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1978-06-06 第84回国会 衆議院 内閣委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月六日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君   理事 小宮山重四郎君 理事 高鳥  修君    理事 藤尾 正行君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    関谷 勝嗣君       玉生 孝久君    安井 吉典君       新井 彬之君    市川 雄一君       柴田 睦夫君    中川 秀直君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         国防会議事務局         長       久保 卓也君         防衛政務次官  竹中 修一君         防衛庁参事官  夏目 晴雄君         防衛庁参事官  古賀 速雄君         防衛庁参事官  番匠 敦彦君         防衛庁長官官房         長       竹岡 勝美君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛庁経理局長 原   徹君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         防衛施設庁長官 亘理  彰君         防衛施設庁総務         部長      奥山 正也君         防衛施設庁施設         部長      高島 正一君         防衛施設庁労務         部長      菊池  久君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      黒木 忠正君         環境庁水質保全         局瀬戸内海対策         室長      岩崎 壽男君         外務省国際連合         局外務参事官  小林 俊二君         運輸省航空局飛         行場部計画課長 平井磨磋夫君         気象庁総務部航         空気象管理課長 小松  巖君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   小島 静馬君     早川  崇君   関谷 勝嗣君     篠田 弘作君   春日 一幸君     吉田 之久君   柴田 睦夫君     三谷 秀治君   田川 誠一君     中川 秀直君 同日  辞任         補欠選任   篠田 弘作君     関谷 勝嗣君   早川  崇君     小島 静馬君   吉田 之久君     春日 一幸君   中川 秀直君     田川 誠一君 同月二日  辞任         補欠選任   新井 彬之君     沖本 泰幸君   春日 一幸君     中井  洽君   三谷 秀治君     柴田 睦夫君   田川 誠一君     中川 秀直君 同日  辞任         補欠選任   沖本 泰幸君     新井 彬之君   中井  洽君     春日 一幸君   中川 秀直君     田川 誠一君 同月六日  辞任         補欠選任   田川 誠一君     中川 秀直君 同日  辞任         補欠選任   中川 秀直君     田川 誠一君     ――――――――――――― 五月三十一日  旧海軍特務士官准士官恩給格付是正に関す  る請願近藤鉄雄紹介)(第五四四四号)  同(池田行彦紹介)(第五四五一号)  同(大村襄治紹介)(第五四五二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第五四五三号)  同(渡海元三郎紹介)(第五五二〇号)  旧国際電気通信株式会社社員期間恩給等通算  に関する請願阿部昭吾紹介)(第五四七〇  号)  同(楢崎弥之助紹介)(第五四七一号)  同(松本七郎紹介)(第五四七二号)  同(吉田之久君紹介)(第五四七三号)  同(和田耕作紹介)(第五四七四号)  同(大柴滋夫紹介)(第五五一八号)  同(中川秀直紹介)(第五五一九号)  靖国神社公式参拝反対に関する請願河上民雄  君紹介)(第五四七五号)  同(木原実紹介)(第五四七六号)  同(斉藤正男紹介)(第五四七七号)  同(田畑政一郎紹介)(第五四七八号)  同(松本七郎紹介)(第五四七九号)  同(荒木宏紹介)(第五五二二号)  同(東中光雄紹介)(第五五二三号)  同(正森成二君紹介)(第五五二四号)  同(三谷秀治紹介)(第五五二五号)  陸上自衛隊習志野駐屯部隊演習場東端下水用  調整池設置に関する請願鳥居一雄紹介)(  第五五二一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月五日  軍嘱託特務機関員恩給給付に関する陳情書  (第三六七号)  同和対策事業特別措置法強化延長等に関する  陳情書外六件(第  三六八号)  青少年の健全育成に関する陳情書外一件  (第三六九号)  元号の法制化に関する陳情書外十六件  (第三七〇  号)  厚木米軍基地の返還に関する陳情書  (第三七一号)  従軍看護婦補償措置に関する陳情書  (第四〇八号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会における参考人出頭要求に関する件  国の防衛に関する件      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会設置いたしております同和対策に関する小委員会におきまして、明七日水曜日、参考人出席を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 始関伊平

    始関委員長 国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  6. 上原康助

    上原委員 今国会もあと余すところ幾らもございませんが、防衛関係法案が今回は提出されていないということもありまして、本委員会における防衛論議もなかなか今日まで機会がなかったのですが、ようやくきょうと明後日、当面する防衛課題についての政府の御見解なりをお聞きし、いろいろ議論をする機会を得たわけです。限られた時間ではありますが、最近の防衛問題について、いろいろな角度から問題が提起をされているような感を受けますので、防衛庁長官並びに政府関係者の御見解を改めてお尋ねをしてみたいと思います。  まず最初に、今国会再開直後の総理施政方針で、国の防衛に関するという一項をわざわざ設けて、国民に国を守る気概を持てというような御発言などがきっかけとなって、防衛憲法とのかかわりなどもいろいろと議論が出てきているわけですが、最近の一連の防衛論議について、直接の責任者である防衛庁長官はどのような御認識で、あるいはどのような心構えで対処しようとしておられるのか、まず、防衛に対するあるいは安全保障に対しての防衛庁長官の御所見を承ってみたいと思います。
  7. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛の問題につきまして今国会におきましても、予算委員会その他決算委員会等でもいろいろ御質問をいただいたわけでありますし、活発な論議意見もあった、またこれが新聞、テレビ等にも取り上げられるという機会もあって、私はまことに好ましい結果だと思うのです。しかし、防衛という問題につきましては、自衛隊二十七万の隊員だけで日本防衛ができるものではない、また自民党だけで日本防衛ができるものではない、いわゆる日本防衛国民すべての合意の中でやらなくてはならない、私はこういう考え方でおるわけであります。しかし、私がいつも考えておりますことは、戦前日本にしてはならない、こういう考え方防衛問題に取り組んでおるわけでございます。
  8. 上原康助

    上原委員 これから逐次お尋ねを進めていきますが、そうしますと長官は、現在の防衛あるいは自衛隊を指揮監督する直接の責任者であるというお立場で、特に問題になるのはシビリアンコントロール、いわゆる文民統制だと私は思うのですが、これまで文民統制シビコンというものは十分その実を上げてきたとお考えなのか、あるいはいろいろとまだ足りない面があるというお考えなのか、その点、いまの御発言からシビコンということは出ませんでしたが、どういうお考えですか。
  9. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、文民統制シビリアンコントロール、こういう問題につきまして先ほどもちょっと触れたのですが、戦前日本にしてはいけないということが一番の歯どめだという感じがいたしておるわけであります。また、現在のいわゆる防衛に対する問題につきまして、シビリアンコントロールというものは完全かというような御質問もあるわけでありますが、法律の問題や予算問題等は十二分に国会審議され、なお重要問題につきましては国防会議等で十分な審議もする。また、総理自衛隊の最大の指揮者でありますし、防衛庁長官もそうでありますが、これが文民であるという立場から言いましても、私は、現状の自衛隊はいわゆるシビリアンコントロールというものは完全に実施されているという感じはいたしておるわけでありますが、足らざるは足さなくてはならぬ、よろしくひとつ御指導いただけるところはいただきまして、それを将来のためにもいたしたい、こうも考えておるわけであります。
  10. 上原康助

    上原委員 確かに防衛庁長官自衛隊の制服でありませんし、文民の方がなっておられる、あるいは最高責任者である総理もそうだということは御答弁のとおりでありまして、また一方、国防会議というものも設置をされていることも理解をいたします。しかし、これは具体的に後ほどお尋ねをしますが、私は、必ずしも完全にその実を上げていない、そういう懸念を持ちますし、特に最近の動きというものは、文民統制どころか、むしろコントロールをすべき文民の方がいろいろと憲法との関係あるいは国会との関係を、無視ということまではいかないかもしれませんが、逸脱をした面が往々にしてあるという点を指摘せざるを得ないと思うのですね。  そこで、きょう法制局長官にもおいでいただいたのですが、これまで政府予算委員会なりあるいはその他の委員会でいろいろと統一見解をお出しになっているわけですが、私たち自衛隊の今日の実力というもの、組織力というものは、これは紛れもなく戦力に値するという見解をとらざるを得ないわけですね。しかし、憲法上はそうではないんだ、さらに発展をしてきて、核兵器の保有も憲法第九条の二項に抵触するものではないんだというようなところまで今日発展をしてきているわけですね。  そこで、改めて端的にお尋ねをしたいのですが、一体憲法上、わが国防衛力整備なり自衛隊自衛力という面で規制を受ける面、歯どめとなるということはどういう点があるのですか。
  11. 真田秀夫

    真田政府委員 お答えを申し上げたいと思います。  まず、考え方基本といたしまして、憲法第九条は、なるほど「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」ということが書いてございますが、問題は、戦力ということの意味内容でございまして、ただいま御質問の中で、現在の自衛隊紛れもなく戦力であるというふうにおっしゃいましたけれども、私たちはそうは思っておらないのでございまして、憲法第九条第二項が保持を禁止している戦力というのは、日本独立国として持っておる固有自衛権というのがあるわけでございますから、その固有自衛権を実効あらしめるといいますか、それを裏づけるために必要な最小限度防衛力実力部隊、これは憲法第九条第二項によっては禁止されておらないというふうに実は考えておるわけでございまして、現在の自衛隊は、もちろんいま私が申し上げました憲法が許容している範囲内のものであるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、恐らく御質問の真意は、自衛のために必要な最小限度というのではいかにも抽象的ではないか、自衛のために必要な最小限度という概念で、では一体どこまで持てるのか、一体歯どめはどうなるのかということだろうと思うのですね、御質問の御趣旨は。(上原委員「それは後で言うよ」と呼ぶ)その歯どめは、先ほど来申しましたように、これは自衛のため必要最小限度というのが実は大枠でございまして、そのために文民統制とかあるいは国防会議とか、あるいは最高指揮官内閣総理大臣であり、あるいはまたその統括者防衛庁長官で、いずれも文民である。しかも、その組織中身については、毎年予算なりあるいは法律をもって国会の御審議を経ているというところで、実は一つ手続上の歯どめもあるというふうに考えておるわけでございます。
  12. 上原康助

    上原委員 いまいみじくも、私がこれからお尋ねをしようということを想定して、きのうどんなことを聞くかということで、そのことも私は申し上げたから答弁が先走ったと思うのですが、いまの御答弁にしても、これまでの見解にしましても、そうしますと、自衛のための必要最小限度範囲内の実力保持することは、憲法九条第二項によって禁止されておらずと、こういう言葉で、表現でカバーといいますか、これに包含をされた形で、自衛のために必要最小限度範囲内の実力という表現ですべてできるということになるわけですね。ここに国民は疑問を持っているわけですよ。必要最小限度実力ということであるならば、当然そこには必要最小限度のパイというのは、非常に狭い範囲にしか解釈できない表現なんですね。しかし、非常に巧妙に考えたがゆえに、いろいろの面で誤解を与えている。  そうしますと、憲法第九条でいわゆる放棄をしていること、戦争放棄戦力及び国の交戦権否認ということでなされているわけですが、ここで言う戦争放棄、あるいは武力及び国の交戦権否認ということと、現在の自衛隊必要最小限度実力ということ、自衛権行使という面とは矛盾する面も出てくるわけですね。私はそう思う。憲法九条で否認をしている、あるいは放棄をした戦力戦争というものは、どういう意味ですか。どういうものを指しているのですか。
  13. 真田秀夫

    真田政府委員 私たち考えによりますと、憲法九条が放棄している戦争と、それからわが国に対して急迫不正な武力行使があった場合にそれを撃退するといいますか、専守防衛をするという概念とは、これは全く違うというふうに思うわけなんでございまして、いわゆる戦争ということになりますと、守るも攻めるもくろがねのとかなんとかというように、攻める方だって当然含まれるわけなんですが、そういうことはしない。ただ、日本独立国でございまして、日本の国土なり国民を外敵から守るというのは、これは政治の最も大事な分野の一つであることは間違いないんで、そういう急迫不正な侵害といいますか、武力行使があった場合に、それを防ぐという範囲内のこと、これがすなわち自衛権行使でございまして、これは戦争という概念とは違うというふうに考えております。
  14. 上原康助

    上原委員 じゃ、九条で放棄をした戦争というもの、あるいは武力というのは、この自衛権行使とは違うんだ。——概念的にはどうなるんですか。侵略戦争だけを放棄したということの意味政府はとっておられるのか、あるいはそれ以外のすべての戦争をこの面では放棄していると私は思うんですね。いま専守防衛ということをおっしゃいましたが、専守防衛ということになると、あくまでも急迫不正の事態が生じて攻撃を受けた場合、武力侵害があった場合に、防衛の出動なり、わが国自衛権発動というものはあり得る、こういうふうに理解をしていいわけですね。
  15. 真田秀夫

    真田政府委員 おっしゃいましたように、わが国に対して急迫不正なる武力行使が行われた、そういう場合にこれを防ぐというのが自衛権発動で、これは戦争という概念ではございませんで、憲法放棄している九条第一項に反するものではない、それがまさしく自衛権という概念でございます。
  16. 上原康助

    上原委員 そうしますと、あくまでも専守防衛基本というのは堅持をなさる。自衛権発動の三つの要件がありますね。急迫不正の事態が起きている。わが方から先に攻撃をしかけるとかあるいは相手の基地をたたくとか、そういうことはあくまでも専守防衛、あるいは憲法九条なりいまの自衛権発動という範囲内ではできない、またやるべきでないという解釈をとっていいわけですね。そういうふうに理解をしていいわけですね。
  17. 真田秀夫

    真田政府委員 ちょっとおっしゃる趣旨がはっきりしないのですが、専守防衛でございますから、急迫不正な侵害があった場合にこれを防ぐという国権の発動は、これは自衛権行使でございまして、いわゆる自衛権発動なり行使についての三要件というものをかねがね申しておりますが、その範囲内において急迫不正なる侵害を防ぐという行動をとることは、これは憲法上禁止されておらないというふうに考えております。
  18. 上原康助

    上原委員 防衛局長、どうなんですか。ですから、急迫不正の侵害があった場合に自衛権発動がある、これまで政府も一応そう言ってきたわけですね。したがって、そのおそれがある場合は先制攻撃なりできるのか。私たちはあくまでできないと思う、専守防衛という基本を維持する限り。それは後の話とも関連していきますので、だから専守防衛なんというのはナンセンスだという議論も出てきているわけです。そういう面は軍事上どういうようなことでいま自衛隊はやろうとしているのか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  19. 真田秀夫

    真田政府委員 ただいまの御発言の中に、急迫不正なる侵害のおそれがある場合に、自衛隊自衛権発動ができるかという点がございましたが、そういうことはできない。おそれがあるという段階で、日本自衛隊自衛権行使と称して防衛出動をするというようなことはできません。ただ、自衛隊法上、そのために準備といいますか、おそれが現実になった場合の準備として防衛出動等を命令することはありますけれども、いわゆる自衛権行使そのものはできません。
  20. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま法制局長官から御答弁があったと同じように考えております。いま先生がおっしゃっている中に、あるいは予防戦争というふうな意味で、そのおそれがあるときに、先に行って、攻撃する可能性があるものをたたくというようなことについては、そういうことはできないというふうに考えているわけでございます。
  21. 上原康助

    上原委員 そこで、さっきの必要最小限度範囲実力ということと、かつては、政府近代戦争遂行能力という表現をお使いになったこともあるわけですね。近代戦争遂行能力と、統一見解でじばしば用いられている必要最小限度実力というのとの違いですね、いまの自衛隊が目指している自衛力というか軍備自衛力軍備がどう違うのか、それも聞きたいわけですが、それのいわゆる目標といいますか、一つ到達点というのは、近代戦争遂行能力保持していきたい、確保していきたいというところに定められていると私は思うのです。だから、われわれは問題があると言う。これを政府近代戦争遂行能力という表現を使わずに、必要最小限度範囲内の実力とか、そういうことに変わったのはどういう意味なのか、また、この違いはどういうふうに考えておられるのか、ぜひはっきりした御見解をお示しいただきたいと思うのです。
  22. 真田秀夫

    真田政府委員 おっしゃいましたように、かつては、政府は、憲法第九条第二項で禁止されている戦力の定義、内容といたしまして、近代戦争遂行能力という言葉を用いておりました。そのときの中身でございますが、近代戦争遂行能力というのは、そのころの政府の説明によりますと、近代における攻守両面にわたりまして最新兵器及びあらゆる手段方法を用いまして遂行される戦争、そういうものを指すものである。そういう理解のもとに、近代戦争遂行能力とは、そういう攻守両面にわたって、手段も無制限な手段を用いて行う戦争、それを独自で遂行することができるような、そういう総体としての能力を持った実力部隊近代戦争遂行能力という言葉であらわしておったわけなんでございますが、これは御承知のとおり、昭和二十九年ごろからその表現を改めまして、現在政府が御説明申し上げておりますように、自衛のために必要な最小限度というふうに言いかえました。  言いかえましたが、その言いかえたときの詳細な理由は、実は昭和二十九年のことでございますので、私自身、直接タッチしておりませんけれども、それはしかし概念としては、中身はそう変わったものじゃない。つまり、自衛のための必要最小限度能力を超えるものは禁止されておる。それは言いかえれば、昔の言葉で言えば、近代戦争遂行能力のある実力部隊であるというふうに御理解いただいて結構であろうと思います。
  23. 上原康助

    上原委員 しかし、いまの御答弁からしても全く同義語ではないわけでしょう、近代戦争遂行能力ということと。  じゃ、言葉をかえてお尋ねしますが、近代戦争遂行能力は、憲法九条が許容する範囲能力実力ですか。
  24. 真田秀夫

    真田政府委員 現在はそういう表現を用いておりませんが、先ほど申しましたような意味合いにおける近代戦争遂行能力のある実力部隊は、これは憲法第九条第二項で保持を禁止されておるというふうに御理解願います。
  25. 上原康助

    上原委員 保持を禁止されているわけですね。
  26. 真田秀夫

    真田政府委員 ただいま申し上げたとおりでございます。
  27. 上原康助

    上原委員 防衛局長お尋ねします。  近代戦争遂行能力は、先ほど法制局長官の御答弁にもあったわけですが、あらゆる戦争に対応できるというような趣旨ですね。そうしますと、当然核武装核装備ということも近代戦争遂行能力には入る、これは常識ですよね。そうですね。
  28. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま法制局長官から御答弁がありましたが、従来法制局からの御答弁の中にございますように、攻守両面にわたる最新兵器、あらゆる手段を用いて遂行される戦争、それを独力で行えるような能力というのが近代戦遂行能力でございます。したがいまして、あらゆる手段方法を用いるという中には、当然核の戦争能力も持っているということであろうと考えております。
  29. 上原康助

    上原委員 そうしますと、これはまた一つの問題が出てきたわけですが、憲法九条二項、あえて二項を引用しますが、二項では近代戦争遂行能力保持は禁止していると、いまはっきり御答弁になったわけですね。近代戦争遂行能力というのは、あらゆる手段を用いて独力で対処する能力、いわゆる実力軍備軍事力だ。しかしまた一方では、必要最小限度範囲内の実力憲法は許容している、ここまではわかるわけです。  では、必要最小限度範囲内の実力の中で核兵器装備はできるという解釈をしているということは、どうなるんですか。近代戦争遂行能力保持というものは許されない、しかし必要最小限度範囲内には核兵器装備の許容まで憲法が否定しているものではないのだという統一見解と明らかに矛盾するのではないですか。ここに皆さんの統一見解なり解釈の仕方あるいはそのときどきの見解というものは、きわめて納得できない、納得しがたい問題があるということがいま指摘できるのじゃないですか。近代戦争遂行能力には明らかに核装備が入る、だから私たち憲法九条の範囲あるいは憲法上は核兵器装備はできないということを一貫して主張してきた。矛盾するんじゃないですか。
  30. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま申し上げましたように、近代戦遂行能力というのは、攻守両面にわたってあらゆる手段を用いて独力で戦う力というふうに申し上げました。したがいまして、その中には当然たとえば攻撃的な兵器も含んでいるわけでございます。したがって、攻撃兵器の中には核兵器というものも含まれるということは当然あるわけでございます。しかしながら、憲法九条の解釈におきます最小限の自衛力という中で解釈上としては核兵器も否定していないと申しますのは、何度も御説明申し上げておりますように、純粋に防御的な兵器、そういったものであれば憲法がこれを否定しているものではないというふうに申し上げているわけでございます。
  31. 上原康助

    上原委員 ここはどうも論理のつじつま合わせで、納得できませんね。純粋に防御的な核兵器というのはありますか。純粋に防御的な兵器、しかも核兵器ですよ、一体そういうのがあるんですか。もしあればとか、あらばという表現も使っていますね。そういうことでごまかそうとするからだんだん矛盾が出てくるし、いろいろな面で意見がかみ合わなくなっている。どう見たって憲法第九条なり前文なりを読んでみて、核装備までできるという判断はわれわれがどんなに考えたってできない。しかも近代戦争遂行能力ということと必要最小限度自衛力ということは、さっき私が同義語だといって少し詰めようと思ったら、いつの間にか変わるんだと言う。明らかに近代戦争遂行能力保持できない、これは当然ですよ。憲法が許容するものでない。憲法が許容するものでなければ、核装備というものは、許容するものでないとするならば解釈一つでなければいかないのじゃないですか。必要最小限度自衛力装備においても核兵器の保有はできないと解釈するのが憲法論理的にもこれは常識じゃないですか。そういう矛盾点が統一見解の中に明らかにあるということです。しかも、純粋に防御的な核兵器とは一体何ですか。
  32. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように、わが国には非核三原則がございます。それから核防条約などにも入っておりますので、自衛隊がこの核兵器というものについて研究をしていることはないわけでございます。したがいまして、純粋に防御的な核兵器というものがこういうものだということは説明申し上げることはできないわけでございますが、いわゆる九条の解釈といたしまして、仮に純粋に防御的な核兵器というものがあるとするならば、それは憲法解釈上否定されるものではないということを申し上げているわけでございます。
  33. 上原康助

    上原委員 そういう解釈でいろいろやろうとするところに私は無理が出てきていると思うのです。非核三原則があり、核防条約があり、原子力基本法がある。きょう一、二点だけより明確になったような感じもしますが、私たちは、やはりスタートが間違っておるというか、憲法解釈として非常に無理な面が積み重ねられてきているがゆえに、いろいろいまの防衛力のあり方について疑問も投げかけてきているわけですね。  そこで、こういう前提で自衛隊の力というのはどんどん増強されてきているわけですが、先ほど私がお尋ねをしましたように、シビリアンコントロールの問題に入りますが、この核兵器の問題にしても全然自衛隊で研究されたことがない、そういうようなことを言っているわけですが、理論上とかあるいは技術上といいますか、いろいろな研究はずいぶんやられてきているのじゃないかという感じを私は持つわけですね。最近の一連の防衛庁長官なりあるいは統幕議長の発言などを見ても、核兵器そのものもあくまで保持をすべきなんだという主張さえ、現時点では余り表面には出てきていないが、底流としては昭和三十八年ごろから出てきている。しかも文民統制の面で言いますと、防衛庁長官先ほど二回とも、戦前のような日本にしてはならないということを強調なさいましたね。失礼ですが、あなたの御認識では、戦前のような日本というのは一体どういうことですか。
  34. 金丸信

    金丸国務大臣 私は大正の生まれでありますから、五・一五事件、二・二六事件、そして満州事変、シナ事変、だんだんエスカレートして第二次世界大戦、そして敗北という姿になった。そういう過程の中で、いわゆる軍人でなければ日本人ではないというような日本であったということをこのはだ身で感じております。私も召集を受けた一人として、またその体験から見ましても、こんなような自由のない、全然国民を無視した戦争というようなものに駆りやられるということは絶対やってはならぬ。私はそこを骨の髄までしみておるものですからそういうことを申し上げたわけでありまして、まさにきょうの日本がこのように自由で、そしてお互いに所得も戦前の状況より多くなってき、あるいは道路も公共事業も推進されるという姿を見れば、なお一段とこの体制というものが必要だということをしみじみと私は感じているがゆえに、かようなことを申し上げたわけでございます。
  35. 上原康助

    上原委員 私は、確かに金丸長官御自身というかあるいは個人としてはそういうお考えなり、体験をなさっておるから人間としてのそれはあると思うのですよ、それじゃいまのような訓示なりを自衛隊の何か集まりとかなんとかの場合になぜやらないのでしょうかね。そういう日本にしてはならないということは言いませんね、そういうときは。そういう体験論も歴史の事実というものをあかしを立てて、自衛隊をコントロールする、あるいは憲法の精神というものを徹底さしていくという教育なり指導というものをおやりになっておれば、それはごりっぱ。私たちももっと協力できる面も出てくると思いますね。  しかし、国会ではいろいろそういうことを、憲法を守りますとか、戦前のような日本にしてはならないということを大変強調なさりながら、残念ながら、制服のところへ行くとそういうお言葉はちっとも出てきませんね。一月八日、習志野の陸上自衛隊第一空挺団視察のときに、「敵に脅威を与えなくて何の防衛か」、これから始まって、防衛大の卒業式においては「精強な自衛隊たれ」、「精強な自衛隊たれ」はまだ少し愛きょうがありますよね。愛される自衛隊になれというのはこれまでの言い分でしたが、それも変わってきている。特に、これを受けて、このときの防衛大の同窓会長はこういう発言をしたという報道がなされていますね。「自衛隊は災害派遣だけしていればいいとか、仮想敵国を想定してはいけないとかの世論があるが、それで本当の防衛が成り立つだろうか」、こういうことがまかり通っている。  さらに四月六日には、衆議院の決算委員会防衛庁長官は、「自衛隊は百発百中で打ち倒す訓練をしており、治安出動にあたってはしっかりしたハラを決めていなければならない」、こういう御発言。また、「全国規模の治安事件なら自衛隊の治安出動もありうる。」これは成田を想定しておっしゃったかどうかわかりませんが。さらに六月一日、ついこの間北海道までお出かけになって、「脅威ある自衛隊でなくてはならない」、また御発言をしている。新聞もいろいろ書いておるのですが、防衛庁長官の人柄だから何か余り問題にならないというようなことで、本来なら国会でこういう御発言というのは、私はやはり文民統制のポストにある最高責任者ともいう方が、もう少しはお考えになってしかるべき点ではないかという感じを受けるのですよね。  先ほどのそういう体験論なり、そういう御体験をなさって、本当に民主主義社会あるいは平和憲法の理念に基づく防衛のあり方といいますか、自衛隊というものを百歩譲って議論をかみ合わすにしても、もっとそういう面はぴしっとしたシビリアンコントロールというものを図らないと、なかなかうまくいくものじゃないと私は思うのですよ。いま私が指摘をしたことについて、大変申し上げにくい点でもあるのですが、やはりお立場でありますから、率直な御見解を承っておきたいと思います。
  36. 金丸信

    金丸国務大臣 私が、脅威ある自衛隊というような言葉、精強な部隊というようなことを言う。私はその前に必ず、平和憲法を踏まえて、自衛隊は侵さず、侵されずという精神でやる中で、いわゆる国民の負託にこたえるのには脅威ある精強の部隊でなくてはならぬ、こう言っておるわけでありまして、そうしてまた講演等も私はあちこちでやります。やる場合は必ず、いわゆる戦前日本にしてはいかない、それは私の体験談も入れて、この問題につきましては衆議院の予算委員会でも、私は答弁をいたしておることも記憶いたしておるわけでありまして、金丸信が何かタカのようなことを言われるわけなんです。金丸信はタカじゃない、私はハトでも雌バトだとたびたび国会答弁をいたしているのですが、私は、戦争は絶対やっちゃいかぬと自衛隊へ行って言っています。ぜひひとつそれはどこかから調査して持ってきてください。間違いない。
  37. 上原康助

    上原委員 そういう信念でひとつやれれば結構だとは思いますが、しかし内部は必ずしもそういうふうには受取っていないところに、私はシビリアンコントロールの問題があると思うのですね。  そこで、個人の名前を挙げてとやかくといいますか議論をするのは、余り好きな方ではないのですが、現在統幕議長のポストにある栗栖氏の発言なりあるいはお書きになったものがしばしば問題になるわけですね。これはすでに今年、予算委員会でもわが党の前書記長の石橋先生がお取り上げになったのですが、一月四日の「ウイング」の問題、これなんかも「「専守防衛」と「抑止力保持」とは並存し難い概念である。」さっきも専守防衛基本は堅持なさるということをはっきり法制局長官もおっしゃったのですが、これを真っ向から否定していますね。  このことは「ウイング」に書かれたことは何もその「ウィング」だけのことではないのですね。すでに一佐時代から、昭和三十八年の六月あるいは十月の陸上自衛隊幹部学校記事の中にもっとひどいのが出ているのですよ、栗栖さんの論文というは。これは十五年前の話だからいまさらというようなことで、私は見逃すわけにはいかないと思いますね。相当長文なんでこれ全部引用するわけにいきませんが、たとえばこういうことも書いてありますよ。  核問題ですが、「核に対する備えを無視して、単に、核の公算は少ないという簡単な前提の下に、わが国将来の防衛を想定するとすれば、これはきわめて危険なことではあるまいか。」こういう表現とか、「特に近時の各国、特に隣国におけるCBR兵器全体の開発度を注視すると、短期間における表面現象のみを追って、長期に亘る国防の基本を設定することの不可なることを痛感する。」近隣諸国なり、これは明らかに仮想敵国を想定してこういうことをやっていると思うのですが、そういうことを考えるならば、わが方も核兵器もCBR兵器も持つべきだという主張ですね。そういう表現とか、あるいは「わが方に対する核攻撃は、相手の発射基地に対して、向うがやれば、こちらもいつでも報復できるだけの力を温存することによって、その発動を躊躇せしめうる。」とか、方々でこういう論理で、いわゆる核装備までもやるべきだ。そして最後の段階においては、こういうふうに言い切っていますよ。「戦術においてだけでなく、戦略においても、専守防御は成り立ち難い。」この「ウイング」だけに書いているのじゃないのですよ。戦術論からいっても、戦略論からいっても専守防衛という論は成り立ちがたい、抑止力にならないのだ、「現時の防衛力増強計画の本質的問題はここに存する。」したがって、専守防衛ということではいかないから、核装備を含めてやるべきだというふうにやって、これに対する反論も出たようですが、さすがに良識派もあるようで、そういったことは憲法上も問題が出てくるのじゃないかという議論に対しては、また反論をしているわけですね。「日本防衛は、素朴な感情論(核停ムード)や敗北主義に委ねえないものがあるのである。」とか、核に対する国民感情というものは敗北主義だとか、感情論だというふうに決めつけている。こういう思想の持ち主が自衛隊の主要なポストにいるということは、果たしてシビリアンコントロールの実を上げているということが言えるのでしょうか、長官。  この論文でも結びの段階においては、「数発の核弾頭を日本の主権下に保有するか、少なくとも有時に際し使用上−わが領土及び領海上のみにても−の発言権を有することは、適切な保管及び運搬手段と相俟って、戦術的に敵の作戦行動を制約する絶大な力を具備することを意味する。このようにして核・ロケット装備は、特にわが国にとり戦略、戦術二重に戦争抑制たる働きをするのである。」そして「核をもてば核を呼ぶのではなくて、かえって相手の核攻撃を抑制する。相手が核をもっている以上、こちらも核をもたねば、完全な防衛は今日期待できないということを、戦略・戦術面から論じた。」さらに最後には、「核対応の研究訓練に瞬時も油断があってはならない。」防衛局長も教育局長もいらっしゃると思うのだが、昭和三十八年の段階でこういうことを言い切っておられるのですよ。  あれから十五ヵ年間何をやっているのかべールに隠されて全くわからぬじゃないか。こういうことがまかり通っておるということは、もっともっと先へ進んだいろいろな考え方なり研究というものが積み重ねられている、もういつでも対応できるところまで来ていると残念ながら私は疑わざるを得ないのです。皆さんは、そこに国民の疑惑があるということをもう少しよく認識をしていただかないと困りますよ。こういう問題について、防衛庁長官なりは一体どうお考えですか。
  38. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 私も栗栖統幕議長といろいろ十分に話し合っておりますし、栗栖統幕議長も制服生活約二十年以上ありますが、彼は彼なりの信念を持っております。  先般、サンケイ新聞で社会党の石橋議員と対談をしております。それをお読みいただいたらおわかりかと思いますが、(上原委員「読みましたよ」と呼ぶ)彼は戦後の日本自衛隊というものは、かつての軍隊のようなプロシャ的な教育じゃなくて、アングロサクソン的な教育というものが行われており、自分もそれを高く買っておる。要するにシビリアンコントロールというアングロサクソン的な自衛隊のあり方というものを高く評価しておるわけです。たとえば石橋さんとの論議の中にも栗栖氏は「当然、現在の憲法、その下の法律をわれわれは順守しなければ、国に対して奉仕することはあり得ないわけです。これは絶対的なんです。」こういうように言っております。あるいは「私どもは憲法をかえてくれ、あるいはかえたほうがいい、そのために(改憲を)やるべきだ、という考えは全然持っておりませんし、それに基づいて私個人も発言している意思は毛頭ないわけです。」こういうことも言っております。彼は、現在のわが国憲法というものを高く評価しております。  ただ、軍事専門家といたしまして、少なくとも政治の場でシビリアンコントロールされるのだから、この政治の場にできる限り自衛官としての生の軍事技術的な声を聞いていただきたい。その上でシビリアンコントロールの判断をしていただきたい。いままではともすれば制服の自衛官というものは、口をつぐみがちであるけれども、それではいけないのだ、正しいシビリアンコントロールをしてもらうためには、制服も制服の立場から大いに声をシビリアンコントロールの場に出すべきだ、こういう信念を持っておるわけです。そういう意味では私は正しいと思います。  一方で「国防私見」、いわゆる十五年前の記事がございます。これもよく読んでいただいたらいいと思いますが、彼は当時一佐でございますけれども、十五年前に軍事的に核兵器の脅威に対しては、核兵器というものが抑止力になるのではないかという考え方を持っておる。これは軍事的にそう思うのは、NATOの現状を見ましても無理ないと思うのです。ただし、いまの憲法のもとにおいて、あるいは政治が——これは当然わが憲法があるわけでございますから、憲法は国家の正当防衛権しか認めていないという意味では、先ほど来話がございましたように攻撃的、侵略的な兵器は持てない。これが一方では憲法が世界に訴えた理想である。その理想を守るためには、軍事的なそういったリスクのあることはわれわれ覚悟しなければならぬ。その軍事的なリスクというものはやはり声を大にして言うべきである。しかし政治は、その軍事的なリスクを補完するために日米安保条約というものを結んでおる。この「国防私見」を見ましても、核兵器に対するには核、核の脅威に対しては核というのが軍事的には考えられる、これが持てない、しかし日本は持つべきでない、そのためには日米安保条約というものの信頼度をもっともっと高めておく必要があるということを彼は強調しているわけでございます。  だから、先ほど言いましたように、軍事的な立場から見まして、軍事的なリスクというものあるいは軍事的な考えというものをできる限りシビリアンコントロールの場に持ち上げていただきたいというのが彼の信念でございます。憲法を無視するという気持ちは毛頭持っていない、われわれはそのように確信しておるところでございます。
  39. 金丸信

    金丸国務大臣 その問題につきましては、予算委員会でも石橋さんから質問を受けたわけであります。私も、純な気持ちで言ったにいたしましても、国民の誤解を招くような面もある、そういう面で厳重な注意と訓戒をいたしたわけでありますが、先ほど来からいろいろお話がありますように、防衛庁のいままでの答弁は、なかなかはっきり割り切れなかったような答弁があったと私は思います。そういうことが誤解を生むということもあったと思う。私は努めてそういう問題を誤解のないように、言うべきことはしっかり言って理解を得るということ、いわゆる書庫の中にしまって隠しておくような答弁はだめだということを言っておりまして、今後できるだけそういう面につきましても御理解いただけるような答弁をいたしたい、こう考えておるわけであります。
  40. 上原康助

    上原委員 長官、残念ながら御理解がいただけないのですよ。私が言うのは、核を保持すべきだという主張をしている人に対してどうするかということをもっと真剣にお考えにならなければいかぬのじゃないですかということです。官房長が、同僚と言ったらなにですが、お役人の立場で同僚をかばうお気持ちはぼくもわからぬわけではない。石橋さんとの対談のことは石橋さんにお聞きになれば一番いい。安保条約があるということは確かに言っていますよ。彼は安保を否定しているのじゃありませんか。  あなたの御答弁も違う。「同盟の弱さ」ということをはっきり言っているのです。これは全部は読めませんが、「同盟の弱さ」という中の五十二ページに「わが国に独自の力(端的に云えば、運搬手段さへあればCBRのいずれでも可)を持つことができないとすれば、米国の報復意思をわが国の運命に対して確実に発動させる手段を講ずる必要があろう。」安保条約でもまだまだ頼りにならないで、「同盟の弱さ」ということを彼は言っているのですよ。憲法があるということ、これにはこんなにたくさん書いてあるけれども、憲法ということは一言も出てないのですね。  さらにそれだけではなかったのです。私が昨年の予算委員会でも取り上げたように、統幕議長になられる前に何と言ったか。皇居で認証を受ける、記帳をして認証官にすべきだという御発言もなさった。これで自衛隊が政治をリードすべきだと言い切っているじゃありませんか。こういうことに対して確かにこの間の予算委員会で問題になって、「ウイング」に書いたことについては厳重に忠告をしたとかなんとかいう御答弁があったのですが、これについては十五年前だからそのままになさるのですか。  なぜ私がこの問題を言うかというと、いま栗栖さんは大いに胸を張っておられると私は思う。恐らく憲法上は核兵器装備できるという統一見解を出したのと符合するわけなのだ。十五年前におれが言ったことは当たっておった、だから自衛隊の諸君よ、核も持とうじゃないかということになるのは人間としてあたりまえじゃないですか。何がシビリアンコントロールですか。これを放任するのですか、責任問題になりますよ。法案が出ておれば、われわればこんなものをのうのうと許すわけにはまいりません。これに対してどういう措置をとるのか、もう一度責任ある長官の御答弁を求めます。
  41. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 長官からお答えになります前に、私から事実関係をもう少し申し上げたいと思います。  先ほどサンケイ新聞の対談から私が引用しましたように、彼には憲法を無視する気持ちはございませんが、その字句の片々で、たとえば前に「ウィング」に、専守防衛だけでは成り立たないということで、抑止力効果とは矛盾するとかいうことを書いておりましたが、それに対して、わが国防衛としては当然日米安保条約による米国の支援があるということを付言しなければ、わが国の国防問題は誤っているという意味では彼の筆足らずもございました。  今回の「国防私見」、これは十五年前でございますけれども、ここに出ておりますとおり、「米国の報復意思をわが国の運命に対して確実に発動させる手段を講ずる必要があろう。」このように、いわゆる憲法がある以上、核兵器の脅威に対してはもっともっと、せめてNATO並みに米国の支援を確保できるような手段を講じなければならないという言い方をしております。それがあたかも日本、アメリカを含めて核の抑止力というものは必要だという言い方をしておるのですけれども、この点につきましても、当時、十五年前でございますから、日本そのものが将来とも核兵器をぜひ持たなければならぬというのみの言い方に聞こえるような節々もございますけれども、いま言いましたように、日米安保条約の確実性を前提にして物を言っておるということを御理解願いたいと思います。  同時に、先般の「ウィング」のときにおきましても、長官から言葉足らずで迷惑をかけたという意味で御叱責があり、彼も謹慎の意を表しております。いまの「国防私見」につきましても、国民の感情を若干軽く見るような言葉の端々がございます。こういう点につきましても、彼は長官のところにそういった言葉足らずのことについては遺憾の意を表し、謹慎の意を表したわけでございます。
  42. 金丸信

    金丸国務大臣 いろいろ御指摘の問題等もあるわけでありますが、私は、本人と四、五十分この問題についていろいろ彼の思想というものを詰めたわけであります。先ほどから核兵器問題等を含めまして、自衛隊が疑心暗鬼に包まれておるような御質問もあったわけでありますが、彼自体が十五年前に核兵器を持つということについてそういう考え方を持った。しかし、それはあくまでも政治優先だという考え方の中で言っているわけでありまして、二人で四、五十分話をした中で、彼は本当に純な気持ちで言っているだけであって、あくまでもシビリアンコントロールだけは守っていかなくてはならぬという思想に徹している、こういうように私は判断をいたしておるわけであります。しかし、厳重な訓戒と注意を与えました。  その後の行動を見ておりましても、私はなるほどと胸に受けるものもあるわけでありますから、ぜひそのように御理解をいただきたいと思うわけであります。
  43. 上原康助

    上原委員 これをずっと読んでみますと、他力本願の防衛ではだめだとか、いろいろ書いてあります。それをそのままにして皆さんは、シビリアンコントロールの実を完全に上げていますと言う。かつて、トルーマン大統領でしたか、朝鮮戦争のときに、中国大陸を進攻すべきだと言ったことで、マッカーサー元帥でさえ解任をしたわけでしょう。それが本当のシビリアンコントロールなのですよ。昨年五月に在韓米軍司令官シングローブをカーター大統領が即座に解任した理由はわかりますか。わが日本ではシビリアンコントロールの責任ある人々がなぜそういうことができないかということを私は政治的に問題にしたいわけです。  そこまでおやりになるのなら、長官がおっしゃることなり官房長がおっしゃることなり防衛庁のやっている仕事も、やはり憲法に基づいて国会の意思を体してやっているということは理解できますが、長官、アメリカの言うところの文民統制シビリアンコントロール、政治の指導というのはそこにあるのですよ。しかし、そうではなくして、日本ではむしろそれを容認するか、あるいは国会とかそういう公式の場ではいろいろ忠告をするとおっしゃっておりますが、実際はそれを激励するような言動さえもあるわけでしょう。これではいけないと私は思うのです。この点、これまでのことも含めて改めて、自衛隊の制服の重要ポストにある人々はもちろん、教育面、指導面においては周知徹底させますね。
  44. 金丸信

    金丸国務大臣 そのシビリアンコントロールという問題を含めまして、栗栖君の問題等もありましたし、マッカーサーの問題あるいは在韓米軍の司令官を左遷するという問題等も含めまして、私は日本でもそういうことは厳重にやらなくてはいかぬということを自分の腹のつもりの中に入れておるわけであります。
  45. 上原康助

    上原委員 あと一つ自衛隊の問題でお尋ねしておきたいのですが、民主主義社会ですから、いろいろな思想があり、いろいろな動きがあってもいいわけです。しかし、事自衛隊というのは、私は公務員だと思うのです。自衛隊が政治的に偏向思想を持ったり、あるいは時の政府に反対したり法律に抵触をする、基本方針に対して、批判はいいでしょうが、反対行動をとるということは自衛官という範囲ではできないと思うのです。  最近、よくはわかりませんが、たしか内閣総理大臣防衛庁長官昭和五十三年三月十日付で建白書が出されていると思います。このことについて、長官御存じですか。
  46. 金丸信

    金丸国務大臣 その建白書は、私は見ておりません。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  47. 上原康助

    上原委員 官房長は御存じですか。
  48. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えします。  私の方へもいま正式に参っておりません。
  49. 上原康助

    上原委員 一部の自衛隊といいますか自衛官も入っているのじゃないかという感じがするわけですが、新国軍創建連盟という会から建白書がたしか出ていると思うのです。ここには三つの点が主に指摘されているのですが、自衛隊が揺れている、要するに皇軍たれということの議論で、私はもちろんこういう動きを是認するわけでもありませんし、全くもって迷惑な話だと思うのですが、こういうことが隊内なりで堂々となされているというところに、シビリアンコントロールの問題、現在の自衛隊の教育の問題というのが果たしてどのようになされているかということを私たちは疑問を持つわけです。  全然見ておられないということですから、もう余り議論いたしませんが、たとえば「防衛庁を国防省に昇格の事。」とか「「士気」高揚の観点から、防衛大学校、各学校、部隊精神教育の大改革を断行の事。」とか、「予備自衛官を飛躍的に増大せしめ、自衛隊の定員を削減の事。」これはちょっと内容がわかりませんが、この中でちょっと気になるといいますか、問題になるのじゃないかという感じも受けるのは、「改革断行の遅々として進まざる場合、吾等は次々と隊内に潜在せる同志の総力を結集して内部暴露戦術を展開する用意あるを明示しておきたい。」こういう脅迫めいたことも言っているわけですね。  したがってこれからすると、もちろん多くの自衛官なり隊員ではないかもしれませんが、少なくともこれだけのことを言い切るには——「吾等は次々と隊内に潜在せる同志の総力を結集して内部暴露戦術を展開する用意あるを明示しておきたい。」かつて楯の会というものがあって、これもいま一部で問題になっていますね。だからなぜ私がこういうことも問題にするかといいますと、もちろん予備自衛官を入れて三十万前後ですから、それだけの大ぜいの人になると、いろいろな思想の持ち主もおるでしょうし、気の強い人も、弱い人も、怠け者も、いい人もいるかもしれません。おるのですが、実際に憲法の枠ということと、絶えず言うのですが、百歩譲って自衛隊の果たすべき任務というもの、役割りというものは少なくとも国民理解する一定の常識的なものがあると私は思うのです。それを著しく逸脱をするようなことはやるべきでないと私は思う。そういうものを周知徹底させていないがゆえに、楯の会ができてみたり、こういういろいろな不穏な動きというものが出てくる。それじゃ、これはお調べになって御報告していただけますね。
  50. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 いまの建白書なるものが私の方に正式に上がってきました場合には、その内容等等を審議調査してみたいと思います。  御承知のとおり、二十有数万の自衛隊員は、入りますときには全部憲法と法令を遵守しということを宣誓して入っておるわけでございます。その一部の者がどういうことを言っておるかわかりませんけれども、もし自衛隊の中で変なことがあるからそれを暴露してやるというなら、大いにやってもらったらいいと思います。そんなものはないと思っておりますし、一部あるかもしれませんが、やるなら大いにやってもらってもいいと思いますが、もし上がってきました場合には十分に調査して、機会がございましたならば、そのときにどういう手を打ったかということはお答え申し上げたい、このように思います。
  51. 上原康助

    上原委員 次に進みたいと思います。  次は、日米防衛協力の問題について、私はこの問題はずっとお尋ねをしてきましたので、きょうも少し取り上げてみたいと思うのですが、これもなかなかいろいろ理解しがたい面があるわけですね。ことしの二月でしたか、予算委員会でも取り上げたのですが、これまで五十二年九月二十九日まで六回の小委員会が持たれておると思うのですが、その後どれくらい持たれたか。五十二年九月二十九日以降の作業の進捗状況をも含めて、全体的にどうなっているのか、まずお答えをいただきたいと思います。
  52. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 防衛協力小委員会につきましては、いま先生がお話しになりました昨年の九月二十九日以降防衛協力小委員会そのものは開いておりません。その間何をやっていたかということでございますが、御承知のように部会が三つできまして、作戦部会、情報部会、後方支援部会におきまして、いわゆるガイドラインというものの中に盛り込むべき内容というものが具体的にどういうものがあるかということをそれぞれの部会で勉強しているわけでございます。  これは御承知のように五回まで防衛協力小委員会を開きまして、その間、先生にも何度も御説明申し上げましたように、前提条件その他について合意を見た段階におきまして、しからば防衛協力小委員会で研究をし、日米安保協議委員会に報告すべき内容のガイドラインというものは一体どういうものになるだろうかということを話し合っておったわけでございますけれども、どうもなかなか具体的なイメージが浮かばないということでございまして、部会というものを設けてもっと具体的に詰める必要があるのじゃないかというようなことで作業を進めてまいっているわけでございます。  大体それぞれの部会におきまして、作戦指揮についてはどういうことが必要であるか、あるいは作戦準備等についてはどういう具体的な問題があるかということを詰め終わっているわけでございます。したがいまして、それをどういう形のガイドラインにまとめるかというようなことをいま話し合っておりまして、近い段階におきまして防衛協力小委員会を開きまして、この作業の結果に基づいてガイドラインとしてつくる内容のものはこういうものではないだろうかということを話し合って、さらにそれを安保協議委員会の方に報告できるような形に持ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  53. 上原康助

    上原委員 そうしますと、この作戦部会、情報部会、後方支援部会というのは、それぞれ防衛庁は防衛庁、米側は米側で持っているのか、合同で持っているのですか。
  54. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これはメンバーといたしましては統幕のそれぞれの作戦の関係者あるいは補給の関係者、情報の関係者、それから内局ではそれぞれの担当課長、それから米側は在日米軍司令部のそれぞれのカウンターパート、こういったメンバーが集まっておりまして、大体テンポといたしましては月に一回ぐらい、それぞれの研究の成果を持ち寄って議論し、また次の段階に進むというようなことで進んでいるわけでございます。
  55. 上原康助

    上原委員 そこで、これはこの資料でもはっきりはしているのですが、もう一度確認といいますか見解をただしておきたいのですが、その前提条件として「事前協議に関する諸問題、我が国の憲法上の制約に関する諸問題、及び非核三原則は研究・協議の対象としない。」この「研究・協議の対象としない。」ということは、わからぬでもありませんが、どうしてそうなったのか、見解を承っておきたいと思います。  それと、事前協議なり憲法上の制約の諸問題、非核三原則は研究・協議の対象としないということになりますと、これはあくまで有事の場合の防衛協力ですよね。有事の場合は当然こういうものも考えられる範囲の事項ですよね。そういう場合にそれはどうするのか。その二つ、もう一遍御見解を承っておきたいと思うのです。
  56. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように日米防衛協力の問題というものは、有事の際に日米安保条約の第五条に基づいて日本自衛隊、米軍が整合のとれた共同作戦が行えるということでございますけれども、この前提条件の中に書いてございますのは、やはりわが国憲法上の制約の問題といたしまして幾つかあるわけでございます。たとえば海外派兵の問題とか、攻撃的な兵器を持てないとか、そういった問題は当然あるわけでございます。それから、さらに非核三原則といいますのは、これはわが国政府が国是とも言うべき政策としてとっている問題でございます。  したがいまして、こういったいわゆる整合のとれた作戦をするという場合にも、いわゆる自衛隊としてできる問題とできない問題をはっきりさせるという意味で、こういう問題については自衛隊はできないのであるということをはっきりさせているわけでございます。さらに、事前協議の問題は、これは自衛隊と米軍だけの問題ではございませんので、この事前協議をやるのは外交チャンネルを通じてやるということになっておりますので、この防衛協力小委員会において具体的にこの問題を研究するということはしないということで合意を見ているわけでございます。
  57. 上原康助

    上原委員 そうしますと、この中で自衛隊としてできるものとできない行為といいますか、それははっきりさせるということですね、ガイドラインの中でも。
  58. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 そのとおりでございます。自衛隊としてやるべき問題はこういうことであるということでございます。
  59. 上原康助

    上原委員 そこで、しばしば問題になってまいりましたように、さらに研究・協議事項の中で(1)、(2)がありますよね。「我が国に直接武力攻撃がなされた場合又はそのおそれのある場合の諸問題」、これは安保条約五条にかかわることですね。
  60. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この中で、わが国攻撃がなされた場合は、まさに安保条約の五条でございます。「そのおそれのある場合」というものは、五条そのものではないけれども、いわゆる五条の発動が予想されるような場合、日米の双方がそれぞれやらなければならないことがあるのではないかということで研究をするということになっておるわけでございますが、現在やっておりますのは「直接武力攻撃がなされた場合」を中心に研究しているわけでございます。  したがいまして、その研究のガイドラインができますならば、「そのおそれのある場合」、すなわち安保条約の五条が発動される可能性がきわめてあるというような場合に、日米双方がどういうことをやらなければならないかということもおのずから明らかになってくるのではないかと考えているわけでございます。
  61. 上原康助

    上原委員 そこで問題になってくるのは、五条を適用する場合、いわゆる自衛隊は、先ほど憲法との関係もあるわけですが、先制攻撃あるいは先制防御は通常できない立場にあると私は思うのです。五条適用の場合でもですね。それと、わが国は集団的自衛権というものの行使はできませんね。できるのですか、まずそこから。
  62. 真田秀夫

    真田政府委員 自衛権には、通例個別的自衛権と集団的自衛権の二色があるというふうに言われておりますが、わが国といたしましては、国際法上は個別的自衛権も集団的自衛権も両方とも持っている。これは安保条約なり対日平和条約なり、いろんな条約にも書いてあります。ただ国内法上、つまり憲法上は集団的自衛権という形において日本自衛権行使するということはできない。あくまでも日本自身が武力攻撃を受けた場合にこれを防衛するという内容、つまり国内法上は憲法の制約がありますので、個別的自衛権しか行使できないという考えでおります。
  63. 上原康助

    上原委員 そこで、米軍の場合は個別的自衛権も集団的自衛権もできるわけですよね。安保条約五条の適用の場合だって、憲法に基づいてということですから、そうすると、そこの調整、整合性はどうなるのですか。自衛隊はあくまで個別的自衛権、また制約がある。この五条適用の場合に自衛隊がとるべき行動の中で制約を受ける、個別的自衛権行使しかないということ、しかし一方アメリカは集団も個別もできるということになると、ここでまた非常に問題が出てくるわけですね。この取り決めというものはどういうふうになっていくのか。私は、実際問題として非常にむずかしい問題があると思う。そのあたりはどのように調整しようというお考えですか。取り決めをしようという考えですか。
  64. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 アメリカが安保五条に基づきまして日本防衛するということ、これはやはりアメリカの側に立てば集団的自衛権発動だと思います。先ほど法制局長官がお答えになりました、わが自衛隊が個別的自衛権発動しかできないということは、いわゆる領海、領土におきまして日本攻撃されたときに五条が発動されるということになるわけでございまして、たとえば防衛構想にございますように、いわゆる小規模の侵略に対しては原則として自衛隊が独力でやる、これに対して、なお大きな攻撃に対しては米側の協力を得てこれを排除するというような形になるわけでございまして、自衛隊が持っている能力、それの足りないところを米軍の支援を得るという形でこの五条が発動されていくというふうに考えているわけでございます。
  65. 上原康助

    上原委員 あくまで制約があるということと、ではもう一つ「(2)(1)以外の極東における事態で我が国の安全に重要な影響を与える場合の諸問題」、これは極東における事態わが国との安全との関係ですから、安保条約六条ですね。まず六条で間違いないのか、外務省も来ておるでしょう、お答えください。
  66. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 第六条に関する事態でございます。
  67. 上原康助

    上原委員 そうしますと、防衛協力小委員会では五条と六条にかかわることを取り決めしょうとしておられるわけですね。
  68. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 第五条及び第六条、双方の関連に関する研究・協議を行うものでございます。取り決めをつくるというのはちょっと正確ではないかと思いますが、研究・協議の対象は五条の事態もあり、六条の事態もある、こういうことでございます。
  69. 上原康助

    上原委員 そこで、この問題が持ち上がった当初から、包括的に有事の場合の日米の、われわれは取り決めだと思うのですが、をやろうとしているという指摘をしてきたのですが、最初漠然としておったが、だんだんそういう方向へ進んでいる。  そこでまた問題になるのは、六条が発動される場合あるいは適用される場合に当たっては、自衛隊は関与できないんじゃないですか、参与というか……。その場合に自衛隊がとるべき行動というのは、どういうことが予想されるのですか。
  70. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃいましたように、六条に関して自衛隊がとるべき行動というものは、具体的にはございません。  ただ、考えられますことは、基地の提供の問題がございます。その対象に自衛隊基地あたりが考えられるというようなことがあるわけでございますが、これは、いずれにいたしましても自衛隊がやるものではございませんで、やはり外交チャンネルを通じまして政府としての交渉になるというふうに考えているわけでございます。
  71. 上原康助

    上原委員 ですから、六条発動に当たっては、自衛隊防衛出動とか自衛隊が行動展開ということはあり得ない、これははっきりできますね。
  72. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 六条によって自衛隊が行動する、いわゆる防衛出動等があるということはございません。
  73. 上原康助

    上原委員 では少し具体的に角度を変えて、たとえばあくまで——あくまでといいますか、一応の想定ができるのは、朝鮮半島有事の際を想定といいますか、頭に置いて作業が進んでいるとぼくは思うのですね。  そこで、朝鮮半島で有事が起きて、これまでも問題になったわけですが、たとえば在韓日本国民を救援する、あるいは領海じゃなくして公海に行って自衛隊がその救援活動をとる、また、何らかの後方支援ということで領海内まで海上自衛隊なりが出動していく、そういうことは全然ないわけですか。そういうときはどうなるのですか。
  74. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いまの先生の御質問がどうもはっきりのみ込めませんので、あるいは答弁になっていないかもしれませんけれども、朝鮮で有事の際に、自衛隊が公海上その他で、日本に直接の脅威がないにもかかわらず行動するというようなことはあり得ないわけでございます。
  75. 上原康助

    上原委員 日本に直接脅威があれば行動するのですか。
  76. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これはいろいろな事態があると思いますけれども、朝鮮半島で紛争があった、それが日本に対して紛争が及んできて、日本が直接攻撃を受けるというような事態になれば、やはり自衛権行使というのはあり得ると思いますが、これは朝鮮の紛争と直接の関係のあるものではございませんで、日本自衛という立場から、防衛出動がかかることが全然ないというふうには考えられないわけでございます。
  77. 上原康助

    上原委員 もちろんそれはそのとおりだと思いますよ。日本武力攻撃を受けた、あるいはもう受ける段階ということになれば、それは自衛権発動というのはいまの法体系ではあり得るわけで、そこは私もわかる。しかし、朝鮮半島で有事があって、アメリカの方なりあるいはよく問題になったように、難民救済というようなことで、そういう場合も出動しませんねというわけなんですね。  人道上出動しなければならないなどというのは、これは話はまた別の問題です。現在の自衛隊法なりこの安保条約六条なりから言うと、そういう場合でもできないという前提に私は立つわけですよ。巻き込まれるおそれがあるというのも、そういう面もあるわけですよ。それは現在の自衛隊法なり現在の範囲内ではできない、また、そういう問題まではこの日米防衛協力小委員会の研究事項、対象事項になっていないのですねということを私はお尋ねしているわけです。
  78. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いまのお話で難民救済の問題等も出てまいりましたが、これは、自衛隊が直ちにそれで行動するというようなことはもちろんできないわけでございます。しかし、予算委員会の分科会でも申し上げましたように、いわゆる日本政府として難民救済をやるというようなときに、たとえば海上保安庁なり警察が直接その任に当たるようなときにそれに協力するというような形では、人道上の問題としてあり得ることだろうと思いますけれども、そのほかの場合に自衛隊が行動するということはないわけでございます。
  79. 上原康助

    上原委員 そこで、この問題につきましては、せんだっても、中間報告なり作業が進んだ段階においては国会にも御報告をするという御答弁がたしか私はなされたと思う。いま三つの部会で作業が進んでいるというわけですが、まだ近々小委員会も開催される。いつごろお開きになって、この中間報告なり全貌が明らかにできるというのはどの時点なのか、改めて御答弁をいただいておきたいと思います。
  80. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 実はなるべく早くやりたいと思っておりましたが、いろいろ字句の問題その他について米側との打ち合わせ等もございます。したがいまして、来月ぐらいにはこの防衛協力小委員会におきまして、そういった内容について議論をいたしまして、報告をいたしまして、それから日米安保協議委員会に報告するのは、やはり秋以降になろうかと思いますのは、私どもの方は外務省と私どもが出ておりまして、常時連絡をとっておりますけれども、米側はこれに出ておりますのが出先機関でございますので、それぞれ上級司令部その他にも一報告をしなければなりませんので、その結果を待って、秋ごろには日米安全保障協議委員会に御報告できるような段取りになるのではないかと思っております。当初、当時の坂田長官から、できるだけその内容について御報告できる範囲で御報告してまいりたいということを言っておりますので、そういう考え方のもとに取りまとめを急いでいるところでございます。
  81. 上原康助

    上原委員 報告できる範囲という言葉がちょっとひっかかるのですが、私はかねがね、この日米安保協議委員会あるいは事務レベル会議ですか、さらに日米合同委員会、そういうところで、委員会で、会議で取り決められた事項が余りにも秘密に付されている、また、先ほども申し上げたのですが、防衛庁のいろんな教範にしても、教科書内容にしても、なかなか国会にさえも公表しない、それはよろしくないと思うのですね。  そういう秘密——もちろん高度の軍事機密とか国家機密というのは別ですよ、それは。それぐらいの常識はわれわれだってわきまえているつもりなんです。それはぜひ改めていただかなければ、栗栖さんがいみじくも、国会議論をしていながらデータが、資料が少な過ぎると、石橋さんとの対談で言っているのですね。それはわれわれが無能力ではないわけです。努力が足りない面はもちろん認めますが、努力をしようにも提供してくれない面が多過ぎるのですよ。したがって私は、こういうことに関しては、国会に出すということは国民に明らかにするということなんですから、そういった秘密主義は今後とってもらいたくない。この点は長官、お約束できますね。
  82. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいまお話がありましたように、秘密というものはそれをみんな出せということじゃない、こういうお話であります。また、国会は、いわゆる文民統制の一番の、最高の場所であります。そこへ当然出せる資料はできるだけ出す。お約束いたします。
  83. 上原康助

    上原委員 そこで、あと一、二点、この防衛協力問題とも関連があると思うのですが、法制局長官も、どうも長くお待たせして申しわけないのですが、現在は、自衛隊は海外派兵はできませんね。
  84. 真田秀夫

    真田政府委員 海外派兵の問題は、これは国会でもうずいぶん何回となく論議されていることでございますが、まず海外派兵という言葉意味をはっきりさせないと実は論議にならないわけでございまして、もちろん海外派兵という言葉が法令上使われているわけではございませんが、従来国会で御論議になっている場合の海外派兵ということの中身は、自衛隊武力行使する目的を持って部隊を外国の領土なり領域に派遣するという意味内容として理解をした上で海外派兵の問題が論議されておったように思います。そういう意味合いにおける海外派兵は日本自衛隊は行うことはできません。それははっきりいままで何回となく御説明申し上げているとおりでございます。
  85. 上原康助

    上原委員 またそこにも何かい窓口を何とか確保しておきたいというあなたの巧みさがあるのですが、派兵という私の表現が海外出動でもいいです。これはいま御答弁のあった点は私もわかりますが、問題は最近の防衛庁のいろいろな計画、後で安井先生なりからいろいろ機構問題についてお尋ねがあると思いますから私はその点は多くを触れませんが、伝えられるところによると、自衛隊の国連軍への参加を計画しているということも言われているわけです。これはあなたのいまの御答弁からすると、武力行使をする目的なりのための海外出動、海外派兵はもちろん憲法上できないのだが、何かそれ以外のことならできるのだ、国連軍への参加を平和部隊というようなことではできるとお考えなんですか。現在の自衛隊法なり憲法上からはそういう面も許容することではないと解釈するのが常識ではないかと思うのですが、どうなんですか。
  86. 真田秀夫

    真田政府委員 一口に国連軍への参加とおっしゃいますけれども、それもかくして参加なら参加した場合の国連軍の目的なんですが、たとえば休戦の監視をするとかある地域における選挙の管理をするとか、そういう武力行使とかかわりのない仕事のために出かけていくことは憲法上禁止はされておりません。ただ、現在の自衛隊法上はそういう職務は自衛隊に与えられておりませんので、自衛隊法上そういうことはできない、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  87. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えいたします。  一部の新聞等で、将来防衛庁が防衛二法を改正するようなときに海外派兵、いわゆる国連の平和維持軍への参加をあるいは考えておるのではないかという記事が出ました。これはわれわれそこまで考えていないのですけれども、自衛隊は御承知のとおり、先ほど法制局長官言われましたとおり、海外における武力行使ということは憲法上絶対許されることではございません。ただし、世界に役立つ日本というような意味なり、世界の平和に日本が何らかの貢献をすべきではないだろうかという一部の声がある、そうすると、まさに国連警察軍なり、紛争国が休戦をやった場合にそれを監視するとか、一種の国連の平和部隊といいますか、せっかくある自衛隊だから、世界に役立つ日本ということで、平和に役立つならばそれに派遣してもいいのではないかという一部の声がございます。  たとえば武器を持たないで、輸送部隊なり医療部隊なりそういったものを自衛隊が出してもいいのではないかという一部に声がございます。しかし、いま自衛隊法上はそういう任務をわれわれ与えられておりませんので、そういう点を考えたらどうだという声がございますが、果たして自衛隊に対します国民的コンセンサスというものがまだ完全ではございません。そういった面も含めまして、この問題は国民のコンセンサス、国民の声といったものを踏まえながら、日本としては、自衛隊もそういう平和のために役立つなら行くべきであるという声が高まれば、自衛隊法改正等でそういうお役に立つことも考えられるかもしれぬということで、われわれはまだ検討の段階であるということでございます。
  88. 上原康助

    上原委員 当初、海外に出動というか足場を求めるのには本当におとなしく構えて、だんだん実力を確保していこうという形でやろうとしたって、それは国民のコンセンサスを得られませんよ。機構問題については、後ほど安井先生なり岩垂先生からお尋ねすると思いますが、では、いま伝えられているように、そういう問題を含めて大改革をやろうという方針で、防衛庁は作業が進んでいるわけですか。
  89. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 自衛隊法あるいは防衛設置法ができまして相当に年月がたっておるわけでございますけれども、いま防衛庁あるいは自衛隊としましては、正面兵力の整備等をだんだん進めてまいりまして、現在御承知のとおり、基盤的防衛力ということでいっておりますが、あわせて、いざというときに真に戦える態勢、本当に戦えるのだろうかということにつきまして、もう少し内部的ないろいろな改革が要るのじゃなかろうかということで、われわれ幕僚監部、内局あわせましていろいろと検討しております。必要のあるものならば法律改正が要るのかもしれぬ。特にこの狭い日本で戦う場合に、三つの自衛隊がばらばらで戦うということはおかしい。もう少し統幕機構の強化とか、そういった点をあわせて勉強しておる段階でございます。  しかし、そう大きな法律改正が伴うかどうかということも、まだ私、この場で申し上げるほどのこと——いままでの検討ではそう大きな法律改正をしなくても、現在のわれわれの運用のやり方によって相当改善できるものもあろうという判断もございますので、現在まだ勉強中であるということでお答えしたいと思います。
  90. 上原康助

    上原委員 もう時間もだんだん迫ってまいりましたので、あと一、二点お尋ねしておきますが、これも新聞の報道によりますと、また先ほど防衛庁長官も官房長もお話があったのですが、国会の事情が許せば何か十三日ごろからNATO諸国、二十日ごろ米国を訪問をして、ブラウン国防長官といろいろ防衛問題なり在日米軍基地の問題について意見交換をするということのようです。  そこで、今度の訪米の目的は一体どういうことなのかということ。これも後ほどお尋ねがあると思いますから、そう多くは触れませんが、その中でも、何かアメリカに弾薬を備蓄するという構想まで、ドル減らしの一役かもしれませんが、いろいろ取りざたされているわけですね。酒屋のおじさん転じて弾薬の商人になるということは金丸長官には余り似合わない御商売のように思うのですが、あるいは基地の肩がわり費用ということで三百億ぐらいは日本が負担すべきだということも長官から御発言があったとかなかったとか。地位協定の歯どめなり安保条約が軍事面で変質していくだけでなくて、経済的にも大きく拡大解釈をされている感じを受けるのですが、そこいらの問題についてどういうふうにお考えになってアメリカ側とお話をなさろうとしておられるのか。もう少し政府のはっきりした方針を明らかにしていただかないと、誠意を持ってやろうとしていることに対してまで、ますます国民の誤解を招く面もなきにしもあらずと私は思うのです。  そういう意味で、全体的中身については時間がありませんので触れませんが、また後の方の御質問との関連もありますから、この際、基本的な姿勢、いま私が申し上げたようなこと等についてどういうふうに考え政府はどうなさろうとしているのか、ぜひ公式の場で明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  91. 金丸信

    金丸国務大臣 爆弾一万トン、新聞の記事で私は見ましたが、私が考えていることではございません。  なお、今回アメリカを訪ねるということ、あるいはNATO、ベルギー、ドイツ、そちらを視察いたしまして、アメリカへ行きたいという、その目的は、特定の目的ではありませんが、日米関係は不可欠だ。不可決である以上、いわゆる日米関係の首脳ができるだけ話し合いの機会というものをつくるということは、日米関係を一層緊密にするということでございます。  なお、分担金三百億という問題は、戦闘機五、六機と言ったから三百億という計算を記者諸君がいたしたと思うのですが、戦闘機は高いのもありますし、安いのもあるということですから、その辺は、私は金額的な考え方で言ったのではないのですが、ただ、日米関係が不可欠である以上、円高ドル安というこの状況の中で、アメリカから要求されるのでなくて、信頼性を高めるということであれば、思いやりというものがあってもいいじゃないか、ひとつ施設庁長官考えてみろ、ことに大平答弁等もあるわけでありますから、そういうようなことについても考えてみてくださいというような話をいたしたわけでありまして、私は、その交渉で向こうへ出かけるわけじゃありません。  なお、その分担金等の問題について、いろいろ私も施設庁長官にも指示いたしておりますので、施設庁長官からも御説明を申し上げるようにいたしたいと思います。
  92. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま大臣からお話がございましたが、日本におきます石油ショック以降、非常に物価、賃金が急騰いたしまして、それから特に昨年来大変な円高ドル安ということで、この一年間だけ見ても、二割ぐらい円が高くなって、ドルが安くなっている、そういう状況もございます。そういうことから、在日米軍が駐留経費の負担に苦しんでおるということは想像にかたくないわけでございます。この点について、別段現在の段階で米側から何らかの具体的な要求、要請がなされているということはございません。  ただ、私ども、ただいま大臣からお話がございましたように、日米の安全保障体制が不可欠である。そうして在日米軍の駐留はその体制の核心をなすものであるということであれば、この米軍の駐留ができるだけ円滑にいくように日本側としてもできるだけの協力をなすべきであるという考えは持っておるわけであります。この点につきましては、大臣からも検討するようにという御指示は受けておりまして、いろいろ頭をひねっておる段階でございまして、まだ具体的な成案というものを持っているわけではございません。  いずれにいたしましても、安保条約並びに地位協定というものがあるわけでございますので、この地位協定に基づきまして考えていく、なすべきことをなすということでございます。  それからまた、いまちょっとお話に出ました四十八年三月の予算委員会における大平答弁というものもあるわけでございまして、外務大臣も仰せられておりますように、この問題につきましては、あくまで地位協定に基づき、それから大平答弁趣旨を踏まえて対処するということは、かねて政府が申し上げておるとおりでございます。  大平答弁というものは、当時の論議の経過でよくおわかりのとおりでございまして、御承知と思いますが、リロケーションとか老朽施設の改修、改築との関連で、既存の施設、区域内で追加的な施設、区域の提供を行う場合の運用面の指針を述べて、そういう場合に代替の範囲を超えないということを述べておるものでありまして、一般的に新規提供、追加提供について述べたものではないと承知しておりますが、いずれにしましても、この大平答弁趣旨を踏まえ、地位協定に基づいて考えていく。具体的には、日本側として関係省庁が協議いたしまして、成案を得ますれば、五十四年度の予算の問題になるわけでございまして、まだいろいろ頭をひねっているという段階で、具体的なものを持ち合わせておりませんが、成案を得ましたならば、五十四年度予算中身といたしまして御審議を願うということになろうかと思います。
  93. 上原康助

    上原委員 当時の大平外務大臣の御答弁は尊重をする、踏まえてということですから、その中身については後ほどいろいろ議論があると思います。  そこで、外務省に一言お尋ねしておきますが、この米軍施設費負担増の問題と関連させて、何か防衛庁、防衛施設庁と協議の上で、米軍施設費に関する外務省見解というものをまとめておられるという報道もなされているのですが、それがあるわけですか。
  94. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいまの先生の御指摘のお話は、恐らく四月十一日付の読売新聞の報道にありますところの外務省見解と称せられるもののことではないかという気がいたします。それ以外には、私どもといたしましてお気づきのものはないわけでございますが、もしそのとおりであるとすれば、この外務省の見解というのは、実は昭和四十八年の大平答弁が行われましたときから数ヵ月後に、外務省の事務当局で、当時の国会での御論議を踏まえて、現実に施設、区域の改修、改築工事をどういうふうにやるかという点についての事務当局の考え方をまとめるためにつくられたものだというふうに理解いたしておりまして、別にそういう意味で外務省の公式見解というようなものではございませんし、また、当時の事務当局がつくりました一種のたたき台ということでございます。
  95. 上原康助

    上原委員 それでは、この地位協定の二十四条の問題と、いま防衛施設庁長官なり外務省のアメリカ局長から御答弁があった点で、今後どういうふうに運用していかれようとするのか、その点について御見解をまとめて提示していただけますね。
  96. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいまの段階では、先ほど答弁したところに尽きるわけでございまして、具体的な中身について成案を持っているわけではございません。先ほど申し上げましたように、われわれとしては地位協定をどうするという考えは毛頭持っておりませんので、あくまで地位協定の枠内で、先ほど申し上げましたような大平答弁趣旨を踏まえてどういうことがなし得るかということをいろいろ考えておるという段階でございますので、これは先ほど申し上げましたように、中身が固まりましたら予算として御審議を願う。あるいはその場合でも、政府側の考え方がまとまりましたら御説明するにやぶさかではございませんけれども、現在の段階で具体的なものを持っているわけではないわけでございます。
  97. 上原康助

    上原委員 外務省は、さっきの四月十一日報道されたという見解はあるわけですか。それは資料として提出してください。それはいいですね。
  98. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 他の委員会でも四月のころに御論議があったのでございますが、これは全く当時の事務レベルの考え方をまとめまして、各省庁、関係省庁の御検討のたたき台に提供した、こういう種類のものでございまして、特に最近考え方を取りまとめた、そういうものではないわけでございます。  そしてその趣旨は、当時の読売新聞に出ましたところが、大要実態をそのとおりに表明しておりますので、改めて資料として提出するということはお許しいただきたい。ただし、その内容は当時の新聞報道でごらんいただくところでほぼ間違いがない、こういうことでございます。
  99. 上原康助

    上原委員 それはおかしい。あなた、それはおかしいよ。さっきは秘密をなくするということをお約束したんだよ、大臣は。それはちょっと納得いきませんね。新聞を見なさいじゃ済みませんよ。
  100. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 別に秘密を隠すということではなくて、いま申しましたように、当時の事務当局の考え方をまとめたものでございまして、その考え方がどういうものだ、こういう点につきましては新聞に出ておるとおりでございますということを申し上げておるわけでございます。  他方、これを、いまこの書類を私どもの検討の土台にしているとか参考にしているとかいうようなことは別にないわけでございまして、これはいま申し上げましたように四十八年当時、大平答弁が行われました後にその当時の国会論議を踏まえて、当時の事務当局がたたき台としてつくったもの、こういうことでございますので、特にいま改めてこれを資料として提出するというような点については御容赦をいただきたい、こういう趣旨でございます。
  101. 上原康助

    上原委員 これは納得しかねます。それは後でお出しください。そんなことでは理解できませんよ。重要なことなんだよ、これは。たくさんあるが、私はすでに大平さんの御答弁というのはもう守られていないと見ているのです。沖繩のリロケーションの実態を見てくださいよ。だから申し上げているのです。  それで、さっきの御答弁ですが、アメリカに一万トンの爆弾を備蓄をするというのは、では、そういうお考えはないということですね。  それともう一つ。けさの新聞にも大きく出たのですが、硫黄島に三軍の大演習場を設置していく、これはどうなんですか、そういう御計画は進んでいるのですか。この二点、確認しておきたいと思います。
  102. 金丸信

    金丸国務大臣 爆弾の話につきましては、私の関知しているところではございません。  硫黄島の問題については、防衛庁といたしましていろいろ検討はいたしたようでございますが、実はこの間、私も硫黄島へ参って視察してまいったのですが、あそこで二万の日本人が亡くなった。戦略的に見ましても、アメリカがあの硫黄島というものを必要であり、また日本があそこを取られては困るというまことに重要な地位だということをしみじみと、素人ですが感じて帰った。たまたまいろいろ話してみますと、まだ英霊が四千五百霊ぐらいしか収集ができないというような状況の中でそういう問題も踏まえてみますと、なかなかこの問題は簡単に解決つく問題ではないな。ただ、検討はいままでもいたしておるようでございますが、厚生省との関係もありますし、他省との関係もあってなかなかむずかしいというのが現状で、きょう新聞に鮮やかに出ておりましたが、鮮やかに出ておるような話になっておらないということだけは申し上げられると思います。
  103. 上原康助

    上原委員 それは自治体との関係、またいま御答弁のありました戦後処理の問題、いろいろあると思うのです。しかし、私たちが重視をするのは、それよりも、こういう発想なり考え方、作業というのは自衛隊の海外進出の拠点にする危険性が十分あり、そのことをより重視しているわけですから、いま私はこういういろいろな防衛論議が高められるというか、出てくるということは、社会環境上やむを得ない面も場合によってはあるかもしれませんが、そういうことに悪乗りしてはいかぬですよ。図に乗っちゃいかぬと思うのですね。どうすれば国民的コンセンサスが得られるかということを、自衛隊を容認する側にしても、あるいはそれを否定する側にしても、もっと考えて、わが国防衛なり安全保障というものをどうするのか。軍事力だけ幾ら強めてみたって第二次大戦は起きなかったじゃないですか。もっと外交努力とかあるいは資源をどう確保していくかということ、近隣諸国との文化交流をどうしていくかということ、本当に平和的な努力によって日本安全保障防衛ということを考えるということに私は原点は取り戻すべきだと思うのですね。そういう意味でこの種の問題もぜひ賢明なる御判断を、改めて要求をしておきたいと思います。  そこで時間ですから、最後に沖繩の問題で一、二点聞いておきたいのですが、せんだってのファントム墜落事故の原因究明は一体どうなったかということですね。  さらにもう一点は、金武村の伊芸区の代表の皆さんも、先月一つの字でわざわざ代表を送って、基地公害、基地被害に対する御要求をいろいろやりました。これに対してどういう措置をとられたのか。また名護市の数久田区の海岸にも十キロ爆弾が飛弾をしていったという問題などもあるわけですね。  何かアメリカは演習するための油代もなくなって、という新聞報道もなされている。そんな油代ぐらいもなくなって演習をやめるような軍隊というものはもともと要らないのですから。冗談じゃないですよ、大国ともあろうアメリカが。だから沖繩でますます演習を頻繁にやっているということかもしれませんが、最近の実情というものは、防衛庁長官、外務省も、これは余りにもひどいですよ。こういう基地被害に対してどういうふうに対処をしていかれようとするのか。これまで起きている被害に対しての問題と今後の予防措置、われわれはすべての演習はやめろということですが、こう言うとなかなか意見もかみ合いませんので、お考えを聞いておきたいと思うのです。
  104. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま御指摘のとおり、最近沖繩におきまして演習訓練に伴う事故が多いということは、私どももはなはだ遺憾であると存じております。周辺の住民の方々が不安を持たれるのも当然であると存ずるわけであります。私どもその都度米側に対しまして、現地の那覇施設局におきましてもそれから中央におきましても、在日米軍司令部に対し、あるいは合同委員会の場で申し入れをいたしておりまして、それぞれ事故原因を徹底的に究明すること、再発防止のために万全の措置をとること、それから原因等について判明次第、その状況と対策について日本側に連絡をしてもらうようにという申し入れをいたしておるわけでございます。  いま具体的に御指摘の問題の一つは、四月十三日の金武村における廃弾処理の破片の事故でございますが、この件につきましては四月の終わりに米側は同処理場における許容限度を五十ポンドに引き下げるとともに、処理方法の改善について回答がありましたが、さらに那覇の施設局から処理場をもっと安全なところに移転することを検討するように申し入れておりまして、米側も検討を約束しておるという状況でございます。  それから四月の二十二日には名護市の海岸で戦車砲の訓練弾が見つかったという事故がございまして、この点につきましては、五月の十五日に同種の砲弾を米軍は当面使用しない、それからバックストップ等の安全施設の設置について検討する、これは戦車砲の訓練弾で跳弾だと思われるという旨の回答があったわけでございますが、その安全施設について現在米軍が設置を進めておるところであると承知しております。  それから五月十八日のファントムの墜落事故でございますが、これも幸いにして演習場内に落ちまして被害はなかったわけでございますけれども、道路やあるいは集落に近いところでありまして、一歩間違えば大惨事になるおそれがあったわけでございます。この点につきましては、合同委員会でも先般申し入れをいたしまして、万が一少しでも外れましたならば大事故につながるおそれがあったということで、こういう事故の再発について絶滅を期するように努力してもらいたい、それからその原因についての調査方、判明次第連絡してくれるように強く申し入れをいたしておりますが、この点はまだ現在米軍で調査中でございまして、調査結果についてはまだ報告を受けていない、以上のようなことでございます。  なお、幸いにいろいろ一連の事故で大きな被害は出ておらないわけでございますけれども、一部たとえば金武村の廃弾の処理に伴って民家の一部に生じた被害等については、これは当然補償申し上げるべきものは申し上げるということで手続を進めておるところでございます。
  105. 上原康助

    上原委員 ファントムの墜落事故原因についてはまだ米側から報告ないのですか。日本側はどういうふうな調査をやったんですか、これについて。
  106. 亘理彰

    ○亘理政府委員 御承知のとおり、米軍機の事故につきましては米軍が調査をするというたてまえでございます。それで日本側に人的・物的に大きな被害が生じたような場合には、これは事故分科委員会でその米軍の調査結果を合同で検討するということになるわけでございますが、本件は被害は幸いにしてなかったわけでありますので、これは米軍の調査結果を待つ、こういうことでございます。  ただ、施設局はもちろん被害のあるなしにつきましては調査する必要がある、被害があれば補償等の問題が生ずるわけでございますので、そういう意味での現場への立ち入りはいたしております。
  107. 上原康助

    上原委員 そこいらも納得しかねるのですがね。人身被害があれば事故合同調査をする。じゃ、被害が起きてから調査したって、仮に人命にもしものことがあったらそれは取り返しがつかないのじゃないですか。そういうなまぬるさが、アメリカが再々事故を起こすのですよ。もうやめようと思ってもこれじゃやめられませんよ、議論も。この件については、原因は徹底的に究明をして、早急に御報告いただけますね。
  108. 亘理彰

    ○亘理政府委員 米側にもそのように申し入れておりますので、連絡があり次第、御報告申し上げます。
  109. 上原康助

    上原委員 防衛庁長官、いま笑っていらっしゃるのですが、これは大変なんです。こんなことでは。それで私は一、二点提案をしておきたいのですがね。少なくとも金武村なりキャンプ・ハンセンなりキャンプ・シュワブのところで夜間の実弾射撃訓練はやめてもらいたい。何もいまそんなにアジア近隣諸国で火を噴いているわけじゃないのですから。本当に夜間もやっているのですよ、実弾射撃訓練を、照明弾を打ち上げて。こういうことをやめなさいと言うんですね。  それと、この爆音問題にしましても、私の住んでいる嘉手納町にしたって、もう十一時だろうが零時以降だろうが、やっているんです。実際問題として離着陸もエンジンテストも。私たちは少なくとも午後の八時以降朝の七時ごろまでやめろと言っている。しかし皆さんの方は九時ごろからあるいは十時ごろからと言うんだが、そんなこと、もうへっちゃらですよ。守っていないのですよ。改めてこの件については、防衛庁長官なり外務省からアメリカ側に、深夜でないですよ、夜間の軍事演習、エンジンテスト、離着陸についてはやめるということ、申し入れできますね。そのぐらいはやってもらわぬとどうにもなりませんよ。そして受けた被害については補償してもらう、お約束できますか。
  110. 亘理彰

    ○亘理政府委員 私どもは、米軍が駐留している以上訓練の必要はあるわけでございまして、訓練を中止しろという立場にはないわけでございます。ただ、その訓練に当たって住民の安全なり生活なりにできるだけの配慮をすべきことも当然でございます。いまお話しの点につきましては、まず実情をよく調べまして、その結果によりまして、私どもがとらなければならない措置があれば、米側との交渉もいたしたいと思います。
  111. 上原康助

    上原委員 いまごろから実情なんて、あなたとんでもないですよ。年じゅうあなた、施設局や出先に行っているんじゃありませんか。そういう御答弁なさるから困るんだよ、あなた。  防衛庁長官、これは幾ら防衛庁でもそういう夜間の——安保条約や地位協定に夜間に実弾射撃訓練していいとか、飛行機をがあがあがなり立てていいとか書いてありますか。そんな議論をしなければいけないのですか、皆さんは。なぜ深夜とか、そういう少なくとも常識の範囲考えられることについて、あなた、成田空港の爆音問題でもそうなっているじゃありませんか。そのぐらいのことは今度ブラウン長官にも言いなさいよ、やるならワシントンの真ん中でやれと。そういうことに対して、もっと厳しく毅然たる態度で対処していかなければいけない。これは防衛庁長官から見解があれば求めておきたいと思うのです。
  112. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま亘理長官からも答弁があったわけでありますが、沖繩県民が基地のために非常にいろいろの、もろもろの苦しみをしておるということも私もわかります。ただ日米安全保障条約というものがあるということも御理解いただける。そういう中で住民が騒音のため、あるいは実弾射撃、それが生活上に支障を来しておるということ、アメリカ側が聞くか聞かぬかわからぬが、こちらは全然国民の声を聞かずに、全然アメリカ側と接触もしないということはこれはいかぬと思う。できるだけの接触をして、いわゆる国民の声を向こうにも伝えたい、そういう努力をいたしたいと考えております。  なお、ブラウン長官に会いましたら、その話もいたしたいと思います。
  113. 上原康助

    上原委員 そういうふうにひとつ督励をしてくださいよ、事務当局なり防衛施設庁にも、まあ結果、成果が上がるかどうか、金丸長官の努力に期待をしておきましょう。  そこで時間が過ぎて、あと一、二点。もう一つ、これはチームスピリット78のこともちょっとお尋ねしたかったのですが、嘉手納空軍基地に新しくMC130といいますかね、そういう飛行機が駐留しているというふうに思うのですが、このMC130というのがどういう飛行機なのか。これは明らかにチームスピリット78に出動していますよね。それとMC130Eとどう違うのか、この点について御答弁をいただきたい。  さらにもう一つ防衛局長に確認をしておきたいんですが、ポスト四次防が一年でしたかおくれたということで、F4ですか、ファントムを十二機追加発注いたしましたよね、そういう計画ですよね。それは当然給油装置と爆撃装置は取り外しますね。  その二点について、一点はどういう性能の飛行機なのか、どういう目的で駐留しているのかということと、ファントムの爆装、給油装置は取り外すのかどうかということ。
  114. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 このMC130型機というのがチームスピリットに参加したということは承知いたしております。そしてまたそれが嘉手納に配備されておりまして、第一八戦術戦闘航空団に所属しているということも承知いたしております。ただ、このMC130型機の性能そのものについては、どうも私どもいままでつかんでいる情報でははっきりいたしません。MCというアメリカの飛行機の型を示す記号からいいますと、いわゆるミサイルを運ぶ能力を持ったカーゴーであるというふうには考えられますが、どうもそれだけの能力ではないようでございます。運ぶだけではなくて、ミサイルも発射できるというようなことも聞いておりますので、この点についてはさらに米軍の方にも聞いてみたいと思っております。  それからいまポスト四次防というお話がございましたが、実はF15の政府の御決定が一年おくれたために、104がダウンしてまいるものですから、その手当てとして十二機をお願いしたわけでございます。したがいまして、従来のファントムと同じような形のものでございますので、給油装置、爆撃装置等はつけてございません。
  115. 上原康助

    上原委員 いまのMC130の件はわれわれも非常に注目をしている。前に私が指摘したEP2でしたか、次から次と新兵器、機密兵器が沖繩に出てきているということ。私はMCはミサイルキャリアじゃないかと思うのです。おっしゃるように。しかし、それだけじゃない。SR71に匹敵する機密偵察面もあるのじゃないのか。あるいはCですから輸送機のタイプですがね。そういうこともやはり出てきているということ。一説には、ミサイルのランスが今度のチームスピリット78に参加をした。それとの関係じゃないかということもまた当然考えられ得ることですね。  したがって、これについてはぜひその性能なり性格について、何機いるのか、常駐なのか、改めて御答弁をいただきたいと思います。よろしいですね。
  116. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 できるだけ調査をいたしまして、御報告申し上げたいと思います。
  117. 上原康助

    上原委員 これで終えます。  先ほどからいろいろ申し上げましたように、防衛庁長官、確かに防衛問題、なかなか議論のあるところですが、少なくともきょう私が指摘したような問題等についても十分、そういう声を代表する、そういう主張なり考えを持っている国民も大多数いるわけですから、そのことを篤と御理解をいただいて、これからのいろいろな問題に対処していただきたい。単なる軍備を強めていく、防衛力を、力だけを強化していけば平和が保たれる、安全保障ができるとは私は思いません。あくまでも平和の保障、外交努力をどうするかということと相まって、国民理解と協力がなければいけないわけですから、その点はわれわれの主張も無視できないと思います。そういう点で御努力をいただきたいということを改めて申し上げて、御所見があれば賜って、質問を終えたいと思います。
  118. 金丸信

    金丸国務大臣 貴重な御意見を承りまして非常に参考になったわけでありますし、また、先ほど来申し上げておりますように、二十七万の自衛隊だけで守れるものじゃないし、自民党だけで守れるものじゃない。国民のコンセンサスがなくて防衛というものはできない。ことに、国会というものは国民のいわゆる代表が出ておる、コンセンサスの場であります。そういう意味で、私もぜひひとつ真剣に取りかかってまいりたい。  ありがとうございました。
  119. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十九分開議
  120. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  国の防衛に関する件について質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  121. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十三日から二十六日までNATO並びにアメリカへ行かれることにつきまして、先ほど上原議員からも御質問があったわけでありますが、それに関連いたしまして、私もう少しお聞きしたいことがございます。  いずれにしても、十三日と言えばまだ国会が開会中であるわけです。その中にあって防衛庁長官がNATO並びにアメリカへ行かれるということは、決して私は単なる視察とか表敬訪問とかという問題でなくして、さらに意義ある懇談会あるいは煮詰めをされてくるのではないかと思うわけであります。  それにつきまして、NATOの場合でございますけれども、施設をごらんになられるわけです。そしてまた向こうの司令官等あるいは国防大臣等にもお会いなって、これは表敬訪問のように聞いているわけでありますけれども、その場合NATOに行かれて、それはいわゆるアメリカの戦略というものがNATOの方においてはどういうふうな効果あるいはまたどういうふうになっているかということについて、防衛庁長官としてはそういう点を重点的にやはりお考えになって視察をされてくるのじゃないかと私は思うのですけれども、その点、NATOの問題についてはどうなんでしょうか。
  122. 金丸信

    金丸国務大臣 国会開会中の十三日に出発するということについて、実は私、五月十七日ですか十六日で国会は終わりになるというような考え方。しかし、それでも私は国対委員長や議運の委員長をやりまして、その勘で、何ぼ延びても二週間だというそろばんもはじいてみたところが、あにはからんや三十日になってしまって、三日ばかりひっかかったというところでございますが、私、そんなような関係で、実はベルギーあるいはドイツ、アメリカ等には会期はせいぜい五月いっぱいだというような考え方の上に立って交渉いたしまして十三日、その十三日に出発してNATOを見てアメリカへ行くという考え方。  実はここに二十万のアメリカ軍の兵力が張りついておるわけでありますが、それはどんなような対応をいたしておるか。また、きょう上原先生からもいろいろ御質問があったいろいろの問題点もあるだろう、そういうような問題点はどのように解決しておるのか。また、アメリカと関係の各国はどのような対応をしておるのか、そういうようなもの。あるいは装備等も見せていただけるものは十二分に見せていただきたいというような考え方。  それから、ブラウン長官は六月二十日ということでございますから、六月二十日にワシントンへ参りまして、目的は先ほど申し上げましたように、日米関係が不可欠である以上、この関係は本当に信頼性の持てる、またその間の交渉の中にはパイプにごみがたまらぬように、いざ有事というときには、日本はアメリカのいわゆる強大な抑止力によってきょうの日本の安全がある、こう私は承知いたしておるわけでありますから、そういう意味で十分に今後とも、ややもすれば日米関係がアジア離れだ、日本離れだ、あるいはただ乗りだ、いろいろな御意見があるようでございますが、そういうような問題につきましても十二分に話し合ってみたい。そんなことで、私は内閣委員会の皆さんにも御了承いただきたいというようなお願いをいたしたわけでございます。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、今回の欧米の視察の随行員を見てみますと、NATOの方に行かれる随行員は国際担当の参事官あるいは事務官あるいは政務の方の秘書官、あるいは空の一佐というような方方が行かれるわけでありますけれども、そこでヨーロッパからアメリカの方へ行かれますと、今度は防衛庁長官伊藤防衛局長、それから施設庁長官、経理局長、こういうメンバーに変わってくるわけですね。大変にアメリカとヨーロッパの役割りは違うのだろう。そこにやはりアメリカに重点的に、いろいろとブラウン国防長官等にお会いになって、そしてお話をされる内容は、かなりのいろいろの懇談がなされるのじゃないかと思うのです。  そういう点について防衛局長にちょっとお伺いしたいわけですけれども、防衛局長はいずれにしても防衛庁長官と一緒に行かれるわけですから、防衛全般という問題についてアドバイスをしたり、あるいはまた懸案になっている問題等もあるかと思いますけれども、防衛局長は、たしか一月ごろアメリカの方でアジアの国際情勢についての一応の説明があったように聞いておりますけれども、その後についての状況等をあなたとしてはお聞きになるのか、あるいはここのところ急速に進んでおります在韓米軍の撤退の問題等も私は一つの重要なポイントじゃないかと思うのですけれども、それについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  124. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 昨年の三原長官のときにもお供をして参りました。この一月には事務レベルの会議というのがハワイでございまして、これには私は参りませんでした。今度大臣のお供をしてブラウン長官との会談に参るわけでございますが、これはあくまで大臣の補佐でございますので、いろいろな問題についてお話し合いになるときに必要なことで聞かれれば申し上げたいと思っております。  同時に、いま先生がおっしゃいましたように、一月にいろいろのアジア情勢について米側の見方というのが話し合われているようでございます。それから半年たっておりますので、いま大臣からも申されましたように、その後出ました国防報告等におきましてアメリカのアジア戦略というものが変わっているのか変わっていないのか、あるいはまた日米安保体制の確保の問題等防衛協力の問題等につきましても、当然大臣とブラウン長官の間の懇談の中にも出てまいると思いますし、また私も聞きたいことがあればそういった機会にお話を伺いたいというふうに考えておるわけでございます。
  125. 金丸信

    金丸国務大臣 アメリカヘは政府委員が多く行くというような御意見でございますが、実は私はヨーロッパも一緒に行く予定でおったわけでありますが、国会が延期になりましたから、答弁に立つ政府委員というものは残らなくちゃいかぬというような考え方で残したわけでありまして、人選につきまして、経理局長がついてくるについては、向こうへ行って何か金の話でもするんじゃないかというような御不審もあるのじゃないかと思うのですが、そういう考え方でなくて、防衛庁としていろいろの人、いままで行かない人とか、そんなようなことを勘案して一緒に行くということでありまして、防衛分担金の問題を話をするんじゃないかというようなことがもしあったら、そういう考え方で一緒に帯同するわけではないと御理解をいただきたい。
  126. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほどの御答弁と大分変わってまいりましたね。先ほどの御答弁からいいますと、今回アメリカへ行くについては、やはりアメリカの防衛費が円高によって非常に急騰している、円高によって非常に苦しい状況にあるので、当時の大平外務大臣の発言もこれあり、そういう意味において十分にその点なんかも話し合いに行くのだというお話があったわけですね。それで、先ほど防衛施設庁長官の方では、この問題につきましては地位協定並びに日米安保条約の枠内においてそれだけの協力をするということは——協力をするということはお金が伴う問題なんですね。ですから、そういう意味において、ただ単に、経理局長はアメリカに行ったことが余りないのでこの際お連れをしようなんということであるとするなら大変にむだなことであって、私は十分にそういう点も踏まえた人選が行われるというふうに思うわけでありますから、その点についてはどうなのでしょうか。
  127. 金丸信

    金丸国務大臣 その問題につきましては、私が先ほどもお話ししましたように、やはり日米関係が不可欠である以上、これはアメリカから要求されるものではない。日本で円高ドル安という問題、信頼性を高めるためにはいわゆる思いやりというものがあってしかるべきだ。その思いやりという問題について金額をどうするとかこうするとかじゃなくて、その実情、当然また行った以上いろいろなお話し合いの中で出てくると私は思うのですが、そのためだからといって経理局長を連れていくということじゃなくて、経理局長はいわゆる防衛庁としても人材であります。将来のことも考えたりして、また向こうへ行ってあるいはそういういまの鈴切先生のおっしゃるような問題も出る。私とてもそろばんは弱いものですから、経理局長に一緒に行っていただくと、そういう面では円滑に回るだろうというような考え方もあるわけでありますが、そればかりねらって人選したということじゃない、こういうふうに御理解をいただきたい。
  128. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 施設庁長官先ほどあなたが御答弁された中に、アメリカの方は言うならば円高に対する、在日米軍が日本に滞在をしているということについて非常に困っている、そういうことについて具体的な向こうから要求はないけれども、こちらにおいて少なくともいま防衛庁長官の命を受けてそして検討しておるのだというお話があったわけです。そればかりでなしに、あなたは日米安保条約並びに地位協定の枠内でやるのだということで内容的にはなかなかむずかしい問題があるというふうに言われたわけですが、地位協定のたしか第二十四条には経費の分担が明確にされておりますね。そういうことから考えまして、どういうふうにこれを具体的に煮詰めておられるのでしょうか。
  129. 亘理彰

    ○亘理政府委員 先ほど上原先生の御質問にお答えしたわけでございますが、大臣が申されたような趣旨で私どももいろいろ検討しなければならないということであります。が、この問題は関係省庁ともいろいろ相談いたさなければなりません。成案を得ますれば、恐らくは五十四年度予算の問題ということになるわけでありまして、まだ先のある話でありますので、検討を始めたという、いろいろ知恵をしぼるように大臣に御指示を受けておりまして、そういうことでまだ始めたばかりでございまして、具体的にどういうものをどうするというところまでお答えする用意は、現在の段階ではまだないわけでございます。
  130. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 地位協定第二十四条は、一つには、「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。」二番目には、「日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。」こういうふうに規定されておりますね。  そうしますと、これはいま大変に苦慮されている問題ではないか。それじゃこれをどういうふうに判断をするかということなのですけれども、前に一度六十億近く従業員の方々に補償的なことをされたことがありますね。そういうようなことで、たとえば従業員の退職金の問題とかあるいは住宅の問題とかあるいは基地の問題とか、そういう問題がかなりそういう要素になり得るところではないかと思うし、またそういうことをお考えになっているのじゃないかと私は思うのですけれども、その点についての具体的な考え方についてお伺いしたい。
  131. 亘理彰

    ○亘理政府委員 地位協定、これは条約でございますので、その解釈については所管の外務省の意見を聞く必要があるわけでございますが、私どもは、米軍が最近の円高その他でいろいろ経理に苦しんでおるという状況は、ときどき雑談の間にもよく話は出ることがあります。それからまた住宅が足りなくて弱っておる。これは、たとえばこれも円高の影響もございまして、基地外に住宅手当をもらって住んでいる兵隊さんたちが、ドルでその手当をもらいますと、支払いは円でございますから大変支払いがきつくなるというふうなこともあろうかと思いますが、住宅が総体として足りないということも聞いておるわけでございます。  私どもは、先ほど申し上げましたように、安保体制の中核をなすと私どもが考えますこの米軍の駐留が円滑に行われるようにできるだけのことを考えたいとは思っておりますが、これはあくまで日本側が自主的、自発的な立場考える。それからその場合の枠組みとしては地位協定というものであるわけでございます。同時に、米側もどういうことで具体的に困っておるのか、何がしてもらいたいのかというふうな希望も聞くのは当然であろうと思いますが、まだそういう具体的なところまで検討が進んでおらないわけでございます。  何分にも私どもは、来年度予算の問題というふうに最終的にはなると考えますので、各省庁においても来年度予算の問題についてまだ具体的なものを、たとえば来年の新政策というふうなことで詰めが済んでいるような状況ではないと思うわけでございまして、そういうことで来年度予算に向かっていろいろ考えなくてはいけないと思っておりますが、はなはだ繰り返しで恐縮でございますが、現在のところではまだ具体的な中身を申し上げられるようなものを持っておらないということでございます。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 さらにもう一度ちょっと聞きたいのですけれども、たとえば退職金問題については、アメリカは退職金を駐留軍の日本人従業員には出していないのですね。そういうことから考えますと、そういうものもやはり対象として頭のすみにお考えになっているかどうかの問題もあるわけです。  それからまたもう一つお聞きしたいわけですけれども、円高に伴う目減りという問題、これを考えたときに、どれくらいお考えになっているのか。金額的にいって二百億とか三百億とかいうようなうわさもあるわけですけれども、そういう点について、たとえば目減りの分の負担をするという考え方なのであるか、あるいは目減り以上にやってあげましょうというような考え方なんでしょうか。だから、いまのいわゆる退職金の問題と二つですね。
  133. 亘理彰

    ○亘理政府委員 退職金云々というお話がございましたが、現在特定の項目についてどうしようこうしようというところまで詰まっておるわけではもちろんないわけでございます。特にこういう公式の場において公的な発言として具体的な一々の項目について申し上げられるだけの準備は全くできておらないわけでございまして、いろいろ検討が進みました段階でなるべく早く私どもの意見を申し上げ、御意見も伺いたいと思っておりますが、現在の段階では一々の費目についてどうこう申し上げる段階ではございません。  また、金額についても同様でございまして、これは来年度の財政状況とも当然絡んでくる問題でございます。防衛庁としても全般の予算を、どういう中身の、どういう要求をするのかということも、まだかいもく固まっていない段階でございますので、この点について金額をどうと申し上げられる時期ではございません。  それからまた、なお円高で、たとえば昨年の会計検査院のアメリカ議会に対する報告によりますと、在日米軍の駐留経費は十億ドルかかると申しております。それで、昨年の春から今日までの一年間で、約二割円が高くなっておりますから、それだけで、黙っていても相当の負担増になっているということは確かだろうと思いますけれども、それに見合って、これを補てんしてやるというふうな考え方は持っていないわけでございます。あくまで日本側としては、地位協定に基づいて米軍の駐留が円滑になるようにできるだけのことをしようということで、これから具体的に検討を始めよう、こういうことでございます。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 すでに今国会におきまして予算が通ったわけですね。F15それからP3C、私どもは反対の立場をとっておりますけれども、予算が通ったということで、これにつきまして今回防衛庁長官が行かれるのとは別に装備局長が行かれるというようなこともちょっと聞いておるのですけれども、装備局長、この問題について大体どういうような御予定で、またどういう内容で行かれるのでしょうか。
  135. 間淵直三

    間淵政府委員 私がF15あるいはP3Cに関するMOUと申しますか、メモランダム・オブ・アンダスタンディングの調印及びそれに伴う種々の事務処理、あるいはこれとは離れての研究、開発の進め方といったようなことの話し合いを兼ねまして、この十八日ごろ出発し、十日間ぐらい向こうに滞在する、こういう予定にしております。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 MOU、すなわち覚書ですね、覚書に署名、捺印をされてくるというわけですが、事務的にはその内容はもうまとまっていましょうか。
  137. 間淵直三

    間淵政府委員 五十三年度の予算の成立を見た直後、事務的に米側と折衝を始めまして、事務的の仮案というものは得ておる次第でございます。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その覚書の細部にわたるのはまだこれから向こうとの話もあるでしょうけれども、大体大綱はどんなふうな内容に覚書はなっていましょうか。
  139. 間淵直三

    間淵政府委員 F15及びP3Cの取得に関し、いろいろ付随する問題、細かい点をかなり大量に含んでおるわけでございますが、主な項目といったようなものを見ますと、開発資金の分担の方法であるとか、あるいは何機をFMSで輸入するとか、あるいはその他をライセンス生産するといったようなこと、及びどういう部門に関してプロダクションリリースをするといったような内容が主な項目になっている次第でございます。
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回のF15については六機、そしてその中の四機が複座で練習用のようなもの、二機は戦闘機としての役目を持つわけですね。これから百機購入する中にあって、たとえばFMSとかライセンス、そういうふうなことで、防衛庁としては今後その点についての細かい詰めというもの、アメリカとの詰め、いわゆる日本においてどれだけライセンスするのか、輸入をするのかということについての確たる確約はとっておられるのでしょうか。
  141. 間淵直三

    間淵政府委員 先生御指摘のように、F15に関しましては、ちょっと数字の訂正をいたしたいと思うわけでございますが、最初の二機は単座の戦闘機でございます。第一次契約の二十三機のうちの最初の二機、それから六機というのが複座の練習用の戦闘機でございまして、その余りの十五機というのがライセンス生産をするわけでございますが、この複座機の六機、最初の完成機輸入の二機、この八機はFMSで輸入するわけでございまして、その他の十五機及びそれに続く、総計百機になるわけでございますが、それにつきましてFMSで輸入するもの及びライセンス生産をするものということについての約束はできておるわけでございます。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 次に、F15のエンジンの故障に係る米側のいろいろな発言がなされているわけであります。F15のエンジンはF100になるわけでありますけれども、それについて、一九七七年の二月に米空軍のスレー中将は下院の軍事委員会においてこの問題で証言をしたということから端を発して、その後、一九七七年の四月に米会計検査院の報告で、空軍省のF16計画の状況、それから一九七七年の十二月にF15とF14の空中戦闘訓練に対する国防省の回答、そして一九七八年の四月、米会計検査院報告「米空軍F−16航空機計画の状況」、こういうふうに一年の間にF15あるいはF16のエンジンのトラブルの問題が大変に話題になってきているわけです。  そこで、まず当初お聞きしたいわけでありますけれども、一九七七年の二月の米空軍スレー中将が下院軍事委員会において、F100エンジンのスタグネーションストールの内容あるいは状況、対策等について証言をしておられますけれども、これは簡略で結構ですから、どういうことを言われているのか、ちょっと御説明願いたい。
  143. 間淵直三

    間淵政府委員 一九七七年の二月十七日でございますが、下院の軍事委員会におきましてスレー中将が、F100エンジンのスタグネーションストールが、一九七六年は千飛行時間当たり四・三回起こっている。及び一九七七年の二月十八日、同じくその下院の軍事委員会においてスレー中将が、一九七六年における戦術空軍での実績は、千飛行時間当たり三・五回起こっておる、こういうようなことを証言しておる次第でございます。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのエンジントラブルの問題が相も変わらずずっと続いてきておりまして、一年以上たった一九七八年の四月、米会計検査院報告、「米空軍F116航空機計画の状況」の中に、これは確かにF16が主体になってはいますけれども、実はエンジンはF100であり、それはF15にも関係する問題であるわけです。そういうことから重大な欠陥が明確に指摘をされているわけであります。  そこで、わが国が採用することとしているF15の戦闘機についてもこのF100エンジンを実際には搭載をしておるわけです。ですから、同報告書にもこれは明らかになっているわけであります。同報告書の中に、いろいろの欠陥を挙げた上において「双発のF−15にとっても深刻な問題である」、こうなっていますね。「深刻な問題である」、こう指摘しているのですよ。もちろん「単発のF−16にとっては、もっと重大な問題となる。」こういうふうに書いてあるのですね。そこで会計検査院はエンジン問題をかなり詳しくここに書いてあるわけでありますけれども、まず項目的に六項目挙がっております。どういう内容の項目が挙がっておりましょうか。
  145. 間淵直三

    間淵政府委員 F100エンジンの問題に関しましては、結論的には技術的に克服可能であるとかそういう結論になっておるようでございますが、そのGAOの報告書において指摘されておる項目といたしましては、第一にタービンブレードのふぐあい、それからそのタービンブレードが外れたとき、エンジンの外へ飛び出すというような問題があるというようなこと。第二には、エンジンストール、スタグネーションの問題でございまして、第三といたしましては、主要燃料ポンプのふぐあいということ。第四といたしましては、地上において冷えたエンジンを始動させる際にスムーズにいかないというようなこと。それから次にはアフターバーナーのふぐあいということと耐久性に問題があるということ。次に、これはエンジン自体の問題ではございませんが、エンジンに起因するF16の減耗率というようなこと及び予算上の制約によって全体の改良がおくれるんじゃないかというような点が指摘されております。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまあなたから御説明をいただきましたけれども、ここに書いてあるのは、二番目は「エンジンストール」というように書いてありますね。会計検査院の報告でございますから正しく言っていただかなければなりません。その下に「エンジンスタグネーション」、いわゆるストールの中でスタグネーションの問題もあるということですね。それからあとあなたが言われた内容で六項目になっておるわけですけれども、その先にさらに、たとえばタービンブレードのふぐあいとエンジン外へのタービンブレードの飛散という問題についてとか六項目についてかなり詳しくこういう状態なんだというように一応記載されておりますから、それをちょっと説明してください。
  147. 間淵直三

    間淵政府委員 まず第一に、タービンブレードの問題についての指摘されておる点でございますが、これは振動あるいはその燃料のノズルの汚れといったようなものによりまして電子エンジン制御装置がふぐあいになる。それが原因で第二段のタービンブレードの分離が一九七七年四月十五日までに十四件発生しておる。このうち四件は、分離したタービンブレードがエンジンを貫通して外部に飛散した。これらのふぐあいについては現在改修が行われている。また、エンジンケースの強化が検討されているが、F16の試作機にはとりあえず補強バンドが装着されたという点が会計検査院の指摘でございます。  それからエンジンストール、スタグネーションの指摘でございますが、これは一九七六年の初期におけるストールの発生率は千エンジン飛行時間当たり九回、また一九七七年末における発生率は四・一回であった。ストール発生率を低くするために失火検知装置が開発されたが、運用上不便なので、他の対策を検討中である。特にストールのうちで自律回復しないものをスタグネーションストールと呼んでいるが、現在戦術空軍における発生率は二・三回であり、単発のF16にとっては非常に重大である、このスタグネーションストールの発生率を低くするため電子エンジン制御装置の改修等が検討されており、これにより発生率は一・三回まで低減することが確認されておる。これがエンジンストール、スタグネーションに関する指摘でございます。  次に、主燃料ポンプのふぐあいということに関しましては、エンジンが熟成した時点における主燃料ポンプの運転時間に対する仕様上の要求は四千時間である。キャビテーション、これは運転中の燃料ポンプの低圧部分に気泡が生ずるというふぐあいでございますが、これによる金属腐食に起因した燃料ポンプのふぐあいというのが一九七六年十二月から一九七七年の間に四十件発生し、二十六機のF15が片肺着陸した。応急措置として以前の型式に戻した。この結果、燃料ポンプの最大運転時間は四百ないし五百時間に低減すると予想されておるという指摘がございます。  それから地上始動の問題に関しましては、冷えたエンジンを始動しようとしても一回で始動しない場合があった。これは一九七七年八月三十一日までに納入された七百台のエンジンのうち三十一台にこの問題が発生した。当面の措置として手順の変更を行い、現在恒久対策を検討している、こういう指摘でございます。  次に、アフターバーナーのふぐあいと耐久性の問題についての指摘でございますが、F100エンジンのアフターバーナーには吹き消え等不安な燃焼を起こすものがあり、空戦時の能力を低下させたが、ロットIVのエンジンでは改良され、吹き消えの発生は減少した。またF100エンジンでは一九七七年七月までにF15で二百二十三件のスタグネーションストールを起こし、このうち七六%はアフターバーナー使用中に発生した。アフターバーナー部分には耐久性に問題がある。これに係る部品の改良については試作試験済みであるが、その実施はまだ行われておらない、こういうふうに指摘されておる次第でございます。  それからまた、エンジンに起因するF16の減耗率という点の指摘でございます。このF16の仕様書においては、累積飛行時間が二十万時間を超えた以後のエンジンのふぐあいに起因する減耗の目標を十万飛行時間当たり一件としているが、現在ではその約三倍になると予想されている。しかしながら、この予想値は他の単発航空機の実績値と同等である、こういう指摘でございます。  それから最後の予算上の制約につきまして、予算上の制約が計画どおりF100エンジンの能力を十分に発揮することを妨げる可能性がある、こういうふうに指摘されておる次第でございます。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 確かに単発であるF16のエンジンストールあるいはエンジンのスタグネーション等につきましては、これはもう大変に重大な問題だと思うのですね。それと同時にF15だってこれは重大だというふうに指摘をしているわけですからね。たとえばエンジントラブルによって、空中戦を展開しているときにこういう問題が起きた場合に、果たして空中戦の効果というものはどうなんでしょうか。
  149. 間淵直三

    間淵政府委員 空中戦の最中においてこういうエンジントラブルが起こると、当然に速力が落ちるとか上昇性能が減るという問題が起こるわけでございまして、完全な性能を発揮して戦えるという状態にはならなくなるというふうに考えます。
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だからそういうふうなF15には重大なエンジントラブルがあるというそういう状態の中にあって、米会計検査院もそれを指摘しているわけですね。それであるにもかかわらず、なぜF15を急いで採用しなければならなかったかということに私は非常に大きな疑問を持つんですがね。どうしてですか。
  151. 間淵直三

    間淵政府委員 このF100エンジンにつきまして、米国の会計検査院その他でいろいろのスタグネーションストールを中心としてのトラブルというものが指摘されておるわけでございますが、米空軍の見解といたしましては、すでに所要の措置を講じたものもあり、これからその所要の措置を講ずることによりまして、たとえばスタグネーションストールといったような問題は千飛行時間当たり〇・四回まで低下させ得る目標を持っておる、そういうことでございまして、千飛行時間当たり〇・四回のスタグネーションストール、これはない方がいいに決まっているわけでございますが、実際の使用上から考えますと、千飛行時間当たり〇・四回と申しますと、一万飛行時間当たり四回ということになるわけでございます。  私どものただいまの戦闘機の使用状況と申しますのは、年に大体二百五十時間ぐらいを使用しておるわけでございまして、こういう計算の基礎に立ちますと、一つの飛行機について、四十年間に四回スタグネーションストールが起こるという確率になるわけでございます。これはないにこしたことはないわけでございますが、そのくらいの故障発生と申しますか、そういうものは従来の飛行機の故障発生率というものに比べても低いものでございまして、実用上はほとんど十全に近い性能を発揮して使用できる、そういうふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、このF15の導入というものは、現に使用中のF104のダウンと申しますか、減耗を補充するものとして計画したものでございまして、計画が一年おくれておるわけでございますが、その104のダウンを補充するものとして採用を決定しておるわけでございます。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 どんなに装備がよくても、どんなにスピードがあろうが、どんなに要撃能力があろうが、エンジンにトラブルがあるということは、非常に重大な問題として受けとめなければいけないのではないかと私は思います。エンジンにトラブルがあるということは、あなたがいまのような数字をべらべら言われたって、たとえばそういうことが一回あったために結局戦闘能力を失ってしまってだめになってしまうとか、いろいろな場合が予想されるわけですから、そういう意味において、少なくとも米会計検査院が指摘していることはやはり重大な問題だというふうにとらえて、防衛庁としてはそういう問題について注目をしていかなければいけないのではないか。     〔村田委員長代理退席、上原委員長代理着席〕 ただ単に少ないから大丈夫だというのではなしに、少なくともこれだけのことを会計検査院がみずからの国のつくった飛行機について指摘をしているわけですから、それに対して、日本の国の防衛関係者がアメリカのメーカーを支援するようなことではなくして、国民の税金を使っている以上は、この問題については関心を持っていかなければいかぬと私は思うのです。その点については十分に関心を持ってもらいたいと私は思うのです。  いま104がダウンをしていくことによってF15というふうに言われておりましたね。そこで、私ちょっと申し上げたいわけですけれども、前に防衛庁の幹部に夏村繁雄さんという方と永盛義夫さんという方がおられたと思うのですが、どういうお役をやっておられたのですか。
  153. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 夏村さんは技術参事官をやっておられました。それから永盛さんは空幕の技術部長をやっておられたわけでございます。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そのとおりだと思います。だからいわゆる権威者だ。いま現職ではないわけでしょうけれども、かつてはそういうことに携わってきたわけですから、権威者ですね。権威者である夏村さんと永盛さんがDEI、すなわち防衛経済情報の中で指摘しているところがありますね。  その中で、いろいろ指摘しているわけですけれども、最終的にこういうふうなことを言われておりますね。「MIG−25は、どうやら我々が考える様な戦斗場面での戦斗機ではない様である。又、伝えられるところではF115、F114に対抗するドッグファイト性能に優れたソ連の戦斗機MIG129は未だにテスト中であると言うことである。とするならば展開までには従来の例からすると六〜七年の余裕があると思われ、F−15の整備は二〜三年遅らせてもよいように思われる。」と書いてあるのですね。これだけの権威者が二−三年おくらせてもいいのだ、F104Jの後がまとしてすぐにいまこういうものを取り入れるということでなくして、二−三年様子を見て、F18もあるだろうし、F16、それからF14、いろいろの機種もあることだから、何もF15をこんなにお急ぎになる必要はないじゃないかというふうに言われておるわけですね。これに対してはどうなんでしょうか。
  155. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 実は私、その夏村さんと永盛さんの指摘というのは読んでおりませんけれども、いろいろな御議論があったのは事実でございます。しかし一方におきまして、先生も御承知のように、防衛計画の大綱で要撃戦闘機の部隊として十個飛行隊というのを維持することをお決めいただいておるわけでございます。一方、五十六年からF104というのは三千時間の寿命が参りまして、それぞれ一個飛行隊ずつ除籍になってまいるわけであります。  したがいまして、この時期に合わせてどうしても次の世代の飛行機というものを整備するということになりますと、五十三年度からこの整備に着手する必要があるということを、従来の整備の経験からいたしましても判断したわけでございます。その時点におきまして、いま先生おっしゃいましたように新しい飛行機でございますので、技術的にもいろいろ問題はないかというような点についても十分検討したつもりでございます。さらにはまた、性能につきまして、たまたま日本に入ってまいりましたミグ25というのは、まさにソ連が防空戦闘用として使っておる飛行機でございます。同時にまた、ミグ系統の戦闘機の技術開発の趨勢というものは、明らかに高々度におきますドッグファイトあるいは低空侵入、そういったものを可能にする技術を持っているわけでございます。  さらに、寿命がF104あるいはファントムよりももっと延びると思われます次の戦闘機につきましては、かなり長い期間主力戦闘機としてこれを使用しなければなりませんので、将来の技術開発の傾向から参りまして、出現するいろいろなタイプの戦闘機に対応できるという観点から、私どもが検討いたしましてF15が最適であるという結論に達しまして、国防会議に御説明し、御判断をいただいたわけでございます。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第三世代から第四世代へ移っていく過程において開発されるであろうミグ29、この問題を一つは対象にしながらF15という問題が考えられたと私は思うのです。エンベロープの線を見ますと。しかし、ミグ29もまだ実際にはテスト中だと言うのです。そういうことを考えれば六−七年余裕があるのだから、二−三年おくらしてもいい。F15は欠陥だとは言っておりません。欠陥だとは言っておりませんけれども、このところ実際エンジントラブルがこういうふうにあるわけですから、もうちょっと状況を見た上で——私はF15を肯定する立場ではないのですけれども、日本国民として、防衛庁がF15を決められたのはかなり早計であった、F4ファントムでももう一、二年そのダウンを補うという方法だって十分あったのじゃないだろうか、こう考えたときに私は解せない点があるし、また、言うならばかつての防衛庁の空の専門官がそういうことを指摘しておることは重大な問題がある。  それにもかかわらずF15を緊急にF4に成りかわってということでどんどんと作業を進めてきたということについては実は大変に問題があると私は思うのですけれども、その点については問題を指摘しておかなければならない。なぜ問題を指摘しなければならないかというと、これは日本の国の今後の問題等にいろいろ影響してくる問題ですから、指摘しておかなければならぬと思います。  それから、実は一九八〇年代後半の脅威の変化という問題についても、アメリカの会計検査院の報告書の中にはあるのですよ。この報告書では、海軍と空軍の合同による要撃ミサイル評価と空中戦闘評価の試験計画での最近の結果から、一九八七年ごろにはF16設計時点に用いた周囲の状況や脅威とは異なったものになる、F16をつくったときと一九八七年とはいわゆる脅威の変化が起こってくる、こういうふうに述べているのです。これはまだ細かいことについては、よくここには書いてはないわけですけれども、防衛局長はその点はどうお思いになりますか。     〔上原委員長代理退席・委員長着席〕
  157. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 脅威の変化というのが具体的には何を指しているのかわかりませんけれども、アメリカの場合におきましては、御承知のように現時点においてもそうでございますけれども、日本の場合のようにいわゆる防空作戦をアメリカの本土においてやるということは余り考えていないようでございます。アメリカの本土が攻撃される場合のものとしてはミサイルを考えておりまして、いわゆる航空機がアメリカの本土に攻めてくるというようなことは余り予想していないようでございます。  現在、F15というのは戦術戦闘機として現にヨーロッパにも配備されているわけでございますが、いわゆる制空戦闘機として戦術的に高空における戦闘能力としてはきわめてすぐれているということは事実でございまして、昨年戦術航空隊に配備された後におきましても戦力の評価というのをやっておりまして、現在ある飛行機についての空中における戦闘においてはもちろんのこと、将来予想される脅威に対しても、あらゆるものに対して対抗できる優秀な飛行機であるという判断を下しているというふうに聞いておるわけでございます。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一九八七年代にはいわゆる脅威その他の状況が変化する、異なってくる、その当時つくったものとは大分変わってくるんだ、こういう判断をしているわけですね。これについて防衛庁としては、会計検査院報告書の中でこういう問題が出たときに、アメリカの方に、海軍及び空軍の合同の試験計画の内容について調査されましたか。
  159. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 そのことを直接問い合わせたことはございません。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはりこういう問題が実際にはF15にも関係するわけですよ。F16においてもそうだけれども、F15だって同じなんですから。そうした場合に、こういうものはどういうふうに変化して、それで果たして一九八〇年代の後半のときに日本の国で使うというF15自体がそれに適合できるかどうかという問題採用して差し支えないかどうかということは、こういうところから判断しなくてはならぬわけでしょう。  今度行かれましたら、防衛局長装備局長、こういう重大なところを、脅威の変化、状況が変わるのだと言っているわけですから、F16をつくったときと変わってくるということに対して、果たしてF15がそれに適合できるかどうかという問題についてはお聞きになる必要があるのではないかと思いますが、その点についていかがでしょうか。
  161. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 それは機会があれば、私も尋ねてみたいと思います。ただ、アメリカの会計検査院が言っている脅威が変わるというのはアメリカの立場における脅威でございますから、日本の周辺諸国の軍事的な問題から考えまして、また日本の置かれた地勢から考えまして防空作戦上どういう能力が必要か、それからまた、現在の軍事技術の趨勢から見てどういった能力が必要か、こういうことで、日本の防空態勢の中で防空能力として必要なものということで私どもは検討をし、F15というものをお願いしたわけでございます。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカの戦略が変わるからその脅威をどう判断するかは、アメリカの問題だと言いますけれども、実際には日米安保条約によって、アメリカは日本の国の足らない分を防衛するという義務を負っておるわけですから、脅威の判断は、アメリカの方はアメリカでやればいいというわけにはいかない、こちらも全く関係がない問題ではないわけです。少なくとも空軍と海軍とで合同していろいろと検討した結果そういうふうなことになっているということは重要な問題ですから、これはやはりお聞きになった方がいいだろうと私は思います。  それから予算執行上の問題についてちょっとお伺いいたしますけれども、F15のECPは現在どれくらいありましょうか。
  163. 間淵直三

    間淵政府委員 F15の機体及びその搭載電子機器のECP、エンジニアリング・チェンジ・プロポーザルについてのお尋ねでございますが、これはF15に限らず、すべての航空機はそうでございますが、運用していきますと、いろいろ改善を要する点が出てくるわけでございまして、この申し出、提案というものは、主としてメーカーが軍に対して行いまして、軍がこれを受諾すると申しますか採用するという段階になるわけでございます。  いままでの経過を申し上げますと、一九七〇年からずっとECPが行われているわけでございますが、最近、一九七六年には百七十七件、一九七七年には百四十八件が採用されておるわけでございます。  この内容は、まず第一に、フォーマルタンクと申しますか二千ポンド燃料の搭載をふやすいわゆるPEP二〇〇〇というような計画、あるいは胴体の下の中央部にECMポットを搭載するように設計を少し直したとか、機体の重量を軽減するためにスピードブレーキとか材料といったようなものをアルミ合金から複合材料に直したといったようなものがあるわけでございます。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 このECP、すなわち改善要求の一つなんでしょうけれども、これをどのように処理されているか。改善計画はどういうふうになっているのか、またその費用はどれくらいかかるか、御調査されていましょうか。
  165. 間淵直三

    間淵政府委員 従来いろいろあったECPにつきましては十分研究したわけでございますが、これからどういうものが出てくるかということについては、私ども現在まだ持っておらないわけでございまして、使用に従ってこういう点を直したらいいんじゃないかという点が見つかってくるのではないかと思うわけでございます。  このECPは機体及び電子機器の改善と、もう一つF100のエンジンに関する改善計画といったものがあるわけでございまして、このエンジンの方に関しましては、CIP、コンポーネント・インプルーブメント・プログラムというふうに言われておるわけでございますが、これも一九七三年からアメリカにおいては計画的に行っておるわけでございまして、その費用は一九七Tは千四百八十万ドル、それから一九七七年度におきましては四千十万ドル、それから一九七八年度におきましては、予算要求といたしまして三千二百七十万ドルという費用が計上されております。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま言われましたF100エンジンの改善のために相当な費用がかかるというふうに指摘をしておりますね。その指摘の中に、なかなか費用が伴わないから改善できないし、おくれているという点があるわけですね。こういうふうなことを考えますと、これからやはりまだまだF100エンジンに対する金の必要性というものは考えられるわけであります。  そう考えたときに大変問題になるのは、一つはF15の価格ですね。実は予算決定をされたときに、補用品込みの七十億円という資料を私どもいただいております。これはいわゆる機体とある程度の物で、実際にミサイルとかそういう装備品というものはほとんど含まれていないだろう。ですから、そう考えたときに、七十億円というのはどういう内容のものであるのか、予算時に七十億円というふうになったけれども、こういうふうにエンジントラブルがあって、どんどんアメリカの方では金をつぎ込まなければならないということになれば、当然それに対する価格の上乗せということも考えられてくるのじゃないかと思うのですが、その点の御見解をお伺いします。
  167. 間淵直三

    間淵政府委員 先生御指摘のとおり、昭和五十三年度に契約いたします二十三機の平均の価格が補用品込みで七十億円、補用品を抜かしますフライアウェー・コストと申しますか、それが六十一億円でございまして、その補用品といたしましては、減耗率がわりに高いと思われる飛行機の胴体とか、あるいは脚の部分であるとか、あるいは電子機器部門の補用品というものが含まれておるわけでございまして、このF100のエンジンにつきまして、構成品改善計画に対しまして数千万ドルの支出がなされておるということでございますが、その費用がF15にはね返ってくるだろうという御指摘でございます。  通常の場合におきましては、契約した後の費用がかかった分の分担というものは、契約が確定してから以降はかかってこないのが通常でございますが、こういうように多額の費用をかけたという——多額と申しましても数千万ドルのオーダーでございますが、それにつきましては、F4の場合とか104の場合にもいろいろの改善に関する支出はあったわけでございますが、その費用はその後にはかかってこなかったわけでございます。今回の場合も通常の例によりますとかかってこないと思うわけでございますが、相当多額に上がってくるということになりますれば、振り分け費、振りかけ費と申しますか、そういうものが全然ないかどうかはちょっと断言いたしかねる次第でございます。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 断言できないということは、こういうふうなエンジンのトラブルを直すのにえらい金がかかる、その費用についてはおのずとやはり、向こうは損して売るわけはないのですから、上積みをしてくるということは間違いない。そういう点についてやはり歯どめもちゃんとかけておかなければいけませんよ。私は何もF15を買えと言っているわけじゃないけれども、防衛庁がやることについて、どちらかというと歯どめをきちっとしていないところに問題があろうかと思うので、指摘をするわけなんです。  そこで、直接購入分とライセンス生産との価格はどういうような状況になりましょうか。
  169. 間淵直三

    間淵政府委員 最初に歯どめのお話でございますが、今回のMOUにおきまして、従来そういう例はなかったわけでございますが、研究開発に要した資金の振り分けに関しましては、今後アメリカ国内及び日本以外の外国へでございますが、販売機数がふえたというような場合は、もう一遍見直しをして公正適切なものにするという意味の一種の歯どめを、今回初めて入れることを向こうが同意したわけでございます。  それからF15の価格でございますが、フライアウェー・コストと申しますか初度部品を入れない価格で申しますと、先ほど申し上げましたように、二十三機の平均価格は六十一億円でございますが、FMSで輸入する単座機二機の平均価格が四十五億円、それから複座機を含めて八機分でございますが、これが四十六億円、それからライセンス生産にかかわる十五機でございますが、これが六十九億円でございます。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、例の七十億円というのは、これはどういう関係になりましょうか。
  171. 間淵直三

    間淵政府委員 七十億円と申しますのは、五十三年度予算で認められました二十三機、すなわち完成機で輸入する単座機二機、それから複座機六機のFMSから輸入する計八機及びライセンス生産十五機の平均の初度部品込みの価格でございます。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど、契約したら、決して上乗せをして向こうの方で高く言ってきているのじゃない、こういうようにおっしゃいましたけれども、一つの例を見ますと、F4ですけれども、F4の昭和四十四年の一機当たりの価格と五十二年の一機当たりの価格は倍になっていますね。実際にはこのように倍にもなってしまうのです。F4の四十四年から五十二年の間の価格の推移についてちょっと御説明を願いたいと思います。
  173. 間淵直三

    間淵政府委員 F4でございますが、四十四年度に契約いたしましたものが、一機当たりの価格が二十億三千六百万円、それから四十六年が二十億八千七百万円、四十八年が二十三億一千七百万円、こう上がってまいりまして、五十二年の契約分が三十七億七千七百万円でございますが、これはこの途中に例のオイルショックがあったわけでございまして、四十四年から五十二年までの間に、一般の卸売物価というのが一・七二倍になっておるわけでございます。それから賃金の上昇率が三・二九倍になっておるわけでございます。それに対しまして、F4の四十四年の価格を一〇〇といたしますと、五十二年は一・八六倍でございまして、ほば卸売物価の上昇率に見合うということでございます。この製造価格の半分は人件費に食われるわけでございますが、人件費が三・三倍近くになっておるという中にありまして、上昇率が一・八六倍ということでございます。  ちなみに、オイルショックがなかったというような事態考えてみますと、、たえばF104DJでございますが、これは三十四年の契約が一機当たり四億八千百万円、四十年が四億九千九百万円でございまして、異常なる経済変動がないといったような場合は、三十五年の価格指数を一〇〇といたしますと、四十年には一〇四、わずか四%の上昇ということでございまして、異常なる経済変動がない限りは、通常の物価上昇あるいは賃金上昇に見合っただけのある程度の上昇というものは考えられるわけでございますが、そう異常な上昇というものは考えられないと思います。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 装備局長、これをつくっているメーカー側は、それをどう考えているかという問題ですね。  経団連の防衛生産事務局長の千賀さん、この方がこういうことを言っていますね。防衛庁の一般的な予算のとり方は、新規要求についてはできるだけ第一年度の歳出予算は少なくして、そして後年度負担をふくらませるという形ですよ。ところが、現実に必要な資金というものは逆になる。第一年度は非常に金がかかる。その辺に防衛庁とわれわれの間にギャップがあるんだ。こういうように言われていますね。ギャップというより考え方がちょっと違うんじゃないか。当初予算を少なくすればそれで事終われりというんでしょうか、それでは結局は全体の単価の問題が逆立ちした形で出てくるというようなかっこうになるんだ。  こういうようなことで、企業に負担をさしておいて、予算要求は立ち上がりは安く見せかけたつもりでおる。防衛庁はそういうふうに思っていないかもしれないけれども、受け取る方は、初めはえらい安くやっているようであるけれども、結局最終的にはだんだん負担を多くされていくんだということを考えると、やはりアメリカの場合においても、当初は国民向けに非常に安く今度買いました。ところが、いろいろの理由を突きつけてこれからどんどん高くなるおそれがある。これは国民の税金ですからね。税金である以上はやはり監視しなくちゃならない。そういう点についてそういうことは絶対ないんだというふうにはっきり御答弁できましょうか。
  175. 間淵直三

    間淵政府委員 先ほども申し上げましたように、単価の査定、FMSで輸入する分についてはアメリカの軍からのオファーでございますが、ライセンス生産分につきましては、三百八十億円余りの設備投資であるとか、そういうものの減価償却あるいは割り掛けといったようなものについては、百機を調達する——ライセンス生産は八十六機でございますが、八十六機を調達するという計算のもとに、均等な償却その他が得られるというふうに厳密に査定をしているわけでございます。したがいまして、経済変動に伴う上昇あるいは下落分というものを別にいたしますれば、普通ならば価格上昇することはないというふうに私ども確信しておるところでございます。  しかし、途中で計算と申しますか、計画が変更になって、たとえば八十六機調達するものが五十機になったというような場合には、その償却費とか割り掛け費というのがふえて、それが価格上昇になるというようなことは理論的には考えられるわけでございますが、私どもの計画がスムーズに進められる限りにおいてはそういう上昇といったものはない、こう考えております。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たしか今年度の大蔵省の査定は一ドル二百六十二円で査定されておりますね。ところが現在は、変動為替相場制でやっておりますから、実は二百二十円を割っているわけですよ。そうした場合、一ドル四、五十円の差というのは、私は、これは一つは非常に大きなギャップであり、お金だと思うのですね。今回入れられますところの購入分、六機ですか、八機ですか。八機ですね。——八機についてはアメリカ政府から直接お買いになるということでしょうから、これはドル建てでしょうね。
  177. 間淵直三

    間淵政府委員 ドル建てでございます。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、ここにちょっと問題ができるわけです。大蔵省の査定が二百六十二円で四、五十円の違いがある。その四、五十円についてはどうされるのでしょうか。
  179. 間淵直三

    間淵政府委員 為替差益か何かそういうものにつきましては、私どもがアメリカの政府から買うというときには、その予算を日銀に払い込むということにいたしますと、日銀はその日の為替相場でアメリカ政府に払う。その差額につきましては自動的に国庫へ納入になるという仕掛けになっておるわけでございます。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国庫へ戻るならばいいわけでありますけれども、前々からこのお金の操作というものが問題になってきているわけです。国庫に入れるならば問題ありません。ところが、たとえば値上げ分に対する何らかの差益分をそれに充てるとか、あるいは国内生産に対する足りない分はそういうものを使うとかというようなことは全然ないでしょうかね。
  181. 間淵直三

    間淵政府委員 ライセンス生産分につきましては、輸入部品に関しましては、その輸入部品を買って支払いをした日の為替相場で支払いをするということになっておるわけでございまして、その他の分につきましては、財政法、会計法などに反しないように処理しておる次第でございます。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それではまた観点を違えて別な問題を質問いたしましょう。  F4ファントムの装備については、昭和四十三年、次期戦闘機の選定に際して国会でもいろいろ論争がありましたね。それに基づいて爆装を外し、給油装置は取りつけないということが決定されたわけです。  昭和五十二年の十月二十五日の内閣委員会で、この場所で防衛局長と私と論争をした。論争をしたときに、最後でありましたけれども、F15の爆装並びに給油装置についてはF4と同じように取り外しはしないのかということを言いましたら、取り外さないということのお話があったわけです。それに基づきまして、その問題は政策の変更にもつながる問題であるから重要な問題だ、恐らく今後国会で問題になるだろうということを私言って、実はそれっきりになっておったわけです。確かに今国会においての防衛論争の中には、その問題が大きく論議されて、十一月十七日付の見解については、たしかこれは取り外さないという理論づけが実はなされたわけであります。  その中で、F15は要撃性能に主眼を置かれた要撃戦闘機であるから、F15は専守防衛にふさわしいという理由で爆装を外さないとし、F4のようなものは戦闘爆撃機としての用法を含む多目的戦闘機であり、対地攻撃能力をも重視して開発されているから、爆装を外したということになっているが、今後F4のような多目的戦闘機で、いわゆるファイターボンバー的な要素が強い戦闘機がもし開発されるとしたならば、それはF4のように爆装をお外しになりますか。
  183. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま先生がおっしゃいましたような戦闘機というものがどういうものか、ちょっと私いま頭に浮かんでこないわけでございますが、あのときに先生の御質問がございまして、爆撃装置と給油装置はそのままにしておきたいと申し上げましたその背景は、いま先生がおっしゃったとおりでございますけれども、ファントムのときに落としたといいますか、外しました爆撃装置というものは何かというようなことについて私も過去の国会の御論議等を調べました。その中で爆撃装置すべてをファントムでも落としているわけではないわけでございます。御承知のように、爆撃専用のコンピューターと核爆弾の搭載装置と、それからいわゆる空対地のミサイルの管制装置、この三つが外されているわけでございます。  F15というものが要撃戦闘に主力を置かれているということを申し上げましたのは、もしそのファントムと同じ系列、すなわち多用途戦闘機としての同じ系列のもとにこれが開発されたとするならば、当然のことながらあれだけの空中戦闘能力というもの、飛躍的に向上しておりますので、当然その爆撃機能というものもファントムに比べてきわめて高いものであるというふうに理解されるはずでございます。  当然のことながら、核爆弾もそれから空対地ミサイルも十分発射できるような能力を持っているはずでございますが、F15というのは、むしろそういった機能というものはファントムとそう違わない。わずかに違うところは、核とか空対地のミサイルは落として、いわゆるコンピューターが共用できるというところでございます。したがいまして、一九八〇年代の飛行機といたしましては、やはり圧倒的に空中におきます戦闘能力というものを重視した飛行機であるというふうに私どもは考えていたわけでございます。  したがいまして、F4の延長線上の同じようなものというもので、大きな爆撃能力を持ち、そしてまた空中戦闘ということになりますれば、またその時点において判断しなければならないと思いますけれども、現実には私どもはいまそういうものを予想いたしておりませんので、F15のときには爆撃装置と空中給油装置を残していただきたいということをお願いしたわけでございます。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私が論議したときには、たしかこういうことを言われましたね。F15は、爆撃装置というのはコンピューターシステムで、そして取り外しができないんだ。これは重要な一つの問題として、爆撃装置というものは取れないんだというふうにそのときは御答弁があったはずですね。  そもそも、その当時御答弁になってから大分答弁が変わってきて——ファントムは多用目的の戦闘機である、ファイターボンバーである、ところが片一方は要撃戦闘機であるというふうに理論づけられまして言われているわけですね。初めあなたがおっしゃったように、コンピューターシステムによる爆撃装置で取り外しがきかないということであれば、そのときあなたが純然として答弁をされた中においては、そのF15というものはすでにそのときにおいてそういう爆撃装置を取り外しができないようなシステムであったとするならば、一つは、これはもう選定の基準から外さなければならない問題ではなかったか。  あなたはそうおっしゃっているのですよ。私は議事録を見ているのですから。コンピューターシステムだから、なかなかそれがソフトウエアで情報が入っておって切り離すことはできないんだ。切り離すことができない状態だとするならば、それはすでにF15というものは、爆撃装置という問題から、選定からは外さなければならない問題であったにもかかわらず、その後あなたはいろいろ理由をつけられた。  たとえばファントムの場合においては五百ポンドの爆弾は二十四個ですよ。それからF15の場合には五百ポンドが十八個でしょう。だから実際には爆撃は大して変わらないのですよ。だけれども、あなたの場合においては、F4は言うならば多用目的の戦闘機だ、そして片一方においては、言うならば要撃専門の戦闘機である、こういうことで理論づけされてきているわけですよ。どうもそういうところが納得がいかぬのですがね。それじゃF15はもう要撃戦闘機のみにしか使えないのかどうかという問題。
  185. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 あのときには十分な御説明をしなかったということは反省いたしております。しかし、このコンピューターが、F4のときと現時点におきましては、F4ができましてからすでに二十年近くたっておりますので、コンピューターそのものがきわめて向上しておるわけでございます。あのときには空中戦闘用のコンピューターとそれから爆撃専用のコンピューターが分かれておったわけでございます。したがって、爆撃専用のコンピューターを外したという経緯がございます。  それから同時に、先ほども御説明申し上げましたが、F15とファントムの最大の違いというものは、核爆弾を積める、あるいは空対地のミサイルを積めるか積めないか、これが非常に大きな違いでございます。ということは、いわゆる強力な破壊力を持った核爆弾を搭載していわゆる攻撃機能というものを十分発揮する、あるいは一点に集中してミサイルを発射する、そういったことが特にこのファントムの場合には強調されておったわけでございます。同時にまた、ファントムは、あの時代におきますマッハ二・五を出す上昇能力あるいは空中におきます飛行性能、そういったものもすぐれておったわけでございます。  しかし、そういったF104の時代に比べまして格段に上がった中で、やはりこの爆撃機能というものもきわめてすぐれておったわけでございますが、同じようなテンポで相似的にそれが性能が向上しているかというと、私どもはそうは思っていないわけでございます。といいますのは、爆撃機能、いま先生もおっしゃいましたけれども、五百ポンドの爆弾が二十四発、十八発というのはまさに同じようでございますが、すでに十五年たっている時期において同じだということは、進歩がなかったということだろうと思います。それに比べまして、たとえば上昇性能あるいは空中におきます旋回性能、そういった点は全く格段の差があるわけでございまして、そういった意味から言いましても、空中におきます格闘能力、いわゆる要撃戦闘といいますか、そういった能力を重視した飛行機であるというふうに考えているわけでございます。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、いまはからずも言われた核爆弾を搭載できるようなシステム、あるいは空対地のミサイル、これは今後戦闘機には絶対お持ちにならぬと、こういうことでしょうか。
  187. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 核爆弾の方は、これはもう核装備をする考えはございませんから、これは全くございません。  しかし、空対地のミサイルということになりますと、これは御承知のように、いわゆる104もロケットは積めるわけでございます。そういったものの種類にもよろうかと思いますが、いわゆる対地攻撃能力も付随的に必要であるということは、限られた戦闘機をもって防空作戦と同時にまた、海上を経て地上の部隊が日本に侵攻してくる際にそれを阻止するという機能も支援戦闘機と同時に持つ必要というものがあると思いますので、その適当なものがあれば、しかもそれを使うということであれば、これは全然やらないかということになりますと、いまの段階では申し上げられませんけれども、いまそういった考えはないわけでございます。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、ファントムは多用目的の戦闘機であり、そういうことからいって攻撃力が強いから、だからそれを外し、片一方は要撃戦闘機であるから、だからその点についてば外す必要はないんだという理論づけをされたわけですけれども、たとえばイスラエルはF15を採用しているわけですよ。あの狭いイスラエルの上空において防空をするなんていう防空戦闘機、いわゆる要撃戦闘機だけの役目をするというわけじゃないのです。あれは。少なくとも相手方へ行って攻撃をして、攻撃能力もあるという判断からイスラエルはあのF15を採用したのですよね。  となりますと、日本防衛庁は要撃戦闘機オンリーだから、これはもういいんだという——F15はかなり要撃戦闘機としての性能は確かにすぐれております。すぐれておるけれども、結構爆撃もできるし、そういうことはできるのですよ、要は。だから、そういう理論づけもちょっと無理だし、私に前にお話しになられたコンピューターシステムで、言うならば分離できないから、だからできないというならばもう選定の前においてその機種は基準としては全く不適格であったというふうに考えざるを得ないわけです。だからはっきり言いまして、今回F4を外し、それからF15をつけたということはやはり政策の変更だというふうに私は思うのですが、その点ではどうお考えでしょうか。
  189. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 確かにF4のときに落としましたコンピューターというものは今回落としてございません。それは、いわゆる爆撃のためのコンピューターというものはなかったということもございます。それから、それではその両用のコンピューターを持っているものを選定から外すべきであるという御意見でございますが、とにかくコンピューターというものは非常に小型化されまして能力が上がっておりますから、いま爆撃専用のためのコンピューターだけを持っている飛行機というものはないわけでございます。そういった意味で確かに、コンピューターを今回残しておるという点につきましては、前とは違っているということは申し上げられると思います。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 装備局長、アメリカの報道官が何か日本のF15については爆撃装置をつけないのだというような報道がちょっとなされておったのですが、これはどういう意味なんですか。爆撃装置はこっちはつけると言うし、アメリカの報道官は爆撃装置はつけないのだというふうに言っております。その点ちょっとギャップがあるのですが、御説明願いたい。
  191. 間淵直三

    間淵政府委員 米国政府の報道官が日本語の新聞には、爆撃装置をつけておらない、こういうふうに報道されておったわけでございますが、正確に英語の方を見ますと爆撃装置という表現ではございませんで、マルチプル・エジェクション・ラック、こういう表現でございまして、これが爆撃装置の一部には違いないと思うわけでございますが、爆撃装置のごく一部ということでございます。  これはどういうものかと申しますと、飛行機の両翼とそれから胴体の下にパイロンというものがついておりまして、それには増槽タンクをつける、あるいは爆弾をつり下げるという装置でございまして、普通の場合ですと五百ポンドから二千ポンドの爆弾でございますが、それが一つずつしかつかないということになっておるわけでございまして、その一つしかつけられないというものを改良するためにマルチプル・エジェクション・ラックという、いわばバスケットみたいなものでございまして、それをつけますと五百ポンドの爆弾六個をつけることができる。したがいまして、私どもはMERと呼んでいるわけでございますが、そのMERというものをつければ爆弾が二発のかわりに十二発ぶら下げることができる、そういう装置と申しますか入れ物でございまして、これが日本語の新聞には爆撃装置という翻訳で載ったわけでございますが、必ずしも正確かどうかはなはだ疑問に思うわけでございます。  アメリカの報道官が言ったのは、これはアメリカの戦術空軍では使っておらないものでございますから、私どもがFMSから買うものにはそれがついておらないわけでございまして、私どもといたしましては爆撃装置も付随的に必要だという前提に立ちまして、これはアメリカの政府から買うのではなくて民間の会社から買って装置をしたい、こういうふうに予算措置をしておるわけでございまして、そこら辺、言葉の問題と、それからFMSからは爆撃装置を買わないということがミックスしてそういうふうに誤り伝えられた、こういうふうに考えておるわけでございます。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 空中給油の問題についてちょっとお伺いいたしますけれども、最近における航空機技術の進歩に対処して、有事においてあらかじめ空中において警戒待機態勢をとる必要性が増大し空中給油機能の有効性が生じたので、空中給油装置を除去しないというふうに防衛庁の方では理論づけされておりますね。必要な場合に米軍の支援を期待するのだというふうに言われておりますけれども、実際にいま現在、有事においてはあらかじめ空中においての警戒待機態勢をとる必要性が増大をしているのにアメリカが来るのを期待をするということは、どういうことなのか。  私は、空中給油装置を少なくとも置いておくということは、その裏には将来空中給油機もつくりたいという願望があるのではないか、それが国民の偽らざる見方ではないだろうかと私は感じてならぬのですよ。空中給油装置、そんなアメリカに期待をするような、必要性の余りない、またいつアメリカが来てくれるかわからない、そういう状態の中にあって、あえて取り外すというふうに言われたものをくっつけるという理由もちょっと考えられないわけですね。しかし、実際にもし日本が有事だという場合においては、それはそれなりに真っ先に空中給油機というものは要るのじゃないだろうか、将来やはりそういうことも願望しているのじゃないだろうかというふうに感ずるのですが、その点についてはどうなんでしょうか。
  193. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 空中給油機につきましては、現在その計画はないわけでございます。CAPオペレーションといいますか警戒待機のオペレーションというものは、今後あらわれます脅威に対しては私どもは必要だと思っております。御承知のようにF15という飛行機はファントムよりも足が長いわけでございますから、これによってCAPオペレーションというものをやらなければならない時期が来るというふうに考えておるわけです。  ただ、現在配備しておりますそれぞれの基地を使ってやるような場合に、直ちに空中給油機によってやらなければならないかという問題になりますと、そこにはやはり段階があろうかと思うわけでございます。したがいまして、航空基地がやられるというようなことによって遠距離からのオペレーションをやらなければならないというような場合には当然必要になってくるわけでございますが、現在配備しておりますそれぞれの基地におきまして、F15によりますCAPオペレーションというものはそれなりにできると思いますが、それをもっと効果的にやるというためには、もちろんこの空中給油機を持っているということが望ましいことであるということは間違いございません。しかし、現在私どもはその計画を持っておりませんので、必要の場合には、いわゆる日米防衛協力によりまして米側の協力を得てそういったことを可能にしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま現在、空中給油装置をつけるといっても、実際にF15は直ちに入ってくるわけではないですからね。F15が入ってきて、かなりそれが日本の防空に必要な状態になった場合においては、やはり空中給油機というものが少なくとも必要な時代がやってくるのじゃないか。そのために皆さん方の分析というものは、有事においてあらかじめ空中において警戒態勢をとる必要があるというふうに言われている以上は、アメリカに空中給油機にさあ来てくださいと言ってみたって、こちらの方ではもう有事になっている場合で、そういうときに果たしてそういうものがすぐに間に合うかというとそうはいかないだろう。だから、少なくとも将来においてはそういうものを考える要素というものはやはり皆さんの中にまるっきりないのじゃないだろう。まるっきりないなら、私どもはもう絶対に空中給油機はつくりません、こうはっきり言ってくださいよ。
  195. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 先ほども申し上げましたように、現在その計画はないわけでございます。現在の部隊の配備等によりまして一応CAPオペレーションというものはできるというふうに考えているわけでございますが、軍事技術の進歩に伴いまして、どうしてもそういうものが必要であるということがないというふうには申し上げていないわけでございまして、現時点におきまして私どもはそれを考えていないということであります。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それから、もう少し国民にわかるように話をしてもらわないと実は困るのです。たとえて言うならば、空中給油の訓練を行う考え方はないとあなたはおっしゃる。教科課程も設けません、こう言っているわけですね。確かにいまF15が来ていないのですから、教科課程なんてつくる必要は何にもないわけですからね。ないのですけれども、少なくとも空中給油というのはわりあいと簡単に空中給油のシステムができると言いますけれども、機上において空中給油のドッキングをするというようなことは、これは実戦に向かぬのですよ、実際には。そうなれば、空中給油課程というものも、たとえばF15をこれから恐らく購入をするという段階において、訓練はアメリカへ行くのでしょう、F15はアメリカにいるのですから。アメリカに行った場合に、その訓練の中においてそういう問題はやはり考えなければならない問題じゃないでしょうかと私は申し上げているのですが、その点はどうですか。
  197. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これは予算委員会の席であったかと思いますが、御説明申し上げましたところでございますが、いま先生がおっしゃいましたように、訓練を全然しなくていいのかという問題になりますと、私が実際にこの調査に参りました調査団のパイロットから聞いたわけでございますが、調査団のパイロットが行きましたときには、いろいろ実験を効果的にやるために、空中給油を受けた経験があるようでございます。そのときの経験からいたしますと、この空中給油をする給油機の方でございますが、これは非常な練度が要るようでございます。ところが、受ける方は、空軍の方式によりますと、一定の高度で、一定の速度で水平飛行をやっているところに、空中給油機の方からホースを出してきて空中給油をしてくれるものだそうでございまして、平均的なパイロットであれば、初めてであってもそれは実際できるそうでございます。  そこで、問題になりますのは、いま先生も御指摘になりましたように、空中においてどの場所で受けるかということでございますが、これは現在の航法によりますと、そうむずかしい問題ではございません。たとえば編隊を組んだり、あるいはそれを解散したりするのとほとんど変わらないわけでございまして、そういった意味におきまして、いわゆるパイロットの教育課程において、そういうものを何時間あるいは何十時間やらなければならないというようなものではないようでございます。したがいまして、いま申し上げておりますのは、空中給油装置があるためにその訓練もやらなければならないというふうには考えていないわけでございます。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するに、教育課程においてはやらないけれども、しかし私は、その空中給油装置をつけた以上は、それは確かに空中給油機の方が構造的にはむずかしい。むずかしいけれども、相当なスピードで飛んでいる以上は、そのドッキングのやり方については何らかのやはり訓練はしなくちゃならないでしょうということなんですね。全くそれじゃ空中給油装置をお取りつけになっても、F15については空中給油機等の練習は一回もやらぬというならやらぬではっきりしていただきたいのですよ。そうすれば、実際に有事の場合に全く役に立たないから、そんなものはよしなさいと言うのですよ。
  199. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この経験をした者の状況を聞きますと、何回か経験しておくということは有効であるというふうに言っております。したがいまして、機会があればそういうことはやった方がいいと私は思っております。しかし、いま先生がおっしゃいましたように、相当なスピードで飛んでいるから、ドッキングというのは非常にむずかしいだろうということでございますけれども、これはパイロットというのは編隊飛行というのをやっております。相当なスピードで飛んでおりましても、相対的にある一定のスピードで一定の高度で水平飛行を飛んでいる限りは、両方の飛行機というのはまさに停止しているような状況でございますから、これは編隊飛行というのを実際におやりになってみるとおわかりだと思いますけれども、そうむずかしい問題ではないというふうに考えられるわけでございます。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛局長答弁の中で、空中給油機は持ちません、それから空中給油の訓練も、またそれは教科課程に入れません、本当に、ただ単に空中給油装置だけを残しておくのだなとしか、国民はこうちょっと御答弁だけの状態であるとするならば、それしか判断できないのですよ。それにはF15が導入されてきた場合には、現在のいろんな技術が発達した中においては、将来やはり空中給油機というものの考え方もあるし、また何らかの形で訓練はよりやることがベターだろう、こういうことであるならば通ずるのですよ。通じないことを言ってもなかなかそれはだめなんです。そういう点で申し上げたわけです。  さて、時間も大分来たようですが、防衛庁長官ちょっとお聞きしますけれども、一月の八日に金丸防衛庁長官が、陸上自衛隊の第一空挺団に対する訓示あるいは北海道における訓示の中で、敵に脅威を与えずして何の防衛か、いえばかっこうがいい発言をされたということで、かなり大きな問題になった。いま防衛庁長官は、平和憲法を遵守した上において、敵に脅威を与えずして何の防衛かというような、そういうふうなことになっているわけでありますけれども、平和憲法というものは、平和憲法の中におけるところの戦力保持という問題についてはかなりいままで論議されているわけですよ。それだけに問題を残した発言であり、またこの間例の北海道に行かれたとき、やはり同じような趣旨の御発言をされたというわけですけれども、その御真意をちょっとお伺いしておきます。
  201. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、ただいま御指摘の自衛隊は平和憲法を踏まえて侵さず、侵されずという、これが基本精神である。しかし、国民の税金をいただいて国の防衛を預かる以上、脅威のない、脅威という言葉は抑止という言葉であろうと私は思います。その脅威なき防衛というものは、一握りの防衛であったら国民の負託にこたえられない。国民の税金をいただいている以上、脅威いわゆる抑止力、こういうことになるのじゃないかという意味で申し上げているわけでありまして、相手方にいどんでいわゆる脅威を与え、こちらが攻め入っていくというような考え方は毛頭持っていないわけであります。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 じゃ防衛庁長官攻撃武力と守勢的武力とはどう違うのでしょうか。
  203. 金丸信

    金丸国務大臣 攻撃とは、相手方に攻め入って相手方の領土を侵害するというようなことが攻撃的だ。あくまでも専守防衛である以上、私は日本の国を侵さんとする者に対しては厳然たる態度で臨む、それは精強な部隊でなくちゃならない、それには脅威を感ずるような部隊でなくちゃならない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 敵に脅威を与えないで何の防衛かという御発言が、切り文句で出たわけです。そこでお伺いしますけれども、日本は相手に被害を与えられるような能力を持つということになるのでしょうか。
  205. 金丸信

    金丸国務大臣 相手方に被害を与えるというような防衛力を持つということではなくて、日本を侵さんとする者に対してはいわゆる脅威を感ずるような防衛というものを持っておらなければならぬ、こういうことであります。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 じゃいま言われましたように、相手がちゅうちょするだけの武力を持っておく必要があるということは、他国にこちらの意思を強制するような力を持つということなんでしょうか。
  207. 金丸信

    金丸国務大臣 相手方が日本の領土を侵さんとするとき、これはやめた方がいいぞと思いとどまるような、こういうような意味も含めておる、私はこう思うわけであります。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうすると、ちょっと問題なんですね。従前防衛庁が考えておられるいわゆる脅威を与えないということは、少なくとも他国にこちらの意思を強制するような力を持つことじゃないんだということを言ってきたわけでしょう。ところが、少なくとも相手方にそういう気持ちを起こさせないようなものをこっちで持つんだということは、まさしく相手方に攻め入らないという気持ちを起こさせるということ、すなわち相手方にそれだけの脅威を与えるということになれば、これは憲法の上において大変に問題を起こす発言ですよ。
  209. 金丸信

    金丸国務大臣 鈴切先生、国民の税金をいただいて、一握りの自衛隊で、日本自衛隊なんというものはどうなってもいい、自衛隊というものはあんなもの問題じゃない、全く一握りにも二握りにもならない、そんな存在でいいのか、こう思いますと、それはいかぬ。民族百年あるいは千年、万年の存続を考えれば、座して死を待つわけにはいかぬ。私は絶対攻めるなんということは言っていない。戦争をやってはいけない、これは私の基本精神です。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官の気持ちはわかるわけですけれども、平和憲法を遵守して、脅威を与えずして何の防衛かなんて、こう言われますと、平和憲法を踏まえてなんて言うと、それで脅威を与えずして何の防衛かなんというのは消されてしまうような感じを受けるわけですけれども、いままでずっと長い間論議されてきた中にあって、相手方にこちらの意思を強制するような、脅威を感じさせるようなそういうものは憲法の中において許されておりませんよ。
  211. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 大臣が申し上げているのは、従来からの防衛構想、これは四次防までも、また大綱のときにもお決めいただいた防衛構想と何ら変わっていないわけでございまして、防衛構想の主眼点というものは、侵略の未然防止というのが主眼でございます。  未然防止というのはどういうことかと言うと、やはり日本に侵略をした場合に失うものが大きいから侵略をしないということになろうかと思います。それが侵略の未然防止でございまして、侵略が起こったときには、いわゆる限定的な小規模のものは独力でこれに対処し、それ以上のものについてはアメリカの支援を得てこれを排除するというのが従来からの防衛構想でございまして、大臣が再三おっしゃっておられますのも、その未然防止というものが最も重要であるのだというような意味でおっしゃっているというふうに私どもは理解しているわけでございます。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 憲法の精神は、戦争が起きても日本自身の力では相手を、まいりましたとかあるいはまたやっつけたりするということはできないというのがその考え方なんです。実際には。ただ自分の被害をできるだけ狭めておくのだということしかできないのですね。足りないものについては日米安保条約に頼っているんだ、これはもう常識的な憲法解釈なんですよ。  ところが防衛庁長官は、脅威を与えずして——与えるのです。向こうに。脅威を与えずして何の防衛か、こういうふうに大みえを切られて、そして平和憲法のもとにと、こうおっしゃるんで大変にここのところ矛盾を感じ、ながら皆さん聞いておるわけでありまして、やはりそういうふうな日本憲法というもの、それからまたいろいろな昔からの防衛論議というものをつぶさに御研究されますと、そういう点について——気概を持つということはいいんですよ。脅威を与えずして何の防衛かなんと言われますと、これは大変に問題を醸し出す発言ではないかと思います。その点だけちょっと指摘をして、私もちょうど時間になって、これからまたほかのものに入りますと、また時間がかなりオーバーするような感じになりますので、これをもって質問を終わりたいと思います。
  213. 始関伊平

    始関委員長 受田新吉君。
  214. 受田新吉

    ○受田委員 金丸先生、先日あなたのかわいい部下たちがPS1の遭難で十三名お亡くなりになりました。私の郷里岩国市の海上自衛隊所属の対潜哨戒機でございました。私も何回かあの基地を訪問して海上自衛隊所属の国産のすばらしい飛行機を拝見しておったわけでございますが、事もあろうにちょうど先日、私、帰国の途中でこの事件を知りまして岩国へ急遽立ち寄りました。そのとき金丸長官が、土曜日の午後でございましたが、葬儀に来られることを伺いまして、私が海上自衛隊を訪問してあなたに弔意を表する文書をお届けしてお悔やみを申し上げたわけです。  私は、この十三人の中に私の個人的に知っている家庭も二、三あられまして、その子供さんが地元の幼稚園に行っていらっしゃる。先生たちからその子供さんのお父さんの亡くなられた悲しみと、お母さんがしっかりしておられることを聞きました。とにかくどうしてこんな悲しいことができたのか。そしてその自衛官の遺族は、自衛官という職責をぴしっと自覚をしておられまして、奥様御自身が、陰では泣いておられたと思いますが、公式には涙を見せないでぴりっとしておられたことを私は伺っておるのです。ちょうど長官が御到着になる三十分前に私は次の会合の予定があって、残念ですが葬儀に列することができませんでしたけれども、長官わざわざ岩国まで来られて、このあなたのかわいい部下たちの死を悼まれたわけでございまするが、この悲しい事件についてどういう感慨を持っておられるか、御答弁を願いたい。
  215. 金丸信

    金丸国務大臣 海上自衛隊の岩国基地のいわゆる哨戒機が高知県の山中に墜落をしたという惨事を聞きまして私も愕然といたしたわけでありますし、またすぐ、この問題につきましては総理にも報告をいたしました。  私は、この問題は、内容は先生御存じですから多くを申し上げませんが、いわゆる国籍不明の船がということでたまたま哨戒に当たっておる哨戒機から連絡があって、命を受けて現地に飛び立ったわけでありますが、その途中の事故でありまして、私は安全という問題を常に考えなければならないことは当然でありますが、十三名という将来有為の人材をなくしたということについては返す返すも残念でありますし、また何とも申しわけないし、国民の皆さんに対しても申しわけないという気持ちでいっぱいでございます。  将来の自衛隊の士気にも影響することでありますし、私が葬式に出席してねんごろに遺族の方々にお見舞いを申し上げることは私の責任だというような考えのもとに岩国の葬式に参列をいたしたわけでありますが、若き未亡人がいたいけな幼稚園程度の子供を抱き、あるいは手に引っ張りながら焼香を上げる姿を見まして、私も泣かされたわけであります。このようなことを二度としてはならない。これに対しては安全対策と、この事故の起きた原因を十二分に究明し、また亡くなられた方々の遺族のためには万全の策を講ずるというようなことを指示いたしました。また、自衛隊宿舎にもおられるわけでありますが、主人を亡くした奥さん方は将来どうすべきか、そういうような将来の問題まで十二分に自衛隊でめんどうを見るべきだという指示もいたしまして、できる限りの償いはしなければならぬ、このように考えて、現在もいろいろ状況報告を海幕から受けながら——幸いなことに、いま先生がおっしゃられたように家族もしっかりしておる。将来の就職の問題やその他いろいろな問題等もあるわけでありますが、順次その問題も解決しておるわけでありますが、将来、長年にわたってこの遺族のためにわれわれはできるだけのめんどうを見たい、このように考えておるわけであります。
  216. 受田新吉

    ○受田委員 海上自衛隊岩国基地に対潜哨戒機PS1は何機配属されておるものであるか、また、この飛行機は他の地域に何機配属されておるのか、岩国だけであるかどうか、お答え願いたい。
  217. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 今回事故を起こしました岩国の部隊、海上自衛隊の第三一航空群という部隊でございますけれども、この部隊が持っておりますPS1は約十五機、このほかに岩国基地には五一航空隊岩国航空分遣隊というのがございまして、これは開発、調査、研究というようなものを任務といたしまして五機、締めて二十機のPS1が岩国基地に所在しております。
  218. 受田新吉

    ○受田委員 この飛行機が足摺岬へ向けて進んでいく途中でなぜ目標を誤ったか、最初に国籍不明の潜水艦を発見したそのPS1の第一号機から二号機への連絡に何か欠陥があったのか、そして性能の高い飛行機なら、少々の悪天候でもそれをしのげると思うのでございますが、余りにもあえなく事故を起こしていることについてわれわれは歯がゆくてならぬのです。原因究明に取っ組んでおられると思いますが、今時点までに定かにされた原因は何であるか、お答え願います。
  219. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 事故の原因につきましては目下調査中でございまして、いまこの段階で申し上げるような材料は持ち合わせがございませんが、念のため、この当日の対潜飛行艇の事故の事実関係について概略申し上げたいと思います。  まず、第三一航空群の対潜飛行艇PS1、いわゆる五八一二号機と申しますが、これが五月十七日の十七時六分、岩国基地を離水いたしまして、波浪観測訓練あるいは洋上離着水訓練を行った後、二十時ごろから岩国付近におきまして離着水訓練を行っておりました。一方、その日の夜、四国沖で夜間洋上訓練を行っておりました三一航空群の別の対潜飛行艇五八一三号機でございますけれども、これが十九時十五分ごろ国籍不明の浮上航行中の潜水艦とそれから艦艇各一隻を発見しましたので、これを監視するとともに、八時ごろ発見報告及び帰投するという旨の通報を第三一航空群司令部に発信いたしました。三一航空群司令はこの報告を受けまして航空集団司令官に通報し、この目標についての識別の照会をしたわけでございますけれども、さらに詳しく監視する必要があるというふうな判断から、今回事故を起こしました航空機にこの任務を充てることにしました。  と申しますのは、当初発見したこの対潜飛行機は、事故機よりも一時間早く離水して飛行時間が長かったということから、残燃料が比較的少なかったということと、この発見機には艦艇識別の熟練者がいなかったというふうなこともありまして、この事故機に対して所要の監視を実施するように命じたわけでございます。  そこで、この命令を受けました事故機が直ちに現場に進出するために四国の上空を飛行中、二十一時半から四十五分ごろにかけて高知県の高岡郡梼原町の山中に墜落した、そして乗員十三名が死亡したということでございます。
  220. 受田新吉

    ○受田委員 私は、その五八一二号機が出かけてあえなく墜落したということが非常に残念なんです。命令系統かあるいは機能の上か、性能の上か、あるいは天候に対する気象観測に誤りがあったか、このりっぱな飛行機を十三人もの俊秀を乗せて簡単に墜落させるような自衛隊では、国土、国民を守る自衛隊として国民に安心していただくようなかっこうになりません。実にあえなく墜落したようなかっこうですよ。平素何をしておったか。そして燃料の計算などというものもどうなっておるのか。それから国籍不明の潜水艦は米国、つまり日米安保体制のもとの友軍の潜水艦であった、そういうわかっておるようなものを常に猛訓練で探索するというようなことじゃ、実戦のときに飛行機がなくなってしまいますよ。きわめて短時間の間に墜落している。  私も郷里が近いところでありますし、四国を何回か自動車でも横断しておりますから、あの辺はよくわかる。四国山脈を越えて、太平洋へ出る途中の南斜面で起こったわけですから、これは上昇過程でなくて下へおりるところで起こっておるわけですから、どう見ても何か異変が起こったとしか私は見られぬのです。気象上の異変なら、あそこの気象観測が何か答えをぴしっと出しておるはずだ。操縦上の欠陥があったならば、それは通信か何かですぐ打電するように平素の訓練ができていなければならぬ。何ら事故の原因もわからぬで、九時過ぎに通信があって、それから事故を起こしておるのでありますから、その間の訓練の経緯等、気象情報等がぴしっと通報されるような仕組みがしてないのじゃないですか。
  221. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 当日、事故機が国籍不明の艦艇の監視命令を受けまして、飛んでから約一時間後に位置通報するはずのものがなかったということから、岩国基地では遭難ではないかということで捜索を開始したわけでございますが、そのころ地元で火の柱を見たとかいうふうな情報あるいは現地の部隊からの連絡によってすでに事故が発生したということを知ったわけでございます。  その間事故機から機体の異変についての通報であるとかいうふうなものは一切なかったわけでございまして、この辺につきましては、今後機体の回収、事故原因の調査、解明を待って、できるだけはっきりさせたいというふうに考えておりますが、いまのところその辺の細部についてはまだ不明でございます。
  222. 受田新吉

    ○受田委員 飛行機が性能の欠陥等でもうだめと思うときは山の中へ落ちてやむを得ぬが、中に乗っている人にはぴしっと落下傘ででも飛びおりるような教育がしてなければいかぬと思うのです。そういうときに一体何をしておったのか。  それから、たった二十機しかない飛行機で一機落ちたのですから、この消耗率は大変なものです。訓練も大事であるが、訓練に先立つものは生命の安全と機体の安全です。平時の場合は、それを犠牲にしてまで訓練を猛烈にやる必要はありません。実戦のときはその意気込みでやれるわけでございますから、命を軽く、飛行機を軽く見てはいけない。余りにもあっけない最期です。これは残念です。二十分の一の消耗率がぴしっと出ている。  私、何回かこの委員会で飛行機事故についてその都度質問を申し上げ、事故の絶滅を期し、遺族の補償をりっぱにしてくれと訴え続けてきましたけれども、相次いで事故が続発しておる。消耗率からいったら大変です。もっと生命を大事に、飛行機を大事にするやり方がないのでございますか。長官、ちょっと何かたるんでおると私は思うのです。自衛隊が飛行機を新しくつくるにしても、このように飛行機が実にあえなくついえていき、とうとい生命が失われるようなやり方というのは、どこか訓練の欠陥か、指揮命令系統の混乱か、科学的な陣容の欠陥か何かがある。生命が軽視されており、飛行機がかりそめに扱われておるという感じが実に残念に思われます。  長官、あなたはこの問現実を見られて、事故の絶滅を期したいと感じられたその御決意の背後に、どうかこういうことが起こらぬように、訓練よりも生命と飛行機の方が大事だということを考えるようにしむけられる必要はありませんか。
  223. 金丸信

    金丸国務大臣 先生のおっしゃられることごもっともだと私思うわけでございまして、まず生命というものは最大に扱わなければならぬことは当然でございます。また、あのような事故が起きた、まだ原因が不明だという状況、なかなか困難な問題だとは思いますが、これをできるだけ早く究明し、あるいは部隊の士気にたるみがあったのか、飛行機の機械がどうだということばかりでなくて、あらゆる面から検討して事故の再発を未然に防止するようなことを私もなお一層究明してまいりたいと考えております。
  224. 受田新吉

    ○受田委員 この飛行機は国産機である。性能に何か欠陥はないのでございますか。
  225. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 このPS1は、先生も御承知のように昭和三十五年から研究開発に着手いたしまして、現在二十機保有しているわけでございますが、性能の欠陥というものは、私どもの知る限りではございません。むしろこの飛行艇は性能的にきわめてすぐれているということで、アメリカの海軍も注目をいたしまして、これを開発いたしますときには御承知のようにアメリカのUFという飛行艇を一機海上自衛隊に譲渡してくれまして、そしてその譲渡された飛行機によって十分試験飛行等を行いまして、この建造に着手いたしております。したがいまして、二十機ございますが、人命を失った事故というのは今回が初めてでございます。
  226. 受田新吉

    ○受田委員 初めてであるだけにあえない最期です。われわれは何かここに非常にゆゆしい原因があると思います。徹底的に原因を究明してほしいと思います。  そして十三名の御遺族に対する補償は、例の公務災害補償という線と賞じゅつ金という制度によるお手だてとで当面を補償され、それから年金を差し上げたらと思うのですが、幼い子供さんを抱えて恐らくイバラの道の前途を持つ若き妻に、お国に生命をささげた夫の後はお国が守ってくださるのだという、子供にも未来を開いてあげるための措置をどの程度されておるのか、二、三の例をお示し願いたい。
  227. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 お答え申し上げます。  先生ただいまおっしゃいましたように公務災害補償、共済組合による給付、それから賞じゅつ金、そういうもので手当てするほか、先生からたしか昨年の暮れでございますか国会で非常にお励ましのお言葉がございました、それ以後、遺族対策についていろいろ意を用いてやってきておるわけでございますけれども、何分国の制度、公務員一般に適用される制度でございますので、それをすぐに手直しをするということはなかなかむずかしゅうございます。そこで、防衛庁限りでできることについて可能なものから実現をするということで二、三の改善をいたしました。  その一つは、先生御承知のように防衛庁で団体生命保険というものを取り扱っておりますが、これの増口をいたしております。  その次には、防衛庁の外郭団体に財団法人防衛弘済会というのがございます。この防衛弘済会を通じて防衛庁限りでできるいろいろな手だてを尽くしておるわけでございます。これにはいろいろなものがございますが、たとえば育英援護資金というのがございます。これは現在も国から出ておるわけでございますけれども、一定限度で打ち切られるということになっておりますので、それを穴埋めするという意味防衛弘済会の方からそれの手当てをしておる、それを今回増額したということでございます。  なお、防衛弘済会からのそのほかのものとして老齢の父母の見舞い金をお出ししておりますが、それの増額を図るというようなことをして、御遺族をお慰めしようというふうに考えておるわけでございます。  なお、本件につきまして、私も先般長官のお供をいたしまして葬儀に参列いたしました。その際、御遺族の方からのごあいさつもございましたが、その中で現地に碑を建ててもらいたいというような御要望がございまして、現在幕を通じ部隊の方に指示をいたしまして殉難の碑というものを建てるべく作業中でございます。なお、何でも御遺族の方の御相談に応ずるように、先ほど長官のお言葉もございましたが、私からも事務的に幕を通じて指示をいたしております。  そういう状態でございます。
  228. 受田新吉

    ○受田委員 渡邊さん引き続き御答弁願います。  正規の公務災害の金額と賞じゅつ金とそれから団体生命保険の総計——団体生命保険というのは大体がもともと政府がやる仕事ではないのでございますから、生命保険を除いて、国が出す金額で機長と一番下位の人との待遇をひとつ示してください。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  229. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 生命保険を除きまして、機長の方は、国からの給付が年金で二百五十五万でございます。それから一時金で六百十九万、これはちょっと端数を省略いたしております。それからそのほかに共済組合からの遺族年金でございますが、これが五十四万ございます。それからさらに、共済組合からの弔慰金といたしまして二十一万ございます。それから次に、これは国からではございませんが、先ほど申しました防衛弘済会からのものでございますけれども、合わせまして百六十六万ございます。それから生命保険でございますが、これは防衛庁の方でやっております制度としては、機長の方は五十口全額入っておられます。これが三千二百五十万でございます。そのほかに個人的にお掛けになっております生命保険がございまして、結局、生命保険全体で五千四百五十万でございます。全部合計いたしますと、年金で三百九万七千円、それから年金を除きます一時金で六千二百五十七万でございます。  それから一番下位の方でございます。この方は独身でございますので、年金が出ません。一時金でございますが、国からの一時金が一千九十九万でございます。それから、独身でございますので、残念ながら共済組合の方からは年金が出ませんが、防衛弘済会の方から同じく百六万ございます。それから生命保険は、この方は四十口入っておられますので二千六百万でございます。そのほかに個人的に入っておられる生命保険がございますので、生命保険は全体で四千八百万でございます。そこで合わせまして、一時金として全部で六千万、ちょっと端数がございますが、そういうことでございます。
  230. 受田新吉

    ○受田委員 独身であるという場合には、両親に対する手だてが行われなければなりませんね。どういうことになっていますか。
  231. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 一番下位の、ただいま申しました独身の方は、お父さんが五十一歳、お母さんが四十八歳でございますので、五十五歳未満の場合には年金が出ないということでございます。そういう制度になっておるわけでございます。
  232. 受田新吉

    ○受田委員 いずれにしても、遺族に対しては民間の生命保険などを当てにしないで、国から直接の手だてを一本にして考えてあげるようにすべきである。もし民間の団体生命の必要があれば、その団体生命の保険料ぐらいは国が出してあげてもいいと私は思うのですね。それは民間の方だから民間で掛けなさいということではなくして、国に生命をささげてくださる人ですから、民間保険であっても、掛金というのはそう大したことにはならぬと思うのですが、年間で五万か六万程度のものだと思うのですが、そのぐらいはひとつ掛けてあげてはどうなんでしょうか。
  233. 渡邊伊助

    ○渡邊(伊)政府委員 実は先生がいまおっしゃいましたことを、私局長に就任して間もなく同じような考え方を持って、持てないのかということで事務的に検討をさせました。結論的には残念ながら非常にむずかしゅうございます。これは、防衛庁の共済組合が二つの生命保険会社と契約を結んでいるわけでございますけれども、保険そのものは組合員個々の保険でございますので、個々の組合員がそれぞれの生活設計に合わせて何口入るかということを自由な意思によって選択をさせておる、こういうことでございます。  そこで、事務的なことを申し上げますならば、掛金を公と私とに分けることができるということであればあるいは可能かもしれませんけれども、それは至難なことでございます。それならば公の部分だけについて契約できないかということまでは検討いたしましたけれども、結局そうなりますと、国の災害補償の制度を拡充するということにほかならないことになるわけでございます。そこで、掛金を国が負担するということを現在実はあきらめておるわけでございます。率直に申しまして、防衛庁共済組合が始めましたこの生命保険の制度というものは、当初は相手方の二社もかなり難色を示した経緯がございます。  ただ、私どもとしては、現在の国の制度あるいは共済組合の法的な制度だけでは十分でない、自衛隊という特殊な任務を遂行する自衛隊員の殉職者に対する手当てとしてはどうしても十分でない、そこで何らかこれを補う必要があるということから、従来からこういういろいろな制度を工夫して実施してまいっておりまして、この生命保険の制度もその一環でございます。したがいまして、現在は、先生おっしゃいましたような掛金を国で負担するということは非常にむずかしゅうございますけれども、先ほど申しましたようないろいろな遺族対策のほかに、さらにまた実現可能なものをいろいろ工夫して実施してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  234. 受田新吉

    ○受田委員 要望しておきます。それをもっと掘り下げて、皆さんを大事にしてあげるように御研究願いたい。  さて、金丸長官、あなたの国務大臣としての本格的な使命に立つ問題をいまから提起します。  憲法第七条には、天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認、国民のために助言と承認規定が書いてある。衆議院を解散することもその国事行為である、国民のための内閣の助言と承認である。よろしゅうございますか。国民のために、左の国事行為を行うということがあるのですから、国民のためでない国事行為というのはないわけです。一党一派のための国事行為とかいうことでは許されないわけです。  そこで、法制局長官にまず伺いたいのですが、衆議院を解散するこの憲法第七条の第三号の規定は、内閣の助言と承認で国民のために行わなければならない。そうすると、内閣の行う助言と承認というのは、内閣総理大臣だけではなくして内閣全員という意味ではないのですか、御答弁願いたいのです。
  235. 真田秀夫

    真田政府委員 お答えを申し上げます。  まず第一点の、内閣が天皇の国事行為につきまして助言と承認をするのは国民のためにやるのだ、それはおっしゃるとおりでございまして、それは憲法で申しますと、憲法の前文にも、およそ国政は国民の厳粛なる信託によるものであるということがうたってあるわけでございまして、すべて国民のために政治は行われなければならない、おっしゃるとおりでございます。  それから第二点の、天皇の国事行為の一つである衆議院の解散、これはもちろん内閣の助言と承認によって行われるわけでございまして、これは「内閣がその職権を行うのは、閣議による」というのが内閣法の規定にもございますし、内閣総理大臣一人で衆議院の解散についての助言と承認をするというわけにはまいらない、そういう規定に相なっております。
  236. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、金丸先生にいまからお聞きするわけですが、いま法制局長官は明確に、内閣総理大臣一人で助言と承認をやることはできない、閣議で、総意で決定せねばならぬと言われておる。ところが、世上福田総理は、八月とか九月に解散をしてみたい、こういう世論をつくりつつあるわけです。金丸先生は閣僚の一人であって、総理大臣が一人でやろうとしても、憲法の第七条の規定は国民のためである、第一が。それから閣僚が全員一致してやらなければいけないということになると、総理が九月に解散をしたいというときに、閣僚である金丸先生はこの九月解散に賛成なのか、反対なのか。  それからもう一つは、総理が、君、おれはやろうと思うから判を押せと言ったときに、簡単に判を押されるかどうか、御答弁を願いたいと思います。
  237. 金丸信

    金丸国務大臣 実は私は、たしか三週間ばかり前だったと思うのですが、閣議の後総理に会いまして、日中問題やあるいは総裁選挙やあるいは解散問題等について話をいたしたわけであります。ただいまの御質問の解散の問題について私もいろいろ——ちょうど安倍長官も座っておりました。何か記者諸君からぼくの耳に入ってくるのは、安倍君は、何の考え方か知らぬが、解散というようなことをしきりと言っておると私は聞いておるんだが、いま解散する大義名分があるのか、政治は国民のためであって福田のためにあるんじゃない、こういう話をいたしたわけであります。そう言ったところが、総理は、とんでもない、解散のかの字も考えていない、ああそうですか、それじゃ私もわかった。  そこで、解散はやらないと言ってもやったという例もないばかりじゃない、そのときおまえはどうするか、私は大義名分のない解散は反対であります。署名もいたしません。
  238. 受田新吉

    ○受田委員 金丸先生、きわめてはっきりしておられます。大義名分の立たぬ解散には反対だ、だから、その際には、閣僚として内閣の助言と承認の根拠になるサインをしないということが言えるんですか。——速記録に載るように答弁していただきたい。
  239. 金丸信

    金丸国務大臣 そのとおりであります。
  240. 受田新吉

    ○受田委員 きわめて明快です。私は、別に解散をおそれるものでなくして、適当に解散を促進する方の側に立っている野党でございますが、しかし、総理が自分で解散権を持つように権限を振り回す危険があるのです。総理が、解散権はおれが持っているんだ、おれの派閥を大事にするためには、この解散権で同じ党内でも他の議員たちをおどしてみせたい、こういうような野心であれば、それは国民のための解散じゃないんです。大義名分の立たぬ解散というのは、国民のためにならぬ解散ということと思いますが、国務大臣いかがでしょう。
  241. 金丸信

    金丸国務大臣 受田先生も、私がこれだけ言えば、私の気持ちは十分にわかっていただいたと私は思うのですが、国民のためにならぬ解散はやってはならない、こう思います。
  242. 受田新吉

    ○受田委員 福田内閣では金丸先生のような方がおられるから、これはいいかげんな解散はできぬ、総理も閣僚の全員の説得ができぬような解散はできないのだということは、法制局長官がいまきわめて明快に答弁をしていただいたものでございますから、かりそめにも解散権を総理が振り回すという、この悪い宣伝だけが国民によく浸透して——マスコミもまたこれをよく理解をするように国民に届けてもらっていかないと、総理が解散権を持っておる、そういう印象を与えて、伝家の宝刀のごとく権限を振り回す危険があるということは、民主主義の国家としてこれは非常に残念なことで、閣議の一致した意見で初めていくのであって、閣僚の中に反対をする者があれば、それを罷免して首をすげかえてやるという手が一つある。金丸さんが反対すれば、君、ちょっとと金丸さんの首を切って、これをちょっと持ってこいというのが一つあるよね。しかし、そういうことは余りやりよると、それは総理自身が国民から批判されるわけでございますので、私は、内閣の助言と承認、しかも国民のため、これを忘れざるように、ひとつ金丸先生も閣内を十分——あなたと同じ考えを持って総理の独断専行を避けるように推進をしていただきたい。  もう一つ法制局長官、閣議の決定というときは、印判を押すのですか、署名だけですか。法律的にはどうなっていますか。印判は要るのですか、要らぬのですか。
  243. 真田秀夫

    真田政府委員 閣議の決定が行われる場合の方法手続等については、別に法令の規定はございません。すべて長い間の慣例によって行われておりますが、現実には、署名じゃなくて、花押で行われているようでございます。
  244. 受田新吉

    ○受田委員 わかりました。  それから、内閣がかわるときには、法制局長官の首のすげかえということも行われるわけでございまするので、その点は、憲法の規定が厳重に守られるように、法制局長官として、御用学者のようなかっこうでなくして、筋を通した法律論ですべてを処断されて、国民のための法制局長官であるように要望します。お答えを願います。
  245. 真田秀夫

    真田政府委員 おっしゃるまでもなく、私は法制局長官といたしまして、別に御用学者のような態度で仕事をしているわけではございませんで、常に憲法及び憲法のもとにおける法律が誠実に執行されるように、閣僚の方にも意見を申し上げ、過ちのないようにしていただくというのが私の職責でございます。
  246. 受田新吉

    ○受田委員 私も法制局長官の御答弁一つの重みのあることを了承して、質問を次に移します。  外務省の方にも来ていただいておりますので、いまから防衛庁と外務省と法制局長官とお三人で——法制局長官は御用があるということでありますが、この私の質問が終わったらお引き下がりいただいて結構です。  自衛隊の海外派兵ということは許されていないわけです。しかし、海外派遣というものは、これは許されておるわけです。例の在外公館に勤務する自衛官、駐在武官に当たる自衛官は海外派遣かあるいは自衛隊の海外派兵かということの議論については、答えは明確に出ております。自衛官が海外へ長期にわたって駐在しておるけれども、それは軍事目的でないということで、これは海外派遣というふうに了解しておるのですが、そう理解してよろしいですか。海外派遣でもない、つまり外務公務員となって行ったのであるから、自衛官としての海外派遣じゃなくて、外務公務員としての海外勤務、こういうふうになるのか、どちらですか。
  247. 真田秀夫

    真田政府委員 海外派兵といい、あるいは海外派遣といい、いずれも法令上の言葉ではございません。従来の国会における御論議を振り返ってみますと、海外派兵というのは、これは許されない。なぜ許されないかと言えば、それは、海外派兵というのは自衛隊の部隊が武力行使する目的で外国の領域、領土、領海内に行くこと、これを海外派兵と名づけて従来御論議されておりました。そこで、そういう目的でない場合ならば、それは海外派兵ではないという意味で、つまり海外派兵と区別する意味で海外派遣という言葉が用いられるようになったと私は了解しております。  それで、ただいまの外務公務員として行くというようなことは、これはいままでの国会の御論議では、海外派兵とか海外派遣というのはどうも部隊のことを言っておるように私、理解しておりますので、もちろん海外派兵ではございませんし、いわゆる海外派遣というのにも何かぴったり当たらないというような感じがいたします。
  248. 受田新吉

    ○受田委員 最近、政府の中におきまして、防衛庁当局で、防衛二法の改正の意図があるやに承っております。  その中に、例の国連平和維持軍への白術官の参加を盛り込む、これは法律にうたわなきゃならぬというような意見もあると聞いておるのですが、いかがでございますか。
  249. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 午前中、上原議員から御質問もございましたのでお答えいたしましたけれども、いま防衛庁としましては、自衛隊法防衛設置法ができましてから約二十年近くなりますので、もう一度現在の防衛二法を見直してみる必要があるのではないかということで、事務的に勉強をしております。特に、大体自衛隊防衛庁の方も、正面装備等もだんだんとできてきておりますけれども、現実に戦う態勢とかいろいろな問題で、特に統幕機構の問題とかいろいろございます。そういう観点から勉強をいま続けておるわけでございます。  たまたま新聞等に言われましたが、国連平和維持機構へ自衛隊を派遣する問題というのが出ておったようでございますけれども、御承知のとおり、現在、自衛隊法防衛設置法に、自衛隊にそういう権限は与えておりません。ただし、一部の声で、国連平和維持軍という、国際平和のために自衛隊も少しは役立っていいんじゃなかろうかという声もございます。武力行使を伴わない国連平和軍あるいは国連警察軍の輸送なりあるいは医療なり、そういった武力行使を伴わないような平和維持機構に参加することもあってしかるべきではないかという一部の声もございます。  まだこれは長官から指示を得ておるわけではございません。事務的に、そういう声もあることを含めまして、今後の防衛二法の改正の作業を進めますとき、国民のそういうコンセンサスが出るかどうか。やはり国民のコンセンサスを得た上でなければこういうことはできるものではございませんが、意にはとめておりますが、現実に次の法律改正にこれを持ち出そうというところまでまだ行っておりません。
  250. 受田新吉

    ○受田委員 それじゃ官房長、せっかく御発言になったので、ひとつ掘り下げていまからお尋ねしたいのです。  いま国連の機構の中に平和維持軍というのがある。その任務、目的というのはどういうふうに理解しておられるのか。  それから、軍事的措置の実施を目的とするものか、例の国連憲章第四十二条にあります制裁行動ですね。制裁行動に当たるものというのはどんなものと見るのか、御答弁をいただきます。御研究されておると思いますので。
  251. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えいたします。  恥ずかしいことですが、まだ十分そこまでの勉強はしておりません。しかし、一応われわれが知っております関連では、国連軍というもの、たとえば朝鮮事変で、国連軍ということで、一部武力をもって侵略者に対する対抗、抵抗をした国連軍もございますし、あるいはレバノンの両当事国同士が平和協定を結んだ、それが守られるかどうとかいうことで国連軍が監視に当たったというような対応もそれぞれあるようでございます。  だから、一概に国連軍あるいは国連平和維持軍とか国連警察軍とか言われておりますけれども、その目的それぞれがいろいろあるようでございます。そういう観点から、もし万一今後自衛隊がそれに参加するというような場合には、武力行使を伴わないという観点から、その国連軍の任務なりそういったものは十分に勉強しなければならない問題だ、このように思っております。
  252. 受田新吉

    ○受田委員 外務省の国連局、来ておられますね。——外務省国連局では、国連の平和維持の部隊というもの、いま官房長がちょっと指摘されましたけれども、その軍事監視団のようなのもあるし、休戦監察機構とかあるいは国連緊急軍とか国連保安隊、国連平和維持軍、いろいろな名称を用いられておるのですが、これはやはり防衛庁も誤ってはいけませんので、官房長もまだ十分研究はしていないという立場で想定をしておられるわけですが、国連局としてつかんでおられる問題点はどこにあるのか。  それから私、特にここで指摘したいのは、いま私がちょっと指摘したのですが、国連憲章四十二条にあります。軍事的制裁活動を唯一の任務とする国連軍というのがあるわけです。制裁行動、これと単なる平和維持とはちょっと性格が違うと思うのでございますけれども、そのことを含めて国連局の御答弁をいただきます。
  253. 小林俊二

    ○小林説明員 お答え申し上げます。  国連憲章には、先生御承知のように「第七章平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」というものがございます。これがいわゆる強制行動でございます。しかしながら、この第七章は、各国が安全保障理事会と特別の協定を結んで国連の安全保障理事会の決定に基づいて行われる武力行動に参画する兵員を提供するための準備を行うということを前提としておるわけでございます。一九四六、七年あたりにそうした特別協定を作成するための努力は行われたのでございますけれども、当時のいわゆる冷たい戦争発展のためにこの協定の締結作業が難航いたしまして、ついに放棄されるに至ったということでございます。  したがいまして、現在に至るもこの国連憲章第七章が予定しておりますいわゆる特別協定というものは一件も成立していない。言いかえれば、国連の用に供すべき兵員を提供するというための国際的な準備が全くできていないということでございます。このために、第七章に基づく正規の軍事的強制行動というものは現在までとられていないというのが現況でございます。  しからば、先生のおっしゃられましたような平和維持活動あるいは停戦監視のための活動というものがどういう根拠に基づいて行われているかと申しますと、それは結局一つのモーダスビベンディと申しますか、便宜的な国際的な英知のしからしめるところと申しますか、結局、総会の決議あるいは安全保障理事会の決議によって、その決議の範囲内においてとられた国際的な措置でございます。また、言いかえて申しますれば、国連憲章には直接の明文の規定がない措置が現在までとられて今日に至っておる。結局、それは国連を中心とする国際社会の実際上の支持に基づいて行われてきたことであって、明文上の規定に基づく行為ではないということも言えるかと存じます。  そうした意味において、今日までとられてきた国連の平和維持活動には、大きく分けて二つございまして、一つは平和維持軍であり、一つは停戦監視団でございます。  停戦監視団と申しますのは、ほんの一握りの将校、兵員が紛争当事者双方の停戦の実施を監視するということでございまして、これに違背する行為があればそれを直ちに安全保障理事会に報告するという任務を帯びておるわけでございまして、その違反行為を抑制するという任務は帯びていないわけでございます。一方、平和維持軍の方は、これはたとえば撤退の実施を保障する、あるいは停戦条件への違背を抑止するという役割りを帯びておりまして、前者に比べれば若干の実力行動が伴う可能性は帯びておるわけでございます。  しかしながら、その二つの主要な平和維持活動のいずれにつきましても、それらの決議が明確に述べておりますことは、自衛のための必要が起きた万やむを得ざる場合でなければ武力は一切行使してはならぬということになっておるわけでございまして、言いかえれば、攻撃的な活動は全く行うことが予期されていないというのが国連の平和維持活動の実態でございます。
  254. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、防衛庁が国連平和維持の部隊に派遣をしようというようなときに、いまの小林参事官のお説のような二つの問題がある。私も、四十二条の制裁行動というものは時に戦闘に発展する危険があるというようなことで、戦闘に発展するようなときは事前に抑えなくちゃならぬわけでございますから、国連に対する協力の仕方もよほど防衛庁として検討しておかれないと、つまり一切の軍事行動は拒否するという立場でこれに参加する。軍事行動が勃発する危険があった、ときには自衛のために制裁行動に出るというような場合が起こる。  それから小林さん、この間コンゴにベルギー軍が出かけましたよね、あれは一体国連軍として行ったのか。あるいは米軍だけが行ったのか、白軍だけ行ったのか、ちょっと途中ですが、説明してください。
  255. 小林俊二

    ○小林説明員 私、非常に正確な知識が実はその点についてはございませんけれども、国連の正式の手続を経て行ったものではないのではないかという印象を持っております。しかしながら、もし間違えました場合には、これは訂正いたします。
  256. 受田新吉

    ○受田委員 そういう問題がありまして、朝鮮事変のときなどは安保理事会にソ連が参加しないままで行動を起こしておるし、アメリカの大統領が司令官を任命しておるというような、変則な国連軍と称しておるわけですけれども、この際、自衛隊法を改正して、国連への協力を単に費用の負担だけでなくして、本当に世界平和機構としての国連への協力をしようと防衛庁が企画されるならば、はっきりとその協力は一切の戦闘行動を避け、平和目的のみに動くものであるということでやられればいいわけで、そのために法改正が必要かどうかという問題が一つある。そういう戦闘行動に一切関連しない派遣ということであれば自衛隊の海外派遣というかっこうにしてもいいじゃないか、海外派兵ではないのだから、戦闘行動に参加するのじゃないのですから。単なる平和行動だけであるとするならば、法律を改正しなくてもできるじゃないかという問題があるのじゃないですか。
  257. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 先ほど申し上げましたとおり、まだ防衛庁として腹が決まったわけでもございませんが、今後の勉強のためには、いま外務省からの答弁で非常に勉強になりましたし、いま先生の御指摘のとおりだと思います。もしやるとなれば平和のためだけでございます。しかし、これにしましても、もし万一そういうことをせよというようなことになりますならば、自衛隊法を改正して、あるいは防衛設置法を改正しまして、自衛隊をそういったものに海外派遣する、国連平和維持軍ですかあるいは国連停戦監視団ですか、そういったものに自衛隊が平和の目的のために武力行使しないで参加するという任務も加えなければできることではございませんので、もしやるとするならば当然自衛隊法なり防衛設置法の改正は伴うと思いますが、しかし、そこまでやるかどうか、これから十分に勉強していきたいと思います。
  258. 受田新吉

    ○受田委員 憲法は海外派兵を否定しておると判断してよいかどうか、真田法制局長官
  259. 真田秀夫

    真田政府委員 明文の規定はございませんけれども、自衛隊先ほど申し上げましたような意味における海外派兵を行うことは憲法上許されないというふうに解釈しております。
  260. 受田新吉

    ○受田委員 昭和三十一年に、座して死滅を待つ以外に道なしというときには敵基地をたたくために海外派兵もよいという答弁があったのを御存じでございますか。
  261. 真田秀夫

    真田政府委員 座して死を待つことを憲法が認めているはずはないではないかという御議論があったことは承知しておりますが、それは純粋の理論上の問題としてというただし書きがついておりまするし、それからあのときに問題になったのはいわゆる海外派兵ではなくて、つまり敵の基地をたたくということも理論上の問題としては可能ではないかという御議論であったというふうに記憶しております。
  262. 受田新吉

    ○受田委員 ここを明確にしておかぬと、理論上はよろしい、実際はいけぬというようなことが核兵器保持についても第九条の解釈で出てきておる。理論的には持てるのだ。理論的には持てるが、実際は持てぬというような解釈をすると、そこに間違いが起こる。首尾一貫しなくちゃならぬです。理論的には、敵の基地をたたかないと座して死滅を待つから、それをたたくためには飛行機で攻撃に行ってもいい、たたきに行ってもいいというような、こういうようなことが政府見解として出ておるのですよ。これは私がタッチした問題ですからよく存じておるのですが、そういうことは、理論的には持てるが実際は持てぬというような、こんな理屈を言わぬ方がいいですよ。持てぬなら持てぬではっきりやっておけばいいのです。防衛局長、御見解を伺いたいのです。
  263. 真田秀夫

    真田政府委員 ただいま手元に当時の資料を持ち合わせておりませんが、私の記憶が正しいとすれば、あのときに理論上は云々と言ったのは、理論上は自衛権概念に入る。しかし、それだからといって、平素からそういう場合を想定して、敵の基地をたたけるような自衛力といいますか、そういう部隊なりそういう装備を持つことは無理であろうというような、そういう解釈の仕方であった、解決の仕方であったというふうに記憶しております。
  264. 受田新吉

    ○受田委員 私は、その都度政府が便宜主義で統一見解を出したりしないで首尾一貫すべきで、いかなる場合にも海外で軍として行動するということはもう絶対避けるんだと答弁すればいいのです。仮定の質問に対しては仮定の質問で答えればいいわけなんです。そういうところが、どこかで不用意な発言をして、それにこだわっておるから後からなかなか骨が折れる。あのときはちょっとこういう答弁をしたが実はこうなんだと素直に断りを言って次に進むというふうにされればいいのを、一たび発言したことへ非常に固執して問題を発展されるからそういうことになってくるということで、少なくとも理論上も実際も核兵器は持たない、海外では軍としては行動しない、こういうようなところを明確にすべきであると私は思うのです。  もう一つ、この問題はそこでお預けにしておきますが、そこで、私は昨年の秋、三原防衛庁長官お尋ねをしました。朝鮮半島で戦乱が起こって、在韓の日本国民が生命の危険にさらされるときに、これを見逃すわけにはいかぬから、船で助けに行くとか飛行機で助けに行くということは可能かどうかと言いましたら、これは憲法上は可能であるという答弁をされたのです。防衛局長、御存じですか。
  265. 真田秀夫

    真田政府委員 ただいま御指摘になりましたような想定のもとにおいて、自衛隊が在外の邦人の生命、財産を救うために出かけることができるかという問題につきましては、三原前長官の御答弁のことは私よく知りませんけれども、それよりもずっと前に、私の前々任者の高辻法制局長官時代に、それは在外邦人が在留している国がまず生命、財産の保護に当たるべきであって、日本自衛隊が出かけていってその救出に当たるというようなことはできませんというふうに答弁しておられたことを記憶しております。
  266. 受田新吉

    ○受田委員 昨年五月二十四日、私から「長官、たとえばソウルの飛行場へ日本人が集まっておるのを助けに行って、自衛隊の輸送機が日本へ連れて戻るとか、あるいは近くの港へ避難しておるのを船で運んでくるとかいうのは武力行使でないから自衛官が行ってもよいという御判断ですね。」それに対して「〇三原国務大臣 憲法九条に関係したものではないという考え方を持っております」ということでございます。そこで、「しかし残念なことに、そうしたことをするにつきましては自衛隊の任務が明確に規定をされておらぬところに問題があるということを考えておるところでございます。」こう書いてある。つまり任務が明確でないから、そういうことは憲法上差し支えはないのだが、残念なことに規定がないということに問題がある、こう言うておる。  これは非常に大事な答弁でございますが、これは防衛局長も心得ておられると思いますが、当時私からさらに念を押して、つまり非常に危機に瀕した日本人、朝鮮戦乱でまさに生命の危険にさらされておるのを迎えに海上から船で行くあるいは飛行機で行くという場合、これはぜひ実行していいじゃないか、第三国に委任するというのが普通やり方としてあるが、朝鮮半島は近くであって朝鮮半島の港まで日本の艦船で迎えに行く、こういうことは事実問題としていいじゃないかという質問をしたわけですが、そのとおりだ、憲法上は差し支えない、しかし、実際には自衛隊の任務が明確になってないので問題があると思いますというので、私はきょうは新長官によってここの問題を明確にしておきたいと思うのですが、直接問題としてそういうことはあり得ることでございますので、どうぞ。
  267. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 いま言われましたような事態の場合に、在外邦人の命が危険だというので、これを救わなければならぬということになりますと、一義的には外国にいる日本人のいわゆる民生問題ということでございますから、あるいは外務省なりそういった第一義的にそういうものに権限のある当局が民間機をチャーターしたりあるいは民間の船をチャーターして助けに行くということもあるでしょうし、あるいは日本の赤十字が民間機をチャーターして行きあるいは民間の船をチャーターして助けに行くということも当然考えられますが、それに関連して、じゃ自衛隊もそれに出ていったらどうだ、助けに行くこともいいじゃないかということになりますと、一応自衛隊法上は、いまわれわれはその任務がございません。問題は憲法上の問題だと思いますけれども、助けに行きます場合に、自衛隊員が自衛隊の飛行機なりあるいは艦船でそれを収容に行くという場合に、たとえばこの間のザイールのようにどうしても行く場合に武力行使が伴わなければ助けられないというようなことになりますと、これは憲法上問題があって私はできないと思います。  しかし、武力行使を伴う必要がない、単に助けに行くだけだ、相手の国の同意を得てそしてやるということならば憲法上は問題にならないのじゃないか、武力行使を伴わない限りは憲法上は問題にならないのじゃないか。ただし、いま自衛隊法にその任務が与えられておりませんから、そういうことをやれということになりますと、防衛設置法なり自衛隊法にその任務を付加しなければならぬことになると思います。しかし、第一義的に直ちに自衛隊が出ていくのがいいのか、あるいは先ほど言いましたように関係当局が出ていった方がいいのか、そういう問題はあろうと思います。
  268. 受田新吉

    ○受田委員 事実問題としてそういうことが起こったらどうすればいいのですか。結果的には行けないのですか。朝鮮戦乱で邦人が危機にさらされておる、戦闘の危険があるからというので見殺しにするのですか。これは明確に御答弁をいただきたい。
  269. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 これはほかの省庁にも関連することでございますので、私が余り言えないかもしれませんが、恐らく政府は何らかの手段で、民間機をチャーターするなりあるいは民間の船をチャーターするなりして、相手国の同意を得て助けに行くであろうと私は思います。思います。もちろん、それでなければおかしいですから。ただし、いま自衛隊にすぐ行けと言われましても、自衛隊はまだ法律にその権限がございませんから出ていけませんけれども、何らかの手を打つだろうと私は思います。
  270. 受田新吉

    ○受田委員 アメリカ局長のかわりをどなたか。朝鮮問題はアメリカ局が御答弁なさる。いまの問題、どうぞ。
  271. 三宅和助

    ○三宅政府委員 場所が実は朝鮮ですから、アジア局で答弁させていただきますが、いま御説明ありましたように、第一義的にはまず民間機をチャーターするなり、その前に在留邦人を少なくしてできるだけ避難させるということを現実問題としてやっております。  では実際問題として、にもかかわらずそういうような事態が起きた場合にどうかということになりますと、問題は二つあるかと思います。一つは、要するに韓国との関係においてどうかということにつきましては、これは自衛隊にしろ警察にしろ公権力の発現、発露ということになりますものですから、事前に相手国政府との相当はっきりした了解を取りつける必要がある。その了解を取りつけた上であれば韓国と日本との関係では問題がない。それでは国内的にそういうことが許されるかどうかという問題は、もちろん民間機のチャーター、それ以外のいろいろな態勢につきましては結構でございますが、警察または自衛隊の派遣の問題につきましては、これは国内法体制上許されるかどうかということは、それぞれの法を主管しております官庁の方で御判断いただきたい、こう考えております。
  272. 受田新吉

    ○受田委員 ほかに答弁していただけるお役所がありますか。つまりこれはお役所のどこかがやるだろうということでなくて、きちっと決めなければいけないわけです。いっそういう事態が起こっても在留邦人は安全だよというかっこうにしなければいけないわけです。答えを願いたいのです。
  273. 三宅和助

    ○三宅政府委員 現在の自衛隊法の体制から自衛隊の派遣が許されないということでありますならば、結局はチャーター機を派遣するとか、次善の策といたしまして、これはサイゴンの場合でもプノンペンの場合でも、いろいろなケースでやってきたわけでございますが、在留邦人の数を極端に少なくし、それからいざという場合には民間チャーター機を派遣して避難させる、さらには最悪の場合は大使館その他に集合して万全の態勢をとるということ以外に実は方策がとりようがない。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 しかし従来までのところは、まあまあ緊急事態というものはそういうことで何とか回避してまいったということでございます。それ以外に方法はないということで。ただ韓国との関係では、すでに申し上げましたけれども、これは公権力の行使は少なくとも外国政府との了解を得られれば、国内干渉という点は回避されるということでございます。
  274. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっとここで避難民のことに触れておきたいのですが、朝鮮戦乱が起こって避難民が海上から日本にどんどんやってくるという想定、これは決して仮定の問題ではなくして、ベトナムですでに学んでおるわけです。その避難民というのは一体どういう種類があるのか。防衛庁が直接艦船で迎えにいこうとする日本の避難民と、在留邦人の救出という直接の保護の方はやらぬが、これを助け出す方の、つまり避難してくる場合にはこれを自衛艦を出動して持っていってもいいという見方があるのかどうか。こういうことを含めて避難民とは一体何かを、これは関係省庁でそれぞれ答弁を願いたいのです。防衛庁が見る避難民の種類、それから内閣の避難民担当の室が見る避難民の種類。
  275. 小林俊二

    ○小林説明員 難民条約というものがございます。国際法上難民という概念は必ずしも確定したものではございませんけれども、難民条約におきます難民の概念、定義は次のようなものでございます。  すなわち、第一は、本国または居住国外に存在していること、第二に、迫害を受ける確たるおそれがあること、第三に、迫害の理由が人種、宗教、国籍、特定の社会的集団への所属または政治的信条であること、第四に、本国の保護を受けることができないかまたはその意思のないこと。以上のようなことがその難民の条約における一つの定義として出てきておるということは事実でございます。  ただ日本の場合には、難民と呼ぶこともあるし、または政治的亡命者と呼ぶこともある。その言葉の使い分けは、必ずしも厳密に行われているようではございません。
  276. 受田新吉

    ○受田委員 難民の中にはいろいろ種類があると思うのです。それは、いまのような、本当に戦争の被害を避けてくる人、あるいは戦闘参加者の避難民もあるかもしれない。ベトナムの戦闘に参加して海上に浮遊してきたというような人がある、政治亡命者、こういういろいろな種類があると思うのですが、戦闘参加者であった者が、たとえばいまベトナムの難民を引き受けたが、それが戦闘参加者であったというときにはどういう処置をすればよろしいのでしょうか、日本がこれを引き受けたとき。
  277. 小林俊二

    ○小林説明員 先ほど私が引用いたしました難民条約において規定されております取り扱いは、すでに各国の国内における難民についてどういう処遇を与えるべきであるかということを規定したものでございます。したがいまして、国外にある難民、たとえば海上にある難民、あるいは自国の外にある難民についていかなる措置をとるべきかということを国際的な権利義務関係として規定した条約は存在しないわけでございます。したがいまして、一般的に申し上げますれば、そのできる範囲内で人道的に処遇するというのが一般的に国際法上の、国際的な慣行としては望ましいと認められておるということ以上には申し上げることはむずかしいかと存じます。
  278. 受田新吉

    ○受田委員 参事官、それではあなたに聞くけれども、戦闘参加者であった者は、戦時国際法規によりまして、こちらでもって武装を解除して、そして平和が回復した時点でこれを送還するというような規定があるのじゃございませんか、戦闘要員であった者が避難民として流れてきた場合に。
  279. 小林俊二

    ○小林説明員 私は、戦時国際法の専門家ではございませんけれども、私が常識的に承知しているところによれば、ただいま先生のおっしゃったようなことは、戦争の当事者である国の権利義務関係を定めた関係において出てくる問題であろうかと存じます。一般的に申し上げますれば、国外にある難民あるいは戦闘要員であった難民をその国が国内に受け入れるかどうかということは、その国の主権事項として判断して差し支えのないことであると、現時点においては一般的に言えると思います。
  280. 受田新吉

    ○受田委員 ごく最近、外国の船がベトナムの難民を連れて日本の港へ入港した。ところが、船籍が外国であるというのでこれを受け付けないで、目下非常に不安な状況に立っておるという問題があるわけですね。こういう場合には、船籍が外国であるから日本の国へ上陸できないということについてはちょっと問題がある。人道的にも、海上でも命がけで、何人か死んだ、生き残りが助けを求めて飛び乗った、日本の港へ船が入った、その時点で、国連の高等弁務官の事務所などがそれに力を入れると同時に、日本も、目の前に難民がぶら下がってきておるときには何かの措置で、船籍はどうであろうと国内でこれを何とかしてあげるべきじゃございませんか。総理府の室長さんからでも結構です。
  281. 黒木忠正

    ○黒木説明員 御説明いたします。  先生おっしゃるような案件が、現在東京港で一隻ございます。  その御説明の前に、一般的な御説明としまして、わが国としましては、主として南シナ海ですが、南シナ海で救助したベトナム難民につきましては、これは人道上の見地からわが国で一時的な滞在を認めるという保護の方針で臨んでおります。ただし、日本船の場合と外国船の場合と差はないのでございますが、ただ一点だけ違う点がございます。これは、日本船の場合ですと、国連の要請を受けて上陸を許可するという手続でございますが、外国船の場合は、その船籍国の政府からわが国に対して難民受け入れの要請と、それから万一第三国への定住がうまくいかないような場合は、その国の政府が責任を持ちますという趣旨の公文書、口上書でございますが、これを出していただく、こういうシステムで現在まで取り扱ってきております。  ただいま御質問の、これはクウェートの船でございますが、難民を救助しまして、わが国の港に入ったのでございますが、クウェート政府から、ただいま現在、私がここに出てきますまでには、まだ口上書が出てきておりません。したがいまして、まだ船上にいると思うのでございますが、私どもとしましては、事人道に関する問題でございますので、クウェート政府の協力と申しますか、口上書の発出を一刻も早くということも申しておりますし、また、仮に時間が非常にかかるようであれば、これは口上書の発出の約束があれば、その時点で上陸させたいというふうに考えておりますので、御質問の船につきましては、ごく近い将来に上陸させる運びになろうかと、このように考えております。
  282. 受田新吉

    ○受田委員 速やかに措置をしてほしい、要望しておきます。法制局長官、御退場を願って結構です。  そこで、今度は防衛庁長官お尋ねしたいのですが、総理が、わが国の外交の基本政策は、ちょっと奇妙な名前ですが、全方位外交政策をとるということを言っておられるのを長官、御存じですか。外務省、そういうことを理解しておられますか。
  283. 三宅和助

    ○三宅政府委員 総理、外務大臣がときどき記者会見あるいは講演その他でそういう言葉をお使いになっているということを聞いております。その意味は、すべての方向、すなわちすべての国と仲よく友好関係を結んでいくというぐあいに理解しております。
  284. 受田新吉

    ○受田委員 すべての国と仲よくするという意味ですか。たとえば、日米安保体制がいましかれておる、それがいけないということですか。
  285. 三宅和助

    ○三宅政府委員 国によりまして、それぞれの国、たとえばA国とB国が比較的関係が悪くても、日本の場合はA国ともB国とも、すべての国と仲よく友好関係を保っていく、すなわち全方位、すべての方向に外交を展開するということだと理解しております。したがいまして、もちろんその中にはウェートづけがありまして、日米関係が非常に重要だということでありましても、それ以外の国とも仲よく友好関係を保っていく、こういうぐあいに理解しております。
  286. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、ある意味では中立政策ということではないんですね。
  287. 三宅和助

    ○三宅政府委員 中立という言葉とはちょっと言葉の範疇が違いまして、すべての国と友好関係を持つ、中立かどうかという問題とはまた別の次元の話かと思います。
  288. 受田新吉

    ○受田委員 日中条約の締結への前進がいま見られる段階です。総理は日中の条約への前進を決断されたようでございますが、ここで一つ、中国政府は例の国連憲章五十三条による敵国条項によって、中ソ友好同盟条約を持っておる。日本と中国が新しい友好同盟条約を結んだときにこれはどうなるものか。中国はこれは死文化するというお話のようでございますが、文章の上で覚書なり何かをきちっとしておく必要があるのではないかという問題。一つの国が二つの性格の反対の条約を結んでいて、その相手はそれぞれ違う場合に、どういうふうなかっこうになるのかを御説明願いたい。
  289. 三宅和助

    ○三宅政府委員 御指摘のように一九五六年に日ソの共同宣言が署名されまして、それから一九七二年には日中の共同声明ができまして、実は両国とも国交関係が回復しまして友好関係に入ったわけでございます。それからその後中ソ関係がその当時と非常に変わりまして、国際情勢が非常に変わったということで、その当時の中ソの同盟条約のいわゆる対日敵視条項というものの実質的な意義が全く失われているわけでございます。  それから中国自体の方も名存実亡という言葉を使っております。これは公式、非公式にも現在の中ソの条約自体がすでに実質的意義を失っているということを繰り返し繰り返し明らかにしているわけでございますし、また現実問題として客観情勢が基本的に変わった、またすでに申し上げましたように日中、日ソの国交回復、正常化、友好関係ということで基本的意義を失ったということでございますが、にもかかわらずやはりこの中ソの同盟条約、敵視条項が存在することも事実でございますので、いま言った名存実亡というような中国側の考え方を何らかの形で今度の交渉再開に当たりましては国民に明らかにするようなことを考えてまいりたい、こう努めてまいりたいと思っております。
  290. 受田新吉

    ○受田委員 そうしたら、そのことは覚書のようなものの意味ですか。あるいは何か交換文書というようなものですか。
  291. 三宅和助

    ○三宅政府委員 これは実は今後の交渉の内容にかかわるものでございますので、具体的にこの場で申し上げるわけにはいかないのでございますが、何らかの形で国民に明らかにするように努力してまいりたいということでひとつ御了承いただきたいと思います。
  292. 受田新吉

    ○受田委員 それは非常に大事なことで、向こう様がこちらへ口頭で言ったくらいの気休めではなくて、すかっとしたもので国民に納得させる方法をとりたいという、相手のあることですが、その要望を実現してほしい。  もう一つ長官防衛出動と治安出動、これが簡単にできないことはあなた御自身が知っておられる。しかし一たび出動したその自衛隊を今度収束するときはだれがやるのですか。防衛出動の収束をやるやり方、つまり兵を引くことです。兵を出すことは総理大臣が命令をする、国会の承認が得られなければやめるということですが、情勢によって、国会の承認を得なければということでなくて、出動すると同時に、これを取りやめることも一応考えなければいかぬわけです。それは一体どういうときにだれが——総理みずからがそれを引く判断をする、そして兵を引かす、国会の承認を得るまでもなくその前に引くという場合もある。兵を出す方は厳しい規定があるが、兵を引くことについてはどういうふうになっておるのかを御答弁願いたい。
  293. 金丸信

    金丸国務大臣 治安出動という問題はなかなか重大な問題でありまして、簡単にできるものじゃないと思いますが、その場合、いわゆる出動ということになれば総理の命を受けて出動が可能になる。また引く場合においても総理の命によって撤退、引くということは当然だと私は考えております。
  294. 受田新吉

    ○受田委員 私は、自衛隊法を改正したいという意図のあるときに——前から私指摘しておるのですけれども、治安出動については簡単に総理が出しているのです。国会の承認をもって出すというような形にすべきであるのに、どうして治安出動だけは総理に権限があって国会が後回しにされておるのか。いまの時点ではこの問題をはっきりと国会優先にすべきである。自衛隊法改正の意図があるならここを明確にした方がシビコンの精神も生きてくるわけで、いかがですか、治安出動の国会承認を優先させるということは。
  295. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 受田先生のそういう御意向ございますが、内閣総理大臣は、命令による治安出動をした場合には二十日以内に国会の承認を求めなければならないというふうに規定されておるわけでございます。私どもは国会によるシビリアンコントロールというものは確保されているというふうには考えているわけでございます。
  296. 受田新吉

    ○受田委員 防衛出動の方は国会の承認が先なんです。治安出動は総理大臣の命令が先なんです。その差を、私、国会を前提にした規定に切りかえるべきだと申し上げておるのです。二十日以内とかいうことでなくて、国会の承認があって初めて出動するというふうにせよと、こういう提案です。その差をつけた理由はどこにあるのですか。
  297. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 その差をどうしてつけたかという理由は私もはっきりは存じませんけれども、警察法の中に緊急事態の布告というのがございます。この緊急事態の布告が、国会の承認の手続といたしまして二十日以内に国会の承認を求めなければならないということになっております。したがいまして、その治安出動の方はこの例にならって均衡をとったのではないかというふうに考えられますが、なぜ治安出動の方がそういう手続であり、防衛出動が「国会の承認を得て、」というふうに決まったのか、いま私ははっきりそのときの理由というものは知らないわけでございます。
  298. 受田新吉

    ○受田委員 防衛局長が御存じないで日本防衛を担当しておられるという、非常に不安があるわけです。これは防衛庁の防衛を担当する局長です。久保先生はかつて防衛局長でございましたから、久保先生の御答弁を願います。
  299. 久保卓也

    ○久保政府委員 お答え申し上げたいのですが、国防会議事務局長でありますので、お答えできません。
  300. 受田新吉

    ○受田委員 もう現在の職務からはそれが言えないということでございますが、防衛出動と治安出動に相違があることがおかしいのです。治安出動というのは、いまの警察法の方に二十日というのがあったとおっしゃるが、警察と自衛隊とは違うのですよ。警察と同じ基準に持っていくような考えで治安出動を考える。治安出動は警察が出動するのじゃないのですよ。自衛隊が出るのですよ。自衛隊が出るのだから、警察と全然違う。性格が違うのです。違うものは、少なくとも国会の承認があって初めて出動ができるような規定にしておかぬと、自衛隊が行動するのですから、防衛出動と全く同じ条件にしてしかるべきものを——この際、この法律を制定した昭和三十年当時、自衛隊スタート当時、なぜこの差をつけたかわからぬとおっしゃる防衛局長がおられることは私は非常に残念で、この理由はここに原因があったという明確な答弁ができない、警察と混同しておられるようなことでは——自衛隊を警察ぐらいに思うて軽く使われると大変なことになる。いま自衛隊の幹部の方には警察官出身の方が多いために、自然に自衛隊を警察隊のように考えていく悪い観念といいますか間違いがある。自衛隊というのは国土、国民を守る、警察は治安を中心とした任務を持っているわけです。  そういう意味から、少なくともこの際、防衛出動と治安出動は同じ基準で国会の承認を得て動く、こういうかっこうにすべきだと思うが、金丸防衛庁長官、この際自衛隊法を改正されるなら、自衛隊の出動の基準を防衛出動の七十六条と七十八条とを同じ基準で直していくという用意をされてしかるべきです。長官の御答弁を願いたい。
  301. 金丸信

    金丸国務大臣 自衛隊が出動するという場面ということは、予期して出動するということができるのであれば国会の承認も得られると思うのですが、突然、仮に過激派が全国に蜂起するというような問題があったとき、国会の承認を得ておる時間があるかどうかというような問題、先生のおっしゃられることも私は十分わかります。ひとつ検討さしていただきたいと思います。
  302. 受田新吉

    ○受田委員 むしろその危険の方は七十六条の防衛出動の方に危険があると思うのです。外部からの武力攻撃がばばっと来る方が、内部の間接侵略の方よりももっと直接侵略の方が非常に危険で、国会の承認を得るよりも大急ぎでやらなければいかぬという方が外部の武力攻撃、誘導弾等で、ぼんぼんやってくれば一発なんですから、座して死滅を待つことがないようにする、間接侵略の方が実際問題としてはるかにゆとりがあると思うのです。  その意味では、むしろあなたのお説のとおりにすれば、防衛出動を「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃に際して、」云々のところを、むしろ大臣の命令一本でぽんとやるというような形で、つまり国会の承認を得ないで、出動を命じたときは内閣総理大臣は直ちに次の国会の承認を求めることができる、この方が非常に緊迫しているのです。治安出動の方は、そういうときにゆっくりやっていいからというような形でなくて、ゆっくり国会の承認を得るのには治安出動の方が条件がいいですよ。だから、いま検討したいと最後に仰せられましたから、治安出動に対する国会承認を優先することを、検討よりも善処するように要望しておきます。大臣から問題を提起していただきました、検討ということでございますので、自衛隊法の改正はそういう方向へ持っていっていただきたいというように要望をいたします。  きょうは、せっかく久保国防会議事務局長が御臨席でございますが、久保先生、前にやったことは責任のある発言ができぬけれども、かつてこういうことがあったということは答弁できますね、事実を、経緯等の説明はできるんですね。
  303. 久保卓也

    ○久保政府委員 むずかしいが、どうぞ御質問ください。
  304. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、久保先生は防衛局長時代に基盤的防衛力というものの構想をお出しになったと思いますが、いかがですか。
  305. 久保卓也

    ○久保政府委員 基盤的防衛力という言葉を使いましたのは、実は相当前でありますけれども、現実に防衛庁の中で構想をまとめ、それを防衛白書の形で、これは一昨年の防衛白書ですが、その形でまとめましたときは全員でやったわけでありますけれども、防衛事務次官でありましたのは私でありました。
  306. 受田新吉

    ○受田委員 国防会議事務局長においでになられて、当時と立場が違ってこられたのですが、国防会議の任務というものを、かつてあなたは参事官でおられたわけですが、改めてあそこに出ている付議事項というものをどう見られるか、これは付議事項の中に全然付議しないようなものはなかったか、ちょっとお答えください。
  307. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは事務官僚といたしまして国防会議の性格を検討し、かつ過去の実例を考えてみますと、従来の国防会議の運用がいままででよかったかというと、私は必ずしもよかったとは考えませんし、また付議事項でも、さらに少しふやした方がよかったのではなかろうかという反省を事務官僚としては持ちますが、そのときのいろいろな諸情勢にもよりましょうから、一概に批判はできないと存じます。
  308. 受田新吉

    ○受田委員 かつて中曽根長官国防会議防衛庁の下請のような印象を与える発言をしたことで、海原さんが大変嘆いた時代があったのを久保先生は覚えておられると思うのですが、国防会議防衛庁よりももっと高い次元の存在であって、国防全体を大所高所から判断し、そしてそれを実効を上げていくという立場の機関だと私は思います。防衛設置法の中にちょっと入っているこの問題について御所感を承りたい。
  309. 久保卓也

    ○久保政府委員 国防会議及びその事務局の現状が法制的に見ましてもよろしいかどうかということについて、若干個人的には疑問も持っておりますので、事務的な勉強をさせていただいているところであります。そこで、いま御質問の面から見ますと、若干問題を含んでいるのではなかろうかという感じがいたします。
  310. 受田新吉

    ○受田委員 問題を含んでいるというのは、どういう含み方でございますか。
  311. 久保卓也

    ○久保政府委員 国防会議の性格として私考えますのに、一つは国防、すなわち軍事あるいは防衛よりももう少し範囲の広い、いわば安全保障という見地から考えるべきであるということが一つあります。もう一点は、文民統制という性格上、国防会議あるいは閣僚が防衛力というものを検討するという見地があります。  そこで、文民統制という見地からしますと、ほぼ現状の機能は働いているように思いますけれども、国防という見地から見ますと、必ずしも広い意味での安全保障政策をそこで扱い得ているというふうには思っておりません。その点に問題が残っているという感じがいたします。
  312. 受田新吉

    ○受田委員 国防会議の構成に関する法律も別途あるわけでございますが、国防の基本方針として三十二年に決まった閣議決定の中にあることと、国防会議の付議事項の中のことで関連する大事な問題を一つ指摘したいのです。  国防の基本方針の中には第一に、さっきから論議しております国連の活動を支持する、それが中心で、国際間の協調を図り、世界の平和に貢献するという大目標がある。そして民生の安定、愛国心の——安保条約だって経済協力が先で、アメリカとの軍事よりも経済から福祉の協力が先に書いてある。その方がおろそかにされて軍事的な方だけ認識を持つようなかっこうになっては、これは国防の基本の本質的なものを逸脱していると私は思うのです。だから、国防の基本方針の一と二に力点を置いて、三と四はその次の問題というふうに考えるべきものではないかと思うのですが、いかがでしょうかね。
  313. 久保卓也

    ○久保政府委員 基本的にはおっしゃるとおりだと思います。そこで三と四の問題につきましては、四というよりも主として三の問題につきまして、主として従来国防会議で当たっており、その面でいわゆる文民統制の機能を果たしているにもかかわらず、防衛設置法の中に規定されているのはおかしいのじゃないかという疑問が出てまいるわけであります。  ところで、一と二の問題については、これは安全保障基本であり、また正しい基本方針が示されているわけですけれども、その具体化がどうなっているのか、及びその関連性、特にそれと軍事力防衛力との関連性がどうなっているのかという意味で、いわゆる広い意味での国防あるいは安全保障、政策としてまとまったものとしての議論が行われていない、そこに問題があるのではなかろうかというふうに私は考えているわけであります。
  314. 受田新吉

    ○受田委員 そういうこと、私は非常に的確なところをついておられると思いますが、この機会に、国民のための自衛隊であり国民のための防衛庁として、そうした国防の基本の問題の方へ少し大きな目を向けて、軍事論よりもそうした基本論を国防会議などでも、国防の基本方針を決める国防会議ですから論議してもらいたいし、国防会議の任務として、「防衛計画の大綱」の次に「前号の計画に関連する産業等の調整計画の大綱」、こういうようなものを書いている以上、産業問題に入ってくるわけですが、もっと幅の広い観点からこういうものを論議しておるのかどうか。どうですか、国防会議でこの国防会議の任務の三を論議したことがありますか。
  315. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在まではございません。
  316. 受田新吉

    ○受田委員 二十年やって一向に生きた対象になっていない。さびしいものですね。もっとこういうものを大いにやってもらいたい。  それから四の「防衛出動の可否」、これは私が前から申し上げておる。治安出動の可否も当然入れてしかるべきだと思いますが、どうでしょう。
  317. 久保卓也

    ○久保政府委員 いま御質問の前段のところをちょっと付加させていただきたいと思いますけれども、従来「産業等の調整計画の大綱」というのを、「防衛計画の大綱」に関連する調整というふうに考えているわけなんですが、従来の国防会議及び事務局の考え方というのは、有事における調整というふうに読んでいたようであります。これは私も答弁申し上げ、かつまた法制局長官もそのとおりだというふうに答えられておるのですが、どうも有事のときだけの調整でなくてもいいのじゃないか。おっしゃるように平時における調整という問題もあるのじゃないか、あるいはまた、防衛計画に直接関係しなくても、防衛の基盤であるいわゆる防衛産業をどうするのかというような問題については、あるいはこの条文で言えば二項の五号で読めるということも考え得るというふうにも思うわけで、この点は従来の考え方とちょっと違うものですから、少し時間をかけて法制局とも相談をしてみたいと思うのです。  それから治安出動の方の問題につきましては、これは従来からお話があるところでございまして、私どももいま事務的には勉強していると申し上げましたが、そういう問題も取り上げるべきかどうかということを含めて勉強しております。
  318. 受田新吉

    ○受田委員 最後に取り上げたい問題に移ります。  岩国の基地の沖合い移設に対する防衛庁、防衛施設庁の調査費が過去五年間にわたって計上されてきたわけですが、この問題に触れていきたいと思います。日本では沖繩と岩国、ほかに海兵隊の基地はありますか。米海兵隊の駐留している地区をちょっと御指摘願いたい。その人数をお示し願いたい。
  319. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 海兵隊は現在沖繩に第三海兵師団がございます。それから海兵隊の航空隊が普天間にございます。それから岩国に海兵隊の航空隊があるわけでございます。
  320. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、本土に海兵隊の航空隊は岩国に一つしかないわけですね。そこで、さっきの海上自衛隊とのつながりで、岩国基地が地元の岩国に大変な負担をかけていることは御存じのとおりでございますが、これを沖合いに移設して、騒音その他、つまりいつ落下物が来るかわからぬという危険も排除して、安定した基地を沖合いに出すという要請が出ているわけですが、これに対してどういう調査をしてこられたか、御答弁を願いたい。
  321. 亘理彰

    ○亘理政府委員 お答えいたします。  岩国飛行場の沖合い移設につきましては、山口県及び岩国市からかねて基地問題の抜本的な解決策として強い御要望がなされているわけでございます。これについては、その技術的な可能性その他いろいろな問題につきまして検討する必要がございまして、防衛施設庁におきまして四十八年度からその沖合い移設が技術的に可能であるかどうかについての予備調査を行ってきたわけでございます。四十八年度から五十二年度まで合計予算額約一億九百万を投じておりますが、それによりましていろいろの技術的な予備調査を行いまして、現在この五年間の調査結果を取りまとめ中でございます。近いうちにこの五ヵ年間の調査の結果がまとまって御報告できるというふうに思っております。いまの滑走路を沖合いへ約千五百メートル出すということでございますが、技術的に可能であるという結論は得ておると承知しております。この結果は近々まとまり次第先生の方にも御報告申し上げたいと存じます。  今後、なおいろいろ地元とも御相談し、政府としても考えていかなければならない問題は多々あるわけでございますが、まず非常に膨大な経費を必要といたします。現在の見積もりでは約六千億くらいかかるであろうというふうに見積もられます。この膨大な経費を必要とする大工事をどういう仕組みでやっていくかということも問題でございます。それからまた、地元の周辺の環境、漁業その他に対するいろいろな影響の評価も行わなければなりません。それから現在あります飛行場の跡地利用をいかがなすべきかというふうな問題もあるわけでございまして、これらにつきましては、この予備調査の結果がまとまりました上でさらに地元の御意見も十分承り、政府全体としてどういうふうな運び方にするか、慎重に検討していかなければならないというふうに思っております。  なお、五十二年度で一応いままでの技術的調査の締めくくりができますが、五十三年度におきましても約四千万円の調査費を計上しておりまして、これは沖合い移設以外の埋め立てによる以外の工法、桟橋工法でありますとか浮体工法でありますとか、そういう埋め立て以外による沖合い移設の建設工法等の調査も、費用対効果を見る上から実施しようということで考えておる次第でございます。
  322. 受田新吉

    ○受田委員 一応の説明をいただいたのですが、これを成功させる方向へ向けてこの調査を生かしたいという態度ですか。あるいは単なる調査にとどまるという態度でございますか。
  323. 亘理彰

    ○亘理政府委員 岩国基地は米海兵隊並びに海上自衛隊の航空隊が大変効率よく使わしていただいておる基地でございまして、また地元からも大変な御協力をかねがねいただいておるわけでございます。地元の長い間の御要望でございますので、この調査は単に調査して終わったということで済むべきものではないのでございまして、これはその実現の方向に向かって、防衛施設庁だけの力でも不十分でございますが、政府として全力を挙げて実現に取り組むべき問題であるというふうに考えておりまして、私どもは積極的にそういう努力をいたしたいと思っております。
  324. 受田新吉

    ○受田委員 この沖合い移設につきましては、これからいろいろな問題がある。いまの、それを成功させたい方向。ただ私ここで申し上げておきますが、成田の空港のような地元の雰囲気ではないのです。もう岩国市、山口県、一致してこれを受ける。一部に異論があるけれどもそれは少数の異論であって、大勢は市議会の決議、県議会の決議等でどうぞ沖合い移駐して岩国市民の不安を解消してくれと強い要請が出ておるわけでございまして、この点は成田事件のような紛争のない空港の沖合い移駐であるということを防衛庁長官も御理解願いたいのですが、それを前提にして、その点ちょっと御答弁願いたい。
  325. 金丸信

    金丸国務大臣 ただいま亘理施設庁長官から御答弁申し上げたわけでありますが、私それと同じような考え方で、また相当な調査費も使っておることですからこの調査費をむだにしてはならぬ、こういう考え方で前向きで善処してまいりたい、こう考えております。
  326. 受田新吉

    ○受田委員 この要望につきましては、地元の漁業者もこれに対して協力をしていることを御存じでございますか。そしてその協力に対して、同時に航行に対する制約を受けておるわけで、それに対してわずかな、これでは間に合わぬという補償が出ておる。そのことも含めて御答弁を願いたい。
  327. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいまも申し上げましたとおり、岩国市には市御当局あるいは周辺の漁業その他の関係の住民の方々から非常な御協力、御支援をいただいておるわけでございます。現在、漁業補償に対してはいろいろ基準がございまして、十分とは申しかねるかと思いますが、補償を申し上げておるわけでございます。これが沖合いに出ました場合には、漁業その他に対しての影響もまた違ったものが出てくるわけでございまして、その辺の調査はまた今後十分にいたさなければならないと思っております。
  328. 受田新吉

    ○受田委員 この沖合い移設につきましては地元の要望はさらに、そのままの現状を沖へ移す案のほかにプラスアルファの案を地元は期待しているわけですね。これは御存じでございますか。そのまま移駐する案のほかにプラスアルファの案。
  329. 亘理彰

    ○亘理政府委員 現在の岩国基地の面積、私、正確に記憶しておりませんが、地元の本来の御要望はそれを上回る大きい空港を沖合いにつくりたいということでございますが、これは経費面のこともございまして、近いうちに報告がまとまると申し上げましたのは、現基地と同面積のものが移った場合の検討を一応いたしておるわけでございます。
  330. 受田新吉

    ○受田委員 これは日本基地としては非常に大がかりなものでございますので、国民の負担も非常に大きくなるという問題でありますので、国家全体の問題として御検討いただかなければならぬことで、十八省庁にわたる問題だという当局の御説明がありました。ただここで、私ぜひはっきりしておきたいことは、この岩国の沖合い付近は航空気象条件が非常によいところであると聞いておるのですけれども、当局の御説明を願いたい、自衛隊と両方の答弁を。
  331. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように、岩国は戦前から航空基地として使っておるところでございます。特に戦前の飛行機というのは気象条件が絶対的と言っていいぐらい非常に重要なことでございましたので、当然のことながら気象条件というのはきわめてよいところだというふうに考えております。
  332. 小松巖

    ○小松説明員 岩国基地周辺の気象状況につきましては、従来から米軍が観測業務をしております関係上、気象庁の方に詳しい資料がございませんので、はっきりとしたことはわかりませんですが、近くにあります広島空港などの手持ちの資料によりまして、風あるいは視程などにつきまして若干統計的なことで申し上げますと、結論といたしますと広島空港は特段他の空港に比べて風が強いとか強過ぎる傾向があるとか、あるいは特異な現象が起こるというふうな場所ではございませんで、冬場、冬季間の季節風時に西寄りの風が卓越してやや強いということが指摘される程度だと思います。  それから視程につきましては、特にあのあたり一帯の霧の発生の問題が重要なことかと存じますが、これは瀬戸内全体に共通した問題だろうと思います。特に春先から夏場にかけて、梅雨期をはさんで全体に霧は出やすい状況にありますが、継続時間は比較的短いというふうなことでございます。ただ前線霧というものが発生することは間々ございますが、これはかなり規模が大きいものでございますので、特に岩国周辺ということではございませんで瀬戸内全体に影響がある、こういう場合にはわりあいに長時間続くことがありますが、ふだんは霧が発生いたしましても比較的継続時間は短い。特に七時から二十時までの日中を主とした広島空港における平均の視程は十七キロと比較的いい気象状況にある、こういうことでございます。
  333. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ運輸省に私がきょうお尋ねしたいと思うことは、板付の飛行場が一方で平和利用の民間空港にもなっているわけですが、岩国はそういう気象条件も一応いま両当局から伺って、いいという答えが出ておるとすると、国際航空貨物の空港にこれを併用するという道はないか。世界的な一つの観点から運輸省として国際航空の貨物空港という構想をこれに取り入れる検討ができるかどうかお答え願いたいのです。
  334. 平井磨磋夫

    ○平井説明員 お答え申し上げます。  岩国基地の移転の計画につきましては、そのような調査が行われているということは聞き及んでおるわけでございますが、具体的な詳細の内容については聞き及んでおりませんでしたので、ただいままでに検討したことはございません。ただ先生御提案の国際貨物空港でございますが、この点につきましては、国際貨物の性格でございますとかあるいは量的な面から見まして、わが国においてそのような専用の空港が必要になる時代というものはまだ相当遠い先ではないかというふうに考えておりますので、そのような必要が生じてまいりました場合には慎重に検討させていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  335. 受田新吉

    ○受田委員 質問を終わりにさせていただく時間がちょうど参ったようです。環境庁にちょっと尋ねたいのですが、瀬戸内海環境保全臨時措置法その他で埋め立て等に対して、ここを特別の条件として空港を沖合い移駐することは差し支えないという立場がとれるかどうかお答え願いたい。
  336. 岩崎壽男

    ○岩崎説明員 岩国基地の移転問題につきましては、詳細について、具体的に中身を承知しておりませんので、そういう問題が具体的になった段階で検討すべき問題だと考えております。
  337. 受田新吉

    ○受田委員 具体的にということになると、ただ瀬戸内海環境保全法でこれがだめだということであればやらぬ方がいいわけですから、そういうことについては、法律の精神からいって、必要な空港移設を認められるゆとりがあるかどうかは、ちょっと法律的に認めておいていただかぬと、決まった環境保全法でだめだということでやられたのでは、これだけ大がかりな十八省庁にわたる大事業にひびが入るわけですから、法律的にはだめだということを言えないかどうか、それだけをお答えいただきたい。
  338. 岩崎壽男

    ○岩崎説明員 岩国基地の移転の問題につきましては、いま申し上げましたように、具体的な内容を実はよく承知しておらないわけでございますので、一般的な問題としてお答えさしていただくということでお許し願いたいと思います。  先生御指摘のように、瀬戸内海環境保全臨時措置法という法律が確かにございます。その十三条には、瀬戸内海における公有水面の埋め立てにつきまして瀬戸内海の特殊性というか、そういったものに十分配慮しなければならないということで、この規定に基づきまして、瀬戸内海における公有水面埋め立ての免許あるいは承認に当たっては、それの運用の基本方針というのができております。  この基本方針の中身は、いろいろ書いてあるわけでございますが、一つは、当該埋め立てが、たとえば海域環境あるいは水産資源あるいは自然環境に及ぼす影響が軽微であるというようなことを確認しろというふうな趣旨のことも書いてございます。したがいまして、これは個々の案件ごとにいろいろ環境影響評価をやっていただきまして、そういう問題として個々にそういった審査を行うというような立場で対処しておるわけでございます。  そういった意味におきまして、やはりこの案件につきましてそれが具体的になりあるいはその事前評価が行われ、どういう形になった、そういった段階で環境保全の立場からも検討すべきだということを申し上げたわけでございます。
  339. 受田新吉

    ○受田委員 両長官にひとつ最後の御答弁を一言いただいて質問を終わります。  この大きな事業は、防衛目的を果たすのに貢献するものであると私たちは思っているわけです。長官発言をもってすれば、脅威を与えるというようなものというふうに見られるかもしれぬというほど、ここの基地が沖合いに移ることによって岩国市民が安定した、安心した生活ができるようになる、騒音その他の公害がなくなる。かつて帝人という工場がありまして、ちょうど滑走路の地かたにある高い煙突を削ってくれという。三十一年の八月に江崎真澄政調会長などと一緒に生産性でアメリカに行ったときに、いまのバンス・アメリカ国務長官が顧問か何かだったときにこの問題を陳情に行ったことがありまして、この問題は米軍の協力を得たわけです。  そういう行きがかりもありまして、とにかく国家的な大きな事業で、米軍も、地位協定による約束の上で沖合いへ移していただければ安心だということも私はあると思うのです。負担金は、日本が当然することでありまするから、あちらには御迷惑はかけぬということにもなるわけなので、このあたりでひとつ新しい基地が沖合いへ出て、住民は安心できる、防衛の目的も果たせる、こういうことになれば、さらに国際的な空港の使命も持っていくということになると、大変大きな意義があると思うのですが、ひとつこれを前向きで、せっかく調査費を五年間つけて、今年度も別の計画もあるわけです。できるだけ早い機会に成功に導かれるよう要望したいと思うのです。その点についてお二人の長官から御答弁をお願いいたします。
  340. 金丸信

    金丸国務大臣 私が防衛庁長官時代に解決する問題ではないのですが、一歩一歩前進して積み重ねていくように、最大の努力をいたしたいと思います。
  341. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま大臣から仰せられたことに尽きるわけでございまして、基地の安定した維持運用ということと、地元の発展、民生の安定ということと両立していくのは私どもの使命でございますので、そういう意味で努力をいたしたいと思います。
  342. 受田新吉

    ○受田委員 質問を終わります。
  343. 始関伊平

  344. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 最初に、五月三日から行われました日米会談についてですが、この日米会談は、本会議質問でもわが党が指摘しましたように、日本が、軍事、経済の二つの分野で危険な重荷を背負ったものであるというふうに考えておりますけれども、日米安保条約に基づく日米の軍事協力が実際にどのくらい協議されたのかということについては、何も明らかにされてはいないわけです。金丸防衛庁長官は直接会談には出席なさってはいらっしゃらないのですけれども、これに参加されました総理や外務大臣からは、日米軍事協力の問題について何か報告を受けていらっしゃるのかどうか、まずお伺いします。
  345. 金丸信

    金丸国務大臣 この問題については、防衛の問題あるいは日米協力その他の問題等ほとんど話はできなかった、出なかった、こういうように私は総理から聞いております。
  346. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまの時代において日米軍事協力、防衛協力の話が一切出ていないということは、ちょっと解せない話であると思うわけです。会談後の日本協会などで共催しました午さん会での福田総理のスピーチでも、安保体制に基づく協力関係の存在ということを礼賛しておりますし、会談に先立つ日本協会でのブレジンスキー演説でも、日米防衛協力は特に良好な状態にあるとして、米国にとっての中心的な重要性を有する地域、たとえば韓国に迅速に展開できるような、全世界を対象とした即応戦力をつくり上げる、こういうことが演説で述べられているわけです。この即応戦力の問題が話題にならないはずはない、こういうふうに一般的に思われるわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  347. 金丸信

    金丸国務大臣 その問題について、総理は問題に触れなかったと言っておるわけでありまして、私が出席して聞いているわけでないのですから、そこでおくよりほかはない、こう思うわけであります。
  348. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 聞いていらっしゃらないということですが、このブレジンスキー演説は、日米会談に臨む米側の態度を表明する、そういう内容であるとともに、日米の軍事協力の現状が率直に述べられているわけです。それは、日米防衛協力は特に良好な状態にある、日本は空、海の防衛力を強化している、両国制服組の協力も拡大している、こういうことが述べられているわけですけれども、この両国制服組の協力の拡大ということはどういう点での協力が拡大されているのか、お伺いします。
  349. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ブレジンスキー補佐官の講演の内容から具体的なものは私どもはわかりません。しかしながら、御承知のように、私どもは米軍と自衛隊との間で防衛協力小委員会というのをつくっておりまして、有事の際の安保第五条に基づく整合性のとれた共同対処をやりたいということで研究を進めているわけでございます。
  350. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまの日米防衛協力小委員会、これは三木内閣のときに設置されましてすでに五回開かれておって、現在では三つの部会での検討が進められておりますが、この内容国民の方から見ますとわからないという状況です。ブレジンスキー演説でも端的に示されておりますように、米国にとって中心的な重要性を有する地域での即応戦力をつくる一環としてこの防衛協力が進められているものである、こう考えるわけです。これは非常に危険な実態というように理解しておりますし、この問題について幾つか質問したいと思いますが、まず、現在の部会ではそれぞれどのようなことが協議されているのか、ひとつ具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  351. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 昨年の第五回目の防衛協力小委員会におきまして、従来防衛協力小委員会の研究の結果というものをガイドラインという形にまとめまして、日米安保協議委員会に報告するということになっておりました。そこで私どもは五回にわたってこのガイドラインというものがどのような内容のものになるか、あるいはどのような性格のものになるかについていろいろ議論し合ったわけでございます。その間にはいわゆる自衛隊としてできること、できないこと、こういうことを明瞭にし、実際にガイドラインの中でそういったことを明らかにしようというふうに考えているわけでございますが、ただガイドラインといいましても、これはきわめて抽象的な考え方でございますので、しからばその中に盛るべき内容というものは一体どういうものがあるかということで、作戦部会、情報部会、後方支援部会というところでそれぞれ具体的な問題について詰めているわけでございます。  たとえば作戦部会におきましては、米軍と自衛隊は指揮系統が異なっております。その異なった指揮系統のもとで調整しながら整合性のとれた運用ができるためにはどういうものが必要であるかというようなことを具体的に詰めてまいってきているわけでございます。それから情報部会におきましては、情報交換のやり方、それからその交換をやるに当たってはどのような体制をとった方がよいのだろうか、それからまたその情報についての秘密保全、そういったもののやり方についてはどうあらねばならないかというようなことを検討しているわけでございます。後方支援部会におきましては、後方補給活動のそれぞれの機能、そういったものでどういう面で協力ができるかというようなことを勉強している状況でございます。
  352. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 もうちょっと突っ込んで聞きたいのですが、まず作戦部会ですけれども、ここには六項目挙げております。いま「指揮及び調整」という問題について若干の説明がありましたけれども、この六項目についてそれぞれどんな点が話し合われているのか、お伺いしたいと思います。
  353. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 それぞれどういうことが話し合われているかというようなことでございますが、たとえば作戦準備をするに当たって双方はどのような体制でどういう点で協力することができるかというようなこと、あるいは陸海空それぞれの作戦においての協力の仕方、そういったものを具体的に話し合っているわけでございます。そういう中からいわゆる防衛協力についてのガイドライン、そういうものを抽出してまとめるという作業をしているわけでございます。
  354. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ちょっと説明がありました「指揮及び調整」に関連する問題ですけれども、さきの自衛隊幹部会同で金丸長官は、中央指揮所の整備、統合運用体制の整備、有事関連諸施策の検討など、すでに指示している事項もある、こういうお話をされておりますが、これらは防衛協力小委員会での米軍との対応上の措置を示すというように理解しますけれども、この点はいかがでしょうか。
  355. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 防衛協力小委員会において、自衛隊の中の指揮統制というものがどうあるべきかというようなことは研究はいたしておりません。これは米軍と自衛隊との間の指揮調整の問題でございます。したがいまして、長官が陸海空の自衛隊の運用上、中央で統制のとれた指揮をしなければならないということは着任以来、陸海空の業務の御説明をした際に最初に言われたことでございます。私どもといたしましても、日本防衛作戦をやる場合に、陸海空がばらばらで行動するということはあり得ないわけでございますので、その間のいわゆる統制のとれたやり方というものをやるためには中央の指揮機能が必要であるということは以前から感じておりましたので、長官の御指示もございましてこの研究を進め、これを具体的には中央指揮所という形でまとめたいということで作業を進めているわけでございます。
  356. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 報道によりますと、防衛庁は統合幕僚会議の機能強化というようなことなど、十三項目に上る改正点を列記いたしました防衛二法改正についてと題する、これは案ですけれども、改正指針を四月末日付で長官官房法制調査官室で作成し、五月一日の臨時参事官会議で担当課長から報告、丸山事務次官を交えた局長レベルで第一回の協議が行われた、こういう報道があるわけですけれども、これは事実かどうかお伺いいたします。
  357. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 先般来同じような御質問がございましたのでお答えしておりましたけれども、防衛庁としまして、防衛二法はもうすでに制定されてから相当な期間たっておりますし、そろそろ防衛庁全般として見直すべき時期が来ておるのではないかということ、あわせて先ほど防衛局長から答えましたとおり、金丸長官の方からもいわゆる自衛隊の統合運用というものはもう少し真剣に考えてみたらどうかというようなお話もございまして、防衛二法の改正をあるいは昭和五十五年ごろにでもひとつ考えてみようじゃないかということで勉強を進めております。と同時に、課長以下のグループで情報機構の一元化なり、あるいは先ほど申し上げました統合運用のあり方、そういったもののプロジェクトチームをつくらせまして、それぞれの検討を進めておるわけでございます。進めております中途段階につきまして、参事官会議で一応の途中までの経過で報告がありました。今後これをどの程度防衛二法の改正、法律事項として取り上げるかどうかというようなことはこれからゆっくりと十分に勉強してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  358. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この改正案について、内容ですけれども、新聞で八項目くらい書いてありましたけれども、十三項目だというように書いてありますが、その十三項目の内容というのは明らかにできますか。
  359. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 新聞に伝えられておりますとおり十三項目という細かい内容まで至っておりません。先ほど申し上げましたように、基本的にはやはり中央機構のあり方、統合運用のあり方あるいは情報の一元化の問題あるいは内局の機構のあり方、それから先ほど防衛局長が答えましたように中央指揮所の問題、こういった点、それから今後の増員をどのように法律で決めるか、こういった点を中心にして検討を進めておりますので、細かく十三項目ということで分けたわけではございません。
  360. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 同じ報道ですけれども、「有事即応へ統幕強化」、こういうふうに言われておりますが、有事の際は陸海空の三つの幕僚監部を一本にまとめた統合幕僚監部を編成する、そのための法改正によって統幕議長に統幕会議の議決権を付与し、有事の際に統幕議長を統合参謀長とする、そういうことが検討されていると報道されております。この点は先ほど質問で指摘いたしました長官の、中央指揮所の整備、統合運用体制の整備の指示という発言内容的にも一致していると思うのですけれども、このような点は具体的に検討されているのかどうかお伺いします。
  361. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 お答えします。  防衛設置法ができました後、その後改正によりまして統合幕僚会議というものが入れられたわけでございますが、この統合幕僚会議の議長の権限と陸海空幕僚長の権限というものにもやはり若干の違いがございます。それで、先ほど申し上げましたように統合運用、この狭い日本で陸海空がばらばらで戦えるわけがない。そうしますと、各幕僚長の長官に対する補佐と同じように、統合幕僚会議議長が有事の場合におきましての長官の最高幕僚になるべきではないかという意見等々がございます。また、現在の統合幕僚会議の議事運営規則というものが訓令でございますが、これにいろいろ決めております。全般的に見まして、その基本的な法律改正が要るかどうかはまだ検討中でございますけれども、現在、その議事運営規則等等を改正しまして、われわれ内局あるいは各陸海空の幕僚監部、こういったもの、いまの統幕会議そのものの権限をもう少し強化するということは実効上も相当できる分野があろうと思います。  そういうことも踏まえまして、有事の場合におきます統合幕僚会議、あるいは先ほど言われましたが、統合幕僚会議における議長の権限、こういった点も足らないかもしれません。こういう点もあわせまして検討しておりますが、どの程度までが法律事項になるか、まだ勉強中でございます。その多くは議事運営規則等の改正でもできる、このように考えております。
  362. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この点、防衛庁は、昭和三十三年の末にも、有事の即応体制整備のための「中央指揮機構の整備に関する件」というのを庁議決定していると聞いておりますが、これはまだ何も実現していないわけです。いまの時期に再びこのような内容について具体的な検討作業を行う背景というものを考えてみますと、伊藤防衛局長が参議院の予算委員会答弁でも述べられておりますけれども、日米防衛協力小委員会で、日米両部隊の作戦調整機関の必要性についても研究している、こう言われているのですが、こういうことも考えていま検討する背景には、この日米共同の対処行動の指揮、作戦の調整機関の設置と、その中における日本側の対応として中央指揮所の設置が要請されているのじゃないか、そういうふうに考えるわけです。  こうなっていきますと、頂点に米太平洋軍司令官それから統幕議長、三自衛隊の実質指揮系統の一元化を実現さして、日米共同作戦体制の実戦即応的で効率的な運用を保証することにねらいがあるのではないか、そういう背景があるのではないか、日米防衛協力小委員会などで米側からもこの点について具体的に要請が出されているのではないか、そう考えるのですけれども、この点についてお伺いいたします。
  363. 竹岡勝美

    ○竹岡政府委員 今回の防衛庁で勉強しております今後の防衛二法改正、その中で統合運用ということを考えておりますのは、アメリカから言われたというような問題では全くございませんし、あるいは日米防衛協力小委員会でアメリカの方からおまえのところ変えろというような示唆を受けた覚えは全くございません。あくまでも防衛庁内部の問題でございます。おっしゃるとおり、先ほど言いましたようにいま防衛庁としましては正面装備等も少しずつできつつございますし、この際、防衛庁全体が一たん有事の場合に有効に戦える態勢ということについてもう一度よく見直してみようじゃないかということ、あるいは金丸長官からも統合運用の必要性を言われまして、そういう防衛庁自体の必要性からこの勉強を進めておるわけでございます。  それから、御承知のとおりアメリカは太平洋軍として三軍一体の体制をとっておりますし、フランスでも統参議長の権限というのは強くございますし、西ドイツでも同じでございます。そういった意味から見ましても、日本の統幕機構というものはやはり考えてみる必要がある。  それから、もちろん有事の場合に、日米が協力して緊密な連絡をとって戦うことは当然でございますが、今回の法改正の趣旨は、あくまでも防衛庁内部で発したものであるということを十分御了解願いたいと思います。
  364. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 内部問題ということを非常に強調されるわけですけれども、いろいろな報道などで伝えられておりますところ、またアメリカ側の発言などを見て、そういうように見える節もあるということで申し上げているわけです。  次に、後方支援の問題です。この問題につきましては、私がさきの外務委員会質問いたしました。四月十二日に報道されました弾薬、燃料などの日米共同使用が防衛協力小委員会で検討されているという米国防総省の東アジア太平洋局長などの発表についてそのときは質問したわけです。そのとき、中島アメリカ局長は、ローマン日本課長は弾薬、燃料を含んだ後方支援について防衛協力小委員会で検討がなされていることを一般的に申した、こういう趣旨答弁をされましたけれども、この点、防衛庁が実際に協議しているのだと思いますが、弾薬、燃料などの共同使用問題は検討されておられますか。
  365. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 共同使用問題というのはどういう御質問かはっきりいたしませんけれども、まずその前提にございますのは、日米安保体制というものがわが国の安全のためにきわめて重要であるということは政府として考えておりますし、自衛隊としてもそれを考えているわけであります。そしてまた、共同対処の際に、補給、整備の面におきまして協力関係を持つということは当然でございます。そしてまた、御承知のように自衛隊は弾薬の備蓄というものが、いままで必ずしも十分でございません。したがいまして今後、この備蓄について努力してまいるわけでございますけれども、共同対処の際に必要な弾薬の補給が行われるということは当然あり得ると考えておるわけでございます。
  366. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これも報道ですけれども、五月一日に、防衛庁長官は、五十四年度業務計画についての長官指示で弾薬の備蓄増強計画を指示した、こういう報道があるのですけれども、この計画は一体どういうことになっているのか。それからまた、一月のハワイでの日米安保事務レベル協議会で、日米共同使用の観点から備蓄の強化ということの要請がアメリカ側からあったという報道もあるのですけれども、この点はどうなっているのか、お伺いします。
  367. 金丸信

    金丸国務大臣 私は、この問題についてはアメリカ側の指示を受けたわけではありません。いろいろ報告を受ける中に弾薬が余りに少ない、いわゆる小銃、大砲はあるけれども弾がなくちゃ仕事になりません。それじゃ一朝有事のときにどうなるのだ、そう考えてみれば、当然これに対して一応来年度予算に対して考えなければならぬ、こういう指示を私はいたしたわけであります。
  368. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 長官は、アメリカから指示を受けていない。そのハワイ会談での事務レベル協議会でアメリカ側の要請があったかどうか。その点、事務局の方にお伺いします。
  369. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 一月の事務レベル会議でそのような要請があったというふうには聞いておりません。
  370. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それじゃ新聞の誤報ということになるわけでしょうか。  次に、間淵装備局長は、ことしの一月二十三日、経団連の防衛生産委員会で五十三年度予算の説明をされております。この中で「備蓄は、現在七万トン程度であり有事の際には在日米軍が保有する備蓄も利用する必要がある。」こうはっきり述べていらっしゃるのですが、この点については当然日米間で合意があると思うのですけれども、この点、いかがですか。
  371. 間淵直三

    間淵政府委員 はっきり内容は記憶しておらないわけでございますが、そういう趣旨のことを述べたと思います。しかし、それに関する協定といったようなものは現在のところはございません。
  372. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 経団連で出しております防衛生産委員会特報にお話が載っているわけです。この発言を見てみますと、当然弾薬は、日米一体で協議し合って備蓄を進めているということになるわけですけれども、特に弾薬については、米国が韓国へ移すとの計画もあり、その補給として現在防衛庁が備蓄を進めているものである、この話から見ますと、そういうふうに読めるのですけれども、それはいかがですか。
  373. 間淵直三

    間淵政府委員 正確には記憶しておりませんが、わが国の弾薬の備蓄量というものは十分でないということを話したということは記憶しております。
  374. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ちょっとそのくだりを読んでみますと、「在韓米軍の撤退に伴い、韓国への米国のコミットメントを保障し、有事即応体制を確保する見地から弾薬備蓄をわが国から韓国へ移管する可能性もあり、わが国としては弾火薬の補充と弾火薬庫の整備を早急に進める必要があろう。」これがお話の内容になっているわけです。こういう点は間違いないでしょうか。
  375. 間淵直三

    間淵政府委員 米軍の計画といったようなものについてはつまびらかに承知しておりませんが、米軍の計画いかんにかかわらず、わが国の所有している弾薬というものの備蓄量は十分でない、こう申したと思います。
  376. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、七九年度陸軍情勢報告について、これも報道ですけれども、韓国など同盟国向けの弾薬、燃料など後方支援物資の備蓄が不足していると、この情勢報告で述べられておりまして、備蓄増強の方針が出されているということであります。これら一連の動きは、アメリカの要請に基づく弾薬備蓄の増強であって、対朝鮮有事への共同の準備作業であると考えられるわけです。そういうふうにいろいろな面から来るわけですけれども、いかがですか。
  377. 金丸信

    金丸国務大臣 柴田先生は、何かアメリカといろいろ謀議をしながら韓国へ出撃するようなことを言いますが、そういう考え方は全然持っておりません。実際問題、弾は足らない。その足らない弾を何とかしなければならぬ、こういう考え方で、防衛庁自体の考え方であります。
  378. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 軍事協力という問題とともに、次に日米共同作戦、それから共同訓練、これもいま一層強化されてきていると思います。先日の外務委員会で、わが党の寺前議員が、ミッドウェーの初参加による共同訓練の問題を指摘いたしました。そのとき、夏目参事官の答弁では、空母が参加した日米共同訓練は過去十数回あるということでありますが、昭和四十九年から、空母の参加した訓練は何回あったのか、日時、訓練海域、空母名について具体的にお答え願いたいと思います。
  379. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いわゆる日米共同訓練と申しますのは、自衛隊と米軍とが同一の訓練項目につきまして、それぞれの戦術技量の向上を目的として実施しているわけでございまして、海上自衛隊が現在までに笹年数回実施しております。このうち、アメリカの空母と実施した訓練回数は、過去十六回でございます。
  380. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いま私が聞いたのは、四十九年から、アメリカの空母が参加した訓練が何回あったのか、その日時、訓練海域、空母名、これを具体的に言ってくれ、こういう質問です。
  381. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 最近におきましては、空母と共同訓練を実施した回数は、五十二年度に一回、それから五十三年度に一回、それぞれ実施しております。五十二年度の訓練につきましては、五十二年の十月、訓練海域は伊豆諸島東方海域でございます。それから五十三年度につきましては、本年の四月、同じく伊豆諸島東方海域で実施しております。
  382. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私が聞いたのは、そのほかに空母名と、それからその期間を聞いているのです。一遍に答えてください、何回もやるよりは。
  383. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 昨年の秋実施した空母はコンステレーション、本年はミッドウェーでございます。(柴田(睦)委員「何日間」と呼ぶ)それぞれ四日間でございます。
  384. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまのコンステレーション及びミッドウェーと言えば、米第七艦隊のアジア配備の空母であるわけです。これは攻撃型空母と言われておりますけれども、こうした攻撃型空母との共同訓練が昨年十月から開始されているということは、やはり一つの重大な意味があると考えます。昨年十月のコンステレーションとの訓練は、先ほど、十月に四日間ということでありましたけれども、そのほかに、米側の艦艇名、それから航空機の種類、日本側の参加艦艇名、航空機の種類、演習の目的、これを答えてください。
  385. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 お答えいたします。  昨年の十月実施した訓練につきましては、日本側からの参加艦艇は八隻、航空機が延べ五十二機、アメリカからの参加艦艇は十隻、航空機四機、それから本年四月に実施した対潜訓練につきましては、日本側からの参加艦艇は八隻、同じく航空機は延べ十六機、それから米側からの参加艦艇は五隻、航空機が延べ九機ということでございます。
  386. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 艦艇名、それから航空機の種類、それはわかりますか。
  387. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 日本側から参加した艦艇、昨年の十月の分から申し上げますと、護衛艦は「たかなみ」「むらさめ」「ゆうだち」「はるさめ」「ながつき」、それから潜水艦が二隻入っておりまして、これが「あさしお」と「なるしお」、それから補給艦の「はまな」、航空機がP2J、S2F、HSS2。それからアメリカ側からの参加艦艇でございますが、空母コンステレーション、これは先ほど申し上げました。あと駆逐艦五隻、潜水艦一隻、補給艦三隻、それから航空機はP3ということでございます。  それから、本年の四月に実施した日本側からの参加艦艇は、「みねぐも」「はるな」「ひえい」「あやせ」「てしお」、それから補給艦の「はまな」、潜水艦二隻「みちしお」と「あらしお」、それから航空機はP2J、PS1。それからアメリカ側からの参加艦艇は、空母ミッドウェー、ほかに巡洋艦、駆逐艦、補給艦、それから航空機はP3でございます。
  388. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ちょっと確認しておきますけれども、コンステレーションやミッドウェーが参加した要するに攻撃型の空母との訓練というのは、昨年の十月が初めてであって、過去にはなかったわけですか。
  389. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 航空母艦にいわゆる攻撃型とかいうふうな分類は五十年度まではアメリカ海軍においても行われていたようでございますが、現在攻撃型であるとか対潜型であるとかいうふうな区分はございませんので、航空母艦はすべていわゆるCVというふうに一本化されております。
  390. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 このコンステレーションやミッドウェーにはCVのほかにもう一つ横文字が入っておりませんか。
  391. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 現在そういうものはございません。
  392. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 過去には区別があって、いまは区別がなくなったという説明ですけれども、これはちょっとまた私も調べてみたいと思いますけれども、さきの寺前議員の質問のときには、対潜捜索訓練である、こういうふうに説明されておりますけれども、ちょっと納得できないものがあるわけです。  そこで、今度は四月のミッドウェーとの訓練についてお尋ねをしたいのですけれども、この訓練における米側の司令官はだれであったのか。氏名、階級及び職名について答えていただきたいと思います。それから、そのときに米司令官はどこで指揮をとっていたのか。
  393. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 アメリカ側の訓練統制官は、いわゆる第七空母群司令グレッグ海軍少将というのがミッドウェーに搭乗しておりました。
  394. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この訓練においてミッドウェーの空母はどういうことをやるのか、例を挙げて説明していただきたいと思うのです。要するに訓練の中でどういった役割りを持っているのか、どういう任務をやるという想定のもとにやるのか、その点をお伺いします。
  395. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 具体的にこの空母がどういうことをやるかということにつきましてはつまびらかにいたしませんが、訓練の目的はあくまでも対潜捜索訓練というのが主なる目的でございます。したがいまして、この訓練の実施に際しては、わが海上自衛隊と米海軍との間に事前に調整をしながら訓練計画、訓練のスケジュール等を決めながら実施したということでございまして、この空母の位置づけその他についてはつまびらかにしておりません。
  396. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この共同訓練において米側の演習部隊と日本側の演習部隊が同一の任務群、すなわちタスクグループを構成するということがあるのですかどうですか。
  397. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 この訓練は、あくまでも日米双方の指揮官が統制官になりまして調整の上実施しているということでございまして、いまお尋ねのようなタスクグループというふうなものを編成して実施しているものではないというふうに理解しております。
  398. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 タスクグループを編成することはないということは、実際を調べた上で言われているのですか、想像なんですか。
  399. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 そのとおりでございます。
  400. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 指揮系統の問題ではなくて、一つの任務を一緒に遂行するという任務部隊のことを言っているわけですけれども、そういう構成はやらないのですか。
  401. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 何度も申し上げますように、そういうふうな構成はとっておりません。
  402. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この点は私たち調査しているのですけれども、一個の単一の任務部隊を形成するということは私たち調査でも浮かび上がっているわけです。海上自衛隊の方から聞いても、そういうことは常識になっている、そういうふうにさえ聞いているわけです。実際海上自衛隊でさえ二つ以上の部隊が共同訓練を実施するときは、単一の任務部隊を構成して指揮系統を単一にしているわけです。この日米共同訓練でも同一の任務群、タスクグループを構成するということがなければいまの日米安保体制下の訓練ということとはちょっと異質なものになると思うのですけれども、くどいと言われるでしょうけれども、もう一遍お尋ねします。
  403. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 何回も申し上げますように、単一の指揮系統というものではなくて、日本側、アメリカ側にそれぞれ統制官を置きまして、その統制官が事前に調整された訓練計画に基づいてお互いに連絡協議をしながら所要の対潜訓練を実施しているということでございまして、いまお尋ねのような単一のタスクグループあるいはそういった任務群というものを編成して実施しているものではございません。
  404. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日米で艦艇同士が対抗戦をやるというわけではないと思うわけです。そして、やはりミッドウェーやコンステレーションが中心的な役割りを持った訓練であるというようにわれわれは考えるわけです。そして、昨年十月からこうしたいわゆる核空母との訓練が始められているということは非常に重大な意味があると思うわけです。  そこで、朝鮮有事の際日本に脅威が与えられるというような場合、こうした第七艦隊の主要空母との共同対処が当然予想されると考えるものでありますけれども、そういう訓練、いまそれぞれの指揮系統でというような説明もありましたけれども、やはり実際は自衛隊が一層米軍の作戦、そういう中に組み込まれる訓練の実証であるというように考えているわけです。この点長官の御見解をちょっと伺っておきたいと思います。
  405. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 大臣が御答弁になる前に、いま先生がおっしゃいました中で明らかにそういうことがないという点だけ申し上げたいと思います。  朝鮮半島における紛争の際に第七艦隊が行動することはあると思います。しかし、自衛隊の艦艇というのは自衛権行使以外には行動することはないわけでございますので、その点ははっきり申し上げておきたいと思います。
  406. 金丸信

    金丸国務大臣 防衛局長が言ったとおりでございます。
  407. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、今度は防衛分担問題ですが、報道によりますと、金丸防衛庁長官は五月十日に開かれた防衛懇話会の講演の中で、日米防衛分担問題に触れて、「アメリカに対し三百億円程度、なんとかするべきだ」、こういうふうに述べたと伝えられているわけですけれども、三百億円という具体的な数字をおっしゃったわけですから、何らかの根拠があると思うのですけれども、この根拠についてお伺いしたいと思います。
  408. 金丸信

    金丸国務大臣 先ほど上原先生にも答弁を申し上げたのですが、日米安全保障条約というものは不可欠のものである、不可欠である以上不可欠のようにこれを行っていかなければいけない、それにはいま円高ドル安というような、アメリカから要求されるべきものじゃない、日本自体が考えてやる思いやりというものがあってしかるべきじゃないか、それが両国の信頼性を高めるということであろう。三百億という問題につきましては、戦闘機五、六機と申し上げましたから、五十億で五、六、三十、三百億。先ほども申し上げましたように、高い戦闘機もあれば安い戦闘機もある。金額の問題より思いやりのある考え方日本も持ってしかるべきじゃないかということを私は強調いたしたわけであります。
  409. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大臣、お疲れのようですから、大臣に対する質問はこれで終わります。  駐留経費分担問題は、今年度から受け入れました労務費の一部六十一億円に加えて、いま米側から労務費分担をふやすことや施設費の負担をさらに非公式に求められているというような報道があるわけです。金丸長官が、五月十一日に長官を表敬訪問いたしましたウイズナー米太平洋軍司令官に対しても、アメリカの要求に応じるというのではなくて、日本考えるべきものだと思うと、いま答弁されたようなことを積極的に言われたというように伝えられているのですが「去る四月四日に丸山防衛事務次官を訪れたラビング在日米軍司令官から円高ドル安のため在日米軍の維持運営が困難になっており、基地内の住宅建設などを進めてほしいという要請があったということも伝えられておりまして、金丸長官発言は、これらの要請に対し日本側から積極的な態度を表明し、これにこたえるというようなものになっていると思うわけです。  そこで、米側からは労務費及び施設費について具体的にどのような要請が出されているのか、お伺いいたします。
  410. 亘理彰

    ○亘理政府委員 先ほどもお答えしているわけでございますが、私ども、米軍の駐留が円滑に行われるようにできるだけの協力はしたいという考えを持っておりますけれども、現在の段階で米側から何らか具体的な要求とか要請とかが出されたという事実はないわけでございます。  なお、いま四月四日のラビング司令官が丸山次官を訪問したときの新聞報道についてお話がございましたが、そのときは実は私も同席いたしたのでございますが、これは全く表敬訪問ということで雑談に終始いたしまして、そういう話は出なかったというのが事実でございます。
  411. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 新聞報道でいろいろなことが書かれる。聞くと、そういうことはなかった。新聞記者の人がそういう自分の想像記事、それをここまでつくって書くということはちょっと考えられないことだと思うのです。やはり取材をされて書かれていると思うわけで、われわれからすれば、そういうことはなかった、なかったと言われるわけですけれども、そうしますと、国民に実態が隠されているというような疑惑を持たざるを得ない。そういう意味で、こういう問題ですから、できる限り明らかにするという態度で答弁していただきたいと思うわけです。  施設費の負担につきましては、昭和四十八年の三月十三日の衆議院予算委員会で当時の大平外務大臣が、地位協定第二十四条の解釈については、「その運用につき、原則として代替の範囲を越える新築を含むことのないよう措置する所存であります。」こういう答弁があるわけです。ところがその答弁の数ヵ月後に、米軍施設費に関する外務省見解要旨というものを外務省で作成した。つくったことはこの国会でも外務省は認められているわけですけれども、この外務省見解は資料としては出せないんだというように言われているわけです。  そこで伺うのですけれども、「代替の範囲」についてどのような解釈をしているのか、この説明を求めたいと思います。新聞に出た見解と同じかどうかということも含めてお答え願いたいと思います。
  412. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほど上原先生からの御質問がありましてお答え申し上げたのでございますけれども、その四月十一日でしたか新聞に出ました外務省の見解なるものは、いま先生もお触れになりましたけれども、昭和四十八年当時の、大平答弁が出ました当時の数ヵ月後に岩国、三沢の施設の建設工事を行わなければならないという事態において、当時の国会答弁を踏まえて事務当局としてどういうことを考えたらよろしいかということをまとめて、それをたたき台として関係省庁にお諮りしたもの、こういうことでございまして、最近これを取りまとめたとかなんとかいうような書類ではないわけでございます。  そういう意味におきまして、いわば当時の必要をすでに満たした書類ということでございまして、そういう点で、これを改めて資料として提出するのは御容赦願いたいということを申し上げたわけでございます。  ただし、その中に別に特に秘匿しなければならないことがあるという意味ではございませんで、その大要は上原先生にもお答え申し上げたのでございますが、その四月の新聞でごらんいただくことで御理解いただけるところであるということを申し上げたわけでございます。  他方、大平答弁に関連する「代替の範囲」ということでございますけれども、私ども、大平答弁はいずれにせよ、リロケーションとか改修、改築との関連で、既存の施設、区域内で追加的な施設、区域の提供を行う場合の運用上の指針を述べたものと考えているわけでございますが、この大平答弁考え方というものは、いまたびたびお答え申し上げておりますように、これを変えるつもりはない。この大平答弁を踏まえ、地位協定の枠の中でこの問題に対処していくべきものである。ただし、いまの状況でアメリカ側から具体的な要求があるというわけではない。ただ、それを検討しなければならないという事態になるにおいては、地位協定の範囲内で大平答弁考えを踏まえながら対処していく、こういうことでございます。  なお、「代替の範囲」云々という御質問でございましたが、「代替」というのは私どもは、その代替さるべき建物の面積とか規模とかそういうようなものを基準にして考えていくべきものであろうと考えておりますけれども、いずれにしろ具体的に必要となる場合に、個々のケースにおいてその「代替の範囲」というものは検討されるべき問題ではなかろうかというふうに考えております。
  413. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そこで、大平答弁では「新築を含むことのないよう措置する」ということが書いてあるわけですけれども、改築となれば、古いやつを新しくしてやるということになるわけですけれども、そういうことも含むわけですか。
  414. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいま申し上げましたように、既存の施設、区域内でいまの改築の必要が生ずる場合に、改築によって新たに建設されるべき建物がその代替さるべき建物の範囲を出ないようにするというのが、大平答弁の重要なファクターであろうと考えております。したがいまして、代替さるべき建物の規模を超えないように処置をしていくということでございます。
  415. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 地位協定の二十四条では、結局「合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」、二項は除くわけですけれども、その経費は合衆国が負担する、こういう規定になっているわけです。老朽化したから改築ということで、新しく建ててやるというようなことになれば、本来米軍が軍隊を維持することに伴う経費ということになると、素直に読めば解釈できると思うのですけれども、改築ということによって古いものから新しいものになるというような場合、それも日本側が負担しなければならないという解釈を二十四条ではとっているわけですか。
  416. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 施設、区域の提供に当たるような改修、改築は、これは二十四条二項によりましてわが国がその負担に当たるべきものというふうに考えます。
  417. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 まとめて申しますと、大平答弁そのものが地位協定二十四条の解釈ということから見ますと、日本側に負担が重くなるような解釈をとっていると思うのですけれども、外務省はその運用について、原則として代替の範囲を超える新築を含まないとした大平答弁からもさらに日本側の負担を重くするような解釈をとっているんじゃないかというように考えるわけです。代替ということになれば、いままであるものと同じようなものをやるということで、そこに価値をふやすということまでは含まれないというのが常識だろうと思うのですけれども、この運用について、大平答弁からさらに態度を変えているんじゃないかと思うのですけれども、重ねてお伺いします。
  418. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ちょっと先生が地位協定の解釈ということをお触れになりましたので、念のため申し上げるわけでございますが、大平答弁は地位協定二十四条の解釈について述べたものというふうには私どもは考えておらないわけでございます。まさに大平答弁にございますように、二十四条の運用につきまして、原則として代替の範囲を超えないようにするということを言われたものであるわけでございます。そこでまさに大平答弁にありますように、代替の範囲を超えないようにするということでございますから、代替関係のある場合に、前の代替されるものの規模を超えないような処理をしていかなければならないということになるわけで、そのような方針で従来もやってまいりましたし、また今後も考えていくということになると思います。
  419. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 駐留経費問題について労務費の一部、六十億円を昨年から負担したということについては、私たちは地位協定にも違反するということで、これには反対してまいりました。というのは、これまで十七年間アメリカ側が当然のこととして負担してきた労務費の一部を日本側が肩がわりすることを決めたわけですけれども、今日またアメリカ側から駐留経費の負担の一つとして、労務費の負担増を非公式に求めてきていると報道では言われております。先ほどそういうこともないというような答弁だったんですけれども、労務費の負担増というような問題についての要請はあるのかどうか、あればその内容をお伺いします。
  420. 亘理彰

    ○亘理政府委員 先ほどお答えしたとおりでございまして、私どもはしょっちゅう米側とは接触しているわけでございます。その雑談の間に、円高でこの一年間で二割も上がって円が高くなっているわけでございますから、在日米軍の経理がやりくりが大変むずかしいとか、あるいは住宅が不足して困っておるとかというような話は聞いておるわけでございますが、米側の要請というような意味で具体的な要請なり要求なりを公式、非公式に受けているということは、いずれの面についてもないわけでございます。  それからなお、先ほど先生が仰せられましたが、これを秘密裏にやらないで、知らしむべきだという点は、私どもも当然そうあるべきだと思います。これは秘密にできることでないのでございまして、何らかの措置をとる場合には、予算措置を要するわけでございます。私どもは在日米軍の駐留を円滑化するためにできるだけの措置を考えろという指示を大臣からも受けておりまして、いろいろ検討を始めておりますが、これは関係省庁ともそれぞれ相談しまして、成案を得ました場合には予算に計上して、国会の御審議を受けるということになるわけでございまして、ないしょでこそこそやれるような話ではないわけでございます。
  421. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 予算に組むという段階の前にいろいろな交渉があれば、そういうことも明らかにすべきだということを言っているわけです。  そこで、日米の労務基本契約、これはやはり地位協定の二十四条に基礎を置くといいますか、これに関連してつくられたものだというふうに考えるわけですけれども、この基本契約の第四条の補償という条項、これは四月六日に改定されたということでありますけれども、改定以前の条項によりますと、労務関連費のうち十三項目についてアメリカ側が日本側に補償するということを決められていたわけであります。地位協定の二十四条でいいます合衆国軍隊を維持することに伴う経費、その中には、アメリカ側が要請しました労働者に関する経費、具体的には、この第四条に掲げられております十三項目の経費は本来全部含まれるというようにわれわれは解釈するのですけれども、そういう解釈は現在はとっていないのですか。
  422. 亘理彰

    ○亘理政府委員 すでに国会でも何度か申し上げておりまして、御承知のことと思いますが、労務問題につきましては、一昨年から日米間で協議を続けてきたわけでございます。その発端は、石油ショック以降の日本の賃金、物価の急騰とかあるいは米軍の海外駐留経費の削減等の影響もございまして、特に四十九、五十年度の駐留軍従業員の給与改定が非常に難航したわけでございます。私どもは、国家公務員と同時同率の給与改定を行うべきであるということで米側と折衝いたすわけでございますが、これが難航して、一般公務員に比べて、ときに実施がやっとまとまっても半年もおくれる、こういうふうな状態が続きまして、こういうことでは、労使関係の安定あるいは二万数千人の労務者の雇用の安定と、それから家族を含めた、これは十万人に近い人数になるわけでございますが、生活の確保ということに支障を来すということで、基本的にこの労務問題を相互に協議しよう、こういうことで一昨年から協議をして、そうして昨年の末に合意したわけでございます。  合意した内容は、これもすでに御承知のとおり、社会保険の保険料の事業主負担金とかあるいは健康診断費とかのいわゆる法定福利費、それから福利厚生費とか褒賞とか災害見舞金とか制服とかのいわゆる任意福利費、それから県の労務管理事務所の人件事務費等にかかわります労務管理費、この三つの項目でございますが、これは五十三年度ベースで約六十一億円、これを五十三年度から日本側で負担をするということで合意に達したわけでございます。  その場合に給与改定の問題については、昨年末の合意で、まず五十二年度の給与改定については、給与その他の労働条件を切り下げることなく、公務員と同時同率で実施する、また、この五十二年度以降の給与改定についてもこれと同様の考慮を払って実施するように努力するということで同意を得たわけでございます。  そこで、この負担につきましては、五十二年度の基本労務契約までは米側の負担になっておるわけでございますが、五十三年度からそういうことで予算措置も行われましたので、五十二年度の基本労務契約においては、その趣旨に沿いまして、社会保険料、これは五十二年度の労務契約で言えば四条の項であります。それからd項の児童手当拠出金、f項の保健及び医務費、それからg項の安全及び衛生費、h項の褒賞費、j項の宿舎費、k項の従業員の福利費、それからi項の管理費、これらは日本側の負担とする、その他の経費については従来どおり米側において負担するということにいたしたわけでございます。  これは、私どもは日米間の労務問題、一昨年から交渉に入りますときに、双方の合意で、あくまで現行地位協定の枠内で何をなし得るかということで考えてきたわけでございまして、現行地位協定の規定を逸脱するものであるというふうには考えていない次第でございます。
  423. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、要するに、改定以前の四条に掲げられていたうちの、いま言われました部分は、地位協定上合衆国軍隊を維持することに伴う経費には入らないというような解釈をとられたのか。とられたとすれば、その根拠をお伺いしたいと思います。
  424. 亘理彰

    ○亘理政府委員 ただいま申し上げましたとおり、地位協定二十四条一項の経費には該当しないというふうに考えられるわけであります。  地位協定二十四条一項で米国が負担すべき合衆国軍隊を維持することに伴う経費というものに該当するものは、在日米軍がその任務を遂行します上で一般に労働力を使用するのに直接必要とする経費であるということ、抽象的に申せばそういうことであると考えるわけでございますが、五十三年度から日本側で負担することになりました福利関係の経費あるいは労務管理費は、これらに該当しないというふうに解しておるわけでございます。  私自身がこの駐留軍従業員の雇用主の立場にあるわけでございまして、こういう日米間協議を続けまして、そして予算措置をお願いしたそもそもの気持ちは、あくまでこの駐留軍従業員の雇用と生活の確保を図る、これを安定した基盤の上に置く、こういう気持ちで地位協定の枠内において折衝をし、予算化をお願いし、これが成立しておるというふうになっておるわけでございます。
  425. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 政府が負担することになりましたこの社会保険料を初めもろもろのもの、これは一般的に言えば使用者が負担しなければならない性質のものがやはり列挙されていると思うわけです。改定されたものを見ておりませんけれども、いままでの、改定以前のものを見てみますと、労働基本契約の前文においても、日本の法令に従うということやあるいは労働者の基本的人権を尊重するということがうたわれております。間接雇用という特殊な形をとっているわけですけれども、実際の使用者は米軍ということになるわけで、使用者が労働者の人権を尊重する雇用関係を確立するということは、現代においては当然なことであって、これらの経費も、労働者を使用するときは当然負担しなければならない経費であると考えるわけです。  特に地位協定が「維持することに伴うすべての経費」ということを書いているわけですから、この米軍を維持することに伴う経費の中にはやはり管理費まで含めて入るというのが当然ではないかと思うのですけれども、そういう解釈をとらないということはわれわれから見れば非常に遺憾に思うわけです。そこで、地位協定の二十四条との関係で、防衛施設庁の解釈から見ても、基本給や諸手当は二十四条の中に入るということになると思いますけれども、その点の御確認をいただきたいと思います。
  426. 亘理彰

    ○亘理政府委員 昨年末の合意では、先ほど申し上げましたように法定福利費及び任意福利費並びに管理費を日本側で負担することとしたわけでございまして、本年度の基本労務契約上は、基本給、諸手当は引き続き米側が負担することになっておることは当然でございます。  地位協定二十四条につきましては、先ほども申し上げましたように、合衆国軍隊を維持することに伴う経費に該当するものは何かということでございますが、これは私どもは在日米軍がその任務を遂行する上で一般に労働力を使用するのに直接必要とする経費だ、こういうふうに考えております。ただ、個々の経費がこれにどう当たるかどうかということについては、そのそれぞれの経費の性格に即して判断すべきものであると考えますが、現在の段階では昨年末の合意以上の検討はいたしていない次第でございます。
  427. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では具体的に聞きますけれども、基本給それから諸手当、これは在日米軍を維持することに伴う経費に入るんですか、入らないんですか。それからもう一つは、eの旅費及び従業員の輸送費、これは米側が負担するということになっているようですが、この三つ、一つずつ答えていただきたいと思います。
  428. 亘理彰

    ○亘理政府委員 私どもは日米間の協議によりまして何らかの措置をとる必要があるということであれば、これが地位協定に照らしてどうであるかということを検討いたさなければならないわけでございますが、ただいま仰せになった経費については現在までの段階でその必要を生じておりませんので、この点について検討はいたしておらない。したがって、公式にお答えすることは現在の段階では控えたいと存じます。
  429. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 これは四月二十日の参議院社会労働委員会でのわが党の山中議員の質問に対する答弁ですけれども、直接経費ということが問題になるわけですけれども、「日本政府といたしましては、労働基準法第十一条に定めます賃金等でございますが、それが日本の労働力を使用するために直接的に必要な経費、それは労働基準法の第十一条に該当する経費かと思う次第でございます。」という菊池政府委員答弁があるわけです。そしてまた「駐留軍従業員に対しましては諸般の手当のほかに退職金とかいろいろほかの給付がございます。ただ、私がいま申し上げましたのは、いわゆる労働基準法十一条に定める経費以外の経費といたしまして、法定福利費、任意福利費、管理費を持つことにしたということでございます。」これは社会労働委員会での政府側の答弁ですけれども、そういう点から考えてみまして、日本の労働者を米軍が雇用するというような場合に、それが米軍を維持するために必要な労働者という場合に、その労働者に支払われる賃金、これは維持に伴う経費ということになるのが当然だと思うのですけれども、その点どうしても認められないわけですか。
  430. 亘理彰

    ○亘理政府委員 先ほど来申し上げているとおりでございまして、私どもは具体的な経費について地位協定に抵触するか否かという問題が生じましたときにこれを検討するということでありますので、いまそういう問題を具体的に生じていない段階で具体的な検討をいたしていないので、軽々にお答えすることは控えさせていただきたいと思います。
  431. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、アメリカ側から要請があった場合には、将来の問題ですよ、基本給も諸手当も、そういうことまで日本が負担することがあり得るということになりますか。
  432. 亘理彰

    ○亘理政府委員 私ば決してそういうことを申し上げたつもりではないわけでございまして、現在そういう具体的な要請も出ておらないということで、特に現在の段階で問題となっていない。したがって検討していないということで、こういう公式の場でお答えするだけの準備はないということでございます。
  433. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 地位協定の二十四条には、いままで政府国会で言っておりますような直接とか間接とか区別された経費、そういうことを書いてないわけです。また労働者の賃金というようなことも書いてはいない。それをいままでの政府答弁を見てみますと、直接経費、間接経費と分けたり、あるいはその賃金に相当する部分だ、こう言ってみたりいろいろ言われているわけですけれども、この「合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、」二項を除いては「合衆国が負担することが合意される。」ということが書いてあるわけで、しかもこの地位協定に基づいて過去十七年間ずっと支払ってきた事実があるということは、動かせない事実があるわけです。  そうしてきたことから言いますと、いままで米軍が払ってきたもの、これ自身がやはり維持することに伴う経費の中に入るという当事者の合意があった。そういう合意のもとに十七年間続けられてきたのだと考えるわけであります。その合意があって、しかも十七年間という長い期間続いているにもかかわらず、今日アメリカ側の要請があればそれらも考えなければならないというような態度、これは地位協定について日本側の負担を重くするというような結果になるわけであって、まことに遺憾な態度をとっておられるというように考えるわけです。この点私はむしろ、そういう屈辱的な考え方、こうしたものに対して抗議の意思を表明したいと思いますが、言うことがあれば聞いておきたいと思います。
  434. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来る八日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十分散会