○今村(久)
政府委員 お答えいたします。
ただいま労働
基本権の制限と
定年制の
関係についての御
指摘が一つございましたが、私ども、
定年制の
関係につきましての
規定につきまして、過去の経緯をずっと調べてございますが、これによりますと、
日本の場合は一般の
国家公務員につきましては従前から
定年制というものはございませんで、
定年制の設けられておりますのは、裁判官とか検察官とかあるいは大学の教授というような
関係の方々でございます。したがいまして、従前の官吏
制度あるいは公務員
制度の中で、一般の
国家公務員について
定年制の
規定が設けられたという時期は一回もございません。一方の争議行為の禁止
関係についての
規定は、これは当初の
国家公務員法、これは昭和二十二年の制定でございますが、当初の
国家公務員法の
規定の中には、一般職の
国家公務員についての争議行為の禁止
規定というものはなかったわけでございます。昭和二十三年の十二月三日に
国家公務員法の改正がございまして、そのときに一般職の
国家公務員について争議行為の禁止
規定というのが挿入されたわけでございます。したがいまして、争議行為の禁止
規定に関しましては、従前の法制上に
変化があったということがございますけれども、
定年制の
関係については
変化がなかったということでございますので、この両者の間に関連があるというふうには
考えられないというのが私どもの
考え方でございます。
それから第二点の、現在の
定年制の検討
状況はどうかという御質問でございますが、この点につきましては二月の三日でございますか、
総理府の方から
人事院総裁あてに書簡でもって
人事院の見解を求めたいという旨の文書を受領いたしました。私ども第三者
機関でございますので、専門的独立
機関という独自の
立場で従前から
定年制問題ということにつきましては基礎的な研究は続けてまいっておるわけでございますが、なお昨年あたりから大変
定年制問題というのが世上をにぎわしておりますので、私どもとしましても、そうした時代の条件ということを
考えながら研究の度合いを深めておったわけでございます。
現在の段階では、この問題が大変根の深い問題であるということは従前の研究でわかっておるわけでございます。まず
根本的に言いますと、先ほど御
指摘がありましたように、職員の身分保障に関する問題であるということで、これは公務員
制度の
基本にかかわる問題であろうという認識を持っております。したがいまして、この問題につきましては、法律で
規定さるべき
事項であって、立法措置というものが必要である
事項であろうということが一つございます。
それからこれがまた非常にむずかしい問題をはらんでおりますのは、現在退職勧奨という実態があるわけでございまして、これが高齢者の離職策として現に各
省庁で行われておるわけでございますが、その退職勧奨の
実情というものにつきましては、現在いろいろと調べておりますけれども、いままで聞いたところでは、各
省庁別に、あるいは職種別に、あるいは役職段階別にいろいろとまちまちであるというような話でございました。したがいまして、それをどういうふうに整合的なものにしていくかという問題が一つあるわけでございます。
それから
国家公務員の職員の年齢構成の特殊性という問題が一つございまして、簡単に申し上げますと、戦後に大量の
国家公務員を採用したものでございますから、その年齢層の方がいま四十八、九歳あたりのところで大変多人数の層をなしておるわけでございます。これらの方々が今後だんだん高齢化していくという
状況があるわけでございまして、これらの方々に対する
人事管理というのは、当面
人事担当者の一番頭の痛い問題になっておるわけでございます。したがいまして、これらの多人数の職員を抱えている年齢層、それが高齢化していくという
状況に関連しての
定年制の問題、これをどう
考えるべきかというのは、これまた現実の問題として非常にむずかしい問題でございます。したがいまして、そういうことも十分慎重に配慮しながらこの問題を
考えていかなければいかぬということで、これも検討しております。
それから
基本的に言いますと、
定年制の問題というのは、大体高齢者の離職を促進する手段として、いわば能率上の
人事管理策ということで出ておるわけでございますが、近年は御
承知のように非常に高齢化社会という
状況が出てまいりまして、そこで高齢者の雇用の安定という要請も社会的な要請として一方に出てまいっておるわけでございます。したがいまして、こうした高齢者の離職の促進の
関係とそれから雇用の安定の
関係と、こういうものの調整の問題というのは、ちょっと大げさな言い方をしますれば一つの
国民的な課題になるようなこれからの大きな問題であろうというふうに認識しております。
したがいまして、こういう点に関連しまして総合的な検討をしなければいかぬ、しかもそれは長期的な展望を持たなければいかぬということでございますので、問題が大変多面多岐にわたっておりますから、私どもきめの細かい検討をしたいということで、目下検討中という
状況でございます。