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杉浦政府委員 お答え申し上げます。
こういう
研究につきまして、実は
研究所側とは非常に頻繁に意見の交換をやっておるわけでございますが、もちろん
基礎研究が大事であるか、あるいは
目的研究が大事であるか、こういう
一般論になりますと、どちらに
重点を置いているというのをはっきりすることは非常にむずかしい問題がございまして、
基礎研究の中から新しい
金属の
創製というようなことが生まれてまいりますし、そうかといいまして、何の
目的もなしに
ただ研究をやっておるということになりますと、
国立研究機関としてその
任務が全うできるかどうかというような問題もございまして、いろいろと
基礎部門と
目的指向部分につきまして議論をやりながら進めておりますが、新しい
分野と申しますのは、
先ほども申し上げましたけれども、たとえて言いますと、
核融合の問題というのが現在これから非常に
推進されると思います。
その間に、
金属材料研究所としては一体どういう
役割りを果たすべきかということを考えますと、やはりこれに対して対応の
姿勢というのはとっておくべきである。非常に
つけ焼き刃で恐縮でございますけれども、たとえば
核融合ということになりますと、プラズマの
温度が一億度ぐらいになる。そういったものの壁面に五、六百度といいますか、数百度の熱に耐える
炉壁が要る。こういった場合に、非常に軽量で強い
炉壁というものをどうやってつくるかというような
研究を続けておるわけでございます。
そのほかに、たとえば
先ほども申し上げましたが、
海洋開発につきましては、恐らく二千メートルから六千メートルというような非常に深海に入っていく
調査船の建造が要求されると思いますけれども、そういった場合の
金属のあり方といいますか、新しい
材料を創出をしていきたいということでございますし、いままで実は高性能の超
伝導材料というものを
開発したと言われておりまして、これは
温度でいいますと、絶対零度に近づいてきますと
電気抵抗がゼロになってくるということを発見したということで、これはバナジウム3・ガリウムというのだそうですか、この新しい超
伝導材料というものを発見いたしまして、これが多大の
貢献が期待されて、
研究者は
恩賜発明賞をいただいたというようなこともございますけれども、こういった
電気抵抗ゼロということになりますと、将来のいわゆる送電の問題なりあるいは
エネルギーの問題に大きく役に立つのじゃないかというふうに考えております。
こういった
研究成果につきましては、すでにいろいろな会社で
工業化を実現しようということでやっておりますし、それからいわゆる超
伝導のマグネットといいますか、これは
通産省の方でMHDという発電の方式をいま
電子技術総合研究所でもって
研究をしておられますが、そういった非常に強力な磁石をつくるときにもやはりこういった
金属が大いに役に立つというようなことでございまして、恐らく将来どういう
科学技術の
プロジェクトが出てくるのか予測もつきませんけれども、現実の段階でそういった要請された
プロジェクトにつきましては、いち早くこれに対応していこうという
姿勢でやらせていただいておるわけです。
それから
研究成果といたしまして、実例を挙げて
説明をするように御指示がございましたが、たとえば
金属材料研究所では、
粉末による
金属の
加工法というようなことを
開発いたしまして、これは
金属を一
たん液状にいたしまして、
液状にする
方法も
発明したようですが、そういったものを
液状にして
粉末をつくる、そしてその
粉末から非常に複雑な形をした
加工品、普通の場合ですとなかなか切削だとかそういった
加工ができないものを、
一つの
加工の
方法をもちましてつくりまして、それでいろいろな
需要に応ずる、たとえば現在いろいろな機械がございますが、そういった
構造の
部品だとかあるいは
高速度工具鋼というようなものがございますが、そういったメーカーに供給をされております。
自動車工業における歯車だとかあるいは軸受けといったものの量産のコストを下げるというようなことに役立っておりますし、それからわれわれの身近なものでありますと、扇風機だとか
電気洗たく機なんかの
部品につきましても、その
粉末冶金の
発明の結果、注油の労がなくなってきたというようなことで、目に見えないところで非常に大きな
貢献をしているのではなかろうか、こういうふうに考えております。
それからさらに、
連続製鋼技術というようなこともやっておりまして、これはむしろスクラップその他を炉に入れまして連続的にまたもとの鋼に戻していくというような
方法も
研究しているようでございまして、これなどできますと、やはり
エネルギー面、
資源面で大きな
貢献がされるのじゃないかというふうに思っております。したがいまして、こういった目に見えて余りはでな
目的ばかりを追求していく
姿勢というのは
科学技術の
研究にとりまして問題であるというような御
指摘がある場合も恐らくあるかと思いますけれども、われわれとしましては、
国立研究所としてそういった
目的研究というものに
重点を置いて運営をさせていただきたい、こういうふうに考えております。