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1978-03-24 第84回国会 衆議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十四日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君   理事 小宮山重四郎君 理事 高鳥  修君    理事 藤尾 正行君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    小島 静馬君       関谷 勝嗣君    竹下  登君       玉生 孝久君    塚原 俊平君       福田  一君    阿部喜男君       上田 卓三君    木原  実君       山花 貞夫君    新井 彬之君       市川 雄一君    柴田 睦夫君       甘利  正君    中川 秀直君  出席国務大臣         法 務 大 臣 瀬戸山三男君  出席政府委員         人事院事務総局         任用局長    今村 久明君         人事院事務総局         職員局長    金井 八郎君         法務大臣官房長 前田  宏君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省矯正局長 石原 一彦君         法務省人権擁護         局長      鬼塚賢太郎君         法務省入国管理         局長      吉田 長雄君         運輸省航空局次         長       松本  操君  委員外出席者         警察庁警備局公         安第二課長   渡辺 善門君         国土庁土地局国         土調査課長   高田 徳博君         外務大臣官房儀         典官      松村慶次郎君         外務省アジア局         北東アジア課長 佐藤 嘉恭君         大蔵省理財局国         有財産第一課長 秋山 雅保君         文部省大学局高         等教育計画課長 阿部 充夫君         厚生省児童家庭         局児童手当課長 加藤 栄一君         建設省住宅局住         宅総務課長   川合 宏之君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   橋本 忠正君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   木原  実君     高沢 寅男君   安井 吉典君     阿部喜男君   中川 秀直君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君     安井 吉典君   高沢 寅男君     木原  実君   甘利  正君     田川 誠一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  参考人出頭要求に関する件  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三号)      ————◇—————
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  行政機構並びにその運営の実情を調査のため北海道に委員派遣いたしたいと存じます。つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣の日時、派遣委員人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  5. 始関伊平

    始関委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  法務省設置法の一部を改正する法律案審査のため、本日、日本放送協会専務理事橋本忠正君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人からの御意見質疑応答をもってお聞きすることにいたしたいと存じますので、さよう御了承願います。      ————◇—————
  7. 始関伊平

    始関委員長 法務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  8. 上田卓三

    上田委員 ことしは、世界人権宣言が採択されまして三十年に当たる記念すべき年でもあるわけであります。人権擁護は今日世界の何人も否定しがたい大きな世論となっておるわけでありまして、国際社会はすでに十八の国際人権条約を成立させているところであります。日本政府はわずかにそのうち二つの条約批准したにすぎず、内外世論の厳しい糾弾、批判にさらされているところであります。昨日も、この場所におきまして外務大臣に私は国際人権規約の今国会批准を強く迫ったわけでありまして、外務大臣も何とかして今国会にこの人権規約批准、成立を図りたいということで鋭意努力中だ、こういう答弁をいただいたところでございます。しかしながら、この国際人権規約以外にもいわゆる十四の国際人権条約というものがあるわけでございますから、ぜひともやはりこの差別をなくする人権擁護という立場法務省がこの先頭に立って外務省十分連絡をとり、もってこの残された人権条約についても早期批准のために努力していただきたい、このように思うわけであります。わが国人権後進国にならないためにも、法務大臣努力というものを期待いたすところでございます。  得に国際人権規約というのは内外人平等という、そういう外国人に対する差別を撤廃するということが基本理念のようでございまして、そういう意味でこの人権規約と非常に関連の深いところの、あるいはさらにその精神を、いわゆる内外人平等という精神を徹底したところのあらゆる形態人種差別撤廃に関する国際条約というものが一九六五年国連で採択されて、一九六九年一月四日から効力を発生いたしておるわけであります。現在、この条約につきまして九十七ヵ国で批准されているのが現状でありまして、この条約について速やかに批准するということが大事だ、このように思うわけでございますので、法務大臣の考え方というものを、まず明らかにしていただきたいと思います。
  9. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 国際人権宣言、それに伴う国際人権規約、これについては政府といたしましてはできるだけ早く承認手続をとりたい、批准手続をとりたい、こういうことでたびたび申し上げておりますけれども、いま鋭意努力をしておる。何とかこの国会に間に合うように提出をいたしたい、こういう構えでおります。  申し上げるまでもないことでございますが、人権問題は当然に大事な問題であります。人権規約は御承知のとおり、非常に多岐にわたって国内法にいろいろな関係がありますから、そういうものの調整等についてやや時間がかかっておる、こういう状況でありますが、できればこの国会に間に合わせたい、こういうことで準備を進めておるわけでありますが、今後とも努力をしたい、かように考えております。
  10. 上田卓三

    上田委員 答弁漏れがあるわけですけれども、その他国際人権規約以外に十四の人権に関する国際条約があるわけでありまして、その中でもとりわけ人種差別撤廃のそういう条約もあるわけですから、特にそういう意味で、国際人権規約批准されるということになりますと、すぐさまこれらの他の人権条約批准ということが大きな問題になりますので、こういうものについての決意というものを聞かせていただきたい、こういうように申し上げた次第です。
  11. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 ただいま大臣が申されましたように、人権のことは非常に大切なことでございますので、まず国際人権規約批准ということについて、その早期批准を目指しまして努力しているわけでございますが、おっしゃるようないろいろな条約がございまして、これについても重大な関心を持っておりまして、人権が守られるように、おっしゃいますように日本人権において国際的にも認められる国であることをはっきりさせるために、鋭意努力したいと考えておるわけでございます。
  12. 上田卓三

    上田委員 質問に正しく答えていただきたいと思うのです。国際人権規約については、今国会批准を期すということで約束をいただいておるわけでありますから、それを踏まえて私は国際人権規約というものを申し上げておるわけですし、とりわけ国際人権規約が内外人平等、いわゆる人種差別を撤廃するということでありますから、そういう意味で他の条約の中に人種差別を撤廃する国際条約があるわけでありますので、すぐさまこの問題について取り組んでいただきたい。きのうも外務大臣に申し上げたのですけれども、とりわけこの条約仮訳すらも——あと十四の多くが仮訳もできてないという状況でありますから、ぜひともひとつ法務省においても、外務省に対して督励をし、また法務省みずからの課題として取り組んでいただきたい、こういうことでありますから、これから以後私の質問に十分に耳を傾けていただいて、的確に答えていただきたい、このように思うわけであります。その点で、法務大臣においては、この人権擁護というものは非常に大事であるという立場から、その他の条約についても即刻やっていただけるものだという解釈で、この問題についてはその程度にしておきたい、このように思うわけであります。  次に、私たち社会党、また私が所属しておりますところの部落解放同盟においても、一貫して憲法第十四条に立脚したところの法のもとでの平等、差別撤廃という立場から、わが国においていわゆる人権擁護基本法というものをやはり確立すべきではないか、あるいは差別撤廃法と言われるようなものも必要ではないかということで要求してきたところでございます。特に今日の人権擁護制度の抜本的な強化を再三再四政府に求めてきておるわけであります。  特にいま問題になっております部落地名総鑑に代表される差別事件の増加と悪質化に対抗したところの緊急かつ不可欠な対策が必要ではないか、このように思うわけであります。十二年前の同和対策審議会答申は、現行の人権擁護制度の抜本的洗い直しと新たな制度の樹立を求めておるわけでありまして、そういう点で、それらのいわゆる抜本的な洗い直しについての現在の作業というものが一体どうなっておるのかをお聞きしたいと思います。
  13. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 答申に、御指摘のような抜本的策をすべきであるということがうたわれておりますことは十分承知しておるわけでございます。恐らく当時の政府といたしましては、その点十分検討いたしまして、そしてさしあたりは啓発活動強化という線で現在の同特法がつくられて運用されてまいったというふうに思うわけでございます。  いわゆる地名鑑事件等の非常に悪質な差別図書発行事件が発生いたしまして、従来の方法だけでは差別解消に足りないのではないかということで、やはり何らかの法的規制が必要ではないかという考えになりまして、ただいまいろいろとその点について検討しているわけでございます。どのような事象を規制の対象としたらよいか、それからまた、規制の具体的な方法はどのようにしたらよいかというような点を中心にいたしまして、これにかかわるいろいろ困難な問題はいっぱいあるのでございますけれども、その問題点検討いたしまして、関係機関と連絡とりながら、これら諸問題についての資料の収集とか分析とか、その他の必要な検討をいま続けているわけでございます。
  14. 上田卓三

    上田委員 私はいわゆる部落地名総鑑に代表される悪質な差別事件に対して、その法的規制も含めてどうするのかということについてこの後申し上げようというふうに思っておったのですけれども、先にお答えいただいたようでございますので、その分に先に入って質問させていただきたい、このように思うわけであります。  御存じのように、この部落地名総鑑というものは第一から第七まで現在出ておるわけでございまして、この真相の究明糾弾というものは、部落解放同盟中心にして行われてきたということは御存じのことだ、こういうように思うわけであります。そういう点で政府のこれに対する対処というものは後手後手に回って、解放同盟糾弾の後追いをしていると言ってしかりだろう、私はこういうように思っておるわけであります。  特にこの第七の地名総鑑に至っては、第一の地名総鑑以後国会でも大きく取り上げられておるさなかに第七が作成されて、販売されるというような政府なりあるいはわれわれの国民運動をあざ笑うがごとくのそういう悪質なものであるということも先刻御承知のことだろう、こういうように思うわけであります。特に作成者あるいは購入者のいわゆる興信所探偵社と言われるものが、われわれのそういう調査協力といいますか、そういうものに対して今日まで拒否しているというような状況になるわけでありますから、そういう点で大臣は、法的規制もいま検討中ということでありますが、私から言いたいのは、今後第八あるいは第九といったようなこういう地名総鑑が絶対あらわれない、出てこないという確信が持てますか、約束国民にできますか、そのことをまず決意というものを大臣からお聞かせいただきたいと思うのです。
  15. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 地名総鑑というような名称の差別につながるようなあるいは差別に利用されるようなこういう書籍が出ておることは、まことに遺憾でございます。上田さん御承知のとおりに、現在人権関係措置行政措置でありまして、いわゆる公権力をもって強制的に措置をするという制度ではございません。しかし、ああいう悪質なものが続いて出版されるあるいは販売されるということはきわめて遺憾でありまして、現状だけではこれを強力に措置することが不可能な状態にあるわけでございます。そこで何らかの法的規制をこの面についてはしなければならぬのじゃないか、そうしなければ、まあ物事、絶滅確信するかと言われると、なかなかこの問題だけではなくて、絶滅ということはこの複雑な社会では困難でありますけれども一、しかし何らかの強制力を持った根拠がなければできないことになっておりますので、これを検討しておるわけでございます。  ただ御承知のとおりに、この面だけとりますと簡単のようでございますが、言論、出版等憲法上の自由権があるわけでございますから、どういう形態のもの、どの程度のどの段階でこれに法的規制を加えるか、そう簡単でない。きわめて慎重に検討すべき問題がありますから、目下それを進めておるわけでございます。  おっしゃるように今後絶対ないと確信するか、そう言われますと、いま申し上げてみたように、この社会現象の中で一法務大臣確信だけではこれは済まない、かように考えておるわけでございます。
  16. 上田卓三

    上田委員 大臣、やはり地名総鑑に代表されるこの事件が起こってかれこれ三年、国会でもしばしば取り上げられてきておるわけでありますから、この地名総鑑によって多くの方々差別のために苦しみ、また自殺にまで追い込まれる、あるいは就職において、結婚において不当な扱いを受けるという事態が起こっておるわけでありますから、もう二度とこの第八、第九というような地名総鑑があらわれないように万全の措置をとるという、私はそういう重大な決意をいただきたかったのでありまして、そういう最善の措置をとったにもかかわらず、また起こるという問題はこれまた別の問題だ、こういうように思っておるわけでありますから、そういう点でやはり法的措置検討と言っているのですから、早急にこの問題を私は結論を出して国会に提出していただきたい、このように思いますので、その点についてお答えをいただきたいと思うわけであります。  特にそれに関連して言いたい問題は、いわゆる興信所とかあるいは探偵社のそういう周辺といいますか、私たちもつき合いがあるわけでございますが、その中ではっきりしたことは、そういう業界内では、ほとんどのそういう興信所とか探偵社がたとえば「日本部落」であるとかあるいは部落人名リストの少なくとも二種類は最低限常備しておるのではないかということがもっぱらのうわさになっておるわけですね。これらの地名総鑑が回収されたにもかかわらず、いまなおそういう業界探偵社興信所などに常備されている。これはもう人目に触れないところで、ある重要な責任者が金庫にしまって管理をしておるんだ、それらがそういう意味では非常に希少価値になっているんだということを聞いておるわけでありまして、そういう点で本当にわれわれとしてはもう断腸の思いでおるわけでございます。われわれのそういうものに対する糾弾といいますか、追及の中でもそれらの興信所方々は、なぜ自分のところだけ追及するのか、あるいは持ってなければ商売にならぬではないか、これは業界常識だ、こういうようにうそぶくような状況であるわけでありまして、差別を商いにしていることは疑問の余地はない、こう言ってもいいのではないか、このように思うわけであります。そういう点で依頼人に対する興信所側差別情報提供も証拠に残らぬように口頭報告と、手口も一段と巧妙に悪質化しておるわけであります。  そういう点で、この興信所なりあるいは探偵社の多くが犯罪的差別図書を常備しているという事実を徹底的に調査してもらいたいし、わかっているなら私はそう御報告をいただきたい、こういうように思うのですが、この点については今後とも徹底して追及するということを申し添えて、この関係の方の御答弁をいただきたいと思うのです。
  17. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 興信所の問題につきましては、御指摘のように、このたびの地名鑑等事件に深くかかわりを持っておりまして、いろいろと問題があるというふうに感じております。ただ興信所実態というものが、これが大きい組織もございますが、大部分が何か個人でやっているのが多くて、非常にその実態を把握しにくい面がございますので、ただいま人権擁護局といたしましては実態の把握に非常に努めておりまして、その問題点を把握しようとしているわけでございます。
  18. 上田卓三

    上田委員 いずれにいたしましても、このことがいずれ明らかになっていくだろうというように思いますし、そういう点でそれが発覚してからあわてふためくということじゃなしに、法務省として徹底的に、こういう業界内ではもう常識になっているということでもありますし、そのことによって多くの犠牲者が出ているということでありますから、私は特に、この業界内でもまじめな方々もおるわけでありまして、この監督官庁がないということはおかしいではないかということから、やはり一定法規制をしてもらうべきだ、われわれも生業としてこれはやっていっているんだからということで、去年も私は国会で取り上げたんですけれども、アメリカなどでは探偵法というような法律があって、それの業界指導というのですか、業界自身の自粛というのですか、そういうものもあるわけでありますので、そういう特に悪質なものを取り締まるという意味で、そういう法的取り締まりというのですか、差別的なものを取り締まるということだけじゃなしに、業界自身一定指導をするところの法律というものがあってしかるべきだ、こういうように思うわけであります。  特にそういう悪質なものも含めて、私はこの内閣委員会なりあるいは法務委員会、私は内閣委員会に所属しておるわけですから、内閣委員長にお願いしたいわけでありますけれども、そういう差別図書の常備の実態究明あるいは業界法的規制地位向上について検討機会を持つという意味で、ぜひともそういう関係者参考人としてこの委員会に呼んで究明機会を与えていただきたい、これは委員長に特にお願いをしておきたい、こういうように思うわけであります。  そこで私は次に問題にしたいことは、こういう興信所とか探偵社で実に多種多様な差別図書が使用されておるということでありますが、これだけ膨大ないわゆるネタというものを持っているのは、私はもうどう考えてもこのネタ提供者というものは政府関係筋しかない、こういうふうに断定せざるを得ないわけでありまして、そういう点でこれらのネタのいわゆる解明がどこまで進んでおるのか、それを本当にやる気があるのかどうかということも含めてひとつお答えをいただきたい、このように思います。
  19. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 それでは御通告のございました地名鑑等事件調査のその後の状況について、ここで御報告させていただきたいと思います。  昨年……
  20. 上田卓三

    上田委員 ちょっと、その問題について非常に長くなるんじゃないかと思いますので、そのことも含みまして、ここにパンフにしておるわけですので、できましたら、法務省にこれは差し上げますから、ここで空白になっている部分はまだ究明されていない部分でございますので、ぜひとも追ってこの空白を埋めるという意味でひとつ資料提供願いたいと思うのですけれども、そういうことでひとつお答えいただきたいと思います。法務省究明しなければならない問題で残っている問題です。
  21. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 それでは一応御希望の御趣旨に従いまして口頭で簡単に御説明いたしまして、そしてあと委員会の御要求がございましたら、資料提供するということにさせていただきたいと思います。  まずこの表の第一でございますが、「人事極秘部落地名総鑑」これの未回収五十四という数字が挙げてございます。このうち五十二部につきましては、ここにも書いてございますが、「五十二−坪田焼却」これがまだ不確定でございましたけれども、その後の調査によりましてこれは発行者坪田が焼却したものというふうに認定いたしております。  それから第二の、これは労政問題研究所発行の「全国特殊部落リスト」でございますが、これの発行者と思われます北沢、加藤という、これが仮名でございまして、実在しておりません。そういうことで、実際の発行者がだれであるかという点を鋭意調査中なのでございますが、この点につきましては、労政問題研究所関係があったと思われますあらゆる人物の情報を集めまして、その一つ一つについて鋭意現在探索中でございます。  それから第三と第四のリストで、これは発行者が同じでございまして、一人は鈴木守立、一人は田中靖造でございますが、この三番目のところに書いてございますように鈴木守立はすでに死亡しております。残っている田中靖造、これが接触はできなかったのでございますけれども、これは鋭意関係法務局で探索しました結果、最近接触することができましたので、引き続き調査中でございます。  それから第五の労政経済研究会発行の「日本部落関係でございますが、これも発行者が姿をくらましまして所在不明でございますので、これも先ほどのと同様に、現在この発行者を把握するため根気強く周辺調査を行っております。  それから第六の関係で、これはサンライズリサーチセンター販売の「特別調査報告書関係でございますが、これは印刷部数が不明なのでございますけれども、これは発行者鈴木守立先ほども申しましたようにすでに死亡しておりまして、その関係印刷部数調査不能でございますが、その他の点については全部解明されております。  それから第七の本田秘密探偵社発行得分布地名」、いわゆる本田リストと言われておるものでございますが、これは発行者本田治でわかっておるのでございますけれども、当初非協力でございました。しかし、根気強く説得いたしまして、最近はかたくなな態度が改まりつつありますので、引き続き調査しておる次第でございます。  それから購入企業について従来調査中でございましたけれども、勧告、説示の処理をしたもの、それからまた近日中処理予定のものがございますので、その点について御報告させていただきたいと思います。(上田委員「それは書面で」と呼ぶ)それでは、それは書面でやらしていただきます。
  22. 上田卓三

    上田委員 いずれにしましても、このような差別図書というものは、これはこの差別によってとうとい生命が絶たれるという事例が枚挙にいとまがないわけでありますから、そういう意味で凶器だと私は思うのです。凶器を不法所持しているということにもなりかねないわけでありますから、徹底して差別図書究明というのですか、興信所などに常備されておるということでありますから、何らかの形でこれを回収しなければならぬだろうというふうに私は思いますし、また第八、第九というような地名総鑑を生まないためにも過去のものについてのネタの追及というのですか、これは少なくとも治安当局とか、いわゆる政府関係筋から出ていると断定せざるを得ないと私は思っておるわけでありますので、そういう点でこういうものを追及するという意味で昨年も国会で議論されて対策本部をつくる——大阪においてもすでにできておるわけでありますが、そういう対策本部をつくるという約束をいただいたのですが、それが果たしてできておるのか、どういう活動をしておるのかということになるわけでありますので、その点についてひとつ篤とお聞かせいただきたいし、同時に、あわせてやはり大臣からこの法的規制が必要だというように言われたわけでありますから、それはいつをめどにしてつくるのか、今国会で必ずつくるのか、どうなのか、そういう準備がどの程度煮詰めて検討がなされているのか、そういう現状についてお聞かせいただいて、その見通しを国民に明らかにしていただきたい、このように思うのです。
  23. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 最初のお尋ねの対策本部の問題でございますが、昨年十一月の十五日と記憶しておりますが、この内閣委員会でやはり社会党の先生からその御質問がございましたときに、総理府長官が、対策本部的なものとして現在総理府にございます同和対策協議会、いわゆる同対協の幹事会、これをもって互いの関係官庁の連携を深め、これに対処したいということを申されました。御承知のように、同和問題は総理府の同和対策室で、ここを中心にしまして関係各省がいろいろと緊密な連絡をとっておりますので、法務省といたしましても、この幹事会において他の官庁と緊密な連絡をとって対処しているわけでございます。  もう一つ、法規制のめどの問題を御質問ございましたが、これも先ほど申し上げましたように鋭意資料を集め、検討を加えているのでございますけれども、まだちょっといま、めどがいつということを申し上げることは非常に困難でございます。私ども鋭意努力しまして早くめどをつけたい、こういうふうには思っております。
  24. 上田卓三

    上田委員 何が問題ですか。
  25. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 問題点は、先ほど大臣がおっしゃいましたように、まず憲法の問題がございますし、それから同和対策特別措置法、いわゆる同特法で行われております同和対策事業の関係でまたいろいろ問題もございますし、それからこの種の立法というのは、やはり構成要件をよく考えていたしませんともろ刃の剣になるおそれもございます。いわゆる治安立法になると困るという配慮もございますし、そういうことでいまいろいろ詰めているところでございます。
  26. 上田卓三

    上田委員 地名総鑑に代表される部分については、やはりこの部落問題として当然同和対策事業特別措置法の強化、延長、特に強化部分に当たるだろうというように私は思いますし、とりわけ法務省として別途この法を立てるという考え方も検討されるべきだろう、こういうように思いますが、しかし、同時に、こういう差別というのは必ずしも部落差別だけじゃなしに、日本の中にあるところの外国人に対する差別も含めて多くの人権侵犯があるわけでありますから、そういう総合対策としても考えるべきではないか、こういうように私は思っておるわけであります。そういう点で、やはりこれも、はっきり言うならば殺人者と同じような機能を持った犯罪行為でありますから、これに対して徹底的に取り締まるということは当然のことであって、治安云々というものといわゆるもろ刃の剣になるというような形で済まされる問題ではないと私は思う。現実にそれに対する被害者が続々とあらわれているという現状を考えた場合に、一刻も猶予できない問題ではないか。そういう意味で私は、決してこのことについて憲法に抵触するものでもなかろうし、とりわけ、先ほども申し上げたように、興信所あたりでもやはり法規制してもらいたいという要望も強いことも、これまた事実であろうというように思うのです。端的に言うて、たとえば理髪店一つ見ましても、あるいは料理屋さんにおいても、たとえばフグの料理屋などでも、みんな全部鑑札制度になっておるのですね。ところが、この興信所とか探偵社だけ野放しで、これを監督する官庁がないということ自身大きな問題じゃないのですか。大臣、答えてください。これだけないというのはおかしいじゃないですか。
  27. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 これを何とか取り締まる方法を講じよう、講じなければおさまらない、法律をつくろうじゃないかということでいま検討しておるわけでありますが、さっきもろ刃の剣というお言葉が出ましたけれども、仮に罰則を定めた取り締まりをするといたしますと、どういうふうな処罰の方法をとるか、どういうときに処罰すべきか、こういう問題点があります。これは非常にむずかしいと言うとおかしゅうございますが、こういうものを出版して販売して、どういうところで処罰するかということによっては、時と場合によってはまた差別問題を新たに起こす、こういうことにもなりかねないというきわめて慎重に考えなければならない問題点があるわけでございます。  それから興信所等の問題については、こちらだけの所管ではありませんから、これは事務当局から一応御説明を申し上げさせます。
  28. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 先ほども申し上げましたように、興信所が非常にかかわりを持っているということで、私どもとの対策をいろいろ考えているわけでございますが、先ほども御指摘のように、興信所について主管官庁がどこであるかということがどうもはっきりしないという問題がございまして、やはり縦割りの行政なものでございますから、ちょっと法務省限りではその問題解決できない現状でございますので、関係各庁と緊密な連絡をとってこれに対処したいと考えておるわけでございます。
  29. 上田卓三

    上田委員 いずれにしても、そういう人権侵犯にどうしてもひっかかりやすい商売をされている業界でありますから、やはり何らかの形でこれを認許可制度にして、無許可で業を営むことができないということにすべきだろうし、またそういう人権侵犯を行うようなそういう業者に対して、許可を取り消しするとかあるいは罰則をつけるとか、いろいろな方法があるべきだ。真剣にこのことを追及するなら、わが国は法治国家なんでしょう、それならそういうことはまず最初にしなければならぬ問題じゃないか、こういうふうに私は思っておるわけであります。  そういう点で、やはり検討検討というのじゃなしに、もっと早く結論を出して国民を安心させていただきたい、こういうことでありますので、いままでのそういう答弁に対して非常に不満である、同時に早急に結論を出していただくということをお願い申し上げて、この点についてこの程度にしておきたい、このように思います。  次に、いわゆる法務省人権擁護活動というものが非常に弱体である、そのことは予算を見ても明らかであろうというように思うわけでありまして、とりわけ全国に五十の法務局があるわけでありますが、そこにいわゆる人権擁護に携わる職員がたったの二百人程度しかいないというような状況があるわけであります。また啓発の予算もわずかであって五千万円少々ということであって、大阪でさえも各自治体の部落問題の啓発予算だけでも二億円を超えるというような状況があるわけでありますか互いかに同和対策だけじゃなしに一般対策それ自身も非常に貧弱であるかということが、そのこと一つ見ても明らかであろう、こういうように思うわけであります。  特にその中でも人権擁護委員の定数は、御存じのように一応定員が二万人にもなっておるにもかかわらず、実際擁護委員として任命されて活動しているのが一万九百名しかいない、約一万名が定員がありながら実際人がいないというような状況になっておるようでございますし、また実費弁償費も年間わずかに一万二千円、月たったの千円というような状況で、果たしてこれでまともな人権擁護活動ができるのか、こう言わざるを得ないと思うのです。ちなみに厚生省に民生委員制度というものがあるわけでありますが、この民生委員は全国で十六万人もおられるわけでありまして、これが多いとは私は思っておりません、不十分だと思います。しかしながら、民生委員でさえも十六万人もおられて、実費弁償が年間三万円、共済制度もある、こういうように言われているわけでありますから、せめて民生委員並みに人権擁護委員の役割りを強化すべきではないか、こういうように私は思うわけであります。そういう点で、予算の問題、人員の問題等を含めて御質問を申し上げたい。  それから、十二月十日が人権デーになっておるわけでありますから、ぜひともこの人権デーに照準を合わせて、人権擁護あるいは人権意識の啓発、特に人権条約批准があと十四、人権規約も入れて十六あるわけでございますが、そういう点でことしが人権問題についてクローズアップさせる一番いい年ではないか。人権宣言ができて三十年という年でありますから、大いに法務省が陣頭指揮で、人権デーに照準を合わせてこれに取り組むという決意を含めて、ひとつ法務大臣からお答えいただきたいと思うのです。
  30. 鬼塚賢太郎

    鬼塚政府委員 人権擁護職員は非常に困難な問題を抱えまして日夜努力しているわけでございますが、その実情をよく先生御存じでいらっしゃいまして、御激励の御質問をいただいて感謝しているわけでございます。  当面している現状を見ますと、確かに人員の関係、決して十分でないことは十分承知しているわけでございまして、増員に努力しているわけでございますけれども、増員につきまして現在非常に厳しい状況にございますので、なかなかこちらの希望どおり達成されないのでございますが、今後とも努力していきたいと考えます。  それから、人権擁護委員関係も、やはり委員制度が発足しまして三十年たちますといろいろな問題が生じておりまして、非常に熱心にやってくださる方もありますし、また、いろいろな関係で余り働かない方もいることも、率直に言いまして事実でございまして、この点で大臣の委嘱につきましても、これは推薦していただく関係市町村に法務局からよくお願いしまして、熱意のある、ふさわしい方を推薦していただくように絶えず連絡をとってお願いしているわけでございまして、今後もそういう人物が得られますように積極的に努力いたしたいと思います。  実費弁償金の関係も必ずしも十分でないわけでございますが、これは予算の関係でございまして、これもやはり今後とも増額に努力をいたしたいと考えているわけでございます。  ことしは人権週間、これについては三十年ということをよく意識いたしまして、意義ある活動をしたいということで、いま鋭意計画中でございます。
  31. 上田卓三

    上田委員 いままでの答弁、私としては非常に不満でありまして、ぜひともここで約束されているものだけでも真剣に取り組んでいただきたい、このように私は思うわけであります。特に地名総鑑が二度と次々と出てこないように、あるいはまた対策本部をつくって法的規制の問題も含めてぜひとも強力に取り組んでいただく。同時に、世界人権後進国にならないためにも法務省が率先して、各省を督励してその推進に法務省が先頭に立っていただくということを特に要望いたしておきたい、このように思うわけであります。  次の問題に移りたいわけでありますが、国際人権規約自身が、先ほど申し上げましたように内外人平等ということにもなっておりますし、またそれをさらに一歩進めた形で、いわゆる人権差別を撤廃するという国際条約批准していただかなければならぬわけでありまして、それに関連して、わが国国内法を早急に整備しなければならない、そういう必要に迫られておるのではないか、こういうように思うわけであります。  とりわけ私の関心が強いのは、在日外国人の中でも在日朝鮮人、在日韓国人の方々の聞くも涙といいますか、語るも涙といいますか、本当に忌まわしい、はらわたの煮えくり返るような、そういう差別の事例というものを私ははだ身を通じて知っておるところでございますし、また、関係の団体からも強く差別撤廃について法務当局に要求されていることだ、こういうように思うわけであります。そういう点で、幾つかの差別的な事例というものを取り出しまして、それに対して、国際人権規約なりに照らして、あるいは日本憲法、そういうものに照らしてみて改善をしていただかなければならぬ問題だろうと思いますので、その点について以下述べますので、お答えをいただきたい、このように思うわけであります。  特に住宅問題でございますが、住宅は日常生活の根本にかかわる問題でありまして、政府が公営住宅やあるいは公団住宅から在日朝鮮人あるいは韓国人を締め出してきた姿勢というものは、今日いかに深刻な事態を招いているかということについて、法務大臣なり関係当局の方がどこまで認識しているのかということでお聞きをするわけでございます。  特に私の知人から聞いたことでございますけれども、この方は四十歳の牧師の方でございますけれども、二年前、大阪の東大阪市で三件、それから大阪市の生野区で四件、住居を探し求めたが、いずれも、第三国人は困る、こういうことで差別暴言を浴びせられたり、あるいは住民票が要ると言って断られているわけであります。彼の場合は奥さんが日本人であるために奥さんの住民票を差し出すと、今度は、奥さんのだけではだめだ、夫婦の住民票が要るのだという形で突き出される、こういう始末であるわけでありまして、結局この方は韓国人の家主のところで家を借りたわけであります。その夜三人の隣人から、御近所の方から家主のところへ、なぜ朝鮮人に家を貸したのか、こういう差別的な電話を浴びせられるというような忌まわしい事件が起こっておるわけであります。  これに呼応して、昨年十二月六日に毎日新聞でもこの方の話を裏づけるような実に悪質な差別の現実を訴えておるわけであります。これは大阪市の生野区で起きている問題でございますが、宅建業者が、外人不可、要住民票、こういうポスターを張り出しておるわけでありまして、こういうのは一件や二件ではなく、大半の宅建業者がこういうようなありさまであるわけであります。彼らの話によると、以前から外人不可と書かなくとも現実には在日朝鮮人、韓国人の入居を拒否してきた、それが業者間の確認事項だ、こういうふうにうそぶいておるわけであります。  昨年十二月のある週の生野区での物件案内を見ると、何と千二百件のうち九件だけが外人可という状況であります。千二百の中で九件だけが外国人であってもいいということであります。ところが、その九件たるや、もう人も住めないような、だれもいやがるような、そういう状況であって、本当に腹立たしい思いをいたしておるわけであります。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 特に生野区は、大体人口は二十万人でございますが、その中でいわゆる在日朝鮮人、韓国人は四万人、実に五人に一人がこういう方々であるということでありまして、一軒の家で五世帯も六世帯も相住まいをしなければならない。実際そこに住んでいるかどうかという問題はあるかもわかりませんけれども、そこにやはり住居を構えなければならない、そこに住民票を置かなければならないというような状況があって、これは非常に教育問題社会問題になっておるところでございます。  こういう状態は決して大阪の生野区だけではなしに全国至るところにあることだ、こういうように私は思っておるわけであります。外国人は不可である、とりわけ在日朝鮮人、韓国人に対してきつい締めつけがあるというこういう話について、ひとつ最初に大臣から、感想なりあるいはこういう実態を把握しているか、これに対してどう思うかということについてお聞かせいただきたい、このように思うのです。
  32. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 上田さんが人権の問題で声を大にしておっしゃることに深く敬意を表しております。人権問題というのは、単に法律などで直ちに解決する問題ではないと私は思います。妙なことを言いますけれども、人類は何千年、何万年の歴史を持っておると思いますが、何千年、何万年過ぎた今日なお、先ほど来お話に出ておりますように、国際人権宣言あるいは人権規約等を協議をして、そして今日ただいまでもまだ問題になっている。これは人間としての考え方がだんだん改まっていかなければ根本的な解決にならない。でありますから、これは常に啓発をし、お互い話し合い、そして、みんな同じだ、また人類は私は同じものだと思いますが、そういう思想が人類なり国民の中に充満するといいますか定立する、そういうことが一番前提にならなければならないと思います。率直に申し上げて、いまも申し上げました何万年、何千年の歴史の中で今日なおかつ人権規約あるいは人権宣言をしなければならないというこの現実。でありますから、相当気長と言うとまことに恐縮でありますけれども、息の長い努力を続けなければこの問題の根本的解決にならない、こういう性質のものであろうと思います。  いま住宅についていろいろお話がありましたが、残念ながら法務省は住宅を担当しておりませんので、どうこうということを申し上げるわけにいきませんけれども、そういうことのないことを希望するためにお互いに努力をしなければならない、こういうことだと思います。
  33. 川合宏之

    ○川合説明員 お答えいたします。  政府施策住宅のうちで公営住宅につきましては、先ほど先生のおっしゃったように直接権利としては認めておりませんが、入居させることができるようにいたしておりまして、昭和五十年の私どもの通達で認めるようにいたしております。  それから、ただいま先生御指摘の私人間の契約における差別というのは、恐らくいわゆる民法の契約の自由と、それから基本的人権擁護との衝突のような問題だと存じまして、これはもちろん建設省だけで解決できる問題ではありませんので、あるいは後で法務省の方から補足的に御説明をいただけるかもしれませんけれども、関係各省と十分協議いたしまして解決に努力いたしたいと存じます。
  34. 上田卓三

    上田委員 先ほど大臣お答えで、私は文部大臣がそういうことを言うならわかる。法律だけじゃなしにやっぱり人権問題というのはそれ以前の問題もあるじゃないか、法律だけで解決できない問題もあるという形で、当然法務省においても人権の啓発とかそういう活動もされていることも事実でありますけれども、少なくともわが国は法治国家でもありますし、法の番人というのですか、そういう立場で考えるならば、こういう悪質な問題が出ておる折においてはそういう立場で考えてもらうべきで、私がそういう立場で言うておるときに、それをはぐらかすような形で、これは法律以前の問題だというような形で一般論を述べられるということは不謹慎ではないか、こういうように私は思うわけでありまして、そういう点はやはりもっと真剣に、まあ言わんとしている意味はわかるわけですけれども、何か私の質問に対して水を差すような結果になっておることを非常に遺憾だ、こういうように思うわけであります。  それから建設省、住宅問題でございますが、これについては御存じのように、国の方が公営住宅とか公団住宅で差別しているがために民間でも差別するという結果が出ておるわけでありまして、いま課長のお話では、五十年の通達によってそれを解除したということでありますけれども、これについても、端的に言うならば、外国人はだめだという通達が勝手に出されて、それ以後五十年において、特別の場合においては云々という形でこの指示通達がなされているということでありますから、この時点で国においては公営、公団については全面的に外国人に対し門戸を開放する。人権規約批准されるというようなこういう状況になってきておるわけでありますから、あるいは公団住宅などは人気が悪うて余っておるというようなことも出ておるわけでありますから、去年など私がこの問題を発言すると、日本人でもまだまだ困っておる人があるから云々ということがあったと思うのですけれども、そういうような状況もいまないようにも思うし、とりわけ公的住宅から全面的に外国人に門戸を開放するという形でさらにもう一歩進んだ形で通達を出していただきたい、ぜひともそのことについてお答えをいただきたい、私はこういうように思います。  それと同時に、民間の関係でございますが、外国人はだめだというような形で、ほんまに世界の各国でそういうことを——一部の国はあるかもわかりませんが、多くの国々では本当に内外人平等という精神で撤しておるのじゃないか、私はこういうように思うわけでありまして、外国人の方が日本に住まれて日本社会に大きく貢献されているという事例は枚挙にいとまがないわけでありますし、とりわけ在日朝鮮人、韓国人の方々は好きこのんで日本へ来たのじゃないのです。かつて日本の軍国主義、帝国主義によって強制的にわが国に住まわされたという忌まわしい歴史的な事実というものを踏まえて考えるならば、こういう方々に対して率先して門戸を開放すべきであるし、いわんや民間において、民間だから、商取引だからということで言うならば、それこそたとえば食堂であるとか理髪店とかそういうような商業のたぐいにまで外国人はだめだ、アメリカでは白人専用とか、いや黒人専用というような形があるようでございますが、実質的にそういうものを認めるような形になりかねない、こういうように私は思うわけです。  そういう点で宅建業者に対して厳しく、どの程度指導ができるかという問題はあるかもわかりませんが、この現行の法律で、そういう人権擁護という雰囲気の中でぜひとも強力な指導をしていただきたいし、それに対して指導ができない不十分さがあれば、法改正も行っていかなければならぬことは申すまでもなかろう、こういうふうに思いますので、そのことについて一言お答えをいただきたいと思うのです。
  35. 川合宏之

    ○川合説明員 まず、普通の私的契約による住宅取得の問題から申し上げますと、先ほど申し上げましたように、これは建設省だけでは解決困難な問題でありますので、関係各省と十分協議の上措置いたしたいと考えております。  それから公的住宅につきましては、従来の考え方をまず聞いていただきますと、外国人の入居は、そのときの住宅水準とか助成の内容とか助成の対象階層とか、そういうものを総合的に勘案して決めていたわけでありまして、その結果、一番低所得者層を対象とします公営住宅につきましては、先ほど申し上げたようなことで、いわば基本的人権にも絡むことでもあり、前向きに措置いたしたところであります。これに対しまして公団住宅につきましては階層がかなり上の方に、中堅階層になっておりますし、さっき先生もおっしゃっておりましたが、やはり日本国民の方を優先させるということで従来は措置いたしてきたところであります。今回、経済的、社会的、文化的権利に関する国際規約が批准されましたときには、そういう観点からもう一度従来の立場を見直すことも必要になってこようかと考えております。  それともう一つ、先生がさっき御指摘になりました公団の空き家問題でありますが、御指摘のとおり、公団の空き家は特に最近建設されましたものにつきまして未入居がざっと一万数千戸発生いたしております。先ほどの先生の御指摘は、さっき申し上げました基本的な問題からの解決のほかに空き家問題としても見直すべきであるという御意見かと存じますが、その点は、おっしゃるように基本問題の検討と並行いたしまして検討いたしたいと考えております。
  36. 上田卓三

    上田委員 現行においてそういう差別があるということは問題だということを私は指摘しているわけですけれども、同時に、国際人権規約、あなた御存じですか。今国会外務省が提出をすると言っているんですね。今国会で規約が批准されたら、これは内外人平等という立場からやはり外国人に対して門戸を開放せねばいかぬのですわ。だから、そういう立場で、そういう内部的な調整についてはもう各省とも打ち合わせ済みだと私は思うのですね。  だからそういう点で私は建設省にお聞きしたいのは、そういう立場でいま前向きに検討している、そして批准された時点ではやはりそういう公営住宅、公団住宅についても外国人に対して門戸を開放するんだ、こういうことになるでしょうというような答えをいただかぬと、国際人権規約批准される以前の、いままでのそういうかたくなな態度では私はだめだと思うのです。現在でもあなたが先ほどお認めになったように、条件つきで認めているという例があるわけですね。大阪とか東京とか兵庫でも一部においては、すでに自治体がそういう者に門戸を開放しているわけですから、これはもう全国的な傾向になりつつあるわけでありますから、そういう点で前向きでひとつ検討していただきたい。それは当然公団においても、去年は確かに日本人が優先と言うものの、日本の住宅事情はまだまだ悪いという問題はあるにしても、とりわけ在日朝鮮人、韓国人の方々については好きこのんで日本に住んでいるわけではないわけですから、そういう点でそういう方々に対して日本人と同じ扱いをしていくということは当然のことだ、私はこういうふうに思いますので、もう一度簡単にそういう点で、人権規約批准されたら直ちにその問題が出てくるわけでありますから、そうせぬと世界の皆さん方に、わが国批准しながら国内法によってなお差別強化するということになるわけでありますから、世界に恥をさらさないためにも、その点について建設省において、あなた、課長としてどこまで権限を持って答えられるかという問題はあるかもわかりませんけれども、先ほどからるる申し上げたことについて十分御理解できたんじゃないかと思いますので、そういう点で前向きに検討するということでひとつお答えいただきたいのです。
  37. 川合宏之

    ○川合説明員 お答えいたします。  今回の国際規約の解釈といたしましては、直ちに在日外国人に対しまして国内法上の直接の権利を与えたものとまでは私ども思っておりませんけれども、ただ、規約の精神にかんがみまして、この規約が批准されましたときには、当然その精神に沿った考え方が必要であろうと考えております。
  38. 上田卓三

    上田委員 不十分ですけれども、その問題についてはまたの機会に、人権規約批准された時点で問題にしていきたい、こういうように思います。  次に、児童手当、児童扶養手当、特別児童扶養手当について具体的にお聞きするわけでありますが、ここに具体例があるので御紹介申し上げたいと思います。  奈良市大宮町に住む金仙玉さんは、夫の兪満秀さんがいわゆる日雇い労働者であるわけでありますが、不安定な低賃金のため五人の子供を養育できず、みずから朝晩新聞配達をして生計を立てておられるわけであります。そんなある日、奈良の市民だよりに「国と県の児童手当早く申請を」「正月早々から実施 第三子以上の児童について支給されます」、こう書かれてあるのを見て、まさに天の恵みとばかり、喜び勇んで市役所の福祉事務所に駆けつけたわけであります。しかし、子供の数やあるいは所得条件から見ても十分に受給資格があるにもかかわらず、外国人ということで断られたわけでありまして、金さんは、私は日本人と同じように県民税、市民税を払っているのに資格がないとは、このように腹立たしい思いを抑えながら帰ってきたということでございますが、これはそういう意味ではまことに矛盾に満ちた不合理なものであろう、このように思うわけであります。  そもそもこれらの法律というものはその目的、趣旨として「児童の福祉の増進」これは児童扶養手当法の一条にあるわけでございますが、同二条「児童の心身の健やかな成長に寄与」、また「精神又は身体に障害を有する児童の福祉の増進」こういう形で、現実の在日朝鮮人、韓国人の状況ということを考えるならば、当然税金も日本人と同じように納めてあるわけでありますから、国籍の違いをもって排除するということはもう論外だ、こういうふうに思うわけでありまして、そういう点でこの問題について、厚生省の方お見えだと思うのですが、国際人権規約批准ということも建設省と同じように絡んでおる問題でございますが、この問題に対して一体どう対処されようとしているのかについて、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  39. 加藤栄一

    加藤説明員 御説明いたします。  児童手当等の手当につきましてわが国の児童に対します諸給付の制度につきましては、その創設当初に、福祉年金制度等、基本的には日本国民日本国内に住所を有することを支給要件としております一般的な社会保障の趣旨と同様の考え方によりまして国籍要件を設けたわけでございます。  児童扶養手当につきましては、母子福祉年金の補完的な制度であるというふうに位置づけられておりますし、特別児童扶養手当につきましては、障害福祉年金の子供版というような制度でもありますので、今後人権規約批准が行われました際には、年金制度と歩調を合わせて対処してまいるということでございまして、人権規約のA規約の趣旨につきましては十分尊重してまいりたいと思っております。  また児童手当につきましては、現在児童手当自体につきまして国民の間にいろいろな御意見がございます。私どもが国民世論調査をいたしましても、国民の御意見といいますものは、辛うじて過半数の方が支持されたわけでございますが、そのほかにもいろいろと制度に対して消極的な御意見の方もございまして、今般児童手当につきましては制度の基本的な見直しをいたしまして、より実効のあるものにいたしたいということで私ども鋭意検討しております。これにつきましては現在大きに基本的な仕組み自体が見直される形にございますので、その際に外国人に対する適用につきましても、一緒にあわせて検討してまいりたいというふうに考えております。
  40. 上田卓三

    上田委員 いままでそういう外国人を排除してきたということが基本的に問題である。いわんや国際人権規約というのは昭和四十一年に国連で採択されて、各国において批准されてきた。それが日本はもう本当に先進国と言われる中でも一番最後に位置している。すでに人権規約が発効して二年を経過したというような状況でありますから、そういう点で遅きに失しているのだという立場で、早急にひとつこの人権規約批准と相まって、関係国内法の整備に全力を尽くしていただきたい。決して変な形で制限を加えたり、あるいは足を引っ張ったりするようなことがないようにお願いを申し上げたい、このように思うわけであります。  次に、国家公務員なり三公社五現業あるいは地方自治体においてもしかりでございますが、外国人の任用の問題について申し上げたいわけでございます。  特に先般、二十日の参議院の予算委員会で真田法制局長官は、外国人の教授の問題については、いわゆる教授会での人事とかあるいは運営など公権力の行使だけ遠慮してもらうという条件つきで外国人の教授への昇進に門戸を開きたい、こういうような見解を述べられておるわけでございます。  まず人事院にお聞きいたしたいわけでありますが、これはそのとおりであると理解していいのか。またさらにお聞きしたいのは、いわゆる公権力の行使とかあるいは国家意思というような問題が大きく問題になっておるわけでありますが、どこまでが公権力でどこまでが国家意思というように理解されておるのか。その点が非常にあいまいなのではないかというように思うわけでありますので、ひとつ人事院の方にまずこの点の見解をお聞かせいただきたい、このように思います。
  41. 今村久明

    ○今村(久)政府委員 お答え申し上げます。  第一点の御質問は、先般の参議院の予算委員会における秦野委員質問に対する法制局長官のお答えだと思います。実は私どもまだその議事録を見ておりませんので、事務担当者を通じまして話を聞きましたのですが、ただいまの御趣旨のような発言があったというふうに聞いております。したがいまして、正確な法制局長官の御答弁というものを議事録で確かめました上で判断いたしたいと思いますが、いままで聞いた範囲のところでは、公権力の行使または国家意思の形成に関与しないという関係であれば国家公務員に任用することは問題なかろうという御質問に対して、そういう点は憲法上は立法論として可能であると考えるというふうなお答えをしたように聞いておりますので、それはもう全く私どももそれに従ってまいりたいというふうに考えます。  それから第二点の公権力の行使または国家意思の形成にあずかる職員というものの範囲の問題で、実はこれは非常にむずかしい問題でございまして、いつも先生の方からそれが明確でないではないかという御質問があるわけでございます。根本的に言いますと、外国人の任用問題というものは、日本憲法基本理念であります自国の主権の尊重ということ、それから外国の主権の尊重、この二つのものを理念として出てきておるわけでございますから、その関係はきわめて重要な問題でございますので、やはりそういう関係について十分留意した上でこの問題を処理していかなければいけませんので、この基準を簡単に、明快に出すという段階には現在ありません。  それで、私どもの立場は、従前の法制局の見解あるいはいままでの事例に即しまして具体的に、個別的にその外国人の任用できる官職というものについての決定をしているという状況でございまして、これも御承知だと思いますけれども、たとえば国立大学における外国人の先生方あるいは病院における看護婦さんとか、あるいは特定の職場におきます技術的作業員というようなものについては、これは公権力の行使または国家意思の形成にあずからないから外国人を任用できるという事例を出しております。いままでのそういうやり方というのは、結局一般的な画一的な基準というものがなかなかむずかしいという前提でこういう状況が出ておるんだろうと思います。ただ、いま先生からも御指摘がありましたように、いまいろいろ情勢が非常に変わっておるようでございますから、国際人権規約の問題等に絡みましてもただいま私ども勉強中でございますけれども、この情勢に即応するような形で十分検討してまいりたいというふうに考えております。
  42. 上田卓三

    上田委員 いずれにしましても、公権力の行使なりあるいは国家意思の形成に携わる云々ということで、いままではそういうものに関連するからだめだということで、すべてそれを拒否してきた。今度は外国人の教授の問題に端を発して、公権力あるいは国家意思の形成に携わらない、そういう条件でなら認めてもいいじゃないかということのようでございます。  そこで、公権力なりあるいは国家意思の形成の範囲というものが大きな問題で、恐らくいままで考えてもみなかった、もう初めからオミットしているのですから、その範囲みたいなものは考える必要がなかったということかもわかりませんけれども、今日ではそのことが真剣に検討されなければならない段階に来ているということはよくわかるのです。しかしながら現実にこの矛盾というのですか、現場などでは、地方自治体など特に、たとえば看護婦さんであるとか、あるいは運転手さん、あるいはマッサージさん、そのほか現実に外国人方々がそういう職種に進出しているということもこれまた事実ではないか。特に現業部門においてはそのことは著しいのではないか、このように思うわけであります。また三公社五現業の中でも電電公社などは、これについて若干問題がありますけれども、門戸を開放するということで、そういう門戸を開放しているところもあれば、開放してないところもある。そういう意味で私は、国全体の施策というのが非常に場当たり的な感じがしないわけでもないわけでありまして、国民から見るならば、一体どうなっているのかということであろう、こういうように思うわけであります。  そういう点で、はっきり言うならば外国人の方は国家意思の形成に携わろうとか、公権力の行使をしようと思っているわけでは決してないのですから、かえってそのことをあえて言うこと自身、私は問題じゃないかというように思うわけでありますから、この際大幅に、やはり国際人権規約批准というものもあるわけでありますから、ひとつ任用について前向きな処置をとっていただきたい、こういうように思うわけであります。  特にそれに関連して、助手以上になれない助手という形で、文部省関係でそういう形で不当に抑えられてきた二十人の助手の先生方がおられると思うのですが、この先生方については、ああいう真田法制局長官の見解もあるようでございますから、ぜひともそういう見解にのっとって、昇進なり処遇の改善を早急に図られたいと思うのですが、その点について文部省の見解をお聞きしたいと思います。
  43. 阿部充夫

    阿部説明員 お答えいたします。  文部省といたしましては、わが国の大学を国際的に開かれたものにするという観点からも、外国の方々でありましても、大学の教員として積極的に受け入れていくということが基本的な方向として必要であろうというのが従来からの考え方であるわけでございます。そういう観点から外国人教師、講師等の現在あります制度の拡充等にも努めてまいったわけでございます。  ただ、外国人方々は国立大学のいわば正規の教授等として任用することにつきましては、ただいままでお話がございましたように、公務員制度上の問題があるというようなことから、現実には助手の段階で、それ以上の昇進が実際に行われていないという実態は確かに御指摘のとおりあるわけでございます。しかしながら、繰り返しになりますけれども、私どもといたしましては、すぐれた方々を積極的に大学に受け入れていくというのが、大学の今後のために大切なことであるという基本的な気持ちは変わりないわけでございますし、また先般の予算委員会での法制局の御答弁もございますので、こういった問題を踏まえまして、今後関係省庁あるいは国立大学協会等とも話し合い、検討を進めてまいりたい、こんなふうに考えておるところでございます。
  44. 上田卓三

    上田委員 そういう方々はいままで抑制されてきたわけでありますから、そういう点で、参議院の予算委員会でクローズアップされたという問題でありますから、ひとつ昇進の機会をぜひとも前向きに検討していただきたい、こういうように御要望申し上げたいと思います。  さて、在日外国人、とりわけ在日韓国人、いわゆる朝鮮人の方々、非常に不当な差別を受けている、六十万とも七十万とも言われておるわけであります。なかんずく不法入国というような形で、いわゆる密入国という形で日本に来られた人、これは確かな数字は私自身もわかりませんし、当局もどの程度つかんでいるかということでありますけれども、恐らく十万人は下らないだろうというようなことも言われておるわけであります。しかしながら、こういう方々を一々摘発して送還するということは実際問題としてでき得ないわけでありまして、そういう氷山の一角というのですか、そういう方々から言うと、間が悪いということになるのかもしれませんけれども、見つかれば強制送還ということになっておるわけであります。私はいろいろ問題点はあろうと思いますけれども、カナダなどではそういう意味では本当に自由に行き来できるというのですか、外国人の方が本当に住みやすいような環境にあるように聞いておるわけでありまして、わが国においても、とりわけ朝鮮半島との関係があるわけでございますので、そういういろいろな歴史的な経過を踏まえて、韓国に帰りても結局言葉もわからない、あるいは身寄りがないというような方々の場合も多くあるわけでございまして、そういう点で、何らかの形でそういう方々について、今後の問題をどうするかという問題はありますが、あるいは現在おられる方の中でもいろいろな事情は勘案しなければならぬと思いますけれども、やはりそういうものについて十分日本で合法的に住めるような道を開いてあげることがぜひとも必要ではないか、こういうように私は思っておりますので、そういう点についての見解を若干お聞きしたいということと、特に再入国の問題について具体的な例を申し上げて、ひとつ善処していただきたい。  同時に、一般的に一年以内に帰ってこなければならぬということであっても、向こうで病気になるとか、あるいは、いまから申し上げるように、政治犯というような形で、本人の意思にかかわりなく向こうで刑務所に入れられる、拘束されるということで、帰ってきたら籍がないというようなことはあってはならぬことではないか、私はこういうように思うわけでありまして、せっかく帰ってくるのに帰ってこれないというようなことでは断じて許せない、こういうふうに思うわけでありますので、そういう点で具体的に申し上げますので善処方をお願いしたい、こういうふうに思うわけであります。  いわゆる在日韓国人の留学生政治犯への再入国、こういうように言われている問題でございますが、韓国に滞在中スパイ容疑で逮捕投獄された在日韓国人留学生青年たちの中で、金達男君が釈放され、近々徐俊植君も釈放される予定になっておるわけでありますが、彼らは日本生まれの日本育ちでありまして、家族も日本に住み、日本への再入国を希望されておるわけであります。出入国管理令では、先ほど申し上げましたように一年ごとの再入国申請をしなければならないということになっておるわけでありますけれども、彼らの場合は先ほど申し上げましたように、病気と同じように不可抗力で申請できなかったわけでありまして、再入国、協定永住権についても機械的な法適用ではなく寛大な措置が必要ではないか、こういうふうに私は思っておるわけであります。  このことについては、昨年の十二月十二日に法務局の方に来てもらいまして、この点についてお願いをいたしたところでございますが、このときもいわゆる外国人登録票の原票閉鎖は機械的な措置にすぎず、そういう意味では人道上の問題でもあり再入国の便宜を最大限図らなければならぬ、そういう話し合いの中で、家族の方々の切々たる訴えでやはりそういう気持ちになられたのではないか、私はそのことは正しいことだというように思っておるわけでありますが、その点についてそういう扱いをしていただけるのか、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  45. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 ただいまのお尋ねの再入国の問題でございますが、向こうで韓国政府が旅券を出して出国を認めるということが前提でございますが、そういう場合に旅券を出したときにソウルのわが大使館に査証申請をなさるわけでございます。そういう査証申請が出てきましたときに、ただいま先生がおっしゃいました、その人が日本生まれであるとか、こちらに家族がおられるとか、そういういろいろな事情を考慮いたしまして、好意的に考えていきたい、こう思っております。
  46. 上田卓三

    上田委員 そうすると局長、大体再入国できるということですね。
  47. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 これは具体的に許可、不許可の問題でございますので、ちょっとこの席上即答することはどうかと思われますので、ただいま私が申し上げましたところからおくみ取り願いたいと思います。
  48. 上田卓三

    上田委員 よくわかりました。ぜひとも寛大な措置をとっていただきたいと思いますし、この事件だけじゃなしに、多くの方々が一たん韓国へ帰られて、帰ってきたときにもう籍がないという場合が多くあるように聞いておるわけでありますので、やはり不可抗力の場合は、どういう状況であったにしても、要するに再入国の手続が一年以内にできなかったわけでありますから、そういう点については寛大な措置をとるということであわせてお願いをしておきたい、こういうように思うわけであります。  密入国の問題について明確なお答えがなかったわけでございますが、その点についてひとつ十分な検討をしていただくということで、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  49. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 潜在的な密入国者は、先生は十万以上とおっしゃいましたが、実はわれわれも的確には数字はわからないのでございますが、まずこの問題につきまして基本的に、密入国者というのは八、九割まで朝鮮半島から入ってきているわけでございまして、韓国の国籍を持った人がほとんどでございますが、これは日本と韓国と国交を開きましたときに基本条約を結び、また法的地位に関する協定も結びまして両国の関係を今後律したわけでございます。したがいまして、その中でやはりわが日本の出入国管理に関する法律はちゃんと守っていただくという前提になっているわけでございます。  したがって、基本的にはそのラインは崩せない。国と国との関係というものは、一たん条約を結んだり協定を結んだら、それをいろいろ口実をつけて崩していったならばその関係はむちゃくちゃになると私は考えます。両国政府約束したことはお互い紳士的に守っていくことによって、両国の関係が良好な状態を保てるのだという基本的な認識を持っております。ただし、具体的にいろいろ問題があることは事実でございまして、そういう場合、実はどう処置していこうかということを韓国政府と内々的に話がいま進んでいるところでございます。
  50. 上田卓三

    上田委員 いずれにしても、韓国と日本で人的交流が多くあるにもかかわらず、そこに一定の制限があるというようなことの中から密入国ということにもなってきておるわけであります。だから法律そのもの、協定自身がいいのか悪いのかということにもかかわってくるだろう、こういうように思いますので、現実には取り締まってもそれは氷山の一角になってしまうということを考えた場合に、私はそこに柔軟な対処があってしかるべきであろうし、やはりこちらに来られている人自身、聞いてみればそれなりの事情があるということになるわけでありまして、私らの事務所にもそういう方が本当に泣きながら訴えてくるという場合もあるわけでございまして、ただ単に法律がこうなっているから帰りなさいと言えないような状況というのもあるわけであります。これは私だけでなく、多くの先生方も一つの頭痛の種というのですか、あるいは解決しなければならない問題として理解されていると思いますので、その点についてひとつ前向きに御検討いただきたい。当然韓国政府との関係があるということは重々承知しているわけでございますけれども、特に日本政府としてそういう点について、日本に現在住んでいるということで、その中で子供も生まれている、学校に行かなければならぬというふうな状況のもとにもあるわけでありまして、そういう子供の教育をどうするかということもありますから、ひとつ十分考えていただきたい、こういうふうに思います。  時間の関係もございますので、次に、法務大臣御存じかと思いますが、いわゆる狭山差別裁判の問題につきまして御質問申し上げたい、こういうふうに思うわけでございます。  この事件は、第二審の東京高裁の審理の過程で石川一雄さんの無実を示す数々の証拠なりあるいは客観的事実が明らかになるにつれて国民の関心が大きく高められ、三百万を超える署名なりあるいは地方自治体の決議などが裁判所に届けられたことは、御存じのことだと思うわけであります。また国会でもしばしば取り上げられまして、昨年も私、予算の分科会でこの問題を取り上げたわけでございますが、日本の裁判史上例を見ない世論の盛り上がりがあったわけであります。東京高裁なりあるいは最高裁は、いずれも真実に目を向けようとせずに、この疑惑を残したまま有罪判決を維持したわけであります。これは、日本の民主主義に大きな汚点を残したと言わざるを得ない、このように思うわけでありまして、真実を求める国民の願いはこれで消えたわけではなく、現在再審を請求し、署名や集会や要請か引き続き、大きく国民運動として盛り上がってきておるわけであります。  最高裁の上告棄却の後も、この狭山事件にかかわる疑問が噴き出しておるわけでありまして、この事件の特徴の一つは、先般も湯山先生なり井上泉先生からも予算委員会で、分科会でお話があったわけでございますけれども、事件関係者が相次いでなぞの死を遂げている。横溝正史の八つ墓村じゃございませんけれども、それ以上に奇々怪々な、非常になぞめいておるわけでございまして、そういう変死といいますか、そういうものに対してなぜか警察当局が狭山事件と簡単に切り離して、もう常識的に言うならば何か関連があるんじゃないかと思う方が正しいにもかかわらず、なぜかそれを切り離して処置している。そしてその変死の事件について捜査も余りしないでこの捜査を打ち切っているということは、非常に心外であるわけであります。  多くの先生からも言われた問題でございますけれども、善枝ちゃんが三十八年の五月一日に誘拐されて四日の日に死体となってあらわれるわけでありますが、その二日後に、かつて中田善枝ちゃんの家に作男として勤めていた奥富玄二が自殺をしておるわけであります。彼女の体内から出てきた血液型がB型ということでありますが、奥富玄二君もB型ということで彼が犯人ではないのかというようなことも一時言われたわけでありますが、それが自殺する。当時の国家公安委員長は、何としても草の根を分けてでも生きた犯人をつかまえよう、何か生きた犯人をつかまえようということは、犯人死んでしもうたからそれでは世間に申しわけない、こう言わんばかりの、そういうことすら想像されるような状況があったわけですけれども、何も奥富玄二が私は犯人だと言っているわけじゃないのですが、やはり重要な人物であったことは間違いなかろう、こういうように思います。  さらに、事件当時三人の犯人らしい男を見た、こう言われております田中登さんがこれまた亡くなっておるわけでございまして、あるいは身のしろ金を持っていた男増田秀雄でありますけれども、これは三十九年三月の十五日にこれも変死を遂げている、こういう状況でございます。また三十九年七月四日には、善枝ちゃんのお姉さんが結婚を前にして農薬自殺。本当に警察が来たときにはもう奥座敷にあおむいて寝ていたというようなことでありまして、どういう形で死んだのかということをすべて解剖も含めて、そういうものが一体どうなっているのかということで、われわれ自身非常に疑問に感じているところでございます。あるいは四十一年の十月二十四日には、石川さんが以前に勤めておった、石川さんの前に怪しいという形でちょっと疑いをかけられておった方でもありますけれども、石田登利造さんが亡くなっておるわけであります。また四十五年の十月二十五日に、これはお医者さんでありますけれども、弁護団が重要な証人だ、こういうふうに思っておった方でありますけれども、この人も亡くなっておるわけでありまして、非常に多くの方が変死、怪死、自殺といっても非常に疑わしい部分があるわけでございます。  それだけじゃなしに、去年の十月の四日には、今度は中田善枝さんの次の兄さんであります中田喜代治さんが首つり自殺をされて、経営難で云々ということも遺書の中に出ておるようでございますけれども、実際問題として事件の真相を知っておったのではないかと言われるくらい、そういう点では多くの方々が自殺、首つり自殺そのものに非常に大きな疑いをかけられているというのが現状であるわけであります。また昨年の十二月二十日には、いわゆる狭山事件を調べていたところのフリーライターであります片桐軍造さんがこれまた変死しておるわけでありまして、そういう点で、合わせて八人もそういう狭山事件にまつわりついて関係者が亡くなっているということでありまして、そういう点で、何とも不可解な事件だと私は言わざるを得ないわけでありまして、そういう点で、こういうようなことを聞かれて大臣は一体どのように考えておるか、御感想も含めてひとつお答えをいただきたい、このように思います。ちょっと大臣から。
  51. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いわゆる狭山事件については、その後、いまおっしゃったように変死といいますか自殺といいますか、多くの方々が亡くなっておる。感想と言われましても非常に困るのですけれども、全く奇怪な事象である、かように考えております。  ただ裁判そのものについては、検察、警察等が調べ、捜査をし、一審、二審、三審裁判にかかってああいう判決が出ておるわけでございますから、それについて私がとやこう内容も調べないでおいて言うわけにはまいらない、こういうことでございます。
  52. 上田卓三

    上田委員 ただ大臣、善枝ちゃん殺しの中から、この狭山事件の中から関係者の中で非常に多くの変死が起こっておるということについて、不思議に思いませんか。国民はみんなそういうふうに思っているのですね。だから私は、やはり関連づけるということがたとえ正しいかどうか別にして、それらの変死とかあるいは自殺それ自身についても死因についてもっと究明していく、そういう中で、関係がなければないということを明らかにすべきだし、また、その中で関連づけられるものが出てくるのではないか、こういうふうに私たちは思っているわけです。  とりわけ石川一雄君については、われわれは多くの証拠から見て完全に無罪だというように確信をし、多くの自治体の決議も含めて大きな、宗教界とかその他、本当に日本の裁判史上例を見ないような盛り上がりを見せていることは事実ではないか、私はこういうふうに思うわけであります。そういう点で、恐らく再審等の中でもかかってくると思いますけれども、そういう点で、私は先ほど軽い意味大臣お答えやすいように感想というふうに言ったわけでありますけれども、大臣のこれに対する考え方というものはやはり皆聞きたがっておるわけでありますから、もう一度お答え願いたいと思うのです。
  53. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 非常に無理な注文だと私は思います。裁判でいろいろ調べられて判決が下っておるわけでございます。いま再審の申請ができておる、こういうことで、法務大臣がその裁判について何かの感想あるいは考え方を述べろと言われても、これは非常に無理な相談じゃないでしょうか。犯罪事実があった後に、犯罪事実でだれかに殺された後にそれにまつわるといいますか、先ほど来いろいろおっしゃったような人たちが死んでおられる。まことに奇怪な問題だ、かようには考えますけれども、そういうものがその都度やはり検死なり検証なり、事情を調べてのことであろうと思いますから、いま私がどうこうという考え方を述べろと言われても、それは無理だと思います。
  54. 上田卓三

    上田委員 私は、何も裁判に対して法務大臣がどうのこうのと言えと言っているのじゃないので、やはり狭山事件に関連して多くの方々が亡くなっている、それに対する警察当局の捜査のやり方というのですか、調べが非常に簡単で、何か狭山事件と切り離そう切り離そう、結びついては困るというような、そういう意図が働いているんじゃないかということで、そういうものに対する捜査自身に非常に国民の疑惑が起こっているという意味で、そういうものに対してやはりもう一度調査のやり直しを含めて考え方を明らかにしてほしいということを私は言っているわけであります。  特に先般二月二十八日に、先ほど申し上げました片桐さんの変死についてわが党の井上泉代議士も質問されたわけでございまして、そのときには、いわゆる死体の検案書にも暴力によると書かれており、狭山事件の真相を追及していて生前脅迫電話が何度もあったわけでありまして、刑事局長も慎重な捜査を約束したわけでありますけれども、その後の状況は一体どのようになっておるのか。以前のようないいかげんな捜査ではなくして狭山事件とのかかわりをも含めて厳重に調査を進めてもらいたい、私はこのように思うわけでありますが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  55. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 先般お答えいたしましたように、警察から被疑者不詳の事件として検察庁が受理をいたしまして、現在検察庁で鋭意捜査をやっておる最中でございます。
  56. 上田卓三

    上田委員 鋭意捜査しているということでありますけれども、われわれが納得できるような形で後日報告していただきたいし、究明をしていただきたいということを要望申し上げておきたい、このように思います。  次に石川一雄さんのいわゆる仮出獄の問題についてお聞きし、お答えをいただきたい、このように思います。  石川さんの場合は第一審の死刑判決を不服として控訴をしたわけでありまして、一九七四年十月三十一日、東京高裁は一審判決を破棄し無期判決に変更したわけであります。したがって、刑事訴訟法第四百九十五条第二項の規定に基づいて第一審の判決から第二審の判決まで、一九六三年三月十一日から一九七四年十月三十一日までの十一年七ヵ月のいわゆる未決勾留日数が本刑に加算されるわけであります。さらに最高裁決定までの四百日の通算がプラスされるわけであります。また一九七七年八月十六日の刑確定から本日まで七ヵ月宣告刑が執行されておるわけでありまして、そういう意味で約十三年三ヵ月ということになるわけであります。したがって、刑法の二十八条の「無期刑二付テハ十年ヲ経過シタル」ものとして当然仮出獄の要件がすでに石川君の場合は満たされているというように判断せざるを得ない、このように思うわけであります。特に石川氏の場合は再犯のおそれなどあるはずもないわけでありますし、石川氏の御両親の年齢も考えるときに、早急に仮出獄の行政処分にかけるべきだ、こういうふうに思うわけでございますが、その点について仮出獄の意思ありやなしやということでひとつお答えをいただきたいと思います。
  57. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 ただいま御指摘の刑法の二十八条の法意は、現に刑を執行することを前提とした規定でございまして、石川君の服役は先ほどお話のございました昨年の八月からでございますので、いまだ十年の期間は経過していないと考えられます。したがいまして、現在すぐに仮出獄というのは現行刑法のたてまえから言えばむずかしかろうと考えられます。
  58. 上田卓三

    上田委員 どうも納得できないのですけれども、法務省の法解釈といいますか、同じ無期懲役でも二年で裁判を終え刑が確定した者は合わせて十二年で仮出獄の資格を得られるということになるわけでありまして、石川さんの場合は、本当にいまのような形でいきますと、いつまでたっても形に服さなければならぬ、いまから言うならば二十四年間というような形になりかねないわけでありますから、そういう点で私は何とも不公平だと言わざるを得ないし、憲法に保障された公正な裁判を受ける権利を行使しようと思えば、結局はその分仮出獄が遠ざかるということになるわけでありまして、そういう公正裁判を受けようと思えば思うほど、またそういう形で控訴すればするほど仮出獄の機会が遠のいていく。俗な言葉で言うたら、そういうまじめなというのですか、そういう公正裁判を要求する者が不利を受けるというようなことは、かえってそういう方々に対するしっぺ返しというのですか、だから要するに裁判所の決定に従え、従ったら得だ、従えなかったらこういうようになるのだというような形のしっぺ返しととられても仕方がないのではないか、私はこういうように思うわけでありまして、そういうこと自身、やはり裁判が長引くのは、裁判所なりあるいは検察官もそれに手をかしているということにならざるを得ない。実際法学界でも法務省の解釈を批判しているのが大半だ、法務省のいまおっしゃった見解を批判している方々の方が多いのではないか、私はこういうように思うわけでありまして、そういう点でまた、私たちは刑法の改悪だ、こういうように思っておるわけでございます。あなた方が言うところの改正刑法草案の第八十一条あるいは第八十二条でも未決勾留日数は無期刑の仮出獄の要件、十年の中に算入すべきだ、こういうようにしておるようでございますので、そういう点で、刑法のそういう改正というのですか、その部分に対しては私は了としておるわけでございますけれども、憲法と矛盾する刑法の解釈が法務省の実務の通説になっているということ、私は、検討すべきだし、法律が変わるまでもなく、変わるということ自身、やはり現在の法務省の見解が間違うているから恐らく変えようとしているのであると思うし、変えなくてもいまの法のもとでも、この石川君を当然今日の時点で仮出獄させるということの方が法解釈として正しい、私はこういうように思うのですが、どうでしょうか。
  59. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 最後の点で、お言葉を返すようでございますが、現在の行政解釈がいいからこれを立法上解決するためには刑法改正をしなければいけないのではないか、こういう議論も成り立つわけでございます。  その間、簡単に御説明申し上げますと、実は現行刑法の刑の内容と改正刑法草案における刑の内容との間には相違があるのでございます。現行刑法におきまして、「懲役ハ監獄ニ拘置シ定役ニ服ス」と、こうなっておりますが、改正刑法草案におきましては、「懲役は、刑事施設に拘置する。」という点を重点に置きまして、そうした者に対して「作業を課し、その他矯正に必要な処遇を行なう。」ということでございます。したがいまして、現行刑法では、定役を課するということと拘置するということとが同じ関係になるのでございますが、改正刑法草案におきましては、拘置するという点に重点を置くことに相なります。そうなりますと、拘置するという関係におきましては、未決拘禁の間でありましても受刑の間でありましても同じであろう。したがって、未決拘禁日数を刑の仮出獄算定の場合の刑期に算入しようという考えが出てきたわけでございまして、現行刑法のたてまえとは違うことから、現行刑法のままで現在の解釈を変えるというわけには相ならぬと考えております。
  60. 上田卓三

    上田委員 それは納得できません。大体あなた方の法解釈が間違っているのです。あなた方の解釈というのは、弁護士さん仲間でも、本当にためにする言いがかり、あるいは公正裁判を要求する人を弾圧し、差別するための解釈だ、こう言わざるを得ない。しかしながらそれも時代の趨勢に流されて、やはり改めなければならないという形で、刑法を変えるということに恐らくなってきているのだと思うのですけれども、現在の法解釈自身に問題があるのだということで、ひとつ十分にその点について検討していただきたい、このように思うわけであります。  次に、申し上げたい点は、刑訴法の第三十九条には、被告人または被疑者は弁護人等と立会人なしで接見できるとしているわけですけれども、石川さんの場合これが妨害されていると再審の弁護人が言われておるわけでありますが、一体どうか。私も石川君に接見したわけでありますが、そういうことについてお聞きしたわけであります。再審の弁護人の場合、立ち会いなしでは接見できず、接見の内容は逐一刑務所長が記録するということになっておるのかどうか。私の接見している間じゅうも看守の方がずっと何か記録していたようでございますが、これは非常に問題だ、こういうように思っておるわけであります。刑訴法の四百四十条には、「再審の請求をする場合には、弁護人を選任することができる。」とあり、この弁護人が刑訴法三十九条の権利が与えられないなら、再審制度はすでに初めから不当な制約を受けることになるのではないか、このように考えるわけでありまして、そういう点で、不合理な法の解釈で弁護人あるいは石川さんの接見に制限を加え、再審の妨害になるということのないように、法務省として刑務所長へそういうことのないよう措置をするようにぜひとも伝えてもらいたい、このように私は思うのですが、いかがでしょうか。
  61. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 冒頭に御指摘になりました刑事訴訟法の三十九条は、未決勾留者に関する弁護人の無立会接見の保障規定でございまして、受刑者になった者が再審請求をする場合における規定とは考えられないのでございます。そのために無立会接見はないという形でございます。  ただ、妨害しているというお話がございましたが、現地所長は弾力的な物の考え方をする方でありまして、その都度われわれも報告を受けておりますが、弁護士さんとの接見については特段の留意をしているところでございます。  なお、監獄法上は教化上必要がある場合には無立会接見が許される形になっておりますので、法律のたてまえはたてまえといたしまして、石川君が再審請求をする場合に特段の支障がないような取り計らいは運用上いたしたい、かように考えております。  なお、再審を請求いたしまして再審開始決定があった場合には、これは無立会接見ということも考えられるであろうというふうに現在は考えているところでございます。
  62. 上田卓三

    上田委員 納得できないわけであります。いずれにしても、いま石川君は再審を要求しておるわけでありますから、そういう点でそういう再審の妨害になるようなことのないようにひとつ十分配慮していただきたいということを強く要求しておきたいと思います。  最後に、時間もございませんので申し上げますが、甲山事件の件でございます。この問題についてはすでにわが党の稲葉委員質問されたわけでありますが、この事件は異例の再逮捕あるいは偽証罪など人権問題でありますし、また国民の警察、検察への不信を拡大するような問題として国民の関心を集めておるわけでありまして、法務大臣の見解を聞きたいわけであります。  この事件は、言うまでもなく、四年前山田悦子さんが逮捕され、そして不起訴になったわけでありますが、当時から警察、検察のやり方が問題にされ、神戸弁護士会人権擁護委員会人権不在の捜査が行われたということで警告をしておったいわくつきの事件でもあるわけであります。私の調べたところによれば、今回の再逮捕は著しい人権侵害を引き起こしておるのではないか、そして端的に言うならば謀略じみた色彩の強いものであるように私は考えておるわけであります。特に三人の偽証罪による逮捕でありますが、武沢さんの場合、被疑者と何のつながりもなく、民事裁判においても記憶に基づいて証言をしただけでありまして、こんなことで偽証罪で逮捕されたのではだれも裁判で証言に立たなくなるのではないか、このように思いますし、実際、裁判所も武沢さんの勾留延長請求、準抗告を却下しておるところであります。また現実の取り調べにおいても不当に長時間に及んだり、死体の写真を見せたり、あるいは自殺もできると、このようにほのめかしたり、検察当局が自白強要の態度をあらわにしているということは非常に遺憾だ、このように私は考えるわけであります。  次に、山田悦子さんの不起訴不当議決をした検察審査会では検察官しか呼ばず、被疑者の山田悦子は呼んでおらず、全く作為的ではないか、このように私は思うわけであります。またこの事件の指揮を行っておるところの別所検事正は、私たちから言うならば悪名高い男だと言わざるを得ないわけであります。昨年、日弁連から取り調べ、捜査が乱暴であると警告されておるところでありまして、実際彼が有罪にしようとしたその事件は無罪になっているという例がすでにあるわけであります。再逮捕の少し前、清水一行という作家がこの事件と全く同じ小説、山田悦子さんが犯人だ、こう言わんばかりの小説を書いている。書かせたのではないかと言われても仕方がないのではないか、非常に作為的である、こういうように思うわけであります。  このような冤罪事件というのは過去に幾つもあるわけでありまして、けさの新聞によりましても、弘前大学の教授夫人殺しの再審裁判で無罪をかちとったところの那須さんの件でございますが、これについては逮捕状もでっち上げておったというようなことが明らかになっておるわけであります。そういう点で、この問題について一体あなた方はどう思っているのかということについて、私がいま申し上げた論点についてひとつお答えをいただきたい、このように思います。
  63. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 法務大臣立場としては、この事件についてとやかく指図することはいたさないわけでございますが、実は、いわゆる甲山事件、被告人は山田悦子さんというのですけれども、お話しのように、この事件は、前に捜査をして、その段階では不起訴処分になっておる。ところが、先般新聞で、さらに再逮捕をした、こういう報道を見まして、二年か前に不起訴になったのを再逮捕するのはやや異例なことでございますから、私は、事はまさに場合によっては人権に関する問題である、また一面、間違いを起こしますと、検察に対する国民の信頼にも関係がある、こういう感想を持ちましたので、早速その状況についての報告を受けました。  詳細な点については刑事局長から御説明をいたさせますが、その報告によりますと、前の捜査の段階では一遍不起訴になったけれども、検察審査会で、さらに再捜査をするようにという決定がされて、こういう事態になったということでございます。前の捜査の段階では、いわゆる甲山学園をめぐる状況が、捜査に非常に困難をした事態があった。その後、二年ぐらいの経過の中で、甲山学園をめぐる状況に相当変化が出てきて、今度の捜査で新たな証拠を発見することができた。そういうことで、再逮捕して調べて、起訴するようになったという報告を受けておるわけでございます。さらに念を押しますと、この事件については確信を持って起訴いたした、こういうことでございます。  私がお答えをしすることはそのぐらいにしておきますが、あとは刑事局長から御説明いたします。
  64. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 何分起訴したばかりの生々しい事件でございまして、これから裁判所による公正な裁判が行われると思いますので、細部につきまして、ここで申し上げることはいかがかと思います。  要は、いま大臣が御説明になりましたことに尽きるわけでございまして、私も大臣の御命令によりまして、早速実情の調査をいたしましたけれども、検察としては確信を持って起訴したようでございまして、裁判の成り行きを見守りたいと思っております。
  65. 上田卓三

    上田委員 この事件に対するあなた方の態度については全く不満であり、強く抗議をしたい、このように思っております。  時間が来たようでございますので、これで私の質問を終わります。
  66. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて上田卓三君の質疑は終了いたしました。  午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後二時三十二分開議
  67. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。市川雄一君。
  68. 市川雄一

    ○市川委員 法務省設置法に関連いたしまして、この設置法の第二に「東京医療少年院の名称及び位置を改め、神奈川少年院を廃止すること。」とありますが、伺ったところによりますと、東京渋谷区代々木西原にある東京医療少年院を廃止して、その分をそっくり神奈川県相模原市にある神奈川少年院の敷地内に移す、名称を神奈川医療少年院として新設をする、同時に神奈川少年院を廃止して、そこに収容されている少年のうち大半を横須賀市にある久里浜少年院に移す、こういうお話でございますが、間違いございませんか。
  69. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 そのとおりでございます。
  70. 市川雄一

    ○市川委員 久里浜少年院の地元周辺の住民の感情を申し上げますと、もちろん非行少年が一日も早く立ち直って社会に復帰してほしいといろ、こういう気持ちは持っておりますし、こういう少年院がどこにできるかということを何か邪魔者扱いするみたいなことはいけないという気持ちは当然持っておるわけですが、同時に、先日脱走事件がございまして、そういう脱走者がまたふえるんではないかという、こういう不安も住民の間に強くあることも事実でございます。そういう立場法務省のお考えをお尋ねしたいと思いますが、この東京の渋谷区にある東京医療少年院を廃止する理由は何ですか。
  71. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 東京医療少年院は、ただいま市川委員のおっしゃったように、東京の渋谷区西原に存在いたします。そこで精神薄弱者及び情緒障害に陥っている少年の処遇を行っているのでございますが、最近、医学の進歩その他処遇技術の進歩によりまして専門的な治療教育を行う必要が生じてまいりました。したがいまして、東京医療少年院の整備拡充ということが緊急の課題になったわけでございます。  ところで、この現在あります東京医療少年院は、昭和二十四年に発足したときに戦後の粗悪な資材をもってつくりましたために木造であり、きわめて老朽化の現象が著しいのであります。すでに建てかえの時期に達しております。かてて加えて敷地が狭隘でございますし、また付近が住宅地、それも高級住宅地と称していいのではないかと思いますが、住宅が密集してまいりました。そのために専門的な治療教育を行うには決して好ましくないという状況になったのであります。そのほか、ここは大きな建物が建てられない地区でございますので、どうしても移さなければならないということに相なりました。その際に環境のことを考えなければなりませんし、また医療少年院でございますので、東京の近くに八王子医療刑務所がございますが、そことの業務上の連絡もしなければならないということで、神奈川県の相模原にございます神奈川少年院の敷地に医療少年院を建てようということに相なりまして、そのために東京医療少年院を神奈川少年院の敷地跡に移そうというものでございます。
  72. 市川雄一

    ○市川委員 いろいろな理由があることはいま伺ってわかったのですけれども、東京の渋谷にある東京医療少年院の周辺におきましても、住民が反対運動というか、そういう運動があったやに聞いております。ですから、そういうことですと、東京ではそういう住民パワーというのですか、非常に反対運動が強い、だから神奈川県に持っていく。どうも、今回の設置法を見る限りにおきましては、都市から地方へ何か移そうという、こういうふうに見えるわけですけれども、その基本の考え方はどういう考え方ですか。
  73. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 矯正施設全般につきまして、環境がまず大切なことは言うまでもないところでございますが、特に少年院におきましては、次の時代を背負う国民になる少年の矯正教育でございますので、どうしても地域住民との御協力が大切なことは言うまでもないところでございます。渋谷にございます東京医療少年院につきましても、付近住民の方々の御協力は得られておりまして、これをわれわれは多としているのでございますが、それと同様に、またそれ以上に、神奈川少年院につきましても付近住民がきわめて御協力的な態度でございまして、そういう関係から神奈川に移すようにしたのでございます。  一般的に、そうなってまいりますと、都市から地方に移るではないかという御質問でございますが、必ずしもそういうわけではないのでございまして、たまたま渋谷付近が住宅地が狭隘になりまして、少年の処遇を行うには適さなくなってしまったということで、神奈川の方に移すということになったわけでございます。
  74. 市川雄一

    ○市川委員 それで、周辺住民に対する理解というものを得ることが非常に大切であるというふうにいまおっしゃられておりましたけれども、これは久里浜ではこの間脱走事件があって、まだ一人つかまってないわけですけれども、そういうことを考えますと、人数がふえるわけですから、やはりそういう事件がまた起きるのじゃないかという不安は当然周辺の住民にはこれは起きているわけですけれども、この移転に伴って、この久里浜少年院周辺の住民に対する配慮というのですかね、そういうことで何か具体的なことをお考えになっておりますか、どうですか。
  75. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 久里浜少年院が新装になりまして、きわめて近代的な少年院になった直後に合計七人もの逃走事故を出し、付近住民の方に不安を与えたことをまことに申しわけなく思っているのでございます。  ところで、久里浜少年院は前にある敷地とほぼ近くに設置されたのでございますが、設置といいますか改築されたのでございますが、以前から久里浜付近におきましてはきわめて少年矯正に御理解がございまして、私も昨年落成式に伺ったのでございますが、保護団体、地域住民の婦人層の方々が相当多数おいでくださいました。代表の方に私もお礼を申し上げたところでございます。  このような逃走事故が二度と起きてはならないのでございまして、起こさないためには、まず第一に必要なことは少年の心情を把握することであります。たまたま改築中、久里浜少年院に勤めていた職員がほかの施設に応援に行っていた等のこともございまして、心情の把握に欠けるところがあったのが今度の事故の一つの原因であろうと思います。そういう点で職員の再教育といいますか、研修等にも今後努め、再びかような事故の生じないようにいたしたいと思っておりますし、その点につきましては院長等から付近の方々にも十分御説明をさせており、また今後も必要があればさせるつもりでございます。
  76. 市川雄一

    ○市川委員 その周辺方々が久里浜の場合は御理解があるから、だからいいんだということだと、何か御理解のある地域だとそれに甘えてやるし、住民の反対があれば下がるしという、そういうことじゃ困ると思うんですよね。いま脱走事件を二度と起こしてはならないという趣旨のお話がございましたけれども、保安対策上やはりミスがあったんじゃないかと思うのですが、その点はどういうふうに御認識ですか。
  77. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 御指摘の事故のときの状況を最初に説明させていただきたいと思います。  ことしの二月十二日、これは日曜日でございますが、夕方五時十分ごろに夕食後の食器を回収するために二人の教官が、三人入っている部屋のとびらをあけましたところ、その部屋におりました収容中の三人の少年が突然廊下に飛び出しまして、二人の教官の顔面、頭等を手で殴るというような暴行を加えまして、門のかぎと教官の持っていた現金一万二千円余り及び定期券入れを奪ったのでございます。さらに、仮錠になっておりました両隣の部屋のとびらもあけまして、そこに入っていた者合計四名、合わせて七名でございますが、これが中庭に通ずるとびらを奪ったかぎであけまして、中庭から外へ出て逃げた、こういうことでございます。  それで、問題になりますのは、夕食後の錠をかけるのを仮錠にしていたという点でございます。この点につきましては、少年院は明るい雰囲気のもとで矯正教育を行うために、たとえばへいもコンクリートべいではございません。刑務所と違いまして、コンクリートのへいではなくてフェンスで囲まれているのでございます。そういう点でなるべく社会復帰を可能ならしめるために普通の部屋のようにしているのですが、どうもこの仮錠にしておいた点が一つの問題があるだろうということで、早速この以後は食事の前、食事の後におきましても本錠をかける。したがって、少年が直ちに自分であけることができないというように是正いたしました。これは全少年院にそうしたことを行うのはまた必ずしも適当ではないと思いますが、久里浜少年院の事故の例にかんがみましてさような改善措置を講じております。そのほか看守の監視体制、保安原則を十分守らせるようにいたしたいと思っているところでございます。
  78. 市川雄一

    ○市川委員 あと一人まだ逃走中の少年がいるわけで、これが住民に危害を加えるのではないかという不安もあるわけですけれども、いまどういう状況ですか、お聞きしたいのです。
  79. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 逃げました七人全部につきまして、警察では強盗傷人の罪名によりまして逮捕状をとって捜査したわけでございます。そのうち六人は先ほども申し上げましたように逮捕されました。いま一人はいまだ逮捕されていないのでございますが、警察におきましては立ち回り先といいますか、本人が立ち回るであろうという先あるいはこれまで勤めていたところ、交友関係等を捜し求めまして、現在鋭意捜査をしているというふうに聞いております。
  80. 市川雄一

    ○市川委員 少年院の性格からいって、刑務所ではありませんから、確かに少年の気持ちを刺激するような余りいかめしい形でへいをめぐらせたり、かぎを厳重にするということは、そういう矯正教育上問題があるかもしれませんが、しかしまた同時に、そうも言っていられない面もあると思うんですよ。実際問題、婦女暴行であるとかそういう事件を起こして入ってきていることは事実なんですから、そういう意味では外べいが金網三メートルで簡単に飛び越えられるというところにも一つの問題があったのじゃないかと思うのですが、その点はどうですか。
  81. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 そこが非常にむずかしいところでございまして、フェンスと言いながら余り金網のへいを高くすると、かえって威圧感があるということでございます。へいを飛び越えるかどうかよりも、まず寮舎に入っておりますときに、そこから出ないようにするという点に重点を置きたい、かように思っております。
  82. 市川雄一

    ○市川委員 もちろん本質的にはそういうことだと思いますよ。少年がそこで本当に教官の教育になじんで一日も早く社会復帰したい、こういう心情になり、脱走しようなんという気持ちが起きないようにするということが当然一番本質的な脱走に対する防止策だと思うのです。しかしこういう場合は、そういう善意を踏みにじってやるということを当然前提としていなければならないと思うのです。ですからそういう意味で、簡単に越えられてしまうといういまのこのへいのあり方、こういうことに対して、ただそれだけのお答えでよろしいのですか。どうですか、その点は。
  83. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 まず逃げないようにするためには、先ほども申し上げましたように心情の把握、少年でございますので突発的な場合も多いのでございますが、その者に何か心配はないかというようなことを十分観察しておりますればかような事故はないのでありまして、またその少年の状況を十分観察するときの話し合い等で、少年と少年院の教官との間に心の触れ合いを生じさせるということになるのでございますので、まずその辺のところを重点に置きたい、かように考えているわけでございます。
  84. 市川雄一

    ○市川委員 それはよくわかるんですよ。そういう考えでずっとやってこられたわけでしょう。そういう考えでやってきたけれども、結局少年の心情が把握できなくて脱走者を出してしまったわけでしょう。また同じ考えでこれからやっていくという気持ちはわかりますよ。わかるけれども、また同じことが起きるんじゃないかということなんですよ。ですから、物理的にある程度脱走のできない状況をきちっとつくってあげることも大事ではないかと思うんですよね。というのは、脱走した場合、脱走した少年自身も刑が重くなっちゃうわけですよ。そういう脱走の可能性を示唆しているということは、かえって罪になると思うんですね、そういう意味では。その辺は非常にむずかしいところかもしれませんが、脱走させれば結局脱走した少年だって罪が重くなる、周辺住民も非常に不安に思う、こういう問題もあるわけですから、その辺の対策はもうちょっと物理的に逃げられないようなものも考える必要があると思うんですよね。ただ心情的対策だけでということでは済まないのじゃないかと思うのです。確かに久里浜少年院はできたての非常にりっぱな少年院ですよ。しかしそれでさえもこういう事件が起きるわけですから、そういう意味でその点を要望しておきたいと思うのです。  それから、この矯正に当たる教員の研修ということをさっきおっしゃっておりましたけれども、年一回しかいまやっておられないのでしょう。どうですか。力入れていきますとおっしゃっていますけれども、回数をふやすとか、もっと研修制度を具体的に充実させていこうとかという具体的なお考えがいまあるのですか、どうですか。
  85. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 矯正機関におきましては、矯正研修所という本所が一ヵ所ございまして、そのほか八つの矯正研修所の支所を設けております。それから研修の対象は、入ったばかりの者に対する初等研修、初級幹部に対する中等研修、それから将来幹部になる者に対する高等研修の三部でございますが、そのほか専門研修といたしまして、その都度必要な者につきましての研修を五日ないし十日の短期間ではございますが、行っているところでございます。特に少年院につきましては、時代の要請に従いまして運営を改善していかなければならない事態に立ち至っておりますので、この研修を本所、支所ともに重視いたしております。さらに、いわゆる中堅幹部の研修を研修所の本所もしくは支所でやりました後、自庁研修と称しまして、自庁においてその研修を受けた者あるいは院長、次長、課長等が研修をするということをやるわけでございます。  久里浜につきましては、先ほども申し上げましたように、改築されている間みんなが集まってそうした研修をする機会がございませんでしたが、今度の逃走事故を生きた教訓といたしまして、十分な自庁研修もさせるように現在指導しているところでございます。
  86. 市川雄一

    ○市川委員 この久里浜少年院における職員が全部で七十一人、そのうち教務課職員は四十四人、この先生たちの勤務については土曜日の午後引き続き勤務した場合や日曜出勤した場合等があって代休をとる。そのため大体常時十人前後の教官が休んでいる。六日に一回宿直もあり、かぜを引いたり家庭の事情で休む方等も考えますと、かなり残った方にしわ寄せが行くんではないか。そういう点が一つはあるんじゃないかと思いますし、また今回収容者が約倍近くにふえるわけですけれども、そういう脱走の防止ということだけではなくて、矯正教育を十分に徹底するという意味から言っても教員の数をふやすというお考えは、この久里浜少年院についてはどうですか。
  87. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 現在いる職員は八十一名でございますが、設置法が通りまして神奈川少年院を廃止して神奈川医療少年院になった場合に、神奈川少年院の職員定員の一部を久里浜に振り向けますので、十四人増でございますが、九十五人にする予定でございます。
  88. 市川雄一

    ○市川委員 ここに勤めておられる方々の場合、普通の勤務と違っていろいろなことに神経を使っておられるわけですね。いつどういう事件が起きるかもわからないし、脱走があるかもわからない。場合によっては、この間の事件のように殴られたりひどい仕打ちに遭うわけですよ。そういう意味で危険手当というようなものを考えて、勤務に張り合いを持たしてやらしていくというようなお考えはないのですか。どうですか。
  89. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 大変御理解のあるお言葉でございまして感謝にたえないところでございます。  実は矯正職員は、全般的に一般の行政職の俸給表より高い俸給表で給与が支給されるわけでございまして、少年院の教官につきましては公安職俸給表の(二)が適用されております。これは一般の公務員に適用される俸給表のいわゆる行政職俸給表(一)よりも一一%高いものでございます。これは、まさに職務の危険性を勘案いたしまして、財政当局並びに国会の御支持がございましてかように決められているわけでございます。そのほか被収容者、非行少年を護送する等の場合におきましては、特別護送手当というようなものも支給されることになっております。こういう点で、今後とも危険な仕事に従事する職員であるという特質性につきまして関係当局の御理解を得て、俸給を高くするのみならず、必要な場合の手当につきましての増額を図るようにできる限りの努力をしたい、かように考えております。
  90. 市川雄一

    ○市川委員 先ほど申し上げたような点をどうぞ御留意いただいて、周辺住民に不安のないような行政をしていただきたいというように御要望を申し上げまして、この少年院の問題は終わります。  次に、登記行政についてお尋ねをしたいと思います。  実は川崎市高津区の菅生、向ヶ丘、稗原、長沢といった地域一帯約二十三万平米、地元の人たちは約三十三万平米と言っておりますが、世帯で約二千世帯から二千五百世帯が住んでおります。これは前にたしか参議院の内閣委員会でも話題になっていると思うのですが、ここで登記所にある公図と現況が著しく違っているためにいろんな問題が起きているわけですね。もうすでに御承知だと思いますが、たとえば営々としてためたお金で買ったマイホームが、家屋は別ですが土地の所有権が確定しない。したがって、いつまでたっても自分の土地にならないということですね。ですから売買もできなければ、引っ越しもできなければ、銀行からローンを借りることもできない、こういう問題になっているわけです。あるいは七十坪もあるスーパーマーケットの半分の三十五坪が公図上では道路になってしまっているとか、実際は三十五坪の土地を買ったのだけれども公図上ではわずか六坪の土地しか載ってないとか、宅地であるはずのところが大きな私道ができてしまっているとか、そのために地主との争いの関係から、川崎市の方は地主の許可がないから砂利は敷きませんということで、親和会という自治会が毎年六十万のお金をみんなで出し合って砂利を敷いているとか、あるいは側溝をつくったり砂利を敷くために第五自治会というところでやはりみんなお金を出し合っているとか、その他都市ガスが引けない、十年たって水道管が非常に腐ってきているのだけれどもその工事さえもできない、こういう問題を引き起こした地域があるわけです。もう御承知だと思うのです。  法務省ではこれを混乱地域と呼んでおるようですが、この混乱を招いた原因を分析してみますと、いろんな原因が複合して起きたと見られるわけですね。確かに悪質な不動産屋にだまされたという意味においては、買った方の不注意があったということは否定できないと思うのです。また、この事業は川崎市の職員組合というものがかんでおりまして、川崎市のある課長は個人の資格で事務局長を務めてやった。その事務所がわりに川崎市庁舎内が使われておったという意味においては、まあ市は全然関知せざるところですが、市がバックアップしているのじゃないかという錯覚を市民に与えたという点においては、やはり市にも責任があるのじゃないかというようにわれわれ理解をしております。しかしまた同時に、そういう申請を受け付けてしまったという国の登記の行政においてもやはり重大なミスがあったというか、国にも大きな責任があるというふうに私は考えておるわけでございますが、まずこの点についてどういう御認識を持っておられるのか、伺いたいと思います。
  91. 香川保一

    ○香川政府委員 御指摘の地域は、いまおっしゃいましたように不動産業者がいわば登記制度を無視して適当に開発されたわけでございますが、その結果全く登記所における公図等と違った現況ができてしまったということが根本的な原因だと思うのでありますけれども、この経緯をいろいろ検討いたしますと、おっしゃるとおり根本的には、登記所において現況に合致した地図が完備されていない、その点に原因があると思うのであります。  御承知のとおり、現在登記所にあるいわゆる公図と言われておりますものは、土地台帳の付属地図として、かつては税務署が所管しておられましたものを戦後引き継いだものでございます。大体、最近のこういった開発地域と申しますのは、昔は地租が非常に安い地域、山林とか原野とかそういったものが多いわけでございまして、そういった地域の地租というものが比較的低かった関係もあってかと思いますけれども、一般的に申しまして、山林原野等の土地台帳の付属地図というものは、当初から現況とはなはだしく違っておるという実態があるわけでございます。さようなところが開発されて住宅地域になっていった。それを追っかけてと申しますか、当然私権の対象たる土地の所有権を明確にする意味で、同時に地図が整備されなければならぬわけでございますけれども、遺憾ながらさような地図の所管を、庁としての登記所の体制が率直に申しまして十分ないということから、地図が追っかけていけないという現況にあるわけでありまして、そこに根本的な原因があることは重々承知いたしておるわけでございます。  この問題はさようなところに根本原因があるわけでございますけれども、登記所の方の公図なりあるいは登記簿を当該不動産の分譲を受ける方がごらんいただいて、これは私どもの登記制度のPRが足りない関係もあろうかと思いますけれども、十分登記所の方で調査していただきますれば現況と公図が違うことが明らかにわかるわけでございまして、おかしいということでその辺のところを慎重に対処される、そういうふうにしていただければ、あるいは未然にかような混乱ということを防止できたのではないかと思うのでありますけれども、実際問題として、先ほどお述べになりましたような背景も手伝って、現況だけで土地を購入されたというふうな経緯のようでございまして、この後始末と申しますか、非常に権利関係が混乱いたしておりますので、どのようにしたらいいか、いま地元の横浜地方法務局、それから市当局も含めまして、地域住民ともいろいろ協議をしておるところでございます。
  92. 市川雄一

    ○市川委員 いまの御答弁、また後でお伺いすることにいたしまして、二つの点でちょっと納得がいかないのですけれども、根本的な原因がその登記所にいわゆる公図と称してあったものが不正確であったということをお認めになった点は評価しますけれども、しかし、買った方が現況と公図を引き合わせればそういうミスはなかったのだという後の方のお話、これは矛盾しているのですよ。というのは、公図が不正確なんですから。そういうことをお認めになっているわけでしょう。その不正確な公図と買った人が突き合わせたってわからない場合があるわけです。それからもう一つ、後で委員長にお願いして地図をごらんに入れますけれども、登記所の専門家たる登記官でさえも受理してしまうくらい間違いやすいのですね。間違えている。ましてそれを一般の知識のない方が間違えたのはいけないと言っても、実際問題これは無理なんです。そういうことをまず指摘をしておきます。  次に、ここで大臣にお伺いをしたいのですが、確認の意味でお聞きしておきたいのです。  不動産登記法の第五十条には「登記官ハ土地又ハ建物ノ表示二関スル登記ノ申請アリタル場合又ハ職権ヲ以テ其登記ヲ為ス場合ニ於テ必要アルトキハ土地又ハ建物ノ表示二関スル事項ヲ調査スルコトヲ得」、こうあります。それからまた不動産登記事務取扱手続準則、これは民事局長通達だそうでございますが、この八十七条には「登記官は、事情の許す限り積極的に不動産の実地調査を励行し、その結果必要があるときは、不動産の表示に関する登記を職権でしなければならない。」同じく八十八条には、「不動産の表示に関する登記の申請があった場合には、原則として実地調査を行なうものとする。」こうあるわけです。不動産登記法は国の法律ですよ。準則は民事局長通達ということでございますが、これはどういう位置づけを持っておられるのですか。できれば守ってほしい、しかし守れなければやむを得ないのだ、こんな程度のものなのかどうかということをまず大臣に確認をしておきたいと思うのです。どうでしょうか。——いや、大臣にお伺いしたいのです。
  93. 香川保一

    ○香川政府委員 事務的なことでございますので、(市川委員「事務的なことを聞いているのじゃない。基本的な登記行政の姿勢を聞いているんです」と呼ぶ)この不動産登記法五十条と準則の精神の基本的な考え方を申し上げますと、いわゆる土地台帳と登記簿を一元化いたしました昭和三十五年に不動産登記法の大幅な改正が行われまして、この時点までは、実は登記所におきましては権利の客体である土地、建物の現況把握というふうな機能がなかったわけでございます。しかし、いかに登記簿におきまして権利関係を明確にいたしましても、その対象の土地、建物の現況が十分把握されていなければ絵にかいたモチと言ってもいいかと思うのであります。さようなことから、昭和三十五年に不動産登記法が大幅に改正されて、権利関係の登記とは別に不動産の現況把握のための不動産の表示に関する登記の制度ができたわけでございます。  このことは、いま申しましたように現況を明確にするということに尽きるわけでございますので、現況を明確にする以上は、いままでの登記制度の基本である申請主義、申請人の申請によってそれに対応する登記をするというふうなことでは十分現況把握ができない、そこに物理的な現況把握が当然実地調査を伴うということに相なってまいりますので、実地調査が基本となって不動産登記の制度が維持される、かような一つの大きな趣旨を五十条にうたっておるわけでございます。それを受けまして、登記所の職員が事務を取り扱う上での心構えと実際の事務の取り扱いをさような理想的なものに近づける努力をすべきものという意味で、いま御指摘の準則を定めておるわけでございまして、これはできるならやって、できなければやらなくてもいいというふうなものではないわけでございまして、私どもといたしましては、いろいろの物的、人的な諸条件を整備しながら、さような理想に近づける一つの大きな目標として重視しておるものでございます。
  94. 市川雄一

    ○市川委員 わかりました。  それではお伺いします。先ほど、根本原因は公図が正しくなかったところにある、こうおっしゃいましたが、川崎市のこの地区のトラブルの原因を法務省では調べましたか、どうですか。
  95. 香川保一

    ○香川政府委員 現地の法務局が、地域住民の方たちのさような混乱するに至った経緯とそれから今後どういうふうに処理していくかということのいろいろの御希望等も十分承る機会をつくって、事情を聴取いたしておるわけでございます。
  96. 市川雄一

    ○市川委員 その混乱の根本原因が現況を正確に把握した公図がなかったことにあるという認識は持っておられるということはわかったのですが、そういう意味では、このトラブルが起きたことに対する法務省としての責任というものを自覚されておられるわけですね。どうですか。
  97. 香川保一

    ○香川政府委員 登記制度のあり方といたしまして、私ども、地図が十分現在整備されていない、そのことについて十分反省はいたしておりますし、かようなことのないように今後整備に一同一層努力したい、かように考えておるわけでございます。
  98. 市川雄一

    ○市川委員 ここに、溝口の登記所ですか、そこの所長さんからこれはいただいたのですけれども、だから私たちが別にどこかから探してきたものじゃないのです。ちゃんと法務省の方からいただいた資料なんですが、これを拝見しますと、これが公図なんですよ。これがいわゆる土地家屋調査士が出した測量図なんです。公道がございまして——あったわけですね。宅地造成前に公道があった。宅地造成の結果そこへ私道ができてしまった。それでこの人が土地を買ったわけですよ。あなたの土地はここですよということで受け取ったのがこの測量図ですね。宅地造成前からあった公道の前にその家は存在しておるわけです。測量図もそうなっているわけです。公道と測量図に書いてあるわけです。ところが実際住んでおるのは、宅地造成後公道のもう一本こちら側にできた私道の前にいまは住んでおるわけですよ。そうしますと、先ほど民事局長がおっしゃった、買う方が注意すれば済んだという御意見なんですが、買う方は、土地家屋調査士がつくった測量図が現実には私道なのにそれを公道と書いてしまってあるわけですね。ですからこれは公図と合わせますと、公図にも公道があるわけですから、その公道の手前に、番地としては二九五の八、こちらも一一九五の八で合うわけですよ。これを発見するためには、現場を見て、道路が何本あるのか、宅地造成前の道路はこれ、これは公道、宅地造成後できた道路はこれで、これは私道ということまで全部調べないと、一般の人にはとてもわからないですね。登記所の方だってすんなりこれを通してしまっているわけでしょう。この場合宅地造成をして土地の地形が著しく変容をしているわけですよ。だから、こんな簡単な測量図でオーケーすること自体が無神経過ぎるのです。この道路は公道と称しているけれども、公道かどうかさえ確認しようがないじゃありませんか、ただ棒が引っ張ってあるだけなんですから。この道がどこへつながっているのかということを示してありさえすれば、これは私道か公道かということは、専門家ですから公図をごらんになればわかると思うのですけれども、ただ道路が引っ張ってある。現実には道路が二本ある。片方が公道で片方が私道、ところが私道のところへ住むのに、測量士書がこれを公道と称してしまったわけですね。こういうことです。これは一軒や二軒の家ができる場所ならわかりますよ。だけれども、第一次から第六次にわたって、かなり大きな地域を崩したり平らにしたり、道路を埋めたり何かしながら家をつくっているわけですから、専門官だって登記官だって、ただ持ってきました、はい見ました、しかもその道路がたった一本書いてあるだけで、この道路がどこへどうつながっている道路なのかということも見もしないで、公道と書いてあるから公道だろうなんということで受け付けちゃったのだろうと思うのです。これは専門家の登記官だってこうやって受け付けちゃうのですから、一般の人にここまで、調べろと言えばそれは調べるでしょうけれども、恐らく無理だろうと思うのですね。そういう意味では、不動産屋は相当悪質ですよ。不動産屋と家屋調査士、これは結託していますな。こういうことですよ。  したがって、これはやはり、私はそれは買う方の不注意も否定はできません。それから、市の方の先ほど申し上げたようなモラル的な責任もあるでしょう。しかし、やはり一にかかって、買う方は、善良な市民の方は、国を信用しているわけですよ、登記所というものを。そういう意味では、信頼にこたえていないという点では、国に解決の重大な責任があると思うのですよ。そういう意味で、ただ川崎市の意見も聞いています。横浜法務局の意見も聞いていますなんという程度のことでは、これは十年たっているのですよ。土地は買った、土地は自分の物にならない、売買はできません、十年もたって、十年も騒いでいるのに、いまだに法務省は、川崎市の方の話も伺いながら、横浜法務局の話も伺いながらなんという、こんな程度の御認識ですか。もっと具体的にどうするのかということをお聞きしたいのです。どうですか。
  99. 香川保一

    ○香川政府委員 これは具体的な解決といたしましてなかなかむずかしゅうございまして、まず、御承知のとおり、実際に買われたところがどこかということから始めなければならぬわけでございます。私ども、登記所はさような私的な売買についてまでいろいろ介入する立場にもございませんし、そういうようなものは民間の方で確定さしていただいて、そしてそれを受けて登記に反映させるということが登記制度でございます。だから、権利関係の確定まで登記所においてお世話するというわけにはまいらない。また、さようなことをすることはむしろよくないと思うのであります。ただ、いま御指摘の図面をごらんいただいてもわかりますように、実際にその公図と合わせますと、自分の買ったらしい地域というのは、公図上は道路の上になっているというふうなものもあるわけでございまして、さっき申しましたように、現在の登記所に備えておる台帳の付属地図というのは、もともと現況に合っていない。この地域も、実際に測量いたしますと、全然その地積から違ってくるわけでございます。  さような意味で、登記所の公図が正確でないことは否定できないわけでございますけれども、ただ単に不動産業者あるいは土地家屋調査士の作製した図面を信頼されて買われたということ、これはやむを得ないといたしましても、どの土地を買ったかという現場においての特定は、これはやはり買った方にしていただく以外に方法がないわけでございまして、しかも売り主の方は、先ほどおっしゃいましたように職員組合が関係しておりますけれども、不動産業者がいなくなっておるわけでありまして、その辺のところをどう解決するかということは、なかなかこれは容易でないわけでございます。だから、やはりその住民のそういう被害者と申しますか、あるいはその地域の土地を買ったという方々の間で、自分の土地はここにするというふうな、いわばそういう和解をひとつしていただいて、それぞれ決めていただいて、文句のないところで、それをもとにして登記に反映さしていくというふうな方法しかないわけでございます。だから、結局住民の方々がさような意味の和解と申しますか、全員で合意をされるということが何といっても先決だろうと思うのでありまして、そういう関係は登記所がいろいろお世話して介入するということもいかがかと思いますので、地元の市にもさような方法がとれないかということをお話し申し上げている、かような趣旨でございます。
  100. 市川雄一

    ○市川委員 もう少し答弁を短くしていただきたいと思うのです。聞いたことだけ答えてください。具体策があるのかないのか。要するにないのです。国に。ないと言っていただけばいいのです。いまおっしゃったことはこちらもわかっているのです。ですから、おっしゃるように、何も法務省に権利関係の確定までやれなんということをぼくは言っているわけじゃないのですよ。この権利関係の確定をするためには、結論として、おっしゃるように現行の境界線で住民が和解するしかない。確かにこれしかないのです。ただ、その和解をするためには話し合わなければならない、話し合いがなくして和解ということはあり得ないわけですから。話し合いをするためには、まず現行境界線を正確に把握した地図が話し合いの出発点になるわけです。そうでしょう。何となく勘で話し合っているんじゃしようがないわけでして、それではお互いに話し合って、もう十年もたっちゃったし、このままほうっておいてもどうにもならぬし、だから現行の境界線で権利関係は一応合意しようじゃないか、じゃ合意するに当たっての境界線はどれですかということになるわけです。そういう意味では、確定した地図じゃなくてもいいのです。まず現行の境界線で測量した地図がある。この地図をたたき台にして和解の話し合いを始める。和解した結果、多少引っ張った線が動くことはあるでしょう、これは話し合いですから。しかしそれが最終的にはこれでいこうということで和解が成立するわけですよね。その地図がないのです。それで困っているのです。  それでは、あれですか、法務省の方ではそういう地図をつくって差し上げましょう、こういうことですか、どうですか。簡単にひとつ……。
  101. 香川保一

    ○香川政府委員 そのような地図は登記所の方でつくりようもございません。
  102. 市川雄一

    ○市川委員 つくりようがないことはないのです。それはきわめて怠慢ですよ。持っている公図は正確じゃありません、また、その公図が間違っているために、それが根本原因で混乱が起きました、その混乱を解決するには、御自分の口で、現行の境界線で権利関係を和解で解決してもらうしかない、こう言いながら、その和解の出発点になる地図、そんなことはできません、これじゃ何ですかということを言いたくなるのです。  そういう意味で、どうかひとつ法務省としては、住民が和解するための話し合いの出発点になる——それは権利関係を確定したものでなくていいのです。いまAさんというのはこういうへいでこういうふうに住んでいる、Bさんという人はこういうへいでこういうふうに住んでいるという、これは権利関係が確定していないという前提での現行の境界線の地図をつくっていただければ、その地図を出発点に置いて話し合いを行う。住民の中にも、これはもう和解で解決せざるを得ないという空気もありますし、ただそういう地図がありませんと話し合いもできない、こういう状況なんですね。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  ですから、先ほど私が伺った根本的原因が、この公図が現況を正確に把握してない点にあったとして、したがって法務省としても責任を当然感じておるという立場にお立ちならば、これはやはりその地図をつくる努力をすべきだと思うのです。市の方は登記行政にかかわっておるわけじゃありませんから、直接の責任はないわけですよ、市としてのトラブル発生の責任は。そういう意味では、市にかぶせるやり方はやはりいいやり方じゃありませんね。これは国の行政のまずさから起きた問題なんですから、少なくとも国がもっと確固たる姿勢を持って解決に乗り出すべきだと思うのです。  そういう意味で、どうですか。いろいろなつくり方があると思うのです。建設省でやる区画整理事業でやるとか、あるいは国土庁でやる国土調査法でやるとか、この法律にもいろいろな隘路がありますけれども、法務省さえその気になればできるんじゃないかという気がするのですが、どうですか、その点は。責任を感じておる、根本的原因は法務省の公図の間違いにあった、そこまでおっしゃっているのですから、責任の裏づけである解決策のための努力というものをなさっていただきたい。それはやはりいま申し上げた話し合いの出発点になる地図をつくる努力をしていただきたい。この点についてお答えをいただきたいと思います。
  103. 香川保一

    ○香川政府委員 現行制度のもとでは、いまお言葉にも出ましたように、国土調査法による地籍図の作成ということをとる以外に私は方法がないだろうと思うのであります。もともと地図というのは現場におきます境界というか、これは事実上のものでいいわけでございますが、隣地との境界はここだ、ここの土地はこういう位置、状況になっているということがはっきりしておりまして、それを図面上に反映するものが地図であるわけでございます。したがって、国土調査による地籍測量をいたします場合も、現場で事実上現況のもとでの自分と隣との境界はここだという話し合いをつけていただいて、それをもとにして国土調査法による実地測量をして地図をつくる、こういう手順になるわけでございまして、だから、地図が先にできてなければ話ができないというのは、ちょっと私には理解できないことなんでございます。  しかし、この国土調査法による地籍測量をやることが一番私は現在のもとでは解決の早い方法ではないかと思うのでありますが、御案内のとおり、この国土調査法による地籍測量は地元負担が要るわけでございます。全部国の費用でやる仕組みにはなっていないわけでございます。金の面、事務の面、それぞれこの場合で申しますれば川崎市の一部負担によってやらなければならぬ仕組みになっておるわけでございまして、市が協力してくれなければ国土調査法による地籍測量もできないということになってまいるわけでございます。さような意味で、市の協力も得なければならぬということを先ほど申し上げたつもりでございます。
  104. 市川雄一

    ○市川委員 大分無責任なことをおっしゃっているのですが、国土調査法というのをずいぶんきのう国土庁の方と詰めたのですがそんな簡単なことじゃないようなんです。国土庁の方お見えになっていますから、この混乱地域について、いま民事局長は国土調査法で地籍調査をおやりになれば地図ができるのじゃないかというお話をなさっておりましたが、どういう見解かひとつお伺いしたいと思います。
  105. 高田徳博

    ○高田説明員 お尋ねの地域につきまして地籍調査を実施し得るかどうかということにつきましては、一概には申し上げられないわけでございます。  地籍調査と申しますのは、国土調査法の規定に基づきまして、毎筆の土地につきまして所有者、地目、地番といったものを調査するとともに、境界及び地積の測量を行いまして、その結果を地図と簿冊につくる、こういうことでございまして、調査の結果、当該土地に係ります権利の変更を生ぜしめるというものではございませんので、このようなことがある場合には、直ちには地籍調査を実施することはできないものと考えております。
  106. 市川雄一

    ○市川委員 いまお答えがあったとおりですが、どうですか、法務省では、この川崎の混乱地域解決のために国土庁と打ち合わせましたか。国土調査法による地籍調査がなじむ地域なのかどうかということをお打ち合わせをして、国土庁の見解を法務省は伺っているのですか。それから、川崎市にその場合協力してもらえるのかという話し合い、協力の要請、こういうようなことをやっているのですか、どうですか。
  107. 香川保一

    ○香川政府委員 私の考えでは、国土調査法による……(市川委員「やっているかいないかということを聞いている」と呼ぶ)まだ国土庁とはさような具体的な話し合いをしておりません。(市川委員「ちっともやってないですか」と呼ぶ)全くやっておりません。
  108. 市川雄一

    ○市川委員 そこが無責任なんですよ。十年も騒ぎがあって、参議院の内閣委員会でもあなたはお答えになっているじゃありませんか。ここに議事録がありますよ。そういう国会質問のときだけ逃げればいいという御答弁じゃなくて、本当にそういうことを具体的にやってもらいたいのです。要するに、完全な地図を備えることが先決だから鋭意努力しますとか、いろんなことをこの議事録の中でもおっしゃっているわけです。  どうですか、建設省の区画整理事業でやるとか、いまの国土調査法でやるとか、いろいろわれわれも知恵をしぼってみたのですけれども、いろいろな難点がある。区画整理事業でやりますと、市の負担が極端にふえるということです。国土調査法ですと確かに三分の二が国の負担で三分の一が県と市ですが、市の方はその負担も恐らく渋るだろうというふうにわれわれは思うのです。しかし、そういう現行の法律で何とかできるのかできないのかという詰めぐらいは努力してもらいたいと思うのです。これもだめだ、これもだめだ、じゃどうしたらいいのか、こうしたらいいんじゃないか、これが私は責任のある立場ではないかと思うのですが、その点どうですか。これからそういう努力をなさいますか、どうですか。
  109. 香川保一

    ○香川政府委員 私の考えでは、先ほどもるる申しましたように、国土調査を持ってくる先決の問題としまして、地元の関係者の間で和解ができることが何よりも大事だ、さようなことに立って、その上で事実上の境界というものを公図的にはっきりさせる意味で国土調査を実施する、かような順序になるわけでございまして、地元の関係所有者の間で話し合いをして円満に話し合いがつくということが何といっても先決だと思うのでありまして、さような意味のことをいろいろ努力しておるわけでございますが、それができますならば、私ども国土庁にもお願いいたしまして、地元と相談の上で国土調査を実施するという手順に運びたい、かように考えておるわけでございます。
  110. 市川雄一

    ○市川委員 ところが、住民の和解和解とおっしゃいますが、これは簡単なことじゃないのですね、沖繩の地籍問題を見てもおわかりのように。  それで非常に大きなネックが一つあるわけですね。たとえば地主が不動産屋に売らないで持っていた土地、これが宅地造成が終わったら道路になってしまった、こういう部分が一つはある。それからもう一つは、地主は売った、不動産屋は買った、その不動産屋は家を欲しいという人に売った。家を買った人はお金を不動産屋に払った。不動産屋は地主に土地代を払わない。それでつぶれていなくなってしまった。その売った土地がたまたま道路になっている。そういう意味で地主がこの土地はおれの土地だ、おれの土地だから指一本触れさせないぞという形になっているところもある。それから不動産屋の悪質なやり方で、もうすでに宅地造成では道路になることを知っていながら、道路の部分を宅地でございますと言って、だまして売って、買っちゃった人がいるわけですね。これがかなりいるのです。それで、自分の土地を持っているつもりなのだけれども、現場へ行ったら道路だった。しかし、その道路はもう現実に日常の生活道路として使用されているわけですよ。しかもその道路が通学路に当たっているのですけれども、市の方は私道であるために、また地主のそういう反対があって通学児童の安全対策も打てないというような状況があるわけです。  そうなりますと、結局住んでいる人は登記上の土地と違うところに住んではいるけれども、多少目減りをしちゃっている面もあるけれども、その辺は話し合いで調整が恐らくつくだろうと思うのですよ、換地をするということで。しかし、この道路を持っている部分の方は納得いかぬと思うのですね。お金を返してもらうか何かしなければ、これは納得いかぬ。そういうネックがあるわけですね。そうすると、これはだれかが道路を補償しなければならないのですね。一番手っ取り早いのは、国でこの道路を買ってくれて市に払い下げでもしてくれれば一番早いのですけれども、そうしないと、これは和解が成り立たないですね。道路以外の部分は和解がある程度進むかもしれないが、この道路部分についての和解が成り立たない、こういう問題があるのです。これは、国が全部金を出すということではないにしても、そういう和解を助けるような、和解をするにはこういうものがネックになっているということなのですから、このネックになっていることを国が助けてあげる。これはやはりお金が何億というお金になりますので、住んでいる者同士でお金を出せといったってとても出せるような額のお金ではありませんので、そういう和解が進むように助けてあげよう。国、県、市の話し合いの中で何とかその補償ということも考えてあげようというような、そういう和解が進むような手だてを応援してあげよう、このくらいの気持ちはあってしかるべきだと思うのですが、それはどうですか。
  111. 香川保一

    ○香川政府委員 ただいま例を挙げられましたような、道路部分を国が買収してというふうなことは、私はとてもできる話ではないように思いますし、そのほか国が金を出して和解が進むようにというふうなことは、これも相当問題ではないかと思うのでありまして、やはり現在それぞれ買われた人が道路部分を除いたところで、いわば法律的にはともかくといたしまして、事実上占有しておられるわけでありますから、その枠内で話し合いをつけられる。道路のところの関係なんというものは、これは恐らく、私は希望的に言って国道になるような性質のものではもちろんないと思いますし、やはり市の方もその辺のところを考えていただく必要があるのではないか。これは言い過ぎかもしれませんが、やはりいろいろ考えましても、国が金を出してどうのというふうな形での和解を促進する手助けというふうなことは、私の答弁する限りでないかもしれませんが、無理なことではないかというふうに思います。
  112. 市川雄一

    ○市川委員 本当はここで大臣に総括をお聞きしたかったわけですよ。要するに法務省の備えておる公図が正確ではない、それが根本原因で起きましたということをお認めになる。責任は痛感しておられる。しかし、和解しなければ解決しません、その和解の手助けも、それはやりません。では責任は痛感し、その根本原因が国の行政から起きているということは認めながらも、要するに国は何もしませんということではありませんか。これでは国の行政のあり方として非常にまずいと思うのですよ。第一、こういう混乱地域をずっとほったらかしておくのですか、それでは。これは事実上はもうほったらかしということになりますよ。そうすると、あなたのおっしゃっている、鋭意正確な地図をそろえることもできなければ、国土庁の地籍調査もできないということですよ。ほったらかしはもうやむを得ません、こういうふうに受け取るわけですよ。  時間が来ていますので、そういう点はひとつ改めていただいて、和解の手助けをするとか、あるいは諮問機関をつくって、全国にもこういう地域があるのですから、川崎市だけではない、神奈川県にもほかにある、全国にもあるのですから、何か権威ある諮問機関に委託して解決方法あるいは費用の分担についての公平なルールというものをお立てになって解決するという、こういう努力をひとつ御要望申し上げたいと思うのです。  最後に、時間が来ておりまして申しわけないのですが、問題は変わりますが、司法書士の試験制度についてお伺いしたいと思います。  司法書士の現行の試験制度では、地方法務局単位に筆記試験、口述試験を経て最終的に地方法局長の認可を得て開業の運びとなる、こういうふうに伺っているわけですが、司法書士の間にはその司法書士の実績から考えて、その社会立場をより明確にしたい、ぜひ国家試験制度にしてほしいという、こういう要望があることはよく御承知だと思います。四十二年七月十一日の第五十五国会での附帯決議でも「司法書士の試験制度も、土地家屋調査士のそれと同様に、国家試験を採用するよう努力を致すこと。」こうなっておりますし、昭和五十一年十月七日の参議院法務委員会におきましてわが党の原田立氏の質問に答えて、香川民事局長は「来年末からの通常国会にはぜひ提案したいということで鋭意作業を進めておるところでございます。」こういう答弁をなさっておられるわけです。聞くところによりますと、本年二月初旬、法務省から現行司法書士法の一部改正の要綱を内示されたやに伺っておりますが、局長がおっしゃるこの通常国会、「来年末からの通常国会にはぜひ提案したい」、これはちょうどこの国会に当たると思うのですが、いつごろ御提案されるのかということをお聞きしたいと思います。
  113. 香川保一

    ○香川政府委員 最近になりまして司法書士会の連合会、関係方面とも改正の内容がほぼ固まりまして、いま国会に提出すべく事務的に鋭意努力しておるところでございまして、いつごろという断定的なことはちょっと申しかねますが、四月の中旬までには国会に出したいということで努力いたしております。
  114. 市川雄一

    ○市川委員 終わります。
  115. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて市川雄一君の質疑は終了いたしました。  次に、岩垂寿喜男君。
  116. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最初に、この法律の一番関係の深い入管事務所の今度できる羽田空港出張所の新しい定員というのは一体何人であるか、そこからお尋ねしておきたいと思います。
  117. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 十名でございます。
  118. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 十名の中に所長さんや女性などが含まれていますか、つまり逆なことを言えば審査官というのは何名になるのですか。
  119. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 所長は含まれております。女性はおりません。審査官は九名でございます。
  120. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは中華航空あるいは外国要人、国内線関係を除き国際線が全部成田に移るという前提で定員の配置をお考えになったのかどうか。
  121. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 そのとおりでございます。
  122. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 運輸省にお尋ねをいたしますけれども、きのうもこの問題について御質問があったそうですか、成田空港では遅刻便というものは一切認めないという方針を貫いていくおつもりかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。
  123. 松本操

    ○松本(操)政府委員 成田空港で実際に飛行機を扱います時間は朝の六時から夜の十一時までというふうに航空情報に出しております。飛行機のことでございますので、ある程度の例外的なもの、つまりおろしてやらないと人道上問題があるとかそういうようなものを別といたしまして、この原則で運用してまいりたい、このように考えております。
  124. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、遅刻便というものは羽田に回すという方針はないというふうに考えてようございますか。
  125. 松本操

    ○松本(操)政府委員 成田で門限おくれになりましたものを、同じように羽田におきましても六時から十一時までが運用時間、十一時から六時までは制限時間ということになっておりますので、成田でだめになったものを羽田に回してしまうというわけにはちょっとまいらないのではないか、このように考えております。(「そんなことを言ったらおりるところがないじゃないか」と呼ぶ者あり)
  126. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま、おりるところがないと言うのですけれども、いまの羽田で気象条件などによって十一時過ぎに出発あるいは到着をする飛行機というのは、一日平均で何機ぐらいありますか。
  127. 松本操

    ○松本(操)政府委員 ごく最近の資料は私ちょっと手元に持っておりませんが、昨年暮れごろまでの統計的な数字で平均二・五機ということになっております。出発、到着を合わせてでございます。
  128. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 成田に行く、したがって羽田の夜は静かになるということは住民の期待でもございますし、とりわけ関係住民だけではなしに東京都や川崎市あるいは大田区、品川区などで、大阪と同じように午前七時から午後九時まででひとつクローズしてほしいという非常に強い要求があることは事実でありますけれども、この要望に対して成田移転という新しい事態のもとで、運輸省としてはどういう条件をお考えになっていらっしゃるか、この要望を生かす上での運輸省の配慮をこの際聞かしていただきたいと思います。
  129. 松本操

    ○松本(操)政府委員 お尋ねの空港は羽田のことであると思いますが、いま先生おっしゃいましたようないろいろの御要求が地元の方々から出ておるのは十分承知をいたしておるわけでございます。御案内のように、現在でも羽田は六時から十一時までということになっておりますし、それからまた、羽田には優先滑走路方式が決まっておりまして、騒音の被害の少ない海から入ってくるというやり方が実はできるわけでございます。  そういうことではございますけれども、確かにいろいろと運用時間についての御注文がありますことも十分承知をいたしておりますので、当面はダイヤの設定に当たって十分——先ほど二・五機程度ございますということを申し上げましたが、これは国際線の遅刻でございますので、国内線についてはよもそういうことがないようにダイヤの設定を十分配慮をするとかいうことをさしあたりはしていきながら、実情等を十分見きわめました上で今後どうするかということは慎重に検討していきたい、このように考えております。
  130. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、成田へ移転した後も十一時以降発着をする飛行機が平均して二・五機というものがある、そういう状態が続く可能性があるというふうに考えていいですか。
  131. 松本操

    ○松本(操)政府委員 そうおとりいただいたとすれば、私の説明が不行き届きであったわけでございまして、成田の門限を守ることのために羽田に門限違反を認めてもらうというのは理屈が通らないのではないか、こういうふうに私どもは考えておりますということと、それからもう一つのお話は、羽田の現在の門限、朝の六時から夜の十一時までというのを変えるべきではないかという御意見が出ておることは承知はいたしておりますが、しかしそれをいますぐ変えるということについてはもう少し実情を見たいということ、そうは言いながらも、三つ目の問題といたしまして、ダイヤを設定するような場合には、ともかくこれにおくれてくるということが絶対にないということを期してダイヤを組ましていくというような配慮をしたい。  総合的に申しますならば、夜の十一時から朝の六時まで運用をしないという門限の時刻は、現在ノータムに出ているとおりで当分置かしていただきたいとは思っているけれども、運用に当たっては十分に配慮をしていくと同時に、これからのありようについては、実態を見きわめつつ積極的に検討をしていくつもりでおります。こういうことでございますので、成田に展開したにもかかわらず、従前どおり十一時の門限を越えて来る飛行機がいままでと同じような機数あるということを考えているわけではございません。
  132. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは、実は私かねて衆議院の公害対策特別委員会でも、当時の環境庁長官、いまの小沢厚生大臣とやりとりをいたしたことがございます。それを含めて申し上げますと、成田へ移った場合には——そのときはその議論ではございませんけれども、十一時というのは遅いので、できるだけ九時に近づけていく、その具体的なタイムテーブルを示してほしいと言ってきたわけです。たまたま成田への移転という問題が起こっておりますので、ことさらそのタイムテーブルを早めていただく、そういう運輸行政をこの際検討願いたいと思いますが、そのタイムテーブル、つまり見込みといいますか、予定と言ったらあるいは言葉が強いかもわかりませんが、運輸省の気持ちの中にあるものをこの際、お示しいただきたいと思います。
  133. 松本操

    ○松本(操)政府委員 先生のいまの御提言、ごもっともでございまして、私どももそういう考え方を十分に踏まえた上でダイヤの編成を指導してまいりたい。特に国内線のことでもございますし、はるばる海の上を七時間も八時間も飛んでくるというわけではございませんので、少し気を配って運航に注意をしてまいれば、そもそもおくれるという要因を根っこから排除するということも可能でございますので、いまおっしゃいましたような方針を十分踏んまえた上で積極的にダイヤの編成に当たっては指導をしてまいりたい、このように考えております。
  134. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはついでで大変恐縮ですが、同僚議員もやっておりますが、私、実は昭和四十七年にエンジンテストの問題で問題提起をいたしました。改善の努力を若干したことを認めないわけではございませんが、依然として完全な解決になっていません。そしてときどき七十ホンを超えるようなかなりひどい音が真夜中に出ているわけであります。そういう改善の措置をとっていくということのための予算をとったというふうにも承ったわけでございますが、これらの問題については、川崎市当局あるいは東京都、そういう関係地方自治体との間に正式な協議の場を持って、エンジンテストを通して住民に迷惑をかけないようなそういうような手だてを考えていくつもりはないかどうか、ぜひそうしてほしいものだと思いますが、その点もこの際御答弁を煩わしておきたいと思います。
  135. 松本操

    ○松本(操)政府委員 地上でのエンジンテストによって実は空港からわりあい離れましたところの住民の方に思わぬ御迷惑をかけているということがときどきございます。特に冬場の空気がわりあいに澄んだときにそういうことが起こりますので、したがって今後の問題といたしましては、エンジンテストの飛行機の向きをいろいろと工夫をしてみたい。まず、一番手っ取り早い方法でございますので、そこから手をつけたい。なぜかと申しますと、従来は非常にたくさんの飛行機が羽田に夜駐機をしておりました関係上、エンジンテストのできる場所というのがそう自由には選べなかったわけでございますが、さしあたって国際線の相当機数の駐機が減りますので、そういうことを踏まえますと、もう少し何かその音の影響の及ばないようなそういうエンジンテストの場所というのが選べないだろうかということには早速取り組みたいと考えております。  それから地元とのお話し合いの場につきましては、都の方につきましてはもう大分以前からお話し合いの場を持っておるわけでございます。川崎市の方はパーマネントなものということには実はなっておりませんが、その都度折に触れて市の当局及び住民の代表の方々と空港当局との間でお話し合いをするようにいたしました。いま先生おっしゃいました思わぬところに及ぶ被害というふうなものも、音の大きさ自身としては七十ないし七十五ホン以下でございますから、真っ昼間ならどうということはないわけでございますけれども、これが夜中に出てくるという点に問題がございますので、今後ともそういうふうな場を通じまして調査もいたしますし、また御意見も十分に承りながら冒頭申し上げたような方向で当面の問題に対処していきたい、このように考えております。
  136. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 入管局長にお尋ねしますが、これ十人ですわな。それでいま中華航空なりあるいは外国要人を除いて国際線が全部向こうへ移るということを申されました。いま運輸省の答弁を聞いても、少し夜中に入ってくる可能性というのはこれはあるわけですね。私ども反対なんですけれども、現実にあるわけですよ。それでつまり十人の審査官でこれこなしていけますか、羽田の体制。
  137. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 こなしていけると考えております。
  138. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまの羽田の定員というのは一体何人で、その配置がどうなっているかということを教えていただきたいと思います。運輸省、忙しいでしょうから結構でございます。
  139. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 現在の羽田は二百三十三人、所長、次長を含む総務課が十二人、審査課関係、上陸、出国でございますが二百十人、警備課が十一名となっております。
  140. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 総務課というのは局長さん、所長がいますわな。次長がいますわな。課長課長補佐、係長が四人います。タイピストが一人、運転手が一人、そのほかに会計の方がおられると思うのですけれどもね。十二人よりもオーバーしているのが実態ではございませんか。
  141. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 恐れ入りますが、いま手元に資料がないようでございます。
  142. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 オーバーしているんですよ。定員を要するにオーバーしているんです。まあそれは後でまたお伺いをいたしますが、審査課が二百十名、いま定員を充足しておりますか。
  143. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 充足いたしております。
  144. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私、実は三月分の勤務表というのを拝見したのです。こう数えてみますと、入国審査班七十八名、出国審査班六十六名、これしかいないのです。そのほかの人たちは、病欠の方も多少はいるかもしれませんが、二百十名に対して、その両方合わせると百四十四名でございます。六十六名はどうなっているんでしょうか。これは私勤務表で調べていますので、現状に合わせてお答えをいただきたいと思います。
  145. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 いまその細かいところの資料が手元にございませんですが、実際問題として、いまさっき先生がおっしゃいました総務課関係とか、少し回っている人があるかもしれませんです。
  146. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 三人とか五人とかが違うというんなら別ですよ。しかしこれだけの開き、それなりの理由があるんだろうと私は思うのですがね。現実に羽田などで出国ブースが十二、そして一と十二の一番両側のブースというのはいつも閉鎖中なんです。どうしてふさがっているんだろうかと思うと、やっぱり定員が不足しているというのが主な原因なんです。ですから、ラッシュのときなどはカウンターのところまで長い行列をつくるというようなこともあるわけなんです。実態から見て。定員不足という実態がここに出ているんじゃないんでしょうか。この辺のところは、実は私は行政管理庁や人事院や会計検査院などが調査をしたということがありましたので、その辺のところに立ち入って検討をと思ったら、実は人員のことはそこの官庁ではやっていないんですね。これもまた大変変な話なんでございますけれども、そういう定員不足の実態というものを局長お認めになりますか。充足していないのですよ、これ。審査官として充足していないのですよ。それは言えるでしょう。
  147. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 全国的に入国審査官が足りないということは事実でございます。ただ、これはやはり政府全体の政策として、できるだけ定員の増員を抑えるという政府の大きな政策から来ているものでございます。
  148. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 全体として定員が不足しているということを仕事を担当している立場からお感じになる、これは当然のことだろうと思うのです。ただ、いまの羽田という実態から照らしてみても、定員がこれだけいるはずなのに、つまり二百十名いるはずなのに三月のこなし方というのは実際は百四十四名でこなさざるを得ないという状態は一体どこから起こっているかということを私はこの際管理局長に——細かいことだからちょっとよくわかりませんでは済まぬことではないだろうか。この法律案を審議している一番のポイントのポジションですよ、これは。しっかり答えていただけませんか。六十六名どこへ行っているんですか。
  149. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 先生のいまおっしゃった数字というのは、実は各班を編成しておりまして、班長もおりますし、課長補佐、課長もいるわけでございますけれども、そういう数字も入れてのことでございますか。
  150. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 班長も入っています。勤務時間管理員も入っています。
  151. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 そういたしますと、われわれの計算では百八十一名になるわけでございます。
  152. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 まあいいです。ここで時間をとっても、私も本意でございませんので、そうでなくても少し時間を短縮しろというふうに言われておりますからあれですけれども、局長、恐縮ですが、こういう実態をきちんとしてほしいと思うのです。三月の勤務表というのは、これで現実に働いている人たちの労働条件を決めているのですよ、ローテーションを含めて。二百十名で定員は不足しておりません、十分でございますという言葉は結構な言葉かもしらぬが、実態はそうなっていない。そうすると、どこにしわが寄っているかということを私は言いたいのです。つまり私に言わせれば、総務関係の方に人が多くて、定員よりもオーバーしているところもあって、現場にそのことがしわ寄せになっているのです。これは現実にそうなんです。そして現場では時間外でカバーしている、こういう状態があるのです。  さらに、私はここであえて申し上げますと、たとえば、人事院や行政管理庁や会計検査院などが調査に行くでしょう。そのときに、おい、ちょっと残ってくれ、自分の名前と違う名前を聞かれたときに答えてくれということまでも含めて、実際問題として帳じりを合わせる努力をしている実態があるのです。ここのところを、入国管理局長というか法務省のきわめてプリミティブな人事管理の問題だと思いますので、きちんとしておいてほしいと私は思うのですが、その問題についての御答弁を煩わしたいと思います。
  153. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 ただいま先生から非常に御親切な御忠告を賜りまして、私もどうもそういう面には疎い面があるのですが、今後とも大いに留意していきたいと思っております。
  154. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 本当はそれでは困るのです。やはり現実の羽田の勤務員がかなり厳しい労働条件のもとにある。そして一般的な経過は、さっき申し上げたように現場にしわが寄っている。この実態というものをきちんとつかんでほしい、認めてほしいものだ。  だとすると、今度は成田へ移りますが、サウスウィングというのですか、ノースウィングというのですか、北棟、南棟、ブースは幾つずつありますか。いいです。私が申します。十八ずつあるのです。羽田は十なのです。十二あったのだが、二つ使っていないので事実十なのです。今度は十八ずつになるのです。  さあ成田の定員はどのくらいになりますか。
  155. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 二百三十一名でございます。
  156. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いままでは二百三十三名、今度は二百三十一名。ブースがふえて、客がそう極端にふえるかどうかは別として、現実に羽田の体制でさえいま申し上げたとおりですよ。いいですか、それを今度は、その人数で成田で事実上こなせというわけです。ここでも定員が不足しておることは事実でしょう。これは原局としては、あっちこっちに気がねしないで、率直に定員が不足しているということを訴えるべきなのですよ。現実はこのとおりじゃないですか。それをちょっと局長、あなたの率直な感じを述べてください。
  157. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 成田が二名減っているじゃないかという御指摘でございますが、御承知のとおり中華航空が羽田に残るわけでございますので、その分だけ減っていると御了解願います。
  158. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 人数のことだけじゃなしに、さっき申し上げたように、ブースの数一つとらえてみても事実上人数が減るわけですよ。一人当たりの労働密度あるいは労働の量というものが大変なことになっているわけです。  御存じのとおりに、羽田では、出国と上陸の両業務に分かれて七班による交代制勤務をしいている。出国の方は一班を九人から十人で構成しています。上陸の方は一班を十一人から十二人で構成していた関係で、忙しいけれどもまあ心にすぎないのですが、多少の心のゆとりを持てたかもしらぬ。しかし、これから成田になっていきますと、これは南北両棟で出国、上陸両方持って、七班編成として、一班は約十人で業務を行うことになるのです。いままでよりも少なくなる。それで、出国関係が忙しいときにはそっちへ応援に行く、上陸の人が手伝いに行く、上陸関係が忙しいときには出国の人が手助けに行くというようなぐあいで、大変厳しいローテーションの中で今度はやらざるを得ない。つまり労働強化が大変厳しくなる。それに伴って健康破壊というか、お医者さんにがかったり薬を飲まなければならぬという人が出てくることは、伊丹などの経験によっても明らかなのですが、こういう点をきちんと考えてほしいと私は思うのです。  それから今度は、御存じのとおりに、管理体制も強化されて、新しい官職として出入国審査総括官というのが南北両棟に各三人ずつ六人配置されるわけです。結局、いまでさえ現場の人手が不足しておるのに、もっと現場の人たちの人数が不足してくるという事態になる。  これは羽田の関係もあわせて考えてほしいと思うのですが、これらの問題について法務省はもう一遍きちんと労働条件を見直して、配置のことについて要求していくという姿勢で、この際、現場で働いているあなたの部下の人たちの気持ちになって答弁を願いたいと私は思うのです。
  159. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 ただいま先生のおっしゃったことはごもっともな点が非常に多いのでございますが、もちろん、今後成田が開き、羽田が動き出してみて、その結果ある程度実態がわかってきたところで、次の予算でできるだけ現状に見合った形の増員要求をしたいとは考えております。
  160. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 羽田の実態に即して配置の問題を見直してきちんと増員要求をしていく、そして現場の職員の厳しい労働条件といいましょうか、そういう問題の緩和のために努力をすると、お答えいただけますね。もう一遍答えてください。
  161. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 人員の増加につきましてはただいま先生のおっしゃったとおりでございますけれども、ただ政府全体がやはり定員の増加を抑制しようという方針をとっておるわけでございまして、それも一つの大きな国の方針でございます。だからその増員にはある程度限度があるとは思います。それから事務の合理化、機械化というものもできるだけ加味していきたい、こう考えている次第でございます。
  162. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 政府全体という立場もわからぬでもないが、現場のボスとしてのあなたが、政府がだんだん減らせと言うから減らしてくれよと言って下の方へしわ寄せをやっていくようなやり方をしてはいけません。現場のボスとして考えるならば、やはり現場に働いている人たちの気持ちを政府に移していくことがあなたの仕事だと私は思うのです。物の言い方として少し変ですけれども、こういう実態というのをよく見てください。そして職員一人一人の労働条件やあるいは成田へ移ることによってどんな事態が起こっているかということをもっと正確に把握し、もっと親切にぜひ対応していただきたいものだと思います。  ついでに伺いますが、問題になっている調整手当——給与、生計費、物価に関連して調整手当というものが出ておりますが、成田も引き続いて全員それが受給できるというふうに考えてようございますか。
  163. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 羽田から成田へ移る人については、向こう三ヵ年調整手当は据え置きになるものと了解しております。
  164. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 三ヵ年ではなくて、やはり成田という条件——きのうも人事院の人も答えておられたようですけれども、やはり制度化していく、そういうことのためにぜひひとつ御努力を願いたい。それは当てにしてようございますか。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  165. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 これは入管だけが決める問題ではなく、もちろん人事院とも相談の上で決まる問題でございますが、ただいま先生のおっしゃった方向で前向きに努力する所存でございます。
  166. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 たとえば家族の関係で成田の付近に住むことができないとかあるいは寮に入れないというような人たちがいますね。そういう人たちは、東京とか上野から通勤をしなければならぬわけです。たとえば京成スカイライナーで行きますと一回千五百円ですね。こういう実態というのは実際問題としてかなり深刻です。いままでなら羽田だからそう大したことはなかったけれども。そういう場合に、通勤手当というような制度の問題は全然検討することはできませんか。
  167. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 通勤手当は一万六千円の限度内で考えざるを得ないということでございます。
  168. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは実際問題として実費がかかるわけですね。だから一万六千円といっても、十回行けばそれで一万三千円ですか、ということになってしまうでしょう。まあ通勤といってもまちまちになると思います。車で行って帰ってきたり何かすることもあるから、一概に通勤手当を額どおりにとは申し上げませんけれども、何かの手だては考えてあげないとやはり問題になるのではないだろうかと思いますので、これも実情を調べて対応していただきたいものだと思います。  以上申し上げて、とにかく羽田にいたときよりも、つまり現在の労働条件よりも下がることはないということを保証できるかどうか、そのことだけこの入管問題については承っておきたいと思うのです。
  169. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 具体的に動いてみないとわかりませんけれども、大体変わるところないんじゃないかと予測しております。
  170. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 変わるところないんじゃなくて、変えないように努力をすると答えてくれ、こう言っているわけです。あなた個人じゃないですよ、法務省として、そういう努力をやるということを約束してほしいと言っているのです。人事管理をしているわけですから、それはやはり考えてほしいと思うのです。もう一遍御答弁を煩わします。
  171. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 どうも言葉足らずで失礼しましたが、変わることないように努力いたします。
  172. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは時間もないので、在日韓国大使館で経済協力を担当してきた李紀元参事官の問題について伺いたいと思います。  第一点は、法務省が李紀元氏の出国を入管事務所に、指名手配という言葉は余り正確な言葉ではありませんが、手配したけれども、その手配をなすった日付はいつでございますか。
  173. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 手配をしたということではございませんで、むしろ李氏が出国したかどうか調べてもらいたいという照会があって調べた。調べたところもう出国していたというのが事実でございます。
  174. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その照会はどこからございましたでしょうか。
  175. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 外務省でございます。
  176. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 出国の日付はいつでございますか。
  177. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 五十二年十一月二日でございます。
  178. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どこから出国をしたか、あるいは出国をしたわけですから、そのときにどこに向かって行ったかということについてはお調べになっていらっしゃいますか。
  179. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 羽田からアメリカのロサンゼルスに飛んでおります。
  180. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣との約束の時間が来ているのにまだ来ないのですが、いまこっちへ向かっているそうですから、実はここのところが大事なところなんですが、まあやりましょう。  出国のカードは見せていただけますか。
  181. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 私がここで、責任者が申し上げることをもって御信用願いたいと思います。
  182. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは、カードというのは一般の人には見せないことになっているからですか。
  183. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 通常、先例がございません。
  184. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 では念を押しておきますが、民間の人や企業に見せるということ、あるいはタッチをするということは、一切過去にもなかったし、これからもございませんね。
  185. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 さよう心得ております。
  186. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これはまたいずれ後であれしますけれども、出国のときの李氏の資格つまり身分は外交官としての出国でございますか。
  187. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 外交官としての出国でございます。
  188. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 家族の出国はいつであったか。そして同時に奥様のお名前がもしわかったらお教えをいただきたいと思います。
  189. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 家族については照会がございませんので調べておりません。
  190. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 後ほどお教えをいただけますか。
  191. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 後日、事実を調べて御通報いたします。
  192. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 韓国大使館は、李参事官は依願退職で、辞任後に個人の家庭事情で渡米したと言っていますけれども、これは事実と相違しますね。
  193. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 韓国大使館がどう言っているか、これは外務省との関係でございまして、入管当局はただいま申し述べた事実のみをつかんでいるわけでございます。
  194. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実は出国カードを見せていただけないということが少しひっかかるわけでございますけれども、それはいま、そういう前例がないからということでございますので、大変残念ですけれども、私は実はそれを見せてほしいのです。それはそれなりの理由があって申し上げるわけですが、それはここではとにかくこれ以上追及することはやめましょう。  外務省、おられますか。この李氏が一九七六年四月十五日に着任をされた以前の役職は何でございますか。
  195. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  李参事官の日本に来る前の役職につきましては、私ども承知しておりません。
  196. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 通常、そういうようなことは全然わからないのですか。
  197. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 通常、外交官が在外公館に派遣されます場合、これはわが国でも同様でございますが、外務省に所属し、外務省の職員として在外公館に配置される、こういうことになっておると了解しております。
  198. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それじゃ韓国大使館でどんなお仕事をなさっておられたか、つまびらかにしていただきたいと思います。
  199. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 在京の大使館におきまして、どういう任務を分担するかといいますのは、それぞれの大使館についてもそうでございますが、一々外務省に通報がないわけで、私どもとしてもはっきり把握していないということでございます。
  200. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういうばかなことはないと思うのです。率直なところ、たとえば日本、韓国外交交渉の過程で参事官が顔を出している、あるいは出席している状態というのはあるわけでしょう。それを何にも、何をやっているのかわからないという形ではないでしょう。大体どういう任務を持っているかというようなことはお互いにやりとりする中でもわかるし、恐らく紹介もしますよ。だから韓国大使館でどういう任務についていた、どういう位置づけか、参事官というのは、これはかなり偉い人ですよ。その人が何をやっているのかわからないという形のものは私はあり得ないだろうと思う。大使館のレベルと外務省でもって接触、そういうものはあり得ないことはないですから、その辺のところは紋切り型に、何をやっているかわかりませんというのじゃ、これはおさまりませんよ。もう一遍御答弁をいただきたいと思います。
  201. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 在日韓国大使館の館員が外務省との関係で職務の上でどういうつながりを持つかというお尋ねかと思いますが、現実の問題といたしまして、私どもアジア局でございますが、アジア局に接触があれば、担当というのはおのずと明らかになるわけでございますが、一般的に、韓国大使館あるいはその他の在日公館も同様でございますが、館員が着任いたしました場合に、必ずしも、すべての場合について、この館員はこういう分担で参っておりますという通報はないものでございますので、着任したからすぐわかるということではないのでございます。御了解いただきたいと思います。
  202. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 李氏はいまアメリカにあって、アメリカの移民局にアメリカに永住できるように申請を行っているわけでございます。国務省は十一月十三日に、米国に滞在を望んでいるという公式な見解を明らかにいたしております。恐らくはこれはアメリカで亡命を希望しているものだというふうに私どもは判断をいたしますし、本人の意思もそこにあるだろうと思うのでございます。率直に申し上げて、李参事官は韓国の経済計画局の調整役とでもいいましょうか、そういう役割りを担ってきた方であり、日本にあっては日韓経済協力を担当する参事官、商社の対韓経済協力などの問題についてかかわってきたということも事実でございます。これらのことは外務省は一切承知をしていないというふうに理解をしてようございますか。
  203. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 李参事官が日本と韓国との間の経済協力の問題について関係していたのではないかというお尋ねでございますが、経済協力の問題になりますと、実はアジア局の所管外になりますので、私の口からその分野を担当していたか、関係したか否かという点について、権限を持ってお答えすることはできないわけでございますが、私の聞いているところでは、外務省の経済協力局との関係があったというふうには聞いておらないわけでございます。
  204. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 何をやっていたか知らないと言ってみたり、経済協力との関係は聞いていないと言ってみたり、どうも言葉が前後していますね。さっきは何をやっているかわからないと言ったし、いまは私が指摘したことを否定している。それはあなたわかっていることじゃないですか。そういうことが大体おかしいのですよ。そんなに隠すことはないのじゃないですか。いまのあなたの前の方の言葉と後の方の言葉と矛盾しているでしょう。知っていたのじゃないですか。そうでしょう。その辺はどうなんですか。
  205. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 私の御答弁で足らないところがあれば補足させていただきますが、外務省としては、李参事官がどのような職務を在日韓国大使館において分担しておったかという点については捕捉していない、こういう点でございます。
  206. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最近、在米韓国大使館などからアメリカに対する亡命をする外交官がいること、数が多くなっていることも御存じのとおりです。日本からこういうケースが出たのは、まだ在留資格がはっきりしていませんから、亡命だというふうに断言するつもりは私はございませんけれども、恐らくそういう例の一つだろうと想像することは容易であります。つまりいまの韓国における、アメリカにおいて問題になっているような事柄、あるいは日本で問題になっている、たとえばソウルの地下鉄問題や浦項総合製鉄所の建設をめぐるさまざまな問題というふうなことについて、良心的な立場と言えるかどうかは別としても、それはよくわかりませんが、問題が明らかになってきて、追及されることに耐えられないということをも含めて、こういう行動に出ているのだろうと思います。  その後韓国大使館と外務省との間に李氏の問題についてやりとりがございましたか。あるいはこの離日以後外務省にどういう連絡が入っているのか、外務省の公式なコメントを得たいと思います。
  207. 佐藤嘉恭

    ○佐藤説明員 外務省には何の連絡もございません。
  208. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 十一月十八日に任務を完了して、家族を含めて出国をしたという確認の通知が二十五日にあったということは事実と違いますか。
  209. 松村慶次郎

    ○松村説明員 李参事官の出国につきましては、十一月二十五日付の口上書で、十一月十八日に家族とともに任務を終了して離日した、そういう文書が参っております。
  210. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま御答弁をいただく前に、外務省には一切ございませんと北東アジア課長は答えているのです。こういう実態なんです。やはりもっときちんと答えてほしいと思うのです。担当の役人が出てきて、私は知りませんと言うならいざ知らず、外務省としては一切ございませんと言っているわけです。これではおさまらぬじゃありませんか。  法務大臣、ソウル地下鉄問題などで、予算委員会における質問に対して、伊藤刑事局長でしょうか、重大な関心を持っているとお答えになりました。浦項の総合製鉄所をめぐるリベート問題なども国会で問題にされています。私は、恐らくこの李紀元参事官がこれらにかかわりがなかったとは言えないと思うのでありまして、現実にそういうことを裏づける指摘もできるわけでありますが、それはそれとして、アメリカで在留資格が安定して、もし証言が得られるというふうなことがあるならば、日韓経済協力をめぐっての疑惑を解明するために、李参事官などに事情を尋ねるというふうなことについても当然なさるべきだろうと思いますが、その点について法務大臣がどんな御見解を持っていらっしゃるか承りたいと思います。
  211. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 ソウル地下鉄問題等で日韓間で何か不正があるような意味国会等で議論がされております。そしていろいろなそれに関係するものとしての資料なども国会で出しておられます。こういうものについては、先ほどお話しのように、深い関心を持っておりまして、どういう事態になっておるか——御承知のとおり、犯罪ということにならなければいわゆる捜査の段階に入りません。そういう資料等、あらゆるものを調査検討し、犯罪ありと認めれば検察庁は当然に犯罪の捜査に入りますが、まだその段階に至っておるというような報告はありません。いま、李参事官の調査とかありますけれども、まだその段階までに至っておるとは聞いておりません。
  212. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういう事態を調査する上でも参考にすべきだろうと私は思いますが、それはそれとして、アメリカに行って在留資格を得て安定をしたという条件があるならば、法務省としては、いま大臣が言われた前提を踏まえながら、当然そういう場合には事情を聞く一人であるというふうに理解をしてようございますか。
  213. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 御承知のとおり、法務省が直接やるわけじゃありません。法務省としては、国会等で出ました資料は全部検察庁に取り次いで、検察庁は独自の立場調査をする、こういうことでありますから、必要があればいまのような事態もあり得ると思います。
  214. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 終わります。
  215. 始関伊平

  216. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 法務大臣、私は放送法の問題について少しお伺いしたいのですけれども、放送法の第一条の二号には「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。」あるいはまた、その三号には「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。」また、同法の三条には「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。」こういうふうに規定をされておるわけですが、私は、法律というものは、これによって第三者を拘束し規制すると同時に、みずからもまた法律を守るように努力をしなければならない、法とは本来そういう性格のものではないかというふうに考えるのですが、大臣の見解はいかがでしょうか。
  217. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 まことに恐縮でございますが、私は放送法をつまびらかにいたしておりません。それはそれといたしまして、法というものは社会の秩序を維持するためにあるいは規制をする、こういうことになるわけでございますが、もちろん法治国家の国民といいますか、立場にある者は、それぞれの立場でやはり法を守る、こういう自覚がなければならないのは当然だと思います。
  218. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 実はこの問題で大臣と論争する気はないのですけれども、法は当然皆が守らなければならないと同時に、その法によって保護さるる方も法をみずから保護するように努力しなければならない。いわゆる相互関係、相関関係の中で法の運用というものが妙を得てくるのではないか。そういう意味で、たとえば放送法の場合には、みずからも法を守る努力は必要であり、同時に、たとえば第三者からの介入についてもこれを規制することができる、法律とは本来そういうものではないか、こうお伺いしたのです。
  219. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 どういう点が問題点かわかりませんが、一般論として申し上げるわけでございますけれども、御承知のように、憲法国民の生活のためにたくさんの権利を与えております。その権利を守るためには、憲法が規定しておりますが、御承知のとおりに、やはり不断の努力をしなければならない、しかも、それは乱用してはならないのであって、社会、公共の福祉のために権利は行使しなければならない、これはいまおっしゃったようなことの趣旨を書いておるのだろうと私は思います。
  220. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それを前提にして少し具体的な問題についてお伺いしたいのですけれども、NHK、お見えになっていただいておりますね。過ぐる三月十日にNHK横浜放送局に右翼団体が乱入をするという事件があったというふうに承っておりますが、そういう事件があったのかどうか、あったとすれば、その内容はどういうものであったのか、御説明をいただきたいと思います。
  221. 橋本忠正

    橋本参考人 お答えいたします。  去る三月十日の午後一時二十分ごろでございますが、横浜市の加賀町警察からNHK横浜放送局に連絡がございまして、鶴見地区で行動中の右翼、車四台が、NHKに抗議に行くといって横浜放送局へ向かっているという情報が入りました。これを受けまして横浜の局長、副局長以下、直ちに対応の準備をいたしまして、局長はみずから局長室の管理職並びに職員を連れて一階に参りまして、一階は表と裏とございますが、裏の方はシャッターを閉じまして、一階だけに管理職以下を配置して対応した。それから副局長は二階の放送部の部屋に参りまして、必要があれば、外部との情報連絡等のことで放送部に待機いたしました。それから局長は、一階の正面玄関での配置を終わった後、本人は二階の営業部に参りまして、必要があれば、いつでも一階におりていって対応するという準備をいたしました。  午後一時三十分ごろ、表玄関の前に四台のマイクロバスが到着いたしまして、応対に出た職員の阻止するのも聞かずに、約二十名ほどが入りまして、支局長、支社長に会わせろ、こういうあれでございました。それで、どういう用件ですかということで応対したのですが、そのまま振り切って一部は二階へ、一部は四階へ上がったわけでございます。それから、二階へ参りましたそのグループも四階に上がって、先に四階へ行った者と合流した。その時点で二階におりました副局長が直ちにその後を追って四階に参りました。四階には局長室がございますが、その隣に局長事務所がございまして、そこに約二十名が入りまして、支局長に会わせろ、こういうことでございます。そこで駆けつけた副局長が、局長と相談する時間がございませんので、独断でそのグループの代表と話し合いましょう、聞きましょうということでそれから後対応し、隣の局長室に相手方の代表を招じ入れて、そこで話を聞きましょうということでございましたが、結果的には一緒に行った約二十名の者が局長室に入った。そこで、向こうは四つの団体でございまして、代表も名前を明らかにして、本日来たのはNHKに抗議に来たんだ、その理由は、概略申し上げますとNHKがどうも左がかっておる、教育テレビ等の出演者を見ると左翼系の学者が多いとか、それから連続テレビ小説の中に出てくる軍隊並びに憲兵の扱い方がきわめて侮辱的である、それやこれやでどうもNHK全体が左傾しているのはけしからぬ、そういう放送はやめろというふうな趣旨の抗議をいたしまして、最後に抗議文なるものを手渡して、これを東京のNHK会長に届けろということで終わりました。  これに対して、副局長は終始向こうのあれに対してきちんと対応いたしまして、決してNHKは一党一派に偏するあれではない、厳正中立、聴視者の負託、国民の期待にこたえるよう公共放送としての立場を堅持している、今後もそれに変わりはないということで対応いたしました。結果的には、局長室へ案内してからおよそ二十分ないし二十五分で話し合いといいますか向こうの言い分を聞いて、向こうの置いていった抗議文の趣旨は東京の本部に届けましょうということで帰りました。  したがいまして、その間、阻止を振り切って入ったということはございますが、別に器物を破損されたとか人身上の被害ということはございません。  以上が概要でございます。
  222. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 公共放送として国民の負託にこたえなければならないNHKが、いまのお話では阻止するのを聞かずに乱入したということでございますけれども、こういうふうに自律を保障されておるNHKが、そういう右翼の団体が乱入してきた、しかもその内容はNHKの番組の問題についての介入、こういう問題をNHKは一体どう受けとめておられるわけですか。
  223. 橋本忠正

    橋本参考人 先生御指摘のように、これは大変大きな問題でございます。私どもは、右と左といずれを問わず、そういった外部からの圧力に対しては常に毅然たる態度をもって臨む、先生御指摘のように視聴者ないしは国民の負託、期待にこたえるべく公共放送としての立場を堅持するという気持ちで常に対応しております。
  224. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 しかし、どうもその対応の仕方というのは、私どもから見ますとNHKの幹部が必ずしも毅然たる態度で国民の負託にこたえておるとは思えないわけです。  思えない理由の第一は、阻止をしたけれども乱入をした、そしてその一部は二階へ行き、残りは四階へというのがいまのお話でございましたけれども、そこへ乱入をしてきた、そのことを許したということが一つ。  それから二点目は、そういう場合には当然こういう問題が起こりましたということを、報道機関のNHKは真っ先にそれを世論に訴えて国民の審判にまつような措置をとるべきではないのか、なぜこういう事件があったことが今日まで公にされなかったのか、その辺に私はNHKの姿勢に問題があるように思えてならないのですが、そういう点はどういうお考えで、乱入してきたのにその方々と会って話をしたり、また二点目には、そういう国民の電波、公共放送の責任者が、その責任者の部屋に、局長室に入ってくるという状態になったのにもかかわらず、それを広く国民に報道しなかった、それが果たして公正なNHKの報道の姿勢であろうか、そこに私は非常な疑問を持つわけで、お言葉とはちょっと実態が違うのではないかという気がするわけですが、どうですか。
  225. 橋本忠正

    橋本参考人 第一点の、阻止を聞かずに入ったという問題でございますが、いままでにはこういう例はございません。大体外部からそういう陳情といいますか、いろんな面で抗議もございます。NHKのいろんなことがけしからぬということで参りますが、その場合には大体現場の担当者が出まして、相手側の代表とまず話し合う、必要な場合には会議室なりに招じ入れて、そこでお互いに、向こうの言い分も聞きますし、またこちらの言い分も聞くということで対応するのが通常でございます。したがいまして、今度の横浜の場合もそういう形で入られるということは予想しなかった。まず管理職の代表が出て対応して、かつ必要があればいつでも局長が出ていって対応するという従来の心構えでおりましたので、結果的には阻止を聞かずに入ったということでございますが、そういう対応の仕方については、従来そういう形でやっております。  それから第二点でございますが、こういうふうなことをなぜ報道しないのかという先生の御意見、確かに理解できるのでございますが、ニュースそのほかで取り上げるということになりますと、そのときの状況もございますし、全体のニュースの価値判断もございます。ただ一点私どもが心配いたしますのは、面会を強要して抗議をしたということだけでニュース等に取り上げますと、宣伝を意図する相手の意図にはまってしまう。逆に言えば、相手の思うつぼにはまってしまうのではないかというふうな疑問もございまするので、その点はどういう扱いをするかということで、私どもも慎重にいたしますが、ひとつその辺は御理解いただきたいというふうに考えます。
  226. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 まずこの第一点は、放送法の目的でも明らかなように自律を保障する、NHKの自律を保障するあるいは放送事業者の自律を保障する、これは私は非常に大きい問題だと思います。もしいまあなたがおっしゃるような事態が容認されるとするならば、NHKには乱入しても局長と会って話ができるんだ、そういう前例ができるわけでございますね。その辺はNHKの幹部として、これは一つの前例ですよ、乱入していってもちゃんと会って話ができるんだ、正当な手続を踏まずに報道機関たるNHKに乱入しても話ができるんだ、それをどう考えますか。
  227. 橋本忠正

    橋本参考人 先ほど申し上げましたように、従来の対応の仕方と同じ形で対応したという点が一点でございます。したがいまして、結果的に、それよりもよりベターな方法があったではないかという御批判は確かに率直に、そのとおりだと承ります。
  228. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は非常に心配なのは、あのときはこうであったではないかと言われたときに、NHKは一体どう抗弁ができるのだろうか。右翼団体ならば、乱入しても会って話をする、そのほかの人たちならば乱入を阻止して入れないということになってくると、大変な差別をすることにもなってきますし、NHKとしても抗弁し切れないだろう。このことは、NHKを預かる幹部としては大きな過ちであった、これは第一点目にNHKの幹部として理解をしてもらわなければならない点だと思います。  二点目は、この中の一部が放送室に入ったというふうに聞いております。事なきを得たからよかったようなものの、乱入した人たちが放送室に入ってこれる、そういう状態を一体どう考えるのか。これが二点目です。
  229. 橋本忠正

    橋本参考人 第一点目につきましては、きわめて重要な問題だというふうに私ども理解しておりますし、今後の対応については万全の努力をいたすよう、すでにいろいろなルートを通じて指示してございます。  それから第二点でございますが、放送室、放送施設のところに乱入したということは、私どもその後調査したのでございますが、そのようなことはございません。
  230. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 その次にお伺いしたいのですが、いまのお話では副局長が対応したというお話でございますけれども、横浜放送局の責任者局長だと私は思うのです。その局長が対応せずに副局長が対応したというのはどういうわけですか。
  231. 橋本忠正

    橋本参考人 最初の概略のときに申し上げましたように、副局長が二階の放送部の部屋におりまして、局長は一階の玄関の対応を指示した後、二階の営業部の部屋に待機しておったわけでございます。ところが、結果的に相手方が四階と二階に行き、かつ二階からさらに四階に行った。その段階で副局長が直ちにその二階に来たグループの後を追っかけていきましたものですから、四階での対応は副局長がまずやったということでございます。それから副局長と対応している間に二階にいる局長に対して、いま相手のグループが四階に行っているということを聞いて後から局長が駆けつけたのでございますが、そのときには副局長と相手方の代表との間の話し合いがかなりスムーズにいっているというか、対応がうまくいっているということで、局長としては、必要があればいつでも出ていこうという気持ちを持ちながら、結果的には終わりまで相手の前には出なかったということでございます。
  232. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 局長が二階におった、乱入した人たちも二階に上がってきた。当然局長はその人たちがどこに行ったか知っておったはずだ。私、何も犯人の捜査をせいなんということを言うわけじゃないのです。ならば、連絡しなくても当然乱入した右翼暴力団が四階に上がったときには局長もそれを知っておって上がっていかなければならない。いまのお話では、連絡があって局長が四階に上がったというお話、その辺、本当に局長は知らなかったのだろうか。知っておったけれども、いい言葉で言えば遠慮です。悪い言葉で言えば逃げておった、そういう姿勢ではなかったのか。その次に四階で副局長と右翼団体の代表二十名が話をした、抗議を受けた。そのときに局長局長室にあらわれておったけれども、代表の緒君との話はしなかった。責任者がなぜ後ろに立っておって話をしないのか。ひとつ想像してみてくださいよ、想像を。副局長責任者として座っておるその周囲を右翼の乱入した人たちが取り巻いておる。責任者がその後ろの方におっておる。暴力団、暴力団と言うと失礼だが、右翼団体の後ろの方におっておる。そういう図柄になるのですね、考えてみますと。これが責任者のとるべき姿勢なのだろうか。特に私がその点を強調するのは、そういう姿勢だから乱入を許すような、毅然たる態度がとれなかったのではないのか、そこに問題があるように思われますので、その辺をどう把握をされておるのかですね。
  233. 橋本忠正

    橋本参考人 第一点の局長が行くのが遅かった、あるいは知っておってわざとおくらせたのではないかという御指摘でございますが、これはやはり副局長の方が先に一緒に上がって、局長に対する連絡が若干おくれたということは、調べました結果事実でございます。したがいまして、局長が四階に行ったのが時間におくれてしまった。  それから第二点の局長が行ったときには副局長が、先ほど申し上げましたように相手のグループ代表ときちんと対応しておったということで、いつでも必要があれば自分は出ていこうという気持ちを持って、結果的には相手のグループの後ろにいたことは事実のようでございます。そこから、先生御指摘のように、こういうときこそ責任者が前面に出てやるべきだということは確かに一般論で言えばそのとおりでございます。今回の場合は、結果的にやや局長の出るのがおくれた、結果的には副局長が全面的に対応したということでございますが、全般的な姿勢としては、先生御指摘のとおりだと思います。
  234. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 仄聞するところでは、たとえば東京でいろいろな集会が持たれると、代々木ですか、神南のNHKの放送局ではシャッターを半分くらいおろして、たくさんの警備員を配置して警戒をしておる。ところが、一方ではこういうふうに全く手だてが講じられてない。私はどうもNHKの姿勢が右翼に非常に甘くて左翼に対して非常に警戒的なような、そういう偏向した姿勢が感じられてならないのです。たとえばNHKの神南の本社というのですか本部というのですか、ここの対応の仕方と出先の横浜放送局の対応の仕方の違いというのはどこから生まれてくるのか、その辺はどうでしょうか。
  235. 橋本忠正

    橋本参考人 右翼であろうと左翼であろうと、別にどっちがどっちというふうには考えておりません。そういう外からの圧力というのですか、そういうあれに対してはきちんと対応するという姿勢でございます。  今回の横浜の問題は、先ほど来申し上げておりますように、従来の対応の仕方で対応しようと思ったところが、結果的に阻止を聞かずに入られたということでございます。渋谷の神南の本部につきましては、ちょっとあれになりますが、前に内幸町にいたころに六〇年安保ですか、私の記憶ではいろいろなものを投げられた経験等もございますので、できるだけそういう面で集団のあれに対してはシャッターをおろすなり対応は十分やろうということでやっております。これは左だから右だからということではございません。  横浜の件につきましては先生御指摘のように、私ども重大な問題だというふうな認識でおります。
  236. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は、神南の本部の方で何か集会があればシャッターまでおろして警戒をする、これは明らかに行き過ぎだと思うのです。一方横浜の方は堂々と乱入をされても阻止することもできない、そういうNHKの警備といいますか体制について非常に問題があるように思います。  私は何よりもそこで問題にしたいのは、一つは局長の姿勢、局長の態度がどうも納得ができない。本当に報道を預かる人間としての、責任者としての毅然たる態度があったんだろうか。それは乱入を許したこと、みずからが責任者でありながら代表の方々との話し合いには応じずに、副局長との話し合いにゆだねて自分は後ろに立って見ておったということ。特に二点目はNHK全体の問題ですけれども、この種のものは幾ら人間を配置してみてもそれで片のつくものではない。要は公共放送としてのNHKを国民のより多くの方々に理解していただくことによってNHKの報道が守られなければならない問題なんだ、これが二つです。そういう意味から、三つ目にはNHKがこの問題を隠蔽して報道しなかった。この三点、もう一遍明確にしておいてもらいたいと思います。
  237. 橋本忠正

    橋本参考人 右翼たると左翼たるとを問わず、そういうあれに対しては毅然たる態度で臨み、公共放送としての自主、中立を堅持したいという気持ちに毛頭変わりはございません。横浜の問題は結果的にああいう形になったということは大変に遺憾に思っております。  将来の問題につきましては、御指摘のとおり肝に銘じて今後そういうことのないようにさらに格段の努力をしてまいりたい、かように考えております。
  238. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 報道を隠蔽した、報道しなかった、事実を隠蔽したと言ったら語弊があるかもしれませんが、しなかったという点についてもう一つお答えを願いたい。
  239. 橋本忠正

    橋本参考人 別に隠し立てするとかなんとかということではございませんで、今回の場合は、先生御指摘のように、これをニュースその他で放送するかしないかという問題につきましては、先ほどちょっと触れましたように、この種のことを報道することによって、逆に相手の意図といいますか宣伝意図に乗ぜられやせぬかということも一方では考えなくてはならぬということもございますので、そのときの状況なりというものを踏まえた上で対処してまいりたい、かように考えております。
  240. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は、やはり報道機関というものは、そういう先入観を持ってこれを報道したら乗ぜられるか乗ぜられないかというのではなくて、事実を報道するのが報道機関でなければならないし、放送法にもその精神は明確にうたわれておるはずです。事実の報道をするということが明確にうたわれておるはずです。勝手にそんたくをして報道を隠蔽するというがごときは、公共放送としてのNHKの使命を忘れておるのではないか、そういう心配もあります。  特に私から注意しておきたいことは、過剰警備をせいということではないんです。私が言いたいのは。私が言いたいのは、報道機関を預かるものとして毅然たる態度で責任を持っておやりなさいということであって、いまの本部のような過剰警備がいいというわけではありません。本当はNHKはあけ放された、だれでも自由に出入りができるような状態でなければなりません。少なくとも暴力をもってあるいは乱入をする、そういう形での応対しかできないところに私は問題があるように思うわけですから、この点は特にこれからのNHKのあり方として御配慮をいただいておきたいところであります。  それから警察庁の方に来ていただいておるのですが、NHKの方のいまのお話では、事前に右翼の四団体ですか、車が四台NHKの方に抗議に行くということを連絡をいただいたということでございますが、この間の事情について簡単に御説明いただきたいと思います。
  241. 渡辺善門

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  パレード中の午後一時十八分ごろに、右翼団体の一行が神奈川区内を進行中に、マイクでNHKの放送ドラマ「風見鶏」は皇軍の憲兵を冒涜しているので、NHK横浜放送局に抗議しようという呼びかけが行われたわけであります。それによって右翼団体がNHKに対する抗議の計画があるということを察知したわけであります。  抗議計画を察知した後にとった警察の措置でございますけれども、警戒中の警察官から抗議計画の連絡を受けた所轄の加賀町警察署は直ちに、大体一時二十分ごろになりますけれども、先ほど橋本参考人からお話あったとおりですが、横浜放送局の局長室に電話いたしまして、応対に出た職員に対しまして右翼の抗議計画を通報するとともに、念のために管轄の派出所に指示いたしまして、制服の警察官を四人配置いたしまして警戒に当たった、こういう状況でございます。  つけ加えますけれども、当日のパレードにつきましては、終始警察が視察警戒しておりまして、当初からパトカー一台、乗用車二台、それに乗っておりました警察官は制服が二名、私服が六名で計八人が終始警戒しております。したがいまして、先ほど申し上げました派出所の警官四人を入れますと十二名で終始警戒に当たっておった、こういう状況でございます。
  242. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私が聞いたところでは、その右翼団体と一諸に私服警察官も何名か局長室に入っておったというようなことも伺っておりますが、実は私ももう時間がありませんので、そういう問題については報道機関の自律、自主というものについて特に警察の方でも十分な配慮をいただいて、いまの私服の方が入っておられたのが事実か事実でないかは知りませんけれども——明らかにしますか。いいですね、もうそれを議論しても仕方がないでしょうから。明らかにしますか。それならばちょっと……。
  243. 渡辺善門

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  警察官は終始視察警戒に当たっておりましたけれども、その間に法に触れるというような行為は現認されておりません。しかも副局長に後で事情を聞いてみましたところ、副局長の考え方といたしましては、警察から連絡を受けましたので会うつもりでおりました、それでお待ちしておりました、こういうことでございます。それから放送局の立場といたしましては、この種の抗議は、お客様であるからいつでもお会いして話を聞くという考え方でおります。それから暴行とか脅迫にわたるような事実は全くありませんでした、しかも代表は話のわかるおとなしい人でありました、こういうように申しておりまして、被害の申告も受けておりません。  以上でございます。
  244. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私は議論をすれば、NHKの方では乱入されたと言っておるわけです。特に国民の公共放送のNHKに乱入されたということで、ガラスが割れなかったからいいとか、それじゃもしも逆に、さっき申し上げたように一部では放送室に入ったのではないかという話さえあるのですが、そういう事態が起こっておったとすれば、これはゆゆしい問題だと思うのです。幸い器物の破損とか放送がジャックされるというふうなことはなかったようでございますけれども、まず乱入されたということは何も問題がなかったのかどうか、私は非常に疑問に思います。ただ私がお伺いしたのは、おたくの方からの説明では、私服警官が三名くらい入っておったという説明を受けたので、私はもうなるべくならばNHKには毅然たる態度で責任を持って応対してもらわなければならないが、同時に、なるべくならば警察は介入してもらうべきではないのではないか、そういう趣旨でちょっとお伺いしたのです。
  245. 渡辺善門

    ○渡辺説明員 この問題につきましては、誤解を受けるとなんですから申し上げますと、実のところ副局長に了解を求めまして、名刺を交換して中に入っております。
  246. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 それで大体事情はわかりました。  最後に、NHKに特にお願いしておきたいのは、冒頭申し上げましたように、自律ということを中心にしながら番組編成の自由というようなものが法律によって認められておる。それは単に認められておるだけでなく、みずからの力で、公共の放送を預かる者としての責任において幹部が毅然たる態度でこれを守っていかなければならないのだ、そのことをしっかり念頭に置いていただいて、いやしくもこういう問題を勝手に判断をして隠蔽されるということは、かえって誤解を招くもとにもなりかねないので、そういう点に十分留意をしていただくようにお願いをし、報道の自由をこれからも守ってもらうことを期待いたしまして、私の質問を終わります。
  247. 始関伊平

    始関委員長 上原康助君。
  248. 上原康助

    ○上原委員 私は、今度提案をされました法務省設置法の一部を改正する法律案の内容を主に取り上げてみたいのですが、その中でも今回の改正案の第一の理由として挙げられている那覇市所在の沖繩刑務所の施設を知念村に移転するということとの関連で、刑務所職員の問題を中心に取り上げてみたいのです。  その前に、先ほど来同僚議員から御質問がありましたように、羽田国際空港の成田への移転に伴って、現在羽田空港に勤務する職員の問題についても全法務の皆さんから若干御要望もいただいておりますので、少しだけ取り上げてみたいと思うのです。  今回の羽田国際空港の移転というのは長い間の懸案でありましたし、ようやく十年がかりで新しい東京国際空港として成田がこの四月一日からですか、開港する運びになるようですが、それとの関連において、これだけの機構を成田の方に移転をするわけですから、それ相応の準備態勢というものを整えなければならないと思うのですね。したがって、特に現在羽田の入国管理事務所関係に働いている職員の皆さんの、新しい成田空港開港と同時に移転をしなければいかない皆さんの生活環境なり勤務状況等々についてどういう措置をとられているのか、また現在問題となっているのはどういうものがあるのか、そういう点について御説明と御答弁を賜りたいと思います。
  249. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 本省及び出先におきまして、特に早くから一つの準備委員会のようなものを結成いたしまして、ただいま先生がおっしゃいましたように、大きな問題、小さい問題、いろいろな問題があるわけでございまして、それを一つずつ検討をしていっております。いろいろここで問題点を全部御披露するには余りにも数が多いのでございますけれども、やはり問題として職員の生活という面から取り上げてみますと、住宅の問題それから学校の問題それから調整費の問題、そういう問題がございます。
  250. 上原康助

    ○上原委員 ですから、そういう問題があるということは私もある程度知っているわけですが、住宅あるいはその家族を含めての生活環境ですね。当然いま御指摘ありました学校問題、また職員の皆さんの負担というものもそれだけかさんでいくわけですから過重になる面もあると思いますし、先ほど通勤手当等の問題もありました。いまありました調整費、そういうことについては現行制度の範囲内で、あるいは現在の法律の範囲内でしかできないという問題もあるでしょうし、それだけでは当然十分でないというどころか、新たな職員の負担として出てくる問題等もあると思うのですね。そこいらをどう解決をし改善をしていこうとなさっておるのかをお答えいただきたいわけです。
  251. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 たとえば先ほど来問題に出ております調整費の問題にいたしましても、これは人事院と相談をして、先ほど人事院からも答弁がございましたが、前向きに検討していくということで、一応さしあたり向こう三年間は問題がない。それで、三年が来るまでにその問題を解決していくということで、検討を前向きにいたしております。
  252. 上原康助

    ○上原委員 向こう三年間はさほど問題がない、その運用を見てということだと思うのですが、むしろ向こう三年が問題があるのじゃないでしょうかね、環境が整備されると生活の知恵というのはいろいろ出てまいりますから。  人事院来ていらっしゃいますね。——人事院は、この件についてはどういうふうな御検討をなさっておるのですか。
  253. 金井八郎

    ○金井政府委員 調整手当の関係の問題につきましては、先ほど先生の御指摘ありました線で検討をすることになると思います。
  254. 上原康助

    ○上原委員 そこいらのことについては人事院として十分調査をしていただいて、検討をいまおやりになるということですからやっていただきたいし、ことしの人事院の勧告も当然あると思いますので、そういう点とも関連づけてやっていただきたいと強く要望を申し上げておきたいと思います。  そこでいま一つ、羽田出張所として一部は残すということですが、先ほど岩垂先生への御答弁の中で、十名程度の職員を確保しておきたいということでした。果たして十名で十分対応することができるかという疑問も持つわけですが、所長を含めて十名ということになりますと、係官というのは九名が働くことになるわけですね。そういたしますと、そのローテーション、いわゆるシフト関係はどうなっていくのか、何交代勤務で何班に分けてやろうとお考えなのか、ここいらの点もはっきりさせていただきたいということと、いま一つは、残る職員の数は十名程度ということがはっきりしたわけですが、どういう方々が残るかについても決まっているのか、そういう面ももう少し具体的に明らかにしておいていただきたいと思います。
  255. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 中華航空が羽田に出入りするわけでございますが、これは一日に少ない日は二機、多い日は六機、大体四機でございまして、一週間三十六機でございます。それからいたしまして、大体十名程度あればいいんじゃないかということでございます。ただ、形態といたしましては、羽田はあくまでも東京入国管理事務所の出張所でございまして、親元の東京入国管理事務所には大きなスタッフを抱えているわけでございます。これはもう地方でもどこでもそうしているのでございますが、たくさんの飛行機が臨時に入ってくるとか非常に忙しいというときには、その親元の方からそれに見合ったものを応援に出すとか、そういうことで解決していっております。そういうこともかみ合わせて考えた場合に、いま十名で一応こなせるのじゃないか、こう考えて「おる次第でございます。
  256. 上原康助

    ○上原委員 ですから、その十名の場合に、やはり八時間勤務とすると交代制でなければいかないわけでしょう。何班に分けてどういう職員配置をするかということまで、この際ぜひ明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  257. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 これは三班に分けまして、交代制にいたしております。三交代でございます。
  258. 上原康助

    ○上原委員 数はわかりましたが、残る職員の氏名などももうはっきりしているわけですか。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  259. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 まだ発令はしておりませんが、内定いたしております。
  260. 上原康助

    ○上原委員 その発令をするあるいは人事の措置をとるに当たっては、十分職員の御意向なども尊重するということでおやりになりますね。
  261. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 もちろん本人の意向も十分聞いた上で決定いたしております。
  262. 上原康助

    ○上原委員 それといま一つ、これは成田新空港への移転問題と関連もありますし、またそうでない面もあるのですが、先ほどもございましたように、たとえば登記所の統廃合の問題も合理化がどんどん進められている、あるいはその他の職員の問題にしましても、定員法との関係もあるし、先ほど答弁がありましたように、各関係省庁、政府全体の人員の抑制といいますか限度というようなことなどもあって、なかなか増員は容易でないということは私たちも理解をするわけですが、しかしどちらかというと、後ほど刑務所関係の面でもいろいろお尋ねをしたいのですが、現業部門では相当無理を強いられている面があるのじゃないかという感じもするわけですね。交代制の問題とかいろいろな面でシフト、ローテーションが組みにくい。したがって、今後これらの人員補充といいますか充足を含めてどのような御方針を持っておられるのか、あるいは職員団体なり各法務省関係機関、支局なりから出されているものを一定限度満たす、十分その需要にこたえていくということであるとするならば、どのくらいの人員を確保せぬといかぬとお考えなのか、その点、計画なり御方針を持っておられると思いますので、この際明らかにしておいていただきたいと思います。
  263. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 矯正局長でございますが、矯正局関係の増員関係の場合にも本省全体を見越して考えておりますので、私からお答えさせていただきたいと思います。  現在、御承知のように総定員法もございまして枠内操作でございますので、計画削減数が出まして、それをいわば増員の原資といたしまして必要なところに分けるという方法をとっているわけでございます。したがいまして、率直に申し上げまして各局におきましてもなかなか思うとおりの増員はできておりません。しかしながら、われわれ民主政体における政府の職員といたしましては国民の財政負担を減らす、逆に言いますればチープカバメントといいますか、できるだけ少ない経費でもって国の施設を経営していくということにも留意しなければなりません。したがって事務の省力化、特に機械力を導入いたしまして省力化できる分についてはできるだけの努力をする、さらに文書事務を初めといたしまして、毎日毎日行う事務につきましても、できるだけ省力化を図ることによって増員にかわるべき施策をとっていこうということでございます。  したがいまして、そうした事務の省力化、合理化との関連において増員を考えなければなりませんので、ただいま現在において何人必要であるかというところは非常に言いにくいだろうと思います。法務省は約四万九千人の職員でございまして、概略申し上げますと、矯正が二万一千人、法務局一万二千人、検察庁約一万人、私の記憶ではそうなっておりますが、それらの点について、二割必要であるか三割必要であるかということはやはり軽々には申し上げられない点がございますが、できるだけ事務の省力化、合理化との兼ね合いにおきまして、増員を抑えながらも必要な人員は確保していきたいというのが一般的な方針でございます。
  264. 上原康助

    ○上原委員 この点につきましては行政改革の問題と関連もいたしますし、いろいろ許認可制度の問題との関連もありますので、後ほどわれわれもいろいろ議論をしてまいりたいと思っているのですが、ただ、確かに国民の側からすると公務員の数が多いのじゃないのか、あるいは日本は公務員王国というか天国というか、そういう批評もないわけではありませんが、しかし同時に国民立場あるいは行政サービスという面からすると、私は、ある面ではもっともっと人員を増加して国民のニーズに十分にこたえていく、それも必要と思うのですね。特に雇用対策、失業対策という面においても、この問題は単に民間ではいろいろ省力がされている、合理化されているが国はけしからぬじゃないかという短絡した考え方に私たちは必ずしも同調しがたいのです。したがって、そういった面は十分御計画を出していただいて、またそれに相応する国民へのサービスを還元していくという姿勢こそいま必要だと思いますので、そういう立場でお尋ねをしたわけですから、その点はまたいずれ議論もいたしますが、法務省関係においても、特に現業部門なり必要な部署にはそれ相応の適材配置をするような御努力をやらなければいけないという点を指摘しておきたいと思うのです。そこで、この法律改正の第一の理由として挙げられておる那覇市所在の沖繩刑務所の移転問題をこれから少乱取り上げてみたいのです。  今度の法律改正で提出をされたということは、羽田の都合があるので日切れだから早うやってくれということで、私たちも昨晩からきょうまでいろいろ無理を言われて協力もしているわけですが、那覇市にある沖繩刑務所というのはいつ知念に移るのですか。
  265. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 大体本年の後半になるかと存じております。
  266. 上原康助

    ○上原委員 本年の後半というと、何月から何月までですか。
  267. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 一年が十二ヵ月でございますので、六月以降ということになるわけでございますが、会計年度でまいりますれば四月から翌年の三月でございますので、九月、十月ごろになるかと思います。  と申しますのは、相当数の人員を現在の地から新しい施設に移すのでございますが、そこに入っている者はもう改めて申すまでもなく危険な犯罪者でございまして、一遍移してから設備が悪かったからもとへ戻そうということは簡単にできません。ところで、新施設をいまつくる場合に、後に御質問があろうかと思いますが、排水溝の問題が一つ残っております。その上で、あらゆる電気設備、あるいは水の流し方等々を十分に検査いたしまして、その結果十分人間が住める、受刑者でございますが、人間が住めるという段階を見きわめてから正式に収容者を移すということに相なりますので、一応後半と申し上げて、やや長期の余裕をいただきたい、かように思い、御答弁をした次第でございます。
  268. 上原康助

    ○上原委員 当初の予定はどうでしたか、皆さんのこの刑務所移転計画をなさった時点では。
  269. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 当初から五十三年度後半と予定しております。
  270. 上原康助

    ○上原委員 五十三年度後半といいますと、場合によっては会計年度から言うと来年、五十四年の二月ないし三月ということにもなりますね。
  271. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 観念的にはさようなことになりますが、現在の施設が非常に老朽化いたしておりまして、収容者のためにも早く移った方がいいので、できるだけ早い機会に、本年後半のうちで早い機会に移転したい、かように考えております。
  272. 上原康助

    ○上原委員 本年後半、ちょっと幅があるのですが、私は非常に疑問を持っておるわけです。また、この間いろいろ便宜を図ってもらって現在の沖繩刑務所と新しい施設を見させていただいたのですが、当初は恐らくこの三月、つまり今月いっぱいに移転をするという御計画ではなかったのですか。もし今年後伴い来年ということであるとすると、何もこの法案改正の第一の理由として沖繩刑務所の移転とかいう、この国会にそんなに急いで法案提出をしないでもよいし、秋の臨時国会でも間に合うし、場合によっては来年の四月ごろ移すというのなら来年の通常国会だってあるはずでありますから、そんなに急ぐ必要はないので、きょう、なんだったらこれから休んでもいいと思うのですが、どんなものですか。
  273. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 心機一転という言葉がありますが、汚いところからきれいなところへ移るわけでございまして、逆の場合には遅い方がいいのですが、できるだけ人道上の見地も考えて早い時期に移りたいということでございます。われわれといたしましても幅を持たせて後半と申し上げておりますけれども、後半のうちでも早い機会にということを懇願しているわけでございまして、どうか速やかなる法案の御可決を、これは大臣が申し上げることで私が申し上げることではないかもしれませんが、お願いをする次第でございます。  なお、当初の予定でも本会計年度に入るであろうというふうに予想されておりまして、現にただいま御審議中の予算案におきましても、三億余りの費用を沖繩刑務所の新設のために要求している次第でございます。
  274. 上原康助

    ○上原委員 そこは余りこだわりません。  そこで、もう少し具体的な問題に入る前に、ちょっと話が前後して恐縮ですが、先ほど法務省関係の職員がざっと四万九千で、そのうち二万一千が矯正施設関係だという御答弁でしたね。そこで、北海道網走から沖繩の刑務所に至るまでの各施設の職員の数、それからその中でも特に刑務官関係はどのくらいいるのか、そういう点について資料を提出していただきたいということ。  さらに冒頭もう一つお尋ねしておきたいのですが、官房長たしかいらっしゃるかと思うのですが、これまで歴代の法務大臣が刑務所施設などを視察して、いろいろ受刑者の実態なりあるいはそこで働いている職員等の状況といいますか、職場環境、労働条件等々を視察をしたり何かやったことがあるのかどうか、あわせて御答弁をちょうだいしておきたいと思います。
  275. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 各施設別の定員等につきましては、後日資料として御提出申し上げますが、二万一千の矯正職員のうち約一万六千人が刑務所、拘置所等の職員でございます。そのうち狭義の刑務官、いわば保安職員でございますが、これが約一万一千人でございます。なお狭義の刑務官ではございませんけれども制服を着ている者がございますが、これが約一万四千人でございます。  矯正施設の大臣の御視察でございますが、御在任中少なくとも一度は各所をごらんになっておられます。しかしながら矯正施設は全部で三百二十二ございます。刑務所関係、いわば行刑関係で申し上げますと、本所が七十四でございます。支所を入れますと百八十でございます。私自身、矯正局長になりまして二年有余になりますが、とても全部を回れるものではございません。敷地が非常に広くて、一回回りますと二時間ぐらいかかりますものですから、特に矯正局長だとすみからすみまで見せるということになりまして、容易に回っておりませんで、まだ百ヵ所になるかならないかぐらいでございます。しかしながら各大臣にごらん願いますのも、国務大臣としての立場から、単に業務の状態をごらんになるだけではなくて、職員宿舎等にまで足をお運びになり、その改善等について有益なる御示唆をいただいております。
  276. 上原康助

    ○上原委員 それなら前法務大臣はどこをごらんになられたのですか。
  277. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 前法務大臣の御在任は必ずしも長くはなかったのでございますが、私の記憶で申し上げますと、福井及び北海道の特に苦労している施設をごらん願いました。これは刑務所、少年院双方でございます。
  278. 上原康助

    ○上原委員 いまの資料はお出しになっていただきたいし、歴代の法務大臣が在任中に必ず一ヵ所ないし二ヵ所あるいはそれ以上御視察になっておられるというのですから、どこをごらんになられたか、その面も含めて資料として提出をいただきたいと思います。  そこで、人事院の方に少しお尋ねをしてみたいのですが、現在国家公務員の勤務時間ですが、これは週休二日制の問題とかいろいろなこととこれからの議論を進めていく上で関連をしてまいりますのでこの際少しお尋ねをしておきたいのですが、四十八時間勤務をしているのはどういう省庁があるのか、それとその職員はどのくらいの数になっているのか。たとえば法務省、大蔵省、文部省、厚生省、農林省、いろいろあると思うのですが、省庁別にこれも資料としてお出しになっていただきたいと思います。ただきょうは、その中でも法務省関係で四十八時間ないしそれ以上現在勤務させられている職員の数はどのくらいあるのか御答弁をいただきたいと思います。
  279. 金井八郎

    ○金井政府委員 法務省関係の四十八時間以上の勤務者でございますけれども、まず刑務官がございます。その数でございますが、四十八時間勤務の刑務官は約一万一千人、四十四時間勤務の職員が四千五百から五千人というふうに承知しております。それから、そのほか四十八時間の者といたしまして入国警備官、検察事務官、それから法務省の外局でございます公安調査庁の公安調査官が四十八時間でございます。  なお、その他の関係の細かい数字につきましては、後ほど資料で提出いたします。
  280. 上原康助

    ○上原委員 これは、いま週休二日あるいは四十時間制という方向に、だんだん民間もそういう傾向にありますし、公務員の場合は、もちろんそれは特例もあるでしょうが、一般的に四十四時間ないしは四十時間ですよね。  そこで、私が冒頭申し上げた人員の問題等もあるわけですが、この四十八時間勤務ということは、指摘をするまでもなく給与法等でそういう規定になっておって、その範囲でいわゆる人事院の規則あるいは各省庁の規定等を設けているようですが、仮に四十八時間勤務を四十四時間ないし四十時間に短縮をした場合にはどうなるであろうかという御検討なり、あるいは今後はそういう方向に当然ならざるを得ないと私は思うわけですね。そういう点についてはどういうお考えをお持ちなんですか。
  281. 金井八郎

    ○金井政府委員 お答えいたします。  御説のとおり、週休二日制を推進しようという時期でございますので、刑務官等の長時間勤務者の勤務時間の短縮につきましては、これを推進いたしまして、一般職員と同様に四十四時間にすることにつきましては、基本的には同感でございます。  ただ、勤務時間につきましては、それぞれ現場におきます勤務体制と密着不離の関係がございます。刑務所等におきましても勤務時間が一般職員よりも長くなっておりまするのは、それなりに業務上の必要性があって行われているところでありますので、すぐこれを四十四時間にいたすというわけにも簡単にまいりません。それなりに相当の準備が要ると思います。今後ともその点、法務省とも協議いたしまして、その検討を進めていきたいというふうに考えております。
  282. 上原康助

    ○上原委員 これは政府機関全般にまたがることでもありますし、大変困難な面のあることもわかります。同時にまた、財政措置が伴うので、いろいろ抵抗も出てくるでしょう。しかし、私はやはりここいらに、日本は先進国だと言って、自由社会ではアメリカに次ぐ経済大国になったということでいろいろ言われているわけですが、勤労国民のこういった勤務状況とか欧米諸国の本当の先進国、本当のというか、欧米諸国に比べて非常に後進性がまだ残っているわけですね。特に刑務所関係においては、もう国民のイメージも変えていかなければいかぬと私は思うのですが、非常に閉鎖的なところがある。したがって、この件については大臣の方から一言御答弁いただきたいのですが、いまの勤務状況の問題なり、こういった人員確保の点については、もう少し積極的な御努力をこの際いただいて、早急に国際社会あるいは日本全体のそういう時間短縮なり余暇をできるだけ持ちたいという国民の全体の期待に率先していく必要性もあると思うのですね。こういったことについて、ぜひ法務省の御見解を承りたいし、同時に、大臣御自身はこういうことについてはどういう御所見を持っておられるのか、この際、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  283. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 大臣からお答えいただく前に、私どもも上原委員のおっしゃっている御趣旨と同じようなことを考えておりまして、現実の施策を行っておりますので、それを先に御説明申し上げたいと思います。  仰せのように、刑務所職員は、当該刑務所の近くに官舎が置かれ、拘束されているわけでございます。そうして閉鎖性あるいはやや悪い言葉で言えば、世間知らずになりがちでございます。そういう面で、なるべくこれをよくしていこうというふうに考えております。とりわけ受刑者は、世の中の辛酸あるいは裏表を知っておるのでございますが、刑務官はへいのすぐ外にいるということでは、なかなか処遇も困難であろうということで、いろいろなことを考えております。  その第一は、ただいまも人事院の職員局長からお話がありましたが、週休二日制を、非常に因難ではあるけれども、何とか実現するように努力したいということであります。少しでも余裕のある生活をさせたいということで、現在、政府の御方針に従いまして、これまで矯正では試行は因難であるということでございましたけれども、とにかく試行してみようということに相なりました。先ほどの、四十八時間を四十四時間にした場合にはどれだけの増員が必要かということは、私どもも一応計算はしておりますが、千人ちょっと超えるぐらいの増員が必要であると考えております。週休二日制をさらに完全実施いたすといたしますれば、それに上乗せした増員が必要ということに相なるわけでございますが、とにもかくにもやれるところまでやってみょうではないか、どこにネックがあるかということを考えてみようということが第一でございます。  第二は官舎の点でございますが、昨日の御質問でもございましたが、庁舎が水洗になっていながら、職員宿舎が非水洗であるというようなところがまだ多いのでございます。私はトイレット局長と言われても、とにかく水洗化に努力すべきだと言っておるのでございますが、犯罪を犯して、性格的にもやや曲がったと思われるものがある者を矯正するその職員が近代的な生活水準を保たないでいて、それでいて矯正処遇を行うということも、これまた非常にむずかしいのではないかということでございまして、官舎というものを整備したいと思っております。  それに関連いたしまして、先ほど来、義務的に施設の近くに官舎を置いてあると申し上げたのでございますが、この警備力を物理的なものに変えていくようなことができていきますならば、あるいは官舎を一般の公務員の官舎の方に移せる、全部移すわけにはとうていいきませんが、四分の一でも三分の一でも一般の方々と一緒のところで住むということによって、社会性を高めていくということが必要ではなかろうかと思っております。  それからなお三番目でございますが、受刑者等につきましては、教化指導というのを非常に重視しておるのでございますが、肝心の職員の方は、勤務条件が非常に厳しいのでそれができないということでございますので、教養向上のために講師をお呼びするとか、あるいは図書室を整備するとかのこともやっていきたい。  それから最後に、地域住民との関連並びに広報でございますが、最近、新しい刑務所の施設ができましたときに、運動場あるいは武道場というものを整備いたしまして、必要があるときには町の方に開放する。また剣道、柔道も盛んでございまして、これらの者が必要に応じては町の子供たちを教えに出るというようなことで、地域住民との連絡協調をよくするということが一つございます。  それからなお、日本での矯正処遇といいますのは、収容者と職員との信頼関係に基づいて行われておりまして、再犯率もある程度高いには高いのでございますが、外国に比べればりっぱな処遇をやっているがために再犯率が高くないのだというふうに思っております。そういう点で、世間の方々に現在行われているすぐれた矯正処遇を知っていただく。知っていただくためには広報をしなければなりません。したがいまして、最近では報道機関の御協力を得まして、差し支えのない範囲で刑務所、少年院等を見ていただいているのでございますが、そうした機会に一般の方々の御批判を謙虚に受け入れて、それによって自分たちの足らざる点を補っていくというような施策も講じております。  それからなお、矯正局と現場施設との関係におきましては、上意下達、下意上達ということがよく言われるのでございますが、特に下意上達に努めるということを考えておりまして、たとえば研修等がありましたときに、拝啓局長様ということでいろいろな建言、意見等を直接私のところに持ってこいというような方策も講じております。  かようなことを考えまして、上原委員のおっしゃる閉鎖性をできるだけ除去していくということに現在も努力しておりますし、今後も一層努力を傾注していきたいというふうに考えているところでございます。
  284. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 人間生活をいかなる形でつくり上げたらいいかということは、考えてみますと非常にむずかしい問題だと思います。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 快適な人生を過ごすような世の中をつくりたい、こういうことだと思いますが、そういう考え方についてもおのおのいろいろあると思います。日本人は少し働き過ぎる、こういうことをよく諸外国の人から、これも全部じゃありませんが、いわゆる欧米先進国などと言われる国民からはそういう指摘を受けておることもあるわけでございます。  私はだんだんそういうふうなかっこうにしていかなければならぬと思いますけれども、しかしそういう場合でも、あえて私の意見を言えとおっしゃいますと、やはり国柄国柄、国の立場、そういうものを勘案しながらやっていかなければ、さらにまた大きな過ちを犯すおそれもあるのじゃないかと思います。わが国の民族は全く働きバチのようにして今日まで来ておりますが、それだけでは決して望ましい人生といいますか、望ましい社会ではない。今日、経済が非常に発展いたしましたといいますけれども、最近の情勢を見てもすぐわかりますように、日本は残念ながら人口がきわめて多い。世界の六番目の人口でございます。しかも領土が狭い。よく言われますように、さて資源というものがない。そういう国とたとえばアメリカ——フランスの経済なとはそれほどではありませんけれども、比較的悠長に暮らしておると私見ておりますが、これはいわゆる近代国家として長い相当な蓄積があるのじゃないかと私は見ております。そういう国のいろいろな条件というものがありますから、諸外国でこうやっておるからわが国もそうしなければならぬということにしますと、時と場合によっては大変な過ちの方に向かっておるかもしれない。こういうことも考え合わせながら、しかしだんだんゆとりのある労働といいますか、ゆとりのある勤務に向かってわれわれは検討を進めていかなければならない。  それで、民間といたしましても、週休二日制とか一日の労働時間を短縮するとかやっておるわけでございますが、政府といたしましても週休二日制を試験的に実験しております。その際、どういうところに支障があるのか、どういう人員の補充をしなければならぬのか、財政負担がどうなるのか、国民との関係はどうか、こういういろいろの問題点を考え合わせながら現在やっておるのは、もう少しゆとりのある勤務といいますか、もう少しゆとりのある人生を過ごす世の中をつくりたい、私はこれは当然であると思います。そういう方向に漸次進まなければならない、かように考えております。
  285. 上原康助

    ○上原委員 ある程度大臣のお考えになっていることがわかったような感じがしますが、時間の都合もありますので具体的な問題に入っていきたいと思います。  そこで、知念の新しい刑務所に移る職員の数、また、那覇の現刑務所に残る職員の数はどのくらいかということを明らかにしていただきたい。  さらに関連して、この施設移転に伴う要求書ということですでに沖繩刑務所の職員の皆さんから各般にわたっての要求項目が提示をされていると思うのです。このことについてどのように御検討なさっておるのか。その中でも、那覇の拘置支所に残す職員についてはできるだけ運転免許証を所持していない方々を優先的に充てていただきたいということも切実な問題として出てきておるわけですが、こういうきめ細かい点にまで気を配っておられるのかどうか。  あわせて、羽田から成田に移転する場合の職員の皆さんの問題とも関連をするわけですが、新しい刑務所施設というのは、御承知のようにきわめてへんぴなところにいま建築されております。交通の便からしても、先ほどありましたように、決して快適な生活環境であるとは言い得ない。いろいろな面で負担を強いられる。そういうことなどをあわせて考えますと、よほどこの移転に伴っては職員の皆さんの意向、要望というものを十分理解をし、そして取り入れられるものは最大限に取り入れていただいて協力を仰がなければならないと私は思うのです。こういうことについてはどのように現在御検討を進めておられるのか、具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  286. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 まず、知念村の新施設に移る者と拘置支所に残る者の数でございますが、現在職員定員は二百七十九名でございまして、百七十六名は新施設の方に勤務する、したがいまして残り百三名が拘置支所に残るということでございます。  なお、残す者と新施設に移る者との振り分けで、その際、運転免許証を持っていない者は拘置支所というお話がございましたが、その点は十分考慮させていただきますけれども、たとえば運転免許証を持っていない者が老齢者ばかりであるということになりますと、拘置支所に残っているところで逃走事故が起きたときに息切れがして追いかけることもできないということにも相なりますし、やはり経験年数、年齢、それから勤務成績等をも勘案いたしまして、適正な構成になっていなければならないと思います。しかしながらその際に、Aを選ぶかBを選ぶかというときに、余り遠くから通勤させては気の毒だという場合には拘置支所に残すということを考えざるを得ないと思います。この点につきましてはすでに現地の所長に、十分本省の趣旨とするところを伝えてございますので、適正な振り分けができるものと信じております。  それから、要求書は非常に多岐にわたるわけでございますが、もう上原委員御存じのとおり、とにもかくにも二十一キロ離れたところに参りますし、いまだ必ずしも開発されていないところでございますので、それに移る職員の気持ちは十分われわれも察しがつくところでございます。そこでこの要求書は昨年の八月三十一日付で私あてに提出されまして、十月には所長に来てもらい、所長に十分本省の対応する方針を話し、現地に戻りまして職員にもすでに示達しているところでございます。  簡単に申し上げますと、宿舎関係の点につきましては、先ほど来申し上げたところでございます。  それから託児所を設置してほしいという話がありますが、これは家族が大体どのくらいになるか、どのくらい幼児があるかということ及び託児所を経営するに独立採算ができるかどうかということも考えなければなりませんので、これは検討中でございます。  集会室、娯楽室につきましては、国民の税金でございますので、直ちにそうしたものを直接つくるわけには相なりませんが、独身寮を護送職員の宿泊施設に充てまして、それであくようなクラブとか構外待機所を集会室、娯楽室として利用させたいと考えております。  それから通学路を整備してほしいというお話がございますが、これは現在知念村と協議中でございます。  遊園地を設置するということは、設置することに決めてございます。  売店、食堂につきましては、共済組合で業者に経営委託をして実施いたします。  診寮所につきましては、共済組合の経営で実施いたしますし、備品につきましては上申を待って整備いたします。  それからお医者さんでございますが、これは現地で努力して確保するということになっております。  それから電話回線がないので赤電話をつけてくれという要望がございますが、これは要望どおりにいたします。  その次に、ハブの生息地帯なので外灯を多くするほか、周辺道路を整備してほしいという要望でございますが、これは人命にかかわることでございますので要望どおりで検討をいたしております。  それからバス路線を確保してほしいということでございまして、この点は現在バス会社と交渉中でございます。  それから宿舎にガス器具等々でございますが、こういうものにつきましてもできる限りの整備をするように努力をいたしております。  それからもう一つは、先ほど申し上げた面と違う意味での公務員宿舎を使わせてほしいという点がございます。これは共かせぎ等で、家内が那覇市に残って働いておる、自分だけ移ると大変なので那覇市の宿舎に入りたいということでございます。この点につきましては、移転の段階におきまして十分考慮いたしたいと思っておりますが、上原委員御存じだと思いますけれども、この新しい刑務所につきましては余り重装備でない近代的な刑務所を最初つくろうといたしましたところ、村の方々から逃走事故等があっては困るので、いわば重装備の刑務所にしてほしいということがございました。そうなりますと、昼間は職員はいるけれども夜になるとみんないなくなってしまうということでは御協力いただいた村の方にも申しわけないという点がございます。もともと矯正職員に対する公務員宿舎は、一般の人では入れない資格の人、いわば等級の低い人でも入れるようにしております。この理由は、やはり夜間でも一たん事があったときには直ちに施設に集まらなければならないという特殊性にかんがみて特別の優遇措置がとられているわけでございますので、矯正職員のそうした責任の重大性ということをも十分職員が自覚をいたしまして、できる限り新施設の近くに住んでいただくようにわれわれは今後とも説得ないし指導をする予定でございます。しかしながら事情やむを得なくて、どうしても二世帯に分けることができないというものにつきましては、現在那覇市にあります公務員宿舎に入ったままで職員は異動するということも考えたいと思っております。  大体以上で尽くされておると思いますが……。
  287. 上原康助

    ○上原委員 大体お答えあったと思うのですが、特に関係職員の皆さんが一番聞きたがっていることは、さすがに矯正局長だけあってさらっと抜かしてしまっておられるのですが、通勤手当の問題、それと特地勤務手当、準僻地取り扱いをしてもらいたいという強い要望が出されておりますね。この件は、人事院との関係もありますが、やはり現行制度の中で、あるいは法律というふうに枠をはめると、お役人さんの頭ですからなかなかできないということをおっしゃるかもしれませんが、しかし三十数年那覇市で生活をして、すでに那覇市を中心に生活基盤ができた皆さんが万やむなく移転をするわけですから、そういう面は、暫定措置としても、あるいは何らかの方法で通勤手当の問題とこの特地勤務手当というようなことなどは考えていただかないと、沖繩は御承知のように鉄軌道ないですよね。バスだってそう簡単にいかない。たとえば親慶原の方からですと、新しい施設までは約四キロある。そうして施設の手前の停留所からでも二・七キロから三キロあるわけですね。三キロぐらいは、いま体力づくりで歩け歩けで、一日、二日ならわかるけれども、雨、台風があるときにあるいは体の調子が悪いというようなときに毎日三キロなり四キロをすたすたと歩いて間に合わすというのはなかなか容易じゃないと思うのですね。年齢差もある。こういうことについては十分な手だてと、職員の皆さんの要望にこたえるべきだと私は思うのです。この件についてどうお考えになるのかということ。  いま一つは児童の通学路の問題、これは御承知のようにああいう高台から、下の知念村の知念小学校かどこかに通学するわけですね。現在そこは車が通らない。全く整備されていないわけで、早目にやらないといけない問題が出ているわけですね。そういう点。  また、託児所の問題にしてもぜひ設置できるようにやっていただきたいし、診療所の問題しかり。  いま一つ集会所の問題ですが、どうも皆さんは、刑務所職員は仕事をひけても、勤務を終えてからでも一定の拘束されるような立場を——緊急事態の場合にはとる必要があると思うのですが、それはどの公務員だって同じ共通する問題です。幾ら刑務所に勤務をする職員の皆さんにしたって、八時間なり一定の勤務が終わった段階では市民ですよね。そうすると、自由な社会生活を営まなければならぬ。したがって、独身寮を利用するとかあるいは刑務所施設の一部である集会所を利用するということではいかぬと私は思うのですね。それはやはり百世帯ぐらいの入居する宿舎をつくってあるわけですから、それに見合う新しい集会所を、職員の皆さんに自由に使えるようにつくってあげるという、これは当然付帯施設としてやるべきだと私は思うのです。そういう問題が残されている。  もう一つは、行ってみてわかることは、どうも幹部職員の皆さんの方は、施設の全体をうまく利用できるように非常に便利なようにできている。しかし一般の職員の場合は片すみに追いやられているようなかっこうに残念ながらなってしまっているのですね。したがって、将来子供さんの遊び場の問題とか、いま言う集会所をつくるということにおいては、あの一般宿舎の方の敷地をもう少し拡大をして余裕を持たして、緑も確保していくというようなことぐらいは将来計画としてやっていかなければいかぬ問題だと私は思うのですね。この点を含めて、ひとつ御答弁を賜りたいと思います。
  288. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 多岐にわたりましたので、もし落としましたならば、また御質問願いたいと思います。  まず、僻地手当の点でございますが、刑務所が移転いたしましたときに果たして僻地のままでいいかどうかというのは、社会復帰を理念とする現在の矯正処遇上問題があると思います。できるだけ刑務所周辺を整備する必要があるわけでございまして、そうなると僻地手当が出てこない、こういうことに相なるわけでございますが、いずれにいたしましても、僻地手当をいただけるか、いただけないかというのは今後人事院と協議しなければなりません。移転直前までの状況を勘案いたしまして、必要があれば人事院と協議いたしたい、こう思っておるわけでございます。  たとえばバス路線につきましても、先ほどおっしゃったように、現在バスの停留所から二キロ以上歩かなければなりません。そうすると、これは僻地手当を支給するためのたくさんある基準のうちの一つになるわけでございますが、刑務所をお訪ねくださるのは決して職員だけではございませんで、受刑者の面会人等もあるわけでございます。そこでバス路線を延ばしますと、バスの停留所から施設までの距離が短くなると、僻地手当の基準との関係でどうなるかという問題があるわけでございます。慎重に検討しなければならない点がございます。なお、職員の待遇に関連をいたしまして、バス路線の延長が予定どおりいかないという場合には、バス停から施設までの特別の送迎車を出したい、かように思っております。  それから通学路の点につきましては、おっしゃったように自動車が走行できるように整備いたしたいと思っております。  集会室につきましては、あとは運用の問題でございますので、先ほど大臣の御答弁もありましたように、できるだけ勤務を離れたときにゆとりのある、自分の教養の向上にも努められるあるいは慰労するに足る設備も整えたい、娯楽道具も整えたい、かように思っております。  なお、官舎の点でございますが、緑を確保し住みやすいところにするという点は官舎のみならず刑務所周辺を含めて必要なことでございますので、これはできるだけの努力をいたしたいと考えております。
  289. 上原康助

    ○上原委員 通勤手当と特地勤務手当、準特地勤務手当的なことは人事院と御協議の上でぜひやっていただきたいし、いま申し上げたことについては、まだ移転するまで期間があるわけですから、職員の皆さんとも十分な御協議を賜りたいと思います。  そこで、各先生方お集まりのようでありますので急ぎますが、この移転問題と関連をして最大のネックになっているのは、冒頭、皆さんあんまりお触れになりませんでしたが、一つ難題があるわけですね。排水溝をどうするかという排水問題、刑務所施設からの排水をどう処理するかということ、これはどのようにお考えになっておられるのか、その解決のめどは立っておるのですか。
  290. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 新しく建設されます沖繩刑務所の生活排水でございますが、これは高性能浄化槽というものをつくりまして、三次処理、一次、二次ではなくて三回きれいにしていくという処理を行った上で排出されるわけであります。ところがこれにつきまして地元の農民の方々から、もう上原先生御承知のとおり水が足りないところでございますので、この水を利用させてほしいという話が出ているわけでございます。われわれといたしましても、沖繩県における水不足の現状からただ流すのはもったいないのでこの水資源を活用したい、できる限り農民の方々の御意向に沿って御要望にこたえていきたい、かように思っておるわけでございます。そのために、地元の知念村あるいは農業用水利用希望者等は相当程度おられるようでございまして、この方々と十分な協議を遂げて具体案を策定いたしたいと思います。こうした場合にはいろいろな御意見が出るものですから、期限をいつまでということはちょっと申しかねるのでございますが、できるだけ円満な話し合いをいたしまして、この排水溝の問題を解決したいと考えているところでございます。
  291. 上原康助

    ○上原委員 あんた、私が調子を合わせて質問をして御答弁いただいているが、そうすりかえたら困りますよ。排水問題は農業用水利用以前の問題があるわけでしょう。私が申し上げているのは、知念村漁業協同組合から刑務所施設からの排水を海に流すのは絶対まかりならぬという要求が出ているわけでしょう。それがうまくいかないで、いま言った第三次処理までやって一部を農業用水に充てて何とかしようという苦肉の策が出てきた。しかしそれもめどが立っていない。これは大臣もよくお聞きになっていただきたいと思うのですが、この排水処理の問題で知念村の漁業協同組合なり地域周辺の住民の納得がいかないと、この刑務所は宝の持ち腐れになりますよ、はっきり申し上げておきますが。  これは念のために読んでおきますが、昭和五十二年五月三十日に知念村漁業協同組合がこういう決議をしているのです。    沖繩刑務所からの排水計画に反対する決議   このたび法務省は地域住民や関係機関の反対  運動にもかかわらず、知念村内の高台に一方的  に刑務所建設を着工し、その生活排水の放流を  知念村字山里地先の知念村漁協の漁業権漁場に  計画している。   この排水計画については、これまで刑務所の  知念村への移転問題に反対してきた村内外の心  ある人々によって指摘された通り将来漁場汚染  につながり漁民にとって死活問題にまで発展す  ることが予見され今日まで反対されつづけてい  ます。   当漁協においても昭和五十一年十月六日の理  事会で知念村漁協の漁業権漁場以外に排水を流  すように申し入れる旨決議し、刑務所当局にも  連絡済であり又、昭和五十一年十一月二十六日  の拡大役員会においても刑務所長に直談判して  知念村への排水計画について絶対反対の意思表  示を行っています。   当計画がなされている漁場は申すまでもな  く、天然モズク、ウニ、甲イカ等ありとあらゆ  る魚貝類が生息する“知念イノー”(内海)と  して全琉でも有名であり我々漁民にとってまさ  に海の幸の宝庫です。さらに一帯は当漁協が推  し進めている養殖モズクの試験栽培に成功した  漁場であり今年度から多くの組合員による本格  的養殖モズクの漁場です。さらに近い将来にお  いて栽培漁業の開発可能な最適地です。   かかる好漁場を現在及び将来にわたっていさ  さかでも汚染しないという明確な保証が得られ  ない以上、刑務所排水計画に断固反対して海を  生活の場とし守り育て、子や孫の代までもこの  大きな海の財産を引きつぐ責務があります。公  害闘争の歴史が証明するとおり、一度公害が発  生し海が汚染されたらそれでもうとりかえしの  つかないことになりかねません。   かつて我々が体験したコバルト汚染を教訓に  してそして又、刑務所の排水が流されていると  いうごく単純なことでひきおこされるイメージ  ダウン等を考え刑務所の排水計画に反対しま  す。   我々の再三再四にわたる反対決議にもかかわ  らず解決の糸口さえも見い出さずに理不尽にも  強行着工しようとする法務省側の態度に我々は  腹の底からの激しい怒りをおぼえ、刑務所排水  計画に断固反対し、本通常総会において全組合  員の名において法務省に抗議し、反対の意思を  表明する。   右決議する。  こういうことがなされて、このことはすでに所長に対しても、本庁に対してもいっていると思うのですね。これを受けて、何とかこの排水問題を処理しなければいけないということで、再三皆さんも漁協の皆さんあるいは知念村役場などとも協議をして、そして汚水処理の問題が出てきたわけですね。したがって、いま申し上げましたようにこれだけ漁協が強固な反対の態度を明らかにし、周辺もそういう態度をとっている以上は、十分にこの問題を解決するめどが立たないとすると、これは移転できませんよ。そこいらの解決策はありますか。
  292. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 実は先ほど申し上げましたように、高性能浄化槽による三次処理、それに伴う農業用水としての活用という点は、当初からわれわれは考えていたのであります。ところが、これにつきましては実は相当な予算を必要といたしますので、むしろ海に流したいという気持ちがございまして、漁業組合と話し合いに入りましたところが、いまお読み上げになりましたような強硬な反対がございまして、私どももあきらめざるを得なくなったわけでございます。そこでもとに戻りまして、費用はかかるのでございますが、こういう方向でいこうということで、いま関係方々と鋭意話し合いを進めているところでございますし、また刑務所が移転してまいりますことが決して村のためにならないということではないということをも、十分御理解を願うように話し合いをしているところでございますので、話し合いの結果によりまして円満に解決するものと信じております。
  293. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、知念村漁協組合から出された要求なり、あるいは皆さんがいま、これはだれが相手かわかりませんが、この覚書の案をつくっていますよね、沖繩刑務所長と農業用水利用組合代表者というようなことで。これを含めて、汚水といいますか、排水処理はやろうということだろうと思うのですが、少なくともこの漁協組合が指摘をしている海面の汚水あるいは海水の汚染、漁場に対する公害を与えない、それは保障できる確信がおありですね。これを無視して排水管を敷設をし、海にちょっとした距離を延長して流すとか、そういうことは絶対にやりませんね、その確約がないとこの問題は協力できませんよ。
  294. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 結論から先に申し上げますと、漁業組合の方に今後おしかりを受けるようなことはいたさないつもりでございます。  実は途中におきまして、私どもモズクの関係で、三次処理をいたす水でございまして、場合によればむしろモズクの繁殖にもいいのではないか、それからいろいろ言われるppmも非常に少ないということもるる御説明申し上げたのでございますが、とにかく刑務所から出てくる変な水を海に流されてはイメージも悪くなるということもございまして、私どももあきらめざるを得なかったわけでございます。
  295. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁は少し過ぎたような感じがしますがね。モズクの繁殖にいいなどということは、これは聞き捨てならぬ言葉ですよ。冗談じゃないですよ、訂正してください。
  296. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 その部分は交渉の過程のことで、話し合いのことでございますので、先生の御指摘がございますれば訂正いたします。
  297. 上原康助

    ○上原委員 そういう観念でこういう問題を取り上げたら、公害をまき散らすことになる。時間の関係もありますので、これ以上はしませんが、一応きょうのところは留保しますが、少なくとも来年に向けて、あるいは今年後半に向けて皆さんが地域住民の協力も得ながら、あるいは沖繩県民の期待にも沿うような移転を達成しようと思うならば、いま最大のネックになっているこの問題と、私が指摘申し上げた職員団体の要求については十分な配慮をやらないと、新しい矯正を目指す新沖繩刑務所の構想なんて、法務省、あなた字面はいろいろきれいごとを書いておっても、ちっとも新しい施設にマッチするような刑務所になっていないじゃないですか、これは引用しませんが。そこは十分御理解いただきたいと思うのです。いいですね。
  298. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 上原委員が冒頭御自分でおっしゃいましたように、親しく沖繩刑務所を御視察願いまして、非常に感謝申し上げているところでございます。余りきつい御質問はないのではないかと思いましたら、そうではないのであれいたしましたが、先刻来御答弁申し上げましたように、刑務所といいますのは、職員を構成単位とはいたしますが、やはり地域住民との御協力なくしては成り立たないものでございます。したがいまして、その点につきましては今後ともわれわれは最大の努力を尽くすつもりでございますし、この点につきましての御支援をもお願いをいたす次第でございます。
  299. 上原康助

    ○上原委員 あと五分ぐらいで終えますので……。それときょうはほかの件でもいろいろお尋ねしたかったのですが、沖繩刑務所に勤務する皆さんは「ハブ新聞」を発行して広報活動をやっているわけですね。これの中には、本土から来られたというか、あるいは本庁から来られた方々の勤務態度とか、先ほどは上意下達でなくして下意上達というようなことをあなたはおっしゃいましたが、しかし実際はそうなっていないわけですね、非常に高圧的である、失礼な言い方をすると、本土感覚ですべて服務規程からそういうものをやろうとするからということで、きわめて手厳しいことを指摘されていますね、これをお読みになっていただきたいということと、こういう意見開陳なり問題提起ができる刑務所というのは、私は全国的に少ないと思う。したがって先ほどああいうお尋ねをしたのですが、こういうこともぜひ参考に職場の改善をおやりになっていただきたいということ。  そして最後に、この跡地の問題は一体どうするかということですね。大蔵省来たと思うのですが、この沖繩の那覇市にある現在の刑務所が移転後の跡地はどのようにお使いになる計画をお持ちなのか。この際いろいろ計画があるやに聞いておりますので、政府の方針として明らかにできる点は明確にしていただきたいと思います。
  300. 秋山雅保

    ○秋山説明員 現在那覇市とその周辺に所在いたします国の出先機関の大部分が実は民有地あるいは公有地の土地とか建物を借り上げて事務庁舎として使っている、こういう状況でございます。こういうふうな施設は市内に散在しております。そのために、利用する県民の方に非常に御不便をおかけしている。それから職員の方も、職場環境と申しますか事務室が非常に使いにくい、こういうマイナス面がございます。  そこで、跡地につきましては、合同庁舎等の予定地に充てたいと思いますが、なお公園用地といたしまして一万平米弱程度の面積を予定している、正確なことはまだはっきり決まっておりませんが、大体このように考えているわけでございます。
  301. 上原康助

    ○上原委員 これは那覇市当局は公園用地に確保したいという要望もありますし、たしかその件については建設省ともすでに合意を得たという経緯もあるようであります。また一方、いま御指摘がありましたように合同庁舎の建設も、開発庁総合事務局と那覇市との話し合いで、ガソリンタンク跡地に小学校を国有地に建設をするときのいきさつもあって、いろいろ複雑な面があるということは聞いておるわけですが、そうしますと、いま一部は那覇拘置支所として、法務省の合同施設として使いますよ、もう一つは国の出先関係の合同庁舎として確保する、そして一方、また公園用地としても確保する。大体三つに分けて跡地は利用するというのが、これは政府全体の方針として、ほぼまとまったというふうに理解してよろしいでしょうか。
  302. 秋山雅保

    ○秋山説明員 正確に申しますと、公園それから那覇地方法務合同庁舎、那覇拘置支所、それから宿舎ですね、それから那覇家庭裁判所、那覇地方合同庁舎、こういうふうな用途に充てたいと考えております。
  303. 上原康助

    ○上原委員 これで大体終えますが、最後に法務大臣、最初から全国的な刑務所職員の問題と、いま沖繩の刑務所移転の面でいろいろお尋ねをしたのですが、特にこれはほかにもいろいろ問題があるのです。用地買収のことも私は前から問題にしているのですが、きょうはもう時間がありませんから、残念ながら聞きませんが、そういったいろいろな経緯があってようやく今日の段階まで来ているわけですね。したがって、その漁業協同組合の皆さんなり地域住民の要望に対しては、法務省だから、あるいは法執行する検察官もおるし裁判官もおるし判事もおる、何でもござれという態度では、私はこの問題は解決できないと思うのですね。そういうことについては、十分な御配慮をいただいて、この問題でスムーズに移転できるといいますか、地域住民の協力が得られるように、職員の待遇改善の問題を含めて、そして公害については、少なくとも刑務所移転によって海水が汚染されたとか、あるいは漁業が台なしになったとか、周辺の環境が悪くなったというようなことのないようにやっていかなければいけないと思いますので、大臣決意のほどを伺って、その御答弁いかんによって質問を終えたいと思います。
  304. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 法務省は強大な権力を持っております。検察庁もあれば刑務所もあるということでございますが、そういうことでいまの社会では通りませんから、国民とともにある刑務所でなければいけないし、また検察庁でなければいけない。特に刑務所は、社会の安全を図るために当然必要な施設でございますが、誘致されるところもありますけれども、何とかどこかへ行ってくれというところも多いわけであります。そういう事情にありますので、先ほど来、局長から申し上げておりますように、できるだけ地元の皆さんと円満に進むように努力をしたい、かように考えております。
  305. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  306. 始関伊平

    始関委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  307. 始関伊平

    始関委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  法務省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  308. 始関伊平

    始関委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  309. 始関伊平

    始関委員長 ただいま可決いたしました本案に対し、村田敬次郎君、上原康助君、鈴切康雄君、受田新吉君、柴田睦夫君及び甘利正君から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。村田敬次郎君。
  310. 村田敬次郎

    ○村田委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの各派共同提案に係る法務省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     法務省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、矯正施設に勤務する職員、特に保安業務に従事する職員の職務の複雑困難性、責任の重要性等にかんがみ、これら職員の勤務条件、職場環境及び生活環境に関し、人的、物的の両面にわたり、勤務の実態に即した改善がなされるよう善処すべきである。   右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じて、すでに明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  311. 始関伊平

    始関委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  312. 始関伊平

    始関委員長 起立総員。よって、村田敬次郎君外五名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。瀬戸山法務大臣
  313. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 ただいま法務省設置法の一部を改正する法律案を御可決いただきまして、まことにありがとうございました。連日長時間にわたり、慎重かつ御熱心な御審議を賜り、厚くお礼を申し上げます。  御審議の間に承りました貴重な御意見を体し、法務行政全般の円滑、適正な運営に努力する所存であります。  また、ただいま矯正職員の勤務条件等に関し御決議いただきましたが、その御趣旨を十分尊重し、矯正派遣の充実及び関係職員の勤務条件等の改善に最善の努力をいたしたいと考えております。ありがとうございました。     —————————————
  314. 始関伊平

    始関委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  315. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  316. 始関伊平

    始関委員長 次回は、来る四月六日木曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十七分散会