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1978-03-23 第84回国会 衆議院 内閣委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十三日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 始関 伊平君   理事 小宮山重四郎君 理事 高鳥  修君    理事 藤尾 正行君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 鈴切 康雄君 理事 受田 新吉君       逢沢 英雄君    小島 静馬君       関谷 勝嗣君    玉生 孝久君       中馬 辰猪君    塚原 俊平君       福田  一君    増田甲子七君       上田 卓三君    木原  実君       栂野 泰二君    安井 吉典君       山花 貞夫君    新井 彬之君       市川 雄一君    柴田 睦夫君       中川 秀直君  出席国務大臣         法 務 大 臣 瀬戸山三男君         外 務 大 臣 園田  直君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      荒舩清十郎君  出席政府委員         人事院事務総局         給与局長    角野幸三郎君         内閣総理大臣官         房交通安全対策         室長      三島  孟君         行政管理庁行政         管理局長    辻  敬一君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛施設庁労務         部長      菊池  久君         法務大臣官房長 前田  宏君         法務大臣官房会         計課長     石山  陽君         法務大臣官房司         法法制調査部長 枇杷田泰助君         法務省民事局長 香川 保一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省矯正局長 石原 一彦君         法務省保護局長 常井  善君         法務省入国管理         局長      吉田 長雄君         外務政務次官  愛野興一郎君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         運輸省航空局次         長       松本  操君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      黒木 忠正君         防衛庁人事教育         局人事第一課長 池田 久克君         外務大臣官房在         外公館課長   松田 慶文君         大蔵省主計局主         計官      塚越 則男君         厚生省公衆衛生         局保険情報課長 長谷川慧重君         厚生省公衆衛生         局精神衛生課長 目黒 克己君         厚生省援護局庶         務課長     吉江 恵昭君         運輸省航空局監         理部監督課長  松村 義弘君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     足立 篤郎君   上田 卓三君     藤田 高敏君   山花 貞夫君     岡田 利春君 同日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     山花 貞夫君   藤田 高敏君     上田 卓三君 同月四日  辞任         補欠選任   足立 篤郎君     宇野  亨君 同月六日  辞任         補欠選任   小島 静馬君     正示啓次郎君   玉生 孝久君     田中 龍夫君 同日  辞任         補欠選任   正示啓次郎君     小島 静馬君   田中 龍夫君     玉生 孝久君 同月七日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     不破 哲三君 同月八日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     柴田 睦夫君 同月九日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     渋沢 利久君 同日  辞任         補欠選任   渋沢 利久君     上田 卓三君 同月十四日  辞任         補欠選任   中村 弘海君     萩原 幸雄君 同月十七日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     前尾繁三郎君   小島 静馬君     田中伊三次君   関谷 勝嗣君     篠田 弘作君   玉生 孝久君     原 健三郎君   塚原 俊平君     愛知 和男君   上田 卓三君     太田 一夫君   山花 貞夫君     田口 一男君 同日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     塚原 俊平君   篠田 弘作君     関谷 勝嗣君   田中伊三次君     小島 静馬君   原 健三郎君     玉生 孝久君   前尾繁三郎君     宇野  亨君   太田 一夫君     上田 卓三君   田口 一男君     山花 貞夫君 同月二十二日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     渡辺 紘三君   小島 静馬君     松野 幸泰君   関谷 勝嗣君     井出一太郎君 同日  辞任         補欠選任   井出一太郎君     関谷 勝嗣君   松野 幸泰君     小島 静馬君   渡辺 紘三君     宇野  亨君 同月二十三日  辞任         補欠選任   田川 誠一君     中川 秀直君     ―――――――――――――三月七日  許可認可等整理に関する法律案内閣提出第  五一号) 同月六日  台湾残置私有財産補償に関する請願瀬野栄次  郎君紹介)(第一六二八号)  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願  (玉生孝久紹介)(第一六二九号)  同(逢沢英雄紹介)(第一六六六号)  同(受田新吉紹介)(第一六六七号)  同(塩川正十郎紹介)(第一六六八号)  同(井上泉紹介)(第一七一一号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第一七一二号)  同(木原実紹介)(第一七一三号)  同(始関伊平紹介)(第一七一四号)  同(栂野泰二紹介)(第一七一五号)  同(中川秀直紹介)(第一七一六号)  同(鈴切康雄紹介)(第一七六一号) 同月九日  台湾残置私有財産補償に関する請願瀬野栄次  郎君紹介)(第一七九九号)  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願  (新井彬之君紹介)(第一八四一号)  同(木村武千代紹介)(第一八八二号)  旧軍人恩給制度改善に関する請願藏内修治  君紹介)(第一八八三号) 同月十六日  救護看護婦に対する恩給法適用に関する請願  (飯田忠雄紹介)(第二一五七号)  同(市川雄一紹介)(第二一五八号)  同(柴田睦夫紹介)(第二二七三号)  同(平石磨作太郎紹介)(第二二七四号)  靖国神社国家護持に関する請願塚田徹紹介)  (第二二〇二号) 同月二十二日  遺族年金扶助料改善に関する請願瀬野栄  次郎紹介)(第二三四一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十三日  恩給共済年金改善に関する陳情書  (第九八号)  旧軍人恩給改善に関する陳情書  (第  九九号)  青少年の健全育成に関する陳情書外一件  (第一〇〇号)  水産省設置に関する陳情書  (第一〇一号)  中小企業省設置に関する陳情書  (第一〇二号)  国民の祝日として国土緑化推進の日制定に関す  る陳情書  (第一〇三号)  同和対策事業特別措置法強化延長に関する陳  情書外十七件  (第一〇四号)  元号の法制化に関する陳情書外十件  (第一〇五号)  米軍施設硫黄ロランA局廃止反対に関する  陳情書  (第一〇六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  許可認可等整理に関する法律案内閣提出第  五一号)  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第一〇号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三号)      ――――◇―――――
  2. 始関伊平

    始関委員長 これより会議を開きます。  許可認可等整理に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。荒行政管理庁長官。     ―――――――――――――  許可認可等整理に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 荒舩清十郎

    荒舩国務大臣 ただいま議題となりました許可認可等整理に関する法律案について、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。  政府は、かねてから行政簡素化及び合理化を促進するため、許可認可等整理を図ってまいりましたが、さらにその推進を図るため、昨年末に決定した行政改革計画に基づき、許認可等整理合理化を行うこととし、この法律案を提出することといたした次第であります。  次に、法律案内容について御説明申し上げます。  第一に、許可認可等による規制を継続する必要性が認められないものにつきましてはこれを廃止し、第二に、規制の方法または手続を簡素化することが適当と認められるものにつきましては規制を緩和し、第三に、下部機関等において処理することが能率的であり、かつ、実情に即応すると認められるものにつきましては処分権限を委譲し、第四に、統一的に処理することが適当と認められるものにつきましてはこれを統合することとしております。  以上により廃止するもの三十七事項規制を緩和するもの十六事項権限を委譲するもの三十七事項、統合を図るもの六事項、計九十六事項について、十二省庁、三十一法律にわたり所要の改正を行うことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及び概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 始関伊平

    始関委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ――――◇―――――
  5. 始関伊平

    始関委員長 次に、在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川秀直君。
  6. 中川秀直

    中川(秀)委員 在勤法お尋ねをする前に、せっかく外務大臣が御出席でございますので、昨日の政府首脳会議のことにつきまして、一、二お尋ねをさせていただきたいと思います。  けさの新聞報道によりますと、いよいよ外務大臣訪中による政治折衝というようなものが、政府首脳会議においても大筋で一致を見た、こういう報道がなされておるわけでありますが、これは今後の日中条約交渉の中においてかなり重要な問題だと思われます。外務大臣の御所信をお伺いしておきたいと存じます。
  7. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  昨日の飯倉公館における話は、総理外務大臣官房長官、それから外務省事務当局が入りまして、まず最初に、総理日米首脳会談の訪米についての日程検討及び第一回の勉強会でございます。  それが終わりましてから、日中友好条約締結手順段取り等を含めて総理外務省考え方を報告し、これに御理解をいただき、さらに検討したものでございまして、外務大臣訪中あるいは再開の日時等を決定したわけではございません。しかし、ただいままで進めてまいりました手順段取り等既定方針に従い進めるということは確認した次第でございます。
  8. 中川秀直

    中川(秀)委員 時期やあるいは日程等はお決めになったわけではないということでございますけれども、既定方針の上にのっとって進めていくというその御確認の中に、外務大臣自身が時期を見て、与党内の調整もございましょう、そういう時期を見まして、たとえば四月の前半あたりに御訪中になる、時期を明示しないといたしましても、いずれ近い時期に御訪中になるのだ、このことについては政府首脳会議において大筋確認をされた、こう理解してよろしゅうございましょうか。
  9. 園田直

    園田国務大臣 いままでの方針確認をいたしましたが、具体的なことについては検討しただけでございまして、まだ決定なりあるいは概略を決めたわけでもございません。今後それぞれ国内的な問題等もございますので、今後の状況、手順段取りを進めながら、その後で正式に決めることになると考えておりますので、ただいまのところは私の訪中その他もまだ検討段階でございます。
  10. 中川秀直

    中川(秀)委員 もう一点お尋ねをいたしますが、第三回の佐藤北京駐在大使中国政府韓念竜外務次官との会談と、検討課題だというお話ですが、恐らく御心中は期するところがあるものと私は拝察をするのでありますけれども、この外務大臣自身の御訪中というものの絡みはどういうぐあいになるでしょうか。検討課題ということですが、その御検討中身の問題としてそういった問題の絡みというものがどんなふうになるものか、将来の問題ではあるかもしれませんが、お尋ねをしたいと思います。
  11. 園田直

    園田国務大臣 これも申し上げましたとおり検討段階でございまして、時期は御承知のとおりきわめて微妙な段階でございますので、これ以上はお答えすることをお許しを願いたいと思います。
  12. 中川秀直

    中川(秀)委員 わかりました。それでは在勤法お尋ねをさせていただきます。  在外公館勤務する大公使等は、在勤法によりましてその俸給、期末手当あるいは在勤手当在勤手当中身基本手当住居手当配偶者手当子女教育手当、いろいろございますけれども、これが住居手当を除いてすべて円建てになっているわけでございます。これにつきましては、この法律によりまして、第十条でございますが、上下二五%の幅で在外公館の種類、所在国または所在地等種別によって政令で定める、こうなっているわけでありますが、この基本手当あるいは配偶者手当子女教育手当といったような円建て在勤各種手当を、今日は大変な円高時代でございますから、これは当然御検討になっていると思われるのでございますけれども、政令でそれぞれ地域的にどのような幅になさろうとしているのか、あるいはいつごろから実施なさるのか、御見解を賜りたいと存じます。
  13. 山崎敏夫

    山崎政府委員 お答え申し上げます。  在勤基本手当支給額円建てになっておりますために、各在外公館所在地消費物価変動あるいは在勤国通貨の円に対する為替相場変動及び本俸額改善等の要素をいろいろ考慮に入れまして、手取り現地通貨実質的価値が維持されるよう必要に応じて調整を行うことにしている次第でございます。昨年末以来円高の傾向が激化しておりますので、一部の在外公館については、在勤基本手当支給額実質的価値かなりの増大が見られます。他方物価の上昇の著しい在外公館もございます。そこでそういういろいろな事情を勘案いたしまして、在勤基本手当の円の支給額を改定する必要を認めまして、その措置につきまして大蔵省当局と協議を重ねてまいったわけでございますが、最近成案を得まして、政令を近く閣議に提出いたしまして四月一日から施行することを考えております。  その内容につきましては、一〇ポイント増額されるものは二公館、それから五ポイント増額されるものは九公館でございます。他方、一〇ポイント減額されるものは四公館、それから五ポイント減額されるものは三十九公館でございまして、計五十四公館につきまして基本手当支給額を改定することといたしております。
  14. 中川秀直

    中川(秀)委員 よくわかりました。  私はここで御検討いただきたい点を一つだけ御指摘をさせていただきたいと思うのでありますが、わが国在外公館の場合、いわゆる大使館員の住宅並びにその使う家具什器のたぐいは全部こういった手当の中からそれぞれが自弁をする、こういうたてまえになっておるようであります。なかなかその家具の手配がつかないところは、それぞれの大使館におきまして家具委員会等をおつくりになりまして大変な御苦心をなさっていることをこの耳で聞いたこともございます。  たとえば欧米諸国の場合、普通の民間の方でも仕事の関係で一年行こうといたしますと、かなりの分は家具つきアパートなどに入居をするわけであります。そういうことが可能である地域において、あるいは不可能な地域においてはなおさら、まあ人の使った家具は使いたくないという部分もあるかもしれませんが、少なくともソファーやその他たな、そういった家具等に関しましては、もう最初から国の什器としてあるいは家具として一定量購入をなさっておいて、それをずっとお使いいただくといった方がより効果的なんじゃないかと思うわけであります。それぞれの館員が買い入れて、また転勤の際に二束三文で売り払う、新しい館員がまた買い求める、それに費やすエネルギーも時間も大変なものがあるという現状から考えてみますと、たとえばこの円高差益などの一部を大蔵省と御折衝になってお使いになっても、そういったものは備えつけのものとして御準備なさるぐらいのことをひとつ御検討なさったらいかがかと思うわけでありますが、いかがでございましょうか。
  15. 山崎敏夫

    山崎政府委員 私たち在外公館勤務する者の生活の実情につきまして大変御理解のあるお話をいただいたことを、まず感謝いたしたいと思います。  仰せのとおり、最近住居手当制度ができまして住居についてはかなり改善を見ておるわけでございますが、その住居の中に入れるべき家具についてはまだ非常に貧弱であるというのが実情でございます。まあ住居を借ります場合に、家具つきである場合にはその家具込みで借りることができるようになっておりまして、しかるべき住居手当を支給できるわけでございますが、家具つき住居がありません場合には、やはり館員がみずから在勤基本手当の中から工面をして家具を買い、また転勤するときはそれを売り払っていかなければならないというふうな実情でございまして、これは、われわれ在外公館勤務する者にとりましては最大の頭痛の種となっております。御指摘のお考えは、大変私たちとしてもありがたい考え方かと存じますが、他方、従来、在勤基本手当手取り額が減りました場合には、基本手当の増額をお願いしておる関係上、円高のために現地通貨による手取り額がふえてまいりました場合には、減額するのは筋ではないかというお話もございまして、われわれもその点は確かにそういうふうに考えますので、先ほど申し上げたとおり、今回は一部の公館につきまして減額の措置をとることといたした次第でございます。もし、その減額するものを減額しないでプールしてやるということは、政府措置としては非常にやりにくい問題でございます。  いずれにいたしましても、家具の問題につきましては、一種の相互扶助の観点から、各館においてその実情に応じていろいろな方策を講じておるようでございますので、この点については、われわれとしても各館においてそれぞれ工夫をこらさせていきたいというふうに考えております。  なお、申し忘れましたが、一部瘴癘地におきましては、家具貸与制度を実施しております。
  16. 中川秀直

    中川(秀)委員 鋭意、一部地域でなくて、みんなが使える家具等については、貸与制度を広げた方が、むしろ国費のむだ遣いを防止することになるのではないかと私は思います。あえて御指摘を申し上げたゆえんはそこにあるわけでございまして、さらに御努力を願いたいと存じます。  さて、外務省の中の省内の効率的な人事運用の問題を二点お尋ねをさせていただきたいと思いますが、いわゆるキャリアとノンキャリア身分格差の問題でありますけれども、私は、やはり全省一丸となった一体感の中で、外務省わが国外交の第一線として外交を展開していただきたいと強く願う者の一人であります。その見地から申しますと、一つの御提案でございますけれども、外交官試験というようなものも、時代に合わせてそろそろ抜本的に御改革になったらいかがかと思うわけであります。現在、外交官試験は、上級それから中級以下は昨年より語学研修も含めまして外務省専門職員採用試験ということで一本化されておりますけれども、いずれにしても二本立てになっているわけであります。これもさらに一歩進んで、外務省においては一本化をしてみたらどうかと私は思うわけであります。  また、外交官試験試験内容も、アベレージの点数で採用するという考え方は、むしろわが国外交の場合、将来の場合、必ずしもそれだけでいいとは私は言えないような気がしてなりません。したがいまして、試験科目もいま八科目ありますけれども、これも少し多過ぎるのではないかというような気がいたします。国家に奉仕する気概のある者、あるいはいかなる困難に出会っても、冷静さを失わず対処できるような外交官資質の持ち主に門戸を開くような内容にして、そのかわり入省後の研修期間を長くして、語学外交官としての必要な知識やテクニックを徹底的にたたき込んで、その過程で、本人の希望を勘案しながら行政職専門職特定地域在外勤務希望者などというぐあいに区分けをなさっていったらいいのではないかと思いますが、その点いかがでございましょうか。
  17. 山崎敏夫

    山崎政府委員 大変貴重な御意見と存じます。ただ、現在の公務員制度のもとにおきましては、外務省といたしましても、基本的には他の官庁と同様の試験区分を設けざるを得ないというのが実情でございます。御承知のとおり、国家公務員採用試験の場合には、上級中級、初級とあるわけでございまして、外務省だけがその点につきまして一切の上級中級の区別を廃止するということは、実際問題としても、いろいろな事情から実施がむずかしい次第でございます。しかしながら、外務省としましても、昨年から実施いたしました専門職員試験合格者を、特殊語学とか地域問題の専門家たる中堅職員として養成する一方、その能力等適性に応じまして上級職員に登用するなどの弾力的な人事政策を行ってきております。御承知のとおり、現に大使でも、上級試験以外の者が任用されております。総領事はそういう人が多数任用されております。また、内部におきましても登用制度を積極的に実施しておる次第でございます。  次に、上級試験試験科目が多過ぎるのではないかという御指摘でございますが、われわれとしては、この試験科目については随時検討を加えてまいってきておりますけれども、外交官としての適性の有無を判断するためには、現在の試験科目は、われわれとしては必要最小限度のものであるというふうに考えております。ただ、御指摘のように、広く人材を集めるという見地から、この数年来は外国語会話を廃止いたしまして、その試験段階において、会話は必ずしも得意でないという人でも試験が受けられるように配慮いたしております。しかし、御指摘の次第もございましたので、今後ともこの試験科目についてはさらに改善に努めてまいりたいと考えております。
  18. 中川秀直

    中川(秀)委員 これまた鋭意御努力をお願いして、適当な時期にいい答えを出していただきたいと思います。  外務大臣にひとつ、外務大臣がそういうことをよく御存じであるかという意味でお伺いをしたいのですが、過去十年間、外交官試験合格をいたしましたキャリア大学出身種別のうち、東大出身者がどのぐらいを占めておられるのか。また、現在、わが国大使全部のうち、東大出身者がどのぐらいを占めておられるのか、大臣は御存じでいらっしゃいますか。
  19. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ちょっと大臣がお答えになります前に、若干の数字について御説明申し上げたいと思います。  外務省人事政策上、東大出身者を優遇するというふうなことは一切やっておりません。また、最近、外務公務員上級試験の中に占める東大出身者以外の国公立大学及び私大出身者が次第に増加いたしてきております。数字につきましては、本省の幹部及び主要在外公館長の東大出身者の比率を調べたものがございますが、それによりますと、本省におきましては、本省の幹部は百二十一名でございまして、そのうち東大出身者数は九十一名、比率は七五%でございます。在外におきましては、主要公館長数は二十四名で、そのうち東大出身者数は二十名、パーセンテージとして八三%、全体といたしまして百四十五名のうち百十一名、つまり七六%は東大出身者でございます。過去十年の数字はないのでございますが、ここに持ち合わせております昭和五十二年度の外務公務員採用上級試験合格者の出身校別の表を見ますと、合格者総数は二十七名でございますが、そのうち東大出身者は十七名でございまして、パーセンテージとしては約六割、この比率は他官庁に比べればむしろ外務省の方は低く、東大以外の大学出身者が多く合格しておるのが実情でございます。こういう傾向は近年もますます増加しております。
  20. 園田直

    園田国務大臣 いま官房長から申し上げましたが、東大出の比率は、本省で百二十一名中九十一名、七五%、それから在外で二十四名中東大出が二十名、八三%、計百四十五名のうち東大出が百十一名でありまして、パーセントから言うと七六%でございます。そこで、これから見ると東大出がパーセントからすれば非常に多いようでありますけれども、これは過去の経緯がございまして、他省庁と比較して多いというわけではございません。  なお、外務省として東大出身者であるからという特別な配慮は一切していないわけでございますが、かつての外交試験受験者は旧帝大、特に東大出身者が多かったことがこのようなパーセントを占める原因になっているようでありまして、近ごろでは外務公務員上級試験合格者の中に占める東大出身者以外の国立、公立大学及び私立大学出身者が相対的に増しておりますので、このパーセントは逐次変わってくるものと考えております。  なお、そういうこともございまして、試験の経過にかかわらず、外務省はまじめで能力ある人を登用することは十分考えておりまして、ノンキャリア在外公館大使六名、総領事二十二名、館長領事六名、本省課長三名、調査官七名、こういうふうにノンキャリアも実力ある者はどんどん登用する。中川さんの御質問の趣旨は十分われわれも考えて、今後ともそういう点はみんなが場所場所で、出身にかかわらず努力をして勉強するようにという風潮はつくりたいと考えております。
  21. 中川秀直

    中川(秀)委員 私は数だけお伺いしたのですが、大臣は最後のお答えまでしてしまいましたので、お尋ねすることがだんだんなくなってしまいますけれども、あえていま一つ指摘をいたしますならば、ただいまお話がありましたように、私が調べましたのは、これまでの十年間のキャリア合格者、やはり五割強が東大出身者ですね。さっき五十二年度六割という数字ですが。それから本省幹部で七五%、在外主要公館で八三%、全体でいくと七六%と落ちるわけでありますが、北米地域は三大使中二大使、欧州地域は二十六大使中二十三大使、アジア太平洋地域では十七大使中十五大使、こういうふうにだんだん落ちてくるわけですけれども、アフリカへ参りますと十九大使中十三大使というぐあいに、北米、欧州あたりは非常に東大出身者が多くなって、アジア、アフリカになりますとその比率がぐんと下がるという、そんな傾向もあります。これはあえて御指摘を申し上げておきますが、私は何も東大だからいけないなんて言っているわけではないのであります。しかしその一方で、優秀な方がたくさんいらっしゃるのだけれども、エリート意識が非常に強いために一般的に辺境の地で外交活動を行うことに生きがいを感じない方もいらっしゃる。そういうことを恐れる。そうでなければいいのでありますが……。  それから第二点は、第三世界に見られる発展途上国社会の非能率性あるいは宗教上の不合理性というものを頭からばかにして、西欧的な合理主義というものだけで物事をお考えになるという傾向がもしあったとするならば、それを恐れる。  それから入省時に希望する語学研修も、ドイツ、フランスあるいはロシア語といった、英米語以外にもそういう語学に集まって、アラビア語、スペイン語、中国語といったような、あるいはもっとたくさんございますけれども、特殊語学をおやりになるそういう志望比率が比較的低い。そういう語学をやると出世の妨げとお考えになるのかどうか知りませんが、そういう傾向ももしあるとするならば、恐れる。これについては、もしあるとするならでなくて、若干あるようであります。それから非常に出世主義的な意識がもし強くて、スペシャリストになることをおきらいになるとするならば、私はこれはゆゆしい問題だと思います。  というような種々の点も一部には指摘をされておるわけでございまして、東大出身者がいけないというわけではありませんけれども、東大出身者なるがゆえにそういったいま申し上げたような四、五点にわたる指摘かなり比率的に高いとするならば、これはひとついろいろな角度から御検討いただいて、是正すべきは是正をしなければいけないのではないかと思うわけであります。かつてサウジアラビアのファイサル国王が暗殺をされましたときに、サウジアラビア王家の葬儀のしきたりを知るスペシャリストが外務省にはお一人もいらっしゃらなかった。一々特使の派遣の是非を現地に問い合わせるような体制であったということは、本当にいまでも語り継がれていることでございますけれども、私はそういったことにも精通をしたスペシャリストを大いに御養成にならなければいけないと思いますし、また親身になって第三世界の人々、これは中国流の言い方でありますけれども、発展途上国の人々とつき合うヒューマンな心の持ち主を大いにお養いになるような人事運用を大いにしていただきたい。心からお願いをしたいと思うわけであります。いかがでございましょうか。
  22. 山崎敏夫

    山崎政府委員 外務省におきましては、人事政策におきまして適材適所の判断及び配置先による事情の考慮以外に、一般的にあらゆるレベルの者につきましていわゆる健康地、不健康地を交互に勤務せしめるということを人事政策一つの要素といたしております。この点は上級職員も同様でございまして、いまや健康地と不健康地を交互に勤務することは外務省員の常識となっております。私たちとしては、上級職員についてそういうものを忌避する風潮があるというふうには承知しておりませんし、仮にそういう者がいたとしても、これは人事政策上公平な見地から十分措置してまいる考えでございます。  また、特殊語学の研修の点につきましては、従来から上級試験の採用者のうちからも例年英語、フランス語、ドイツ語だけでなく、ロシア語、中国語、スペイン語、アラビア語、朝鮮語、ポルトガル語等の語学研修に従事せしめております。今後とも上級試験採用者に対しましても必要に応じて特殊語学研修を受けさせていく方針でございます。ちなみに、最近、昭和五十二年度の上級試験合格者の研修語学を申し上げますと、英語は十名、フランス語は六名、ドイツ語は二名、そのほかロシア語二名、スペイン語二名、中国語二名、アラビア語二名、計二十六名でございます。したがいまして、英、仏、独を除きましても八名の者がロシア語、スペイン語、中国語、アラビア語といった専門語学を研修いたしておるわけでございます。
  23. 中川秀直

    中川(秀)委員 もう時間がなくなりましたので、最後のお尋ねをいたしますが、外務公務員法を読んでいて、私はちょっと意外な感嘆がしたのでありますけれども、第七条「外務公務員の欠格事由」の中の「国家公務員法第三十八条の規定に該当する場合の外、国籍を有しない者若しくは外国の国籍を有する者」、これは外務公務員にはなれませんよ、これは当然のことであります。同時に、この後がちょっと気になるのでありますけれども、国籍を有しない配偶者もしくは外国の国籍を有する配偶者を持っている者は外務公務員となることができないと書いてあるわけですね。そしてまた「前項の規定により外務公務員となることができなくなった」、つまり外国人の女性を奥さんにおもらいになった方は、「政令で定める場合を除く外、当然失職する。」という規定があるわけであります。もちろん政令では、結婚の日から一年を経過するまでに国籍をとれば外交官は続けられますよ、こうなっているわけですが、中には、私は引き続き母国の国籍を保持したい、そういう方もいらっしゃるかもしれません。そういう方の場合は当然失職をするということになっているのですけれども、この法律の制定の趣旨並びに現状の中でそういうことが起こっておやめになるという方もいらっしゃるのかどうか、あるいはこういった規定が、国際化社会の中にあって時代錯誤と言えないのかどうか、その辺の御見解をまとめてお伺いをしたいと思うのであります。
  24. 山崎敏夫

    山崎政府委員 御指摘のように外務公務員法中に、国家公務員法とは異なる欠格事由があることは事実でございます。  この趣旨は、やはり外交官というものが、国を代表いたしまして、全体の国益に奉仕する者として勤務するものでございますので、特別の考慮から、配偶者についても国籍要件を必要とする、日本国籍を持っていることを必要とするということになっておるわけでございます。しかしながら、これはあくまで国籍の問題でございまして、実際の問題として、外国人と結婚することは全く自由でございます。これはまさに憲法で保障されている自由であると考えます。ただ、そういう外国人と結婚した外務公務員については、その配偶者が一年以内に日本国籍をとるように求めておるわけでございます。これは外交というものにつきましては、その事柄の性質上、交渉過程においては若干秘密を伴うこともございますし、特に細心の注意が必要なこともございますので、こういう立法趣旨となっておるものと考えます。  実際問題といたしましても、外務公務員になりました者で外国人と結婚する者は、毎年事例がございます。その人たちについて、そういう日本国籍をとることを求めておりますけれども、そのために特に外務省をやめるという事例は、皆無ではないと思いますが、最近、私の承知しております限り、事例を聞いたことはございません。その意味で、この第七条の規定が大きな障害になっているということはないと存じます。
  25. 中川秀直

    中川(秀)委員 終わります。
  26. 始関伊平

    始関委員長 安井吉典君。
  27. 安井吉典

    ○安井委員 ただいまは在外公館法の審議でございますが、私、査察の強化だとか日本人子女教育の問題だとかを取り上げたいと考えておりましたけれども、けさの理事会で大体附帯決議にも盛り込まれるという話でございますので、本論はしばらくおきまして、せっかく園田外務大臣も御出席でございますので、当面の一番大きな政治課題である日中問題につきまして、若干伺っておきたいと思います。  昨日、社会党の飛鳥田訪中団が、先般の公明党訪中団に続きまして北京へ出発いたしました。きょういろいろ話し合いをしているころだと思います。同じ昨日、飯倉の公館におきまして、福田総理大臣を中心に外務大臣も御出席で、今後の日中平和友好条約交渉の進め方についてのお話し合いが行われたということであります。先ほど、中川委員のその内容についての質問に対して、もっとお答えが出るように私は期待をしておったわけでありますが、何か木で鼻をくくったようなお話で、それもそのはず、けさの新聞を見ましても、各紙ともニュアンスが皆違うのですよ。政府が余りきちっとした発表をされないと、そんなようなことに世論が食い違ってくるわけですね。ですから、私は、国会の場を通してもう少し政府の取り組みの方向等について明らかにし、国民の支持を受けるという態度でお進めをいただきたいと思うわけであります。どうもいつもの園田外務大臣らしくなくて余りお話をされないというのも困るのですが、その内容について、私、もう少しお尋ねをしてみたいと思います。  いままで、園田訪中によって政治的な決着がつく、そのことについて福田総理大臣の決断が行われるというふうに私ども聞いており、昨日のその協議会がそんなような性格を持ったものじゃないかな、こう思っておったわけでありますけれども、先ほどの御答弁では、どうもそうじゃないようでありますが、重ねてその点を伺います。
  28. 園田直

    園田国務大臣 お答えをいたします。  決して木で鼻をくくっているわけではなくて、御丁重に私の苦しい立場を説明申し上げてお許しを願っておるわけであります。今朝の朝刊は全部推測記事であって、内容を発表してないことは御発言のとおりでございます。  昨日は、ただいま言われました外務大臣訪中も含めていろいろな手順段取り検討したことは事実でございます。しかし、この問題は、すでに方向が決まり、そして具体的に目標を定めて段取りをいたす場合には、少なくとも私の方から御報告申し上げる時期は、その段取りがだんだん進んでいって、そして向こうと合意ができて、何月何日ごろからどこでどういうことをやるというようなことにならなければ、これは相手のあることでございますから、きわめて微妙な時期にここでいろいろ発言をいたしますと、向こうの方では、おれの方はまだ聞いてないとかあるいは私の方の与党内の問題等もございますから、きわめて大事な時期で、この日中問題、五年間もかかったわけであります。これをいよいよきれいに仕上げるためには大事に大事をとっていきたい、こういうことから、実は内容はお許し願ったわけでありまして、時期がだんだん迫るにつれて逐次御報告すべきことは御報告をしたい、こう考えておるわけでありますので、お許しを願いたいと思います。
  29. 安井吉典

    ○安井委員 それでは、福田総理大臣の決断という段階ではなしに、いまいろいろな手順段階を踏んでいる、そういう時点にあるのだ、そういう中でのきのうの協議であった、こういうことですか。
  30. 園田直

    園田国務大臣 先般も委員会で申し上げたわけでありますが、総理大臣の本件に関する交渉再開の決断はすでになされているわけであります。したがいまして、その後どういうような手続で、どういう問題で、どういうふうにやっていくかということの検討が、昨日の飯倉公館総理を中心にした検討会でございます。
  31. 安井吉典

    ○安井委員 園田外務大臣は、かつていつでも中国に行けるようにエンジンは吹かしっ放しにしてある、かけっ放しになっている、こういう御発言もあり、余りかけっ放しにしていて時期が長引けは、ガソリンの方が切れてしまうのではないかと心配する人もあったくらいでありますが、いよいよそのエンジンは車を動かす、そういう作用をする段階に入ってきていることだけは間違いないと思うのですよ。きょうの各紙のいろいろな推測では、外務省が置かれている各種の外交日程の状況の中からは、四月の九日ごろから十五日ごろまでしかあいてないようだ。訪中はそのころではないかというふうな表現もあります。これはきのう決めたことなのか、そうでないのか、そういうことをここで言えと言ってもお答えはないのかもしれませんけれども、大体当たらずとも遠からず、こう考えてよろしいですか。
  32. 園田直

    園田国務大臣 安井さんの御推測は玄人の推測でありますから、りっぱな御推測だと考えております。
  33. 安井吉典

    ○安井委員 そういたしますと、今度の訪中で、これは政治決着というところにいくのかあるいは政治折衝の継続なのか、その点は、いまここでお話をいただけるような段階にないのですか。これから外務大臣訪中されるといたしますれば、そこはもう決着の場なのかあるいは折衝の継続の場なのか、いかなるお見通しをお持ちですか。
  34. 園田直

    園田国務大臣 政治決着という言葉がなかなかあいまいな言葉でありまして、まかり間違うと、政治決着というのは両方の意見が合わぬところを適当なところで、玉虫色くらいのところで話を決めるということが政治決着だと誤解を受けるおそれがございます。やはり日本国民の方々も納得をし、中国の国民も納得をされ、他の国々も、あれならなかなか妥当な条約である、納得されるような決着をつけたい。それについては、事務的折衝ではある段階までしかいきませんから、政治折衝をやりたい、政治折衝でぜひ決着をつけたい、こういうことでございます。
  35. 安井吉典

    ○安井委員 福田首相は、これまでも交渉再開に当たっては、自民党の党内の説明やその他のいろいろな手はずが必要だというふうなことを言われており、その中に、交渉再開に当たっては野党代表との会談もというような意味を発言されたことがあるそうでありますが、外務大臣訪中前にそういうような機会を持つ考え方政府にあるのかどうか、総理大臣御自身ではないので、お答えにくいかもしれませんけれども。野党との話し合いをなさるのかどうか、その点を、外務省としての考え方でも結構です。伺います。
  36. 園田直

    園田国務大臣 総理大臣のことでございますから、一外務大臣がお答えすることは僭越ではございますけれども、しかし、この条約はきわめて大事な、しかも、日中両国間の長きにわたることを規律をする条約でありますから、各党並びに国民の方の御支持と協力がなければとうていできないことであります。そこで、総理としては、何らかの方法で交渉に入る前に各党の方々の御意見も伺いたいというお気持ちをお持ちのようでございます。
  37. 安井吉典

    ○安井委員 一応伺っておきたいと思います。  この間、公明党の矢野訪中団が出発する前に、福田総理大臣に会われた際、二項目を提示された。その内容は、政府として早期締結に大変な熱意を持っているということ、それからまた、いずれの国とも平和友好を進めるという日本の基本的な態度に理解をしてほしい、このような二項目を伝言として携えていった矢野書記長に対して、福田首相は、先方がそのような二項目に対する理解を示せば、外交交渉に入った場合、一定の弾力性ある対応をする用意があるということを矢野書記長に伝えたというふうに伝えられておりますが、それはそのとおりですか。
  38. 園田直

    園田国務大臣 公明党の訪中団が訪中をされる前に、総理に会見の申し入れがありまして、私も立ち会って会見をしたわけであります。その際公明党の方では、自分たちは野党であるから、政府間交渉の枠に立ち入らない、しかし、野党として日本の実情を伝え、向こうの実情も聞いてきたい、野党としての立場を貫きたい、こういうことで、総理の本件に関する考え方を聞かれました。そこで、総理が二、三意見を言いましたら、さらにそれを問い返して、こういうことを向こうに言っても間違いはないか、こういうことでございませんか、こういうことが伝言ということになってきたわけでありますが、そういうことで、特に伝言とかあるいは物を託したというわけではございませんけれども、結果としては、総理の決意を向こうに伝えられたということになったわけでございます。
  39. 安井吉典

    ○安井委員 それに対して、その際に総理から、この伝言に対して中国側が理解を示して会談に入れるようなら、もう少し弾力的な態度を示すことができるということまで矢野書記長に言われたのかどうかという点です。
  40. 園田直

    園田国務大臣 後の、弾力的なという言葉はなかったと記憶いたしております。
  41. 安井吉典

    ○安井委員 これはやりとりですから、新聞で見た言葉をちょっと確めてみたわけです。  そこで伺いたいのは、これまで二回にわたる事務会談が行われたわけですが、その際には条約の草案をお互いに示し合って表現を煮詰めるというところまでいったのか、それとも単なる瀬踏みだとか腹の探り合いと言うと言葉が悪いかもしれませんが、そういう程度の二回の会談であったのか、その点どうでしょう。
  42. 園田直

    園田国務大臣 特に私の方からも佐藤大使には注意したところでありまして、条約の内容には立ち入っておりません。しかし御推測のとおり、交渉再開になったら、問題点になりそうな瀬踏みは両方からしたようでありますけれども、それらも中途でそういう議論をしておっても話は進まぬからやめようということでやめたという程度でありますが、その際、中国の政府から言われた四項目というのは、やはり中国の姿勢として示されてはおります。
  43. 安井吉典

    ○安井委員 ところで最大の問題点は、今後ともやはり反覇権問題ではないかと私どもも見ています。公明党に示された四つの見解、いまおっしゃったそれでありますけれども、その中では中国側の従来からの主張をさらに明確に示しながらも、一方で日本政府外交方針や立場に対し、従来以上に理解を示してきているという印象を受けるわけでありますが、政府としてはどう受けとめておられますか。
  44. 園田直

    園田国務大臣 四項目そのものは、御承知のとおりに、いままで中国が言っておる方針を一貫して述べたものであります。この四項目について弾力性があるかどうかということは、折衝を前にして私が言うべきことではないと思いますので、控えたいと存じます。
  45. 安井吉典

    ○安井委員 大事なところへ来るとするりと逃げられてしまうので困るのですが、まあいずれにいたしましても微妙な外交交渉の段階でありますから、内側に立ち入ったことまでお聞かせを願おうとは思いませんけれども、しかしあそこで示されている四項目見解、その中では、一つには、反覇権というのは両国が共同行動をとるということを意味するのではないということをはっきり言っているようです。それからもう一つ、両国はそれぞれ独自の外交政策を持ち、互いに内政干渉をしないということも明言しているようです。それからさらに、会談の中で鄧小平副首相は、いかなる国とも友好関係を樹立するということは理解できる、反覇権条項自体ほかの国との友好関係を樹立できないという性格を持ったものではないとも言っているようですね。そして最後に、園田外務大臣訪中歓迎と、こう言っているところから見れば、礼儀に厚い中国のことですから、日本政府の立場に対するかなりの程度の理解を示したものだというふうに受けとめられるわけですが、これはどうですか。
  46. 園田直

    園田国務大臣 おっしゃるとおりのこともそうでありますが、しかしまた一方には覇権反対という、その次に特定の第三国に向けたものではないということは、ロジックが合わないということも強く言っておりますから、今後、さて条約文をつくるということについては、やはりいろいろ議論は出るのではなかろうかと思っております。
  47. 安井吉典

    ○安井委員 もちろん原則には厳しい中国ですから、反覇権という意味のとらえ方については、従来と全然変わっていないということだけは間違いないと思いますが、しかしそれへの対応について若干の変化が出てきているのではないかという感じを受けるものですから、私は申し上げたわけであります。  この条約は特定の第三国に対するものではないという日本政府筋の考え方を矢野氏が持ち出して打診したところが、副主席の方は、それだとかえって問題を起こすということで、言下に拒否反応を示したというところなどは、私は明らかではないかと思います。問題はやはりこの辺ではないかと思うのです。この条約は特定の第三国に対するものではないというようなことを、これではどうですかということは、これまでも日本政府は中国側に提示していたのでしょうか。  それからまた、これもけさの新聞にあるわけでありますけれども、昨年の十月に自民党の二階堂氏が訪中したときの私案として、この条約を基本とする日中間の平和友好はというのを主語にした代案のようなあるいは折衷案のようなものを提示して、これに対し中国側は、真剣に検討するという意思表示があったというふうに、これも新聞の報道ですが、このことについて政府のお考えを伺いたいと思います。
  48. 園田直

    園田国務大臣 いまの案等も参考として承っておりますが、いま先生がおっしゃることは、ことごとくこれ、今後の折衝の条約内容に関する問題でございますから、これについてはかたくお答えすることをお許し願いたいと思います。
  49. 安井吉典

    ○安井委員 私は、中国の主張するところの、日中両国が平和友好関係を樹立し発展させることは、このことで特定の第三国に対しようとするものではないという主張だそうであります。そういうふうに伝えられているわけなんですが、この言葉をもう少し分析してみると、日中両国が平和友好関係を樹立して発展させる、その仕方にはいろいろな方法があるのではないか、その一つの方法として特に有力な形式は両国が平和友好条約を結ぶことである、つまり両国の平和友好関係の樹立、発展という中に条約の締結というものも含まれるというふうに理解できるのではないかと思います。つまり中国のその主張の中に日本の主張も、この条約はという特定した日本の主張も平和友好の促進というその中の一部に入ってしまうのではないか、そういう理解の仕方もでき、問題のソ連に対する説明もそういうところからつくのではないかとも思うのでありますが、要はこれらの表現の問題だと思います。いまこれに対してイエスとかノーとかというお答えはどうも出そうもありませんけれども、ひとつ私の見方として申し上げておきたいと思いますが、どうですか。
  50. 園田直

    園田国務大臣 貴重な参考として承っておきます。
  51. 安井吉典

    ○安井委員 時間がありませんので、あともう一つ別な問題も伺いたいと思いますので少ししぼりますが、この日中平和友好条約の締結に対するソ連の反発の問題このこともちょっと伺っておきたいと思うのです。  一月の外務大臣の定期会議のときも園田外務大臣説明をされている。これは別にソ連の了解を受けてくる事項ではないにしても、その後ソ連側から領土問題その他について、しばしば日本政府に対して日中条約締結への牽制ではないかと受けとめられるような行動が続いてきた事実は間違いないと思います。ポリャンスキー大使総理大臣訪問でのブレジネフ書簡の手交だとか、あるいは善隣協力条約草案の一方的な公表だとか、タス通信やプラウダ等の次々のキャンペーン、こういったようなことは日中条約を対象にしたものだという明言もございますし、そうでないものもありますけれども、かなりこの条約の動きを意識したものだということは間違いないと思います。いささか異常ではないかと思われるような事態まで私は考えるわけなんですが、キャンペーンも、これは国として当然のことかもしれませんけれども、余り続くと内政干渉的な感じを受けないと言えばうそになると思います。私は、この際、日本の外交はあくまで主体制を貫くべきだと思うのですが、これならもうはっきりお答えが出ると思うのですが、どうですか。
  52. 園田直

    園田国務大臣 私も御指摘のとおりだと考えております。
  53. 安井吉典

    ○安井委員 これはプラウダではなかったかと思うのですが、条約がソ連に敵対し反ソ同盟の性格を持つ以上、そういうような場合は報復措置もやむを得ないという意味のキャンペーンがあったように記憶しています。しかしこれも、この条約がソ連敵対、反ソ同盟の性格を持つというそれが前提なんですから、条約がそういう前提のものでないということを明確にすれば報復云々という言葉は当然消えてしまう、私はこう理解をするわけですね。したがって、日ソの関係も重大懸案がたくさんあるし、特にいま日ソ漁業交渉が行き詰まって、中川農林大臣に早く訪ソをせよという希望もあるとか言われていますが、公海でもサケ・マスをとらせないという言い方をソ連が最近している。これらも全くかかわりのないことではないのではないかという印象も受けるわけです。したがって、今度の日中条約というのは、日中がともに組んで反ソ統一戦線をつくっていくのだというようなものではないし、日本は、従来から持っている日ソ友好の外交政策はあくまで堅持し、その具体化、現実化のために一層努力を払っていくのだ。そういうことを今度の交渉の中でも、それからまたその後の外交的な動きの中でも明確に示していく、時間をかけて具体的に、反ソではないのだということを説明していくということが私は大切ではないかと思います。どうでしょう。
  54. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言も御指摘のとおりでございまして、日中友好条約が、日本と中国の提携によって真にアジアの平和そして世界の平和に貢献するものであることを的確に明瞭に説明をし、またソ連に対しても理解を求める必要があると考えております。
  55. 安井吉典

    ○安井委員 それからもう一つ、この推進のブレーキのような形になっているのは政府・与党の中の一種の動きだということも言えるのではないかと思います。別な党のことですから、内政干渉的なことを私は言うつもりはありませんけれども、今度のこの日中平和友好条約の締結というものの性格をきっちり理解をした批判であってほしい、そう思います。  いろんな動きがあるようでありますけれども、とりわけここで政府に気をつけておいてもらわなければいけないのは、この平和友好条約を結ぶことを一つの手柄にして、これで国会を解散して福田内閣を有利に導くのだとか、あるいは逆に、この交渉を挫折させたり、非常に難渋をさせることによって福田内閣にダメージを与えるのだとか、そういう底意のあるような動きというものは断じて国民の立場から許すわけにはいかぬ、こう思うわけであります。私は、野党に方にはほとんど問題はなくなってきていると思います。問題は政府・与党の中にある、こう思うのですが、この辺について外務大臣としてお考えがあったら伺いたい。
  56. 園田直

    園田国務大臣 このような重大な問題を、一政権の維持だとかあるいは政権打倒だとか、そういう政略的な問題に使うような方は一人もおられないと私は考えております。しかし、与党の方にもよく御理解を求め、野党の方の御協力も得たいと考えております。
  57. 安井吉典

    ○安井委員 最後に私申し上げておきたいのは、今度のこの条約というのは、かつての忌まわしい不幸な戦争の後始末として一九七二年に田中・周恩来国交樹立共同声明、これの最終的な清算だということを常に忘れてはならぬと思うことであります。あの共同声明の際にも反覇権という言葉はあったのですよ。あったのだけれども、当時は台湾問題への懸念の方が先走って、余り問題にならなかった。ところがもう六年近くになって、条約の締結がおくれてきている。そういう過程の中で反覇権という問題が大きくクローズアップされてきて、それがいま問題になっているわけなんですけれども、例のあの不幸な歴史の過ちの反省の上に立って共同声明そしてこの条約、こう続くわけですから、単にこの条約締結が損だとか得だからというもっと前の原点があるということを私たちは忘れてはならないと思うわけであります。アジアの国々もそのことを注視していると思います。私は、これから交渉が進む段階においていろいろな問題が出てくると思うのですが、常に原点に返るべきだということ、このことを外務大臣も胸におさめ、そしてまた行動の中であらわしてもらいたい、こう思うのですが、どうです。
  58. 園田直

    園田国務大臣 御意見は参考といたしますが、この条約締結が最終の後始末であるということについては、いささか私考えが違っておりまして、共同声明で前のことを終わって、その共同声明を出発点にして、未来にわたって日中の問題を規定していくのがこの条約であるというふうに解釈をいたしております。
  59. 安井吉典

    ○安井委員 もちろんそのとおりだと思います。しかし、共同宣言のときも、必ず条約は結ぶんですよということを約束しているわけですね。その約束の履行にもなるわけで、その履行をサボったりあるいはやらなかったりするということは、こんな大きな不信義はないし、対中国だけじゃなしに、対アジアあるいは対世界に対する日本の重大な問題に発展をする、そういうことを私は強調したかったわけです。  もう一つ、この際、外務大臣の御出席の際に伺っておきたいことがありますのは、ブラウン米国防長官の最近の国防報告であるとか、あるいは国会に対する証言であるとか、あるいはこれまた最近終わった米韓合同軍事演習、これらの一連の出来事があるわけです。私はこの連続的な出来事の中で感じますのは、日本は北方のいかりという表現でアメリカの軍事戦略の中に位置づけられているということを知りました。それからまた在韓米軍が撤退した後朝鮮半島に非常事態が起きた場合には、米韓日、これがまさに軍事的な一体化の中で連動していくということもまざまざと目の前に見せつけられたという感じがします。そして朝鮮半島有事の際には在日米軍があくまで主力になるということ。沖繩の海兵隊や空軍部隊、横須賀基地の第七艦隊等の派遣、そこから事態への対応が始まっていく、あるいはまた米本土からの輸送機が横田中継で朝鮮半島に飛んでいるわけでありますが、地対地ランスミサイルというのは核弾頭もつけることのできるしろものでありますから、それが横田を通過して朝鮮半島に入ったということは、核持ち込みの危険性すらも生ずるおそれがあるというようなこともこれらの一連の動きの中で感じ取り、非常に懸念をする次第であります。現に三月十五日には沖繩県議会が、自民党をも含めて満場一致で、沖繩を発進基地とすることに抗議の決議をしています。自民党も含めてというのは、これはまさに県民全体の合意だということでありますから、基地だらけの沖繩にとってまさにショッキングな出来事だったということも間違いありません。私はこの中で特に感じますのは、いわゆる安保条約の事前協議制、この問題をいまこそ再検討しなければ将来大変なことになるという点であります。  二月二十二日のブラウン国防長官の米議会証言、朝鮮半島の有事の際には在日米軍を緊急出動をさせる方針をそこで述べているわけでありますが、あの証言の内容について具体的な速記録のようなものを政府は入手していますか。
  60. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 お尋ねのブラウン国防長官の証言でございますが、これは御指摘のように二月二十二日にアメリカの下院の国際関係委員会の公聴会で行われたものでございます。この証言につきましては、公式の議事録というものがまだできておりませんで、大分時間がかかる、こういうことだそうでございます。でき上がりますれば、当然に取り寄せて調べたいと思っております。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 当面私どもは、非公式な議事録というもので、これはそこにいた人間がその証言をとったというような記録は持ち合わせております。
  61. 安井吉典

    ○安井委員 手に入りましたら、私どもの方にも見せていただきたい。
  62. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 入手次第お届けいたしたいと思います。
  63. 安井吉典

    ○安井委員 朝鮮半島の事態の発生と同時に、沖繩の海兵隊や在日の海軍、空軍部隊等が朝鮮半島に投入されるというような新聞の報道でありますが、これはどういう実際の表現があったのか知りませんけれども、投入というのは事前協議の対象になるのかならないのか、どうですか。
  64. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 ただいまのブラウン長官の証言でございますが、申し上げましたとおり、全く非公式な、私どもの掌握しておりますところの議事録によりますれば、まず、ブラウン長官はこういうことを言っております。冒頭に、状況によりその具体的内容が決まってくると思うが、次のような例を挙げることができようということで、朝鮮半島の近隣地域からの米軍の対応の情勢をいろいろと述べておりまして、その最後に、米国は状況により、また米国の決定に応じて、地上兵力すなわち沖繩にある海兵師団及び旅団を二、三日以内に移動することができるだろう云々ということを述べております。この点は、私どもの把握しております非公式な議事録によりますれば、英語では、ウィークッドムーブグラウンドフォーシズ、地上部隊をムーブすることができるだろうということを言っております。この発言から推測いたします限りは、別に、ブラウン長官が沖繩の海兵師団をいわゆる戦闘作戦行動に発展させるというような意味で用いていたとは必ずしも考えられない、要するに朝鮮半島地域に部隊をムーブすることができる態勢にあるということを述べただけでございまして、そこから推測いたしますところは、実際の問題といたしましては、従来からもお答え申し上げておりますように、戦闘作戦行動の発進基地としてわが施設、区域を使うということになれば当然に事前協議が必要になってまいりますし、そのような行動でなければこれは事前協議の対象にはならない、こういうことになるわけでございます。
  65. 安井吉典

    ○安井委員 これは金丸防衛庁長官が、きょうはいないのでありますけれども、今週のNHKの国会討論会の際に、移動も事前協議の対象になるという意味の発言があの中にあったと思います。一部の新聞にもそういう報道があるのですが、これはどういうふうに解釈すればいいのですか。
  66. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 金丸長官の発言につきましては、予算委員会におきましても、出動の場合に事前協議の場合もあるだろうというような御答弁をなされたことがございます。そのときに私が補足いたしまして、いわゆる事前協議の対象になる作戦行動といたしまして、航空部隊による爆撃あるいは空挺部隊の戦場への降下あるいは地上部隊の上陸作戦ということが前提になった場合の出動、これは事前協議の対象になりますということを御説明申し上げたことがございますが、大臣もNHKの討論会におきましては、そういうお気持ちで御発言になったというふうに聞いております。
  67. 安井吉典

    ○安井委員 そうすると、この大臣の発言の移動もという明確な言い方は誤りなんですか。
  68. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 私正確に記憶しておりませんけれども、出動というような議論のときに言われたというふうに記憶いたしております。それは、いま申し上げましたような三つのような場合を前提とした御発言であったというように聞いておるわけでございます。
  69. 安井吉典

    ○安井委員 これはもう少しそのときの発言を、ビデオがあると思いますからぴしっととらえてはっきりさせてください。  そこで、作戦行動か移動かという点でありますが、戦争状態にある地域に対して部隊が移動するということ、これはもうすべて戦闘行動につながるわけです。戦闘行動があるところに戦闘に何にも関係のない部隊が行くなんということは考えられないわけですから、戦闘行動に直接つながるということは間違いないわけですよ。特に沖繩駐とんの海兵隊のごときは、戦争が始まったらまず真っ先に飛び込んでいく実戦部隊であるわけです。その戦闘部隊が移動するというのをこれは戦闘行為でないんだ、移動なんだ、そう言いくるめるというぐらいべらぼうな話はないと私は思います。普通の場合じゃないのですよ。いま何にもないときに行くというならこれは別なんですけれども、有事の場合に海兵隊が行くということは、平穏な移動だというようなことを幾ら言われたって納得する人はないのではないかと私は思います。  そして移動か出撃かということで論争をし、その論争によって政府の方は事前協議のチェックから逃れようとする。そういう議論をするということは全くおかしいと私が思うのは、アメリカがどこかの国と交戦する、その交戦する相手国から見れば、こっちの方は国内で移動か出撃かと言って争っているけれども、向こうの方から見れば、相手方から見れば移動も出撃も同じなんですよ、自分の方に攻撃をするための行動でしかないわけなんですから。その出撃あるいは移動の基地である沖繩なら沖繩というのは、名前は移動になろうと出撃になろうと、向こうからすればそれをたたいて撃滅していくという作戦を持ち、そういう意思を持つのは当然じゃないですか。あくまで攻撃目標になるということは、移動も出撃も同じなんです。実際特に海兵隊の場合は。私はそんなことがわからないはずがないと思うのですが、もう一度お答えいただきたい。
  70. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 戦闘作戦行動というのは、一つの指揮系統の中に入って作戦するのが作戦行動でございます。したがいまして、海兵隊が移動していって在韓米軍司令官の指揮下に入って、それからの行動というのがまさに作戦行動でございまして、前方展開をやっておりますアメリカの部隊が一つの作戦を行うために一つの場所に集結するということは、直接の作戦行動というふうには考えられないと思うわけでございます。
  71. 安井吉典

    ○安井委員 そういうへ理屈は、それはいろいろ言うことができるかもしれませんけれども、一たん事が起きた場合は、相手方から見れば移動も出撃も同じなんですよ、そこを攻撃目標にするという気持ちは。向こう方はそうすると思います。移動か出撃かということが問題になるのは、日本の政府が事前協議の対象にするかしないかという、アメリカとの話し合いの中で起こるただそれだけの形式的な問題でしかないわけですね。ですから、私はこの際、日米安保条約の事前協議制は何のために設けられているのかという根本にわたっての疑問をもう一度提起してみなければならぬと思います。  私どもの聞く限りでは、日本に米軍が駐留する、そのことによって他国の紛争に巻き込まれるおそれがある、それを防ぐために事前協議という仕組みがあって、それにイエスと言うかノーと言うか、それは日本の判断いかんなんだ、こういうふうに説明されておりますが、事前協議制というのは私の解釈でよろしいのですか、園田外務大臣
  72. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 事前協議制度を設けました趣旨等のお尋ねでございますが、これは例の第六条の実施に関する交換公文に掲げられてありますような三つの事項につきましては、わが国の意向に反して米軍が一方的にそのような行動をとることがないようにするというのが基本的な趣旨でございます。
  73. 安井吉典

    ○安井委員 それはそういうように書かれているのですが、その趣旨というのは何なのか、日本を紛争に巻き込ませないためにそういう仕組みができたのじゃないですか、その意味合いなり趣旨なりを伺っているわけです。
  74. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先ほどから御論議がございます点は、たとえ戦闘作戦行動のためでなくても日本から特定の地域に米軍が移動していくということを相手方から見ればそれは敵対的な行為であって、したがってそれに対する報復を招くのではないかというのがポイントというふうに理解いたしておりますが、多少細かな問題になりますが、まず第一点として指摘させていただきたいのは、これは従来からもいろいろ議論のあるところでございますけれども、いずれにしろ米軍が国際法上許されないような勝手な行動に出るということはまず考えられない。米軍が出ていく、米軍が行う行動というものは、国連憲章上許容されるところの、基本的には自衛権の行使ということになるわけでございまして、その集団的自衛権を行使するために日本の施設、区域をたとえ使ったからといって、それに対して相手方がこれを侵略の基地だということで攻撃をしかけてくるとすれば、相手方自身がそもそも初めに行っておりました侵略行為のそれは拡大続行であるということが一点あるわけでございます。  そこで、まあそれはさておいても、わが国の施設、区域から米軍が出ていくというそのこと自身には、軍隊でございますから、当然に軍事的な意味合いがあるわけでございますが、いわゆる事前協議に関する限りは、そのような軍事的な行動のうち、いま防衛局長からもお話がありましたような戦闘作戦行動にしぼって、これを事前協議の対象にするということになっておるわけでございます。戦闘作戦行動というのは、いまもお話がありましたように、直接戦闘に従事することを目的とした行動でございまして、いわば俗に言えばぱちぱちというような行動を言っているわけでございまして、そのようなことがわが国の意向に反して勝手に米軍によってとられるということがあってはならないというのが事前協議の趣旨でありまして、それ以外の行動、すなわち米軍が所定の位置につくとか、移動していって特定の海外の別の基地で出撃に待機するというようなことまでも含めてこれを事前協議の対象にするものではないということが趣旨でございます。
  75. 安井吉典

    ○安井委員 ちょっといま議論をする時間がありませんので、私はここで問題提起だけをしておきたいと思うのですが、事前協議の戦闘作戦行動についての政府の統一見解は、これは沖繩国会のときの四十七年六月七日の沖繩・北方特別委員会で示されています。先ほど来おっしゃっているのはそれだと思います。この統一見解の中にも戦闘行動の典型的なものを二つ三つ挙げており、それから「このような典型的なもの以外の行動については、個々の行動の任務・態様の具体的内容を考慮して判断するよりほかない。」こうあります。それはそうでしょう。とてもここで挙げ切れないようないろいろなケースが出てくるということで、「個々の行動の任務・態様の具体的内容を考慮」、こう言うのですが、これの基準が明確でないものですから常に議論が起きる、私はそういうことではないかと思います。  そこで、現在の事前協議の基準というようなものをこの際にもう一度洗い直す必要があるのではないか。たとえば部隊は小さくともその質で判断をする、すぐ戦闘部隊という海兵隊のようなものとか、配置の問題でも、一個師団以上ということになっているけれども、航空母艦などの働きというものは、航空母艦一つの方が陸上の一個師団以上の働きがあるのではないか、もう少し一つ一つのケースについての判断の仕変えというのが必要になってきはしないか。あるいはまた、さっき私が指摘いたしましたように、戦闘地域に対する移動というのは、これは出撃と異ならないのじゃないですか、そういう移動という中身ももっともっと細かな判断をする必要があるのではないか。特に領海十二海里といういまの段階に来て、三海里のときに考えていたものと、十二海里になったのと、もう少し変わってきてもいいと思うのです。領空も領海も広がったわけですから。  そういうような場合や、あるいは有事駐留経由基地、補給基地等の場合もいろいろありますけれども、もう少ししぼりを考える必要があるのであり、いまの事前協議制というのは、日米安保条約始まって以来一つもないでしょう。外務大臣、そうでしょう。ただの一回もないのですよ、事前協議があったというのは。大きな戦争がなかったのかもしらぬけれども、ベトナムもあった、しかしただの一度も使われたことのない規定なわけです。そんなものを相変わらず、事前協議があるから戦争に巻き込まれやせぬよと政府は国民に説得したって、これは説得の値打ちは全くないものだと思います。ですから私は、実効の上がるような事前協議の運用基準というものをもう一度つくり直せということを提言したいわけであります。  そして、この防衛問題はとても短な時間では処理し切れないので、いままでも国会の中では予算委員会、外務委員会その他の場でいろいろ防衛問題が議論されているが、この内閣委員会が防衛の所管なんですよ。ところがこの国会の中では、この委員会には防衛庁関係の法案がないものですから議論の機会がない。私は、やはりかなりの時間をとって、適当な機会に、理事会等の御相談の上に防衛問題の集中審議の場を委員長、おつくりをいただきたい、こう思います。  前段は、事前協議についての基準についてもう一度考え直す気持ちがないかということを外務大臣に伺いたい。それから後段は、委員長の御決意を伺いたい。
  76. 園田直

    園田国務大臣 安保体制は、御承知のとおりに日米基軸となって、日本の安全そしてアジアの平和を守るためになされておるものであります。したがいまして、日本自体が脅かされるかあるいはアジアの平和が脅かされるか、そういう場合に発動されるものでありまして、それ以外は、逆に、アジアに紛争を起こす場合には日本は協力する必要はないわけであります。  いままで事前協議の例がないということは、事前協議をする必要がなかったということは幸いでありまして、こういうことがちょいちょいあっては困ると思います。事前協議についての両国間の連絡はさらに緊密にしたいと考えておりますが、現在の段階において、これを洗い直す、見直すということは考えておりません。
  77. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 安井委員に申し上げます。  ただいま安井君から御提案になりました案件につきましては、理事会に諮りまして、御趣旨の線に沿って進めてまいりたいと存じます。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時四分開議
  78. 始関伊平

    始関委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木原実君。
  79. 木原実

    木原委員 午前中の安井委員外務大臣とのやりとりを篤と拝聴いたしました。私どもとしましても当面の問題である日中平和友好条約の締約ということにつきましては、党を挙げてこの問題に取り組んでおるというような事情でございます。長いこと私どもも、中国と善隣友好の関係を結ぶということが、わが国を初めアジアの平和に大きな礎石を築くことである、なかんずく平和条約の締結については、大臣も申されたように、将来にわたって日本と中国との平和と発展のいわばレールを敷く仕事である、こういうふうに認識をいたしておるところでございます。私どもの党としましても、昨日、党首の飛鳥田委員長を含めまして首脳が訪中をしておる、こういう事情でございます。当然のことでございますけれども、野党としましてできるだけの道を広げたい、こういう気持ちで努力をいたしておるところでございます。さきには公明党の首脳の訪中ということもございました。これらのことにつきまして大臣の受けとめ方についてひとつ御見解を承っておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  80. 園田直

    園田国務大臣 当面の大きな問題である日中友好条約に絶えざる御激励と御支持をいただきまして厚く御礼を申し上げます。  なお、ただいま社会党からは委員長が団長となって訪中をしておられるわけでありまして、実は総理は、前段申し上げましたとおり各党、国民の支持と協力を得たいという念願から、飛鳥田委員長ともお話があればお会いしてという気持ちがあったわけですが、御承知のような都合で出発直前に会うことができませんでした。しかし、それ以前にしばしば会合で一緒になっておりますが、飛鳥田委員長の御意見も総理の御意見も、両方でこの問題について話をしておられたことを私は横で聞いておりました。なお電話等でも連絡をとられたはずでございます。私といたしましても、きのうの検討会の内容等をまだ申し上げることはできないのは、飛鳥田訪中団が帰られた後、御意見等も承って万遺漏なきを期したい、こういうことでおるわけでございまして、お帰りになってお話を聞いて、これを参考にしたいと考えておるわけでございます。
  81. 木原実

    木原委員 たまたま政府が交渉の再開を考えるような時期に私どもの党首が訪中をいたしておるわけでございますけれども、私どももせっかくの党首の訪中でございますから、これからの交渉につきましても何がしかの力になれるような成果があればと期待をいたしているところでございます。ひとつこの種の問題は、与野党が一致をして国民的な理解の上に立って推進されることが望ましいと考えておるところでございます。  そこで、いずれにいたしましても、国民的な課題でございますから、この交渉等をめぐりまして、国民の中にも交渉当事者の一挙手一投足について関心があり、注目されているのは当然であると思います。おおむねの腹づもりとしましては、総理が五月に訪米をされるという日程があると聞いておりますけれども、その前には何らかの形で妥結ができる、こういう期待を持ってよろしゅうございますか。
  82. 園田直

    園田国務大臣 日中平和友好条約は、御承知のとおりにアジアの平和そして世界の平和の基礎になるものであると考えておるわけでありますから、一番大きな問題であるし、総理訪米までに見通しがつくとまことにいいことだと思って、そういうことを目標にしながらやっておるわけでございますので、それ以上は御推察をお願いしたいと思います。
  83. 木原実

    木原委員 交渉が成功してほしいという気持ちが強いものですから、直接交渉にかかわるような問題については、私の方からも立ち入ることは避けたいと思います。ただ、このような段階になりましても、御存じのとおり、平和条約の締結につきましてなお慎重論を唱えられる向きがあるわけでございます。私どもとしましては、共同声明を基礎にして積み重ねられてまいりました交渉の上に立って、速やかに妥結に向かうべきときが来ているのだと考えているわけでありますけれども、慎重論を唱えられる向きがあります。ある新聞の世論調査によりますと、国民の中でも、それぞれ慎重に対処すべし、こういう意見を持たれる方々がやはり半数近くいらっしゃる。速やかに締結に向かうべしという意見と慎重を期すべしという意見とが相半ばするような数字が出ているようにも見受けるわけでございます。そうしますと、これは考えようによりますと、国民の強い関心の中で、なおそういう慎重論があるということは、容易ならぬことではないかと考えるわけでございます。当然、この種のことでございますから、国民の理解と、それから何よりも支持の上に立って、将来にわたって一点の疑念も残さないということが大きな前提にならなければならないのだと思うのです。  そこでお伺いするわけでございますけれども、さまざまにある慎重論につきまして、外務大臣として、これらの疑念やあるいは疑問に対しまして、これから先どのように理解を求め、あるいは説得をなさるのか、腹づもりをひとつお聞かせ願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  84. 園田直

    園田国務大臣 慎重にやれとおっしゃる方々の御意見の中にも、いろいろ分かれておるような気がいたします。一つには、今日行われておる中ソの紛争の中に巻き込まれるのではないか、そしてソ連から報復手段を受けるのではないかという慎重論。それからもう一つは、政治形態の違う共産主義の国と日本がなぜあわてて条約を結ばなければならぬかという、大分かたい方の御意見でございます。もう一つは、日本国民が何となしに思っているのは、どうもソ連と中国は違うと思うのだが、中国も本当に日本と仲よくしてやっていこうと思っているのかという何となしの不安、こういう三つだと思います。したがいまして、各方面にそれぞれ説明をし、御理解を願わなければなりませんけれども、要は、今度の再開になった後の交渉、それから結論、これによって、真に日本も中国も両国の平和を願い、アジアの平和を願っておるのだということが明瞭になること、そしてもう一つは、ソ連を敵にした両国間の同盟条約みたいなものではないということを明瞭にすることによって、こういう方々の御理解を願いたいと思うわけであります。  なおまた、共産主義国と日本の国との、政治形態の違う国の交際はもう近ごろの常識でありまして、日本はどこの国とも、共産主義の東欧諸国とも交際を結んでおるわけでございます。隣国の中国とだけ条約がないわけでありまして、この条約もいま改めてやろうというわけではなくて、共同声明で言い交わした仮証文を本証文にするということでございます。そしてまた、政治形態の違う日本と中国が提携することによって、真に戦争のない平和共存の社会ができるということにわれわれは一歩前進しておるのだ、こういうことを十分御理解願うように努力をし、この交渉及び結末については、国民の方がなるほどそうかと納得されるようなことをやりたいという決意を固めておるわけでございます。
  85. 木原実

    木原委員 それらの点が問題点だと思いますが、午前中も論議がございましたように、また焦点でもございますたとえば覇権という問題の解釈につきまして、やはり否定的な見解がある。中国の見解ですと、覇権というのは一般的な用語であるよりもすでに政治的な用語になっている。しかしわが国の方は、覇権というのは一般的な用語として解釈をしてきた。それを一つの条約の中に入れるわけですから、どうしてもそこにはロジックに反するところや無理なところがある、こういうわけなんで、そこが恐らく御苦心の存するところだと思うのです。まあ聞き方は粗雑ですけれども、本当にロジックに合い、相互に理解のできる成文が、これは仕上がらなければ条約にならないわけなんですが、両論併記のような形になるおそれはないのですか。
  86. 園田直

    園田国務大臣 両論併記のようなかっこうでは、国民の方も納得されないし、それから中国の国民も納得されないし、その他の世界の国々も納得されないと思います。しかし、両国とも平和を願い、そしてお互いに内政外政、お互いの国の独立国家としての主権は拘束しないということでありますから、条約の内容をどのように持っていくかということは今後の問題でありますけれども、十分誠意を持って話し合えば必ず結論は出る、私はこう考えておるところでございます。
  87. 木原実

    木原委員 中身には立ち入るつもりはございませんけれども、国民の心配の中にあるのは、よく伝えられておりますように、それからソビエトの方からも反撃といいますか反発があるように、反ソ同盟的な性格を持つのではないのか、こういう点に尽きるのだと思います。国民の安心を願うためにも、やはり関連をして残る問題は、これからのソビエトに対するわが国の対処の仕方といいましょうか、外交政策に返ってくるのではないか、こういう感じがするわけです。しかも、私ども見るところでは、対ソ外交関係というのは、現状におきましては、北方領土の問題、これはかみ合っておりません。あるいは漁業交渉もきわめてシビアになっている。あるいはまた、最近は何か軍事的にも緊張したような側面が出てきている。シベリア開発等につきましてもはかばかしい協力の進展が見られない。幾つかの点を挙げてみただけでも、対ソ連外交というのは閉塞状態にあるような感じがするわけですね。その上に、今度中国との関係は友好条約が成立をする、こういう形になってきますと、どうもいままでの流れでまいりますと、好むと好まざるとにかかわらず、対ソ関係はもっと冷たいものになっていくのではなかろうか、この心配が残ると思うのです。  そうなりますと、外務大臣おっしゃられたように、日中は日中、日ソは日ソだ、こうわが国の立場で割り切りましても、そういう関係が残りますから、残る問題というのは、これからの対ソ外交をどういう形で親善友好の路線に乗せていくか、こういうことに帰すると思うのです。いわば日中以後の日ソに対する外交の展開について所信を承っておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  88. 園田直

    園田国務大臣 まさに御発言のとおりでございまして、きわめて大事なところであり、日本の国民すべての人々が、いまの御発言と同様の心配をいたしておるところであると考えております。中ソが御承知のような状況でございますから、日本と中国が条約を結ぶことは好ましいと思うはずはございません。しかし、締結した以後、これがきわめて大事でありまして、その以後、本条約が、同盟をしてソ連に共同敵対行動をとるものではないということが明確になり、そして理解を求め、日本とソ連の間には領土の問題は意見が対立しておりますが、それ以外の問題はお互いに相助け相補うという利害関係はあるわけでありますから、日中以後、われわれは心してソ連に対する友好の関係推進していかなければならぬと考えております。
  89. 木原実

    木原委員 対ソ関係につきましては大臣のおっしゃられる心構えはわかるわけですけれども、先ほども申し上げましたように多くの点で閉塞状態にあります。何らかの形でこれを打開していくという努力が残っているわけですね。私どもがまた心配いたしますのは、日中との条約ができることによって、午前中も報復という言葉が出ましたけれども、そういう圧力がかかってくるとなると、現状でも閉塞状態にあるわけですけれども、それをこじあける努力というのは容易ならぬものがあると思うのですね。これからの対ソ外交を展開をする上で何か新しい足がかりになるようなものはお考えになっていらっしゃるのですか、どうですか。
  90. 園田直

    園田国務大臣 ソ連に対する友好関係に全力を挙げることは御発言のとおりでありまして、そのためには何をやるか、これはこの前モスクワに参りましたときにもお互いに意見を交換しているわけでございまして、いろいろの問題があるわけでございます。そういう問題を逐次解決しながら善隣関係を深めていきたいと考えております。
  91. 木原実

    木原委員 日中友好条約の締結によっていままでいろいろなことが伝えられておりますけれども、ソ連側の反発があると判断をなさっていらっしゃるのですか、そういうことはないだろうというふうにお考えになっていらっしゃるのですか、いかがでしょう。
  92. 園田直

    園田国務大臣 相手のことでありますから、私がとやかく言うべき問題ではありませんけれども、今度結ばれる友好条約がソ連に対する敵対行動を意味するものではないということがわかれば、世間の人がごもっともな条約だということになれば、その世間の常識を押し切ってソ連が報復手段であるとか、その他に出てくるようなことはあり得るはずがないと考えております。
  93. 木原実

    木原委員 もう少し遠回しのことを聞きたいと思うのですけれども、将来にわたって近隣諸国との安定した平和の体制をつくっていかなければならぬという使命があるわけです。中国とソ連との不幸な対立があるのですけれども、短期的もしくは長期的に見まして、中ソの関係は和解の可能性があるのか、もっと長く冷たい対立の状態が続いていくと判断をなさっているのか、これは外交当局の情勢判断のようなものをお聞かせ願えたらと思うのですが、いかがでしょう。
  94. 園田直

    園田国務大臣 予測し得る近い未来において中ソ関係が変わるとはただいまのところ考えられません。しかし、ソ連の方は、私が行ったときにも日本が中国と条約を結んでこの紛争に巻き込まれるということは言いますが、直接言葉を出して中国を非難することは言いませんでした。そしてまた、新聞の伝えるところによると中国にはソ連から国交正常化を申し入れたなどということもありますので、遠き将来では緊張よりも緩和の方に向かっていくであろうとは思いますが、予測し得る近き将来においてこれが変化があるとは考えておりません。
  95. 木原実

    木原委員 残念ながらわれわれは引っ越しをするわけにはいかないので、この対立関係というのは好むと好まざるとにかかわらず影響を受ける地理的地位にあるということを考えますと、私どもとしましても非常に関心のあるところでございます。しかも、その中の一方と条約が締結をされる、他方ではなお岩のようにかたくドアが閉ざされている、こういう状態なものですから、その辺に国民の不安も存すると思います。  そこで、もう少しそれらのことについてお伺いをしておきたいわけですけれども、新しい対ソ外交を展開するに当たって、従来何か善隣協力条約といったものが発表されたり、北方領土の問題等についても御承知のようなやりとりがございました。これは新しい手がかりを求めるために全部いままで問題を拒否してきた。つまり、北方領土の問題についても、これはいろいろな変遷がありましたけれども、現状はどうにもならないような意見の対立があるままに推移をしている。それからソ連側から出してくるものにつきましてもかなり一方的なものもある、これらを拒否しているわけなんですが、しかしその間に、大臣が先ほど申されたことをもう少し具体的にお伺いしたいのですけれども、何かこちらからアプローチをして取りかかっていくという問題は持ち合わせていないのでございますか。
  96. 園田直

    園田国務大臣 ソ連が発表いたしました善隣協力条約については、平和条約を解決しない間はわれわれはこれを受け付けないという方針は一貫をいたしております。しかしその他の問題で、話し合う問題は幾らでもございますし、またソ連の方も日本に望む問題等も内々ありますので、そういう問題を逐次解決していって相互理解をだんだん深めていきたい、こう思っております。
  97. 木原実

    木原委員 つまり領土問題が一向進展をしないという状態がありまして、それで入り口が閉ざされていまして、ほかのものがそのためにほとんど進行をしないといったような形になりますと、こじあけようにもこじあける問題も出てこないという形になるわけですね。私どもはそういうことも含めまして、特に日中後の対ソ関係を重視した場合に、やはりこちらの考え方や言葉の上でのアプローチではなくて、具体的なことやものによって対ソ交渉を始めるべきではないのか、こういうふうに考えるわけです。何かこれからものを考えていきたい、あるいはものがあるということでございますけれども、いずれにいたしましても対ソ外交につきまして、日中に伴う問題であることは間違いないと思うのです。それらのことについて一定の展望が立てば、国民の中でも、当初申し上げたような不安感といいましょうか、この日中問題についての理解がもっと進展するのではないか、こんなふうに考えるからお聞きをしたわけです。  それからなお疑念を持たれる方々の中に、これは新聞でも与党の方々の中にそういう意見があるというふうに伝えられておりましたけれども、尖閣列島の帰趨の問題が取り上げられているやに聞いております。尖閣列島の問題については、この条約の交渉の中で双方において触れない、こういう確認でございますか、自然に触れていないということで対処をされているわけですか。
  98. 中江要介

    ○中江政府委員 尖閣諸島は、先生も御承知のとおり日本の固有の領土でございますし、いずれの国を相手といたしましてでも本件を取り上げるべき性格のものではないというのが日本政府の基本的な態度でございまして、これには変更はございません。  他方、日中のいまの平和友好条約の交渉の過程におきましてこの尖閣諸島の問題が言及されたこともあるかということは、全然ございません。また、そういうこととは全く関係のない、日中間の将来を展望した条約のための交渉が行われている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  99. 木原実

    木原委員 尖閣列島の問題につきましては、日本はかねてから、固有の領土である、こう主張いたしておりますが、沖繩返還の当時に中国の方で占有権があるんだという意味の意思表示があったわけですか、どうでしょう。
  100. 中江要介

    ○中江政府委員 沖繩返還のときではなくて、一九六八年にエカフェ、いまはESCAPという名前になっておりますが、国連のエカフェがあの水域の埋蔵天然資源の調査をいたしまして、あの近辺に石油資源がありそうだという報告が出ましてから、最初に台湾が、あの島は自分のものだということを言い出しまして、続いて北京政府の方でもそういうことを言ったことがございます。これは国交正常化前の一九七〇年ごろの話でございまして、沖繩返還との関連で本件が出ましたというのは、つまり沖繩返還といいますか、サンフランシスコ条約であの地域にアメリカが施政権を行使しておりましたそのアメリカの施政権下に尖閣諸島は置かれていたので、沖繩返還によって返ってくるときに当然のことながらアメリカの施政権が、尖閣諸島に関する部分も日本に返ってきた、そういう経緯として御説明したことはございますけれども、沖繩返還に伴って何か問題があったかと言うとそれは全く問題がなかった、こういうことでございます。
  101. 木原実

    木原委員 そうしますと、尖閣列島の問題は具体的な外交交渉の日程に上ったことはこれまでもない、わが方としてはそういう事情できちんとした領有権があるのだ、したがって今度の条約交渉の中でもこの問題に当方から触れる必要は少しもない、こういうことですね。したがって、中国の方からはそれには触れていないという一つの事実関係が生まれているというふうに解釈してよろしいですね。
  102. 中江要介

    ○中江政府委員 そのとおりでございます。
  103. 木原実

    木原委員 国民の慎重に対処せよという議論の中には、大臣もおっしゃったように、ほかにも幾つかの議論があるわけですけれども、やはり領土の問題にかかわることであるとか、あるいはまたいまの情勢の中でソ連との関係といったようなことが私どもとしては大きな疑念として残っているのではなかろうか、こういうことでお尋ねをしたわけでございます。いずれにいたしましても、日中関係につきましてはようやく交渉の機が熟して、外務大臣の御努力を中心にして私たちとしても成功を期待いたしたいと思います。  そこで、もう少しそれ以外のことをお伺いしておきたいわけですけれども、総理が五月に訪米される日程が決まったというお話を聞きまして久しいわけですが、総理がアメリカを訪問されて、アメリカの大統領と会談をされる会談の主要なテーマはどういうことを想定されているのでございますか。
  104. 園田直

    園田国務大臣 首脳者会談における議題については、ただいま両国間で外交ルートを通じて打ち合わせている最中でございますけれども、大体、総理が先般答弁されたように、アジア情勢、世界情勢そしてその中における経済的な第一の地位にあるアメリカ、自由側の第二位なる日本、こういうものの責任あるいは両国間の問題こういうことが議題になるであろうと見当をつけて、向こうと折衝しているところでございます。
  105. 木原実

    木原委員 私どもとしましても、両国の首脳が会談をされること自体はいいことだと思いますけれども、どうもこの時期に参りまして何を話し合いされるのか、経済問題などが恐らく中心になりはしないかと思いましても、それらの問題についてもこちら側から何か積極的に提案するものがあるのだろうか、一体何を話をしに行って、何がテーマでどういうことになるのだろうか、総理のこの時期での訪問につきましてはどうも少し合点がいかないような感じがいたします。お出かけになるわけですから、それだけの問題を携え、それから詰めるべき話があることは間違いありませんけれども、この中でこの首脳会談を基本的に性格づけるものは何か、こういう理解が私どもにはなかなかできないわけです。おっしゃいましたように、一般的なアジア情勢の変化に伴う問題や国際的な諸問題やそれから当面の経済問題、こういうことがテーマとしては考えられるわけでありますけれども、経済問題を除いてはさしたる大きな問題もないのではないかというふうに考えているのですが、しぼられていきますと、つまり性格づけをいたしますと、五月の首脳会談は何を中心にした話になるか、お心構えをお伺いをしておきたいと思いますが、いかがですか。
  106. 園田直

    園田国務大臣 一番大きな問題は、米国と日本の立場から見た世界経済をどうやるか、御承知のとおりにその後に先進首脳者会議があるわけでございますから、やはり通貨問題、貿易問題、それから発展途上国問題、自由貿易、こういうことが主な議題になると考えております。
  107. 木原実

    木原委員 私どもが心配いたしますのは、従来経済問題をめぐりましても、アメリカと日本の関係の中でどうもアメリカのペースが強過ぎる。ですから、下手にまいりますと、せめてドル防衛をアメリカにお願いするような会談になったのではどうも身もふたもないのではないかという感じがするわけです。日本もこれだけ苦心をして国内経済の浮揚策をやっておるわけですから、せめてそれならばアメリカに対しましてもきちっとした提案をし、言うべきことを言う、そういうテーマが世論の中からも出てくるような背景でないと、この首脳会談は何か定期便みたいな感じがするわけです。その辺は恐らく外務大臣の御所管のほかに政府の中においても検討なさっていると思いますけれども、やはりもっと積極的な提案を持って訪米をされるという、そういうお考え方はどうでしょうか。
  108. 園田直

    園田国務大臣 いろいろな問題で率直に話し合い、積極的に話し合うことは御発言のとおりでございまして、ただいまの発言も重要な参考としてそういう方向で議題を詰めていきたいと考えます。
  109. 木原実

    木原委員 その時期までに日中条約についてのめどがついておれば、当然日中関係の条約の締結その他の問題についても話し合いのテーマになると考えてよろしゅうございますか。
  110. 園田直

    園田国務大臣 それは話題になるのが当然の儀礼であると考えております。
  111. 木原実

    木原委員 もうこの辺でこれらの問題については終わりたいと思いますが、冒頭申し上げましたように、日中条約の問題は、私どもとしてはかなり大詰めの段階に来ている、この時期がしかも一番重要な時期である、こんなふうに考えております。そして首脳会談の中で日中条約の問題が話題になるようにそれまでにきちっとしためどがつくことを期待したいと思います。そんなようなことでこれから先も外務大臣の御努力を期待いたしたいと思います。  そこで一般的な質問はこの程度にいたしまして、本題の法案に触れての問題を少しばかり申し上げたいと思います。  午前中の理事会で附帯決議をつける、こういうことの御決定をいただいたと承っておるところです。いずれも在外公館勤務する公務員の処遇やそれにかかわる問題について外務省としてもっと努力をすべきではないか、こういう趣旨になっておるわけです。百数十ヵ国の各地に多数の外交官の皆さんが勤務をしておるわけですから、処遇その他についてもなかなか一律にはいかない面も確かにあると思うのです。しかし、いずれにいたしましても、大変に国際化の進んだ中で外国に勤務をされておる人たちの御苦労は、恐らく十年前とは著しく様子が変わってきておるように見受けるわけです。したがいまして、幾つかの点について処遇を改めていく時期に来ているのではないか、こんなふうに考えておるところです。委員会としまして附帯決議はそういう方向で作成されておるというふうに私もいま拝見をしたわけです。  ただ、その中で一つだけ強調をしておきたいことがあるわけですけれども、外国に勤務をする人たちが大変に住宅問題に困窮をしておるという事情があるわけです。先進国を含めまして、どこの国も首都には人口が急増をするという事情がありまして、聞いてみますというと、任地に赴任をしましても住宅にありつけるまでに数ヵ月を要する。任地について非常に忙しい初めの時期を、仕事の面と住宅探しに追われているというような事情がある。したがって家族を呼び寄せるまでにもかなり時間があるといったような話を至るところで聞くわけです。せめてそれらの問題について何らかの解決の道を図りたい、私どももこんなふうに考えておるところです。  そこで、一つだけお伺いをいたしておきたいのですけれども、外務省として、現在は住宅手当ということで対処をしておるわけですけれども、これらの住宅事情にかんがみて。何かいままで改善措置を考えられたことがあるのでしょうか。
  112. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、在外職員の住居に関しましては、外貨建てで支払いますところの住居手当をもって支弁するというのをたてまえとしております。御指摘のとおり、地域によりましては借りるにも借りる家がない、あるいは非常に高いという困難な事情があるところもございまして、このような住居事情の悪い地域につきましては、昭和四十八年度以来、逐次簡易宿舎の国有化、購入を進めてまいっておりまして、本年度末、現在までに百六十四戸を取得している次第でございます。
  113. 木原実

    木原委員 私は、委員長に少し御相談があるわけですけれども、附帯決議が出まして、私どもも喜んで賛成をする立場ですが、この附帯決議の中にも、外国で勤務をする公務員の住宅や宿舎の問題について改善を図れ、こういう趣旨の決議案文になっておるように拝見をしたわけです。私どもの見るところでは、外国に土地を求め、建物を求めるということは、必要であって、なかなか困難だ、こういう感じがするわけです。ただいまも答弁がありましたように、ある程度のものは取得をいたしておるわけですけれども、大使の公邸の整備もまだ十分いっていない。一般の公務員の人たちは、非常に苦しい住宅事情の中で、とても住宅手当の枠の中では恐らく適当な住居に住めないというような事情で、困惑をしておるというような事情があります。こういう事情を踏まえまして、私どもとしては、この際、もしこの附帯決議が可決をされれば、その線に沿って、思い切って外国に国有財産を取得をする、必要な土地や建物の構築もしくは建造物をつくる、それらを公務員の宿舎に充てるといったようなことも含めまして、何らかの有効な措置を講ずるときに来ているのではないか、こういう感じがするわけです。  率直に申し上げまして、こういうきれいなことを言いましても、外務省のいまの大蔵省との折衝能力からしますと、とてものことには、われわれがこういう決議をつけましてもありがた迷惑ではないかという感じがするわけです。恐らく、実力者の園田さんが外務大臣ですから、いや決議をしてくれたらやるだけのことはやるよとおっしゃるかもしれませんけれども、どうも長年の外務省大蔵省との折衝能力から見ますというと、なかなか思い切ったことはできない。まあ、他省とのバランスという問題もあるかもしれません。  しかし、私は考えますのに、ある地域には、もう住宅問題はきわめて緊急に差し迫ったようなところがあります。そればかりか、ちょうどうまいぐあいに――うまいぐあいにと言っては悪いのですが、外貨減らしに政府も大変に苦慮しておるという事情もこれあるわけですね。ですから、こういう機会に、われわれの委員会の問題として、つまり外務省の枠を超えまして、議会の意思として、必要なところには国有財産を取得をして、ふさわしい設備をつくれ、こういうことでこの決議案の趣旨に沿って対処をしていく、必要に応じて、この委員会関係の省庁の人たちの意見も参考として聞いて、私ども自身がその方向に沿って政府に当たってみる、こういうようなことが協議のできる委員会の場をおつくり願えないだろうかというのが私の相談なんですが、委員長、いかがでしょうか。
  114. 始関伊平

    始関委員長 これから附帯決議が出されて可決されると思いますが、その中に在外公館勤務する外務公務員給与その他処遇の問題がかなり大きなウエートを占めております。しかも、いまお話しのとおり、住宅、宿舎の問題がいま緊急だし、また、非常に重要だということは御指摘のとおりだと思います。これは政府に対する要望でございますから、外務大臣外務省が全力を尽くしておやりになると思いますが、当委員会といたしましても、限界はあるかもしれませんが、実際上こういう問題を推進するについて努力する余地はあると思いますので、具体的な方法は理事会等で御相談することといたしまして、木原委員の熱意が実を結ぶようにひとつ努力してまいりたい、かように存じております。
  115. 木原実

    木原委員 これはぜひひとつ委員長のそれこそ御決断で、当委員会の課題として取り組むようにお願いをいたしたいと思います。  外務省を軽視して、それを飛び越えるわけでは決してございませんけれども、率直に言いまして、実情がわかってまいりますと、なかなか思い切ったことができません。私がこういうことを申し上げますのは、多少私どもが外国を歩いてみまして、あちこちでたたかれるほど日本の国際化が進んでいるということなんですね。日本は大変勤勉な外交官をたくさん持っているわけですけれども、しかしそれにしては、その処遇やその活動する条件というのはやはり大変日本人的でして、大いに刻苦勉励の風習が残っていると思うのです。やはりいまの日本の国情にふさわしい処遇を与えて、少なくとも外交官は一国を代表して任地についているわけですから、それにふさわしい処遇を与え、あるいは環境をつくって差し上げるというのは、これは議会としての一つの仕事であろう、こういうふうに私は考えるわけですから、先ほどのことはひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。  あわせて、これは外務省にもう少しお伺いをしておきたいわけですけれども、給与その他のことにつきましては、一つのルールがあるわけですね。これは給与だけの問題でないわけですけれども、国によってはかなり条件が違うわけです。ある国では、同じ処遇でもかなりゆとりをもって活動することができる、しかし、ある国では、とてものことにはたまらないというような国もあるわけです。それらの格差のあると言いましょうか、それぞれ事情の違う任地、その実情に即して、もう少し処遇その他について対応するといういわば機動性みたいなものは考えられないのですか、どうですか。
  116. 山崎敏夫

    山崎政府委員 木原委員仰せのとおり、各在勤地におきます勤務条件あるいは住宅環境が千差万別でございます。したがいまして、一律の給与ではそれぞれの外交活動にふさわしい環境が確保できないということは事実でございます。したがいましてわれわれといたしましても、法律におきましてできるだけ弾力的に対処するように規定を設けてございます。まず在勤基本手当につきましてはある基準額を定めまして、その上下二五%以内は政令で変えられるようになっております。また住居手当も金額は明示いたしませんで、そのときどきの、またその土地土地の状況に応じて政令で改正できるようになっておるわけでございます。ただ、それを毎年何回もやるわけにはまいりませんで、一年に一回か、極端な場合には一部については一回以上やることもございますけれども、大体状況を見ながら一年一回程度の改定を行っておる次第でございます。
  117. 木原実

    木原委員 外務省公務員の皆さんはそういうことについて余り不平がましいことを言ったり、労働組合も恐らく弱いのだろうと思うのですけれども、声は出されないわけなんですが、私どもがたまたま訪れた場合、特に私ども内閣の委員をやっておりますと、これは恐らく大臣がおいでになった機会にはなかなかそういうことはお耳に達しないと思うのですが、率直に陳情という形でお話を承ることもあり、それからまた私ども気になるものですから実情を聞いてみますと、かなり刻苦勉励型が多いわけですね。これが普通の勤務ならいいわけですけれども、外交活動をやっているわけですから、実情を聞けば聞くほど何とかしなくちゃならない、あるいはほかの国とのつり合い、バランスのことも考えますと、処遇の問題を含めて、勤務地の環境づくりには、私は先ほどお聞きのようなことを申し上げましたけれども、外務省としてももっと努力する必要があるのではないかと思うわけです。  私、ちょっと聞き漏らしたのですが、大使公邸で、国有財産として取得しているところはどれぐらいあるわけですか。
  118. 山崎敏夫

    山崎政府委員 公邸として取得しておりますのは大ざっぱに申しまして半分でございます。世界じゅうにあります大使及び総領事等の公邸の約半分は国有財産になっております。
  119. 木原実

    木原委員 公邸にしてもしかりで、さらに公使のクラスの人たち、それから一等書記官ぐらいまでの方たち事情を聞いてみましても、外国人の慣例に従って家庭に招いてちょっとした交際をするということにも支障を来す場合が間々ある、それは仕事のうちだとわれわれは理解をするわけですけれども、それが思うようにいかないから、それに必要なだけの住宅に住むとなると条件がうんと違ってくる。具体的な例を私ども幾つか聞いてきましたけれども、十五万円の住宅手当を受けておる公使の人で、どうしても二十四、五万の支払いをする住宅に住まなければそういう活動に支障を来すというような状態ですね。これでは余りにも自己負担が多過ぎる、こういう感じがするわけです。せめて必要な官舎といいましょうか、そういうものをとりあえず整備をしていくということのお考えはできないわけですか。
  120. 山崎敏夫

    山崎政府委員 われわれといたしましては、まず館長の公邸の整備を優先課題として取り組んでおるわけでございますが、もちろん外交活動は館長だけではなく館員もすべてやる必要があるわけでございます。それで、その外交活動の場にふさわしい住居に各館員が入れるように、住居手当実情に応じて随時改定してまいっておるわけでございます。しかしながら、仮に住居手当が適当なレベルになっておりましても、実際にそういう住居はない、買わなければないということもありまして、そういうものにつきましては、次席の館員住居を国有化して館員宿舎にするという手段も講じております。これはまだ十分ではございませんが、特に重要な公館については、そういう次席の館員の宿舎の国有化も逐次進めてまいっております。さらに、状況によりましては、買うものはなかなかすぐにはないけれども借りることは可能なところもございますので、そういう場合には次席館員に対する宿舎の借り上げということも一部実施しております。こういう制度を今後逐次強化してまいりたいと考えております。
  121. 木原実

    木原委員 あわせまして、国によりましては大変治安の状況の悪い地域が御承知のようにございますね。いろいろな誘拐事件その他が先進国の中でも相次いで起こっておるような事情がございます。また、外国の外交官の人たちがそういう憂き目に遭うというような事例もございましたし、現にわが国でも先般東南アジアの方での事故がございました。この在外公館勤務をする人たちの治安上の対策といいましょうか警備といったようなことにつきまして、あるいは安全を確保するといったようなことにつきましては、外務省としては何らかの措置をおとりになっていらっしゃるのですかどうですか。
  122. 松田慶文

    ○松田説明員 お答え申し上げます。  在外公館の警備、なかんずく事務所及び公邸の警備につきましては、従来年間およそ六千万円の予算をちょうだいいたしまして、警報装置をつけるとかガードマンを雇うとか事宜に応じまして所要の措置をとらせていただいております。  ところが、昨年の秋以来、主として日本赤軍の海外における活動を中心といたしまして、わが国在外公館に対する危険度が著しく高まりましたことに伴いまして、五十二年度におきましては約四億円の予算流用をもちまして抜本的な対策を講じた次第であります。なお、五十三年度予算におきましても約二億五千万の予算をちょうだいいたしまして、引き続き在外公館、事務所、公邸及び館員の保護、安全のために所要の措置をとることとしております。
  123. 木原実

    木原委員 そのちょうど去年の秋、幾つかの国を回ってみたのですが、治安対策としてはまことにお粗末きわまるものですね。何がしかの予算を流用して警備態勢の方は強化に努めたとおっしゃるわけですけれども、たとえばロンドンの大使館へ参りますと、古ぼけたビルの中におりまして、どうにもならぬわけですね。領事部はどうしてもあけておかなくちゃならない。片っ方の正門の方は鉄のとびらか何かをつくっておりましたけれども、これはその気になれば素人のどろぼうだって入れるような古いビルの中でやっているわけです。警備のしようがないと嘆いておりましたですね。パリでも同じことを聞きました。なるほどわれわれから見ましても、これはもう既存の建物の古いビルといいましょうか、どうにもならない、その気になればどうにでもなるというようなところで大使館の仕事をしておるという状態があるわけですね。ですから、恐らく対策の立てようがないというようなこと心あるのではないかと思うのです。しかし、これらのことを含めまして、私は従来の、こう言ってはあれですけれども、外国に公館が開かれましてすでに二十年は超えたわけですけれども、当初スタートしたときの状態の上に継ぎ足し継ぎ足しして事務所が開かれている、大使館が開かれている、公使館が開かれているという状態のところが多過ぎるのではないかと思うのですね。ですから、さかのぼっていきますと、たとえば治安上の問題、警備態勢の面からいきましても、私はやはりこの面についても、抜本的というお言葉がございましたけれども、必ずしも抜本的になっていないと思うのです。木のドアを鉄のドアにかえるかガードマンをふやすか、こういう程度のことですから、これらの問題についてもやはり現状にふさわしい改善措置をそれこそ抜本的に講ずる必要があるのではないかと思うのです。  委員長、決議案の中にも「在外公館の査察を一層強化すること。」という案文が一つ出ておりますけれども、これは少なくともやはり幾つかの典型的なところにつきましてはかなり厳しい査察をしてみて、それぞれの国の現状、それからまた日本の現状というようなことに照らして相当思い切った措置を講じていく時期に来ているのではないかと私は思うのです。先ほども申し上げましたように、わが国の国際化というものが急速に進んでまいっておりますから、それだけに大使館、公使館等の状態というのはある意味ではそれに取り残されておくれているという感じがいたします。ですから、これはまた別の機会に、委員会の中でフリーにひとつ御討議をお願いすると同時に、外務当局の御見解もこの際ひとつ承っておきたいのですが、いかがでしょう。
  124. 山崎敏夫

    山崎政府委員 在外公館の警備についてまだ万全ではないという御指摘は、私たちも率直に認めるものでございます。ただ、先ほど在外公館課長説明いたしましたように、財政当局の理解を得まして相当の金をつけていただいて、いま警備の強化に取り組んでおるわけでございます。ただ、各地の状況は千差万別でございまして、ことに借家の場合、余り人の家を自由にいじくり回すわけにもいかないという問題もございまして、限界もございます。この点は、国有化された財産については自由にやれますので、その意味でも国有化は進めたいと思っておるわけでございます。警備強化のための予算は今後ともわれわれとしては重点を置いて大蔵省にもお願いして増額をいたしまして、先生のおっしゃる抜本的な対策を講じてまいる決意でございます。  それから、在外公館の査察の点でございますが、外務公務員法の中に査察という制度がございまして、外務公務員の中から適当な者に従来から査察を行わせてまいったわけでございますが、従来その間隔が少し間遠でございましたので、この点について昨年来いろいろ検討を重ねまして、今後は二、三年に一回は外務公務員による査察を定期的にやるという制度を確立いたしまして、現に実行に移しております。そういう査察を行うことによって各館の活動状況を全体として把握いたしまして、その館の仕事の面あるいは勤務環境の面に対して客観的な評価を与えて、改善すべき点は現地で改善させ、また予算の増強とか人員の増強を伴うものにつきましては本省において手段を講じて、在外公館の仕事の能率の向上にさらに努力してまいりたいと考えております。
  125. 木原実

    木原委員 いずれにいたしましても、一概には言えない側面があると思いますけれども、しかし私どもの目につく範囲におきましてもアンバランスもありますし、おくれがはなはだしいという指摘を、この際しておきたいと思うわけです。  それから、これまた決議案の中に盛られている問題ですけれども、子女の教育の問題ですね。きょうは文部省は別に呼んでいるわけではないのですけれども、外務省としても、政府部内の問題としてやはりもっと積極的に取り組んでもらいたいと思うのです。これは何も在外公館勤務をする公務員の皆さんだけの問題ではなくて、民間の方々が多数外国に出ていて、いずれも子女の教育のために大変に苦労なさっている。そのために外国勤務がはなはだ支障を来すという事例が至るところにあるわけです。繰り返すようですけれども、外務省としてもこの点で文部省ともう少し話を詰めて、少なくとも国内の受け入れ体制の問題ですから、拡充をしていく、整備をしていく、こういう方向での努力はいかがなものですか。どうですか。
  126. 山崎敏夫

    山崎政府委員 仰せのとおり、子女教育は、われわれ在外に勤務する者にとって非常に大きな問題でございます。これは外務省員のみならず、外国に勤務する民間の方々にとっても大きな問題でございます。したがいまして、われわれとしてはこの問題は二つの面から取り組む必要があると思っております。  一つは、海外に子女を連れていく人々のために全日制の日本人学校または補習学校をつくることでございます。これは外務省としても長年力を入れてまいりまして、最近逐次整備されてきております。毎年四校ないし五校の全日制の日本人学校が各地に開校されてきておるわけでございます。もちろんこういう日本人学校は、開校されましても教材の面とか施設の面でまだ不十分でございますけれども、現地におられる方々と協力してその内容の充実に努めてまいっておりますし、今後も努めてまいるつもりでございます。  他方、そういう海外におります子女が帰国いたしましたときの受け入れの問題がございます。これは文部省の所管でございますが、近年、文部省におきましてもこの点について非常に力を入れていただいて、そういう帰国子女のための受け入れ学校とかあるいは少なくとも学級、クラスをつくっていただくという動きが具体化してまいっております。この点につきましては、外務省としましても文部省と協力して、さらにこういう受け入れ体制の整備に努力してまいりたいと考えております。
  127. 木原実

    木原委員 双方あるわけですけれども、外務省所管の中でも、お話がございましたように、日本人学校は寄付その他によってかなりな部分が賄われているという実情もあります。外務省所管ということになる日本人学校、これは義務教育が中心ですから、本来国の費用で賄うのが当然なんですけれども、この寄付の関係というのは慣習としてかなりあるようですけれども、何かこの基準といいますか、これを減らしていくというような方向のことは考えられないのでしょうか。
  128. 山崎敏夫

    山崎政府委員 ちょっと補足して申し上げますが、現在海外にあります日本人学校は、アジア地域に十九校、北米に一校、中南米に十一校、欧州に七校、大洋州に一校、中近東に五校、アフリカに五校の計四十九校が全日制の学校として設置されておるわけでございます。それからそのほかに、地震のために開校を延期していましたブカレストの日本人学校が開校の準備を進めております。このほか、先ほど申し上げましたとおり、先進地域を中心といたしまして七十二の補習授業校が開設されております。来年度の政府予算原案におきましては、さらに五校の新設を考えておる次第でございます。  この在外にあります日本人学校は、国の義務教育を施す学校として政府が全部責任を持つという体制にはまだなっておりません。いわばその土地におられる在留邦人の方々がそういう学校を設立し、それを政府が補助するというふうな体制になっておりまして、われわれが在外において支出しておりますのは、校舎の借料とその派遣教員の在外給与でございます。本俸については別途文部省においていろいろお手当てを願っておるわけでございます。しかしながらそれだけではもちろん足りませんで、その土地におられる邦人の方々がいろいろと財政的な負担をしておられるのは仰せのとおりでございまして、それもその年の物価の上昇その他によりまして負担がなかなか軽減されない、むしろふえる傾向があるという苦情もときどき聞いております。われわれといたしましては、この点については校舎の借料を全部負担するとかいろいろな方法も講じて何とか父兄の方々の負担を軽減するように持っていきたいと考えております。  他方、海外子女教育振興財団というのがございまして、そちらの方から教材等も贈られておりまして、これはわれわれとしても非常に助かっておるわけでございますが、こういう民間の活動がさらに強化されまして、それを通じて各地におられる父兄の方々の財政負担が軽減されるように今後とも各方面と話し合ってまいりたいと考えております。
  129. 木原実

    木原委員 これは経済変動ということもあるわけですし、それから在留邦人がたくさん在住をしていて旺盛な活動をしているというときは比較的順調にいくわけです。しかしそれぞれ経済変動がありまして、たとえば在留邦人の事務所等の閉鎖も相次ぐ、商社等も撤退をする、しかしたとえ何人でも子供さんたちが残っておれば、従来あるわけですから閉校というわけにはいかない、そういう形で運営をしているところもあるわけですね。そういうところの悩みは、校長さんの私どもへの訴えは、ともかく寄付集めが大変なんだ、こういうことなんです。外務省としては、そう言ってはあれなんですけれども、これは付属の仕事なんですけれども、子女の教育ということにつきましては国全体の責任があると思いますね。しかも義務教育につきましては、当然国の責任というものが前提にあるわけですから、これまた実情に即して、やはり予算の配分その他につきましても、余り学校経営の上に寄付の問題が大きな重荷になったりあるいは大きな影を落として、そんなことが教育に支障を来すというようなことのないような配慮ぐらいはいまからでもやってほしいと思うのですが、いかがですか。お調べになれば、その実情は、幾つかのケースというのはすぐ出てくると思いますけれども、どんなものでしょうか。
  130. 山崎敏夫

    山崎政府委員 いま仰せのありましたように、生徒数が非常に少ないとかあるいは従来かなりいたのが減ってくるというふうな場合につきましては、父兄の負担が総体的にふえてくるという問題があるようでございます。この点につきましては、われわれとしても常時その実態を把握いたしまして、そういう父兄の負担が著しくふえていくような場合には、この点は外務省としてもまた関係方面ともいろいろ相談して、そういうことが起こらないように今後施策を講じてまいりたいと考えております。
  131. 木原実

    木原委員 もう終わりたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げましたように、われわれは附帯決議をつけてこの法案を成立させたいと思うのですけれども、外国に勤務をする人たち実情というものはなかなか世の中のテンポに合うような形で進行していないという実情を私も多少見聞をし、訴えを聞いてまいりましたので、問題にしたわけです。  それから、冒頭委員長にお願いをいたしましたように、その中で必要なことにつきましては、やはり議会の意思としてきちんとした対処の仕方をしたい、こう思いますので、ひとつ委員長の格段の御配慮をお願いをいたしたいと思います。できますならば議会の中で具体的なことについても成案を得て、必要な予算は補正の中へでも組み込む、これぐらいの意気込みで、これは全部はとてもできると思いませんけれども、ひとつ委員会としてできるだけの努力をしていただきたい、こんなふうに考えるわけですが、ひとつ委員長の御判断をいただきまして終わりたいと思います。
  132. 始関伊平

    始関委員長 さっき申し上げましたが、後ほどに附帯決議が提出されるわけですが、かなり詳細な内容を盛っております。なお、この趣旨にのっとりまして、予算の要求その他、外務省一生懸命でおやりになると思いますが、われわれ国会の立場としてはおのずから制約があると思いますけれども、実際問題としてこれを推進するということはできると思いますので、さっき申し上げましたように、御相談いたしまして最善を尽くしてまいりたい、かように存じております。
  133. 木原実

    木原委員 これはいま与党の筆頭理事もお見えのようですから、あわせてひとつお願いをしておきたいと思うのです。  まだ後の質問者が来てないようですから、もう一つ、二つそれじゃ追加をしてお伺いをいたしておきたいと思います。  これまた決議案の中に盛られていることなんですけれども、在外公館勤務する公務員の人たちが事故に遭った場合の補償の問題ですね。何回かこの委員会でも取り上げられたことがあるわけです。過去に殉職をしたという取り扱いでそれなりの措置が講じられた事例の御報告も聞いたことがあります。しかし、私どもとしましては、公務員全体の事故等の場合の補償のレベルが、世の中のレベルに比べて必ずしも高いというわけのものでもないし、むしろ低きに失するという問題があると思うのです。なかんずく治安の悪い地域等で勤務をしていて事故に遭われたといったような場合の補償の問題については、この際かなり思い切った、特例を開くと言うと語弊がありますけれども、措置を講じる必要があるのではないか、かねてそういう意見を展開しているわけなんです。附帯決議をつけましたのもそういう含みがあるわけなんですけれども、これはやはり官房長、従来も何回か問題にした点ですが、特例を開くという言い方がいいか悪いかわかりませんけれども、やはりそれにふさわしい補償の措置というものが考えられないものかどうか、この段階での御見解をひとつ聞いておきたいと思うのですが、どうでしょう。
  134. 山崎敏夫

    山崎政府委員 仰せのとおり、在外公館のあります。部の国におきましては非常に治安が悪い、そのために、そこに勤務する職員もそういう悪条件のもとにおいて常に不安を持ちながら勤務しているというのが実情でございます。また最近の事例で、ラオスにおきましてもわれわれの同僚が、そういう治安の悪さに恐らく原因がありまして、夫婦で殉職いたしたわけでございます。そういう際に、公務災害補償という制度の適用をいただきまして補償はしていただいたわけでございますが、われわれの気持ちといたしましては、さらにそれにもう少し加算をしていただきたいという気持ちは持っております。この点に関しましては人事院規則がございまして、一定の条件のもとに五割増しの制度があるわけでございますが、実際問題といたしましてそういう五割増しの加算が適用になりますのは、実際に内乱があって、しかも身体または生命に対する高度の危険が予想された状況下において外交領事事務に従事している際に災害を受けたときに適用されることになっております。一般的な治安が悪い状況下においては、なかなかこの五割増しの加算は適用できにくいというのが人事院の見解でございます。われわれといたしましては、そういう点についてもう少し在外公館実情を御認識いただいて、そういう場合にもその状況に応じて五割増しの加算ができるようにしていただければありがたいという気持ちは持っております。しかしながら、これは国家公務員の災害補償に関する一般的な問題とも絡む問題でございますので、さらに人事院その他関係方面とも話し合いを重ねてまいって、こういう制度の拡充ないし改善をしていただくことを希望しておる次第でございます。
  135. 木原実

    木原委員 これで最後にしますけれども、在外勤務公務員の皆さんの処遇の改善をということをるる申し上げてまいりました。最後に苦言を呈しておきたいのですけれども、これまた決議案の冒頭に、大いに人材を登用し、研修の充実を図れ、こういうふうに強調してあるわけなんです。ある国の大使館に参りますと、現地の言葉をこなせる人は一人しかいない、しかも現地採用で間に合わせたといったような実情のところにもわれわれぶつかるわけですね。いろいろな国に邦人が活動する舞台が広がっておりまして、しかも大使館あるいは公使館といえば頼っていく最後のところはそこだ、こういうことにもなるわけです。それからまた、外交活動という面からいきましても、英語やドイツ語やフランス語の通じるところはいいわけですけれども、しかし固有のその国の言葉を使って意思を通ずることができるという外交官が余りにも乏しい。したがって、その国に留学をしていた若い人を現地で採用をして、辛うじて現地語での意思表示をやるといったような実情にぶつかるわけなんです。多様な言葉の国があるわけですけれども、外交官としては基本的な仕事の一つだと思うのですが、そういう言葉についての、なかんずく途上国等の現地の言葉についての研修方針やそういう言葉を解する人たちの配置といったようなことについては、何か考えていらっしゃることがあるのですか、それとも従来は、おおむね英語で通用できるからそれで間に合わせるということで対処をしてきたのか、あるいはしていこうとするのか、その辺のことを少しお聞かせいただきたいと思うのです。
  136. 山崎敏夫

    山崎政府委員 外務省勤務いたします者は、一国だけでなくいろいろな国に勤務するわけでございます。したがいまして、世界じゅうでかなり通用しやすい言葉、英語とかフランス語とかスペイン語とかいう言葉の研修をさせることが多いのは事実でございます。これは一国だけにずっと勤務するのであれば、その国の言葉だけをやらせればいいのでございますが、人事政策上あるいは本人の訓練のためにいろいろな国に勤務させますので、そういう基礎的な語学といいますか、最も広く通用する言葉を研修させるということはどうしても必要なわけでございます。しかしながら、他方、特殊な言葉の国でその館員がだれもその国の言葉を話せないということでは、これは外交活動上差し支えることも事実でございまして、われわれとしては、そういう特殊語学についてもできるだけ広く研修させるようにいたしております。  外務省はいま上級試験専門職試験の二本立てになっておりますが、上級試験の者につきましても、英語、フランス語、ドイツ語といった一般的な言葉のほかに、ロシア語、中国語、スペイン語等を研修さしておるわけでございます。一例といたしまして、昭和五十二年度に上級試験合格者は二十六名おりますが、その内訳は、英語は十名、フランス語は六名、ドイツ語は二名、ロシア語は二名、スペイン語は二名、中国語は二名、アラビア語は二名でございまして、英仏独を除いて八名の者がいわゆる特殊語学を研修いたしております。さらに、専門職員となりました場合には、もっといろいろな言葉をそれぞれ各地において研修させて、御指摘のように、その公館のだれもが現地の言葉がしゃべれないというようなことがないようにいたしたいという方針で取り組んでおります。  ただ、何分にも語学の研修は時間を要しますし、人材の養成は正直言って楽ではございません。また、そういう特殊な語学を研修いたしました場合には、外務省給与が必ずしも十分でないということで、むしろどこかに引き抜かれるというふうなことも起こりまして、せっかく育てた人が外務省を去るという事例も間々あるわけでございます。この点はまさに給与の問題もあると思いますので、そういう面にも配慮をいたしまして、そういう特殊語学の人を大いに育ててまいりたいと考えております。
  137. 木原実

    木原委員 これで終わりますけれども、特殊な語学の研修につきまして、英語の通用する途上国で、イギリスの人たちはその国の言葉を研修すればボーナスを出す。ボーナスを出すのがいいのか悪いのかわかりませんけれども、大変努力をしておるということをあわせて聞きました。外交活動の基本になる問題で、いろいろな条件もあろうかと思いますけれども、どうぞ十分な活動ができるような条件をひとつ外務省としても整えてもらいたい、こういうふうに思います。  外務大臣には、冒頭申し上げましたように大変に差し迫った、しかも国民的な課題が待ち受けておるわけです。それぞれ疑念の残らないような形で、国民の合意の中でりっぱな成果が上げられるように期待を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  138. 始関伊平

  139. 上田卓三

    上田委員 まず、外務大臣にお聞きいたします。  ことしは、いわゆる世界人権宣言が発せられまして三十年を迎え、記念する年でもあるわけであります。前鳩山外務大臣にも再三直接会い、要望もし、また予算委員会なり分科会なり、あるいはしかるべき委員会で、わが党からも強く国際人権規約の批准を要望いたしたところでありますし、また園田外務大臣にも二度ばかりお会いさしていただきまして、お願いもしたところでございます。外務省においては、今国会で国際人権規約を批准をすべく準備しているというふうに聞いておるわけでございますが、その点についてどうなっておるのか、今国会に批准すべく準備が十分行われておるのか、その点についてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  140. 園田直

    園田国務大臣 人権規約の批准については、上田さんから再三御激励をいただき、また御協力をいただいていることを頭に厚く御礼を申し上げておきます。  御意見のとおりに、私としましても、この人権規約はきわめて大事であり、他の国におくれておりますから、与党の御了解も得、各省との詰めも大体終わって、法案等の詰めを行っておりますが、ぜひ今国会に提出をして審議をお願いするようただいま着々と準備を進めておる最後の段階でございますが、なかなか微妙な段階でございますので、具体的に報告するわけにはまいりませんが、お許しを願いたいと思います。
  141. 上田卓三

    上田委員 若干留保条件云々というようなことも新聞などでも聞いておるわけでございますけれども、世界の多くの国々で、無条件で批准というのですか、留保というのは余りないようでございます。わが国だけが今日一番おくれておるというような状況でございますので、おくればせながら批准するわけでありますから、そういう点はぜひともひとつ御留意いただきたいと思いますし、また時期的にも今国会が一番いいのではないか、このチャンスを逃してはならない、このように私は考えております。園田外相は非常に熱心にこの問題に取り組んでいただいておりますことを非常に喜んでおる次第でございますが、しかし同時に、いろいろな関係でおくれてしまうということになって、今国会の批准が間に合わないということになっては大変だ、こういうように思いますので、そういうことのないように全力を挙げて取り組んでいただきたい、このように思いますが、そういう私の趣旨を体してやっていただけるかということを、一言で結構ですから、お答えいただきたいと思います。
  142. 園田直

    園田国務大臣 上田さんの御発言の趣旨を体して全力を挙げます。
  143. 大川美雄

    ○大川政府委員 この国会へ国際人権規約を提出いたします準備の段階におきまして、もちろんいろいろな問題が検討されておりますけれども、それの外務省関係省庁間の最後の詰めをやっておりますので、具体的にどの条項について留保するかしないかということは、いまの段階では、できれば申し上げることを控えさせていただきたいと思います。  それから世界のほかの国々が余り留保をつけていないというようなことをちょっとおっしゃったように伺いましたけれども、これはそれぞれの国、それぞれの事情に応じましてかなり留保をしておる国がございます。完全に留保なしで批准しておる国もあろうかと思いますけれども、それぞれの事情で、それぞれの立場から留保をしておる国もいろいろございますことを御参考までに申し添えさせていただきます。
  144. 上田卓三

    上田委員 国際人権規約というものの趣旨をわれわれ理解するについて、先進国というものはこういう人権規約に盛られておる精神というものは大体到達しておる、多くは発展途上国において達成しなければならぬ、こういうことにあるというようにも考えられるわけであります。そういう点についていろいろ調整に手間取っておるようでございますが、留保を少なくする、あるいは皆無に近い形でぜひとも御努力をお願いしておきたいと思います。  次に、園田外相も御存じのように、国際条約というのはたくさんあるわけでございますけれども、国際人権規約以外にまだ十六の条約が、国連で賛成しながらわが国において批准をしていないということになっておるわけでございますので、この人権規約の批准のめどが立つ、あるいは批准された後において次々と必要に応じて他の条約の批准をしてもらいたい。その決意をお聞かせいただきたいと同時に、少なくともこの条約の仮訳ですか、そういうものをつくっていただいて、関係議員に配るなど国民にわかるようにしてもらいたい、このように思いますので、その点について答弁をしていただきたいと思います。
  145. 大川美雄

    ○大川政府委員 国連の場で採択されましたいわゆる人権関係の国際条約というのは全部で十八ございます。そのうちで日本は二つは批准ないし加入の手続を終わっております。それで、日本が加入の手続を済ましておりますのは人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約、それからもう一つは婦人の参政権に関する条約であります。そのほかに、今回できれば批准いたしたいと考えております人権の両規約を足しますと四つになります。そうすると、残るのは全部で十四になります。  日本としては、もちろんこういった人権関係の条約、一般的にはできるだけこれに参加すべきであるということで努力いたすことは当然でございますが、とりあえず、こういった十四の条約の中で最も基本的な条約である人権の両規約にまず全精力をつぎ込んでこれをできるだけ早く批准いたしたい、こういう方針で臨んでいる次第でございます。まだ仮訳ができてない条約につきましては、もちろん外務省としても事務的能力の範囲内でできるだけつくってまいりたいと思います。なかなか事務能力の限界がございまして、ただいま私の局では人権規約の批准準備に最も重点的に力を注いでおりますので、それが済みました上でまた御要望にできるだけ沿うように努力いたしたいと思います。
  146. 上田卓三

    上田委員 人権規約はその多くが内外人平等という線に貫かれておると思うのでありますが、わが国においては人種差別といいますか、外国人に対する差別が多くあるわけでございまして、そういう点で、人種差別を撤廃する条約もあるわけでございますし、また、戦争犯罪人のいわゆる時効の不適用といいますか、時効はないというような条約もありますし、そういう点で人権にかかわる非常に重大な国際条約が多くあるわけでありますから、ぜひとも批准に努力をしていただきたいし、仮訳を早く出していただくようにお願いをして、この件については終わりたいと思います。  次に、日中平和友好条約で、政府、とりわけ外務省において鋭意努力されておられますことに敬意を表する次第でございます。わが党も飛鳥田委員長を中心にいたしまして昨日訪中いたしまして、向こうの党なり政府の要人とこの問題についての解決のために鋭意努力をいたしておるところであります。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕  さて、一九七二年の九月にいわゆる日中共同声明が発せられたわけでございますが、この声明については、すべての国民は、日本政府が過去の侵略戦争の歴史を清算して戦後二十数年にわたる敵対と断絶の状態に終止符を打ち、中国との国交を回復し、平和五原則に立った善隣友好関係の発展を約束し合ったものであると心から歓迎したものと考えるわけでございます。当時わが日本社会党は、党声明によりまして、人民外交の成果を喜ぶとともに、日中善隣のあり方について次のように訴えたわけであります。  第一に、日中共同声明前文の示すように、日中国交回復は単に日本と中国の国際関係を樹立したというだけではなく、アジアにおける緊張緩和と世界の平和に貢献し得るものでなければならない。  第二に、日中国交回復の実現は、戦後自民党政府がサンフランシスコ平和条約と日米安保体制の枠組みの中で進めてきた対米追随と反共冷戦外交がいかに間違っており、その破産、修正、変更を余儀なくされているかを明白に示した、こういうように述べておるわけであります。  また第三には、日中国交回復は、中国、ソ連、朝鮮、アメリカなどすべての関係諸国と善隣友好、不可侵の取り決めを結び、軍事同盟による対決ではなく、平和共存の原則に立つ国家関係の発展の中でアジアの緊張緩和と世界の平和を追求することが日本の国際社会に対する責任であるというように述べておるところであります。  以上の立場を踏まえて、日中平和友好条約の締結によって、日中間の戦後処理が完全に果たされ、また将来にわたり両国間の紛争の火種が取り除かれて、アジアの緊張緩和に貢献するものでなければならない、こういうように希望するわけであります。そういう点で、日中交渉の重大な局面に際して、以下基本的な問題について質問をさせていただきたい、このように思います。  園田外相は一月二十一日の外交演説で、日本の外交の基本的方向は「第一に、平和に徹し、いかなる国とも敵対的関係をつくらないことであり、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないこと」である、このように述べておられるわけであります。総理も「いずれの国とも平和友好を進める日本外交の基本的立場について中国側の理解を求める」と伝えた、こういうように言われておるわけであります。この点はいわゆる平和憲法の原理でもあり、今回の日中交渉においても不動の原理であろうと思っておるわけでありますが、この基本姿勢というものが果たして今度の日中友好条約に貫かれるのかどうか、その点について国民に約束できるのかということについて、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  147. 園田直

    園田国務大臣 ただいま発言された私の国会における外交方針演説、総理の施政方針演説ではっきり明確に申し上げました諸点は、今度の日中友好条約の締結についても一貫して貫かなければならぬ問題であると思っておりますし、これは貫く所存でございます。
  148. 上田卓三

    上田委員 国民は政府の基本的立場が日中交渉において本当に生かされるかということで心配をされておると思うわけであります。特にエンジンかけっ放しとかあるいはゴーサインを待つばかり、こういったように外相はあらゆる角度から条約を徹底的に吟味していると思いますけれども、何かややもすればムードに流されているような、そういう面で交渉姿勢というものに対して不安を感じる人もあるのではないか、このように感じておるところであります。  三月十二日の読売新聞の世論調査、外相も目を通されたと思うのですけれども、この調査では「早く締結に持ち込むべきだ」というのが二九・九%、「締結が遅れてもやむを得ない」というのが四五・三%で、「日本の主張通らねば… 「日中締結」遅れやむなし 半数近い慎重論」、こういうように報道されておるわけでありますけれども、日中友好に一〇〇%賛成の国民がいわゆる日中平和友好条約に半数近くが慎重な態度をとっているということ、先ほど私はそういうことも含めて国民が心配しているということで申し上げたわけでありますが、この根本原因というのですか、それはどこにあると考えておるのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  149. 園田直

    園田国務大臣 国民の感じておられる不安というのは、第一は中国の言うとおりに条約を結ぶのかどうか、日本の主張を一貫して通すのかどうかということ、第二番目には日中友好条約を結ぶことによって中ソ紛争に巻き込まれないだろうかということ、それからごく少数ではありますが、隣国の共産主義大国と友好条約を結ぶことによって日本が不安にならないかという不安、この三つだと私は理解をいたしております。  したがいまして、私がしばしば発言いたしましたのは、いまのままの状態でずるずるいきますことは、一方ソ連からは御承知のとおりにいろいろ文句をつけられ、中国からはいろいろ言われて、結局日本が自主性なく、右左ながめているような態度をやることはよろしくない、すでに共同声明で基本線は出されておるわけでありますから、日本の立場を一貫して貫き、この日中関係にけりをつけるべきだ、こういうのが私の考えでありまして、微力ながら、それには私が参って直接話をする以外にない。政治的決着をつけるということではなくて、日本国民が納得をし、中国も世界の他の国々も納得されるような線で、折衝は政治的折衝を続ける、こういう考え方をいたしておるところでございます。
  150. 上田卓三

    上田委員 条約文に反覇権という文言が入ることについて、双方に大きな意見の相違はないだろう。ただ問題は、反覇権がいわゆる特定の第三国に向けられたものではない、そのことが条約の中でどのようにうたわれるのか、あるいは日中条約が第三国に向けられたものではない、あくまでも日中双方の関係の友好善隣であるということが前提ではなかろうか、こういうように思うわけでありますけれども、そういう点で、福田首相は今月の六日に衆議院の予算委員会で、外交の基本姿勢に食い違いがあれば厄介なことになる、佐藤大使は中国側に、世界のどこの国とも敵対しないという平和外交方針を伝え理解を求めている、このように述べておられるわけであります。しかも総理は、いずれの国とも平和共存を進めるとの日本外交の基本的立場について理解を得られれば交渉に入るということで、公明党の矢野書記長を介して中国側に伝えてあるということのようですが、交渉再開のぎりぎりの条件がこの点にあると思うわけでありますけれども、この点について理解を大体得られたというように解釈、判断していいのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  151. 園田直

    園田国務大臣 これから交渉に入ることではございますけれども、先ほど言われたように、日本が自分の立場を一貫して通せるかどうか、あるいは日本国民、世界の国々が不安を持って見るかどうかということは、問題はやはり覇権の取り扱いにあるということは御指摘のとおりでございます。この覇権をどう扱うかということは、条約の内容にわたることでございますから、いまお答えするわけにはまいりません。  なお、この覇権について相手がどうであるかこうであるかということを理解することが交渉再開の前提ではなくて、これは交渉された後の内容にかかわる、こう私は理解をいたしております。そうでなければなかなか、交渉前に条約の内容に立ち入って、そしてよかったら交渉に入る、こういう交渉はあり得ない、このように私は考えております。
  152. 上田卓三

    上田委員 けさの新聞報道によれば、近く日中政治交渉によってこの覇権条項問題の解決を図る方向で政府の意思統一を図られた、こういうようなことのようでございますが、国民はやはりあくまでも外相がそういうムードに流されることなく、あらゆる国との友好という基本目的に基づいたところの日中平和友好条約の早期締結を期待しておるわけでありますから、再開されたら滞ることなく調印に至るという福田首相の言葉どおりの展望として理解をしてよろしいでしょうか。
  153. 園田直

    園田国務大臣 私は、日中友好条約については決してムードに流されておるわけではなく、気分でやっておるわけでもございません。先ほど申し上げたようなことで、私は政治折衝をやるべきだ、それが外務大臣の責任だと心得ておるわけでございます。したがいまして、昨日飯倉公館総理を中心にやりましたことは、これはもうすでに御承知のとおりに、この日中友好条約交渉再開というのは、始めるかどうかということは、大詰めの段階に来ているわけであります。しかし、それでございますけれども、なおいろいろな各方面の御理解あるいは協力、あるいは相手国の打診等、最後まで綿密にやる必要がありますから、本日の新聞記事は全部推測記事でありまして、きのうのは、諸般の問題について、外相訪中も含む、こういう点について検討した第一回目の勉強会だと心得ていただければ結構でございます。  なお、先ほど言われましたとおり、先般公明党が訪中をされ、ただいまは社会党の委員長一行が訪中をしておられるわけでございます。飛鳥田委員長総理は、それまで日中問題については意見の交換はされた機会があるわけでありまして、電話でもお話をされたはずでございます。飛鳥田委員長は、政府の走り使いはしないが野党としての本務を尽くす、こういうことでございますので、帰られたら、社会党の委員長の御意見等も承り、これを参考に、ひとつこういう時期に来ましたら、ますます落ちついて慎重に進める所存でございます。
  154. 上田卓三

    上田委員 平和友好条約を一日も早く締結していただく、これは両国民の願いでもありますし、園田外相が非常に熱心であるということについてもわれわれは敬意を表するわけでありますので、いま明らかにされた諸点を明確にしながらひとつ交渉をしていただきたい、このように思うわけであります。  ただ、日中平和友好条約は、平和条約そのものではないわけでありますね。そういう点で外相は、三月十一日の参議院の予算委員会で、日中条約は平和条約ではなく平和友好条約だから、この中には領土問題は入らない、このように述べておられるわけであります。一般に、平和条約というものは、交戦国間に存在する戦争状態を終止し、かつ平和回復の条件を定めたものであり、これによって初めて戦争を引き起こすに至った紛争を決定的に解決し、そして交戦国間の関係はもちろん、中立国との関係も明瞭になるというものであろう、このように思うわけでありますが、このようなものとしてのいわゆる平和条約というものを、今後中国側と交渉し締結するのかどうか、その必要性はあるのかないのか、その点について明確にお答えいただきたいと思うのです。
  155. 中江要介

    ○中江政府委員 御質問の点は、一九七二年九月二十九日の日中共同声明、先ほど先生も御引用になりましたけれども、この中に明確に書いてございまして、たとえば前文の第四項にございますように、「両国間にこれまで存在していた不正常な状態に終止符を打つことを切望している。戦争状態の終結と日中国交の正常化という両国国民の願望の実現は、両国関係の歴史に新たな一頁を開くこととなろう。」こういう背景を前文で述べまして、そして本文の第一項で「日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。」ということをうたいますと同時に、たとえば本文の第五項には「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。」通常、いまお述べになりました平和条約などに述べられるような条項を含めまして、日中共同声明によって暗い過去の清算は本日をもって終わりましたということを、当時の外務大臣が北京のプレスセンターの記者会見でも述べておられますように、暗い過去の清算はすべて共同声明で終わっている。したがって、戦争処理的なものはもう一切要らない。残されているのは、実務協定を初めとして、ただいま問題になっております将来の日中の平和友好関係を強固にし、発展させるための日中平和友好条約の締結、こういう組み立てになっておりますので、御質問に対しましては、そういった戦争処理的なものは今後とも要らない、そういうことを考える必要がないというのが政府考え方でございます。
  156. 上田卓三

    上田委員 私は、それは納得できないと思うのです。というのは、共同声明で、領土問題あるいは戦後処理の問題について合意に達しておる、だから平和条約は要らない、こういうことでありますが、御存じのように、サンフランシスコ条約の第二十六条の趣旨も、未署名各国が将来日本との二国間の平和条約の締結を期待している、また、日ソ間では平和条約交渉が懸案になっていることは御存じのことだろう、このように思うわけでありまして、そういう意味で、国際法のイロハというものを見た場合でも、いわゆる戦争状態の終止というものは平和条約ということが通り相場、それが常識になっているだろう、こういうように思うわけであります。そういう意味で、変則的な戦争状態終止宣言とかあるいは平和条約の締結が不可能な特別な事情がある場合か、また後日平和条約が締結されるまでのいわゆる過渡的な措置である、こういう場合ということになろうというように思うわけであります。たとえば日ソ共同宣言は、こうした過渡的な措置だというように私は受けとめておるわけでありまして、そういう点で、日中間の戦争状態の終止と平和回復の条件といった基本的な関係が条約でなくてよいという特別の事情というのがよくわからないわけであります。そういう点で、中国との場合だけいわゆる平和条約ではなしに、声明という形で事足りているということ自身、中国べっ視というのですか、あるいは中国を差別するようなあらわれとして見られても仕方がないのではないかと私は思うのですが、声明でよい、平和条約はもう結ばなくてもいいんだというその理由というのがよくわからないのですが、もう少し説明願いたいと思うのです。
  157. 中江要介

    ○中江政府委員 先生が国際法のイロハということでおっしゃいましたので、純粋に国際法的にどういう経過であったかということを振り返って申し述べる必要があるかと思います。  日本と中国とが戦争状態にありまして、この戦争について最初に、一九四五年の九月二日に休戦に合意いたしました。つまりポツダム宣言を受諾いたしまして、日本が全面降伏いたしました。これは一九四五年でございまして、その九月二日に休戦する。もう戦闘行動をやめる。その時点での中国というのは、いまの政府ではない政府によって代表されていた中国でございまして、この一九四五年に全面降伏しましたときの戦争の相手である、当時中華民国ということで戦争状態にあったわけですが、この中国を代表する中華民国政府との間に講和の話が進みまして、締結されましたのが一九五二年でございまして、いま私どもが国交正常化をいたしました中華人民共和国政府というのは一九四九年に誕生しておるわけでございます。  したがいまして、戦争をし、休戦をいたしましたときの相手国の政府との間には、一九五二年に御承知の日華平和条約というもので、これはサンフランシスコ平和条約にのっとった形の平和条約を結びまして、これによって、国際法上、日本と中国との間の戦争状態を終結して、それに伴う戦後処理をいたしたわけでございまして、これは御承知のとおりであります。ところが、この日華平和条約の対象とする地域が、実際上の支配地域が非常に限定されておりましたために、実効支配の及びませんでした中国大陸との間に不正常な状態が続いていたということが他方あったわけで、当時御記憶のように政経分離だとかなんだとか言われながら、民間その他の交流が大陸との間で積み重ねられまして、そしてやがて一九七二年の国交正常化という時期を迎えます。  そのときに、一体、一九五二年に日本が国際法上有効に締結し、日本国憲法に従って国会の承認も得ておったその国際約束をどう認識するのかという問題がございまして、その点は先ほど私が申し上げましたような共同声明にありますような表現、つまり「不正常な状態に終止符を打つ」、不正常な状態を終了させるということで、中国大陸に一九四九年、つまり休戦後成立しました政府との間には、そういう表現ですべての不正常な状態を正常なものにするということで合意が見られまして、あわせてそのときに、御記憶にございますように、当時の大平外務大臣が日華平和条約、先ほど申し上げました一九五二年に国際法上有効に機能しておりました日華平和条約はその任務を終了したので、存在の意義を失ったので終了したものとみなすということを宣言されまして、それによって日華平和条約の任務終了と中華人民共和国政府との間の正常な状態を樹立した。ソ連の場合には、相手は絶えず一つのソ連との間の問題でございますので、過渡的な一つの手段ということは考え得たかもしれませんが、中国との間では、御承知のように、絶えず双方とも中国は一つという原則を貫き通しておりますので、そういう現実の前に実際的な外交措置としてとられましたのが日中共同声明である。したがいまして、日本と中国との間の戦後処理はこれですべて終わったという日本国政府の立場には、国際法的にも疑問がないというのが私どもの考え方でございます。
  158. 上田卓三

    上田委員 いわゆる平和条約を結ぶことが不可能な特殊な事情というんですか、そういう場合という形に私は理解できないわけでありまして、そういう点で、やはり声明によってその問題が明らかであるということなら、なぜこの平和条約が結ばれないのか、私はそういう点でいまの発言が納得できないわけであります。日中共同声明で幾ら本来の平和条約の目的たる戦争状態の終結、それから国境線の画定、領土の帰属ですね、それから国交の回復あるいは賠償請求権の放棄などは、すべて最終的かつ完全に終了したとみなして果たしていいのかという点でございます。  そういう点で、今回の日中平和友好条約によって領土問題は扱わなくて、今後日中間で一切紛争が生じないという保障が果たしてあるのかということで、その点についてお聞かせいただきたいと思うのです。     〔小宮山委員長代理退席、村田委員長代理着席〕
  159. 中江要介

    ○中江政府委員 これは私から申し上げるまでもなく、国と国との間には全く紛争が起きないという状態はむしろ考えにくいのでございまして、いずれの国との間でも紛争は起き得るということで、この共同声明でも第六項の後段に「両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。」ということをうたっておりますように、いずれの国との間でも友好条約を締結したからといって一切紛争が起きないということではなくて、国と国との間に起き得る紛争を友好的に平和裏に解決する、これが友好の精神である、こういう発想でございますので、日中平和友好条約を締結したから、将来日中間には何の紛争も起きないということが保障されているかと言われますと、それは国際社会の現状からいたしまして多少無理なことではないか、こういうふうに思います。
  160. 上田卓三

    上田委員 逆に考えると、平和条約を結ばないということは、領土問題は解決しておると言いながら、実際やってないというように理解されても仕方ないんじゃないですか。その点どうなんですか。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 なぜその領土問題がはっきりと――今後そういう国境の問題、領土の問題で紛争が起きないのかと言うと、いや、それは他の国々でも起こる可能性があるというようなそういう形ではいかないと思うのです。少なくともこの日中声明であなたのところとはもう完全に終戦処理が終わったというなら、その問題に関してもう絶対起こりっこないんだということがなければならぬと思うのです。そのためにこそ平和条約というものがあるのではないか、私はこういうふうに思うのです。ところがそれを声明で事足れりとするのは、逆に領土問題は解決していると言いながら領土問題をやはり解決していない、そこにちょっとあいまいさを残しているんじゃないかというような疑義が出るのですけれども、どうですか。
  161. 中江要介

    ○中江政府委員 先生のおっしゃいます領土問題というのは、つまり平和条約によって解決しなければならない領土問題という意味だと思いますが、そういう意味におきましては、サンフランシスコ条約で日本は連合国との間で包括的な平和条約を結びました。その中で中国との関係で領土問題は何かというと、台湾及び膨湖諸島の問題であったわけです。その点は先ほど私、一九五二年の日華平和条約におきましてサンフランシスコ条約にのっとって解決をしたと申し上げましたその考え方が、共同声明の中でも御承知のように、第三項のところで「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」ということで、戦争処理という観点からする日中間の領土問題たる台湾及び膨湖諸島につきましては、共同声明におきましてサンフランシスコ条約でとりましたと同じ、つまりポツダム宣言を受諾いたしました日本の義務をその限りにおいて確認しているということで終わっている。それ以外に戦争処理に伴う領土問題というのは日中間にはないということは、これはサンフランシスコ条約以降一貫した立場である、こういうことになろうかと思います。
  162. 上田卓三

    上田委員 それじゃお聞きいたしますが、一九七二年に効力を失ったいわゆる日華条約、われわれ日台条約と言っているわけですけれども、日本はサンフランシスコ条約第二条に基づき、台湾、膨湖諸島、それから新南群島、西沙群島の領有権を放棄した、こういうようにうたっておるわけであります。日中共同声明の第三項では、「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」こういうように言われておるわけであります。しかもポツダム宣言第八項は、満州、台湾、膨湖島のような日本国が清国人より盗取したすべての地域を中華民国に返還することにあるというカイロ宣言の履行を記しておるわけであります。  そういうことを考えますと、たとえば日本と中国との間にここで言われているところの新南群島あるいは西沙群島の帰属を規定するものは何一つもない、こういうふうに考えられるわけですけれども、そう考えていいんでしょうか。
  163. 中江要介

    ○中江政府委員 いま先生がお読みになりました日華平和条約あるいはそれのもとになっておりますサンフランシスコ平和条約も同じでございますけれども、日本はそれらの地域に対するあらゆる権利、権原及び請求権を放棄するということになっておるわけでございまして、そういう権利を放棄するというところが連合国に対して、あるいは連合国から日本が負わされた義務である。それ以上のことは日本はできない。そのことは何に淵源するかというと、ポツダム宣言を受諾したというところから出ているということを確認しておるわけでございますので、それ以上の領土問題についてどうするかということは、これは純粋に国際法上の問題といたしまして、日本はサンフランシスコ条約上の権利義務を忠実に守っていく必要があるということから出てくる帰結でございまして、いまの中国との間のいわゆる戦後処理の観点からする領土問題というのは、ポツダム宣言第八項の立場を堅持するというのが最も正しい立場でありますし、そのことについて中国も理解を示しましたればこそ日中共同声明が出ている、こういうことでございます。
  164. 上田卓三

    上田委員 だから私は聞いておるわけですけれども、日本と中国との間には、サンフランシスコ条約の第二条に基づく云々ということで、新南群島、西沙群島の帰属については現在何らの取り決めがないというふうに理解していいのですか。
  165. 中江要介

    ○中江政府委員 日本国は、それらに対する権利、権原及び請求権を放棄したというところでとどまっておるわけでございます。
  166. 上田卓三

    上田委員 私が申し上げるのは、新南群島なりあるいは西沙群島ともに戦略的に非常に重要な海域に所在しておるわけでありまして、しかも石油資源の可能性の高いものとして近年非常に注目されているところであります。今日の実態というものは、ベトナムのいわゆる人民軍が一九七四年春、南ベトナム解放に勝利した際、この新南群島のサイゴン政府軍を武装解除し、ベトナム民主共和国が現在領有しておるところであります。同国発行め統一ベトナム全図も新南群島あるいは西沙群島をベトナムの領土として示しておるわけであります。  一方中国は、一九七四年春、海軍力を投入して西沙群島を領有し、翌七五年十一月二十四日、南中国海諸島は昔から中国領土である、こういうふうに主張されたわけであります。そういう点で、日本政府はこの中国政府の南中国海諸島の領有権を承認しているのかどうかということ、いわゆるベトナムと中国との領土問題というのですか、そういう問題があるわけでありますが、いわゆる日台条約の失効あるいは共同声明ということの中から、やはりこれらの諸島について日本が中国側に帰属するもの、領有するものというように認めていることになるのかならないのかということは非常に大きな問題であろう。やはりアジアの紛争の種は、そういう意味でまだ残されているというように私は思うわけですが、そういう点について日本側のこの問題に対する見解をただしておるわけでありますから、明確に答えていただきたいと思います。
  167. 中江要介

    ○中江政府委員 まず二つの点があると思います。  第一点は、先ほど私が申し上げましたように、日本国はそれらに対する権利、権原及び請求権を放棄しておるという事実が厳然としてございます。今度は第二点といたしまして、日本国の領域でない領域についての紛争というものが仮に起こりましたならば、それは当事国の間で平和的に解決されることを期待するというのが最も公正な立場であって、日本は裁判所でも調停者でもないわけでございますので、軽率にコメントはできないという立場を貫くのが正しいか、こういうふうに思います。
  168. 上田卓三

    上田委員 だからわが政府は、中国政府が言っているところの南中国海諸島の領有権をそういう意味では承認してないということで理解していいですね。答えてください。
  169. 中江要介

    ○中江政府委員 日本国として承認するしないという立場をとる前に、その地域についてまず日本があらゆる権利、権原、請求権を放棄しているということと、それから日本とともに外交関係を持っておりますベトナムと中国との間で、もしそれが紛争であるのであれば、その両国の間で平和的に解決するのを待つという以外にない、こういうことでございます。
  170. 上田卓三

    上田委員 だから日本はそういうどちらに帰属するという判断に立ってないということの答えであったということで理解をしたい、このように思います。いずれにいたしましても、ベトナムと中国との関係において領土問題があり、いわゆる日中平和友好条約が日中の平和友好というだけではなしに、アジアでのそういう紛争の種をなくしていくということになりますと、そういう点についてやはり明確にしていく必要があるだろうと思います。  さらに、もう一点質問したいわけでありますけれども、昨日の新聞報道によりますと、いわゆる尖閣列島は固有の領土であり、現に実効的に支配している、領有権をめぐってどの国とも話し合う必要がない、このように閣議で決まって、政府見解という形で新聞にも報道されておったわけであります。しかしながら、中国政府は一九七一年に外交部声明で、尖閣列島に対する領有権を主張しておるわけでありまして、一九七二年の日中共同声明によっても、尖閣列島の帰属は一言も触れられていないわけであります。要するに、日中間において尖閣列島の帰属は、中国側によれば未解決であり、本来平和条約の締結によって最終的にその帰属が確定されるべきものではないか、こういうように考えるわけであります。そういう点で、その点について一体どのように考えておられるのか。  また、いかなる理由によって、政府として尖閣列島がわが国の固有の領土であるというように言われておるわけでありまして、わが党も各党においてもそのことについては異議がないわけでございますけれども、政府のそういうわが国の固有の領土であるという、領有権があるという主張というものを、ひとつかいつまんで御説明いただきたいと思うのです。
  171. 中江要介

    ○中江政府委員 まず前提としてはっきりしておいていただきたいと思いますことは、尖閣諸島に対する日本の領有権について、日本国以外の国が領有を主張し始めたというのが一九六八年、九年、七〇年、ごく最近のことであるということでございまして、それは国連のアジア極東経済委員会、エカフェの調査によりまして、あの近辺に石油資源があるかもしれないという調査報告が出ましてから最初に台湾、続いて中国が尖閣諸島の領有を主張し始めたという問題でございますのて、もともと一九四五年に終了いたしました戦争の処理として尖閣諸島を何とかするという、つまり戦後処理の平和条約上の領土問題という性格は全く持っていない問題であるということをはっきりしておく必要があろうか、これが前提でございます。日本はそれよりもずっと以前から固有の領土であると主張している根拠をかいつまんで申せということでございますが、これは御承知のように一八七九年、つまり明治十二年でございますが、明治政府が琉球藩を廃止いたしまして沖繩県を設置いたしまして、その後一八八五年、つまり明治十八年以来十年間もかけまして数回にわたって、設置いたしました沖繩県当局を通じていろいろと実地調査をいたしまして、尖閣諸島が当時の清国に所属する証拠がないということを慎重に確認いたしました上で、一八九五年一月十四日の閣議決定によりまして沖繩県の所轄として標杭、つまりしるしのくいを立てることを決めたわけでございます。これは国際法的に申しますと、国際法の先占の法理にかなう領土取得である、こういうふうに私どもは認めておりますし、この立場には何の疑念もないというわけでございます。  これを裏づける問題といたしまして、サンフランシスコ条約で第二条と第三条に分かれまして、戦争終結に伴って日本国の領有権から離れていく地域、第二条地域と、日本国の領域からは離れないけれども一時アメリカに施政権を認める地域、第三条地域というのに分かれました。尖閣諸島はその二ヵ条の中の第三条地域に入っておりまして、いわゆる沖繩に対する施政権という包括的な言い方をされておりますアメリカの施政権下に入っておったわけでございます。それが沖繩返還協定とともに、日本にその施政権が戻ってまいりまして、日本は平穏無事に固有の領土に対する施政権もいまは回復いたしまして、完全に日本の固有の領土になっているということでありまして、これについて領土問題があるあるいは紛争があるというような立場は、日本政府としては一切認めるわけにまいらない、こういうことでございます。
  172. 上田卓三

    上田委員 外務省は、提出されている資料においても、あるいはいまお答えいただいた面についても、いわゆる有力な証拠というようなものについては一言も触れていない、日本政府側、わが国側の主張を一方的に述べるということになっているわけです。しかし、中国は中国でやはり一定の考え方を持っているだろうし、また各国においてもこの問題について関心ある方々は、やはりそれなりの判断を持っておることだ、こういうように思うわけでありますけれども、たとえば明治二十八年、一八九五年一月十四日の閣議決定によって、いま局長がおっしゃったように沖繩県の所轄としたと言うが、それ以前の歴史的事実は無視しているのではないか。つまり尖閣列島は明、清時代の中国人の琉球へのいわゆる航路目標とされ、中国名がつけられ、かつ中国の公的文献に記録されているという面があるわけであります。しかも、その島々は中国の沿海、大陸棚上にあって、中国領であることが自明である島々に連なっておるということ。あるいは三番目には、その島々のさらに先に連なる島は当時の琉球語がつけられ、はっきりと旧の琉球領というものと、いわゆる中国語の使われている釣魚諸島と区別されているということがあるわけであります。また、日本の先覚者でありますところの林子平氏の「三国通覧図説」は、図上色分けされておりまして、清国領と一目で判別するようになっていることも周知の事実ではないか、このように思うわけであります。  外務省の資料は、慎重な編入手続を踏んだかのように描き出しておるわけでありますけれども、実際はいろいろな疑点というのですか、解明されなければならない問題を含んでおるのではないかと私は思うわけであります。  一八八五年から一八九〇年ごろまでの政府部内及び沖繩県の尖閣列島領有をめぐる往復というものは、まず内務省がこの地域領有の意図もあって沖繩県に調査を内命しておるわけであります。次に、沖繩県は、中国領かもしれないので日本領にすることをためらっている、そういう部面もあるわけであります。しかもなお、内務省はやはり領有をしなければならぬ、こういうことから、外務省も中国の抗議を恐れて、いますぐの領有に反対したということが言われておるわけでありまして、そういう状況の中で、その結果、内務省も外務省の意見を入れて一応領有についてあきらめたというようなことがわかっておるわけであります。  日清戦争の日本の勝利、そういうものが確実になったところの一八九四年末に情勢は一変してくるわけでありまして、このとき明治政府は断然と尖閣列島を日本領にすることに踏み切っておるわけであります。そういう一定の武力というのですか、そういうものを背景に、またそういう中国との関係になった時点でやはり一定の行動に移っておるということであります。確かに下関条約でいわゆる奪取したものではないというものの、やはり日清戦争の戦局有利を背景に閣議決定したいわゆる奪取したものであると言っても言い過ぎではないのではないか、私はこういうように思うわけであります。  さらに外務省の資料では、「中国側の文書も認めている」こういうように題して、サンフランシスコ平和条約第三条に基づいて、米国の施政下に含まれた事実に従来何ら異議を唱えなかった、こういうように判断されているわけでありますけれども、しかし外務省は、サンフランシスコの講和会議に中国代表は当時招請されていなかったということをお忘れではなかろう、こういうように思うわけでありまして、そういう意味で、この講和会議のどのような決定も中国を拘束するものではないということは明らかではないか、私はこういうように思うわけであります。  つまりそういう意味で、中国と日本との間のいわゆる領土問題というのですか、政府はもう領土問題じゃないんだ、こういうのは解決済みの問題だということになるかもわかりませんけれども、やはり中国側としては、まだこの尖閣列島の問題について解決済みだというように解釈されておらないわけでありまして、そういう点で本来日中の講和会議を通じていわゆる平和条約の締結をもって解決さるべき問題ではなかろうか。今後中国との間で平和条約は結ばないとか、あるいは中国の戦後処理は完全に終了した、こういうように無理やりというのですか、おっしゃっておるわけでありますけれども、しかしやはり今後日中間でいわゆる国境の画定や領土の帰属をめぐって紛争が起きないと私は断言できない、このように思うわけでありますが、その点についてひとつ外務大臣考え方というものをお聞かせ願いたいと思うのです。
  173. 中江要介

    ○中江政府委員 どういうお立場の方の御議論を展開されたのかは存じませんが、日本国政府の立場とは基本的に違っている、それでいまの御意見を拝聴いたしましても、私どもの立場を変更する理由は全くない、こういうふうに思います。
  174. 園田直

    園田国務大臣 日中共同声明はすべての戦後処理問題は終わったという両方の合意でありますから、これから両国の間で改めて平和条約を結ぶという意見は出てこない、このように確信をいたしております。
  175. 上田卓三

    上田委員 確かに日本側としてはそのように主張されてきたし、いまもなおこの委員会で主張されるのもわからないわけではないわけですけれども、しかし中国側がいま日中平和友好条約締結というこの一点にしぼっておるがためにある程度この問題を出しておらないが、後刻この問題がやはり大きくクローズアップされるときが来るのではないか、私はこういうように思うのです。そういう点で、国民は、何か領土問題何もないんだというような形で理解している場合が多いわけでありますけれども、こういう尖閣列島の問題についても、あるいは安全、平和という立場から見ても、ベトナムと中国との関係の領土の問題も含めて、やはり日本は過去のいきさつの中で深くかかわっているというようなことなども知っていてもらう。何も問題が起こらなければありがたいわけですけれども、しかし起こってきた場合に、政府は一貫して問題は解決しておるというように言ってきたではないかということで、国民は寝耳に水というのですか、そういうようなことになってはならない、こういうように思いますし、やはりそういう立場で平和友好条約、これは早期に締結していただかなければなりませんけれども、同時に中国側と完全にそういう意味では、こちらは一方的に解決したと言ったって、向こうは解決していないと言っているのですから、そういう点で私は領土問題を含めてやはりそういう声明でただ単に終わらせるのではなしに、平和条約というものを結んでもらいたい、結ぶべきである、こういうように考えるわけです。大臣からもう一度もらっても、恐らく先ほどと同じような答えであろうと思いますが、いずれこの問題は友好条約が締結した後においても、これは私たちにおいても非常に関心を持っておる問題でございますから、われわれとしてもこの問題について質問を続けたい、このように思うわけであります。  さて、次の問題に移りたいわけでありますが、大臣は二月の十六日に参議院の外務委員会で、いわゆる日本敵視条項を盛り込んだ中ソ友好同盟条約について、実質的に失効したものと判断しているとの判断を示されたわけでありまして、特に中国の要人は、名存実亡と言っており、こうしたことを国民が納得できるよう交渉の過程で明確にしたい、このように述べておられるわけであります。中国側の何らかの保証を取りつけたいとの意向を示されておるわけでありますが、このことは事実なのか、そういう気持ちで日中交渉に臨もうとされておるのか、その点について、ひとつ事実関係からお聞かせいただきたいと思います。
  176. 園田直

    園田国務大臣 そういう趣旨の発言はしておりますが、御理解は少し違うような気がいたします。  中ソ同盟条約は、ソ連でも私は話題にいたしました。そして、ソ連に対しては、中ソ同盟条約というのがあって、日本を敵国視しておられる、その条項がある、したがって、この中ソ同盟条約を将来続けられるのか、あるいは打ち切られるのか、これは内政干渉にわたることであるから、私は申しませんけれども、この条約の中に日本を敵国扱いにする条項だけは削除願いたい、こういう話をいたしました。そこでソ連の方では、中ソ同盟条約を続けるのか打ち切るのか、中国の態度はわからない、こういう返答をされて、ソ連自体はどうするかということは全然返答がございませんでした。これと同様に日本でも、一方中国と友好条約を結びながらソ連とも平和条約を結ぼうとしておるし、あるいはアメリカとも安保体制があるわけでありますから、中国がどこの国とどういう条約を結ばれようとも、これをこちらから干渉する資格はないわけであります。しかしながら、そこに敵視条項がありますから、日本の国民の大多数は、これはどうなるであろうかという不安を持っておられるのが実情であろうと考えますので、私は、もし訪中をいたしましてそういう機会がありましたならば、中国に対して、これはどうなさるのか、あるいは敵国条項はどうなさるのかという、日本国民が納得のできるようなことを相手に聞くなり、あるいは意思の表明を受けるなり、何らかの方法でこの点ははっきりしてもらいたいということであって、日中友好条約の中にこれを明確にしたいという意味の発言ではございません。
  177. 上田卓三

    上田委員 中ソ同盟条約が日本を敵国扱いしている、敵国条項があるということでありますけれども、これは歴史をひもとけばすぐわかることでありますけれども、これは第二次世界大戦中のいわゆるファシズム国家と言われましたところのナチ・ドイツとかあるいは日本のそういう軍国主義、帝国主義というものに対して、やはり今後日本が軍国主義、帝国主義を復活し、二度とそういう忌まわしい侵略がないように、あったときという立場で、日本そのものを敵視したんじゃなしに、いわゆる日本国民自身が敵視しているところの日本の軍国主義の復活やあるいは日本のそういう他国侵略というものに対して備えたものであって、私は第二次世界大戦中のファシズムに対して非常にみじめな殺戮を繰り返された国のそういう条約というのですか、敵国条項というのは、国連憲章で認められているものじゃないんですか。その点、ちょっとお聞かせいただきたい。
  178. 園田直

    園田国務大臣 戦争直後なら別でありますが、ただいまは両国の関係が変わってきておるわけであります。そしていま友好条約を結ぼうというわけでありますから、名存実亡とおっしゃっておりますか、これは訪中の方々に言われたことであって、向こうの政府がこちらの政府に言われたことではございません。したがって、これはどうなりますか、こういう個条は困ります。こういう意見を言うぐらいは、私は当然であろうと思います。
  179. 上田卓三

    上田委員 外相自身、先ほども私、例にとりましたけれども、いわゆる外交演説で、日本外交の基本目的が、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないことだと、こういうように述べておられるわけでありますし、中ソ同盟条約の前文は、その目的が、日本帝国主義の復活及び日本の侵略の防止と、こういうふうに示しておられるわけでありまして、日本のいわゆる防衛という意味とやはり性格が大いに違っておる、私はこのように思うわけであります。そういう点で、やはり外相自身の、いわゆる他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないということが事実だとするならば、やはりこの中ソ同盟名存実亡ということを中国の要人が言ったということでありましょうけれども、日本はやはり中国とも仲よくし、ソ連とも仲よくしていかなければならないというときに、そういうことに対して内政干渉がましいことを日中平和友好条約の時点で持ち出すということは、私は、非礼ではないか、内政干渉だと言われても仕方がないのじゃないかということで危惧をいたすわけでございます。  特に、かつて日本の軍国主義の、いわゆる長年の侵略によって、数え切れない苦難を経験した中国の民衆に対して、いわゆる日本帝国主義の復活と、日本の侵略の防止を目的とする条約の破棄を強要するというのでしょうか、あるいはそういうことを要請するということは、絶対に日中両国人民の信頼と友好に役立たない。いま確かに不幸な状況でございますけれども、中ソの関係は対立していることも事実でありますけれども、やはり中ソ自身が仲よくなるということ自身が日本の平和にも関連するし、アジア、ひいては世界の平和につながることでありますから、そういう点で、別段中国とソ連とけんかさせるつもりはなかろうとは思いますけれども、こういうような発言をされるということはどうか、こういうふうに思うのですけれども、外相の考えをもう一度述べていただきたいと思います。
  180. 園田直

    園田国務大臣 ちょっとお聞き違いがあるのじゃないかと思いますが、私は、この条約を破棄しろとか続けろとか、そういう内政干渉はいたさぬということははっきり言っているわけであります。しかし、たとえ軍国主義の復活、これはわれわれも身を張って反対するものであります。しかし、それを他国と両方の条約の中に入れられて、特に日本侵略などという言葉があって、それで結構だという日本国民はおられぬと思います。したがって、これに対する向こうの御意向を承り、日本国民が納得するようなことを話してくることは、これは日本国民大多数の御希望だと私は理解をいたしております。
  181. 上田卓三

    上田委員 そうすると、その中国側から何らかの保証を取りつけるというその中身はどういうことなんですか。
  182. 園田直

    園田国務大臣 保証を取りつけるなどという発言をした覚えはございません。
  183. 上田卓三

    上田委員 何を取りつけてくるのですか。
  184. 園田直

    園田国務大臣 取りつけるという発言はいたしておりません。私の発言は、そういう日本の国民が納得するような何らかの方法を向こうで話してきたい、こういう意味の発言をしております。
  185. 上田卓三

    上田委員 その何らかのというのがよくわからないんですけれどもね。われわれとして、いま外相がおっしゃったように、そういう内政干渉がましいことはしないということであろう。また同時に、日本が軍国主義あるいは帝国主義を復活するということは身を張って阻止したいという決意はよくわかるわけですから、そういう点で、やはり対ソ連との関係もあるわけでありますから、この問題に対して、余り中ソの問題に対して深くかかわらない、それよりも、中国も日本と仲よくしたいということでありますから、そういう点に重点を置くべきであって、そういう中ソの関係に手を深く突っ込まないでいただきたいということを要望しておきたい、このように思うわけであります。日中問題については一応これで終わっておきたい、こういうふうに思います。  残り時間も少ないようでございますけれども、次に、日ソの問題について若干御質問申し上げたい、このように思うわけであります。  一月の日ソ外相会議にソ連側より提出された日ソ善隣協力条約を預かったままで検討しない、金庫にしまっておく、こういうふうに判断された理由について、まあ新聞なりその他でいろいろと見聞きいたしておるわけでありますけれども、ここでもう一度明らかにしていただきたい。  また政府としては、領土問題をたな上げにしたまま新たな日ソ関係を規定する条約など締結する考えはないということも言われておるわけでありますが、そういうことであるのか、お答えいただきたいと思います。
  186. 園田直

    園田国務大臣 日本の方針は終始一貫しておりまして、戦後未解決の問題、いわゆる四島一括返還、この問題を解決をしてソ連と日本の間に平和条約を結びたい、これがすべての前提条件である、こういうことは私は向こうで言ってまいりました。
  187. 上田卓三

    上田委員 講和条約以来のそういう事実を公平に、また冷静に振り返って、日本の主張は一体国際的に説得力を持っているのかどうかということをこの際考えてみる必要があるのではないか、私はこういうように思うわけであります。とどのつまり領土問題というものは、日本はサンフランシスコ講和条約の第二条で千島列島に対する権利、権原を放棄した、こういうようにうたっているわけでありますが、その千島列島に国後と択捉が入っているか否かということが大きな問題であっただろう、こういうように思うわけであります。このサンフランシスコ講和会議で当時日本の代表はこれをどのように理解し、発言したかということが大事であろうというように思います。向こう側の記録には全部それが載っているわけでありますから、そういう点で当時のそういう経過あるいは記録というものをやはりもう一度思い起こしていきたい、このように思うわけであります。  当時吉田首相は、千島ははっきりと放棄した、この南千島、いわゆる択捉、国後は当然千島列島の中に入るという形で理解をしておったのではないか、こういうように思うわけであります。そのことは、一九五一年の国会で西村条約局長が「條約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。」これは一九五一年の十月十九日に答えておるわけであります。しかしその後経過する中で、この条約を四十八ヵ国が批准してから、吉田元首相は西村条約局長に若干答弁を変えさせておると言ってもいいのではないか。それが国内向けの苦肉の策であれ、国際的には日本ははっきりと放棄しているということではないか、このように思うわけであります。  特にソ連は、平和条約を結んだときに歯舞、色丹は返す、このように鳩山元首相に約束をしておるわけであります。しかし択捉、国後は、こうした経過からともかく千島の中に入っていないのだという形でどこまで言えるのかという、過去の経過の中で私は申し上げておるわけでありますけれども、マリク・ソ連代表と松本日本代表のいわゆるロンドン交渉も、日本のやり方に、そういう意味では弱さというのですか弱みというのがあったことは事実ではないか。この交渉は、四島一括ではなく歯舞、色丹でやりとりがなされて、ソ連は、平和条約締結のときには返す、このように約束されたと言われておるわけであります。そこで日本側は、それじゃ次は国後、択捉の返還を要求します。こういうようにやったので、相手は怒って、それは違うということで、それ以来、国後、択捉の話はソ連が拒否をしてきておるわけであります。  やはりこうした経過を一番よく知っておるのは外務省であるわけでありますから、そういう点で、感情に走ることなく冷静にソ連と平和条約、特に領土問題の――われわれについても全千島という要求があるわけでありますし、国民全体もそういう考え方が強いことは事実でありますけれども、しかしながらやはり事領土問題については、ソ連との関係について、あるいは国際条約の中でそういう経過というものもあることも、これまた事実であるわけでありますから、そういう点で、この時点で、四島一括返還ということの中で平和条約というそういう考え方自身、われわれ自身どう言うことないわけですけれども、ただ問題はソ連側から出されておると言われているところの日ソ善隣協力条約、これをわれわれは問題にできない。もう平和条約が先だ、四島返還が先だということを言われておるわけでありますけれども、しかしながらやはり平和条約に行くまでの段階的なそういうものがあってしかるべきではないのか。そういう貿易の関係についてもすでに開始されていることも事実でありますけれども、やはり一歩一歩詰めていく、そういう中で平和条約というものにこぎつけていくということがいまの時点で大事ではないかと思うのですが、その点について政府考え方というものをいま一度お聞かせいただきたい、このように思います。
  188. 園田直

    園田国務大臣 日ソ平和条約、未解決の問題を解決してやる、それがすべての前提であるということは一貫して変わりはございません。しかしその他の問題で合意できる点はどんどん話を進めていくという点においては、外相会議、経済閣僚会議等、逐次話を進めているわけでありますから、そういう方向から友好関係、相互理解を深めていくことは当然でございます。
  189. 上田卓三

    上田委員 大臣は二月の二十七日、大阪の経済団体との懇談会の講演で、ソ連の日ソ善隣協力条約について、アメリカと手を組んでソ連に脅威を与えるなとか、あるいは相手に脅威を与える事態があれば双方が協議して第三国の覇権行動を防ぐ、の点が明記されているので、いわゆる東欧などとの同盟条約とほぼ同じであり、米国あるいは中国と日本の結びつきを弱めて日本を孤立化させた上で、東欧諸国と同様の関係に持っていくことがソ連の本心と判断していると語った、こういうふうに報道されておるわけであります。  ソ連が発表いたしております。また園田外相に手渡したと言われる日ソ善隣協力条約のいわゆる草案のねらいが東欧並みもくろみ、こういう外相の発言が朝日とか毎日、読売、日経、サンケイに大々的に報道され、NHKのテレビでも同様の趣旨報道されておるわけでございます。しかしながら、私ここに資料を用意してお渡ししますから、委員長の方で、後で議事録に掲載していただくようにお願いをしたいというように思うわけでありますけれども、この日ソ善隣協力条約の第五条、ちょっと読みますが、「双方の意見によって、平和維持に危険とみなされる情勢が発生した場合、もしくは平和が侵犯された場合、情勢改善のために何が可能かについて意見交換する目的で、即座に相互に接触し合う。」こういうように書いてあるわけですけれども、これをちょっと見ますと、ソ連とカナダとか、あるいはソ連とイタリア、あるいはソ連とフランスその他の国々ともこういうよう議定書というのですか、というものが交わされている場合に、日本に示されたものと同じものが出ておるわけでありまして、もしか日本がそれは東欧並みのもくろみだ、こういうように言うならば、カナダとかあるいはイタリアとかフランスも、そういう議定書を結んだということになるわけでありますけれども、そういう点で私はちょっと間違っているのじゃないか、あるいは私自身園田外相の趣旨というものを十分に理解できておらないのかもわかりませんが、その点についてお答えいただきたいと思うのです。
  190. 園田直

    園田国務大臣 私が大阪で以前に発言をいたしましたのは、この善隣協力条約の中に、前の方にはわが国が米国との安保条約体制を解消して中立政策をとるような意味のことが述べられておるし、さらにはソ連とより密接な関係に立つことを希望しておるであろうことを一般的に述べたものでありまして、東欧諸国に言及したのは、ソ連と密接な関係にある国の例として挙げたわけであります。また、この草案についての一般的印象を述べたものであって、具体的条項に対する論評を加えたものではございません。
  191. 上田卓三

    上田委員 三月十二日の読売新聞の世論調査でも、「四島一括返還を貫くべきだ」というのが四二・三%、あるいは「柔軟に対処すべきだ」というのが三五・四%、こういう形で反応があるわけでございます。いまの経済不況の中で日中の国交回復も非常に大事でありますが、また同時に、ソ連との善隣友好というものも非常に大事だ。私は、一日も早くそういう平和条約というものも結ばなければならぬということも事実だというように思うわけでありますが、それまででも、ソ連と多くの先進諸国が議定書というような形でいろいろ友好条約がなされておるわけでございますので、そういう点で、平和条約が達成されるまでたとえば協議に関する日ソ間の議定書といったものを結ぶ、そういう気がいまなおないのかどうかということについてお聞かせいただきたい、このように思います。
  192. 園田直

    園田国務大臣 政府方針には何ら変化ございません。条約を結ばなくても必要なことは逐次やっていけるわけでありますから、そういう日ソ間の友好関係の問題は逐次解決していきたいと考えておりますから、平和条約を結ぶ前に他の条約を結ぶ意思はございません。
  193. 上田卓三

    上田委員 先ほど委員長にお願いしたように、資料を配りますから議事録に――結構ですね。
  194. 始関伊平

    始関委員長 先例を調べまして、後で理事会で協議いたします。
  195. 上田卓三

    上田委員 前例ありますよ。先般外務委員会で添付されていますね。外務大臣もよく御存じだと思います。いいですね。添付してくれますね。
  196. 始関伊平

    始関委員長 議事録へ載っけるかどうかにつきましては、先例を調べて理事会で協議をいたします。
  197. 上田卓三

    上田委員 先例があれば載せてくれますね。
  198. 始関伊平

    始関委員長 理事会で協議をいたしますから……。
  199. 上田卓三

    上田委員 先例があれば載せてくれるのですね。
  200. 始関伊平

    始関委員長 そういう点を調べまして、相談して……。
  201. 上田卓三

    上田委員 それじゃ先例があれば載せていただくということで、私の発言を終わります。
  202. 始関伊平

    始関委員長 おしまいですか。――よろしゅうございますか。――先例を調べて御相談いたします。
  203. 上田卓三

    上田委員 あれば載せていただくということでしょう。
  204. 始関伊平

    始関委員長 そういう御希望であることを承って、後で皆さんの方の理事の方とも相談いたしますから。
  205. 上田卓三

    上田委員 先例があれば載せてくれていいのじゃないですか。先例があれば、載せているのに私だけ載せないということはないでしょう、希望しているのですから。
  206. 始関伊平

    始関委員長 先例が全部載せているものかどうか、実はこういう問題は初めてなものですからね。
  207. 上田卓三

    上田委員 初めてじゃないですよ。今国会ですでにありましたよ。
  208. 始関伊平

    始関委員長 上田君、あなたの方の理事の皆さんともよく相談いたしますから、御了承願います。  上原康助君。
  209. 上原康助

    ○上原委員 私は、法案に関係することにつきましては先日いろいろお尋ねをしたのですが、ぜひこの機会に外務省と防衛庁、防衛施設庁ですか、に少しお尋ねをしておいて、ぜひ御努力をいただかなければいけない点がありますので、少し時間をいただけましたから、わずかの時間ですが、質問をさせていただきたいと思います。  もうすでに御承知おきかと思うのですが、去る三月十日に在沖米陸軍は、在日米国陸軍支援責任についての整理統合計画というものを発表いたしております。この件については外務省、御承知おきでしょうか。
  210. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 御指摘の点につきましては、ことしの三月在京のアメリカの大使館から概要について報告を受けております。
  211. 上原康助

    ○上原委員 皆さんが在日アメリカ大使館の方から受けた内容というのはどういうふうになっているのか、概略を御説明いただきたいと思います。
  212. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 私どもがアメリカ大使館から受けました通報によりますところの概要は、これはいずれも七八年中に実施の予定ということでございますが、まず、牧港の補給地区とキャンプ瑞慶覧の支援体制を陸軍から海兵隊に移管するということでございます。それから知花の弾薬庫と知花サイトを空軍に移管する。それから瀬名波通信施設と奥間レストセンターと那覇の冷凍倉庫を空軍に移管する、こういうことでございます。
  213. 上原康助

    ○上原委員 いままで、在沖米陸軍の施設を米海兵隊、米空軍に移管をするということで、日米間でこのような協議をしたとか、たとえば合同委員会議題になったとか、そういう経緯はございますか。
  214. 菊池久

    ○菊池政府委員 まだ合同委員会議題になったことはございません。
  215. 上原康助

    ○上原委員 どうも外務省のアメリカ局長の御答弁にしても、いまの労務部長の御答弁にしても、余り内容について御存じないような印象しか受けないわけです。これだけ重要な機構統合、在日米軍基地の主要部門についての整理統合であるにもかかわらず、いままで日本側と正式な協議もなされていないで、米側の一方的な考え方で強行されようとしていることに私は改めて非常な疑問と憤りを禁じ得ません。  そこで、きょうは時間がありませんので、この三月十日に在日米陸軍、いわゆる在沖米陸軍の発表したこの統合計画というものの具体的内容は、一体いつまでに明らかになるのか、そのことによって影響する雇用員の数はどのくらいなのか、ぜひこの際明確にしておいていただきたいと思います。
  216. 菊池久

    ○菊池政府委員 在沖米陸軍の再編成計画につきましては、五十一年度にその計画が発表されまして、逐次各軍間の移管が行われておりましたわけでございます。今度三月十日に発表されました再編成計画もその一環であるというふうに承知しております。  当庁としましては、さきの移管計画の実施に当たりましては、従業員に対する影響を最小限にとどめようということで米側と鋭意折衝を重ねまして、従業員の雇用の確保を重点に置きまして、ほぼ九〇%の従業員の雇用を図ったところでございます。今回の計画につきましても、まだその細部につきましては米軍部内で決定を見るに至っていないというふうに聞いておりますので、当庁としましても、関係従業員の雇用の確保を中心としまして、当該計画の発表の直後に米軍司令部に対しましては、早速申し入れを行った次第でございます。  さらに、問題の重要性にかんがみまして、担当官を現地に派遣いたしまして、現地米軍に対し同趣旨の申し入れを行っている最中でございます。なお米軍の方も、今回の計画の実施に当たりましては、関係従業員の雇用の確保には最善の努力を払うということを当庁に表明してしてきておる次第でございます。いまだにはっきりはしておりません。
  217. 上原康助

    ○上原委員 いまだにはっきりはしていませんと言っているが、三月十日に発表になった「在日米国陸軍支援責任の整理統合」という文書を十分皆さんお読みになっておるのですか。「これまで、米軍は日本政府に対し、在日米国陸軍と他の在日米軍間のサービス支援業務の整理統合に関する情報を提供いたしました。」こういうふうに明確に書いてあるわけです。さらに三ページの上段ですが、「予備交渉の結果によると、受け入れ側の米軍では、場合によっては在日米陸軍から移管される日本人従業員の数より少い人員を必要とし、又は在日米国陸軍従業員が所持する技能以外の資格を必要とすることもあり得ます。この場合、人員整理措置が必要となります。」こういうふうに具体的に、皆さんと協議の上でやってきたということをアメリカ側はこの声明文で言っておるではありませんか。私がいま言っておるそんな抽象的なことでなくて、今度の整理統合計画によってどのくらいの数の日本人従業員に影響していくのか。この計画は今年末までということになっておるけれども、具体的にはどういう手順を踏んで、いつまでに日米間では話が詰まるのか、そういうこともなくして、これだけの重要な計画をただ一方的に進めさせていいのですか。そのことが政府間ではどうなっておるかを私はお尋ねしておるのです。
  218. 菊池久

    ○菊池政府委員 現在米陸軍とユーザーであります海兵隊並びに空軍と話をやっておるということでございまして、まだその具体的内容がわかりませんので、わかり次第われわれの方に通報するように、事前に通報するようにということで申し入れている次第でございます。
  219. 上原康助

    ○上原委員 労務部長、失礼ですが、あなた初めてでこういう問題に十分御理解をいただいていないのじゃないか、そう思わざるを得ないのですが、在沖米陸軍関係の雇用員の数は何名ですか。牧港サービス地域にはどのくらい働いておるのですか。知花弾薬庫地域にはどのくらい働いているか。この声明文の中で明らかになっている部隊の移設に係る従業員の数、それによってどのくらいの人員整理があるかは皆さん推測できるでしょう。法律上の雇用主は施設庁、政府ではありませんか。そのくらいのことも把握せぬでこれだけの合理化問題、ただアメリカのやりたいほうだい、勝手にさせるのですか。もう少ししゃんとした考え方を明らかにしてください。そうでないとこの法案も通せない。冗談じゃない、外務省も含めて。大使館から紙切れをもらって、はいそうですかということが日本政府の態度ですか。ちゃんとここにこれだけ重要なことを発表しておるじゃないですか、三月十日に米側が。しかも、三月十七日に施設庁長官と防衛庁長官にも私は申し入れをやった。同時に、三月十四日には駐労共闘からも申し入れがなされておるはずなんです。
  220. 菊池久

    ○菊池政府委員 ただいま先生から御指摘ございました在沖米陸軍の中に勤務いたします従業員の数でございますが、牧港補給地区におきましては、これは十二月三十一日現在でございますが、総数で千九百二十七名でございますが、そのうち米陸軍に所属します従業員が千三百六十八名でございます。それからキャンプ瑞慶覧におきましては、全従業員数が千六百三十九名のうち陸軍関係が五十三名でございます。さらに知花弾薬庫につきましては、三百七十九名のうち陸軍関係が三百二十九名でございます。さらに瀬名波通信施設につきましては五十三名でございます。全部陸軍関係でございます。それから奥間レストセンターにつきましては、三十八名中陸軍関係従業員が、MLC、IHAを含めまして三十八名という内容になっております。このうちマリーンにどの程度トランスファーできるかという具体的な内容につきましては、いまだに明確になっておりません。
  221. 上原康助

    ○上原委員 いまだに明白になっていないということで、じゃ、いまだに明白になっていなければ日本政府はどうするつもりですか。いまあなたがおっしゃっただけでもざっと二千名の人々が該当するわけですよ。二千名の方々がどんどんこの不況の中で、しかも中には二十四、五年働いておる人もいる。しかも、アメリカ側はこの声明の中で、基地そのものは日本政府には全然返さないと、今回ははっきりと言っているのですよ。在日米陸軍の機能も全く変更はないということをこの声明文の中で言い切っている。にもかかわらず、働いている雇用員だけは解雇される。そういう状況を拱手傍観して許すいわれはないじゃないですか。具体的にそれに対して政府はどのように対処するのか、お答えください。
  222. 菊池久

    ○菊池政府委員 先ほども申し上げたのですが、在日米軍司令部に対しましては、早期情報の提供ということで三月十日過ぎに直ちに申し入れをいたしました。さらに当庁の職員をただいま沖繩に派遣しておりまして、対軍折衝をさせている最中でございます。
  223. 上原康助

    ○上原委員 そこで、あなたにいろいろお尋ねしても余り要領を得ないようですから、これ以上多く申し上げるわけにもいかないような感じがしますので、これは外務省もぜひお聞き取りをいただきたいのですが、私は前々から絶えず疑問を持っているのですが、労務の問題とか基地の整理統合、縮小ということをよくおっしゃるにもかかわらず、余りにも形式的なことだけで済ましているのじゃないかという感じを受けるのですね、一連のこの基地の整理統合を見ますと。今回の基地の整理統合というのは、明らかに在韓米軍の撤退問題と関連していると私は思うのですね。予算委員会なり本内閣委員会などで在韓米軍撤退がどのような影響を在日米軍基地に与えるかということに対しては、与えないということを言い切ってきた、前外務大臣もあるいは防衛庁長官も。しかし、明らかに沖繩の基地の動きを見てみると、こういうところにも影響が出てきているわけですね。したがって、これだけの重要な整理統合であり、かつ二千名近い人々が解雇されるかもしれない、あるいはそのうちの三分の二ないし半分くらいは配置転換という形でできるかもしれませんが、問題は既得権の保障ということも出てくるわけですね。一たん解雇されて引き継ぐのか、あるいは継続雇用するのかということも全然明らかにされない。そういうことについて少し、防衛施設庁任せでなくして外務省なりが外交的な立場でアメリカ側とじっくり話して、合同委員会の中でも詰めて、そういう議題の中で話し合った後にアメリカ側がその計画を発表するとか、事を運ぶというような方向に変えないと、これは犠牲を受けるのは働いている労働者なり県民だけに、日本人ということになりますよね、大臣。そういうことについては、もう少し毅然たる態度で対米交渉をやって、この計画そのものも日本政府と十分内容も詰めてから実施に移すということぐらいは取りつけていただかないと私は納得できないのですがね。  この点について、もう時間もありませんから大臣の決意を促しておきたいと思うのですが、御所見を賜っておきたいと思います。
  224. 園田直

    園田国務大臣 ただいま上原さんの質問、発言を聞いておりましたばかりでなく、前々から外務大臣として考えているところがございます。それは、あなた方とわれわれは立場が違いまして、日米安保体制は日本のすべての基軸であります。したがって、その安保体制を緊密に体制をとるのには、今後は基地問題が一番問題になってくると存じます。これはアジアの他の国々を考えても当然であります。したがって、その基地問題というのは、地域住民の方がまあまあがまんができる、納得できるということにわれわれは努力しなければならぬ。それについては、第一は、御承知のとおりに外務省、防衛施設庁その他、業務を分散をしておりまして、そしてとかく何となしに出てくることを受けて立って、それをお互いが始末するというかっこうになってくる。これでは本当の基地問題の対策はできない、こう考えておりますので、この点を十分検討して、そしていまのような問題でも、この前は千百名のうち百名は解雇、あとは配置転換で終わりましたけれども、今度は軍の支援補給部隊を各軍に移管するわけでありますが、諸般の情勢から見てどうも配置転換によってできるものと解雇になるもの、解雇になるものの数がこの前よりもふえるのじゃないかと想像はできるはずでありますから、こういう場合には向こうからの通告を待ってやるのではなくて、これは最終の責任は日本の政府でありますから、この時期に解雇される人のことを思えば、こちらが進んで向こうに積極的に、どれくらい配置転換するのか、どれくらいどうやるのかということを聞いて、それについては、こういう問題はこうだからなるべく配置転換をふやせとか、そういう折衝をやるようにしなければ、今後基地問題ばうまくいかない、こう考えております。  私今度アメリカへ参りましたときには、国務長官と会いますが、こういう問題についてはこちらから積極的な発言をする。同時にまた、外務省、防衛施設庁その他の関連ももう少しうまくいくように、責任者がちゃんと会ってやらないと、どうもこういうものはいままでの交換文書だとか慣例にとらわれてそれに流されていく、そのうちに基地問題はどんどん変わっていく、そこに地域の不平が出てくる、こういうことが出ております。私は前々からそういう考え方を持っておりましたが、いまの御質問を聞いてその感を深くしておりますので、そういう方向で決意を固めて善処したいと考えております。
  225. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそのように大臣御自身もやっていただくと同時に、事務当局に対しても、合同委員会なりで十分詰めてその後に米側にこの計画は実施に移させる、それで既得権の保障と、解雇というものを極力避ける。原則的には反対です。そのことを詰めていただきますね。それが一つ。  もう一つ、基地内の交通方法変更問題についても、日本人従業員の対策はいま皆無ですよ。全然なされていない。その二つについて十分日米間で話してやっていただきますね。
  226. 園田直

    園田国務大臣 交通問題は、御承知のとおりに総理府の所管でありますけれども、いまの御意見は伝達をいたしますし、また、基地問題、雇用問題についてはいまのような方針でやっていくつもりでございます。
  227. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  228. 始関伊平

    始関委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  229. 始関伊平

    始関委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  230. 始関伊平

    始関委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  231. 始関伊平

    始関委員長 ただいま可決いたしました本案に対し、村田敬次郎君、上原康助君、鈴切康雄君、受田新吉君、柴田睦夫君及び中川秀直君から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。村田敬次郎君。
  232. 村田敬次郎

    ○村田委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブの各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、速やかに検討の上、善処するよう要望する。  一 我が国外交活動の基盤を強化するため、効率的な人事運用、人材の登用、研修の充実等に一層意を用いること。  一 勤務環境整備の必要がある地域勤務する在外職員の勤務条件等について、引き続き格別な配慮をすること。  一 在外公館勤務する職員が、安んじて職務に専念しうるよう警備の強化、補償制度の充実等適切な措置を講ずること。  一 在外公館の事務所及び公邸の国有化を推進するとともに在外職員宿舎の整備に努めること。  一 在外公館の査察を一層強化すること。  一 全日制高等学校の新設を含めた日本人学校の拡充、子女教育手当の充実、帰国子女教育制度改善、教育施設の整備等総合的に海外子女教育対策を推進すること。  一 帰国子女教育については、我が国の大学への入学につき、在外教育施設において取得した資格を認めるとともに、国語学力の一時的なおくれに対しては、その選考方法について適切な配慮を加えること。   右決議する。  本附帯決議案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じまして、すでに明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成をお願い申し上げます。
  233. 始関伊平

    始関委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  234. 始関伊平

    始関委員長 起立総員。よって、村田敬次郎君外五名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。園田外務大臣
  235. 園田直

    園田国務大臣 ただいま在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案を御可決いただきまして、まことにありがとうございました。  また、本法案の御審議の過程において、本委員会が真剣に御審議をいただき、外交活動の基盤強化につき、深い御理解と貴重な提案をしばしば行われ、配慮を示されたことに対し、厚く御礼を申し上げます。  法律案と同時に可決されました附帯決議の内容につきましては、御趣旨を踏まえ、適切に対処してまいる所存でございます。まことにありがとうございました。御礼を申し上げます。     ―――――――――――――
  236. 始関伊平

    始関委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 始関伊平

    始関委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  238. 始関伊平

    始関委員長 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栂野泰二君。
  239. 栂野泰二

    栂野委員 私は、設置法の一部改正法律案に関連いたしまして、二つの問題についてお尋ねしたいと思います。  初めに、監獄法の改正問題ですが、この問題は、いま法制審議会で審議が進んでおります。監獄法の改正部会では、一番問題の代用監獄の問題に審議が移っているやに聞いておりますが、いまその辺の進行状況はどうなっているかお尋ねしたいと思います。
  240. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 いま栂野委員から御指摘のように、監獄法改正部会は、一昨年の三月法制審議会の総会に諮問いたしまして、その後部会が開かれて、私の記憶では、本年三月をもちまして二十四回の会議が行われておりますが、そのうち二十二回、二十三回、二十四回の三回、すなわち一月から三月にわたりまして代用監獄の審議をいたしました。その結果、細かい問題点を小委員会でさらに検討するということで、近く小委員会検討が行われる予定でございます。
  241. 栂野泰二

    栂野委員 そこで、この代用監獄について、法務省は存続するというお考えなのか、それとも廃止の方向でお考えになっておるのか、その点はいかがですか。
  242. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 御承知のように、法制審議会で自由な御意見をちょうだいするたてまえから、審議の内容その他につきまして詳しく申し上げ、あるいは法務当局の考え方を明らかにすることは必ずしも適当ではないかと思いますので、その辺をまず御了承願いたいと思います。ただ、監獄法改正上の問題点の一つでございますので、法務当局が監獄法改正部会に提出いたしました「監獄法改正の構想及びそれに基づく細目」の内容について若干御説明を申し上げたいと思います。  代用監獄と申しますのは、御承知のとおり、警察の留置場に犯罪者、未決拘禁者を収容する制度でございまして、刑務所として代用する場合と、拘置所として代用する場合とがございます。私どもの考え方は、刑務所として代用するということにつきましては、従前から論議がございましたので、この際やめていきたいというふうに思っております。ただし、未決拘禁者が代用監獄に入っておりましたときに確定したような場合に、暫定的には代用監獄に収容せざるを得ませんので、そうした経過規定は必要であろうかと思います。  次に、未決の拘置所として代用する点でございますが、これまでの捜査の実態を見ておりますと、代用監獄に犯罪人を収容して捜査をするということの迅速適正な機能を果たしているという点にかんがみますると、直ちに廃止することは困難ではなかろうか。また、仮に現在の警察の留置場への収容を全部やめまして、拘置支所を増設するといたしますれば、多額の費用がかかり国の財政的負担も大きくなるという点がございますので、制度改善はいたさねばならぬと考えておりますけれども、直ちに廃止することは困難であるというふうに考えております。
  243. 栂野泰二

    栂野委員 いまその二つの理由を挙げられましたが、きょうは時間が余りありませんから要点だけ申し上げます。  この監獄法というのは明治四十一年の制定でありますが、この時点ですでに代用監獄制度というのは本来廃止すべきものだ、ただ当時としては、財政問題があるからしばらくはやむを得ないのだ、こういう答弁から始まって、昭和二十二年の七月に設置されました司法省の監獄法改正調査委員会の決議でも明確に、この代用監獄はこれを廃止すること、こういうふうになっていますね。それから昭和二十三年の第三国会の衆議院法務委員会の答弁でも、拘置所を建てたいという希望を持っていて大蔵省としばしば折衝してるのだけれども、残念ながらその運びに至っていない、各方面に多大な御不便をおかけしている次第でございますが、来年度におきましては、全部ということはとうていできませんけれども、重要度のあるものからできるだけたくさんの支所を設置したいと考えて、ただいま本予算の準備をいたしておる次第であります。こういうことで廃止の方向で努力をする、問題はやはり財政問題だと、こういうふうに言われております。それから、これは四十四年の「自由と正義」の二月号、当時の矯正局長の勝尾さん、この人の書いたものでも、監獄法は廃止するという方向でやるのだということをちゃんと言っておられる。  ところが最近になって、どうやら法務省は、財政問題ではなくして捜査の必要性から存続するという方向に転換しておられる。いまの答弁もそうであります。明治四十一年以来廃止に努力すると言いながら――当時は八十九ヵ所しか代用監獄はなかった。ところが現在は千二百ヵ所あるのです。減るどころかふえてきている、こういう状況であります。私は資料をもらいましたけれども、最近は新設は全くない。浦和の拘置所を増設しただけだ、こういうことでございます。  そこで、最初にこの財政問題でお尋ねしたいのですが、理想的には簡易裁判所ごとに対応する拘置所をつくるというのが一番いいわけであります。そういう前提で、この間いただいた資料によりますと、新設が四百二十庁、増設が百五十五庁、ただしこれは十人以上の定員とする、こういう考え方。そうしますと、土地購入、建物整備費で二千七百億円かかる。法務省は、そうだとするとこれは八十年から二百三十年くらいかかる、こういうことを言っておられるらしい。それで、この新設の四百二十庁の中で、各地方で一日平均一人以下しか対象者がないというのが二百十庁ある、こういうことのようですね。  一つ問題なのは、ここに土地購入費となっていますが、どうも二百二十万平米くらい必要だ、こういうことのようですけれども、一体そんなに必要なのかどうか、国有地を使えばこんな土地の入手は必要ないわけで、そこら辺は一体どうお考えですか。
  244. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 栂野委員指摘のように、現在、代用監獄を廃止いたしまして拘置支所を増設するといたしますれば四百二十庁の新設であり、それに建設費土地購入費で必要とする経費が二千七百億である、こういうふうに申し上げてございます。  まず、年間収容人員の平均が一人、二人でございましても、十人のものを用意しなければならないということから御説明申し上げなければならないのでございますが……(栂野委員「簡単でいいです」と呼ぶ)これは一人、二人では職員もそう多くありませんし、その者は毎日夜勤等をしなければならないというようなこともございます。  それから土地につきましては、拘置支所をつくりますれば、炊事場も必要でございますし、運動場が必要でございます。特に都会地におきまして、屋上を使えというお話もございますが、屋上等を運動場に使いましたのでは周りからも、人からも見られる、上から犯罪人が町をへいげいするということに相なるわけでございまして、相当程度の敷地を必要とするという点の計算から二千七百億円を必要とするに至ったものでございます。
  245. 栂野泰二

    栂野委員 そこで、どうしてこの八十年ないし二百三十年もかかるなんということになるのか、仮におっしゃるように二千七百億全部かかるとしまして、本気にやる気になれば、一年で一回というわけにはいかぬでしょうけれども、せいぜい数年でそういう予算は組めるはずではありませんか。  それから、これはやはりいただいた資料なんですが、都道府県の警察の施設費それから整備費の補助金ですね、昭和四十八年から五十二年の五ヵ年間で合計七百三十七億要っている。一体この整備費の補助金は、いまの代用監獄があるということが考慮されているのですか、されていないのですか。
  246. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 ただいま御指摘の資料は警察からの資料であろうかと思います。  警察の留置場の増設あるいは改造に必要な経費でございますが、代用監獄を廃止した場合にわれわれが拘置支所を増設すると申し上げておりますのは、裁判所の裁判によって拘留された後のことでございまして、いわゆる逮捕中に警察が身柄を収容しているという点もございますので、その費用が全部われわれがいただける費用にはちょっと相ならぬのではないかと思います。それが第一点でございます。  それから二千七百億の金で八十年から二百三十年かかるという点の御説明でございますが、実はただいま御審議をいただいております予算案によりますと、法務省の年間の施設費が百二十億でございます。それでこの百二十億で、法務省の官署はたしか二千近くあると思いますが、これを賄っているわけでございますが――大臣に教えていただきましたが、二千八百あるのだそうです。二千八百の分を全部やめまして、全部つぎ込みまして、二千七百億を百二十億で割りますと、そう多くはならないわけであります。しかしながらそういうことは考えられませんので、一割増設を認められて、それを拘置所に回しますと二百三十年、二割回せば百十五年、三割回せば八十年、こうなります。  それから、五年でできるはずではないかというお話でございました。五年ですと約五百億ぐらいの金になりますが、五百億と申しますのは全官公庁、実は国会も含めまして、その分の庁舎等の整備費が五十三年度予算におきまして五百六十億でございます。したがって、国会の増築その他もおやめ願い、在外公館の増築もおやめ願ってやっと五年になる、こういうことでございますので、数字は二千七百という数字でございますが、二千七百億となりますと、なかなか莫大な数字になるということでございます。
  247. 栂野泰二

    栂野委員 計算はそういうことになるかもしれませんが、とにかく明治四十一年から今日まで一体どれぐらいたっていますか。それを全くほっておいての話だからそういうことになるのであります。  それからいま、二階にしたらぐあいが悪いというお話がありましたが、小菅だって千坪あるわけでしょう。そういうところを二階にしたからといって、あそこから下をのぞくようなところじゃありませんし、それから警察の代用監獄施設がある、そういうところとやりくりするということも考えられる。いろいろ財政的にはすぐにとはだれも考えていない。一日平均一人程度のところは、これは簡裁ごとか原則であったって、そこら辺はある程度まとめるという、こういうことも考えられるし、私は、とにかく財政的に無理だという根拠は薄い、熱意さえあれば、財政の問題というのは一時的ではだめかもしれませんけれども、かなりの期間がたてばどんどん拘置所は建っていく、そういう方向が見えてくるというふうに考えております。  それで問題は、捜査の必要という点から法務省が最近になって考え方を変えられた、つまり明治四十一年以来ただ問題は財政だけだと言っていたのが、最近変えられるようになった。ここは大変問題であります。  五十二年の十二月に警察庁の刑事局が「警察の留置場を勾留施設とする必要性」、こういう文書を出しておられる。これは御存じですね。これを読んでみますと、一つは迅速な捜査のためにどうしても必要だ。それからいまおっしゃった効果的な被疑者の取り調べの実施、こういうことですね。書いてあるのは、要するに警察と拘置所の距離が遠くて、やはり代用監獄は、留置場は自分のところにあるわけですから、近くないと早く捜査できないし、効果的な捜査ができない、こういうことだけですね。それから取り調べ室の施設が十分に整備されていなければいかぬという、これだって拘置所でちゃんとそういう整備をすれば問題は解決するはずであります。それから被疑者その他の関係者の利益保護のために、やはり代用監獄はあった方がいいということも書いております。たとえば被害品がすぐに返せる、発見できる、それはやはりいまのような制度でなければいかぬとか、面通しその他捜査の協力をしてもらうのに拘置所ではぐあいが悪い、家族の面会も留置場の方が便利だ、こういうことを言っていますが、これは全くためにする議論で、要するに近くに置いておけば捜査のために便利だ、警察から言えばそういうことになるのでしょうね。  問題は、一体そういう代用監獄がどういう役割りを果たしてきたかということなんですよ。戦前は、とにかく自白が証拠の王と言われた時代であります。だから、どうしても自白さすためには少々手荒いことをする、拷問もしばしば行われたという事例がある。それは全部この代用監獄、留置場でやられたことなんですね。だから、そういう反省の上に立って、しかも戦後は刑事訴訟法体系が全く変わった、近代的な法律構造になったわけですね。当事者主義もとられた。そういうことで、特に戦後は何としても代用監獄は早くやめなければいかぬということになったわけです。  ただ、先ほど申し上げましたように、昭和二十三年ごろは、これは戦争が終わったばかりだったですから、確かに、早くやりたいのだが財政的にすぐにというわけにいかぬ、そういう事情はわかるのです。ですから問題は、その財政的な理由だけであって、結局代用監獄というのがいかに弊害を生じたか、変則的なものかということは、これは全部一致していたはずです。だから法務省もそういう見解をとってこられたはずですね。  ところが最近になって、いま申し上げました警察の主張に同調されるようになってきた。なるほどこの「警察の必要性」の中に代用監獄の批判がある。それに対する反論が書いてあります。まあ代用監獄だと自白の強要があったり人権侵害が行われやすい、それから設備が劣悪で処遇も悪い、それから捜査機関である警察が同時にこの身柄を拘束しているということは、刑事訴訟法の根本にある当事者主義訴訟構造に反するという、いま私が申し上げたようなこういう批判について、そんなことはないんだと言っている。それは結局、読んでみても、要するにいまの法律をちゃんと守りさえすれば――いまの法律には人権侵害をしたりしちゃいかぬというふうに書いてある。それをちゃんと守れば問題でございません、現に警察は守っておりますと、こう言っているんですが、依然として人権侵害が後を絶たない。戦後の名だたる事件で、結局、自白が問題になっている。それは全部留置場で自白を強制されたという事例ばかりでしょう。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 警察官がりっぱな人で教養もある、そういう拷問などしないという、そういうことを言ってみたって、問題は、捜査をやる警察官が二十四時間、調べられる被疑者を全面的に管理、支配しているわけですからね。ここのところが問題なわけです。  それから、依然としていま日本の警察は近代的な捜査の観念がないのです。やはり自白が非常に証拠価値を持っているように考えている。だから、むしろ一生懸命まじめにやる警察官なら、その人の方が何としてもひとつ吐かせようということになるのは自然でしょう。そういうやり方をするために、警察にとって一番理想的な制度は、代用監獄。拘置所をつくれば、そんなことはない。だから、警察がいまのような前近代的な捜査をやるのに便利だから残してくれという、それに法務省が乗っかるなんということはとんでもない話です。大体勾留というのは逃亡のおそれ、証拠隠滅の防止のためですよ。これは私が言わなくともわかり切ったことですね。何も取り調べの便宜のために勾留するわけではない。しかし、現実には取り調べの便宜のために勾留されて、しかもその代用監獄制度が利用されている、こういうことであります。法務省は、たしか昨年あたりからじゃないですか、そういうふうに見解を変えられたのは。そこら辺は一体どうなんですか。
  248. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 御質問が多岐にわたりましたので、最後の方からお答え申し上げておきたいと思います。  何か警察が代用監獄の必要性があるから法務省が意見を変えたという前提での御質問でございますが、さようなことはございません。と申しますのは、冒頭栂野委員は、明治四十一年以来、代用監獄を廃止するという意見であったということでございますが、この点につきましては必ずしもそうではないという意見もあるわけでございまして、明治四十一年の帝国議会における現行監獄法施行の際の論議におきましても、行刑施設として代用することをやめるべきだという意見か、未決拘禁施設としての代用をやめるべきであるかという点につきましては、監獄法改正部会におきましても両様の読み方があるということでございました。  なお、昭和二十二年の改正要綱を御指摘なされましたが、その改正要綱の後の方には、代用監獄を認める前提での制度改善をうたったところもございます。  なお、われわれといたしましても、拘置所の増設につきましては努力いたしているところでございまして、数字で御説明申し上げますと、昭和二十五年には拘置支所が九十二ヵ所、刑務支所が十六ヵ所、合わせて百八ヵ所でございましたが、昭和五十三年のただいまでは、拘置支所が九十二ヵ所から百五ヵ所になっております。と申しますのは、刑務支所の十六を拘置支所の方に転用いたしまして、現在は刑務支所は九つになっているわけでございます。したがって、七つだけ足すと、九十二に七つを足しますと九十九でございますが、百五になりましたのは拘置支所も増設しているからでございます。  私どもが財政上の理由と申し上げておりますのは、ただ金がないということを申し上げているのではないのでございまして、たとえば簡易裁判所所在地における警察にある留置者が四、五十人というところがあるわけであります。年間四、五十人のところについて拘置支所をつくりますと、仮に一日に一人ずつ入りますと、三百六十五日のうち四十日だけは働いているけれども、あとの日は働かなくともいいということになります。入れる者がないのにかかわらず、拘置支所をつくり、職員を配置しておくということは、やはり国民に財政的負担を与えることになるのでございまして、これでいいのであろうかという問題がございます。  それからさらに島とか僻遠の地をお考え願いたいのでございますが、たとえば東京で言いますと、三宅島ですか八丈島かに警察がございます。簡易裁判所は大島にあるわけでございまして、海上百三十キロと聞いております。仮に八丈島に拘置支所をつくりますと、ここ三年間収容人員はゼロだと聞いております。これはつくるのがむだであるということになります。つくりませんで大島まで持ってくるということになりますと、百三十キロの海上を船で持ってこなければならないということになるわけでございまして、またさらに僻遠の地を考えますと、行政効率上非常にむだなところが出てまいるのでございまして、そういうところではどうしてもいわゆる身柄を警察の留置場に置かなければならない。そこにもつくらなければならないということは、国民の財政的負担に過大の負担を与えることになるのではないかということでございます。  それから留置場において自白の強要があるというお話でございますが、留置場の中に取り調べ室があるわけではございませんで、取り調べるのは警察官でございまして、留置場と別なところで調べるのでございます。現に監獄法改正部会におきましても、警察に仮に人権じゅうりん的な自白強要等があるとすれば、それと留置場を持っているところの因果関係は果たしてあるのかという御指摘がございました。  それのほかに、仮に拘置支所に全部移すといたしますと、当該被疑者の調べに警察官は拘置支所に出向かなければならなくなります。そうすると、取り調べ時間が短くなります。短くなりますれば、勾留日数をふやさなければならないということに相なります。あるいはまた、参考人も警察から事情を聞かれ、あるいは被勾留者と対質等をする場合に、調べは警察で受けて、それからさらに拘置支所に行かなければならないという不便が生じます。弁護人の場合も同様でございまして、警察に行って捜査の状況を聞いた上にさらに拘置支所に赴かなければならないということもあります。  それから先ほど証拠物の話がございましたが、証拠物はいわゆる参考人に見せることもありましょうし、被疑者、被告人に見せる場合もありますが、それを運搬しなければなりません。仮に大きな自動車であるとかそういうものになりますとか、最近はやりの爆弾事件の不発爆弾なんというようなことになりますと、警察から拘置所に運ぶのもこれは大変であるということに相なるわけでございまして、現に弁護士さんの一部の方も「自由と正義」に、第一回公判期日までは警察に入れておいてもらった方がいいというような御意見も発表されているのでございまして、そういう諸般の状況を十分考慮し、現実的な処理として何が一番適切かということでもって、先ほど申し上げたような構想、細目を設けたのでございます。  なお、四十五年ごろのお話がございましたが、そのころ代用監獄が果たして廃止できるかどうかということで検討いたしまして、刑務所長、拘置所長の意見を聞いたことがございます。その結果、これは拘置支所の増設ということでとうてい賄うことはできない、むしろ代用監獄を全部廃止するというようなことは半永久的に困難ではないかというような意見も出ているのであります。これらの点につきましては、監獄法改正部会におきまして、私から詳細御説明を申し上げております。そういう点を勘案いたしまして今後小委員会検討し、それをさらに部会に上げまして皆様方の御意見を聞きたい、こう思っているところでございます。
  249. 栂野泰二

    栂野委員 八丈島の話なんて例外的なことはわかっているんですよ。そういうことを言っているわけじゃないでしょう。  それから、私は留置場の中で自白と言ったのは私の言い間違いでして、要するに代用監獄というのは、同じ警察の庁舎内にあるわけでしょう。留置場と取り調べ室は隣り合わせ、そこを言っているわけですよ。  それから、拘置所になると、どうしても不便だから取り調べ時間が長くなって、勾留請求が長くなるなんて、警察のこれにも書いていますが、そんなことはないですよ。拘置所に行ってもいいし、警察へ呼んで調べたっていいじゃないですか。そんなことは理屈にならない。  それから、被疑者の方もむしろ代用監獄の方が取り調べに便利だ。弁護人だってそのはずで、拘置所は不便だという、こういうことを言っておられる。それは拘置所が遠ければ時間的に不便だということはあるでしょう。しかし、そんな問題じゃないじゃないですか。だから、日弁連は全面的に代用監獄廃止論ですよ。不便なことは承知の上ですよ。被疑者だってそうですよ。全部が全部拘置所の方がいいと言うじゃないですか。警察の方がいいなんと言う被疑者はいませんよ。結局そういうところに代用監獄の問題点があるわけではないわけです。それはもうあなたは承知の上でそういうことをおっしゃっている。  それから、証拠物の運搬なんということは、こんな危険物の運搬なんというのは例外中の例外でしょう。そんなもの何も拘置所に持っていかなくたって、それは警察の取り調べ室でやったらいいじゃないですか。問題は、その代用監獄制度を問題にしているのであって、あなたがおっしゃっているようなこんなことが代用監獄の存置論の理由になるとすれば、これはとんでもない話ですよ。四十五年に何かそういうことで検討されたらしいんだが、半永久的に代用監獄がなくならないなんということになったら、これは大変なことですよ。現に国際的にもそうでしょう。日弁連が昨年の暮れに「諸外国における未決拘禁の実態」という本を出していますね。二十二ヵ国、五十一ヵ所の関係機関に質問書を送っている。十二ヵ国、二十三の機関から回答が来ている。イギリス、アメリカ、カナダ、フランス、西ドイツ、オーストリア、イタリア、オランダ、ギリシャ、デンマーク、フィンランド、イスラエル、このうち未決拘禁が警察で行われている、つまり日本と同じなのはイスラエルだけですね。イスラエルというのは、建国以来戦時体制にあるわけでしょう。いまだって大変な状況ですね。全く日本だけが例外的、しかもいま言われたような理由で半永久的に日本は代用監獄制度をとるんだなんということは、これは国際的に言ったって恥ずかしくて言えないことだと私は思う。  それから、これは一九五九年の一月五日から十一日までニューデリーで開かれた国際法曹委員会、ここでも司法官憲に引致された後の拘禁は警察にゆだねてはならない、つまり代用監獄制度は廃止すべきだという決議に、裁判所からも二名、法務省の人権擁護局長もちゃんと出て、この宣言に参加しておられる。流れとしてはそうだったんですよ。ほんのおととし、去年あたりから法務省が見解を変えられた。何も警察が言ったから変えたのじゃないとおっしゃるが、いまおっしゃったようなことは、この刑事局の文書にみんな出ている。そればかりですよ。納得できる理由は一つもない。  それから明治四十一年の国会の答弁、それから昭和二十二年の監獄法の改正要綱の趣旨も必ずしも代用監獄をやめるという趣旨じゃないなんということを、そういう意見があるとおっしゃるが、そんなふうには読めませんよ。いままでそういうことを言ったことはないじゃないですか。最近そういうことを言い出したのじゃないですか。  そこでもう一つ伺いますが、建物はいまのような警察の中であっても、つまり代用監獄を警察の管轄系統から全部法務省の管轄に移すという、こういうことは検討されてはいませんか。
  250. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 ただいま御指摘のような御意見も、監獄法改正部会で出ました。この点につきましては、現在警察が持っているいわゆる留置場の施設を国の拘置所に使うということに帰するわけでございますが、無償でいただくということになりますれば、これは地方公共団体の財政的負担に相なりますし、有償でいただくことになりますれば、これは相当な予算措置が必要であるということがございます。また、拘置支所のみならず、拘置所、刑務所、刑務支所も同様でございますが、われわれは義務官舎を設けまして近くに職員を居住させております。警察の場合でいきますと、夜昼ほかの方が働いておりますからそういうことがないようでございますが、もし警察署の一部を拘置所にいたすということにいたしますれば、その中に、その付近に、あるいは隣接して矯正職員の宿舎もつくらなければならないということになります。そのほか、同じ建物に二つの役所が同居するわけでございますが、やはり責任ある者を置かなければならないということになりますれば、支所長室になりますか出張所長室になりますか、そういうものを置かなければなりません。しかのみならず、千二百の代用監獄全部にそうしたものをつくるとなりますと、相当な職員が必要であるということ等いろいろございますが、省略いたしまして、非常に現実的ではないという意見も出ました。  私が申し上げておりますことば、ただいま部会で審議されておりますので、法務省の意見として申し上げた点は、はっきりその点を申し上げ、あとは部会の審議の状況を御説明しているわけでございますので、全部が法務省の意見として主張しているということでは決してございませんので、その点をひとつ御了解願いたいと思います。  要するに、わが国の警察制度にある面の御批判はございましょう。しかしながら、検挙率がきわめて高く、世界に確固たる治安を維持できているということを誇っておるということは、これは警察の能力の高いことをも実証しているわけでございますが、それを崩すような形で監獄法の改正を行うということはどうかという点につきましては、部会委員全部がお考えになっていることでございます。  なお、外国の制度のことも御引用なされましたけれども、多くの外国の制度は、いわゆる司法官憲に引致された後の警察官による取り調べというものが認められていないわけでございます。したがって、いわゆる代用監獄というのはないわけです。したがって、代用監獄がないところの分で御比較くだされましても、これは何とも申し上げようがないのではないか。日本の刑事訴訟法のたてまえにおける警察の捜査権限というものを前提といたしまして現実的に処理したい、かように考えているわけでございます。
  251. 栂野泰二

    栂野委員 ですから、先進国では最初からこんなものはないわけですよ。だから早くなくさなければいかぬということなんですよ。  それから、いま検挙率の話が出ましたが、検挙率が高いというのは確かにそのとおりですよ。しかし問題は、検挙率が高いというのは、どういう捜査をやってきたのかでしょう。そういう日本の警察の捜査のやり方が戦前と実態は変わっていないという、ここに問題がある。その戦前と変わらないような捜査のやり方、つまり自白が証拠の王だという、どうしても吐かせなきゃいかぬという。そのためには少々手荒なことでもやるということになる。あるいは利益誘導もやる。早く吐かなければ、めんどう見と言うのですな、これは警察では、留置場では、めんどうを見てやらぬと言うのです。こういうことが行われるのが代用監獄制度です。  だからこれをなくさなければいけないのであって、いま確かに、警察の建物の中に拘置所をつくる、それは法務省管轄にするということになれば、組織的にはこれは非常にややこしいことになると思いますよ。しかし、それでもなおかつやはりこの代用監獄というのは早くなくさなければいかぬのだ、そういう立場を法務省がとられるならば、これは解決の方法がある。しかし、現状を肯定するという立場に立つならば、やはりいまのままでいいという、警察と同じことになってしまうわけですね。  きょうはもう時間がありませんから、いずれこれは、まだ法制審議会の段階ですから、また何かの機会に質問させていただきたいと思います。  それで、弁護人抜き裁判の問題ですが、これも本格的な論議は法務委員会で行われることになると思いますので、多くは申し上げませんが、私は、いまごろどうしてこういう法改正を持ち出されたのか、全く理解に苦しむところであります。  これまた法務省刑事局がことしの一月出された「刑事訴訟法の一部改正について」という、なぜ必要かという文書、これを読ましていただいても、全然私には納得ができない。  第一番に、ハイジャック対策の一環として、「過激派による刑事事件の裁判の促進を図る」、こういうことですが、弁護人抜き裁判、必要的弁護の例外を設けて、何でハイジャック対策になるのですかね。何も、未決であろうと既決であろうと、彼らは持っていくわけでしょう。全然これは関係ない。  それから「一部の過激派事件の裁判では、被告人と弁護人とが一体となって裁判を開かせないという法廷闘争の戦術として、この規定を逆用し、正当な理由もなく弁護人が不出頭、退廷を繰り返して裁判を遅らせて」いる、こういうことですね。しかし、この種の事件のこういう問題が起こるのは、裁判を遅延さすというのじゃないのじゃないですか。自分たちの主張を通すというところにあるんじゃないんですか。  それから、そういう法廷闘争戦術というものの代表した例として、連続企業爆破事件、それから連合赤軍事件というのが挙げられておりますが、これも、この連合赤軍事件で弁護人の退廷というふうなことが起きたのは、要するに、言われている百回指定という、裁判所が三ヵ月分、一週間に一回ずつ期日を指定するという、こういうことをやったから問題が起きたのですよ。こんな弁護士の職業の実態を無視したようなやり方をされたら、これは何事件だろうと、こういうことになりますよ。だから結局は、こういう問題の即時抗告があった。東京高裁の決定は、むしろ裁判所のやり方にいささか妥当性を疑わせる点がうかがわれるという、裁判所を批判している。こういう決定が出たので、そこで弁護士会あるいは東京地方裁判所、こういうところがいろいろ話し合った結果、裁判官が百回指定を取り消して月に二回、こういうことに話がなった。それ以後は問題は起きていない。法廷は、言ってみればスムーズに進んでいるわけです。  企業爆破事件でも、これは同じですね。当初は、裁判官が月二回ということで期日指定をしていた。ところが、かわった裁判官は、途端に月四回指定ということを強引にやり始めた。そこで問題が起きた。これも結局は、また裁判官の方が折れて、月二回ということにした。現在は、訴訟はスムーズに進んでいるという。言ってみれば、どこもいま荒れている法廷は一つもないわけですね。  この法務省の文書を読みますと、とにかく皆悪いのは被告、弁護人の方であって、裁判所の方はちゃんと訴訟指揮をやっているのだ、強権的な訴訟指揮がなされているようなことはありませんと、こういうことを言っておられるが、実態はそういうことじゃない。  問題は、「弁護士会の役割」というところで言っておられることだと私は思う。弁護人が裁判のルールに違反したという場合、弁護士会がその弁護士に迅速、適正な懲戒を行うことによって弁護人の違法、不当な行為を防止できることがたてまえだと。ところが過去三十件ばかりの裁判官や一般の人たちから弁護士会に対して懲戒請求がされている、これは弁護人が法廷の内外での訴訟ルールを無視した、こういうことを理由に。しかし一人も懲戒されてないということが書いてある。懲戒されたのは、依頼者から預かった金銭の横領など、そういう犯罪行為をやったような事案ばかりで、弁護活動そのことを理由にして懲戒した例はない、こうおっしゃっている。確かに最終的に懲戒された例というのはないのですね。私はこの三十人というのは一体どういう人たちを指しておられるかわかりませんが、私が調べたところでは、戦後にはメーデー事件で一人ですね。これは東京弁護士会で、懲戒相当ということで綱紀委員会で決定になった。懲戒委員会で、いろいろな事情を考慮して懲戒しないということになった。それから最近では東大事件のときですね。これはいろいろな類型がありますが。これも、弁護士会がまるでほってあるような言い方をされていますけれども、どの懲戒事件についても非常に慎重な審理をやっているのですよ。その結果綱紀委員会が懲戒不相当にしたり、それから綱紀委員会では懲戒相当という結論が出て、懲戒委員会に回って、懲戒委員会がその懲戒を却下するとか、こういうことになっている。  たとえば東弁の却下の事件などは申し立て人資格の問題で、法律上の問題でそうなっているわけです。それから東大事件以外では、その翌年の十・十一月事件と言われる事件があるのですが、これは第二弁護士会です。これも裁判官や一般の人たちが申し立てているのに、弁護士会は何もしないような言い方をしてあります。いま私が申し上げた東大事件それから十・十一月事件の関係は、多くは弁護士会長が申し立てているのです。これは。当時の東京地裁の新関所長の申し立てもありますが、東弁、第二弁護士会の多くの人数については弁護士会長自身が懲戒請求を申し立てているわけです。それを弁護士会の中の綱紀委員会なり懲戒委員会が懲戒しない、こういうことでございまして、まるで弁護士会は全然ほったらかしなんだという印象を与えるような言い方は、私は、とんでもない、実態を無視した言い方だと思っている。  時間がないから、私、言いたいことを先に言いますが、それ以外は、どうも三十人と言われるのを見ますと、十・十一月事件に絡んで、結局は私選弁護人が亡くなって、それで弁護士会が国選弁護士を選任した。ところが言うところの過激派の被告たちがなかなか一筋なわではいかない、裁判所も非常に強権的な訴訟指揮をやるというので、国選弁護人が、とてもじゃないがこれはやれないというので辞任をした。その弁護人に対して過激派の被告人がその懲戒を申し立てているんじゃないですか。そういう過激派の被告人たちの懲戒申し立てを弁護士会が恐らく審理しても、これは懲戒すべきだなんという結論は出さぬでしょう。法務省が新聞にも参事官の名前で投書しておられるが、そういうのを見ますと、世の中では、いま言ったように、弁護士会というのは自律機能がないんだ、弁護士が少々なことをやっても懲戒なんかしないんだ、これでは困るなという印象しか持たないのです。しかし実態は全然違う。今度のこの一部改正について、暫定的特例を定めるとなっていて、第一条にも「当面の措置」となっていますが、聞くところによると、これは弁護士会の懲戒制度がおかしいんで、その懲戒制度が改められれば、あえてこういう法改正をする必要がないんだ、それまでの暫定的あるいは当面の措置だ、こういう見解を法務省が持っておられるやに報道されていますが、いまの最後の点でいいですが、いかがですか。
  252. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 最後の点だけということでございましたが、ただいまお述べになりましたことが全部絡まってまいりますので、最後の点にお答えしました上で、一、二点だけつけ加えさせていただきたいと思います。  今回の国会に提案しております特例法は、ただいま御指摘になりましたように、当面の異常な状況に対処するための当面の暫定的な特例という形でお願いを申し上げておるわけでございます。それでは、どういう状況になればこの暫定的な措置を廃止できるかということになるわけでございます。もちろん刑事訴訟法の本則に対する特例でございますから、必要がなくなれば一日も早くこれを廃止する方向に向かうことが望ましいのでございますが、その条件はどうか考えてみますと、一つには弁護士会の今後の御努力によりまして国選弁護人の選任がスムーズに行われるようになることでございます。いま一つは、ただいまお話のございました、弁護士の非行に対する懲戒処分が国民的監視のもとに行われるように制度的保障がなされること、こういったような条件が満たされましたときには、およそごく一握りの過激な行動に出られる弁護士の方は姿を消すわけでございますので、現在お願いしております法律というものは不必要になろうと思っております。  それからなお、一、二点つけ加えさせていただきますと、お話にございました過激派の事件につくごく少数の弁護士といえども、訴訟の遅延を目的とするのではなくて主張を通そうとしてやっているんだ、こうおっしゃいます。これは確かにそのとおりで、主張を通そうとしてやっておられるわけでございます。しかしながら、弁護士の主張と申しますのは、法廷という土俵の上でおやりいただくことになっておるわけでございまして、土俵へ上がらないで、たとえが悪うございますが、勝負を始めさせないというようなことは、主張を通す手段としてきわめて不適当であろうというふうに思っております。  それから、現在、過激派の裁判は荒れてないではないかというお話もございました。確かに荒れておりません。私どもがこの法案を準備し始めましたところ、にわかに静かになっております。  それから、弁護士会の懲戒のことについて最後に申し上げますが、御指摘のように弁護士会では懲戒申し立てがありました場合に、大変慎重に御検討になっておるようにお見受けいたします。たとえば昭和四十四年に東京地方裁判所長でありました新関氏から申し立てられました案件につきまして、私どもはこの法案の準備をいたしました昨年十二月になりまして、ほぼ九年ぶりでございますか、却下という御処分がございました。その却下の理由は、弁護士会の中の綱紀委員会が懲戒委員会に対して懲戒処分の請求をなさいますときに申し立て人の名前を書き間違えられたということで、昨年の十二月に却下になったようでございまして、これに対しては新関さんから日弁連に異議の申し立てがなされておるわけでございます。  いずれにいたしましても、慎重に検討しておられるということはこの一例でも明らかだろうと思っておりますが、私どもがいま懲戒の問題について感じておりますのは、現在、弁護士の懲戒と申しますのがだれからも申し立てることができます反面、単位弁護士会及び日弁連のなさいます御決定に対して何ら争う道が認められていない。これはもちろん日本弁護士連合会の性格というものを非常に高く評価しての法制度であろうと思いますけれども、遺憾ながら法廷の秩序を乱したという理由で懲戒処分を現実にお受けになった弁護士さんが三十年間一人もおられないということは事実でございまして、これはやはり国民の目から見ました場合に、法制度の欠陥というようなものとして映る場合もあり得るのじゃないかという感じを持っております。
  253. 栂野泰二

    栂野委員 私は、実は東大事件で問題になった第二弁護士会の懲戒請求を申し立てられた弁護士の懲戒事件のその弁護士の弁護人をやっていましたが、それは大変な苦労をしたのですよ。ですから、弁護士会長が懲戒すべきだと言って申し立てた、そこで論戦をやって私どもが勝ったんですよ。全部がそういうことですよ。たとえば新関さんの申し立ての問題でも、裁判所なら裁判所法を見ればどういう資格で申し立てなければいかぬかぐらいのことはわかるはずです。しかもそれは切りかえられればいいのに、全然そういうことをなさらないんですね。ですから、弁護士会としては、慎重に法律論的に組み立てれば、これは却下しかないんですよ。三十年間に一度もないという結果だけ見て何にもしないなんということはないのです。つまり弁護士会としては慎重に会長が申し立てていることですから、それはきちんとどの委員会だって審理を尽くしますよ。その結果、やはり懲戒理由がないというんだから、ほっておいたわけじゃないんですよ。  しかも、こういう弁護人は全部法律上の監置処分を受けていますね、あるいは過料処分ですよ。法廷活動をやって弁護士が十日も二十日も監置処分をやられれば、刑務所にほうり込まれて手錠をはめられるのですよね。これは相当な制裁を受けていることになるのです。しかし、それは裁判所がその法廷活動を見て、裁判所の立場からこれは法廷秩序を乱したということで処分をしたのであって、それが果たして弁護士として弁護士会が懲戒すべきかどうかというのはまた全然違うですね。法秩序というのは一方的に裁判官がやれるわけですから、弁解聞かなくていいのですからね。だから、裁判所の法秩法による処分が間違っていた、こういうことだってあり得るわけでしょう。何か裁判所のやったことは全部正しい、それに従わない弁護士は全部悪い、その悪い弁護士を懲戒しない弁護士会はなっておらぬ、こういう組み立て方がおかしい。しかも刑事訴訟法のような基本法、その基本法の基幹部分をなす必要的弁護制度をそう簡単に手をつけられては困るのです。弁護士会の弁護士自治といいますか自律機能だって、これはもう長年の血の出るような努力の結果できたものであって、これはいま言われるように、そう簡単に崩されるべき性質のものではないわけですね。要するに、私に言わせれば、ハイジャック事件が起きた、それに便乗して弁護権を、言ってみれば法務省がハイジャックするようなものだと思うのです。あるいは弁護士会の自律機能をハイジャックして取り上げる、こういうことだと思うのです。  それから過激派の事件をいろいろ見てきまして、皆さんとは基本的に全然考えが違うのです。いろいろマイナス面があることはわかりますよ。皆さんはそういう過激派の被告とそれを弁護する弁護士は一体だ、同じだというふうにどうもお考えのようだけれども、西ドイツは赤軍派の弁護士がいるのですね。日本にはそういう過激派思想、被告の思想に同調する弁護士というのはいないのですよ。が、そういう連中もどうしても弁護しなければいかぬという弁護士の使命からやっているわけですよ。そこで、当初はある程度法廷は荒れますが、それは多少の行き過ぎがあるかもしれませんよ。が、裁判所のそういう強権的な態度もある。しかし、ある程度の時間がたてばおさまっていく、こういうことになっている。そのおさまっていく役割りを一体だれが果たしているのか、私は弁護士だと思うのですよ。  というのは、皆さん方はそういうのはやめてすぐ国選弁護人だとおっしゃいますが、あの過激派の連中というのは全くわれわれとは物の考えが違うのですからね。体制全面否定でしょう、裁判制度そのものを否定しているわけですね。そういう連中が普通の国選弁護人を信頼するなんということはちょっと考えられないですね。しかし、彼らとは思想は異にするが、ともかくやはり言い分があれば本気になって弁護してやろう、そういうふうにいままでやってきた弁護士諸君にはある程度の信頼感を持っていると思うのですね。そこがいわば緩衝帯といいますかパイプ役というのか、そういう役割りを果たしている面も私は無視できないと思うのですよ。もしそういう弁護人ば全部抜いてしまえということになったら、そういう被告と裁判所と真ん中なしに対決することになるのじゃありませんか。一体そうなったらどういう事態が起こるのか、大変憂慮するような問題が起きやせぬかと思って、私は実は心配しているのです。そこら辺を一体どう考えられておるのか。過激派のようなああいう連中と申し上げますが、それだってやはり日本の裁判制度の中にとにかく入れてやらなければいかぬのですから、これは大変むずかしい問題ですが、いまのような制度改正をやった方がうまくいくとどうも思っておられるらしいが、私がいま申し上げたようなそういう心配を一体大臣はなさったことがあるのですか。その点をちょっと最後に伺って、質問を終わりたいと思うのです。
  254. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いろいろ弁護士としての立場を持ちながら栂野さんから御意見がございました。この問題についてもいろいろ御意見があることも当然であるし、またそれを承知いたしておるつもりであります。私どもは、こういう特例法を設けなくてよろしいことを実は祈っており、願っておるわけでございます。私どもは、わが国のいわゆる法治国家のもとで、特に刑事裁判は裁判所、検察庁、検事それから弁護人、弁護士、三者一体でこの憲法下における法治国家の実を上げることに努力してもらいたいと祈っております。これは国民の期待であろうと思います。弁護士会あるいは弁護士さんほとんどの方々は、そういう気持ちでおられると私は確信をいたしております。  残念ながら、一部の過激派と言われる特殊の考え方を持っておる、しかも過激な事件を起こした被告人の裁判において、これを弁護される弁護士の方の中に、率直に申し上げて現在のこの制度を破壊しなければならない、こういう主張に立っておられる方があります。大体裁判にかけるということが間違いだ、殺人を犯し、放火を犯し、爆弾で多数の人を殺傷した被告人に対して、こういう裁判にかけることが間違いだ、こういう立場で弁論をしておられる弁護士もいらっしゃる。この種類の被告人は当然にそういう立場であらゆるいわゆる法廷闘争をしている。国民から法治国家の維持のために努力をせよということで負託を受けておる私どもの立場からすると、これを容認するわけにはいかないという考えに立っております。  御承知のとおりに裁判官については、もし裁判官として不適当である、あるいは品位を汚している、裁判官にあるまじき裁判官があれば、国民の代表として国会がこれをチェックする制度があるわけでございます。いわゆる訴追委員会、弾劾裁判所、こういうのがあります。また検察官についても検察官適格審査会という、これもまた国民監視の措置が講じられておる。不適当な検察官はチェックをする、こういうことになっておる。弁護人の立場に立たれる弁護士については、その制度はありません。これは昭和二十四年に弁護士法ができたときに議論されておるわけでありますが、少なくとも最高の、と言ってもよろしいでしょう、見識を持たれておる法律家の集団である。そういう方々は少なくとも自律によってそういうことのないように、いわゆる国民の負託にこたえる、人権を尊重し、また公正、社会正義のために尽くす、弁護士の品位を保てという弁護士法ができております。そういう方々の集団だから、もし非違があれば、弁護士としてあるまじき行動、行いがあれば弁護士会の中で処置をする、こういう制度になっておりますが、あるいはお耳ざわりかもしれませんけれども、率直に申し上げて、いまの弁護士連合会あるいは弁護士会においてはその機能を十分に発揮されない姿になっておることは事実でございます。でありますから、先ほど刑事局長が申し上げましたように、何らかそういう国民の監視あるいは国民のチェックのできる制度ができればきわめて幸せである。これは率直に申し上げて、私は国会で考えていただくべきものだと思っております。  そういう点も考え、しかも先ほど申し上げましたように、人類の歴史は、国家制度に対する、国家の公権力に対してこれと闘うのが人類の歴史である、こういう主張に立っておられる人があります。また、いわゆる過激派の中にはそういう思想がずっと横断的にあります。それはまた、過去の長い人類の歴史を見ますると確かにそういう歴史があった。われわれの先輩がいろいろな苦心をして今日われわれの国のような人権を基本とした憲法、また裁判制度、あらゆる法律制度をつくって、それで国民の平和と安全と自由濶達な生活ができる組織をいま保とうとしておる。それにも過去の長い歴史がありますが、国家をなすと、どうしてもやはり権力組織ということがなければ国家の組織体としての姿はできません。これもやはり反権力として、これをたたきつぶさなければならぬという主張を現に法廷でなされておる弁護士がいらっしゃる。これは間違いありません。そういう姿では、決してわが国のいわゆる法治国家としての秩序を保っていけない。そういう一角からだんだん崩れていくということは国民の立場として許すべきではない。われわれは国民の負託を受けて法秩序の維持に専念しておる立場からいいますと、やはりそれには備えなければならない。  よく弁護士抜き、弁護士抜きと言われておりますが、そうではなくて、できるだけ法廷においていわゆる真実を発見するために被告人の人権を守り公正な裁判をするということに御尽力をいただきたい。そのためには法廷闘争として、いわゆる必要的弁護制度を逆用して弁護士が法廷にいなければ裁判が進まないのだ、そういうことは憲法、刑事訴訟法、弁護士法は期待をしておらない。でありますから、そういう人はおられぬでもやれる制度をつくらなければ裁判というものは絶対に進まぬ。また、進ませないのが目的であるということを主張しておられる方がある。その問題をわれわれは取り上げておるのであります。堂々と被告人を弁護し、公正な裁判が進むように努力していただきたい。しかしいま申し上げましたように必要的弁護制度法律を盾にとって、いなければ裁判が進まないのだ、しかも被告人と意思を通じたようなかっこうでやられる。この種の被告人は全部そういう立場でありますから、それでは法治国家は成り立たないじゃないか。あの日航機のハイジャック事件のそういうものを防ぐためにやったのだというふうにいろいろ言われておりますが、もちろんこれを契機にしてこの制度を考えたわけであります。ああいうことを一角でも逃がしておくということは、ひいては国民の法治国家に対する認識がだんだん薄れていく、疑いを持つようになる、それではならないからということでやはりこういう制度をこの際暫定的でもつくって正さなければならない、こういう立場でおりますということをここで申し上げて、いろいろ御議論があることも承知しておりますが、御理解をいただきたいと思います。
  255. 栂野泰二

    栂野委員 もう終わりますが、大臣、私が肝心な一点をお聞きしたことにお答え願わないで、何か大臣の御見解を述べられましたが、この弁護士の懲戒問題でも、私がさっき言いましたように、東大事件のときとその翌年の五、六件、それから後は、いま言ったように過激派の被告が申し立てた懲戒事件、これしかないのですよ。何だかそこの辺をえらい誤解しておられるのが一点。  それから、ああいうたとえば赤軍派事件、それから連続企業爆破事件のようなものを起こして、裁判にすること自体が間違いだなんと言う弁護士さん、そんな者はいないはずですよ。ただそれは、大臣だって裁判官出身だからおわかりだが、つまりそれは公訴棄却論か何か組み立てたのか知りませんよ。だけれども、とにかく被告が言うようなことと全く同じレベルのことを言う弁護士なんかあり得るはずがない。弁護士としてはそんな書面は恥ずかしくてとても書けませんよ。それから、裁判官と検察官は公務員ですからね、それの資格、適格審査、懲戒と、弁護士という特殊な身分ですから、地位ですから、それは全く違って考えていただかなければいかぬ。  最後に申し上げますが、弁護士は法廷秩序を維持する協力義務はありますよ。日弁連の弁護士倫理の九条二項というのがあって、「法廷の秩序維持及び訴訟の進行については、裁判所と協力しなければならない。」と書いてあるのです。このとおりなんですね。が、いま大臣なんかおっしゃるのは、やはり裁判所に協力しなければならないという言い方なんですね。これは、裁判所と協力するということと裁判所に協力するということとは全然違うのですよ。裁判所も法廷秩序維持のために協力してもらわなければいかぬし、弁護士も協力しなければいかぬ、お互いに。一方的に弁護士だけが協力するという意味じゃないのです。だから、言ってみれば、弁護士の法廷秩序維持のための協力というのは、対立しているわけですからね、闘争的協力というふうな言葉があるが、そういうことでして、やはりそこら辺を理解してもらわなければ本当の意味の弁護活動というのはできなくなりますよ。  言いっ放しになりますが、とにかく時間が参りましたので、これで終わらしていただきます。
  256. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて栂野泰二君の質疑は終了いたしました。  次に、新井彬之君。
  257. 新井彬之

    新井委員 大変遅くまで御苦労さんでございます。  初めに、今回の日中友好条約の締結につきまして恩赦をするのではないかということが流れておるわけでございますけれども、今回のこの日中友好条約というのは、日中間の不幸な関係を清算するとともに、第二次世界大戦に一つの終止符を打つわが国外交の画期的な成果である、日中平和友好交渉の推進は与野党一致して賛成しており、条約締結は国家的慶事と言うにふさわしい、こういう判断で恩赦ということが言われているようでございますけれども、それについては法務大臣、いかがお考えになっておられますか。
  258. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 日中平和友好条約が成立した場合にいわゆる恩赦をやるか、流れておるという話でありましたが、いつかある新聞にちょっとそういうことが書いてあるのを私も見ましたけれども、私どもは全然恩赦など考えておりません。どこかの国と友好親善条約ができたから恩赦をする、そう軽々しく扱うべきものでない、かように考えておるのがいまの立場でございます。
  259. 新井彬之

    新井委員 その考え方は今後変更されることもあって、いまはそうだということですか、それともそれはずっとそういうことなんだということですか。
  260. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 恩赦というときわめて重要な問題でありますから、よほどのことがなければ、先ほど法秩序の話を申し上げましたが、法秩序の結果を軽々に御破算にするということは厳に慎むというのが私の立場でございまして、将来変えるか変えないかということではございません。
  261. 新井彬之

    新井委員 運輸省、参っておりますか。まだですか。  今回のこの法改正の中では、東京医療少年院を移転するとか沖繩の刑務所を移転するとか、こういうことがございますけれども、いままで刑務所とかあるいは少年院等につきましても、古くから建物がある地域にたくさんございます。その中で、都市化がどんどん進みまして、そしてそれを何とか建てかえをしてほしいとか、あるいはまた移転をしてほしい、こういうような要望も多々法務省の方に参っておることをお伺いしているわけです。現在、移転すべきであるということを考えておられるのが八庁ある、それから移転計画が決定して、予算措置を講じておるものも大分あるわけでございますが、今後刑務所をどういうところに建てたら理想的なのか。これは地域の住民の方々というのは、なるたけ郊外に建ててやっていただきたいというような希望をたくさんお持ちなんでございますが、法務省としては、そういう市街地の中にある方がいいのか、あるいはもっと空気のいい山とかそういうところの方にあった方がいいのか、そういう面についてはどのようにお考えになっておられますか。
  262. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 市街地がいいかうんと離れたところがよいかということでございますが、やはり一概には言い切れないだろうと思います。  まず第一に必要なことは、やはり受刑生活と言いましても、社会復帰を目指した処遇が行われる関係上、静かな環境にあることが第一であろうと思います。  二番目は、施設の建設にある程度の広さ、すなわち面積の得られること、それからいまはコンクリートづくりでございますので建築に適した良好な地盤であること、災害発生のおそれのないことが二番目でございます。  三番目には、職員と家族の良好な生活環境を確保しなければならないということ。それにまた関連するのでございますが、収容者の処遇上必要な、われわれ社会資源と申しておりますが、たとえば健康管理に必要な病院等の医療機関が近くにある、教育に必要な外部の講師が来やすいということ、それから篤志面接委員、教誨師もお越しになりやすいということ、それから保護との関係がございますので、保護の機関ともそう遠くないということ。懲役受刑者には作業をさせるわけでございますが、その作業の実施上、作業を御注文される一般企業と密接な連絡がとれるというようなことが必要でございます。  そうなりますと、市街地の真ん中にありまして、刑務所が都市発展の支障を来しているということ、こういう場合には移転をいたしますけれども、やはり職員等の通勤あるいは買い物に便利であるということがまず必要であろうかと思います。それから職員の人権も考えなければなりませんので、職員の子弟の通学が便利であるということ。それから病院等につきましてはあえて御説明するまでもなく、外部の医者の御協力を得やすいという場所でなければならない。それから、作業との関連でまいりますと、製品、材料の運搬等も必要でございますので、都市計画上の準工業地域あるいは工業地域に接近しているというようなことで、工場との連絡が便利であるというようなことも必要であります。それからさらに、中に入っている者、被収容者の家族等が面会その他で施設を訪れるのに便利であるという要素もございます。それからさらに裁判所、検察庁、警察、先ほど保護機関も申し上げましたが、保護観察所等が近くにあるということが必要であろうかと思います。これが三番目に申し上げたい点であります。  それから四番目は、一番いま大切なことは水の確保でございまして、施設の維持管理に必要な、飲料水がまず肝心でございますし、それから汚物の排せつのための水洗用の水ということもそこに入ってまいります。それから電力の確保。さらにその水をためておくわけにはまいりませんので、排水が可能であるという点。  それから最後に、五番目でございますが、私どもは、矯正施設といいますのは、悪いことをした人ではありますけれども、これらの者を処遇によりまして矯正いたしまして、いずれ社会に帰るのでございますので、やはり地域社会等の協力がなければなりません。その反面から言いますれば、地元住民の受け入れの反対等がないということ等であろうと思います。
  263. 新井彬之

    新井委員 いまこれだけの条件をそろえるというのは、非常にむずかしいと思います。今回の沖繩刑務所あるいはまた東京医療少年院というのは、こういうところが全部そろったのだ、こういう地域をお選びになったということでございますか。
  264. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 神奈川医療少年院は東京医療少年院が移るのでございますが、神奈川医療少年院を設けるところは、現在神奈川少年院がございまして、いま申し上げた要件が全部そろっております。  沖繩刑務所は、那覇市から二十一キロ離れたところに建設されたものでございまして、これはやや先ほどの条件からいいまして足りない点もございます。しかしながら、今後そういう点は改善措置を講ずることによりまして、先ほどの条件に全部適するということになる予定でございます。
  265. 新井彬之

    新井委員 地域住民の方が何とか移転をしてほしいというような場合に法務省の方にいろいろあろうかと思いますけれども、この話し合いとか、移転をする場合のいろいろと申し入れ等があるようでございますけれども、そういう経過というのはどういう形で言われるわけですか。たとえて言いますと、都道府県知事から、あそこは何とか移していただきたい、こういうような申し入れがある、あるいは市町村長からございますね。その場合に、いま言ったような条件の代替地等が探されるならば、非常にその施設が老朽化している場合には、そっち側にそれでは建てかえましょう、もちろん予算の関係がございますから一遍にはできませんけれども、そういうような具体的な一つ一つのことについては、どのような経過をもってこの移転ができたり、あるいはまたよそへ新設をしたりとか、そういう経過はいかがでございますか。
  266. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 率直に申し上げまして、適当な敷地である場合に私どもは移転を好むものではございません。老朽施設につきましても、できるだけ現在地で改築をいたしたいというのが、まず第一の方針でございます。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、都市計画あるいはその都市の発展上どうしても支障になるから移転していただきたいという場合には考えようということでございます。その場合には、御指摘のような地方公共団体の機関の長からの要請もございますし、議会からの要請もございます。なお、住民の方が何とかしていただきたいということで御要請になる場合もあります。そのときには、あるいはおしかりを受けるかもしれませんが、もともと刑務所をつくりましたときには、大体市街地につくったのではございません、端のところにつくったのでございますが、そこに住民の方がお越しになりまして、邪魔だから出ていけ、こうなりましても、私の方でも、はい、さようですかと言って、おいそれと出るわけにはまいりませんので、出てくださいということであれば、先ほど申し上げたような適地を探していただきたい、適地が得られまして、これはいわゆる移転条件でございますが、移転条件が充足される限りにおきましては移転をいたしましょうということになるわけでございます。しかしながら、その適地の確保につきましては、地方公共団体も相当御苦労されるようでございまして、私はよく前九年、後三年の役とこう言うのですが、早くて三年、長ければ九年、あるいは合わせて十二年というような時日を要しているのが現状でございます。
  267. 新井彬之

    新井委員 もう一つ、新築とか移転とかという問題ではなくて、現在比較的施設が古いとか、たとえて言いますと、くみ取りの便所である、そういうのを水洗便所に変えなければいけない。たとえて言いますと、姫路の少年刑務所等におきましては、くみ取りになっておるようでございます。ところがなかなか業者がいないようでございます。いま何か非常に忙しくて、あっちこっち仕事をやっているのですけれども、そのくみ取り料というのですか、そういうものを委託をされるわけでございますけれども、ほかの施設と違って非常に安いので、だれも成り手がなくて、それじゃ順番にやろうじゃないかというような形で協力をしてやっているようなことでございますが、そういう一般的な経費でございますね、そのくみ取り料とかそういうものを計上するところ、あるいはまたそういうものを水洗便所化していくとか、そういうようなことについての改善はいかがになっておりますか。
  268. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 くみ取りの方は収容諸費、収容関係の費用の中に雑役務費というのがございまして、それで賄うことになっております。
  269. 新井彬之

    新井委員 もう一つ、そういう施設の内容改善というようなことについてはどのように進められておりますか。
  270. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 非水洗のところを水洗にいたしますのは、施設費で出すわけでございます。  この点につきましては二つ実はございまして、地方にいわゆる公共下水道が整備されておりますときには非常にやりやすいわけでございます。ところがそうでない場合ですと、相当大きな浄化槽をつくらなければなりませんので、非常に多額の費用を要するわけでございます。  いずれにいたしましても予算との絡み合いでございますが、実は庁舎だけで申し上げますと、刑務所では水洗になりましたのが七〇%でございまして、非水洗が相当ございます。職員の宿舎になりますと、さらに下回るというようなことで、私ども頭を悩ましているところでございますが、特に公共下水道が整備された地域につきましては、予算事情を考慮いたしまして、優先的に水洗化に努力したい、かように思っているところでございます。
  271. 新井彬之

    新井委員 刑務所あるいは少年院は非常に古い建物等が多いと思いますね。そういうわけで、何も建物を建てかえてどうのこうのというだけのことではありませんけれども、当然内面的には水洗にするとか、いろいろの問題についてもやはりきめ細かく変えていかなければいけない、このようにお願いをいたしておくわけでございます。  それから、移転等については、やはりその近所では非常に希望がございます。したがいまして、そういうような申し入れがありましたときには、ただいまお話がありましたように、手順を教えてあげて、当然これは市町村長等に言って、その中で代替地の問題も必要なんだ、それからまたいろいろな客観的な問題もたくさんございましたけれども、そういうところでないとだめなんだとか、そういうことで協力を得るなら、私たちは決して移転するのにやぶさかじゃないのだ、こういうぐあいに親切に教えてあげていただきたい、このように要望をいたしておくわけでございます。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  それから次に、少年院の問題が出ましたので、少年犯罪のことについて若干お伺いしておきたいと思うのです。  この少年の犯罪は年々増加をしておるというぐあいに理解をしているわけでございますが、滋賀の野洲町で起こった中学生の殺人事件、その結果どのような取り調べが行われ、そこで解明されて、どこをどう直さなければいけないのだということ、これはもう教育の問題もありますし、家庭のあり方もございますし、あるいはまた社会環境ということもございますけれども、教育者は教育者として、あるいはまた父兄は父兄の立場として真剣に考えなければなりませんけれども、法務省の立場として、どうも私の考えでは、普通そこらにおられる中学生が起こした事故だ、だから何もこれは特別中の特別の事故であったという理解ではないのではないか、こういうぐあいに思うわけでございます。したがって、こういう問題を解決していくために何が抜けておったのだ、こういうことでお考えをお聞きしておきたいと思います。
  272. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘がございました少年犯罪は、統計的にはここのところやや横ばいの状態でございますけれども、やはり何といいましても、人口千人当たりの犯罪者率が成人の二・九人に対して少年は九・〇人という高い数値を示しておりまして、私どもはこの対策について頭を痛めておるところでございます。  先般起きました野洲町の事件、こういう事件を防ぐにはどうしたらいいかという点を私どもも私どもなりに考えてみておるわけでございます。教育でございますとかそういうものは私どもの守備範囲ではございませんので、私どもの守備範囲で考えますと、あの事件をよく調べてみますと、やはり一連の中学生が暴力団というようなものに魅力を感じておる。暴力団組織といいますか、そういうグループをつくっていろいろなことをやる、親に内緒でいろいろなことをやるというようなことに魅力を感じたのが始まりのように思われます。  そういうことを考えますと、やはり私どもは法務省あるいは検察庁という立場からは少年を取り巻く環境の浄化、さらにはただいま申し上げました暴力の問題、暴力団を中心とする暴力の問題あるいはちまたにはんらんしております風紀の関係のいろいろな事象、こういうものを冷静に見詰めまして、暴力事犯でありますとか風紀事犯の徹底した検挙等によりまして環境を浄化してやる、そういうことが私どもとして、まずもって少年のためにやってやらなければならぬことではないか、そういうふうに考えております。  なお、犯罪に陥りました少年に対しまして家庭裁判所等の関係機関で適切な処分が行われますように御協力申し上げることはもちろんでございます。
  273. 新井彬之

    新井委員 今回の法案の中に入国管理事務所の移転等の問題が入っているわけでございますが、入国管理事務所の体制が、人が足らないとか、あるいはまたたとえて言いますとハイジャック防止法というのができましたが、空港なんかでボデーチェックを初めといたしまして、器械を導入していろいろやっておりますけれども、それでもなおかつハイジャックは起こるときには起こるのではないか、これで完璧だというような状態ではないわけでございますね。そういうことで、この入国管理事務所の体制というのは万全なのかどうか、率直な御意見をお伺いしたいと思います。
  274. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 お答えいたします。  確かに、先生のただいまおっしゃいましたように、近年の国際的、社会的諸情勢を反映いたしまして事務が量的に非常に増大してきております。また質的にも非常に複雑になってきております。そういうときにまたハイジャック事件のようなものも起きてまいりまして、それに対処するための体制というものは非常にむずかしくなってきております。われわれといたしましては事務の合理化とか機械化ということでできるだけ省力するという方向でやっておりますけれども、しかしやはりどうしても人間がまだ足りないというのが実情でございます。そういうことで、ことしも実はただいま御審議いただいております中で二十四名の増員を認めていただくことにお願いしているわけでございます。
  275. 新井彬之

    新井委員 この入国管理事務所に勤務されている方の現状というのは八時半から十七時ですか、それから十時から十六時、十三時から夜中の一時、何かこういう三交代になっているようでございまして、三班に分かれていろいろやられておるのでございますが、外国船なんかの入港は大体夕方の四時から八時ごろまでに集中する、そういうわけで、非常に激務なようなことだそうでございます。もう一つの法務省から出しておる年鑑を見ますと、不法入国者検挙状況は四十七年が八百五十四人、四十八年が千二百六十九人、四十九年が千四百十三人、五十年が千八十三人、五十一年が九百五十四人、こういうぐあいになっているわけでございますけれども、これはあくまでも検挙された人でございますね。新聞なんかの資料を見ますと、これは予想でございますけれども、大都市なんかには何万人も密入国者がいるんではないかということが想定されている、こういうことが一つあるわけです。  それからもう一つは、たとえて言いますと麻薬あるいは覚せい剤、これは国内ではほとんど製造は不可能だというぐあいに聞いておるわけでございます。確かに摘発はされておるわけでございますが、全部摘発すれば麻薬患者などというのは一人もいるわけはないわけですね。あるいは覚せい剤の患者なんかいるわけないわけです。ところがやはり結構暴力団関係を中心にして流れているところを見ますと、確かにそれだけの法律は整備はされておりますけれども、それだけ不法入国なりあるいはまた密輸、そういう形で流れてきている。これを徹底的に解明をして、法律の不備なものは法律を改正しなければいけませんし、もしも法律はあっても実効が伴っていないということならば、これはやはりその実効の伴っていない部分を直していかなければいけない、こういうように考えますけれども、いかがでございますか。
  276. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 ただいま先生から不法入国者の数について御指摘がございましたが、確かに毎年非常な努力をいたしまして不法入国者を摘発しているのでございますが、なかなか敵もさるもの巧妙になってまいりまして、それ以外に潜在的に不法入国者が相当数いるということは残念ながら事実でございます。それの的確な数が幾らであるかということは、実はわれわれもつかめていないのでございまして、人によれば五万あるいは十万と言う人もございます。的確につかめていたらわれわれは検挙しているわけでございますので、なかなかその辺はむずかしゅうございます。それを今後どういうふうにやっていくんだという御質問だろうと思うのでございますが、何分最近は日本人、外国人の出入国が非常にふえてまいりまして、それと同時に、全国の港の開発というものが非常に大規模な開発で、港湾区域が相当距離、何キロに及ぶという港湾がございます。そういうところを一々人がきを立てて見守るわけにもまいりません。したがいまして、これは関係機関とも、海上保安庁であるとか警察であるとか、または税関であるとかいう各関係機関と密接な連絡をとりまして、できるだけ情報収集をする協力体制でやっていくより仕方がない、こう思っております。  それから他方、この不法入国のほとんど八、九割は朝鮮半島から入ってくるのでございます。したがいまして、われわれといたしましては相手国政府に、やはり向こうから出なければこっちに入ってこないわけでございますので、向こうから出るのを、要するに向こうの立場から申しますと密出国になるわけでございますが、この密出国をできるだけ厳重にチェックしてもらいたいということを相手国政府に申し入れております。相手国政府もこちらの立場に非常な理解を示してくれまして、逐次努力してくれているようでございます。  なお、麻薬につきましては、これは入管が直接タッチはいたしておりませんけれども、これは麻薬取締官、税関、また海外の情報というものが非常に大事でございまして、在外公館外務省、こういう関係機関で常に密接な情報交換をして、入管としては摘発に協力しているという現状でございます。
  277. 新井彬之

    新井委員 いまの問題は、法律にも不備がない、あるいはまたそういう人的な配置にも問題がない、あるいは警察とか保安庁と打ち合わせをして完璧にやっているということには一応表向きにはなっていると思いますが、しかし現実面はそういうことで密入国者も入ってきている、あるいは麻薬も入ってきているということでございますから、これはやはり各省関係者でよく協議していただいて、特にこの麻薬とか覚せい剤というものは亡国の根源でございますから、これはもう徹底的に、もちろん警察も法務省も挙げて努力をされておるところでございますけれども、そういう一つ一つの、いままでのちょっとした穴だと思いますが、そういうものを埋めてやっていただかないといけないのじゃないか、こういうぐあいに思うわけでございます。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 時間も余りないので、どういうぐあいにとめるかという問題については、またいろいろと今後お聞かせ願うといたしまして、きょうは、これに関連をしまして難民の問題がございます。  昭和五十年から五十二年の間でベトナムの方々が日本へ難民として来られた。沖繩の村長さんあたりがどうしたらいいのかということで、これは人道上の問題だということでいろいろ手配をして、比較的時間がたってから国内に招き入れたというような経過があるわけですけれども、この前の予算分科会で中江アジア局長は、朝鮮半島の有事の際の自衛隊による難民の救助について、難民救助に当たっては国際法上の制約と人道上の考慮の二点があるが、その処理は事態の生じたケースに応じて対処していくことになろう、両方の問題が抵触する場合には人道上の差し迫った理由があれば国際法上の違法性を退けても救助することもあり得る、こういうような趣旨を述べているわけでございますが、そういうことがあっちゃいけません。これはもう日本国にとって朝鮮半島にそういう有事の際があるなんということはとんでもないことでございますけれども、しかし、もしもそういうことがあったと仮定した場合にも、やはり日本の法体系といいますか受け入れ体制といいますか、これは明確にしておくことが法治国家として当然ではなかろうか、このように考えるわけでございます。こういう場合に、どのようにこれを外務省と打ち合わせをされておるのか知りませんが、法務省としてはいかがお考えになっておられますか。
  278. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 先般来、国会内において朝鮮半島云々という事態を仮定しての討論が行われておるようでございますが、率直に私から申しまして、そういう仮定をして軽々しく、まあ軽々しくと言ったらちょっと語弊がございますが、簡単に物を言うことは私の立場からは慎ましていただきたい、こう考えております。  ただ一言原則的に申し上げますると、まあ一応基本的にはわが国としては人権の尊重、人道的立場で考える、しかし、そのときの国際環境とかいろいろな要素もございます。また、わが国の国益ということもございます。そういういろいろな要素を考えて具体的な問題が起きたときには処理することになるだろう、こういうことは申し上げて差し支えないのではないかと思います。
  279. 新井彬之

    新井委員 ではこの問題は、まだ大分いろいろ詰めたい問題がございますけれども、余り答弁も出てこないようでございますので、こういう問題も確かに現実がなければ考えられないということもあろうかと思います。しかし、ベトナムからでもあれだけの難民の方がとにかく沖繩のあの島へたどりついてこられたという事実もあるわけですね。したがいまして、朝鮮に有事の際があるのかどうか、こういうことがあっちゃいけませんけれども、ほかであった場合は今後はどうなのかといういろいろの問題については、やはりお考えを持っていただく必要があるのではないか、このように考えるわけでございまして、今後よろしく御検討をお願いしたいと思います。  それから、きょうの新聞でございますが、私は交通安全対策特別委員をやっておりまして成田空港等も見せていただいたわけでございますが、この遅刻便でございますね。遅刻便が出た場合、夜中の十一時以後は羽田空港に回すということが何か決まったということが出ておりますけれども、そういう事実がございますか。
  280. 松本操

    ○松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  そのようなことを決定した事実は全くございません。あの報道は昨日決まったというふうに書いてございますが、事実に反するというふうにはっきり申し上げてよろしいかと思います。
  281. 新井彬之

    新井委員 それじゃ成田空港では遅刻便は一切認めないんだという運輸省の決定はございますか。
  282. 松本操

    ○松本(操)政府委員 成田空港は、御案内のように国際線専用の空港でございます。国際線ということになりますと、時差の関係がございますので、日本では夜中でも夜明けの国もあるというふうなことがございますので、何時に門限をつくるかということは非常にむずかしいわけでございます。特に騒音問題も絡んで、地元からはなるべく早い時刻に門限をつくれ、こういう御要望もあるわけでございますが、一方、冒頭私が申し上げましたような事情もございますので、羽田並みの門限、つまり午後十一時から午前六時までの間は運用を中断する、こういう形にしよう、こういうふうな方針を決めまして、このことは昨年の十二月三日、航空情報と申しまして、通称ノータムと呼ばれておりますが、全世界の航空関係者に対して発出いたしました回覧状のようなものでございますが、その中に明確に記してございます。
  283. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、飛行機というのは遅刻というのは常識だそうでございますが、特に国際便というのは遠いところから来ますから、何時に着くかわからない。運輸省としては、極力早い時間に着陸をするように考えるけれども、おくれた場合でも問題はないということでございますね。
  284. 松本操

    ○松本(操)政府委員 先ほどお答えいたしましたように、新空港の門限と申しますか、俗にカーフューと呼んでおりますが、午後十一時から午前六時ということでございます。しかし、たとえばアンカレッジから飛んでまいりますような場合には、延々八時間以上かかってくるわけでございますので、途中の気象の悪化その他によって当然予定の時間に着くはずなのが着かない、こういうこともあり得るわけでございます。また航空機は空に浮いているものでございますので、何か緊急事態が発生してどうしてもおろさねばならないというふうなときには、人道上の問題もあってとやかく言うわけにもまいらないということもございます。そこで先ほどお答え申し上げましたノータムの中に、六項目に限りまして、こういう場合には例外として発着禁止を解きますということが書いてございます。  たとえて申しますと、飛行中の航空機に異常な状態が発生した場合でございますとか、急を要する緊急避難、たとえば台風等のために進路を変えてどうしてもおりてこなければならない場合とか、天候の予期しない悪化によりましてやむを得ず燃料がなくなっておりてこなければならないとか、こういうふうな六項目の場合につきましては、これはやむを得ないからおろす、あるいは出すこともある、こういうふうにしてございますが、私どもは運用の基本方針として、このやむを得ない場合というのをなるべく適用しないで済むようにということで、たとえばダイヤの編成一つをとりましても、相当の余裕を持って航空機の発着ができるようにということをやかましく航空企業に申しまして、いませっかく最後の詰めをしておる段階でございます。
  285. 新井彬之

    新井委員 当然いまの六項目に当てはまらないような飛行機が飛んでくるということはちょっと考えられないわけでございますが、これはあらゆる空港の機能ですね、入国管理にいたしましても、いろいろなことに関連することでございますので、各省とよく打ち合わせをされて、そういう六項目以外のようなことがあった場合にはどうするのかというようなことまでひっくるめて、最後の詰めをやっていただきたい、このようにお願いいたしておくわけでございます。  今度は、先ほど覚せい剤の問題でお伺いしましたのでございますが、これは水際作戦で絶対にとめてもらわなければいけませんけれども、これがとまらないでルートを伝わってヘロインとかヒロポンとかいうものを打っている人、こういう方を今後はどのように救済をするかということがもう非常に大事な問題ではないか、こういうぐあいに思うわけでございます。  そこで、特に麻薬ではなしにこの覚せい剤というのは、興奮作用ですか、私、専門的なことがわかりませんから失礼なことを言うかもわかりませんので、よく教えていただきたいと思うのでございますが、この覚せい剤の薬理作用によって非常に犯罪が行われておるというようなデータ等も見せていただいておるわけでございます。こういうのは、近ごろ、五十一年とか五十二年ではどのような数に上がっておりますか。
  286. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま詳細な数字を持ってまいりませんでしたので、抽象的なお答えで恐縮でございますが、戦後、昭和二十年代の時期に、俗にヒロポンと言われましたものの大変爆発的な流行がございまして、それを法改正等をいたしまして、また関係機関が一致協力して撲滅作戦に出ました結果、ほとんど事象がなくなっておりましたところ、ここ数年ぐらい前からまた非常に増加してまいりまして、昭和二十年代のときが旧軍の使い残りのものからつくっておりましたのに対しまして、今日ではほとんどがアジア近辺の諸国からの密輸品である、これが暴力団の有力な資金源になってまいりまして、暴力団が売り先を積極的に開拓するというようなことから、一般市民や婦人あるいは青少年にまで浸透しつつある憂うべき状況になっております。覚せい剤を常用いたしますと脳の中枢神経に作用がございまして、錯乱状態あるいは幻想がわいてくるというような状態で、極端になりますと、精神分裂病と同じような症状になるとされております。そういう状態におきまして犯罪を犯します者がここのところ大変ふえております。  この問題につきましては、御指摘のございましたように四十八年に刑罰の引き上げをいたしまして、これの実施に鋭意いま努めておるところで、税関、厚生省の麻薬関係、警察、それから裁判関係を担当いたします検察、一致協力して水際作戦並びにこれを扱います暴力団の撲滅、それから実際に自分で使っている人の処置、これらに努めておるわけでございます。  ただ一つの問題点としましては、そういう中毒による精神錯乱状態で犯罪を犯した人がふえてきておる、これに対しては、鑑定の結果犯行当時心神喪失であったという鑑定が出ますと無罪になります。この措置についていま頭を悩ましておるわけでございますが、この対策としては、一応法務省といたしましては、刑法全面改正の中で保安処分制度というのを設けまして、これをこういう人たちの治療等に役立てたいと思って、現在鋭意検討しておるところでございます。
  287. 新井彬之

    新井委員 厚生省にお越しいただいておると思いますので、ちょっと専門的にお伺いをしておきたいのでございますが、精神衛生法という法律がございまして、この中で覚せい剤を打った者にこの法律を準用するということになっております。それで、普通の精神病と覚せい剤を打ったときの精神病といいますか、それと違うのかどうかわかりませんが、その辺の違いというのはどういうぐあいに違うのですか。
  288. 目黒克己

    ○目黒説明員 お答えいたします。  御質問のきわめて専門的な問題でございますけれども、通常、専門家の立場からの御意見を伺っておりますと、非常に鑑別しやすいものとそれから困難なものというものが事例ごとにあるというふうに私ども聞いておるわけでございます。したがいまして、それに対する処遇も、事例ごとにいろいろな処遇方法をとってきているというふうに聞いているわけでございます。
  289. 新井彬之

    新井委員 もう一つお伺いしておきたいのでございますが、ヒロポンならヒロポンを打って、この精神衛生法に言われるのは、慢性的ということがただし書きについているわけですね。いつの時点が慢性で、いつの時点が慢性でないかということについては医学的に明確になりますか。
  290. 目黒克己

    ○目黒説明員 御指摘の点についても、いわゆる教科書あるいは専門家の意見等を調査いたしてみますと、大体覚せい剤を二、三ヵ月から数ヵ月以上使用いたしますと慢性症状を呈するというふうに私ども聞いているわけでございます。したがいまして、私どもの方の精神衛生法に適用いたします慢性の覚せい剤中毒というものに対しては、大体これに一致したものというふうに私ども考えているわけでございます。
  291. 新井彬之

    新井委員 そうしますと、たとえて言いますと、酒を飲むときに非常に弱い方がいまして、ビールをコップ一杯飲んでも真っ赤になるのですという方もいらっしゃいます。一升飲んでもどうということない方もいらっしゃいます。そうすると、たとえて言いますと一月なら一月飲んでもやはり精神錯乱とか精神分裂を起こすような方もおりますね。いかがですか。
  292. 目黒克己

    ○目黒説明員 きわめて専門的なことでございますので、なかなかお答えしにくい点もございますけれども、そのような事例もございます。また非常に容易に鑑別できるものもあるということでございます。
  293. 新井彬之

    新井委員 実は私これは現実の一つの事例からいま物事をお話をさせていただいているわけでございます。そこで、たとえて言いますと、ヒロポンを打って、一時は入院をして治った、しかしこれはまた再発を、打たなくても年に一回寒いとき出でくるとか、あるいは非常に食事をしないときに出てくるとかというようなこともございませんか。いかがですか。
  294. 目黒克己

    ○目黒説明員 覚せい剤の慢性中毒の患者の中には、数ヵ月から一年以上にわたって症状が持続する者があるということは聞いております。また御指摘のような、一時症状が消えて、しかも覚せい剤等を使用することなく、再びまた同じような症状があらわれてくるという者はまれにあるというふうには聞いておりますけれども、一般的に申し上げまして、そのような者は余りないというふうに聞いているわけでございます。
  295. 新井彬之

    新井委員 この法律からいきますと、自損あるいは他損ですね、人を傷つける。この傷つけるという内容の意味が、ナイフでもって人を傷つけるところまでいくのが傷つけるのかあるいは人の物をとるというぐらいのこともやはり人を傷つけていることはつけているわけでございますからね。その傷つけるという、これはどの辺までのことを傷つけると言うのですか、法律では。
  296. 目黒克己

    ○目黒説明員 現在精神衛生法でいわゆる自傷他害のおそれという判断でございますが、この判断は具体的に心身に障害を与えるということを大体中心にいたしております。したがいまして、その精神障害が原因となって、そのような心身を傷つけるといったような具体的なものがございました場合に初めておそれがあるというふうに判断をするものと聞いております。またそのほか、極端な被害妄想と申しますか非常に特殊な妄想状態にありまして、確実に他人を刺すおそれがあるといったようなものがはっきり精神症状の上でしている者については、これはやはりこの自傷他害のおそれがあるというふうに判定をいたしておるのが現状でございます。
  297. 新井彬之

    新井委員 本人が、あいつ殺してしまうんだ、現実には殺してないのですけれども、そういうことを言った。事実過去の経歴を見るとそういうこともあるかなとは思う、確かにおかしくなっている、こういう場合に、この法二十三条によりますと「精神障害者又はその疑のある者を知った者は、誰でも、その者について精神衛生鑑定医の診察及び必要な保護を都道府県知事に申請することができる。」これを保健所長を経て都道府県知事に提出するわけでございますが、この申請人の住所とか氏名とか、こういう様式がございますね。このとおり出したら本当にこれ調査するのですか。
  298. 目黒克己

    ○目黒説明員 御指摘の点は、いわゆる精神衛生法によります強制的な措置入院という制度のことであるというふうに私理解いたしておりますが、いまのような場合に通報、これは警察官あるいは一般人ともに通報がございまして、自傷他害のおそれのあるというか非常に危険な精神障害者のような者がいるというようなことが保健所に入りますと、その保健所が直ちに調査をいたしまして、精神衛生法に基づく鑑定措置に該当するかどうかということをまず調査をいたしまして、その上で鑑定という措置に踏み切るわけでございます。したがいまして、御参考までに申し上げますと、五十一年度でございますが、全部一括いたしますと一万四千六百五十五件の通報がございましたが、そのうち、事前の予備調査と私ども通称いたしておりますが、この予備調査で千九百三十三件は鑑定の必要ないというふうな結果が出ているわけでございます。したがいまして、さらに鑑定をいたしまして、そこで精神障害者である場合あるいは精神障害者でない場合と順々にふるいにかけていくという仕組みになっているわけでございます。
  299. 新井彬之

    新井委員 専門医が診ても、それが慢性なのかあるいはまた急性なのかあるいはどうなのかということは非常にわかりにくい状況だと先ほどおっしゃいましたね。専門医が鑑定しても、いろいろなケースがあって、顕著にわかる人もあるし、わからない人もいる、しかし極端に言えば非常にわかりにくいのだと私は理解したのでございますが、そういうわかりにくいものを具体的にどういうように審査をしていくわけですか。書類だけで審査をするのですか。
  300. 目黒克己

    ○目黒説明員 非常にわかりにくいと申し上げましたのは、多くの事例の中に非常に判定の困難なものも、精神障害者という病人でございますので、当然診断のつきにくいものはあるわけでございますが、大部分のものはやはり慢性覚せい剤中毒という症状の認定については大きな問題点はないというふうに考えております。たまたま幾つか非常に困難な事例というものが、これは医学一般におきまして非常に診断のつきにくいケースというものは当然あるわけでございますけれども、少なくとも精神症状があるかないかという判定につきましてはそれほど困難はないというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、精神症状はあるけれども、それが慢性覚せい剤中毒によるものかどうかというそのあたりにあるいはむずかしい問題も出てくる例もあるというふうには聞いておりますが、大部分のものについては大きな困難はないというふうに聞いているわけでございます。
  301. 新井彬之

    新井委員 精神衛生法からいきますと、これは基本的には覚せい剤とかそういう方については準用するわけですからね。やっていることがおかしいな、どうもこれは人を傷つけるのじゃないか、あるいはまた自分を傷つけるのじゃないか、こういう方をたまたま見て、通報するわけですね。通報しましたら、それは後の内容が、これは覚せい剤でこうなったのだ、いや覚せい剤じゃなかったのだということはわかると思いますが、どっちにしても何とかこの方をそういう状態から、その人も守ってあげなければいけないし、あるいはまた善意の第三者だって、突然知らない人に切りつけられたり鉄砲を撃たれたりするということはとんでもないことでございますし、これは結構人権を持っておるわけでございますから、やはり精神が錯乱している人であっても、後で治った場合、あなたば鉄砲で撃ち殺したんだよ、こんなことが知れていいわけはないわけですね。そんなことがあっていいわけはないと思うのです。  ちょうど精神錯乱とかそういう状態というのは、何もわからない子供ががけっ縁で遊んでいるようなものだ。したがって、ある程度の期間というのは、やはり少し丁寧に見てあげてやらなければいけない。ただそのときに、第三者が見てもわからないけれども、家族なんというのは毎日一緒にいるわけですね。したがって家族だけでも、家族と息子がけんかしてこんなにかあかあ怒るのはおかしいから精神病じゃないか、一遍診てもらえとかというようなことであっては、これはまた人権の問題が出てこようと思いますけれども、少なくともその家族あるいはまたその近所の人が本当にこれはえらいことだというようなときは、ある程度もっときちっとめんどうを見るような形にしないと、事故が起こってからやはりこの法律が適用されるような形になると思いますが、いかがですか。
  302. 目黒克己

    ○目黒説明員 御指摘の、事故の起こる前にそれを予測するということは、非常にむずかしい点であろうかと思います。しかしながら、私どもの方でも御指摘のようなケースがございますれば、精神衛生センターあるいは保健所等のいわゆる精神衛生活動の一環といたしまして、そのようなことのないように従来とも努力をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、これは御指摘のとおり非常に人権の問題がございまして、現場ではやはり非常に危険だというふうな面と、それから患者の人権を守らなければならない、不当に入院させられるということに対する非常な反省と、そういうことがないという、不当な人権拘束というものに対する予防と、両面を勘案してまいっておりますし、また私どもの方もその辺を指導いたしておりますが、御指摘の点については、今後とも十分に指導をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  303. 新井彬之

    新井委員 それから同意入院というのがございますね。同意入院というのは、両親が精神病院へ行って、そして判こを押して入院をするということですね。その場合には病院まで連れていかなければいけないわけでしょう。連れていけるような病人だったら余り関係ないわけですね。自分を傷つけたり、人を傷つけたりするおそれというのはないわけでしょう。そうしますと、ある意味では第三者が通報をして、それも第三者というものが、本当のよく事情を知っている人なら別なんですけれども、知らない人がだれでもかれでも行ったら、これは人権問題もいいところだろうと思いますよ。しかし少なくとも両親が、これはいままでの経過から考えて大変だというような場合こそ、それは一緒に病院に行くならばお願いしますと言って連れていけばいいのですけれども、行かないところに非常にまたこれは問題がありますね。  こういうところはやはり現実問題として法律をちょっと直して親に協力をし、そしてその病院なら病院で診せてあげるというところまで手伝ってあげる必要があるのじゃないかと思いますね。矛、れで、もしもどうしてもそれで人権侵害になるというようなことも考えられますね。その場合には、保護司さんとかあるいは民生委員の方とかあるいはまた近所できちっと自治会長なんかいらっしゃいますね。そうすると、そういう方というのは急にそんなことになってどうということはない。特にもう御近所みんな知っている人は、これはやはり心配だな。しかし現実にはそういう方がほったらかされている。だから私はさっきの答弁で、第三者であろうとちゃんと書類が出たら、それについてちゃんと都道府県知事からそういう返事が来てこうですということになるということが、いま答弁がありましたから、だからそれは現実面として一遍またやってみましょう。そういうことになるかどうか。  だから、もちろんこれは鑑定の結果こうだった。しかし、これは新聞にも出ておりましたが、これは去年の八月に「覚せい剤中毒による精神分裂症と幻聴」と診断され、通院中の暴力団幹部が、「警察官を撃てば話を聞いてくれる」と猟銃を警官に発砲、負傷させた。」こういう事件がございましたね。「その後、男は大阪地検で鑑定の結果「覚せい剤乱用で幻覚、幻聴を起こすなど心神喪失状態だった」として不起訴処分となった。この際同地検は「このまま釈放すると危険」と大阪府に精神衛生法で強制入院の措置を求めたが、大阪府衛生部公衆衛生課の鑑定医が拘置所で調べた結果、「犯行時は別として現状では強制入院の必要はなく、通院で足りる」としている。こういうふうなことから見ますと、これはいつ、どういうことを起こすのかということの判断が医学的に明確なら結構ですよ。しかし、病院に通院をしている間もおかしくて、その間、警察官を撃てば何とかしてくれるだろうということでやって、それで心神喪失の状態だから不起訴処分になった。それでなおかつ鑑定したらまたこれも大丈夫だ。今度やったら、一体これはだれが責任を持ってくれるのですかね。これは本人の人権もございます。けれども本人の人権というのは、もしもそのときにまた今度鉄砲を撃って人を一人殺したら、そうしたらその本人だって人殺しという――やはりだれもとめてくれなかったという、これは人権問題じゃないですか。だから本当にそれは両親にも説得し、納得させて、こうですよ、ということで治す。不当にどうのこうのするということがあってはいけませんけれども、そういうことをもっときめ細かくやらないと、やはりこれは現実面から見てこういう問題を解決しないといけないということを私は強く、現実のぼくの知っている一つの例から思うわけでございます。  先ほど、保安処分というお話がございまして、私は法務省の保安処分というものが刑法一部改正の中でどういう位置づけであり、どういう形でおやりになろうとしているかはまだ存じておるところではございませんけれども、とにかく現実に見合った、そしてだれも納得するような形で、そういうことでやはり法律を運用していただくなり改正していただくようにしないと、麻薬はあるいは覚せい剤はどんどん入ってくる。そして水際作戦をやっているけれども、どうしても漏れてきた分に対して多くの方々が、打った本人だけでなくて、善意の第三者が今度は人権が侵害されている。そういう意味からも、極力この範囲まで納得するのならいいだろうということについては、やはり全力を挙げてひとつ御研究をしていただけないか、このように思いますけれども、いかがでございますか。
  304. 目黒克己

    ○目黒説明員 御指摘の点、特に精神衛生法の鑑定措置制度のきめ細かな運用ということについては、私どもさらに検討を加え、十分に都道府県等に適正に運用を図るように指導してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  305. 新井彬之

    新井委員 終わります。
  306. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 これにて新井彬之君の質疑は終わりました。  次に、受田新吉君。
  307. 受田新吉

    ○受田委員 先日の在勤俸関係法案の際に、法務省に関係ある質問事項を残しておきましたので、まずその問題から質問に入ります。難民問題でございます。  難民問題に関しましては、特にベトナム戦争の余波を受けまして南太平洋上に浮遊する小舟にベトナム難民が多数、生死のちまたを彷徨していることは世間周知のとおりであります。この難民の救済に当たりまして、われわれ非常に注目すべき発言をワルトハイム国連事務総長によって聞かされております。それは、国連の難民条約を日本は批准していない、受け入れさえもできず、宗教団体の施設に頼っているありさまである、定住も許されない、仕事も与えない、援助もしない、同じアジアの同胞が困窮し訴え続けているのに、日本政府の態度は余りに冷た過ぎはしないか、日本よ、特に日本政府に人道主義に基づいた外交政策をとってほしいと希望しておる、これは大変な発言です。  私は、あえてここで提唱したいのでございますが、日本は難民問題に余りにも冷たかった。しかし、時は迫りきて、現にベトナム難民が日本周辺に浮遊しているという悲惨な状況になり、また朝鮮半島にいつ戦争が勃発するかもしれないというとき、極東の平和と日本の安全が脅かされる段階になったときに、朝鮮で本当に悲しい戦争が勃発するときに、日本は一番火の粉を多く受けるということは、これまた国民が覚悟していることだ。そのときに、朝鮮戦争で多数の難民が日本へ押し寄せてくるということもこれまた想定にかたくないことです。日本がなぜ国連の難民条約にいままで加盟しなかったかという問題を抜本的に洗い直す時期が来ておると思うのでございますが、御説明を願いたい。
  308. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 お答えいたします。  難民条約に日本は加盟すべきではないかということでございますが、法務省といたしましては、この難民条約の趣旨には賛成でございまして、法務省としても、その加盟した場合の問題点等を目下実際に検討しておる次第でございまして、決して法務省が反対しているわけではございません。     〔村田委員長代理退席、高鳥委員長代理着席〕
  309. 大川美雄

    ○大川政府委員 外務省といたしましても、ただいま入国管理局長が言われたと同じことでございまして、難民条約及び難民条約を改定いたしました議定書の趣旨にはもちろん賛成でございます。また、この条約の中で規定されている難民のためのいろいろの事項がきわめて広範にわたっておりますし、関係省庁も多うございますので、関係国内法の整備等を含め、この検討に時間がかかっている次第でございます。この検討は続けてまいる所存でございます。  なお、人権関係の条約はほかにも、全部で十八ございますけれども、私どもといたしましては、そういった人権関係の条約のうちで、特に最も基本的な条約でありますところの国際人権規約、これは二つございますけれども、この両人権規約をまず早期に批准することを最重点に作業いたしておりまして、その他の人権関係の条約は実はその関係で後回しになっているというような実情でございます。
  310. 受田新吉

    ○受田委員 国際人権規約をまず批准したい、これはもう世論も熟しているわけです。私、どうして政府はこういう問題に、いま法務省の吉田局長も、また外務省の国連局長も、何とかしたいというお気持ちがありながら結論をなかなか出していない。国連の事務総長さえもこれほど厳しく日本を批判しているという段階で、もはやちゅうちょ逡巡することを許されないと思うのです。特に国際人権のお約束などというものは、文明国として、平和を愛する日本として、人間を尊重する日本として、全人類に対する深い愛情を寄せる意味からも、どうですか、国際人権規約はいつ踏み切ることになっておるのですか。
  311. 大川美雄

    ○大川政府委員 国際人権規約の国会提出の準備として、ただいま関係省庁との最後の詰めを行っております。もういよいよ最後でございます。できる限り早く御提出申し上げたいと考えております。
  312. 受田新吉

    ○受田委員 今国会中にこれを提出する予定でございますか。
  313. 大川美雄

    ○大川政府委員 何とかしてこの国会に提出すべく最善の努力をいたしているところでございます。
  314. 受田新吉

    ○受田委員 今国会に間に合わせたいと大川国連局長は明言をしておられます。法務大臣も同感でございますか。
  315. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 国際人権規約関係、広範にわたっておるわけでございます。その趣旨政府として賛成をいたしております。いまの世界の流れから見ましても、できるだけ早く批准するのが日本の立場として当然である、かように考えておりますが、広範にわたっておりますので、それぞれの法律との関係等、いま検討しております。できれば今国会に提案をしたい、こういうことで進めておることを申し上げていいと思います。
  316. 受田新吉

    ○受田委員 法務、外務両責任者、特に国務大臣の瀬戸山先生の御発言もありまして、今国会のうちにこの国際的なりっぱな約束を果たすということ、これは党派を超えて答えが出ると思うのでございます。  したがって、もう一つ、国連の難民条約というものは、いま私が示したような国際情勢はもう熟している。特に日本の周辺にそういう問題が続出しようという情勢の中でこれはいま御協議をいただいておるのでございまするが、これは、時期的にはどういうふうな進め方をお考えでございましょうか。
  317. 大川美雄

    ○大川政府委員 先ほどお答え申し上げましたような事情でございますので、いつ批准の具体的な手続に入れるかはちょっとただいま申し上げる立場にございませんことを御理解いただきたいと思います。
  318. 受田新吉

    ○受田委員 難民条約の方については、いまその時期を明確にすることが困難であるということのようです。ところが現実に日本の周辺にはベトナム難民が押し寄せておる。私、先般鹿児島を訪問しました。一夜城山観光ホテルに宿泊して、そこを訪問してくれた友人よりベトナム難民を乗せた船が鹿児島に入ってくる、入国管理業務の上からこれらの人々を上陸させることができない。宗教団体がこれを受け入れて上陸、そこで国連の事務職員が適当な日当、七百円か八百円かのいわゆる食事代に当たるものを与えて上陸した人々を生活させておる。アメリカへ行きたい、その他の国へ行きたいという人についての手だてもする。しかし日本に残りたいという希望の者に対しては、これはまことに冷たいということでございます。  それから、何日も船が港に泊まっておって、それをいまのような手続に時間をかけて、何日もしてから、またそこから追い出される。したがって、南太平洋で小舟に乗って浮き沈みしており、大半が海に沈んでいるそうですか、一割か二割の人が大きな船に助けられて日本に連れてこられても、日本の港へ上陸した時点で追い返されるということで、良心的な船長でさえもその目に見える気の毒な人を、涙をのんで振り捨てて日本へ帰ってくる船が多いということです。目の前に死の最後の瞬間の死の訴えをする小舟に揺られた人々を見捨てて、知らぬふりをして帰ってくる船長の気持ちも私よくわかります。同じ人間として生まれた不幸な国の運命にさらされた人々を、こういう問題は人道問題として無条件にみんな救い上げていいじゃないか。御苦労だったなと言って温かい手を差し伸べて船に受け入れてやって、日本に帰ったら、とにかく生死のちまたを彷徨したこれらの同じ人類、不幸な国に生まれたゆえに苦労しておるのですから、その人々が解放されたところでああ助かってよかったと喜んでいただける日を迎えさせてやりたいじゃないですか。私はここに何か日本の政治の上に冷たいものがあると思いましたね。いかがですか。入国管理業務というものは、このわかり切ったベトナム難民にこれほど厳しくしなければならないのですか。お答えを願いたい。
  319. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 お答えいたします。  昭和五十年の五月から現在までにわが国に上陸いたしましたベトナム難民は千二百六名、それから上陸した後で子供が二十八名生まれております。これはケースとして四十五件ございます。それで、日本船が拾ってきたのは全部これは私の方で揚げております。ただ、昭和五十一年の秋から五十二年の前半に三つのケース、外国船が入ってまいりまして三件だけ事実上上陸しなかったケースがございます。  これはなぜかと申しますと、実は外国船が入ってきました場合に、その船籍の本国政府といろいろやりとりをやるのでございますが、相手国政府がリベリアとかパナマとかギリシャとかはなかなか返事が来ないので、わが方はノーとは言っていない間に向こうが出ていった。一方この時期は、日本船及び実質的に日本が責任を持つべき、日本が用船をしている外国船が、次から次へとベトナム難民を拾って、続々と日本に到着をしていたときでございます。  それで、一つは入国管理局が揚げないということではございませんで、私の方は政府の窓口でございます。それで国内に揚げてもその時点において収容できる見込みが立たなかったときがございます。それからもう一つ、船籍主義で、自国船が拾ってきた場合は、日本が責任を負うべき場合はやはりある程度それを優先せざるを得なかったという事情で、少し外国政府との交渉が暇取ったということで、四十五件許可して上陸したわけでございますが、三件だけその準備のまだ整わなかったときに、事実上上陸せずに出ていった外国船がございます。  そういう次第でございます。
  320. 受田新吉

    ○受田委員 そういう外交交渉などをやるも何もない、もう生死のちまたを縫って辛くも船に助けられて日本の港に入った、お疲れさまと言って温かく迎え上げて、その時点で交渉すればいいので、沖へ船を浮かしたままで交渉するというのは、陸が見える、あそこに家がある、食べたい、水が飲みたい、そういうものを前にして、長い海上の浮遊から救われようとする人を沖に残したまま交渉するということは、吉田先生、これはちょっと残酷ですね。ごちそうを目の前にどうというような問題とは違って、辛くも助かって救われてきた人たちをまず揚げる。  いま施設とおっしゃったが、この施設はどこにでもあるじゃないですか。公共施設、また民間に協力を求めても、こういうのを同じ人類が、同じアジア人が長いことお疲れさまだった、あなたの国は戦乱に十年も苦労して本当にお疲れさまと言ってやれば、食糧もとにかく豊かになっておる日本ですよ、助けてあげたいですね。三隻沖に追い出したというのは、私は悲惨だと思うのです。これに対する対策について、その後相当進んだ手を打っておられると思うし、ここで総理府に、各省の間でお話を詰めて、すでに連絡会議の責任者の室長さんもおられる。室長さん、この問題について政府、特に担当のあなたがいま把握している難民対策のポイントを教えてください。
  321. 黒木忠正

    ○黒木説明員 御説明いたします。  昨年の九月、難民の数が非常に多くなりまして、先生お話しのような収容施設も足らないというような状態もございましたので、閣議了解をもちまして難民対策を定めたわけでございます。その一環としまして、まず組織的には、内閣に連絡会議というものを設けましたし、総理府の中に対策室というものも設けて、昨年九月以来鋭意努力しておるわけでございます。  当面とりました措置といたしまして、まず一点、先刻来問題になっております収容施設の足らないという問題がございますので、これにつきましては、固有の施設の中で難民収容のために使える施設があれば、これを難民に提供しようということで、目下準備を進めている問題が一つございます。  それから難民の緊急に医療を要する場合の手当ての問題。それから難民収容施設の中で、従来働くことについて若干の問題があるということで、事実上収容施設の中でじっとしておるという状態であったわけですけれども、これにつきましても法務省、労働省と協議いたしまして、働く場合の手続等も定めて、難民が日本でより心安く生活できるような対策を講じているわけでございます。
  322. 受田新吉

    ○受田委員 ベトナムに関する難民の問題の中で、かつて南ベトナムから日本に留学した学生さんがある。私、昭和四十六年十月に、前の衆議院議長、文部大臣の松田先生と一緒に日本の経済協力でやったチョーライ病院、カントー職業訓練所を二人で視察をしたことがあります。そのときに南ベトナムの首脳部と連日会談をして、これらの国に対する不幸な人々の救援に私自身も大変意欲をわかしたのですが、恐らく政府首脳部の皆さんの中に戦争の結末でいま悲惨な運命に遭っておる人、それはどこかへ亡命しておる。もちろんグエン・バン・チュー大統領自身はアメリカに逃げておるのですが、あの外務大臣、連日、会談した人たちの中にいずれかへ亡命しておる者もあるかと思います。これらの政治的な意義のある亡命者というものに対して日本が、もしこの人々が日本に亡命してきたとき、あるいは密航して、そっと海上から揚がって日本へとどまったときにどういうことになるのでございますか。  こういう皆さんについて触れてみたいのは、現に犯罪人の引渡し条約をアメリカとの間で結ぼうと外務委員会で条約をいま研究しておるわけです。国際的な犯罪人引渡し条約には日本はまだ入ってない。今度朝鮮でもし事件が起こって、日本へ政治的亡命をした人、近いところですから海上から密航してくる場合があるかもしれない。密航した場合の政治的な逃亡者と、堂々と入ってきた逃亡者と政治亡命者というものの扱いはどうなるのですか。
  323. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 難民条約と申しますのは、世上少し誤解をされている面があるかもしれませんが、いま、国連はこれを非常にはっきり区別しているのでございます。難民条約に当てはまる人と申しますのは、それが本国に帰ったら自由の迫害を受けるおそれがあるという前提でございます。これを英語ではレフュジーと申しております。それからいまベトナム難民と、われわれ日本語では同じ難民という言葉を使っておりますが、これは実は厳格に言えばその範疇に入らない、国連はこれをディスプレースドパーソン、行く先のない人たち、こういう言葉で表現をしております。したがいまして、要するに本当の難民条約の精神と申しますのは、ある政治的な主張をしたりいろいろなことで、いま先生がおっしゃいました政治亡命者なんかそれに入ると思うのでございますが、そういう者についての扱いというものを難民条約は規定しております。  この難民条約が起こりましたオリジンと申しますのは、ヨーロッパで、第二次世界大戦の結果いろいろ国境が変わり、いろいろなレフュジーが出たわけで、この人たちを落ちつけるためにヨーロッパ諸国が中心になってつくった条約でございます。したがいまして、一九五一年をめどに区別しているわけでございますが、その後アフリカに独立運動があって、その独立運動に従事する政治亡命者的な者をどうするかということでアフリカ諸国が入ってきてできた。こういう経緯がございますが、それとベトナム難民は少しカテゴリーが違うわけでございます。  それから先生がいまおっしゃいました政治亡命者的な人が港に来て揚げろと言われたときどうなるか、これは実はいま、まだそこまで難民条約は規定していないのでございます。それで、これは国連局長が御説明した方がいいと思いますけれども、実は、そういう場合をどうするかということで、今度は領土的庇護に関する条約案、国連が中心になりましてこの条約を国際的につくろうじゃないかということで、去年の二月に第一回の会議をジュネーブで開催いたしまして、これは後もう一、二回国際会議をやらないと条約案としてまとまらないと思いますが、国際的にはそういうことになっております。  これを国内法の方から申しますと、実は出入国管理令はそういう点は何でものめるようになっておりまして、たとえばベトナム難民、世上よく難民条約に入っていないからだめなんだろう、こういうことをおっしゃる方が多いのでございますが、実は、いま申しましたように、難民条約に入っている入っていないと、ベトナム難民を受け入れるのとは余り関係がないのでございます。われわれはそれの処理はあくまで現行の出入国管理令に基づいてやっておりまして、何ら支障はないわけでございます。  それからまた、政治亡命者が来たらどうするかと言いますと、その政治亡命者の場合も、法務大臣が特別に許可し得る権限が現在の出入国管理令内にございますので、政府がそういう決意をいたしますれば、いつでも受け入れることができる。したがって、国内法上何ら支障はないというのが現状でございます。
  324. 受田新吉

    ○受田委員 日本へ亡命した皆さんが母国へ帰れば殺害されることは明白であるというようなときに、日本へ亡命すれば生命が維持されるということですね。それはもう間違いない。  私ここでひとつ、大変気の毒なベトナムの留学生、日本へ留学した皆さん方とも何回か話したことがあるのですが、母国がああいう状態になって帰ることもできない、日本におることになると、これは不法残留者ということになるのですね。こういうときにこの学生たちは一体どういう運命――これはある意味ではもう完全な難民ですよ、在日難民。これはどういうことにするわけですか。
  325. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 昭和五十年四月末にサイゴンが陥落いたしました後、わが国におりますインドシナ半島から来ている留学生をどうするかということを政府関係各省間で協議、決定いたしまして、とりあえず、大学で勉強している人は継続して勉強してもらう。金がもう本国から送ってこないだろうからアルバイトしてもよろしいということも決めました。それからまた、本当を言えば留学生は卒業したら自分の国へ帰ることになっておりますが、帰るところがないだろうからしばらく日本にいてもよろしいということになっている次第でございまして、本人に滞在期限が切れそうになると入管局へ来ていただいて滞在期限延長申請をしていただければ、われわれの方としてはいつも許可しております。
  326. 受田新吉

    ○受田委員 いま現実に路頭に迷っている学生はないと判断してよろしゅうございますか。
  327. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 滞在延期に来ない学生がございます。そうなりますと、ただそれをわれわれはとりたてて言いませんが、滞在期限が過ぎて滞在しているのだから法律的に言えば不法残留ということになりますけれども、どういうかげんか、滞在期限延長申請に来ない学生がいるということを聞いております。
  328. 受田新吉

    ○受田委員 いずれにいたしましても、人間としての生存権というものは国際的にみんなが守り合ってあげなければならない問題でございますので、日本を頼りにしてたどり来た人々にその立場を最高に守ってあげて、その生命の存続に協力してあげるということを、特に日本のような先進国家としての面目を世界に誇る国家として、十分考えていかなきゃならない。提案しておきます。  次に、先般の質問の残りにも関係するし、また、きょう新たに提案したい問題は、中国から日本へ里帰りをしてきた人々の処遇でございます。  いわゆる中国孤児、大東亜戦争の末期に中国に残された日本人の子供さんが、日中国交回復以後、中国から日本を頻繁に訪れて、その数もう三千人と言われておりますけれども、これらの皆さんに対して、法律的には一時帰国者あるいは引き揚げ者、その二つの立場の人のほかにまだどのようなものがあるか。  それからもう一つは、法律的に日本国籍を持った中国の孤児、死亡の宣告を受けて戸籍から抹殺された人が実は生きておったという場合の扱い、お答えを願いたいのです。
  329. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 恐れ入りますが、前段の御質問、もう一回お願いいたします。
  330. 受田新吉

    ○受田委員 これは中国の孤児として――大東亜戦争の末期にあの戦乱の中で親が帰ってきた、子供は残してあった。その子供が大きくなって、もちろん日本の国籍としてこれが戸籍に入っておった者もあれば、入らないままで残されて現地の人に託してこっちへ親が帰ってきた、こういう中国に残された子供、親捜し運動があれほど頻繁に起こっておる。これは人道問題として非常に麗しいことでございますが、これらの人の中で日本国籍を持っておった人、それは当然日本へ引き揚げ者として帰ってくるわけですね。これは厚生省の方では、未帰還者留守家族等援護法の対象になっているのかどうか。  それから、向こうに国籍を持っておって、親が日本人であるというので親に会いに来る立場の人は、これは日本へ旅行するいわば里帰りということになってくると思うのです。これはいわば一時帰国。その二つのケースのほかにまだ何かあるかどうか。と同時に、この身分的な扱いをどうしておるかをお尋ねしておるわけです。
  331. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 親が日本人でその子供が日本国籍を持っている場合には、これは当然日本人の権利として帰ってこれるわけでございます。  それから、そうじゃない、どうも中国人に養われているとか中国人の養子になっているとか、そういう形式の、現在中国籍だ、しかしどうも自分は日本人なんだ、けれども親がわからないというような場合があるかと思います。そういう場合は、もちろん向こうにおったまま日本の国籍を有することが明らかであるという場合はまた当然帰ってこれますが、そうじゃない、現地にいたんじゃ捜せないので日本へ来ていろいろ捜したい、こういう場合もあるかと思いますが、その場合はこっちへ来て身元保証人と申しますか、そういう方がおられる場合はもちろん入国を認めております。
  332. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっと手続的な簡単な御答弁でございますが、日本が受け入れた昭和四十七年以後の、日中外交が正常化して以後の数字をちょっと示してもらいたいのです。
  333. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 お答えいたします。  昭和四十七年十月のいわゆる日中国交正常化後に中国から永住帰国、つまり引き揚げと申しましょうか、そういう形でお帰りになった方は三百七十六世帯千二百九十三名でございます。
  334. 受田新吉

    ○受田委員 その数字は、今日現に日本に残されている数字との関係はどうなっていますか。その中で今日日本にそのままおる人。
  335. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 この方たちは永住の意思を持って帰国におなりになりまして、私どもが帰国直後の定着援護を行った数でございまして、おおむねの方は日本で生活しておられるかと思いますが、一部あるいはお帰りになった方もおられるかもしれません。私どもとしては、引き揚げ後相当期間経過して向こうにお帰りになられます方の数は把握しておりません。
  336. 受田新吉

    ○受田委員 別に一時帰国をした人の数字も、あわせて言うてもらいたいのです。
  337. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 一時帰国をされました方は、同じく昭和四十七年の日中国交正常化以後二千五百六十七世帯三千九百六十六人でございます。(受田委員「残っている人」と呼ぶ)  それで、一時帰国というのは、六ヵ月を限度としてお帰りになっておりますので、中国へ再びお帰りになった方は二千二百七世帯三千三百七十人が中国へお帰りになりました。それでこの差が、現在日本に滞在中の方及び一時帰国後に永住帰国に意思変更されまして、日本に定着された方でございます。その方の数は、両方合わせますと三百六十世帯五百九十六名、約六百名の方がまだ里帰り中で一時日本に滞在中の方であるか、または永住帰国に意思変更されまして、日本に住んでおられる方でございます。
  338. 受田新吉

    ○受田委員 ここでちょっと問題があるのですが、中国から日本へ入ってきた人の登録問題です。日本へ戻って家庭裁判所で国籍上の登録をしてもらった人に、また裁判所の決定にかかわらず外国人としての扱いをしてそれに旅費を渡して、日本へもし必要であれば帰化手続をせよというような扱いを法務省はしておる。こういう扱い方をちょっとただしておきたい。家庭裁判所で戸籍が復活している人に対して外国人の扱いをするということをどういう形でやっているのか、同じ日本国の機関が二様の扱いをしておることを私は伺っておるのですが、御答弁をしていただきたい。
  339. 香川保一

    ○香川政府委員 ただいま御指摘の家庭裁判所での登録というのは、これは制度上はないわけでございまして、お尋ねの点は恐らくは前に失跡宣告を受けて戸籍から抹消されておる者、さようないわゆる中国孤児が日本へ帰ってまいりました場合に、まさにその失路宣告は間違いであったわけでございますから、家庭裁判所に申請して失綜宣告を取り消して、そして市町村役場の方に復籍の届け出をする、かようなことによって日本人としての戸籍に登載をされる、こういう手続になるわけでございます。  さような失跡宣告の取り消しがあった者について帰化の申請をすべきだというふうなことは、理論的には非常に矛盾することでございまして、恐らくは中国孤児の中にはいわゆる護照、パスポートでございますが、中国官憲の発行したパスポートを持って日本に来る、このような場合には中国政府のパスポートを持っておるわけでありますから、中国政府としてはその孤児を中国人というふうに取り扱っておるものと考えざるを得ないわけでございます。ただ、その場合でもいろいろのケースがございまして、たとえば日本人である小さな子供を中国人が拾って育てた。そして、その養父と申しますか、親がわりをしておった中国人が中国の戸籍に登載すると申しますか、日本流に言えばそういう手続をとった場合、それからまた中国人の夫が日本人妻の意思を確かめないで中国への入籍の手続をとった場合、いろいろそういった本人の希望によらないで何らかの事由によって中国への入籍の手続がとられたものは、これは入籍そのものが無効でございますから、したがって、依然として日本人の国籍を保有しておる、かように考えられるわけでございます。  しかし、そういったケースでなくて、自分の希望によりまして入籍の手続をとった日本人は、その手続によりまして中国人となるわけでございまして、そうなりますと、日本の国籍法の八条によりまして、自分の志望によって外国に帰化した者は日本国籍を失う、こういうふうなことになるわけでございます。そういう人につきましては改めて帰化手続をとっていただく。そうしなければ日本人になれないわけでございまして、これは御承知のとおり元日本人であったわけでございますから、一般の外国人の帰化よりもより簡易な帰化手続で帰化を許すことにしておりまして、実際の扱いは、そういった気の毒な事情にもありますので、できるだけ早くその手続さえとってもらえば私どもとしては帰化を許すことで処理いたしております。
  340. 受田新吉

    ○受田委員 いわば行方不明というかっこうで失跡の宣告をしたのが、戸籍が復活するわけですから、生き返ってきたわけです。生き返ってきた人がまた中国籍でもある。これはいわば二重国籍みたいなものですね。こちらでは戸籍で失綜の宣告を取り消して生きてきた。向こうの中国の方でも籍がある。二重国籍じゃないですか。どうですか。
  341. 香川保一

    ○香川政府委員 先ほど申しましたように、自分の意思で中国に入籍した者は中国国籍を持っておりまして、そのことによりまして日本の国籍法上は八条の規定によって当然に日本国籍を失う。したがいまして、入籍の事実が本人の意思によってなされたということでありますならば、二重国籍ではなくて、まさに中国人ということになるわけでございます。たまたまそういう方が内地におきまして失跡宣告の手続をとられておったということになりますと、もはやその失跡宣告を取り消しても復籍はできないわけでございまして、したがって、日本の戸籍に登載されるという関係にはならないわけでございます。だからさような方は、先ほど申しましたように、帰化手続によって初めて日本国籍を取得する、こういうような関係になるわけでございます。
  342. 受田新吉

    ○受田委員 そういう数字はどの程度ございますか。つまり、日本の国籍を復活した、同時に中国の国籍から帰化手続を申請しておる者と数字が出ているはずです。相当数あるのですか。
  343. 香川保一

    ○香川政府委員 ただいま的確な数字は持ち合わせておりませんけれども、私どもの取り扱いの基本的な考え方といたしまして、中国の護照、パスポートを持って帰ってきた人でも、いろいろ本人について調査いたしまして、先ほど申しましたような、本人の意思に基づかないというふうなことでありますれば、帰化手続はとる必要なしに、さようなものの中には、実は、向こうで日本人の子供として生まれて日本の戸籍に登載されてなかったというものもあるわけでございまして、さようなものはそのまま日本の戸籍に、いわば出生届と同じような形での就籍を容易に認めておるわけでございまして、いまおっしゃいましたような、中国に自己の意思で入籍して、しかもこちらで失跡宣告を受けておって、そして日本へ帰ってきて帰化したいというふうな数は、ただいま的確には持ち合わせておりませんが、相当数あると思います。
  344. 受田新吉

    ○受田委員 えらい冷たい考え方だと思うのです。つまり、日本で失跡宣告を受けた分が取り消されて戸籍が復活しておる。その行為をもってもう日本国民たるの意思が明白なんですから、それがいま中国籍にまだ魅力があるとかなんとか考える方がおかしいので、日本の国籍が新しく復活しただけで、その要求をしただけでもうりっぱに日本人の立場を守っておるのが、まだ中国の方に残る意思があったとかなんとかいうくだらぬことを考える、そのことが非常におかしいと思うのです。  私はむしろ、時間が来たので大事な問題として一つ最後に、これらの方々が日本へ帰ってきても、ふるさとの国へ帰ってきたのに日本は冷たいんだ。先般新聞に大きく書かれたあの宮城県に帰ってきた中国里帰りの人が家族を殺して、実は家族の方は重傷にとどまったのですが、本人が自殺したというような事件がある。言葉も十分わからない。これは悲劇ですよ。中国里帰りにこの悲劇を起こすことは、受け入れ体制の日本としては許されないのだ。だから、中国から日本へ帰りたい、母国へ帰りたいという皆さんは、日本へ帰ってきた以上は温かくこれを迎え入れて、言葉、教育上の問題、生活の問題、就職の問題できるだけ永住の道を開くことを前提にしながら、そうしたりっぱな受け入れ体制をしくために、まあ総合的なセンターのようなものをつくってほしいという要望も出ておるし、国会でも論議もちょいちょい出ておるのですが、これはひとつ急いで各省間で、法務省、厚生省、外務省一体となって、民間の関係者とも一本になってこの受け入れ体制を真剣に取っ組んで、安定した生活がしてもらえるように、法務省どうですか。深刻にお考えになってしかるべきじゃないか。厚生省も来ておられるはずです。外務省もおそろいです。三者一体になって、中国里帰りの皆様に失望した母国でなくして希望多き母の国日本という印象を与えてしかるべきだと思うのです。総合対策をそれぞれの立場で御答弁願いたい。
  345. 香川保一

    ○香川政府委員 お言葉を返すようでございますが、やはり中国国籍を取得した方は、日本に帰ってこられまして日本人に戻るといいますか、それはまさに帰化申請でございまして、法律的には、いかにも冷たいかもしれませんが、法律的に申し上げますと、中国国籍を取得したことによって国籍法により日本の国籍を失っておるわけでございまして、これを日本国籍を取得するためには、現行法のもとでは帰化の手続しかないわけでございまして……
  346. 受田新吉

    ○受田委員 それは、話は済んでおるのです。私は受け入れ体制を聞いておるのです。局長の御答弁は非常にもたもたしてポイントを外れておる。すかっと答えてください。時間がないんだ。
  347. 香川保一

    ○香川政府委員 受け入れ体制の方は、私どもの所掌事務としては帰化の関係だけでございます。
  348. 吉江恵昭

    ○吉江説明員 お答えいたします。  私どもは、中国からお帰りになった方の受け入れ体制のまず第一番に着手する任務を担当しておる役所でございます。個々にいろいろなケースをお持ちの方がおられます。一つ一つ全部ケースが違うと思いますが、厚生省の援護局の分野の中でできることは、一生懸命今後とも充実してやってまいりたいと思います。  それから、あるいは教育の問題、就労の問題、そこら辺については関係各省とか、出先関係各機関の御協力を得、お互いに緊密に協力し合って今後とも充実した援護対策を進めてまいりたい、かように考えております。
  349. 受田新吉

    ○受田委員 私、中国里帰り問題については、いまのような悲劇を繰り返さないために、とにかく最善の努力をして、できるだけ本人の希望に対して速やかな手当てをしてあげる、生きる道を、希望を与えてあげるということを配慮してほしいのです。  私に与えられた時間がもう六分しかありませんので、法務大臣に一つただしたいことがございます。  今回の法律案のそれぞれのポイントについてお尋ねする時間がなくなりました。ただ、裁判の促進というものについては、法務大臣としても強く願っておられるでしょうし、公職選挙法にも選挙違反の処理については百日裁判という厳しい制約もついておることも御存じと思うのです。そういう裁判を促進して、できるだけ問題の解決を早めるということをわれわれ特に選挙違反事件については明確にしておかなければいかぬ、この点同感ですね。
  350. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 選挙違反については百日以内にできるだけやれということになっているわけでございます。ただ、御承知のように、実際になかなかそうできておらぬところがある。これはいろいろな事情がある。特に、率直に言って、関係者の引き延ばし作戦、いろいろあるわけでございまして、裁判所だけの責任じゃないのですけれども、これは当然裁判所としては百日裁判を遂行するように努力する立場にあるわけでございます。
  351. 受田新吉

    ○受田委員 それから死刑の宣告というものは、これは最悪、極刑でございますが、死刑の宣告を受けた者は、刑の執行をする段階で、法務大臣のサインが要るということを大臣御存じでございますか。だから、死刑の執行は大臣の決断で決まるわけだ。大臣がサインをしたら、何日後に死刑の執行がされるのですか。
  352. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 五日以内に執行することになっております。
  353. 受田新吉

    ○受田委員 死刑の宣告を受けて刑の執行をしていない数がどれだけあるか。そう多くはないと思います。
  354. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 現在十六名のはずでございます。
  355. 受田新吉

    ○受田委員 帝銀事件平沢被告が死刑の宣告を受けたのはいつでございますか。
  356. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 死刑の判決が確定いたしましたのが昭和三十年五月七日でございます。
  357. 受田新吉

    ○受田委員 十六名の中には平沢氏がおるわけですね。この二十三年間、刑の執行をしない理由はどこにあるのですか。これは大臣が答弁していただきたい。
  358. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 刑事訴訟法によりますと、死刑確定裁判がありましたら、六ヵ月以内に執行する原則が立てられております。ただし、再審の請求等がありますと、これは必ずしもこの基準にこだわらなくてよろしい。これは人命でございますから、一遍処断いたしますと終わりでございます。再審の請求や恩赦の請願がありますと、その結論を見るまでにはできるだけ余裕を持とう、これが現在までの扱い方でございまして、平沢氏に対してはずっと再審の請求が今日まで続いて、再審の審査が続けられておる、こういう状況でございます。
  359. 受田新吉

    ○受田委員 再審の請求を繰り返し繰り返し認めていけば、刑の執行は生涯されなくて済むという事例にもなるわけです。ここまで来ると、八十を超えた平沢被告に刑の執行というものは現実になし得ない状態になっておるのでありませんか。
  360. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 平沢氏はいま八十四歳か五歳だと思いますが、いま申し上げましたように、再審の審理中でございますから、実際上は余裕を置いておる、こういうことでございます。
  361. 受田新吉

    ○受田委員 再審の審査の期間は無制限ですか。
  362. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 特に再審請求に対して、何日以内、何ヵ月以内に裁判をしなさいということにはなっておりません。
  363. 受田新吉

    ○受田委員 これは世論もここまで来ると、刑の執行ということを平沢氏に求めるような声はもう消えてしまっておる、大勢がそうなっておるというような状況で、まだ再審が続いておる。死刑廃止論というのがあるのですが、これは大臣、耳を傾けたことはございますか。大臣は死刑をむしろ厳しく実行すべきだという御意見がほのかにあると承っておりますが、ひとつ御心情を……。
  364. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 死刑を厳しくという考え方を持っておるわけではございません。死刑廃止論というものは確かにございます。世界の趨勢も、できるだけ生命を絶つ刑は少なくしよう、わが国でも御承知のとおり改正刑法草案なんかでもそういう傾向にあります。しかし、各国もさまざまでございますが、死刑を全廃するということが刑事政策上いいかどうかということについて疑念があります。私は、全廃ということについては賛成しかねる、かようなことであります。
  365. 受田新吉

    ○受田委員 時間が来ました。質問を終わります。
  366. 高鳥修

    ○高鳥委員長代理 柴田睦夫君。
  367. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 沖繩刑務所の移転の問題ですが、今回の改正案では、沖繩刑務所を移転することになっておりますけれども、施設の移転に当たっては、職員の待遇問題に十分配慮が加えられなくちゃいけないと思っております。刑務所の移転に当たりまして、沖繩刑務所職員一同ということで、施設移転に伴う要求書というのが法務省の矯正局長あてに提出されておりますけれども、この内容及びこれに対する見解をお伺いいたします。
  368. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 お尋ねのとおり、昨年の八月に、幹部職員を除く沖繩刑務所の職員から私あての要求書が出ております。これにつきましては、内容の中には法律上実施不可能な点もございますが、さような点は除きまして、その要求書に盛られた心情にはくみする点もございますので、十分検討をいたしまして、実施可能なものにつきましては極力実施するように努力いたしますし、刑務所の職員並びに家族に不利益を与えないように対応いたしたいと思っております。  内容はきわめて多岐にわたっておりまして、全部を申し上げますと相当時間をとるのでございますが、私どもといたしまして、できるだけ努力をいたしたいという点について申し上げたいと思います。  那覇市から二十一キロ離れたところで現在まだやや開発されていないところへ参るので娯楽施設がない、そこで集会室とか娯楽室を設置してほしいということでございますが、やはり国の施設でございまして、余りそうしたことを表向き認めるということは、国民の財政負担上からも問題があると思います。そこで運用に当たりましては、独身寮を護送職員の宿泊施設に充てまして、護送職員が普通泊まるような構外の待機所あるいはクラブ等を集会室、娯楽室にできるだけ利用するようにしたいと思っております。  それから移転する子供のための遊園地を設置してほしいということでございますが、これは設置する方向で検討中でございます。  なお売店、独身者のための食堂等を開店してほしいという要望でございますが、これは共済組合で業者に経営を委託して実施したいと思っております。  また、診療所も充実してほしいということでございますが、この点は共済組合の経営で実施することに決めてあります。備品については十月下旬までに上申させることになっておりまして、現在検討中であり、お医者さんについても、その確保について現地で努力する予定になっております。  それから電話回線が不足であるというようなことがございました。宿舎に電話がないときにはできるだけ赤電話を設置してほしいという点がございますが、これは設置する予定でございます。  それからハブの生息地帯なので外灯を多くするほか、周辺道路を整備してほしいということでございますが、これは人命にかかわることでございますので、設置いたす予定でございます。  それから公務員宿舎に換気扇、畳、カーテン、流し台、ガス器具を完備してほしいということでございますが、これは完備する予定でございます。  そのほか、検討中のものといたしましては託児所の問題がございますが、これは果たして経営が成り立つかどうかということもございますので、検討をいたしたい。  それから通学路を整備してくれということでございますが、これも関係の村と目下整備について協議中でございます。  それからバス路線の延長等の御要望がありますが、これについては、現地で目下交渉中でございます。  最後に、遠くに移るので公務員宿舎を継続して使わせてほしい。これは那覇市で共かせぎ等をやっておりますと、夫婦別れ別れになると困るということでございます。この点は柴田委員も御存じだろうと思いますが、刑務所の場合には昼夜受刑者の監視に当たるたてまえから、本来は公務員宿舎を与えられない一般職員につきましても公務員宿舎を与え、また義務官舎といたしまして施設の付近に居住するということになっておるわけでございまして、これが逃走を防止し、また逃走があった場合の警備に適するわけでございまして、こういう点につきましては、いわば矯正職員としての使命感の問題でございますが、これが欠けるようなことがあってはならないわけでございまして、矯正職員に特に与えられている優遇措置についてはできるだけ理解をして、国の方針に協力すべきであるという点は説得あるいは指導をいたす予定でございますが、事情まことに気の毒なものにつきましては、移転の段階において善処したいと考えております。  以上でございます。
  369. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 御親切な答弁をいただきましたが、刑務所の職員というのは国公法などで団結権、団体交渉権が奪われているわけです。団体交渉もできないという立場にあるわけですから、この職員たちの要求についてあいまいにされてはならない、特に配慮をしなくてはならない、こう思うのですが、法務大臣の見解を一言お聞きしたいと思います。
  370. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 おっしゃるとおりに刑務所職員には団体交渉等の制度がございません。これは職務の性質上さようになっておると思います。したがって、関係者が安心して職務に忠実にやっていただくようにという立場から、いま矯正局長からもいろいろ御説明いたしましたが、可能な限りのことをしたい、かように考えております。
  371. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局、施設の移転が知念村というところになって、これは非常な僻地である。こういうところに移転するわけですから、いわゆる僻地手当、特地勤務手当を支給してほしいという要求があるのですが、この点人事院はどうお考えですか。
  372. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 人事院からお答え申し上げます。  沖繩刑務所の那覇からの移転に伴いまして隔遠地的な特地勤務手当の支給の要望について人事院はどうかというお尋ねでございますが、御承知のように特地勤務手当といいますのは、離島等の著しく生活不便な土地にあります官署に勤務する、あるいは勤務することになる職員を対象として支給される手当でございまして、生活が著しく不便であるということはどういうことであるかといいますと、基準がございまして、その生活条件として学校あるいは役場、病院、停留所、乗り物関係とか、それまでの距離、交通機関の頻度などを総合的に一定の基準により評価することにいたしております。その結果、総合して一定の点数というか評価以上になりました官署について初めて隔遠地手当、特地勤務手当を支給する、こういう手続にいたしてございまして、現在、御質問の沖繩刑務所の事例につきましてはまだ詳細を伺っておりませんので、ここでいま何とも申し上げる段階ではございませんが、いずれ法務省より御相談がございました段階で具体的に検討させていただきまして、その取り扱いを決定していくことにいたしたい、さように考えております。
  373. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この点は十分検討して官署指定をして、特地勤務手当を支給すべきであると考えますので、これを要望しておきます。  それからもう一つ職員の要望でありますが、公務員宿舎を利用している者が百九十九名中二十四名だということです。それで、奥さんの職場とも関連して、引き続き公務員宿舎を使用させてほしいという要求であるわけです。この要求に対する御見解をさっき伺いましたが、ひとつその状況をいろいろな面から把握されて、どうしても事情やむを得ない、これを使用させなくちゃならぬとお考えになるものについてはこれを使用させるというように特に取り計らってもらいたいと思います。この点もう一度……。
  374. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、矯正職員にはいろいろな優遇措置が認められておりますが、それは矯正職員としての仕事のむずかしさの反面、使命感をも自覚しろ、こういうことであろうかと思います。まことに二十一キロ離れたところに移転するのでございますが、国内におきましても、たとえば名古屋刑務所とか福岡刑務所の移転は二十四、五キロでございます。黒羽刑務所の移転は七十五キロ隔たったところに移転をしているのでございまして、そういう点も十分考慮して、矯正職員としての使命感を持ちつつ今後も仕事をしていただきたいということがまず第一にわれわれの考えているところでございますが、先ほど申し上げましたように、事情やむを得ない場合には認めるということでございます。  この点につきましては、現地職員にもいろいろな考えがあろうかと思いますし、私どもでも指導に努力する予定でございますので、柴田委員におかれましても、さような点がございましたときには、ただ甘いということではなくしてひとつ指導の点についても御協力をお願い申し上げます。
  375. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 刑務所というところは非常に大変な職場であって、これが那覇のような中心からへんぴなところに移転する。これは職員にとってみれば精神的にも肉体的にも大変な問題がつきまとうわけです。こういう中で出されている要求でありますから、先ほど大臣おっしゃいましたように、十分職員の意見を聞き、そしてまた各省庁とも協力していただいて、要求を実現さしていただきたい。このことを強く要望しておきます。  それから刑務所職員の勤務時間の問題ですけれども、保安課の一般職員、看守とか看守部長勤務時間はいま週四十八時間になっておるわけです。同じ保安課でも係長以上は週四十四時間ということになっております。同じ課の中で差があるということ自体が不合理であると思うのですけれども、いまの時代においては週四十八時間労働というのはもう常識外になってきているわけです。一般社会の労働条件と比べて比較にならないという現状、しかもその仕事の中身も非常に重要で厳しい。こういう点について法務省としては世間並みに労働時間を減らすというような検討をされているのかどうか。そういう考えはないのかどうか。この点を伺います。
  376. 石原一彦

    ○石原(一)政府委員 ただいま御指摘の点につきましては検討中でございます。その是正をいたすためには、どうしても増員が必要と相なるわけでございますが、御承知だと存じますが、昨年と本年度の予算案についてふえましたのはわずか三人でございまして、この二ヵ年では合計六人でございますが、過去十年を換算いたしますと、沖繩復帰後の沖繩刑務所の職員の数を除きますと、百五十人余りの減員になっているわけでございます。したがいまして、増員等も考えつつ、勤務時間の短縮化につきましては、今後とも努力を重ねてまいりたいと考えております。
  377. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、入国管理事務所の統廃合の問題に関連してです。  まず、米軍基地に関連する入管事務所の問題ですが、安保条約に基づく地位協定の第九条で、米軍人は旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外されておって、これにかわる身分証明書なども要請かあるとき提示すればよい、こうなっております。これはいわば日本の主権が制限されている米軍基地ということになるわけですけれども、そこに入管事務所を設置する必要性はどこにあるのか、お伺いします。
  378. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 お答えいたします。  横田、岩国等米軍基地におきましては、日米地位協定の適用を受けない一般の外国人の出入国も相当数ございます。これについて出入国管理を行う必要がございます。また出張所設置予定の周辺には、多数の外国人が居住しております。それらの在留管理を行う必要もございます。これが出張所を設ける理由でございます。
  379. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 日本の米軍基地から米軍人軍属及びその家族以外の外国人、または日本人も含めてですけれども、これらの基地を利用して出入国する人がたくさんいるわけです。昭和五十二年十月までの統計ですけれども、日本人だけで横田は四百人、嘉手納が三百二十八人、佐世保が百八人出国するという状況になっております。これらはどういう目的で、なぜ米軍基地を利用して出国しているのか、この点お伺いします。
  380. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 これらの人々は何らかの意味において米軍と関係のある人々でございます。たとえば日本人ですが、退役軍人の妻、それから米軍がチャーターしております民間航空機には、日本人のスチュワーデスなんかが乗っておったりします。しかし大部分は日本の婦人が米軍人と結婚して、まだ日本人のパスポートを持っておる、こういう人でございます。
  381. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 安保条約に基づく地位協定では、米軍人軍属及びその家族が米軍基地から自由に出入国することが許されているわけです。ところで、これらの人たち以外の者である自衛隊員が米軍基地から出入国しているということを聞いておりますけれども、これはどういう目的で米軍基地から基地を利用して出入国するのか、この点防衛庁にお伺いします。
  382. 池田久克

    ○池田説明員 ここ数年の問題について申し上げますと、自衛隊員で米軍基地を利用して出入国した者はございません。
  383. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 昨年の国会ですか、ちょうど金大中事件が問題になっていたころ、自衛隊の幹部が横田の基地から韓国に行ったということを認めておられますが、そういうことは御存じですか。
  384. 池田久克

    ○池田説明員 昭和四十七年、八年、九年、その段階でございますと、主として米国側の招待、これには米国防省の招待もありますし、太平洋軍の招待もございます。招待の目的は相互に情報を交換し合うということもありますし、あるいは日本の記者団を米側が招待してアメリカの実態を見てもらうというような話がありまして、関係の自衛隊員が同行したというようなケースはございました。しかし、少なくとも先ほど申し上げましたように、ここ数年につきましては、そういう例はございません。
  385. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この数年来ないということは、現在はやらないという方針に決まっているのですか。
  386. 池田久克

    ○池田説明員 先ほども申し上げましたように、米国が主としてでございますけれども、米側からいろいろな形で招待が参ります。そのときに、御承知のようにアメリカ側は非常に長距離の輸送機を米軍自身が持っておるものもありますし、あるいはパンアメリカン等をチャーターいたしまして軍用に使う飛行機があります。その飛行機で来てほしい、また帰りもそれで送るというケースは今後もあろうと思います。そのようなときは出入国はあり得ると思います。  私自身も、古い話で大変恐縮ですが、昭和四十一年に米空軍省に招待を受けまして、帰りはパンアメリカンのチャーター機で横田におりております。当然のことでありますが、そこで入国の手続をいたしました。したがいまして、今後ともないとは申し上げかねます。
  387. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 なぜこういうことを言うかといいますと、米軍基地を利用して韓国やフィリピンの米軍基地へ自衛隊員が自由に行けるというような道を開くことになるということを恐れるからです。先ほど言いましたように、韓国に渡ったという事例もありますし、また自衛隊以外の場合に見てみますと、米軍の関係者ということで米軍基地から米軍基地へと渡り歩く中でスパイ行為だとかあるいは密輸というようなことに関係する、そういうケースになる可能性も考えられるわけで、そういうことを考えますと、米軍については地位協定上の規定がある。そして軍属やその家族、こういう人についても入国審査というのは厳重にやらなくてはならない。それから、そういう人でない一般人の場合、これは国際空港が日本にあるわけですから、そうした基地を使わすべきでなくて、この国際空港を使うべきだというふうに考えますが、この点、ちょっと大臣の御意見を伺いたいと思います。
  388. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 われわれ入管当局といたしましては、米軍の方に出入りをコントロールしている部署がございまして、常にそれと密接な連絡を持ってやっております。最近はもうほとんど何もトラブルというものは、私が着任して以来聞いておりません。
  389. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、羽田空港出張所に関連して、これと表裏一体の関係になります成田入管職員の待遇問題についてお聞きします。  この三月三十日に開港を目指しておりまして、そしてこれに対しては欠陥空港だというようなことまで含めて世論の批判が強いわけです。そういう中で、そこで働く労働者の待遇問題が十分に取り上げられていないのではないか、そういうことを懸念するわけです。実際、空港の機能から見ますと、パイロットや管制官、飛行場施設の関係者、税関、入管職員、いろいろあるわけですけれども、法務省所管の入管職員に待遇問題を万全にするということは、これは開港する上においては前提条件だというように考えます。  そこで、法務大臣に入管職員の待遇問題についてどういう認識を持っておられるか、どういう考えでおられるかということをお伺いします。
  390. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 ただいま先生のおっしゃったことは十分われわれも認識いたしておりまして、職員なんかの意見等も十分取り入れて、万全を期している次第でございます。
  391. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ではちょっと具体的に聞きますと、入管職員は羽田から成田へほとんどが移転しているわけです。そこで、そういう中で調整手当などを現行八%支給されているわけですが、これが引き続き支給されるのだろうか、あるいは宿舎は完全に確保されているのだろうかというような不安あるいは不満というものが積もっているわけです。五十二年六月二十八日の人事担当官会議の要望書を見てみますと、この八%の措置を講じることを人事担当官会議でも要望しております。また総評その他の組合から政府への要請に対して、人事院にそれを要請するというようにも回答がなされております。いままでの経過から見まして、現在法務省としては、こういう問題に対してどう対処するつもりか。また人事院は調整手当を引き続き支給するということを実施するつもりでいるのか、この点をお伺いします。
  392. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 羽田から成田へ移る職員につきましては、ただいま先生がおっしゃいましたようなポイントは十分われわれ考慮いたしておりまして、目下非常に前向きに検討中でございます。
  393. 角野幸三郎

    ○角野政府委員 人事院からお答え申し上げます。  羽田から成田へ異動します入管職員の調整手当問題でございますが、調整手当の問題はもともと給与、生計費、物価等の著しく高い地域の官署に勤務する職員に支給する、こういうたてまえになってございますが、現在八%支給されております東京、すなわち羽田から成田の方に転勤するわけでございます。成田はここで初めてそういう手当の出ないところに新しくできたわけでございますので、もちろん無給地でございますが、現在の調整手当制度の中には、異動いたしました場合に、異動してから後三年間は異動前の支給のパーセントを確保する、そういう調整規定がついておりまして、したがいまして羽田の入管の職員が成田に動かれましても、三年間は八%が支給されるということで当面はつながる状態になってございます。  しかし今後制度的にどうなのかということがもう一点ございます。これは国際空港がこのように新しくできて移転するということは前代未聞でございまして、いままで例がございません。したがって過去の経験に徴してどういうふうにその周辺が発展し、勤務条件が変わるかということは予断できませんが、少なくとも学校等が引っ越すような場合とは違いまして、国際空港でございますので、急激にそういう条件は変化するというふうに考えられます。したがいまして私どもは、開港後その急激な変化をよく見きわめた上で、現在の調整手当の規定にあります給与、生計費、物価等のそういう条件に該当する状態になるかどうかということをよく見きわめたいと思っております。当面は異動保障の三年間の保障がございますので、それでいける、そういうふうに現在考えております。
  394. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 三年から先についても前向きでやってもらいたい。特に賃金や手当、労働条件、生活条件にかかわる問題につきましては、労働者の要求を十分検討して、誠意を持って改善努力してもらいたいということを申し上げておきます。  次に、登記所職員の問題ですが、五十三年度の登記所職員を含みます法務局の定員問題につきまして、全法務労働組合は一万一千八百七十九人の人員要求、法務省当局の最初の要求が千八十二人、約十分の一、そして最終的に予算で認められた増員が二百十人、定員削減分九十九人、これを差し引きますと純増は百十一人ということになって、組合の要求から見れば百分の一になったというように聞いておりますが、この職員団体の増員要求から見ますと、法務省当局の当初要求から見ても全く微々たる増員であると思うわけですけれども、行管庁と大蔵省はどういう根拠でこのような定員査定になったのか、これをお尋ねします。
  395. 辻敬一

    ○辻政府委員 登記所の定員につきましては、従来から私どもといたしましてもいろいろと配慮をしているところでございまして、毎年相当数の増員を行ってきているわけでございます。五十三年度におきましても、登記事件数の推移でございますとか業務運営の実態でございますとか、そういうものを勘案をいたしまして定員増をいたしたわけでございます。純粋の登記職員だけでございますと百九十二人の増員ということになりまして、定員の計画削減によります九十七人の減を差し引きまして純増が九十五人、かようなことになっております。
  396. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 九十五人と全国から見ればきわめて少ない数になるわけです。  そこで伺いますけれども、この定員査定に当たって、五十三年度予算で大いに宣伝されております住宅建設、たとえば住宅金融公庫の融資が伴う住宅を四十万戸建設する、こうした住宅建設に伴って登記の件数が増加してくるというようなことば考慮したのかどうか、行管庁と大蔵省にお伺いします。
  397. 辻敬一

    ○辻政府委員 定員の審査に当たりましては、先ほども申し上げましたように事件数の推移はもちろん重要な要素でございまして、登記事件数の推移を勘案いたします。しかし、そればかりではございませんで、いろいろと事務の合理化、能率化の実態もございます。予算も御承知のように毎年相当ふえておるようでございますし、五十三年度の予算におきましてもこのような経費がふえておりますので、そうした業務運営の実態等を勘案いたしまして、先ほど申し上げましたような定員を査定したわけでございます。
  398. 塚越則男

    ○塚越説明員 行管庁からのお答えを繰り返すようになりますが、全体の定員管理の問題につきましては、政府の基本方針といたしまして第四次の定員削減計画を実施していくという基本的な姿勢があるわけでございまして、こうした一方の事情を踏まえまして、登記関係の事務につきましても、事務の合理化、能率化方策というようなものを十分講じた上で増員の問題をこれと関連させて考えていく必要があるというふうに考えております。  そこで五十三年度の話でございますが、このような基本的な考え方に立ちまして、公共投資の伸び等による登記事件数の増加状況、これに対処するために、予算上特に乙号事務の合理化、能率化のための経費を最重点として措置いたしまして、その上で増員につきましても、先ほどお答えがありましたように法務省全体の増員が四百三十人でございますが、このうち九十二人を登記関係の事務の職員の増員ということに充てた次第でございます。
  399. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いまの答弁を聞いておりますと、大いに宣伝しております住宅の建設ということに伴う登記事務の増加というような問題については考慮されてないというようにしか聞き取ることができないわけです。  そこで今度は法務省の方に伺いますけれども、住宅金融公庫の融資つきの建物四十万戸を建設するということになれば、登記の件数は大体何件くらいふえるか、どういうふうにお考えですか。
  400. 香川保一

    ○香川政府委員 ケースによっていろいろ違いましょうが、大体の典型的な例を申しますと、土地を買って、そして家を建てる。この場合に土地の取得の登記あるいはその前提としての分筆登記とか、建物を建てますとその表示の登記、それから担保に入れるといたしますと所有権保存の登記、抵当権設定の登記、こういったものが出てまいるわけでありまして、一つの建物が建ちますと、従来の経験に徴しますれば、大体三件から七件ぐらいの登記事件というのがあらわれてくるというように考えております。
  401. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは登記所職員の一人当たりの標準事件処理数、これは甲号事件と乙号事件で何件になるかということ、そして住宅金融公庫の融資つきの住宅の四十万戸などの建設に伴う登記事件増には最低何名ぐらいの増員が本当は必要なのかということはいかがですか。
  402. 香川保一

    ○香川政府委員 大体登記所は、御承知のとおり、規模の大きなものから小さいもの、千差万別でございますので、平均的には登記甲号事件一人当たり二千五百件ぐらいの処理が可能、乙号で申しますれば大体五万件ぐらいの負担が適当であろうというふうに考えております。  これを基礎にいたしまして、登記甲号事件が二万件以上の庁、それから二万から一万までの庁、一万未満庁というふうな三つのグループに分けまして、それぞれの事務量を積み上げまして、不足人員を出しまして、そしてこの中で機械化できるものは機械化して省力化をするというふうなこと、あるいは正規の職員でない賃金予算で処理できるものは、それによってやるというふうなことで、さようなものを差し引きまして、結局純増員数として必要なのは、法務局全体で千八十二名という要求をしたわけでございます。
  403. 高鳥修

    ○高鳥委員長代理 主計局塚越主計官から答弁の訂正があるそうですから、どうぞ。
  404. 塚越則男

    ○塚越説明員 先ほど九十二名と申しましたが、百九十二名の誤りでございますので、訂正させていただきます。
  405. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 住宅の建設を進めるということは、政府の政策として打ち出されているわけで、このような住宅建設とそれに伴う登記の事務が増加するというのは、いまの法務省の説明でも控え目だと思うのですけれども、わかるのですが、登記職員の定員に対してこれに対応する手当てをしなければ、全く無責任なやり方だと思うのです。この点を指摘しておきます。  私、きのう千葉地方法務局の本局と船橋支局、市川出張所の三つの登記所を、実際仕事をしているところを見てきたのですけれども、現状でさえもとてもこのまま放置できないというような状況になっているということを痛感いたしました。この点について関係省、法務省、行管庁、大蔵省に、この登記所の実態の認識についてちょっといまから具体的にお伺いしたいと思います。  まず、登記所では定員不足ということから、司法書士や調査士などによるいわゆる部外応援が日常化しているわけですけれども、これらの部外応援は全国で現在何名おりますか。また、これらの人たちからは具体的にどのような応援を受けているというように認識されておるか、この点をお伺いします。
  406. 香川保一

    ○香川政府委員 部外応援の排除につきましては鋭意努力中でございますが、遺憾ながら現在一日平均約千四百人分程度の応援を受けているのではないかというふうに推定いたしております。この部外応援者は、司法書士あるいは調査士の補助者のほかに、地方公共団体の職員あるいは土地改良区の職員というふうな公共団体の職員でございます。  これらの部外応援を受けておる者にやっていただいておる仕事を申しますと、登記簿冊の書庫への納入というふうな簿冊の整理関係、あるいは地方税法による市町村に対する通知事務があるわけでございますが、こういった通知書の作成とかあるいは最も大きな事務は、現在御承知のとおり登記簿の謄本は複写機で謄写いたしておるわけでございますが、この謄写作業を手伝っていただいておる。それから調査士関係の主たる応援といたしましては、現場に行って実施測量調査するわけでございますが、その場合の現地案内をしてもらっておるというふうな仕事が主でございます。
  407. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それから部外応援のほかに、先ほど言われておりました賃金職員や下請契約をしている民事法務協会の職員がいるわけですけれども、現在これらの人たちは全国でそれぞれ何名ぐらいいるのか、またどういう仕事をやってもらっているのか、お伺いします。
  408. 香川保一

    ○香川政府委員 五十二年度で申し上げますと、賃金職員延べ約三十万七千人ぐらいだろうと思います。その仕事の内訳は、窓口整理員としての作業、それから現在登記簿謄本をつくります場合に、昔の古い粗悪用紙というのがあるわけでございまして、これを謄写が鮮明にできるような書きかえ作業をやっておるわけでございまして、この書きかえ作業に従事しておる。それからコピー焼き、謄写作業そのものとして民事法務協会からの派遣職員がおる。それから商業登記の関係で現在商号見出簿というのを作成中でございますが、この作業に賃金職員を充てておる。大体主な作業は以上のようなとおりであります。
  409. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 不動産登記法の十二条を見ますと、登記所の事務は登記官が行うということが書かれているわけです。ところが、実際は登記官ではない、いま言われた部外応援の人たちあるいは賃金職員、下請契約の人たち、こういう人たちがやっているということはこれは法律違反ではなかろうかと思うのですが、御見解をお伺いします。
  410. 香川保一

    ○香川政府委員 部外応援を得て国の事務を処理しておるということは決してほめた話ではなく、むしろ強く非難さるべきことだろうというふうに考えております。しかし、本来登記所の職員、正規の公務員によってすべての仕事をしなければならぬという法律的な制約は、私はないだろう、したがいまして、先ほど申しましたような単なる機械作業と申しますか、登記簿の謄本を作成する一つの過程におけるコピー作業というふうなものは民事法務協会に委託して、その派遣職員の手によってやっておるわけでございまして、そういう意味からすべて法律違反というふうには断定しがたいと思うのであります。しかし何と申しましても、そういった賃金職員あるいは正規の手続による民事法務協会の派遣職員というふうな形をとらないで、司法書士の補助者あるいは地方公共団体の職員の応援を得ておるという事態はできるだけ早く解消すべきだというふうに考えておりまして、ただ率直に申し上げまして、部外応援を一切明日から排除する、廃止するということになりますと、相当登記所の事務が遅延することになりまして、さような混乱を避ける意味から、一方増員とかあるいは省力化のための能率機具の導入等々によりまして、徐々にこの部外応援をできるだけ早く解消するように鋭意努力しているところでございます。
  411. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 御説明によりますと、最も大事な登記簿の記入の事務、いわゆる甲号事件については応援は受けていないという話ですけれども、実際現場に行ってみますと、マンションや団地などの集団の登記は件数が多いということもあって、司法書士が代理人として実際は登記簿まで作成してきて記入のためのタイプまで打ってくる、そういう実態になっているんですが、これは法令違反にはならないでしょうか。
  412. 香川保一

    ○香川政府委員 お尋ねのようなケースはきわめてまれなことでございまして、御承知のように住宅公団あるいは公社等の団地をつくられるというふうなとき、あるいは民間で大きなマンションをお建てになるときには、数百件、数千件の事件をどっと一度に登記所に持ち込まれるわけでありまして、これを処理するのに職員が全部手がけるといたしますと相当登記がおくれる。ところが融資等の関係もございまして非常に迅速な処理が要請されるというふうなときに、登記簿の表題部の作成を関係職員によって応援をしてもらっておるということは間々あるように聞いておりますけれども、これは単に登記官が書くかわりに、いわば登記官と申しましても登記所の従事職員がタイプで記載するかわりにそういった部外応援で記載しておるわけでありまして、これを登記官が申請書、嘱託書と照合いたしまして適否を判断して、登記官の認印を押すというふうなことになっておるわけであります。したがって、いわばタイプライターのかわりをやってもらっておるような記載手続だけでございますので、さような事態は決してほめた話じゃございませんけれども、法律違反というふうには考える必要はないことだろうというふうに思っております。
  413. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 非常にまれな話だと言われましたけれども、私がきのう見てきましたところは人口急増地帯であって、団地ができる、それからマンションが建つということで、まれなどころではなくて、段ボール箱いっぱいになったものをぼこっと持ってくる、それが登記簿までつくられている、これが実態であるわけです。  次に、登記簿の抜き取りとか改ざんを防止するために不動産登記法施行細則の三十七条で、登記簿や図面の閲覧は登記官の面前で行うことになっているわけですけれども、実態は、監視官の机は置いてあってもそこに座る人がいない状態で、たまに通りかかった職員がちらっと見る程度という説明でありました。この面前閲覧というのが守られていない。これも私は法令違反ではないかと思うのですけれども、この点についてはいかがですか。
  414. 香川保一

    ○香川政府委員 御指摘の施行規則は、私どもは訓示規定、当然のことを規定したものと思っておるわけでございまして、その当然のことつまり登記簿の閲覧を許す場合の監視体制が十分でないということはまことに遺憾な限りであるわけでございますけれども、実際登記所におきましていろいろレイアウト等を検討いたしまして、不正事件、抜き取りというふうなことのないようには十分注意を払っておるわけでございまして、事故はたまに起こりますけれども、現在の登記所の繁忙程度から見て、幸いさような監視体制が不十分なために起こった事故というのはさほど多くございません。しかし、いずれにいたしましても、監視体制の強化については努力しなければならぬというふうに考えております。
  415. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次に、土地、建物の表示登記に関して登記官が実地調査をするということになっているわけですけれども、いただいた資料によりますと、この実測のための車は全国で百六十九台配置されているけれども、専任の運転手は一人もいない。ですから、車はあっても運転手がいないということなので、実際は調査士の案内によってようやく実地調査を行っているという実態で、しかもその実地調査をやる数も一割程度というのが実情であります。この調査士の調査料は申請人の負担になっていて、結局は申請人にしわ寄せが行くということになるわけです。これは部外応援という説明がありましたけれども、これは法令違反にはならないのかどうか、お伺いします。
  416. 香川保一

    ○香川政府委員 実地調査をいたします場合に、本来ならば役所に備えつけの実測車で職員がみずから出かけていくということが一番望ましいわけでございますが、遺憾ながらこの実測車も十分まだ整備されておりませんし、人手不足のためにさようなところまで人を割くということがきわめて困難な状況にございます。したがいまして、登記所におきましては、週に一回集中的に数件の調査事件をあわせて一回の出張によって処理するというふうなことをいたしておるわけでございますけれども、どうしても急がれる事件がございますと、やはりその関係の調査士に現地まで車で案内してもらって、そこで実地調査をするということでございまして、この場合の部外応援的なものはまさにその片道の、現場に行くまでの自動車の便を与えてもらっておるということでございますので、これもできるだけ避くべきことではあると思いますけれども、特に法律違反というふうな問題にはならないだろうと考えております。
  417. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 法令違反ということはお認めになりませんけれども、実際上の登記所の運営としては好ましくないことであるという点については、幾つか認められているわけです。私から見れば、法令違反の疑いが非常に濃いと思うのですけれども、法を守る番人として、好ましからざる、ことが実際に行われている、これについて大臣の御所見をお伺いします。
  418. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 いま柴田さんからいろいろ御指摘がありました。私どもも登記関係の職員はまだ十分でないと思っております。  ことしは、五十三年度予算では住宅の建設を相当大幅にしておる、こういう関係で登記事務は相当にふえるじゃないか、これもそのとおりでありまして、住宅ばかりでなくて、景気問題から相当大幅ないわゆる公共事業をやる。道路にしても河川にしても、その他の問題すべて土地に関係のあるものは、何がしか登記に関係があるわけでありまして、そういうことも勘案して、ことしの予算編成に当たっては、一面においては御承知のとおりに行政改革あるいは人員削減、こういう方針の中でも、そういう問題が控えておる、公共事業等を推進するにしても、やはり登記事務が可能な限り円滑に進まなければ公共事業の促進に支障を来す、こういうことも話し合いまして、関係各省庁に理解をしてもらって、不十分ではありますけれども、御承知のような増員を図ろうとしているわけでございます。  今後とも、やはりいまおっしゃったような問題がたくさんありますから、可能な限り増員に逐年努めていきたい、かように考えておりますから、御理解をいただきたいと思います。
  419. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 結局こういう事態であると住民サービスは低下する、それから不正や過ちが起こってくるということが想像されます。ことしの二月の初めに東京都住宅供給公社の所有権登記に関係した司法書士の汚職事件が新聞で報道されておりましたけれども、これもやはり部外応援だとか処理のおくれをそこだけ早くやるというようなことが背景にあると思うのです。  定員不足による弊害というのは、こうしたことのほかに職員への犠牲ということになって、あらわれてきております。私がきのう見たところでも、本当に全然手を休めることなく所長以下みんなが働いているという状況でありまして、昼休みにも相談員は残しておかなくちゃならぬ、それから中間の休みなんかとてもとれない、タイピストが限度を超えて職業病になる、それから、組合の資料によりますと、五十二年中に四十歳台の人を中心にして十八人もの人が在職中に死亡するというような報告が出ております。  それから、所によっては庁舎が狭いという問題があります。  一つ冷暖房の問題ですけれども、仕事の性質上夏なんか窓をあけることができない、それから扇風機を使えないという仕事場であるわけで、冷房をつけてほしいということが職員の非常な要望になっておりましたが、この点については検討されているかどうか、お伺いします。
  420. 香川保一

    ○香川政府委員 まことに登記所の環境は御指摘のとおり劣悪なところが多うございまして、特に北海道等の寒地におきましては暖房が必ずしも十分でない。特に簿冊を格納しております書庫の暖房が十分でないというふうなことで、これは昨年度予算から実施しておりまして、大体三年計画で全部終わる予定にいたしております。  それから冷房につきましては、これもなかなか容易でないわけでございますけれども、昨年度予算化されまして、引き続いて特に暑い地域から冷房を備えつけるということで職員の執務環境の改善努力したい、かように考えておるわけでございます。
  421. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 時間が来ましたので最後ですが、私がきのう回ったところでも、先ほど標準型の仕事の量を言われましたけれども、千葉の忙しいところ三ヵ所ともそうですけれども、実際上その倍ぐらい働いて万全なやり方ができないということを嘆いておりました。これは働いている人だけでなくて、その責任者の人たちまでやはり定員が倍ぐらい本当は必要なんだということを言っておりました。私たちも不要不急の機構の定員はできるだけ削減する必要があると考えておりますけれども、登記所の職員や看護婦や保母さんなど、国民に奉仕する機構の定員は、やはりいまは思い切ってふやさなければならない、そういう必要があると考えております。総定員法の枠という問題があるわけですけれども、これも四十三年につくられてすでに十年間たっている今日でありますし、実際上はパンクして、たとえば五十二年度では国立大学の新規増員分は定員法の枠外にいたしました。きのうの参議院の予算委員会では国立の病院、療養所の定員は、足りない分は大いに増員する、こういうことを行政管理庁長官が答弁されたようであります。こういう考え方を登記所の定員の問題に当てはめるという考え方が必要であると思います。そしてまた定員法の上限などについての見直しを検討しなければならない段階だと思うのですが、この点について、最後に大臣の御所見を承って、終わりたいと思います。
  422. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 登記関係を定員の枠から外すということはなかなか困難であろうと思います。しかし、いまおっしゃったように全体の公務員の総枠からどういうところに配置すべきか。繁閑があるわけでございますから、一面においては行政改革整理等もしておりますが、一律にやるというところに非常に不都合な問題が起こりますので、そういう点を十分考えて、サービス機関で人がやる仕事が多うございますから、今後おっしゃるとおりに十分心得ていきたいと思います。
  423. 高鳥修

    ○高鳥委員長代理 中川秀直君。
  424. 中川秀直

    中川(秀)委員 運輸省がお越しだろうと思いますが、まず本年から福岡ー香港間の国際線が週四便になった際に、従来の路線ルートと若干変わりまして、その増便分だけは、従来は福岡-鹿児島-香港という線でございましたけれども、これが福岡-那覇-香港という認可になったと聞いているのでありますが、その理由はどういうことでありますか。
  425. 松村義弘

    ○松村説明員 那覇空港の国際空港としての育成を図るという政府方針に従いまして、那覇空港を経過地としまして香港に飛行機を飛ばすようにしたいと思っております。
  426. 中川秀直

    中川(秀)委員 本当にその理由だけですか。
  427. 松村義弘

    ○松村説明員 それだけでございます。
  428. 中川秀直

    中川(秀)委員 私が聞いておりますことでは、この増便された便の曜日は日曜日である。しかしこの日曜日が、福岡板付空港でのいわゆるCIQ、関税、入管、検疫等の業務がほとんど行われていないがためにこの増便は便宜国内線として、福岡-沖繩という国内線を使って、さらにいまお話のあったような那覇-香港という国際線につなぐ。同じ飛行機でありますけれども、現実はこうした一つの便法としてそのようなことにしたんだということを聞いているのでありますが、事実に反しますか。
  429. 松村義弘

    ○松村説明員 現在福岡発の国際線につきましては、関係官庁とのすり合わせがまだ十分できておりませんので、日曜日は利用していないというのが実態でございます。
  430. 中川秀直

    中川(秀)委員 法務省にお伺いをいたしますが、わが国の国際線の関係空港で、日曜日入管業務をしているところ、していないところ、どんなあんばいになっておりますか。
  431. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 法務省といたしましては、板付及び鹿児島両空港出張所における必要な人員の充実に今後とも大いに努めまして、他の空港関係機関、CIQが一致しなければこれはだめでございますけれども、協議いたしまして、御指摘のように地元の要望に応じるようにしたいと大いに考えております。
  432. 中川秀直

    中川(秀)委員 お尋ねをしたのはそれではないので、先にお答えになっておるようですが、現在わが国の国際線関係空港で日曜日、ワンセットのものとおっしゃいますが、入管業務をしているところと、していないところ、どんなぐあいになっておりますか。
  433. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 大きな空港は全部日曜日やっておりますが、いま申しました板付、鹿児島、それからたしか名古屋もまだ日曜日開いておりません。
  434. 中川秀直

    中川(秀)委員 冒頭お話をいたしました国際線の増便の問題も、そのような事情によって路線を、寄港地を若干変えざるを得なくなったということを聞いておるわけでございます。  現在国際化社会を迎えまして、たとえば日曜日を利用して出発する、あるいは帰国をするというような需要というものは非常に高まる一方でございます。また、比較的近い隣国への旅行ということになりますと、特に商用である限り、この土曜、日曜というものを有効に使いたいという方はふえる一方でございまして、どうも現在のCIQは、そういった福岡板付あたりの空港でも、あるいはいまお話しになりましたような名古屋、鹿児島といったようなところでも非常にスムーズにいかない事情があるようであります。たしか五十三年度の予算措置を見ますと、成田、大阪空港が、このCIQの関係、特に入管の関係は、措置が重点に置かれているようでありまして、その他は次年度以降というような事情にあるようであります。この点は大いに御努力を願って、そういった国際化社会の対応がおくれないで済むように御努力を願いたいと思いますが、この福岡の場合は、現地の方に聞きますと、税関の方は何とかオーケーできるということだそうでありますが、入管、検疫の方は、現状の予算措置ではとてもそこまで手が回らぬという現況のようであります。  先ほどお話ししたような観点で御努力を今後なさるかどうか、法務省、厚生省にお尋ねしたいと思います。
  435. 吉田長雄

    ○吉田政府委員 いまさっきちょっと先生に申し上げましたように、法務省としては何とかしたいと思っております。(中川(秀)委員「五十四年度は」と呼ぶ)それもほかと協議した上でございまして、本年度もやろうと思えばやれないこともないと思っております。
  436. 長谷川慧重

    ○長谷川説明員 福岡空港につきましては、地元の福岡県及び福岡市の方から、日曜日における航空機の検疫について認めてほしいという旨の要請がありますことは、先生御指摘のとおりでございます。  厚生省におきましては、福岡空港には現在三名、それから鹿児島空港におきましては二名の職員を配置して検疫業務をやっているわけでございますので、日曜日における検疫の即時実施というのは非常にむずかしい問題でございます。しかしながら、今後の運航状況を見ながら他の官署とも連絡いたしまして、検疫体制につきましては万全を図ってまいりたい、かように思っているところでございます。
  437. 中川秀直

    中川(秀)委員 私は、一時間という時間をちょうだいをしておりまして、お尋ねをしたいことも多々あるのでありますが、大変不健康な時間にもなっておりますので、本日は、またの機会に譲るといたしまして、終わります。
  438. 高鳥修

    ○高鳥委員長代理 次回は、明二十四日金曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時二十二分散会      ――――◇―――――