○藤原
委員 経営の問題とか予算の問題とか、いろいろ各種各方面から検討すべきこともあろうと
思います。それは認めるわけですが、今後その基本
姿勢をぜひとも具体化させていただいて、三月ですか、人事の交流、人事の異動があるようなときにはぜひこれを
思い出していただき、積極的にやっていただきたいことを強く要望いたします。
もう時間がありませんので、次に、関連して述べさせていただきたいと
思いますが、いま、わが国の
テレビ台数は
契約台数で二千七百万台にも達しており、ほとんどの家庭に普及している。また、
ラジオも町を走っている車のすべてにつけられているわけですから、外にいましても、家に帰ってきても、
電波は私
たち国民の周りにいつでもある。この間言いましたように、空気のように存在している。これは単に至るところで
電波が流れて
放送が行われているというだけの問題ではなくて、先ほどから申しますように、国民の生活の
内容を変えてきている。人間の生き方、考え方まで場合によっては変える、変革まで起こすという力も持っているわけです。
ですから、現在の
放送法が
NHKの存立を政府機関としては別個のものとして定めて、権力の介入を許さないということにしているのだと思うのです。これとさっきの米軍の問題とは私は違うと思うのですけれども、そこらが混同することも起こると
思いますが、根本的にはこういうことなんですね。権力の介入を許さない。そのためにこういった
放送法が出てきた。今日の
受信料制度が国民と
NHKの私的
契約と定められていることも、そこに大もとがあると思うわけです。
戦前の
ラジオの
受信といいますのは、私法上の聴取
契約を結んで、その上で
ラジオ設置の許可を逓信省からもらう。こうしないと無認可聴取ということで罰則を受けたということでございますね。つまり、
放送事業者は国家権力に守られて
聴取料が取れたわけですね。これとうらはらの関係で、厳しい
放送の検閲、統制も受けていたわけです。
私は
NHKがおつくりになりました「
放送五十年史」を勉強させていただいたわけですけれども、「
ラジオのために設けた「
放送用私設
無線電話規則」(大一二)をさらに具体化した既述の「
放送用私設
無線電話監督事務処理細則」で、検閲に関する事項を詳細に
規定した。」となっています。そして、そういう中で、「逓信省電務
局長から詳細な通達が出されている。」とか、「
番組内容に関する「
放送禁止事項」は、広い範囲にわたっていた。」として「例えば、安寧秩序を害し、風俗を乱すもの」とか、「外交または軍事の機密に関する事項」とか、「官公署の秘密、議会の秘密会の事」とか、「政治上の講演、または
論議と認められる事項」とか、「官庁が
放送を禁止した事項」とか、こんなことはやったらいかぬという制約を受けていたわけです。また、さらに、「日中戦争への突入によって、政府の
放送に対する統制はいちだんときびしくなったが、統制には二つの側面があった。その
一つは、軍事機密や一般の治安に関する報道の差し止め事項という“知らせない”統制である。もう
一つは、世論を統一するために、
放送、新聞、出版、映画を積極的に利用しようとするものであった。」と書かれております。
そして第二次世界大戦へ入っていくわけですけれども、第二次世界大戦のときには、「日英米戦争ニ対スル情報宣伝方策大綱」には、
放送による“世論指導”の基本方針として、要旨次の三点が定められていた。」として、「一、今回の対英米戦は、
日本の生存と権威の確保のために、やむをえず立ち上がった戦争であること 二、戦争発生の真因は敵側の利己的な、世界制覇の野望にあること 三、世界の新秩序は八紘一宇の
理想に立ち、万邦おのおのその所を得せしむるにあること」となっています。そして、「開戦と同時に、次々と打ち出された政府の方針に基づいて、
日本放送協会の全
番組は戦時
編成に切り替えられ、
内容を一変した。」というふうに世論づくりに全面的に組み込まれたわけです。
ラジオは
日本国民を悲惨な戦争に駆り立てていくという役割りを大きく果たしてきたわけです。この普及についても軍部が一体となってやってきたわけです。この五十年史にもさらにいろいろ書いてありますけれども、
日本の五十年の
放送史の中で、前半の二十
年間は、まさに政府の権力による軍国主義の高揚と侵略戦争遂行のためにあったという、こういう
状態が起こっております。
しかし、これをずっとひもといてみますと、時間がありませんので読み上げませんけれども、八百四十五ページに出ている昭和四十九年四月の「
NHK研究開発
委員会報告書」には「一九八〇年代の社会と
放送の役割」について述べられておりますが、ずいぶんと多種多様に発展をし、深い任務が出てきているという歴史の変遷がわかるわけです。
私はこれを読ませていただいて、本当にリアルに五十年の歴史を物語っているこの労作に対して本当に敬意を表したわけですけれども、当時と比較にならないほど発達した現在の
テレビや
ラジオの問題を考えますときに、この人類が生み出しました武器を人類の幸福と発展のためにこそ使わなければならないと強く思うわけです。二度とあのような戦争の
状態にはならないように、
放送がこういったものに駆り立てられていく武器とならないように、まさに
NHKの発展は
日本の国の平和と民主主義の正しい発展の中でこそ育ち、その中でこそ守られるものだと思うわけです。
この中で序文を
坂本会長が書いていらっしゃいますが、「今日、
放送が社会に提供する情報は多種多様であり、その及ぼす影響もはかり知れなくなってきた。このことは、反面で情報公害ということばを生み、
放送に対する
批判にもつながっている。歴史の流れが、政治・経済・社会のあらゆる面で変革を求めている時、
放送もまた例外ではあり得ない。
放送界は、
一つの転換期に立っているといっても過言ではない。」とおっしゃっている
趣旨はそのことではないかと私は感じたわけでございますが、その点について最後に
会長から、今後の御決意と婦人の問題の根本的な考え方等も含めまして御感想、御決意を聞かせていただいて終わりたいと
思います。