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小川(省)議員 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました
地方公営交通事業特別措置法案につきまして、その提案理由と概要を御説明申し上げます。
地方公営交通事業は、
昭和四十八年の第二次財政再建以来、依然として赤字を重ね、
昭和五十一
年度の不良債務は、実に二千二十五億円となっております。こうした財政
状況は、
地方公営交通事業経営健全化促進法制定時において、すでに十分予測されていたことであり、旧態依然の再建策を自治体に強要している政府・自民党の態度は、無
責任きわまりないと言わなければなりません。
公営交通の財政悪化の原因は、第一に高度成長下でもたらされた都市環境、なかんずく交通環境の悪化が何ら改善されることなく放置されているためであり、加えて
地方財政はもとより公営交通においても十分な
財源を保障されず、もっぱら企業主義的合理化を押しつけられていることも第二の原因として
指摘しておかなければなりません。
不況が深刻化し、そのため
地方財政も一段と危機的
状況に立ち至っている実態のもとで、公営交通が住民の足として十分その機能を発揮するためには、これまで政府・自民党が進めてきた企業主義的経営政策をやめるとともに、道路整備
中心の交通政策を大量大衆輸送機関
中心に改め、地下鉄、バス等交通整備のための国、自治体の
責任と負担区分を確立する必要があります。
日本社会党は、こうした認識のもとに地下鉄、バス等の建設、整備に対する国、自治体の
責任を定め、住民
生活に不可欠なバス路線の維持存続を図るための補助制度の確立を図るとともに膨大な不良債務の解消と自治体の交通整備のための
財源を保障する必要があるとの立場から本
法律案を提案をいたしたわけであります。
次に、
法律案の概要を御説明申し上げます。
第一は、目的及び国、自治体の責務でありますが、ともすれば事業の効率性のみが追求されがちな公営交通事業について、住民の福祉向上を目的とし、国はそのために必要な財政上の
措置並びに交通環境の整備に努め、自治体においても同様の責務を負うことを重ねて明らかにいたしているわけであります。
第二は、交通事業健全化
計画についてであります。
昭和五十四年三月三十一日現在の不良債務について、経営の健全化を行おうとする自治体は、経営の健全化の基本方針等を
内容とする交通事業健全化
計画を議会の議を経て策定し、自治
大臣に届け出ることといたしております。
第三は、交通事業健全化債の発行についてであります。交通事業健全化団体は、前記の不良債務の範囲内において交通事業健全化債を発行することができることとし、
地方公営交通事業経営健全化促進法に基づいて発行された交通事業再建債も含め、その償還については一般会計から繰り入れることといたしております。なお公営企業金融
公庫は、交通事業健全化債について、その全額を引き受けることといたしております。
第四は、国の補助についてでありますが、国は、地下高速度交通事業または
地方鉄道事業を経営する団体に対しその施設の建設または改良等に要する費用の四分の三を補助することとし、バス事業を行うすべての団体に対しバス購入費及び身体障害者の利用のためのバスの改造に要する費用の十分の八を補助することといたしております。
第五は、
生活必需路線に対する補助制度の創設であります。住民
生活の利便のため維持するバス路線で営業係数が一三〇〇以上の路線を
生活必需路線とし、具体的には、1乗車密度が二十人以下の路線2当該バス路線の最混雑時間帯と最閑散時間帯の輸送人員の比率が当該事業の平均繁閑率の二倍を超える路線3当該バス路線の表定速度が当該事業の全路線の平均表定速度の九〇%以下の路線4官公署、学校、病院その他
自治省令で定める重要な公共的施設の利用のため必要な路線5三百戸以上かつ千二百人以上の規模の住宅用地の新設に伴い開設された路線で開設後五年を経過していない路線6その他政令で定める路線のどれか
一つに該当する路線を
生活必需路線としてその赤字額の三分の二を国は補助することといたしております。
第六は、一般会計の補助及び
地方交付税の基準財政需要額の算入
措置についてであります。地下高速度鉄道建設費等に対しては四分の一、バス購入費については十分の二、
生活必需路線については、その赤字額の三分の一をそれぞれ一般会計から補助するとともに、交通事業健全化債及び再建債償還費、地下高速度鉄道建設費等に対する一般会計の繰り入れ及び補助については七割を、またバス購入費及び
生活必需路線の赤字額に対する一一般会計の補助については全額を、それぞれ
地方交付税の基準財政需要額に算入することといたしております。
第七は、
地方道路税の配分割合の
引き上げと交通事業健全化債の償還等に対する充当についてであります。前述のように公営交通整備のための
財源を保障することなくして公営交通の確立はあり得ないとの立場から、現行一キロリットル当たり六千六百円の
地方道路税を倍増し、交通事業健全化債と再建債の償還並びに本
法律案で定める一般会計の補助及び交通環境の整備に充てることができるといたしております。この
措置によって公営交通を有しない自治体においても、交通環境整備の
財源を保障されることとなり住民の足の確保は大きく前進するものと考えられます。なお勤労国民の税負担の増大を抑制するとの立場から
地方道路税の
引き上げ額と同額を揮発油税においては引き下げることといたしておりますことを申し添えておきたいと存じます。
以上が本
法律案の提案理由及びその概要であります。慎重御
審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)