○徳田説明員 先生御
指摘のとおり、現在
金融機関は非常に厳しい環境に置かれているわけでございまして、預貸し金利ざやが逆ざやの
金融機関も出ているわけでございますけれ
ども、これは単に一時的な現象では必ずしもないわけでございまして、安定成長
経済への移行の過程において
金融構造自体が大きく変わっているわけでございます。
金融機関自体、公共部門への資金供給あるいは個人部門への資金の貸し出しというような、
金融機関の経営面から言えば必ずしも、収益性の面では一般の貸し出しについてよりどちらかというと劣るようなものにも融資をしなければならないわけでございます。こういう
意味で、
金融機関自体の経営の効率性というのは非常に強く要求されているわけでございますが、これと同時に、オイルショック等を契機といたしまして
企業批判がいろいろ出たわけでございますけれ
ども、やはり
金融機関自体、
経済社会が
金融機関に何を求めているかといういわば社会的公共性からの効率性を求めていくことが今後の経営にとって必要なわけでございます。こういう
意味で
金融機関は、
金融機関自体の経営の効率性と同時に、
経済社会全体の論理からする経営の効率性というものを追求しなければならないという二重の非常に厳しい情勢に置かれているわけでございます。
こういう状態に対しまして大蔵省といたしましても、適正な競争原理を導入いたしまして、大いに厳しい自主的な
企業努力をしてもらうことを
考えておるわけでございます。その過程においてはやはり経営効率の劣る
金融機関も出てくるわけでございまして、もちろんこれに対しては厳しい自己努力が必要になるわけでございますけれ
ども、置かれた融資基盤等において限界のある場合には、そういうものを抱いていくようないわゆる護送船団的な行政はもはや社会的に許されないと
考えられますので、場合によっては提携であるとか合併であるとか、そういうことも必要になるということを
考えておるわけでございます。ただしかし、合併の問題は、合併される
金融機関の従業員なりあるいは取引先にとっては非常に重要な問題でございますから、どこまでも
金融機関相互の自主的な合意が必要である、このように
考えておるわけでございます。
そのように自主的に合意が行われた場合の大蔵省としての対処の仕方でございますが、先生御
指摘のとおり、
金融機関の合併及び転換に関する法律第六条に審査の項目が並べてあるわけでございまして、その第一は、合併が「
金融の効率化に資するものであること。」つまり合併することによって
金融機関が、規模の利益等もございますので、経費率、人件費率、物件費率等がだんだん低下いたしまして資金コストが安くなる、したがって、取引先に対して低利の良質な安定的な資金を供給できるようになるということが見渡されることが第一の条件でございます。
第二の条件は、合併により「当該地域の中小
企業金融に支障を生じないこと。」ということでございまして、これは非常に重要な項目でございます。要するに、従来の取引先であった中小
企業に対して合併後むしろより円滑な貸し出し、
金融ができるようになることということが一つの大きな条件でございます。この場合、仮にでございますが、都市銀行と相互銀行との資金コスト、貸出利回りを比べますと、都市銀行の場合には現在、五十三年六月現在で五・七五%でございますし、相互銀行は七・二六%でございます。もちろん中小
企業貸し出しがこのとおりの金利とは限らないわけでございますけれ
ども、一般的に
考えられれば金利の低下が期待できるわけでございまして、取引先に対する金利の低下が期待されるわけでございます。あとは、量的な面におきましては、これは従来以上に円滑に確保することができるかどうかということ、これが一つの大きな審査の要点になるかと思います。
それから三番目の「合併又は転換が
金融機関相互間の適正な競争関係を阻害する等
金融秩序を乱すおそれがないこと。」という点でございますが、合併によって仮にその地域の
金融機関に寡占化が行われることになりますと、これは適正な競争を阻害するわけでございますので、そのようなことがないようにということが第三番目の着眼点でございます。
それから第四番目は、その
金融機関が合併後に行おうとする「業務を的確に遂行する見込みが確実であること。」これはある
意味では当然のことでございますが、なおこれに関連しまして、合併後の従業員、役職員の処遇の問題につきましても、これは審査についての大きな基準になるわけでございまして、従来のこのような合併の場合には、合併前に組合との間で合併に関する協約書がつくられるのが通例でございます。その項目といたしまして通例挙げられておりますのは、合併の前後を問わず合併を理由とする退職勧告、人員整理及びその他の不利益行為を行わないということであるとか、あるいは新しくできた
金融機関の人事上の処遇については公平かつ適正に行い、出身
金融機関による差別を将来にわたり行わないということであるとか、あるいは合併後の人事配置の基本方針については事前に組合と協議するとともに、店舗の統廃合に伴う人事
異動については本人の事情を十分に配慮するということであるとか、さらには合併に伴う従業員の不安解消、
労働強化の排除等について十分に対処する、このような協定については合併後の組合にこれを継承するというような協定書がつくられるのが通例でございます。
そのほか法律に規定しております基準といたしましては、同種の
金融機関相互間の合併を妨げないというような事項もございます。それからそのほか、公益上必要ある場合にはその必要な限度においていろいろな条件を付するということがあるわけでございます。たとえば必要な場合には中小
企業金融に対する比率について条件をつけるとか、そのようなことも
考えられるわけでございます。
いずれにいたしましても、合併の認可に当たりましては、従前の取引先、特に中小
企業に対して従来以上に取引を円滑にするということ、それから従業員の処遇の問題、このようなことが認可に当たっての審査の大きな事項になるのではないか、このように
考えております。