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村山国務大臣 まず対外的に関する、特にアメリカに対する認識の問題について申し上げます。
為替相場の変動というものが、やはり為替の
需給関係を最終的には反映するという基本論については、だれも異論のないところであるわけでございます。しかし、最近におきます
円高あるいはマルク高あるいはスイスフラン高という問題は、反面
考えてみますと、それらの通貨に対してドル安になっておるという、裏返して言いますとそういうことであるわけでございます。そこで、基本論であるその為替の需給の問題というものは、やはり実体経済あるいは国際収支の
実態から出てくるわけでございますけれ
ども、これだけいま象徴的に申しますれば、
円高それからドル安というものについて、そういう基本論だけでなくて、何らかそれぞれ国内的に
努力する道があるんじゃないか、そういう問題が
一つ認識としてあるわけでございます。
具体的に申しますれば、アメリカ自身も基軸通貨としての役割りを持っているわけでございまして、アメリカに言わせれば、おれは好んで基軸通貨になったわけではなくて、勝手にみんながおれを基軸通貨にしている、こういう反論もあるかもしれませんけれ
ども、よかれあしかれ、その
意味で国際的な責任を負っていることは事実なんだから、ドル価値の安定のために、単に自然に任せておるということでなくて、いまアメリカが
計画しておりますところのもろもろのドル安定策について急いでやって、さらに力を入れてやってもらう道があるかないか、この道を特にわれわれとしてはアメリカに対してはお願い申したい、要請したいということでございます。石油
法案の問題にいたしましても、あるいは最近雇用よりもインフレの問題が徐々に大きくなっているという問題、国内的にも大きくなっておりますので、そういったものに対してアメリカ自身が国内的に、対外
関係をにらみながらみずからがやり得る道を早くやってもらいたい、あるいはより一層力を入れてもらいたい、こういうことが
一つの問題でございましょうし、そしてまた、その段階で日本とアメリカと両方がそれぞれ、われわれも一生懸命いたしているわけでございますし、それから、多くの者が現在の通貨価値の安定のために共通の認識を持っているということ、そのこと自身が、共通の認識を持ってこれからみんなそれぞれの立場でやっていくということ、国際的な
政策をにらみながら国内
政策を進めていくという共通の認識を持っているということがもしできれば、それ自身、やはり相場というものは非常に心理的な影響が働くわけでございますから、私は、現在のいろんな将来の通貨価値の見通しに対して不安を持っておる、そういったことによる資本の動きに必ずいい影響を及ぼすであろう、そういうことを
考えながら、これから対外的な
関係、そういった道を探っていきたいというのが私の
考えでございます。
それからターゲットゾーンの問題でございますけれ
ども、これはなかなかむずかしいということは、あの説を唱えましたローザ自身が実は言っているようでございます。いわゆるローザ構想というものが一面的にとらえられているということを、ローザ自身が言っているやに私は聞いているわけでございまして、ローザ自身があの構想がすぐできるというふうには
考えていないんで、
一つの将来の
考え方として述べたにすぎぬので、自分自身としてはそれがいますぐできるとは
考えていないというやに聞いているのでございます。
私たちも、こういった基軸通貨の間でターゲットゾーンをいま設けることが可能であるかどうかという問題が
一つありまして、それはなかなかむずかしかろうと思うわけでございます。下手に結びますと、逆にその間を縫いまして、やはり投機家が非常に介在してくるおそれが十分あるわけでございますので、その点はむずかしいんじゃないかなという感じがいたしているのでございます。
私が宮澤構想というものに賛成したというのは、宮澤さんも同じように、やはりターゲットゾーンをつくるということを言っているわけじゃないんで、前段に私が申しましたような国際的な何らかの、その内容は人によっていろいろでございましょうけれ
ども、何らかの合意を見ることができれば、それは、非常にそれぞれの国の立場において、この際為替相場を安定させるために何らかの
措置をとることが、あるいは早めることが必要であるという共通の認識ができれば非常に幸せだ、また、自分はそういうことに
努力したいということを宮澤さんは言っておったのでございまして、私もその点は同感であるということを申し上げたのでございます。