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1978-03-17 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十七日(金曜日)     午後一時五分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君    理事 塚田 庄平君 理事 坂口  力君    理事 永末 英一君       宇野 宗佑君    小渕 恵三君       大石 千八君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    坂本三十次君       高鳥  修君    中島  衛君       原田  憲君    本名  武君       村上 茂利君    森  美秀君       山崎武三郎君    山中 貞則君       大島  弘君    川口 大助君       沢田  広君    只松 祐治君       平林  剛君    山田 耻目君       貝沼 次郎君    宮地 正介君       高橋 高望君    荒木  宏君       永原  稔君  出席国務大臣         内閣総理大臣  福田 赳夫君  出席政府委員         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         大蔵政務次官  稲村 利幸君         大蔵大臣官房審         議官      海原 公輝君         大蔵大臣官房審         議官      渡辺 喜一君         大蔵省主計局次         長       山口 光秀君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省関税局長 戸塚 岩夫君         大蔵省理財局次         長       副島 有年君         大蔵省証券局長 山内  宏君         国税庁長官   磯邊 律男君         国税庁税部長 水口  昭君  委員外出席者         厚生省社会局保         護課長     高峯 一世君         通商産業省通商         政策局総務課長 豊島  格君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     児玉 幸治君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 高橋 久子君         日本開発銀行総         裁       吉岡 英一君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     中島  衛君 同日  辞任         補欠選任   中島  衛君     愛知 和男君     ————————————— 三月十七日  各種手数料等の改定に関する法律案内閣提出  第三〇号) 同月十六日  石油税新設に関する請願石原慎太郎紹介)  (第二一五九号)  同(小此木彦三郎紹介)(第二一六〇号)  同(越智通雄紹介)(第二一六一号)  同(大塚雄司紹介)(第二一六二号)  同(粕谷茂紹介)(第二一六三号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第二一六四号)  同(小泉純一郎紹介)(第二一六五号)  同(島村宜伸紹介)(第二一六六号)  同(中村靖紹介)(第二一六七号)  同(福田篤泰紹介)(第二一六八号)  同(坊秀男紹介)(第二一六九号)  同(与謝野馨紹介)(第二一七〇号)  同(足立篤郎紹介)(第二二七七号)  同(羽田孜紹介)(第二二七八号)  不公平税制是正等に関する請願小川国彦君  紹介)(第二二〇三号)  農林省農業技術研究所跡地利用に関する請願  (濱野清吾紹介)(第二二五二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川口大助君。
  3. 川口大助

    川口委員 せっかく総理がお出ましをいただきましたので、実はたくさんお尋ねしたい点があるわけであります。  たとえば、総理はあるいは企業経営の御経験がおありかどうかわかりませんが、企業の常識では金利の支払いの限度は大体売上高の三%ぐらいが限度でありまして、五%になりますとこれは危険信号、一割以上になりますと倒産を意味するものだ、こういうふうに言われておりまするし、そういう心構えで経営をしておるのが実態だと思うのであります。そういう考えからいまの国の予算財政を見ますると、どうも放漫に見えてしようがないのであります。つまり、予算がない、財源がないというと国債をどんどん発行する。緊急事態だといってはさらにまた増発を重ねる。決算がつかぬということになりますると翌年度分の前倒しで二兆円も使ってしまう。そうしてついには、赤字の借金を返済するのにとにかく増税によって賄わなければならぬという、そういうふうな考え方は、まことに親方日の丸的な、財政と言うに値しないような財政運営だというふうに考えておる者が多いわけであります。こういう点についてはもちろんであります。  次には、民主主義の過程におきましては、批判勢力があるのは当然であります。したがって、その批判勢力に対してどのように対応していくかということが、一つ民主主義成長発展であるわけであります。総理は、連帯協調ということを言っておるわけでありますから、そういう意味におきましては、たとえば今回の野党の要望等に対して、予算修正なども当然これはしかるべきだと考えるわけであります。しかし、それは予算修正はやらない、しかし補正では考える、こう言いますと、国民から見ますると、いまは財源はない、しかし補正には財源があるのか、こういうまた素朴な疑問があるわけでありますから、こういう点についても当然お尋ねをしなければならぬ。  さらにまたいま一つは、公定歩合がまた下がりました。三・五%に下がりました。昨年の三月、四月にも公定歩合を下げました。これは経営者負担を軽くする、こういうことでありますが、総理、実際は地方においてはいまだに銀行金利でも八分ないし九分で金利はやっておるわけでありまして、実際に中小企業はこの公定歩合の引き下げによって、確かに幾らかの軽減になりましたけれども、経営負担を軽くするほどの軽減にはなっておらぬのであります。こういう実態等につきましても総理といろいろお話をしたい、こう考えておったわけでありますが、限られた時間でありますので、こういうふうな意見もあるということをひとつ心にとどめていただきまして、十分御配慮、お考えを願いたい、こう思うわけであります。  そこで、私はきょう限られた時間内において、いま一つ大変基本的な問題について総理お尋ねをしたいのでありますが、総理はかねがね働こう内閣、こう言っておるわけであります。総理の働こうという意味は一体どういうことを言っておるのか。  さらにいま一つは、総理人づくりに重点を置く、こう言っておりますが、総理考えておられる人づくり人間像というものはどういうものを描いておられるか、まずこの点を伺いたいと思うわけです。
  4. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 働こうということは、もう本当に終始緊張した姿勢国家国民のために奉仕したい、こういうことを意味しておるわけであります。国家国民への奉仕、これを一生懸命にやる、こういうことでございます。  それからもう一つ人づくりという問題ですが、いま国民も、私はそういう傾向があると思うのです。それから政治家政治への取り組み、そういう中でもそういう傾向があると思うのですけれども、ことに今日の世の中は不景気だ、こういうようなことで不況対策だ、円高だ、そういうことで経済面大変目が集中しておる、そういう感があるわけですが、しかし長い国家の命でございまするから、その長い国家の命の中で、この国を一体どうしていくんだという国づくりですね、この問題が政治の最大の課題としてあるんだということ、これは片時も忘れちゃならぬ、このように思うわけであります。  その国づくりとは一体何だと言いますれば、それはもう、経済の側面、これもあります。ありまするけれども、一番大事なものはこれは人づくりである。つまりこれから二十一世紀、これが二十二年たつとやってくる。そこまで行くまでの間にもいろいろこれから世界に変化があろうし、また新しい世紀におきましてもはかり知れないいろいろな変化が出てくるであろう。その変化に対応して民族は生き延びなきゃなりませんけれども、その生き延びる道というのは、私は結局一人一人の日本人、これをたぐいなき日本人として育て上げるということにあると思うのです。  りっぱな日本人ができ上がるということになれば、これはいかなる客観情勢変化がありましてもこれに対応していく、知恵を生み出していく、そのように考えるので、人づくりということを強調しているのですが、さあ好ましい人間像というものは一体どういうものだ。やはり私は知徳体と言いまするけれども、それはもう当然そうでありまするけれども、もう健康でなければならぬなんということはこれはもちろんであります。けれども、その健康の上に立ちまして、私はやはり人間人間らしい情操を持つということ、これが非常に大事だろう、このように考えるわけであります。もう人の喜び喜びとし、また人の憂い憂いとし、人の困っている状態を見ればこれに手を差し伸べたいという気持ちに自然になるような、そういう人間らしい情操というものを育て上げる、これが一つ。それからもう一つは、やはり知恵ですよ、知識。これはもう世界じゅうの一人一人に比べまして、わが日本人その一人一人がよりすぐれた知恵を持っているというその知識の涵養である。  そういうことで、人間らしい人間、同時に国際性、私はこれを非常に重視をします。国際性豊かな、国際感覚を十分身につけた日本人、そういうのを好ましい日本人像として想望しておるということであります。
  5. 川口大助

    川口委員 大変御説明もございましたが、端的に言うと、私は働こうという意味は、それは総理の立場では確かに国家国民のためだと思うのでありますが、国民にとりましては、やはり骨身を惜しまずひとつがんばろう、そうして効率を高めて成果を上げるようにする、これが働こう、がんばろうという意味だと思うのであります。  さらにまた、人づくりにつきましても、ただいまいろいろお話がありましたが、結局その正直者ばかをみない、流した汗が報いられるというふうなことに対するやはり配慮というものが人づくりになければ、私は総理の言われる連帯協調であっても信頼であっても生まれない、こういうふうに思うわけであります。  そこで私は次に、そういう観点に立って具体的なお尋ねをするわけでありますが、時間がありませんからひとつ端的に、明快にお答えを願いたいのですが、いま日本農民政府農政に対する大変な不信を持っております。しかしながら、不信を持っておるけれども、自分の持っておる固有の土地を耕作する権利、それをも断念をして食管を守らなければならぬという考え方に立って、耕作面積を減らしながら決められた範囲内の耕作反別の中で、つまり精を出してがんばっておるわけです。歩どまりのよい米をつくろうとしてがんばっておるわけです。この姿は総理、お認めになりますか。
  6. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 農民が歯を食いしばって営々として努力をしておる、これはもう私は確かにそのとおりに認めます。
  7. 川口大助

    川口委員 ところが、限られた反別を指定されて、その反別の中で耕作してできた米も政府は買わないと言っているのです。これは一体、いまのお話とどういう関連で総理は受けとめておられますか。
  8. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま農家生産する米につきましては、食糧管理体制をとっておる。この食管体制というものも、これは経済の大きな流れといいますか、経済原則を全く無視して成り立つものじゃありません。つまり需給がちゃんとバランスをとれるという形、これは非常に大事な問題だろう、こういうふうに思うのですが、それをある程度農家の人もわかってもらわなければいかぬ。もし需給、いまのような状態でほっておいたら一体どうなりますか、これは食管制度を維持するわけにいきません。やはり食管制度というものは維持していきたいというのは、これは政府考えもそうでありまするけれども、私は農民考え方もそうだろうと思う。私は、そういう農民がいまの食管需給状態というものを静かに考えてみるということになれば、ああ多少生産の規制、制限というものをみずから打ち出していくということもやむを得ないことじゃないかな、こう考えるに違いない、こう考えています。
  9. 川口大助

    川口委員 ですから、私は言っているのは、政府のそういう減反政策農民協力をしているわけです。協力して、自分のある耕作反別を減らして、政府の言いなりになって減らしてつくっておるわけです。そのできた米くらいは当然これは買ってしかるべきじゃありませんか。特に総理は、いま人づくりの中に、最近の日本人は困っておるのだ、経済面だけ強調しておると言っておるでしょう。しかし、いまの総理答弁は、経済面からそういう政府協力して自分反別を減らして、そうして孜々営々として働いておるその農民の労苦にも報いることができないということは、それは総理、一体どう考えるかということを私は聞いているわけです。
  10. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 食管制度運営の問題ですから、政府買い上げ米も出てきます。あるいは自主流通米という問題もあります。これは制度全体をもとからやり変えるというなら格別でありますが、いま行われている制度ですね、そういう中では、やはり政府買い上げ米というものも出てくるし、自主流通米というものも出てくるので、制度を全然いままでの慣行、慣熟した制度とは別の考え方をとるのだということになれば、いろいろなまた考え方もありましょうが、生産された米、これを全量買い上げなければこれは何か農民気持ちにそぐわないというようなお考えをいまお示しでございますが、それは私は現実離れをした見方である、こういうふうに思います。
  11. 川口大助

    川口委員 ですから私は、前段に人づくり総理の基本的な考え方はどうだということを伺っておるわけです。  ですから、総理のいまお話を聞きますと、農民政府協力をして減反をしているのですよ。減反をしないで余分な面積から出た米なら、これは総理の言うお話もよくわかります。しかし、これだけつくってこれだけに減らしてくれ、これだけに減らしてくれと言った反別の中で、それじゃ増産に進むことはいけないことなんですか、技術をみがいて効率を上げることはいけないのですか、その点はどうですか。
  12. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府国民にお分けをするその量というものは大体測定できるわけでありますから、その測定された米以上に政府が買って、それを一体どうするのですか、そういう問題もあるのですから、農家制限を受けたそのたんぼの中でできた米を全量買い上げなければならぬ、そういうことが食管制度前提にある、こういうふうな理解はいたしておりません。
  13. 川口大助

    川口委員 私は、食管制度そのものはわかっています。十分わかっています。水田利用編成の問題にしてもわかっています。わかっていながらお伺いしているのは、つまり農民は、政府協力をして耕作反別を減らしながら、歩どまりのよい米をつくろうと思ってやっておるわけです。その歩どまりのよい米をつくる努力政府は認めることはできぬとおっしゃるわけですから、そこは一体どうだと言っているわけです。  いま現に、これは時間がなくて大変恐縮でありますが、やはり国は依然として米の指導員もおりますし、普及員もおりますし、各県には農事試験場もあって米づくりをやっておるのです。そして現に、いまから十年前を考えますと、十年前の反当収量は四百五十キロぐらいでありましたが、現在は六百キロぐらいになっているのですよ。それは天候にも左右されますが、天候を上回る技術の向上によって米づくりにいそしんでいるわけです。ですから、反別を減らされると減らされるだけ自分の生活を守らなきゃならぬわけですから、一生懸命米をつくるわけです。歩どまりのよい米をつくるわけです。ところが、言うことを聞いて耕作反別を減らしたにもかかわらず、できたものを全部買ってくれない。せめて言うことを聞いた、政府の言い分に沿って協力した分についての米だけは、これは全量買い上げても結構ではありませんか、このことを伺っておるわけです。
  14. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府は、年間の国民に対する販売予定額というものがあるわけです。その販売予定額を超えて保有するというか、前提として買い入れを行うというわけにはいかぬじゃないですか。そのことを私は申し上げているわけです。
  15. 川口大助

    川口委員 総理はそう言いますが、余り米についても配給計画に入っているのですよ。余り米配給計画に入っていないというのじゃないのですよ。余り米配給計画にはちゃんと入っているのです。それを政府が買うか、農協が買うか、集荷組合が買うかの違いだけなんですよ。そうなんです。  ですから私は、正直者ばかをみせない。経済面だけにとらわれておる、そのところを農民に何か希望を与えて——いまから十年計画たんぼの再編成をしようとしても、ペナルティーはとるけれども、とったものについては保証ができないということであれば、農民は何を望みに、何を夢みながらこの土に生きる農民が生きていけるのですか。ですから、ペナルティーをとるものはとっても場合によってはよろしいかもしれない。しかし、約束を守った者は買い上げてやる、こういう姿勢が必要じゃありませんか。この点どうですか。
  16. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 約束というか、これはもう今度の減反の話だろうと思いますけれども、減反は、これは政府が強制しておるわけじゃないのですよ。農家自発的協力によってこれを行う、こういう趣旨で、いろいろここでも議論があったのです。つまり、法律をもって減反の権限を設定せよというふうな話もありましたけれども、それはいかぬ。やはり農家政府が話し合って理解の中から農家が進んで協力しなければならぬというふうにする、そういうたてまえからいいますと、法律によることは妥当でない、こういうことをるるお答えをいたしておるわけなんですが、何も強制して農家との間に約束をさせて、そしてその約束を守れ、守らないならどうするとか、守ればどうするとか、そういうことじゃないのです。要は、とにかくいまは米の需給というのが非常に緩んじゃった、こういう状態では、これは食管制度、その根幹を揺るがすということになるので、農家の方々には協力願って、そして米の生産を少し控えるようにしていただく、こういうことでありまして、その約束を守った人にはどうするとか、守らなかったらどうするとか、そんなようなことになったら、またあなた方が言われるペナルティー議論とかなんとかというものにも発展しかねない、そういうことを考えて慎重に配慮しているというふうに御理解願います。
  17. 川口大助

    川口委員 ですから総理、ぼくはこれは本当に時間があればじっくりひざを交えてとことんまで総理の心情を聞きたいくらいの気持ちでおるのですよ。そう思っておるのですが、結局農民は大変だと思っておるのです。農民余り米では大変だと思っているのですよ。ですから、政府がいろいろ施策を出してくるのに対して、不満を持ちながらも、何とか将来に希望をつないで、将来好転することを望んで協力をしやっているわけです。ですから、いま総理が言うように、そんなものは何も法律で決めたことでもないし、ペナルティーをとるわけでもないから、これはしようがない、こういうことでは済まされないほど深刻に農民はこの政府計画というものを受けとめているのですよ。  ですから、いまの話を聞くと、何かいろいろなことを言っているけれども、本音は米はつくらぬでくれ、こういうことなのか、狭い範囲であるけれども一生懸命増産に励んでくれというのか、基本的に一体その考え方はどうなのか、こういうことについて、余り長くなるとできませんから、ひとつ簡単にお答え願います。
  18. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 考えておる需給がとれるように切望しております。
  19. 川口大助

    川口委員 ということは、どうですか。余りつくるなということですか。
  20. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そう短絡的に言うわけにもまいりませんけれども、また、そういう短絡的な考え方でやっていくことは妥当であるとは考えませんけれども、要するに、米も大体需給がとれるというような状態でありませんと、これは食管制度を続けていくわけにはいかなくなっちゃうのですよ。その食管制度というものを続けさせなければならぬ、こういうふうに考えるがゆえに、需給調整、つまり減反ということをやらなければならぬじゃないか、その考え方農家の人にも呼びかけて御理解を願っておるということで、決して強制でも何でもない。農家の人は、それはそう好ましいというふうには思わないけれども、これはやむを得ないことだなくらいには思ってくれておる、このように考えております。
  21. 川口大助

    川口委員 しかし、総理農家自主性に任せる、こう言うけれども、逆にそれを裏にとって、自主性に任せられたから減反の必要もないんだ、勝手につくってもいいんだ、ただ余り米だけの処理には困るんだ、それは農家自身が何とか解決するというふうな考え方になったら困るでしょう。これはやはりある程度、自主的だとは言いながら、政府計画に沿うたように協力してもらいたいというのが本音ですよ。その協力をするために、農家自分権利を放棄して——あるいはこれは憲法違反になるかもしれないですよ。自分土地自分で耕すことを放棄させるのだから、憲法違反になるかもしれない。自主的だということでうまく逃れているけれども、実際は農家にとってはそれを強制的に受けておるのですよ。そういうものを協力するようなかっこうに持っていくためには、せめて政府のいわゆる町村の割り当ての反別だけに縮小したものについては全量買い上げしてやるのだから、ひとつ協力してくれ、この方がよほど人間らしくありませんか。何か裏があったり表があったり、たてまえがあったり本音かあったりするようなことで、これから農政に取り組むという姿勢は一体どうですか。それでうまくいくと思っていますか。
  22. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政府は、その販売に必要な数量を超えて買うというのは、これはなかなかむずかしいことですね。しかし、生産された米は、過剰でない限り需給がとれておるのですから、それぞれの用途に従いまして効率的に使用される、こういうことでありまして、それが政府買い上げであろうが、自主流通であろうが、いろいろな使い方がありましょうが、農家の丹精の結果というものはそれはそれなりに評価され、また供用されておる、このように考えます。
  23. 川口大助

    川口委員 政府買い上げ米自主流通米と、そのほかに余り米というものがあるのですよ。だから、自主流通米なら自主流通米として全部認める、これなら結構ですよ。その点、どうですか。政府買い上げ米自主流通米とあるのです。ですから、全部自主流通米として扱うというなら、それで結構ですよ。(「農林大臣を呼べ」と呼ぶ者あり)いや大臣、これは農政の問題ではないですよ。国づくりの基本的な問題であり、根本の政策だと思うのですよ。また、農民をたれよりも愛すと言った農林大臣当時の総理の言を私は信じているから、ですからぼくは、いま総理として一体この日本農政に対して農民をどう考えているのか、そういう基本的な考え方に立ってこの答弁を求めようとするわけです。時間になりましたが、もう一度ひとつお答えを願いたいと思います。
  24. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、農村、農民というものはわが国の社会の中で非常に大事な存在であるというふうに考えておるのです。いわゆる農家人口、これは一五%を切るというくらいまで減ってきておりますけれども、その一五%の農家人口というものが、私はやはり民族の伝統的な精神というものを伝承する、そういう角度から見た健全な日本社会、こういうものの維持のために非常に大きな貢献をしている、私はこういうふうに思うのです。ですから私は農村に対しましては、大変深い関心を持ち、まあ世の中も大変変わってきまして工業化、そういうことが余り進まない、進むべきでない、逆に言えば、食糧の自給力を向上しなければならぬというような時勢になってきましたので、そういう時勢ともにらみ合わせながら、農村の維持発展、これは政治の非常に大きな重点としてとらえていかなければならぬだろうな、そのように考えております。
  25. 川口大助

    川口委員 これは時間がないからこれ以上やりませんが、農村の維持発展を考えるなら、どうか農民希望を与えていただきたいというふうにぼくはお願いを申し上げまして、質問を終わります。
  26. 大村襄治

    大村委員長 村上茂利君。
  27. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 自民党に十分間の質問時間を与えられまして、不肖村上、十分間質問をさせていただきたいと思います。  私は、経済の基本に触れる問題で、税金にも関連いたしますが、一般的かつ基本的かつ重要な問題について、総理と申しますか、むしろ福田経済思想ないしは福田経済理論という立場からお考えをお聞かせいただきたいと思います。  総理が今日までわが国の経済を指導されてまいりました基本的な考え方というのは、その結果があらわれておると私は思うのであります。たとえば狂乱物価を抑えよう、総需要を抑制しよう、こういう態度をきつくとってまいりました。時間はかかりましたけれども、だんだん物価が落ちついてまいりまして、本年三月におきましては予想を下回るかもしらない、こういう形になってまいりました。これは総理努力された結果でございまして、大成功でございます。  また、一昨年総理になられましてから、景気回復には財政政策と輸出政策だとおっしゃって、輸出を振興されました。その結果がいま貿易黒字、黒字、こういうかっこうになっておるのでございまして、総理が提唱されました基本理念というものはその実を結んでいるのでございます。ただ残念ながら、景気が思うように回復しない、これも実は、総理のお考えの中にあります物価抑制との関連におきまして、需要を抑え込んできたということの帰結ではなかろうかと私は思うのでございますが、いま申し上げたいことは、福田理論というのは成功しているんだ、特に物価抑制におきましては世界的に見ましても大した成功だということをまず申し上げ、そしてその御苦労のほどを感謝申し上げたいのであります。  さて本論に参ります。  私がいま総理のお考えをお聞きしたいのは、貯蓄と資本形成と、それから税の問題と海外投資、この四つの問題を絡めて、私はこういうふうに考えるものですから、総理の御意見をお聞かせいただきたいと思うのです。  戦後日本経済は資本不足でございまして、アメリカから外資を導入したりしまして一生懸命経済の立ち直りを図りました。そのうちだんだん日本みずからが力がつくようになりました。特に国民の旺盛な貯蓄意欲というものは、日本経済に必要な資本形成に非常に役立ったと私は思うのでございます。ところが、経済学の教科書じゃございませんけれども、この貯蓄というのは可処分所得マイナス消費イコール貯蓄、こう経済学の本にもなっております。ですから消費が停滞しますと、可処分所得の使い道というのは貯蓄というかっこうになってくるわけでございまして、私は、日本の貯蓄率が非常に高いという問題、特に最近貯蓄率がぐんぐん伸びておりますけれども、これは私は当然理論的な帰結でそうなっておると思うのであります。  ところが、その蓄えられた預貯金、つまりいろいろな方面に使われます資金というものがだぶついてまいりますと、これはとんでもない経済現象が起こってくる。資本としてそれが有効に活用されておる段階はいいんですけれども、産業活動が停滞してまいりまして、蓄積されたその資本というものが過剰になるという傾向を持ってまいりますと、これは縮小均衡、デフレ、不況、こういうふうなかっこうになってくるわけでございます。  幸い現在はと申しますか、不況になりましてからのこの預貯金の資金というものの使い道をたどってみますると、従来は企業に投下する資本が大部分でございまして、国や地方公共団体が債券を発行いたしましてその金を使うという率は非常に少なかった。ところがここ一、二年は、国債発行、地方債の発行、そういう関係で、資金量の四〇%を超えるような量を使うようになった。産業側はどうだ。産業、企業の使用率というのはだんだん低下いたしまして、率といたしましては、国、地方公共団体がその資金を使用いたします率とまさに拮抗状態、それがさらに低下せんとしようとしている。一般には個人の貸し出しがございますけれども、要するにだぶついた預貯金というものを現在は、大量の国債を発行しあるいは地方債を発行して賄っておりますけれども、これがだんだん減ってまいりましたときに、わが国の産業が蓄積されたその資金、これを使うような規模がずっと維持できるならば結構ですけれども、はみ出しますと、これは経済全体の運行が渋滞してまいります。縮小均衡になる可能性がある。  そこで私が申し上げたいのは、貯蓄率が旺盛だというのは一面においては、税金の取り方が少ないんじゃないか。可処分所得マイナス消費イコール貯蓄でございますけれども、消費も伸びない、何も伸びないということになれば預貯金に回るのは、当然の理論的帰結だと思います。それで私は増税の問題を、赤字財政で国債発行をしているんで、これを消却しなければいかぬし、将来増税しなくちゃいけない、こういう理論がだんだん強くなってきておるようでございますけれども、全体の貯蓄、資本形成、それとの関連において実は日本は税の取り方が少ないのではないか。これはもう御承知のところで、時間もございませんから数字は申し上げませんけれども、もう少し税金を取る余力があり、取る必要があるのじゃなかろうかということを私は考えるのであります。  それからいま一つは、海外援助が足らない。日本経済のキャパシティーに合わぬ部分のオーバーするような資本蓄積がありましたならば、もっと積極的にどんどん海外に投資をするか、あるいは経済援助をもっと積極的にやればよろしい。ところが、従来は非常に消極的でございまして、GNPの比率から見ると海外援助や投資が非常に少ないと言われております。私は、現在の日本人の貯蓄傾向から見まして、蓄積された資金が過大になり過ぎましてそれが国内で消化できないというような場合には、従来の経済的帝国主義じゃございませんで、新しい時代に即応したところの海外援助というものを積極的にやるべきじゃないか、こう思うのでございます。  要するに質問の趣旨は、いま申しました貯蓄、資本形成といったような現状が、日本の将来の経済の枠組みと合わせまして、取るべき税金は取る必要がある、また、積極的な海外援助を行う必要があるという趣旨を申し上げた次第でございますが、もう十分になりますが、その点についての福田経済思想ないしは経済理論をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  28. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 貯蓄問題といいますか、貯蓄率ですか、この問題を税の問題、また資本蓄積の問題との関連においてお考えになっておるという御見識に対しましては、深く敬意を表します。  つまり、われわれはめいめいが一人一人生活しています。同時に、われわれは一人一人で生きていくわけにはいかぬ。そこで何がしかふところから出して、そうして出し合って共同の家計を営んでおる。この共同の家庭が国家であり社会である、こういうわけですからね。  そのふところからの出し方は私は二つあると思うのですよ。税で出すという方式もありましょうし、貯蓄で出すという方式もありましょうし、税が少なければ社会を持っていくのに、税だけでは足りませんからどうしても貯蓄がなければならぬ、こういうことです。  今日のわが国の社会状態から見ますと、まあ税はわりあいに負担率が低い、こういうふうに言われておりまして、その反面において貯蓄率は諸外国に比べて非常に高いと言われておりますが、税がこれから多少負担がふえなければ財政運営ができないという状態は想像できますが、しかしさらばといって、税がふえたから貯蓄がもっとずっと減っていいというふうに私は思わないのです。  わが日本は、これからも経済的には、減速経済でありまするけれども成長経済を続けていかなければならぬ、また、財政はやはりわれわれの社会資本、おくれた生活関連の施設をどんどんやっていかなければならぬ。そうすると、そこでは金が要るのです。公債だってすぐやめるというわけにいきませんよ、財政は。ある程度持続的に出していかなければならない。だんだん公債発行率は下げていかなければなりませんけれども、発行額、これはずっとしばらく続いていくだろうと思う。それから、成長政策を財界において進めていく、そういうことになれば設備投資が必要だ、その金を一体どうするのだということになると、全部これは貯蓄なんです。貯蓄なしに成長政策を進めるわけにいかぬ、財政においては社会関連の諸施設を進めるわけにいかぬ。貯蓄というものは非常に大事だ。  一時貯蓄は悪である、消費は美徳であるというような考え方がありましたけれども、私はこれは非常に間違った考え方だ、こういうふうにとらえておるわけでありまして、社会化といいますか、貯蓄だとか税を通じまして共同の家庭、つまり国家に資金が集中するのです。その集中した資金をもって政府社会関連投資を進めていくのですから、まさに社会化なのです。社会化の方向に世の中がずっと動いていくということはこれは歴史の流れだ、こういうふうに考えるときに、貯蓄は悪であり、これを退治しなければならぬなんという考え方は大変間違った考え方だということを、私はいい機会だから強調しておきます。
  29. 村上茂利

    ○村上(茂)委員 終わります。
  30. 大村襄治

    大村委員長 沢田広君。
  31. 沢田広

    ○沢田委員 前略でまいりますが、今日、福田総理は最後の手段として為替管理、公定歩合の引き下げというのを実施をしたわけでありますが、きのうきょうの円高の状況というものはきわめて憂慮すべき状況になっております。このままで二百二十円台に突入するのではないかと思われるのでありますが、その場合の責任といいますか、どのようにお考えになっておられるのか、また、それにはどういう対策を考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  32. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま国際社会で通貨不安という状態は非常に深刻だと思うのです。いま円高だという沢田さんのお話でございますが、本質は円高ではないのです。ドル安なのです。それだけにまた問題がむずかしい。円が逆立ちしたってなかなかこの問題の解決にはならないのです。やはりドルにしっかりしてもらわなければならぬ。そのドルは一体どうかといいますと、ドルはアメリカの通貨でありまするから、これは強大なアメリカの経済を背景としておる、したがって私は、ドルがそう弱体なものだというふうには考えません。ところが、現象的、今日的な問題といたしましては国際収支上あれだけの赤字を出している。これがドルのバランスに大きく影響してくるわけでありまして、本質的には、アメリカがドルの国際収支バランスに本当に腰を入れた安定対策を打ち出さないと、この不安というものは解消されない、こういうふうに思うのです。  しかし、アメリカのドル安でございまするけれども、この不安を手伝っておる要素があるのです。それは今度は逆にわが国の国際収支の黒字のバランスです。それからドイツも同様な状態だ。こういうようなことで、やはり日独は黒字バランスを是正してドルの安定に寄与するというか、お手伝いをしなければならぬ、このように考えておりますが、基本的にはアメリカがその国際収支の姿勢を正す、そしてドルの安定、これに本式に取り組む、これ以外には道はないと思います。  そこで、わが国といたしましてもドルの安定につきまして、アメリカ当局には本当にきめ細かな連絡をとっておるわけでありまするし、ドイツにおきましても同様なことをやっておるというふうに見受けられますが、何とかして日米欧相協力いたしまして、そして今日のこのような不安状態を解消したい、このように考えております。
  33. 沢田広

    ○沢田委員 それだけわかっておりながら、国民はあれよあれよという間に二百九十円から今日二百三十何円と、その目減りだけでも一兆何千億という円の損害を受けている。今度の公定歩合でも九千八百億とも言われる損害を受けているわけです。それだけもしおわかりになっているのならば、そのわかっていることを事前に阻止するのが政治家の使命ではないのか。それをただアメリカが不景気だから、それでしようがないんだということで、わが国民がその被害を受けなければならない理由はないんじゃなかろうか、あるいはそれを防止する措置を講ずることがわが国の政治家としての使命なのではなかろうかと思うのですが、どう思われておりますか。
  34. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 為替相場が変動するということは、わが国に対しましては相対的な影響があるわけです。メリットもありまするし、デメリットもある。いま景気問題が非常に深刻な時代でありまするから、そのデメリットの面が大変深刻に響いてくるわけですね。つまり輸出関連の事業が打撃を受ける、そういうことで、デメリットの面が大変強く響きますが、しかし、日本経済全体としますとデメリットばかりじゃないのですよ。これは物価がともかくあれだけ鎮静化してきているじゃありませんか。卸売物価は去年に比べて年間上昇率はマイナスだ、消費者物価は二月の時点では四・四%の上昇にとどまる、こういうようなことになってきておる。これはかなり為替変動が響いてきておるわけでありますが、デメリットはなるべくこれを防ぎとめ、それからメリットはなるべくこれを生かしていく、これが政府の基本的な姿勢でなければならぬだろう、こういうふうに思うのです。  しかし、先ほどから申し上げましたように、本質はドル安なんですから、これは日本だけが幾らどうしても、なかなかそう簡単にこれを処置するというわけにいきませんよ。日本じゅうどなたでも、これをどういうふうにできるという人があれば、ぜひひとつ御意見を承らしていただきたいという気持ちでいっぱいでございますが、政府としてはあれやこれや最善を尽くしておる、このように御理解を願いたいと思います。
  35. 沢田広

    ○沢田委員 いままでの総理の発言というのは、きわめて強い姿勢で野党に向かってこたえてきておるのでありますが、いまの日本の国の状態というものを考えました場合に、これは自民党であるとかそうでないとかという論議の前に、どう国民の生活を守り、あるいはそれに生きがいを見出し、あるいは生活の中にゆとりをどこに見出し、失業をなくし、倒産をなくしと、いろいろ挙げれば切りがないのでありますけれども、ともかくそういう方向をとらなければならぬという時期に来ていると思うのです。ただ、総理自分の自信過剰といいますか、信念を持っておられることについては、そのことはそのことでいいと思うのですが、しかし、もっと野党の意見、われわれも国民の意見を聞きながらここで述べているわけでありますから、もっと野党の意見を謙虚に受け入れるという姿勢がやはりあっていいんじゃないかと思うのでありますが、その点はどのようにお考えになっておりますか。
  36. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、ずいぶん野党の皆さんに気を使っているつもりでございます。重要政策の決定、こういうことにつきましては、野党の党首の皆さんにも御意見を承る。たとえば外交問題で去年の動きがそうであったのでございます。それから予算編成、そういうことになれば、それに差しかかる前に皆さんにお目にかかっていろいろ御意見を承る、私どもできないことはできないでその席でもはっきり申し上げておるわけでございますけれども、意見の違うところは出てきますけれども、やはり連帯協調じゃございませんけれども、お互いに話し合って、共通のものがあればお互いにこれを取り入れていくというふうにすべきだ、こういうふうに思うのです。私はそういう気持ちでやっていきますので、ひとつ何とぞ御協力のほどをお願い申し上げます。
  37. 沢田広

    ○沢田委員 さらにもう一つ追加して。  いまどの論説を見ても、どの学者の説を見ても、これは私もそう思うのでありますけれども、いま言ったように後手後手の政治、常に後を追い後を追い、いま日本は重大な病気にかかっちゃっているわけなんです。円高病であるとか不況病であるとか倒産病だとか、不況風は吹くし、とにかく重大な病気にかかっちゃっている。あなたも病気にかかっちゃっているそうですか、治らないのもそのゆえではないかと思うのであります。やはり見通しがない、あるいはこれをどうやったらいいのかわからぬ、では、どうしたらこうなるのだという先手の政治、あるいはこうなりますという国民に対する指導性、そこに一番欠けるものがあるのではなかったのかと思うのであります。  いままでの過去の実績から見て、これはよかった、確かにそれはメリットもあったかもしれません。しかし、デメリットの方が多ければ、やはりこれはマイナスなんですね。いま現在の日本がこれからどう歩いていくかという場合に、デメリットの方が多かったら何にもならない。だから、こうすればあなた方の生活は、雇用は、失業は、倒産は、こうなりますという指導性が今日求められているのではなかろうかと思うのです。それがいまないと私は思うのですが、どうお考えになっておられますか。
  38. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、そのように沢田さんから言われるような実態じゃないと思います。もう石油ショック後まる四年、四年ちょっと越えてきました。あの後の日本経済運営というのは、国際社会でも相当の評価をしているのですよ。これは第二の戦後の日本の奇跡だという表現までして評価してくれる人もあるくらいでございます。とにかくショック直後なんかは年間に百三十億ドルの大赤字だった、狂乱状態の物価状態だ、成長は戦後初めてマイナスになる、そういうような状態から三年で完全に抜け出たのですから、これは世界がそういうふうに評価するゆえあり、私はこういうふうに思いますが、そんな国がどこにありますか。世界じゅう大変な状態でありますけれども、わが国はあのショックからの立ち上がり、しかも、石油資源を海外に九割九分依存しているという日本ですよ。その一番打撃を受けた日本がとにかくそれだけの実績を示したというのですから、これはそう悶着のある状態ではないと思うのであります。  しかし、世界じゅう非常に混沌たるその中におきまして、わが日本におきましても、ずいぶん国民からあああってほしい、こうあってほしいというその願望にこたえられない点は多々ある、こういうふうに思います。しかし、このような中ではなかなかむずかしいことですよと言いながらも、私は最善を尽くして国民の願望にこたえたい、こういうふうな気持ちでございます。
  39. 沢田広

    ○沢田委員 結局福田総理としては最善を尽くした結果がいまの状態で、これ以上の手はない、こういうふうに解釈していいのかというふうに思いますが、きわめて遺憾な結果が出ているということであります。  時間がありませんから、次に若干前向きの話をしてまいります。  現在の円高、ドル保有高の現象から見まして、朝令暮改であろうかなかろうかは別といたしまして、関税の見直し、あるいは租説特別措置法の見直し、あるいは野党の言う減税、やはりこれを追加してやっていかないと、今日の景気の回復あるいは雇用の確保というものはできないのじゃなかろうか、こういうふうにも思うのでありますが、その点率直にお答えいただきたいと思うのです。
  40. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私が一番心配しておるのは為替相場の動きでございますが、これがそう重大なる変化がないという状態におきましていまの私どもの展望にそう大きな狂いは出てこない、こういうふうに私は見ておるのです。しかし、国際社会の中のわが日本経済でございますから、為替の動きに見られるように、世界のちょっとした動きがすぐ日本にも敏感に伝わってくるのですから、そういう中で、日本経済を取り巻く客観情勢変化に応じましては、日本経済にもいろんな変化が出てくるだろう、こういうふうに思います。しかし、そういう変化がありましても、それには応じまして、予算委員会でも申し上げましたが、弾力的な構えで政策を進めていきたい。また、一朝何かの変化があるという際におきましては、それに対しまして積極的に勇断をもって対処する。また、政策手段というものはいろいろあるわけでありますから、それを縦横に駆使いたしまして安全運転を実現をしたい、こういうふうに考えます。
  41. 沢田広

    ○沢田委員 非常に言い回し方はぐるぐる回っているのですが、率直に言って、関税も見直さなくちゃならなくなるのではないか、あるいは租税特別措置法も見直さなくちゃならなくなるのじゃないか、あるいは減税もやっぱりやっていくということを考えなければ、公定歩合も引き下げた、為替管理も幾らかやった、しかしこれでなおかつまだ円高が続くという結果が起きてくる状況を考えてみたときに、そういう追加措置が必要なんじゃないか。それを、縦横無尽に——何を縦横無尽だか、幻のごとくいま私には何も見えないのです。何を縦横無尽に駆使されるのかわかりませんけれども、その何をという具体的な提案をいま私がしたわけです。その点、時間がありませんのでお答えいただきたい。
  42. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 具体的にはいま何にも考えておりませんです。その時点におきまして、その時点で最も有効であるという施策をとる、こういうことを申し上げているわけです。施策というのは、減税だとか関税の前倒しだとかいまいろいろ申されましたが、そんなに限定されたものじゃない、たくさんの施策があるわけであります。その施策の選択、それはその時点における客観情勢によって判断する、このように御理解願います。
  43. 沢田広

    ○沢田委員 せっかく総理がおいでのときですから、公定歩合の引き下げに伴いまする諸問題の幾つかについて、若干お伺いをいたしたいと思います。簡単にお伺いをいたします。  一つは、公定歩合の引き下げに連動をしないで零細の郵便預金については金利を保障してほしい、こういう私の立場でいま質問をいたしますが、その点について保障をしていただきたいというのが率直なまず第一であります。  第二は、今度の公定歩合引き下げに基づきまして、毎日の新聞にも、あちらで心中、こちらでは自殺というふうにいろいろ出ているわけでありますが、既存住宅ローンについても若干これは考慮していくということが、当然連動して起きてこなければならないのではないか、こういうふうに思いますが、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  44. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公定歩合を下げることを決意しましたが、何のために公定歩合を下げるのだというと、公定歩合の引き下げというのは大体において二つ意味があるのです。一つは、金融の量的緩和、この象徴としてやるのだ、これが一つ。それからもう一つは、金利軽減金利水準の引き下げ、こういうことですね。  いまこの時点で公定歩合の引き下げをしましたが、第一に申し上げました量的緩和、これは量的に非常に緩和されている状態でありまして、このために公定歩合の引き下げが作用をするというような考え方は持っておりません。もっぱら金利の引き下げという面の機能、これがどういうふうな働きをするかということに着目をしておる、このように御理解願っていいと思うのです。  そうしますと、貸し出し金利水準も下げなければならぬ、これは勢い預金の金利、貯金の金利も下げなければならぬ、こういうことになる。これを下げないままで公定歩合ということになれば、公定歩合政策、これはただ単にそんなことを言っただけの話でありまして、その機能を発揮することはできないのです。そこで、零細な貯蓄、そういうものについて預金金利を下げるのだ、預金金利を下げるんだということは、これは忍びがたいところではございますけれども、やはりここで一番大事なことは、日本経済が立ち直る、景気の立て直しをすることである。その景気の立て直しのためには、企業金利負担軽減、つまり貸し出し金利の引き下げということも非常に大事なことである、そういうふうに考えまして、とにかく一律に預貯金金利の引き下げもお願いするということにいたしたわけです。  しかし、社会保障政策の対象者、こういう方々に対しまして、かねて特別措置をとっておりますけれども、それしも撤廃するということは妥当でないというふうに考えまして、その社会保障対象者に対する特別措置、これは存続をする、こういうふうにいたし、せめてもの配意を示したというところでございます。  なお住宅、既存の金利を下げるということは、金利はこれから先もどんどんいろいろ変動があるので、変動があったとき、今度は下がったわけでございますけれども、上がるときもあるのです。そういうときにまた上げなければならぬかというようないろいろな問題がありまして、そう簡単なことではございませんが、なお考えてはみます。
  45. 沢田広

    ○沢田委員 一番基本的なことは、今度の金利の引き下げでだれが一番救われるのかということが一つ日本経済という言葉の中に隠れているだれが救われて、だれが救われないのかということがやはり基本的な問題だと思うのです。ですから、いま総理考えている、企業の借金を軽くしてやることによって企業負担が軽くなり、助かるということについては、それはメリットがあるでしょう。しかし、営々としてみずからの汗とあぶらによって積み重ねたささやかな預金にその被害を及ぼすということが、政治の大道としてもとらないかというのが私の質問の趣旨なんです。  時間がないので結論だけ申し上げた。なぜもっとそこに温かい思いやりというもの、企業負担を軽くしてやるならば、みんなが一生汗を流した労働の価値としての預金についての郵便預金ぐらいは据え置いておくというものが、心の中に幾らなんでも福田さん、あってもいいんじゃないですか。せめてお答えをいただきたいと思うのです。
  46. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 景気回復といういま日本社会が当面している最大の問題、その最大の問題を解決する上において、金利負担軽減という問題は非常に重大な問題でありますから、その重大な問題を解決する。その上にいろいろな方々に御迷惑を及ぼす、こういうことはありますけれども、とにかく零細な人々にそういう御迷惑を及ぼすことについての配慮、これはしなければならぬというのは、私もそのとおりに考えておるのでありまして、せめてもの配慮、これは社会保障対象者に対する特別措置である、このように御理解願います。
  47. 沢田広

    ○沢田委員 最後の質問になりましたが、一つは、企業にある退職引当金の問題なのであります。  倒産になったときに、いつの間にか退職引当金というのがなくなってしまっている。これは実質上引当金としての効果を示してない。そのために、結論的に申し上げますと、半分はそこに雇用されている職員の権利に属するものだ。ですから、それを担保に使うとかあるいはそれを流用するときには、その職員の過半数の代表者の承諾を得る、せめてそれぐらいの公共的な指導というものが必要なんじゃなかろうか。いろいろ不況になっていきます。いわゆるほうり出されてしまいます。そういう状態じゃなくて、せめてその引当金という措置を認める以上は、半分は雇用されている人間権利というものを確保してやる必要があるのではなかろうか。その点について、いわゆる過半数を代表する者のたとえば判こを押してもらう、そういう形によってこの引当金の流用なり抵当権を設定するなり、そういう方法をとるべきではないかということが一つです。  それから、企業社会性というものを高める必要がある。企業というものが倒産をしたかと思うと、今度は奥さんの名前でまたぼこっとつくる。あるいは三親等以内の者は三年以内はできないとか、これは商法の改正にまで及ぶかどうかは別といたしまして、いわゆる企業社会性、公共性というものを高めていくことが必要なのではないか。そして、公認会計士というものをさらに有効に利用するとか、貸借対照表、損益計算書の掲示方法であるとか、あるいは総会屋の取り締まりであるとか、社会的損害に対する規制であるとか、そういうものを同時に行っていかなければいけないのではないかと思うのでありまして、その提案に対してお答えをいただきたいと思うのであります。
  48. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 前段の御質問について私からお答えいたしますが、沢田委員よく御承知のように、退職給与引当金というのは負債勘定に計上されているものでございまして、担保とか流用とかいう感じでお取り上げいただくのにやや適さないわけでございますが、御質問の御趣旨は、その退職金請求権が発生したときに、せっかく引当金を持っているんだから、退職金がちゃんと払えるような法的な担保をもって考えるべきじゃないかという御趣旨であると思います。  その点は、企業に万一の事故が起きました場合の各種の債権者の権利の保護との調整という、非常にむずかしい問題を含んでおりますので、なお今後の研究問題にさせていただきたいと思います。
  49. 山内宏

    ○山内政府委員 後段についてお答えをいたします。  企業が倒産をいたしました場合、具体的に申しますと、会社更生法の適用申請に及びました場合には、そういった会社について裁判所が必要と認めます場合には、公認会計士を調査委員に任命をいたしまして、倒産会社の財務状況を判断するということになってございます。  なおまた、有価証券報告書につきましては、これは現在すでに大蔵省、それから本店所在地の財務局並びに証券取引所、それから当該会社の本支店というところで、過去五年分にわたりまして自由に閲覧をすることができるような形になっておりまして、これはかなり簡易に一般の公衆の利用に供しております。  なおそのほかに、大蔵省の印刷局から有価証券報告書総覧として公刊をしております。
  50. 沢田広

    ○沢田委員 終わります。終わりますけれども、そういう答弁を求めているのじゃなくて、もっと前向きに今日の事態に備える対策を考えてほしい、こういうことを言っているので、いまの言じゃ、経過報告なんか聞こうと思ってわざわざ総理大臣が来ているんじゃないのだから、もう少し勉強して答えてもらうように総理大臣、よく監督しておいてください。だから総理大臣が来て、私がここで質問しているのです。  しかも、他の債権者と退職引当金を同一視しているなんということは、大体退職引当金としての名称に値しないでしょう。そういう点は、退職引当金として置いておく以上は、それはある職員の雇用の退職金としてのために置いてあるのですから、それが他の債権者が有利に持っていってしまうような、そういう順序を逆にするようなことでは間違いでしょう。これは総理大臣、よく監督してもらうことを切望いたしまして、終わりたいと思います。
  51. 大村襄治

    大村委員長 宮地正介君。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 最近の円の急騰に関しまして、先ほど来から総理は、本質的にはドル安であるということでございますが、昨日大蔵省が発表いたしました二月の国際収支、これは経常収支で十九億一千五百万ドルの黒字となっております。史上最高となっております。この結果、昨年四月からことし二月までの経常収支の黒字が累積で百十九億ドル、こうなっておりまして、政府経済見通しといいますか指標の重大な一つであります経常収支、恐らく本年度末には百三十億ドルになるのではないか。こうなりますと、当初見通しの百億ドルを大きく上回るといった大変な異常事態の額になるわけでございますが、これに対して総理としての政治の責任、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  53. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、今回の通貨不安というのは、円高というように言われておりますけれども、そうじゃないのです。これは実態はドル安なんです。それは計数的にも非常にはっきりしておりますので、このドル安現象が円に対して急激に起こってきたのは昨年の九月二十八日でしょう。その二十八日来、今日までどういう状態かといいますと、円がドルに対しまして一四・五%上がっているのです。さあそれじゃ円高かというと、そうじゃない。ドイツもまた一四・四%、ひとしく上がっているわけです。スイスフランのごときは二四・八%上がっておるわけでございまして、これは全くドルが世界的全面的に安い、こういうことなんで、わが国自体とすると、いろいろ手は尽くしております。おりますけれども、なかなかむずかしい。しかし、ドルの不安に対しまして、これを安定化させる、それを妨げている要素として円の問題があるのです。つまり、経常収支の大幅な黒字という問題、ドイツにもそういう問題があるわけでありますが、こういう問題。日本としては何としても、ドルが不安であるということは国際通貨が不安ということですから、これは責任を果たさなければならぬ、こういうふうに考え、いまいろいろな施策をしておるわけでございます。しかし、基本的にはこれはドルの問題である、そのように御理解願います。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 基本的にドル安で、ドルの問題である、アメリカに責任があると言うだけでは済まされないと私は思うのであります。  特に五月三日には日米首脳会談が予定されているようでございますが、この日米首脳会談において、福田・カーター会談において、総理としてどの程度このドル安問題についてアメリカ側に強い要請をする考えであるか、伺いたいと思います。
  55. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 首脳会談をする前にどういう中身のことを話すのだなんということをいまここで申し上げるわけにはまいりませんけれども、できる限り申し上げますれば、とにかく日本はアメリカとの関係は格別のものですから、その大統領と年に一回ぐらいは会って、世界じゅうの諸問題を話し合うということは適当であると考えまして、日米会談の話を持ちかけたわけなんです。先方でもそのように心得ております。  話すところは、大体日米両国間に介在する問題というのはほとんどないと私は思います。ありますのは、とにかくいま世界の経済が非常に混乱している。そういう中で、世界第一の経済大国アメリカ、それから第二の工業国であるわが日本、その二つの国がどういう心構えで立ち向かっていくか、これは世界に大きな影響があるのですよ。そういう両国が世界経済にどういう対処をするか、これなんかは重要な話題になるに違いない、この程度のことを申し上げさせていただきます。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 内容については明らかにすることはできないでありましょうが、しかし、相当な決意を持ってこのドル安に対する問題についてカーター大統領に臨む、そういう決意を持っておられるのかどうか、その点について伺いたいと思います。
  57. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま世界の大問題といえば、これは通貨不安の問題はその雄たるものですから、この問題の話が出ないはずはない。わが国から話す際には、国会で皆さんにも申し上げているそういう認識に立って話をする、こういうふうに御理解願います。
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに先日、いわゆる経済閣僚会議でドル減らし対策として、特にエアバスの導入問題が検討されて、大枠で推進をされるようになっておるわけでございますが、この問題について最近、リース会社構想というものが浮かび上がってきているわけでございますが、総理としてこの問題をどのようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  59. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 リース会社構想は、新聞に報道はされておりますが、政府部内においてそう大きな声となっておるわけではないのです。大きな声となっておりますのは、外国からわが国の用途として外国の航空機を買い入れましょう、こういうことなんです。リース会社構想というのは、東南アジアの国々に欲しいという国がありますれば、わが日本が買ってそれを貸してあげる、こういうような考え方でございますが、そのようなことは、着想としてそんなことを言う人がありまするけれども、まだ進んだ考え方にはなっておりません。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 それは総理、ちょっとおかしいと思うのです。三月十一日の国際収支対策に関する関係閣僚会議の第二項目で明確に、「航空機の輸入について、緊急外貨貸し制度の活用を含め、リース方式による発展途上国等への航空機を貸与する事業の具体化を検討する。このため、関係各省間で速やかに検討体制を整備する。」こういうふうに決まっておるわけですよ。いまの総理の御発言は、閣僚会議の内容よりも大変後退しておる。それでよろしいのですか。
  61. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 航空機をわが国の航空会社の用途に買おうという話ばかなり進んでいるのです。しかし、リース構想というのは、リースする相手国もあることなんです。この事情も調べなければならぬ、また御意向を聞かなければならぬ、こういうこともありまして、わが日本だけで決めることのできない問題です。ですから、構想としてはそういう構想が持ち上がってはおりまするけれども、わが国航空会社が買うという問題のようにまだ進んでおらない構想であるということを申し上げておるわけです。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題については政府部内におきましても、いろいろ関係省庁間においてまだ異論があるようでございます。特に外務省、通産省あたりは積極的にこの問題の推進にあるようでございますが、これは今後に大変大きな問題を残しております。そういう点から運輸省などにおいても、この問題については相当難点を示している、このようにも私たちは聞いているわけでございます。そういう点で、総理がいまおっしゃいましたが、このリース方式による航空機の導入については、十分慎重な態度で臨みませんと、今後かえって国益に反する結果になるのではないか、こういう心配があるわけでございますが、その点について総理の明快な御答弁をいただきたいと思います。
  63. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 リース構想というのは、申し上げるまでもありませんけれども、リースをする相手の要請がなければこれは成り立たない話でありまして、まだそういう接触もしておらぬ、こういう段階であります。いろいろ問題のある構想でございますので、慎重に扱います。
  64. 宮地正介

    ○宮地委員 まだ接触をしておらない、こういうことでいま答弁がありましたけれども、私たちが調べたところによりますと、現実的にはすでに某商社なり某銀行が発展途上国などにおいてリサーチをしておる、これが実態でありますし、通産省としてもこの問題については大方の構想をどうするかということも詰めてきておりますし、実際にこうなっては困るというようなことで運輸省としてもいろいろと難点を示しているようでございます。特にこの問題で事務的に詰めております通産省、この点についてどの程度検討されているかお話を伺いたいと思います。
  65. 豊島格

    ○豊島説明員 豊島でございます。お答えいたします。  この制度につきましては、いろいろと法律上の問題、たとえば先ほど先生の御指摘の航空法の問題とかいろいろ運輸省の問題があると思いますし、それから、この制度が成り立つためのどういう条件があるかというような問題点について、いろいろと勉強をしておるわけでございまして、まだ具体的なものとしての検討はいたしておりません。
  66. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは時間がありませんから、こちらから少しお話をしたいと思いますが、最近のマスコミあるいはいろいろお話の伝わるところによりますと、すでにEC諸国のエアラインの方々が、特にECのエアバスと言われるA300につきまして、すでにわが国の航空会社に売り込みに来ておる。すでにアプローチがある。特に東亜国内航空などにつきましても相当なアプローチがされておる、こういうことが新聞にも報道をされております。特にA300のエアバスなどにつきましては、まだ世界的にも四十六機しか飛んでおらないということから、航空機それ自体にも大変信頼性にも不安があるのではないか。あるいは、大体大型機のエンジンというのは三基以上ついているのが安全面からも大変望ましい、しかしこれは二基である、あるいは滑走路の問題など、大変この問題が多く難点があるようでございます。  しかし、私たちが国民の立場から大変心配いたしますことは、このA300の導入問題に絡んで、いわゆる成田空港の開港などによって国内の新路線との絡みがあるのではないか、こういうような心配もされているわけでございまして、いわゆる第二のロッキードと言われるようなことが起きてはならない。こういうことで政府も、航空機の機種選定についてはこれは民間サイドに任せる、こういうことで慎重に、運輸省当局もその問題については慎重な態度でいるようでございますが、私はこの問題が、ともすると大変な一つ国民の不安といいますか、不信を買うような方向には絶対にやってはならない。そういう面からもぜひこの航空機の導入によるいわゆるドル減らし、あるいはリース構想などによるドル減らし、こういう問題についてはぜひ政府部内においても、第二のロッキードなどと言われるようなことは当然やってはなりませんし、またそういうような疑惑さえも私は絶対にもたらしてはならない。  そういう点で、総理からこの際明快に、そういうことのないようにぜひ取り計らう、また断じてそういう疑惑を国民に与えない、こういう立場から御答弁をいただきたいと思う。
  67. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 おととしロッキード問題という大きな問題が起きた直後のことでもあり、今回航空機を購入するということになりましても、ロッキード問題、ああいうような不祥事件が起きるということは絶対にさせないように、これはお約束申し上げます。
  68. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、いわゆるドル減らしということが、それが結果的にそういうような大変国益に反すること、あるいは国民に疑惑を与えるような方向には絶対に持っていってはならない、そのための歯どめとして私は、十分政府は研究もし、またそれだけの強い決意でこの問題には臨んでいただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  また私は、最近のこのドル安問題について政府がとっております種々の対策に対しましては、大変その御労苦に対しては敬意を表するわけでございますが、私は角度を変えまして、現在の国際収支の改善あるいはその日米間の問題について、特にアメリカ側が最大のアキレスけんとして失業問題を抱えているという事実、この問題に対してわが国として、たとえば米国における失業問題解消に何らかのいわゆる対応策かそういうものができる方途というものはないだろうかということを、やはりもっと前向きに私は検討すべきではないか。たとえば、現在アメリカなどにダンピング問題だとかいろいろとたたかれておりますけれども、中にはやはり合弁会社などをつくって、みごとに米国内において米国の雇用問題確保に貢献をして、日本企業が進出しても米国内の失業対策に大変貢献をして感謝をされ、むしろそういういわゆる貿易上の支障などがなかなか起こりにくい、こういうようなことで大変好感を持たれている一部の企業もございます。  そういう点で私は、資本の自由化の問題などについても十分検討をして、やはりお互いの国における国民に対しての最大の心配事は何なんだろうか、特に私は経済の面からばかりでなくして失業という面をもっととらえて、わが国としてその対応できる道はないのだろうか、こういうようなこともやはり検討をして、もっと抜本的ないわゆる国際収支の改善といいますか、日米間の経済調整といいますか、そういう問題に取り組んでいくべき発想の転換も必要ではないか、こういうふうに考えているわけでございますが、総理の御見解を伺いたいと思います。
  69. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま日本に対しまして各国から風当たりが非常に強い。その各国が悩んでおる問題点は何だというと、これはお話の失業問題なんですよ。特にいま諸外国、先進工業国ですね、若年労働者、これに非常に深刻な失業問題が起こってきておる。さらに、技術若年労働者まで最近は失業問題が深刻化している、こういう状態であります。  いろいろ日本姿勢について文句を言います。言いますその相手方の言い出したがる気持ちの中には、やはり失業問題で非常にいらいらしておる、こういうことがあるのだろう、こういうふうに思います。ですからその対応は、わが国の諸外国からぶちまけてくる不満に対する対応というものは、この失業問題ということをとらえまして、それに対してどういう貢献をなし得るかということ、これを中心にしており、また今後も当分の間そういう態度でいかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
  70. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  71. 大村襄治

  72. 高橋高望

    高橋委員 総理、おかげん悪いように伺っておりましたがお元気なんで、ちょっと御注意をいただきたいと思います。  各委員お尋ねしておりましたが、円高関連で少々お尋ねをしてみたいと思います。  つい一昨日、大蔵委員会でもドル不安と申しましょうか円高問題質疑をさせていただいて、いろいろ御要望申し上げました。御用意されていたと思いますけれども、私は、午前中にお話し申し上げたら午後金利も下がりまして大変恐縮、何か知らないうちに運ばれていることで大変赤面いたしましたが、いろいろな意味でお手当てなさっていると私は思います。  しかし、現実になかなかドル不安というか円高は解決しない。当然のことながら、次の対策をもうお持ちでいらっしゃると私ば思いたい。そこで、いろいろとお考えの中にございましょうけれども、私はあえてここで御提案申し上げたいのですが、緊急に五大国会議かあるいは三大国会議計画なさる御意思はございませんでしょうか、まずその辺からお尋ねしてみたいと思います。
  73. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 首脳会談という意味でありますと、緊急に五大国首脳会談というようなことは計画いたしてはおりませんけれども、事が通貨の問題ということになりますると、やはり専門家の会談ということだろうと思います。首脳会談というのは適当でないので、専門家会談、専門家レベルのいろいろな往来あるいは会談、そればもう非常に頻激に行われておる、このように御了知願います。
  74. 高橋高望

    高橋委員 私は、頻繁に行われていることを存じ上げた上でなおかつここで、われわれの国の状況あるいは相互の状況の新たな理解ということを含めて、御提案という形で、こういう会議をお持ちいただいたらどうか、このように考えているものでございます。重ねてで恐縮でございますけれども、いかがなものでしょうか。
  75. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 そんな御着想も私はあろうかと思うのですよ。思いますけれども、現実の問題とするとそう急にというか、そういうのはなかなかむずかしいだろうと思うのです。やはり首脳会談ということになりますれば、それが成功ということにならぬと逆効果になる。成功させるためには相当の準備を必要とするということで、緊急に首脳会談というのはなかなかむずかしいと思いますが、しかし、事務レベルというか、あるいは大蔵大臣同士とか大蔵省の事務レベルとか、そういうような接触は相当頻激に行われておる、このように御了知願いたいのであります。
  76. 高橋高望

    高橋委員 私がその御提案を申し上げますのは、どうもここまで事態が複雑になってまいりますと、私たちの国内での対策だけではどうにもならない世界があると思いますので、そういう意味合いからひとつ私の提案を何かのときにお生かしをいただきたい、お願いを申し上げておきます。  続いて、下げていただいた例の公定歩合の〇・七五をめぐってお話を申し上げてみたいと思うのですが、いつでも公定歩合が下がりましたときに、実際にこれを借り出して運用する立場に立ちましたときには、とかく実際の金利とのずれが目立つわけでございます。実際に借り出せる金利とのずれが目立ちます。これを銀行当局では追随率なんという言葉を使っておられるのですけれども、公定歩合が下がったからといって、そのまま町の金融機関あるいは都市銀行にしても下がりっこない。そうであれば、実際に借り出す立場に立つと、中央で幾ら公定歩合が下がったといっても、自分たちが借りている感じから言うと実際に発表される数字とはほど遠い、これがずっと繰り返されて今日まで来ている。  今回の公定歩合の引き下げのねらいは私は二つあると思います。一つは、いま申し上げた国内企業の設備投資を含めたいろいろの刺激であろうと思うのです。それからもう一つは、内外の利子の差をこの際はっきりして外資の流入を防ごうということ。二つございましょうが、とりあえず国内企業に対する刺激、設備投資を刺激するという意味を含めて、公定歩合と従来行われている追随率という言葉で代表される実際に借りるときの金利差の問題、この辺を、事情を十分御承知だと思いますので、総理の御見解をちょっとお伺いしたいと思うのです。
  77. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 公定歩合が下がりました、預貯金の金利が下がりましたからといって、すぐ貸し出しの方へそのまま響いていくという性質のものではないのです。つまり、次の手形切りかえのときとか新しい貸し出しを行うとか、そういう際に新しいレートが適用されるということでありまするから、総体として見るときにはそうはかばかしい追随になっておらぬ、こういうことになりますが、しかし、最近の公定歩合の変動とそれから窓口の実際の貸出金利、これの追随状況というのは非常に順調です。いままでかつてないくらいの順調な速度で追随が行われておる、こういう状態でありまして、恐らく今度預金も金利が下がる、貯金も下がるということになりますれば、これは相当の影響があるのじゃないか、そのように考えております。  この前の公定歩合の引き下げのときの追随ぐあい、これなんかもつぶさにフォローしておりますが、これは非常にいいのですよ。これは、いい状況は御説明してもよろしゅうございますけれども、非常によろしいので、その勢いで追随を的確にやってまいりたい、このように考えます。
  78. 高橋高望

    高橋委員 総理おっしゃるように、私も追随がどの程度かということは存じ上げておりますが、この際いわゆる心理的な効果も含めて、また実際面でもそうなんですけれども、少なくとも都市銀行あたりは一律に〇・七五下げろ、こういう強い姿勢はおとりになれませんか。またそう言うことは、逆に言えば、政府が意図されている企業に対する刺激に直結すると私は思いますので、この際、従来のやり方というものを思い切って見直されて、やみ金融は別として、とにかく〇・七五各金融機関は引き下げろ、こういった強い御姿勢はおとり願えませんでしょうか。
  79. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 金融機関の預金貯金、これは金利が下がりますけれども、下がりますのが急に下がるわけじゃないのです。やはり預金の期限の切りかえ、そういうときとか、新しい預金をするとか、そういうときに新しい金利が適用されますので、公内歩合引き下げ決定の日に直ちに金利コストが全部下がっておるということじゃないものですから、ただいま高橋さんからお話しのような措置はむずかしいのですが、しかし、切りかえが来ますとか、新しい預金契約になりますとか、あるいは貸出契約になりますとか、そういう際におきましては、お話しのような線でみんな動いていく、ですから追随率が非常にいい数字になって出てくるわけであります。
  80. 高橋高望

    高橋委員 この件でもう一つ総理にお願いを兼ねてお尋ねしておきたいのですが、実は政策金融と呼ばれるものの金利が割り高にとどまっている。中小企業金融公庫を初めとして直接に市民生活を考えるときの窓口になっている政府関係の金融機関が依然として金利が高い。先ほどもある委員から御指摘ございましたけれども、政策金融の金利というものを少なくともプライムレートぐらいまではこの際考え直すべきじゃないか。公定歩合にプラス優良企業の〇・二五、こういういわゆるプライムレートの水準にまで引き下げるのが、政策金融としての本来の姿勢ではないかと思いますけれども、この辺についてはいかがでございますか。
  81. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 政策金融は、これはおおむね長期金融なんですね。長期金融の金利は、公定歩合が変わったからといって一々それに追随しておるというわけにはいかないのです。長期の展望の中で金利水準というものを決めなければならぬ、こういうことでありますので、今回公定歩合の引き下げがありましたけれども、それに連動してこれをすぐ変えるというわけにはいかぬということは、御理解願えると思うのです。しかし、公定歩合が下がって、そうしてある展望の中で金利水準が幾らか下がっていくだろうというような展望になりますれば、それはそのとき長期金利体系の修正という問題が起こってくるのです。国債の利回りをどうする、あるいは社債の利回りをどうするとか、そういう長期金利を一体どうするんだ、こういう中の一つの問題点として政策金融の問題、これも検討する、そういうことだろうと思います。
  82. 高橋高望

    高橋委員 総理、どうぞひとつなお一層の御関心をこの面にお寄せいただいて、実際に借りている連中の立場に立っての金利政策を関係当局に御指示願いたい、かように思います。  時間も迫ってまいりましたので、最後にお願いを兼ねてのお話になろうかと思いますが、私たちの党が従来から行政の見直し、省庁の統廃合等々をお訴えをし続けてきて、立党以来でございますから十年以上そのお願いをし続けてきていると思います。  現実に行政の見直しというのはなかなかできない。特に、われわれは現在までは経費の立場でいろいろとお話をしてきたかと思います。ところが、私がいろいろ経験してまいりました段階では、経費の問題は当然過ぎるくらい当然これは詰めていただかなければならないのですが、現実に行政のあり方として、法律をつくる部署、この法律をつくる部署の方々、いわゆるお役所の方々は、つくること自体には大変熱心に情熱を傾けられるのですが、一たんでき上がった法律がどのような展開をし、さらにはどのような成果を上げたかという見届けの段階になると、比較的手が抜かれる。ですから、行政の見直しというのは、いわゆる経費的な問題と同時に、こういった取り組む姿勢をひとつ総理のお声で直していただかないことには、私は両面にわたっての効果は出てこないと思う。大変失礼ですけれども、法律をつくるときには、関係の力みんな一生懸命になって法律だけはつくる。後は野となれ山となれとは言いませんけれども、後のいわゆるフォローアップというか成果を見届ける段階までは、総理、そういう点になると比較的熱意が薄まっているように私は思われてならない。  きょうは具体的な例を挙げる時間もございませんけれども、そういう意味で、われわれが言う行政の見直しというのは、経費の問題とあわせ、法律とその後の成果の見届け、この辺にまでどうかひとつお考えを広めていただき、進めていただきたい、これをお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  83. 大村襄治

    大村委員長 荒木宏君。
  84. 荒木宏

    ○荒木委員 短い時間ですので早速お尋ねをいたします。  長引く不況で大変苦しんでいる事業専従者といいますか、白色申告は三百二十五万でございますが、これに関係する事業専従者の取り扱いについて、私は総理政治的なお立場からの御意見を伺っておきたい、かように思います。  同居の親族の事業専従者につきましては、御承知のように一定額を事業者には必要経費として控除をする、他方同額を事業専従者には給与とみなす、こういう扱いになっておりますが、これが税法上五十年以来四十万円でございます。給与でございますから、仮にボーナス三カ月として計算しますと、一カ月は二万六千円くらいの勘定になるわけなんです。私は、これは余りにも少ないのではなかろうかと思う。しかも五十年以来四年越し据え置きになっているということで、見直しの必要があるのではないかということで総理の御意見を伺っておきたいと思います。
  85. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 どうも的確なお答えが私できないかもしれませんが、白色事業専従者控除は、給与の支給の有無にかかわらず、家族が事業に専従しておる事実に着目して一律的に控除されるものであり、その控除額は必ずしも賃金水準に見合って引き上げていかなければならない性格のものとは考えておりません。なお、仮に控除額の引き上げを見送ったことに問題があるといたしましても、青色申告者になればいわゆる完全給与制が認められ、また、白色事業者が容易に青色申告者になれるよう記帳方法を簡易なものにする等の措置を講じてきておりますので、基本的には青色申告者になることで解決される問題である、このように心得ております。
  86. 荒木宏

    ○荒木委員 いま総理がお述べになったのが大体事務当局の従来の見解でございまして、大体問題の所在はそれでおとりいただいたと思うのです。私は、そういう実務的な論議ではなくて、政治的に制度全体としてどうなっているかということを、ひとつ短い時間ですが御論議をいただきたい、こう思うのです。  厚生省に聞きますが、生活保護一級地、これは五十年最高が幾らで、五十三年予定額最高が幾らになっていて、伸び率が幾らか、報告してください。
  87. 高峯一世

    ○高峯説明員 生活保護の第一級地の基準額でございますが、五十年度二万四百八十円、五十一年度二万三千四十円、五十二年度二万五千九百九十円、五十三年度予算では二万八千八百五十円でございます。  以上の伸び率を申し上げますと、五十一年度は一二・五%、五十二年度は一二・八%、五十三年度は一一・〇%の予定でございます。
  88. 荒木宏

    ○荒木委員 それからもう一つ、家事労働というのがありますが、法務省に、昭和四十九年七月十九日付最高裁判決で、家事労働の評価をどういうふうに見たかという判決要旨のポイントだけ御報告いただきたいと思います。——それでは、法務省から聞いたところが多分間違いないと思いますので報告しておきますが、これは同年の女子労働者の平均賃金を家事労働に従事している主婦の労働力価格として評価基準にする、こういう趣旨の判決でございます。  そこで労働省に、五十三年一月の事業所三十人以上の平均賃金、それから東京での最低賃金、これは幾らになっておるか、数字を報告してください。
  89. 高橋久子

    高橋説明員 お答えいたします。  五十三年一月の毎月勤労統計調査によりますと、規模三十人以上の事業所におきます女子の月間給与総額の平均は十一万五千百三十九円でございます。  最低賃金は、ただいま資料を持っておりませんので、後で御報告したいと思います。
  90. 荒木宏

    ○荒木委員 総理、先ほど事務当局の見解を御披露いただいたのですが、私が申し上げたいのは、確かに本質が給与であるかどうか、これはいろいろな点があると思いますが、法律で給与とみなすと書いておるのです。法律は給与として扱う、こう言っておるのです。そして生活保護は、五十年が二万円強、五十三年の予定は、四〇・九%伸びまして二万八千円を超えておるのです。これでもまだ少ないという意見はあります。だが、それに比べても、ボーナス三カ月とすれば二万六千円しかない。また、家庭で家事労働に従事している婦人の労働力は、最高裁の判決では、いま労働省からお話がありましたように十一万五千円余りですから、年間百三十八万になるのです。そうしますと、税法で扱っておるこのみなし給与の額は、生活保護と同水準であり、最低賃金の二分の一であり、家事労働の三分の一にすぎない。しかも四年引き続き据え置きになっておる。  ですから、控除の引き上げなりあるいは相当な方法での給与の認定なり、こういった見直しが必要ではないか。もちろん青の道があるということはそのとおりですけれども、しかし、それを選択する義務はないわけですから、白と選択した場合の扱いとして、法律でこういったみなし給与を定額のままに据え置き続けて、今日の長引く不況の中で放置しておることはどんなものかということを、総理政治的な御意見を伺いたいと思います。
  91. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 先ほど総理の御答弁にもございましたように、白色申告者の場合の専従者控除と申しますのは、給与とみなすというふうに規定してあることはおっしゃるとおりでございますけれども、給与を払う払わないにかかわらず一律に認めておるというところに非常に特殊な性格を持っておりまして、これを必ず一般的な給与水準に合わせて引き上げなくてはならないというものではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  92. 荒木宏

    ○荒木委員 実務的な答弁は大蔵委員会で幾らでもやりましたし、前にもやったのです。私は、そういうことについて各省庁でこういう扱いを、法務省も労働省も厚生省も進めているときに、大蔵省のそういう態度がいいかということを総理に伺っているのです。  あわせて、しかも一本立ちしようと思っている人たちがその中でわずかな金を預金していれば、預金金利の引き下げになる。そういう人たちに対するみなし給与の配慮と、それから預金の金利配慮と、総理は一体どうこたえられるのかということを伺っているのです。これを総理から伺って私の質問を終わりたいと思います。
  93. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 白色事業専従者控除は、賃金上昇以上に引き上げられておるというふうに聞いておりますので、あなたの御所見とそう大きな違いのある処置にはなっておらぬように私は考えております。  それから、預金利子のことにつきましては、先ほども申し上げましたが、これは預金をする零細な資力の方々、この方々は大変御迷惑なことにはなりまするけれども、いま差し迫って日本の当面している最大の問題は何だといいますれば、これは景気の回復だ。そういうことになりまするときに、皆さんに犠牲ではありまするけれども分担していただく。その結果景気がよくなるのだということになりますれば、やがてそれは皆さんのところにはね返ってくるのですから、しばらくの御協力を願います。こういう気持ちでございます。
  94. 荒木宏

    ○荒木委員 私は納得はできぬですね。さっき総理、賃金が上がっている以上に上がっていると言われたが、実態は決してそうではない。時間が来ましたから私はこれで終わりますけれども、政治的に聞いたので、実務当局の意見は専門委員会で聞いておるわけですから、そういう点で承服できない。引き続きお尋ねするということをはっきり申し上げておいて、質問は終わります。
  95. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  96. 永原稔

    ○永原委員 私は、いま縦割り行政の行われている中でもう少し総合的な考え方が必要だ、こういうことを訴えながら、その中の一環として不況に悩んでいる業種の実態を申し述べ、総理考えを伺いたいと思います。  実は、基礎産業として苛性ソーダが果たしている役割りというのは非常に大きい。これは四十八年を思い起こしますけれども、あの社会的な混乱を背景にして製法の転換が行政指導で強制的に行われました。水銀法から隔膜法への転換、こういうような全面的な転換という指示が出たのは、世界あるいは日本の産業史上も例を見ないようなことであったと思います。もちろん行政指導ですから法律で決めたのではない、強制ではないというようなお話は出てまいりますけれども、そういう中で十二省庁が関連する仕事でございます。通産省が窓口にはなっておりますけれども。そういう中で転換が行われた。しかし、その行われた結果を見ますと、これは品質が非常に下がっている、またコストが上がっている、国際競争力を失ってしまった、こういうような実態があるわけです。しかも全面転換と言いながら、技術開発がおくれているというようなこともあり、四割は水銀法のまま仕事が継続されている。こういうような状況で、両者の間に大きな格差が出てまいりました。  このことについては、昨年の六月に民社党の玉置委員が商工委員会において御質問になっております。時の通産大臣は、「隔膜法の問題につきまして、私どもは行政官として深い反省をしなければいけないと思っております。ムードにだけ押されて、かような技術的な問題を簡単に処理したところに反省を必要とするところがあると私は思います。ことに、化繊関係のような高級苛性ソーダを必要とするものは、普通の隔膜法のごとき程度の苛性ソーダでは使用不能であるということも技術的にはわかり得たと思うのでありますが、そういう点、私どものは行政官としていろいろ」と、そういう反省を加えられて、行政の責任ということをみずから反省していらっしゃるのです。そういう中で開銀その他の特別な措置というようなことも触れていらっしゃるわけです。しかし、通産省の所管に属しない事項について、みずから権限をお持ちでございませんので、事態はそれに対応して進展はしておりません。やはり十二省庁が関連して決めた方針であり、しかも技術的、経済的な解明がなされないで政治的な判断によってなされた、こういう仕事でございますので、これについては政治的な配慮があってしかるべきだ、こう思いますけれども、こういうような業種に対する対策というので総理大臣はどういうようにお考えになっていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  97. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 私は、苛性ソーダ工業だとか個別の企業の問題についてタッチしておりませんけれども、一般的に申し上げますと、苛性ソーダ工業、これは構造的な要因を抱えた不況産業である、こういうふうに考えます。構造的な不況産業に対しましては、これは設備の廃棄を必要とするというようなものもありまするし、あるいは事業の転換を必要とするというようなものもありまするし、あるいは当面つなぐための処置といたしまして金融方面においていろいろな協力をしてやらなければならぬというようなものもありますとか、いろいろありますが、政府といたしましては、本当にこの種の産業につきましては一つ一つどういう処置がいいかということを、縦割り行政とおっしゃいますけれども、関係機関が皆寄って、衆知をしぼって、そしていま対処しておる、こういう最中でございます。
  98. 永原稔

    ○永原委員 総理のそういう態度はわかるのですけれども現実がそのとおり動いていないのです。  いま金融のお話が出ました。転換に当たって開銀が融資された、そのときの金利が一般金利よりも低くしてあるというようなことは銀行局長もこの前お話しになっておりました。しかし、そういう中で実態を見ていきますと、その後公定歩合の引き下げあるいはプライムレートの変化によって、開銀の金利というのはだんだん苛性ソーダの製法転換緊急対策資金としては金利が下がってきている。四十九年、五十年の二カ年に集中的な投資をして六割の企業が転換をしたわけですけれども、そのときの金利が平均して七・九%、これは一般の貸出金利より低いから、もうそれ以上は下げられないんだというのが銀行局長のお考えでしたけれども、まさに役人的な発想であると思うのです。というのは、この対策資金についてはその後の公定歩合の引き下げなどによってずっと下がってきている。五十二年六月には七%、五十二年十月には六・七%、こういうふうに下がってきております。こういう低い金利の恩典を受けるところといえば、後発組、いわゆる四割残っているところは恩典を受けられるでしょう。このまま据え置きになるとするならば、先発組、行政指導によって、その指示に従って転換してきたところの金利は据え置かれているならば、非常に不利をこうむるわけです。こういうものが一つの行政不満というものを起こしますので、ぜひこういう点についてもお考えいただきたいと思いますが、こういう御指導はいかがでしょうか。
  99. 児玉幸治

    ○児玉説明員 お答え申し上げます。  ただいまの転換をいたしましたソーダ工業の金利の引き下げの問題でございます。  ソーダ工業は御承知のように、化学工業の一部でございまして、このソーダの部門が非常にウエートが高い企業あるいは低い企業、それから全体を見ましても、ある程度の収益の上がっている企業あるいは赤字の企業とさまざまな形のものがあるわけでございます。私どもも、転換いたしました企業の経理につきましては重大な関心を持っておりまして、その推移につきましては常に情報をとっているわけでございますけれども、現在経営上いろいろ問題がございます企業につきましては、関係の金融機関とよく相談をいたしまして、個別に問題に応じまして、元本の返済猶予その他の措置を講じているところでございます。
  100. 永原稔

    ○永原委員 開銀融資のことを私は問題にしているわけですけれども、昨年の第一次補正のときの財源に、産投会計に開銀の貸倒準備金の一部から繰り入れが行われました。受け入れについては、運用利殖金収入ということで六百六十二億六千五百五十万だったと思いますけれども、それくらいの繰り入れをして、一般会計に貢献するというようなことをしたわけです。これだけ利殖収入があるということであるとするならば、やはり先発組のそういうものの金利も下げていくのが必要ではないだろうか。政府関係機関ですから、公正にやっていかなければならないというのはわかりますけれども、利殖を上げていくほど効率的であるならば、そういうものをさらに金利を引き下げる方向に向けていくのが、政府金融機関としてのあるべき姿ではないか、こういうように思うわけです。そういう点について考えていただいて、ぜひこの金利は不満の起こらないように統一的にすべきだ、こういうように思いますけれども、いかがでしょうか。
  101. 渡辺喜一

    ○渡辺(喜)政府委員 既応の金利を引き下げるというお話になりますと、これは非常に一般的にも及ぶ話ですし、一体どういうラインでそれを切るべきかというようなむずかしい問題も出てまいります。したがいまして、私どもといたしましては、金融の問題についてはできるだけ個別対応でやっていきたい。個別企業において本当に非常に苦しいという事情があるならば、それに応じた返済計画とかあるいは金利の償還計画、こういうものを認めるようにしていきたいということで現に指導をしておるところでございます。
  102. 永原稔

    ○永原委員 総理大臣、いまお聞きのように、各省庁でいろいろやりましても、国策としてこれは転換だ、それに伴っていろいろな措置をするといっても、それを受ける各省はそれぞれ自分の立場でお考えになるわけです。やはりこういうものについて総合的に考えて、国策としてやるのだったらそれに対応するような措置が必要ではないだろうか。特に開銀資金のようなのは、非常に利殖収入ということで一般会計が受け入れるほど実績が上がっているのです。そういうものを国策の面で使っていくといっても、これは運営上の問題はないのではないかという気がするのですけれども、そういう政治的な判断が必要だ、こう思います。特に発足が政治的判断によって転換をさせられた、こういうような仕事でございますので、それに対応する対策としても政治的な判断によってやっていくべきだと思いますが、こういう点はいかがでしょうか。  非常に基礎産業として、出荷額がわずか三千億ぐらいかもしれません。しかし、波及する効果は三十兆にも及ぶような基礎産業であるだけに私は憂えるわけです。そうして、それがいまや倒産につながるとすれば、社会問題にもなってまいります。個々の企業について相談するというお話がありますけれども、やはり公害を防ぎ、本当に新たな技術を開発していこうという過程において生じている問題でございますので、こういう点については総合的な判断が必要だということを申し上げ、総理お答えを伺って、質問を終わらせていただきます。
  103. 福田赳夫

    福田内閣総理大臣 いま非常に経済がむずかしいときでありまして、大型の倒産とか出るくらいな状態ですが、企業経営のむずかしいというか、おかしくなってきた、そういう企業につきましては、これは通産省所管につきましては大蔵、通産それから日銀、これは緊密な連絡をとりまして、もうできる限りの配慮をすることにいたしておるのです。かなりの功績を上げておるわけです。  まあ業界一般、苛性ソーダというような話になりますると、これは通産省が所管の官庁でありますから、通産省で総合的にこれをどうするのだという施策を決めまして、業界といろいろ話し合って善処するということでございますが、いまお話は、全体のお話のようでございますから、通産省によくお願いをいたしまして、業界がどういうふうに進むがいいか、こういうことにつきまして、通産省としてもできる限りの御協力をするようにいたします。
  104. 永原稔

    ○永原委員 ありがとうございました。
  105. 大村襄治

    大村委員長 次回は、来る二十二日水曜日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時六分散会