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1978-03-08 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月八日(水曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       宇野 宗佑君    小渕 恵三君       大石 千八君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    坂本三十次君       林  大幹君    原田  憲君       本名  武君    村上 茂利君       森  美秀君    山崎武三郎君       山中 貞則君    伊藤  茂君       川口 大助君    平林  剛君       山田 耻目君    貝沼 次郎君       宮地 正介君    高橋 高望君       荒木  宏君    永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  出席政府委員         大蔵政務次官  稲村 利幸君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局次         長       山口 光秀君         大蔵省主税局長 大倉 眞隆君         大蔵省理財局次         長       川崎 昭典君         国税庁税部長 水口  昭君         国税庁徴収部長 西野 襄一君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局核燃料課長 田中 久泰君         科学技術庁原子         力安全局原子炉         規制課長    早川 正彦君         厚生省医務局看         護課長     都築  公君         農林省構造改善         局農政部農政課         長       若林 正俊君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (税理士)   中村 自明君         参  考  人         (日本大学経済         学部教授)   井手 文雄君         参  考  人         (成蹊大学経済         学部教授)   肥後 和夫君         参  考  人         (谷山税制研究         所主任研究員) 大山 明雄君         参  考  人         (経済団体連合         会理財部次長) 小山敬次郎君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月八日  辞任         補欠選任   三原 朝雄君     高鳥  修君   高橋 高望君     吉田 之久君 同日  辞任         補欠選任   吉田 之久君     高橋 高望君     ————————————— 三月八日  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(村  山喜一君外九名提出、第八十回国会衆法第一四  号)  は委員会許可を得て撤回された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出第七  号)  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(村  山喜一君外九名提出、第八十回国会衆法第一四  号)  の撤回許可に関する件  有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四号)      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  ただいまより、本案について参考人から意見を聴取することにいたします。  本日御出席をいただきました参考人は、税制調査会会長小倉武一君、税理士中村自明君、日本大学経済学部教授井手文雄君、成蹊大学経済学部教授肥後和夫君、谷山税制研究所主任研究員大山明雄君、経済団体連合会理財部次長小山敬次郎君の各位であります。  この際、参考人に一言申し上げます。  参考人各位には、御多用のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、目下、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を審査いたしておりますが、本案につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  なお、御意見十分程度にお取りまとめをいただき、その後、委員からの質疑にお答え願うことにいたしたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず最初に、小倉参考人からお願い申し上げます。
  3. 小倉武一

    小倉参考人 私、小倉でございます。  せっかく参考人としてお呼びいただいたのでございますけれども、御参考になるようなことを申し上げられるほど勉強もしておりませんので、はなはだ申しわけなく存じます。  税制調査会会長ということでお呼びいただいたわけでございますので、昨年の九月でございましたか、当大蔵委員会参考人として出席いたしました後の税制調査会の経過を簡単に触れさせていただきまして、御参考に供したいと思います。と申しましても、もうすでに御承知になっていることばかりかと思いますが、まず、昨年の十月四日にいわゆる中期税制あり方についての答申をいたしました。この答申の中で、税制あり方についての基本的な考え方、それからまた現存税制について是正すべき点、特に増税ということを頭に置いてどういうことが考えられるのかというようなことを検討し、その上に今後の税制あり方について答えを出す、提言をする、こういった仕組みになっております。  検討の基本的な考え方といたしましては、何といたしましても、社会福祉の増進その他の公共サービス確保を図る必要がありますが、同時にまた、たくさんの公債を出さなければならないというような財政の現状を踏まえて、できるだけ早い機会多額公債の依存から脱却したい、それによって国民生活の安定と国民経済の健全な発展を図るということに視点を置いてまいりたい、こういったようなことを考えたわけでございます。その際、どうしても一般国民負担をお願いしなければならぬのではなかろうか、こういうような考え方をいたしたわけであります。  既存税目なりあるいは考えられる新しい税目についての検討でございますが、その主なるものについて申しますと、所得税法人税あるいは現存のもろもろの租税特別措置について検討を加えた次第でありますが、その各項目についてどういう検討をしたかも引き続き税制あり方答申に触れておるところであります。  そこで、最後提言でございますが、この委員会でいま御審議になっております租税特別措置についての項目が第一に来るわけでございます。これは従前税制調査会としては、整理合理化をするという基本的な方針でまいっておったわけでありますけれども、昨今の財政状況を考えると、一方において増税ということをどうしても近い将来に国民一般にお願いしなければならぬのではなかろうかというようなことを考えますと、従前以上に租税特別措置についての検討を加える、あるいはいわゆる不公平税制是正を図る必要があろうという趣旨に相なっておるわけであります。それから、既存税目につきましても、法人税なりあるいは間接税につきまして若干の増税の余地があるのではなかろうかというようなことでございますが、大幅の赤字公債というようなことを考えますと、既存税制の中で増税をお願いするということではどうも間尺に合わないのではなかろうか。  そこで考えられるのは、所得税一般的に増税する、あるいは一般的な消費税をお願いするというようなことになるのではなかろうか。そこで、所得税一般的な増税と、消費税、これは新しい税目になるかと思いますが、そういうものを創設するということを彼此勘案して、どちらがいいのだろうかということでございますが、筋としては、所得税でお願いするのが本当は筋なんだろう。ところが、国民感情と申しますか、あるいは国会での御議論等々から見ますと、どうも一般所得税増税をお願いするのは無理なような感じがする。そこで、この際は一般的な消費税創設といいますか、消費税増税をお願いするということになるのではなかろうかというようなことに相なった次第であります。  そこで、一般的な消費税創設といいますか、消費税の増収を図るという意味においての新しい税制あり方といたしまして、ごく粗筋検討はいたしたわけでございますけれども、何しろまだ新しい税目でございますし、過去においては付加価値税というようなことについて検討をいたしましたけれども、これについてはある程度御批判なりをいただいている点がありまして、そういうものも踏まえて一般的消費税を考えると、どういうかっこうになるのだろうかということについてのごく粗筋中期答申では示しておるわけでございます。  そこで、今後の問題といたしまして、税制調査会では、できるだけ早い機会にもう少し一般的消費税の具体的なあり方についての、スケルトンと申しますか、細目と申しますか、具体案をつくって、その上で、一般の御批判を得てさらに練り上げるというような段取りが必要ではないか、こういうようなことを考えたわけであります。  引き続きまして、五十三年度の税制改正の問題に及んだわけでございますが、景況も必ずしも思わしい足取りで回復するというわけにもまいりませんので、一方においては内需の拡大を考える、他方においては財政の節度ということをわきまえて考えるというような両点から、五十三年度の税制あり方を考えたわけでありますが、その結果、五十三年度から一般的消費税を導入するということは、時間的に余裕がないし、いま申しましたような状況から適切でもない、こういうことになったわけであります。  もう一つは、所得税の問題でございますが、所得税減税については、ある程度減税すべきであるという御意見と、さらに、景気あるいは個人消費拡大によって景況の好転を図るという意味において多額減税を図るべきだ、こういう意見税制調査会内部でもございまして、いろいろ討議を重ねた結果、大方意見としましては、こういう財政の事情でございますので、この際は所得税減税というのは見送ったらどうか、こういうのが大方の御意見であったわけであります。  次は、租税特別措置でございますが、これは年々企業関係についての特別措置中心にして漸次整理してまいったのでありますが、先ほど申しましたように、これについてさらに合理化を図っていく、租税負担の公平をそれによって図る必要があろうということで考えたわけであります。  なお、特別措置の問題のほかに、こういう財政が苦しいときに一般的に考える場合に、お酒に関係する税金であるとか、石油ないしガソリンに関する税金であるとかいうふうなことについては、ある程度税金をお願いしてもいいのではなかろうかというようなことで、酒税について二割四分何厘かの増税をお願いしたらどうか、石油税という新税を創設して若干の税金をお願いしたらどうかというようなことを考え、なお、特別措置にも関連しますが、景気の回復というようなこととも相まちまして、他方企業関係特別措置も整理するということもあわせて考えて、投資促進のための税制を新しく特別措置として設ける、あるいは住宅建設を促進するという意味におきまして住宅取得控除を考えるというようなこと、さらにはタックスヘーブンについての税制を整備する、こういったような措置を講ずることにしたらどうかというのが大体の考え方であります。政府国会に提案されている五十三年度の関係法案も、おおよそただいま申しましたような趣旨に沿って提案されているというふうに私どもは理解しておる次第であります。  なお、社会保険診療報酬課税特例措置につきまして、これも御承知のとおり、かねて税制調査会ではその是正方の必要をうたってまいったわけでありますが、なおこれが見送りにどうもなっておるというようなことになっておりましたのは、大変残念でございますが、聞くところによりますと、この特別措置は五十三年度限りとして、その間に対策といいますか、必要な措置をとる、諸般の施策を講ずるということで、五十三年度限りでこの特別措置をやめるという趣旨法案が今国会提出されるやに聞いております。そういうことになれば、かねて税制調査会政府に対して申し上げている趣旨に沿って前進をして、近づいていただけるというような気がいたしております。  なお、最後にちょっと申し上げますと、今後の税制調査会あり方といいますか、進め方でございますが、これは一つには、政府のお考え方もございまして、税制調査会だけでどうするというわけにもまいりませんけれども、中期税制あり方についての答申に引き続きまして、その後の経済状況財政状況等も踏まえ、できるだけ早い機会に中期的な税制あり方についての具体案を得ておくということが必要ではないかというような気がいたしております。今国会における当委員会等におきます税制についてのいろいろの御高見、これからもいろいろな機会に拝聴し、あるいは知ることができるかと思いますが、そういうことを踏まえまして、できるだけ早い機会に発足する必要があるのではないかというふうにひそかに私は考えておるところでございます。  だんだんと経済状況、むずかしいようなことになっておりまして、その際の税制あり方をどうするかということも、中期税制あり方答申しましたとき以上にむずかしいいろいろの考慮を要する事項が出てまいっておるように思いますが、それだけに、従来よりは少し早目再来年度も含めましての今後の税制あり方検討が必要ではないかというふうに存じておる次第でございます。
  4. 大村襄治

    大村委員長 ありがとうございました。  次に、中村参考人にお願いいたします。
  5. 中村自明

    中村参考人 私は、税務行政の末端において、納税者代理としての税理士という仕事を行っておる者でございます。と同時に、税制民主化税務行政執行民主化のために運動を続けている大阪専業税理士協会会長を務めております。御存じの方もおられるか知りませんが、「専業税理士界」という機関紙発行責任者でもあります。  本日、ここに租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案についての意見を述べる機会を与えられましたことを感謝いたします。  租税特別措置法は、シャウプ勧告に基づくわが国所得税法人税基本理念である負担公平の原則を破壊した歴史であります。  国家の社会政策経済政策の一環として租税政策は利用されたわけであります。確かに、太平洋戦争後の破壊され尽くした企業活動を蘇生せしめるためには必要であったかもしれません。わが国経済力が世界第二とか言われる経済力を持ち得たのは、負担の公平を犠牲にした租税政策のたまものであるかもわかりません。  負担の公平を犠牲にした租税特別措置法の使命は、昭和四十四年に終了しております。しかるに、政府の怠慢によって今日まで放置した結果が、現在の構造的不況となっています。  租税特別措置は、税制を通じて行われる補助金政策であります。  財政民主主義原則は、憲法八十三条において、「國の財政を虚理する権限は、國會議決に基いて、これを行使しなければならない、」と規定しています。すなわち、国会中心財政基本原則が定められております。大蔵省中心国税庁中心財政処理は一切許されないことになっています。  さき国会予算が修正されました。政府あるいは自民党の中には、国会予算修正は認められないというような意見があったように新聞で見ましたが、憲法八十三条によれば、国会は当然修正権があると思います。憲法八十五条には、国費支出するには「國會議決に基くことを必要とする。」と規定されています。国費支出に対する国会の統制は、法律に基づくと同時に、別に支出に関する国会承認を要するものとなっています。  租税特別措置による減収税額は、大蔵省資料によりますと、昭和五十三年度で四千七百九十億円となっています。さきに述べました理由に基づけば、国会議員の皆様の承認を得ざる不当支出が四千七百九十億円になっていることになっています。われわれの研究によれば、昭和五十三年度四千七百九十億円という数字は事実より著しく低いように思われます。  日本国憲法は、衆議院の先議権及びその議決権優越性規定しているのであります。財政に関する国会中心主義原則において、憲法八十五条に、「國が債務を負擔するには、國會議決に基くことを必要とする。」と規定されています。数千億円か数兆円か不確定な補助金国会承認もなく支出されていることは、財政公開原則にも反すると言えましょう。  このように申し上げますのは、租税特別措置は、社会政策及び経済政策便法として、租税基本税法である他の税法負担公平の原則を歪曲し、隠れた補助金助成金の性格を持っているからであります。  所得税法人税等基本税法自体の中にも特別措置は少なくありません。租税特別措置法は、国税に関するものであり、地方税に関するものは含んでいませんが、国税特別措置が自動的に地方税に波及する減免効果も大きいことは御理解ください。  租税特別措置法は、大企業、大資産家優遇の実態を持っています。国税特別措置のうち、貯蓄奨励政策として次のようなものがあります。利子所得分離課税措置法三条)、少額国債利子非課税措置法四条)、納税準備預金利子非課税措置法五条)、非居住者等の受ける戦前外貨債利子非課税措置法六条)、それから、民間外貨債利子非課税措置法七条)、特殊の外貨借入金等利子非課税措置法七条の二)、証券投資信託の収益の分配に係る配当所得源泉分離選択課税措置法八条の二)、株式等に係る配当所得源泉分離選択課税措置法八条の四)、それから、確定申告を要しない配当所得措置法八条の五)。  利子所得配当所得優遇政策は、金融機関、大企業資金調達便法として意義があります。現在の不況下において、貯蓄より消費を喚起すべき政策を必要とされています。今回の予算編成においても政府は、減税よりも公共投資によって景気を回復すべきだと主張されています。となりますと、さきに述べました利子所得配当所得優遇政策は当然廃止されなければなりません。  所得税法第十条にあります少額預金利子所得等非課税に関して考えてみます。郵政省の定額貯金残高は三十兆円と聞いています。国民一人当たり三百万円が限度とされていますから、ちょうど全国民一人当たり三百万円の郵便定額貯金を所有していることになります。皆さんの知り合いの中でこのような家庭ばかりでしょうか。標準家庭が四人の家族を有するとしますと、みんな一家庭千二百万円の預金があることになります。このように平均的に財産を所有されていますと、住宅ローンの悩みも、サラリーマンローンの苦しみもあるはずがありません。  大部分国民にこのような余裕があるはずはありません。しかし、現実にはこのような計算が成り立ちます。この計算を成立させているのは、資産家が名義を分散して利用しているからであります。もともと貧乏人は利子所得配当所得非課税措置を利用することは少ないし、これに伴う利益少額であります。この特別な措置によって最大の利益を得るのは大資産家であります。定額貯金の三十兆円のうち二分の一が不法な預金と考えますと、十五兆円の五・五%の利率で八千二百五十億円の課税所得が漏れておるわけであります。  租税特別措置法第八条の五は「確定申告を要しない配当所得」として、一銘柄十万円以下の配当金確定申告をしなくても源泉徴収額二〇%で納税を終了します。証券取引所に上場されています株式銘柄は千四百余あります。欠損会社数は二百八十社、差し引きしますと千百社は配当しておりますので、配当金十万円以下になるように株式を購入すれば、一億円近い所得課税外にすることができます。  これらの立法趣旨は、低所得者層に対する税の軽減をねらったのでありましょうが、利用し、恩恵を享受しているのは高額所得者であります。  いままで所得税を例に取り上げて申し上げましたが、法人税法におきましても、規定としては中小会社も含めた規定、あるいは中小会社向け規定がありますが、大部分は大会社が利用しているわけです。今回の不況で悩む中小会社では、税対策どころか、存亡をかけて努力している状況です。  大蔵省資料によりますと、各種引当金等の一億円未満の法人利用割合は、貸倒引当金については約二八%、退職給与引当金は約一六%、賞与引当金は二六%、製品保証引当金は九%、価格変動準備金は三六%、海外市場開拓準備金残高は三・七%、公害防止準備金は六%、探鉱準備金は二八%、特別及び割増償却実施額は四一%、技術等海外所得特別控除は一・三%、増加試験研究費税額控除は六%となっております。法人数で言えば九九%の中小法人の享受している割合であります。  今回の租税特別措置法改正案が、税負担公平確保の見地から十一の項目が廃止されることは結構なことでありますが、巷間最も非難の高い第二十六条、社会保険診療報酬所得計算特例を初め、最も重大な不公平な条項が残されたことは残念であります。  電源開発株式会社等増資登記に対する軽減法のようなものは、縮減というより廃止すべきであると思います。増資登記費用負担する能力がないとは考えられません。  住宅対策として住宅取得控除拡大されますが、政策としては邪道であります。高度成長時代では、二、三年援助をすれば、その後はインフレ利益でカバーできましたが、今後は税金でカバーするのではなく、住宅ローン金利政策を考えるべきであります。住宅ローン金利は、市場金利に比較して高過ぎるように思います。金融機関は十分な担保を取り、保険を掛けた上に高金利となっています。住宅政策土地政策を税の面で取り扱うべきではありません。  投資促進税制景気刺激政策としては疑問に思います。  利子所得配当所得分離課税撤廃を要求することに対して大蔵省は、これらの資料を収集するのに多大の人員、費用を必要とすると説明しますが、しかし、これは全くうそであります。現行主要税法申告納税制度を採用しています。納税者国民がみずから税額を算定し、納付することによって納税義務を完了しているのであります。したがって、利子配当所得に対する課税税務職員増加を必要とはしないのであります。  私は税理士であります。税理士は、納税者租税上の権利義務代理することを職業としているものであります。われわれは、所得税法人税確定申告を、納税者義務ではなく権利と考えております。税法国民権利規定したものと考えております。  シャウプ勧告は、納税者代理する専門家と題して、次のように勧告しています。   能率的な租税制度は、税務当局に対して納税者代理する資格のある専門家の存在を必要とする。このような代理は、個人納税者に、その個々の事件において、税務行政上の誤謬に対し必要な保護を与えるものである。加えるに、この専門家は、行政制度について見識のある批判を加える能力があるから、このような制度は、行政事務全般にわたる牽制として役立つのである。その結果、行政能率を増進させ、決定を一層公正ならしめるために、絶えず必要な刺激が与えられることになる。着々と納税者代理者の数が増し、その素質が向上するということは、日本における税務行政の成功にとっては、きわめて重要なことである。  税理士会は、国民のためになる税理士制度を確立するため、数年にわたる研究の結果、税理士法改正に関する基本要綱を作成しました。この問題を要約して、皆さんのところへ税理士法改正要望書なるものをお渡ししているはずであります。  ところが税務当局は、特に現在大蔵省証券局長をやっている山内宏という男が大阪国税局長時代に、大阪合同税理士会の役員選手に猛烈な介入を行い、昨年の日本税理士会長選挙には主税局参事官の地位によって介入して、現山本義雄日税連執行部が誕生しています。一部の悪質な税理士と大部分の気の弱い税理士によって支持されたものであります。ところが、この一部の悪い執行部と国税当局が野合して、秘密裏に税理士法を改正して、税理士税務行政の下請機関化しようとしています。  このような骨のない税理士ができますと、納税者が困ります。国会の皆さんがどんなに租税法をりっぱにつくっても、末端において歪曲されては何にもなりません。不公平が助長されます。  税理士は、納税者国民のための制度でなくてはなりません。税務署のための制度であってはなりません。  時間が制約されていますので、以上で陳情を終わります。
  6. 大村襄治

    大村委員長 ありがとうございました。  次に、井手参考人にお願いいたします。
  7. 井手文雄

    井手参考人 御紹介にあずかりました井手でございます。  この租税特別措置でございますが、企業関係租税特別措置が相当ございましたが、これがいわゆる税制の不公平の大きな原因である、こういうふうにかねて指摘されておりまして、われわれも早急にその整理合理化を主張してまいったわけでございます。政府当局あるいは大蔵省におかれましては、一昨年あたりからかなり精力的に整理に努力をされまして、また今度、五十三年度におきまして十一項目の廃止、あるいは二十六項目ぐらいですかの縮減というようなことを御計画になっておりまして、これは私といたしましては、まことに結構なことでございまして、御努力に対して高く評価いたしたいと存じます。あと数十項目が残存いたしておりますけれども、これは今後早急に手をつけられるようにお願いいたします。  ただ、先ほどからも御指摘になっておりますように、所得税関係の利子配当所得源泉分離選択課税制度が手つかずになっておるということは、まことに遺憾でございまして、この制度もすでに使命は終わった。それにまた、今日は消費需要の喚起ということが重要になっておるときに、貯蓄増強を目的とするこの制度は時代にマッチしない、こういうふうに思いますので、使命を終わり、また時代に適合しない、しかも税制の不公平というところから指摘されておりますので、これはぜひひとつ廃止いたしていただきたいと存じております。  それから、これもまた先ほどから御指摘になっておりますが、医師所得の優遇、いわゆる社会保険診療報酬の優遇制度でございますけれども、これも来年度、五十四年度はぜひひとつ廃止していただきたいと存じます。ある調査によれば、医師所得の必要経費は平均いたしまして五二%ということになっておる。七二%といいますと二〇%ほど優遇されていることになっております。しかもその五二%というのは平均でありまして、医師間によって相当の開きがあるわけでございます。ですから、一律に七二%にしておくことは医師間において非常に不公平にもなっております。一律にしておくことがかえって不公平なわけです。一般の医師以外の者との間における不公平と同時に、医師間内部においても不公平だと思います。ですから、実情に応じて医師所得の必要経費を確認されて、そしてそれを控除する、こういうように実態に即した制度に直す方が医師間においても公平ではないか、私はそう存じております。これもお願いいたしておきます。  次に、租税特別措置というのは、私は必ずしも絶対に反対するというわけじゃなくて、すでに従来の特別措置が使命を終わっているのだから、それを整理してもらいたい。これからも新しい時世の要求によりまして政策上どうしても必要だという特別措置があるならば、それをやるべきだ。ただ、著しく税負担の不公平を来すようなことはいけないわけですけれども、それを勘案しながら、必ずしも否定するものではない。しかもその特別措置の内容が、いまからの福祉国家が要求する福祉行政、福祉政策と内容的にマッチした特別措置であるならば、これは非常に望ましいとも言えるわけです。ですから、特別措置というものを、整理の方向に向かいながら中身を変えて、新しいものを必要最小限度設ける、こういう基本方針が望ましい、私はそういうふうに思っております。  それから、税制の公平、不公平でございます。特別措置が不公平だというわけでございますけれども、必ずしも特別措置だけではない。これも先ほども御指摘になったと思いますけれども、たとえばいろいろの引当金制度、これは本法法人税法にも規定されておりますし、企業会計上も負債性であるということになっておりますけれども、現実にはたとえば退職金引当金のように、ある大企業におきましては、その計上額の利用額の割合は七、八%にすぎない。ということは、これは明らかに優遇措置になっております。ですから、特別措置の枠を超えまして、そういう引当金制度の問題等々広く法人課税合理化ということを検討する、商法あるいは企業会計原則税法との関連において考えていく、こういうことが必要だと思うのです。  これは非常に厄介でございます。よく言われるように、法人における受取配当益金不参入というのは不公平だ。しかしながら、法人擬制説という立場から言えば、これは不公平でもなんでもないわけだ。当然のことなんだ。しかし、現実に不公平感はぬぐい切れないとなれば、このところは非常に厄介な問題だけれども、やはり各界の専門家を集めて少し検討していただくということですね。租税特別措置だけでなしに、全般的に税制法人税所得税との合理化ということを、めんどうで厄介だけれども、もう一遍洗い直していただく時期に参っておるのではないかと私は存じます。  住宅ローン減税でございますけれども、先ほど申しましたように、新しい要求にマッチした、またその中身が福祉的な政策とマッチしておれば、租税特別措置に必ずしも反対しないわけでございまして、住宅ローン減税も、そういう意味においては私は基本的に賛成でございます。  ただ、そういうことでありますけれども、効果について言われますと、よく言われますように、実質的な可処分所得が非常に伸びないという状況のもとにおいて、果たしてこの住宅ローン減税住宅建設に対する意欲をどれだけ喚起をし、どれだけ住宅政策あるいは景気回復政策に寄与するかということになりますと、その点ちょっと疑問でございます。しかし私は、景気政策にしましても、公共事業でありましょうけれども、いろいろ多様的な政策が必要でありますからして、こういう住宅ローン減税をやるという面からの景気刺激政策、特に福祉政策とマッチしているのですからして、こういうようなものはやるべきではないかと存じます。  ただ、内容について申しますと、最高二千万円くらい借金可能な人が、限度額が三万円プラスして六万円になるのですね。ですから、そういう相当高額の借金能力を持った、そうしてマイホームを建設する能力をたとえ借金にしろ持った者の優遇だということが一つ問題なわけなんですね。  今度の予算を見ますと、たとえば住宅金融公庫の個人住宅向け融資に対する貸付限度額を引き上げるとか、償還期間の延長あるいは元金の据え置き、そういうようなことも加わっておりまして、住宅政策に意を用いられていることはわかりますが、その住宅政策というのは、民間における住宅の建設あるいは取得を可能ならしめるような方向に向いているわけです。つまり、国民経済を公共部門と民間部門に分けますと、公共部門、パブリックセクターでは、道路とか公園とか公共財が生産される。民間部門では、こういう洋服とかパンのような民間財が生産されるわけです。家というのは本来民間財なんですね。民間部門で供給されるわけなんです。それで、五十三年度の予算案を拝見しますと、住宅金融公庫の問題にしましても、また住宅ローンの問題にしましても、民間部門における民間財、プライベートグッズとしての住宅、家をいかにうまく建設させるかという誘導的な政策であり、それはそれなりで一応評価できるのだけれども、しかしそれだけでは、いま言ったように土地を買う金もない、借金する能力もないという人たち、いわば低所得層の人たちに住宅を供給するということをはみ出ているわけですよ。そうなると、市場経済というか、民間部門における低所得層における住宅の供給ということになると、ちょっとこういう借金をして家を建てる人たちを優遇する制度だけでは非常に片手落ちである、福祉政策としても片手落ちである。  とすればどうするかというと、住宅の一部を公共財としまして、国が公共財として低利に供給するのですよ。そうして貸し付けるとか、簡単に言えば公営住宅とか公団住宅ですね。こういうような住宅は、公共財としての住宅なんで国が供給しているのですね。こういう面も必要じゃないか。こういう公共財としての住宅建設戸数の計画数は、五十二年度よりも五十三年度は一万戸ですか減っているようでございますけれども、これは低所得層向けの住宅政策としては片手落ちである。住宅ローン減税は賛成なんだけれども、それと並行して公共財としての住宅の供給ということですね。きざでございますけれども、マスグレイブという財政学者が、こういうように公共財としての家屋の供給というようなことは、メリットウォンツ、価値欲求の充足ということを言っておりますけれども、こういうことはもう一遍反省されるべきではないか、こういうように私は存じております。  それから、公営住宅、公団住宅が少し減ったということにつきましては、政府当局の御答弁の中には用地難であるということがあったと思いますけれども、そうなりますと、ここに土地政策ということも問題になってまいります。それと関連いたしまして、土地譲渡益重課制度の改正ということがございまして、これも私、基本的には反対する意は持たないわけです。ただ、適正利益率が二七%ですか、それを適正価格ということにしますと、適正価格をどう決めるかということによっては、従来の適正利益率二七%を超えるものでも、売買において知事の許可とか勧告というものが必要でない、自由になるということになる。かなり自由な範囲が出てくる。だから、宅地供給ということになって住宅政策としてはプラスである、こういうことですけれども、しかしまた考えますと、それは非常に野放しになりまして、何でもいいから宅地を売って、マッチ箱みたいなものをずらりと無計画に宅地が造成されていく、しばらくすると、それが矛盾を来して、もう一遍やり直さなければならぬということになるので、ある程度住宅政策というものは計画性を持たなければならぬということと矛盾しはせぬか、こういう気がいたします。ですから、私正直言って、適正利益率というものをやめまして適正価格にするということが果たしていいか悪いかということになりますと、正直のところ、いろいろ判断に苦しんでおる、こういうような状況でございます。  土地政策につきましては、土地所有権の制度はあくまでも尊重するとともに、利用権というものについてある程度制約すべきであるという意見がかなり出てきておるわけでありまして、利用権のある程度の制限ということは、別に資本主義社会における私有財産制度の根幹を揺るがすものではない、私有権はあくまでも尊重するということでありますから。もっと根本的に土地政策については考える段階に来ているのではなかろうか、こういうふうに存じております。  投資促進税制、これも基本的には賛成でございます。  こう言うと、何でも賛成というようになりますけれども、やはり先ほども申しましたように、景気政策を、公共事業を拡大するという、公共事業一辺倒というよりも、いろいろの角度から、つまり景気政策の多様性ということですね、そういう意味においては、さっきの住宅ローン減税だって一翼をあれする。投資促進税制もそういう意味においては一応評価できる。ただし、住宅ローン減税と同じように、それが果たして実効がどの程度あるか、やった方がいいかもわからぬけれども、ということになりますね。それは基本的には、五十三年度における政府予算案に対する取り組み方、今後の日本経済をどう持っていくかという、そういう基本的な姿勢というものがはっきりしていないと、住宅ローン減税にいたしましても、それからまた投資促進税制にしても、内需拡大効果というものが必ずしも出てこないんじゃないかという、こういう気がいたします。  この不況は、あるいは相当続くかもわかりません。五十三年度の予算は、臨時異常でございましたか、臨時異例でございましたか、言葉はちょっと忘れましたが、予算編成方針にそういう表現があったと思いますが、私は、この臨時異例という言葉に何かこだわるわけですね。この五十三年度だけでああいう公共事業をふやす。じゃ、五十四年度からはどうか。ある程度腰を据えて景気対策に打ち込むということをすれば、設備投資意欲もわき起こってくると思うのです。ただ、五十三年度だけが臨時異例でこういうことをやるんだ、そして五十四年度からはぱっと財政の節度に切りかえていくんだということになると、また先すぼまりになりはせぬかという気もいたします。腰を据えて不況克服の政策というものを、ことしの予算案が臨時異例じゃなくて、景気が直るまで今後もある程度続くんだ、そしてこういうような日本経済に持っていくんだという青写真をお示しになるということが必要で、それがないと、せっかくの投資促進税制というものも効果が薄れていくのではないかと思います。  景気政策の多様性という点から言いますと、投資促進税制は適用範囲を広げる方がより効果があるんじゃないかという気がいたします。しかし、また他面から言うと、特別措置でありまして、税制の公平、不公平という点から言うと、余り広げるべきではない。つまり、適用範囲を拡大すべきかある程度に抑えていくかという、この辺のところが慎重な勘案のしどころだろうと存じます。  それからまた、一部に声があったと存じますけれども、中小企業税額控除比率というものをより高めていく、大企業よりも高めていくということで、中小企業政策もここに組み入れる、こういうような措置もできれば望ましいのではないか、こういうように存じております。  もう時間がございませんが、タックスヘーブン対策税制、これも賛成でありますし、中小企業対策、これも賛成でございます説明は省略いたしまして、最後に、簡単でございますけれども国税収納金整理資金に関する法律の一部改正でございます。  今日は、予算制度といたしましては、会計年度独立の原則ということがありまして、これは民主的な予算制度として非常に重要なものだろうと思います。ですから、現金主義でいま一般会計は経理しておりますので、三月三十一日までに入ったものをその年度の支出の財源に充てなければならぬわけなんですね。それを越えたならば次の年度の財源に充てるわけなんです。ただ、機械的に三月三十一日でぴたっと区切るということは、事実上事務上もできないし、また円滑な財政政策の執行にも支障を来すわけです。年度末になって非常な財政資金の乱費が行われるというようなこともございますし、それも避けなければならぬし、あるいは事業を行っておってぴたっと三月三十一日で打ちとめるというようなことにもなりますので、やはりある程度の整理期間が必要だ。だから、四月三十日までという必要最小限度の現金収支の整理期間というものを設けてあるのです。  これは必要最小限度であって、大体会計年度独立の原則からいってこれが最大限度じゃなかろうか、会計年度独立の制度に違反しているわけですから。それを五月いっぱいまで延ばすということは、せっかく戦後の憲法財政法によって確立した民主的な予算制度、従来の予算制度よりも民主的な予算制度というものができておりますのに、これをお崩しになるということは、非常に残念であると同時に危険でもあるというふうに存じます。  それからまた、そういうことによって公債依存度が三七%じゃなしに三二%になるということかもわかりませんけれども、それは無意味だと思うのです。公債依存度が三七%になってしまったのならそれでいいわけで、そういう現実を国民に示して、そして、かくのごとく財政は危機である、だから増税をしなければならない、こういう危機感を国民に訴えるためには、むしろ三七%がいいわけなんです。それをわざわざこういうような措置をとって、形式的には公債依存度は三二%である、従来の歯どめライン三〇%をただ二%しか超えてないというように工作をするということは無意味である。むしろ堂々と三七%ということでこれを国民に訴えて、そして国民の判断を請う、こういうことが望ましかったのではないか、私はそういうふうに思っております。
  8. 大村襄治

    大村委員長 次に、肥後参考人にお願いいたします。
  9. 肥後和夫

    肥後参考人 成蹊大学の肥後でございます。  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について、参考人として意見を申し上げたいと思います。  第一番目に、租税特別措置整理合理化についてでございますが、租税特別措置を狭義に理解いたします場合には、租税特別措置法第一条の規定がございまして、所得税法人税、相続税、財産税、登録免許税その他の間接税等を軽減し、もしくは免除し、または納税義務課税標準もしくは税額計算、徴収について、上記の諸税の本法、国税通則法及び国税徴収法の特例を設けることというふうになっておりますが、上記の定義は国税に関するものでありまして、地方税には及んでおりませんということも考慮しまして、国税地方税の本法について特別の措置を講じ、税負担軽減を図っている措置を、広く特別措置法関連というふうに理解して意見を述べたいと思います。  ところで、租税特別措置法一般的にどう考えたらよいかということでございますが、税負担軽減額が租税特別措置法によります場合には表面にあらわれないために隠れた補助金になる、そのために税負担の不公平を生ずる弊害があるということで、真に政策上必要でやむを得ないものを除いてはできるだけ廃止することが望ましく、また、過去に政策上必要であったものでも、その役割りが終わりましたものについては既得権化させずに整理していかなければならないというふうに考える次第でございます。  もちろん、いろいろ議論されておりますように、企業関連の特別措置法でございましても、法人の利潤というものを本質的に定義する上で当然に措置されなければならない特別措置もありますし、政策上の配慮から措置されている特別措置もあるわけでございまして、企業関連の特別措置原則としてすべて悪いと申すわけではございません。ただ、これを安易に、あるいはいつまでもだらだらと使うということについては問題があるということを申し上げているわけでございます。  こういう点につきましては、すでに総論としましては国民的なコンセンサスが成立していると考えられますので、問題は、この基本的な考え方の線に沿いまして具体的に整理合理化をどう進めていくかということでございます。特に中期的には国民に税負担増加を求めなければならないような客観的な情勢があると考えられますので、特に税負担の不公平の疑惑を国民に与えるような種類のものは、これを廃止するように努めなければならないと考える次第でございます。  このような立場から、今回の租税特別措置関連の税法改正を検討いたしたいわけでございますけれども、今回の改正は、第一に既存租税特別措置整理合理化、第二に住宅、土地税制、第三に投資促進税制、第四にタックスヘーブン対策税制、第五にその他と非常に広範にわたっておりますので、時間の関係もありますし、あるいは細部の点については、私十分に意見を申し上げることのできないようなものもありますので、特に意見のあるものについてかいつまんで所見を申し上げたいと思います。  第一に、既存租税特別措置整理合理化についてでございますが、廃止されるものが十一件、それから縮減合理化されるものが二十六件ということになっておりまして、縮減の程度、繰入率の問題等についてはいろいろ意見も分かれようかと思いますけれども、方向としては前向きに評価すべきではなかろうかと思っております。  また、地方税につきましても、電気税の非課税措置、固定資産税関連の各種の非課税特別措置等が行われておりますが、このような廃止または縮減につきましては、国税同様、方向としては評価すべきではないかと考えております。  第二に、住宅、土地税制についてでございます。  今回の措置は、基本的には住宅建設の促進のためには住宅と土地に対する税制はどうあるべきかという観点から考えるべきものではなかろうかと思います。  まず、住宅ローン控除限度、現行の三万円からさらに三万円引き上げる、実質的には大体ローン総額七百万円程度で一%程度の金利負担軽減になるというような措置を講じ、適用期限を一年延長するということになっております。また、住宅貯蓄控除の適用期限を二年延長する等々の措置が講じられているわけでございますが、それはそれなりに必要な前向きの措置であることは間違いありません。  ただ、住宅ローン控除につきまして申しますと、これがいわゆるローンの返済金であるから、所得税法上当然に控除すべき経費であるかどうかという点につきましては、それは当然に控除すべき経費ではなくて、政策控除するかどうかということが考えられなければならないというふうに考えるわけでございます。  この点につきましては、戦後の住宅建設促進のため、アメリカあるいはヨーロッパでも大いに住宅ローン減税というものは利用されております。でございますから、個人住宅建設を促進しようということであれば、この住宅ローンを大幅に利用するということも政策の有効な手段として考えられないわけではなかろうと思いますが、赤字公債を大量に発行せざるを得ない現状で、財政節度という観点からいって、果たして財政にそれだけの能力があるかという点、それから問題は、個人住宅の建設の一番の根本になるのは、その住宅ローンの若干の幅を上げることよりも、もっと基本的に、土地税制の問題をどうするかということではなかろうかというふうに考えますと、住宅ローン減税だけを特に取り上げて、それだけを拡張せよというふうにこの際意見を申し上げるのも、やはり決して十分ではなかろうというふうに考える次第でございます。  そこで、問題の土地税制でございますが、今回、法人の土地に係る譲渡所得の重課制度につきまして、先ほども御意見がありましたように、利益率二七%を超えた場合に法人税のほかに二〇%の特別の課税をするという制度を改正しようという提案をされているわけでございます。あわせて、地方税におきましては、特別土地保有税についての改正が行われようとしているわけでございますが、これは現在の特別土地保有税の枠そのものを改めようというわけではありませんで、ただ、国土利用計画等も進展している現在で、土地の有効利用率というものに即して考えようというわけでございますから、それはそれとしてよろしいわけですが、法人の土地譲渡所得の重課税制度の改正が現在必要であるかどうかという点について、私は若干問題を持っております。  ただ、要するに現在でも利益率二七%を超えるということはあり得ないのではないか。しかし、将来土地が大幅に値上がりしました場合には、やはりこの今回の改正が効いてくるであろう。その場合に、確かに現在市町村の開発要綱その他で開発者負担が非常に厳しく求められるような時代でございますので、民間デベロッパーにしましても、あるいは住宅公団にしましても、その開発者負担を土地の値上がりを通して負担していくということができなくなって、たとえば公営住宅政策ですら行き詰まっているということは事実でございます。しかし、よくよく考えてみますと、果たしてそういう土地の値上がりを通じて住宅問題を解決することができるかということになりますと、最終的には、これは結局住宅を建設する個々人が負担しなければならないわけでございますが、低成長段階に入りまして所得の伸びが非常に低くなっております現在では、高度成長時代のようなメカニズムは働きにくいのではないか。そういうことを考えますと、むしろやはり一番余裕のある近郊農地の宅地への有効利用の制度をどうするかということについて、もっと本格的に取り組まれるべきではなかろうか。ハードな政策としては近郊農地の宅地並み課税というのがございます。これは見送られているわけでございますが、あるいはそのほかにもっと有効な制度があるかどうか。とにかく土地の値上がりを期待するような政策で、しかも個人住宅の建設を促進するということはちょっと望み得ない。もっと抜本的な住宅対策が必要ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。  次に、投資促進税制でございますが、設備投資の特別償却制度投資促進のために役立てるということは果たして、要するに、景気政策の手段としてこの制度を利用するということを外国でもやっているかどうかということについてはいろいろ意見がありまして、問題でございます。したがいまして現在、各種の特別措置が存在し、方向としてその整理、縮減が図られておりますときに、効果の疑わしい措置を新設することは、屋上屋を重ねるようなたぐいの問題もなくはないようにも思われるわけでございますが、今回の措置は、対象をしぼって重複を避けておられる、適用期限も一年限りとするということでありますので、グルーミーな投資環境の気分転換の一助になることぐらいの程度だというふうに見きわめをつけますと、あえて反対することもないわけでございます。  だがその場合に、今回の措置は、従来の特別控除が実質的に結局利子負担を先に延ばすだけであったものが、税額控除、実質的に負担を軽くするということになっているわけでございまして、投資促進制度としては、そういう点では新味があるわけでございます。ただ、これは非常にまだ外国等の調査を含めましても、なかなか本当にこれが効果があるのかどうかということは、私は問題ではなかろうかと思っております。  次に、タックスヘーブンの対策の問題でございますが、今回の措置は、タックスヘーブンを利用する法人税負担回避に歯どめをかけようとされている点ですね、これはわが国税制上大きな前進ではなかろうかと思っております。とかく税負担の国境を越えた調整と申しますと、従来の財政学では関税ぐらいのものでございました。それで、最近は一般消費税についての国境税調整の問題が注目されるようになっているわけでございまして、さらに法人税に対象が広がってきたということは、注目すべき措置ではなかろうかと思っております。  日本経済の国際化が急激に進展しつつあります中で、消費あるいは法人利潤、個人の所得等を含めまして、広く国境外への不当な租税逃避の道をふさぐ必要がますます高まっております。もちろん一方では、海外に対する適正な投資を助成することもあわせて必要でございますが、これらの方面について、今後一層の租税政策上の努力や研究が払われることを望みたいと思います。  以上は、今回実施されようとしている政策についての所見でございますが、いわゆる医師優遇税制の改正が今回見送られておりますことは残念でございます。また、利子配当課税につきましては、これまでの前年度の改正によりまして、本年一月一日から利子配当の源泉税率が五%引き上げられたということでもありますし、また、今回有価証券取引税の引き上げを含めまして、キャピタルゲイン課税にも一応の配慮が払われております。有価証券取引税がキャピタルゲイン課税そのものであるかどうかということは問題でございますが、まあ関連の配慮が払われていることは事実でございます。しかし、不公平税制是正が問題になっておりますことでもありますので、利子配当、キャピタルゲイン課税の根本的なあり方については、預金の名寄せの問題とか、ソシアルセキュリティーナンバーの当否の問題等も含めて、やはりもっと本腰を入れて御検討を願いたいと思います。  次に最後に、国税収納金整理資金の改正の問題につきましては、五十三年度の税収の伸び悩みを補い、財源の確保を図るとともに、地方交付税の減収緩和を図りまして地方財政の収入減にも対処する必要がありましたから、五十三年度中に窮余の一策として、五月中に収納される税収を五十三年度所属の歳入として受け入れるという措置を図られたことは、これはやむを得ない措置であると思っております。ただし、これで二兆円ぐらいの税収増加になるというふうに見込まれているようでございますけれども、五十四年度についてはこういうようなやりくりも効かない、それだけ財政は窮迫しているという点は、やはり十分に留意すべきであると思っております。  長くなりましたが、以上をもって意見の陳述を終わりたいと思います。
  10. 大村襄治

    大村委員長 ありがとうございました。  次に、大山参考人にお願いいたします。
  11. 大山明雄

    大山参考人 大山でございます。私は、これから三点についてお話ししていきたいと思います。  まず最初は、租税特別措置と会計検査院との関係といいますか、それを一つ。もう一つは、税制調査会答申の中で、一般消費税を導入しないと日本の財政危機は解消しないのだということをお話しされているわけですが、私は、これは非常に疑問である、もしやるとすれば十兆円以上の税収を得ないと実質的なプラスにはならないのではなかろうかという試算を一つしてみたので、それをお話ししたい。三番目には、いま先生方がお話しされた、五十三年度の個別的な問題にちょっと触れていきたいと思うわけでございます。  それでまず最初に、租税特別措置と会計検査院の関係ですが、これは御存じのとおり、昨年の暮れだったと思うのですが、会計検査院の報告の中で、いままでいろいろ問題になっております保険医に対するいわゆる不公平税制ということで、一人当たり七百万円の税金が安くなっているという発表があったわけでございます。  われわれいささか税金に関係している者として、医師一人当たり七百万円も軽減されるということは絶対あり得ないことで、おかしいと思いましたので、会計検査院の報告書を、コピーをもらって見たのですが、確かに新聞に書いてあるとおり一人当たり七百万円を超えるということなんですね。これは私はよく検討したのですが、確かに算術平均すればこのようになるわけでございます。しかし、会計検査院というのは御専門の方なんですが、その方がなぜ国民にこのような誤解を与えるような発表の仕方をされたのか。私は、そのとき発表になった新聞をいろいろ見ましたが、全部一人当たり七百万ということなんです。しかし、それは私に言わせれば、専門家である会計検査院の発表の仕方が非常に国民に誤解を与えるような発表をされているのではなかろうかと思うわけです。  これは私いろいろ試算してみますと、あれは一億円以上と千五百万円未満、いろいろ計算されたのですが、一億円以上の場合は一人当たり平均千七百四十五万円の所得税軽減になっておるわけですね。ところが、千五百万円未満の場合ですと六十二万九千円の軽減にしかなっていないわけです。これはあたりまえでございまして、収入が千五百万円あって七百万円税金が安くなるということは絶対にあり得ないわけですから、算術平均的にはきわめて何か、これは私の考え過ぎかもわかりませんが、不公平税制の目玉としての医師税制に対する国民のあれを何かあおるという意味で、私は非常に作為的な発表のされ方をなさったのではなかろうかという疑問が非常にあるわけです。  七百万といいますのは、保険の収入が五千万から一億円の間の先生方が大体七百六十万の軽減でございまして、私はそういう数字に計算したわけでございます。ですから私は、このような会計検査院の発表の仕方には非常に疑問があるわけです。ただし、いままでいろいろ問題になっていたいわゆる租税特別措置に対して、会計検査院が国民税金という面からメスを入れたことは高く評価したいわけでございます。それで今後も、単なる保険医に対するいわゆる不公平という問題だけではなくて、いままでいろいろな方がお話しになったような租税特別措置全体に対して、会計検査院が個別的、具体的なメスを入れていただきたいということをぜひお願いしたいと思うわけでございます。われわれには概括的なことはできますが、これは会計検査院以外にはできない。以外と言うと問題がありますが、一番適格ではなかろうかと思うわけです。そういう点で、今後会計検査院におかれましても、いわゆる特別措置と言われるものを、もっときめ細かな実態を国民の前にあらわしていただきたいと思うわけでございます。  ただしこの場合、しからば租税特別措置は何かということを、やはり国会ではっきりとその概念規定をしていただきませんといけない。たとえば税制調査会答申で、東京都の新財源構想研究会に対して、あれは特別措置ではないものも特別措置とやっているから話にならぬみたいな文言があったように記憶しておるわけですが、これは当然特別措置をどうとらまえるかということでいろいろ違ってくるわけです。  たとえば税制調査会答申を見ますと、特別措置と言われているものは三つに分けられる。一つは、それは租税制度の仕組みとしてあたりまえのことなんだ、だからこれはいわゆる特別措置ではない。もう一つは、企業会計の課税所得計算する上に非常に合理的であるからという、いわゆる引当金の問題でございます。それから三番目にはいわゆる政策減税。これだけを特別措置というふうに限定されているように私は見たわけなんですが、そこらあたりをはっきり国会なり何かの形で合意を得ておきませんと、議論がなかなかかみ合わないというふうに思うわけでございます。  まず、そういう点概念をはっきりさせた上で、ひとつわれわれ国民の目の前に実態をできるだけ具体的な数字でお示しを願いたいということが、私の第一のお願いでございます。  それから、いま医師税制の問題が不公平ということで先生方もいろいろお話しされたわけですが、私は、これが租税特別措置法第二十六条にあるということでは、その限りでは特別措置かと思います。しかし、減税額が政府の発表ですと大体千八百億から二千億ということなんですが、私は極端なことを言いますと、もしこれを特別措置と言うならば、給与所得者全員が特別措置を受けているのではなかろうかと思うわけです。これは御存じのとおり、給与所得控除というのがございまして、これは法律で決まっておりまして、最低五十万でございますね。それで、たとえば収入が一千万の方ですと二百五万円、三千万の方ですと四百五万円という給与所得控除が、これは使ったか使わないかということは全く問題なしに控除されているわけでございますから、保険医の七二%と実際の五二%の差額二〇%が、実際に使ってないのに控除するからけしからぬという議論ですと、それだったら、給与所得控除も絶対、一切使ったか使ってないかにかかわらず全部控除になるわけですから、それも特別措置と言わざるを得ないと私は考えているわけでございます。  またもう一つは、引当金とか準備金というものが認められているわけですから、医業というもう一つの経営体というふうに理解しておりますので、実額、実際かかった経費以外にそういう引当金、準備金があってもおかしくない。それがいま法律にないだけでございますから。たとえば日本の全体の医師、保険医は、私の知る限りでは、大体千五百万から三千万が平均保険収入でございますので、その場合、所得として四百五十七万四千円がいわゆる二〇%相当部分だ。この場合は一八%ですが、この部分がけしからぬということですと、四百五十万がけしからぬということになります。そうしますと、この部分をいわゆる医師引当金とか開業医、保険医準備金というふうに理解をすれば、別に特別措置ではない、私はそのように理解しているわけでございます。ですから、確かに特別措置法にある限りでは特別措置かもわかりませんが、決して世上言われるほどのひどいものではなくて、これ以上のいわゆる不公平税制というのはもっとたくさんあると私は申し上げたいわけでございます。  次は、一般消費税を、EC型付加価値税、いわゆる前段階税額控除方式になるか、あるいは税調でおっしゃるような前段階取引控除型になるかそれは別問題としまして、仮にEC型の一般消費税を導入いたしまして、一〇%の税率で仮に国税として五兆円の税収を上げたといたします。そうしますと、ネットでどれだけ財政に寄与するかと言いますと、しぼりにしぼってネットで大体一兆五千億くらいしか増加にならないわけでございます。  これはどういう計算かと言いますと、まず、非常にわかりやすい点で地方財政に及ぼす影響を考えてみたいわけでございます。つまり、五十三年度の地方財政の計画によりますと、全体の財政支出は三十四兆三千億なんですが、このうち私の計算では大体十三兆一千億円の財政支出一般消費税の対象になるというふうな理解をしております。これはいままでいろいろ調べたのですが、いままでの実績を見ますと、地方財政白書などを見ますと、大体地方財政支出の三八%か四〇%が、いわゆる一般消費税の対象になるものというふうに理解しておるわけでございます。それで、五十三年度の場合は、投資的経費が十二兆六千億ですから、これと維持的経費を加えますと十三兆一千億。これの一〇%としますと、一兆三千億が財政支出として自動的に消えていくということですね。一般消費税は言うまでもなく、国及び地方自治体でも担税者、納税者になるわけですから、一般消費税が行われるということは、それだけ財政規模が自動的にふくらむというきわめてあたりまえなことなわけでございます。それで一兆三千億円が財政支出の方でふえます。  それから今度は、ヨーロッパや韓国の例を見ましても、やはり統合整理される地方税というのがございますから、これをたとえば料理飲食等消費税とか娯楽施設利用税、電気ガス税、木材引取税、この四つだけにしぼりましても、六千四百五十四億円、今度は地方財政の収入の方で減ってくるわけでございます。そうしますと、財政支出の方で一兆三千億、財政の収入の方で六千四百億、大体二兆円近い数字が、自動的といいますか、減収かつ支出増になってくるわけでございます。  それで、たとえば今度の五十三年度の国のいわゆる特例国債というのは大体五兆円でございますから、それをなくすという前提で、五兆円の一般消費税を取りまして、それを地方交付税の対象として三二%を地方の方へ回す。そうしますと、一兆六千億でございますから、一兆六千億地方財政に加わっても、いまお話ししたようなことで、地方財政の方は赤字になってしまうわけですね。一体そこらあたりをどのように考えていったらいいかという問題です。  それからもう一つは、いま言ったような赤字は、給与費を上げないというのが前提でございます。五十三年度地方財政計画によりますと、地方公務員三百万の給与費というのは十兆円になっております。そうしますと、一般消費税ですから、消費支出が大ざっぱに言って一〇%上がるわけですから、そうしますと、当然一〇%の賃上げをしないと、地方公務員の実質賃金が下がるということになります。そういうものを入れないという前提でも赤字ですから、もし仮にこれを入れますと、それから扶助費なんかを入れますと、大体減収分を含めて三兆二千億の交付税をもらわないとペイしないということになります。  これは逆算をしますと、国税として大体十兆円の一般消費税を入れないと、地方自治体はバランスが合わなくなるというふうに理解します。つまり、私は、もし一般消費税を入れるとすれば、地方自治体でも国でも、公務員の給料を上げない、それから扶助費は上げないという前提でないと、十兆円みたいな数字になってくるというふうな計算をしたわけでございます。  とすれば、国の方はどうかといいますと、国は五兆円のうち一兆六千億を地方交付税として渡してしまう。残りが三兆四千億。それから物品税が大体九千億ありますから、これを引きますと、大体二兆五千億。そのうち、今度は五十三年度の予算案を見ますと、投資的経費というのは七兆一千億ですから、その一〇%が七千百億円、これも国の財政支出の方で自動的にふえてしまうわけであります。これを足し算しますと、大体五兆円税収があっても、人件費を上げないで、そういうものを全部抑えるという前提においても、一兆五千億前後の純増にきりならないのではなかろうか。一体こういうものをどう考えたらいいのかというのが私の考えでございます。  ですから、税制調査会のおっしゃるとおり、そういう一般消費税を入れても、果たして、国民の方は五兆円なり七兆円なりの物価上昇ということで、もろに損害を受けますが、しかし、国の財政は余りプラスにならないではなかろうか。私がいま考えることは、一般消費税を導入することよりも、やはりさっきから問題になっているような特別措置というものに大幅にメスを入れて、それを改廃して、それで財源を求めた方が、国民にとっても、かつ国、地方自治体を含めての財政にもプラスになるのではなかろうかということでございます。  三番目ですが、税制調査会がいままで何回も、租税特別措置をする場合は、五つのテストとか四つのテストとかいろいろやっているわけですが、そういうテストを果たして十二分に繰り返して、今度の五十三年度の新しいものが生まれてきたのかということは非常に疑問なわけです。いわゆる租税政策でやるのが一番いいという場合にのみ特別措置が許されるのだというのが税制調査会のいままでのお考えですから、今度の問題が果たしてそういうテストに合格するものかどうか、私は非常に疑問だと思います。  以上でございます。
  12. 大村襄治

    大村委員長 次に、小山参考人にお願いいたします。
  13. 小山敬次郎

    ○小山参考人 ただいま御指名をいただきました小山でございます。  初めに、若輩の私に発言の機会をいただきまして、まことに光栄に存じますとともに、委員の皆様方に厚くお礼を申し上げる次第でございます。  与えられた時間が十分でございますので、私は、総論的なことを申し上げて、後の質疑の方でまた具体的な問題がございますれば申し上げさせていただきたいと思います。  私に与えられた課題は、租税特別措置中心といたします税制改正についてということでございますが、この問題を考える場合に、私は、当面の経済環境を抜きにして論ずることはできないのではないかと思いますので、若干迂遠になりますが、その点につきまして一言申し上げさせていただきたいと思います。  私どもも、わが国経済の将来が安定成長経済に向かわなければいけないということについて、しかもそれに対しては的確な適応体制をつくっていかなければいけないということは当然であると考えておるわけでございますが、現在の経済の状態を考えてみますと、そういう安定成長の軌道からきわめて大きく落ち込んでおります。そのための各種のひずみが表面化しておりますことは、もう申し上げるまでもないと思います。先ほど参考人の方から、答申を出しましてから以後非常に経済環境の変化があったということの御指摘がございましたが、私どもも全くそのように考えております。  最近生産が伸び、また在庫調整が進んでいるということでございますが、私どもから見ますと、安定成長の軌道に乗るまでにはまだまだ相当の時間を要するのではないかというふうに考えておりまして、このような状況のもとで、企業が抱えております過剰雇用が二百万と言われておりますが、二百万人の過剰雇用、あるいはまた来年度新規に参入してまいります五十万人と言われます新しい労働力、あるいはまた表面に出ております百三十万人近い失業を吸収するということにつきまして、私ども経済界といたしましては、どうやってこれを吸収し、また雇用問題についての解決を図っていくかということについて、毎日取り組んでいるわけでございますが、いかんせん、その問題を解決するにつきましては、大前提としまして、政府が目標として掲げられました七%の成長をぜひ実現をしていただかなければいけない、こういうふうに考えております。  しかしながら、これは私どもの推計でございますけれども、七%成長を実現するにつきましては、依然として三兆円もしくは四兆円といったような需要の不足を頭に置かなければいけない状況にあると思います。三兆円と四兆円、非常に大きな幅がございますが、予算を弾力的に執行していただいた場合に初めて三兆円という不足、あるいはまたそういうことが実現をいたしません場合には四兆円の不足が生ずるのではないかというふうに憂慮いたしておりまして、私どもは、予算の執行の促進、上期集中等につきまして格別の御配慮をいただくように、この席をかりてお願いをいたしたいわけでございます。  経済界としては、政府あるいはまた議会の皆様方にお願いをするだけではございません。経済界としては、独自の立場から、民間の需要の拡大ということで、石油の備蓄の問題、あるいは電源開発の問題、その他の促進につきまして、関係の皆さんと話し合いをいたしておるわけでございますけれども、これが所期の効果を上げ得るかどうかという点につきましては、必ずしも自信を持って申し上げられるような状況にはございません。  したがいまして、ここで私どもは、景気対策の手段につきましてできる限り多様化をしていただきたいというふうに考えておりまして、昨年来政府景気対策につきまして積極的な手を打っていただいているという点につきましては、率直に評価をいたすといたしましても、税制面における経済政策的な配慮ということが十分であったかどうかという点につきましては、疑問を持たざるを得ないのでございます。  わが国と対照的に、これはもう申し上げるまでもないと思いますが、各国とも需要の回復、景気の回復あるいはまた雇用の改善ということで、積極的に税財政を活用しております。たとえばカーター大統領は今般、二百五十億ドルの減税提案をいたしております。また、従来から当初予算におきましては均衡予算をたてまえとして編成をしてまいりましたフランスにおきましても、八十七億フランというような大きな赤字を計上しても、景気対策に取り組むという積極姿勢を示していることは御承知のとおりでございます。  しかしながら、わが国のような大きな赤字財政のもとで、果たして租税政策を活用するということに限界がないのかどうかという御議論があることは、また十分承知をいたしておるわけでございますけれども、税制面を考える前提といたしまして、私どもは、支出合理化ということについてもっと積極的に考えていただきたいと思うわけでございます。いまのような状態の中で、余りにも財政の健全性ということにこだわり過ぎまして、性急に財政の健全化を追求をいたしますと、かえって逆の結果を生むのではないか、そして財政の健全性に逆行するのではないかということを懸念をいたすわけでございます。むしろ安定成長へのめどのついた段階でこの問題は本格的に考えるといたしまして、現時点では、税を含めたあらゆる政策手段につきまして、景気対策として積極的に活用をしていただきたいと思うわけでございます。  ここで問題になっております租税特別措置の問題でございますが、いままでの経緯を見ておりますと、果たして経済政策の手段としての考慮がどれだけこの面であったかどうかという点につきましては、私どもは疑問を持っているわけでございます。経済政策としての議論よりも、優遇税制であるという前提に立ちました公平論議が先行しているという点は否めないわけでございまして、租税政策の本来の機能が失われているのではないかという懸念すら私どもは持っているわけでございます。  私どもとしても、租税特別措置につきまして、その目的あるいは効果を十分見きわめた上で整理合理化に取り組んでいただくという点については、全く異論がございません。しかしながら、いままでの租税特別措置の見直しという点を振り返ってみますと、見直し即削減の歴史でございまして、これに対して、政策的な配慮から拡充ということが欠けていたのではないかと思います。特にここ五十年ないしは五十一年以降の動きを拝見をいたしておりますと、どちらかと言えば、これを画一的に削減をするあるいは縮減をするということでございまして、たとえば期限がまだ残っている租税特別措置につきましてもこれをカットするといったようなことがございます。これでは租税の安定性という問題にもとるのではないかという感じもいたすわけでございます。  こうした形で大幅な租税特別措置の縮減が行われてきた関係で、国税収入に占める租税特別措置割合は、四十七年度の五・一%から、最近では二・一%というふうに割合が半減をいたしております。率だけではございません。実額の面におきましてもかなり後退の一途をたどっておりまして、五十二年度には四千四百億円の減税になっていることはもう御承知のとおりでございます。特に法人関係につきましては、ずっと大幅な縮減が行われてきておりまして、私ども、交際費課税による増収分を考慮いたしますと、むしろ法人関係については増税になっているということは、これもまた皆さん御承知のとおりかと思います。  また、これを別の角度から考えてみますと、法人が納める税金に対する租税特別措置割合をとってみましても、日本の場合には三・九%の割合でございます。ちなみに、私がアメリカの例ばかり挙げるのは恐縮かもしれませんが、アメリカでは投資減税並びに輸出所得に対する優遇あるいは減耗控除といったような三つの主要な租税特別措置だけをとりましても、いま申し上げました同じ比率が二一・三%ということでございます。  そういう状況を踏まえたと思いますが、政府税制調査会におきましては、企業関係租税特別措置については、もう縮減はやるところまでやったのじゃないかといったような評価もされているように私は理解をいたしております。  私は、この租税特別措置整理合理化といったような問題を考える場合には、ただ租税特別措置だけを切り離して議論をするのではなくて、もうアメリカにおいても常識となっておりますようなタックスエクスペンディチャーの考え方、つまり補助金租税特別措置を一体として考えまして、そしてその施策が妥当であるかどうかという側面からこれを検討いたす方が妥当ではないだろうか。租税特別措置だけを取り上げて公平、不公平論議をするのは、片手落ちではないかという感じがいたすわけでございます。  いままで租税特別措置につきましては拡充の歴史はなかったのだということを申し上げたわけでございますが、このたび五十三年度におきまして拡充の第一歩、一つの画期的な事柄だと私は理解いたしますが、設備投資についての税額控除創設が提案をされていますことは、私どもも大変評価をいたしているわけでございます。その評価というのは、当面の景気対策としてだけではございませんで、将来設備投資の懐妊期間ということを考えますと、この数年後におきます物資の需給、供給力ということを考えますと、私はまた、そういういまのような設備投資の状態が続いてまいりますと、物価問題にはね返ってくるのではないかという感じがいたしておりまして、現在の需要効果とそれから数年後におきます供給力効果と両面から見まして、この投資減税は非常に意義のあるものであると思うわけでございます。  その投資減税について、効果があるのかどうかという点についても御意見があろうかと思いますが、私は、確かに期限が一年に限定されている、あるいは対象が非常にしぼられているといったようなこと、あるいはまた、この財源につきまして他の租税特別措置の縮減ということが見返りになっているといったようなことがございまして、その効果については、あるいは私どもが期待したような効果を上げ得ないかもしれません。  千二百億円ということでございますけれども、アメリカ等におきましても、これは規模が違うわけでございますけれども、たとえばハーバード大学のジョルゲンソン・ゴードンといったような学者も、投資減税については高く評価をいたしております。また、スウェーデンにおきましても実証的な研究がございまして、諸外国における実証研究は、これが効果があることを評価をいたしております。  また私はむしろ、この投資減税が効果があるかどうかという議論をするよりも、投資がここ数年間沈滞してきたことの問題点、したがって、その問題を解決する上ではどうしたら効果あらしめることができるかということに議論を集中していただきたいと思うわけでございます。それは、この投資減税だけではなくて、金利の問題もございましょう。あるいはまた、投資減税自体の拡充強化という問題もございましょう。そしてまた、三分の二の利用率が予想されております中小企業に対する利用のための積極的なPR等々を側面からいたしますれば、私は予想されている以上の効果が出てくるのではないかと思う次第でございます。  時間がございませんので、最後一つだけ申し上げたいと思いますが、海外事業に係る所得税の合算課税の問題、いわゆるタックスヘーブン課税の問題でございますが、私どもも、租税の回避という面で海外子会社の利用に行き過ぎがあれば、これに課税をするという基本的な考え方は理解をするものでございます。しかしながら現時点では、資本の流出を通ずる経済協力ということが非常に重要な課題になっております。また、国際的な商取引というものが非常に複雑多種にわたっておりますので、そういう実態を十分考慮をした上で、正常な事業活動にまでこの税がかかり、そして正常な事業活動を阻害することのないように、十分御配慮をいただくようにお願いをいたしまして、とりあえず私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  14. 大村襄治

    大村委員長 以上で参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  15. 大村襄治

    大村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。川口大助君。
  16. 川口大助

    ○川口委員 私は川口大助と申します。  ただいまは貴重な御意見を拝聴しまして、大変ありがとうございました。  実は、一時間ほどお尋ねする予定でありましたが、皆さんの陳述が長くなりまして、時間の削減がございまして、三十分でやれ、こういうことでありますので、お聞きしたい点はたくさんあるわけでありますが、その範囲内でひとつやらしていただきたいと思います。  そこで、ただいまお話を伺っておりますと、大変疑問があるわけであります。特に大山参考人の話の内容等につきましては、一時間ぐらい存分にやってみたい、こう思っておりましたが、その時間もないようでありますので、まず最初に、小倉参考人からお願いを申し上げます。大変素朴な、あるいは初歩的なお尋ねになろうかと思いますが、ひとつ端的にお答えを願いたいと思います。  まずお願い申し上げたいのは、税制調査会というものの権威あるいは立場、そういうものを会長さんはどういうふうに御理解の上運営なさっておられるか、お伺いしたいと思います。
  17. 小倉武一

    小倉参考人 さて、どうお答えしたらよろしいのでしょうか、やはり……(「無力感を感じる」と呼ぶ者あり)調査会の活躍は、これはずいぶん長い間の歴史がありまして、いろんな答申もし、また、それに対して政府がどう処置したかということもある程度御推察をいただけるかと思いますが、そういうことから御判断願う以外になくて、私、手前みそみたいなことを申し上げても、これはちょっとかえって失礼になるかと思います。
  18. 川口大助

    ○川口委員 最近、税制調査会は一生懸命御苦労なすっておると思うのでありますが、大変御苦労なすっておるわりには余り評価されておらぬのであります。むしろいま政府といいますか、場合によっては自民党の隠れみのになっておるというふうな意見さえ出ておるわけであります。と申し上げますのは、やはり税制調査会意見、見解、答申というものは、一つの長期の展望に立った、いわば不偏不党の立場に立った税のあるべき姿というものを的確に答申なさることだと思うのであります。現に大蔵省のたびたびの提案の理由の中には、税制調査会がかく答申したからというふうな表現が非常に多いのであります。ところが、都合の悪いときはどうもそれが出てこないで隠れみのにされておる、こういう例が多々あるわけであります。  特に、ただいま参考人の御意見を拝聴しておりますと、何か増税をしなければならない苦しい立場の釈明が陳述された。いわば来年度の増税に向かったPRの陳述である。いわゆる世にいう医師の優遇税制については、言いわけをしておるというふうに聞き取れるわけでありますが、一体医師の優遇税制につきましても、これは長年の間答申を続けておるわけでありますが、今回たまたま自民党が五十四年度まででこれを打ち切って自後の対策を立てるというふうなことで、会長は満足しておられるかどうか、お伺いしたいと思うのであります。
  19. 小倉武一

    小倉参考人 満足しておるというふうに申し上げるわけにはいかないと思います。しかし、従前と比べれば相当の進歩であるといいますか、税制調査会考え方に一歩でも二歩でも近づこうとされておるということについては、これはもう認めなくてはならぬ、こう思います。
  20. 川口大助

    ○川口委員 先ほど権威について無力感であるというふうなそちらから発言もありましたが、私はやはり税制調査会が長年言い続けておる一つの問題を、いまのような形で取り扱われるというふうな場合には、会長は毅然とした態度で、たとえ自民党であろうが大蔵省であろうが、毅然としてその意思を貫くような行動というものをとってしかるべきだと思うのでありますが、そういう行動はとられておるのでしょうか。
  21. 小倉武一

    小倉参考人 ああいう調査会ですから、特別目立った行動をとるというわけにもまいりませんが、無論、またこれは国会でどういうふうに処理されるか未知のことでございますので、政府がどうされるか、あるいは党がどうされるかということによりましては、調査会としてもただ沈黙しておるというわけにもこれはまいらぬことと思います。
  22. 川口大助

    ○川口委員 そこで私は、変なたとえでありますが、どうも特に私どもの年代は、一杯飲みに行きますと、余り割り勘ということはやらぬですね。いや、おれが持つよというようなかっこうで持つのですが、これはつまり金額の問題ではなしに、納得の問題だと思うのですよ。納得さえ得られればやはり税も相当円滑に納められる。先ほどどなたかからもお話がありましたが、特に税は権利であるわけです。喜んで権利を行使する、こういうためには、どうしてもその税が納得されるという形のものでなければならぬ、こういうふうに私は考えるわけです。  そうしますと、時間がありませんから特に租税特別措置法に限って申し上げますと、この措置、この制度自体が、先ほどどなたかからもお話がありましたが、行政の分野とそれから税の分野、余りにも混同しておる、こう思われるわけです。ですから、税というのはいわば私ども日本におる一億一千万の人たちが暮らすための会費なんであります。ですから、会費の徴収は的確にする。しかし、使途については、使い方についてはそれぞれの政策の運用なり、政策を十分に効率あるようにして使途を決める、つまり使い方の場合に政策というものが発揮される、こういう形が、非常に単純でありますが、取るものはある程度厳格、使い方についてはある程度政策を加味して運用する、こういう形が望ましいのじゃないか、こういうふうに思うのでございますが、いかがお考えですか。
  23. 小倉武一

    小倉参考人 確かにお考えのところは、ごもっともなところもあると思います。ただし、いかに税制といいましても、税だけのことを考えてやる、税の立場だけで考えてやるというわけにもまいりませんで、税制をもって政策目的は達成できる、またその方がベターであるというようなことについては、これはやはり特例措置的なものが今後とも必要であるし、また起こってくるだろう、こう思います。  私、よく過去のことは存じませんが、たしか、もう戦前から特別措置的なものが存在しておりまして、若干の役割りは果たしてきておりますので、先ほどどなたかからも御指摘がございましたように、特別措置全体が不公平であるから当然これは廃止すべきものであるというふうにだけで割り切るわけにはいかぬのではなかろうか。ただ、その目的を達成した後までもなお残っておるということはとかくありがちである、あるいはある目的を持ってその特別措置を講じたけれども、所期の目的はなかなか達成できなかった、要するに、その特別措置は講じたけれども、どうも効果がなかった、こういうものまでもいつまでも残る、こういうことは困るわけでございますので、そういう観点から整理するという大方針は無論必要かと思いますけれども、そのことは同時に、全部が不公平でこれは国家目的に沿わないとか、あるいは公益に反するのだ、こういうふうに割り切るわけにはまいらぬ、こう思います。
  24. 川口大助

    ○川口委員 それはつまり税の中に政策を織り込むために、特にいまのような自民党はくるくる政策が変わるわけですから、それを税の既得権のような形で政策を盛り込んじゃうわけです。税のところに政策を盛り込んじゃうから、納める側はそれは一つの既得権になってしまうわけです。したがって、いかに国家のあるいは自民党の政策の変更があっても、その政策の変更に適応するような税の体系ができなくなっておる。そのために財政の秩序も混乱しておるし、また支出の面においても硬直化を来しておる、こういうふうになっておると思うのでありますが、この点についてはいかがお考えですか。
  25. 小倉武一

    小倉参考人 御指摘のようなことは確かにあると思います。そういうこともございますので、特別措置あるいは不公平税制是正ということが、政府の御方針でもあるようでございますが、税制調査会としても従前からそういう方針で、毎年ある程度の方針を定めて、具体的な措置政府にお願いして案を立てていただくということになるわけでありますが、努めてまいった次第であります。
  26. 川口大助

    ○川口委員 そこで、もう一つですが、先ほどもお話がありました補助金特別措置との違いはどういうふうに御理解なさっていますか。
  27. 小倉武一

    小倉参考人 補助金にもいろいろございまするし、特別措置にもいろいろございまして、一概に異同を論ずるということはむずかしいと思います。ただし、たとえば特別措置の中で税額控除というようなものになっていますものは、補助金とほとんど同じくらい近い性質のものでございます。そういうものについては、どういうわけで補助金にしないで税額控除でいくのかということについては、これはちょっとむずかしいといいますか、どちらがいいのだという議論は当然あってしかるべきである。補助金ならばとてもそういう補助金は出せない、ただし税額控除であれば、補助金という名前は使わぬから安易にそちらに向かう、こういうきらいがあるいはあるかもしれませんが、これは余り好ましい考え方ではない、こう思います。
  28. 川口大助

    ○川口委員 ただいまのお話をちょっと整理しますと、当然補助金でやるべきものを租税特別措置法という手だてで援助措置としておるためにどうも大変いかがかと思われる点がある、しかし、これはいまのお話ですと、補助金であると国会の審議があっていろいろな問題が起こるので、国会の審議をある程度逃れるために特別措置法で実施しておるのだというふうな点もあるというふうなお答えと御理解してよろしゅうございますか。
  29. 小倉武一

    小倉参考人 むしろそれは逆じゃないかという気がいたします。税額控除であろうと、租税特別措置のようなことで政策を誘導するといいますか、政策手段としてそれで産業なり経済を誘導するということでございますれば、一々国会の御議決が必要となってくる。ところが、補助金になりますと、事柄によっては法律に基づく補助金もございますが、多くはむしろ予算としては御審議いただくわけですが、予算の御審議の中では一々細かい補助金項目をどうこうという御審議は実際問題としてなかなかむずかしかろうということでございますので、その点はちょっと先生のおっしゃるのとは逆じゃないかと思います。  ただ、補助金となりますと、国会という以外に会計検査院というのがくっついてまいるわけです。ところが、税額控除のような場合は、どちらかというとそちらの関係は比較的少ない、めんどうなことがない。もう一つは、補助金となるというと、どうしても関係官庁にお願いをして、こういう補助金をくださいと毎年毎年お願いをしなければならぬ。ところが、税額控除は一種の権利というようなもので、これは当然してもらえるものだというようなことで、同じ国の施策の中で、税額控除で恩恵を受けるのと補助金で恩恵を受けるのとは、何だか少し立場が補助金の方が肩身が狭いような、あるいは手続も厄介だし、ちょっと手続を間違えれば会計検査院からしかられる、こういったようなことは、むしろ補助金の方が多いのではないかという意味において違うと思います。
  30. 川口大助

    ○川口委員 ということは、そういうお考えで特別措置法をつくっておられるというふうに考えていいのですか。
  31. 小倉武一

    小倉参考人 いやそれは、その方が簡便である、補助金だあるいは低利融資であるということよりは、特別措置でやる方が行政的にはっきりするし、簡明であるしということで、同じ政策目標を達成する場合にも、国の財政にかかる負担としては似たようなものであるならば、特別措置によった方がよろしいというようなことも確かにある。具体的にどれがそれだというふうに申し上げるわけにもまいりませんけれども、考え方としてはお話しのようなことかと思います。
  32. 川口大助

    ○川口委員 いや、私の聞いているのは、税制調査会に聞いているわけですよ。税制調査会は、そういう便法上その方が有利だという、便法まで考えて答申をなさっておるのか、こう伺っておるわけです。
  33. 小倉武一

    小倉参考人 税制調査会としては、そういう便宜性を考えていたしているわけではございません。考え方としてはむしろ、特別措置の中にもいろいろございまするけれども、税額控除的なものは好ましくないというのが一般的な考え方かと思います。したがって、そういうものに依存するものは非常に例外的なものにしたい、するという考え方で従来来ておったかと思います。
  34. 川口大助

    ○川口委員 ちょっといまの答弁は私わかりかねるのですが、もう一度ひとつお願いします。
  35. 小倉武一

    小倉参考人 行政的に簡便であるという特色が、補助金と比べますと特別措置にはあろうかと思います。そういう意味で、政策当局、大蔵省の主税局以外の各省で特別措置を要請する、もう一つの方法としては、予算補助金等を組んで主計局に要請する、二つの方法があるわけですけれども、どちらかというと、特別措置に依存する方が行政的に簡便というようなことがあるかと思います。ただ、税制調査会としては、それが簡便であるから特別措置がよろしいというふうに考えているわけでは毛頭ございませんです。
  36. 川口大助

    ○川口委員 税制調査会では、この点は補助金でやるべきか特別措置でやるべきか判断に迷うような場合は、どちらにお決めになる場合が多いですか。
  37. 小倉武一

    小倉参考人 具体的にそういう問題で討議した記憶はございませんけれども、そういうふうに補助金でやった方がよろしいというようなことが相当考えられるようなものについては、そもそも特別措置の対象にしにくいというように考えた方がよろしいのじゃないかと思います。考えた方がよろしいのじゃないかと思いますというのは、税制調査会としてはそういう考え方をするだろう、こういうことであります。
  38. 川口大助

    ○川口委員 そこで、もう一つ突っ込んでお聞きしますが、特別措置でよろしい、こう思って答申なさったその事柄について、それはどういうふうな効果を果たしておるかという点について把握なされる場合がございますか。
  39. 小倉武一

    小倉参考人 個々の特別措置についての功罪というものを全部洗い立てて調査会として審議し、その結果を発表するということは、たしか従来いたしていないと思います。ただ、主税局なりが個々の問題について、各省の要請も聞きながらそういう吟味をいたした上で、総括的な結果を私ども税制調査会に披露なさって、その上で全体的な方針を討議する、こういうことを従来やっておる次第であります。
  40. 川口大助

    ○川口委員 そうすると、税制調査会そのものでは既存措置法についての洗い直し、効果の測定をしないで、どうやって改廃をしたり期間短縮したりするのですか。どういう根拠でそれをなさるわけですか。
  41. 小倉武一

    小倉参考人 全然そういうことをいたさないというわけじゃございませんで、大小漏らさず役所の方でそういうことをいたしておって、その結果を踏まえて税制調査会では討議しておる。ただし、非常に重要な項目、たとえば利子配当の特別措置についての経済に及ぼす影響あるいは貯蓄に及ぼす影響等については、税制調査会でも討議をいたしておりますし、そういう例がないわけではございません。
  42. 川口大助

    ○川口委員 ですから、私最初に税制調査会の権威とか立場はどうお考えですかということを聞いたわけですが、何かお答えが私ども一年生にはわかりにくいのです。自主性があるようなないような、しかし常識で言うと、大蔵省の言い分を聞きながらやっていますという答弁に尽きるような感じもするわけです。もし調査なさっておる、独自の見解でも若干の調査をなさっておるということでありますと、具体的な問題についてちょっとお伺いしたいと思うのであります。  たとえば、準備金の中にたな卸しに対する目減りの分のいわゆる準備金という制度がございます。過去何十年間たな卸し引当金というものはやっておりますが、一体いままでたな卸し在庫品が値下がりしたことがございますか。
  43. 小倉武一

    小倉参考人 直接具体的な御質問でございますけれども、先ほどのお答えをちょっと補足するように申し上げますと、特別措置、いわゆる不公平税制について税制調査会ではどういうふうな考え方で審議をしてきたかと申しますと、ごらんのとおり大変たくさんの項目がございます。したがいまして、一々の項目について税制調査会で審議するということは、従来原則的にはいたしておりません。これは審議の途中でありますけれども、大まかに特別措置についての整理の方針を行政当局に示す、その上でおおよその結果を聞いて、それをある程度抽象化して答申に織り込むということをいたしております。役所の方では無論そういうことで、一々の具体的な項目について関係団体あるいは関係省と税務当局が討議をするということでございますが、その具体的な一々の項目について調査会として審議をするということではなく、そういう結果を踏まえておおよその方針を立てる、あるいはそういう具体的な税務当局の討議の前に、おおよそこういう方向で整理したらどうかということを申し上げて、その結果をさらに今度は答申に織り込むということをいたしておるわけです。  したがいまして、特別の事項、たとえば先ほどの社会保険の診療報酬という問題なんかについては、具体的に調査会として取り上げたということもございますけれども、全般的には個々の問題は取り上げない。そういう時間的な余裕と、またそれだけ多方面にわたることを年度年度の税制調査会答申の中に織り込むというわけにもなかなかまいらないという実際上の問題があって、そういたしておるわけです。  いまお話しの価格変動等についての積立金あるいは準備金等につきましては、いろいろ御議論がございまして、これも一つ特別措置的なもののようにお考えの向きもおありのようでございますけれども、そしてまた、最近はちょっと様子が違いますが、一般的に物価が上昇してきている時代ですから、そんなに価格が下落するということを考える必要はないんじゃないかというのは、一般論としては言えるかと思います。ところが、個々の企業にとりましては、商品につきましても売れ行きのいい商品と、もうすっかり陳腐化して売れ行きが悪くなってしまう、あるいはもう全然売れないという商品が出てくる。個々の業界、個々の商品にとっては非常に違ったことでございますので、一般的な経済趨勢と個々の企業、また個々の商品との関係は若干違うかと思います。
  44. 川口大助

    ○川口委員 大変重要な答弁をお聞きしたと私は思うのでありますが、そうしますと、端的に言うと何を何%引き下げるとか、お酒はどのくらい上げるとか、そういう個々の問題はやっておらぬということですか。
  45. 小倉武一

    小倉参考人 私は、租税特別措置についての税制調査会の審議の従来のやり方をお話しいたしたわけでございまして、たとえば所得税の基礎控除をどうするとか、扶養控除をどうするとか、いまお話しのような酒税についての考え方をどうするということについては、ある程度具体的なことまで討議をし、また答申にも具体的に触れておるということになっておると思います。
  46. 川口大助

    ○川口委員 そうしますと、この特別措置法に基づく問題については、項目別な審議はしておらない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  47. 小倉武一

    小倉参考人 大体さようでございます。個々の具体的な項目ごとに、これは廃止すべきである、これは半分に削る、これは年度をどうするというようなことはいたしておりません。
  48. 川口大助

    ○川口委員 どうもわからぬのでありますが、私どもへの提案の理由は、大蔵省では税制調査会というものの審議を経て、それで十分練った上で提案をしたのだというふうに言われておるし、私どももそう理解しておるわけですが、いまお話を聞いておりますと、本当に隠れみの、税制調査会にかけたんだという名目的なもの程度だというふうになりまして、税制調査会の存立の意味さえ私は疑わしくなるわけですが、御答弁に誤りがないですか。
  49. 小倉武一

    小倉参考人 別に間違ってはいないと思いますけれども、まあ間違っておれば、これは役所の関係もございますから、役所の方からもあるいは是正があるかもしれませんが、特別措置については、大きな方針をまず討議し、その方針に基づいて役所の方で個々に審議し、その審議の結果を私どもに見せていただく。その見せていただく中には無論個々の項目が入っているわけです。だけれども、税制調査会としては、さらにその個々の項目について審議をするということはいたしておりませんで、大まかな方針に沿っておるというふうに認めればそれをオーケーする、こういうことになっておるわけです。
  50. 川口大助

    ○川口委員 先ほどの問題にちょっと関連がありますが、このたな卸しの分でありますが、企業の責任、つまりどれくらいの在庫を抱えて、どのくらいの在庫を持つか、あるいは整理をするかというのは、企業の責任じゃないかと思います。企業の責任で仮に値上がりをする時代にどんと買い込んでおって、そして将来の値上がりを待って在庫を持った場合に、それに対しても優遇税制の適用がなるということについて、税制調査会では不審やあるいは疑念を持つようなことはございませんでしたか。
  51. 小倉武一

    小倉参考人 税制調査会の中では、無論各種のそういう経理上の問題について若干の議論があったかと思いますけれども、全体として、これは不公正なものである、当然税金を納むべきものが、積立金等としてあるいは準備金等として残るというようなことは好ましくないというふうな観点から、いまお話しのようなことが議論になったことはございませんです。企業会計の上から適正な経理をする前提でもって認められておることは、それはそのまま税制の上でも受け取って税制を仕組む、こういうようなことになっておるわけであります。
  52. 川口大助

    ○川口委員 時間がありませんので、もう少しいろいろお聞きしたいのでありますが、次に大山参考人に一言だけお聞きをしないとどうも納得いかぬのですが、医師の優遇税制について、優遇というものと控除というもの、この解釈はわかりました。参考人のおっしゃる解釈はわかります。しかし私どもは、一般給与所得者は、つまり五十万なら五十万、基礎控除二十九万なら二十九万というものの控除に立って納税というものは行われておるけれども、お医者さんに限っては七二%全額控除だ、そこが一つ特例だというふうに思うわけです。ですから、一般の給与所得者と同じような方法で税の計算が行われるということであればわかるわけですが、どうも大山参考人のおっしゃった意味が、この辺のところが少し私のみ込めなかったのですが、いま一度簡潔にひとつお知らせをいただきたいと思うのです。
  53. 大山明雄

    大山参考人 まず第一にはっきりさせておかなければいけないことは、給与所得者の場合、雇用関係にあるということで、これは給与所得ということになるわけでございますね。それから医師の場合は、いま問題になっておりますのは事業所得としての医師の問題でございますから、これは全く異なっているわけでございます。  ただし、先ほどお話ししましたように、いま二十九万円というお話があったのですが、私はこう思っておるのです。じゃ、医師が二十九万円で一年間生活できるかどうか。これは現在、所得税法に決まっているわけですから、そこらあたりの関係で考えなければいけないのじゃないか。二十九万円だから七二%がいいということじゃなくて、先ほどもお話ししたように、七二パーのうち、会計検査院の報告によると、大体二〇パーが特別措置だと言われているわけですから、その二〇パー部分に、先ほど言ったように医者のいわゆる自家労賃、まあ先生方は自家労賃という言葉は好まないかもわかりませんが、やはり自分自身で働いているんだ、その控除を、いわゆる勤労所得者としての必要経費をどう税法で考えているのか、それが現在ありませんので、それが非常に事業所得全体の共通の問題になっておる、そういうふうに私は考えております。
  54. 川口大助

    ○川口委員 そのままで結構ですが、お医者さんの場合は事業税を払っておりますか。
  55. 大山明雄

    大山参考人 事業税を払っておりません。
  56. 大村襄治

    大村委員長 許可を求めて発言をしてください。
  57. 川口大助

    ○川口委員 ちょっと時間がありませんので……。  事業税を払っておらないのですよ。ですから、形の上では一般給与者のような形に扱われているわけですよ。にもかかわらず、控除割合が違うというのは不公平だ、こういうふうに私どもは思っているわけですよ。いかがですか。
  58. 大山明雄

    大山参考人 何が不公平かということで、たとえば事業税がかかってないとおっしゃる。じゃ、広告宣伝業もいま事業税がかかっておりませんね。(川口委員「ぼくはお医者さんのことを聞いているのです」と呼ぶ)いや、お医者さんの問題を出されましたが、事業税がかかってないということです。
  59. 大村襄治

    大村委員長 簡潔に願います。
  60. 大山明雄

    大山参考人 ですから、事業税がかかっていないから云々ということじゃなくて、これは事業所得と給与所得と全く所得の性格が違うものでございますから、その次元は別として考えなければいけないと私は理解しておるわけです。
  61. 川口大助

    ○川口委員 まあ議論はありますが、結構です。  次に、委員長、もう一つだけちょっとお聞きしたいのであります。  それは中村参考人一つお願いしたいのですが、先ほど税理士のお立場についていろいろ陳述があったわけです。特にどうも最近における税理士の立場は、ややもすると権力等の圧力が加えられて、納税者の立場になるよりも、むしろ税務署の立場にならされがちであるというふうなお話がありますが、この点について。  いま一つは、いまもちょっとお話がありました基礎控除二十九万円というものがあるわけですが、これは高額所得者にとりましては二十九万でも場合によっては、妥当性は別として、あれですが、低所得者が基礎控除二十九万円よりないということ。ですから、そういうふうに考えますと、二十九万円というものは果たして妥当な基礎控除の額であるかどうか、この点についての御見解。  それから、いま納税の時期に入っておりますが、利子分離課税というものの実態について、限られた時間でありますが、ごく簡潔にひとつお話を願いたいと思います。
  62. 中村自明

    中村参考人 税理士会におきましては、税理士法附則三十項によりまして特別なる税理士試験というものがありまして、これによって多大の税務職員税理士となります。そういう関係で、税理士納税者代理という権利意識が薄いので、先般の大阪合同税理士会の選挙であるとかいろいろの選挙に税務署が介入してくる。これをはねつけるというようなことがようできない。だから、一般納税者といたしましては、税理士納税者代理するという認識が乏しい。こういうことが結局税務行政に対する不公平感というものを助長しておるように感じます。  その次に、基礎控除でございますけれども、政府は最低所得を二百二、三十万円というようにおっしゃっておられますけれども、一般の事業所得、要するに零細企業というんですか、たこ焼き屋であるとか八百屋さん、こういうので小さく、自分の体一つで働いているという方は、基礎控除二十九万円が最低限度でございます。二十九万円といいますと、月二万五千円にも達しません。生活費から見ると、やはり月五万円生活費が要るとしますと、年六十万円。これが二十九万円引きますと三十一万円で、税額一割で三万一千円、これぐらいの所得の人が三万一千円三月十五日に払うということは、非常な苦痛を感ずるわけなんです。そこで、もっと基礎控除の引き上げということを考慮、配慮していただきたいと思います。  それから、利子所得につきましては、低額所得者は利子をもらうために銀行に預金するんじゃございませんで、大体金庫番、要するにお金を預けておったら安全だ、どろぼうにとられない、火事で失わないということで、低額所得者の銀行預金とかは大体そういうものであります。したがって、利子所得に対する貯蓄奨励という優遇制度は、もうこれはお金持ち、大資本家、そういう者に対して大きなメリットがあるんで、貧乏人には余りメリットはありません。ましてや源泉所得税二〇%といいますと、本当の零細所得者というものには全く効果はないような状態でございます。だから、利子所得に対しての総合課税というものは早期に踏み切るべきじゃないかと思います。  以上です。
  63. 川口大助

    ○川口委員 どうもありがとうございました。終わります。
  64. 大村襄治

    大村委員長 宮地正介君。
  65. 宮地正介

    ○宮地委員 参考人の方々におかれましては、大変に御多忙の中お越しをいただきまして、貴重な陳述をいただきまして、初めに厚く感謝を申し上げたいと思います。  私に与えられた時間も限られておりますので、税制調査会会長並びに井手参考人中心といたしまして、若干の質問をさしていただきたいと思います。  最初に、井手参考人にお伺いをしたいと思います。  今回の租税特別措置法並びに国税収納金の整理資金の改正につきまして、やはり一番大事な問題は、一つは、いかに不公平税制が改善されるか、またさらに、現在のこの不況克服という国民の重要な課題に対してどう貢献をしていくか、さらには、当面する財政の危機をどう克服していくか、こういうようなところに私は集約をされるのではないかと思います。  そういう点につきまして、特に井手参考人からは先ほど来、特に景気対策については評価はできるが、効果についてはどうも一考を要するのではないかというようなお話がございました。また、不公平税制についても、租税特別措置法整理合理化が促進はされておりますが、しかし私たちから見ますと、引当金あるいは準備金の制度など、国民の立場から見ますとまだまだ大企業に優遇されているんではないか、こういう批判もあるわけでございまして、さらに積極的に改善を進める必要があるのではないか。また、今回のこの改正におきまして、ある意味では社会福祉の向上といった面の立場というものがさらに増幅されなくてはならないと思います。たとえば高等学校などはすでに九〇%を超える進学率でございます。そういう中から、教育減税の導入をすべきではないか。あるいは住宅ローンにつきましても、いわゆる中古住宅についてもさらに幅を広げるべきではないか。あるいは最近大変に家賃あるいは部屋代が高くなっております。こういうものについても何らかの住宅控除を考えるべきではないか、こういうような提言を私たちはしているわけでございますが、そういう点を含めまして、先生の御意見をお聞かせいただければありがたいと思います。
  66. 井手文雄

    井手参考人 第一点でございますが、今回住宅ローン減税等々があったけれども、一応は評価するけれども、その効果については必ずしも評価できないというような点でございますけれども、大体私は、租税政策で国のいろいろの政策を行うということは基本的には反対なんです。基本的には、租税はどうして徴収するか、税制はいかにあるべきかというと、財政支出を十分に満たすだけの収入を租税をもって上げる、その税の取り方は公平でなければいかぬ、これがもう基本だと思うのですね。ですから、租税制度あり方はいかにあるべきかというと、公平であるということなんで、税負担の重い、軽いはありますけれども、公平、不公平ということが国民納税意欲に非常に影響するのですね。税金を出さなければならぬことはだれでも知っているけれども、こんなに不公平な税金だったならばこれは出したくないということなんですよ。これはもう隣組、近所を見ましてもはっきりわかる。明らかに暮らし向きのいいうちの方が自分よりも所得税や住民税が少ないということはよくあるわけですね。これが納税意欲を削減するのです。税負担が重い、軽い、負担率ということよりも、公平、不公平が非常に重要なんです。  ですから、租税制度はいかにあるべきかということは、根本においては公平でなければいかぬということです。それを、経済政策だ、景気政策だというようなことで増税したり減税したりするというようなことで租税政策を、税制を利用してそういう国の政策を行うということは、私は基本的には反対なんです。みだりに税制を利用して国の政策を行うということは、これは国家政策の貧困化を来すと思うのですね。本当に問題を解決するための国家の政策に取り組んで、どのような政策を行うべきかということを努力をもって政府国民も考えなければいけない。そういうことがめんどうだから、むずかしいから、それをやめて、早速はその辺ならば減税をしよう、景気が立ち直らない、国内需要が足りない、設備投資需要も足りない、それでは減税をしたらいいだろう、そういうようなふうに何でも税金でもっていくというのは、非常に安易な考え方であって、国の本来の経済政策に取り組む姿勢の貧弱なことですね、そこから来ていると思うのです。  ですから私は、この特別措置であれ何であれ、とにかく何でもかんでも税制によって経済政策を行うということは基本的に反対なんです。基本的には反対ですけれども、やはりそこにはそういう税制をもって行わなければならないという必要性を絶対認めないわけじゃないのです。ですから、必要最小限度にそういう税制を行わなければならぬということですね。住宅ローン減税にしましても投資減税にいたしましても、そういう意味においては、今回現状においては私はそういうのは採用は一応認める、そのかわりに使命を終わったもの、効果のない既存特別措置は遠慮会釈なく撤廃していかなければならぬ、そういう考え方です。  それから、住宅ローン減税にしても投資減税にいたしましても効果が怪しいというのは、これは五十三年度の予算案全体あるいは国の景気回復政策、その総合的なメカニズム、それとの関連において、こういうような住宅ローン減税なり何なりの効果が出てくるかどうかということが問題になるわけです。だから、全体としての政策体系というものが欠陥があり、あるいは不十分であるならば、こういう個別的な減税政策というものは効果をもたらさないわけですね。幾ら住宅ローン減税をやったって、土地も買えないし、家も建てられないということにもなりますし、幾ら投資減税をやってみても、設備投資意欲というものがわかないということになる。こういうのは根本の政策じゃなくて、全体の国の政策のメカニズムの中にはめ込まれて、そうして全体として始動していくんです。動くんですよ。全体のメカニズムがなってなくて、そこの中にこういうようなものだけが、機械の歯車がぽつぽつとはめ込まれたって、全体は動かないですよ。私はそういう意味においては、個々の住宅ローン減税とか投資減税というものの存在は一応評価する、しかしながら、全体の政策のメカニズムにおいて多少問題があるので、だからその効果が十分ではないのじゃないかという、その心配をいたしておる、こういうふうに存じます。  次の問題、引当金などの問題。税制が不公平であるというときには、いわゆる租税特別措置が不公平だと言われておりますし、準備金の制度あるいは特別償却の制度というようなものは、これは利益留保なんだ、本来ならば税金がかけられるものを損金として落として税金をかけないというんだから、これは優遇税制である、不公平である、しかも現実的には大企業がそれを活用しているんだから非常に不公平である。これはそのとおりだと思うのですけれども、引当金の制度というようなものは、これは負債性でありまして、企業会計原則からいっても認められておるし、特別措置じゃなくて、たとえば給与関係、法人税法本法の中に組み込まれておる、だからこれは負債性だから不公平ではないかというと、そこが問題なわけですね、先ほどもちょっと申しましたように。  先ほどは退職給与引当金の問題でありまして、一万人なら一万人の従業員が一斉に退職した場合の退職給与引当金を計上しておくということですけれども、実際の利用率は七、八%だ。それじゃ企業が倒産したときにその退職給与引当金で全員の退職金を支給するかというと、そういうことじゃなくて、そういう退職給与引当金というのは別途に運用されておって、倒産会社というものはその従業員をそのときは一斉に解雇するならば、そのときこそ退職給与引当金が大いに利用されるべきだけれども、その金はないというような現象もあり得る。ですから、これは明らかに再検討する必要がある。引当金制度だ、本法だ、企業会計原則や会計学で負債性だということで、これはもう優遇措置じゃないというふうには簡単に言えない。  これは、私がいまこう言っていることもいろいろ議論があると思います。会計学者あるいは税法学者あるいは商法学者、いろいろの意見があると思いますから、そういうものとの関連においてみんなが再検討をする必要があるんじゃないか、こういうふうに考えております。たとえば先ほど申しましたような法人の受取配当の益金不算入というようなものも、法人税の理論からいえば当然のところでありまして、優遇でも何でもないのだけれども、現実において優遇感がどうも常識的に払拭できないとなるとやはり検討の余地があるし、それから、個人株主の配当所得控除制度にしましても、これは法人税所得税の二重課税を排除するのだと言いましても、これは一つの税理論から言うと当然のことなんだけれども、優遇でもなんでもないけれども、やはり常識としてこの問題になるのですね、感覚的には不公平。感覚的には不公平なことが十分に真実であることもあるのですからして、もっと広く、いわゆる狭い意味での特別措置、準備金、特別償却というのを越えて、広くこの税体系を謙虚に洗い直してみる。一概に引当金が悪いというわけではなくて、それはやはり財政学者、税法学者、会計学者、商法学者、こういう者が集まって研究をする必要があるのではないか、そういうふうに私は思っております。むずかしい問題ですけれども思っております。  それから最後に、福祉政策はいま非常に必要でありまして、いろいろ御指摘がありました教育減税あるいは住宅控除等々、あるいは住宅ローンに中古住宅を取り込めというようなことがございまして、先ほど申しましたように、私は基本的には余りに租税政策に依存し過ぎるということは反対ですけれども、先ほども申し上げましたように、最小必要限度やるべきだ。ですから、徹底的に、既存の使命の終わったもの、効果のないもの、そういうものを整理した上で、新しい角度から必要なものは積極的にやらなければならぬ、しかも福祉政策と内容的にマッチしたものは。つまりそれは、そういう特別措置というのは税制の不公平を満たさないわけなんですね。内容的にも、たとえば教育減税にしましても、住宅控除にしましても、これはその内容そのものが福祉政策とマッチしているのですね。ですから、そういうような意味での、まだほかにも探せばいろいろあるかと思いますが、そういうようなものは大いに積極的に検討する。ただ、余りにも何やかやと、あれも控除だ、これも控除だということになると、これは税体系を乱しますので、それはほどほどということでございますけれども、なおいろいろ積極的にこういう個別的な控除制度特別措置というものは新しい角度から検討の余地がある、こういうふうに私は考えております。
  67. 宮地正介

    ○宮地委員 小倉参考人にお伺いをしたいと思います。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  最初に、今回いわゆる所得税減税を見送った、これについては先ほどの陳述の中で、財政事情ということをおっしゃっておりましたが、現実に五十三年度で所得税減税を見送るということは、国民の実質的な増税につながるわけです。そういう点についての、いわゆる国民生活防衛という立場から、せめてたとえば物価調整減税程度のものについて配慮はできなかったのか。この点について、まず税調としてどういうような御検討をされたのか、これが第一点です。  第二点は、今後の問題として、先ほど来陳述の中で、いわゆる一般消費税具体案、これを練り上げていく必要があるということを強調しておりました。さき政府の出しました財政収支試算を見ましても、その裏には増税キャンペーンがある。今回の小倉参考人の御意見も、その方向に、一つのいわゆる軌道に乗った延長線上の問題ではないかと理解するわけでございますが、現実にそれでは、これをどの程度の期限に限って詰めようとされているのか、また、もし内容等について方向性をお持ちでしたら、御意見を伺いたいと思います。
  68. 小倉武一

    小倉参考人 まず、所得税減税でございますけれども、税制調査会の討議について、もうあるいは御承知かと思いますけれども、税制調査会におきましても、所得税について、いわゆる物価調整減税ということを考えたらどうか、もう一つは、さらに数歩進めまして、個人消費刺激というような観点を踏まえて、もっと大幅な所得税減税をしたらどうか、こういう意見と、そうは申しましても、この際の財政状況にかんがみるというと所得税減税は見送るべきではないか、この三つの御意見が開陳されまして、いろいろ意見の交換をいたしたわけでございますけれども、結論としては、この際は物価調整減税も見送らざるを得ないのではないかというのが結論でございました。そのゆえんは、やはりお話しのように、それを見送るということは実質的な増税になるということでありますけれども、この際はひとつ一般国民にもがまん願うというようなことでなかろうかという趣旨でございました。  それから、もう一つ一般消費税の問題でございますけれども、昨年の秋、十月に中期答申を出しましてから、しばらくの間、一般消費税についての討議が各方面で行われる、あるいは大変各方面の注目を浴びたわけですが、何しろ中身が固まっていないという点がございまして、もう少し固まらなければ、本気の討議はできないではないかというふうなこともございます。それからまた、税制調査会といたしましても、中期答申でもって中期の税制あり方の全貌が示されたというわけではございませんで、あれはあれなりの一つの大綱みたいなものでございまして、さらに若干の具体化を図る必要があるということでございましたので、近き将来に税制調査会が再開されますれば、無論その後の国会初め各方面の御意見を踏まえながら、若干の具体化を図っていく。あるいは多少とも中期税制あり方についての考え方を直してみるというようなことが、あるいは委員の先生の方から起こってくるかもしれませんが、そういうことも一つ討議の中に入れてやってみるのが必要ではないか、こういうような考え方をいたしております。  調査会の時期と申しましては、これは国会の関係等もございまして、国会の関係というのは役所の都合もございましょうが、いつからというふうに申し上げるわけにはまいりませんけれども、できるだけ早い機会に、中期税制あり方を踏まえた討議を再開いたしまして、いつごろまでということもなかなか申し上げにくいわけですが、もし中期税制のままで大体考えようということでありますれば、秋ころまでにはおおよその骨格を考えてみる。しかし、その間いろいろまた御意見もありましょうし、また昨今の経済事情からまいりますと、なおそこに考えなければならぬようなことも起こってまいりまして、いま申しましたようなふうにいきますかどうか、要するに、中期税制答申しましたときのような考え方でもってうまく大綱が組めるかどうか、これはちょっと確信はございませんけれども、できますればそういうふうにいたすのがよろしいのではないかというふうに考えております。
  69. 宮地正介

    ○宮地委員 時間が参りましたので、私は最後に一問だけお伺いしたいのですが、要するに、ただいまのお話を伺っていましても、国民にいわゆるがまんを強いる、さらに今後については増税キャンペーンのどうも柱に一般消費税を考えているような発言に私はとれたわけでございますが、いま大方国民の皆様は、まず税調に何を検討してもらいたいか。これは、やはり不公平税制、この問題に勇気を持って取り組み、その執行に取りつけるまでの責任を持ってもらいたい。また、特にその中においても、たとえば大企業優遇と言われるような、先ほど来申しております退職給与引当金のたとえば積み増し率を現行の二分の一に縮小するとか、あるいは交際費については超過限度額に対する一〇〇%課税を行うとか、あるいは会社臨時特別税を復活するとか、あるいは価格変動準備金は現行の積立率を三〇%縮小するとか、または政府関係機関の貸倒引当金を縮小するとか、こういうような問題にも取り組んで、まず不公平税制をやることである。その問題を抜きにして、ただ国民にがまんを強い、さらに、物価の問題あるいはこういう経済環境の悪化しているときに一般消費税などの導入をして、さらに国民経済的不安を与えるようなことは慎むべきであるというのが、私は国民の真の声であろうと思います。そういう点について、ぜひともよろしく国民の、特に庶民の声に耳を傾けまして、慎重に御検討いただきたいことを要望したいと思いますし、それに対しての御決意なりお考えを伺って、終わりにしたいと思います。
  70. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお話の中にございました不公平税制是正ということを大前提にすべきではないかという御趣旨、これは税制調査会としてもさようなつもりでおります。したがいまして、来年度のみならず、再来年度税制を考えます場合にも、そういうことをまず大前提として考えたい。ただ、不公平税制の中身、先ほどもほかの参考人からお話ございましたように、中身についてどう考えるのか、何が不公平税制であるかについては、若干の意見の相違がどうもあるのではないかと思いますけれども、これはできるだけやはり広く討議の対象にはすべきであるというふうに私は感じております。  それからもう一つの、一般的な増税をお願いする云々という問題については、いたずらに国民に不安を与えるということになるからそこは慎重に考えなければならぬという御注意、まことにごもっともでございますが、同時にまた、増税の必要性についてだれも考えないというのでは、税制調査会に関係している者としては少しこれは無責任、逆に、後は何とかなるというふうに確信が持てるような根拠があればよろしいのでございますが、どうもそうでもありませんので、考えて討議することだけはひとつお認め願いたい、かように存じております。
  71. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 高橋高望君。
  72. 高橋高望

    高橋委員 各参考人、御多忙のところおいでいただきまして、恐縮でございます。時間の制約もございますので、皆様に全部お尋ねをするということができませんので、お尋ねが限られますことを冒頭お許しいただきたいと思います。  最初に、小倉参考人にお伺いしたいと思います。  いつでも、このところありがたいことに、中小企業対策ということについては、税制でいろいろと御配慮いただいておることはよく知っております。しかしながら、すでにもう大多数の方が認めていらっしゃいますが、いわゆる中小企業の卒業生とも言うべき中堅企業、この対策については依然として手つかずの状態が続いているのではないかと思います。現実に経済社会にあってこの中堅企業の占めている率は、その会社数あるいは従業員数、さらには上げている利益、したがって納税額等々から考えまして、ほっておいてよい問題でないと私は思います。こういう状況の中から、現在までの税制調査会の審査の中で、この中堅企業に対してどのようなお取り組み方がなされてきたか、お差し支えのないところでひとつ状況等を御説明いただきたいと思います。
  73. 小倉武一

    小倉参考人 中堅企業というふうに特別に取り出しまして、大企業、中小企業、そのほかに中堅企業ということだけにしぼって税制あり方をいかにすべきかということを、特に討議したことはございませんです。ただし、いろいろの税制を考えます場合に、ただいわゆる中小企業と大企業という関係のみだけでなくて、中堅企業ということを頭に置いて討議するということはときどきございました。ただ、中小企業対策といったようにまとまった国としての政策があり、あるいは役所があるということでもないというようなことが反映しておるのでしょうか、中小企業でなくて中堅企業対策としての税制ということについては、特段の考慮は、私の管見でございますが、税制調査会としては余りしていなかったように思います。  ただ、たとえばこういうことはありました。まあ意見の相違があるかもしれませんが、例の会社臨時特別措置、利得の特別措置でございますね、あれを復活しろという御意見もおありのようですが、あれは廃止するのがいいんじゃないかということに税制調査会として結論を出しました一つは、あれはいわゆる中堅企業ですね、中堅企業について酷ではないかというような考慮はたしかあったかと思います。
  74. 高橋高望

    高橋委員 私は、その対策が遅きに失することをおそれますので、今後ともいろいろの場で、特に税調の場でひとつお取り上げいただきまして、特に国の企業についての線引きが、中小企業かそうではないところかという二つに分けてございますので、この線引きだけでよいものかどうか、ひとつ実態から御判断いただきまして、差し迫った問題としていろいろお考えをいただきたいとお願いを申し上げておきます。  そこで次に、肥後参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど来先生、またかねてからそのような御発言をいろいろな場所でしていらっしゃいましたが、住宅ローン減税よりも先駆けて土地税制を少し考えるべきではないか、これがなくしては住宅ローン減税も本来の効果が上がらないんじゃないかというふうな御発言だったかと思います。  そこで、いまもうすでに検討の段階に入り、また私たちの党としても検討を始めておりますが、土地バンク構想、土地銀行構想、この土地バンク構想について先生の御所見をちょっといただきたいと思います。もちろん前提としては、土地に対する意識革命があろうかとは思いますけれども、この辺を踏まえての土地バンク構想について、先生の御卓見を承りたいと思います。
  75. 肥後和夫

    肥後参考人 お答えいたします。  あの土地バンク構想そのものについて、まだ私、掘り下げて研究しておりませんけれども、やはり土地というものを投機の対象とすべきではない。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕 土地というのは、私有財産権を尊重するという意味では当然でございますけれども、これはやはり特別の非常に公共性の強い財産であるという見地から、これについて何か公共性を持たせるような運用の仕方というものを、土地バンク構想を含めて検討すべきではなかろうか。いまのような状況では、要するに賃金の値上がり率とのバランスがこの経済基調の大転換で狂ってまいりましたので、従来のような発想で果たして住宅建設が促進できるか、あるいは持ち家対策といったようなものが促進できるか、非常に疑わしくなっておるんじゃないかと思っております。
  76. 高橋高望

    高橋委員 ありがとうございました。この辺も先生いろいろとまたお力添えいただきまして、ひとつこの土地バンク構想を御一緒に考えさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  それでは、小山参考人にお伺いをいたしたいと思います。  お立場もありましょうし、企業中心にいろいろとお考えになることは当然であろうと思います。ただ、現在まで行ってまいりました特別償却を柱にするいろいろの企業優遇策、これがどうも大方の方から見ると何か不公平であるという印象を取り切れないでいる。私自身はいろいろの場所でもまた国会内部でも、この投資減税を含めてむしろ減税積極論者でございます。そうであればあるほど、企業側に対して、いろいろとやはりいままでやってきたことの反省もしていただかなければならないことも私はあろうかと思います。  たとえばかつてある機械の特別償却を考えた、そしてその細かな仕様が発表になった、ある機械はこういう仕様であれば特別償却の対象になる、それが二分の一であれ三分の一であれ、そういう対象の機械をお考えになったときに、どうもその発表された細かな仕様というのは、特定の企業が御自分のところで購入予定か、あるいはすでに購入をし契約をしておられるものに対して当てはめたような条項がたくさん出てきていた、こういうふうな具体的な問題が、かえって基本的に税制として、政策として取り上げて、あるべきものを曲げてしまって、それがまた逆に大ぜいの方からは不公平であり、企業優遇だと思われるような方向へ行ってしまった。そういう点を踏まえて、いろいろのお立場もございますけれども、先生のお立場から、ひとつこの過去の特別償却に対する取り組みについてお考えにあることがありましたら、お伺いをさせていただきたいと思います。
  77. 小山敬次郎

    ○小山参考人 お答え申し上げます。  ただいまの質問の具体的な事実につきましては、私ども実は伺っておりませんので具体的に申し上げることはできません。ただ、いま御指摘のありました合理化特別償却につきましては、現在ではほとんど整理が行われまして局限されたものしか残っておりませんので、その問題については、もちろん今後具体的な問題があれば、私どもとしてもその姿勢を正すように関係の方面の方々に話をしてまいりたいとは思います。しかしながら、一部のそういう誤った活用の仕方が租税特別措置そのものに対する批判とつながるようなことがあれば、非常に私どもは残念だと思う次第でございます。
  78. 高橋高望

    高橋委員 私は、あえて具体的な例を申し上げたわけでございますけれども、過去のそうしたことの積み重ねが今日になりまして、いろいろと正当な判断を妨げているということをひとつ十分に御配慮願いたいと思います。特にこのところの経済環境の中で、国の基本方針としての付加価値を高める作業に対しては、これは時限であるとかあるいは特例だとかというのじゃなしに、基本的にもう柱として持つべきだという、そういう党の立場も、また私自身の立場も持っておりますので、そうであればなおのこと、先生方に一つお願いは、過去のそうした過ちを繰り返さないようにしていただきたいし、それが国としての方向づけに少なからず妨げになってしまったということも御反省をしていただきたい。大変恐縮でございますけれども、あわせてお願いを申し上げておきたいと思います。  最後になりましたが、井手参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど先生もちょっとおっしゃっておられましたが、退職金引当金の積み立てでございますね。従来これは企業に対しては何か優遇策であるように思われてまいりましたが、お話しのように、仮に今日のように倒産、しかも連鎖倒産などで、直接自分の責任ではなしに、いわば突発的に起こるような場合には、退職金の積み立てがあった方がいい場合もあると思うのです。そういう点を踏まえて先生にひとつ重ねて、この退職金引当金についてのお考え方をお述べいただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  79. 井手文雄

    井手参考人 退職引当金は、もちろん従業員の生活を守るという意味におきまして非常に重要だと思います。だから、あった方がいい、ないと危険だと思いますね。ただ、いま全従業員が一斉に退職した場合を踏まえて積み立てられておるようでございますけれども、それが少し過度であって、その積立金の計上額に対してその利用額といいますかの割合が非常に低くなっておるということになると、ふだん正常に活動しておる企業においては、それほどの多額のものを引当金として、いわば負債性のあれとしているということは、一種の利益留保的な要素が相当にあるのではないかということで、そういう意味におきましては、もう少しその積立金の額を、やはり積立率を減らすということが望ましいのではないかということです。  それからなるほど、一遍に退職するということはあり得ないかもわかりませんけれども、倒産すればあり得る。本当に倒産してしまって、全従業員が明くる日から路頭に迷うというときには、たまたま全従業員のための退職給与引当金がちゃんとそこにあれば非常にいいことだと思うのですね。ですから、そういう意味においてはけっこうなんですが、私、実際企業を経営していることがありませんので、ある文献などによって知り得たところによりますと、そういう退職引当金の積立額は、いろいろ多目的にふだん利用できておって、多くの目的にあるいは他の目的のために利用することができるようになっておる。そして、現実にいざたまたま倒産したときには、その退職給与、まさに退職給与支給金として利用できないことがある。倒産した場合に何もない。私は実際にそういうことをやっていませんのでわかりませんけれども、ある文献によればそういうことが書いてありますので、ふだんは全部退職することはあり得ないということと、たまたまこのごろのように倒産ということもあると一斉退職ということになるかもわかりませんけれども、一斉退職した場合はどうであろうかと思って見たらそういうことがあったというようなことでありまして、そういうことであればなおのこと、この退職給与引当金の仕組みというものは多少検討すべきではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  80. 高橋高望

    高橋委員 ありがとうございました。  最後に、小倉参考人に再度お尋ねいたしたいと思いますが、税調の段階で例のタックスヘーブン対策をお考えになるときに、経済合理性の追求ということが主であることは、私はこれはもう当然だと思うのですが、ここへいわゆる発展途上国を含めた経済協力という観点からのお取り上げ方は何か税調の段階でございましたでしょうか、その辺をひとつ最後にお尋ねいたしたいと思います。
  81. 小倉武一

    小倉参考人 タックスヘーブンについての特別の税制を考えます際に、特に発展途上国に対する経済協力との関係は論議にならなかったかと思いますが、何か特に注意すべきことがございますれば、お示し願いたいと思いますが……。
  82. 高橋高望

    高橋委員 残念なことに時間が参りましたのであれでございますが、私は、タックスヘーブンの対策として、一つには、国内の連結決算方式の中へ組み込むことができないものかどうか。もう一つは、やはりできればその地で上げた利益はその地において積み立てておいて、その地域への何らかの形での再投資等に振り向けていく、そういうことを考えた上での経済協力ということを実は腹案として持っておるものでございますので、この問題のさらにの進展の中で、経済協力を含めたタックスヘーブン対策を考えるのがこれからの私たちの国の姿勢ではないかと思いますので、どうぞひとつ御記憶を願いたいと思います。  委員長、終わります。
  83. 大村襄治

    大村委員長 荒木宏君。
  84. 荒木宏

    ○荒木委員 参考人の皆さんには御苦労さまでございます。  初めに小倉参考人にお尋ねをいたしますが、先ほどの御意見で、租税特別措置については整理合理化を進めてきた、こういうお話でございました。ただその中で、個々の税目については調査会で諸般の事情これあり十分な審議ができない、全体についての指針を示すといいますか、そうした作業だという経過の御報告がございました。確かに私ども伺っておりますところでは、期限でありますとか、また目的に照らしてどうであるとか、また効果との関連で検討すべしとかいう、それなりに一定の物差し、判断基準をお示しのように伺っております。  しかし、私がお尋ねしたいのは、個々の税目のそれぞれに掲げられました政策目的、それとの関連はもとよりあろうかと思いますが、同時に、税制度本来の機能といいますか役割りといいますか、それとの関連で、全体として果たすべき役割りがどうであるか。個々のことについて立ち入るなにがなくても、全体としてのそうした内容に立ち入っての論議というものがいかがなものであろうかということをお尋ねしたいわけであります。  企業税制が、税制本来の機能である景気調整機能をどのように果たしているのか、会長としての御認識を伺いたいと思うのです。特別償却あるいは割増償却、各種準備金、それぞれの時期にそれぞれの項目についてそれぞれの目的を掲げて設けられてきました。いま生産と需要の関係につきまして、量的に大変なアンバランスがある、また、国民のニーズとの兼ね合いで質的にも食い違いが大きい、構造不況と言われております。あるいはまた、輸出入のバランスが大変に失している。量的にも質的にもそうでありまして、構造不況、円高不況と言われておるのであります。こうした原因にはいろいろな関係がございますから、税制にだけその責めを求めることはあるいは必ずしも正鵠ではないと思いますけれども、しかしさりとて、従来皆さん方が個々の吟味を放棄してこられた特別措置、全体としての基準をお示しにはなったけれども、それが期限、目的、効果という形式的な側面にとどまったという、そうした作業過程が無縁であったとは言い切れぬと思うのであります。そうした意味合いで、企業税制景気調整機能に与えた特別措置の役割りといいますか、それの再検討といいますか、吟味が必要なのではないかということで御意見を伺いたい。  あわせて、所得税は申すまでもなく、所得再配分の機能ということが言われておりますけれども、総理府の統計その他によりましても、第一分位と第五分位の消費支出、格差が拡大する傾向があるという指摘もありました。所得税減税見送りという答申を五十三年度に向けてされたのでありますが、こうした点から、所得再分配機能における税調の論議の再検討ということもあわせて御見解をお示しいただきたいと思います。
  85. 小倉武一

    小倉参考人 まず、特別措置についてのお尋ねでございますけれども、まず特別措置についてどういうふうに検討しているかということに関連しての部分について申しますと、繰り返しになって恐縮でございますが、個々のアイテムについて特段の深い討議をしないと申しますのは、これは税制プロパーの問題には違いありませんが、ほかのこととは若干趣が異なって、それぞれ他の産業経済政策、個々の産業経済政策一つの手段となっている面が大部分でございます。そうしますと、個々の産業政策経済政策を担当している役所、あるいはその背後にある団体もありますけれども、あるいは業界もありますが、少なくともその政策を担当しておる役所との関係がございまして、これとの折衝が必要になってくるわけです。税制調査会はそれを構わずに、調査会だけの内部の討議で結論を出すということも考えられなくもありませんけれども、各方面の具体的な個々の業界、産業についている人が集まっておるわけでございませんので、どうしても個々の審議はしにくいということがございます。また、若干のものについてはできることがあるでしょうけれども、これについてはまた時間的な制約があるということで、先ほどのように大まかな方針でまず考えてもらって、その上での各省との折衝の結果を調査会の場面に登用願って締めくくりをする、こういうようなことになるわけでございます。  その際でございますが、従来どういうふうに考えておったかと申しますと、一つは、中小企業の関係の優遇措置特別措置についてはできるだけそれは尊重していこう、それからもう一つは、少額貯金の優遇というようなこともございますが、これもできるだけ尊重していこう。したがいまして、残りましたところは、中小企業対策でも十分目的を果たしたものであるとか、あるいは一般的になかなか効果の上がらないというようなものとか、あるいは特に大企業の優遇に過ぎるというふうなもの等について焦点を置いて整理をする、こういうことになるわけでございます。  お尋ねの最後の点でございますが、あるいは要点かと思いますが、景気調整との関係でございますけれども、租税特別措置については、特段に景気調整との関係を考えて措置をしているというのは、全くないというわけでもないかと思いますが、そうないのではないかと思います。たとえば今回新しく御審議を願う投資促進税制などは、これは景気対策との関係もございますが、一般的にはそういうものは少ないのではないかと思います。したがって、お話しのようなそういう観点から特に今回討議をしたということはないかと思います。  ただ、特別措置の観点とは若干違って、一般的に経済景気の調整ということについては、税制がどういう役割りを果たし得るのであろうかということについては、基本的な問題として討議をいたしたことはございますが、これについては、結論を実は得ておりません。どちらかというと、これは租税法定主義等々の関係がございまして、若干消極的な意見ではなかったか、こう思っております。
  86. 荒木宏

    ○荒木委員 時間の関係がありますので、私は、いまの御説明に一、二点をつけ加えるにとどめたいと思います。  同僚委員から税制調査会あり方といいますか、権威の問題に触れての御質疑がありました。確かにいろいろ実態との関連では、関係省庁との接触あるいは事実調査その他が関連をしてまいりますから、実務作業としてはなかなか大変なことは容易に想像できるところであります。しかし、総理大臣の諮問機関とされておりますゆえんのものは、単に地方税制が絡んでおるからという、それだけのことでもなかろうというふうに思うのでございます。私は、税制調査会がいままでの高度成長時代経済運営に果たしてきた皆さん方の役割りといいますか、皆さん方の関与された度合いというものを、世を挙げて安定成長に切りかえていくと言っておりますときに、いろいろ税制面では、一般消費税の導入の問題とか財政危機の解決の問題で論議をされておりますけれども、そうしたいま批判、再吟味、検討がされております経済全体とのかかわり合いをさらに十分検討されることを期待したいと思うのでございます。  時間の関係がありますので、大山参考人にもう一言伺っておきたいと思います。  先ほど診療報酬の特例についての御意見の陳述がございました。医師の平均的所得と申しますか、平均的な収入階層に対する軽減額はどのぐらいになるか。先ほどは、会計検査院の算術平均的には七百万ということについての作為的な発表の仕方という御指摘があったように思います。触れて、一億円以上が千七百万幾ら、千五百万円以下の所得の場合には六十二万幾らと分解してのお話だったんですが、実態の平均的な、一番多い医師の収入階層における軽減額はどのぐらいになっているか、これが一つでございます。  それからもう一つは、物の考え方に関して、企業税制における各種準備金、引当金の手当て、措置とあわせて考えれば、これだけが特別措置の典型と言えるかといったような御意見もあったように思うのですが、片や企業税制は個々のアイテムがありますから、なかなか全体としてはとらえにくい面があろうかと思いますけれども、実績対比との関連で診療報酬の方は約二〇%という御指摘があったように思います。企業税制との関連で、実績乖離はどちらが大きいというふうにごらんになっているか、これをあわせて御意見を伺っておきたいと思います。
  87. 大山明雄

    大山参考人 お答えいたします。  まず最初の、私の経験では、会計検査院の区分で言います千五百万から三千万の保険の収入が、大体現在の開業医の平均値だろうと考えております。これですと、検査院の方法でやりますと、軽減額は百七十七万円という数字になってまいります。これは単純に所得税法に従って計算しただけのことでございます。  それから第二の、企業税制と実態との関係でございますが、これは、医師の問題なんか全然比較にならないくらいの乖離、実態とのかけ離れがあると思うわけでございます。その一番いい例は、先ほども例が出ておりました退職給与引当金の問題でございますが、これも私、ぜひ触れておきたいのですが、これはどうしてかといいますと、退職給与引当金というのはあくまでも紙の上のものでございまして、じゃその一億なら一億という引当金が預金か何かで別にリザーブされておるかというと、これは全くそうじゃないわけです。全く紙の上で、決算書に退職給与引当金というのがあるというただそれだけのことでございますから、これは先ほどから問題になっております労働者保護という立場でいくと、全く税法は何ら関知せざるということになるわけです。  そういう点では、やはり企業会計の仕組みとすれば、もし退職給与引当金を現行のまま許すとすれば、十二、三年前にあったような、その金額は別でございますが、特定預金というようなそういうことを復活すべきであって、要するに、それでも要資金額の四分の一きり保証はされてなかったわけですが、そういう点で、やはり労働者保護という立場から見たら、はっきりと何か絶対第三者が手を触れない預金なり、すぐ換金性のある資産で社内にきちんと別建て経理して現金預金として残しておくべきである。そういうものがないと、全く労働者保護にはならない。何兆円という退職給与引当金が、総額であっても、そういう点では全く労働者のためになっていないという、そういうことが企業税制と実態との大きな違いではなかろうか、このように理解しております。
  88. 荒木宏

    ○荒木委員 そうしますと、大山参考人の御意見としましては、保険診療報酬の特例はこのまま手をつけずに存続するという御意見になるのでしょうか、それともそれに比してより現状乖離の多い、不合理の多い他の企業税制その他の是正を図り、その上で診療報酬の特例措置についても合理的な改善を図るべしという、こういう段階論的な御主張になるのでしょうか、その辺はいかがでしょうか。
  89. 大山明雄

    大山参考人 現在の租税特別措置法二十六条が全くそのままでいいとは私は思っておりません。しかし、たとえば先ほどお話ししたような千五百万から三千万の段階で検査院が出した平均経費との差額の四百五十七万四千円、これを医者の給料というふうに考えれば決して高いものじゃないわけですから、やはりそういう先ほど申し上げましたいわゆる事業所得における自家労賃という問題と絡めて、ほかの全部の事業所得者と同じような観点で、いわゆる青色、白色を問わず事業所得者に自家労賃を認めていけばという方向づけを私は考えておるわけです。それで現在の七二%のもの全部カバーできるかどうかということになると、いろいろ問題はありますが、そういう方向づけで進むべきだと思います。  それから、どちらが先かということになりますと、たとえばいろいろな引当金、準備金、一般的なものだけで大体十兆円あるわけでございますから、仮にそれの十分の一、一兆円に対して課税しましても、四千億という税収がすぐ得られるわけでございます。仮に医師のこの税制を全廃したとしても、大蔵省の発表ですと千八百億から二千億でございますから、そういう税収の点から考えますと、やはり先ほどお話ししたような企業税制、大資産家に対するそういう全面的な廃止の方が優先するであろう、そういうふうに理解しております。
  90. 荒木宏

    ○荒木委員 ありがとうございました。
  91. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  92. 永原稔

    ○永原委員 大分時間も過ぎましたので、簡単に伺いたいと思います。  まず最初に、小山参考人に伺いたいと思いますが、先ほど経済全般の動きの中でお話がございました中で、雇用問題ということが非常に強調されました。日本においても、離職者対策をやったり、あるいは企業になるべく失業予防の手当てをしたりいろいろはしていますけれども、先ほど数字を挙げられたような状況になっております。そういう中でお触れになったように、カーターの減税政策、この中で特に雇用問題が取り上げられているように思います。世界的な同時不況の中でそれぞれの国が悩んでいるこの雇用問題ですけれども、カーターのとりました税制政策で、七七年、七八年じゅうに七六年と比較して二%以上増員した企業に対し一人当たり二千百ドル、一社当たり最高十万ドルまで税額控除をしようというような構想が述べられておりますけれども、こういうものに対して、税額控除補助金であるとかいろいろな御議論が先ほどございました。そういうものも承りながら、こういう思い切った手を打つ政策に対してどういうようにお感じになっていらっしゃるか、御意見を承りたいと思います。
  93. 小山敬次郎

    ○小山参考人 それでは申し上げます。  先ほど御指摘がございましたように、カーター提案は全く御趣旨のとおりでございます。私どもといたしましても、先ほどから申し上げましたように雇用問題を非常に重要視いたしておりますので、これには非常な関心を持って勉強いたしたわけでございますが、ただ、こういうたぐいの税がむやみに広がるということについて、私どもは賛成するものではございません。ただし、現時点で雇用対策ということを考えますと、どうしても生産性の低い第三次産業に相当の雇用の吸収力を期待いたさなければならないと思いますので、このような措置につきましても、期限を切るということでこれを実施するということであれば、私どもは賛成でございます。  ただ、これを実施するにつきましては、イギリスにおきまして選別雇用税という制度が、幾つかの逆にイギリスの経済力を低下させるといったような弊害をもたらしたという例もございますので、十分その辺については留意をしながら、なおかつ雇用問題の重要性ということからこの制度につきましてはぜひ実現を図っていただきたい、かように考えます。
  94. 永原稔

    ○永原委員 ちょっと就業構造の問題に関連をしてくると思いますけれども、生産性の低い三次産業への移動、こういうようなお話がございましたが、日本の就業構造がアメリカ型でいくかあるいは西欧型でいくか、将来の経済の動向を先ほどお話しになりましたので、そういう観点から、あるべき姿について何か御意見がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  95. 小山敬次郎

    ○小山参考人 ただいまの件につきまして申し上げます。  私どもも、長期的に見ますと、サービス産業といいますか、第三次産業の方向に相当なウエートあるいはまた就業構造が高まっていくということが必然的であろうかと思います。  では、アメリカ型であるかドイツ型であるかということにつきましては、短期的に見ますと、やはりどうしてもそのいずれでもない形、つまり第二次産業の付加価値を高める、あるいは第二次産業に付帯するようなサービス産業が当面は伸びていく。そこにはおのずからサービス産業化と申しましても限界がございまして、アメリカのように六割がサービス産業であるとかあるいはといったような形にいくということは、いまの時点では望みがたいというふうに考えまして、先ほど、現行のサービス産業の中に雇用を吸収していくことを期待する、こういうふうに申し上げた次第でございます。
  96. 永原稔

    ○永原委員 さらに二点ほど……。  先ほどお話の中で法人税の問題をちょっとお触れになったように聞いておりました。きょうは税調の会長がおいでになりますけれども、答申の中には、法人税についてはまだ若干引き上げの余裕があるようなことが書かれております。そういう中で、先ほどのお話もう一度詳しく伺いたいと思いますけれども、どういうようにお考えになっていらっしゃるのか、御意見をいただきたいと思います。
  97. 小山敬次郎

    ○小山参考人 申し上げます。  いまの税負担率の問題に集約して申し上げたいと思いますが、もう申し上げるまでもないと思いますが、日本の場合には法人税負担率が四九%強、それからドイツは五六・五二%、アメリカについては五二%という数字を恐らく念頭に置きながら、先ほどの中期答申の文言が出てきたのではないかと思うわけでございますけれども、私どもの立場から考えますと、日本の法人税率の計算につきまして、たとえば地方の法人事業税あるいは法人住民税につきまして、ほとんどの都道府県といいますか、地方公共団体が超過課税をいたしております。その点を考慮して限界税率を適用しているという前提で計算をいたしますと、私どもの計算では負担率が五一・一%という数字が出てまいります。  五一・一%が出ましてもなおかつ、ドイツあるいはアメリカと比べて高くないじゃないかということになろうかと思いますが、この点につきましては、アメリカの場合には、カーター提案を加味して考えますと四九・〇四%になるというふうな説明もなされておりまして、それだけではございません、アメリカの場合には、租税特別措置割合が、先ほども申し上げましたように非常に高い比率を占めております。しかも連結納税制度あるいはまた申告調整といったような制度がございます。したがいまして、実際の負担率を見てまいりますと、個々の会社のことを申し上げてはいけませんが、アメリカの企業は営業報告書に表面税率と実効税率の比較を書くことになっております。それを拝見いたしますと、一〇%ポイントから二〇%ポイントくらい税負担率が表面税率よりも軽くなるといったような実態もございます。  したがいまして、私ども国際環境の中で企業の問題を考える場合には、そういう本当の意味での実質的な負担ということを頭に置かなければいけないと思います。  また、ドイツの件につきましては、これももう申し上げるまでもないと思いますが、インピュテーション方式ということで、配当の個人段階と企業の支払い段階との完全な調整ということで方式がとられたために、五六%という数字が表に出ておりますが、こういう新しい方式とそれから日本の方式とを比較する場合には、やはり個人、法人を通ずる負担率ということで比較をしなければならないと思います。この点につきましても、私どもも計算をしてみました結果、個人、法人を通ずる負担率で見ますと、日本が特に軽いという数字は出てまいりませんでしたので、御報告させていただきます。
  98. 永原稔

    ○永原委員 経団連という立場にいらっしゃいますのであえて伺いますけれども、交際費課税の強化というようなことがやはり不公平税制というような印象の中で語られております。こういうものについてどういうように受けとめていらっしゃるか、お考えを伺いたいと思います。
  99. 小山敬次郎

    ○小山参考人 申し上げます。  交際費につきましては、五十一年度の総額が二兆三千億と記憶いたしておりますが、その中で七割弱のものが中小企業の利用である。私どもは、中小企業の利用であるから云々ということを申し上げるつもりはございませんけれども、やはりこの交際費の問題につきましては、販売促進的な性格からこれについて費用性を認めるという前提に立っていると思いますので、販売促進的な目的を著しく逸脱するものについては、ある程度の課税強化もやむを得ないじゃないかと思うわけでございますが、その課税強化の仕方につきましては、先ほど申し上げました中小企業の利用率等をも考慮いたしますと、私は、定額部分、四百万円の部分についてもう少し御検討になるのが妥当ではないかというふうに考えます。
  100. 永原稔

    ○永原委員 最後に、小倉参考人にお伺いしますけれども、税の不公平感ということがさんざん論議されております。これは大規模の事業についていろいろ言われるのですが、実態は庶民の中でささやかれている声が届かないようなものがあろうと思うのです。雲の上のような高いところにいらっしゃる会長さんにこういうことを言うのは失礼かもしれませんけれども、地域にはそれぞれ納税貯蓄組合があります。こういうところで実際個人個人のところからささやかな税金を集めてきている。そういう中で甲の人、乙の人、丙の人いろいろ比較してみると、ここはこういう税負担でいいのかなという声がささやかにささやかれているわけです。こういう声も税調の中ではお聞きになる必要があるのではないかという気がしますが、そういう点はいかがでしょうか。
  101. 小倉武一

    小倉参考人 確かにお話しのように、末端の納税者が何をお考えになっているのか、納税ということについてどういう関心をお持ちになっているのかということは、これは税調の時間を割いて、参考人として来ていただいてお話を聞くという必要性はあるかと思います。いままでも若干そういうことはございましたけれども、それは末端の納税者の立場でのお話では必ずしもなかったので、そういうことも試みたらよろしいんじゃないかと思います。  もう一つ、不公平ということについて関連をいたしますけれども、一般不公平税制、こう言う場合には、私どもは法律制度のことをすぐ頭に置くわけですけれども、一般の方々が不公平税制と言う場合には、実際税制じゃなくて、業態によって違うとか、所得の把握率が違うとか、それが非常に不公平になっているという面がむしろ多く語られておるんじゃないかという気がいたします。これはある意味においては徴税上の問題でございますけれども……、したがいまして、不公平の問題を論ずる場合には、税制の上での制度の面と同時に、徴税上の問題もやはり相当考えておく必要があるんじゃないかという気が実はいたしております。
  102. 永原稔

    ○永原委員 長時間どうもありがとうございました。これで終わります。
  103. 大村襄治

    大村委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後六時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時四十二分休憩      ————◇—————     午後六時四十四分開議
  104. 大村襄治

    大村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  お諮りいたします。  第八十回国会より継続審査となっております村山喜一君外九名提出有価証券取引税法の一部を改正する法律案につきまして、提出者全部より撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  105. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。      ————◇—————
  106. 大村襄治

    大村委員長 内閣提出有価証券取引税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る一日、質疑を終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  有価証券取引税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  107. 大村襄治

    大村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  108. 大村襄治

    大村委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表して綿貫民輔君外五名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。塚田庄平君。
  109. 塚田庄平

    ○塚田(庄)委員 有価証券取引税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について、提出者を代表して、その趣旨と内容を簡単に御説明申し上げます。  案文は、お手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきます。  御承知のとおり、個人の有価証券の譲渡所得に対する所得税課税は、昭和二十八年に廃止され、継続的大量の取引等、一部の取引から生ずる所得以外は非課税とされているのであります。  この非課税措置が、税の公平感を著しく阻害することは、本法律案の審査の過程において再三にわたり指摘されたところであります。  この決議案は、以上のような状況に顧みて、政府に対し、個人の有価証券譲渡益に対する課税の強化を早急に検討すべきことを強く望むものであります。  以上が本附帯決議案の趣旨とその内容であります。  何とぞ御賛成のほどをお願い申し上げます。     —————————————    有価証券取引税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  個人の有価証券譲渡所得非課税措置は、税の公平を著しく阻害しているので、政府は有価証券譲渡益の課税の強化を早急に検討すべきである。     —————————————
  110. 大村襄治

    大村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。村山大蔵大臣。
  112. 村山達雄

    ○村山国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたす所存でございます。     —————————————
  113. 大村襄治

    大村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 大村襄治

    大村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は付録に掲載〕      ————◇—————
  115. 大村襄治

    大村委員長 次に、租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。永末英一君。
  116. 永末英一

    ○永末委員 租税特別措置法は、本則に対しましていろいろな政策的配慮から主として減免をやるのでございますが、大蔵省税務行政の多くの部分が、もちろん法律には典拠はございますが、通達等によって実務を処理されている部分が非常に多いのでございます。その面で私はきょうは、取引相場のない株式の評価の問題について少しく、その通達の適不適を念頭に置きながら質問を申し上げたいと思います。  第一に伺いたいのは、この取引相場のない株式の評価は、相続税の問題が起こった場合あるいは譲渡が行われた場合等で起こっておるようでございますけれども、一体この相続に関して該当株式の評価が行われた件数、譲渡に関して似たような評価が行われた件数、ここ五年間ぐらいの傾向がどうなっておるか、お知らせを願いたいと思います。  その場合に、類似業種比準方式でやられたもの、ないしは純資産評価でやられたもの、さらにはこれら二種を併合してやられたもの等がございますので、まずその件数をお知らせ願いたいと思います。
  117. 水口昭

    ○水口政府委員 お答えいたします。  相続税及び贈与税におきますところの財産の評価の問題でございますが、相続税法二十二条の規定におきましては、相続財産取得のときの時価により評価する、こういうふうに書いてあるわけでございます。そこで、先生いま御指摘のように、この詳細はすべて相続税財産評価に関する基本通達、この中に規定してございます。  ごく大まかに申しますと、法人を大中小の三つに分けまして、大きな法人の場合には類似業種比準価額方式、それから小さな法人の場合には純資産価額方式、これによって評価をいたします。それからちょうど真ん中ぐらいの規模の会社、その場合には、いま申しました二つの方式の混合方式と申しますか、それを併用いたしまして計算をする、ごく大まかに申しますとかようなことになっております。  そこで、ただいまお尋ねの件数でございますが、国税庁の統計で特にその件数は把握はいたしておりませんが、大まかに申し上げますと、大会社の場合の件数というのは比較的少ない、それから中会社が一番多く、小会社がその次である、非常に大まかなことで恐縮でございますが、そういった状況になっております。
  118. 永末英一

    ○永末委員 税金は、これは数字で出てくるものですね。したがって、この問題につきましても、多いとか次とか少ないとかということではなくて、数字でお知らせ願いたい。という意味は、戦後、わが国税法体系の中で個人営業をやっているものが法人化をして、そのために非常に多くの法人ができておることは事実でございまして、それが三十年近くの年数を経てまいりますと代がわりというようなことが行われる。しかし、それはいずれも会社でございますから、それは株によって評価資産等々がそれに化体をしておるといたしますと、三十年もたてばいろいろなことがございますから、そこに相続の問題も起これば譲渡の問題も起こってくる。したがって、普通の相続、譲渡、個人間の問題とは別に、いまのような種類の、取引相場のない株式を保有しておる会社においてそういうものが起こっておるのでございますから、その件数はこのごろ非常に多くなっているのではないか。そこで私は数字の提示を求めているわけですから、数字でお答えを願いたい。
  119. 水口昭

    ○水口政府委員 はなはだ恐縮でございますが、ただいま手元に持ち合わせがございません。それで国税庁として、先ほど申しましたように、詳細な統計はとってございませんが、サンプル調査と申しますか、そういった数字はございまして、いま手元にその数字がないのではなはだ恐縮でございますが、先ほど申しましたように、大会社は非常に少ない、中会社が多くて、その次が小会社である、こういうことになっております。
  120. 永末英一

    ○永末委員 手元に数字がないというお話でございますが、数字は持っておられるのですか、ここにないということですか。
  121. 水口昭

    ○水口政府委員 サンプル調査的な数字はあるわけでございます。
  122. 永末英一

    ○永末委員 それでは、本法案の審議の終結までにはそれをお知らせ願えますか。
  123. 水口昭

    ○水口政府委員 御報告をさせていただきたいと思います。
  124. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣、この問題は、いまのような歴史的経過の中ではなはだ重要な社会問題に現在なっておるわけでございまして、十年前にはこれは余り問題でなかったわけですね。この基本通達ができたころは、問題があったからできたのでしょうが、それに該当していろいろなことががたがた言われなかった。しかし、それ以来いろいろな問題が発生している。したがって、サンプル調査ではなくて、やはりどういうような実態なのかということを明らかにしていただきたい。これに該当するものは百二十万ぐらいあるわけでございますから、したがって、やはりそういう的確な数字を基礎にこれからの御方針を立てていただきたい。その意味で、とりあえずサンプル調査があれば、この法案の審議終結までに数字をお知らせ願いたいことと、大蔵大臣の責任において、どういう状態になっているかということをひとつお調べを願って、後刻御報告を願いたい。
  125. 村山達雄

    ○村山国務大臣 承知しました。  しかし私が想像しますのは、恐らく相続税が多いんじゃないかと思うのですが、相続税の年間発生件数というのは大体決まっているわけでございます。やはり寿命でもって亡くなるわけでございますので、課税相続というのは非常に割合が少ないわけでございます。したがいまして、恐らく百万ぐらい会社があるといたしまして、ほとんど大部分が中小企業であろうと思うわけでございます。一億以上の会社というのはほんの微々たるものでございますから。そこで、相続税の課税最低限が決まっておりますし、各種の控除が決まっておりますから、課税になる人が非常に少ないのではないかと思います。恐らくそのときに財産の形態はわかると思うのでございます。たとえば毎年のやつで土地が幾らとか家屋が幾らとか有価証券が幾らとか、こういうことはわかると思いますが、いま言ったように、この通達でいわば時価評価をしたもの、あるいは純資産でやったもの、混合方式でやったものというのは恐らく統計的に出ていないで、サンプル調査かあるいはそれから推計したものしか出ないんじゃなかろうかと思うのでございますが、国税庁に命じまして、できるだけの資料を出すようにいたしたいと思います。
  126. 永末英一

    ○永末委員 相続税としてとらえられている件数、これは確かに少ないですね。しかし、たとえば同族会社の同族の範疇にいる者が死亡し、その者についての所有株の相続が発生した場合には、これは計算はされているわけですな。したがって、これから申し上げる計算の中に入るわけでございますから、そういう意味でひとつお調べを願いたい、こう言っているわけです。  さて、いま直税部長が話されましたように、この基本通達によりましていろいろな評価の仕方が書いてございます。大会社、中会社、小会社に分けて、そして大会社につきましては類似業種比準方式をとる、小会社につきましては純資産価額方式をとる、そして真ん中の会社については二つを併用する。なぜ二つの評価をとっておるのですか。
  127. 水口昭

    ○水口政府委員 御承知のように、取引相場のない会社と一口に申しましても、内容はピンからキリまでございます。大きい会社で申しますと、資本金が百億円を超えるような大会社も幾つかあるわけでございます。また小さい方は、実態的には個人企業とほとんど変わらないといったような会社がたくさんあるわけでございます。  そこで、本来財産の評価というものは、取引相場にのっとって評価するのが一番よろしいかと思いますが、何分取引相場のない株式というものは、上場株式のように取引相場がないわけでございますから、何らかの工夫をせざるを得ない。そこで、大会社の方は、その会社は取引相場がないにいたしましても、似たような業種で似たような規模でもって上場されている会社が幾つかあるわけでございます。したがって、そういった会社をもとにいたしまして、諸種の調整をした上で財産の評価をするといったのが合理的な方法ではなかろうかと思います。これに対しましてごく小さな会社は、上場会社と比較すると言ってもなかなか技術的に困難でございます。むしろ実態は個人経営の企業に近い、そういうことであろうかと思いますので、純資産価額方式ということでやっておるわけでございます。
  128. 永末英一

    ○永末委員 まず第一の、大会社と称せられる範疇に属する関係について伺いたいのでありますが、いま似たような業種で似たような規模、こうきた。似ておるか似ておらぬかということが問題ですな。税務署の方は似ているように思うけれども、受ける方は似ていると思わぬかもしれない。  あなたの方で決められた一応の計算によりますと、七掛けにしていますね。何で七掛けにしておるのですか。
  129. 水口昭

    ○水口政府委員 先ほど申しましたように、類似業種比準方式でもって価額を計算する、この場合には、類似の業種の取引価額をもとにいたしまして、あと利益金額であるとかそのほかいろいろの要素でもって調整をするということでございますが、ただ、株式の価額というものはそれだけで形成されるものではなかろう、いろいろな要因があるのではなかろうかということと、いま一つは、何と申しましても取引相場のない株式は取引の価額がないわけでございますから、そういったことも考慮いたしまして、かた目の評価と申しますか、一応七割ぐらいということで昔からやっておるわけでございます。
  130. 永末英一

    ○永末委員 昔からやっていると言ったって、だからあなた方のやっていることの正当性が証明せられるわけではありませんね。ともかく類似業種の上場株であれば、それは時価がはっきりしておるわけですから、それを基準にあなたの方は、その二つの会社の年配当金額とか、年利益金額であるとか、純資産価額、これは簿価ベースでありますが、それをミックスして、そいつを三等分して、それに〇・七を掛けておる。御説明によりますと、かたくしておるというのですが、〇・七の根拠は何ですか。
  131. 水口昭

    ○水口政府委員 お答えいたします。  〇・七の根拠いかんと言われますと非常につらいわけでございますが、要するに先ほど申しました理由でもって、取引相場のない株式というものは市場性、流通性に欠ける、そのほかの要因も考えまして、かた目の評価をしようということで〇・七を掛けておる。  なおちなみに、これは株ではございませんが、土地等の評価におきましても、やはり相続税の評価の場合にはかた目の評価が必要であるということで、従来から大体七掛けぐらいをめどにやっておる、こういう実情もあるわけでございます。
  132. 永末英一

    ○永末委員 かた目というのは、いまちょうどあなたが触れられたように、市場性、流通性があるならば、それは価額がちゃんと経済社会で認められる、そういう価額が出るわけですね。まさにその流通性、市場性がないからそれがないのであって、その流通性のなさというのが三割なんですか。かた目はわかりますよ。かた目という表現はわかるけれども、なぜそれが〇・七でなければならぬかという積極的な証明にはなりませんな。積極的な証明をやってください。
  133. 水口昭

    ○水口政府委員 ただいまお答えいたしましたように、流通性、市場性がないということが最大の要因であろうかと思いますが、そういったことをも勘案して七掛けにしておるということでございまして、七掛けの明確な根拠いかんということになりますと、非常にお答えがむずかしいかと思います。
  134. 永末英一

    ○永末委員 大蔵大臣は専門家でございますが、この七掛けの根拠、あなたはどう思われますか。
  135. 村山達雄

    ○村山国務大臣 昔から、流通性のないのはやはり価額は下がるであろうということは当然想像されるわけでございまして、恐らく流通性がないというところに最大の着目をした七掛けではないかと思っているわけでございます。
  136. 永末英一

    ○永末委員 流通性がなければ、先ほどのような計算をしても、そのままではだめだという一つの前提がある。したがってかた目になる、内輪にへこむであろう。私どもちっともわからぬのは、〇・七というのは何としてもわからぬ。天下の日本国の大蔵省でしょう、やはりある何かの数字があって帰納してきた数字じゃないかと思うけれども、だれかインスピレーションで考えたのですか、〇・七、これでもう大体いいだろう。そこがわからないので聞いているのでして、昔からって、昔決めたときのことを聞いているわけだ。
  137. 水口昭

    ○水口政府委員 先ほど申しましたように、株式の類似業種比準方式におきましても、あるいは土地の評価等におきましても、〇・七という数字が従来から活用されておるわけでございますが、その明確な根拠いかんということになりますと、なかなかお答えがしにくい、こういうことであろうかと思います。
  138. 永末英一

    ○永末委員 明確な基準は答えがしにくいということになると、これは不明確な基準である、こう了解してよろしいか。
  139. 水口昭

    ○水口政府委員 長年の実務を通じまして、ほぼ適正な率ではなかろうかというふうに考えております。
  140. 永末英一

    ○永末委員 だから、先ほど実際にあなた方がやられた件数を伺いたいと言ったのであって、あなた方の方は適正だと思っている。しかし、評価をされた納税者側は適正だと思っていないと思うのですね。そこに問題があるから、この質疑をしているわけです。それは私の理解では、はなはだ明確を欠いた基準であると思いますよ。  さて、それはそれといたしまして、次に、類似の業種と言いますけれども、昔裁判で負けたことがありますね。昭和三十七年、大阪地方裁判所の「(行)第一二号贈与税審査決定取消請求事件」というので、あなたの方が類似業種だと言ったところが、それは裁判所の判決では、これは東洋化工という会社ですかな、それが大日本インキを類似会社とした場合に、その「正当性についてはなお立証が不充分であるといわなければならない。」こういうことになってしまった。その理由としては、事業の種類の同一性が薄く、事業規模が大日本インキの方が八倍もありというようなことで、事業規模の相違は見逃せない、こういうことで負けましたね。これは控訴しましたが、どうなっていますか。
  141. 水口昭

    ○水口政府委員 ただいま先生がおっしゃいました裁判につきましては、控訴はいたしておりません。  なお、この取引相場のない株式に関する訴訟というものは四件ございまして、そのうち二件は勝訴、それから二件は敗訴、こういうことになっておりますが、その判決の内容を見ますと、ただいま御指摘の判決につきましても、その基本的な、大会社は類似業種比準方式でやるといったような点については、裁判所も理解を示しておるわけでございますが、具体的なその類似業種の選び方と申しますか、相応の点について十分でない点があった、こういう判決であったと思っております。
  142. 永末英一

    ○永末委員 取引相場のない株式会社とまさにぴたりと同じ業種のものが上場されている場合、それはいいでしょうね。それは類推したっていいわけです。しかし、まさに類似業種としてとるとり方に税務署側のきわめて恣意的な判断が加わるということになると、迷惑するのは納税者だ。これが一つの例なんですね。  それならば伺いますが、あなたのところで、たとえば「昭和五十二年十一月分及び十二月分の業種別平均株価について」というのが、ことし各国税局長等に国税庁長官から出ておりまして、これは「類似業種比準価額計算上の業種及び配当金額等の平均額(昭和五十二年分)」というのですが、それぞれの業種の名称がございまして、それにそれぞれ番号が振ってございまして、一番から百五番まで振ってある。これは上場株式会社でございますから、千四百ぐらいですね、一部、二部合わせまして。この千四百を百五に仕分けられておりますけれども、一番少ない会社しかないその名称の該当はどれですか、少ないものから上の方へ五つ言うてください。何番ですか。
  143. 水口昭

    ○水口政府委員 この類似業種でございますが、これは先生いまおっしゃいましたが、われわれの方で、税務当局の方で類似業種として挙げている業種が百五でございます。それから、標本といたしました上場会社が千五百二十八社、こういうことになっておりますので、平均的な数字はおのずから明らかでございますが、一番少ないのはどうか、こういうお話でございますが、いまちょっと調べましたところでは、一番少ないところは三社というのがございます。
  144. 永末英一

    ○永末委員 下から少ないのを五つぐらい、後で調べて知らせてください。  それから、その中で「卸売業」というのがございますね、七十二番から七十九番まで。これは九つ、いろいろな卸売業が書いてございますが、これは少ないのはわかりますか。
  145. 水口昭

    ○水口政府委員 ただいま御指摘の七十二番から七十九番まで、この辺が「卸売業」になっているわけでございますが、たとえば七十二番について見ますと、「繊維品卸売業」ということで、その内容は「生糸、繭、繊維原料、糸、織物などの卸売業」、こういうふうな分類になっておるわけでございます。
  146. 永末英一

    ○永末委員 それはそこに書いてあるとおりですからわかってますよ。数が何ぼか。たとえば七十二番にしますと、「生糸、繭、繊維原料、糸、織物などの卸売業」。しかし、生糸の卸売業と繭の卸売業、繊維原料の卸売業、糸の卸売業、織物の卸売業、全部違いますよ。それを七十二番で一括しておりますがね。だから、たとえばここで聞きたいのは、もしあなたが七十二番で何社だと言ったら、その何社は何だということを聞きたいわけですね。
  147. 水口昭

    ○水口政府委員 七十二番の会社数は全部で四社でございます。
  148. 永末英一

    ○永末委員 そこの内容に書いてございますが、内容は五、書いてあるわけですね。その四社は何に該当しているのでしょう。
  149. 水口昭

    ○水口政府委員 急のお尋ねでございますので、その会社の名前はわかりますが、どういうふうに結びつくか、いまちょっと即答はいたしかねます。
  150. 永末英一

    ○永末委員 私が聞きたいのは、類似業種があるという前提に立っているわけだ、この類似業種比準方式というものは。ない場合にどうするんだろうということが、もしこの方式だけならわからないわけですね。大蔵大臣、わかりますね、私の言っていること。しかもよくわからぬのは、この卸売業でも、七十九番は「その他の卸売業」となっている。それまでは、たとえば「繊維品卸売業」であるとか、その次、七十三番が「衣服、身のまわり品卸売業」、七十四番が「食料品、農水産物卸売業」、品目が変わっておりますから一見明白だと思う。ところが、七十九番は「その他の卸売業」。「その他」といったら、品目はどういうのがあるのですか。
  151. 水口昭

    ○水口政府委員 恐縮でございますが、いまちょっと即答しにくい面がありますので、調べて御報告いたしたいと思います。
  152. 永末英一

    ○永末委員 調べてお答え願ったら結構ですが、「その他」と雑炊みたいに、卸売業ということは同じ業種かもしれないけれども、扱っている品目がばらばらであったら、もしこれにひっかけて類似業種の指定をせられた業種はえらいことになるでしょうね。だから、これの判決、先ほど負けた判決例を申し上げましたけれども、非常に危険なことをあなた方はやっておられる。  大蔵大臣、あるところでは、その類似業種の引っ張り方によってはどうともなるんですと言った税務署があると聞くわけですね。そんなことを聞かされる方は、とんでもないことですな。これは非常に危険なことです。やるならば一見明白、だれが見ても、すなわち納税者から見ても、それに類似業種の指定をされるのはあたりまえだ、こういうことでないといけませんね。  それで、小売も同じことだな。小売も四業種、四つに分かれておりますが、これは何社で、「その他の小売業」というのはどういう小売業を言っているのかわかりますか。
  153. 水口昭

    ○水口政府委員 お答えいたします。  「小売業」でございますが、まず「百貨店業」が二十五社、それから「飲食店業」が九社、「自動車小売業」が四社、「その他の小売業」が四十七社と、こういうふうになっております。
  154. 永末英一

    ○永末委員 その「その他の小売業」というのは、分類が細分されているから四十七になるのでございましょうが、これにひっかけられたら困るでしょうね。これは平均値でございますから、それぞれ配当金額、利益金額、純資産金額等が書いてございますけれども、こんなのをくそみそ一緒と言うのでしょうね。くちゃくちゃとみんな集めて平均値をとってある。数字が書いてあると一見明白なようだけれども、実は何ものも物語らない数字である、こう思いますが、いかがですか。
  155. 水口昭

    ○水口政府委員 私ども、全国で五百六の税務署に指示をいたしまして、アンバランスのないように執行しているところでございますので、なるべくわかりやすい形で国税局がこういった数字をつくりまして、納税者から照会があった場合には、すぐにそれを見せるというふうなことでやっておりますので、中には、先生御指摘のような面もございますが、現状ではやむを得ぬのではないかというふうに思っております。
  156. 永末英一

    ○永末委員 私の方は、やむを得ぬと思わぬから、もっと明確にやっていただきたい、こう言っているわけですね。  これの百五番、「その他の産業」というのはどんな産業ですか。
  157. 水口昭

    ○水口政府委員 これは文字どおりその他でございまして、どれにも分類できないのは、この「その他の産業」といったのを活用している場合が多いわけでございます。
  158. 永末英一

    ○永末委員 あなたの方の言葉は活用だ。しかし、これに入れられたのはわけがわからぬですよ。だから、類似というのなら、一見明白にわかるように分けて、そして、あなたの業種はこれですよ、その業種は、これこれの利益を上げ、株価はこうなっている、こうでないとわかりませんよ。それは活用じゃないですよ。それは悪用だ、乱用だ。いかがですか。
  159. 水口昭

    ○水口政府委員 国税当局といたしましては、長年知恵をしぼって、こういうような形に落ちついておるわけでございますが、なお、今後とも工夫してみたいと思います。
  160. 永末英一

    ○永末委員 上場会社の場合には、厳しい上場基準というのがございまして、これに外れると上場取り消しを受けてしまう、こういうことですね。ところが、取引相場のない会社というのは、言うならばそういう基準に合致していない。したがって、それを基準にやると、つまり上場会社というのは俗な言葉で言えば、それほどりっぱな会社でしょうね。りっぱでない、これは七掛けになるというのはよくわからぬのですが、もう一つわからぬことがあるのは、中会社に対して併用方式をとっておる。その併用方式をとる場合に、純資産価額によって評価をする場合に、あなたの方は併用方式の場合に大中小と会社を分けて、そしてまた、それを卸売業と卸売業以外と分けて、Lという数字を使っていますね。つまり〇・二五で計算する場合と〇・五で計算する場合と〇・七五で計算する場合。このLというのは何ですか。
  161. 水口昭

    ○水口政府委員 中会社につきましては、大会社の方式と小会社の方式を併用する、こういうことでございますが、単純に足して二で割るということではなしに、ここに書いてございますようないろいろな細かい基準がございますが、こういう基準をもとにいたしまして、この中会社はより大会社に近いか、あるいは小会社に近いか、そういったことを見る一つの基準といたしまして、Lを定めまして、それによっていろいろ細かい計算方式をいたしているところでございます。
  162. 永末英一

    ○永末委員 中会社になった場合に伺いたいのですが、この類似業種比準方式が当てはまらないのはたくさん出てくると思うのですがね、そういう御経験はございませんか。
  163. 水口昭

    ○水口政府委員 当てはまらないのも確かにございますが、そうたくさんあるというふうには聞いておりません。どうしてもその特定の類似業種に当てはまらないものが出てきた場合には、これは各国税局においてケース・バイ・ケースで処理をするわけでございますが、先ほど申しました「その他の産業」を活用いたしましたり、あるいはそれも活用できないという場合にはまあやむを得ませんので、最も合理的と思われる方式によって計算をする、こういったやり方をやっております。
  164. 永末英一

    ○永末委員 あなたの方の合理的というのと、受ける方の合理的と物差しが違うので、それで質問申し上げているのですが、先ほどLの説明を受けましたけれども、〇・二五と〇・五と〇・七五に何か積極的な意味はありますか。〇・五から考えれば、こちらに半分行ったところが〇・二五だし、こちらに半分行けば〇・七五だ、こういう意味ですか。
  165. 水口昭

    ○水口政府委員 このLもやや概括的な決め方でございまして、足して二で割るならば〇・五だけでいいわけでございますが、それでは余りにもラフであろうということで、一定のいろんな基準を設けまして、〇・五のほかに〇・二五とか〇・七五といったような数字を設けておるわけでございます。
  166. 永末英一

    ○永末委員 目の子ですね。大体真ん中、真ん中の真ん中、こういう発想でつくられた数字ですね。
  167. 水口昭

    ○水口政府委員 余り細かく分けることもいかがかと思いますので、このあたりではなかろうかと考えておるわけでございます。
  168. 永末英一

    ○永末委員 いま三つの株式の評価方法があることを検討してきたのでありますが、もう一つございます。配当還元方式と言われる方式でございまして、これは同族株主以外の株主が株を取得した場合の評価でございまして、この計算ですね、これは額面金額にその会社が払っている配当率をかけて、それを一〇%で割っている。何で一〇%で割っているのですか。
  169. 水口昭

    ○水口政府委員 この配当還元方式は、わかりやすく申しますと、五十円の額面といたしまして、一割配当の場合は五十円、二割配当の場合は百円、なお無配の場合は二十五円、この程度で評価をしよう、こういう趣旨で算式を定めておるわけでございます。
  170. 永末英一

    ○永末委員 そこのところがよくわからぬのだな。なぜ一〇%なのか。しかし、概算しまして、この配当還元方式で評価されました評価が一番安いですね。
  171. 水口昭

    ○水口政府委員 仰せのように、類似業種比準方式であるとか純資産価額方式、これと配当還元方式を比べてみますと、一般的に申しまして配当還元方式の方はかなり安い金額になる場合が多うございます。
  172. 永末英一

    ○永末委員 この同族会社の場合、同族であった者が死亡して贈与が始まる。相続じゃありませんよ、死亡せぬでもええですけれども。要するにくれてやったという場合に、非同族の者がその株をもらったらどの評価でやりますか。同族であった者が非同族の者に株を贈与した、その場合どうなりますか。
  173. 水口昭

    ○水口政府委員 その贈与を受けたり、あるいはその定額の譲渡を受けたその者が非同族であった場合、これは配当還元方式、これが適用になります。
  174. 永末英一

    ○永末委員 逆の場合にはいろんな問題が起こるわけですね。非同族の者が同族のものに株を売った、譲渡した、その場合には、配当還元方式でなくていままでの三つのいずれかに該当する評価を受けて、そして差額がありますと、その部分は贈与税だ、こうなりますね。
  175. 水口昭

    ○水口政府委員 仰せのとおりでございます。
  176. 永末英一

    ○永末委員 世の中経済学の教えるところによりますと、自由経済の特徴は一物一価の法則が貫かれるだろうという前提に立っておる。ところが、この同族会社株式の評価については一物二価の法則がございますな。これは何でですか。
  177. 水口昭

    ○水口政府委員 われわれは一物二価であるとは考えておりませんで、先ほどからいろいろお話に出ました、大会社であれば類似業種比準方式、小会社であれば純資産価額方式、こういったような方式が原則である。それに対しまして、配当還元方式の方はきわめて特例と申しますか、いきさつを申しますと、昔は配当還元方式のようなやり方はなかったわけでございます。ところが、相続税の財産評価に関する基本通達が昭和三十九年に全文改正されまして、その際に中に入ってきたものでございますが、なぜこれが取り入れられたかと申しますと、同族会社の中でほんの少ししか株を持っていない、そういう人の評価をする場合に、原則どおり純資産価額方式でやるということになりますと、これは非常に手間がかかるわけでございます。わずか五百株や千株の株のためにそんなに手間をかけてやる必要があるだろうかといったような技術的な要因、それから、そういったごくわずかしか株を持っていない、会社に対する支配権もなければ影響力もない、ただ配当を受け取るだけであるといったような人に対しまして原則的な評価をいたしますと、かなり高額になることもあって実情に合わない、いろいろな要望が強うございましたので、三十九年に改正をいたしまして、こういったものを取り入れたわけでございますが、これはあくまで特例的なものでございまして、原則は純資産価額方式といったようなものである、したがって、一つであるというふうにわれわれは考えております。
  178. 永末英一

    ○永末委員 先ほど一番当初に租税特別措置法と本則との関係を申し述べましたが、これなんか特別措置みたいなお考えのようでございますが、それなら、非同族から非同族に株を売った、そして大体五十円のやつを百五十円くらいで売った、こうしますね。しかしその総額は六十万円以上である、それくらいの株を売った場合に、これは三倍の値段が立っておりますが、これは一割配当の会社ですと額面どおりで売らなければいけませんな。受けた者はこれどうなりますか、贈与を受けたことになりますか。配当還元で計算しなければならぬのですが、その売買をやった実績は認められるのですか。
  179. 水口昭

    ○水口政府委員 非同族の者が非同族に売った場合には、その買った方を中心にして物を考えますので、したがって配当還元方式、これをじかに用いるわけでございます。
  180. 永末英一

    ○永末委員 配当還元の場合には、一割の配当の会社でございましたら五十円は五十円で売らねばならぬわけですね。ところが今度は、買うた方が百五十円で買った。配当還元方式なら五十円で売らねばなりませんね、一割配当ですから。だから、株式を受けた者じゃなくて、おまえは株を売買という名前で金をたくさんやり過ぎておる、それは贈与だ、売買ではないということで、金をもらった方、すなわち株を売った方、これは六十万円以上そういうことがあったら、それは贈与だということになりますか、正当な売買行為だということになりますか。
  181. 水口昭

    ○水口政府委員 ただいまの設例は時価以内でございますから、課税上の問題は起こらないと思います。
  182. 永末英一

    ○永末委員 時価以内とおっしゃるのは、すなわち、もしここに純資産価額方式を用いれば百五十円以上になっておるから、こういうことですね。
  183. 水口昭

    ○水口政府委員 そういうことでございます。
  184. 永末英一

    ○永末委員 その考え方の中には、あくまでもあなたの基本通達でつけられた方式、これが本則であって、配当還元方式などはまさにそれの特別措置である、それで最初の三つのやり方で決まるのがこれが会社の株の評価であって、配当還元方式はそうではない、こういう御見解ですか。
  185. 水口昭

    ○水口政府委員 方式は一つであるというのはちょっと言い過ぎかもしれませんが、原則の方式がありまして、それに対して配当還元方式という特例的な方式が片すみにある、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  186. 永末英一

    ○永末委員 私は、一つと申したのは、つまり大中小と区分されて、最後にそれは大であるか中であるか小であるかによってやられる評価の方法が決まりますから、どれか具体的なものは一つと申し上げた。いずれにしても、方式は三つあるが具体的に適用される方式は一つだから、それが株の評価である。  そうしましたら、どういうぐあいにそれが使われようとも、もともとその株式はそれだけの価額を持っておるものだというのがあなた方の判断ですね。
  187. 水口昭

    ○水口政府委員 そういうことでございます。
  188. 永末英一

    ○永末委員 そこに問題があるわけです。実際問題として、そういう譲渡なり相続が行われた場合に、だから納税をせよと迫られる。最初大会社の場合を援用して問答したわけでございますが、流通性がないというわけですね。市場性がない。したがって、税務署はそれは受け取らないというわけです。もしその株の評価があなた方が評価されたように一般社会で認められる値打ちがあるのなら、すなわち、上場株が時価が相場で立ってそれで転々流通するようなぐあいに流通しておるなら、問題はないわけだ。ところが、流通性がない、市場性がないからそれはその評価でいかない。あくまでもあなたの方はこれをその評価で通せとおっしゃる。そうしますとその場合、納税を、たとえば贈与税であれあるいは相続税であれ、迫られた側は一体どうなるのか。個人の相続の場合には、あるいは個人の贈与の場合には、それが物件であれば売り飛ばして換金して払いますね。これは換金ができない。そこに問題があるわけです。どうしたらいいですか。
  189. 西野襄一

    ○西野政府委員 いまお尋ねの件でございますけれども、たとえば贈与された財産の場合について、納税を金銭で一時に納めることが困難であるというような場合につきましては、担保を提供していただきまして、その贈与税の額を五年以内の年賦で納付することができることになっております。ただ、延納できます金額と申しますのは、納付が困難な金額が限度になっておりまして、また、その延納期間中につきましては、年六・六%の利子税がかかるということでございます。  それから、相続税の場合の納付ということでございますが、相続税の納付につきましても、原則といたしましては金銭によって納付をしていただくということでございますけれども、相続税は財産全体を課税の対象にしておるというようなところから、物納制度というものが認められておるところでございます。ただその場合に、物納をどういうふうな物件でもってするかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、金銭で納付することが困難であるということが大前提でございますし、さらにまた、物納される場合につきましても、その財産につきましては順位がございまして、国債とか地方債、不動産、船舶というのが第一順位になっております。それからその次に、社債、株式証券投資信託、貸付信託というのが第二順位になっておりまして、第三順位に動産が参ります。そういったふうな順序で物納をしていただくとか、そういったふうな形で贈与税並びに相続税の納付をお願いするということでございます。
  190. 永末英一

    ○永末委員 それはあなたの答えられたのは一般論だ。ぼくの聞いているのは、いま直税部長が答えたように、非上場会社の株の評価はいまのような方法でやって、そしてそれがもう決まりだ、こういう話です。そういう価値があると認められるわけだ。それによって納税が発するのだったら、一般納税者の場合にはいろいろなものがあるかもしれませんよ。もしそれが普通の上場株を持っておれば、これは納められませんから上場株で物納します。その評価は時価で決まりますね。ところが、これは上場株でないものだから、いわゆる時価はないわけだ。ところが、法律並びに通達によって時価を計算されるわけですね。そして、実はおまえの相続した非上場株の金額はこれこれだと言うてくるわけだ。それなら納税者の方は、ああそうですか、そんな高いものならこれで納めますと言ったら、あなたの方は受け取らぬというのでしょう。先ほどあなたの言われた第二順位の株式の中に入っていますか。非上場株も受け取るということですか。
  191. 西野襄一

    ○西野政府委員 非上場株も株式の中には入っているのでございますけれども、その場合の物納に当たりましては、管理または処分をするのに不適当であると認められる場合につきましては、その物納申請の変更または却下をされることがございます。この場合の解釈につきまして、売却できる見込みのない有価証券というのがこういったふうなケースに該当するとされているところでございます。  それで、非上場株式につきましての扱いでございますけれども、従来は一律に売却できる見込みのない有価証券というふうに取り扱われてまいりましたために、事実上物納の道が閉ざされているのに近いような状態になっていたところでございます。しかし、この非上場株式につきましても、将来の売却見込み等を勘案いたしますと、必ずしも一律に取り扱うことは適当ではないのじゃないかということで、相続財産のほとんどが非上場株式であって、その株式以外に物納に充てるべき財産がない、さらに金銭による納付が困難である、そういうふうな場合につきましては、将来の売却見込みなどを勘案いたしまして、適当と認められるものにつきましては、その物納を認めることにいたしたい、このように考えております。
  192. 永末英一

    ○永末委員 非常に重要な御答弁をいただきました。  将来の売却見込み等を考えながらというのは、だれがだれに売却するのですか。
  193. 川崎昭典

    ○川崎政府委員 物納株式を引き継ぎまして、財務局がもとの縁故者などに売却する場合があろうかと考えております。
  194. 永末英一

    ○永末委員 いままでの実例によりますと、まず縁故者、すなわち同族が買い取りますと言ったら初めて受け取るということですが、いまのお話ですと、それは未来のことであるから、まず受け取る、売れるか売れぬか実はわからぬ、こういうことでいいのですか。そこは正確にひとつお答え願いたい。
  195. 川崎昭典

    ○川崎政府委員 従来の扱いは厳格過ぎると申しますか、やや不合理な点もあったかと思いますので、国税庁と協議いたしまして改めたわけでございますけれども、たとえば現在は全然買い手がいない、縁故者も資力の関係で買えない、しかし買いたい気持ちはあって将来には買えるであろう、そういったようなものは引き受けるということに改正したわけでございます。
  196. 永末英一

    ○永末委員 もう少し正確に言っていただきたいのですが、買えるであろうというのはあなたの方の見込みですね。相手方が買いますということを言わなくてもいいのでしょう。
  197. 川崎昭典

    ○川崎政府委員 さようでございます。
  198. 永末英一

    ○永末委員 わかりました。  大蔵大臣、これは重要な政策の変換でございまして、大蔵大臣にひとつこの際確認をしておいていただきたい。
  199. 村山達雄

    ○村山国務大臣 物納を受ける方の国税庁とそれからそれを引き継いで管理する側の理財局の国有財産を所管する次長が言っておることでございますから、確認しておきます。
  200. 永末英一

    ○永末委員 きょうの結論は、いままでの政策がより具体的になって、納税者としては喜ぶべきことだと思います。  最後にもう一つ伺っておきたいのですが、それもいろいろな数字、七掛けであるとか、Lの〇・二五、〇・五、〇・七五であるとか、その数字がいわば評価を高からしめている一つの原因であろう。そこで、あなたの方では、株式評価懇談会をつくって、いろいろとそれの検討をしておられるようですが、いまどんなことをやっているのですか。
  201. 水口昭

    ○水口政府委員 取引相場のない株式の評価につきましては、国会におきましてもいろいろ論議のあったところでございます。そこで、国税庁といたしましても、この通達を改正する必要があるのではないかということで、いろいろ学識経験者の方々あるいは利害関係のある方々、そういった方にお集まりをいただきまして、去年の年末とことしの二月に二回懇談会を開催いたしました。そこでいろいろ御意見もちょうだいいたしましたので、国税当局としては、なるべく早い機会に、できれば今月中にも成案を得まして、通達の改正を行いたい。  その内容でございますが、まだ細かい点は決定しておりませんけれども、やはり取引相場のない株式の評価に当たりましても、個人の場合とのバランスを崩すわけにはいかない、それは必要でございますが、しかし、株主の中で余り支配権を持たない株主がたくさんおられるわけでございます。そういった方に余り酷な評価にならないように、その点に重点を置きまして、ただいま具体的な案を得るように鋭意研究をしているところでございます。
  202. 永末英一

    ○永末委員 いい傾向だと思います。同族とはいいましても、株主等の親族だとか、その親族と生計を一にする者が同族会社の支配権を持っているわけではございませんので、今月末を目途にしてやっておられることははなはだ喜ぶべきことだと思います。大体の傾向が定まりましたらぜひひとつ大蔵委員会に報告をしていただいて、われわれの意見も聞いていただいてから通達をつくっていただきたい。右要望いたしまして、質問を終わります。
  203. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  204. 永原稔

    ○永原委員 時間が移ろってという言葉をいつも最初につけなければなりませんので恐縮です。お疲れでしょうけれども、しばらくよろしくお願いいたします。  きのう、きょう、投資減税の問題あるいは租税特別措置法の問題をめぐりまして参考人の方からいろいろ御意見も伺いました、そういうものも参考にしながら大臣のお気持ちを伺ってみたいと思います。  一番最初は、この経済不況の中でわれわれの心配するのは雇用問題です。いままで政策の中で離職者をなるべく出さないように、企業に抱えさせるように手当てをし、あるいは現実に出てきた離職者に対して再雇用を促進させるような助成措置、こういうものがとられてきておりますけれども、現実に失業率は二%を超えるような状況で、百二十六万という失業者が現在ちまたにあふれております。また、潜在失業労働力というのが二百万近いのじゃないかというようなことまで言われております。  そういうようなことを考えますと、雇用対策というのは特に力を入れなければならない点であるのは当然のことだと思います。いまのような過剰労働力を抱えた企業の実態を見ますと、これで本当に労働生産性が上がっていくのだろうか、こういうように疑問を持ちます。しかし、これを放出したならば大きな社会問題が出るなあということで、ジレンマを感ずるわけです。中高年齢層の転職者、この人たちは、終身雇用制がとられておる日本の実態にございますので、なかなか再就職が困難だ、こういうことは否定できない状況になっております。職業訓練で果たしてこの人たちが吸収できるかというと、むずかしい問題が含まれておるように思います。政府が公共事業を増大し、それによって雇用の拡大を図っていこうという気持ちはわかりますけれども、そこで拡大される労働力というのは労働の質が違う、こういうように思うのです。  こういう中で、雇用問題というのはなまやさしい問題ではないなということをつくづく感ずるのですけれども、世界的な同時不況の中で各国ともこの雇用問題には悩んでおり、日本はまだまだ少ないという部類かもしれません。しかしアメリカでは、減税問題がかなり強く訴えられ、また、カーター大統領の政策の中でも雇用促進対策として減税問題が論ぜられております。七七、八年中に七六年と比較して二%以上企業が増員したときに、一社当たり最高十万ドル、一人当たり二千百ドル、こういうような税額控除をする、こういうまさに思い切った政策に訴えておるわけであります。  経済規模も違います。また税体系も違います。そういうことは承知しておりますけれども、この緊急避難というような異常な臨時的な措置をしなければならないような日本の現況において、こういうような思い切った政策というのを大臣はどういうように評価なさるか、お気持ちを伺ってみたいと思います。
  205. 村山達雄

    ○村山国務大臣 こういう不況のときに雇用の問題が一番大きな問題であることは、私も永原委員と全く同感でございます。その意味で、公共事業が最も有効であろうと思ってやっているところでございます。  ただ、税制で入れるかという問題になりますと、私はどうも、やはり歳出の方でやる方が政策としては適当ではないであろうか。御承知のように、今度の不況業種の場合、それを雇い入れたものにつきましては、雇用保険の方でもって出すとか、あるいは一般会計からその雇い入れた人に出すということになっているわけでございます。税でもってやるということはどうしても一律的になってしまう。恐らく好況業種の方がずいぶん雇い入れる余地があるんじゃないだろうか。それは結局、好況業種と不況業種のバランスの問題があるだろうと思うのでございます。もちろん雇用政策というものは一つ政策でございますけれども、どうも感じで言いますと、これは歳出マターではないだろうか。それとまた、雇用の慣習もアメリカとは違うわけでございまして、日本は終身雇用制をとっているわけでございますし、アメリカの方は恐らくそこの点は、企業が悪くなれば所定の解雇手当を出して、そしてどんどん合理的な減量経営をやっていくという雇用習慣ではないか。そういう違いもあって取り入れた税制ではなかろうか。どうも日本としては、どっちかと言いますと、税制には少しなじまぬような気がいたすのでございます。
  206. 永原稔

    ○永原委員 では、その次に進みます。  四十三条で原子力発電設備の特別償却、それが五十六条の五で連動しておりますけれども、この廃止の問題は一応納得ができます。五十五条で使用済み核燃料の再処理の海外委託の問題が出ておりますけれども、海外投資等損失準備金積み立て、百分の四十というのが損金計算されるようになっておりますが、この中で、きのう東電の副社長を中心にしていろいろ御意見を承りました。やはりああいう電力会社が脱石油というようなことで、東電自体は昭和六十年度には現況の半分に依存度を下げる、二七%まで下げる、そういう中で原子力発電のウエートが非常に高まってくるというお話がございました。  一方、国の政策として、設備投資を何とか拡大していきたい、その中で特に電力会社に期待する、電力設備の増加に期待するということが言われておりますけれども、昨日の話では、全体の設備投資が四兆二千億、これは一兆円の繰り上げ発注を入れて四兆二千億というようなことでございました。東電が、自分自身は九千四百五十億、これに二千億の繰り上げ発注をしていこうと思っているというお話もございました。東電自体の消化は大体見通しが立っているのだと胸を張っておりましたけれども、この四兆二千億の消化については立地の困難性ということを非常に訴えておりました。  そういう中で、私ども実際に住民に接触いたします場合にまず最初に出てくる問題が、使用済み燃料についてはどうなるだろうか。私、静岡ですけれども、静岡県民は昭和二十九年、第五福竜丸というのがマリアナで被曝しております。現実に一人死んでいる。そういうような現実がございますので、この放射能に対する危険感というものが非常に心にしみついているわけです。そういう中で使用済み燃料の問題というのが非常に大きく論議されます。  国の計画で、六十年時点で約三千万キロワット、六十五年では六千万キロワットの原子力発電というようなことが計画されておるようでございますけれども、これの使用済み核燃料の処理についてが問題だということで過日私は質問をいたしました。そういう中で橋本資源エネルギー庁長官は、いま五十八年時点までの処理は二千六百七十トン海外に委託契約がしてあるので、それで処理できる、しかし、六十五年時点を考えた場合にそれでは処理ができませんので、現在すでに昨年の九月にフランスと契約を結んだ、さらにいまイギリスと契約を結ぶ交渉中であるというようなお話がございました。これに要する経費が二千五百億、こういうように聞いておりますけれども、それで処理はできるでしょうが、さて、この条文の中で言う内容と関連があるわけですけれども、昨年九月にフランスと契約ができた、その当事者は一体だれだったのでしょうか、その点について伺いたいと思います。
  207. 田中久泰

    ○田中説明員 お答え申し上げます。  わが日本側の当事者は電力会社、つまり東京電力その他日本原子力発電を含めまして十の電力会社でございます。
  208. 永原稔

    ○永原委員 それは五十五条の別表に出ています「使用済核燃料再処理事法人」、これを結成しているのでしょうか。
  209. 田中久泰

    ○田中説明員 そのように承知しております。
  210. 永原稔

    ○永原委員 たとえば五十二年九月にフランスと契約をして、まだ恐らく建設にかかっていないのではないかと思います。実際に二千五百億近い金だということは聞いているわけですけれども、イギリスとも契約を結んでそれを支出していく。六割は開銀資金を融資していただくようになっているのじゃないかと思います。その四割について、いまお話しの十社で結成する法人、これがこの一千億近い積み立てを一遍にやることができるのでしょうか。
  211. 田中久泰

    ○田中説明員 まず、先ほど私、答弁の仕方が正確を欠いたかと思いますが、契約の当事者はそれぞれの個々の電力会社が別々に契約するわけでございます。したがいまして、英国及びこれからフランスに対して融資を行い、あるいは再処理の料金を支払うという当事者もすべて、それぞれの個々の電力会社が別々に行うことに相なるかと思います。
  212. 永原稔

    ○永原委員 そうしますと、これは主税局の方に伺いますけれども、個々の電力会社をここで言う「使用済核燃料再処理事法人」、こういうように読んでよろしゅうございますか。
  213. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 お尋ねは五十五条一項三号の「使用済核燃料再処理事法人」の定義であると思いますが、これは先方の法人のことをここで規定いたしておりまして、ただいまの例で申しますと、フランス燃料公社のことになります。
  214. 永原稔

    ○永原委員 私が取り違えましたので、わかりました。  ただ、この中で五十五年の三月三十一日で実際に積み立てが行われるのかどうか、その見通しはどうでしょうか。
  215. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 これは一般論といたしまして、租税特別措置にそれぞれ期限をつけまして、根元の海外投資等損失準備金そのものに期限をつけておりますので、本件につきましても同様の期限がついておりますが、期限到来のときにこの制度全体をどういたしますか、そのこととの関連で適当な処理を見つけてまいりたいと思います。
  216. 永原稔

    ○永原委員 いまのお答えで、今後問題が出てこようと思いますけれども、解決を図っていただきたいと思います。  次は、ちょっと余談になるかもしれませんけれども、放射性物質、低レベルの廃棄物、これがドラムかんで非常にたくさんたまっている。これが住民に対して非常な心配、不安感を与えるというようなことで、どういう処理計画かということを過日伺いました。未処理分が約八万本あるというようなお話だったのですけれども、翻って考えてみますと、敦賀の日本原子力発電所が運転開始したのが四十五年の三月十四日、もうすでにまる八年近い日を経過しているわけです。それ以後十三の軽水炉の原子力発電所が運転しております中で、八万本というようなものがただたまりたまっているというのではおかしいのじゃないか、こういう気がしてなりません。これの処理について、五十四年に海洋試験投棄をやるというようなお答えがこの前ありましたけれども、なぜこのようにおくれたのか、そういう点についてお答えいただきたいと思います。
  217. 早川正彦

    ○早川説明員 原子力委員会といたしましては、五十四年から海洋投棄を試験的にやってみようという方針でいま進んでいるわけでございまして、先生の御指摘をいただきましたおくれているのではないかということ、実は、海洋投棄の問題については非常に慎重を期したい、同時に、原子力発電所にたまっております非常にレベルが低い放射性廃棄物については、現在発電所の中で十分保管、管理ができるという前提に立ちまして、廃棄物処分につきましては、海洋処分を行う候補地域のいわゆる海洋の環境調査を十分にやる、同時に、固化体の海洋投棄を進めますので、その健全性の試験を十分やるというステップを踏みまして、その上でさらに安全評価をしていこう、その上で海洋試験投棄をやってみたいということで、五十四年に来ているわけでございます。同時に、本海洋投棄の問題につきましては国際的な問題もございます。これはIAEAの勧告ですとか、あるいはOECDの原子力機関の問題、こういうところでいろいろ実績も踏まえておりまして、こういう実績も十分踏まえつつやっていきたい、慎重を期したいというのが現在の姿勢でございます。
  218. 永原稔

    ○永原委員 使用済み核燃料の処理の問題、あるいは幾ら低レベルといっても、原子力の問題というとこれは非常に高度の技術に属しますので、科学になじまない地域住民にとっては非常に危険なものに思えてならないわけです。これについて安全だというような説得が非常にむずかしい。しかも、きのうも東電の方で話をしておりましたけれども、現実にこの説明をするのは企業と住民の間でなされる。大企業に対する不信感というのはどうしても住民にはあるのですね。そういう中で、企業側の説明だけではなかなか納得しない。やはり国の方も積極的にこの事に当たって、安全だというようなことについてはPRを特に徹底していただきたい、こういうようにお願いいたします。  次に移りますが、大臣には少しお聞きいただくようで恐縮ですけれども、この原子力発電所に関連しまして電源三法の交付金の問題がございます。これがことしは二倍に増額されたとかいうようなお話はございますけれども、立地する町村は、財政的に非常に貧弱な町村が多いわけです。生活関連施設についていろいろこの交付金の使途が限定されつつ、その建設費に充当されるというようになってまいります。ところが、この建設費だけでは問題があるわけです。いろいろ施設ができてもそれを維持運営していくのに金がない、こういうようなことについて訴えがありますので、運営費についてもこういうものが使えるようにしたらどうだろうか、こういう質問をしてみたわけですけれども、資源庁の長官は、基準単価を引き上げる、対象施設も拡大する、交付時期の繰り上げを行う、それから、地元の要望に沿うように各省と調整をしていきますというお答えはいただきました。しかし、現実になりますと、すべて行政ベースで考えられてまいります。  たとえばこういう運営費について、特別な財政需要になるじゃないか、だから、もしも交付金が本当に建設費だけに限定されてしまうんであるならば、こういう特別な財政需要を補うために、大規模償却資産の基準財政収入額算入をこういう地域だけでも外せないだろうか、こういう提案をしますと、自治省は、これは一般的な問題に波及するのでできない、こういうお答えになってしまうわけです。しかし、こういうようなものを何か前進する方向で考えませんと、国が非常に設備投資などを期待して、また電力需要からしてもぜひつくらなければならない、こういう原子力発電所が進展しない、こういう事実をわきまえていただきたいと思いますし、これは大蔵大臣の政治的な判断でこういうものに何かできないものかどうか、お考えを承りたいと思います。
  219. 村山達雄

    ○村山国務大臣 これは御承知のように、電源開発促進税ですか、税の方は大蔵省の所管であるわけでございますけれども、その交付の方は、実はあれは目的税でございまして、いわばその基地にできるまでの間、固定資産税相当額のようなものを交付金で出そうじゃないかということで、しかもたしかあれをつくるときに、住民にみんなばらまいてしまったんじゃ何にも残らないから、公共施設のようなものにしようということで、出す方の会計の所管はたしか通産大臣じゃないかと思っているわけでございます。御意見のほどは十分伝えておいて、そして何かいい知恵があるかどうか、私から通産大臣によく伝えておきたいと思います。
  220. 永原稔

    ○永原委員 ぜひよろしくお願いいたします。  原子力発電所のことばかり言って恐縮ですけれども、国の五十年代前期経済計画についていろいろ読ましていただくと、やはり原子力行政の体制が十分でないと率直に反省していらっしゃるように受け取れます。原子力行政体制の改善、強化を図るというようなことが言われておりますけれども、こういうことについて過日河本通産大臣は、内閣全体の問題だからどうしても解決しなければならない、ぜひとも内閣挙げてこれに取り組むのだ、こういう話は抽象的にございました。  しかし、なかなかそれでは納得ができないのです。現実にたとえば原子力発電所が立地している地域、広大な土地は、大部分農地がつぶされております。そういう人たちが、建設期間の六、七年の間は臨時的な雇用が可能でしょうけれども、それが終わったときの自分たちの職業がどうなるか、雇用の場がどうなるか、こういうところに非常に不安感を持つわけです。また、港とか道路とか河川とか、いろいろつくっていただきたいという要望が出てまいります。こういうものについて、通産省にいらっしゃる立地企画官、こういう方が、中央の出先機関を集めながら意見調整をし、一生懸命努力していらっしゃる姿はわかります。  しかし、現実問題はどうでしょうかというと、道路にしても、河川にしても、あるいは港湾にしても、国はそれぞれ長期計画を持っているわけです。長期計画の中でこれをこなしていこうとしますので、これではとうてい地域住民の希望に沿うような事業の進捗は見られません。  そういう中で、私一つ例を申し上げたいのですけれども、たとえば芦浜、これは立地が困難で中電が難渋しているところです。こういう地域へ行ってみますと、あそこには二百六十号という国道が通っておりますが、二十年間かかって十八キロ改良舗装されただけ、まだ五十キロというのが未改良、未舗装になっているわけです。こういうものについて、改良舗装を至急やっていただければ、漁業者も市場に近くなる、地域の発展にもつながるのでわれわれは陳情を続けているのだ、しかし建設省に行けば、長期五カ年計画の中に入っていないということでけっちんを食ってしまう、これではどうして自分たちが賛成できようか、この問題一つとってみても、もっと国が総力を挙げて取り組む姿勢が必要だ、こういうことを訴えてまいります。  そういうようなことについて、総合計画のようなマスタープランをおつくりになるということは伺いましたので、ぜひ実現していただきたいと思いますが、そういうものを消化するのに、挙げて各省が力を合わせなければ、期待どおりの原子力発電所は進展しない、こういうように思うわけです。いま村山大臣がお話しいただきましたので了解はいたしますけれども、原子力関係の閣僚会議で、財政を担当していらっしゃる大臣ですから、こういうものの推進についてぜひバックアップしていただきたい、お骨折りをいただきたい、特にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
  221. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いま原子力の問題はなかなか大事な問題でございまして、今後のエネルギー政策の恐らく中核をなす問題だと思っておるわけでございます。  交付金の交付につきまして、従来いろいろな問題がありまして、整備計画そのものがどういうものをつくっていいかわからぬというようなことでございましたが、今度通産の方でそのマスタープランのようなものをつくってお示しするということでございますので、私たちもその進捗を期待しておるところでございます。いま永原委員からありました点、これまた十分通産省と連絡をとりまして、促進方に努力するつもりでございます。
  222. 永原稔

    ○永原委員 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。  次に、登録免許税、政策減税だと思いますけれども、非常に細かいことで恐縮ですが、この背景にあるものについて伺いたいのです。  七十五条の二、正看、准看の養成施設の保存登記あるいは移転登記、これがそれぞれ五割アップになっています。これは医科大学建設などに絡みまして、また一般の医療水準の向上もありまして、看護婦が足りないということから、そういう政策に基づいてつくられた減税措置ではないかと思いますが、厚生省に伺いますけれども、この看護婦の養成状況というのは一体どういうようになっているのでしょうか。
  223. 都築公

    ○都築説明員 お答えいたします。  看護婦の不足を計画的に解消するために、昭和四十九年を初年度といたしまして五カ年計画を立てまして、看護婦の養成力の拡充、処遇の改善等を図っておりますので、昭和五十三年には約四十九万人を見込んでおるところでございます。
  224. 永原稔

    ○永原委員 現実問題として、それで十分間に合うのでしょうか、目的を達成したと言えるかどうかを伺いたいのです。
  225. 都築公

    ○都築説明員 お答えいたします。  五十一年には就業者が約四十三万四千でございますので、この五カ年計画を一応ほぼ計画どおり達成していると考察いたしております。
  226. 永原稔

    ○永原委員 ですから、目標は達成しつつある、看護婦の養成は一応目標どおり進んで充足されているというふうに判断してよろしゅうございますか。
  227. 都築公

    ○都築説明員 ただいまあります五カ年計画に沿っては、ほぼ達成されていると考えております。十分であるかどうかということについては、今後の労働条件の改善、それから医療の向上、改革等、そういったことを踏まえていかなければならないかと思いますが、ただいまのところ、看護婦需給五カ年計画については、一応その数を満たしていると考えております。
  228. 永原稔

    ○永原委員 なかなかはっきりしたお答えでないと思うのです。二・八体制などを考えますと、現在の看護婦でもまだ足りない、これが現実ではないでしょうか。そういう中で私は、こういうような税の額がどうこうということではなくて、やはり背景にあるもの、本当に目的を達したかどうか、それを見て手をつけるべきではないかということを申したいわけです。  次に移ります。七十六条で、未墾地買収されたような方々に代替国有地を売り渡す場合の保存登記、七十七条で、農業委員会のあっせんによって農地の交換をしたような場合の移転登記、それと、農業経営規模を拡大し、農地の集団化を図るために設けられた七十七条の三の措置、こういうものを見ますと、これが今度は五割増というようなことになっているようですけれども、七十六条は、ゼロから千分の一、千分の三という新しい税率が課せられるようになるようですが、一体農林省はこういうようなものについてどうお考えになっているか伺いたい。
  229. 若林正俊

    ○若林説明員 お答えいたします。  農政推進の立場からいたしまして、法制度あるいは財政金融措置等とあわせまして、必要な税制上の特別措置を講じてまいるということは大変重要な課題だ、このように認識しておりまして、従来から種々努めてまいったところであります。  五十三年度におきます農地関係の税制措置検討当たりまして、新たに発生しております政策しの種々なる課題に税制上どう取り組むかという検討をいたしまして、一方において、新たに御審議いただいておりますが、農地の生前贈与を受けた農業者が猶予措置を講じていただいておるこの人たちが、さらに孫に経営移譲していくという場合に農業者年金基金の経営移譲年金を受けたい、こういう方々が大分ふえてきておりますので、これらの場合に、使用収益権の設定をしましても引き続き贈与税の納税猶予の措置が継続されるよう、さらには相続税につきましても同様の措置が講じられるように積極的に講じてまいりたい。また一方で、いまお話がございました農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域の中で、極力規模拡大等農地の有効利用を図ってまいるという観点から、実は現況が山林原野でありましても農用地として開発するのが適当だというような土地につきましては、これを農地と同様に登録免許税上の特別措置の適用ができるように拡大したいといったようなことを購じながら、他方におきまして、税制上の合理化を促進するというような観点等から見まして、実際件数、金額などの実績を見て、農政上、農政推進の面からそう悪影響がないだろうというような部分につきましては、全体の均衡ある税制合理化という点もあわせ考慮して、これを今回、従来の特例措置の水準を御質問のように引き上げるということをあわせ購じて、総合的な農地税制上の改善合理化を図った、こういうわけでございます。
  230. 永原稔

    ○永原委員 針小棒大に言うつもりはありませんけれども、いまの農業政策をいろいろ拝見していて、去年の福田総理の施政方針では、農民に対して誇りと生きがいを与えるというような言葉が使われ、総合自給力を高め、体質を改善するんだということが強調されました。しかも、国政の基本方針にこれをというようなことを言われて非常に張り切っていたわけですけれども、一体本当に誇りと生きがいがあるのかどうか、こういうことに疑問を持ちます。中川農林大臣に伺いますと、これは国民に食糧を自給率を高めて供給するというのが誇りであり、安定して供給するのが生きがいだ、こういうようにお話しになりました。  しかし現実を見ていくと、農業の実態というのは、体質が改善され、よくなっているとはなかなか思えないのです。減反政策などに一つの例が見られますけれども、ああいう措置をせざるを得ないような状況の中で、本当に農業所得によって生活改善が行われているかというと、そういう状況にない中核的な労働力を確保するというようなことで少しずつ成果が上がっているようなお話がございましたけれども、たとえば農業高等学校を例にとってみますと、実際に卒業して農業につく者、これは現在大学に入っている者まで含めてですけれども、昭和五十年に三〇・三%、五十一年に二九・五%、五十二年に二八・六%、だんだん減ってきているのです。こういう中で、本当に誇りと生きがいを持ったような農業ができるか、こういうことについて私は非常に心配するわけなんです。  いろいろいまスクラップ・アンド・ビルドでもって、スクラップの方もあるかわりにビルドの方もあるというような内容のお話がございました。私は、額の問題ではなくて、やはり背景にある情勢を見ながらこういうものに手をつけるのが本当ではないかという気がしてしようがないのです。  中小企業につきましても、不況の中で今度は、集団化を図るについて建物が軽減の対象になってきたのは前進だと思いますけれども、土地の面についてはいろいろ問題がございます。それぞれ一件の額にすれば二百円だ、三百円だというようなことで大したことはない、こういうことになるとすると、これは考え方の相違かもしれませんが、私は問題だと思うのです。やっぱり背景のことをよく考えてこういう改正には手をつけるべきではないかと思いますが、主務局長いかがですか。
  231. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 おっしゃる御趣旨は、私どもの方も理解できるつもりでおりますが、ただ私どもの立場から申し上げまして、やはり五十一年度以降、政策税制につきましては縮減、整理という方向で全体を処理さしていただきたいということを関係省庁にお願いしておりまして、もちろんその政策効果なりあるいは政策目的というものを一々吟味いたすわけでございまして、政策目的をそのまま認めていればこそ存続という措置をとるわけでございますが、しかしそれにしましても、やはり政策税制によるフェーバーの幅というものは漸次縮減をさせていただきたいということを終始お願いしておるわけでございまして、今回の登録免許税関係の軽減措置の縮減につきましても、延長すべきものは延長いたしておりますが、やはり漸次そのフェーバーの度合いは縮めていくということで、全体としての他の企業関係への特別措置などとの整合性も持たしていただきたいということで、関係省庁と十分論議を尽くしました上で現在のような御提案を申し上げたわけでございます。
  232. 永原稔

    ○永原委員 いろいろ御努力いただいていますので了解いたします。  十条の二、投資減税の関係ですけれども、これは一年限り、いろいろ前倒し効果を期待なさっているように承っております。しかし、昨日のいろいろな参考人意見を伺いましても、これによって大きな前倒し投資が行われるようには余り受け取れませんでした。しかし、一年限りでやっていけばどれだけの成果があるかということには疑問を持ちますけれども、ことしはとにかく設備投資に力を入れよう、こういう方針のもとでこういう一年限りの措置がとられておりますが、仮に七%ことし達成できたとして、やはり来年については福田総理は、七%に近い六%台の成長を期待するようにお話しになっております。今度は、来年はこういう設備投資に期待しないでも、仮にここで七%を達成できれば、来年は設備投資に期待しないでもいいというお考えなのかどうか、その辺はどうでしょうか。
  233. 村山達雄

    ○村山国務大臣 いままでいろんな議論が行われておるわけでございますが、ことしはむしろ設備投資は年の後半から少し出てくるぐらいのところで、やはり本格的な設備投資はむしろことしの後半以降来年じゃないか、こういう大体見通しのようでございます。だから、そのきっかけをつくるというところが一番大事であり、そういう意味で今度一年限りやらしていただこう、こういうことでございます。
  234. 永原稔

    ○永原委員 議論が分かれますので、これもこの程度にしておきます。  実は、四十条の四第一項、地域指定の問題が政令に譲られておりますけれども、どういう国あるいは地域を予想なさっているのか、この点を伺いたいと思います。
  235. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 法律の表現としましては、できるだけ実質的な思想がはっきり出るようにということで法制局に審議をお願いしたわけでございますが、そこにございますように、その法人の税負担わが国に比べて著しく低いということで、それをてこにして租税回避を図ることを防止しようという趣旨でございます。  具体的に政令、さらには個別指定の段階に移りますときに、簡単に申しますと三つのタイプを考えておりまして、一つは、そもそも法人税に相当するような税金を全く持っていないという国ないし地域がございます。これはやはりまずは指定の対象になる。具体的にはたとえばバハマのような地域、これは国と申すより地域と申した方がいいのかもしれませんが、これは指定の対象になると思います。  それから第二のグループといたしまして、特定の所得に対しては法人税を課さないというようなシステムの国あるいは地域がございまして、今回の立法趣旨から申しますと、非常に国際的な業務を行う子会社につきましては、その地域に看板をかけて本店がありましても、その地域から見て外国になる部分、国外になる部分については法人税を課さないというような仕組みがございます。そうしますと、国際的業務につきましては、そういう地域に本店を置いた子会社を置きますと、実際はもうけがありましてもその地域では取られないで済んでしまうということになりますが、そういうものもこれは指定の対象に取り入れるということを予定いたしておりまして、これはたとえばパナマのような国がこれに該当してまいろうと思っております。  それから第三には、法人税はある。あるけれども、その税率が低い。したがって、そのまま留保しておいて再投資をすることが有利であるという状況がございます。これはその「著しく低い」という概念で規定をして、政令、個別指定に移ってまいるということを予定いたしておりますが、その「著しく低い」という考え方は、通常はほかの法律用語の例によりましても、大体半分という用例でございまして、御承知のように、日本に本拠を持っております場合の法人関係税の実効税負担が現在四九・四七%でございますので、大体その二分の一ということで、実効税率で二五%程度以下になっておる国を指定することを考えております。これは具体的には香港がその例に入ってまいろうかと思います。
  236. 永原稔

    ○永原委員 最後に、これは通告してないことで恐縮ですけれども、大臣がこの前じっくり私の質問を聞いてくださいましたソーダ工業の問題です。こういうようなソーダ工業とか、あるいはアルミなど非鉄金属の工業については、電力の多消費型になっているものでございますけれども、こういうものが、たとえばソーダ工業ですと、塩は、これは専売公社を通して自分で価格がどうも操作できない段階ですし、電力も、これも自分で幾ら企業努力をしてもどうにもならない。そういう中で、行政指導を受けて、それに従って非常に苦しんでいるという現実が片方にありますけれども、こういうものは租税特別措置で何か救う道はないかどうか、その辺いかがでしょうか。
  237. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 私ちょっと前回の永原委員の御質問、何かの都合で伺っていなかったのかもしれませんで、ちょっととんちんかんなことを申し上げることになってしまうかもしれませんが、おっしゃいますように、非常に収益的に困っておるという状態でございますと、遺憾ながら税ではなかなか手の打ちようがない。もうけがないところに税でうまく処置をするということは、なかなかいい知恵がないということだけは申し上げられるかと思います。
  238. 永原稔

    ○永原委員 遅くなりました。ありがとうございました。
  239. 大村襄治

    大村委員長 次回は、来る十日金曜日午後五時三十分理事会、午後六時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時二十九分散会