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長島参考人 東京電力の副
社長の
長島でございます。
私からは、最近の
電気事業の
設備投資の
動向、それを
東京電力の場合を
中心にして
概要並びに
問題点について御説明申し上げたいと存じます。
まず
最初に、五十三年度の
設備投資計画をつくるに当たりましての基本的な
考え方、構えについて申し上げたいのであります。
現在、電力の需給
関係、これは幸か不幸か、深刻な不況によりまして
需要が民生用も
生産用もいずれも停滞して伸び悩んでおります。その結果、電力の需給面から申し上げますと安定しております。また、経営収支面におきましても、過般の料金改定によりまして、現在のところ一応小康を得ているような状態でございます。
このように電力の需給とか収支、経営の基本面においては安定しておりますにもかかわらず、少し先——遠い先ではございません、少し先を見ました場合に幾つかの問題がございます。非常に厳しさを増します立地問題、それによる
設備建設の困難化、このような
現状からしますと、近い将来、供給の安定が図られるかどうか、多少の懸念があるわけでございます。
また、世界的なエネルギー情勢の中で、電力の
生産に必要な一次エネルギーの確保が安心して図られるかどうか、ここにも大きな問題がございます。
さらには、資本費とか燃料費を初めとしまして電力原価は毎年上昇の一途でございます。そうしますと、収支の将来
動向がどうなるか、これもわれわれとして非常に心配の種でございます。このように経営上の幾つかの基本的な問題が少し先には山積しておるのでございます。
私
ども、今年度の
設備投資計画をつくるに当たりましては、このような重要な経営上の諸課題、将来に持っておりまする諸課題に思い切って積極的に取り組んで将来に備えることがどうしても必要だ、そういう心構えでございます。そしてあわせて現在、国としての最も重要な課題であります
景気浮揚面のお役にも立ちたい、このように
考えておるのでございます。
そのような
考え方から、具体的に重点を置いた点を申し上げますと、まず第一には、立地問題でございます。この点はますます困難を加えております。これが建設推進上の現在における最大の隘路でございます。したがって、これに対しましては十分なリードタイムをとりまして
計画を立てるとともに、あらゆる努力をこの立地問題の解決に集中しまして
計画の
達成に万全を期し、将来にわたる安定供給の確保を図りたい、これが
中心の最重点を置いた点でございます。電力の
設備は、建設に非常に
長期間を要しますので、電力が不足になった時点ではもう遅いのであります。現在からその体制をとることがぜひ必要なわけでございます。
それから、第二の点はエネルギー問題でございまして、この点につきましては、国際的なエネルギー情勢の
推移をよく見きわめまして、あるいは国としての総合的なエネルギー政策、その線にも沿いまして、今後原子力とかLNG火力あるいは水力等を推進しまして、何とかして少しでも脱石油の方向を志向した電源開発を進めたい、このように
考えております。ほとんど一〇〇%
海外に依存する石油への依存率が非常に現在多い。このままだと非常に将来に不安がございますので、ぜひ脱石油を目指した電源の多様化を図りたいということが第二の点でございます。
それから第三は、従来とも積極的に
実施してまいりましたけれ
ども、
環境対策、
公害対策、
安全対策等の一連の
対策でございます。この面につきましては、ますます今後高度化してまいります地域
要請、
社会要請に積極的にこたえていきたい。これは従来にもやってまいりましたけれ
ども、今後もこれに積極的にこたえまして、いい
社会環境、地域
環境をつくっていきたい、このように
考えておるのでございます。
第四の重点を置きました点は、原価の問題でございます。毎年の
設備投資は非常に巨額になってまいります。この面からの資本費の負担、償却とか金利負担は非常に膨大なものでございます。何とかしてこの
設備投資の巨額化による資本費の負担を抑制するために、あらゆる面にわたりまして効率化とか
合理化を進めまして、
投資による原価の上昇をできるだけ抑制して、料金の安定を最大限図って
長期に維持したい、こういう
考えでございます。これは今年度に限りませんけれ
ども、今年度特に
設備投資計画をつくります上において重点を置いた点は、以上の点でございます。
次には、それによる
設備投資の
概要について、輪郭について、簡単に御説明申し上げたいのであります。
まず、全体の
投資の
規模、
投資額でございます。
当社の五十三年度の
投資額は九千四百五十億円であります。非常に巨額なものでありまして、五十二年度の
実績の推定値、大体七千三百八十億、これは五十一年度に対してかなりふえておるのでございますけれ
ども、その五十二年度の
実績値七千三百八十億円に対しましても二八%の
増加でございます。さらにこのほか、特に
景気浮揚への協力を効果あらしめるために、
投資計画とは別に繰り上げ発注を
予定しております。これが約二千億でございます。そうしますと、繰り上げ発注と
投資額では、
当社一社におきましても一兆を超えるような巨額に達するわけでございます。
御参考までに、これを
電気事業全体について申し上げますと、
設備投資はおおむね三兆二千億と現在算定されております。五十二年度の
実績推定値二兆五千億でございますが、これに対して、
業界全体としても約二七%の
増加となります。また、繰り上げ発注、これは
業界全体でも
実施するように現在検討中でございますけれ
ども、現在の段階では
業界全体の繰り上げ発注約一兆円に達する
予定でございます。したがいまして、
業界全体におきます今年度の
設備投資は、
設備投資額と繰り上げ発注を合わせますと、現在の段階ではおおむね四兆二千億の巨額に達する次第でございます。
次に、そのような
規模の
投資額の、
当社の
設備投資の内容について簡単に申し上げます。
まず
最初に、電源の拡充工事でございますが、経済の全体は今後は低
成長時代に向かうと思うのであります。その面からは、キロワットアワーの
需要は過去の
高度成長期に比べて大きく低下しております。大体六%
程度と
考えられるのでございますけれ
ども、一方、ピーク
需要、キロワットアワーではなくてキロワット、ピーク
需要の方は、冷房
需要を初めとしましていろいろな面から、これはキロワットアワーの
比率よりかなり大きくなります。
当社につきましては、大体ピークの
需要が毎年二百万キロワット以上伸びる
見通しでございます。したがいまして、
設備計画としては、このピーク
需要の伸びに対応する必要がある、それに対応しない限り供給ができないわけでございます。
そういう面から現在着手しておりますのは、現在電源開発で実行中のものは、水力が二百五十万キロワット、火力が二百八十万キロワット、原子力が七百十万キロワット、合わせて千二群四十万キロワットの電源開発工事を着工または着工準備中であります。非常に大きな額でございます。
いま申し上げましたのは五十二年度から継続するものでございますけれ
ども、このほか五十三年度につきましては、新たに電調審で御決定いただくように
お願いしております新規工事は、水力と原子力で二百十五万キロワットございます。
もしいま申し上げましたようなこれらの電源開発工事が
計画どおり順調に
達成されました場合には、将来にわたり大体
需要に対して八%
程度の予備率を持ち得ることになります。このぐらいが供給責任確保のための必要な予備率と
考えておりますけれ
ども、それが確保できる
見通しでございます。
また、この電源開発
計画は、さきにも申し上げましたように、脱石油の方針をとっております。
当社は最大の一次エネルギーの
需要者であります。一次エネルギーを確保して、それを二次エネルギーに転化して、電気として供給しているわけでございます。その所要の一次エネルギーのうち、現在の
当社の石油への依存率は約五四%、半ば以上は現在でも石油に依存しておるのでございます。先ほど申し上げましたように、何とかこの石油依存率を低めたいというのが
計画でございました。その結果、毎年石油依存率は低下してまいりまして、六十年度になりますと、石油にかわりまして原子力とかLNGの
比率がふえてまいります。石油の依存率は、
計画によりますと二七%、ちょうど半減するわけでございます。その面から飛躍的にエネルギー構成というものが改善されることになるのでございます。この電源拡充の工事は、五十三年度で約三千二百四十億円、電源だけで三千二百億円余でございます。
次に、電源以外の送変配電
設備など流通
設備について申し上げますと、それの拡充工事でございますけれ
ども、電源関連の基幹系統あるいは超高圧の外輪系統、さらには東京の都心に入れます導入系統等、
一般の送電
設備、変電
設備、配電
設備等を含めまして、大体
金額にして三千七百八十億円の
計画でございます。工事としては非常にたくさんの工事の集積されたものでございます。
そのほか、既設
設備の改良工事とか、原子力の核燃料代、これも
投資計画のうちに含めております。そういうもので二千四百三十億円を
投資いたしますので、合計しますと、先ほど申し上げましたように、その
投資額だけで九千四百五十億円の巨額になるのでございます。
以上が、
当社の五十三年度
設備投資計画のほんの輪郭でございます。
次に、この
設備投資計画の
問題点とか特色といったものについて二、三申し上げたいのでございます。
第一の点は、先ほど申し上げましたように、
電気事業全体で、繰り上げ発注を含めますと、四兆円を超える、四兆二千億にも達する巨額な
投資計画でございますけれ
ども、それが本当に
達成できるかどうかという点でございます。
この点につきましての最大の隘路、
問題点は立地問題でございます。私
どもとしては、
民間の事業者自体としましては、この点は総力を挙げまして、地域住民の御理解と御協力をいただくための万全の施策と粘り強い努力を続け、何とかして
計画の一〇〇%の
達成を念願している次第でございます。これは従来からもあらゆる努力をこの問題に傾注してまいりましたけれ
ども、さらに全社を挙げてこの問題に取り組みまして、何とかして地域
社会の合意を得て
計画の
達成を図りたいと強く念願しているのでございます。
また、この点につきましては、
政府におかれましても、
計画の
達成に積極的な御支援をいただいております。その点を申し上げますと、まず第一には、重要電源地点を最近追加していただきまして、その立地の推進を図っていただく体制をとっていただいております。第二は、電源三法を活用しまして、電源立地促進
対策交付金の単価を二倍に引き上げるというような措置をとりまして、地域福祉の向上を図る体制をとっていただいております。それから第三には、特に主管官庁におきまして、電源立地官とか連絡調整官の専任者の増員等電源立地推進体制の整備強化を図っていただくとともに、さらには
関係省庁間の協力体制の強化、それから電調審上程の手続を初めといたしまして、電源立地に必要な許認可の円滑化、迅速化等の措置をとっていただくことになっております。
私
どもとしては、このような現在の官民を挙げての努力と誠意は必ずや結実するものと強く期待し、またこれを心から念願しているところでございます。ぜひ皆様におかれましても御支援賜りますよう、この点について幾重にも
お願いを申し上げたいのでございます。
次に、問題と申しますか、第二の点につきますと、これは電力の
投資が
一般に強く期待されております
景気浮揚に及ぼす
影響についてであります。どのような
影響を与えるであろうか、この点につきましては、私
ども量の面と質の面、両面から
景気浮揚とか
経済成長には相当な
影響を及ぼすことができる、このように
考えております。
まず、量の面から申し上げますと、
一般の
民間投資、これは不況とか特に大きな
需給ギャップのために伸び悩んでおります。その中にありまして電力の
設備投資は、先ほど申し上げましたように、対前年比較二七%増と三割近い大幅な
増加であります。また、
民間設備投資全体に占める割合も年々ふえておりまして、
高度成長期には電力の
設備投資は大体五ないし六%でございまして、しかし、これが五十三年度には約一二%に達すると見込まれております。きょうの新聞にも開発銀行さんの、あれは主要
産業の中の電力
投資の割合が出ておりました。あれにも、このような
傾向が入っているのは御存じのとおりかと思います。このように量的にいいまして、電力の
投資は
民間投資の大きな落ち込みを防ぐ支えとなっているのではないかと
考えます。
次に、質的な面から申しますと、電力の
設備投資は
生産の誘発効果の大きい
機械部門への
投資の割合が大きい、大体機器の割合が非常に大きい
投資でございます。そのため、
生産誘発係数と申しますか、そういうものの比較的小さい用地代とか土木、建設部門への
投資の
ウエートが高い公共
投資等に比べましても、波及効果は相当大きいのではないかと
考えておるのでございます。
さらに、前に申し上げましたように、電力
業界では、電力
投資の中でも最も波及効果の大きい火力とか原子力などの電源機器を
中心として約一兆円に達する繰り上げ発注を
予定しておるのでございまして、これはメーカー段階にとりましてはそれなりの効果が期待できると
考えております。
以上のような点から総合しまして、電力
投資の
景気回復に対する
影響はそう小さなものではない、このように
考えております。
以上、五十三年度の
設備投資を
中心にして概略を申し上げましたが、足りないところにつきましては後ほど御質問によってお答えさせていただきたいと存じます。
どうもありがとうございました。