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1978-02-15 第84回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十五日(水曜日)     午後六時二十九分開議  出席委員    委員長 大村 襄治君    理事 小泉純一郎君 理事 野田  毅君    理事 保岡 興治君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 塚田 庄平君    理事 坂口  力君 理事 永末 英一君       愛知 和男君    池田 行彦君       石橋 一弥君    宇野 宗佑君       小渕 恵三君    大石 千八君       後藤田正晴君    佐野 嘉吉君       坂本三十次君    原田  憲君       本名  武君    三原 朝雄君       村上 茂利君    森  美秀君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       池端 清一君    沢田  広君       只松 祐治君    貝沼 次郎君       高橋 高望君    荒木  宏君       永原  稔君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 村山 達雄君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    澤野  潤君         大蔵政務次官  稲村 利幸君         大蔵省主計局次         長       松下 康雄君         大蔵省関税局長 戸塚 岩夫君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君  委員外出席者         外務省経済局国         際経済第一課長 賀来 弓月君         大蔵大臣官房調         査企画課長   大竹 宏繁君         農林省農林経済         局国際部貿易関         税課長     中島  達君         農林省畜産局食         肉鶏卵課長   甕   滋君         通商産業省貿易         局輸出課長   柏木 正彦君         中小企業庁小規         模企業部小規模         企業政策課長  富永 孝雄君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 二月十四日  辞任         補欠選任   宮地 正介君     浅井 美幸君 同日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     宮地 正介君 同月十五日  辞任         補欠選任   林  大幹君     与謝野 馨君   山中 貞則君     石橋 一弥君   小平  忠君     高橋 高望君 同日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     山中 貞則君   与謝野 馨君     林  大幹君     ————————————— 二月十五日  昭和四十二年度以後における国家公務員共済組  合等からの年金の額の改定に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出第三一号)  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律及び国際金融公社への加  盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法  律案内閣提出第三二号) 同月十三日  一般消費税導入反対等に関する請願田邊誠  君紹介)(第八五二号)  宅地買いかえに伴う税の軽減措置に関する請願  (伏木和雄紹介)(第八五三号)  同(大柴滋夫紹介)(第九二五号)  同(大内啓伍紹介)(第九七〇号)  同(春日一幸紹介)(第九七一号)  同(河村勝紹介)(第九七二号)  同(佐々木良作紹介)(第九七三号)  同(高橋高望紹介)(第九七四号)  同(竹本孫一紹介)(第九七五号)  同(塚本三郎紹介)(第九七六号)  同(中井洽紹介)(第九七七号)  同(中川嘉美紹介)(第九七八号)  同(中野寛成紹介)(第九七九号)  同(永末英一紹介)(第九八〇号)  同(西村章三紹介)(第九八一号)  同(山本悌二郎紹介)(第九八二号)  同(和田耕作紹介)(第九八三号)  中古住宅取得に伴う税の軽減措置に関する請願  (伏木和雄紹介)(第八五四号)  同(大柴滋夫紹介)(第九二六号)  同(大内啓伍紹介)(第九八四号)  同(春日一幸紹介)(第九八五号)  同(河村勝紹介)(第九八六号)  同(佐々木良作紹介)(第九八七号)  同(高橋高望紹介)(第九八八号)  同(竹本孫一紹介)(第九八九号)  同(塚本三郎紹介)(第九九〇号)  同(中井洽紹介)(第九九一号)  同(中川嘉美紹介)(第九九二号)  同(中野寛成紹介)(第九九三号)  同(永末英一紹介)(第九九四号)  同(西村章三紹介)(第九九五号)  同(山本悌二郎紹介)(第九九六)  同(和田耕作紹介)(第九九七号)  個人土地建物譲渡所縄の区分に関する請願(  伏木和雄紹介)(第八五五号)  同(大柴滋夫紹介)(第九二八号)  同(大内啓伍紹介)(第一〇一一号)  同(春日一幸紹介)(第一〇一二号)  同(河村勝紹介)(第一〇一三号)  同(佐々木良作紹介)(第一〇一四号)  同(高橋高望紹介)(第一〇一五号)  同(竹本孫一紹介)(第一〇一六号)  同(塚本三郎紹介)(第一〇一七号)  同(中井洽紹介)(第一〇一八号)  同(中川嘉美紹介)(第一〇一九号)  同(中野寛成紹介)(第一〇二〇号)  同(永末英一紹介)(第一〇二一号)  同(西村章三紹介)(第一〇二二号)  同(山本悌二郎紹介)(第一〇二三号)  同(和田耕作紹介)(第一〇二四号)  不公平税制是正等に関する請願外三件(井上  一成君紹介)(第八五六号)  同外二件(飯田忠雄紹介)(第八五七号)  同外三件(池田克也紹介)(第八五八号)  同外一件(池端清一紹介)(第八五九号)  同外五件(石田幸四郎紹介)(第八六〇号)  同外三件(石橋政嗣君紹介)(第八六一号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第八六二号)  同外三件(上田卓三紹介)(第八六一三号)  同外一件(上原康助紹介)(第八六四号)  同外三件(小川省吾紹介)(第八六五号)  同外五件(大橋敏雄紹介)(第八六六号)  同外一件(岡田春夫紹介)(第八六七号)  同外一件(沖本泰幸紹介)(第八六八号)  同外六件(貝沼次郎紹介)(第八六九号)  同(川崎寛治紹介)(第八七〇号)  同(木原実紹介)(第八七一号)  同(北側義一紹介)(第八七二号)  同(久保三郎紹介)(第八七三号)  同(草川昭三紹介)(第八七四号)  同(佐藤観樹紹介)(第八七五号)  同外一件(佐藤敬治紹介)(第八七六号)  同外一件(斎藤実紹介)(第八七七号)  同外五件(坂井弘一紹介)(第八七八号)  同(沢田広紹介)(第八七九号)  同外一件(嶋崎譲紹介)(第八八〇号)  同外二件(新盛辰雄紹介)(第八八一号)  同外六件(鈴切康雄紹介)(第八八二号)  同外六件(田邊誠紹介)(第八八三号)  同外一件(竹入義勝君紹介)(第八八四号)  同(竹内猛紹介)(第八八五号)  同(楯兼次郎紹介)(第八八六号)  同外一件(玉城栄一紹介)(第八八七号)  同外一件(中村重光紹介)(第八八八号)  同(成田知巳紹介)(第八八九号)  同(野口幸一紹介)(第八九〇号)  同外二件(芳賢貢紹介)(第八九一号)  同外六件(林孝矩紹介)(第八九二号)  同(平林剛紹介)(第八九三号)  同(伏屋修治紹介)(第八九四号)  同外二件(細谷治嘉紹介)(第八九五号)  同外二件(松沢俊昭紹介)(第八九六号)  同外二件(美濃政市紹介)(第八九七号)  同外二件(宮井泰良紹介)(第八九八号)  同(森井忠良紹介)(第八九九号)  同(山口鶴男紹介)(第九〇〇号)  同(山花貞夫紹介)(第九〇一号)  同外三件(吉浦忠治紹介)(第九〇二号)  同(和田一郎紹介)(第九〇三号)  同外三件(渡部一郎紹介)(第九〇四号)  同外七件(新井彬之君紹介)(第九三〇号)  同外二件(有島重武君紹介)(第九三一号)  同(井上泉紹介)(第九三二号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第九三三号)  同外一件(大野潔紹介)(第九三四号)  同(大原亨紹介)(第九三五号)  同(岡田利春紹介)(第九三六号)  同(加藤清二紹介)(第九三七号)  同外三件(川本敏美紹介)(第九三八号)  同(北側義一紹介)(第九三九号)  同(草川昭三紹介)(第九四〇号)  同外一件(後藤茂紹介)(第九四一号)  同(佐藤敬治紹介)(第九四二号)  同外二件(斎藤実紹介)(第九四三号)  同(坂口力紹介)(第九四四号)  同(渋沢利久紹介)(第九四五号)  同(新盛辰雄紹介)(第九四六号)  同外五件(瀬野栄次郎紹介)(第九四七号)  同(田口一男紹介)(第九四八号)  同外三件(武田一夫紹介)(第九四九号)  同外一件(玉城栄一紹介)(第九五〇号)  同(千葉千代世紹介)(第九五一号)  同外一件(塚田庄平紹介)(第九五二号)  同外二件(鳥居一雄紹介)(第九五三号)  同(成田知巳紹介)(第九五四号)  同外五件(二見伸明紹介)(第九五五号)  同外三件(野村光雄紹介)(第九五六号)  同外五件(春田重昭紹介)(第九五七号)  同外二件(松本忠助紹介)(第九五八号)  同(矢山有作紹介)(第九五九号)  同(山花貞夫紹介)(第九六〇号)  同外二件(吉浦忠治紹介)(第九六一号)  同外一件(吉原米治紹介)(第九六二号)  同(和田一郎紹介)(第九六三号)  同外二件(阿部未喜男君紹介)(第一〇三九  号)  同外一件(浅井美幸紹介)(第一〇四〇号)  同外一件(有島重武君紹介)(第一〇四一号)  同外二件(井上普方紹介)(第一〇四二号)  同(伊藤茂紹介)(第一〇四三号)  同外二件(市川雄一紹介)(第一〇四四号)  同外六件(小川新一郎紹介)(第一〇四五  号)  同外二件(大久保直彦紹介)(第一〇四六  号)  同外三件(大野潔紹介)(第一〇四七号)  同外三件(近江巳記夫紹介)(第一〇四八  号)  同外三件(岡田哲児紹介)(第一〇四九号)  同外二件(岡本富夫紹介)(第一〇五〇号)  同外二件(沖本泰幸紹介)(第一〇五一号)  同外五件(長田武士紹介)(第一〇五二号)  同外五件(鍛冶清紹介)(第一〇五三号)  同(川口大助紹介)(第一〇五四号)  同外一件(河上民雄紹介)(第一〇五五号)  同(北側義一紹介)(第一〇五六号)  同(草川昭三紹介)(第一〇五七号)  同外三件(小林進紹介)(第一〇五八号)  同外五件(古寺宏紹介)(第一〇五九号)  同外二件(権藤恒夫紹介)(第一〇六〇号)  同(佐藤観樹紹介)(第一〇六一号)  同(佐藤敬治紹介)(第一〇六二号)  同外一件(佐野進紹介)(第一〇六三号)  同外一件(斎藤実紹介)(第一〇六四号)  同(坂本恭一紹介)(第一〇六五号)  同(沢田広紹介)(第一〇六六号)  同(柴田健治紹介)(第一〇六七号)  同(田口一男紹介)(第一〇六八号)  同外二件(田中昭二紹介)(第一〇六九号)  同外五件(竹内勝彦紹介)(第一〇七〇号)  同(武田一夫紹介)(第一〇七一号)  同外一件(谷口是巨君紹介)(第一〇七二号)  同(塚田庄平紹介)(第一〇七三号)  同外二件(中川嘉美紹介)(第一〇七四号)  同外一件(西宮弘紹介)(第一〇七五号)  同外一件(野村光雄紹介)(第一〇七六号)  同外三件(長谷雄幸久紹介)(第一〇七七  号)  同外二件(原茂紹介)(第一〇七八号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一〇七九号)  同外一件(広沢直樹紹介)(第一〇八〇号)  同外一件(福岡義登紹介)(第一〇八一号)  同外三件(古川雅司紹介)(第一〇八二号)  同外五件(正木良明紹介)(第一〇八三号)  同外三件(宮地正介紹介)(第一〇八四号)  同外四件(村山富市紹介)(第一〇八五号)  同(八百板正紹介)(第一〇八六号)  同外三件(矢野絢也君紹介)(第一〇八七号)  同外一件(矢山有作紹介)(第一〇八八号)  同外三件(山田太郎紹介)(第一〇八九号)  同外一件(山花貞夫紹介)(第一〇九〇号)  同外一件(湯山勇紹介)(第一〇九一号)  同外二件(吉浦忠治紹介)(第一〇九二号)  同(渡部行雄紹介)(第一〇九三号)  土地譲渡益重課制度の一部改正に関する請願(  大柴滋夫紹介)(第九二七号)  同(大内啓伍紹介)(第九九八号)  同(春日一幸紹介)(第九九九号)  同(河村勝紹介)(第一〇〇〇号)  同(佐々木良作紹介)(第一〇〇一号)  同(高橋高望紹介)(第一〇〇二号)  同(竹本孫一紹介)(第一〇〇三号)  同(塚本三郎紹介)(第一〇〇四号)  同(中井洽紹介)(第一〇〇五号)  同(中野寛成紹介)(第一〇〇六号)  同(永末英一紹介)(第一〇〇七号)  同(西村章三紹介)(第一〇〇八号)  同(山本悌二郎紹介)(第一〇〇九号)  同(和田耕作紹介)(第一〇一〇号)  個人土地建物長期譲渡所得課税に関する請願  (大柴滋夫紹介)(第九二九号)  同(大内啓伍紹介)(第一〇二五号)  同(春日一幸紹介)(第一〇二六号)  同(河村勝紹介)(第一〇二七号)  同(佐々木良作紹介)(第一〇二八号)  同(高橋高望紹介)(第一〇二九号)  同(竹本孫一紹介)(第一〇三〇号)  同(塚本三郎紹介)(第一〇三一号)  同(中井洽紹介)(第一〇三二号)  同(中川嘉美紹介)(第一〇三三号)  同(中野寛成紹介)(第一〇三四号)  同(永末英一紹介)(第一〇三五号)  同(西村章三紹介)(第一〇三六号)  同(山本悌二郎紹介)(第一〇三七号)  同(和田耕作紹介)(第一〇一三八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一七号)  国の会計税制及び金融に関する件      ————◇—————
  2. 大村襄治

    大村委員長 これより会議を開きます。  この際、一言申し上げます。  先般の委員会において、不測の事態で休憩のまま散会いたしましたことは、まことに遺憾でありました。今後かかることのないよう、円満かつ厳正な委員会運営を行いたいと存じますので、御協力と御理解をお願いします。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。荒木宏君。
  3. 荒木宏

    荒木委員 税財政の問題ではいろいろ質疑もございましたので、私は金融の問題、特に国民金融公庫が扱っております小規模企業経営改善資金と言っておりますが、俗に言うマル経資金について主としてお尋ねをしてまいりたいと思います。  銀行局長お尋ねをいたしますが、このいわゆるマル経資金資金枠がいまかなり余っている、こういう話がありますが、実情はいかがですか。
  4. 徳田博美

    徳田政府委員 マル経資金枠に対する計画と実績でございますが、五十年度は枠が二千四百億ございまして、実績が二千三百四十四億円でございまして、九七・七%でございます。それから、五十一年は枠が三千五百億ございまして、これに対しまして実績が二千七百九十八億円でございまして、七九・九%でございます。
  5. 荒木宏

    荒木委員 去年は八割にいかないで七百億以上余った。この余った分はあとどうしたのですか。枠の余った分はどういうふうに処理されたのでしょうか。
  6. 徳田博美

    徳田政府委員 この枠の余りましたものは使いませんで、返す形になるわけでございます。
  7. 荒木宏

    荒木委員 ことしは上半期もしくは十二月まで出ておると思いますが、どうですか。
  8. 徳田博美

    徳田政府委員 ことしは四千七百億円の枠がございまして、四月から十二月までの実績でございますと二千五百四十六億円でございます。
  9. 荒木宏

    荒木委員 これも年率に直せば八割そこそこということになりますか。  これは国民金融公庫が扱っている。言うまでもなく、一般金融機関で賄えない、そこでは融資を受けるのが困難な国民大衆を対象にしている、これは法律の規定にございますがね。それがこういう時期に無担保、無保証の枠が余って、それが返される。何かこの仕組み、運用の面で検討すべき余地はないのだろうか、いまのままでいいのだろうか、これが私の問題提起であります。  その前提として一言伺っておきますが、マル普といいますか、一般マル経以外の枠はずいぶん余っておりますか、それとも大体そこそこですか。この点いかがですか。
  10. 徳田博美

    徳田政府委員 いわゆるマル普の枠はほぼ消化されております。
  11. 荒木宏

    荒木委員 大臣に御理解をいただくために、若干の数字の資料を用意しておりますのでごらんいただきたいと思いますが、委員長よろしゅうございますか。
  12. 大村襄治

    大村委員長 よろしゅうございます。
  13. 荒木宏

    荒木委員 いま大臣のお手元に差し上げました「国金融資問題点」というリストは、局長から御答弁いただいた数字とほぼ同じであります。  第一表の全体の貸付枠、これは五十一年度ですが、不足が五百九十三億あります。一般口不足が千七百十六億円あります。つまり、申し込みに対してそれだけ足らないというわけです。ところがいわゆるマル経は、一表の一番下にありますが、七百億円余り余っている。第三表に経過年度がありますが、五十年度まではマル経は大体消化されておりましたが、五十一年が八割を切りまして、五十二年は、これは上半期だけですが、三割そこそこしかない。一方で、金融機関から融資を受けるに困難な国民大衆普通口にどっと殺到している。ところが有利なマル経は余っている。言うなれば、ある列車は相当すいているけれども、次の箱はもう満杯で乗客がどんどん押しかけているという状態でありますので、これはこのままでいいのだろうか。制度発足五年になりますが、検討すべき点があるのではなかろうかという感じがするのですが、その点について御所見を伺いたいのであります。
  14. 徳田博美

    徳田政府委員 先年御指摘のとおり、確かにマル経の枠は、四十八、四十九、五十年度まではほぼ完全に消化していたわけでございますが、五十一年に入りまして約八割しか消化できなかったわけでございます。ただ、この間におきます枠の伸びを見ますと、五十一年は前年に対しまして四五%と、非常に大幅に枠が伸びたわけでございます。これに対しまして貸し出しの方も、五十年に前年に対して倍にふえたのを受けまして、なお五十一年は約二〇%伸びているわけでございます。この間におきます一般民間金融機関の、たとえば相互銀行、信用金庫のような中小企業金融機関伸びは一二、三%でございますので、その一般中小企業貸し出しに対する伸びをこのマル経伸びはかなり上回っているわけでございまして、そういう枠との関係もあるのではないか、このように考えられます。
  15. 荒木宏

    荒木委員 私は、それは理由にはならぬと思いますよ。この第二表のところに伸び率がありますけれども、五十一年度で四五%伸ばした。これで八割いかなかったということが実績として出ているわけです。ところが、五十二年度にまたマル経だけ三四%伸ばしている。つまり、実績は傾向としてある程度わかりながら、これは伸ばす必要がありということで伸ばしておられるのだから、そこのところで実績がいかなかったからと言うのは、枠の伸ばし過ぎと言うのは、いわばみずからの立てた目標をたなに上げての釈明であって、私は通らぬのじゃないかと思うのです。むしろ現にそれだけの枠を組んでいる、そしてそれは、それだけの需要があるからだろうということで組まれたものであります以上は、それが活用されるような仕組みの御検討もいただかねばならぬと思うのです。  それで、つきましては、御案内のように、いま仕組みとして商工会議所窓口にしぼられておりまして、そしてそこで経営指導を受けるということになっています。それが条件になっている。これは経営指導経営改善に対する金融的な補完措置ということになっておるわけですけれども、しかし私は、経営改善は果たして商工会議所一手販売であろうか、こう思うわけです。  御承知のように、いま各業界の協同組合も、みずからの組合員経営をどう改善していくか、これは構造不況業種であればなおのこと、それこそわが身のことのようにいろいろ検討もし、工夫もし、誠実に努力もしている。地方自治体も、これは自治体によって制度はいろいろありますけれども、やはり県民のため、府民のため、その自治体内の業者のためにさまざまな制度も設けて、そうして経営指導経営改善にそれこそ日夜努力を傾けている。枠が余っているんなら、それは私は商工会議所役割りは決して否定はしませんけれども、それ以外にも、それ以上に熱心な協同組合自治体経営改善指導をやっているわけですから、そこにもこのマル経資金を活用するという道はないものだろうか、私はこれは素朴な疑問だと思うのです。  もちろん従来の経過とか、あるいは団体間のいろいろな事情などがあることは決して否定はいたしません。しかし、いまのようにいわゆる窓口一本化のままで、指一本触れないで聖域視して、ほかの団体経営指導はこれはもう扱わない、これだけが専売特許という従来のあり方がそのまま踏襲されていいかどうか、この辺のところを私は大臣の政治的な御見解も伺いたいと思うのです。実務的なことは実務的なことでまたいろいろやっていただきたいと思いますけれども、いま国民大衆資金需要がそういう意味では強いときに、大臣の政治的な御所見を伺いたいと思います。
  16. 徳田博美

    徳田政府委員 大臣がお答えになる前に、一応いままでの経緯もございますので、ちょっとお答え申し上げたいと思います。  先ほども申し上げましたように、五十一年度におきまして充足率が八割に達しなかったのは、全体の経済活動の影響もあろうかと思います。それからまた、先年御指摘のように、今後もいろいろ、制度のことでございますから、常に改善、改造が必要でございますので、そのような努力余地もあろうかと思いますけれども、ただ、このマル経制度は、先年御承知のように無担保保証でございまして、金融としてはきわめて異例の措置でございます。したがいまして、これは独立した金融制度と申しますよりは、先生先ほど御指摘のように、小企業経営改善普及金融面からの補完という趣旨でできた制度でございまして、その本質はこれからもその方向で育成してまいりたい、このように考えています。
  17. 荒木宏

    荒木委員 大臣の御答弁をいただく前に、局長にちょっと言っておきますが、私は何も経営改善経営指導否定はしませんよ。そんなことは一言も言っていません。商工会議所専売特許ですか、こう聞いている。局長、わかるでしょう。いま構造不況業種協同組合の幹部の人たちがどれだけ経営立て直しのために心血を傾けているか、局長御存じないはずはないと思うのです。  なるほど商工会議所はいろいろな地域の業種の人が寄っています。しかし、大都市の商工会議所地方の商工会とは、それこそ資本金何百億の総合商社地方の小規模の企業との違いぐらいに千差万別なんだ。しかも、いろいろな業種人たちが寄っている。違う業種のことは、理解はできてもわが身のこととはなかなかいかないのです。構造不況業種協同組合人たちは同じ業種ですから、表も裏もみんなわかっていて、一蓮托生でどう立て直すかということにそれこそ心血を注いでいる。私は、自治体関係者のこの点の努力も、決して商工会議所の役員の皆さんの人後に落ちるものではないと思うのです。  そういう面での経営指導経営改善をどうしてこの設けられた制度に結びつけることができないか。それも私は、つけ加えなさいとは言っていないのです。つけ加えることが適当かどうかの検討がされてしかるべきではないだろうか、いわんや枠が余っているのですからね。いや伸ばし過ぎであるとか、景気の成り行きを見なければならぬとか、いろいろな言い分はあると思うのです。総合的に判断しなければなりませんよ。私は否定はしていません。だが、五年前に設けられたこの窓口一本化の新制度がここへ来ていまの情勢で果たしてそのままでいいであろうか。私はそういう点を踏まえて、大臣にひとつ政治的な御意見を伺いたいと思うのです。
  18. 村山達雄

    村山国務大臣 私の記憶によりますと、これは商工会議所の方の経営改善という一つの方針に乗って、補完的な金融制度として設けられたものと承知しております。そして、その裏といたしまして、商工会議所にいろいろな帳簿上の指導員とか、そういったものもあわせて充員していったところでございます。  いま荒木委員が示されましたように、この枠の食い方は大変なものでございまして、これを見ますと、五十一年度で四五・八%、それから五十二年度で三四・三%、こう枠が伸びておるようでございます。しかし貸し出し実績は、五十一年から八〇を切り、五十二年の上では枠の三〇%ぐらい、こういうことでございます。  それで、いろいろなことが考えられるだろうと思います。いま銀行局長の言ったようなことも考えられますし、また、資金需要があるのかないのか、こういう問題もあるし、それから、枠の方がよけい過ぎるのかどうか、あるいはまた、その商工会議所指導員が一体どのようにやっているのか、あるいはまたそれだけではなくて、もっと広範の、いろいろな機関を使っていった方が有効にこの枠を残さないで使えるのか、そういったいろいろな問題が考えられますので、われわれとしてもこれを十分に検討してまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  19. 荒木宏

    荒木委員 大臣からいろいろな要素を御指摘になりました。その中に、商工会議所だけでいいかどうかという窓口の問題も含めて御検討をいただくという御答弁をいただきましたので、私はその限りで、御検討を続けていただくことを期待したいと思います。  なお、御参考に一、二つけ加えて申し上げておきたいのですけれども、いま指導員の指導の実態を一度見てみよう、こういうお話がございました。中小企業庁見えていただいておりますので伺いますが、商工会議所経営指導員は、国家試験などを受けておる有資格者、公的な、国家が関与した有資格者と決められているのかどうか。それから、もしそうでないとすれば、商工会議所経営指導員以外に、経営診断、経営指導をなし得るような有資格者というのはいまの制度上ほかにあるのかどうか。この二点についてお答えいただきたいと思います。
  20. 富永孝雄

    ○富永説明員 お答え申し上げます。  商工会、商工会議所経営改善普及事業を実施するために経営指導員が置かれておるわけでございますが、経営指導員の資格要件といたしましては、たとえば大学卒の場合には実務経験が二年ということで決められておりまして、それに類するような資格要件が幾つかございます。しかしながら、これは国家試験ということではないわけでございますけれども、こういった資格要件は国と県が相談して決めているわけでございまして、そういった一定の資格要件に従った者を採用いたしまして、それを一定の期間研修をいたしまして、経営相談、経営改善事業の実施のために必要な専門的な知識を十分授けた上で経営指導に当たらせる、そういったことをやっているわけでございます。  経営指導員以外にそういった相談、経営指導をやる者がいるかどうかというお尋ねでございますが、現在、地域の総合的な経済の発展ということを全国的にカバーするという意味で商工会、商工会議所経営指導員をお願いしているということでございまして、そういう意味で、その推薦の窓口といたしましては現在、商工会及び商工会議所に置かれました経営指導員を使っておる、そういう実態でございます。
  21. 荒木宏

    荒木委員 いま答弁がありましたように、公的な試験を経たものではない、大学卒で実務経験二年というのですが、私聞いてみますと、普通の企業に勤めて、たとえば経理課にいてコンピューターをはじくとかそろばんをはじけば、これで二年の経験だというのです。ほかに中小企業経営診断士というのがありますし、あるいは業界組織には傘下の組合員経営指導を長年系統的に研究してきた人もいるわけです。そういうような実際の経営指導に当たる人の資質その他の点からも、私は、窓口の一本化という点については御検討いただく余地があるのじゃないかと思います。  なべて申しますと、商工会議所はいわば地域の各業種を横の面で横断的にカバーしていると思うのです。業界組織は縦の面でずっと組織しているわけですから、経営指導経営診断で横の面をカバーするとともに、縦の面でもその指導の深度を深めていく必要もあるのではないか。そのそれぞれについていわゆるマル経資金金融補完措置をカバーしていくことも考えられるのではないかということでもあります。  そういったことから、ほとんどそれらしい素養といいますか、いろいろな方がおられますから一概に言えませんが、十分制度的に保障されていない、したがって情実が入るという話も間々耳にいたします。商工会議所経営指導員からさらに振興委員という方に仲介を依頼されておるという例が少なからずあります。そこに情実が入り込む、そういったうわさも流れますし、推薦がありますと、国民金融公庫窓口では、普通貸し出しですと現地臨場して臨店調査もする、あるいは直接来店いただいて面接をして金融審査をする。ところが会議所、商工会の推薦のある分は、書類だけでほとんど審査を終わってしまうものですから、金融審査が浅くなるといいますか、そういった話もございまして、現に大臣ごらんいただいていますこの第四表では、管理口比率といいまして、二カ月以上返済が滞れば管理口扱いになりますが、全体の管理口比率が、金額にいたしまして五十一年十一月は一・八九ですが、マル経の方は二・〇二になっています。昨年の十一月は、全体が二・二八になりますが、マル経の方は二・六二、全体が三九%の伸びに対してマル経の方は六〇%の伸びです。比率も二・二八に対して二・六二。普通なら経営指導経営改善を受けておって経営状態がよくなって返済の率がよくならなければならないはずなのに、逆に悪化している。こういう面にもあらわれておりますので、政府系金融機関として、特に無担保、無保証融資の場合は、担当職員がそのことに責任を持つという意味合いからも、金融審査の比重もひとつこの際検討の中に入れられてしかるべきではないかと思いますので、これはひとつ御要望の一つとして申し上げるということにとどめておきたいと思うのです。  時間もなんでございますので、もう一、二つけ加えて伺っておきますが、いま実務のしでは六カ月この指導を受けて、それからマル経融資を受ける、こういうことになっておるようですが、私は、診断能力があれば、過去六カ月、過去一年の業績をいろんな財務書類で見れば大体診断がつくのではなかろうか。いろいろ本人から直接事情も聞いて資料を付加すれば、今後の経営方針も立つのではなかろうか。そしてそのときに窓口は、会議所を通そうとあるいはそれ以外であろうと、いろいろ今後の御検討の課題としてありましょうが、その診断の時点で金融的な補完措置が必要だという判断も間々あり得ると思うのです。それから六カ月たって初めて金融の応援をする、何といいますか、薬を飲ます。注射をする。しかし、診断をしてすぐ注射しなければならぬ、薬を飲まさなければならぬということだってあり得るわけですから、六カ月というものはもっと弾力的に考えてもらってもいいのではないか。つまり、診断をして事後の指導六カ月ということでも差し支えないわけですので、その点の運用について、これは銀行局長から伺いたいと思います。
  22. 徳田博美

    徳田政府委員 お答えいたします。  ただいまマル経貸し出しは先年御指摘のとおり、原則として六カ月以前から経営指導員の経営指導を受けていることが必要、こういう条件になっているわけでございますが、これは原則ということでございまして、実情に応じて若干の変動もあり得るわけでございます。  それから、もう一つの点でございますが、これは単なる金融という面だけでございますと、確かに先生御指摘のとおり、帳簿を見れば何も六カ月間そばにつきっきりでなくても、経営の内容はわかるわけでございますけれども、これは先ほども申し上げましたように、商工会議所、商工会による経営改善普及事業の補完でございますから、やはりこういう小企業の方に記帳をしていただき、そして経営に当たっていろいろ指導に従っていただくということも非常に大事でございますので、その意味からこのような条件がついているわけでございます。
  23. 荒木宏

    荒木委員 いや私、何も経営指導経営改善否定していませんよ。これは大いにやっていただいたらいいのです。実情として往診の回数がまだ少ないという声すらあるぐらいですから。ただ、そのときに、金融措置補完的に講ずるのが必要だと思われる場合に発動する措置としてここの制度があるわけでしょう。それに必ずしも六カ月たったときに初めて、このマル経を使うことが必要だという判断に到達する場合ばかりとは限らぬと、これを言っているわけでありますから、繰り返して申し上げるまでもないと思いますので、その点ひとつよろしくお願いしたいと思います。  時間がなにですので、最後に一、二まとめて大臣にお伺いしておきたいと思いますが、国民金融公庫に国民金融審議会というのがございます。これは法律を見ますと、国民大衆の代表というものが四人入るようになっている。そして総裁の人事その他事業計画も含めて非常に大事なことを御審議なさる機関のように思います。法律では年四回以上という開催日数が決まっておるのですが、私、記録を調べますと、大体その最低の回数しかお開きになっていないというように思います。いまの検討のお約束いただきました問題その他も含めまして、ぜひ国民金融審議会の意見なども徴していただきまして、一般金融機関から金融を受けるに困難な国民大衆法律用語をそのまま使いまして、国民大衆のニーズに合致する機能を果たせるようにひとつ工夫もいただきたい、これが一点でございます。  二点は、倒産防止融資制度がございますが、五十三年三月で期限が参ることになっております。一月の倒産件数は、民間機関の発表によりますとやや減りましたけれども、例年一月は手形交換の数も少ないというので、大体まあ落ち込みということになるのですが、まだ二月、三月に向けていろんな懸念も起きておりますし、場合によっては推移を見て延長ということもひとつ御検討いただきたい。内容の改善の声も出て、おりますので、あわせてその点もひとつ御意見を伺っておきたいと思います。  最後に、実は昨年与野党の減税による予算修正の話がございました。私、大蔵省の広報誌である「ファイナンス」を拝見いたしますと、昨年の三月九日の記者会見の模様が出ておりまして、坊大蔵大臣が記者の皆さんの質問に答えて、「財源を公債発行によって賄うという方針はないか。」という質問に対して、「そのつもりはない。だから難しい」こうお答えになっているのです。こうした事態が、本年いろんな推移が考えられますけれども、進んでまいりましたときの財源についての大臣の御所見。  あわせて以上三点について御見解を伺って、質問を終わりたいと思います。
  24. 徳田博美

    徳田政府委員 最初の、国民金融審議会の件でございますが、これは実際に開催した件数のほかに、そのほか緊急を要する案件につきましては持ち回りで審議をいただくことも行っておりまして、重要な案件についてはいまいろいろそういう意味で御審議を願っているわけでございます。  それから、倒産関連の特別融資制度につきましては、いろいろ経済の実情を踏まえながら検討してまいりたいと考えております。
  25. 村山達雄

    村山国務大臣 いまのお話は、坊大蔵大臣のお話を出されたのは、恐らく五十三年度の予算に絡んで減税をやる場合のお話ではないかと思うのでございますが、その御質問であれば私たちは、いま出しておる予算、歳入を含めましてあるいは税制案を含めまして、ベストの案を出していると思っているのでございまして、そのような意味で、いま提案申し上げておる以外の減税をやるつもりはないのでございます。
  26. 荒木宏

    荒木委員 終わります。
  27. 大村襄治

    大村委員長 永原稔君。
  28. 永原稔

    ○永原委員 大蔵大臣の財政演説、また所信表明を伺いまして、お考えは理解できるのですが、さらに突っ込んで少し掘り下げた質問をしてみたいと思います。  非常に安定成長ということが言われておりますけれども、思い起こせば、池田内閣のときに所得倍増計画ということが言われました。あのときは経済成長率七・二%、十年間で倍にするんだというようなキャッチフレーズであったわけです。しかし、現実は経済開発が中心でございましたので、非常に高度成長を遂げたような施策が展開されたと思います。三十八年に首班の更迭があって、安定成長路線への転換、社会開発への転換ということがうたい出されました。しかし、現実はやはり同じような高度経済成長が見られたわけですけれども、大蔵大臣のお考えになっていらっしゃる安定成長というのは、どの程度のことをお考えになっていらっしゃるのか。また、速やかに着実な回復軌道に乗せる、乗せたいというようなことをお話しになっていますけれども、どの程度の経済成長、それが安定成長であり、また好ましい回復軌道であるのか、そういう点についてどうお考えになっていらっしゃるのか、承りたいと思います。
  29. 村山達雄

    村山国務大臣 高度成長あるいは減速成長、これが私は言いますと、対立する概念ではないか。その高度成長においても、安定的にいく高度成長もありましょうし、それから減速経済のもとにおきましても、安定的な減速経済、こういうもので、私の理解では、安定という概念と高度かあるいは減速かというのは別の話ではないかと思っておるのでございます。  そういった意味で、私見でございますけれども、何と申しましても高度成長は、やはりいろいろな要素がございますけれども、決定的に一番大きな問題は世界的な技術革新、そして日本がその革新技術を輸入した、それが一巡したという点が最大ではないかと私は思っておるのでございます。さらにオイルショックの問題もあるわけでございますけれども、こういう三つの要素から、日本はもう高度成長はまずできない、やろうと思っても、どんな政策をやってみてもできないと思っておるのでございます。  現状はどうかというと、減速経済になっているのですけれども、非常にバランスが悪い。つまり私の言う意味では、まだその減速経済下における安定軌道に乗っていない、そういうことを申し上げたつもりなのでございます。特に経済成長という面から見ましても、マクロから見ましても、石油ショック以来、マイナスになりましたり、それから三・七になったり五・幾らになったりということがありますけれども、特にその内容を見てみますと、民間企業が非常に悪い。これはもうドイツやアメリカ等に比べてみまして、なるほど成長率の面では日本の方が高いのでございますけれども、非常に無理をしていまの成長を保っておる、これは長続きのしないやり方でやっていると私は見ているわけでございます。そういう意味で本米、現在のような経済体制のもとではやはり民間経済が主導型にならなければならぬ。企業あるいは家計消費、こういったものがやはり主導的になって、そして減速経済下なら減速経済下で整合性のとれた形にしなければならない。  それで、それなら一体どれくらいの成長率を考えているのかと申しますと、政府の方でもいろいろ計算しているわけでございますけれども、まあ六%強ぐらいはいけるのじゃないだろうか、こういう測定をいたしているわけでございます。
  30. 永原稔

    ○永原委員 ケインズの理論でいろいろ展開してきた経済政策ですけれども、完全犀川というのがこの六%成長の中で本当に達成できるだろうか。いま二・一%ぐらいの失業率というのが一体、どのくらいになったら完全雇用と言われるでしょうか。そこら辺についてのお考えはどうでしょうか。
  31. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 先生御承知のように、昭和五十年代前期五カ年計画で、昭和五十五年度のわが国経済の姿を描いておるのでございますが、先ほど申しましたように、その中では成長率は六%強という伸びを見込んでおるわけでございます。失業率でございますけれども、その六%強の成長率のもとで失業率は、五十五年度の予測値といたしまして一・三%程度というふうに見込んでおります。この程度の成長によりまして、完全雇用がほぼ達成できるという姿を想定しております。
  32. 永原稔

    ○永原委員 景気回復に財政が主導的役割りを果たせるかどうかということでございます。この前私がお伺いしたときに大蔵大臣は、やはり財政の経済に対する立場は補助的手段である、こういうようなことをお話しになり、ただ、こういうように景気が非常に停滞している中では、いままでのような役目でいいのか、もっとここ数年の間、あるいは少なくとも来年は直接需要を喚起するようなそういう役割りを、財政は果たさなければならないようなお考えを述べられたのを記憶しております。  そういう中で私、大竹課長に伺ったのですけれども、五十二年の六・七%に対する財政の寄与率、こういうものを伺いましたらば、一九・四、一次補正を加えて二三・八ですか、第二次補正を加えると二六・一というように私は伺っておりますけれども、そういう立場で本当に財政が主導的な役割りを果たせるだろうか、ここに一つ疑問を持つわけです。しかも、この財政の寄与率は別に公共事業だけではございません。経営部門支出の寄与もあるわけで、そういうものを見ていったときに、いまのように公共事業だけで本当に財政の主導的な役割りが果たせるだろうか、ここに疑問を持ちますけれども、こういう点についてはいかがでしょうか。
  33. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 五十三年度の経済成長の達成の上におきまして財政が主導的な役割りを占めておるということは、たびたび申し上げているとおりでございまして、もちろん財政だけで望ましい経済成長の姿になるというわけではございませんで、財政、特に公共事業を中心といたします財政規模の拡大によりまして、その波及効果がいずれ民間の自律回復力を引き出すという想定をいたしておりまして、全体としての経済が望ましい成員の姿を実現するものと期待をしておるわけでございます。  その場合、財政がどのくらいの寄与をするかということでございますが、国民総支出の中で財政支出が占めておりますウエート、増加に対するウエート、すなわち寄与率でございますが、これは二七%というふうに見ております。
  34. 永原稔

    ○永原委員 いまお話がありましたように、国民経済の大宗を占めるのは民間経済だ、こういうようなことで、民間経済の自律回復力を喚起する必要があるということを大臣は御指摘になっていらっしゃいます。そのために、住宅建設や設備投資の促進のため予算、税制あるいは財投計画を通じて所要の施策を講ずるのだ、こういうことをお述べになっていらっしゃいますけれども、自律回復力をいま鈍らせている原因は一体なんでしょうか。
  35. 村山達雄

    村山国務大臣 私は、端的に申しまして二つあると思うのでございます。  一つは、在庫が多過ぎるという問題でございます。したがって、なかなか政府のとる政策が最終的に設備の稼働率まで及ばないという問題が一つ。それから第二には、過剰設備の問題が一般的にあるだろうと思うのでございます。特に構造不況業種において過剰設備が多い。この二つがやはり大きな要因ではないか、かように思っております。
  36. 永原稔

    ○永原委員 私はもう一つあると思うのです。というのは、ことさらに国家財政が非常に窮乏している、こういうような悲壮感に満ちた訴えが一つなされております。また片一方では、それを克服するために増税が必要だ、こういうことが非常に強く訴えられています。円高現象の中で不況が続き、失業のおそれ、こういうようなものが心理的に国民に大きく影響しているのではないか。やはり国民総支出の中で大きな比重を占める消費支出がそう期待どおり伸びないというのが、この不況の大きな要因になっていると思いますけれども、こういう心理的な影響というものが企業家マインドを縮小させているし、また、大衆の貯蓄性向を高めるというようなことにも作用していると思うのです。非常にハードないろいろな計画というのが示され、ソフトなビジョンというものが何も示されていない、こういう気がするのです。しかも、公共事業だけやればいいのだ、こういうようなことで本当に国民がそれで納得するかどうか、その点について大臣はどうお考えでしょうか。
  37. 村山達雄

    村山国務大臣 要素を挙げれば、もう切りがないと思うのでございます。私の申し上げているのは、どこから手をつけるのか、それからまた、政府がなし得ることは何なのか、その問題に的をしぼって申し上げているつもりなのでございます。  おっしゃるように、現在完全失業者が多いとか、あるいは企業内失業者が多いとか、あるいはまた、いま少しは落ちついてまいりましたけれども、物価の情勢とか、それから明るい見通しがないとか、それから円高の要素があるとか、もろもろの問題は、全部やはり国民の消費マインドあるいは企業の活動意欲、そういうものに影響していることは違いございませんけれども、その中心点は何なのだということになりますと、さっき申しましたような中間在庫が多過ぎたのだ、それから石油ショック以来、ほかの国に比べて非常に設備投資をよけいにやっておったのだ。それが他国に比べまして——特に私が申し上げているのは、ほかの国に比べて日本がいまマクロで相当の数字を示しながら、ミクロでなぜこんなに苦しんでいるかということは、その二つの点じゃないだろうか、こういうことを申し上げておるのでございまして、そしてそれを解決する政府の持っている手段といたしましては、やはり公共投資をどんどんやっていく、思い切って何年分——何年分と言ったらなんでございますが、思い切った措置で、大変な財政負担になり、それから公債発行も大変なんでございますけれども、ちびちびやっておったのじゃ、これは大変だという感じでございまして、それを早く直すこと、そしてやがて経済が回復することによって財政の健全性の基礎は築かれる、こう思っているわけでございます。
  38. 永原稔

    ○永原委員 昨年坊大蔵大臣は、公共事業は地域的にも業種間にもばらつきがある、跛行性がある、こういうようなことを率直にお認めになっておられました。やはり公共事業だけということでは、そういうばらつきは否定できないと思いますけれども、現実にそういうものがこの経済の中に見られたのではないでしょうか。そういう点はどうでしょうか。
  39. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 業種的なあるいは地域的なばらつき、回復の跛行性といった現象は、昨年そういう現象があったことは事実でございますし、最近におきましても、いわゆる構造不況業種と言われたような業種の存在というものもあるわけでございます。もちろん公共事業を通ずる総需要の拡大というものが、こうした構造不況業種に対しましても需給ギャップの縮小に寄与するということはあるわけでございますが、そのほかに予算、財政投融資あるいは税制といったあらゆる政策手段におきましても、構造的な対策を講ずることによりまして、こうしたいわば地域的あるいは業種的な跛行性の是正という問題にも取り組んでおるところでございます。
  40. 永原稔

    ○永原委員 昨年、公共事業を七三%、前倒しで実施なさいましたけれども、これによる効果というのはどの程度だったのでしょうか。
  41. 大竹宏繁

    ○大竹説明員 昨年と言いますか、五十二年度でございますが、七三%を上期に集中し、執行するということで、鋭意この促進を図ったわけでございまして、その結果といたしまして、公共事業関連の諸指標を見ますと、最近その効果がかなり浸透してきておるということは申し上げてよいかと思います。  たとえば建設資材の出荷が非常にふえておる。建設資材の価格が非常に低落をいたしまして、そのために非常に不況に陥っておりました業種もございましたが、価格もやや回復に転じておる。あるいは建設業の新規の雇用というものもふえておるというような状況でございまして、そうした公共事業関連の業種を中心にいたしまして、実体経済に公共事業の施行の促進という効果が及んできておるということは申し上げられると思います。
  42. 永原稔

    ○永原委員 公共事業が効果を上げてきているとおっしゃっても、結局建設資材という限定されたものに成果が見られているので、一昨年、五十一年度が実質五・七%ですか、五十二年度が五・三%、実質成長率がそのくらいにとどまっております。その中で、昨年は特に九月の総合経済対策をお考えになって、二兆円規模程度の公共投資を追加するというようなこともなさいました。そうやってもなお五・三%にとどまってしまった。さらに第二次補正も加えてそうなっているわけですけれども、こういう中で、本当に公共事業だけでは景気の浮揚に結びつかないという気がしてしようがない。やはり浮揚の要因として、公共事業だけだったらばらつきもありますので、全体への波及というのが非常におくれるし、公定歩合の引き下げ、これは大蔵大臣がいまおっしゃったように、集中的にやらなければ意味がないのだという、端的な例になる一つのケースだと思いますけれども、昨年はかなり何回も何回もやったけれども、結局実効が上がらなかった。また、要因として考えられるのは減税があるわけです。そういうようなものを複合的に考えていかなければ、公共事業だけを集中的にやると言っても、成果が上がらないのではないかという気がしてしようがない。  そういう中で、減税と言いますと、財政がこういう窮迫状態にあるので、もうできないというお答えが返ってくるのですが、しかし、緊急事態にある、こういうのを乗り切るためには、そういう要因を複合的に考えて成果を上げるように政策を展開すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  43. 村山達雄

    村山国務大臣 まず公共事業のばらつきという問題でございますが、確かにそういう点は非常に気をつけなければならぬと思っているわけでございまして、それであればこそ——公共事業は何と申しましても、直接仕事が出るわけでございます。また、どれだけふえるかは別に波及効果を見なければなりませんが、直接雇用の増につながることは当然なことでございます。その程度がどれくらいであるかということはいろいろな問題があると思うのでございます。  それで、ばらつきの問題でございますが、今度は比較的雇用効果の多い、そしてまた同時に、立ちおくれております生活関連の方に非常にふやし方をよけいにしておりますことは、社会資本の増加率をずっと見ていただくとわかるわけでございます。地域的にもどうするかという問題は、これからの実施計画の問題でございますが、予算委員会等でも十分指摘をされておるわけでございますので、社会資本を種類ごとに、おくれているもの、あるいは雇用効果の高いもの、地域的に比較的雇用問題のやかましいところとか、あるいは不況業種の多いところとか、そういったところにやはり重点を置くようにしてやってまいりたい。それとスピードをかけて早くやりたい。あらかじめいろいろな部内手続を進めておりまして、予算編成ができましたら実施計画をやろうとしているところでございます。したがって、従来ありましたような御批判を受けたような点を踏まえまして、そういうことがないようにということはできるだけやるつもりでございます。それが第一点でございます。  それから第二点の、ほかの政策も織りまぜたらどうかというお話なんでございますが、私はどうしても同じ財源であるならやはり公共投資が一番適当であろうと思っておるのでございます。それで、今度の大変な公共債を発行するわけでございますけれども、言ってみますと、いまの消化能力は幸いにして——幸いといいますかあるいは不幸にしてというのですか、民間の資金需要が出ておりませんので、もう筒いっぱいそれを有効に活用させていただく意味で、公共投資に余資は全部使わせていただく、こういう計画を持ってそれでやっているわけでございまして、総理は国家資金を動員してと非常に大げさな言葉を使いましたけれども、民需に回るもの以外は民間資金をほとんど活用させてもらおう、こういう意味でやっておるわけでございます。したがいまして、資金的にももういっぱいのところじゃなかろうか。結局貯蓄の範囲でやるわけでございますので、民間の需要を考えますと、この辺がぎりぎりいっぱいのところではないか。それは今度の特例公債も入りますけれども、建設公債を合わせまして大体二十一兆二千億くらい公共債が出るわけでございますが、大体いっぱいいっぱいのところじゃなかろうか、かように思っているわけでございます。
  44. 永原稔

    ○永原委員 御趣旨はわかるのです。だけれども、やはり公共事業だけでは、先ほど指摘しました国民に明るさを与える政策にはならない。同一の財源をより有効に使うには公共事業だとずっとおっしゃいますけれども、また国民に希望を与えるような政策も必要だ。たとえばいま教育減税というようなことを私どもは主張しておりますけれども、教育に熱心な方々の授業料負担というようなものが非常に重荷になっている。こういうようなものも軽減するんだという措置こそ国民に明るさを与えるのではないか、希望を与えるのではないか、そういう気がしてしようがないのです。そういう点についてのお考え、これは伺っても結論はもう変わらないと思いますけれども、ぜひそういうことを考えていただく必要があるのではないか、このことを指摘しておきたいと思います。  時間が来ておりますのであと一、二にしぼりますけれども、いま国民の貯蓄を使うのだというようなお話がございました。最近の金融情勢から見て、公債発行が民間金融圧迫の恐れになるとは考えられないというような御説明がこの前もあったわけです。そういう中で、黒字減らしの一環としてでしょうか、市場の開放政策というようなことも推進するようにおっしゃっていましたけれども、円建て外債が非常に増加していく傾向にある。これは黒字減らしとして必要な政策かもしれません。しかし一体どの程度まで開放に向かっていくのか。それがいまお話のあった二十一兆二千億に及ぶそういう公債消化に何か影響はないだろうか。その点についてはいかがでしょうか、
  45. 村山達雄

    村山国務大臣 それは別の見地で、まあ黒字減らしには結果的にはなるわけでございますけれども、主としてはそっちの方ではなくて、日本の国を考えてみますと、やはり自由経済、世界的な資本の交流あるいは貿易の自由というものがなければ、日本はほとんど立っていかないことは当然でございます。そして万一世界の動向が保護主義的な立場になったとすれば、恐らく世界でもって一番苦しむのはわが国であろうと思うわけでございまして、そういう意味で日本は、貿易はもちろんの話、資本市場もどんどん国際化していかなければならない。そういう意味で、いま円建て外債は、幸い日本は金利が非常に安うございますから、非常に需要が多いわけでございます。しかし、その程度というものは、伸びた率からいいますと、今年は恐らく昨年の倍ぐらいになると思いますけれども、全体の資金量としてみるとそれほどのものではない。むしろ資本市場発達という意味の方から評価すべき問題ではなかろうか。結果において黒字減らしになることは当然でございますけれども、黒字減らしのためというよりはむしろ国際経済の立場、特に日本の資本市場あるいは公社債市場育成、こういう見地からやっているわけでございます。
  46. 永原稔

    ○永原委員 まあ三十一兆二千億についても影響はないということですね。  それで、これは御説明の中にあったのですけれども、「市中保有の国債残高の増加に顧み、今後とも安定的な投資家の育成」を図るというようなお話をなさっておりますが、「安定的な投資家の育成」というのはどういうことを考えていらっしゃるのでしょうか。
  47. 村山達雄

    村山国務大臣 これは何と申しましても、やはり個人消化が一つの大きなポイントである。それから、機関投資家をだんだん育てていくという問題が一つあると思います。そのためには、幾つかの問題がございますけれども、一つはやはり公社債市場の実勢に合わせて——そこにおのずから流通利回りが出るわけでございますから、それに合わせて発行条件というものを考えていかないとなかなか消化しにくいということが一つあるだろうと思うのです。そうでないと、従来悪口言われたように、あれは押しつけ金であるとか、あるいは上納金であるとかいうようなことを言われるわけでございまして、決してほめたことではないと思って、この点を十分考えていく。  それから第二番目は、やはりニーズにこたえるために発行条件についていろいろな種類を入れていくことではないであろうか。五年の割引債をやりましたり、あるいは発行条件をしょっちゅう変えているわけでございますけれども、そういった工夫も要ると思うわけでございます。  同時にまた、投資家のことを考えまして、情報をたくさん提供するということで、いま国債の気配相場のようなものを証券業協会に定期的に出させているとか、こういう市場条件の整備、こういったことも、細かいようでございますけれども、やはり大事なことではないだろうか。そういった各般の施策を講じながら、資本市場あるいは公社債市場の育成に努めているところでございます。
  48. 永原稔

    ○永原委員 最後に、都市銀行の保有国債の放出というケースが非常にふえてきているようですけれども、これは投資家への影響というのは出てこないでしょうか。
  49. 村山達雄

    村山国務大臣 これは無理に抑えるというのはできるだけ早くやめた方がいいな、実はこう思っているわけでございます。しかし、実際問題として、なかなか急にはいきませんけれども、いわゆる引き受け債の乗りかえ制度の問題につきまして、われわれいま検討を進めているところでございます。本来から言ったら、あるべき姿から申しますれば、やはりそれが自由に売却できるような市場体制を早くつくるということが理想ではないだろうか。しかし、いま急にやりますと、なかなか大変な問題を起こすわけでございますので、そこは漸進的に、また弾力的にいま考えているところでございます。
  50. 永原稔

    ○永原委員 時間が来ましたので、終わります。      ————◇—————
  51. 大村襄治

    大村委員長 次に、関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府より提案理由の説明を求めます。村山大蔵大臣。     —————————————  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案     〔本号(その二)に掲載〕     —————————————
  52. 村山達雄

    村山国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  この法律案は、最近における内外の経済情勢の変化に対応し、関税率等について所要の改正を行おうとするものであります。  以下、この法律案につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一は、東京ラウンド妥結前の関税の一括引き下げであります。  御承知のように、東京ラウンド交渉は、関税の引き下げや非関税障壁の軽減撤廃を通じて世界貿易の拡大と自由貿易体制の維持を図ること等を目的として、目下本格的交渉の段階に入っておりますが、わが国はこれに積極的に取り組んでいるところであります。  政府は、かかる東京ラウンド交渉の妥結促進を通じて保護貿易主義の高まりを抑えるとともに、わが国の輸入の増大に資するため、同交渉の妥結前に、乗用自動車等百二十四品目について関税率の引き下げを行うことといたしております。  また、この関税率の引き下げ措置による不測の影響に機動的に対処するため、本措置により特定の貨物の輸入が増加し、国内産業が相当の損害を受け、または受けるおそれがある場合は、政令で貨物を指定し、この引き下げ措置を停止することができることといたしております。  なお、これらの改正事項の施行期日については、東京ラウンドが本格化しているこの段階において、交渉の妥結促進を図ろうとするわが国の姿勢を具体的に示すとともに、輸入の増大に資するという所期の目的をできるだけ速やかに達成するため、他の改正事項に先立ち、改正法の公布の日から施行することとしております。  第二は、原重油関税の改正であります。  政府は、別途御審議をお願いいたします石油税法案により石油税を創設し、石油対策の財源を拡充することとしておりますが、これに伴い、原油関税について、その税率を現行の一キロリットル当たり七百五十円から六百四十円に引き下げることとし、重油関税の一次税率についても、これに見合う引き下げを行うことといたしております。  また、比重の高い原油のうち、石油の安定的な供給の確保を図るため特に必要があるものとして政令で定めるものについて、国内への引き取りの円滑化に資するため、その関税率を暫定的に一キロリットル当たり百十円軽減することといたしております。  なお、これらの改正に伴い、石油化学製品製造用原油等に係る関税の減税、還付制度につき減税、還付率の調整を行うことといたしております。  第三は、その他の関税率等の改正であります。  まず、最近における産業の状況等を勘案して、以下の三つの措置を講ずることといたしております。  その一つは、麦芽について関税割当制度の一次税率を一〇%から五%に引き下げるとともに、二次税率を一キログラム当たり二十円から三十円に引き上げることとしております。  その二は、アルミニウムの塊を新たに関税割当制度の対象として、割当に係る数量に適用される関税率を現行の九%から五・五%に引き下げることとしております。  その三は、鉛の塊の無税点を精製鉛の場合一キログラム当たり百五円から百四十円に引き上げることといたしております。  次に、昭和五十三年三月三十一日に適用期限の到来する大豆、トウモロコシ等七百六十六品目の暫定税率の適用期限を一年間延長するとともに、給食用脱脂粉乳の免税等各種の減免減制度について、適用期限をさらに三年間延長する等所要の改正を行うことといたしております。  また、今回の関税率の引き下げ及び別途御審議をお願いいたします酒税法の改正等に伴い、入国者が携帯して輸入するアルコール飲料に対する簡易税率表につき、所要の改正を行うことといたしております。  このほか、関税率表における物品の分類のための品目表に関する条約で定められている品目分類の国際的基準が改正されたことに伴い、関税率表についても所要の調整を行うことといたしております。  以上、この法律案につきまして、提案の理由及びその概要を申し述べました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  53. 大村襄治

    大村委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。     —————————————
  54. 大村襄治

    大村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。沢田広君。
  55. 沢田広

    沢田委員 関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案に関連をいたしまして、若干数点にわたりましてただしてまいりたいと思います。  最初に、これは大蔵大臣にお伺いをいたしますが、今度の東京ラウンドによるということを主体にした引き下げでありますが、七%成長とこの引き下げとはどういう関係にあるのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  56. 村山達雄

    村山国務大臣 七%成長に直接この分が幾らカウントされているという意味では、それほどの関連を持たないと思います。しかしこのことはやがてむしろ、関税率を下げることによりまして、輸入の促進あるいはわが国を含む世界経済の拡大均衡を目指しているわけでございますから、そういう意味で申し上げれば、やはり何ほどか七%に関係する部分もなしとしない、こういうことであろうかと思うのでございます。
  57. 沢田広

    沢田委員 経常収支六十億ドルにするということは、関税の引き下げと当然関係をしてくるものだと思いますが、いかがですか。
  58. 村山達雄

    村山国務大臣 お説のとおりであります。
  59. 沢田広

    沢田委員 とすれば、七%の成長は外圧ではないということを言ったが、結果的には東京ラウンドによる妥結によって、強いられたという表現が適切であるかどうかは別といたしまして、その因果関係というものはきわめて深い、夫婦みたいなものだ、なかなか切っても切れない、こういうことだということになりますが、いかがですか。
  60. 村山達雄

    村山国務大臣 これはもう御案内のように、外圧とかなんとかいう問題ではございませんので、東京ラウンドは四十八年の九月に東京で行われたわけでございまして、当初はたしか一九七五年くらいまでにやりたいということで、各国勇ましくみんなスタートしたわけでございますが、御案内のような事情で延び延びになっておったのでございますが、昨年の五月のロンドンの首脳会議で、促進しようじゃないかということで非常に気勢が上がりまして、それで本格化してまいったわけでございます。それで、ことしの一月十五日を期限といたしまして各国はオファーをし、そして二十三日から本格的な交渉が始まったわけでございますので、それらの前後の経緯からおわかりのように、これはやはり世界貿易を拡大していこう、ともすれば保護主義がいま高まりつつある、こういう共通の危機感のもとにやったことでございまして、わが国も率先してこれに参加しているという状況でございます。
  61. 沢田広

    沢田委員 今年度の予算で五千二百七十億を予定をいたしておりますが、この関税の引き下げによってどの程度見込みは違ってくるということになりますか。
  62. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 御案内のように、引き下げをいたします百二十四品目でございますか、これの五十一年の輸入実績は約六千四百億ぐらいでございます。それだけの輸入実績のあったものを引き下げる。いろいろの品目によりまして、価格が下がるとどれくらい消費がふえるかなということを、一つ一つの品目について積み上げ計算をしていくということは大変むずかしいわけでございまして、私どもマクロモデルを使いまして一応試算いたしますと、百億ぐらいの輸入がふえるというような計算もできるわけでございまして、どれぐらいの輸入がふえるかというのは、いま申し上げたようになかなかむずかしいわけですが、税収の方で見積っております積算では、大体百六十億ぐらい関税収入が減るんじゃないかというように見込んでございます。
  63. 沢田広

    沢田委員 前年度、五十一年度の決算で五千億程度、前々年度の決算で四千八百億程度であります。そうしまして、この五千二百七十億の予算を編成したのは、いわゆる予算の膨張率そのままを適用したと思われるのでありまして、当然この関税の引き下げ分は見込まれてなかった当初予算ではなかったのかというふうに推察するわけでありますが、そうすると、この関税の法律案と五千二百七十億との関連性はどういう関連になるのか、簡単にこれはお答えいただきたい。
  64. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 先年お話しになりました五千二百七十億といいますのは五十二年度の当初予算でございまして、五十二年度の補正後の予算では五千百五十億というふうになっております。
  65. 沢田広

    沢田委員 だから、この関税率の引き下げはそれだということですか。
  66. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 本年度内にどの程度関税が……(沢田委員「具体的に言って幾らになるんですか、この引き下げで」と呼ぶ)私申し上げましたのは、五十三年度の予算において百六十億ということでございます。
  67. 沢田広

    沢田委員 そうすると、その五十三年度予算は引き下げるということですか。
  68. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 さようでございます。
  69. 大村襄治

    大村委員長 沢田君、発言を求めてから言ってください。
  70. 沢田広

    沢田委員 はい。どうも回答があいまいもことしておりますから言ったわけですが、今度は大臣にお伺いいたします。——その前に、同じように十七兆円の輸入で大体五千億程度の関税が入っているわけですね。これは大体間違いないですね。
  71. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 間違いございません。
  72. 沢田広

    沢田委員 そうすると、その比率は実に三四%ぐらいになってくるということになる、三分の一ですから。——十七兆円の三十分の一ぐらいになるわけですね。そういう割合だと見ていいですか。
  73. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 三%ぐらいが関税収入の割合だということになると思います。
  74. 沢田広

    沢田委員 次に大蔵大臣に、このガットの精神というものの主体はどこにあると——決められているものがありますけれども、御承知だと思いますが、今度の関税法の改正といわゆるガットの精神というものとの関連はどうお考えになっておられますか。
  75. 村山達雄

    村山国務大臣 今度の前倒しとガットの精神ですか。——ガットの方はもう御承知のように、やはり原則的には、漸次相互主義の原則でお互いに関税率を下げていこうじゃないか、そういう考えで相互主義でやっているわけでございます。われわれはその精神にのっとりまして、そしてそれをさらに一層促進するため、特にわが国の現状に顧みまして、その妥結に先立ってその精神を一部実行していこう、こういう考え方でございます。
  76. 沢田広

    沢田委員 このガットの協定には「貿易及び経済の分野における締約国間の関係が、生活水準を高め」る、それから「完全雇用並びに高度のかつ着実に増加する実質所得及び有効需要を確保」する、そして「関税その他の貿易障害を実質的に軽減」していく、これがこの協定の主要な目的であるわけですね。この今度の関税率の引き下げに関連いたしまして、どこにこの生活水準を高めるという効果を求めているのか、それからどれだけ完全雇用に近づける努力をこの中から見出そうとしているのか、その点ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  77. 村山達雄

    村山国務大臣 それは要するに、貿易を縮小均衡ではなくて拡大均衡に持っていく、そのためのガットであるわけでございまして、それを通じて完全雇用、生活水準の向上、そういったものをうたっているわけでございます。したがって、やはりこれはグローバルにとらえるべきものであろう、かように考えているわけでございます。
  78. 沢田広

    沢田委員 抽象的にくつの上からかいているような答弁なんでありまして、さっぱりわからないのですが、これだけの関税の定率を引き下げたことによって、どういうところにどういう雇用が生まれ、それからどういうように国民の、消費者の生活水準が高まるのか、一例を挙げて結構ですから、その関連性というものをやはり国民の前に示すことが必要だと思うのですね。ですから、その意味において、このガットの精神の二つの柱はどこにどういうふうに具体的にあらわれるのか、これだけの厚い資料の中から拾い出すことは大変でしょうけれども、一つを明示していただきたいと思うのです。
  79. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 たとえば百二十四品目の中の一つ、エビをとってまいりますと、エビの五十一年の輸入額というのは二千二百三十六億でございます。これはインドネシア等からも入っているわけでございますが、この税率を、五%の実行税率を二割引き下げまして四%にするわけでございます。そうしますと、ある程度その価格が下がってまいりますと、諸外国から入ってくる品もふえるでございましょう。そういう関係においては、輸出している国の雇用もふえるし、所得もふえるという結果になろうかと思います。
  80. 沢田広

    沢田委員 たとえばここにある日本、アメリカ、EC、カナダの関税率を比較してみまして、いまおっしゃられたエビ、これは冷蔵物、アメリカは無税、カナダも無税、ECは一〇%ないし二〇%、ニシンの卵が、日本で今度下がると一五%、ECで一一%、カナダは八%、こういうふうになっているわけでありますから、それから見て、いまおっしゃったような形で消費者に結果的にはどうはね返るかということを私たちとしては聞きたいわけです。そうでなければ、生活水準を高めることにはまずならない。それから、完全雇用ということについては、じゃエビが四%になった、あるいはインスタントコーヒーが、アメリカは無税であり、カナダは七%でありますけれども、そういうような関連において下がったことによって、どれだけの効果があるのか、その具体的なものがやはり示される必要があるのじゃなかろうか。ウイスキーにしてみてもそのとおりでありまして、現在リットル当たり三百九十二円、これがカナダであれば、これは若干単位が違ってきておりますけれども、まあ四・五四六リットル当たり五十カナダセント、こういうふうになっておるようでありますから、その意味において、この日本の経済事情及び消費生活というものについての関連性というものを明らかにしていただきたい、こういうことでお願いをいたしたいと思うのです。
  81. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 先生御指摘のように、関税率を引き下げたならばわが国の輸入価格に響いてきて、それが末端の消費者の価格の方にも響いてこなければいかぬと私どもは思っております。政府といたしましては御承知のように、経済企画庁の物価局が中心となって、円高あるいは関税率の引き下げに伴ってずっとフォローアップをしまして、消費者末端ではどうなるかということについて、この法案が通りまして実施されました暁においては、私どもとしても強く経済企画庁にそういうことを求めてまいりたいというように思っております。  そういうものがどんどん入ってまいりますと、先ほど申し上げましたように、輸出国の方は所得が高まったりあるいは雇用がまずふえていくという結果をもたらすわけでございます。また、そういうようになりますと、わが国の方からの輸出の方もある程度ふえていく。先ほど大臣が申しましたように、拡大均衡というのはそういう意味でございまして、わが国の雇用の方も、そういう輸出がふえていくならばある程度ふえていく。ただ残念ながら、私どものやっております社会科学では、そういう細かいところまで数字を挙げて説明するまでの精緻な技術を開発していないのが現状でございます。
  82. 沢田広

    沢田委員 あと東京ラウンドやケネディ・ラウンドあるいはECのこれからの問題は、後から佐藤委員が質問されるようですから、その点は省略して先にまいります。  いま大蔵大臣が考えているダンピングというものについては、どういう受けとめ方をされておりますか、お伺いしたいと思います。
  83. 村山達雄

    村山国務大臣 そのダンピングというのは、やはり常識的に申しまして、不当な価格で輸出を伸ばすために相手国に売っているということであろうと思います。
  84. 沢田広

    沢田委員 不当な価格とはどういうことを言うのですか。
  85. 村山達雄

    村山国務大臣 不当な安値で売ることであろうと思うのでございます。
  86. 沢田広

    沢田委員 不当な安値というのは、またどういう意味なんでしょうか、中身としては。
  87. 村山達雄

    村山国務大臣 それはやはり原価計算上出ました価格、たとえば国内で一体どれぐらいで売っているか、それをはるかに切って売るというようなことが、一般的に言われているのではないかと思うのでございます。
  88. 沢田広

    沢田委員 それは不当廉売の関税の種類に属する内容じゃないでしょうか。たとえば五分の一の賃金で品物をつくっている、そういう場合は、これはダンピングの内容には含まれないと解しているのですか。それともまた、それぞれの国の労働条件がILOならILOに示されている一つの基準というものを守っていく、その中においての生産された品物がいわゆる正当な価格、それ以下の賃金なり労働条件でつくられているものについてダンピングという表現は使われないおつもりでありますか。
  89. 村山達雄

    村山国務大臣 私も、その点は専門家ではありませんけれども、ごく常識的に考えて、現実的なその原価、それを中心としてその国では一体幾らで売っておるのか。もちろんCIFでございますから、内国税がかかっておりますればそれは差し引くでしょうし、それからまた、向こうに送るについては、いわゆるCIF価格でございますから、運賃なりそういったものは当然かかるわけでございまして、内国で売っているものに正当なプラスをしたりマイナスをしてみたりいたしまして、それでおおよその適正価格といいますか、ある幅が出るものだと思っておるわけでございます。
  90. 沢田広

    沢田委員 いま私が特に取り上げておりますことは、ILOで示されているそれぞれの国の労働者の生活水準あるいは労働条件というものが、やはり一定の水準に、同じ条件にあって、その中から生産されるもの、そのことを、不当に安い賃金で、あるいは不当に安い労働条件でつくられているものはダンピングの範疇に入るのではなかろうか、その点はどう解釈されているのか、こういうことです。
  91. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 先生御承知のように、ガットの一般協定第六条で、ダンピングについてのやや定義めいたことが規定されているわけでございますが、まあ比較する場合の価額とダンピングであるかどうかのときにとられます価額は、輸出国におきます消費に向けられる同種の産品の通常の商取引における価額、それと比べてダンピングかどうかということでございまして、非常に賃金の安い国でコスト的に安くできるという価額で仮に入ってまいります場合でも、それはダンピングであるということは言えないというように私どもは理解しております。
  92. 沢田広

    沢田委員 これは見解の差があるようでありますが、これからこのダンピングの解釈は、国際間においてもやはり一定のレベルというもの、日本が下水道ダンピングだと言われ、エコノミックアニマルだと言われ、あるいは労働時間が長過ぎると言われた、そういう表現の中にダンピングという表現が使われてきた実績があるわけですね。ですから、いまあなたが言っていることで解決されたとは思いませんけれども、その点はまた次にして、進ませていただきます。  大蔵大臣が現在この提案をされているもの、あるいは既往のものは、保護関税の性格を持っているものなんですか、それとも財政的な立場における関税というものは幾つかあるのですか。それとも財政的な関税というものはなくて、すべてが——すべてがというのは、ほぼが保護関税、こういう性格づけと理解してよろしいのですか。
  93. 村山達雄

    村山国務大臣 戦後におけるわが国の関税は、原則としてはやはり保護関税であろうと思います。ただし、いま原重油関税については財政関税であるという説もございます。
  94. 沢田広

    沢田委員 では、占領下のときには全然関税がなかったわけでありますが、まあやみ市もできました、あるいは相当なやみ売りもありました。しかし、その中から日本人の英知というものが創造的に生まれたという実績は、一面の評価として評価できるのじゃないかと思うのです。この関税は言うならば、いわゆる管理価格、まあコントロールシステムといいますか、そういうような要素を持っているわけですから、いわゆる占領下のような関税で、今度は日本が同じように新しい産業構造をつくっていく場合の刺激剤として見るならば、思い切って関税をなくして、そしてその中から新しい日本の進路というものを見出していく。単なる援護援護、保護保護、こういうことでは伸びていかないのじゃないか。結果的には不況対策、いろいろ議論はしてますけれども、それは臨床学的なものであって、病人に注射をしているようなもので、健康な体になるための措置ではないと思うんですね。ですから今日、占領下における無関税時代というものが戦後の日本の復興の上に、よしあしは別として、もちろん悪い面もありましたけれども、相当大きな創造性を生んだということだけは間違いがないと思うんですね。そういう意味においての関連性について、ひとつお答えをいただきたいと思うのです。
  95. 村山達雄

    村山国務大臣 関税は、いま保護関税と申し上げましたが、しかし、できるだけそれを低減して、低めていこう、これがガットの精神であろうと思うのでございます。やむを得ざる場合に自国産業として保護していかなければならないもの、それについてはやむを得ないけれども、しかしできるだけそれを下げていこう。だから、関税は何のためにあるかと言えば、やはり保護的な意味であるという意味で保護関税と言っているわけでございます。しかし一面において、それを下げていくということは、同時にその国の消費者の利益につながり、また世界的に貿易を拡大していく、そういう国際経済全体として拡大していくということ、この両方をにらんでいると思っているのでございます。  そこで、先ほど終戦後の話が出ましたけれども、確かに日本人の適応能力をよく示していると思います。
  96. 沢田広

    沢田委員 もしそういうことであるならば、そういう形の中から新しい日本の産業構造、まあわれわれで言えば、ある一定のものを描いて、これからの日本の歩むべき一つの計算、計数というようなもの、消費量あるいは生産というものを計算をした上で産業構造を編成する。自民党さんの方でいけば、自由競争なんでありますから、その意味においては、関税を全部なくして、自由競争の中から新しい産業構造をつくるという論になるんじゃないかと思うのですが、そういう形において、保護関税を置いておくことはかえって体を弱める、病弱な子供に運動させないでいるようなものであって、これでは健康体にはならないのじゃないかという点についてはどうお考えになっておられますか。
  97. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 占領期間中に確かに保護関税的な機能というものは関税で果たしておりません。そういう時代には、先生もちょっと御指摘になりましたように、非常な管理貿易、輸入の制限をするということをやっていたわけでございます。自由な取引などはとうてい行われないという環境であったわけでございます。戦後非常な勢いで産業が興ってきたという背景には、御承知のようにガットに日本が加盟いたしましたのは昭和三十年の九月でございますが、そういう中に入って、わが国も関税率を張るべきものは張る、自由になるものは自由にするというように、そういう貿易の中に入ってたくさんの商品を外国に売ることによって、雇用の機会もふえ、所得も上がってきたというのが実態だろう、私はそういうように理解しております。  それからもう一つ、保護関税、保護関税という形でひ弱な体質を産業に残してはいけないではないかというのは、私も全く同感でございます。できるだけ関税を下げていく。しかしながら、国内でこれから伸ばしていけば十分伸びていける産業であるな、雇用もふえていく産業であるなと認められるものにつきましては、暫定的にある程度関税を張って、そういう障壁を設けて、その産業を伸ばしていくという政策は、先進国も関税として当然とるべき姿勢ではないかというように私どもは解しております。
  98. 沢田広

    沢田委員 いま回答がありましたから、では次に、農林省の方に来ていただいておりますので、それに関連をしてひとつお伺いをいたしたいと思うのです。  いまの保護関税ということで、現在の大麦、小麦、大豆、木材、この辺ぐらいを挙げたのでありますが、砂糖もありますが、簡単に言いますと、日本の国内の消費量、それに対して農林省としてはどれだけの自給率を国内で生産をして、そしてどれだけを輸入に頼っていくという目標を設定をしているのか。また、あるいはこの四十九年、五十年、五十一年度の間における政策として、どういう政策と具体的な目標を持って行ってきたのか。いまの答弁が保護関税であると仮定をするならば、そういう方針を当然持っていなければならないと思うのでありますが、その点いかがでしょうか。
  99. 中島達

    ○中島説明員 お答えいたします。  ただいま先年から、農産物につきまして一体いかなる需給の見通しあるいは供給の計画といった見通しを持って行ってきたかという御質問があったと思います。  この点につきましては、はっきりした計画と言えるようなものは持ち合わせていないのではありますけれども、五十年の四月に、将来にわたりまして農産物の長期的な需要と年産の見通しというものを立てたわけでございます。  これによりますと、四十七年度の自給率ということで申し上げますと、まず食用農産物の総合自給率というものは、四十七年度の当時七三%であったわけでございます。これを見通しの目標年次、六十年度を目標といたしまして当時見通しをいたした数字では、これが七五%という結果が出ておるわけでございます。  御承知のように、農産物につきましては、やはりいろいろ国際的な食糧の需給の見通しといったものを勘案いたしまして、国内で年産ができるものにつきましては、生産体制の整備等を通じまして極力国内生産で賄っていく。また一方、国土資源の制約等から今後とも輸入に依存をせざるを得ないもの、そういったものもございますので、そういったものにつきましては、やはり国際的な需給状況等をよく勘案しながら輸入の安定的な確保ということを図っていくということを、基本的な姿勢としてまいってきておるわけでございます。
  100. 沢田広

    沢田委員 四十九年前の数字は一応省略したのですが、あなたの答弁、極端に言えば、農林省は何やっていたのかというのが結論なんですよ。  四十九年度は、大麦で十八万トン、それから五十年度は十七、五十一年度も十七、三年間はほとんど国内年産は異動なし。小麦にしても、四十九年二十三、五十年が二十四、五十一年が二十二、これは逆に下がっていっている。それまで何をやっていたのか。それから大豆にしても、四十九年十三、五十年が十二、そして五十一年度は十一、これまた何をやっていたのかということになる。  そして大麦、四十九年度の全消費量は百五十九万トン、それから五十年度は百七十六万トン、五十一年度は百九十三万トン、こういうのが一応国民の消費量として出てきている数字です。この数字はどう受けとめますか、全体の消費量と受けとめておりますか。それから次にまた小麦も言います。四十九年度五百六十万トン、五十年度五百八十九万トン、五十一年度が六百四万トン、だんだん消費量は伸びている。伸びているにもかかわらず、国内生産はだんだん落ちている。どこに保護関税の意味があるのですか。  さらに木材にしてみてもそのとおり。木材、畜産、これは農林省も林業の関係は来ていないでしょうけれども、四十九年八千五百万トン、五十年度が七千二百四十三万トン、五十一年度が四千四百八十九万トン、これは特別の事情があるのでしょうけれども、五十年度の国内生産三千四百十五万トンというのがあります。五十一年度は一応数字が載っていない。  そういうふうに見ていきますと、農林省でこの三年間予算を組みながら、まあ全部の予算とは言いませんけれども、いま言った保護関税の効果というものはどこに出ているのですか、具体的に説明してください。
  101. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 私がお答えするのもいかがかと思いますが、私が先ほど申しましたのは、日本で将来伸びていくなあ、供給が相当ふえていくなあというものについては、保護関税をしているわけでございますという説明をしたわけでございました。農林省の例で御説明いたしますと、たとえばブドウでございます。生果のブドウは現在九九・五%ぐらいまでは自給しているわけでございます。そういうものに対しては二〇%という税率で、どんどん入ってくるということは障壁を設けて入らないようにしているというのが実態でございます。  先ほど小麦とか穀類の話がございましたが、これはわが国で、みんなが食べるパンなどはとても自給できないという見通しでございますので、現在関税では無税にしているわけでございます。
  102. 沢田広

    沢田委員 だから保護関税ということではなしに、それだったら、国内のいわゆる自給率の向上ということについてはどういう位置づけにこれを置いているんだ。国内ではあきらめちゃったんだ。もうあなたのおっしゃるとおりでいけば、国内の土産はあきらめた、小麦も、大麦も、大豆もあきらめちゃった、これは全部よそからもらう、輸入するものだけで日本は消費していく以外ないんだ、こういう立場でこれからの農業政策を進めるということに理解していいですか。
  103. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 ちょっと言葉が足らなかったのでございますが、小麦については、わが国の需要を国内だけで賄うことはとても無理である。もちろん国内で生産される麦の不足部分につきましては、枠を設けまして現在は国家貿易をしているわけでありますから、その必要なものについて入れる場合には無税という形で、決して国内での生産を全くあきらめるというような意味ではございません。ちょっと訂正させていただきます。
  104. 沢田広

    沢田委員 問題は、そういう抽象的な一と九とか、二と八とかという分け方の答弁ではなくて、いわゆる政府の基本的な方針の問題だと思うのですよね。だから、関税がなしということであるなら、じゃこれだけとにかく百五十九万トンも大麦、まあ現在では百九十三万トンも輸入をしている。国内生産は十七万トン。しかも前年度からだんだん減っていっている。それでは、これはあきらめてしまって、国内で生産するという努力はしないでいい。それなら、そのような農業政策というものが確立されなければならぬでしょう。そういうところに費用をつぎ込んでいってみたって、これは穴のあいたバケツに水を入れているようなものになってしまう。とすれば、方針があいまいじゃないですか。もしこれを、十七万トンが十八からだんだん下がっていっているのにふやしている努力ないのですから、自給率を向上させようというならば、これはふえていかなくちゃならない。少なくとも国民の消費量に比例してふえていかなくちゃならない。それが農業政策でなければならないだろうと思うのです。だんだん割合が消費量に対して下がっていっているということは、農業政策がいわゆるNO政という農政になってしまう、ナッシングになってしまう、そういうふうに理解されても結果としてはしようがないじゃないですか。どうですか。
  105. 中島達

    ○中島説明員 先生いま御指摘になられましたように、たとえば小麦につきましては、先生の御指摘のような数字があるわけでございます。小麦につきましては御指摘のように、現在自給率が非常に小そうございます。しかしながら、たとえば現在の米の生産の状況を見ましても、耕地の高度利用を図るというような観点からいたしましても、小麦というものを裏作として非常に作付を奨励をしていかなければならないということがあるわけでございまして、農林省といたしましても、そういった自給率が非常に小さい小麦、あるいは大麦にいたしましても、その年産の振興を図ってきてまいっておるところでございます。  ただ、先生も御指摘に相なりましたように、いま非常に低い自給率ということに相なっているものを、ほかの品目のようにこれを一挙に、あるいは相当近い将来に急激に自給率を向上させるということは、いろいろなわが国の諸条件のもとにおきましてはなかなかむずかしいという問題がいろいろあるわけでございます。ただしかしながら、そういう状況下にありましても、先ほど関税局長からのお答えにありましたように、一億を超えるわが国の国民の皆様がパンあるいはその他小麦粉を使用するといった食料品に対する需要といったものがすでにあるわけでございますので、そういったものを安定的に供給の確保を図っていくということもまた必要なわけでございます。したがいまして、そういうものにつきましてはやはり関税は、たとえば小麦については無税とするような措置を講じまして、できるだけ安定的に輸入がなされるようにという配慮をしてまいってきておるわけでございます。
  106. 沢田広

    沢田委員 農林省の方へ行っていずれまたお目にかかることがあるだろうと思いますが、保護関税という言葉の中から、いわゆる保護関税というものが果たしてどういう意味に位置づけされるのか。また、日本のいわゆる食糧事情の自給率をどう高めようとする考え方を持っているのか。また、高めていかなければならないためにはやはり年産を上げていくという形が必要である。そのためにあるいは保護関税というものが必要であるかもしれない。その関連性というものの整合性がなさ過ぎる。こういうことと、国費を使っていながらだんだんこうやって減っていっているというのは、口では農業振興、農業振興と言うけれども、これではちっとも農業振興になってないじゃないか、結果として。その結果についての判定を求めたわけでありますが、また質問をもとへ戻します。  次に、これは大蔵大臣でありますが、現在の関税は従価税と従量税というふうに分けますと、まあ従量税に主体を置いている。いわゆる量ですね、量に置いている。いわゆるその価値に置いているんではない。そういう方向がとられているわけでありますが、その点の見解をお聞かせをいただきたいと思います。
  107. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 ちょっと先生はお間違いになったんじゃないかと思うのでございますが、大部分のあれは従価税でございまして、従価税でございますから、量に着目しているのではなくして価格に着目しているものが大部分でございます。  価格に着目した従価税が多いというのは、関税の負担が貨物の価格に応じて公平に負担できる、適用できるという点においては、従価税の方が適切なのではないかというように一般的に考えているわけでございまして、かつては従量税も相当多かったのでございますが、だんだん整理いたしまして、従価税が中心になっているわけでございます。
  108. 沢田広

    沢田委員 じゃ続いて、ブラッセル関税表はどうしてわが国にそのまま取り入れることはできないのか、その点ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  109. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 品目表のことだろうと思うのでございますが、御承知のように関税の理事会、CCCにわが国も加盟しておりますので、今回の御審議いただいております法案にも、CCCの決めた決定に従いまして、税目番号などを統廃合するというように、合わせてやっているわけでございまして、税率自体は別にCCCが決めるわけじゃなくて、その国々が決めていくということは御案内のとおりでございます。
  110. 沢田広

    沢田委員 この本文にあります二千三百品目の中で、一応主文にありますのがブラッセル関税表に示されているものを適用している。そして次のただし書きに——まあただし書きと言っていいでしょう。ただし書きに使われているものがいわゆるわが国特有の関税率である、こういうふうに受けとめてよろしいですか。
  111. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 ブラッセルで品目を統一していきますというのは、われわれの言葉で言いますと、四けた分類、四けた分類と言っておりますが、法律で四けたで書いておりますので、その枝番的なものはわが国が独自につくっているということでございます。
  112. 沢田広

    沢田委員 その分が保護関税に当たるんだ、こういうふうに理解してよろしいですか。
  113. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 ブラッセルの四けた分類は御案内のように農産物から鉱工業品に至るまで品目がずらっと並んでいるわけで、これは商品の統計や何かに用いる場合にも品目を統一するという目的があって、そういう分類をしているわけでございますが、それとわが国の保護的な関税を張らなければならないというものはパラレルに出てくるものではなくして、その国々が決めることでありまして、別に枝番即保護関税というわけではございません。
  114. 沢田広

    沢田委員 だけれども、ほとんどがそういう趣旨に立っているものだということは言えるでしょう。
  115. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 必ずしもそういうものではございませんで、分けて税率を適用した方がいいという実態のものにつきまして、国内で分けているというように御理解いただきたいと思います。
  116. 沢田広

    沢田委員 大分問題が多いので次へ行きますが、わが国から輸出をして一年以内に加工をしてわが国へ持ってきた場合については一応無関税、こういう取り扱いになっていると思いますが、そのとおり理解してよろしいですか。
  117. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 政令で指定しております一定の品目については、先生お話しのとおりでございます。
  118. 沢田広

    沢田委員 この一定の品目が、たとえば韓国のようなところへ行って五分の一の賃金である、あるいは東南アジアのような低い賃金のところへわが国の企業が材料を提供して、輸出をして、そこで製品にされたものがわが国に入ってくる、これが非関税であるということは、結果的により多くのわが国の産業への影響というものを及ぼすものと思われますけれども、その点はどのように受けとめておられますか。
  119. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 五十一年の暦年の実績で申し上げますと、輸入額総額で十億六千九百万という数字になっております。それによっての減税額でございますが、これは四千三百万という程度のことでございまして、わが国にそんな大きな影響をもたらしている、そういうようには私どもはとっておりません。
  120. 沢田広

    沢田委員 続いて、では農林省のいる間に次の問題に行きますが、無関税の割り当て数量というのがあります。さっきは従価税だと言いながら、一方では従量関税があるわけでありますが、牛にして六千頭、これは若干変更されたと思いますが、チーズで一万三百、それからオートで二万、トウモロコシが五十八万トン、麦芽が四十四万トン、マンガンが百万トン、重油が百三十万、これの根拠はどういう根拠によってつくられているわけでありますか。
  121. 中島達

    ○中島説明員 ただいま先年御指摘の品目の中には、農林省の所管でないものもございましたが、農林省の所管で現在関税割り当て制度の対象になっているものといたしましては、御指摘にありましたような子牛あるいはナチュラルチーズ、オート、麦芽その他八品目ございます。これらの品目の一次税率で輸入される関税割り当て数昂につきましては、やはり需要と国内生産の動向を十分配慮いたしまして、妥当な水準に定めてまいっているところでございまして、最近の傾向といたしましては、全体といたしましては、需要の増大を反映いたしまして、割り当て数量というのは増大をしているところでございます。
  122. 沢田広

    沢田委員 この関税割り当てのあるべき姿というものはどのような考え方でおりますか。  ついでに一つつけ加えます。いわゆる国民の消費量の何%程度を関税割り当てに置くべきか、また置かなければならないか、それを政策的にどのような位置づけに置いているか、こういう意味です。
  123. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 先ほど農産物資につきまして農林省からお答えがありましたように、国内の生産量及び国内での需要量、その足らず前を割り当てまして、それについては一次税率、無税ないしは低い税率で入ってくるというふうにしていっているわけでございまして、何割というところを目安に置いているかという大変むずかしい御質問でございますが、私どもといたしましては、やはり国内である程度の生産ができるものであり、また、それだけでは需要が賄い切れないというものについて暫定的にそういう関税割り当ての制度をやっていくべきものだというふうに思います。したがいまして、国内でまずだんだん衰退してどうしようもないというようなものについては、またその割り当て制度によって何も保護していくということはすべきではないというように考えております。
  124. 沢田広

    沢田委員 それでは非常に抽象的だし無計画ですね。やはり国内の消費量が幾ら、生産量が幾ら、そしてそれとのバランスをとって幾らの無関税のものを入れるか、その辺の計画がなしに、当てずっぽうにつくっているのだというのじゃ話にならないじゃないですか、答弁にならないじゃないですか。
  125. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 毎年毎年どれぐらいの割り当てをするかというのは、関税率審議会の関税割当部会で慎重に審議していただいて決めているわけでございます。どの程度の割合かというのは、先ほどから繰り返しまして恐縮でございますが、国内での生産量、それだけでは足りないという需要衆を見込みまして、その足らず前を入れるということで、慎重に毎年決めているというのが実態でございます。
  126. 沢田広

    沢田委員 それでは、後の問題と関連して、その点で目標では幾らか。——この六千頭が足らなかったということなんですか。そういうことで、幾らで足りて幾らが足りないのか、その点具体的に後でお答えいただきたいと思います。  同じ牛に関係しまして、この間もいろいろ牛の肉が高いということが言われましたから、その内容は細かく私の方はもう一回言いません。ただ、畜産事業団の損益計算書でいきますと、五十一年四月から五十二年三月三十一日ですが、百七億のたな卸しがある。輸入の買い入れ高は四百六十四億あった。合わせて五百七十億の肉がこの一年間にあったわけです。そしてこの輸入の牛肉の売り上げ高は実に八百二十三億。たな卸しが四十三億あります。これは残った分ですから引きます。そうしますと、実に三百億もうけているのです。  さらに輸入の乳製品の買い入れ高は百二十三億なんです。それに対して売り上げ高は百七十六億なんです。不動産屋だってこんなもうけ方をしないだろうと思うのです。五十三億ももうけているのですよ。こういうことを大蔵省としては、どこが監督しているのかわかりませんけれども、見逃しているのですか。どうしてこういうべらぼうに価格を上げて売りさばいているということをやらせているのですか。利潤を取るにしてみてももう少し少なくていいのじゃないですか。
  127. 甕滋

    ○甕説明員 畜産振興事業団は、国内の牛肉需給全体あるいは価格安定を図りますために、輸入牛肉の売り渡しを行っておるわけでございます。買い入れてまいりますのは、現地の価格、フレート、手数料その他を基礎といたしまして買い入れますが、売り渡しの場合には、国内のその物の品質に応じた時価で売り渡すということに相なっております。したがいまして、現地の価格と国内のそれが評価される価格との間の内外価格差というものに応じて、それを取り扱います畜産振興事業団に差益の形で一定の金額が発生をすることに相なるわけでございます。その差益は、畜産振興事業団が助成勘定というところに振りかえまして、農林省が大蔵省と協議をいたしました方針並びに定められた事業に使われておるわけでございまして、これは国内の生産振興あるいは流通の合理化、生産、消費両面のためになる事業に振り向けられて使用されておる実態でございます。
  128. 沢田広

    沢田委員 抽象的で、答弁の中身はゼロなんですよね。じゃ、価格安定といっても、いま肉が高いと思っていますか安いと思っていますか、どっちなんです。
  129. 甕滋

    ○甕説明員 牛肉の価格につきましては御案内のとおり、国内で安定価格制度が行われております。(沢田委員「いや、どっちに思っているかということを聞いているのだよ」と呼ぶ)これは畜産振興審議会の議を経まして、安定価格帯が決められております。これが高いとか安いとかいう議論はございますけれども、現在の価格の推移を見ますと、その安定帯のちょうど真ん中あたりを推移しておりまして、安定帯制度によりますと、卸売価格としては適正な水準に落ちついてきているというふうに見ております。
  130. 沢田広

    沢田委員 それは答弁にならぬし、はなはだ見識を欠く答弁だと思うので、大蔵大臣よくしかっておいてやってください。こういうことで国民が了解するとは思いませんよ。——これは大蔵大臣がしかる役割りにはないかもしれぬけれども、立場は違うかもしれぬが、よく伝達をしておいて、閣内でひとつ調整をとっていただきたいと思うのです。  時間の関係がありますので、次の質問に行きますが、円の持ち出しを三千ドルに引き上げましたね。
  131. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 円の持ち出しにつきましては、四月一日から三百万円という線に引き上げることを検討しておるというように聞いております。
  132. 沢田広

    沢田委員 三百万円持ち出すことを認める。これは船賃はもちろん別です。そうして、持ち帰りが十万円で切ってあるということをこの前も若干触れたのですが、これは向こうに行って何に使えという意味なんだろうかと思うのです。宿泊は一万円ぐらいですから二十日間でも二十万、小遣いを使っても三十万ぐらい。三百万円持っていって、あと何に使えという意味なんだろうと想像せざるを得ない。それで、この十万円の持ち込み制限というのはいまだにそのまま置いてある、こういうことなんですけれども、その点の理解に苦しむので、その点改めてお答えいただきたいと思うのです。  それから関税法施行令の第一条の二の三号に旅客の個人的な用途に供するため使用し、またはこれに充当する場合はよろしい、こういうことにもなっているわけでありますから、持ち帰り品の現実に対応して変更するべきじゃなかろうか。現在乗客が、あの申告書をどうやってうそを書こうか、どうやったら価格を安く書けるか、ここにいる公務員の皆さんなんかもそうだと思うし、これがわかれば虚偽の申告ということになって、また罰則があるわけであります。そういうことが日常茶飯事に行われている現状に照らして、三百万円に引き上げたのならば、持ち帰り品というものも当然引き上げていいのじゃないか、このように思うのですが、これは政治的な問題ですから大蔵大臣、お答えをいただきたい。
  133. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 私どもの方で免税の取り扱いをしております金額は、先生御指摘のように十万円でございます。で、十万円しか持って帰ってはいけないとか、何もそういうことを意味しているわけじゃありませんで、たくさんおみやげをお買いになっていただく、ただ、免税の限度というものは十万円ということ、たばこだとか香水とか酒とかそういうものは別にいたしまして、十万円ということにしているわけでございます。
  134. 沢田広

    沢田委員 これにまた時間をとりたくないのですが、とにかくいまの物価指数からいって三百万円までに引き上げたのならば、やはり家族の者になりあるいは親戚の者に、あるいはそれぞれおみやげというものもあるだろう。いわゆる社会常識の線ぐらいまではこの免税というものが——何でもかんでも税金をぶったくればいいのだということではなしに、やはり常識の線に近づけるということは当然必要な措置じゃないのかと思うのですよね。そういう意味において、それはやはり考慮していくべきじゃなかろうか。全然考慮しないということは、これは若干——三百万まで引き上げたということに対応するべきじゃなかろうかと思うのですが……。
  135. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 私も、いま私どもで免税しているのは、税金でどれぐらいの免除になっているかというのをちょっと試算してみたのでございます。そうしますと、十万円で仮にハンドバックを買ってきた、お酒は三本、たばこは二百本、香水は二分の一オンス、オメガの時計を二つ買ってきたという人が、羽田の税関支署の方で一体どれだけの税額が免除されていることになるかというのを試算してみたのでございますが、四万三千八百円でございます。私は、やはり税の負担ということも考えていかなきゃいかぬ。また、海外に行く人は先生御案内のように、相当ふえたとは申しましても全人口の三%でございます。その三%の方が羽田で、半端まで使った場合には四万三千八百円の税額。そういう税額の免除をさらに上げるということについては、私どもとしてはにわかに賛成しがたいということを申し上げたいと思います。
  136. 沢田広

    沢田委員 では、三十万円かかって二百七十万円買ってきたという場合をひとつ計算しておいてもらいたいと思うのです。それは後で計算してください。  ひとつその次の問題に入ります。  船舶の問題でありますが、これは運輸省の管轄だと思うのですけれども、これも関税と若干関連しますからお聞きをするわけですが、現在の貨物の利用というものでわが国の利用率はだんだん下がってきている。そして、これは雇用の問題とも関連をしますから聞くのでありますが、二三%ですね、わが国の貨物船が使われている率というのは。石油だのなんかについては四六%程度なんであります。どこに原因があると思われておりますか。——答弁できないですか。わかりました、じゃいいです。これは雇用の問題にも関連をしますし、それからいわゆる関税品を入れていくという場合にも、外国船を使うよりも日本の貨物船を使う、そういう形において、雇用の拡大にもつながるし、また同時に、日本の船舶業にもつながるし、そういう意味においての関連性で一応お伺いをしたわけでありますが、これはまあ要望として御検討いただきたい。  次に、三月三十一日に羽田から今度は成田に開港されるわけでありますが、その成田に行きます税関その他の職員の労働条件、非常に通勤時間が長くなる、そういう点についてはどのように配慮をされているのか、これはひとつ大蔵大臣からお聞かせをいただきたいと思うのです。
  137. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 御案内のように、三月三十日に開港で、エアレーンの関係でまあ四月の二日、三日ぐらいまでに全部移るというようなことをちょっと聞いているわけでございますが、そちらに参ります税関の職員は、大体四百名ぐらいになるかなというように、東京税関の方でいま細部を詰めておりますが、そういうことでございました。  これに対しまして私どもとして、何といいましても職員の宿舎の問題でございますが、宿舎につきましては、いまここに資料を持ってまいりませんで大変恐縮でございますが、ほぼ二百をちょっと超えるぐらいの宿舎を新設しておりまして、大体十分な手当てをしておるということを申し上げられると思います。
  138. 沢田広

    沢田委員 大体とか言いますが、これは労働組合もあることでありましょうから、配置転換みたいなもので当然それぞれの個人の労働条件というものに応じて取り扱われるものだと思うのですが、また、実際に三月三十一日に開港するかどうかまだ見当もつかないのだろうと思うのですけれども、実際には、三十一日にはかかわらず移動するのですか。そしてまた、その間の労使の協定というものは完全にその労働条件については完結をしているという状態になっているのですか。
  139. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 先ほどもちょっと申し上げましたように、東京税関の方で組合ともよく話し合って、職員が移転に伴って不安を持ったりそういうことのないように、十分に出前の話をしているというように聞いております。
  140. 沢田広

    沢田委員 では、万全の措置を講じ、労使の介意に達するような条件にしてから措置する、こういうふうに受けとめてよろしいですか、これはイエスかノーかでお答えいただきたいと思います。
  141. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 大局におきまして、そのように御理解をしていただいて結構だと思います。
  142. 沢田広

    沢田委員 時間もなくなりましたが、暫定措置法にあります第三条の給食用脱脂粉乳、それから第五条にあります航空機の一部、それから第四条にあります原子力の研究、こういうことについて無税、無関税である、こういう取り扱いがされております。その航空機の一部について、これは国が購入をするものについてはもちろん別だと思います。しかし、民間航空の方で今日いろいろ言われておりまする条件の中で、全面的にこれが無関税であっていいのかどうか、その点どのようにお考えになっておりますか。
  143. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 航空機産業については、先進工業国としてはまだおくれている面もありますが、だんだんに育っていくという産業でございますから、先年も御指摘になったように無税というような形は基本的にはまずいというように私は思います。しかしながら、まだ国産がとてもできないというものにつきましては、運送業者等ユーザーの立場も考えまして、暫定的に無税という扱いをなお三年間延長させていただきたいというのが、この法案の内容でございます。
  144. 沢田広

    沢田委員 そうすると、この航空機の一部と称せられるものの中には、もちろん戦闘機の製造の一部、あるいは航空機でありますから核関係の研究、原子力関係の研究の一部、これは第四条でありますが、第四条の関係も含まれてくる、こういうことに理解してよろしいですか。
  145. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 そのような御理解でいいと思います。
  146. 沢田広

    沢田委員 これは結果的に、関税としては取り締りはきかないのかもわかりませんけれども、やはり関税をある程度——わが国の原子力の開発あるいは航空機の問題については、防衛という立場も含めて、これは関税だけでどうこうというものにはならないでしょうけれども、やはりチェックをしていけるという機能を持っていかなければならないんじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点は関税とは直接関係してチェックをしていくか、関税なしにチェックをしていくのか、その点だけお聞かせをいただきたいと思うのです。
  147. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 原子力研究用物品の免税制度は、原子力の研究、開発及び利用は平和の目的に限るという原子力の基本法の趣旨からいって、私どもはそういうものに限って、国産できないものについて免税をしていくということで執行しているわけでございます。
  148. 沢田広

    沢田委員 時間がなくなってきたのですが、持ち帰り品だけについてはちょっと気に入りませんので、もう一回言っておきますけれども、表現が若干適切でなかった点はこれは言いますが、いずれにしてもこの十万円の限度というものは、やはり三百万に持ち出しをするならば大体社会常識の線までは引き上げて、その点までは家族の者に使う。これをどこかに密売するとか何かするというならいざ知らず、そういうものならば、大体これだけの旅客人口で、新婚旅行なんというものもほとんど外国へ行くのがもう例になってきちゃっているわけですから、そして仲人さんにおみやげを買ってくる。それにまた税金をかけさせられる、そういう思いやりのない形が果たして税の本質かどうかということになりますと、やはり問題があるんじゃなかろうか。  私も、電車の中で話を聞いておりましたけれども、とにかくミンクのコートを二万七千円ぐらいの値段で申告した。実際に十万円で、税関の職員が取り締まりがきく体制にありますか。実際にそれだけの評価をそれぞれ確認できますか。ここだけでどんなことを言ってみたって、それを現実に十万円以上を完全に税を取るようなことを言ったら、羽田だったらパンクしちまいますよ。今度成田に行ったって、同じようにパンクしちまいますよ。それだけ結果的にはあいまいなものが残ってきているということにもなるわけですよ。  ですから、そういう形から言ってみて、もっと常識の線にしていかなければならないんじゃなかろうか。もし全部それチェックして、十万円以上であったと仮定をすれば、全部また赤ランプのところへ行って申告して税金を取る、その職員おりますか。それだけの体制ありますか。もう少しその辺、現実的に対応していくことが必要なんじゃないでしょうか。
  149. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 先ほども申し上げましたように、おみやげを幾らお持ち帰りになってもそれは自由でございます。私どもは、やはり十万円までを免税額ということで執行していくのが妥当ではないかというように考えております。
  150. 沢田広

    沢田委員 もう時間が来たようですが、全然反省の色がなさそうでありますから、もう少し世間を勉強してもらって、大体それであなたの子供がもし結婚でもして行った場合に、税金を納めてきたかどうか、そうでなかったのかどうか、その辺からも身近な者からひとつぜひ確かめてもらって、私の言っているのが常識に反しているのか、あなたの言っていることが常識に反してないのか、その辺をよく調べていただいて、三百万円までは持っていっていいなんて、これだって三百万持っていくのは大変ですね。普通の人じゃ持っていけないですよ。じゃ、向こうに行ったら何使っていいんだろうかと思って迷ってしまう。そういうようなことでないようにひとつ配慮してほしいし、税金だけということになりますけれども、その税金でも、そこで払う税金というのはやはり精神的な重圧というものは、それは相当多いんですよ。これは金額の問題じゃないので、会計検査院がごちそうになって問題になったのと同じように、やはりそういう感情的な精神的な威圧あるいは精神的な圧迫というものを解除してやってほしい、こういう要望でありますので、これは最後に御検討をいただきたいと思います。  それ以外にまだありますけれども、時間が来たようでありますから、あとは佐藤委員の方に譲って、私の質問は終わりたいと思います。
  151. 大村襄治

  152. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 きょう私は、大きく言って三点御質問をしたいと思うのであります。  第一点は、今後の国際収支の見通しとの関連の問題です。  まず、大臣にお伺いをしたいのでありますけれども、大臣が読まれた提案理由の説明の第一項目には、東京ラウンドの妥結の前に関税の一括引き下げを行う。これは「かかる東京ラウンド交渉の妥結促進を通じて保護貿易主義の高まりを抑えるとともに、わが国の輸入の増大に資するため、」というふうに提案理由の説明では述べられているわけですね。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  これは、まず確認をしておきたいのでありますけれども、昨年の九月以来の円高基調、ついに二百四十円を割ったときもあったという円高基調ですね、このわが国の国際収支の問題が背景にあって、それの一助として東京ラウンドの妥結の前に関税の引き下げという前倒しをやる。もちろん背景には、したがって、いま申しましたわが国の国際収支の異常な黒字、これが背景にあるということはよろしゅうございますね。
  153. 村山達雄

    村山国務大臣 先ほどもお答えしましたように、それは直接には関係ございません。東京ラウンドの推進につきましては、われわれはかねてからこれを積極的にやりたい、それが世界経済の拡大均衡のためであり、またわが国のためになると考えておるところでございまして、現にこの関税前倒しの問題は、関税率審議会におきまして、円高の問題がやかましくなり、ストラウスが来るとか来ないとかいうその前から、この問題を検討しておったところでございます。
  154. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 関係ないというのは私は非常に理解に苦しむのですが、それは審議をしていたのは前かもしれませんけれども、それはやはり円高基調というのが背後にあって、そして関税率審議会の方は急いだのじゃないですか。関係ないというのは私はおかしな答弁じゃないかと思うのですがね。
  155. 村山達雄

    村山国務大臣 円高の問題がありましたから、さらに関心が強くなったということは言えるだろうと思うのでございますが、全体のプロセスを考えてみますと、これは前からずっとやっておったところでございます。
  156. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 なぜそこにこだわるか私はよくわからぬのでありますが、経済企画庁にお伺いしますが、この日米通商交渉が始まる前に経済対策閣僚会議というのを宮澤経済企画庁長官が主宰をされてやられた。そのときに、対外経済対策八項目というのが入っていましたね、これはどういうものですか。
  157. 澤野潤

    ○澤野政府委員 九月三日の総合経済対策の中の一項目に対外経済対策というのがございます。その対外経済対策を九月二十日関係各省の間で確認いたしたものが、いわゆる八項目である対外経済対策でございまして、これの中には、一が東京ラウンドへの積極的な取り組み、二が輸入の促進でございまして、それから大きな分類で申しますと三が輸出面の措置、これはオーダリーエキスポート、秩序ある輸出でございます。それから四が資本取引及び経済協力、この四つでございまして、その第一に東京ラウンドへの積極的な取り組みというのが確かにございます。
  158. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私はこんなことでこだわるつもりはないのでありますけれども、いま経済企画庁からお話しをしていただいた対外経済対策というのは、あくまで九月から始まりました円高の問題、あるいは別の面で言えば日米の貿易収支の問題、あるいは対ECとの関係もありますけれども、この対策がいまの対外経済対策なんでしょう。その中に東京ラウンドの推進より早く前倒しをやろう、こういうことになっているのじゃないですか。ですから、関係ないというのは私はおかしな御答弁だと思うのですがね。
  159. 澤野潤

    ○澤野政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、対外経済対策は総合経済対策の一部でございます。総合経済対策は九月三日でございまして、いわゆる円高が非常に急激かつ大幅に起こりましたのは九月末及び十月の初め以降でございまして、もちろん年初来若干の円高の傾向はございましたけれども、いわゆる急激かつ大幅な円高との直接的な関係は、いま大蔵大臣がお答えになりましたように、直接的な関係にはございません。それ以前でございます。
  160. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それでは、十二月六日に経済対策閣僚会議で八項目の対外経済対策というのを決めていますね、これは一体何ですか。
  161. 澤野潤

    ○澤野政府委員 十二月六日に決めましたものは確かに、九月二十日に先ほど申し上げましたように総合経済対策の中の対外経済対策というものを関係閣僚の懇談会で確認いたしましたものを、さらに確認いたしたものでございます。
  162. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 恐らく大蔵大臣関係ないという言葉を使われたのは、外圧じゃないんだ、みずからの意思なんだということを背後で言われたいということが、関係ないという言葉にあらわれているのじゃないかと思うのであります。それは、前後がどうだったかという事実関係のことで私は論議をするつもりは余りありません。ただここで皆さんの方が、この法律が公布になれば、つまり参議院も通れば直ちに施行するという姿勢は、やはり背後に経済的な要件として円高基調の問題、それから対外的にもいろいろな約束をされた背景があるから、われわれの方でも、政府がそれだけ公布の日に施行するという意志があるならば、国会としてもそれにこたえようという意思でありまして、その意味では、事実関係はどちらが要因になりどちらがその結果としてあらわれたか別として、東京ラウンドの推進ということは確かに円高の前からあったかもしれないけれども、今国会にこの法案を出してきたというのは、より一層円高問題の対策の一つとしてここで出されたというふうに私は理解をして今日まで来たわけでありますけれども、改めてその点はいかがでございますか。
  163. 村山達雄

    村山国務大臣 率直に申し上げているわけでございますが、円高が年初来徐々に来まして、しかし急激に来たのは、九月二十九日のブルメンソールの発言以来でございます。あれからわずかの間にざっと一割以上上がってきたわけでございます。この問題が決まりましたのは、その前に決まっておるわけでございますし、かつまた、関税率審議会が審議していたのもずっとその前からやっておったわけでございます。  東京ラウンドを早くやらなくちゃいかぬというように言っておりましたのは、わが国とそれから恐らくアメリカが一番強かったのじゃないかと思うのでございまして、去年の五月のロンドン首脳会議で非常にみんなやろうじゃないかという機運になってきた、やはりそれが原動力だと思うのです。しかしおっしゃるように、だんだん国際収支の経常黒字が大きくなって問題になったから、いよいよもってこれは大事な政策だということに心理的になったことは間違いないと思うのでございます。  それから、公布の日からやりたいと申しておりますのは、いいことは早くやりたいということはもちろんでございますけれども、そういたしませんと、そのうちに関税が安くなるからというようなことで、それならそのときまで輸入を延ばそうかなんということになるとこれまた大変でございますから、一刻も早く成立さしてもらいたいという願いも込めているわけでございます。
  164. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私はこだわるわけではありませんけれども、いまの大臣の御答弁を聞いておりますと、しからば、東京ラウンドを日本だけが早くやって——後から詳しくお伺いしますけれども、これはあくまでケネディ・ラウンドの約倍くらいの国がネゴシエーションをやって、本来なら東京ラウンドというのは決める問題ですね。それを、日本だけが早く手を挙げてやって国会に提出なさるというのは、やはり日本がきわめて大きな貿易黒字を持っている対策の一つとして、世界に対して日本はこれだけのことをやっているんだということの一つのあかしといいますか証明と申しますか、こういうふうに理解しなければ、後から御質問しますけれども、フランスなんかそんな四〇%引き下げはできないという話をしているさなかに、日本だけが国会で承認を求めるという話も非常におかしくなりますね。  私は余りこのことにこだわらぬけれども、だから私は、別に外圧だからどうのこうのと言っているのじゃなくて、日本の貿易黒字に対する結果として起こってくる円高、もちろんそれだけの要因じゃありませんけれども、いろんな要因が加わっておりますけれども、やはりそれの対策の一つとして、いま大臣が言われるようにいいことはなるべく早くやりたいという一つの意思がここにあらわれているのだ、こういうふうに理解して次の質問にいってよろしゅうございますか。
  165. 村山達雄

    村山国務大臣 もういまとなればそれに十分役に立つわけでございますので、あわせお考え願いたいと思うわけでございます。
  166. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私もこだわらぬけれども、やはりこれは重要な問題なんですよ。  そうしたら大臣、もし円高という問題が起こらなかったら、東京ラウンドの前倒しというのはなかったでしょう、あったのですか。円高ということがなくても前倒しは、東京ラウンドの各国の妥結を待たずして、みずから日本だけがこういった関税定率法及び暫定措置法を出してくるような事態というのはあったのですか。そういう事例というのはあるのですかね。何十カ国という国が妥結をして初めて一つそこで成立するものが、日本みずからが手を挙げて、日本みずからが国内の法律を直すというのは、一般では考えられないと私は思うのですね。
  167. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 村山大臣は、ほぼ前倒しの内容が決まるというころにいらっしゃいましたので、私が去年の六月からずっとこの仕事に携わった者として補足させていただきたいと思います。  東京ラウンドは東京で宣言されたにかかわらず、去年の六月でございますから、四年近くたっても一向動き出さない。五月、ロンドン・サミットが行われた際に福田総理が、このままやっていくと世界恐慌のおそれだってある、こういうふうに言われまして、それで、何としてでも恐慌を避けるためには、東京ラウンドを実りあるものにしなければならぬという発言は、円高とかそういうことは全然関係なくて、ホスト国日本として東京ラウンドを積極的に進める手はないものかということをフランクリーに話をされまして、それでカーター大統領なども、昭和の恐慌を経験した福田総理が言われるというのは大変わかるというようなことで、ストラウスSTRの大使にもよく話をして、去年の七月にECのジェンキンズ委員長とストラウスが会って、ことしの一月十五日にオファーを出すというような大体のスケジュールまで決めてやろうじゃないかという形で、東京ラウンドが眠っておりましたけれども、進み出す動きになったわけであります。  私、私事にわたって大変恐縮でございますが、六月に関税局長を拝命しましてから、これを積極的に動かすためには何とかしなくちゃいけないというようなことで、可能であるならば、日本は口で言うだけではなくて態度において示すというような、重い腰を上げさせるような動きをしてみたいというので、鋭意勉強をしていったわけでございます。たまたま国際収支の方を見ておりますと、どうも輸出が非常に伸びて輸入が減って、日本が大幅な黒字の経常収支を持つに至りまして、諸外国から日本の国際収支の改善についていろいろな要望がなされてきたというのが、八月ぐらいからでございます。そこで私どもとしましては、国際収支の改善にも役立つということで、二つの目的から具体的に関税の前倒しの商品を選びまして、本日ここで御審議をいただくような法案になった次第でございます。
  168. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 日本がホスト国として先陣を切るというか、前倒しというところまでいかないまでも、声を大きくして東京ラウンドを何とか進めたいというそのことは、私もわかるわけです。しかし、とにかく今度の加盟国はケネディ・ラウンドの約倍ぐらいある。しかも前倒しというか、内容的に自分の国だけはこれだけ下げましたというだけでは、これは国際的には通用しないので、やはり相手の国も、これは東京ラウンドの妥結のときにやる部分ですよ、東京ラウンドではまたここで、国会でいま審議をしておる関税定率法や暫定措置法よりもさらにもう一歩進むんだ。もう一回やり直すんだという話では、私の理解ではないわけですね。となりますと、あくまでもいま審議をしておる前倒しというのは、東京ラウンドでやる部分をある程度外国の方も納得をしてもらって、これが東京ラウンドで、ジュネーブですか、交渉しておる中の日本の部分ですよ。——もちろん、あとまだまだいろいろな動きがありますから、後からお伺いしますけれども、まだまだこれにいろいろ加わる部分もあろうかと思いますけれども、とにかくいま提案をされている部分については、これはある程度外国も東京ラウンド分として認めてくれなければ、私は世界的な交渉にはならぬと思うのですね。  その意味で、ホスト国としての役割りというのは私もわかりますけれども、あくまで前倒しを実現するというのは、やはり円高の、日本の貿易収支の大幅黒字、これに対する日本と立ての一つの答えというふうに理解をしないと、日本だけがこの前倒しをやっているということの意味がうまく結びつかぬわけですよ。そういうふうに理解していいわけでしょう。
  169. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 国際収支の改善に資するというような日本の姿勢を示していることは、またこの法案の一つの目的でございます。先生のおっしゃるとおりでございます。
  170. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、もう一歩前に進めますけれども、十四日に通関統計が大蔵省の力で発表になったわけであります。大体私も数字を見てきたわけでありますけれども、円ベースとドル表示とでは若干数字が違っているところもありますけれども、いずれにしろ大きく言えることは、少なくとも円ベースで見る限りは輸入が減っている。それから、もちろん対前年同月比の話でありますけれども、対前年同月比で見ますと、五カ月間連続し輸入が減っている。そして、恐らく一月というのは大体輸入の多い月でありますので、こういうような状況でいくと、ある程度輸入の水準が回復するにはまだまだ二、三カ月低位を行くのではないかということが、一つ輸入の面では言えるのじゃないかと思うのであります。輸出の面では、自動車その他がかなりいい水準で進んでいる。輸出が高い位置にある。確かに一月は輸入超過になったようでありますけれども、そういうようなことから見ますと、どうも日本の輸入がそんなに特別ふえる基調にない、輸出はある程度高い位置にあるという、この構造というのは余り変わりないのじゃないか。  これは一月の通関統計だけからでありますけれども、一応過去の推移を見てみますと、幸か不幸かそういうふうに結論づけられるのではないだろうかと私は見るのでありますが、いかがでございますか。
  171. 澤野潤

    ○澤野政府委員 確かに先生のおっしゃいますように、五十三年度の輸入は一月も含めまして、国内生産活動が一般的に十分盛り上がりを示していないという点がございますので、われわれの見通しといたしましては、年度を通じまして前年度比八%程度の非常に少ない増加にとどまるようでございます。  一方輸出の方は、昨年前半は世界景気がかなり伸びたこと等とも相まって、日本の輸出も相当伸びたのでございますけれども、後半は世界貿易の伸び方がやや緩やかになったということと、先ほど先生お話しの円高の問題がかなり影響してまいりますので、輸出の伸びが緩やかになっておりまして、五十二年度の輸出の伸び率は対前年度比一五%程度になっております。したがいまして、五十二年度の経常収支の黒字は百億ドルをややオーバーする程度じゃなかろうかと見通しておりますが、五十三年度の輸出について見ますと、これは世界貿易が五十三年後半から伸び悩みになっておりまして、やや低くなっております。それと円高の影響がフルに浸透してまいるかと思いますので、輸出の伸びが五十二年度に比べまして非常に減ってまいるのではなかろうかと思っているわけでございます。  一方輸入の方は、国内生産活動、これは鉱工業生産指数等であらわされておりますけれども、五十三年度の二・六に対して五十三年度は六・八というふうに見通しておりますので、それによる輸入の増加ということが見込まれるわけでございまして、こうした内需の拡大が輸入に結びついてくるであろうということとか、先ほどお話がございましたような東京ラウンドへの積極的な取り組みとか、またいま御審議いただいております関税の前倒しの問題とか、いろいろ検討いたしております市場開放の推進というようなことで、その伸び率は、われわれの見通しといたしましては五十二年度に対して一三%になる。したがいまして、経常収支の黒字幅は、五十二年度に対して五十三年度は顕著に縮小するのではなかろうかと思っているわけであります。
  172. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 昨年も秋にこの委員会で審議をしたのでありますけれども、経常収支の話でありますが、昨年の見通しが七億ドルの赤と見ていたのが、実は百億ドル、正確にはいま百一億ドルぐらいの黒になったということで、大変な問題になったわけですね。ただ国際収支の問題というのは、大蔵省の方々の言われることは私もわからぬわけではない。貿易額がこれほど大きくなれば、一%の狂いが大変大きな狂いになるということもわからぬわけではないし、国際収支のこれだけの細かい数字を挙げている国は日本だけしかないわけですから、その意味では、その辺の振れというのは私はそう細かいことを言うつもりはないのであります。ないのでありますけれども、いま審議官が言われるように果たしてそう図式的にいくだろうかというのは、私は非常に疑問を持っているのであります。  それは数字的に言えば、五十三年度は六十億ドルの黒字になるだろうということですね。五十二年度の実績見込みが百億ドルの経常収支の黒でありますから、ここで経常収支としては約四十億ドルも減るということで見ている。しかも輸出は、五十二年度の実績見込みが七百九十五億ドル、それに対して皆さん方の経済見通しでは八百五十億ドルとふえて、いる。そして輸入もふえている。そして、もちろん貿易外収支もありますけれども、とにかく貿易収支の幅は小さくなる。これは理想的は理想的ですね。輸出は伸びる、輸入もふえる、そしてなおかつその幅は縮まる、これは貿易の拡大という意味では非常に理想的でありますけれども、果たしていま澤野審議官が言われたようになるだろうかというのは、私は疑問に思っているのです。  というのは、一つは今度のことに関係するのでありますけれども、沢田さんからも指摘があったように、今度のこの法案によっていかほどの輸入がふえるのだろうか。これは余り輸入がふえないふえないと言いますと、外国に対しては余りいい結果にならぬので、国益という面から私はそう細かい数字を聞こうとは思いませんけれども、大体業界も納得したということは、そう格別これによって輸入がふえるということにはならぬだろう。自動車についても私はしかりだと思う。今度の法案によって貿易収支が大きく変わるというのは余りないのじゃないか。  それから澤野審議官は、内需が増せばかなり輸入がふえるのだということも言われたけれども、確かに若干ふえるでしょうけれども、いまの場合には付加価値性が非常に全体的に高くなっていますから、したがって内需がふえれば、それに比例をして原材料、つまり輸入がふえるだろうかということになると、余り細かい議論はしませんけれども、必ずしもそうはいかないという趨勢がいま出ている。  それから、円高によって輸出が減るだろうと言うけれども、ドル建てのものがかなりあるわけですね。したがって、二百五十円を割る、あるいは円が非常に動いていたときにはなかなか貿易の交渉ができなかったけれども、ある程度二百四十円なりにいま落ちついたら、またかなり貿易の契約ができつつあるというようなことから見ますと、日本人の趨勢からいって、円高になって苦しくなればなるほどまた一生懸命働くというのが、私はある面では日本人のいいところだと思うのでありますけれども、そういうようなことから考えますと、澤野審議官が言われるように図式的にはなかなかいかないという——これはもう少し数字上裏づけをすればまた話は別でありますけれども、過去の趨勢から見て審議官の言われるような図式は通らないのじゃないか。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕 またまた輸入は額としてはそんなにふえない。そして輸出ドライブがかかって、このままでいくと、私はまた円高の二の舞いをやるのではないかという懸念を持っているわけです。いかがでございますか。
  173. 澤野潤

    ○澤野政府委員 確かに先年のおっしゃいますように、五十三年度に入って直ちに輸出が減り輸入がふえるということは、いまのところ考えておりません。むしろ五十三年度の前半と申しますものは、十五カ月予算で代表されますように、その考え方でまいりますと、前半はどうしても財政主導型になる。しかもその財政主導型で前半をいっている間に、最近顕著な動きを見せております在庫の調整でございますが、これが在庫の積み増しに結びついてきて、五十三年度後半に至って民間の在庫投資を中心とする設備投資等にも結びついてくる。したがって、生産、出荷というものに結びついてまいりました場合に、輸入の増加に結びついてくる。したがって、輸入が増加するという趨勢は、五十三年度後半ではなかろうかと思っておるわけでございます。
  174. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 その辺が経済構造の認識が実は私と澤野さんと若干違うと思うのでありまして、私はそのことで民間設備投資は去年以上にそう起こらない。日本経済の持っている過剰設備の状況から、あるいはいまのイノベーションの状況からいって、そう起きないという認識を持っているものですから、その辺がまた少し違うのでありますけれども、その論議をしていたら大変時間がかかってしまうので、きょうの本題ではありませんのでそれは別として、私はそういうようなことで、去年のいまごろ、つまり去年のいまごろといえば、ことしは経常収支は七億ドルの赤にしますと言っていたときと、一年たったいまと一体いかなることが違うだろうか。私も九月に国際収支の質問をしたときに言ったのでありますけれども、経済見通しでは七億ドルの赤と言っているけれども、それをする方向に向かって一体具体的に行政が何をしたのかというと、去年余り何もやっていないわけですね。やっていないから百億ドルの黒ということになってしまった。ではことし、いまの状況を見たときに、一体何をやっているだろうかということになると、澤野さんは内需が広がっていくであろう、あるいはここでいま審議をしている関税関係で輸入が若干ふえるだろう、あるいは円高の影響があって輸出がある程度のあれがかかるだろうということを言われているわけでありますけれども、私はそこは余り重点はかけられないのじゃないか、額としてかけられないのじゃないかというふうに見ているわけで、また去年と同じような状況をたどるのじゃないか。  それは村山大蔵大臣の前だけれども、他の委員からも一般質問の中でお話があったように、公共事業だけは確かに一生懸命やっていることはわかるけれども、それが経済全体を引っ張っていくだけの力はないだろうと私は見ている前提に立てば、国際収支の面から見ても、昨年とことしというのは、どうも澤野審議官の言われることも効果がゼロと私は言っているのではないけれども、去年の結果として百億ドルの黒を、ことしの見通しとして六十億ドルの黒にする、そこで経常収支として四十億ドル減らすということができるほど、いま挙げられた要因は大きいだろうかと私は非常に疑問に思うのですよ。  そこで、お伺いをしたいのでありますけれども、先ほどちょっと冒頭に触れました昨年十二月の経済対策閣僚会議の中での八項目の中に、節度ある輸出ということが言われているわけですね。これは内容的には、各輸出の突出部門と申しますか集中豪雨的な輸出に対して、その業界に対してひとつ話をしていこうということで、秩序ある輸出というテーマが挙げられているようでありますけれども、これは具体的には通産省の所管になるかと思うのでありますけれども、具体的にこの項目に沿って一体どこの業界とどういうような話をされて、果たしてその秩序ある輸出に向かって全体に行きつつあるのかどうなのか、その点はいかがでございますか。
  175. 澤野潤

    ○澤野政府委員 まず全般的な対外経済対策の観点から、輸出との関係について経済企画庁の方からお答え申し上げます。  まず政府といたしましては、自由貿易主義というような基本的なたてまえでございますので、いま申しましたように黒字幅の縮小を図っていくわけでございますけれども、その黒字幅の縮小は基本的には拡大均衡ということでやっていきたい、それが先ほど申し上げました五十二年度と五十三年度の数字の違いでございます。  それの立場に立ちました場合には、われわれとしては輸出を抑制することは考えておらないわけでございまして、先ほど申し上げましたように、内需の主導ということによります輸入の拡大と、それから対外経済対策にのっとりました市場の開放といった線で進んでまいりたいと思います。  個別の集中豪雨的輸出の秩序ある輸出への誘導ということにつきましては、通産省の方からお答えしたいと思います。
  176. 柏木正彦

    ○柏木説明員 通産省の輸出課員の柏木でございます。  大筋はただいま澤野審議官がお答えになったとおりでございます。政府といたしましては、各輸出商品につきまして、輸出動向を慎重に注視しているところでございまして、相手国市場で貿易摩擦が起こるおそれがあるような場合には、適宜業界に対し節度ある輸出を行うよう注意を喚起しますとともに、必要がある場合には機に応じ措置をするということにしております。  たとえばEC向け鉄鋼につきましては、輸取法に基づきまして五十一年より高炉六社の自主規制、これは本年の輸出数量百二十二万トンでございますが、やっております。また船舶につきましては、現在は構造的に需要が落ち込んでいるということに加えまして、昨年より輸出貿易管理令に基づきまして船価チェック、円ベースにおきまして五%船価を上げるというふうなことも行っております。それ以外に、たとえば先年も御承知のとおり、去年の七月からは米国向けカラーテレビにつきまして、輸取法に基づき年間百七十五万台の数量規制を行っております。本規制は五十五年六月まで続くことになっております。  他方、対米鉄鋼につきましては、現在すでに一部の品目につきましてトリガー価格が米政府によりまして発表されているところでございますが、今後逐次他品目にもこのトリガープライスが発表される見通しでございまして、これらの点を踏まえまして、慎重な輸出を行うよう鉄鋼業界には指導しており、また今後とも指導していきたいと思っているわけでございます。  もう一つ例を挙げますと、英国向けの乗用自動車及び卓上ステレオにつきましては、相手国イギリスの要請もございましたので、業界間で情報、意見交換を行うよう指導しておりまして、その結果これらの品目につきましても節度ある輸出が行われておるということができると思います。
  177. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 先ほど澤野審議官から言われた話でありますが、私も拡大均衡でうまく国際収支の面もいけばそれにこしたことはないし、いま失業者が百万人だ、これからの雇用をどうしようと言っているときですから、それは私はそれにこしたことはないと思うのであります。  しかしこういう状況になれば、五十二年以上に五十三年は輸出ドライブがかかっていくということを考えなければいかぬし、自由貿易だからといってラッシュ的な輸出をやれば必ず破綻が起こるわけで、それで宮澤経済企画庁長官が中心になったところの経済対策閣僚会議でも、秩序ある輸出。秩序ある輸出とは何ぞやといえば、少なくも、伸び率はどうなるかわかりませんけれども、量的にはふえるものも若干あるかもしれませんけれども、従来の伸び率よりも落としていくというのが、私は秩序ある輸出だろうと思うのです。物によってはいまお話があったように、横ばいにしようというものもあるでしょうし、その意味では、自由貿易だからといって拡大均衡だ、そして輸出はなるべく抑えない、それにこしたことはないわけです。抑えないのにこしたことはないけれども、現実に円高の問題等が、国際収支の大幅黒字という問題が大きな世界的な問題として日本が非難をされるというようなことがあるから、次の手を考えざるを得ないのではないかと私は思ってお伺いをしているわけであります。  それともう一つ、いまのお答えでありますけれども、いま具体的にいろいろ例を挙げて御答弁があったわけでありますけれども、たとえば日米関係で言えば、いま通商交渉が終わり、まだまだ日本がいろいろ多くの宿題を持っているわけでありますけれども、とにかく感じとしては一段落した感じ、後は日本が約束をした七九年度くらいまでには国際収支の改善をするとか、赤字を甘受するとか、こういういろいろな約来を果たしていくということだと思うのです。  しかし、後でお伺いしますけれども、対ECに対してはまた別のいろいろな問題がいま起こっているわけですね。いま柏木課長からお話があったような、鉄鋼、船舶、カラーテレビあるいは自動車等々で具体的にお話があったわけでありますけれども、一体このくらいで、いわゆる秩序ある輸出なるものが、この辺である程度外国も認めてくれるというふうに通産省としては考えていらっしゃるのか。われわれも何も輸出を全面的にやめろとかなんとか言っているのではなくて、ある程度突出部門については何らかのことを考えないと、ひいては日本経済全体がひっかぶってくる。それか日本の経済力あるいは産業の力というもの、あるいは輸出競争力というものを結果的には短命に弱めてしまうことがあるので、やはり突出部門については何らかのことをしなければいかぬのではないか。また、そういうものが発動されないようになればなるほどそれにこしたことはないわけでありますけれども、どうも先ほど言った私の前提から言うとなりそうにないので、そういったことで、突出部門については何らかのことを考えていかなければいかぬのではないか。通産省としては、いま御報告があったようなことで、大体ことしはうまくいくのではないだろうか、細かに監視しているからいいのではないかというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。
  178. 柏木正彦

    ○柏木説明員 お答えいたします。  理想は、先ほど来澤野審議官が言われていますとおり、自由貿易の原則にのっとりまして拡大均衡の方向に行くべきであると思いますけれども、通商国家でもございますわが国といたしましては、他国におきまして貿易摩擦が起こる、フラッド的な輸出が起こり、摩擦が起こるということは本意ではないわけでございますから、そういうふうな徴候があらわれましたるときは、自由貿易原則に対する一種の緊急避難的な例外措置といたしまして、節度ある輸出を行うよう業界を指導いたしますとともに、必要があれば措置をしていくということは、先ほど来申しているとおりでございます。  ただし現在までのところ、そういうふうな貿易摩擦につきましては何らかの形の——これは措置の方法は、直接の業界指導、輸取法に基づく措置、輸出貿易管理令に基づく措置といろいろと何層もの措置があるわけですが、現在までのところ見まするに、フリクションのあるものにつきましてはおおむね何らかの措置が講じられている次第でございまして、一応当面は様子をウオッチしていきたい、こう思っておるわけでございます。  繰り返しになりますが、貿易摩擦を起こしますのは、通商国家たるわが国といたしまして本意ではないわけですから、必要がございましたら適宜適切な措置を講じたい、このように思うわけでございます。
  179. 澤野潤

    ○澤野政府委員 先ほどの拡大均衡について付言させていただきます。  私が拡大均衡と申しましたのは、五十二年度から五十三年度にかけまして、輸出は五十二年度が一五%の伸びに対しまして今度は七%の伸びでございます。それに対しまして、輸入の方は五十二年度が八%の伸びに対して五十三年度は一三%の伸び、しかもこれは数量ベースの実質で申しますれば、輸出はほとんど横ばいだろうと私ども推測いたしておりますが、輸入は七%程度の数量の増加ではなかろうか。その他の部分は価格の増加でございます。
  180. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 次の問題にいきます。  次は、対ECとの関係なのでありますけれども、いまも申しましたように、アメリカに対しては日米通商交渉でいろいろの約束をしたけれども、これからは日本の実行、アメリカはもちろん実行しなければいかぬことがあって、とにかく一段落をしておるようでありますけれども、ECに対しては一体どういう措置がとられたのだろうかということについて、いささか首をかしげざるを得ないのであります。  今度の関税定率法なり関税暫定措置法の中でECのいろいろな要求に対して一体どんな前倒しをしたのか、ECシフトはどんなことが事実上そうなっているのか、その点についてまずお伺いをしておきたいと思います。
  181. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 今度の関税の前倒しの品目につきましては、わが国の関税率が外国から比べると比較的高い、あるいは輸入に対して輸出が非常に伸びているというような品目から、さりとて中小企業が無理してやっているとか、あるいは不況業種が無理してやっているとかいうような品目は除きまして、引き下げても国内で何とかやっていけるというものを選んでいったわけでございます。その結果、ECのかなりの関心の品目もその中に拾うことができました。たとえばワインとかウイスキー、ブランデー、あるいは紅茶とかマロングラッセとか香水等化粧品、自動車、航空機用エンジン、部品、ライターなどは、いずれも何らかの形においてECが引き下げてもらいたいという関心を示していたものでございまして、それらも拾うことができました。  五十一年の輸入実績で申しますと、先ほど沢田委員にお答えいたしたのでございますが、前倒し対象品目の輸入額は六千三百九十五億円でございます。そのうち地域別でECはどうかと申しますと、千三百五億円でございます。それで、ECからの五十一年暦年の輸入総額は一兆七百四十九億円でございますから、一兆七百四十九億円のうち千三百五億円が前倒し対象品目になる。カバー率で申しますと一二・一%でございます。そういう率をアメリカについてとってみますと、六・一%というので、結果的にはECの関心品目が地域別に見ますと一番高くとられたというのが、この対象品目の実態でございます。
  182. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 しかし、戸塚関税局長が声を大にして言うほどECの方は余りありがたいとも——ありがたいと言ってはいかぬのかもしれませんが、どうも余り感じていないんじゃないですかね。現にいまECの大洋州とアメリカと日本の三地域を担当するメイネル局長が来て、大蔵省とも話しになったり、通産省とも経済企画庁とも話しになっているわけですね。だから、戸塚局長が言うようにどうもECの方は感じていない気がするのですよ。  そこら辺に少し焦点を合わせてお伺いしたいのでありますが、その前にちょっとお伺いをしておきたいことは、一月の二十日でございますか、ECの外相会議が行われて、この中で九カ国がけんけんがくがくいろいろやったようでありますけれども、特にフランスの主張によってECの側としては、関税率の引き下げ率が、当初は四〇%とお互いにアメリカも日本もEC側も言っていたのが、三五%ぐらいになったようで、何かまさに玉虫色の妥協が九カ国でなされた、四〇%を交渉の出発点とするというようなきわめて玉虫色の一つの妥協案ができたように報じられているわけでありますけれども、一体そういうECの動きに対して、日本というのはすでにいまここで事実上審議をしているわけですね。それから片面では、残された部分については、ジュネーブでもうオファーを出しているわけですね。日本はこの二十日の何日か前に日本の案というものは出している。出したものは引っ込めるわけになかなか国際的にいかぬでしょうけれども、初め四〇%ということで出発していたのに、ECの側は、やってみないとわからないけれども、とにかくどうも結論的には三〇%台になるんじゃないかというような動きが外相会議の中であるわけですね。  そういうことになりますと、一体日本の出したオファーというのはどういう取り扱いになるのですか。ちょっと待ってくれ、約束が違うじゃないかと言って、もう一回計算し直して出すということになるのですか。それとも一回出したんだから、日本は武士の国だから、一回出したものは引っ込めないということでいくのですか。これも多国間の交渉という観点からいきますと、どうも私たちにはわからないわけですよ。これはEC外相会議で決まったと言われる大体三五%ぐらいの関税率の引き下げというECの動きに対して、日本は一体態度を変えるのですか、どうするのですか。
  183. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 日本は鉱工業品の引き下げにつきましては、先生お話しのように四〇%を若干超えるというような形でオファーを出しております。これに対しましてECは、やや技術的になって大変恐縮でございますが、十六プラスX分の十六Xという方式、そのXというのは現行の税率でございますが、そういう方式で例外なしで一応オファーを出しているということでありまして、これを土台にして多国的な交渉に入っていくわけでございます。  どういうやり方でECと日本と交渉していくかということの細部にわたっては、この席ではちょっと差し控えさせていただきたいのでございますが、わが国といたしましても、対等の立場に立って十分納得のできるような形にまで持っていきたいというように思っております。  参考としていただいていいと思うのでございますが、ケネディ・ラウンドのときは五〇%一律引き下げということでスタートしたわけでございますが、結果といたしましては三五%の引き下げになったというように、スタートがそういうところに定められておりましても、これからのネゴシエーションにおいて相当変わってくるというようにお考えいただいていいと思います。
  184. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうすると、結論といたしますと、日本が出したオファーというのは変えない、こういうように結論づけてよろしいですね。
  185. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 それを土台にして交渉をするわけでございまして、私どもとしては、それを撤回するとかなんとかじゃなくて、各国の出方を見た上でネゴをやっていくということでございます。
  186. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで、いまちょっともとへ戻りますけれども、ECの動きを見てますと、日米の通商交渉で発表した内容は、単なる日米に限らずグローバルなものだということでありますけれども、どうもその辺はEC側には十分わかってないというような気がしてならぬのであります。それが証拠に先ほどお話ししたように、メイネルEC日本担当局長も来ているし、このままでいくとどうも三月には、デンマンという対外関係局長が来る、あるいはその後にはハフェルカンプというECの副委員長が来るというような予定にずっとなっているわけですね。こういう一連の動きを見てみますと、対アメリカとの話は、通商交渉で共同声明を出して一応とにかく、約束事はいろいろあるけれども、実行だけが問題であります。片はついたけれども、ECに対しては一体これはどういうことになっているんだろうか。しかも、局長が言われるように、ECに対してはアメリカよりもより厚く向こうが要求するものにはやっております。やっておりますと言うわりには、続々とEC関係者が日本に来て、各省を回って、やれチョコレートだ、やれお菓子だ、やれエアバスだというようなことを言うというのは、どうもよくわからぬのであります。  これは外務省にお伺いしますが、牛場大臣が、日米共同声明の後だったと思いましたけれども、ECに行っているわけです。このときにはECのOKというものは何もなかった。つまり、アメリカと日本はこういうことにしますよ、そしてその中身というのは、単なる日本とアメリカだけのものじゃなくて、ECも含めたグローバルなものですということをただ伝えてきただけだったのかというふうに、いまから見ますと非常に疑問を持たざるを得ないのであります。一体牛場大臣がECに行かれてされたことというのは、どういう意味がいまから考えてみるとあったんだろうかということについて、若干お話をお伺いしたいと思います。
  187. 賀来弓月

    ○賀来説明員 牛場大臣の先般のEC委員会及び加盟国訪問は、昨秋以降政府が内需拡大による景気回復と輸入促進措置、それから市場開放のために一連の措置を打ち出したわけでございますが、そういったものが日本の自主的かつグローバルな見地からとられたものであることをEC側に説明したというのが、基本的な目的でございまして、話し合いは交渉といった性格のものではございません。
  188. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 余り過去の話ばかりしていてもしようがないので、関税局長にお伺いしますが、いま申しましたように局長は今度の法案の中で、いま言ったワインとかウイスキーとか紅茶とかマロングラッセとか香水、自動車、ライター等々かなりECに対しても配意をしているという御答弁なのでありますけれども、先ほど私が言ったようにECの関係者が続々来る。その中には、工業製品だ、菓子だ、あるいは酒類については大蔵省にもいろいろな話があった等々、さらにすでに百六十品目ばかり工業製品を中心にして関税の引き下げを要求しているというように精力的にやっている状況を見ますと、どうも局長の答弁というのは話が合わないじゃないか。そんなにECに対して、今度の法案でそれなりのシフトをして向こうの要求についてもある程度のんでやったというなら、何でさらにいまごろ工業製品だ、エアバスだ、何だかんだと言って、あれも買えこれも買えという話が来て、話があれしなかったらもっと上役を連れてくるよ、いまどうして続々とこういう話が出てくるのか、どうもその辺のところがわれわれには合点がいかぬのですが、いかがでございますか。
  189. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 私が先ほど御説明いたしましたのは、関税率の引き下げの問題に限って、前倒しに限ってそういう形になっているということでありまして、メイネル、デンマン、ハフェルカンフという形で続々と来るのではないか、あるいはそういうことになろうかと思いますが、それは、何も関税率の引き下げ、前倒しの問題についてどうだということでは決してないというように私は理解いたしております。全体としての日本の経済の持っていき方、それについてもECがいろいろ理解をしていかなくてはいけないし、また関税だけじゃなくて、市場、マーケットを開いていく、通商一般の問題についても触れていくということになるのではないかというように思っております。
  190. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大分時間がなくなってしまったんで、もう一つだけお伺いしておきますが、ジュネーブの交渉で日本はセーフガードについてはどういう方針をとる予定なんですか。一説によれば、やはりこれは自由貿易を主とする日本としては、あるいは貿易立国の日本としては、こういった一定の国に対して、急激な輸入に対しては国を決めて緊急輸入制限をするというのは好ましくないという大前提でいままで来たと思うのでありますけれども、片方の面では、輸入国という立場から見れば、特に私のように愛知の出身は、繊維が香港、台湾、韓国、こういうところからさんざんやられているわけですね。こういうようなことで将来を見た場合に、日本もいずれは発展途上国に譲らなければいかぬ産業があるだろう。そしてそれと同時に、譲るのはいいけれども、原則はいいけれども、それが一挙にということになれば、これはやはり貿易立国として緩やかな産業構造の変換という観点からいくと、将来にわたって日本もセーフガードについては一定の考えを持っていなくてはいかぬのじゃないだろうか。貿易立国だからという立場だけで果たして物が考えられるんだろうかという気がするわけであります。  一体日本は、この緊急輸入制限、特に今度は一般的ではなくて国も決めて、もちろんそのために監視機構を設けたりとかいろいろな話がありますけれども、その場合に日本は一体このセーフガードについてはどういうお考えで臨むつもりですか。
  191. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 東京ラウンドに参加するに当たりまして、かなり古い話になって恐縮でございますが、閣議決定をしております。その中の四でございますが、「貿易自由化の一層の促進とその成果の確保を図るとの趣旨から無差別の原則に配慮して多角的セーフガードにつき検討することとする。」ということを決定しました。現在もその方針に従って臨むつもりでございます。
  192. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 古い話というのは何年の話だか知りませんが、局長が古い話というのは恐らく大分古い話なんでしょうが、日本の貿易の将来を見ますと、そのころと大分変わってくるだろう。そのときに、何らか日本としても備えていかなくていいのかという心配が私にはあるわけですね。その点をお伺いをしておるわけでありますが、いまの御答弁ですと、従来の方針に変わりないというふうに理解してよろしいですね。
  193. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 大変古いと申しましたのは、四十八年の八月三十一日、東京ラウンドへの参加に関しての閣議決定でございますが、そのときの方針というものは現在においても変わりはございません。
  194. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 質問の第三でありますが、それは自主開発原油についての関税の引き下げの問題でございます。  これは法律案の要綱にも書いてありますけれども、関税暫定措置法の別表第一の関係であります。比重の高い原油について「石油の安定的な供給の確保を図るため特に必要があるものとして政令で定めるもの」について関税率を軽減するということでありますが、「政令で定めるもの」というのは一体どういうものを言うのか、簡単で結構でございますが、お答えを願いたいと思います。
  195. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 現在検討中でございますが、一つの要件は、石油開発公団の出資、融資または債務保証を受けて行われた探鉱または採取にかかる事業から生産されるもの、第二番目には、当該事業を行う法人が取得した原油である旨確認されるもの、そういう政令の定め方になろうかと思っております。
  196. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、一応いまの言われた政令でいきますと、具体的にどこの会社のどういう石油が、この減免措置の対象になるのですか。
  197. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 いま申し上げました要件を満たす原油は、いまのところアラビア石油のカフジ原油と日本イラク石油開発のバスラ・ヘビー原油になろうかと思います。
  198. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま局長のお話の中に、石油の比重とかなんとかお話しになりませんでしたけれども、それは大体わかっているのでありますが、(戸塚(岩)政府委員「それは法律事項です」と呼ぶ)法律ですか。今度の関税暫定措置法の別表第一の関係のあれは、具体的には二社の原油のみになる予定というふうに理解していいですね。
  199. 戸塚岩夫

    ○戸塚(岩)政府委員 いまのところそのとおりでございます。
  200. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで通産省にお伺いしたいのでありますが、いま具体的に挙げられた二社というのは、たとえばコストの面で、同じような質の原油に比べて、一体コストがどのくらい高いのですか。
  201. 大永勇作

    ○大永政府委員 カフジ原油の場合に、これと類似いたしますクウェートの原油と比較いたしますと、キロリットル当たりにいたしまして約五百円程度割り高であるというふうに考えられております。
  202. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、キロリットル当たり五百円単価が違うわけですね。それで今度の法律によって、そのうち関税を百十円まけましょう、そして安定供給してくださいという話になるわけですね。  私も、自主開発原油というのは、日本が自前でやっている原油でありますから、長いエネルギー政策という面から見れば必ずしも否定するものではないわけでありますけれども、キロリットル当たり五百円コストがかかる、そのうち百十円を関税で見ましょうという話で、残りは一体どうなるのか。そしてこの法律では一年ですね、暫定措置法ですから一年だ。そうしますと、もう一年たったときに、その五百円のコスト高というものが一体解消できる見込みがあるのか。今度の場合に、いま御答弁いただいたように、具体的には二つの会社の石油だけであるだけに、大体減税額が二十六億円ぐらいと聞いているのでありますけれども、それだけに、きわめて特殊な関税減免措置というのは、それなりにもう一年たったら、ちゃんとコストは——いまのはどこのでしたかね、そのものとコストがほぼ一緒になるという見通しがある程度ないと、国会の方としても、私たちとしても、一年たってみたらまた関税でまけてください、またくださいでは、長期的に関税でそういうめんどうを見るということは問題があろうかと思うのです。その点はいかがでございますか。
  203. 大永勇作

    ○大永政府委員 五百円の中で約百二十円分につきましては、いわゆるユーザンスの金利の関係でアラビア石油が現在メリットを与えておりますので、実際に高いのは三百八十円ぐらいということになるわけでございますが、その中で約三分の一につきましては、これはやはりアラビア石油が産油国であるクウェート等に対しまして価格の引き下げを交渉いたしまして対処すべきものである。あとの二百数十円が残りますが、そのうちの約半分に当たります百十円をこの関税軽減措置によって協力をするようにいたしたいという考え方でございまして、若干のものにつきましては、これは原油の安定供給確保という見地からいたしまして、石油業界あるいは石油の消費者にやはりこれを負担してもらうという方向で指導してまいるということが、必要であろうというふうに考えております。  先年御指摘のとおり、これは一年の暫定措置でございますので、われわれは五十三年度中におきまして、その後におきますこの自主開発原油の安定的な引き取りにつきまして、エネルギー調査会の石油部会等におきまして論議してまいりたいと思いますが、その際には、たとえば通産省の定めます石油供給計画の中に、この自主開発原油の引き取り目標を記すというふうなことも、一つの方法として考えてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  204. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 具体的に、では、三百八十円から関税の百十円を引いて、残りをクウェート側に値段を下げてもらうようなこともいろいろあるでしょうし、それでもまだ差があるという話ですね。私が心配するのは、また一年後に同じようなことを言ってきても、この具体的な会社が二社という、自前の石油とはいうものの、それを関税で保護する、エネルギー問題だから何でもいいというわけに私はいかぬと思うので、一年間はこうだったけれども、一年後には解消しましたというふうになってもらわないと、これは非常に問題があろうかと思うのであります。  その点だけを念を押しまして、大変時間がおそくなりましたので、私の質問を終わります。
  205. 大村襄治

    大村委員長 次回は、来る十七日金曜日開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時五十七分散会