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1978-06-01 第84回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月一日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 細谷 治嘉君    理事 田中 六助君 理事 楢橋  進君    理事 野田  毅君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 利春君 理事 中西 積介君    理事 西中  清君 理事 稲富 稜人君       大坪健一郎君    藏内 修治君       山崎平八郎君    岡田 春夫君       中村 重光君    権藤 恒夫君       安田 純治君  出席政府委員         資源エネルギー         庁石炭部長   宮本 二郎君  委員外出席者         通商産業大臣官         房参事官    高瀬 郁彌君         参  考  人         (日本石炭協会         理事技術部長) 斎藤 裕夫君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合事務局次         長)      古賀 徳継君         参  考  人         (全国石炭鉱業         労働組合書記         長)      小山 和衛君         参  考  人         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         議長)     鈴木 照生君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     伊木 正二君     ————————————— 五月八日  炭鉱離職者緊急就労対策事業継続実施に関す  る請願(野田毅紹介)(第四〇三四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭対策に関する件(石炭鉱山保安に関する  問題)      ————◇—————
  2. 細谷治嘉

    細谷委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  まず、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  石炭鉱山保安に関する問題について、本日、参考人として日本石炭協会理事技術部長斎藤裕夫君、日本炭鉱労働組合事務局次長古賀徳継君、全国石炭鉱業労働組合書記長小山和衛君、全国炭鉱職員労働組合協議会議長鈴木照生君及び東京大学名誉教授伊木正二君の御出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 細谷治嘉

    細谷委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————  この際、一言、参考人各位に対しごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、本日、当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  近年におけるわが国石炭鉱山罹災率は、関係者努力の積み重ねにより減少傾向にありましたが、この間、五十年、五十二年には、関係者努力にもかかわらず、幌内、芦別などで重大災害が発生し、多数の死傷者が出ましたことは御案内のとおりであります。このため、政府においても、五十一年に石炭鉱山保安懇談会を開催し、その報告に沿って深部掘採に伴う保安対策などを検討し、五十三年には鉱山労働災害防止五カ年計画を策定して、災害防止に万全を期しております。  しかしながら、五十一年には発生しておりませんが、五十年には五件、五十二年には四件、本年もすでに一件重大災害が発生し、また、落盤運搬災害等頻発災害も後を絶たず、その災害率はなお他産業に比べ著しく高率であるというのがその実情であります。  去る四月三十日、五月五日にも鉱車逸走脱線に伴う運搬災害三池において発生しておりますが、三十八年における三池の大災害は、鉱車逸走した際、炭じんを巻き起こし、それが誘因となってガス爆発が発生したことを想起いたしますと、かかる運搬災害が引き続き起きましたことはまことに遺憾なことであります。  わが国石炭鉱業を取り巻く諸環境は、採掘区域における自然条件悪化、需要の減退等非常に厳しいものとなってきておりますが、石炭わが国唯一エネルギー資源であること、また人命尊重という基本理念に立脚しますと、災害未然防止のためには、従前に増して強力な保安行政を推進する必要があると考えられます。  つきましては、本日、御出席いただきました参考人各位から、石炭鉱山保安問題につきまして忌憚のない御意見を伺いまして、今後の委員会審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、参考人各位からの御意見の開陳は議事の都合上まず十分程度お述べいただき、その後委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず斎藤参考人にお願いいたします。
  4. 斎藤裕夫

    斎藤参考人 ただいま御紹介にあずかりました日本石炭協会斎藤裕夫でございます。技術部長といたしまして協会保安並びに生産の業務を担当いたしております。本日は、炭鉱保安問題につきまして意見を述べる機会を与えていただきまして、まことにありがたく感じております。  さて、国会の諸先生並びに関係当局から種々深い御配慮をいただいておるにもかかわらず、最近、死亡災害が続発し、多大の御心配をおかけいたしておりますのはまことに遺憾なことでございまして、まず、衷心から深くおわび申し上げる次第でございます。  私たちは、炭鉱保安確保することは炭鉱経営基本であるとの会長並びに各社長の御意思を体しまして、各社、各山の技術陣協力して保安の万全を期して保安体制努力を続けてまいったわけでございますが、それにもかかわらず災害は根絶するに至らず今日を迎えましたことは、重ね重ね残念なことでございます。さらに決意を新たにして、一層自主保安に徹し、災害絶滅のため努力を傾注してまいらねばと思考しているところでございます。  炭鉱保安確保については、去る五十一年五月に答申されました石炭鉱山保安懇談会の「今後の石炭鉱山保安対策について」の中で述べられていること、すなわち災害の諸原因を徹底的に排除するための自主保安対策強化することを基本としてとらえ、全力を挙げて努力してまいりました。またその中で、具体的には保安管理体制強化技術基準強化研究開発体制強化保安教育強化がそれぞれ細部項目を含み明示されていますが、それを受けて可能なものから実施に移しております。特に保安管理体制強化を目指して、たとえば二番、三番方のライン体制整備保安監督員、同じく補佐員制度充実強化、あるいは石炭企業間におけるクロスチェック相互技術交流等を各地方または各山の実態に合わせて早々に実施をいたしました。さらに当局の御指導のもとに、昨年八月から約三カ月にわたり、各社保安責任者により各種事故の究明を基礎として徹底的に論議を尽くしまして、自主保安体制具体的拡充強化のための共同目標を定め、チェック機構改善等体制充実行政指導を含めまして体制見直しを行い、逐次改善を行っている段階でございます。  最近の保安成績について述べさせていただきます。  死亡災害は四十八年から二けた台の成績となり、五十一年は先ほど委員長が申されましたように死亡者は二十九名、重大災害はゼロとなりましたが、昨年五十二年は五十八名の死亡者を数え、重大災害も四件と逆戻りのまことに不本意な成績に終わりました。事由別に見ても、このうち頻発災害要因による死亡者は三十名で、五十一年の横すべりの状況にございます。また、保安成績一つの指針であります災害率は、御存じの稼働延べ百万人当たり羅災者で示す数字でありますが、五十一年は二三三、五十二年は二二三、五十三年は三月までの成績ですが二一四と、わずかでありますが減少傾向は示しております。今年は災害率はいま述べたとおりでありますが、死亡者は四月末から増加いたして現在十七名ということになっており、また、すべて落盤運搬等頻発災害要因によるものであります。その足取りは例年に比べて早いのではないか、早く歯どめをかけるよう努力をいたす必要があると痛感いたしております。  考えてみますと、炭鉱保安の当面する対象として、まず第一に、一瞬に多数の人命を奪い会社経営の根幹にも甚大な影響を与えるあの忌まわしいガス爆発ガス突出坑内火災等炭鉱特有のいわゆる重大災害の根絶が挙げられます。この種の災害は絶対に惹起させぬとのかたい決意のもとに、予知監視体制、諸保安設備あるいは教育訓練強化を積極的に進めておる次第でありまして、今後もまだ未知の部分についての技術的解明あるいはより前進した技術開発の試みを促進しながら、さらに万全の体制を堅持してまいる所存でございます。  あわせて、今日の炭鉱保安は、重要災害に対すると同様に、死亡のおそれある頻発災害についてもその絶滅を期して渾身の努力を傾注すべきものであるとの共通の認識に立っております。人間尊重基本理念からは当然のことであります。ただ、頻発災害は日常の作業に密着して惹起するものだけに、その態様、要因等はまことに多様なものがあり、また働く人すべてに関係するもので、その対応は一々個々に見るときわめて複雑多岐にわたるわけで、私どもはなるべくこれを横断的にとらえ、深い次元で原因を究明し、対策を進めなければならないものと考えております。  こうして考えてまいりますと、頻発災害防止のためには保安上の指示命令が徹底できる体制環境づくりが第一に必要になるのではないかと考えます。すなわち、  一、指示を出すライン系統が十分整備され、有機的に結合し完全に機能し得る状態にあるのか。  二、指示は適切なものであり、かつ作業者に理解され実行されているのか。  三、そのチェックは十分に行われているか。  四、保安上の指示が、出す者も受ける者も自主保安により結ばれ、スムーズに生かされるような環境にあるのか。等々を確実に把握して、もしできてなければその原因を究明し、阻害要因を徹底的に排除する決意努力が必要だと考えております。この場合、問題点として、技術職員管理あるいは技術の能力、作業員保安意識あるいは技能、または職場秩序等が関連する場合が多いものと予想されますが、個人的な問題に及ぶ場合や全体的な対策を必要とする場合等、困難かつ時間を要する場合もあるかと思いますが、勇気と根気を持ってその解決に当たる必要があるものと考えられます。  また、当面の具体的な対策として、現在、各山がそれぞれその実態に即し実施している作業規格手順等が完全に実行されているかを常時見直しチェックを行う体制を定着させること。また、係員及び鉱員に対する教育についても、有資格者指定鉱山労働者並びに新入者等に対する諸教育はもちろんのこと、自主保安の見地から各山元において独自に数多く教育が行われておりますが、実効がより一層上がる充実したものを目指して、不断に改善しながら実施すること。以上の二点を、各社協力を得ながら推進してまいりたい所存でございます。  現在、石炭協会といたしましては、在京の保安責任者が参集して毎月一回技術連絡会情報交換討議を行っており、重要な問題については保安推進協議会または保安部長を必要に応じて随時開催し検討討議を行っております。また、災害事例研究会も随時開催しております。保安懇談会は、学識経験者石炭技研鉱業労働災害防止協会等関係者による保安問題の懇談会でありますが、隔月に実施いたし、保安の向上に役立たせております。  九州北海道保安推進協議会は、九州北海道石炭協会支部事務局を担当いたしまして、協会傘下全山をもって構成する協議会でございますが、五十一年二月から保安検討班による相互点検技術交流を行っております。九州では三山でありますので年六回、北海道は年十回、定期的に全炭鉱で順次開催し、坑内現場を巡回し、検討会を行いますが、当該炭鉱のみでなく、出席炭鉱も自山の保安対策を説明、意見交換検討を行っており、非常な成果を上げておると自負いたしております。日本の各炭鉱保安技術企業秘密は全く存在しない状態となっております。今次頻発災害対策として六月早々、北海道芦別炭鉱九州三池炭鉱において運搬災害対策を主とした保安検討会を行う予定にしており、東京からも参加することになっております。  次に、石炭技術研究所の活動について申し述べさせていただきます。  先生方御高承のとおり、日本炭鉱は年々深部化の道をたどり、このためにもたらされる坑内条件悪化は、盤圧ガス温度増加等であり、保安技術開発が必要になります。保安技術開発のため、基礎研究は各大学あるいは九州北海道に置かれておる石炭鉱山技術研究センター中心となり、また石炭技術研究所では、各炭鉱協力のもとに現場適用試験中心として、さきに述べた機関有機的連携をとりながら整合性のとれた保安技術開発に取り組んでおります。また、その技術成果現場に普及するよう、保安確保のための助成を活用し、保安対策に遺漏のないように努めておるところであります。  最後になりますが、今後とも保安確保については、でき得る限りの努力を続けてまいる所存でございますので、諸先生方の厚い御支援、御指導を賜りますよう衷心よりお願い申し上げて、意見の陳述を終わらせていただきます。
  5. 細谷治嘉

    細谷委員長 どうもありがとうございました。  続いて、古賀参考人にお願いいたします。
  6. 古賀徳継

    古賀参考人 おはようございます。  ただいま御紹介を受けました日本炭鉱労働組合事務局次長古賀です。労働並びに保安を担当している立場から、本日、意見を述べられる機会を得ましたことを厚く御礼を申し上げます。時間が非常に限られておりますから、要点のみを申し上げたいと思います。  まず第一に、炭鉱保安現状について若干申し上げたいと思います。     〔委員長退席岡田(利)委員長代理着席〕  ただいま協会の方からもお話がありましたように、最近、各炭鉱採掘区域は年々深部に移行しております。マイナス五百あるいは六百、深いところではすでにマイナス千メーターという非常に問題の多い採掘個所に移行しつつあります。こういったことに伴いまして、ガス湧出量増大並びに坑内温度の上昇、そして盤圧増大ガス突出など重大災害要因が非常に予測される状態になっております。こういうものを中心にいたしまして、ただいまもお話がありましたが、五十一年の五月十四日に石炭鉱山保安懇談会が一定の方向を出しました。それに伴いまして石炭法規改正を行ったわけでありますが、この改正に伴いまして、深部に移行していく過程における保安上の万全の対策は法的には整備された、こういうふうに判断をいたしておりますが、問題は、これをいかに現場で実行し実践し、災害絶滅を期すかということがわれわれに課せられた大きな任務であり課題であります。  こういった重大災害の問題とともに、私ども災害絶滅を期して取り組んでおりますのが頻発災害であります。この頻発災害は最近特に多くなったわけでありますが、これは、すなわち炭坑の深部化に伴う坑道延び増大、そして骨格構造複雑化、加えて人員不足保安施設、資材の問題こういうものが両々相まちまして、いわゆる頻発災害が数多く発生しているのではないか、こういうふうに私どもは言わざるを得ません。  先ほどお話もありましたが、五十年からの災害状況を簡単に見てみましても、災害件数としては五十年度が二千六百七件、これが余り減少しない傾向を今日も続けておりまして、百万人当たり災害率先ほどお話がありましたとおりですから省略いたしますが、この災害によりまして損失日数が何と六十万から五十五万台を数えているということは、他の産業に見られない非常に多くの問題を石炭鉱山の場合には抱えておる、こういうふうに言わなければならないであろうと思います。  特に、本年に入りまして頻発災害増大してきたということであります。すなわち、いま問題となっております三池炭鉱でありますが、一月の十一日に機械のために一名の死亡を出しまして以来実に数多くの災害を出しております。私の資料では六件、そして六名の死亡者を出しております。全体的に見ますと、今日まですでに十七名の頻発災害による犠牲者が出ておる、こういう実績であります。  以上のような炭鉱保安現状をどう打開するかということでありますが、私どもは、炭鉱保安基本的なあり方として、何といっても保安第一、人命優先労働者なくして炭鉱はあり得ないわけですから、「安全なくして労働なし」、こういうスローガンをもって日夜取り組んでおるわけであります。  頻発災害防止対策でありますが、いろいろ今日まで、石炭が生まれましてからあらゆる方法で取り組まれてきたわけでありますけれども落盤運搬等による頻発災害が、今日の進んだ社会においても、あるいは技術的には日本石炭技術は非常にすぐれておる、こういう中においても相変わらず後を絶たない。     〔岡田(利)委員長代理退席委員長着席〕 しかも、たとえば運搬災害一つとってみましても、類似する災害鉱車逸走あるいは脱線、同じようなケースのものが次々に発生する。落盤事故一つとらえましても、同じようなケースのものが後を絶たない。こういう現状は一体どこから来ているのかということについて、私の私見として率直に申し上げてみたいのは、まず第一に、何といっても保安管理体制が十分に確立されておるかどうかということであろうと思います。  御承知のとおり、石則におきましては、保安統括者から保安技術職員、そして会社職制機構としてはライン関係でいろいろ管理体制が確立されておるやに見受けられるわけでありますけれども、果たしてこの末端保安技術職員に至るライン全体に、生産よりも人命が何にも増して優先するのだ、そういう気風が確立しているのかどうかということが一番問題であろう。保安管理体制が十分に確立されておるとすれば情報伝達も早いでありましょうし、指揮命令系統もきちんと整備されておるはずであります。そういう中では法規違反あるいは規定違反——あるいは対策としていろいろ打ち出した方向が守られるはずであります。  しかし、実際に災害一つ一つを検証してまいりますと、やはりはっきり言えることは法規に違反している事例が数多くあるわけです。あるいはまた、社内規定規格、あるいは作業手順というものがありますけれども、そういったものに間違いなく従って作業が進められておるとすればそういった災害は防げたはずにもかかわらず、それらを犯して生産に走っていないかということが一番大きな問題ではなかろうかと思います。現に三池災害幾つかを取り上げてみますと、法規に明らかに違反している、あるいはとられた対策が十分でなかった、いろいろ批判すべき問題点があります。そういう問題点をなくすためには、何といってもやはり社長から末端職員に至るまでの保安管理体制整備強化拡充されておらなければならない。その中で保安は絶対大事なんだという気風が十分に確立されておることが必要ではないのか、こういうふうに私どもは痛感いたします。そして、この保安管理体制が十分な上で、もし法規に違反するというような事例が出た場合には、それには厳罰主義で臨むということを考えなければならないのじゃないか。  二点目には、そういったライン体制もさることながら、それをサイドからチェッカーとしていろいろ検証してまいる、あるいは監督してまいる監督員補佐員保安委員、社によりましては安全推進委員というような人が配置されておりますけれども、こういった人がサイドチェッカーとしての権威を確立しながら、ラインのともすれば生産に走りがちな方向を引き戻す、厳しくチェックしていく、そういう体制が確立されていなければならない、こういうふうに考えるのですけれども、私どもは、五十一年の五月十四日に方向を出されました石炭保安懇談会の中でも種々申し述べたところでありますが、結論として、そういうことのないようにライン強化、そしてまたサイドチェッカーの不十分な点は充足していくという方向が確立されたわけであります。それ以来、それぞれ各資本、各山では保安管理体制の不十分な点は強化する、あるいはパトロールもふやす、いろいろな処置がとられたわけでありますけれども頻発災害を近年多く出しました三池においては、果たしてそれが十分であったのかどうかということについて、今後私どもは十分掘り下げて検討しなければならない、こういうふうに考えておるところであります。  三点目には、一般労働者への教育の徹底、先ほど協会も言われましたが、指定鉱山労働者あるいは職員、こういう人たちに対する教育を徹底的に行う、そうしてその中で自主保安の確立、こういうことを実践していく体制をつくらなければならないであろう。社内においてはいろいろ教育が行われております。しかし、それが果たして十分なのか、十分であれば頻発災害を起こすということもなかったのではないか。とすれば、不十分な教育をもっと充実化方向検討し直す、改めて見直してみる、場合によっては、せっかく国の機関としてあります保安センターを活用する、そういう積極的な姿勢というものが望まれる。私ども労働組合としては、何といってもこの保安には、人命尊重第一主義に立って、労使が協力していかなければならない、こういう観点から、保安教育充実を叫んでおるところであります。  そのほかの問題として幾つか挙げられますけれども、まず第一には、やはり保安技術開発ということを急ぐべきだ、こういうふうに考えます。  先ほどから言っておりますように、深部化に移行していく中で重大災害がまだ後を絶たない、あるいは頻発災害も後を絶たないということであれば、何とかこれを徹底的に排除するために保安技術開発というものを急ぐべきだということから、私ども炭労としては、保安技術開発センターを国の力によってつくるべきではないかという問題提起を行いながら、今日まで関係機関協議を続けてまいっておりますけれども、これがいろいろまだ問題を持っておりまして、十分に結論を見出す方向までは行っておりません。  以上のほかに、果たして坑内骨格構造、それにふさわしい施設充実なり人員拡充、充足、あるいは、はっきり申し上げまして賃金、労働条件等が十分に確保されておるかどうかということ等々を全部洗い出して初めて頻発災害防止され、そして炭鉱保安というものが確立されていく方向が、一つ一つじみちではあるけれどもでき上がっていくのではないのか、こういうふうに私どもとしては考えております。  したがいまして、以上申し上げましたような方向に立ちながら、今後、炭労としては対会社との話し合い、あるいはまた関係当局との話し合い、こういう場を通じまして頻発災害及び重大災害の排除にあらゆる努力を傾注してまいりたい、そのために諸先生方の絶大なる御支援と御協力、こういうものをいただきますよう切にお願い申し上げまして、簡単でございますが、以上で私の意見といたします。
  7. 細谷治嘉

    細谷委員長 どうもありがとうございました。  続いて、小山参考人にお願いいたします。
  8. 小山和衛

    小山参考人 ただいま御紹介いただきました全国石炭鉱業労働組合、略称全炭鉱と申しますが、書記長小山和衛と申します。  衆議院石炭対策特別委員会の諸先生には、日ごろより石炭諸問題について御援助と御指導を賜りまして、厚くお礼を申し上げておきたいと思います。  また、本日は、保安問題を取り上げていただきまして、意見を述べさせていただきます機会を与えていただきましたことについて、心から感謝申し上げておきたいと思います。  なお、最近の一連の事故に関しまして御心配をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げておきたいと思います。  そこで、私ども炭鉱保安に対する姿勢について述べさせていただきますが、特に一昨年は保安懇談会の中でその方向を示させていただきましたが、私どもといたしましては、保安はすべてにまさる労使共通の課題として取り組んでおります。  私どもの職場は地下産業という特殊な環境でございますので、より作業の安全性が問われるところでございます。したがって、保安管理者、保安技術職員、鉱山労働者がそれぞれの立場を自覚いたしまして、労使が一体となって人命尊重の立場から保安確保するという基本姿勢をとってまいったわけであります。  ややもいたしますと会社のみにその保安責任を押しつけがちでありますが、実際現場で稼働いたしますのは鉱山労働者でございますから、まず第一に保安施設整備充実を図っていかなければならぬと思います。第二に、一人一人の労働者が、定められました事項を遵守することが大切と思います。いわゆるなれと手抜きと油断をなくすことが大切と判断をいたしておるわけであります。もちろん私どもは、不安全要素に対しては断固排除する方針で今日まで参っております。すなわち、保安確保のためには企業は費用と時間、手間を惜しんではならない。きょうすることはきょう実施させる、あすでは遅いという考え方で要求をいたしております。  そのような考えをもとにいたしまして、全炭鉱といたしましては七年ほど前から五項目の安全宣言を決議いたしまして、同時に保安カードをつくり各人に携帯をさせまして、点検の習慣と不安全要素の発見、また、その措置などを記載し報告させる制度を設けてまいったわけであります。これらは組合員の保安に対する自覚と責任を促しておるわけであります。そういう内容のもとで保安運動を進めてまいっております。  さて、現状の全国炭鉱災害率はどうなっているのかということでありますが、先ほど前者が申し述べましたように、全国炭鉱の百万人当たり災害率は、四十三年九五七が五十二年では二二二・九と約五分の一に減じてきております。このこと自体は非常に喜ばしいことと私どもも思っておるわけでありますが、しかしながら非常に残念なことは、死亡災害については四十七年百十八名、四十八年六十三名と減じましたが、五十年六十八名、五十一年二十九名と半減してまいりましたが、五十二年、再び五十八名となり、私どもの悲願でございます死亡災害ゼロの目標達成にはほど遠い感じがいたすわけであります。その災害原因を五十二年度で調べてみますと、落盤による死亡が十六人、運搬による死亡が九人、ガス爆発によりますものが二十八名、その他五名、計五十八名となっておるわけであります。  また、本年度一月−五月の死亡災害は十七人で、特殊なものを含まない災害としては多いという感じがいたしておるわけであります。その災害内容は落盤六名、運搬六名、その他五名、計十七人の死亡災害という状態であります。特殊なガス爆発は大多数の犠牲を伴うものでございますので、集中監視施設を含めました監視体制強化とボーリング及びガス抜き坑道の先行対策を必要といたします。  本日は、この問題は一応差し控えさせていただきまして、頻発災害に目を向けてみたいと思うわけでありますが、やはり前に述べましたように、落盤、運搬によりますものが上位を占めておることは事実であります。これらの個々の対策は、保安法及び規則に基づきまして労使構成によります保安委員会で原因を追及いたしまして災害対策が立てられておるわけであります。このような過去におきます災害対策を労使が忠実に守ることが頻発災害をなくすことと私どもは考えております。  特に今日の中で鉱山労働者、保安係員、保安管理者が綿密な連携を持ったチェック体制、内容の充実を図ったものが必要ではないかというふうに考えております。また、日常作業に従事する者の一人一人が保安動作の基本を忠実に遵守することが大切ではないかというふうに考えるわけであります。すなわち、正しい作業のあり方について教育充実すべきではないかと考えるわけであります。  現在、石炭予算に保安センター事業費が、各先生のおかげで一億二千四百万円組み込まれて、新入社員の基礎教育及び有資格の一部教育がなされ、効果が上げられております。これらの保安センター教育も必要だと私どもは考えておりますが、さらに充実を図っていただきますために、講師を現地に派遣した、実技を含めた再教育をしていただきますならば、基礎動作の確実化による災害防止に効果が上がるのではないかと思う次第でございます。どうか、この点、よろしく先生方に御検討をいただきたいと思うわけであります。  最後に、私ども炭鉱として、従来より独自の保安運動として毎年二月に保安点検週間を組合の立場で実施いたしております。具体的には各山別に保安点検目標を定めまして、全炭鉱保安巡視班を編成いたしまして、現場実態を調査するとともに、保安カード運動とあわせまして組合員家族の自覚を図り、これをまとめて会社保安面の改善要求をいたしまして、不安全要素の除去に努めております。  もとより災害減少保安の目標でございますけれども、とうとい人命を失う死亡災害絶滅は何としても果たしていきたいと存ずる次第です。今後、深部化、遠距離化していく各炭鉱にとって宿命的な保安対策強化が必要となってまいりますが、各先生方の御指導をいただきながらこの目標を達成する覚悟でございますので、よろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  私ども保安に対する一端を申し上げまして陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  9. 細谷治嘉

    細谷委員長 どうもありがとうございました。  続いて、鈴木参考人にお願いいたします。
  10. 鈴木照生

    鈴木参考人 全国炭鉱職員労働組合協議会議長をしております鈴木でございます。常日ごろから石特の先生方には、石炭産業の恒久的な安定化、こうしたことのために特段の御配慮をいただきまして、厚く御礼申し上げます。また、本日は、石炭産業にとりまして最重要課題とも言うべき保安問題につきまして意見を述べる機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。  過般、わが国石炭産業の位置づけを二千万トン以上の確保ということで決定されましたが、この目標を達成するための前提の一つといたしましては、何といいましても保安確保ということが大きな柱であるということは論をまたないというふうに考えております。すなわち、保安確保がなければ生産はあり得ないということであろうと思います。  私どもの傘下組合員は、その大半が保安技術職員で構成されております。したがいまして、私どもといたしましては、常日ごろから、われわれは現場における保安の責任者だという自覚のもとに、人命の尊重を第一義といたしまして、死亡者ゼロという目標に向かいまして運動を推進しておるところでございます。  御高承のとおり、石炭鉱山災害率につきましては前者からいろいろ数字が並べられておりますが、他産業との対比では依然として高率ではありますが、逐年減少傾向をたどっております。しかし死亡災害について見ますと、遺憾ながら昨年の死亡者数は増加するという最悪の状態になりまして、人命尊重という見地からまことに残念な事態であるというふうに考えております。また、本年に入りましても、各炭鉱におきまして死亡災害事故が頻発しており、まことに憂慮にたえません。この種の事故防止にさらに努力しなければならないと考えております。と同時に、まことに申しわけないというふうに存じております。  端的に申し上げまして、保安確保基本というものは決めたことを守るということに尽きるというふうに考えております。鉱業権者あるいは保安統括者保安技術職員、鉱山労働者の一人一人が、保安というものはだれのためでもない、自分自身のためのものだという自覚を持ちまして、保安に関する規則、規程あるいは各事業所で自主的に取り決めました事項などを、それぞれがそれぞれの立場で完全に守るということが肝要であろうというふうに考えております。また、ここで、当然のことではありますが、決めたことが守られるような体制をつくるということが必要であろうと思います。すなわち、決めた事項を全従業員に対しまして周知徹底を図るということは申すまでもなく、そのための諸設備の完備あるいは環境整備を図るなど、上級者は部下、これは必ずしも係員と鉱山労働者の関係ということだけではなくて、広い意味のことでございますが、いわゆる上級者は部下が必ず守れるような状況をつくるためのきめ細かな配慮があってしかるべきだというふうに考えております。  次いで、具体的な問題でございますが、まず技術的な面では、御高承のとおり、既存の炭鉱は相当深部に移行しております。また、移行しつつあります。深部移行に伴いまして、盤圧あるいはガスなどの増加、そして坑内温度の高温化、こうした現象が発生してまいりますが、このような要因によりまして、坑内骨格構造の展開のおくれや、あるいは産業環境悪化という問題が出てくるわけでございます。これを克服することが保安確保上重要な課題であろうというふうに考えております。  こうした問題を解消するために、深部移行に伴う山はね、ガス突出、高温などに対する対策の確立が急務となるわけでございますが、これらの問題につきましては、関係当局の御指導によりまして、各関係機関において現在それぞれ鋭意研究がなされておりますが、現場に直接従事するわれわれといたしましては、これらの対策が早急に確立されることを強く望んでおるわけでございます。  次に、保安教育の面に触れますが、企業側が行っております各種の保安教育に加えまして、鉱山保安センターによりますところの新入者の基礎教育あるいは有資格者教育などが行われておりますが、先ほども触れましたように、今後、深部移行に伴いますところの自然条件悪化、あるいは新技術開発等の問題を抱えておりますだけに、有効かつ適切な教育が望まれます。これに十分対応できる鉱山保安センターへ、さらに充実していただきたい。そうしまして、係員、鉱員教育の徹底を図っていかなければならないのではないかというふうに考えております。  最後に、石炭対策特別会計で実施されております保安関係の補助金などにつきましては、石特の先生方を初めといたしまして関係当局の御努力によりまして、近年逐次充実されてまいりましたが、さらにこの上とも特段の御配慮を賜りますよう、本席をおかりしてお願いいたします。  以上、炭鉱保安確保について申し述べましたが、冒頭に触れましたように、現場における保安の責任者である保安技術職員で構成されております私どもといたしましては、今後ともその責任の重大さを認識いたしまして、保安確保のため、英知を結集してこれに対処していく所存でございますので、今後ともよろしく御指導くださるようお願いいたしまして、私の意見の開陳を終わります。  ありがとうございました。
  11. 細谷治嘉

    細谷委員長 どうもありがとうございました。  続いて、伊木参考人にお願いいたします。
  12. 伊木正二

    伊木参考人 ただいま御紹介いただきました伊木でございます。  いままで四人の参考人の方々がそれぞれ御意見を申されましたけれども保安に対する根本的な考え方というのは恐らくどなたも違っていないというふうに私は考えております。そこで、私、平素炭鉱保安につきまして考えておりますことをお話し申し上げてみたいと思います。  まず、保安とは一体どういうことなのかということでございます。  保安は、災害の発生を予防し、あるいは万一災害が発生した場合でもその被害を最小限に抑えるということが目的でございます。こういう言い方をいたしますと、炭鉱には災害がつきものであるというように聞こえるかもしれませんけれども、決してそういう意味ではございません。われわれは、炭鉱から災害絶滅することを目標にしましてあらゆる努力をしなければなりませんし、また努力をしておるわけでございます。しかし、どんな産業でございましても、あるいは社会におきましても、全く災害をなくすということはとうてい人間のなし得ることではございません。たとえ災害を予測し、それに対して十分な対策をとったといたしましても、ちょっとした欠陥が原因災害を起こすことがございます。また、一つの欠陥だけであれば余り問題にならなかったはずであるのに複数の欠陥が重なり合って大きな災害につながる場合が多いのでございます。ことに、坑内作業は、自然に対抗しまして岩盤を掘削するもので、自然条件いかんが作業の難易に大きな関係を持っております。しかも、自然条件と申しますのは、地域的にも時間的にも、始終変化することが多くて、作業の機械化が困難で、人力に依存することが多いわけでございます。したがって、それだけ危険性の高い作業が多くなるということも否定できないかと思います。  坑内は、一般の工場と違いまして、地下という特殊条件がございまして、これが災害発生の原因一つになっているということも事実でございます。すなわち、運搬災害とか酸素欠損のほか、落盤、自然発火、ガス突出、山はね、爆発などの発生する危険性をはらんでおりまして、これらは炭鉱の宿命的危険性と言わざるを得ないと思います。この宿命的な危険性に対しましては、それぞれ各種の技術対策が講ぜられまして、もちろんまだ完璧だと言うことはできないと思いますが、常にその改善努力しているものでございます。今後、坑内深部化が進むに従いまして、これらの対策はさらに強化改善していく必要があることは言うまでもございません。  炭鉱坑内保安優先、人命尊重基本理念とすべきことはもちろんでございますが、坑内作業には生産保安とに区別できないものが多くありまして、両者を両立させなければ意味がございません。坑内災害をなくすだけのことであれば、これは坑内作業を中止してしまえばそれでよいのでございます。坑内をできる限り安全な状態に保ちながら作業をするのが坑内作業であり、保安作業であると思います。生産作業がほとんど保安作業を伴いますし、保安作業はすべて生産作業につながるものでありまして、生産保安とは常にバランスのとれた状態でなければならないと思います。また、各機械施設は安全なものでなければなりませんが、各自の安全は自分で守らなければならないと思います。すなわち、機械を安全確実に運転するための安全装置は完備させておく必要がありますが、この機械の取り扱いあるいは誤った接触などについては、各自が注意する以外にはないかと思います。もちろん、誤って機械に接触しないように覆いをするなどといったようなことも結構なことでありますが、余りに人間を過保護にすることは、すべてのものが完璧であるということになって、かえって人に油断を与えることになるのではないかというふうにさえ考えられるわけでございます。  いかなる坑内災害でも、何らかの人的原因がもとになっているというふうに考えられます。しかも、その人的原因としては、いわゆる管理職から末端作業員に至るまでのだれかの無知あるいは無理あるいは油断によるものが大部分であろうかと思います。災害が発生しますと、よく不可抗力というような言葉が使われますが、それはその当時の技術としては予測されなかった事故だというだけでありまして、結果的には事前にある処置をしておけばよかったということがしばしばございます。その対策技術は、なかったのではなくて、事前に気づかなかっただけで、不可抗力とは言えないかと思います。  従来、基礎研究大学及び国立研究所において、実用化研究は主として石炭技術研究所において行われ、さらに各現場がそれを応用して現場適用化を図っておるわけでございます。しかし、基礎研究はとかく理論が先行して実用化との結びつきが薄いものがございます。それは、基礎研究をやる場合には条件を単純化して実験を行うというのに対して、現場状況というのは複雑でありまして、実験データがそのまま現場状況に適合しない場合が多くあります。大学などでももっと現場問題点を把握して、その目的に沿った基礎研究を行う必要があるかと思っております。また、実用化試験におきましても、すぐに役立たないものは失敗であるというようなことで見捨てられてしまう場合が多くありますが、もっと現場適用化についても改善する努力技術者自身がする必要があるかと思います。言いかえますと、大学、研究所などの研究者と現場技術者との相互連絡を密にしまして、研究の目的、方法、成果等を検討するように努力すれば、それだけでも一層の効果を上げ得るものと思っております。  それから、最近保安管理体制についていろいろ問題が提起されておりますので、そのことにつきまして一言触れさせていただきます。  坑内では上席係員その他保安専任係員が適時巡回し、保安点検を行っておるわけでございまして、その他保安監督員、同補佐員、また山によっては保安委員が巡回し、サイドチェックを行って、いわゆるダブルチェックシステムというものが採用されて二重三重のチェックが行われております。その上さらに鉱務監督官による巡回検査もかなり頻繁に行われているように聞いております。ところが、この二重三重のチェックがあるためにかえって他人の保安点検に頼り過ぎるようになる場合があるのではないかというような気もいたします。また、各点検者が自分だけ承知しまして相互の連絡が悪いために総合的な判断に誤りを生ずる場合もあるように思われます。ダブルチェックももちろん必要でございますが、コミュニケーションをもっとよくして、各自が必要に応じて自分みずから点検をし直すという労力を払う必要があるかと思います。  それから、保安教育について一言申し上げます。  係員、作業者を問わず、新規採用者に対しては関係のある作業について実技教育を行って、作業者にはある程度の繰り返し作業を実際に行わせて習熟させ、係員に対しては、ある程度それ以上に広い範囲にわたって作業の主要ポイントを会得させるような実技を習得させる必要があるかと思います。そのほか、災害事例教育というのも一つの有効な手段かと思います。  以上申し上げましたように、坑内作業では何よりも保安確保が大切であることは言うまでもありません。保安優先の作業でなければなりません。保安対策は、大綱においてはどこの山にも共通するわけでございますが、細部に至ってはこれを画一的に規定することはかえって保安確保を困難にするものだと思います。常に山の幹部は、自分の山の特性を把握して、各方面の経験を参考にして独自の保安対策を立てる必要があります。そのためには、保安統括者から末端作業員に至るまで相協力して、みずから保安を守るという精神を徹底させることが最も大切なことだというふうに考えております。  以上で私の意見を終わらせていただきます。
  13. 細谷治嘉

    細谷委員長 ありがとうございました。  以上で参考人各位の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  14. 細谷治嘉

    細谷委員長 これより質疑に入ります。  この際、質疑者各位にお願い申し上げます。  質疑の際には、あらかじめ答弁を求める参考人及び政府当局者を指名して質疑を願います。  また、参考人各位にもお願い申し上げます。  参考人各位は、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言を願います。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、参考人及び政府当局に対する質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中六助君。
  15. 田中六助

    ○田中(六)委員 斎藤古賀小山鈴木伊木参考人、お忙しいところを私どものためにおいでいただきましてありがとうございました。  時間がありませんので、早速質問に入ります。  その前提といたしまして、鉱山保安監督局、まず三つ政府当局に聞きたいのです。頻発災害重大災害はどういうふうな区別をしているのか、それから自主保安という言葉を各参考人使っているのだが、これはどういう意味かということと、それから、鉱山保安法の三十九条に「保安技術職員の国家試験を行い、及び保安技術職員の資格に関する事項を調査審議するため、通商産業省に鉱山保安試験審査会を置く。」と言っておるのだが、この三十九条は具体的にはどういう資格者をどういう観点から選定するか、次の条項で審査会の委員は十名になっていますが、資格者を選定する基準、そういう三点をちょっとお答え願いたい。
  16. 高瀬郁彌

    ○高瀬説明員 お答えします。  まず、保安技術職員の国家試験制度の概要になりますが、これは上級と普通がございます。全部これは国家試験を受けるということでなければ資格が与えられないということになります。上級といいますのは技術統括者になる方のためでございまして、したがいまして、試験の内容は、鉱山法規とそれから坑内、外、機械、電気等の技術問題全般が対象になっております。また普通は、これは末端の係の方がございますので、各分野、たとえば発破係員だとかというような形で試験が行われます。この試験は、法定の試験審査会というのがございまして、これは学識経験者それから各鉱山の技術者を中心として構成されまして、そこで試験が行われまして、合格は、百点満点に対しまして六十点以上という基準で採用しております。  重大災害とそれから頻発災害の相違でございますが、これは統計上の基準でございます。死亡災害は、死亡が三人以上、または罹災者が五人以上が一つのメルクマールになっておりまして、そのほかに、重大災害につながります自然発火とかそれから爆発が重大災害ということになっております。  それから、三番目の自主保安体制ということでございますが、やはり保安の問題というのは、労使ともにお互いの自己責任で保安を守っていくという考え方でございまして、あくまでも監督局の行います監督指導というのは、これを外からバックアップするという形に相なっておるわけでございます。したがいまして、自主保安体制というのは、あくまでも相互にみずからの鉱山なり命を守るという体制でございます。
  17. 田中六助

    ○田中(六)委員 いま頻発災害重大災害の区別、それから自主保安、それから審議会の構成と、具体的にどういう試験をするのかを聞きたかったのですが、時間がありませんからそれは別にいたしまして、いま三つのようなことを前提にいたしまして、皆さんにお聞きしたいと思います。  保安教育の徹底、教育が非常に大切だということを言っておりますが、それならば具体的にどうしたらいいのかということなんですが、伊木教授がちょっと触れておりましたけれども保安管理体制ということから、災害事例教育という面、それから実体的に実技教育を行ってほしい、臨床実験みたいなことをやって、それからそれを抗内に適用してほしいということなんですが、私は、実は坑内に入ったことがないものですから、抗内の場面を頭に描くことができないのですけれども、ただ、私の筑豊地帯で、山本作兵衛という、炭鉱夫の長い間の経験で、いま絵をかいて、絵物語みたいなものでベストセラーになったこともありますが、その中の絵で頭に残してやるのですが、先山と後山と具体的にある、切り羽の前に。それからその後ろに係員といいますか、保安チェックする人々がおる。そういう三者を想定いたします。そういう場合に、人間関係ですから、いま具体的に、法律がどうの、あるいはこういうようにしたらいいというようなことはみんな参考人の方々述べていただきましたけれども、終局のところ、やはり心理的な、メンタルな面で、こういう単純化した後山、先山、係員、つまりチェックする人々、伊木教授もちょっと指摘しておりましたが、このコミュニケーションといいますか、そういうものがどうなのかということを問題提起した場合に、やはりいろいろなことが考えられるのです。たとえば、先山の場合は熟練した人がなるでしょう、これは常識的ですが。後山に残るグループの人々は未熟練の人が多い。そういうところ、それに加味して係員がおる。そういう心理的なもの、そういう場面を想定したときに、地下五百メートルあるいは千メートル、そういう場所でそういう人々の心理の交流というものが案外頻発災害につながっておるのじゃあるまいかということを考えるのです。そうすると、先山の人が熟練工だから、非常に未熟練な人に対して頭ごなしに何とかするとか、それからそれに反発する。係員がチェックする場合でも、人間関係ですから、そう相手の気持ちを全部推しはかってチェックするわけにもいかない。そういうようなところが結局何か事故につながっているのじゃないかという、突き詰めたところですね。教育とか、それは保安センターでどうするこうするとかいうこともありますが、そういう面はどうなんだろうかという思いがありますが、この点につきまして、斉藤理事、それから古賀さんと小山さん、鈴木さん、どうでしょうか、お答え願いたいと思います。
  18. 斎藤裕夫

    斎藤参考人 お答えいたします。  私も三十数年前、大学を出ましてすぐ現場の一線の係員になりました。いま先生のおっしゃるのは、現在とその時代との違いがどうかというようなことですぐ頭に浮かんだわけでございますけれども、確かにこれは時代が変わったと申しますか、たとえば親子の間あるいは夫婦の間でも、だから思うようにいかぬというような、いろいろ個人としての意見というものがはっきりしまして、そんな点から、三十数年前の話で恐縮でございますが、その時代に比べますと、若干関係は薄くなっておるやには思います。しかし、やはり社会でも同じように、それにかわる何か一つの理念、それをつなぐ、たとえば先山と後山、係員と鉱員というものをつなぐものが生まれてこなければいかぬわけで、特に、先ほど参考人の方が申し上げておるように、坑内作業というのは係員と鉱員あるいは先山と後山との信頼関係がなければ、やはりなかなか思うようにいかぬというか、問題があるわけでございまして、本当言うと、そういうことで抗内作業が昔から成り立っておる、今でも成り立っておるというふうに思っております。  そういうふうに整理してみますと、先生のおっしゃるような形で、現在うまくいっていないからそれが頻発災害の増加ということにつながらないかということの御返事は、結局、先ほど、これも各参考人が述べているように、災害率は四、五年前に比べて五分の一ぐらい、ましてや十年前に比べると、ほとんど十分の一——十分の一はひどいですが、七、八分の一ぐらいまで下がっております。そういうことは、やはり違った意味での関係ができておるのじゃないかというふうに思っております。これは相対的な話でございます。  それから、災害死亡者が——いま言っているのは頻発災害の率は、結局件数なり率は減っておるけれども死亡者が減らないというところに問題があるように思いますので、災害率あるいは災害件数が減っても、何とか死亡者は減らしていくというような問題になりますと、やはりもう少し違った意味で判断してみる必要もあるのじゃなかろうかと思います。  それから当然、先生のおっしゃることが、うまくいってないのじゃなくて、これは普通うまくいっているというふうに申し上げた方がいいのじゃないかというふうにお答えいたします。  どうも、返事になっているかどうか知りませんが、お答えといたします。
  19. 古賀徳継

    古賀参考人 お答えいたします。  非常にむずかしい質問ですけれども、先山と後向き、そして係員、いわゆる炭鉱における人間関係、こういうものは他の社会から見れば若干異質なものがあるように思います。といいますのは、居住区がほとんど一緒という中で、そして特に北海道あたりでは昔から、御存じと思いますが、友子制度なんというのがございましたけれども、そういうものの流れとは言えないが、つまり一つの組をつくって、そしてその組が一定の長期間パートナーとして作業を続行していくという関係がございます。やはり一番問題なのは信頼関係ということになってくるでしょう。つまり、係員が優秀な技術者であり、そして卓越した指導力を持っておるという中では人間関係は実にスムーズにいくのではないか、あるいは、先山がまた熟練した技術工であり、そしてまた判断力、こういうものもすぐれておる場合には、後向きという者はそれに従っていくことができるわけです。  そういった中で、特に近年問題としておりますのは、技術職員の皆さんが非常に老齢化してきたということが一つはございます。そして、新規の大学卒だとか高校卒だとかいう方がなかなか入ってこないという関係から、登用制度というのが非常に重要視されてきているのですけれども、この登用制度の中で、先山よりも技術が劣る場合、こういう場合が若干問題になってくる。係員が判断したことと先山が判断したことを総合的に判断してみた場合に、係員が言っていることはちょっとおかしいよ、先山が言ったのがやはり正しいのじゃないか、そういうことが起こり得る場合も想定されます。しかし、人間関係がだめだから災害につながったというふうに結びつけることは問題としては適切ではないのじゃないか、私はこういうふうに思います。  災害一つ一つ原因を追及してみますと、確かに死亡した、あるいは負傷された方の心理状態というものをもっともっと学者の方々の御協力も得ながら分析し、そしてその中から炭鉱における保安とコミュニケーションといいますか心理といいますか、こういうものについては検討していくべき方向であろうという重要な示唆は、ただいまの先生の御質問から私は判断をしておるところです。  以上です。
  20. 小山和衛

    小山参考人 御質問にありましたコミュニケーションの問題でございますけれども、私どもといたしましては、保安生産一つの両輪という考え方を持ちまして、ZD運動というものを毎月実施をいたしております。これの目的は、やはりコミュニケーションというものが前提でいろいろ会議をやっているわけでありますが、大体十人程度のグループをつくりまして、その中に首席係員あるいは担当係員、組合でいいますと中央委員とか代議員というものがございますが、それを含めまして、先山さん、後向きさんそれぞれ組み合わせまして交流を図っておるわけであります。これはやはり保安生産両方の問題を中心として論議をし合うわけでありますけれども、たとえば災害ゼロであれば災害ゼロという一つの目標を設定いたしまして、どうしていったら一番賢明な保安対策がとれるのか、そういった面での論議を月一回以上行っております。しかしながら、やはり実際上の問題として災害が起きておるわけでありますから、これらの問題点はさらに強化していかなければならないと思います。  ただ、先ほど私が陳述で述べましたように、ややもすると基本動作をなれと習慣によって忘れがちなところが災害要因になってきているのではないかということが判断できる場合が多うございます。したがいまして、人間関係も確かに必要ではございますけれども、これらの作業動作の一つ一つの組み立て方に基礎的な教育を熟練者に対しましてもあるいは新入者に対しても再度強固に実施すべきではないか、こういうふうに判断いたしております。  若干内容的にずさんな面があるかもしれませんけれども、私どもとしてはそういうふうに今後とも実施していきたい、こういうふうに考えております。
  21. 鈴木照生

    鈴木参考人 先生御指摘のいわゆるコミュニケーションという問題は一般社会すべての問題だと思いますが、特に石炭産業の場合は自然条件を相手にしておりますので毎日毎日状況が変わっていく。そういうような中にありましては、先生御指摘のとおり、特にコミュニケーションというものは必要だというふうに考えております。ただ、今次の一連の頻発災害はそういうコミュニケーションの欠如がすべてだということはもちろん先生もお考えではないと思いますが、そういう意味では私たちも、今後やはり部下と上司というもののコミュニケーションという問題について考えていかなければならないのじゃないかというふうに考えております。
  22. 田中六助

    ○田中(六)委員 いま鈴木さんは、コミュニケーションの欠如が災害につながっているというように私は考えていないだろうとおっしゃったけれども、実は私は考えているのです。特に三井の場合は新労と旧労がある。そういう人たちが同じように、先山、後向きとか言っていましたけれども、そういう中にグループとしてあるんじゃあるまいかと、自分ながら考えてみたりするのですが、その点は、組合の方二人、具体的にどうなんでしょうか。
  23. 古賀徳継

    古賀参考人 おっしゃるとおり、三池はいわゆる分裂をしております。いわゆる三池闘争後の非常に感情が対立、高ぶっていた当時においては、若干職場でもトラブルが起こったのは否定できません。しかし、そのトラブルが、では災害につながったのか、トラブルと災害ということになりますと、これは一言では言い尽くせない問題ではないか。特に最近の状況を率直に言いますと、最近ではそういうトラブルというものはほとんどございません。むしろ人命尊重ということで、お互いが間違った行為をするあるいは危ない行動をとる場合にはそれをお互いが注意し合うという状況はでき上がっておるというふうに確認しております。  ただ、現場においては確かに、私どもは旧労とは言わないで三池労組と言っておるのですけれども、この三池労組と新労の先山、後向きという関係はございます。その中で、このやろうは死んだらいいんだなんということを考えている人はだれもいないと思いますし、けがをすればいいんだということを考えている人はだれもいない。したがって、人間関係というのは職場においては、一種独特の職場ですから、これはそういうことを超越して、やはり人間の命を大事にするという気風は、三池においてもあるいは他の炭鉱においても同じだ、こういうふうに思います。上がってから組合運動としてどうするかということになりますと、これは違ってまいりますけれども現場ではそういうことはないと申し上げておきます。
  24. 小山和衛

    小山参考人 お答えいたします。  いま古賀次長が申された内容と変わりませんけれども坑内におきます作業は、私どもは運命共同体という理解に立っておるわけです。一つのいわゆる弱点がございますと、それによる災害が私ども新労といえども三池労組といえども起きてくるわけでありますから、それに対処する手段の保安というものを現場において対処する場合にトラブルが起こる可能性は、むしろ相互に注意し合うという体制の方が多いのではないかというふうに理解をいたしております。特に人間対人間の問題でありますが、たとえば新労同士でありましても、あるいは三池労組同士の中でも、個人的ないさかいがあったりしました場合に人間関係の問題は出てくるだろうと思いますが、そういった人間性の問題については、先ほど申し上げましたように、いろんな会議あるいは習慣の中からそれぞれの性格その他の判断を係員がいたしております。したがいまして、組み合わせの場合もそれらを配慮いたしまして組み合わせをいたしておりますし、そういう内容での現場のトラブルというものは、私がいままでおりました実態の中ではないというふうに判断をいたしております。
  25. 田中六助

    ○田中(六)委員 人命のことですし、自分の命がとうといということから出発すれば、相互にそういう理解が成り立って、私は新労も旧労もそういうことがないというふうに思いますが、メンタルな面だから、それがどこかに作用するんじゃないかという気がして質問したわけで、別に他意があったわけではございません。  それで、具体的に、今度は坑道がだんだん深部になっていく、それで暑さが、熱が出てくる、その他条件が非常に悪くなってくる。したがって、科学的にその条件の悪いのを排除していっていい環境に持っていくということは労使ともやっていくのでしょうが、しかし、自然を相手ですからなかなかできない部分が出てくるのですが、そうしますと私は、そこに人間の適性というものを考えざるを得ない。坑夫としての適性、つまり地下で作業する人の適性、地上ではこの人はすべてが普通なんだが、坑内に入ると、やはり人間性が違うと同じように人によって感度が違うのですから、したがって、本当の教育という場に、つまりこの人は坑内夫として坑内に入って作業するのに果たして適性があるかどうかというところの教育を、採用するときにしたらどうかということが頭に浮かぶわけですね。だから、教育という面にそういうことがあるのかどうか。何でもかんでも来た人は、できるだけ人が足らぬからやるということ、だから、私どもも考えなければいかぬのは、これからのエネルギーというものは、日本では石炭が唯一のものだ、大陸棚の問題とかいろいろありますけれども、なかなかそうはいかぬでしょう。したがって、石炭日本にとって唯一のエネルギー資源ならば、その石炭採掘に関連をする人の給料というか賃金は最高に上げてもいいと思うのです。だから、そういう環境整備、生活を伴った環境整備はあらゆる角度からするということを前提にした場合、今度は採用する場合に、そうなると多くの人が来るでしょう。しかし、その採用する場合に、この人が適性があるかどうかということを教育していく余地が出てくるとぼくは思う。したがってそういう面の教育伊木先生、どうでしょう。
  26. 伊木正二

    伊木参考人 私、最近会社が採用についてはどういうふうな形でしておられるか存じませんけれども、私も学校を出まして約一年ぐらい現場におりまして、そのときのこと、あるいはその後幾つかの会社でそういう話を伺ったことで申し上げますと、確かに坑内夫の採用のときには体のいい人がまず考えられると思います。ところが、体のいい方でも非常に動作ののろい方で、坑内夫として適しないという方もあるようであります。それが人員が集まらないときには、多少無理があってよそういう適しないというまででなくても適当でないという方でも採用したかと思いますが、最近はその点はかなり選択ができるような状態であるのではないかというふうに考えておりますが、いかがでございますか。
  27. 田中六助

    ○田中(六)委員 実は私の満足するような御答弁はいただけないのですが、時間がございませんし、この程度で終わります。  教育教育と言うのですけれども、具体的にそれなら坑内に適してどうするかということになりますと非常にむずかしい面がございます。金のかかることでもあるし、そういう点はわれわれも十分配慮して、できるだけ事故のないように、人命が尊重でき得るように具体的なことで対処していきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  28. 細谷治嘉

    細谷委員長 岡田利春君。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 参考人の皆さん、どうもありがとうございました。  伊木参考人には、私、他の参考人に聞いた後、所見をひとつ承りたい、こういう形で参考人の皆さんにお尋ねをしたいと思います。  保安法ができてことしがちょうど三十年目になるわけであります。特に、炭鉱保安を守る上において、保安法は五十八条から成っておるし、また、石炭鉱山保安規則は四百条から成っておるわけです。これに基づいて各山に保安規程がある、このくらい管理あるいは規制、あるいはまた機械器具の指定が微に入り細にわたっておる法律体系というものは他に類例を見ないのではないか、こう思っておるわけです。しかし、依然として炭鉱災害は減らない。しかも、かつて千ぐらいあった炭鉱が、いま大きいところでは大体十三の炭鉱でほぼ一万一千六百トンの生産をしている。いわば優秀な炭鉱が最後に残った、こう言わなければならぬと思うのです。だが、依然として重大災害が発生する、あるいは頻発災害が発生する。これは、やはり保安法三十年を迎えた今日、もう一回原点に立ち返って災害というものは完全に追放する、こういう決意の出発であってほしいな、こういう実は気持ちでお尋ねをいたしたいと思うわけです。  特に最近の一月からの災害を見ますと、落盤が六件、運搬が五件、坑外で三件の死亡がある。社別に見ると、三井が七件、北炭が四件、三菱が二件、住友が三件、松島が一件。炭鉱別に言って、死亡災害が五月末まで出ていないのは北炭の清水沢、三井の砂川それから太平洋。あとは死亡災害が出ておる。こういう総括に実はなるわけであります。そして残念ながらこの中には社外といわれる、俗に組夫といわれる社外工の災害が昨年から出ておる。こういう点が実は非常に注目をされるわけであります。  そこで私は、まず第一点として、古賀さんと小山さんにお聞きいたしたいのですが、保安法二十三条の二では組夫の使用の問題について実は定めがあるわけです。実際問題として組夫の保安管理について一体どうなっているんだろうか。直轄の場合には保安作業指示も一元化して体制がとれているわけですが、組夫の関係は雇用が違いますから、当然保安係員もいる。だが系統的な保安管理体制の中には組夫の保安管理は含まれるわけであります。そうすると掘進とか運搬、いずれかに組夫が使われているわけですけれども、その接点における保安指示命令管理系統が果たして水が流れるようにいっているんだろうかと思うと、災害原因を調べてみれば、やはりそれは実は十分にいっていないと判断ぜざるを得ないわけです。そういう意味で、労働組合の場合には組合員の安全を守るということが第一義の目的でありますけれども炭鉱保安の連帯性から言えば、やはり組夫の災害がもし重大災害であれば他に波及する、こういう恐れがあるわけですから、こういう意味では、組合としても社外工の保安の面、こういう面をもう一度掘り下げて検討する必要があるのではないか、こう私は思うわけです。そういう点で、組合の立場としては一体どう考えられておるか。また、協会斎藤さんは、これらの点について、届け出をして、保安事項を定めて監督局長が認可をするわけですから、そういう点で問題はないと理解されておるか、それぞれ御意見を承っておきたいと思います。
  30. 斎藤裕夫

    斎藤参考人 お答えいたします。  先生御承知のように、組夫の使用に関しては法の定めるところで監督官庁に届け出まして、許可をいただいてやるというような形になってございます。  これの保安体系の中における位置づけにつきましては、組は大きい小さい、いろいろあるわけでございますけれども、いずれにしましてもこれは保安法のらち内に全部入っておりまして、当然保安的な最高責任は、直轄あるいは組という区別なしに保安管理者にあるわけでございます。そうしますから当然それに基づいて常駐職員なり一般係員が配置される。ただし大きい組ですと当然、係員を組自体が持っているというような形で、一部組の仕事についてはその組の法定の係員に任ぜるというような形でやる場合がございます。ただしこういう場合でも、現在、私どもの調べでは、どの会社もほとんどダブルチェックというような形で各方一名ないし二名、これもまた作業規模によって違いますけれども、これをつけまして、これは作業指示あるいは作業実態の把握あるいは連絡というようなことも含めながら当たっておるのが現状でございます。ただ、組の中には御存じの、法に届けない、一カ月以内でやる小さい組がございますが、これは原則としては直轄の係員が見ることにしてございます。見るというのは、係員の掌握の中に入れた形で保安上、作業上の指示をするというような形で消化するというような形になっておると判断いたしております。  それで、災害の問題とつなぎまして、当然そういう形からそれじゃどういう具体的な教育なりなんか行っておるかということになりますと、これも最近の私どもの調べ、あるいはその前の調べでも、各社とも、たとえば私、先ほど冒頭陳述いたしました中におけるいわゆる有資格者、指定鉱山あるいは新入者、これの資格付与あるいは追教育、そういうものについては組も直轄も分けずにいわゆる教育計画の中に同等に織り込んで教育しているという形が多いようでございます。むしろ組関係がコミュニケーションあるいは集まりが悪いということで、専門に組関係教育というようなことでダブルチェックと違った意味で教育専任者を充てる、あるいは月に何回かそういう者を教育しているというような山が多いように承知いたしております。  ただ、保安体制としては決まっておりましても、やはり企業体制として若干違う、直轄並みにいかない面の間から、その連絡あるいは指示の不徹底という面で事故につながった例というのは、先生おっしゃるとおりあるようでございます。  それで、そういう点につきましては、そういう事故の起きた炭鉱は、さっき申し上げたダブルチェック係員というか組係員というか、いろいろ会社によって違いますけれども、これを十分活用してそういう穴を埋めていくというようなこと、あるいは特にわりあい手薄になっております二番、三番の保安管理体制の中における組の使用というような問題についての対策という問題で別個に取り上げて、それぞれ対応しているというような形になっていると思います。  い、ずれにしましても、これが一つの盲点になりまして事故が起きたというのは非常に申しわけないと思いますし、そういう点での事故は今後とも防いでいきたいというふうに思っております。
  31. 小山和衛

    小山参考人 組関係に対する命令系統につきましては、ただいま説明がございましたので、ダブルチェックという制度を生かしまして、鉱長あるいは副長と組関係の責任者あるいは特に組関係の担当の首席係員、こういうものを現場に派遣をしながらチェックをしておるというのが一つの事象でありますし、あるいは保安の組織の中で組も当然中にに入っておりますから、私どもが組合として選任をいたしております保安監督補佐員保安委員委員あるいは安全推進員というものがございますが、これらがすべて現場に行きましてチェックは行っております。しかしながら、先ほど御指摘がございましたように、今回の一連の災害の場合に組が多いではないかという御指摘は確かにそのとおりだと思います。したがいまして、今後の問題としては、先ほどから何回も申し上げますが、基礎作業というものが、いわゆる基礎動作というものがやはり今回の場合に一番欠けておったのではないかという感じもいたすわけであります。したがいまして、その他の保安問題を網羅をいたしまして、一連の災害に対します対策として一方組関係教育を徹底して今回特に三池の場合は行っておる模様であります。したがいまして、私どもの組合の方向といたしましても、坑内に入る作業者に対する教育の徹底あるいは災害事例をもとにした教育の徹底というものを図っていくことが、類似しました災害絶滅を期せるのではないか、こういうふうに考えております。したがいまして、やはりこれらの問題を重点的に今後とも続けていくべきではないかというふうに考えております。
  32. 古賀徳継

    古賀参考人 組の関係につきましては、実は炭労といたしましては、できる限り人員を削減していく、そして本工への採用、登用といいますか、そういうことで本来のあり方に戻すということを原則に考えておりますが、残念ながら、いわゆる本工の人員不足ということによって掘進がおくれていく、あるいは必要な機械、設備等が間に合わないということから、起業掘進あるいは機械、電気という職種を網羅した組があらゆる炭鉱に入っております。そこで、原則的には組の皆さんは、起業掘進、そういう関係で払いあるいは払い周辺には入れないといいますか、そういう作業の範囲としては除外するという考え方で臨んでまいっておりますが、これが今日、先ほど言いましたように、人手不足あるいは生産体制整備という中からはやむを得ず切り羽近く、払い近くに組の皆さんが作業しなければならないという現状も否定はできません。  そこで、この人たちに対する保安上の問題でありますが、取り組みとしては、先ほども前者が言いましたとおりでありますけれども、このダブルチェックシステムというものをやはりもっと強化していくということが一つと、それからもう一つは、保安委員会に対するオブザーバーとしての出席を求めながら、そして保安委員会が決定した事項を間違いなく組の労働者の皆さんに伝える、そして確実に守っていただくという方向をとるべきであろうということから、今日ほとんどの炭鉱は、保安委員会に対するオブザーバーの出席あるいは保安委員会の決定事項を、組の代表者の皆さん方に集まっていただいて、そこで厳重に伝達しながら、そしてその伝達が生かされておるかどうかということを直接現場職員の皆さんが出向いてダブルチェックをする、そして違反とかあるいは不安全行為については直ちにそこで改善させるという行動をとっておるわけですけれども、率直に申し上げまして、やはり組の皆さんと本工との関係では若干その辺に問題なしとしない面があります。したがいまして、炭労といたしましては、各社各山に対しては、この組の皆さんとのコミュニケーションこそ大事だということで、いままで保安委員会に対する出席あるいはそういうチェックしていく係員の皆さんの教育、同時に保安委員なり山元におります安全推進員等の皆さんが、やはり本工関係の職場だけを巡回するのではなくて、そういう組関係の職場においても巡回をしながら不安全行為なり違反行為については指摘し改善を求めていくという行動をとるべきだということから、今日そういった方向で取り組みをいたしておりますけれども、この組の問題については、本来的にそうあるべきだということは理解されても実態的にはいろいろトラブルを起こす要素も否定できないということですから、この点については、何とか今後、石炭協会あるいは当局とも協議をしながら、全体的に一人の労働者も亡くしてはならない、あるいは一人の違反によって全体が影響をこうむるということが起こり得るのが炭鉱でございますから、絶対そういうことがないように、今後取り組みを強化していきたい、かように考えております。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 起業掘進のような場合には、これは鉱長がおり係長がおり、案外系統は把握が容易だと思うのですよ。ただ、撤退作業だとか運搬というものは一々組の係員がついて管理しているはずはないのであって、そういう意味では、いわゆる作業保安関係の管轄権といいますか指示権といいますか、こういう面はやはりもう一段と工夫する必要があるのだろう、こういう私の意見だけを述べておきたいと思います。  次に、これは端的にお聞きしたいのですけれども保安監督官、鉱務監督官がそれぞれ炭鉱保安検査をする。私の承っておるところでは、北海道は、この検査が終われば、交渉的な、意見も述べる、意見も積極的に聞く、懇談もする、こういう方向北海道の場合には運営されておると聞いておるわけです。九州の場合にはそういうことがほとんどない。組合とかそういう関係ではほとんどない、こう承っておるわけです。これは事実かどうか、これは古賀さんと小山さんから端的にお答え願いたいと思います。
  34. 古賀徳継

    古賀参考人 先生、監督官と言われますと、三池の場合ということでしょうが、余り組合との接触はないようです。ただ、いわゆる課長あるいは管理官という方が保安監督機構の場合にはあるわけですけれども、こういった人たちとは接触が行われておる、こういうふうに現地からは報告を受けております。
  35. 小山和衛

    小山参考人 全く同じ意見でございますけれども意見の交流は、特に、現場に入ります場合に、私どもが推薦いたしております保安委員会のメンバーあるいは安全委員のメンバー、これらと同行をいたしております。したがいまして、現場におきますコミュニケーションも当然この中でできておるというふうに判断いたしますし、組合関係といたしましては執行部が、監督官が参られましたときに出向きましていろいろ私ども意見も述べさせていただいております。
  36. 岡田利春

    岡田(利)委員 保安法第十五条、監督員監督員補佐員というものを定めてあるわけです。監督員補佐員制度ができて実は十五年になるわけであります。ところが監督員補佐員の位置それから身分というものを考えてみますと、これはもう全然各山によって違うわけですね。しかしこの任命は、鉱業権者が保安監督員補佐員の場合には労働者の推薦を受けた者を任命するわけです。鉱業権者が任命する以上、その待遇について、あるいはまたその位置について、勤務の位置、任務について、これは明確に定められなければならないと思うのです。  ある保安監督員補佐員労働組合の事務所におったり、別なところにいてみたり、ある山では監督員のいるところに補佐員としておる、こういうことでばらばらなわけですね。法の精神からいって、これは私はどうも筋が一本通っていない、こう実は考えておるわけです。  同時にまた、請負給の鉱員保安係員の資格を持って補佐員に選任をされる、給与が下がる者も出るわけですね、出来高払いであれば。こんなばかな話はないと思うのですよ。少なくとも保安法に定めた保安技術職員であるはずですから。そうすると、それにふさわしい待遇というものが当然決められるべきだと私は思うわけです。これをやらない会社もおかしいし、解決しない組合の方も私はおかしい、どうしてもおかしいと思う。法の精神にかなっていない、こう思うわけです。この点どう考えるか、労使の参考人からこれも端的に、長い時間要らぬですから、ぴしっとお答えいただきたい。
  37. 斎藤裕夫

    斎藤参考人 お答えいたします。  監督員の地位については法的に先生のおっしゃるとおりはっきりいたしておりまして、私の知っている範囲で申し上げますと、保安監督員という立場で地位的にはもうはっきりしているんじゃないかというふうに思います。ただし、待遇的な問題につきましては、いまお話しの請負給が出来高払いで、下がるとか、そういう問題についてはちょっと資料がございませんのでお答えできませんけれども、ただ少なくとも監督員の待遇といいますか、これはその現地の労使で話が決まって実施しているというふうに考えております。  以上でございます。
  38. 古賀徳継

    古賀参考人 お答えいたします。  位置という問題ですが、これについては、それぞれ労使の長い慣行がございます。したがって、たまたま労働組合の事務所に机があるといいましても、その人たちは全部会社管理機構の中に組み込まれておるわけです。そういう意味では、すべて指示系統というのは会社側にございますから、そういう面でのそごはない、こういうふうに考えます。  第二点のいわゆる待遇、賃金という問題ですが、実はこれは、いわゆる五十一年の五月十四日、石炭鉱山保安懇談会の答申をめぐりまして、労使でこの保安委員あるいは補佐員の賃金の問題については話し合いました。そして炭労としては、少なくとも出身職種の現収保障といいますか、最高といいますか、こういうものをきちんと位置づけるべきではないのかというふうに主張したわけでありますけれども、これも長い間の山の慣行というものがございまして、ほとんどその出身職種ですね、採炭であれば採炭、あるいは掘進であれば掘進の出身職種の平均なりあるいは本人の現収を下回らない、前の賃金、補佐員以前の賃金の状況から下回らないという線で、具体的には各山で協議してもらうということにしておるわけですけれども、御指摘の、ある山におきましてはその賃金が十分ではないということから、問題をまだまだ解決し得ないでいるという山がございますから、この点については、引き続きその現地における努力と相まちまして、炭労としても来春闘あるいはその時点、時点における問題点の洗い直しを行いまして努力をしたい、かように考えております。
  39. 小山和衛

    小山参考人 先ほど古賀参考人が申されましたように、管理機構の中では、会社管理機構の中に入っておりますので、その中で十分連携を保ちながら保安に対する対策、その他を指摘いたしておるわけであります。もちろん組合との打ち合わせ等で組合の方に参りまして相当時間おることも事実であります。  そこで待遇改善の問題でございますけれども、これは御承知でありますように、炭鉱の賃金の場合に、ベースアップ一方当たり幾らという財源の中で賃金の操作をいたしていかなければなりません。したがって、一つの財源をお互いが食い合うという状態になるわけであります。したがいまして、これらの中で民主的な討議を重ねまして賃金の配分を決定しているのが実態でございます。したがいまして、現状の中では、ある一つの山の場合は本人給としては最高の位置に定めております。しかしながら、この監督員補佐員その他の方が請負給出身の場合は、請負給がございます関係で給与としては下がるという可能性は当然出てくるわけでありますが、位置としてはそういった位置で本人給としては最高の支給をしておる、こういう実態でございます。  御承知のことかと思いますけれども、賃金展開、財源の内訳もございますので、やはり山元において協議しながら、待遇については討議をして結論を出していきたいというふうに考えております。
  40. 岡田利春

    岡田(利)委員 参考人意見をもらったんですけれども、そういうところに日本的な考え方がある。そういう点で唯々諾々としておるというところに問題がある。ベースには関係ないわけですよ。保安監督員に準ずる給与を決めればいいわけですから、それを保障すべきなんですよ。私は、少なくともこの監督員補佐員を制度発想した人間の一人として、非常にいまの監督員補佐員の地位は不十分である、待遇についてもこれは当然考えなければならぬ。保安技術職員なんですから、その職についての待遇をするのが当然じゃないですか。この点は、いずれまた政府にも見解をただしたいと思うのですけれども、考え方はやはり変えるべきだ、こういう意見を私は述べておきたいと思うのです。  次に、これは政府に聞きましょう、保安法三十八条で、労働者の申告ということが保障されておるわけです。不利益な扱いをしてはならないということも明確にここで定められている、こういう件数はこの五年間どのくらいの件数があるか、承っておきたいと思うのです。
  41. 高瀬郁彌

    ○高瀬説明員 お答えいたします。  鉱山保安法三十八条に基づく申告は、過去五年間で札幌で四件、福岡で三件、計七件であります。そのほか電話等で札幌では十九件という数字になっております。この申告を受けました場合には、監督官が現地に赴きまして調査をして、必要な対策指示するということをやっております。
  42. 岡田利春

    岡田(利)委員 労働組合からの申告はありますか。
  43. 高瀬郁彌

    ○高瀬説明員 お答えいたします。  組合等から団体としてきた申告ではございませんで、これは全部個人からの申告になっております。
  44. 岡田利春

    岡田(利)委員 よく法違反、規則違反という問題がいろいろ出るわけです。もちろん規則の中には守られないような規則も、私も現場で体験をして、あると思うのです。たとえばロングで発破をかける場合に何メーターなんてきちっと守っている人なんていないはずですね。そういうことはわれわれ自身も経験している。だがしかし、普通一般、技術的に考えても保安的に考えても法違反ということになって、もし労働組合で確認するとするならば、これは三十八条を運用すればよろしいわけです。そういう意味で、個人だろうと団体だろうといいわけで、鉱山労働者は申告できるわけですから、そういう面で、もし問題があるとするならば、そういう積極的な姿勢が必要ではないかと私は思いますし、先ほど古賀参考人からもお話があったので、むしろこういう法の活用ということを労働組合側も考えるべきではないのかという私の見解だけを述べておきたいと思います。  それともう一つ、これは鈴木さんに伺っておきたいと思うのですが、規則第三十八条、第三十九条には有資格鉱山労働者と指定鉱山労働者の定めがあるわけです。先ほど来ダブルチェックの話がずいぶん出ているのですけれども自主保安という面からダブルチェックを考える場合にどうあるべきかという点について、若干認識の相違があるわけです。と申しますのは、なぜ一体有資格鉱山労働者を定めるのか、なぜ一体指定鉱山労働者を定めるのか。これは機械とかいろいろな取り扱いの関係上それぞれ資格が必要だ、こういう厳格な規制をしているわけです。たとえば今度の災害の場合を見ましても、ロング長というか払い長というか、こういう人の災害もあるわけですね。採炭、掘進の第一線の現場では大体チームを組んでいるわけです。それが先山であり後山、あるいはまた最近は近代的な名前で払い長とか、いろいろな名前が各山でつけられている。これは係員の指示を受けて作業をするわけです。そうすると、チームの長といいますか、先山と係員とのコミュニケーションということがやはり一番大事なわけです。幾らダブルチェックをやっても、点と線と面から言えば、たとえば上の方の上級は点であるし、あるいはさらに三交代の係長をふやしたといっても、これは線にしかすぎない、決して面にはならないわけです。そうすると、日常現場の態様は変わっていくわけですから、ガスの湧出も変わっていくでしょうし、現場を掘進していけば刻々変わっていくわけですから、これにダブルチェック体制をとるとすれば、やはり先山と係員とのコミュニケーションにおけるダブルチェック自主保安基本に据えられなければならぬだろうと思うわけです。ところが、先山は保安法規上から言えば別に資格はないわけです。有資格でもなければ指定鉱山労働者でもないわけです。しかし、先山である以上、自分の部下がおるというか、チームの長でありますから、単に作業は非常に行動的にやるけれども保安知識が欠如するということであってはまずいわけです。ある一定の保安の知識レベルを持っていなければならない。そして係員との間でチェックし合う。たとえば今度の芦別のような災害を見るとそういう傾向があるわけですね。そういう点がぴしっと据えられて、きれいに整理整とんされて初めて自主保安におけるダブルチェック体制だ。これが自主保安におけるダブルチェックの一番肝心なポイントだということを私はかねがね主張しておるわけですが、なかなかそういっていない。そういう意味において、特に技術職員の組織である鈴木さんから、この面の意見を承りたいと思うのです。
  45. 鈴木照生

    鈴木参考人 先生のおっしゃるとおりだと思います。先ほどもちょっと言いましたが、特に抗内というのは自然条件を相手にするところでございまして、前の日の方と本人の当方はまた変わっておる場合があるわけでございますから、やはり係員は現場を十分に把握して適切な指示をしなければならない。ただ、先生がおっしゃいますようにたとえばロングですと多数のチームでもって一つの仕事をするわけでございますから、いわゆる係員の片腕となる先山の方々が当然係員を助けていく、また係員も先山からいろいろなことをアドバイスを受けながらやっていくということも当然あり得るかと思いますので、この辺のコミュニケーションというものは一番大切だと私は考えております。先生いま御指摘の、いわゆる先山は有資格者でも何でもないじゃないかということにつきましては、私、本当に貴重な御意見だと思って拝聴いたしました。
  46. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは伊木先生に伺っておきたいと思うのですが、特に今回、参考人には三池炭鉱災害を契機にして御出席願ったわけですが、三池炭鉱は、いま二千万トンにしても四分の一の五百万トンを超える生産をするわけです。いまですと坑内掘りで計算しますと二七、八%になるのでしょうか、大変大きな国際的な炭鉱であります。そしてたとえば三川であれば毎日一万トンぐらいの出炭をする。有明、四山という鉱がある、大変ビッグな炭鉱であるわけです。しかし、保安法の保安関係管理機構は大体百万トン前後の炭鉱を標準にして発想したものだと思うわけです。私もかつて昭和二十三年に公聴会に出席したことがあるわけです。三池炭鉱でも、私自身も戦前、監督係員として働いたことがあるわけです。いま所長さんが保安統轄者で、技術次長さんが保安管理者、そして鉱の鉱長さんは副保安管理者であるわけです。三川の出炭規模というのは、太平洋炭礦がその次、一坑口から出る出炭量は一年間に二百五十万トンです。そうしますと太平洋には、一つの坑口ですから、保安管理者がおって、副管理者はさらに下におる、そして保安監督室がある、こういう機構体系になっておるわけです。こう考えますと、こういう飛び抜けたビッグな炭鉱に対する管理機構というものはこれでいいのだろうかと私はちょっと疑問に思うわけです。少なくともそれぞれの鉱長さんは保安管理者ではないか、そして坑道が連絡しておって統括する必要があるから、別に法に統括という名前があろうとなかろうと統括する保安管理者がその上にいていいのではないかと思うわけです。そういう点で三池の場合には、保安管理機構というものは、法では合法であるが、適当であるかどうか、この点、非常に問題があるのだろうと思うのです。私自身、常識的に考えて、適法ではあるがまた適当な方法を考えるべきではなかろうか、こういう気がしてならないわけであります。そのことが災害につながっているという意味ではありません。そういう直線的なことを私は申し上げませんけれども、そういう点は特に検討されなければならぬ点ではないかという気持ちが実はあるわけであります。湿度と温度、炭のサルファが多いということを除けば、何と言っても類例のない炭鉱でありますから、こういうところで災害が起きるということであっては日本炭鉱保安はなかなか守られないと思うわけです。そういう点で私の考え方に対して、伊木先生の所見があれば承りたいのです。
  47. 伊木正二

    伊木参考人 三池の場合は恐らく坑内がつながっているということで一つの鉱業所になっており、そしてたしか施業案や何かは各鉱別になっているのだろうと思います。  それで、保安管理機構の問題でございますが、これは私は、どちらにされてもかまわない、また、細かく分けていかれればそれぞれの長所もあるかと思いますが、やはりああいう一つ坑内でつながった炭鉱であれば全体としてすべての保安計画というものを見るべきであって、個々の鉱別で見ただけでは間に合わないという感じがいたしますので、特に各鉱別に保安管理者を置くということが、そうでなければいけないというふうには私は考えません。どちらでも運営次第であろうというふうに考えております。
  48. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういう意味で、保安管理管理機構におけるダブルチェックとの関係、こういうことも私はこれからそれぞれ検討しなければならない素材ではないかという気が実はいたしているわけです。  特に、私はこの機会災害の件数、内容をずっと調べると、運搬が多い。運搬というのは、大体巻き立てなんですね。三池鉱車逸走事故だって、もしとめるところから下の方にポイントを置けば逸走しなかったはずですね。ちょっと傾斜が強いところはみんなポイントを置くわけですね。これがそういう形で坑底逸走防止するということになっているわですから、そういう面から考えますと、概していいところで、場所としてはそう悪い条件のところで事故が起きているのではなくして、概して普通の現場事故が起きている。落盤の場合でも、見ますと、大変山が悪くて落盤災害が起きているということじゃないわけですね。かつて三井、三池あるいは山野あるいはまた田川の大災害というのは、みな特免区域で起きているわけですよ。そしてああいう大災害か起きるわけです。太平洋の場合だって条件のいいところなんです。過去の重大災害はそうですし、あるいはまた北炭だろうとどこだろうと、大体調べると、非常に条件の悪いところでは災害が起きてないわけです。ということは、災害は防げるということをこのことは証明しているのだと私は思うのです。そういう意味で考えますと、坑内条件がいい、保安体制も整っておるが、なおかつ災害が起きる、ここの問題なんです。ですから、そういう意味で考えますと、保安管理重大災害については、保安管理のシステム、そういうものが、常に責任を持って対応していくというものがなければいかぬでしょうし、普通一般、現場末端では、やはり自主保安という思想を高めて、先ほど言ったダブルチェックということも考えなければいかぬではないか、こういう気がするわけであります。  それともう一つは、先ほど言いました保安監督員補佐員というのが、法でこれだけ技術職員体系に組み込まれた労働者推薦の監督員補佐員などという制度は、日本の国では他にはないわけですね。ドイツであれば経営参加で重役が推薦されれば重役の給料を払うわけですよ。法の定めた精神からいっても任務からいっても、それにふさわしいところに位置づけする、ぴしっと統一的に指導する、こういう点などは中央保安協議会当たりでもぴしっと統一的に定めるべきではないか、こういう気がするわけです。幸い伊木先生は中央保安協議会の会長さんでもありますので、私の所見に対して御感想を承りたいと思うのです。
  49. 伊木正二

    伊木参考人 ただいまの、確かに補佐員が法的に監督員の下にあって、補佐員として監督の立場にあるということで、これは全然組合とは別個だというお話でございますが、そのとおりであると思います。  それで、ただこれは一昨年の保安懇談会のときにも、そういう細かい内容ではございませんで、補佐員をもう少し人数をふやしたらというお話もございまして、その検討もしたわけでございます。補佐員というのは組合の方から推薦される、そこに一つのやはり問題点があるんじゃないか。問題と申しますのは、組合の立場ということで推薦されて、しかもそれが今度はいわゆる監督の立場になっておるならばいいのですが、あくまで組合の立場でいろいろと仕事をされる方もないとは言えないと思います。組合から推薦されている以上。そうなりますと、必ずしも本当の補佐員の仕事をしていないということにもなり得るかと思います。また、監督員の方も、逆に言えば会社の方からの任命であるということであって、会社の立場だけだというふうなことも言えるかと思いますが、そこはその人いかんによることでありまして、本当に監督員あるいは補佐員という資格であれば、当然いま先生がおっしゃるようなことを検討する必要があるかと思います。その辺はまだ私に十分のみ込めておりませんので、この点で十分なお答えにはならないかと思いますが……。
  50. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんので、終わります。
  51. 細谷治嘉

    細谷委員長 権藤恒夫君。
  52. 権藤恒夫

    ○権藤委員 本日は、参考人の方には大変御苦労さまでございます。前に質問された方と重複するかもわかりませんけれども、御意見を賜りたいと思うわけであります。  最近の鉱山災害を見てみますと、落盤事故もございますけれども、やはり機械の操作というものの中で死亡事故が起きておるわけでございます。そこで、斎藤技術部長さんと伊木先生にお伺いしたいわけでございますが、この機械の安全装置といいますか、このようなものについての見直しが必要ではないかと思うわけです。それと、先ほどから申されておりますように、高度な技術を要する、そのような採炭方式に変わってきておるわけですが、それに合う技術開発、これはもっとなされなければならないのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  過日、三井の炭車の暴走事故がございました。それによって、まあ、あれだけの暴走でよく一人の犠牲者だけでとどまった、こういうふうに思っておるわけでございますけれども、これは常識として考えられますことは、軌道の上を走らせる炭車なり人車、これを休みでありますとかあるいは一定の時期停止させる場合は、当然そのブレーキあるいは歯どめ等も必要でございますけれども、地上での軌道車を停車させる場合と同じように、やはり万一ということを想定した脱線装置というものは是が非でも必要ではないかと思うわけです。そういうようなものすらなされていない。しかも炭車は、石炭を満載して、その重量二百数十トン、こう言われておるわけであります。また、坑内では当然傾斜があるということは考えられるわけであります。そういうような単純な、後になって考えてみればそういうことはあり得ないと思われるようなことがこの事故につながっている。したがいまして、手抜きであるとかあるいはなれであるとかということも事故原因であろうかと存じますけれども、そのような万全の安全装置やあるいは高度な技術開発ということが必要であろう、こういうふうに思っておるわけでございますが、斎藤さんと伊木先生の御意見を賜りたいと思います。
  53. 斎藤裕夫

    斎藤参考人 お答えいたします。  機械の安全装置の見直しについてということでございますが、この意味がちょっとあれなんですが、実際炭鉱では安全装置を含めまして、これは、安全装置はいろいろ機械の種類、大きさあるいは型式その他で違いますけれども、原則として、たとえば毎方装置を点検するもの、あるいは一週間に一遍ぐらいやるもの、あるいは年に二遍とか一回精密検査をやるというような形で、これは法的にも規制されているものもございますし、それから、自主保安の立場から各山で決めて点検しているのもございます。  先生のおっしゃるのが、いまの安全装置がいまの時代に合うというか、古いので、もっと違ったものをつけたらという意味でおっしゃっているようにもちょっと聞こえたのでございますが、そういうものの見直しというものについては、いま申し上げたような点検基準というような形で実施いたしておりますので、もちろん、そういうものが時代に合わなくなれば当然新しいものにつけかえていくとか、そういう点はこれはふだんの、いわゆる私どもの言葉でいう機器の整備というようなことで、担当で言いますと機械係員、あるいはまた電気で言えば電気係員が専門にやっている。あるいは、もちろんそこの有資格者、そういう者が当たることになっておりますので、ことさらにあれしなくても、こういうことが実際ふだんのわれわれの仕事だというふうに考えております。  それから、そういう意味で払いが高度化して、高度の技術開発が必要でないかというようなことが二点目でございますが、これは全く同感でございまして、こういう形でいま進んでおりますのは、先生御存じのように、たとえば払いの鉄柱支保のことでございますが、これがほとんど可能な限り、対象は平層でございますが、自走枠化しております。ただ、自走枠化して、さらにそれをもっと、何といいますか、ワンマンコントロールあるいは無人採炭、こういう表現でそういうものに対するアタックというか試みは、いま企業を中心にいろいろ進めております。これは諸外国の例でもそういう形で進んでおります。もちろん、高度になればなるほど、当然、保安的な意味でいう安全装置その他、保安装置が問題になるかと思いますが、当然そういうことを含みながら技術開発を進めておるというふうに承知しております。  それから三川の事故につきましては、残念ながら私、現在事故調査中で特にコメントを申し上げる材料はございませんので、御勘弁願いたいと思います。
  54. 伊木正二

    伊木参考人 機械の安全装置を見直したらどうかということでございますが、この点は、いま斎藤参考人がおっしゃったとおりでございます。安全装置と申しますのは、その機械が安全に、しかも確実に運転されるためにつけてあるのでありまして、これに対して、もしその機械がそういうふうに確実に運転できないものであれば、これは当然、安全装置が悪いということで、これを取りかえるとかいうこともしなければならないかと思います。その点は、いまお話のありましたように、規程の方で始終点検をする、一定の期間を置いて点検するようになっておりますので、その点は私は間違いはないというふうに考えております。  それから、高度の技術開発でございますが、これは当然われわれとしてやるべきことでございます。ただ、技術開発というのはそう簡単に、一朝一夕にできるものでございませんので、相当長期間、また相当の金をかけてやっていかなければならないと思いますので、将来そういう方向で進むことは当然でございますが、いますぐ、それならばどういう装置ができるんだというふうにはいかないかと思っております。  それから、三川の問題でございますが、これは、私も詳しいことは存じませんし、何か、普通の水平坑道でございますので、水平坑道と申しましても本当の完全な水平ではございません。炭鉱の水平坑道と申しますのは、必ず中の水が自然に坑口の方へ流れ出るように二百分の一ぐらいの傾斜をつけておるものでございます。恐らく三川の場合でもそういう傾斜がついておったのじゃないか。そこへもってきまして炭車が固定してあったということ、機関車がブレーキをかけてあったということだろうと思いますが、そのブレーキがどうして外れたのかはちょっとわかりませんけれども、普通であれば、坑道の二百分の一ぐらいの傾斜のところであればそう簡単には走らないという感じがしておるわけでございます。ただ、非常にレールがいい、あるいは炭車の構造がいいということでありますと、ちょっとしたショックによって走り出すことがあるかと思いますが、その辺は私、まだ詳しいことを聞いておりませんので、どういうことか……。  それからもう一つ、ああいうものに対して脱線装置をつけたらどうか、つけてないのはまずいじゃないかというお話でございます。ただ、脱線装置とおっしゃるのがどういう意味かよくわかりませんけれども、坑道の途中にそういう脱線——斜坑の場合にはそういうものをよくつけておりますが、水平坑道で脱線装置などをつけておきますと、これは普通の正常の運搬のときにかえって邪魔になるものでございます。これは斜坑でも同じでございますが、脱線装置があるがためにかえって事故を起こす例がございます。したがって、水平であれば炭車が走らないということで、むしろ脱線装置はない方がいいのじゃないかという気がいたします。  以上でございます。
  55. 権藤恒夫

    ○権藤委員 脱線装置なんですけれども、鉄道の専門家の方にお伺いしたわけでございますけれども機関車を車庫に入れるとか、あるいは客車あるいは炭車を一定の時間停車させる場合、これはどのような状態の中でも脱線装置をつけておるというのが常識であるのだそうです。したがいまして、先ほど申し上げましたようにやはりそんなことは考えられないと思われるようなところに事故というものが起きておるわけでございますので、こういう事故が再び起こらないようなそういう研究なりを大いにやってほしい、こういうふうに要望する次第でございます。  それから、先ほども質問がございました、いわゆる社外組夫の問題でございます。この下請業者の実態を調べてみますと、非常に小規模な業者が多い。作業員を二十名ぐらいしか抱えてないというような業者の方が多いわけでございます。したがいまして、これが果たして保安上どういう教育がなされるのか、私ども不安であるわけであります。そういうことにつきまして、古賀次長さんそれから小山書記長さん、鈴木議長さんにお伺いしたいわけでございます。  それとまた、下請作業員でございますけれども、概して、入れかわりが非常に激しい、長く勤めていらっしゃらない人が多いように見受けられるわけであります。とにかく、炭鉱を都合のいいところを転々と歩き渡るというようなことだろうと思うわけでありますが、こういう人たちが、炭車やそれから巻き上げ機の操作をする資格を持たないという人もあるやに聞いておるわけでありますが、こういうことが事故につながっていくのではないか、こう想像されるわけであります。したがいまして、先ほどからのお話によりますと、社員と同じような教育をしている、こういうふうにおっしゃいますけれども、出入りが激しいというようなこと、それからきわめて小さな規模の業者というような中で本当に教育が行われておるのだろうか。行われておるならば、このような事故も少なくなってくるのではないか、こういうふうに私は思うわけでございます。このような下請作業員に対する管理体制は、一体、組合の方では会社とどういうような形で掌握をし、教育なされておるのか、その実態につきまして、三人の方々の御意見を賜りたいと思うのです。
  56. 古賀徳継

    古賀参考人 労働組合の立場から申し上げますと、この社外工、いわゆる下請組夫の皆さんの把握というのは非常に困難を来します。率直に言いまして、やはり会社の方が完全にその組夫なり社外工の皆さんの実態を把握する、そしてその把握したものを労働組合と協議しながら、そしてどこにどんな作業に配置していくのか、その場合のいわゆる保安管理体制というのは一体どうするのかということを前提に協議し続けておるわけです。おっしゃいましたように、流動が非常に激しいわけです。したがって、たとえば三日保安教育をやりましても、一週間後には姿が見えないという場合もあり得ます。したがって、直ちにまたそういった小さい組の場合には、ほかからずぶの素人でも連れてきて作業につかせるということが間々あるわけですけれども、こういうものを一々組の皆さんが会社の方に、実は前のAの人がやめたので今度はBの人を採用した、したがって、この人についての教育をこうしたい、ああしたい、そういった微に入り、細に入りのところまで届けがないということも一つの問題であります。  一番問題は、やはり現場でそういった資格がない人、それから経験も全くない人に作業を行わせるということですから、そういうことがないように、組の係員、組の責任者に対する徹底した保安意識の向上といいますか、義務化といいますか、こういうものとあわせて、会社機構におけるダブルチェックとしての職員指導といったものを強化する以外にない。それに相まって、補佐員なり保安委員とかいう労働組合出身の諸君がそれを監視していくということによって、今日のところはいかに災害を防ぐかということに腐心しておる状況でございます。
  57. 小山和衛

    小山参考人 組関係実態でございますけれども、私どもには労働協約がございまして、事業内に組合員以外の者を使用する場合は、従来の慣行によって、協議をして入れるようにいたしております。具体的には、生産会議その他の会議を持ちまして、組の導入についての話し合いをするわけでありますけれども、問題は、保安上の教育の問題がどうなっているのかということでございます。先ほど申し上げましたように、組関係教育と直轄関係教育は、全く同じような内容の教育をいたしております。たとえば新入社員の場合に、先ほど申し上げましたように、会社内の教育保安センターによる教育とございますけれども、これらの教育も当然受けておりますし、それから、定期的な月一回の保安常会その他につきましても参加をさせまして、災害事例に基づいて教育をいたしているのが実態でございます。  しかしながら、現在組関係災害というのが大きくなってきているわけでありますけれども、これらの災害については、やはり教育の徹底とダブルチェックによる不安全要素の排除というものが一番大切ではないかというふうに考えております。
  58. 鈴木照生

    鈴木参考人 実態等につきましては前二者がお話ししておりますので、組の方々のあり方について私の考えを述べさせていただきたいと思います。  先ほどからもございますように、やはり坑内実態を申しますと、だれか一人が間違ったことをすることによりまして非常に大きな問題となるわけでございますので、そういう意味では、それぞれがそれぞれの立場で十分注意をしながら仕事をしてもらわなければならないわけでございますが、その点やはり、組夫という表現がどうかは別といたしまして、組夫の方々は御指摘のとおり非常に出入りが激しゅうございます。また、逆に、いわゆる本工と申しますか、直轄の従業員の方々は、山を愛するという気持ちにおきましては、どうしてもやはり組夫の方々とはその辺の違いがあろうと思います。そういう意味では、それだけにさらに一層の保安教育と申しますか、あるいは規則の徹底だとか、そういうものをやはり特段の努力を傾けてやらなければならないのではないかと考えております。
  59. 権藤恒夫

    ○権藤委員 大変ありがとうございました。やはり人命尊重という立場から、大変困難であろうかと思いますけれども、人事管理等に十分に企業内で努力していただきまして、こういう事故が未然に防げますために今後ともひとつ御研さん賜りたいというふうに要望申し上げまして、質問を終わります。
  60. 細谷治嘉

    細谷委員長 安田純治君。
  61. 安田純治

    ○安田委員 参考人の皆さんには大変御苦労をおかけいたしまして、感謝申し上げます。  まず最初に伺いたいのですけれども先ほど古賀参考人意見陳述の中で、深部に移行するということから、坑道の延長、骨格構造複雑化がある、それに比べて人員不足というような御発言がちょっとあったようですが、この人員不足という点について実態がどうなっておるのか。たとえば坑道延長あるいは骨格構造複雑化との関係でどういうふうになっているのか、具体的にお話しいただければ幸いだと思います。
  62. 古賀徳継

    古賀参考人 お答えいたします。  骨格構造複雑化、それから深部化、一口になかなか言えないわけでありますけれども、たとえば三池の場合は、いま最深部が六百メーターというところにございます。そして、三つの山があるものですから、これが非常に広範囲にわたって坑道を展開しております。地域的に言いますと、大牟田の南、荒尾の方から、熊本県境から柳川の手前まで、十何キロにわたっておると思いますけれども、そういったところに坑道を展開しております。そういうことと、たとえば太平洋あるいは南大夕張とか北炭新鉱とか、それぞれ坑道が非常に長くなる。はっきり言いまして、わかりやすく言いますと、坑口から現場に到着するまでの時間が、以前は三十分で行けたものが、今日では五十分も必要とするというように、歩行時間が非常に多くなっているということがあります。そういう中で、機械の高度化あるいは導入が非常にスムーズにいっている場合はそういうことはないと思いますが、どうしても人力に頼らざるを得ない面というものがございます。したがって、人員を充足しなければならないということですけれども炭鉱のイメージというものが、いまだ将来展望に明るいというものをつかみ得ない今日では、新規採用しましても、高卒の人がいきなり炭鉱に入ってくるという状況は余りございませんで、やはり中途から他の産業から転換してくる人が多いわけですけれども、この人たちをそれでは直ちに掘進の方に回せるかといいますと、回せません。どうしてもそこに熟練した、あるいは経験を持った人が必要でございますから、やはり必然的に先ほどから諸先生心配されております組夫、こういう関係に起業掘進あるいは探炭坑道というものは回さざるを得ないということです。以前は、これはほとんど本工で行っておったわけです。それを今日、人手不足ということと掘進のスピードアップをするというような関係から、そういった組の皆さんに協力を願うということになりまして、現在三万六千名程度の炭鉱常用労働者がいると思いますが、この中で約七千名程度は組の皆さんの協力がなければ炭鉱が成立しないということでございますから、そういう方向での人手不足をどう解消するかということは大変大きな課題で、一朝一夕には解決し得ない問題を内包しておるというふうに判断しております。
  63. 安田純治

    ○安田委員 安全の確保につきましては、当然、個人が注意をしなければならない問題があると思うのですね。どんなにすばらしいシステムがあろうが、機械があろうが、人間が不注意であれば事故が起きることは当然だと思うのですが、しかし同時にまた、人間の不注意というのは必然的にある程度起こるわけでして、これを防ぐために機械の安全装置とかあるいはダブルチェックとか、いろいろなことが考え出されているんだと思うのですね。逆に言うと、どんなに不完全な機械でも、人間が非常に注意すればそう事故が起きない場合だってあるし、どんなに完全な機械でも、人間が不注意であれば事故が起きる。こういうこともあるとは思うのですが、そういうことを当然の前提としていろいろなシステムが考えられていると思うのです。  そこで、人間の不注意が起きるという潜在的な条件の中には、疲労とかあるいはなれによる不注意とかいろいろ心理的な要因があると思うのです。先ほど古賀参考人の人手不足という問題ですけれども、そのために、たとえば労働強化がはなはだしいとかそういうことがあって、疲労が蓄積されておるということがあれば、一般的に人間が不注意になることは考えられるわけでして、そういうふうに影響をストレートにしているものかどうか、あるいはそうじゃなくて、先ほど言った組夫の問題で、保安教育をしてみても一週間たったらいなくなってしまう、そういうことであるのか、それとも、人手不足のために労働強化、疲労の蓄積ということがあって、そういうものが現場にあるために不注意が起きるような条件が存在するのか、その点はいかがでしょうか。
  64. 古賀徳継

    古賀参考人 いろいろな要素が絡み合って事故につながるということなのですけれども、いま先生が言われました労働強化があるかどうかということですが、労働組合の立場から言いますと、労働強化がないとは、これはもう言えません。といいますのは、はっきり言いまして長時間労働が常態化しておりますのがいまの炭鉱実態でございます。つまり八時間で完全に作業を終了して昇坑しているか、坑外に上がっているかというと、そういう炭鉱は存在しておりません。やはり残業という超過労働を前提とした作業システムというものが一方では存在しております。したがいまして、その面からすれば、これは快適な労働条件、快適な生活ということからすれば問題がありますから、労働強化というものが存在しておるのは否定できませんが、そのことがそれではその災害とどう関連しておったのかということになりますと、ケース・バイ・ケースによって判断する以外にないわけです。頻発災害の中でいま一番運搬災害というのが多くございますが、この運搬災害を見てみますと、一人作業の中で現認者もいないで亡くなった、死亡者が出たというものがございます。これなんかは、以前でありますと二人で作業をするとか、あるいはベルトが五台も六台もありますと、それに対して二台を一人が見るとかあったのですが、いまは五台も六台も一人が見なければならないというような現実もございますから、そういう人手不足、それから労働強化、それからおっしゃる不注意というのは私どもは使っておりませんけれども、いわゆる施設が十分だったのかどうか、それから作業の手順を間違えたのかどうか、あるいは人間ふっと気の緩みがございますから、その気の緩みからベルトに手をはさまれたのかどうかということが総合的に考えられなければならない。したがいまして、ケース・バイ・ケースによってそういった問題についての原因を究明しながら対策を立てておるのが各山の現状でございます。
  65. 安田純治

    ○安田委員 確かに、労働者の不注意という言葉を使うと、事故原因は、直接的に、単純にそこだけを切ってみればそういうことになって、すべて個人の責任という危険があります。ただ、われわれは、自動車の交通事故や何かの、全般にいわば災害が起きる場合のことを考えて、一般的な用語として言ったわけです。  そこで斎藤参考人にお伺いしたいのですが、いま古賀参考人が言われましたような人手不足ですね、たとえば、いままで二つ見ておったものを五つも六つも車を見るというような状態現場にあるとすれば、これは一体そういう人間の能力をカバーする方法を何かお考えになっているのかどうか、その点いかがでしょうか。
  66. 斎藤裕夫

    斎藤参考人 具体的な話でないとこれはなかなかむずかしいと思うのです。いずれにしましても一応、合理化、こういう言葉になるかと思いますけれども、合理化をやる場合には、たとえば先生のおっしゃるように、仮に危険を伴うものであるなら、当然、それを抑える保安装置とか、いろいろな器具その他でカバーできるという形で、それにかわるという形で実行されるはずでございます。合理化につきましては、そのほかに先ほど出ました労働強化、これは時間的に統計的に見ると多いということになっても、たとえば八時間の作業内で十分こなせるというような形で、その前から見ると確かに時間的には多くとも普通の所定の時間内で消化できる作業内容であるということ、当然、合理化提案をする場合には、組合の皆さん方に御納得いくような装置の安全性の問題あるいは労働強化の問題ということで、現実的な、一応働くべきである時間内あるいはその労働を想定して決めるはずでございますので、個々のそういうものを全然無視して決める、合理化を強行するということはないと私は信じておりますが……。
  67. 安田純治

    ○安田委員 たてまえとしてはまさにそうあるべきだし、そうなければならないと思うのですけれども、実際に炭労参考人の方から、どうも生産に走りがちではないか、ライン全体に安全優先の気持ちがきちっとあるのか、ともすれば生産に走りがちではないかという意見陳述が先ほどあったわけですね。  そこで聞きたいわけなんでして、たてまえどおりに現実にもいっていれば事故が起きるはずはないと思うのですね。たとえば法律の制度についても、この法律は欠陥があるからここを直せばいいのじゃないかというところは特にいま参考人各位の陳述の中でも指摘されなかったわけですし、そうしますと運用の問題ということになるのか。法律制度もたてまえとしてはまずくない。一応はいい。岡田委員がおっしゃいましたように、炭鉱の条件ほど厳しく細かく書いてあるところはないわけですけれども、そういう点でもある。それからあと機械の装置についてもある程度一生懸命やっておる。それからあと保安のシステム、管理のシステムについても、教育についてもいろいろおっしゃっている。そうなると、事故はそう起きるはずがないのにもかかわらず現実には起きておるので、われわれどうも不思議に思わざるを得ない。何かそこにあるのではないかと言わざるを得ないと思うのです。そこで伺うわけなんでして、たてまえだけで見ますと、おっしゃるようにそんなはずはないはずだと思うのです。合理化をするについても、安全を無視した合理化などは、労使で話し合ってやっておるはずだからそんなはずはないとおっしゃるかもしれません。しかし、何といってもやはり保安確保については会社側の姿勢が非常に重要だということは事実だろうと思うのです。  たとえば安全に対する考え方だと思うのですが、具体的な例を挙げますと、三池の「くろだいや」という何か機関紙みたいなものがあるらしいのですが、これは会社側のといいますか、保安に対する考え方なんか出るようですけれども、この三月二十五日付の「緑十字」という欄にこういうようなことが書いてあるのですね。「「落ちるな、落とすな、ケガするな、ケガする人はバカである」これが私の信条であり、保安標語である。このようなことをいえば、すぐ暴言だという阿呆(あほう)がいるが、これが真実だから仕方がない。」。けがをする人はばかである、こういうことなんですね。「落ちるな、落とすな、ケガするな、ケガする人はバカである」これが標語だ。こういうものがこういう機関紙に載っているというふうな報道がなされておるわけです。  そうしますと、すべてこれは個人責任にしておるのじゃないか。もちろん書いた人に言わせれば、先ほども申し上げましたように、どんなに完全なシステムや機械があっても、人間が動かすものだから注意しなさいよということを強調ぜんがために書いたのかもしれません、動機は。しかし、どうもこういうふうに文章になってみると、けがするやつがばかなんだ、すべて個人の責任だという姿勢にも受け取られがちだ。それで「すぐ暴言だという阿呆(あほう)がいるが」、こういうふうな御丁寧な説明までついているわけです。しかし、「これが真実だから仕方がない。」、こういう話なんでして、こういうのを見ますと、どうもおっしゃるように、労使協議の上、合理化をしておるのだから、安全を無視してやるはずはないし、そう確信しておると斎藤さんおっしゃいますけれども、どうもそうなっていない節があるのではなかろうかということが一つです。  それからもう一つたとえば三池の場合を考えますと、三川鉱の本層六十卸十片ですか、十一片では地熱五十度の高温地帯があるというようなことが言われておるわけですが、ここで熱中症で倒れた人もいる。それで、こういう場合における労働時間の短縮というよりむしろ高温手当といいますか、お金を払って解決しているという話も聞くわけです。これは事実かどうか知りませんけれども。しかし、高温の中で働く場合にはお金だけでは、もちろん栄養をとったり何かするお金も必要ですが、それだけで、人間お金をもらったから疲労が回復するものでもなかろうと思うのです。やはり労働時間の短縮などが必要ではないかというふうに思うのですが、その点、古賀さんと斎藤さんにお伺いしたいと思います。
  68. 斎藤裕夫

    斎藤参考人 お答えいたします。  「くろだいや」というのがどういう性格のものでどういうあれか、いま読んでいただいた点だけではよくわかりませんけれども、私が御返答しているのはたてまえで、実際はこれだけ事故が頻発すれば、それはたてまえだけで実際は違うのではないかということが本当の質問のあれじゃないかと思いますけれども、冒頭に陳述いたしましたように、まことに災害を起こしておりますので申しわけないというふうに思っておりますし、また申しわけないだけではなくて、それを防ぐにはどうすればいいのかというようなことと、それに絡んで、私ども、いま災害防止の土壌といいますか柱といいますか、どちらでもいいですが、それが保安管理体制だと思うのです。保安管理体制の中にやはり企業としての意思というものがそこに入っていくわけですし、そういう形での整備をいまやっている段階でございまして、それが不十分といいますか不完全といいますか、そんなところの手漏れが災害につながっていくというのはあるかと思います。しかし、先ほどから先生もおっしゃっておられます不注意とか、いわゆるいかにそういう体制なりあるいは機器類が整備されても起きている面もあると思います。それで、その辺、個々に、災害事例そのものを一つ一つ分析をしないといろいろわからないわけでございますけれども、いずれにしましても、御指摘のように、まだ私が申し上げておる本音のようになっていないと思われる節があるわけでございます。それを、冒頭に陳述の中で申し上げましたように、集約して、個々の事象をとらえるだけでなくて、もう一歩根っこの方に入ってながめてみる必要があるのではないか。しかも、その個々の事象をつないでみて、そんなところに指示命令が徹底する、あるいはそれを完全に受け入れられるような環境というものがなければならない。そういうものができ上がらない限りはやはり事故は減らないんだということで、何とかそれをつくっていきたい。それから、仮にそれができましても、さっき申し上げた、先生もおっしゃっている、やはり人間には弱点がありますから、炭労さんでは不注意という言葉を使わないわけですからあれでございますが、現実的に一般的な言葉で言う不注意というのが人間にはやはりあると思うのです。そういうものは、たとえばそういうふうな体制が整ってもやはり起きるのではないかと思います。いずれにしましても、先生のおっしゃる、私が申し上げている形がいわゆるたてまえで、完全になっていないのではないかという御指摘に対しては謙虚に反省して、私が申し上げているような形に何とか早く持っていきたいということでいっぱいでございます。  それから、高温の問題で、いま具体的に御指摘になりました三川の地熱が五十度で、これは賃金だけで解決しているという点については、残念ながら私もよくわかっておりませんけれども、普通一般的に言うと、高温現場は、いろいろ会社あるいは炭鉱によって違いますけれども、方法としては、金で支払うというか、ある程度高温手当という手当の額で支払う場合とそれから作業時間を短縮するという形の二つの方法がとられるわけでございます。三川のその現場がどういう状態になっているかというのは、私も申しわけございませんけれども存じてないのでわかりませんが、恐らくその問題につきましても後で古賀参考人からお話があると思いますが、それがいまどういう形をとってあるのかという現実がちょっとわからないので、申しわけございません、ちょっとそれ以上お答えできないと思います。  一般的には、申されるような二つの方法のコンバインで出てくるだろうと思います。
  69. 古賀徳継

    古賀参考人 まず「くろだいや」の問題ですけれども、これは三池現地で厳重に会社側に対して抗議をしております。やはり七千人もいますと、十人十色といいますけれども、いろいろな意見を考えているので、それがたまたま会社機関紙の「くろだいや」に載るということは、やはり一つ姿勢を示唆しているというふうにもわれわれは受け取りますから、そういう意味で、三池労組からは厳重に会社に対しては抗議をしているということが一つです。  それから高温問題も徐々に解決しつつありますけれども、なお三池の場合には、阿蘇の火山帯との関係があるんじゃないかと思いますが、部分的に高温地帯がおっしゃるとおりございます。そこで、ただ単に金で解決しているということではございませんで、その上に、必要により休憩をするというようなことで、その現場の条件によってそれに対応した労働の仕方をしているはずであります。  そこで問題は熱中症という関係ですけれども、これは非常に個人差、それから同じ人でも前の日に深酒して調子が悪いというようなときには入ったばかりでばたっといって熱中症にかかるような場合もございますが、そういったことがないように、いま現地では冷凍装置を導入しております。これは幸い皆さん方の御理解によりまして石特の中で補助金、そういったものを出していただいておるわけですけれども、徐々にこれが強化されておりますが、なお三池においては熱中症を出すような高温地帯がまだ存在しておりますので、今後も冷房、冷凍関係については強化していく必要があろう、こういうふうに判断いたしております。  三点目のいわゆる時間短縮という問題ですが、これが私ども炭労の今後の非常に大きな課題であろう、こういうふうに考えております。先ほども言いましたように、長時間労働が常態化している中で、世の中では週休二日制だとかあるいは七時間労働だとかということが言われる。逆行しているわけですから、どうしてもこの逆行している労働時間を一般並みに、あるいは先進国ではむしろ炭鉱が先に時間を短縮していくという傾向があるわけです。そういう傾向にいかにして到達していくのかということを今日模索しておりますけれども、何といっても二千万トンをキープするという前提の上に立った生産体制がそれぞれ目いっぱい組まれておるという関係からする操業日数の確保ということが、どうしてもいま問題として出ております。この問題については、私ども、労使でここ四年以来取り組んでまいりましたが、ようやく国民の祝祭日十二日は完全に有給で休日化することができましたけれども、日々の労働時間、週の労働時間なり月の労働時間をどう短縮していくのかということが今後重大な問題であろう、こういうふうに考えておりますので、この点は生産体制とそれから会社のいわゆる経理の問題、こういった問題が総合的に絡んでまいりますので、そういった点で労働組合としては真剣に取り組んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  70. 安田純治

    ○安田委員 小山参考人鈴木参考人にそれぞれお伺いしたいのですけれども、時間が二十分ということで来てしまいましたので、最後に伊木先生にお伺いしたいのですけれども、たとえば三井三池の運搬関係事故などを見ますと、それ自体、一つ一つ切ってみると、きわめて単純なんですけれども、それが続けざまに起こっておるということから、やはり潜在的要因というものを注目しなければならないのじゃないかというふうに思います。  その点で、まず一つは、いまの安全に関する法規について、先生として何かこういうふうにしたらいいのじゃないかというふうな御意見があれば述べていただきたいということと、それから、そうした潜在的要因について究明していくために必要な考え方といいますか、これについてお教えをいただければありがたいと思います。
  71. 伊木正二

    伊木参考人 いま法規改正と申しますか、見直し、あるいは潜在的な原因がということでございますが、そう簡単に一言で言えない問題でありますし、私もまだ十分そこまで検討しておりませんので、その辺はお答えができないわけでございます。  ただ、先ほどからちょっとお話のありました、個人の不注意という問題がかなり原因におっつけられるのじゃないかというお話でございますが、これは実際に作業をしている間に、本人が不注意だというような意識をすることは当然ございません。もちろんみんな大丈夫だということで仕事をするわけです。それが思わざる災害を起こすので、これは後から見て、あるいはこれは本人の不注意であったのじゃないかというような見方になるわけで、決してやっている間にどうのこうのという問題ではありませんで、やはりこの辺が保安のむずかしさでありまして、常に各自では万全だというつもりでやるわけなのですが、そこに一つの見落としといいますか、何か油断があるといいますか、本人が気づかなかった、あるいは技術的にまだ足りなかったという点があるかと思いますが、後で見直して初めてわかることでございまして、その点は一概に本人の不注意だと責めるわけにはいかないと思います。言葉は、私の言い方が悪かったかと思います。  それでは、最後のようでございますので、私からちょっと申し上げてみたいのは、きょう、参考人として出席しておりますのは全部保安協議会委員でございまして、きょう、先生方からいろいろと貴重な御意見をいただきましたので、この点は、われわれ協議会におきましても、また、今後、三者で十分協議をして、できるだけこの保安の問題に対して万全を期していきたいと存じますので、今後ともよろしく御指導、御鞭撻をお願いしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  72. 安田純治

    ○安田委員 大変ありがとうございました。では、よろしくひとつお願いいたします。  終わります。
  73. 細谷治嘉

    細谷委員長 これにて質疑は終わりました。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四分散会