運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-25 第84回国会 衆議院 商工委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 山崎  拓君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       藏内 修治君    佐々木義武君       島村 宜伸君    辻  英雄君       中西 啓介君    楢橋  進君       橋口  隆君    松永  光君       渡部 恒三君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    後藤  茂君       上坂  昇君    清水  勇君       武部  文君    中村 重光君       長田 武士君    玉城 栄一君       西中  清君    安田 純治君       大成 正雄君  出席政府委員         通商産業政務次         官       野中 英二君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業大臣官         房審議官    松村 克之君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君         中小企業庁指導         部長      豊永 恵哉君  委員外出席者         議     員 渡辺 三郎君         議     員 橋口  隆君         議     員 長田 武士君         議     員 西中  清君         議     員 玉城 栄一君         科学技術庁原子         力安全局原子力         安全課長    中戸 弘之君         農林省食品流通         局商業課長   堤  恒雄君         農林省食品流通         局砂糖類課長  馬場久萬男君         通商産業省生活         産業局日用品課         長       脇山  俊君         労働省労働基準         局監督課長   小粥 義朗君         建設省計画局不         動産業課長   清水 達雄君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律  案(中村重光君外九名提出、第八十二回国会衆  法第六号)  小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律  案(橋口隆君外四名提出、第八十二回国会衆法  第七号)  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案松本忠助君外三名提出衆法第一〇号)  小規模事業者生業安定資金融通特別措置法案(  松本忠助君外三名提出衆法第一一号)  伝統的工芸品産業振興に関する法律の一部を  改正する法律案松本忠助君外三名提出衆法  第一二号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 武藤嘉文

    武藤(嘉)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は、委員長が所用のため出席がおくれますので、委員長指定により、私が委員長の職務を行います。  第八十二回国会中村重光君外九名提出小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案、第八十二回国会橋口隆君外四名提出小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案松本忠助君外三名提出下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案小規模事業者生業安定資金融通特別措置法案及び伝統的工芸品産業振興に関する法律の一部を改正する法律案、以上五案を議題といたします。  順次提出者より提案理由説明を聴取いたします。渡辺三郎君。     —————————————  小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案(第八十二回国会中村重光君外九名提出)     〔本号末尾掲載〕     —————————————
  3. 渡辺三郎

    渡辺(三)議員 ただいま議題となりました小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案につき、その提案趣旨及び内容を御説明申し上げます。  商調法は、さき通常国会において、いわゆる分野調整法とともに改正せられ、中小小売商団体は、大企業者進出について、調査申し出及び調整申し出都道府県知事に対してすることができるようになったのでありますが、その申し出適格団体に追加の必要が生じたのであります。  次に、改正内容であります。  法第十四条の二第一項の規定による調査申し出及び法第十六条の二第一項の規定による調整申し出をすることができるものとして、以下の団体を加えることとしております。  一 商店街振興組合及び商店街振興組合連合会  二 事業協同組合または協同組合連合会であって商店街振興組合または商店街振興組合連合会設立要件に準ずるものとして政令で定める要件に該当するもの  三 法第三条第一項の許可に係る一の小売市場内の小売商であることをその組合員資格とし、かつ、当該小売市場内の小売商の大部分組合員である事業協同組合及び当該事業協同組合であることをその直接または間接の会員の資格とする協同組合連合会  なお、経過措置として、この法律施行の日以後六カ月以内に商店街振興組合または商店街振興組合連合会設立認可申請を受理された団体は、当該設立の登記があるまでまたは当該申請について不認可の処分があるまでの間、改正後の商調法第十六条の七の規定の適用については、商店街振興組合または商店街振興組合連合会とみなすものとしております。  以上が、提案趣旨及びその内容であります。何とぞ、慎重に御審議の上、御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  4. 武藤嘉文

  5. 橋口隆

    橋口議員 ただいま議題となりました小売商業調整特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及びその概要を御説明いたします。  さき中小企業事業活動機会確保のための大企業者事業活動調整に関する法律との整合性を持たせるための小売商業調整特別措置法改正が行われました結果、大企業者特定物品販売事業への進出につき、当該特定物品と同種の物品を販売する中小小売商団体申し出に基づく調整ができるようになりました。  ところが、最近における大企業者小売業部門への進出による紛争は、その多くが商店街等一定地域における各種の物品を販売する中小小売商との間に生じているのであります。  本改正案は、このような紛争現状にかんがみ、商店街振興組合及びこれに準ずる組織を有する事業協同組合等一定地域を地区とする中小小売商団体も大企業者進出に係る紛争に関する調整申し出をすることができるようにする規定を設けることにより、中小小売商事業活動機会のより適切な確保を図ろうとする趣旨のものであります。  なお、商店街においては中小小売商団体法人組織化がおくれておりますので、商店街振興組合等設立認可の手続中の任意団体についても、経過的に、調整申し出ができるようにいたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 武藤嘉文

  7. 長田武士

    長田議員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  本法は、取引関係で弱い立場にある下請事業者利益保護を図るため、下請代金支払い期間及び支払い条件等について基準を定めておりますが、実際には不況深刻化等経済変動影響下請事業者に著しくしわ寄せされ、親事業者から不当に不利な取引条件を押しつけられる場合が少なくないのであります。  たとえば不況により親事業者は減産に追い込まれると、下請事業者に対する発注量を大幅に減らすのみならず、自社操業率の低下を食いとめるために、それまで外注に出していた仕事社内生産に切りかえる内製化を進めることにより、下請事業者の一方的な切り捨て、あるいは自社生産減少分をはるかに超える仕事量の削減を行うのであります。  さらに、親事業者資金繰りが苦しくなると、下請代金支払い条件についても現金比率を引き下げたり、納品から支払いまでの期間、さらには手形決済期間を延長して下請事業者にその負担を転嫁することになります。  言うならば、親事業者下請事業者景気変動のクッションとして利用しており、景気がよいときは生産費の節減を図るために多くの外注を出す一方、不況時にはこれらを切り捨てて不況影響を少しでもやわらげようとするのであります。  このように親事業者下請事業者を利用して不況に対処することができますが、下請事業者にとっては、自己防衛の手段は全くありませんので、その利益保護するためには法的に十分な措置が必要なのであります。  この点から見ますと、現行法は、一部にざる法とも言われるように、下請事業者保護対策としてはきわめて不十分な内容であります。  そこで、本改正案は、下請事業者の置かれている現状にかんがみ、支払い条件について規制を強化して親事業者下請事業者との公正な取引確保し、もって下請事業者経済的利益保護を図ろうとするものであります。  次に、改正案内容について御説明申し上げます。  第一は、下請代金支払い期日現行の六十日以内から四十五日以内に短縮することであります。  本来、下請代金給付受領後遅滞なく支払うべきものであります。しかしながら、現実は、不況となり資金繰りが苦しくなると、代金支払い期日を繰り延べる傾向が見られます。  この際、下請代金を速やかに支払い下請事業者保護を図るため、支払い期日給付受領後四十五日以内に短縮することといたします。  第二は、下請代金のうち、現金支払い部分比率を新たに定めることであります。  親事業者資金繰りが苦しくなると、下請代金について現金支払い比率を下げる傾向が見られます。  手形の場合は金融機関で割り引くとき一定割り引き料がかかりますし、また実際には金融機関により手形金額の百分の十五ないし百分の三十を歩積みとして強制的に預金させる場合が少なくありません。  さらに、手形が不渡りになった場合には、下請事業者金融機関からそれを買い戻さなければならず、それだけ危険負担を負うことになります。  このように、手形による支払い下請事業者にとって相当不利な面がありますので、公正な取引確保するため、親事業者下請代金のうち親事業者現金支払い比率実態及び支払い能力を勘案して百分の四十以上を現金または小切手で支払うよう努めなければならないことといたします。  第三は、都道府県知事中小企業庁長官と同様に本法違反事実に関する立入検査、報告の要求、公正取引委員会に対する措置の請求の権限を与えることであります。  現行法ではこれらの権限都道府県知事に与えられておりませんが、膨大な下請取引実態について十分に把握し、それに関して必要な措置を講じて下請事業者保護に遺憾なきを期すためには、これらの権限都道府県知事にも付与することが必要であります。  第四は、親事業者下請事業者との継続的な取引関係を維持するように努めるべき旨の規定を新たに設けることであります。  これは、経済変動により、親事業者生産が縮小されると、外注部分を大幅に減らして一方的に下請事業者を切り捨ててしまう場合が少なくありませんので、下請事業者立場保護するために、親事業者は継続的な取引関係にある下請事業者に対しては引き続きその取引を維持するよう努めるべきことといたしました。  以上が、本法律案提案理由及び要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。     〔武藤(嘉)委員長代理退席山下(徳)委員長代理着席
  8. 山下徳夫

  9. 西中清

    西中議員 ただいま議題となりました小規模事業者生業安定資金融通特別措置法案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。従来の政府中小企業政策は、ともすれば小規模事業対策が忘れがちであったと言えます。  すなわち、従来の中小企業政策は、中小企業の中でも比較的力のあるものを近代化させてその競争力の強化を図る一方、こうした政策には乗れないような小規模事業者はその陰で、十分な対策もないままに切り捨てられてきた傾向が見られるのであります。  しかしながら、本当に保護育成を図る必要があるのは大きな企業ではなくて、資本力が乏しい小規模事業者であるはずであります。  中小企業を取り巻く環境は、不況深刻化円相場の高騰などますます厳しいものになっております。こうした影響をまともに受けるのは、中小企業の中でも小規模事業者であります。  高度経済成長政策から国民福祉経済政策への転換が叫ばれながら、小規模事業者に対しほとんど施策らしいものが講じられなかったことにつきましては、大きな反省がなされなければなりません。  こうした中小企業のすそ野を形成する数多くの小規模事業者に対し、適切なきめの細かい施策の手が伸べられてこそ国民経済の安定が図られると言えるのであります。  政府においても、小規模事業対策として、小企業等経営改善資金融資制度を創設する等の措置を講じておりますが、現在の小規模事業者の置かれている環境を考えた場合、より抜本的な対策が必要であることは言うを待ちません。  ことに小規模事業経営形態経営者自身生活目的とした生業的性格が強いことを考えた場合、これに対応したきめの細かい施策を用意する必要があります。  この観点から、一定要件に該当する小規模事業者に対し、無利子生業安定資金融資制度を創設して、これを無担保、無保証でも利用できる道を開くことといたしました。  次に、本法案の主な内容について御説明申し上げます。  まず、本法律目的は、小規模事業者に対し生業安定資金を無利子貸し付け事業を行う都道府県に対し国が必要な助成を行う措置を定めることにより、小規模事業者生業の安定を図ることであります。  この場合、小規模事業者とは、常時使用する従業員工業等の場合は五人以下、商業及びサービス業の場合は二人以下の事業者でその所得が政令で定める額以下の者ということといたしております。  次に、都道府県小規模事業者に対して行う生業安定資金貸し付け内容は、二百万円を限度で無利子とし、その償還期間は五年以内で、その貸し付けに当たっては、原則として担保または保証人を要することとしますが、これの困難なときでも償還の見込みがあると認められる場合は無担保、無保証でも貸し付けの道を開くことといたしております。  また、事情により、償還の繰り上げまたは猶予及び償還免除等措置をとることができることといたしております。  さらに、都道府県生業安定資金貸付事業を行うために特別会計を設けるものとし、国は、都道府県がこの特別会計に繰り入れる資金の二倍に相当する額を補助金として都道府県に交付するものといたしております。  以上が、本法案の主な内容であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  10. 山下徳夫

  11. 玉城栄一

    玉城議員 ただいま議題となりました伝統的工芸品産業振興に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  本法は、伝統的工芸品が民衆の生活の中ではぐくまれ受け継がれ将来も存在し続けるために、伝統的工芸品指定振興事業に対する助成等規定してありますが、ここ数年来伝統的工芸品類似品海外から輸入されることにより、国内の伝統的工芸品産業に被害をもたらす場合が少なくないのであります。  日本古来伝統的工芸品に類似する商品が、海外から大量に輸入されることによって、日本固有伝統的工芸品産業は、その工芸品の売り上げの極減などにより倒産に陥るなど、伝統的産業自体の死活問題となっているのであります。しかも、伝統的工芸品と類似する外国製商品原産地表示に関する規制措置が欠けているため、輸入品に対する区別がほとんど不可能となり、消費者の判断を不当に紛らわすおそれすらあるのであります。  これらの点から見ましても、現行法は、伝統的工芸品産業振興する上に、きわめて不十分な内容であります。  そこで、本改正案は、伝統的工芸品産業の置かれている現状にかんがみ、同産業振興の一環として伝統的工芸品と類似する外国製商品原産地表示に関する規制措置及びその輸入に対する措置に関する規定を設けること等により、伝統的工芸品産業保護を図ろうとするものであります。  次に、改正案内容について御説明申し上げます。  第一は、伝統的工芸品と類似する外国製商品原産地表示に関する措置を新たに設けたことであります。  すなわち、伝統的工芸品と類似する商品外国において生産されたものが原産地表示を付さないで輸入されることにより、伝統的工芸品産業が重大な損害を受ける場合に、類似商品輸入する事業者に対して、その原産地表示した商品でなければ輸入してはならないことを命令できるようにいたします。  第二に、類似品輸入に対する措置を新たに設けたことであります。  現行法では、類似品輸入に対して何ら対抗できない状態であります。したがって、本改正案では、伝統的工芸品類似商品外国において生産されたものの輸入が増加することにより、伝統的工芸品産業が重大な損害を受ける場合、政府類似商品輸入に関して輸入の制限、関税率の引き上げなどの措置を講ずることができるようにしております。  第三に、伝統工芸品産業振興協会業務内容として、伝統的工芸品表示についての指導助言等を行うことができるようにいたします。  以上が、本法律案提案理由及び要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  12. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 以上で提案理由説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ることにいたします。      ————◇—————
  13. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。上坂昇君。
  14. 上坂昇

    上坂委員 初めに、中小企業分野法運用についてお伺いをしたいと思います。  中小企業事業機会確保法が昨年の通常国会で成立いたしまして、昨年九月二十四日から施行されております。この法律は横暴な大企業進出から中小企業事業活動機会を適正に確保することを目的としておりますが、この分野法一定条件を満たす中小企業団体申し出ることによって初めて動く仕組みになっていることは御承知のとおりであります。したがって、その実効性は端的に言って行政府運用いかんにかかっていると言って差し支えないと思います。中小企業者はこの法律に大きな期待をかけておりましたが、施行の段階ではかなり期待外れがありまして、多くの疑問を持っているというのが実情だと思うのであります。  そこで、お伺いをいたしますが、分野法五条に基づいて調査を行うということが政令で定められておりますが、この政令に定められている各項について、その目的趣旨を改めて御説明をいただきたいと思います。
  15. 豊永恵哉

    豊永政府委員 お答えいたします。  御質問は、分野調整法五条二項の調査事項及びその制定趣旨いかんということかと思います。  まず、調査事項でございますが、これは分野調整法五条二項の規定に基づきまして主務大臣調査を行う事項施行規則四条で定めております。具体的には内容が四つございまして、第一は、その大企業が始めます事業の開始あるいは拡大の時期でございます。それから第二番目は、その事業を行います事業の大きさと申しますか、事業の規模でございます。三番目は、事業目的物たる物品の種類、どのようなものをつくるのかあるいはどのような役務を提供するのか、その内容でございます。四番目は、事業の所在地、それからその物品あるいは役務の主たる供給地調査することになっております。  次に、五条二項の制定趣旨でございますが、分野調整法五条調査を行うようにしました趣旨は、中小企業団体は一般的には情報収集機能が非常に乏しいものでございますので、場合によっては大企業進出計画をみずから詳しく調査をすることがなかなかできないことも考えられますし、もし調査ができない場合に、分野調整法六条での調整の申し立てを行うタイミングを失してしまうおそれもあろうかと考えまして、中小企業団体から申し出がございました場合には、その事業を所管します主務大臣がみずから大企業進出計画調査するようにしたらどうかというのが、この五条二項の趣旨でございます。
  16. 上坂昇

    上坂委員 いまの御説明によりますと、中小企業情報収集が非常にむずかしい、したがって調査もなかなかできない、そこで主務大臣にこれを申請をして、申し出調査をしてもらう、それがタイミングが外れると非常に困るということも御説明になったわけでありますが、そうなりますと、この調査期間と申しますか、そういうものが非常に重要になってくると思うのであります。この計画調査の結果の有効期間は一体どのくらいを見ているのかということも非常に重要なファクターになるのではないかと私は思います。  そこで、この調査をする場合、一体どのくらいの期間調査をするのかということが第一点。それからもう一つは、調査の結果は一体どのくらいまで有効に保たれていくものであるか、ある時期になるとそこで切れてしまうというような性質のものであるかどうか、この点についてひとつ御説明をいただきたいのです。
  17. 豊永恵哉

    豊永政府委員 御質問趣旨は、分野調整法五条二項に基づいて行います調査期間、何年先くらいまでの調査を行うのかという点が第一点かと思いますが、この点に関しましては、分野調整法五条二項の調査というのは、事業を所管しております主務大臣調査を行うことになっております。その趣旨と申しますのは、中小企業業種といいましても業種業態によりましていろいろ特殊な事情があろうかと思いますので、そこら辺の事情に一番通じております主務大臣調査をお願いするということになっておるわけでございます。  そこで、どのくらいの調査期間調査をすればいいかということになりますと、これは業種業態によりましていろいろ事情があろうかと思いまして、一律に定めることはなかなかむずかしいかと思います。いずれにしましても、調査をしましたとき大企業事業の開始あるいは拡大の計画を有しておりますときは、その計画内容はすべて調査していただくということになっております。ただ、大企業がその計画を余り先まで持っていない場合もあろうかと思います。と申しますのは、大企業も、事業を開始します場合に、とりあえずたとえば一年程度の計画を立て、後の状況に応じてその先を考えるという場合も考えられますので、その場合にはその有している範囲ということにならざるを得ないのではないかと思います。
  18. 上坂昇

    上坂委員 この調査をしている時期が余り長くなってしまうと、この法律趣旨としては、言ってみれば、いろいろ聞き込みがあって、煙の出た時点でそれを調査する、こういう趣旨になっておりますので、これが余り長くなってしまうといつの間にか固まってしまって、そして実際には三条申請なりが行われてしまう、こういう状況が出てくると思いますね。そうなりますと、先ほどあなたが言ったタイミングが外れてしまう、こういうことが言えるのではないかと私は思います。そういう点で、この調査期間をできるだけ短くしていくということが必要ではないかと私は思うわけです。したがって、野放しにずっとかかるようなやり方では困るわけですね。大体いままでの例でいきますと二カ月間以上かかっている事例がたくさんあるわけでございまして、これではちょっと長過ぎるのではないかというふうに思うのです。  それからもう一つ、余り先までの計画がない場合もあるだろう。一年くらいである程度の計画を立てておいて、様子を見てそれからまたやるんだ、こういう計画でたとえば大企業進出をしてきた場合、これに対して調整をした場合でも、一年の範囲内ではその計画が余り大きなものではなかった、控え目であった、控え目であったからそれは影響が余りないだろう、こういう結果になってしまう。ところが、二年目に入ったら、これは調子がいいということでこれがどんどん進んでいく、こういう形になってしまうとこれは大へん大きな影響を残す。その時点で調整を図るということは非常にむずかしくなってくる。こういう点では、一年くらいでとめておくというような計画では大企業の場合にはちょっとおかしいのではないかと私は思うのです。かなり先までの計画というものを立てて事業に取りかかるというのが大企業の性格ではないか。特に大企業進出している場合には、小売商業の部門、ナショナルスーパーの問題なんかを見ましても、かなり長期的な計画あるいは日本的な計画、そういうもので戦略を立てながらやっている、こういうふうに私は思うのです。そういう点では、いまおっしゃったようなところで調査をとどめてしまうということであったのでは、これはとてもいわゆる事前調査目的が果たせないことになるのではないか、こう思いますが、その点はいかがですか。
  19. 豊永恵哉

    豊永政府委員 お答えいたします。  ただいま先生の御質問の御趣旨、まことにごもっともかと思いますが、二点あったかと思います。  第一点は、調査期間が長過ぎるとタイミングを失するのではないかという点でございます。具体的な例でお答えした方がよいかと思いますが、昨年の十月に建設省所管の不動産業に絡みまして調査申請がございましたが、これは十二月に回答しております。もちろんできるだけ早く調査を行って回答するのが好ましいわけでございますが、二カ月程度の範囲内でやったということは妥当なことではないかと思っております。その後の実例というのはございませんので、あとは今後の問題になるかと思いますが、中小企業庁といたしましても、各主務大臣に対しましては、調査期間はできるだけ合理的な範囲内で行うように要請はしていくつもりでございます。  それから第二点でございますが、もし一年程度の計画でその先がわからない場合に、大企業がどんどん事業を拡大してしまっては問題ではないかという御趣旨かと思いますが、何年先まで計画を立てろということを大企業に一律に強制することもいかがかと思います。法律のたてまえとしましては、大企業が持っております計画、もし三年分持っておりましたらそれをすべて出していただくわけでございますが、持っている範囲内で出していただくということになっております。  その出ました大企業計画につきまして、その調査結果というのは、それをもとにしまして二つの道がございまして、一つは当事者同士、つまり中小企業者と大企業が相互に話し合いをして自主解決をする道と、それから第二番目の道と申しますのは、調整の申し立てをする道というのがございます。いずれの場合におきましても、その大企業が出しました計画をもとに議論をしていくわけでございまして、その計画、何も紙に書いた計画そのものではなくて、その背景にあります大企業のこの事業に対します考え方、どういう事態になったらどう拡大するというような考え方までもいろいろ調べながら、聞きながら自主解決なりあるいは調整を行っていくことになるかと思いますので、現実の問題といたしましては、大企業側が、一回調査をいたしまして、あとは勝手に事業が拡大できるという事態にはならないかと思っております。
  20. 上坂昇

    上坂委員 どうも一年程度の計画を出されて、そしてその計画で判断をするということは、私は主務官庁でも非常にむずかしいのじゃないかと思うのですね。報告によって、一年度はこれだけの計画しかありませんよ、建物だけはでっかいのつくりますよ、しかし営業状態はこんな程度なんです。こういうことになってしまって、営業のときにはあとやってみなければわかりません、一年たってまたつけ加わるかもわかりません、こういうことになりますと、だんだん月日がたつにつれて仕事が積み重なっていく、そうなりますと、既成事実がそこでもう完全にでき上がってしまう、こういうことになると思うのですね。そうなりますと、話し合いをしろと言っても、もう既成事業が積み重なっているところへもってきて、それを後に戻すということは非常に困難でありますから、そこで話し合いをしてもなかなからちが明かない。また、主務官庁がそこへ入っていわゆる調整をし、勧告をしようとしてもそれはなかなかむずかしい、こういう事態になってくるんじゃないかと思う。  あなたの言うふうなかっこうになると、今度は一年たったらまた一年ごとに申請をしていかなければならない、申し立てしていかなければならないということになると思うのですね。これが半年ぐらいの計画だったらなおひどいわけですね。半年たったらまた半年目に申し立てをしなければならない、こういうふうになったら、中小企業団体としては事務的にも何も非常に困るわけです。人手も足りないし、いまのような不景気な状態の中で、そんなことに手間がかかっているというのは営業に差し支えるわけですから、非常に困る。  そこで、少なくとも調査期間というものは、計画書を出させる以上は二年ないし三年ぐらいの期間を目標に置いて出しなさい、こういう指導をしなければならない。私は、これは三年くらいが必要だと思うのですね。三年くらいの計画がなくて——新しい分野に入ってきて中小企業をいじめるような状態になるんだから、そういう影響があったら大変なんだから、そういうことのないような計画を出しなさい、こういうような形にしていかないととても中小企業はやりきれないのではないか、こういうふうに思うわけであります。  いま申し上げたのは調査の対象であります。もう一つは期間でありますが、大企業進出計画を変更する場合には、調査をしてある一定のところで調査が終わった。それからまた計画を変更するときには、必ず何カ月前に、調査を受けた企業は主務官庁に対して事前にこれを報告する義務を持つ、こういうような形にしなければならないのではないか、私はそういうように思います。そして義務づけて、その義務づけによって出てきた報告に基づいて、その調査結果をいわゆる申請団体に、申し出団体にこれを通知をしていく、こういうやり方をしないと、とても未然にこれを防いで話し合いの場をつくっていく、こう言ったってできない相談ではないか、こういうふうに思うのです。その点いかがですか。
  21. 豊永恵哉

    豊永政府委員 先生の御心配の御趣旨ごもっともかと思うのでございますが、いままでも行政指導によりましていろいろ当事者の話し合いで紛争を解決した例がございますが、その例では、大企業側が事業を新たに拡大しようとした場合、そういうような場合も当然また話し合いの対象になってきておりますので、いままでの現実の動きを見ますと、それほど支障があったというようには承知いたしておりません。  それから、先生の御指摘の、一年あるいは半年の期間では問題なので、それを二年なり三年なり期間を義務づけてはどうかという御趣旨でございますが、これは先ほども申しましたように、中小企業業界と申しましても業種業態によりましていろいろ事情が違いますし、また大企業もその企業によって計画のつくり方というのは一律ではございませんので、その業種業態に応じて一番好ましい形ということが行政上も弾力的に行えて好ましいと思いますので、一律に何年ということを決めることはいかがかと思っております。  それから、もし一年で計画を出しましてその後拡大したような場合、これは当然事業も開始し、それからまた新たに拡大することでございますので、これはまた新たな事由になって調査ができるわけでございます。法制的にはそういうことになるわけでございますが、しかし、現実の問題としましては、大企業が一年の計画しか出してこない場合でも、どういう考え方でその後の事業計画を立てるのかというような考え方などは、大企業中小企業者の話し合いの中で大企業側の考え方が十分わかるものでございますので、それを踏まえまして話し合いの解決あるいは調整の方法というものは決められることではないかと思っております。したがいまして、御心配の御趣旨はごもっともかと思いますが、現実にはそのようなことで問題が生じることは余りないのではないかと思っております。
  22. 上坂昇

    上坂委員 これはまた後で触れることにいたしまして、ただ私は、いまの点は十分考えて前向きに検討してもらうことを一応ここで要請をしておきます。  次に、第四条の先ほど言った「自主的解決の努力」、こういうことです。いわゆる話し合いをしなさい、こういうことになっているわけでありますが、話し合いをしてこいという事例が非常に多いのですね。申し立てをする、そうするととにかく話し合って解決するよう努力した方がいいだろう、こういう指導が行われて、調整を願い出ても、調整の方は後回しだ、まず先にやってこい、こういうような状況が出てくるわけであります。これが第一点。  それからもう一つは、こういう計画がありそうだからひとつ調査をしてくれ、こういうふうに申し出をするわけです。そうしますと、その申し出てきた段階で、それだけ大体わかっているのなら、それで向こうと話し合ったらどうですか、こういう指導が実際に行われている。そこに問題があるわけです。ちゃんと受けてきて主務官庁が調査をして、その調査の結果を通知をして、そこで話し合いをするというのならわかるのですが、それをやらない前に、話し合いをしなさい、こう言われてしまう。そうすると、今度は申し出た方は困ってしまうわけですよ。話し合いの基準が、先ほど言ったように中小企業情報を的確につかんでないわけです。したがって、その的確な情報がなければ、その情報を基本にしての話し合いというのはできないわけです。だから、一体何を話し合っていいかわからない、こういう状況になってしまうわけであります。そこで私は、自主的に話し合いをするということは一体どの辺まで考えているのかということで御説明をいただきたい。
  23. 豊永恵哉

    豊永政府委員 先生御指摘のように、分野調整法の第四条には、中小企業と当該大企業、「その双方の当事者は、早期に、かつ、誠意をもって、自主的な解決を図るように努めなければならない。」という規定がございまして、現実にはいろいろ各主務大臣のところで、問題が起きますと、この規定趣旨に沿いまして両当事者ができるだけ話し合いで解決するようにということを申しておるわけでございます。と申しますのは、この分野調整法趣旨中小企業者とそれから大企業者との間の紛争解決の新しいルールづくりというものを目指しておるわけでございまして、双方の当事者が納得いきますような解決になりますことが一番好ましいわけでございますので、この話し合いを行わせるわけでございます。もちろん、この話し合いにおきまして話し合います場合に、中小企業者側が大企業計画その他わかりませんときは、当然これは五条調査の申し立てをしていただきますれば主務大臣がこれを調査いたしまして、その内容を前提に当事者の話し合いということが行われるべきだと考えております。  それから、その話し合いの内容でございますが、これは法律にもございますように、両当事者は誠意をもって話し合うということが書かれておりますので、少なくとも中小企業者のみならず、当該大企業者も誠意をもってこの話し合いには応じるべきだと考えております。
  24. 上坂昇

    上坂委員 これは四条の方にまず自主解決の努力をしろ、その次、今度は五条へ来てそして調査申し出、こうなるわけですね。ですから、自主解決を先にやれというふうな形になっちゃうんですね、これは法律のあれからいくと。どうですか。そこで、先に自主解決ができないんです。なぜかというと、内容がわからないから。そこで、第五条を何といってもやらなくちゃならない。ところが、第四条というのがあるから、とにかく話し合いをしなさい、そのぐらいの材料があればいいだろう、こうなっちゃったんでは困るので、やはり申し出をしたらそこできちんと調査をして、その調査の資料に基づいて話し合いをさせる、こういう指導をしてもらいたい。
  25. 豊永恵哉

    豊永政府委員 ただいまこの法律には第四条が自主解決になっておりまして、第五条調査申し出ということになっておりますが、これは別に四条をやってから五条ということではございませんので、先生おっしゃいますとおり、大企業計画がわかりませんときには五条調査をいたしまして、それをもとに四条の自主解決をするということも現実にございますし、そこは時系列的に四条が先ということはございません。
  26. 上坂昇

    上坂委員 それは私もわかっているんですがね。わかっているんだけれども、実際にめんどうくさいものだから、担当主務官庁になりますとそういう傾向に走りがち、そういう例がいままでたくさんあるわけだ。私も知っているわけですね。だから、そういうことのないようにひとつやってもらいたいということです。  そこで、具体的な問題に入ってまいりますが、理化医ガラス業界の問題なんですが、いまこのガラス業界の状況というのはどんなふうになっているか、御説明いただきたいのです。
  27. 脇山俊

    ○脇山説明員 理化医ガラス業界におきましては、旭硝子株式会社とアメリカのコーニングガラスの合弁企業でありますところの岩城硝子株式会社が昭和五十年にアメリカから自動成形機を導入いたしまして、これを大量生産する動きが生じまして、分野調整問題が発生したわけでございます。その結果、通産省としては、昭和五十一年一月以来、岩城硝子の出荷水準を制限するように行政指導を行ってきておるところでございまして、その水準は六カ月ごとに指示しておりまして、詳細にはいろいろございますが、基本的にはおおむね四十九年水準の一〇%減とした後、横ばいに近い線に抑制してきております。この間、昭和五十二年五月には、理化医ガラス製造業を中小企業近代化促進法の指定業種として指定し、その近代化努力を促すということで、その近代化計画の策定を現在行っているところでございます。  業界の状況といたしましては、需要が停滞いたしまして、わりあいに業界全体として業績は不調であるというふうに伺っております。
  28. 上坂昇

    上坂委員 いま御説明がありました旭硝子とアメリカのコーニング社の合弁会社の岩城硝子の進出でありますが、昭和四十四年にいわゆるいまのべローマシンを入れたときには、大体十五社が転廃業しておりますね。それから、理化医ガラス業界では、昭和三十年ごろにも日本電気硝子株式会社が進出をして十数社が転廃に追い込まれているという例もあります。したがって、理化医ガラス業界というのは中小企業が主体なので、大企業進出が非常に影響を及ぼしているということは数々の事例があるわけでありまして、その都度大変な数の会社が倒産あるいは転廃業に追い込まれているわけであります。  いま御説明があったように、五十一年の一月から六月までに出荷量を、四十九年度の実績を一〇%程度下回る水準での出荷量を決め、指導している、こういうふうになってきましたが、この行政指導の問題点があるんじゃないか。その一つは、岩城硝子株式会社の生産実績が明らかにされていないという問題、それから、先ほど言いました近代化の指定業種にして、いわゆる工業組合をつくらして指導している、こういうことでありますが、二年ぐらいで中小企業者が十億円もするいわゆるブローイングマシンといいますか、そういうすばらしい機械に対抗できるような近代化が一体図れるのかどうか、この点がやはり非常に問題じゃないかと思うんですね。したがって、ちょうど五十一年からですと、去年の十二月で切れているわけですね。ですから、ことしに入って非常に問題が大きくなってきた。特に不況が非常に押し寄せてきておりますから、なおさら大変だと思うんですね。そういう点で岩城硝子に対してのこれからの対策指導といいますか、そういうものについてはどういうふうにやっていかれる方針なのか、お聞かせをいただきたい。
  29. 脇山俊

    ○脇山説明員 第一点の御質問の岩城硝子の生産実績でございますが、行政指導の水準は年産百三十トンということでございまして、岩城硝子としてはその行政指導の水準内に出荷を抑えている旨、毎月報告を受けております。  それから次に、三番目の御質問から先にお答えしますと、行政指導期間が五十一年、五十二年の二年間で一応切れてしまったのではないかというふうな御質問にちょっと伺えたのですが、これは当初二年間ということで行政指導を行いましたが、それが切れた後も、つまり五十三年一月から六月までについても、現在行政指導を継続して行っております。それでその水準は、昨年の水準並みの横ばいに抑えるということにいたしているわけでございまして、その点をひとつ御了解願いたいと思います。  それから、十億円もする近代化設備を導入することが果たして可能かどうかという点でございますが、これについては、現在いろいろの学識経験者の方の御参集をいただきまして、詳細に検討を進めているわけでございまして、御指摘のとおり十億円程度かかると一応考えておりますが、こういうワンセットの設備を導入して最も本格的な近代化を図った場合にはどういう問題があるか、そのフィージビリティー調査、それからさらにもっと何かほかのやり方はないのかどうか、そういう点を含めて現在いろいろの観点から検討を行っているところでございまして、中小企業メーカーとしての企業の体力というようなことも十分念頭に置きながら、適切な近代化計画をつくっていきたいというふうに考えて、現在鋭意努力しているところでございます。
  30. 上坂昇

    上坂委員 いまの出荷額ですが、これは百三十トンですか、これはいわゆる中小企業と競合している分野の出荷量ですか。
  31. 脇山俊

    ○脇山説明員 中小企業側と岩城硝子の成形機による自動成形法によって成形するマシンが直接競合するものといいますと、主にビーカー、フラスコ、そういうものになりますが、百三十トンというのは、そのビーカー、フラスコ類についての出荷水準でございます。
  32. 上坂昇

    上坂委員 理化医ガラスの業界の方で出している資料では、五十二年度で中小と岩城硝子との間のいわゆる競合部門の調査をしているのに対しては、中小が全部で六十トンである、そして中小側が八二%で岩城硝子の方は一八%を占めている、したがっていわゆる指導の一〇%以内におさめているというのは相対的には非常にふえている、こういう報告を出しているわけですが、この点についてはどんなふうにお考えですか。
  33. 脇山俊

    ○脇山説明員 御指摘のとおり、昨年十二月に受領いたしました全国理化医ガラス工業組合の要望書によりますと、全需要量六十トン、そのうち岩城硝子のシェア一八%というふうになっているわけでございまして、この統計は、この組合の方が組合のメンバーの方から聴取したところに基づいて作成されたものでございまして、私どもの方としてはこれを十分参考にいたして行政指導いたしたわけですが、公式の統計によっては、この六十トンという数字を現在のところまだ確認しておりません。しかし、行政指導に当たっては、十分この数字も参考にして行政指導の方針を決定いたしております。岩城硝子のシェアが、その同じ資料によりますと、四十九年の一〇%前後から一八%ぐらいにふえたということでございますが、私どもの行政指導の方針は、岩城硝子が中小企業に混乱を与えないという観点からの指導を行っているわけでございまして、毎年毎年の需要量、これを調べまして、その岩城硝子のシェアを一定の水準に維持するというふうな観点には必ずしも立脚しておりません。全需要量の統計といいますとなかなか整備されていないという点もございますので、中小メーカーに混乱を与えないような水準というのはどの程度のところかということで、当初一〇%減にして横ばいというようなことでやっているわけでございます。
  34. 上坂昇

    上坂委員 問題は、確かにそのシェアを少なくしようと指導しても、片一方で中小企業はどんどん転廃業をしていくということになれば、相対的に岩城硝子の方が生産をそのまま維持している限りにおいてはシェアがふえていくということになるのですね。これは当然です。しかし、そのシェアがふえることによってまた影響を及ぼすということがないように、ここのところは十分指導していただきたいというふうに私は考えます。先ほども説明がありましたように、非常に事業が停滞して、いま不調の状況にありますから、なおさらそこのところは十分気をつけて指導していただくように要請をしたいと思います。  次に、中小企業の不動産業界の問題に入りますが、昨年の十月二十七日付で、社団法人全国宅地建物取引業協会連合会が、当時の長谷川建設大臣に対しまして、分野法五条にかかる調査申し出を行っております。その対象は三井不動産株式会社及び三井不動産販売株式会社でありますが、この調査結果と、調整の必要があるかどうか、建設省の方、この点をお伺いをいたしたい。
  35. 清水達雄

    清水説明員 まず、調査結果でございますが、三井不動産販売株式会社は、すでにこれはもう現在行っている事業でございますが、東京の町田市で一店舗、神奈川県で四店舗、専属特約代理店というのを設けて営業しておりますが、これを本年の四月一日から十店舗増設するということを骨子とした計画を持っておったわけでございます。  このことを全宅連に昨年の十二月に通知をしたところ、全宅連といたしましては、本年の三月一日に調整の申し立てを行ってきたわけでございます。私どもといたしましては、全宅連は中小企業団体でございますし、それから三井不動産販売株式会社のこの専属特約代理店というのは、いわゆるダミーではございませんけれども、仲介業務を行うに当たりまして、三井不動産販売株式会社の名前においてそれの代理店という形で行うということでございますので、分野調整法の対象になるであろうという判断のもとにこれを受理いたしました。しかし、全国宅地建物取引業連合会の調整の申し立て書の内容につきましては、このような三井不動産販売の計画の実施が中小宅建業者の経営の安定に著しい悪影響を及ぼすこととなるという理由が具体的に余り明確でございませんので、現在この点についての補充的な疎明を求めているところでございます。全宅連といたしましては、これを受けて現在調査を実施中でございます。  一方、両当事者は、事柄の性質上、と申しますのは、三井不動産販売と中小宅建業者の提携の仕方というところに問題の焦点がございまして、そういった事柄の性質上、話し合いによって解決を図りたいという意思を持っておりまして、現在までに二回話し合いを行っております。その過程で、三井不動産販売は、話し合いを円滑に進めるために四月一日からの事業拡大を三カ月間延期するということにいたしておりまして、今後引き続き両者間で話し合いによる解決の努力が行われるということになっておりますので、私どもといたしましては、この両当事者間の話し合いによる解決の努力というものをもうしばらく見守っていきたいというふうに考えているわけでございます。
  36. 上坂昇

    上坂委員 いまの御説明は私が聞いているのとかなり違うのでありますが、建設省は、調整申し出をしたときに、余り悪影響はないだろう、したがって、たとえば調整申し出をして、調整をしようと思ってあるいは勧告をするという形になっても、それが勧告の対象にならないというような形になってしまうと、そういう通知を宅連の方に出さなくちゃいけない。そうすると、そのことがかえって宅連が考えているのと違ってきて、三井不動産販売の方の計画をかえって強化してしまう、バックアップするような形になってしまうこともあるので受けない方がわれわれとしてはいいと思う、だから話し合いをしてきなさい、こういう指導をしたというふうに聞いておるわけです。そういう指導をした結果、いま言ったように二回の話し合いが行われたのではないかと私は思うわけでありますが、そういう指導をしたのですか。
  37. 清水達雄

    清水説明員 実は三井不動産販売の調査に応じて出してきた計画を見ますと、十店舗の専属特約代理店による事業計画といいますか事業目標というものは、現在の不動産の流通量に比べましてごく微々たるものではないかという感じがするわけでございまして、分野調整法にいうところの、いわゆる相当数の中小企業者が現在供給している物品とか役務の需要を減少させて、経営の安定に著しい悪影響を及ぼすというふうな、そういう判断ができるものかどうか、われわれとしてこれは実際に調査をしてみなければもちろん言えないわけですけれども、ごく常識的に言いまして非常に問題だなという感想は全宅連側にも言ったことがございます。しかし、それを理由にして調整の申し立てはしない方がいいとかいうことを、いわゆる分野法の不動産業部門を担当する行政運営の立場からそういうことを申したわけではございません。
  38. 上坂昇

    上坂委員 それはそのまま受け取っておきますが、もっともそれが当然だろうと思います。  そこで、三井不動産というのは百二十三億七千二百万円の資本金を持っていますね。業界のトップ企業だと言われている。そこが一〇〇%出資で三井不動産販売株式会社をつくって、そこに仲介業をやらせている、こういうふうに思うのですが、いま御説明があったように、三井不動産販売株式会社はことしの十月に大阪に住宅センターの営業開始をする予定だ、それから、先ほど言いましたように代理店をフランチャイズ化して、そして現在の五店を十店ふやして十五店にする、こういうことですね。そこでまた大阪にも一つ設ける、こういうことでありますが、いわゆる供給地域といいますか、影響する地域は関東各地の主要都市を対象にしているわけです。これは本当のことを言えば、私は、全国的な進出の足がかりをつくっているのではないか、こう思わざるを得ないわけですね。  建設省の調査報告によりますと、この販売会社の方の計画による本年度の取扱高等の件数がありますが、まず取扱高の方を見ましても、千葉県で八十一億三千六百万円、埼玉県で九十三億八千万円、神奈川県で四十二億八千六百万円、合計しまして二百十八億二百万円になっているわけです。これが第一年度でありますが、この程度では大した影響はないと、こういうふうに考えるわけですか。  いろいろ資料を見ますと、これからの中古住宅については一兆数千億のいわゆるシェアが出てくるだろうとか、あるいはあと五、六年たつと十二兆円の市場が出てくるのじゃないかというようなことを言われておりますが、それから見ると非常に少ないかもしれません。しかし、一年で十五店舗できただけですでに二百十八億円の営業取扱高を計算することができるということになります。これを土台にしてどんどん広げていくということになれば、これは全国を席巻してしまうだろう。不動産業界というのは中小企業が多いわけでありますから、とてもこの百二十三億円の資本金をバックにした大企業が後ろに控えている不動産販売株式会社には太刀打ちできない、私はこう思うのです。その点はどういうふうにお考えになりますか。
  39. 清水達雄

    清水説明員 実は三井不動産販売がわれわれに対して回答をしてまいりました内容につきまして、全国宅地建物取引業連合会のメンバーの方々からは、この程度の計画ではなくで、三井不動産販売のいま先生おっしゃいましたように全国制覇をねらった計画の第一歩ではないかというふうな点について、われわれに対しても質問がございました。私ども、そういう点について三井不動産販売にたびたび確認をしたわけでございますけれども、現在のところこれ以上の計画を持ち合わせておりません、こういう回答でございます。私どもといたしましては、先ほどもちょっと問題になりましたが、いろいろ話し合いのプロセス等におきましてさらに計画が出てくるというふうなことにつきましては十分注意をしなければいけないということで、その後も、最近の時点におきましても確認をいたしておりますけれども、現在のところそういう計画はない、これ以上の計画はないというふうに三井不動産の方は申しております。  先生御指摘になりましたその将来の問題につきましては、恐らく今後の全宅連と三井不動産販売との話し合いの過程の中で、いろいろその点についての議論も行われ、やりとりもあるのではなかろうか、そういう中で全宅連としても、ある程度の何といいますか見通し等についても持ち得ることになるのではなかろうかというふうなことを期待しているわけでございます。
  40. 上坂昇

    上坂委員 いまの説明によりますと、全国制覇をねらっているのかどうか、とてもいまの段階では判断がつかない、こういうことになるわけですね。そこで問題は、先ほど通産省の方に聞いた調査期間が、たった一年くらいの計画だけ出させておいて、そして後どうなるのかわからないということになったら、これはもうどんどん全国各地の中小企業影響を及ぼしてしまう、こういうふうに私は思うのです。そこで先ほど通産省に対してそういう質問をしたわけなんです。  この点について、次官、先ほどからずっとお聞きになっていると思いますが、いま言ったように非常に中小企業というのは弱い立場にありますから、既成の事実を大企業につくられたらもう大変であります。それを一年くらいの期間のところでとめられてしまって、次々と計画が出ていくようないわゆる状況が出てくるというときには大変なことになります。そういうことを防いでいくということが私は分野法の精神だろう、こういうふうに思うのです。その点でどういうふうにお考えになりますか。今後分野法運用について、ひとつ前向きでこれらの点を検討していただきたいと思うのですが、次官の御見解をいただきたい。
  41. 野中英二

    ○野中政府委員 お答え申し上げます。  現行法におきましては、いま持っております各会社の計画だけを調べることしかできないようになっておるわけでございますが、先生も御指摘のように、特にこの住宅宅地問題につきましては、そのシェアの高いのは東京、いわゆる首都圏でございます。したがいまして、この首都圏のシェアというものを一つの踏み台として今後全国的に拡大をされていくということは、中小宅建業者の今後の行き方に大きな支障があると思いますので、十分にその計画を今後も見詰めながら監視をしてまいりたいというふうに考えております。
  42. 上坂昇

    上坂委員 次に、日本住宅流通株式会社の問題についてお聞きいたします。大阪宅地建物取引業協会が去る三月十四日付で日本住宅流通株式会社の進出についての調整申し出をしていると聞いているのでありますが、この点はどういうふうになっておりますか。
  43. 清水達雄

    清水説明員 先生御指摘のとおり、大阪の宅地建物取引業協会から調整の申し立て書を持ってわれわれの課に来たことは事実でございます。私どもといたしましては、日本住宅流通株式会社に関してそういう動きがあるということを承知いたしておりましたので、すでに会社に対して会社の内容について文書で回答を求めておったわけでございます。その結果によりますと、日本住宅流通株式会社は本年の二月十五日付で設立されております。大和ハウス工業を初めとする住宅不動産業関連企業、銀行、生保、損保等四十一社の出資によって設立されまして、資本金は三億五千万円でございますが、従業員につきましては、常時使用する従業員の数は二十一名でございまして、そのほかに役員がおるわけでございます。  そういう状況でございまして、分野調整法で定める「大企業者」といたしましては、不動産業の場合に、資本金が一億円以上であってかつ常時使用する従業員の数が三百名以上ということになっておりますので、日本住宅流通は、資本金の面では該当いたしますが、従業員の数の面で該当しないということで、言うなれば中小企業ということになるわけでございまして、分野調整法の対象にはなりませんので、調整の申し立てば受理できないということで、受理はいたさなかったということになっております。
  44. 上坂昇

    上坂委員 資本金が三億五千万円でも従業員が二十一名であるから分野法調整対象にはならない、こういうことでありますが、不動産業というのは三百名も五百名も持っておるというところはそうないわけで、普通大体二十名、三十名、多くてせいぜい三十名程度なんですね。五名や十名でやっておるところだってあるんですね。一人でやっておるところだってあるんです。したがって、従業員が少ないからといって大企業でない、中小企業だというふうに言うということは非常におかしな話だと思うのです。これは実際問題としては即さない考え方だと思うのです。  そこで、法律にはそうなっているから仕方がないんだというような言い方ではなくて、やはりそうした背景が非常に大きい、いまおっしゃったように四十一社で、銀行が十二行、不動産会社が八社、保険会社が十一社、地所会社が三社、住宅建設が六社等これがほとんど日本の大企業と言ってもいい大きな企業ばかりであります。しかも大和ハウスの会長が社長になる、あるいは銀行の人が常務になるといったような形で、役員構成から見てもまさに大企業を網羅している。背景はとても大変なものだと思うのですね。これは三億五千万どころの騒ぎじゃないんじゃないか。とにかく十二兆円の中古住宅供給のシェアを将来押さえてしまうという構想でやっているらしいのでありますから、これは大変な会社だと思うのですね。こんな会社を中小企業だなんて言ってほうっておくということは大変問題だと思うのです。これだけ株主に大企業が入っていれば見過ごすことはできないので、やはり大企業と同じ扱いにして、調査あるいは勧告、調整の対象にしていくということでなければならぬじゃないか。その点はいかがですか。
  45. 清水達雄

    清水説明員 分町調整法に基づくいわゆる法律運用といたしましては、やはり分野調整法の対象になるものでないとできませんので、この点は御了解いただきたいと思うのでございますが、法律を離れて実際に調整の必要がある場合にはどうかという御質問でありますれば、法律の対象にならないからといって必要がある場合でも行政指導として何も行わないということはもちろん言えないわけでございまして、たとえ形の上では中小企業同士の紛争でありましても、不動産事業の円滑な運営を図っていくために必要があれば、われわれとしては行政指導という形でやるという基本的な考え方については否定するわけではございません。  日本住宅流通株式会社の現状を見ますと、なるほど会社の設立のされ方につきましては大企業ばかりが集まってつくっている、しかも資本金もかなり大きいということで、将来あるいは大企業に成長する可能性をかなり大きく持った会社ではあるかもしれません。しかし、現状におきましては従業員数が二十一名というふうなことでございます。不動産の仲介流通というものは基本的には人間がやることでございまして、現在のような陣容ではそう大したことはできないというふうに通常考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、まだ業務を開始してないような状況でございますので、社会的に見て行政指導という形で調整の必要があるかどうかという点につきましては、今後の推移を見守っていく必要があるのではないかと考えております。
  46. 上坂昇

    上坂委員 いまの法律ではそれはできない、こういうお答えでありますが、それでは身もふたもない話でありますから、この点については、いまのような事例の場合一体どういうふうにして分野法の精神を生かしていくのかということについて、通産省にも今後前向きに検討していただきたいと思うのです。  これは日本住宅流通株式会社が「新会社設立の背景について」という形で株主に配ったものだと思うのですが、これを見ますと、ちゃんと書いてあるのですね。中古物件の売買物件はこれから一五%も増加して、その取引額は二兆五千億円という膨大な市場に成長しつつある、これが昭和六十年になると十二兆円の市場に拡大する、だからいまのうちにこの分野に進出をしなければならないんだ、こういうふうに言っているわけでありまして、これは大企業でなければ現実問題としてとてもできないわけですね。それを従業員が少ないから分野法の大企業とは見られないんだ、こういうことになったんでは、こうした流通部門においては非常に大きな問題が生ずるのではないか。この点について今後十分検討する意思があるのかどうか、通産省の御意見をいただいてこの質問は終わります。
  47. 豊永恵哉

    豊永政府委員 ただいま先生の御質問のありました具体案件につきまして、当方まだ建設省から正式に話をお聞きしておりませんので、詳しくお答えすることはできませんが、分野調整法の中に大企業の定義がございますが、それだけではダミーの問題と申しますかそういうものが生じますので、どういうものをダミーというかということにつきましては、施行規則で一応定めてございます。したがいまして、この具体案件が施行規則に該当するのかどうかということは、一応検討してみたいと思います。
  48. 上坂昇

    上坂委員 次に、精糖業の合理化問題について質問をしたいと思うのですが、農林省の方、おいでになりますね。  通産省にまずお伺いするのですが、最近の構造不況産業の中に砂糖産業を入れているようでありますが、その理由、判断の基礎というのはどんなものか、御説明をいただきたい。
  49. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 お答え申し上げます。  最初に、一般的な考え方について御説明申し上げたいと存じますが、ただいま参議院で審議されております特定不況産業安定臨時措置法案におきましては、先生御案内のとおり対象の産業を二段構えで指定することになっております。  まず第一段階といたしまして、対象候補業種を指定するわけでございますが、これはこの法律で平電炉、アルミ製錬、合成繊維、造船業等四業種がすでに例示として挙げられておりますが、そのほかに、一定要件、すなわち設備過剰の状態が長期に継続することが見込まれるというようなこと、またその理由によりまして当該事業者の相当部分の経営が著しく不安定になり、これが長期継続するおそれがあるということによりまして、これを克服するには設備の処理が必要であるというような幾つかの要件がございまして、この要件に合致する業種につきまして政令指定をするわけでございます。この政令指定をいたします際には、主務大臣は関係審議会の意見を十分聞きまして検討を行った上、指定の手続をとるということになっております。  こういった第一段階としましての候補業種が指定されましたところで、その業種に属する事業者の大部分申し出をいたしました場合に、その産業特定不況産業として最終的に政令指定することになっております。  この第一段階の対象候補業種というところで指定されるわけでございますが、私ども法案作成の過程で農林省から意向を伺っておりましたところでは、この第一段階の対象候補業種の中に精糖業を含めるべきであるという意向を持っておるというように伺ってまいりました。精糖業につきましての具体的な不況要件の有無等につきましては、主務大臣である農林省の方から御説明していただきたいと存じます。
  50. 上坂昇

    上坂委員 いまのことについてはわかっておりまして、業種に指定されるのは、もしされるとすればこれからなんですが、ただ精糖業について過剰設備であるとかなんとかというような問題が出ているものですから、その点でお伺いをしたわけでありますが、現在精糖業における設備能力、それと生産状況、設備の稼働状況、これらについて御説明をいただきたい。
  51. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 お答えいたします。  精糖業の設備につきましては、昭和二十年代ぐらいから設置されたもの、それからごく最近に設置されたもの等いろいろございまして、これを一概に把握することはなかなかむずかしいわけでございますが、私どもが一定基準によりまして各精糖業者からとりましたものを、フル稼働した場合にどのくらいの砂糖の製造能力があるかというふうに推算いたしますと、大体年間四百四十万トンぐらいあるのではないかというふうに推定されております。これに対しましてわが国の現在の砂糖の需要、これは実は昭和四十八年ごろにピークに達しましたが、その後若干消費の停滞等ございまして、現在の国内の砂糖の需要は大体二百八十万ないし九十万トンぐらいじゃなかろうかというふうに考えております。  この中には、御承知のように、北海道でてん菜、ビートからつくりますビート糖というのがございまして、これは原料の大根から一貫して精製糖までつくってしまいますので、これが大体三十万トン強ございますが、これを除きますと二百五十万トン前後でなかろうかというふうに考えております。したがいまして、四百四十万トンぐらいのフル稼働した場合の設備能力があるのに対して、需要が二百五十万トンぐらいというふうに考えますと、約六割の稼働率といいますか、ぐらいになるかというふうに考えております。
  52. 上坂昇

    上坂委員 どこの会社でもフル稼働するなんということはほとんどあり得ないのであって、特に電力会社なんかになると、原子力発電なんというのは二〇%ぐらいしか稼働していないところがあるわけでありますから、そんなことだけで標準にして、それだから設備過剰だというわけにはいかないので、実際問題としてはやはり消費に見合って生産が行われる、そこのところに精糖業の一つの特色があると私は思うんですね。したがって、現在の状況でずっと続いていくならば、各会社ともそれぞれやっていけるような条件というのがあるんではないか、こう判断をしているのですが、その点はいかがですか。
  53. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 先生おっしゃいますとおり、設備のフル稼働ということは実際にはあり得ないということは、私どももある程度了解いたすわけでございますが、それにいたしましても、やはり需要の動向あるいは季節の繁閑等考えましても、現在おおむね需要量の二割増程度の設備があれば足りるのではないかというふうに考えておりますので、精糖業については従来から製造設備が過剰であるということを申しておるわけでございます。
  54. 上坂昇

    上坂委員 この機械設備のいわゆる程度ですが、先ほど御説明があったように、昭和二十年代あるいは最近のものと、こういうふうになっておりますが、かなり老朽化したりいわゆる更新を要するというようなものがあるんですか。
  55. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 砂糖の精製工程というのは、加工業の中ではかなり単純な方でございます。いわゆるクリーニングなどと言われておりますが、したがいまして、昭和二十年代の設備を使いましても、それから最新の設備を使いましても、できてくる砂糖にそう大きな差はない。また、各企業の形態によりまして、たとえば古い設備でも非常にうまく使っていい品質と言いますとおかしいんですが、需要に見合ったいいものをつくるというところもあります。したがいまして、一概に年次を経たからこの設備はだめとか、そういうことは言いがたいというふうに思っております。
  56. 上坂昇

    上坂委員 ここ数年来の消費の推移についてお伺いしたいんですが、先ほどお伺いするところによると、現在の需要は二百八十万トンから九十万トンだ、こういうことでありますが、砂糖の場合には季節によってかなり違ってくるんじゃないかというふうに思うんですが、それに対応していくためにはどうしなければならないか、ストックの問題も含めて御説明をいただきたい。
  57. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 近年の砂糖の消費について一般的に申し上げますと、まず、昭和三十年代から四十八年ぐらいまでは、一貫して国民の生活の向上とともに需要は伸びてきたわけでございます。その一番伸び切ったところ、大体年間三百十万トンと先ほど申しましたぐらいの需要がございましたときに、いわゆる狂乱物価といいますか、砂糖の値段が非常に高騰したということもございまして、四十九年には前年比で一五%ぐらい砂糖の消費が減りました。その後は、国民の生活の中でも甘いものから余り甘くないものへ嗜好が変わる、いわゆる砂糖離れと言われるような現象も見られまして、消費は停滞してきております。無論年によりまして若干の変動はございますが、先ほども申し上げたように大体二百九十万トンぐらいではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  これの砂糖の季節的な動向でございますが、実際には余り大きな変化は見られません。といいますのは、砂糖の需要の大体七五%が加工用でございまして、加工用のものはかなり長期にわたって需要期に向けてつくるということもございますので、大きな変動はございませんが、あえて申しますと、年末にかけましてはやや需要が増加する。そのかわりに、年初一月、二月は需要が減退するというような形でございます。設備能力の関係で言えば、この年末需要の増に対して、先ほど申し上げたような形で、現在の需要の二割増くらいの設備能力があれば十分対応できるというふうに私ども考えているわけでございます。  なお、在庫のお話でございますが、原料であるいは製品で、どういう形で在庫を持つかというといろいろ論議がございますが、現在私ども砂糖売戻し特例法という法律、ことしの二月から施行いたしておりますが、この施行に当たっての需給の物の見方のときに、大体原料糖で一カ月程度、それから製品で十日程度持てば、大体企業としては供給責任という面でも果たせるのではないかということで、そのような想定で需給の見通しをつくっております。現状におきましては、各精糖企業が持っております原料は一カ月あるいはこれをやや超える程度でございます。また、製品についても若干いま過剰でございますが、いずれ先ほど申し上げたような適正在庫にいくだろう、こう思っております。
  58. 上坂昇

    上坂委員 次に、原糖の手当ての問題であります。これはいま北海道のビートの問題が出ましたが、国産糖との関係で、いま原糖についてはどのくらい入っているのか、豪州糖とそれからグローバル糖で、数量と価格を説明をいただきたい。
  59. 西山敬次郎

    ○西山政府委員 昨年のわが国の原糖の輸入でございますが、総量で二百七十万一千トンでございます。そのうち豪州からの輸入は六十四万一千トン、全体の二四%になっております。それから金額でございますが、平均いたしますとトン当たりCIFで七万一千六百八円になっておりますが、豪州の場合は、CIFトン当たり十二万一千百七十八円となっております。
  60. 上坂昇

    上坂委員 原糖の輸入で、特に豪州糖は非常に高い。これが国内における消費の問題あるいは生産に携わる場合、非常に大きな障害になっているということはわかっているわけでありますが、原糖の手当てをする場合、いま言った価格で入ってきて、これがそのまま精糖各社に渡されて、精糖各社がクリーニングをして、生産をして市場へ出していく、こういう形になると思うのですが、精糖各社に渡される値段と、それから精糖各社の工場出し値、それから商社が販売を扱っていると思いますが、これは代理店になるのかどうかわかりませんが、その卸価格とそれから消費者に渡る場合の価格、これについて御説明をいただきたい。
  61. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 砂糖の価格の形成の問題でございますが、まず一つは原糖、先ほど通産省の方から御説明ございましたが、あの価格で入ってまいりますが、それはそのまま工場の製造の原料価格にならないわけでございます。御承知のように、砂糖につきましては糖価安定制度という制度がございます。糖価安定事業団という特殊法人が、輸入するときに、輸入糖については法律に基づきまして売買を行います。そこで一定の国内で定めました砂糖の安定帯、安定上限価格、下限価格がございますが、安定下限価格よりも下回っている場合、これは輸入される価格を平均輸入価格というもので一応推定しまして、それをある程度高くします。したがって、事業団においてその間の課徴金として差額を取るわけでございますが、そういう形で価格の調整を行っています。さらに関税としましてトン当たり四万一千五百円、これがかかります。それがかかったものを工場に渡されるわけでございます。  工場において加工をいたしまして、これは加工経費がまた各工場によって先ほどのようなお話もありまして非常に差があるわけでございますが、加工されましたもの、これが工場から出荷されるわけです。現在私どもが、いま申し上げました糖価安定制度と関税を踏まえまして、平均的な加工経費を加えたものとして工場から出されるというふうに想定しますと、大体キログラム当たりで、これは上白糖という種類の砂糖でございますが、百九十五円前後だろうというふうに思っております。  砂糖の流通の関係になりますが、工場から出されました砂糖は、大部分は代理店を通じまして、それから特約店、さらに二次卸というふうに経過して小売店へ行くということになっております。もちろんそれぞれの段階におきまして、代理店から直接実需者に渡る場合もございます。特約店から大口の実需者に回る場合もございますが、価格の形成をいま最初に申しましたルートで参るといたしますと、工場出し値というのは代理店が特約店に渡すときの値段でもございます。したがいまして、代理店の手数料は工場出し値の中に含まれているというふうに考えていただきます。この工場出し値をもちまして特約店まで運んで特約店に渡す価格、これが形成されるわけです。大体工場出し値と特約店の手元に行くまでに四円くらい価格が上乗せになるかと思います。それからさらに特約店から二次卸店へ行く、これが、規模とか何かによって違いますが、大体十円前後経費がかかると思います。さらにその二次店から小売へ参りますが、これは小口に分けたりいろいろいたしますので経費がかかりまして、二十五円か三十円くらいかかるということになっております。  ことに、いま私が百九十五円と最初申しましたのは、いわゆる三十キロの大袋のものでございまして、よく消費者の方で問題なりますのは、一キロ単位の小袋になっています。この小袋と大袋で大体十円くらいの格差がございます。あれこれ足していきますと、大体小袋で計算いたしますと、いまの工場出し値、大袋との差はキログラム当たりで大体四、五十円、これも御承知のように、スーパーマーケット等で目玉で売りますと非常に安いのがあったりいろいろございますが、大体の末端の小袋価格との差は四、五十円というふうに考えております。
  62. 上坂昇

    上坂委員 原糖の手当ての場合には必ず商社がこれに介在していると思うのですが、精糖業に非常に深いかかわりを持っている商社は現在何社ぐらいあるのか、それから商社がどうしてこうした精糖業に深いかかわりを持ってきたかということについて、ひとつ御説明いただきたいと思います。
  63. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 商社と精糖企業とのかかわりの問題でございますが、御承知のように、わが国の砂糖の大体八割は輸入でございます。しかもこれは世界の自由市場から購入しているわけでございます。したがいまして、海外の各国からそのときの自由市場の価格で原糖手当てするということが必要になってくるわけでございますので、精糖業としては、当然その原料手当てに自分で乗り出すということは非常にむずかしゅうございます。したがいまして、現在どの社も輸入糖の手当ては商社を通じて行うというふうになっております。精糖メーカーと関係のあるという商社は正確には数えてございませんが、二十社ぐらいあるはずでございます。これらの商社が一方において原料糖を供給すると同時に、先ほど申しましたように、製品の販売面においても全国的な需要に対して販売するということで、精糖業メーカーの代理店ということで販売機能を担っておるわけでございます。これ自身は、ほかの加工業においても原料を外国から仰ぐあるいは製品を全国的に販売するという場合に、商社機能を活用することはよく見られることであります。  ただ、実は精糖業が商社との結びつきを特に問題にされますのは、先ほども申しましたように、海外の砂糖を入れる場合に、海外の砂糖の値段が自由市場の値段でございますので、非常に大きく変動するわけでございます。変動するということと、もう一つは国内において精糖業が過当競争の状態にある。過当競争の状態にあるといいますのは、設備能力の問題もありますし、商品の性格がその会社によってそう大きな差もないというようなこともございまして過当競争が行われてきたわけでございますが、そうなりますと、精糖メーカーとすれば、原料の価格が非常に変動する、国内においても製品の価格が変動するということで、何らかの形で経営の危機に見舞われるというようなことが出てくるわけでございます。そこで、そういう取引上の安全といいますか、不安をヘッジする意味でたとえば商社の金融の助けを借りるというようなことになっているわけです。そこで、商社が金融あるいはそういう原料の提供、製品の販売ということを通じまして精糖業者と、メーカーと結びつきが非常に強くなってくる。近年においては、ことにそういう経営面での問題が出てきますので、資本とか人事とかそういう面でも商社との結びつきが強くなってきておる、こういうふうに理解したわけでございます。
  64. 上坂昇

    上坂委員 いまのお話にもありましたように、商社の精糖業界の支配というんですかね、言ってみれば。それが非常に強化をされていて、商社なしには精糖会社がなかなかやっていけないというような状況もあるようにいまの説明で感じたわけであります。  原料糖の輸入の問題ですが、そうなりますと、輸入数量が多ければ多いほどいわゆる商社の利潤はふえる。ところが、余りいっぱいつくって今度は消費のところで少し需要が減退してくれば、その点で困ってしまう。そうなると、今度はどうしなければならないかということになりますが、その場合にはたくさんつくらせるというような形に向いていくのじゃないかということも考えられるわけでございますね。そして余りもうけの少ないところは、いっぱいつくらして薄利多売という形で利潤を上げていく、こういう形になっていくのじゃないかというふうに思うのですが、そういうふうな考え方でいいのですか。
  65. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 おっしゃるとおりに、商社が支配しているかどうかは別としまして、先ほど申しましたように商品の特性が非常に少ないものでございますから、自由な競争をさしておきますと、企業によってたくさんつくって薄利多売でやろうという企業が出てくることは当然でございまして、そういう動きを過去において示した企業も確かにございます。ただ、ある意味では昔からの主要な食品でございますので、流通等について比較的安定している、古い企業は安定しているところもありまして、そういうところは必ずしも設備を拡充して薄利多売に走るということでなくて、従来からの顧客を大事に安定的に供給していく、そういうビヘービアをとっている企業もございます。これはいま全体で精製糖業界二十二社ぐらいありますが、企業によってそういうビヘービアはかなり違っております。
  66. 上坂昇

    上坂委員 そうしますと、いまの精糖業界はいろいろ問題が出て、企業が倒産に追い込まれるというような状況が出ているわけでありますが、その状況についてはどういうふうに考えるのが一番適正というか的確なのか、その点について御説明いただきたいのです。
  67. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 精糖業界の中で倒産するということでございますが、実は昭和三十八年に砂糖の輸入が自由化されました。それ以降、国民の需要の増大ということもありまして、余り倒産という話も聞かなかったのでございますが、ここ一、二年、一社倒産をいたしました。一社は一度破産宣告をいたしましたが、これを取り下げて、現在会社更生法の手続の開始を申し立てております。これはそれぞれその企業の持っていますいわば体質の弱さというものがあって、全体が先ほど申しましたような過当競争ぎみの業界ではありますが、何とかやってきているわけでございますが、特に体質の弱い会社がどうしても倒産せざるを得ないというふうになっているわけでございます。  たとえて言いますと、いま会社更生法の適用の手続を申請しております会社について言いますと、これは古い工場でございまして、内陸部にある。原料を港から内陸部まで運ばなければいかぬという問題がございます。それから、施設的にも古くからの施設で、いわばかなり稼働の形態が最近の新しい工場に比べますと劣っておるということもございます。それからさらに、その地域的な供給の問題がございまして、その地域においてその工場でつくったものがうまく売れるかどうかという問題がございます。いまの場合は、最近新鋭工場が臨海地帯にできたというようなことで、かなり厳しい競争にさらされたというようなことがございます。そういう各企業の置かれております体質によって、自由のまま放置しておきますと、ある程度淘汰されてしまうということになろうかと思います。
  68. 上坂昇

    上坂委員 いま説明がありました会社は東海精糖だと思うのですが、東海精糖についてひとつお伺いをしたいと思いますが、五十一年の七月の決算で三十六億円の赤字が発表された直後、三井物産などの大手商社から原料糖の供給がとだえたわけですね。そこで今度はメーンバンクの東海銀行が資金援助を打ち切った、そこで五十一年の九月に操業停止せざるを得ない状態に追い込まれた、破産の宣告を行った、こういうことだと思うのです。これは後で結論を申し上げます。ところが、その後豪州糖が約二〇%安く買えるようになっている。それから、先ほども説明がありました糖価安定法に基づく売戻し特例法が成立した。糖価安定事業団が需給調整することになっている。したがって、精糖業界をめぐる環境条件が非常に変化をしている、こういう中で五十二年の十二月二日に破産の申し立てを取り下げて、五十三年の二月二十五日に会社更生法による手続開始の申し立てを津地裁四日市支部に対して行った、こういう経過になっていると思うのですね。  そこで、背景の問題でありますが、一つは、売戻し特例法の成立に伴って各社ごとの輸入割り当てが決められることになったので、原料糖の供給見通しが立てられるようになっている。これが第一点。それから、精糖業界の採算にも先ほどの条件が整備されてきたので、明るい見通しが出てきた。もう一つは、再建の代表者に、東海精糖の社長の親戚で、かって他社の再建を手がけた経験を持つ三和澱粉株式会社の森本さんという人が乗り出す見通しがついた。こういう背景があって、何とかやっていけるんじゃないかということで会社更生法の手続の開始の申し立てをした、こういうふうに思うわけであります。三番目の問題は別にいたしまして、この背景となる一、二の問題について、これは認められるかどうか、御意見をいただきたいのです。
  69. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 お答えします。  先生のおっしゃいましたように、昨年の臨時国会におきまして砂糖売戻し特例法という法律ができました。この法律は、御存じと思いますが、砂糖の最近の需給事情の不均衡というようなことを考えまして、砂糖の需給の調整を臨時的に限時法で行おうということでございます。そのやり方は、従来から糖価安定事業団が輸入糖について売買という形で課徴金を取るという価格の調整をしておったわけでございますが、これに加えまして、数量的に一定の数量以上のものは事業団に売ってきて、これは輸入は制限していませんので、輸入するために売ってくるのは買うわけでございますが、買っても国内に出回りをさせないという形で、事業団が一時預かるという仕組みになったわけでございます。  したがいまして、問題になりますのは、どの精糖業者にどのぐらいの数量まで従来どおりのフリーパスといいますか瞬間タッチの売買で国内に入れさせる、それ以上はだめというか、そういう数字をどういうふうに決めるかという問題でございます。これは私どもの方で法律施行する上で必要なものでございますから、ことしの二月一日までに各社についての数字を決めるということでやりまして、これを過去の実績等を考えて各社ごとに割り振ったわけでございます。これは三カ月ほど数字を割り振っております。  いま先生のおっしゃいました原料糖の供給の見通しがつくというお話は、そこである程度の数字が与えられれば原料糖が入る、こういうことかと思いますが、これは実は事業団が砂糖を持っておってそれを渡すわけじゃございませんで、従来からと同じように、商社等を通じまして入ってくる砂糖を、わが国に入ったところで数量的にどこまで流通を認めるか、こういうことでございますから、実質的には、東海精糖の場合で言いますと、たとえば商社等を通じて原料が入ってくるということが確実でなければ、この制度には乗ってこれないわけでございます。  それからもう一つの、業界がある程度価格の回復等で明るい見通しがあるというお話でございますが、これにつきましては、私どもの方でも、従来の過当競争というようなことを防止しようという意味で、いま言ったように数量の調整を行うことにしたわけでございますので、その意味では国内の需要に見合っただけの輸入にしぼるということをやっておりまして、その効果といたしまして、最近においては先ほど申しましたおおむね百九十五円がらみの価格が実現されている。したがって、個々の企業の採算は別でございますが、平均的に見ますとほぼ全体のコスト価格に近いものが実現されておる、こう思っておるわけでございます。
  70. 上坂昇

    上坂委員 精糖業界に明るい見通しといいますか、ある程度安定した考え方があるということについては是認できるというお話であります。  ところで、東海精糖の赤字の問題について、五十三年の三月六日に労働組合の方が上申書を提出しているわけでありますが、その中で、精糖業界の当時の実情から見て、他社との比較では決して経営的に劣っていない、むしろいい方だ、大手企業よりも経営内容としてはいいのではないか、こういう指摘があるわけです。それから、三十六億円の赤字の問題についても倒産の理由になっているわけでありますが、三菱商事の粗糖売買代金の内払い金九億一千万円を損金としているので、実はこれは資産として計上されるべきものであって、これを損金に入れた結果、三十六億円の赤字の大きな部分を占めた。それからもう一つは、たな卸し資産の評価を、五十年七月の決算から原価法から低価法に変更して、ここで十九億円の売上原価の過大評価を行っている。本来は十五億円くらいの利益があるはずなのに三億円の赤字になってしまっている。それから、この低価法を五十一年七月の決算期でも引き続き踏襲している。そうしてそこで二億円の評価損を計上している。こういうものが積み重なって三十六億円の赤字を出している。考えると、こうした多額の欠損金の発生というのは会社の意図的な経理操作、言うてみれば計画倒産の疑いもあるのではないか、こういうふうに見られるわけでありますが、こういう点については農林省はどのような見解をとっておられるのか、お伺いしたいと思うのです。  なお、この件については、法政大学の角瀬教授が分析して、東海精糖は再建の可能性があるということを指摘しているのですが、再建の可能性のある会社を再建させないということは、景気回復あるいは雇用安定ということを政府の基本的な方針としている今日、これは非常に問題になる点ではないか、挙げてこうした企業の再建を図って、経営の安定を図るというところに行政のあり方を進めていくべきではないか、私はこう考えるわけでありますが、その点についてどうお考えになっているか、御説明をいただきたいと思います。
  71. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 お答えいたします。  最初に、先生のおっしゃいました東海精糖株式会社の欠損の内容のいろいろな判断でございますが、実は私ども、これについては必ずしも詳細に承知しているわけではございません。ただ、先ほど先生の方からもお話ありましたように、東海精糖は本年の二月二十五日に会社更生法による更生手続開始の申し立てを裁判所にいたしております。したがいまして、そういう債権債務の中身等の問題につきましても裁判所において今後調査が進められ、そして同社の再建の是非あるいは再建される場合の具体的な方策、こういうものは裁判所において判断がなされるというふうに私どもは思っておるわけでございます。  ただ、先ほど先生がお話しになりました中で、同社が再建する見込みがある、こういうお話でございます。これは私ども一概に否定するわけではございませんが、同社がいま負っておりますいろいろな債務、それからたとえば豪州糖の引き取りの問題等々は、同社の従来の経緯等から見まして、やはり業界あるいは一般債権者、金融機関、こういうものが協力して再建するという方向にならないと、なかなか解決のむずかしい問題じゃなかろうか、こういうふうに思っているわけでございます。したがいまして、そういう諸問題を関係者との間で解決をして、原料の手当てあるいは製品の販売ルートの確保、そういう経営の実態面においていろいろな条件が整備されることが必要であろうというふうに考えております。先ほど申しましたように、私どもとして再建の機会が全くないとかあるとかいう予断を現在持っているわけではございません。当面、裁判所においてそれらの問題は会社更生法に従いまして手続を進めていく段階で明らかになっていくものだ、こういうふうに思っております。
  72. 上坂昇

    上坂委員 三月十一日の津地裁四日市支部の審尋で三井物産の砂糖部長が言っていることは、主力銀行に不信感を持っている、それから、開始の決定があっても、主力銀行は一〇〇%の担保を持っているのだけれども私の方には担保がないから更生には協力できない、こういう発言をしているわけでありますね。これはまさに銀行と商社間の争いだと思うのです。こういう争いがある以上は、協力協力と言ってもできないわけです。これを協力させるということになれば、砂糖の安定供給なりあるいは業界の振興なり、いまの不景気の脱出というような点から行政サイドでこれを指導していく、お互いの不信感を取り払って協力体制をつくらせてやるということが必要ではないかと私は思うのです。これをほうっておいたのではいつまでたってもできないので、あなたが言うように協力を待っているだけでは行政の責任は果たせないのじゃないか、私はこんなふうに思うわけです。こういう状況を一体どう判断するのか、いま言ったような政府の責任をどういうふうに考えているのか、この点について御説明をいただきたい。  それから、時間がありませんからもう一点お伺いしておきます。  社会労働委員会や農林水産委員会あるいは参議院の農水委員会等でもいろいろ問題が起きていますが、三井物産が意見書として出した中で、原糖の割り当てを東海に対してはできない、こういうことが中心になっていると思うのです。東海精糖に対して割り当てができないのだ、シェアを与えることができないのだということについて、農林省も三井物産が言っていることを裏づける発言をしているのだ、私はここに質問の焦点があったような気がするのです。いま申し上げましたように、更生があってもこういうことでは協力ができない、三井物産はこう言っているわけでありますから、これを力づけるような発言を政府筋がやっていくということになれば、東海精糖の更生についてはますます不利になってしまうわけですね。この辺のところをどういうふうにお考えになっているのか、またどうしなければならないのか、これは政府の責任という形でお答えをいただきたいと思うのです。
  73. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 最初の、民間ベースでの協力に任せておいてはいつまでたっても話が進まぬじゃないかという御指摘でございますが、確かに関係者の協力を得ることが非常に困難な状況であるということは私どもも認識しておるわけでございますが、各企業それぞれかなりの額の債権を持っている、商社と銀行が見解が違うというような場合に、役所がこれに入ってまとめるということは非常にむずかしいわけでございます。行政指導というものは確かにありますが、具体的に企業の採算なり債権をどうするという話になりますと、民間会社のそれぞれの判断というものを無視して役所が介入するわけにいかないと私も思っているわけでございます。したがいまして、関係者にこの間の問題についていろいろ話し合うようにということは役所としてはできるかと思いますが、内容に立ち入ってどの債権をどうするというような問題は、先ほど申しましたように裁判所の問題でございますし、私どもとしてはそれ以上のことはなかなかむずかしかろう、こういうふうに考えておるわけでございます。  もう一つお尋ねがありました三井物産が裁判所に申し立てた内容の中で役所がこれに何か加担するような発言をしているような御指摘がございましたが、私ども、三井物産の意見を必ずしも支持するというようなことを申した覚えはございません。  ただ、三井物産の意見の中で一つ明確にしておきたかったのは、豪州糖の引き取りの問題が特例法の目的との関係で、御承知のように、特例法の目的に「国際的協定の円滑な履行に資する」というのがございます。そこで、東海精糖は豪州との約束の砂糖を引き取っておらぬからこれに売り戻し数量を与えるのはおかしい、こういうことを三井物産は言っております。しかし、私どもは、この豪州糖の引き取りの問題は、豪州糖を引き取る三十二社のいわば輸入カルテルの中の問題である、したがって役所が法律の解釈としてそれを問われれば、これはむしろカルテルの中で話し合いがつけばどういう形でつくかということは問わない、こういうことを申し上げておるわけでございまして、三井物産の主張をそのまま是認しているわけではございません。
  74. 上坂昇

    上坂委員 時間が来ましたからこれで終わりますが、精糖業界も、東海精糖側の経営サイドが引き取りを一時延期しているけれども、操業再開後は未引き取り分を含めて全量引き取る旨を明確に意思表示している、したがって、東海精糖が操業再開の暁には当然延期部分を含めて全量の引き取りを行うものと予想して、まだ東海精糖の再配分自体は全く行っていない、こう言っているわけです。したがって、私は、東海精糖の割り当て分が別にあるのじゃないかと思うのです。まだ再配分してないのだから。それからもう一つは、三井物産が裁判所に提出した意見書の中でもそのことが言われているわけなんです。  それにもかかわらずその分の割り当てができないということになれば、再建に非常に支障を来すのじゃないかと思うのです。原糖の割り当てをするということがなければ工場の再開はできないわけですから、業界自体がそうした配慮をして、しかも三井物産でも、それは当然だ、未引き取り分を配分することは当然で、いまだに再配分はしておりませんよということを言っている。そういうことがある以上は、農林省としてはこれは割り当てを与える方向で前向きに検討すべきではないか、こういうふうに思うのです。  その点について一言お伺いして、質問を終わります。
  75. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 先生のおっしゃいました再配分の問題というのは、豪州糖の引き取りの再配分の問題と思うのですが、これはおっしゃるとおりいまだ再配分がなされていませんので、東海精糖が引き取る分というのは、先ほど言いました輸入カルテルの中であるわけでございます。それから、後の方でおっしゃいました割り当てをすべきだという問題は、私どもの方の特例法の運用の問題でございます。特例法の方は、御承知のように、先ほども言いましたように、三カ月ごとに、その期間に国民に確実に砂糖が供給されるという前提に立ちまして数量を割り振っているわけでございます。したがいまして、私どもとしては、東海精糖が関係者とのいろいろな了解あるいは裁判所の決定等を経まして実際に稼働できる、たとえば七月から九月の間に数量を割り当てる場合に稼働できるという状態になれば、当然そういう方向で判断しなくてはいかぬと思っておるわけでございます。ただ、いつ動き出すかわからないものを、たとえば四月−六月の場合はそうでございましたが、数量を割り当てるということはとてもできない、こういうことでございます。
  76. 上坂昇

    上坂委員 なお質問したいことがありますが、後日に譲りまして、きょうは終わります。
  77. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  78. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。後藤茂君。
  79. 後藤茂

    ○後藤委員 きょうは商品取引の問題にしぼりまして御質問を申し上げたいと思います。  商品取引の問題につきましては、過去この委員会におきましてもしばしば質疑が行われておりまして、私がこれから申し上げることは、これまでに論議をされたことをもう一度復習をするということにもなるかと思います。ただ、私がこれを取り上げる気持ちになりましたのは、実は四月の十九日であったと思うのですが、議員会館の私のところに、取引員から、毛糸の相場をお始めになりませんか、現在幾ら幾らで、これから値上がりをすると予想されるので、ぜひ説明伺いたい、こういう電話がかかってまいりました。  また、これまでいろいろな資料を見てまいりますと、特に商品取引に、つまり相場に手を出しまして大衆投資家が大変大きな損害をこうむっているということが新聞等でもときどき出てまいります。特に最近では、五十二年の九月ごろでしたでしょうか、千葉県市原市の永田熊次郎さんという方が相場に手を出して四百数十万円の損害をこうむって自殺をしたとか、ことしに入りましても、三月の一日に川崎駅で、国鉄職員の宇野昇さんの妻の浪子さんと長女の裕美子ちゃんの二人が、夫が相場で失敗した百五十万円を苦にして自殺を図って、そして奥さんの方は三カ月の重傷、長女の裕美子ちゃん四歳は死亡している、こういう記事が出ているわけです。さらにごく最近、四月の十日でございますけれども、埼玉県の入間郡の毛呂町で、安藤重光さん六十四歳と妻のシマさん同じく六十四歳の二人が、商品取引の相場に手を出して二百五十万円の借金をつくった、その遺書を残して自殺をしているわけです。これらは新聞等にもその都度報道をされてまいっております。私は、この記事を見ましても、相当行き過ぎた大衆投資家に対する勧誘が行われているのではないだろうか、こういうように思えてならないわけです。  商品取引に関しては、紛議を処理していくという機構ができているようでございますけれども、最近の商品取引に係る紛議、大変ふえているように聞いております。一体これをどのようにごらんになっておられるか、通産、農林、それぞれからまず最初にお答えをいただきたいと思います。
  80. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 紛議につきまして通産省の所管の取引所に申し出のございました件数は、昭和四十九年度、五十年度と大分減ってきておったのでございますが、遺憾ながら、昭和五十一年度、五十二年度と大分ふえてきております。件数を申し上げますと、昭和四十九年度が十四件、五十年度が十三件、五十一年度が三十九件、五十二年度が五十九件。これは私ども所管の各商品取引所に調停の申請のあったものの数でございますが、こういった増加の傾向があらわれております。  この原因につきましてはいろいろ考えられるわけでございますが、一つは、最近の景気の低迷下で一部の専業商品取引員が新規の委託者獲得のためにかなり過当勧誘を行っていたというようなこと、あるいはまた、一方で委託者の方の権利意識が高まってきてこういった訴えがふえてきておる、それで件数が多くなっているように思われます。  私どもといたしましては、問題の多い商品取引員に対してこれまで立入検査等を行うとか、あるいはまた法令違反がある者に対しましては、受託業務の停止、戒告、始末書徴取、そういった内容の処分を行ってきておるところでございます。紛議につきましては今後とも調査を機動的に行い、違反があれば厳正な処分を行ってまいりたいと考えておるところでございます。
  81. 堤恒雄

    ○堤説明員 お答えいたします。  農林省関係も、ただいま通産省の方からお答えがあったと同じような紛議の発生の足取りをたどっておりまして、五十年度まで漸減してきておりまして、五十年度には三十四件というところまで減ったわけでございますが、五十一年度五十四件、それから五十二年度の四月−十二月までで四十五件、そういうふうな経緯になっております。  発生の原因につきましては、山口審議官からお答えがあったのと基本的には同じでございますが、私の方は、砂糖の取引が一時休止中だったわけでございますが、五十一年度から再開したこともございまして、その辺がプラスされた事情になっているかというふうに考えております。基本的な対策については、ただいま通産の方からお答えあった方向と同じでございます。
  82. 後藤茂

    ○後藤委員 私は、きょう質問をしたいのは、この紛議が現実にあらわれてくる、あるいは主務官庁に持ち込んでくるこの数の背後に、大変多くの大衆投資家が泣いているのではないだろうかということを考えておりますだけに、ちょっと二、三発生した紛議の処理の状況と関連をいたしまして、この商品取引所法等から照らしてみますと、本来はそういうことをした者は厳しい制裁が加えられなければならない、こういうたてまえになっていると思うのですが、それがどうも迅速に処理をされてない二、三の点をひとつ御質問をしてみたいと思うのです。  先ほど堤商業課長御答弁をいただきましたが、私の手元に、足立の会田さんという方に七月三十日付の商業課長の名前ですけれども、七月十六日に東京穀物商品取引所に紛議の申し出があったので措置をするように言っておいた、こういう手紙が会田さんに届いております。この人は、現金二百万円と、それから株券十銘柄一万四千株、昨年七月ごろですから当時七百万ぐらいの株価ではないか、こういうように言っているのですけれども、これが紛議の中身でございますが、穀物商品取引所に措置をさせておいて、その後どういうようになっているか御存じでございましょうか、どういうように始末されているか。この方は、それぞれの株の銘柄と幾ら幾らの株数等もつけて、私の手元に証券目録のコピーもあるわけですけれども、この実態は、課長の名前でこの方にこういうように処置をしたということを言っているわけですけれども、どういうようになっているか御存じでございましょうか。ちょっとその点お聞かせをいただきたいと思うのです。
  83. 堤恒雄

    ○堤説明員 私どもといたしましては、個別の紛議案件につきましては、従前から問題が起こった取引の所轄に係る商品取引所にこれを処理させるというやり方でやってまいっておりまして、したがいまして、私どもの方に紛議の申し立てがあった場合、その内容を付しまして関係の取引所に指示するというやり方をとっておるわけでございます。  ただいまの会田さんの件については、必ずしも私その結果について十全に承知しておりませんが、当然のことながら、関係の東京穀物商品取引所の方でしかるべき調停をしているものというふうに考えておる次第でございます。
  84. 後藤茂

    ○後藤委員 そうすると、申し出の処理だけは回した、あとは取引所がしかるべく処理をしているだろうというところで主務官庁としては一応終わるわけでございましょうか。その後、穀物取引所に、あの件はどういうふうになっているかというようなことを立ち入りするなり、あるいは状況を聞くなりというようなことは全くされていないんでしょうか。また、これは一つの例でございますけれども、一般的に主務官庁にこういう紛議の申請が持ち込まれたときに、もちろんこれは取引所へ行くわけですが、それはそこへ送っておいたから、そこでしかるべく処理をしてくれるであろうということでとどまるんでしょうか、いかがでしょうか。
  85. 堤恒雄

    ○堤説明員 紛議の調停につきましては、その取引時の状況、それからそのときに関連する相場の動き、こういうふうなものは商品取引所が一番よく承知しているということから、やはり個別案件については、先ほど申し上げたようなやり方でもって取引所にその処置を指示しているというやり方をとっているわけでございます。個別具体的なその結果については、通常の場合、年度末にまとめてその報告を受けておりますが、ただいま先生からお話があった点についてはつぶさにはまだ承知しておらない、こういう事情でございます。
  86. 後藤茂

    ○後藤委員 通産省にお伺いしますが、こういうふうな紛議が通産省の方へ持ち込まれた場合にはどうでしょうか。それぞれの取引所に、こういう大衆投資家からクレームが届いている、ひとつ取引所で紛議調整をするようにという書類一件を回して、それであとどういうようになっているのか。それぞれのアフターサービスといいますか、こういうことは行われないままにずっと来ているんでしょうか。簡単で結構でございますから、御答弁をいただきたいと思います。
  87. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 当省の場合は、苦情が持ち込まれました場合には、両当事者から事情を聴取いたしまして、関係の取引所に対しそれの具体的な対策についての検討を指示いたしまして、その方法について再度当省の方に報告をさせまして、そしてその上で処理をするようにという指導をしておるところでございます。
  88. 後藤茂

    ○後藤委員 これまで商工委員会等で論議をされている記録等を見てまいりましても、私は商品取引法律なり制度というものは一応整ってきているんではないかと思うんです。ところが、特に大衆投資家がこの相場に手を出させられるようになってから大変な紛議件数が起こってまいっておりますし、それから実情をいろいろ聞いてみますと、肩書きが災いをしたりあるいは親きょうだい親戚等になりが悪い、かっこうが悪いということであったり、いろんなことを考慮し、どうも紛議のところまで持ってきているというのは大変少ない。紛議に持ってきたというのはよほどよくよくのところだろうと思うのですが、その処理の実態を見てみますと、いま農林省の方から御説明がございましたが、その程度だと、大体は大衆投資家が負けている、泣き寝入りさせられているようですね。そしてそれでも納得ができない場合には裁判で争ったらどうですか、こういうことを言われて、さてその裁判で争うというようなことになってまいりますと、これは単に長年月がかかるということだけじゃなしに、その費用と労力というものは大変でございますから、ついそこで二の足を踏んで泣き寝入りになってしまっている、こういうのが実態であろうと私は思うのです。  この私の指摘に、いやそうじゃない、そんなものは、納得できないものは裁判ざたにして、十分その原告、つまり裁判に持っていった人々の大衆投資家は保護されてきている、もしこういうような方向であるとすれば、私の見当違いでございますから、これは通産、農林両省から、ひとつそれぞれの取引所で十分に大衆投資家の意見を聞いて、そして実情を調べて、後で御質問をしたいと思うのですけれども、私が例を見てみますと、ほとんどが外務員の法律違反の勧誘から、あるいはその取引から起こってきているというように素人判断でも判断できるだけに、私は、どうも主務官庁としては、サービス行政、消費者保護、大衆投資家保護という観点が欠けているのではないか、こういうように考えます。  先ほど申しましたように、それじゃ裁判の方向に持っていくというような例、さらに裁判に持っていかれた場合にどういうような判決といいますか、内容になっているかという例がございましたらお伺いしたい。そうではなしに、ほとんどが示談で終わらせられてしまっていて、消費者、大衆投資家というものは泣いているという実態なのか。私は、そのことだからいかぬとかいいということじゃなしに、ぜひ実態を知っておきたいので、重ねてお伺いをしておきたいと思います。
  89. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、当省に持ち込まれました苦情につきまして、取引所に連絡をとりまして解決を図らせておるというやり方をできるだけとっておるわけでございます。たとえば商品取引被害者の会等から申し出のございました紛議件数、最近の状況で見てみますと、三十件のうち解決されました件数が十二件、うち全額返還されたのが三件、未処理案件につきましてさらに速やかに処理を行うように督促をしていくというやり方をやっております。法的には、先ほどお話に出ておりましたように、裁判にかけるという手段があるわけでございますけれども、私どもとしましては、消費者の方々から見ましても、できるだけ取引所で十分話し合いをしてもらって紛議の解決を図っていくという方がいいという場合が多いのではないか、現実に裁判に持ち込まれているというケースはほとんどないのではないかと思っております。できるだけ取引所においてあっせん、調停機能を活用いたしまして解決を図らしていきたいというように考えておるところでございます。
  90. 堤恒雄

    ○堤説明員 先ほどから申し上げておりますように、取引所が公正な立場で調停に当たることが最も適当だというように考えて指導してまいっているわけですが、手元にある数字によりますと、五十一年度の数字につきまして申し上げますと、紛議として申し立てのあった五十四件のうち、取引所の調停によって和解が成立した、こういうものが四十四件、それから、申し立てが無理があったということで調停委員会において却下されたものが五件というふうなことになっておりまして、さらに裁判等に移行のために取り下げとなったというのが五件、こういう内容になっておるわけでございます。  この五件がすべて裁判に移行したかどうかつまびらかではありませんが、先ほど通産省の山口審議官からお答え申し上げたようなことで、私どもといたしましても、やはりこの調停は、申し入れの内容に即して、それから取引内容に即して判断さるべきであるということから、商品取引所において調停に当たることが望ましいということで指導している、こういうことでございます。
  91. 後藤茂

    ○後藤委員 ほとんど和解という方向に持っていかされてしまう。しかもいま農林省の方では、五件ばかりが申し立てたのを紛議を申し込んできた者の方に不利というか、そういうことがあるということですが、この実情をいろいろ調べてみますと、まず大衆投資家の一〇〇%といったら極端ですけれども、ほとんどの人々が、後でこれから一つ一つお尋ねしてみたいと思うのですけれども、十分な商品知識を持たない、しかも相場に大きな額をかけていくというほどの資力もない、こういう人々がほとんど利用されているわけですから、商品取引の中でも、特に大衆投資家をここに参加させる手段方法に大変無理があるのではないだろうか、こういうように私は実は思えてならないわけです。  たとえばこれはどういうように判断をされましょうか。ここにコピーがあります。「覚」と書いて、甲、乙の名前はここでは一応省略しますが、  一、甲は、乙に一金七拾萬圓也を昭和五十二年四月六日、商品取引運用する為に三ケ月間借し渡す  一、商品取引において得た利益金は、甲が八割、乙が二割とす  一、損金を生じた場合は、借り受けた日より三ケ月後に乙は甲にすみやかに半額を返済する   事   右記事項を甲、乙共に確約す   昭和五十二年四月六日            甲 の 名 前            乙 の 名 前 さらに立会人として商品取引所員の署名があるわけです。  これは一体九十四条の「不当な勧誘等の禁止」の項目に抵触をするでしょうかしないか。これは通産省で結構でございます。
  92. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 取引所指示事項によりまして、委託者に融資のあっせんを約束して勧誘を行う、あるいは売買取引を継続させるということは禁止いたしておりますので、そういった勧誘の仕方は不当であると考えられるところでございます。
  93. 後藤茂

    ○後藤委員 当然そうだと思いますが、もう一つ例を出してみたいと思います。  これも全部名前がわかっているのですけれども、きょうは名前は省略しておきます。「前略此の度は私供の方に関心をもたれたことは、菊池様にとって幸福なことではないかと思います。」というような書き出しの手紙です。そしてその中で、輸入大豆、毛糸等の銘柄のことに触れまして、「このような銘柄を買って下されば、半年以内で貴方様は投資金額の五割内外の利益を得る事が出来るでしょう。」まだいろいろ書いてありまして、「このような時期に穀物の銘柄に投資すれば菊池様は短期間で五割内外の御利益を得る事が出来ます。」として、数字を書いて、「百万円投資して」「五十万円と言う純利益が菊池様のお手元に届きます。」こういう便りがその会社の用せんで、ちゃんとその取引員の企業の名前も印刷をされた手紙で送られているわけです。  これは一体「不当な勧誘等の禁止」に抵触するでしょうか、しないでしょうか。これは穀物関係ですから、ひとつ農林省の方から……。
  94. 堤恒雄

    ○堤説明員 ただいま後藤先生のお読みになった内容から推定いたしますと、その内容は、九十四条の一項の一号の「利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供して」というふうな疑いがあるのではないかというふうに思います。
  95. 後藤茂

    ○後藤委員 もう一つ、ここに念書があるわけです。「昭和五拾弐年六月弐拾七日の前場弐節で大阪小豆の拾壱月限を五拾枚、成り行きで売落ちしてくれとの注文を渕本憲雄氏より私は受けていたが、相場が上に行くだろうと思い、私は渕本憲雄氏には無断で、その注文を出さなかった。」これは農林省にも相談に行っている問題です。「右相違ありません」と署名捺印しているんですが、農林省の方にお伺いしたい。  つまり大衆投資家がもうこれはやめてくれということを言っているわけですね。それを聞かないでやったということの念書を書いているわけです。こういうものはやはり九十四条の違反になっていくのではないかと思いますが、これは御存じのことだと思いますし、農林省の方から御答弁をいただきたいと思います。
  96. 堤恒雄

    ○堤説明員 ただいまのお話の内容につきましては、私どもが外務行為の不当事項ということで団体を通じて指導しております仕切り指示違反ということに該当するのではないかというふうに思っております。
  97. 後藤茂

    ○後藤委員 いま三つばかりの例を挙げました。これに類する例はたくさんあるわけです。それぞれ九十四条の違反だというように言われたわけですから、もしこれが相談に持ち込まれてきた場合、こういう取引員というものは、四年に一回の許可の更新の際を待たずに、何らかの制裁ができるものでしょうか。それとも注意ぐらいで、それはいかぬぞという程度のことで終わるものでしょうか。これは両省からひとつお伺いをしたいと思います。
  98. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 現在の法律による許可の更新に際しましては、取引員の活動につきまして法令等の違反がある場合にはこれについて配慮をするということになっております。また、違反があります場合には営業の一時停止あるいは戒告あるいは注意書提出、始末書提出等の各段の処分行為があるわけでございまして、その違反事項に対応しまして適正な処分をしていくということになると考えます。
  99. 後藤茂

    ○後藤委員 審議官、たてまえは、制度は私も承知をしているのです。そういうことをやった事例があるかどうか。農林省の方にも、もしありましたら……。私がいま読み上げたのは一、二の例でございまして、たくさんこういうことが具体的に、単なる状況証拠程度じゃなしに挙がっている。もうこういうようなものを残してないものはいっぱいあると思うのですね。それに対して一つでも、いま審議官がお答えになったような処理をして取引所での行為を以後一切禁止してしまった、こういうようなのがあるでございましょうか、お伺いをしたい。
  100. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 昭和五十一年度の法改正後に処分をいたしました事例といたしましては、始末書の徴取、戒告、さらに受託業務停止というような処分をしたことがございますが、許可の取り消しをいたしました案件はただいまのところございません。
  101. 堤恒雄

    ○堤説明員 基本的な対応は先ほど山口審議官からお答えあったとおりでございますが、私どもといたしましては、問題の多いそういう取引員に対して、そういう事実に即して立入検査を行いまして問題点が立証された場合は、営業停止の処分をするということで臨んでおります。五十二年度五十四件ほど立入検査いたしましたけれども、そのうち営業停止以上の処分を実施したものが五社ございます。
  102. 後藤茂

    ○後藤委員 その営業停止をしたのは、その後また許可をされて営業行為はやっているわけでしょうか。営業停止期間は何日ぐらいか、お答えをいただきます。
  103. 堤恒雄

    ○堤説明員 先ほど山口審議官からお答えがありましたように、営業の取り消しではございませんで、営業停止処分ということでございます。したがいまして、その内容に応じまして、五十二年度実施したものは二日以上五日、こういう内容になっているわけでございます。
  104. 後藤茂

    ○後藤委員 いま両省の方から御答弁をいただいたわけですけれども、私は、次官、これは基本的なお考えをちょっとお聞きをしておきたいのですが、昭和二十五年に商品取引所法ができ上がり、商品取引所が復活をしてまいりました。この商品取引というのは、国際的にも世界的にも長い歴史を持っているわけですね。私は、信用取引なり公正な価格形成という役割りを歴史的には果たしてきたと思うのです。ところが、この商品取引というものを、まず私はこの質問をするのに、十分やったこともないものですからいろいろと勉強してみました。大変難解です。まして相場に手を出してもうけてやろう——もうける場所があれはだれだって蝟集してくるわけですから、そうどこにでも転がっているわけじゃない。よほど知恵をしぼり、勉強し、鋭い感覚を持って相場は手を出していかなければならぬだろうと思うのです。  かつての歴史を見てみましても、大体ヘッジング等の必要から、あるいは公正な価格形成の必要から、商品取引というものは歴史的には当業者が進めてきた。そしてそれを制度化していくということは私は必要だと思うのです。法律はできている。しかし、法律なり制度なりができ、れっきとした通産省なり農林省という官庁がある。ところが、これはずっといろいろ見てみますと、私は、完全にと言っていいと思いますが、プロの相場師じゃなくて大衆投資家がまず一〇〇%泣かなければならないような制度になってきていると思うのです。そしていま御質問を申し上げますと、いや、立入検査をいたします。営業停止をいたしました。そのことも大切だと思いますけれども、その程度では済まないような問題を、後からまた入っていきたいと思いますけれども、持っているのではないか。  主務官庁として、大衆投資家が泣いているという実態を見た場合、これに対して重い腰を上げてもっと対策を講じていかなければならないという姿勢に立つべきではないか。きのうきょう初めて出てきた問題ではないわけです。商品取引の問題につきまして、当業者がヘッジングのために、あるいは公正な価格形成のためにこれを利用していくということを越えた大衆投資家が犠牲になっているという実態に対して、次官、どういうようにお考えでしょうか。簡単で結構でございますから、抽象的な言葉じゃなしに、姿勢の問題を聞きたいのです。
  105. 野中英二

    ○野中政府委員 御存じのとおり、商品取引所は、公正な価格の形成であるとか、平準化の問題であるとか、保険のつなぎの問題であるとか、それなりの役目、機能を果たしてきたと考えておるのです。しかしながら、問題は大衆投資家、しかも商品知識のない大衆投資家を勧誘していくというところに大きな問題があるのじゃないだろうか。価格形成という立場からいけば、大衆投資家というものは必要なのでありますけれども、いま言ったように、大衆投資家の質という問題がいろいろ問題を起こしているのではないだろうか。してみれば、われわれとしては、今後、商品取引につきましては取引所並びに商品取引員の素質の向上を図り、また厳正な法の運営を考えていかなければならぬのじゃないかと思います。
  106. 後藤茂

    ○後藤委員 次官、その程度では、心構えだけ言われても、いまの大衆投資家が食い物になり犠牲になっていることの救済にはならないだろう。現実には、たとえばここに昨年十二月五日の毎日新聞があるわけです。「知恵遅れ青年まで食いもの 解約依頼に「財産差し押える」商品取引“過熱セールス”」という記事があるわけです。これは商品取引員の名前は伏せられておりますし、またその人の名前も伏せられておりますけれども、母子家庭だとかなけなしの退職金を大切にして老後の生活を夫婦で何とか平和に暮らしていきたい、こういうような人とか、いま毎日新聞にも出ておりましたが、知恵おくれの青年、そして私が冒頭申し上げましたように、私のところに電話がかかってきたのはなぜかと言いますと、昔の中学の在京同窓会名簿を出しているわけです。私の先輩河本さん、通産大臣ですから河本大臣のところにも行ってはいないか、後で大臣にも聞こうかと思うのですけれども、あらゆるところで、私のところにもかかってきている、私のところにもかかってきている。電話をかけただけで九十四条違反にはならないと思いますけれども、大変な過剰勧誘が行われてきているわけです。これは一、二の悪徳だけの問題だろうか。この商品取引に内在している問題はないだろうかということについて、私は大変疑問を持つわけです。  山口審議官、この大衆投資家をなぜ入れていかなければならないか、その入れる必要性はどこにあるか、お伺いしたい。
  107. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 商品取引所の目的は、基本的には当業者主義と申しますか、先ほど次官からお話ございましたように、公正な価格形成あるいは価格の平準化を図る、また保険つなぎの機能を果たすというような趣旨でございますので、当業者が中心になるということでございます。ただ、当該商品の流通、生産、消費等の関係者の参加のほかに、健全な投機資金の参加というものを必ずしも拒むところではないのではないか、ある程度はそういった参加も得て価格の公正な形成が行われていいのではないかという考え方に立っておるわけでございます。  ただ、先ほども次宮からお話がございましたように、知識経験のないいわゆる大衆が投機的な参加をしていくということになりますと非常に問題が多い。また資力、信用の問題についても、そういったものを持たない大衆投資家の参加は非常に弊害が多い、問題が多い、こういうところは確かに先生御指摘のとおりでございまして、この大衆参加の比率が余り高いというのは確かに好ましくないというように考えるわけでございます。ただいま私どもの担当いたしております商品取引所の中でもいわゆる大衆玉の比率がかなり高いものもございますので、そういったものにつきましてはできるだけその比率を下げるような指導をしていく必要があろうと考えておるところでございます。
  108. 後藤茂

    ○後藤委員 先ほど公正な価格形成のためには大衆の資金も必要であるという意味の答弁があったと思うのですけれども、どうも根拠が薄弱だろうと思う。最初昭和二十年代から三十年の初めは、当業者でほとんどやっていたと思うのですね。プロの相場師がそれに参加をしておったと思うのですが、大衆投資家が多数参加することによって公正な価格形成ができるということはどうもフィクションじゃないか、つまり虚構の上に成り立っているのじゃないかという気がしてならないのですよ。つまり、先ほど申しましたように、商品取引というものは非常に厳しい相場の世界なんですね。十円刻みになっているようですけれども、一銭一厘に目の色を変えて相場の動きを見ていきながら、その差金を争っていく市場なんですね。確かにフリーマーケットになっておりますけれども、そこに入っていこうとするにはよほどの売り買いに対する知識がなければならないし、そしてその知識の総和によって公正な価格形成ができるし、そのことによってヘッジングは可能だろう、先物の価格にいたしましても形成されてくるだろうと私は思うのです。  ところが、ここに問題がありますのは、たてまえはそうなっています。しかし、一人一人の大衆投資家は全く知らない。これは農林省の資料を見ましても、ほとんどの人が十分な知識を持たないということをアンケートに答えている。あるいはほとんどの人々が取引員に任せていると答えているわけです。そういたしますと、集めた大衆投資家の資金というものに対して、その大衆投資家の意思は全く市場に反映されてないと私は思うのですね。そこへ反映されているものは何か。当業者でしょう。取引員です。そして何億もうかるとか何億損したとかということに人生の生きがいを感じておるプロの人々、この人々の意思は貫かれていると私は思うのです。さらに、ここでは仕手戦の問題にまで触れようとは思いませんけれども、そういう意思は貫かれていくでしょう。しかし、仮に私が、たとえば毛糸の相場をやってみませんか、ちょっと手元に四、五十万の遊び金がある、それじゃおまえに任すわ、これでひとつやってみてくれ、こういうのは公正な価格形成になりますか。審議官、いかがでしょうか。
  109. 野中英二

    ○野中政府委員 私もお説のとおりだと思います。御存じのとおり、いま先生が幾つか挙げられました例にかんがみますと、それは大衆投資家ではなくて、むしろ資金運営を取引員に委託したという形で、私は投資でないと考えております。そういう点を考慮いたしまして、通産省といたしましても、未成年者であるとか、あるいは恩給、年金、退職金、保険金等により主として生計を維持する者、あるいは病気療養者、公金取扱者、家庭の主婦、こういう者の大衆委託を受けないように、質的選別をするように、こういうことを取引所に対して指導しておるわけでございます。
  110. 後藤茂

    ○後藤委員 その指導は結構です。私は、ここでは本質的な問題をちょっと聞いておきたいと思って申し上げているわけです。そういう悪徳取引員に対しては、あるいはまたそういう母子家庭だとか未成年者だとか家庭の主婦だとかお年寄りの方々とかという者に対しては、この九十四条の禁止事項で足りなければもっと制度を充実すればいいと私は思うのです。しかし、問題は、本来当業者間で出発してきたことが何で大衆を引き込んでいかなければなりませんか。  しかも、私はこの実態を見てみまして、次官、百人が百人とも損をしていますよ。というのは、いろいろな落とし穴があります。一つは、ちゃんと法律によってでき上がってきている。保証されている。さらに通商産業省、農林省というれっきとした官庁で、そしてそれぞれの担当をされている方々がきちっと目を光らせている。どこかの薄暗い裏長屋で取引がされているのではない。その都市の中心地で取引が行われてきている。ここに、一つは素人の大衆投資家は信頼を置きます。  さらに、この「商品取引委託のしおり」、これは初めて相場に手を出される方々には、取引員がこれを見せて十分に説明をされるんだろうと思う。ここにも呼び値の単位と売買単位ということが書いてあります。書いてあるから、投資をする者は当然知っておるだろうと言われるのですけれども、ここにも実は問題があろうと思うのですね。つまり呼び値の単位というものが小さくて、売買単位が非常に大きいのですよ。だから、勧誘員が余り勧めるもんだから、それじゃ、損するかもわからぬけれども、もうけさせてもらえるんだなと思って、それに仮に三、四十万出す。普通の商行為の場合には、大体自分が出した金は、失敗したら元も子もなくなるという言葉はあります。しかし、その自分の出した金よりもさらに多い金を払っていかなきゃならないというのは、大衆、素人の頭の中にはない観念だろう、こう思うんですね。  仮に四十万円ぐらい渡します。そういたしますと、それの十倍ぐらいの取引が実はできるわけです。しかもほとんどが、これを見てみますと、勧誘員が、これはもうかっておりますとか損しておりますとかと言う。いや、もうやめたと言ってやめようとすると、ここでやめたら男がすたる、いままでの証拠金がむだになる、追い証でひとつやりなさい、こういうようにやられる。気がついたときには大変な損害をこうむる。大体二、三カ月、長くて半年ぐらいで新規投資家というものはすべて商品取引市場から消えているわけです。こういう実態になっているわけですね。  しかも、ほかの物でしたら、物を買ってきて、まあ安物買いして損したけれども、近所の人に上げましょうとか、うちへ持って帰って押し入れに入れるということはありますけれども、ゴムにいたしましても、あるいは小豆にいたしましても、毛糸にいたしましても、上場商品ほとんどすべて、そんな物はうちへ持って帰れないというようなこと、これはもちろん信用取引ですから当然ですけれども、こういうことをすべて知らない。そういう人々が勧誘員に勧誘をされてなけなしの金をはたかされている。これはいま御答弁がございましたような、単なる規制を強めるだとか、あるいは新規投資者の取扱売買枚数を制限するとかいうことでは済まない問題があるように私は思うわけです。  そこで、審議官に重ねてお伺いをいたしますけれども、大衆投資家というのはなぜ必要なのか。産構審の答申等を見ましても、本来当業者の取引に返るべきだというようなことも言っているわけですね。その大衆投資家が参加できるようにしておりますから、どんなに規制なりあるいは条件を厳しくしたとしても私はなくならないだろうと思うのです。この大衆投資家が必要だという積極的な理由を、ひとつわかるように御説明をいただきたいと思います。
  111. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいま先生からるる御指摘のございましたように、現在の商品取引所の取引単位等から見て、大衆参加の面から見まして取引単位が大き過ぎるんじゃないかという点につきましては、現物の取引の単位等から見まして、いま使っております最低単位が大きいということには必ずしもならないかと思いますが、ただ、それに対応する証拠金の率の問題につきましては、現行の証拠金率がかなり低いというようなことで、大衆参加が安易に行われる余地があり得るというような点の御指摘もあったかと思います。  いずれにいたしましても、大衆の参加がなぜ必要かという点の御指摘でございますが、積極的に大衆参加がなければいけないということは確かに言えないと存じます。ただ、取引所の機能が十分果たし得る程度に大衆が参加するというときに、これをあくまで拒むというところまで必要があるかどうかという点を考えますと、ある程度の参加というものも認めていっていいのではないか。問題は、そういった大衆参加の場合に、知識経験のない、あるいは資力等に乏しい、そういう者ができるだけ参加が排除されるように、それについての質の向上を目指すような対応策というものを講じながら、最低限の参加を図っていくということではないかと考えるところでございます。
  112. 後藤茂

    ○後藤委員 この問題、また時間があればもう一度畳みかけてみたいと思うのですが、その前に、ちょっと時間がございませんので一つお聞きしておきたいのですが、五十年に法改正がございました。上場商品政令指定になったわけですね。これは商品取引所の環境を考えてみた場合に、当然新たな上場商品というものが想定をされてこの法改正があったんだと私は思うのです。今日、五十年の法改正後に、新しい上場商品というものは何が行われたか、あるいはもし行われていないとすれば一体どこに原因があるんだろうか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  113. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 五十年度の改正後、新規に上場された商品は当省関係ではございません。なぜかという点でございますが、その後の状況におきまして、商品についての価格形成について、特に取引所の必要性と申しますか、そういった商品が具体的に出てこなかったということでございます。
  114. 後藤茂

    ○後藤委員 具体的に出てこなかったのではなくて、いま商品取引所の今日のあり方に対する不信感が非常に強いのではないだろうか、私はそういうように実は思うのです。その理由といたしましては、先ほどのこの無差別爆撃をされているような、こういう取引に対する今日の業界では、どうも自浄作用というものは百年河清を待つという感じがいたします。これがもし普通の業界でしたら、こんなひどい、大衆投資家を相場に手を出させるのは、業界内部でもう少し規制があるだろうと思うのですね。自浄作用、それがないということも大変大きな問題ですけれども、自浄作用がとれないようなつまり商品取引にかかわる機構なり制度になっているのではないか、ここにメスを入れていかなければならないわけです。  先ほど言いましたように、これだけいろんな紛議の問題が起こってきているのに、有効な手段を全然とっていないじゃないですか。通産省、農林省、主務官庁、私はいろんな手紙を見ました。大変なものです。そしてほとんどがもうかるというような言葉巧みに勧誘されてやられてきている。そしてそこでクレームをつけ始めてくると、今度は申し合わせたように、取引員、つまり勧誘に来た人がかわっているのです。その会社の中でかわっているだけじゃないのですよ。今度は別の企業が来まして、いや、あそこの会社はちょっとあくどいんだ、うちに任してくれればというような形で、もうそのころには精根尽きていますね。大衆投資家は泣き寝入りしてきている。  ひとつこの業界の自浄努力というものをどのように進めていくかということと、それから大衆投資家を泣かしている、しかもこの法律違反というものは歴然としている。証拠があるかということを言われたら、ほとんどが口頭での相対でやりとりしていますから、皆見ましても、ほとんど立証すべき証拠がないようです。しかし、行われていることは、私よりも皆さん方の方が御存じだと思うのです。しかも、お聞きをいたしますと、業界二百何社ある中の約一割、二十社前後がそういうことだ、こう言われている。その二十社前後、一割に対して、手が加えられない業界も私はけしからぬと思いますけれども、しかし、ここではやはり主務官庁として、これに対して有効な手をぜひ打っていただきたい。  こういう不況の時代ですから、しかも預貯金の利子が下がってくる。少し自分の持っておる余裕金といいますか、あるいは何かのものに使いたいという金が、少しでも利子を生んでくれれば、利益を上げてくれれば、やはり飛び込んでいきたいというような環境にいまありますだけに、この対策というものはぜひ強化をしていただきたいし、それから、今日のようにいろんな価格支持制度がありますし、あるいは倉庫にいたしましても、流通にいたしましても、管理、運営にいたしましても、それぞれのコンピューターも導入されておりましょうし、装置が行われてきているわけです。商品取引というものは、そこにどうしても必要であるという意義が今日だんだん失われてきていると私は思いますね。  農林省にお伺いいたします。小豆関連の加工業者、ユーザーほとんどすべて、お菓子屋さん、あんこ屋さん、こういう人々が、商品取引の上場商品にしてくれるなという陳情を出しているわけです。しかも商品取引には、均質性だとか貯蔵性だとかあるいは価格の乱高下だとかありますけれども、その中でも大量流通というものが私は一つの条件だろうと思う。小豆なり大手亡豆というものは大量流通商品になってないのではないか。しかもその関係者が、仕手戦を演じられますし、こういうもののおもちゃにされて、私たちがその価格で買わされていくということは、もうかなわぬということを言っているわけです。農林省、小豆なり大手亡豆等は、一体どうでしょうか、本当に商品取引所に上場することによって公正な価格が形成され、そしてヘッジング機能が確保されるのだというように確信を持ってお答えできるでしょうか。これはもう一言、簡単で結構でございます。
  115. 堤恒雄

    ○堤説明員 先ほど先生からお話があった、業界の自浄作用の問題等につきましても、先般業界に指示いたしまして、やはり商品取引所は自治の原則に基づいて、その信頼性をみずから回復するということが必要であろうということで指導してまいっておりまして、業界もようやく目覚めてそういうふうな方向に進んでいるというふうに私ども思っております。あと、その足らざる点については、やはり先ほどから申し上げておりますように、検査による処分、こういうことを通じましてえりを正さしていくということが大事だろうというふうに考えている次第でございます。  それから、小豆につきましては、先生いま御指摘の点がございましたけれども、私どもといたしましては、小豆の流通実態、これが御案内のように、生産、消費、非常に零細、分散的でありまして、流通過程も複雑多岐にわたっているということから、価格の形成上商品取引の果たしている役割りはなお根強く残っているのではないかというふうに考えておりまして、現実にたとえば生産サイド、北海道の生産団体さらには輸入業者、こういうもののヘッジングもかなり大きくございますし、それから現物流通の面でも、商品取引所を通じて受け渡しをされている量は、たとえば五十一年度で見ましても供給量の約四割程度は取引所を通じて受け渡しをされている。こういう実態から、現在でも上場商品としての適格性は持つんではないかというふうに考えているわけでございます。
  116. 後藤茂

    ○後藤委員 いま農林省の方は、小豆についてはなお適格性を持っているというように言われておりますけれども、全体的に上場されておる商品というのは、ほとんど一次産品、素原材料、そして日本経済の大きな升の中におけるそのウエートが非常に小さくなってきている。この中で、もう一回もとに返りますけれども、当業者は、先ほど堤課長も答弁の中で触れておりましたが、ヘッジングの機能を果たさせる立場から利用する必要があるだろうと思いますけれども、しかし、一般に大衆投資家というのは、これは次官にちょっとまたお答えをいただきたいのですが、大衆投資家というのは日常生活しているのです。商品取引員だとか当業者だとかあるいはプロの相場師は、この値動きを敏感にとらえていきながら、それにかけていくわけです。損しちゃいけませんから。ところが、大衆投資家はどこかの会社へ行っている、あるいはどこかで働いている。勧誘員から連絡があったその情報だけで行われてきているんですよ。  もしこれに対する大衆投資家保護の有効な手だてがないとすれば、先ほど次官は、それは投資じゃなくて預託しているんだと。預託しているんなら、そういうところに預託させないで、もう少し資金運用の安全が確保されているところに預託させてやるのが政府指導だろうと私は思うのです。こういう大衆投資家を引き込んでいくような制度はこの際抜本的に考え直していかなければならぬというようにお考えじゃございませんか。私は、取引員がいいのがいるとか悪いのがいるとかいうことじゃなしに、もっと真剣に、これだけ痛い目に遭い、泣いている大衆投資家が、全国におびただしい数でいま上がってきている。ただ皆さん方のところまで浮かび上がってきていないというだけだと思うのです。それに対する有効な手だてがもしなければ、大衆投資家の参加というものは、相場に手を出す方法というものは制度的にやめさせるべきである。どうしてもやるという人は別だということになりますと、当然そこには証拠金の額だとかあるいはいろいろな規制措置というものを講じていかなければならない。なまはんかなことでは私はできないと思いますが、次官、いかがでしょうか。
  117. 野中英二

    ○野中政府委員 お答え申し上げます。  御存じのとおり、商品取引の問題は、いま御指摘のような諸問題がありますので、プロの投資家と大衆投資家のこの割合がどんな割合が一体バランスがとれるのであろうか、あるいはまた、もし大衆投資家の投資の割合が仮に出たとするならば、この大衆投資家をどう擁護していくかというこの問題を前向きに検討していきたいというふうに考えております。
  118. 後藤茂

    ○後藤委員 時間が参りましたので、最後に御指摘をしておきたいし、それからこの問題につきましては、また私は当委員会で大臣にも御出席をいただきまして、少し商品取引のあり方についての本質的な問題についてもお伺いをしたいということを申し上げまして、一つだけ最後に言っておきたいのです。     〔中島(源)委員長代理退席委員長着席〕  つまりこの商品取引というのは、当業者の利益経済活動の指針にしていくとかあるいはヘッジングの機能を果たさせるとか、こういうことが商品取引の本来の役割りだと思うのです。それに、いま私は虚構だと申し上げましたが、大衆投資家が参加することによってより公正な価格形成もできるし、ヘッジングにいたしましても、当業者のこれからの経営指針にも役立っていくというように言われているわけですが、ここで大衆投資家というものを外したら、それじゃすべてだめになるのかというと、私はそうじゃないと思う。つまり当業者の利益のために大衆投資家が犠牲になっていないだろうか。この点はぜひひとつ、取引所がある、おびただしい取引員がいる、だから少しずつびほう策を講じてやっていくということよりも、もっと考えていかなければならない。  しかも昭和二十五年にこの法律制定されたころから約十年間ぐらいというものは、ほとんど当業者で行われてきている。大衆投資家が巻き込まれることによって商品取引自体の存在を問題にされるようなことになっていることは、せっかくの商品取引として資本主義経済、自由市場の中で必要な装置というもののその墓穴をみずから掘ることになりはしないか。せっかくのいい機構がそういうことになりはしないか。さらに言えば、どんなにいい機構であったといたしましても、いい制度であったといたしましても、害悪の方がより大きく出てくるとすれば、私はその制度というものはやはり欠陥があると思うのです。大変な害悪が出ているのです。その害悪をなくしていくということがもしできないとすれば、しかもその害悪をどんどんより大きくさせるような行動が、商品取引所というものを一つの背景として現在行われているとすれば、悪徳取引員というものを規制をし、この許可更新の時期を待たないでこれを取り消していくということはもちろん大切ですけれども、さらに大衆投資家を守っていく、そのために行政府としてはこういう手だてをしっかりと持ってやっていくんだ、そして商品取引というものが公正に、そしてうまく運用できるような条件をつくってやるんだ、こういう立場からひとつこの問題は考えていただきたい。  時間がございませんので、答弁は結構でございます。次回にまた質問の時間をいただきまして御質問をしたい点を幾つか残しましたので、そのことを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  119. 野呂恭一

    ○野呂委員長 長田武士君。
  120. 長田武士

    長田委員 本日は、電力料金の円高差益還元対策についてお伺いしたいわけでありますが、その前にタンカー備蓄についてお尋ねをしたいと思います。  四月二十二日の日本経済新聞の報道では、   関係筋が二十一日明らかにしたところによる  と、政府は原油タンカー備蓄の泊地を小笠原諸  島と南西諸島の間の公海上とすることを内定、  六月早々にも実施に踏み切る。タンカー備蓄は  黒字減らし対策の有力な柱になっているもの  の、国内の泊地選定に手間取って実施のメドが  立たないことから、公海上でタンカー船団を遊  よくさせる方式を採用することで、見切り発車  することになった。公海上の石油備蓄は世界で  も例がなく、安全環境面などで国際的な波紋を  呼びそうだ。このように新聞で報道されておるわけであります。  通産省はこの計画について御承知だと思いますが、この真偽についてお尋ねをいたします。
  121. 大永勇作

    ○大永政府委員 タンカー備蓄につきましては、先般予算措置がとられまして現在準備を進めているところでございますが、準備の方法といたしましては、通産省のほか運輸省、水産庁を加えまして、タンカー備蓄合同委員会というのを昨年の十一月に設置いたしております。さらに、その中心的な問題になります場所の選定につきましては、財団法人日本タンカー石油備蓄協会、これは去る二月に設立をいたしておりますが、ここに委託をいたしまして検討しておるところでございます。  それで、この場所の問題につきましては、錨泊方式、湾等の中にいかりをおろしましてとめる錨泊方式を中心として検討いたしてもらっておるわけでございますが、それとあわせまして、いま先生御指摘の遊よく方式につきましても研究はいたしておりますけれども、具体的に新聞に上がっておりますような地点に内定したというようなものではございませんで、なお錨泊方式とあわせまして研究中の段階であるという段階でございます。
  122. 長田武士

    長田委員 新聞報道によりますと、具体的に小笠原諸島と南西諸島の間である、二十隻から二十五隻、公海上で五百万キロリットルだ、このようなニュースが流れておるのですね。検討中ならばこういう場所なんというのは流れないのじゃないですか。これは通産省から出ているのじゃないですか。
  123. 大永勇作

    ○大永政府委員 通産省といたしましては、先ほど申し上げましたように研究中の段階でございますので、具体的な地点につきまして言及しているという事実はございません。  ただ、遊よく方式を行います場合には、台風の通る道でないこととかあるいは黒潮のルートではないこととかあるいは航路が錯綜していないことというような条件が前提として当然必要でございまして、そういうところから検討すると、そっちの方向がいいのではないかというような海運の専門家の意見あたりを参考にして書かれたものではないかと思いますけれども、これは想像でございまして、いずれにいたしましても、通産省といたしまして具体的な地点名に言及しているというふうな事実はございません。
  124. 長田武士

    長田委員 それでは、さらにお尋ねをしますけれども、現在検討されております状況をひとつ御報告してくださいませんか、中間報告を。
  125. 大永勇作

    ○大永政府委員 錨泊方式でありますと、いかりをおろしまして一定の場所に係留する方式につきましては、全国で数カ所につきましてその可能性の調査を進めておる次第でございますが、遊よく方式につきましては、具体的に地元との折衝というふうなむずかしい問題はないわけでございますので、これは具体的にどこの場所ということにつきましての検討は現在いたしておらないわけでございます。ただ、遊よく方式にした場合にどういう安全上の問題があるであろうかといった点につきましては、海難防止協会等に対しまして研究をしていただいておる、こういう状況でございます。
  126. 長田武士

    長田委員 これは私が質問いたしましたのは二十一日でありまして、新聞は二十二日なんですね。そのとき長官、初めその答弁は、橘湾をいま検討しております。あと数カ所あるけれども、それについては候補地は言えない、こういう答弁だったのです。翌日新聞に出るのですよ。そういう点では、私は、国内における泊地候補いろいろ検討しておる中で、何か牽制球のように思えてならぬのです。この点どうなんですか。
  127. 大永勇作

    ○大永政府委員 橘湾そのほか数カ所につきまして、いわゆる錨泊方式、係留方式につきましての検討あるいは地元の内々の意向打診等々は、先ほど申し上げましたタンカー備蓄協会を通じまして行っておる次第でございますが、これに対しまして牽制球として当省がそういう遊よく方式について言及したというふうな事実は、先ほどもお答え申し上げましたように、ない次第でございます。
  128. 長田武士

    長田委員 そうなりますと、それでは橘湾と公海上の両者をタンカー備蓄の泊地候補地としていくのだという結論でしょうか。
  129. 大永勇作

    ○大永政府委員 錨泊方式につきましても、橘湾が一つの候補であることは事実でありますが、そこにしぼったわけではございませんし、先ほど申し上げましたように、遊よく方式につきましても、その可能性、有効性等につきまして研究中の段階でございますので、そこにしぼったとかどうとかいうふうな状態ではございません。
  130. 長田武士

    長田委員 どうもはっきりしない答弁ですね。公海上は考えておるのでしょう、検討しておるでしょう。どっちにもとれるような非常に中途半端な答弁ですね。関連法案審議中でございまして、この審議過程でも明らかにされなかったことが、簡単にこうやって新聞で報道されてしまう、そういう点で私は非常に疑問を持つのですよ。当委員会でみんな真剣になって検討しておる、審議しておる、そういう段階においてぱっと出てくる。私ははなはだ疑問を持っておるのです。  そこで、タンカー備蓄の泊地の候補地について、通産省はどのような考え方を持っておるのか。さらに、具体的な候補地としてどこを考えておるのか。私はあしたの委員会まで資料を提出していただきたいと思うのです。委員長、資料の提出、取り計らってください。
  131. 大永勇作

    ○大永政府委員 地点の選定につきましては、先生も御承知だと思うわけでございますが、これは地元との関係が非常に微妙な問題がございますので、具体的にどことどこの地点についてどういう形で調査を進めておるという点の公表につきましては、地元との関係もございますので、これは御容赦をいただきたい、こういうふうに考える次第でございます。
  132. 長田武士

    長田委員 私が申し上げておるのは、公団法の改正審議中じゃないですか。備蓄の問題を検討しようということでいま審議しているのですよ。こんなことは全然考えてない、翌日の新聞にぱあっと出る、こういうことでいいのですか。それだったら、皆さん方が答弁ありました数カ所ある資料を私が要求するのは当然じゃありませんか。委員長、その点、諮ってください。
  133. 野呂恭一

    ○野呂委員長 長田委員に申し上げます。  あすの理事会で検討いたしまして、資料提出ができるものなら御要望にこたえたいと思います。
  134. 長田武士

    長田委員 次に、四月二十一日に、国際収支対策、円高に伴う物価対策を決定されたわけであります。消費者産業界が最も関心と期待を寄せておる電力、ガス料金については、五十四年度までの据え置き指導にとどめておるわけであります。電力料金の場合、政府決定の資料によりますと、為替差益を値下げによって消費者に還元すれば、平均使用料で一カ月四十円程度安くなることになっております。仮にこの四十円程度の値下げであったといたしましても、これを実施すれば、公益事業の社会的責任を果たすという意味からいたしましても、心理的効果ははかり知れないものがあるのじゃないか、こう私は思うのです。また、福祉世帯や中小零細企業などに対して重点的な為替差益の還元を図るといった対策が当然考えられてもいいのではないかと私は考えるわけであります。そこでもってこうした対策をとれば、将来燃料が値上がりした場合、電力料金の引き上げに対する消費者の抵抗というのはやわらげることができる、そういうことも私は考えておるわけであります。  そこで、電力料金の値下げなどにはどうして為替差益を還元できないのか、政府が決定いたしました電気料金対策の背景の理由について、ひとつ詳しく御説明をいただきたいと思っております。
  135. 大永勇作

    ○大永政府委員 先生ただいま御指摘になりましたように、円高によりますところの差益、これは発生しておるわけでございますが、今後におきますコストの動向を考えてまいりますと、一つは設備投資の増加に伴います資本費の上昇が考えられますほかに、また人件費、修繕費等の諸経費の増加もありますので、全体としてのコストは今後増高すると見込まれる次第でございます。また、原油価格につきましても、今後の動向につきましては、ドルの減価等を反映いたしまして予断を許さないものがございまするし、また為替レートにつきましても、現状のまま二百二十円ベースで推移するかどうか、最近の動き等からも必ずしもはっきりわからないわけでございます。こういう状況を考えますと、現時点で電気、ガス料金の引き下げを図りますことは、かえって今後の料金の安定性を損なう結果となりますので、むしろ現行料金をできる限り長期間据え置くということが為替差益の還元を図る上で望ましいと考えた次第でございます。  そういう観点からいたしまして、通産省といたしましては、ことしの一月に九電力会社及びガス大手三社に対しまして、五十三年三月以降におきましても少なくも一年間現行料金を据え置くことを指導したわけでございますが、最近におきましてさらに円高傾向が進展してまいりましたので、先般の二十一日の経済閣僚会議におきます決定になったわけでございまして、その決定内容は、先生も御高承のように、現在の円高傾向が継続し、原油の値上げ等経済事情の変化がない限り、北海道電力を除きます八電力会社及び大手のガス三社につきましては、五十三年度及び五十四年度の二年間は現行料金を据え置くということにいたした次第でございます。為替差益の生じていない北海道電力につきましては、五十三年度中は現行料金を据え置くものといたしますが、五十四年度につきましては情勢の推移を見ながら改めて検討することといたしたい、こういう考え方でございます。
  136. 長田武士

    長田委員 この資料を見てまいりますと、二十一日の経済対策閣僚会議、一番目に「輸入等の促進」、その二番目には「緊急輸入のための長期外貨貸付制度の概要」とか、そうなっておりまして、六ページですね、ここに「円高に伴う物価対策」というのがありますね。これには、外国製たばこについてはこれは引き下げよう、それから国際航空運賃についても同じように引き下げていこう、国際電信電話料金についても引き下げていこうじゃないか、こういうように2、3、4と、こうなっておるのですね。一番目のいま申し上げました電力及びガス大手三社の料金については、いま御答弁がありましたとおり、五十四年度までは現行料金は据え置くように指導する、いわゆる公共料金だけは下げません、ガスあるいは電気料金だけは据え置きましょう、こういう決定のようですね。このような説明では一般消費者というのは納得できないわけであります。そこで私は、具体的にさらに突っ込んで質問をしてまいりたいと思うわけであります。  円高基調の中で九電力会社が一昨年、五十一年ですね、その電力料金の値上げ以降五十二年度末までにどのぐらいの円高差益を得ておるのか、会社別に数字を示していただきたいと思います。私の手元にある資料ですと、五十二年度しかないのですよ。公表されているのは五十二年度しかないのです。五十一年度が隠されてしまっている。
  137. 大永勇作

    ○大永政府委員 五十一年度及び五十二年度のいわゆる為替差益につきまして計算した数字につきまして、御説明申し上げたいと存じます。  五十一年度につきましては、九電力全体で百三十九億円というふうに試算をいたしております。五十二年度につきましては九百二十五億円というふうに試算をいたしておるわけでございます。  そのうちの主な会社について申し上げますと、東京電力につきましては五十一年度は五十億円、それから五十二年度は三百九十億円、中部電力につきましては五十一年度が二十五億円、五十二年度が百六十億円、関西電力につきましては五十一年度が四十億円、五十二年度が二百三十億円、大きなところにつきましてはそういうふうに計算をいたしておる次第でございます。
  138. 長田武士

    長田委員 いま御説明ありましたのは、九電力で百三十九億円ですね。そうなりますと、五十二年度の差益が九百二十五億円、合計いたしますと一千六十四億円ということになりますね。間違いありませんね。
  139. 大永勇作

    ○大永政府委員 これは試算でございますが、試算の限りにおきましてはもう間違いないわけでございます。
  140. 長田武士

    長田委員 五十三年度の政府見通しは、どのぐらいの差益が出る予定ですか。
  141. 大永勇作

    ○大永政府委員 五十三年度の円高差益につきましては、現在の段階でははっきりした見通しは立てにくいわけでございますが、仮に為替レートが年度を通じまして二百二十円ということで安定的に推移する、かつ、OPECによる原油の値上げも行われないという前提で計算いたしますと、九電力全体で二千二百億円ということになるわけでございます。ただ、五十三年度につきましては、原価計算期間が五十二年度で終了いたしておりますし、諸経費の今後の増加分につきましては、この円高差益の二千二百億円から差し引いて判断する必要があろうかと思う次第でございます。
  142. 長田武士

    長田委員 そうなりますと、五十一年が百三十九億円、五十二年が九百二十五億円、五十三年度の政府見通しとして二千二百億円、合計いたしますと三千二百六十四億円の円高差益が見込まれるわけであります。  そこで、お尋ねしますが、これはどんな試算の結果なのか、この算定基礎について詳しく御説明していただきたいと思います。
  143. 大永勇作

    ○大永政府委員 五十一年度及び五十二年度につきましては、外貨建ての燃料の購入実績及び実績見込みと五十一年度、五十二年度の為替レートの実勢を用いて計算いたしておるわけでございます。  五十一年度の燃料を御参考までに申し上げますと、購入数量といたしましては、原油が二千二百万キロリッター、LNGが三百九十万トン、その他が二百四十万キロリッターでございます。単価といたしましては、貿易月報に記載されたCIFの平均単価をとりまして、原油がキロリッター当たり八十四ドル、LNGがトン当たり九十八ドル、それからその他NGLがキロリッター当たり八十五ドル、輸入重油が七十七ドル、為替レートにつきましては、五十一年度の実績レートが二百九十三円、査定レートが、これは種類がいろいろありますが、三百円、二百九十九円、二百九十八円と、会社によりまして、認可の時期によりまして異りますが、この二百九十八円から三百円までの査定レートと五十一年度の実績であります二百九十三円という為替レートとの差、これを先ほどの数量掛けるドルに掛けまして、先ほど申し上げましたような百三十九億円という数字をはじいておるわけでございます。  五十二年度につきましては、燃料の購入数量、これはまだ実績がはっきりしておりませんが、実績見込みといたしまして原油が二千二百六十万キロリッター、LNGが五百六十万トン、その他が四百四十万キロリッターということで、内訳といたしましてはNGLが三百十万キロリッター、輸入重油が百三十万キロリッターでございます。単価は原油が九十ドル、LNGがトン当たり百八ドル、NGLが九十五ドル、輸入重油が八十一ドルということで計算をいたしまして、五十二年度の実績レートといたしましては二百五十八円ということで計算をいたしておるわけでございます。  五十三年度の見込みでございますが、燃料の数量につきましては、五十三年度におきます購入計画値を用いまして原油が二千二百万キロリッター、LNGが八百七十万トン、その他五百五十万キロリッター、うちNGLが四百四十万キロリッター、輸入重油が百十万キロリッターといたしまして、価格は原油が九十ドル、LNGが百八ドル、NGLが九十五ドル、輸入重油が八十一ドルといたしまして、為替レートにつきましては、先ほども御説明申し上げましたが、二百二十円ということで推移すると仮定いたしまして計算をいたした次第でございます。
  144. 長田武士

    長田委員 この政府の「五十二年度推定実績に基づく円高差益試算(電力)」、これについて先ほどちょっと触れましたが、五十一年度の下期の差益が百三十九億円ですね。これについては何で資料を公開しないのですか。いままで円高差益がずいぶん論議されてきたわけですけれども、五十一年度下期は円高差益が全然公表されていない。その理由はどういう理由ですか。
  145. 大永勇作

    ○大永政府委員 特に他意があったわけではございませんが、五十一年度につきましては、料金の査定時の為替レート平均が二百九十九円に対しまして実績が二百九十三円でございますので、その間六円の差があるわけでございますが、相対的にその差が小さいということで計算をしなかったわけでございまして、特に発表が困るからというふうなことで計算してなかったわけではございません。
  146. 長田武士

    長田委員 次長、金額が少ないどころじゃないじゃないですか。百三十九億円ですよ。私は、円高差益についてどうしても理解できないのは、企業が努力して利益を生んだ、果実を生んだという問題でないんですよ。為替差益というのはたなぼた利益なんです。こういう問題は消費者に公開をし、公共料金でありますから、為替差益は国民の前に明らかにして、少しでも還元しようということが政府として当然な姿勢じゃありませんか。何となく百三十九億円は少ないから、隠したつもりはないけれども——冗談じゃありません。百三十九億円ですよ。そういうことをやっているから私たちは信用できないのですよ。そういう意味で何か意図があったのじゃないですか。何で隠したのですか。
  147. 大永勇作

    ○大永政府委員 先ほども申し上げましたように、隠したわけではございませんで、二百九十九円と二百九十三円ということで、その差が六円であるということと、それから、先生先ほど五十一年度の下期というふうに御指摘になりましたが、百三十数億円、これは掛け算をして出てきた答え自身は決して小さい数字だとわれわれも思いませんが、これは四月からの五十一年度いっぱいの計算値でございますので、その点はお断わり申し上げたいと思います。いずれにいたしましても、六円といえども数量に掛けて出てきます答えは比較的大きなものになるわけでございますが、為替の差が六円ということで、余り大きくないということであえて計算してなかったというだけのことでございまして、決してわれわれといたしましては、その計算の結果につきまして隠すというふうな意図はなかったことだけは、御了解いただきたいと思う次第でございます。
  148. 長田武士

    長田委員 そうなりますと、もうすでに決算が終わっているわけでありますから、社内で留保されておるわけですね。その点どうですか。
  149. 大永勇作

    ○大永政府委員 ちょっとお断わりいたしておきたいと思うわけでございますが、この為替差益といいますのはいわゆる計算値でございまして、電力会社に限らずほかの事業でも全部そうでありますが、いわゆる会計経理上為替差益と言っておりますときには、契約時とそれから支払い時との間の為替の差、これを為替差益として貸借対照表、損益計算書、いわゆる財務諸表に載せるわけでございまして、料金査定時の為替の値とそれから実際に支払ったときの為替の値との差は、財務諸表に載ってくる数字ではございませんで、われわれが燃料の購入量それから単価、それに料金査定時とそれから実勢の為替とを比べた場合のその差というものから計算すればこうなるということでございまして、先生御指摘のいわゆる財務諸表に載ってまいります為替差益というのは、これは契約時と支払い時の差の問題でございますので、先ほど来御説明申し上げました数字に比べますと、うんと小さい数字が財務諸表には載っておるはずでございます。
  150. 長田武士

    長田委員 為替差益というのは、契約時と支払い時が差があるということでしょう。当然支払い額が減るわけでありますから、それだけの利益が上がるということじゃありませんか。そうじゃないのですか。為替差益というのはどこかにすっ飛んじゃうのですか。おかしいじゃありませんか。
  151. 大永勇作

    ○大永政府委員 いや、すっ飛ぶわけではございませんで、契約時と支払い時との差、たとえばその間に一カ月あるいは三カ月くらいございますと、その三カ月の間に為替が動きますと、その額が為替差益あるいは差損という形で財務諸表上出てまいるわけでございます。  ただ、先ほど御説明申し上げましたいわゆる五十一年度の料金査定時とその後の実際の為替の差がどうなったかという点につきましては、これは期間が一年とか二年とか相当長いものですから、為替レートの差もかなり大きくなるわけでございますが、契約時と支払い時ということになりますと、これはその期間のズレというのが通常二カ月とか三カ月とかという程度でございますので、その差は比較的に小さい。しかし、これは財務諸表上には営業外の損益という形で明確に表示されるものでございます。
  152. 長田武士

    長田委員 そういう説明ならば理解できます。益できちっと載っかるということですね。そうでしょう。損金で載っかるのじゃないのでしょう。利益として載っかるという意味なんです。  そうなりますと、九百二十五億円プラス百三十九億円、合計一千六十四億円、これは五十三年度の見通しの二千二百億円を除いておるわけでありますから、純然たる為替差益としてきちっと留保されている金額だと私は思うのです。そうなりますと、一千六十四億円を為替差益として消費者に還元することは可能だと私は思いますが、どうでしょうか。
  153. 大永勇作

    ○大永政府委員 経理上から申し上げますと、為替差益と申しますのは独立した形ではございませんで、全体の経常収支、営業経常収支に営業外の損益を加えまして、それから税金その他を差っ引きましたものが後期の繰り越しとして次の期に繰り越されるということになるわけでございまして、電力の場合でもほかの事業の場合でもそうでございますが、現実にその次の期以降におきましていわゆる損益の平準化等に役立ちます原資というのは、この後期繰り越しの額がそれに当たるわけでございます。
  154. 長田武士

    長田委員 私はそんなことを聞いているのじゃないのですよ。当然会社は経常収支として出てくるのはあたりまえなんです。企業は全部そうなんですよ。したがって、私は為替差益というものは、先ほどもくどく言っておりますけれども、企業の努力あるいは合理化等によって得た利益ではない。そういう意味からして、私は日本経済のもたらした円高、この恩恵というのは消費者に当然還元されなくちゃいけないという主張を言っているのです。経常収支として処理いたしました、利益は上がっておりますけれども、あなたはそういうものは還元すべきではないという論理なのですか。おかしいじゃないですか。為替差益というものは国民、消費者に還元するのが筋だと私は言っているのです。筋じゃないのですか、筋じゃあるのですか、はっきりしてくださいよ。
  155. 大永勇作

    ○大永政府委員 電力会社、ガス会社もそうでございますが、公益事業といたしまして国が監督しておるわけでございまするが、その電力会社、ガス会社が得ました利益といいますのは、いわばこれは国民の財産といいますか、国民の得た利益でございますから、当然消費者に還元すべきものであると思います。問題は、その還元の仕方をどういう形でやることが最も適切であるかという問題になるわけでございまして、利益はもう電力会社、ガス会社が私するものではなくて、当然国家社会に還元するべきものである、こういうふうに考えております。
  156. 長田武士

    長田委員 じゃ、次長、円高差益は国民に還元すべきが筋だという論理ですね。そういう理論ですね。間違いありませんね。——それでは、試算した場合この一千六十四億円に当たる円高差益によって得たところの利益、私は試算をするのが当然だろうと思います。そこでお尋ねしたいのでありますけれども、この場合どのような試算結果になるか、各社別に数字をひとつ示していただけませんか。一千六十四億円の差益、各社別の試算結果をひとつお教え願いたいと思います。
  157. 大永勇作

    ○大永政府委員 お答え申し上げます。  五十一年度及び五十二年度の為替差益でございますが、これを合計いたしますと、先ほど御説明申し上げましたように千六十四億でございます。これを仮に一キロワットアワー当たりそれぞれの会社で幾らになるかということではじいてまいりますと、北海道電力の場合には、これはほとんどゼロでございます。それから東北が一キロワットアワー当たり十八銭、これは平均使用量家庭への影響ということであれいたしますと、月当たり二十八円ということになります。それから東京電力の場合が一キロワットアワー当たり三十八銭でございまして、平均使用量、これは百七十四キロワットアワーでございますが、にいたしますと影響が六十六円、それから中部電力が一キロワットアワー当たり三十一銭でございまして、平均使用量家庭については月当たり五十二円、北陸電力は一キロワットアワー当たりが二十一銭でございまして、平均使用量家庭に対しましては三十七円、関西電力は一キロワットアワー当たり三十五銭でございまして、平均使用家庭に対しては七十円、中国電力は一キロワットアワー当たり五銭でございまして、平均使用量家庭に対しては九円、四国電力は一キロワットアワー当たり八銭でございまして、平均使用量家庭に対しては十三円、九州電力は一キロワットアワー当たり十二銭でございまして、平均使用量家庭への影響は十九円、全国九電力平均いたしますと一キロワットアワー当たりの差益は二十七銭でございまして、平均使用量家庭への影響は四十七円、こういうことでございます。
  158. 長田武士

    長田委員 電力料金については、国民、消費者がいま一番望んでおりますのは、円高差益によって料金が下がらないかどうか、そういうことを非常に期待をいたしておるわけであります。これに対して政府はその意が十分反映された資料を公表していないわけなんですね。そこで私は、政府としても今回このような五十二年度の円高差益試算を行ったと思うわけであります。しかしながら、それがすべての円高差益を含んで試算を行っていないというのが現状なんですね。そこで私は、国民、消費者の要望にこたえ、もっと五十一年度の下期についてもあるいは五十二年度についてもあわせて公表し、そして円高差益というものを国民にこのようになっておりますということを公表すべきだと思いますが、その点どうでしょうか。
  159. 大永勇作

    ○大永政府委員 適当な機会がございましたならば、先生御指摘のように五十一年度の差益も加えました数字を発表いたしたい、こういうふうに思います。
  160. 長田武士

    長田委員 次に、電力会社における五十一年度末の総借入額とその資金構成はどうなっておるか、お尋ねいたします。
  161. 大永勇作

    ○大永政府委員 五十一年上期末でございますが、残高といたしましては、九電力合計でもちまして六兆六千五百十四億円、そのうち社債が三兆三千二百五十七億円でございます。それから開発銀行が、開発銀行固有分と外債分と世銀分とございますが、開発銀行固有分が五千二十六億円、外債分が九十億円、世銀分が百六十六億円でございます。それから債券発行銀行が六千七十四億円、貸付信託が六千百五十五億円、市中銀行が七千十三億円、それから生保が四千四百一億円、外資が三千四百十一億円、その他が九百二十二億円、計六兆六千五百十四億円でございます。
  162. 長田武士

    長田委員 現行料金が改定されました時点は、公定歩合は六・五%だったんですね。現在、公定歩合は三・五%と大幅に下がっておるわけであります。これに伴って各電力会社の金利負担は非常に軽くなっておると私は思っておるのです。では、その軽くなった料金改定時から五十二年度まで九電力会社がどのぐらい利息軽減になっておるのか、お尋ねいたします。
  163. 大永勇作

    ○大永政府委員 五十二年度中におきます金利低下分のメリットは二百九十六億円というふうに試算をいたしております。
  164. 長田武士

    長田委員 全体的には資金の絶対量が当然ふえると私は思うんですね。それに伴う支払い利息は増加するのは当然だと思います。そこで私は、経営には相当好影響を与えておる、そう考えるのですが、その点どうでしょうか。先ほど来、電力会社については設備も投資しなくちゃならない等々いろいろ為替差益を還元する障害というものをるる答弁されたわけでありますけれども、一方においては、いま御答弁がありましたとおり、公定歩合の下がったことによって経営に相当好影響をもたらしておる、その点いかがですか。
  165. 大永勇作

    ○大永政府委員 確かに御指摘のように、金利の引き下げは社債等につきましても、既応の発行分には及ばないわけでございますが、新規の発行分につきましては最近の金利低下によりまして安い社債の発行ができますし、そのほかの長期の借り入れにつきましても、新規のものにつきましては低利の借り入れが可能でございますので、その分は経営に好影響を及ぼしておるということは御指摘のとおりでございます。
  166. 長田武士

    長田委員 では、続けてお尋ねいたしますけれども、五十三年度における電力会社の資金量についてお尋ねするのですけれども、それに対しまして電力料金改定時の金利を合わせると支払い利息はどのぐらいになるのか、また、同じ資金量に対して現在の金利はどうなっておるのか、この二点についてお尋ねいたします。
  167. 大永勇作

    ○大永政府委員 五十三年度におきます九電力の調達所要額二兆八千八百億円のうちで、外部資金は社債、借入金等一兆五千九百億円ございます。これを仮に昭和五十一年の料金改定当時の金利水準と現在の金利水準で試算してみますと、両者の差額は約二百三十億円ということになるわけでございます。
  168. 長田武士

    長田委員 ただいま御答弁がありましたように、電力料金の改定時より現在の方が支払い利息は相当少なくなっておるわけですね。その上に莫大な円高差額があるということであるわけでありますから、電力会社は実際には円高差益と金利負担減の利益を得ているということになるわけですね。そこで、東京電力について言えば、五十二年度末においては為替差益が三百九十億円、五十一年度の下期が五十億円、これを足しますと四百四十億円、金利負担は百五億円で、合計五百四十五億円となるわけであります。これを政府の試算によって値下げしたとすれば、キロワットアワー当たりどのぐらいになるのか、お伺いしたいと思います。
  169. 大永勇作

    ○大永政府委員 ただいま先生御指摘のように、五十一年度、五十二年度の為替差益及び五十二年度の金利低下分のメリット、この合計五百四十五億円を一キロワットアワー当たりに直しますと四十六銭、平均使用家庭への影響は八十円、こういうことでございます。
  170. 長田武士

    長田委員 東京電力については一世帯当たり、いま御答弁がございましたとおり、平均使用量で八十円の値下げということになるわけでございます。これは現行料金に対して三・二%の値下げになるわけであります。なぜこれを値下げによって消費者に円高差益を還元できないのか、私は非常に不思議に思えてなりません。いままで通産省の答弁を聞いておりますと、上がる材料は非常に巧妙に説明いたしますけれども、いわゆる利益の上がる部分、そういう点は非常に説明が不足しておるのですね。私は決して、円高差益について、この関連質問といたしまして金利負担の軽減の問題を取り上げるつもりはなかったのです。しかし、いままでの説明を聞いていますと、余りにも資本投資がかかるとか人件費が上がっておるとか、いろんな理由によって為替差益が還元できない、こういう答弁ですから、私はあえて公定歩合の問題も出したわけなんであります。そういう意味で、円高差益、これは当然還元できるのじゃないか、実現できるのじゃないか、私はこういう感じを持っておるのですけれども、その点いかがでしょうか。
  171. 大永勇作

    ○大永政府委員 先ほどもお答え申し上げましたが、この為替差益は国民に当然還元されるべき性質のものであるという認識は先生のおっしゃるとおりでございます。ただ、どういう形でこれを還元するのが適切であるかということでございまするが、先ほど申し上げましたように、現在の為替レートがこのまま存続をいたし、かつ、OPECの値上げ等が行われないというふうに仮定いたしましても、人件費、資本費等の今後の動向を考えますると、五十三年度は若干の黒字が出まするが、五十四年度には逆に赤字になるであろうというふうなことが予測されるわけでございます。かたがた、この為替レートの推移あるいはOPEC等につきましても、いわゆる不確定要素がきわめて高いわけでございます。電力会社あるいはガス会社の利益は、これはもう当然還元すべきものであり、かつこれは政府の厳重な監督下に置かれておりまして、外部にはみだりに流出を許されない性質のものでございます。そういうことを前提として考えますると、われわれといたしましては、還元のいたし方としまして、現在料金を下げてまた近いうちにこれをさらにまた再度引き上げなければならないというふうな、下がったり上がったりという形ではなくて、現行料金を長期安定的に維持するということがこの還元の最も適切な方向であろうというふうに判断いたしまして、原則二年間据え置きという方式を出したわけでございまして、これによりまして為替の利益の還元を行いたい、こういう考え方でございます。
  172. 長田武士

    長田委員 私の申し上げておりますのは、これから不確定要素を含んでおります五十三年度について還元せよと主張しているんじゃないんですよ。間違えないでくださいね。要するに、過去五十一年の下期、それから五十二年度において為替差益が一千六十四億出ております。これについては不確定要素は全くない過去のものでございますから、当然国民に還元すべきが筋であるということを私は主張しているわけであります。おわかりですか。  そこで、政府といたしましては、こうした状況では電力料金は当然原価主義を守ってまいったわけですね。そうして政府認可料金、公共料金、当然政府の許可がされてそれが値上げされるという認可料金でありますから、私は当然原価の見直しはすべきではないかと思いますが、この点どうでしょうか。
  173. 大永勇作

    ○大永政府委員 電気料金の決め方については先生も十分御高承のことと存ずるわけでございまするが、電気料金を決めます場合には、原価計算期間、これは現在通常二年ということになっておりますが、原価計算期間を定めまして原価を計算し、いわゆる料金を設定するわけでございますけれども、この二年間という期間は、料金を設定するときのめどとしての原価計算期間でございまして、二年たちましたならばその料金を決めました供給規程が失効するといいますか、そういう形のものではないわけでございまして、二年たちましてもその料金がそのまま存続してしかるべきであるという状態のときにはいわゆる申請が行われないわけでございまして、申請がありましたときに初めてそこで改めてまた原価計算期間を定めまして、料金の見直しを行うということになっておるわけでございます。そういうたてまえからいたしまして、五十一年の料金の認可をいたしましたいわゆる二年間というものがたちましたら、そこで自動的に料金の見直しが行われるというふうな制度にはなっていない次第でございます。
  174. 長田武士

    長田委員 電気料金は、御承知のとおり、電気事業法第十九条によりまして原価主義によって定めるということになっておるわけですね。  そこでお尋ねをしたいのでありますけれども、この規定に基づいて通産省資源エネルギー庁の内規といたしまして、「供給規程料金算定要領」がございますね。この原価算定期間は四十九年までは三年となっていたわけであります。それで四十九年以降、原則三年だが、原価要素の変動が激しい場合など、三年間の原価算定期間によることが適当でない場合には一年、二年も可能とすべきだと改められたわけであります。間違いありませんか。そうして現行料金については原価計算期間は二年であります。ただいまの御答弁のあったとおり。したがって、五十三年三月末日で終了をしておるわけでありますから、原価の見直しは当然やらなくちゃならない、私はそう考えるわけであります。この点どうでしょうか。
  175. 大永勇作

    ○大永政府委員 ただいまもお答え申し上げましたように、五十三年三月、つまり五十二年度が終了いたしましても、現行の供給規程、電力会社の定めました供給規程はそのまま存続いたしておるわけでございます。この供給規程料金を変更しようとする場合には、電力会社から料金改定の申請があるわけでございまして、その申請の際には、新たに原価計算期間を定めまして申請が行われるということになるわけでございまして、申請がございますれば、当然新たな原価計算期間につきましての原価の見直しということが行われるわけでございます。申請がない場合には、新たな原価計算期間を定めての見直しということは行わないというのが従来からの方式であるわけでございます。
  176. 長田武士

    長田委員 そうしますと、この内規にございます原価要素の変動が激しい場合というのは、たとえば円が非常に強くなったというケースの場合には含まれないのですね。あくまでも電力業界が料金を上げてほしいという申し入れがなかったならば、この原価の見直しというのはやらないのですか。それでは公共料金じゃないじゃありませんか。
  177. 大永勇作

    ○大永政府委員 ただいまのはいわゆる申請に基づきまして供給規程を変更する場合でございますが、これは電気事業法でまいりますと十九条の規定がそれに相応するわけでございます。そのほかに電気事業法二十三条というのがございまして、いわゆる社会的経済的に著しい事情の変動がありまして、現在の供給規程が著しく不適当であるという場合にはいわゆる申請を命ずる、通商産業大臣は電気事業者に対しまして供給規程の変更の申請を命ずることができるという規定がございます。これは社会的経済的な事情が著しく変動した場合でございまして、現在のような事態には、この規定の適用というのは現段階ではまだ当てはまらないというふうにわれわれとしては考えておる次第でございます。
  178. 長田武士

    長田委員 そうなりますと、著しい変動と言いますのは、具体的にはどのぐらいの金額を指すのでしょうか。二百九十八円で昭和五十一年六月ですか、価格の改定をやりました。そして原価計算をこのようにやったわけですね。もうすでに円は一ドル二百二十円前後、こうなりますと著しい変動の相場に値しませんか。じゃ、具体的に金額言ってください。幾らになれば改定しますということ……。
  179. 大永勇作

    ○大永政府委員 電気事業法二十三条の規定は、「通商産業大臣は、電気の料金その他の供給条件が社会的経済事情の変動により著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認めるときは、電気事業者に対し、」先ほどのような供給規程の「変更の認可申請すべきことを命ずることができる。」となっておるわけでございます。この規定は、供給規程その他の供給条件が全体といたしまして社会的経済的な事情の変動によりまして著しく不適当となったときということでございまして、料金につきましては料金そのものが著しく不適当となったときでございまして、原価の要素になります一つ一つの、たとえば為替レートが著しく変わったとか、人件費が著しく変わったとか、油の値段が著しく変わったとかいう個々の項目ではなくて、それらを総合いたしました総合的なコストから見て、そのときの料金が著しく不適当であるということになった場合にこの命令が出せるということでございまして、個々の原価項目の変動によりまして命令をするという性質のものではないわけでございます。
  180. 長田武士

    長田委員 そうなりますと、現在の円高による変動は見直しには値しないということですね。今度値上げをする場合には、私はそれを具体的にやりますよ。値しないという論拠を出しますよ。下げることについては一向に腰が重いが、上げることには非常に安易に上げてしまう。そうなれば、国民本位じゃないじゃないですか。公共料金というのは、国民を守る、国民に著しい負担をかけないという意味で公共料金が設定されているのじゃありませんか。その点、笑っていますけれども、次官どうですか。
  181. 野中英二

    ○野中政府委員 ダイレクトに物を考えますと、これは先生がおっしゃるとおり、公共料金を引き下げるのに値すべき要因であると考えております。しかしながら、御存じのとおり、為替相場の問題もフロート制をとっておりまして、いついかなることになるか、まず安定していないということが第一点。第二点といたしましては、OPEC十三カ国のオイル価格をいつ引き上げられるかという問題もございます。過去の例から見ますと、一割程度毎年上がってきた実勢にかんがみて考えてみましたときに、果たしてここで電気料金を引き下げるべきであろうかどうか。  まずその基本は、いま申し上げましたようなこともございますけれども、国民生活はいつでも乱高下があってはならない、できるだけ安定した国民生活形態でなければならない、そういう立場に立ったのが第一点であります。第二点といたしましては、次長もお答えしたかと思いますけれども、景気浮揚のためにこの際民間設備投資を促進しなければならない。そのために九電力に対しまして三兆一千八百億をわれわれは期待しておるのでございます。  以上のような点にかんがみまして、率直に申しまして、この際電力料金を引き下げるべきでない、こういうことで推移してきたわけでございます。
  182. 長田武士

    長田委員 政務次官、あなたはちょっと席を外していましたからやりとりがわからないと思いますけれども、私は、これからの為替相場について変動がもちろんあると思います。現実に変動しているのですから。それについてこれからの不確定要素を含めて還元しなさいというようなことを言っているのじゃないのですよ。五十一年度下期と五十二年度のこの為替差益については企業努力によって得たものではありません。日本の経済の力によって得たと言えるわけなんですね。国民一人一人の利益として還元されなくちゃならないのは当然じゃございませんか。そういう意味で、私は五十一年度の下期それから五十二年度の一千六十四億円については還元できるじゃありませんかと申し上げているのです。これは公共料金たるゆえんじゃありませんかと申し上げているのです。もう一度お答えください。
  183. 野中英二

    ○野中政府委員 先生のおっしゃる点は十分わかるわけでございますけれども、御存じのとおり、一家庭に還元されますのをダイレクトに計算いたしますと、一世帯四十円程度でございますので、これを引き下げまして国民生活に寄与すべきか、それとも、四十円程度でありますから、景気浮揚をしてまいるための民間設備投資に振り向けていくか、この両者の考えに立って検討した結果、今年度は電気料金を引き下げない、こういう立場をとったわけでございます。
  184. 長田武士

    長田委員 私は円高差益の話をしているのですよ。それに対して設備投資すべきだなんという論理はどうなんですか。これは企業が努力して正当な利益として得たものではないということを言っているのです。企業が努力をし、そして利潤を得た、その分については私たちはとやかく言っているのじゃないのです。よろしいですか。  次官も御存じのとおり、過去にも、これは昭和四十一年でありますけれども、中国電力が値下げをしたことがあるのです。その理由といたしましては、二十九年十月の一斉値上げの際、老朽設備を中心に料金の算定が行われまして他社に比べて割り高になっておりましたけれども、新鋭火力発電所の建設で経理上余裕ができたということなんです。これに対して他の八電力会社は一切追随しなかったわけでありますけれども、このときの値下げは、一般家庭では一・〇六、五百キロワット以上の大口電力は六・九%でありまして、各方面に非常に潤いを与えたと言われておるわけです。  東京電力の場合は、一般家庭では三・二%値下げされるわけで、過去の例から見ましても非常に大きいと思われるわけであります。私は、値下げをすればこの波及効果は非常に大きいのではないかと考えるのです。政府も、円高傾向にあった時代に、円高差益は国民に還元いたしますと公約したじゃありませんか。それが公共料金である電力料金については還元いたしませんという態度は、私はどうしても理解ができない。この点いかがでしょうか。
  185. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、中国電力でございますが、これは昭和二十九年の料金改定の後、四十一年に至りまして料金改定の申請、それも値下げの申請をしてまいったということでございますが、ただいま御指摘になりましたように、一つには新鋭火力の導入ということ、それから当時石油価格が安定的に推移しておったというようなところから、将来における発電原価の見通しにつきましてきわめて安定的な要素が多かったという点が当時の特徴かと思います。それに対しまして、今回は、この六月のOPECの総会で原油価格がどのように扱われるか、あるいは現在の円レートがどのように推移するかといったことからきわめて不確定要素が多いというところが、中国電力の値下げの段階と情勢が非常に違うということになろうかと思います。  それから、御指摘のように円高差益も発生していることは事実でございますが、これをどのような形で還元するかという問題になってくるかと思います。いわゆる料金の引き下げという形で還元するのか、公共料金としての性格からできるだけ長く据え置いた方がいいのか。私たちとしては、諸般の事情を検討した結果、総合判断いたしました結果、できるだけ長く据え置いた方がいいという後者の立場をとった、こういうことでございまして、当初一月二十日時点におきましては、少なくとも五十三年度いっぱい、その後はできるだけ長くという指導をいたしたわけでございますが、その後二カ月間における為替レートの推移、特に円高基調を踏まえまして、北海道電力を除いて八社については五十四年度も据え置くように、ただし前提といたしまして、OPECによる石油価格の引き上げがない、あるいは現在の円高レートがこの形において推移するといったようなことを前提といたしまして、二年度間にわたって据え置きを指導するということにいたしたわけでございます。御指摘のように円高差益を国民に還元する、企業の努力以上のものとして出てきておる円高メリットを還元する方法として据え置きの方法をとった、こういうことでございますので、そういった点で御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  186. 長田武士

    長田委員 長官、私は当委員会で何回も質問しておるのですが、円高差益の問題に触れたときに、初めは、各大手の九電力についてはオイルショックで物すごい赤字があると言いましたね。その穴埋めをいまやっておるという答弁をしました。その次には、一世帯当たりは非常に些少であるからこの還元は非常にむずかしいというような答弁をいたしました。現在においては、安定供給をするためにいわゆる価格は据え置くのだ、こういう答弁なのですね。これは御存じのとおり、原価計算をいたしましたときに、円の相場はずっと二百九十八円で計算されていますね。そうですね。五十一年の改定のときには二百九十八円ですね。これが二百二十円台でずっとドルが推移していくということになりますれば、今度はどういうふうな答弁をするつもりですか。
  187. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 私といたしましては、オイルショックの後の赤字を穴埋め云々ということでお答えした記憶はないのでございますが、終始申し上げておりましたのは、円高差益をどのように還元するかという立場でお答えしておったというのが私の記憶でございます。  ただ、二百二十円で五十三年度も推移した場合にどうなるかというお尋ねでございますが、約二千二、三百億ぐらいになるのじゃなかろうかと思います。  それから、先ほど五十一年の料金改定の際の為替レートについてお触れになりましたが、当時九社につきまして三度に分けて料金改定をやっておりまして、第一のグループでは、当時は為替レートは三百円でございます。二度目のが二百九十九円、三度目が二百九十八円、こういった料金改定の際の為替レートの見方は、過去三カ月の実績の平均値をとった結果、さように三つのグループに分かれておるわけでございます。
  188. 長田武士

    長田委員 いろいろ伺ってまいったわけでありますが、そもそもこの料金改定のときには公聴会を開く義務があるわけであります。この問題についても、各社が円高差益や金利低下による負担減などの状況について消費者説明するため、公聴会を開催するよう通産省が指導すべきだと私は思いますが、この点いかがでしょうか。
  189. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 御指摘の公聴会と申しますのは、料金改定、いわゆる料金引き上げの場合あるいは引き下げの場合、公聴会という手続を踏むわけでございますので、今回のように据え置きということで公聴会云々ということは、いま法律は予定しておらないわけでございますが、言われる趣旨は、なぜ据え置きにするか、どの程度円高メリットがあるかということを国民の各位によく理解していただくべきであるという御趣旨のことかと思いますので、私たちといたしましても、積極的に私たちの試算結果を発表すると同時に、電力会社等につきましても、その決算時点におきまして、円高メリットが各社ごとにどうなっているかといったようなことを極力国民の皆様におわかりいただけるように公表させたい、そのように指導したいと思っております。
  190. 長田武士

    長田委員 本日は、さらに福祉料金の創設あるいは円高差益や金利低下による負担軽減について企業会計上で公開することなど、種々の問題について伺っておく予定でありましたが、時間が参りましたので、以上で終わります。
  191. 野呂恭一

    ○野呂委員長 安田純治君。
  192. 安田純治

    ○安田委員 私は、政府が推進しようとしている原子力発電の設置促進、増強に関連しまして、福島県の福島市の北芝電機という企業がございますが、これの経営悪化及びその再建計画にあらわれたわが国の原子力産業の持つ問題点について伺いたいというふうに思うわけです。  まず第一に、原子力機器メーカーとしての大手と言えば、日立、三菱、東芝の三社が挙げられるわけでございますけれども、これら三社を頂点とする原子力関連企業は、全体として約千三百億円以上の累積赤字を抱えていると言われております。この主な原因は幾つか挙げられるでしょうけれども、電力会社の納期繰り延べとか逆ざやがあるとか聞いておりますけれども、簡単にこの点、まず御説明をお願いしたいと思います。
  193. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 ただいま安田先生から御指摘のございました点、お答え申し上げます。  わが国の原子力発電機器メーカーといたしましては五グループございまして、それの関連する企業全部をトータルいたしますと約三百社ということになっております。ただいま先生から御指摘のございました千三百億ほどの累積赤字と言われておりますのは、この約三百社全部をひっくるめた数字であろうかと思います。  そこで、こういう多額の累積赤字をもたらしております原因といたしまして私ども考えておりますのは、一つは、原子力産業というのは御承知のとおり先端産業でございまして、かなり広範囲の技術者といいましょうか、技能者を含めましたそういう方々を多く抱えておかなくちゃいかぬという事情がございます。それからもう一つ、先端産業としての特殊事情から、当然に研究投資というものが先行せざるを得ないということでございます。この二つの要素が絡まり合いまして、あわせまして、御指摘のとおり若干原子力発電所の設置が計画よりもおくれておる、こういうことから発注がそれほど期待できなかった、こういう幾つかの要素が絡まり合いまして多くの累積赤字を抱えるに至った、こういうふうに私どもは考えておるところでございます。
  194. 安田純治

    ○安田委員 五グループあるということですけれども、大手メーカーと関連会社、関連下請との間に逆ざやがあるということを当局は承知しているかどうかを伺いたいと思います。
  195. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 逆ざやという意味がちょっとわかりかねますが、恐らく先生の御指摘は、製品として発注者に売る場合のコストに比べまして、下請なり関連企業に出す場合のコストの差がかなりあるという意味ではないかというふうに考えるわけでございますが、御承知のとおり、原子力関連機器と申しますものは大変信頼性を要求されるものでございまして、いわゆる親請会社と関連会社との間には、相当長期間の信頼関係といいましょうか固定された関係というものが成り立って、初めてそういう信頼性のある機器を供給できるというふうに解釈しておるわけでございます。したがいまして、特に関連会社に対しまして不当な価格の要請をするとか、あるいは電力会社から発注を受けます場合に故意に安い価格で入札に応ずる、こういうことは私はあり得ないのではないかというふうに考えておりまして、そういった意味で、いま先生の御指摘のございました逆ざやという現象は、私どもの段階では把握はいたしかねております。
  196. 安田純治

    ○安田委員 それでは、原子力関係に限らずに、大手メーカーと関連子会社との間には通常の取引ではあり得ないような関係がございます。たとえば先ほど申しました福島の北芝電機という会社、これは資本金は六億円でして、東芝の出資が八二・九%なわけです。東芝からの委託を受けて生産する製品の比率は約八〇%に及ぶわけで、完全に東芝が支配する会社と言ってもいいわけですけれども、ここの主力商品である小型モーターについて見ますと、ある商品の場合、北芝の製造単価が四千五百六十円、これを東芝に納入する単価が四千五百円。製造単価が四千五百六十円の物を東芝に納入する単価が四千五百円、こういうことになっている例がございます。あえて多くの例を挙げませんが、私どもの調査によると、その小型モーターの部門についてはもうほとんどすべてそういう状態である。要するに生産をすればするほど赤字になる仕組みになっているわけなんです。北芝電機としては、自力で開拓した受注部門でこの赤字を埋めて、辛うじて経営を維持してきたわけですけれども、しかし、五十年度以降の不況で次第にこの方法も立ち行かなくなって、ついに昨年、千四百三十二名の従業員を九百名に減らす、こういうことを一つの柱とする人減らし再建を打ち出さざるを得ないような状況に追い込まれておるわけです。  北芝電機がこうした状況に追い込まれた原因には、先ほど挙げましたように東芝との取引の逆ざやの問題だけではなくて、北芝が独自に受注を開拓したものについても、規模の大きなトランスなどは東芝に取り上げられてしまうわけです。つまり受注領域を自分で開拓しても、大型のトランスの場合は東芝の方へ行ってしまう、こういう問題がある。要するに、あの手この手で関連会社を利用しているわけです。こうした点を改善させれば北芝電機の経営悪化は防ぐことができるとわれわれは考えますし、現在のような大量の人減らしを行わなくても再建に向かうことができるというふうに考えるわけですけれども、当局としては東芝に対して行政指導する意思はないかどうか、伺いたいと思います。
  197. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 北芝電機の再建問題につきましては、私どもといたしましても大変深い関心を持っておるところでございます。そこでいろいろ実情を調査いたしてみましたら、おっしゃるとおり、東芝電気がかなり、まあ八〇%程度のシェアを持ったいわゆる関連会社でございまして、東芝といたしましても北芝電機の再建問題につきましていろいろな方策を講じておるという話を聞いております。その一つといたしまして、プールライナーの発注を北芝にいたしましたという点が第一点でございます。それから第二点といたしまして、原子力発電サイトに対します管理補助要員八十名の受け入れという問題がございます。  ただ、この二点は、言ってみますと当面の北芝電機に対します若干のサポート策といいましょうか、そういうものでございまして、基本的に北芝電機に対しましてどういう長期戦略を考えておるかということを質問してみましたところが、従来より北芝電機という会社は大変豊富な経験を持っておりまして、特に変圧器の関係あるいは電動機の関係では大変な信用のある会社でございますので、東芝といたしましてはそういう面につきまして大いにてこ入れをしてまいりたい、こういう意向を示しておりますので、私どもといたしましては大変結構なことではないかということでございまして、東芝がそういう方向で北芝の再建問題について援助をするという方針につきまして温かい目で見守ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  198. 安田純治

    ○安田委員 確かに東芝がてこ入れとして十六億円の融資をしたり、あるいは東芝の工場に九十八名を引き取ったりしておることは事実ですけれども、これは北芝という工場の特殊性もありましょうが、地元の現地採用の労働者がほとんどでございまして、労働者や町の経済発展の要求と全く反する解決策であるということが一つございます。人減らしをしなくてもいい方法を何とか探求していただきたいというふうに当局にもお願いしたいわけでございます。  そこで、原子力機器産業の問題にちょっと入りますけれども、ここ数年先を見通した場合に、新たに設備投資をしたり新規に参入する企業をつくり出す必要が一体あるのかどうか。先ほどお認めになったように、三百社の関連会社で累積赤字が千三百億円ある。その原因については、逆ざやのことはともかくとして、技術者を抱えておかなくちゃならないとか技術の研究をしなくちゃならないという先端産業の持っておる云々がありますが、同時に、立地が問題でいろいろ進まないという面もございますね。こうした面をお認めになったわけですから、そういうことを考えてここ数年先を見通した場合、新たに設備投資をしたり新規に参入する企業を原子力機器産業について必要があるとお考えかどうか、お答えいただきたいと思います。
  199. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 五十三年の一月現在の時点におきまして、運転中の原子力発電所は十四基、約八百万キロワットでございます。建設中のものが十一基、九百七十万キロワットございます。現在建設準備中のものが四基、四百十九万キロワット、こういう現況でございます。それに対しまして、昭和六十年度までに原子力発電能力といたしまして二千六百万から三千三百万キロワットアワーにしたい、また日本のエネルギー総合計画の観点から検討いたしますとその程度の規模の原子力発電所をつくるべきである、こういう答申もございまして、私どもといたしましては、現在建設中あるいは準備中のものを考えましても、なお原子力発電所につきましては鋭意その建設に努力しないと、日本のエネルギー対策上問題があるのではないかという観点がございますので、先生御指摘の御質問に対しましては、私どもといたしましては、その新規参入というかっこうよりも、現在五グループでやってもらっておりますので、そういう方々にできるだけの仕事が与えられるような、そういう行政をやってまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  200. 安田純治

    ○安田委員 まさにどうもいままでの経過を考え今後の見通しを客観的に見ますと、主観的願望はともかくとして、実際問題としてはすでにもう既存の五グループですか、これの仕事確保するといいますか、へたをすると撤退をするというふうな状況、経営的には余りもうからぬという状態だろうと思うのです。ですから、新たに設備投資をしたり新規参入する企業をわざわざつくり出すというよりは、いまの五グループ、それも撤退しないでおくのが容易でないという状態に客観的には置かれていると思うのですよ。  ところが、北芝電機の場合に、いままでは原子力関連会社ではなかったわけです。東芝の関連会社ではあるけれども、原子力産業とは何の関係もなかったわけであります。それが原子力関連会社として再出発することは一体技術的に可能であるかどうかということを非常に疑問に思うわけですよ。いま八十名ばかり応援といいますか出向しているようでありますけれども、一体この北芝電機が原子力関連会社として再出発する可能性が考えられるかどうか、この点、通産当局の御認識はどうでしょうか。
  201. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、東芝の北芝電機に対しますてこ入れの方法といたしまして二点あるわけでございます。第一点はプールライナーの発注をいたしました。これはステンレスタンクの下部の鉄横物を発注したわけでございます。それからもう一つは、原子力発電サイトの管理補助要員の受け入れということでてこ入れをまずやったわけでございます。この二点のために北芝電機が原子力機器産業に参入したと考えるのは、私は早計ではないかと考えております。先ほどお答え申し上げましたとおり、変圧器でございますとかあるいは電動機につきまして北芝電機は大変信用のある会社でございますので、基本的にはそういった従来の重電のパターンで再建を図っていくべき会社ではないか、こういうふうに考えております。
  202. 安田純治

    ○安田委員 原子力機器産業現状では赤字産業になっているということは事実だと思うのですね。電力会社の方が力が強くて、日立、三菱、東芝も赤字覚悟で受注するのが実情であると言わざるを得ないと思うのですね。こういう部門に赤字会社が再建のために参入するということは、筋が通らない話であると私どもも考えます。通産当局も、原子力機器産業に新規参入ということではなかろう、一時的な言わばてこ入れ策として、東芝の原発部門に八十名引き取ったにすぎないというふうに御認識のようです。  ところが、北芝電機の実態を見てみますと、ことしから原子力サービス部というのが新設された。四月十一日に東芝の原子力建設部長、それから部長代理、放射線管理課長、安全衛生主査、この四名が、北芝電機の班長以下百五十名を対象にして、二時間四十五分かけて原発教育を行っているのであります。こうして北芝電機は全社的な原発協力体制に向かい始めた、こういうふうに経営者側も言っておりますし、いま申し上げましたように客観的にもそういう行動をとっておる。これは明らかに東芝の北芝てこ入れという名による不採算部門を北芝に負わせようとする策としか考えられない。少なくとも赤字企業再建の道として原発関連に乗り出すということは、適切な策ではないということは明らかではないかと思うのですよ。その点、当局の判断を伺いたいと思います。
  203. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、基本的に北芝電機の生きていくべき道は重電の部門である、これは東芝もそう認識していると思いますし、私どももそういう姿が一番いいんではないかというふうに行政的にも判断しておるわけでございます。  ただ、当面の北芝の再建策をどうするかという問題がございまして、特に先ほど先生から御指摘のございましたとおり、大幅な人員整理の計画もございます。配置転換の計画もございますので、そういった現実に対応いたしましてどういうふうに再建するかということは北芝電機にとりましても重大な問題ではないか。ところが、いますぐ仕事の関係を見つけ出すということになりますと、大変問題も多いわけでございます。当面、原子力関係の部門におきまして東芝がある種のてこ入れをすることができるということでございますので、その部分についての助勢といいましょうか、あるいはしかるべき対策を講ずるということをまずやっているのではないかというふうに私どもは認識しておるわけでございまして、それが北芝電機がまるまる原子力機器産業に看板をかえてしまうことにはならないのではないかという認識を依然として私どもは持っておるわけでございます。
  204. 安田純治

    ○安田委員 確かにおっしゃるように、原子力機器産業に新規参入をするというのはちょっと大それたことでございまして、経営的にも非常に危険だろうと思います。先の見通しもないと思うのですね。既存の五グループで仕事はいっぱいで、まずそこにやらせるべきだし、われわれの調査したところによると、北芝のいまの経営者の言っていることというか態度を見ますと、原子力産業で生きていくんだというようなことを労働者に言っているようですし、通産当局の認識とはちょっと違うような言い方をしているようなんですよ。われわれはその将来について非常に心配をしておるわけなんです。そういう点で、東芝の方で一時的ないわばてこ入れ策の一つだということでございますけれども、不採算部門をそういう下請というか関連会社に負わせるという行動が見られる場合は、ぜひ厳しく指導していただきたいというふうに思うわけです。  次に、原子力発電所における被曝放射線量についてお尋ねしたいわけです。  東京電力の福島第一原子力発電所の場合、〇・五レム以上五レム未満の被曝した人の数ですが、四十八年度と五十一年度を比較しますと二千九百五十七名から四千八百七十四名にふえているようであります。しかも社員従事者、つまり東京電力の社員ですが、人数が四年間で百三十七人増加しているわけです。ところが、請負など社員外従事者は千七百八十人もふえているわけであります。この数字に間違いないかどうか、ひとつお答えいただきたいと思います。
  205. 中戸弘之

    ○中戸説明員 お答えいたします。  私どものデータによりますと、東田の福島第一原子力発電所の従事者の数でございますが、昭和四十八年度が二千九百五十七名、以後年を追うごとに増加いたしまして、五十一年度では四千八百七十四名、こういう数字になっております。なお、社員と下請の内訳を見ますと、四十八年度二千九百五十七名のうち下請が二千五百二十七名、社員従事者が四百三十名、五十一年度ではそれが四千八百七十四名の総計のうち下請が四千三百七名、社員が五百六十七名、こういうぐあいになっております。
  206. 安田純治

    ○安田委員 社員の数じゃなくて、原子力発電所における被曝放射線量分布別の従業者数を聞いているわけです。〇・五レム未満というのもありますけれども、〇・五レム以上一・五レム未満、一・五レム以上二・五レム未満、二・五レム以上五レム未満、五レム以上とあって、五レム以上というのは全部ゼロになっておりますけれども、本当はこれ以上やってはいかぬということになっておりますから、数字の上でゼロになるのはあたりまえです。このたとえば二・五レム以上五レム未満という数字を見ましても、昭和四十八年には社員従事者が六名そういう該当者がいる。しかし、請負等社員外従事者は四十七名だ。四十九年になると、社員従事者はたった二名なのに、請負等社員外従事者はふえて五十七名になっておる。五十年度になりますと、社員従事者はたった一名に減ったのに、請負等社員外従事者が百三名、約倍近くふえておる。五十一年度は、社員従事者が二名になっていますけれども、下請の方は百七十二名、また倍近く前年度よりもふえておる。これは二・五レム以上五レム未満の人ですけれども、こういう数字になっていることは間違いございませんか。
  207. 中戸弘之

    ○中戸説明員 いまの先生のお尋ねに直接お答えになるかどうかわかりませんけれども、私どものデータによりますと、東京電力の福島第一原子力発電所の従事者の平均被曝線量という数字がございますが、これにつきましてお答えいたしますと、四十八年が一人当たり年間〇・二九レム、二百九十ミリレム、それが以後毎年、四十九年度が〇・三一レム、三百十ミリレム、それから五十年度が〇・四一レム、それから五十一年度が〇・四九レムということで、平均で見ますと各年少しずつふえているというのが実情でございます。
  208. 安田純治

    ○安田委員 私の質問に答えていないようですが、これは昭和五十三年二月付で科学技術庁、通産省が予算委員会に提出した資料という中に、ちゃんと一覧表になって、先ほど申し上げましたような二・五レム以上五レム未満の人が、社員従事者の場合は昭和四十八年から五十一年度までの四年間で六、二、一、二、ところが、請負等社員外従事者の場合は四十七、五十七、百三、百七十二こういうふうにふえている。この事実は、おたくの方で出された資料だと思うのですが、間違いないのですか。
  209. 中戸弘之

    ○中戸説明員 失礼いたしました。いま先生のおっしゃったような数字が私どもで調査いたしました数字でございまして、それを国会の方に提出いたしました次第でございます。
  210. 安田純治

    ○安田委員 さて、この社員以外の従事者についてでございますけれども、その内訳は当局で一体掌握しておるんでしょうか。たとえば東芝社員が何名とか東芝の子会社から何名とか建設会社から両名というふうにつかんでおりますか。つかんでおるならおる、おらないならおらないで答えてください。
  211. 中戸弘之

    ○中戸説明員 科学技術庁としては、そこまでつかんでおりません。
  212. 安田純治

    ○安田委員 じゃ、外国人は何名いるか、つかんでおりますか。
  213. 中戸弘之

    ○中戸説明員 私ども承知しております数字で申し上げますと、五十二年度におきます東電福島第一発電所の外国人労働者の数は百二名ということになっております。全国各地の外国人労働者の数は、全部で約二百名程度ということを承知しております。
  214. 安田純治

    ○安田委員 この二百名というのは、東電の第一原子力発電所も含めてですか。そうすると、残りは全国で約九十八名しかいないということになるのですね。
  215. 中戸弘之

    ○中戸説明員 詳しく申しますと、東電福島第一がいま申しましたように百二名でございます。それ以外で働いておりますのが九十四名、こういう数字に相なります。
  216. 安田純治

    ○安田委員 原子力発電所に働く一人一人が国の定める三カ月三レム、年間五レム以下の基準に合っているかどうかという点については、企業側の自主報告に任せられているのがいまの仕組みだと思います。したがって、企業が違反実態を当局に報告するわけがありません。私の調査によりますと、少なくない外国人が危険な作業に従事しておる。基準以上の被曝線量に達すると、日本の医者にかからないで本国に送り返されているという実態があるようであります。また、違反の事実が隠されている。当局は調査すると言いますけれども、いろんな委員会で似たような質問があったと思いますが、調査したがそんな事実はなかったという答弁を、いろんな機会に今日まで繰り返しておるわけであります。この問題は、近日、別の機会に本格的に問題にしたいと思いますけれども、いま北芝電機では原子力発電所への出向という問題が起こっているわけですね。そういう実情から見て、労働者が大きな不安を持っているのは当然なんです。  そこで、次に労働省に伺いたいわけですが、労働基準法の二条で労働条件が労使対等で決定されるべき旨が規定されておることはもう周知の事実ですが、同法の十五条で、賃金その他の労働条件、これは使用者が雇用の際に明示すべき労働条件としておるわけですね。そうして同法の施行規則の五条には、法十五条の労働条件とは次のものであるというようなことで十一項目にわたって列挙しております。その第一番目に、「就業の場所及び従事すべき業務」、これは仕事内容でしょうね、「に関する事項」というのを挙げておりますね。  そこで、いわゆる出向について伺いたいわけですが、この出向は、こうした労働基準法の規定から見てきわめて重要な労働条件の変更であるし、労働者と使用者が対等の立場で決めるべきものと考えられますが、労働省の見解はいかがですか。
  217. 小粥義朗

    ○小粥説明員 出向にもいろいろな形態のものがございますので、一概に言えない面がございますが、一般的な形で申し上げますと、先生御指摘のように労働条件の重要な変更になるわけでございます。したがって、基準法十五条では、これは労働契約締結時に労働条件として明示しなければいけないということになっておるわけでございますが、つまり採用時点に出向のことあるべしということは必ずしも明示されなくても、その後出向という形が行われるケースは間々ございます。これは言うならば、労働契約の変更ということになるわけでございますが、そうなりますと、その契約の変更が、労働者と使用者の対等の立場での合意なくしてできるかどうかという問題が生ずるわけでございます。これは当然労働者の合意がなければいけないという一般論になるわけでございます。ただ、その場合の同意というのはどういう形でなければならないかという点はいろいろ議論がございまして、たとえば労働協約で出向の根拠を明示してある場合あるいは就業規則上明示してある場合、そういう場合には個々に同意がなくとも可能であるという判例等もございます。そういうことで、出向の態様によっていろいろケースは分かれるかと思いますが、原則的には当然労働条件の変更になるというふうに理解しております。
  218. 安田純治

    ○安田委員 たとえば出向する人数の枠とか対象者の人選の基準とか、そういう大枠のものは労働協約で決めたとしても、あるいは個々の個別的な協定で決めたとしても、そのことについて直ちにある特定の労働者がある特定の場所に出向する義務が発生するわけではないと思うんですよ。これは大枠ですね。結局、この会社で何十名出向することは組合としては認めるとか、その場合の人選対象の基準として妻帯者を除くとか、いろいろな基準が考えられますけれども、そういう大枠があったからといって、直ちにある特定の労働者がぽんと行かなければならないことはないと思うのですね。これは必ずそういう基準に基づいて選定された人との間で話し合いが行われるだろう。ことに、こうした労使間の協定の中で基準は決めたけれども、その具体的な対象者に対しては話し合いでやる、つまり業務命令とかなんとかはしないという約束があった場合は、当然これは話し合いで行われなければならぬじゃないかと思うのですよ。したがって、協約もそういう労使間の合意があった場合、つまり基準は決めたけれども、個々の労働者に出向させるかどうかは職制とその具体的な労働者との話し合いでやるんだということを決めた場合には、当然本人の意思が尊重されると考えていいと思うのですが、どうですか。
  219. 小粥義朗

    ○小粥説明員 出向に、在籍出向とそれから移籍出向がございます。移籍出向ですと、これは出向という名前は使っていますが、一たん元の会社との雇用関係を切って、新しい会社との間に雇用関係が生ずるという形になりますから、これについては当然個々の労働者の同意がなければならないというのが一般的な考え方でございます。しかし、在籍出向の場合には、在籍出向の仕方にもいろいろなタイプがございまして、元の使用者の指揮命令権がある程度残っている場合と、それから事実上相手方、出向先の方に任されてしまう場合と、いろいろございます。ある程度元の使用者の指揮命令権が残っているケースについては、これは労働協約の中で包括的に出向の基準なり人数なりを決めてありますと、必ずしも個々の労働者の同意を得なくてもいいというような判例があるわけでございます。しかし、それは全く相手方の出向先に指揮命令権がゆだねられるということになりますと、これは民法六百二十五条の問題等もございますから、個々の労働者の同意が必要になるだろう、こういうような判示もございますので、出向の態様によって違ってくるケースが生ずるかと思います。
  220. 安田純治

    ○安田委員 北芝の場合は、北芝に確かに在籍をするような形式のようでありますけれども、特別休職という奇妙なやり方ですね。特別休職で出向、指揮命令権はみんな当然向こうが、東芝側にあるわけで、そのほかは北芝としての関係は切れてしまう。ただ特別休職という期間だということになっているわけです。  それはともかくとして、少なくともその出向の協定の同意の中に、具体的な出向については話し合いをする、となれば、やはり一方的な業務命令は出さぬという約束が組合との間にあったわけですけれども、そういう場合には、指揮命令といってもはっきり業務命令を出さぬということですから、話し合いで、納得づくで行くということになると思います。これは当然そうだと思うのですが、どうですか。
  221. 小粥義朗

    ○小粥説明員 出向の根拠を定めました労働協約の中で、個々の労働者の出向の有無についてはその労働者の合意によるということが書いてありますれば、当然合意が必要になると思います。
  222. 安田純治

    ○安田委員 必ずしも明文で書いてなくても、会社側が業務命令でやりたいという申し入れを労働組合にして、労働組合がそれに反対して団体交渉した結果、そういう業務命令は撤回するということを団体交渉の席上で明言されたということになれば、これは必ずしも明文で規定しなくても、労使の合意であることは間違いないと思うのです。  それはともかくとして、少なくとも出向を強要するということは、そういう場合には、これは協定、協約の精神からいっておかしいというふうに言わざるを得ないと思うのですが、強要の程度の問題もあると思うのです。もちろん同意権の乱用ということも考えられますから、何ら合理的理由がないのに、ただいやだいやだという場合には、むしろ同意権の乱用というふうに考えてもいい場合もある。これは判例でも学説でもそういうことがあり得ることは認めていると思うのです。ですから、強要の中身次第によって多少は動くんだろうと思うわけです。同意権の乱用的なものになれば、話し合いというものを前提にしてもそれで賄えるわけです。ただわがままに、何の合理的理由もないのにいやだと言っておる、いかなる説得をしても聞かぬという場合に、これは同意権の乱用みたいな形になることは、いかに協定で同意を要すると書いてあっても、これはそれで賄えると思うのです。ですから、強要の中身、つまり労働者の自由意思を拘束するような形で説得をしたかどうかということが問題になってくるわけだと思うのです。  それで、自由意思の決定を妨げたかどうかという中身は、抽象的に言えば、刑法上の概念で言えば、要するに害悪の通知ですね。強要罪とか脅迫罪、恐喝罪の場合に、相手方に害悪の通知をすることによって義務なきことを行わしめた場合は刑法上の強要罪になるわけですね。したがって、たとえば金を貸せということを言っても、短刀を突きつけて金を貸せと言えば、確かに貸せという言葉だけれども、これは正常な金銭消費貸借にはならぬわけですね。明らかに恐喝になると思うのです。ですから、説得の中身、やり方によって協定違反にもなれば、協定違反なら当然労働基準法上は労使対等で決めるはずになっていますから、これは労働基準法違反にもなると思うわけです。少なくとも出向を求めるやり方によっては違法になるわけで、非常に強い違法性がある場合は刑法上の問題にもなり得ると思うのです。要するに強要罪、人を脅迫、威迫して義務なきことを行わしめるという刑法上の罪になると思います。これは労働基準法の問題じゃなく刑法の問題だと思う。  しかし、それより多少程度が低いことであっても、害悪の通知、おまえ、説得に従わなかったならば不利益をこうむらせるぞという害悪の通知、これが自由意思の決定を妨げる程度に強い場合は、やはり強要になるんじゃないか。刑法上の強要にならなくても、労使対等で約束——つまり雇い主がかわるから契約の更改になるわけでしょうけれども、これは民法上の問題になるでしょうが、そういうことになる場合、労使対等で決めたことに仮にうんと言ってもならぬのではないかというふうに言わざるを得ないと思うのです。それは強制労働を禁止した労働基準法の五条規定から見ても、物理的強制は当然のことながら、精神的なあるいは害悪の通知によって、大きな害悪を免れるためにやむを得ず従うという場合には、自由意思で行動しているわけではございませんから、強制労働に当たる場合もあると言えると思うのです。  そこで、そういった基準法違反の訴えが監督署に出された場合、調査してくれという要請、これが出た場合に、監督署は本人を調べずに結論を出すことが適当かどうかということについて伺いたいと思います。
  223. 小粥義朗

    ○小粥説明員 いま出向について労働者の合意がない場合のいろいろな強要の仕方についてのお尋ねがあったわけでございますが、従来基準法の解釈といたしましては、出向のやり方それ自体が基準法のどの条項に触れ、したがって罰則が適用になるということはございません。  いま先生御指摘の二条の問題であるとかあるいは強制労働の規定の問題がございますが、少なくとも強制労働の規定の適用はなじまないというふうに考えておりまして、問題は、二条の方の問題になろうかと思いますけれども、同条には罰則がついていないということで、監督機関の立場で申告を受けて臨検監督をする場合には、従来出向の問題の中身についてはやってないわけでございます。したがって、たとえば労働協約で個々に労働者の合意を必要とすると言っておきながら、合意を得ない形で強要した出向命令、命令まで至らないまでもそういうようなやり方は、当然労働協約に反するものとして無効ということになるわけでございますから、その出向の効力については当然民事上の争いの余地が出てまいるかと思いますが、少なくとも基準法上の刑事罰の対象としては、従来もそういうような事例はございませんし、具体的にどの条項の、したがってどの罰則が適用されるということには直ちにはならないかと存じます。
  224. 安田純治

    ○安田委員 それはそう簡単には言い切れないのじゃないですか。いままでそういうことをおやりになってなかったというのは遺憾だと思うのですが、昔で言うタコ部屋みたいなものがあって、強制的に、おまえあそこへ行って働かなかったら殺すぞというようなことになった、脱走したらば日本国じゅう探してもリンチを加えるぞというようなことでやったことが仮にあれば、これは出向だから強制労働に反しないとかそんなことはないのであって、出向という名目でも、その強要の仕方、中身いかんによっては強制労働になることはあるのじゃないですか。いままでにはそういうケースはなかったとおっしゃるかもしれぬけれども、そういうことは理論的にはあり得るでしょう。つまり、どこどこへ行っておまえ働けということで、これは出張命令になる場合もあるし、いわゆる法律上の出向になる場合もありましょうが、どっちにしても、逃げ出したら承知せぬぞ、言うことを聞かなかったら殺すぞというようなことになって、いやいやながらそこへ行って働いておれば、これはりっぱに強制労働じゃないでしょうかね。そういうことはあり得るじゃないですか。
  225. 小粥義朗

    ○小粥説明員 いま先生おっしゃいました、従わなければ殺すぞというような形で意に反して労働させるとなれば、これは強制労働になろうかと思います。ただ、先ほどお話のありました出向の強要の仕方から判断しますと、そういうような極端な言辞まで言っていないケースがむしろ通常じゃないかと思いまして、その程度ですと、これはたとえばその会社を離れることとの関係、自由も他方あるというような議論もあるわけでございますから、直ちにそれが五条の適用の問題にはなってこないのじゃないかということでお答えしたわけでございます。
  226. 安田純治

    ○安田委員 要するに、確かにその強要の仕方の具体的な中身によると思うのですね。出向という名前をつければどんなことをやっても強制労働にならぬなんてばかな話はないし、逆に、そうじゃなくたって強要の仕方の中身によっては強制労働になるだろうと思うのですよ。これは理屈からいって当然だと思うのですね。ですから、本人が強要されたといろいろ訴えてきた場合に、会社側と労働組合に協約があるかどうかということをお調べになるのは当然だと思うのですが、いわば会社は加害者の立場ですね。もちろん、そうするといろいろ弁解なんかがあると思うのですよ。そんなことはやらぬとか、あるいはやったけれどもこのくらいのことは強要に当たらぬのじゃないかとか、いろいろな弁解があると思うのですね。そういう場合、被害者の方の実情を聞かずに結論を出していいものかどうかということなんですよ。  一般の刑事事件でございますと、脅迫されたと言って告訴した場合に警察はその加害者に事情聴取をする、いや、おれは金を貸せと言ったので、取るとは言わなかったと仮に言ったとしますね。そういう場合、被害者のことをもう一遍調べないで、ああこれはもう恐喝罪にならぬということで結論を出すのは、捜査機関として非常に不適当だと思うのですね。基準法上違反だって同じことでして、刑事罰を科するか科さないかはともかくとして、と言うよりは刑事罰に値する国家警察権が発生する事案かどうかを調べるわけですから、その場合に具体的な強要の中身、そのときの雰囲気、これは調べないわけにはいかないと思うのですよ。ことに雰囲気というのは非常に重大だと思う。文章で書けば、金を貸せと言った。大体、ちょっと顔をかせとか金を貸せというのは恐喝の場合通常言うことであって、それを文章に書けば貸せだけれども、これはよこせということですよ、強取するということですよ、雰囲気によっては。ですから、その雰囲気を聞かなければ、実際は文章に書かれた言葉だけでは威圧の程度というものはわからぬわけですよ。だから、どうしても被害者、被害者というかこの場合は労働者ですが、聞く必要があると思うのですが、どうですか。
  227. 小粥義朗

    ○小粥説明員 監督署に基準法違反の事柄で申告がございます場合、申告者は通常被害者である労働者の方から申告があるわけでございます。その場合は、監督署としては当然申告者からまず詳しく事情を聞くわけでございまして、その上で事業所に臨検して使用者側からの事情聴取をしたり、いろいろ捜査もするわけでございます。したがって、通常監督署が申告を受ける場合は、当然被害者である申告者の方からの事情は詳しく聞いた上でやるわけでございますので、ただ使用者サイドから事情聴取するというだけで事を処理しているわけではございません。
  228. 安田純治

    ○安田委員 いままでは一般論ですが、今度は具体的な問題なんです。  北芝で、実は出向についてそういう強要をされたという申告を福島の監督署にした。申告と言えるかどうか、要請ですね。その事実があるのですが、それに対して、やられたと言っておる労働者を調べた事実はございますか。
  229. 小粥義朗

    ○小粥説明員 福島県管内の監督署に、その出向を強要されたという労働者の方からの申告がございまして、それについて監督署は事情を調べたことがございます。その際、これは強要されたという労働者の方からの申告があったわけでございます。そこで、会社の方にいろいろと事情聴取したところが、申告された方々は出向の対象にもともとなっていなかったということでございまして、そのような行き違いと申しますか、それが二度ほどあったようでございますけれども、一応申告者は出向を強要されたという方でしたので、その方から事情を伺った上で会社側の事情を聞いた、こういうことになっております。
  230. 安田純治

    ○安田委員 実は私は申告の控えを持っていますが、大分それは違うのじゃないですか。一人一人の名前を載せて、こういうことを言われたということを書いて文章になっておりますけれども、その人たちを調べなかったのですか、この申請になっている中身の一人一人。たとえば茂木忠男君とか具体的に名前が挙がっていますが、どうですか。佐藤房夫君とか、この人たちから聞いたのですか。私どもの調べによると、監督署から何ら聞かれてないと本人たちが言っているようですが、どうなのでしょう。
  231. 小粥義朗

    ○小粥説明員 私ども、福島局から報告を受けています限りにおいては、監督署に十二名の申告者の方が来られて出向を強要された旨の申告があったので、監督署としては事業所の方から事情聴取した結果は、それらの人はいずれも出向なり移籍の対象になっていないということでございましたので、それによって調査は一応打ち切ったかっこうになっているわけでございます。
  232. 安田純治

    ○安田委員 申請書にはちゃんと名前が載っています。その人を調べないで結論を出しているような、私どもの調査によるとどうもそうなっているのですよ。しかもわりかし詳細な要請書で、こういうことを言われたと書いてあります。  そこで、ぜひ一言注意を喚起したいのは、先ほど言ったように、金を貸せという文章になっているからこれは金銭の消費貸借の申し入れだと錯覚することはできないのであって、そう言われた雰囲気もあるわけですね。本人にどういう雰囲気で、どんな顔つきで聞かれたのか、どのような心理的な威迫を感じたのかということを聞いた上で会社側の弁解を聞かなければ、言葉だけではまずいと思うのですよ。そこで、私どもの調べによると、聞かれていないと本人たちは言っておりますので、結論を出すのはともかくとして、一遍調査をしてみていただきたいということをぜひお願いしたいわけです。これは時間がないから、最後に答えていただければ結構です。  そういうわけで、この北芝問題は、いままで申し上げましたように、東芝との系列化の中で赤字部門である原子力機器産業に参入するようなことを会社側は言っておる。そういう中で放射線の問題が先ほど言ったように出ておる。そういう中で実は出向の問題が出て、労働基準監督署に訴えが出たり、最近この原子力発電所に行くのを拒否といいますか、いやだと言って解雇された人が一人おります。これはさき申請した茂木君という人がそうです。今度解雇されていますから。そういう事実も起きているわけなんで、ぜひその点で、通産当局も先ほどから北芝のことを心配されていらっしゃるのは大変ありがたい話なんですが、ぜひそういう観点からももう一遍北芝の再建問題について、本当に北芝がうまく再建できるように、ひとつ役所としても見ていただきたいということを最後にお願いしておきたいわけです。これは返事は要りませんけれども、労働省の方でいまちょっと返事がされたいようだったので、返事をいただければ最後に……。
  233. 小粥義朗

    ○小粥説明員 先生のお話と私ども報告を受けておりました話と若干ずれもあるようでございますので、実情調査したいと思います。
  234. 安田純治

    ○安田委員 よろしくお願いします。  終わります。
  235. 野呂恭一

    ○野呂委員長 大成正雄君。
  236. 大成正雄

    ○大成委員 最後になりましたが、よろしくお願いします。  去る四月十三日に中政審の小売商政策小委員会並びに産構審の小売商政策小委員会の合同小委員会によって、大店法並びに商調法改正に関する意見の具申がなされました。この内容はすでに新聞紙上等にも公表されております。この意見具申に従いまして、政府は近く両法の抜本改正案として国会提案を準備されているように承っております。当商工委員会としても、また各党としても、この抜本改正に関しましては重大な関心を持っておるわけであります。同時に、全国の小売商業の紛争実態、現況からいたしますと、一日も早く本法改正案国会を通過して施行体制に入ることを、全国百六十万の小売商業者は期待いたしておるところでございます。  そこで、まず第一に承りたいわけでありますが、政務次官にお伺いいたしたいのですが、小売商調整関係法の立法作業は政府において現在どの程度まで進んでおるのか、その現状をお聞きしたい。  同時にまた、これが閣議決定をされ、国会に上程をされる時期はいつごろと目されるのか、承りたいわけであります。今国会も五月十七日の会期末まで余すところ約一カ月足らずでございます。なお、この間五月の連休もありますし、総理大臣のアメリカ出張もあるわけでございますが、そういった状況を踏まえて、本法改正について政府はどれだけの意欲を持って今国会で通過させようとしておるのかも含めて、承りたいと思います。
  237. 野中英二

    ○野中政府委員 御存じのとおり、大店法及び商調法改正につきましては、過日中小企業政策審議会及び産業構造審議会からの答申が出ておりますので、これを受けまして政府もただいま鋭意作業中でございますが、できるならば今国会にぜひ提案いたしたい、こういう熱意に燃えていま鋭意作業中でございます。
  238. 大成正雄

    ○大成委員 できるならばということは非常に政治的な含みを持っておると思うのですけれども、いま衆参両院、特に参議院で審議しておる重要案件等の処理状況等を見通しいたしますと、できるならばということは非常に意味が深いと思うのでございます。各党閥におきましては、議員立法ででも今国会に間に合わせようというような意見もあるやに承っておるわけでありますし、またそれも結構だと私は思うわけでありますが、閣法でなく衆法によってこれを改正しようというようなことに対して、政府としてはどのようにお考えでしょう。
  239. 野中英二

    ○野中政府委員 御存じのとおり、通産省といたしましても、いま重要法案を抱え、参議院の今後の法案審議情勢等も踏まえなければなりませんし、流動する国会の情勢がどうなるか、この辺も見きわめまして、できる限り、私はこう言ったわけでありますが、今国会提案をいたしたいというのがわれわれの偽らない気持ちでございます。
  240. 大成正雄

    ○大成委員 いまの次官の答弁からいたしますと、確信を持って今国会本法改正を期する、こういった明確な御答弁までは得られないわけでありまして、私ども非常に憂慮する面もあるわけであります。しかしながら、きょうは大分見えなくなってしまいましたが、各党の皆さん方も恐らく本法の成立は期して待ちたい、こういう気持ちであろうと思うわけであります。  そこで、現在政府本法改正の方向についていろいろ検討しておられますが、正式に案として提案された段階ではこれを修正することもむずかしいと思うのでございますけれども、この立法の以前に、私はいま答申の中でいろいろ指摘されておる事項等も含めてその問題点について御質問をし、政府の考え方をただしていきたい、このように考えるわけです。  まず第一に、大型店と中型店の面積の境界線を千五百平米、下限を五百平米、こうしておるわけでありますが、新しくいわゆる中型規模の小売店舗というものを規定していこうという考え方でありますが、この面積境界線を五百平米以上、千五百平米以上、こういう線引きをした根拠について承りたいわけであります。現在全国の条例あるいは指導要綱等では三百平米、八百平米、千平米、さまざまでありますけれども、これをあえて下限を五百平米、千五百平米といった境界線を引いたことについての根拠を承りたいわけであります。
  241. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいま御議論のございましたように、審議会の答申が四月十三日に出まして、その後私どもで法案作成の作業をただいま進めておる状況でございます。国会等の事情もございますが、法案につきまして法制的な見地からの問題点がいろいろとございますので、ただいま内閣法制局でいろいろ審議を進めていただいておるところでございます。そんなことでございまして若干時間がかかっておりますが、できるだけ早く案をつくり上げたいということで考えております。  ただいま御指摘の大規模小売店舗をさらに準大規模小売店舗と申しますか中型店まで対象を広げるということでございますが、先般の審議会の答申では、その下限を五百平方メートルというように一応出しております。これにつきましては、一つのデータといたしましては、先生御案内のように、ただいまの大規模小売店舗法の千五百平米未満の店舗につきまして、都道府県あるいは市町村で条例、要綱その他におきまして調整を行っておるわけでございますが、市町村等で行っております調整につきまして過去約三年間の調整状況を見ますと、大体全体の九割以上が五百平方メートル以上の店舗、千五百平方メートル未満でございますが、この間の店舗の場合ということになっておりまして、そういったところから大体五百平米を下限にすればほとんど問題の発生に対処し得るんじゃないかというのが線を引きました根拠の一つでございます。
  242. 大成正雄

    ○大成委員 次に、届け出制か許可制かといった問題でございます。  答申では届け出側ということでありますが、この委員のうちで八名の方々が許可制が望ましいという少数意見を付しております。四十九年のこの大店法への改正以前、いわゆる旧百貨店法時代は許可制であったわけでありますけれども、全国の小売業の方々は、これを許可制にすべきであるといった強い意見を持っておるわけでございます。出店中止を含めた調整権限というものを規定していこうというこの立法の構想からするならば、私は許可制でもいいんじゃないか、何ゆえこれを届け出制ということで答申がなされ、またそういう方向で立法が準備されておるのか、疑問に思うわけでありますが、許可制ではぐあいが悪いということはどこにその理由があるのかを承りたいわけであります。
  243. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 審議会の答申では、許可制等の問題につきまして答申案自体では届け出制というものが提案されております。先生御指摘のように、付記意見といたしまして、中小小売商団体の代表の方々その他から、調整方法について許可制をとるべきだという意見が出されております。ただ、このような意見に対しまして、一方では、規制強化には反対であるという趣旨の意見が消費者団体あるいは大型店の代表の方々から出されております。  許可制か届け出制かあるいはその他の方式かという問題については、いろいろと御意見のあるところでございますが、現在の大規模小売店舗法のとられております届け出制度、これによっていく。百貨店法の法律から大規模小売店舗法の届け出制に移行したわけでございますが、それはそれなりにいろいろの種々の理由があって現行法ができ上がっておるわけでございますが、そういった総合的な判断をいたしますと、やはり現行の届け出制の基本に立って調整を進めていくということが一番よいのではないかという趣旨が、この答申にも一応出ておると判断いたしておるところでございます。
  244. 大成正雄

    ○大成委員 この問題につきましては、昭和四十九年以前の旧百貨店法の当時、なぜ許可制であったということにはそれなりの理由があった。すなわち当該行政に対する指導の一つの重点の置きどころがそこにあったと思う。比重のかけ方がどっちに比重をかけるのかといった判断があったと思うのであります。今日それが再び届け出制というそういう方向を継承していこうとするわけでありますが、この点については、きょう時間がありませんので、いずれ法案として本委員会に提案された段階で、十分この本質的な論議を詰めたいと思います。  次に、立法の構想として都道府県知事調整というものを抜本的に持ち込んでおるわけでありますが、都道府県知事の意見を徴するあるいは都道府県知事みずからが中規模店については調停をする、調整をしていく、こういったことでありますが、知事といっても、知事の権能をどのようにこれを組織上、行政上裏づけしていくかといったことが一つの問題でありますが、現在政府が考えておる知事の調整のあり方の具体的な内容あるいは組織の構想等について、承りたいと思います。
  245. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 店舗の大きさによりまして、千五百平米以上の調整者は通産大臣、千五百平米未満の調整者を都道府県知事とするというような案になっておりますが、都道府県知事調整の方式に関しましては、最終的には地方自治体の長としての都道府県知事権限によりましてその判断をするということになるわけでございまして、ただ、実際上は、各都道府県におきまして審議会等の機構を構成すると申しますか、あるいはさらに市町村等の意見を聞き得るような一つの体制というものがとられるものと思われますが、どこまで法律でそういった点を書き込むかというような問題につきましては、ただいま法制局で審議をしておるところでございます。
  246. 大成正雄

    ○大成委員 この点、非常に重要でありますが、都道府県段階に知事の諮問機関としてのいわゆる都道府県段階の三者構成あるいは四者構成の商調協的なものを考えておられるのか、あるいは審議会といったものを、いまお言葉の中にありましたが、考えておられるのか、その他の何らかの機関を考えておられるのか、その点、承りたいと思います。
  247. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいまの大規模小売店舗法によります大規模小売店舗審議会が意見を申します際に、商工会議所あるいは商工会の意見を聞いた上で大臣に意見を申し述べるということになっておりまして、その際、商工会議所、商工会等でいわゆる商調協を編成いたしまして、関係当事者の意見をまとめて調整意見を出していくわけでございますが、こういった方式を都道府県がとるのか、あるいは全く別な機構をつくると申しますか、構成員その他につきまして新たな観点から、たとえば中立委員だけの構成にするとかいろいろな方式は考えるわけでございますが、その点については、各都道府県実態にもよりますし、最終的には知事の権限行為ということになってまいりますので、知事の判断によって決めていくということになると存じます。
  248. 大成正雄

    ○大成委員 知事の権限ということになりますと、当然県議会あるいは県議会の内部の委員会、こういったものの意見というものが相当反映してくると思うのです。要するに政治の介入というものも考えられなければならぬと思うのですが、そういう点は十分配慮しておられるのでしょうか。
  249. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 都道府県知事に対しましては、これは一種の機関委任事務ということになってくると思いますので、やはり通産大臣が行う場合と同様、公正妥当な調整方式がとられるということが基本であると考えるわけでございまして、そういった方向で都道府県知事にもお願いをしてまいりたいと考えます。
  250. 大成正雄

    ○大成委員 次に、現在の紛争の事例の中で、要するに建物設置者の建築確認の方が先行してしまって、結果においてこの調整が難航しておるという事例が多いわけであります。この建築確認行政と小売商調整の整合の問題について、現在立法段階において政府はどのように考えておられるのか、この答申の中にはこういった問題はないのですけれども、この点について考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  251. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 この答申の中におきましては、通産大臣が行います大規模小売店舗の調整の場合にもその届け出先を都道府県知事とする、いわゆる届け出を都道府県知事経由とするというような考え方が盛り込まれております。これは、都道府県知事を経由することによって地域的な視点を十分取り入れることが可能になってくるのではないか、またさらに、都道府県知事調整について特に意見を付することができるというような方向で、そういう意見の反映の仕組みが取り入れられるのではないかということが期待されておるわけでございます。  そういった都道府県知事の関与というものを強めていくということが言われておりますから、建築基準法の関係につきましては、法律の関係におきましては、直接建築についての規制をこの法律の中に取り込むということは、法律体系が異なっておりますので困難な点があるわけでございますが、実際上の問題としては、都道府県知事がそういった意見を具申するというようなところにも、たとえば建築問題あるいは地域開発問題、そういったいろいろな観点からの意見も含めて判断したものが反映されていくというように考えられるわけでございます。
  252. 大成正雄

    ○大成委員 次に、中小団体申し出権の解釈でございますが、法律的な資格を持った者でなければ申し出権がない。また、きょう提案されました衆法のこの改正案においても、協同組合、商工組合等の法的な資格を持った者というふうに規定されているのですが、これも私どもの見解としてはおかしな話だ。要するに協同組合であろうがなかろうが、ともかく地域小売業者としてはこの大型店あるいは中型店の出店によって圧迫を受けるわけでありますから、協同組合なり商工組合なりの組織の本来の目的とこの商業調整の問題とは全く次元の違う問題です。そういうことでありますから、法的な人格を持った者でなければ申し出権がないなどという、そういう決めつけをしていること自体にいかにも官僚的な発想が盛られていると思うのです。この申し出権についてなぜ法的な資格を持っていなければならないか、その理由について承りたいわけであります。
  253. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 申し出制度の問題につきましては、先般の審議会の答申で、千五百平米を下回る中規模小売店舗については、公示制度を加味した申し出制によるのがいいのではないかというような提案が出ております。  ただ、この点につきましては、その他の大規模小売店舗あるいは店舗自体の設置の点につきまして届け出制を採用するということになってまいりますと、届け出制と申し出制というもののかみ合わせと申しますか、そういった問題も出てまいりまして、法制上の問題等もいろいろ出てまいりますので、最終的にどういうような方式によるべきかという点について、ただいま法制局等の審議を進めておる段階でございまして、まだ成案を得ていないところでございます。したがいまして、申し出団体につきましても、ただいまのところ、私どもとして特に一定の考え方を持っていないところでございます。
  254. 大成正雄

    ○大成委員 ただいまの審議官の答弁は答弁になっていないのですが、要するに、なぜ法的な団体でなければ申し出権がないのか、その理由を聞きたいということを言っているわけです。そうすると、政府側としては、申し出権のある団体というのは法的な資格のあるなしをまだ判断してない、こういうことでしょうか。
  255. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 先生の御指摘の点は、小売商業調整特別措置法申し出団体の件でございましょうか。それとも、現在私どもが検討いたしております改正案の問題でございましょうか。(大成委員「そうです」と呼ぶ)改正案の問題につきましては、ただいまのところ、申し出制度について届け出制度との整合性と申しますか、そういったところの審議をまだ終わっていない段階でございまして、申し出団体の範囲をどうするかというところについて、実はまだ成案はできていない段階でございます。
  256. 大成正雄

    ○大成委員 それでは次に、知事が中型店の調整をするに当たりまして、従来の会議所、商工会の商調協というものの役割りはどのように機能をしていくのでしょうか。
  257. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 千五百平米未満のいわゆる中型店の調整につきましては、都道府県知事調整権限ということにしてはどうかという案になっておるわけでございまして、その場合の具体的な意見を諮問する方式と申しますか、それにつきましては、先ほど申し上げましたように、都道府県知事が最終的に決定をいたす機関になるわけでございまして、その際、従来大店法によりまして設けられております地元の商調協をどういうように活用していくかという点でございますが、この点につきましては、大規模店舗につきましては大体従来と同じように、ただ、商調協の運営につきましていろいろな問題を改善しつつこれを活用していくということを期待いたしておりますが、都道府県知事の行います中型店の調整につきましては、これを活用するかどうかというところは、最終的には都道府県知事の判断にゆだねられることになるわけでございます。
  258. 大成正雄

    ○大成委員 この点もいまきわめて重要な御答弁がなされておるわけでありますが、知事がこの中型店の調整をするに当たっては、これは法律でなくても、政令なり施行のための通達なりで、会議所、商工会の意見は当然徴されなければならぬというふうに私どもは理解をするわけであります。ぜひそういう方向で立法をしていただきたい、地元の商調協の意見が直接十分反映するような方向でひとつぜひ御検討を願いたい、これは希望を申し上げておきます。  次に、営業時間、営業日数については各地域の実情にゆだねる、こういう方向であるというふうに承っておるわけでありますが、この営業時間、営業日数というものが紛争実態としては非常に大きな意味を持っておるわけでありまして、法律としてこれを規制することがなぜむずかしいのか、この解釈を承りたいわけであります。従来は、大規模店舗審議会の目安というものが示されて、それに準拠して営業日数等の指導がなされておったように私は理解をしているわけでありますが、その解釈を承りたいわけであります。
  259. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 営業時間と営業日数の問題でございますが、先生御案内のように、ただいまの大規模小売店舗法では、通産省令で定めました一定基準、すなわち閉店時刻午後六時、休業日数月四日という基準よりも厳しい条件である場合には届け出の必要がございませんが、これを超えるような時刻まで開店する、あるいはこれを下回るような休業日数になるというような場合には届け出をする必要がある、こういう法律規定になっております。そこで、この基準よりも緩やかな条件の場合には、現在、具体的には店舗面積あるいは開店日等の調整と同様に、開店の際に商調協の議論等を踏まえまして調整をしておるわけでございます。  それでその際、たとえば午後七時ごろが一般的であるとか、あるいは休業日数は年三十日であるとか、そういった一般的な考え方があり得るわけでございますが、これを法律規制をする一定の時間、日数以外の場合には原則として認めない、こういう考え方が一部であるわけでございますが、この点につきましては、対象も店舗の業態もいろいろ多種多様になっておりますし、また地域によって商習慣等の差もございますので、これを全部法律で決めまして、それ以外は原則として認めないという方式をとるのは地域の実情から見ていかがなものであろうか、もう少し弾力的な考え方が望ましいのではなかろうか、こういったように考えておるわけでございます。
  260. 大成正雄

    ○大成委員 次に、答申の最後に、全国の条例あるいは要綱について、必要性がなくなるから廃止の方向で検討されるべきであるというふうになっておるわけであります。しかしながら、現在の大店法あるいは商調法のもとにおいても、条例あるいは指導要綱が生きておる。また、罰則を伴う条例等についても、法制局の見解としては、これは直ちに違法であるとは認められないといった解釈がなされておるわけでございますが、この新しい立法がなされても、自治体の条例や指導要綱を廃止することはなかなかむずかしいと思うのです。これは自治権に属する問題だと思うのですが、この点の解釈はいかがですか。
  261. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 先生御指摘のように、地方自治体の自治権の問題がございますので、これを禁止することにはなかなかむずかしい問題があろうかと思います。  ただ、一応いま提案されておりますように、対象店舗の範囲を五百平米まで引き下げまして、これよりも大きな店舗についてはすべて届け出制を採用するということがもし仮に行われた場合、それがまた五百平米未満の店舗につきましても、現在商調法の十五条にございますような都道府県知事紛争についてのあっせん、調停規定のようなものが何らかの形で法律上どこかに担保されておるということになりますと、実際問題として小さな店舗の場合でもいろいろ問題解決に対処し得るというような制度が仮にできるといたしますと、調整対象よりも小さい店舗についての条例あるいは要綱は必ずしも必要がないのではないかということが実態面からも言えるわけでございまして、そういう意味で必要性がなくなるので、廃止の方向で検討されるのが妥当ではなかろうかということになろうかと考えます。
  262. 大成正雄

    ○大成委員 答申の二番目にあることでございますけれども、「調整対象店舗以外のものに係る紛争にも対処できるようにするために、斡旋、調停ができるような制度を設ける方向で検討すべきである。」という意見があるわけであります。この「調整対象店舗以外のものに係る紛争にも対処」するということでありますが、これはどういうことを政府は意図しておられるのか、その点を承りたいと思います。
  263. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 現在の小売商業調整特別措置法の第十五条第三号に、「中小小売商以外の者の行う一般消費者に対する物品販売事業に関し、その者と中小小売商との間に生じた紛争」につきまして申し出があった場合には、都道府県知事がこれのあっせん、調停を行うというような規定がございます。このような規定の対象は必ずしも範囲が限定されていない、店舗の大きさ等を限っておりませんので、小さな店舗の場合にも紛争あっせんができることになるわけでございますが、こういった条項をどこかに、今度の新しい法律体系をつくりました場合に、何らかの形で法律にこういう趣旨が出ておることが適当ではないか、そういう意味での検討をすべきであるというのがこの答申の趣旨だと考えております。
  264. 大成正雄

    ○大成委員 同様に、生協、農協スーパーなどについての問題でありますが、答申の四項の中に生協、農協スーパーなどの活動について、販売事業について地元中小小売商との調和が図られるような方途が講ぜられるべきであるというのがございます。また、全国小売商団体の今日の熱心な御要望としては、この生協、農協スーパーなどの規制を強化すべきである、こういう意見であります。  そこで、生協、農協等の員外利用の規制の強化、取り締まり強化の問題でありますが、この点は法律の取り扱いが違う、所管行政が違うわけでありますが、通産当局としてこの生協の員外利用の規制の強化の指導について、過去において関係省庁との打ち合わせをしてきたことがあるのかどうか、また法改正においてこの問題はどう取り扱おうとしているのかを承りたいわけであります。
  265. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 生協、農協の問題につきましては、現在の大店法あるいは商調法におきましても、その扱いが法律的にどうなるか非常にむずかしい点も含んでおります。御案内のとおり、それぞれの法律があるわけでございます。しかし、一方で現実に一般の小売商業者との紛争問題もあるのが実情でございますので、これらの地元中小小売商との調和を図るような何らかの方途を講ずるべきではないかということがこの答申にも盛り込まれておるわけでございます。やはりそれぞれの法律運用とも非常に関係があるわけでございまして、それぞれ担当の主管省とは常時連絡をとっておるわけでございます。今回のこの問題の改正審議に際しましても、常に農林省あるいは厚生省等の担当者がこの会議に参加をいたしておりまして、議論について承知しているところでございます。
  266. 大成正雄

    ○大成委員 いままで大店法、商調法改正に関する政府側のお考え等を承ってまいったわけでありますが、まだまだ具体的な内容については十分審議を尽くさなければならない点が多くあるように思われるわけであります。  要は、この改正案が今国会に通過させることができるかどうか、このことが非常に重大な問題でありまして、先ほどの政務次官のできる限りとかできるだけといったようなことでは、今日これだけ大きな問題になっておる、岩槻等では洋品店の経営者が自殺までしている、あるいは浦和市在の白鍬では警察の出動まで起こっている、そういった事例も全国にあるわけです。また、法的な係争にまで発展しているといった事例もあるわけでありまして、これだけ社会問題化しているこの問題を、政府みずからがその責任において法の改正を果たすことによってこの問題を解決していこうというその責任を放棄するようなことになったならば、私は現内閣の責任はきわめて重大だと思います。あえてわれわれ政党の立場に立つならば、衆法によってこれをやることもやぶさかではありませんけれども、できるならば政府みずからがその責任を果たす、こういう決意でやってほしい、こう思うわけでありますが、最後に、もう一回政務次官の決意を承りたいと思います。
  267. 野中英二

    ○野中政府委員 大成先生から御指摘がありましたように、岩槻でも自殺者が出る、あるいはつい最近与野市におきましてはけが人が出る、こういうような実態でございまして、全国津々浦々に至るまでこの係争が絶えないようでございます。したがいまして、私どもといたしましては、今国会提案し、しかも通過させたい、こういう気持ちで作業いたしております。  以上の決意を述べまして、答弁といたします。
  268. 大成正雄

    ○大成委員 終わります。
  269. 野呂恭一

    ○野呂委員長 次回は、明二十六日水曜日午前十時三十分理事会、午前十一時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十一分散会      ————◇—————