○
熊谷政府委員 お答えいたします。
この翻訳文というのは、
国際出願がなされまして引き続く国際公開、一年半後に行われるわけでございますが、それに続きまして一年八カ月までに出されることになるわけでございます。ただいま
先生がおっしゃいましたように、翻訳文と原文の不一致という問題は、実はこの翻訳文の提出の時点で起きるわけでございます。御
承知のように、この出された翻訳文は
国内公表が遅滞なく行われますが、その取り扱いは、約五割がそのまま、
審査請求なく七
年間継続のまま残るという形になるわけでございます。また、残りの五〇%
程度は
審査請求がございまして、翻訳文によります
審査が行われ、いま
先生の御
指摘のように仮の実体のない部分につきましても異議の申し立てがなければそのまま公告される、またやがて権利になる、こういう形になるわけでございます。
そこで、結論から申し上げますと、
審査請求にあって
審査をするもの、それから
審査請求が行われないままになっておるもの、この
審査請求の行われないままになっているものにつきましても、場合によりますとこの誤った
国内公報を見まして、たとえば後願の方で企業化を
考えていた場合に、もうすでにそれがあたかも真実であるかのごとく誤解をいたしまして企業化をやめる、こういうような弊害もあるわけでございまして、権利保護という立場に立ちますと確かにその点は問題でございます。したがいまして、
審査段階に入りましただけの分野のみならず、それ以外の問題もやはり放置されるべきではない、本来の
問題点として
先生御
指摘をいただいいるものと私理解をいたしております。したがいまして、
国内公表します
段階に全件について翻訳文と原文とのチェックを行って真正な翻訳文だけが出されるという事態になれば、これは
先生のおっしゃるような懸念はなくなるのかもしれません。しかしながら、このチェックというのは、たとえば新しい翻訳センターといったような機関でもつくらない限り、なかなかこういった真正な翻訳について
処理をすることができませんし、また、翻訳しましたものが、他人の権利の翻訳が正しくなされているかどうかにつきまして本人の承諾を得る必要もございます。あるいは本人がその翻訳に
承知しない場合にはその裁定であるとか、新しい
制度も必要になるかもしれません。私
どもがこういった
国内公表の
段階で全件をチェックするというようなことは、これは実際上不可能でございます。まずそれが第一でございます。
それから第二には、この多国間の取り決めに基づきます多種の
言語の
出願を
処理するものとしまして、この翻訳文と原文の不一致というものが本来ないというたてまえでプラクティスが組み込まれるというものでなければ、これはワークしないという
考え方が流れていると私は
考えております。先ほど午前中の御
質問にもございましたように、大体こういった見せかけの
出願を意図的に
出願いたしましても、後で瑕疵が発見された場合に拒絶されるという非常に不安定な本人に不利な結果もございますので、それほど多くの分野においてこういった不一致が起こるとは
考えておりません。いわばレアケースであると
考えておりますが、しかし、理論上はあり得るわけですから、法的に
措置をしなければなりません。
その場合に、ただいま申し上げましたような全件についての原文と翻訳文とのチェックを常に照合すべきということを法的に義務づけることの妥当性ということを
考えました場合に、私
どもは現実問題としましてその
処理がきわめて困難であるということと、また、そこまでしての法的な強制は
制度として妥当ではないのではないかという
考え方に立ちまして、公告後の異議待ち並びに無効審判
請求、訂正審判とのリンクによります
措置をとっておるわけでございます。これは
制度としての問題としてそういうふうに取り運んだ次第でございます。