○
宮崎参考人 私、
宮崎でございます。
原稿を用意しておりませんで、メモにアイテムだけを書いて申し上げますので、適切なる発言を欠くことがあるかも存じませんが、お許しをいただきます。
今回の
法案につきまして、化合繊が
構造不況業種に指定されておりますが、私は、その
原因を考えてみますと、第一は生産過剰だと思いますが、大体二割程度の勧告操短に引き続きまして、今度
不況カルテルに移行することになっております。しかし、大体二割、三割の操短というのはほとんどの業種に共通でございまして、何も化合繊に限ったことではございません。化合繊の原料である石油化学は、すでにわれわれ以上の減産をしております。そういう意味におきましては、これはほとんどの業種に共通だと思っております。
それから、第二のポイントは
円高でございます。これも輸出
産業はほとんど共通でございますが、化合繊
業界は大体五〇%以上を輸出しておりますので、私がざっと計算いたしましても、昨年度は二百九十三円でございましたから、それといまの二百二十円そこそこと比較いたしますと、約二千四、五百億の円の手取り減になります。それから、五十二年の一月−十二月で二百七十円でございましたから、これと比較いたしましても約千七百六十億という計算になります。こういうように円の手取りが非常に減るということが
構造不況の
原因でございますが、これも輸出
産業共通の問題でありまして、何も化合繊に限った問題ではございません。
化合繊に限っての問題と思われますのは、次の第三のナフサの問題でございます。
輸入原材料というものは、自由に取引がされておりますと、
円高によって当然下がってまいりますが、ナフサの問題は、御承知のように石油業法がございまして、その三条と十二条だと思いますが、その条文によりまして、ナフサの輸入は、
法律的には可能でございますけれ
ども、現実的にはできないような仕組みになっております。したがいまして、現在輸入ナフサの値段の差が大体七千円以上ございます。ロッテルダム価格と比較してもそれよりさらに大きいのですが、諸先生方が
御存じのように、三千円値下げということが昨年の十月−十二月分について決まったというように表示されておりますけれ
ども、とてもあれでは問題になりません。そういうふうに
円高の恩典を受け得ないような
法律の仕組みがあるために、これは合繊、石油化学独特の問題であると私は考えております。
それから次には、輸入でございます。合繊が非常に値段が落ち込みまして、これが恐らく五百億ないし八百億ぐらいの大きな手取り減になっておりますけれ
ども、これが上がってきますと輸入がふえてまいります。ですから、現在の実情を見ますと、たとえば北陸三県等にあります製品、ジョーゼットなどの一部の分野はほとんど食われておりますし、それから、台湾から非常に安い仮より糸が入るというようなことがございまして、輸入の問題については、御承知のように国際協定、MFAがございますけれ
ども、現実には合繊は依然としてまだ輸出
産業でございますので、この発動が非常に困難であるという問題がございます。ですから、私
どもは、私
どもみずからできますアンチダンピングを関税定率法によりまして適用しようということで、いまその準備をし研究をしている段階でございます。
こういうところから考えますと、今度の
法律は、要するにオーバープロダクションである
設備を廃棄するということのための独禁法との
関係を規定してあるというのが第一点でございまして、それに要する
資金はいわゆる
保証協会をつくって確保してやるというこの二点がこの
法律のポイントでございまして、われわれが直面している
円高、ナフサの問題、輸入の問題というような抜本的な問題には何らこの
法律は触れておりません。したがいまして、今度の
法律は、
構造不況産業安定法というような大きな羊頭を掲げておりますけれ
ども、実際は狗肉を売っている
法律でございまして、私
どもとしては従来の特繊法というような
法律でちゃんと経験がございますけれ
ども、この
法律に余り多くを期待しておりません。
ただ問題は、私
どもがビジネスマンとして非常に重要に考えますことは、
設備を廃棄するということは、先ほど申しましたオーバープロダクションの解決でございまして、これは必ず何らかの方法でやるべきだと思いますけれ
ども、問題は、オーバープロダクションを解決するための
設備廃棄をやる
資金の確保でございます。この
法律は、この一番大事なところにまだ大変不明確な点がございまして、あるいはこれからだんだん明らかになると思いますけれ
ども、実はこの点がこの
法律の本当のポイントであると考えております。
と申しますのは、要するにいまのところそういう基金の出
資金の約十倍程度の金を用意するということでございますけれ
ども、仮に百億としましても千億ですから、私
どもの
設備でも、仮に三割廃棄いたしますと平均で千億要ります。そのほかに労働者の
処理が要りますから、これが退職金その他で、出し方によりますけれ
ども、千億ということも考えられないことはないということでございますし、
設備の廃棄による廃棄費用が要ります。そういうことでございますので、実際この
設備を廃棄する——自主廃棄をするという話がさっきもございましたけれ
ども、廃棄すると
相当な特損が出ます。担保物件がなくなるわけです。したがって、借り入れをする限度の担保物件が減ってくるわけです。そういう意味で、私
ども合繊
業界としては、その
設備を廃棄するについては残存
業者が負担したらどうかという大体の
コンセンサスが得られております。
しかし、みずから進んで
設備を廃棄するというのは、合繊のように巨大な
設備産業の場合はブックバリューが
保証されませんとなかなか廃棄に踏み切れぬと思うのです。そういう意味でそのブックバリューが少なくとも
保証される、でき得べくんば廃棄費用も負担される。それから大事な雇用問題、三割としますと一万数千人の失
業者が出ますが、それらの受けざらがもうございません。ですから、これの退職金その他について、離職者法等がございますけれ
ども、ああいうものではとうていカバーできませんので、その点の
資金がきわめて低利かつ長期に確保できるかどうかという点でございます。
ですから、いまその
コンセンサスがほぼ得られておると申し上げました残存
業者負担にいたしましても、その残存
業者がみずから負担する分の持ち分を自分で払うのか、あるいは買い上げ
機関をつくってその買い上げ
機関が補償して、われわれは買い上げ
機関に対して補償をすることになるのか、これは恐らく研究中だと思います。
それから、
保証基金の
保証のほかにわれわれの裏
保証が要るのか、あるいは物的担保の提供が要るのかということでございまして、やはり物的担保なり
保証をいたしますし、特に
保証がいわゆる営業
報告書に載るような
保証でございますと、自然にわれわれの借り入れ限度額の担保の
能力は減ってまいります。
ですから、そういう点がございますので、実際の金を借りるのはどの市中
金融機関から借りるのか、
政府機関から借りるのか、その
金利がどうなるのか、返済期間がどうなるのか、こういう点。それから、
保証される側ではブックバリューが
保証されるのか、何割
保証されるのかという点が非常に重要でございまして、ここが完備されておりますと、みずから自発的に、つくってもつくっても損が出るようなものであるならばこの際廃棄しようか、土地でも売ろうかというものが出ないとも限らないのでありまして、ここが実はこの
法律の本当のポイントでございまして、そのポイントのところがまだこの
法律では何にも明らかになっておりません。
そういうことで、私はこの
法律の問題はこれからであるというふうに考えております。ですから、その辺のところをどうか適切な御施策をちょうだいして、廃棄することが自動的に可能になるような素地をつくっていただきたいということが、私の念願でございます。
それから、問題点でございますけれ
ども、廃棄をいたしました場合に、廃棄についてあるいは新
増設につきまして、問題は、
指示カルテルについて
アウトサイダー規制命令が今度ございません。かつての特繊法というのは、
指示カルテルについて
アウトサイダー規制命令ができるようになっておりました。承るところによりますと、
指示カルテルで廃棄をして
アウトサイダーを規制いたしますと、要するに
政府の補償がないじゃないか、そういう意味で、ある意味の憲法違反だというような
法律論があったやに伺っておりますけれ
ども、やはり昔の特繊法では
指示カルテルに
アウトサイダー規制命令がありました。それから、別の
法律で、登録制でございまして、これは紡機の廃棄ですけれ
ども、そのときは登録制で
設備の新
増設が現実的に規制されておりました。そういう意味で、従来の
法律は
指示カルテル及び新
増設について
アウトサイダー規制命令または新
増設に対するチェックがあったんですけれ
ども、今度の
法律にはそれは両方ともに何にもございません。
そういう意味におきましては、やはり
指示カルテルに
アウトサイダー規制がないと、全体がまとまっていくのには自主的に話をまとめるしかないという意味で非常にまとまりにくいという点がありまして、これは
法律的にも今度の
法律の大きな穴でありまして、私は、少なくとも
指示カルテルについて
アウトサイダー規制命令がないのは、この
法律の大きな欠陥であるというふうに判断をしております。
原案は、承るところによりますと、新
増設につきまして
アウトサイダー規制命令があったように聞いておりますけれ
ども、本当は
指示カルテル自体についてこそ
アウトサイダー規制命令が必要でありますし、過去においてわれわれにはそういう
法律が現にございました。特繊法というのがございました。それが問題の第一点でございます。
それから第二点は、
設備を廃棄いたしましても、化合繊の場合は技術が進歩しまして、スピードが上がるんでございます。スピードが上がりますから、二年もしますとまた生産過剰になります。したがいまして、
設備廃棄がきわめて一時的な効果しかないという点がありまして、
設備を廃棄しましても、これはやはりまた
不況カルテルなりなにが要るということが予測されます。この点が化合繊
業界の問題の第一点でございます。
それから第二点は、新
増設の禁止でございますが、その中に改造の禁止も入っておりますが、改造と改良とは一体どう違うのか。これは国会答弁等を見ますと
政府側の答弁がございますけれ
ども、私
ども実務から見ますとその区別がわからない。
特に、たとえば私
どもは重合と言っております。重合の点について、新しい原料転換をする、たとえばDMTをPTAに転換する場合だとか、あるいはバッチ式をコンティニュアスシステムにかえるとかというような場合は改造なのか、改良なのかという点がありまして、そのときに紡糸機だけを
指示カルテルをして、重合はしないという点もございますが、そこらあたりの運営が非常にむずかしいということを考えます。
それから、どの部分をいたしましても、技術が非常に進歩しますから、進歩した場合に、やはり古い
設備をかえなければいけません。
スクラップ・アンド・ビルドはいいということになっておりますけれ
ども、そのときは必ず
能力がふえます。重合でも、従来は
一つのセットが三十五
トンくらいでございましたが、いまはもう七十
トンというのが普通でございまして、そういうふうに非常に能率が、技術が進歩しますので、そういう意味の技術の進歩を阻害するような新
増設の特に改造の禁止を行うということについては、
指示カルテルの
内容について
相当な配慮をしませんと、長い間の凍結または廃棄をして、あるいは現在の
設備を改造することはできなくなって、改良はいいとしましても、それが改造であるとして禁止されますと、非常に技術におくれをとる、こういう現実の問題がたくさんにございます。
〔
委員長退席、山崎(拓)
委員長代理着席〕
それから次に、疑問でございますが、化合繊というのは、先ほど申し上げましたとおりに、ナフサの問題、それから輸入の問題というのにポイントがございまして、生産過剰と
円高の問題はあらゆる
企業に共通である。にもかかわらず、これをこの
法案で品目として特掲されてあるというその理由が私にはよくわからない。しかし、これは
法律技術の問題でありまして、余り熟考の問題ではございません。
それからもう
一つは、時限立法としておられますけれ
ども、これは廃止するものとすとなっておりますが、私
どもは過去の経験がございまして、先ほど申しました
設備のいわゆる登録制をしいておりました
法律がございますが、その
法律には自動的に失効するものとすというふうに書いてあります。ですから、期限が来ますと必ず失効するという書き方で、これは繊維工業
設備等
臨時措置法と申しますが、四十五年にエクスパイヤーいたしましたけれ
ども、この
法律には当然に失効するものとすというふうに書いてあります。
しかし、今度の
法律も特繊法も廃止するものとすと書いてございますから、廃止に特別に諸先生方の議決が要るように書いてございますから、大体これは本当の意味の時限立法ではないという
法律技術上の問題と、第二点は、
資金の
保証等が伴いますから、当然に五年で廃止されるはずはないんですね。そうしますと、これは現実的に時限立法ではないと私は思うのです。
そういう意味におきまして、時限立法なんてする必要はないので、なぜ堂々と——廃止はいつでもできるわけですから、した方がむしろいまの
保証行為等については期間の
制限される危険がないのだという安心感を与えるのであって、私は時限立法とわざわざされる理由がよくわからないというふうに
理解いたします。
その他たくさん問題がございますが、時間がございませんので一応ここで終わらせていただきまして、後で諸先生方からお教えいただきますならば、私の感ずるところを率直に申し上げさせていただきたいと思います。
これで終わります。ありがとうございました。