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1978-03-29 第84回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十九日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 山崎  拓君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       藏内 修治君    島村 宜伸君       田中 正巳君    辻  英雄君       中西 啓介君    西銘 順治君       橋口  隆君    後藤  茂君       上坂  昇君    清水  勇君       武部  文君    中村 重光君       長田 武士君    玉城 栄一君       工藤  晃君    安田 純治君       大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         通商産業政務次         官       野中 英二君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         通商産業省貿易         局長      西山敬次郎君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         資源エネルギー         庁次長     大永 勇作君         資源エネルギー         庁石油部長   古田 徳昌君         中小企業庁長官 岸田 文武君  委員外出席者         大蔵省理財局資         金第一課長   森  卓也君         大蔵省銀行局総         務課長     石川  周君         大蔵省銀行局特         別金融課長   藤田 恒郎君         大蔵省銀行局中         小金融課長   吉居 時哉君         厚生省環境衛生         局指導課長   林   崇君         林野庁林政部林         産課長     輪湖 元彦君         運輸省海運局外         航課長     塩田 澄夫君         運輸省船舶局造         船課長     間野  忠君         建設省計画局建         設業課長    広瀬  優君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出第三  八号)  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占の禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。宮田早苗君。
  3. 宮田早苗

    宮田委員 構造不況業種構造改善を一日も早く進めることは、日本経済全体の景気回復を図るためにも緊急を要すると思います。私ども民社党は、かかる観点から政府案修正を考えております。中でも一番重要な点は、緊急避難的な措置としてアウトサイダー設備の新増設を規制できるようにする点でございますが、政府案修正によって本法案早期成立を主張しているのでありますが、本日は、三十分間という時間をいただきましたので、残された問題点を幾つか指摘をいたしまして、政府答弁をお願いする次第であります。  まず、政府は、昨年末、いわゆる構造不況業種実態調査をされたと思います。それから約半年を経過しておるわけでございますが、主要業種、中でも平電炉合繊造船合板、これらのその後の業況説明していただきたいのであります。また、昨今のとどまるところを知らない円高によります影響等も含めて御説明をお願いする次第です。
  4. 河本敏夫

    河本国務大臣 円高による産業界影響につきましては、昨年の年末に二百四十円の水準の場合に調査をいたしました。しかしながら、それから三カ月たちまして、いまさらに一段と激しい円高情勢でございますので、ごく最近の事情につきましていま調査をしておる最中でございます。  なお、お尋ねの数業種についての現状につきましては、担当局長から説明をさせます。
  5. 天谷直弘

    天谷政府委員 平電炉につきましては、オイルショック以降、特に昭和五十年以降需要が停滞いたしたわけでございますが、これに対しまして約二千万トン程度設備がございまして、七百万トン程度が過剰になっておるわけでございます。なお、昭和五十五年度までの需要を見通しましても、三百三十万トンの絶対的過剰があるというような状況でございます。こういう過剰設備の圧力と、それから企業が多数乱立をしておって過当競争が行われているというような状況によりまして、約二年半余りもの間価格コストを大幅に割り込むという状況が続いてまいりまして、平電炉企業の大多数は、非常な債務超過に近いような状況になっておるわけでございます。ただ、最近に至りまして、公共投資が進んできておること、それから、カルテルによりまして生産調整して在庫が八十万トン程度に減ったということもございまして、小棒の市況はかなり改善をいたしてきております。ただし、これに伴って、並行いたしまして鉄くず市況も上がってきておりますので、平電炉企業経理内容は、必ずしもはかばかしい改善を見ているわけではございません。  なお、円高影響でございますが、円高及び海外の需要が低調であったということもございまして、昭和五十二年の輸出は、五十一年と比べまして約四割程度下落をいたしております。さらに、最近の急激な円高は、小棒の輸出に対しまして重大な打撃を与えるものというふうに考えております。  次に、アルミニウムでございますけれどもアルミニウムは、電力価格オイルショック以前におきましてはキロワットアワー約三円でございましたものが、現在八、九円というような高い水準に上がっております。そのために、アルミニウム生産コストが三十五万円から四十万円の間というような高い水準に上がってしまいまして、国際競争力を喪失したわけでございます。これに対しまして、輸入価格の方は、最近の円高等もありまして二十六、七万円で日本に入着をする、関税等諸経費を払いましても三十万円前後で国内で売られるというようなことになっておりまして、したがいまして、この輸入価格に引きずられまして国内アルミニウム価格低迷をいたして、コストを大幅に割っておるというような状況で、アルミニウム製錬業の経営内容は、極端に悪化をしておるというような状況でございます。
  6. 藤原一郎

    藤原政府委員 合成繊維産業の現況について、簡単に御説明申し上げます。  合成繊維につきましては、内需の不振あるいは近隣諸国の追い上げ、それからアメリカ合衆国等輸出攻勢というふうな要因がございまして、久しく低迷状態を続けてまいっております。特に最近の円高傾向といいますものは、合繊産業輸出に非常に依存度が高い関係もございまして、輸出市場におきまして非常に苦境に立っておるというふうなこともございまして、一層国内需給状況もむずかしい状態になっておるわけでございます。したがいまして、市況が非常にコスト割れ状況になっておりまして、各社経営状況というのは非常に苦しくなっております。合繊メーカー七社の経常収支で五十二年度上期が合わせて約百八十億円の赤字でございまして、下期につきましてもそれに近い赤字ということが見込まれる状態でございます。  対策といたしましては、昨年の十月から、行政指導をもちまして減産を指導してまいったわけでございまして、需給状況は、若干改善を見ております。価格も、ある程度回復を見ておりますが、なおコストを償うところまでは至っておりません。したがいまして、四月以降不況カルテルに移行することを現在考えているわけでございます。設備の問題につきましては、大体やはり二割程度の過剰というものが見込まれるようでございまして、これは、本法案成立の暁におきましては、審議会等でさらに検討いたしまして過剰設備廃棄する方途を考えてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  7. 輪湖元彦

    輪湖説明員 合板製造業につきましてお答えいたします。  合板製造業業況は、昭和四十四年から四十八年の間に約五〇%も生産能力を増強させてございますが、その後のオイルショック以降の需要停滞によりまして著しい需給ギャップに悩んでおる次第でございます。過去三年間の昭和五十年当初からの不況カルテル実施等によって業況改善を図っておりますけれども、特に昭和五十二年の十一月からは、不況カルテルに加えまして事業活動規制命令による生産調整をやっておりますけれども、依然として業況改善されておらないという現状でございます。  なお、円高によります影響につきましては、輸入原木価格低下という好影響が一部見られます。本年の一月の原木価格は、対前年比で約二二%低落をしておりますけれども、それにもかかわらず、公共投資等によりまする需要の増加がどうも合板業界には見られないということで、依然としてコスト割れの苦しい状況が続いている次第でございます。
  8. 間野忠

    間野説明員 造船につきましては、石油危機以後非常に受注量も下がってまいりましたのですが、昨年度までは大体八百五十万トンとか九百万トンとかいう年間の受注量がございまして、ある程度操業度を維持できたわけでございますけれども、今年度に至りましては、恐らく五百万総トン程度受注量しか見込めないと考えております。そういうことでございますので、来年度の確定工事量というのは非常に下がっておりまして、当初の予定では、六百五十万総トン程度一般商船を起工できるのではないか、工事量として持てるのではないかと思っておったのですが、いまのところ、確定分は、二百六十万総トン程度しかないという現状でございます。
  9. 宮田早苗

    宮田委員 造船の問題についてもう一点お伺いをしたいわけですが、例の官公庁船舶等の繰り上げ発注という問題があったと思いますが、その点、どうなっておりますか。
  10. 間野忠

    間野説明員 官公庁船の中でも特に海上保安庁の巡視船艇等につきましては、二百海里の問題もございまして、大幅に予算を増額していただいております。それで、それの早期発注ということでございますが、先週の経済対策閣僚会議でも早期発注に努めるということで御了解願っておりますので、おっしゃったような趣旨で進められるというふうに思っております。
  11. 宮田早苗

    宮田委員 合板の問題について、最近、例の永大産業の倒産に関連をして、業界の間から会社更生法適用を認めないでほしいという動きが表面化しておるように察知するわけでございますが、そういうことについてどう把握されておりますか、また、どのような考え方を持っておられますか、その点、お聞きいたします。
  12. 輪湖元彦

    輪湖説明員 日本合板工業組合連合会が、永大の会社更生法適用申請に際しまして、現在の合板業界不況下に置かれておるし、そういったことの中で業界が一体となって生産調整事業を行っている、さらには生産設備調整内容とする構造改善対策事業に手をつけておるという業界不況実態を認識してもらうという趣旨から、地裁を初めとする関係機関にアピールをしようということを検討しておるということは聞いております。  林野庁といたしましては、もしそういうような陳情を行うとすれば、業界全体の置かれておる現状について正しい認識、理解を深めるという観点から陳情が行われることが望ましいと考えておりまして、そのように指導してまいりたいと考えております。
  13. 宮田早苗

    宮田委員 もう一度、平電炉のことについてお聞きをいたします。  先ほど申し上げましたように、私どもは本法の早期成立を期しているところでございますが、この法律に先行した形でスタートいたしました、いまも説明がございました三百三十万トンの設備廃棄を目指す平電炉業界構造改善ルールづくりといいますかへ話し合いはどの程度いま進められておるか、その点もお知らせ願いたいと思います。
  14. 天谷直弘

    天谷政府委員 昨年の二月に平電炉基本問題研究会の報告をいただきまして、これによると、三百三十万トンが絶対的に過剰であるということでございましたので、この方針に従って構造改善を進めるべく、平電炉カルテルインサイダーといろいろヒヤリングをいたしまして、その結果、各社がこれくらいは廃棄してもいいというふうに考えている数字を聴取して、それを合計したところ、三百三十万トンという数字は達成可能であるというふうに現在見通しを得ているところでございます。  それから、この三百三十万トンの廃棄をしている過程におきまして、片方で新増設が行われるということでは非常に困りますので、これについては、産構審の平電炉小委員会においてルールづくり検討していただいておるところでございます。現在までに三回ほど会合を開いておりますが、できるだけ早い機会に結論を得たいと考えております。
  15. 宮田早苗

    宮田委員 この平電炉の問題については、スタートしまして相当長くなるわけでございまして、おっしゃるように、努力をしていただいておることはよくわかるわけでございますが、一向に具体化をしない、こういう点についてはちょっと疑問のあるところですが、どこら辺にネックがあるのかということです。  もう一つは、これはアウトサイダーの方の関係でしょうけれども、新増設ということに対する計画の問題もある。そういうことについての調整業界の中だけではなかなかできかねるような情報も承っておるわけでございますが、そういう点についてはどこにネックがあるのか、また、新増設をしようという計画をするところに対してはどのような御指導をなさっておるか、この点もお聞かせを願いたいと思います。
  16. 天谷直弘

    天谷政府委員 まず、設備廃棄の方でございますけれども、これについては、昭和五十五年までに三百三十万トン廃棄というのが目標でございますが、いままでわれわれが業界と相談をしてきましたところでは、五十五年ではなくて、あと一年ぐらいかかればその廃棄ができるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけで、必ずしも構造改善計画どおり進んでいないわけではないと考えております。     〔委員長退席山下(徳)委員長代理着席〕 現在七億円の保証基金がございまして、これで七十億円の保証ができるのでございますけれども、今度の法律が通りますればさらにこの保証の規模を拡大することができますので、それによっても構造改善は促進されるのではなかろうかと期待をいたしておるわけでございます。  それから、他方、新増設の問題でございますけれどもアウトサイダーの方で新増設をどんどん進められるということになりますと、インサイダーでいままで廃棄すると言っておった人も廃棄しなくなるおそれが出てまいりまして、構造改善が進まなくなる可能性があるのでございますけれども、これについては、通産省として、アウトサイダーの方に対して、こういう状況であるから新増設についてはできるだけ慎重にやってほしいというふうに説得に努めておりますけれども、いまのところ、新増設をしようというような計画については、まだ聞いておりません。ただ、これは自由経済設備投資意思決定に関する完全な自由ということを強く主張しておられる方でございますから、通産省としても特に余り強い説得力を持っておるわけではございませんが、最近の景気状況でございますので、こういう方々も、事改めて設備投資をやろうというようなお考えは、さしあたってはお持ちではないのではないかというふうに考えております。
  17. 宮田早苗

    宮田委員 その点につきましては、さっきの質問局長答弁にもございましたように、在庫もだんだんに減ってきた、こういう状況をつかまえて新増設計画に踏み切るというようなことになりましたら、せっかくのこれを規制する法律そのものが全然役に立たぬということになり得る可能性もあるわけでございますので、その点はよろしく御指導をお願い申し上げる。これは要望でございますが、特に御留意していただきたいと思います。  そこで、特定不況産業信用基金によります債務保証対象について、政府は、設備廃棄資金並びに退職金限定をしておるということなんですが、こういう解釈でよろしいですか。
  18. 濃野滋

    ○濃野政府委員 対象となりますものは、三十九条の一号にございますように、「計画的な設備処理のため必要な資金」、それから「当該設備処理に伴って必要となる資金借入れに係る債務保証」となっておりまして、ただいま御指摘のように、私どもは、設備処理対象となる設備担保解除資金、あるいはそれに伴って関連設備と申しますか、付帯設備処理せざるを得ないという場合の担保解除資金、それから、労使間の完全な合意に基づきまして雇用調整が行われる場合に、退職金の支払いを円滑にする必要があるというような場合の資金というようなものをこの保証対象と考えております。
  19. 宮田早苗

    宮田委員 ただいまのところ、その解釈というのが狭過ぎるのじゃないかという気がするのです。「設備処理に伴つて必要となる資金」、これについての解釈論でございますが、広く設備廃棄に伴う関連資金として、その運用につきましては弾力的に行うことができるようにすべきだと思うわけですが、その点についての考え方をもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  20. 濃野滋

    ○濃野政府委員 御指摘のように、「設備処理に伴つて必要となる資金借入れに係る債務保証」という問題の解釈の点であろうと思います。ただ、私どもがこの保証基金を設立する趣旨から申しまして、この設備処理を円滑に行う、しかも、それはたてまえとしては関連事業者の自主的な努力ということを前提に、設備処理をうまくやるということを補完するために必要不可欠な範囲での資金の借り入れに限定をして運用せざるを得ないのではないかと考えておりますので、一般的にたとえば赤字補てんのための資金等債務保証にまで拡大することは、どうもこの基金の設立の目的から見ていかがか、こういうふうに考えているわけでございます。
  21. 宮田早苗

    宮田委員 もう一つは、特定不況産業指定された業種の多い地域、もちろん地域差というのがあるのじゃないかと思いますが、この地域の自治体の意見をどう反映させるかということなんです。  設備廃棄地域経済に与える影響というのは非常に大きいわけでございますが、その場合、知事や市町村長対策を具申できるようにしておいた方が、実行する場合により画一性があるのじゃないかというふうに思いますが、その点についての御意見を聞かしていただきたいと思います。
  22. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御指摘のように、いわゆる構造不況業種、この法律に言う特定不況産業の中には、特定地域に非常に大きな影響を与える地域産業というものが非常にたくさんあることは、私ども十分承知いたしております。したがいまして、この法律対象候補業種指定する政令をつくる、あるいはさらに手続が進みまして安定基本計画をつくるというような段階の場合に、それぞれ法律の定めるところによりまして、審議会の場で十分検討をお願いするかっこうになっております。  そこで、私ども、そういう産業につきましては、私どもの方からもそういう審議会の場で十分地元の御意見をいただく、あるいはただいま御指摘のような関係地方公共団体の長から特にお申し出等があれば、その御意見は十分に参酌をいたしまして、この設備処理を進めていく計画作成の上で参考にしていきたい、こういう運用を考えております。
  23. 宮田早苗

    宮田委員 次に、鉄鋼の副原料ということなのですが、フェロアロイの問題についてでございます。  何しろ余り大きな業界でないものですから、どうも対象になりにくい。しかし、もう一番困っておる業界でございますだけに、それの救済措置というものを考えなければならぬと思うわけでございますが、このフェロアロイ対策ということについて、さきに基本問題研究会からのあれも出ていたと思うわけでございますが、このフェロアロイ全般の問題についての対策、この点についての説明をひとつお願いしたいと思います。
  24. 天谷直弘

    天谷政府委員 鉄鋼不況影響を受けまして、フェロアロイ産業も現在大幅な経営悪化に悩んでおるわけでございます。操業率が六〇%程度まで下がっておるわけでございますし、他方また、フェロアロイ製造に当たりましては電力を大幅に消費するわけでございますが、この電力コスト大変高騰をしておる、また、物によりましては輸入の圧迫を受けておるというようなケースもあるわけでございます。したがいまして、このフェロアロイ産業構造不況対策をいかにすべきかということで検討しておるわけでございますが、このうちフェロシリコンにつきまして、まず基本問題研究会を開きまして検討を重ねており、おおむね四月中旬ころになりますと、答申を得られるのではなかろうかというふうに考えております。  フェロシリコン以外のものにつきましては、まだ業界の意向がいろいろございまして、研究会を開催するまでのところにこぎつけていないわけでございますけれども、今後いろいろ意見調整しながら、研究会等の開催にこぎつけるようにしたいと思っております。  なお、研究会答申を得ることができますならば、労働省と折衝しなければなりませんが、離職者対策法等指定をするということも可能になってまいるのではなかろうかというふうに考えております。
  25. 宮田早苗

    宮田委員 実は、この業界で前々から非常に期待をしておりますのは、先回できました離職者法案指定を受けたいという気持ちがあるわけです。ところが、労働省だけの判断ではこれができかねるものですから、どうしても通産省担当の皆さんの方で、この指定ということについての一応の根拠といいますか、その情勢というものをきちっとしてほしいという期待が非常に強いものですから、四月の初めにいけば答申が出るということなのでございますが、答申が出次第、できるだけ早くひとつ結論を出していただくように、特に要望をしておきます。  最後になりますが、私の前回の質疑の際に、設備廃棄ルールと申しますか、償却済み設備とそうでない設備廃棄について、監督官庁が適切な指導をすべきだということを申し述べたわけでございます。通産省といたしましては、新鋭設備を残すような指導をするという御答弁があったわけでございますが、これに関連をして、設備廃棄や凍結に必要な金融機関からの借入金に対し税制上の優遇措置を講じられないかどうか、この点についてお聞きをして、私の質問を終わります。
  26. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま先生の御質問の、構造不況業種に対しまして何か税制上の特例措置検討できないかというお話でございます。  私どもいろいろ検討してみたいと考えておりますが、たとえば特定業種に限って、あるいは特定の事態を前提といたしましての特例税制上の措置として講ずるということ、全体一般論といたしましては、御案内のように、いわゆるそういう意味での特別措置は、方向としてはなるべく整理をしていこうという方向が基本的にございますし、今回税制改正の一環としてお願いをしておるたとえば円高対策の緊急的な税制上の特例措置、これは中小企業対象に、円高という非常に一時的なショック、これはある意味で把握しいいものだと思いますが、そういう業種をしぼりまして小さな中小企業に非常に特例的に暫定的に与える、こういうものでございまして、構造不況業種一般に、特にいま御指摘のような金融の問題に対しまして税制上の優遇措置が考えられるかどうかというのは、ちょっと論理の組み立てからいってもいろいろむずかしい問題があるのではないかと思いますが、構造不況業種対策の今後の一環といたしまして、いろいろ検討すべきことがあればわれわれ検討させていただきたい、かように考えております。
  27. 宮田早苗

    宮田委員 終わります。
  28. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 工藤晃君。
  29. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 前回私が質問しましたときに、この法案に例示された四業種が、そろってオイルショック以後七三年度から比べて七六年度くらいの期間に需要が減っている、しかし、生産能力の増を続けた、そういう型に当たるということを示しました。特に平電炉、アルミ、合成繊維生産能力というのは大体三割ぐらいの増強であったわけで、いまこれらの産業について設備処理をどこまでやるか、示されているその縮小の規模とか割合が、大体オイルショック後の設備能力の増強、そのときどんどん設備投資をやってしまったその分だけ削らなければいかぬということが問題になっているということも、もうすでに明らかになったわけであります。  ですから、言葉をかえて言えば、オイルショック後にこういう設備投資に対して行き過ぎないいろいろな手だてあるいはそういう政策をもっととっておれば、過剰設備ということがいま問題になっていても、それほど程度の上で、それは多かれ少なかれということになりますけれども、はるかにそれは抑えられたということにもなるわけなんで、そういう点で政府の方で責任はなかったのかどうか、この問題について改めて聞きたいわけであります。というのは、日本における特にこれらのいま問題とされている構造不況業種設備投資が自由放任状態だったとはとても見れないわけなのでこういうことを伺いますが、これは最初に、大臣、お答え願いたいと思います。
  30. 河本敏夫

    河本国務大臣 昭和四十八年の秋にオイルショックが起こりまして、自来政府は、ほぼ三年でオイルショックによる打撃を回復いたしまして経済を正常な姿に戻したい、こういうことを目標に一連の経済政策を進めてきたわけであります。従前は、戦後何回か大きな景気変動がございましたが、大体底は一年ないし一年半、こういうことで正常に返っておりますので、オイルショックの場合は、打撃は非常に大きいが、三年間努力すればほぼ正常に返るのではないか、こういう見通しを立てたのであります。ところが、御案内のように、三年目というのは昭和五十一年でありますが、昭和五十一年に至りましても回復しないばかりか、五十二年はさらに悪化する、こういう状態でございまして、いま五年目を迎えておる、こういう事態でございます。したがいまして、政府の方で三年の間にほぼ景気回復する、経済が正常な姿になるであろうという見通しは間違っておったのではないかと言われますと、ある意味においては私どもは反省せざるを得ないと考えております。  ただしかし、オイルショック直後に起こりましたあのわが国の国際収支の大幅な赤字、それからまた狂乱物価、ああいう状態を見まして、世界の国々が、さすがの日本もこれでいよいよ行き詰まってしまうのではないか、もうだめではないか、このように考えておりました日本経済も、ようやく赤字も黒字に返ることができましたし、物価もようやくおさまった、こういう状態で、日本経済の受けた深刻な打撃の一番の中心の課題、つまり病気そのものは治ったと私どもは考えております。ただ、余りにも病気が重かったために体力の回復に若干の時間がかかっておる、こういう点でございまして、少し時間がかかっておりますので、その点での見込み違いということは、私どもは反省せざるを得ないと考えております。
  31. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 一面では見通しが甘かったということで反省されたと思いますが、同時に、病気が治ったと言う、これも大分楽観論があると思います。  ただ、私が聞きました質問というのは、もう少し具体的な問題で聞いたはずなんです。私の方の示した問題点というのは、いま法案に特に例示された四業種について言うと、いろいろ構造不況業種と言われる中でも、この間どんどん需要が減っていく、そういう事態にありながら設備の増強を続けてきた、構造業種の中にもそうでないものもあるわけですけれども、そういうタイプに属しているではないかという問題、この期間にぼっとふやした分をいま削らなければならぬということで問題にしている。きのうまではどんどん増強させていって、きょうは削らなければいけないという、まさにそういうことをやっている。こういう問題。  しかも一つ一つ業種をとってみますと、造船設備投資については、造船法に基づいて造船施設の生産調整がある。これは御存じのことですから、ここで答弁を求めたりする問題ではありません。しかし、ごく最近まで、日立造船の有明とか、名村の伊万里だとか、波止浜の多度津だとか、どんどん新鋭設備をつくってしまった。これがいま問題になっている。  それから、合成繊維について言えば、これは六〇年代の初期から問題になった産業構造政策の中で、官民協調ですか体制というものが比較的早くとられて懇談会が持たれ、そして産業構造審議会での設備投資調整というのが事実上やられてきたし、それからアルミについても、産構審のアルミ部会の中間答申、そのほか産構審の長期ビジョンもありますが、その中で、「アルミニウム需要は、世界平均を若干上回る八%前後の伸び率で成長するものと想定される。」こういう想定のもとで設備投資がなお続いたし、平電炉については少し違うかもしれませんが、それでも平電炉の中の高炉系列などありますが、高炉の参加している月曜会といったような政府側と業界側とのそういう懇談会を通じていろいろな生産の見通しが出される、そういう中にあっての設備投資であったということであります。そういうことで、これは平電炉基本問題研究会の報告書を見ましても、要するに、現在の設備過剰は七四年度から七六年度に行われた二十三基の電炉の新設にあるということは認めているわけなんです。  そういうことで、この責任ということが、ただオイルショック後の見通し問題という一般的なことでの誤りということだけでなしに、これまでの産業構造政策の中で設備投資の進め方に、これらの業種について言うならば、政府もかなりかかわり合った上で出てきた問題だということは、はっきり言わざるを得ないわけです。  そういうことで、次の質問としまして、ここにあります五十三年二月の「構造不況対策について」という、これは通産省のパンフといいますか、説明がありますが、この中の十一ページ目に、「構造不況に陥った原因は、経営者の放慢経営というよりは、石油危機以降のエネルギー価格の高騰、民間設備投資の沈滞、最近の円高という予測せざる内外の経済的事情の変化にある。」、設備過剰になった主な原因というのは、全く「予測せざる内外の経済的事情の変化」だということにしてしまっている。ということになりますと、これは全く民間資本の側にも何の問題もないということにもなるんだろうと思いますが、これはやはり政府としてもそういうお考えなのかどうか、お伺いしたいと思います。
  32. 河本敏夫

    河本国務大臣 正確に言いますと、予測せざる事情云々ということで、全部自分は責任ないんだよと言うのは、私もいかがかと思います。そういうことよりも、そういう事態はいずれも予測できた事態だと思いますが、ただ、その影響の大きさが予測できなかった、こういう意味でないかと思います。
  33. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) では、いまのあれで言うと、このパンフにある表現はいささか的確でないというふうに考えていいととりますが、それを前提としてもう少しこの問題について私は考えも述べ、質問もしたいわけです。  基本的に言えば、戦後の高度成長期を通じまして産業構造の高度化政策というのがとられました。これは特に所得倍増計画、それから産業構造調査会ができて、それから審議会にいくわけでありますが、少なくとも六〇年代の初期ごろ、今後の産業構造をどう選ぶかということで、もっぱら二つの基準が問題にされた。一つは所得弾力性の基準といって、世界市場で所得が伸びると弾力性の上で一番伸びのいいものを選ぼうじゃないか、それから労働生産性の基準ということも選ばれた。もっぱらここの分野の産業の急速な拡大発展を期そうということで、それに合わせた税制や金融、財政、さまざまな助成が行われてきた。その延長線の上でいま構造不況業種として問題にされているのは、まさにこのときに急速に拡大発展が図られたその惰性がいつまでも続いて、つい最近までこれが続けられてしまったために特別過剰を大きくしたという点についての反省点がどうしても要るのではないか。それがなしにこの対策が論議されている、政府の方で出されているという感じをどうしても持たなければならないわけであります。  言うまでもなく、こういう産業構造政策というのは、一面においては国民の個人消費を非常に抑えてきたわけでありますから、いつかは市場問題にぶつかるということであります。それから同時に、これまで進めてきた高度成長の方式が、七〇年代に入って、少なくともニクソン・ショックやオイルショックの後で、こういう行き方で進められないということが一層明らかになった時点であったわけです。私はここで、六〇年代、七〇年代に日本共産党がどういう政策を出して、起案してきたかと言いませんが、私たちは予測し、こういうことが起きないようにということで、つり合いのとれた発展ということを六〇年代においても、七〇年代初期においても常に対置してきました。これは何も共産党だけでなしに、財界人の加わった産計懇と言われるようなところでも、列島改造計画が出たときに、これに対するアンチテーゼみたいなものを出した、こういういきさつもあるわけですから、先ほどの説明、特にパンフの説明の中で、予測せざる事態ということですべてを許す、こういうことに対しては非常に許せない感じを持って私は質問したわけであります。  ですから、こういうふうにして、何か起きてしまって、予測せざる事態ということになると、これからも、こういう政策でやったけれども全部失敗しました、これは予測せざる事態によるものです。こういう説明をしていけば、いつまでたっても政治の責任、政策の責任は問われないことになるということだと思います。そういうことで、もう一度念のために、今後も、これからいろいろ起きた政策の問題を、予測せざる事態によって起きたということで塗りつぶすことのないようにその辺やるべきではないかと思いますが、その点について、ごく簡単でも、ちょっとお考えを述べていただきたいと思います。
  34. 河本敏夫

    河本国務大臣 民間が設備投資をいたします場合には、自由主義経済でございますから、最終的には、民間の企業経営者が諸般の情勢を総合いたしまして最終判断を下して決断をする、こういうことになるわけでありますから、その意味においては政府は責任はないということは、あるいは理論的には言えるかもわからないと思いますけれども、しかしながら、そういう判断をするにつきまして、やはり政府のいろいろな見通しであるとか、あるいは政府の政策であるとか、あるいはまた、政府が直接いろいろな見通し、統計をつくらなくても、政府関係ある幾つかの機関が出す見通し、統計、こういうものを参考にしておる場合も多いと思います。でありますから、そういう意味におきましては、政府として責任がないとは私は言い切れないと思います。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、オイルショックによる影響は余りにも大きく、私どもは三年で何とか目鼻がつくであろうと思っておりましたものが長引いておりますけれども、わが国の雇用問題、それからわが国が資源のない国でありながら世界で何とか生き延びていかなければならぬ立場にあるということを考えますと、一刻も早く経済の活力を回復いたしまして、産業活動を軌道に乗せなければならないわけでございますので、いま政府の方も懸命に取り組んでおるところでございます。しかしながら、過去のことは十分反省をいたしまして、今後に対処していくつもりでございます。
  35. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) それから、商工委員会調査室の「特定不況産業安定臨時措置法案の要点及び問題点」の中で、繊維の場合、設備過剰になった原因の一つに発展途上国の追い上げを挙げておりますが、これは通産省としても同じ考えでしょうか。
  36. 藤原一郎

    藤原政府委員 繊維産業設備過剰の点につきましては、いろいろ原因があるかと思いますが、その中で、発展途上国といいますか、近隣諸国の追い上げという意味合いもあるかと存じます。
  37. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これは通商白書の七七年版によりますと、アジア地域の繊維産業に対する日本の海外直接投資累積額が、七六年三月末六億七千二百万ドル、特に韓国、台湾、香港、タイ、インドネシア五カ国において著しいわけですが、この五カ国の生産能力は、ポリエステルステープルで日本設備生産能力の一・二倍、ポリエステルフィラメントで一・一倍で、日本を上回っている。そのほかナイロンフィラメント、アクリルステープルで日本の半分を超える、綿スフタイプの紡機で約八割、そして五カ国の生産能力における日本の合弁企業のウエートは、ポリエステルステープルで約四五%、同フィラメントで四六%、ナイロンフィラメントで一七%等々いろいろあるわけですが、先ほど発展途上国からの追い上げということが設備過剰の原因の一つに挙げられているけれども、それば、日本の資本、企業がこれらの国でかなり大がかりな設備投資をやってきたということが、やはり日本の過剰の度合いを大きくした原因として見なければいけないのじゃないか。もちろんそれは何も逆輸入という形をとらなくても、第三国輸出市場への競合の度合いを強める等々から結局そういうことになったのではないのかということで、この辺、どういうふうに考えているのか、伺いたいと思います。
  38. 藤原一郎

    藤原政府委員 合繊産業近隣諸国、特に東南アジア諸国におきますところの資本投資といいますものは、お話のように、相当程度のものが進行していることは事実でございます。それが結果として、いわゆるブーメラン現象として日本へ製品が返ってきておるというものは、それほど多くないわけでございますが、確かに輸出市場におきましてそれがなかったならば日本から輸出したであろうというふうな意味合いからいいますと、輸出用の設備という意味合いから、そういう感じで過剰の一つの原因であるということは言えないことはないと思います。  ただしかし、しからば日本がそこに資本投資しなかったならばどうなったかということになりますと、それは当然他の国が資本投資したわけでございまして、そういう意味合いからいいますと、それはプラスマイナス余り直接の影響として勘定するわけにはいかないのではないかということでもあろうかと思います。
  39. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) この問題を聞きますと、いつも、確かにそれは影響を与えておる、しかし、日本がやらなかった場合にはよその国がやったに違いないという違いない論で、それでみずからを慰めておるような答弁になるわけですが、これはおかしいと思うのですね。  そこで、さっき言ったように、予期せざる事情だなんという考えが出てくるほどなのですから、そしていま設備の過剰が著しいということが問題になっているわけですから、どうなんでしょうか、こういう少なくとも設備過剰であるという産業について、日本の資本が一方では海外投資をなお続ける、それが税制、金融でいろいろ擁護されるという形でさらに周りでの直接投資をふやす、それが第三国市場だけでなしに、次には逆輸入、これもどんどんふえておりますが、それがまた日本設備過剰を大きくする、こういうことが現に進んでいるときに、少なくともこういう特定不況産業とか、これからも設備を二割も三割も減らそうと問題にしているそういう産業においての海外投資活動に対して、これまでどおりの放任、放任どころか促進する政策だと私ども見ておりますが、それを続けるのかどうか、これはやはり検討しなければおかしいことなのじゃないでしょうか、どうでしょうか。
  40. 藤原一郎

    藤原政府委員 合繊産業等に限って申し上げますと、従来から繊維産業につきましては、海外投資に当たりまして事前に行政指導をしてまいっております。     〔山下(徳)委員長代理退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 また、合成繊維関係の海外投資に関して申し上げますと、ここ数年間はほとんど投資が行われておりません。相当早い時期に投資をされたわけでございますが、今後も、現状で世界じゅうがある意味で非常な過剰設備を抱えている状態でございますので、合成繊維産業につきまして現状以上に海外投資が行われるということは、まず余り考えられないという状況でございます。
  41. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 合成繊維に限ってということですから、ついでにアルミ産業について伺っておきたいと思うのですが、海外でのアルミの開発輸入につながる直接投資の状況あるいは投融資の状況、それから地金の開発輸入の推移や見通しについて伺いたいわけであります。  同時に、そういう海外におけるアルミの直接投資に対して、いまどういう税制あるいは金融上の助成があったのか、そういう点についても伺いたいと思います。  それから、これが日本に対して、日本のアルミの過剰問題について及ぼす影響の見通しなどについても、ちょっと伺いたいと思います。
  42. 天谷直弘

    天谷政府委員 現在、日本の資本が海外にアルミニウムで投資しておりますプロジェクトを簡単に申し上げますと、まず、ニュージーランドのNZAS、それからカナダのALPAC、この二つのプロジェクトは完成をいたしまして、すでに輸入が開始されております。また、ベネズエラのVENALUMに関しましては、年内に完成をして、来年早々に輸入が開始される見込みでございます。それから、インドネシアのアサハンプロジェクトにつきましては、現在工事中でございまして、当初計画によりますと一九八一年ころから輸入が始まるはずでございましたが、これ若干おくれる見込みということになっております。アマゾンの計画につきましては、このフィージビリティースタディーが終わった段階で、これから現地で合弁会社を設立するかどうか、検討をしておるというふうな段階でございます。  それから、これらのプロジェクトにつきまして国の助成がどのように行われたかということでございますけれども、以上申し上げました中で、国の特段の助成が講じられておりますのはアサハンプロジェクトだけでございます。アサハンプロジェクトにつきましては、海外経済協力基金より出資を三百三十七億、海外経済協力基金よりの円借款、これが二百六十二億を初めといたしまして、国際協力事業団よりの融資、それから日本輸出入銀行よりの融資等の積極的な助成が講じられておるわけでございます。  なお、一般的に税制上の優遇措置といたしましては、海外投資に関しましては、海外投資損失準備金制度というものがあることは御高承のとおりでございます。  それから、需給見通しの問題でございますけれども昭和五十五年で、日本の新地金需要おおむね二百万トン前後というふうな見通しに現在なっておるわけでございます。他方、現在通産省で考えております設備の凍結計画によりますと、現在、日本のアルミ製錬の生産能力は百六十四万トンほどあるわけでございますが、このうち三十九万トン程度を凍結いたしまして、設備能力を百二十五万トン程度まで減らすというふうに考えておりますが、そういたしますと、その差額は輸入を必要とする、こういうことになってまいります。その輸入のうち、開発輸入分がどれくらいになるかというわけでございますが、五十五年度で二十八万トン、六十年度で六十万トンくらいになるというふうに一応見通しを立てておるわけでございます。  以上でございます。
  43. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いま御答弁ありましたけれども、先ほどの合繊の例やアルミの例を見ましても、その他のいろいろな業種が挙げられるわけでありますが、企業の海外直接投資が進められる、それがいろいろな形で政府から助成も受ける、それがとりわけいま構造不況だと言われて設備の過剰が深刻だ、これは削らなければいけないというところで、一方では設備の過剰の度合いを大きくする要因となるような、あるいはなり得るような海外での投資が促進されている、こういう形というのは大変問題がある。矛盾しているというだけじゃなしに、企業のそういう海外投資活動がそういう形で放置されながら、一方ではそれが設備過剰の度合いを強めながら、そしてこの過剰を何とかしなければいけないという大変矛盾した話だと思うので、このところはいまの政府の政策として大問題だと私は思っておりますが、次の質問に続けたいと思います。  特定不況産業に何を指定するかというときに、一般的にこういうのが特定不況産業であるというのならば、これは第二条第一項の五号の中で「前各号に掲げるもののほか、」これを読むと長いですからやめますが、この第一項五号に書いてあるこれに該当するものを指定するのだということでいいわけですね。
  44. 濃野滋

    ○濃野政府委員 第二条の五号に指定対象となるものの要件が書いてございますが、この要件に該当する場合に政令で指定をするいわば候補業種でございます。お説のとおりでございます。
  45. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) そうしますと、設備処理によってその事態を——その事態というのは、一口で言えば不況ということなんでしょうが、その事態を克服することができない業種、それは要件を満さないからその候補にもならない、指定もされないということと考えていいわけですか。
  46. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの御質問趣旨が——この法律の立て方が、設備処理をやるかどうかという判断の大前提は、二条の三項にございますように、当該業界申し出ということでその後の手続が始まるわけでございますが、その申し出の有無というものを別にいたしますと、過剰設備状況というものがあって、それを克服しなくては問題が片づかない、そういう業種対象にするわけでございますから、いわゆる設備過剰という状態のない業種はこの政令の指定対象にはなり得ない、かように考えております。
  47. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私が伺ったのは、設備過剰がないというのではなしに、設備過剰であって、同時に、設備処理をやれば、やり方はいろいろあると思いますけれども、度合いがある、形態もあるでしょう、とにかく度合いをいろいろ考えてやって、そうすればこの不況は克服できる、そういう見通しがあるものが選ばれるので、そうでないものは選ばれないのかどうか、そういうことなんです。それを大事なので、ちょっと聞いておきたい。
  48. 濃野滋

    ○濃野政府委員 そのとおりでございます。
  49. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) そうしますと、前に書いてある一、二、三、四の四業種は該当するというふうに考えているのですか。それとも、該当しないけれども、この五号でやられてしまうと該当しなくなってしまうので、この際入れておいた方がいいということを勘案して入れたのですか、どうですか。
  50. 濃野滋

    ○濃野政府委員 一号から四号までに掲げました業種は、五号の条件に適合することが非常にはっきりしておる業種、むしろ私どもそういう了解で入れました。つまり過剰設備状況があるという判断で入れたわけでございます。
  51. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いや、私が聞いたのは、過剰設備があることはもちろんなんですが、過剰設備処理ということを通じてそれで不況状態を克服できるという見通しがあるからこそこういう形をとるのである、過剰状態があり、過剰設備処理ぐらいによってはなおどうにもならないということまで含めるわけではないのかと聞いたところが、そのとおりと答えたのでやったのですが、そういうことですね。
  52. 濃野滋

    ○濃野政府委員 いわゆる構造不況業種、この法律に言う特定不況産業がいろんな問題を抱えておるわけでございますが、それの共通的な一般的な問題として、やはり過剰設備を抱えている、したがって、その過剰設備処理を図るということが、それで一〇〇%すべての問題が片づくとは私ども考えておりません。しかし、非常に重要なその業種の抱えている問題は、過剰設備処理を行うことによって解決ができる、そういうふうに考えているわけでございます。
  53. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) だけれども、この法律の語感からいいますと、結局こういう処理を行うことによりその事態を克服する、そのことが国民経済の健全な発展を図るために必要である、こういう書き方をしてあります。これは当然、事態の克服ができるということが前提にならなければ、こういう書き方にならないと思いますが、その議論は押し問答していてもしようがないのですが、たとえば造船業界について言いますと、これは日本経済新聞の三月六日の夕刊で、造船工業会会長の真藤氏が、既存の設備を半減する、しかし、これだけではどうにもならないのだ、これは後ろ向きの対応だけであって、これだけではどうにもならない、五十三年度を補正し、五十四年度、五十五年度三年間で、財投その他で最低一兆五千億円ぐらいの需要造船業界向けに喚起しなければこの造船業界は立ち直らないのだ、こう言っている。  これはまた、運輸省からいただいた資料でも、業界から要望している対策案の一から六というのは大体そういうことでありますし、それから最近の景気浮揚七項目の中にも、官公庁船の問題とか浮体構造物などの需要促進ということがいろいろあるということになっておりますが、そこで、さっき聞いたのは、この選び方で、不況産業であって、過剰であって、しかも過剰設備処理でかなりのことがいくということが要件であるかのようにしながら、実際造船なんかはそれだけではだめだということで、もっと多くの政府の施策をここからあわせて引き出そうとしているわけですね。そうしますと、結局この指定をされるということが、同時にその他のいろいろな対策をあわせて受け取れるという、打ち出の小づちのような役割りも果たすようになるのではないかと思いますが、その辺で、やはり法案としてはっきりと、設備処理によってどこまでやれるという見通し、そうしてそれがどういう意義があるのか、それがはっきりしないままいろいろ指定して、それで安定基本計画をつくる、安定基本計画内容たるや、これは主として設備処理に関する内容でありますから、しかもそれによっていかにも明るい見通しが出るかのようなものでありますから、そういうことをこの法案の特徴としているのですが、こういう非常にあいまいな規定といいますか、これはこういう政策としておかしいのではないか。もっと要件というのははっきり具体的に示す必要があるし、それから、これによっておのずからほかの対策もあわせてどんどん引き出すというような理由づけになるような、そういうことにしておいてはまずいのではないかと思いますが、その点についてちょっと伺いたいと思います。
  54. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、いわゆる構造不況業種が抱えておる問題はいろいろございますから、設備処理のみをもって当該業界の抱えておるすべての問題が片づくとは、私ども考えておりません。しかし、先ほども申し上げましたように、過剰設備の存在ということが、ほかのいろんな施策を仮にやるといたしましても、この存在が続く限りは問題の解決の基盤ができないというのが構造不況業種が抱えておる非常に共通的な問題である、そういう認識でこの法案の御審議をお願いしたわけでございます。したがって、ただいま、安定基本計画内容設備処理に関する事項だけではないか、こういう御指摘でございますが、これは、この法案の目的と申しますか、中で考えておる手段が、構造不況業種対策の中の設備処理ということに注目してこの法案を用意、立案をしたわけでございますので、したがって、こういう体系になっておるということでございます。  なお、この法案がいろいろなほかの対策の引き金になるんではないかということでございますが、設備処理問題が片づけば、それは業界の首脳部の方あるいは個々の方、いろいろ御意見があると思いますが、私は、基本的な問題は十分に解決されるんではないか、こういう認識でおるわけでございます。
  55. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 結局、設備処理によって基本的な問題が片づくという認識、また、そういう形でこの法律ができておるということだと思いますが、少なくとも造船業界なんかについていうと、私は当てはまらないと思っております。  それは長くやっておってもしようがありませんが、この設備処理が構造不況産業企業の相当部分の経営の著しい不安定といった状態を克服できるとしたら、それは具体的にどういうメリットを通じてですか。つまり過剰設備という状態がある、それで廃棄ということを通じて経営の安定に至るとしたら、フローチャートみたいにしてかくとしたら、どういうことがそこで働くからこのメリットにつながるのか、それをちょっと詳しくお聞きしたいのです。
  56. 濃野滋

    ○濃野政府委員 御質問に直接お答えすることになるかどうかわかりませんが、私ども、当然のことながら、経済の動きの中にはいろいろな波動があることは事実でございまして、そういう意味での景気の好況、不況というものの波は、経済運営の中でいろいろなかっこうで出てくると思います。これにはそれぞれの事業者の対処の仕方というのはいろいろございますが、業種全体としても、たとえば生産調整、需給調整というかっこうで対処ができると思います。つまり過剰設備処理ということは、そういう短期的な需給調整あるいは短期的な変動を超えまして、非常に長期の目で見てみましても、いわば根っこにあるべき供給力を超えたこぶがあるということでございまして、やはりこれを業界全体の力で一緒に処理をするということは、いわば将来の長期的な需給関係、これを判断し、あるいは長期的な需給関係の見通しの中でこの需給というものが動いていきますから、その際のいわば根っこのこぶを取り去るということで非常に大きな意味があるのではないか、一般的に申せばそういうふうに考えておるわけであります。
  57. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの御答弁だと、設備過剰だから、その設備過剰の部分を取ればよくなるだろうという一般論であって、個々の企業にとってみれば、不況ということは深刻な事態でしょう。個々の企業にとってみると、業界を挙げて設備廃棄をする、処理をするとすれば、たとえばそれが市況回復につながる、これがメリットとなるのかどうか。なると思いますけれども、それが考えられるのか。それから同時に、設備廃棄が固定費の削減につながるとかそういうことになるのかどうか、こういうことを聞いているわけです。どうですか。
  58. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私は、過剰設備処理ということが短期的な市況回復影響を与えるということは本来あるべきではないのではないか、それは短期的な需給調整生産調整の問題でございまして、先ほど申し上げたように、もっと長期の目で見たバランスの問題として考えるべきではないか、もっとも、その長期的なバランスの回復が可能だということがいろいろ心理的な問題として響きはあろうと思いますが、直接的に短期の市況回復につながるものではないのではないか、こういうふうに考えております。  それから第二に、過剰設備処理を行うということは、個々の企業にとりましてはいろいろなメリット、デメリットのかっこうで出てくると思います。たとえばある企業の抱えておる設備が全体的に非常に新しい設備で、これをつぶすということがどうかという問題もございましょう。それから、企業会計上にこれをどう処理するかということば、企業の経理の面その他でも、かえって一時的にはいろいろな負担をかけるという問題もあるかもしれません。しかし、そればその業種として、あるいは企業としての長期的な判断の面から見れば、過剰設備処理が全体として進むということは、単なる業界のみならず、個々の企業のベースに立ってもメリットと考えるのではないか、こういうふうに私は考えております。
  59. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いや、個々の企業にとって見れば、この安定基本計画をつくったら、設備処理することになるわけですね。その場合、実際いま企業会計上の問題というふうになりましたが、たとえば設備廃棄してしまうということになれば、特別損失を計上しなければいけない。これは経営で黒字が大きいときにはやりやすいかもしれないけれども、これは一つ負担になる。これ自体がメリットには必ずしもなれない。ところで、いまわが国の企業会計原則で、臨時巨額損失の繰り延べといった処理、これは天災などに限られている。これは適用できないはずだと思うのですがね。そうすると、これ自体がかなりマイナスになる。そうすると、別の面でプラスとして考えられるのは、一つは固定費がどれだけ削れるかということにどうしてもなりますね。設備がもし完全に廃棄されるならば、これは固定費で減価償却費がそれだけ削られるだろうということになりますが、その分というのは、私は余り多くないと思うのですね。そうすると、もう一つの面は、市況回復ということがどうしても出てこないと、これは合わないではないかということに当然なるわけであります。  そういうことで、これは公正取引委員長に伺いたいのですが、不況カルテルと比べて今度指示カルテルの方は、効果の上でどういう面でどういう違いが出てくるのか。たとえば期間の上で最初からかなり長期にできるというようなことだとか、あるいはアウトサイダーの規制の面だとか、市況回復とかいう面でそれは一体どういう違いがあるのか、これについて伺いたいと思います。
  60. 橋口收

    橋口政府委員 独禁法の不況カルテルとこの法律に基づきます指示カルテルとの性格の違いでございますが、手続の面を省略して実体的な面だけについて申し上げますと、期間の問題これも行政上の扱いの問題でございますから、本質的な違いではございません。ただ一つ、顕著な相違点と申しますのは、不況カルテルの場合には、特定の商品の市場価格が平均生産費を下回る、こういう条件がございます。したがいまして、市況回復をいたしまして生産費を上回りました場合には、不況カルテルは原則として打ち切りになるということでございます。この設備廃棄指示カルテルにつきましては、その結果としての市況回復があって平均生産費を上回るようになりましても、それだけの理由で打ち切る必要はない、こういう実体的な相違があると思います。
  61. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの答弁で、やはり指示カルテルをやった方が市況回復などの点でははるかに効果があるということだと思いますが、それがたしか一つのメリットになることは、もう言うまでもないと思います。  端的に言って、設備処理を通じて、一方では特別損失の計上その他でマイナスを負うとすれば、市況回復以外に固定費の削減ということへどうしても走らざるを得ないということになると、これがただ減価償却費が少なくなるということだけで済まないのではないか。私、一昨日造船のSSKに参りましたが、はっきり言って固定費、人件費を削らなければいかぬ。現実に大規模な人減らし計画と賃金カットをやってきているわけですが、どうしてもそういうことになる。  それはたとえば通産省の資料によって、合成繊維の五社について生産部門の従業員一人当たりの機械装置の簿価で見ますと、二百九十万円から七百万円ぐらいになります。そうすると、その廃棄により減価償却費の軽減というのは、年間仮に十分の一と見ると、せいぜい二十九万円から七十万円くらいですが、従業員一人当たりそれしか減らせないとなると、それに見合った従業員一人の方の人件費の軽減というのは、年間二百万円をどうしても下らないということになる。  ですから、ともかく計画的な設備処理によって市況回復をするんだということ、それからもう一つ固定費の削減ということになると、どうしてもこういうところでの固定費の削減ということにいかざるを得ない。そこへ駆り立てられていくのではないだろうか。しかも退職金に対しては、これはもちろん労使協議の上という前提だということですが、これは基金債務保証対象になるということになるのではないか。どうしてもそういう性格が浮き上がってくるわけです。そうすると、ここで例示四業種を含めて構造不況業種がすでに相当な人減らしをやってきている。それが過剰設備、遊休設備、そういうものが多くあるということを背景に行われてきた。したがって、今度遊休設備を一層計画的に廃棄しようということになるならば、それで生産縮小しようということになるならば、拍車をかけるのではないだろうか。この点について答弁を伺いたいと思います。
  62. 濃野滋

    ○濃野政府委員 構造不況業種と雇用との関係の問題でございますが、先生ただいま御指摘のように、構造不況業種は本来大変な過剰設備を抱えまして、経済全体が不況、沈滞の中で特に不況の波をかぶっておりまして、現在までの動きを見てみますと、これは私どもが便宜的に、繊維あるいは平電炉、肥料、アルミ等々私どもの所管の業種につきまして、構造不況業種製造業全体の中での従業員数の動き等を見てみますと、確かにいわゆる構造不況業種と呼ばれておる業種の従業員数の減少の方が、一般的な平均レベルより高いという傾向が出ております。  それじゃ、これからどうなるかということでございますが、これは設備処理がどういうかっこうで行われるかということによりまして、各業種業種実態で非常に変わってくると思いまして、私ども、全体としてどうなるかということの把握は大変困難でございます。  ただ、私ども通産省の所管業種で見ますと、業種によっては、まだ企業の中での他部門への配置転換等で相当片づくのじゃないかと思われる業種、たとえば化学工業関係の会社等については、非常な複合生産でございますから、設備処理のテンポをうまくやりさえすれば、そういう企業の内部の転換で片づく、あるいは関係会社の出向関係で片づくというようなことで、外にいわゆる失業というかっこうで問題を出すことは非常に少ないのじゃないかと思われるような見通しの業種もございますし、一方、先ほどから御議論がございましたような、たとえば平電炉業界でございますとかあるいは繊維産業の一部等につきましては、今後の景気全体の動きなりあるいはこの構造改善の進め方いかんによりましては、ある程度のそういう雇用調整の問題も考えていかなければならぬというような業種もあると思いますが、総括的に申し上げまして、この過剰設備処理は、安定基本計画でその設備処理のテンポ等もいわば雇用の安定ということの非常に有機的な関連で考えていかなければいかぬと思いますから、そこの調整のよろしきを得れば、何とか雇用の安定ということを確保しながら設備処理が進めていけるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  63. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 大臣に伺いたいのですが、いまの答弁の中で、この法案によって一体雇用状態がどうなるのかということはしかと把握できないというようなことや、それから、実際にこういう設備処理計画的に行われたときに、すでに進んでいた人減らしに一層拍車をかけられるではないかということに対して、はっきりした返事がないし、また、この法律の中にももちろん何の縛りも事実上ない状態なんですが、この点について一体どう考えておられるのか、もう少しはっきり大臣に伺いたいと思います。
  64. 河本敏夫

    河本国務大臣 設備の過剰の状態は、各業種によって非常に違っております。そこで、どの程度設備廃棄が行われるかということでありますが、私どもは、ある業種では一、二割で済む業種もあると思いますが、また中には、五、六割以上の廃棄をしなければおさまらないというような業種もあろうと思います。したがいまして、そこから発生する雇用問題は、いろいろ工夫をいたしましてもある程度避けられないのではないかと思います。もっとも、これまで不況業種、長い間いろいろ経営合理化に努めておりますので、ある程度雇用調整は進んでおりますけれども、それじゃ一切もう雇用問題は起こってこないかといいますと、そうはまいらぬのではないか、このように考えております。  それにつきまして、政府といたしましては、法律の中でできるだけの対策を考えていこうということを述べておりますが、これまでの幾つかの制度等を活用いたしまして、極力この雇用問題に対処していかなければならぬと考えております。
  65. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 極力対処ということでこういう対策を進めながらやって、問題解決できないと思うのです。  私は、造船について具体的にもう少し聞きますが、共産党の国会議員団として長崎県の造船調査いたしました。そうしますと、これは三菱とSSKだけ挙げますが、ピーク時に比べてことしの一月というのは、減員数が三菱重工の場合は約一四%、SSKは八%従業員数が減っております。ところが、いま会社側が出している人減らしの計画によりますと、これはさらに三菱の場合一二・六%、SSKの場合ですと二二・六%減らしていくという計画を出していっているということになりますと、ピーク時に比べ、三菱の場合ですと二五%、SSKの場合だと二九%というように、ほとんど三割ですね。いままでじゃないのです。これから減らす。それにまたこの計画が乗ってくるわけですね。設備廃棄とか処理とか、それが乗ってくるわけです。それがされない前にすでにこういう勢いで進んでいるわけです。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕  とりわけ下請に対して一体どういう考慮が払われているのだろうか。造船の場合、三菱、SSK、それからさらに長崎県内の大島と林兼について見ますと、七五年一月から七七年五月までに約六千人の減員になって、これは本工の方の減員率といいますのは、さっき言った四社の一一%に比べてこちらの方はもう三三・六%も減員が進んでいるわけです。そしてことしの一月について言いますと、SSKの場合ですと、いわゆる社外工、下請がさらに減ってしまって、ピーク時というよりも七五年一月に比べて約八割も減っている。こういう進み方なんですね。  ですから、もうすでに人減らしというのは、本工だけではなしに、下請がこのようにどんどん減らされている。しかも造船などの場合ですと、設備を外に持っているという下請でなしに、もっぱら構内の主要な労働力の一部を構成している下請がかなり大きいわけでありますから、結局設備処理によって親会社の方が処理してしまうと、こんな法は何のメリットもないのですね。何のメリットもないどころか、自分たちは設備処理について中小企業として共同処理などして受けられるそういう恩恵も何もない、もっぱら必要なのは運転資金なんですが、そのめんどうも見られない、それで人減らしはどんどんやられなければいけない、こういう状況がすでに出てきているわけです。  これは私、造船だけじゃないと思うのです。やはり下請を広く使っているところもそうだと思うのです。こういうことを考えますと、今度の法案が下請や雇用に対して非常に大きな影響を及ぼすという実態があるのですから、仮にこの法律が成立して新しく施行されるとしたらどういうことになるか、結果は明らかじゃないかと思います。造船ですから、造船関係の運輸省の方からその問題についてひとつお答え願いたいと思います。
  66. 間野忠

    間野説明員 長崎と佐世保につきまして雇用の減少について御指摘がございましたけれども、全体で見ましても、確かにピーク時は関連工業も含めまして三十六万一千人ほどおりましたのが、現在は二十三万程度というふうに非常に減っております。ただ、現在までは、特に大手等におきましては、企業内他部門へ配置転換するとか、あるいは新規採用をやめて自然減も不補充でいくというようなことで、かなり進んでまいったわけでございますけれども、五十三年度につきましては、特に工事量が非常に減少することが心配されております。  先ほどの御質問の中で、造船工業会の会長が、いろいろ工事量確保、工事量造出のための施策を提案しておるという御指摘がございましたが、これにつきましても、本来の過剰設備とは別に、特に五十三年度、五十四年度について仕事が落ちるということを懸念しての御提案であると思います。そういうことでございますので、われわれとしましても、この法案によります過剰設備処理ということは確かに基本的な問題でございますけれども、効果というものは中期あるいは長期的に出てまいるものでございまして、とりあえず五十三年度とか五十四年度については、いろいろ他部門への転換ですとか新たな工事量を創出するというようなことで、極端な近間の落ち込みは何とか考えなければいけない、この法案だけでどうこうということではない問題であるというふうに理解しております。
  67. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 私、長崎県側ともいろいろお話し合いしましたが、特に造船の場合非常に興味深いと申しますか、この法案に対して何の期待も抱いていないのじゃないかという印象さえ受けたわけです。造船所に行ってみますと、設備処理をどうしてやっていいのか、これも全くはっきりしない、それでまた、そういうことで直ちにメリットが出るわけじゃない、もっぱらさっき言った固定費減らしで人減らしだけをやっているということで、その中であと官公需船をどうしてほしいということだけが出てくる、これが実態であります。そういうことで、先ほど来の質問で、特に直接のメーカーにとってこういう設備処理廃棄がどういうメリットをもたらすであろうかということを通じて質問をし、そしてそのメリットの追求ということになると、それがなぜ人減らしにつながるのかということも明らかにしてきたわけです。  今度は、前回の質問でも私は出しましたが、特に四業種についても、ほかの重立った構造不況業種についても、個々の企業が単独で設備投資をやってきたわけじゃない。それぞれ三井とか三菱とか住友とかいろいろ挙げられるでしょうけれども、そういう大きな資本の集団で金融機関を背景に持ちながら設備投資をやってきた。平電炉の場合などで言いますと、高炉系、商社系、その他というふうに分かれるけれども、高炉系、商社系で大体八割を占める、こういう実態なのであります。そういうことで、さっき過剰設備を起こした上での政府の責任ということを問題にしました。そのとき、政府にもいささか責任があるということでありました。  民間側の責任ということを考えるときに、個々の企業ということだけでなしに、やはり何といってもこういう背景にいる大きな金融機関、商社を含めてその責任が問われなければならないし、また、仮に設備処理をするということならば、それにふさわしい負担のとり方ということがなければおかしいんですが、この法案には、そういう個々の事業者についてどういう努力をするかということはありますが、こういう過剰設備をつくり出したグループ、あるいは銀行、商社、そういうものがどういう負担をするのか、責任をとるのか全く明らかになってないのは大変な欠陥法案だと思いますが、その点について、これは大臣から伺いたいと思います。
  68. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは一番肝心な点は債務保証基金運用のあり方だと思うのですが、この場合に、やはり商社、銀行等これまでの責任もありますから、適当な責任をとってもらうつもりでおります。具体的なことにつきましては、局長から答弁をいたします。
  69. 濃野滋

    ○濃野政府委員 御指摘のように、いわゆる構造不況業種業種によっていろいろ実態は違いますが、一般的に申し上げまして、金融界あるいはたとえば商社、大商社等々いわゆる金融的ないろいろな支援関係があることは事実でございます。しかも現在の過剰設備の問題が出てきた背景に、設備の投資をやるかどうかという判断、これは個々の企業家の判断の問題でございまして、その裏の金融界あるいは金融的関係のある商社との間のいろいろな経緯は、個々の業種あるいは個々の事業者によって違う、いろいろあるとは思いますが、しかし、あくまでも責任はやはり事業者の問題であると思います。その責任云々という問題は別といたしまして、この過剰設備処理を進めていくためには、金融界あるいはそういう商社を中心とする関係業界の全面的な協力のもとでなければ、これは進められないと考えております。  そこで、いま大臣、一つの例として御答弁ございましたが、たとえば債務保証基金運用等につきましても、保証基金保証をしたたとえば裏負担の問題でございますとか、あるいは基金に対する協力の問題でございますとか、そういう面で金融界なり商社その他の関係事業者の全面的な協力を要請をしていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  70. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) その商社や金融機関の責任は部分的に認められたような御答弁だったと思いますが、この法案そのものでは、第四条などのところでは、もっぱら努力するのは事業者だということになっておって、実際上一緒になって設備投資活動を進めてきた、あるいは資金を供給してきた側の努力とか何をしなければならないかとかいう縛りがこの法案の中では全然かけられてないということは、大変重要な点だと思うわけです。  しかもこの裏保証、裏負担ですか、政府保証の裏負担をするというのですが、これはどうなんですか。個々の企業企業努力としてとってきて、そしてこうとりましたよというとき初めて受けられる、そういうことなんですか。  それから、ついでに伺っておきたいのですが、エコノミストの三月七日号で、日本長期信用銀行の調査部長竹内宏氏が「三分の一という話もある。」と言っていますが、これは三分の二という話も聞くのですが、どの程度なんですか。
  71. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この信用基金保証をどういうかっこうで行うかという問題につきましては、非常に技術的な問題がたくさんございまして、私、いま裏負担、裏保証という言葉も使いましたが、それじゃ、それをどうやってやっていくか、どういう割合にやっていくかということは、ただいままで何回も御答弁申し上げましたように、現在私どもと大蔵省当局、それから銀行、つまり金融機関の専門家の方たち、いま御指摘のございました長銀等も含めまして、銀行の専門家の方たちがいわばグループをつくりまして、そういう技術的な問題の詰めをいろいろやっておりまして、三分の一とか三分の二とかいろいろ書いてございますが、私どもまだ全く白紙でございます。その辺、協力体制ということを前提に、しかも信用基金保証機能をどうやったら一番うまく果たしていけるかということについて詰めている段階でございまして、まだ何ら具体的に決まっておりません。
  72. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 実際この法案の性格からいって、一口で言えば、ぼくは大きな商社の救済法だと言えると思うのですね。これまではどんどん設備投資をやらしてきて、そして経営状態が悪くなる、不良債権をつくってもらっては困る、あるいはまた会社更生法適用になってしまうと債権がどこまで押さえられるかわからぬ、そこで新しい基金政府保証をやる。本来ならば、日本のいまの金融機関やグループの力から言えば、その過剰設備部分の担保抜き資金の部分を無担保で貸し付けるぐらいの力はある、私は、はっきりそう言えると思うのですが、その分を政府保証するということによりまして、会社更生法適用とかそういうことになることで受ける銀行や商社の打撃はこれで避けてしまう、避けられるようになる、そういう意味で救済法だと思うわけです。  そして、いま言われたように、少しでも責任を負わせようということについて言えば、もっぱら裏保証である、裏負担である。ところが、その具体的な内容はこの法案で何の縛りもない。三分の一かもしらぬ、三分の二かもしらぬ。それは一体だれがとってくるんだ、これさえはっきりしてない状況であります。しかし、もし仮に個々の企業がそれをとってくるということになれば、どうしても自分が直接借りてきた金融機関、いわゆるこれまでの主力の金融機関、そういうところを相手にとってくるという構造になると思います。そうすると、今度は金融機関の側が、この安定基本計画が悠々ときっちりやれるようにそういう立場は保障されて、しかも政府保証がありますから、自分のところのリスクというのはみんな政府にかぶせてしまった形にして、そして今度は金融機関の側の圧力として、もっと人減らしをやれとか、固定費の削減をやれという形で合理化を急がせるという、そういう役割りだけは確保する、どうしてもそういうことになるのではないかと思いますが、どうでしょう、これは大臣に御答弁願いたいと思います。
  73. 河本敏夫

    河本国務大臣 私どもは、こういう法律ができましても、業界がこういう法律に頼らないで、できるだけ自主努力業界の再建をしてもらいたいということを期待をしておるわけでございます。しかしながら、業界によりましては、どうしても自主努力ではやれない、だから万やむを得ずこの法律に依存してやっていこうという業界も出てくるであろうと思います。  いずれにいたしましても、いまお述べになりましたような問題等もございますので、やはり商社や銀行にも積極的に参加をしていただきまして、みんなが集まって工夫をこらして、そして問題を打開しないことにはうまくいかないのではないかと考えております。だから、余り形式にとらわれないで実情をよく判断いたしまして、効果が上がるように持っていきたいと考えております。
  74. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) やはり法案というものは、国会で審議して国会を通す以上、規定というのがはっきりしてなければいけないんで、責任ある者は責任があるとし、それで努力させる者には努力させるとし、その限度とか内容、そういう規定というものが当然なければいけないのです。特に今度の日本の過剰蓄積とかあるいは構造不況をつくり出した一番張本人の方は、きわめて自由に、これからいろいろ協議して自由自在にやっていきましょうといって何の縛りもかけられない、そういう性格の法案だとどうしても見ざるを得ません。  そこで、最後に一問だけ。いまの円高不況の問題で、円高がさらに進行していく。進行していけば、当然構造不況業種の広がりとかその深刻さの度合いが広がると思うのですが、こういうことに対しての対策なしに、結果として出てくる設備が何%過剰だという状態、そこだけをちょん切っていこうというそういう法案になっているんじゃないか。というのは、政府自身が円高を大体どの程度でおさめるとか、あるいはいまは異常過ぎるからいずれもとへ戻すとかいうそういう方向性というものもはっきり示されてない、どうしてもそう考えざるを得ないのですが、その点について伺いたいと思います。
  75. 河本敏夫

    河本国務大臣 円高がわが国の産業に非常に大きな影響を及ぼしておることば、これはもう御指摘のとおりでございます。そこで、昨年の年末には二百四十円という水準、この水準で全産業に及ぼしておる影響調査いたしまして産業政策を立案したわけでございますが、最近の事情は激変をいたしておりますので、いま最近の事情につきまして急いで調査をしておるところでございます。近く結果が判明いたしますので、それによって判断をしたいと考えております。
  76. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これで終わります。
  77. 野呂恭一

    野呂委員長 大成正雄君。
  78. 大成正雄

    ○大成委員 ただいま工藤委員が最後に円高構造不況対策とのかかわり合いをお尋ねになったわけでありますが、私もその辺から承っていきたいと思います。  昨日の東京市場の寄りつきが二百二十五円、先物相場で二百二十円、こういった異常なというか、急激な円高基調が続いておるわけであります。これに対しまして、大臣も本委員会で積極的に御答弁をいただいておりますように、ともかく景気の拡大がドル減らしにつながるという、そういう発想でいろいろな手法なりあるいは政策の選択をすることが大事なことだということを強調されておられるわけであります。  去る二十五日に政府円高対策景気浮揚対策の七項目を挙げられておるわけであります。これによって実質経済成長率七%程度を達成する。ドルについては幾らぐらいに持っていくということは書いてありませんけれども、ともかく外貨保有高三百億ドルに迫ろうとしておる、こういう状態でありまして、この委員会においていま私たちが審議を進めております構造不況対策も、そういった内外の経済基調の中で判断をしていかなければならないと思います。  そこで、日英経済シンポジウムにおいて英国のエコノミストのレディング氏が一つの論文を発表して、二十六日の日経紙がその概要を伝えております。一読をいたしまして、私、非常に示唆に富んだ論文だと思いますので、あえてその論旨を引用させていただきまして政府考え方をただしたいと思うのであります。  このレディング論文からいきますと、景気の拡大が輸入の拡大につながる、また製品輸入比率を高める、したがって外貨収支は均衡といったそういう論理が、なかなかそういう方向には行かないのではないか、日本の市場調整メカニズムと申しますか、そういったものがそういう矛盾をはらんでいるということを率直に指摘されておられるわけであります。景気拡大策は、レディング論文では、自国製品の消費につながって、結局なおかつ日本製品の競争力は一層拡大する方向に行く、そして貿易黒字は多少減るでしょうが、それは石油と原料輸入増につながっていく、したがって、先進国の不況産業にとって何らの助けにもならないという一つの論点でございます。この点についてまず政府考え方を承りたいと思うのです。
  79. 河本敏夫

    河本国務大臣 その論文は私も拝見をいたしましたが、いろいろなことを言っておりますけれども、要するに、日本経済は力があるんだからもっと世界全体の経済の発展のために努力したらどうだ、これまでの努力はきわめて小さくて不十分である、こういう趣旨を言っておるのだと思います。その点に関しては私どもも全く賛成でございまして、現在の日本経済力及び世界における立場等を考えますと、やはり経済協力、いろいろな面があろうと思いますが、それに飛躍的に力を入れていくということが必要であろうと痛感をいたしております。
  80. 大成正雄

    ○大成委員 次に、この論文の趣旨からいたしますと、いまのような日本景気拡大策というものは、インフレにつながっていくという点を指摘しておるのであります。昨日あたりの株の相場を見ましても、ダウ平均の記録を出しておる、こういった状態でありまして、一面、かつてとは違った過剰流動性と申しますか、金のだぶつきというものがそういう方向に集中をしていっておるというふうにも見られるわけでありますが、いまの景気浮揚対策が物価騰貴やインフレにつながるかどうか、こういった心配についてはどのように考えておられるでしょうか。
  81. 河本敏夫

    河本国務大臣 現在とっております景気政策を成功させるためには、やはりその前提としての物価対策が一番大事だと考えております。でありますから、昨年の年末に予算を決めましたときにも、特に公共事業に必要とする物質の需給、物価の動向に対しては万全の配慮を払わなければならぬということを、特に閣議で決定をしたわけでございます。  ただ、いま御指摘の点は、為賛相場に介入をいたしました結果手持ちのドルが相当ふえておるではないか、それが当然一部円資金となって為替市場に還流されておっていまの株高になっておるのではないか、こういうお話でございますが、確かにそういう傾向はあろうと思います。ただ、前回の過剰流動性の時代と違いますことは、前回は、とにかく土地を買え、物を買え、株を買え、こういうことでいわば狂乱状態でございましたが、今回は、土地を買えとか物を買えとかそういう動きではございませんで、一部は預金になりあるいは一部は証券投資になっておる、こういうことで、前回とは相当事情が違っております。でありますから、このことが直ちに物価の上昇につながるとは考えておりませんが、しかし、よほど気をつける必要があろうと思います。
  82. 大成正雄

    ○大成委員 せっかくでございますから、この実質のない株高に対して、大臣はどのようにお考えですか。
  83. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは、つい先般までは余剰資金の非常に多くの部分が債券投資に向かっておったのでありますが、公定歩合が下がり、そして金利水準が非常に低下をいたしましたので、そういうこともございまして証券投資にこれが向かっておる、このようにも判断できると思います。ただしかし、ある意味におきましては、私は、多くの方々は日本経済の将来に対しては決して悲観はしておられないだろう、こう思うのです。悲観をしておられれば、当然資金は別の方向に向かうはずでありますけれども、相当部分の資金が証券投資に向かっておるということば、やはりある程度将来を展望しておられるのではないかと考えております。
  84. 大成正雄

    ○大成委員 先刻申し上げたような急激な円高日本産業再編は避けて通れないということを、このレディング論文でも指摘をしておるわけであります。全くそのとおりだと思うのです。いまこの構造不況法案等によって象徴的なのは円高対策等でございますけれども円高による産業被害の救済策というものが先に立って、一部合繊等においては産業再編論といった方向も打ち出されておりますが、この円高によって西ドイツのようにもっと産業の再編論というものにアプローチしてきてもいいのじゃないかというふうに思うのです。政府がそのような政策の選択を強く打ち出すことがいいかどうかは、時期的にむずかしいとは思うのですが、いまの円高基調は、必然的にその市場調整メカニズムの帰結として日本産業再編成は避けて通れない、こういった考え方に対して通産省はいまどういう政策の誘導をしようとしておるのか。その一環として構造不況法案も提出されておるものと思うのですが、この程度のものが産業再編につながるのかどうか。特に主要産業の世界的な位置づけ、また、日本産業の活力を温存するといったことを背景として、この産業政策論というものをどのように政府は考えておられるのかを承りたいわけであります。
  85. 河本敏夫

    河本国務大臣 産業再編成というのは、比較的短期間で考えるべき課題じゃないかと思いますが、もう少し中期的に考えますと、日本としてはその前に産業構造の転換という問題がございます。昭和四十八年にオイルショックが起こりまして、政府の方は産業構造審議会昭和六十年代を目標として日本産業構造はいかに持っていったらいいかということについて諮問をいたしまして、答申をいただいたわけでございます。その後毎年手直しをしておりましたが、五十二年は手直しをしませんでそのままになっておりますが、五十三年度には、やはり六十年を見通しました産業構造のあり方についてもう一回検討していただこうと考えております。  ただしかしながら、この産業構造の転換をする場合におきましても、そういう青写真はできましても、経済がある程度回復いたしまして活力を持ちませんと、よたよたした経済の中で産業構造の転換などは進められるものではございません。だから、その前提といたしましても、ここ当分の間は七%または七%近い経済成長を続けるということがその前提条件であろうと私どもは理解をいたします。そのために、景気回復ということを最優先課題として取り上げておるわけでございます。  たまたまオイルショックが起こりまして、ある業種は非常によくなり、またある業種は非常に悪くなったという大きな影響が出たわけでございますが、悪い業種はなかなか立ち直りません。産業全体の足を引っ張る、こういう状態でございますので、今回お願いをいたしております法案の御審議をいただいておるわけでございますが、この法律案が成立をいたしまして、構造不況業種設備廃棄というものがある程度進んでまいりますと、当然御指摘のような再編というものもある程度起こってくると私は思います。これは業界ごとにそれぞれ規模とか進み方は違うと思いますが、もう避けて通れない課題だと考えております。
  86. 大成正雄

    ○大成委員 これは大臣が読売に円高対策として発表しておられる対談の中身でありますが、大臣がこのままおっしゃられたのかどうかわかりませんけれども、「日本が開発援助に使っているカネが、先進工業国の中で一番少ないのは恥ずかしい。」こういうことをお述べになっておられるわけであります。  そこで、先ほど引用しましたレディング論文の結論として、日本のとるべき円高対策として資本輸出に目を向けるべきだ、特に日本はアフリカ、中南米、東南アジア等の途上国のプロジェクトに対する融資計画に積極的に協力すべきだということを言っております。ただし書きがついておりまして、この資本財の輸出のひもをつけてはならない、こう言っておられるわけでありますが、大臣のお考えとそう大して変わりはないと思うのでありますが、この内容といまの円高対策との関係について大臣の御所見を承りたいと思います。
  87. 河本敏夫

    河本国務大臣 円高の背景はいろいろあるわけでありますが、一つはやはりわが国の大幅な黒字、それからアメリカの大幅な赤字、この二つが一番大きな力になっておると思います。  そこで、対策といたしましては、輸出に関しては数量で横並び、輸入に関しては緊急輸入の拡大、それからさらに経済協力の推進、こういうことを考えながらいろいろ対策を立てております。もちろん抜本的には内需の拡大ということが一番の柱にならなければならぬわけでございますが、直接の外貨対策といたしましては、以上申し上げました三つの柱を考えておるわけでございます。  私が日本現状は開発援助で先進工業国の中で一番少ないということを申し上げましたのは、GNPのパーセンテージにおいて一番少ないということを言ったわけでございまして、金額では日本も相当上位にあることはもう御案内のとおりでございます。昨年は〇・二四という非常に恥ずかしい数字でございましたが、ことしはようやく〇・三強というところまで改善をいたしました。それにいたしましても、これは日本の実力から考えますとまだ少ないわけでございまして、これを少なくとも五年間に倍以上にしていこう、都合によればその五年という年限を短縮していこう、こういうことを目標にいたしまして開発援助を進めておるわけでございますが、経済協力といいますとそれだけではございませんで、ほかにもたくさんあるわけでございますから、経済協力全体を含めまして、やはりこれを早く拡大していくことが必要であると考えております。  日本経済の生きていく道は、内需の拡大もさることながら、世界経済全体が回復発展をいたしませんとむずかしいことはすでによく御承知でございますが、そういう意味におきまして、経済協力の拡大ということを先般も政府として決定をしたわけでございます。
  88. 大成正雄

    ○大成委員 そこで、ただいまお述べになったようなお考えのもとで、具体的にさらにどのようにお考えかをひとつただしたいと思うのでございますが、二十五日に景気浮揚対策一つ方向として、数量ベースで前年度と横ばいという方向を目標にしていくということを言っておられるわけでございます。二百二十円台といったような円高基調の中で数量ベースで横ばいということは、円ベース、ドルベースではどうなのかということが具体的には問題になってくると思います。具体的に通産の輸出統計等を引用するのは避けますけれども、ともかくそれぞれいずれに比重を置くかによって相当の問題があります。その考え方をひとつ円ベース、ドルベースに引き直してどうか、二百二十円台の円高基調でどうかといったことであります。また、数量ベースで横ばいに持っていくということは、わが国の経済の実勢というものが七%の成長というものを可能にするものなのかどうか、また、この輸出寄与率というものはどうなのかということであります。  それから、若干ミクロ的になりますが、この輸出関連産地企業あるいは中小企業等において、二百二十円台になったことによって非常に成約が困難になってきておる、あるいは従来の非価格競争力を上回って価格競争力そのものにも問題が出てきておる、こういったことでありますが、それらについてもひとつ承りたいと思います。  それから、輸出を規制するということでありますが、大臣は、拡大均衡的な方向で法制的なブレーキはかけないということでありましょうが、地域別に輸出統計等からしますといろいろ問題もあるようであります。そういった地域別の規制のあり方、あるいは特にいま頭に描かれておるこの規制対象品目、こういったこと等いろいろ細々と申し上げましたけれども、ひとつ総括して承れればありがたいと思います。
  89. 河本敏夫

    河本国務大臣 五十三年度の予算を編成いたしましたのは昨年の十二月でございますが、その予算編成に先立ちまして政府は五十三年度の経済見通しを作成いたしました。その経済見通しで、輸出は金額で、ドルベースで七%増という想定をいたしておりますが、数量では横並びである、こういう考え方に立って七%増というドルベースの目標を掲げたわけであります。そのときは二百四十五円と想定をしておったわけでありますが、その後二百四十円台に年末から年始になりましたので、そのときさらに再計算をいたしましたところ、数量ベースで大体横並びということは、結局ドルベースで若干ふえまして、七・五%ないし八%見当の増額になるであろうと想定をいたしました。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 昨今のような円高になりますとその数字は当然ふえるはずでございますが、これにはやはり幾つかの複雑な要素がございますので、まだ最終的には正確な計算はいたしておりません。したがいまして、数量ベースで横並びという線を指導してまいりますならば、七%という経済成長には影響は出てまいりません。  しかし、万一数量で減すということになりますと、これはたちまちのうちにして七%成長にそれだけで影響が出てくるわけでございます。たとえば仮に五%減しますと、円ベースで一兆円以上の輸出の減になりますから、生産をそれだけ落とさなければなりませんし、波及効果を考えますと、経済成長率は一%以上低い水準に押さえ込まなければいかぬ、こういうことにもなりますので、たちまちのうちにしてこれは雇用問題にも響いてまいります。また、これが導火線になりまして、世界全体に保護貿易という傾向が起こってこないとも限りません。でありますから、何とか数量ベースで横並びという線は堅持をしたいというのが私ども考え方でございます。ただし、そのためには品目ごとに、また地域ごとにきめの細かい行政指導が必要でございまして、それには関係者の間でいろいろ準備をしておるところでございます。  また、中小企業に対する影響は、二百四十円時代の調査はしておりましたけれども、最近の調査ができておりませんので、いま緊急調査中でございます。結果いかんによりましては、現在の中小企業に対する支援体制をさらに強化していく必要があろうかと考えております。
  90. 大成正雄

    ○大成委員 大臣お触れになりませんので、私の方から一つだけお聞きしますが、特に増加寄与率等からしますと、輸出がふえた主な品目でございますが、乗用車、トラックなんというのが一九・九一%、約二〇%近く、船舶が六・八四、オートバイ、こういったものですが、自動車に関して数量ベースである程度行政指導の規制をしていくといったようなことの内容について、カラーテレビと同じような考え方を持っておられるのかどうか、その点をひとつ承りたいと思います。
  91. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 自動車につきましては、私ども、端的に申し上げまして、法的な輸出規制をする気は全くないわけでございまして、概括的に申し上げますと、先ほど大臣から答弁のございましたように、数量が大体五十二年の横並びという数字でございまして、これは先生も御指摘になりましたように、地域的な問題もその中に含められております。したがいまして、地域的な問題をにらみながら、自動車の輸出全体といたしまして五十二年度並みになるような行政指導をやりたいということでございまして、現に特定地域につきましてはしかるべき行政措置をとっておりますし、今後とも行政措置を強化してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  92. 大成正雄

    ○大成委員 経企庁、どなたかおいでですか。  この政府が二十五日に決定しました景気浮揚七項目で、マクロでお聞きするわけですが、需給ギャップがどのくらい縮小するというふうな計算の基礎を持っておられるのでしょうか、この点を承りたいと存じます。
  93. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  土曜日に決定いたしました当面の経済対策を実施することによりまして、私どもは七%成長が確実に達成されるというふうに考えております。その結果、需給ギャップがどういうふうになるかというお尋ねでございますが、先生御承知のように、一般に需給ギャップと申します場合にはいわゆるGNPギャップでございますけれども、GNPの概念と申しますか、成長能力そのものを測定するのは大変困難でございまして、私どもは、その中で比較的確実な製造業における需給ギャップというものを計算しているわけでございます。  七%成長でまいりますと、最近稼働率の基準指数が変更になりましたが、大体企業操業度でまいりますと、五十三年度末、つまり五十四年三月には大体八割強程度になろうかというふうに考えております。
  94. 大成正雄

    ○大成委員 時間の関係もありますので、さらに個別的な問題について御質問申し上げたいと存じます。  最初に、この法案関係について優先させていただきたいと思うのですが、本法の審議の過程で、一つ修正意見として、時限五年では長過ぎるのではないか、これを三年くらいに縮めたらどうか、こういう意見が出てきておるわけであります。わが党の立場からはむしろ逆で、これは五年が当然だという考え方を持っておるわけでございますけれども、この法定時限を五年とした根拠もあろうかと思います。また同時に、これを三年に短縮することによっていろいろな問題も出てくると思います。私も具体的に幾つか触れたいのですけれども、時間の制約もありますから、この修正の問題として当然出てくる問題でございますから、その時限五年といったようなことに対する政府の根拠のある御答弁をこの際承っておきたいと思います。
  95. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法案立案に当たりまして、附則の第二条で「この法律は、昭和五十八年六月三十日までに廃止するものとする。」ということで、ほぼ五年の時限立法といたしました。  いろいろな理由がございますが、一番実質的な問題は、現在、御案内のように、設備処理、広い意味での処理でございますが、これには業種、業態によりまして進めていく期間がいろいろあると思いますが、現実にたとえばアルミ製錬等、この法律に将来乗ることを考えますと、五年間凍結をするというようなことでいろいろな検討が進められております。そういうことで、やはり五年程度設備処理に時間をかけてやるという業界があるのではないかということが一番中心の問題でございます。  また、仮に設備処理がもっと短い期間、たとえば二年で完了する、あるいは三年で完了するという業界もあるかもしれませんが、ただ業種によりましては、たとえば残存者負担というようなことで全体の設備処理を進めていくという方式をとる場合も考えられまして、こういう業界がございますと、これは最後の処理までに二年とか三年という短い期間ではとても終わらない、やはり五年程度の期間が要るのではないかというのが実質的には一番大きな理由で、五年ということを一応の必要な期間ということとしたわけでございます。
  96. 大成正雄

    ○大成委員 もし仮に三年とした場合に、たとえば保証基金の取り扱いの問題等を考えるときに、廃止立法でそれはまた改めて法定したらどうか、こういう一部意見があるわけですが、局長はどういうふうにお考えですか。
  97. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御指摘保証基金の問題は、これは保証期間の問題とも絡んでくると思いますが、私、ただいまの答弁で申し上げませんでしたが、一応いま保証期間は五年ということにしております。これを三年にした場合には、廃止法でございますれば、その廃止の段階でなお保証の期間が続く間はこの基金の機能を継続させるというような処理ができるかもしれませんが、むしろ問題は、先ほど申し上げましたように、三年というようなことにしました場合でも、実質的にほかのいろいろな、たとえば雇用安定の関係、それからその他いろいろな立場から見まして、設備処理の期間に五年要るというようなたとえばアルミ製錬業のような問題の方がむしろ実質的でございまして、これが三年でなくなるならば三年間でその処理計画をつくれと言われましても、なかなか現実の問題としてできない。そうすると、三年といたしましても、そういう業界についてはやはり五年間設備処理という実体的な面での期間を認めなければいかぬというようなことでございまして、そういうことで私どもは、信用基金による保証期間が五年を一応前提にしてやっているということよりは、むしろ業界によって現実に設備処理に要する期間が五年ぐらいかかるものがあるということから、この御審議を願っておる法案で五年、こうしたわけでございます。
  98. 大成正雄

    ○大成委員 過般も承ったわけでありますが、この設備廃棄凍結融資の金利下げの問題は、業界も強く要望をしております。今回の公定歩合の引き下げによりまして、金利も全般的に下がっておるわけでございますが、この一月の全国銀行貸出約定平均金利で六・七六二という数字になっております。いま現在はもっと下がってきておると思うのですけれども、この基金を裏づけとした融資金利については、その後何か詰めがなされておるでしょうか。
  99. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この信用基金による保証をどうするかという問題につきましては、前回御答弁を申し上げたと思いますが、非常に技術的な問題も多うございますから、関係者の間でいろいろ詰めを行っております。  いま御質問の金利の問題でございますが、これはこの前もたしか御答弁申し上げましたように、一応たてまえといたしましては、当事者間、つまり当該金融機関とこれを借りる事業者との間で決定される筋合いの問題であるということで、この信用基金による保証をめぐる問題としての対象とはいたしておりません。しかし、前回もたしか大臣から御答弁あったように、私どもといたしましては、やはり設備処理を円滑に進めていく上では、大変困っておる事業者、これが構造不況業種に属する事業者でございますから、設備処理に当たって金融界の全面的な協力を期待をいたしております。その上では、一緒にひとつ業界全体、業界ぐるみで立ち直りをしていく上にはできるだけ安い金利で設備処理に伴う金融上の援助と申しますか、協力体制をとってもらうことを大いに期待し、そういう方向で私どもはいろいろなことを考えていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  100. 大成正雄

    ○大成委員 この保証つき金融の他の事例等からしますと、大概金利は上限を幾らというふうに決めて金融機関と交渉をしていくのが行政のあり方だというふうに私どもも理解しておるわけなんですが、この金利の上限を信用基金で裏づけをすることによって決めるお考えはないのでしょうか。
  101. 濃野滋

    ○濃野政府委員 各金融機関と個々の事業者との間の金利をどうするかという問題、これはただいま御答弁いたしましたように、私ども、この保証を行うにつきまして上限を決めるというようなことは、現在検討対象とはいたしておりません。
  102. 大成正雄

    ○大成委員 実際的な場面を想定したときに、これらの対象となる業界は非常に不況業種でありますから、相当高金利の金融負担をかぶっておると思います。ですから、この点はまた改めて私どもも論議をしたいと思いますが、考えていないということでなく、ひとつ十分御検討をいただきたい、このように思います。  次に、個別対策として幾つかの問題点を承りたいと思うのですが、二百二十円台といった円高によって、先ほど大臣の御答弁にもありましたように、一層不況要因は増大してきておるわけであります。特にこの影響度の高い幾つかの業種を挙げて承りたいわけでありますが、最もひどい造船業界の問題であります。  この二百二十円台といった円高に対して、幾つかの例を挙げて、問題の解決策をどうするか、せめて被害を最小限度にということで、海外発注船主の円離れの問題であるとか、値引きの要求であるとかいろいろ挙げておるわけでありますが、それらについての概括的な御意見を、この二百二十円台にどのように対応してその被害を最小限度に食いとめていこう、またこれを救済していこうという考え方であるかを私は承りたいわけであります。
  103. 間野忠

    間野説明員 前回のあのいわゆるニクソン・ショックのときに、造船の方もかなり為替差損をこうむりまして、それ以来、円建てで海外船主と契約をするということをやってまいったわけです。ただ、おっしゃいましたように、円がこういう二百二十円台という高い水準になり、また、先行きも必ずしも見通しがはっきりしないということになりますと、海外船主もできるだけドルで契約をしたいという傾向が強くなっております。ただ、船の輸出契約の場合、延べ払い契約と現金契約とございまして、延べ払いについてはまだ円で契約するという方針でおりますが、現金の場合にはいろいろ細工をすれば何とかなるということもございまして、かなりドルで契約するというものがふえております。そういったことがございまして、最近では、延べ払いだと円になるというような関係もございまして、現金払いの契約がふえておるというのが実情でございます。ただ、一般的に船腹過剰等の影響もございまして、注文の量は非常に減っております。  それから、既契約船につきましても、確かに値引きの要求は幾つか出ておったように思います。ただ、円建てで契約しておったものが大部分でございますので、まるまるかぶるということではなくて、従来の取引関係も考慮しまして、船主と造船所とで何がしかずつ折半して負担しておるというのが現状であると思います。
  104. 大成正雄

    ○大成委員 二百二十円ベースというのは、海運にも大変な不況をもたらしておるわけであります。特に定期船部門の目減りという非常に大きな影響を与えておるようでありますが、そういった定期船部門の目減り対策については、いま運輸省としてはどのような対策をとろうとしておられますか。
  105. 塩田澄夫

    ○塩田説明員 ただいまの御指摘でございますが、現在までのところ、海運業におきます定期船部門におきましては、非常に深刻な状態になっているということではございません。今後先行きの問題としましては、全く見通しがつかないという考え方もございますが、現在までのところ、定期船が非常に大きな影響を受けているということではございません。
  106. 大成正雄

    ○大成委員 次に、合繊、石油化学、化学肥料といった一連の問題であります。しばしば本委員会でナフサ価格の問題について私も指摘を申し上げておるわけでありますが、昨年末までの自主交渉による第一段階の値下げは一応の成果を得たわけであります。問題は、一月以降の価格交渉の問題と、大臣の御答弁で相当思い切ったことでないと第二段階の調整はできないというふうに言っておられるわけでありますが、ここまで円高が来ますというと、その第二段階の思い切った調整も避けて通れない。合繊、石化、化学肥料、それがすべてではございませんけれども、この原料であるナフサの問題は避けて通れないわけでありますが、これに対して通産当局としてはどのようにお考えでしょうか。
  107. 大永勇作

    ○大永政府委員 先生御指摘のように、昨年の十−十二月のナフサ価格につきましては、輸入物を含めまして実質三千円引きということで大部分決着したわけでございますが、一−三月の価格交渉につきましては、まだ行われておりません。恐らく四月に入りましたならば、また最近におきます需給、為替等の状況を踏まえまして折衝が行われることになろうかと思います。  なお、輸入につきまして、五十二年度の下期におきまして増量を図ったわけでございますが、輸入の数量につきましては、通産省といたしましては、五十三年度につきましても弾力的に考えていきたいというふうに考えております。
  108. 大成正雄

    ○大成委員 終わります。
  109. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時八分休憩      ————◇—————     午後二時九分開議
  110. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。中村重光君。
  111. 中村重光

    ○中村(重)委員 大蔵省にお尋ねをしますが、公定歩合が引き下げられて三・五%ということになるんだけれども、今回引き下げられた〇・七五%、これが当然貸し付けの利下げにつながっていかないといけないんだけれども、いつごろからどの程度貸付利息が下がるというように判断をしておられるのか、その点、いかがですか。
  112. 石川周

    ○石川説明員 公定歩合は、去る三月十五日に〇・七五%の引き下げが決定されまして、翌十六日から実施されております。その際、日本銀行、それから大蔵省両方から、各民間金融機関の方に対しまして、金利政策の趣旨を踏まえて貸出金利引き下げに努力をし、円滑な資金の供給に努めていただきたいという要望をし、期待も申し上げているという意向表明をしております。  これを受けまして、民間金融機関の方におきましては、短期プライムレートを連動させまして、同様に〇・七五%引き下げるということを決定いたしまして、三月二十日からこれを実施しております。したがいまして、二十日以降の貸し出しにつきましては、借りかえの時期が来れば、あるいは新規貸し出しにつきましてその都度新しい低い金利が適用になりますので、民間の方におきましては、逐次そうした形での金利の切りかえが進むものと思われます。ただ、既応の貸し付けにつきましては、手形の書きかえ期などにおきまして新しい金利が適用されますので、若干の時間がかかろうかと思います。  それから、政府関係金融機関の方につきましては、これはその原資でございます郵便貯金の利下げの方向がまだはっきりいたしておりません。郵政審議会が招集されておりまして、三十日にその審議が行われると承っておりますが、その結果、もし郵便貯金金利が下がるということになれば、資金運用部の預託金利も下げられまして、その下げられた原資を受けた各政府関係金融機関が金利を下げていくことができるという段階になりますので、政府関係金融機関の方の貸出金利の引き下げは、もう少し様子を見る必要があるのではないかと考えております。
  113. 中村重光

    ○中村(重)委員 貸出金利が引き下げられているかどうかということを、追跡調査をおやりになるのだろうと思っていますが、それはいつごろおやりになりますか。
  114. 石川周

    ○石川説明員 貸出金利の引き下げの実行の状況につきましては、毎月平均約定金利という統計がございまして、各金融業態別に統計を求めておりまして、これは日本銀行で集計いたしておりますが、その統計の状況によりまして引き下げの実態が確認されていくというふうなこととなろうと思います。
  115. 中村重光

    ○中村(重)委員 従来の実績なんだけれども、毎月そういうことでおやりになっていらっしゃって、大企業中小企業との貸出金利の差はどの程度になっていますか。
  116. 石川周

    ○石川説明員 市中貸出金利の統計につきまして、大企業中小企業という分類でそういう統計がございませんので、直接にただいまの先生の御質問のお答えにならないかと存じますが、相互銀行、信用金庫の平均約定金利という統計はございます。それで、いわば代用ということに相なろうかと存じますが、相互銀行の平均約定金利はこの一月末の時点で七・七一七%という統計になっております。相互銀行はピーク時、統計的には五十年四月になっておりますが、一番高かったときには九・七二九という統計になっております。九・七二九から一月末の七・七一七まで二・〇一二という引き下げが平均的には行われているということになるわけでございます。
  117. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま相互銀行と信用金庫のことについてお答えがあったのだから、的確に大企業中小企業との差がわからないとしても、大蔵省は、そこらあたりは十分注意を払って、中小企業の負担を軽減していくというような配慮はあるんだろうと思います。相互銀行と信用金庫というのは大体中小企業なので、大企業はないわけですから。  その他の都市銀行であるとか地方銀行、そこらはどうなっていますか。
  118. 石川周

    ○石川説明員 失礼いたしました。  まず、全国銀行について申し上げます。  全国銀行は、御承知のように、都銀、地銀全体を含めたものでございますが、これはピーク時で、五十年三月でございますが、九・四〇二、五十三年一月末には六・七六二でございました。したがいまして、通算の引き下げ幅は二・六四七%ということになっております。  先ほど申し上げましたように、相互銀行は現在七・七一七、通算引き下げ幅が二・〇一二と、いずれも全国銀行に比べますと若干高い、それから下げ幅がやや小さいという傾向がうかがわれます。これは、相互銀行の資金源でございます預金コストがそれだけ高いものになっているということ、あるいは経営基盤の強さ弱さといったいろいろなものの差がそこに出ていると思われます。ただ、私どもといたしましては、この金利引き下げの政策効果があらわれるように、中小企業にも十分均てんするように事あるごとに強くお願いをしているところでございます。
  119. 中村重光

    ○中村(重)委員 公定歩合が引き下げられて貸出金利が下がってくるということになりましても、中小企業の金利が下がるというのは非常におくれるわけですね。ところが、円高による影響を最も強く受けているのは輸出関連中小企業、また、円高だけではなくて、全体的な不況の中で弱い中小企業というのはさらに深刻な状態にあるわけですから、従来のように公定歩合を下げると大企業に対しては直ちに金利が下がる、しかし、中小企業は発言力が非常に弱いだけに置き去りにされている、そういうことがあってはならないと思います。だから、そこらに施策の重点を置いて、速やかに弱い中小企業、特に打撃を受けた中小企業に対して貸出金利を下げさせる、そういう行政指導が当然なければいけないと考えますが、そこらの配慮はいかがですか。
  120. 石川周

    ○石川説明員 先生の御趣旨、ごもっともでございます。私ども、事あるごとに金融界のいろいろな方々にお話をする際に、中小企業に対する配慮ということは常に強調し、お願いをし、指導をしているところでございます。ただ、現在のような金融緩和期になりますと、実は金融機関もその資金運用先をできるだけ優良なものにしたいという意欲が強うございまして都市銀行、地方銀行が中小企業を冷遇すると言うと語弊がございますが、そういう感覚は少なくなってきておりまして、中小企業のいいところを資金運用先としてつかまえたいという意欲がかなり強くなってきているように思います。中小企業、大企業であれ、企業規模の問題よりも企業の優劣、経営のよしあしといったところが融資に当たっての基本的な判断になってきている傾向が強くなっているように思われます。私どもは、中小企業だからといって冷遇するようなことがないように、金融機関に対して公平な効率的な運営をするように強くお願いをしているところでございます。
  121. 中村重光

    ○中村(重)委員 あなたがおっしゃるとおりで、最近の都市銀行は企業成績のいい中小企業に貸し出しのシェアを拡大していこうという傾向があるのですね。またそのことが地方銀行であるとか相互銀行とかの弱い金融機関に対してしわ寄せが来る。勝手なことを都市銀行はやるという反発が出てくるところもそこらあたりにあるだろうと思うのです。ですから、中小企業の中でもそんなに強い中小企業の場合はまずおくといたしまして、やはり弱い中小零細企業に対しては特に保護的な意味も含めた施策が当然なければならないと考えて強く申し上げたわけですから、十分そこいらに焦点を当てた対策を講じてほしいと思います。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕  この点については、岸田長官、あなたは中小企業庁長官として、中小企業のいま議論した問題について特に関心を持たなければならない。あなたの方で受けとめている大企業中小企業の金利差であるとか、それから中小企業の中でもいま大蔵省からお答えがあったような強い中小企業と弱い中小企業との貸出金利差はどういうものであるか、非常に不合理がある、弱いものはさらに弱くなっていくということを何とかここでカバーしていかなければならない、そういうことがあなたの任務として当然なければいけないと思うのだけれども、そこいらをどう把握をし、また、そうした不公平を是正をしていくために大蔵省とどのような折衝を続けているのか、また、続けていこうとお考えになっていらっしゃるのかを伺いたい。  それから大蔵省に、歩積みの問題はこの間予算委員会の大蔵部会でも、大蔵大臣、銀行局長からお答えをいただいたのだけれども、特にこういう円高不況のダブルパンチの中で、円も二百二十五円になって、恐らく二百二十円ぐらいまで上がるのではないかと思われる。輸出関連中小企業の競争力はますますなくなっていく。また、全体の中小企業は弱いなりに打撃も大きくなってまいります。歩積みの問題についてはにらみ預金であるとかいろいろあるわけですけれども、特別な配慮がなければならないと私は思います。それらの点に対してはどのように指導をしておられるのか、その点についてもお答えをいただきたいと思います。
  122. 岸田文武

    ○岸田政府委員 私ども中小企業経営の実情を見ておりまして、やはり金利の負担が大きな圧迫要因になっていると理解をいたしております。これを少しでも軽減できるようにすることは、中小企業対策としても非常に大きな関心事でございます。その意味におきまして、先ほどお話がございました約定平均金利の動きについては、私どもも毎月その状況をにらんでおるところでございます。  さらに、中小企業行政に直接関係のございます政府関係金融機関の金利の問題については、絶えず大蔵当局と連絡をとり、また三機関とも連絡をとって、中小企業の金利負担を少しでも軽減してほしいという声にこたえられるように注意を払っておるところでございます。幸いに大蔵当局におかれても、中小企業の実情については十分理解をしていただいておりますし、また、御協力をいただいておると私どもは思っております。たまたま公定歩合の引き下げがございましたので、これを受けてどのような形で政府関係金融機関の金利に反映させるか、この辺についても十分調整を図っていきたいと思っているところでございます。
  123. 石川周

    ○石川説明員 拘束性預金の問題につきましては、先生御指摘のとおり、私どもも非常に問題であると存じまして、かねてから強い指導金融機関にしているところでございまして、その成果と私どもは考えておりますが、五十二年五月の金融機関報告によりますと、拘束性預金比率が三・九%という数字に小さくなってきております。このいわゆる拘束性預金の歩積み両建て退治を始めたとされております三十九年五月当時には、二二・三%という高い比率でございました。これが三・九%まで縮小され圧縮されてきたのは、先生方の御指導を受けながらの努力であると自負しているところでございます。     〔委員長退席、中島(源)委員長代理着席〕  ただ、問題は、最近のにらみ預金でございます。にらみ預金の実態はなかなかはっきりいたしませんで、私ども統計的な基礎も実は少ないのでございますけれども、大蔵省といたしましては、これまでに二回調査いたしております。  にらみ預金は、事柄の性格上、金融機関調査をいたしましても計数的には出てまいりません。預金をしている預金者、企業者の方の心理的な問題でございますので、企業サイドを調べませんと統計的には出てまいりません。というわけで、まだ二回しか調べられておりませんが、第一回目は五十一年の二月でございます。それから第二回目は昨年の八月でございます。  その場合のにらみ預金比率を申し上げますと、第一回目の五十一年二月のときは一一・三%でございました。それから五十二年八月、昨年の秋集計いたしました数字は九・五%でございました。これは金融機関報告ではございませんで、各企業に対するアンケート調査を大蔵省がみずから実施した調査でございますので、これが統計的に時系列がもう少し延びていきますと傾向が出てくると思いますが、方向といたしましては若干ながらも改善されてきていると考えております。  私どもといたしましては、機会あるごとに金融機関に、拘束性預金はいけないのだ、できるだけ圧縮してほしい、過当な圧迫を預金者に加えることのないように配慮してほしいということは、これからも強く指導してまいりたいと考えております。
  124. 中村重光

    ○中村(重)委員 さっき石川総務課長がお答えになった例の政府機関の通利の引き下げであるとか特利の関係ですね、これは資金運用部の関係になるわけですから、郵便貯金がどう決まるかによるわけで、それは理解できるのですけれども、大蔵省は大体の見通しを立てて、通利を幾らにするかあるいは特利を幾らにするかということは、関係省庁とも連絡をとりながら準備を進めてきていると私は判断しているわけです。確定的なことでなくて結構ですけれども、いま検討している通利並びに特利貸し付けについては、どの程度引き下げをしようとお考えになっていらっしゃるのか。
  125. 石川周

    ○石川説明員 失礼いたしました。  政府関係金融機関のうち私が先ほど申し上げましたのは、特利の方の問題でございまして、基準金利は、すでに三月二十七日から民間の長期プライムレートと連動いたしまして、〇・五%の引き下げを実施いたしております。その結果、開発銀行、中小公庫、国民公庫といった政府関係金融機関の最も基本的な基準金利は七・六%でございましたが、これが七・一%に下げられております。  問題の特利の方でございますが、これはやはり郵便貯金金利の動向によりまして、またそのタイミング、下げ幅、いろいろ御議論いただくことだと思います。また、その下げ方いかんによりましては財政負担がかなりふえてくるというようなこともあり得るわけでございますので、財政の問題でもございます。いま私がここで見通しを述べるというような段階には、まだ立ち至っておりません。
  126. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど民間金融機関の金利がどの程度になったということでお答えがあったわけです。六・七六二ということでしたか、全国銀行の場合の。ところが、政府関係金融機関は、いま二十七日から実施したのが七・一%。政府関係の方が高いんです。  私は、政府関係金融機関の魅力というのか、また当然政策としてそうあらねばならないということは、民間金融機関よりも金利が低いということでないと、政府関係金融機関の意義というものが全うされないというようなことを考え方として持っているわけでして、いつもそのことを主張してきたわけです。ところが、政府といたしましては、その財源そのものが、資金運用資金もこれを使うという形になっている、なかなか下げることには限度があるということで、どうしても政府関係金融機関らしい下げ方というのをやらないですね。だから、これはもっとやはり大幅に引き下げをする必要があるんじゃないでしょうか。  千葉県が新しい制度を実施したということを、この間新聞報道で読んだのですけれども、それによりますと、一般会計から大幅に投入をして全部県の財源でもって融資をするということなんです。ということは、政府関係金融機関の場合におきましても、やはり低利でもって融資をするということになってまいりますと、一般会計の方から相当出資をしていく、低いコストの原資でもって融資をするということになってくるともっと下げられるだろう、また、下げなければならないというように私は考えるのですが、その点、どのような見解ですか。
  127. 石川周

    ○石川説明員 金利は、当然のことながら、貸付期間によって違ってまいります。民間金融機関の方の場合には、一カ月、二カ月、九十日、百二十日というような手形に対応する貸付金利でございまして、政府関係金融機関の方は、これはかなり長期の貸し付けでございます。中小公庫、国民公庫、長いもの、短いもの、いろいろございましょうが、三、四年といったようなもの、開発銀行ではもっとかなり長いものもございます。単に表面約定金利の差ではございませんで、その貸付期間の長さ、資金の貸し付けの長さということにおいて比較をしていただきたいと思います。そういう意味では、政府関係金融機関の基準金利と申し上げました新しい七・一%というのは、民間の方の同様な、政府機関ほど長いものではありませんが、興長銀の長い貸し付けの基準金利、長期プライムと呼んでおりますが、これも同じように七・一%でございます。  私どもの理解は、民間金融機関の長期のものの一番安いものが七・一、これを民間では長期プライムと呼んでおりますが、その七・一を政府関係金融機関の基準的なものとして、その下に特利というものが体系が並んでおる、こういう理解でございまして、民間の一番安いものよりも政府機関の方が高いということにはなっていないように理解しております。
  128. 中村重光

    ○中村(重)委員 十年以上、十五年、二十年くらい前は、政府関係金融機関の貸出金利というのが民間と比較すると非常に低かった。ところが、民間の金融機関というものの抵抗も実はあるのだろうと思うのですけれども、総貸出高の中に占める政府関係金融機関は一〇%というものを上下しているのですね。ふえないのです。これもやはり相当民間金融機関の抵抗があるためにこれをふやさないのだろうと私は思っている。絶対額がふえても、比率はいま言う一〇%内外だ。金利の方もいまのようではなかったと思う。やはり政府関係金融機関というのは、金利の面において、貸出条件の面において社会政策的なものも加味しているというような、そういうことがうかがえたわけなんですね。それが私は変わってきていると思うのです。  あなたがまだ幹部職員におなりになる前のことなんだから、資料をもってお答えになる以外にないのだろうと思いますけれども、私はいつも関心を持っておりますから、この点は取り組んでいろいろ意見を申し上げたり、質疑をやってきたこともあるのですが、その点はどのようにお考えになりますか。
  129. 藤田恒郎

    ○藤田説明員 話が歴史的な問題に関係いたしておりますので、所管いたします私の方からお答え申し上げます。  先生もこれは十分御承知と思いますけれども、かつては政府金融機関の中小金利と申しますのは、民間の金融機関の貸付金利よりもかなり高かった時代がございました。たとえば民間の長期の貸付金利でございますプライムレートを政府系の中小金融機関の貸付金利はかなり上回っておった時代、これが大体三十年代ぐらいまで続いておりました。昭和四十年代以降に入りまして、政府系の金融機関の中小関係の貸出金利の引き下げを図りまして、これは大体プライムレートと同水準でほぼ動くという形になっておるわけでございますが、ただ、昭和四十九年以降の非常な高金利時代におきましては、民間のプライムレートが非常に上がった。これに対応して政府系の中小金融機関の金利も引き上げるのは非常にお気の毒だという配慮から、民間のプライムレートと政府系の中小金融機関の金利の格差をつけたことはございます。しかし、最近におきまして民間の金利も非常に下がってまいりまして、一般の金利も下がってまいりましたので、政府系の中小金融機関の金利と民間のプライムレートを同水準とするという形で運営しておるわけでございます。  これはあくまでも一般論でございますので、今後の金利水準、そういったものを見ながら、政府金融機関の中小関係の貸付金利というものはどういうふうにしなければいけないのか、財政負担の問題等も絡めながら私ども検討してまいりたいというふうに思っております。  これはもう申し上げるまでもないと思いますけれども、中小機関の貸付金利を民間の長期のプライムレートと同一にしておりますのは、これは政府系の中小金融機関の貸し付けの一般の金利でございます。したがいまして、たとえば円高関連の問題であるとか、倒産の関連の問題であるとか、もろもろの問題が発生いたしましたときには、それに対応してできるだけ低い金利で政府系の金融機関の金利も決めるということにいたしておりますので、一般論としては、やはり民間の金融機関の最優遇の長期の金利にスライドして動かす、しかし、必要なものがあれば、その必要に応じてできるだけ財政負担をしても金利の引き下げを図る、こういうのが私ども政府系の中小金融機関の金利のたてまえではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  130. 中村重光

    ○中村(重)委員 それは、政策金利というのは当然なければいけないから、いまお答えがあったように、円高不況その他政策的に金利をずっと引き下げなければならぬのは下げているということは、私もよく理解しているのです。しかし、基準金利にしましても、民間と水準を合わせていくということはどうだろうかと私は思うのですね。バス会社なんかの場合、民間のバス運賃もそれから地方公共団体経営をしています場合も、大体余り差がないようなことにしなければいけないという配慮というものがあるのだろうと思います。しかし、運賃はそうだけれども、たとえば民間金融機関は採算外れのような路線は走らないのです。やはり採算というものを中心にしている。運賃は同じにするけれども、民間が走らないようなところを、やはり県民とか市町村民の足としての役割りを果たすために採算を度外視して走っている。どこかにそういう地方公営企業としての役割りを果たしているわけなんです。金利の場合もそういう配慮があってしかるべきではないのか。  しかし、その配慮をどうしようかということになってくると、先ほどお答えがありましたような、そういう政策的な特別の低金利にしなければならぬというようなこと、これは当然といたしましても、やはり基準金利の場合におきましても、政府関係金融機関の貸出金利というものはやはり民間金融機関を幾らか下回る、それは条件的な面においても多少は社会政策的なものを加味していくというような配慮がなければならない。日本のように、こんなに経済の二重構造というものは他の国にないような、そういう特別な状態にあるわけですから、それはやはり埋めなければいけないのですね。中小企業基本法その他の基本法なんというようなものは、やはりそこらに焦点を当てた法律でもあるわけです。だから、具体的な面においてはただいま私が指摘いたしておりますようなことを生かしていくということでないと、経済の二重構造、大企業中小企業の格差というものは縮まってこないというように私は考えるわけですが、その点はそうはお考えになりませんか。
  131. 岸田文武

    ○岸田政府委員 御指摘のように、私どもも金利の動向については絶えず注意を払っておる必要があると思っております。ただいまの御議論の中で、政府関係金融機関の金利を極力下げるようにという点、私ども趣旨はよくわかっておるつもりでございますが、実情を見ますと、中小企業金融公庫の資金はほとんど全部が長期資金でございますし、国民金融公庫の場合にも、一年未満の短期の資金は約二%程度という実情でございまして、ほとんど長期である。そういうことからしますと、長期資金同士を比べてみれば、大企業の一般水準と比べても低い水準にあるということが言えるのではないかというふうに思っているところでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、山下(徳)委員長代理着席〕 大企業でも興長銀のプライムレートを適用できるものは一部分でございまして、もっと高い金利のものを使っておるという面もございます。そういうような点もひとつ頭の中に入れておいていただければと思っております。  金利の問題、私どもも絶えず気をつけて大蔵省とよく調整を図っていきたいと思っておるところでございます。
  132. 中村重光

    ○中村(重)委員 保証協会の問題についてお尋ねをするのですが、今度保険公庫に対する融資基金が百億ということのようですが、準備基金が四百億、合わせて五百億ですね。従来は、準備基金よりも融資基金が予算面においては多く計上されてきたのです。五十三年度においては、準備基金がぐっとふえて融資基金は百億にとどまっているということなんですが、倒産なんというような点を加味して準備基金にウエートを置いたのだろうと思うのですけれども保証協会の保証能力を高めてくるということからいたしますと、貸し付けをやって運用益というものによってやるわけですから、当然融資基金というものをふやしていく、そして保険公庫の保証協会に対する貸付金利をできるだけ低くするということで保証協会のなめらかな運用を行わせしめるようにしていく必要がある、そこで保証協会の保証能力を高めてくるということになるのですが、そこいらはどのように判断をしていらっしゃいますか。
  133. 吉居時哉

    吉居説明員 現下の経済情勢にかんがみまして、信用補完制度の重要性ということに特に配意いたしまして、五十三年度の予算編成に当たりましては、非常に厳しい財源状況の中でこの信用補完関係の予算の確保に努めたところでございます。その結果、ただいま先生御指摘のように、全体として五百億の出資になっているわけですが、その中では、当面最も大切な準備基金、これにつきまして四百億、それから融資基金につきましては、経営安定の分を含めまして百億、こういうふうに相なっておるわけです。  確かに先生御指摘のように、融資基金というものが各協会の経営の強化に役立つ面があるわけでございますけれども、同時に、融資基金というのは、実際にそれをもって保証するというためのものでございまして、最近の保証の実績を見ますと、現下の経済状況に即応いたしまして約一割程度の伸びしか見ておらぬ、こういう状況でございますので、そういうような状況も考えまして、百億の融資基金というものを予算に計上した次第でございます。
  134. 中村重光

    ○中村(重)委員 保証協会に対する保険公庫からの貸し出しの金利、これを相当引き下げることになっているのか、そのこともお答えをいただきたいと思うのです。  それから、税制税制として評価しなければなりませんから申し上げますが、保証協会に対して五億を今度出資されました。たしか五十一年度もやりましたかね。五億の出資、これは非常にいいことなんです。五億ですと恐らく百億以上の保証をすることになるのだろうというように私は思うのです。こういうことはひとつ大いにおやりになって、そして来年度は、五億なんていうことじゃなくて、相当思い切って十五億か二十億ぐらいはやはりおやりになるということ、そうすると、大蔵省は胸を張って中小零細企業のために大蔵省はこうやっているんだと言って、大いに声高々と中小企業者と接することができるだろう、こう思う。中小企業庁長官もあなた方の前に立って深々と敬意を表するということになるのだろうと私は思うのです。いいことなんだけれども、五億はちょっとちびり過ぎたというような感じがしてならないのだけれども、ここらあたりはどのようにお考えになっていますか。先ほどの保険公庫からの貸し出しの金利の問題を含めて……。
  135. 吉居時哉

    吉居説明員 私ども、信用保証協会の経営の強化につきましては、これを大変心配しておりまして、できるだけの努力をしているわけでございますが、ただいま先生からおほめの言葉をいただきました協会に対する補助金の五億というのも、その一環でございます。同時に、いま御指摘ありましたように、保険公庫から各協会に対する融資基金の金利、この点につきましても、市中の金利動向、特に預金金利の動向に即応しまして、全体が下がっていけば下げる、こういう連動の方式をいま考えておりまして、近くこれを実行したい、こういうふうに思っております。
  136. 中村重光

    ○中村(重)委員 何ゆえに私が保証協会の保証能力を高めるためにもっと積極的な助成をする必要があるということを強調しているかといいますと、最近は、保証協会の保証をつけろ、こう言うのが全部と言っていいくらいにあるのですね、零細企業の場合は。政府関係金融機関の貸し出しの場合、たとえば国金であるとかあるいは商工中金なども、例外なしに保証協会の保証を要求するという状態にあるのです。ところが、保証協会もまた大変でして、保証協会は、保証要求に応ずれば応ずるほど、代弁というのが出てくるのですね。最近のように、さあ不況だ、円高だということになってまいりますと、なおさら持ち出しはふえる。てん補率が七〇%から八〇%ですからね。これと金利を最後まで保証協会は払わなければいけないのです。焦げついているわけですから、その金利を払っていくのですよ。そうすると、元金と金利と合わせますと、持ち出しが約三〇%になるのです。これは大変な負担なんです。  そこで、私は、保証協会の保証能力を高めるためには、この三〇%の持ち出しに対して、たとえば七〇%か八〇%程度でも何らかの形の是正措置を別に見てやるということが必要ではないかというように考えるわけです。先ほど申し上げた五億の補助金だってその一環ということになるわけですから、ここらの金額をぐっとふやしてやるということになってくると、よほど保証協会は代弁をしましても、行き詰まるということが幾らか緩やかになるというように考えるのですが、その点は、私の主張というものは無理な主張ということになりましょうか、いかがですか。
  137. 吉居時哉

    吉居説明員 ただいま御指摘のように、保険てん補率を引き上げろ、こういうお話でございますけれども、これまた御承知のように、信用補完制度というものは、信用保証協会の保証とそれから中小企業信用保険公庫の保険、この二本柱でもって成り立っておるわけでございまして、それぞれその役割りを分担していることは申すまでもないところでございます。このような信用補完制度全体の中で、中小企業信用保険公庫の保険料率あるいはてん補率というものが実は決まっているわけでございまして、これらは保険収支全体を総合勘案して決められているというわけでございます。  そこで、ただいま御指摘のような、てん補率をすぐ引き上げろ、こういうお話につきましては、これはなかなかむずかしい問題であろうと思うわけでございますけれども、しかし、先ほどもお答えいたしましたように、私ども、信用保証協会の経理の改善強化ということには意を配っておりまして、繰り返しになって恐縮でございますけれども、五億円の補助金というような、ああいう方式であるとか、あるいは先ほど申し上げましたような公庫から協会に対する融資基金の金利を連動させる方式とか、こういういろいろな工夫を行って、協会の経理の強化ということを考えていきたい、こう思っております。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 中村重光

    ○中村(重)委員 大蔵省は余りにも締めつけ過ぎるという点もあるわけです。たとえば保証協会に収支の差額が出るでしょう。それが出ますと全部基本財産に入れさせるのですよ。私はそれは無理だと思うのです。いろいろ必要経費というのも要るわけですし、予測しない出費というものも出てくるということからいたしますと、あらかじめ収支差額を全部基本財産に入れさせるのではなくて、やはり別途積み立てを認めてやるということが必要ではないですか。基本財産の中に積み立てますと、大蔵省が取り崩しをなかなか認めないのです。最終段階で認めるということになるのですが、私は、初めから別途積み立てをある程度認めていく、全部基本財産に入れさせない、そういう配慮があってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  139. 吉居時哉

    吉居説明員 決算の結果収支の差額が出た場合には、たとえば求償権のための準備金に繰り入れるといったようなこともあるわけでございます。現にそれを行っているわけでございますけれども、基本財産に繰り入れます場合には、結局それがまた保証倍率を通じまして貸し付けの原資がふえる、こういうふうなメリットがあるわけでございます。
  140. 中村重光

    ○中村(重)委員 それはメリットにはなりますよ、基本財産の三十倍から六十倍というのが保証枠というのか、それだけ保証ができるわけですから。しかし、それはそれとして、当然取り崩しを認めなければならない出費というものがあるわけだから、平均してみてわかっているわけです。そういうものをあらかじめ弾力的に基本財産の中に繰り入れさせないで、別途預金を認めてやるという配慮があってしかるべきだというように私は思うのです。  それから、保証能力を高めるためには、いまあなたがお答えになった基本財産ですね、三十倍から六十倍というのではなくて、これをもう少し引き上げてやる、それば認めていいんじゃありませんか。三、四年前から幾らかこれは引き上げまして、たしか最高五十倍であったのを六十倍まで上げていますから、改善はしているのですけれども、私はもっと大幅に引き上げてやる段階にあるんだろうというように思いますが、この点、いかがですか。
  141. 吉居時哉

    吉居説明員 その利益に対して何らかの繰り入れを行ったらどうかというお話につきましては、先ほど申し上げましたほかに、現在千分の六から八までの間で責任準備金に繰り入れることができるということになっておりまして、この辺は各協会において状況を見て繰り入れを行っておるわけでございます。  それから、その次の御質問保証限度、保証倍率をもっと上げたらどうか、こういうお話でございますけれども、信用保証協会からの定款倍率の引き上げ要望というのが確かにございまして、それにつきましては、私ども従来から内容十分検討の上、弾力的にこれを認めてきているところでございます。現に五十年度におきましても二十二協会、それから五十一年度におきまして七協会、五十二年度におきましては、五十三年の二月まででございますけれども、二協会というものにつきましてその限度の引き上げということを行っているわけでございます。今後とも個々の協会の保証の動向やあるいは経営内容というものを総合勘案しまして、この点につきましては弾力的に対処していきたい、こういうように考えております。
  142. 中村重光

    ○中村(重)委員 倍率の引き上げというのは、代弁の少ないようなところに倍率を高く見てやるというようなことで、代弁が非常に多いところは抑えていこうという懲罰的な点があるんじゃないかと私は思っているのだけれども、これは質問答弁という形ではなかなか——いやそうじゃないとあなたは言うだろうし、私はいまのように申し上げている。だから、これはいつか資料で見てみようじゃありませんか。そうすると、私がなるほどということで理解をするか、あなたの方が反省することになるのか、これはデータがありましょうから、そこでまた議論するということで、この問題は持ち越しておきたいというように思うのです。  それから、倍率の問題でも、倍率いっぱいというのは保証協会も保証できないのです。ということは、ピークがあるということです。それからもう一つは、国でも県でもいわゆる制度融資というのを、保証協会には別に相談はないわけですけれども、一方的と言えば悪いことをしているように聞こえますけれども、私は制度融資をするということはいいことだと思いますから、決してそれを責める意味で申し上げているのではありません。制度融資を政策的な点から国でも県でもやるのです。保証協会は、そういう制度融資というものがまた改めて出てくるわけですから、そこらあたりも配慮して、先ほど申し上げたピークの問題も考えて、倍率いっぱい保証することを控えるのです。だから、申し上げたように、この倍率に手かげんをして倍率を高めていくというような方向が、保証能力を高めることにつながるんだということが一点であります。  もう一つは、保証協会の地位を確保してやるということが必要だろう。単に従属的な付属機関という形で保証協会を見るべきではないんじゃないのか。保証協会の位置づけというものをこの際考えていくということでないと、いろいろ私が指摘いたしましたような矛盾というか問題点がどうしても残るような気がいたします。保証協会の位置づけについてどうお考えになるのか、先ほど申し上げた倍率の問題も何か補足して御答弁いただけることがあれば、私の重ねての指摘に対してあわせてお答えをいただきたい。
  143. 吉居時哉

    吉居説明員 現実の保証倍率を見てまいりますと、各県それぞれ違いますが、平均では約七割ということになっておりますから、確かに満杯を使っておるわけではございません。ただ、先ほど申し上げましたように、それぞれの協会からの保証限度の引き上げ要望につきましては、私ども、よく内容を審査いたしまして弾力的にやっていきたい、こういうふうに考えております。  なお、保証協会の地位の向上ということでございますが、私ども保証協会は非常に重要な機関であると考えておりまして、別に、先生おっしゃいますように、従属とかいうことはわれわれ全然考えておりません。非常に大事なりっぱな機関である、こういうように思っております。
  144. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、造船不況対策として、下請や関連中小企業団体は、親会社が会社更生法適用を受けた際、手持ち債権があるわけですね。この手持ち債権を担保に保証協会の保証を受けて融資を受けなければ下請や関連中小企業は倒産してしまうというので、私がいま申し上げたような陳情活動を展開していたようでありますが、この点は大蔵省としてはどのように受けとめていらっしゃるのですか。これは岸田長官のところにも恐らく来たんだろうと思うのですが、いかがですか。それぞれお答えいただきましょう。
  145. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いまお話しのような趣旨陳情、私も直接伺っておるところでございます。ただ、その席で申し上げたのでございますが、親会社に債権があるということだけで担保価値を見出すというのは、元気いっぱい活動中の会社でもやっていないことでございまして、なかなかそのこと自体制度化するのはむずかしいんじゃないかという感じがするという点でございます。ただ、実質的には親会社が倒れたということで困っておられることは事実でございますので、私どもは、中小企業信用補完制度におきましても不況業種指定もやっておりますし、また、親会社が更生手続に入ったというようなときには倒産企業指定をするというような、信用補完面で十分な配慮を行うというやり方で措置をいたしておるところでございます。  なお、もうしばらくたちますといわゆる倒産共済制度が動き出すことになりまして、ふだんからある程度の掛金を掛けておけばいざというときに対応できるという体制ができるのではないか、かように考えておるところでございます。
  146. 中村重光

    ○中村(重)委員 これは大蔵省の方にはまだ行っていなかったのかな。長官どまりかな。あなたの方が少し前向きで大蔵省とも話し合いをしてやらないと、かわいそうはかわいそうなんだ、親会社は会社更生法で生き延びるというのに。債権を持っておってもしようがないでしょう。つぶれてしまうでしょう。だから、それを担保にして保証協会の保証をして金を貸してほしいというのは、耳を傾けてやらなければならない問題だろうと私は思う。だから、いまあなたが言われたようなこと、これは後ろ向きだと私は受けとめざるを得ないのですね。もっと突っ込んでいって実態をつかんで対応していくということが必要だろうというふうに考えますから、十分御検討いただきたい。  それから、円高とか輸出関連中小企業は、私はいまピンチに立っていると思う、二百二十五円というようなこういう為替相場のあり方では。そこで、対策をいろいろお考えになっているようです。新聞報道等でも、事業転換を推進するということなんですが、これを今後どう進めていこうとしておられるか、その点、ひとつ長官から。
  147. 岸田文武

    ○岸田政府委員 ごく最近の円高の急激な動きについては、私どもも非常に心配しながら見ておるところでございます。二百三十円台が割れたという状況に対応いたしまして、三月十七日付で急遽全国の七十九産地についての実態調査を実施いたしまして、大体今週いっぱいで答えがまとめられるということになっておるところでございます。  なお、それに加えまして、さらに二百二十円台の動きが強まっておりますので、近く主な輸出産地十産地余りに対しまして中小企業庁自身で特別にチームを派遣して、実態の把握及びこれからのあり方についての相談を行うということも計画をいたしておるところでございます。その場合に中小企業庁の部長をヘッドにするというような力の入れ方を考えておるところでございます。  対策でございますが、とりあえず円高緊急融資の対象となる業種の追加を行いまして、より広い適用が可能になってくるかと思っておるところでございます。そのほか、従来やりました制度の見直しをいろいろやっていく必要があろうかと思っておるところでございます。ただ、正直に申しますと、制度的に打つべき手は大体一通り打ってございます。これからの問題は、いままでのような、しのぎをどうするかという問題ではなくて、これから産地をどういうふうに持っていくのか、新しい活路をどうやって見出していくのか、いわば身の振り方をお互いに考えていくということが特に大切なのではないかという気がいたしておるところでございます。
  148. 中村重光

    ○中村(重)委員 身の振り方、これは転換ということだろうと思うのだけれども、事業転換を推進していくのですか。具体的に新聞の報道だと、いま指定しているのは八十六業種がある。これを二十業種ぐらい追加をするという報道なんだけれども、そういう具体案みたいなものが準備されているのですか。だとすればどういう業種を追加していこうとしているのか。それから、貸出金利も引き下げるというようなことの報道なんだから、これは当初の三年が六・五%か、これをこの前五・五に下げたんだが、なおこれを下げるということだろうと思うのだけれども、これは先ほど大蔵省からお答えがあった全般的な問題とのにらみがあるのだろうとは思うのだけれども、この点はどうお考えになっているのか。  それから、身の振り方ということ、転換をさせる、推進するということになってくると、受けざらが必要になってくる。受けざらがないと、いまの転換法なんて、どうぞあなたの方で転換なさるならばおやりなさい、税金は少しまけることにいたしましょう、特別制度融資でもって低金利で貸し付けをすることにいたしましょう、どうぞ御随意にと、こういうことなんで、何も積極的にやろうという構えの法律じゃないですね。だから、こういう段階になってくるとそんなことではもうどうにもならぬ、もっと積極的な対応が必要であるということで、いまお答えになったように三部長が先頭に立って、そしてこれからでも遅くはない、調査に乗り出すということだから、それはそれとして評価をいたします。評価をいたしますが、調査団を編成して三部長が団長になって行くということは、ある程度の対応策を考えて、そして調査と同時に考え方もいろいろ説明をするという構えであろうと思うのですが、それについて、受けざらとして具体的にどのようなことをお考えになっていらっしゃるのか。
  149. 岸田文武

    ○岸田政府委員 いま身の振り方ということを申し上げましたが、実は、この前のドルショックのときに各産地がどういうふうに対応したのかということを、いまいろいろ調べておるところでございますが、それを見ておりますと、やはりあのようなショックを受けたときに思い切って合理化を進める、あるいは新製品を開発することによって切り抜けたという産地が非常にたくさんございます。しかし、中には減量経営に移行をしていった、あるいは事業の転換を行った、あるいは内需向けに転換をしていまでは非常に隆々たる地位を築いておる、さまざまな行き方があったように感ぜられるところでございます。  今回の新しい円高という事態に対して産地の声を聞いてみますと、いま申し上げましたようなさまざまの方向について、いわばいま模索の段階であるという感じがしておるところでございます。今度参りますチームは、実情の把握もさることながら、これからの生き方について、個々の企業で、あるいは個々の産地でどういうことを考えているのか、またどういうことが可能と見込まれるか、この辺の見通しをつけ、また相談に乗り、また今後の支援の方向を探るというのが課題でございます。  対応策の中で事業転換の問題にお触れになりましたが、いまお話がございましたように、現在八十六業種対象になっておりますが、近く二十業種程度追加するようにいま作業を進めておるところでございます。四月上旬に転換部会を開くことにいたしておりまして、それまでに業種の詰めを行うという段取りで考えておるところでございます。それで転換の問題は、その後の動きを見ておりますと、ごく最近までで大体五十二業者認定を受けておりまして、このところ月に大体十件ぐらいの割合で認定が行われております。いままでの業種にしがみついておるよりは新しい天地で思い切って力を伸ばしていきたいという企業もたくさんあるように感ぜられますので、こういった方々をできるだけ激励をしていきたいと思っておるところでございます。
  150. 中村重光

    ○中村(重)委員 それで、最近ドル対法のときとは比較にならないぐらいに転換がふえているということば、それほど深刻になっているということなんです。だから、この受けざらを十分考えてやらなければいけないということですね。特に製造業からサービス業等第三次産業の方にずっと雇用もふえているわけでしょう。製造業はたしか九十万ぐらい減って、商業、サービス業の方に百二十六万ぐらい新たに雇用がふえているというように私は資料で見ているのですが、サービス業等いわゆる第三次産業というものは雇用創出の業種という形になっているわけですから、ここに相当力を入れてもらわなければならないですね。  それで、受けざらということで私は提言をするのですが、これは大蔵省もお聞きいただきたいのだけれども、既存設備の買い上げをしてやらないと、これはどうにも転換はできないと私は思うのです。それから金利を大幅に引き下げる。それから据え置き期間を相当長く見てやらないと、半年や一年という据え置き期間ではどうにもならないですね。ある程度軌道に乗るまでは、貸し出しをした場合の据え置き期間が必要であるというように考えるのです。具体的には、少なくとも二年以上ぐらいは据え置き期間を置いてやらなければいけないのではないか。同時に返済期間の延長。それから税も、法人税、個人事業税もそうなんですけれども、軌道に乗るまでは税の免税をしてやるということでないと、これはなかなか腰が上がらないというように考えます。  それから既往の貸し付けの償還猶予ということ、これは言うまでもないことですから、そういう点は十分配慮していく必要がある。  それから、新たな一つ業種というのですか、そういう形で進出をしてくるという場合、どうにか地ならしをすると、そこへまた大企業がぽんと進出をしてきて、せっかくこれで安定をしかかったかと思うと、また打ち崩されてしまうということになりますから、やはりそこらを転換した企業に対しての保障ということを考えて、大企業の進出等はこれを抑制していくというようなことでないとなかなかうまくいかないというように考えますから、そういう点は今後検討する必要がある。  同時に、事業転換した、労働者だけほったらかしということであってはなりません。だから、従業員に対する福利厚生施設に対して長期低利の融資をしていくということが必要であろう。  まだその他いろいろありますけれども、きめ細かな転換策を講じていく必要があると私は思うのでございますが、それらの点に対しては、いままでの経験等からいたしまして、いろいろな制度の制約というものはありましょうが、そのからから出なければ、こういう深刻な状態の中で活路を見出すことにはなかなかならないというように考えるのです。いま、円高対策、黒字減らしとして、以前なら予想だにしなかったような、金を欲しい者はいないか、借りる者はいないか、何か売ってくれる者はいないかということで、もう全くなりふり構わないで黒字を減らしていかなきゃならぬというような取り組みをしているときでございますから、転換に対しては、少なくとも私が以上申し上げたようなことは最低限度の措置としておやりになる必要があるであろう、こう考えますが、それらの点はいかがですか。
  151. 岸田文武

    ○岸田政府委員 転換の問題については、私どもも、法律を制定して以降、これをいかにうまく使っていくかということで腐心をしておるところでございます。つい先日、転換問題に関する中小企業モニター会議を開きまして、現に転換を終わった人、あるいは転換の計画が進行しつつある人あるいは産地の方々の実情も聞いてみたわけですが、出席された方々は、転換を終わった人については、転換してよかったということを言っておられます。転換中の方々は、現にいろいろの悩みを乗り越えるよう努力をしておられるところですが、私どももできるだけの知恵を出してこれを応援をしていきたいと思っております。  正直に申しますと、応援の手段としては事業転換法でさまざまの手段を用意をいたしておりますし、特に円高に伴って転換をするという場合には、先般の措置で五・五%という特利を適用する道を開いたところでございます。私は、いままでいろいろの転換事例を見ておりまして感ずることは、やはり事前に相当しっかりとした準備をするということが特に大切でございまして、その準備の段階でいろいろの情報を提供し、相談に乗り、激励をする、ここが一番大切なことなのではないか、これさえうまくいけば、いろいろの応援手段を活用して相当に活路が開けてくる、こんな感じでいるところでございます。  いま種々御指摘になりました点は私どももよく勉強いたしますが、率直に言って、いま受けております印象としては、申し上げたとおりでございます。
  152. 中村重光

    ○中村(重)委員 石川総務課長にお尋ねするのですが、銀行が不況業種等に対して貸し付けを行うときに、人減らし、合理化というのを条件に貸し付けを行うということが相当高い声で批判されているのですが、これは御調査になっていらっしゃいますか。
  153. 石川周

    ○石川説明員 格別調査はいたしておりませんが、昨年秋でございましたか、臨時国会の際にもそのような御議論がございまして、いろいろ金融機関の方に話を承ったことがございますが、また、その後もときどき折に触れて聞いておりますけれども、人減らしを直接の融資条件として融資をするというようなことは、ちょっと考えられないということでございます。それよりも、やはり経営全般としまして融資にたえ得るような——金融機関の方も、大事な預金をお預かりしてその運用に当たっておるわけでございますので、返らないということでは貸せないわけでございますので、やはり経営全般しっかりして返せるようなものとして融資に応じてほしいということはお願いしておりますけれども、人減らしということを直接の条件とするようなことはあり得ないのではないか、こういうふうに理解しております。
  154. 中村重光

    ○中村(重)委員 考えられないことですね。ところが実際は行われているということも事実じゃないのでしょうか。企業が過剰労働力を抱えている。したがって、いま当委員会において特定不況産業安定臨時措置法という設備廃棄の後ろ向き法律案の審議を実はやっているわけです。金を貸す側ですから、そこらあたりは百も二百も承知している。だからして、過剰労働力はある程度整理しなければならぬじゃないかというようなことで、考えられないことを、金を貸すという優越した地位、そのことがまた債権の保全にもつながるということだろうと思うのですが、まことに内政干渉もひどいような要求というものが現実問題として行われているのだということを、私は、単なるうわさとしてではなくて、具体的にそういうことを聞かされているわけです。その要求をされた企業者からも。そういう点は十分調査をして注意は促していくということでないといけないということを申し上げておきたいと思います。  下請代金の支払い状況というのがどうなっているのかという点、これは通産省でございますが、それから建設省に対して、公共工事の前渡金はどの程度で、それからその流れをどうつかんでいらっしゃるのか。下請企業に対して大体四〇%程度が前渡金のようですから、どの程度下請企業にこれが渡っているというように把握をしていらっしゃるのか、お伺いします。
  155. 岸田文武

    ○岸田政府委員 下請企業に対する支払い条件、これは逆に申しますと、下請企業からの受け取りの条件になるわけですが、これにつきましては、毎月その実情の調査を行っておるところでございます。その結果を見てみますと、まず、現金比率の動きでございますが、大体四二、三%というところでこのところ推移をいたしております。それほど大きな波は見受けられません。それから、手形サイトでございますが、これは総平均で申しますと、百二十日から百二十二日前後で推移をいたしております。
  156. 広瀬優

    ○広瀬説明員 建設業に関連いたします下請代金支払いの状況でございますが、私ども五十一年に実態調査しました結果では、代金の支払い期間、これは請求等があってからというかっこうになりますが、三十日未満のものが六五・三%、三十日から四十日未満が二五・七%ということでございます。また、手形期間につきましては、三カ月未満二五・八%、三から五カ月未満六三・八%でございます。現金比率につきましては、三割未満が一八・三%、三から五割未満が二〇・三%、五から七割未満が一五・五%という結果が出てございます。  なお、これは約三千社弱の調査対象につきまして、公共工事、民間工事を含めまして調査いたしましたものの結果ですが、調査では、支払い条件、受け取り条件、それぞれに分けて調査いたしましたが、ただいまの説明は、これを取りまとめて平均的な姿で説明申し上げました。  前払い金の方でございますが、支払いの状況でございますと、先生御存じのとおり、国、都道府県、市町村でございますと四割以内、それから公団、事業団でございますと三ないし五割以内というかっこうで制度化されてございます。  ちなみに、実績で申し上げますと、五十一年度分では実績で三〇・七%という実績値が出てございます。これを金額で申し上げますと……(中村(重)委員「いいです」と呼ぶ)金額はよろしいですか……。
  157. 中村重光

    ○中村(重)委員 いまの前払い金なんだけれども、いまのような数字を肯定するといたしまして、渡されているのだけれども、ところが、その金が下請に回っていないのだ。親企業が押さえているのだね。そして下請にはもうできるだけ前渡金を渡さないだけでなくて、工事をやって、相当工事が進行した段階で金を渡す。そういう状態をほったらかしておいたのでは、いつまでたっても公共事業によるところの景気浮揚という形には私はつながってこないと思う。だから、そこらはひとつ厳しく、地方公共団体とも連絡をとりながら改善をするということにしてほしいと思う。その点を強く要求をいたしておきます。そうしますか。
  158. 広瀬優

    ○広瀬説明員 前払い金等の流れでございますが、私ども五十二年の調査の結果では、いま先生御指摘のように、三ないし四割という形で出てまいりましたものが、総額の話ですが、使われておりますのが材料費で五一%、これは元請が材料を買いましたものが下請へも流れていく材料でございます。それから外注費で三八%、これが下請へ流れていく代金でございます。いずれにいたしましても、前払い金を含めまして下請代金の支払い条件というものは、先生おっしゃいましたように、景気刺激につながりますし、さらには労働災害あるいは賃金不払い等の防止にも役立つわけです。そういうことの改善につきましては、今後とも関係方面とよく連絡をとりながら努めてまいりたいと存じます。
  159. 中村重光

    ○中村(重)委員 親企業と下請というのか、元請と下請というのか、多様なんです。いろいろな条件が違うわけですね。いずれにいたしましても、親企業が前払い金を押さえていく、そしてうまく自分だけで運用していく、下請をしぼる、そういうやり方というのはよろしくないのです。その点は厳しく改善をするようにしてほしいということを要求しておきます。  それから、石川総務課長吉居中小金融課長にお尋ねするのですが、不況円高で倒産が増加をしているというのですね。だから、国民金融公庫等の融資を退職金等にもしていくというような道を開かないといけない。最近改善をしているのかどうかわかりませんが、融資対象の条件が決まっているのですね。そういう金には融資をしないというのが従来までの運営のあり方ですから、そこいらを今後どう改善をしていこうとしていらっしゃるのか。  それから、中小金融課長にですが、製造業からサービス業、いわゆる第三次産業というものに、先ほど申し上げたように雇用がずっと移ってきているのですね。そうなってまいりますと、保証協会の保証対象というものも広げていかなければいけないのじゃないでしょうかね。風俗営業というものは保証協会の保証対象の中に入ってないです。だから、そこらも検討する必要があるんだろうというように思いますが、この点はどうお考えになるのか、それぞれひとつお答えをいただきます。
  160. 石川周

    ○石川説明員 国民公庫の問題でございますが、退職金のための融資ということは、私ども考えますに運転資金融資ではないかという感じがいたしますので、その限りにおきましては、国民公庫も融資が可能でございます。設備資金融資、運転資金融資その中で退職金という問題が特に問題になるということは、その限りにおいてはないのではないかという感じがいたします。
  161. 吉居時哉

    吉居説明員 風俗営業についても保証対象にしたらどうか、こういうお話でございますが、たとえばバー、キャバレー等のたぐいの風俗営業につきましては、保険公庫の性格から考えまして、これまでも保険対象に含めるということはいかがかというふうに考えております。ただ、風俗営業の許可を受けているものであっても、食事の提供というものを主目的としているたとえばおすし屋さんというものなどにつきましては、現在も保険の対象にしておるわけでございます。
  162. 中村重光

    ○中村(重)委員 私も、政府関係金融機関設備資金と運転資金という二つの融資の制度があるということは承知している。ところが、運転資金の中に、退職金といったようなものはどちらかといえば後ろ向きの融資という受けとめ方をしまして、非常にシビアな査定というのか、実質的にそこからはみ出されてくる。特にあなたの方で、退職金なんかに向ける融資をしてはいけないのだぞという通達をしているのかどうかわからないのだけれども、どうも退職金ということになってくると後ろ向きで、企業というものが非常に採算割れをしたときでないと出さないのだという配慮、独立採算制になっているものだからそういうシビアな態度をとるんだろうと思うのですけれども、現実にはそういう点があるので、これはやはり改善をしていくのでないと、大きく情勢は変わってきているのだから、企業そのものをつぶしてしまうことにつながるんだということを私は問題点として指摘をしているわけですから、そういう点を配慮してほしいということを申し上げておきます。  それから、いまの吉居さんのお答えでちょっと聞き取れなかった点もあるのですけれども、風俗営業等は主として環衛公庫ですから——この制度をつくります際、附帯決議は私が原案をつくったのです。初めはバー、キャバレー、連れ込み旅館というのは環衛公庫の対象にしてはいけないという原案をつくったら、それは憲法違反になるという指摘がありまして、大衆的でない事業に対しては貸し付けを行ってはならないというように実は附帯決議を変えて社会労働委員会を通したという経緯があるわけです。  いまのは保証協会の問題を申し上げたのですが、そういう大衆的でないものは別といたしまして、申し上げた風俗営業というようなものもやはり環衛公庫の融資の対象であることは間違いない。保証協会はそれがだめなんだ。だから、保証協会の場合にも、そうした大衆的であるものに対しては、風俗営業ということであっても大衆的であるものもあるので、私は余り詳しくないのだけれども、ああいうものはこうだということはわからないのだけれども、あるそうですから、保証協会も弾力的な保証態様をつくっていく必要があるんだろうという意味で申し上げているわけですから、この点、いかがですか。
  163. 吉居時哉

    吉居説明員 確かに環衛公庫の対象とそれから保証協会の保険対象とは、若干違う点があるようでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、現在の保証のあり方という点から考えます場合には、やはり先ほど申し上げましたようなバー、キャバレーのたぐいというのはどうもおかしいのではないか、ただ、食事の提供を主たる目的とするような職業やあるいはスナックという点につきましては、現在でも対象にしているわけであります。ただいま先生の御指摘にありましたような点は、将来の問題としてわれわれも考えてみたい、こういうふうに思っております。
  164. 中村重光

    ○中村(重)委員 もうすぐ終わりますから、しばらく時間をかしていただきたいと思うのですが、公衆浴場の融資対象の問題について、大蔵省と厚生省の御見解を伺いたいと思うのですが、御承知のとおり、公衆浴場というのが非常に斜陽化している。それで、厚生、大蔵両省は、これに対していわゆる経営の多様化ということで特別な扱いをしているということは承知しているわけであります。先ほど環衛公庫の融資の問題について、私は、党の環衛団体対策特別委員会の委員長という立場に立ちまして、この問題は大蔵、厚生両省と接触を続けてまいりました。  当初の生い立ちのことからよく承知しておるわけなんですが、当時と違って、公衆浴場というのは大変な経営難に陥っているということで、厚生省は、たしか五十一年度からの要求だったと思うのですが、駐車場それから部屋貸しを融資対象にしようという——私も藤田課長とこの点についての話し合いもし、マル食資金の問題についても、花であるとかいろいろなこともございましたが、これは食料じゃないというので農林省と意見が分かれて、藤田課長と私は意見が一致して、花は対象になっていないのですが、さて、この公衆浴場の部屋貸しは私もなじまないと思います。何ぼ多様化といっても部屋貸しはなじまない。しかし、駐車場は認めてやる必要があると思いますよ。  いまは、一階入ってすぐ浴槽があるということよりも、入る人も公衆浴場にゆったりした気持ちでお湯につかる方がいいですから、二階がいいですね。最近は二階にして、下を駐車場にする。これはなじむんじゃないでしょうか。私は、喫茶店も多様化として認めていらっしゃるし、その他お認めになっていらっしゃるので、五十三年度の中でも、駐車場と貸し室をお認めにならなかったが、償還期限も二十年ということに延ばして助成措置を講じられたという点は評価しますが、五十三年度は申しません。五十四年度は駐車場ぐらいはぜひ貸付対象に入れるように踏み切る必要がある、こう思いますが、いかがでしょうか。
  165. 藤田恒郎

    ○藤田説明員 なかなかむずかしい問題でございますけれども、私どもの理解といたしましては、浴場業の経営多様化は、浴場業の施設を利用して、浴場業にプロパーな密接な関係のある手段を通じて経営多様化を図られる問題ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、先生もアパートとまでは言わないとおっしゃるわけでございますが、駐車場と申しましても、これは一つの独立した駐車場業でございまして、これに対しては、現在中小公庫あるいは国民公庫も融資の対象といたしているわけでございます。したがいまして、環衛公庫が融資対象にしないから全く融資を受けられないというわけでもございませんし、全般的な駐車場業そのものの問題として、別途中小あるいは国民公庫において融資の審査を行うべきではなかろうかと思います。  おっしゃいましたように、浴場業の経営問題というのは非常に深刻であるということはわれわれも十分理解しておりますし、かねてからできるだけの配慮はしてきたつもりでございますけれども、やはり浴場業と直接関係のない駐車場というのは、確かにおっしゃいましたように、ゆったりした気分でというのは私も気持ちとしては大変理解できるわけでございますけれども政府金融機関の融資の分野調整という観点からまいりますと、私どもとしてはやはりシビアに考えざるを得ないのではないかと考えておるわけでございます。
  166. 林崇

    ○林説明員 公衆浴場の問題については、先生御指摘のように、最近自家ぶろ等の普及というような形の中で利用者が減少している一方、営業費用等の高騰ということで経営が非常に悪化しているわけでございます。今後公衆浴場をめぐる諸情勢は非常に厳しいものが考えられるわけでございまして、そういう中では、今後一層経営の合理化を図っていかなければならないと考えておるわけでございます。公衆浴場につきましては、さような意味からも、私どもも最も力を入れておる分野でございまして、従来も、財政当局の御理解、御援助もいただきまして、税制面なりあるいは金融面なりの努力をいたしてきたわけでございます。一方、営業者におきましても、そういうような情勢の中から経営改善を図っていく、施設の近代化を図る、あるいは経営の多様化を図るというような形の中で利用者の確保を図っていくことが必要だろうと思います。  そこで、経営の多様化資金でございますけれども、現在は、教養娯楽室ですか、それから蒸気ぶろ、サウナ、あるいは家族ぶろ、喫茶室、こういうようなものが対象になっておるわけでございまして、いまの段階では、営業施設を利用してやることが適当な事業という形で、その四つがあるわけでございます。今後そういうような形の中で、浴場の実態を踏まえまして、浴場業が付帯事業としてやるものの施設、こういうものの範囲の対象の拡大という形も検討もし、努力もしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  167. 中村重光

    ○中村(重)委員 藤田さん、ちょっとシビア過ぎるように私は思うな。私が提言しているのは、施設を利用することになるんだよ。私、あなたとは予算編成のときにずいぶん接触があるわけなんで、あなたと一致して、原局、農林省であるとかその他をむしろ説得する側に私も回ったりしているわけで、むちゃを言おうとは思わないですよ。筋の通らないことは言おうとは思わない。私が言うのは、浴場の用地は一つの施設内です。それを、二階には限らないだろうけれども、浴槽は二階につくって一階を駐車場にするという形になると、これは経営の多様化ということで、施設から離れたところでやることにならぬじゃないか。  あなたがおっしゃるように、ほかにいろいろ制度融資の道があるんだ、そうおっしゃるならば、いま対象になっているものだって、ほかにあるわけです。たとえば喫茶店もそうでしょう。ほかにあるんですよ。しかし、それはお認めになっていらっしゃる。サウナとかなんとかは同じ室内なんだから当然としても、道はある。いまあなたが現にお認めになっていらっしゃるのでも、ほかに融資の道はあるのだけれども、施設の中であるからということでお認めになっていらっしゃるのだから、駐車場は当然あなたの考えていることにマッチするだろう、こう私は思う。これは考え直さなければいけない。部屋貸しはあなたと同意見です。何ぼ多様化といっても、アパートをつくって、そこに環衛資金から貸しなさい、これは筋が通らないですね。大体合うんじゃありませんか。いかがですか。
  168. 藤田恒郎

    ○藤田説明員 確かに先生のおっしゃる点、まことにごもっともな点もあろうかと思いますけれども、私ども考え方といたしましては、特に私ども担当しております職務と申しますのは、いろいろある政府金融機関がどういうふうな分野を担当していくかということでございます。まさにそれは浴場業という形でとらえましたときに、駐車場を営まれる場合には、浴場業が駐車場を営まれるんだというふうに考える道も確かに御指摘のとおりだろうと思いますけれども、われわれといたしましては、駐車場業というのはかなり独立した規模で行われる業でございますし、従来から中小公庫で融資ができるという形になっておるのであれば、中小公庫の融資ということでお考えいただくので十分なのではなかろうかというふうに申し上げたわけでございます。  しかし、御指摘の点もございますので、五十三年度予算には厚生省の方からも要求も特になかったわけでございますけれども、今後の問題としてはその点も踏まえて検討してまいりたいと思います。
  169. 中村重光

    ○中村(重)委員 そういうことでやってほしいと思います。経営者のために認めるんだというのじゃなくて、公衆浴場はふろを持たない住民のために必要なんだから、公衆浴場がなくなってしまったら庶民が大変困るわけです。だから、庶民のためにという観点に立って、可能な限り公衆浴場を廃止させないで存続させなければならぬ、そういう観点に立って厚生省と大蔵省は両者話し合ってほしいということを注文しておきます。  それから、住宅ローンの問題ですけれども、金融公庫その他金融機関から住宅建設の金を借りると、一定額の定期預金を、強制ということを言っていいのかどうか、まあ強制と言っていいのだろうと思うのですが、強制貯金を要求する。給与から銀行振り込みを義務づけられる。借り主はやむを得ずこれに応じざるを得ない。これは明らかに住宅ローンを利用した歩積みだというように私は考えるのです。マイホームの夢ということで大変生活を切り詰めて住宅ローンで家を建てるということなんだから、定期預金でもって貯金を強制していくことは、もしこれを承知してお認めになっていらっしゃるとするといかがなものだろうか、こう思うのですが、この点、どうでしょうね。
  170. 石川周

    ○石川説明員 御指摘の点はちょっと考えられないようなケースだと思います。私ども、もしそのようなケースがあるとすれば、はなはだ遺憾に思います。  先生のそのような御疑念を承りましたものですから、時間がございませんでしたが、ちょっと一、二聞いてみました。そういたしますと、こういうケースはあるようでございます。つまり、いままで全然銀行と取引がなかった人たちの名簿が、住宅ローンを通じてその人の存在を知った、そうした場合に、その人のところに、せっかく取引ができたのですから給与振り込みなどを御利用いただけないだろうかというように、全然担当の違うところが接触するという機会はあるようでございます。その場合、ローンを受けた借入者の方はやはり心理的な圧迫が加わる、そういう問題だと思います。  私どもといたしましては、そういう誤解を招くような預金勧誘の仕方は厳に慎むように、注意して指導してまいりたいと思っております。
  171. 中村重光

    ○中村(重)委員 非常にはっきりした答弁で、評価をします。連合自治会の会合に行って、自治会長からこの問題の指摘があった。その人一人じゃないのです。周りにいた何名かの人が、本当だ、あれはけしからぬなというような言い方で、私が追及をされるというようなかっこうになりまして、私もどうもけしからぬことだと思ったものだから、早速調査をしましてそういうことをやっていたらこれを改善をさせるように努力をいたしますという約束をしてしまったのです。これはあなたも私と考え方は全く同じであるわけですから、なお調査をしていただいて、指導もしてほしいと考えます。  これで終わりますが、岸田長官に指摘をしてお答えをいただくのですが、町ぐるみ近代化ということが、これからの流通産業を育成強化していく上について大切であると私は考えます。それは具体的にどういうことをやるかというと、公共事業と補助事業と融資事業と組み合わせた形の町づくりをやる必要があると考えます。農林省はすでにやっているんでしょう。これは大蔵省がお認めになっていらっしゃるんでしょう。農林省から先に——生鮮食料品等の市場というのは農林省の所管だということになるんだけれども、買い物道路は公共事業、一般の駐車場も公共事業、組合員の駐車場は補助事業、それから建物を建てることは補助事業です。そういう公共事業と補助事業と融資事業を組み合わせた形の町づくりというものをやっているわけだから、あなたは中小企業庁として、これは専門なんだ。責任を持つ庁なんで、農林省が先にやって通産省がこれを検討だにしてない。私はこの問題をもう二回くらい取り上げたと思うのだけれども検討だにしてないとあえて申し上げなければならないのですが、これはいかがなものですか。先を越されたというように思いませんか。いまからでも遅くはなし。大蔵省と積極的に折衝して、きょうは主計局お見えになっていないのだけれども関係のある三課長がお見えでございますから、大いにひとつ協力を受けて町ぐるみで整備をしていくということをおやりになったらいかがですか。
  172. 岸田文武

    ○岸田政府委員 町ぐるみの近代化は、私も趣旨において大賛成でございます。これから商店街の近代化を図っていくというときには、いままでの既成の枠を超えて思い切ったイメージづくりということがどうしても必要かと思っておるところでございます。  いままでやっていなかったかといいますと、たとえば一昨年でございましたか、酒田の大火がございましたときに、あの中心街を思い切って改造しようということで、いまお話しございましたように、公共事業と補助事業とそして中小企業振興事業団と三位一体になって取り組んだという経験もございます。また、各地で商店街近代化の助成をいたしておるときによくよく聞いてみますと、やはり公共事業が行われるということに並行して町に近代化の声が盛り上がったというケースもございます。私どもも、そういう一つのきっかけをとらえて、先ほど御指摘のような方向を少しでも育てていくように、これから気をつけてまいりたいと思います。
  173. 中村重光

    ○中村(重)委員 森資金第一課長がお見えだったのだけれども、私の質問に何かお答えいただくことがあったのじゃなかったですか、いままでの点で。もしあったら、進んでどうぞお答えをいただきたい。  それから、長官、信販業界の銀行クレジットというのが非常に活発に行われているのですね。それで、中小小売商のチケット団体というのはこれで脅かされているのですよ。これは長官の分野というよりも、山口審議官お見えですから、これはひとつ何とか小売商の団体を守ってやるということ、それから量販店、これは今後分野法のさらにきめ細かな運用の問題とそれから大店法の改正があるわけだから、そういう中で議論をいたしますが、量販店のむやみやたらな進出というものが各地方都市でも紛争を惹起している。これらの問題とあわせて、銀行クレジット会社の問題というようなものをチェックしていく必要があるだろう、こう思いますが、いかがですか。
  174. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 銀行系クレジットカード会社の問題につきましては、先生御指摘のとおり、中小割賦購入あっせん業界影響等非常にいろいろと問題がございますので、従来から、その事業活動については十分慎重に行うよう、大蔵省等とも連絡をとりながら指導してまいっておるところでございます。法律的に現在の割賦販売法の適用に直接該当いたしませんので、実際面からの行政指導ということになろうかと思いますが、できるだけ問題の起こらぬように指導してまいりたいと考えております。  それから、大規模店舗の問題につきましては、先生御案内のとおり、昨年の国会での特別決議以降、法律のあり方につきまして小売問題懇談会等におきまして審議を進めてまいっておるところでございまして、ただいま中小企業政策審議会産業構造審議会の合同委員会で最終的な考え方の詰めを行っておるところでございます。その結論を総合的に十分検討いたしまして、この問題につきましての今後の方針をできるだけ早く決定してまいりたいと考えております。
  175. 中村重光

    ○中村(重)委員 これで終わりますが、長時間詳細にお答えいただいて敬意を表します。委員長には、予定時間を二十五分超過をいたしまして恐縮でした。これで終わります。
  176. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、明三十日木曜日午後二時三十分から委員会を開会し、参考人を招致して意見を聴取します。  本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十六分散会