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1978-03-24 第84回国会 衆議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十四日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 中島源太郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 山崎  拓君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君       鹿野 道彦君    粕谷  茂君       藏内 修治君    島村 宜伸君       田中 正巳君    辻  英雄君       中西 啓介君    楢橋  進君       西銘 順治君    橋口  隆君       松永  光君    渡部 恒三君       渡辺 秀央君    後藤  茂君       上坂  昇君    渋沢 利久君       清水  勇君    武部  文君       中村 重光君    長田 武士君       玉城 栄一君    工藤  晃君       安田 純治君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         経済企画庁国民         生活局長    井川  博君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         通商産業政務次         官       野中 英二君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    山口 和男君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       武田  康君         資源エネルギー         庁公益事業部長 服部 典徳君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部保安課長  柳館  栄君         文部省初等中等         教育局高等学校         教育課長    菱村 幸彦君         農林省食品流通         局商業課長   堤  恒雄君         通商産業省産業         政策局商政課長 野々内 隆君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 具体的な問題は午後に質問をいたしますが、わずかな時間、両大臣お尋ねをしたいと思うのです。  政府、日銀が公定歩合の引き下げあるいは為替規制措置等、あらゆる手を打っているようですが、円高はなかなか鎮静しない。むしろ円高傾向が非常に高まってきているという大変な事態のようですが、円高はどこまで上がるのか、なかなかむずかしいことでお答えもしにくいのではないかと思いますけれども、その見通しをどうお考えになっていらっしゃるのか。それと、手を打つだけ打った、もう打つ手なしといったことなのか、まだ政府としての施策をいろいろ講じようとお考えになっていらっしゃるのか。一応それらの点について考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中村委員がよく御承知のとおり、わが国としては基本的にはフロート体制考え方基本にいたしておりますので、乱高下だけは防いでおりますけれども、そのようなことから申しましても、またいろいろその他の理由から、将来を予断することはなかなか困難でございますし、むしろ差し控えるべきかと存じます。  しかし、基本的には、一つはわれわれ自身経済運営の問題であろうと存じます。すなわち、参議院で御審議いただいております予算案を遅滞なく執行をすることによりまして、内需の振興、ひいては消費者の信頼の回復等々を図ってまいる、これが基本であると存じます。と同時に、輸出につきまして、極端に急増すること等によって相手国の市場を荒らすというようなことはいろいろ一般に問題がございますので、御承知のように、すでに鉄につきましてもカラーテレビにつきましても国際的な取り決めもできておることでございますが、その種類の問題が一つ。と同時に、われわれが現在必要とするものをできるだけ急いで、また大量に輸入するという輸入の問題があろうと存じます。私どもといたしましては、とりあえず五十三年度予算の成立を前提といたしまして、その際優先的に取りかかるべき事項を今週の末くらいには関係閣僚の間で決定をいたしたいと存じております。他方で、外貨の問題につきましては、従来から幾たびか緊急輸入あるいは外貨利用等のことにつきまして関係閣僚の間で決定をいたしておりますが、なおそれにつきましてさらに一工夫を加える必要があろうかと存じます。その点はさらに追って検討し決定をいたしたいと存じております。  それらがわが国としてとり得る施策でございますが、同時に、ただいまの国際通貨状況は、国際基軸国である米国自身の問題でもございます。アメリカにもそろそろそういう意識が出てまいっておるようで、これは国内におけるインフレーションの問題として取り上げられているようでございますけれども、それでも結構なのでありまして、対内対外価値は同じでございますから、何かの形で基軸通貨国としての責任と自覚をもう一段高めてもらうことが必要であると存じます。そういう認識は米国内にぼつぼつ出ておるようでございますが、また、私どもとしても、そのような呼びかけもだんだんいたしていきたいと考えておるところでございます。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 私は、本会議代表質問でも、いまのフロート体制は一応再検討しなければならないのではないか、私の頭の中にはローザ制度というものがあってそういうことを申し上げたわけでしたけれども固定相場制に移行できるかどうかということはいろいろなむずかしい問題、これは国際的な関係ですからよくわかるのですが、いまの事態というものが単に為替体制そのものを動かすということによって解決し得るようななまやさしいものではないということはわかるのですが、さりとてそのことも重要な問題点であろう、こう思うのです。宮澤長官としてはどうあるべきかということについてのお考え方というものもあろうかと思うのですが、いかがですか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる固定相場制というものを円滑に運行しようといたしますと、申し上げるまでもないことでございますが、基軸になる通貨がよほどしっかりしておりませんと、なかなか固定相場制というものは維持できない。ただいまの現況では、私はそれはちょっと困難な情勢であると考えておりますし、十分な条件が整わずに固定相場をいたしますと、これは一種の剛構造でございますから、それに対する反撃反撃に対してはまた非常にフレキシブルでない対応をいたさなければならないということになりますので、どうもその時期ではないと私はただいま考えております。  そういたしますと、やはりフロートということになっていくわけでありますが、フロートをもう少し上手にやる方法というものはないであろうか。これは申すまでもなく、一国でできることではございませんので、何かもう少しフロート投機筋に便乗されないような形で主要国が気持ちを合わせて運営する方法というのが何かないであろうかということを、これは私ばかりでないと思います。考えておられる方が多いと判断しておりまして、はっきりこうこうこういう構想でなければならないというようなことを申しますと、問題はそこでまたいろいろ議論を起こしてしまいますので、いまの段階としては、このように通貨乱高下をするということは、わが国とか西ドイツとかスイスとかばかりでなく、基軸通貨国であるアメリカにとっても迷惑なことではないのかという、そういう呼びかけ、お互いに困るではないかという認識の統一というものがまず先決事項でありまして、そうでありませんと、その上で何をするかという話になかなか入れないというふうに判断しております。  アメリカにもだんだんそういう意識動きつつあるように存じますが、なおまだまだ十分とは申しがたい。いまアメリカ政治首脳もいろいろな世界的な政治課題を持っておられますから、おのずから問題の処理にも優先度というものもあるのでありましょうが、しかし、いまやアメリカ自身のインフレというものは、かなり国内の問題として大きな政治の問題になりつつございますから、そういう政治次元でこの問題に取り組んでほしいということを呼びかけつつあるわけでございます。しかし、なかなかいろいろな事情がございますので、少し時間がかかっても私はやむを得ないと思いますが、お互いにこれはどうかしなければならない問題であるという共通の認識先進国間でつくり上げるということがいま大切な段階ではないかと考えておるわけでございます。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃるとおりだと思います。これは日本政府施策よろしきを得なかったという点も事実であるし、また企業姿勢という問題もある、わが方に反省しなければならない点はこれは率直に認めて改めていかなければならぬと思うのですが、同時に、アメリカ姿勢というものもこれは当を得てない点があるわけですから、みずからただすべきものはただし、そして要求すべきものは強く要求をしていくというような、そういう構えで対処してほしいと思うのですね。ECとの会議においても、河本通産大臣は、ここ数日の新聞報道を見ますと、そうした姿勢で対処しておるように思うのですが、強くその点は要請をしておきたいと思います。  さて、通産大臣、この円高が続いてまいりますと、もう関連中小企業はピンチに立ってしまっていますね。だから、いまのような円高の状態だと、もう輸出関連中小企業というものは脱落してしまうのではないかというような考え方すら私は持っているわけですが、大臣のお見通しはどうなのか。  それから、いろいろ不況だとか円高に対する施策を講じてこられましたけれども、それも間に合わない。もう強力な施策を講じていく必要があるであろうというように思うのですが、見通し対策について考え方をお示しいただきたいと思う。
  8. 河本敏夫

    河本国務大臣 ことし一月、国会再開劈頭におきまして、中小企業に対する今回の円高の影響が余りにも激しいものがございますので、緊急対策決定をしていただきまして、二月から直ちに実施に移しております。この一月に法律を御審議いただきました背景は、十二月に通産省輸出に依存する比率の比較的大きい産地産業七十九地区を調査いたしまして、その結果に基づきまして一月の法律審議、こういうことでお願いをしたわけでございますが、最近の動きはまたさらに一段と激しくなっております。  そこで、ごく最近の状況を至急にいま調査をしておるところでございます。その調査の結果いかんによりまして、さらにあるいは中小企業に対しては一層の緊急援助をする必要があるのではないか、このように判断をしておりまして、調査を急いでおるところでございます。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣は、自動車輸出を昨年並みに抑えていこうという考え方だということなんですが、さて、実効が上がるかどうかという点なんです。その点に対しては実効が上がる具体的な施策をお持ちなのかどうかという点です。  それから、自動車だけではなくて、輸出競争力の強いカメラであるとかあるいは弱電であるとかその他あるわけですが、それらに対しても、自動車と同様ということでなくとも、やはりそうした方向についての行政指導というものを強めていこうとするお考え方であるかどうかという点であります。  それから、貿易管理令といったような法的措置というものを政府としては講じていくのではないかと言われておりましたが、通産省としてはそれを否定する、あくまで行政指導でいくという態度のようでありますが、そのとおりなのかどうかという点をひとつお聞かせいただきたいと思う。
  10. 河本敏夫

    河本国務大臣 具体的な品目についての取り扱いを申し上げます前に、ごく簡単に最近の貿易の大体の動向を申し上げますが、五十二年度は、数量ベースそれから円ベースとも、ほぼ五、六%ぐらいな伸びでずっと四月から一月まで来ておりました。数量ベース円ベースは必ずしも一致しませんが、ほぼ同じような動きでございまして、そう大きな違いはないわけでございますが、ただ、二月になりましてから駆け込み輸出等がふえまして、非常に数量もふえております。一二、三%ぐらい数量がふえておるのではないかと思いますが、三月もやはりその傾向が強く出ております。だから、年度間全体を通じては、あるいは数量円ベースとも大体六、七%ぐらいに少し上がるかもわからぬと思っております。しかし、これは世界全体の貿易伸びから見ましても、そう大きな違いがあるわけではございませんで、世界全体の貿易伸びも、数量ベースではほぼ五、六%前後伸びておるわけでありますから、日本だけが特別に数量が多く伸びておる、こういうことではないわけであります。  ただ、昨年秋以降の円高のために一部の商品は数回にわたって値上げをいたしております。もっともこれは競争力の強い業種でございますが、また、中には円ベースで契約しておるものは、計算上はドルの手取りがふえておることになります。そういうことで、非常にドルベース金額は激増いたしまして、現状では貿易収支黒字、ひいては経常収支黒字というものは、再修正をいたしました当初の予想を相当大幅に上回る見込みでございます。そういうことから、この際は貿易に一段と工夫を加える必要があると考えまして、五十三年度はとりあえず円ベースでほぼ横並び水準に持っていきたいと考えております。ただし、その中には激減するものもあると思います。若干ふえるものもあろうかと思います。だから、全体を平均いたしましてほぼ横並び、こういう考え方でございます。  いま個々の商品についてお尋ねでございますが、自動車等も大体そういう考え方でございまして、年度間を通じては大体五十二年度横並び地域ごとに若干の出入りはございますけれども世界全体に対しては大体いま申しましたような横並び考えておりまして、いろいろ具体的に対策をいま考えまして、その目標が実現できるように取り計らっておるところでございます。その他の商品等につきましても、それぞれの業界と十分打ち合わせをいたしまして、適当な判断指導を行うつもりでございます。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、自動車については五十三年度は前年度並みで抑えていく、それ以上は伸ばさないような行政指導を強くしていくという態度は決めているわけですか。     〔委員長退席中島(源)委員長代理着席
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 自動車は、五十二年度はほぼ四百六十万台前後、あるいは四百六、七十万台くらいになるかもわかりませんが、その見当だと思っております。五十三年度もほぼその水準指導していきたいと考えております。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 通産大臣石油タンカー備蓄のことでお尋ねをするのですが、長崎県の橘湾石油備蓄タンカー停泊使用の申し入れを、久保知事が先般上京されたときに通産大臣はされたということですが、御承知のとおり、長崎県は水産県である。問題の橘湾というのは、タイとかタチウオの好漁場なんですね。それで、その地域漁船だけではなくて、相当広い範囲漁場にそこはなっているわけです。それだけにいま大きなショックを漁民に与えているわけなんです。そうしたことをどの程度考えになっておられたのか。  それから、二月十日に設立したタンカー備蓄協会計画を進めていると思うのですが、橘湾はその計画に入っていたのかどうか。  それから、そうしたタンカー備蓄停泊候補地といったようなものが、何カ所かもう決まっているのか、その点、いかがですか。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 先般、長崎県の久保知事が上京されましてお目にかかりました。御案内のように上五島で大規模な洋上備蓄計画がございまして、地元といま話し合いが続いておるところでございます。そこで、その際に私が知事に申し上げましたのは、上五島の大計画、これは政府としても促進したい考えであるが、もっともこのためには地元との話し合いが妥結するということが前提条件になっておるけれども、それが済めば何とか実現したいと考えておるということを申し上げました。あわせて、これが実現をいたしますのは早くて二年先、おそければ三年先ということになりますので、その間、長崎県は非常に天然の良港が多いので、特に橘湾などはタンカー備蓄等についても大変いい場所であると思うから、ひとつその上五島基地ができ上がるまでの間、タンカー備蓄基地として預ってもらえないか、やってもらえないか、こういうことを御相談した事実はございます。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 そうした事実がありましょうが、先ほど申し上げたように、長崎県の水産県としての特殊性、それから当該橘湾の持つ好漁場経済水域二百海里時代における沿岸漁業振興という点は大きな政治課題になっている、そのことを私は軽視してはいけない、こう思うのです。だから、あくまで地元住民とのあるいは漁民との合意というものがない限り、これは強行するといったようなことがあってはならない。いろいろな手練手管、という言葉は適当な言葉でありませんけれども、特に長崎県知事通産大臣に対して個人的にも非常に尊敬をしておる一人でありますから、通産大臣から言われますと、相当重荷を感じるだろう、そのことがやはり漁民住民に対する強い要請となってあらわれてくるであろう、こうとすら、私はよく知っているだけに、そういう杞憂があるわけなんです。だから、そういう無理をすべきではない、あくまで合意の上でなければやらないという態度を明らかにされる必要があると思うのですが、いかがですか。
  16. 河本敏夫

    河本国務大臣 その点につきましては、久保知事も、長崎県は水産県で、漁民の数も五万はおるということを言っておられました。そういうことでありますから、やはり何事をするにしましても漁業関係者との話し合い先決である、でありますから、もちろん地元との合意がなければできないことでございますので、合意が得られるようにひとつごあっせんをいただきたい、こういうことをお願いしたわけでございまして、地元合意がとれないのに強引にこれを推進するということは不可能でございますので、この点をお願いをしたわけでございます。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 これで終わりますが、橋本長官にお答えいただいてけっこうですが、何隻程度計画しておられるのか、それから、停泊期間というのはどの程度かという点、それから、町村に対する使用料停泊港の町村だけか、また、ただいま申し上げたように、橘湾というのは千々石町という町にあるわけなんです。ところが、その漁場は、周辺というよりも相当広範な地域からの漁船漁場になっていますから、そうした漁船の所属する町村というのもその使用料を支払う対象とお考えになるのか、それから、漁協に対しても使用料を多くお出しになる、主として漁協にお出しになるようですが、漁協も、そこを漁場とする漁船の所属する漁協全体をお考えになっておられるのかどうかといった点についてお聞かせをいただきたい。
  18. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 お尋ね橘湾に何隻の錨泊お願いするかということは、まだ決めておりません。ただ、タンカー備蓄といたしましては、全体として五百万キロリッターVLCC型タンカーで二十隻ぐらいというふうに考えております。現地の同意が得られるならば、その範囲内についてお願いするということになろうかと思います。  それから、期間につきましては、石油開発公団による陸上タンクあるいは海洋備蓄体制が整うまでの間ということでございます。大体二年ぐらいを考えております。  それから、地元に対します交付金でございますが、これは、新しい交付金制度が発足いたしますと、キロリッター当たり百円というふうに考えております。それから、別途いわゆる水面使用料といたしまして、キロリッター当たり四百円の予算を計上いたしておるわけでございまして、そういった資金の使途につきましては、できるだけ実情に即応したような形で、当該一市町村にとどまらず、実情に即応して交付していきたい、かように考えております。
  19. 中島源太郎

    中島(源)委員長代理 武部文君。
  20. 武部文

    武部委員 ちょっと時間が変更になりましたから、最初円高差益の問題は、十分時間がとれませんので後日に一部を回したいと思いますから、その意味では資料の提出をぜひお願いしたいので、このことを後で委員長お願いをいたしたいと思います。  円高差益物価に生かせというふうに総理が閣議で指示をされたのは、去年の二月であります。当時の円相場は大体二百九十円台というふうに記憶をいたしておりますが、あれから一年何カ月ずっと円高が続いてきたわけであります。円高差益物価に生かせ、これは消費者に還元をしろ、こういうことになるわけですが、その後、政府が各業界に対していろいろな行政指導を行って協力方を依頼をしておる、そういう通達の写しをわれわれも見せてもらっておるわけですが、一向にこの効果が上がっていない、このように私は思います。  そこで、きょうは、この差益の問題で一番手っ取り早く国民の皆さんに理解できるのは、石油の問題であろうと思います。電力の問題あるいはガス、そういうものは直接国民の暮らしとも関係をするし、日本産業にとっても非常に重要な意味を持つものでありますから、このことについてお伺いをいたしたいのでありますが、五十二年一年間に石油業界円高によって得た差益、これは一体幾らぐらいに見ておるか、最初にそれをお伺いしたい。
  21. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 石油につきましては、一円の円高によりましてキロリットル当たり八十六円のメリットがあるというふうに試算いたしておりまして、それを前提に、五十二年度輸入量二億八千六百万キロリットルが予定どおりに入るといたしますと、年間約二百五十億円になるわけでございます。そういったことを前提に試算いたしますと、五十二年度では約七千九百億、八千億弱のメリットがあった、かように考えております。
  22. 武部文

    武部委員 それは円レート平均幾らとして見てですか。
  23. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 上期が二百七十二円という実績が出ております。下期を幾らに見るかということでございますが、年度間を通じておおむね二百六十円ぐらいというふうに考え計算いたしております。
  24. 武部文

    武部委員 前回、物価特別委員会でこの問題を通産省の方と数字の点でいろいろとお話し合いをいたしましたが、ちょっとあなたの数字と違うのであります。上期は二百七十二円、下期は二百五十二円の平均として計算をしてあったわけです。その結果、約一兆円という金額が出ました。あなたは二百六十円ぐらいですか、ちょっと話が違うのですが、通産省の方と私どもの方との数字の違いがなくなって、ほぼ一兆円という金額、そうなった。これは議事録を見ればわかることですから。  問題は、その差益が、あなた方のおっしゃるように、備蓄の費用であるとかあるいはOPECの値上げだとか、そういうものでどの程度消えたというふうに思っておられるのか、また、その金額通産省が独自ではじき出したものか、あるいはそういうことをメーカー、元売り会社から聞かれたものか、どっちかお伺いしたい。
  25. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 私たちの計算いたしましたところでは、五十二年度におけるコストアップ要因といたしましては、二回にわたる原油価格の引き上げによりまして約五千五百億円でございます。それから備蓄、防災等の経費の上昇が約千五百億円、合計いたしまして七千億円、これは私たちが独自に計算いたしたものでございます。
  26. 武部文

    武部委員 やはり何遍やっても数字が合わぬわけですが、この間あなた方の示された数字によると、大体六千五百億ぐらいということになっておりました。いまはちょっと五百億多いわけです。  私ども計算とあなた方の計算が若干違うにしても、大体三千五百億、これだけは去年一年間に元売りメーカーの得た差益である、こうなるわけです。あなた方の計算でこのコストアップとかあるいは備蓄の費用とかというものは、会社の提出をした資料に基づいて計算されたものだというふうに思うわけです。われわれは、前から言っておったわけですが、この差益というのは、普通の商行為によって得たものではない、企業努力によって得たものではない、こういう特殊な利益である、したがって、それを他に転用するとかいうようなことは公益事業である以上許されない、こういうことを強く何回か主張してきたわけです。したがって、こういうものは即刻、この物価高だし、また、円高によって非常に困っておる企業もたくさんあることだから、そういうものをわかる形で還元をすべきではないかということをかねがね主張してきたわけです。これは灯油にしてもガソリンにしてもそうです。そういう形で、一体どういうふうにこの利益が還元されておるというふうに通産省は見ておるのか、これをひとつお伺いをしたい。
  27. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず、家庭用の灯油でございますが、私たちの指導によりまして、昨年の十二月以降、元売り仕切り価格で約二千円程度引き下げになっております。その結果といたしまして、ことしの一月に十八リットルの容器に入ったもので七百円、この二月には六百九十二円、一年前同期に比べまして約三十円見当の値下がりになっておるというふうに理解いたしております。  それから、ことしの一月になりまして、一部の有力元売り企業が、各種製品平均いたしましてキロリッター当たり二千円の値下げを発表いたしたわけでございます。その後の需給状況、あるいは御指摘の円高傾向を背景にいたしまして、現在では平均いたしまして最低二千円程度の値下がりになっておるのじゃなかろうか、月にいたしますと約五百億円になるわけでございまして、さようないわゆる需給関係、市場メカニズムを通じまして事実上差益が還元されておる、かように見ておるわけであります。
  28. 武部文

    武部委員 いま灯油のことをちょっとおっしゃったわけですが、私は、この灯油というのは、暖冬だし、不況だし、そういうことで需要が減って在庫がだぶつく、そういう形の中で必然的に下がった金額だというふうに理解をするのです。ですから、この差益を還元したという形には残念ながら結びつかない。若干はあるかもしらぬが、現実にそうは理解できないのです。ここであなたと論争してもしようがないが……。  それから、二千円なり二千四百円のアップを考えておったが、それも取りやめた、こういうような話もございました。しかし、現実にいま元売り会社の決算というのは、全く大変な好況だし、配当だってどんどんふえておるし、そういうことを見ると、どうやら差益というものはどこかに隠されておるじゃないか、どこかへ消えてしまりておるじゃないかというふうにすら思えるのであります。したがって、いまあなたの方では二回のOPECの値上げの内容とかあるいは備蓄とかコストアップとかいろいろな要因のことをお述べになったけれども企業が秘密主義をとる限り、そういうことをあなた方の方に具体的にあけすけに言っておるとは思えない。むしろこういう特に公益事業に値するような業界ですし、また、かつて石油ショックのときにあの人たちがやったことは、もう皆さん御承知のとおり、一年間に五回もカルテルを結んで、すでに高裁で裁判にかかっておる、こういう業界だということになるならば、当然もっと強い行政措置をこの業界に対してとるべきではないか、そうしてもっと経理を総ざらいにして国民の前にこれを明らかにする必要がある、こういうふうに私は思うのです。  きょうはこれ以上できませんから、去年も出してもらいましたから、五十二年一年間の元売り会社の各社別の円高差益を一覧表にしてぜひ提出していただきたい。委員長にこれをお願いしたいのです。
  29. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 まず、資料の前に若干お答えいたしておきますが、暖冬だとかあるいは産業活動の不振といったような需給事情が価格低下に寄与しておるということは、私自身も否定いたしませんが、問題は、それによってコストが変わるわけのものでもありませんので、その陰において事実上、私は、為替差益と申しますかあるいは円高メリットは還元されている、かように申し上げたわけでございます。  それから、ただいま御指摘の資料でございますが、上場企業について準備いたしたいと思います。ただ、御承知のように、為替差益と申しましても、いわゆるユーザンス差益とそれから事実上の円高メリットというのがございます。後者につきましては、原価構成として入ってくるわけでございますのでなかなか把握困難であるということで、前者につきまして上場企業について資料を準備いたしたい、かように考えます。
  30. 武部文

    武部委員 それじゃ、資料の方、よろしくお願いいたします。  通産大臣、いま私は石油の問題を言ったわけですが、これと同じように電力のことをちょっとお伺いしたいのです。  きょうの新聞に出ておりますが、電力の差益は、私ども通産省とのやりとりの中で、五十二年一年間に九電力の得た差益は約一千億、こういうふうに回答がありまして、大体それぐらいだろう。それは、一円高くなるにつれて三十三億円一年間もうかる、差益が出る、こういう算出根拠に基づいて一千億という数字が出たわけです。これをどう還元をしていくかということでいろいろやりとりいたしましたが、前回の二三、二四%くらいですかの値上げの際に二年原価方式をとったが、これを延長することによって消費者に還元をするという形をとりたい、こういう話でございました。きのう通産大臣が総評の事務局長と会われた記事がきょう新聞に出ておりましたが、それによると、五十二年の円高差益の九電力の推計は千四百億くらいになるであろうというのですが、この千億といい千四百億といい、これは通産省として大体間違いなくつかんだ数字であるか、これをまず最初にお伺いしたい。
  31. 河本敏夫

    河本国務大臣 数字は大体そのとおりになると思います。
  32. 武部文

    武部委員 そこで、電気料金というのは、電力料金と電灯料金と合わせて電気料金であるから、いわゆる電灯料金の方をまけたらどうだ、安くしたらどうだという主張をわれわれはしたわけです。電力料金の方はそっとしておいて、電灯料金の方を安くしたらどうだ、こういう話をいたしました。そうすると、いまの差益を還元することによって、標準家庭で大体年間一千円以上になるだろうというような計算も出てくるわけです。そういうことをやってもらったらどうだという話をしたわけですが、それは電気料金という形で二つが一本になっておるので、下げることはできないという答弁があったわけです。  きのう大臣が会見をされて、その記事が出ておりますが、ここに福祉の関係の料金を設けたらどうだ、いわゆる生活保護世帯などに対して三〇%以上を割り引くような福祉料金を設けたらどうだという提案があって、これに対してあなたは、電気事業法の第十九条によってそれはできないとおっしゃったわけです。そのときに、今回はやりたくないというふうにおっしゃったわけですが、そういうふうにおっしゃったわけですか。
  33. 河本敏夫

    河本国務大臣 若干説明をいたしますと、現在の電気料金は、五十一年度、五十二年度の電気料金を原価計算をいたしまして、五十一年度一昨年の上半期に決定をしたものでございます。そこで、五十三年度以降はまた原価計算をいたしまして、その後値上げの要素等も若干起こっておりますし、あるいは為替差益などを得て値下げの要素等も起こっておりますので、原価計算をして、もう一回五十三年度以降の電気料金をどうすべきかということを検討する年になっております。しかし、先ほど申し上げましたように、昨年は約千億、ことしはおよそ千四百億見当の為替差益も出ることでもあるから、一方でベースアップとか諸経費の値上がり、そういう値上がりの要素もあるけれども、この際はしんぼうして、五十三年度は電気料金は据え置き、そういうことでやりなさいということをことしの初め申しまして、電力業界もこれを了解をせられまして、いまその方向で進んでおるところでございます。その際、あわせまして、とりあえず一年間ということにしておくが、なお工夫と努力を重ねて一年以上継続できるようにひとつ努力をしていただきたい、こういうこともあわせて申し添えたのでございます。したがって、現在では少なくとも一年以上現行料金を据え置く、できるだけ長く据え置く、こういうことにしておるわけでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、福祉料金のことにつきましては、昨日総評から申し入れがございました。前回の値上げのときには、次の予算が成立するまでということで、約半年間福祉料金を若干優遇したことがございます。もともと福祉政策というのは財政がやるべきことでございまして、電力業界がやるべきことではございませんが、しかし、できるだけのことはしなければいかぬというので、次の予算が成立するまでは、電力会社は特別に合理化をいたしまして、それだけの分を自主努力で捻出することにいたしまして、若干の値引き期間を置いたわけでございます。しかし、今回は前回と事情も違っておりますので、福祉料金を設定するということは必ずしも適当ではない、こういうことを昨日申し上げたわけでございます。
  34. 武部文

    武部委員 この電気事業法の第十九条というのは、料金を決めた項目であります。その二項の第四号に、「特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと。」ということがありますね。これだと思うのですが、これだけ差益がどんどん九電力に集まってくる、ましてや円はずっと高くなっておる、こういうことになってくれば、むしろこういうものを生かして、生活保護世帯とかそういう恵まれない人に福祉料金をつくってあげた方がいいじゃないか。ここに書いてある第四号は、「特定の者に対して不当な差別的取扱い」となっているわけですが、私は、まことに妥当な取り扱いだと思う。だから、やれるわけですから、そういうものを恵まれない弱い人たちに対して——これは電気料金ですから、電気がなかったら大変なことだ。そういう直ちに国民の側にわかりやすい、しかもそのことによってそういう人たちが救われるということは、財政が福祉の中心だとかそういうことはよくわかりますけれども、そうではなくて、そういう政策をいま福田内閣がとることは最も必要なことではないだろうか、このように思うのです。  この第一号は、「料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」。果たしていまの料金が適正な原価に適正な利潤を加えたものであるかということについては、私も大変疑問に思うのです。そういう点から見て、今回はやりたくないとおっしゃったが、特に私どもとしてはそういう点を考慮してもらいたい。ましてや、去年よりもことしはさらに差益がふえるわけですから、こういう点についてぜひこの第十九条というものを生かして、第四号をそういう「不当な」ということでなしに、妥当なやり方として生かす必要があるのじゃないか、こう思うのですが、もう一回この問題について……。
  35. 河本敏夫

    河本国務大臣 これは前回のときもいろいろな技術上の問題があったのですが、短期間、次の予算までということで実施をいたしましたが、その間のいろいろな問題点のいきさつ、それから今回のいろいろないきさつ、法律の解釈、こういうことにつきましてエネルギー庁長官から説明させます。
  36. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 電力料金の査定と申しますか、決定に当たりましては、ただいま先生御指摘になりましたように、原価主義と公平主義というのが大きな原則になっておるわけでございます。したがいまして、一部の特定の者についてこの原価主義あるいは公平主義を離れて割り安で供給するあるいは割り高で供給するということは、現在の電気事業法のたてまえからしてそれはなし得ない、こういうことであるわけでございまして、大臣が先ほど今回はやれないんだというお話をいたしましたのは、前回、五十一年度に料金改定をする際に、いわゆる福祉家庭につきまして予算措置がまだ行われておらない、新しく予算措置が行われるまでの間、原価主義、公平主義を逸脱しないで電力企業の自己努力によってその分をカバーするということで実施いたしたわけでございますが、今回の場合には、料金改定といったような問題が伴ってきておりませんので、そういったところが事情の差であるということで、円高メリットがあるからといって、直ちにそれをもって福祉家庭により安く電力を供給することはできないんだ、こういう趣旨でございます。  あくまで原価主義、公平主義の立場に立って電気料金というものは決定されておる、強いて申しますならば、それ以外の目的意識あるいは政策目的に即応するためには、料金体系と別途の体系で措置すべきものである、こういうふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  37. 武部文

    武部委員 あなたの方の考え方と私どもの電気事業法の解釈は違うわけですよ。だから、あなたが出てくるとそういうことを言うだろうと思って大臣に言ったんだけれども、これは仕方がないです。水かけ論になっちゃうから。しかし、電気事業法をそういうふうに解釈して、全く棒をのんだような解釈は、今日の円高でこういうことが起きておる段階に対して余りにも一本やりのような解釈だと私は言わざるを得ないのです。ですからそういうふうな意見が出てくるでしょう。  たとえば、電力料金の側だって、これはなかなかむずかしいかもしらぬが、アルミ業界は大変な電力を使うということで、特定不況業種に対しても電力料金を下げたらどうだ、こういうような意見も出てきますね。いろいろな意見が出てくると思うのです。それに対して、棒をのんだように、電気事業法はかくのごときものだから絶対にだめだなどというようなことを言っておったら、一つもこの問題は解決に向かわない、そう私は思うのです。これはまた後で別の機会にやりましょう。  この九つの電力会社の五十二年度差益、これを一覧表にして提出していただきたい。いかがですか。
  38. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 お出しいたします。
  39. 武部文

    武部委員 それでは、時間がございませんから、次に移ります。  去年私は、物価特別委員会で、マルチ商法、このことについて追及をいたしました。あれから一年たったわけです。それまでの間、訪問販売等に関する法律、こういうものがつくられておりながら、行政が取り締まりについて全く横を向いておるのか、後ろを向いておるのか、半身の構えなのか、そういう形で一向に前進をしなかった、その間被害者がどんどん出てきた、こういうことがあったわけです。  そこで、私は、去年の春にこの問題を委員会で質問をいたしましてから、ともかく行政府に前向きの形でこの問題について取り組んでもらった。たとえば警察庁はどんどん摘発をされるし、通産省はマルチ企業の名前を公表する、あるいは通産ないし経企庁は啓発運動をやる、こういうようなことで、この問題はずいぶん進んできたというふうに思います。したがって、一定の成果は上がったわけです。一年たったわけですが、このマルチ商法について私はこの一年間を総括してみて、より一層行政の推進というものを願いたい、こういう立場から、二、三の意見と疑問をひとつ提示してみたいと思います。  まず、各省庁別にお伺いいたしますが、通産省は、主管官庁として、この一年、マルチ商法についてどのような対策をやってきたのか、その結果マルチ商法の組織は現状どうなっておるか、これを最初にお伺いしたい。
  40. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 お答え申し上げます。  通産省におきましては、過去一年間に、マルチ対策といたしまして次のような施策を講じてまいっておるところでございます。  まず、PR関係につきまして、苦情受理公表制度に基づくいわゆるマルチ業者の名前の公表を行いまして、都道府県、消費者団体、経済団体、また、若い大学、高校等の生徒の関係につきまして、文部省を通じまして大学、高校等に連絡するというようなことで、その都度連絡してまいりまして、これまで三回実施してまいっております。また、そのほかテレビ、ラジオを通じましてマルチ商法の啓発をやるということ、それから、リーフレット、映画等によりまして問題のPRを進めていくというようなことをやってまいっております。  このようなPR関係の問題のほかに、マルチ業者に対しましては、解約金の返済に円滑に応ずるようにというような指導をいたしますとともに、商法につきまして非常に問題のあるようなところにつきまして指導いたしまして、商法の変更をさせるというような相談にも応じております。  また消費者に対しましては、先ほど申し上げました苦情受理公表制度というものを実施いたしまして、都道府県あるいは市町村消費者相談窓口で苦情相談に応じてきております。  こういった状況でございまして、ただいまのところ、マルチ組織を調査いたしましたところでは、約六十の組織を調査いたしましたが、マルチ組織としまして訪問販売等に関する法律の第十一条の定義に該当するマルチ業者につきましては、大体そのうちの十六社ぐらい、こういう状況になっております。
  41. 武部文

    武部委員 企業の名前を公表されたということは、私は非常にいいことだったと思うし、これは大きな成果が上がったと思うわけですが、一部にはマルチというものはもう終わったというような声が聞かれるわけですが、私はこれは間違いだと思います。後で具体的なことも申し上げますが、数としてはまだまだ残っておるわけです。行政が手を抜くと、この法律というものは全面禁止法じゃありませんから、全面禁止法じゃないだけに、復活するおそれが多分にあるわけです。ですから、行政は始終これを監視しておかなければならぬ、そういうことを私どもは皆さんに強く訴えたいのであります。  しかし、今後はわが国最大のベストラインというような組織は復活しないとは思います。思いますが、細分化して小さな組織がいろいろな形で出てくる可能性があるし、しかも手口は非常に巧妙になってくるというふうに思わなければならぬと思います。したがって、私は、通産省がマルチ対策についてどういう基本的な姿勢をこの訪販法の運用の基本的な柱に置いてやろうとしているのか、前の大臣ともいろいろやり合ったわけですが、このマルチ対策について通産省基本的にどういう考えでやろうとしておるのか、これをぜひひとつ大臣からお伺いしたい。
  42. 河本敏夫

    河本国務大臣 マルチ商法についての考え方でございますが、いま審議官の方から大体のことを申し上げましたが、なお重ねて私から、非常に重大な問題でございますから、改めて申し上げます。  この規制につきましては、訪問販売等に関する法律の厳正な運用に加えまして、マルチ業者の名前の公表と各般にわたるPRによりまして、かなりの効果を上げたものと考えております。しかしながら、現在のマルチ業者の大半が、倒産もしくは営業廃止に追い込まれましたマルチ組織の中から細胞分裂を起こして、新しいマルチ組織が次から次へ発生する、こういう現状でございます。したがって、通産省といたしましては、今後とも悪質なマルチ商法をなくするために、関係省庁との緊密な連絡を図りまして訪問販売等に関する法律を厳正に運用するほか、一般の人に対するPRもさらに積極的に行っていかなければならぬと考えております。  なお、御参考までに申し上げますが、一昨年の五月十八日、本委員会の審議の過程におきまして、マルチ商法につきまして、政府委員から、実質的禁止の方がより有効な方法であるとか、あるいは実質的には悪いマルチを禁止していかなければならぬ、こういう趣旨の答弁をいたしておるところでございます。
  43. 武部文

    武部委員 わかりました。そのような基本的な姿勢でぜひ通産省はこれからも臨んでいただきたい。このように特に要望しておきたいと思います。  そこで、今度は警察庁にお伺いいたしますが、これまでのマルチ摘発の状況、その内容、これを簡単に説明してください。
  44. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  昭和五十二年中に警察が検挙いたしましたのは七組織でございます。名前はベストライン、ライフ、セレクト、白光、サバニー、ゴールデンケミカル、FMC。なお、ことしに入りましてからさらに一件の摘発をいたしておるわけでございます。
  45. 武部文

    武部委員 摘発された企業が送検されるときには、十二条違反は確かにくっついておりますが、十二条違反で逮捕された企業は、いまおっしゃった中のセレクトだけであります。私が去年追及した最大のマルチ組織であるベストライン、これは警察の摘発を受けてこの一月に倒産をいたしました。一万五千人の被害者が商品を会社に返したわけです。返したけれども、これに対して返金は全然ない。まるまる被害者が損をしたという形になっておるわけですが、その総括結果についてはどうですか。いま私が言ったことは間違いありませんか。そのように警察庁も見ておりますか。
  46. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  私ども、先生がただいまおっしゃったようなことにつきまして、直接はタッチいたしておりませんけれども通産省の方からの御連絡では、ただいま先生がおっしゃったようなことだと承っております。
  47. 武部文

    武部委員 この法第十六条にクーリングオフというのがあって、二週間以内ならば無条件で解約ができる、こういうふうになっておるわけです。そういうことをやってもこれは全然守られない、こういうふうに現実になったわけです。ですから、被害者は全く救済されなかったということになるわけです。しかも被害者の感情からすれば、代表者は海外に逃亡しておるわけです。そうしてそれを手助けした日本人の幹部には何にも手がつけられておらない、こういう結果を見て、被害者としても、また、追及した私どもとしても、大変疑問が残るわけであります。  特に代表者のジム・アーノット、これが一番の張本人ですが、このジム・アーノットというのは、海外に逃げてしまってから外為法違反で警察庁から逮捕状が出た。外国に逃げてしまって、おらなくなってから外為法で逮捕状が出る、こういうことになったわけですが、これは全く不手際だというふうに言わざるを得ないわけです。警察庁はこれまで大変苦労して、努力をされて摘発に踏み切られたことについては、私は敬意を表しますけれども、このマルチ規制法の骨であるところの十二条、これが日本人の幹部に対して適用されなかったということは、この法律のどこかに問題点がありはしないか、このように思うのですが、警察庁は、この逮捕に踏み切り、あるいは踏み切れなかった、あるいは海外逃亡を許してしまったということについて、この十二条というものは何か法律の中に手抜かりがあったのじゃないかというふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。私は、この十二条というのは、罰金ではなくして体罰になっておるわけだから、十二条というものを伝家の宝刀としてあまり抜かずにさびつかせてしまったのじゃ何にもならぬという気持ちを持つのですが、現実に摘発された警察庁としてどう思いますか。
  48. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  十二条に入ります前に、アーノットの逮捕の件でございますけれども、これは御承知のように、知能犯的な要素を帯びておるわけでございます。こういったものの捜査につきましては、最初に捜索をいたしまして資料を集めて、それを検討した上で初めて逮捕容疑事実というかたい容疑事実に入っていくのが普通でございます。今回ベストラインにつきましても、同じようなことでやったわけでございます。したがいまして、ほかの者についてはかなり逮捕の容疑事実があったわけでございますけれども、それもそのことをやってしまうとアーノットがひょっと逃げるのじゃないかというおそれがあったもので、それも控えておったわけでございます。一月ぐらい後でまた帰ってくるというお話等もありましたので、それまでに容疑事実を固めようということで、結果的には手おくれになった次第でございます。  そこで、お尋ねの第十二条の件でございます。これは御承知のように、重要事項の不告知でございます。こういったものの立証といいますのは、実際捜査をやってみまして、かなりむずかしい点はあるわけでございます。今回ベストライン社につきましての逮捕までに踏み切れたのは、十二条というよりは、むしろ外為法を使ったから逮捕状の請求に踏み切ることができたというのが実情でございます。
  49. 武部文

    武部委員 確かにマルチ業者というのは法の裏をかくものだからというような答弁もいままで何遍もございましたし、われわれもそう思っています。非常に巧妙だし、警察庁として証拠を握って逮捕に踏み切るまでにはなかなか時間もかかるし、困難だろうということはよくわかります。しかし、現実に被害者である人たちから見れば、肝心かなめの者が逮捕されないで、ここにベストラインの一覧表の幹部の写真がありますが、この一ページの表からこちらの方は幹部ですが、そういう者ではなしに、この辺の二、三匹の子ネズミがつかまった程度で、肝心かなめの者は知らぬ顔している、こういうことになるわけですね。ですから、この辺は非常にむずかしい問題だろうけれども、これからまた具体的なことを言いますから、そういうものを通じて、ぜひ取り締まりをもっと厳しくやってほしいということを特に要望しておきたいわけであります。  このように、マルチというものはまだまだはびこっておるわけですが、その中に関西最大のロスカ商事というものがあるわけです。これはサンケイ新聞が現在特集をして、これを追跡をしておる記事が連日このように新聞をにぎわわしておるわけです。この被害の実態調査が報道されて、さらに続々と投書なり被害事実が新聞に寄せられてきました。  これを見ると、この組織は、解約を申し出たら他の会員に乱暴をされたとか、あるいは一晩じゅう監禁されておどかされたとか、あるいはやめるなら学校へ行かれないようにしてやるとか、そういう監禁、脅迫、暴行というものが行われておるわけです。特に未成年者に対して新規加入をさせる場合には、特約店契約を結ぶときには両親が書くことになっておる親権者同意書、こういうものがあるわけですが、それを無理やり本人に書かしておるというような事実もこの中に出ておるわけです。これは明らかに私文書偽造です。あるいはまた、これは二十四歳の元私鉄に勤めておった若い青年でありますが、完全に廃人同様、精神病で精神病院に入院しておる。その本人はもちろん書けませんから、いとこと称する人がその経過を手紙につづって新聞社に送り、私はそのコピーをここに持っておるわけですが、読むにたえぬようなことが書いてありますね。大変なことです。このようにしていまなおこういう精神病者にまで追い込むような、そういう手口が行われておる。これは関西のロスカという会社です。  こういうふうに内容を一つ一つとってみても、大変なことがこの中に書かれておるわけです。平均金額は一人平均百二万円ですが、暴行、監禁、預金強奪、集団リンチあるいは「新人勧誘はデートで」なんという新しい方式で、この二十四歳の狂人になった人も、何かデパートで女性に誘われて入ったというようなことがここに書いてありますが、こういうふうに全く新しいかっこうの組織が大阪あたりでは出ておる。そうして被害者がこのようにたくさん出ておるわけです。こういう会社は社会的制裁を当然受けるべきだということがこの手紙の締めくくりのところに書いてあります。復讐をしてやるとかいうようなことが書いてあります。  こういうふうな問題が現実に出ておるわけですが、このことについてわれわれは、これはただ単なる経済行為だというようなことではなくて、むしろこれは脅迫、暴行あるいは私文書偽造、そういう全くの刑事罰だというふうに思うわけで、いわゆる商法に名をかりた犯罪を経済行為だから遠慮をするというようなことでなくて、もっとびしびし摘発をし、捜査をしてもらいたいというふうに思うわけですが、警察庁としてどう思いますか。
  50. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のロスカ商事につきましては、現在告訴、告発も出ております。それに沿いまして、大阪府警では捜査をいたしております。捜査の細かい内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、単に訪販法違反ということだけではなしに、ただいま御指摘のようなことが明らかになってまいりますれば、刑法の所定の条文等を適用して、厳しく摘発をすることになると考えております。
  51. 武部文

    武部委員 お聞きいたしますと、このロスカのことは警察庁でも承知しておられるようでありますが、この内容は、かつてベストラインがやったこと以上の内容のようですね。私どもが調べたいままでのいろいろなマルチがやったことには、脅迫とかいろいろなことがあったけれども、それとは比較にならぬほどこれは悪質のようです。このサンケイの報道というものは相当影響を与えておるようですから、即刻ひとつ摘発をして、全貌を明らかにしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  もともと、問題となっておるところのこのマルチというのは、全部と言っていいほど勧誘の手口が大体似たり寄ったりこういう形のものなんです。そうでなければマルチというものは広げられないのですよ。そういうことはいままでの私ども調査によってももう明らかになってきた。したがって、こういう体質を持っておるマルチは、これ自体は十二条、十三条の違反はもう当然のことですが、これは刑事罰でどんどんやらなきゃいかぬというふうにも思います。  同時に、主務大臣による営業停止命令、これは十二条から出てくるわけですが、そして十三条、この主務大臣によるところの営業停止命令というものを一遍も発動していないんじゃないですか。どんどん発動をして運用すべきだと思うのですが、この点は通産省、どう思いますか。
  52. 野々内隆

    ○野々内説明員 お答え申し上げます。  十三条の発動は、御承知のとおり、現に不当な勧誘が行われており、また、引き続き将来も行われるおそれがある場合ということになっておりまして、私どもとしては、十三条命令の発動の可能性のある企業に対しまして、事前にそういうことをやめるように指導を行い、そしてその指導を聞かない場合には発動する、こういう方針でおります。  具体的には、ベストライン社につきましては、昨年八月に十三条の発動を私ども一たん考えまして指導いたしました結果、先方から不当な勧誘を以後行わないという誓約書の提出がございましたので 発動を差し控えまして、その後様子を見ておりましたが、結果的には、主としてPRの効果が出まして破産に追い込まれたわけでございますが、今後とも、具体的な事例がございましたら積極的にこれを調査いたしまして、要件に該当いたしました場合には、当然十三条命令の発動まで考えたいというふうに考えております。
  53. 武部文

    武部委員 警察庁に要望をしておきたいと思いますが、先ほどからお聞きいたしますと、確かに捜査は進んでおるようですが、どうも大阪が立ちおくれておるように思います。大阪方面のこういう問題に対する捜査がおくれておるように思うし、特に地方の県警の中には、マルチ商法というものを本当に知っておられるだろうかと思うような人もおるようでして、そういうことを考えると、捜査がおくれればおくれるほど被害者が出てくるわけですし、それから、何回もやっておられると思うのですけれども、さらに全国の県警に対して、マルチ商法の認識というものと、それから訪販法による取り締まり、こういうことについてぜひひとつ徹底させてもらいたいというふうに思います。  これは必ずしもマルチだけではなしに、ネズミ講もそうなんですよ。これは具体的な県警の名前は言いませんが、あるところで具体的な問題が出た、なぜやらぬかと言ったら、いや、どうも警察が出る幕じゃありませんよと言っておるうちに大変な被害が出たのです。これは先手をとらなきゃだめなんですから、そういうふうなことをぜひやっていただきたい。これを警察庁に特に要望をしておきたいと思います。  それから、経企庁にお尋ねいたしますが、経企庁はこの一年間、マルチ対策として一体何をやってこられたか、これをちょっとお聞きしたい。
  54. 井川博

    ○井川政府委員 消費者保護の問題の総合調整をやっております経済企画庁といたしまして、まずマルチ全般につきましては、昨年の十月、第十回消費者保護会議で、消費者保護の政府の各施策決定いたしたわけでございますが、その中で「販売方法の多様化等への対応」という項目がございまして、「訪問販売等に関する法律の適切な運用により」「マルチレベル商法の弊害の規制に努める。」こういうふうな項目をネズミ講と一緒に決定をいたしたわけでございます。  さらに、それぞれの消費者保護施策を主管の各省庁で行っていただくわけでございますけれども、特にこの種の問題につきましては、規制もさることながら、消費者の啓発、教育が大切である。経済企画庁におきましても、特殊法人国民生活センターというのがございまして、消費者に対する啓発ないし苦情の処理を所管をさせておるわけでございます。  国民生活センターでは、おととしこの法律の施行の時期に、テレビ等でいろいろPRをやったわけでございますが、たとえば昨年九月に「くらしの豆知識」という小冊子を出しまして、この中でマルチ商法なりネズミ講に消費者としてはひっかかってはならないというような記事を載せております。それから、行政上どういうことがされているかということを、主として地方公共団体中心あるいはまた地方の生活センター中心に毎月二回送る「生活行政情報」という情報誌がございますが、これに昨年十二月に二回にわたってマルチ商法の件を載せてございます。  なお、われわれ経済企画庁といたしましては、消費者団体と毎月一回連絡会を持っておるわけでございますが、通産省なり警察庁なりの各種のマルチ商法に関する取り締まり、あるいはそうした公表された名前につきましては、ここの場で消費者団体にいろいろ連絡、周知をしております。  なお、府県、市町村、自治体に対しましては、先ほど申し上げました消費者保護会議決定の趣旨の徹底という意味で、昨年の年末ブロック別の会議を持ったわけでございますが、この席でその趣旨を十分徹底いたしたところでございます。
  55. 武部文

    武部委員 経企庁は、特に国民に対する啓発活動をもっと積極的にやってほしいと思います。国会で論議をされて、中央官庁では認識も大体深まってきたと思うのですが、一番国民に身近な地方公共団体の消費者行政担当部門の認識は、決して高いとは言えません。マルチにひっかかる者はもうけることが頭にあるのだろうという認識です。なるほどそういう認識が一点にあるかもしれませんが、そうではなくて、ひっかかる者は主婦、OL、学生とか若年者という知識がない人がひっかかっておるわけです。そういう意味から言うと、経企庁は消費者行政の一環としてこの問題をとらえてやるべきではないかと思うのですが、経企庁は消費者行政の一環という認識でこれからもやっていく考え方かどうか、これをお伺いしたい。
  56. 井川博

    ○井川政府委員 先ほども申し上げましたように、従来とも、こうした新たな商法によって被害者が出てくる事態に対して、消費者保護の一環としてやってまいったわけでございますが、今後ともそういう方向で進めてまいりたいと思っております。
  57. 武部文

    武部委員 文部省、おいでになっておりますか。——私はこういう点を要望いたしますから、文部省としてぜひお考えをいただきたいのであります。  被害者を調べると、ほとんどが地方の高校を卒業して上京し、大学に入る学生あるいは就職に来た者が盛り場でねらわれておるわけです。そういう者は何も知らぬ。いつかも委員会でお見せしましたが、小さなカードを配っていく、あるいははがきのあて名書きのアルバイトとか言って、おびき寄せたらえじきにしてしまう、そういうことが随所に出ております。したがって、そういう子供たちに、高校を卒業する直前に、マルチというものはこういうものだということをホームルームあたりを通じて教える必要があるのじゃないかということをわれわれは前々から考えておったわけです。ぜひそういうことをやって、都会へ出てくる何も知らぬ若い人たちがこういうもののえじきにならないように対策を立ててほしい。同時に、これも学校の先生がわからなければ話にならぬので、先生自身にもそういうものがあるということを何らかの形で認識させるような処置を文部省にとってほしい、こういうことを要望しておきますから、ぜひ何らかの形で文部省の態度を決めていただきたいと思いますが、いかがですか。
  58. 菱村幸彦

    ○菱村説明員 ただいま御要望のありました点、私どもも十分気をつけてまいりたいと思います。  従来からも大学、短大、高専等に通知を出しておりますし、各都道府県の教育委員会を通じまして、マルチ商法によって子供たちが被害に遭わないように、生徒指導の充実をするように通知を出しております。  ただいまお話のございましたホームルーム等というのは、私の方で申しますと生徒指導の充実ということになりますが、ホームルームに限らず、あらゆる機会を通じてこうしたことの知識の啓発等に努めてまいりたいと思っております。
  59. 武部文

    武部委員 わかりました。  それでは、最後に公取委員長にお伺いいたします。私が申し上げたいのは広い意味でのフランチャイズ、特約店契約と言った方がいいかと思いますが、この問題についてお伺いしたいのであります。  このシステムについては、中小企業庁には、中小小売業の流通の近代化になるという特約店契約があるというような考え方があるようですが、無店舗個人、全然店舗のない個人を対象としたフランチャイズに加入する者は、調べてみれば一目瞭然でわかるように、事業経験もなければ商売をやったことのない家庭の主婦だとか、倒産で解雇されて行くところのないような中高年齢層の人、そういう人たちが対象にされておるようです。  また、チラシなんかを見ても、説明をいろいろと聞いても、マルチと同じようですが、商品が特許品だとかすぐにもうかるとか、やめるときには権利金はすぐ返すとか、こういうような勧誘でいわゆるテリトリー料を取っておる、権利金を巻き上げておる。実際はそういう説明とは全くの大違いで、中身は不良の商品だし、やめようと思っても金は返してくれぬし、結局はテリトリー料かせぎの悪徳商法だという現実になっております。その代表的なのは、愛知県の半田ですか、ここに本社を移転したエコー株式会社、ここのテリトリー料は最低五十万円から三百万円、四百万円という金額を取ってやっている。こういうものが現実にあるわけです。  この商法は、訪販法の対象とはならぬわけですね。したがって、契約店として加入する者は業者ということになるわけです。消費者として守られぬわけですから、それに対する救済策がない、また、規制がないわけですが、この特約店を消費者と解釈をして、勧誘のときのPRの誤り、間違い、そういうものを独禁法の十九条、いわゆる不公正な取引として、あるいは不当表示として規制をする、そういうことが必要ではないかと思うのですが、公取委員長、どう思われましょうか。
  60. 橋口收

    橋口政府委員 無店舗業者を対象とするいわゆるフランチャイズシステム商法に対して、景表法あるいは独占禁止法上措置が可能か、こういう御質問であろうかと思いますが、御質問の中にもございましたように、景表法は一般消費者を対象にした法律でございます。したがって、法律を狭く解釈いたしますと、いまおっしゃいましたような商法を行う者については、なかなか適用しにくい問題があろうかと思います。ただ、そうは申しましても、それじゃ一般消費者でないから直ちに事業者であるかというふうに申しますと、これはやはり一般消費者と事業者の中間のなりわいを立てておられるような、そういう方々であろうと思います。したがいまして、やはりその具体的な事例に即して、表示、広告の方法が適当かどうか、これはよく調べてみたいと思います。  それから、奈良県で被害を受けられた方が、来週公正取引委員会の大阪事務所の方においでになるということも伺っておりますから、よくその具体的な事例の内容を調べてみまして、いまおっしゃいましたような方角で規制ができるかどうか、仮に景表法で規制がむずかしいという事態に、次の問題として独禁法上の措置が可能かどうか、いま不公正な取引方法に該当するのではないかというお示しがございましたが、この点もさらによく検討いたしてみたいと思います。  いずれにいたしても、弱者保護という立場から何らかの措置を積極的にとっていきたい、こういうふうに考えております。
  61. 武部文

    武部委員 アメリカでは、フランチャイズの規制法というのが、フロリダ州、カリフォルニア州あたりで現実にできておりますね。したがって、私は、いまおっしゃったように、中間的なということが言われたわけですが、確かにそういうことが言えると思うのです。しかし、現実に勧誘時の誇大広告やあるいは不当表示というようなものが全く野放しになっておるということについて、何らかの規制をしなければならぬじゃないか。それがこの独禁法の十九条、こういうことになるかどうかは、いまおっしゃったように検討してもらわなければなりませんが、現実にそれじゃ損害を受けた者がどうして救済を求めるかというと、これは民法によって詐欺罪として損害賠償を請求するということで、この間はピロビタンという商法が大阪で——これは倒産したわけですけれども、乳酸菌飲料の会社であるピロビタンという会社が詐欺罪として損害賠償請求を訴えられて、民事の判決が出たということもあるようです。ですから、もうそろそろこの問題についても見解を示す時期に来ておるというふうに思うわけです。  公正取引委員会は、かつてマルチ商法に対して、この法律、訪販法の法律ができる前の昭和五十年の二月ホリディマジック、同じく七月エー・ピー・オー・ジャパン、これに対して十九条によって立入調査をした、そういう経過がありますね。ですから、この規制は私は可能だというふうに思うわけですから、ぜひ早急にこの問題についての考え方をまとめてほしい、このことを特に要望して、ちょうど時間が来ましたから、これで終わりたいと思います。
  62. 野呂恭一

    野呂委員長 松本忠助君。
  63. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 予定した時間が若干おくれておりますが、午後の本会議が始まるまでの時間を活用させていただきまして、電力の供給の問題等について大臣にお伺いをいたしたいと思うわけでございます。  動力炉・核燃料開発事業団が今回開発いたしましたところの新型転換炉「ふげん」、これが臨界に達したというニュースを聞きまして、大変明るいニュースであると私は受け取ったわけでございます。     〔委員長退席中島(源)委員長代理着席わが国独自の技術によるところの初めての国産発電用の原子炉の完成、これは非常に意義があることと私は思うわけでございます。そこで、まず大臣お尋ねをいたしたい点は、この「ふげん」のいわゆる臨界に達し活動を開始することができたという点について、大臣はどのように評価されるかをまず冒頭に伺いたいわけでございます。
  64. 河本敏夫

    河本国務大臣 ここに至りますまでの間は、いろんな紆余曲折があったわけでございますが、ようやくこの段階に達したということを私どもは大変喜んでおります。これまでの関係者の御苦労に対して敬意を表するものでございます。
  65. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 そこで、私は、五十三年度通産省関係の財投の計画の中から、また、大臣が先般お述べになりました予算案等についてお伺いをしてみたいところでございます。  大臣が先般述べました五十三年度通商産業省の予算案の中の十三ページのところに書いてある言葉でございますが、後段の方に、「電源開発株式会社につきましては、大規模石炭火力発電所の建設着手等電源部門を中心に、事業規模千二百五十六億円を確保しております。」と、このように書かれてあるわけでございます。  この使途につきましては、昭和五十三年度通産省関係の財投計画の中で、重点事項の説明といたしまして、二ページ目の下の方に書いてあるのが「竹原三号(石炭火力)、佐久間第二(水力)等の建設着手」、また、その下の段に「松浦(石炭火力)、新型炉(重水炉)の開発準備」と、このように書いてあるわけでございます。  そこで、私どももいろいろと調べてみましたところ、この千二百五十六億円というものは、発電設備に五百三十二億、送電設備に四百九十八億、変電設備に九億、通信設備に一億、開発準備費三十三億となりまして、その他が百八十三億ございまして、合計千二百五十六億となるわけでございますが、私どものこの調査が間違っているかどうか、まずもってお答えをいただきたい。これは長官で結構であります。
  66. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 その他の百八十三億は、切り上げで百八十四億ともなるわけでございますが、御指摘のとおりでございます。
  67. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 百八十三億でなくて、切り上げると百八十四億になる、こういうわけですね。  なお、開発準備費の三十三億を火力と水力と原子力の開発準備に充てるとするならば、これは三分割するとそれぞれの金額幾らになるのでございましょうか。
  68. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 現在事業計画を策定しておる段階でございますので、まだ確定的なことは申し上げかねるわけでございますが、一応現在の見通しとして、三十三億の内訳を申し上げますと、発電調査が約二十四億、送電通信調査が三千万、開発予備費が八億五千万でございまして、このうち発電調査の約二十四億は、水力調査で約二億、火力調査で約十七億、原子力調査で約五億程度と見込んでおります。
  69. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 その詳細につきまして、後で結構でございますが、資料を一部いただきたいと思います。  それから、もう一つ伺いたいことは、原子力開発に、通産省の財投説明書の二ページの下の方でございますけれども、最下段にあるところの「新型炉(重水炉)」、いま読みましたけれども、これはいわゆるカナダから導入するところのCANDU炉を指すのか、あるいはまたその他ATRも含むのかどうか、この点はいかがでございましょうか。
  70. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 財投計画の面では、ATRあるいはCANDU炉というふうに特定はいたしておりませんが、かねがね電発ではCANDU炉の検討調査をいたしておりますので、事実上CANDU炉になるのじゃなかろうかという見込みでございます。
  71. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 了解しました。ATRよりもむしろCANDU炉であるというふうに理解しているわけでございます。  そこで、ちょっとこれは話が古いわけでございますけれども、二月二十一日の毎日新聞の報道によりますと、両角電源開発総裁が、二月の二十日の記者会見で、電発が導入を検討しているところのカナダ製の重水炉、いわゆるCANDU炉につきまして、年内にも導入の可否を決断すると発表している、こういうわけであります。  年内といいましても、もうすでに——まあこれは年度内か年内か、ちょっと私もその辺のところがよく理解できないでいるのですが、年度内とするならば非常にもう近い時期にやらなければならないわけでございますが、それはさておきまして、このことはわが国の将来にわたる原子力の政策、ひいてはエネルギーの安全保障に重大な影響を与えるものだけに、電力業界は当然のこととして、政府も一体となって意見調整を急がなければならないという時期だと思うわけでございます。五十三年度予算に、ただいまお話のあったように計上されております点も考えますと、いろいろとこれらの点で意見調整をしなければならない時期が来ているというふうに思うわけでございます。  御承知のように、わが国の原子力の発電所というものは、イギリスから導入したところの東海一号、このコールダーホール改良型十六万六千キロワット以外はすべてアメリカからの輸入でございます。そうして、核燃料は濃縮ウラン、減速材は軽水という炉を採用しておるわけでございまして、その規模はすでに八百万キロワット、全発電設備の八%近くにも達していると言われておりますけれども、問題はいろいろあるわけでございます。問題というのは、要するに安全性であるとか稼働の時間が非常に少ないであるとか、こういうところでございます。  ところで、電発が導入を計画しているCANDU炉は、燃料に天然ウランを使うので、軽水炉の場合のようにウランの濃縮を必要としない。このために燃料サイクルが単純であり、減速機と冷却機と重水を使用するので中性子経済がよく、ウラン資源を効率利用できると言われております。また、これとは別に、先ほども話が出ましたが、昭和六十年代には動力炉・核燃料開発事業団が開発したATRと称する新型転換炉が実用化の段階に入るというふうになっております。言うなれば、アメリカの軽水炉、カナダの重水炉、またATRも重水炉で、その構造はCANDU炉と類似していると言われておりますが、このように三種類が登場するわけでございます。  そこで、大臣に伺いたいことは、通産省はこのCANDU炉をどのように評価するのか、また、この炉の導入についてどのような見解を持っているのかを伺いたいわけでございます。
  72. 河本敏夫

    河本国務大臣 CANDU炉は、電発がいま計画をしておるのでございますが、通産省といたしましては、その技術、耐震性、いろいろな角度から調査研究委員会を設けまして、いま前向きに調査をしておるところでございます。
  73. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 前向きに調査しているというあらわれが一つことしの予算に計上されているというふうに理解をしてもいいわけでございますけれども、とにかくこのCANDU炉というものが運転実績が非常によろしい。カナダにおける実験でございますけれども、七〇%以上の稼働率がある。それから、何といっても天然ウランを燃料とする点、使用済み燃料中のプルトニウムの量が多くて軽水炉の場合の約二倍、また、使用済みの燃料は、これに含まれるプルトニウムが利用できる時期まで再処理せずに貯蔵ができるというようなすぐれた特徴を持っているというふうに私ども聞いているわけでございます。  一方、電力各社でいままでに建設をいたしました軽水炉、これは非常に問題があるようでございまして、稼働率が低い、大体四〇%程度の稼働しかない、こういうふうなこと等考えてみますと、CANDU炉に期待が持てるような気もするわけでございますけれども、電発がCANDU炉の技術的の検討も済ませて、そしてまた通産省や科学技術庁などの方針の決定次第、直ちに建設できるように建設地点の物色も始めているというふうなニュースも入ってきているわけでございます。  一方、いわゆる九電力の方では、新聞記事によりますと、電発が強行するならば、その電気は引き取らないなどという感情的な発言もあるやに聞いておりまして、両者の対立というものが深まるばかりであるというような印象をわれわれは受けている。非常にその点を私は心配するわけでございます。そのようなことがありますと、日本の電力事情に大きな影響を与えますので、こういうことがないようにひとつやらなければいけないと私は思いますので、それらの点について十分な御配慮が大臣はおありになるとは思いますけれども、一応念のために伺っておきたいわけでございます。
  74. 河本敏夫

    河本国務大臣 いま申し上げましたように、技術上の問題、特に耐震性の問題等を研究しておりまして、その結論が出ましたならば適当な判断を下したいと考えております。
  75. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いろいろ問題のある点も承知しております。地震に対する問題等も考えているようでございますけれども、要するに、通産当局としてこのCANDU炉が導入された場合に、わが国の核燃料サイクルというものが二つの系列になる。さらにATRというものを考えていくといろいろ問題が多いと思います。こうした核燃料源の多様化、これを推進するお考えなのか、この点はそのように受け取ってよろしいわけでございましょうか。
  76. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 先生御承知のように、わが国における原子力の発電開発政策は、いわゆる軽水炉、FBR路線をとっているわけでございます。軽水炉を中心にしまして将来FBR、高速増殖炉につないでいくという路線でございますが、これは当然のことでございますが、非常に長い期間、長期的な視野に立っての路線でございます。その長い期間の間に、たとえばFBRの開発がおくれるといったような不測の事態が発生するということも考えておく必要があろうかと思います。そういった場合に、いわゆる核燃料サイクルに柔軟性を与える、あるいはそれによってFBR路線をバックアップしていくというような対応も必要だと思います。そういった意味合いから、ATRあるいはCANDU炉といった重水炉を開発していく、あるいは導入していくということもきわめて重要な関係に立つのじゃなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  77. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 長官のいまのお答えのように、言うならば、日本のこれからの産業のことを考え、その動力源を大いに多様化しておくという必要もあろうかと思います。この点は私も理解できるわけでございますが、問題になっておりますCANDU炉の地震の問題でございます。地震に対する十分の検討が済まされているなどとニュースは伝えていますけれども、この点についてはどのような調査が通産当局としては済んでいるのでしょうか。全くこれは電発の方にお任せになっているのでございましょうか、どうでございましょうか。
  78. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 CANDU炉を導入する場合に、やはり一番の問題点は、御指摘の耐震性の問題だと思います。従来、過去二年にわたりまして、電発におきましては現地に赴きまして、専門家を派遣いたしまして、いろいろと耐震設計の改良の可能性等について検討してまいっておるわけでございまして、今後も引き続きまして、設計の改良あるいは確証試験などを進めていくというふうに承知いたしております。  通産省といたしましても、発電用新型炉等実用化調査委員会という委員会を設置いたしまして、耐震性を中心に検討を進めておりまして、耐震性の確保に万全を期したい、かように考えておるわけでございます。
  79. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 一応原子力発電の問題についてはその程度にとどめておきますが、日本の動力源という重大な問題でございますので、これがいわゆる九電力あるいは電発あるいは今後実用化された段階においてATR、こういうもので相互間に誤解があったり摩擦を生じたりすることはまことに私どもとしては残念なことだと思います。そうしたことのないように通産当局として十分指導監督をしていただいて、万全を期していただきたいことを重ねて要望をいたしておきまして、次に移ります。  午前中の同僚議員の質問でもございましたが、いわゆる円相場の問題でございます。きのうもロンドン支局の電報は二百二十九円台、まあ新高値でございます。東京の為替市場の円相場も二百三十円ちょうどというようなところでございますけれども、いわゆるヨーロッパ市場では今週末から来週初めにかけてイースターの休みに入る。休日明けの二十八日からまたドル売りの圧力が強まるだろうというようなニュースが入っております。そして、復活祭の休暇明けの来月は二百二十円台に定着するだろうというようなニュースが入っておるわけでございまして、私どもといたしましても非常に強い関心を持っておるわけでございますが、このような円相場の高騰に対しては、政府としても金利の引き下げ等々を行いましたけれども、どうも金利の引き下げが実際に功を奏さなかった。ヨーロッパでも、スイスフランのように、一%の金利にしてみてもなおまだスイスフランが買いあさられるような状態がございます。日本のこの円相場が二百二十円台に定着するようなことがあったとしたならば重大な問題でございますので、これらの点について通産省としてはどのようにお考えであるか、もう一度大臣から承っておきたいわけでございます。
  80. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまお話がございましたように、円相場は、けさ、東京市場で二百二十八円台で推移をしておりますが、私どもはこれに対して非常に深い関心を払っております。  この背景でございますが、一つは、やはり日本経常収支が非常に大幅になっておるということ、この最近の動きが背景にあると思います。もちろん、そのほかにアメリカ経済政策、世界全体の経済動き、そういうものが総合的に判断されるわけでございますが、やはり一番大きな原因というものは、日本の現在の国際収支関係にあると私どもは理解をいたしております。  そういうことから、どうしても五十三年度経常収支六十億ドルという線にこれはあくまで圧縮をしなければならぬ、このように考えておるわけでございますけれども、そのために緊急輸入をいまいろいろ計画をしておりますが、先般決めましたような程度では規模が非常に小さいわけでございます。やはり現事態に対応するためにはもっと大規模な緊急輸入対策を早急に進める必要があろうと考えておりまして、いま相談をしておるところでございます。
  81. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣がこの問題に対して強い関心を示されて、また、緊急輸入というような問題も、これはぜひ何とか実現をしなければならぬと思う。そのために経済閣僚の方々が御心配になり、やっておられることに非常に私どもも大きな期待をかけているわけでございます。  いままで国内の地場産業等がこの円相場の影響を受けまして非常な苦境にあることは、しばしば当委員会でも私も申し上げてまいりましたけれども、なおまた、私は、非鉄金属の問題が大きな影響を受けている点を見逃すわけにはいかないと思うわけでございます。  最近のロンドンの金属取引所の銅相場でございますけれども、六百六十ポンド台を低迷しておりまして、これまでの、昭和四十九年四月、これが最高でございましたけれども千四百ポンド、この半値以下にいまなっているわけでございます。しかし、この半値であっても、円高の影響さえなければ、ポンドが以前の千八円に維持されていたならば、トン当たり日本では約六十六万五千円となりまして、採算としては余りよくないけれども、何とか国内鉱山を維持することができた。ところが、御承知のような円高が現出いたしまして、このために現在の為替レートによりますと現行の国内の建て値が三十二万円、こうなりますと、業界では二十万円以上も赤字操業を余儀なくされているのが実情でございます。  この非鉄金属業界を取り巻くところの為替の問題は、これだけにとどまりません。たとえば銅の輸入鉱石の製錬費はドル建てとなっておりますために、この段階でも差損が起きております。また、少資源国であるところの日本の悩みとして、原料鉱石確保のために海外の鉱山の開発に多額の資金を投融資いたしております。これは国策の一環としてやってきたわけでございますし、また、今後の業界の発展のためにもやっているわけでございます。これもひどい為替差損を受けているわけでございます。円高は、この業界にとりまして、決定的な打撃を二重、三重に与えているわけでございます。しかしながら、一方、こうした日本の鉱山の実情であるのに反しまして、CIPEC加盟国であるところのペルーとかチリといった銅の輸出国などは、自分の国の通貨を切り下げているので、長期の不況にかかわらず利益を上げているというような状態になっているわけでございます。  銅という一つの鉱産物をとってみましてもこのような状態でございますが、ここでわが国の非鉄金属鉱山、製錬業界、これは重大な岐路に立たされていると思うわけでございます。世界からの圧迫、これは日増しに強まっております。弱まることは今後考えられません。しかしながら、国内鉱山というものは資源の安定供給源であるということを見逃してはならないと思うのでございます。しかも資源有限という点からも大切にしていかなければならないと思います。また、鉱山を抱えるところの地域の問題、これも十二分に考える必要があろうかと思います。たとえば閉山というような事態になったときに、町は火が消えてしまう、こういうふうになります。こんな状態になりますと、種々の面からも社会問題が生じてくることになります。また一面、鉱山技術を受け継ぐ者がなければならない。これは加工貿易国であるところの日本の原料確保という面において海外鉱山を開発するという事業にも、国内にそうした技術習得の場所がなくなるということになりますと、将来に禍根を残すことになるのでございます。  したがいまして、この円高というものが起きたがゆえに、この非鉄金属業界というものが大変な苦衷に追い込まれているわけでございます。私ども円高問題に対して重大な関心を昨年の春以来抱いてまいりました。国会においてもしばしば議論がされております。しかし、この円高問題は余りにもその手の打ち方が後手後手になったのではなかろうか、こういう点を、私は、政府の対外経済政策が無為無策であるというふうに非難をしたいわけでございます。しかし、こうしたことは、いまその問題を追及しましても、いろいろの要素があるわけでございますし、政府もまた真剣にこれの対応に取り組んでいらっしゃることもわかるわけでございますが、この国内鉱山の振興という問題、いまのままでおきますと、国内鉱山が全部倒れでしまう、もう休廃止せざるを得なくなるような状態になると思うわけでございますが、こうした問題に対して通産当局としてはどのようにお考えなのか、基本的なお考えをひとつ承りたいわけでございます。
  82. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 わが国の非鉄金属業界あるいは国内鉱山は、まさにただいま先生が御指摘になった状況にあるわけでございまして、われわれこれに対応するためにいろいろと努力をいたしておるわけでございます。特に銅について申し上げますと、年間生産量百万トンのうち国内鉱が七万トン程度にまで落ち込んでいる。亜鉛の場合は七十万トンのうち二十五万トン程度にまで落ち込んでおるというのが現状でございます。  さような現状に立ちまして、長期的な展望に立っていかに対応していくかということにつきましては、昨年の七月以来鉱業審議会で鋭意検討を進めておるわけでございますが、その間といえども、従来から実施いたしておりますいわゆる三段階方式による鉱量の確保あるいは備蓄の拡充あるいはスライド関税制の活用によるコスト補てん、こういった措置を従前以上に進めていきたい。特に五十三年度予算が成立いたしましたならば、できるだけ早くそういった制度を実行に移すことによりまして対応していきたい、かように考えておるわけでございます。
  83. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 大臣に、私は率直に私ども調査の結果をひとつお耳に入れておきたいと思うのです。  それは、ことしの三月に入ってからでございますけれども、島根県の昭和鉱業経営の鰐淵鉱山が、五十二名の解雇をいたしまして閉山しました。それから、新宮鉱山経営の愛媛県の新宮鉱山でも、五十名を解雇して閉山をしました。日鉄鉱業経営の福島県の八茎鉱山は、銅、鉄鉱石の採掘を中止して、賃金支払いを八〇%にとどめているというような状態でございます。また、四月中に閉山予定されておりますものの中にも、三重県の紀州鉱山、秋田の尾去沢鉱山、埼玉県秩父の秩父鉱山などがございまして、一時帰休あるいは人員整理あるいは縮小と、十社を数えるような状況でございます。  このようなことは大臣すでに御承知と私は思うのでございますけれども、このように鉱山の閉山が続きますと、地域経済あるいは雇用問題、こういうものにきわめて憂慮すべき事態が起きるということは、先ほども申し上げたとおりでございます。このまま日本の鉱山を休廃止してしまうならば一体どうなるのか。たとえば休廃止したところの鉱山から流出するところの各種の成分を含んだ水、こういうものが一体どうなるか。この間も持越鉱山の例がございました。そういう点を考えますと、これは非常に心配せざるを得ません。鉱山側が閉山をしてしまって手をつけないということになれば、国かあるいは地元の府県、地方公共団体等で処理しなければならなくなると思います。これには相当な費用を見込まねばならなくなると思います。放置するならば公害問題、ひいては社会問題、こういうものに発展するわけでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、山崎(拓)委員長代理着席〕 また、一面、これらの銅、亜鉛の価格は、永久に現状のままでいるということは考えられません。必ず世界的に需給の均衡がとれ、回復することもあると私は思うわけでございます。そのときになって新規鉱山を開発する、こういうことは実際問題としては間に合わないと思います。また、あえてそれをやれば、開発のコストが増大するということは明らかでございます。そうしたことを考え合わせてみたときに、これらの鉱山をすべて休廃止に追い込んでしまうのならばいざ知らず、何とか持ちこたえさせたい、こういうことが考えられるのではなかろうかと思うわけでございます。  そこで、大臣に根本的なお話をお答えをいただきたいわけでございます。いま橋本長官からもお話がございましたように、鉱業審議会の中の鉱業政策懇談会、こういうところでよくお話を煮詰めてそれから答えるなどということであってはならないし、また、その会議の中であっても対応はしているというふうなお話がございましたけれども基本的に根本的に、この問題について通産当局として、一体このような日本の非鉄金属の鉱山をつぶしてしまうのか、それとも何とか生き長らえさせていくのか、この二つのうちの一つ、これをひとつ大臣からお答えをいただきたいと思うわけでございます。
  84. 河本敏夫

    河本国務大臣 非鉄金属業界実情は、長年の不況で非常に苦しい状態になっておりましたが、特にここ数カ月間、円高等も加わりましてきわめて深刻な事態に立ち至っております。私どもも大変心配をしておるわけでございます。そこで、昨年来、鉱業審議会でこの対策をいろいろ御審議をしていただいております。しかし、何分にも完全に国際競争力を失ってしまったこの業界を、非鉄金属の今後のあり方とにらみ合わせまして、一体どう対処していけばいいのかという基本問題等もございますので、至急に検討を急いでいただきまして、事態は一刻も遷延を許しませんので、早く結論を出していただきまして、通産省としても何らかの対策考えなければならぬということで、いま対策を急いでおるところでございます。
  85. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いま大臣が言われるように、何らかの対策を立てなければならない、しかし、それも急いでやらなければならないと私は思います。こういう点についてせっかく努力されることでございますから、私どももその対策の実現をお待ちするわけでございますが、大変な状態をこのまま放置しておくことはできないと思いますので、ぜひともいまの大臣のお答えのように、早い時期にこの問題解決のための手を打っていただきたいことを重ねて要望いたしておく次第でございます。  それから次に、電力問題について私ちょっとお尋ねをいたしたいわけでございますが、非鉄金属のいわゆる製錬用の電力。御承知のように、非鉄金属というものは近代工業の重要な基礎資材でございますことはおわかりのとおりでございます。その安定確保を通じまして、わが国経済の発展に少なからぬ寄与をしてきたことも事実でございます。これは認めないわけにはいかないと思います。現在は大変な状態になっておること、このためにも、私は、何とかなるものならば、いま残っている工場のいわゆる製錬用の電力というものについて通産当局として考えられないかということでございます。  御承知のように、この製錬技術というものの向上は、非常に日本では目覚ましいものがございますし、そしてまた、設備におきましても世界のトップクラスにあると思うわけでございます。特に亜鉛の場合は、自由世界における生産量は日本が第一位でございます。しかも消費量はアメリカに次いで第二位、こうした実勢は内外ひとしく認めるところでございますし、とりわけ発展途上国に対するところの影響は大きなものがございます。しかし、ここで問題になるのが、私がいまお伺いしようとする製錬用の電力の問題でございます。電気は原料の一部だ、こういうふうに言われております。この電力料金のいかんが製造原価に大きな影響を与えておりますし、国際競争力を保持させるためにも、現在のような電力料金ではとうてい太刀打ちができない、こう思うわけでございます。そうなったときに、これから——いままでこれらの業界ではいろいろと自分たちの力でやれるものをやってきた、自家発電の開発、あるいはまた低廉な余剰電力を求めて工場設置をもくろむなど数々の努力を重ねてきたことも事実でございますけれども、もはやもう限界に来ているというのが現状ではないかと思います。  そこで、この製錬用の電力について、いまの電力事情、あるいはまた電力会社が非常な為替差益を受けて大変な好況にあるわけでございますし、こういう点を考えたときに、何とかこの製錬用の電力というものについて値下げができないか、せめて国際水準並みに引き下げることができないか、こういうのが私の質問でございます。  御承知のように、電力の九電の中でも、北海道は別といたしまして、特に東京電力の社長さんが二十三日の記者会見で、五十三年度でもこの為替差益が三百九十億も転がり込む、したがいまして、五十三年度に引き続いて五十四年度も電力料金の据え置きをする、こういうふうなことを言っておるわけでございます。当局としましても、据え置きということ、これは、あるいはこの円がいまのような実勢でドル円高という状態がいつまでもいつまでも続かないということを考えれば、一応据え置きということは安全な策かとも思うわけでございますけれども、むしろ、据え置きするよりも電力料金を値下げしてやることが物価の鎮静に役立つのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。したがって、一番問題になっているこれらの細々と生き長らえているところの非鉄金属の製錬、こういう問題に対して特別の措置をもって電力料金の引き下げということができないものかどうか、この点をひとつお答えいただきたいと思うわけでございます。
  86. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 非鉄金属の製錬コストの中に占める電気料金のウエートが高いということは事実でございます。また一方、ただいま御指摘のありましたように、電力各社が円高によるメリットを受けておることも事実でございます。そのような中にあって、特に低廉な価格で電力を供給し得ないかという御指摘でございますが、御趣旨はわれわれとしてもよくわかるわけでございます。御承知のように、現在の電力料金体系なるものが原価主義と公平主義の上に立っておるというところから、非鉄製錬用の電力料金だけ安くするというわけにまいらないというところにわれわれの悩みもあるわけでございます。  一方、では全体として電力料金を引き下げたらどうかという御指摘もございましたが、仮に五十二年度における電力各社の円高メリットが約一千億というふうに試算されておりますが、これを全体にお返しするということになりますと、キロワットアワー当たり二十五銭程度にしかならないといったようなこともございまして、少なくとも五十三年度中は据え置きというふうに対処いたしておるわけでございますが、さようなところから、私たちといたしましては、制度上許す限り特約料金制度と申しますかあるいは深夜料金の活用といったことのほかに、小規模ながら水力開発をやるとかあるいは地熱開発をやるとか、できるだけ低コストで上がる電力が確保できるように開発銀行の融資等を通じて助成いたしておるというのが現状であるわけでございます。
  87. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 細かい問題を伺おうと思っておりましたが、時間の関係がございますので、ちょっと飛ばしまして、大臣に一言だけ伺いたい。そして、細かい問題は後から長官に聞くことにしたいと思います。  非鉄金属の業界と、特にその業界の労使ともどもに相談し合って、しかもまた鉱山所在地の地方自治体の三者が一体になりまして、国内鉱山経営安定緊急融資制度、こういうものをつくって、国内鉱山の危機を切り抜けるために何とかしてもらいたいということを通産当局に実現を申し入れたということでございますが、この内容についてはどのようなものであったのでしょうか、ごく簡単にひとつお答えをいただきたいと思うわけです。
  88. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 債務保証のための基金といたしまして、十六億の原資をもって、十倍保証で百六十億までの債務保証をいたしたい、そのための基金設定の構想とわれわれは聞いております。
  89. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 詳しいことはまた後で伺うとして、要するにそうした緊急融資制度というものを何とか実現してもらいたいと言ったけれども、現実にはできなかったわけで、五十三年度予算というものが決まった後、こういうふうな時期であったのではなかろうかと思うわけでございます。  そこで、大臣にお伺いしたい一点は、きのうの参議院の予算委員会でも参考人の意見開陳が行われました中で、特に自民党の推薦で出られました青葉日本経済調査協議会専務理事さんの御発言の中で、前の方は略しますが、「公共事業中心の大型予算の効果は円高で削減され、来年度実質成長率は本年度実績見込み並みの五・三%程度にとどまり、経常収支黒字も百億ドルを上回ることは避けられないのではないか。通貨安定のためには」云々というふうに公聴会で発言をされております。これは新聞記事でございますが、この発言からすると、福田内閣の悲願とも言えるところの五十三年度の七%成長というものはなかなか大変な問題になるんだということを、自民党の推薦の参考人が言われている点に着目しなければならないと私は思うわけでございます。  そこで、ことしの予算がまだ執行もされていないのにそんなことを言うのはどうかとも思うのでありますけれども年度予算の成立ということはもう当然の話になっておりますので、あえて申し上げるわけでございますが、そうした事態になったときには当然補正予算も組まなければならないと思うわけでございますが、そうした補正予算が組まれる時期において、国内鉱山の経営安定緊急融資制度というようなものを大臣が考慮の中に入れるお考えがあるのかないのかの一点をお伺いして、大臣に御退席をいただいて結構でございます。
  90. 河本敏夫

    河本国務大臣 学者や評論家の間にはいろいろな意見があるわけでございますが、やはり政府はあらゆる政策手段を尽くして、万難を排して、責任を持って七%成長、六十億ドルを達成する、こういうことを言っておるわけでございますし、これは最大の政治課題になっていることは御案内のとおりであります。これができなければ雇用問題に火がつきますし、それから国際的にもトラブルが深刻化いたします。どんなことがあってもこれは実現しなければなりませんので、臨機応変に対応する、こういうことを繰り返し申し述べてきておるわけでございます。  その際に、非鉄金属政策を一体どうするのかということでございますが、これは先ほど申し上げますように、事態が非常に深刻でございますので、鉱業審議会の意見も早く結論を出していただきまして、政府として何らかの措置が必要である、このように考えております。
  91. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いつもいつも思い切って勇断をもってやっていただくことをわれわれは大臣に期待するわけでございますが、常に鉱業審議会の答申を聞いてというようなことになることは残念でございますけれども、これもいたし方ないことだと思います。そういった時期が来たときにはぜひ御配慮をいただきたいことを申し上げておきます。  そこで、長官にあと若干伺いたいことがございますけれども、これはいま、たとえばの話でございますけれども日本の銅の生産に携わっておる会社、これは一体何社あるわけでございましょうか。同時に、亜鉛の生産に携わっておる会社も述べてみてください。
  92. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 銅の製錬は十二社でございます。鉱山は二十三社、それから、亜鉛は製練所十四社、鉱山は九社でございます。
  93. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 一時よりも大変休廃止した鉱川が多いということがいまの数字からうかがわれるわけでございますが、これらの会社の累積赤字というのは一体どれぐらいあるものなんでございますか、この点をつかんでいらっしゃいますか。
  94. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 いろいろ計算方法もあろうかと思いますが、累積は約百数十億円ではなかろうかというふうに私ども試算いたしております。
  95. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 百九十億ですか。大変な金額の累積赤字を持っているわけでございます。これらの鉱山は相当数の労働者を抱えておると思いますし、なおまた、その労働者の背後にはいわゆる下請関連の事業者もその家族もおるわけでございますが、現在稼働している銅、亜鉛等の鉱山、またそれ以外の非鉄金属の鉱山、こういったものが、全く仮定の話でございますけれども、一斉に休廃山に追い込まれるとしたならばどれぐらいの人間が荒波の中にほうり出されることになるか、また、これを救おうとするならば、退職金というのは大体どれぐらい要るのか、こういう点について何か計算をしたことがございますか。全く仮定のことですから、なかなかむずかしい問題だとは思いますけれども……。
  96. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 仮定の御質問でございますので、非常に答えづらいわけで、私たちとしては、本来ならばさようなことはお答えしたくない気持ちではございますが、現在、銅、鉛、亜鉛の製錬あるいは鉱山に従事しておる人は一万四千人でございますから、御指摘のようなことであれば一万四千人が失業することになろうかと思います。  それから、退職金はいかほどになるかということでございますが、これは各社ごとの労使協約によって決まっておる額等十分把握いたしておりませんので、計算はいたしてはおりません。
  97. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 当然、会社の規模が違うし、それから支払いの規定も違うわけでありますし、そうしたものを基礎に置いての計算がなされないわけでございますから、算出することは非常に大変なことであろうと思いますけれども、これらのものが一斉に休廃山に追い込まれたときには大変なことになることはわかっております。しかし、仮にそうしたことになったとしたならば、いわゆる日本の非鉄金属というものは全滅でございます。そうしてはならない、こう私は思いますので、何とかこれに対しても対策考えなければならないのではなかろうかと思います。  先ほどもお話のございましたような業界が独自に考え出し問題点国内鉱山の経営安定緊急融資制度というものが、仮に補正予算が組まれる段階においてこれが日の目を見れば大変結構でございますけれども、現在の状態からはこれもなかなか大変だということも言えるわけでございますが、こうした人たちが万が一にも全員首になり、ほうり出されるというようなことになると、大変な金額が必要になってくるわけでございます。その金額が具体的には幾らになるかは算定はむずかしいわけでございますけれども、ここでもう一つ方法として、国内鉱山維持調整基金制度というものが現在検討されているということを私どもも聞いております。  これも前に述べました国内鉱山の経営安定緊急融資制度の内容にほぼ似通ったところがあるわけでございますが、長期の融資制度をつくって、銅や亜鉛の価格が下がったら補給する、価格が上がったらば返すというような点では非常に新機軸のものではなかろうかと私は思うわけでございます。こうした業界自体が自主的に自分たちの業界の再出発に当たって何かをしなければならないというこの自助努力というものを評価するに私はやぶさかではございませんが、こういう点についても、通産当局とし、エネルギー庁として見守ってやらなければならないと私は思うわけでございますが、これらの新しいいわゆるやり方、こういうものについてエネルギー庁長官としてどのようにお考えであるかを承って、私の質問を終わりたいと思います。
  98. 橋本利一

    橋本(利)政府委員 お答えする前に、一言訂正させていただきたいと思います。先ほど一万四千人と申し上げましたのは山関係だけでございます。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、ただいま御指摘の緊急調整基金制度あるいは先ほど御指摘の緊急融資制度でございますが、われわれといたしましてもすでにいろいろと検討いたしております。特にそれが現実の問題として十分機能し得るかどうかという問題もございますし、あるいはその財源なり使途なりどのようにするかといった現実的な検討も必要かと思いますので、われわれも慎重に問題点を詰めておる、こういうことでございます。  ただ、さようなことを言っておりまして先ほど御指摘のような事態になると非常に大変なことでございますので、私の方では、鉱山各社から事情聴取いたしまして、特に当面対策を打たなければ、緊急融資をつけなければこの三月期を越し得ないといったようなものにつきましては、その親企業とよく話し合いをいたしまして、必要な資金手当てができるように当面の対処をいたしたい、かように考えております。
  99. 松本忠助

    ○松本(忠)委員 いまの長官の答弁で一応了解するわけでございますが、これらの人たちが本当に日本のいままでの産業を支えてきた、そういった実績も評価しなければならぬと私は思う。確かにいま相場の問題で大きな打撃を二重三重に受けておるこれらの業界の方々を何とかしてあげなければ、日本の将来のためにも大きな禍根を残す、こういうように思います。業界の方々が自分たちで考え出しているその方法を取り上げることも大変いいのじゃなかろうかと私は思います。いろいろと機関それぞれにおいて検討されなければ政府として重い腰を上げるわけにはいかぬと思うわけでございますけれども、何とかこれらの窮状というものをよく事情聴取をしていただいて、そして実態に即したところの救済の方法考えてやっていただくことを特に申し添えまして、私の質問を終わります。
  100. 野呂恭一

    野呂委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ————◇—————     午後二時三十八分開議
  101. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。工藤晃君。
  102. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 本当は、この委員会で大臣の御出席を願って質問したいことが多かったわけでありますが、やむを得ずこういうふうになりましたけれども、本日は、商品取引にかかわる問題について私質問しますが、冒頭、きょうの午前中の円の相場が二百三十円を東京でも割りまして、二百二十八円ぐらいになってまいりました。この問題について、本来大臣に御質問したいところでありますが、しかし、こういうことなので、私の考え最初に少し述べて、それから質問に入りたいと思います。  それで、二百二十八円という相場、こうなるとやはり二百二十円まで行く、そういう可能性も大きくなってきたと思いますが、これは日本経済全般にとって非常に厳しい事態になってきたということは言うまでもないと思います。しかも、この異常な円高がそのまま黒字の縮小という効果につながらないで、逆にかえって不況が深刻になるため輸入も減り、また、一部の企業にとっては輸出ドライブをかけて大きな黒字が残る、少なくともドル表示では大きな黒字が残る、それがまた円高を生み、不況に追い込まれるという、いわゆる円高スパイラルといったかなり悪い状況に突き進んできた、こう考えざるを得ないわけであります。  この点について私がここで申し上げたいことは、円高というのは、わが党はこの原因として二つの面を重視しなければいけないと思う。  一つの面は、どうしても変動相場制のもとでアメリカがますます通貨の面で節度を失って、赤字を出し続けていくということになってきている。その上、日本に対しては、日本との軍事同盟があること及び戦後の長い歴史の関係を通じて影響力を非常に持っている、あるいは国際金融面でのアメリカの地位は非常に強い、そういうことからアメリカの責任で本来負うべきもの、解決すべきもの、努めるべきものがなされなくて、日本の側に圧力をかけてこられることに対して、これまでの政府はただそれに追随するという面が大きかったのではないか。  一月の牛場大臣とストラウス代表との共同声明を見ても、日本側がなすべきことは非常に具体的に詳しく述べられている。これを私は予算委員会で指摘しました。ところが、アメリカ政府側が努力することは、日本文に訳したものでわずか五行にとどまっている。とりわけ具体的に書かれた点といえば、アメリカ自身の赤字の拡大を防ぐのに役立つであろうエネルギー計画にかかわる法案が九十日以内に議会を通るであろうという確信が述べられているだけでありますが、この確信はまさに確信どおりいかないで、事実上まだ通っていないし、また、これだけでアメリカの赤字問題が解決するとはとても思えない。そのほか、実際にいまの国際的な投機に対しての対処の仕方にはいろいろな問題があることを指摘してまいりました。  しかし、同時にもう一つ国内の原因としてはっきり重視しなければいけないことは、日本の一部の巨大な企業、とりわけ組み立て加工産業に属するものがいまではそうでありますが、そこは世界的にいっても異常な国際競争力をまだ持っている。労働の強度が著しい。よく言われるように、トヨタ、日産は労働者が一年間で四十台、五十台の自動車をつくるが、フランスでは十七台ぐらいだという比較が述べられますが、それに象徴されるように、労働条件日本では悪い。下請制度が異常なまでに過酷である。こういうことを一方では土台にし、また、財政、金融、税制全体としてこういう国際競争力強化一本やりで支えてきたことが、一部の企業で二百三十円、二百二十円になってもまだ輸出を伸ばせる状況をつくり、したがって、多くの中小企業や多くの産業部門はそれによって打撃を受けるという状況になってきているわけなのです。  こういう事態を踏まえて、こういう構造を生む問題に対して手をつける、こういうことまで考えなければ、次々と出てきた事態に後から手を打って、それも間に合わず、また次の手を打たなければならないということを繰り返すのではないかということを考え、同時に、これまでの政府の政策に対して私は大変遺憾に思うわけであります。  そういうことで、今後の円高問題につきまして、大臣おられませんが、政務次官がおられますので、いまの決意その他について最初に伺わせていただきたいと思います。
  103. 野中英二

    ○野中政府委員 工藤先生の円高についての御質問にお答え申し上げます。  御存じのとおり、今日の未曽有の円高につきましては、われわれといたしましても大変憂慮いたしておるところでございます。したがいまして、円高を防止するためにはやはり内需拡大をしなければならないであろう、これが第一点であります。この内需拡大のために、御承知のとおり、政府といたしましては七%の経済成長をいたしたいと考えてやってまいりました。それで、さらに操業率と申しましょうか稼働率を八〇%程度に持っていこう、こういうことで鋭意内需の拡大に努力をいたしておるわけであります。  しかしながら、現実におきましていま大変な円高になり、輸出のドライブがかかっているという現象は、われわれは一時的なものではなかろうかというふうに把握をいたしておるところでございます。と申しますのは、円高がさらに続くであろうということで契約をいたしております輸出分をいまのうちにということもございますでしょうし、あるいは円契約によるものにつきましては逆に円高によってドルがよけい入ってくるという実態等がございまして、輸出にドライブがかかっているようでありますが、今後とも厳重に現実を直視しながら手を打ってまいりたいと考えております。
  104. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) さて、私は、予算委員会で商品取引にかかわる商品取引員の悪質な行為について質問しました。そのときは、時間の関係上、ことしの許可更新の際政府がとるべき姿勢態度につきまして、また、公表制度を検討すべきではないかということをそこでは取り上げるのにとどまりました。そこで、この商工委員会におきまして続きの質問をしたいと思います。  私が前から強調しましたように、ここで質問する前提は、たとえば昭和四十九年四月十七日付の産業構造審議会答申「商品取引所制度の改善について」、この冒頭にもこのように書かれておりますが、「わが国商品取引所制度については、昭和二十五年の「商品取引所法」制定以降、数次の法改正により変遷を遂げてきており、特に前回の昭和四十三年の法改正においては委託者保護に重点を置いた諸々の措置が講じられたが、なお、商品取引所制度をめぐる問題は引き続き生じている。」ということで、五十年の法改正が行われましたが、その後の経過は、この法改正でせっかく委託者保護に重点を置いた措置が講ぜられたはずなのに、遺憾ながらいろいろな事故は激しく起きている、こういう事実をどうしても解決しなければいけないのじゃないかという立場であります。そういうことで、きょうはまず紛議、苦情処理をどうやっていくのか、この問題について最初伺いたいわけであります。  手元にあります農林省、通産省から出されました取引所の申し出事由別紛議件数によると、昨年四月−十二月で七十七件、この理由を見ますと、過当勧誘四十三件、これは五六%です。これは農林省、通産省合わせて出しております。これに一任売買、無断売買を加えると六十件、七八%に上る大多数を占めているわけであります。ところが、私もいろいろ調査しましたが、取引所における苦情処理や紛議の調停、その実態にずいぶん問題が多いんではないか。ここをまずメスを入れて、冷静に見て、直していくべき点は直さなければいけないんじゃないか。  まず、いまその不当勧誘が多いということがありますが、共通しているのは、まず新規の委託者を勧誘するために、必ずもうかります。これは必ず言うわけであります。これ自体、商品取引所法の第九十四条違反だということははっきりしているわけであります。そのほか、一任売買とか無断売買も第九十四条違反ということになります。そして、こういう被害に遭った委託者が取引所に調停を申請します。申し出ます。そうすると、取引所はやはり一応はその被害の話を聞く。しかし、それ以上調査しないで、大抵まず言うことには、全額返せなどと言ってはだめですよということを最初からかぶせてくるという例が、これまでもはなはだ多かったわけであります。いまでも多いと思われます。ところが、実際調査した上でそういうことを言うならまだいろいろ納得できる点はありますが、よく話も聞かない、少し聞いただけで最初から、全額などを返せるものではない、こういうことを取引所が言う。これは大変問題だと思いますが、これについて通産省、農林省の意見を伺いたいと思います。
  105. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 紛議につきまして、もっと委託者の立場に立って調停の処理をすべきでないか、そういう点に遺漏があるのではないかという御指摘でございます。  紛議につきましては、御案内のとおり、その内容はいろいろ千差万別でございますが、取引所における調停は、当事者双方から取引の事情を十分に調査をして、公正な立場で行われるべきものでございますし、商品取引員の側に偏しているというようなことは大変問題があると存じます。私どもはそういうような調停のあり方にはなっていないと思っておりますが、ただいま先生が御指摘ございましたような、最初から全額は返らないよというような式の調停について非常に偏ったようなやり方、そういうものがあるといたしますと、これは大変重大な問題でございますので、十分そういった点について調査をし、指導をして改善するようにやっていきたいと考えます。
  106. 堤恒雄

    ○堤説明員 農林省としては、いま通産省の方からお答えがあった基本的な態度で臨んでまいっているわけですが、私どもといたしましては、この商品取引に係る紛議というのは、商品取引所における取引、それを原因として生まれたもので、やはり商品取引所が中に入ってきちんとさばくことが一番適当である、そういうことから定款に紛議処理にかかわる規定を設けさせて、そして公正、妥当にやれということを指導してまいっておるわけでございますので、先生がいま御指摘のような実態があるとすれば、当然のことながら正させてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  107. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いま、もし最初からもう全額返すなんて言ってはならないと言うようなことがあるとすれば、そういうことは正させるという答弁だと思いますから、それは当然そうすべきだと思います。しかし、実態はそれが大変多いということも私は申さなければならないわけであります。  たとえば東京砂糖取引所の例について一つ申し上げたいと思います。  これは、被害に遭った方は母子家庭の方です。御主人の生命保険と本人の退職金二千三百万円、それで老後を過ごさなければいけない。この二千三百万円をまるまる失ってしまった。その取引員は大成商品であります。大成商品は、この御本人が持っているお金というのはこういう性格のお金である、つまりこの場合絶対取引に巻き込んではいけない経済力のないタイプの方に属すると思いますが、それを承知の上で、しかも本人が病気療養中でほかに収入のないことを承知の上で勧誘し、しかももう初めから五十枚とか、一カ月もたたないうちに一日で百枚、百五十枚という取引をさせてしまった。精糖で一枚というのは九千キログラムですから、五十枚というと四百五十トンであります。一般の家庭ならもう家の中に積み切れないような大変な量であります。これも、あの十二項目から言えば、素人の人を誘い込んでいきなり最初から大口をやってはならないという、これにも違反したことをやっている。  したがって、そういうことが起きましたので、この婦人は、会社と最初交渉して、会社も、自分が悪いことをやったことを知っておりますから、二割は返すと言ったわけですが、もうそんなことではとても許せないというので、取引所に電話したわけであります。ところが、そのとき取引所は電話で何と言ったかといいますと、二割も返した例はない、もう取引所に来たって無理だよ、裁判になるともっと時間がかかる、こういうふうに言われて、もうすっかり取引所に足を運ぶ意欲を失わしてしまって、やむなく示談した。  しかし、この件は全く無法なやり方でありますから、取引所での調停を復活させて争われておりますが、これは特に農林省に関係ありますが、こういう頭から、しかもこのようにもう最初から九十四条違反あるいはまた十二項目の禁止に違反していることがわかっている例、しかも経済力がないという、こういう婦人の訴えに対して取引所が、二割など取り返せない、二割以上取り返せない、こういう態度をとったということに対しては農林省としてどのように考えられるのか。
  108. 堤恒雄

    ○堤説明員 先ほど申し上げましたように、取引所は公正妥当に解決に当たるべきであるということは言うまでもないと思います。本件につきまして、私どもの方にも当該委託者から文書による申し入れもありましたので、砂糖取引所に指導いたしまして、先生いまお話のように調停に当たらせている、こういう実態でございます。  いま先生からお話がありました取引所の対応につきましては、私ども調査をしたわけでございますが、まあ電話のやりとりということもありまして、必ずしもそういうふうな事実があるということははっきりしなかったということでございます。ただ、やはり私どもとしては、そういう誤解を生むような対応は望ましくないということから、砂糖取引所の理事長を呼びまして、紛議調停に当たる部門の人事の強化等について指示をいたしまして、そういう措置をさせたところであります。したがいまして、先ほど申し上げましたように、取引所全般を通じていま先生からお話しのような対応がないように、今後具体的に指導してまいりたいというふうに思っています。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕
  109. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これは昨年の十一月ごろ商品取引被害者の会が発足したわけですが、昨年十一月ごろまでの実態、最近の実態でなしに、実際に取引所での紛議調停によって取り戻された被害の額と言われるのが大体どのくらい平均して返されているのか、その実態についてちょっと伺いたいと思います。
  110. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいま手元に金額全体の額につきましては数字がございませんが、昨年十月ごろまでの状況を見てみますと、大体ケース・バイ・ケースで返済率が違っておると思いますが、物によっては五割、六割というようなものが比較的多いのじゃないかと思われます。
  111. 堤恒雄

    ○堤説明員 私の方も、調停申し立てとその調停の解決の件数はわかりますけれども、その内容につきましては手元に数字がございませんので、調査して改めて御連絡するよりほかないと思います。
  112. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いま通産省の方で五割から六割のケースもあったと言いますが、最近通産省所管で全額取り戻したという例が幾つか出てきたというふうに聞いておりますが、このころまでまず平均すれば、私たちいろいろ伺ったところから言えば、一割から二割くらいだ、このように考えますが、どうですか、これはまた後で調べて出しますか。
  113. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 調べさせていただきまして、提出させていただきます。
  114. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 結局、取引所に持ち込んでも、これまでの紛議調停、苦情処理というのは、被害者にとって大変冷たいといいますか、どうも信用ならないというふうに考えざるを得ないケースがこれまで多かった、これが事実なのであります。そして実際に取引所に最初から二割ぐらいが相場だというふうに言われてしまう。そうして、じゃ裁判をやるかというふうに詰められる。裁判では二年、三年かかるだろう、また、経済的にも負担が大変だ、とても庶民ではこういう対応はできません。そうすると、泣き泣き示談の方向にいかざるを得ないということになりますが、この示談のやり方にも相当問題があると思いますので、数多くありますが、私は、一つの例だけを申し上げたいと思います。  これも東京砂糖取引所にかかわる例でありますが、大成商品株式会社が、やはり被害者の足元を見て和解契約に持ち込んで、ここにあります和解契約書というものを作成しております。この和解契約書というのは、甲が被害者の方で、乙が大成商品です。  一条から四条までありますが、二条で、ともかく大成側は和解金として五十万円を支払うとあるわけですが、第三条では、「甲は、」甲というのは被害者の方ですが、「本契約成立后、本件取引、本件和解契約について他言しないと共に、自からあるいは他人に依頼して異議調停の申立、民事訴訟、刑事告訴等不服申立権一切を放棄する。」まだ先があるわけですね。「万一、甲においてこれに違反したときは本契約は無効となり、甲がすでに受領した和解金を返還すると共に、右和解金の倍額を支払う。」このことについてうっかり他言した、どう考えても納得いかないとして公にするということになると、五十万円取り返すというだけでなしに、あと百万円払え、三倍の罰金を払わせる、こういう内容になっております。  これは、ここに写しがあるからぜひ見ていただきたいと思います。  さらに第四条に、この被害者である「甲は、本件取引に於いて商品取引所法令違反、受託契約準則違反等の行為がなかったことを確認する。」一体、この法律家でもない、弁護士でもない一般の素人の人に、法令違反があった、なかった、認めることができっこないのに、こういうことまで書かせる。これは一体どういうことか。  こういうような和解に持ち込む、示談に持ち込むということは、ただこの会社にだまされていろいろ取引に巻き込まれたというときに、この御本人が縛られておるというだけでなしに、示談をしたためにその後もずっとうかつに口外もできない、公にもできない、社会問題にもできない、こういうことになるわけであります。いわばこういう会社と縁を切ったはずなのに、その後もその会社から縛られている、不断に圧迫を受けなければいけない、こういうとんでもない内容だと思うのです。  私があえてこういうことを出したのは、こういうタイプで実は示談をやらしている例がどうも多いのではないか、これが一つのタイプではないかと思うからで、こうして、さっき言ったように、取引所へ行っても冷たいというので泣く泣く示談する、示談すればこういうふうにしておどかされ、抑えつけられてしまう、こういうやり方があっていいかどうか、この和解契約書について一体どう思われるか、これも農林省、通産省の御意見をいただきたいと思います。
  115. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 ただいま先生から御指摘のございましたような事実につきまして、私ども十分了知いたしておりませんが、書面を後ほど拝見させていただきたいと思いますが、ただいまお話ございましたような内容だといたしますと、たとえば委託者がこの和議の契約について他言しない、もしした場合には一切権利を放棄するとか、あるいはその場合に契約が無効になって三倍の金が返されなければいかぬというような点を考えてみますと、そういった和解書は、いわば公序良俗に反するというような意味で無効であるという可能性が強いのではないかと思います。したがいまして、一応法的には訴訟を行うことができましょうし、また、取引所に対しまして改めて調停の申し立てを行うというようなことが可能かとも思いますが、いずれにいたしましても、そういった実態につきましては十分実情調査いたしまして、指導をしてまいりたいと考えます。
  116. 堤恒雄

    ○堤説明員 農林省としても一ただいま通産省から御答弁があったものと全く同じ考え方でございます。
  117. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これをぜひ見て調査していただきたい。とりわけ農林省所管ですから、急いで調査してはっきりさせていただきたいと思います。しかし、そもそも悪いことをやっているからこそ、こういうふうにしても口外してもらっては困る、公にしてもらっては困るというわけで、やみに葬ろうとするわけでありますから、全くこれは許せない内容だと思います。  さて、続いて、紛議調停の期間がどうも長いのではないか、これも一つ問題にしなければならないわけであります。二カ月も三カ月もかかる、そういうことからいま言ったように示談が押しつけられてしまう。もう示談やむを得ないというふうにならざるを得なくなってくる。そういうので、調停がなぜこんなに時間がかかるのだろうか、この辺もやはり改善しなければいけない一つのポイントだと思います。  一つ、これは東京繊維取引所の例でありますが、ここでは被害者の会の方が、これはしばらく前でありますが、ぜひ取引所に苦情処理を持ち込みたいと言ったところが、苦情相談員の方が、とても週一件ぐらいしかこなせない、月にせいぜい四件である、このようなことを答えました。  もちろんこのことにつきましては、私どもも農林省を通じて、こういうことがあってはならないというので、その後はやや改善されたと思いますが、ひとつここで私、はっきりさせておきたいのは、通産省、農林省が取引所における苦情処理に対して行政指導を行う姿勢の問題として、ただ、こういう訴えが来てます。そちらで取り上げてあげなさいと言うのにとどまるだけでいいだろうか。そうではなしに、話を聞いて、さっき言いました商品取引所法の第九十四条違反、あるいは十二項目の禁止、これにも明らかに違反している、しかも最初から取引に巻き込んではならないような母子世帯の方だとか、あるいはお年寄りだとか、退職金だけで細々と暮らそうとしている人だとか、病気の人だとか、こういう人を巻き込んだということが明らかならば、当然政府として、農林省や通産省として、取引所に対して、これはそもそも会社の方に大きな問題があるんだから全額返させるとか、厳しい態度で調停に臨むべきである、このような具体的な内容のある指導をすべきだと思いますが、これについても伺いたいと思います。
  118. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 取引所に申し出のございました紛議につきましては、取引所の定款によりまして二つの方法でこれを処理しておるわけでございます。紛議調停委員会で調停をするというケースと、簡易調停と申しますか、取引所の紛議担当職員が両当事者から事情を聴取いたしまして、分析をし、調停をしていくという方法、二つやっておりますが、大多数は後者の簡易調停で和解が行われているという状況でございます。  こういった取引所による紛議の解決につきましては、できるだけ迅速かつ簡易に解決を図るというようになるのが一番望ましいわけでございます。また、取引所は営利を目的としない、法による許可法人でございますので、その立場は中立的であるというようなことを貫くべきだというふうに思われるわけでございます。  こういった点につきまして、私ども従来から通達を発しまして、取引所における紛議処理体制の充実強化を図るように指示をしてきておるところでございますが、なお、直接被害者から私どもにいろいろ苦情といいますか持ち込まれましたような話につきましても、早速その内容を十分聴取いたしまして、さらに具体的に取引所に解決についての迅速な処理を図るよう指導をいたしてきておるところでございます。
  119. 堤恒雄

    ○堤説明員 農林省としても、ただいま山口審議官から御答弁申し上げたような方向で対処してまいりたいと思います。
  120. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 最近、通産省関係では、特に母子世帯、そういった明らかにだまかして巻き込んだというような例に対しては、通産省指導どもあって全額取り戻したというような例が見られると思いますが、農林省所管ではまだこういう点が少ないのではないかという意見を申し述べておきます。そういうことで、もう一つ具体的な例を挙げておきたいと思います。  これは双葉商事にかかわる例であります。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 これを訴えてこられた方は大分県の岐部さんという方でありますが、この勧誘の仕方というのは、昨年八月農林省推薦のアンケート調査はがきを各農家に郵送した双葉商事ですと言ってまず農家に入ってきた。そして、郵便貯金や農協貯金よりもはるかに利回りのよいものです。こう言います。これもいわゆる十二項目違反がはっきりしています。それから、農家の皆さんの収入増を図るために農林省が力を入れ普及した事業です。ここでも農林省がバックであるかのようなことを言う。バックが農林省で絶対に心配は要りません。みんな取引してからではもうけがないから、やるならいまのうちです。早くやりなさい、こう来ているわけであります。  それで、この岐部さんの方はその後双葉商事に対して何度も解約を頼んだけれども、例の悪徳業者の例に漏れず、返事はするけれども、解約はしない。そして無断売買もする、追い証がかかる、そしてそのときも無理して借金しろ、また借金をして解約を申し入れる、それでも解約しない、こういうようなことで二千万円の被害を受けたということが訴えられておりますが、問題は、こういう手口そのものが非常に悪質であるというだけでなしに、この関係のある——これは関門取引所です。関門取引所の調停のやり方に大変問題があるのではないかと私は思いました。  大体、苦情あっせんのときに両者から聞くというのに、岐部さん一人に対して双葉商事側の方は五人も並べる。五対一でまくし立てられてしまう。その後私たちも、この問題を心配しまして、当然これは一対一で静かに話し合えるようにしなければ苦情もよく聞けないじゃないかということで、農林省は会社側も一人にするような、そういうような話し合いといいますか事情聴取すべきである——ところが、その後三月十三日の段階で、二回目でありますが、やはり会社側は四人で、四対一でまくし立てられたということであります。  しかし、ともかくも二回目の事情聴取で、双葉商事側は、農林省推薦あるいは農林省が普及した事業と言った事実などを認めたということまではいったけれども、そこでまた取引所の調停員の問題が出てくるのですが、そういう場で、一番終わりに、また岐部さんに対して、損金全額返せと請求しているけれども、一銭もまけないよという態度ならば裁判やるしかない、その場でそういうふうに圧力かけて、それで、裁判するのかあるいはまけていくのか、まけるのかどうか十八日までに返事せよという形で圧力をかける。これなど、まさに事実を聞いてこれから調停を進めていかなければいけないのに、初めから、被害者である側に、態度をやわらげろ、余り全額などと言うな、それでなければ裁判以外にないという形で突き放すようなやり方をしている。これはまことに遺憾なやり方だと思います。  このことにつきまして二つばかり私は聞きたいのですが、一つは農林省に対して、この双葉商事がやったと言われているいかにも農林省推薦の仕事であるかのようにいろいろ言いながら勧誘していった、これはもしそのとおりだとすればもう詐欺的である、詐欺罪にも当たると思いますが、そのことについて調査したのかどうか、伺いたいと思います。
  121. 堤恒雄

    ○堤説明員 ただいま先生から御指摘の案件につきましては、私どものところにも文書による申し入れがありましたので、関門取引所の方に調停を進めるように指示したところでございます。現在調停が、先生からも御指摘のように、進行中でございまして、いずれにしろ、取引所としては双方の言い分をよく聞いて、公正妥当な解決を見出すよう努力するということで努めているはずでございます。  それから、ただいまの御質問の点について、私ども、その調停の過程で双葉商事の方から関門取引所がよくその辺を調査するようにということを指示いたしまして、その報告を受けたところでは、双葉商事といたしましては、証券は大蔵省の所管、監督を受けてやっているが、商品取引の方は農林省の所管、監督を受けてやっている取引であるということは話をしたが、推薦とかそういうふうなところまでは言っていないということを関門取引所からの報告では来てまいっておるわけでございまして、私どもも、先生もいまおっしゃったように、そういう非常識な詐欺的なことはやっていないのではないかというふうに思っているわけでございます。
  122. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) どうも農林省は判断するのが早過ぎると思うのですね。これは本人からの訴えが来ておりますし、また、二回目の紛議の事情聴取のところでは、双葉商事の外務員がそういうことを言ったということを少なくとも認めたとされております。これは農林省の名誉にもかかわることだと思うのですね、農林省推薦の事業だといってやられているわけですから。これは関門取引所から聞くということはもちろん必要でしょうけれども、もっと直接調べるべきことではないだろうか。そうしないとこれは大変重大なことだと思うのですね。日ごろ本当に信頼している——農家の場合ですと、どうしても農林省と言われると関係が深い、つい引き込まれていくということになったし、御本人もまさにそれを言われたから引き込まれてしまったと訴えているのを、ただ関門からそういうふうに聞いて、そしてもうそういうことはなかったという判断に行くというのは早過ぎるから、これはもう一度調査をし直すべきであると私は思います。  それと関連して、この際、やはり関門取引所について一言言わなければいけないし、問題にする必要があると思うのは、もう時間もありませんから、やりとりしてその中で答えていただいてもいいわけですが、関門取引所の理事長、これはだれかということですが、これは農林省からいただいた資料で答えははっきりしていると私は思いますから申し上げますが、佐伯義明氏、関門の理事長が山佐商事株式会社の代表取締役である。それで、この山佐商事というのは一体どういう会社かといいますと、これは、一九七〇年八月二十日衆議院商工委員会提出資料によりますと、商品取引事故の総括表というのを出されて、一九六七年四月から六九年十月までの間で最も事故件数が多かったのが、この前私が問題としました例の吉原商品であります。五百八十三件。二番目がこの山佐商事で、四百三十四件であります。ワーストツーである。  こういう一番問題を起こした取引会社の責任者が関門取引所の理事長になっているということからして、実はこの前の五十年の法改正の前にも、産業構造審議会の答申などでは、理事会の理事長についてはやはり主務大臣の承認制とすべきであるというくらいこの問題がなって、残念ながら法改正の中にこれは入らなかったわけでありますが、そういう法の不備といいますか、それをくぐってこういう一番問題を起こした専業取引員の責任者がそのまま取引所の理事長におさまっているという問題、これはどうしても是正すべき問題ではないか、こういう問題は見過ごせない問題があるのではないか、こう思うわけであります。  しかも関門の紛議調停の調停委員会の構成を見ますと、商品取引員が全体九名のうち五名、過半数を占めるわけですね。それで学識経験者が四名である。商品取引員が五六%を占める。これは後でこの構成問題を聞きますが、こういう取引所の構成の問題、理事会の構成の問題やあるいはまた紛議調停委員の構成の問題やはり考えなければいけないのではないか。この問題について伺いたいと思います。
  123. 堤恒雄

    ○堤説明員 役員の構成問題あるいは紛議調停委員の構成の問題については、私ども以前からその公正さを確保するという観点から指導してまいっておるわけでございます。ただ、私ども関係で申し上げますと、全体で言えば、紛議調停委員会の構成メンバーについて言えば、私ども指導の方向である学識経験者なり取引員なりそれから一般会員の比率はほぼバランスがとれておると思いますが、御指摘のように、一、二取引員の比率が高いというところがあることは事実でございます。  ただ、ここで御理解いただきたい点は、私どもの方の所管の取引員、これが百八十社ほどございますけれども、このうち百社はいわゆる現物兼業の取引員でございまして、受託業務を付随的に行っておるそういう実態にあるわけでございます。したがいまして、紛議調停委員としての行動等については、当然のことながら、専業取引員としての立場よりはそういう一般会員に近いものであるというふうに私ども考えているわけでございます。しかしながら、全体として誤解を生むような構成は望ましくありませんので、今後とも問題の取引所については個別に是正方を指導してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  124. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 通産省所管の商品取引所の理事の構成につきまして、全体を申し上げますと、一般会員の理事が五六%、商品取引員の理事が二六%、学識経験者の理事が一八%というふうになっております。専業取引理事の比率は、商品取引員理事の中では六六%ということになっておりますが、全体の比率を見ますと、一八%ということで余り高くないわけでございます。  なお、学識経験者理事のうちで公益理事と申しますか、公益的な立場から運営に参加してもらっております理事の方が、現在、大阪三品取引所と神戸ゴム取引所を除きます他の通産省所管の商品取引所にはそれぞれ一名ずつ選任されております。こういうふうに、公益的立場から運営に参加していただくというのは非常に好ましいことでございますので、現在不在のところにつきましてもそういった点を実施していくように指導してまいりたいと思っております。  なお、理事長につきましては、通産省所管六取引所の中には、商品取引員が理事長になっております取引所は一件もございません。  以上でございます。
  125. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 理事の構成で、これはこの前の産業構造審議会の答申でも、第三者理事をふやす問題や、あるいは紛議調停機関の構成員についても中立の委員をふやせという方向が出されている。そういうことに照らしてみると、農林省所管、通産省所管の違いはあるとはいえ、やはりまだ努力が足りないのではないか。たとえば調停委員の構成について見ますと、通産省所管の五取引所で商品取引員、ブローカーの比率というのは平均二三%である。最大三二%のところがある。農林省では十二取引所が平均二九%である。最大五六%である。これは関門の例であります。これはもっともっと下げなければいけない。  もともと紛議調停だから、被害者を代弁する、そういう立場の人が入り、そしてまた、商品取引所をある程度知っているという人が——まだバランスがとれているならばいいけれども、いわゆる専業でないとはいえやはり商品取引員である、そういう代表がかなりの比重を占めている。そして第三者という方もおられますけれども、実際にどこまで被害者を代表するかということにはなってない。以上、本来言えばこの取引員が入るということ自体一つ疑問になる点でありますが、そういうことも含めてこの問題はやはり再検討しなければならないと思いますが、この問題につきまして、構成をもっと公正な方向に、とりわけ急がれるのは紛議調停委員でありますが、改めることについて伺いたいと思います。
  126. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 通産省所管の取引所の紛議調停委員会の委員の構成では、専業の取引員の比率は三分の一以下というようにいたしておりますこと、また、委員長には専業取引員以外の者から選任させるというようなことで、できるだけ中立性を高める、さらに、なるべく商品取引員の調停委員を減らして、一般会員あるいは学識経験者の委員をふやしていくというような方向で指導してまいりたいと考えます。
  127. 堤恒雄

    ○堤説明員 私どもの方の十二取引所の平均でも、先ほど先生からもお話がございましたが、二九%が商品取引員という構成でございます。確かに二、三の取引所に取引員の構成比率が高いというところがございますが、従前からそういう方向で指導してまいっておりますが、まだ改善されてないという点がございますので、引き続き指導してまいりたいというふうに思っております。
  128. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いままでは紛議調停の問題について伺いました。しかし、問題は、こういう事故、事件が起きないようにしていく、そのことの方がある意味では重要でさえあると言えると思います。もちろん、紛議調停のやり方がいままでのように悪徳商法をやった方に甘いというようなことになるから、ますます図に乗ってやるという点がありますから、これは厳しくしなければいけませんが、しかし、もともとこういう事件が起きないようにするということの努力、そのためのいろいろな制度改善、いまはそれに努めるべきではないか、このように考えるわけであります。  そういうことで、この商品取引について、当業者主義というのを貫かせるということに沿ってこの制度の改善を検討すべきではないか。法改正が昭和五十年にも行われているわけでありますが、悪質な商法で大衆の被害がふえているわけであります。ですから、そういう被害に対して悪質なことをやった業者に対しての処分、それをも厳しくせよということは、私はこの前予算委員会でも強く言いましたし、また、公表制度も検討すべきである、そういうところに来ている、このことも言ったわけであります。  それに加えて、いま私が言った当業者主義を貫く方向で制度や運営を改善していくべきではないだろうか。  この点については、昭和四十六年十一月二十五日の商品取引所審議会の「商品取引所の制度と運用に関する意見」、この中ではかなりはっきりと、最近の商品取引をめぐる事件が起きるのは「「当業者主義」が崩れてきたことが指摘される。」として、「実質上の当業者主義が強く貫かれる体制に速かに戻ることが肝要である。」こういう指摘も見られました。  また、その同じ一九七一年、昭和四十六年二月八日の予算委員会において、宮澤国務大臣の答弁の中で、  この制度は、本来商品の取引価格の安定をもって発足したわけでございますけれども、はからずも大衆を巻き込みまして、ただいま御指摘のようなたくさんの不幸なできごと、社会悪を生んだわけでございます。本来の目的と違ったところでそういう結果を生じたわけでございますから、今後この商品取引のあり方を検討するときに、そういう事実起こったこと、事実をやはりもとに考えなければいけないのではないだろうか。そういたしますと、まずこれは当事者だけのこと、これは当業者のことだと思います。  専門家だけの取引であって、大衆は巻き込まない、いわゆるみだりに勧誘をするというようなことは許してはならないということが一つございましょうと思います。という答弁がありますが、これはやはり当業者主義を貫こうという答弁だと私は思いますが、このような方向でいまどうしても検討しなければいけないと思います。  ところが、現状はどうかといいますと、七五年度の総売買玉のうちに大衆玉の割合というのは、小豆、これはショウズと言っておりますが、それで六五・八%、精糖で六二・四%、綿糸で六三・二%、毛糸で六四・八%というように、多くのところで過半を占めているわけであります。まさに大衆が大変巻き込まれているわけです。  そういうときに、私は、この当業者主義を貫くという立場でいろいろ考えていくときに、一つのよりどころとして、さっき言ったいろいろなこれまでの経過がありますが、さらに産業構造審議会の答申、四十九年四月十七日の答申の中に、当業者主義ということがどこまではっきりうたわれているかといういろいろ疑問な点もありますが、一応大衆参加のあり方として、「いわゆる大衆化市場であることまでも意味するものではない。」まあ外部資金の導入はある程度必要であるけれども、「いわゆる大衆化市場であることまでも意味するものではない。また、投機は経済的予測の上に立って行われるものであり、当該商品の生産、流通等に全く無知の大衆の参加は、むしろ好ましくない。」「上記の意味において、定期市場への大衆参加については、一定の制限を加えるべきものと考えるが、商品取引に参加する者は、まず十分な資力を有していることが必要であり、また、十分な商品取引に関する知識を有していることが前提である。」こういうふうに考えております。  ただ、この場合、この前の法改正については、法改正の中に十分これを取り入れられなかったという判断をわれわれは持っておりますが、きょうはこの議論はそれ以上進めないこととして、少なくとも最初に勧誘するときに、経済力のないあるいはまた商品取引についての知識を持っていないそういう大衆参加が行われないようなチェックのあり方に根本的に改善すべきだと思いますが、それは通産省、農林省、どうやっていくつもりなのか、検討するのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  129. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 御指摘のとおり、余り商品知識もなく、また資力や信用に乏しい大衆が取引に参加するということは、必ずしも公正な価格形成に意味があるというわけでもございませんし、被害が多いということで、好ましくない問題であろうと思われます。  そこで、従来から商品取引員に対しまして、委託者の知識、資力、信用力等の調査を十分するとかいうようなことによって、いわゆる質的選別を十分行うようにするようにという指導をしてきているところでございます。しかし、一部の取引員では、大衆への過当な勧誘が見られるというようなこともございまして、取引所に対しまして、新規委託者に対する過当勧誘についての是正措置、勧誘及び受託の改善についての措置等、新規委託者の保護についての対策を検討するようにということを先般指示いたしておるところでございます。当省といたしましてはこの結果を待ちまして適切な措置を検討してまいりたいと考えております。
  130. 堤恒雄

    ○堤説明員 農林省も、基本的にはいま通産省の方からお答えいただいたとおりでございます。私どもとしては、さらに価格形成の公正さという点から申しますと、一般投機家の参入段階にとどまらず、市場管理段階でやはり建て玉制限あるいは証拠金、こういうふうな市場管理仕法、こういうものを有機的に活用しまして、全体として投機資金の過大なる流入をバランスとっていくというふうなことも指導してまいっておるわけで、その辺あわせまして御指摘のような方向を実現してまいりたいというふうに思っております。
  131. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 問題は、いろいろな答申やあるいは指導について述べられるときに、そういう大衆参加ということの許容の限度があるんだ、それで幾つかの要件を満たさない大衆参加は防がなければいけないということが繰り返し言われるわけでありますが、実際それは市場の自治であるとか取引員のいろいろな自覚であるとか、結局はまた外務員そのものの自覚であるということにされてしまって、最初段階で新規にお客さんが巻き込まれるところで、どういう形でそれが委託者になったのかという、そこをチェックするところが実際ないんではないか。私はここが一番問題だと思います。  それで、先ほど言いました資力、信用力、こういう問題も確かに重要でありますが、商品取引の知識といっても私は二つあると思う。一つの知識というのは、こういう取引所で行っている商品取引というのは先物であって、たとえばお客さんが元手と考えられる証拠金というものの十倍ぐらいを取引してしまう、したがって、もう一カ月、二カ月のうちに元手の数倍に当たるような損をこうむることがある、大変な目に遭うという恐ろしさ、そういうこともあらかじめよく知っているということが一つの知識でありますが、同時にまた、それぞれの砂糖だとか輸入大豆だとかあるいは小豆だとか、そういう価格が少なくとも価格形成を公正に推し進める、それにふさわしい、それに役立つ大衆参加であるというならば、そういう商品についての知識といいますか、それも持っている人でなければいけない。ところが、この後者も含めて、これはもうなかなか大変なことなんですね。  最近、朝日新聞社が「総合商社」という本を出しておりますが、あの中で、ある総合商社がアメリカから情報が入ってくる、それは、ある友人がミシシッピ川の上を飛行機で飛んだところが凍っていた、それで相場がこう変わるぞというような、まさにそういう世界的な情報網を握っているような、そういうものであって初めて商品取引において十分有利に動ける、そういう振る舞える知識を持ち臨めるわけなんでありますが、一般の人にはこれはとてもできっこないわけなんです。  そういうことを考えると、そもそも、また問題が最初に戻りますが、当業者主義、本当に大衆参加を規制していく、厳しくしていく、これは最大の問題になると思いますが、そこで、さっき言ったように、ただ会社が本人に対してそういうことをやりませんでしたよということじゃなしに、やはり新規に委託者となったならば、どういう形でそれが委託者になったのかということを今度は取引所そのものがチェックするとか、あるいはまた、取引所そのものが、最初のうちに大変枚数を多く取引をやるとかそういうことがないようにチェックするとか、そういうことまでやる、こういうことも含めた検討が要るんじゃないかと思いますが、時間が来たというので、そのことを最後に伺いたいと思います。
  132. 野中英二

    ○野中政府委員 大変事細かく示唆に富んだ御質問を賜りまして敬意を表する次第でありますが、基本的に申しますと、当業主義ということが大切でありますが、その主なるものは、やはり公正な価格あるいは価格の平準化等々の基本があるわけでございます。しかし、これを原則的に基本的に当業主義でいくということは、かえって価格の公正化が図れるかどうかという問題がありますので、私は、これは第三者の介入、投機というものを認めてきたのであろうというふうに考えておるわけであります。  そこで、この第三者である大衆参加と同時に、この大衆をいかに擁護していくか、保護していくか、このりっぱな投機家を守っていくかということが実は問題点でございまして、御存じのとおり、そのためにはやはり健全なる知識というもの、これをまず持っていただかなければならぬし、同時にまた、豊富な潤沢な資本力というものがなければならないというような要件を考えなければならぬのじゃないかと思うわけであります。  同時にまた、紛議になるケースというものは、先生御指摘の点もございますけれども、これはやはり心理学的なものがあるんじゃないか。ギャンブルのような、要するに競輪、競馬のような気持ちで入ってしまう、そういう点もあろうと思うのでございまして、この辺の大衆心理というものの動きという、こういう心理学的な問題も踏まえまして、先生のおっしゃられたことに対してこれから善処してまいりたいと思います。  以上、簡単ですが、答弁といたします。
  133. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの、取引所として、新規に入る、その入り方をやはりチェックするぐらい、そういうことも含めた検討が要るんじゃないか、それについて最後もう一度答えていただきたいと思います。
  134. 山口和男

    ○山口(和)政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもの方から全国商品取引所連合会及び全国商品取引員協会連合会にあてまして、去る三月二日付で受託業務改善のための検討についての指示をいたしておりますが、その中で、新規委託者に対する勧誘の是正措置と申しますかを含めて検討をするようにという指示をいたしております。先生御指摘のございましたように、新規の包括売買契約者を取引所に届け出させるとか、また、事前に取引所で審査させるとか、あるいはまた、売買内容を取引所に届け出あるいは審査を取引所でやるとかいうようなことを含めて検討をするようにという指示をいたしておるところでございます。
  135. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これで質問を終わりますが、先ほど政務次官が心理的なこともあると言われましたけれども、もう一度最後に私は強調したい点は、私のところに被害者からたくさんのお手紙をいただいております。一つの例から言いますと、これは五十二年七月ごろ、要するにこの方も未亡人で、そして御主人の生命保険を受け取って、そして家が道路に当たったというので若干のお金があったけれども、息子さんも心臓病であるということで、家作三軒建てようとして、八月には大工さんに支払わなければいけない、そういうお金であるということを承知の上でこの会社は無理やりに巻き込んでしまった、そしてそれが大変なことになったのですが、その最後にこう言っております。  現在担保物件があったから借金で約七割ぐらいの支払いをしましたが、今度は担保流れです。一カ月以上ノイローゼで、人に会うとどうしたの?と聞かれるのがつらく、部屋に閉じこもって、胃がきりきりと痛んで食事もままにならず、まさに生き地獄でした。  日本の国は法治国家のはずなのに、こんなうそつき商売が何で野放しなのでしょう。こういうのです。法治国家のはずなのに、何でこんな商売が野放しなのか、こういう叫びというのは非常に多く聞くわけであります。そういうことで、きょうは大臣もおられませんので、またいろいろ聞かなければいけないと思いますが、この問題と真剣に取り組んで解決していただきたいということを要望しまして、私の質問を終わります。
  136. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 次回は、来る二十八日火曜日、午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十一分散会