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1978-03-23 第84回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十三日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 野呂 恭一君    理事 藏内 修治君 理事 中島源太郎君    理事 武藤 嘉文君 理事 山崎  拓君    理事 山下 徳夫君 理事 岡田 哲児君    理事 渡辺 三郎君 理事 松本 忠助君    理事 宮田 早苗君       小川 平二君    鹿野 道彦君       粕谷  茂君    島村 宜伸君       田中 正巳君    辻  英雄君       中西 啓介君    楢橋  進君       西銘 順治君    松永  光君       渡部 恒三君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    加藤 清二君       後藤  茂君    上坂  昇君       渋沢 利久君    清水  勇君       武部  文君    中村 重光君       長田 武士君    草川 昭三君       玉城 栄一君    高橋 高望君       米沢  隆君    工藤  晃君       安田 純治君    大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 妹尾  明君         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         大蔵大臣官房審         議官      渡辺 喜一君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省産業         政策局長    濃野  滋君         通商産業省基礎         産業局長    天谷 直弘君         通商産業省生活         産業局長    藤原 一郎君         工業技術院長  窪田 雅男君         資源エネルギー         庁長官     橋本 利一君         中小企業庁長官 岸田 文武君         労働大臣官房審         議官      谷口 隆志君  委員外出席者         大蔵省銀行局銀         行課長     吉田 正輝君         林野庁林政部林         産課長     輪湖 元彦君         水産庁海洋漁業         部国際課長   片桐 久雄君         運輸省船舶局造         船課長     間野  忠君         参  考  人         (船舶整備公団         理事長)    亀山 信郎君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事)   秋野 莞爾君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   西中  清君     草川 昭三君   玉置 一徳君     高橋 高望君 同日  辞任         補欠選任   草川 昭三君     西中  清君   高橋 高望君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   米沢  隆君     玉置 一徳君 同日  理事藏内修治君同日理事辞任につき、その補欠  として山崎拓君が理事に当選した。     ————————————— 三月十七日  特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律  案(内閣提出第六四号) 同月十六日  水素エネルギー実用化促進に関する請願(中  曽根康弘紹介)(第二二五一号) 同月二十二日  栃木県小山地区大型店進出延期に関する請願  (稲村利幸紹介)(第二四八五号)  同(武藤山治紹介)(第二四八六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出第三  八号)      ————◇—————
  2. 野呂恭一

    野呂委員長 これより会議を開きます。  この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事藏内修治君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  引き続き、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。  それでは、委員長は、山崎拓君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 野呂恭一

    野呂委員長 内閣提出特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の本案について、社会労働委員会農林水産委員会及び運輸委員会から連合審査会開会申し出がありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時等につきましては、委員長間において協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。     —————————————
  7. 野呂恭一

    野呂委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、必要に応じ参考人出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選及び出頭日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 野呂恭一

    野呂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、参考人として、船舶整備公団理事長亀山信郎君、商工組合中央金庫理事秋野莞爾君が出席されます。     —————————————
  10. 野呂恭一

    野呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。板川正吾君。
  11. 板川正吾

    板川委員 特定不況産業対策法に対しまして、通産大臣労働大臣公取委員長ほか関係各省に  ついて若干質問いたします。  まず、通産大臣にお伺いをいたしますが、本法案目的は何かということを伺いたいわけであります。第一条に書いてありますけれども過剰設備を抱えている特定産業の安定を図るのが目的の中心なのか、それとも究極的には国民経済の健全な発展を期する、こういうところに本当目的があるのか、そのいずれかということをまずお伺いをいたしたいと思います。
  12. 河本敏夫

    河本国務大臣 いわゆる構造不況業種と称せられる業界は、御案内のように、非常に深刻な事態に直面をいたしております。緊急の対策といたしまして、過剰設備廃棄して業界全体の経営というものを安定軌道に乗せなければならないということが緊急の課題でございます。したがいまして、さしあたりはこのことが目標になりますが、そのことが実現されましたならば、当然そのことによって国民経済全体が健全化される、こういうことにもなりますので、いまの御質問は、双方とも目的でございます。
  13. 板川正吾

    板川委員 私、過剰な設備を抱えておる特定産業設備廃棄するのが手段であって、本当のねらいは国民経済の健全な発展を期するというところに重点が置かれているべきじゃないだろうか、こう考えるのですね。そうでないと、この法案はどうも余りにも手段の方に重点があって、要するに過剰な設備廃棄するというところに重点があり過ぎて、労働者雇用の安定とか関連中小企業の安定とか健全な国民経済発展を図る、そういう要件が欠落しているといいますか、そういう点に重点がなかった、実は大事な点にウエートがない、こういう感じがするわけであります。これでは過剰設備を抱えておる企業経営の安定は図れても、国民経済の健全な発展は期されないのではないか、こういう感じがいたしますが、いかがでしょう。
  14. 河本敏夫

    河本国務大臣 この法律主眼そのものは、過剰設備廃棄ということであります。私がいま申し上げましたのは、過剰設備廃棄をすれば、当然その業界安定経営に復帰することができますし、そのことがひいては国民経済全体の発展につながる、こういう順序を申し上げたわけでございまして、この法律そのものの直接の目的過剰設備廃棄、こういうことでございます。
  15. 板川正吾

    板川委員 確かに第一条では、「計画的な設備処理促進等のための措置を講ずることにより、」となっており、これは手段であります。しかし、私が言いたいのは、そういう過剰設備廃棄して経営の安定を図ったところで、そのために膨大な失業者が出たり、そのために中小企業倒産が相次いだりしたのでは、結局国民経済の健全な発展にならないのじゃないか、実は私どもはこういう点にウエートを置いて考えているわけでありますが、順次その理由を申し上げてまいりたいと思います。  次に伺いますが、本法案対象となる業種は、ここに法定四業種がありますが、政令で定めることを予定しておる業種はこのほか幾つかありましょうか。九つあるとか言われておりますが、幾つあるかということ、そしてその業種ごと過剰設備がどの程度あるのか、その点も、これは事務当局で結構ですが、ひとつ答弁を願いたい。
  16. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私からお答え申し上げます。  この法律対象業種といたしましては、いわゆる特定不況産業というこの法律対象になりますのは二段階になっておりますが、ただいまの先生の御質問の趣旨を、むしろその第一段階目としてお答え申し上げますが、いわゆる候補業種でございますが、法律に四つありますほか、五号で政令で指定することになっております。法律的に申し上げますれば、この法案成立しました後、関係審議会意見を聞いて検討して定めるということになっておりますが、ただ、この法案成立過程におきまして私ども一応いろいろなバックグラウンドの議論をいたしまして、そのとき念頭に置きましたいわば五号の対象として考えられるものはどんなものがあろうかという意味で申し上げますが、一つ化学肥料業界、それから綿、スフ、合繊等紡績、それから毛紡績、それからいわゆるフェロアロイ業界、それから段ボール原紙等業界、それから、ここにはアルミの製錬が入っておりますが、たとえばアルミ圧延業というようなのも一つ対象として考えられるのではないか、それから塩ビ樹脂業界等、これが大体通産省所管業種として考えたものでございます。  そのほか、他省所管といたしまして、農林省所管で合板あるいは精糖等も考えられるのではないか、それから、運輸省所管業種といたしまして、ここに挙がっております船舶製造業のほか、船舶用機関でございますとかあるいは船舶用品等一つ候補対象業種たるのではないかという議論をいたしました。  第二に、設備処理量でございますが、これも法律的に申し上げますれば、法案成立後、しかも、ただいま申し上げました候補業種の中から業界申し出特定不況産業のいわば第二段階目業種が決まった後に、安定基本計画で定めることになると思いますが、御案内のように、業種ごとに昨年以来産構審の場あるいはいろいろな研究会の場あるいは業界の検討の場等でいろいろ議論されております。そういう場で過剰設備として処理をする対象の量が大体どのくらいあるかという点で議論になった数字を申し上げますと、第一に平電炉でございますが、平電炉は約三百三十万トンが過剰設備として処理をする必要があるのではないか、それからアルミ製練でございますが、これは百六十万トン中四十万トン程度設備処理対象として考えるべきではないかということでございます。それから合繊につきましては、現在百五十万トンの能力がございますが、この中の二五ないし三〇%程度の三十五万から四十五万トン程度ではないか、それから綿紡につきましては、千百万錘のうちの約二割前後、二百二十万錘程度設備処理対象として考えるべきではないか、毛紡につきましては、二百二十万錘現有能力の中の同じく二割前後、四十五万錘程度ではないかということが議論をされております。  なお、ただいま私が申し上げました肥料につきましては産構審、それからフェロアロイの中のフェロシリコン等につきましてはいま研究会をつくりましていろいろ検討しておりまして、まだ具体的な数字は出ていないというのが現状でございます。
  17. 板川正吾

    板川委員 労働省伺いますが、この法律成立をして予定どおり過剰設備廃棄をされたとすると、予想される離職者の数はどの程度と見込んでおりますか、伺います。
  18. 谷口隆志

    谷口(隆)政府委員 本法案成立いたしました場合の特定不況産業というものがどういうものかにつきましては御説明ございましたが、そういう不況産業におきまして今後離職者がどの程度出るかということにつきましては、これらの産業をめぐります今後の事態推移のいかんにも左右されるところでございますし、また、産業に属します企業経営実態によって個々にも異なることでございますので、具体的にどれだけの数になるというようなことを予測することは非常にむずかしいところでございます。  ただ、私ども雇用対策を預かる職業安定機関といたしましては、やはり従業員雇用の安定というような観点からはできるだけ早くそういう問題が出る事態を把握する必要がございますし、そういう意味で、関係機関との連携を密にしまして事態早期把握に努め、それに基づく所要の対策を講じてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  19. 板川正吾

    板川委員 労働省では、五十三年度予算の場合に、特定不況業種離職者対策積算として、特定不況業種従業員が四百万人おるじゃないか、そのうちに過剰人員が仮に一〇%と想定すると四十万人、四十万人のうち三〇%、十二万人程度が自然減耗されて、特定不況業種の中から失業予定している者は二十八万人、こういう数字予定しておるのじゃないですか。
  20. 谷口隆志

    谷口(隆)政府委員 いま先生の指摘ございました数字は、昨年の臨時国会におきまして、特定不況業種離職者臨時措置法議員立法成立いたします過程におきましての議論でそういう数字が出たということは、私ども承知をいたしております。
  21. 板川正吾

    板川委員 これはまあいずれ予想ですからね。まだいろいろ学者の説などありますから、こういう数字がぴたりというわけにはいかないのでありますが、一応そういう目標を立てたということがあると思います。  それで通産省は、もしこの法律成立をして、先ほど挙げた業種過剰設備処理が希望どおり行われたとすると、どのくらい離職者があるとお考えでありますか。
  22. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま私、現在までにいろいろの場所で検討されておりました設備の要処理量と言われるものを御説明申し上げましたが、過剰設備処理がもし予定どおり行われた場合の離職者をどう見積もるかということでございますが、これは大変むずかしい問題でございまして、いわゆる特定不況産業、この法律対象になる業種は、大分長い間大変な過剰設備を抱えてきておりますので、現在までのところ、他の事業部門への転換とか、あるいは関連会社への出向とか、さらにやむを得ず雇用調整が進んでおるというようなことで、私どもいろいろ積算によりますと、そういう意味での雇用調整がかなり進んでおると受けとめております。したがって、今後の設備処理で具体的な発生数は、これからこの産業がどういうかっこう設備処理をして、ただいま私が申し上げましたような配置転換とか関連会社への出向等々がどういうかっこうで進められるか、産業ないしは企業実態によって違いますし、雇用問題で具体的な数字業界側としても公にすることを大変ちゅうちょいたしますので、率直なところ、具体的にどのくらいかということは私どもはじき出せませんのが現状でございます。  ただ、感触で申し上げますと、たとえば先ほど申し上げました業界の中の肥料とかあるいは塩ビ樹脂というような化学関係につきましては、業界そのものが、どちらかと申しますといわば多品種の複合生産をやっておりますので、それからその業種に属しております従業員の数が比較的に少ないというようなことから、大体配置転換等で対処し得るので、そこからいわゆる離職者というかっこうでは出てこないのではないかという感じを私ども持っております。  それから、同様にアルミ製錬あるいは段ボール原紙等、これからの進め方でございますが、それほど大きな雇用問題は出てこないのではないか。今後の成り行きで離職者がもし発生するといたしますれば、一番懸念の強いものはやはり繊維産業、あるいは平電炉等はかなり進んでおりますが、平電炉業のこれからの進め方等、私どもこういうふうに方向を予想しておりまして、具体的にはこれからの進みぐあいに応じまして、先ほど労働省から御答弁ございましたように、労働当局と非常に具体的なケースあるいは業種につきまして緊密な連絡をとって必要な対処をしていきたい、こういうふうに考えております。
  23. 板川正吾

    板川委員 通産省が出された資料に基づいて予定業種ごとにこの基礎人員を置き、それからそれに過剰設備の割合を計算してみましたところが、従業員数で約六十一万、そして過剰人員数積算してみますと約十四万、その基礎人員に対して二二・八%、これは私の計算ですが、こういうことになります。配置転換なりいろいろありますから、二二・八%がそのまま離職するわけではないのですが、仮に半分としましても相当の数が離職をすることになる、こう私は思います。  労働省伺いますが、いま潜在失業者と言われている数字はどのくらいに考えておりますか。景気変動調整事業とかあるいは事業転換雇用調整事業などから推算をすれば、ある程度潜在失業者と言われる数字がわかるのではないかと思いますが、いかがですか。
  24. 谷口隆志

    谷口(隆)政府委員 潜在失業者を何によってとらえるかということは、議論がいろいろ分かれておるところでございまして、一義的に決めるということはなかなか困難な状況でございます。ただ、従来私ども潜在失業者議論するに際しまして、短時間就業者とかあるいは追加就業希望者を推計の基礎として用いるというようなことが多いわけでございますけれども、そういう短時間就業者とか追加就業希望者数字について見ますと、五十三年の一月現在におきまして、たとえば一週間で一時間から十四時間の短時間就業者が非農林業で百八万人とか、あるいは追加就業を希望する者の数は同じく非農林業で百七十一万人というような数字になっております。
  25. 板川正吾

    板川委員 三百万近い潜在失業者と言われる者がおるわけでありますが、完全失業者と最近の有効求人倍率について、もう一度ちょっと伺っておきます。
  26. 谷口隆志

    谷口(隆)政府委員 先生も十分御承知のとおりでございますけどれも、最近の景気回復のおくれから、昨年来非常に厳しい雇用失業情勢が続いておりまして、完全失業者について見ますと、昨年一年間百万台で推移した状況でございます。一番最近の時点では一月が百二十六万人で、失業率は二・〇五%、有効求人倍率は一月時点で〇・五二倍ということでございます。
  27. 板川正吾

    板川委員 完全失業者が百二十六万人というのは最近にない数字ですね。しかも急激にふえておりますね。それから有効求人倍率も、〇・五二というのは、最近〇・五五あたりで前後しておったのが、これまた急激に減っている、こういう状況だと判断していいですね。
  28. 谷口隆志

    谷口(隆)政府委員 雇用失業情勢の厳しい状況は昨年来続いておるわけでございますが、一月の百二十六万人の完全失業者というのは、例年一−三月というのは季節的要因もございまして、完全失業者の多い季節でございます。そういう意味におきまして、前年同月では百十四万人、二月が百二十二万人、三月が百二十七万人というような状況でございます。  なお、有効求人倍率は、昨年の六、七月ごろから〇・五四、〇・五三、〇・五二前後で推移いたしておるということであります。
  29. 板川正吾

    板川委員 完全失業者がふえており、有効求人倍率が下がりつつあり、それから莫大な潜在失業者がおる、こういう労働雇用事情の中で、これからさらに設備廃棄をされて何十万かの首切りが行われる、こういうことになりますと、私は、労働不安といいますか、社会不安が起こってくるんじゃないだろうか、こう思います。失業者には雇用安定法休業補償を延長したから心配ないなどという言いわけはできないんじゃないか。それは、病人に対して葬式の方は費用があるから心配するなというのと同じような言い方になるわけでありまして、失業の防止という点に政府はもっと真剣な配慮をめぐらさなくちゃいかぬ、こう思います。  そこで次に、中小企業庁長官伺いますが、最近の倒産状況推移をひとつ説明を願いたいと思います。
  30. 岸田文武

    岸田政府委員 倒産件数は、昨年一年で約一万八千件という大変高い水準で推移をいたしました。最近の動きを見てみますと、件数では対前年比がマイナスを示すというような形で、やや落ちつきを見せておりますが、金額の面では、間々大型倒産が含まれたりいたしましたために、まだ情勢が流動的でございます。特に、二月におきましては、永大産業倒産というようなこともございまして、従来の記録を示したというような形になっております。今後の情勢についてもなお注目をしておかなければならない、かように考えております。
  31. 板川正吾

    板川委員 確かに一月の倒産件数は、前年一月に比較いたしまして約一割近く減っております。しかし、昨年の倒産件数それから負債総額は、過去に例がないほど非常にふえておることを考えなくちゃならぬと思います。たとえば四十九年に一万一千七百件の倒産、そして負債総額が一兆六千五百億、五十年は一万二千六百件、そして一兆九千億の負債総額、五十一年はぐっと上がりまして一万五千六百件、二兆三千億の負債総額、五十二年は一万八千五百件、三兆円にわたる負債総額になっておるわけでありまして、企業倒産が非常に多くなってきておる、しかもその相当部分中小企業と言われるものである、こういうふうに考えなくちゃならぬと思いますが、本法案成立をして予想どおり過剰設備廃棄された場合に、工場閉鎖等関連中小企業に及ぼす影響をどういう程度に考えておりますか、また、それに対するどのような対策を用意しておるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  32. 岸田文武

    岸田政府委員 御承知のとおり、中小企業は長い間不況で苦しんでおるわけでございますが、中小企業に聞いてみますと、やはり親元がしっかりしていないとどうにもならないというような声をよく聞くわけでございます。原材料の支給の関係あるいは下請の関係等にある業者の場合には、特にそういうことが感ぜられるのかと思います。この意味におきまして、この法律ができて親元企業がしっかりするということは、長い目で見れば好ましいことであるというふうに言えるかと思うわけでございます。  ただ、設備処理される、それによって仕事が減るのではないかということも懸念されるわけでございますが、いろいろ聞いてみますと、親企業の方も現在相当過剰設備を抱えておる状況でございますので、それが即仕事の減少につながるという程度はそう大きくないのではないかという感じがいたしておるところでございます。  しかし、場合によっては問題が起こり得る、そういうような場合に備えて、この法律の運用に当たっても、特に中小企業についての配慮をお願いしたいと思っておるところでございます。もちろん、中小企業対策としてもできるだけのことをやっていきたいと思っておるところでございます。長い問の不況にある中小企業に対して、不況対策の面あるいはそれに加わって円高対策の問題、倒産対策の問題、従来からいろいろの対策を講じておるわけでございますが、これらの手段を精いっぱい動員してこれに対応していきたいと考えておるところでございます。
  33. 板川正吾

    板川委員 過剰設備廃棄する、各企業がその過剰の分だけ生産を制限するというならば、あるいは縮小されたまま、その関連中小企業はいままでより一割なら一割仕事が少なくなればいいということになると思うのです。しかし、この法律はそういう生産を制限するというところに目的を置いてない。過剰な設備廃棄するのだ、長期的に使えないようにすることが廃棄だ、こう言っているのでしょう。そうしますと、東京アンモニアのように、ある工場自体をやめさせる、廃棄する、こういうことになる場合がある。ですから、それにぶら下がっておると言うと失礼ですが、それについておる関連中小企業、結局それは事業転換をするかしなければならないのじゃないですか。事業転換をするとするならば、廃棄させたままでなくて、中小企業庁はその事業転換にどのような対策を持つかという対策を持たなければ、切りっ放しでは中小企業庁の役割りが勤まらぬじゃないですか。いかがですか。
  34. 岸田文武

    岸田政府委員 お示しのような事態に対応する手段としましては、まず一つは、仕事のあっせんの問題があろうかと思います。下請振興協会等を通じましてやっております仕事のあっせんの仕事を集中的にやるというようなことが必要かと思います。それと同時に、場合によっては、いまお話ございましたように、事業の転換を考えるとか、あるいは自分自身の過剰設備処理しまして、もっと小ぢんまりした、けれどもしっかりした体質に切りかえていく、こういった対策も必要であろうかと思います。  事業転換の問題につきましては、御承知のとおり、事業転換法を活用するということになろうかと思います。産地の状況をいろいろ聞いておりますと、かなり真剣に勉強しておられる向きもあるようでございますので、私どもも、具体的に相談に乗りながら、いい転換先があればその新天地で活躍していただけるようにお手伝いしていきたいと思っておるところでございます。  なお、自分自身の過剰設備処理につきましては、中小企業対策として特別にいろいろの助成手段を用意をいたしておるわけでございまして、これらについても幾つかの業種が現にこの問題に取り組んでおるという状況でございます。
  35. 板川正吾

    板川委員 どうも中小企業庁も、本法から生ずる中小企業に対する対策配慮というものが欠けている感じがいたします。  通産大臣にお伺いいたしますが、福田内閣の当面する最大の課題は、いかにして景気を回復して雇用の安定を図るかという点にあることは、これはもう政府の基本的な方針だろうと思うのです。過剰設備廃棄失業の増大、中小企業倒産をもたらすというような本法の図式は、内閣の課題に逆行する方向だろうと私は思う。需要に対して過剰設備があるから、それを廃棄してバランスをとるというのは縮小再生産の方向であって、景気を回復して雇用の安定を図るという方向から見れば、私は、逆の方向だろう、こう指摘せざるを得ないのです。しかし、緊急避難的行為で一時的でやむを得ないと、一歩譲ってそのように解釈しても、本法に欠ける点は雇用の安定と中小企業に対する対策、そういう具体的配慮が私はどうしても欠けていると思うのでありますが、通産大臣、いかがお考えでしょうか。
  36. 河本敏夫

    河本国務大臣 当初に申し上げましたように、この法律の一番のねらいは、構造不況業種過剰設備廃棄をいたしまして、そして需給のバランスをとっていこう、こういうことでございます。そのことによって、ひいては国民経済全体がプラスになる、こういう判断をしておるわけでございますが、過剰設備廃棄をいたしますと、当然ある程度雇用問題が起こってまいります。そこで、本法にも、国も県もそれから事業者も雇用問題には特別の配慮をしなければならぬ、こういう趣旨の規定がございまして、いろいろな計画をつくります場合に審議会で意見を聞きながらつくるわけでございますが、その審議会には労働側の代表も入っていただきまして積極的に意見を述べていただこう、このように判断をいたしております。  また、中小企業、下請企業にも影響が当然起こってまいります。その点につきましては、先ほど中小企業庁の長官が申し述べましたような方向で対策を進めていきたいと考えております。
  37. 板川正吾

    板川委員 法律の条文の中に、配慮しなければならぬとか、努めなければならぬとか、訓示規定はありますが、具体的に対策が欠けている、こう私は指摘せざるを得ないのですが、これはまた後で触れてみたいと思います。  通産大臣伺いますが、指示カルテルという言葉ですね、私は、勧告カルテルの方が、置くならその方がいいんじゃないかと思っているわけです。  私が言うまでもなく、現代社会において企業経営者は自己責任制が原則であります。企業経営者の責任中最大の決定要件というのは、設備の規模をどう決定するかという点にあると思います。景気の動向、国際、国内の経済情勢、需給状況等を予想して、みずからの責任で設備の大きさを決定する、そして莫大な設備投資を行うわけでありますが、成功すればそれは利益を得ることができるし、失敗すればそれはもちろんみずから損をするということになるわけであります。それが企業経営の原則であることは言うまでもありません。  その自己の最高の意思決定で決めた設備を、たまたま経済の著しい変動があるとはいえ、主務大臣が指示カルテルで廃棄させるということは、どうも指示という語韻が適切ではないと思います。指示というのは指令につながりますし、どうも命令的な語韻がするわけであります。設備廃棄という財産権の処分ともいうべきものを、指令的な口調で廃棄させるというのは適切じゃない。私は、勧告とした方が妥当じゃないだろうか、こう思いますが、いかがですか。
  38. 河本敏夫

    河本国務大臣 通産省としての一番の希望は、仮にこういう法律ができましても、この法律に頼らないで、構造不況業種の中でも自力で構造改善事業を進めていこうという業界が出てくることを私どもは一番期待をいたしております。中には、一、二の構造不況業種では、そういう方向で進みつつあるようであります。私どもはそういう動きを高く評価をいたしております。  それから、万やむを得ずこの法律に頼って構造改善事業を進めていこうという場合にも、安定基本計画を自主的な努力で達成をしていただくということが一番望ましいと私は思うんです。しかし、万やむを得ず、いろいろな事情でどうしてもそれができないという場合には、指示カルテルによってこれを達成するということになっておるわけでございまして、指示カルテルによるやり方というものは最後の最後である、私どもはこのように考えております。  なお、指示カルテルという言葉を使いました理由につきましては、政府委員から答弁をいたします。
  39. 濃野滋

    ○濃野政府委員 指示カルテルの指示という言葉が確かに強制的なにおいを持った言葉であることは、気持ちの問題として私も御指摘のとおりの面があると思います。ただ、先生も十分御案内のように、私どものいわゆる指示カルテルの運用は、ただいま大臣の御答弁のとおりに、私どもそういう方針で運用をしていきたいと考えておりますが、御案内のように、幾つか過去の先例等を見ましても、国が基本的な計画、この法律で申しますれば安定基本計画というような計画を定め、その計画の実施を担保するための最後の手段といたしましていわゆる指示カルテル制度というのがございますが、幾つか先例がございまして、法律的に申し上げますと、指示というのはこれが直ちに罰則に結びつくという意味での命令ではない、法律的にはそういうことでございまして、あるいは先生のおっしゃった勧告、通常の使用の言葉としてはニュアンスがございますが、法律的には指示カルテルという一つの制度が過去に例がございますので、私ども、そういう意味で、一つの仕組みとして指示カルテルという制度をとったわけでございます。
  40. 板川正吾

    板川委員 いま私が申し上げましたように、財産権の処分的な設備廃棄しろということを命令的な語韻を持つ指示というので——過去に例があるけれども、それは設備廃棄じゃないと思いますよ。だから、財産権の処分的な要因を持つ中に、命令的な語韻よりも勧告と言った方が適切じゃないだろうか、私はこういう見解を持っております。ひとつ御検討を願いたいと思います。  そこで次に、通産省と公取に伺います。  法律に入りますが、第四条で事業者の自主努力を規定いたしております。第五条で、事業者が自主努力しても廃棄目的安定基本計画目的を果たせないときは主務大臣は指示カルテルを出す、その指示カルテルに従った事業者は第八条で届け出をする、それに信用基金から債務保証をする、こういう図式ですね。  そこで、順次伺いますが、自主努力とは事業者のどのような行為を予定しているのか。自主努力というのはどういうこととどういうことを予定しているのか、伺っておきたい。そして、自主努力をした事業者に本法はどのように機能するのでしょうか。端的に言いますと、安定基本計画で二〇%過剰である、こういう基本計画の内容が告示をされる、個々の事業者が自主的に二〇%を廃棄した場合に債務保証の対象となり得るかどうか、そういう点で伺っておきます。
  41. 濃野滋

    ○濃野政府委員 四条の自主努力は、私ども、幾つかの方法と申しますか、やり方があると思いますが、一つは、定められました安定基本計画のラインに沿いまして、その計画を一つのガイドラインと申しますか目標といたしまして、それぞれの事業者が単独で設備処理を進める場合、これはたとえば設備処理等を技術的に見ましてもプロラタで進められるような事業、業界につきましては可能ではないかと思いますが、その場合、あるいは業界業種企業のグループ別にこの問題を取り上げていく場合もあると思います。第二には、たとえば中小企業団体法、独禁法の不況カルテルの運用というような、現行の仕組みを使いまして共同して廃棄を進めていく場合もあると考えております。  第二に、こういう自主的な努力と債務保証との関係でございますが、債務保証は、いわゆる指示カルテル、指示に基づく共同行為ばかりでなく、当然のことでございますが、四条による自主的な努力によって設備処理を進めていく場合にも、債務保証の対象にし得るということを私どもは考えております。
  42. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、二〇%なら二〇%の設備が過剰だからこれを廃棄するという安定基本計画が発表され、個々の事業者が自主努力で二〇%を廃棄する場合に債務保証の対象となるわけですから、それはわかりました。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕  それからもう一つは、独占禁止法二十四条の三による不況カルテルの設備制限と中小企業団体法十七条による設備制限、協同組合や商工組合が自主的に廃棄する場合、本法の対象となって債務保証の対象となるということでよろしいですね。もちろん中小企業の場合には別の方法の方が有利であることは事実ですが、自主的にやる場合、一応本法に乗るのだ、四条の解釈はそれでいいですか。公取もいいですか、公取もひとつ答弁してください。
  43. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまのラインで結構でございます。
  44. 橋口收

    ○橋口政府委員 通産省と同じ考え方でございます。
  45. 板川正吾

    板川委員 六条に一号から四号まで共同行為の内容がうたわれております。指示カルテルの変更、共同行為の指示の変更等、これは七条であります。十二条が公正取引委員会との関係でありますが、この六条、七条、十二条の関係について伺っておきたいと思います。  七条で、主務大臣は、指示カルテルの内容が六条の共同行為の内容に適合しなくなったときは、その指示カルテルを変更し、または取り消さなければならないと規定してあるわけであります。そこでお伺いしたいのは、六条の四号は、「当該共同行為の指示を受けた事業者の従業員の地位を不当に害するものでないこと。」と規定されていますが、当該従業員の地位を不当に害するということは、一体だれがどのような基準で判断をされるのか、この点についてお答え願いたいと思います。
  46. 濃野滋

    ○濃野政府委員 第六条の共同行為の内容として四つの要件が挙がっておりまして、この四つの要件は、先ほど御答弁申し上げましたように、従来いわゆる指示カルテル制度等に当たりまして共同行為の内容として掲げられておる要件、大体こういうものが挙がっております。  第二に、この四号の「事業者の従業員の地位を不当に害するもので」あるかどうかの判断は、この共同行為が第八条によりまして届け出が行われますので、届け出がされました段階で判断をいたしますのは、第一義的には通産大臣等の主務大臣が判断を行うことになると思います。
  47. 板川正吾

    板川委員 第六条の一号から四号まであるわけですが、事業者の従業員の地位を不当に害するもので、該当しなくなったときは変更または取り消しをさせることになるわけですが、従業員の地位が不当に害されるというのは、主務大臣が変更または取り消しをする場合にどのような基準を持つのですか。
  48. 濃野滋

    ○濃野政府委員 先ほど私は、四号の判断をだれがするかという点で、第一義的には主務大臣と申し上げましたが、そもそも共同行為自身が、この各号に適合しない場合には私的独占禁止法の適用除外との関係等についても問題が生じてくるのではないか、こう基本的に私は思います。しかし、それは別といたしまして、従業員の地位を不当に害するかどうか、特にそれが変わったものであるかどうかというのは、一般論としてはなかなかお答えがしにくうございまして、個々のケースにつきまして判断をしなければいかぬと思います。そういうむずかしい問題でございますが、一般的に申し上げますと、たとえば「従業員の地位を不当に害するものでない」ということの中で一つ考えられますのは、非常に不当に、たとえば本来そこまで従業員に対して雇用調整等をやる必要がないのに、あるべき当然考えるものを越えてそういう雇用調整が行われるとか、あるいは従業員自身の調整の仕方の中に問題がある、こういう場合が抽象論としては考えられるのではないかと私は思います。
  49. 板川正吾

    板川委員 頭のいい濃野局長にしては言っていることがどうもぴんと来ない。じゃ、武士の情で、後でこの点を明確に答弁してください。  次に、第六条の二号、三号について伺います。  第二号には、「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」三号では、「不当に差別的でないこと。」これは公取が判断を示すような感じがいたしますが、この二号、三号も主務大臣が判断するのでしょうか。この該当しなくなったときの手続、あるいは判断の基準についてお伺いをいたします。
  50. 濃野滋

    ○濃野政府委員 第六条の二号は一般消費者と関連事業者に対する関係、三号はその内部での関係を規定する規定でございまして、過去にも、先ほど申し上げましたように、大体同様の問題がございます。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕  まず、第二号についてでございますが、そもそも安定基本計画に一般消費者や関連事業者の利益を不当に害するというものを定めることは、事実上あり得ないと私どもは考えます。したがって、その安定計画を実施しろという共同行為の指示も、それからそれに従って行われる共同行為も、本来的にこの規定に該当するようなものは、私ども具体的にはなかなか考えられないと思います。それが事実と申しますか、運用上はそうだと私思いますけれども、積極的にこういう規定を置くことによりまして、法律によって、こういう共同行為の主務大臣の指示、これの行き過ぎによる一般消費者に対する影響あるいは関連事業者に対する悪影響、これを防止するというのがこの立法の基本的な趣旨である、こう申し上げられるのではないかと思います。  なお、関連事業者というのは、これは非常に広い言葉でございますから、ユーザー、それから下請事業者等と取引関係のある事業者を全部指すと思いますし、それから、「利益を不当に害する」というのは、これによって製品の価格が急に著しく上がった、それによって一般消費者、関連事業者の利益を害するというような場合が一番具体的なケースだと思いまして、後の「変更等」で予想されるのは、たとえばそういうことがあり得るのではないか、こういうふうに考えます。  それから、三号の「不当に差別的でない」ということ、これは、共同行為を実施する事業者相互間で過剰設備処理の内容が公平に行われるべきであるということの趣旨から入っているわけでございまして、したがって、プロラタ方式等についてはそういうことは問題がない、問題が起こることが少ないと思いますが、しかし、業界によりましては、事業者がそういう一律の設備処理が非常にむずかしい業界もあると思います。こういう場合には、それ自身が不当に差別的ではございませんけれども、実質的に、たとえば各事業者の受ける負担が本人の意思に反して公平でないというような場合にはこの問題が起こると思いますし、後の変更命令等も、実際の共同行為の内容でそういう問題が生じたときに変更という事態が起こってくるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  51. 板川正吾

    板川委員 私は、だれがどこでどのような基準でこれを判断するのでしょうか、こういうことを聞きたいのです。ここに書いてあることはわかるのですが、これはだれがどういう基準で決めるのですか。
  52. 濃野滋

    ○濃野政府委員 これは先ほど御答弁しました四号の場合と同様に、この共同行為の各号の判断は、一義的には主務大臣がまず——これは第五条で、安定基本計画が実施をされる、これを担保するために共同行為を実施すべきことを指示するわけでございますが、共同行為の内容が第一義的な問題でございまして、このときには主務大臣が主務大臣の判断として、この一号、二号、三号、四号に当たっているかどうかという判断がまず第一義的にあると思います。それから第二は、先ほど申し上げましたように、この共同行為が現実にはこの指示に従って行われ、届け出が行われてまいります。届け出の内容が一体その指示の内容と合っているかどうかというところで、第二義的と申しますか、主務大臣の判断があり得る、こういう点を、先ほどの問題も含めまして、第一義的には主務大臣の判断と、こう私考えております。
  53. 板川正吾

    板川委員 公取はこの問題にどういう関連を持ちますか。
  54. 橋口收

    ○橋口政府委員 法案第六条の共同行為の内容でございますが、これは独禁法の立場で申しますと、共同行為を認可いたします場合のいわゆる消極要件でございます。つまりこういう要件に該当していない場合には認可してはいけない、この法案によりますと指示をしてはいけない、いわば消極要件を列記してあるのでございまして、したがいまして、そもそもの淵源は独占禁止法にあるものでございますけれども、これは私から申し上げるのはちょっとよけいなことでございますが、先ほどもちょっとお話が出ました特定繊維工業構造改善臨時措置法というのが昭和四十二年に制定をされておりますが、これが戦後の立法例としてただ一つ設備の共同廃棄についての指示カルテルの制度でございまして、この法律にも今度の法案と全く同じ内容がうたわれておるのでございまして、一から四までと同じものが入っております。繊維の法律につきましてはそのほかに五号というのがございますが、これはつけたりでございますので、およそ共同行為をやります場合の消極要件として、常にこの一号から四号まで、ことに四号の「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」というのは、特定繊維工業構造改善臨時措置法にも同じ規定が入っておるのでございまして、そういう点から申しまして、過去に行政の実例があるという点から申しまして、公正取引委員会の判断も過去の事例に即して行うことになると思います。  で、いま通産省からお答えがありましたように、まず、安定基本計画との整合性ということも見る必要がございますし、それから消費者とかユーザーとかの意向と申しますか、意見というものも聞く必要がございますし、これは現在の不況カルテルの場合等につきましても、ユーザーの団体等からの意見も徴求いたしておりますし、それから不当に差別的でないということも、公平であるかどうかという観点から検討いたしておるのでございまして、この点は従来の行政体験に徴しまして十分審査をして回答をし得る、こういうふうに考えております。
  55. 板川正吾

    板川委員 後でまたこれに絡んできますから伺いますが、では次に行って、この六条の第一号です。安定基本計画のこれが中心項目だろうと思います。「設備処理等を実施するため必要な程度を超えないこと。」ということになっておりまして、これは最初決めるときにはそうですか、今度その変更または取り消しとなる場合、必要な程度を超えるか否かという判断は、一体どのような基準でなさるのでしょうか。たとえば設備廃棄をこの安定基本計画でされ、指示カルテルで行われた。生産調整が進んで、在庫が減少して価格が上昇する。ユーザー側は、指示カルテルはやめてほしい、こういう声を上げる。しかし、業界では、たとえば過去の赤字の回復が十分でないとか、まだもうかってないとかといういろいろの理由を挙げて、指示カルテルの延長をしてほしいということを仮に通産省にお願いしてくる、陳情する、このような場合に、どのような基準でこの必要な程度を超えたか否かを判定するのでしょうか。どのような基準でそれを判定するのか、それを伺っておきたい。
  56. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの御質問は、実はその安定基本計画の変更の問題、具体的には三条の六項の問題とも現実問題としては絡んだ問題として出てくる可能性もあると思います。  その前に、私ども安定基本計画は短期の需給調整ではございませんで、業種によってそれぞれ差はあるといたしましても、いわゆる設備の長期的に見た需給関係と申しますか、設備が過剰であるかどうかの判断に立って行いますから、今後の現実の経済の動きの中で、なるほど一時的に需給が詰まったりあるいは緩和をしたりいたします波はあるといたしましても、長い目で見ました設備の過剰分を処理するということでございますので、ただいま御指摘のような質問がないように、その安定基本計画のそもそもの中身を考えるべきだ、こう思っておりますし、それは個々の業種別に審議会で慎重に検討して決めるべきだと思います。  ただ、先ほども答弁申し上げましたように、あるいはただいま御指摘のございましたように、そうは言っても短期的な問題としていろいろなケースが起こる、あるいは一時的な需給の逼迫あるいは価格の変動というようなものが起こる。それが短期的な循環的な問題なのか、この安定基本計画につながるような基本的な問題であるのか、この判断が第一に必要ではないかと思います。それが基本的な判断だということになりますれば、三条六項の問題として私どもは取り上げていかなければなりませんし、それから第二の問題は、仮に短期的な問題にせよ、共同行為の内容として六条に掲げられておりますたとえば二号の一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するかどうかという判断の問題になってまいります場合には、この六条の問題、それに絡んで七条の問題というようなのが出てくるのだろうと思います。  それじゃ具体的にどういう基準かということでございますが、これは一般的な基準をここで申し上げるのは大変むずかしい問題でございまして、やはり業種別あるいは品目別に具体的な問題として考えざるを得ない、こういうふうに私は考えております。
  57. 板川正吾

    板川委員 最初指示カルテルを通産大臣が認めるときには、六条の一号から四号まで、まあ従来もこういうことを基準としていましたから、それはそれで慎重に長期的におっしゃるように決める。しかし、慎重に長期的に決めたとしても、経済社会のいわゆる著しい変動がまたあるかもしれません。そして、廃棄したらば逆に今度は供給不足になる、廃棄の量を決めたときにはそれはそれで妥当と思っても、将来の経済社会は変動するのですから、それが廃棄したのが多過ぎて、需要に対して生産が追いつかなくなり、そして価格が上がる、こういう事態がいままでもずいぶんあるのじゃないですか、公取だって通産省だって。公取の四十七年の鉄鋼のカルテルなんかもそうですよ。そしてしまいには、お互いにカルテルで生産制限しておきながら、増産してくださいなんて要請を通産大臣がしなくちゃならないという事態もある。経済の動きは予測しがたいものがあるでしょう。だからその場合に、今度は変更あるいは取り消しをするというときに、どういう判断でこれを変更したり取り消したりするのですかと、こう私は聞いている。それをどうも判断が非常にむずかしいなんて言われたんじゃ困る。答弁ができないというならば時間を待ってもいいですよ。整理して判断を示してもらいたい。
  58. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私、その判断の基準を具体的に申し上げるのは大変むずかしい問題だと申し上げました。やや抽象的に申し上げますれば、ただいまちょうど先生御指摘のように、私ども安定基本計画を慎重に決めるといたしましても、安定基本計画を単に自主的に実施するばかりではなくて、この五条によるいわゆる指示カルテルの事態まで進んでしまった、そして共同行為が行われたという事態の場合に、ただいま御指摘のような価格の著しい急騰の問題が出る、あるいは安定基本計画を慎重に決めましたけれども、おっしゃるとおり取り巻く内外の経済環境が大変大きな変動をいたしまして、長期的に見てもこの業種はもはや当初予想していたような過剰設備処理という事態は全くなくなったという判断が出てくる、そういうふうに長期的な判断から見まして、安定基本計画を作成したりあるいは共同行為の指示をして共同行為が行われたり、その事態が基本的に変わってしまったような場合、それから短期的に見ましても、この一号、二号、三号、四号の各号、特に二号のいまの例でございますと関連事業者の利益とかあるいは一般消費者の利益を不当に害するおそれのあるような経済情勢が出てきた場合、これは七条でいう変更、変更というよりは、ただいま申し上げましたようなケースはむしろ取り消しのケースに該当すると思いますが、七条によって共同行為の指示の変更等が行われる、判断の基準は、抽象的に申し上げればそういうことではないかと考えております。
  59. 板川正吾

    板川委員 だから、私は、切めから、六条、七条、十二条の関係で聞きますよと、こう言って、変更または取り消しを中心に聞いているのです。その五条の内容ですけれども、出発するときじゃない、変更するときを中心に聞いているのですよ。必要な程度を超えた場合には変更または取り消しをするんでしょう。七条にあるでしょう。だから、では必要な程度を超えたというのはどういう基準でおやりになるのでしょうか、これを私は聞きたいのであります。「必要な程度を超えない」というのはまことに抽象的ですから、法律ではこう書かなくちゃならないかもしれないし、例文があるから同じように書いたのでしょう。しかし、これを運用する通産省とすれば、どういう基準でやりますからという細則が用意できないというのはおかしいじゃないですか。  それで局長、三条の六項について触れたから言いますけれども、三条の六項は、関係審議会意見を聞いて変更しなければならない、変更するときは三条の六項で関係審議会意見を聞くとあるが、取り消しの場合にはどうされるのですか。これは審議会の意見を聞かないのですか。
  60. 濃野滋

    ○濃野政府委員 指示の変更の場合、これは緩和をする場合が大部分であろうと思いますが、この場合には審議会の意見を聞かない、聞く必要がないというのが法律のたてまえでございます。ただ、これを強化をするという場合が仮に考えられるとすると、それは新しい指示として審議会の意見を聴取する必要がある、こういうふうに判断、解釈いたしております。
  61. 板川正吾

    板川委員 いいです。変更の場合には関係審議会意見を聞くが、取り消す場合には関係審議会意見を聞かない、それはそれで、その意味はわかります。  公取に伺います。指示カルテルの内容は六条ですが、六条の一号から三号に該当しなくなったとき、指示カルテルに同意した公取が主務大臣にカルテルの変更または取り消しの措置を請求することができる、こう十二条にありますが、仮に公取が取り消しの措置請求をしたときにどうなるのでしょうかということを聞きたいのです。主務大臣は公取の同意があったから指示カルテルを出せた、そのいわば共同決定の一方の当事者が取り消しの請求をしてきたのだから、直ちに指示カルテルを主務大臣は取り消すのでしょうか。三条の六項の解釈からいって、公取が、この六条の共同行為の内容について一号から三号までの条項に該当しなくなったから取り消してほしい、こういう要請があった場合、直ちに取り消しをいたしますか、この点を伺っておきます。
  62. 橋口收

    ○橋口政府委員 私の方から先にお答えを申し上げたいと思いますが、ちょっと元に戻りまして、六条の共同行為の内容に関連してどういう判断をするかという問題をめぐっての議論が展開されておったのでございますが、公正取引委員会は、法律の規定によりまして同意を行うという立場にございますので、ある意味では共同責任でございます。したがいまして、私どもの考え方といたしましては、指示カルテルの内容が安定計画に沿っておることはもちろんでございますが、その場合にもできるだけ安全率を見てほしい、つまり、だれが見ても過剰だと目される部分についての廃棄の指示であってほしい、こういう基本的な考え方を持っておるわけでございまして、先ほど先生がおっしゃいましたように、将来の経済社会の変動を一〇〇%展望することが可能かと言えば、これはもちろん可能ではございません。しかしながら、現時点において、つまり指示カルテルの出る時点におきまして、いわば人事を尽くしていろいろな展望なりあるいは見通しをいたしまして、その範囲で絶対的に過剰になるだろうと目される部分について同意したい、こういうふうに考えております。  したがいまして、大きな経済変動が生じた場合には、そういう判断をいたしたものにつきましても、将来取り消しとか変更とかいうことがもちろん生じ得ると思うわけでございますが、ただ、その場合にも、強化の方向に向かっての変更ということは恐らくは起こり得ないのであると思います。つまり、緩和をする方向へ向かっての変更とかあるいは取り消しということが内容になると思うわけでございますが、これは主務大臣が行われました指示でございますから、その指示の消却要件に該当するような状態になりました場合には、もちろん指示権をお持ちの主務大臣におきましても十分事情の変更ということを御勘案になると思いますし、また、公正取引委員会法律の規定によりまして仮に措置請求をお願いいたしました場合には、当然判断においてそう大きな違いはないというふうに確信をいたしますから、恐らくは主務大臣におかれましても、適宜、また、機を失せず措置をとられるものというふうに私は考えております。
  63. 板川正吾

    板川委員 通産省、お願いします。
  64. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この十二条の第三項の公正取引委員会措置請求権、これの発動があった場合に各主務大臣としてはどうするかということでございますが、私ども、ただいま公取委員長の御答弁にございましたように、あるいは先ほどから申し上げておりますように、第六条の一号、二号、三号の要件というのは、これは共同行為の指示の場合の要件であると同時に、その後共同行為が有効に独禁法の適用除外として継続をしていく上での要件であると考えておりますから、私ども、まず主務大臣として、この共同行為の内容を経済の実態と合わせてどうなのかという御判断を続けていくべきだと思いますし、みずからの判断で、先ほどからの御質問にございます。条の共同行為の内容の変更とかあるいは取り消しが必要な場合には、速やかに対処することが必要だと思います。  まして、この十二条の三項によりまして、公正取引委員会から、六条の一号から三号までの規定に適合しなくなったというような御判断で取り消し、変更の要求があった場合には、当然でございますが、速やかにその要求に対処して、七条による共同行為の指示の変更とか取り消しというような必要な手を打たなければならない、こういうふうに考えております。
  65. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、十二条の三項で公取からそういう措置請求があった場合に、取り消しの場合は、共同決定の当事者の一方がおりたのですから、三条の六項で直ちに取り消す、変更の要請の場合には、審議会を開いて、そうして審議会の意見を聞いて変更する、こういう手続がとられる、こう考えてよろしいですか。
  66. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  十二条の三項によるいわゆる措置請求がございました場合には、これは、第五条一項の規定の指示に従って行う共同行為の内容が、六条の要件に該当しなくなったという御判断で公取からいただくわけでございますから、そういう措置請求の要請があった場合には、七条によって、五条の指示の内容の変更ないしは取り消しを行うことになると思います。  この七条によります共同行為の指示の変更と取り消しにつきましては、先ほど御答弁いたしましたように、審議会の審議を経ないということが法律上の仕組みになっております。
  67. 板川正吾

    板川委員 わかりました。  団体法の場合には、カルテルの取り消しの措置請求が公取からあった場合には、公取はその措置請求をした場合は直ちにこれを告示する、告示一カ月後には自動的に失効する、こういう規定がある。団体法によるカルテル取り消しの措置請求については、一カ月間の期限がある。今度の場合には、取り消しの場合には直ちにそれをやるので、そういう一カ月とかある一定の期間の期限は考えていない。ただし、変更の場合は審議会の意見を聞いて変更する、こういうことになるわけですから、変更の場合は時間がかかります。こういうふうに考えていいわけですね。
  68. 橋口收

    ○橋口政府委員 初めに私の方からお答え申し上げたいと思いますが、中小企業団体法の規定の趣旨は、民間が行いました共同行為を主務大臣が認可をするという形になっております。したがいまして、あくまでも民間の行為でございますから、それに対して主務大臣が認可した行為について公正取引委員会意見を言うということでございますので、ああいう措置請求の最終担保の規定があるわけでございます。  今度の場合は、指示カルテルの指示の変更ないし取り消しという国の行為でございますから、したがいまして、同じ政府の中の政府機関意見を申したことに対して、法律の規定に基づいて主務大臣が反応されるということでございますから、したがいまして、中小企業団体法のような規定は不要である。さっき申し上げましたように、また、通産省からお答えございましたように、機を失せず速やかな御措置がいただけるもの、こういう確信の上に立ってそういう規定が置かれていない、こういうことでございます。
  69. 板川正吾

    板川委員 通産省、いいですね。
  70. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの公正取引委員会委員長の御答弁と同じでございます。
  71. 板川正吾

    板川委員 次に、通産省、公取に伺いますが、本法による「設備処理」という定義ですが、第二条で、「廃棄若しくは長期の格納若しくは休止(廃棄に代わるべき設備の生産能力の縮小の態様として妥当なものに限る。)」という非常に厳しい規定になっており、「又は譲渡により設備が生産の用に供されないようにすることをいう。」これは第二条の規定にあるわけです。大変念入りに設備処理ということを規定しておりますが、本法で言う「設備処理」という定義と、独占禁止法の二十四条の三の不況カルテルの「設備の制限」、中小企業団体法の十七条の商工組合が主務大臣の認可を受けて行う「設備に関する制限」、この三つの規定の定義はどこが違うのでしょうか。その違うところを明らかにしていただきたいと思うのです。公取も通産もこれをどういうふうに扱っているのか、伺っておきたいと思います。
  72. 橋口收

    ○橋口政府委員 初めに、一般的に申しまして、独占禁止法が制定されましたのは昭和二十二年でございますし、二十四条の三の規定が入りましたのは昭和二十八年でございまして、昭和二十年代の法律でございますから、したがいまして、規定の仕方自体がかなり抽象的と申しますか、かなりおおらかな規定になっております。その後、三十年代、四十年代になりまして法律の規定の仕方が精緻をきわめるようになってまいりましたので、今回の法案の内容は、いまお示しがございましたように、詳しくまた精密に内容を限定してございます。  そこで、私ども所管いたしております独占禁止法の「設備の制限」の考え方でございますが、これは設備の事業活動に関する一切の拘束と申しますか、一切の行為を含んでおるのでございます。したがいまして、単に設備を凍結するとか封印するとか格納するとか、そういう行為ももちろん入りますし、それから設備の新増設も入りますし、それから設備処理廃棄まで含む一切の行為が「設備の制限」という言葉で包含をされておると考えております。これは独占禁止法を理解いたします場合に、二十四条の三のみではなく、第二条の六項というのがございまして、およそ設備を制限する行為、つまり設備に関する企業の行う行為に対して拘束を行います場合には、これは不当な取引制限に該当する、こういう第二条の六項の規定もございますので、私どもの理解としては、一切の行為が入る、こういうふうに考えております。
  73. 板川正吾

    板川委員 通産省答弁してください。
  74. 濃野滋

    ○濃野政府委員 「設備処理」あるいはただいまの独占禁止法の解釈につきましては、公正取引委員会が独禁法の法的解釈をなさる役所でございますから、その解釈に私ども従っていきたいと考えておりますが、この法律は、先ほど先生御指摘のように、「設備処理」という内容を具体的に書いてございまして、若干重複いたしますが、一つは「廃棄」、廃棄というのは、その設備を物理的にたとえば破砕をするというふうな処理の仕方をする廃棄。二番目は「長期の格納若しくは休止」ということでございまして、「格納」というのは、物理的に本来あるべき設置してある位置から取り外して、長期的に一部の場所に格納、収納することでございますし、「休止」というのは、設備を一応そのままの状態で設備の主要なポイントとなる部分を取り外しまして、運転はできないようにいたしまして放置をすることと私ども考えておりますが、そういう長期の格納または休止、しかもその場合に、法律にございますように、「廃棄に代わるべき設備の生産能力の縮小の態様として妥当なものに限る。」という制限をつけております。それから「譲渡」、譲渡と申しますと、本来設備処理ということを、その企業、事業から離れることをもってある意味では設備処理かもしれませんが、譲渡をされたものがいろいろなかっこうで実際上の能力がその後も継続して発揮し得る状態というのは問題でございますので、譲渡された設備廃棄されることが明らかな場合、たとえば共同廃棄事業等で共同廃棄が一定の期間に進んで、それが共同して私がいま御説明をしました第一の廃棄というような手続がとれることがはっきりした場合に限るということで、この法律対象としての「設備処理」の内容は、この三点に明確に記してあるわけでございます。
  75. 板川正吾

    板川委員 団体法による「設備に関する制限」という定義は、どう違いますか。
  76. 岸田文武

    岸田政府委員 従来、この「設備に関する制限」の解釈としましては、設備の登録、設備の封印、それから操業の短縮、それから新増設の制限、大体こういうことを内容として運用してまいってきたところでございます。
  77. 板川正吾

    板川委員 そうしますと、団体法の中の「設備に関する制限」というのは、設備廃棄は含んでない、こういうふうに解釈してよろしいんですか。たとえば独禁法上の「設備の制限」という中には、これは広く解釈をして廃棄も当然含まれる、こういう解釈であります。本法による「設備処理」とは、ここに精密に規定してあるとおりです。ですから、「設備処理」と「設備の制限」と団体法で言う「設備に関する制限」——団体法の「設備に関する制限」の中には設備廃棄は含まれてない、こういうふうに解釈をしてよろしいのかどうか。この定義の内容が公取と通産省の間で見解が一致してないと、主務大臣が安定基本計画を定めてカルテルを指示するために公取の同意を求めたときに、設備制限の定義の内容に食い違いがあると食い違いのおそれがあると思うからでありまして、通産省は独禁法では設備廃棄はできないんだと解釈していると聞いておったものですから、この三つの法律の似たような表現がどこがどう違うのかと思っておったのですが、団体法では「設備に関する制限」というカルテルの中で廃棄は含まれてない。なぜこういうふうに廃棄は含まれないのか、その理由はわかりますか。
  78. 岸田文武

    岸田政府委員 「設備に関する制限」ということを字句どおり解釈しますと、かなり幅の広い解釈が可能であると考えられます。その意味におきまして廃棄も含み得るのではないかと考えられますが、ただ、実際問題といたしましては、従来の運用が大体協同組合の事業というような形でやっておりまして、この辺、廃棄を含むのか含まないのかということについて、十分詰める機会もないままに今日に至っておるというのが現状でございます。
  79. 板川正吾

    板川委員 私の聞くところによりますと、団体法では、御承知の五十五条、五十六条でアウトサイダー規制ができるようになっておる。アウトサイダー規制が加えられる法体系の中で、設備廃棄をアウトサイダーまで規制をすることは憲法違反である、こういう論理があるために団体法では「設備に関する制限」の中に設備廃棄は含まないと解する、こういう解釈があると聞いておるわけですが、それはその解釈が本当じゃないですか。
  80. 岸田文武

    岸田政府委員 御指摘の点が解釈上は一つの問題であろうと思います。自主調整まではできる、しかし、アウトサイダー命令までかけるのは行き過ぎである、こういうふうに解釈すべきであるか、あるいはアウトサイダー命令もかけられるようなものはそもそも自主調整も問題があるのではないか、この二つの解釈があり得るだろうと考えておるところでございます。従来協同組合でやっておりましたために、その辺が法律的に可能であるかどうかというような点について、十分の詰めが行われる機会のないままに今日に至っておるのが現状でございます。
  81. 板川正吾

    板川委員 それでは、せっかくの機会がありましたから、ひとつその見解を検討して、しかるべき時期に報告をしていただきたい、こう思います。  次に、公取に伺います。  昨年独禁法が改正されまして、カルテル違反に対して課徴金をかけられるようになりました。二十四条の三の不況カルテルの解釈と運用について公取は変更したと言われておりますが、もう一度、その変更した理由、内容についてこの際説明をしていただきたい、こう思います。
  82. 橋口收

    ○橋口政府委員 独占禁止法二十四条の三の不況カルテルに関する解釈を変更したのではないか、こういう御趣旨の御質問でございますが、この解釈につきましては、先ほど来申し上げておりますように、「設備の制限」というものを広範な解釈が可能であるという考え方を持っておったのでございます。ただ、現実の運用の方針といたしましては、昭和二十八年にこの制度が制定されまして以来、できるだけ限定的にこれを行う、こういう方針をとって昨年の秋まで推移をいたしてまいりましたが、御承知のような構造不況業種を抱えた日本経済の現況からかんがみまして、従来の不況カルテルについての運用方針のみでは十分対応できないのじゃないか、そういう感触を強く持つに至ったのでございます。  これは余談でございますが、不況カルテルの審査をいたしておりまして、いわゆる適正在庫率になりましても依然として商品の市況が回復しない事例が続出してまいりました。いろいろ考えてみますと、在庫率が調整されたにもかかわらず市況がよくならないということは、どうもその背後に過剰設備があるのではないか、つまり生産能力としての過剰設備のあることが結局商品の市況の回復をおくらせているという本当の原因ではないか、こういう認識を持つに至りましたので、仮に構造的な不況業種のような業種について業界で共同して設備廃棄したい、そういう希望なり申請があった場合に、一体公正取引委員会はどのように対応するか、そういう問題意識に基づきまして、従来の四分の一世紀にわたる運用の方針に対しても検討を加え、これを修正したものでございます。  したがいまして、解釈、方針を変更したということではなくて、従来公正取引委員会がみずからに課しておりました自己制限と申しますか、あるいは運用方針と申しますか、みずからに課した制約条件を緩和したというふうに考えております。
  83. 板川正吾

    板川委員 緩和したといいますか、いわゆる不況カルテルの解釈、運用について経済社会の実態に合うように公正取引委員会で変更したことは、そのことはそれで私は異論を言うつもりじゃありませんが、関係行政官庁、たとえば通産省、そういうところにその辺の運用の変化を連絡されておると思いますが、どうも通産省の方は、逆に、いやそれはできないはずだ、こういうふうに一方的に解釈しているうらみがあるのじゃないかと思いますので、政府部内で連絡を密にしてもらいたいと思うのです。  それに関連して、これは公取と通産省に伺うのですが、実は昭和四十一年に、通産省の事務次官、公取の事務局長との間で二十四条の三の不況カルテルの運用について合意した覚書がある。「産業の構造改善の推進に関する独占禁止法の運用について」通商産業事務次官から公正取引委員会事務局長あてに照会の文書を出した。これが四十一年十一月二十四日、それで公取は、四十一年十一月二十八日に、「照会のあった標記の件については、異存ありません。」こういう運用に関しての合意事項があった。  その合意事項の中で、「過剰設備処理について」という項目がありまして、これは「(1)に準じて取り扱う。」ということになるのですが、(1)に準ずるというのは、「現在および近い将来の需給関係に実質的な影響を与えないものであれば、独占禁止法上問題とされることはない。」と解釈してよいかという通産省質問に対して、公取はオーケーと言っているわけですが、その覚書は今日なお有効なのでしょうか。有効でないとすれば、先ほどの理由もありますが、もう一遍確認の意味で理由を明らかにしてもらいたい。  実は通産省関係の方、OBですが、構造不況法案のときに、第一次構造不況案が大変統制的な内容を持ってきたときに、なぜこんな法律を出すんだ、こう私は思っておったらば、その陳情に来て、実は四十一年の通産、公取の合意事項があって、これが生きているのでこの法律を出さざるを得ないんだ、こういう意味の話があったものですから、四十一年のこの覚書を読み直してみて、さてこれが一体あの統制色の厳しい第一次構造不況法案を出さざるを得ない原因になったかどうかわからぬものですから、この辺の感触について通産、公取から意見を承っておきます。
  84. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私から先に御答弁申し上げます。  ただいま御指摘の四十一年の覚書、これは覚書と申しますより、ただいまお話のございましたように、私ども通産省の事務次官から公正取引委員会の事務局長あてに文書を出しまして、それに対して返書をもらうというかっこうの確認事項でございまして、私ども、本件について、先生の御質問のようなこれが生きておるか生きていないかというような議論というかお話し合いを、公取当局とまだやっておりません。  しかし、私は、この往復文書は、ただいま御指摘のように、現在及び近い将来の需給に実質的な影響を与えない過剰設備処理が独禁法上問題にならぬのだということのいわば確認が中心だったと思いまして、この私どもの方の文書を見ましても、最後のところに、「ついては、念のため、当省の理解している」云々という書き方にしてございます。  それで、なるほどこれは十一年前の、十二年前になりますかの文書でございまして、出しました当時の情勢といまの情勢はまたいろいろ違っている面があると思いますし、いま公取委員長の御説明のように、不況カルテル一つの運用をとりましても、率直に申し上げまして、むしろ非常にシビアな、期間も非常に短期に限られて公取は運用をしてこられましたが、むしろ最近の情勢によりまして、昨年以来不況カルテルの運用等も非常に弾力的な運用に変わられておる。これは経済の実態に合わせてできるだけ弾力的な運用を図ろうという公取の御意向だと思います。  したがって、十一年、十二年前のこの覚書は生きておるか生きていないかという議論を、形式論としていたしますといろいろな意見が出ると思いますが、私は、ただいま申し上げたような意味での基本的な確認をしたポイントとなる事項、つまり実質的な影響を与えない設備処理が独禁法上問題にはならぬという精神はそう変わっていないんじゃないかと思います。  ただ、この文書自身が生きておるか生きていないかということを議論することは、余り実質的な意味はございませんで、今度の法律等も、経済情勢の変化等に応じまして、当時割り切れた、クリアにカットできた問題も、非常にいろいろな問題が混在していて、当時とはその判断等も非常にむずかしくなってきておる。したがって、今度のような法律をつくる、しかもこの法律を中心に公正取引委員会と個々のケースについては十分な連絡をとって、一番経済の実態に即した独禁政策と産業政策との間の調整を円滑にやっていくことが何よりも大事なことではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  85. 橋口收

    ○橋口政府委員 通産省からのお答えで一〇〇%結構でございますが、多少補足して申し上げますと、客観情勢の変化ということにつきましてはいま御説明がございましたから、つけ加えて申し上げることはございませんが、そのほかに考慮すべき事項といたしましては、昨年の独禁法改正の結果として、独禁政策の強化が行われたという事情の変化がございます。したがいまして、一体この文書が有効であるか有効でないかという議論をいたします場合の考慮の要件といたしまして、法制の変化ということを念頭に置く必要があるのじゃないかということがございます。  それからもう一点だけ申し上げますと、これは独占禁止法の解釈についての有権的な見解を示したものというものではございません。つまり、現在及び近い将来の需給に影響がなければ独占禁止法上違法ではないという有権的な解釈を示したものではございません。これはその後の東京高等裁判所の判決等から見ましても、競争制限というものはやはり形式的な純粋性をもってとらえる必要があるという見解でございまして、実質的に競争制限によってどういう利益が失われるか、そういう実質判断は本来適当でないというのが裁判所の見解でもございますし、私どももそういう見解をとっておるのでございまして、あくまでも昭和四十一年現在における公正取引委員会の独占禁止法運用についての姿勢をあらわしたものにすぎないというふうに考えております。  その二点だけつけ加えさせていただきたいと思います。
  86. 板川正吾

    板川委員 四十一年にこういうことがあるから、あたかもこれが将来にわたって独禁法の有権的な解釈の基準だと思われては困る、独禁法も強化改正もされましたし、運用についてもおのずから新しい運用の方式がありますということだろうと思います。  公取に伺いますが、先ほど自主努力の中で、独禁法の二十四条の三の不況カルテルでも、設備廃棄する場合には債務保証がなされる、こういう道があるわけでありますが、そうしますと、数量カルテルと設備カルテルの併用が可能かどうか、また、数量カルテルは途中で市況を見て打ち切ることが必要だと思いますが、その場合に設備廃棄カルテルを残すというようなやり方、これを併用して認可をして、しかし別々に処理する、こういうことが独禁法の運用上可能だろうと思うのですが、念のために伺っておきます。
  87. 橋口收

    ○橋口政府委員 結論から申し上げますと、可能でございます。現在でも生産数量カルテルと設備制限カルテルが併用している例がございますし、いまお示しの事例は、生産数量の制限カルテルと設備の共同廃棄カルテルとの併存が可能かということでございますから、これは要件さえ充足しておれば可能であると私は考えております。  それからさらに、生産数量カルテルが必要でなくなったような状態の場合に、なおかつ設備の共同廃棄のカルテルが存在し得るかということでございますが、これも、独占禁止法の二十四条の三の要件を充足しております限りは、存置が可能であるというふうに考えております。
  88. 板川正吾

    板川委員 中小企業庁長官伺いますが、自主努力の中で商工組合などが団体法の規定で共同設備廃棄をする場合、中小企業振興事業団からの融資の特例があります。必要資金の九〇%以上を融資します。ただし、繊維については九五%まで融資をします。そして無利子であり、据え置き期間四年を含め十六年以内に返済すればよろしい。組合員の設備を買い上げるときは、簿価の三倍、新品の二分の一以下の価格で買い上げすることができるという中小企業振興事業団の融資の特例がありますが、これは本法の主務大臣の安定基本計画にのっとってやった場合に、中小企業が共同設備廃棄した場合にこのような特例措置がとられておるのでしょうと思いますが、いかがですか。
  89. 岸田文武

    岸田政府委員 この法律成立しました暁において、安定計画において設備廃棄が定められる場合に、中小企業がどういうふうな位置づけになるかということはこれからの運用の問題でございますが、現に幾つかの業種につきましては、設備の共同廃棄事業というものが進行いたしておりますし、また、五十三年度において計画をいたしておるものも幾つかございます。正確には、五十二年度に進行中のものが五業種、それから五十三年度から新たに発足を予定しておるものが七業種でございます。
  90. 板川正吾

    板川委員 本法で主務大臣の安定基本計画にのっとって中小企業者の団体が設備を共同で廃棄しようという場合に、中小企業振興事業団からそのような優遇措置がとられております。そういう道があります。そして現在進行中のものが五業種あります。こういうわけですね。  その中小企業振興事業団の融資の枠は、どのぐらい予定されておるのですか。
  91. 岸田文武

    岸田政府委員 五十二年度におきましては、大体事業規模六十七億四千万円、それから五十三年度は事業規模六百億円程度というふうにとりあえず考えておるところでございます。この事業規模に見合う必要な財政資金を事業団から供給をするという形になっております。
  92. 板川正吾

    板川委員 本法が債務保証で一千億何がしですから、六百億のそういう非常に条件のいい共同設備廃棄をする場合の措置があるなら、これは中小企業者はそういう中小企業振興事業団の融資を受けた方がはるかにいい、こういうことが言えると思います。  そこで、通産省伺いますが、本法は大企業設備廃棄することを目的として立案されたものと考えていいのか、こういう点を念のために伺います。
  93. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法律自身は、必ずしも大企業あるいは中堅企業中小企業というような企業業種の規模は、考え方といたしましては頭に入れて、その中での大企業を中心という、そういう考え方をしたわけではございません。ただ、どちらかと申しますと、今回のこの法律をつくります間の作成のいろいろな論議の過程におきまして、中小企業につきましては、すでに設備処理ないしはそれを取り巻くいわば長期的な転換を含んだ対策等につきましてもいろいろな仕組みができ上がっておりまして、そういうものでは救えないものということで、どちらかというと、大企業ないしは中堅企業を中心とする業種がこの候補業種の中に考えられたということは事実でございます。しかし、紡績業等のように中小等も含めた業種も当然のことながらこの候補対象業種にするということを考えておることは、先ほども説明したとおりでございます。
  94. 板川正吾

    板川委員 大企業中小企業、別に区別してないけれども対象の主なものは、大企業と一緒に中小企業が入る場合は別だが、主として大企業を中心に立案されているものと私も思います。ところが、その大企業中心の本法の中でアウトサイダー規制をしろなどという要望もあるそうでございますが、団体法による中小企業の場合にはアウトサイダー規制は可能としても、大企業を含めたものがアウトサイダー規制まで出せるような産業組織政策というものは許されない、私はこう思いますが、念のために一応主張だけしておきます。  次に、通産省伺いますが、本法に対して五つの問題点があると指摘した新聞があります。二月十六日の朝日新聞でありますが、一つは、本法は首切り法案である。第二は、中小企業切り捨ての法案である。第三は、物価高を招く法案である。第四は、反独占禁止法的法案である。第五は、官僚統制的法案である。この法律に対してはだれしもこのような懸念を持っているのではないかと思うのです。この構造不況業種に対して何らかの対策をとる必要があるということはわれわれも認めるのでありますが、一面、この法律に対して五つの批判点があるということは私も同感であります。この五つの問題点に対して、通産省としてはどういう説得なり、あるいはどういう考え方を持っておるのか、それを伺っておきたいと思います。これは新聞の見解というよりも、私の見解ですから……。
  95. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法案は、本年の年初から法案の作成作業にかかりまして、一月の半ばごろに私どものいわゆる第一次案——第一次案と申しますよりは、いろいろな議論の結果をまとめました案ができ上がったころから、ただいま先生御指摘の朝日新聞の二月十六日でございましたか、その前から、この法案に対する各方面からのいろいろな論評が出てまいりました。  ただいま先生からは五つ御指摘がございまして、一つ雇用問題で首切り法案、二番目が中小企業の切り捨て法案、それから物価高を招く、それからいわゆる独占禁止法との問題、反独占、それから官僚統制を招くというような御批判がいろいろな方面から出てまいりまして、そういう御批判はまことに私ども残念でございまして、そもそもこの構造不況問題の取り組みは、大臣からも何遍も御答弁ございますように、昨年以来私どもは、関係業界の自主的な努力を前提に、なるべく役所が介入することなく、業種業種実態に応じて問題点を整理し、整理のできたところで一緒に解決の方向を考えていくという基本方針で進んできたわけでございます。そういう意味で、こういう御批判を受けたのははなはだ残念でございましたが、この法案作成の階段になりましていろいろな問題点の整理をいたしまして、それが第一次案と申しますか、最初に取りまとめた段階では、すべて問題点として羅列をしたというのが現状でございまして、その中でこういう御批判が出てきたと思います。  しかし、その後の調整の過程におきまして、たとえば第一の首切り法案である、あるいは中小企業の切り捨て法案であるという点につきましては、この法律案の第一条の目的にも書きましたように、過剰設備処理という構造不況業種に共通の問題点に取り組むことによりまして、むしろそういう業種の不況の克服と安定を図ることによって雇用の安定あるいはそれにつながる中小企業の安定を図るということで、私どもこういう御批判にはそういう意味でこたえたつもりでございますし、物価高という点につきましては、先ほど御説明いたしましたように、私ども、当面の循環的な問題というよりは、非常に長期にわたってこの業界の安定を図ることによって、むしろこの対象業種というのは、どちらかと申しますと、基礎資材の供給産業でございますとか、あるいは国民衣料を中心としたいわば国民生活のために基本的に必要なものの供給をする産業、あるいは典型的な輸出産業ということで、そういうものが長期的に安定したかっこうで供給をされるということがむしろこのねらいでございました。  それから、独占禁止法との関係、当初にはいろいろなことを問題点として私ども検討はいたしましたけれども公正取引委員会との間で調整の結果この法律案の作成に到達したわけでございまして、独禁法という観点、独占禁止政策という観点から見ても、十分調整のとれた案ではないか、こう思っております。  また、官僚統制という点では、先ほどから御指摘にあるたとえば指示カルテルとかあるいはアウトサイダー命令、いろいろな点も議論されました。しかし、私どもは、あくまでも安定計画と、それから後の金融的ないわば債務保証ということを柱に、むしろ業界の自主的な努力、判断を前視に構造不況対策を進めるということをこの法律のいわば柱としているわけでございまして、官僚統制的な色彩がこの法律の中に出ておるとは私ども考えておりません。  以上でございます。
  96. 板川正吾

    板川委員 あと五分しかありませんから、まとめて二問だけ質問いたしますが、結局、構造不況業種に対する対策は、すきっ腹に飯とか肺炎にペニシリンのような即効薬というものはないんじゃないかと私は思うのです。統制的手段を避けて、金融的、財政的ないろいろの誘導政策なりを積み重ねていって、雇用の安定と中小企業対策というのを加えて補完していくという方式しかないんじゃないだろうかという感じを持っております。それで、当該企業も、苦しみながらもその後の企業経営にこの体験を生かしていくという必要があって、いたずらにアウトサイダー規制をして、政府が全部やってくれるという考え方を持つことは私は妥当ではないと思う。  そしてもう一つは、過剰設備廃棄することを目的とするよりも、内需を拡大して設備が稼働できるような経済政策に政府は力を入れるべきであって、この需要の拡大については余り対策を考えずに、過剰だから設備廃棄していくという図式は、先ほども触れましたように、縮小再生産の方向につながる、こういう批判のあることも、そしてそれは国民経済の健全な発展にはならないという批判があることもひとつ念頭に置いて運用してもらいたいと思います。  最後ですが、本法による特定不況産業別に当面予想される債務保証の枠、そして一千億を用意した積算基礎、これは時間がありませんから、後で資料として出していただくように、委員長計らっていただきたいと思います。  最後ですが、これは公取委に意見伺いたいのですが、本法は独禁法の適用除外規定があります。昭和四十八年二月二十六日の閣議で、独禁法の適用除外法は今後は見直す必要があるという方針の閣議の決定をされた経緯があります。これは福田総理が経済企画庁長官時代だろうと思いますが、産業官庁の指導によるカルテルの適用除外は本来好ましくないはずであります。われわれも、本法が緊急避難的立法だとしてこれを認めるわけでありますが、それにしても五年間の時限法というものは長過ぎる感じがいたします。この安定基本計画や適用除外の項目は三年ぐらいで区切るべきだろう、私はこう思いますが、公取としてはこの点どうお考えですか。法律案の五年間という時限は長過ぎると私は思うのですが、公取はどう思いますか。
  97. 橋口收

    ○橋口政府委員 独占禁止法の適用除外例が、日本の場合大変多いということが学者の先生方からも指摘をいただいておりますし、われわれもかねがね適用除外例の整理に努力をいたしておりますが、まだ依然として数百を数える適用除外のカルテルの事例がございます。最初にそういう制度をつくりましたときから時間がたってまいりますと、そういう必要が薄れてまいりますので、今後も機会をとらえてできるだけ整理をいたしてまいりたいと考えております。  それから、この法律の存続期間の問題でございますが、これはいろんな考え方があろうかと思いますが、実際に過剰設備廃棄に要する期間等を考えますと、やはり三年では少し短過ぎるのではないか。安定計画をつくったり、実際に業界で意思統一をしたり、指示カルテルを出したりというようなこともいろいろ考えますと、やはり五年等の期間は必要ではないか、結論的にはそういうふうに考えております。途中経過でいろいろな意見を申し上げましたが、結論的には五年程度は必要ではないかというふうに考えております。
  98. 板川正吾

    板川委員 終わります。
  99. 野呂恭一

    野呂委員長 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後一時四十九分開議
  100. 野呂恭一

    野呂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。加藤清二君。
  101. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 お許しを得まして、ただいま上程されておりまする特定不況産業法案について質問を試みたいと存じます。  きょうは、まことにありがたいことに、この法案は今国会の目玉法案と言われておりまするけれども、内閣の大物大臣、目玉がお二人おそろいいただきまして、こんな光栄なことはありません。いずれ兄たりがたく弟たりがたく、いずれが先に総理大臣におなりあそばすことやら、それを想定しつつ楽しみに御答弁を承りたいと存じます。  最初に質問の趣は、私がつくりました質問ではなくして、この不況につきまして、わが党といたしましてはいかに対処すべきやということで、飛鳥田委員長を先頭に不況地区を回ってみました。団長飛鳥田さんの顔見世興行という意味も兼ねて、私が副団長になりまして、不況の中心であるという泉南地区、繊維不況の中心地でございます。それから泉大津地区の平電炉の不況地区、それから京都を中心として絹織物の不況地区、愛知県を中心として陶磁器、木材、特にベニヤ板、繊維ではウール、コットン、シルク、ともに大阪と並んで世界一の生産を誇っている地区、これが不況のどん底なのですね。そこで、おえら方に聞くよりは現場で働いている中小零細企業のおやじさん、と言っては失礼ですが、中小零細企業のよく言えば社長さん、通用語で言うと大将。大将に直接お目にかかって聞いてまいりました。  その声をここへ取り上げまして、よってもって対策を図るということは民主主義の第一歩ではないかと思いますので、それを、手紙で来たり電報で来たり直接会ったり、いろいろありますが、証拠に残る手紙で来た分を最初に読み上げます。  前文略。   特定不況産業安定臨時措置法案に対する懸念、二つの面から懸念が感じられます。政治姿勢あるいは思想の問題として、合併の独禁法適用除外規定やカルテルのアウトサイダー規制まで盛り込むような、想像を絶する統制的発想があたりまえのことのように通産省あたりで取り上げられている点には、今後の国家権力行使の乱用を招く危険をひしひしと感じます。それはちょうど昭和十二年、時の商工大臣吉野信次さんのもとで、いわゆる財政経済三原則が設定され、九月に臨時国会で資金調整法、輸出入品等臨時措置法、軍需工業動員法の適用等々、いわゆる三統制法が成立し、金と物の国家権力の直接介入が始まり、翌年には原綿の輸入、のりのつけ方まで統制をされました。今度また増設の許可制、綿糸、石油切符制の採用などと、急速にエスカレートしたあのことが思い出されると同時に、なるではないかと心配になります。今回はそのはしりではないでしょうか。 これに対して御答弁を煩わしたいのです。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕
  102. 河本敏夫

    河本国務大臣 いまわが国の産業の一部は非常に深刻な状態にございます。そこで、一番の対策は、景気を速やかに回復をいたしまして、こういう法律をつくらなくても事が済むようにすればいいわけでありますが、なかなか予定どおり景気も回復いたしませんので、万やむを得ず今回の法律をお願いすることにしたわけでございます。  しかしながら、非常に状態の悪い構造不況業種あるいは特定不況産業等に属するような業界におきましても、一部の者は、こういう法律に依存しないで自分の力で何とか構造改善事業をやって立ち直ってみせます。大変御好意はありがたいけれども、自分たちの努力だけでやります。こういう業種も一、二ございます。私は、こういう業種の動きを高く評価しておるわけでございますが、しかしながら、大部分の不況業種は、やはり自力で過剰設備廃棄するということはなかなかむずかしいですから、この法律に依存するということになろうと思います。  いまおっしゃったような統制的な傾向になるのではないかというお話でございますが、そういうことにならないようにできるだけの配慮を加えておるということでございます。特に、安定計画ができましても、この安定計画を自力で達成してもらいたい、このように考えておるのでございます。
  103. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 詳細については後でお尋ねするとして、もう一つ、これは恐らく関係大臣のところへも送達されたと思っておりますが、署名は原吉平さん、かつてのニチボーの社長です。ジェトロの会長を長くやっていらっしゃった方であります。あえてこう言っている。「過去六十年間、繊維産業一筋に生涯を捧げた一老人の叫びである。」これは全部読むと長くなりますから、要点をしぼって申し上げますと、   通産政策は自由貿易のイデオロギーに捉われ、自国産業への配慮よりむしろ諸外国の保護貿易への傾斜を防止することに専念しているように見られる。   このままの状態がつづけば、恐らく日本の繊維産業は五年を待たずに全滅し、失業者は街に溢れる怖れありと思う。   業界では夙にこれを憂い、たびたび政府に対し輸入規制を陳情し、既存のガットの国際繊維貿易取極(M・F・A)を適用するよう申入れたと聞いているが、政府は馬耳東風で未だに手を下そうとはしない。然るに生糸、絹製品に対しては敢えてガットの精神に悖りながら中国や韓国からの輸入制限を実施し、また最近、牛肉や果物の輸入についても、国民の不満を物ともせず頑強に自由化を拒み農業の一部や畜産業の保護に専念している反面、国際的に貿易秩序化のための規制が認知されている繊維品については手を下そうとしないのは、極めて大きな矛盾と云わざるをえない。 その後にアメリカやEC諸国の先例をずっと書いて、   今日の日本繊維産業の不況の根本原因は綿製品を中心とする繊維製品の輸入激増にあることは明白である。従って不況対策としては輸入を規制するのが先決である。然る後生産制限、過剰設備廃棄或は特定不況産業安定臨時措置法等の対策も効果的となってくるのであって、通産省のとらんとする対策は本末を転倒しておるのではないか! こう言って、最後に、   現在、先進国で何らかの輸入規制を行っていない国が他にあるか? アメリカが断行し日本も実施した輸入規制が何故繊維産業に適用できないのか! こう決めつけておられます。  なぜすでに認知されているガットの繊維貿易取り決めの規制が適用できないのでございましょうか。これは過去本委員会において私が何度も申し上げ、すでに、有償無償の賠償金を韓国に送る、そのことが決まった直後に、やがておのれを撃つ鉄砲玉を相手に提供するようなものだ、だから、かの地における設備の増強もほどほどにすべきであるということを再三申し上げ、プラント輸出の場合は、輸出シェアを初めから相談して、その上におけるプラント輸出をすべきではないか、アメリカはその例をとっているということを、いまは亡き横路節雄君と二人で切々と訴えたことを覚えております。案の定そうなりました。さて、それじゃ、諸外国、先進国が韓国や台湾に行っていることがなぜ日本ではできないのでございましょうか。
  104. 河本敏夫

    河本国務大臣 繊維の国際取り決めを発動して繊維の輸入規制をするということは、条件が整えば、わが国におきましても決してこれをいとうものではありません。ただしかし、公平に考えまして、現時点ではその条件はまだ熟してないと考えております。
  105. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは納得するお答えではないと思いますが、先を急ぐ関係上、これは大事な問題ですから、経済を一手につかさどっていらっしゃる経企庁の長官さんの御高説もぜひ承りたいものでございます。
  106. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの問題につきましては、通産大臣の言われたとおりだと私も考えております。
  107. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しからばお尋ねする。どういう条件が整うと発動できますか。
  108. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  多国間の繊維取り決めは、御承知のとおり、ガットの例外規定として設けられておるものでございまして、例外といたしますゆえんのものは、報復措置その他をとらずに、制限措置があるいは二国間協定というふうな形でとれるというところにあるわけでございますが、条件といたしましては、やはり急増とか、それから国内に対する被害のおそれありというふうな場合が条件になっておるわけでございます。
  109. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その条件は、まだ国内では整っていないとおっしゃるんですか。
  110. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  繊維品の輸入につきましては、昨年五十二年、暦年で見まして、五十一年に比べまして金額ベースで約八%の減少という状況でございまして、そういう意味合いでは、全体として急増ということはまず言えない状態でございます。また、品目ごとにいろいろと出入りございます。したがいまして、詳しく見ますと、糸あるいは織物段階ではまず急増というふうなものはございません。
  111. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 急増だけが条件ではない。じゃ、具体的に数字をお尋ねいたしますが、ただいま韓国から輸入されております大島、この間も流通問題の小委員会でこれを行いました。大島、京都の伝統産業である西陣、それから友禅、それからしぼり、これはオール国内生産の何%が輸入されておりますか。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕
  112. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 絹織物についての御質問かと存じますが、絹織物につきましては、先生承知のように、MFAの対象外になっておりまして、ストレートにガットの適用になる品目でございます。御承知のように、韓国及び中国との間におきましては二国間協定を結びまして、実はそういう意味合いにおきましてすでに制限措置に入っておるわけでございます。つむぎ類その他絹織物につきましては、おおよそ国内生産との比率におきまして約一割程度だと思います。
  113. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 一割、それはどこのデータですか。一割なんという、このことで私は論争をいどもうとは思っておりません、時間を食いますから。これはひとつもう一度よくデータを調べ上げて、いずれこの法案が審議されておる最中に、これが上がらない前に詰めをいたしたいと思います。ぜひひとつ私がいま申し上げました銘柄別にそのデータを出していただきたい。  大臣、ひどいのはこういうことがある。この間も大島の人、鹿児島の方、これは自民党の代議士さんもみんな集まっての小委員会ですよ。そこで業者の訴えは、みやげ物として輸入されるだけでも大変な数でございます。旅行団が編成されて飛行機一台を借り切って行く。帰りに一人が二十反、三十反買う。あなた、考えてみてくださいよ。大島つむぎなどというのは何十万円とするものですよ。妻や子供に何十反も買ってやれるほどの財産家が、日本じゅう数えて何人ありますか。これは全部横流しになって、京都の室町の問屋街へたたき売りで流れていくのです。それを行うと旅行費がすっかり浮いてしまう、こう言っておる。それで、四万反の政府間契約の中にそれは包含されるかされないかといったら、計算があやふやになってしまっている。これでは二国間協定もあってなきがごときものでございます。さて、今度は綿紡、これは日本オール消費量のどれだけ入っておりますか。
  114. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 綿糸の輸入量の比率だと思いますが、いま正確なデータはちょっと手元にございませんが、綿糸の輸入量は生産量に比べますと非常に少ない、少なくとも一けた台のパーセンテージだと思います。
  115. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しからばお尋ねする。その一%台だとおっしゃる内訳を聞きたい。韓国からどれだけ、台湾からどれだけ、パキスタンからどれだけ、しかも内訳を聞きたい。二〇番手はどれだけか、三〇番手はどれだけか、四〇番手はどれだけか、はっきり出してもらいたい。あなたが一%だとおっしゃるから言うのです。
  116. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  実は番手別の統計はございませんので申しわけないのですが、全体の数量といたしまして、綿糸の輸入量が五十二暦年におきまして二万七千トンばかりでございます。そのうちシェアといたしまして、韓国が四一%、台湾七%、香港が〇・五%、中国七・七%、アメリカ二・九%、EC五・九%、。パキスタン一一・五%、こういう比率に相なっております。
  117. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 局長さん、恐れ入りますけれども、それも一遍よく調べ直してください。世界一のコットンの産業が、一%や二%ぐらいの輸入で、名前を言うと失礼になりますから言いませんけれども、十大紡が倒産の瀬戸際に追い込まれるほど日本の繊維産業は弱いものだと思っていらっしゃるのですか。いま申し上げたのは太番手で、下級品をつくる糸です。これはほとんどが輸入品です。じゃ、タオルの糸、夏のゆかたの糸、これをどこの紡績のものだと思われますか、日本の製品だとおっしゃるなら。一〇〇%以上です。それから、キャラコから普通の敷布から、そういうものに織る糸も、よこ糸はほとんど輸入品です。それだから、世界に誇った日本の十大紡がいかれていくのです。それに影響を受けない日清紡や近藤紡は悠々とやっていけるのです。それを一%や二%で——それだったら、泉南の紡績はどうして息絶え絶えになるのですか。それじゃ、日本の糸はどぶへ捨てておるのですか。日本の総需要と私は言っている。総需要とは、機屋がどれだけ使うかということなんです。これを一度よく調べ直していただきたいと存じます。  なぜ私がこういうことを申し上げなければならぬかというと、今度は大臣にお答え願いたい。素朴な質問で、綿工連や毛工連から、今度の法案にもかんがみて、三割ぐらいの自主廃棄をしようではないかという相談がある。しかし、三割削ったら需給のアンバランスが直りますか、これで安定しますか、こういう質問なんです。お答え願いたい。
  118. 河本敏夫

    河本国務大臣 構造不況業種、この法案では特定不況業種という名前を使っておりますが、これの指定を受けまして安定基本計画をつくるときには、いろいろな問題を総合的に判断をしてつくります。国内の需給関係、貿易の関係、将来の見通し、いろいろな関係を判断して総合的につくるわけでございます。でありますから、どの程度過剰設備廃棄すれば将来の見通しが立つかということは、業種ごとによって判断が違ってくるわけでございます。
  119. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私の尋ねていることが言葉不足で御理解できなかったかもしれませんが、機屋さんの質問なんです。私が機屋さんにかわって質問するのです。綿工連、毛工連、綿を織っている機屋さん、毛を織っている機屋さんのグループで、この際三割ぐらい設備廃棄しよう、これはどうかということで相談を進めております。ところが、先生、三割削ったらそれで需給のバランスがとれますか、需給のバランスがとれて残った七割はフルに稼働できますか、その答弁のいかんによっては、銀行から金を借りることも、労働者の首切りからレイオフも計算してかからなければならぬ、こう言う。そのとおりです。いつまで続くぬかるみぞという不安感があるのです。ですから、いま通産省も指導的立場に立ってやっておられる。何割削ったら需給のアンバランスが解消できますかということを聞きたいのです。業種によって違うとおっしゃるから、私は、あえて綿工連、毛工連と指定して言っておる。
  120. 河本敏夫

    河本国務大臣 わかりました。  そこで、どの程度設備廃棄すれば見通しが立つかということにつきましては、私がいま申し上げました幾つかの要素を、それぞれ関係の審議会におきまして、たくさんの権威者、関係業者がおられるわけでありますが、そこでいろいろな角度から御相談をいただきまして、そしてその御答申をいただきまして安定基本計画をつくるということになっておりますから、ここで直ちに三割でよろしいとか五割でよろしいというようなことは申し上げかねる、こういう段階だと思います。
  121. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、綿工連の言う自主規制三割は延期ですね、通産省がそういうふうに指導しないのだから。あくまで具体的に聞きますから。待っていましたということになりますよ。
  122. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 綿工連に関係のある設備廃棄について御説明申し上げますが、これにつきましては、現在時点におきまして大体五十五年度を目標に一応需給を計算いたしまして、現有設備の約二割、七万五千台の廃棄ということで大体需給バランスがとれるという計画に相なっております。五十二年度中に二万一千台の廃棄ということで現在廃棄が進んでいることも、先生承知のとおりでございます。
  123. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 稲葉秀三さんつかさどるところの繊工審の中の総合部会、これの中間提言が、ちょうど私どものこの前の選挙の終わった十二月七日に発表されておりますね。あれ以来もう一年半近くになっておりますが、何ら行われていない。私はそこの委員のメンバーもよく知っておりますけれども会議も行われていないセクションがある。  大臣にお尋ねする。それ待ちだとおっしゃるなら、いつまで待つとそれが出てきますか。
  124. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 一昨年末、繊工審の方から、繊維産業の将来のあり方につきまして基本的な方向ということで提言がございました。その後、その提言の趣旨に沿いまして、縦型の構造改善というものを鋭意推進してまいったわけでございますが、実はそのときに判断いたしましたよりもさらに不況が深刻化いたしまして、当時、廃棄とかなんとかということは、設備に即した物の考え方というものについては、繊工審のその際の提言では余り重きを置かずに提言が行われたわけでございますが、その後の状況の変化によりまして非常に需給が窮屈になってまいりました。特に輸出が非常につらくなったという面もございまして、設備廃棄ということをやらざるを得ないのではなかろうかということで、私ども緊急的にそれぞれ、たとえば綿工連あるいは絹工連というふうな部門別に需給をはじきまして、設備廃棄の計画を振興事業団の金を使いまして推進しているところでございます。
  125. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 同じ繊維の不況でも、大手の集まりである合繊の方は指定してくれと言うている。しかし、一番困っている中小零細企業の多いコットンやウールの方は、仲間に入れてくれと言わぬ。だから、通産省も指定していない。理由は何でございますか。
  126. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 今度御審議願っております特定不況産業臨時措置法でございますが、これにつきまして、例示として繊維からは合繊産業だけが例示されておりますのは御承知のとおりでございます。しかしながら、全体といたしまして繊維産業過剰設備処理するという問題はあるわけでございまして、中小企業分野につきましては、絹、綿、毛あるいは合繊まで含めまして、中小企業振興事業団のお金を使いましての設備廃棄が進行しつつある状態でございます。それから、中小企業振興事業団の対象になりませんところの部門につきまして、今回の法律で対処いたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  127. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私が聞いているのは、通産省の方針じゃなくて、なぜ業界が入れてくれと申し出をしないかと闘いでいる。つまり、これは不況を立て直してやろうというための法案なんですね。そうでしょう。官僚統制だとか、独禁法骨抜きだとか、いろいろ言われながらも、過剰設備を計画的に廃棄して、そうして業界を立て直してやろう、こういう法案でしょう。そこにねらいがあるんでしょう。それは一番何が不況かと言ったら、設備が多過ぎるからだ、だから構造不況だ、こう言う。その最たる綿工、毛工が希望を出さずに、それよりももう少し楽にあるところの合繊の方が申し出ているという理由は一体どこにありますかと聞いておる。
  128. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  いま御説明申し上げましたように、いわゆる綿工、毛工という工連の段階中小企業でございまして、この部分はすでにそれぞれ進んでいるわけでございます。それから、大企業につきましては、法律上例示はございますが、実はまだどの部門も手を挙げているわけではございませんで、いまそれぞれ内部的に進行している状況でございます。
  129. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたの答弁はそれでよろしいです。あなたと論争しようなどとはつゆさら思っていない。どうしたら不況のどん底にある日本の基幹産業であった繊維産業を救えるかというところに私は目標を置いているのですから、あなたの答弁を追及しようとは思わぬ。なるほど別な法律があって、ある程度救うということは、それはもうあなたに聞かぬでも、中小企業庁の長官もよく知っていることなんだ。それでもなお不況のどん底にあるから何とかしてやろう、こういうわけなんだ。その何とかしてやろうという法案を頼ってこないのはどういうわけか。理由があるからだ。あなたの方から言いにくければ、私が申し上げます。  第一、合繊の場合は大企業並びに大企業の系列が多いのです。ところが、シルク、コットン、ウールは、歴史が長くて地場産業です。日本じゅう米と繊維のとれないところはないんだ。どこにでもある。しかし、それは、片や伝統産業であり、零細産業なんだ。それがカットされるおそれがある。三割削るの二割削るのと言われますけれども、経済単位以上のところは、二割削られてもなお生き残れるのです。ところが、経済単位以下で、たとえば紡績で四万錘のところを二割削ったら、これは成り立ちますか。わかりやすく言うと、こういうことです。貧血の病人から血液を抜き取る、健康な体から血液を抜き取る、これと同じことであって、健康な人からは、百ccはおろか、三百ccとったってがんばっていけるのです。しかし、貧血の病人から百ccとったら、倒れてしまうのです。そこに問題がある。  そこで、承りたい。これはこれに指定されたら、削られる場合に平均に削っていくのか、算術平均で全部削るのか、それとも零細の方へは余裕を残して、免除条項をつくっておやりになるのか。もちろん免除条項などということは法律には書けないかもしれませんが、省令、政令にこれを入れる気持ちがあるのかないのか、それとも計画は私の想定する案でないのか、どっちです。
  130. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  この法律でいわゆる過剰設備処理をするというのは、法律の二条にいう「特定不況産業」で、特定不況産業に最終的に指定されますのは、当該業界の大部分の者の申し出ということがあるということは御案内のとおりだと思いますが、その後で安定基本計画をつくるわけでございます。安定基本計画の中では、第三条の二項に何を決めるかということが書いてございますが、その一つとして、いま先生設備処理を行うべきどういう設備処理するか、どれだけ処理するかということと絡みまして、つまり設備処理に関する事項を定めることになっております。  いま御指摘のどういうかっこう処理をするかというのは、まさにここで決めることでございまして、安定基本計画はそれぞれの審議会の場で慎重に検討して決めるわけでございますが、それは業種によりまして、一律のプロラタ的な設備処理になじむ業界と、それから、いやいやなかなかそういう一律の設備処理ではできない、もっと有機的な、ある意味からいけば業務提携とかそういうものを含んだ設備処理をやらなければ進まない場合等がございましょうし、また、いま御指摘の業界の規模によってたとえば基礎控除をするとかいうような技術的な問題も恐らく出てくると思いますが、それはいずれもそれぞれの業種ごとに審議会におきまして検討の結果この設備処理のやり方が決まることになる、こういうふうに思っております。
  131. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 いい言葉が出ました。基礎控除、いい言葉ですね。これを忘れぬでおいてくださいよ。  審議会審議会といって隠れみのに使うことも結構ですが、この法案をつくる場合に、通産省としては、その免除条項を適用とか、基礎控除とかいうことを基本的に考えていらっしゃるのかいらっしゃらないのか。あるいは審議会にゆだねるときに、ゆだねる趣旨説明を行われますね、その趣旨の中に免除条項、基礎控除、そしてともに生きられるように指導なさるか、なさらないか。
  132. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、今後いわゆる特定不況産業とは何かということが決まりまして、業界申し出がある、その業種業界実態に応じまして、どういう方式で設備処理を進めるか、いま申し上げたように、プロラタで全部が一律にやるのか、あるいはそこに処理の方針について特定の、基礎控除と私申しましたが、そういう方式をとるのか、これはそれぞれの業種、業態によりまして違ってくると思いますし、その際にいろいろなたたき台、考え方がいろいろ出ると思います。そういう意味で、ただいま通産省で、個々の特定の業種についてこういう考え方でやろうということについて、具体的なものは私どもいま現在のところは持っておりません。
  133. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 私がことに心配するのは地場産業、伝統産業で、指定されている織物業、染色業は規模が非常に小さいのですよ。それが十把一からげの算術平均でカットされていったら、それはみんなつぶれるのです。したがって、先例これあり、すなわち無籍織機から料金を取り上げて自主的に工連が経営を成り立たせようとしたときにも、いわゆる基礎控除を適用したのです。それがいま不安なので、一斉にやられたらかなわぬ、こういう考え方であるので、工連の方では、うっかり乗ったら殺されてしまう、そこらのところをはっきりさせていただきたい、こう言っております。  大臣、伝統産業を初めとする零細な織物業は、算術平均で二割削ったら生きていけなくなる。特に綿工連は三割と言っております。それはもうやっていけなくなる。そういうものに対しては、免除条項とか基礎控除とか、それを適用する方がベターであると御存じなのか、十把一からげでびしゃりやった方がいいとお思いでございますか。
  134. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  先ほども説明申し上げましたが、いわゆる伝統産業とかあるいは産地産業という零細な部面につきましては、本法案対象といたしますよりは、むしろ中小企業振興事業団によりますところの設備廃棄でやります方が手厚うございますし、実態に即しているかと考えておるわけでございまして、その際、いまお話ございましたような一律というふうなことには相ならないように運営が進んでおるかと思います。
  135. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 一律算術平均では切らない。一律算術平均で足切りや手切りはしない、こういうことですね。そう受け取ってよろしいですね。——はい、わかりました。それだけでも一歩前進でございます。  その次に、もう一つ参加をいやがっている理由がございます。それは詳細に、日清紡、これも名前入りで来ております。われわれのところへも来ているのですから、恐らく関係大臣のところへは全部行っておると思いますが、日清紡ですね、三ツ桃をやっておる。これは世界に冠たる綿織物ですね。この社長から山本啓四郎署名捺印入りで来ておりますが、この意見は、ただここ一件だけじゃない。こういう業界が、日本の十大紡の中にも、新紡の中にも、新々紡の中にもある。つまり、言えば得意技を持っているということ、ちょうど通産省の長きにわたる指導によって付加価値をより多くつけるという製品を持っているから、世界じゅう輸出が出ていってさほど痛みを感じない。しかし、これらが参加することによって一斉に二割減、三割減をやられるならば、かえって国際競争力を削減するのみならず、コストアップになるおそれがある。だから、さようなことのないように気をつけてもらいたい、こういう意見です。これをもっと下世話でわかるように申しますと、病気になった、がんができた、がんのできた人は摘出切開手術もそれは必要でしょう。そのときに血液も輸血してもらわなければならぬでしょう。しかし、私のところは何もありません。健康体です。病気は何もありません。薬を飲む必要もなければ、いわんや切開手術して手を切り、足を切りということは必要ありません。こういう意見です。  これについて両大臣、こういう考え方はどうお考えになりますか。
  136. 河本敏夫

    河本国務大臣 アウトサイダー規制の問題だと思いますが、この法律をつくりますときに、アウトサイダー規制をすべきかどうかということにつきましてはずいぶん議論がございまして、一カ月半ばかり議論を続けたわけでございますが、最終的には、アウトサイダー規制はやめよう、こういうことになったわけでございます。したがって、ある業界では一部の企業が参加しない、こういう場合もあり得ると存じます。
  137. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その場合に、原案にありましたように、官僚統制的な強化をして、アウトサイダー規制の発動をなさいますか、なさいませんか。
  138. 河本敏夫

    河本国務大臣 この法律では、いまも申し上げましたように、アウトサイダー規制はしない、こういうことになっております。
  139. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それが正しいと思います。すでに先例これありです。イギリスのランカシャーも、ある時期において大変なダウンダウンをいたしました。アメリカの南部の繊維生産地区におきましても、大変なダウンであり、デュポンまでが大打撃を受けたことがございました。しかし、それは二つともいま立ち直っております。その立ち直りに当たって何をしたかと言ったら、やはり政府みずからが援助はいたしましたけれども、優等生を切って捨てるというようなことはしなかったのです。優等生に続けという指導をやったのです。私は、この際、先例にかんがみて、日本の場合も、算術平均をするよりは、病人は救わなければならないけれども、優等生の足をとめたり、力のあるものの力を削減するようなことを政府の強権でもって行うということは、これは民主主義に反する行為だと思うのです。  その意味において、もう一度、通産大臣のこれに臨む決意と、今度は経企庁長官の世界的にながめた経済の指導方針は、この臨時措置法に対してどうお考えになっているかを承りたい。
  140. 河本敏夫

    河本国務大臣 法律ではアウトサイダー規制はしないということに決まっておりますから、それは御心配要りません。
  141. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私どもは、もともと市場経済がわが国にとって最も適した原則であるというふうに考えておりますから、したがいまして、このたび御審議願っております法律案は、そういう意味ではこの原則に対する大きな例外、臨時的な措置であると考えざるを得ません。そういう措置をとらなければならないようなわが国の経済界の現状であるという認識に立ちましてこういう法律案の御審議をお願いしていると私は理解しておりますが、そこで、もしこれがそのような一種の例外的な臨時的な措置であるとするならば、その方向に従ってアウトサイダー規制もある場合にはやむを得ないではないかという一貫した考え方は成り立ち得ると思います。ここはしかし、考えの分かれるところだと思いますので、結局、臨時的な措置ではあるけれども、しかし、やはりアウトサイダー規制というようなことは、もともと市場経済の原則から言えばはなはだしく正常でないことでございますから、臨時的な措置といえどもそこまですることは適当でないというふうに政府として判断をいたして、この法律案の御審議をお願いしているものと私は考えております。
  142. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ごもっともです。両大臣の意見と私の意見、というよりは業界のそれぞれの希望するところが初めて完全に一致したようでございます。ぜひそのように進めていただきたいと存じます。  ただ、どうしても一致せぬ点で関係業界が非常に懸念している問題は、輸入量の野放しということでございます。条件が整わないとかいうお話のようでございますが、次から次へと倒れているのですね。失業者が百二十万人余になっているのですね。条件は整っているように思うのですけれども、それでもあえて整わぬとおっしゃるならば、逆にお尋ねしますが、一体輸入量が日本のオール消費量の何%ぐらいになったら発動なさるのですか、これを承りたい。  なぜかならば、具体的に申し上げますと、いままでコットンの場合もシルクの場合もウールの場合も、何回も何回も設備制限を行ってきたのです。その都度いっとき需給のバランスができ上がって、ちょいと景気の芽が出ます。そうすると、需要がふえた分以上に外国から入ってくるのであります。何ぼダウンしていっても、ダウンして減産した分だけが輸入されてきたらどうにもならない。それを生きた業界は長年体験してきておる。したがって、今度の特定産業臨時措置法ができたとしても、入っても効果が薄い、だから参加することは見合わせておこう、お手並みを拝見しよう、こういうふうになってくるわけでございます。  そこで、お尋ねする。日本の産業を守るために、輸入量とオール消費量が何%ぐらいの比率になったら制限をなさるおつもりですか、そこを聞きたい。
  143. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  繊維製品の輸入量と国内生産の比率が幾らになったらというお尋ねでございますが、現実にその生産量と輸入量の比率が幾らになったらというところに焦点をしぼることは、実は非常にむずかしゅうございまして、実際に国際協定等の運用に当たりましては、要するに対前年度比の急激な増加がどの程度被害を及ぼすか、こういう観点に立っておるわけでございまして、通常、MFAの場合、御承知のように六%というのが一つのめどになっております。
  144. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 あなたの御高説はありがたく拝聴いたしますけれども、アメリカの場合は、あなたさっきおっしゃった絹でもちゃんと制限しているのですよ。パーセンテージは、六%だの八%だの、そんなところへいきませんよ。一番必要としているウールですね、アメリカはオール消費のどれだけ買っているとお思いなさる。上限は五%ですよ。日本が二四%占めたと言ったときがあった。それを一〇〇%消費のうちの二四%と、こうガバメントオフィスの方々はお考えであった。私は忍者部隊になって行ったから知っている。全体で五%しか買わないのです。そのうちを日本が二四%で、イギリスが一八%で、フランスとイタリアとで分けていた。二四%といったら、これは数量にすると何ぼですか。五%の二四%ですから一%とちょっとでしょう。一%とちょっとということは、オール消費の一%なら三日分ですよ。年間に割ったら一週間分ありませんよ。それで制限ときたのですよ。ラッシュと言っている。絹は何と言ったとお思いなさる。燃えるからいけないと言ったのです。燃えない絹がどこにある。燃えるからいけない、称して可燃性繊維と言ったのだ。ワンダラーブラウスは何と言ったか。安過ぎるからいかぬ、一ドルのブラウス、そんなばかなことはない、アメリカでは五ドルしている、レーバーダンピング、チープレーバーと言ったのです。  お尋ねする。つい先年アメリカから合成繊維の制限を受けました。ダニエルとニーマーが忍者部隊で来た。私は何度も会いました。もう時効にかかったから言います。なぜ日本が制限を受けたのですか。合成繊維までなぜ制限を受けたのですか。
  145. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 合成繊維の特殊のものにつきまして、いわゆる輸出急増といいますか、対前年比の伸び率が非常に高いということであったと思います。
  146. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 交渉の段階のどこのページにそういうことが書いてあるのですか。いつの幾日の交渉でそういうことが出たのですか。
  147. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 いまその正確な記録が手元にございませんので、ちょっと申し上げかねます。
  148. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 想定ではいかぬ。具体的に申し上げましょう。ここから先は合繊の問題になってきますから申し上げます。日本の合繊のオール生産は大体百二十六万トンから百五十万トンと見ればいいですね。大臣、先ほど板川さんの御質問にお答えになってみえました。そのとおりであります。  じゃ、韓国と台湾とで合わせますと、合成繊維の生産数量は何ぼありますか。——お教えしましょう。約八十五万トン、六割五分でございます。これは加工しなければ使えない数量でございます。あとの仕上げをしなければなりません。仕上げ機を持っているのは、ドイツ、フランス、イギリス、日本、アメリカ、これだけです。その八十五万トンがどこへ行くかと言えば、EC諸国は絶対に買いませんから、これがアメリカへ渡るか、それとも日本へ渡るかのいずれかなんです。  それがアメリカへ輸出されるようになったらそれこそラッシュになる。なっては、デュポン以下ようやく景気の出たものがまたダウンしなければならない。それでは困るというのがニーマーさんたちの任務なんです。そこで、先に日本へ来て、何とかしてくれ、制限を許してくれと言った。理由がないと言う。全然理由はありませんと言う。ところが、後に理由があるからと言う。あなたのところと二国間協定を結んでもらわなければ、次の方が結べない、だから勘弁してくれと言う。その結果、じゃ一年という期限を切りましょうと言った。そうしてこれに因縁をつけたのです。よりの回転数五回以上は加工糸ということにしよう、それ以下のフィラメントとカット綿——綿と言ってもこれは合繊のことですが、を制限する、こういうことにした。引き続いて台湾も韓国もこのようになり、それがさっき申し上げましたガットの繊維特別取り決めの適用となって、いま継続しておる。  韓国と台湾の八十五万トンがどこへ行くのです。しかも、アメリカのそれを制限する一つの理由は、日本資本が加担している、こう言うのです。ですから制限せざるを得ないと、こう言うのです。持っていく先がないのです。日本が買わなければならない。日本が買う。日本が買っておいて、そうして日本の設備廃棄する、これがいまの現状なんです。もっていかんとなす。絹は何やらで除外だの、あれだのこれだの、それは日本で言っているだけの話なんです。アメリカだけではない。EC諸国は、ガット三十五条第二項の援用で、とっくに日本へ制限を長年にわたって適用している。何も生活産業局長が悪いと言っているのではありませんよ。制限をしないように奨励したり動いたりする勢力があるからなんです。  そこで、お尋ねせなければならぬのは、合繊はこの適用業種になっておりますが、どれだけ削るのですか。どれだけ日本の設備を削ると安定いたしますか。
  149. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 合成繊維産業につきましても、昨年の初めごろから設備について再検討いたしました結果、大体の見通しでは、二〇%から三〇%ぐらい平均で設備過剰ではないかという感じでございます。もちろんそれぞれナイロン、ポリエステル、アクリルと、品種ごとに内容が違うわけでございまして、多少の出たり引っ込んだりするところはあるかと思います。特に一番大きいのは、現在合成繊維産業につきましては、その輸出比率が全体で五〇%を超えておるわけでございまして、輸出の低落ということが見込まれますので、特に設備は過剰という感じが強いわけでございます。
  150. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 どれだけ削る予定ですかと聞いておるのです。
  151. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 これは先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、それぞれ業界の方で自主的に判断をされまして、これを繊維工業審議会その他で検討をいたしまして、その結果、需給をさらに詰めまして、その上でどのぐらいになるかということでございまして、私どもの方で現在幾らというふうに決めてかかっているわけではございません。
  152. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 では、こちらで決められることを言いましょう。  日韓の会談が政府間で行われましたね。終わりましたか。
  153. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 いまお話しの点は、絹に関する会談かと存じますが、私どもは、日韓でやっておりますのは絹に関する会談だけでございまして、第一回を終わりましたけれども、まだ意見の一致は見ず、次回ということに相なっております。
  154. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 絹は論議したけれども合繊、コットンは論議をしなかった、こういうことですか。
  155. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 お答え申し上げます。  そもそも日韓の繊維に関する会談は、当初から絹だけを対象といたしておりまして、ほかのものについては政府間ベースの会談はやっておりませんし、現在のところやる段取りになっておりません。
  156. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 政府でやる勇気がなかったら、民間の業者間協定を推進したいという意見が出てきたら、やる勇気はありますかありませんか。これに対して政府はどうされますか。
  157. 藤原一郎

    ○藤原政府委員 それぞれ品種別にいろんな問題がございます。したがいまして、物別に民間の業界同士の話し合いが持たれることは大変好ましいことだと思っておりますし、それで話し合いがうまくつきますれば一番よろしいかと思います。私どもも、そういう意味合いでは、そういう民間の話し合いというものにつきましてはバックアップしてまいりたいと思っております。
  158. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 長官が次の会合の時間だそうですから、退席していただきますが、お帰り前に一声だけきれいな声で鳴いていってくださいね。  経済の元締めをやっていらっしゃる長官としては、繊維の輸入量はいかほどだとおよろしいとお考えですか。アメリカはラッシュラッシュと言うけれども、去年と比較して伸び率を言っているのであって、日本へのラッシュは、絹の輸入量は、アメリカに対する日本のラッシュよりもはるかにひどいのですよ。それを去年と比較して、高くして安定してからの話をしているのです。アメリカの場合だったら十何年も前からの計算をとりますよ。いつの時点を基準にするかということによって伸び率が変わるわけなんです。が、それはそれとして、したがって、私は基礎計算をオール消費量のと言っている、これなら世界共通ですから。去年と比べて云々だなんて、冗談じゃない。おととしどんと上がっておったら、これはどうするのですか。過剰輸入が累積してきておるじゃないか。それは計算に入れない。そんなばかな計算がどこにあります。  そこで、お尋ねをする。日本経済を安定に導くという法律なんです。その場合に、関係産品の輸入量はどの程度だったら安定するのか、学識経験豊かな長官に御指導を賜りたい。
  159. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も、最近の繊維のことは実は疎いものでございますから、お答えをする資格が十分ございませんけれども、事は本来通産大臣の御所管のことでございます。恐らく通産大臣のお立場としては、その当該業界のことはもとよりでございますけれども、わが国全体の産業経済の現在及び将来をいろいろにお考えになり、なおその上で、世界のこの地域におけるわが国の広い意味での将来、近隣諸国との関係の中から見られるわが国の将来というようなものもお考えの上で、当該産業について具体的にどう考えるかという御判断をなされるのではないかと思います。そして恐らくは、本来どのくらいの増加あるいはどのくらいのシェアならいいかというようなことは、具体的な産業政策の問題として具体的に御判断をなされるのであろう、一定の尺度が何かあって、それによってトリガーのように自動的に発動するしないというようなものではないのではなかろうかと存じておりますけれども、十分実情を存じませんので、はなはだ御不満な答えかと思いますが、御了承をお願いいたしたいと思います。
  160. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それでは、話を先へ進めていきたいと思います。  日本の経済状況を静かにながめてみますと、至るところで金融機関が主体性を占めて、産業界がそれに追随せざるを得ないような状況に置かれておりますが、これは私は、本末転倒と言おうか、逆転と言おうかと思うのです。官庁、金融機関、それから産業部門、といっても製造部門ですね、それと流通部門との複合体が日本の経済を構成していることは、これはもうだれが見てもよくわかることですが、金融機関が中心になって結束をしておるといいましょうか、金融機関がリモコンをしつつ事を行っているという面が多々ございます。飛鳥田委員長と一緒に回ってみましても、設備をどれだけたたくといいですかと言う。これが第一番。第二番は、銀行がこういうことをやれ、ああいうことをやれと言うのですが、これは一体どうしたことでございましょうか、こういう質問でございました。  そこで、お尋ねしたいのですけれども通産省で、中小企業のためにも大企業のためにもそうですか、いろいろ特別措置が行われて、融資が行われるようになっておりますね。その場合、三公庫が貸し出しを行いまする場合はさほどでもございませんけれども、国家の金を市中銀行が代理業務として行っているときには、間々自分の銀行の金と似たり寄ったりの貸し方を中小企業に強要するんですね。こういう傾向について通産大臣はどう思っていらっしゃるんですか。何だったら具体的に例を示します。——じゃ、申し上げましょう。  たとえば泉南の加藤という紡績工場がございます。私のところはこの際運転資金を貸していただかぬとやっていけません。なぜいけないか。私のところでつくっている糸は、ほとんどが二〇番手から三〇番手でございます。韓国から安い糸がたくさん入ってまいります。在庫がどんと行って、銀行の金利と倉敷料に大変金を取られてダウンダウンです。そこで、銀行へ金を借りに行きました。そうしたら支店長いわく、首を何人切るかと言われました。金は貸してやるが、労働者の首を何人切るか、労働者に払う賃金や年末賞与をやるような金は貸せぬ、おまえのところは人数が多過ぎるんだから、もっと省力化すればいい。いい機械、新しい機械を買い入れて省力化をして、そして労働者の賃金を削りなさい、こういうふうに指導されました。それで、そこの製品を買っていただく商社ですね、丁産業と言うておきましょう。そこの大阪支店長に尋ねてみたところ、やはりそうしなさいと言われました。私らが金を借りるのに、銀行の支店長が私のところの従業員を指図するんですか、これはどういうことでございましょうか、こういう話でございました。私、資料をここに、固有名詞も金額も全部持っております。これは一つや二つじゃありません。  某国立銀行のいまを時めく有名な調査部長、その人と一緒にヒヤリングをやりました。こういう事実があるが、これはどうだと言ったら、あるですね、近ごろそうなっていますよと。銀行が金を貸すかわりに首切りを要求する、こういうことが行われますと、金融の金利の窓口規制ではなくして、産業構造まで支店長クラスが指示、指導をする、こういうことになりますですね。これは一体どうしたものでしょうか、大臣の御指導をいただきたい。
  161. 河本敏夫

    河本国務大臣 全般的に言いますと、日本の産業全体の外部資本が八五%と言われております。つまり自己資本が一五%、借金が八五%で平均的な企業経営が行われておる、こういうことでありまして、結局そういうところから金融優位という問題が出てくるのだと思いますが、これは一般論でございまして、いまお話しの件は、私は、そのお話だけで判断できませんが、資金を貸す場合に、当然金融機関としては返済の可能性ということについて十分検討するのではないかと思います。したがって、その企業の再建計画を当然示さないと、金融機関としても無条件では貸しにくい、こういうことに関連をいたしまして、どういう合理化案を持っておるのか、そういうことを質問したんじゃないでしょうか。首切りを強要したとかそういうことではなくて、合理化案を示せ、こういうことであったのではないかと、私はひそかにいまお話をお聞きしながら拝察をしておったわけであります。
  162. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣や局長さんクラスが関係の融資の支店長クラスや重役クラスと相談なさるときは、そんなことは言いません。私の言っているのは、現場の話なんです。現場は事実それが行われておる。  じゃ、もう一つ具体的に申し上げましょうか。繊維が不況ですから、機械産業もともにまた不況なんです。機械産業は次から次へと倒れておりますね。北陸織機は倒れました。遠州織機は自動車の部品に転身いたしました。平野織機はついこの間倒産したばかりです。すべての繊維機械メーカーが転退を余儀なくされております。この場合に、何とか生き延びようというので銀行へ参りますと、やはり同じことを言われる。同時にまた、その当該繊維製造会社並びに繊維機械メーカー、これに融資をし、株を持っていた、この際はM産業と申し上げておきましょう、は、倒れるかもしれぬというやさきに、株まで売り払っちゃった。融資しておった金を引き揚げちゃう。昔、ひどいやつを高利貸しと言った。何でひどいかといったら、病人のせんべい布団までむいていくからだ。いま高利貸しよりもひどくて、貧血患者から血液を抜いていくのは、どうも銀行と、それに伴う商社のようなんですね。具体的事例が幾つかあります。こういうことについて、一体大臣はどのように御指導をなさいますか。
  163. 河本敏夫

    河本国務大臣 中小企業の金融機関に対しましては、不況も非常に長く続いておりますし、事態が非常に深刻でありますから、それぞれの企業の実情をよく調べて、もし返済猶予等について相談があれば、できるだけその相談にあずかるように、こういう指導をしております。中小企業庁で調べましたところ、昨年一カ年で約四万件の返済猶予が実現をしております。さらにまた、新規の貸し出し等につきましては、最近は担保の取り方が非常に厳しくなっておりますので、担保の評価の見直し、こういうことについてもできるだけ便宜を図るようにという指導もいたしております。  これは主として政府系の三機関についてでありますが、もし通産省に、政府系の三機関以外の金融機関についても何らかの御相談があれば、それに準じて取り扱うようにという指導を、時には大蔵省を通じてしていただいておるのでございます。いまおっしゃったような事例は、いま私が申し上げた方針とは逆行しておるわけでございまして、そういう事例がございましたならば、地方の通産局で十分実情を調べまして善処をいたします。
  164. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 結構でございます。  大蔵省、来てみえますね。
  165. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 民間の金融機関についてのおしかりでございますが、私ども常々、金融機関というのは、一般の企業より以上に社会的な役割りといいますか使命といいますか、そういうものを持った機関であるということで金融機関の指導をしてまいっておるわけでございます。特にこういう不況の時代におきましては、金融機関の役割りに対する期待、こういうものは通常のとき以上に大きいわけでございまして、そういう意味で、そういう指導を強化しておる次第でございます。  ただ、金融機関といえどもやはり私企業でございます。自分自身の存立という問題、御承知のように、最近金融機関の経理環境というのは非常に厳しい状況になってきておるわけでございますし、さらに金融機関自体の合理化ということもあわせて私どもは求めてまいっておるわけでございます。個々のケースにつきまして私ども情報不足の面があるかと思いますが、かねて本国会におきましても、金融機関雇用に干渉しておるのではないかというふうな議論もございまして、そういうことは万々ないと信じておりますけれども、なお念には念を入れまして、全銀協その他各種金融機関の団体等を通じまして、金融機関雇用、首切りというふうな問題に干渉することのないように、非常に厳重に注意をしてまいっておる次第でございます。
  166. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 金融機関雇用問題に干渉するということは、経営の正常化を審査する場合の逸脱行為であると思う。したがって、そういうことが万々ないように注意するとおっしゃられましたから、それ以上私はあなたを追及しようとは思いませんが、もしあったらどうしなさる。  次に、本委員会において、金融の正常化を図るために委員の皆さんが再三にわたっていろいろ熱心に御討議をいただき、附帯決議もいただいている案件がたくさんあります。  その第一は歩積み両建ての問題であります。これは自分から言ってはおかしいですが、私は、予算の理事を五年間もやっておりましたときに、あなたの方から歩積み両建て先生というあだ名をちょうだいしたことを覚えております。来る年も来る年もそれをやったから。いまだにこれが直っておりません。  それから、政府からの援助資金を貸してやるにしても、もう繊維にしても木材にしてもあるいは陶磁器にしても、不況産業は目いっぱい借りてしまっているのです。もう担保能力がないのです。だから、担保といえば、大体土地、建物が入っている。特に土地は多いから、その土地は値上がりをしてきているから、担保の総見直しをしてやってもらいたい。そうしてそこから担保余力を見出してやってもらいたい。いわんや三分の一、半分、残りあと二〇%しか借りていないというにもかかわらず、担保だけは最初借りたときのものを凍結しているということが盛んにいまも行われている。  私は、冒頭に申し上げましたように、きょう自分の意見を申し上げているのではないのです。飛鳥田委員長と一緒に回ってみて、副団長で私が行ってみて、直接訴えられたことを申し上げておるのです。ですから、実例を欲しいとおっしゃるなら、必ず出します。が、それを出しますとどういう結果になるか。これは大臣、覚えておいてください。大事なことです。親に対してでも、銀行に対してでもそうですか、私の企業に対してこういうことをやられましたと加藤綿織物株式会社が言うと、今度は銀行が目つぼにとって、江戸のかたきを長崎で、貸さないようになる。おれのところに恥をかかせやがった、こう言うわけです。ですから、中小企業は自分の固有名詞をなかなかに公表したがらない。  歩積み両建てと担保凍結、最後に手形サイト。いま大蔵省にお尋ねする。実行されている手形はどこまでが有効ですか、サイトは。それ一点でいいです。何カ月、それだけで結構です。——もう時間ですから、急いでください。
  167. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 手形のサイトがどのくらいになっておりますか、手元に数字がございませんので、お答えいたしかねます。手形サイトの問題は、むしろ通産省の所管かと思います。
  168. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 もちろんそうですか、銀行で有効なのは何カ月くらいかということです。
  169. 渡辺喜一

    渡辺(喜)政府委員 特に現在何カ月というふうなことは、私ども存じていないわけでございます。
  170. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 存じていない。あなた、金融機関の監督官庁が現在行われている手形サイトを知らないじゃ、そんなばかな、よく月給をもらうねと言いたくなる。自分の月給は知っておるでしょうな。そこから先は、論争になったりするといかぬから、もう言いません。  大臣、お産、台風、七夕なんというのは通り越してしまっているのですよ。いま二百、二百と言うより、日にちで言うより、あれで言いましょう。二十四カ月、三十六カ月手形というのがあるのです。だからこそ、下請代金支払遅延等防止法をもう一度見直してくれという意見になってくる。支払遅延等防止法によれば、六十日までは受取人が割引料を払い、六十日以後は振出人が払うということになっているのです。にもかかわらず、現行は受取人が全部払っておる。  二十四カ月があったらどうされますか。三十六カ月があったら、これは銀行に持っていったら通用しますか。
  171. 岸田文武

    岸田政府委員 私ども、下請関係を扱っておりまして、支払い期日がどういうふうになっているかということについては常々注目を持って見ておるところでございます。平均いたしますと、大体最近で百二十二日という平均になっておりますが、中にはそれを大幅に超えるものがあることも事実でございます。銀行でどの程度まで割ってもらえるかというのは、個々の企業の力にもよることでございますが、百二十日程度は割ってくれるにしても、長いものになると問題があるというふうに承知をいたしております。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕
  172. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そのとおりです。  そこで、もう時間が参りましたから、この際、要望を申し上げておきます。  第一、歩積み両建て、手形サイトの問題、大蔵省の審議官が知らぬじゃ通用しませんよ。なぜかならば、それは監督は中小企業庁ですけれども、実際に割って割引料を取るのは銀行ですし、それから、これはサイトが長過ぎるからペケですということを決めるのも銀行ですから、これはあなたの監督の傘下です。ひとつこの歩積み両建ての現状と手形サイトの今日の実行の仕方と、割引料をだれが払っているかというところを御調査相願いまして、本法案がこの衆議院を通過する前に御提出願いたい。委員長、これはよく聞いておってください。  それからもう一つは、先ほど要望したなんですが、日本の繊維需要の一覧、ウール、シルク、コットン、合繊の需要の一覧を出していただきたい。同時に輸入の量の一覧。  それから最後に、合成繊維の今日の設備状況と稼働状況、アクリル、ポリエステル、ナイロンの三つに分けて、日本、韓国、台湾の一覧表を至急御提出願いたい。委員長、いいですか。
  173. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 ただいま加藤清二君から要求のありました資料につきまして、大蔵省渡辺議官通産省生活産業局長、よろしゅうございますか。——そのように取り計らいます。
  174. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ありがとうございました。それでは、その資料が本委員会に配られた時点において、それに基づいてもう一度質問をいたします。  本日は終わります。
  175. 山崎拓

    山崎(拓)委員長代理 草川昭三君。
  176. 草川昭三

    草川委員 草川でございます。皆さま方にちょっとお許しを得まして、きょうは参加をさせていただいたわけでございます。  実は、このたびの構造不況法案が提案されるに当たりまして、私ども、いわゆる構造不況業種と言われる産業をかなり歩いてみたわけでございまして、それぞれの産業実態、あるいはまたそこで働いておりますところの現場の労働者なり経営者の方々、あるいはまた金融機関の方々のいろいろな御意見を集約をしてまいりまして、私どもなりに整理をして、この法案について、骨格的な問題になりますけれども、ひとつ御質問を申し上げたいというふうに思うわけであります。  まず、私の率直な感想でございますけれども、日本の産業というものが、予想外に体力というのですか活力が非常に弱まってきておるという気がしてなりませんでした。日本の高度経済成長の中で、いろいろな重化学工業なり軽工業なり第三次産業もそれなりに発展をしてきたわけでございますけれども、私自身が考えておる以上に事態は実は深刻ではないだろうか、こんなような感じがしておるわけでございまして、そのような状況なるがゆえに、この構造不況法案というものが政府によって提案をされたわけでございます。  しかし、私は、この法案だけでは今日の日本の産業政策のすべてではない、こういうことを感ずるわけでございまして、いわゆる特定不況産業という法案そのものは、まさしく構造不況と言葉を置きかえていいと思うのでございますし、また、一般的にはこの特定不況産業安定臨時措置法案というものは、構造不況法案というように言われておるわけでございますが、結論的に申し上げますと、片肺ではないか。後ろ向きの対策が中心になるわけでございますから、もう一ついわゆる前向きの、需要を拡大していくという積極的な法案というものを提示しないと、これは片肺飛行となって、先ほど触れましたが、日本の産業の活力というものを逆に弱める効果の方を促進するのではないだろうか、こんな感じが私は率直にするわけであります。これは現場の実態からの私なりの判断であります。  そういう上に立って、第一番目に、この不況産業業種指定についてお伺いをしたいというように思います。  それぞれ、平電炉アルミ合繊というように来ておるわけでございますが、実際はこれからいろいろな業界からの申請等もございまして、さらに政令で追加をされると思うのですけれども、今後どういうような形で業種がふえていくのか、ただいまのところどの程度のものを予定されておみえになるのか、そのことからまずお伺いをしたい、こういうように思います。
  177. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  この法律対象業種でございますが、ただいま御指摘のとおり、法律では四業種のみをいわば例示として掲げてございまして、残りは政令で指定をする。これは一つは、対象業種はいろいろな検討の視野、視点があろうと思いまして、指定の要件は書いてございますけれども、なるべく早くこれを指定する。一年以内というふうに法律上でなっております。この指定は、法律成立しました後にいろいろ検討を要するわけでございまして、したがって、いま決まっておるわけではございませんが、ただいままでも何回か御答弁申し上げましたように、この法案の作成の過程で私どもが一応念頭に置きましたと申しますか、こんな業種があるのではないかという対象業種は若干議論をいたしました。  それを申し上げますと、この四業種のほかに、一つ化学肥料関係業種、あるいは塩化ビニール樹脂、塩ビの関係等化学関係業種、それからここには合繊だけが載っておりますけれども合繊以外に綿紡、スフ紡あるいは毛紡というような紡績業、それからいわゆる板紙類関係の紙の業種等、通産省所管でもまだこのほかに幾つか業種がございます。なお、フェロアロイ関係業種等も同様に候補業種として議論対象になりました。そのほかに、通産省所管外で、農林省の所管で合板業界あるいは精糖業界等も、業界の中でそういう大きな動きがあれば対象業種になるのではないか。また、造船業が対象になっておりますが、造船業以外に、船舶関係業種につきまして運輸省がいろいろ御検討になっておると承っております。
  178. 草川昭三

    草川委員 第二番目の質問になりますけれども、いまいろいろな業種予想されるということで答弁があったわけでございます。この法案の中にもありますように、全国業種の三分の二の申し出という形で出されるわけでございますけれども、その地域の特殊性というものが一つあると思うのですね。地域の特殊性から業種指定にされるような業界はどのようなものが予定をされるのでしょうか、お伺いします。
  179. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この業種指定は二段階になっておりまして、一つは、ただいま御答弁申し上げましたように、特定不況産業法定の四号のほかに、二条の五号、つまり言葉を平たく申せば候補業種でございますが、これの指定がございます。  ただいまの御質問は、むしろその後の関係でございまして、二条の一項で候補業種が決まる、その中から、三項によりまして申し出というのを一つの要件にいたしまして、そこで初めて特定不況産業というものが指定されるわけでございます。この点は、ただいま御指摘のとおり、「大部分」という言葉を使っておりますが、法律上、従来の法律の解釈から申しまして約三分の二、しかも、私どもは、その業種として全国ベースで考えておりまして、数とそれから事業活動二つの要件がございますが、全国ベースで考えております。  ただ、具体的には非常に地域産業というのがあり得るわけでございまして、通産省所管業種で申し上げますと、先ほど私がちょっと触れましたたとえばフェロアロイ業界などというのは、これは電力を非常に使う業種という関係から、立地的に非常に地域的にかたまっておるというような特殊性もございますし、直接この法律対象になるかどうかは今後の問題でございますけれども、その他の業種につきましても、そういう意味での地域的な要素が出てくるものがあり得ると思います。  なお、この法律で四号の船舶製造業等につきましても、これは他省所管で私つまびらかには存じませんけれども、やはり地域的に見ますと、かなり地域に密着した産業一つではないか、こういうふうに考えております。
  180. 草川昭三

    草川委員 いまおっしゃられましたように、地域の特殊性をどう見るかという問題については、今後の運営の中でいろいろな要件があると思いますけれども、ひとつ前向きの形でぜひこれを取り上げていただきたい、こういうように思うわけであります。  そこで、第三番目の質問になるわけでございますけれども、いわゆる業種の認定でございますが、それぞれの法律によって、たとえば通産省、農林省あるいは運輸省、いろいろな業界をそれぞれ抱えておるわけでございますが、いわゆる市民的な立場から、構造不況あるいは不況産業、円高問題、油の値段が上がったから行き詰まったというような業界から、いろいろなものがあると思うのですけれども、調べてみますと、それぞれの法律の趣旨によって違うわけでございますが、かなりたくさんの認定の仕方があるわけです。たとえば中小企業信用保険法によるところの不況業種というのは約四十あります。それから経済白書で不況業種と言われるものがやはり十一ぐらいございます。それから通産省の公報による不況業種というものが六。労働省の場合は、これはまた雇用という面もあるわけでございますから多少違うわけでございますが、特定不況業種離職者臨時措置法に基づくところの業種というものは約十二ございます。それから雇用調整給付金を支給する対象の不況業種というのは約五十、どんどんふえておりますけれども。それから通産関係ではやはり十三だとか、それから中小企業事業転換対策臨時措置法に基づく業種指定、これは全国業種として、厚生省——厚生省関係ではおふろ屋さんなんというのもあるわけでございますから、多少実感からはまた別な判断もございますけれども、農林省、通産省運輸省等で七十六。また、そのほかに、構造改善事業関係として中小企業近代化促進法に基づく指定業種というのが七十五あるわけであります。また、中でも特定業種というのが三十八、構造改善に特別になっておるというようなことであります。そのほか、円高対策法の指定業種として全国では約百八の業種指定がありまして、いわゆる構造不況業種というものは、認定というもの、考え方でずいぶん幅の広いものがあるわけであります。  それぞれの業界の方々は、それぞれの業界団体を通じて自分たちの諸要求というようなものも出されるわけでございますし、アピールもしてみえるわけでございますけれども、私は、ひとつここで業種指定についてのある程度の整合性を持たせる必要があるのではないだろうか、こう思うわけでございますが、その点についての見解を賜りたいと思うわけであります。
  181. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの御質問に私がお答えするのはいかがかという感じもいたしますが、ただいま先生御指摘の中の構造不況という言葉に関連いたしまして、私からお答え申し上げます。  ただいまいろいろな法律についての指定要件についてお話がございました。ただ、それは、当面の不況業種という非常に広い、短期的な、いまの不況に対処するという観点から見た場合の業種指定の問題等も含めて、いろいろな角度から見ておりまして、ただ、これを全部統一するというのはなかなかむずかしい問題ではないかと私は感じます。  構造不況業種という言葉についてのみ申し上げますと、この言葉は昨年の春ぐらいからいわゆる構造不況問題ということで出てまいりまして、いろいろな新聞、雑誌その他の面で使われた言葉になっておりますが、御指摘のように、それ自身必ずしもぴったりいたしておりませんが、どちらかと申し上げますと、先生がいま御指摘になった中の製造業を中心にいたしまして、当面の緊急対策あるいは不況対策だけでは片づかない問題を抱えた業種という意味で、十二といいあるいは十三といい、あるいはほかの数え方もございますが、そういう意味で、何とはなく固まってきた概念でございまして、この法律は「特定不況産業」という言葉を使ってはおりますが、ただいま申し上げたような意味での昨年春ぐらいから出てまいりました構造不況業種という言葉を念頭に置いて、それを対象にして考えた法案でございまして、全体を通じて共通的な一つの特徴は、この法案目的にもございますように、設備処理が必要ではないか、つまり過剰設備を抱えているという点が全体に共通の特徴ではないか。したがって、対象としては、どちらかと申しますと製造業でありまして、長期的に見て過剰な設備を抱えておる、こういう業種をこの法案対象としたわけでございます。
  182. 草川昭三

    草川委員 いま、製造業が中心ではないだろうか、まさしく構造的な問題という意味での位置づけだと思うのです。同時に、過剰設備を抱えておるというところに視点を当てたい、こういうお話がございまして、この法案を読みますと、まさしく過剰設備対策というのが中心的になるようであります。  そこで、構造不況の要因ということについて、製造業なりが過剰設備になった原因も含めて、構造不況になったと言われる要因について、いまの定義で結構でございますから、発展をしてお考えを聞かしていただきたいと思います。
  183. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御答弁申し上げました意味での構造不況業種にどうして構造不況問題が出てきたかということには、いろいろな理由があると思いますし、したがって、業種別にこれからの解決の方向というのもそれぞれ違った問題を抱えているように私は考えます。  これを幾つか分けてみますと、一つは、オイルショックを契機といたしまして、従来の非常に高い成長率から、成長率が屈折をいたしまして、非常に低い成長率、低成長率に移った、別の見方をすれば、そこで需要の伸びが非常に大きく屈折をして低くなってしまったということが原因のもの、もう一つは、反対に、オイルショックを契機にコストの構造、供給側のサイドでございますが、コストが非常に上がってしまった、これに起因する問題を抱えておる業種、それから三番目には、これは若干中長期の問題を含んでおりますけれども、この経済の発展過程の中で、発展途上国を中心とする国際的な面から見ました追い上げによって国際競争力がなくなってきたという問題、それから、当面と申しますか、昨年ぐらいから非常に目立ってきたのは、円高ということによる影響、この辺が一つの原因のものもございますし、ただいま申し上げたような三つ、四つの非常に大きな要因が絡み合ってそれぞれの業界に影響を与えておりまして、共通しているのは、先ほどから申し上げておるように、短期の需給調整対策、景気対策だけではなかなか片づかない、どうしてもこういう原因が絡んだために長期的に見て設備が過剰になっておる、そこに基本的な一つの問題がある、こういう感じがいたしております。
  184. 草川昭三

    草川委員 いま低成長あるいは需給ギャップ、コストアップ、円高等の四つの問題をおっしゃられたわけですが、それはそのとおりの理由だと思うのです。だけれども、基本的に政府の指導方法あるいは経済の見込みの間違いというものが抜本的にあると私は思うのですね。やはりそれが第一番目に出てこないと、今後の日本の産業構造を基本的に転換をするという方策は出てこないと私は思うのです。そういう政府の見込み違いというのは全然なかったのかどうか、それをもう一回お聞かせ願いたいと思います。
  185. 濃野滋

    ○濃野政府委員 一九六〇年代を通じまして日本が大変高い成長を続けてまいりました。一九七〇年代に入る昭和四十年代の半ばぐらいからでございますが、ただいま御指摘のように、こういう高い成長がそのままいつまでも続いていくかどうかということにつきましては、各方面でいろいろな反省と申しますか、そういう検討の気持ちというのが当時から出てきたことは事実でございまして、私ども通産省の中で、七〇年代の通産政策、ちょうど四十五、六年にそういうことを議論いたしまして、やはり従来のような高度成長はいつかは屈折をする時期が来るのではないか、そのときに産業政策としてどう取り組むかということは、私どもの省の一つの問題として議論をいたしました。ただ、そうは申しましても、オイルショックということを契機にこのように非常に大きな経済の屈折が、しかも長期にわたって低迷をするような事態が来るということをだれが予測したかと申しますと、率直に申し上げて、その辺には若干の見通しの違いがあったということは認めざるを得ない、こういうふうに考えております。
  186. 草川昭三

    草川委員 ですから、私は、きょうこの場でこの問題の論議をするつもりはございませんけれども、やはりだれでも今日の状況は予測できないということ、あるいは基本的には過剰設備の問題については経営者の責任もあるのじゃないかと思うのですけれども政府も謙虚に反省をしながら構造不況対策というものを出していきませんと、なかなか今後の方向というのがうまく回らないのではないだろうかと思うわけであります。  そこで、七%の経済成長との関連についてお伺いをします。  七%の経済成長というのは、ずいぶん予算委員会等でも論議になりましたが、これが成功——成功と言うと言葉が悪いのですが、完全達成をされた場合に、先ほど来から言われております構造不況業種の位置づけというものは一体どういうようになるのか、不況業種というのは七%によって一体救われるのか救われないのか、絶対的に多過ぎるのか、七%でも多過ぎるのか、その点についての考え方を簡単で結構ですから出してください。
  187. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまいわゆる構造不況業種と言われておる業種が製造業、二次産業の中でどのぐらいのウエートを占めておるかと申しますと、拾いようによっていろいろございますが、一五%程度ではないかと考えております。しかし、現在の景気感の足を引っ張っておるのはこの構造不況業種の存在だと思いますし、七%という本年の経済成長の目標が達成された場合には、やはりこういう構造不況業種を取り巻く問題の解決ないしはその方向をよりいい方に持っていくということは事実でございますが、率直に申し上げまして、七%の成長を達成したならば構造不況業種が抱えておる全部の問題が片づくかと言えば、それはなかなかそうはまいらぬ。やはり過剰設備の問題というのは長期の問題として、今年度の七%の経済成長が達成されても、相変わらずそういう面での問題はどうしても残っていくのではないか、ただ、その環境は非常によくなる、こういうふうに考えております。
  188. 草川昭三

    草川委員 いまおっしゃられたのが私は本当の実情だと思います。私どもも現場を歩いてきて、実情は七%の経済達成はなかなか困難だと思いますし、たとえばそれができても、実感の判断では、いま言われたような製造業なりあるいは過剰設備というものを解消するような段階には至らぬということはよくわかるわけであります。そのとおりなるがゆえに、私は、実はこの構造不況法案というこの法案だけでは基本的な日本の産業の活力というものは復帰しない、こう思うわけですね。だから、逆に私は、問題解決のためには、もっと業種を横断的に把握をして対策を立ててみるということも必要だと思いますし、いまのこの法案は基本的には産業の調整策にすぎぬのではないか、できれば産業構造政策に属する積極的な産業転換政策というものもあわせて打ち出していく必要があるのではないだろうか。特にこの円高というのは予想外に急テンポで迫ってきておりますし、私どもはどちらかと言えば雇用の問題を中心に取り上げてきたわけでございますけれども、地域的には大変な雇用の問題もやがて出てくるのではないだろうかと思うわけであります。  ただいまの本年度予算が公共投資重点的に提案されておりまして、いろんな論議を呼んでおるところでございますが、現実には建設、土木関係ではかなりの材料の値上がりという面もあるわけでございますが、それなりに息づいておることは事実ですね。ところが、この構造不況業種に対する需要増大というものを予算面からどう政府は考えていくのか、ひとつここで大臣に、前向きの財政援助というものを彼らに考える必要があると認められるのか、あるいは片肺のこの構造不況対策だけか、今回の案だけかということについてお伺いをしたいわけでございます。具体的には予算の早期執行だとか、あるいは同時に秋には大型の補正予算が必要だというような意見も一部産業界には出ておるようでございますけれども、その点等を含めて、あくまでも片肺で行くのか、積極的に転換政策を打ち出しながら需要拡大の方針を出すのか、大臣からの見解を賜りたいと思うのです。
  189. 河本敏夫

    河本国務大臣 今回お願いをしております法律は、ある意味では後ろ向きの法律でございます。そこで、いまのお尋ねは、このような後ろ向きの法律だけを出して問題は解決しないではないか、もっと総合的に判断をすべきではないか、こういう御意見でございますが、その御意見の骨子には私どもも賛成でございます。やはり景気を速やかに回復をいたしまして、産業全体の操業率を上げていくということが根本でございまして、これがある程度実現をいたしますならば、構造不況業種特定不況産業と言われるものの大半は問題が解決するわけでございます。  でありますけれども、オイルショック以降の産業構造の変化というものは非常に大きなものがございますので、やはりある業種はどうしても構造改善事業をしなければ立ち直ることがむずかしいと私は考えております。でありますから、一面においてこういう後ろ向き対策をやりながら、あわせて積極予算を組みまして、あるいはまた金融政策なども積極的にこれを運用いたし、さらにまた産業政策、貿易政策の面におきましてもいろいろな積極的な配慮を払いながら産業全体の活力を取り戻す、こういう積極的な対策はぜひ必要である、このように私どもは判断をいたします。  そこで、いまのお尋ねは、それではさらにそういう積極的な対策を進める上において、必要とあらば補正予算等も組むべきではないか、こういうお話だと思いますが、この点につきましては、総理がたびたび予算委員会等を通じ、あるいは本会議等を通じて明らかにされておりますように、私どもはいまの政策で大体目標の経済効果は期待できると考えておりますが、万一という場合にはほっておくわけにはまいりませんから、その場合にはもう臨機応変かつ機敏に対応しなければならぬ、これは内閣全員の一致した意見でございます。でありますから、秋にならなければ補正予算は組まないとか、そういうことではございませんで、臨機応変でありますから、必要とあらばいつでもいかなる対応もする、こういう構えで進んでいかなければならぬと私どもは考えております。
  190. 草川昭三

    草川委員 先ほどの局長の答弁で、たとえば七%経済成長が実施をされたとしても、なかなか今日の産業構造のこの構造不況というものは解決しないという御答弁、こういうものがあるわけでございますから、私は、この片肺だけではだめですぞということを申し上げたわけでございます。いついかなる条件においても機敏に対応するということですが、私は、実質的には相当早期にそういう必要が考えられるのではないだろうか、こう思うわけであります。しかし、時間がございませんので、次の安定計画の方に移っていきたいと思います。  この安定計画についてですが、私は、どちらかと言えば、先ほどもちょっと触れましたように、この法案設備廃棄ウエートを置き過ぎるのではないだろうか、こういう感じがするわけであります。私は、終始一貫、供給力よりもむしろ需要の方に目を向けていきませんと、角をためて牛を殺すことになりそうだという意見を持っておるわけでありますが、しかし、そうは言いましても、日本の高度成長の中でふくらんだキャパシティーというものを正常な状態に縮めなければいけないということも、またよくわかるわけであります。そういった意味で、日本の産業構造自身の問題にもなるのですが、日本という一つの国の一つ産業が世界じゅうを独占するというような、そういう産業はもう限界が来ておるのではないだろうか。いわゆる国際連帯、あるいは国際協調、国際分業という問題もございますけれども、日本はずっと伸び切ってしまったわけでございますから、その点について、産業そのものに対する大臣の見解を簡単でいいですからお答え願いたいと思います。
  191. 河本敏夫

    河本国務大臣 オイルショック以降非常に大きな影響を全産業が受けております。そこで、ことしは、通産省といたしましては、昭和六十年を展望いたしまして産業構造の展望をひとつ考えていきたい、こういうことで、いま産業構造審議会にお願いをいたしまして、いろいろの作業の準備を始めておるところでございます。  また、今国会におきましては、後ろ向きの法案としての特定不況業種のこの法案をお願いしておりますが、さらに、前向きの法案として、いわゆる機械情報産業を育成することについての法律案をお願いをしよう、こういうことでいま準備をしておるところでございます。発展途上国、周辺の国々の産業の状態等を考えますと、どうしてもこれまでの産業構造ではやっていけない、ある程度転換は必要である、そういうことを十分考えながら今後の産業政策を進めていかなければならぬと考えております。
  192. 草川昭三

    草川委員 続いて、安定計画の実施の内容になるわけでございますけれども、たとえば平電炉でもベニヤでもそうでございますけれども、財務体質でいくのか生産性というか能率でいくのか、どちらを選択するかという非常に重要な問題があると思うのです。だから、財務体質、たとえば商社、銀行の立場から言うならば、古い機械で細々とやっていけばいいじゃないかという意味で、新鋭設備と対比いたしますと、新鋭設備の方は物すごい投下資本がかかっておる。フル生産すれば確かにランニングコストというのは安くなるわけですけれども、安定計画から一割カットとか二割カット、三割カットというものがあるわけですから、それだと負担がえらい。ですから、常識外ですけれども、新鋭設備廃棄して古い設備を残そうということもあり得るわけですね、この計画から言うならば。その点、通産省は一体どちらを指導されるのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  193. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの点でございますが、この安定基本計画の第一号で、どういう設備処理対象にするか、それから設備処理の方法をどうするかというようなことは具体的に決めるわけでございます。ただいま御指摘の財務体質か物的生産性かという問題は、繰り返し申し上げておりますように、設備処理は、第一にはやはり民間の自主的な努力、それから個々の企業の判断というものを優先さすべきだ、こう私どもは考えております。したがって、通常の大原則といたしましては、つまりどういう設備処理するかという対象設備とその量が決まりました以上は、何を処理するかというのは第一義的には個々の企業の判断ではないかと私は考えております。  ただ、そうは申しましても、ただいま御指摘のように、これからの日本の経済というものを考えてみますと、特に特定の業種につきましては、国際競争力上どうだという判断をすることが非常に重要な業種がたくさんあると思います。その場合に、ただいま御指摘の財務体質ということだけに限って新鋭設備をつぶしてしまう、これはまことにばかげたことでございまして、そういうものが非常に重要な業種につきましては、個々具体的な業種について安定基本計画の策定に当たって問題が起きないように、新鋭設備にはさわらぬ、古いやつをやるのだということを決めなければならぬものもあると思います。結論的には、そういう業種、業態の実態に応じまして具体的な安定計画策定のときに審議会において十分議論してみたい、こういうふうに考えております。
  194. 草川昭三

    草川委員 いまの答弁は、個々のケース、実態で十分詰めてみたい、こういうことでございますけれども、それはそれで結構でございますが、一面、こういう話もあるのです。  すでに開発途上国の方から、そういうことなら生産の一本のラインをワンセット、つまり一つ一つの個別の機械ではなく、たとえばベニヤ、平電炉というのは一つのラインになっておるわけですから、ワンセットそのラインごとに引き受けたいという商談、ネゴが来ておるという話があるわけであります。もちろんこの法案とその許可の関係はないわけでございます。別な話でございますが、そういう話があったときに、それはいい話だからどうぞどうぞという形になるのか、ちょっと待てということになるのか、答弁願いたいと思います。
  195. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御指摘の点は、この法案の内容に絡めますと、設備処理対象としていま使っておる機械の輸出を一体どう考えていくかという問題ではないかと思います。いまお話にもございましたように、この設備処理の問題とは別に、自分の使っておる設備を輸出しようということを個々の企業が判断をする、これは自由と言えば自由でございますが、しかし、この設備処理ということが業界ぐるみで、しかも安定基本計画をつくる対象業種になった場合には、いわゆるブーメラン効果と申しますか、あるいは外にそういう競争相手をつくるということは、業界全体の問題として別途議論されるべき問題であろうと私は考えます。  そこで、まず第一に、この法律関係から申しますと、この法律は、基本計画をつくるほかに、一つの大きなポイントといたしまして、特定不況産業信用基金による保証の問題がございます。輸出をいたしますれば、通常の場合、少なくともそれに見合いのお金が入るわけでございまして、この保証基金の対象としてはまず考えられないケースであろうと思います。  それから第二に、それでは輸出を設備処理対象に入れるかどうかという問題でございますが、この法案議論いたします段階では、これは個々の業種によって今後いろいろ議論がされると思いますが、やはり輸出を直ちに設備処理一つの方式とするということは問題があるのではないか、こういう考え方で私どもはおるわけでございます。
  196. 草川昭三

    草川委員 いま、設備を輸出する場合はこれの処理対象にしない、問題があるという答弁でございますから、それはそれで結構ですが、背に腹はかえられぬという状況が実際金を貸しておる商社だとか銀行にはあるわけですから、思い切ってと——いまは銀行自身が構造不況業種ではないかと言われておるぐらいに追い詰められている場合だってあるわけですから、私は、日本の国というものを考えて、事前事前に対策を立てていく必要があると思うわけであります。これは意見であります。  次に移りますけれども、信用基金の話が出ましたけれども、この信用基金についてでございますが、私どもがいろんな業界の方とお話をしてまいりますと、これはかなり不信感が強いし、果たして実際うまく実行できるかという御意見が非常にあります。特に、せっかくこういうようなものをつくっていただいたとしても裏保証をしなければいかぬとか、裏保証をする力がないじゃないか、裏保証ができるだけの仕事が欲しいじゃないかというような切実な実は訴えというものが多いわけであります。  私は、そういう意味で、また最後に総括的に大臣からも御答弁願いたいと思うのでございますが、まずその前に、たとえば今度の法案は五年なら五年ということになっておりますけれども、これで法案ができて、そして業界から申請があって認定されて、それから安定計画を一年なら一年の間につくってから基金に対して申請するということになりますと、あと四年の期限しかございませんね。この基金の範囲というものはそういうものでしょう、五年なら五年という範囲になるわけですから。そうしますと、その四年先の債務保証の状況をいまどのように判断を通産省としては持ってみえるのか、一体それで終わりなのか。たとえば四年間なり三年間なりで償還をしなければいかぬと、一年度は物すごい返済になりますね。そんなことは実際上不可能ですよね。だから、私は、そういう点で、これは後ほど具体的にベニヤの例なんかを引いて御質問をまた申し上げますけれども、とりあえず、この信用基金の有効期間と法との関係、あるいは債務保証の状況というものをどのように続けていくのか、あるいは枠から張り出した分、張り出すことも実際銀行はあるのかどうかということも問題があるわけでございますが、そのような点について答弁してください。
  197. 濃野滋

    ○濃野政府委員 債務保証基金の運用に絡んだ問題、幾つか御質問ございましたが、第一に、私ども、この債務保証基金の保証をなるべく早く開始をしなければならぬ。御指摘のとおり、この法律ができまして、この法律に定める特定不況産業の指定の政令あるいはそれに続きました安定基本計画の策定をゆっくりやっておりましたらば、これはえらい先のことになりますが、私どもは、この法案が幸いに御審議の結果成立を得ました場合には、なるべく早くこの法律に定められておるいろいろな手続を進めまして、設備処理に具体的に取り組めるようにしたいと思っております。そういう意味で、ただいま計画をつくるのに一年ぐらいかかってそれからという話もございましたが、私どもは、もっと早くこれを進めたいと考えております。  第二に、債務保証基金の具体的な運用の内容につきましては、現在いろいろ事務的な準備は進めておりますが、債務保証基金の保証の期間は五年と考えております。そうすると、この法律の附則二条によりまして、「昭和五十八年六月三十日までに廃止するものとする。」となっておりまして、大体五年間しか生きぬので、そこをどうするかということでございますが、この法律を失効法ではございませんで廃止法といたしましたのは、まさにただいまの御指摘のように、保証期間は五年といたしますと、この五十八年六月三十日を越えて保証しなければならぬかっこうになると思います。そこで、この法律が五十八年六月三十日に近づきましたころに、この基金の債権債務の関係の整理、それからこの保証がどうなっておるかというような、そのときの実態等に応じまして最もいい措置をとりたいということで廃止法といたしました。この廃止をするための法律を出すときに、ただいまのようないろいろな権利義務関係等をその法律の内容に盛り込みまして、そして実体的に支障のないようなかっこう処理をしていきたい、こういうつもりでおるわけでございます。
  198. 草川昭三

    草川委員 そうすると、たとえば解散をした時点で債権債務が残ったとするならば、まあ残るような計画になれば、次の何か新しい公団というのですか、財団というのですか、公庫というのですか、何かそういうものに引き継ぐかあるいはまた新しい法律ができるというように理解していいわけですか。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 濃野滋

    ○濃野政府委員 そのとき、この法律の附則二条に定めます五十八年六月三十日が来ましたときにどういうかっこうで整理するか、これはいま想像することは大変むずかしゅうございますが、一つの考え方といたしましては、この法律の、たとえば新しく安定基本計画をつくるとかあるいは指示カルテルをするとか、こういう規定は全部廃止をするけれども、先ほどから御指摘のございますような債務保証基金による保証、これがまだ保証の期間が残っておれば、その限りでは保証基金はまだ存続をさせて、そしていろんな債権債務関係あるいは仕事をそのまま継続をさせるとか、それから、それが全部終わったときに基金の持っておりますその基金をどう処分するとか、こういうことをその廃止法の中で決めたい。したがって、私がここで申し上げられますのは、六月三十日が来た時点に直ちに基金を廃止するよりは、むしろ、保証業務が残っておる場合には、その限りで保証基金はまだ存続をさせるというようなことが現実的な方向ではないかと思いますが、そうここで断定するわけにはいかないということを申し上げておきたいと思います。
  200. 草川昭三

    草川委員 いまの点は非常に重要だと思うわけです。各業界なり実際これに参加をする人は、この法律の範囲内だけで不況が直るなんて少しも思ってないわけです。だからこそ構造不況なんという名前になっているわけです。だから、その点はそれが残るという意味、あるいはまた何らかのいい方法を考えるという御答弁がございましたので、それは前向きの問題として私は受けとめておきたいというように思います。  続いて、余剰の設備破棄のことだけでは問題があり過ぎるじゃないかということを言っておったのですが、当然企業合併という問題も出てくるわけでございます。ところが、産業を見てまいりますと、大体いままでの企業合併というのは、銀行系列だとか、資本系列だとか、いろんな形で一応ほとんど終わったと私は思うのですね。これからの企業合併はどうあるべきか。たとえば具体的な例を申し上げますと、木材、これは農林省の方もお見えになっておられますから聞くわけですが、たとえばベニヤ業界というのは、なかなかいままででも合併というのはできないわけですね。実際個人の経営者のずっと生い立ちがある。だから、そう極端に企業合併というのはできないと思うのですが、これからの企業合併の一つのルールなり方向というものをどう通産省は指導されるのか、お聞かせ願えませんか。
  201. 濃野滋

    ○濃野政府委員 企業合併、あるいはこの合併という言葉を広くとりまして業務提携とか、そういうものも含めたいわば広い意味での企業の合併問題あるいは本当意味での合併問題、一つのルールがあり得ないかというお話でございますが、これは大変むずしい問題と私は思います。やはり企業の合併というのは、そのときに置かれましたいろいろな経済的な環境の中で企業者の判断すべき最も重要なポイントでございまして、一つのルールをつくり上げるというのはなかなかむずかしい問題だと思います。  ただ、今回のこの法案議論いたしますときにも、ただいま御指摘のように、今後の日本の経済の運営の中で、特に従来の高度成長から経済成長の減速化を踏まえたいわゆる新しい経済発展の経済運営の中では、従来のようなかっこうでそれぞれの業界がそのまま生きていくというのはなかなかむずかしい問題になっていくであろうという認識は私ども持っておりまして、たとえば安定基本計画を定め、その中で設備処理をするといたしましても、単純にいままでの業者の方が全部そのまま残って一律の設備処理をするというだけでは済まない業界も出てくるのではないか、そういう観点から、この三条「安定基本計画」の中身の一つといたしまして、「設備処理と併せて行うべき事業の転換その他の措置に関する事項」も必要があれば定めよということを取り上げておりまして、事業転換のほかに「その他の措置に関する事項」として私ども予想いたしましたのは、生産の委託関係をやるとか、あるいは共販会社を設立するとか、あるいは品種の専門化を共同して進めるとか、あるいはさらに進んで合併をするというような、ただいま御指摘のような合併の事態等も、この設備処理の問題を一つの契機といたしましてそういうことが進められる、そういうことが熟した業界においてはそういう点も安定基本計画の中身にする、そしてでき得れば、そういうところまで熟した業界においては、ただいま御指摘のような一つのルールと申しますか、見通しというものも議論されるのじゃないかということを期待しているわけでございます。
  202. 草川昭三

    草川委員 実は、そこで雇用の問題と関連をしてくるわけでございます。先ほども私は一年という言い方をしたのですが、局長は、一年なんというそんなにのんびりしたことは考えていない、早急に安定計画をつくりたいという答弁でございます。だから、安定計画をつくれば、そのワンラインの破棄か一律カットかは別といたしまして、当然過剰雇用という問題が出てくるわけであります。  ところが、そう簡単に過剰雇用をやってもらっては困るという意見が、法案のいろいろな準備段階から実はぐうっとこう来ておるわけです。予算委員会などでもわれわれはその点についての集中審議さえやっておるわけですが、これは非常にむずかしい問題であります。何も揚げ足を取っていくというつもりはないのですけれども質問をしますと、必ず逆の矛盾点が、いまもうこれで三つも四つも引き出されてきておるわけであります。労働者の解雇を伴う産業再編成なり安定計画というものが当然考えられるわけでございますが、労働組合の事前の協議というものを産業別に審議会に入れるのか、地域代表というような労働組合の声もこの審議会に入れるのか、大臣にお答え願いたいのですが、もし通産省が考えているとおりにこの安定計画が進んでいった場合に、過剰雇用というものあるいは失業者というものがどの程度出てくるのか、これは当然労働省あたりとも事前に協議をされてみえると思うのですが、その具体的な考えを出していただきたいと思います。
  203. 濃野滋

    ○濃野政府委員 先ほど私、安定基本計画をなるべく早くつくりたいと申し上げましたのは、計画はできるだけ早くつくりたい、ただ、具体的に設備処理をどういうテンポで進めていくかという点は別問題でございまして、ただいま先生御指摘のように、その中で一つの大きな問題は雇用の安定との関係ではないかと思います。  そこで、いまいろいろな御質問がございましたが、第一に、この安定基本計画をつくるに当たりまして私どもが現在考えておりますのは、関係の審議会において、しかも審議会はそれぞれの業種別に部会なり小委員会なりあるいは分科会なりを設けまして検討をする、その場に関係労働代表というものの御参加を願って十分意見の開陳、御審議を願うということにいたしたいと考えております。  第二に、地域別の問題、先ほども御指摘がございましたように、特に構造不況業種というのは非常に地域と密接した問題を抱えておる業種がたくさんございますので、地域代表の御意見を審議会に反映させることも必要だと思いまして、必要に応じて、そういう審議会の委員になられるなり、御意見を伺う機会を得るなりして、ぜひそういう御意見は十分反映させていきたいというように考えておるわけでございます。  第三に、この安定基本計画自身には、いわゆる雇用の面で具体的な数字をとるということは私ども予定しておりません。むしろ、雇用の安定ということは、基本的には、安定基本計画に定めました過剰設備処理を、各事業者のベース、業界ベースで労使の話し合いのもとに円満に進めていくのが前提でございます。したがって、この安定基本計画の中身として、具体的な雇用をどうするかという問題を私ども予定いたしておりませんが、雇用の安定に響く問題でございますので、この点については労働省当局とも安定基本計画の策定に当たって十分話し合いをしていくということで、労働省事務当局とすでにそういう覚書と申しますか、文書をつくっておるわけでございます。  以上のように、雇用の安定という面では、この基本計画の策定の段階、あるいはその後に出てまいりますけれども、最終の場合にたとえば共同行為の指示をするというような事態もございますが、こういう場合等々につきまして、審議会の場ではすべて労働組合あるいは労働関係者の御意見を十分反映させるような運用をしていきたい、こういうふうに考えでおります。
  204. 草川昭三

    草川委員 いずれ連合審査が行われると思いますから、またそのときに詳しいことはお伺いしたいと思うのですが、実際、個々の企業の中では労使関係の間で労働協約がある、事前協議約款があったと仮定をしますと、なかなかここで話が煮詰まらない、だけれども業界全体では安定計画を実施したいといって見切り発車があった場合に、通産省としてはそれを認めるかどうか、一言だけお伺いしたいと思います。
  205. 濃野滋

    ○濃野政府委員 特定不況産業と指定をされました業種設備処理をどうするかというその業種ベースでの問題は、ただいま御答弁申し上げましたように、私ども、それぞれの審議の場等において十分御意見を反映してやっていくつもりでございます。ただ、個々の企業の問題になりまして、これが具体的に設備処理を進めていくという段階につきまして、これを法律上の手段として規制するとかいうようなことはいかがか、やはり労使の関係にお任せすべきではないかと考えております。しかし、雇用の安定という問題は非常に重要でございますので、事業者の責務と申しますか、あるいは国、地方公共団体のいわゆる配慮事項といたしまして、今度の法案の十条にわざわざ、これは訓示規定ではございますが、私どもの態度をはっきりと明記しておるのもそういう趣旨でございます。
  206. 草川昭三

    草川委員 では、その問題はそこでとめまして、少し具体的に合板の例をお伺いしたいと思うのです。  合板の場合、すでに個別的にはいろいろと構造改善の基金をつくられまして、六億五千万円でございますか、やっておみえになるようでございますが、なかなかうまくいっていないというお話があるわけであります。そこで、もう内容はわかっておりますし、時間があれでございますから、内容は別といたしまして、その基金ですね。こちらの安定計画の方は二十億、もう大体手配は済んだというお話がすでに出ているようでございますけれども、個別の合板の場合に、購入原木に一定の割合で賦課金をかけたい、そのために商社の協力が必要だというようなことを言われておみえになるようでございます。商社から原木を買っていない業者もおるわけでございますが、そういうように資金づくりについて一体どういう問題があるのかということにしぼりましてひとつ質問をしたいと思います。
  207. 輪湖元彦

    輪湖説明員 お答えいたします。  基金につきましては、先生おっしゃられましたとおりに、五十二年度の予備費から三億二千五百万円を助成いたしまして、六億五千万円の基金を造成するということで、現在造成中でございます。  ところが、問題は、設備を買い上げて廃棄をする、目合連という工業組合連合会が事業を行うわけでございますが、その返済につきまして、やはり合板の場合は機械がライン単位で稼働しておりますから、そういった意味では少なくともワンラインあるいは工場単位というかっこうでの処理をする必要があるわけでございまして、そうなりますと、その処理をする企業につきましては返済能力がなくなる。したがいまして、残存メーカーでの負担というかっこうになるわけでございます。  残存者が負担をしてその資金を返すわけでございますが、その場合の返済の金の集め方にはいろいろな方式がございます。現在、生産量割りという方式が一番いいのではないかという意見等もございますが、過去三年来のカルテル連続という不況業種でございまして、現在でも販売価格が生産原価よりも大幅に下回るという商況でございますので、そういった意味合いでは、メーカーがじかに生産数量割りで毎月返済をするということがなかなかむずかしいわけでございますので、原木段階で一括して原木代金にプラスいたしまして、それを上乗せして商社あるいは問屋等からまとめてその基金の方に納入していただくという案がどうであろうかということで、現在検討を進めておるわけでございます。しかしながら、先ほど先生おっしゃられましたように、商社から購入する原木、あるいは問屋から入ってまいる原木、さらには製材業の方から回る原木とか、いろいろルートがございますので、その辺の把握方法について現在鋭意調整をしておるところでございます。  早急にこの事業の実施を図る上からも、返済方式の早期確定、業界の意思の統一がぜひ必要であると私ども考えますし、しかも長年にわたりまして返済をしていかなければいけませんから、そういった意味合いでもそういった意思の統一が必要であるということで、もうしばらくの調整が要るというふうに考えている次第でございます。
  208. 草川昭三

    草川委員 いま合板関係、零細企業なり中小企業の方々が多いのでございますけれども、いろいろと歩いてまいりますと、結局今度の構造不況法案も、基金をつくってくれるのはありがたいけれども、金利は一体どの程度になるだろうか、先ほども申し上げましたように、実際上の裏負担をするだけの力がもうないのだというようなこと、裏負担を頼む商社だとかいうような方もなかなかいい顔をしないというようなところがございまして、これは一億円以下ということになると思うのですけれども中小企業振興事業団の助成の方がよほどいいですよという意見が強いのですよ。中小企業振興事業団の方は現在五十三年度の予算でも六百億の予算枠があって、これは多少数字は半端がございますけれども、九割は国、一割は地方自治体が持ってくれるわけですし、十六年でございますか、長期にわたって返せばいい、できたらこれで再建したいというのが多いのですよ。こういう意味で、もう一回これは通産省に戻りますけれども、信用基金のあり方、あるいは個別にそれぞれの業界の方々が銀行から借りる場合の金利負担というようなことを考えられるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  209. 濃野滋

    ○濃野政府委員 債務保証を行います基金の運用のいろいろな問題点につきましては、ただいま事務的に問題点を整理いたしております。ただ、そうは申しましても、幾つかの基本的な問題がございます。  第一に、債務保証基金は、当面の措置として開発銀行から本年度百億円を限度として出資をいたしますが、民間からの出資または出捐もお願いするということでございまして、まずこの新しい基金の基礎をどうやってはっきりさせるかという問題が第一でございます。  第二に、ただいまの御質問に関連いたしますが、今回この基金をつくりましたのは、構造不況問題はいろいろな取り組みがございますが、基本的に設備処理ということが一つの共通した問題であって、いわばそれの大きな裏打ちとして金融の補完的な機能を果たす保証機能というのがどうしても必要ではないかということで、この基金をつくったわけでございますが、この前提といたしましては、それぞれの当該業界のみならず、金融界及び関係業界、たとえば商社等の全面的な協力が必要であろう、やはりこの基金を設立すると同時に、私ども行政官庁としても協力体制が確立されるように努力をしていくことが第二の問題であろうと思っております。  第三に、具体的にただいま金利というお話がございましたが、これは債務保証基金でございますので、保証料の問題が出てまいります。保証料はまだ決めておりませんが、この性格にかんがみまして、できるだけ安くしなければならぬということで、今後財政当局等と詰めていきたいと私どもとしては考えております。  第四に、金利と申されましたのは、結局従来の担保抜き等いろいろ原因は違いましても新しいお金を借りなければならぬ、そのお金が一体どれだけの金利で借りられるか、こういう問題であろうと思います。個々の業種安定基本計画をつくりまして設備処理業種別に進めるに当たりまして、ただいま申し上げたように、その業界として本当に立ち直っていくためには、金融界、商社等関係者の十分な協力が必要でございまして、私どもの立場といたしましては、設備処理に当たって必要な資金の金利はできるだけ安くしてもらうように、関係金融機関への協力等も今後要請をしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  210. 草川昭三

    草川委員 実は農林省の方、もっと質問する予定だったのですが、時間がございませんので、これで結構でございますから、御苦労さんでございました。  いま、金利なり保証料の問題等についてのお答えがあったわけでございますけれども、話を少し進めましてまたそこに戻りますから、続いて造船の方の具体的な例を申し上げたいと思うのです。これも余り時間がございませんから、ひとつしぼって、きょう大変御迷惑でございますが船舶整備公団においでを願っておりますので、ちょっと実情をお聞かせ願いたいのでございます。  船舶整備公団というのは、私なりの解釈で言いますと、沿岸だとか、あるいは中小零細は船舶を共同で持ちなさいとか、いろいろな意味での御支援をなさる公団だと承っておるわけであります。私どももそれなりに、近県の堀川べりというのでしょうか、昔からの小型船舶の造船所をずいぶん見てきたわけでございます。これは業界の常識と言えば常識なんですけれども船舶整備公団が共有船をつくってくれる、あるいは共有船でだめな場合にはある程度チャーターをしてくれる、こういう制度をさらに拡充をしてもらいたいというのがずいぶんあるのです。  だけれども、今度それを実施する段階になって、造船所に仕事を発注する場合に、その造船所がどうも危ない、果たしてこの造船所が全部船を建造してくれるかどうかという意味で、銀行に対して保証を要求するというわけですね。これは大きな船でも国際的にはやっておるけれども、大きな船の場合は、まさか船をつくる途中で倒産するということはないわけですから、銀行がどんどん保証をしてくれる。だから、銀行にとってみればまるもうけの一つのシステムになります。また、逆に輸出船の場合には、外国に保証させるという意味でタイでございますけれども、問題は、小型造船所の場合は少しひど過ぎはせぬかという意見があるのです。  銀行は、たとえば十億なら十億の船の保証の場合、一隻くらいは保証してくれますけれども、二杯、三杯となりますと、もうお手上げになるわけです。保証できない。そうすると、受注を遠慮してみたり無理が重なるというので、思い切って中小零細造船の場合には、船舶整備公団という一つの非常に大きな国家的な助成を目的とする公団でございますから、そういうものの再検討をしたらどうかということを私は御提案申し上げたいのですが、御意見を承りたいと思うのです。
  211. 亀山信郎

    亀山参考人 中小零細造船所に前払い金を払います場合の金融機関の保証の問題であると思いますが、現在、私どもは、船価の七割ないし八割を公団で負担して、船主と共同で発注をいたしております。造船所の選択は、主として船をつくる船主の選択によっておるわけでございますけれども、当公団の資金はすべて財政資金でございますので、その運用に過ちなきを期するために、ただいまの前払い金に対する保証を求めることにしてやっております。  お話のように、金融機関によっては保証を渋る場合がないではございません。過去におきましても、ごくわずかでございますが、若干例がございました。せっかく船主も造船所もその気になっており、私どもも、その造船所が技術的に見ても適格性があると考えて発注したいと思っておる。そのときに金融機関の保証がないという場合に、金融機関の方が実は造船所に対する知識と申しますか、内容についての知識が不十分である。大銀行のような調査機関を持っておるものじゃございません。大体が信用金庫あるいは地域の相互銀行、そういう金融機関と申しましても非常に地域性の強い小さな金融機関でございますので、大銀行のような審査能力がない、そういうことから何となく不安に思って保証を渋る場合がある。その場合には、金融機関側とお話をしまして、取引先の信用金庫等でございますけれども、公団としては七割ないしは八割はキャッシュで必ず払うのだ、またこの造船所の実績から見て大丈夫であるというふうな説明をしますと、大体納得して銀行保証をしていただける、かようなことになっておりますので、もし船主が希望し、造船所においても適格性があるところで保証が得られない場合には、当公団にお申し出をいただけば、当公団の方で金融機関に御相談をして保証をとる。私どもは、やはり財政資金をお預かりしておる関係上、万一の場合に備えるという用意は当然必要かと思いますので、そういうことをやっておりますが、いま言ったような措置で、まず九九%以上保証がとれると私どもは考えております。
  212. 草川昭三

    草川委員 本当に困った場合には公団もある程度協力をしようという答弁でございますので、それは非常に結構な話だと思うのですが、私が言いたいのは、小型船でございますから、たとえば運輸省だとかあるいは公団自身が、近県のそれこそ大造船所なんかもあるわけでございますから、逆の意味での建造をするという保証を、もしもその企業倒産した場合には、小型なんだから簡単にそれぐらいはこちらで引き受けてやってもいいですよと言うぐらいの余力というものをある程度持つことが、これからの本当の——沿岸の全くの小型船舶でございますから、私は、そういうことを保証した方が本来の銀行保証のあっせんをするよりはいいのではないだろうか、こう思うのです。しかし、これは素人の意見でございますから、いまおっしゃられましたように、財政資金を預っている立場上は、前払い金についても保証をとらなければというのも当然だと思いますが、私は、そういった施策、生きた施策というものがこれからの構造不況業種にとって非常にありがたいことではないだろうか、こう思うわけでございますから、これはひとつ要望として申し上げておきたいと思うのです。  大変わずかの時間にお呼び立てをいたしまして申しわけございませんけれども、沿岸の小型船舶のいろいろな零細企業の方々は非常に強い期待を持っておりますから、ひとつよろしく今後の御指導方をお願い申し上げておきたい、こういうように思います。どうもありがとうございました。  続きまして、造船の方に行きますけれども、造船も何回か集中審議が運輸委員会等でやられておりますから、きょうは時間もございませんから、余りくどくどと申し上げませんが、一つ積極的な提案があるのでございます。  下請の場合に、船をスクラップにして、そしてそれを解撤作業しようじゃないかというのが、運輸省の助成で五十二年度も出たわけでございます。これは私どもも十分承知をしておるわけでございますが、もういまの段階になってまいりますと、一時スクラップの値段が下がったからというので非常に縮小しておりましたが、逆にいまは親会社ぐらいに積極的に、スクラップ・アンド・ビルドという政策もあるわけでございますから、現実的にスクラップしたらどうなんだろう。そして、きょうのテレビを見ておりますと、外国からの共有船もどんどん外貨減らしのために日本の国に戻そうというような提案がテレビに出ておりました。私はあれも一つの方法だと思うのです。共有船を直ちにスクラップにするにはまだ新しい船でございますけれども、逆にそういうものを日本の海運が引き受けるということになりますと、その分だけ老齢船というものを早くスクラップ化するという押し出し政策になると思うのです。そういう意味では大胆に、いまは大企業はあしたからでもあさってからでも予算措置がつけばやれるわけなんで、私は、かえって下請ではなくて、まさしくいまは中小あるいは大造船でもこのスクラップ政策というものはやれるのではないだろうか、こんな気がするわけであります。そんなことについて、運輸省の方からお答えがあれば御意見を賜りたいと思います。
  213. 間野忠

    ○間野説明員 先生御指摘のように、五十二年度に、主に造船下請業が解撤の方へ転換する場合に、その技術を改善するための補助金というのを交付することによりまして、造船下請業の解撤業への転換を促進するという措置をとったわけでございます。現実に試験解体もかなり進みましだが、いかんせん、ただいま御指摘のように、スクラップの売却代が非常に低下いたしまして、予算折衝中と申しますか、一昨年いろいろ計画いたしましたときには、船を解体しました場合、解体したスクラップ製品トン当たり平均三万六千円ぐらいでは売れるのではなかろうかということで計画したわけなんですが、一時は二万円を割るぐらいのところまで下がりまして、その後回復したとはいえ、まだとても三万円といったところには及ばないような現状でございます。そういったことで、下請も含めて、まだ必ずしも本格的にスクラップに乗り出そうという機運が非常に薄いわけでございます。それと、従来スクラップの値段とそれから解体用の船舶の値段というものは大体比例して動いておったのですが、今回の場合は、スクラップの売却代は非常に下がったのですが、解撤用の船舶の値段というのは、ライトウエートトン当たり九十ドルとか百ドルというところで相変わず推移しておりまして、そういったことも採算の非常に苦しいという事態の原因になっております。
  214. 草川昭三

    草川委員 私どももいろいろな下請の関係の方とお話をしてまいりましたけれども、トン当たり十工数ぐらいの工数がくる。だから、雇用の面から言いますと、これは非常に魅力のある作業だと思うのです。私は、これからも相当いろいろなスクラップの値段の上下があると思いますけれども仕事をつくるという意味では構造不況対策の非常に最たるもののような気がしてなりません。これはひとつまたぜひお考え願いたいと思うのです。  第二番目に、これはやはり造船の関係になりますけれども、いろいろな地域に、たとえば北海道の函館のところへ私は行ってきたわけでございますけれども、ソ連の漁船の修理というのは山ほどあるというのです。ところが、御存じのとおり、昭和四十二年に領海三海里時代に、韓国だとかソ連だとか台湾だとかという漁船のかなりの乱獲というものに対抗してつくったむずかしい法律があって、外国人漁業の規制に関する法律というものがあって、たくさんのソ連船の修理の引き合いがあるのだけれども、現実的には農林大臣の方から認められていないために、これは値段の関係もあるけれども、ずいぶん香港だとかへ流れていっておる。だから、もし本気で日本の役所が造船不況ということを考えてくれたら、たとえば一つの船に何人ぐらいの船員が乗っておろうとおるまいと、そんなことは関係ないじゃないか、もう直接修理させたらどうなんだろう、のどから手が出るじゃないかというような非常に切実な訴えがあるわけであります。しかし、現実にはあと一歩手前のところで、何か業界の要請、陳情があるようでございますけれども、なかなか役所のかたくなな態度があってうまくいっていないという話を聞いております。ひとつそういう点について、水産庁の方なりあるいは運輸省の方から御意見があれば出していただきたい、こう思います。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕
  215. 片桐久雄

    ○片桐説明員 お答えいたします。  ソ連漁船のわが国への寄港につきましては、従来、ソ連漁船が北海道周辺で操業しておる場合に、わが国漁船との問で漁具紛争を起こすというような事件がございまして、そういう事件にかんがみまして、これらソ連漁船の寄港を認めることはわが国の漁業の正常な秩序の維持に支障があるということで、原則としてソ連漁船の寄港は認めないという考え方でおりました。しかしながら、昨年の夏にわが国も二百海里漁業水域を設定いたしまして、この二百海里漁業水域でのソ連漁船の操業条件につきまして日ソ漁業協定ができたわけでございます。この日ソ連漁業協定の条件に基づいて操業している限りはわが国の漁業の秩序の維持に支障がないであろう、こういうことで、昨年の秋に方針を変更いたしまして、ソ連漁船の修理を目的とする寄港につきましては、これを個別審査の上、許可の対象とするというふうに方針を変更したわけでございます。  ところが、その方針変更の後に、現在までのところ、ソ連漁船についての具体的な寄港申請がなされておりませんけれども、今後具体的な寄港申請がありましたら、その段階で寄港の許可及びその寄港の際のいろいろな条件等につきまして判断させていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  216. 草川昭三

    草川委員 これも余り立ち入った論議ができないと思うのですけれども、具体的な申請があればある程度は考えるということ、あるいは条件を考えるというような答弁があったわけでございますが、それは現実的な答弁じゃないと私は思うのです。いま言いましたように、現地からは非常にいろいろな運動があるようでございます。私も水産庁の方ともお話をしておるわけですけれども、ソ連との漁業関係についても秩序はある程度守られてきておる、そしてまた、農林大臣もいろいろな意味での具体的な行動を起こしてみえる、そういう段階に来ておるわけでございますから、ひとつ積極的に前向きな許可の方針を出していただきたいということを要望申し上げて、次に移りたいと思います。御苦労さまでございました。  私は、いま細かい話をいろいろ出しておるようでありますが、一番最初に申し上げたように、構造不況の後ろ向き対策ではなくて、前向きの対策でずいぶんこういう方法があるじゃないかということでいま申し上げておるわけでございます。  続いて、今度は通産省にタンカー備蓄のことでちょっとお伺いをしたいというふうに思うわけです。ドル減らしの意味でのタンカー備蓄の問題がきのうの新聞にも出ておったようでございますけれども、タンカー備蓄をするという意味は、公害対策の問題も一つございます。漁民の関係もございます。それから安全の問題もございます。いろいろな複雑な問題もあるわけでございますが、ひとつ候補地を探す場合においても、上からの押しつけということはやめた方がいいと思うのです。  現在、日本タンカー備蓄協会というようなもので候補地を探してみえるというようなお話でございますけれども、どういう条件で探してみえるかということをまずお聞かせ願いたいのですが、私自身としては、思い切って条件を出して、各地方自治体の方から、それならばわが方でも結構ですよというものを引き出した方がいいのではないか、あるいはまた、開港、不開港、いろいろな問題もございますけれども、時によっては外国船のタンカーなんかも利用して、なるべくローテーションを遅くして、停泊期間というのを逆に短くしていく、これは船員さんとの関係も出てくるわけでありますが、そういうようなローテーションなんかを考えてやっていったらどうなんだろう、こんなようなことも考えるわけですが、御答弁願いたいと思います。
  217. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 まず、錨泊地について一定の条件を示して公募したらいかがかというお話でございますが、御承知のように、タンカーを錨泊させるためにはいろいろな状況を充足する必要がございます。たとえば海象、気象、あるいはその港の水深といったような自然条件の問題もございます。あるいはその地域におきます漁業活動の程度、あるいは海上交通の量といったような社会条件、こういった条件を十分点検した上でないと錨泊地として適さないということになるわけでございまして、私たちといたしましても、運輸省あるいは水産庁の協力を得まして、昨年来、既存の資料を活用いたしまして、候補地点についていろいろ点検してまいった。現段階におきましては、先ほどお話しのように、そういった事前調査の結果を参考にいたしまして、タンカー備蓄協会が現地について具体的な調査あるいは地元との接衝に入っている、こういう段階でございます。  それから、いま一つ、外国船を使ってはどうかというお尋ねでございますが、このタンカー備蓄は、いわゆる国家備蓄と申しますか、石油開発公団による備蓄のつなぎ措置として実施しようというふうに考えておるわけでございます。そういった国家備蓄といった趣旨からいたしまして、やはり国内法は当然のことといたしまして、政府の指導等にも十全に従ってくれるというようなことも必要かと思います。現在いろいろと用船方法等についても検討中ではございますが、現段階ではやはり日本国籍船を使うべきであるという意見の方が強いというのが現状でございます。
  218. 草川昭三

    草川委員 ただいまの質問に関連して、地元に立地交付金というものを大体どの程度出されるつもりか。
  219. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 新年度からいわゆる石特会計の石油勘定の中に石油貯蔵施設立地対策等交付金というものを発足させたいとしてお願いいたしておりますが、これが発足することになりますと、キロリットル当たり百円でございます。これによって、たとえば漁業の共同貯蔵所だとか、あるいは養魚場だとかいった共同施設に活用できるのではなかろうかと考えております。このほかに、別途、水面使用料ということでキロリットル当たり四百円の予算を計上いたしております。
  220. 草川昭三

    草川委員 そうすると、大体二十万トンクラスの船が多いということになりますか。
  221. 橋本利一

    ○橋本(利)政府委員 現在、運輸省から提示してきておりますのは、VLCC型といっておりますが、大体二十五万トンクラスのものというふうに考えております。
  222. 草川昭三

    草川委員 それじゃ、その件についてはそれで終わって、次へ行きますけれども構造不況業種の長期的な転換を図るために、大型の国家的なプロジェクトというようなものを開発することが必要じゃないか、こう思うわけであります。これは時間がございませんので、ごく簡単に御答弁願いたいのですけれども、ただいまのところ、工業技術院だとか、あるいはまた太陽エネルギー、波力、潮汐発電、高潮の差を利用する、あるいはまた温度差を利用する、あるいは風力、いろいろなものがあるわけでございますけれども、実際上は企業化の段階まである程度行っておるのかどうか、あるいはまた、行くような時点であるとするならばどういうような対策なり援助を考えておるのか、簡単で結構ですから、御答弁願いたいと思います。
  223. 窪田雅男

    ○窪田政府委員 お答えいたします。  工業技術院におきましては、いわゆるサンシャイン計画といたしまして、新エネルギー技術の研究開発の中で、太陽エネルギー関係とか地熱あるいは石炭のガス化、液化等のプロジェクトを推進しているわけでございますが、現在、基礎研究の段階をおおむね終わりまして、テストプラントの開発に入っているわけでございますが、まだいわゆる実用化の段階には立ち至っておりません。  以上でございます。
  224. 草川昭三

    草川委員 実用の段階になっていないという答弁があったわけでございますが、やはりこういうものについては、通産省という一つの単位だとか、あるいは何々省という単位ではなくて、国家的な意味で少しみんなが知恵を出し合う、そして、民間も単なる利益追求ではなくて、国という立場からひとつ新しい発想の転換をしないと、私どもが先ほど来から何回かくどくどと申し上げておりますけれども、日本という国の活力というものがなくなっていくのではないだろうか、こういう視点からぜひひとつ非常に大がかりな支援体制を組んでもらいたいし、あるいはそういう形で御発展を願いたい、こういうことを要望して、次に移っていきたいと思います。どうもありがとうございました。  そこで、いよいよ最後になってまいったわけでございますけれども、もう一度前へ戻しまして、構造不況というものは、先ほど私は前向きの姿勢ということを盛んに言いましたけれども、なかなか実用の段階になっていないとか、あるいはあれをやればこれをやればと言っても、なかなかうまいものはないわけであります。結局、とりあえず当面の問題は、構造不況業種の金繰り、金融の問題だと私は思うのです。  そこで、きょうは大変お忙しい中を商工中金の方にもおいで願ったわけでございます。あるいは中小企業庁長官にもおいで願ったわけでございますが、実は、ことしの二月の予算委員会で、私どもの大橋という先輩議員がこういう質問をしたわけであります。  いわゆる企業倒産をする場合に、関連倒産の指定ということがあるという場合に、中小企業倒産緊急融資というのが政府系の商工中金だとかいろいろと行われておるという答弁がございまして、さらに私どもは保証協会の問題の質問をしたわけであります。中小企業信用保険法に基づく倒産関連特例措置の活用ということを質問したわけでございますけれども、そのとき実は質問者は、一次下請には適用になるけれども、二次、三次、四次の孫の下請には適用はない、それをどうするのかという質問をしたわけです。そうしたら中小企業庁の方からは、いや二〇%の取引さえあるならば孫下請でも適用になるとおっしゃられたわけであります。商工中金の理事もお見えになっておりますが、商工中金の方は何か少し配慮をなすっておるようだけれども、それでも実際は二次、三次の孫まで手厚い対策はないように聞いておるわけでありますが、まず、商工中金の方からお聞かせ願いたいと思います。
  225. 岸田文武

    岸田政府委員 予算委員会における御質問には私がお答えしたのでございますが、たしか倒産関連緊急融資についてのお尋ねであったのではないかと記憶いたしておるところでございます。  倒産関連緊急融資につきましては、その席でもお話しいたしましたとおり、倒産企業に対して五十万円以上の売掛金債権を有するか、あるいは取引依存度二〇%以上ある中小企業者を対象とするだけではなくて、倒産企業とは直接取引を行っていない、一次下請と取引のある孫下請も対象とするというふうにお答えをしたところでございます。  ただ、いまのお話で、中小企業信用保険法の方はどうかということでございますが、この信用保険法に基づく保険の特例につきましては、この場合には直接取引関係のある者に限られております。これは制度の趣旨が保証の別枠を用意することにあるわけでございまして、一般的に普通保険でございますと五千万円の限度がございます。孫下請のような段階になりますと、大体五千万円の限度があれば十分こなせるという理解のもとに、この場合には一次下請に限るという運用になっておるところでございます。
  226. 草川昭三

    草川委員 私もいまそのときの予算委員会の議事録を持っておるのです。だから、これを正確に言った言わぬということになりますと、それはおたくの方はそのつもりで言ったということになるし、質問者の方は、信用保証協会の、たとえば何々県、東京都でも大阪府でも愛知県でも岐阜県でもどこでもいいのですけれども、その県の相談の窓口へ行けば、二次、三次はだめですよという答弁がどこでも出るわけです。そういう趣旨の質問をしているわけですね。だから、私もこれが間違っておるかどうかということはずいぶん検討したわけでございますが、私にしてみれば、やはり政府側の答弁はきわめて不親切だと思うのです。  ですから、実際倒産関連の指定を受けた場合には、孫だとか二次とか三次という方もずいぶん困っておるわけでありますから、やはり県庁所在地の県の中小課へも行くでしょう。ところが、そこではなかなか色よい返事はないというようなことでございますから、実際この現実の構造不況業種の金融の手配というのは、よほど親切に手厚くやらないとなかなか——片一方、商工中金あるいは中小企業金融公庫に行っても、この前の御答弁ではないのですけれども、保証協会へ行って保証とってこいという場合だってあるわけでしょう。それは国のお金ですから、危なければ保証とってこいというのはあたりまえかもわかりません。だけれども、最終的には、地方自治体にしてみれば、おい、何だ、国の方が最終的には県に保証しろというのかというような話、片一方は、保険でございますけれども、そういう受けとめ方にもなるわけですね。  そういう点について、実は商工中金の理事の方に、最後になって非常に恐縮でございますけれども、最近非常に厳しくなったのではないだろうかという意見が非常に多いのです。これはいろんな業界の方々の御意見でございます。商工中金の立場に立ってみれば、厳しいとかどうのこうの言ったって、やはり国民の皆さん方に債券を買っていただいて運営しているのですよ、何も社会保障で金を貸しておるんじゃないですよという答弁があるわけですよ。だけれども、先ほどの岸田中小企業庁長官のお話ではございませんけれども、やはり政府系の金融機関の方がなるべく現状に合うような配慮をするということになっておるわけでございますが、最近の政府系の機関の指導のあり方について、厳しくなったのかどうか、ちょっと御答弁願いたいと思うのです。
  227. 秋野莞爾

    秋野参考人 お答えいたします。  最近の商工中金の態度が非常に厳しくなっているのではないかという御質問でございますけれども、私どもの方も、主務省の方からも機会あるごとに、こういう大変な時節であるから、できるだけ親切に中小企業の方々に対応するようにというような御指導もいただいておりますし、私ども理事側といたしましても、日ごろから職員に向かっては、こういうときこそ商工中金の役割りというものが本当に発揮されるときなんだということで、借りる方の身になってできるだけ懇切にやるようにということで、先生御指摘のような、中小企業の方々も非常に危ない時期だから審査態度を厳しくしろというふうな指導は一切行っておりません。  しかし、先生御指摘のようなことが、商工中金といたしましても七千人以上の職員がございますので、末端に行きましてその趣旨があるいは徹底していない面がもしあるとすれば、まことに申しわけないことでございますので、一層自戒をいたしまして、できるだけ懇切に対応するように一層努力をいたしてまいりたいと思う次第でございます。
  228. 草川昭三

    草川委員 大変恐縮でございますが、政府系で商工中金だけを呼んだというのは、時間的な都合もあって、実は国金なり中小企業金融公庫なり具体的な例もずいぶんたくさんあるわけでございまして、申し上げたいのですが、時間の関係から商工中金になってしまったわけでございます。  いろんな構造不況の方々が御相談になる場合でも、たとえば最終的にこの担保があるんだ、この担保によって金を借りられるのならば何とか生き延びたいという切なる訴えがある場合に、いわゆる窓口側としては、いろいろな分析をしてみると、これ以上貸し込むとかえってあなたの方は負担が多くなってえらいじゃないか、だから、あなた、もう思い切って担保があるなら売ったらどうなんですか、こういう指導をする場合もあるわけであります。  私は、それは金融ベースからいうと必ずしも間違っておるとは申し上げません。申し上げませんけれども、やはりさらの担保、山林などというものではないわけです。非常にりっぱな担保があるとすれば、せめてそういう担保があるならばひとつかけてみようではないか、経営者の立場に立ってかけてみようではないかというのが市中銀行と政府系銀行との違いだと思うのですね。ここを余りコマーシャルベースで運営をされますと大変な不満というものが出てくる。いま約一時間五十分にわたって長々と私どもが申し上げたこの構造不況というものは、まさしく国家的な問題になりつつあるわけでございますから、一面、火の車になっておるところの業界の方々に対する金融からの手配というものは、より一段と慎重なもの、あるいはまた親切な立場があってしかるべきではないだろうか、こういうことをひとつ要望申し上げておきたいと思うのです。  わずか一問で、お忙しい中おいで願いまして恐縮でございますけれども、ひとつそういうことをくんでいただいて、またひとつ御努力を願いたい、こういうようにお願いをするわけであります。どうもありがとうございました。  いよいよ時間になりましたので、最後に一言大臣に。  いま私どもがこの今日的な構造不況法案の問題点を指摘し、さらに今後の前向きのある程度の私見というものを申し上げ、そしてさらにまたもう一度原点の現状ということを探ってみますと、血の出るような思いの産業実態だと思うわけであります。     〔山崎(拓)委員長代理退席、委員長着席〕 それだけに、構造不況法案というものは、本来の自由経済競争に対して政策介入をするということになるわけでありますから、通産省としての行政責任というものはきわめて大きいものがあると私は思うのです。たとえば造船の場合だったら、五〇%破棄をしようじゃないか、しかもその残った五〇%の半分しか仕事がとりあえずないんだよという段階の中で、一面的には労働者の首を切っていく、あるいは地域の経済というものをある程度は壊滅させていく、非常にドラスチックな事態というものがこの法案ができると行われる、これは当然予想されるわけであります。そうしないと乗り切れないというようなきわめて重要な法案がいまここに出ておるわけでありますから、従来と違った意味通産大臣は日本の構造に対する責任というものを持たなければならぬと私は思うのです。そういう責任の所感について一回大臣の所感をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたい、こういうように思います。
  229. 河本敏夫

    河本国務大臣 構造不況業種に対する一番大事な対策は、景気回復だと私どもは思っております。でありますから、一面積極的な経済政策を展開いたしまして、そしてそれが功を奏しますならば、これらの業種の抱えております問題点は大半解消するわけでございますから、やはりこれに引き続いて全力を入れなければならぬと考えております。そして、この法律ができましても、政府としての期待は、法律に頼らないで自力でやってみよう、こういう業種のたくさん出てくることを私は期待いたしますが、万やむを得ずこの法律によって再建をしなければならぬという業種に対しましては、いま御審議をしていただいておるような内容でいろいろ援助をするつもりでございます。その場合に、政府が余り介入をいたしまして統制的な色彩を出さないように、十分配慮して進めてまいる所存でございます。
  230. 草川昭三

    草川委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
  231. 野呂恭一

    野呂委員長 米沢隆君。
  232. 米沢隆

    米沢委員 この法案につきましては、さきの予算委員会の一般質問で概略御質問をいたしておりますので、本日は、そのとき答弁の漏れたもの、それからその段階で御答弁できなかった点等を中心にして御質問を続けさせてほしいと思います。  まず最初に、「共同行為の実施に関する指示」、いわゆる指示カルテルの問題についてであります。  法案によりますと、特定不況産業に属する事業者が自主的な努力のみをもってしては、安定基本計画に定める設備処理等についてうまく実施されないと認められる場合、その事業者の相当部分の事業の継続が困難であり、また、国民経済発展に著しい支障を及ぼすというときにこの指示カルテルをやる、こういう形になっております。個々の事業者が自主的な判断と努力でやって、それでできない。次に、独禁法に基づく設備に関する不況カルテルによってやってもまだできない。そして最終的に公取の同意を得て指示カルテルをやる、そういう構造になっておるわけでありますが、この要件を見ておりますと、最後の手段でありますがゆえに相当にシビアなものである感じがします。そこで、最終的にこの指示カルテルというものを残さないと構造改善事業は進まないという判断をされた通産の指示カルテルに固執された理由について、一言お伺いしたいと思います。
  233. 濃野滋

    ○濃野政府委員 指示カルテルの発動の要件は、ただいま先生御指摘のように、第五条に列記をしてございますが、ただいま御指摘になりました中で、私どものこの法文の運用上の解釈につきまして一言だけちょっと申し上げておきたいのは、「事業者の自主的な努力のみをもってしては、」という一つの条件でございますが、これは本日も御答弁申し上げておるように、全く事業者が単独であるいはその他現行のいろいろな仕組みを使って不況カルテルの運用、団体法の運用を使ってと申し上げましたが、これは必ずしも前置主義、これをやってみてだめだということではございませんで、そういうものがその業界の実情等から見てできないという場合も含んでおるということは、この法文の解釈として一言申し上げておきたいと思います。  第二に、ただいま御質問のなぜ指示カルテルに最後までこだわったか、こういうことでございます。  私どもは、この設備処理というのは、繰り返し申し上げておりますように、あくまでもその業界の自主的な努力なりあるいは判断、その上に立って進められるべきもので、わざわざ「事業者の努力」という四条の規定を入れたというのもその意味でございますが、少なくとも法律をつくりまして、政府安定基本計画を定め、そして最後にその実行を担保するという以上、一つの仕組みといたしまして、自主的な努力、いま申し上げたようにこれは前置主義ではございませんが、自主的な努力でできないという場合の最後の実行の担保として何らかの手段、仕組みが要るわけでございまして、そこにこの指示カルテルという制度を入れたわけでございます。これは過去に幾つか同様の趣旨の立法がございます。一番典型的なのは繊維の構造改善に関する立法でございますが、そのほか必ずしもこういう構造改善問題ではないその他の立法も幾つかございますが、国が基本的な計画をつくる、この法律で言えば安定基本計画でございますが、それを最終的に担保する手段といたしましていわゆる指示カルテル制度というものをとっておる法律がたくさんございまして、いわばそういう仕組みをこの法律でも最後の担保、手段としてとった、こういうことでございます。
  234. 米沢隆

    米沢委員 事業者の努力のみをもってしては処理等が進まない、この解釈ですが、これは、現実に事業者が任意の不況カルテルをやったけれども、実際はいろいろとそこまで突き進んだ生産調整ができないということで、結果的には基本計画にそぐわない、だから通産の判断によってもう一回その安定計画に基づいてやらせる、そういうことを意味しておるのか、それとも、業界が不況カルテルを結ぶことについて、あるいは生産設備廃棄することについて異論続出でまとまらない、まとまらないから通産が出ていく、そういうような解釈をしていいのか、どっちなんでしょうか。
  235. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま先生御指摘の両方の場合があり得ると私は思っております。特に御指摘の二番目の場合、国の立場から見て、この法律にございますように「当該特定不況産業に属する事業者の相当部分の事業の継続が困難」、しかもそれがほうっておけないというにかかわらず、恐らくその場合には、現実の問題としては、ぜひ自主的な努力で設備処理を進めなさいという行政指導、接触という段階があると思いますが、しかし、議論百出まとまらない、どうしてもやらざるを得ないという場合も当然この指示カルテル発動の「自主的な努力のみをもってしては」という言葉の中に含まれると解釈いたします。
  236. 米沢隆

    米沢委員 重ねて確認をしますけれども、当該事業者が任意の不況カルテルではどうしてもその安定基本計画に沿うような設備廃棄に至らない、その場合には指示カルテルを発動する、同時に、それとは無関係に、業界そのものが基本計画に合うような設備廃棄について合意が得られない、だれがするか合意が得られない、そういうときにも発動をする、あるいはこの両者の理由によって発動する場合もある、こういうふうに理解してよろしいですね。
  237. 濃野滋

    ○濃野政府委員 そのとおりでございます。
  238. 米沢隆

    米沢委員 そこで、この指示カルテルにつきましては、御説明にありますように、もとより強制力を持つものではない。ただ全事業者に共同行為によってその設備処理をするようにという共同行為をすることを指示するだけである、こういう御説明でございます。だから、最終的には、設備処理等の具体的な取り決め、あるいはそれをうまくやるための監視の制度等は業者にみんな任せる、こういうことになるわけですね。ですから、そういう形になったときに、この指示カルテルの実効性というものが果たして上がるものであろうか。ただ共同行為をやりなさいという指示だけで、簡単に、ではやりましょうといって業界が協調してやるなんというのだったら、指示カルテルという手段に訴えなくても当然できていたはずだ、そういう意味で、指示カルテルの実効性というものが具体的な問題になったときには大変疑われてくる、問われてくるのではないか、そういうふうに思います。そういう意味で、いま通産省の考えておられるこの指示カルテルの実効性を確保する行政指導とはどういうものを考えておられるのか、そのことをお伺いしたいと思います。
  239. 濃野滋

    ○濃野政府委員 この法律は、そもそも対象業種としての特定不況産業をどうやって決めるかというところから、関係業界申し出、つまり関係業界の自主的な努力といいますか、判断、これを前提にいたしておりまして、私どもは、やはり当該業種を営む人の大部分の方の申し出で、この法律に定める一連の手続を経て設備処理をしたいという、いわば業界の意思を前提に進めるわけでございます。たびたび大臣からも御答弁ございますように、指示カルテルというのは万やむを得ざる場合に出す最後の手段でございまして、私もそう考えておりますし、先ほど御説明いたしましたように、国が安定計画を決めるという、そういう仕組みの中での最後の実効性担保の仕組みとして指示カルテルというのを設けたわけでございまして、まず第一には、その関係業界一つのまとまりというものを私ども当然に予想、前提としているわけでございます。  そこで、指示カルテルと申しましても、ちょっと指示という言葉が上からの強制的なにおいもございますが、ただいま御指摘のとおり、これは共同してカルテルをつくって設備処理をしなさいということを指示するだけでございまして、法律的な強制力はございません。ただ、私がいま申し上げたような業界のまとまりを前提といたしまして、その中でいろいろな意見も出てまいりましょう、具体的に設備処理を進めるに当たりましては。その中で私どもは、多数の事業者、関係業者とその指示の内容に従って共同行為が円滑に進むよう、まさに私ども産業行政の一環として十分な話し合い、一緒に考える、こういう姿勢で事を進めていく以外にない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  240. 米沢隆

    米沢委員 ちょっと話が具体的ではないのでありますけれども、結局まとまらないから指示カルテルという手段に訴える。共同行為をしなさいと言ってもやはりまとまらなかったとする。その間にいろいろ行政指導という形で、業界現状だとか将来展望だとか、これではだめですよというような話はあるでしょう。ところが、それでもおれはいやだ、一緒にするのはいやだ、こうなったときに一体どうなるのか。どうでしょう。
  241. 濃野滋

    ○濃野政府委員 御答弁申し上げます。  ただいまのように、どうしても業界として最後までまとまり切らないという場合には、法律上はどうこうする手段はございません。
  242. 米沢隆

    米沢委員 そこで、次はアウトサイダーの規制の問題であります。  当初は、通産省の原案にはアウトサイダー規制が入っておりました。ところが、いろいろな議論過程を経て、結果的には外すということになりました。そこで、その議論の経過を知るために、当初盛り込まれた根拠、理由というのは一体何なのか、最終的な議論の結果外すという結論に達したその理由は何か、このことを御説明いただきたいと思います。
  243. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  私どもこの法案の立案に着手をいたしましたときに、いわゆる設備処理問題を進めていく上でのあらゆる問題点、それから関係業界が持っておられるいろいろな御意見等を全部整理いたしました。その整理の一つの方向といたしましては、この法案にございますような将来の長期展望に立った一つの将来の計画をつくり、その計画の中で設備処理を進めていく。設備処理進め方につきましては、やはり自主的な努力を前提にしながら、先ほど御説明いたしましたように、従来の立法例もあるように、最後の担保手段として指示カルテル制度をつくることはどうかという点までは大体みんなの意見が一致をいたしましたが、さて、その場合に、設備処理をする以上は、設備の新設あるいは増設というものは、これはお互いの共同行為でやるにしても抑制をするようにしなければならないという議論に絡みまして、その場合のアウトサイダーについても、設備の新増設について必要な場合に規制をすべきではないかという意見一つ出てまいりました。つまり、別の言葉で申し上げますれば、計画の作成、それから設備処理への努力、そして最後の指示カルテルによって設備を共同で廃棄していくという手段、そして論理といたしまして、その場合にアウトサイダーをどうしても規制する必要があれば、新増設を抑えるべきではないかという論理の一つの帰結として、アウトサイダーの規制問題というのが出てまいりました。  しかし、御案内のように、たしか一月半ばごろだと思いましたが、私どものこの法案作成に関するそういういろいろな問題点の整理を中心とした一次案に対しまして、いろいろな御意見が出てまいりました。アウトサイダー規制賛成という御意見から反対という御意見まで、非常にバラエティーがたくさん出てまいりました。私どもは各方面との折衝の中で、最終的に各業種を通じて一般的な設備処理のこういう一般法をつくる段階において、アウトサイダーの規制命令までも含む法案の内容では、現段階で全体のコンセンサスが得られない、こういう判断をいたしまして、最終的に法案段階から落とした、こういう経緯になっております。
  244. 米沢隆

    米沢委員 いま御説明いただきましたように、最終的にはアウトサイダー規制を外すということになりました。しかし、いろいろ異論はありましょうけれども業界で協調して設備廃棄をしようというときに、ある数社が新増設に踏み切っていくということは、やはりその効果を減ずる一面はある、そう思いますね。そういう意味で、法規制の中には入れられなかったけれども、実際的にはアウトサイダー規制と同じような行政指導をやられる意思があるのかどうか、やられるとしたらどういう行政指導なのか、そのところを聞かしてほしいと思います。
  245. 濃野滋

    ○濃野政府委員 いわゆるアウトサイダー規制問題は、現在、こういう長期的な設備処理の問題のみならず、当面の生産調整等におきましてもたまたま問題になる問題でございまして、私どもは、私ども産業行政の一環として、そのアウトサイダーの方との個別の話し合い等いわゆる行政指導を通じまして、何とか全体の業界の動きに協力をするように従来指導に努めてまいりましたことは御案内のとおりだと思いますが、この設備処理問題は、さらに長期的に設備処理という問題を含んでおりますので、大変むずかしい問題だとは思いますけれども、先ほどから申し上げておりますように、安定計画の作成から具体的な設備処理に至るまで、業種別に私ども話し合いと説得に努めていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  246. 米沢隆

    米沢委員 御案内のとおり、中小企業団体法によるカルテルにおきましては、アウトサイダー規制というのができるようになっておりますね。ところが、今度のこの法案については、実際はいろいろな問題があって外すという結論になった。法体系の問題として、中小企業の団体法によるカルテルはアウトサイダーの規制が認められて、この場合には入れることをちゅうちょする、そのあたりに法の体系として矛盾することはないのか。特に、この際お聞かせいただきたいことは、中小企業団体法によるカルテルがアウトサイダー規制ができるという法的な根拠といいましょうか、法理論といいましょうか、そういうものについて通産省はどういう見解を持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  247. 濃野滋

    ○濃野政府委員 結局、アウトサイダー規制と申しますのは、憲法で保障されておる営業の自由に対する制限でございまして、公共の福祉という判断、それをどこまで見るかという法律的な解釈の問題であろうと思います。  現行の中小企業団体法の解釈につきましては、中小企業庁長官がおりますのでお答えを願うといたしまして、中小企業団体法にアウトサイダー規制の規定がありながら、なぜこの法律にないかという点でございますが、私は、一つの大きな理由といたしましては、この法律対象となる業界あるいは事業者というのが、いわゆる中小企業団体法の対象になります中小企業を中心とした中小企業性の高い業界というのと基本的に違いまして、どちらかというと、大企業ないしは中堅企業、大きな事業者を中心とした業種が主な対象になる、ここに非常に大きな違いがあるのではないかということが一つ。  それから第二に、必ずしも中小企業業種のみならず、ほかのこの法律に似た業種対象とした法律につきましてアウトサイダー命令が皆無ではございません。ただ、その点につきましては、これは個々の業種の単独立法と申しますか、一つ業種を規制する立法でございまして、これに対しまして今度の法律は、どちらかと申しますと、過剰設備処理ということに重点を置きました特定不況産業の一般法と申しますか、こういう性格でございまして、そういう性格の法律に非常に強いアウトサイダー命令を入れるということがいかがか、こういう法律論もあるのではないか、こういうふうに考えております。
  248. 岸田文武

    岸田政府委員 団体法においてアウトサイダー規制が入れられております背景としましては、やはり何と申しましても、中小企業経営基盤が脆弱である、そして非常に数が多い、こういうところが実体論としてあるのではないかという気がいたすわけでございます。せっかく商工組合をつくり安定事業をいたしましても、アウトサイダーがいるためにその効果を上げ得ない。これを何とか説得によってカバーしようと思いましても、余りにも数が多くて、行政指導のような形も実際問題として不可能であるし、また、それがうまくいかなかった場合に、企業基盤が脆弱であるがゆえに中小企業が多数倒れてしまう、こういうことが現実の問題として考えられましたので、あのようなアウトサイダー規制が用意されたんだというようなことと理解しているところでございます。
  249. 米沢隆

    米沢委員 たとえば小形棒鋼業界は、中小企業団体法による不況カルテルでアウトサイダー規制ができる。同時に、この小形棒鋼業界は、この法律に言う構造不況業種という指定も受けられる感じのする業界だ。その場合、業界自身の判断で、どっちのカルテルによるか、それとも都合のいいところだけとって、指示カルテルとそっちの不況カルテルと同時にやっていくという、そんな方法はとれるのかどうか、いかがなんでしょう。
  250. 濃野滋

    ○濃野政府委員 これは個々の業種によりまして、今後具体的にどうなるかはいろいろな展開があると思いますが、法律的には、ただいまおっしゃったように、どちらの法体系を選ぶか、あるいはその処理進め方として両方の法体系を一緒に利用することも可能であろう、こういうふうに考えております。
  251. 米沢隆

    米沢委員 わかりました。  次は、債務保証基金の問題についてであります。  この問題については、もうすでにいろいろと議論もなされておると思いますが、さきの予算委員会質問に対しまして、最終的には一千億では足らないであろう、その後ふえていく、ふやしていかねばならぬというところまでは御答弁をいただいたわけです。そして通産大臣のお話では、初めから金額を書くのはいかがなものであろうか、それよりもある程度流動的に考えていけるようにした方がいいんではないか、こういう議論が最近出てきて、いま調整中である、こういうことでありましたが、最終的な調整はいかがなったのでしょうか。
  252. 濃野滋

    ○濃野政府委員 お答え申し上げます。  この保証を行います信用基金につきまして、この信用基金の資本金の問題でございますが、たしか先生が予算委員会で御質問がございました段階では、この法案の資本金のところに——この資本金は、御案内のとおり、開銀の出資と民間の出資または出捐、二つの資金の源がございますが、当時、政府部内で法案検討の段階で、開発銀行の出資につきまして、当面百億というものを限度とするという限度の規定を入れるかどうかということがまだペンディングになっていた段階ではなかったかと私は思います。  その点は、大臣のそのときの御答弁のように、今回の法案には開銀の出資の限度を設ける規定は削除をされておりまして、したがいまして、百億という限度は法律上設けられていない。その意味では、当面ただいまのところ、財投計画の上では百億を限度としてということになっておりますが、仮に今後これを増額するときには法律改正なしに増額ができる、こういうことになっております。
  253. 米沢隆

    米沢委員 この法律がもし成立をしたときに、これはそれからの問題でありますけれども、いろいろな業界が指定をされていくであろう、そうなった場合にかなりの金額が要るであろう、そこらは一般的には言われておりますけれども、それが三千億であると言われたり五千億であると言われたり、実質的にはなってみなければわからぬ部分があるわけですね。しかし、構造不況業種の指定を受けて安定計画をつくって、それにのっとって設備廃棄をしようとする業界にとっては、その金額がどれくらいの幅があるのか、あるいはどれくらいの規模になるのか、もしわれわれが指定を受けたらそれに全面的に適用できるような規模になり得るのであろうか、そこが一番の心配の種であり、不安の材料だと私は思います。  そういう意味で、いろいろ一般的には言われておりますけれども、いまのところこの法案によって業種指定を受けるであろうというものは大体わかっておるわけですね。その業界実態も大体わかっておるわけです。そして、どれくらいの設備廃棄をしなければならぬだろうというところも大体わかっておるわけですから、大体の総額のめどというものは持っていらっしゃらなければおかしいと思うのですね。そういう意味で、相当金額はかさむであろうけれども、大体最終的にはどれくらいの規模になるであろうか、そしてその金額を調達できる可能性があるのかどうか、そのあたりを聞かしてほしいと思います。
  254. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの御質問の中で、一体どのくらいになるだろうか、実は申しわけございませんが、私ども大体どのくらいという目安も現在のところついておりません。一つは、通産省所管につきてましても、この法律をつくりましたときにどういう対象業種にするかということにつきまして、当面百億という開発銀行からの出資を決定いたしましたときと、この法案作成の段階でさらにこういうものも考えられるのではないかということで、大分流動的でございまして、変わってきております。それともう一つは、船舶初め運輸省所管業種がこの法律に最終的にどこまで乗ってこられるか、あるいは農林省所管業種が最後どこまで乗ってこられるかについて、まだ最終的な関係省の間の打ち合わせが終わっておりません。  ただ、私どもは、百億、それに民間の出捐、出資を入れまして百二十億プラスアルファでこれは動いてまいりますが、前回大臣からの御答弁にございますように、今後そういう業種がたくさん手を挙げてまいりまして、しかもこの保証基金にそのうちの大部分がやってくるということになれば、これは相当大きな金額になることは事実でございます。その場合には、ただいま御説明申し上げましたように、政府及び民間の出資、出捐、両方合わせながらこの保証が十分できるような体制をつくることに、当然のことでございますが、私ども努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  255. 米沢隆

    米沢委員 そこで、この基金の規模が業種指定がふえるに従ってふえていく、それに従って民間の出捐あるいは出資がふえていく、果たしてそういうものがいま考えていらっしゃるような形でスムーズにふやしていけるものかどうかというところに非常に大きな不安が残ります。  そこで、いまの場合には開銀百億、当面八十億プラス民間二十億、民間がふえるに従って百億に伸ばすということでありますけれども、その後民間と開銀の出資比率というものが固定的に伸びていくのか、それとも金額の規模においてはある程度比率が違っていくのか。同時にまた、民間というのは一体何か。銀行であり、商社であり、いろいろであるかもしれませんが、銀行であるとするならば、その銀行は都市銀行なのか地方銀行なのか、いろいろなその他の銀行まで含む出捐をねらっておるのか、商社といったらどういうものをねらっておるのか。そのあたりのこれから拡大をしていく場合の民間と政府の出す資金の比率、これが変わる可能性があるのか、それともいまの八対二ぐらいの割合で推移していくのか。そして、出資、出捐させる民間の内容というのは一体どんなものか、銀行というのはどこまでねらっておるのか、そのことを聞かしてほしいと思います。
  256. 濃野滋

    ○濃野政府委員 こういう保証機能を持ちます基金につきましての政府と民間の負担の割合につきましては、政府部内におきましてもいろいろな意見がございます。財政当局は、従来の基本的な考えといたしましては、政府と民間は一対一というのが基本的ないわばたてまえであるという考え方を持っておられます。今回この基金をつくるに当たりましても、私ども、いま御指摘のように、構造不況業種という業種対象に財政当局の持っておられるたてまえを貫くことはとてもむずかしいということで、最終的には、ただいま御指摘のとおり、当面八十対二十、二十が若干ふえる見通しがついたときに百まで出すという原則で当面動き出そうというのが政府部内で固まった意見でございます。  そこで、これからこの保証基金の機能と申しますか要請がますます強くなり大きくなってきたときに、そこの考え方をどうするかということはこれからの問題でございますが、業界を預かります私ども通産省の立場といたしましては、御指摘のとおり、政府と民間の割合を一定の比率にこだわっていてはなかなかできない。したがって、そこをどうするかということは、これから財政当局と十分に弾力的に対処をしてもらうように私ども考えてまいりたいと思いますし、一方、この二十億をどうやって集めるかという問題につきましては、私ども、どの業界に幾らの出資、出捐をお願いするという具体的な分配はまだ決めておりません。  ただ、私どもは、この構造不況問題というのは、その当面する当該業界の問題ではなしに、やはりこれからの日本経済全体が新しい経済発展と申しますか経済成長の路線の中で生きていく全体の問題として受けとめるべき問題だということで、いわゆる財界、産業界、金触界を含めまして財界首脳部に対しましてこの基金への協力を要請しておりまして、その中でこの法律案を御審議いただき、幸いに御賛同が得られました暁におきましては、そういう意味で全産業界それから金融界を相手にいたしまして話を詰めていきたい、こう考えておりますが、さらにこの保証基金を将来ふやさなければいかぬという場合には、国と民間業界との関係につきましても財政当局に弾力的な対処をお願いすると同時に、民間につきましても、苦しいかもしれませんが、できる範囲での協力も同じような趣旨でお願いをしていく、こういうことにいたしたいと考えております。
  257. 米沢隆

    米沢委員 具体的な数については、民間のどこそこに何ぼということはまだ決まってないというのはわかりますけれども、たとえば銀行といったときに、金融界全体にお願いをしても、それじゃその負担割合はどうするかとなったら、都市銀行だけなのかそれとも地方銀行まで含めるのか、あるいは相互銀行まで入っていくのか、そういうところにやはり焦点が当たってこざるを得ないのですね。特にこの信用保証基金というのがスムーズにできるということを担保するためには、やはりその受けて立つ銀行あるいは商社、そのあたりの経営状況との関連も含めて考えない限り、そう簡単にスムーズに基金は集まらないと私は思うのです。そういう意味で、たとえば一言で銀行、金融界とおっしゃいますけれども、最終的にはどういう分担にするのか、金融界にすべてそれは任せるのか、それともこちらの方から、都銀と有力な地方銀行ぐらいとかあるいは相互銀行ぐらいとか、そういう感じでの要請がなされるのか、そのあたりを聞かしてほしいと思うのです。
  258. 濃野滋

    ○濃野政府委員 そういうことはこの法案成立を待って具体的には始めるべき問題であろうと私どもとしては心得ておりますが、ただ、いろんな準備、心づもりもございますので、事務的にはいろいろ非公式な接触をしております。  金融界の問題につきましては、御案内のとおり、この基金は大蔵大臣と私どもの両省共管の団体でございまして、むしろ大蔵省当局といろいろ相談の上、現段階は全銀協に対しまして、銀行側がその配分等についてどういうふうに考えるか、こういうことについて内々接触をしておるということでございまして、それ以上具体的にどこからどうだという点までこの問題はまだ詰まっていないというのが現状でございます。
  259. 米沢隆

    米沢委員 そういう段階でありますならば、裏保証の仕組み等についてこの前質問したときにも、まだ調整中だという話でありましたが、まだそれも調整中であり、裏保証の実際の具体的なあり方については最終的な検討は煮詰まっていないというふうに見てよろしいわけですね。
  260. 濃野滋

    ○濃野政府委員 そのとおりでございます。  ただ、この保証の仕組み、仕方につきましては、裏保証と申しますか、銀行ないしは商社等がどれだけ協力体制がとれるかという問題につきましては、いろいろむずかしい技術的な問題も含みますので、私どもの担当ベースで、大蔵省、それから銀行——銀行も広く長期信用銀行関係、それから一般の市中銀行関係関係者を入れまして、いろいろ問題点の整理をいまやっておるところでございまして、お説のとおり、まだ現段階でどうすべきであるという一つの仕組みができ上がっておりません。
  261. 米沢隆

    米沢委員 具体的なそういう仕組みがわかっておりませんので、非常にむずかしい問題かもしれませんけれども、総体的に言って、今後信用保証基金というものを民間にも出資させる、それが大きくなった場合にもそれなりの分担をしてもらわねばならない、しかし、信用保証基金をつくる協力が果たしてうまく得られるものであろうか、同時にまた、裏負担等についても過大な負担であるという金融界の反発もあるやに聞いております。基金にも拠出させられて、裏保証もしなければならなくて、それから新しくお金も貸さねばならない、そういう実態本当に——まあ銀行がもうけておるときにはよかったかもしれません。現在の銀行の経営状況あるいは商社金融の状況等については後でまた御説明いただきますけれども、そう簡単に、基金に協力させ、裏保証にわかりましたと協力させ、そして新しい金も貸せという、そんな議論になり得るかどうかというのが、今後のこの構造不況業種、特に設備廃棄に要ります金の調達という意味では大変不安が残るのですね。  そういう意味で、まず最初に、銀行局の方来ておられると思いますが、現在の銀行の経営状況、特に利ざやの縮小というものが伝えられておりますが、その実態、それから不良債権がかなり伸びておるはずでありますが、そのあたりの実態、それから通産省には、商社金融がいま具体的にどういうかっこうになっておるのか、その点について事情の説明をしてほしいと思います。
  262. 吉田正輝

    ○吉田説明員 銀行の利ざやと資産内容についてのお尋ねであると思いますが、昭和五十年の三月から金融緩和の過程が進行いたしまして、その間に、前回の引き下げを入れますと、合計五・五%の公定歩合の引き下げがございます。これに伴いましてプライムレートも引き下がっておりますけれども、預金金利の引き下げ幅は、今回の公定歩合の引き下げを入れておりませんけれども、四・七五%に対しまして二・五%でございます。要求払い預金につきましては一・五%ということになりますので、その格差は二・二五%以上ということになっております。このため、金融機関の預金と貸し金の御質問の利ざやは大変縮小してございまして、五十二年上期の預貸金の利ざやは、都市銀行は平均ゼロになってございます。地方銀行も、前期が〇・六六%でございましたが、〇・三九%、相互銀行も、前期〇・六二%に対しまして〇・三五%と戦後最低の水準になっておることは事実でございます。  それから、資産内容のお尋ねでございますけれども、銀行といたしましては信用問題がございますので、なかなかはっきりは申し上げられないわけでございますけれども、資金需給は緩和基調でございます。それに加えまして、収益性の低い国債などの公共部門の比重あるいは低利の住宅ローンの個人部門の比重などが高まりますので、金融機関の収益環境は厳しい、こう申し上げざるを得ないと思っております。
  263. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私から商社の経営状況、商社金融の実態につきまして若干御説明申し上げます。  私ども、いわゆる大手商社の経営状況等につきまして、有価証券報告書あるいは商社からのいわゆる聞き込み調査等によりまして調べておりますが、そのような意味で、総合商社大手九社を中心にやっております。  概して言いまして、総合商社は、構造不況業種に対しては貸付金は余り多くございませんが、しかし、売掛金とか債務保証行為とかいうような形での信用供与はかなりの額に上っております。構造不況業種だけについてどのぐらいやっているかということはよくわかりませんが、有価証券報告書から総合商社の大手九社の状況を見てみますと、五十二年三月期で与信額総計が十八兆でございます。ただ、これは借りている方を引きましてネットになりますと約半分程度ではないかと推定をいたしますが、十八兆ございました。以上のような状況でございます。  一方、経営状況は、確かに利益率の低下は最近相当著しいものがございまして、五十一年の三月、五十二年の三月、それから五十二年九月期の中間決算で見ますと、経常利益は、五十一年の三月から五十二年の三月に一時回復をいたしましたが、その後まただんだん悪くなっておりまして、総取扱高に対する経常利益の比率は、五十二年の三月の〇・三が五十二年の九月期では〇・二四と下がっております。それから同時に、売上高もどうも伸びが悪いという状況でございました。  そこで、総合商社は、構造不況業種にはいわゆる貸付金という直接のかっこうではそれほど大きくないが、与信総額としてはかなりのものがあると申しました。したがって、構造不況業種の体質改善がこの法律で図られるということになれば、総合商社の経営にもその意味ではプラスがございますので、この基金に対しますいろいろな協力関係、確かに私、この情勢の中ではむずかしいとは思いますが、しかし、別の意味で、この保証基金等の活用によりまして抱えておる対象業種がよくなるということは、そのはね返りの利益が大きいものでございますので、私ども、そういう点で総合商社にも協力が得られることも期待をいたしておりますし、そういうことでいろいろ非公式の接触をやっておる、こういう次第でございます。
  264. 米沢隆

    米沢委員 いま御説明いただきましたように、公定歩合の引き下げに伴いまして金融機関の利ざやは急激にマイナスに転じ始めておる、都市銀行等はゼロだ、しかし、都市銀行はその他の金がいろいろありますから、結構黒字を出しておるのでありましょうけれども、それにしても銀行そのものが今後構造不況業種と言われるような——確かにそれを再建させることによっていままで貸し付けたものが焦げつかないという範囲のメリットはありましょうけれども、後ろ向きな金をそう大量に貸すはずがない。また、商社につきましても、いま御説明いただきましたように、収益状況が大変悪くなっておりますから、特に構造不況業種というのは歴史的に商社の信用供与に支えられておる部分がたくさんございまして、そういう意味でも、いまから商社が信用供与をやったり金を貸したりという、そういうものにそう前向きに出られるはずがない。確かに銀行、商社の社会性とか言われますけれども、しかし、銀行も商売ですし、商社も商売ですから、自分の身銭を切って、マイナスになることがわかっておって助けてやろうなんという、正義の味方月光仮面のような役は決してしないであろう。そういうことを考えますと、この基金を造成する資金を出させるという面でも大変大きな難関があり、そして裏保証にもかなりの抵抗があり、金を新しく貸すという部分についても相当の抵抗があるのではないか。この基金ができたけれども、実際にスムーズにそれが運用されていくかということは、私は大変大きな疑問が残るという感じがしてならぬのであります。  特に、地域性のある問題、たとえば造船なんかは昨年一年間で十七社が倒産しました。それも大体瀬戸内海の沿岸に集中しておりますから、十七社の倒産した負債総額相当なものです。しかし、その周辺の倒産した造船会社が遠いところから金を借りておるはずはありません。その地域の地方銀行、相互銀行あたりから金を借りておるはずだ。もうすでに倒産をして不良債権をたくさん発生させておる造船が、構造改善をやるからお金が要るんだといったときに、その地域の銀行が新しくまた喜んで貸すかといいますと、もう貸せません。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 同時に、倒産した造船会社の下請あたりにも相当の被害があるはずですから、そういう意味では完全にお手上げという状態が出てくることはもう十分考えられるわけですね。  そういう意味でいま心配なのは、そういうかっこうで、銀行界も大変おかしいし、商社も大変おかしい状況の中においてこういう構造改善を進めていかなければならぬ、そういうものがスムーズにいくためには、もはや単なる民間の銀行とか商社に頼っていてはどうしようもない一面が現実に出てきている。その実態を踏まえた上での対策がなされない限り、これは絵にかいたもちになる可能性が十分あると私は思うのです。その点、どういうふうにお考えなんでしょうか。
  265. 濃野滋

    ○濃野政府委員 先ほど御説明申し上げましたように、今回の基金をつくるに当たりまして、政府部内で最終的に開銀の方からの出資と民間の出資の割合と申しますか負担の割合を決めましたのも、ちょうど先生御指摘のような最近の苦しい状況を前提に決めたわけでございまして、これから民間の出資、当面二十億を集めますのも、法成立後それが具体問題となったときに、そう簡単に右から左にお金が出ると楽観しているわけではございません。私ども大いに努力が必要だと思います。  ただ、確かに商社も銀行も苦しい、あるいはその他の財界、産業界も苦しいのは事実でございますが、別の観点から見ますと、ただいまもちょっとお話がございましたように、構造不況業種の問題は、同時に銀行それ自身の問題あるいは商社それ自身の問題でもあるわけでございます。別の見方からいたしますと、それも全部国がしりを見るというかっこうは、これはいかがか、やはり当該業界ないしはそれの関連業界が一緒に片づける問題だというのが構造不況問題に取り組む基本姿勢であるべきでございまして、先ほども申し上げましたように、そういう意味で私は、私どもの努力いかんによりまして広く産業界、金融界等の協力が得られるものと期待をいたしておりますし、また、努力しなければならぬと思っているわけでございます。
  266. 米沢隆

    米沢委員 通産当局のその基本姿勢もよくわかりますし、今後いろいろな各方面の協力を得なければどうしようもないのもわかります。しかし、総論はわかっても、具体的に銀行、商社が動かなかったら何にもならぬわけですね。そういう意味で御健闘を期待したいとは思いますけれども、この際、ぜひお願いしたいことは、特に地域に集中する造船とか繊維、そのあたりは、少なくともいまおっしゃったような基本姿勢だけでは絶対乗り切れない部分がある。その面については、この構造改善事業をスムーズにしていくためには、どうしてもより多くの政府金融のてこ入れがなされない限り私はだめだと思うのですね。これはやってみなければわからぬという水かけ論になるかもしれませんが、私は少なくともそのことを言うておきたいと思うのです。  そこで、通産当局に対してぜひお願いしたいことは、民間にもぎりぎりの協力を求めよう、と同時に、この構造不況業種をスムーズに進展させていくために、もう一歩踏み込んだ政府系金融が拡充されない限りは私はだめだと思う。そこで、二月二十日の日経新聞の報道によりますと、構造不況業種については政府金融のてこ入れがなされるやに書いてあるのでありますが、具体的にはどういう方針なのか、どういうものが充実される方向にあるのか、その点を聞かしてほしいと思います。
  267. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいま御指摘のは、あるいは開銀の転換融資の問題ではないかと思います。  私ども、構造不況の問題の取り組み方といたしまして、過剰設備処理の問題は、もちろん今後長期的に生きていくための長期的な対策ではございますが、どちらかというと、余っておるものを廃棄するという後ろ向きの対策でございます。しかし同時に、こういう構造不況業種に属する事業がいわば新しく事業の転換等を進めていく場合に、民間ベースでの金融機関あるいは関係事業者等の協力を得ながら、企業の自主的な判断が基礎になるのは当然でございますが、前向きの資金金融につきましては何らかの手当てをすべきであるというのが私どもの基本的な考え方でございます。  そこで、たとえば開発銀行におきまして、五十二年度、繊維産業につきましては、そういう構造改善的な事業に対しまして一定の資金枠を設けて、これをバックアップをしようということになっております。しかし、今後は繊維にかかわらず、ちょうどこの法律対象として、いわば構造不況業種あるいは特定不況産業に属する業種が同様な意味で前向きの転換資金等を必要な場合には、開銀の枠の中からこれを資金的にバックアップしよう、こういうことで財政当局と五十三年度の問題として話し合いをした、これが新聞に出た内容ではないかと思っております。
  268. 米沢隆

    米沢委員 新聞によりますと、「同法案の指定業種になれば設備廃棄資金を債務保証するのに加えて1高金利が適用されている既応貸し出しの金利を一律に引き下げる2個別企業に対しても返済猶予、金利軽減措置を基準にこだわらず実施する」、そしていまおっしゃった「3日本開発銀行の事業転換融資の対象業種にする」、この三つはこれでよろしいのですか。
  269. 濃野滋

    ○濃野政府委員 ただいまの御指摘の点は、昨年の秋に、政府系金融機関からの過去の非常に高い金利の貸出物につきまして、私ども大蔵当局と相談の上、特定の業種と申しますか、企業別に過去の高い金利のものを引き下げようという方針が決定になったわけでございますが、今回この法案成立をし、特定不況業種がこの法律で指定になりました場合には、それに属する企業についてその原則を適用して、過去の高い金利のものを引き下げる方向をとっていこうということで大蔵当局と事務的に話を始めたということが新聞に出たのではないか、かように考えております。
  270. 米沢隆

    米沢委員 先ほどから申しておりますように、政府金融のてこ入れをもう少し強化してほしい。その一つの内容は、たとえば開発銀行あたりは、業務の範囲を見ておりますと、法律によって長期的なそれも前向きの融資しかできないようになっている。しかし、この段階において構造不況業種をスムーズに転換させていくためには、たとえば運転資金等後ろ向きのものにも、開銀法を改正して、何らかの形で処置できるような窓口を開くべきではないかという議論が高まっておる。その点、私も同感なんでありますが、通産当局として、大蔵省との折衝がありましょうけれども、前向きに、開銀法を改正して業務範囲を拡大する意思を持っておられるのかどうか。
  271. 濃野滋

    ○濃野政府委員 私ども、新しい経済の発展と申しますか経済環境に対応いたしまして、今後広い意味での政策金融はどういうかっこうであるべきか、その中には当然のことながら開発銀行による金融方式、政策金融のあり方も含まれますが、もっと広い意味で政策金融はどうあるべきかという問題意識を持ちまして、実は昨年の春からそういう準備を始め、昨年の秋以降この問題を取りまとめてみたいということで、産業構造審議会の資金部会の中にそういう場を設けまして、検討に着手しているところでございます。  その中で、開発銀行が今後どういう形になるべきかというのは、私ども通産省産業行政にタッチしておる立場から見ましても、いろいろな見方、考え方があってしかるべきだと思いますが、ただ一方、ただいまお触れになりましたように、いわゆる金融という立場あるいは銀行という立場から財政当局がごらんになって、開発銀行のあり方にこれまた一つの御意見があると思いまして、私ども産業政策の観点から政策金融がどうあるべきかということについて一つの考え方をまとめまして、そして今後の方向として大蔵省当局といろいろ議論をしてみたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  272. 米沢隆

    米沢委員 ぜひ前向きに御検討をいただきたいと思います。  それからもう一つ、たとえばこの構造不況業種の指定を受けて親会社が具体的に設備廃棄に移る、そうなりますと、たとえばその廃棄をした部分にメンテナンスなんかで入っていた下請企業等は、これは完全に御破算になるわけですね。親会社の方はこの基金をもし利用できたとしても、下にある関連企業あるいは下請企業というものは、親が構造改善すると同時に、おのれも構造改善しなければならぬ境遇に立つわけです。そうなった場合には、一体下請企業についてはどういう金融措置があるのでしょうか。
  273. 岸田文武

    岸田政府委員 これは中小企業金融一般の手段がすべて動員をされることになろうと思います。ただ、第一次的には、政府関係金融三機関が応援に駆けつけるということになろうかと思います。そのほかに、私どもとしましては、仕事のあっせんの問題が出てくる可能性があるというふうに考えます。このような要望がございました場合には、下請振興協会等を活用しまして応援をいたしたいと思います。
  274. 米沢隆

    米沢委員 たとえば事業転換をする場合には、いろんな政府金融で対処できますね。ところが、親企業設備を三〇%廃棄した、その部分についておった仕事が全然なくなって、労働雇用も全部パーにしなければならぬ、そのかわり事業転換をするものがなくてそのまま埋没してしまうときには、完全にその金融的な援助は受けられないということになるわけですね。そういう意味で、たとえば業種指定の問題についても、親企業は確かに業種指定になるけれども、それにかなり密接な関係にある下請企業についても、親が指定されると同時に下の方も指定をする、政府系の中小企業対策の金融があるではないかということではなくて、親が指定をされたら即下の方も同時にその業者について指定ができる、そういう方法は考えられないのですか。
  275. 岸田文武

    岸田政府委員 いま、御承知かと思いますが、中小企業信用保険法に関連をいたしまして、不況業種の指定という制度がございます。この業種の指定を受けますと、一般の保証のほかに、別枠で同額が用意をされるという制度でございます。この不況業種の指定は逐次追加をいたしまして、いまでは製造業の約半分くらいの企業が適用を受けるというところまで来ておるところでございます。構造不況が問題になっておるという業種については、あらかたこの中小企業信用保険法に基づく不況業種の指定が行われておるわけでございます。下請の方々も、こういうような業種に適用されておる場合には、当然保証の別枠は受けられるという関係になろうかと思います。現実にケースを当たってみまして、いまの業種指定では読み切れないというような場合がもしあるとすれば、その業種として指定要件を備えておるかどうか、私どもも吟味をし、必要があれば追加をするという形で対応いたしたいと思います。
  276. 米沢隆

    米沢委員 時間もありませんので、最後にお伺いしたい点は、この法案ができますまでに公取とのいろんな議論がなされました。さきの私の予算委員会質問に対して、この構造不況業種のいわゆる設備廃棄も不況カルテルの対象にするという公取委員長の発言に関連して、こういうふうに述べておられます。「昭和二十八年の改正独禁法によって生まれました不況カルテルの運用方針を転換いたしまして、従来は、設備の制限という用語を狭く運用方針として採択をいたしておりまして、設備の格納とかそういうもののみに限定したいという方針でやってまいりましたのを転換」した。「これは、必ずしも独占禁止法の弾力的運用というふうに私は考えておらないのでございまして、むしろ独占禁止法の厳正な適用の領域をふやすべきではないか、」という観点からやったのだ。これはもう明らかに、独禁法の二十四条の三の解釈についていままで通産と公取といろいろとやってきました論争に、新しい局面が開けた部分ではないかと思います。  そこで、この独禁法の二十四条の三の解釈については、詰めた議論で結論は出ておりません。常にいつも議論対象でありました。そういう意味で、公取としては、この二十四条の三の解釈を、「設備の制限に係る共同行為」の中に設備廃棄も含むという新解釈をとった。通産としてはこの見解について納得されておるのか、それとも、そんなに議論するようなものでないのか、そのあたりを最後に聞かせてほしいと思います。
  277. 濃野滋

    ○濃野政府委員 独占禁止法の解釈につきましては、これは公正取引委員会が公定解釈をされるわけでございまして、その解釈にまたざるを得ないと私ども思っております。  ただ、現実の設備処理ということが現実の姿として今後行われる場合に、私ども公正取引委員会の解釈が廃棄を含むという事態になりましても、不況カルテルだけで果たして設備処理ができるかどうかということについては、実体的な面でいろいろ疑問を持っておりまして、それが今度最終的には指示カルテルという仕組みでもう一つ新しい仕組みをつくらざるを得なかった。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 しかも公取はそれをお認めになったわけでございます。  その理由でございまして、幾つかございますが、一つは、不況カルテルというのが、二十四条の三に不況要件というのがございまして、この要件、二十四条の三の要件に該当する限り読めますと、公正取引委員会委員長、こういう御答弁をなすっております。この要件に当たるかどうかというのは、現実にはいろいろ問題が出てくるのではないか。  第二に、不況カルテルと申しますのは、仮にあるAという業種でたとえば百万トン設備処理をする必要があるということを前提といたしました場合、不況カルテルの運用ということになりますと、これは三十万トンと、百万トンを超えない限りは不況カルテルオーケーでございますが、ただ、一つの安定計画をつくりまして何とか百万トンを達成したいということになった場合には、不況カルテルだけでは、いわばその百万トンの枠の中であればどんなに小さくてもこれは不況カルテルとしてはオーケーになるケースでございまして、ここに一つ設備処理を計画どおり進めるということとの間で実体的に一つの問題がございます。  それやこれやで、不況カルテルの運用でできるものは、先ほど申しましたように、四条のいわば自主的努力の一つとして私どもそれを進めることが一つの方法であろうと思いますが、ただ、指示カルテルという新しいシステム、仕組みをつくりましたのはそういう理由だということを御説明申し上げておきます。
  278. 米沢隆

    米沢委員 まだ問題をたくさん残しておりますけれども、また次の機会に譲りまして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  279. 野呂恭一

    野呂委員長 次回は、明二十四日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会