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1978-06-22 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月二十二日(木曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 竹内 黎一君    理事 森井 忠良君 理事 大橋 敏雄君    理事 和田 耕作君       石橋 一弥君    大坪健一郎君       大野  明君    小坂徳三郎君       斉藤滋与史君    戸沢 政方君       葉梨 信行君    橋本龍太郎君       湯川  宏君    安島 友義君       枝村 要作君    大原  亨君       金子 みつ君    田口 一男君       草川 昭三君    古寺  宏君      平石磨作太郎君    西田 八郎君       浦井  洋君    田中美智子君       工藤  晃君  出席国務大臣         労 働 大 臣 藤井 勝志君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      安倍晋太郎君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      伊豫田敏雄君         郵政省人事局審         議官      大友 昭雄君         労働省労政局長 北川 俊夫君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 六月十六日   一、母子家庭母等である勤労婦人雇用の    促進に関する特別措置法案枝村要作君外    五名提出、第八十回国会衆法第四七号)   二、労働基準法の一部を改正する法律案(村    山富市君外九名提出衆法第一四号)   三、雇用対策法の一部を改正する法律案(森    井忠良君外九名提出衆法第一五号)   四、労働基準法の一部を改正する法律案(金    子みつ君外九名提出衆法第一七号)   五、母子保健法健康保険法等の一部を改正    する法律案金子みつ君外九名提出衆法    第二五号)   六、環境衛生関係営業の運営の適正化に関す    る法律の一部を改正する法律案橋本龍太    郎君外二名提出衆法第三二号)   七、医療法の一部を改正する法律案(羽生田    進君外三名提出衆法第三三号)   八、健康保険法等の一部を改正する法律案(    内閣提出第八一号)   九、厚生関係基本施策に関する件  一〇、労働関係基本施策に関する件  一一、社会保障制度医療公衆衛生社会福    祉及び人口問題に関する件  一二、労使関係労働基準及び雇用失業対策    に関する件 の閉会中案はの閉会中審査を本委員会に付託され た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝村要作君。
  3. 枝村要作

    枝村委員 六月十九日に公共企業体等基本問題会議意見書安倍官房長官に手渡されたのでありますが、本委員会は早速この問題を取り上げて、きょう各委員からいろいろな御意見が出されまして、そして一定の方向を明らかにされると思います。私は大変時宜を得たものだというように考えております。とりわけ、あすの二十三日に関係閣僚会議が開かれ、今後の方針を決めるということになっておりますだけに、ひとつ官房長官労働大臣も、われわれの考え方をよく頭の中に入れて対処されるように最初、強く要望しておきたいと思います。  まず総括的に、この意見書に対する私の意見を述べてみたいと思うのであります。  昭和二十三年七月にマッカーサーの命令によってスト権を剥奪されてから今日まで三十年たっておりますが、いまなおスト権は回復されていない。そればかりか世界の大勢に逆行して労働基本権をさらに大きく規制しようという、ここ二、三年来の動きが自民党内やその他の方面から出されておるということは、きわめて遺憾である、私はこのように思っております。ですから、われわれは、これに対応するいろいろな策もありますけれども、どうも、その対応の未熟さがあって、こちら自身にも反省すべき点はあると思います。あると思いますが、それにしても労働基本権という問題が一連の反動攻勢にさらされ、あるいは、それに振り回される、あるいは政争の具に、これが利用されることがあるということは、きわめて汚点を残した問題である、私はこのように思っております。  今回のいわゆる意見書も、このような余りよくない情勢、悪い環境の中で出されたのでありますから、したがって、当初から予想されておりますように、その内容そのもの余りよくない、こう思うておりましたが、まさに、そのとおりであります。今日までの経過を全く無視して、せっかく労働関係正常化方向に向けて努力しようとする、それを妨害し、あるいは阻害するということに結果的にはなる意見書であるというように私は思っておりますし、また、憲法二十八条に保障された労働基本権を、これは否定するものである、このように、この意見書を私ども見るのであります。ただ、一筋の光があるとするならば、それは中山座長の良識的な御意見と努力の結集が若干でも意見書の中に含まれておるということ、それからまた、記者会見によって世間一般に、その真意を公表されたという点にあるだけだと私は思っておるのであります。  そこで労働大臣にお伺いするわけでありますが、あなたはILO総会出席されて十九日にお帰りになりました。聞くところによりますと、この機会に諸外国の労働行政責任者や労組の幹部とお会いになったそうでありまして、世界的視野をますます広げられてお帰りになったと思うのでありますが、その中にはスト権問題についての知識も深められてお帰りになったと思います。これから、いよいよスト権の問題について本番に入るわけでありますから、また深刻な労働行政にいよいよ取り組まねばならない立場にあるし、私はこういう問題はあなたが主役であると思います。その主役の責務をどのように果たしていかれようとするのか、それをまず第一にお伺いしておきたいと思います。
  4. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先般のILO六十四総会労働大臣として出席をさせてもらいまして、その際、総会において所見を発表すると同時に、関係者と会いました。ブランシャール事務総長、あるいはまた帰途、OECDのバン・レネップ事務総長、同時にアメリカのマーシャル労働長官等に会いまして、やはり労働問題は国際的な視野で考えなければならぬという認識を、まさに百聞は一見にしかず、身をもって体験をいたした感じがいたします。しかし私は、これを通じて結論として感じますことは、労働問題は中心労使関係でありますが、労使関係人間関係であるということ、人間関係信頼関係であるということ、この前提を確立することが一番基本でなければならぬ、このように思うわけでございます。  ちょうど帰りました十九日の晩に、たまたま長年、学識経験のある方々が検討をされ審査された結論公共企業体等基本問題会議意見書として提出されたのを私も拝見をいたしました。まだ十分、熟読玩味の時間の余裕がございませんけれども、その意見書の冒頭に結論として結ばれております「労使関係正常化こそ」問題解決基本であるというこの関係は、私は短時間でありましたけれども、ずっと世界を一周いたしまして労働行政関係者と会った結論と全く一致する、私の体験とも一致する、このように考えるわけでございまして、やはり急がば回れということでありますが、いろんな問題について、まず、その基本の原点に立って労使関係信頼関係を取り戻すことが一番大切である、このように考えるわけでございます。
  5. 枝村要作

    枝村委員 労働大臣に対しては後から、じっくりとお伺いいたしてまいりたいと思いますので、ここで中断して、官房長官にお伺いしておきたいと思います。  政府公共企業体等基本問題会議に対して一体、何を諮問したのかという点をお伺いいたしたいのであります。パンフレットによれば、経営あり方当事者能力の強化、関係諸法令改正、この三つの点について意見を正式に文書として求めておるのであります。意見を聞きたい、そういう諮問をしておるのでありますが、これは間違いないでしょう。  ところでスト権の問題について一言も、との諮問の中には触れてない。今回の意見書の中では、これが入っておる。一体これはどういう関係で、こうなったのか、官房長官お答えしてください。
  6. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 公共企業体等閣僚会議基本問題会議に対しまして、三公社五現業の経営あり方労働基本権問題を最終的な課題としまして、経営形態当事者能力、その他関係諸法令に関して御検討をお願いをしたものでございまして、同会議争議権の問題につきましても意見を取りまとめられたということは、政府としては、きわめて適切な措置ではないか、こういうふうに考えております。
  7. 枝村要作

    枝村委員 それは結果論でありまして、政府自身が、そういう意見を求めたことは一体あるのかないのか。私は形式は問いませんけれども、あるのかないのか。もし、ないとするならば、この基本問題会議が勝手に判断してスト権の問題に触れて本文として出したのかということになるわけなんですね。ひとつ、その点を明らかにしてください。
  8. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほども申し上げましたように、経営あり方とか労働基本権の問題については最終的な検討課題ということで、あと三点の問題について御検討をお願いしておるわけでございまして、これはいわば例示的なものであると判断しております。ですから私たちは、労働基本権問題についても意見を取りまとめられたということは適切ではなかったかと判断しておるわけです。
  9. 枝村要作

    枝村委員 それはわかるのですが、諮問しようという政府態度最初から、スト権の問題などは、なるべく避けてもらいたいという考え方であったのかどうかという基本問題、基本態度を貫く、これは問題でありますから私は質問しておるのです。  五十二年十月二十日に政労交渉がありました。当時は石田労働大臣でありますが、その交渉の中で、政府基本態度スト処分ストという悪循環を断ち切っていこうという点にある。今度の基本問題会議でも、それを具体化するために中山委員会にそれを伝えてある、こういう答弁をしておる。  それは一つの政府としての態度の救いでありましょうけれども、それが諮問文章の中に含まれぬというのは、いい意味で言えば、スト権の問題はむしろ政府の手にゆだねられておる。だから、たとえ基本問題会議でやらなくても政府解決をするという考え方で文書化しなかったのかどうか。悪い方に考えれば、これに触れないから現行維持でいこうということになるのか、こういうようにいろいろ解釈されるのです。  政府基本的な態度は、いま言いましたように石田労働大臣が表明したようなものであるならば、諮問のときに文書化されなくてもよいと思う。そして個人的に、あるいは官房長官中山座長に対して、これをひとつ討議してくれないかという口頭の申し入れでもいいと思うのですけれども、ただ、いまから大きく問題になりますから、あなたのいま言った、結果から見て、これはよかったんだということだけでは、どうも済まされないような気が私はするから再度質問しておるのです。答えられますか。
  10. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この基本問題会議というのは御存じのように正式な法律に基づく設置根拠を持った政府審議会とは異なっておるわけでございます。そういう意味政府諮問申し上げたことは、そうした審議会に対する正式な諮問といったような形ではないと思っておるわけでございます。そういう中で、基本問題会議におかれまして広範な検討をしていただいて、労働基本権問題も含めた、こうした意見書を取りまとめていただいたということは、私は、先ほどからも申し上げましたように、きわめて適切なことではなかったろうかと判断しておるわけです。
  11. 枝村要作

    枝村委員 くどいようですけれども、それが条件つきであろうが何かであろうが、もし諮問もしないのに基本問題会議からスト権を付与せよという、いわゆる答申、意見書が出された場合には、あなた方はどうしますか。仮定の問題ですから話になりませんけれども、全く自分の意に沿わないから、極端に言えば、おれは諮問もしないのに答申したのはけしからぬと言って逃げる口実は、そこにできますよ。  ですから、それはそれでいいですよ。いいですけれども、故意かなにか知りませんけれども、形式的に文章スト権問題は諮問から外したということは、結局いままで政府がいろいろ基本権問題に取り組んできた。そして、われわれにも約束し、政労交渉でも明らかに約束したとおり、いろいろの方面から意見は聞くけれども、最終的には政府が決める、いま言いました立法上の問題ですからね。そういう強い態度が私は流れておると思うのです。  ですから基本問題会議から、現行ではスト権は適当でない、認めることはできないということとあっても、政府のいままでとってきた基本的な態度を貫こうとするならば、これにこだわらず、この問題について、いまから本格的に政府一体となって取り組んでいけるものである。もしスト権の問題について大衆的に討議しようとするならば、あるいは国会の中あるいは別個に、いろいろな審議会を設けて、新たに再出発の意味ではありませんが、再確認の意味で、いまから日程を組むということになっていくのではないか、こういうふうに私どもは考えております。そうしないと、この問題について、いままでいろいろ努力された、たくさんの人々に対し、あるいは国民が期待した問題について背信行為となる、こういうふうに思います。  うわさに聞くと、この基本問題会議から出されたスト権の問題については、現行では認めないというので、これでもう、この問題を打ち切ろうということを政府が考えておるとか、おらないとかいううわさが流れておりますが、それでは全く、いま言いましたような政府態度を表明したことが大きな裏切り的行為になっていくのではないかという気がいたしますから、しつこいようでありましたけれども聞いたわけであります。  官房長官が結果的には、ああいうふうに出されたのを歓迎するということになりますと、では、いまから、これをどうするかということになっていくわけであります。いま私が言いましたような考え方は、恐らく多くの人々の、国会の中では全野党の考え方であろうと思いますから、これは基本的に、いままで政府のとった態度を崩さぬとするならば、あすの関係閣僚会議で、それを大きく主張して、いやしくも、おかしなうわさがあるようなことのないように、そういうことにならないように官房長官労働大臣も、ひとつ十分がんばって言っていただきたい、このように考えております。その点について官房長官一言
  12. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 政府としましては、あす公共企業体等関係閣僚会議を開きまして、この意見書につきまして検討を行うわけでございます。したがって、それまでは政府としての態度を申し上げる段階には至らないわけでございますが、長い間かけて中山座長中心にして有識者の皆さんがお集まりになって苦心されたこの意見書でございますし、政府諮問して、いただいた意見書でございますので、総理もしばしば国会で答弁しておられますように、この意見書については尊重をすべきものである、こういうふうに基本的には考えておりますけれども、しかし閣僚会議をあすに控えております。閣僚会議検討を経なければ政府としての態度を示すというわけにはまいらない、こういうことでございます。
  13. 枝村要作

    枝村委員 もう一度ちょっと言いますけれども、従来の三木さん以前から今日に至るまで、政府としては一貫して前向きの姿勢をとったと思います。しかし政府自民党政府ですから、自民党内にやはりいろいろな問題がありました。しかし、いま、ここに至ったら毅然として従来の政府態度を貫くということだけはお忘れにならないように、特にお願いしておきたいと思います。  基本問題会議は、今回の意見書提出されたことによって、いわゆる消滅するということになると思うのですが、その点について、いかがですか。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本問題会議の方は、今回の意見書提出によりまして、その任務は終了したもの、こういうふうにに考えております。
  15. 枝村要作

    枝村委員 それから、十九日に中山座長記者会見をして、いろいろな自分真意、所信をお述べになりました。その中で明らかになっておるのは、先ほどもちょっと言いました処分ストというような悪循環、こういうことはよくないということは委員全員の一致であったというふうに伝えられておりますが、これは全くそのとおりだと思うのです。  では、悪循環を断ち切るためにどうするか。そのためには、労働大臣も言いましたように労使関係の改善が強く求められております。ところが労使関係が改善されたら、じゃどうするかという点については意見書の中には書いてありません。中山座長私見中の私見などが出ておりますが、これは私見ですから、あなた方は尊重はするといっても、そう簡単にオーケーはならぬと思います。政府としては渋い顔になるばかりであります。  それから労使関係が改善されたかどうかの判定基準をどこに求めるかという問題についても中山座長は、改善されたら、これに応じて具体化に努力するというのが、この結論、趣旨であると言うだけでありまして、そのほか一言も言われておりません。その分は、やはり、こういう意見書の中に書いてあるのですから、これは中山座長私見中の私見でなくして基本問題会議全員意見だと思います。そしてまた改善されたという証拠を判断するのは最終的には政治的なものである、こういうふうに言明されておるのであります。  ですから、先ほど言いましたように政府は、この基本問題会議意見書を十分尊重し、慎重に取り扱われるでありましょうが、今日まで、とってきた態度、これは中山さんがお考えになっておることと、いままでは同じであったのですから、やはり堅持していただきたいという、こういう私の強い希望になるのであります。そしてまた意見書には「関係労使が参加する適切な話し合いの場を設ける」などもやるべきである、こういうふうに書いてあります。これは必ず実行されることだと思います。そのために今後も頻繁に政労会議を行っていってスト権問題の究極的な解決を図るべきである、こういうふうに私は思いますが、官房長官、いかがですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 意見書全体につきましては明日、関係閣僚会議を開きまして、その場で検討することになるわけでございますが、御指摘がございましたような「関係労使が参加する」「話し合いの場を設ける」という意見書提言等につきましては、これは話し合いの場を設けるという方向で対処をすることになるというふうに考えておるわけでございますし、われわれとしては、政労間で話し合う、これはこれまで随時やってきておるわけでございます。先ほど藤井労働大臣が答弁されましたように、やはり労使関係というのは信頼関係であるということから、そうした政労間の話し合いの場というものは積極的につくっていかなければならぬ、こういうふうに考えてはおるわけでありますが、話し合いが決着しなければ決まらないんだということではないわけで、争議権の問題というのは国民的な視野に立って検討すべき問題であるというふうに考えておりますので、政労間の交渉により解決を図るというふうなことは、問題の性格上とるべきじゃないということは、これは私がいまさら申し上げるまでもないわけでございます。立法政策の問題として、政府責任において最終的には決めなければならない課題である、こういうふうに思っております。
  17. 枝村要作

    枝村委員 私も、最終的には政府の決断であるし、そうやるべきだと考えておりますが、中山さんの指摘しておるのは、政労交渉ども、やはりどんどんやって話し合いの場をつくれ、こういうことですから、大体、私の要求に対してお答えになったものと理解をいたします。  そこで、その次の質問でありますが、基本問題会議はいわゆる消滅するのでありますから、今後スト権問題を討議する場合、先ほど言われたように政府判断立法措置をとっていくのか。あるいは先ほど、ちょっと質問いたしましたが新しい機関を設けていくかというような、これは、いまはわからぬとお答えになるかもしれませんけれども、用意があるのかどうか、これをちょっとお伺いしておきたいと思うのです。
  18. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまのような問題につきましては、意見書に基づきまして、あすの関係閣僚会議で協議することになっておりますから、ただいま、ここで確たることは申し上げる段階にないわけでございますが、いずれにいたしましても意見書は総合的な判断として、現時点における争議権あり方ということについては明確な結論を出しておるというふうなことを考慮いたしますれば、改めて争議権問題を討議する機関を設けるというようなことは、そういう可能性は少ないのではないか、こういうふうに判断はいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、明日の関係閣僚会議で、そういう点も含めて検討をしたい、こういうふうに思っております。
  19. 枝村要作

    枝村委員 労働大臣には後で、今日のいわゆる政治情勢労働情勢それから労使正常化の問題について、お聞きいたします。いま時間がありませんので聞きませんけれども中山座長が言っておりますように現時点労使関係はよくない。どの辺がよくないか、それはわかりませんよ。わかりませんが、よくない。だから現時点では争議権を認めるのは適当でないというんですから、そのことは将来、というのは現時点を離れたら、あすでも可能性があるということを、はっきり言っているんですよ。  ですから、後から分析をいたしますけれども、そんなに労使関係が最悪の場合にあるかどうかという問題点もありましょう。しかし問題は、現時点は適当でないけれども次は、ということで意見書は出ておるんですからね。ですから、そういう意味で私はいま、そうなったら新しい機関を設けるかどうかと聞きましたら、いまのところ可能性はきわめて薄い、ない。ないと言っているんですから、ない。それならば先ほど質問しましたように、いわゆる現時点の、いまの状態から、そうでなく、私余り労使正常化なんという言葉は好きでないけれども、もし本当にそうなった場合には、政府先ほどから何回も言われるように自分判断で、立法上の問題として、そういう方向に進んでいくのかどうか。こういうことに結局は質問がしぼられてくるわけなんですけれども、それに答えられますか、安倍さん。
  20. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、争議権あり方をめぐっての新しい機関をつくるというふうなことの可能性は少ない。これは、あした関係閣僚会議で、もちろん検討しなければならぬ問題ですが、少ない、こういうふうな判断をしておるわけでありまして、この争議権の問題については立法政策上の課題として、政府責任において判断をし、結論を出さなければならない、そういう筋合いのものであるというふうに了承しております。
  21. 枝村要作

    枝村委員 いまのところ、そういう質問に対して答えはそれ以上出ないと思いますけれども先ほどから、くどいように言いますが、私ども希望は、やはりいま多くの人々が望んでおるように、長い間行われてきた悪循環を、この際、福田内閣の手によって、りっぱに解決していかれるようにお願いしておきたいと思います。  その次に、ちょっとまだ時間がありますから伺いたいのは、経営形態についての報告です。これは意見書を含めて全体として尊重するとあなたはおっしゃるのですが、実際に、これは実現できるものかどうか。これも、いまの時点ではお答えになられないかもしれませんが、むずかしい部分もたくさんあるのじゃないですか。私はそういうふうに考えるのです。その証拠は、これまでに、いろいろな新しい提言が行われてきましたけれども一つも実現をしていませんね。たとえば政令諮問委員会とか公共企業体の審議会、臨時行政調査会、専売制度調査会、行政監理委員会など、その他の多くの機関で審議されたが、結局、現行経営形態が維持されて今日に来ておる。ですから、そう見ますと、まあ福田内閣が本当に本気になって、政治生命をかけてでもやるのなら、できる、できぬは別にして、これはおもしろいものですけれども、実際に、いま言いましたことから考えて非現実的な報告、意見書ではないか、このように思っておる。これは意見になりますけれどもね。それで、いまの時点でお答えできるとするならば、本気になって取り組む決意があるかどうかということの質問であり、あなたの答弁になると思いますが、どうですか。
  22. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の意見書は相当大部なものになっておりまして、その中での経営形態あり方等につきましては、これを実現するということから見ますると、なかなか困難な問題も控えていることは事実でありますが、いずれにいたしましても、あしたの閣僚会議で、その取り扱いは検討いたしまして、今後、政府の部内で真剣に取り組んでいかなければならぬ、そういうふうにわれわれとしては考えておるわけであります。
  23. 枝村要作

    枝村委員 まあいいでしょう。  その次に、当事者能力について、ちょっとお伺いしておきたいのですが、この報告書は「制度面での弾力性を活用」しなさいという提言であります。当事者能力の拘束の根幹になっておるのは予算統制のためであるのですから、欠如している当事者能力を強化することが、この基本問題会議の中では、スト権と並んで当然、関連して本気になって検討されるべきであったにもかかわらず、この報告は、いま言ったような調子で何ら具体的に改善策を盛っていない。まあ基本問題会議から出されたのでありますから、問題は、政府が本気になって当事者能力の問題について予算統制の緩和などの方向で決断しなくては解決策にならぬと思うのですが、その点について官房長官、どうお考えになりますか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この当事者能力の問題につきましても基本問題会議から貴重な御意見をいただいておるわけでございますから、あしたの閣僚会議を開いて、その取り扱いを協議していくわけでありまして、今後、政府の部内において真剣に検討しなければならぬ面が出れば、これはもう政府部内において検討を行っていくわけでございますが、いまの当事者能力につきましては、いま、お話がございましたような、いわゆる予算統制といいますか財政民主主義という基本の原則から見まして、なかなか困難な問題を控えておるということは申し上げられるのじゃないか、こういうふうに考えております。
  25. 枝村要作

    枝村委員 次に、法令関係の中の給与関係について、少し質問というか私の意見を述べましょう。  これは賃金抑制策として民間賃金との比較の提言であると私どもは受け取るのです。それから「積極的に自主交渉を進めるよう」提言をしておるのですけれども先ほど言いました当事者能力を現状のままにしておいてできる話じゃない。さらに労使対等の原則を認めずして当局を拘束している実態がある限りは団交の充実と前進もないのです。ことしの春闘でも団交拒否ですか、あるいは賃金の問題について賃金抑制策で、予算に組んであるものより下の回答をしたり、結果が出る。これは明らかに当局を政府が拘束しているから、こうなっているのです。それから先ほど言いました賃金の比較についても、また、おせっかいにも退職金や年金の部分まで、くちばしを基本問題会議は入れているのですね。こういう雇用条件にまで介入するのはけしからぬと思うのですよ。だから、このような提言は全く受け入れてはならぬ、これを強く要求しておきます。  それから、もう時間がありませんから、損害賠償の部会の報告について若干申し上げておきたいのです。  大体、報告書の表題が「違法な争議行為の抑制措置に関する報告」頭からけんか腰ですね。挑戦的です。スト権について全く論議せずに違法行為のみを問題としている点に不当性があると私は思うのです。  それから「法を守ることは民主主義国家の根幹」と言っているのでありますが、われわれから言えば国の最高法規である憲法を守っていないことが問題の根幹であって、スト権を認めない限りは真の本当の民主主義はあり得ない。これは今後またいろいろ討議が進められるでありましょうが、そう思います。  それと、民間と同じようにスト権を認めることが出発点でなければならないとわれわれは主張しておりますが、さらに民間の場合、労調法が適用され、規則に違反した場合には団体罰があるのに対して、なぜ公企体の労働者に刑事罰や損害賠償が請求されねばならぬか、これなども明らかに法の平等を欠いていると思います。ですから、よく考えてみると、これは弾圧思想から発想しておるものであって、労使紛争をなくするというのではなくて、ますます激化を誘発するような提言である、このように思います。  そこで、これらに基づいてお願いしておきたいのは、労働者を弾圧する部分だけ、たとえば損害賠償の問題だけをつまみ食いするようなことはあってはならぬ。これは許せないことでありますから、このようなことは、もちろんないとは思うが、念のために官房長官に伺っておきたいと思います。
  26. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 意見書、いろいろと盛られておるわけでございますが、この意見書全体につきましては、何回も申し上げて失礼ですが、あしたの関係閣僚会議検討いたしまして、さらに問題が残れば今後とも政府部内において、これらの問題を解決するために積極的に努力をしてまいりたい、こういうふうに思うわけです。
  27. 枝村要作

    枝村委員 もう一分あるから、労働大臣、いまのつまみ食いをしないということに対して、あなたはどういうふうにお考えになるか、するなという、われわれの要求に対してお答え願いたい。
  28. 藤井勝志

    藤井国務大臣 官房長官からお答えがございましたように、明日の関係閣僚会議において、いま御発言の御趣旨も十分踏まえて、労働大臣としては労働大臣の立場を自覚して十二分の配慮を持って今後の取り扱いをいたしたい、このように思います。
  29. 枝村要作

    枝村委員 どうも、いままでの答弁を聞くと、あしたまで、あしたかあさってか知りませんが箝口令をしかれておるような気がして、長官や大臣の本当の真意を一つもおっしゃらない。きわめて残念でありますが、時間が来ましたから、これで終わります。
  30. 木野晴夫

    木野委員長 次に、草川昭三君。
  31. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。時間がございませんので、官房長官にしぼって御質問をしたいと思います。  御存じのとおりの、ああいう答申案が出たわけでありますが、あの中での第三の柱である、いわゆる「労使関係正常化」のために政労使は「相互信頼を基礎とした対話を積み重ねること」に努力すべきだという点について、私は他の点については非常に不満なんですけれども、この一点は真剣に受けとめなければいかぬ、こう思っておるわけです。また、それが国民の願いでもないだろうか、こう思います。  しかし一方、労働側から言わしてみれば、これで三回目の肩透かしということですから、労働側の不満もきわめて大であるということも十分了解をしたい、こう思うわけであります。  しかもまた、政府の方も、いままでスト権というものを否認しておったわけですけれどもストライキ、処分ストライキの悪循環の問題を絶とうという問題意識からすると、結局、答申案というものは直ちに現状改善にはつながらない問題ではないだろうか、こう私は思うのです。  しかも、この答申案の内容発表で中山座長の御発言を私は新聞、テレビ等で聞いておりますと、ニュアンスについて答申案の内容とかなり違うことを私は拝見をするわけであります。これは、いいか悪いかの問題は別でございますけれども、非常に重要な問題が含んでおみえになります。特に非常に幅の広い選択を政府でとってもらいたいというような願望もございますし、それから私のちょっとうがった言い方でございますけれども、国際的に見るとILOでは、もう公務員のストライキというものは国際的な潮流になっておるわけでありまして、というようなことを言っておみえになって、恥ずかしいと言わんばかりの御発言でございました。でございますから、この意見書と座長の考え方はかなり差があると私は思うのですが、まず官房長官の御見解を賜りたい、こう思います。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中山座長が、政府に対して意見書提出された後に行われた記者会見で、中山座長の個人としての見解を述べられた、その内容については承知しておりますし、また政府としては示唆に富んだ所見もあるというふうに考えておるわけでございますが、しかし、これはあくまでも中山座長が説明をされたように私見中の私見である、個人的な意見として表明されたものであるというふうに承知をしておりますし、政府としては意見書を正式に受けたわけでありますから、政府としては意見書の文言をそのまま受け取ってまいるべきではないか。意見書を出された、その文言をそのまま受けとめて、これに対処していくのが政府としての筋ではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。  それから先ほどからお話がありましたような政労話し合い、これについては何か、いままでやってないような印象も与えられたわけでありますが、政府としては、これまで何回も政労話し合いは、労働側の要請に応じて、あるいはまた政府みずから進んで政労間の話し合いをやっておるわけであります。この意見書に盛られておる点は十分われわれとしても尊重しなければならぬ。そして今後とも政労間の話し合いという場は積極的につくっていきたい、こういう基本的な考えは、もちろん変わっておりません。
  33. 草川昭三

    ○草川委員 いま、この中山座長記者会見態度は個人的ではないだろうか、政府としては文章、文言を中心とするとおっしゃったのは当然だと思うのですけれども、しかし、わざわざ実は落第だというような御表現もあったと思うのです。内容について自信を持って政府に答弁できなかった。もちろん時間的にも不十分だけれども、問題は、最初から足かせ手かせの答申では恥ずかしいような答弁しか出せなかったという御発言を真摯に受けとめるべきだと私は思うのです。そういう内容こそが今日の労使関係の非常にぎくしゃくした不信感を生み出した根本だと私は思うのです。そもそも答申案が自信を持って先生から出していただけなかったということを素直に官房長官は受けとめるべきではないだろうか。あれは個人の意見だとおっしゃっては、せっかくの、この答申案が生かされぬのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  34. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中山座長の御発言の中には、先ほど申し上げましたように、確かに示唆に富んだ御所見も述べられておるというふうに私どもは拝察をするわけでありますが、政府の立場からしますと、意見書を正式に受け取った、この意見書の文言をそのままに受け取るのが当然の役割りである、こういうふうに思っておりますし、中山座長が十分でなかったというふうな御発言もあるわけでございますが、あの長い間かかって取りまとめられた中山座長を初め各座長や委員の皆様の御苦心に対しましては、政府としては心から敬意を払っておるわけでございます。
  35. 草川昭三

    ○草川委員 その中山先生の意図を、われわれが、これからどう生かしていくのかというものが、これからの立法府に与えられた一つの問題点ではないだろうか、私はこう思うわけでございますから、これは今後の問題として取り組んでいただきたいし、あすの閣僚会議には、中山先生の後の記者会見の御意向を、それこそ本当に取り上げていただきたいということを申し上げてみたいと思うのです。  問題は、あすの閣僚会議については、先ほどの御質問の中でも余り明確な御答弁がございませんので繰り返し申し上げません。しかし、あすの閣僚会議で、ある程度、予想されるような態度があるわけでございますが、一体、最終的には、いつごろをめどに態度決定をされるのか。問題がかなり先送りになっておるわけでございますけれども、もう逃げ場のない、政府の最終態度決定というのは一体いつにめどを置かれるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あしたの閣僚会議で、この意見書について検討をするわけでございますが、実は、あしたの閣僚会議を開いて、そして閣僚の意見を集約してみないと、これからの問題については明確に申し上げるわけにはいかないわけでございますし、先ほどから私や労働大臣が箝口令がしかれているのじゃないかというふうな御発言も枝村委員からもあったわけでございますけれども、実際、政府として私が代表して受け取ったわけでありますが、あしたの閣僚会議までは政府としては何も決めるわけにいかない。閣僚会議で初めて、その方向を打ち出すことになるわけでございますから、あしたの閣僚会議の論議というものを経なければ政府としての方針を打ち出すわけにはいかない、こういうことであります。
  37. 草川昭三

    ○草川委員 しかし大体、一定のめどというものは長官としては腹の中に持ってみえるのでしょう。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、いま、めどは持っておりません。あしたの閣僚会議を見ないと、あしたの閣僚会議で論議をしないと、めどが立たない、これは当然のことだと思います。
  39. 草川昭三

    ○草川委員 本気で、めどを持ってないと言うんだったら、私は不謹慎きわまると思うのです。そうじゃないですか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは先ほどから申し上げましたけれども基本問題会議意見書というものは、政府としては基本的には、これを尊重すべきものであるというふうに考えておるわけでございますが、あすの閣僚会議の議論を経て政府としての態度を決めていく、こういうことです。
  41. 草川昭三

    ○草川委員 私は問題は内容だと思うので、新聞等では、すでに秋だというようなことが言われておるわけでございますし、多かれ少なかれ、その時期から外れた問題というのは実際はないと思うわけです。それはそれでいいんですけれども、私は、せっかく、きょう、こういうところへ閉会中にもかかわらず官房長官、お忙しい中おいでになったわけでございますし、国民の一番注目すべき点でございますし、労働界の方々だって、あすの閣僚懇談会の推移も見守りたいという気持ちが十分あると思うのです。そういう中でのわれわれの審議でございますから、もう機械的、形式的に、考えてないなんということで突っぱねられると、本当に議論は進行しないと思うのです。そういう態度ではなくて、せっかく中山先生のああいう付加的な発言があるわけですから、それをお互いがどう生かしていくかという、こういう立場こそ、いまスト権問題等にとって一番大切なことではないだろうか、私はこう思うわけです。  そういう点で私はさらに、もう少し労使関係の方に移っていきたいと思うわけでございますけれども、調和点を探るという本来の目的から言いますと、この答申案は本当に具体的な解決にはなっていないと思うのであります。労使の努力で将来、労使関係の改善が進むならば、おのずとスト権問題解決の道が切り開かれる、こういうような内容があるわけでございますけれども、これから政府労使の間の話し合いの場をつくるということを言っておみえになりますが、具体的には、どういうようなもので話し合いの場をつくられるのか。新しい産労懇のようなものも計画になっておみえになるようでございますが、何か内容があれば、お聞かせ願いたいと思います。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は何も言ってないんじゃなくて、せっかくの国会の場でございますから、すれすれのところまで発言をしているつもりでございますが、いまの話し合いの場をつくる、これは、これまでも政府もやっておったわけでございます。しかし、この意見書にもあるわけでございますし、これは政府としても十分に尊重して今後の話し合いの場というものはつくっていかなきゃならない、こういう方向に進むものというふうに判断をしておるわけでございますが、具体的にどうするかということについては、今後早急に、これは検討課題として詰めていきたい、こういうふうに思っております。
  43. 草川昭三

    ○草川委員 いまのような質問程度だったら、私は大体考えてみえるようなことを、いま言われた方が本当はいいと思うのです。いまのような程度のお話すら、これから考えるというような答弁をまともに労働組合側として受けとめられたらどうなりますか。政府態度というのは、答申案が出てから検討しましょうということにあらわれているように、政府労使関係を生き物として扱ってないと思うのです。労使関係というのは本当に生きた存在ですから、並行して常に考えられていかなければいかぬ。実際労働省だって、そういうことは考えてみえると私は思うのです。この点について、また私は労働大臣の御意見を聞きたいと思うのですが、これは午後に大臣の方にお聞かせ願いたいと思うのですが、私は非常に不満だと思います。  きのうでございますか、政労交渉があったと思うのです。この政労交渉の中では組合の方も、あくまでも労働側の意見尊重して、ひとつ最終的な決断をしてもらいたいということを、七四年の春闘合意五項目あるいは昨年の十二月二十七日の政府回答の問題を中心にして言っておみえになると思うのですが、その労働側の意見というものを、そのまま認めた上で話し合いを続けられるのでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 労働側の意見を重要な参考資料とするということについては、私も労働側の皆さんと話し合いをするたびに申しておるわけでありますし、十二月二十七日の政労話し合いの場で、そういう取り決めも行っておるわけでございまして、そういう基本的な姿勢で、その後ずっと政労会談も何度も行いましたし、そして労働側の意見は十分承ってきておるわけでございます。政府としては、この話し合いあるいは基本問題会議等で労働側の発言があったわけでありますが、そうした発言等も十分参考にして、政府としての態度は決めたい、こういうふうに考えております。
  45. 草川昭三

    ○草川委員 きのうの政労交渉で組合が政府に申し上げたら、道正さんの方から、ちょっと否定的な何かコメントがついておったのが、ちょっと私ども気になるわけでありまして、昨年の十二月二十七日の官房長官の回答には「七四春闘合意五項目の趣旨を踏まえ、結論を出す。その場合組合の意見を聞き」の、この「組合の意見を」というところが非常に問題になったようでございます。「組合の意見も聞き」というのが最初の原案だった。「組合の意見も」というのが、政労交渉の間で「も」を「を」にした。「組合の意見を聞き」ということで、組合の意見というものが非常に重要になってきた。重点的になったというように聞いておるわけであります。ですから、いわゆる「組合の意見を聞き」という、この昨年十二月二十七日の態度は今後も続けられるかどうか、もう一回、念を押したいと思います。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん問題にもよるわけでありますけれども、今後とも政労会議政労話し合いについては、労働側の要請があったときは政府も喜んで応ずる。また政府も労働側にお願いをして開くということもあると思いますが、いずれにいたしましても十分話し合いはしていきたい。そして労働側の意見は今後の施策の上に重要な参考資料として政府は受けとめてまいりたい、こういうふうに思っております。
  47. 草川昭三

    ○草川委員 いま組合の意見はと、「を」が「は」になったわけでありますけれども基本的に昨年の十二月二十七日の態度を貫いていただきたい、こういうことを強く申し入れをしたいと思います。  そこで、この中にもございます今後の労使正常化の問題でございますが、いろいろと最近の労働界の動きなんかを、私ども第三者でございますが見ておりますと、微妙な形ですけれども、ずいぶん弾力的になったり、柔軟路線になってきておると思うのです。ここで郵政省にも、ちょっとお伺いしたいと思うのですが、郵政省あたりも、長い間の労使関係というものは、かなりぎくしゃくしたものがあったと思うのですが、近年とみに落ちついてきておるような気が私はしてなりません。しかも、ことしの春闘の時点を見ましても、かなりドラスチックな戦術採用なんかをやっておみえになるようでございますが、これは主体的には組合の内部に私ども、とやかく申し上げるつもりはございませんが、一国民としますと、何となく大人になったようでございますし、将来の労使関係安定化への一つのきずなになるような節があるような気がしてなりません。その点について使用者側としての当局の御意見を賜りたいと思うのです。
  48. 大友昭雄

    ○大友説明員 全逓の今春闘の違法ストライキにつきましては、郵政省といたしましても、厳しい経済情勢下にあって国民生活に与える影響また事業運営に多大の影響を及ぼすというようなことにもなるものでございますから、再三にわたって、その中止を強く求めてきたところであります。したかいまして、全逓が四月下旬の違法ストライキをとにかく中止したということは、省としましても、法秩序の維持、事業運営という観点から、また今後の正常な労使関係という観点からも意味があることであるというふうに考えております。  今後とも法を守るということは当然要請されることでございますけれども労使双方がお互いの立場を尊重しながら、それぞれの本来の責任を果たしていくということを基本にして、さらに正常な労使関係の確立ということに向けて努力を傾けてまいりたいというふうに考えております。
  49. 草川昭三

    ○草川委員 いま具体的に一つの労働運動の中で、当局側の方からも正常化への一つの節になったというような、そういうニュアンスの御発言もあるわけでございますし、素直に私は評価をしていきたいと思うし、問題は、それを育てなければいかぬと思うのです。  そういう立場から、これはひとつ全逓だけに限らず、国労なんかの運動方針を見ておりましても、私は、これはずいぶん柔軟になり、そして非常に新しい方向を模索をしてみえるのではないだろうか、こう思います。そういった立場を官房長官はどのように判断をされてみえるのか。これは今後の問題として非常に重要だと思いますので、お聞かせ願いたいと思います。
  50. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 労使間の流れが一般的に改善の方向に向かっておるというふうに即断はできないわけでございますが、しかし一部には、やはり御説のような動向が見受けられるということは確かであろうと私は思います。政府としましても、こうした動向が今後一般化をして、そして労使関係というものが改善をされるということを期待いたしますとともに、そういう方向に向けて政府自体も今後努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えます。
  51. 草川昭三

    ○草川委員 時間が来ましたので、これで終わりますが、そういう新しい芽をつぶすもつぶさないも使用者側であり、政府だと私は思うのです。そういう意味で私はぜひ、これは単なる一般の個別の労使関係ではなくて、日本の国の将来をつかさどる非常に大きな節が来ておると思いますので、いまの官房長官のその御発言を基礎に、ひとつ今後の国の対策を立てられたいということを強く要望して、私の質問を終わりたい、こういうように思います。
  52. 木野晴夫

    木野委員長 次に、西田八郎君。
  53. 西田八郎

    ○西田(八)委員 私は、民社党の立場から、今回出されました公共企業体等基本問題会議意見書について、官房長官に二、三質問をいたしたいと思います。  まず第一点は、憲法二十八条には、労働者の団体行動権、交渉権その他労働基本権が認められておるわけであります。しかし、公共の福祉、社会の秩序を守るという意味で、公務員に対しましては公務員法もしくは公企体法によって、これが制約をされておるわけでありますが、少なくとも今日、公務員に対するスト権付与は世界的な潮流ともなっておるわけでありますし、すでに消防職員や警察職員がストライキをやった国さえもあるわけであります。そういう観点から考えました場合に、一定の制約、手続上のいろいろな制限は付せられたとしても、基本的には、やはりスト権は認めるべきではないか。これこそ労働者の基本的権利でありますから認めるべきではないかというふうに思うわけでありますが、残念ながら、その点に対して基本問題会議意見書は、労使関係の未成熟あるいは当事者能力その他もろもろの条件を勘案して「現時点において争議権を認めることは適当ではない」というふうに意見書提出されたわけであります。  ところが、座長をお務めになりました中山先生は、昭和二十九年の世紀の大争議と言われた近江絹糸の人権争議を担当されまして、非常に国民世論の納得する中で解決を図られました。当時、組合側には非常な不満もあったわけでありますけれども、しかし、それを国民的見地から、あるいはまた日本の経済全体の立場から、これを処理され、われわれ中山先生のごあっせんに対して非常な敬意を表したものでございました。そういう経過と経歴を持っておられる先生が今回、座長として、この会議を取り仕切られ、かつ、この意見書を持ってこられるについては、中山先生の本当の意思ではなかったのではないか。むしろ、われわれの言うような、ある一定の制限、制約をつけてでも基本権として認めてやるべきではないかという御意見が強かったように私は思うのです。ということは、新聞その他テレビ等に出てくる中山先生の御意見を承って、先ほど草川委員もそのように申されておりましたが、確かに私はそういうふうに受け取っておるわけであります。  したがって、こうした答申がそのまま忠実に政府で守られる——私は恐らく政府は、この意見書を、まさしく、わが意を得たりという感じで受けとめられるのではないかと思うのですが、それであっては今後の問題、特に公労協関係の様相はますます激発されるであろうと思われるわけであります。したがって、こうした意見書が出されたことに対して、まあ、あしたの閣僚会議を待ってからということでありましょうけれども、少なくとも閣僚会議には官房長官という立場で御発言をなさろうことであろうと思うので、その辺どのように受けとめておられるのか、ひとつお伺いをしたいと思います。
  54. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 基本問題会議は、中山座長中心といたしまして各界の有識者を集めて二年余の論議を重ねられた結果、ようやく意見書という形で、これはもう中山座長の大変な御苦心の結果まとめていただいたわけでございます。そして政府としては、これまで、しばしば総理大臣も国会で発言をしておりますように、この意見書提出を受けて政府態度を決めたい。その場合においては、この意見書については基本的には尊重していくべきものである、こういうふうに答弁もいたしておるわけでございますが、これだけの労作をいただいたわけでございますし、長い間の問題となった点も、ここに含まれておるわけでございますが、私といたしましては、この意見書というものはやはり基本的には尊重すべきであるという立場で、あしたの閣僚会議に臨みたい、こういうふうに思っておりますが、閣僚会議で最終的にどういう結果が出るか、これが政府としての最終的な結論である、その後、閣議というものはあるわけでありますが、そういうふうに思っておるわけでございます。結論的には、あしたの閣僚会議を見ないとわからないわけでありますけれども先ほどから申し上げましたように、私としては、この基本問題会議意見書というものについては基本的には尊重すべきものではないだろうか、こういうふうに判断しておるわけです。
  55. 西田八郎

    ○西田(八)委員 それでは基本問題会議意見ということでありますから、争議権は認めないという方向で進めたいということですか。
  56. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはまさに、あしたの閣僚会議で各閣僚の意見、それぞれあるわけでございますから、その結果を踏まえて取りまとめをする。私が取りまとめの責任があるわけでございますから、もちろん私だけの意見を申し上げるわけにはいかない。各閣僚の意見を取りまとめて集約して政府としての態度を決めていきたい、こういうふうに思います。
  57. 西田八郎

    ○西田(八)委員 いずれにしても、あしたの閣僚会議を前にして、きょう、官房長官労働大臣に物を言わそうというても、なかなかそれは言われないことであろうと思いますので、その辺のところはひとつ、いまの御答弁で私は私なりに理解をしていきたいと思います。  この意見書の末尾の方で「このような観点から、労使関係正常化こそが本来の課題であるとの認識のうえに立って、」から、労働組合に対して法律無視の態度を改めろと言うと同時に「使用者及び政府に対しては、」と、わざわざ政府が入っているわけです。「政府に対しては、労働組合のもつ社会的機能のより深い理解の下に組合との間に相互信頼を基礎とした対話を積み重ねることを、それぞれ要請したい。」こういうふうに意見書が出されておるわけであります。  私は従来の争議の事前の政労使会議あるいは労働大臣のいろいろな努力、政府の努力等をながめてみたときに、必ずしも事前に問題を解決しようという熱意がなかったように思う。争議が予告され、いよいよストライキに入るという寸前にならなければ何もやらないということであってはならないと私は思うのです。こういう面で、この意見書の中には随所に、労使関係正常化あるいは労使の対話、政府を交えてのコンセンサスという問題、これは民主主義の原点でありますけれども、そうしたことが非常に強く打ち出されておる。これに対して今後この提言、直言に対して官房長官として、政府はどういうふうに取り組んでいくか、いったらいいかというふうに思われるか、その点、一点について御質問を申し上げて、ちょうど時間になったようですから、お答えを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  58. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この意見書に盛られました最後の項につきましては、これは相当含蓄の深い内容を持ったものであるというふうに思っておりますし、政府としても、これまでの労使関係あるいは政労関係信頼関係というものが大事であるということは、もちろん基本として考えておりますし、そうした立場で、しばしば政労会議が開かれたわけでございますが、今後とも、やはりそうした労使信頼関係を確立していく、労使関係の改善を労使の努力によって、また政府も努力をして一日も早く確立していく、そういうための努力は惜しまない。そのための政労あるいは政労使話し合いの場というものは、これは設ける。具体的に、これをいつ、どこで、どういう形で設けるかということは検討しなければならぬわけですが、設けるという基本的な方針に立って善処してまいりたいと思っております。
  59. 西田八郎

    ○西田(八)委員 質問を終わりましたが、最後に私は、やはり人間対人間のつながり、それは何といっても相互信頼の上に成り立つものであり、経営努力という言葉もうたわれておりますが、労働者にもやはり経営をよくするというための努力は社会的に要請されておると思うのです。また、そういう面を持って臨んできておる労働組合も公労協の中には幾つかあるわけであります。したがって、そうした良心的なまじめな労働組合との対話、そのことを通じて本当に経営の刷新のために努力をされ、また、そうした努力が重ねられれば、現在、法律に反した行為をしておられる人たちといえども、私はむしろ自分たちの基本的権利が認められたという立場に立って問題を判断するように変化していくのではなかろうかというふうに思うわけであります。むしろ現在スト権が付与されていないところに問題を提起しておる根幹があるように思うわけでありますから、意見書とは多少違った観点から私は物をながめておりますけれども、そういう立場で、きょうは労働大臣もお見えでありますから、あすの閣僚会議には担当大臣として、また、この意見書の取りまとめの責任者として官房長官の、より深い理解のもとで、いい結論が出るように、ひとつ御努力をいただくことを要請いたしまして、質問を終わります。
  60. 木野晴夫

    木野委員長 次に、田中美智子君。
  61. 田中美智子

    ○田中(美)委員 時間が十分しかありませんので、むだを省くために、まず見解と質問を初めに述べましてから、一括して御回答を願いたいと思います。  このたび三公社五現業労働者のスト権問題を審議してきた公共企業体等基本問題会議が、その見解をまとめた意見書政府提出しました。共産党・革新共同は、今回の基本問題会議の反動的な答申を絶対に容認することはできません。  まず、その理由の第一は、本来スト権経営形態とは無関係であるにもかかわらず、経営形態と絡ませてスト権を論じているということは、まず根本的に誤っていると思うのです。その誤った観点でスト権を否定しているのですから、これは二重の誤りだと思います。  さらに国有企業の一部を民営、準民営に移行させるという提言ですけれども、公共の福祉に奉仕すべき公共企業体の事業を利潤追求本位の民営に移行させれば、国民へのサービスは低下しますし、国民に負担増を押しつけることになります。アメリカでは電信電話、鉄道など私企業がいま公営化の方向に進んでいますし、フランス、イタリアなどでは国有化が日本と比較して、はるかに広範囲に行われています。こういう観点から見ても、この提言は、こうした国際的趨勢にも逆行しているものではないか、このように思うわけです。官房長官はどう思われるだろうかというふうに思います。  第二点は、この意見書では当事者能力の強化を検討する、こう言っていますが、公企体労働者の賃金や労働条件の改善に関する当事者能力については、給与総額制を維持するとして当事者能力を否定しています。その一方で、公共料金の自由な値上げに道を開く料金法定制を緩和しようとして当事者能力を強める。これでは労働者の待遇については当事者能力はないとしながら、国民から収奪するという面では当事者能力の強化を主張しているというのは明らかに矛盾していると思いますが、いかがでしょうか。  第三点は、スト権を付与しない論拠として、国有企業は市場抑制力の働きが弱いとか、労使関係が未成熟であるとか、だから、その正常化のための環境づくりを先行させるのだと主張しています。そう言いながら一方では賃金カットだとか損害賠償、インジャンクション制などを導入して、現在より一層労働者の権利抑圧を強める方向を提言しています。賃金カットに至っては、ストライキ参加者だけでなく、その対象範囲を拡大せよとさえ主張しています。これは過去において決着済みの論議を出してきた反動的なものだと私は思います。またインジャンクション、つまり裁判所によるストの事前差しとめ命令は、イギリス、アメリカなどでストライキを抑圧する体制の一環として進められてきたものです。だからアメリカでは、スト権問題について、この差しとめ命令を出させないようにする、こういう闘いを進めてきたものです。ですからヨーロッパ大陸の国々では、今日このようなものは全く影をひそめているものです。そういうものを、いま改めて日本の制度に導入しようとすることは著しい時代錯誤と言わざるを得ません。もし、これらが日本で強行されることになれば、民主主義を大幅に後退させ、日本の民主主義の後進性を世界に示すことになるとさえ私は思います。  官公労働者のスト権は憲法二十八条で保障された基本的人権です。もともと官公労働者のスト権は、戦後当初の時期には、経営形態関係なく、民間労働者と同様に保障されていたものです。ところが、このスト権は、一九四八年にアメリカ占領軍、マッカーサー書簡とこれを受けた政令二百一号によって不当にも奪われたものです。その後三十年たった今日、こうしたアメリカによる全面占領時代の反動的遺物を一日も早く解決することこそ、わが国の民主主義の発展にとって不可欠なものだと思います。  新聞報道によりますと中山伊知郎座長は「この意見書は正直いって上等の出来具合ではない。自信をもって天下に公表する気にはなれない。その理由は、政府に広い判断の幅を残している点で、不親切なものだ。」こう言っています。政府は、このような今回の意見書の内容にこだわらないで、労働者の意見を十分に聞き、尊重して、官公労働者にスト権を保障するために、直ちに不必要な法律は廃止し、また必要な法の改正を行うべきだと思いますが、その御見解を伺いたいと思います。そして、あしたの関係閣僚会議に、いま私が述べました見解を十分に反映させて討議していただきたいと要請いたします。  御回答をお願いいたします。
  62. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 意見書政府はいただきまして、政府結論は、あしたの関係閣僚会議で出すわけでございますから、現在の段階におきまして、この意見書につきまして私がいろいろと申し上げるということは筋の通らないことであろうと思っておるわけで、あしたの閣僚会議の議論を経て正式に政府としての考え方として打ち出していくわけでございます。しかし基本的には、あの中山座長中心にして委員の皆さんが長い間検討された結果、中山座長の大変な御労苦によって、あの意見書というものにまとまりがついたわけでございますし、私たちは、この中山座長中心とする各委員の皆さんの作業に対しては心から敬意を払っておるわけでございますが、同時にまた、政府諮問に対して貴重な意見書をいただいたわけでございますので、しばしば政府が申し上げておりますように、この意見書につきましては基本的には、これを尊重する、こういうふうな態度で臨んでいきたいというふうに思っておるわけでありますが、そういう意見書の内容につきまして、いまいろいろと御指摘があったわけでございます。  たとえば国有から民営企業に移していく、こういうふうな経営形態あり方意見書では述べておるけれども、これは世界の趨勢に逆行するものではないか。公共の福祉という観点から、民営は国民に負担を強いるということになって、これは逆行するのではないか、こういうふうなお話でございますが、私は、この意見書に盛られた内容を読んでみましても、むしろ、こうした経営形態あり方についての意見書の内容は国民に負担増を強いるものではなくて、負担減を期待する方向検討が行われた結果こうした結論になったのではないか、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。  あるいはまた、当事者能力の問題についても御質問がございましたが、労使の自主的な交渉を容易にするために、この基本問題会議では当事者能力強化の方向において検討が行われた、こういうふうに私は承知しておるわけであります。その場合に、やはり国民的な視野に立った検討が行われておるということは申すまでもない、こういうふうに考えております。  また、いろいろと労働者に対する抑制措置を強化しておるのではないかという御質問でございますが、やはり現在の状況は違法行為がずいぶん行われておる。こうした違法行為を、いかにすれば、なくなすことができるか、こういうふうな観点に立って検討された結果じゃないだろうかというふうに思っておるわけであります。私どもは、やはり遵法といいますか、法治国家のたてまえにおいては法律を守っていくというのが根本的な課題である、国の根幹であるということは正しい議論ではないだろうかというふうに思いますが、いずれにいたしましても、あしたの閣僚会議で十分検討していただきまして政府としての結論を出してまいりたい、こういうふうに存じております。
  63. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いまの回答には非常に不満ですけれども、午後から質問がありますので、いまの時間はなくなりましたので、これで質問を終わります。
  64. 木野晴夫

    木野委員長 次に、工藤晃君。
  65. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 十分間で質問をするわけですから、多くのものは期待できません。一、二お聞きをいたします。  本日、三公社五現業等の争議権の問題について質疑がなされてまいりました。私は、いままでの委員の方々が、こういう公共性の事業に関与する労働者の基本的権利であるスト権を付与しようという立場からの御意見が多かったようにお見受けするわけでございますけれども、一方においては、この公共性と、それから、そういう部門に関与する労働者のスト権という立場から言えば絶対に相入れないであろうという問題について、いささか公共性という立場から、これをながめてみた場合の考え方も必要ではないか、かように考えるわけでございまして、そういう意味において、このたびの公共企業体等基本問題会議意見書の中の最後の方の結論めいたところで「上記の諸点を総合的に勘案すれば、現時点において争議権を認めることは適当ではないと考えられる。」こういうふうな結論になっているように思うわけでございますけれども、これについて官房長官はどのように受け取られたのか。これは私的な見解でも結構でございますから、第一点お聞きをいたしたい、かように思います。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この労働基本権の問題につきましては、基本問題会議で十分検討していただいた結果、意見書に盛られたような意見が出されたわけでございますが、政府としては、意見書全体については基本的に、これを尊重してまいるべきではないかという立場をとっておるわけでございます。しかし具体的に争議権をどうするかとか、あるいは経営形態をどうするかといった問題につきましては明日の閣僚会議で、その方向をできれば出したい、こういうふうに考えておるわけであります。
  67. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 次に、「現時点において」というただし書きがございます。これはやはり将来においては、また考えていかなければならないという含みがあるように思うわけでございますけれども、この「現時点において」という問題に絡んで、たとえば現在は認めるわけにいかないけれども将来は、どういうふうに、この問題を解決しようとお考えになっていらっしゃるのか、ひとつお聞きをいたしたい、かように思います。
  68. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 意見書の限りにおきましては「現時点において」という表現がなされておるわけでありまして、将来にわたっては触れておらない、こういうふうに思っておるわけでございますが、基本的に大事なことは、労使関係の改善といいますか正常化といいますか、そういう方向へ今後とも政府も、あるいは労働側も、あるいは使用者側も積極的に努力をしていかなければならない、私はそういうふうに考えておるわけであります。
  69. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 私がお聞きをしたいのは、将来ともに争議権を認めるわけにいかないという発想にお立ちになっていらっしゃるのか、あるいはまた将来いろいろな問題の解決とともに、この問題についても柔軟な姿勢で臨みたいというふうにお考えになっていらっしゃるのか、そこら辺のところをお聞きしたいと思ったわけでございますので、そういう点お答えをいただきたい、こう思います。
  70. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま何回も申し上げましたとおり、この意見書は将来の問題については触れてはいない、こういうふうに思っておりますので、政府としては意見書中心にして議論をするわけでございますから、意見書に従った議論をして結論を出していきたいというふうに思うわけでございますが、意見書判断の基礎となった諸事情、たとえば労使の成熟あるいは構造的問題についての国民的な判断などの変化等、本問題をめぐるところの環境条件の動向について今後とも注視していくということについては言外に要請しているという読み方もあるのではないかと思うわけでございますが、いずれにしても、あしたの閣僚会議意見書中心とした結論を出してまいりたいと思います。
  71. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 現時点においての問題にとらわれておられるようでございますけれども、やはり、この問題を将来に解決していかなければならないという含みを大分持って、現時点において解決できるものは何もないというふうに私は考えるわけでございまして、これはあくまでも将来の解決のめどというものを方向づけている意見書であろうと思うのです。これはだれが考えても、そう簡単に解決できる問題とは受け取っておりませんけれども、やはり将来においての展望というものも片一方においてはなくちゃならない。またしかし一方、労働者においても、非常に公共性を持つ、そういうところに職場を持たれる労働者でございますから、一般企業の勤労者と同じような発想でスト権というものを主張されることも、やはり一方、考えていただかなければならない。そういう前向きの姿勢が両方に出てまいりませんと、この問題はあくまでも並行のままに終わっていく。いつまでたっても違法ストが続行される、その結果、国民が迷惑する、こういう三段的な形で常に繰り返されてきたという、ここに一つの何か方向の変更というものを見出すためには、やはり、あすの閣僚会議方向づけというものが、あるいは、その突破口の一つにならぬとも限らない。  ですからスト権問題もさることながら、やはり国民の公共性というものを重要視していただく立場に立って、なおかつ労働者の基本的権利をどのように認めていくかという大変むずかしい問題に対して、現状は、こういうふうに書かれておるので、未来のことは考えていない、あるいは考える必要はないというふうな御見解であるとするならば、今後の解決の糸口は見出し得ない、私はこのように考えるわけなんで、この最後の方にも、いろいろな注釈がついておって、これは確かに、認められないという結論に対する解決の手段というふうな形には非常に接近しがたい結論でございますけれども「労働組合のもつ社会的機能のより深い理解の下に組合との間に相互信頼を基礎とした対話を積み重ねることを、それぞれ要請したい。」こういう文章があるのですが、それでは具体的に、どのような相互信頼を回復していくのかということについて、やはり未来という展望がなければ、そういう解決にはつながらないだろう、こう思いますので、言いにくい点もたくさんございましょうし、また現時点において言えないこともございましょうけれども、ひとつ、そういう点については、この意見書の中にも非常に苦しい表現がたくさん見当たります。そういうところも踏まえられて、将来に光明が見出し得るような解決方法を私はお願い申し上げたい、こう思うわけで、そういう意味においては、現状、現状という言葉にこだわることなく、将来の展望というものを国民の前にも御提示いただくということが、やはり国民の側にとっても重要な一つの関心事でございますから、ぜひそういうことについても積極的な御意見を出していただきたい、こう思うわけです。  最後に「三公社五現業の関係労使が参加する適切な話し合いの場を設ける」ということの「環境づくり」をしてくれという要望もございますが、「適切な話し合いの場」ということについての何かお考えがあったら、ひとつお答えをいただきたい、こう思います。
  72. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 あしたの閣僚会議意見書に対する政府態度を決めたいというふうに思っておりますが、そういう論議の中におきまして、ただいまの御発言につきましては非常に貴重な御意見として承っておきたいと思うわけでございますが、今後の問題、特に政労あるいは労使関係正常化といいますか、改善ということについては、これまでも努力はしておりますが、今後とも積極的な努力をしてまいりたい。特に意見書にも盛られておるわけでございますから、私たちはその意見書を踏まえて話し合いの場を設けるということで処置してまいりたい。具体的に、どういうふうにするかということは、これから閣僚会議その他で詰めていくべき問題であると思います。
  73. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 時間が参りましたので最後に。  スト権ストという問題は国民の側からすれば、ある意味においては大変困った問題でございます。同時に、そういう問題によって多くの社会秩序が混乱することは、やはり避けていただきたい。そういう意味においては、ぜひとも公共企業体に関与される労働者の良識をお待ちしたいわけでございますけれども、一方においては、その方々の切なる願いであり、また要求であるものに対して、つれなく、それは認められないというふうな態度じゃなくて、やはり解決の根底には、大変大きな問題、いろいろ障害があっても、少しでも、その方々のため耳をかしていこうという不断の謙虚な姿勢というものを、ぜひ政府の方でもお示しをいただきたい。こういうことによって光明の一端をつかんでいければ、きょうの委員会も大変有効であろう、かように考えるわけでございます。最後に、そういうお願いをして私の質問を終わります。
  74. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大坪健一郎君。
  75. 大坪健一郎

    ○大坪委員 同僚の野党の先生方が御質問になりましたが、このスト権の問題は大変むずかしい問題でございます。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 特に公務員のスト権の問題は、公共の福祉という、いわば近代工業国家の一番根幹にかかわる問題との兼ね合いで労働者の基本的な権利をどう扱うかという問題でございまして、大変慎重な検討を要する問題ではないかと存じます。  実は、皆さんの議論を伺っておりますと、憲法二十八条に従って労働基本権があって、その憲法二十八条には労働団体の行動する権利と書いてあるのを全部スト権と集約してしまって、スト権は必ず与えられなければならない、これが進歩の方向であるというような御議論がございます。ところが団体の行動する権利を与えるという問題と、何が何でもスト権を与えなければならないという問題とは、少し議論の次元が違うように思いますし、世界的な現象でも、これは必ずしも一つの方向に向かって動いておるとは思えないわけです。  もちろん、たとえば西ドイツのドイツ労働総同盟、DGBは従来、十六単産でございましたが、最近、警察の労働組合ができまして十七単産になりました。これは一つの方向でございましょう。しかし、今回ILOで公務員の問題に関する条約が採択をされたと思います。ごく最近のことでございまして、私どもでは新聞の情報しか入っておりませんけれども、公務における結社の自由及び雇用条件決定手続に関する条約と称される条約の中では、紛争の処理に関してスト権が当然の前提として議論されておりません。これも一つの方向ではないかという感じがいたします。  そこで、実は公共企業体等基本問題会議意見書が出されたわけでございまして、この意見書につれて、いろいろ御議論がなされますし、明日は関係閣僚会議も持たれるわけでございますが、当面の関係当事者としての官房長官がお帰りになりましたので、直接いま政府が、どういう態度でお臨みになるかということをお伺いするよりも、わが国の労働政策の政策最高責任者であられる労働大臣がおられますので、基本的な考え方とか今後の労働政策の方向であるとか、そういう点を中心に若干の御質問を申し上げたいと思います。  その前に、実は、いま申し上げましたようにILOで問題が出たわけでございますが、大臣は最近ILOにおいでになりまして、国際的な労働情勢をごらんになり、かつ日本政府の立場も御説明になってこられましたので、ILOにおいでになりました御感想を、まずひとつ、かいつまんでお話しいただきたいと思います。
  76. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私が今般ILO六十四回の総会労働大臣として出席をいたしまして、滞在は九日から、ちょうど四日間でございまして、すべてを語る資格も何もございませんが、私はその後アメリカに渡りまして、マーシャル労働長官あるいはAFL・CIOのミーニー会長、こういった人たちと会いまして、労働問題が国際的スケールで判断をされなければならない、こういう認識を、まさに百聞は一見にしかずということで、しみじみと体験をいたしました。  いまILOにおいて公務条約のことについて、どうなったかということでございますが、私が滞在中にはまだ結論がついておらず、帰りましてから情報として聞いたわけでございまして、委員会の審議におきまして、この条約はストライキ権を扱ったものではないという確認ができたということを情報として聞いておるわけでございまして、御指摘のとおりと考えております。  同時にまた、諸外国の公共部門におけるストライキ権の取り扱いは、その国の制度、国情あるいはまた伝統、こういうものによって非常に異なっておるわけでございまして、一律に公共企業体等にストライキ権が与えられているというのは事実と違っておるということを私ははっきりと申し上げることができると思うのでありまして、ストライキ権は、国際情勢として全体的に付与するのが進歩ある国のあり方だということは必ずしも事実とは違っておる。たとえばスイスの、これは情報でなくて、はっきりした事実でありますけれども、すべてストライキ権を与えられておりません。あるいはフランスにおいても国営関係の事業には与えられておりませず、アメリカにおいても、民営は別でありますけれども、国営においては与えられておらない、こういうことでありますから、国々によって事情が異なっておる、この事情も私はつぶさに承知いたしておるわけでございまして、御指摘のとおりと心得ております。
  77. 大坪健一郎

    ○大坪委員 実は、わが国の場合は、官公労働問題で非常にむずかしい困難な政府側と労働側の意見の対立が起こりますと、労働側はILOに問題を持ち込まれまして、ILOがある方針を決めれば、それが国際的な方向であって、日本は非常に退嬰的である、あるいはおくれておるという議論をされておるようでございました、しかし、どうも、そこら辺が日本人の西欧コンプレックスというのか、もう少し独自に自分たちの労働制度なり労働慣行なりを考えてもいいのではないかと思われる現象が最近二、三出てきた。  たとえば今度のILOで、従来、日本の消防は制度の成り立ちから言うと当然、警察と同じ範疇に含めて考えるべきであろうと日本政府は考える。ところが自治労の皆さんは、そうではないとお考えになるので、ILOに提訴をされて争いのもとになっておりまして、条約勧告適用委員会で八十七号条約に違反するのではないかという議論が盛んに行われておりましたけれども、ことしは、その問題を条約勧告適用委員会にかけなかった。日本側が言うたのではなくて、むしろ向こう側が、条約勧告適用委員会に、この日本の消防の問題を警察とするかしないかという議論をかけないことにした。これは日本の国内問題であるという考えになってきたというようなこと。  それから、いまの公務における結社の自由及び雇用条件決定手続に関する条約という長ったらしい条約、あえて言えば公務員関係条約とでも申しましょうか、この条約では、紛争の解決手段として、むしろ交渉でありますとか、あっせんでありますとか調停でありますとか、あるいは強制仲裁も含む仲裁といったような相互信頼を基礎に置いた解決方法を強調しておる。スト権を取り上げておらぬ、こういう状況が出ておる。これは年来わが国政府ILOで主張してきたことに、むしろILO側が歩み寄ってきたのではないかという感じがいたしますが、その辺の御感想はいかがでございましょうか。
  78. 北川俊夫

    ○北川説明員 ILOにおきましては、スト権については、一般の場合に労働者の地位の擁護のために認めるべきであるという一般論を踏まえながらも、いま先生おっしゃったように、公務員あるいは公共部門につきましては、やはり当然、禁止を含む制約があり得る。ただ、その場合に、代償措置というものが当然整えられるべきであるというのが伝統的考え方でございました。いま、お触れになった公務条約のほかILO八十七号あるいは九十八条約につきましても、すべてスト権については何ら触れておらないところでございます。  先生御指摘のように日本の場合に、公共部門の労働者につきましては、それなりのスト禁止等の措置をいたしておりますけれども、労働条件が民間の労働者に比べて遜色がないという保障をいたすために公労委制度あるいは人事院勧告制度というものが整備しておるわけでございまして、その点が、先生も御指摘のようにILOあるいは世界の諸国において、ようやく認識をされ始めた、こういうふうに考えております。
  79. 大坪健一郎

    ○大坪委員 いまのような問題は非常に重要な問題でございまして、私どもも再度これを深化した議論をいたしたいと思いますが、きょうは主要なテーマであるスト権の問題が残っておりますので、そちらに移りたいと存じます。  私は時間を一時までいただいておりますので、まず今回、公共企業体等基本問題会議から内閣官房長官あてに出されました意見書の経緯並びに中身について若干御質問を申し上げまして、最後に、その事実に基づいて労働政策として、あるいは労働権の問題として、これをいかに考えるべきかという点について御質疑を申し上げたいと思います。  まず、確認をしておきたいわけでございますが、今回、意見書提出しました公共企業体等基本問題会議の設置の趣旨それから、どういう構成メンバーであるか。それから、その性格について、簡潔で結構でございますが、ひとつ御説明いただきたい。
  80. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 公共企業体等基本問題会議は、三公社五現業等の労働基本権問題に関する昭和五十年十二月一日の政府基本方針に基づきまして、政府検討を進めるに当たりまして学識経験者の意見を求めるために設置されたものでございます。最終的には、言うまでもなく三公社五現業の経営あり方並びに争議権問題を検討の対象とするものでございます。具体的には、経営あり方当事者能力の強化、関係諸法令改正等の三点について検討をお願いしたことになっております。  なお、この会議経営形態当事者能力及び法令関係の三懇談会によって構成されております。また、経営形態懇談会には国鉄部会等の六部会、法令関係懇談会には給与部会等の二部会が、それぞれ設けられております。  委員の構成の問題でございますが、委員の選考に当たりましては、この問題をどのように処理してまいるかが国民生活各般にきわめて大きな影響を与えることにかんがみまして、単に労使関係の観点からのみでなく、国民的な立場に立って広い視野から検討していただくために、これにふさわしい公正中立な学識経験者を各界にわたって慎重に選ばせていただき委嘱することにしたものでございます。出身別の分け方もなかなかむずかしいのでございますが、座長を含め九十七名、委員をお願いいたしました。その構成は学界二十九名、産業界二十一名、法曹界五名、言論界九名、消費者、利用者関係十名、官界出身者二十三名、おおむね以上のような構成となっております。  なお、本問題は技術的にも、経営形態当事者能力関係諸法令改正等、従来にも増して非常に広範囲に掘り下げた検討を要する問題でございますので、労働問題の専門家を多数含めなければならないというものではなく、ただいまのような一般的な構成になっている点を御承知願いたいと思っております。  なお、労使の代表を、その委員としてお願いするかどうか、これを加えるかどうかという問題につきましては、御承知のとおり従来の専門懇以来のいろいろな経緯もございまして、会議の場にむき出しの対立が持ち込まれるようなことがあると、なかなか取りまとめもむずかしい問題であるというふうなことから、四座長の意向をも勘案いたしまして、労使を加えず中立的な立場にある学識経験者をもって構成することとした、このような経緯がございます。  以上でございます。
  81. 大坪健一郎

    ○大坪委員 いま、お話の中で出ていましたように学識経験者二十九名、官界出身者二十三名、産業界二十一名、こういった構成が中心でありますのに、やはり労働問題の専門家ぐらいは、もう少し入れてもよかったのではないかと思います。労使の代表そのものを入れるのは利害関係が相反しますから問題かと思いますが、しかし、産業界代表として二十一名の方が入っておるわけですから、少なくとも労働評論家なり何なりで、どちらかと言えばレーバーマインドの労働問題の専門家を少し入れた方が説得力があったのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。
  82. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 その点の御指摘につきましては学界あるいは法曹界あるいは言論界、こういうふうに分けさせていただきました中にも、それぞれの分野において労働問題にいろいろ御関係の深い方をお願いしてございますので、このような一般的な構成でよろしいのではないか、このような考え方から人選が行われたと承知しております。
  83. 大坪健一郎

    ○大坪委員 御配慮があったというふうに善意にとっておきましょう。  次に、この答申に至る審議経過をかいつまんで御説明をいただきたいと思います。特に、この意見書の作成をされますに当たって、本問題に直接関係のあります労働組合あるいは三公社五現業の当局側、こういった人たちから、どういう意見を聴取され、あるいは、どういう意見がこれに反映されておるのか、こういう点をちょっと伺わせてください。
  84. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 基本問題会議におきましては一昨年、五十一年五月、第一回座長連絡会を開催いたしました。以来、今般の意見書提出まで、おおむね二年間にわたりまして延べ百七十六回にわたる審議が行われております。  その間の経緯は、まず五十一年九月から五十二年七月、その間の約一年間におきまして、部会等を単位といたしまして、監督官庁その他からのヒヤリングを相当何回も慎重にやっております。  五十二年九月、いわゆる中間報告と言われておりますような主要な問題点の取りまとめ、これによって自後の検討は順次行われたわけでございます。五十二年一月まで実質的な討議が各部会においてそれぞれ行われました。  五十三年、本年一月から四月、起草小委員会が行われまして、その結果おおむね三懇談会につきまして各部会を単位といたしまして三懇談会における報告書の大要が取りまとめられたということができると思っております。そのおおむねの取りまとめができました段階におきまして、本年五月、六月の約二カ月間におきまして、争議権問題に関連をいたしまして、その報告書の内容を踏まえまして基本問題会議全体としての意見の取りまとめが行われたわけでございます。  なお、この間、関係労使からの意見聴取を大きく二回に分けて行っておりまして、五十二年十月、十一月におきまして使用者側及び全官公傘下組合等からのヒヤリングを行っております。その際、御出席をお願いいたしましたが、いろいろの事情から五十三年一月、二月に至りまして公労協傘下の組合等から御出席をいただいて、いろいろの御意見を伺っております。御意見の内容は経営形態から争議権問題まで広範囲にわたるものでありまして、十五日間にわたりまして回数にして二十五回、各部会ごとに、これらの御意見を伺っております。  なお、こういう場で表明されました組合、関係労使からの意見につきましては、委員意見書を作成されるに際しまして十分参考にされたものと考えております。  以上でございます。
  85. 大坪健一郎

    ○大坪委員 いま官房長官帰りになりましたが、この意見書は大体これに従って、あした、お話し合いをなさって政府の方針をお決めになるというようなことでございますけれども、本来的に拘束するような問題なんでしょうか。この意見書政府は直接拘束されるということなんでしょうか。その辺はどうでしょうか。
  86. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 先ほど申し上げましたように、三公社五現業等の基本的な問題を検討するに際しまして意見を徴するために設けたという性格のものでございまして、特別の法律上あるいは政令上の規定等もございません。これに拘束されるというふうな性格の会議あるいは会議意見とは考えておりません。ただ、いずれにいたしましても、こちらがお願いをいたしまして有識者の掘り下げた、かつ長期にわたる御検討の結果でもあり、基本的には政府はこれを尊重してまいるべきものと考えております。
  87. 大坪健一郎

    ○大坪委員 いまのところは特に大切だと思います。ある意味では大変世間を騒がせた意見書でございますから、この苦渋に満ちた中身は、ひとつ労働大臣、十分内部に御反映をいただきたいと存じます。  大体、経緯はそういうことだということでございますので、次に内容を少しお聞きをいたしたいと思います。  今回の意見書は、いま、お話しのように経営形態ですとか当事者能力でありますとか法令関係の三つの懇談会が持たれまして、その報告書が出された。それから、その報告書の概要の取りまとめとスト権に関する部分の意見書が含まれておるわけですけれども、その問題点、それからスト権部分の意見書と懇談会の報告書の関係はどういうことになっておるのか、それをちょっと御説明をいただきたい。  それから中山会長が意見書を御発表になった後でおっしゃった中身も、新聞の報道で聞いておりますけれども、もし、わかるなら事務当局から説明をいただきたい。
  88. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 経営形態懇談会、法令関係懇談会並びに当事者能力懇談会、それぞれ内容は非常に多くのことを提言しております。ただいま、この席で時間をいただいて、どの程度のことまで申し上げていいのか、ちょっと判断がつきかねますが、全体といたしまして経営形態懇談会につきましては、国鉄につきまして、まず、これを複数の経営主体に分割し、同時に、これを特殊会社にすることが適当であろう。あるいは、そういうことが考えられるというふうな提言がなされております。  電電公社につきましては、一番問題となりましたのは、現在やっております電話電報でなく、むしろデータ通信問題が非常に問題となりました。問題となりました理由は民間との競合問題がある、この問題について、どのように考えていくかという基本的な問題でございますが、結果的には電電公社の内容につきましては現行経営形態を維持すべきであるというのが結論となっております。  専売公社につきましては、喫煙健康問題とか外国たばこ資本との競争などの問題が基本的にはあるにしても、財政収入の確保あるいは効率性の維持、いずれの面からいたしましても本来的には民営、消費税制度が望ましい。塩については現行専売制度を当面維持する、こういうふうな方向結論が出されております。  郵便事業につきましては、郵政事業はともかくとして、為替貯金事業及び簡易保険事業の両事業は民間と競合する部門も持っております。この問題についても、いろいろ深い検討がなされておりますが、最終的には三事業一体ということのメリットをやはり大きく評価いたしまして、全体として現行経営形態を維持すべきであるということになっております。  国有林野事業につきましては、国有林野事業の持つ公益的な使命と申しますか、あるいは国有林の持つ公益的な機能と申しますか、こういうものを考慮いたしますとき、現行の国営形態を変更することは適当でない。しかしながら、その作業部門の運営の仕方につきましては、原則として現行の直用方式を請負方式に切りかえていく必要があるということが主要な内容かと考えております。  アルコール専売事業につきましては、今日、工業用アルコールの安定的供給の確保という面からは製造を国みずからが行っていく必要はなく、民営が適当と考えられる。また飲用への転用防止の目的は、現行の専売制度でなくとも税制によっても確保し得るものであって、結論として税制による方が適当ではないかと考えられるというのが全体の結論となっております。  なお経営形態につきましては基本的な考え方が、その総論として掲げてございまして、重要な点は、一つは争議権問題を頭に置かないで、むしろ公共性及び効率性の面から、特に効率性の面については競争原理の導入がどこまで可能か、こういう見地から検討を行っていくということ。もし民営に移行する場合の移行についての問題でございますが、それぞれ必要な範囲において触れていると同時に細かい点につきましては、細かいというよりも技術的な面と申し上げますが、技術的な面につきましては政府検討にゆだねていく、こういうことを総論としてつけ加えられております。  以上が経営形態懇談会の報告書の要旨でございます。  次は、当事者能力懇談会の報告書の要旨でございますが、当事者能力につきましては、現在の制度上の諸制約が労使関係の安定や経営の効率性にどのような影響を及ぼしているか、こういう見地から当事者能力強化の方策はないだろうかというスタンスに立って検討が行われております。具体的には、予算統制それから主として給与総額制の問題を含みます給与統制の問題並びに料金統制、業務範囲の統制、こういうふうな現在、当事者能力を制限しております主要なる諸事項について検討を行いました結果、予算統制については制度面では特に変更を必要とする事項はない。給与総額制に関連をいたしましては、現在の給与総額を超えて給与水準を改定するためには、調停案に基づき締結された協約を実施する場合にも、これができるような措置を講ずることが必要ではないかというふうな提言が行われております。なお、料金統制につきましては弾力化の方向。業務範囲の問題につきましては適時適切な法律改正を要望されております。  それから法令関係懇談会の給与に関連する部会におきましては、その基本的な視点といたしまして、給与の決定につきまして当事者間の自主交渉による解決の促進、他方において給与の内容について国有国営事業であるという見地から要請される客観的妥当性の確保、こういう二つの要請の調和点をどこに求めるべきかという視点に立って、給与決定の仕組み及びそのあり方について検討が行われております。結論的には、自主交渉をさらに充実すべく労使の努力が必要である。給与のベースアップ問題につきましては、給与水準そのものの比較というものを、さらに重視して考えなければならない。それに応じて必要な統計その他についての必要な措置も要請されております。それから経営状況と給与との関連につきましては、単に利益が出たからといって、国有国営であることを考えれば、これを直ちに給与に反映させるということもできないけれども、さりとて一律になってもいけない。その間において業績手当等の立法上の趣旨に沿った活用というものを要請しているところでございます。  最後に、いわゆる損害賠償部会におきましては、具体的に解雇、懲戒、損害賠償責任問題、賃金カット、刑事責任、事前抑制措置それぞれについて一般的な意見並びに要請が行われているわけでございます。詳しくは、その点は省略させていただきたいと考えております。  以上が、長くなりましたけれども、三懇談会報告書の概要でございます。  それから争議権問題についての最後の取りまとめの点でございますが、両者の関係をあらかじめ申し上げておきますが、意見書の本文いわば総論のところにも書いてございますように、この意見書は三懇談会報告書の結論を踏まえまして検討が行われたわけでございまして、基本問題会議の審議方針として当初から、まず企業体ごとの経営形態あり方当事者能力の強化の方策等、個別的、具体的問題から検討を尽くし、これらに関する結論を踏まえ、争議権問題との関連についても意見を取りまとめるという、この審議方針からいたしましても当然の順序を踏んでいるものと考えます。なお具体的な関連につきましては、たとえば基本問題会議意見書の中途におきまして「経営形態についての結論は、結果的に各企業体における争議権あり方に影響するもの」である、結果的にそれが影響するものである、こういうところで関連がつけられております。  また当事者能力問題につきましても同様に「当事者能力懇談会においては、現行諸制約の一部については緩和することが適当であるが、予算統制等その根幹については、これを維持する必要があり、現状のおいては、当事者能力の強化にもおのずから限界があるとの結論が得られている。このような当事者能力に対する制約の度合いは、究極的には財政民主主義等の見地をふまえた国民の判断によって定まるもの」云々というところでごらんいただきますように、まさに先ほどから御議論あるいはお尋ねになっております「現時点において争議権を認めることは適当ではないと考えられる」という結論に至る過程におきまして、その問題の一つとして関係が明示されているわけでございます。  以上でございます。
  89. 大坪健一郎

    ○大坪委員 もう一つ、ちょっとここでお聞きしたいのですけれども、五十年十一月に専門委員懇談会の意見書が出まして、非常に厳しい調子だったと思います。今回の意見書との関係といいますか、その相違点、そこをちょっとはっきりさせていただきたい。
  90. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 専門懇意見書の内容でございますが、専門懇意見書と申しますものは争議権問題についての非常に大部のものでございまして、それを要約することは非常に困難かと考えておりますが、今回の公共企業体等基本問題会議意見書においては、その最初の部分において一応の要約を行っております。  その要約の内容でございますが、当事者能力の見地を特に重視いたしまして「その使用者側の当事者能力が制約されていることなどから、団体交渉の補完的手段としての性格を有する争議権には、その本来の機能を期待し得ない。今後は、それぞれの事業の実態等に応じて、その経営形態はいかにあるべきかの点について検討すべきであり、また、労使関係を円滑ならしめるという観点からも、当事者能力の強化を図る必要がある。」このように取りまとめられております。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕 私は、ただいまの段階で、この基本問題会議意見書を有権的に解釈する立場にございませんので、これの比較をして確定的なことは申し上げられませんが、私といたしましては、特に結論のところで「現時点において争議権を認めることは適当ではないと考えられる。」という結論によりまして、現時点を述べまして将来においては触れていない。また、なお書きにおいて将来における正常化、この点について強く要請が行われている、こういう点が大きな相違点と言えるのではなかろうかと考えております。
  91. 大坪健一郎

    ○大坪委員 大体、経緯の御説明を伺いました。それで、やはり先ほどから同僚議員のいろいろな御質疑の中でも出ておりましたように、スト権問題の基本は、現に存在をしており、かつ非常に重要な社会的役割りと機能を果たしております公共企業体の労働組合、この労働組合の労働問題に関して将来、国がどういう政策で臨むか、どう対処しようとしておるのかということでございますが、率直に申し上げて私は与党の立場ですけれども、この意見書がどちらかというと、たとえば「当事者能力が制約されているから、団体交渉の補完的手段としての性格を有する争議権には、その本来の機能を期待し得ない。」それじゃ、その本来の機能を期待し得ない争議権にかわるべき措置を、どうやって十全のものにして労使紛争を解決し労働問題に対処していくのかという一番重要なところがどうもあいまいだと私は思うのです。将来の問題が残されておる、触れられておらないというところが今回の意見書の救いになっておるのではないか。中山会長がそこの点について私見を申された。会長の私見でございますけれども中山会長と申せば日本の労働問題においては最高の権威者でございますし、中労委の会長をずいぶん長い間しておられて、現実の労働問題の処理についても非常にお詳しい方でございます。その方があえて意見書の発表の後に私見を述べられたということは、将来踏み込むべき方向についての論議に中山さんなりの一つの物差しを出したのではないかという感じもいたすわけです。  そこで率直にお伺いをいたしたいと思いますが、これは労働政策の問題でございますから、労働大臣のお考えをいますぐ直ちに具体的に出せと申すわけでもございません。私の私見を交えながら若干お聞きをしてみたい。  元来、スト権はわれわれ自由社会の一番重要な、社会的ないろいろなフリクションと申しますか、ぶつかり合いを処理していく自由社会独特の成立原理と言われております労使対等の原則あるいは労使自治、自主交渉、自主決定、こういったものを保障するために認められている労働側の団体行動をする権利の一つでございましょう。全部ではないと思うのです。だから、スト権が絶対なくてはいかぬかどうかということよりも、先ほど議論に出ておりましたILOの今回の公務員関係条約にも言われておりますようなさまざまな解決手段というものを積極的に具体的に国の労働政策が取り上げるということによって、その国の国内事情に適し、かつ、その国の国民慣習に適した解決方法が見出されるのではないか。スト権が絶対であって、スト権がない国は何か非人間的な国であるとか、公務員にスト権を与えない国は非民主的な国であるという論議が横行いたしておりますけれども、これは明らかに固定観念で、論証のいわばサボタージュではないかと私は思うのです。だから、そこのところはもっと率直に議論をするような雰囲気と態度政府もお持ちになる必要があるのではないかということでございますが、多少、専門的な議論にもなりますので、労政局長の御見解をまず伺わせていただいて、大臣の御感想を聞きたいと思います。
  92. 北川俊夫

    ○北川説明員 先ほど大臣がお答えしましたように、公務員ないしは公共部門の労働者についてスト権を与えるかどうかは、それぞれの国の国情あるいは慣行、それと、その労使関係の実情、そういうものを反映をして決めるべきものだ、こう私たちは考えております。現に、これも大臣が触れられましたように、先進諸国の中にも、やはり必要に応じて適正な制約を加えておる国は幾らもあるわけでございます。また、一般に労働争議が非常に自由だと言われる国においても、たとえばフランス等においても、それなりの制約を加えておる。こういうことでございまして、一番重要なことは、やはり先生がおっしゃったように公務ないしは公務員として働いておる人たちの労働条件がいかに守られておるか。たとえばストライキが禁止されておるならば、それに対する代償というものが十分であるのかどうか。それから、これも御指摘のように、ネゴシエーションといいますか団体交渉が果たして労働者が満足するような形で行われておるのだろうかどうか。当局側が当事者能力がなくて、全く通り一遍の形だけの団体交渉というようなことでは、たとえ結果的に民間準拠のいい結果の賃上げができましても不満が残るわけでございまして、そういう意味では労働条件の確保の点と、そこへ到達する過程での労使交渉の問題あるいは話し合いの問題の質的な充実、こういうような面に、われわれは今後わが国の三公五現の労使関係についても十分配意して、制度の弾力的運用等は、今回の意見書でも指摘をされておりますけれども、さらに努力を重たい、こう考えております。
  93. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私も労働大臣として今度初めて、いわゆる春闘の経験をしたわけでございまして、私は、スト処分スト、この悪循環を断ち切るということが労働行政の長年の懸案であり宿題である、このように心得て、これが解決の方途について、私は私なりに現在も心痛をいたしておるわけでございます。  たまたま、この十九日に、長年、専門家が検討検討を重ねられた公共企業体等基本問題会議結論が出たわけでございますけれども、この結論は何かこう本当にはっきりした結論でないという御指摘に対して、私も、そういう面が残されておるというふうに、これを受けとめざるを得ない。ただ救いは、この意見書の中にも最後に書かれておりますように、やはり労使話し合いを積み上げていくという、こういったことをひとつぜひ今後も推進すべきである、こういうことでありまして、私は労働組合側に対しては、やはり法治国家である日本としては、法律尊重する、法を守る、違法ストはしないということ、これをまず実行であらわしてもらわなければならない。同時にまた使用者側においては、労働組合の社会的機能というものを十二分に理解して、これが対応をしてもらわなければならぬ。これを要するに、労使がもっともっと話し合ってもらいたい。そして労使は、先ほども申し上げたように人間関係であり信頼関係だという、この信頼関係をひとつ回復していく努力を今後も続けなければならぬ。その立場に立って労働大臣もひとつ懸命の努力をいたしたい、このように考えるわけでございまして、鶏と卵のような関係にもなるわけでございまして、どこに、その解決のきっかけをつかむかということは、今後の、やはり日本国民全体の課題として、労働大臣労働大臣としてがんばらなければならぬ、このように思うわけでございます。
  94. 大坪健一郎

    ○大坪委員 いま、お話がございまして大変重要な問題に触れてきております。  この意見書では「現行の国有・国営形態を維持することが適当とされた事業における争議権あり方については、立法政策の問題であると考えられる」というふうに割り切っておられます。立法政策の問題であって基本権の付与の問題とかなんとかいう問題ではないということになりますと、この意見書の後の方にも出てまいりますように、労使関係正常化し、成熟したならば、その時点で改めて、こういう問題を検討してもいいではないかという、一種の余裕と申しますか、そういう見方が出てくる。私どもの党でも内部で、この問題は非常に真剣に議論いたしております。労使関係の成熟を待っても不可能に近いのではないかという、違法ストの繰り返しの結果生まれた大変な不信感もございます。これはやはり私は、労働組合側が違法ストの繰り返し、違法スト処分、違法ストということで醸されました国民の不信感を積極的に払拭する努力をしていただかないと、立法政策上の問題に上がってこないのではないかという感じがいたすのでございますけれども、またしかし一方で、わが党の中でも、やはり労使間のそういう問題ができてくる可能性は十分あるのではないかという見方もある。特に最近の公労協の指導者の方々の見解を承ったり、あるいは、いろいろなところに行動として出てまいります状況を見ておりますと、労使関係について新しい物の見方、新しい方向づけが出ておるのではないか。現に公労協の労働組合でも立法運動を展開する、違法ストの繰り返しよりは立法運動に方針を変えようという動きもあると聞いておりますが、こういうことになってくると、やはりこの問題は再認識の領域に浮かび上がってくる、そういう感じがいたします。  たとえば、新聞に東大の石川教授が言っておられましたけれども基本的には国民世論の動向が、労使間の問題の解決として、こういう紛争解決手段を仲立ちにしても十分だというふうになってくれば、当然、立法府の多数を制することができるわけで、これは問題解決方向になる。これが法治国における労働組合のとるべき方式ではなかろうかと、まあおこがましいけれども、私は考えます。  そういう点で、スト権を何が何でも与えろという議論は、この意見書提出しております立法政策の問題ではないかという問いかけに答える態度なり方向ではないのではないだろうか、その辺についていかがお考えでございましょうか。
  95. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は、今度の意見書を発表されるに当たって中山座長代表の私見を加えての御発表を、非常に示唆に富んだ、そして今後参考にすべき大切な御意見である、このように受け取っておるわけでございますが、ただいま大坪委員の御発言、これまた非常に示唆に富んだ大切な御意見だと拝承いたします。  今後やはり労使正常化の場を、環境づくりをいかにしてするかということについて、労働大臣としてひとつ知恵をしぼって、そして政府全体が本当の問題解決に努力をしていく、また同時に、これは政府が幾ら逆立ちをしても、労使関係正常化されないということになれば、なかなか問題は前進しないわけでございますから、そこら辺をどういうふうに今後持っていくかということは、ひとつ今後の課題として、それこそ急がば回れではございませんけれども、粘り強く努力していくということで今後の対応の仕方を考えたい、このように思うわけでございます。
  96. 大坪健一郎

    ○大坪委員 時間が参りましたので、最後でございますが、あえて率直に申しますと、この労働問題の、特に公労協のような国有国営事業を中心とした、そういう企業にあります労働問題というものの解決は、政府当事者が国会で縛られ、政府関係機関のさまざまな内部制約で縛られて思い切った手が打てないわけでございますけれども、労働側の信頼を確保できるというたてまえを重んずるという観点からいいますと、まあ極端な言い方をすると竹光ばかりやってもしようがないので、本物の刀を、抜かないように約束させて預けた方がいいのではないかという議論もあるわけです。  私は、スト権は、労働組合がおとなしくなったら与えてやるというような、そういう発想は大変古い発想だと実は思うのです。むしろ、その辺の順序が逆になっても考えられないことはないのではないかと思うぐらいの問題だ。(発言する者あり)しかし、そういう議論が国会の中で出るようになるためには、あなた方が余りかた苦しい一方的な自己主張ばかりしないで、もう少し国民のコンセンサスを求めるような、そういう論議を展開してくれないと本当の議論にならないのではないか。(「政府自民党から示せ」と呼ぶ者あり)政府自民党は国民の信託を受けた政党であり、政府でございますから、国民がそういう議論になってきたときには当然腹を割って次の行動に移ると思う。それができないのは、やはりいつも非常な不安なり非常な不満なりを残すような一方的な行動だけに終始しておるからではないかと思うのです。率直に申しますけれども。  同僚諸君のお怒りを買うてもいけませんので、この議論はこの辺でやめますけれども、ひとつこういう観点で、労働問題というのはやはり腹を割った信頼関係が底にないと、形式論で幾らやっても、法律を幾ら振りかざしても、違法ストは幾らでも続いてくるということになってしまうので、ここら辺の労働問題の要諦というのは、当面私は、この意見書結論で、スト権を与えない方がいいと思いますけれども、あしたの会合では、どうぞ労働大臣腹を割ってお話しいただきたいということでございますが、最後に一言意見を伺いたい。
  97. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ただいまは御意見を含めた御質問並びに御要請でございまして、十分意のあるところを踏まえまして、私も明日の関係閣僚会議に臨みたい、このように考えておりまして、結論は、国民全体の良識の上に、どういう活路を見出すか、こういったことに相なると思うのでございます。
  98. 大坪健一郎

    ○大坪委員 どうもありがとうございました。
  99. 木野晴夫

    木野委員長 この際、午後二時まで休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後二時五分開議
  100. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。枝村要作君。
  101. 枝村要作

    枝村委員 労働大臣に対して、ただいまから質問を行いたいと思います。  経営形態の論議はスト権とは全く無関係だ、われわれ、こういうふうに主張しておるのでありますが、そのことを基本問題会議自体でも今回では認めておるのです。伊豫田さんでしたか、あなたも先ほど、それらしい内容をもって答弁されたのでありますが、争議権問題については「経営形態を選択するに際しては、判断要素として取り上げなかった。」というように書いてありますとおりで、この基本問題会議自体も、そういう前提で結局、経営形態論議が進められたということになるわけです。  ですから結果的には、この問題やあるいは当事者能力やら関係法令を検討することによって争議権との関連はある。それはあるでしょう。それ自体そういうことについては関連があって、この意見書全体ができたんだと思いますけれども、私どもは全く無関係なものである、そういう立場をとります。しかし、これは争議権中心に論議が進められて、その結果、こういうところの解釈がなければならぬというので、経営形態とか当事者能力というのが出てくるのは、これは必然だと思いますね。従来の経緯も大体そうであったと思う。  四十年の十一月に第一次公務員制度審議会が発足してから八年の歳月を経て、第三次公制審が四十八年に答申を出しておりますが、そこでも可及的速やかにスト権問題を解決するために当事者能力の強化の検討を求めているとおりでありまして、基本問題会議スト権中心として取り上げて審議すべきものである。にもかかわらず、今回の基本問題会議では経営形態などと称して全く関係のないものを持ち出しているのは筋違いである、この点について労働大臣はどう思われるかという質問です。
  102. 藤井勝志

    藤井国務大臣 経営形態スト権の問題とは全然無関係だという前提に立って質問をするが、労働大臣はどう思うか、こういうお尋ねに対して、ちょっと答弁するのに戸惑うわけでございますが、私は確かに公共企業体に対するスト権の問題は、それ自体として検討すべきだという考え方も一つの見識だと思います。同時に経営形態と無関係だというのは、ちょっと私は、他の欧米先進国の公共企業体に対するスト権付与の状態を見ましても、経営形態ときわめて密接な関係もございますし、やはり実際問題として今度、公共企業体等基本問題会議意見書として出されました詳しい内容の分析から考えましても非常に関係が深いというふうに読み取れるわけでございまして、この問題については、経営形態を踏まえて検討されたという今度の意見書は十分傾聴に値する意見書である。同時に、この意見書の中にも最後に、やはり問題の基本労使正常化である。今後、関係労使話し合いの場をつくって、そして信頼関係を取り戻していくということが問題の基本であるという指摘もあるわけでございますから、そういうことを考えて今後、労働大臣としては対処すべきである、このように思うわけでございます。
  103. 枝村要作

    枝村委員 私は無関係を主張するのは、もちろん基本問題会議でも、そういう形で論議が進められていって結果的には関連がある。これは逆さまになろうが何になろうが、関係ないことはないのですよ。ただ、もともと、こういうものは先ほど言うようにスト権論議の中から自然に出てくる問題であるから、関連はありますけれども、無関係だと言うのは、そういういわゆるスト権論議を一生懸命やった結果から出るならいいけれども、そうでなくて初めからスト権なんかというものはたな上げしておいて、こういう経営形態などだけを論議をしろという政府態度に問題があるとぼくは言うのです。そこの点を追及するために無関係と言ったのです。それから基本問題会議もそういうふうに言っている。  結果的には関係がある、これはわかるのです。大ありですよ。たとえば当事者能力なんというものが、いま余りないから結局、争議権があっても役に立たぬじゃないかという、基本権問題とは別に、そういう当然の論議も出てくるのは承知しています。しかも、官房長官のときに質問しましたように、この諮問そのものの中に争議権は一切含まれておらぬ。こんなものをお伺いしたいという諮問もないですからね。これは基本問題会議そのものが、それじゃいかぬということで経営形態をやったけれども、結果は争議権に結びつけてはならぬ、そういう審議日程をつくられたというのは、基本問題会議そのものが常識でやったというだけであって、政府自体は初めからそうじゃない。端的に言えば無関係のものを審議させて、そして争議権なんというものはほうっておこうという姿勢がどうも見られる。これは、われわれだけではなくて労働界も識者もそういうふうに言っているのですよ。それから、基本問題会議の中の良識ある学者さん、先生たちは皆そう言っていますよ。まあ、わずかしかおりませんけれどもね。あとの会社の社長とか、ああいうおじさんみたいなのはわけわからぬと思う。だから、そういうことには気がつくか気がつかぬか知りませんけれども、こういうことになっていったと私は思うのです。  そこで労働大臣に聞いても、先ほど言われたような答弁にしかなりませんけれども、ぼくは、どうも争議権の問題を少したな上げするようにして経営形態の問題を論じたというのは、ほかに何かいろいろ目的が、意識的にあるかないか知りませんけれども、あるような気がするのです。これは私の方の一方的な説によるかもしれませんけれども、しかし多くの人もそう思っておると思う。それは経営形態など、スト権関係のないものをああいうふうにどんどん論議して、国鉄を九分割にするとか、それからアルコールやたばこを民営にするなんということは、やはり日本の産業再編成という長期の展望に立って、しかも大合理化を前提とした政府、企業の考え方が何かしら底を流れておるような気がしてならぬのですね。それはあなた方から言えば、そうじゃなくて、純粋に考えて物を言われると思うのですけれども、われわれはそう思わざるを得ぬ。  極端に言えば、もうけにならないものはどんどん切り捨てていく、そして、もうけになるものは、それが公共性を持っておろうがおるまいが、資本側に収奪しようという考え方が出てくるんじゃないか。いま私が言ったものが現実に今後の日程となってあらわれるかもしれませんよ。そのときには、あなたの言ったとおりだなということになるかもしれませんが、そういうねらいがあるから経営形態の問題が特に産業界を中心にして一生懸命やられておる、こういうふうに私どもは見ておるわけなんです。  特に、アルコールとか、たばこなんというものはもうけになりますよ。資本の側は、これはよだれを流すほど欲しがっているのですね。これをいまのまま、ほっておっても資本は肥えませんからね。そういうねらいがあるから、これは民営にしろということをやはり言われる。ところが官僚たち、あるいは大蔵省、そういうところは、こんなものをもがれて、しようがあるかという、そこにやはり抵抗があります。同じ向こう側の陣営でも抵抗がありますけれども、しかし資本は執拗に、こういうものを求めていくというその結果が、この経営形態の中の、この部分で一つあらわれている。  国鉄みたいなところは、地域の特殊会社をつくってみたって、これはもうけになりません。だから、しようがない、ちょっと意見を出しておけ、報告しておけという程度のもので、これは各官庁、主張している本人たち、だれもかれも本当にできるなんて思っておらぬと思うのです。そういう物の取り扱いをしておる。しかし、いまの国鉄は、これが九分割されていきますと、政府の手で切り捨てぬでも、国鉄だけでなく私企業も含めて地域によって切り捨てられていくという運命に置かれる、そういうふうに考えられるのではないか。争議権を頭に入れずに主として経営形態が論議されたというところに、それがあると思うのです。そういうふうに私は見るのです。  だから労働大臣に、そうじゃないかと聞いてみたって、あなた答えられるはずがありませんが、ひとつそういう点をよく警戒して、あなたは純粋なんだから、常に労働者の立場で行政をやらなければならぬのですから、あしたの閣僚懇談会ですか、そこで、できもせぬようなものを報告されても、安倍官房長官に、よし、それは尊重して一生懸命やりますなんて、うそを言わぬで、こういうものはきっぱり、あきらめた方がいいですよ。そういうようにしたらどうか、こういうふうに思います。  それと公共性の理由によって国有国営形態の事業にはスト権を付与できない、こういうことも今度の基本問題会議の中では、みずから否定するようなことになっておるようですね。これは労働大臣お気づきかどうか知りませんけれども、あれを見ますと、いわゆる公共性とスト権否認は、もはや説得力はなくなって、こじつけにすぎぬということを基本問題会議それ自体が白状をしているように見えるのです。たとえば国鉄の場合、先ほど言いましたように地域に特殊会社をつくる、それにはスト権を付与する。これは基本問題会議が言うても言わぬでも、民営になればスト権というのはあたりまえのことなんです。しかし、民営になった、会社になったからといって、いままでの公共性を持っておる事業が変わるものじゃないですよ、やはり国民生活に不可欠な関係にあるのですから。そして、そのサービスを提供しているものがどんな形態になろうとも公共性には変わりはないのです。ですから公共性を理由にスト権を与えるとか与えないとかいう論議にはならぬわけなんですよ。そういうことを今度の基本問題会議ではちゃんと認めておる。  それからさらに、スト権を付与しない理由として財政民主主義という理論が意見書の中に出てくるわけなんですね。これも私はお話にならぬと思うのです。公共性によるスト禁止と民営化によるスト権付与は、こういう意味で大きく矛盾があらわれてきておりますので、これを隠蔽するために、お話にならないようなものであるけれども、いま言った財政民主主義を持ち出してきたのである、こういうふうに私ども判断しております。財政民主主義というのは、これは私が説明せぬでもいいのですけれども、国または自治体の財政運用が民主的に行われるように、それを基調とする理念ですからね。そして民主主義国家は財政民主主義をその根底としています。日本社会党を初め各党も常に、このことを主張してきておるわけでありまして、労働基本権と対立するような問題ではないのです。そういう財政民主主義によるスト権否認というこじつけは全く不当なものである、このように私は考えております。  大体、以上が今度の意見書経営形態に対するわれわれの反論です。  さて問題は、午前中も話しましたけれども労使関係正常化について、ひとつ大臣の意見を聞かしていただきたいと思うのです。  この意見書は徹頭徹尾「労使関係正常化」が「本来の課題」だとしていらっしゃいます。いままでの質問答弁の中でも、それをおおよそ肯定して、そのために努力しなければならぬ。人間関係信頼関係が第一であるというのは、こういうところから出てくる、こういうふうに言われております。私も正常化については望むところでありまして、基本問題会議の言う正常化とは若干内容が異なるかもしれませんけれども、この正常化に対しては心から望むものであります。ただ基本問題会議の言う正常化とは、あの構成、動き、その他を見て一体何を意味して正常化と言うのかという点に少し疑問を感ずるところがありますから、それを申し上げたいと思います。それがうそか本当か、ひとつ大臣の御回答を願いたいのです。  私どものひがみかもしれませんけれども基本問題会議が言う正常化というのは、どう見ても悪い方向にしかとれない、どうしても、まともに考えられない節があるのです。たとえば正常化とは労使協調でなければ正常化の一つのあらわれではないと言うのか。あるいは極端な言い方ですが、一方的に労働組合がその運動と闘いを放棄する、そうなったことをもって正常化と言うのか。端的に表現するとストライキの問題です。だれかに言わせると違法ストですね。違法ストをやるから正常化でない、違法ストをやめれば正常化というふうに見ておるのか。そういう点が必ずしもはっきりしませんが、われわれの見るところでは、いま言った三つの考え方が実行されなければ正常化とは言えない、それが正常化だというふうに、もし考えておるとするならば、少し誤りじゃないかというように考えるのです。  それは、どこの歴史を見ましても、スト権労使正常化によって保障されるということはあり得ませんし、午前中に大坪委員が言われましたように、ストをやめればスト権は与えるなんというのは、ナンセンスとまでは言いませんけれども、間違っておると自民党、与党委員から言っているのです。ところが基本問題会議や、その他それをとる人々が、いま言ったようなことでなければ正常化とは言えないし、そうしなければストライキは認められぬということであれば、これは大変な間違いである、こういうふうに思っております。ですから歴史を見ればストライキ権をとれたところは、ほとんど弾圧と闘ってきた足跡が残されておるのですから、正常化とはそういうことを意味する。先ほど言ったようなことを意味するものでなくて、基本的には労働大臣言われているように、お互いの人間間の信頼関係の中から正常化が出てくるのであって、ストライキをやるとかやらぬとかいうことではないだろうという意味のお伺いでありますから、大臣によって答えてもらいたい。
  104. 藤井勝志

    藤井国務大臣 なかなか大事な基本問題に触れられた御質問でございまして、私は非常に大切なお尋ねだと思いますが、私がお答えする前に、まず一つ、物には裏表があると言うと、ちょっと言葉が語弊を生むかもわかりませんけれども、いろいろ枝村委員御心配をされておる点も、お立場によって、そういう御意見のあることは私は十分理解ができると思います。したがって、正常化とは一体どういう状態かという判断も立場立場によって、いろいろ意見が違ってくると思いますけれども労使がお互い、いまのような状態でなくて、もっともっとフランクに円滑に話し合いができて、そして公社五現業は申し上げるまでもなく非常に公共性が強いわけでありますから、お互いが公共性が強いという認識の上に立って問題処理に当たるという環境が成熟してこなければいかぬ。そういうことになってきて初めて正常化ということになり、これが中山座長代表が私見的に述べられた含蓄のある言葉ではないか。そこへひとつ一刻も早くたどり着くように労働大臣としては今後環境づくりに努めなければならぬ、このように思うわけでございます。  現時点において、いま私が、これ以上のお答えを申し上げるということは、明日を控えておりますから、できませんが、今後の努力を積み重ねていかなければならぬということ、同時にまた労働大臣がひとり力んだところで、労使関係という現実がその方向へ対応してもらわなければ、どうにもなりませんから、そういったものが呼吸を合わせていくという環境に一刻も早くなるように私は念願したい、むしろ祈りたい、こういう気持ちでさえおるわけでございます。
  105. 枝村要作

    枝村委員 わかりました。  そこで、では今日、労使関係正常化とは言わないにしても最悪の状態にあるのかどうか。正常化に向かってお互いに努力しておることを認めるのか認めないのか、この点はやはり問題だと思うのです。いまが全く手のつけられぬほど労使関係が悪化しておると判断する者はいないと思います。中山座長でも、いまは正常化でないから、やれ、やれといろいろ言いますけれども、裏を返して、では全然悪い関係にあるとは言われてないと思う。労働問題にお詳しい学者ですから今日の情勢はよく知っていらっしゃいます。特に労働省なんかは、政労交渉なんかの一番トップで話し合っているのですから、彼ら幹部が、いま、どういう考え方をしておるか一番よく知っていらっしゃると思いますね。ですから、ひとつ伺いたいのは、正常化という文句をいま私が言いましたが、そこまでいかぬにしても今日、正常化でない状態であるというように判断されるのかどうかということです。
  106. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は、労働大臣という立場から考えまして、労働者並びにその組織をなしておる労働組合、このあり方に対しては、できるだけひいき目で見たいという考えを持っておりますけれども、いまの状態がいいという判定は下せない。今度の春闘を通じましても、具体的に例を引きますと、有額回答を引き出すためのスケジュール闘争ということが発表されました。私は有額回答を早期に実施するために関係方面に努力をいたしまして、十七日には有額回答を出しました。そして関係者に、いわんや違法ストにおいておや、このスケジュール闘争はやめてもらいたいと言ったのに、今度は超低額有額回答だから、それを撤回するストだ。こういう理屈をつけた対応の仕方というのは、努力が足らなかったのか、私の気持ちも通じておらぬ。同時に国民的共感が得られない。このような感じを、そのときに私は持ったわけでございまして、まだまだ組合側もそういった点について対応の仕方を考えてもらわなければいかぬ。同時に、あれはもともと違法ストであるわけでございますから、それはたとえ意見が違っておっても、これは憲法の許すところの労働基本権である、こういうふうな判断が仮にあっても、いわゆる法律でありますから、法律は、ともかく改正されるまでは、これを守るという姿勢がなければいかぬではないか。だから中山代表座長も違法ストをするような状態が直らぬ限りは、なかなかスト権問題も議論の段階に来ない、こういうふうに言われておるわけでございますから、やはり公共性を認識をして、違法ストをしないという状態が来なければいけない。そういう状態には、いまはまだなっていない。残念ながら、そういう状態が来るまでは、いい姿ではないと思わざるを得ない、こうお答えせざるを得ないのであります。
  107. 枝村要作

    枝村委員 違法ストそのものについての論議は、また将来もやっていかねばなりませんが、これは違法ストと言われると、われわれは、労働基本権を認めずに公労法その他マッカーサーにスト権を奪われた、そのこと自体がすでにもう違法だと思っている。だから、それから先は違法ストだとは思っていません。しかし、そのことによって国民大衆に多くの迷惑をかけたり、そのことが労使の間に大きなわだかまりとなり、のっぴきならぬ最悪の状態に置かれておるかどうかという問題については真剣に考えていきたいと思うのですよ。午前中の冒頭に、やはりわれわれの対応の未熟さもあって反省せねばならぬと私は言いました。けれども、そのこと自体で、労働基本権であるスト権を未来永劫に剥奪するという考え方は、これは間違いである。  それから、いま、あなたが言われた中でも、先ほど大坪委員が指摘したのと反対の言辞があるのですよ。違法ストをやめたらスト権を与えるという条件が出てくると言うのだけれども、それはまた別だと思う。それではいかぬと大坪君は言いましたが、そういう姿勢であるから、ますます争議権の問題について解決が見出せぬということを大坪委員が言ったのですから、どうも、あなたは、そのときはいいことを言いましたが、また、いま大坪委員と反対の発言をしたようなことになりました。それは少し考えてもらわなければいかぬと思いますよ。  それで、あなたは今度の春闘で、有額回答でやったにもかかわらず、けしからぬと言って非常に立腹されたということを聞いております。それ以後、藤井さんはハト派がタカ派になったとみんなが言うのですけれども、私はそうじゃないと思う。あなたがまじめであるだけに、せっかく無理して有額回答を出したのにかかわらず、あんなことをするからということになったのだと思うのですよ。三木総理大臣のときに条件つきスト権ですか、ひとつ、おれの力によって、そういう方向に進めようと言って三木総理大臣は努力されたと思うのです。ところが、あのような長期にわたるストライキをやったから、元も子もなくなったと言って大変腹を立てられたのですよ。せっかく三木さんの考えておることより別な方向に、結局、自民党の中のいろいろな動きと合わせていってしまいましたけれども、それと同じようなことを、有額回答のことで、いま、あなたもちょっと言われた。しかし、それは冷静にならなければいかぬですよ。冷静になって争議権本来の問題について取り組まなければならぬと思います。  それで、ぼくら反論すれば、なぜ、そういうストライキをやらねばならぬか。ストライキとは別に、いわゆる労使正常化に向けて一生懸命いま取り組んでいる、これをあなた方認めないというはずはないんですよ。それは、あなたが一番よく知っていらっしゃいます。それを単に、ああいう行動をとったからとか、違法ストをするからということで退けてはいけないということを、いま言っているのです。しかも実際のあれを見てみなさい。一方からはスト権は剥奪されて、一方では当事者能力を奪われ、また責任を持たせず、労使紛争を起こさせているのは、むしろ労使関係ではなくして、今日では政府自民党にあるというふうに私は思っているんですよ。しかし自民党全部とは言いません。それはたくさんのいい人がおりますから、本当に考えておる人だったら、そういう動きはしていただきたくない。させないようにするためには、政府の力があり、政府が厳然たる態度を一日も早くとるべきである、このように私どもは考えております。  それと、いま労使関係正常化によって云々ということになりますと、過去でも、いまでも、少なくとも三公社五現業の当局者は条件つきストライキ権を与えた方がいいという考え方を皆持っておりますよ。それは、きょうとかあすの時点では、こういう場に来ては言えないかもしれませんけれども、過去五十年のときの本委員会では、明確にスト権を与えた方がいいと言っておりますね。それから労使正常化になったとは必ずしも言わないけれども、その方向になりつつあると労使ともに証言しているのですね。そういうふうに考えてまいりますと、今日の労使関係というものは決して悪い方向にいっているんじゃない、お互いに努めておるのだ、こういうふうに見るのが私は正しいと思います。  それと違法ストの問題ですけれども、確かに、いまの公労法その他によれば違法ストでしょうけれども、実際は違法の色のつくようなストの体制にはなっていないのですよ。国鉄の例をあなたは知っていらっしゃいましょうけれども、昔は確かに当局が違法ストと言ったから、組合がとめれば、一本でも動かそうと思って警察官や公安官を連れ出して組合のピケを打ち破って汽車を動かしていった。そのために大変な負傷者も出るし、刑事事件として逮捕されていくという本当に嘆かわしい事態が起きておる。今日ではそうではありませんでしょう。組合がストライキをやると言ったら、ちゃんと当局の方がストライキをやっているのですよ、あれは。当局が協力して、ちゃんとストライキを組まなくては、いまのような整然たるストライキはできぬのですよ。違法ストじゃない、合法ストですよ。それを労使が認めておるのだ。大体、いまや違法ストというものはなくなっているのです。悪循環をやめさせるためには、どうしても、ここでスト権を確立する以外にないと当局が一番認識しておるから、いまのような考え方になっているのですから、そういうことも考え合わせますと、いまは不正常な状態ではなくして、正常化されておる、あるいは、まだなっていないところは、それに向けて一生懸命に労使は努めておる、こう見ておる。  だから、それを妨げておるのはだれかというと、何回も言いますけれども自民党の中の一部の連中だ、こう言うのです。それに振り回されているのじゃないか。世界の大勢に逆行して労働基本権を阻もうとしている、規制しようとしている。私が午前中言ったような方向になっていることは私はきわめて残念でならぬ。だから労働大臣が先頭になって、いまから本格的にやるのでしょうけれども、あすの閣僚協議会でも一生懸命それを主張されて、本当に争議権の問題については、あなたの手によって大きく前向きの方向にするように努力をされたい、こういう意味のことを私は言っておるわけでありますから、また決意表明を聞くというのはおかしな話ですけれども、そのためにひとつ努力をしていただきたい。これは日本社会党だけではなくして、いま少なくとも新自由クラブを含めた全野党がそういう気持ちになっている。午前中の各党の意見発表を聞きますと、そう見ていますよ。このように思っておるのであります。  そこで実際に、この問題について、せっかく、いま自民党の中でも本気になっているにもかかわらず、これが打ち破られていく、こういうのを私は、この三、四年来見てきております。特に三木さんは就任して五十年の四月に、だれも言わずに自分から、スト処分ストという悪循環は私の手によって断ち切りたい、こういうことを発言されました。それに基づいて社会労働委員会労働大臣中心に五十年代ではいろいろ討議してきたのです。それは当時の長谷川労働大臣も、そのために多くの努力をされました。ところが対応の未熟さというのを私は口では言うのですけれども、それがやはりあって、自民党の中のスト権を与えることを不満とする連中の挑発に乗ってしまった。それと自民党の中の派閥争いの道具に、この争議権が使われたなどのいきさつもありまして、せっかくの三木総理や長谷川労働大臣中心とする労働省の皆さんの努力もつぶれてしまったといういきさつがあるわけなんです。  それを思うと、われわれはもちろん、そういう経験を十分踏んまえて、再びそういう挑発に乗るようなことをしないように、がんばらなくちゃなりませんが、何といっても労働大臣中心になって強い姿勢をつくってもらわなければならぬと思うのです。ところが、その後、労働省は全くお呼びでないのか意欲を失ったのかしりませんが全く沈黙を守る。長谷川労働大臣も貝になりたいなんて言い出す。今度の基本問題会議でも、労働省の意向がどれほど入ったか入らぬかわかりませんよ。わかりませんけれども余り入っておらないような気がする。そうして労働省はつんぼさじきに置かれる場合も、いままでもあったような気がするのです。そういうことであってはならぬ。そういうことであったら、ますます反動の攻勢に振り回されてしまうという懸念を私は持っておるのです。  しかし、そうは言っても、五十年の十二月のあの長期のストライキの直後はなかなかできなかったでしょう。ところが今度五十一年に入って三月の段階で、これはロッキード汚職事件が発覚して以後の、三木さんに対する風当たりがきわめて強くなっておる時点においてすら、三木総理大臣や、あるいは長谷川労働大臣は、この労働基本権を守る、スト権を何とかして解決しようという意欲を失わずに勇敢に国会で発言をしておるのです。ここに議事録がありますけれども、読んでもいいのですが、その時点における三木総理大臣の率いる内閣それから労働大臣は、スト権に対して今後こうするという明確な答弁をされておるのです。私は勇気があったと思う。それから引き継いで今度あなたの代にもなったのですから、しかも情勢はその後ずっとよくなっておることを考えるならば、先ほどから、いろいろやりましたが、あすがあるからといって回答はありませんでしたけれども、あの意見書の中にも一筋の光があるのですから、あなた方はそれを最大に尊重して、この問題について解決してほしい、こういうことをいま言っておるわけであります。  そういうことで、ひとつやってもらいたいということと、もう一つは政府は、こういうスト権の問題で態度が常に一貫しておらなければならないと思います。いまのところは一貫しておるように見えます。あなたが決意を表明されたように、この悪循環は断固断ち切らなければならぬという立場。断固断ち切るにはどうするかといったら出口は一つしかないのです。スト権を認めていくというしかないのです。スト権を認めぬでおって、そうして悪循環を断ち切るなんということは、およそばかげた話でありまして、スト権を与える、正常化悪循環を断ち切る、これがあたりまえ。それができぬから、どうするかといって、いまやっているのですからね。そういう基本は貫かれております。おりますが、先ほどから再々言うように、何かどうも基本が通らないような今日の情勢であるということを思うときに、私は懸念をするのですが、その点について私一人しゃべってはいけませんから、同じ答弁になるかもしれませんけれども労働大臣にもう一遍はっきり、一貫した基本態度を貫くという点についてお答え願いたいと思います。
  108. 藤井勝志

    藤井国務大臣 スト処分スト、この悪循環は、日本全国民が一刻も早く解消されることを待望している。それに労働行政責任者である労働大臣として真剣に取り組み、これにこたえる、これは当然のことであります。  ただ、十九日に意見書が提案され、しかも、その意見書では、座長代表である中山先生からの私見も交えた発言の中にも、この時点では、まだスト権を与えることは適当でない、もうちょっと条件が整備しなければならぬ、そういう意味の発言があったことも御案内のとおりでありまして、私は、明日関係閣僚会議におきましては、きょうの各委員の御発言を踏まえて、ただいま申し上げたような基本線を踏まえて、ひとつ発言もしたい。同時に、意見書の中に正式にうたわれておりますように公社五現業の労使関係正常化を図ることが何よりも肝心である、こういったことで結ばれておるわけでありますから、そういう問題について私はしかるべき発言もいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  109. 枝村要作

    枝村委員 そろそろやめますが、一つおもしろいことがあるのですよ。  これは第八十国会ですかな、五十二年五月十七日の社会労働委員会で民社の和田委員質問いたしました。それに対する当時の石田労働大臣の答えがふるっているのですが、和田委員の「一言でいいのですけれども条件つきスト権付与ということをすれば、大臣としての個人的な感触ではストライキがふえると思いますか、あるいは減ると思いますか。現在の関係の労働組合の体質から考えていかがに判断なさいますか。」という質問に、石田さんは「これは、ずばっと言って私は減ると思います。」こう言われておるのですな。ところが一般の悪い人たちは、気違いに刃物という論法もありますし、いろいろとにかく頭のかたい人たちは、いまの労使関係をいま言ったように見ている。ところが、ちゃんとした考え方を持っておる特に労働大臣とか常識のある人たちは、むしろストライキ権を与えたら減ると言う。やはり、なくなるとは言わない。ストライキは減る、国民に迷惑をかけぬことになる、こう言っている。  だから午前中も言いましたように、現時点では争議権を認めることは適当でないという表現は、じゃあすはということになると、あすは保証はされないけれども、あすからでも、あるという意味なんですから、ゆっくり考えて、どうしましょうという問題なんだ。  たとえば、いまわれわれは、それにかかわらず争議権を与えろ、憲法に保障された云々とか言いますけれども、それは正しいから一応言うのですが、しかし、それをかたくなに考えてはおらぬのです。やはり基本権があるからストライキ権もとらなければならぬけれども、もともとあったのを奪還するんだからという理屈は言いますけれども、しかし、今日の政治情勢の中で、そんなことはもうわかっています。ですから柔軟な姿勢で、これに臨もうとしておる。国鉄労働組合の場合は立法要求もしておりまして、あれを見れば、どういう考え方かということがわかる。わが日本社会党も、いま立法のための準備を進めております。ですから、政府もやはりそういう立場をとりながら、政府の手でスト権の問題について解決するということでないと、これで打ち切りというのは解決でありませんから、このままでおくということで打ち切るなんというばかげたことはせずに、やはりいま言ったように大勢もそうだし、労使もそうだし、野党もそうですから、ここで労働大臣が一踏ん張りやれば立法段階にもいけるかもしれない。そうして国民に迷惑をかけない、りっぱな世の中ができるであろう、こういうふうに私は確信しておるのですから、労働大臣もそのつもりで、やっていただきたいということを特に強く申し上げまして、私の質問を終わります。
  110. 木野晴夫

    木野委員長 次に、森井忠良君。
  111. 森井忠良

    ○森井委員 労働大臣、ぶしつけな質問で大変恐縮ですけれども、戦後昭和二十三年ころは、失礼ですけれども何をしていらっしゃいましたか。
  112. 藤井勝志

    藤井国務大臣 ちょうど私は昭和二十二年に岡山県地方議会の議員になりまして、その当時、県議会の方に労働部ができまして、労働部の常任委員長をさせてもらった、こういうときであったと思います。
  113. 森井忠良

    ○森井委員 党派はどこか属しておられましたか。
  114. 藤井勝志

    藤井国務大臣 当時、協同民主党、それから国民協同党という名前に変わった当時だと思いますが、党派はそのような党派でございました。
  115. 森井忠良

    ○森井委員 国民協同党は、三木前総理大臣も同じように国民協同党でございました。労働大臣も、いまお聞きいたしますと国民協同党であられたようであります。  スト権を議論いたします場合に、このことはどうしても触れておかなければならぬと私は思うわけでありますが、当時の国民協同党は、マッカーサー書簡あるいは政令二百一号、そして公労法、こういった一連の動きに対して、特にスト権を剥奪することについては国辱的だという言葉を使っておりまして、基本的には反対だけれども、マッカーサーの指令でありますから、やむを得ず認めざるを得ない。しかし、一日も早く、こういった状態はなくしてほしい、こういう発言が国会の記録に残っておるのですね。もう一度申し上げますと、このようにスト権を剥奪することは国辱的なことである。国民協同党としては、これはマッカーサーの指令だから、やむを得ず認めるけれども、一日も早く、こういった状態をなくするように望むという発言があるわけです。これは大臣、いま非常にぶしつけな質問で恐縮ですけれども、やはり大臣もその当時の国民協同党の党員でありますから、心の底に残っておるのではないかという感じを私は持たざるを得ないのでありますけれども、率直な所感をまず、お聞かせ願いたいと思うのです。
  116. 藤井勝志

    藤井国務大臣 もう三十有余年前のことでありまして、その当時、地方議会の末席を汚しておった関係で、あの当時どのような印象を受けたかということを、いま御指摘になって、私も思い起こそうといたしておりますけれども、なかなか定かなる記憶がございません。  ただ私は、いま御指摘されましたことを現時点において考えてみますに、やはり日進月歩といいますか、時の流れとともに労使関係も変わってくる、こういう変化、特に最近の新しい時代の変化ということを考えた場合、このスト権問題で、すべてが片づくということでない公共企業体の実情、こういうものも、やはり新たに考えなければならぬ問題ではないか。もちろん原点も忘れてはならぬ、このように私は思うわけでございます。私は、あえて国辱的ということを当時の国民協同党の立場で表明されたとするならば、これは労使双方に対して反省すべき一つの問題提起というふうにも相なるわけでございまして、もともと、ああいうゼネストをやるようなことになるということ自体が国辱的ではないか。そういうスト権を剥奪するようなゼネストを起こしたということが問題ではないかというふうな一面もあるのではないか。これはまあ立場によって、いろいろ意見が変わるわけでございますけれども、むしろ、いろいろ新たな時代に対して新たな考えと、また、その考えに基づく行動を起こさなければならぬ、このように私は思うわけでございます。本当にあのとき、もうちょっと労使関係がうまくいっておればスト権が剥奪されないで済んだのではないかという点においては、確かに御指摘のとおりと思います。
  117. 森井忠良

    ○森井委員 基本問題会議意見書が出されまして、あした関係閣僚会議をおやりになるわけでして、大臣、労働大臣というのは自民党の大臣じゃないわけですから、率直に言いますと労働省という役所を預かられるという立場があります。ほかの役所と違いまして、いわゆる労使の問題について公正妥当に労働行政を進めていかれるという基本的な立場があると私は思うのです。  ですから、きょうは、たまたま冒頭に失礼でありますがと言ってお聞きをいたしましたのは、悪い意味で人の傷でも探るような言い方で言ったのじゃないのです。いま、いみじくも、あなた言われましたけれども、世の中が揺れ動いておるという認識で、いろいろおっしゃったのだろうと思うのですけれども、こういう厳然たる事実があったことは間違いのないことですし、いま大臣はゼネストが国辱的だと言われましたが、まあこれはいろいろ背景があったわけで、私どもとしては、きわめて正しかった行為だと思いますけれども、いずれにいたしましても占領軍が一片の書簡によってスト権を奪ったわけでありますから、この国辱の方がやはり大きいのでして、そういう意味では国民協同党の方針は正しかったと私は理解せざるを得ないわけです。  ですから私は、いま問題点の提起をしておりますので、いま何も労働大臣を私が敵視して、何とかかんとか追及をするという立場で私これから質問をするのじゃないのです。あした公共企業体等関係閣僚会議ですか、ここで議論をなさるといいますから、ある意味では私は労働大臣をこれからうんと激励をして、場合によっては、ふつつかではありますけれどもども野党も大いに応援をしたいという立場で申し上げておりますので、これはひとつ誤解のないようにしていただきたいと思うのです。  大臣、世の中が変わると言われましたから、もう一つ、ちょっと例を挙げますと、こういう言葉があるのですよ。これは第九十帝国議会、昭和二十一年の五月から二十一年の十月まで行われたわけでありますが、その当時の厚生省労政局長、当時は労働省はございませんで厚生省です。厚生省労政局長がこういう発言をしておるのですね。吉武恵市厚生省労政局長でありますが、経営形態に関する問題です。先ほど、わが党の枝村議員の質問に、あなたはお答えになりまして、まあ仕事の内容もだけれども、やはり経営形態に密接にかかわり合いがあると思う。わが党の枝村委員は、これは関係ない、スト権経営形態とは関係ないのではないかということで見解の食い違いが浮き彫りにされましたけれども、いま申し上げましたように、これは役所の答弁です。前の方を省略いたしまして「ソレカラ一般ノ官公吏デアリマシテモ、国鉄デアリマストカ、或ハ公共団体ノ電車其ノ他ノ所謂公企業ニ於ケル現業デアリマスルガ是ハ勿論一般官吏ニ付テ組合団結権ヲ認メルト同様認メテ居ルノデアリマス、ソレハ国が鉄道ヲ動カシマシテモ、会社が鉄道ヲ動カシマシテモ、其ノ企業自体ノ本質カラ申シマスレバ同ジコトデアリマス、会社デアルカラ争議権ヲ認メ国家ナリ公共団体が経営スルカラ之ヲ認メヌト云フ訳ニ参リマセヌノデ、之ニ付キマシテハ一般ト同様ニ実質的ニ之ヲ取扱ツテ居ルノデアリマス、唯此ノ現業員ニ付キマシテ公益事業ニ関連が多イノデアリマスカラ、之ニ付キマシテハ抜打チ争議ヲ制限シテ居リマス、争議行為其ノモノヲ制限シテ居ルノデハナイコトハ御承知ノコトト思ヒマス」こういう答弁なんですね。これは労調法案の審議をしたときの議事録であります。  これもずいぶん違うのですね。国民は、そういう意味では非常に迷惑です。当時の役所の考え方と、あなたは変わっても仕方がないとおっしゃいましたけれども、憲法ができまして、憲法二十八条の権利は、その当時もいまも文章は全く同じであります。政権がかわると、いま申し上げたように、ここまで変わるのです。大臣は、先ほどお触れになりましたように、経営形態の問題についてもスト権と密接に関係がある、こうおっしゃったわけでありますが、こういった変わり方については一体どういうふうに理解すればいいのでしょうか。
  118. 北川俊夫

    ○北川説明員 終戦直後の労働法制の変遷は、先生の御指摘のとおりでございまして、最初の二十一年三月に施行されました労組法では、公務員も原則として労働基本権が認められておったわけでありますが、いま先生御指摘の二十一年十月の労調法施行に伴いまして、非現業の国家公務員については争議行為を禁止した。その反面、吉武労政局長が当時説明いたしましたように、現業の公務員については争議権が認められておったわけであります。その後、御承知の政令二百一号以来、現業公務員についても争議権が禁止をされる、こういうことになったわけでございます。そういう歴史的な経過とともに、社会の進展その他で、同じ鉄道を動かしておりましても私鉄と国鉄というものでは、その公共性あるいは最近よく言われる予算関係の財政民主主義との関係、そういう関係から、民間の企業とは別に基本権について制約はやむを得ないというのが、いまの日本の一般世論あるいは法律的な通論、こういうことになってきたと私は考えております。
  119. 森井忠良

    ○森井委員 まだ現役の労働組合の幹部の皆さんや、あるいは中高年の労働者は、その当時からずっと現役なんですね。先ほど一つ、二つしか指摘をいたしませんでしたけれどもストライキ権に対する認識というのは、当初は、いま私が指摘をしましたような形ですね。それがずっと三十年、今日まで流れてきておりまして、しかも現役もまだ非常に多い。実は私も勤めておりましたが、そのとおりだと思うのでありますが、ここまでひどく変わってきますと、労働者だけを責めるというのは確かに問題が出てくる。それでは経営者はその後どれだけの制約があったか。これははっきり申し上げて無傷です。ここのところを考えますと、私は冒頭に申し上げましたように、労働省という役所だけは、もっとしっかりしていただかないと視点を見失う、このことだけは明確に指摘をしておきたいと私は思うのです。  それから、福田内閣の閣僚として、これは労働大臣に御質問をするわけですけれども、やはり内閣の姿勢も、私、言いたくはありませんけれども、そうほめたものでもない。たとえば最近、深刻な不況であります。いま思い起こしますのは公害国会のころ日本じゅうが公害で大騒ぎをいたしました。もちろん経済は高度経済成長でありましたけれども、私のところなんかは、県庁へ漁民が汚染された魚を玄関前に持っていきまして、そしてまき散らしたりして暴れたくらい憤りのひどいものでした。いまもまだ水俣病の患者は呻吟をしておられる。いわゆる公害病の患者は全国にあふれています。しかし、どうも景気が悪くなって、余りぜいたくを言うなやという形になってまいりました。たとえば今度の国会でも、公害と直接は関係がないとも言えるような環境影響評価法案、いわゆるアセスメント法はとうとう国会にお出しになりませんでした。じっと見ておりますと公害行政というのは、だんだん後ろに引かされていっている感じが私はあると思うのです。  スト権の問題につきましても、田中首相そして三木首相、福田首相と、最近の三代の内閣の姿勢をとってみましても、だんだん後退に後退を重ねる。最近は民間企業は悪いですから、公労協については親方日の丸論が盛んに出てまいりました。いまも、そうして何年か前と全く経営の状態は変わっていない。片っ方は民間が不景気だということは確かにわかります。しかし、スト権の問題とあわせて賃金を大幅に、たとえば民間企業よりも極端に大きく賃金を引き上げろというふうな要求にはなっていないし、妥結もそうなんです。ごく控え目な、結果としては物価の上昇率にも及ばないような賃金の引き上げ率になってまいりました。  そうして先ほどもちょっと指摘がありましたが、ことしの春闘でも、大詰めになりまして何が問題になったかと言えば、物価の上昇分をどうするかということが問題になりました。三公社の場合は御案内のとおり、ちゃんと予算で五%前後の賃上げの原資は組んである。これは国会で認めた一応の予算です。もちろん政府考え方はわかりますよ。しかし、いずれにいたしましても、公労協がその場合に何もかも生活が苦しいのだから、もっとよこせという言い方をしましたか。やはり親方日の丸論で結局抑えつけにかかった。これはうまく不況にあえぐ民間の労働者の皆さんの気持ちに、どちらかと言うと迎合する形で抑えにかかった。決して無理な動きはなかったし、結果からいきますと、ああいうふうに大幅賃上げどころか、物価上昇にも及ばない形で結局妥結、事実上妥結ですね、それで今日に至っておるわけです。  しかし、何か経済の不況に事寄せて、これだけ大変なんだ、いまスト権どころじゃないじゃないかという振りまき方をなさるのじゃないかという心配がございます。そうして、指摘をされておりましたように、あの今度の基本問題会議の答申の中で、いま一番、関係の労働者が恐れていることは、あのスト権の否認とか、あるいは部分的に損害賠償だとか、あるいは刑事弾圧だとか、そういったところだけ政府がつまみ食いするのじゃないかというおそれを持っておる。恐らく、そういうことはないと思いますけれども、これはぼくは内閣の一連の姿勢だと思うのです。  そこで、まず福田内閣の閣僚の一人として、内閣の姿勢を占うものとして、いま申し上げました田中内閣以降公制審答申等が出て具体的になってまいりました、少なくともここ数年の一連の動きに対して、福田内閣は絶対に反動的あるいは後退的にはならないという、その保証ができますか。これだけはひとつ大臣からお答えをいただきたい。
  120. 藤井勝志

    藤井国務大臣 大変激励を込めた私への質問をお受けいたしました。労働大臣というのは労働者の生活の安定と福祉の向上を図ることが使命であります。したがって、そういう前提に立って、明日の関係閣僚会議においても、今度の公共企業体等基本問題会議意見書に対応して内閣がどういう態度をとるかということについて、私の立場においての意思表示をいたします。その場合に、いま御指摘のように現在の内閣が労働行政において逆戻りするとか反動的な方向にいくとかいうことには絶対ならないように、私はそういうことはあり得ないと思いますが、いま御指摘のようなことを十分踏まえて言動いたしたいと思います。
  121. 森井忠良

    ○森井委員 私は、スト権の議論は本当はきょう一日だけでなくて、時間をかけて、じっくり議論すべきだと思うのでありますが、時間の関係もありますから、もう一点だけ、僭越ですけれども私は大臣の注意を喚起いたしたいわけです。それはストライキ権そのものです。  御承知のとおり世界じゅう労使関係のあるところ労働基本権基本的にはあるのでして、公務員とか民間とかいうのとは別の話です。一般論ですね。ですから、やはり労働問題がある限り、あるいは雇用関係がある限り、どうしたって労使のトラブルは起きてまいりますし、それは立場上仕方がない。だからこそストライキ権という基本的な権利が認められておるわけですから、いわゆる公共企業体とか公務員だとかいうことを抜きにして、労働者が持つストライキ権そのものについて、いま私は問題にしようとしておるわけです。  じっと考えますと、最近いろいろなところで宣伝が行き渡りまして、ストライキというのは悪いことなんだという風潮も一部にはある。これは御承知のとおり民間企業でも最近は不景気だから若干ストライキは減る傾向にはありますけれども、しかし、無理な雇用調整その他をやると、また、かえってストライキが続発する傾向もなきにしもあらずでありますから、一概には言えませんけれども、本来、労使のあるところにストライキはやむを得ずあるんだ、労働基本権の一つなんですから。先ほど申された労働省の職掌柄からいけば、あたかもストライキをやることは公務員、民間を問わず罪悪に近いことではないか、ストライキは困ったものだという一般の風潮が日本国内にあるとすれば、これはだれの責任でもない、労働省の大きな責任だと私は思う。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 労働者が労働基本権として憲法二十八条に認められておる労働三権を持っておるのだということは、労働省は一体どういう場で国民に教育をされますか。これは労政局長。
  122. 北川俊夫

    ○北川説明員 いま先生御指摘のように労働三権が憲法二十八条で保障されております。労働条件を個々の労働者が経営者との間の労働契約あるいは交渉で対等にはなかなか実現ができないだろうという意味で、団結権、団体交渉権さらに団体交渉権の裏づけとしての争議権の保障をしておるというのが労働三権保障の本来の趣旨であろうと思うのです。そういう意味で先生が御指摘のように、ストライキがあることが悪いことだという考え方は私は間違っておると思います。  そういう意味で、労働三権についての正しい認識というのは、労働組合に対して労働教育的にいろいろやっておるだけでなくて、経営者、一般国民に対しても、たとえば労働協会の諸行事等を通じまして、あるいは労働省の指導によりまして地方の労政課あるいは労政事務所等で、あまねく国民の皆様方にその趣旨の徹底を図っておるところでございます。  ただ、スト権につきましては、いまも申し上げましたように団体交渉権を補完する。団体交渉が十分行われて、なおかつ労使の間に意見が不一致で解決を見ない。その場合に、まあ俗な言葉で言いますならば伝家の宝刀として労働組合がスト権を行使をして解決を図る、こういうのが本来の趣旨でございますから、その権利の使用に当たっては労働組合は良識を持って、その権利の行使を図るべきだということも、われわれ申しておるところでございます。
  123. 森井忠良

    ○森井委員 先ほどの吉武恵市厚生省労政局長が申しておりましたが、その当時は、同じ鉄道でも公企業の場合と私企業の場合と実質的に変わらない、こういう発言をしておりますが、仮にいまの感覚で、あなたの御答弁を引用させていただきますと、たとえば地下鉄がストライキをやる。そうするとターミナル駅は大変な混雑になっておる。ストライキけしからぬじゃないかという国民の感情は私はあると思う。これは違法ではないわけでしょう、一言
  124. 北川俊夫

    ○北川説明員 民間の地下鉄がストライキをやりまして、それが市民生活に大変大きな影響を与えましても決して違法な争議ではございません。
  125. 森井忠良

    ○森井委員 公共の福祉を阻害しているとは私は思いませんけれども、通勤者に迷惑をかけておるという点では、国鉄のストライキも私鉄のストライキも全く同じなんですね。そして通勤者は国鉄に向けて、あるいは時としてストライキをやっておる私鉄に向けて不満をぶつぶつ言いながら通勤をしておる。これは間違いのないところです。  それでは、切り込むようで恐縮ですけれども、労働省はその場合に大臣談話でも発表して、あの私鉄のストライキは当然の権利なんだから国民の皆さん、がまんしなさいと言ったことがありますか。
  126. 北川俊夫

    ○北川説明員 そういうような大臣談話を発表したことはございません。むしろ労使に対して、早期解決に御努力され、国民の迷惑が早くなくなるようにというお願いはいたしております。
  127. 森井忠良

    ○森井委員 ですから、そういうものが標本になって一般的にストライキは罪悪じゃないかというのが国民に流れておるとしたら、やっぱり労働省の責任ですよ。いま申されましたように、一番いいのは労働省も積極的にアドバイスなさって、早く労使紛争が解決をしてストライキがなくなることがよろしい。しかし、少なくとも形態としてストライキがあらわれれば、ストライキをやっている労働者だけを責めることはないわけですね。これは賃金の紛争、労働条件の紛争、いろいろあるわけですから。たとえば私鉄の問題一つとってみても、第二基本給だとか、われわれ、ちょっと考えられないようなことがあってみたり、いろいろそれは賃金の形態で問題があるところはあるわけですから、要求を見ておりますと、これはなるほど労働者が怒るのも無理はないというようなストライキをやっているところも、ずいぶんあるわけです。だから、その場合、一番いいのは先ほど言われたように早く労使紛争を解決することだけれども、形態としてストライキに入ったら労働者だけを責めるべきものではない。労働者が賃金の減額も覚悟してストライキをやっておるのだから、使用者にも打撃がいくのは当然だし、理解をしなければならぬ。その点の国民に対する教育というのは、率直なところ、これは内閣の姿勢もあるかとは思いますけれども、私は繰り返し申し上げますが、やはり労働省という官庁はもうちょっと本気にストライキ権の問題については国民にPRされる必要があると思うのです。  大臣は今回イギリスには行かれなかったようですけれども、炭鉱のストライキを私どもも現地を見たわけではありませんが、つぶさに聞かされております。これは注意を喚起しますために申し上げるのですが、御承知のとおりイギリスの炭鉱は国家管理です。まさにこれは日本で言えば公企業に属するものです。何十日もストライキをやるのですね。それは条件が劣悪だから、そこで引き上げるという形になってくる。国民はどうするか。日本と違って、たとえば電力のエネルギー源というのを、あの国では石油よりもむしろ石炭に求めています。石炭のウエートが非常に高い。だから炭鉱の労働者がストライキをやれば、これは必然的に会社は操業短縮もしくは休みになる。一般の家庭は停電が次から次へ起きてくる。私が聞いておりますところでは、それが何十日続いても、そのために勤労者は工場は休みになる、家へ帰っても電灯がつかない。ろうそくへ火をつけて、それで湯を沸かして、ゆで卵をつくって晩御飯を食べる。それでもイギリスの国民はじっと耐えて、今日までストライキを炭鉱の労働者がやっても、それは部分的には、ある程度いやな顔はするかもしれませんけれども、やはり労働者は連帯して、炭鉱の労働者の賃金が上がることは、やがて自分らにもはね返ってくるんだという国民的な理解があるから、それでもじっとがまんをする。  もちろん歴史の古い国ですし、産業革命以来、労使基本的な権利が確立をされている国ですから、日本のように戦後ストライキ権ができたという国ではありませんから歴史は違いますが、私はある意味で、これはやはり学ばなければならぬ点がずいぶんある、大きな参考にしていただきたいと思うのでありますが、この点は大臣いかがでしょう。
  128. 藤井勝志

    藤井国務大臣 森井委員の私への助言、激励を込めての御発言でございますが、どうもイギリスがそうやっているから大いに学べという、これはむしろ不幸な気の毒な事柄であって、なぜ、そうなったかということの実情について、せっかくのお話ですから私はよく実情を調べてみたいと思いますけれども先ほども、ちょっと御答弁いたしましたように、アメリカも西ドイツもスイス、フランス、これは公共企業体には現在スト権を与えておらない。イギリス、イタリーは与えておる。そこら辺において、果たしてイギリス国民が幸せであるかどうかということについては慎重に考えなければならぬ、このように思うわけでございまして、ろうそくをともして、がまんして、ベースアップによって、いずれはよくなるという、こういった御理解の御発言でございますけれども、果たして、それだけに割り切って、これを他山の石とすべきかどうか。せっかくの御提言でありますから私も十分勉強はさせていただきます。  ただ私は労働大臣になりまして、いささか戸惑うことは、スト権を与えられている民間の企業はストライキをしておらない。スト権を与えられておらない公共企業体が違法ストをやっているということは、いかにも世の中が逆しまではないかというふうな感じがする。私が昭和二十二年から三年ごろ労働委員長をしておりましたとき、これはやはりストをやる方がもっともであって、経営者の労働組合に対する対応の仕方が未熟であるということを体験した例もしばしばございます。しかし、最近では経営者の方も民間の企業は対応の仕方を相当熟達したと申しますか、同時に労働組合は組合で会社がつぶれれば元も子もなくなるという一つの歯どめがある。こういう点から私は労使関係が成熟してきているんではないか、このようにも思うわけでございまして、この問題は労働大臣としては一番大切な問題でありますから十分勉強さしていただきたい、このように思います。
  129. 森井忠良

    ○森井委員 民間のストライキがなくて、言うなれば公労協にあるというのは、大臣、これはしばしば指摘をされておりますようにストライキを避ける方法はあっても政府なり当局が示さない。とにかくストライキをしなければやむを得ないような形の経過がずっとあるんですね。結論は恐らく大臣とすれ違いになりますから多くは申し上げませんが、先ほど来指摘されておりましたように、たとえばゼロ回答がどうして続くのか。そして結果としては、ことしも五%台で最終的に妥結をすることになるわけですけれども、やはり当事者能力との関係で、たとえば国鉄なら国鉄の労使、電電公社なら電電公社の労使が団体交渉をやっておりましても、もう話をすることはありません、あとは政府へ言ってくれ、こういう形になってしまうのです。多くは申し上げませんけれども。それではちょうど、くつの裏から足をかくようなものでして、なかなか思うようにかゆさがとまらないものですから、やむを得ずストライキをした経過もあります。これはすれ違いだと思いますし、大臣のいまの御答弁、私は納得するとは申し上げませんけれども、ただ先ほど申し上げましたスト権の認識だけは、ぜひともひとつ、もう一回この際洗い直して、労働行政としてどうすべきかということを、イギリスの例は一例で申し上げたわけでありまして参考になるかならないか別にいたしまして、私は参考になると思いますが、ぜひ御留意をいただきたいと思うのです。  そこで、ちょっと大臣の発言で、もう一つ気になりますのは、官公労働者について何カ国か、いまスト権の有無につきまして例をお挙げになりました。いわゆる先進工業国と言われております諸外国ですね。そうしますと、いま大事なところで、たとえばドイツの例なんかお挙げになりませんでした。挙げましたか。日本とドイツというのは、GNPが本当にもうどっこいどっこいなのでありますが、もうこの点については答弁要りません。誤解なら私が解きますけれども、大臣の御答弁によりますと、これはことしの二月、労働大臣の所信表明に対します私の質問の中で、できればスト権の問題については、ことしじゅうには決着をつけたいという答弁が入っているんです。覚えていらっしゃるかどうか知りませんけれども、ことしの社会労働委員会におきます私の質問です。そのときに、約束ではありませんよ、ことしじゅうには何とか解決できるように努力したいという言葉が入っているんです。これは議事録を見れば明らかです。  そういたしますと、まだ、そういう意味で逼迫した時間じゃないと思うのでありますが、おっしゃったように外国をごらんになったんでしょうけれども国会もありますし大急ぎで帰ってこられたという感じが私はあると思うのですよ。この際、スト権を議論をなさいます場合に、大臣は何もかも全部知ったよとおっしゃらずに、もう一回お挙げになりました幾つかの国の法制、これも重要な参考になさる必要が私はあると思うのです。この点どうですか、諸外国の例は参考にする、これはいいでしょう。
  130. 藤井勝志

    藤井国務大臣 公共企業体のスト権の状況、欧米先進国の事情の勉強は御指摘のとおり十分したいと思います。
  131. 森井忠良

    ○森井委員 基本的な問題で時間をとり過ぎてもいけませんから、それじゃ次に具体的な御質問を申し上げたいと思います。  先ほど官房長官の御答弁によりますと、基本問題会議の性格について、これは法律に基づくものではなくて、あくまでも任意なものだという答弁がありました。これはそのとおりですね。
  132. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 先ほど申し上げましたとおりでございます。
  133. 森井忠良

    ○森井委員 たとえば継続審議になりましたが健康保険法の改正案、これは二つの審議会の議を経て国会提出される、こうなっているわけですね。これは絶対に諮問しなければならないものですね。所管は違いますので答弁はしにくいと思いますから言いっ放しにしておきますが。それと比べると、今度の基本問題会議の答申というのは法律的には雲泥の差がある。つまり強弱では、健康保険法の改正案に関する社会保障制度審議会ほか一つの審議会の答申、これはもう絶対に聞かなければなりませんが、事スト権に関しては、基本問題会議意見書というのは、そういう意味では拘束力のない、弱いものだと私は理解せざるを得ないのですが、この点いかがでしょうか。
  134. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 強い、弱いということにつきましては私の方から、ただいま、お答えするということは考えておりませんが、おっしゃるとおり性格において違いがあるであろうことは、そのとおりだと考えております。
  135. 森井忠良

    ○森井委員 スト権を議論する場合に、法的には基本問題会議意見を聞かなければならぬということはないのでしょう。
  136. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 法律上そういうことが定まっているという問題はございません。
  137. 森井忠良

    ○森井委員 私は、今度の意見書を見まして、まず気がつくことは、経営形態とか、あるいは当事者能力とか法令とか分かれて審議をなさったようでありますが、スト権に関する部分については、これは中山座長以下十二人の委員スト権に関する部分の意見をお書きになった。そうですか。
  138. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 三懇談会の報告書を踏まえまして、基本権問題の基本問題会議意見を取りまとめるに当たりましては、ただいま、おっしゃいましたように中山座長以下十二名の委員の方、座長、部会長を務めておられた委員の方に御審議を願っているわけでございます。
  139. 森井忠良

    ○森井委員 その中で中山座長意見というのは、どちらかというと少数意見だというふうに私は理解をしておりますが、これは伊豫田審議官、このスト権に関する部分については、そのように理解してよろしいですか、私の場合は新聞で見ただけですけれども
  140. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 争議権問題に関連をいたします取りまとめに関連いたしましては、会議を非公開でやっております。したがいまして、私は事務局の次長として同席はしておりましたけれども、この席でその会議の内容につきまして御答弁申し上げるのも必ずしも適当でないと思いますので、御遠慮させていただきたい、このように考えております。
  141. 森井忠良

    ○森井委員 十二人のスト権に関する部分の意見書をおまとめになった方、ざっと経歴を調べてみますと、私、率直なところ余りいい感じはしないのです。きわめて偏っております。たとえば労働代表なんというのは一人も入っていないわけですから、もちろん三者構成にはなっていない。見ますと、氏名は言いませんけれども、三井金属鉱業の社長、関西電力の相談役、日本ハウジングローン社長、太陽神戸銀行会長、王子製紙社長、元法制局長官等々でありまして、私が先ほど基本的な問題で申し上げましたけれども労使の問題については少なくとも労働省は公平にやってほしいという、その願いからすれば、およそ、このスト権に関する部分の合議をなさったメンバーの方々たは、どちらかというと、労使ということになれば使の方の立場の方ばかり。大学の先生が一人二人いらっしゃいますけれども、あとは全部それなんです。  国民の側から見て、これが基本問題会議の答申でございますとお出しになっても、そして新聞によりますと、きょうの答弁もそうでしたけれども基本的に尊重する。基本的かどうか知りませんが、とにかくあの意見書については尊重しますという発言がなされていますが、私は、いま申し上げましたような立場からするなら、しかも先ほど伊豫田審議官会議は非公開だから明らかにできないと言われましたけれども、あの新聞記者会見中山座長の御発言は、節々に、やはり自分は少数意見であったということを、あたかもおっしゃるようにとれる節がずいぶん出ておりますね、新聞で見る限り。これはもう新聞は公開されておるわけです。しかも中山さんが御発言になったことなんです。そうしますと少数意見のもとに中山座長もずいぶん御苦労なさった。専門懇の意見書と今回の基本問題会議意見書を比べてみて御自分で評価をなさっておられましたけれども、前に向いて、スト権にある程度展望を持たせるように努力した、これが精一ぱいだ、こういうふうにおっしゃっている。私はそこで、いま申し上げましたように、せっかく出された答申ですけれども、国民的な合意を得る説得力のある委員の構成メンバーではなかった。全部で九十何人という答弁がありましたけれども、このスト権に関する部分をお書きになった方々については、少なくとも労使の側から見れば使の方にウエートを置く人たちばかりと言っては語弊がありますけれども、その方が圧倒的に多い中で書かれた、このことは認めますか。
  142. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 三者構成になっておりません理由につきましては、すでに先ほど答弁さしていただいたところでございます。それから確かに、おっしゃいますようにメンバーの構成上、現在産業界に関係しておられる方が多いことも事実でございますが、いろいろの分け方があると思いますが、私の方でも一応どういうバランスになっているかということは検討さしていただいておりますが、学界が三名、官界出身者が四名、言論界が一名、産業界が四名、もちろん、この中におきましては重複しているものもございますので、こればかりが分類のやり方ではございませんが、このような考え方もあるかと考えております。  また、最終的に十二名の委員で取りまとめを行っていただくことになりました経緯につきましては、確かに会議発足の当初に、ここまではっきり決まっていたわけではございません。先ほど御説明申し上げましたように、三懇談会報告書がおおむねまとまりそうになった段階におきまして、その取りまとめをどうするかということを、それぞれの部会等にもお諮りいたしまして、四座長にお任せ願いまして、四座長の御検討の結果、それでは座長、部会長を務めた者十二名、これによって取りまとめを行おうじゃないかというふうにして定まったものと承知しております。
  143. 森井忠良

    ○森井委員 こういうことが書いてあるんですね。答申の一つの部分をちょっと申し上げますと「労使関係正常化こそが本来の課題であるとの認識のうえに立って」云々とありまして「使用者及び政府に対しては、労働組合のもつ社会的機能のより深い理解の下に」と、「社会的機能」という言葉が使ってあるのですね。これはどういう意味ですか。
  144. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 一つ一つの言葉につきまして、それの持つ意味あるいは、どういう趣旨で十二名の委員の方が使われたかということを細かく私の方でも申し上げる立場にございませんし、また、できませんが、「社会的機能」という言葉は、社会的役割りときわめて近いもの、あるいは同じもの、こういうふうな御議論があったことを記憶しております。
  145. 森井忠良

    ○森井委員 これは六月二十日付の朝日新聞でありますけれども、そのことについて、こう書いてある。中山さんは、これは「労働組合の権利を尊重するという意味だが、」つまり基本的権利だ、労働基本権だ、こう言っている。ただ、権利という言葉を使うと基本的権利であるスト権が当然認められるということになるので、誤解を避けるため「社会的機能」という言葉を使った、あとは政府判断に任せている、こう朝日新聞には報道されています。  労働基本権、これは三つ大きな権利がありますけれども、いずれにいたしましても、これをわざわざ「社会的機能」と書かなければならなかったところは、労働法学者が聞いたら、ちょっと首をかしげるのじゃないかと思うのです。労働基本権とずばっと書けばいいところを、これは使用者なり政府が労働組合の「社会的機能」を認識をしろ、こういう意味なんですね。だからスト権を認める、認めないでなくて、労働基本権というのは憲法にちゃんと書いてあるのです。公共の福祉に関する部分で、それは議論がありますよ。あるんですけれども基本的な認識ということになれば労働基本権と書いてもいいところを、わざわざ、こういうふうに薄めて労働組合の「社会的機能」というふうな、私も法律を少し学生時代にかじっておりますけれども、何といいますか、きわめていびつな表現が使ってあるのです。ここまで遠慮しなければならないのかということになると、きわめて問題だと私は思う。これはやはり労働基本権と私は理解をするが、これはどなたからでもいいです。間違っておるかどうかだけ明らかにしていただきたい。
  146. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 私も、中山先生が会見をなさいましたときの御発言を、そばで聞いておりました。その点につきまして、ただいまお読みになりました新聞記事そのままであるかどうかについては、私、記憶が定かでございませんが、「社会的機能」というものは労働者の権利を言うのだという趣旨の御発言があったことは記憶しております。ただ、ここに書いてある「社会的機能」という言葉をどのように解釈するか、これをイコール労働基本権というふうに解釈するか否かにつきましては、いろいろの解釈の仕方もございますと思いますが、私、それを直ちに、そのものであるというふうなことで解釈し得るものかどうかについては何とも申し上げられないというのが正直のところでございます。
  147. 森井忠良

    ○森井委員 答申をできるまで手伝った人が、そういうふうな答弁しかできないようなことでは——だから非公開の問題がありますが、出てきた文章の解釈が、じゃあ、これはいつ明確になるわけですか。「社会的機能」とは労働基本権かどうか。私は労働基本権じゃないか、こう言っているのです。中山座長記者会見では、この新聞記事が正しければ、そう言っておられる。あえて、こだわりませんけれども、答申そのものを、私、率直なところ信用できないという感じもありますけれども、しかし、これはいつか明らかにされるのですか。
  148. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 「社会的機能」を労働基本権あるいは労働者の権利というふうに、確かに中山先生はおっしゃっておりますが、これは個人的な見解である、あるいは私見として、あらかじめお断わりの上、申されたお言葉でございますので、それを直ちに、私、肯定、否定いずれにしても、することはできないと考えておりますが、一般的に考えれば「社会的機能」は労働者の権利というものを含めた、もっと大きな意味を持っているのではないか、そのように考えております。
  149. 森井忠良

    ○森井委員 いずれにいたしましても定かにはなりませんから、受け取った政府が適当に解釈をいたしますということだろうと思うのです。  もう一つ、この意見書の中でお伺いしたいのでありますが、公共企業体の当局、それと労働組合つまり公労協、双方とも、この基本問題会議では出席をして最終的に意見を述べました。これはどの部分に入っておるのでしょうか。全く参酌されていないのか、どの部分に入っておるのか、明らかにしていただきたい。
  150. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 御意見は、争議権並びに経営形態並びに当事者並びに法令関係、各方面にわたりまして関係される組合すべて、及び公共企業体の当局から御意見を承っております。ただ非常に多岐にわたっておりますので、私、どこの部分がどうということを、ただいま正確に申し上げるだけの資料を持ち合わせておりません。ただ事の経緯から申しまして、十分多くの委員が御出席になり、その意見を聞かれた上での御結論と考えておりますものですから、その範囲において十分参考にされたものと信じております。
  151. 森井忠良

    ○森井委員 参考にはするが、後でどうなったのですか。そのまま抹殺……。  具体的に申し上げますと、各当局も経営形態は変えるなということを明確に話しておりますね。当事者能力はもっと与えよ、これも入っておったと思うのです。それから、この部分は述べたかどうかは別にいたしまして、国会で明らかになっておるわけでありますが、スト権についても条件つきの付与という形で、これもまた明らかにされておる。そして公労協も経営形態等については同じような意見を述べておる。私も、この意見書を一読をさせていただきましたけれども、これは考慮するどころか、一言一句、全く入っていない。そして追い打ちをかけるように労使正常化をもっとやれ。私はもともと無理があると思いますよ。先ほど申し上げました十二人のスト権の問題の会議をお持ちになった方々、労働組合の運動をやった方があるのでしょうか。まことに言葉は失礼でありますけれども学者先生と経営者、現に第一線で苦労しながら労使問題と取り組んでおられる皆さんとは思えない。その意味では全部素人です。公共企業体の労使関係という形になれば。そういう意味で私は、こんな答申をああそうですかと言って認めるわけにいかない。これは答弁をもらっても仕方がありませんから、これ以上申し上げませんが、もう一つ気がつきますのは、最近、単にスト権だけではありませんが、日本の国の政治を考える場合に国際比較というものが当然出てまいります。先ほども大臣にも私、御注文申し上げましたけれども、この国際的な認識に立つスト権の議論というのがなされたのかどうなのか、これはいかがですか。
  152. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 取りまとめの部会におきましても、あるいは争議権の問題一般についてのヒヤリング等を行います場合においても、国際的な問題はやはり一応議論の対象とされております。
  153. 森井忠良

    ○森井委員 これは今度は読売新聞です。新聞というのは仕方がないのですね、私ども中山さんがお話しになるところに立ち会ったわけじゃありませんから新聞を信用しています。そういうことで今度は読売新聞のやはり二十日付の記事をちょっと見ますと、こういう言葉があるのですね。中山談話でありますけれども「日本の公企体に準ずる諸外国の事業体はスト権が与えられており、ILOでは公務員のスト権問題さえ議論が起こっているのが世界の現状だ。今後、日本は特別だという言い訳はだんだん難しくなるのではないか。必要な制限はやってでもスト権を持てるよう考えておくのもいいのではないか。」これは読売新聞の記事であります。ここいらにも、せっかくの座長さんではありましたけれども、きわめて少数意見で御苦労をなさったということが言えると私は思うのです。  特に今日円高で、もう二百十円割れという現状にまでなってまいりました。これが要するに日本の貿易の黒字という問題で非常に大きな国際的な反感を呼んでおるわけですけれども、ここでやはりスト権を否認をなさるような形の一連の動きが出てくるということは、直接ではないにしても世界のひんしゅくを買いますし、ひいては、やはり日本の経済問題にも発展しかねない。貿易収支の黒字が円高に関係するとすれば、ここで、まだ日本はあれだけ戦後三十年に余って議論されておるスト権まで否認をするというふうな国かということになりますと、私は経済的にも、やはりかなり問題が出てくると思うわけです。その意味では、いま時期といたしましても、申し上げましたように貿易収支を初めといたしまして非常に世界の注目を浴びているわけでありますから、この辺にも、やはり慎重な配慮をする必要があるのではないか。労働大臣いかがでしょうか。
  154. 藤井勝志

    藤井国務大臣 この問題については、先ほど私もお答えをし、労政局長からもお答えをいたしましたが、いわゆる公務条約、いまILOで審議中でございますけれども、その条約審議の過程において、スト権問題には関連しない、これを扱っていないという確認が審議中の委員会においてなされた、これは私がジュネーブを立ってから後の話でありますが、そういう情報を、私はこちらへ帰りまして得ておるわけでございますので、中山先生の御指摘は、ちょっとその点は実情と違っておる、こういうふうに理解いたしております。
  155. 森井忠良

    ○森井委員 それは私は反対だと思うのですがね。いま申し上げましたように貿易の黒字で、ある意味での国際的な攻撃をいま受けておるわけでありますが、それにスト権まで否認をすれば、さらに経済的にも攻撃を受けるという、そのことを私は御指摘申し上げておるわけですから、ILOがどう扱うかということと別だと私は思うのです。  時間がありませんから締めくくりをさせていただきたいと思うのでありますが、労働大臣基本問題会議意見書を出して、これで解散、こういう形になるわけですね。意見書を聞くか聞かないかということは、政府のこれからの対応にかかってくると思うのでありますが、伝えられるところでは、尊重する、こうなっております。片方において例の十二月二十七日の政労交渉、ここでは「政府側はスト権問題について、七四春闘合意五項目の趣旨を踏まえ、結論を出す。その場合組合の意見を聞き、十分に参考にして問題の解決を図る。」七四春闘口頭合意五項目では、「三公社五現業等の争議権等及び当事者能力強化の問題の解決に努力する。」これは「五十年秋ごろまで」こうなっておるわけですけれども、これも政労交渉では労働組合とのかたい約束ですね。これからも頻繁に話し合いをしろということは意見書の中にも出ておりますし、きのうも政労交渉をお持ちになったようですけれども、これは当然これからやはり労働側との話し合いの大きな場になると思うのです。それと今回の意見書尊重という問題と、これはどちらにウエートがかかるのでしょうか。やはり労働組合は、降ってわいたようなことでなくて、これだけ、かたい約束がなされておるわけですから、こちらの意見も聞かなければならない。そうすると労働側の意見というのは明らかに意見書と矛盾するわけです。意見書は否認です。労働側はスト権を認めよというわけですから食い違ってくるわけですけれども、これは一体どちらをおとりになるのか明らかにしていただきたいと思う。
  156. 藤井勝志

    藤井国務大臣 このたびの意見書は、政府から諮問を依頼いたしまして、その道の経験豊かな、学識経験のある方々が慎重審議されて出されたわけでございますから、当然この意見書尊重するというのが基本でなければならない、このように思います。同時に、十二月二十七日の政労交渉においても労働組合との話し合いということは、その後もしばしば行われたわけでございまして、私もその席には立ち会っております。今後もいろいろな問題、これから労使正常化という問題をめぐりまして、先ほどもお話を申し上げたような環境づくりのために、ひとつ大いに努力をいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  157. 森井忠良

    ○森井委員 最後に、もう基本問題会議も解散、そして関係閣僚協議会ですか、ここでの議論をなさるわけですが、私はこの際、国会で、たとえば健康保険、医療制度に関して小委員会が本委員会にできましたけれども、本委員会で扱うかどうかはもちろん別にいたしまして、それぞれに公制審でありますとか、あるいは専門懇でありますとか基本問題会議でありますとか、そういった言うなれば外部の声も大事かもしれませんが、もうここまで来たのですから、この際、国民の代表の声をもろに反映する国会で各党が英知を集めて十分議論をする、そういう意味での国会での審議をする場、仮にこれを特別委員会と申し上げるならば特別委員会をつくってやった方がいいのじゃないかと私ども考えておるわけでありますが、もし、そういう事態になれば労働大臣のお考えはどうですか。
  158. 藤井勝志

    藤井国務大臣 もし、そういう結論が出れば、労働大臣はその委員会に喜んで参画させていただき、いろいろ意見を述べることは当然でありますけれども、この特別委員会を設けるかどうかということ、これは国会自体が決定をされる問題でございまして、行政府の一員である労働大臣が、この場において云々すべき性質のものではない、このように考えております。
  159. 森井忠良

    ○森井委員 つくることには賛成ですか、反対ですか。それも言えませんか。
  160. 藤井勝志

    藤井国務大臣 労働大臣という立場では、私はこの委員会のこの場においてお答えをすることは差し控えさせていただきたい、このように思います。
  161. 森井忠良

    ○森井委員 終わります。
  162. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 次に、草川昭三君。
  163. 草川昭三

    ○草川委員 草川でございますが、先ほど中山先生のいわゆるILOにおける公務員のストライキ権問題について何か誤解の情報があるようなことを、ちらっと大臣が言われたのですが、私は、いまの森井さんとのやりとりを余り詳しく正確につかんでいないので問題があると思うのですが、もし中山先生がILO総会の公務員問題の論議を間違って聞き取られて発言されたということになると非常に重要だと思いますし、これは一度、別の機会に事実経過だけはやはり正確にお伝え願いたいと思うのです。ただ中山先生に、たとえば誤解があったとしても、今日のヨーロッパの動きなり世界の大勢というものは明らかに先生が御理解なさったような方向に問題がいっておる。たとえばILO会議で、そのことが大臣が言われたような点があったとしても、大勢としては私はそういう方向ではないだろうか、こう思っておるわけです。そういう立場から、ひとつもう一回、午前中にもお尋ねしたわけでございますが今度は大臣から、この基本問題会議の後で中山先生が発言なさったことは非常に重要だと思うので、御見解を賜りたいわけであります。  その前に、大臣は三月二十五日の政労交渉スト権付与については非常に好意的な発言をしてみえる。過日の社会労働委員会で私は、いまも、その態度についてお変わりございませんかという質問をしたら、変わりがないというお答えがございました。そういう立場の延長線で、この中山発言の重みというものを理解いたしますと、中山さんの御発言は、実は答申案の中では、スト権はいまはだめだとしても将来はあり得るのかという肝心な点が、意見書の表現の中にははっきりしていない。それを中山先生は記者会見において意見書の注釈という形で玉虫色の点を明らかにしようとなさったのではないだろうか。こういう点で私は大変重要な発言だと思うのです。そこで、条件つき付与ということになると思うのですけれども中山発言についての藤井労働大臣の御見解を賜りたい、こう思います。
  164. 藤井勝志

    藤井国務大臣 中山座長代表の意見書発表に当たっての御見解の表明というのは、座長代表の持たれておる豊かな経験と労働問題の権威者といった内容からいたしまして、私は非常に示唆に富んだ見識である、見解であるというふうに受けとめております。特に、私見としてお述べになりました内容につきまして、今後われわれがスト権問題を取り扱うに当たって非常に重要な参考になるべき御意見である、私はこのように理解をいたしておるわけでございます。
  165. 草川昭三

    ○草川委員 では、もう一回前に戻りますけれども、ことしの三月二十五日に政労交渉が行われたときに、大臣は、ストライキ、処分またストライキという、この悪循環を断ちたい。何とか一つの決着をつけたいということを言われておみえになるわけですが、この決着ということは、いずれにしても現状を変えなければ、つかぬわけであります。そういった意味で、いまの御答弁だと、大変参考になる、示唆に富むという程度の御発言でございました。  では、示唆に富むといま大臣はお考えになったわけですが、あしたの会議で、その示唆に富んだ考え方を、どのように御発言なされるのですか。
  166. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は実は、十九日のあの意見書の内容を海外から帰りました直後に初めて拝見をしたわけでございます。実は私がかつて、スト処分スト、この悪循環は長年の労働行政のいわばがんと申しますか懸案である、これには何とかして、ひとつ終止符を打ちたいという念願、悲願を持っておるという気持ちを申し上げたわけでございますけれども、私自身、その後の春闘そのほかの体験を通じまして、やはり国民的世論の動向といったものを踏まえますと、この意見書結論と、同時に中山座長代表の私見を含めてのお考えといったものを考え合わせて今後に対処しなければならぬ。決着をつけたいというのは、私は依然として自分の悲願として持っておりますけれども、そう簡単に問題が片づくような性格のものではない。これはやはり世論とともに、また相手のある労使関係の現実がどう動くかといった問題を踏まえて対応しなければならない重大問題であり、それだけに、また慎重に、これに対処しなければならぬ、このように考えておるわけでございます。
  167. 草川昭三

    ○草川委員 そういう程度のお考えなら、あしたの閣僚懇ですか、関係閣僚会議での御発言は、労働省としての前向きに将来の展望をした御発言になるとは、ちょっとうかがえないわけであります。  非常に気になりますのは、大臣も、ことしの春闘で大変御苦労なすったことは事実だと思うのですけれども、片や公労協は戦後三十年間の苦悩というものがあるわけであります。     〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 大臣は春闘に対してわずか一回の御経験だ。だから、この歴史の重みの中から労働界の方々がいろいろな行動をとってみえるということを、将来の展望を含めて包容しませんと、一回の経験によって後退をするような態度があっては相ならぬ、こう思うわけでありまして、その点はまさしく労働行政という立場ですから、他の閣僚と一歩違うところがあると私は思う。その点は、あすの御発言は将来展望を含めた、あるべき姿として、中山さんが言外に含められた精神というものをくんでいただいて、ひとつ、これを補完をしていただきたいということを申し上げておきたいと思うわけであります。  第二番目の問題で、今度の基本問題会議意見書では、スト権付与については、いわゆる立法政策の問題だというふうに本質がすりかわってきておるわけです。これは私は純粋の労働法上の立場から、今後のために、ひとつ労働省としての見解をお聞かせ願いたいと思うのでありますけれども、いわゆるスト権というのは憲法上の労働基本権ではなくて立法政策上の問題だと労働省の関係当局も思ってみえるのかどうか、それをひとつお伺いしたいと思います。
  168. 北川俊夫

    ○北川説明員 労働三権につきましては憲法二十八条で保障されておる権利でございます。そういう意味では憲法上の権利ということは間違いないわけであります。ただ二十八条で保障されておる労働三権につきましても、公共の福祉あるいは財政民主主義、そういう観点から制約を受け得る。したがって憲法二十八条で保障されておるから、すべての場合にスト権は制約ができないのだ、不可侵の権利である、こういうことではなくて、公共の福祉とのバランスあるいは財政民主主義との調和、そういうものを考えて立法政策の問題として、そのときの世論、社会情勢等を勘案して解決すべきだというのが、この基本問題会議意見立法政策上の問題という指摘ではないかと思います。その点につきましては、すでに先般出ました名古屋中郵の最高裁の判例でも、そのとおりでございます。労働省としても全く同意見でございます。
  169. 草川昭三

    ○草川委員 私は、この一連の、二回目、三回目というような形で肩透かしを食っている労働側の立場から言うと、事実経過はかなり違うと思うのですよ。いろいろな審議会の中でも、労働問題を治安対策上と位置づけられて、いろいろと御発言をなさってみえる方もおみえになるわけであります。だから前半は、私はいま北川局長がおっしゃった立場でいいと思うのです。ところが、いまの御答弁の中でも後半になって、立法政策上というふうに非常にすりかわってくるのです。私は、いわゆる公共的な立場から言うならば、憲法の範囲内における、いろいろな意味での制約は当然あっていいと思うのです。いわゆる条件つきスト権付与という形が、そこで出てくると思うのです。だから、そこで全く問題がすりかわった形で立法政策の問題だということになってまいりますと、労働基本権というものが、これは他の労働組合の場合でも、この問題が正しく評価されない点があるのではないだろうか、こう思います。  そこで私は、ここで労働省に電気事業のストライキ規制法の問題をちょっと問うてみたいわけであります。  御存じのとおり、これは昨年の十一月二日でございますが、労政局長通達というのがあります。どういう通達かといいますと、電気事業におけるストライキ規制法というのがあるわけですが、ストライキ規制法の目的というものは、本来、電力の供給維持にあり、争議行為の具体的な制限にあるのではない。もっと具体的に言いますと、争議行為によって電気の正常な供給に直接に障害が生ずる可能性がある場合であっても、たとえば停電ストライキの可能性がある場合であっても、あらかじめ関係労使間で十分の協定がなされて、それに伴う措置が行われる場合にあっては違法行為ではないという新しい解釈が、電気事業法に関係するストライキ規制法について出ておるわけです。一体どういう意思で電気事業法の場合に労政局長通達が出ておったのかということを、後からまた少し発言をしたいと思いますが、局長の答弁をお願いしたいと思います。
  170. 北川俊夫

    ○北川説明員 いま御指摘の労政局長通達は、実はスト規制法の運用と問題点ということで昭和四十九年以来スト規制法問題調査会でいろいろ御検討いただいたわけでございますが、昭和二十八年にスト規制法を制定して以来、その後の運用状況あるいは電気事業の社会との調和の問題等を考えますと、現時点スト規制法は存続すべきである、こういう意見書をいただいておるわけでございますが、それとあわせまして、意見書の中では、電気事業労使関係トップレベルにおける意思の疎通、それとともに、二十八年に法律を制定しましたときに、労働次官通達で、その解釈内容を通達をいたしておるわけでございますけれども、以来約二十五年を経まして、電気事業の供給の体制につきましても、いろいろ技術変化その他、事情の変更がございますので、その辺のことを明確にすべしということで通達を出したわけでございます。  先生御指摘のように通達の中には、たとえば保安協定というものが労使の間で十分につくられておる場合には、たとえ、その業務の停止が、そういう保安協定がなければ正常な供給の阻害を派生するような行為であっても、それはスト規制法違反の行為にはならないのだ等々の解釈を示しておりますけれども、これは制定当時ないしは、そのときの次官通達の中身を敷衍したものでございまして、解釈の変更をいたしたものではない、こういうことでございます。
  171. 草川昭三

    ○草川委員 解釈の変更ではなくて一つの考え方として、労政局長通達では、電源ストライキについて、ある程度の制約を外さないと、たとえば電気を送るという条件さえあるならば、一方的にあらゆる規制を課するということは労使にとって不均衡ではないだろうか、そういう立場があると思うのです。ただ、先ほどおっしゃったように二十五年もたっておるわけですから、電気産業の労使関係は一定の安定状況があるわけですし、十分、労働側の意見を聞きながら、電源さえ確保してくれるならばという前提があるわけですから、そういうような通達になってきて、基本的な権利は権利として、労使双方の立場、いわゆる労働者側というものは使用者側に対応するならば力が弱いわけですから、そういうものを十分配慮をしながら考えていこうという態度があると思うのです。  また、公労協関係の公務員等の方々の立場に立ってみると、逆の意味で、どうしても戦後三十年間にわたって一方的に基本的な権利というのは奪われてみえるわけでありますから、そういうものを、あらゆる機会に回復しようとなすってみえる。そういうものを考えていきますと、片方では、一つの労使関係が安定してきたから労使の力関係というものをもう一遍見直してあげようじゃないかということが言外に、この局長通達の中にも出ておる。ところが片一方の方では、全然そういうことを考えられずに、どちらかと言えば治安対策上のような発想というものが非常に露骨に出てくる。そういうふうに、一つの同じ労働行政を比べて、一種のひがみが片一方にはあるかもわかりませんけれども、差別的な発想というものが労働行政の中にあるのではないだろうか、こう思うのですが、その点はどうでしょうか。
  172. 北川俊夫

    ○北川説明員 繰り返して申し上げますけれども、昨年の電気スト規制法についての労政局長通達が、従来の解釈を変更いたしまして合法性の範囲を広げたということはございません。むしろ、いまの二十五年たちました情勢に応じての適正な解釈をしたということで、従来と同じ内容の通達、運用ということを考えております。  それからなお、電気事業の労使関係と公労協の労使関係について、私は先生にぜひ御記憶いただきたいのは、電気事業の場合には、停電ストを禁止をしておるというようなことのほかに、事務的な部門ではストライキ権を与えておるという点がございますけれども、送電についてのスト規制に対応する代償措置というのは何らないわけでございます。しかし、三公社五現業の職員につきましては、御承知のように公労委制度あるいは特に強制仲裁制度というものがございまして、労使で紛争が解決しない場合には、スト権というようなものがなくても公正なる第三者によって適正な仲裁が行われる。現に、その結果、三公五現の職員の給与水準というのは、一部民間からは、むしろ親方日の丸だのに高過ぎるのじゃないか、合理化もやっておらぬではないかという批判があるぐらいに、このことは私、正しいとは思いませんけれども、一つの例として申し上げれば、そのように適正な労働条件の確保については万全を期しておる、代償措置については十分なことが行われておるということを御記憶願いたいと思います。
  173. 草川昭三

    ○草川委員 いま、おっしゃられたような公正な第三者の仲裁が正しく行われ、あるいは当事者能力というものがぴしっとしておるなら今日のような労使関係というのは生まれなかったと私は思うのです。過去の幾多の例で苦い思いというのはあるわけですから、だからこうなったので、私どもストライキというのは反対であります。国民に迷惑がかかるようなことについては何とか解決をしてもらいたいという立場をいつも持っておるものであります。しかし、やっぱり労働者の基本的な権利というもの、あるいは実際まじめに働きながら相手側に常に裏切られていくというような労使関係があるならば、彼らは彼らなりとしての行動を起こすということも十分考えなければいかぬと思うのです。確かに、それは国民の立場から批判すべきものは批判をするわけでありますから労働界の方々も、ずいぶん運動というものは柔軟になってきておる、こう思うわけであります。ですから、そういう点では逆に、私は電気産業の方は本当に苦労したと思うのです。それはいま局長が言われるように全く何らの代償措置というのはないわけですから。それをみずからやっておみえになったから、私は逆に、このような局長通達が出たのだと思います。ただ、これを比べてみると、いま私が、こう二つを並べてみるから局長は、そういうつもりはない、こうおっしゃられるのですが、どちらかと言えば、まじめに労使関係を築き上げてみえた電労連関係の方々に、せめてなりの配慮として、このような局長通達が出たのだ、こう私は受けとめておるわけであります。  時間がないので最後の経営形態の移行についてお伺いをしますが、いろんな御質問がございますからダブらずにやります。  経営形態の移行については実際上、資産の引き受けだとか職員の身分変更だとか、いろんなむずかしい問題が現実的にはあると思うのです。一般の国民の方は、スト権の問題から派生をしてきて民営化問題が起きたと思ってない方がずいぶんいるのです。私どもにも、専売公社は本当に今度民営になるのですかなんという全くまじめな御質問なんか、ずいぶんあるのです。国鉄は本当にローカル線は民営になるのですかと言う。皆さんの方は、いろんな経過を知っておみえになりますから、率直なことを言って、そう、あした急に民営にはならぬ、こうおっしゃるわけですけれども、やっぱり、これだけ打ち出した以上、相当国民の間にも真剣な話題になると私は思うのです。これは労働大臣にお伺いをしたいわけですが、大臣、本当に民営化の実現見通しはあるとお考えになられますか。
  174. 藤井勝志

    藤井国務大臣 なかなかむずかしい問題でございまして、実は私も、この問題に対して、そう簡単に決着のつく問題とは思っておりません。ただ、明日、関係閣僚会議がございますし、みんなの意見を総合いたしまして私自身判断を決めたい。いまお尋ねになりまして、私が明快な答えができないことを、まことに残念に思います。
  175. 草川昭三

    ○草川委員 時間が来たので、これで終わりたいと思いますが、そう簡単にはいかないだろうという御答弁というのですか感想は、まさしくそのとおりだと思うのです。そういう立場から、あした、また御発言願いたいと思います。  以上で終わります。
  176. 木野晴夫

    木野委員長 次に、古寺宏君。
  177. 古寺宏

    ○古寺委員 新聞の報道によりますと、今回の意見書の作成の段階で何回も自民党に説明をいたしまして、逐次その了承を得ていたということが報道されておりますが、これは事実でございますか。
  178. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 政府といたしまして与党、自民党に対しまして基本問題会議の進展状況等を御説明いたしたことはございますが、ただいま御質問のありましたような逐次了解をとるというような事実では全くございませんので、そう申し上げたいと思います。
  179. 古寺宏

    ○古寺委員 了解をとるというよりも、内容を説明して了承を得ていた、こういうふうに報道されておりますが、事実でございますか。
  180. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 ただいま申し上げましたとおり、了承をとるというような事実はございません。
  181. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、新聞の報道は誤りでございますか。
  182. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 了承をとるというような事実はございません。
  183. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、説明をしただけということでございますか。
  184. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 そのとおりでございます。
  185. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、今回の意見書提出国会終了後までおくらせたのは国会軽視あるいは国会無視というふうにも言われておりますが、そういうことが意図的に行われたことはないというお答えがあろうかとは思いますが、そういうことが意図的に行われたと受け取られる面があるわけでございます。なぜ国会終了まで、この意見書提出がおくれたのか、その理由について承りたいと思います。
  186. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 基本問題会議が約二年前に発足いたしましたときに、当時、中山座長の御意見として、おおむね二年を目途として結論を取りまとめたいということで、自来、鋭意審議が進められたわけでございます。しかしながら、御承知のように九十七名に及ぶ委員並びに三懇談会、八部会という構成になっておりますので、若干ずつ日程がずれてきた問題もございまして、国会終了まで答申をおくらせるというような意図は全くございませんが、このような状態になって、十九日それがようやく提出されるという状況に立ち至った、このように承知しております。
  187. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、予算国会等におきまして政府の答弁では、大体五月をめどに、この意見書提出したいというお話だったわけでございますが、その予定が大幅に狂った、こう理解してよろしゅうございますか。
  188. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 二年を目途にして五、六月ということは二年前から申し続けておりましたが、最後の段階に至りまして、なかなか議論が尽くしませんで、このような状態になった、このように理解しております。
  189. 古寺宏

    ○古寺委員 それは自民党の了承を得るために、そのように作業がおくれたわけでございますか。
  190. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 そのような事実は全くございません。
  191. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、本意見書の趣旨また内容につきまして中山代表座長が記者会見で説明をなさっておられます。新聞の報道によりますと、いろいろと相違があるようでございますが、この記者会見で説明された内容について御説明をお願いしたいと思います。
  192. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 私も出席をしておりましたが、必ずしも全部を記憶しているわけではございませんし、また若干のメモがございますが、それも、ただいま用意しておるわけではございません。ただ新聞で若干ずつは違っておりますけれども、本日午前中より、この委員会でいろいろ御討議願っております。それらの点がおおむね中山座長がおっしゃったところのポイントか、このように考えております。
  193. 古寺宏

    ○古寺委員 審議官がお聞きした内容、御記憶にある内容について、お話しをしていただきたいと存じます。
  194. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 それでは記憶に基づいて御説明させていただきます。  まず一番最初に、これが私見であるとお断りになったことを記憶しております。  それから二番目には、これははなはだ、できが悪くて残念であるとおっしゃったのですが、その後で、そのできが悪いという理由は、政府に対して多くの裁量と申しますか判断と申しますか、そういう幅を与え過ぎた、そういう意味で、これを詰め切れなかったのが、できが悪いという意味である、このように解説をなさっておりますので、必ずしも全般にわたって自分のお気持ちに反するものであると言っておられるようには受け取れませんでした。  それから第三点でございますが、正常化労使間の問題の最終的課題である、ここにこの意見書のポイントがあるのだということを言われたことを記憶しております。  それから労使関係が改善されれば、そこにスト権付与の可能性があるんだという御表現だったと記憶しておりますが、可能性ということで言われておる、このように考えております。  それから経営形態労使関係の問題を吸収するきらいがあると言われたと記憶しておりますが、そういうふうなきらいのある、かつての専門懇意見書に比べて、今度は労使関係の方を重視した、あるいは直視した、こういうふうな御趣旨の御発言があったと記憶しております。  なお、質問に答えまして、しかし、まずスト権を与えることによって事態を改善する、こういう考え方までには私は踏み切れませんという御発言がありました。それから正常化につきまして、いかなるメルクマールを考えているのかという質問に対して、これは判断の問題である、メルクマールはない、このように言われております。  きわめて雑駁な記憶でございますけれども以上のとおりでございます。
  195. 古寺宏

    ○古寺委員 ただいまの御答弁にもございましたように中山代表座長は、スト権について将来に向かってふたをしたものではない、こういうふうに説明しておられますが、それは事実でございますか。
  196. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 そのような趣旨の御発言があったことを記憶しております。
  197. 古寺宏

    ○古寺委員 また、現時点ではスト権は付与できない、このように答申の中には書かれてあるわけでございますが、この現時点ということは、いつのことを指しているのでございますか。
  198. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 非常にむずかしい御質問だと思います。中山先生も、その点につきまして現時点がどういう言葉を意味するのかという御発言はございませんでした。  もし私の方の現時点はどう解釈するのかということが御質問の趣旨でございますならば、少なくとも、いまの瞬間を言っておるのではない。やはり、ある程度幅のある概念だとは思いますけれども、やはり現時点現時点としか、ただいま申しわけございませんが、この程度しかお答えができないことを残念に思っております。
  199. 古寺宏

    ○古寺委員 普通、労働省で現時点というふうに使う場合には、大体どういうことを指しているわけでございますか。
  200. 北川俊夫

    ○北川説明員 いま伊豫田審議官が答えましたように、非常にむずかしいあれでございまして、現時点について、従来の慣行として、どのくらいの期間というようなことで論議をしたこともございませんので、やはり常識的に、ある程度の期間を経た、そのぐらいのタームのことを言っておるのではないかと思っております。
  201. 古寺宏

    ○古寺委員 大臣は明日、この重大な答申書を基本にいたしまして、特に労働大臣の立場で関係閣僚会議にお臨みになる。この答申書をお読みになって、この現時点という問題についてはどのように解釈なさって明日は閣僚会議に御出席になるおつもりでございますか、承りたいと思います。
  202. 藤井勝志

    藤井国務大臣 先ほど両名の説明員からお答えをしたわけでございますが、私は先ほどお答えを申し上げましたように、スト処分ストという、この悪循環はできるだけ早く解決をして国民の期待にこたえたいというのが私の念願でございますから、ひとつ、できるだけ早い機会に決着がつくような方向で、私は私なりに明日の関係閣僚会議に臨みたい、このように思うわけでございます。  ただ私は、この意見書が出た内容からして、そう簡単に事は運ばぬぞという、こういう一部の心配もいたしております。一労働大臣が逆立ちしても、内閣全体の体制という、こういったこともありますし、政府・与党という、こういった関係もございますし、それをひっくるめて世論という、何よりも大切な世論というものを前提に考えた時分に、やはり慎重な対応をする必要がある。しかし、慎重ということは、いつまでもだらだらするという考えではございません。私は、ひたすら悪循環解決したい、解決する方向に向かって数歩でも前進をするような方向に努力をいたしたい、このように思いまして明日に対処したい。私は私なりの考えを目下求めておる最中でありまして、きょうの午前中から午後にかけての皆さん方の有益な御意見は十分踏まえて対応したい、このように思います。
  203. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、スト権付与については中山代表座長は、ふたをしたのではない、将来に希望を持っておられるような、希望を特たれるような御発言をなさっておられるわけでございますが、この中山座長の発言に対して、いわゆるスト権付与の将来展望について、労働大臣はどのようにお受けとめになっておられますか。
  204. 藤井勝志

    藤井国務大臣 中山座長は、しばしば申し上げておりますように労働問題に対しては深い見識と、また豊かな経験を持っておられる方でありまして、その座長が、二年がかりで取りまとめられまして、その取りまとめの発表に当たって、私見という前提ではございますけれども意見を出された、あの発言は、きわめて示唆に富んだ貴重な、今後参考にすべき意見である、このように理解をいたしております。
  205. 古寺宏

    ○古寺委員 大臣は、けさほどから違法スト処分、違法スト処分のこの悪循環を一日も早く断ち切って、そして労使関係正常化したいという御発言を何回かなさっておられるわけでございますが、明日は、関係閣僚会議において労働大臣としての御所見をお述べになろうかと存じますが、これらの悪循環を断ち切るための解消策、この問題について大臣は現在どのような対策をお考えになっているか、承りたいと思います。
  206. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は、何よりもやはり、この意見書尊重という前提を踏まえなければならぬと思いますが、その意見書の中に、三公社五現業の関係労使のいわゆる話し合いの場をつくる、こういったことの必要性を指摘をされておるわけでございますから、その御指摘にこたえて、そのような関係労使間の話し合う適切な措置を、ひとつ早急にとってもらう、こういったことを念頭に発言をいたしたい、このように思っております。
  207. 古寺宏

    ○古寺委員 時間ですから終わります。
  208. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大橋敏雄君。
  209. 大橋敏雄

    ○大橋委員 公共企業体等基本問題会議の答申をめぐりまして、けさからずっと論議をされているわけですが、また今後も続くわけでございますが、私も、今回の答申につきましては、その作業に当たられた各メンバーの努力と申しますか、労苦に対しましては敬意を表するものでございますが、スト権解決という立場から、これを見るとき、はなはだ遺憾でなりません。不満足であるということでございます。そして、きょうも論議されている中に、肝心かなめの問題に入りますと、あしたの関係閣僚会議でということで、みんな言葉が消えてしまうわけでございますが、少なくとも労働者の立場からは、全面的な付与というのは無理としましても、条件つき付与という姿で何らか具体的な答申内容になるであろうということは、偽らざる大きな期待であったと思います。しかしながら閣僚会議閣僚会議ということで、きょうも肩透かしを食っているわけでございますが、スト権を付与する最大の条件というものが、きょうの論議の中でずっと煮詰まってきたような感じがします。それは労使関係正常化にある、ここに全くすべて、しぼられたような感じがします。大臣も、労使関係正常化は、要するに人間関係というものは信頼関係が重大である、最大の問題だ。じゃ人間の信頼関係を生むものは一体何かということですね。これは余りおっしゃってないような気がするのですよ。大臣はここをどう考えられますか。
  210. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は、お互いが信頼し合うというか、これは話し合うということで、血を分けた親子でも話し合いが少なくなると離れ離れになる、こういうことでございますが、やはり労使関係といえども人間関係であり、人間関係信頼関係、その信頼関係はやはりフリーに話し合うという、円滑に話し合う場をつくる、こういったことを、もう一回原点に返って配慮すべきではないか、このように思うわけでございます。
  211. 大橋敏雄

    ○大橋委員 おっしゃるとおりだと思いますよ。話し合うこと、話し合って約束をしたならば、それを守ることだと思うのですよ。簡単な言い方かもしれませんが、一般的には約束を守り合うことによって初めて、その信頼関係が生まれるのですね。ところが、これまでの政府のやり方を見ていると、その信頼関係を生むどころか逆行させるようなことばかりだと私は思うのですね。奪われたスト権です。御承知のとおりですよ。奪われたスト権を取り戻すのは当然ですね。そういう立場で関係労働者は一生懸命、今日まで闘ってきたわけです。そして大臣の午前中の答弁でしたか、急がば回れだ、こうおっしゃいましたけれども、もう回り過ぎるほど回ってきているのですよ。  ILOのドライヤー勧告があったでしょう。これはスト権の一律禁止、大量処分は適当ではない。またILO八十七号条約の批准、これらを背景にしまして四十年の十一月に公務員制度審議会が発足したわけですね。答申が出るまで何年かかったと御理解なさっていますか。言うまでもなく八年かかったわけでしょう。この論議は官公労働者の基本権問題を検討したわけですね。私も、との国会に参りまして何回となく、この委員会スト権問題を質疑しました。その都度、公制審の答申を待つ、公制審の答申を待つのだと言ってはぐらかされてきました。私に言わせれば、こういうものはスト権解決を引き延ばそうとするための隠れみのでしかない、私はこのように感ずるわけですし、八年目にやっと答申が出たわけでございますが、これは有名な三論併記ですよね。つまり現状維持、分離論そして条件つき付与、こういうことで三論併記の答申になったわけでございますが、それでも条件つきの付与論がそこに示されたということで、いままでとは一歩前進であると、ある意味では高く評価してきたつもりですよ。  そしてまた七四春闘の収拾に当たりまして、これは四十九年の四月ですけれども政府と春闘共闘委員会は五項目の了解事項を交わしたわけでしょう。その中に閣僚協の結論というものは五十年秋までに出しますと、これも努力目標を示したわけですね。これも裏切られたですよ。簡単な言葉で言えば約束が破られたわけですよ。  そして五十年の六月三日、当時の労働大臣は長谷川大臣でございましたけれども、この委員会の場で、スト処分悪循環は今回を最後にしたい、それこそ真剣な答弁をなさっておりました。それを踏まえて公労協の皆さんも、これは高く評価しようということで予定していた長期ストを中止したのです。ところが、その結果どうなったかといえば、もう御存じのとおりですよ。  そういうことで、その後五十年の十月十五日、電電、専売公社の当局が条件つきスト権を認めるべきだと見解を表明しております。明くる日は、十六日は国鉄当局、全国総務部長会で条件つき付与が現実的と表明いたしております。よろしいですね。それからまた五十年の十月十八日は国鉄の諮問委員会が国鉄再建のための提案の中で条件つき付与論を示唆いたしております。二十一日は三公社の総裁が衆議院の予算委員会出席しまして、条件つきスト権を認めるのが望ましいと公式に発言をしました。これは当局側の正式見解として当時の三木首相も認めたわけでございます。こういうことは大臣はもう御承知のはずですね。  ですから少なくとも今回は条件つき、その条件つきの内容こそまだ明確にされないまでも、少なくとも条件つきの付与はするぞという方向の答申が出るはずだと思うのが当然ですよ。しかし、その方向とは全然違った、現時点ではだめだというような、しかも経営形態とか、そういう問題が主体となってきた内容であればこそ、労働者はまた裏切られたかという気持ちになっているわけです。  こういう中にあって、果たして、いまおっしゃっていたような労使関係正常化が望まれるであろうかというのです。ですから私は言いたい。それで条件つき付与にしても、いつごろまでには、こういう姿で条件つき付与します。だからこそ、もうストは極力やらないでください、このようになって初めて関係労働者も納得いくと思うのです。大臣、その点どうですか。
  212. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いま大橋委員の御指摘のような過去の経緯は私も承知いたしております。特に公社五現業、こういった当局がかつて条件つき付与論の見解を述べたことも承知いたしております。このような当局側の見解というのは重要な参考意見だと思いますけれども、結局私は、国民的視野といいますか全体的国民の良識を踏まえて、どうしたらいいか、こういったことに結論は結ぶべきであって、その結論が二年がかりで学識経験者を中心にして出されたのが今度の意見書でございます。その意見書は、現時点においてはスト権は与えることは適当でない、こういう判定を下した意思表示があったわけでございまして、その理由は、この意見書に書かれておるように、最後はやはり労使関係正常化、こういったことに原点に返ってもう一遍検討すべきである、このような指摘でありますから、私はもう一回、労使関係が過去を振り返って、組合側は組合側で対応の仕方にまずさはなかったか、また政府側は政府側で労働組合に対する話し合いが十分なされておったかどうか、相互に反省をして、真の話し合いの場をつくるべきである。  ここまで来てしまったわけでありますから、過去のいきさつを幾らとがめ立てをして言い合ったところで、それこそ問題の解決には役立たない。私は、およそいがみ合いというのは、片一方だけがよくて片一方が悪いんだという、こういうことでは生じないと思うのです。相互に反省しなければならない問題点がある。私は、ごく最近において経験したことにおいて、先ほども申し上げましたから、くどく申し上げませんけれども、有額回答を出せという提言に対して有額回答を出した。出したにかかわらず、今度は超低額有額回答は撤回のストライキだ、こういうことでは信頼関係が発生しないではないか、こういうふうに思うわけでございます。
  213. 大橋敏雄

    ○大橋委員 時間が非常に短いので、結論的に申し上げますが、いま労働大臣、有額回答のその一件でも本当にたまらない気持ちが起こるでしょう。公労協、そんなことが何回も繰り返されて味わっているわけです。一回だけの問題でも、そこまで、あなたは忘れない気持ちで、いまも述べられておるわけですね。ですから言うんです。五十年の六月にあの緊迫した委員会の中で当時の長谷川労働大臣が、私は命がけです。命がけで、この解決に当たりますと言った言葉や姿が私は焼きついております。きょう、あなたは、あしたの関係閣僚会議自分自身が、藤井という労働大臣一人が逆立ちしても云々という話をしていらっしゃいましたけれども、まさにあしたは、あなたが主役ですよ。本当にあなたが、ここで、いまのような問題を整理しよう。お互いに反省しよう。そして話し合い解決するんだ。条件つきならばスト権を与えられる状況になるんだという腹をがっちり決めた上で、それこそ命を的にするくらいの思いで、あした臨まれたならば、あしたの会議方向性はぐっと変わってくると思うのです。いま、おっしゃったように有額回答云々というような、そういう心境で臨まれたのでは、やはり私はただ慎重というだけではなくて、その内容は全く期待に外れたような結果が出てくるのではないかと心配をいたしております。最後に労働大臣の、あした臨まれるその決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  214. 藤井勝志

    藤井国務大臣 私は、しばしば例に引きましたから、それを根に持って感情的に対処するのではないかという御心配、これは私の不徳のいたすところでありまして、虚心に私は臨みたいと思います。ただ、そういうふうなことでは国民的コンセンサスが得られぬではないかという、こういったことを私は常々念頭に置いておったわけでございまして、私自身がそういうことを根に持って対応しようとは、さらさら考えておりません。
  215. 大橋敏雄

    ○大橋委員 とにかく条件つき付与。これを与えたならば大混乱が起こるであろうなんという予想は、これは全く的外れだと思います。あしたの会議を期待しております。終わります。
  216. 木野晴夫

    木野委員長 次に、和田耕作君。
  217. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私の時間は二十五分でございまして、簡潔にお答えをいただきたいと思います。  労働大臣、この問題は四十八年でしたか、最初の公制審の答伸、あれはスト権そのものを問題にして、そしてストを全部やらすべきだ、それはいけない、あるいは条件つきに付与すべきだという、そういうふうな形で、後の専門懇、そして今回のあれに申し送ってきたということになるわけですね。この前の五十年の例のスト権ストの真っ最中に、専門懇が経営問題を中心に、経営問題の検討から、このスト権の問題を考えようというふうに問題を提起して、それを受けて今度の基本問題会議の答申になったということなんですね。ところが今度の問題の場合は、私ども最初から、これは経営問題というものを余り正面に据えて、経営問題が中心でこの問題を検討すると間違ってくるよという感じを持ったのですけれども、案の定そういうふうな結果になったというふうな印象を持つのです。これは私どもの一つの印象でございまして、と申しますのは、三公社五現業と申しますけれども、国鉄の問題が余りに多く、この関係委員の頭を左右し過ぎたという感じを私は受けるのです。  国鉄というところの問題は、スト権ストも問題であるけれども、それよりももっと大きな問題を抱えているわけです。十兆に及ぶ借金とか、そして何とも言えない経営のまずさとか、いろんな問題があるわけです。これはまた非常に多方面にわたった経営自体の問題が、国鉄の問題そのものであるわけです。この国鉄の問題が余りに多く関係委員の頭の中を占めたんじゃないかという印象を否定できない。  この答申の中にも、最初のところに「三公社五現業等の事業の経営形態について、主として公共性及び効率性の観点から検討を行った」とありますね。「公共性及び効率性の観点から」ということではなくて、これはもともとストライキ権をこの関係の労働組合に与えることがいいかどうか。与えるとすれば、どういう条件なのかということが問題の提起の最初だった。ところが、この経営の問題の最初中心が「公共性及び効率性の観点から検討を行った」と、書いている。スト権ストという問題は全然土俵の外にあるわけですね。そのことがはっきり書いてある。その次の行には「経営形態の選択に当たっては、争議権問題の解決を図るという視点は取り入れられていないが、」と書いてある。つまり、こういうところに国鉄の問題が余り多く委員の頭の中を左右し過ぎた。案の定、郵便局とか、あるいは電電公社の中には、経営の問題はいろいろあっても、これは大した問題じゃないんだ、現状どおりでいいんだ、こう書いてある。  問題なのは、たばこだとかアルコールだとかということと並んで、つまり国鉄の一部民有という問題が出てきている。これは一部でなくて、つまり国鉄の現在の業態、それと関係した無法なスト権ストの繰り返しということが余り大きなウエートを占めているものだから、何か全体としてちぐはぐな答申になってきている。最初スト権ストという視点が外れて、経営の問題が余りに多く出てきておる。しかも経営の問題の一番最後の締めくくりのところが非常に不十分な答申になっている。これは中山さん自身私見の中に漏らしていますね。最後のスト権スト関係検討は二回しかなかったと言っている。そういうふうな点は、この答申全体を評価する場合に、ぜひともひとつ、あしたの閣僚協議会の中で問題を出してもらいたいと思うのです。それが第一点です。  時間がないから、続けて私は申し上げていきますけれども、第二の問題は、国有国営の現在のままで置いた方がよろしいという場合におけるスト権の問題の検討が載っておりますけれども、三つの問題を取り上げている。第一は、事業の有する公共性を考慮した結果、一般の国民は、この公共的なサービスを持続的に受けることを望んでおるのだ。こういう場合に争議権を与えるということによって持続的な提供ができなくなるおそれがあるのだということが、現在においてはスト権を与えちゃいけないという条項の第一に書いてある。この項目でも、たとえば条件つきスト権を与えるという頭が、これを検討した場合にありましたら、この項目の検討でも大分内容的に変わってきやしないか、そういう感じを私は受けるのですよ。第一、この項目の最後には「争議権についても禁止を含め相応の制約を免れないものと考えられる。」こう書いてある。「禁止を含め相応の制約を免れないものと考えられる。」これはあくまでも条件つきに付与する、条件によっては、この要請にこたえることができるわけです。しかし、条件つき付与という頭がないものだから、この状態の検討が中途半端になっている、こういう印象を受けるのですね。  その次の問題は、いわゆる親方日の丸の問題です。つまり親方日の丸という経営形態があり、そしてまた労使も、かなり無責任な状態があるから、この問題について争議権の取り扱い方については十分慎重を期する必要がある、この答申にはこう書いてある。しかも国有の形態がいいという判断のもとであるわけで、その場合の争議権をどうするかということになれば、条件つきに与えるという頭から見れば、この問題だっていろいろと回答が出てくるはずでしょう。ところが、もうこの場合には経営の問題が中心になっているものだから、国鉄が中心になって、しかも経営の問題が中心になっているものだから、条件つきスト権を与えるという頭が出てこない、突っ込みが出てこない。そういうことが、もし条件つきという頭があれば、たとえば変なことを労働組合が、あるいは経営者がやった場合には、特に労働組合がストライキをやった場合には、一定の条件のもとで争議を停止さすとか、いろいろ条件をつければ、この問題についての一つの回答になるわけですよ。経営者についても、たとえば経営者として当然やるべき管理責任を放棄しておれば、それに対する処罰等を含めたあれができるわけです。こういう問題でも、つまり条件つき付与という頭がないものだから、この問題について、そのことを検討することをおろそかにしているという感じがある。  最後に、当事者能力の問題もそうです。この三つの問題を検討しているわけですね。当事者能力の問題でも、これは予算の統制権の問題あるいは給与総額の問題でも、いままで何回か改正されてきているわけですよ、当事者能力を拡大する方向で。そうでしょう。しかも、それを拡大する問題は今後もあるわけですよ。そういうふうな問題を条件つきに考えておれば、そういうふうなところに頭がいくのだけれども、そういう検討が一つもここに行われていない。後の各論の方には若干ありますよ、そういう問題についての評価が。しかし、各論の評価と、この評価とが結びついていない。なぜなれば、条件つきに付与するという一つの頭のあれがないものだから、そういう問題の解決がきわめて中途半端ないし、しり切れトンボになっているという印象なんですね。  まず、いま申し上げた第三点について、いや、そういう線じゃないんだということがあれば、お答えをいただきたい。これは労働大臣よりは、むしろ、このものを扱っている事務当局から、どのような審議が行われておったのかということについてお答えをいただきたい。
  218. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 関係閣僚会議の事務局の方からお答えさしていただきます。  経営形態問題、これを重視し過ぎるところにいろいろ問題が生じているというお話でございますが、実は経営形態問題についての指摘は、かつての公制審以来その問題が触れられているわけでございまして、当基本問題会議といたしましては、問題の発端は争議権問題から由来したことは事実でございますが、やはり三十年を経て、今日まで公共企業体が三十年以上それぞれ続いておりました。その間における経営形態の問題を全く新たな見地から見直すことは、これも一つの国民的要請ではないかという立場から検討を行った。したがって、国民的視野からという意味で、やはり公共性の点をまず第一に取り上げる。第二に官業非能率というふうな問題はないかという点から効率性の問題を取り上げる。その段階において、争議権を与えるために民営化するというふうな視点が加わりますと問題が非常に混乱をいたしまして、かつ結論が出た場合に誤解されやすいという問題もございますので、わざわざ総論に断って、いま御質問の最中で指摘されましたように、それは別の問題として一応考えて検討したというふうにされている次第でございまして、そのような見地から、この検討が行われたと承知しております。  それから公共性の問題につきまして、確かに、おっしゃるように公共性の見地から、要するに、その方向から光を当ててみた場合には「禁止を含め相応の制約を免れないものと考えられる。」言いかえれば、公共性の見地からだけ、すでに禁止が必要であるほど非常に高い公共性のものもあれば、同時に、先生がおっしゃいましたように相応の制約で足りる公共性もある。その点は事実でございまして、決して条件つき付与のことを念頭からおいて、ここが書かれているわけではございません。  また、次につきましても「争議権の取扱いには十分慎重を期する必要がある。」と言いながら、なお、さらにそれに乗せまして「特に、節度ある労使慣行、使用者側の経営者意識」と、慣行並びに使用者側に対しても物を言っております。そういう「労使の未成熟な実態を考慮すれば、」ということで、いわゆる市場抑制力と申しますか、そういう点については現状においては特に気をつけなくてはいけないということを指摘している次第でございます。  また、当事者能力につきましても、拡大する方向から当事者能力懇談会の検討が行われていることは先ほど御説明したとおりでございますが、その見地に立って、なお「予算統制等その根幹については、これを維持する必要があり、現状においては、当事者能力の強化にもおのずから限界がある」というのが当事者能力懇談会の結論でございます。  それらをすべて踏まえまして「上記の諸点を総合的に勘案すれば、現時点において争議権を認めることは適当ではないと考えられる。」と言っておりますので、条件つき付与の問題を念頭から離して、これを議論されたものではない、このように理解さしていただいております。
  219. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私は、これを読んで国鉄の問題が余りに頭にあり過ぎたという感じがあって、したがって郵政とか電電公社の問題はもう国鉄に巻き添えを食って、国営、公営の事業はもうスト権はだめだ、こうなっている。国鉄はいろいろ問題はあります。郵便局とか電電公社の問題は条件つき付与で十分対処できる内容じゃないですか、いろいろな分析の全部を読んでみれば。しかし、この経営の問題だけが頭にあるものだから、国営、公営であればスト権はだめだ、民営にすればよろしい、あるいは条件つきで与えるということがあるものだから、結局、郵便局と電電公社の問題が巻き添えを食ってしまったという感じを受けるのですね。そういう感じとしては、ないのですか。
  220. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田説明員 そういう感じをお受け取りになる向きがあるかもしれませんけれども、私はそういう感じで、これが書かれたものとは、ただいまのところ理解いたしておりません。
  221. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは労働大臣、この問題を歴史的に見て、そして、この意見書の持っている矛盾というものは、中山さんが補足したと言われる「現時点」という言葉を入れたということが意味があるとかないとかいろいろ言われておりますけれども、ただ、この言葉だけで全体の持っている矛盾がカバーされているみたいな感じがするんですよ。つまり、この結論が、この非常にめんどうなスト権ストという問題をめぐって、これを与えるとか与えぬとかいう長い間の争いというものについての答えを出してないという感じがするんですね。出してないのは、つまり余り経営問題をこの問題と絡ませ過ぎた。国鉄の問題は、これははっきり絡ませて考えなければならぬと私も考えています。これと関連なしには国鉄の問題は考えられない、私はそう思う。しかし、それを余り考えるものだから、他の国営企業あるいはそれに準ずる企業についての正しい答弁が出ていない。  だから国鉄の問題でも、いまの条件的に付与ということによって、もう意地っ張りになっておりますからね、スト権を与えるとか与えないとかいうことは。意地っ張りになっているということは、一応条件をつけて与えることによって、その結果を見るということもできるわけですよ、労使関係をよくするという目から見て。そういうメリットもあるわけです。欲しいものを与えて、そのかわり大変に危険な場合は、それに対する予防措置を講じ、つまり条件をつけて与えて、そして労使関係が好転する一つの動きを見守っていくということもあるわけです。国鉄の場合でも。他の場合はなおさらですよ、他の郵便局とか電電公社の場合は。国鉄の場合すら、そういう条件的付与のメリットというものは考えられるわけだと私は思う。しかし国鉄の場合には、余りに、いまの経営の実態がだらしないものだから、スト権なんという問題よりも国鉄自体の経営をという頭があるものだから、こういうふうになってしまったという感じがしてはならない。  したがって、あしたの閣僚懇談会で労働大臣、その見方を、もし少しでも私の申し上げたことが必要なことであるとすれば、ぜひともひとつ御考慮に入れて正しい結論を出していただきたいと思うのです。大臣から一言お答えをいただきます。
  222. 藤井勝志

    藤井国務大臣 和田委員から大変参考になる御意見を承りました。明日の閣僚懇談会におきましては十分御意見も念頭に踏まえまして対処したい、このように考えております。
  223. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 終わります。
  224. 木野晴夫

    木野委員長 次に、田中美智子君。
  225. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今回の基本問題会議の十二名の委員のうち八名が大企業の社長や会長など財界人で占められていて、もちろん労働者の代表が一人も加わっていない。これはやはり国民が素直にこれを受けとめにくいのではないかというふうに考えています。たとえば関西電力の相談役だとか日経新聞の会長、日本ハウジングローンの社長、三井金属の社長、太陽神戸銀行の会長、王子製紙社長、三井物産相談役、旭化成の社長、こういったように、ほとんどの人が企業の指導者である。そういうことが結局、新聞報道に、これは六月二十日の毎日新聞ですけれども「十二委員の中に「いま労働側を勇気づけるような結論にすべきじゃない」という暗黙の了解があったと言われる。そうなれば結果的は明らかで、“スト権禁止”は全員一致だったという。」というふうに書かれているわけです。これは一つの新聞報道ですけれども、私は国民は、今度の意見書というものがスト権を禁止するという、政府とそういうふうに一緒に話し合ってとは言いませんけれども、そういう方向でいくんじゃないかという危険性を感じ取っているというふうに思います。この中身を見ましても一体労働者の意見というものは、どこで反映されているのだろう、こういうふうに思うわけです。  それで先ほどからも出ておりますけれども中山伊知郎座長、これも新聞報道ですが、先ほど言いましたように、この意見書は上等なできぐあいではないとか、自信を持って天下に公表できないとか、それから政府に対して広い判断の幅を残している点では不親切な答申だというようなことが新聞報道にあるわけです。ですから、そういう点で政府がどういう受けとめ方をなさり、あした、どういうふうな結論を出されるのかはわかりませんけれども、労働者は、あしたの労働大臣の動き方というものには非常に注目をしている。数々の疑いを持っているわけですから、そういう点で前進的な考え方を持って、正しい、労働者が信頼できるような結論を出していただきたいと思うわけです。  大臣はしばしば、中山先生を座長にして二年間努力をしてこられた、こういうふうに言っていられます。それは誤りではないかもしれませんけれども中山さんが言っていられるのに、三懇談会の審議を進めてきたけれども、その結論スト権と結びつけることになったとき、せいぜい二カ月ほどしか時間がなかった、こう言っていられるわけですね。こういうことも労働者にとっては、大臣が簡単に、二年間かかって十分にというふうに言われますけれども、そうじゃないんじゃないか。スト権のところは避けて通ってきて、結局、最終的には禁止の方向に暗黙のうちに追い込められていっているのではないか、こういう疑いを持っているのだというふうに思います。そういう点で、私は労働者の基本的な権利であるスト権について、労働者の意見を十分に反映し、労働者がある程度信頼して見られるような態度をとっていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  226. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いろいろ今度の公共企業体等基本問題会議の構成メンバー、特にスト権を取り扱った委員会のメンバーの内容を踏まえて御心配な御意見が開陳をされました。私は労働大臣としては、申し上げるまでもなく労働者の福祉、生活の安定、こういったものを踏まえて当然職責を果たさなければなりませんが、現在の社会というのは、もういま、すべてが勤労者社会といったことでございまして、やはり働く勤労大衆のために、どういうふうに問題に対応したらいいか、これが私は大切な基本路線であるというふうに考えます。したがって、中山座長の見解、また私見を踏まえての発表、こういった問題も十分示唆に富んだ貴重な経験として今後に対処しなければならない、このように思います。
  227. 田中美智子

    ○田中(美)委員 このスト権問題については過去の歴史があるわけです。そこで信頼関係を裏切ったとか、どちらがくやしい思いをしたかとか、先ほどあったように労働大臣も一遍ぐらいくやしい思いをした、労働者はもっと何遍もくやしい思いをしているのだというような討議もなされてきたわけですけれども、やはり原点に戻って考えてみますと、昭和二十一年の労調法案委員会というので吉武政府委員というのがスト権の問題で答えているわけです。これは労調法を成立させるときのことなんですけれども、ここに「会社デアルカラ争議権ヲ認メ国家ナリ公共団体が経営スルカラ之ヲ認メヌト云フ訳ニ参リマセヌ」というふうに、官民というものは同じ扱いであるということを国会の中で、はっきりと政府委員が答えているわけなんですね。そこから当然出発すべき問題であって、日本の労働運動が戦前、戦中、非常に世界の趨勢からおくれていた。戦後、早くそれに追いついていこうという立場にあったときに、やはりこういう考え方をしていたわけですね。  ですから、その後いろいろあったわけですけれども、いまから考えてみますと、このときから非常に後退しているということを私はしみじみと思うわけです。その中の過程は、どこで、だれが裏切ったとか、うそをついたとかいうことはありますけれども、こう考えてみたら、ずいぶんおくれてきているじゃないですか。これだけはっきりと官民は区別ないのだと言っていながら、どうして、こういうことになっているのかというふうに思います。この事実を大臣は御存じなわけですね。
  228. 北川俊夫

    ○北川説明員 労調法の制定の当時、本国会で当時の政府委員である吉武労政局長がそういう旨の回答をしておることは事実でございます。  ただ公共性につきまして、その後、政治、経済、社会の情勢が変わっておるということも事実でございます。
  229. 田中美智子

    ○田中(美)委員 その情勢が変わるというのは、それは歴史が動いていけば必ず情勢はいろいろ変わるに決まっているのであって、しかし、憲法で保障された基本的人権がそんなにくるくる変わるなんということはあり得ない、そんなことはないと思うのですね。情勢がいつもいつも変わるのはあたりまえです。きょうとあしたでは、もう情勢は変わりますよね、あさっては変わりますからね。そんなおかしなことはないと思うのですけれども世界を見ましても発達した資本主義国では官民区別というのはなくスト権が与えられているということも大臣御存じだと思います。  先ほど、私の聞き違えかもしれませんけれども、フランスにはスト権がないというふうに言っていられたように思いましたけれども、フランスでは警官とか税関、刑務所の職員、軍隊を除いて、すべての一般公務員、公営企業にはスト権が付与されています。公共企業体などには規制がついています。ちょうど労調法みたいなものが。五日前に予告をしなさいとか、持ち回りのストは禁止するとかいうふうな規制はついていますけれども、きちっとスト権をフランスは与えています。ですから大臣、もしお間違えでしたら訂正していただきたいと思うわけです。  しかし、こうした規制を破った場合——フランスはじゃんじゃかやっているわけですからね、五日前に予告せよなんて言ったって予告しないでやっています。御存じだと思います。いまもフランスでルノーがやっています。ルノーなんというのは有名なところですから何となく私的な企業じゃないかとか、トヨタみたいなものじゃないかなんというふうな感じで国民は受けとめているかもしれませんけれども、このルノーは国営ですからね、公社ですから。ここで、いま物すごいストライキをやっています。何万人という人が参加したストライキをやっています。そういう中で国民も驚かないし、また刑事的な処罰というのは全くないのですね。こういう規制を破っていても、ないのですね。そこまでやはり労働関係というものが進んでいるというふうに私は思います。  それからイタリアでも公務員の団結権、スト権が認められておりますし、経済スト以外の政治ストをしても刑事罰というものは行われないし、行政処分の対象にもならない。いまのイタリアの判例はほとんど、そういうふうになっています。  それからイギリスでは、もう非常に早くから、一八二五年以降、私営、公営、国営区別なくスト権が与えられていて、与えられていないものはただ一つ軍隊ぐらいだ、こう言っている。警察官だって待遇についてだけはスト権を行使できる道というものが開かれている。  こういうふうな状態の中で、日本のいまのあり方というのは非常に後進性であるし、今度のこの意見書というのを見ましても非常にそういう点ではおくれている。現在、円高の問題などと直接的には−私は相当大きな関係があると思いますけれども、働き過ぎだ働き過ぎだという形で世界からも非難されていますし、そして日本の労働者の状態というものが十九世紀並みじゃないかというようなことも言われています。これはスト権だけの問題ではありませんけれどもスト権がないというところに日本の労働者の権利というものが十九世紀並みだというふうに世間から批判をされ、労働者が不当に働き過ぎをさせられているために円高にもなっていくのだし、世界の経済に対して悪い影響を与えているのだというような批判をされているというふうに思うのですけれども、そういう点、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  230. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いろいろ欧米先進国の具体的な例を引用されて、公共企業体に対してストが禁止されておる日本は非常におくれておる国ではないか、こういう御見解を含めた質問でありますが、フランスの場合、個別に禁止されておるという条件をつけ加えないで、いきなりフランスはスト権がないのだという、これは訂正をいたします。  ただ、スト権を与えることが進歩だという考え方は、これは現在の経済、社会諸情勢を考えてみて、やはり見直すべきである。フランスあるいはイタリアが非常に都合よく国家の運営ができているか、こういうことを考えましたとき、これをそのまま受けとめるわけにはいかない。やはり、その国の労使関係、国の制度、こういったものを踏まえて、どういうふうにやったら一番国民大衆みんなのために幸せか、こういうことに判断の基準を置くべきである、このように考えるわけでございます。  なるほど、憲法二十八条において労働基本権というのが認められておりますけれども、同時に公共の福祉あるいは財政民主主義、こういうことも憲法で明記されておるわけでございます。こういう問題をどう調整し調和するかというところに政治の工夫があり、努力がなされなければならぬ、このように思うわけでございますから、いろいろな御見解を私は十分参考にさせていただきますけれどもスト権の取り扱いについては、やはりせっかくの意見書が出されまして、現時点においてすぐスト権を付与するということは適当でない、こういう一応の決定が出たわけでございまして、今後は特に三公社五現業の労使関係というのは、もう一回ひとつ胸襟を開いて話し合う場をつくっていく。いままでがどうだったから、こっちが悪いんだ、あっちが悪いんだというようなことを言わないで、もう一回フランクに話す場をぜひつくって、基本である労使関係正常化に努めるというのが当面の労働大臣の役割りである、私はこのように考えるわけであります。
  231. 田中美智子

    ○田中(美)委員 最後に、簡単に申しますが、今度の意見書の中で、いまも大臣おっしゃいましたけれども労使話し合い環境づくりを進めていくのだ、こういうふうに言っているわけですね。それで当事者能力というものを強めていくということを言っているわけですね。午前中にも言ったわけですけれども当事者能力を強めるということはどういうことなのかということで、私はあれを何遍も読んでみたわけですけれども、給与総額制をそのままに維持しておきながら、公共料金の値上げのところは法定制を緩和していくということは、労働者の待遇や何かについては当事者能力がないんだと言って逃げておいて、国民から料金を取るときには、もう国会にかけなくてもいいんだ、当事者能力をうんと強くしていくんだということは、これは一体矛盾してないか、当事者能力を強化したのかということになると思うのですね。  矛盾していないかという一点と、それからもう一つ、労使話し合い環境づくりをするんだ、仲よくやっていかなければならないんだ、こういうふうに言っていながら、労働者の権利を抑圧する部分、ここのところが非常に厳しくはっきりと出てきているわけですね。賃金カット、これは範囲をずっと広めて、ストに参加しない者まで同じ組合に入っていれば賃金カットをしていくんだとか、それから損害賠償、これは中曽根さんがお好きなような言葉ですけれども、損害賠償を取るんだとか、それからインジャンクションの導入、これに至っては全く過去の遺物的なもので、もう労働運動の中からなくなりつつあるものを、いま改めてここへ持ってくる。こういうことをすることで、どうして話し合いができますか。まさに労働者の頭の上に刀を振り上げておいて、そして仲よく話をしようじゃないか、話をしようじゃないか、こんなことをして話がうまくいかないというように私は思うのですね。やはり、こういう刀はちゃんと下げて、ちゃんとさやへおさめて、そして話し合いをしようというならわかりますけれども、国民から収奪する方はどんどん当事者能力を高めておいて、そしてここでは刀を振り上げて、違法ストをやったら切るんだぞ、こういう姿勢をしながら環境づくりをしましょう、しましょう、そんなことでできますか。本当に大臣はこんなことでできると思っているのでしょうか。私は、これはむしろ労働者にいよいよ刺激を、労働者に挑発をかけるというふうな非常に反動的なものだというふうに思いますけれども、最後に大臣の御見解を伺って、私の質問を終わりたいと思います。二つの問題について御見解をお願いします。
  232. 藤井勝志

    藤井国務大臣 いろいろ立場によって御意見があることは当然でありまして、当事者能力付与の問題につきましては、一応料金を改定する幅を国鉄総裁に認めたというのは、やはり当事者能力をふやしたという、こういった解釈をしていいではないか、このように私は思います。  同時に、いろいろな厳しい条件をつけながら話し合いの場に乗ってこいという、これはちょっと無理な話ではないかという御見解でございますけれども中山座長私見に指摘されておるように、やはり、この労使関係正常化ということについて、原点に返った話し合いの場をつくって、ひとつ問題の解決のきっかけをつくるという、こういったことの必要性また、その可能性を信じて今後努力したい、私はこのように思うわけでございまして、まあ鶏と卵のような微妙な関係も確かにあります。ありますけれども、この時点においては、やはり意見書を踏まえて今後に対処するということが現実的な問題解決の対策である、措置である、このように考えるわけであります。
  233. 田中美智子

    ○田中(美)委員 もう時間がございませんので、労働者の基本的人権であるスト権を認めるという方向で、あしたの会議に臨まれることを切に要望して、質問を終わりたいと思います。
  234. 木野晴夫

    木野委員長 次に、工藤晃君。
  235. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 私は、三公社五現業のスト権について大臣に幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  現状において毎年、違法ストが行われておりますこの労使関係について、大臣から、このような状態が正常な状態であるか、あるいは異常な状態に置かれているかということについてのお考えを、まず第一番にお聞きいたしたいと思います。
  236. 藤井勝志

    藤井国務大臣 毎年、いわゆる春闘という名において違法ストが展開をされ、繰り返されておるということは、まことに不幸な事態であり、正常な状態とは考えておりません。
  237. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) それでは、どのような状態になれば、この労使関係が正常だというふうにお考えになっておられるか、お答えをいただきたい。
  238. 藤井勝志

    藤井国務大臣 特に三公社五現業というきわめて公共性の高い事業部門においては、やはり関係労使が公共性に対して深い理解と認識を持って、そして少なくとも現時点においてはストライキは禁止されておるわけでありますから、違法ストはやらないという節度を持った対応の仕方ができることが、私は正常な労使関係である、また労働状況である、このように思うわけであります。
  239. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) それじゃ永久に、こういう関係の労働者に対してスト権を与えないことが正常だというふうに考えられるわけでございますか。
  240. 藤井勝志

    藤井国務大臣 御承知のごとく公共企業体にはスト権は禁止しておりますけれども、そのスト権を禁止している代償措置としては公労委制度というのがあるわけでございますから、この公労委制度を積極的に活用していくということにおいて労使関係正常化を図れる、このように私は思うわけでございます。
  241. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 国民の側から見まして、非常にのめり込んでしまった毎年の違法スト、これは何とかならぬかという切なる願いが国民の中にもあると思いますし、ある場合は、それが国民の生活を大変困難な状態に陥れる場合もあります。そういう意味においては、一般の企業のストというのとは、あるいは全然意味が違うだろうということは、私も十分認識するわけでございますけれども、問題の解決ということについては両方とも一歩も歩み寄れないという形がいまの状況ではないか。こういうどうにもならない厭世観のようなものが漂っているのじゃないか。そこに何らかの光明を見出していきたいという切なる願いが、このたび発表されました基本問題会議意見書の中にもやはり苦慮されておるような面があるような気がします。  それだけに歯切れが悪いという逆な意味もあると思うのですが、こういうむずかしい問題について、簡単にこれを逆に考えてみますと、スト権を付与しても何らかの形で公共性が担保できないのだろうかという発想が一つ持てると思います。二番目に、公共性を担保するためには、スト権を付与しなくても労働者が納得できる方法はないだろうかという問題が、二番目の手段として考えられるのじゃないか。いずれにしましても、やはり両方が納得をしていくという形があらわれませんと問題の解決につながらないような感じがするわけでございます。しかしながら、問題はどうあれ、経営の危機を回避しながら、違法ストは実際は停止されて、労使関係が円滑な状態に戻ることを国民はすべて期待をしている、こういうことでございますので、問題の解決は、具体的に言えば、このどちらかの道を選び得たら解決の道へつながるのだろうと考えるわけで、どうもいままでの質疑を聞いておりましても、そこに歩み寄れないものを強く感じるわけでございます。  しかし一方においては、相互信頼と盛んに言われておりますけれども、労働者の基本的権利であるスト権を付与しろという要求は、労働者にとっては大変強かろうと思います。しかしながら、それを付与することによって公共性が担保されないのではないか。そのために大変困るような状態が起きてくるのではないか、こういう心配が一方にある。だとすれば、先ほど申し上げましたような、二つの問題を解決するための基本的な条件は、やはりお互いに信頼し合えるような環境がつくられることが第一番ではないかと思うのです。そこにお互いの不信感があれば、どちらか一方がその問題の提起をしましても歩み寄れないという常に堂々めぐりの悪循環で、毎年毎年、違法ストが行われていく、こういうどろ沼の状況から抜け出すことができない。  そうすると簡単に分析をしますと、先ほど申し上げましたように、まず第一番に、お互いにどうやって信頼感を取り返すか。また、そういう公共的な事業に関与する労働者のスト権を認めろということについても、国民がそういうものに対して理解を示すという状況を設定していかなければ、恐らく勤労者の要求もなかなか通りにくい。そういう意味においてスト権が付与されると公共性が破壊されていくのじゃないか。あるいは、ひょっとしたら、そういうところで問題がエスカレートするのではないか、こういう危惧がある間は、なかなか両方が歩み寄っていけないというふうに考えるわけでございまして、その意味において何よりも必要なことは、お互いの信頼関係をもう一度どうやって取り返すかという歩み寄りから始まるべきではないかと思うわけでございます。そのためには、両方ともお互いに言いたいことはたくさんあるけれども、やはりまず第一番に謙虚に話し合いをしていこうというムードづくりが必要であろうと考えるわけでございます。また、もちろん一方においては労使の自主的な解決に対する努力は最も望まれなければならない。  しかし、いま大臣もおっしゃったように、現在公労委の立場というか、そういう問題も大変重要視されているようでございます。そういう相互信頼を回復するためにも、公労委の機能をより高めていくという条件が必要になってくるのじゃないか。そういう意味においては、いまの公労委の状況は非常に満足された状態であるとも思えないし、また、この意見書の中にも具体的に、公労委の今後果たすべき役割りはこうあるべきではないかということも述べているわけでございます。そういう意味から、公労委の置かれている立場をより機能させるという発想が、今後ともに、そういう問題解決のための、決して、それは満足される条件ではないにしても、一歩前進させるために必要な具体的な手段ではないかと考えているわけでございます。そういう意味において大臣の御所見を承りたいと思います。
  242. 藤井勝志

    藤井国務大臣 工藤委員のただいまの御指摘は、私は非常に大切な問題提起だと思います。私自身、春闘をこのたび経験いたしまして、ストライキ権を与えない代償措置としての公労委の役割りは、今度は相当高く評価すべきではなかったか、評価すべきである、このように私は思うわけでございます。ある程度、違法ストは行われましたけれども、いわゆるスケジュール闘争の最後にまで突っ込まなかったという、これは公労委の存在が大いに役割りを果たしてもらったと私は高く評価いたしたい、評価していただきたい、このように思うわけでございます。  今度の意見書の中にも公労委の機能の強化の提言があるわけでございますから、公共企業体へのスト権の付与の問題は将来の問題として、とりあえずは公労委の機能強化によって問題の解決、すなわち労働基本権と公共福祉との調和点を公労委において機能させていくべきだ。その間において労使がフランクに話し合いをする場をこの際つくり上げる、そして過去のいきさつを水に流して大いに円滑な話し合い環境づくりに労働省は努めたい、このように考えております。
  243. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) これは、立場をかえれば主張されることは当然の問題でございまして、そこに歩み寄る大変むずかしい壁があるように思われます。しかしながら、この問題はこのままにしておいていいということは、だれしも認めていないわけでございます。そういう中から、私は具体的には申し上げられないのですけれども、公労委が全く中立的な立場よりも、スト権を付与されていない労働者の立場に立って、もちろんスト権を付与されないために、いろいろな条件も言い分も一方においてはあるかもしれませんけれども、やはり基本的な労働権を付与されていない労働者の立場というものを常におもんばかった、あるいは多少は、そういう方向に偏った形でも、いまのぎすぎすした争いを起こすよりも、そういう立場に立って、十分与えられていない理解を示す公労委というものが今後の公労委の果たすべき役割りではないか、私はこのように考えるわけで、そういう意味においては、公共性を主張されてスト権を付与していない使の方も、それくらいの御配慮はされてしかるべきではないか、こういうふうに考えているわけでございます。  そういうことで時間が参りましたので、あしたの関係閣僚会議には、ぜひとも、そういう立場から大臣の御発言を期待すると同時に、この意見書よりも、より後退しないように、ぜひとも、これよりか一歩でも前へ進めるような御解決の方法を期待してやまない次第でございます。  私の時間が参りましたので、これで終わります。
  244. 木野晴夫

    木野委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十九分散会