○工藤(晃)委員(新自) 本日は、身体障害者あるいは
母子家庭の御婦人、そのような社会的に弱者と言われる方々の雇用の問題について質疑をさせていただきたいと思います。
六月四日の朝日新聞に大きく「障害者にも
仕事の場を」という見出しで、今日のこういう障害者に対する雇用の問題をクローズアップさしているわけでございまして、その中で最初に書かれている部分の要点を読んでみたいと思います。
障害者が、不自由な身をこらえながら作り上げ
た製品をもっと利用してほしい、
仕事の場もふ
やしてほしい——障害者のこうした声を背景
に、全国社会福祉協議会や各地の授産施設が中
心となって「障害を持つ人にも
就労の場を」と
いう運動が進められている。こういうことが書かれておりまして、その次に
障害者が
仕事を持ち、自立してゆくことこそが、
リハビリテーションの最終目標といえる。障害
者たちの集会や活動の中で、あるいはふだんの
話し合いの場で、もっとも強い関心を寄せられ
るのが「
就労」の問題だ。やはり、「
仕事を持つ」
ということが、障害者自身にとっての生きがい
につながり、しかも自活の道に通じているだけ
に、もっとも基本的な課題だ——と考える障害
者が圧倒的に多い。こういうことが書かれておりまして、それから
昭和五十一年十月に改正されました身体障害者雇用促進法、こういうものをもっと生かしてほしいということが言われております。それから、逆に今度は、そういう身体障害者を雇用しない場合には、身体障害者雇用納付金制度を設けて、そこから逆に月額三万円のお金を徴収して、そういう促進をしておるところに、それを配分していくというような考え方でありますが、それが
九十四億円にものほり、制度の趣旨がまったく
生かされない結果となった。“罰則金”を納める
のを覚悟で障害者を雇い入れることを拒んでい
る
企業が多いという実情である。
労働省職業安定局が昨年六月行った身障者の
雇用
状況調査によると、障害者の雇用率を一・
五%以上と定められている民間
企業のうち、四
七・二%が雇用率を達成してないし、一・八%
以上の特殊法人にいたっては七三・一%が未達
成というありさまだ。とくに、民間
企業につい
ては、規模の大きい(
従業員数が多い)
企業ほ
ど障害者雇用率が低い。
従業員数が百人以下の
小
企業の雇用率達成の割合が五七・七%である
のに対し、千人以上の
企業は二一・一%という
ひどさ。こういうことが言われているわけですね。
ここから考えましても、とにかく雇用促進法という法律がつくられて、それが本当にどれだけ機能しているのかという問題が一つ考えられなければならない問題であるし、特に特殊法人などの雇用の達成率が非常に悪いということは、ある意味においては、やはりこういう問題についての一つの反省材料にならざるを得ないのじゃないかというふうにも思います。それからまた、そういう者を収容し得る能力を持っている大
企業が、逆に中小
企業に比べてそういう達成率が非常に悪いということも問題点だろうと思う。それにはそれなりの、いろいろな
理由がございましょうけれ
ども、そういうことに対しても何らかの
対策を、こういう
不況下でございますから早急に考えていかなければならない問題であろうというふうに考えるわけでございます。
そういうことと同時に、たとえば全国の授産施設や福祉工場でつくられたものが、うまくさばけないために非常に困っているのだということとか、それから、そういう製品をできるだけ国や公共団体に利用してもらいたいという要望もあるようでございます。また
昭和二十四年につくられた身体障害者福祉法というものが非常に形骸化してしまっている。この中にも
二十五条は「身体障害者の援護を目的とする社
会福祉法人で厚生大臣の指定するものは、その
援護する身体障害者の製作したほうき、はたき、
ぞうきんその他政令で定める物品について、国
又は地方公共団体の行政機関に対し、購買を求
めることができる」とある。障害者が働いて作
るものといったら「ほうき」や「ぞうきん」ぐ
らいしかない、といった認識の古さが、この条
文からのぞかれる。こういうことが書いてございます。まあだらだらしゃべれば切りがございませんので、これぐらいにします。
こういう大きな問題の断面が紙面にも取り上げられているという現状を私たちは深刻にとらえなければならぬ。この前のときにも私は、こういう身障者を含めた社会的弱者に対する失業
対策は、できるだけひとつ、きめ細かくやっていただきたいということも申し上げたし、身障者の職業訓練法の場合にも、そういういままでの訓練法から多少発想を変えて、ひとつ、そういう弱者の職業訓練についてもお考えをいただきたい、こういうことを言い続けてまいったのですけれ
ども、ここで時間がございませんので、できるだけ、それを限られた時間の中で要約してお答えをいただきたいと思いますので、実は、こういう問題について私が考えました一つのプランを最初に三つ申し上げます。そして
労働省、厚生省、大蔵省から、こういうプランについてのお考えなどをお聞きしながら、何らかの前向きの姿勢を出していただければありがたい、かように考えるわけでございます。
そのプランの一番目は、たとえば身障者の雇用促進法というのがつくられておりまして、一・五%以上雇用しなければならないという法律は一応つくられているわけですが、大
企業ほど、その実行が行われていないということでございます。そういう中で、特にこういう不
景気の中で、
政府も
景気浮揚という立場から非常に熱心に、いま
公共事業投資をしているわけでございます。そういう
公共事業に関与する
企業、あるいは、そういうものの落札に参加する
企業ですね、あるいは地方公共団体にいろいろ
関連を持つ
企業、こういう
企業でも、やはり、こういう雇用促進の達成をしていないところがたくさんあるのじゃないかと思うわけです。ですから、こういう
公共事業に関与する
企業に対しては、要するに関与する資格として、一・五%以上の達成をした
企業でないと、そういうものに関与する資格を与えないというふうな制度をつくってはいかがかという一つの案を提示したいと思うのです。もちろん
公共事業、国の出す
事業に関与する以上は、できるだけ、その
企業としての、そういう弱者に対する責任も果たしていただかなければならない。そういう未達成の、責任を果たしていないような
企業が堂々と同じ資格で参加していくということは、私はやはり不公平ではないかと思うわけでございますので、まず、そういうことを考えてみたらどうだろうかという案を一つ提示いたします。
二番目に、ほうきやぞうきんその他でなくて、
政府あるいは地方公共団体のような行政機構の中で消費するものを総合的に
調査研究をして、その中で弱者の人たちが健常者に比べてそう能力的に劣らないような単純作業の
部門で生産できるようなものは、できるだけ福祉工場とか、あるいは授産施設その他、一方においては福祉を対象にするような、民間でも結構ですけれ
ども、そういうふうな
企業に優先的に発注して、
計画的にそういうものを生産させ
計画的にそれを吸収していく、こういうふうな方法をとれば、逆に日本全国にそういうふうなものを適正配置をしながら、そこで身障者の職業訓練も
計画的にできるのじゃないか。
そういう中から、できるだけ販売ルートを一般の市場に流さないで吸収してあげる。そういうことによって、一方において、そういう販売のために必要な経費というものを節減しながら、そういう社会的弱者の方々に対する給与も、そういう面の省力によって比較的生み出せるのじゃないかという考え方が持てるわけでございますので、この新聞の一部分にも書いてございますけれ
ども、授産施設協議会の大須賀会長自身も何か名古屋でクリーニングの授産所を開いておられて「主に母子寮の母親たちに来てもらっていますが、わたし自身がセールスから集金までやるという
状態です。どこの施設でも施設長自ら製品の売り込みから原材料の仕入れまでやっている。せめて、販売に苦労しないですむようになれば、と願っている」こういうことを言われているわけですから、そういう面において販売に苦労しないで、できるだけ生産にだけ苦労できるようなものを
計画的に考えてあげれば、その地域社会における社会的弱者の方々の生活の安定にも大きく寄与するのじゃないかと思います。
どうも聞いてみますところ、行政機構の中で、そういうものを
計画的に消費し
計画的に吸収していくというふうな発想が、いまのところ、まだないようでございますので、総括的に、そういうものの
計画を立て発注していくというような機構が生まれれば大変いいのじゃないかなというふうに考えているわけです。こういうことについて二つ目に、そういう市場の開発を、既存の方々の分野を侵食して、そこへ当てはめるというのじゃなくて、新しくその市場を開発していく、こういうプロジェクトを組まれたらいかがだろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
それから三番目には、これは特に大蔵省の方にも御意見を伺いたいと思うのですけれ
ども、単純作業でできるような部分については、大
企業から、そういう福祉工場へ特に発注をしてあげるということを促進するような方法を考えたらどうか。もちろんハンディがあるから自由競争の中で、その下請工場へ出せといっても、なかなかむずかしいところもございましょうから、逆に、
企業がそういう下請をするような福祉工場をどんどん抱えて、そこへ製品の発注というものを推進するような
企業に対しては、そういうところへ出した製品に対して何らかの税制上の優遇措置を考えてあげて、できるだけ、そういう面の福祉工場のいわば経営の安定が図れるような施策を考えてあげたらどうだろうか。
社会的弱者と言われる方々の生活の場を確保するために、こういうことをやったらどうだろうかというふうな、そういう考え方で私が考えました三点ほど提起したわけでございますので、時間の
関係上、労働、厚生、大蔵の、この三つの点についてのお考えをまずお伺いしたい、かように思います。