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1978-04-19 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十九日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 竹内 黎一君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    大坪健一郎君       大野  明君    川田 正則君       小坂徳三郎君    津島 雄二君       戸沢 政方君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    湯川  宏君       安島 友義君    枝村 要作君       大原  亨君    金子 みつ君       川本 敏美君    栗林 三郎君       田口 一男君    矢山 有作君       草川 昭三君    古寺  宏君      平石磨作太郎君    浦井  洋君       田中美智子君    工藤  晃君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小沢 辰男君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         厚生省公衆衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省環境衛生         局長      山中  和君         厚生省環境衛生         局水道環境部長 国川 建二君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 中野 徹雄君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         警察庁交通局交         通企画課長   鈴木 良一君         環境庁自然保護         局施設整備課長 佐藤 善也君         環境庁水質保全         局企画課長   神戸 芳郎君         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         外務省国際連合         局専門機関課長 木島 輝夫君         大蔵省主計局主         計官      窪田  弘君         文部省社会教育         局青少年教育課         長       柴沼  晉君         水産庁研究開発        部漁場保全課長 伊賀原弥一郎君         運輸大臣官房観         光部整備課長  川手  創君         運輸省自動車局         業務部旅客課長 阿部 雅昭君         海上保安庁警備         救難部海上公害         課長      佐藤 弘毅君         労働大臣官房国         際労働課長   石田  均君         建設省道路局企         画課長     渡辺 修自君         自治省財政局交         付税課長    柳  庸夫君         自治省財政局指         導課長     土田 栄作君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。相沢英之君。
  3. 相沢英之

    相沢委員 きょうは薬害問題並びにその救済制度について若干お伺いいたしたいと思います。  薬務行政に関しましては、いままで私も不勉強で余りよく承知をいたしていないのでありますけれども、サリドマイド事件キノホルム、ストマイ、その他いままで数多くの薬害問題が起こっておりますし、また、これに対応して、その救済制度をどうするかということが、この委員会におきましても、しばしば議論されてきているわけでありますが、薬事法改正並びに救済制度の創設につきまして、まず最初に、どういうような段階にあるか伺いたいと思います。
  4. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおりに、近時サリドマイドであるとか、あるいはスモン、さらにクロロキンとか、いろいろな形の薬の有害な副作用によるところの薬事紛争あるいは、その訴訟が頻発をいたしておるわけでございます。数年来、厚生省といたしましては、この医薬品の有害な副作用健康被害に対するところの救済制度構想につきまして検討を進めてまいりまして、一昨年研究会報告をいただきまして、これに基づきまして救済法構想を詰めてまいったわけでございます。  ただ、御承知のとおりにスモンといいます史上空前薬害事件が発生いたしまして、このスモン紛争処理のために政府といたしましては和解努力を続けてまいりまして、その東京地裁における和解が軌道に乗りました段階で、それとの関連も踏まえまして、一応、救済制度の第一次の事務当局試案を発表いたしたわけでございます。これに対して各方面から、いろいろな御意見が寄せられたわけでございます。一番強い御意見といたしましては、この薬害救済に先立つと申しますか、これと車の両輪をなすような、いわば現行薬事法の基本的な安全性をめぐる問題の見直しが必要であるという御意見が各方面から寄せられまして、それに基づきまして厚生省といたしましては、薬害救済薬事法の基本的な見直しの問題とを車の両輪として掘り下げた検討を行うという段取りになったわけでございます。  現在その作業を鋭意事務当局としては進めているところでございますが、できれば、この薬事法の基本的な見直し作業薬害救済とを一緒に国会に提出いたしまして御審議を願いたい、かように考えて現在その作業を進めておる段階でございます。
  5. 相沢英之

    相沢委員 その作業を進めている段階というのは前からお聞きしているわけですけれども、この国会に提出するような段取りになるかならぬかという点については、いかがですか。
  6. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 今国会におきましては、その事務的な手続としては検討中の法案ということでお願いをいたしてあるわけでありますが、現在、事務当局検討が大体終わりまして、これから関係方面との意見調整作業に入る手続のところでございます。したがいまして、できれば出したいというふうに努力はいたしておるわけでございますけれども、実際問題としては次期通常国会に提出するというような運びになるのではなかろうかと、いま考えておるところでございます。
  7. 相沢英之

    相沢委員 薬事法改正も、もちろん救済法との関連において大事な問題ではありますけれども、急がされているのは救済制度の確立なんでありますから、薬事法の根本的な改正と合わせて、この救済制度もつくりたいという考え方ではなくて、薬事法改正改正として、ぜひ、その救済制度を早くつくることに重点を置いて考えるべきじゃないかと思います。いずれの法案も今国会に提出することはむずかしいという御答弁なんで大変残念に思いますが、いまの、救済制度の方を先行すべきではないかという意見に対して、もう一度御意見を伺いたいと思います。
  8. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 事務当局といたしましては、先生指摘のとおりに、当初、現実の発生いたしますところの健康被害救済を先行させるという発想であったわけでございますが、これにつきまして、実はこの薬害救済制度の基本的な性格と、薬事法現行製造承認との理論的な関連性の問題がございまして、そのような理論的な面もあり、また一方に実際上、現行薬事法の不備をそのままにして薬害救済を先行させるということは、非常に極端な批判でありますが、一種薬害隠しというようなことになるのではないかという御意見もあったわけでございます。それらを勘案いたしまして、事務当局としては、先生指摘のように、薬害救済を急ぐ姿勢は全く変わりはございませんが、国会の御審議を願う段階においては、やはり薬事法改正法案関連させて並べて御審議を願いたい。それがまた薬事法性格との関連から考えましても妥当なあれではないかというふうに考えているところでございます。  しかし、いずれにいたしましても事務当局といたしましては、薬害救済制度の発足を一刻も早くしたい、これを急ぐということについては先生指摘のとおりの姿勢でございます。
  9. 相沢英之

    相沢委員 薬事法改正並びに薬害救済制度に関する新立法は今国会においては困難だという御答弁でありますが、これは当然、可及的速やかに国会に提出されるということになると思います。では次の国会には必ず提出されることになりますか。いかがですか。
  10. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 現在、次期通常国会に必ず提出できるように全力を挙げて作業に取り組んでいるところでございます。
  11. 相沢英之

    相沢委員 次の国会というのは通常国会とは限らないので、その点はいかがですか。
  12. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 臨時国会云々ということにつきましては、私どもといたしましては、ちょっと判断いたしかねますが、現在の作業日程からいたしますと、薬事法改正問題を含めて大体秋ごろまでには具体的な成案が、関係方面との調整を行いまして固められるというふうに考えております。
  13. 相沢英之

    相沢委員 私は、薬事法改正並びに薬害救済制度に関して最終的な結論を得るのは、これからの段階であるように伺っているので、そういう意味におきまして、これから若干の希望を込めて質問をしたいというふうに思っております。特に薬害につきましての製造業者並びに国の責任の限界、この点について特にお聞きしたいと思うのであります。  関連しまして、まず一つ伺いたいのは予防接種法でございます。予防接種法については御承知のように第十六条に「予防接種による健康被害救済に関する措置」というものが規定をされております。この規定は、予防接種法の「第四条、第七条又は第十条の規定により予防接種を受けた者が、疾病にかかり、廃疾となり、又は死亡した場合において、当該疾病廃疾又は死亡が当該予防接種を受けたことによるものであると厚生大臣が認定したときは、次条及び第十八条第一項に定めるところにより、給付を行う。」こういうふうになっております。この予防接種によって健康被害を受けた者に対する給付趣旨はどういうところにありますか。
  14. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 お答え申し上げます。  予防接種法に基づきます予防接種というのは、伝染病の発生と、その蔓延防止という社会防衛見地から国民に義務づけて実施しているものでございます。しかし予防接種いたしました場合に、いわゆる関係者過失がない場合でございましても、重篤な副反応が起きてくることがございます。そういうふうなことがございますので、社会的に公平を図るという見地から救済制度を行っているものでございます。
  15. 相沢英之

    相沢委員 社会的な公平を図るという見地からというのですけれども、とにかく予防接種をすることに伴う健康被害に対して、国が一種無過失責任を認めて、それに伴う給付というふうに、これを観念できるのじゃないかと思うのですけれども、この点いかがですか。
  16. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 そのとおりでございます。
  17. 相沢英之

    相沢委員 予防接種は言うまでもなく疾病予防に有効であることが確認されている免疫原注射または接種する。この免疫原注射接種に伴う健康被害というのは、いわゆる薬害一種であると考えていいと思いますが、いかがですか。
  18. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 そのようにお考えいただいて結構だと思います。
  19. 相沢英之

    相沢委員 予防接種法に基づく健康被害救済としての給付というものは、いわゆる薬害サリドマイドとかキノホルムとかいうようなものの薬害と多少違うところがある。というのは、予防接種通常の場合は国がいわば強制的に行わせるという点がありますから、その点いわゆる薬害と違うところがあると思うのですけれども、そうすると薬害に対して国がいわば無過失賠償と申しますか無過失責任を負っている一つの事例と考えてよろしいことは、先ほどの御答弁で明らかなんであります。  そこで薬事法の問題になるわけでありますけれども、薬事法の第十二条に「製造業許可」それから第十四条に「日本薬局方外医薬品等製造承認」二点に分かれておりますが、この「製造業許可」と、それから第十四条による「日本薬局方外医薬品等製造承認」でもって医薬品製造に対する厚生大臣の権限といいますか、それが規定されていると考えてよろしゅうございますね。
  20. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 御指摘のとおりでございますが、多少の補足をいたしますと、製造業許可の方は、いわば製造に当たりますところの事業所設備構造等チェックをいたしまして、業としての製造許可を行うものであり、十四条による製造承認は、個別の医薬品についての製造承認であるというふうなニュアンスの差はございますが、いずれにせよ、この二つの条文によりまして医薬品製造に関するチェックが行われているということは御指摘のとおりでございます。
  21. 相沢英之

    相沢委員 そこで「医薬品副作用による被害者救済制度研究会報告」に関連をして、以下また御質問を申し上げます。  薬事法の第十四条の規定によりますと「厚生大臣は、日本薬局方に収められていない医薬品医薬部外品厚生大臣の指定する成分を含有する化粧品又は医療用具につき、これを製造しようとする者から申請があったときは、その名称成分分量用法用量効能効果等審査して、品目ごとにその製造についての承認を与える。」そこで、製造業者から申請があった場合に、これらの点についての審査をして承認を与えるということになりますが、この審査の過程について、どういう手続をとっているか、御説明を願いたいと思います。
  22. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 十四条によるところの審査は非常に具体的な例といたしますと二つの種類に分かれるかと思います。特に医薬品でございますが、すでに承認をされている特定医薬品と、その成分分量用法用量効能効果等同一のもの、過去にもすでに承認されているものに対して製造承認を与えるケースと、全く新しい成分あるいは従前認められていないような用法用量効能効果等についての場合と、その二つに分かれるかと存じます。  それで、新しい成分あるいは新しい効能効果等につきましては、昭和四十二年以来、厚生省といたしましては非常に厳格な製造承認基準を設けておりまして、この新しい四十二年以降の方針に従いますと、現実的な問題といたしましては、まず第一に動物実験基礎実験と申しますが、動物実験によりまして有害な副作用等をまずチェックをいたします。さらにその上に、今度は臨床試験と申しますか、人に対する副作用問題あるいは現実特定疾病についての薬の効能効果、いわゆる治験でありますが、この実績審査いたします。このような動物実験あるいは人試験のために、普通は大体二年くらいのメーカー側の、そのような実績集積がございまして、この実績集積を、厚生省諮問機関でございますところの中央薬事審議会に諮りまして、ここで審査をしていただいて製造承認を与えるという方式でございます。すでに、もう開発され、承認されている薬につきましては、同一成分あるいは効能効果等であれば、この他の業者先行業者のものを、いわば、まねるという形で審査をいたすわけでございますけれども、これについては比較的簡単な手続で行われているところでございます。
  23. 相沢英之

    相沢委員 そうすると、厚生大臣医薬品の、特に新しい医薬品についての承認を与える場合において、ここに書いてある成分分量用法用量効能効果等審査に際して、その審査をし判断をするところの基準となるいろいろなデータは、先ほど言われました動物実験または人によるところの実験も含んで、それは原則としてメーカーデータ基礎としてやる、原則としてというか、もっぱらというのか、その点は、そういうふうに理解していいですね。
  24. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 お答え申し上げます。  その点につきましては、先進諸国いずれも共通いたしまして、開発者の側が、そのような実験データ集積いたしまして、これを当局に提出をいたしまして、その審査を受ける、これは先進国いずれも共通のやり方でございます。ただし特定の、たとえば新薬についての規格試験のごときものにつきましては、厚生省の直轄の機関でございますところの国立の衛生試験所等試験を行うというふうな、部分的に国の側の試験にゆだねられる面もございます。しかし原則的には、メーカー側実績集積であるということでございます。ただし、その場合に、その信憑性信頼性の問題もございますので、これを厳重にチェックするということと、たとえば一般に公開されている学術雑誌等に、その治験等の結果が公表されているものを使うことというふうな条件も付してございまして、これらはいずれも先進国共通審査方針であるというふうに理解をいたしております。
  25. 相沢英之

    相沢委員 その場合、いまちょっと触れられたのですけれども、衛生試験所はどういう場合に試験をやるわけですか。
  26. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 衛生試験所等を使いますケースといたしましては、新薬についての規格試験ということでございまして、その新しい薬の規格試験を行います場合の基準等がどのようなものであるべきかというふうな問題につきましては、国の衛生試験所でこれを行うという手続通常とっておるところでございます。
  27. 相沢英之

    相沢委員 三月に出されましたスモンに関する金沢地方裁判所判決理由要旨の第二に「被告国責任」という項がございますが、この中で「厚生大臣は、日本薬局方に収められていない医薬品、いわゆる新薬について製造許可等申請があったときはもちろん、その医薬品局方に収められていないが、その医薬品中の成る成分局方に収められているものであるとき、いわゆる新製剤(例えば本件キノホルム剤)」というふうに書いてありまして「について、製造等許可申請があったときは、その申請にかかる医薬品について全体としての安全性有効性審査する義務があるというべく、その成分中のあるものが局方収載品(例えばキノホルム)であるからといって、審査対象を分離し、局方収載品について右の審査を省略して他の成分(例えば賦形剤)についてのみ審査をしたり、局方収載品が主たる成分となっているからといってその製剤全体の審査を簡略にするといったことは法律上は許されていない」そして、厚生大臣右義務薬事法に基づくものである、こういう要旨の判示があるわけであります。この点について、つまりこれは薬事法解釈になるわけなんですけれども、この薬事法解釈について法制局に御意見を伺いたいと思います。
  28. 別府正夫

    別府政府委員 お答え申し上げます。  ただいま相沢委員から御質問のございました第十四条の製造承認解釈ということかと思いますが、第十四条は、先ほど来、相沢委員の読み上げておられましたように、医薬品について言えば、薬局方におさめられている医薬品は特に製造承認を必要としないが、薬局方におさめられていない医薬品製造しようとする場合には、その名称等々につきまして、その製造しようとする者から申請をし、品目ごと製造承認を与える。そういう製造承認を受けたものでなければ、十二条で製造業許可する場合に、製造業許可が与えられないという構成になっていくというふうに考えております。なお、必要でございましたら、補足して御説明いたします。
  29. 相沢英之

    相沢委員 つまり、私がお聞きしているのは、いま判決要旨にありましたことなんですが、この「新製剤について、製造等許可申請があったときは、その申請にかかる医薬品について全体としての安全性有効性審査する義務があるというべく、」云々という、その文句ですね。薬事法に基づく厚生大臣義務という点について、こういう解釈でお考えかということをお聞きしているのです。
  30. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 この判決の、これは先生お手元の要旨でございますけれども、この第二の一の部分の審査義務という点については、先生の御指摘のとおりの趣旨に、われわれとしても考えております。
  31. 相沢英之

    相沢委員 どうも質問趣旨にお答えになっていないようで、それじゃいまの判決要旨の第二項ですね。第二項にこういうことが書いてあるわけです。「厚生大臣としては、医薬品安全性確認のためには、無方式による実質的審査義務を負っている」もので、「当該具体的事案のもとで適切と考えられるあらゆる方法」を駆使して審査に万全を期する法律上の要請がある。「厚生大臣医薬品安全性確認についての注意義務は、その時代における最高学問的水準に拠ったものでなければならない」この審査に際しての安全性確認のためにとるべき措置とか、あるいは注意義務については、これはそのとおりというふうに理解されますかということなんです。
  32. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 ここに示されておりますところの、たとえば「注意義務は、その時代における最高学問的水準に拠ったものでなければならない」というくだりがございます。われわれといたしましては、その言葉の端々について別段あげつらうつもりはございませんけれども、薬事法上の何と申しますか、当局のたとえば安全性についての注意義務ということに関して申しますれば、その時代時代におけるいわば学問水準というものに即して理解さるべきものでございまして、たとえば結果的に後から、その時代学閥水準からは発見されなかったようなことが事後的に判明するというふうなことはあるわけでございます。薬の副作用については、そういうケースが非常に多いわけでございまして、その点「その時代における最高学問的水準」ということについては、われわれといたしましては、その時代における、いわば医学、薬学の一般的水準というふうに理解をいたしたい、かように考えておるところでございます。
  33. 相沢英之

    相沢委員 私は、いま訴訟になっているところのキノホルムスモンとの関係、その他この問題に関しての国の責任がどうこうという問題は、これは現に訴訟になっている事案でありますから、そのことについては私は意見を聞こうというつもりではないのです。そうじゃなくて、一般的に、この第十四条の「薬品等製造承認」に当たっての厚生大臣のとるべき措置というものが、ここの判決に示されているようなものだというふうに理解をすべきかどうかについて質問をしておったわけなんです。これは、そういう薬害に関しての国の責任がどの程度かというものを考える場合に、私は、特にこのことが重要だと思うので、質問をしているわけなんです。  そこで、このスモン金沢裁判の結果についての国の責任というのは、これは、それとして書かれているわけでありますけれども、医薬品による健康被害救済を考えます場合に、このことが関連をしてくるわけです。そこで、医薬品による健康被害救済に関する法律案の大綱、これは去年の十二月に発表されたものですけれども、この試案を見ますと、その健康被害救済に要する資金について国庫補助規定を見れば「国は、基金に対し事務費および保健福祉事業費の一部を補助する」ということになっておりまして、その限りにおいては国もこの救済事業に助成をするという趣旨は明らかであります。しかしながら、健康被害救済についての給付そのものに対する国の負担というのは、ここには認められていない。薬害に関しての国の責任ということについては、これは原則として被害救済というものはいわば製造業者負担においてやるという考え方であるので、その給付については国が負担をしないということは、その趣旨薬害救済については国は責任を持たない、そういう趣旨だというふうに理解してよろしいですか。
  34. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 国の医薬品製造承認に当たりまして、たとえば金沢判決に示されたような、その安全性あるいは有効性について、これを厳重に審査する国の行政上の責任があるということについては、これは当然のことでございます。ただし、その行政上の責任が、たとえば仮に結果的に、ある種の薬害を発生した場合に、それにつきまして国のいわゆる賠償責任と申しますか、そういう種類の不法行為責任を直ちに発生させるかどうかというのは、理論的には全く別の問題でございまして、この許可性格をめぐって、いわゆるライセンスを与えたということ、そのライセンスを与えるについての国の側の行政上の責任という問題と、ライセンスを与えられた者が実際にある種の被害を招いた場合に、その補償をどうするかということは二つ区別して考えるべきものだと考えております。  たとえば一九七六年に制定されました西ドイツの新薬事法におきましては、国の製造承認についての非常に厳重な責任規定を置いておりますけれども、発生いたしました薬害救済については、これはすべてメーカー側負担とし、これを強制的に損害保険に付保させるという方式をとっておるわけでございます。この例によりましても、そういう行政上のチェック責任と実際に起きた副作用についての、いわば民事上の責任というような問題は区別して考えるべきものだというふうに考えております。  先生指摘の、厚生省検討いたしておりました救済法案につきまして国庫負担を与えるべきかどうかということは、いま申し上げましたような理論上の問題とは別個の、いわば政策判断の問題であるというふうに考えられるところでございます。  われわれ事務当局といたしましては、昨年十二月に発表いたしました案におきましては、薬というのは、その有効性と一定範囲におきますところの副作用という、いわば盾の両面を持っておるわけでございまして、一方、医薬品によるところの疾病の治療等、医薬品のメリットを受ける人が非常にたくさんある。一方において不可避的に発生する副作用によって健康に重大な被害を受ける人もいる。こういうメリットとデメリットの間の均衡論ということからいたしまして、いわば医薬品の価格そのものの中に救済費用というものを織り込み、したがって、それをメーカー負担をするという発想でつくられたものでございます。  ただし、事務当局の立場はそのとおりでございますが、この案を公表いたしました際に関係方面から、国庫負担を行うべきであるというふうな強い御意見のあったことも事実でございます。そのような御意見もございまして、これを踏まえて、いわば予算折衝も行われたわけでございますが、薬事法との関連がございまして、これ全体を予算関連法案から切り離した経緯がございます。したがいまして、国庫負担分につきましては、事務当局の立場はいま申し上げたとおりでございますが、現在のところ最終的には結論を得られてないというのが実態でございます。
  35. 相沢英之

    相沢委員 いや、原則として薬の害について、その製造業者救済責任を負うのだという考え方に疑問を持っているわけじゃないのです。そうじゃありませんし、また、たとえば第十四条に規定されているところの「製造承認」にあります条件になっているところの成分とか分量とか、その他この決められたものを厚生省承認を得たものにたがうものを製造するとか、あるいはその製造の過程で他に劇物、毒物がまざったとか、その他によるところの、いわば製造業者の故意または過失によるところの損害に対してまで国が責任を持つべきだということには当然ならないと思う。これは明らかなんです。  そうじゃない一般の場合において、その薬を使用するところの国民は、これは厚生省製造承認をしている、認可をしている。だからその薬は安全なんだ。もちろん決められたところの量をはるかに超えて使用したとか、その他そういう薬を使用する側の問題は別としまして、その薬の安全性に対しての信頼感というのは、やはり国が製造承認しているというところにあると私は思うのです。ただ、その承認に当たって、一々全部メーカーがやっているような検査過程と申しますか、それをとれないということは私にもわかるのです。わかるのですけれども、少なくとも一般の人がその薬の安全性に対して信頼をする根拠に国の承認があるということも私は事実だろうと思うのです。だから、たとえばスモンの問題に関しましても、やはりそういうような結果を招来することがわかったかわからないかは問題がありましょうけれども、しかしながらキノホルムの使用とスモンとの関係に因果関係があるということになりますと、そのキノホルムについての製造承認をした厚生省、国にも何らかの責任があるのじゃないかというふうに考えるのは、私は、これは現行法上どうというのじゃないのですけれども、一般の人の常識としては、そうじゃないかと思うのです。この点についての大臣の御答弁をお願いいたします。
  36. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は今日の薬事法製造承認というのは、一般的に禁止をされている医薬品製造というものを、一定の基準に該当する医薬品の場合には、これを解除する行為であると思っておりまして、したがって、いわば警察許可的な行為であるというふうに、現在の法解釈としては、それが適当ではないかと思っております。したがって国は、ある製造業者から出した証明が一般的禁止を解除するに足るだけのものであれば、これはやはり製造承認をしなければいけないし、同時にまた製造承認をする義務があるものだというふうに思います。したがって私は、いまおっしゃるように法的には、今後の事件についても私どもは金沢判決について控訴をいたしておりますように、製造承認という法的な解釈をどうも今度の判決は広げているし、また予見の可能性についても、私どもはこれに対して反論をいたしておりまして、法的な責任については国にないものという考え方のもとに控訴をいたしております。  しかし先生のおっしゃるように、国民の側から見ますと、国が一々全部、相当厳重なチェックをして、それで専門家の審議会にも諮って、また何回か、こういうデータを出せ、ああいうデータを出せと言って、折り返しいろいろメーカーともやって、それだけ厳重な審査をやっているのだから、国がやっていることでもあるから安全だろうと思うという御主張は、私もそのとおりだと思うのです。一般国民から見ますとそうだと思うのです。しかし、そうだからといって、法律的な責任が直ちに国にあるという解釈には通じてこないだろう。しかし、そういう点を、お説のような国民感情も考えまして、それから同時に起こっている患者の被害の幅といいますか深みといいますか、そういう大きな患者救済の観点に立ちまして、今度は、その法的な責任はともかくとして救済に応じているわけでございますから、おっしゃるような感覚は私どもも十分持って事に当たっておる、こういうことになろうかと私は思います。  しからば今後どうするかということになりますと、私どもとして、この製造承認の問題については、やはり薬害救済という面から、特に現在の法的な性格を変える必要があるのかないのか、この点も十分よく検討してみなければならぬと思います。しかし、どうも私は、救済制度に絡んで今度の薬事法検討する場合に、この法的な性格まで一体いけるかどうか、これはいろいろ法律的にも、まだ検討しなければいかぬ問題が多々あると思いますので、いまのところ、この製造承認の法的な性格を、さらにもう一歩、何といいますか、非常に大きな完全な、国が責任を負うための判断というふうに見るかどうか、これはなお検討をさしていただきたい。おっしゃるように、国民の側のそういうこともございますから、したがって、それと同時に患者の置かれた立場というものを考えまして、一般的な行政責任の表明の仕方として、国が何らかの意味で関与すべきではないか、こう考えているわけでございます。
  37. 相沢英之

    相沢委員 私が次にお聞きしようと思うことに対する御答弁もありましたのですけれども、現行法の解釈としては、医薬品製造承認がいわゆる警察許可に当たるとするのが通説であると私も聞いております。聞いておりますが、ただ立法論として、今後もそういう警察許可というようなものに医薬品製造承認が当たるというような考え方でいいかどうか。われわれ一般の国民の常識からいいますと、あれが警察許可だというようなことは、どうも感覚的にも合いませんし、また、今後における薬害救済というものを重点に置いて考えました場合にも、立法論として、国の責任を明らかにするということの方がいいんではないかという気もするわけなんであります。  時間がちょっと詰まってまいりましたものですから、これに関連して一つ、二つお聞きしたいのは、このキノホルム薬害に関しまして、すでに東京地裁において和解が成立をしているわけでありますが、その和解に際しまして、救済に要する費用の三分の一を国が持つということになっておりますが、その趣旨はどういう点にあるか。これは国庫の負担の問題、国の負担の問題として主計局、大蔵省にお聞きしたいと思います。
  38. 窪田弘

    ○窪田説明員 このスモンの問題が起こりましたときに私ども、厚生省と十分御相談をいたしましたが、原則として薬害の問題は、薬というのは人間の健康にとって非常に有用なものではございますが、反面ある程度、被害は避けがたいという性格のものでございますので、西ドイツでやっておりますように保険方式で対処するのが最も適当ではないか、こういう議論をいたしました。しかし現在すでに発生している災害、スモンの場合は現在すでに発生している既往の災害であるということ、それから被害の規模が著しく大きいということ、半面、先ほど大臣からも、ちょっとお話がございましたが、被害者救済が早急に迫られている、こういう点を総合的に勘案いたしまして——スモンの前にサリドマイドの問題がございました。これは西ドイツでも三分の一国庫負担いたしましたし、わが国でも同様の措置をしたわけでございます。これに準じまして国庫の負担をすることといたしましたが、しかし将来は、業者の拠出によりますところの薬害救済基金を早急に設けまして、これに対処することが適当である、こういう合意のもとに負担に踏み切ったわけでございます。
  39. 相沢英之

    相沢委員 東京地方裁判所にかかっておりますところのスモン訴訟の案件のうち、和解になったのは一部ですね。ただ、その残りのものについても、厚生省としては、いま、すでに成り立った和解と国じ方式和解をすることを進めているわけですね。そこで、その場合には当然、国が救済費用の三分の一を持つということになると了解してよろしゅうございますか。
  40. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  41. 相沢英之

    相沢委員 であるとしますと、三分の一を国が持ったというのは、例外的に一件について持ったというのじゃなくて、とにかく、このスモン訴訟に関しては、もし和解という道があるならば、できるだけ、それでもって処理したいという考え方と了解してよろしゅうございますか。
  42. 中野徹雄

    中野(徹)政府委員 その点につきましても、おっしゃるとおりでございます。
  43. 相沢英之

    相沢委員 としますと、国が費用の一部を持つというのは、ただ、その社会的な影響あるいは被害が大きいということだけではなくて、そこに何らか、それは制度的なものでは、もちろんありません、あるいは心情的なものであるかもしれませんけれども、国がその責任を少なくとも一部を感じたというふうに理解されるのじゃないでしょうか。大臣いかがでしょうか。
  44. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 その責任を感じなければ、これは国が三分の一出す理由がないわけでございますから、責任を感じたことは事実でございますが、その責任は、薬事法製造許可の法的責任という意味でなくて、一般的な行政の責任を何らかの形で果たしているということで御理解をいただきたいと思うのです。
  45. 相沢英之

    相沢委員 時間がなくなりましたので、これでやめますが、私が先ほど来質問をいたしておりました趣旨は、医薬品による健康被害救済が急がされる、その制度をまず早く創設していただきたい。ただその際に、これは国の責任問題というのは、どこまで明確にすることができるか、薬事法改正とも絡む問題でありますけれども、国の責任問題をとことんまで明確にすることができなくとも、やはり何らかの形で、その給付について国も一部を負担するという考え方にした方が、今後、薬の製造業者また薬害を受けた人との間におけるトラブルを両者の問題だけに任せることなくして、やはり国も、そういう意味においての責任の一部を感じてやれるという意味において望ましいのじゃないかというふうに思いますので、これは意見として申し述べまして、質問を終えさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  46. 木野晴夫

    木野委員長 次に、矢山有作君。
  47. 矢山有作

    ○矢山委員 時間が限られておりますから、二、三の具体的な問題についてお伺いをしたいのです。  まず、具体的な問題に入る前に一つお伺いしておきたいのですが、昭和四十八年の六月に、老齢者対策に関する行政監察結果報告書というのが出されておることは御承知のとおりだと思うのです。そこで、この中を見ると、老齢者対策に関する行政監察の結果として「老人福祉施設の運営管理等について」という項があるのですが、その中の「施設の運営管理の適正化について」というところで、いろいろなことが指摘されておるのですが、その中で、給食が厚生省策定の標準栄養所要量を下回ったり入所者の嗜好を把握していないこと、衛生管理面で不十分なところがあるなどの指摘がなされております。また、職員の配置状況については、生活指導員や機能回復訓練指導員等が未配置であったり、あるいは基準を下回っている等、数多くの指摘がなされておりまして、これらの改善を図ることが求められておるのでありますが、それとともに、施設についての指導監査についての不十分さ及び指導監査に基づく指摘事項について未改善のまま放置されておる事例が多くあるということが指摘されておりまして、指導監査の効果確保に努める必要のあるということが要請されております。  そこで、この行政監察による指摘事項の改善について、厚生省はどういうふうに対応しておられるのか。そしてまた現在、こうした指摘事項が十分改善されたという認識を持っておいでになるのか。これをまずお伺いしたいのです。
  48. 上村一

    ○上村政府委員 四十八年に行政管理庁から、そういう監察の指摘がございましたので、それまでも努力しておったつもりでございますけれども、その後におきましても、予算上の措置といたしましては、措置費におきまして人員増を図りますとか、その他の施設の運営の改善を図ると同時に、社会福祉施設につきまして、本省なりあるいは都道府県知事、それによります監査というのを励行するように努めてまいっておるところでございます。  現在、その結果、指摘されるような施設が全然なくなったと思うかというふうな御指摘につきましては、数ある施設でございますから、中には例外的に、そういうものがあるということは残念ながら認めざるを得ないというふうに思います。
  49. 矢山有作

    ○矢山委員 この問題については、具体的な相当詳しい調査をしてから議論をすることになると思いますが、先ほどおっしゃったように、必ずしも十分な効果が上がってないという例が具体的に一つありますので、それを挙げて論議をしながら、今後の厚生省の対応というものをどうしていくかということで、お伺いをしてまいりたいのです。  それは、岡山県の御津郡加茂川町というところに、社会福祉法人まこと会の特別養護老人ホーム加茂川荘というのがあります。この件についてお伺いしたいのでありますが、この特別養護老人ホームは五十二年の四月に開設されました。そして収容定員は五十人でありますけれども、現在五十五人の寝たきり老人を収容し、運営されておるのであります。  ところが、開設後間もない五十二年の十月ごろから、施設運営に数多くの不正不当のあるということが外部に出てまいりました。自来、地元の町議会でも問題になり、また一般町民の間では特別養護老人ホーム加茂川荘の正常な運営を訴える会、こういうものが町民有志で組織されまして、この不正不当なやり方に対する糾弾をやっております。そういう中で県当局も、ことしの一月十四日から十五日にかけて指導監査をやりました。そして指摘事項について改善を求める等の努力をしておるのでありますが、今日に至るまで、さっぱり、その改善の効果が上がらないどころではなくて、理事が総辞職をする、後の理事の選任ができない、こういう状態で混乱をきわめておるのでありますが、これらの経過について、恐らく厚生省は十分御調査になっておると思いますので、その状況というものを、まず御説明をいただきたいと思います。
  50. 上村一

    ○上村政府委員 いま御指摘になりました特別養護老人ホーム加茂川荘、その設置者であります社会福祉法人まこと会につきましては、かねてから県の方からも話があったわけでございますが、先週、岡山県知事もお見えになり、それから昨日は地元の加茂川町の町長、町議会議長が見えて、いろいろお話をされたわけでございます。  そういった県なり町当局からのお話で私ども把握したところによりますと、話の始まりは、去年の十月ぐらいに、開設後六カ月程度のところで退職者が十二、三人もいるというふうなところから、県の地方支分部局に連絡があった。そして、ことしの初めぐらいから県庁あてに内部告発の投書というのが頻発をした。理事者がその施設を私物化しておるとか、手当が支給されておらないとか、給食内容が低下しておるといったような点が述べられたのでございます。  そこで、県自身は去年の十一月には施設に注意をしたわけでございますが、ことしの一月十三日から十四日にわたりまして、投書内容確認のために、法人と施設につきまして特別監査を実施し、一月三十日付で、その指導監査の結果を法人の理事に対して指摘したわけでございます。そして三月になりまして、設置主体であります社会福祉法人から指摘事項の処置状況が提出されたわけでございますが、現在まで聞いておりますところでは、その監査の際に指摘されました問題につきましては、改善されたのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  51. 矢山有作

    ○矢山委員 中身の実態を十分把握されてないのではないかと思いますから、この社会福祉法人がどんなでたらめな運営をやっておるか、むしろ福祉の名によって商売をして金もうけをやっておる実態というのを、県の指導監査結果に基づいて御披露申し上げたいと思うのです。  まず施設の問題でありますが、施設管理の面においては、機能回復訓練室が居室に転用されておって本来の機能を果たしておらぬ。防火管理者の設置と消防計画書の作成がなされていない。  五十二年七月開催以来、六カ月余りも理事会が開催されていない。五十二年の七月に開催された理事会の議事録も整備されておらぬ。そういう状態でありますから、監事が辞任をしても、その補充ができておらない。また職員給与の改定の案件も未処理のままになっておる。これは管理体制の理事会の問題です。  それから職員関係の問題では、生活指導員が配置基準に反して非常勤職員である。理事長が事務責任者に就任しておる。この点をもう少し詳しく言いますと、理事長の奥さんが施設長になっており、理事長が事務長を兼務しておる。したがって、これは理事長、施設長、事務長というのが夫婦で握られてしまっておるということであります。そして事務分掌を見ましても、職員の所掌する事務分掌が明らかでない。  それから次は職員の処遇の問題でありますが、職員は理事長の意のままに首が飛ばされておる。したがって、開設以来半年の間に、寮母、調理員を中心に十三名もの解職、退職者が出ておる。  給与の問題を見ますと、住宅手当が支給されておらぬ。施設長を含んだ事務職以外の職員に対しては超過勤務手当が支給されていない。期末手当、勤勉手当の支給率が理事長の意のままに決められておる。通勤手当が五十二年の四月から六月分については支給されておらない。ただし施設長と事務長と他の二人についてのみは支給をされておる。寮母への主任手当と調理員の職務手当は給与規程に定めがないのに支給をされておる。休日勤務に対する割り増し賃金が支払われていない。五十二年十月に改定された措置費に伴う職員給与の改定が行われておらない。職員給与の決定は理事長の意のままに行われておるんだろうと思います。それは決定の経緯が不明確であるということで指摘をされております。  給食は、標準栄養所要量を大きく下回っておる。このために個人で、売店で販売をしているパンや牛乳を毎日のように買って栄養補給をしなければ、やっていけないというのが実態であると言われております。  会計経理の面で、売店で販売しておるパン、牛乳仕入れ費は措置費から出されております。そして、その売上代金はまこと会の名義で預金をされております。別会計として経理をされておらぬということであります。理事長、施設長宅の電話料が措置費から支出をされております。給食材料の現金仕入れを中心に、納品書、請求書のないものが多くあり、購買量が不明確であります。周辺の商店あるいは仕入れ先の商店で調べたところによりますと、物資を購入するかわりにリベートを徴収しておるということが暴露されております。そしてさらに、入居者への小遣い支給、これが月額三千円でありますが、これについてのピンはねが行われておるということも暴露されております。  このほかに、入居者の預金通帳を保管して、日用品代だとか電話料だとかと称して、これを取り出しております。入居者家族、老人からの寄付金、謝礼金が入ってくると、そのままふところに入れております。入居者より電気料、燃料代負担金と称して徴収し着服をしております。老人に与える給食を従業員にも同時に食べさせて、従業員から実費を徴収をしております。施設名義で乗用車二台を購入して、施設の従業員を運転手にし、そして車両運行に伴う諸経費を施設負担にしておきながら通勤手当だけはちゃっかりと取っておる。こういうことが暴露されておる。  こういう施設の経営の実態というものを、指導監査の結果の中になくて私どもが現地を調査し、得た情報も交えて申し上げたわけですが、こういうような特別養護老人ホームが存在しておることを一体どうお考えになっておるのですか。
  52. 上村一

    ○上村政府委員 県が監査いたしました結果、そういうような事実があるということは私どもも承知しておるわけでございます。こういった事実そのものは、老人ホームを経営する者として、はなはだ妥当ではないというふうに考えるわけでございますが、その後、指摘されました事項について是正、改善されておるというふうな報告があるわけでございます。たとえて申し上げますと、各種の給与の問題につきましては五十三年三月に、さかのぼって支給したとか、あるいは給食につきまして、栄養量の確保ができるような給食を実施するようにした等々、指摘されておることについての改善があるわけでございます。
  53. 矢山有作

    ○矢山委員 それで、それだけの改善が行われたことで、この特別養護老人ホームのいままで抱えてきた欠陥が是正をされて、いい運営の方向に進んでおると認識されておるのか。あるいは進む可能性があると認識されておるのか、どちらなんですか。
  54. 上村一

    ○上村政府委員 こういった運営について改善の報告があったにもかかわらず、先ほど申し上げましたように、県当局なり町当局から、さらに、この法人の運営について、いろいろ問題点が指摘されるところから考えますと、これで、すべてが終わったものではないというふうに考えるわけでございます。
  55. 矢山有作

    ○矢山委員 これは、すべてが終わらぬどころの話ではなくて、いま全く混乱をきわめているのですよ。というのは、指摘された事項で、それはなるほど改善をする部分もあるでしょう。給食のピンはねをやっているということを指摘されて、それが事実ならば、これを何とか手直しをしなければいけないというぐらいのことは、いかに悪党でも考えることなんです。だから、そのぐらいのことはやる。やるけれども、基本的に運営を正していこうという姿勢が全然見られない。それはなぜかというと、県あたりからやかましく言われて、二月十日、十四日、十六日の三日間にわたって理事会を開いているわけです。それで県の方からも出席をして、いろいろと改善の問題について論議をした。しかしながら結局は、この根本的改善を図るのには、理事長を中心にした理事会のあり方にメスを入れなければ、これは改善できないだろうということで、その理事会の席上で一応全員の理事が辞職する。そして新しい理事を選んで運営をやり直そうということの申し合わせができて、異例なことでありましょうが、理事選考委員会というのをつくって新しい理事をつくった。  ところが、その理事をつくったんで、さあ理事会を開いて、これを受け入れぬかということで何遍催促をしても理事会を一向に開こうとしない。理事会を開こうとしないどころか、理事会の中の分断をねらって一、二の理事に対して辞任を要求して辞職願を出させるというようなことをやっておるわけです。ところが、辞職願を出した理事が二名おりますが、そのうちの一人は、新しい理事が選出されるまでは、いまの理事会で運営をしていくということになっておるんだから、それまでは私は留任いたしますよということを、ちゃんと文書で明らかにして、その上で辞任届を書いておるという状況ですね。  そういうような状況の中で、とうとう県当局も、幾ら言っても理事長がふてぶてしく応じてこないので、しまいには、いささか腹を立てたんでしょう、岡山県知事が西井理事長に対して三月三十日付をもって役員体制の確立について異例の指示書を交付した。そこで心臓の強い西井理事長も理事会を開かざるを得なくなって四月の二日に岡山の国際ホテルで理事会を招集した。ところが、理事会を招集したけれども、当初の議題は理事、監事の選任の件になっておったのを突如として変更をして、自分が辞表を出させた理事を補充するんだ、理事補充依嘱、監事選任ということに議題を変更して、そして理事会を押し切ろうとした。しかも、その理事会には役員でも何でもない、この社会福祉法人まこと会には無関係な人間を四人も理事長は出席をさせておった。そしてその理事会の席上で、一たん辞表を出した理事について、ここに出席する資格はないじゃないかということで大騒ぎをやって議事の進行を妨害した。そして理事会が流会した、そのままで今日に至っておる、こういう状況なんですよね。  これで一体正常な運営が確保されるんですか。このやり方を見ておると、全く理事長が、おれが金を出して、おれがこの施設をつくったんだから、おれのものだ、おれの意のままにすることを横からくちばしを出すな、こういう姿勢としかうかがえないわけですし、うかがえないだけではない、本人はそういうことを公言をしておるわけです。さらに公言をしておるどころではない、西井理事長は職員を前にして、おれは岡山県選出の○○大臣と懇意だ、あるいは県会議員の中の○○県会議員と非常に懇意なんだから、何ぼ、おまえさんたちががやがや騒いでみたところで、びくともするものではないということを放言しているわけです。こういう施設の存在というものを厚生省は一体どう考えるかということです。
  56. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるとおりだといたしますと、社会福祉法人の施設としては不適当だと思います。よく調査をしてみたいと思います。
  57. 矢山有作

    ○矢山委員 大臣、これは徹底した調査をやっていただきたいのですが、当面、監督指導に当たられる責任のある社会局長としては、やはり地元の話を聞いたり、県から言ってくるのを聞いておるだけじゃ問題解決はできぬと私は思いますよ。これはやはり現地に乗り込んでいって、実態を調査して、しかるべき措置をとるべきだと思うのですよ。地元では非常に問題にしておるのは何かというと、社会福祉法人の設立なり施設の設置に当たって認可、許可を与える、その認可、許可を与える与え方に問題があるのではないか、こういう指摘をやっておるわけであります。事は人間の生活、生命にかかわる問題なんですよ。したがって、こういうものの認可、許可に当たっては徹底した調査をやった上で認可、許可を与えるべきじゃないか。そうしないと、こういう問題というのは根絶できない、こういうふうに私は思うわけでありますが、その許認可に当たる責任者として厚生省は一体どう考えるのか。今後こういう問題に対して、どう対処しようとするのか。これを承りたいのです。
  58. 上村一

    ○上村政府委員 御指摘になりましたように、まず社会福祉法人の認可に当たりましては、役員自身が社会福祉に熱意のある者でなければならない。それから役員の構成は特定の団体とか親族で占められてあってはいけない。それから資金自身が確実に確保されていなければならない。そういった点の審査をした上で認可をしておるわけでございます。  一番むずかしゅうございますのは、法人の役員になる人の人柄といいますか、人格というものでございまして、これは判断をするのがなかなかむずかしゅうございます。そこで、こういった社会福祉法人の認可に当たりましては、岡山県なら岡山県の場合、知事を経由いたしまして、知事の意見書を添えて、そして判断をするというふうにしておるわけでございます。したがいまして、いま福祉施設が相当足らないということから、福祉施設をつくられる、そのことは私ども歓迎すべきことではございますけれども、その福祉施設の経営に当たる人が、少なくとも、きちんとした資産を持ち、福祉に対する熱意を持ち、かりそめにも、それを食い物にするような、非難を受けるようなことがあってはならないというふうに考えるわけでございまして、そういうふうな観点から指導してまいっておるわけでございます。
  59. 矢山有作

    ○矢山委員 厚生省は認可、許可を出す場合、まず第一次的に県の方が責任があるんだ、県がその実態を十分把握しなければいけないんだとおっしゃる。ところが県の方を追及すると、県の方はどう言っているかというと、最終的には厚生省が認可するのですと言っているわけですよ。そうすると、厚生省に言えば最終責任は県にあるんだ、おれは県の意見を聞いてやったんだ、こう言って責任逃れをする。県を追及すれば県は最終決定は厚生省がやるんだ、こう言って逃げる。これは一体どこが責任を持って、どこが処理していくのですか。
  60. 上村一

    ○上村政府委員 社会福祉法人を認可する最終的な責任厚生大臣でございます。ただ私、申し上げましたのは、その中で法人の役員になる人柄について、これは書類ではわからぬことでございまして、地元の人の方がよく知っておるわけでございますから、そういった点までは東京ではなかなか把握し切れない。その施設の内容なり、あるいはその施設の資産なり、そういったものについては十分審査できますけれども、人柄というのは、正直申し上げまして、なかなか審査し切れないというふうに考えるわけでございます。
  61. 矢山有作

    ○矢山委員 それはおっしゃるとおりでしょう。人柄がそう簡単にわかるわけはない。ところが、この西井という理事長の人柄については、実は残念ながら直接の地元の町の人たちもよくわからぬ。最初これをつくるんだと言って話を受けて、いろいろ話しているときに、どうも、これは多少臭いところがあるなという感じはしたと、いまになって言うぐらいな話であって、どういう人かわからない。地元としては、そういう施設がない。ないけれども要求は非常に強い。つくってやると言うんなら、これはありがたいことだというので、町は町議会議決をやって四千平方メートル以上、一千一百万円以上の土地を無償譲渡している。おまけに、さらに現金五百万円を寄付金として拠出しておる。こういう状態なんです。地元の町自体がそういう状態だから、県もまた、その人柄はわかるわけはない。厚生省もまたわからない。そうすると結局、人柄はわかりませんから、いたし方ございませんで、これは責任の持ち場所がない。  そこで私は、そういう状態であるとするなら、この認可、許可をおろす際に、一体どうその認可、許可をおろすべきかということを、人柄はわからぬということで突っぱねるのでなしに、再検討する余地があるのではないかということが一つ聞きたいのと、もう一つ、認可、許可をおろした。しかしながら、こういう先ほど指摘したような問題が出てきた場合の指導監督というものを、もっと強化すべきではないかと私は思うのです。  なるほど、社会福祉法人の解散規定もある。許可の取り消し等の規定法律の中にありますね。ところが残念ながら、取り消したり、あるいは解散をさせたり措置費を打ち切って抑えたりすると、困るのは、そこに入所しておられる老人の方々が行き場がなくなっちゃうのですよね。これが困る。そこで、こういう法律規定はあっても、その強権措置をとることができないというのが実態なんじゃないですか。こういう弱みを悪らつな人ほどちゃんと知ってござる。そういうことじゃないのですか。
  62. 上村一

    ○上村政府委員 御指摘になりましたように、社会福祉法人として認可されますと、その解散なり、あるいは役員の解職というのは、やはり社会福祉事業法に定めるところに従って行わなければならないということになるわけでございまして、本件の場合そういった規定に照らしますと、いま御指摘のようなことになるのじゃないかというふうに考えるわけでございます。
  63. 矢山有作

    ○矢山委員 いかにも気楽に人ごとのようにおっしゃっているけれども、入っている人はこれは大変ですよ。食べる物まで削られて、小遣いまでくすねられてやられるのでは、これはたまらぬです。だから、そういう解散であるとか、あるいは許可の取り消し等の措置がとりにくいんでしょう。とりにくいことを開設者はちゃんと承知しておるわけですよ。少々の悪どいことをやっても、県の監査が入ろうと、厚生省が何と言おうと、なかなか解散をさせたり、あるいは設置の取り消し等をやらせるようなことは、ようやらぬだろう。これで、のんでかかっているわけですよ。だから私は、そういう法律の仕組みになっておるということを前提にしながら、そうした悪らつな人間を施設の経営から排除していくべき、しかるべき方法は考えられないのかということを言っているわけです。
  64. 上村一

    ○上村政府委員 そういった点が、県当局も悩み、私どもの方にも相談がある点でございますが、行政庁としては、法令違反なり定款違反という事実がない限り、なかなか、そういった措置がとれない。一つのあり方としては、仮にその福祉施設に入っておる老人の処遇が不当であるというふうなことであれば、その老人ホームに措置をとる権限のある福祉事務所長が、その老人ホームから別の老人ホームに老人を移すということもできるわけでございますが、これも、いま、その施設自身の数が必ずしも多くないという事情から一つの制約がある。その取り組み方に非常に悩みのある問題であるというふうに私考えておるわけでございます。
  65. 矢山有作

    ○矢山委員 法令に違反しなければ何もできないとおっしゃるけれども、措置費を不当に流用するということは法令からは明らかに違反じゃないのですか。支給すべき小遣いのピンはねをするということは法令上違反なんじゃないですか。そういう法令上の違反を起こしておるということは明らかなんですよ。それかといって、先ほど私が指摘したように解散だとか取り消し等の措置がとれない。痛いところでしょう、あなた方も。  だから、それを打開するための方策はないかというのです。あなた方が言わぬのなら、私の方で言ってあげましょう。理事長を、こういうような法令に違反するような、あるいは不当な運営をやっておるその施設の理事長なる者は、これは解職させたらどうですか。解職させるような方向に将来これを持っていけないのか。それから、そういうような不当な経営、違法な経営をやっておる理事会の構成がえをさせるということはできないのか。あなた方はいろいろな政省令で事細かに規定をたくさんつくっておる。くだらぬ規定をつくるよりも、そういう施設を利用して、弱い者を利用して金もうけをやるような不当、違法な施設の経営をやっておる者に対して、この理事長の解職をさせるとか理事会の構成がえをやらせるということは、できないはずはないのです。それは考えませんか。
  66. 上村一

    ○上村政府委員 さっきも申し上げましたように、福祉法人の役員の解職というのも福祉事業法上の規定が要るわけでございまして、この施設は補助金が出ておる施設でございますから、福祉事業法の五十六条の二項が適用になるわけでございますが、この法人の役員が、法令による行政庁の処分なり定款に違反した場合に初めて役員を解職するように勧告することができるというのが、法律上、厚生大臣なり都道府県知事に与えられた権限の限度であるわけでございます。そして、もともと社会福祉事業法が制定されました当時は、およそ社会福祉事業を営む人は心素直な人であるというふうな大前提があったというふうに考えるわけでございます。したがいまして、社会福祉事業そのものの運営が経営者の良心を信頼して任せておけば円滑にいくものだという期待がある法律であるというふうに私ども考えておるわけでございまして、どうしても現行法のもとでは、いま、お話しになったような措置というものは非常にとりづらいということになるわけでございます。
  67. 矢山有作

    ○矢山委員 それは法令違反があろうと不当なことがあろうと、施設経営者の良心に期待するんだ、そんなことはいまは通用せぬ。まさに言うなら、それはよまい言ですよ。そういうような解職を勧告してみたところで、こういう悪らつな経営者というのは、ちゃんと法律の中身まで承知して、ここまでしか彼らはやれぬ、だから、がたがた言っても大丈夫なんだという、ふてぶてしい性格なんですよ、これは。だから、そういう者に対して、将来の検討事項として、やはり私は、そういう不当な違法行為を犯すような理事長は、解職の勧告でなしにやめさせる、理事会はその構成がえを強制的にやらせる、そういう措置検討してもらいたいと思うのです。そうしないと、こうした問題はなかなか根絶やしにすることはできぬと私は思いますよ。  さらに、あわせて検討していただきたいのは、理事長、施設長、事務長というようなものが一人で兼務をされたり、夫婦で兼務をしたり、親子で兼務をするというような、そういうことも私は禁止すべきだと思う。これはあなた方たくさんの規則なり、いろいろなものをつくっておるのだから、そんなことを考えるなら、そういう規則をつくったからといって人権侵害にも何もなりませんよ。ほっておく方が人権侵害です。でたらめなことをやらして人権侵害を起こす。さらにまた、施設長は理事会で決めるとか、こういう運営についてある程度責任が持てるような人事のあり方等についても今後検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
  68. 上村一

    ○上村政府委員 御指摘のように、社会福祉施設の数がふえるに従いまして、必ずしも私どもが当初に期待したような経営が行われないものも出てまいっておりますので、私ども検討課題として考えてまいりたいというふうに思うわけでございます。
  69. 矢山有作

    ○矢山委員 あなたと議論をしていると、どうも、いつものれんに腕押しみたいなので、やはり検討しなければならぬところは検討して、ぴしっと歯どめをかけていかなければだめですよ。第一どうなんですか、いま社会福祉施設の大部分は民間福祉法人に任されているのでしょう。公的な経営というのはわずかしかないんじゃないですか。たとえば特別養護老人ホームの場合は、私は全国的なのは調べておりませんから、ここで岡山県の例を言いますと、特別養護老人ホームが十八施設ある。千五百人ほど収容しております。ところが、そのうちで十七施設は民間施設なんです。そして現在二十二ぐらいの新設計画があるようでありますが、これも全部民間施設なんです。私は、こういうように民間に社会福祉施設の経営を依存しておるというところが最大の問題だと思うのです。  厚生省、憲法二十五条というのは御存じですね。憲法二十五条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」こういうふうに規定されておるところを見ると、やはり、こういう施設というのは民間に依存するのでなしに、国で積極的にやっていくべきではないかと私は思う。あなたのおっしゃるように、慈善心に期待をしたり、奉仕の精神に期待するということは、もう昔話、いまはそんなことはできない。そうすれば一方においては、民間福祉施設の、入所者に対して、すべての犠牲をかけていくような不当な違法な経営をやらせることを規制するとともに、もう一つは、そういった施設の経営を、民間の社会福祉法人に依存するのでなしに、公的なものとして経営をする方向を目指すべきだと思うのですが、これは社会局長よりも厚生大臣の方が御答弁をいただくのに適当だと思います。
  70. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は、すべて国なり地方公共団体で社会福祉事業というものはやるべきだという議論にはくみしないわけでございます。しかし、先生のおっしゃるように、民間のそういう福祉施設が非常に多くなってきておる今日の現状ですから、立法論として当然、現在の法律の不備は直していかなければならぬと思います。したがって、よく実態等をそれぞれ調べました上で、必要な措置法律上できるようにしなければできないのか、あるいは行政上、現在の法制のたてまえでも十分できるのか、この点をよく検討いたしまして、おっしゃるように相当強い監督指導あるいはその他の権限を持ち得るような措置を何らかの意味で検討させていただきたいと思います。
  71. 矢山有作

    ○矢山委員 厚生大臣、私は、すべてのこういう社会福祉施設を国でやれというふうに押しつけておるのでなくて、やはり民間依存型というのを是正していく方向を目指すべきだというのが一つです。これはぜひ、そういうことで検討願いたい。  それから、先ほど来申しておりますような、こういう不当、違法な経営が野放しにされないようにするための人事のあり方その他について、具体的に言うなら理事長の解職の問題あるいは理事会の構成をかえさせる問題、理事長、施設長、事務長の兼務を禁止させる問題、あるいは施設長は理事会で選んでいくというような問題等について、さらに改善方を検討していただくということを、先ほどのようにお約束願ったと考えてよろしいですね。
  72. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃる点等の内容、全部というようには私はまだ検討しておりませんから、あれですが、社会福祉法人としての本当に実の上がらないような施設があった場合に、これを改善さす法的な裏づけをどういうように持っていくかということを早急に検討をいたしますし、同時に、これは立法しなければならないことになれば、その間の問題もありますので、現行法のもとでやり得る最大限の努力をしてみまして、そうした事例の起こらないように私どもとしても善処していきたいと思います。
  73. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは、この問題について実は地元では加茂川荘運営正常化特別対策委員会というのが町議会に設けられておるわけであります。ここの委員長をやっておる赤木という町会議長がおりますが、この人の言葉を御参考までに御紹介申し上げて、そして次の質問に移りたいと思うのです。  赤木さんは、こういうことを言いました。私は今回この件に関与してみて、日本の福祉行政がいかに底の浅いものかがよく理解できたし、私は大変な勉強になった。これらの施設が一度認可された後には、町では意見を述べることはできても決定的なチェックすべき法的根拠はなく、経営者はしたいほうだいの野放しである。これはひとえに許認可に問題があり、県や厚生省責任はきわめて大きいものがある。私たちは、このような施設が個人の経営に任されるような福祉行政に問題があり、できるだけ公的経営が本来のあり方ではないかと考える。県と厚生省に抗議をし、責任を明らかにしていくべきだと考えております。これが対策委員長の赤木さんの言葉です。これは十分あなた方でかみしめておいていただきたいと思います。  そこで、この問題につきましては、これで質疑を終わりまして、次の質問に移らせていただきたいと思いますが、これは沖繩の関係の問題であります。  去る二月二十三日に、海洋博覧会のありました本部町で、脳性麻痺の子供これは九歳だということですが、これを抱えた夫婦が、その子の将来に希望を失い、他の四人の子を親元に預けたまま親子三人で自殺するという悲惨な事件が起きて、県民に大きなショックを与えているということが報道されました。恐らく御承知でしょうが、新聞報道によると、その障害児は鹿児島の施設これは国立南九州病院ですが、鹿児島の施設に入所中で、一時帰省中の出来事であり、かねて両親は県内の施設に入れることを希望していたが、県立の施設は満杯で待機しなければならない事情にあったと言われております。そうだとするなら、この事件の底には、施設整備の貧困から、幼い子供を遠く離れた本土にまで預けなければならないという現状があるということを私は無視できないと思うのです。そこで厚生省当局は、こういう状態をどうお考えになりますか、まず承りたいのであります。
  74. 石野清治

    ○石野政府委員 確かに沖繩県の場合は重症心身障害施設の数、ベッドが非常に不足いたしておりまして、昨年の十二月現在で見ましても全体で重症心身障害児の数が二百八十二名おりまして、そのうちで入所している者は百五十六名という数字でございます。したがいまして、百二十六名というのが在宅のまま残されておるわけでございますが、そのうちで、さらに医学的に見まして入所が必要だという者が六十二名、こうなっております。  私の方は重症心身障害児施設につきましては、社会福祉施設の中でも一番最重点に整備を進めていくということでやっておりまして、沖繩県に対しましても、できるだけ早く、その整備計画を立てて、やってほしいということを前から申し上げておるわけでございます。私の方が県から聞いている範囲内におきましては、五十三年度においては計画がございませんで、五十四年度に現在ございます沖繩療育園のベッドを拡充したいという話は聞いております。
  75. 矢山有作

    ○矢山委員 六十二名の入所を急ぐ重症心身障害児・者がいるということでありますが、早く施設の整備をやって入所措置をとっていかぬと、こういう問題が起こるではないか。特に沖繩の場合は、本土と違って隣の県に施設があるから入れるとかなんとかいうようなことができないわけです。はるばる海を渡って、何ぼ近くても九州まで来なければならぬわけですから、それだけに施設整備が急がれる、私はこういうふうに思いますので、ひとつ厚生省では、その施設整備を急ぐように努力をしていただきたいと思うのです。  そこで、施設整備を急ぐということに関連してお伺いをしたいのは、昭和五十一年七月に開所しました国立療養所琉球精神病院内に重症心身障害児のベッドが八十床確保されておるということであります。ところが五十二年十二月末現在で五十二人だけが入所して、二十八ベッドがあいておる。これはもったいない話なので、二十八ベッドあいておるのなら、どうしてここに入所を進めていく措置がとられないかと思うのですが、これは、厚生省の方はどうお考えなんですか。
  76. 石野清治

    ○石野政府委員 確かにおっしゃるとおり二十八名の欠員がございます。これは国立療養所の問題でございますので、私が答弁するのはいかがかと思いますけれども、現在、看護婦につきましては、おおむね確保できたわけでございますが、医師が充足されていないということで、実は医師不足のために入れられない、こういうことに聞いております。
  77. 矢山有作

    ○矢山委員 医師不足のために入れられぬということでありますが、この療育園には専従の医師はおるのですか、おらぬのですか。
  78. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 国立療養所琉球精神病院には、専従の精神科医を中心とした医師がおります。
  79. 矢山有作

    ○矢山委員 それで、お伺いしたいのですが、精神科を中心とした医師と言われるのですが、本来なら、十分に看護婦なり医師なり保母なりを確保した上で、これを入所させるというのが本来のあり方です。私もそういう方向で努力すべきだと思うのですが、しかし何にしても先ほど来の話のような状態ですから、二十八名を入所させるということが不可能な状態なのかどうか、その点いかがですか。
  80. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 純粋に医学的なことを申しますと、先ほども児童家庭局長がお答えいたしましたように、精神科以外の整形外科医その他必要でございますので、なかなか困難でございますけれども、一応看護サービスを中心に考えますれば、看護の職員は充足しておるわけでございますから、入れることは不可能ではないと思います。
  81. 矢山有作

    ○矢山委員 私は、十分な医師の確保ができてない状態の中で入れろというのは、実際いささか矛盾を感ずるのです。矛盾を感ずるけれども、いま聞くと看護婦さんは充足されておるというようなお話のようですから、したがって、二十八人について早急に所要の職員を確保するという努力をすることを前提にしながら、社会局と医務局の方で話し合いをして、二十八人入所の措置をとるということはできませんか。
  82. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 現場の病院とも、よく相談をいたしまして、前向きに慎重に検討いたしたいと存じます。
  83. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは、いまの御答弁を信頼いたしまして、無理な点もあるということは重々私どもわかりますけれども、緊急に処理する必要があるとも考えますので、御処置をいただきたいと思います。  最後に、もう一つだけ、ちょっと時間が過ぎたようですが、お聞きをしたいのです。  昭和四十九年の三月から建設を始めて、三年後の昭和五十二年に完成を予定しておった宜野湾市我如古の国立療養所がまだ完成せず、その結果、筋ジストロの小児用病棟四十床も利用できないままになっておるというのですが、この状況はどうなっておりますか。また、いつからオープンできるのか承りたいのです。
  84. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 計画どおり進めば本年十月からオープンいたします。そのときに筋ジスの病棟四十床もオープンいたします。
  85. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、この病院について私が聞いておるところでは、国立療養所沖繩病院は当初の構想、計画と実際に建設されている計画とでは大きく食い違っていて、関係地元住民たちには現在大きな不満と動揺があるのだ、こう言われておるようであります。というのは、地元の方では一般診療をもやってもらえる病院になるだろうという期待があったやに聞いておるし、また、そういう話し合いで着手をされたのではないかと思われる節もあるわけであります。沖繩は御存じのように、四十九年末で人口十万人当たり医療従事者は全国各県の最低で、全国平均の二分の一に満たぬという状態でありますから、したがって、地元の要望としては一般病院としての機能も備えてもらいたいということは私はわかる気がするのです。そこで、こうした地元の要望との間の調整等をおやりになって、そういう希望に沿っていくべく努力するという御意向がおありかどうか、最後に承っておきたいと思うのです。
  86. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 確かに昭和四十九年着工以前に地元の方においては総合病院を希望していらっしゃったと存じます。しかし現在の計画は、種々検討した結果、八十床の増床をいたしまして、従来三百十床でございますが三百九十床にする。そのうち結核が二百五十床で、一般、これは子供の慢性疾患を考えておりますが百床、筋ジスが四十床というふうに、一般病床も百床考えているわけでございます。この体側で当面、進んでまいりたいと考えておりますが、一番問題になりましたのは、近く開設が予定されております琉球大学医学部付属病院がすぐそばにできる予定でございますので、そういうことも勘案して現在の計画が作成されたものと考えております。
  87. 矢山有作

    ○矢山委員 もう一つだけ県立の沖繩療育園の運営についてお尋ねしたいのですが、この施設では長年の要望であった集団訓練指導棟が五十三年度建設されるということになっておるのですが、これに対する補助がなかなかむずかしいのだという話が一つある。これがどうなるのか。それからもう一つは、この療育園に隣接した、かなり広い土地があって、そこをこの療育園が確保して、そして施設の増設をやりたいということを考えておるようでありますが、残念ながら療育園が購入を希望しておる、その土地というのは、本土復帰前に非常に安い値段で某生命保険会社が購入したのでありますが、最近では、かなりの金を出さぬと、とても売ってくれぬというので、その土地確保に悩んでおるという話もあります。そこで、これに対して沖繩の実情を踏まえながら厚生省として考慮いただける余地があるかないか、その二点お聞かせいただきたい。
  88. 石野清治

    ○石野政府委員 第一点の集団訓練指導棟の問題でございますけれども、これにつきましては機能訓練室が現在ございまして、それを拡充すればいいのか、あるいは別個に必要なのかどうかにつきまして十分検討いたしまして、もし機能訓練上必要だということになれば検討いたしたい、こう思っております。  それから第二点の土地の問題でございますが、これは社会福祉施設全般に通ずる問題でございまして、土地の確保の問題について特別の助成ということは現在考えておりません。
  89. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは時間がいささか超過いたしましたが、これでやめます。いずれにいたしましても、ただいま申し上げました問題については御善処方をお願いして、質問を終わります。
  90. 木野晴夫

    木野委員長 次に、川本敏美君。
  91. 川本敏美

    ○川本委員 先ほど来、矢山議員から岡山県の老人福祉施設、特別養護老人ホームの実態についていろいろ話がありました。私は冒頭まずそれに関連して大臣にお聞きしたいと思うのです。  この間も四月三日の毎日新聞ですが、老人ホーム行きはいやと言って一人暮らしの老人が自殺をしておるのです。これは四国の高松ですけれども、四月二日に老人ホームに行けと役場から言われて、いやだと言って自殺をしておる。全国的に在宅老人のアンケート調査をしますと、私は死ぬまで家にいたいという答えがもう圧倒的に多いわけです、今日までの日本のいわゆる老人福祉対策というものは、明治時代の養老院に始まって今日まで、いわゆる福祉施設に収容することが中心になって行われてきたわけです。しかし居宅の老人はほとんど、死ぬまで家にいたいというわけです。厚生大臣、死ぬまで家にいたいですか、それとも福祉施設に行って死にたいですか、どちらですか。
  92. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は、老人が自分の家にいたいという気持ちは、これを尊重して老人対策をやるべきだと思います。私自身も恐らく、そうなるだろうと思います。いまのところは、そう老境にも入っておりませんので、まだ自分で方針は決めておりません。
  93. 川本敏美

    ○川本委員 大体、ここにおられる方で、私は老人ホームに行って死にたいと思っておる人は一人もないと思う。やはり死ぬまで家にいたいというのが本当だと思う。ところが、これから迎えようとしている、わが国の老齢化社会の中で、老人の数というのはますます激増してくる。昭和九十年には大体千八百万人、全人口の一八%以上が老人になっていく。こういう老齢化社会を迎えようとしておるわけですから、そこで福祉施設中心の老人対策では、もう追っつかなくなるのじゃなかろうか。そうなりますと勢い在宅老人あるいは在宅の心身障害者、精神障害児等の対策から、さらに幅広い在宅対策に、その中心が移されていかなければならないと思うわけです。  そこで、まずお聞きしたいのですが、現在、わが国において介護を要すると思われる老人あるいは身体障害者、精神障害児の数は、それぞれ何名ぐらいおりますか。
  94. 上村一

    ○上村政府委員 合計いたしますと八十四万六千人ぐらいだというふうに推定しておるわけでございます。このうち老人は三十八万七千人、それから大人の身体障害者が二十六万三千人ぐらい、それから精神薄弱の人たちあるいは身体障害の子供、そういうものを合わせますと十九万六千人。したがいまして、冒頭申し上げましたように約八十四万六千人ぐらいいるというふうに推定しておるわけでございます。
  95. 川本敏美

    ○川本委員 その中で、先ほど来論議をされておりましたような、いわゆる養護老人ホームとか特別養護老人ホームあるいは身体障害者の福祉施設その他に入所している人々の数は何名で、在宅の数は何名ですか。
  96. 上村一

    ○上村政府委員 老人福祉施設、たとえば特別養護老人ホームでございますが、それから身体障害者の場合には身体障害者老後施設があるわけでございますし、それから重症心身障害児施設等があるわけでございますが、この施設の数が全部で二千百四十五、入所定員がトータルいたしますと約十五万でございますが、この中で介護を要すると思われる人たちを対象にする定数というものは約十一万人、つまり施設へ入る者は約十一万というふうにお考えになっていただければと思います。したがいまして、八十四万六千人から施設に入ります十一万を除きましたものが約七十三万になりますが、これは在宅ということになるわけでございます。
  97. 川本敏美

    ○川本委員 いわゆる介護を要する人たちの圧倒的多数が在宅であるということが、いまの御答弁ではっきりしたわけですけれども、その在宅の方々の中で、いわゆるその家族によって介護でき得る人と介護できない人とに区別されると思うのです。そこで、家庭で介護できない人の数はどのくらいですか。
  98. 上村一

    ○上村政府委員 さっき申し上げました介護を要する人で家庭にある者が約七十四万と申し上げましたが、その中で家族の介護ができるというふうに推定されていますのが四十三万でございます。それから家族の介護が不可能だというふうに推定されますのが約三十万、こういうふうに考えておるわけでございます。
  99. 川本敏美

    ○川本委員 現在、老人福祉法の十二条とか、あるいは身体障害者福祉法の二十一条の三などによって、いまおっしゃった約三十万人の在宅で介護を要する人であって家族で介護できないという人を重点に、いわゆる家庭奉仕員、ホームヘルパーが派遣されるようになっておると思うわけです。現在、全国の市町村で、この人々の介護といいますか介助といいますか、そういうお世話のために設置されておるホームヘルパーの数は何名ですか。全国の市町村全部について、これが設置されていますか。その点お答えいただきたいと思います。
  100. 上村一

    ○上村政府委員 まず去年の九月末の数字でございますが、全国の三千二百七十九市町村の中で三千百五十六市町村、約九六・二%になるわけでございますが、この九六・二%の市町村が家庭奉仕員を置いておる。そして家庭奉仕員の数は一万二千六百二十人でございます。五十三年度は若干増員をいたしまして二万二千九百二十名配置することになるわけでございます。ちなみに都道府県、指定都市合わせますと五十六あるわけでございますが、その中で二十九の都道府県、指定都市が全市町村設置ということになっております。
  101. 川本敏美

    ○川本委員 いまおっしゃる数字でいくと、五十三年度で大体一万二千九百二十人のホームヘルパーが設置をされる。そして全国の市町村の中で九六・二%が大体設置をされておる。設置されていないところは百数十である。こういう御答弁ですけれども、私は私の選挙区の奈良県の実態について、ことしの一月に調べました。そうしますと県下四十七市町村の中で、いわゆる未設置の町村が現在二町村あります。そして設置はしておるけれども家庭奉仕員を設置してある数は一名だというのが全市町村の中で二十三町村あるわけです。そうすると四十七市町村のうちで二十三町村が家庭奉仕員の数は一名、そしてあと二カ所が未設置、こういうことになると、簡単にいいますと五〇%以上は一名しか設置してない。これは奈良県だけじゃなしに全国的にも、こういう風潮があると思うわけで、厚生省から家庭奉仕員を設置せよと言うものだから設置はしておるけれども、それは名目的に一名だけ設置してある。対象ケースについては、調べてみますと一人の家庭奉仕員が二十ケース、多いところでは四十ケースくらい担当しておるわけです。そすると、老人福祉法や身体障害者福祉法で言う週二回というようなことはもちろん、これは家庭奉仕員という名前のいわゆる家庭訪問員に変わってしまっておるんじゃなかろうか、こういう感じがするわけなんです。そういう点について厚生省は、一名でも構わぬ、設置さえすればいいという考え方なのかどうか。それとも老人福祉法や身体障害者福祉法に言われるように実質的にいろんなお世話ができるような体制をつくらなければいけないと思っておるのかどうか。その点についてお聞きしたい。
  102. 上村一

    ○上村政府委員 私ども補助金を計上いたしまして家庭奉仕員の配置を市町村に奨励しておるわけでございますが、さっき御指摘になりましたように、週二回訪問できるような体制をとることが好ましいというふうに考えておるわけでございまして、実際に毎年、家庭奉仕員の数もふえてきておるわけでございます。市町村の設置率を見ましても、五十年度が九四%、五十一年度が九五%、五十二年度は、さっき申し上げましたように九六%と伸びてまいっておるわけでございますが、一般的に考えますと、市町村にもいろいろなタイプがあるわけでございまして、農村部に参りますと、家庭奉仕員に頼るよりも、むしろ地域社会の中で対応されているケースというのが相当あるのじゃなかろうかというふうに推定するわけでございます。いま御指摘の奈良県の、ある町が一人だからといって少ないとか多いとかというのは、その地域の事情からも判断しないと、いいか悪いか、なかなかにお答えしにくいのじゃないかというふうに思うわけでございます。
  103. 川本敏美

    ○川本委員 前回、ことしの二月十六日ですが、私がこの社会労働委員会で、この問題について質問をいたしました。そのときに局長は、いわゆる老人とか身体障害者の介護については、これは市町村の固有の事務である、こういう御答弁をされたと思うわけです。私は、そういう意味は、これは地方自治法第二条第九号に該当するのだというお考えだと思うのですけれども、心身障害者対策基本法の第十三条では「国及び地方公共団体は、心身障害者の家庭を訪問する等の方法により」云々という文言があるわけですね。いわゆる「国及び地方公共団体は、」ということで国の責任も明らかにしておる。老人福祉法の場合は、そういうことは何ら書かれていないから、これは全く市町村固有の事務だという地方自治法第二条第九号を盾にとっておられると思うのですが、先ほどもお話がありましたように、こういう諸問題については、私は、憲法第二十五条から見て、やはり国の責任はあると思うわけです。だから、市町村が固有の事務として持っておる、そういうところで、市町村が家庭奉仕員を設置するか否かは市町村長の判断にゆだねるべきであって、義務的に設置せよというようなことを義務づけるのはおかしいのだという厚生省の基本的な解釈は、私は憲法二十五条に反すると思うのです。やはり、この問題について国と都道府県の責任はどうなのか、国や都道府県がどういう守備範囲を持っておるのか、こういうことを明らかにすべき必要があると思うのです。それについてどのように考えておられますか。
  104. 上村一

    ○上村政府委員 二月十六日のこの委員会で私、家庭奉仕員の派遣事業のようなものは市町村の固有の事務ではないかというふうに確かに申し上げたわけでございます。それから、老人対策というのはいろいろあるわけでございますが、老人の所得を保障する年金のような仕事というものは、国全体の規模で統一的に行わなければならない仕事であるわけでございますから、国自身の仕事ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。それから養護老人ホームあるいは特別養護老人ホームのような幾つかの市町村にまたがってあるような施設に御老人を入れる仕事というのは都道府県の仕事ではなかろうか。それに比べまして、在宅対策と言われるものの一つであります家庭奉仕員の派遣事業というのは、それぞれの老人の家庭の個々の必要性に応じた、きめの細かいサービスというものが提供されるということになるわけでございますから、どうしても老人のニーズというのを的確に把握できる市町村が、その事業を実施するのが一番適当であるというふうに思うわけでございます。  しかしながら、こういった寝たきりの御老人等の日常生活のお世話をする仕事というのは非常に大事な仕事でございますから、家庭奉仕員を派遣する事業の経費について、国と都道府県と市町村がそれぞれ三分の一の費用を持つ。五十三年度の予算に即して申し上げますと、国が四十八億円持ち、都道府県が四十八億円持ち、市町村が四十八億持つ。市町村の固有の仕事であるけれども、国や都道府県がお手伝いをするということで、その経費の一部を負担するということになっておるというふうに考えるわけでございます。
  105. 川本敏美

    ○川本委員 昭和三十七年二月一日付の時事通信第八百九十九号厚生福祉版で、当時の厚生省社会局施設課長の瀬戸新太郎さんが談話を発表しておられます。これは、その当時から家庭奉仕員がいよいよ設置されることになった、ちょうど施行の時期に当たってですけれども、この事業が公的性格の強いものであることに着目して、その設置主体は市区町村または都道府県とすることを考えていた。だから厚生省は、当時これは市町村固有の仕事だとして、こういう家庭奉仕員を派遣する事業は市町村でなければいけないというのではなしに、都道府県も設置主体の中に入れて考えているということを明らかにしておるわけです。それがいつの間にか都道府県ではいけないで、市区町村の仕事だというようにきめつけてしまうのはおかしいんじゃなかろうかと私は思うわけです。その点について、昭和三十七年から今日までの間に厚生省の考えが大きく後退してきたというふうにしか私は理解ができないわけです。  それと同時に、家庭奉仕員の問題についてですけれども、その瀬戸さんは同じときに、事業の性格と社会的ニードから判断して奉仕員の職は恒常的な常勤の職員であることが望ましいところであり、また多分に公的性格を有するものと考えられるので一応常勤の公務員とすることを予定しているが、こういう言い方で家庭奉仕員像というものを言っておられるわけです。ところが、これも大分、当時から実情は違ってきておると思うのですけれども、現在、厚生省としては家庭奉仕員というものの位置づけを常勤のものとして考えておるのかどうか。非常勤と考えておるのかどうか。さらには、これを公務員にしていくのが妥当だと考えておるのかどうか。その点について、まず意見をお聞きしたい。
  106. 上村一

    ○上村政府委員 まず、昭和三十七年から家庭奉仕員の制度が始まったわけでございますが、この家庭奉仕員という、当時から見ますと耳なれない制度について、直ちに市町村が置くことができないような場合もあろうから、そういう場合には都道府県が応援をしなければならないということだと思うわけでございます。と申しますのは、やはり都道府県から奉仕員を派遣するということは事実問題としても必ずしも適当ではないのではないかと私どもは思うわけでございまして、後退したのではなくて、老人福祉に対する理解というのが市町村の段階、都道府県の段階、国の段階というふうにきめ細かく浸透していった結果ではなかろうかというふうに思うわけでございます。  それから次の、家庭奉仕員の勤務の形態でございますが、これは従来から原則として常勤とするように指導してきておるわけでございまして、年々その常勤化率というのもふえておるわけでございますが、この前も申し上げましたように、市町村が考える問題でございますから、市町村が場合によると非常勤にする方が適当だと思って社会福祉協議会等に委託をされておるような場合についてまで、これは市町村の職員にしなければならないというようなことは、なかなか言うべき筋合いのものではないのではないかというふうに思うわけでございます。
  107. 川本敏美

    ○川本委員 ここに私は、こういう古い新聞を一つ持ってきたのですが、これは一応ごらんをいただきたいと思うのです。昭和三十四年七月六日の毎日新聞の社会版に「家庭奉仕員 ホーム・ヘルプ・サービス 来年度からつくる」という見出しで大きな八段抜きの記事が、ここに出ておる。これを見ますと「家庭の主婦がお産や病気、その他の事情で子供の面倒をみられないことがある。こんなときに子供を放任しておくと事故や病気などの原因をつくりやすい。そこで厚生省は児童福祉の立場から、こういうとき子供の世話や家事の手伝をする家庭奉仕員制度(ホーム・ヘルプ・サービス)をつくることになった。子供たちの幸福と出産前後の母体の保護、女性の職場獲得がねらいである。」こういうことで「お産や病気に出張子供の面倒をみる制度」こういう大きな記事が出ておるわけです。そしてここには厚生省児童局企画課の談話が出ておるわけです。「子守りとか女中とかいうものはもう過去のもので、これからは子供の保育を中心に、人手が必要な時には安心して頼める人を国が世話してやる必要がある。いわば現在の家政婦にはっきりした身分を与え、仕事の目的を明らかにしたものである。」これは来年度から実施しますというところまで書いてあるのです。いろいろ読んでみますと「国庫負担分として一億五千万円を要求、来年度から実施するため準備を進めている。」この制度はその後、実施されておりますか。
  108. 石野清治

    ○石野政府委員 三十四年当時でございますので余り記憶ございませんが、調べてみますと、おっしゃるように、確かに当時、厚生省の児童家庭局の局内でホームヘルパー制度について検討した事実はございます。そのときの背景を調べてみますと、当時、施設内分娩というのがまだ普及いたしておりませんので、せいぜい五〇%程度であったわけでございます。それから、もう一つは、保育所自身の普及率も非常に低かった。さらには母子健康センターというのもなかった、こういうことで、現在の状態と当時の状態とはまるで違うわけでございます。そういう中で検討されたわけでございますけれども、残念ながら、省内の議論におきまして結局外に出ないで、そのまま要求されなかった、こういうことでございます。  そこで、この問題についてどう考えるのかということが一つあると思いますけれども、ついでに申し上げますと、出産の問題になりますと、保育所の措置基準の第四号の中に、はっきりと書いてございまして、そういう場合には、その子供を保育所に預けることができる、措置する、こういうことになっております。それから同時に病気の場合につきましては、特に長期の場合につきましては当然、保育所の措置基準に一番該当するわけでございますので、当然、保育所措置によりまして対処するということができるわけでございます。なお、出産のような場合は、きわめて一時的な場合でございますので、むしろ家族なり親類なり知人なり、あるいは友人なりの援助による場合が非常に多いわけでございまして、特に、この問題についてホームヘルパー制度を現在の時点で考えるべきかどうか、これは問題であろうかと思います。
  109. 川本敏美

    ○川本委員 ヨーロッパの先進諸国は全部、現在実施しておるわけなんですね。早くから実施している。いわゆる一家の主婦が疾病とか出産とか事故のために入院したり臥床したりしたときは、その家が崩壊の危機に瀕しておる、こういう判断から、要請があればヘルパーを派遣する。これは低額所得者だけとは限らない。だから有料の制度もあるわけです。ヨーロッパの先進諸国あるいはカナダ、アメリカ等においても、もうすでに、こういうことは法律によって実施をされておるわけですね。  日本も福田総理が先進国首脳会議というのに、ときどき顔を出しますけれども、経済的には先進国かしらぬが、福祉の面では物すごい後進国だと私は思うのです。だから、先進国というのなら、経済的な先進国並みのことだけではなしに、先ほど来取り上げている、いわゆるホームヘルパーの問題、在宅老人や身体障害者、あるいは乳幼児、児童対策、こういうことについても先進国並みにやらなければ、本当の先進国とは言えないと思うわけです。  昭和三十四年に、こういうきわめてユニークで進歩的な制度が厚生省の内部で議論をされて、そしてもう、あすからでもやるように新聞にまで、でかでかと出たのが、先ほどからの答弁を聞くと外に出ずじまいと言っておるが、ちゃんと新聞に載って外に出ていますよ。ところが厚生省は今日これをほおかむりしている。これを見ると、厚生省は何ですか、思いつき行政をやっているのですか。そのとき思いついたことを、ぱっと発表して新聞に載るけれども、やらなかったら素知らぬ顔をしてしまう、そんな思いつき行政で国民の福祉や健康が守れると思うのかどうか。この点について厚生大臣、これはいまからでも遅くないですから、こういうことを検討してみる気があるかどうか、ひとつお聞きしたいと思う。
  110. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 企画やアイデアあるいは理想を追求することは、もう私は前から先輩として、大いに若い人たち、厚生省にいろいろなことを言っているわけでございますが、たまたま、そういうようなことをぜひやってみたいと考えた児童局の課の考えが外へ出たのだろうと思うのでございます。決して悪い考えじゃないと思っております。しかし実は、最初に御議論がございました老人等につきましても、まだホームヘルパーという制度がなかなか十分ではございませんし、また保育所の要望等が、そういう場合に非常に活用されておる点もございますし、いろいろ考えまして、優先度というものを考えますと、私どもとしては、まだまだやらなければいけない他の面がたくさんございますから、経済的な一流国が、どうも福祉では二流、三流じゃないかと言われる御批判は甘んじて受けなければいけない面がございます。しかし、やはり事の軽重といいますか、緩急のそれぞれのことを考えていかなければなりません。したがって、まだ十分ではありませんので、いま直ちに、いい制度だとは思いますが、力を余り分散をすることも、窓口だけ広げて、それぞれの対策について充実していかないということもよくないことでございますので、私どもは、これから老齢化社会を迎えるに当たっての対策を、まず重点的にさせていただきたいと考えておるわけでございますので、大変いいアイデアだと思いますが、いましばらく御猶予をいただきたいと思うわけでございます。
  111. 川本敏美

    ○川本委員 厚生大臣は、ただいま日本は経済的には世界の一流国であるけれども、福祉については二流、三流国であるということを認められました。私は、一日も早く世界の先進国の仲間入りをさせることが厚生省の一番の大事な仕事だと思うわけです。その点について、これからひとつ御努力をいただきたいと思うのであります。  そこで話を進めまして、五十三年度の予算の中で、家庭奉仕員の給与については、どのようになっていますか。
  112. 上村一

    ○上村政府委員 五十三年度予算に計上しました給与の額は、月額九万五百円と活動費が一千円ということになっておるわけでございます。
  113. 川本敏美

    ○川本委員 この九万五百円プラス活動費千円、この給与は、どういう根拠によって算出されたものなのですか。妥当だと思っておられるのか、その点についてお聞きしたいと思う。
  114. 上村一

    ○上村政府委員 家庭奉仕員の方々が定期的に御老人なり、あるいは身体障害者の日常生活の世話に当たっておられるという業務の実態にかんがみまして、五十二年度の決められました給与に公務員のアップ率を掛けて九万五百円にし、それから新しく活動費というものを計上したわけでございまして、私ども、五十三年度においては妥当ではなかろうかというふうに考えます。
  115. 川本敏美

    ○川本委員 家庭奉仕員という方の仕事の内容を、いまさら申し上げるまでもないと思うのでありますけれども、常勤の家庭奉仕員として一日に二軒、三軒という老人家庭を訪問して、食事の世話から洗たくから、家の掃除から買物から、病院へ通う介助から年金の受け取りから、あらゆるお世話をしてきておる方々に対する報酬としては余りにも少ないんじゃなかろうかと私は思うわけであります。現在、全国で家庭奉仕員の常勤、非常勤の割合はどのくらいになっていますか。
  116. 上村一

    ○上村政府委員 五十二年四月現在で、九一%が常勤、非常勤が九%でございます。
  117. 川本敏美

    ○川本委員 常勤の率においては、世界的にも、わが国は常勤率が高いということは、これはもう世界的な文献が示しておるところですので、その点はいいわけですけれども、そこで、この経費については、先ほどお話があったように、三分の一が国、三分の一が県、三分の一が市町村、こういう割合で負担をするということになっておる。私は、九万一千五百円という金額は、仕事の内容から見ても、公務員の格づけから見ても、物すごく低きに失すると思うのです。だから、これは少なくとも来年度から、仕事の内容にふさわしい給与に引き上げる必要があると思うのですが、その点については後ほどお答えをいただきたいと思う。  そこで自治省にお聞きをしたい。この都道府県の三分の一、あるいは市町村の三分の一の負担については地方交付税で配分されておる、このように厚生省答弁をしておるわけです。それについて自治省、どのような実情になっておりますか。
  118. 柳庸夫

    ○柳説明員 お答え申し上げます。  ただいま、お尋ねのありました家庭奉仕員に対する都道府県及び市町村の負担分についての措置でございますが、従来から普通交付税の中で国庫補助金に対応する地方負担額相当分を措置をいたしておりまして、昭和五十三年度におきましては、先ほど厚生省の方からお答えございましたように、国費で四十八億円措置されておりますので、それに対応いたしまして、都道府県分、市町村分とも、それぞれ同額の四十八億円を措置いたすことになっております。  そこで、具体的な配分の方法といたしましては、基準財政需要額の算定の仕方といたしまして、都道府県、市町村とも、標準団体というのを想定をいたしまして、それぞれ必要な経費を積算いたしておるのでございますが、この関係について都道府県分につきましては、全国の、先ほどお答えのありました一万二千九百二十名を割り返しまして、都道府県の標準団体は人口百七十万の規模を想定いたしているのでございますが、百七十万の県におきましては百九十四人分、これは昨年度は百九十人でございましたが、四人増員ということで百九十四人分、これの年間の所要額が、国庫補助負担金の受け入れを含めまして一億四千二百万円になりますが、その二分の一、七千百万が国庫負担でございますので、県費として七千百万円措置をすることになっています。それから市町村でございますが、市町村につきましては、人口十万の市を標準団体といたしておりますが、人口十万の市におきまして十一人分といたしまして一千二百万、これにつきましては国、県の支出金が八百万参りますので、市の一般財源分としては四百万円を措置することといたしております。もちろん、これは交付税の基本的な性格からいたしまして、人口百七十万なり十万の団体においては、これだけの家庭奉仕員を置けというような、強制したり義務づけたりするものではございませんが、全国水準からいたしまして、これだけの標準的な行政をやるための必要な財源は交付税でちゃんと措置してありますよということの積算になっているわけでございます。
  119. 川本敏美

    ○川本委員 自治省に、もう一度お聞きしたいのですが、市町村であれば十万の標準団体で十一人という想定だ。そうすると、人口一万ぐらいだったら一・一人ぐらい、いわゆる補完係数みたいなものがあって、いろいろ計算されるんだろうと思うのですが、その補完係数で計算されても、人口一万ぐらいであれば一人ぐらいになってしまうのかどうか。あるいは人口二十万、三十万という都市は、この二倍、三倍というような数字が出てくる係数になっておるのかどうかということを、ひとつお聞きしたいのと、もう一つは、先ほど、お話がありましたように未設置の町村が全国で何ぼかあるわけです。そういうところも、係数的には、これはいまの説明からお聞きすると、やはり基準財政需要額の算定に入っているんだから、設置してあろうとなかろうと配分されておることになるんじゃなかろうかと思うのですが、その二点について、もう一度お答えいただきたい。
  120. 柳庸夫

    ○柳説明員 人口一万なり何十万という市あるいは町の場合でございますが、この家庭奉仕員は社会福祉費の中で措置されているわけでありますが、社会福祉費の算定につきましては、測定単位は人口でございまして、人口に大体比例をして算定をすることになっておるわけでございますけれども、個々の団体によりまして地域的な特殊性というのがございますので、いろいろな補正係数を乗じて算定をいたしますので、完全に正確に比例するということにはならないわけでございます。  主な補正といたしまして段階補正あるいは態容補正というものがございますが、態容補正は個々の市町村によりまして相当差がございますので、人口比例関係で一番問題になります段階補正、これは人口が少ない場合には一人当たりの行政経費は割り高になるだろう。また人口が多くなれば一人当たりは割り安になるだろうということで段階補正というのを設けているわけでございますけれども、いま、お尋ねのありました人口一万ぐらいの市の場合には、この段階補正係数が一・二一というような数字になっておりますので、これは社会福祉全体として一人当たり割り高になるだろうということで、この家庭奉仕員自体の人数に、そのままぶっかけていいということには直ちにならないのでございますけれども、仮に標準団体の十一人に乗ずれば一・三人ということで、コンマ以下の数字でございますけれども、そういう数字が出てくる。また逆に、大きい方をとりまして、人口百万ぐらいの指定都市ではどうなるかということになりますと、段階補正係数が一応〇・八二ということになっておりますので、十一人を単純にぶっかければ九十人ぐらいの数字になる、こういうような状況になっております。  それから未設置の市町村、小規模の町村の場合でございますけれども、その場合にも交付税の客観的な計算方式によって算定をされますので、一応この家庭奉仕員に相当する経費というものも理論的には含まれておる。ただそれを人数で割り返しますと〇・何人とかいうことになりますので、問題もあろうかと思いますが、一応、額としては何らかのものが措置されている、こういう状況になっているわけでございます。
  121. 川本敏美

    ○川本委員 もう時間がありませんので簡単にお聞きしたいと思うのです。  そこで厚生省にお聞きしたいのですが、現行の老人とか身体障害者に対する家庭奉仕員のいわゆる運営要綱がございますね。この運営要綱そのものが、サービスの内容についても、まだまだお世話する範囲を広げる必要があるんじゃなかろうかというような点が一つ。  もう一つは機構の問題について、家庭奉仕員というものはばらばらに作用しておる。その上で家庭奉仕員を指導する主任家庭奉仕員といいますか、あるいはその上の家庭奉仕員の指導員といいますか、そういうような制度をつくっていかなければ、福祉事務所や市町村の民生課等では、家庭奉仕員自体がケースケースについてのいろいろな相談や悩み事、それを実質的に相談する人もなければ機構もなっていない、こういうような点があろうかと思いますので、そういう機構、制度を充実する必要があるんじゃなかろうか。あるいは財政的には、先ほど来の話で、いろいろわかりましたが、たとえて言えば、都道府県は家庭奉仕員のいわゆる研修とか、そういうようなことをやるという任務づけを明らかにしていく、こういう意味においても、やはりいまの運営要綱では不十分だ。  私は、家庭奉仕員という言葉はいけないと思っておるわけです。家庭奉仕員の奉仕という言葉が、日本人にはどうも無料奉仕のように解釈されて、そして無料奉仕から、さらに奉仕を強制するというような思想に発展をして、現在、家庭奉仕員の方々が非常に苦慮しておられると思うのです。だから、この家庭奉仕員という言葉も家庭介護員というような名称に変えて、家庭介護員制度というような、家庭介護員派遣法というような法律でもつくる必要があるんじゃないか、またそういう段階に来ておるんじゃなかろうか。そうして、先ほど来、出ておりました出産とかその他病気のときにも出張する、あるいは低所得ということに限定をせずに、老人であっても、一家の主婦であっても倒れたとき、これは所得のある人に対しても、先進諸国でやっておるような有料化も導入した、いわゆる先進国並みの家庭介護制度というものを法制化する時期に来ておるのではなかろうか、このように考えておるわけです。この点について、大臣から最後に御答弁いただきたい、このように思います。
  122. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は、家庭の介護をやる、ことに在宅の、広い意味で心身に何らかの欠陥のある方々に対して家庭の介護をやるという在宅対策は非常に必要なことだと思っております。ことに、いまのヘルパーの制度を見ますと、場合によって専門的な技能が非常に欠けるようなこともございまして、かえって受け入れ側で、来てもらわぬでもいいというような傾向も間々あるやに聞くわけでございますので、したがって、ホームヘルパーには、やはりおっしゃるような一定の資格が必要なんじゃなかろうか。それによって、だんだん地位の向上を図っていくということもあわせて考えていかなければいかぬだろうと思っておりますが、ただ、それを法律で決めるべきなのか、あるいは一定の基準等を設けまして研修等も十分やりましてやる方がいいのか、この辺は検討をいたしたいと思っております。方向としては、相当訓練されたホームヘルパーでなければ実際の効果が上がっていかないんではなかろうかと思います。  ただ、ここで問題になりますのは、やはり日本でおくれておりますボランティア活動、これをできるだけ活用していく道を今後も考えなければいかぬ点もございますので、あるいは場合によって老人のいわゆる福祉事業対策として、老人といいますか、老境に入った方々で、健康な方々の社会的な活動の場を与えていくということも、一つには考えていいんじゃないかとも思いますので、法律というよりは、もっと一定の基準を設けて、できるだけ、そういう方々に対する一つの組織をつくり上げ、そして専門の常勤の方々がその指導員になりながら、いく体制を、研修等の方法によって実を上げていくような方法も、あるいはいいんじゃないかとも考えますので、いろいろ検討いたしまして、何らかの意味で、おっしゃるように相当の技能を習得して、しかも、それが地位の向上につながるような、また受ける側の福祉にも十分役立つような方途を考えていきたいと考えておりますが、これは私が就任しましてから、この制度の議論をいろいろ拝聴しまして、いま考えておる点でございますので、直ちに実行するという意味で申し上げているわけじゃありませんけれども、十分おっしゃる方向を踏まえて検討さしていただきたいと思います。
  123. 川本敏美

    ○川本委員 最後に一つ私の意見だけ、もう少し、つけ加えておきたいと思うのです。  人口十万人当たりに換算して、スウェーデンでは実に人口十万人に対して八百二十五人のホームヘルパーが、もう昭和四十八年ごろに設置されておるわけです。わが国は現在、人口十万人にしますと大体十人から十一人弱という形です。だから、スウェーデン並みのホームヘルパーを設置するということになりますと、日本の人口はいま一億一千三百万余りですから、九十三万二千九百人ぐらいのホームヘルパーが必要です。いま一万二千人ですから、いかに日本がおくれておるかということは、ボランティアも含めてですけれども、これ一つを見ても明らかです。これに近いのは、ノルウェーもイギリスもアメリカも、やはりそういう形で非常に進んでおるわけです。ひとつ、この後進国の汚名を早急に返上するために、大臣に前向きで早急に善処していただきますようにお願いして、私の質問を終わります。
  124. 木野晴夫

    木野委員長 この際、午後一時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  125. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。草川昭三君。
  126. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  本日は盲導犬のことについて、いろいろと現状の訴えをさせていただきたいわけでございますが、本日のこの委員会を開催するに当たりまして、委員長初め各党の理事の諸先輩の方々に大変お世話になりまして、心からお礼を申し上げさせていただきたいと思う次第でございます。  まず第一に、盲導犬のことでございますけれども、最近は車社会で交通事故が非常に多くなってきておりますし、どこの道路を歩いておっても激化しておるわけでございますが、盲人の単独歩行はきわめて困難になっております。きょうも傍聴に来ていただいておるわけでございますが、中部盲導犬協会の調査によりますと、盲人で外出できなくなった方は三六・七%である。交通が非常に繁雑になったために、こういうアンケートが出ております。外出の場合、付添介助者が要るのですけれども、多くは家族に頼らなければいけないので、家族労働というのですか、家族にしわが寄るといって悩む方が四七%に近いわけであります。しかも、お父さんとかお母さんとか、あるいは奥さんとか、介助者がついておりながらも交通事致に遭われた例が一七・二%にも及んでおります。それだけ結局、外出をする視覚障害者の方々が危険な思いをなすってみえるわけでございますが、盲導犬を持った方々は、非常に気楽に外出できるようになった、胸を張って町を歩くことができたと大変喜んでおみえになるわけですが、また逆に、犬がきらいだ、盲導犬を見ると大きいのでびっくりするとか、そんな方もおみえになりまして、いろいろな意味での偏見がございます。  そこで、まず警察庁にお尋ねしたいのですが、今度の道交法の一部改正法律案のトップに、身体障害者の通行を保護するための規定を整備したい。目が見えない者は盲導犬を連れて道路を通行することができるという非常に画期的な改正がでております。これも心から敬意を表したいと思っておりますが、盲導犬を同行している場合の事故の発生というものは一体どのような状況なのか、まずお伺いをしたいと思います。
  127. 鈴木良一

    ○鈴木説明員 お答えいたします。  盲導犬を連れた目の見えない方の交通事故は、現在まで私どもが確認しておるものは二件でございます。そのいずれも、盲導犬の行動が不適切であったために起きたものではございません。
  128. 草川昭三

    ○草川委員 ただいま、盲導犬の事故は二件で、盲導犬自身による事故ではないということでございますが、それはたとえば、ほかから車が無謀運転で突っ込んできたとか、そういうことによる事故なのか、お聞かせ願いたいと思います。
  129. 鈴木良一

    ○鈴木説明員 二件のうち一件は、歩行者が横断しようということで横断歩道の手前で待っていたわけでございますけれども、盲導犬の方は歩道上におったわけでございますが、目の見えない方の方が安全確認のために片足を一歩車道に踏み出したという形に対して、車の方が逆に漫然と運転していたということで起きた事故でございます。もう一件は、歩行者が盲導犬を連れて横断歩道を横断中であったわけでございますが、途中まで行きました段階で、車の方はその歩行者を認めたわけでございますけれども、歩行者の方がとまるであろうという形で漫然と進行したために被害者に衝突した、こういう事案でございます。
  130. 草川昭三

    ○草川委員 いずれにいたしましても、盲導犬は戦前から細々ながらもあるわけでございますが、非常に長い歴史の中で事故の発生というのは非常に少ない。これは信頼性が非常に高いという結果だと思うわけであります。  盲導犬というのは、御存じのとおり交差点に来ますと、ぴたっととまりますし、車の流れを自分の目で確かめて黙々と障害者の方々の案内をしていくわけでございます。また障害者の方々も、盲導犬によって、ひとり歩きができるということは、いままで夢であった、羽が生えて鳥になったような気持ちだとおっしゃっておみえになるわけでございます。そして、歩く自由なくして本当の意味での幸せというのはない。交通量の多い中で、迷いようなく胸を張って歩くことができるようになったし、白杖よりもコンプレックスなしに歩くことができるという喜びを持ってみえるわけですが、実は全国でわずか二百三十頭ぐらいしか、いまいないのです。全国の視覚障害者の方々は約二十五万人。少なくとも十人に一人は、盲導犬と一体となって手足として歩きたい。わがものの足だ、あるいは手だ、体の部分だとおっしゃってみえるわけでございますが、残念ながら盲導犬の育成は民間に任されておりまして、国の助成は一銭もございません。わずかに自治体の援助よりないわけでございますが、ひとつ厚生大臣に、この盲導犬そのものの育成あるいは助成等についての基本的なお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  131. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 盲導犬は、おっしゃるように視覚障害者にとって、その歩行を助ける上で非常に大きな役割りを担っておると考えます。御熱心に御推進を願う草川委員に、私も心から敬意を表するわけでございますが、ただ、生活用式等が諸外国と違いますので、その普及にはいろいろな問題点があるわけでございますが、できるだけ、この隘路の打開に関係省庁の協力を求めてまいりたいと思います。  なお、盲導犬に対する国民の理解の促進と育成方法等についても今後十分検討してまいりたい、かように考えます。
  132. 草川昭三

    ○草川委員 いま、いろいろと生活様式が違うというようなこともおっしゃられたわけでございますけれども、アメリカは昨年、カーター大統領になりましてから、いわゆる身体障害者の方々に対する差別の禁止法という法律ができまして、公共施設等への立ち入りを差別しては相ならぬ、こんな法律もあるわけです。私は、そういう外国の例を持ち出してきて、こちらがどうのこうのと言うつもりはございませんけれども、いま大臣の方から、盲導犬の役割りの大きさということは認められておるわけでございますが、残念ながら、いま盲導犬の同伴が、公共施設等に自由な立ち入りが認められていない例も多いのです。私は、これは一つの差別だと思うのですけれども、公共施設等を、障害者の方々なり、あるいは盲導犬同伴の方の立ち入りが自由にできるように改造をしてもらいたい、そんなような要求もあるわけでございますし、事実、アメリカの障害者差別全廃政策というものは、公の施設には手話通訳だとか、あるいは点字タイプだとか、いろいろなものを置かなければいかぬということがありますし、それを断ったら処罰される、こういうことになっております。しかもアメリカの保健・教育・福祉省、日本で言えば厚生省のような役所の公民権事務局の局長さんは、三十五歳だそうですけれども全盲の方で弁護士出身だというのです。役所にも、どんどん、こういう目の不自由な方々が高い地位についておみえになるわけでございます。ここで盲導犬は公共施設に自由に立ち入りさせるべきだと思うのですけれども、社会局長に基本的なお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  133. 上村一

    ○上村政府委員 こういった公共施設へ立ち入る問題につきましては、施設の管理者の判断にゆだねられておるのじゃないかと思うのです。したがいまして、管理者の理解の程度、それから、そういった公共施設の一般利用者への影響、いま、お話しになりましたような設備条件、そういったいろいろな問題があると思います。したがいまして私どもとしましては、アメリカの例もございますけれども、公共施設について、できる限り盲導犬を利用する盲人の方々にとって不便の生じないような配慮がなされるように要請をしてまいりたいというように考えるわけでございます。
  134. 草川昭三

    ○草川委員 いま、管理者の判断に任されておると言っておりますけれども、基本的には厚生省姿勢が大切だと私は思うのですが、具体的に一回、例を挙げて申し上げてみたいと思うのです。まず最初に環境庁の方から。  国民宿舎に宿泊を申し込まれた盲導犬同伴の方がみえるのですが、断わられておる例があるのです。私は、いまの局長のお話からいっても、これはおかしいと思うのですが、国民宿舎に対する今後の盲導犬同伴者に対する態度を、どのようにお考えになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  135. 佐藤善也

    佐藤(善)説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、国民宿舎は地方公共団体の整備、運営する全く公共的な施設でございまして、広く国民の皆さんに御利用いただいておるわけでございます。したがいまして、その利用について差別があってはならないというふうな考えは、私どもも基本的に持っておるわけでございます。盲人の方が国民宿舎を利用される場合、先ほど来、厚生省からもお答えがございましたように、宿舎の設備条件と申しますか、その他そのときの利用の実態等を勘案した上で、実際には支配人の判断にまつということになるわけでございますが、御利用なさる盲人の方々に、できるだけ御不便を与えないように配慮いたしたいというふうに考えております。つきましては、近く開催が予定されております全国の国民宿舎の支配人の研修会等の機会をとらえまして、前向きに、そういった面の指導をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  136. 草川昭三

    ○草川委員 いま、国民宿舎への出入りの差別にならないようにというので、近く全国支配人研修会で、そういう申し入れをするということでございますので、それをひとつ前向きの答弁として受けとめますが、現実に、きょうお見えになった方に、私ちょっと午前中に聞きましたら、やはり、こういう国民宿舎の手配でも困っておる、こういうお話がございますので、ぜひ、この支配人研修会で、盲導犬と一体になって泊られる方には差別のないように取り扱われたい、このように申し上げます。  第二番目に、厚生省の方へお聞きしますが、たまたま駅の前で待ち合わせをしたいとか、あるいは、いろいろと会合したいという場合に、レストランだとか喫茶店を盲導犬同伴で利用をする。こういう場合に保健所の方の通達で、公衆衛生上困るから出入りをやめてもらいたいという話があるわけであります。私は、盲導犬とペットとは違うと思うのです。愛玩のための犬とは違って、本当に人間の体と一体になって、手足になって、しかも、そのことによって、どんどん仕事がふえていったり生活の安定につながるわけでありますから、私は体の一部として、それこそアイメイトとして盲導犬を理解すべきではないだろうかと思うのですが、公衆衛生上の問題についてお伺いをしたいと思います。
  137. 山中和

    ○山中政府委員 食品衛生法は、食品衛生の確保ということを目的にしておりまして、盲導犬がレストラン、喫茶店等の客席に立ち入ることについては、衛生上の特段の規制は行っておりません。保健所からという問題は、恐らく都道府県知事が、こういうレストランとか旅館の調理場、そういうところへ動物を入れてはいけないという規制をしております。そのことでございまして、客席に立ち入ることにつきましては全く規制はございません。
  138. 草川昭三

    ○草川委員 いま、客席に入ることについての特別の通達を出していないというお話でございますが、一部では誤った、そういう理解をするところもあるわけですから、ぜひ世論形成というのでしょうか、あるいはPRというのですか、そういうようないろいろな機会を通じて、いまの趣旨を下部に流していただきたい、私はこのように要望を申し上げておきます。  三番目に、これも厚生省関係があるわけですが、厚生年金会館で盲人の方々のチャリティーショーがあったときに、盲導犬同伴が拒否をされている例がございます。そして、いろいろな要望がございまして、ごく最近では盲導犬を一時、別のところで預かって本人が聞かれるというようになっておるわけでございますけれども、それはおかしい。やはり身体障害者の方々が文化的な催しにどんどん参加することは国民の願いでもあるわけでございますし、私は、盲導犬の入場を認めるような方向で検討してもらいたい。特に全国のホール協会、いろんな催しをいたしますホール協会の理事長は厚生年金会館の館長だそうでございますので、特に社会保険庁からも、そういう要望を出してもらいたいと思うのです。  盲導犬というのは、たとえば犬のきらいな人がいて、かみつかれるんじゃないかとかいいますが、極端なことを言うと、他に非常にどうもうな犬がいて盲導犬にかみついても、血が流れても一切ほえない、主人のために忠節を尽くすという、今日的にはとても理解ができないような、盲導犬の方が私どもより頭がいいですね。そして忠実でありまして、私はうちの女房にも、せめて、こう言いたいのですが、それは別の話といたしまして、実は、それぐらいに盲導犬というのは絶対的な信頼があるわけですから、私は、ホールの中に入れても間違いがない、こう思うわけでございますが、社会保険庁の方から見解を聞かしていただきたいと思います。
  139. 大和田潔

    ○大和田政府委員 お答え申し上げます。  厚生年金会館におきます盲導犬の取り扱いにつきましては、ただいま先生おっしゃいましたように、盲導犬を受付でお預かりいたしまして、案内係が御本人、お客様を席までお連れする。演奏等が終わりましたときに案内係がお客様をまた御案内して盲導犬と一緒に帰っていただく、こういうような取り扱いをしておるわけでございます。これは先生おっしゃいましたように、ホール客席に盲導犬同伴で入場をさせるということにいたしますためには、何と申しましてもやはり一般入場者、それから主催者あるいは出演者、こういった人たちの理解を得なければならない。私ども、そういうような見地から、これから理解を得るような努力をしていかなければならぬ。理解を得るような努力をいたしまして認識が深まりました段階におきましては、先生おっしゃいましたように、盲導犬と一緒にお入り願って、そして客席にお座り願う。お客様にお座り願い、犬もそこで待ってもらうというようなことで措置していきたいと思うわけでございます。まず何といいましても、先ほど申しましたように一般の認識を、これから深めていかにゃならぬ、そういう観点で努力をしてまいりたいと思います。
  140. 草川昭三

    ○草川委員 一般の方々の認識というのも、私どもも、いろんな運動の中で大変理解が深まってきておると思いますし、障害者差別の撤廃法案が、アメリカの場合ではカーター大統領あたりが率先的に、こういう法律をつくっておみえになるわけでして、あらゆる公共施設では差別をすれば処分をされるというぐらいに非常に前向きの動きが一つの国ではあるわけです。ヨーロッパでも大体、障害者の方々に対する理解というのがあるわけです。やはり、いつまでも放置をするならば、犬はこわいとか、きらいだとか、ほえたらどうだなんという後ろ向きの空気しか生まれてこないわけですから、私はぜひ前向きに処置をしていただきたいと思うわけです。  次に、ではホテルの場合はどうなんだろうか、あるいは旅館の場合はどうなんだろうか。あるいはビジネスホテルの場合は、盲導犬同伴の場合に断るような例があるんじゃないか。あるいはまた、今後旅館なんかの一般の利用について、運輸省はどういうようにお考えになるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  141. 川手創

    ○川手説明員 お答え申し上げます。  先生のただいまの御趣旨はまことにごもっともでございまして、目の御不自由な方々に対しても何ら差別なくお泊め申し上げるということは、ホテル、旅館のごとく公共的性格を有する施設のあり方としては当然のことと私どもは理解しております。先ほどのお話にもありましたように、日本の盲導犬は全国で二百三十頭、うち百十頭は東京でありまして、あとは地方に少数、点在しているということでございますが、昨今における日本の旅館、ホテルの盲導犬をお連れになったお客様に対する対応ぶりを、私ども、できる限りで調べさしていただいたわけでありますが、たとえば東京のある大きなホテルでは、宿泊を全く拒否してはいない。昨年実際に数名ではございますが御宿泊いただいた例があります。その際に、エレベーターの御利用を御遠慮いただく、あるいはできる限りルームサービスを御利用いただきたいというようなことを条件にしたことはございます。それから名古屋のホテルの例でございますが、名古屋のある大きなホテルを二カ所調べましたが、これにつきまして宿泊を拒否をした例はございません。それから東京のまた大きなホテルでありますが、動物は原則として宿泊させないというたてまえをとっておりますが、盲導犬の場合は、そういうことはしてなくて、お泊め申し上げるということを聞いております。また別な大きなホテルの例では、これまた動物は原則として宿泊させない。ただし盲導犬については別な考え方を持っておりまして、これは現在のところは、お申し込みの実例がないそうでございますが、ありました場合は前向きに検討したいというようなことを言っております。それからまた別なあるホテルでは、原則としてお断りするということは考えておりません。ただ、お連れになった犬を一時、別な場所でお預かりし、そのお預かりしている間、目の御不自由な方を車いす等で御案内申し上げて、別のかっこうで、その間補てんするというような措置を講じておるところもあるそうでございます。  それから今度は旅館の例でございますが、余り小型旅館の例を知りませんが、私ども大型、中型の旅館について概況を調べましたところ、原則としてお断りはいたしていない。ただ、旅館の場合は、まだ現実の例が余りございませんので、ありました場合は、たとえば犬だけ別のところへ、ちょっとお預かりして、お泊め申し上げるというかっこうで対処しておるということを聞いております。  それからビジネスホテルでございますが、これはやはりホテルと似ておりまして、原則として動物は泊めないというたてまえを貫いておりますが、盲導犬の場合はやはり別に考えておる。しかも、これも実例が余りないのでございますが、かような実例に対しては前向きで検討したいということを言っております。  それから私ども御参考までにと思いまして、在京の外国政府の観光機関等を通じて、これはもう御案内かと思いますが、外国の例を調べたわけでございます。フランスの場合には宿泊は可能であります。ただし、犬を部屋には入れず、別のところにお預かりしているというのが通例であるようでございます。それからドイツも全くオーケーでございます。それからイギリスも、もちろんオーケー、それからイタリアも宿泊可能で、余りこういうこと自体が問題になっていない。それから米国も同様でございます。また東南アジアの例として香港を調べましたが、香港も同様でございます。ホテルに関しましては、世界の大勢として、こういうふうになっております。  ただ、日本の宿泊施設の場合には、原則として動物を断るという、そういうことが何となく観念として定着しておりまして、これは外国の場合が皆オーケーで、日本の場合断っているというのは、やはりそこに商慣習というか、あるいは一般観念的な慣習というか、いい悪いの前に、そういうような考え方の違いもありますと思われますので、これについては啓蒙というか今後の指導の対象になろうかというふうに思っております。  私ども、盲導犬の場合には先ほどのお話にもありましたように、いわば一般の畜犬類とは異なり、目の御不自由な方の手となり、足となり、いわば体の一部というようなものでありますから、しかも十分に訓練されていると伺っておりますので、全く普通の犬と区別して考えなければなりませんですが、ただ、私どもの所管しておりますコマーシャルベースの宿泊施設におきましては、やはり多少、他のお客様との触れ合いというか、そういうことをちょっと観念上、考慮しなければならない場合が出てくるとか、あるいは施設そのものがあっても、施設の使い方について多少やはり制限が加わっている例がございますので、たとえば御利用の際に余り御迷惑のかからない、あるいは御負担のかからない程度で条件をつけさせていただくことがあるかと思いますが、今後はぜひ御趣旨を体して、盲導犬を連れた方のお申し込みの際に御不自由をおかけすることのないよう、また御不快な思いをなさることがないよう、関連のホテル協会、ビジネスホテル協会、それから国際観光旅館連盟、日本観光旅館連盟と、こういうようにお泊まりになりそうな関連の業界団体がございますが、その業界団体を呼びまして、御趣旨を十分徹底するよう十分な指導をいたしてまいりたいと思いますので、ひとつ、かように御了解願いたいと思います。
  142. 草川昭三

    ○草川委員 いま運輸省の方から、外国ではほとんど、このようなことが問題になっていない。いろいろな経過があって日本ではというお話がございまして、全く経過はそのとおりだと思うのです。それだけに私は、いま言われた関係するホテル協会だとかビジネスホテル協会、こういうところに対して、ひとつ十分な申し入れ、指導をして、差別のないように取り扱っていただきたいと思うわけであります。  続いて運輸省の方に。過日、自動車局長の方から全国のバス協会に、盲導犬の乗車を認めるという通達が出ました。私は、これは非常に前向きで結構だと思うのですが、原則として犬は口輪をつけて乗せてもらいたいという通達であります。ところが、盲導犬は口で体温の調節をするわけでございますので、輪をかけるということは一種の虐待につながるわけでございまして、通達には「原則として」という言葉がございますけれども、盲導犬は訓練をして、盲導犬協会のいわゆるナンバーのついたメタルをつけて乗車をしておるわけですから、それこそ一般の犬とは違うわけであります。どんなに尾っぽを踏まれようと、危害を加えられようとも、血を流しても主人の言うことだけはぴしっと聞く。ただし、主人の言うことを聞かない場合が一つある。それは何かというと、主人が交差点で、もうこれは車もないから横断しよう、行けと言ってサインをしたときに、遠くから車が来たという場合には、この犬は主人の命令を聞かないわけですね。それほど訓練された犬であるわけでありますから、もう本当に人間の手足の一環として盲導犬というのを理解をすべきではないだろうか。さすれば、この自動車局長の通達も、かなり前向きではございますけれども、輪っぱを外すというように、ぜひ指導をされたいと私は思うのでございますが、自動車局のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  143. 阿部雅昭

    ○阿部説明員 お答え申し上げます。  盲導犬を連れた盲人の方が、一般のバスにも安全かつ円滑に乗車していただくことができるよう、私ども昨年来、関係者と協議を進めてまいりまして、去る三月二十七日付で関係の通達を出しました。その通達は先生も御存じいただいていることと存じますが、第一番目には「盲導犬であることの証明書を携帯し、盲導犬にハーネスを装着して」いただいていること、二番目に「車内では一般乗客の乗降等に支障のない場所に着席」していただくということのほかに、三番目に「当該路線に常時乗車していること等により一般乗客の理解が得られている場合以外は、原則として盲導犬に口輪を装着すること。」ということにさしていただいております。  私ども、この基準をつくりますに当たりまして、吉祥寺の訓練施設も拝見いたしましたし、また、吉祥寺までのバスに口輪なしで乗車されるところに同行させていただくということもやらせていただきまして、実際上は口輪をつけずに乗車していただいて何ら問題がないというような印象を受けたわけでございますが、まあバスは車両が非常に狭いということでございますし、また現在の交通状況等から急ブレーキをかけなければならない事態というようなことも、いろいろ予想されますし、バスの利用者の中には、どうしても犬がちょっとこわいというような方もおられるということも予想されますので、一般的に利用されていない、乗客もなじみが薄い路線などでは、念のために口輪をしていただきたいということで、このような基準にさせていただきました。しかしながら、このような問題は、他の乗客を含む一般社会の理解が深まるならば当然、解決することだと私ども考えておりますし、口輪をせずにバスに乗車されるようなときが、できるだけ早く来るよう、私どもも今後努力してまいりたいと思いますし、関係者に対する指導も現在、行っているところでございます。また、厚生省なり警察庁の方からも、いろいろPRをしていただいているところでございますので、今後そういう方向で、さらに努力したいというふうに思います。
  144. 草川昭三

    ○草川委員 どなたのいろいろな御答弁の中でも、社会の理解が大切なので、そういう理解が深まったら、ある程度は前進することができるというお話でございます。それぞれの行政官庁の方々の御答弁でございますが、皆様方自身も、この視覚障害者の方々、目の不自由な方々の立場ということを理解して、本当に盲導犬によって自立をすることができたんだ、いままでと違って胸を張って、ひとりで歩くことができたんだというので、前向きに本当に胸がふくらむような気持ちだとおっしゃっておみえになるわけでありますから、その立場で世論喚起のための御努力をお願い申し上げたいと思うわけであります。  私は、障害者の方々の職業訓練のことにも、これで移っていくわけでございますけれども、ハンデのある方々には、われわれ健常者が、ハンデだけは同列になるまで、ひとつ支えようじゃないか。そのかわり同列になったら、障害者の方々もわれわれと同じような立場で仕事をやってもらおうじゃないか、元気にがんばってもらおうじゃないか。だから、われわれはれんびんだとか、哀れみだとか、お気の毒だという立場には立たぬわけですよ。ハンデがあるなら、それはわれわれの責任だという立場から、どんどんやってもらいたいと思うのでございます。  ここで、職業訓練のことですが、正直なことを申し上げまして、視覚障害者の方々は、はり、きゅう、マッサージとかいう非常に限られた職業に押し込められているような気がしてなりません。しかも、その限られた職業すら、今日的には健常者によって脅かされようとしてきておるわけであります。これはもう徳川時代からの障害者の方々の一つの職業すら奪われようとしてきておるだけに、この職業訓練については、たとえばキーパンチャーだとかプログラマーだとか、あるいは情報産業なんかで、どんどん伸びていただけるところがあるわけでございますから、何か今度、所沢に国立のリハビリセンターが、これは労働省のサイドでもできるわけですし、厚生省のサイドでもできるのですが、もっと国家的に職業訓練という立場から視覚障害者の方々の訓練範囲を広めるべきだと思うのですが、局長がお見えになっておられますので、その点についての御答弁をお願いしたいと思います。
  145. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 草川先生おっしゃいますとおり、視覚障害者の方々の職業分野というものを、既存の観念にとらわれて、その分野に限定すべきでないというように私どもも考えます。それに、いま御指摘もありましたとおり、厚生省が主体になっておつくりになる国立リハビリテーションセンターに、私ども職業リハビリテーションセンターを併設することにいたしておりまして、厚生省の行います治療リハビリの後、その職業の適性を検査し、適性に合った職業訓練をして、職業についていただくまでのお世話をさせていただきたい、こう考えて、来年度から、これが発足することになります。そこでは、視覚障害者も含みます重度の障害者の方々の職業分野につきまして、むしろ既存の職業訓練でやっているようなものでない、近代的ないし先端的な職種についての研究開発を進めつつ、職業訓練を具体的に展開をしてまいりたい、こう考えておりますので、いま御指摘もありました視覚障害者の方々にふさわしい職業訓練、それにふさわしい職種というものを開拓し、それに対する職業訓練をしてまいるということの研究開発に努めてまいりたい、こう存じております。
  146. 草川昭三

    ○草川委員 今度の国立リハビリセンターは職業訓練等で非常に新しい画期的なことをやられると思うので、ぜひ視覚障害者の方々の訓練範囲というものを非常に幅広く育てていただきたい、このことを強く要望しておきたいというように思います。  次に、今度は道交法というよりも建設省関係にお伺いをしたいわけでございますが、私どもも、ついつい、うっかりしておって気がつかないことがあるのですが、道路標識だとか看板だとか、あるいは天幕だとかというものが非常に乱雑に行われておりまして、目の不自由な方々は、どうしても頭を打つ例が多いのです。  そこで、いろいろな法規を調べてまいりますと、道路標識、道路標示に関する命令というのが、総理府あるいは建設省令であるわけでございますが、これだと、補助標識の下の板から地上までは一メートル以上あればいい。実際上、警察庁なんかでは内規がございまして一・八メートル以上ということになっておるわけであります。そのほか地方自治体の広告条例なんかがございまして、道路構造令でいきますと建築限界といたしまして二・五メートルというような基準があるわけであります。それぞれ違うわけでございますが、少なくとも歩いてぶつからないように、一・九メートル以上に、これを実施すべきじゃないだろうか。二・五メートルになれば一番問題はないのですけれども、二・五メートルの標識ということになりますと、今度は識別が困難だということもございますが、少なくとも一・九メートルぐらいにして、夏の日よけだとか立て看板だとか、そういったようなものについても、これはアメリカでは連邦法で建設物の障害除去というような規制法もあるわけでございますが、何か整合性のある方式というものが必要になってきたのではないか、こう思います。そこで、その点について道路局の方から、お聞かせ願いたいというように思います。
  147. 渡辺修自

    ○渡辺説明員 お答えいたします。  道路標識につきましては、先生がただいま御指摘になりましたような道路標識令がございまして、高さが決まっておるわけでございます。標識によりましては、特に警戒標識でございますけれども、こういったものは確実に視認ができて内容が判断できなければいかぬというようなことで、ほかのものとちょっと、その高さの取り扱いが違ったりしておるわけでございますが、歩道に立てたりするケースがどうしても多いものでございますから、道路局長通達を出しまして、下端の高さが一メートル八十以上を標準とするということで指導しておるわけでございます。そういたしましても、狭い歩道等になりますと問題がございますので、狭い歩道等では、これをもう少し上げろということも指導いたしております。  なお、御指摘の日よけとか、そういったいわゆる道路の占用物件でございますが、これはお話にございました二メートル五十という歩道の建築限界の高さがございますから、これを犯さないように管理の面で指導をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  148. 草川昭三

    ○草川委員 いままで具体的に、いろいろな問題点を提起をしましたが、やはり目の不自由な方々、視覚障害者の方々にとりましては、非常に問題の多い点が出たと思うわけであります。そういった意味で、私は、ぜひこの際、大臣にお尋ねをしたいと思うのですけれども、盲導犬の見直しというのでしょうか、非常に今日的な役割りの重要さということを考え直していただきたいと思うわけであります。  残念ながら、いま盲導犬の育成というものは、ほとんど地方の善意の方々にゆだねられております。そして一頭の犬を育てるのに約八カ月かかります。しかも費用は、いろいろな計算をすれば限りがないわけでございますが、二百三十万円ぐらいはするんじゃないだろうか。わずかに地方自治体の支援にまたれておりまして、訓練士というのですか、そういう方々は、一カ月の平均賃金なんというのは十万円ないというのです。八万円か九万円ぐらいで、二十四時間、自分たちの寮の中に起居をともにし、そして盲人の方々に無料で差し上げるわけでございますけれども、そのためには一カ月間、その寮の中で寝起きをともにする、こういうような非常に涙ぐましい御努力をなすってみえるんです。片一方は、職業訓練法という法律があって、訓練をする場合には、ある程度手当をもらって、いろいろな訓練ができるのですけれども、この障害者の方々は、全く、そういうものの保障がない。私は、そういうことを考えていきますと、少なくとも盲導犬の育成事業というものは、社会福祉事業法の対象にすべきじゃないだろうか、こう思うのです。この法的な援護の道も閉ざされておりますから、全国で六カ所ほどの施設がございますけれども、非常に運営に困っておみえになります。  一番最初に申し上げましたように、少なくとも全国で二十五万の視覚障害者の方々がおいでになりますけれども、十人に一人は欲しいと言っておみえになるわけです。さすれば当面、少なくとも二千頭とかいうことになりますけれども、そうはまいりませんが、七、八百頭は欲しいと思うんですよ。そういう点で、私は、速やかに国家的な施策というものが必要だと思いますし、あるいは、いろいろ善意のある寄付がありましても、この寄付は、社会福祉法人扱いになっていませんから税の対象ということになります。法人税によって無税扱いになるようにも努力をしたいと思うわけであります。そういう点で、海外においては盲導犬というものは非常に高く評価されておるわけでございますが、日本のおくれた現状を厚生大臣としてはどのようにお考えになり、さらに、この盲導犬の育成について、国の助成ということについて、ひとつ前向きに取り組んでいただきたいということを要望申し上げるわけですが、最後に大臣の御見解を賜りたい、このようにお願いを申し上げます。
  149. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 盲人に対する福祉政策としては、私は、一つの新しい非常にいいいき方じゃないかと思いますので、できるだけのことは配慮いたしたいと思いますけれども、たとえば、その中で盲導犬育成の事業というものを社会福祉事業の対象とすべきではないか、これは一つの検討事項だろうと思います。  それから税金のことをおっしゃいましたが、税務当局はなかなかガードがかたいものですから、私ども、いろいろなものを持ち出しても、なかなか一遍に実現できるかどうかわかりませんが、私は一つの構想だと思いますので、どうせ予算要求と絡みまして税の要求等もありますので、これはひとつ交渉の対象にしてみたいと思います。  ただ、直接国が予算でこれを援助するということになりますと、盲人対策として、もっとほかにやらなければいけないこと等がたくさんございますので、それがまた全体の盲人の方々に、そのために何か自分たちの福祉政策の予算が犠牲になったというような印象を与えることは非常にまずいと思いますので、その辺のところと、よくにらみ合わせてやらなければいかぬだろうと思いますので、この点は、いま直ちに私、今度の予算要求で措置をするということをはっきり申し上げられません。しかし、先ほど言いましたような社会事業としての方途を何か考え出すとか、あるいは減税問題等について配慮をしていくように努力するとか、あるいは国民の理解と協力を得るようなPRについて、私どもはできるだけ協力を申し上げるとか、その他できるだけの施策を考えて、関係各省にもよく御理解と協力を得るように努力することは一生懸命にやりたいと思いますが、直接の補助ということになりますと、いろいろ他の盲人福祉施策の予算との関連等もございますから、この点はもう少し検討させていただきたい。
  150. 草川昭三

    ○草川委員 いろいろと大臣の方からも御見解を賜りまして、非常にありがたく思うわけでございますが、小さなパイを取り合うということではなくて、やはり全体のレベルというものを上げていきたい。特に今日のように公共投資の問題が非常に話題になっておりますけれども、社会福祉の面で、お金をどんどんいろいろな面に使うべきではないだろうか。具体的にアメリカの盲導犬協会へ行きますと、日本の後楽園球場の三倍か四倍ぐらいの広い面積で三百頭ぐらい、しかも訓練士の方々も五十人、六十人という方々がお見えになるというような設備があるわけであります。そんなのが全国でたくさんできることが、いま最も緊急なことではなかろうかと思うわけであります。そういう意味で、この盲導犬の育成事業が社会福祉事業法の対象になる。あるいはまた善意の方々に御寄付を願った場合に免税措置になる試験研究法人扱いに、これからもぜひ取り扱っていただきたいということを強くお願いを申し上げまして私の質問を終わるわけでありますが、本日のこの委員会に当たりまして、関係各位、先輩の方々に大変御理解を願ったことを心からお礼を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  151. 木野晴夫

    木野委員長 次に、金子みつ君。
  152. 金子みつ

    ○金子(み)委員 私は、本日は看護職員の雇用及び労働・生活条件に関する条約並びに勧告に関してお尋ねをして、政府の御見解を承りたいと存じます。  国際労働機関すなわち私どもがよく言いならわしておりますILOですが、ILOでは「他の職種の保健職員とともに、国民の健康及び福祉の保護と向上において看護職員の果たす重要な役割りを認識し、」「看護職員の雇用及び労働条件の向上において特に積極的な役割りを果たすべきである」ということを認識しているわけであります。     〔委員長退席、村山(富)委員長代理着席〕 そして「看護職員の有資格者の不足が存在し、また既存職員が必ずしも最も有効には活用されていない多くの国における看護職員の現状が、効果的な保健業務の発展にとって障害である」ということも留意しております。  そこで「看護職員が、差別待遇あるいは労働時間、有給休日及び有給教育休暇、社会保障及び福祉施設、母性保護及び労働者の健康保護等雇用及び労働条件に関する一般基準を設定している多くの国際労働条約及び勧告の対象とされている」ということも想起しているわけであります。そこで、看護業務として行われておる特別な条件にかんがみ「看護職員は保健の分野においてその役割りにふさわしく、また、看護職員にとって受け入れ得る地位を享受できるようにするための看護職員に特有の基準によって補足することが望ましいということ」も考慮しているわけであります。  そこで、ILOは世界保健機関、WHOとの協力のもとで、今回新たに条約が形成されることになったわけでありますが、看護職員の雇用及び労働・生活条件に関する提案をし、その提案が条約の形をとるべきであるということを決定して、昨年すなわち一九七七年六月二十一日の第六十三回ILOの総会において採択された、こういういきさつがあるわけでございます。  国際連合の一つの機関であるILOが、その関係する多くの職種の中から看護職だけを特に取り上げて一つの条約を形づくるということをあえて実行いたしましたということは非常に意義があることだと思います。従来そういう取り扱いをしていないわけでありますから、今回、看護職だけを取り上げたということについては深い意義があるということを思うわけであります。  そこで、お尋ねしたいわけでございますが、昨年の総会の席におきまして、この条約が採択されます際に、日本政府はこれを棄権しております。そこでお尋ねしたいわけは、なぜ棄権されたのか、その棄権の理由。それからそれに関連することでございますが、条約の手続といたしまして、日本は棄権はしましたけれどもILOに加入しております。加盟国の義務として採択後十二カ月以内に、その国の国会に条約また勧告の正文を提出しなければならないことになっておりますが、その場合に、ただ正文を提出するだけではなくて、それに対して、その国の政府の何らかの意見を添えて出さなければならない。する意思があるとか、あるいは意思がないとか、考えてみるとか、いろいろなことがあると思いますが、いずれにいたしましても意見を添えて提出しなければならないということになっております。この総会が昨年の六月の二十一日に採択されておりますから、十二カ月以内ということになりますと、本年の六月二十一日までということになりますので、その間における国会ということになりますと、本国会が最終の国会になるわけでございます。したがいまして、今国会中にどのような形で、この問題についてお取り扱いになろうとしていらっしゃる御所存であるのか。これを履行するのには、本日ただいま直ちに、そのことについての詳細な御答弁がないかもしれませんけれども、あと一カ月で本国会は終了になるわけであります。ですから、それまでの間に、どのような形で、内容で、どのように履行なさろうとしていらっしゃるのかということにつきましてお尋ねをしたいわけでございます。御答弁は、外務省、労働省、厚生省、それぞれお聞かせいただきたいと思います。
  153. 木島輝夫

    ○木島説明員 お答え申し上げます。  ただいまの看護職員の雇用並びに労働及び生活条件に関する条約、これは先生がただいま詳しくおっしゃいましたとおりでございまして、昨年の六月の第六十三回ILO総会において採択されたものでございます。実は、これは当初、勧告ということで、われわれ準備しておりましたところ、会議におきまして、労働側委員及び一部政府側委員からの要求で、これが急遽、勧告案中の原則的な部分を条約として採択するということになったものでございますので、わが国国内法との関係もございまして若干問題があるということで政府は棄権した次第でございます。  今後これをどのように取扱うかという御質問でございますが、これは規定によりまして一年以内に国会に御報告を申し上げるということでございますので、今国会終了までに、できるだけ早い時期に、これを国会に御報告申し上げるべく現在、準備を進めているところでございます。
  154. 石田均

    ○石田説明員 労働省といたしましても、ただいま外務省からお答えになったとおりでございまして、今国会に報告できますように関係各省と、いま準備作業を進めている段階でございます。
  155. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 厚生省医務局は、プロジェクトチームをつくりまして、先般の看護に関する条約、勧告について、いろいろ問題点の整理を進めております。もうすでに最終段階に入っております。結論から申しますと、私どもはできるだけ前向きの態度で進んでまいりたいと考えております。
  156. 金子みつ

    ○金子(み)委員 初めに勧告のつもりだったのが、総会の場において、それが条約に変わってしまった。だから十分準備ができてないということが一つ。国内法との関係があって簡単には批准できない、賛成できないと思ったから棄権したのだというような御答弁をいただいたわけでございますけれども、それだけの理由では棄権をなさった理由としては余り明確ではないというふうに私は思うわけです。もう少し、はっきりした理由が聞かせていただきたいわけでございますが、さらに理由を補足していただけませんでしょうか。それが一つです。  それからいま一つは、労働省の御答弁は内容が全く何もお聞かせいただけなかった。外務省が言ったとおりですというようなことをおっしゃったわけですが、そういう御答弁のなさり方では私も納得できません。労働省は労働省としての見解があるはずでありますから、外務省と同じだというようなことで言いっ放しになさるのは、いささかどうかと思います。もう少し、はっきりした意思表明をしていただきたいというふうに考えるわけでございますが、いかがでございましょう。まず、その二つの省に。
  157. 木島輝夫

    ○木島説明員 まだ、われわれ条約を非常に詳しく検討しておりませんけれども、問題点が若干あるということでございまして、たとえば本条約六条に、看護職員が他の労働者と同等の条件を享受するという規定がございますが、この同等の条件という言葉の意味がどんなものであるか、これが果たして国内法上そのまま、すっと受け入れられるものかどうかというような点があろうかと思っております。
  158. 石田均

    ○石田説明員 ただいまの御質問でございますが、私どもといたしましては関係各省といろいろ協議をいたしまして準備を進めるわけでございまして、いまの段階で具体的に、どういう方向づけでというのが申し上げにくいわけでございます。従来、国会に御報告しております内容と申しますのは、条約、勧告のテキストと、それから条約、勧告の内容をごく要約いたしましたもの、それから、この条約、勧告につきましての国内事情等につきまして、なおしばらく検討を要するというふうなことをつけ加えまして御報告することにいたしておりますので、大体そういった趣旨に従って御報告するというふうなことを、頭の中で、いま考えているわけでございます。いずれにいたしましても、まだ関係各省と十分時間をかけて調整いたしたいと思っておりますので、お許しをいただきたいと存じます。
  159. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いまの二つ関係省の政府の御答弁でございますと、今国会に間に合うのだろうかという疑問を、いま私は持ちました。たとえば条約にいたしましても勧告にいたしましても、それぞれ外国の文章でつくられておりますが、これをまず翻訳する作業があるわけでございますが、昨年の六月のことでありますから、もうそろそろ一年になるわけです。この翻訳の作業はどうなっているのでしょうか。これがもとになって、それからさて中身がどうだこうだということを議論なさるのじゃないでしょうか。  先ほど外務省がおっしゃった平等の条件を亨受する、平等とは何だということを議論しなければならぬということをおっしゃっているわけでありますけれども、そういうようなことを議論するについても、きちんとした翻訳ができていなければ、それぞれの省で翻訳なさったものをお使いになっていらっしゃるとするならば考え方は違ってくる可能性もある。翻訳の仕方が必ずしも一〇〇%同一というふうには考えられません。したがって、違った形で翻訳されたものを基礎にして議論をなされば結果的には間違ってくるということも考えられると思いますが、そうなりますと私がお尋ねをしたいのは、この条約あるいは勧告の正文に関して翻訳する責任はどこにあるのか。そして、そのことが、どの程度、作業が進められているのか。そして今国会中に意見を添えて提出するということについて時間的に十分間に合わせて進められるように関係各省庁と話し合いができるのかどうか。その辺の見通しを聞かせていただきたい。
  160. 木島輝夫

    ○木島説明員 お答え申し上げます。  これは十二カ月以内というふうに、はっきりと規定してございますものですから、当然のことながら今国会中に御提出を申し上げる筋合いのものでございます。そのために鋭意、翻訳作業はもう始めておりまして、その翻訳の過程で労働省と外務省が翻訳の仕方が違うというようなことは理論上は考えられるわけでありますけれども、われわれ現実には非常に緊密に共同作業をしておりますので、そういうことはないようにしたいと願っておるわけでございます。  なお、翻訳の責任等につきましては、外務省が当然のことながら国会に御報告申し上げるものですから、外務省が責任を負うというような形になっておるわけでございます。
  161. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そういうふうに御答弁なさるから、それを信ずるほかに方法はないだろうと思うのですけれども、大変に不安を感じております。というのは、翻訳を見せていただきたいと申し上げても、ただいま翻訳中でありますからというような返事が役所から戻ってきたり、あるいは、つくった翻訳は、労働省がなさった翻訳は外務省へ持っていって、外務省でそれを再点検をするのだ。その上で初めて正式な翻訳になるのだというようなお話を伺っておりますと、外務省として正式な翻訳がおできになるのはいつでございましょうか。
  162. 木島輝夫

    ○木島説明員 若干、敷衍いたして申し上げますと、国会に御報告申し上げる段階では、御承知のように条約を国会に御承認を求める段階での法制局審査というのがございますけれども、その法制局審査手続は踏みませんので、政府としまして正式な翻訳というふうな形では考えておりませんで、むしろ外務省としての責任でやった翻訳であるというふうに考えております。  これがいつできるかというお尋ねでございますが、これは今国会中のできるだけ早い時期にお出ししなければいけないわけですから、その目標に沿って現在、鋭意進めておるわけでございます。
  163. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは今度は厚生省にお尋ねしますが、先ほど医務局長はプロジェクトチームをつくって鋭意検討中だというふうに御答弁くださいました。大変結構だと思いますし、当然そうあるべきだと思うのですけれども、いま外務省の方の御答弁によりますと、翻訳は外務省の翻訳として国会に出すのだということですが、そうしますと厚生省がプロジェクトチームで使っていらっしゃる翻訳は、外務省の翻訳には関係なく厚生省の翻訳のものをお使いになっていらっしゃるのでしょうか。
  164. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 そのようにお考えいただきたいと存じます。
  165. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そこで私は再度、同じことをお尋ねすることになるのでありますが、それぞれ役所が違うとは申しましても、話し合いをしながら関連をとりながら、しているから、決して間違ったことにはならないだろうとおっしゃるに違いないと思いますが、しかし全く三つの省の中で、この翻訳文について突き合わせて照合したりなどして具体的に内容の統一をお図りになったことがあるのでございましょうか。     〔村山(富)委員長代理退席、委員長着席〕 それなしに、それぞれが翻訳したものを使ってやっていらっしゃるのでしょうか。その辺をはっきり、わからせていただきたいわけであります。
  166. 木島輝夫

    ○木島説明員 一般的に申し上げますと、各省それぞれ担当部分について真剣な検討をする段階におきましては、それぞれが仮訳みたいなものを、それぞれおつくりになるということは当然あるわけでございます。それを外務省に持ち寄りまして最終的な固めをするという手続になろうかと思っております。  なお、現在、問題になっておりますところの看護条約につきましては外務省が統一的な翻訳文をつくっているという段階には差しかかっておりません。
  167. 金子みつ

    ○金子(み)委員 大変時間をかけてしまったわけでありますけれども、非常にはっきりしないし不安な気持ちがございます。いまの外務省の御答弁では翻訳に取りかかっておりませんとおっしゃったわけですから、そういたしますと今国会中に意見をつけて正文を提出なさるということが果たして、できるのかどうか、非常に不安な感じがいたしますが、これ以上お尋ねしても同じ答弁が返ってくるだろうと思いますから、もうお尋ねいたしません。ただ申し上げなければならないと思いますことは、鋭意努力を進められて間に合うようにしていただかなければ困るわけでありますが、その件について、ひとつ厚生大臣にもお願いしておきたいと思います。  と申しますのは厚生大臣、この条約はどこが窓口と申しますか、どこが担当なのかということを実は知りたいわけなんですけれども、それぞれ関連しているから、どこが取りまとめをするかということが決まっていないのかもしれないと思います。しかし内容的に申しますと、これは労働問題であるということになれば、ILOの問題は窓口が労働省だということはわかります。それから条約だから、これは外務省の所管になるんだということも言えるでしょう。しかし対象となっている職種は看護でございます。看護職種でございますから、これは厚生省所管、こういうふうになるわけでございますので、それぞれにまたがってきているというふうには思いますけれども、しかし条約なり勧告なりの中身を討議するのが私たちの目的でございまして、形式を討議するわけじゃございませんから、中身で物を申しますならば、厚生省がイニシアチブをとらなければ、このものは進まないではないだろうかというふうに私は考えるわけです。  そこで、先ほど来のお話を伺っておりましても、それぞれ理由があって、それぞれ時間がかかっているようでございますが、今国会中にぜひ意見を添えて提出しなければならないという義務があるわけでございますから、それについて厚生省がリーダーシップをとり、他の関係の省庁にその旨を御連結いただき、来月の十七日国会終了までの間に、しかるべき形で御提出なされるように図っていただきたいと思いますが、これについて中心的存在になる厚生大臣、ぜひそれを進めていただけますように御努力を願いたいと思うのですけれども、いかがでございましょう。
  168. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 今国会中には必ず報告をいたすように外務大臣、労働大臣とも打ち合わせ済みでございますから、その点は御安心いただきたいと思います。イニシアチブは、これはやはり外務省が中心になっていただかなければならぬことでございますし、厚生大臣が報告するわけでございませんで、やはり外務大臣がやるわけでございます。ただ私の方としては、その意見書がまとまった場合に、また、まとまる過程において、われわれの尽くすべき努力努力として検討していくということでございます。
  169. 金子みつ

    ○金子(み)委員 実質的に、どうぞリーダーシップをおとりになっていただきたいと思います。それでは、この問題はここで終わらせまして、次にお尋ねしたいことがございます。  それは、先ほど外務省で、まだ疑問に思っているとおっしゃったことの中に、平等な条件を享受するということがあるけれども、平等とは何だということを議論しているんだというお話がありました。それはそれで私は結構だと思うのですけれども、その件について私もひとつお尋ねしたいことがあるわけです。  これは条約の第六条でございますが「看護職員は、下記の事項について少くとも国内における他の労働者と同等の労働条件を受ける。」こういうふうに規定されておりますが、「下記の事項」というのは何かと申しますと「時間外労働、不便な時間の労働、交替勤務の規正と補償を含む労働時間」「週休」「年次有給休暇」「教育休暇」「出産休暇」「病気休暇」「社会保障」こういうふうになっているわけでございますね。ですから平等な「同等の労働条件を受ける」ということで、いま申し上げましたような事項について同等な労働条件を受けるということになっているわけでございますから、これも一つ一つ詰めていかなければならないことだと思うのですけれども、きょうは、それを一つずつ詰める時間の余裕もございませんし、その目的でもございませんので、ここで、さしあたって一つだけ、どうしても御意見を伺っておきたいことがございますので、お尋ねしたいと思います。  それは日本の労働基準法でありますが、三十二条に労働時間の規定がございます。一日八時間、週四十八時間というのが労働基準法で定めておる労働時間でございます。ところが、こういう規定がございますにもかかわりませず、看護職については、法律の四十条及びそれを受けた施行規則の二十七条によって、一日九時間、一時間多いわけですね。一日九時間、週五十四時間まで労働させることができるという例外規定がございます。この例外規定が適用されているわけでございますけれども、そこで問題になると思いますのは、たとえば、いま人事院が試みに始められていることでありますが、いわゆる週休二日制、週四十時間勤務労働時間というのがいま行われ始めておりますし、多くの企業では、そのことを始めかけているというふうに私どもも承知いたしております。ILOの勧告の三十二条の(2)というのがございますが、それによりますと「一般労働者の正規の週当り労働時間が四十時間をこえる場合には、一九六二年の労働時間短縮勧告の第九項に従って、俸給を減じることなく、看護職員のために労働時間を、漸進的に、しかしできるだけ速やかに週四十時間の水準にまで引き上げるための措置がとられるべきである。」というふうになっているわけでありまして、そうなりますと看護職員についても週四十時間の勤務時間というものを、できるだけ早く実行するようにするべきであるという勧告がついているわけであります。これはいま申し上げた条約の六条を受けてきているものだというふうに考えることができるわけですけれども、このことについて、いまの日本の労働基準法では、いま申し上げましたように看護職については例外規定が存在しているという問題なんでございます。このことを取り上げたいわけなんです。  この例外規定でいきますと、仮に週休二日制が行われたといたしまして、一週間五日間の勤務労働時間だといたしましても、一日九時間でありますと週四十五時間ということになるわけでありまして、週四十時間にはならない。週四十時間を五時間オーバーするということになると思うわけなんです。こうなりますと、他の労働者と同等の労働条件を受けるということにならなくなるのでございますね、労働時間の問題だけにおいても。いま労働時間のことだけしか取り上げておりませんけれども、それだけ考えても同等にはならないということが出てくるわけでありますが、この点についての御意見を承りたい。看護職だけが、他の労働者よりも一日一時間多く、週五十四時間まで勤務できるという、この例外規定が設けられているということについて、全く他の労働者と同等の労働条件を享受することができない立場に置かれている。そういう条件に置かれていることについて、これは正しいあり方かどうかということ、看護職員だけが長い時間労働することが許されていいのかどうかという、この不平等の取り扱いについて、どのようにお考えになっていらっしゃるかということについて、労働省と厚生省から御答弁いただきたいと思います。
  170. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 労働基準法の問題につきましては後で労働省から詳しく御説明があるかと思いますが、特例措置が講じてございますのは保健医療を業とする女子だけでなく、物品販売業だとか映画製作業だとか、あるいは旅客輸送業だとか、そういうふうなものも、やはり特例措置があるわけでございます。ただ、医療機関の中で見ますと、やはりいろいろ、また問題も起こってくるのかもしれません。そういう点を重視しなければならないと考えております。ただ、日本もだんだん勤務条件が改善されてまいりまして、すでに国公立の病院では週四十四時間制に入っているわけでございます。民間の一部の病院に、それをオーバーするところがあるということでございましょうけれども、こういった点につきましては、やはり基本的には看護婦の養成計画などとも絡んでまいりますので、総合的な対策を立ててまいりたいと考えております。
  171. 石田均

    ○石田説明員 ただいま御指摘ございましたように病院、社会福祉施設等の保健衛生事業につきましては、労働基準法及びそれに基づきますところの労働基準法施行規則によりまして一日九時間、一週間について五十四時間を超えてはならないという特例があることは、おっしゃるとおりでございます。これはほかの業種についても一部認められているところでございまして、その辺につきましては公衆の利便と密接に関連があるということから、こういう特例業種としての取り扱いがされておるわけでございまして、直ちに、こういった取り扱いを撤廃することは困難ではなかろうかということでございます。私、国際労働課長でございまして労働時間の問題の直接の担当ではございませんので大変お答えをいたしにくいわけでございますが、一応そのようなことでございます。  ただ、基準局の方といたしましては、一日八時間を超える所定労働時間を定めることは好ましいことでないという観点から、こういった基準法上特例を認められておる業種につきましても、できるだけ一日八時間以内の所定労働時間とするように行政指導を行っておると承知をいたしております。
  172. 金子みつ

    ○金子(み)委員 本日、労働省から御出席の方が労働時間を直接取り扱う所管の方ではないとおっしゃっていらっしゃいますので、この問題を、もう一つお尋ねしたいと思いましたけれども差し控えておきますが、厚生省の方で御答弁いただければと思います。それは例外規定が設けられた理由を、おわかりでいらっしゃいましょうかということです。
  173. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 基本的には有資格の看護婦さんが非常に不足をしていたということではないかと存じます。また、日本の医療施設、特に病院における長年の慣習というものもあったかと思います。そのほかに、日本は狭うございますけれども、北から南まで、立地条件、環境条件の違うところがあるわけでございますので、そういう点を勘案して、あのような規定が設けられていると思いますが、一番基本になりますのは、公衆、国民に対するサービスという問題ではなかったかと思います。
  174. 金子みつ

    ○金子(み)委員 一番最後におっしゃった理由が私もちょっとよくわからないのですが、公衆に対するサービスという、そのこと自体はわかりますけれども、それなら、なぜ八時間の労働時間を九時間にしなければならなかったのか、一時間長くてもよろしいという線を出したのはなぜかというのがわからないわけです。局長はそういうふうに理由をおっしゃいましたが、それはどういうふうに結びつけてくださいますか。
  175. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 結論から申しますと、どうしても一時間長くしなければならないような施設があった。また、そのようにしなければ患者さんの適切なサービスが行えないという地域があったということではないかと思います。
  176. 金子みつ

    ○金子(み)委員 その辺については確かな理由はわかっていないのでございますね。いまの局長の御答弁でも、そうではないかと思うとおっしゃっていらっしゃいます。先ほどの御答弁でも、看護婦の数が非常に不足していたのではないかと思うとおっしゃっていらっしゃいました。そこで端的に考えられますことは、看護婦の数がもっと多くなれば、そういうことなしにできるのかもしれないということも考えられることだと思うわけです。ですから、これは看護職員の不足の問題と絡んでいるということも、全くそうではないとは言い切れないと私も思います。ただ、理由がはっきりしない、あいまいな問題を基盤にして、この先、物を考えていくということは、その先へいってから、また間違った結果を出すという例がございますので、この問題につきましては、いま、ここでこれ以上御答弁をいただけないように思いますので、なぜ九時間という数字が出てきたのかということについては別の機会にわからせていただきたいと考えるわけでございます。  関連いたしまして看護婦の不足の問題が出てまいりましたので、このことについて一つ、二つ時間内にお尋ねさせていただきたいと思います。  と申しますのは、今回の条約につきまして、条約が採択されました基本的な理由というのが、先ほどもちょっと読み上げましたわけでございますけれども、世界的に有資格看護職員の不足ということが大きな原因になっています。看護職員が不足であることによって保健医療の内容が十分に進めることができない。進歩発達した医療の国民への反映ということが、看護職員の不足によって十分果たし得ない。そういうような阻害をしている、障害になっているというようなことも原因になっているわけでございますから、この際、看護職員をもっと増員をすることによって、国民への保健医療のサービスが十分できるということに結果的になるのだろうと思います。ところが、看護職員をふやすことについては、ただ教育をして絶対数をふやせばいいというだけの問題ではなく、この条約の中にいろいろと書き示されておりますように、さまざまな条件があるわけです。さまざまな条件がつけ加えられて看護職員が増加できるかできないかという問題になるわけでございますので、労働条件も生活条件も、いろいろ詳しく載っているわけでございますが、その一つ一つをするわけではございません。  そこで、そういうことが原因で、この条約が今回つくられたことになるわけでありますが、この点は日本に対しましても全くそのとおり当てはまると思います。日本は例外ではございませんで、ぴったりと当てはめることができると思うわけです。日本の看護職員の不足というのは、いま、ここで議論をする必要もないぐらい十分議論されてきているわけでございますけれども、ここで一つ考え方としてお尋ねをしたいことがございます。  厚生省は看護職員の需給計画の中で、昭和五十三年度、今年末には四十九万名看護職員をつくり出すことによって一応不足が解消するというふうに考えていらっしゃるのかどうかということです。これは厚生省からいただいた資料ですが、五十三年末に四十九万名にするという計画があるということを承知しているわけでありますが、こうなった暁には、いままで言われております不足というものは一応解消するのかどうか、その点をひとつ。
  177. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 四十九年度からの第一次看護婦需給五カ年計画は、厚生省の社会保障長期計画懇談会の御答申を得て始めたものでございまして、いろいろな条件はついておりますけれども、当時としては一応問題点は解消するのじゃなかろうかという考え方でございました。また現に五十一年末の就業看護婦数が四十三万四千人でございますから、計画は予定どおり進行していると考えております。しかしながら、その後のいろんな社会的、医学的な変動というようなこともございます。また先ほど問題になりましたILOの条約、勧告といったような問題がございます。したがって、どうしてもこの第一次五カ年計画だけでは十分とは言えないわけでございますので、医務局といたしましては現在、五十四年度を初年度とする第二次計画の作成を急いでいるところでございます。
  178. 金子みつ

    ○金子(み)委員 第二次計画がなされなければ、とうてい解消するとは思われないと思っておりましたが、第二次計画を作成するように御準備中だと伺って、それは大変に結構だと思うのです。けれども、その第二次計画の中には、今回のILOの条約や勧告の中に盛られておりますような条件、これもあわせて考えて計画していただきませんと、いままでのように二・八体制がとれるかとれないかということが目標となった需給計画だけではなく、たとえば週四十時間の勤務時間を看護職員に実践できるかというような問題も出てまいります。  あるいは先般の、これは厚生科学研究費でなさったことかと思うのですけれども「看護度別患者数と付添い数の調査」がございます。付き添い問題というのは社会的問題になっている大きな問題でございますが、この付き添いが、その調査の結果では平均して一〇・九%ついているということが出ております。そういたしますと、一〇・九というのは、たとえば五十床の一病棟ですと五人にはついているということになりますが、お調べの対象になった施設が特二類をとっている。言うならば日本で一番看護度といたしましては高い看護度を提供している大病院というふうに理解できるのです。そこで、これだけの付き添いがついているということは、言葉をかえれば、一つの五十床病棟に五人ぐらいの重症患者がいるというふうに理解できます。なぜかと申しますと、絶えず観察を要する患者についているというふうに説明がしてございますので、二十四時間絶えず観察が必要ということになりますと、一応重症というふうに解釈ができるので、そういたしますと、そういう人たちに必ず一人ずつつけなければならないであろうということが考えられるわけでありますが、そういうことなども勘案していただいて、これからお調べになるものについては、どれぐらいの必要数が出てくるか。いままで考えていらっしゃったものよりも、かなり大きな数になるのではないだろうかということが私どもは想像がつくわけでございますが、もし、その数字が試算していただいておりますので、おわかりでございましたら教えていただきたいと思いますし、あるいは、それがまだできておりませんでしたならば、きょうは時間もございませんから、この次に補充しても結構なんでございますが、そういうふうにして、ただ単に二・八体制がとれるということだけの目的で必要数を算出するのではなくて、このたび出てまいりましたILOの条約や勧告の中に盛られております看護職に対するさまざまの条件を取り入れて、どれだけの人が必要になるだろうかということを算定をしていただきたいわけです。  これは私の要望になるわけでありますが、そのようなことを考えて、いま五十四年度から新たに計画されていらっしゃるという看護婦の需要供給計画の中に取り込んでいただきまして、そしてこれを余りゆっくりやっていていただきましては国民に対するメリットがございませんから、やはり五年計画ぐらいの形でつくっていただきたいと思いますことと、これを実際に計画なさることが無理なのか無理でないのか、その辺のお考えをぜひ、ひとつ聞かせていただきたいと思うわけでございます。
  179. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 第二次計画は、ただいま先生が御指摘になりましたような問題点を全部含めて計画を策定したいと考えております。そこで一番問題になりますのは週四十時間制の問題でございますが、こういったことは日本全国一気にやれるものではございません。やはり時間をかけてやるべきものではないかと思うのでございます。また、民間の週休二日制とか労働時間の動向の今後の変化といったものも、よく見きわめながら検討しなければならない問題だと思います。そこで、やはり五カ年というのは、いろいろな面からちょっと無理になって、六十年度を最終年度とする七カ年計画ぐらいになるのではないかと考えております。  また付き添いの問題でございますが、現在の病院の付き添いの実態調査などを拝見いたしますと、雑務のための付き添いというような方が非常に多いようでございますので、そういった意味では、いわゆる看護助手と申しますか、看護の補助員といったものを、たとえばアメリカやスウェーデンの制度のように今後大いに考えて充実していくべきじゃなかろうか。これはいわゆる有資格の看護婦さんの問題ではございません。そういったこともあわせて検討をいたしたいと考えております。
  180. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いま局長がおっしゃったようなことが実現できれば大変に結構だというふうに思いますので、せっかく御努力願いたいと存じます。  いま看護助手のお話も出ました。それとつながることだと思いますが、不足、不足ということを大変に申しますけれども、日本の場合でも、今回の条約や勧告の中のILOの考え方の中にも出ておりますように、有資格看護職員の活用の仕方が大変に上手でない。まずいということですね。言葉をかえて申しますと、さなきだに少ない有資格看護職員を有効に活用していない。たとえば医師の下請をやらせる、医行為を看護婦にさせる。あるいは、よく言われます雑用をも看護婦にさせる。ある病院では食事の盛りつけまで有資格看護婦がしているということもありますから、このような有資格看護婦の活用の仕方というものを、もっとしっかりわからせていただきたい。わかってないことはないと思いますが、厚生省としては指導監督をなさる責任がおありだと思いますので、その立場から何か方法を考えていただけないものであろうかということを考えます。いろいろございましょう、わかっているのだというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、この有効な活用の仕方によっては、私はその不足のあり方がずっと変わってくるというふうにも考えられると思いますので、その辺をもっと賢くと申しますか、合理的に使われるように指導していただきたいと思うわけです。  以上、もう時間になりましたので、私ここでやめますが、いまの最後の問題は要望として申し上げる点でございます。  最後に大臣にお願いいたします。看護職の問題につきましては、もう本当にいろいろな問題があることは大臣もよく御承知の点だと思うのですけれども、たまたま今回、条約や勧告などが出てまいりましたのを機会に、いままでできなかった看護職員に対する不合理な実態を、この際改めて、本当の意味で有資格看護者たちを有効に活用して、そして国民の健康が守れるような対策を厚生省としてはおとりになっていただきたい。国民の健康づくりも結構でございますから、その中にでも、これも正しく織り込まれるように大臣の御指導を願いたいと存じます。どうぞ大臣の御見解を伺わせていただきまして、きょうの質問を終わりたいと思います。
  181. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 看護業務につきましては非常に重要でございますし、しかも、いまおっしゃいましたように、その有効な活用のあり方、これは本当に、よくいろいろな分野で検討していかなければいかぬだろうと思っております。グローバルに言いますと、大体この五カ年計画は今年度で目標を達成するわけでございますが、しかし具体的に、たとえば国立病院等を考えますと、今度は定員がどうだという問題とぶつかってまいります。全体的には需給のバランスがとれても、今度は個々の場合の具体的な定員という問題になってきますと、なかなか問題が個々にございますので、私としては、いま一番頭にありますのは、国立病院、療養所等について、まあ労働時間は、いま申し上げましたように四十四時間に大体なっておりますが、ILO条約の批准をやるというようなことになりますと、まだ年次休暇の問題やら、その他いろいろございますので、いまの有資格看護婦さんの有効な利用の方途等も看護課長の先輩でもあります先生意見等も十分伺いまして、私としてひとつ検討してまいりまして、なるべく近代的な看護体制が、わが国において確立されますように今後とも一層努力いたします。
  182. 金子みつ

    ○金子(み)委員 一つ忘れました。大臣にお願いします。この条約を批准するつもりでいらっしゃいますか、批准しないつもりでいらっしゃいますか、それだけ聞かせてください。
  183. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いま申し上げましたように、その方向に持っていくための努力を、まずしませんと、ただ批准をすると言いましても、この体制が整っていないのに、そういうわけにもまいりませんから、できるだけ内容になっております条件整備に私としては全力を挙げたい、こういうことでございます。
  184. 金子みつ

    ○金子(み)委員 わかりました。どうもありがとうございました。
  185. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大原亨君。
  186. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私は、きょうは屎尿の海洋投棄の問題を中心に質問をいたします。  下水道施設の普及率を引き上げていって、終末処理を含めまして、それらの施設を整備することは非常に大きな日本の政治課題でありますが、きょう私が屎尿の海洋投棄の問題を中心に質問をいたしたいと思いますのは、やはり、それらの全体の計画や施策というものを円滑に進めていく必要があるのではないか、こういう観点からであります。  第一点、屎尿の海洋投棄の全国的な実態及び瀬戸内海各県の屎尿の海洋投棄の実態はどういうふうになっておるか、ひとつお答えいただきます。
  187. 国川建二

    ○国川政府委員 お答えいたします。  いわゆるくみ取り屎尿の量でございますけれども、全国で申し上げますと、五十一年度末では一日当たり一万二千九百十五キロリットルとなっております。四十六年度末が一日当たり一万三千六百四十キロリットルでございますので若干減少はしているわけでございますけれども、ほぼ横ばいの状態というように考えております。  それから、いまのは全国でございますが、瀬戸内海関係の沿岸といいますと大体十一府県あるわけでありますが、この関係の投棄量は、五十一年度末では一日当たり四千二百四十一キロリットル、おおむね全国の三分の一という程度になっておりまして、四十八年度は四千五百八十三キロリットルでございましたので、若干これも減少しているということが言えると思います。
  188. 大原亨

    ○大原(亨)委員 屎尿の海洋投棄については、海洋汚染防止法等の法的な根拠法規があるわけですけれども、法律上の規制措置についての具体的な内容についてお答えいただきたいと思います。
  189. 国川建二

    ○国川政府委員 廃棄物処理法では一応、屎尿は海洋投棄可能という仕組みになっておりますが、他方、海洋汚染防止法等の関係から、海洋投棄する場合の場所あるいは投棄の方法等についての規制がそれぞれございます。
  190. 大原亨

    ○大原(亨)委員 たとえば太平洋においては、あるいは日本海においてもそうですが、日本列島の沿岸においては距離の制限は、たしか五十海里というふうになっておると思うのですが、五十海里という距離を置いて投棄するという規制をいたしました根拠、何を目安にして五十海里という規制措置をつくったか、これは環境庁かな。
  191. 神戸芳郎

    ○神戸説明員 お答えします。  廃棄物を海洋投入する場合の投棄海域でございますけれども、それは昭和四十七年でございますが、中央公害対策審議会の答申を得まして、廃棄物の性状に応じまして海洋に還元するものと、それから、できないものの二つに分けたわけでございます。そして、それぞれの排出海域を海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律で決めているわけでございます。屎尿に関して見ますと、その性状から見まして海洋に還元できる、そういう型でございますので、これは海洋に拡散させまして海洋還元を促進する、そういう基本的な立場に立ちまして、水産動植物の生育環境と漁場として重要な海域は、その場合に除く。それから海洋の広範な浄化能力を利用するために黒潮とか親潮、そういう海流に乗せやすい海域である、こういう条件を設定しまして、そういうことを考えまして領海の基線から、先生いまおっしゃいましたように五十海里以遠の海域、これをC海域と言っていますが、C海域を定めたわけでございます。
  192. 大原亨

    ○大原(亨)委員 五十海里以遠のC海域を設定したというわけですが、五十海里という基準は何を基礎にして設定をしたのかということをお聞きをしたわけです。
  193. 神戸芳郎

    ○神戸説明員 お答えします。  最後に私が申し上げましたように、黒潮、親潮、そういうことを考えまして、それから海への油の排出が一応五十海里というような設定もございまして、それとの関係等も考慮して五十海里ということにしたわけでございます。
  194. 大原亨

    ○大原(亨)委員 昭和五十年の九月十九日に広島県知事と大分県知事それから高知県知事との間において、担当部長がそれぞれ出席、捺印をいたしまして覚書を交換いたしておりますね。これは御承知のように百四十海里であります。百四十海里沖に屎尿の海洋投棄を一定条件で認めるという覚書がございます。法律の規制とこの覚書との関係、五十海里と百四十海里の関係ですが、それは法律上はどういう効力を持っておるのか、伺いたい。
  195. 神戸芳郎

    ○神戸説明員 C海域というのは五十海里以遠ということになっておりまして、それ以上のところは捨ててもいい、こういうことになっております。百四十海里というのは以遠でございますので、いま水産上の問題とか、そういうことを考えて、それがベターな場合、その海域に捨てるということはいい、こういうことになるわけでございます。
  196. 大原亨

    ○大原(亨)委員 二つ質問いたします。  その際に、たとえば沿岸から百海里のところで屎尿廃棄をいたしますと、法律上の効果はどういうふうになりますか。つまり上乗せの基準ですね。  それから広島県、大分県の知事と高知県の知事が、上乗せのそういう基準を協定いたしました以外に、日本全国で五十一年度末において一日に一万二千九百十五キロリットルほど投棄をいたしておるわけです。その場合に、距離の上乗せをした例が他にございますか。
  197. 国川建二

    ○国川政府委員 高知、大分、広島三県が覚書を結んで、そういう投棄をしているわけでございますが、その他の地域等では、こういう覚書等が結ばれているという事例は聞いておりません。
  198. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それでは瀬戸内海の海域におきまして昭和五十三年八月、覚書の期限でありますが、その期限内に陸上の施設を整備いたしまして陸上で処理するということになりますが、その目標を達成できない沿岸の市町村は大体どのくらいございますか。
  199. 国川建二

    ○国川政府委員 現在、私ども鋭意、五十三年八月末時点で全量陸上処理に切りかえることができない市町村あるいはその量はどの程度のものかということを調査いたしているわけでございますが、たとえば広島県で申しますと、ちょっといま正確な数字を持っておりませんけれども、町村の数にいたしまして五、六市町村、量にいたしまして一日当たり約三百キロリットル程度が、陸上処理に全量切りかえることができるかどうか危惧が持たれているという状況でございます。なお、ほかの県も多数ございますけれども、全体の量、瀬戸内海沿岸の十一府県、福岡県、山口県も含めての話でございますが、全体を申しますと、八月末以降なお海洋投棄が必要なのではないかと想像されますのが、日量約四千キロリットル程度ではないかと思っております。ここらの扱いにつきましては、それぞれ各県でも鋭意検討をされているわけでございます。どういうことになるのか、私どもも注目して指導していきたいというように思っている次第でございます。
  200. 大原亨

    ○大原(亨)委員 広島、大分両県と高知県との覚書の中に「所定の投棄海域へし尿を投棄した場合でも、本県漁業に」というのは高知県ですが「漁業に損害を与えたときは、両県の責任において補償するものとする。」これは市町村が海洋投棄の屎尿処理の責任自治体でありますが、知事がそういう約束をいたしております。適正な約束か、よけいな約束かはわからぬのですが、そういう約束をしております。  7としまして「所定の海域以外への違反投棄が行われたときは、広島、大分両県の責任において、事後の投棄を中止させるとともに、これによって生じたと認められる実害につき、補償等の適切な措置を講ずるものとする。」とあるのですが、こういうトラブルが起きましたかどうですか。  これは海上保安庁が監視する役割りですが、海上保安庁は、そういう問題について円滑にいっているのかどうかという点についての実態把握について答えてください。
  201. 佐藤弘毅

    佐藤(弘)説明員 お答え申し上げます。  海上保安庁といたしましては、海洋汚染を防止するために法令で定められました事項につきまして、違反の防止という観点から監視、取り締まりを行っておるわけでございます。五十二年度に、いまの屎尿の不法投棄の関係で検挙をいたしました件数といたしましては、三隻ございます。
  202. 大原亨

    ○大原(亨)委員 関係県の間において漁業組合をはさんで、そういう補償問題が起きたことがありますか。これは農林省。
  203. 伊賀原弥一郎

    ○伊賀原説明員 水産庁といたしましては、大分遠距離に場所が切りかえられましたというような経緯もございまして、現在のところ具体的な問題としては聞いておりません。
  204. 大原亨

    ○大原(亨)委員 両県が協定いたしましたことが、かなり円滑に履行されている、こういうふうに理解をし、私も理解をいたしておりますが、漁業組合等においても、そういうトラブルはない、こういうふうに理解をいたしております。ただし、海上保安庁が取り締まりをいたします、監視をいたしますのは、海上五十海里以遠の地域の法的な問題であるというふうに理解をいたしておりますし、海上保安庁はうなずいておりますから、そういうことは間違いないだろう。それで、両県の知事がそういう協定、覚書を交わすということは、道義的な、政治的な問題であろう、こういうふうに私も理解をいたしております。  そこで、いまもお話がございましたように、屎尿を海洋投棄することは本来好ましいことではない。しかしながら、この廃棄物処理の法律や海洋汚染防止法等を受けまして一定の基準があるわけですが、屎尿の場合は重金属とかあるいはPCBなどのような有害化学物質等を海洋投棄する場合とは違うわけであります。海洋に還元するという言葉を使われましたが、昔は瀬戸内海でも海洋投棄をいたしておったわけでありますが、しかし、これがだんだんと海洋投棄によりまして富栄養化の原因になって赤潮の原因になるということで、太平洋黒潮の中心部に投棄をすることに相なったというふうに理解をするわけであります。  先般、この部屋でやりましたが、公害環境特別委員会におきまして、瀬戸内海の環境保全の問題のときに、矢込という参考人でありましたが、これはやはり有機農業という観点から瀬戸内海等においては特に農地等に還元の措置を留意すべきではないか。あるいは海洋投棄の場合も、有害物質ではないのであるから、プランクトンが発生をして、それが魚族のえさになるならば、自然の循環の過程の中に入るわけですから、屎尿が直接に環境の破壊、汚染につながるようなことがなければ、これは一定の限界においては好ましいことではないかという議論を参考人はいたしておりました。  私は、問題はたくさんあるわけでございますが、瀬戸内海の環境を保全するために、やはり屎尿だけでなしに畜産のたとえば鶏とか豚とか牛などの屎尿の処理の問題もあるわけです。やはり有機農業ということ等も農林省等は考えて総合的に施策を展開することが必要である。いまのように農薬をアメリカその他の三十倍も五十倍もたくさん使うとか、化学肥料だけでやりますと土地がやせて、農業は行く行くは衰退するという問題等があるわけです。私は、そういう総合的な観点から瀬戸内海の浄化もやるべきであると思うのですが、きょうは、そういう議論を展開する時間はありませんから、さしあたっての議論でありますが、いままで議論をいたしてまいりましたように、期限を八月の末に切っておるために地上の施設において、いろいろな施設をしようとする場合に、住民との間においていろいろなトラブルが起きておるわけであります。  それはせっかく両県の関係県が好意をもって覚書を締結しておるわけです。その実施の状況はいままでの答弁のとおりでありますが、しかし、その期限を付しておるために、かえって双方とも意思の疎通を阻害いたしまして、そしてトラブルの原因になっておるというふうに思うわけであります。したがって、この関係知事の間における覚書、協定の法律的な効果につきましては、いままでの質疑応答で明らかでありますけれども、これは両県の漁民やあるいは住民の要請にこたえて、そしてその利害を調整しながら進めていくことも大切でありますが、その期限をもって陸上施設をやるぎりぎりの期限に追い込むような、そういう行政上の措置は好ましくない、こういうふうに私は考えるわけであります。したがって、法規による一定の基準があるわけでありますが、こういう点について厚生省として、私は一定の指導、助言の見解を明らかにしてもらいたいというふうに思います。この問題につきましてお答えいただきたいと思います。
  205. 国川建二

    ○国川政府委員 先生ただいま御指摘の問題につきまして、廃棄物処理法のたてまえ、あるいは厚生省といたしましては、先ほどもお話がございましたように、原則的に陸上処理で処理していくのが好ましいというぐあいに考えておるわけでございまして、そのための施設整備に最も重点を置いているわけでございます。しかし当面の問題といたしまして、ただいまお話ございましたように海洋投棄が一部行われているわけでございます。ただ、そのために何と申しますか拙速をとうとぶという意味から、陸上での処理施設等があるいは十分でないものが建設されるというようなことがあれば、これは問題でございますので、私どもは、そういう点十分配慮しながら、やはりきちんとした陸上処理施設の建設に努めたいというように思っているわけでございます。  なお、この関係の府県の間の覚書と申しますか方針等につきましては、県の方針でもございますので一応は尊重しなければならないかと思っているわけでございますが、先ほど申しましたような状態でもありますので、関係府県の意向を十分私ども掌握いたしたいと思って、目下調査いたしているわけでございます。したがいまして、その結果あるいは当該府県等から各種の打診と申しますか申し出等がありますれば、この間に立ちまして私ども十分な指導、助言等いたしたい、そういうように考えております。
  206. 大原亨

    ○大原(亨)委員 この点について厚生大臣に改めて質問するのですが、海洋投棄の期限が協定等によって定められているのは瀬戸内海関係府県だけなのであります。これは三県の間であります。法律上は期限はないわけでありますから、五十三年九月以降についても関係市町村が屎尿の投棄を円滑に行えるように関係府県に対し助言、指導を行う、こういうことが必要ではないかという点についてであります。  というのは、八月末を期してやるべきである、あるいは、こういう点が問題だということで、たとえば新聞のスクラップ記事をとっただけでも、三つの地方が、やはりそのことをめぐりましてトラブルになっておるわけであります。かえって覚書のことが、実際上は被害もないし円滑に行われているにもかかわらず、ある意味においては自然のサイクルに還元をしていくという問題等をめぐって議論があるわけですけれども、法律上のプラスアルファを協定いたしましたために、かえって、そのことがトラブルの原因になっているということでございますので、完全な施設が住民の合意によって行われるように、大臣としても特段の注目と助言、指導をしてもらいたい、こう思うわけでありますが、大臣、重ねて見解を明らかにしてもらいたい。
  207. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるとおりでございますので、あくまでも住民の納得を得た上で、私どもは処理方法としては陸上における化学処理が最もいいと思いますけれども、しかし、あくまでも、やはり住民の納得を得た上でやるべきだと思いますし、それまでは海洋投棄等につきましての必要な助言と指導はやってまいりたい、かように考えます。
  208. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これでぴしゃっとやめますと時間が余りまして模範生になるのですが、もう一言だけ質問いたします。  たとえば陸上における処理方式で重油処理という方式が一つある。重油で屎尿を完全に焼却するわけです。しかし、これは莫大な重油の量が要るわけです。これから長い間のことを考えて、省エネルギーを考えてみましても、あるいは、それらの条件が変わることを考えてみましても、急ぐ余りに、そういう方式をとるということは、これは拙速に陥る、活性汚泥のそういう方式も完全なものではありませんけれども、やや普遍化した技術であります。重油を使って完全焼却方式をとっておる地域がございますか、そういう自治体はどういう規模のものでございますか。厚生省は、どのような処理の仕方が好ましい、こういうことで環境庁その他と連絡をとって指導いたしておるのであるか。その点をお答えください。
  209. 国川建二

    ○国川政府委員 ただいまお尋ねのいわゆる焼却式処理法ということかと思いますが、ここ数年の間に新しい方式として開発されてきているわけでございます。全国で現在稼働中のものが三カ所、建設中、試運転中のものが八カ所、約十一カ所でございます。ちなみに瀬戸内関係の沿岸の府県では、実際に焼却を行っております市町村が二カ所、建設中のものが三カ所という程度のものでありますが、規模はおおむね大変小規模なものでございます。  お話ございましたように、いわゆる屎尿処理施設は従来から原則的にはと申しますか、いわゆる水を使った水処理方式が使われてきておるわけでございます。もちろんタイプも方式もいろいろありますが、一般的には経費、建設費、運転管理費等も含めまして、そちらの方がいいのじゃないかというふうに思っているわけでございますが、いろいろな立地条件、たとえば水がないとかあるいは放流先が非常に得がたいとかあるいは余熱利用その他特殊な条件があります場合には、こういう焼却方式も、そういう条件に合致する場合に限って採用することも一応は考えられるじゃないか。しかし一般的には好ましい方式であるとは私ども思っていないわけでございます。したがいまして個別の計画等十分検討した上で、よろしいかどうか判断いたしたい、そういう方針を持って臨んでいるわけであります。御指摘のように確かに運転経費といいますか燃料費が非常に莫大になるというような点が、私どもとしては気になっている点でございます。
  210. 大原亨

    ○大原(亨)委員 以上で私の質問は終わりますが、特に屎尿処理の問題、終末処理の問題は下水道を計画的に整備をし化学的に行う、こういうことで、それまでの間といたしましては海洋投棄も十分自然に還元できるような基準の中で行っていく。そういう場合の規制を考えながら陸上における完全な施設を整備していくということが大切である、その点において厚生大臣と完全に意見の一致を見たわけであります。この上とも十分実態を把握された上で適切な指導をされるように特に要望いたしておきます。  以上をもって私の質問を終わります。
  211. 木野晴夫

    木野委員長 次に、田口一男君。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
  212. 田口一男

    ○田口委員 時間がありませんから簡単に申し上げますから、ひとつ要領よくお答えをいただきたいのです。  一つは、ボランティア活動ということで昭和五十一年八月に、これは一つの例なんですが私の出身の三重県津市に子供会というのがありますが、その子供会の野外活動中に遺憾なことに会員である小学校三年の子供が水死をいたしました。大変痛ましい事件なんです。ところが、その水死事故に対して、当日、引率をしておった父兄——子供会というのですから会長、副会長いろいろあります。その父兄のうち一名だけ特定をされて過失致死罪として起訴をされました。その公判にいま、かかろうとしておる時期でありますので、なんでありますけれども、ボランティア活動という問題から見逃しにできないことでもありますので、ひとつ法務省に。来ておりますね。
  213. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  214. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 速記を起こして。
  215. 田口一男

    ○田口委員 いまの問題はちょっと後回しにします。  厚生省なんですが、この社会労働委員会でも、きのうと十二日、雇用問題で集中審議をいたしましたが、それに関連をいたしまして、社会福祉施設の要員の充実は不況下における雇用機会の創出という見地からもきわめて重要な課題と考えられます。そういった観点から、昭和五十三年度の予算では、いま言った施設職員にどの程度の増員を見込んでおるのか、まず、それをお聞きをいたします。
  216. 上村一

    ○上村政府委員 社会福祉施設の運営を強化するというのは、私ども社会福祉関係の予算の中では特に眼目を置いておるわけでございまして、五十三年度予算でも、この社会福祉関係の運営費の予算というのは、厚生省では医療、年金、生活保護に次ぎまして五千七百五十億円計上しておるわけでございます。その中で職員の増員でございますが、新たに介助する職員を二千四百人配置するなど、全体としての増員が約一万九千人見込んでおるわけでございます。
  217. 田口一男

    ○田口委員 大変少ないと思うのですが、さきに自治労という組織が、これは御存じだろうと思うのですが、社会福祉施設の職員の配置について、どこどこの施設に何人というふうに、大変細かい調査をやりまして、それによりますと、現在数が四十四万一千三百七名。完全にそれらの方々に指導なり援助をするためには、さらに四十三万六百九十五名増員が必要である、こういう提案をしておるのですが、この提案、厚生省御存じだろうと思いますので、どのようなお考えを持っておるか、この点ひとつ。
  218. 上村一

    ○上村政府委員 自治労から提案された内容については承知しておるわけでございますが、自治労が提案されました増員案というのは、収容施設の職員を現在の三倍、それから保育所の保母さんを二倍、その他の職員を一・五倍から二倍にするという基準で計算されたものであるというふうに理解しておるわけでございます。  私どもとしましては、五十年度以降、大幅な改善措置もやってまいりまして、現在の施設職員の基準というのは一応のレベルに達しておるのじゃないか。したがいまして一律に二倍以上是正しなければならないというところまでは考えておらないわけでございます。そして雇用対策として社会福祉施設の職員の増員の問題を考えます場合にも、財政負担の問題なり社会福祉予算の中で、どういうふうに優先度を考えていくかという問題がございますので、提案につきましては慎重に検討する必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。
  219. 田口一男

    ○田口委員 内容を御存じの上で、いまのような御答弁なんですが、大変消極的なように思います。しかし、現下の情勢としては、単に雇用情勢ということ以外にも、この社会福祉施設の職員の体制をより充実することが必要だと思います。いまもお話がございましたように、かつて、こういった社会福祉施設関係については労働基準法に違反をしておるとの指摘もあったようでありますけれども、その後の取り組み、それから、いま言いました職員体制の充実、こういう問題について今後どのように考えておるのか、その点をひとつ。
  220. 上村一

    ○上村政府委員 御指摘になりましたように、昭和四十九年ごろに、社会福祉施設において労働基準法が守れるような体制を立てるべきである、そういうふうに私どもも考えまして、収容施設における夜勤体制、それから保育所における休憩時間の確保等、増員を図ることにいたしまして、五十年度と五十一年度の二カ年で一万六千人の大幅増員を図ったのでございます。それから五十二年度におきましては、給食体制の整備を図りたいということから調理人、栄養士等、約三千二百人の増員を図ったのでございます。こういう増員措置をとることによりまして、国としましては労働基準法が守れる条件が整えられたというふうに考えておるわけでございますが、今後とも入所者の処遇の向上という点も含めまして、職員の栄働条件の向上を図る必要があるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、昭和五十三年度の予算におきましても、新しく介助職員を配置するというふうな措置を講ずることにしたのでございます。  ただ一般的に、これから福祉施設の職員の体制をどういうふうに持っていくかということになるわけでございますが、当然のこととしまして、これからも向上を図らなければならない事項があると思いますが、それはその施設の種類で、いろいろ違いますし、それから個々の施設の運営状況によって、なかなか一律には決められない。たとえて申し上げますと、重い程度の障害の人の入っております施設につきましては、さっき申し上げましたように新しく介助職員を配置することにしましたけれども、それがどういうふうに、入っておる人たちの処遇の向上に役に立つか、それを見守りながら今後の充実の方向というのを見定めてまいりたいと思いますし、それから入ってくる人たちがだんだん重くなってまいりますので、そういったものに対応する職員体制の充実というものを、収容施設であるとあるいは通所施設であるとを問わず、進めてまいりたい。その場合には、どうしても専門的なサービスができるような職員の配置というものを検討していく必要があるのじゃないかというふうに思うわけでございます。これまでも増員してまいりましたが、今後もいろいろ問題がございますので、運営の改善を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  221. 田口一男

    ○田口委員 端的に言うと、どちらなんですか。増員ということよりも運営の改善の方にウエートをかけるのですか。必要ならば増員をする、この簡単なことだけを……。
  222. 上村一

    ○上村政府委員 運営の改善と申しますのは、当然、職員の処遇なり増員を含めた改善になるわけでございます。
  223. 田口一男

    ○田口委員 自治省来ていますか。いまお聞きのような社会福祉施設関係について厚生省は相当前向きといいますか意欲がうかがわれるのですが、毎年自治省が五月中ごろになりますと地方交付税の法案の成立を機として、いわゆる事務次官通達というのを出していますね。昭和五十年から五十二年、昨年までの内容を見てまいりますと、これは本年も来月ごろ出るのだろうと思いますけれども、いま言った社会福祉関係の職員についてのみ申し上げますと、四十八年も、四十九年はちょっとないのですが、五十年も、五十一年も五十二年も、「社会福祉関係職員等必要最小限にとどめる一方、」毎年こういう表現なんです。次官通達全体の流れからいくと、人件費も抑えろ、職員数も抑えろという流れの中で、この職員の数については必要最小限にとどめるという表現が使われておるのですけれども、いまの厚生省のそういった考え方、それらを受けて同じ政府部内の自治省として、やはりことしも、こういう表現で、抑えろというふうにウエートをかけた次官通達の内容にしようと考えておるのかどうか、そこをひとつきっぱり言ってもらいたいと思います。
  224. 土田栄作

    ○土田説明員 お答え申し上げます。  先生承知のように、地方財政は非常な財源不足でございまして、毎年、特別の財政措置を講ずることによりまして、ようやく全体としての収支の均衡を保っているという状況でございます。したがいまして、地方団体におきましては、事務の整理統合、職員の配置転換等によりまして、全体としての職員の増員というものは極力抑制すべきであるというふうに考えておりますし、この点につきましては引き続き適切な指導を行ってまいりたいということでございます。  それから、いま御質問のございました社会福祉関係職員についてでございますけれども、昭和五十三年度におきましても、社会福祉関係職員につきましては地方財政計画上、所要の増員措置を講じているところでございますし、今後も行政需要の動向に即応いたしまして、必要不可欠な職員に限って、その増員を認めてまいるという考え方でございます。
  225. 田口一男

    ○田口委員 これは自治省の関係で後でも聞くのですけれども、運営の改善をやる、それに応じて保母なり何なりがふえてくる、そういった方向で厚生省が一方で指導するのに、自治省の方では、これは公的施設に限ってですが、こういったことをやろうとすれば自治省が言っているからと抑えよる。ちぐはぐですね。だから、そういったちぐはぐによって、末端といいますか、第一線の県なり市町村が、どっちをとったらいいんだ、一方では施設の拡充、一方では人を抑えるというふうな苦労が毎年あるわけです。ですから、私は強く要望して、その見解を聞きたいのですけれども、ことしなんかは、この職員数、特に社会福祉関係といったところについて、こういう抑制にウエートをかけたような指示、通達というものはむしろ出すべきじゃないんだ。出すべきではない。もっとそういう住民のニーズにこたえて、それに応ずるような職員配置ということを考えなさいといった程度の通達を出すべきじゃないか、こう思うのです。もちろん、これは次官通達ですから、まだまだこれから積み上げていくのでしょうが、自治省の考えとして、もっときっぱりしたものを出してもらいたい。どうでしょう。
  226. 土田栄作

    ○土田説明員 事務次官通達でございますが、これは先生お話しのありましたように、「社会福祉関係職員等必要最小限にとどめる」と書いてございまして、社会福祉関係職員をここから削減せよとか、そういうニュアンスは含んでない文章であるというふうに私たちは考えております。  それから、御指摘のような問題というのは、いろいろあろうかと思いますが、それはまさに地方自治でございますので、それぞれの団体の中での配置転換とか、知恵の出し方によって、いろいろ対処できる面があろうというふうに存じております。
  227. 田口一男

    ○田口委員 配置転換など、まあ全体の中でという言い方ですけれども、いままで事務屋をやっておった者が、すぐに保母になるのか、最近は保父というのもあるそうですけれども、それから養護老人ホームなんかの、そういうものになるのか。厚生省、いまの見解にどうですか。そんなすぐにぱっと切りかえられるものですか。ちょっとそこだけ。
  228. 上村一

    ○上村政府委員 職種によると思いますけれども、中に入っておる御老人とか、あるいは体の不自由な人の世話をする専門職というのは、いままで事務をとっておった人が翌日からやれるという筋合いのものではない。要するに特定の教育を受けて専門的な処遇のできるような職員でなければ、福祉施設で中に入っておる人のケアに当たるわけにはいかないというふうに思うわけでございます。
  229. 田口一男

    ○田口委員 時間の関係で、それ以上言いませんが、雇用創出の観点からいたしますと、いままで申し上げたように、やはり施設職員の増員、同時に、地域住民の求めに応じて施設の拡充整備を進めるということも大変重要であると考えます。そういう点で本年、社会福祉施設整備について厚生省としてはどういう計画を持ってみえるのか、その点をお願いいたします。
  230. 上村一

    ○上村政府委員 御案内のように、四十六年度から五カ年計画で福祉施設を整備してまいりましたので、中に入っておる人の数で一・五倍、施設数で一・五倍になりましたし、職員数も当初二十一万であったのが現在四十万、一・八倍になっておるわけでございます。  これからの問題点としましては、特別養護老人ホームでございますとか、あるいは心身障害関係の施設、保育所を中心に、なお要望が相当高うございます。同時に、その施設の整備の状況が地方によってかなり差がある、こういうふうな状況でございますので、厚生省としましては、都道府県の段階で策定されます施設整備計画というものをもとにしまして、国としての助成を推進してまいりたい。特に老朽の福祉施設の改築とか改修の促進ということも一つの眼目に置いてまいりたいというふうに思うわけでございます。
  231. 田口一男

    ○田口委員 いまのお話で、私もちょいちょい聞くんですけれども、各府県、それから市町村なんかで、住民の要求が強くありますから、施設整備をやりたい、新設をやりたい、こういったことで厚生省の方に来ておると思うのですが、いまの話では、相当枠が狭くて、まあ後回しにしてくれ、ことしは無理だから、来年、再来年にしてくれというふうな話も聞くんですけれども、その辺の事情はどうなんですか、端的に数字なんかを含めて言えば。
  232. 上村一

    ○上村政府委員 五十三年度の社会福祉施設の整備の予算は、前年に比べまして二四%増の四百九十億円の予算を計上したのでございます。過去二年に比べますと、伸び率で倍以上であったわけでございますが、ことし、地方からの福祉施設の整備の要望というのは、保育所あるいは老人福祉施設、心身障害関係施設を中心に例年にない伸びでございまして、現在のところ、正直申し上げまして、そのすべてに対応するということは困難な状況でございます。
  233. 田口一男

    ○田口委員 ここで大臣ひとつ御決意のほどをお聞かせいただきたいのですが、先月の二十五日経済対策閣僚会議がありましたね。そこで景気浮揚の七項目を新聞にも発表されておるのですが、そういうことから考えれば、いまの局長の御答弁にありましたように、前年に比して二四%の増であるけれども、本年の地方の要求は近年にない伸びである、こういう状況で、どうさばくかということなんですが、やはり雇用増大という意味も含めて、むしろ地方の計画を、よし持ってこい、ことし全部消化しよう、こういうぐらいの姿勢が望ましいと思うのです。といって財源は、五十三年度の予算が決まった後どうこうということにはならぬのですけれども、そういう地方自治体が考えておる整備拡充、増改築、もちろんそれには職員の増もある、そういった点について大臣はどういうお考えを持ってみえるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  234. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 社会福祉施設整備費は大幅に増加したのですけれども、実はいまヒヤリングをやっている途中なんですが、私も暇を見てちょっと聞きますと、もう大変な開きがありまして、頭を悩ましております。ことに保育所、それから老人施設等については非常に要望が多い。これは来年統一選挙というような傾向もあるだろうと思いますが、非常にいいことだと思うんです、私どもとしては大歓迎でございますので、できるだけ、これを何とかひとつ年内に処理をしたいと思いまして、先の話でありますが、公共事業の予備費等もございますものですから、なるべく努力をしてみたいと思っております。ただ、予備費の問題は、予算が通って、年度の事業をこれから執行するときでございますから、いますぐ、そういうことはできないと思いますが、全体のあれをよく見まして、できるだけ努力をしてまいりたいと思っております。
  235. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 関連質問の申し出がありますので、これを許します。村山富市君。
  236. 村山富市

    ○村山(富)委員 先ほど局長からの答弁を聞きますと、本年度予算で四百九十億円、これは新設ですね。この四百九十億円で予想される人員増というのは、どれくらい想定されるわけですか。
  237. 上村一

    ○上村政府委員 四百九十億円と申しますのは、新設、増設、場合によりますと改築も含んだものであるわけでございます。それで例年のベースで申し上げますと、毎年、福祉施設が増設されることによりまして増員される人数というのは、約二万人前後であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、五十三年度の施設整備がなされました後において、そこで働くことになる職員の数というのは約二万人前後になるのではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  238. 村山富市

    ○村山(富)委員 そうしますと、施設整備費四百九十億円、これは新設も含めて。大体、この四百九十億円の予算が全部使われた場合に二万人ぐらいの増員になるということが予想されるということですね。そうしますと、いま都道府県、各市町村から上がってきている要求というのは、大体どの程度ありますか。
  239. 上村一

    ○上村政府委員 いまヒヤリングの最中でございますが、六百億円を超えております。
  240. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは大臣、先ほど答弁がございましたけれども、ことしの予算なんかは、特に景気回復と称して公共事業にうんとウエートを置いていますね。建設関係の予算というのは、各都道府県の要求よりも上回っているというものがたくさんあるわけですね。そういう点から考えてまいりますと、これは大臣のこれからの努力にもかかるわけでありますが、せっかく、これだけ地方自治体からの要望がある。しかも、これは景気回復にも大変役に立つし、それから、ある意味では雇用創出にもなる。そういういま一番時宜に適した仕事でもあるし、この機会に、やはり福祉関係をうんと引き上げる、こういう観点からも私はやはり最大限の努力をすべきではないかというふうに思いますが、いま当初予算から比較をして、これだけの大きな要求がある。しかも、いま申しましたように客観的な、こういういい面もあるわけですから、したがって、この際、思い切って予算の増額を図っていこう、こういう努力をする、どの程度のめどを考えたらいいのか、考えられておるのか。大臣のそこらの決意をもう一遍ひとつ聞かしていただきたいと思うのです。
  241. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私は、時期はちょっといますぐというわけにいきませんが、三千億の予備費があるのだから、社会福祉関係に二百億や三百億はとりたいなと思っております。
  242. 村山富市

    ○村山(富)委員 ひとつ期待にこたえて最大限がんばっていただくように、御健闘を期待しておきます。
  243. 田口一男

    ○田口委員 今度は、さっき初めに言ったボランティア活動について、法務省、もう時間があと二十分しかありませんから簡略にお願いしたいのです。  昭和五十一年八月に三重県津市で、これは全国にもあるそうでありますけれども、いわゆる地区子供会が野外活動としてやっておりましたら、そのうちの会員である小学校三年の子供が不幸にして水死をいたしました。大変痛ましい事件なんですけれども、問題は、当日その子供を引率しておった育成者十一人のうち一人だけ特定をされて、刑事事件として過失致死罪ですか、起訴をされました。このことを新聞で見たのですけれども、事実関係について簡単に御説明願いたいと思います。
  244. 佐藤道夫

    佐藤(道)説明員 御説明申し上げます。  ただいまお尋ねの事件につきましては、五十一年十一月四日、所轄の警察署から津の地方検察庁の方に過失致死事件ということで事件の送致がなされておりますが、送致されました被疑者と申しますのは、子供会の指導員と称する保母さん、それから子供会の会長さん、それから同じく班長さん二名の計四名でございます。津の検察庁におきましては、この事件につきまして、事柄の性質にかんがみ慎重に検討した結果、指導員である保母さん一人を過失致死ということで、昨年十二月二十七日津の簡易裁判所の方に公判請求しております。  起訴事実の概要を申し上げますと、これは四ツ葉子供会という子供会のようでございますけれども、ここの指導者として、五十一年八月一日、子供会所属の児童三十名を引率いたしまして、同じく子供会の会長ら父兄十名ほども同行いたしまして、三重県の安濃川の川べりに川遊びを兼ねてのハイキングに赴いた。その際に、子供の行動についての監視が必ずしも十分でなかったという過失によりまして、児童のうち一名が溺死したという事件でございます。この事件につきましては、現在、津の簡易裁判所の方におきまして公判が行われておるということでございます。
  245. 田口一男

    ○田口委員 公訴事実はそのように聞いてはおるのですが、私は、いま公判にかかっておりますから、これについてどうこうということは差し控えるべきだと思うのですけれども、ここで特に問題にしたいのは、この子供会といったような社会教育の一分野、これは厚生省にもボランティアがいろいろあると思うのですけれども、それに善意で奉仕ですよ、参加をして不幸にして、こういう事件が起こった。亡くなったお子さんや、その御遺族の気持ちは重々にわかりますけれども、一体、社会教育の観点として子供会というものはどうなのか。そして、いまもお話がありましたが、育成会の育成者それから指導者、こういった者の性格、これについて簡単に。
  246. 柴沼晉

    柴沼説明員 ただいま先生指摘のとおり、ボランティアとして、みずからの意思で、多くの場合、学業や職業を有しながら無報酬で青少年団体活動の指導、助言のために自分の技能や時間を提供する、そういう無償の奉仕活動というものが青少年の団体活動を非常に支え、あるいは青少年団体活動の振興に大いに役立つものと私どもは理解をしております。また、そういう意味で、それぞれの団体において、そのボランティアの呼び方については、いろいろな呼び方がございます。子供会では育成者とか指導員とか、さまざまな呼び方がありますけれども、私どもとしては、ボランティアの活動を今後とも振興してまいりたい、そのように考えております。
  247. 田口一男

    ○田口委員 そうしますと、第一回の公判があったのは三月九日ですか、そこで、こういう心配が出ておるのですね。当日、公判を傍聴した他の地区の子供会の、いま言った指導者、育成者は、こういうことで裁判になるのなら、痛ましいことという前置きがありますけれども、「もう子供会の行事なんて不安でできません。もし、裁判に負けるなんてことになれば、子供会指導者を続けていくことも考えなければ」ならない。ということは、いま文部省でそういうことを指導、奨励しようと思っても、善意の奉仕者が、しかも特定をされて、おまえは指導者であったのだからといって刑事責任を問われる。これは社会教育ということに大変な影響を及ぼすのではないか。  現にそれが起きてから、これは厚生省の所管ですけれども、あえて答弁は求めませんが、保育所が遠足をいたしますね、毎年卒業期というか。そのときに、こういう事件で裁判ざたになったものですから、遠足の行事を計画をしておきながら、いつ幾日どこどこへ行くというのが、もう保育所はさあっと後方に下がったのですね。そして、事故があったら困るから、当日の遠足の責任者は園児の保護者でやってくれ、こういう事態が起こっておるわけです。したがって、善意の奉仕者であるボランティアが——ここで文部省にお答えを求めるのは、ちょっと公判に差し支えるかどうかわかりませんけれども、こういうことがあったら、今後進めようとしておるボランティア活動なり、そういったことにいいことか悪いことか、これを端的にひとつお答えをいただきたいと思う。
  248. 柴沼晉

    柴沼説明員 このたび、先生のお話しのとおり、訴訟そのものについての意見は、現在、法廷で争われている段階でございますので差し控えさせていただきたいと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、ボランティアが青少年の団体活動に非常に重大な役割りを果たしているということを考えますと、この裁判の成り行きがボランティア活動の普及促進という観点から見て重大な影響を及ぼすと私どもは考えておりまして、大きな関心を持って、これは見守っていきたいと思います。  それから、ボランティア活動につきましては、かねてから文部省としても野外活動における安全とか、あるいはまた不幸にして事故が起きた場合などの補償等につきましていろいろ通達等も出してまいりましたが、こういう事件が起きた、あるいはこういう訴訟が起きたということもございまして、いま私ども青少年団体の意見も聞きまして、そういう事故の防止のあり方、あるいは不幸にして事故が起きた場合の補償の方法あるいはボランティアのあり方、そういうものについて検討を進めているところでございます。
  249. 田口一男

    ○田口委員 法務省にお尋ねをしたいのですが、公判に差し支えのない範囲で結構ですけれども、聞くところによりますと、本人は本業として県の職員で児童相談所の保母をしておるのですね、本業として保母の資格を持っておる。それから指導者であるから特定をしたのだ、こういうふうな話なんです。普通、私どもが一般的に考えると、道義的には、このことに何らかの責任があると思うのです。そうすると、会を総括するといいますか、いま挙げた四ツ葉子供会育成会、それの会長であるとかなんとかというのが特定をされるのが一般的な常識だと思うのですが、なぜ被告人として、名前を言いますが、田村マキ子さんというのですけれども、言われておるように本業は保母であるからというふうなことになるのか。なぜ十一人の引率者がおったのに、これを特定するのか、その辺のところ、もし差し支えなければ。
  250. 佐藤道夫

    佐藤(道)説明員 お答え申し上げます。  お尋ねの事件につきましては三月九日に第一回公判がございましたが、この段階におきましては検察側におきまして起訴状を朗読したというだけでございまして、まだ事件の全貌を明らかにする、いわゆる冒頭陳述なるものは行われておりません。この冒頭陳述は次回の四月二十八日に行われる予定でございますので、検察側の主張の内容につきましては、この冒頭陳述において明らかにされるということでございますから、この段階におきまして検察官の考え方、この事件の見方等を私から申し上げることは適当でないと思います。いずれにいたしましても、ただいま先生のお話にありました、保母であるとか、あるいはまた指導員であるとか、そういう事実のみを、ことさらに強調いたしまして過失責任を認めたということはないわけでございまして、通常の事件と同様に、諸般の状況を総合的に勘案いたしまして、やはり本件につきましては最終責任者はだれであるかということを突っ込んで検討した結果、保母さんである田村と申しましょうか、この方についての刑事責任を追及するのが適切妥当であるという結論に達して公訴を提起したということでございます。
  251. 田口一男

    ○田口委員 法務省の方にお尋ねをしても、いま言った程度のことで、それ以上は公判の場でやるよりしようがないのですけれども、ボランティア活動という観点からいって文部省にお尋ねをいたしますけれども、指導者とか育成者とかというのは一体どういう根拠で選ぶのですか。何か聞きますと、去年か、おととし佐賀県で講習会のようなものがあった。そういうところへ行ってくると育成者になり指導者になるんだ。また、PTAと同じように、だれもなり手がないものですから、たまたま熱心な人がおれば、無理やり、あなたやってもらえないか、こういうことで指導者という名前がつくんだと思うのですね。今後あってはなりませんけれども、こういう事故があった場合に、たまたま本業が保母であった、県の職員であった、そういう子供を扱いなれておるような仕事をしておるから指導者になってくれ、そうなると、事故があった場合、一発でやられる。したがって指導者であるとか育成者というものの根拠をどう考えてみえるのか。
  252. 柴沼晉

    柴沼説明員 いま保母の資格があったからという御質問、これは法務省からもお答えございましたように、現在、弁護団が検察側に釈明を求めているという段階でございますので、私から意見を申し述べるのは差し控えさせていただきますが、通常の場合、青少年団体においては、それぞれの団体の特性に応じて、さまざまな形態において指導者の育成を図っております。これは一般的にどういう単位で、どういうふうになるということは、ちょっと申し上げにくいのでございますけれども、一定の経験なり年月なり、あるいは一定の講習を受けたり、そういうことによって指導者なり育成者なり、これも団体によってさまざまな呼び名がございますが、そういう資格を与えている。それからまた国としても青少年団体指導者の講習を行いまして、いわば団体の指導者としての基礎的な知識を講習している。そういう国の施策としての指導者養成、それと団体独自の指導者養成、そういうことで団体の指導者なり育成者なりと呼ばれるボランティアが育っていく、そういうことになっております。
  253. 田口一男

    ○田口委員 残念ながら公判という事実があるのですし、刑事責任を問われておる。そうなってくると、その結論を待つまでは、いかんともしがたいということに実はなるわけでしょう。文部省の方から法務省に対して、けしからぬ、影響があるので、やめてくれと言うわけにもまいりませんし、新聞なんかを見ますと、公訴権の乱用ということも一つの要素になっておるようです。それらはいずれ裁判で争われるにいたしましても、私はちょっとむちゃを言いますけれども、この裁判のけりがつくまで、社会教育関係厚生省もそうなんですが、本業が公務員の者、公務員に限りませんが保母なり何なりを本業としておる者のボランティアについては一切お断りという通達を出すべきであると思うのです。そうでなければ地域におけるこういうことはみんな恐ろしくてやりませんよ、だれだって裁判はいやですから。聞いてみますと、もし刑事事件に負けたら三千万要求するということを遺族の方も言っておるそうです。刑事事件は何らかの形でけりがついた。また三千万要求される、それも特定した個人、こういうことになると、もう恐ろしくて子供会の育成者や指導者なんというものにはなりたくない。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕 こういうことでは、今日の過保護状態ということを、より奨励をすることになると思うのです。そういう悪い結果になると思うのですが、やはり恐ろしい、いやだ、不安だという気持ちがあるのですから、けりがつくまでは指示、通達を出して、それらの混乱を一応避けることが必要じゃないか、こう思うのですがどうでしょう。厚生省、ボランティアの範囲はあるのですか。あっては困るのですが、またそういう事故があるかもしれぬ。文部省もどうでしょう。
  254. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 本事件ははなはだ遺憾な事件でございますが、さりとて、いま先生のおっしゃいますような、一切活動を断れということはどうでございましょうか。この事件については昨日ようやく耳に入っただけでございます。私どもも重大な関心を持っておりますので、今後のボランティア活動というものについては、教育面のみならず福祉活動でも相当奨励していかなければならない立場でございますから、ことに先ほど御引例になりました保育所等の園児のいろいろ野外活動、教育活動等について、いろいろな支障を来しても困りますので、よく状況等をつまびらかにさせていただきましてから私どもの考えを正確に申し上げたいと思います。
  255. 田口一男

    ○田口委員 私がむちゃと言ったのは、そういうことになっては困ることは重々承知をいたしております。それに現在、子供が置かれておる状態を見た場合、まあ昔という表現はおかしいのですが、今日の社会環境は結局親子きょうだい。地域の餓鬼大将などによる年長者と年少者が一緒に遊ぶ場がだんだん少なくなっているのですね。しかも外へ遊びに行こうとすれば車社会で危険がある。そういった観点から遊び場をつくろう、そういった縦の社会で年少者と年長者が遊びながら社会の訓練を受けていこう、こういう意味で私は子供会というものを奨励していると思うのです。そういった子供会は官製ではありませんが、地域の自治会の中、PTAの中で地区委員として、たまたま地区に居住しておる保母の経験を持った人なんかが自発的に社会奉仕をする、こういう形が今日まで続いていると思うけれども、まだ十分じゃないと思う。そういった過程で不幸にして、こういった事件が起きたわけでありますけれども、それがたまたま新聞記事なんかを見ますと、本職が保母であるから、あれをやったのだという話が、さっき法務省が言ったように、これからはっきりするでしょうけれども、言われておる。そうすると、特に公務員というものは、刑の行方によっては休職処分を受けたり、また地方公務員法によって免職になったりする。これも公務員の自発的な社会奉仕活動ということの一つのネックになる。これは御理解いただけると思うのです。したがって、新聞に出ておる公訴権の乱用とかどうとかということは、この場では言いませんけれども、社会教育、それからボランティア活動、こういうものの意義と、危険はつきものでありますから、そういった危険が万が一起こった場合には事故を受けた家族と育成会なら育成会との人間関係がうまくいくような方途というものも最低限それぞれ行政責任として考えておく必要があるのじゃないか。それがあるから、むちゃをやっていいというのじゃないけれども、最低限安心のできるような方途を講じておく必要があるのじゃないかと思いますが、その辺について御見解を承って、この問題については、いずれまた改めて法務委員会などで質問をしたいと思いますけれども、いまの問題についてのお考えのほどをお聞きしたいと思います。
  256. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 ボランティア活動に参加する方は、私は職業なり身分なり問わないと思うのですね。公務員の方であろうと当然、自分の余暇をボランティア活動に割くということは私はとうとい行為だと思っております。したがって、そういう方々のボランティア活動をいままでどおり、むしろ従来以上に積極的にやっていただくような客観情勢を整えるということについて御指摘だろうと思いますので、文部省、厚生省その他いろいろな各省が関連してくると思いますが、できるだけ意を配ってまいりたいと思います。
  257. 田口一男

    ○田口委員 終わります。
  258. 木野晴夫

    木野委員長 次に、古寺宏君。
  259. 古寺宏

    ○古寺委員 生活保護法の問題について質問いたしたいと思います。  生活保護法につきましては最近、毎年のように改善を見ているわけでございますが、まだまだ生活保護法の内容につきましては多くの問題があるように思うわけでございまして、それらの点につきまして、これから質問申し上げますので、厚生省のお考えを承りたいと思います。  まず第一は、生活保護法の中には級地というのがございます。一級地から四級地まであったわけでございますが、今年度から一級地から三級地までになるようでございまして、一級地は百六地域、二級地が二百二地域、三級地が、今年度二百二十二地域の四級地が三級地になりまして、二千九百四十九地域というふうになる、このように承っておりまして、この各級地の格差は九%、こういうふうになっているわけでございますが、この級地を決めるに当たっては、どういう基準によって級地を決めておられるのか、まず承りたいと思います。
  260. 上村一

    ○上村政府委員 御指摘になりましたように、従来、級地の区分は四区分だったわけでございますが、今年度から三区分にしたのでございます。こういう級地の決め方でございますが、一般的には、その地域における消費水準の差、そういったものを考えながら、それぞれの地域の生活実態に照らして検討を加えておるわけでございます。実際に家計調査など見ましても、現在の級地間の格差というものは、おおむね妥当ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  261. 古寺宏

    ○古寺委員 ただ、おおむね妥当であるというだけでは納得がいきませんので、どういうような計算の仕方で、どういう内容になっているのか、一応御説明してください。全部というわけではありませんが。
  262. 上村一

    ○上村政府委員 たとえば、総理府の家計調査をもとにいたしまして、一般世帯の実態生計における地域差というのを一人当たりの平均消費支出額に即してながめてまいりますと、五十一年の場合には、一級地を一〇〇にいたしますと、二級地は九四、三級地は八二、四級地は七六というふうなことになっておるわけでございます。  それから、私自身まだ新聞で見ただけでございますが、先般発表されました総理府統計局の物価統計調査でも、大都市ほど物価が高くて、その差が開きつつあるというふうなデータが出ておるわけでございまして、現在日本で三千数百あります市町村というのを三つのクラスに分けるということ自身が、相当抽象化した作業をせざるを得ないわけでございますが、いま申し上げましたような数字から見て、さっき申し上げましたように、おおむね妥当ではないかというように考えるわけでございます。
  263. 古寺宏

    ○古寺委員 この一級地と二級地、私はきょうは、そういう数字を持ってまいりませんので、後ほど比較検討してみたいと思うのです、この資料はきょう、ちょうだいしたものですから。  これをずっと見ますと、たとえば東北、北陸の場合は、県庁の所在地のみが二級地になっておるわけです。厚生大臣の新潟県も、新潟市だけが二級地になっている。雪の降る地方に行くに従って、だんだん二級地が少なくなり三級地が多くなる。南の方ほど一級地が多い、こういう傾向になっているのでございますが、私の単純な考え方からするならば、この生活保護法の目的、あるいは第二条の無差別平等の精神、あるいは第三条の最低生活の保障、こういう点から申しますならば、むしろ私は逆でなければならないんじゃないか、そういう感触を受けるわけです。ですから、この級地の基準というものを定めるに当たって、九%の格差というのは一体何を根拠にして九%の格差を置いているのか。そしてまた、この一級、二級、三級はどういうような手法、作業によってこういう決め方をなさっているのか。しかも、これを決められるのは、これは厚生大臣の専決事項でございますから、厚生大臣が勝手に決められるわけです。こういう級地の見直しをすべきであるということ、それから格差の是正をすべきであるということを、われわれが、いろいろなところへ行くたびに言われるわけです。ですから、この点について今後厚生省として、級地の適正な見直し、また格差の縮小について、どういうふうにお考えになっているか承りたいと思います。
  264. 上村一

    ○上村政府委員 さっき申し上げましたように、それぞれの地域によって消費生活の水準に差があるというふうなことに着目をしたのが地域差であるわけでございます。一般的に申し上げますと、これだけ交通が頻繁になり、商品の流通が全国的になるにしたがいまして、地域の消費水準の差というものが次第に縮まってくるというのも一つの傾向であるわけでございまして、五十三年度は、その中で四級地というのを全部なくすというふうなことにしたわけでございます。したがいまして、いままでございました一級、二級、三級、四級というのが三つの段階のランクになる。そういうふうなことにいたしますと、今度は従前の三級地が、いままで四級地であったものが三級地になったところとのバランスで、見直しの議論が出てまいる。そういうふうなことで毎年度、私ども、四級地を三級地にしていくこととの絡み合いもありまして、級地の見直しというのを個別的に行いつつあるわけでございます。いまお話しになりましたように、雪の降っているところが二級地、ほとんど三級地というのじゃございませんで、やはり大都市の多いところが一級ないし二級で、北の方あるいは雪の方、あるいはもっと南の方というのがやはり三級地が多いというふうにお考えいただきたい。やはり生活保護を受けて営まれる生活というのは、それぞれの住んでおられる地域の消費生活水準との相関的な関係にあるものであるというふうに私ども理解しておるわけでございますから、決して差別があるものではないというふうに考えておるわけでございます。
  265. 古寺宏

    ○古寺委員 これを議論していますと時間がなくなりますので、後日改めて内容の決め方につきまして詳しく教えていただきたいと思います。先ほど新潟県は新潟市のみと申し上げましたが、新潟県は長岡市も入っております。  最近、不況業種の多い地域あるいは二百海里問題を抱えている地域に参りますと、生活保護の対象が幾分か増加しているようでございます。現在は雇用保険あるいは調整給付金とか、いろいろな制度によりまして、ある程度のカバーはされておりますが、今年度の夏から後半にかけては相当数の生活保護世帯が出るのではないかと、こういうことを各市町村では予測をいたしております。最近の生活保護世帯の増加の傾向あるいは今後の見通しにつきまして、厚生省はどのようにお考えになっているか、承りたいと思います。
  266. 上村一

    ○上村政府委員 まず最近の生活保護の動向でございますけれども、五十一年度は被保護世帯が七十一万世帯で人員が百三十五万、十年前に比べますと世帯数で増加して人員で減ってきている。しかし昨年の八月と四十九年の八月を比較しますと、世帯数もふえ、人員もふえてきている。したがいまして、被保護人員の状況を見ますと、最近は微増傾向にあるんじゃないかというふうに思うわけでございます。地域ごとに見ましても、さっき御指摘になりましたように産炭地域、その他産業の少ない地域では保護率が高く、それから東海地方のように非常に繁盛している産業のあるところでは保護率が低いというふうな傾向にあるというふうに私どもつかんでおるわけでございます。
  267. 古寺宏

    ○古寺委員 この生活保護の問題につきましては、いろいろな問題があるわけでございますので、限られた時間でお尋ねをしてまいります。  次に、教育扶助というのがございます。この中に、高い教材でございますね、これはなかなか思うように買えない、こういう皆さんの要望があるわけでございますが、この点については、どのようになっておるんでございますか。
  268. 上村一

    ○上村政府委員 生活保護で保障します教育扶助というのは、義務教育に伴って必要な最低限のものでございます。したがいまして、そういった扶助の内容というのは、被保護家庭以外の児童なり生徒の場合と均衡を失しないようなものでなければならないというふうに決めておるわけでございますけれども、現在の基準で被保護世帯の児童なり生徒が実際の授業を受けるのに支障はないんじゃないかというふうに考えておるわけでございまして、教育扶助の基準額は表にあるとおりでございますけれども、副読本的な教科書、ワークブック、それから和洋辞書、そういったもののほかに、正規の授業である特別活動の中で、クラブ活動でその子供が必要な用具類、たとえば剣道の道具というようなものも教育扶助で見るような措置を講じておるわけでございます。
  269. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、たとえばスキーですね、雪国に参りますとスキー、それから次に陸上競技用のスパイクですとか、あるいは柔道着ですとか、こういうものは対象になりますか。クラス全員がそういうものを購入しているんでなければ対象にならぬ、こういうふうに言われているわけですが、仮にクラブ活動等でもって十人とか二十人の人が柔道や剣道をやっておるとか、あるいは通学用としてスキーを着用している、そういうような場合に、これは教育扶助の適用を受けられますか。
  270. 上村一

    ○上村政府委員 私、申し上げたのはクラスの全児童というんではなくて、正規の授業であるクラブ活動で、そのクラブの全児童が購入するようなことになっておるものについては教育扶助で認めている。したがって、剣道がクラブ活動であるものについては剣道の道具、スキーがクラブ活動であるものについてはスキーの用具というものについて教育扶助で見ることにしておるわけでございます。ただ、個人的なレクリエーションとしてスキーの用具が欲しいと言われましても、これはどうも見かねるということになるわけでございます。
  271. 古寺宏

    ○古寺委員 私が申し上げているのは、全然雪の降らぬ地方の生活保護家庭の子供さんが一人だけスキーが欲しいというのは、それは無理な注文かもわかりませんが、少なくとも雪の降る地方においては、そういうことは当然適用されてしかるべき問題であると思うのです。ところが現実には、先ほど申し上げましたように、クラス全体が購入したものでなければいかぬというふうな制約を受けて、非常に困っておる家庭があるんです。ですから、そういう面については今後改善をしていただきたいと思います。  次は、時間がなくて大変なんですが、医療扶助を受ける場合の医療券の問題ですが、生活保護家庭では、その都度福祉事務所へ行って医療券をちょうだいしてきて、そして医療機関に持っていかなければならぬ、こういう不便がある。これは非常にむだだと思うのです。ですから、普通の健康保険の加入者が保険証というものを持っていけば受診できるように、生活保護家庭には、医療証という名前でも結構でしょう、大体同じようなタイプの、そういう医療証のようなものを差し上げて医療機関に持っていけば受診ができるというような制度に今後、改めていくべきだと思うのですが、この点はどうですか。
  272. 上村一

    ○上村政府委員 いま御指摘になりましたような保険証に似た医療証といったようなものの採用についての要望も高まっておるわけでございますけれども、生活保護のたてまえというものは、改めて申し上げるまでもございませんけれども、最低生活の保障の一環として必要に即して行われるというたてまえをとっておりますので、今後の検討課題として、当面は現行の方式をできる限り簡略化するように努めてまいりたいと思うわけでございます。現に、四十九年度におきましても相当その手続を簡略化いたしましたし、五十三年度におきましても、被保護者が急性疾患で直ちに入院するような場合について、要否意見書による審査というものを、入院月に限って省略するような措置を講ずることにしておるわけでございます。
  273. 古寺宏

    ○古寺委員 これはできるだけ早急に検討いたしまして、特に子供さん方がいろんな病院に参りましても、医療券を持っていくのと保険証と同じような医療証を持っていくんでは違うと思うのですよ。そういう面の配慮というものも、やはり念頭に置いて、この問題の検討をしていただきたいと思います。  それから次は冬季加算ですね。暖房の問題ですが、これをいろいろお聞きしてみますと、十一月から三月までの五カ月間の暖房費として支給しているようでございますが、最近の生活保護世帯の傾向としては非常に高齢化しているんです。それから身体障害者ですとか、あるいは傷病者ですとか、そういう方々が多いのですね。そういたしますと、われわれの地方では十月から四月まで暖房が必要になってくるわけです。ですから、冬季加算につきましては、実態に合わせまして十月から四月までの暖房費を支給すべきであると思いますが、いかがですか。
  274. 上村一

    ○上村政府委員 この冬季加算と申しますのは、生活扶助基準の二類の冬季における加算として行われているものでございまして、ねらいは、冬の暖房の需要を賄うために必要な経費というのを十一から三月までに分割して支給している。その地域の実態から見まして、十一月から三月までの以外の時期において必要なときに一括購入ができるような措置も講じておるわけでございまして、暖房関係の経費というのは一応必要なものは満たせるような扱いになっておるのじゃないかと私ども考えるわけでございます。  いま、お話しになりましたように、十月から四月までといいますと六カ月になるわけでございます。一年の半分が冬であるということになるというのもいかがか。むしろ十一月から三月までを冬季加算の対象にして、それに必要な経費というのは、場合によれば事前に一括して支給するような措置も講ずるということにしておるわけでございます。なお、五十三年度では、この冬季加算につきましても一一%引き上げをしたわけでございまして、冬季加算自身は、これまでも充実してまいりましたし、これからも充実するつもりでございます。
  275. 古寺宏

    ○古寺委員 その十一月から三月までに分割して暖房費冬季加算をしているという内容はわかりますが、その冬季加算の金額が実際の暖房費に合わぬわけですよ。間に合わぬわけです。もっと簡単に言うなら足りないのですよ。ですから、この暖房費を、ひとつ局長さんも一遍寒い方へ行って実際に実態を調査なさって、そうして、この中にあるのでしょう、健康で文化的な最低生活を保障せぬといかぬのですよ。これじゃ保障できないじゃないですか。ですから、この冬季加算についても、ひとつ検討していただきたいと思います。  次は、年末には毎年、一時扶助というのが一人当たり七千四百十円ですか、もち代として支給されておりますね。ところが夏期にはないのです。普通は、一般の勤労者というのは必ず冬期にも夏期にもあるでしょう。いかに一般勤労者の生活水準に格差を縮小するかというのが、現在、生活保護が抱えている一番大きな課題なんです。そういう面から言うならば当然、夏期手当、お盆手当と申しますか、これは一時扶助として、やはり支給すべきものであるというふうに考えますが、大臣どうですか。大臣に今度お伺いします。
  276. 上村一

    ○上村政府委員 現在の生活扶助基準の決め方でございますけれども、その月々によりまして多少の変動がありましても、それは生活のサイクルの中で賄っていただく、それを前提にしました平均月額的な意味で設定しておるわけでございます。したがいまして、暮れの場合に比べまして夏における消費需要が、ほかの月に比べまして格段に多い。したがって、一般基準では賄うことが非常にむずかしいというふうな事情があれば別でございますけれども、現在の状況を見てまいりますと、夏期の一時扶助というのを一般の生活扶助基準の枠外で創設する理由というのは、冬期の場合に比べまして少ないのじゃないかなというふうに思います。
  277. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 いろいろ古寺先生から御指摘をいただきました問題点、私も、もっともだなと思うような点も若干ございますので、ずっと御意見を承っておきまして、内部でまた検討させていただきたいと思います。
  278. 古寺宏

    ○古寺委員 次は、住宅扶助の問題なんですが、実際に住宅扶助の金額と生活保護世帯が入っている家の家賃とが合わないのです。住宅扶助の方が安過ぎるのです。この点はどうですか。
  279. 上村一

    ○上村政府委員 住宅扶助の決め方でございますけれども、これは借家なり借間に住んでいる人の家賃とか間代、土地を借りている人の地代、それを対象にしているわけですけれども、いま御指摘のようなことはないのじゃないか。一般基準では二級地の場合、青森市は二級地でございますが九千円、しかし、この基準で賄えないような場合には、各都道府県ごとに第二種公営住宅、それから、それぞれの地域の被保護世帯の家賃を実態調査して特別基準を設けることにしておるわけでございます。青森を例にとりますと、二級地の場合、五十三年度は一人から六人世帯で一万六千二百円という特別基準が住宅扶助に設定されておるということになるわけでございまして、五十三年度の標準四人世帯に即して申しますと、住宅扶助基準も合わせますと、二級地の場合に生活保護費は十四万三千四百円ばかりになるということでございますから、全体として最低生活は賄えるというふうに考えております。
  280. 古寺宏

    ○古寺委員 その一万六千二百円というのは第二種公営住宅の家賃なんですね。ところが、普通ちょっとしたアパートでも最低二万円ぐらいは家賃を取られる。しかも、この第二種公営住宅に入ろうと思っても、なかなか入れないというような実態なんです。ですから、現在の住宅扶助というものは実態に合わないのですね。局長さん、首をかしげていらしゃいますけれども、実態に合わないのですよ。われわれ調べてみまして、いろいろお聞きしてみまして、実際に実態に合わぬわけですから、生活保護世帯の方々が住宅の面でお困りにならないような必要最小限度の住宅扶助というものはやはり考えてあげなければならないと思うが、どうでございますか。
  281. 上村一

    ○上村政府委員 いま御指摘になりましたように、第二種公営住宅の家賃をもとにして特別基準を設定しておるわけでございますが、五十二年度に比べまして約二割のアップをしたわけでございます。これからも、その努力はしたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、生活保護費全体として、その生活が賄われることになるわけでございますので、全体としてながめた場合に一応最低の生活は賄えるものだというふうに考えるわけでございます。
  282. 古寺宏

    ○古寺委員 どうもかみ合いませんが、実態を調査しまして、実情に合うような住宅扶助というものを、ひとつ考えていただきたいと思います。  それから次は、基準看護の病院に入院した場合の付添料の問題なんです。普通は、基準看護の病院の場合には付き添いは要らないことになっておりますが、実際問題として国立病院ですとか、いろいろな公立の病院に参りましても、重症の場合には付き添いを必要とするわけです。その場合の付添料については全然めんどうを見てもらえぬわけですが、この点についてはいかがですか。
  283. 上村一

    ○上村政府委員 医療扶助でやっております看護の給付というのは医療保険の例にならっておるわけでございまして、基準看護の承認を受けていない医療機関に入院している場合に限りまして、付添介護人をつける。御案内のように、医療保険制度では、基準看護の承認を受けた医療機関では看護婦、準看護婦が一切の看護をする。患者の負担による付添看護というのは行われないということになっておりますので、生活保護の上でも付添看護を認めるというわけには、なかなかまいらないというふうに考えるわけでございます。
  284. 古寺宏

    ○古寺委員 この基準看護が承認されていない病院に入院しているものであって、付添看護が今度承認された場合の看護料がございます。その場合に慣行料金というのがありますね。その慣行料金にふさわしい看護料というものを認めていただかないと、生活保護世帯の方々は支払いができないわけです。この点についてはいかがですか。
  285. 上村一

    ○上村政府委員 医療扶助の看護料というものは全く健康保険の看護料の算定方法によっておるわけでございまして、健康保険の看護料と同様に医療扶助の看護料というものも毎年引き上げながら、妥当な額を確保するように努めておるわけでございまして、生活保護の医療扶助というのは、およそ医療保険に右へならえしているものだというふうにお考えいただきたいわけでございます。
  286. 古寺宏

    ○古寺委員 それじゃ、いま生活保護では幾らの看護料を認めているわけですか。
  287. 上村一

    ○上村政府委員 東京の例でございますが、基準額として看護婦さんの場合に五千三百四十円、準看護婦の場合に四千五百四十円、それから看護補助者の場合に四千十円でございます。
  288. 古寺宏

    ○古寺委員 二級の場合は幾らですか。
  289. 上村一

    ○上村政府委員 青森県の例でございますが、看護婦の場合四千九百四十円、準看護婦の場合四千二百円、それから看護補助者の場合に三千七百十円でございます。
  290. 古寺宏

    ○古寺委員 最後に大臣に、あなたの専決事項でございますからお伺いしますけれども、この生活保護法の目的あるいは第二条の無差別平等の問題、第三条の最低生活、これらを読みますと、憲法第二十五条の理念に基づいて健康で文化的な最低生活を保障するんだというのが、この生活保護法の根幹をなしておる。ところが第四条の中に、いわゆる補足事項が出てくるわけですね。いずれにしましても、第一条、第二条、第三条からするならば、生活保護法というものは最低生活を保障するというのが法の精神であるわけです。したがって生活保護法というのはむしろ生活保障法としての性質の法律だというふうに私は考えるわけです。  いまの生活扶助にいたしましても、住宅扶助にいたしましても、あるいは教育扶助にしましても、その基準を定めるのは大臣の専決事項になっているのです。ですから、あなたのお決めになった基準額というものが、この生活保護法の第一条、第二条、第三条にうたってあるとおりの内容でなければならぬわけです。しかし現実には、先ほどから申し上げておりますように、級地の問題にいたしましても、格差の問題にいたしましても、あるいは教育扶助、住宅扶助の問題にしましても、まだまだ不十分な問題がたくさんあるわけでございますので、今後これらの問題について早急に改善をしていただきたいということを強くきょうは御要望申し上げたいと思うのですが、いかがでございますか。
  291. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 生活保護を相対的に見て、私は一カ月の単位というものを見ますと、そう低いことはないのじゃないかと思うのです。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 ただ、級地別等については、それはおっしゃるように、たとえば北海道は札幌と、もう一カ所どこかあったと思いますが一級地で、他が二級地とか三級地、あるいは沖繩なんかの例を見ますと、私は実感として、ちょっとおかしいなと思うのは、那覇というところは県庁所在地で都会だというので二級地で、他は三級地だとか四級地になっております。ところが、遠方に行くに従って運賃がかかって、あそこは生活物資全体がそんなに自給能力がないのにかかわらず、非常に高くなっておる点があります。だから、あるいはこれらの問題については、いろいろ公平の見地から検討していかなければいかぬかもしれぬという感じもいたします。ただ、いまのたとえば暖房の費用にしましても、非常に寒くなる時期が早いところと遅いところがございますので、もう少し、きめ細かい何か配慮をやっていく必要があるのじゃないかなと考えたりいたしますが、全体的なレベルは、そんなに悪い方じゃないのじゃないかと思うのです。個々の問題につきまして、きょう御意見等もございましたから、逐次努力していくつもりでございます。そう何もかも一遍にできませんものですから、この点はひとつ御了解願いたいと思います。
  292. 古寺宏

    ○古寺委員 終わります。
  293. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 次に、平石磨作太郎君。
  294. 平石磨作太郎

    ○平石委員 私は、保育についてお伺いをしたいと思います。  まず最初に障害児保育についてですが、この障害児保育については、一般保育の中で保育をしていくということが、障害児を持っておられる父兄の方々からの要請で、地方におきましては昭和四十九年ごろから保育が行われ始めました。だんだんと、そういったことで全国的にも、このことが行われてきておるのですが、厚生省としては、この障害児保育について、どのように位置づけをしておられるか、まず、お伺いをしてみたいと思うわけです。
  295. 石野清治

    ○石野政府委員 障害児保育につきましての基本的な考え方でございますが、四十九年度から、この障害児保育につきまして指定保育所制度をつくって始めたわけでございます。その際には、一定の保育所につきまして特別の設備なり人員を抱えたものについて、障害児を受け入れた場合どういうような形の問題が出るか、そういう問題について、いろいろ試験的あるいは研究的にやってみようという形で出発いたしたわけでございます。そのときの判断といたしましては、これを数年続けてみて、それを全国的に指定保育所制度というものを広げた方がいいのか、あるいは、もっと一般保育所の方に障害児について受け入れ体制をつくった方がいいのか、その場合に、どういう問題点が出るのか、そういうことを研究する意味で実は始めたわけでございます。  私どもが一番心配しておりますのは、保育所で受け入れるということにつきましては問題がいろいろありますけれども、一応出発いたしたわけでございますが、問題は障害を持った児童、それの療育問題との絡みをどう考えるのか、特に通所援護施設でございますとか、あるいは通園施設等ございますが、そういうものとの連係プレーをどうしたらいいのか、こういう問題につきまして、まだ十分な結論が実は出ていないわけでございます。そういう意味で五十二年度に指定保育所制度に一応終止符を打ちまして、五十三年度におきまして新たな方式を採用いたしたわけでございますけれども、これにつきましても一〇〇%これでいい、こういう考え方には立っていないわけでございます。
  296. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま、そういった御答弁の中で、厚生省自身としても、まだこれについては手探りの状態、もちろん実施をしております地方団体あるいは各保育園におきましても、まさに手探りの状態でやっておるんではないかというような気がいたします。  ところで、これには非常な労力、いわゆる手がかかるということが現実問題として出てくるわけです。これはこの全国保育研究大会の資料としても出ておるわけですが、この資料を見てみましても、これは私の地元の方のことになりますけれども、一応資料として出ておるのを見てみますと、やはり保母さんが非常な不安を持って保育をしていかねばならない。それから、どのように保育をしていいのか、指導していいのか、これもまさに手探りの状態というようなことが出ております。そしてこれは高知県の春野町というところの実態が出ておりますが、この子供を見てみましても、言葉ができないというようなことで言葉の教室へも連れて通わにゃならぬ、こういう実態。それから耳の関係で病院へも通院をしていかにやならぬというような形。さらに視聴覚教室等へも連れていくというように、一人一人の症状、程度あるいは問題の行動、これがばらばらというようなことで、これに対応しながら子供の発達ということに腐心をしておるようです。そのように非常に、いわばマン・ツー・マンでもってやらなければ、とても一般の児童の中で一般児を見ながら、さらに障害児を見ていくということは非常な負担にもなっておるというようなことで、各団体、地方団体においては、これにマン・ツー・マン的な加配をしておるわけです。保母さんの加配をしておる。この加配処置に対して厚生省はどういうように処置しておられるか、簡単にお願いをいたしたい。
  297. 石野清治

    ○石野政府委員 五十三年度から考えましたのは、従来の最低基準で置きます人員のほかに上積みをいたしまして、障害児をもし入れた場合には四対一になるような形で計算をして補助金を流すことにいたしたわけでございます。
  298. 平石磨作太郎

    ○平石委員 五十二年度は全国で指定保育園制度をとって、高知県においてもわずか一カ所しか指定がなかった、こういうことで、今度いまの答弁にありましたように五十三年度から、もうその指定制度を廃止をして四人に一人という形で加配をつけよう、こういうことなんですね。  ところで、これも非常な前進であって非常に歓迎するわけですが、私はいまの実態から申して、こういうことだけではなかなかむずかしい。ほとんどのところがマン・ツー・マンでやっておるというような実態等考えてみましても、財政的に非常な負担がかかってくるというようなこともありますので、これはむしろ措置費の中に入れてはどうか。措置費の中に、そういう障害児のおる場合は加算をしていくという形で、措置費で操作する方がむしろ公平であって、しかも、どの園で収容してやっておっても適用ができるという形になりやしないかという気がいたしますので、この点どのようにお考えか、お伺いをしたい。
  299. 石野清治

    ○石野政府委員 先ほども申し上げましたけれども、この障害児の受け入れというのは大変むずかしい問題がございます。率直に申しまして、施設側についても、これに反対する施設長なりあるいは保母さんも実際にはおられます。それから一般の児童の保護者につきましても、どうであろうかという議論もございます。その中で出発をいたしましたので、いろんな問題点をここで解明していって、そして本当に必要なものについては、これは予算措置をしていかなければならないと思いますが、そういう段階で、いきなり措置費という形はなかなかむずかしい。むしろ私どもの方は、それを奨励する意味で補助金をつけて、そしていわば奨励をして、ある程度普及した段階でどうするか、こういうふうに考えていくのが筋道ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  300. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまのお言葉を返すようですが、もう実態は相当進んでおる、一般化されてきた。それから、いまのお話の中にありました保母さんが預かる不安、あるいは園長さんがこれに対して拒否をする、こういったようなことも当初はございました。だが、いまの時代では、もう、そういったことはすでに過ぎてしまった。そして中には、当時、保育に措置する場合に障害児であるかどうかといったようなことは書類の上に出てまいりません。実態調査に全部行けばわかるのですが、そうでない場合は、受け入れてから、措置をしてから障害児であったというようなことがわかるわけなんです。そういう者も間々おります。だから、これを拒否するとか云々とかいうようなことは、もう法の上からいいましても障害児は受け付けぬというようなものもないのですから、これはもう措置して、園で園長さんが会うてみますと障害児であったというようなことも出てきておるわけですね。そうしますと、やはり私がいま申し上げたような措置費の中で処理ができれば処理した方が、むしろいいんじゃないか。  それから時間がないから、あわせて申し上げますが、これは手探りというような状態の中では、担当保母の責任感といったことだけではなかなか処理できません。そうしますと保母の研修、障害児に対してどのように養護したらいいのか、あるいは教育をしたらいいのか、これも専門的な専門機関等とも連携をとりながら、やはりやっておる。この保育指針の中にも、そういった障害児に対する保育をどのようにするか、保育内容について指導指針も出されてないといういまの状態。これもやはり早く、このことについて指導指針の中に入れて、現場で混乱が起きないように、適切な指導ができるようにやるべきではないか。  それから医師との連携、こういったようなことも必要ですが、そういうことに対しても、やはり厚生省としては、現場で混乱が起きないような措置を早くとってほしいというように私は考えるので、この点、簡単にひとつお願いしてみたい。
  301. 石野清治

    ○石野政府委員 実は今度の障害児保育についての新方式によります新しい制度につきましては、従来の軽度の障害児ではなくて中度の障害児を対象といたしますので、先ほど申し上げたような問題が出てまいりますと申し上げたわけでございます。軽度の問題につきましては、いまでも保育所にかなり入っておりますので、その問題は確かにないと思います。一度を中心として入れた場合に、どういう問題が出てくるのかについて、さらに検討いたしたい、こういうことでございます。  それから研修問題、大変重要な問題であると思います。実は五十三年度も特別研修という形で障害児保育を担当する保母を対象として二百人程度の研修を考えておりますけれども、これはさらに充実していかなければならない、おっしゃるとおりであると思います。  それから、医師との連携の問題につきましても、特に障害が中度であればあるほど医師との関係については密接にしなければなりませんので、その点についても十分指導してまいりたいと考えております。
  302. 平石磨作太郎

    ○平石委員 次は、無認可の保育所についてでございます。  無認可保育所というのが現在、全国的に非常にたくさんございます。これはやはり設備が、あるいは保育園が整わないといったような点から、これが出てきたのではないかというように考えます。  それで、この実態というものは、現実に保育環境の非常に悪い条件の中で行われておるというようなことで、当時、無認可保育でいろいろと事故がございました。そういった事故があった関係上、私も現地を見てまいりますと、小さなストーブを置いて、その周りで子供が遊んでおって、火事で事故が起きたわけですが、そういったことを村長さんは放置できません。だから仕方なしに無認可保育に対して、ある程度、安全確保のできるような基準をつくる、少なくとも保母さん一人は置いてほしい、おってもらわぬと困るというような簡単な基準をつくって助成をやっておるわけです。これは厚生省の方では認可保育園に吸収をし、認可保育園をもっともっと拡大をして解消を図っていこうというようなお考えのようですけれども、実態としては解消ということは不可能な状態である。そうしますと、これに対して厚生省はどういうように対処せられるか、ひとつ簡単にお願いをしたい。
  303. 石野清治

    ○石野政府委員 いま先生のおっしゃったとおり、基本的に保育所が足らないということから、やはり、こういう問題が出ている、私どもはこういう認識でございます。したがいまして、保育所について需要の一番多いところから、どんどん整備していくという従来の基本方針を続けざるを得ないわけでございます。  無認可保育所である、その理由といいますと、先ほど先生おっしゃったように、そもそも最低基準を満足していないというような問題、あるいは県の認可方針に合っていないというようなもの、それから個人財産であるために社会福祉法人とするのはいやだというような問題、さまざまな理由があるわけでございます。  その中で私どもが無認可保育所の対策として考えておりますのは、基準が達しないものについては優先的に整備費を出して、その基準を満足させる、それによって正規の保育所にできるということで、そこに一番最重点を置いているわけでございます。それから同時に、土地の問題等で、なかなか確保できないという面もございますので、小規模保育所制度というのを認めまして、それによって無認可の解消を図る、これが私どもの無認可対策の重点でございまして、無認可施設そのものに対して国の助成をするということは全く考えていないということでございます。
  304. 平石磨作太郎

    ○平石委員 厚生省の立場もわからぬではございませんが、現実には地方団体では、これが超過負担になっておる。そのまま放置はできないというジレンマに陥っておるわけです。それで、これは自治省にお聞きしたいのですが、やはり財政需要として地方団体には経費がかかってくるとなると、厚生省がいま言うたような考え方で進むとするのなら、これは地方交付税の基準財政需要額の中に、そういったものを算定して一応財政的なものを見てあげた方がいいのではないかという気もするわけですが、その点お伺いをしてみたい。
  305. 柳庸夫

    ○柳説明員 お答え申し上げます。  無認可保育所について交付税の基準財政需要額で措置をしたらどうかということでございますが、先生御案内のとおり地方交付税と申しますのは、財政力の格差のあります地方団体間の財源の均衡化ということとあわせまして、標準的な行政の運営を保障するための財源の保障ということで、できている制度でございまして、そういうことからいたしまして、法令によって、はっきり制度ができておるものについては、その法令の制度の裏打ちとしての財源保障をするというたてまえになっておりますので、保育所のように、はっきり国の方で最低基準というものが制度化されているものについて、それから外れているものを正面から基準財政需要額のもとになります単位費用の積算基礎で取り上げていくことは非常に困難ではなかろうかと考えておるわけでございます。  ただ、無認可保育所の問題は、それぞれの団体によって、いろいろ事情がおありだろうと思います。そういうことから、各市町村が独自の施策として、それに対処されるという場合には、地方交付税におきましても、そういった各市町村が独自の施策をおやりになるということも予想をいたしまして、交付税の計算をいたすときに基準財政収入額の計算の中で市町村税の二五%分は計算外に外すということになっておりますので、そういうこともかみ合わせて自主的な運営をされるほかないのではなかろうか、かように考えている次第でございます。
  306. 平石磨作太郎

    ○平石委員 基準財政需要額へ入れて、しかも基準財政収入額で二五%、いわゆる市町村の場合七五%ということですから、その面での余裕があるというようなお答えだと思うのです。もちろん、それはその制度として結構なことですけれども、やはり表には見えない、そういったもろもろのものがあるわけです。そのもろもろのものの中に、この無認可保育の経費が入っておるわけですが、まあそれらも含まれたものとおっしゃればそれまでですが、いま厚生省のお言葉にあったようなことでは、とても解消にはならない。お言葉にもありましたように、土地がないとか、いろいろなネックがあるので、これを解消するだけの認可保育所の整備ということは不可能だと思うので、いま私が御提案申し上げたようなことを、ひとつ自治省もお考えいただいて需要額の中に算定をしてほしい、このことは強く要望をしておきたいと思うわけです。  それから保育料の問題でございますが、保育料もだんだんと高くなって、家計負担の中で非常なウエートを占めるといったような形になってまいりました。やはり親も子供に対する養育の責任もありますので、これは当然のこととして負担はせねばなりませんが、ただ、これだけ大きくなってまいりますと、一人の子供さんならまだしも、二人の子供を保育園に同時に入れるという場合には非常に家計に響いてくるというような話を聞くわけですが、この二子について、どのようにしておられるか、お答えをいただきたい。
  307. 石野清治

    ○石野政府委員 保育料徴収基準におきます二子の取り扱いでございますが、先生御案内のとおり現在まではD4階層までにつきまして二子の半減をやってまいりました。この問題については、私ども基本的な考え方としましては、二子、三子については当然、減額制度を拡大すべきであるという基本的な方向で財政当局と折衝いたしまして、五十三年度におきましてはD8階層まで伸ばすことができたわけでございます。なお、この問題については、今後さらに努力をいたしたいというふうに考えております。
  308. 平石磨作太郎

    ○平石委員 五十三年度はD8階層まで拡大をせられた、こういうことで、この点は了解をいたします。なお今後ひとつ努力を要望いたしておきたいと思うわけです。  それから保母定数の改定等いろいろ問題がございます。保育については、時間があれば、もっともっと皆さん方にお願いの筋もあるわけですけれども、時間がありませんので、保育については、もうこの程度にとどめさせていただきます。  それから次に、国立病院それから療養所、ここで働いておられる職責さんについてお伺いをしてみたいのです。  これは私のところへ、あちこちから手紙も来ております。特に賃金職員と言われる者について非常な格差があり、定員職員と賃金職員あるいはパート職員、こういった区分になっておるようですが、処遇の上で非常な格差があるということで話が上がってきておりますが、いま、この実態はどのようになっておるのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。
  309. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず職員数でございますけれども、五十三年度における国立病院、療養所のいわゆる定員見合い賃金職員の定数は六千百十三名でございまして、定員職員が五万一千五百九十人でございますから、その一一・八%となっております。職種別に見ますと、看護婦が三千六百四十二人、看護助手などが二千四百七十一人となっております。また、賃金でございますけれども、これは勤務年限と申しますか、勤務の期間によって多少の差があるわけでございまして、たとえば看護婦の場合に、一年未満の方でございますと三千五百円でございますけれども、五年以上にわたっている方は三千八百円。准看護婦の方であれば、一年未満が三千百六十円でございますが、五年以上になっていらっしゃる方は三千四百六十円。また、その他の雑役関係などの職員でございますと、一年未満の方は二千八百四十円でございますが、五年以上の方は三千百三十円となっております。なお、期末手当、勤勉手当、それから社会保険料等も、予算の運用によって、できるだけお世話をすることにいたしております。
  310. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの答弁で、私ここに資料をいただいておるわけですが、定員職員の場合、大体行政職(二)表の適用の職員ですが、この場合は二十五日に割ってみまして、賃金で一日当たり六千二百六十七円になるわけですね。それから賃金看護婦さん、賃金職員の場合、これは三千六百円、ざっと半分です。それから看護助手に至りましては二千九百三十円単価、こういう形で、まず半分程度にしかなっていないという実態です。ボーナス時期においては、賃金職員については看護婦さんでわずか三千六百円の二十五日分で九万円しかもらえない。それから看護助手に至っては七万円しかもらえない。それで定員職員の方は大体九十万程度になる。同じ病院の中で同じような仕事をしておられる、そういう立場から考えてみましても、余りにも格差がひどい。この手紙の中にもありますが「ボーナス時期が来たら涙が出て容易に出ていけません。」この方は六年勤めておるわけです。六年勤めておるけれども、五十二年の給与が一日当たり二千六百五十円という状態になっている。このことを考えてみますと、余りにも格差がひどいし、さらに女子職員の労働省の賃金構造基本統計調査、これで見てみましても、賃金が大体女子で八万七千二百円、これを二十五日で割ってみますと三千四百八十八円になるわけです。これは五十一年度のものです。それで、国立病院等における賃金職員の看護助手、この方を例に挙げてみますと、二千五百五十円の五十一年度の単価ですが、これも労働省の基本統計調査におきまする平均の金額からいいまして七三%しか処遇されていないというような結果が出ておるわけです。そういうことで非常に人員の伸びもないし、あるいはふやしてくれないし、さらに病気になっても休むことができない。むちうって働かなければならぬ。何年勤めてみても本採用にならない、そういう格づけになってしまっておるというような実態なんです。  私は、こういった方々が下積みに働いておられるからこそ、病院の運営もどうにか回っておるのじゃないかというような気がしてならないのです。だから、朝は早くから夜遅くまで患者の下のお手伝いまでして働いておられる、こういった賃金職員の処遇については格段にひとつ努力をしていただきたい、こう思うわけですが、厚生大臣ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  311. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 私どもの大事な国立療養所、病院で非常に協力していただいている大事な職員のうちでございますから、処遇の改善等については常に努力をしてきているつもりですが、なお一層今後努力をいたしますし、定員化の努力と相まちまして、処遇を十分考えていくように私も努力します。
  312. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間が参りましたので、これで質問を終わらせてもらいます。
  313. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 次に、浦井洋君。
  314. 浦井洋

    ○浦井委員 まず最初に、五十一年度に発足をいたしました救命救急センターの問題についてお尋ねをしたいと思います。  数字を確認したいのですけれども、この救命救急センターは五十一年度四カ所、五十二年度十三カ所発足をしていて、現在十七カ所あるということだそうでありますが、間違いないですか。
  315. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 そのとおりでございます。
  316. 浦井洋

    ○浦井委員 もう一つ数字をお尋ねしたいのですけれども、この救命救急センターに対する運営費の補助基準額は、現在二十床で幾ら、三十床で幾らになっていますか。
  317. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 三十床の場合には約五千万円でございます。二十床につきましては、いま手元に資料がございませんけれども、若干下回るように考えております。
  318. 浦井洋

    ○浦井委員 一番初めに指定をされた神戸市の中央市民病院に聞きますと、二十床で三千二百五十三万二千円ということになっておるようであります。  そこで問題は、その額であります。すでに、もう厚生省に提出をしたようでありますけれども、神戸市立中央市民病院の救命救急センターの五十二年度の収支決算書みたいなものによりますと、五十二年度の総事業費が五億三千五百七万円。その中で診療収入及び寄付その他が三億二千五百七万円。差し引き二億一千万円という、いわゆる持ち出しをしなければ赤字になるというものが出てきたわけです。この数字から見られるように、この救命救急センターの仕事というのは明らかに採算がとれないわけであります。だから、本体になっておる病院から持ち出したり、あるいは市の一般会計から全体として持ち出すという現象が、どこでも出てきておるようであります。それに対して、不採算医療だから、また去年の目玉商品だからということで、厚生省、国の方も救命救急センターをつくらしたわけだから補助をしておるということになるわけでありますが、先ほど申し上げましたように二十床の場合で言えば補助基準額が三千二百五十三万円。これが国、県、市三分の一ずつでありますから、病院にとりましては実際の補助額は二千百六十八万円少々になる。これはちょっと実情に合わない、少な過ぎるというふうに、だれだって思うわけであります。やはり補助基準額を、これからもっと引き上げていくような努力をしていただきたいと思うわけでありますが、これはどうですか。
  319. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 救命救急センターの場合も、病院の医療には違いがないわけでありますので、まず基本になりますのは健康保険などの診療報酬でございます。次に、御指摘の神戸の市立中央病院の場合には交付税が参っておりますので、その交付税がどうなるかというのが第二の問題でございます。そこで最後に残りますのが、それでも足りないような不採算的な部門を補助金で補うということになるわけでございます。  まず医療費については、先般二月の改定で一般的に時間外診療は二割引き上げられておりますし、また蘇生術だとかあるいは開頭術、足の骨折、こういった外科的な手術、処置につきましては三割の値上げがされているわけでございます。第二の交付税につきましては、まだ、どのように決まったか承っておりません。残る厚生省からの運営費の補助金の問題でございますが、結論から申しますと、御指摘のように、できるだけ単価を引き上げる努力はいたしたいと考えております。ただ大都市の県立とか市立病院の場合には職員の給与が非常に高いわけでございまして、そういったものを全部補助対象にするということは困難でございます。したがって、そういう問題をどういうふうにするかという今後、頭の痛い問題があるのでございますけれども、そのような観点から総合的に救命救急センターの経営の改善に努めてまいりたいと考えております。
  320. 浦井洋

    ○浦井委員 厚生省が、この救命救急センターが発足をしたときに、二十床の数字でありますが、一たん指示した人数というのは三十八人というふうに見たわけでありますが、これは補助基準額が全部人件費に当たるわけではない。薬品費にしても、あるいは経費にしても、そういうものを総合的に勘案して決められたのだろうと思うのですけれども、しかし、たとえば常勤が三十八人おるんだからということで、先ほどの三千二百五十三万円という数字を割ってみますと、職員一人当たり二千三百四十五円。それから現実に神戸の中央市民病院の救命救急センターに従事しておる常勤職員は、医師、看護婦その他を合わせましても五十七人。三千二百五十三万円を五十七人で割ると、何と一日一人当たり千五百六十四円というようなことで、人件費にも満たない低額になるわけであります。  厚生省が去年言われておったように、この救命救急センターというのは自治体にとっても必須のものであるし、また地域の住民にとっても、命を救うために、どないしても置いておってほしいという要望でつくられたわけでありますから、局長、総合的に勘案していきたい、頭の痛い問題だと言われておるけれども、私は一層の努力を望みたいと思うわけでありますが、今度はひとつ大臣の方から決意なり考え方なりを、お聞きしておきたいと思うのです。
  321. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 御承知のように保険点数の改善は、ほぼ毎年やってきているわけでございますから、それで一応収支を償ってもらうということになっておるのでございますけれども、先ほど医務局長答弁をいたしましたように、運営費等の補助について、なお一層、今後とも漸進的に改善の方向で努力をいたしていきます。
  322. 浦井洋

    ○浦井委員 もう一つ、これに関連をして尋ねておきたいのですけれども、この神戸の市立中央市民病院は、近々のうちに新しくできる新中央病院という形になるわけです、移転をして。当然、救命救急センターも移転をするわけでありますけれども、このセンターに対しては、増改築というのですか新改築というのですか、この項目として補助は出るだろうと思うのですが、どうですか。
  323. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 そういうものに、はっきり出るということは決まっておりませんけれども、できるだけ出るように努力をしてみたいと考えております。
  324. 浦井洋

    ○浦井委員 ひとつ市や県とも、よく相談をして、その努力が具体的に金額になって日の目を見るように私は期待をしておきたいと思うわけです。  そこで、十七カ所救命救急センターがあるわけなんですが、最近の、いろんな頭の中の病気であるとか、あるいは内容の詰まった臓器などを診断をするためのCTスキャナー、これが十七カ所のうちにどれくらい入っておるのか、ちょっと聞いておきたいと思うのです。
  325. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 いま手元に詳細な資料がございませんが、大部分の病院はすでに持っていると考えております。
  326. 浦井洋

    ○浦井委員 数字、私から言っておきましょうか。十七カ所のうち現在、稼働しておるのが十一カ所だそうです。そうですね。
  327. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 すでに稼働しておりますのは十一カ所でございます。
  328. 浦井洋

    ○浦井委員 そこで、これもまた神戸の中央市民病院のデータでありますけれども、五十一年度の救急で搬入をされた入院患者の疾病分類を見てみますと、消化器、これが二六・四%、それから脳神経系、脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血など、これが二三・一%、循環器が一一・二%、呼吸器が七・三%、その他、子供が一五・四%というようなかっこうになって、ここで見られるのは、やはりCTスキャナーの適応症に当たる消化器であるとか、あるいは特に脳神経系というようなものが非常に高位を占めておる。こういうところから見ると、いまやCTスキャナー、それも頭部だけでなしにホールボデー、全身のCTスキャナーというようなものは、やはり救命救急センターには不可欠のものになってきておるのではないかというふうに私には思えるわけでありますが、ひとつ医務局長の所見を聞いておきたいと思います。
  329. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 医務局といたしましては、救命救急センター、いわゆる第三次救急医療センターには、もちろん全身のCTスキャナーが必要であると考えておりますし、また、できるだけ第二次の救急医療センターにも持たせてやりたいと考えております。
  330. 浦井洋

    ○浦井委員 ところが、救命救急センターが備えるスキャナーに対して国としては補助の制度はあるのか。あれば、一体その補助基準額はどれくらいなのかということを、ちょっと教えてほしいのですが。
  331. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 救命救急センターの場合には、予算の額といたしまして二億六千万の額で補助金を出しておりまして、その内容については、各施設にお任せをいたしております。ただ、CTスキャナーのようなものは新しい機械でございますので、全部のセンターが最近購入をした、これから購入をするということになりますので、最も優先する機械の一つではないかと考えております。
  332. 浦井洋

    ○浦井委員 先ほど局長の言われた二億六千万というのは、CTスキャナーも含めました機械補助としての補助基準額じゃないですか。
  333. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 機械器具全部含めての補助単価でございまして、その選択は各病院に任せているわけでございます。
  334. 浦井洋

    ○浦井委員 そこでまた、やはりお金の話になるのですけれども、神戸の中央市民病院で、ホールボデー、全身のCTスキャナーをすでに購入をして、これは間もなく稼働するそうでありますけれども、これの購入単価が二億六千三百万円、だから機械器具一切を含めた補助基準額が二億六千万——二億三千三百万じゃないですか。そういうことですから、私の言いたいのは、これは基準額が低いのではないかという同じ問題になるわけでありますが、やはりこれを高める努力をしていただきたい、こういうことです。
  335. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 確かにCTスキャナー等のいわゆる医療機器そのものは二億三千三百万ということになってまいります。そこでCTスキャナーの価格が問題になってくるわけでございますが、撮影時間の短いほど高いわけでございまして、現在、最高のものは三億六千万から七千万というものもあるわけでございます。したがって、そういったものにつきましては厚生年金の還元融資による特別地方債で、できるだけお世話をする。もちろん自己負担分は残りますけれども、融資で、できるだけお世話をするという基本方針をとっております。
  336. 浦井洋

    ○浦井委員 厚生年金の還元融資地方債というようなお話でありますけれども、借金は借金であるわけです。  それともう一つの問題は、それに関連をして、その中央市民病院の人たち、管理をしている部署におる人たちに聞いてみますと、確かに救命救急センターに入れたスキャナー、非常に威力を発揮するだろう。しかし二月一日、点数が設定をされて、その点数が、これは非常にむずかしい問題でありますけれども、当初予想されたよりもかなり低い点数設定になった。千二百点プラス六百点というようなことも条件に入って、これは自治体病院にとって一番頭の痛い、CTスキャナーの部門も下手をすれば不採算医療になるのではないか、こういうことを非常に心配をしておるわけであります。だから、その機械を購入する際の補助、これは借金でなしに、やはり補助してやる。そして、その額をふやしていくという方向で進んでいただきたいし、それから、これはなかなかむずかしい問題だろうと思うのですけれども、たとえば運営費補助に似たような制度で、維持管理の上でもCTスキャナー必須であるから、それに対して何か国として、めんどうを見てやるというような方法がないものかどうかということが第一点であります。  それからもう一つは、これは前にも、昨年の国会でも私、申し上げたのでありますが、やはり民間病院が利潤第一で、どんどんとCTスキャナーを備えつけるというようなことが、どうも最近聞いてみますと、点数が低く設定をされたということもあって、その普及の勢いが少し鈍化をしておるように聞いておるわけなんです。だから、それはそれとして一応よい方向だろうとは思うんですけれども、早く厚生省が、このガイドラインのようなものを出して、適正配置というようなことの一環として、このCTスキャナーの問題も考えていくべきではないか、これが第二点であります。局長の御意見をひとつ。
  337. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず補助金の問題でございますが、特にCTスキャナーだけを取り出して高率の補助率で高額の補助金を出すということは、なかなか困難なことであろうと考えます。先ほど申し上げました、いわゆる機械整備費の単価を今後できるだけ引き上げていくようにしていくべきじゃないかと考えております。また運営費の補助金につきましては、先ほども大臣が申し上げましたように、収支のバランスを見まして、その赤字分を埋めるという方式をとっておりますので、どうしても医療費その他との密接な関連が出てまいりますけれども、この点につきましても、先ほど申し上げましたような人件費の非常な相違といったような問題は今後も残るかと思いますけれども、できるだけふやしてまいりたいと考えております。  次に、保険の点数が思ったより安かったということで、民間の医療機関のCTスキャナーの整備が少しおくれてきた、スピードダウンしてきたというお話でございますけれども、私どもは、二月に設定いたしました一回一万二千円、次に造影剤を入れて、もう一遍撮りますと一万八千円という単価は、そんなに低い単価ではない、それほど多くのフェアリターンは出ませんけれども、収支とんとんぐらいにはいく診療報酬であると考えております。しかし、こういったことは、ある程度、実績も見ながら再検討をしていく間胆ではないかと考えております。  最後に、CTスキャナーの全国的な整備計画でございますが、これはすでに、公表はいたしておりませんけれども、補助金とか、あるいは特別の融資をいたします場合の基準といたしまして内規がつくられておりまして、先ほども申し上げましたように、救急医療関係では第三次と第二次の救急医療センター、また、そのほかに、がんのセンターとか循環器病のセンター、小児医療のセンター、こういったもの、さらに卒後研修の指定病院、そういったものを対象にして、全国的なネットワークをきちんとしくことにいたしております。
  338. 浦井洋

    ○浦井委員 機械器具に対する補助あるいは運営費に対する補助、いま一つのルールに乗っかった、それを拡大していくことはもちろんでありますけれども、やはり新しい状況に見合った新しい補助のつけ方も、ひとつ十分に検討をしていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  そこで、この救命救急センターにとって新しい、見方によっては非常に大きな問題が出てきておるわけであります。それは一言で言えば、救命救急センターというのは当然、本体病院があるわけでありますが、その本体病院の入院患者が重症化してきておる、こういう問題であります。  たとえば、具体的に申し上げますと、これも神戸の中央市民病院の例でありますけれども、五十二年度の入院をした搬入患者が千三百十三人、一日、平均が三・六人であります。そして、救命救急センターは二十床でありますから、この救急ベッドを確保していくということになるから、センターに入院した患者は、大体平均して五日後には、もういやおうなしに一般の病床に転床させるというかっこうになるわけであります。そうすると、これはもう救命救急センターの本体病院でありますから、三次救急であります。そこへ入ってくる人はかなり重症だというようなことになってくると、結局、一般病床に転床するものですから、病院全体が非常に重症患者が多くなってくる、こういう現象が出てくるわけであります。  これもデータを一つ挙げてみますと、その中央市民病院で五十一年度、これは五十一年の十一月から救命救急センターが発足したわけでありますから、ちょうどまたがっておりますけれども、この五十一年度の搬入患者が千六百人、うち七割が一般病床に移っておる。そのために、看護婦さんの配置が、二・五人に一人が一・九人に一人というようなかっこうになっていっておる。しかも、二・八でも不足するので三・八体制をとるというようなところもローカルには出てきておるということであります。発足して間がない救命救急センターではありますけれども、こういう実情を厚生省としては、やはり早く報告を受けて、具体的に事態に対応するような手を打たなければならぬと私は思うわけでありますけれども、どうですか。
  339. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 御案内のように、今回の救急医療対策は三カ年計画で実施をいたしております。したがって、まだ本年は第二年度目でございます。そのために、兵庫県の全県の救急医療システムがまだ確立していないわけでございまして、一部の救命救急センターに重症の患者が偏っているわけでございます。したがって今後、まあ明年で終わるわけでございますが、予定どおりの全県の救急医療システム、その二次救急医療センター、三次救急医療センター、こういったもののネットワークがきちんとでき上がれば、現在のように神戸の市立中央病院に重症患者がたくさん集まるというようなことは、だんだん解消されるのじゃないかと考えております。  しかしながら、一般的に申しまして総合病院の救急部あるいは救急センターに患者を置いておきますのは、国によってまちまちでございますけれども、大体三日から七日の間、救急部に置いておきまして、あとは一般病床のそれぞれの病床に、重症の方は重症の病床に、中等症の方は中等症の病床に移すというならわしでございます。  過渡的な現象として、神戸の場合、一部の病院に重症患者が集まっておりまして、職員の方々も大変かと思うのでございますけれども、いま申し上げましたような全県の計画の完成を急ぐということ、またさらに、これまでの経験を生かして救急医療の進め方に工夫をこらすこと、病院の中における患者の取り扱いに工夫をこらすこと、こういったことによって、かなり改善されるものと考えております。
  340. 浦井洋

    ○浦井委員 局長はそう言われて、いわば自助努力に期待するというような御意見のようでありますけれども、そうしたら、あなたの言われるようにネットワークが全県下的に完成をするのが予定どおりにいくかどうか保証の限りではないわけですし、また救急病院では、これはもう局長も御存じのように、患者に接する態度に一般職員が非常に気をつけなければならぬ。そうすると、非常に緊張が高いし、疲れる。しかも、普通の医療機関と違って、はい、ありがとうございました、よかったですね、というようなかっこうでの決着がつかないわけでありまして、そういう点で、この救命救急センターの本体病院の職員の中では、いろんな発散できない不満やら、もやもやとしたものがうっせきしておる、しやすいというふうなことも私は聞いておるわけでありまして、やはり早く実情を調べて、場合によっては、もっと財政的な援助措置が考えられないものかというふうに私は思いますし、またさらに、具体的に国も責任を持って、そのネットワークの完成のための努力をしていただきたい、こういうことをお願いしておきたいと思うのですが、どうですか。
  341. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 そのような努力は、今後一段と力を入れて進めてまいりたいと考えております。
  342. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、お聞きになったようで、おわかりになったと思うわけでありますけれども、救命救急センターが発足をしても、やはりその後かなりなアフターケアをやっていただかなければ、いろいろな新しい問題が出てくるんだということなので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  それから、その次の問題といたしましては、これは母子家庭の問題でありますけれども、要するに私が言いたいことは、実情をいろいろと聞いたわけでありますけれども、主人が亡くなった。そして何とか職を探して働きにいって子供を養っておるわけなんだけれども、そのために、かえって生活保護も適用されないし、また、いろいろな国の援助措置についても、どうも母子療に入ったり、あるいは離婚をしたりというような人たちに比べるとハンディがあるのではないかというようなことを、いろいろ各所から聞くわけであります。だから、私が大臣に要望したいのは、こういう場合に御主人の厚生年金の遺族年金が入るわけでありますけれども、やはり遺族年金の五〇%を八〇%に引き上げるとか、いろいろな自治体で、すでに実施しております、病気になった場合の保障として医療費の自己負担分の公費化、こういうことがせめて考えられないものかということを私は大臣にひとつ尋ねておきたいと思う。御意見を聞いておきたいと思う。
  343. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 具体的なことは児童家庭局長がお答えいたしますが、私ども低所得者対策として、今後、保険の制度を根本改正をやる場合には、今日まだ具体案をつくっておりませんけれども、低所得の方々に対する措置をとりますような方針を持って、大筋を審議会等で御了承を得ましたら、国会に御提案を申し上げる際には具体的にどういう施策をとるかというようなことを含めて決定をしたいと思いまして、目下検討中でございますが、いずれにしても健康保険制度の今度の抜本対策では低所得対策というものを考慮に入れて進めていきたいと考えておりますので、公費負担に全部というようなことは、老人の医療無料化以外は、いまのところ考えておりませんから、何らかの別の対策を、それぞれの事情に応じて、いろいろ出てくると思いますので、検討してまいる所存でございます。
  344. 浦井洋

    ○浦井委員 実態をよく調べていただきたいと思う。  厚生省は四十八年の実態調査が最後だそうでありますけれども、たとえば母子家庭の母親の就労状況は、最近、非常に自覚が少なくなって雇用がふえてきておる。また、常勤が少なくなって不安定雇用であるパートとか臨時がふえてきておる。平均収入も、これまた年収百万、いわば月十万円以下の層が国の調査でも圧倒的だし、神戸市の調査でも過半数を占めてきておる。しかも、ずっと経時的に見ると、生活保護世帯が全体として母子家庭はふえてきておる。そして、母子家庭の母親の悩みとしては、何をおいても生活を維持していくのに精いっぱいで、それに一番神経を使っておる、全神経を使っておるというようなことであります。  また、神戸市の方に聞きますと、神戸市ではゼロ歳児の医療費の無料化を市の単独事業でやっておるけれども、これの年間予算が六億であります。すでに母子家庭の医療費の無料化を実施しておる県であるとか市の話を聞いてみましても、もちろん年齢制限であるとか所得制限であるとか、あるいは給付の種類をいろいろと選別をしたりして工夫してやっておるわけでありますけれども、要するに予想したほど母子家庭の医療費の無料化というのは費用がかからない。神戸市の意見では、ゼロ歳児の無料化は六億以下でおさまるのではないか。だから、金が要るからということでは理由にならぬわけでありまして、やはり率先して国としては、この必死で生き抜いておる母親に対してひとつ報いるような、せめても医療費の無料化をやってほしい、これを私は要望しておきたいと思います。後で御返事を大臣なり局長の方からいただきたいと思うのです。  それからもう一点は、これは先ほども出ましたけれども、医務局長にお尋ねをしたいのです。ILOの看護職員条約と勧告の問題に関連をしてでありますけれども、この条約、勧告がILOで採決をされるに至ったのは、これは看護職員等の不足によって、効果的な保健業務の発展にとって障害となっておることから労働条件に関する基準を設定する、こういうふうになっておるわけであります。だから、日本の看護婦不足という現状についても、いわゆる潜在看護婦という多数の有資格者が医療や保健の本来の仕事から離れている大きな原因は、やはり非常に悪い労働条件にあるわけであります。だから、政府に私が要望したいことは、この条約の批准のための条件を、先ほどから答弁がありましたけれども、単に看護婦養成に限るだけでなしに、まず第一に、この条約の批准を急いで、現在の看護婦の労働条件を改善して、潜在看護婦を再び医療という場に戻して、さらに新たな養成を図るというような形でやらなければならぬのではないかということが第一点であります。  それから、ILOの総会において日本政府が賛成をした勧告の第五十八項では「臨時、パートの職員の雇用条件は常用の職員と同等であるべきであり」こういうように言っておる。ところが、先ほども出ましたように国の直営の療養所、国立病院で賃金職員というような形で千七百人余りの看護婦さんが働いておる。だから、これは矛盾をしておるのではないか。国際会議で日本政府も賛成をしたわけでありますから、早急に賃金職員の処遇を改善すべきである、こういうことを最後に尋ねて終わりたいと思います。
  345. 石野清治

    ○石野政府委員 母子家庭の置かれました状態というのは、四十八年の調査あるいは五十一年におきまする厚生行政基礎調査におきましても、おっしゃるとおりでございます。しかしながら、これにつきまして医療費の公費負担をするかどうかにつきましては、先ほど大臣が御答弁いたしましたように、やはり医療保険制度の中で対処すべきものと考えておりますので、新しい公費負担制度を考えることは考えておりません。
  346. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず、ILOの関係の中の潜在看護職員の活用のための日本における勤務条件の改善の問題でございますが、先ほども申し上げましたように、第一次の五カ年計画でも毎年四、五千人の潜在看護婦さんに職場に帰っていただこうという計画になっておりまして、ナースバンクも全都道府県にできましたので、おおむね計画どおり進んでおります。ただし、その賃金については確かにまだ十分ではございません。しかし、これは非常勤の職員の場合には各省の統一賃金になっておりまして、一カ所だけ非常に高くしていくということがむずかしいという問題がございます。しかし、有資格の看護婦さんの場合には御案内の夜勤手当も出るわけでございまして、これも年々引き上げておりますので、さらにプラスアルファがあるわけでございます。
  347. 浦井洋

    ○浦井委員 大臣、看護婦さんの問題で御意見ないですか。
  348. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 ただいま最後にお答えいたしましたことに関連いたしますけれども、確かに常用の看護婦さんと非常勤の賃金の看護婦さんとの処遇の格差の是正を図らなければならないわけでございまして、もちろん私どもは年々、定員職員のベースアップに合わせて賃金職員の賃金もアップしているわけでございますが、なお差があるわけでございます。先ほども申し上げましたように、この問題については、なかなかむずかしい問題がございまして、一気に解決はできないと思うのでございますけれども、できるだけ改善に努力をしてまいりたいと考えております。
  349. 浦井洋

    ○浦井委員 より一層の努力を期待し、要求いたしまして質問を終わります。
  350. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 次に、工藤晃君。
  351. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) きょうは、日本の今後の検疫の問題について幾つか質問をしたいと思います。  先月、大変世間をにぎわしました横浜港に流れ込みます鶴見川の流域におけるコレラ汚染という大変大きな社会問題を踏まえて、今後の検疫及び防疫体制についてお聞きをしたいと思うわけでございます。  本来ならば、いろいろ質疑した後で、最後に大臣に今後の展望をお聞きしたいと思っていたのでございますけれども、大臣の御都合もおありのようでございますので、冒頭にそういう問題についての幾つかのお考えを伺いたい。  その最初にお伺いしたいと思うことは、いままでのような過去の検疫体制は、主に船を利用して海外からいろいろな伝染病が流入してくる、それを水際で食いとめていくという発想であったと思います。しかし最近は、今度の鶴見川コレラ汚染でも示すように、航空機によって運び込まれたであろうと推定されるような汚染が非常に多いわけで、昨年の六月の和歌山県における有田市のコレラ汚染もそういうことであったと思います。要するに、そういう乗り物の種類が変わってきたということが一点と、それから国際交流が非常に激しくなった、そのために人の移動も非常にふえている。たとえば厚生白書にございますように、昭和四十二年から五十一年の統計を見ましても、航空機検疫人員が百万ちょっとから約十年の間に五百万というような数になっている。こういう急激な伸びに対しても、やはり防衛体制は十分対応していかなければならないと思います。そういう意味で、ひとつ今後の日本の検疫体制あるいはそれによる伝染病の防疫というものに対して、どのように対処されていくのか、大所高所の御意見で結構でございますから伺い、あとは局長を初め、その分野の方々から細かくお伺いしたい、かように思います。
  352. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 今度の事件で、私ども本当に、犯人なき事件というような感じで、御承知の河口の港湾地帯に発見をされましてから、ずっと川をさかのぼって検査をいたしましたわけでございますが、医療機関の浄化槽からということについても、一体原因がどこにあったのか、どうもまだ、よくつかめないわけでございまして、結局は、日本は汚染地区でありませんから、外の汚染地域からの侵入ということしか考えられないわけでございますので、恐らくは船または航空機による侵入だろうと思うのでございます。そういたしますと、これは時期的に一体どれぐらいの時期であったのかという点は、私は学者でありませんのでよくわかりませんが、今後一層、航空機並びに船舶に対する検疫を徹底をいたしまして、また国外から旅行しておいでになった方々あるいは外国の方々に対して十分PRといいますか注意を喚起して、そして、それらの方々の率直な情報といいますか、あるいは下痢等の状況についての申告を早めさせて、そういう対策を中心にして把握を的確にするような努力をしていかなければいかぬと思っております。  今度の事件は、これが一たんおさまりました場合に、専門家に集まっていただきまして、今後の対策等についてどうしたらいいのか、これらを徹底的に検討いただいて、その結果を得まして、さらに直すべき点があれば、私どもとして検疫体制を直していく、増強していくという考えで、侵入を未然に防止する一層の努力を今後いたしてまいりたい、かように考えております。
  353. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) もう一点お聞きをいたしたいと思います。  今度の鶴見川流域のコレラ汚染に関連して、その河口で生業といいますか釣り舟その他で生活をしておられた方が非常に経済的な打撃を受けているということが新聞紙上で書かれておりましたので、この実態は後でいろいろ詳しく聞きますけれども、もし、そういうふうな状況下に置かれているとするならば、そういう方々に対する何か救済あるいは補償というふうな面について、大臣が中心になられて他の関係省庁の方々とも御相談いただいて、そういう方々への適切な援助を差し伸べていただきたいと私は考えているわけなんでございますが、大臣、その点のお答えをちょうだいしたい。
  354. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 おっしゃるように今度の事件で非常に各方面の方々の御協力を得たり、あるいはまた御迷惑をかけたことは事実でございます。特に、零細ななりわいをいたしておられる方々には大変な御迷惑をかけたことになったと思うのでございます。どの程度のことであるのか、現在まで実は事件の進行中でございましたから、私どもに対して訴え等は聞いておりませんけれども、事実あの事件が発生をしまして発見されました日から直ちに御協力をいただいて、釣り舟等の業者の方には一切自粛をしていただいたりいたしたわけでございますので、関係省庁ございますから、これらの省庁にお願いをいたしまして、どの程度の被害であったか、これにはどういうふうにしたらいいのか、いろいろそれぞれ、いままでの例等もございますものですから、有田の事件等もございましたし、たとえ実際の患者が発生をいたしておらないにいたしましても、同じような警戒をいたします際には、当然これらの影響が出てまいることでございますので、よく実例等も調べまして、また被害の実情等も調査をいたしまして、関係省庁にできるだけ配慮をしていただくように私としては努力をしたいと考えます。
  355. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 最後に、それに関連して大臣にお聞きいたします。  これは鶴見川流域のそういう方々に対する配慮に終わらず、恐らく今後ともにこういうふうな問題は再三起きてまいろうと思います。そういうことに対する恒久的な対策の一つとして、そういう方々への補償対策というものについても十分今後の対策として御勘案願いたい。これについて、大臣にお答えをいただきたいと思います。
  356. 小沢辰男

    ○小沢国務大臣 基本的には、おっしゃるとおりだと思うのですが、ただ、今度の事件のような場合は、有田と少し違いますのは、現実の患者さんが出ておりませんし、それから、いち早く御注意を申し上げておりますし、また、たとえば釣り関係の方々でございますと、こちらは禁止するわけにはいきませんけれども、こういう事情だからと言って自粛を呼びかけたわけでございますが、業者の方々の方でも、もし、それによってまた自分たちが、そういう状況であるにもかかわらず営業して、お客さん等から、いろいろな、何といいますか、後でクレームがついたり、いろいろな損害等についての事件といいますか問題等が起こりますと、かえって御迷惑になる点もございますものですから、やはり、それぞれの補償というよりは、それぞれの実態に応じて、その方々のそれだけ業としての幅が縮小になった分について、今後それらの方々がどういうふうなことが出てきますか、事実、金融上その他のいろいろな措置が必要になってきますと、お手伝い申し上げるというようなことじゃないかなと、今回の事件については思うのでございますけれども、なお今回の事件だけではなくて、有田の事件のようなものがまた出ないとも限りませんので、もちろん水際で十分、検疫の措置を万全を期したいと思いますが、起こる場合も当然想定されますものですから、われわれとしては、過去の例等を十分よく調べておきまして、そういうような場合に一体どう措置をしたらいいのか、十分研究を進めておきたい、かように考えます。
  357. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) ぜひ、そういう問題も含めて、今後の対策の中に御勘案をいただきたい、かようにお願いをして、大臣に対する質問を終わります。  あとは、担当の局長初め皆さん方に、鶴見川の問題を主として、幾つか時間の許す限り質問させていただきたい、かように思うわけでございます。時間があれば今度の鶴見川のコレラ汚染の概況などをお聞きしたいと思いますけれども、恐らく時間が余りないと思いますので、それについては割愛いたします。  それで、ただ一言、最初に、コレラ汚染に対する防疫体制をしいて一生懸命やっていただいたことに対する当局の皆さん方を初めとした多くの方々の御協力、あるいは横浜市医師会初め関係の団体、そういう方々の協力で、不掌中の幸いと申しますか、いまだに患者が一人も発生していないということと、それから感染源というところまで突きとめられたということに対する労を、この席で感謝をしておきます。  そういう前提に立ちながらも、今度の問題発生で、振り返って幾つか今後の問題処理のために反省をしてみなければならぬ点があるのではないかというふうに考えます。その中で幾つか御質問をしたいと思いますが、私の方にちょうだいしました資料には、横浜港で三月二十二日に最初の採水をしている。この後、三月二十八日にエルトール型のコレラ菌をはっきりと証明したということを発表されている。発表はその後ですか、検出されておる、こういうことでございますが、その二十二日から二十八日までの間の対応は、どのようになさっていたのか、簡単に御説明をいただきたい、かように思います。
  358. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 ただいま先生指摘いただきましたコレラの菌の発見、いわゆる水から菌の証明に至るまで時間がかかり過ぎではないか、こういうことでございますが、通常ああいう薄い水の場合には、まず最初に炭素で吸着をいたしまして、それから、それをペプトン水に植え、それから、もう一回ペプトン水に植えということで、二回増菌をいたしております。この二回増菌ということで大体七十二時間ぐらいはかかっておるのではないか、通常そのくらいかかるものでございます。  そこで実は、この時点におきまして非常に不思議に思ったわけでございます。通常こういうことは、まずないというふうに考えたわけで、本当にこれはコレラ菌だろうかということで、ほかの腸炎ビブリオのようなああいう菌と、もし間違えておって、そしてコレラ菌だというようなことで問題にいたしますと、これは非常に無用な混乱を起こすというおそれがございまして、さらに、これにつきまして本当のコレラ菌かどうかということで、たとえば糖の分解の様子を見るとかオキシダーゼ反応を見るとか、そういうようなコレラ菌であるということを本当に確認するための詳細な検査を、その後も、いたしたわけでございます。そういうことで、最終的には二十八日に、自信を持ってコレラ菌だということが言えるという結果に至ったということでございます。
  359. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) その間、七十二時間というと約三日間ですね。そうすると、その後の三日間ぐらいは、その菌の同定というのですか、決定するために、いろいろな検査をされておったということでございます。間違いないという結果が出たので対応した、これはある意味においては大変慎重なことで結構なんですけれども、やはり伝染病予防というものに対する対応としては、余り確実ということで慎重にし過ぎるために、初動調査というものが日数がかかり過ぎますと、逆にその間に患者の多発を見るという、こういううらはらな結果も起きてまいろうかと思います。そういう意味においては、もう少し知恵を働かせていただいたらよかったのではないか、こう思うのです。ということは、二十二日に定期的な検査のための採水をされて、二十八日にその菌を同定されるまでの間に一度も次の採水をしておられないと思いますが、その点どうですか。
  360. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに、おっしゃるとおり次の採水はいたしておりません。
  361. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) もし疑わしい場合には、当然これは学問的な問題もさることながら、防疫体制を一日も一秒も早くとるために必要な作業は、それに優先するだろうと思いますので、そういう場合には、少なくともおかしいというものが出た瞬間に、もう次の採水に入り、どんどん次の条件整備をしていくという体制をおとりになってしかるべきではなかったのかと思いますが、その点、局長どうですか。
  362. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに、先生のおっしゃるような面があろうかと思います。ただ私ども、こうやって出たときに、よもやという気が実はございまして、通常、海水の検査でコレラ菌が出たというのは、私ども過去に例を持っておりませんので、そういうことからして、むしろ、そのものであるという感じの方は薄く持っておったというのが実態でございます。
  363. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) これは、やはり今後の検疫体制あるいは防疫体制のために、いい示唆になったと思いますね。いままでのやり方あるいは、いままでの考え方では考えられなかったような感染経路をたどっていたということでございます。同時に、それに対する頭の方の対応も、やはり既成概念にとらわれていたという証拠でありましょう。ですから今後は、こういうふうなエルトール型のコレラ菌が日本でも繁殖するのではないかというふうなことも言われているわけですから、また、先ほど大臣も言いましたように、航空機という乗り物で多数の人が出入りする、こういう環境下においては、当然その検疫体制も、それに対応できる体制がしかれていなければならないわけなんで、いま、いみじくも局長がおっしゃったようなことは、そういう対応がいまだ不十分である、あるいはまた、そういう対応の見方をしていなかったという、ここに明らかな方向の変換を求めなければならない結果が出ているように思います。そういうことから、鶴見川コレラ汚染の結果というものを大変大事にしながら、今後の日本の検疫体制というものを総ざらいしていく必要があるのではないか、こういうふうにも思います。  それから、コレラ菌そのものも、昔の劇症であるアジア型のコレラ菌というのは非常に少なくなって、こういうふうな非常に軽症型ではあるけれども繁殖力が非常に強い、こういうものが簡単に潜入してくる。それも、せっかく感染源である、ある診療所の浄化槽までは突きとめられたにしても、その先の排菌者まではつかめていないわけです。これは、たまたま偶然こういうふうな流行を見ずしておさめられたということは、一つには、そういう検疫体制に努力なさった方々の大変大きな熱意と、それから御努力があったと思います。しかしながら一方において、もし、これがそういう検疫体制のすき間から多発したというようなことがあったとしたならば、これは大変大きな社会問題を醸し出したであろうし、また、そういう環境の中から、たとえ生命に異常がほとんどないということであったとしても、パニックをもたらしたんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。  そういうことから、やはりコレラ菌の性状に対する対応の仕方も考えなければならぬだろうし、それから侵入経路の対応も必要でしょうし、それからまた、どなたがそういうふうな保菌者であったかということを特定できないということは、逆に侵入経路に対する検疫体制が不十分であったという証左であります。今後ともに、こういうことがあり得ないということは絶対に考えられないし、逆に、そういうことは今後ともに往々にして起きてくるだろう、こういうふうに考えた方が妥当ではないか。そうすると、日本の検疫体制というものが今後ともに大変不安定な状態の中に置かれているのではないかという疑いも出てくるわけでございますから、一方では大変むずかしい問題だろうと思いますけれども、やはり、そういう防疫体制というものをより完備するために、先ほど大臣にもお聞きしましたが、英知を集めて、その結果というものをできるだけ具体的に実行することを急がなければならぬ、こういうふうに考えますが、その点、局長ひとつお答えをいただきたい。
  364. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 結局、まず第一に、わが国から外国へ出かけていく方に、向こうで、かからないような注意をしてもらうというPRが一つ重要な仕事だと思います。これは当然のことながら私どもも十分力を入れておるつもりでございます。  それから第二に、もう先生よく御存じのように、たとえばコレラですと、五日の潜伏期がございますので、潜伏期間の間に日本へ入ってきてしまうということがあれば、検疫は、いわゆる港、水際というやり方でも全く不可能なわけでございますので、現在、私ども、飛行機が中心になっている海外との交通ということにつきましては、結局、その帰ってこられた方々、特に汚染地区から帰られた方々がぐあいが悪くなったら、すぐ医療機関なり保健所なりへ直ちに連絡していただく、こういうことが中心であろうかというふうに考えまして、これは伝染病予防調査会の方の御意見もいただきまして、現在、それを中心に体制を整えているという状況でございます。
  365. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) もう一つ、コレラの直接の防疫も、もちろん言うまでもなく大事でございますけれども、そういうものが不幸にして発生した場合にも、正しい情報というものを冷静に受けとめる、そういう環境づくりを、ふだんからしておかなければならぬと思います。そういう環境づくりがないと、必要以上に社会的パニック状態をもたらして、その結果、また、いろいろな弊害も起きてまいろうと思いますから、そういうふだんからのPR活動も必要だろう、こう思いますので、ぜひそういう面も御留意いただきたい、こう思います。  それから、これは時間がありませんので、ただ申し述べるだけにしておきますけれども、今度の鶴見川流域のコレラ汚染は、菌そのものの生息状況としては余りいい環境になかった。温度が非常に低い状況の中で、こういうふうな多量の検出ができるという状態ですから、一般常識で、コレラ菌が生息する温度は十七・八度以上だ、繁殖するためには二十八度前後が一番適当じゃないか、こういうふうなことも言われておりますけれども、こういう定説も、そのまま信用してしまうわけにはいかないのじゃないかということを実証したのが今度の鶴見川流域のコレラ汚染だというように考えるわけです。ガンジス川下流の状況と、それから生麦運河といいますか、あそこは非常にたくさん菌が証明できた、そういうところの環境とが非常に似た状況の中にあるということも新聞で書かれております。それからまた、ヘドロの中で増殖をするのではないかというふうなことも発表されておりました。そういうことから、今後ともに同じ鶴見川において二度と起きないという立証はございませんので、そういう非常に培地になりやすいような部分については、今後ともに、そういうようなものを清掃して、コレラ菌の培地にならないような環境づくりを具体的にしておかなければならぬと思いますが、その点はどのようにお考えになっていらっしゃるか。
  366. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 まず第一に生麦運河でございますが、ここのところは、わりに温度が高いということがわかりました。と申しますのは、工場排水がございまして、その工場排水が高い温度で出ているということがわかりましたので、やはり温度的なことで、あそこのところが可能性があり得るのではないかというふうに考えたわけでございます。いずれにいたしましても、そういうところで生息するかどうかという先生の御指摘でございますが、ただいま、あそこのヘドロを取りまして、そのヘドロにコレラ菌を植えて、これがコレラ菌の培地になり得るかどうかということを研究いたしている、そういう段階でございます。
  367. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 今度のコレラ菌の騒動の中で、満潮期に逆流することによってコレラが多発するんじゃないかという心配をしたり、あるいは、そういうコレラ菌を含んだ水が土の中へ浸透していって、井戸水を汚染して、またコレラを発生するのじゃないかというような心配をされたりしておったようですけれども、やはり、こういう場合に考えなければならないのは、その流域の方々の中に、いまだに井戸水を飲用しているという状況があるのかどうか、もしあれば、やはりそういうものは、この際、上下水道への移行をしやすくさしてあげる、上水道をつくるために協力してあげるような対策も必要だろうと思いますし、そういう運河の状況の結果、清掃その他についても、ぜひ具体的にやっていただきたい。時間が参りましたので、そういうものも含めて幾つかの今後の課題を申し述べて終わります。そういういままでの検疫体制では考えられないような侵入路あるいは数、あるいはまた症状その他、いままでの発想から全く切り離したような新しい発想で検疫体制も完備していかなければならないだろうと思います。そういう点でぜひ鋭意御努力をいただきたい、これを私は最後にお願いをしまして、時間が参りましたので、やめさしていただきます。
  368. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十三分散会