○工藤(晃)
委員(新自) まことに結構でございます。ただ私は、そこで
一つお願いをしておきたいことがございます。いままで労働行政というのは後追い行政であって、常に他の省に主導されて、後から失業対策とか、あるいは
雇用対策という部分を何か補ってきたような傾向が非常に強いと思うのですけれども、これからの日本の社会というものは、先ほども申し上げますように、日本の大部分の方が給与所得者、日本国民すべてが給与所得者であるというふうな考え方からいけば、完全
雇用というものをどう実現するかということは、逆に、そういうことから発想して、
産業構造をどのように、第一次
産業にどのくらい配分していけばいいか、第二次
産業にどのくらい配分すればいいか、第三次、第四次と、こういう問題をどのように整理統合していけば最も合目的な
雇用ができるのか。あるいはまた、将来の
企業の進むべき
方向、知識集約型、こういうふうな日本の
産業構造の質的な
向上あるいは知識集約型
産業への
転換に伴って、そこに働く方々の
職業も当然変わってくるわけでございますから、そういう
意味においては、当然うらはらの裏ではなくて表に、そういう問題が出ていっていいんじゃないか、こう思うわけでございますので、ぜひひとつ、受け身の発想じゃなくて、積極的な発想で、そういう
産業構造の
変化へまで、こちらの意見が出ていくような研究
開発をお願いしておきたい、かように考えるわけでございます。
こういう問題について、今後ぜひ予算も、日本は形あるものには金を使いたがりますけれども、形のないものに金を使うのは大変抵抗がありました。しかし、今後の日本の発展のためには、そういう知性の
開発という部門にどんどん金を使っていかなければ、かえって、むだ遣いが多くなってしまう、かように思いますので、どうかそういう点は大臣、思い切って金を使っていただいて、そしていい結果を逆に社会に発表していっていただく、それがまた、いろんな
企業の参考にもなっていくように考えていただきたい。
職業訓練法の一部を
改正する
法律案関係資料という中にも、ちょっと読ませていただきましたところが、「
事業主等の行う
職業訓練に対する援助
助成等の拡大」というところで、一番目に「
職業訓練に関する情報の提供等」として「国は、
職業訓練に関する調査・研究及び情報の収集・整理を行い、」こう書いてございます。こういう情報収集だけではなくて逆に、そういうことを発表していって、そういう情報をどんどん提供していく、そして知識集約型の
産業への、
産業構造の
変化に十分資料になっていくように、質的な
産業構造の
変化をしていかなければならぬ、概念的にはそう思っても、実際に
企業が、それでは、そういう
転換をするためにどうすればいいかということについては、およそ試行錯誤している状態だと思うのです。そういうところへどんどんこういうものをしていったらどうか。あるいは、こういう資料、統計をわれわれは握っているのだ、こういうことまで発表されましたら、単に
職業訓練あるいは労働という問題だけではなくて、そういうところに使ったお金が有効にまた別のところへ使われていくのじゃないか。そういう
意味からも、どうか波及
効果の大きい点を御勘案いただいて、ぜひ今後の労働行政の一助たらしめていただきたい、かように思います。
この問題はこれくらいにして、次に移らせていただきます。
今後は、こういうふうな非常な不況下になってまいりますと、一番最初に行政が心配しなければならぬのは、やはり身体
障害者とか、あるいはそういう弱者と言われているような方々の生きていく手段、方法というものを考えてあげなければならない。そういう
意味において身体
障害者の
職業訓練という問題に
関連して、これも発想の
転換をしていかなければならない時期に来ているのじゃないかというふうに思いますので、これも実はきょう厚生省も来ていただいておりますけれども、この
福祉という問題は、決して物を与えたり、あるいは金を与えたりして、その方々を救済していくという考え方ではなくて、やはりそういう人たちが自立していける、人のお世話にならなくても生きていける、そういう道を開いてあげることが最も大切なことだと思います。また、その方々が一般健常者に比べて大変大きな精神的なハンディを持っている。そういう方々に勇気を与え、あるいはまた生きがいを与えてあげるような方途というものを、縦割り行政という形ではなくて、やはり横の連携もとりながら、やっていただかなければならない時代に来ているのではないか、こう考えまして、それに
関連して
質疑をさせていただきたい、かように思うわけでございます。
四月七日の朝日新聞に「
障害者の自立」という見出しで、イギリスの脳性麻痺者協会レクリエーション部長のウィリアム・M・C・ハーグリーブズ、こういう方が日本にいま来ておられまして、いろいろな講演をされているのですが、この方のおっしゃっている中に幾つか大変参考になるというか、われわれがかがみとしなければならない点がございますので、その幾つかを御
紹介申し上げながら、
関連した質問をさせていただきたい、かように思います。
同氏がもっとも強く訴えているのは「体に障害があるからといって心理的にハンディキャップを負う必要はない」こういうことを言っておられます。それから
障害者と健常者との
関係も「健常者が
障害者に対して思いやりを持つと同様に、
障害者も健常者に対して思いやりを持つこと。」こういうことが必要だということを言っておられます。それから「もう
一つ。「労働」の問題がある。とくに、脳性マヒ者は、身体は不自由だが精神的にはしっかりしている。だから、心でできることと身体ができることとのギャップが大きく、欲求不満になる。重要なことは、「労働」をすべて「生活の糧」としないで「生きがいの場」とすべきだ」こういう言葉が述べられているわけで、この「「労働」をすべて「生活の糧」としないで「生きがいの場」とすべきだ」、これは大変重要な発想であろうと思うわけでございまして、そのために、同氏の
説明によりますと「英国では七〇%以上の
能力がある人は保護工場で働くことができる。しかし、脳性マヒ者のほとんどは肢体不自由でここでは働けない。重度者のための「作業
センター」があってそこで働く。ここでは生産性を問われることはなく、障害の程度に合った“仕事”がある。仕事量や
能力に
関係なく週二ポンドが支払われる。基本的な生活は、
社会保障でできる仕組みだ。」こういうことを言っておられます。そして「その頭脳を生かした“知識工場”“頭脳集団”、例えば発明、発見などの仕事につく方が精神的満足が得られる」と、こういう身体
障害者に対する
職業訓練の
あり方に対する
一つの
方向を述べておられます。
この発想は、私は大変重要なことだと思います。いままで労働省
関係の身体
障害者に対する
職業訓練の中には、こういう発想がなかったのではないか。あるいは、あったとしても非常に少なかった。具体的にはなかなか生まれてこない。それで健常者と同じような
職業訓練を身体
障害者にも与えていこう、こういう発想が非常に強く前に出ていたと思うのです。ですけれども、いま申し上げましたようなこういう考え方で、身体
障害者に対する
職業訓練というものを、もう一遍、洗い直してみたらどうだろうか、こういうふうに私はこれを読んで感じました。
そういうことで大臣、私がいま申し上げましたようなことについて、どのようなお考えを持っておられるのか。あるいはまた、それに対して大臣はどのような具体的なお考えをお持ちか。ありましたら、ひとつ教えていただきたいと思います。