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1978-04-18 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十八日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    大坪健一郎君       大野  明君    川田 正則君       小坂徳三郎君    斉藤滋与史君       津島 雄二君    戸沢 政方君       友納 武人君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    山口シヅエ君       湯川  宏君    安島 友義君       枝村 要作君    大原  亨君       金子 みつ君    川本 敏美君       栗林 三郎君    田口 一男君       矢山 有作君    草川 昭三君      平石磨作太郎君    西田 八郎君       浦井  洋君    田中美智子君       工藤  晃君  出席国務大臣         労 働 大 臣 藤井 勝志君  出席政府委員         内閣審議官   伊豫田敏雄君         労働省労働基準         局長      桑原 敬一君         労働省婦人少年         局長      森山 真弓君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      岩崎 隆造君  委員外出席者         議     員 金子 みつ君         内閣総理大臣官         房参事官    橋本  豊君         厚生省社会局更         生課長     金瀬 忠夫君         厚生省児童家庭         局障害福祉課長 佐藤 良正君         農林省食品流通         局砂糖類課長  馬場久萬男君         通商産業省生活         産業局窯業建材         課長      大高 英男君         中小企業庁長官         官房調査課長  西川 禎一君         労働大臣官房参         事官      鹿野  茂君         労働省労働基準         局監督課長   小粥 義朗君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     福永 一臣君   井上  裕君     福田 篤泰君   大原  亨君     長谷川正三君   草川 昭三君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   福田 篤泰君     井上  裕君   福永 一臣君     相沢 英之君   長谷川正三君     大原  亨君   正木 良明君     草川 昭三君 同月十八日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     高田 富之君 同日  辞任         補欠選任   高田 富之君     川本 敏美君     ————————————— 四月十五日  労働基準法の一部を改正する法律案金子みつ  君外九名提出衆法第一七号) 同月十七日  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  麻生良方紹介)(第三一八九号)  同(加藤清二紹介)(第三二六四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第三二六五号)  同(安井吉典紹介)(第三二六六号)  同(川崎寛治紹介)(第三三二九号)  積雪寒冷地季節労働者失業給付九十日支給に  関する請願斎藤実紹介)(第三一九〇号)  全漁業離職者職業転換給付金支給に関する請  願(津川武一紹介)(第三一九一号)  母性保障法制定に関する請願西田八郎君紹  介)(第三一九二号)  同(西村章三紹介)(第三一九三号)  同(宮田早苗紹介)(第三一九四号)  同(米沢隆紹介)(第三一九五号)  同(和田耕作紹介)(第三一九六号)  同(渡辺武三紹介)(第三一九七号)  同(渡辺朗紹介)(第三一九八号)  療術の制度化に関する請願長田武士紹介)  (第三二二三号)  同(矢野絢也君紹介)(第三二二四号)  同外九件(小沢一郎紹介)(第三二六〇号)  同外四件(長田武士紹介)(第三二六一号)  同外九件(椎名悦三郎紹介)(第三二六二  号)  同外三件(長谷川峻紹介)(第三三三五号)  同外四件(三塚博紹介)(第三三三六号)  失業対策事業就労者通勤交通費支給に関する  請願瀬野栄次郎紹介)(第三二二五号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第三二七三号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法期限延長に関  する請願平林剛紹介)(第三二二六号)  同(伊藤茂紹介)(第三二五六号)  同外一件(岩垂寿喜男紹介)(第三二五七  号)  同(平林剛紹介)(第三二五八号)  同(山花貞夫紹介)(第三二五九号)  環境衛生関係営業運営適正化に関する法律  の一部改正に関する請願藤本孝雄紹介)(  第三二二七号)  医療及び福祉充実に関する請願和田耕作君  紹介)(第三二二八号)  同(栗林三郎紹介)(第三二六八号)  同(田中美智子紹介)(第三二六九号)  同(西田八郎紹介)(第三二七〇号)  同外四件(田口一男紹介)(第三三三〇号)  同(田中美智子紹介)(第三三三一号)  同外三件(矢山有作紹介)(第三三三二号)  原子爆弾被爆者援護法即時制定に関する請願  外一件(大原亨紹介)(第三二六三号)  社会保障社会福祉拡充等に関する請願(北  側義一紹介)(第三二六七号)  同(鳥居一雄紹介)(第三三三四号)  老人福祉充実に関する請願菅波茂紹介)  (第三二七一号)  全国一律最低賃金制確立に関する請願瀬野栄  次郎紹介)(第三二七二号)  准看護婦制度廃止に関する請願外一件(井上泉  君紹介)(第三二九六号)  同(小川省吾紹介)(第三二九七号)  同(大島弘紹介)(第三二九八号)  同(大原亨紹介)(第三二九九号)  同(加藤清二紹介)(第三三〇〇号)  同(河上民雄紹介)(第三三〇一号)  同(木島喜兵衞紹介)(第三三〇二号)  同(栗林三郎紹介)(第三三〇三号)  同外一件(小林進紹介)(第三三〇四号)  同(後藤茂紹介)(第三三〇五号)  同(佐藤敬治紹介)(第三三〇六号)  同外一件(斉藤正男紹介)(第三三〇七号)  同外一件(下平正一紹介)(第三三〇八号)  同(田口一男紹介)(第三三〇九号)  同(田邊誠紹介)(第三三一〇号)  同(田畑政一郎紹介)(第三三一一号)  同(多賀谷真稔紹介)(第三三一二号)  同(高沢寅男紹介)(第三三一三号)  同(武部文紹介)(第三三一四号)  同(千葉千代世紹介)(第三三一五号)  同(土井たか子紹介)(第三三一六号)  同(中西積介紹介)(第三三一七号)  同(中村重光紹介)(第三三一八号)  同(西宮弘紹介)(第三三一九号)  同(馬場昇紹介)(第三三二〇号)  同(細谷治嘉紹介)(第三三二一号)  同(松沢俊昭紹介)(第三三二二号)  同(村山富市紹介)(第三三二三号)  同(森井忠良紹介)(第三三二四号)  同(八百板正紹介)(第三三二五号)  同(山口鶴男紹介)(第三三二六号)  同(吉原米治紹介)(第三三二七号)  同(渡部行雄紹介)(第三三二八号)  公衆浴場法の一部改正に関する請願外二件(土  井たか子紹介)(第三三三三号)  腎臓病患者医療改善等に関する請願橋本龍  太郎君紹介)(第三三三七号)  婦人労働者の保護及び労働基準法改正に関す  る請願和田耕作紹介)(第三三三八号)  障害者・児の生活保障等に関する請願和田耕  作君紹介)(第三三三九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  職業訓練法の一部を改正する法律案内閣提出  第五五号)  労働基準法の一部を改正する法律案金子みつ  君外九名提出衆法第一七号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  職業訓練法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
  3. 村山富市

    村山(富)委員 前回から職業訓練法の一部改正案につきまして、大分問題点が出ておりまして、出尽くした感がございますけれども、数点にわたって確認をする意味でお尋ねをしておきたいと思うのです。  本来、職業訓練制度というのは、言うならば技術革新などによって社会的、生産的変化が起こってくる。そうした変化に対応して、労働者が生涯にわたって安定的に職業を持ち、その技能を維持向上させるために職業訓練を受ける、こういうものであるべきだと思うのですね。そういう観点から考えた場合に、現行訓練制度施設のうち、公共職業訓練施設機能技能開発センターまたは職業訓練短期大学校転換をする、こういうことに今度の改正ではなるわけでありますが、いま申しました本来あるべき職業訓練制度に照らして、現行制度関連をさせて具体的に、どういうふうに変わっていくのか、御説明をいただきたいと思うのです。
  4. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 職業訓練のあるべき姿について、いま先生指摘のとおりだと思います。今回の法律改正で、特に公共職業訓練施設再編整備を図ろうとしておる趣旨もまさに、そこにあるわけでございます。  現在、公共職業訓練施設としては、都道府県立職業訓練施設並びに雇用促進事業団が持っている職業訓練施設がございます。それで昭和三十三年に法律ができまして、昭和四十四年に法律改正ができましたが、前回改正が踏まえましたものは、高度経済成長時代においての第二次産業における主として技能労働者不足に対処しようということで、技能労働者養成確保ということが中心のことになっておったと思います。特に中卒者がだんだんに減りまして高卒者がふえてくる。したがって、技能労働者は、中卒者中心から、さらには高卒まで踏まえまして技能労働者養成確保をしなければならぬという観点施設整備されておったように思いますが、最近並びに今後、予想されます雇用構造変化あるいは産業構造変化の中で、第一には、現在並びに将来、問題になっており、また、なるであろう中高年者中心にいたしました離転職者訓練、再就職のための訓練ということが一つの重要な課題になりますし、また現在働いております在職労働者も、技術革新あるいはその他の技能のさらに向上、あるいは再開発ということが必要になってくる。こういう意味では、在職労働者のいわゆる成人訓練と言われるものも非常に重要な課題でございます。  もう一つ養成訓練につきましては、技術革新その他によりまして、今後要求される技能労働者というのは、理論的なこともわかり、かつ技能も達者であるという非常に高度の技能労働者というものが必要になってくるという観点から、総合的に考えますと、公共職業訓練施設あり方は、第一には、能力開発並びに成人訓練ということを中心施設にしていく。それから養成訓練は、中卒者が非常に減ってまいりまして高卒中心になりますが、その中でも特に中卒者につきましても、非常に多角的な素地を持った技能労働者養成する必要がある。それからさらには、先ほど申し上げた高度の頭と腕を兼ね備えた技能労働者養成する必要がある。  そういうことから今回考えましたのは、雇用促進事業団が現在、全国各地大方、一府県に二施設程度持っておりますものを、これは雇用保険法に基づきます施設として全額、能力開発事業という財源から出ているということもありますので、この高度の技能労働者養成、これを私ども短期大学校ということで、すでに東京と富山に二校つくっておるわけでございますが、これに一つは切りかえていく。それからもう一つは、能力開発訓練並びに成人訓練中心的なセンターとしての技能開発センターに切りかえていこう。そして養成訓練のうち、そういった短期大学校でやります養成訓練以外の中卒者並びに高卒者に対する多能的な基盤を一応備える技能者養成していこうというものは、都道府県施設全国に三百ぐらいございますが、それに漸次切りかえていくことが適当ではないか。それから、その地域地域における産業構造、そこから出てまいります雇用需要、それに対応する訓練需要というものを十分見詰めつつ、県の訓練校あり方というもの、それから雇用促進事業団のいま申し上げた短期大学校並びに技能開発センターへの切りかえということを、本当にその地域地域の実情に合ったような形で位置づけていく、こういうことが今回の一つのねらいでございます。
  5. 村山富市

    村山(富)委員 要するに、いま都道府県立職業訓練施設がある、雇用促進事業団がやる総合高等職業訓練学校がある、それに短期大学校がある。そこで、今度一応、若干の整理をして、養成訓練それから離職転職訓練等については都道府県立訓練校重点を置く。そして現在までやっておりました雇用促進事業団の総訓は、技能開発センター短期大学校、この二つに区分する、こういうことになると思うのです。私は、形を幾ら変えてみたって、内容的に変わっていかなければ意味がないんじゃないかと思うのです。したがって、技能開発センターに変わり、短期大学校に変わるということは、具体的に施設整備やら内容等々がどういうふうに変わっていくのかということが一つと、現在おる指導員等に対する処遇やら扱いはどうするかといったような問題は、当然残ってくると思います。そういう問題に対する考え方はどうなんですか。
  6. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 たとえば、現在までにも雇用促進事業団訓練施設を、短期大学校は先ほど申し上げました二つ、それから技能開発センターに数カ所切りかえておりますが、それの切りかえに当たりましては、その地域における訓練需要を十分見た上で、まず施設設備整備につきまして、これは当然予算の裏づけが伴います。それから、訓練科目等につきましても、その地域地域訓練需要に対応するようなものに必要であれば、訓練科目転換をする措置をとっております。  それから、訓練指導員につきましても、たとえば短期大学校あるいは技能開発センター訓練指導員というのは、言ってみれば従来の中卒中心養成訓練よりは高度の訓練技法なり、あるいは、みずからも技能、理論というものを身につけなければいけません。当然、資格を持っている者もありますけれども、その不足を補うための指導員の再訓練というものは、相模原にあります訓練学校で、そういったコースを設けて、あるいは民間企業、それから工科系の大学の大学院等を利用して再訓練をして、そして、その施設にふさわしい内容を持った指導員に再訓練をした上で配置をする、こういうやり方は当然とっておりますし、また今後進めていかなければならないことだと考えております。
  7. 村山富市

    村山(富)委員 やはり一つ転換ですからね。当然、身分やら労働条件やら、いろいろ関連してくると思いますから、組合と十分事前の協議を尽くして、転換がスムーズに機能的に効果の上がるような形で移行できるようにすべきだと思うのです。その点はいいですね。  それから、いまの制度を考えた場合に、たとえば離職者あるいは転職者等の言うならば能力開発訓練ですか、これは、できれば、いままでやっておった職業または類似する職業等関連がある再訓練を受けて、そして再就職した場合に前職の賃金が保障されるという程度のものであることが望ましいと思うのです。ところが、現状から考えますと、たとえば非常に職種が限定されるという理由もあるでしょう。同時にまた、社会的にどういう職業が一番求人が多いかといったような求人関係等もあって、必ずしも本人が希望する転職ができない。全然違った新しい職業訓練を受けるということもあり得ると思うのです。そうしますと、ある意味では、低賃金構造を構成する一つ受けざらになっていく、こういう可能性も出てくるのではないかと思うのですね。  たとえば、旋盤工なら旋盤工職業訓練をまた受けて、より高度な技術を身につけて出ていくということになれば、一定の条件がつきますね。ところが、旋盤工の人が全然方向の違った職業訓練を受けて就職するという場合には、相当条件が悪くなるというふうに考えられますね。いまの能力開発訓練施設やら内容から見ますと、お粗末過ぎるのではないか。だから、前段に申し上げましたような条件が満たされないのではないか。やはり全体として非常に賃金の低い層を構成する基盤になっていくのではないか。こういうことが心配されるわけでありますが、そこらは実際に現状はどういうふうになっていますか。
  8. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 いま先生指摘になられますように、従来、技能を持って企業就職していた者が、たとえば不幸にして離転職をしなければならない、その場合の再就職について、やはり従来の技能を生かして就職をする、あるいは技術革新等に伴って向上訓練を受けて、同じような職種に自分の腕を生かして就職をする、これが望ましい姿であることはもちろんでございます。特に高度成長時代には、そういった形で離転職訓練が行われ、また効果も上げ得たと思います。ですが、前々からいろいろ御議論いただいておりますように、現在並びに今後の産業構造あり方、それに伴う雇用構造あり方というものを考えますと、あるいは第二次産業におけるそういった技能労働者としての雇用吸収力には限界がある。したがって、第三次産業への離転職というようなことも当然考えていかなければならぬ。  そこでまず、技能労働者として再就職する場合にも、従来、たとえば大企業年功序列制賃金のもとで勤め上げて定年でやめたという方は、相当賃金水準が高うございます。そういう方々は、再訓練を受けるるいは向上訓練を受けて再就職をされるという場所が大方中小企業ということになりますと、賃金水準が低いというようなことが出てまいります。再就職はやはり賃金水準が若干低いところに就職せざるを得ないのじゃないかというような問題はあろうと思います。     〔委員長退席竹内(黎)委員長代理着席〕  そういうことに対応いたしまして、しかし高齢者を特に優先的にともかく就職をさせてもらうということのために、雇用奨励金措置等も講じて、賃金水準もなるべく下がらないような措置をとりながら再就職の道を選んでいくという関係助成も、いろいろとしておるわけでございます。  同時に、離転職者訓練につきましては、今後の雇用需要というものを考えて、従来、身につけた技能を生かしていくということが最善ではございますけれども、やはり第三次産業的な雇用需要の多いところに再就職をしてもらう、そのための訓練を受けるということを今後の展開としては、どうしても図っていかなければならないだろうと考えます。その面での措置は、たとえば訓練施設職種転換や、あるいはそういった面での機能拡充、さらには、再三申し上げております民間訓練施設への委託訓練というようなことで充実を図ってまいりたい。  いまの賃金水準の問題というのは、わが国の雇用構造に伴う賃金構造の問題として、なかなか訓練の力だけで解決できるという問題ではございませんけれども、労働政策としては、そういう面には十分気を配りながら職業安定機関職業訓練機関を通じましての職業紹介あるいは職業指導、また事業所への要請等も十分尽くして、できるだけ労働者雇用の安定、福祉改善ということに努めてまいりたいと思います。
  9. 村山富市

    村山(富)委員 これは、いまの訓練科目なんかが限定されておる。だから、なかなか弾力的な運用ができないというようなこともありましょうし、やはりこれは再就職が目的ですから、求人にどうこたえていくかというようなこともありましょうから、むずかしいと思いますけれども、しかし比較的中高年齢層が多いと思いますから、したがって前職の賃金がある程度保障されるというくらいの質の高いものに転換をさしていく必要があるのではないかと思います。その点もひとつ十分今後検討してもらいたいと思います。  それからもう一つは、最近の県立の専修あるいは高等職業訓練校等を見ておりましても、社会的な条件も変わってきておりますし、経済構造も変わってきておりますから、そういう訓練学校に対するニーズが変わってきておりますね。ところが、やはり行政の一つの機構ですから、したがって地域ニーズにこたえて弾力的に運用するという面で欠ける点があるわけです。したがって、大変悪い例だけれども、大分県であったように、職業訓練校を廃校にするというようなこともあり得るわけです。今度の改正で、都道府県が持っておる専修あるいは高等職業訓練校というものは内容的にどういうふうに変わっていくのか、全体の職業訓練施設の中でどういう位置づけになっていくのか、あるいは今後充実するとすれば財政的にどういうことをお考えになっておられるのか、そこらについて御説明願いたいと思います。
  10. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 県の訓練施設におきましては、その地域地域における産業構造雇用構造、その他諸般の情勢に最も適合したふさわしい職業訓練をやるということの施設として考えたいと思っているわけです。現在の訓練需要離転職者訓練あるいは成人訓練、さらには高度の多角的な技能素地を持った者の養成訓練ということが要請されておりますから、そういう観点で県の職業訓練校というものを位置づけてまいりたい。もちろん、その地域地域における事業内の訓練というものも、いろいろな助成措置をとって今後とも振興してまいりたいし、自主的な機運も相当高まってきておりますので、養成訓練等は、そういう面でも従来の訓練需要を満たしていく面があると思いますけれども、その地域地域において最も必要な訓練をするという観点から、県がそれぞれ訓練計画の中で、その地域における事業主あるいは労働組合、またその他のいろいろな訓練関係職業安定関係機関等との連携を十分密にいたしまして訓練需要を発見し、そしてその中で最も必要な訓練をそれぞれの訓練校においてやっていく。それは地域地域におきまして、養成訓練主体になることもございましょうし、離転職訓練あるいは成人訓練主体として運営することもありましょうと思います。今回の改正でも、県の訓練校は、そのいずれをも総合的にやれ、また、どれかに主に重点を置いて運営できるということにもしてまいりたいと思っております。  それから、県が運営いたします職業訓練施設に対しては、従来とも二分の一の国の補助を、施設設備につきましても、あるいは運営費につきましても行っております。この方向は基本的には変わりませんが、そういったいろいろな形での転換については、十分に財政的に裏づけができますような方向で努力をしてまいりたいと思います。
  11. 村山富市

    村山(富)委員 要するに、県がやっておる専修高等職業訓練校というものは、これからは養成訓練と、それから離転職者訓練重点になると思うのですね。そうしますと、これは要するに雇用促進事業団都道府県立のものと機能を分化する。職業訓練をする主体条件を区分をして整理していくというだけの話であって、内容的には一つも変わらぬのじゃないか。たとえば、言われるように機能的に弾力的に地域ニーズに応じて運用できるように、こういうふうに変えていきますとか、あるいは施設設備をどのように充実していきますとか、もう少し具体的な話があれば、これはいいですけれども、ただ説明としてあるだけであって、こういうふうに機能を整理して分離しますというだけの話では、何のために、そんなことの必要があるのかと言わざるを得ないのですね。そこら、わかりますか。(岩崎政府委員「わかります」と呼ぶ)そうでなければ私は意味がないと思うのです。そこらはどうなんですか。
  12. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 先ほどから申しておりますように、従来ともすれば、その地域地域において、いろいろな訓練施設が同じような機能を競合してやっているというところもありましたので、そこの区分けをきちっと方向づけをする。しかも今後その地域地域における訓練需要をつかむについて、いろいろその地域における連携を各種団体、機関等と保ちながら、転換を図っていく方向づけをしたいというのが今回のねらいでありまして、その具体的な内容、たとえば財政的な措置とか方向とかというようなものにつきましては、その方向に沿いまして、今年度も相当予算面では努力しておりますが、特に来年度以降、この法律改正をてこにいたしまして大きな転換と申しますか、あるべき方向づけをしていきたいということを考えております。
  13. 村山富市

    村山(富)委員 ぼくはもう少し具体的に、この問題をとらえぬと、うまくいかぬのだと思います。たとえば、ここ二、三年ずっと五職種なら五職種の教科をつくって訓練していますね。ところが客観情勢が変わってきて、もっとこんな職業訓練をしてもらいたい、こういう職種を選んでもらいたい、こういうことが起こってくると思うのです。しかし、県としてはもう指導員は決まっているわけですから、その指導員を新しい要求にこたえる指導員にかえるわけにはいかぬわけですから、そういう意味では、なかなか機能的に弾力的に地域ニーズに応じた運営ができにくいという点もあると思うのですよ。そこらはもう少し工夫をして、本当に機能的に発揮できるようなものに今後変えていくのだ、こういう何かがなければ、ただ養成訓練離転職者の再訓練主体都道府県立訓練校はやります。そして、いまある総訓は技能開発センターにして、こういうふうにしますというだけでは、ちょっと意味がないのじゃないかというふうに思いますが、どうですか、その点は。
  14. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘のことは私も全く同感でございます。いま局長からお答えいたしましたように、今度の改正方向は御理解いただいておるわけだと思いますが、その方向づけを裏づけるものは、雇用促進事業団の今後の職業訓練の財政的裏づけを、いまおっしゃったような方向に向かうように配慮する。同時にまた職業訓練あり方というものを、やはり産業構造変化に対応して労働者の配置がえが求められておるきょう今日でありますから、それに対応できるように、職業訓練をまさに弾力的、機動的にやっていけるような体制を整えていく。それには何といっても指導員の資質の向上も必要ですし、またその組み合わせが、従来のようなことだけでなくて、部外の方からも知識を導入する、そして部内の人の力を補ってもらう、こういうふうに配慮していくということも一つの考えではないか。いずれにいたしましても、この法律を通していただいた後、関係審議会の専門家の意見も動員して、御指摘のような方向に向かわなければ、この改正意味はなさない、私はこのように思っておるわけでございます。
  15. 村山富市

    村山(富)委員 そういう点がやはり今後の問題点として懸念されますから、そこらは十分配慮しながら、職業訓練というのは雇用の安定の一つの柱として大変大きな役割りを持ってくると思いますから、そういう意味で、もっと検討していく必要があるのではないかと思うのです。  それからもう一つは、モジュール訓練を今度は採用するということになっていますね。これはやはり一つの試みだと思うのです。職業訓練というものは、冒頭に申し上げましたように、労働者の生涯訓練として必要に応じて必要な職業訓練が受けられるということが一番大事なんで、期間を決めて、そして何カ月訓練を受けた。したがってこの人はこれを修了したというような形式的なものでなくて、自分の必要とする職業訓練を受けたら、やはりその資格が何らかの形で保証される、こういうものに変えていく必要があるのじゃないかと思うのですけれども、そこらはどういうふうにお考えになっていますか。
  16. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 先生指摘のように、モジュール訓練というのは、それぞれの訓練受講者の持っております訓練の度合いに応じまして、それに積み上げていく、あるいは横に広がりを持たせていくということを、単位、単位に分けて何を習得していくかということをやりながら進めていく技法でございまして、その目的は就職に結びつくための、こういったものについては、これだけの腕を持つのだということなんで、それが本当の意味での目的でございますから、たとえば三カ月やったら、まだよく習得していないのに、それで卒業だというような従来のやり方と、言ってみれば非常に改善される面があるのじゃないかと思います。しかし、それにいたしましても一応の訓練期間のめどというものはつくりますが、それに必ずしもこだわるものではなくて、多少の柔軟性を持たせるということが本来の趣旨でございます。  それから、資格との結びつきの問題につきましても、先生指摘のとおりでございます。すでに既存の資格と結びついた訓練が行われ得ているというものもございますが、さらに、いろいろな資格と結びつき得るように、課題が幾つかございますので、それは今後ともに最大限の努力をしてまいりたいと存じます。
  17. 村山富市

    村山(富)委員 ある意味では学校の卒業証書をもらうような、そんなものは余り必要ないんじゃないかと思います。そうでなくて自分がこの職業をやっていく、その仕事に対して、これだけ訓練を受けて技術を身につけましたといったような証明書があれば、それで十分いけるわけですから、そういうものに変えていく必要があるのじゃないか。そういう職業訓練施設にやはり整備していく必要があるのじゃないかというふうに思うのですね。それはひとつ今後の課題として十分検討してもらいたいと思うのです。  今度の法改正職業能力開発協会というのが中央、都道府県につくられるわけですね。この開発協会というのは、どういう機能と権限を持ってやられるのですか。ある意味では今後の職業訓練施設なり、あるいは免許の取得なり、資格の取得なり、そういうものとの関連というのは非常に強くなってくるのではないかと思いますから、よほど民主的に運営していただかないと弊害がまた生まれてくるのではないかという気がしますし、労働組合等とのかかわり合いはどういうふうになっていくのか、そこら辺について若干御説明をいただきたいと思います。
  18. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 私ども職業能力開発協会を中央、地方に設立しようと考えましたのは、今後の訓練というものが、特に民間の力を結集したような、そして民間、公共が一体となった幅の広い訓練の実施体制を確立する、そして労働者の生涯にわたる職業訓練並びにそれに対応する技能評価という、車の両輪のようなこの二つの結びつきを密ならしめまして、一体的な民間の力を結集したい、こういうことを考えているわけでございます。したがいまして従来、技能検定の仕事をやっております中央、地方の検定協会並びに訓練民間の集合体であります県の職業訓練法人連合会並びにその中央会というものを、それぞれ合体いたしまして、国及び地方に職業能力開発協会をつくる、これはまさに民間の知恵を結集するわけでございますから、民主的に運営されなければならない、先生の御指摘のとおりでございます。  今回も、そういう意味民間の幅広い訓練並びに技能評価に関する知識経験というものを結集するということで、参与制度というものを設けております。これは法律の条文では学識経験者を委嘱するという形になっておりますが、その中には当然、訓練並びに技能検定についての広い学識経験を持った方々を幅広く選定をしてもらうということから、当然、事業主あるいはいわゆる学者その他研究者の学識経験者並びに労働者の代表者というような方も随時御委嘱申し上げまして、民主的な運営に資してまいりたい、このように考えております。
  19. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間もございませんので、最後に総括的なことについて見解を承っておきたいと思うのですが、いまの日本の職業訓練制度の位置づけというのは、たとえば養成訓練にしても、離転職者の再訓練にしても、向上訓練にしても、受け身ではないかと思うのですね。受け身というのは、離職をした、あるいは転職を余儀なくされた。再就職が可能になるように、転職が可能になるように、どうして労働者訓練していくか、こういうことで職業訓練がなされておる。それは社会的には、そういう面も必要があると思いますけれども本来、職業訓練というのは、労働者の基本的な権利に基づいて当然やらなければならぬことなんだという位置づけが必要ではないか。そのためには単なる養成訓練離転職者訓練だけでなくて、社会的に労働者技能向上させて一生安心して仕事ができる、こういうものを身につけていくんだ、これは労働者の権利なんだ、こういう位置づけを前段にきちっとしておく必要があるのではないか。  フランスの場合なんかは相当莫大な金を使って労働者の権利を保障して、社会的、制度的にできていますね。そういうところから比較しますと、日本の訓練制度というのは、ある意味では全く受け身だと私は思うのです。そういうところから、やはり施設なり機構なり、そういうものの欠陥もあるのではないかと思うのですけれども、これからは、そういうものであってはいかぬ。ですから、今度の改正は、それほど抜本的な改正でもございませんので、もう少し職業訓練というもののあり方、本質というものをしっかり統一して確立する必要があるのではないかと思うのです。さっきから議論していますように、労働者が必要に応じて必要な訓練をいつでも受けられる、こういう仕組みにして、生涯、自分の技能で安心して生きられる、あるいは身につけた技能を職場は変わったにしても十分生かしていける、こういうものに職業訓練あり方を変えていく必要があるのではないかと思うことが一つ。  それからもう一つは、先ほど、いまの制度は非常にお粗末じゃないかというお話も申し上げましたけれども、訓練所、訓練学校で取得をした技能が資格として社会的に位置づけられるというようなものであれば、それだけ評価も固定するわけです。ですから、そういう仕組みというものをもっと考えていく必要があるのではないか。この職業訓練を受けることによって労働者の生活なり技能なり位置づけというものが向上していくというものでなければならぬと思うのですね。そういうものに変えていく必要があるのではないかというふうに思いますし、とりわけ現行制度から考えてみましても、たとえば職業教育との関連をどうするのかとか、いろいろなこれから検討しなければならぬ問題があると思います。しかも、こうした職業訓練校の機構全体がこれからも変わっていくと思いますから、それに対する行政機構というものをもっと検討する必要があるのではないか。同時に、これは雇用保険法の千分の一の財源でもって、この職業訓練を賄うという程度のものではなくて、さっきから申し上げておりますように、労働者の権利を保障する社会的制度をつくっていくんだ、こういう考え方に立てば、もっと金もつぎ込んで職業訓練充実させていく必要があるのではないか。そうでないと、労働者の要求にも社会的要請にもこたえない、まことに現状はお粗末過ぎるのではないかというふうに私は思うのです。そこらの大臣の考え方、これからの方針等を最後に承って、質問を終わりたいと思います。
  20. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 ただいまの現在の職業訓練あり方というのが、いわば後追いであり、時代の要請にこたえる体制としてはきわめて弱体である、こういう御指摘は私も率直に認めざるを得ないというか、認めるべきだと思うのです。  私は、実は訓練法の改正の問題に取りかかるとき、やはり先立つものは金であるということも考えなければならぬ、雇用促進事業団の金の使い方が、いままでは施設本位の金の流れになっておる。これを職業訓練方向へ向かって相当流れを変えるべきであるという考え方を省議においても指摘をいたしまして、そして、われわれがいま送りつつある現在の社会、経済の質的な変化に対応して積極的に労働者がその場を得られるような職業訓練に切りかえるべきだ。そのためには思い切って金も投入すべきである、こういう認識を持っているわけでございまして、御指摘の点は一々私自身が頭に考え、今後そういう方向へ向かって前進させたい、このように考えておるわけでございまして、先ほど局長から答弁いたしました職業能力開発協会、まさに身につけた技術をしかるべく評価をして、それがまた労働者の給与にも結びつくような方向へ行くべきではないかということも考えるわけでございます。  今度十年ぶりの改正でありますが、客観情勢はいま言ったような方向職業訓練がいくことが本当に改正の趣旨を生かすゆえんである。そして願わくは文部省の方の職業教育とうまく補完し合って、そして本当に労働者の生活が保障される、現在の段階で職業訓練職業安定と直結している、こういうことをも踏まえて訓練法の改正、実施に取り組むべきである、このように考えているわけでございます。
  21. 村山富市

    村山(富)委員 大臣の見解を聞きましたが、これはやはり歴史的なものもありますし、それから労使の職業訓練に対する認識の浅さとか無理解とか、いろいろあって、むずかしいことはよくわかりますよ。だけれども、いま大臣も言われたように、ある意味では、これから大変重要なものになってくると思いますから、そういう意味で、そうした重要性を十分理解し認識し合って、もっといいものにしていく、今後一層の努力を期待して、質問を終わります。
  22. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、田中美智子君。
  23. 田中美智子

    ○田中(美)委員 職業訓練法について質問いたします。  今度の改正は、いまもお話しになっておりましたように、離職者訓練の方にずっと重きを置かれている、この点はいいことではありますけれども、中卒の養成訓練、幾ら数が少なくなったといっても、現場で聞いてみますと、これに対する不安というものを非常に持っていられるようです。そういう点で、この養成訓練というものを何らかの形で継続をしていかれるような、そういうことは考えられないかということを、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  24. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 いま御指摘のように養成訓練につきましては、中卒者が減っておりますけれども需要がありますから、それは今度の改正では県の訓練校中心にいたしましてやっていただく。それから事業訓練も、もちろんやっておりますから、その両方を中心に、やっていただくことで、訓練機会を奪うというようなことはないというふうに考えております。
  25. 田中美智子

    ○田中(美)委員 奪うことはないと言われますけれども、実際に愛知県では、大体こういう方向で去年あたりから先取りしたような形でやられているわけですね。こういうのを見てみますと、たとえば能開訓練の方は十三科目になって、養成訓練は四科目というので、いままでと逆さまになるわけですね。政府の行き方も大体そうなわけですけれども、一年ぐらいの間に、あっという間に養成訓練の方はなくなってきているわけですね。そういう点で、いまおっしゃったように、ここのところが大丈夫であるか、総訓校を転換するときに十分慎重にしないと、そこに問題が起きるのではないかということを私は言っているわけなんですけれども、その点は十分大丈夫でしょうか。
  26. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 私どもも総訓校の転換につきましては、当然その地域における県の訓練校訓練あり方、あるいは事業訓練をどういうふうにやっているかということとも関連させまして、基本的な方向短期大学ないし技能開発センターに総訓校を切りかえていくということでございますけれども、経過的な措置は、十分にそこの訓練需要を見詰めながら対応していきたい、このように考えております。
  27. 田中美智子

    ○田中(美)委員 あっという間に転換するのではなくて、慎重にやっていただきたいというふうに思います。  それからもう一つ指導員の問題なんですけれども、訓練者の十人に対して指導員一名ということになっているわけです。愛知県の場合をちょっと見てみますと、三十名に対して二名しかいないのですね。これは十名ずつ二カ月ごとにおくれて入りますので、初めは確かに十名ですね。二カ月日に、もう十名入りますと、これは重なるわけです。また二カ月後に、もう十名入りますと、これは常時三十名いるわけです。これがもう半永久的に続くわけですから、出発のときだけが違うのであって、後は全部三十名になっているわけです。それが二名しかいないのです。これは聞いてみますと、指導員の補助というものは国から二分の一出ている。これは三人分もらっている。しかし実際には二人しかいない。こういうようなことでは、やはりまずいのじゃないですか。現場では非常に困っているわけです。たとえば三十名が同じレベルの人だったら、まだいいというわけではありませんけれども、全部レベルが違うのです。十名はもう卒業間際、もう十名はちょうど真ん中、十名が入ったばかりの人というので構成されて三十名。ですから、本当ならば、ここは三名よりもむしろ、そういう中のレベルがばらばらですから、ふやすべきところなのに、それが減っているということ、こういうのは国としてはどう指導していらっしゃるのでしょうか。
  28. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 先生指摘の、あるいは能力開発訓練で二カ月ごとの入校というやり方を、すでに先進的にとっている例かと思いますけれども、基本的には、訓練基準では十人に一人ということにして、補助金もそういうような形でやっておる、先生指摘のとおりなんです。  そこで、私どもがつかんでおる大方のところでは、訓練指導員は充足していると思うのですけれども、県によりまして、その対応が多少異なっているところがある。そういう点につきましては、私どもも当然訓練基準に従ってやっていただくように県とも十分話をして指導していかなければなりませんし、また現に努力はしております。今後とも、先生おっしゃるとおりなことでございますので、その点は努力をしてまいりたいと存じます。
  29. 田中美智子

    ○田中(美)委員 努力というのじゃなくて、やはり、こういうのは明らかに間違っているわけです。     〔竹内(黎)委員長代理退席、越智(伊)委員長代理着席〕 だから、その間違いを、そのままに置いておくというのではなくて、簡単なことですから、努力して徐々に直すという問題とは違いますので、努力ではなくて、この愛知県の問題を至急御指導をしていただきたい。人数をすぐふやしていただきたい。これはすぐにできることじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
  30. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 十分指導してまいりたいと思っております。恐らく原因としては、一つ考えられますのは、県の訓練指導員の年齢構成あるいは給与構成等で三人にすると持ち出しが非常に多くなって、そのために、その点は全体の指導員の中で一人か二人がまんしてもらう、その結果、ある科目をとってみますと、三人のところが二人というような状況があるのかと思いますが、調べまして十分指導をいたします。
  31. 田中美智子

    ○田中(美)委員 よく御存じですけれども、結局、持ち出しが多くなるということ。これは指導員が六の九ですか、そうすると十四万円ぐらいで指導員を雇うということは現状としては困難なわけですよ。それの二分の一しか来ないというわけですから、それは半分以上持ち出している。県が超過負担をせざるを得ない。それが結局そういうごまかしをせざるを得ないということになるので、私としては国の補助の単価自体、指導員のこの六の九という、こんな安いものを決めているところに国の指導の問題があると思うのです。ですから、ここのところをまず直していただきたい。そうすることによって、いずれにしても県はいますぐ三名にしなければならないことですけれども、いまおっしゃったように、県の持ち出しが大変だから、こういうふうに国がおっしゃるならば早急に六の九というのを直していただきたい。これは大臣、どうでしょうか、補助金。十四万円で雇えるはずがないじゃないですか。
  32. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 先生六の九とおっしゃるのは、まさに、いまそういう基準でやっておるのですが、これを三年ぐらい前に思い切って三号ほど飛ばして増額したという経緯があるわけです。ただ、私どもは全国をにらんで補助をいたしますので、特定の県が非常に人員構成、給与構成等で高くなっているというような問題がございまして、あるいはそういう事情もあろうかと思いますが、よく調べまして検討いたしたいと思います。
  33. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ぜひこの点、県の指導員の補助単価のアップというものを検討していただきたいと思います。  次に、訓練生五十名に対して事務員が一人という基準になっているわけですね。この問題はそれでいいとして、今度は委託が非常にふえてくる。各種学校も広がりますので、こういういき方は私はいいと思うのですね。委託していくということは幅も広くなりますし、こういういき方はいいと思うのですけれども、せっかく、いいものをつくっても、事務員が五十名に一人というところに今度もし委託が三十名だとすれば、そこに委託者はいないにしても、しかし報告を受けるとか、いろいろ連絡だとかという事務が非常に繁雑になってくる。それに対して、五十人に一名の基準を据え置いたということは、やはりちょっと問題があるのではないか。この点はいかがでしょうか。
  34. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 委託の事務がふえるだろうし、それからふえてもらわなければ困るということになるわけですが、現在の五十人の基準が、それではいまの仕事に対応してどうなのかというのは問題がございますので、今年度は、そういうことでございましたけれども、それと同時に、いろいろな安定機関とか、いろいろの関係団体等との協力体制などもとりながら、無理のないように推進はしてまいりたいと私は思っております。今年度やってみまして現実に実態がどういうことになりますか、それによりまして、私ども十分検討さしていただきたいと思います。
  35. 田中美智子

    ○田中(美)委員 当然、事務量はふえるわけですし、委託がもし非常に多くなったときは大変なことになりますので、ぜひこの点も検討して、できるだけ実効あるものにしていただきたいというように思います。  次に、心身障害者職業訓練の場合、この場合にもやはり一般の訓練校と同じように十名に対して指導員が一名ということでは、素人が考えても、この基準はおかしいんだというふうに思いますけれども、どうでしょうか。
  36. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 御指摘のとおり、指導員の基準は、一応一般の健常者の訓練校専修課程に準じて十人に一人ということにしておるのですが、その訓練校訓練校の事情によりまして随時、臨時に増員ができるような措置はできるように手当てはしておるのでございます。
  37. 田中美智子

    ○田中(美)委員 手当てをしているということと、いま私の言いますのは、やはり基準を変えていく必要があるんじゃないか。健常者と障害者を同じ数にしていくということは、これはだれが考えても、手がかかるということはあり得るわけですから、やはり十名に対して一人というのは、ちょっと基準が少ないんじゃないですか。それを言っているわけで、実際に困るときには補充する、こういうことでは困るわけです。
  38. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 訓練生の障害の程度によっても異なるわけでございまして、私どもは重度の訓練生が非常に多いところにつきましては五人に一人という指導員の基準も持っておりまして、その所々の事情に応じまして対応できるように考えております。
  39. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私はそういうふうに思わないのですね。国立の場合は大体軽い人を入れて十対一でやっている。それで県の方には、どちらかというと重いのを入れて、重症の場合には五対一にしている。見てみますと、現状は大体そうじゃないですか。私の言っているのは、県の方は重症だから五対一にしているということはいいことですね。しかし問題は、それは障害の程度によるということはありますけれども、いずれにしても障害があるという人と健常者を全く同じ十対一にしているというところに問題があるじゃないかということを言っているわけです。ですから重症のときは、こうしていますというのではなくて、この基準自体が健常者と障害者を同じにしているというところに問題があるのじゃないか。県の方は五対一で重症をずっと入れて、国立はどっちかというと、ほとんど軽い人だということになっているので、この基準をやはり直してほしいというふうに私は思うわけです。
  40. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 基準は基準でございますから、身体障害者訓練校における訓練の科目にもよりましょうし、それから訓練生の障害の程度等にもよりますから、一般のところが十人に一人だから身障者の方は何人に一人というふうに一律にするのも、また必ずしも適当ではないのじゃないか。ですから、そこのところはむしろ、ある程度、弾力性に富むような形での運用基準を定めておりますので、そういうことで対応していけるものではないかというように考えております。
  41. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は一律にせよと言っているわけではなくて、最低基準というものを上げろと言っているわけです。そして、それを弾力的にやってほしい。最低基準が健常者と同じというところに、やはり障害者に対する考え方というものが少し厳し過ぎるのではないかというように考えているわけです。  次に、視力障害者の場合ですけれども、訓練科目の中に視力障害者の問題が入っていない。これは、どういうお考えから訓練科目の中に、その職種が入らないのですか。
  42. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 従来、身体障害者訓練科目の中に一般的には視力障害者のためのものがなくて、現在、神奈川で視力障害者のための電話交換の訓練の科目を設定しているという事例がございます。ただ、これは私どもとしても検討課題でございますので、今度昭和五十四年度から所沢にできますリハビリテーションセンターの中における職業訓練施設におきましては、視力障害者についても訓練科目を設けることについて十分検討してまいりたいというように考えております。
  43. 田中美智子

    ○田中(美)委員 神奈川の場合は、本当に特例と言われるような形で、たった一つということですね。視力障害者というのは、ずっといままで、いたのであって、突然、最近ふえたということではないわけです。だから視力障害者に対する考え方というのが、やはり厚生省に基本的に間違いがあるのではないか。  それはどういうことかといいますと、結局、視力障害者というのは三療やっていればいいのだ、はり、きゅう、あんま、これをやっていればいいのだ、目が見えなくなったら、もうそれなんだという形しか考えていないところに、こういう問題が出ているのじゃないかと思うのですね。  それで、厚生省もよく御存じだと思いますけれども、いまの、はり、マッサージというものも、交通事情がひどくなってからというものは、往診というのがどんどんできなくなってきているわけですよ。それで収入というのは減ってきて非常にやりにくくなっている。だから、往診の方は晴眼者の人がやるというふうに、むしろ視力障害者職種が晴眼者に事実上少し侵されていくという面さえあるわけです。そういう点では、三療しかないということは、それが侵されてくるし、実際には診療室を持って、そこに来てくれる人の場合でないと、それができないというようになっているわけですね。ですから、そういう現状変化というものを考えると、盲人は三療だけでいいという考え方を基本的に変えなければならないことと、いま三療だけでは、とてもやっていけなくなっているというところを見ると、この視力障害者に対する職業訓練というのは欠くべからざるものだというふうに思うのですね。  いろんな障害の中でも視力障害の方というのは目だけなんですから、訓練によっては非常にすばらしい仕事ができるわけです。ですから、目を余り使わなくてもいいものであれば幅広く幾らでもできるというふうに、私は職種を広げられると思うのですね。ヨーロッパや社会主義国などを見ましても、日本のように盲人を三療の中に閉じ込めている国というのはほとんどないのです。ですから非常におくれているわけですから、出発として神奈川にたった一つあったというのが自慢のような言い方では困るのであって、積極的に盲人の職業訓練をこの中に入れて、うんと幅広くやっていただきたいというふうに思います。  この間、私は実際に見てこられた方の盲人のお話を聞いたわけなんですけれども、ソ連では盲人のための生産工場があるのです。盲人工場というのがあるわけです。大臣、この中には六割の盲人がいるのですよ。それで一般の生産をやっているわけです。あんまとか、はりとかいうのじゃないですよ。実際の生産をやっている。これが二百五十カ所あるのです。四割は晴眼者を入れているわけです。そういうふうにして、六割は目の見えない人がいても一つの工場がちゃんと成り立つ。そういうことをきちんとやっている。そして目の見えない人が、それに向けて訓練をして、その工場に行こうという形で訓練校を出ていくという受けざらというものもできているわけですね。ここまで進んでいるわけです。香港のようなところでも、盲人が見てきたと言っているのですけれども、飛行機のイヤホンの洗浄とか袋に物を詰めるというようなことをやっているということを私も伺ったわけです。  外国へ行って、みんなもうびっくりしてくるわけなんですね。日本はあんま、はり、きゅう、これが悪いとは言いませんけれども、それしかない。職業訓練の三十三職種の中に盲人のは一つも入ってないということ自体が——今度、所沢につくりますといっても、これはまた試験的に、ちょっとそこでやられるだけだ。だから、受けざらはないじゃないか。せっかく訓練しても受けざらはないじゃないかというような形ですが、もう少し計画的に、労働省でも、そうしたよその国の進んだ面というものは積極的に学んできて、日本の伝統的な、目の見えない人はあんまでいいんだという考え方を基本的になくしていただきたい。今度の改革案には、そういうものが全く盛り込まれていない。先ほど大臣もおっしゃったように、何年ぶりかの大改革をするんだというけれども、その中にそれが落ちているということは、改めて視力障害者に対して非常なさびしさを与えているわけですね。そういうところをもっときめ細かくということよりも、むしろ基本的に欠落しているというふうに私は思います。この点、大臣に伺いたいと思います。
  44. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘の盲人の職業訓練の領域というものを、その方面の進んだ国の事例を踏まえて、ひとつ前向きで善処するようにという御指摘でございまして、確かに考えなければならぬ領域だと思います。これは目標として、私も日本の現在の状況を踏まえて、やはり受けざらがなければいけませんから、全体の社会環境といったものを考えながら、ひとつ盲人の職業がいままでのようなわずか三療の中に閉じ込められないような方向で前進するように検討さしていただきたい、こう思います。
  45. 田中美智子

    ○田中(美)委員 確かに、受けざらまでも計画的に労働省がきちっとやってくれればいいわけですけれども、いままで見ましても、日本は受けざらという点で非常におくれているわけです。障害者問題は非常におくれているわけですから、やはり、まず職訓の中に入れていくということが受けざらをつくっていくということになるわけですね。ですから、その点を早急に検討をしていただきたいというふうに思います。よろしいですね、大臣。
  46. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 この点はちょっと私は、盲人の職業の範囲を広げていくということは十分検討に値する問題だと思いますけれども、受けざらを考えないで、ただやったところで、これはふん詰まりになるといいますか、やはり全体的に総合的な考え方を持ってやらないといけない。それを持って総合的な配慮をしながらやるということは、決してこれの取り組みを従来どおりの惰性でごまかすという考え方ではないのです。やはり前向きにするならば、そういうことをも考えながらやっていく。御指摘の点は、とりあえずそれをつくっておかなければ物が前進しないではないか、それも一つの考えでしょうが、私はちょっとその考え方には、そのまま賛成しかねる、こう思います。
  47. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は、受けざらができるのを待ってから職訓するというのではなくて——われわれ晴眼者から見ますと、目が見えなくなったら何もできないじゃないかというふうに自分の感覚で思います。しかし、目の見えない人がどうして、あれだけ上手に歩くのか不思議に思うくらいです。ただ道を歩くのでも、どうして一人で歩けるか、私がいま目が見えなくなったら、もうそこのドアを出ることさえできないじゃないか、こういう素人の考えではだめだと思うのです。ですから、目の見えない人たちの受けざらというのは、そんなにむずかしい問題じゃないのです。相当のことができるのですよ。実際に盲人の方の動きをごらんになると驚くほどです。どうしてできるのか不思議になって、どうしてわかるのですかと、私なんか盲人の方に言うのです。でも、わかるわけなんです。道路の高低でも非常によくわかりますし、曲がり角でも、ちょっとした空気の動きですぐわかりますし、道を歩くのでも私たちの想像できないようなことができているわけです。ですから、受けざら受けざらといって、確かに物の考え方は受けざらまで考えながら——今度の職訓にしても、いろいろ受けざらがないということで、母子家庭の職訓にしたって希望者が少ないでしょう。あれを見たって、受けざらがないから、せっかく母子家庭の職訓をしても希望者が少ないということがあるので、確かに受けざらは必要ですけれども、大臣のお言葉を聞いていますと、よほど受けざらというのがむずかしいもので、もう目の見えない人というのは大変なんだ。だから特別な受けざらをつくらなければ、あんま、はり以外はできないのじゃないかということが底にあるように感じられるのです。そうではないのです。本当にそれ以外の仕事でしたら、いますぐでも——大量に、いまのソ連の話のように六〇%全部盲人を入れるというのは、これはやはりきちんとした受けざらをつくらなければ、そういう工場というのはなかなかできないでしょうけれども、いま、いろいろな職場の中に盲人をぽつぽつと入れていくということは、これは簡単なことなんです。受けざらというのはあるわけです。ただ、技術がない、訓練をされていないからできないわけなんです。この点について大臣も、言い逃れではないんだ、いままでのように惰性でやるのじゃないんだということを言っていらっしゃるので、私はそれを信じたいと思います。視力障害者の問題というのは余りにもおくれているので、世界に対しても恥ずかしいのです。ぜひこの点を積極的に検討していただきたいというふうに思います。よろしいですね。
  48. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 確かに、社会の片すみで非常に気の毒な立場に運命づけられた方々の生きがいといいますか、生活のよりどころを与えて、生きがいを享受してもらうということは、私はいいことだと思います。その方法につきましては、いろいろ労働省の方で検討さしていただきますけれども、これは厚生省の関係、あるいはまた、これを雇う事業場の関係では通産の関係とか、関係の役所あたりと総合的に進めていく。結局、私は、どっちが先だというのではなくて同時発車、こういう方向で取り組まなければ前進しない、こういう認識を持っておるから先ほどからお答えしたようなわけでございますが、まあひとつ十分御趣旨の点は参考にさせていただいて検討いたします。
  49. 田中美智子

    ○田中(美)委員 次に、精薄者の問題ですけれども、精神薄弱者の場合に職業訓練校が全くない。愛知県にたった一つ愛知コロニーがあるだけなんですね。身体障害者雇用審議会の答申を読んでみますと、「選職、能力開発の如何によっては健常者よりむしろ優れている場合さえあるにもかかわらず」こう書いてあるのですね。多少の知恵おくれというのは訓練さえすれば、健常者よりも仕事としてはよくできるというものさえある、こう言っているわけです。ですから、やはり訓練というのは必要だと思う。日本に愛知県にたった一つしかないということではなく、ぜひ精薄の職訓校をつくっていただきたいと思うのです。愛知のコロニーではIQ六〇、二十歳までの人を募集したわけです。ことしです、五十三年度。百名定員のところ百二十八名来ているのですね。ですから、これは非常に希望が多くなってきているのですね。そういう点で、やはり、そういう対応を国がしていただきたいし、また五十四年度から養護学校が義務化されますね。そうしますと、障害者また障害者の周辺の人たちの権利意識が非常に高まって、いままでは、これは運命だから、しょうがないんだとあきらめていた人たちが、いや自分たちだって働く権利もあるんだし、生きがいを持った生き方をしたい、生きがいを持った生き方をさせたいという意識は非常に高まってきていますので、それに対応するように労働省の方も精薄者の職訓校もつくるということを検討していただきたいわけです。こういうものが今度の職訓の中に落ちているわけですね。その点はいかがでしょうか。
  50. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 いま先生お話しのように、現在、春日台に愛知県立の精神薄弱者のための施設があるわけです。これは私ども、精神薄弱者に対する職業訓練についての技法の問題とか、あるいは、どういった科目がいいのかとか、いろいろな問題がありますので、そう言っていいのかどうか、一つの試行的なものとして、いままで、やってきていただいているわけです。確かに精神薄弱者は健常者のように、すぐわき見をしたり飽きたりということなしに、一つのことに非常に集中して飽くことなくやるような能力があるということは、よく指摘されます。ただ私ども、健常者に対する職業訓練としてやっておりますものは、相当幅の広いあるいは深みのある技能を身につけさせる、そういう職業訓練という観念からしますと、ちょっと角度が違うというような感じもするわけです。したがって、それも職業訓練と言うのかどうかというような問題もあろうかと思いますが、私どもとしては、精神薄弱者の職業訓練のありようについて、愛知の春日台の言ってみれば試行結果等も踏まえて今後さらに研究開発ないし検討を進めてまいりたい、このように考えている段階でございます。
  51. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ぜひ職訓校をもっとふやしていただきたいというふうに私は思います。  それで、いまこうした精薄の方の職業相談員という制度があるわけですけれども、愛知県には二人しかいないのですね。二人では、とてもだめだというので、名古屋市では、特別に名古屋市独自で三名の相談員をつくったわけです。これは非常に好評なんですね。そういう点で、確かに職訓校というものの必要性と同時に、相談員というものも、もっとふやしていくということで、簡単に職場で教えることによって就職できるということがあるわけです、特別な職訓校に行かなくても。そういう点では相談員のところで相当解決していくという面も出ていますので、ぜひ、これをふやしていただきたいというふうに思います。
  52. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘のように、精神薄弱者を専門に担当します職業相談員の仕事は非常に重要でございますので、従来とも私ども、その増員をやってきておりますが、新年度におきましても、全国的には三十名増員しまして九十名、そのほかに心身障害者、両方やるのですけれども、促進指導官というのがございまして、これも毎年ふやしまして、現在全国に二百十四名いるわけでございます。そういう方々の増員につきましては今後とも努力してまいりたいと思いますし、それからお尋ねの愛知県につきましては、相談員は今年度も一名、いま申し上げた三十名の中から増員をすることにいたしております。
  53. 田中美智子

    ○田中(美)委員 今後ともぜひ増員の点を考えていただきたい。これは相当解決している面がありますので……。  その次に、やはり精薄の問題なんですけれども、名古屋市にいま、ゆたか、みのり、なるみと三つの精薄者の通所授産施設があるわけです。これは通過施設ではありますけれども、実際には御存じのように、そこで働いているわけですね。これがいま仕事がなくて、いろいろな問題を抱えているわけですけれども、ここへ働きに来るということが、精薄者にとっても家族にとっても非常に喜びになっているわけなんです。実際に私は、これは全部、行って見てまいりましたけれども、ここに歩いて通ってくることが原則だという、この原則に、私は非常に疑問を感ずるわけです。  その施設の中の二十人、三十人という人たちが、その周りの歩いてこられるところだけの人しか来られない。遠くの人はやはり電車、バスを乗り継いで来なければならないわけですね。その途中で、いろいろなトラブルが起きるということは御想像できると思います。私たちのように健康な者でも、満員電車に乗り、バスを乗り継ぎという中で、いろいろトラブルがあるわけですから、そういう中で精薄者がぼやぼやしていて、いろいろ問題を起こす。それは精薄者が起こすというよりも周りの人が起こすのだと私は思うのです。そういうことで、ここではマイクロバスを買いまして、そうして、ちょうど幼稚園の子供のように送り迎えをしているわけなんですね。このバスの運行に非常に金がかかるわけです。バスの購入は別で、運転手さんは常雇いじゃないにしても、頼んだり、ガソリン代、こういうものが年間二百万ぐらいはかかるのです。こういうものに対する補助金を何とか国に、もう少し、つけてもらえないだろうかというふうに思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  54. 佐藤良正

    佐藤説明員 精神薄弱者通所授産施設等の運営につきましては、措置費の中で人件費であるとか食糧費であるとか、その他事務経費を計上しているところでございます。年々その運営充実ということで措置費をアップいたしておりまして、五十三年度の予算でございますと、通所授産を例にとれば、昨年の六万八千……(田中(美)委員「時間がありませんので、質問だけに答えてください」と呼ぶ)アップされておるわけでございますが、年々いまの状況にかんがみまして、今後もやはり措置費の大幅アップというようなことを図っていくということで対処いたしたい、こう思っております。  なお、通所授産施設の設置の基準でございますが、やはり近隣の精神薄弱者が通えるところ、それからさらに、通所訓練と申しますか、社会に出て自分でなるべく活動できるという趣旨におきまして、たとえば電車で通うとかいうようなことについても積極的に進めているという状況も御留意いただきたいと思うわけでございます。
  55. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いまの質問の回答は非常にけしからぬと思うのです。何も措置費を上げろとか、措置費の話をしているわけじゃないでしょう。そういうふうに時間をむだに使わないでいただきたいと思うのです。私が言っていますのは、そこに通所してくるときのバスの補助金を出してやってくれ、これは父兄の分担になっているからと、そう言っているわけです。措置費を上げたって、それをバスに使えということじゃないでしょう。バスのことを言っているわけで、それについて答えていただきたいのです。そういう遠回しのやり方をしないでいただきたいのです。もうちょっと、まじめに話していただきたいのです。  積極的に電車に乗ることを勧めています、なぜ勧めるのですか。電車に乗ることを勧めるという、そういう小さな教育的な問題というのは、それは総合的に考えるべきであって、現状として、いま通ってこられないからマイクロバスを運行しているのですよ。     〔越智(伊)委員代理退席、委員長着席〕 ですから、それは場所によっても違うでしょう。だから、現状をちゃんと見て、ここの授産所はやはりバスで通わなければならないんだということであるならば、それに対してきめ細かく補助金を出してくれ、こういうことを私は言っているわけです。それを電車に乗ることを勧めていますなんて、どこの電車か、どういう電車になっているか見もしないで、そういういいかげんな国会答弁というのはやめていただきたいと思うのです。できないならできないとか、そういうふうにまじめに答えてほしいのです。そういうぐらぐらしたやり方はできないわけです。  大臣、もう時間がありませんので、この点は検討していただきたいと思いますが、現状を見て弾力的にやっていただきたいが、簡単に一言でお答え願いたいと思います。
  56. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 大変具体的なお尋ねでございまして、先ほど厚生省から答えがありましたけれども、措置費というのがそういう方向へ予算措置として流れてくるという、こういう意味説明があったというふうに私は理解しているのです。いまの問題をどうしてくれるかということについて、私はイエスともノーとも、きょうの段階では答えられない、これが私の答弁です。
  57. 田中美智子

    ○田中(美)委員 わかりました。  最後にもう一つ障害者雇用促進法ができてから雇用率が非常に悪かった銀行ですね、こういうものについて、前の石田労相が、直接指導する、こう言われましたけれども、実効が上がっているかどうかということなんですが、時間がちょうど来ましたので、そのお返事を、どのように実効が上がっているか、それとも、どのように上がってないかという数字を、きちっと私のところへお届けいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
  58. 細野正

    ○細野政府委員 銀行に対する指導の効果につきましては、かなり活発な動きを見せているのでございますけれども、全国的に統計的な数字というのはまだ把握しておりません。したがいまして、御存じのように、六月一日現在で毎年把握をいたしますので、その結果を待ってお届けするようにいたしたい、こういうふうに思います。
  59. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、六月一日を待って、その結果をお知らせいただきたいと思います。忘れないで私のところにお願いします。よろしいですね。
  60. 細野正

    ○細野政府委員 調査時点が六月一日でございますので、集計してからお届けする、こういうことになると思います。
  61. 田中美智子

    ○田中(美)委員 じゃ、お願いいたします。
  62. 木野晴夫

    木野委員長 工藤晃君。
  63. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 職業訓練関連いたしまして幾つかの質問をさせていただきたい、かように思います。  いま日本は、産業構造の質的な変化あるいは年齢構造の変化で非常に長生きをするようになった、こういう二つの大きな流れの中で、雇用問題が深刻な状況を醸し出しながらも、新しい次の世代への模索をしている時代ではないか、かように考えるわけでございます。  私は常日ごろから申し上げているのは、やはりいまから二十一世紀へかけて、健康の保障をどうするかということが一点、生活の保障をどうするかということが二点、三点目は生きがい、この三つをどう付与していくかという、こういう問題の総合的な解決を図っていかなければならぬ時代に入っているのじゃないか、こういつも考えているわけでございまして、労働大臣も常日ごろからおっしゃっているように、この職業訓練に関しても、日本の産業構造の質的な変化に対応する労働力をどう確保していくか、どういうふうに配置転換をしていくかという問題が、この職業訓練の大きな将来のビジョンであるというふうなことをおっしゃっておられます。まことにそのとおりでございまして、私どもも賛同をいたすわけでございます。けれども、総論についてはまことにそのとおりでございますが、いざ各論ということになりますと、大変いろいろむずかしい問題、あるいは、いまから試行錯誤していかなければならない時代だろうと思うのですが、大臣はこういう問題について具体的には将来どういうふうに対処していきたいとお考えか、ひとつお答えをちょうだいしたい、こう思います。
  64. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘のような認識の上に、私は、五十四年度の予算措置においては、ある程度、なるほど、そういう方向へ向かい出したということが認識してもらえるような体制をぜひつくりたい。まずその柱は、職業訓練あり方について、先ほどからいろいろ御審議願っているような体制をつくるということ、そしてまた具体的ないろいろな問題につきましては、やはり事が労働省だけでは解決ができません。したがって、関係省庁と密接な連絡をとり、また、役所だけの知恵では足りませんから、学識経験者の意見も動員する。同時に、現在いろいろ、この問題に関連する機構がございます。たとえば内閣には雇用問題閣僚懇談会がありますし、あるいは産業労働懇話会、産労懇というものがございますし、あるいは雇用政策のための研究会というのもございます。こういった既存の機関の知恵もかりなければならぬ。そして、せっかくの職業訓練法改正を契機に、本当にこの職業訓練というものが雇用安定と結びついていくような方策について、いいことは一つ一つ皆、取り上げて前進さす、できるところからやっていくというふうに配慮していきたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、職業訓練校の再編成だけでも大変な大事業だと私は思うのです。だけれども、現在の日本の社会、産業が置かれたこの時期を考えますと、ひとつ衆知を集め、皆さんの力をおかりして前進を図りたい、具体的な政策を一つ一つ実行するように全力を尽くしたい、このように考えるわけでございます。
  65. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 言うはやすく行うはかたい、大変むずかしい問題であろう。と同時に、非常に遠大な理想あるいは計画というものを立てていかなければならない。しかしながら職業訓練というのは、やはりそういうもので、今日の問題を解決すればいいんじゃなくて、その人の長い十年、二十年という一生の生活をどう保障してあげるかという、こういう問題でございますので、その見当が外れた場合には大変その方にとっても、なさった努力は水泡に帰する。たとえば構造不況と言われているような業種の職業訓練を受けて、たまたま構造不況にぶつかってしまったということであれば、この人のやった努力というのはむだであるし、それを指導した国にも、その責任を問うていかなければならないということにもなろうかと思います。  そういう意味において、職業訓練の非常にレパートリーの多い中の、ただ一つの分野というふうにお考えになれば、問題は非常に小さい問題でございましょうけれども、株式会社日本の一億の完全雇用をどう図っていくかという問題に絡めた発想から職業訓練というものを考えるとするならば、これは大変重要なことでございます。また、大臣いまおっしゃったような発想で、大きなマクロ的な考え方から職業訓練というものをお考えいただくのが正しい考え方ではなかろうかというふうに私も考えるわけでございます。  そのためには、やはり日本の置かれている立場、あるいは日本だけのことを考えるのじゃなくて、やはり世界の産業構造が今後どのように変わっていくのか、あるいはまた世界の経済的な発展がどのような変化をしていくのか、そういう世界経済の中に置かれた日本の産業、その中の職業訓練、こういうふうな形から深慮遠謀、正しい見通しというものに立って、その職業訓練を適応させていただきたい、こう思うわけでございまして、そのためには、逆に言えば、国の国策そのものがイコール職業訓練であるというふうなことにもなろうかと思います。しかし、実際問題として、要するにすべての知識を集約した見通しを立てていくためには、やはりただ、したいという願望だけでは目的は果たせない、こう思いますので、こういう問題をまず第一番に方向づけをしていかなければならぬし、またその分析もしていかなければならぬだろう。そういうことから、すべての知識を集約をしていくプロジェクトチームというものを労働省が指導力を発揮してやる。いま、おっしゃったように労働省だけではできない、こういう問題についても、どこかが中心になって呼びかけていかなければ、まとまっていかない、知識がばらばらで集約はできない、私はこういう気もいたしますので、これに集約をしていくようなプロジェクトチームを労働省が指導的な立場でお考えになるような御発想があるかどうか、大臣にひとつ伺いたいと思います。
  66. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘のように、せっかく職業訓練をやったけれども、それが当てが外れたということになると、全く二重、三重のむだのみならず、不幸でございます。したがって、これからの日本の産業構造変化に対応して一体どういう職業訓練が必要であるか、またその職業訓練をやるのには、どういうやり方が適切であるかという、こういったこともやはり煮詰めなければならぬ。とりあえず、ことし職業訓練研究センターというものをつくったゆえんも、そういった役割りを担ってもらう一つの拠点である。同時に、いま御指摘のように、私は、これから一体日本の産業構造はどうなるのかということの、いわゆる総合的なビジョンをつくって、そのビジョンに基づいて各論が出てくるという、こういったこともあわせ遂行しなければならぬ、このように思うわけでございまして、試行錯誤、いろいろ苦労しなければなりませんけれども、御趣旨の点は私は全く同感でございますから、労働省挙げて、マンパワーをいかに活用するかという、こういう観点から努力いたしたい、こう思います。
  67. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) まことに結構でございます。ただ私は、そこで一つお願いをしておきたいことがございます。いままで労働行政というのは後追い行政であって、常に他の省に主導されて、後から失業対策とか、あるいは雇用対策という部分を何か補ってきたような傾向が非常に強いと思うのですけれども、これからの日本の社会というものは、先ほども申し上げますように、日本の大部分の方が給与所得者、日本国民すべてが給与所得者であるというふうな考え方からいけば、完全雇用というものをどう実現するかということは、逆に、そういうことから発想して、産業構造をどのように、第一次産業にどのくらい配分していけばいいか、第二次産業にどのくらい配分すればいいか、第三次、第四次と、こういう問題をどのように整理統合していけば最も合目的な雇用ができるのか。あるいはまた、将来の企業の進むべき方向、知識集約型、こういうふうな日本の産業構造の質的な向上あるいは知識集約型産業への転換に伴って、そこに働く方々の職業も当然変わってくるわけでございますから、そういう意味においては、当然うらはらの裏ではなくて表に、そういう問題が出ていっていいんじゃないか、こう思うわけでございますので、ぜひひとつ、受け身の発想じゃなくて、積極的な発想で、そういう産業構造変化へまで、こちらの意見が出ていくような研究開発をお願いしておきたい、かように考えるわけでございます。  こういう問題について、今後ぜひ予算も、日本は形あるものには金を使いたがりますけれども、形のないものに金を使うのは大変抵抗がありました。しかし、今後の日本の発展のためには、そういう知性の開発という部門にどんどん金を使っていかなければ、かえって、むだ遣いが多くなってしまう、かように思いますので、どうかそういう点は大臣、思い切って金を使っていただいて、そしていい結果を逆に社会に発表していっていただく、それがまた、いろんな企業の参考にもなっていくように考えていただきたい。  職業訓練法の一部を改正する法律案関係資料という中にも、ちょっと読ませていただきましたところが、「事業主等の行う職業訓練に対する援助助成等の拡大」というところで、一番目に「職業訓練に関する情報の提供等」として「国は、職業訓練に関する調査・研究及び情報の収集・整理を行い、」こう書いてございます。こういう情報収集だけではなくて逆に、そういうことを発表していって、そういう情報をどんどん提供していく、そして知識集約型の産業への、産業構造変化に十分資料になっていくように、質的な産業構造変化をしていかなければならぬ、概念的にはそう思っても、実際に企業が、それでは、そういう転換をするためにどうすればいいかということについては、およそ試行錯誤している状態だと思うのです。そういうところへどんどんこういうものをしていったらどうか。あるいは、こういう資料、統計をわれわれは握っているのだ、こういうことまで発表されましたら、単に職業訓練あるいは労働という問題だけではなくて、そういうところに使ったお金が有効にまた別のところへ使われていくのじゃないか。そういう意味からも、どうか波及効果の大きい点を御勘案いただいて、ぜひ今後の労働行政の一助たらしめていただきたい、かように思います。  この問題はこれくらいにして、次に移らせていただきます。  今後は、こういうふうな非常な不況下になってまいりますと、一番最初に行政が心配しなければならぬのは、やはり身体障害者とか、あるいはそういう弱者と言われているような方々の生きていく手段、方法というものを考えてあげなければならない。そういう意味において身体障害者職業訓練という問題に関連して、これも発想の転換をしていかなければならない時期に来ているのじゃないかというふうに思いますので、これも実はきょう厚生省も来ていただいておりますけれども、この福祉という問題は、決して物を与えたり、あるいは金を与えたりして、その方々を救済していくという考え方ではなくて、やはりそういう人たちが自立していける、人のお世話にならなくても生きていける、そういう道を開いてあげることが最も大切なことだと思います。また、その方々が一般健常者に比べて大変大きな精神的なハンディを持っている。そういう方々に勇気を与え、あるいはまた生きがいを与えてあげるような方途というものを、縦割り行政という形ではなくて、やはり横の連携もとりながら、やっていただかなければならない時代に来ているのではないか、こう考えまして、それに関連して質疑をさせていただきたい、かように思うわけでございます。  四月七日の朝日新聞に「障害者の自立」という見出しで、イギリスの脳性麻痺者協会レクリエーション部長のウィリアム・M・C・ハーグリーブズ、こういう方が日本にいま来ておられまして、いろいろな講演をされているのですが、この方のおっしゃっている中に幾つか大変参考になるというか、われわれがかがみとしなければならない点がございますので、その幾つかを御紹介申し上げながら、関連した質問をさせていただきたい、かように思います。  同氏がもっとも強く訴えているのは「体に障害があるからといって心理的にハンディキャップを負う必要はない」こういうことを言っておられます。それから障害者と健常者との関係も「健常者が障害者に対して思いやりを持つと同様に、障害者も健常者に対して思いやりを持つこと。」こういうことが必要だということを言っておられます。それから「もう一つ。「労働」の問題がある。とくに、脳性マヒ者は、身体は不自由だが精神的にはしっかりしている。だから、心でできることと身体ができることとのギャップが大きく、欲求不満になる。重要なことは、「労働」をすべて「生活の糧」としないで「生きがいの場」とすべきだ」こういう言葉が述べられているわけで、この「「労働」をすべて「生活の糧」としないで「生きがいの場」とすべきだ」、これは大変重要な発想であろうと思うわけでございまして、そのために、同氏の説明によりますと「英国では七〇%以上の能力がある人は保護工場で働くことができる。しかし、脳性マヒ者のほとんどは肢体不自由でここでは働けない。重度者のための「作業センター」があってそこで働く。ここでは生産性を問われることはなく、障害の程度に合った“仕事”がある。仕事量や能力関係なく週二ポンドが支払われる。基本的な生活は、社会保障でできる仕組みだ。」こういうことを言っておられます。そして「その頭脳を生かした“知識工場”“頭脳集団”、例えば発明、発見などの仕事につく方が精神的満足が得られる」と、こういう身体障害者に対する職業訓練あり方に対する一つ方向を述べておられます。  この発想は、私は大変重要なことだと思います。いままで労働省関係の身体障害者に対する職業訓練の中には、こういう発想がなかったのではないか。あるいは、あったとしても非常に少なかった。具体的にはなかなか生まれてこない。それで健常者と同じような職業訓練を身体障害者にも与えていこう、こういう発想が非常に強く前に出ていたと思うのです。ですけれども、いま申し上げましたようなこういう考え方で、身体障害者に対する職業訓練というものを、もう一遍、洗い直してみたらどうだろうか、こういうふうに私はこれを読んで感じました。  そういうことで大臣、私がいま申し上げましたようなことについて、どのようなお考えを持っておられるのか。あるいはまた、それに対して大臣はどのような具体的なお考えをお持ちか。ありましたら、ひとつ教えていただきたいと思います。
  68. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 ただいま、よき具体的な例を引用されまして、大変示唆に富んだ御提言でございます。確かに身障者の職業訓練あり方というものが、日本のやり方は、いままで体を何とかして機能的に回復させてとか、そういう面に重点が置かれていたけれども、体は不自由だけれども精神はそうでないという、こういう面を生かしたような身障者の職業訓練、それによって生きがいを感じてもらうという方向に今後、検討すべきではないかというふうに、私も、お話を聞きながらも、またすでに新聞でちょっと見せていただいて、あのヒントですね、感じております。ひとつ前向きに検討させていただきたいと思います。
  69. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 大臣の御発言に対して、ぜひそのような検討をしていただくと同時に、関連して厚生省にちょっと質問したいのです。  いままでの厚生行政の中にも、身体障害者に対して働きの場を提供してやろうとか、あるいは健常者に迷惑をかけないで自立して生きたいんだとか、あるいはまた、これは文部省にも関係があるのでしょうけれども、身体障害児をまとめて学校をつくってしまう、健常者との交わりを、できるだけさせなければならないということはわかっていながらも、いろいろな形で、そういう方々はそういう方々だけのコロニーをつくってしまいがちな、そういう閉鎖社会に閉じ込めておくような傾向が、いままであったと思うのです。そういう意味から、たとえば大臣もいま、こういうふうなことについて前向きにひとつ日本は日本なりに、もっといいものをつくっていきたいというようなこともおっしゃっていただいておるわけですが、こういう脳性小児麻痺のような方々の中にも頭の方は全く健常者と同じ、あるいは健常者以上の方もいらっしゃるわけだろうと思うのです。たまたま、そういう方が頭の中で考える発想が社会に大変大きな寄与をする場合もあるだろうと思うのです。そういう発想が具体化していくプロセスの中で、要するに身体障害者だけでは、体が不自由なために、そういうものを生かして具体化していきにくい環境の中に置かれていると私は思うのです。ですから、そういう身体の障害は別として、そういう方々がいろいろ頭で真剣に考えることを社会が活用していく。そのためには、そういう方々が相談をかけていく何かこういう窓口があれば、その方々のすばらしい発想が埋もれてしまうことなく社会に出ていくだろう。その恩恵を社会が受ける場合には、これはもう金にかえられないほど大きなものもあるかもしれない。また、そういう身体障害者が、たとえば発見とか発明とかというようなことに大きな貢献をしたという事実が社会に発表されました場合には、それと同じような身体障害者の人たちに対しても、われわれも社会に関連しながら、りっぱに社会のためになっていけるんだという自信を持たせるためにも、重要な生きがいを与えることになると私は思うのです。  そういう意味で、どうでしょうか、ひとつ身体障害者向けの相談一一〇番というようなものをつくって、そういうところへ電話をかければ、窓口の方がいらっしゃって、できるだけ懇切にそういうものを聞いてあげて、たとえばその中で、この問題は科学技術庁の方に相談をかければ、あるいは知恵をかりられるかもしれない。あるいはまた職業訓練、こういうところへお世話をしてあげれば、その方々のそういう発想は生かされるのじゃないかとか、あるいは職業訓練の中で、有能な技術者がいらっしゃるんだから、そういう発想を今度は逆に具体的に、技術的に開発していくというような、こういう横の関連ですね。たとえば、身体障害者向きの何かの補助器具を考えた方が、健常者が考えるよりか、ずっといい知恵が浮かぶのじゃないかと私は思うんですね。その知恵が浮かんだとしても、それを実際に具体化する過程が、いまのところ開かれていない。そういうところをできるだけ、職業訓練とも関連をしていくだろうと思いますので、ぜひひとつ、そういう身体障害者福祉という立場から新しい福祉観点、あるいは新しい福祉あり方というものの一つの具体化された窓口として、そういうものが開かれたら大変いいのじゃないか、こう思うのですが、それについてひとつお考えをお伺いしたい、かように思います。
  70. 金瀬忠夫

    金瀬説明員 身体障害者福祉という立場で考えますと、御指摘のとおり、いわゆる在宅におられます障害者に対する施策あるいは施設と、両方の面からあるわけでございますけれども、先生指摘のように、従前、ともすれば施設中心に物を考えてきたという経緯はあったかと思います。しかし、この数年来、施設はもちろんでございますけれども、同時に在宅に対するいろいろな施策の充実というものが一つ重点事項として厚生省としては施策を進めてきておるところでございます。  ただいま御指摘もございましたように、在宅におられます障害者に対する一つのいろいろな面での窓口ということの関連でございますけれども、先生御案内だと思いますが、在宅を含みまして身体障害者のいわば相談、指導あるいは助言という意味の窓口という意味では、身体障害者相談員というのが全国に六千八百三十人ほどございます。それと合わせまして福祉事務所あるいは身体障害者更生相談所というふうな行政機関がそれに関連をして、そして個々の障害者に対しては、いま申しました相談員あるいは福祉事務所のケースワーカー、こういう方たちが障害者の日常の問題についての御相談にも乗り、また生活の上でのいろいろな指導というようなことを担当いたしておるわけでございます。  おっしゃいますように確かに障害者、体は不自由だけれども、非常にいろいろなアイデアその他をお持ちになる方もいらっしゃるわけでございますが、そういう方につきましては、いま申しました相談員なり、あるいはケースワーカーを通じた連携が、いまおっしゃった、あるいは職業問題なり、あるいはいろいろな発明、いろいろな関係の問題もあると思いますが、関連のところの結びつきがまだ十分じゃないじゃないかという御指摘のように私も実はお伺いいたしたわけでございますが、そういう意味におきましては、先ほど申しましたような相談員あるいは福祉事務所あるいは更生相談所というものの機能障害者の意向を十分反映して動けるような指導というものを、これからも十分進めてまいりたいというように考えております。
  71. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 相談員が幾らいても、相談員が持っていく受けざらがなければしようがないのですから、ぜひ、その受けざらをおつくりいただきたいし、また大臣も、こういう問題については、そういう前向きの姿勢で、いろいろな施策をお考えいただけるそうでございますので、ぜひ今後とも関連を持って、こういう問題の具体化に、よりよきものをつくっていただけるように、ひとつ御協力を願いたい、かように思います。  障害者職業訓練については、これぐらいにしまして、あと時間の残された部分で幾つか質問をいたしたい。  職業訓練の中で、やはり年齢構造の変化、高齢化社会、こういう時代に入ってまいりましたことを十分踏まえていただきまして、一生一つの仕事をしていかなければならないという時代から、職業転換を途中で図らなければいけないのじゃないかという時代へ必然的に移行してくると思うのです。中には一生続けられる仕事もございますけれども、肉体的あるいは労働の問題その他で、だんだん年をとると、そういう職業が不適当になってしまう。そのために第二の人生を新たに開いていかなければならない。そのための中高年層の転職離職者という考え方でなくて、やはり積極的に職業転換するという時代が参ろうというふうに考えます。また、企業の方も終身雇用制で、一たん勤めていただいた方の一生のめんどうを見ていかなければならない、こういう時代から、そういう職業転換を図りながら企業の活力を逆にまた維持していく。そのためには、その方々の職業転換を図りやすいような環境整備というものを、その方が十分働いておられる能力のある間につけていかれる。そのために企業も今後積極的に考えていかなければならない時代に来ているのじゃないか、かように思うわけで、企業は、せっかく職業訓練に出したって、会社をやめられてしまったのじゃ利益にならない、こういうふうな非常に短絡的な目先の考え方から抜け出して、やはり新陳代謝をどんどんしていくことによって、企業企業なりの活力をつけていくんだ。また、その方も一生その会社でめんどうを見てもらわなければならぬというふうな気持ちから抜け出して、どんどん新しい職域を自分で開いていける、こういう相互扶助的な発想、また社会に対する企業の責任というものも含めて、ぜひとも職業訓練の中においても、そういう発想が取り入れられていいのじゃないかと思います。  しかしながら、この職業訓練の中の職種を見ますと、まだまだ足りないと思うのです。たとえば第三次産業への移行、これは離職者が第三次産業へ移行される方が非常に多いというふうな数字上の統計もございます。また、私の知っておる会社でも、ある会社の重役さんだった方は、四十数歳で第二の人生を開こうということで、その方は若いときに、何もそれを将来の希望としていたわけじゃないけれども、料理に興味を持って、ある料理学校先生について一生懸命、興味半分で覚えられた。その方は何もやめなければならぬ理由はない事情だったけれども、将来のことを考えて、いつまでもサラリーマンをやっているよりも、いまここでやった方がいいのじゃないかというので、料理飲食の方に変更されて、りっぱに再生されている。そういうことを見ましても、やはりそういう傾向がもう現実にあるわけですね。同時に、たとえば手打ちそばとか手打ちうどんとか、そういう技術だってりっぱな技術だと思うんですね。ところが、そういう技術を持った人はどんどんいま、とだえていこうとしている。今度はそういうものを習いたいと思っても、そういう技能者がもういなくなってしまう時代が目の前に来ているのじゃないかと思う。そういうことを踏まえて、職業訓練の中にも、そういう第三次産業への希望者も今後ふえてまいろうと思いますから、どうかひとつそういうところへも御配慮をいただいた職業訓練職種を御開発願いたい。  同時に、関連しますと、時間がございませんので、もう少し言いたかったのですけれども、この卓越技能者の表彰制度もございます。こういう方々の中にも、先ほど申し上げましたような技能者もぜひ含めていただいて、またそういう方々も積極的に後継者指導のために第二の人生を送っていただく。職業訓練所あるいはその関係でそういう方々を再活用していただくというふうなことに、ひとつ御配慮をしていただきたい、かように思いますので、大臣にひとつお答えを願いたい。
  72. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 ただいま御指摘になりました問題については、私は、大切な事柄だと思います。したがって、十分御趣旨を体して検討させていただきたいと思います。
  73. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) それから最後に、有給教育訓練休暇制度のことについて一、二お聞きをいたしたいと思いますが、この制度は現在どういうふうな概況になっていて、どのような実績をいま上げているのか、時間がございませんから、ひとつ簡単にお答えいただきたい。
  74. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 有給教育訓練休暇制度は、それぞれの企業におきまして労働者が休暇をとって教育訓練を受けたいということに対して、使用者が賃金を支払いながら休暇を与える、それに対して、一定の賃金負担分を軽減させる意味での助成をしようという制度でございまして、これが昭和五十年度から始まっております。そして昭和五十年度では延べ約七千人が対象になっております。それから五十一年度では延べ約二万人が対象になっております。  そこで、今年度のものでは、その有給教育訓練休暇の限度が、現在の制度では一人につき百日を限度といたしておりますが、中高年者につきましては特に百五十日まで、さらに助成金も上積みするという制度にして、今後の拡充を図っていきたい、このように考えております。
  75. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) こういう制度は、実際、事業主とかあるいは労働者の中に、もっと周知徹底させていかなければならないことであろうと思うのです。特に、いま時間的に余裕がある時期でございますから、できるだけ、そういう時間をむだにしないで、こういう職業訓練あるいは再教育、あるいは平均寿命七十五歳という長い人生を歩むために必要な、いわば一貫した再教育、再訓練の場に、有給教育訓練、こういう制度をもっと活用していただきたい。そのためにぜひ、せっかく生まれている制度でございますから、それが利用されるような啓蒙運動を労働省としては今後強力にやっていただきたい、そういうふうにお願いをしたいと思いますが、それについてお答えをいただきたい、こう思います。
  76. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 先生指摘のとおりでございまして、これはまだ労使に十分に浸透していない面があると思いますから、いろいろな機会を通じ、また機関を通じまして、普及徹底に努めてまいりたい、このように考えております。
  77. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) ひとつ大臣、最後に改めてもう一度お願いいたしますけれども、職業訓練という非常にミクロ的な考え方から脱却していただいて、大臣最初におっしゃっていた、そういう産業構造の質的変化に対応していくんだ。逆に言えば、質的変化よりも先行した考え方で職業訓練というものを見通していくということについて、ぜひともお願いをしていきたい。それについて大臣、最後に御定見を承って、私の質疑を終わります。
  78. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、まさに現在は、本当に日本の産業構造が大転換を遂げざるを得ない環境に置かれておるわけでございますから、それを担う中心は、何といっても人であります、マンパワーであります。その人の配置は、その時代が要請する職業訓練、これを通じて私は前進をするというふうに考えますから、そういう認識の上に今度の職業訓練法改正も前進の一こまとして、ひとつ推進をしたい。そのほか、総合的な日本の経済構造一つのビジョンを関係当局ともよく連絡をして、所期の目的に一層万全を期していきたい、このように考えます。
  79. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) これで私の質問を終わります。(拍手)
  80. 木野晴夫

    木野委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  81. 木野晴夫

    木野委員長 これより本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、職業訓練法の一部を改正する法律案の採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  82. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  83. 木野晴夫

    木野委員長 この際、越智伊平君、森井忠良君、大橋敏雄君、和田耕作君、浦井洋君及び工藤晃君から、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  その趣旨の説明を聴取いたします。森井忠良君。
  84. 森井忠良

    森井委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     職業訓練法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、現在の長期にわたる深刻な雇用失業情勢にかんがみ、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 職業訓練を受講希望する者の意思を尊重し、入校時期等の弾力化を図り、希望者が訓練を受けられるよう態勢を整えること。  一 特に、中高年齢離転職者婦人労働者及び身体障害者のための職業訓練については、職種開発をも含めて、施設、設備の増加と充実を図ること。  一 訓練受講者の再就職の機会の拡大のため、訓練期間の弾力化を図り、各種資格の取得のための便宜を与えるとともに、職業安定機関との連携を密にすること。  一 失業多発地域における職業訓練については、定員の増員、訓練職種の増設等事業の弾力化を図ること。  一 訓練受講中の生活を保障するため、失業給付非受給者が訓練を受講するときの職業訓練諸手当については、今後ともその増額に努めること。  一 公共職業訓練施設技能開発センター又は職業訓練短期大学校への転換に当たつては、一定時期に、画一的に切り替えることなく、現に行われている養成訓練の実施について、新規学卒者及び若年労働者など養成訓練希望者が不当に受講機会を失うことのないよう運営上、予算上の措置を講ずること。  一 職業訓練短期大学校訓練内容施設設備訓練生の入校資格、修了時の資格等について改善を行うこと。  一 営利を目的としない法人等が行う認定職業訓練に対する補助の拡大を含め認定職業訓練に対する援助、助成の強化を検討すること。  一 生涯職業訓練体制の確立、推進のため、職業教育との関連をも含めた職業訓練制度あり方、行政機構、職業訓練事業の財政面での強化、職業訓練指導員の資質の向上等について、基本的な検討を更に引続き進めること。  一 技能検定を必要とするすべての職種技能検定を拡大することを基本方針とし、現在実施されていない第三次産業、装置産業、組作業等の職種についても新たな技能評価方式の研究開発を推進し、作業管理等の能力も加味した検定等の実施についても検討を進めるとともに、技術革新等を考慮し、試験基準等の見直しを行い、検定内容充実を図ること。  一 中央及び都道府県職業能力開発協会の運営に当たり、事業主及び労働者の意見が十分反映されるよう措置すること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  85. 木野晴夫

    木野委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  86. 木野晴夫

    木野委員長 起立総員。よって、本案については越智伊平君外五名提出の動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。藤井労働大臣。
  87. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、これが実現に今後とも一層努力いたしたいと存じます。     —————————————
  88. 木野晴夫

    木野委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  90. 木野晴夫

    木野委員長 次に、金子みつ君外九名提出労働基準法の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。金子みつ君。     —————————————  労働基準法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  91. 金子みつ

    金子(み)議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  近年、わが国の経済は高度成長を遂げ、工業生産力はヨーロッパの先進諸国を追い抜き、アメリカに次いで、資本主義国の中で第二の地位を占めるに至りました。  しかしながら、労働条件においては、なかんずく婦人労働者労働条件においては、欧米の先進諸国に比べて、著しく立ちおくれているのが実態であります。  特に、解雇、昇進、昇給等々の労働条件において、わが国では、婦人が大きな差別を受けております。この性による差別は、解消される傾向にあるどころか、不況が長期化、深刻化する中で、むしろ拡大される傾向にあります。  たとえば、結婚した婦人や、子供を生んだ婦人が、事実上差別的に解雇されたり、定年退職年齢を男子より低く決められるようなことが当然のごとく行われておるのであります。  憲法は、第十四条において、すべての国民は法のもとに平等であって、人種、信条、社会的身分とともに、性別により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない、と定めております。  ところが、現行労働基準法においては、第三条で「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。」と定めながら、性別による差別の禁止はここから省かれ、第四条において、賃金についてのみ男女の差別禁止が定められておるのであります。このままでは、解雇、昇進等における性差別をなくすることは不可能でありましょう。  また、合理化が進められ、労働の密度が高められ、神経も一層疲労させられる結果、早産、流産、死産等々の異常出産が多発し、特に周産期死亡率の国際比は一・三倍から一・六倍も高く世界第一位を占め、妊産婦死亡率も戦後ずっと世界第一位となっております。  母性をよりよく保護し、健康なる子供の出産と成長を保障することの重要性が一層増しているのであります。このようなすべての国民の健康にとって必要不可欠な母性保護が、性差別の範疇に入る性質のものでないことは言うまでもありません。  世界的に見ても、国際労働機関すなわちILOの第百十一号条約では雇用及び職業についての性差別が禁止され、その第五条では、「国際労働機関の総会が採択した他の条約又は勧告で定める保護又は援助に関する特別の措置は、差別待遇とみなしてはならない」と規定しております。ILO第百三号条約では母性保護が具体的に定められ、第九十五号勧告ではより進んだ母性保護の内容が勧告されているのであります。  日本社会党は、このような状況にかんがみ、労働条件における性差別をなくするとともに、母性保護を推進するために、労働基準法改正を提案する次第であります。  次に、この改正案内容について御説明申し上げます。  第一は、この法律の目的であります。  この法律は、すべての労働条件について、性別による差別的取り扱いを禁止するとともに、異常出産の多発等にかんがみ、母性保護の推進を図ることを目的としております。  第二は、性差別の禁止についてであります。  この法律は、現行の第三条に性別を加えることにより、賃金のみならず、すべての労働条件について、性別を理由として差別的取り扱いをしてはならないものとすることといたしました。したがって、男女同一賃金の原則を定めた第四条は削除することといたしました。  第三は、母性保護についてであります。  その一は、現行第十九条を改正し、使用者は、妊娠中の女子及び産後一年を経過しない女子を解雇してはならないものといたしました。  その二は、現行第六十一条及び第六十二条を改正し、妊娠中の女子または産後一年を経過しない女子について、労使協定による時間外労働及び深夜労働を禁止することといたしました。  その三は、現行第六十五条を改正し、産前産後の休暇の期間をそれぞれ八週間(二人以上の胎児に係る妊娠の場合には、十週間)とすることといたしました。なおこの間、健康保険法の改正により、健康保険からの六割分に、国庫からの四割分を加えて、賃金の十割に相当する給付を保障することといたします。  また、産前産後六週間の期間については、女子の請求による場合でも、就労を認めないものとすることといたしました。  また、使用者は、妊娠中の女子が請求した場合には、その者の労働時間を短縮しなければならないものといたしました。  その四は、妊娠に起因する疾病の休暇を設け、その疾病により就業が困難な女子が休業を請求した場合には、使用者はその間、その者を就業させてはならないものとすることといたしました。なお、その休業の問は、二週間を限り、産前産後休暇の場合と同様にして、賃金の十割に相当する給付を保障することといたしました。  その五は、妊娠中または産後一年以内の女子が、母子保健法による保健指導または健康診査を受けるために必要な休暇を請求したときは、その者に休暇を与えなくてはならないことといたしました。なお、その休暇については一日を限り、母子保健法の改正により賃金分の給付を保障することといたします。  その六は、現行第六十六条を改正して、育児時間は、一日二回、おのおの少なくとも一時間与えなければならないものとすることといたしました。なお、その時間は労働したものとみなすことといたしました。  その七は、現行第六十七条を改正し、生理日の女子が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならないものとすることといたしました。なお、その期間は、二日を限り有給とすることといたしました。  以上、この法律案の提案理由及びその内容について、御説明申し上げました。  早速御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)
  92. 木野晴夫

    木野委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  この際、午後四時まで休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ————◇—————     午後四時四分開議
  93. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
  94. 村山富市

    村山(富)委員 本年の経済政策の最大の課題雇用問題である。それを受けて、社会労働委員会雇用問題に対する集中審議もやってきたわけですが、とりわけ戦後最大と言われる五十年不況以降の景気は、いろいろな手だてを講じていると思いますけれども、一向に回復の兆しが見えない。長期にわたる不況が続く中で構造不況業種と言われる業種が増加していく。同時に、急激な円高問題等がこれに加わって、雇用・失業情勢はきわめて深刻の度を加えつつある。しかも、そういう中で大型倒産や大量解雇が続発している。これは仮に構造不況業種と言われる業種でなくても、ある意味では、こういう情勢に便乗した形で、この際ひとつぜい肉を落として身軽になろう、こういう便乗型の解雇なんかもあるのではないかと思うのですね。それだけにまた、全体として雇用問題、失業問題というのは深刻の度を加えていく、こういう状況になっておると思うのです。  こうした情勢については、先般来この委員会でもたびたび指摘をされておるところでありますが、ここでお尋ねしたいのは、本年度の雇用の見通しについて労働省はどのように見込んでおるか。これは莫然とでなくて、たとえば完全失業者数はどういう推移になっておるのか、あるいは失業率はどうなのか、有効求人倍率は昨年に比較してどういうことになっていくのか、具体的に数字を挙げて御説明を願いたいと思うのです。
  95. 細野正

    ○細野政府委員 経済情勢は、先生指摘のように、なかなかはかばかしい景気の回復を見ないで停滞を続けているという状況でございますが、御存じのように政府としまして、五十三年度におきまして思い切った財政運営によりまして景気を回復すると同時に雇用の拡大を図ろう、こういたしておるわけでございます。それに加えまして、先般来何度か御答弁申し上げておりますように、雇用対策につきましても、いろいろな充実を図りまして、そういうことによりまして、政府全体の見通しとしましては、雇用者の数については、五十二年度に比べまして五十五万人ふえて三千八百三十五万人になるのではなかろうか、これは年度平均でございます。それから、完全失業者は、同じく五十二年度に比べまして五万人ほど減って、百十万人程度になるのではなかろうか。それから、完全失業率につきましても、五十二年度に比べて若干低下しまして二%弱程度になるのではなかろうか。それからなお、求人につきましても、現在、企業の在庫調整が進んでおりますので、これが一巡し、あるいは公共事業の波及効果も出てくるという時期になりまして、徐々にではございますけれども増加に向かうのではなかろうか。その結果、有効求人倍率は、五十二年度は〇・五三倍というふうに見ていたわけでございますけれども、それをやや上回って〇・五七倍ぐらいにはなるのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。
  96. 村山富市

    村山(富)委員 完全失業者の数とか率というのは、諸外国の統計と比較してみますと、日本の場合には比較的低いのですね。これは完全失業者を出す統計のとり方の違いがあると思うのですね、指標の違いがあると思うのです。  そこで、これはやはり国際比較をする場合に若干問題になると思いますし、日本の場合には、とりわけいまの完全失業者を算出する基準というのが厳しいから、不完全失業者と俗に言われる失業者の部類に入るのではないかと思われるようなものは統計数字にあらわれてこない、こういうきらいがあるのではなかろうかと思うのです。私が調べた範囲では、不完全失業者、たとえば臨時雇用者とか日雇いとか、それから休業者、あるいはパートタイマー等々を加えた場合に、恐らく七百万から一千万ぐらいあるのではないかと言われているわけです。したがって、大変、国際比較なんかもしにくいわけですけれども、こういう失業、雇用の指標について見直しをするような話があると聞いていますけれども、それはどうなんですか。
  97. 細野正

    ○細野政府委員 ただいま先生から御指摘ございましたように、各国も必ずしも失業の数なり率なりのとり方が一様でありませんけれども、ごく大ざっぱに申し上げますと、アメリカは、ほぼ日本と同じように安定所という枠を離れまして、全般的な労働市場全体についての調査を実施しまして、その調査の結果によって完全失業者というものを把握しておるわけでございます。ヨーロッパの場合には、安定所登録の失業者、ですから日本の場合の雇用保険の受給率とほぼ似たようなやり方をしているわけでございます。そういう観点で比較しますと、アメリカと比較する場合には、日本の現在の約二%という数字が、計算上さほど狭過ぎるということはないのじゃなかろうか。一方、ヨーロッパと比較するときには、むしろ現在雇用保険の失業率が二・六%ですから、こちらの方で比較した方がヨーロッパとの比較としては相対的に合っているという勘定になるわけでございます。  しかし、いずれにしましても、失業の定義なり何なり、いろいろございますし、それから先生指摘の不完全就業とか過剰雇用とか、いろいろな見方の問題もございまして、そういう点を含めて、もう少し雇用情勢の実態なり、あるいは雇用政策を発動する場合の有効な指標になり得るような分析というものはないだろうかということが、実は現在の第三次雇用対策基本計画の中でも指摘をされておりまして、現在、学者の方にお願いしまして、私どもも入れていただいて、指標の開発、研究をやっておるわけでございますが、現段階、まだ基礎的な勉強の段階でございまして、新しい方向を生み出すところまで来ておりませんが、できるだけ早い機会に、実際の判断なり、あるいは政策の発動基準として役立つような指標を開発してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  98. 村山富市

    村山(富)委員 それで、冒頭に今年度の完全失業者や不完全失業者あるいは求人倍率等の見通しについてお尋ねしたわけですけれども、いま説明がありました見通しというのは、政府が言う七%の経済成長率を前提にして、七%の経済成長率に達した場合に、こうなります、こういう数字ですね。私は、これはいろいろな角度から専門家も議論されておりますように、七%の経済成長というのはきわめて困難だというふうに思っていますけれども、仮に七%の経済成長が達成されたとしても、労働省の見方はやはり甘過ぎるんじゃないかと思うのです。これは、もちろん経済成長率が落ちるよりも、七%に達した方が雇用が伸びることは伸びるでしょう。しかし、いまお話がございましたように、仮に七%の経済成長率を達成しても失業者は二人に一人ぐらいしか就職できない、こういう状況になるので、深刻な雇用問題というのは変わりはないと思うんですね。  そこで、今後の経済雇用政策の方向として、いかにして雇用の場を拡大していくか、維持していくかということが一番大事になると思いますから、そういうことを前提にして、二、三の質問をしてみたいと思うのです。  その一つは、わが国の場合には、総労働時間が限定されているわけですから、したがって、その総労働時間の中で、いかに多くの人に雇用機会を与えていくかということが一番大きな問題になってくると思いますね。そういう観点からしますと、一人一人の労働者の労働時間をできるだけ短縮して分け合う。そして、できれば週休二日制等も実施して、多くの人に雇用機会を保障していく。いまの状況の中では、こういう政策がやはり前段として考えられてもいいのではないか。そうしたような観点から、社会党は先般、労働基準法改正をやって、この際週休二日制をひとつ思い切ってやるべきではないか。ただ、中小企業の場合なんかは、いますぐやれと言ったって無理な条件がありますから、十分状況の整備をしながら、全体として週休二日制が実施できるようなことにすべきではないか、こういう基準法の改正案も出しておるわけでありますけれども、仮に、いますぐ基準法の改正がむずかしいにしても、労働省が、三年計画ぐらいで実施が可能になるような、そういう指導をやはりこれからやっていく必要があるのではないかと私は思うんですね。たとえば産業別あるいは地域別に労使会議を設けて、そうして早急に、その必要な措置が講じられるような、そういう行政指導をやっていく。そして国際的な情勢にも対応していけるような条件整備をしていくということを労働省として当然考えてもいいのではないかというふうに思いますが、そういう点はどうですか。
  99. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 労働時間対策の進め方、週休二日制を含んで、これからの経済のいわゆる低成長の軌道に修正されるという将来を展望いたしますと、やはりわれわれはそういう面においても、御指摘のように仕事を分かち合うという観点から、ぜひ積極的に進めるべきだ。去年の暮れ、中央労働基準審議会から、いまのような問題を含めて労働時間対策の進め方について私は建議を受けました。これは公労使一致した建議としては、行政指導でこれを進めていけ、こういうふうな提言を受けたわけでございまして、御指摘のように産業別、地域別に、ひとつぜひこれが実行を期するべく、五月にいろいろ具体的な方向づけをいたしまして、各地方局長あてに産業別の会議の持ち方なり議題のとり方なり、こういったものを指示しよう。そして着実に、できるところから、ひとつ労働時間の短縮、特に非常に過重な超過勤務あたりは解消していくということが当然でありますけれども、週休二日制の問題についても、ひとつ検討の課題にしてもらう、こういうことで具体的なスケジュールをもって、これから運び方を進めていきたい、このように考えております。
  100. 村山富市

    村山(富)委員 ですから、雇用・失業問題を考える場合に、これはだれが考えても同じだと思いますが、できるだけ雇用の維持を図り、拡大を図っていくということが一つの方法ですね。拡大を図るためには、雇用の創出ということもやはり考える必要があるのじゃないか。これは最近の資料なんかを見ますと、たとえば中高年なんかの雇用率、これは中高年雇用促進法というものがありまして、中高年を雇った場合に、いろいろな援助措置をやっていますね。これを見ましても六%以上の雇用率を達成するように中高年の場合には努めなければならぬ。現状はどうなっているかというのを見てみますと、雇用率は大体五・六%、その中で千人以上の規模の企業をとってみると、雇用率が三・九%、雇用率未達成の企業は八二・二%ある。これは身障者の場合も大体同じですよね。ですから、週休二日制は比較的大企業の場合には実施されておるが、しかし、こういう中高年や身障者の雇用率はきわめて低い。そして中小企業の場合はいろいろな条件がよくありませんから、なかなか週休二日制は実施しにくい。しかも中高年や身障者を比較的まじめに抱え込んで政府の指導に従っておる。こういう状況にありますから、私は、雇用の創出というものは、この際、こうした条件も勘案をして、やはりもっと大企業に対する指導を強化していく必要があるのじゃないかというふうに思うのですが、その点はどう考えるかということが一つです。  それからもう一つは、雇用を創出する場合に、民間企業雇用を拡大することが一つと、それから地方自治体が雇用を創出をして、できるだけ失業者を抱え込んでいく、雇用の場を与えていく、こういうこともまた考えられると思うんですね。ですから社会党は、二十万人の雇用創出を目的とする緊急立法をいま提案して御審議を願っているわけですけれども、しかし、いずれにしても、そういう雇用の拡大を図る場合に、民間にしろ地方自治体にしろ、やはり仕事と財源の保障がなければなかなかできにくいと思うのですね。こうした政策に対して労働省は今後どういう考えで、どういうふうに取り組んでいくおつもりなのか、見解を承りたいと思います。
  101. 細野正

    ○細野政府委員 まず、最初に御質問のございました、大企業が中高年の雇用等について特に悪い状況にあるので、そこを重点に指導を強化すべきじゃないか、こういう点でございます。まさに御指摘のとおりでございまして、そういう意味で私どもは高年者の雇用率の達成につきましては大企業重点を置きまして、定年の延長等も、まさに大企業の問題と申しても過言でないわけであります。大企業で高年者雇用が進まない理由の一つには、もちろん全般的に景気が停滞しているという問題もございますが、そのほかに、御存じの年功序列賃金体系がありまして、これとの絡みで、年功序列賃金の方はむしろ大企業に発達しておりまして、中小企業の場合は比較的寝ているという事情もかなり影響しているわけでございます。そういう年功序列賃金の修正ということとあわせまして定年の延長を進める等によりまして、先ほど御指摘のございました六%の雇用率の達成を強く指導してまいりたいと考えておりまして、本年度からは業種別にでも定年延長を進めるための会を設けまして、そこでそれぞれの産業に内在するいろいろな問題の相談に乗りながら、それを克服して高年者雇用を進めるようなことを少し具体的にやってまいりたいと考えているわけでございます。  それから、二番目に御指摘のございました雇用の場をつくるという問題でございますが、この点につきましても、雇用民間を通じてやるというのが経済の基本だろうと思うのでございます。率直に申しまして、公共部門で抱えると、むしろ逆に縮小再生産になるおそれもありますので、基本はやはり民間雇用を伸ばすという角度に立ちまして、御存じのように景気の回復ということがまず第一番の基本的な雇用拡大対策ということで、現在、私どもも政府全般にお願いして、その推進をやっていただいているという状況でございますが、そういうことのほかに、具体的な個々の産業なり地域という問題もございますので、そういう点につきまして先般、雇用問題閣僚懇談会を開いていただきまして、その席上で大臣から強く、たとえば石油の洋上備蓄のプロジェクトの問題とか、あるいは官公庁船の問題とか、そういうふうな構造不況と言われている業種についての需要喚起対策を各省に強く要請をしていただいたわけでございます。そのほか、同じ雇用閣僚懇におきましては、公共事業重点配分あるいは失業者の吸収等五項目の決定をしていただきまして、それぞれの事務当局にそれをおろして検討していただき、あるいは指示をしていただくというふうにやっているわけであります。  それだけでは、まだなかなか全般的な問題に及びませんので、これも先生御案内かと思いますけれども、本年度から中高年齢者、特に先生が御指摘のように中高年齢の方の問題が非常に多いわけですから、中高年齢者の方を雇い入れる事業主の方に対しまして賃金助成をするという制度を新設いたしまして、そういうふうな制度を全部総合的に活用しまして民間雇用の増大を図ってまいりたいと考えているわけでございます。  なお、先ほどお尋ねの自治体が雇用を吸収するという問題につきましては、これはたとえば社会福祉関係その他今後どうしても国として拡充しなければならぬという分野につきまして、それを何とか早めることができないのかという点、そういうところは検討の余地があるのじゃないかという気がいたしておりますが、いずれにしても、そこだけ無理に拡大するのは一種の公務員がふえるだけの話でございますので、やはりその面については慎重でなければならぬのではないかというふうに考えているわけでございます。
  102. 村山富市

    村山(富)委員 これはいずれまた別の機会で問題になると思いますけれども、日本の国は何といっても社会保障が一番おくれているわけですから、そういうおくれた部面を、この際、拡大して、そこら雇用の創出を図っていくことも必要なことだろうと思います。労働省もそういう意味では雇用・失業問題については責任もあるわけですから、積極的に推進をしていくような努力をしてもらいたいと思うのです。  先般もこの社会労働委員会で四国と九州の調査に参りましたけれども、さっきからお話が出ていますように、構造不況業種とか円高不況業種というのは地域的に集中している場合が多いですね。例を挙げて大変恐縮ですけれども、今治とか佐世保とか北九州とかいう地域に構造不況業種や円高による不況業種が集中している。したがって、そこには失業者が多発する、こういう地域があるわけです。こうした失業者は、当面は失業給付を受けながら生活を支えていると思いますけれども、本年の秋ごろになりますと大体失業給付は切れてしまう。その後一体どうして生活していくのか、こういう問題が起こってくると思うのですね。雇用の拡大も図られて再就職が可能になって、生活ができるという条件整備されればいいですけれども、いまの見通しでは、そう簡単にいくとはなかなか思われませんから、結局、失業者は失業給付で生活を支え、失業給付が切れたら真っ暗、こういう状況になることが心配されるわけです。  そこで、そうした状況に対応して、これからの失業者の生活保障措置について具体的に何かお考えがあれば承りたいと思うのです。
  103. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘がございましたように、部分的に、かなりそういう深刻な状況が懸念をされるわけでございますが、私どもとしましては、御存じのように雇用保険は所定内給付日数が若い人で九十日から年輩の方になると三百日までになっておりますが、さらにこれに対しまして、訓練を受けられる場合の訓練延長という制度がございますし、高年の方につきましては、さらに個別延長の特例措置もあるわけでございます。さらに、先般成立させていただきました特定不況業種の離職者臨時措置法におきましては、この個別延長制度にまた特例の個別延長をいたしているというような状況でございまして、当面まずこういう制度をいろいろ活用してまいりたいというのが第一点でございます。  さらに、失業多発地帯につきましては、他の地域に求職活動をなさる方につきましては、そういう意味での広域延長という制度もございまして、これが九十日間延長できるようになっておりますので、そういう制度を活用して広域職業紹介にできるだけ乗せていくというやり方がございます。  それからもう一つは、これも特定不況業種の離職者臨時措置法あるいは中高年法で業種の地域の指定ができるようになっております。その地域に指定されたところについては、個別延長の年齢を下げるという仕組み、あるいはその指定地域については公共事業についての吸収率が課せられるというふうないろいろな仕組みがあるわけでございます。  それから、先ほど御審議いただきました訓練法におきましても、そういう方々の実情に即した訓練を弾力的、積極的にやっていくということになっておりまして、今治等におきましては知事さんが非常に御熱心で、職業訓練、それも委託訓練やら、あるいは職場適応訓練というような制度をかなり積極的にやっていただいているというようなことで、幸い離職者の中にも転職をしようという機運も出てきておられるようでございますので、そういう方々の再就職意欲というものをうまく訓練をすることによって生かしてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  こういう制度に、先ほど申しました中高年齢者を雇い入れる場合の助成制度というものをあわせて活用をすることによって、再就職の促進と離職者の方の求職活動中の生活の安定を図ってまいりたいと考えているわけでございます。
  104. 村山富市

    村山(富)委員 失業者の生活というのは家族も抱えて大変深刻ですし、景気のいいときと違って大変深刻な不況の中ですから、不安が募っていく。したがって、そういう失業者の生活の実態というものを十分踏まえて、可能な限りの措置は講じていくという努力をしてもらいたいと思うのです。  しかし、何はともあれ失業者が出ないようにする、これが一番大事ですし、それから冒頭にも申し上げましたように、構造不況業種でもない、あるいは円高の影響は余りない、にもかかわらず、この際できるだけ労働組合の弱体化を図ろうとか、あるいはさっきちょっと触れましたように、ぜい肉を落として身軽になって、そしてこの不況を乗り切っていこうというふうに考えて、悪口を言えば、便乗してこの際、合理化を行うとか、あるいは希望退職を募るとかという業種も見られますね。したがって、国会が定年制の延長に対する決議をしてみても、労働省が呼びかけてみても、なかなかそのとおり実効が上がらぬというのは、やはりそういう状況にあるからではないかと思うのです。したがって、できるだけ失業を予防していく。そして、そういう切実な理由もないのに、便乗して解雇をするとか希望退職を募るとか、こういうものは幾らか規制をしていく必要があると思うし、同時に、いままで一生懸命働いていた労働者の首をできるだけ切らずに働いてもらうというのは、経営者の社会的責任でもあると私は思うのです。同時に、そのことはまた国民経済的な立場から考えても必要なことだと思いますから、そういう意味で、私どもはこの国会に雇対法の改正案も出して、できるだけ解雇規制を強化していこう、こういう方向で御審議を願うことにしてあるわけでありますけれども、しかし、これはなかなか経営者側の反対も強いことも十分承知しています。したがって、すぐ右から左に実現できるとは思っていませんけれども、しかしいま雇対法の中にありますように、たとえば大量の雇用変動がある場合に届け出をする義務がありますね。これは五十人以上となっています。これを三十人以上に改めるとか、こういうことは法律改正がなくてもできることですから、現状に照らしてもう少しシビアに見ていく、そしてできるだけ勝手気ままな合理化や希望退職やら首切りをさせない、こういう指導を強化する意味でも検討をしていただく必要があるのではないかと思いますが、その点はどうでしょう。
  105. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 大変厳しい雇用・失業情勢を目の当たりにしているわけでございまして、そのためには何といっても御指摘のごとく失業者を未然に防止するということが必要であり、そのためには、やはり解雇するという場合の規制措置も当然考えなければならぬわけでございまして、現在は一月間に五十人以上の場合を届け出の義務ということになっておりますけれども、御指摘のごとくこれを三十人以上ぐらいな線に圧縮をして、そしてこの規制措置を強化するということは前向きで検討すべきである、このように考えております。  同時に、雇用安定資金制度が去年の十月に発足をして現在実施されておりますけれども、これもその後の雇用の厳しい情勢を勘案して、また労使、各方面の意見も聞いて十分今後に処したい、このように考えております。
  106. 村山富市

    村山(富)委員 その解雇の届け出義務の問題については早急に検討して、できれば措置をしていただきたいと思うのです。  それから、いま大臣からお話がございました雇用安定資金の制度の活用、運用ですけれども、これは私は、いろいろな意見はあるにしても、失業を予防する、完全に職場から離脱させるということを予防する上には、やはり実際に相当役に立ってきていると思うのです。  そこで、これを使う側の意見として、貸し出しの条件が少し厳し週ぎるのではないか、現状にそぐわぬところがある、こういう意見もあるようですから、これは早急に見直しをして、この制度がつくられた目的である、失業を予防するという効果がもっと上がるように、役立つように、今後も検討する必要があるのではないかと思いますが、その点はどうですか。
  107. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 雇用安定資金制度発足以来、逐次業種指定を拡大して、いわゆる弾力的、機動的な運営を期しておるわけでございますけれども、その後の実施状況を踏まえて、この景気変動雇用調整事業と同時に事業転換雇用調整事業、こういった趣旨に照らして、そしてこの実際の運営の実態を見ながら、関係労使の意見も十分聞きながら、今後改善すべき点は機敏に対応したい、このように考えております。
  108. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がございませんので、これで終わりますけれども、先ほど来申し上げておりますように、いままでの労働省の雇用・失業対策というのは後手後手になっているきらいがあると思うのですね。それでは当面の対応策としては、これはちょっと間に合わぬと思いますから、むしろ積極的に失業の予防を図っていく、あるいは雇用の拡大を図っていく、そのために何が必要かということを果敢に積極的に実行していくということが大事だと思いますから、ひとつ今後一層の皆さん方の御努力を期待して質問を終わります。
  109. 木野晴夫

    木野委員長 次に、田口一男君。
  110. 田口一男

    田口委員 私も引き続いて雇用の問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  十二日の本委員会雇用集中審議、そして先ほどの村山委員の質問に対する大臣の答弁、それをお聞きしておりまして、よく大臣がおっしゃられるように、三月二十五日ですか、経済対策閣僚会議で、景気浮揚を図って雇用の確保、維持、こういうために努力をする。私はその効果に大いに期待をしたいし、もっともっと強力な手を打ってもらいたい。それは一応異論はございません。  ただ、いまも失業率の問題が出ましたけれども、職安局長あたりの御答弁を聞いてみますと、確かに数字の面で見れば二%ちょっと、この調査の方法は別として、諸外国との比でいけば大したことがないという数字にも見えるのですけれども、そういったマクロの面での失業率で二%であるとか二・何%であるとかということであっても、失業した労働者にとってみれば一〇〇%苦痛である。その苦痛を緩和するということも労働行政にとって必要なのじゃないか。そういう立場から、この三月二十五日の経済閣僚会議、ああいったことは私はマクロという位置づけをいたしますけれども、いま言った失業した労働者にとっては一〇〇%苦痛である。まあこれをミクロというふうな立場で言って、労働省に限らず、雇用の問題は労働省の枠組みだけではいまなかなか前進をいたしませんから、関係各省がその持てる権限の範囲内またはすれすれでも結構ですけれども、その影響力を及ぼす企業に対して行政指導なり援助といいますか、そういうことをフルにやって、一〇〇%苦痛の労働者を少しでも食いとめる、こういう努力も相まってやるべきではないか、やることが当然ではないかと私は思うのですが、まず、そういう基本的な考えで、大臣、国はマクロの面だけやっておればいいんだというお考えなのかどうか、そこのところをちょっと確かめたいと思います。
  111. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 現在のこの雇用・失業情勢の改善を図るということは、私は当面の政治の最大課題であると考えております。したがって、そういう観点から、福田内閣は何よりも思い切った公共投資をやって、そして景気の回復ということが、これまた雇用の安定の背景であることをしばしばお話し申し上げたとおりでございます。そういったことと同時に、関係各省が密接な連絡をとって、従来の労働行政の枠組みだけでは解決できない問題、先ほど局長からも御答弁いたしましたように、たとえば洋上の石油備蓄の問題にしても通産との関係もありますし、あるいは官公庁の船の早期建設、こういったことは運輸省との関係もございますし、あるいはいま懸案中で検討してもらっておりますが、船の解撤事業、これあたりもまた建設省の関係。これは中小造船企業の不況克服のために役立つであろう、こういったことでありまして、いろいろな役所が相互に連絡をとり合う、こういったことによって、集中的に発生した現在の造船不況、あるいはまた繊維関係の円高関係における輸出産業の不況地帯、こういうことの対策はあらゆる関係省庁が連絡をとっていくことが必要でありますし、また公共事業は建設省を中心に、特に指定地域の失業者は四〇%これを吸収していく、こういうふうないろいろな施策を労働省は労働省の雇用の面において積極的に建設省の方へもアプローチしていく、こういうことでありまして、御指摘のとおりだと私は思っております。
  112. 田口一男

    田口委員 私はもっとそれを微に入り細にわたって、たとえば個別企業、何々会社、何々企業というのがありますね。そこが危殆に瀕しておる。行政機関がちょっと手を加えれば、そのことを未然に防ぐこともできる場合があるのじゃないか。そういうことも今日の雇用事情からして、関係行政機関としては、それぞれ連絡をとり合いながらやっていく必要があるのじゃないか。そこのところを言いたかったのです。  そういう立場で、そのことは御異存ないと思うのですけれども、先般も私、大分それから社会党の雇用調査として北九州に参ったのですが、前回の集中審議の際に、森井委員からも多少触れられましたが、ああいった鉄冷えの町、北九州は鉄冷えの町と言われているのですが、そこで相当深刻な雇用不安が起こっておる。  その中の一つの例として、多くを言いませんが、日本板硝子の工場が大正の末期から操業しておって、その創業と同時にその下請関連企業として、これも特定の名前を挙げますけれども、二島海運という運搬を中心とする下請会社がある。ところが、今日の状況の中で、その板硝子が三百四十三人の従業員を抱えておったものを全部、工場を閉鎖して配転、出向などの措置によって、かろうじて板硝子自体としては何とか目鼻をつけた。ところが、その五十年来のつき合いをやっておる二島海運の労働者については、不本意ですがということで、全部解雇になったという話も聞いたのです。そういう問題で、細かいことでなんですけれども、その板硝子が労使の協議の中で物流センターという新しい会社を設けて、そこで若干板硝子の正社員を吸収したという話を聞いているのですけれども、私どもが現地へ行って聞くと、その二島海運に勤めておった労働者が、せっかくそういうものをつくるのならば、五十年来のつき合いがあるのだから、おれのところも多少は入れてくれたっていいじゃないか、こういう話があるわけです。そうなってくると、私がさっき申し上げたように、この所管が通産省だと思うのですけれども、通産省あたりで行政指導といいますか、そういう要望に対しては、労働省と相談をしながら、でき得る限り吸収したらどうか、こういうことも私はいま必要だと思うのです。全部入ればいいですよ。そのうちのたとえ十人であろうと十五人であろうと、その会社が依然としてあるのならば、私は一〇〇%の苦痛を味わう失業者が、それによって減っていく、こういう観点から必要なんじゃないか。いま例に二島海運の問題を出したのですが、きょうは通産省は来ておりますから、ひとつまずその状況把握をしておったら、またそういう指導の考えがあるかどうか、それをお聞きしたいと思います。
  113. 大高英男

    ○大高説明員 板硝子の関係につきましては、いま先生のお話にございましたように、石油ショック後の建築需要の減退によりまして大きく後退いたしまして、日本板硝子といたしましても、四十九年以降赤字経営のやむなきに至ったわけでございます。その結果、企業の体制の立て直しが必要となりまして、先ほどお話しのように、若松工場の閉鎖のやむなきに至ったわけでございます。  この際、問題になりますのは、日本板硝子及びいまお話のございました二島海運等の下請会社の従業員対策でございます。これを慎重に検討いたさねばならないわけでございますが、その対策の一環といたしまして、サッシの組み立て等を事業といたします板硝子の物流センターを設立いたしまして、その従業員の吸収に努めたわけでございます。この従業員といたしましては、日本板硝子社の従業員とともに二島海運の従業員をいわば同じ比率で公平に採用した、こういうふうなことでございます。  通産省といたしましては、雇用問題の重要性にかんがみまして、今後の状況につきまして関係会社、関係者から事情を聞きますとともに、必要に応じて指導を行っていきたい、こういうように考えております。
  114. 田口一男

    田口委員 具体的な数字はわかりませんか。
  115. 大高英男

    ○大高説明員 現在、物流センターは六十三人従業員を吸収いたしまして、日本板硝子社からは五十名、二島海運社からは十三名でございまして、それぞれの退職者の比率はほぼ同じでございます。
  116. 田口一男

    田口委員 いわゆる親会社と下請会社とが、そういうことで同率で、五十名、十三名、そこまでやってもらったという話なんですが、私は多々ますます弁ずるじゃないのですが、なお二島海運の方には退職者はおるわけですね、十三名ですから。たしか向こうでもらった資料によりますと、全部で九十何名おるそうですが、そういったことについても、ひとつ今後なお一層の吸収方を指導してもらいたい。これを一つ要望しておきたいのです。  同時に、ちょっと労働省の問題を離れるのですが、最後にちょっと大臣の御見解を承りたいと思いますので、状況をお聞きいただきたいのですが、私はいま申し上げたように、個別の企業関係監督官庁が援助する、指導することによって失業の防止に通ずる、雇用の確保になる、こういう観点から、いま板硝子の問題を言ったのですが、それと同じ観点で、農林省所管の精糖会社の問題を具体例として挙げたいのです。  実は三重県四日市の在に東海精糖という精糖会社がございます。この会社が、経過をちょっとかいつまんで申し上げますと、昭和五十一年九月に豪州糖などのいわゆる原料糖が高くなってきた。コストが上がってくる。そのために累積赤字が相当出まして、九月に操業をストップいたしました。以来今日までいろいろな経過があるのですけれども、そこに働いておる二百余名の労働者は、何としても企業の再建をしなければならぬ、雇用の確保に努力をしなければならぬということで、賃金未払いのまま、労働者同士のカンパなり、そういったものによって今日までなお工場を守り続けております。私もそういう状態を見て、多少相談にもあずかったのですが、幸いなことにメーンの銀行が協力をするという話を持ってきたのですね。  その協力をする前提条件として四つある。まず第一は、労働組合企業再建のために全面的に努力をしてもらいたい、協力をしてもらいたいということ。それから二つ目は、金融機関の援助である。それから原料糖を入れる商社、これは三井物産でありますけれども、三井物産などの協力が必要である。そして、それと相まって監督官庁、農林省の行政の援助ということが必要である。この四つがそろえば金融機関、東海銀行というのですが、応分の援助をいたしましょう、こういう話になったわけであります。そして、まあ労働組合、いろいろな労働条件の協定を結んでおりますから相当難航をしたようでありますけれども、最終的には雇用の確保を図るためには忍ぶべきは忍ぼうじゃないか、そこで一〇〇%協議が調って、金融機関の方も、いままでの債権をたな上げして、新債を十億なり十五億なり出す用意をしましょう、法律的に会社更生法の申請もしようじゃないか、今日こういう経過になっておるわけであります。  ところが、御存じのように、去年の暮れの国会で砂糖の特例法が成立をいたしましたし、いま発効しておるのですけれども、シェアが割り当てられる。それに基づいて原料糖の確保をしなければならぬ。となってくると、四つの条件の後の二つが問題なんですね。いま佐世保重工の例なんかを見たって、金融機関がお手上げという状況でしょう。この場合は珍しく金融機関がたな上げにしてでも新債の用意があるというケースなんですから、砂糖の法律はあるのでしょうけれども、雇用の維持、確保という観点から、四つの条件のうち二つまで調った、あと二つは農林省のサイドで、ここで一歩前に出れば二百余名の労働者雇用というものはつながっていくのじゃないか。全体の大きな失業者のうちで二百余名がどうこうという、そんなことじゃなくて、一人一人が一〇〇%の苦痛を持つのですから、そういう観点に立って、監督官庁としての努力が望まれるのじゃないかと思うのですが、その場合、大臣の見解としてはどうですか。
  117. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 いま先生のおっしゃいました東海精糖の関係を所管しておりますので、私の方から適宜申し上げます。  農林省といたしましても、現在の社会経済情勢、深刻な雇用問題ということは十分理解しておるつもりでございます。ただ、御指摘の東海精糖の場合、御承知のように、いま先生も述べられましたように、五十一年の九月以来操業を中止しておるということで、一年半以上実際の生産活動をやっておりません。したがいまして、この企業が今後再建をして精糖業界の中で存続をしていくためには、いわば雇用面の判断だけでなくて、原糖供給の問題あるいは製品の販売の問題、そしていままでの業界内での利害といいますか、関係のある豪州糖の引き取りの問題、そういうようないろいろな問題についての解決のめどがつかないと、再建と言っても、なかなかむずかしかろうという面があるわけでございます。私ども決して東海精糖の再建そのものを云々するわけではございませんが、業界の中で、この企業が生きていくためのそういう諸条件について債権者、関係金融機関等関係者の協力が得られるということがあって初めて成り立つお話かというふうに考えておるわけでございます。
  118. 田口一男

    田口委員 いま課長が言われたように、それも理屈でしょうけれども、大口債権のうちで、まあ金の方は、要るだけとは言っておらぬでしょうけれども、新債十億なり十五億なりは用意しましょうということは、シェアをもらって製造をして販売をするというところまで、その会社はやれるという見通しがつくから金を貸そうというんだと思うのですね。そうなってくると農林省がシェア割りの権限を持っておる。いま会社更生法で、これは裁判の方ですからなんですけれども、私が得た感触では、労働組合の協力がある、金融機関の協力がある。そこで、会社更生法の開始決定のかぎを握るのは、もうあと二つだ。一つは原糖を入れてくれるのか、農林省がシェアをくれるのか、これさえはっきりすれば、もうすぐにでも開始決定をしましょうと言っておるのですね。その話を聞きました。ですから、ここで、あと二つ残っておる山を一つ落とすのは、農林省の方でシェアがあります。——東海精糖のシェアがあるというのは前々から言われておるのです、前の農林水産委員会でも。そうすると金はあるのですから原糖を買えるわけでしょう。二・何%のシェアに対しては原料糖を買えばいいじゃないか、こういうふうな簡単な見方もできるのですが、その辺は無理なんですか。
  119. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 先生のおっしゃるシェアの問題でございますが、これは御承知のように、昨年の秋にできました砂糖売り戻し特例法に基づく糖価安定事業団の売り戻し数量というふうにわれわれは考えておるわけでございます。この数量を農林大臣が東海精糖に割り振るかどうか、こういう問題だと思います。  これは御承知のように、精糖業界が最近の需要の伸び悩みあるいは豪州糖の割り高な価格というようなもの、あるいは従来から持っております過当競争の体質ということによって非常な混乱に陥っているということで、特別の臨時立法といたしまして、輸入される砂糖の糖価安定事業団の売買の数量を農林大臣が決めることによって需給調整を行う、こういうことで考えられておるわけでございます。したがいまして、私どもの、この法律の運用に当たりましての考え方でまいりますと、確かに個々の企業に数量を割り振りますが、それは需給調整を前提としておりますから、その数量が確実に製品になって国民に供給される、こういうことが必要なわけでございます。したがいまして、東海精糖の更生手続開始ということが、今後円滑に東海精糖が操業していけるというための、いわば裁判所における更生計画決定までの一つの手続でございますから、その段階で、にわかに私どもが、国民に対する砂糖供給が円滑に行われるという判断のもとにシェアを出すことはなかなかむずかしいのではないかというふうに考えたわけでございます。したがいまして、東海精糖の再建、円滑な操業の開始ということが、より具体的に判断できる段階において私どもは判断いたしたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  120. 田口一男

    田口委員 それはちょっとおかしいんじゃないですか。いま課長が心配をするように、再開をして需給調整に混乱を起こさないように、そういった条件が全部整ったらということですけれどもね。裁判官の会社更生法の開始決定に至るまでの、しようとする言い方、まあ弁護士なんかを通じての言い方なんですけれども、さっきから何回も言っておりますように、金融機関が見ておる四つの条件がある。労働組合、金融機関、それはもう解決した。そうするとシェアがあって——これはシェアがないとは言えませんね、前の鈴木農林大臣は言っておるのですから。シェアがあるのかどうかということを重ねて聞いておる。それから、原糖が入ってくるのだろうか。そこでひとつ、シェアがありますよ、それに基づいて原糖も入ります、こういう状況になれば、東海精糖の再建は可能であると見ておるわけですね。再建が可能であるということは、供給の場合も販売の場合でも、そういったいろいろな計画というものは入ってくるのでしょうから、その状況が出てからシェアを与えるという言い方は、これは順序が逆であって、再建可能のための二つ条件はシェアと原糖だ。だから、向こうが、私が最初から申し上げているように、雇用の面から考えても二つの点が解決をした。シェアの問題を農林省は、これはもう言わずもがな、ありますよ。そして、これからお願いしょうと思うのですが、三井物産に対する指導なんかをやれば、会社更生法の開始決定の条件というものが、ここでそろう、こういうことになるんじゃないですか。その開始決定の条件を、いま中に入っておるものを、それらの条件が全部そろったらシェアを与えましょうということは、私は順序が逆だと思うのですね。開始決定の条件がシェアだ、こう先に言っておるのに、いや、おまえのところの状況を見たら、やりましょうというんでは逆でしょう。そうじゃないですか。
  121. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 私どもの方の砂糖売り戻し特例法の運用のことについて少し御理解いただきたいと思いますが、これは確かに各社のシェアを前提にして数量をはじきますが、それぞれ三カ月ごとに具体的に糖価安定事業団で売買する数量を各社に割り振るわけでございます。したがいまして、現在で言いますと、四月から六月までの間にある社については何千何百トン、こういう数字を割り振るわけです。それは四月から六月までの間に、その社がその砂糖を入れて融糖して販売する、こういうことになるわけでございます。したがいまして、シェアというのは、観念的に、その東海精糖についてあってということではなくて、具体的に、たとえばこの四月−六月の間に何トン必要であるか、何トン溶かして売ることができるか、こういうことになろうかと思うのです。七月−九月については、また六月の末に決める、こういうことでございますから、シニアというのがずっと潜在的にあって、それがまずあるんだ、こういうふうに言えば数量が出るというのじゃなくて、あくまでも、たとえば四月−六月に操業ができるという条件がそろっておれば、確かに法律の定めるところによりまして、東海精糖は過去において砂糖を輸入しておりますから、そういうものを勘案して私どもは判断いたしたい、こういうことでございます。
  122. 田口一男

    田口委員 いや、そこで話がわかったのですけれども、確かに、いまおっしゃったように、四、五、六の三カ月のシェアは、もうすでに決定している。きょうは四月十八日ですか、もう入っておるわけですね。そこでぽんと入ってきても、これは無理だと思うのですよ。五月一日からよこせとか六月一日からシェアをよこせということは、事実、私は無理だと思う。  ところが、さっき言ったように、会社更生法の開始決定、まあいろいろな法律的なことを私は余り知りませんけれども、鋭意詰めておって再建可能である、いま言った四つの条件が整って。そしてこの四・五・六といま課長が言ったことで絵にかいたように言えば、七月からいまの砂糖の需給調整の中に参入をしよう、こういう準備ができたときには、いま言ったシェア二・何%というのは当然にあるはずでしょう、出てくるでしょう。これはどうなんですか。
  123. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 先生のおっしゃっているシェアの数字は、過去においてのカルテルのときのシェアを基礎にされておると思います。この数字自身につきましては、現在の操業中の精糖業に対して、必ずしもカルテルのときのシェアそのものではございませんから、いろいろ議論の余地があるかと思います。ただ具体的に、先ほど私、申し上げましたように、関係者の協力のもとに再建案なり操業の見通しが確実になれば、他の各社との関係もありますから具体的な数字を申し上げるわけにいきませんが、私どもはそういう状態が整ったことを見きわめた上で判断していきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  124. 田口一男

    田口委員 ここがちょっと大事だと思うのですが、再開の条件が整って——まあ私は具体的なシェアの数字は言いません、いまの課長の言葉をそのままうのみにして。四、五、六は無理だけれども、四月、五月、六月の間に、そういう再開の条件が整って、七月一日から参入できる条件が整った、その場合には当然に、いろんなものがあるにしても結論から言えば、東海精糖にはシェアを与える、当然与えるべきなんです。あるべきだ、こういうことでしょう。そこのところをもう一遍。
  125. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 おっしゃるように、具体的に操業の見通しが確実になり、円滑に操業が続けていけるということが見通されれば、私どもはそういう方向で考えたいと思っております。  しかし、先ほど先生のお話しの裁判所における会社更生法の更生手続の開始、これは私ども、会社更生法については有権解釈権限を持つわけではございませんが、これは手続のいわば入り口だと私どもは思っておるわけであります。御承知のように、会社更生法の定めるところによりますと、開始決定をした後におきまして具体的には管財人を選び、そこにおいて従来の経営の内容あるいは債権債務の実態等が調査されるわけでございますし、それを根拠に再建の計画、再建の是非といいますか、あるいは具体的な方策といいますか、そういうものは検討され、計画案ができていく、それらの段階において行政庁の意見を裁判所がお尋ねになる、あるいは行政庁の側から積極的に意見を述べることができる、それによって計画が成り立つこともあるし成り立たないこともあるという形に法律の構成がなっておるように私ども思うわけでございます。  したがいまして、手続の開始決定の段階における裁判所の判断、これは裁判所のお考えでございますから、われわれ云々するわけではございませんが、これはあくまでも更生の見込みが全くない、見込みがないときというのはできないけれども、見込みが積極的にある、あるいは可能であるという裁判官の判断がそこで行われるかどうか、どうも私どもは、そこはむしろ灰色といいますか、少なくとも全く見込みがないということではないという程度の判断かなというふうに、これはわれわれ推測してでございますが、考えておるわけでございまして、それから後のいろいろな手続の段階で、裁判所は行政庁の意見も聞くというふうになっているかと思っております。
  126. 田口一男

    田口委員 開始決定即操業開始という点まで、私は簡単には見ていないのです。ただ、いろいろな条件が整って開始決定をやって、管財人も決まって、それから調査をやりますね。そして、それらの日程が四、五、六の間に詰んで、七月に参入する。そうする場合には、いま言った、数字は別としてシェアがある。こういう順序をいま課長が答えたのですけれども、その入り口である開始決定の条件としてシェアがあるのか、原糖の供給があるのか。開始決定をしないことには調査にも入れぬ、管財人の設置もできぬ。もう更生の見込みがないという意味ですわね、開始決定がなければ。それはわかるでしょう。だから、更生の見込みありなしを問う一番判断の材料になるのは、残された二つだ。その入り口のところでシェアについてはどうこうということでは、裁判所の判断ということは、更生開始決定の判断にはならぬのじゃないか。ですから、私は、初めから雇用の面にちょっとでも手助けすれば雇用の維持確保ができるという観点に立つならば、向こうが言っておる四条件のうち二つが残っておるなら、それはいろいろな条件があるにしても、シェアはありますよ。ここのところは入り口で言えないでしょうか。そこを言っておるわけです。
  127. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 くどいようでございますが、先生のおっしゃっているシェアの意味、私どものいまの砂糖売り戻し特例法の上では、期間ごとの事業団の売り戻し数量という形であらわれてくるわけでございます。したがって、その具体的な売り戻しの数量を決める段階にならない前に、私の方からシェアがあるとかないとかいうことを申し上げることはなかなかむずかしいわけでございます。ただ、過去において実績があるということは私どもも知っております。したがって、全くいままでに輸入実績がないから対象にならぬとか、考慮の外であるとかということではないのでございます。  シェア、シェアとよく言われますが、その行政上のあらわれ方としては、先ほど言いましたように、あくまでも三カ月ごとの具体的な数量という形になっておるわけでございます。先生のおっしゃるような形で、更生手続の開始決定の段階で役所が抽象的に、シェアがあるということを言うことが望ましいという、お気持ちはわかりますが、私ども具体的に裁判所の方とお話をする場合にも、恐らく法律で定めているところは、そういう意味からではなくて、具体的な期間ごとの数量として決めるという話でございますから、その段階で判断せざるを得ない、こう言わざるを得ないと思うのです。
  128. 田口一男

    田口委員 私は、裁判所の裁判官の話の中で、農林省がシェアがあると言えば四つのうちの三つは片づいた、こういう端的な言い方ですね。それを法律的に、行政上でシェアというものはこういうものですよという話を、一遍当事者でやってもらいたいのですけれども、いまの課長の答弁でいったら、もっとすっきりした言い方ができるのか。開始決定の条件一つである——私の方の理解ですよ、シェアというものは当然にあるのですと。ここのところですが、こればかりやっているとなんですけれども、おたくの方は監督官庁ですから。  さらに、三井物産はこういう言い方までしておるのですね。これは雇用全般から見てもゆゆしい表現だと思うのですが「いわゆる系列下に入ることにより、それら商社の金融支援を受けて経営危機を回避した例がみられましたが、同社の経営方針は特定商社系列に属することを嫌い、」それによって今日の事態を招いたのだ。自分のところの系列に入っておったらつぶれませんよ、系列に入らなければつぶれるのですよという言い方ですね。これはいかに金を持っておるか知りませんけれども、そういうものじゃないだろう。時間の関係で長々言いませんけれども、一商社の意見ですと言ってしまえば、それまでかもしれませんけれども、三井物産の意見書に盛られている内容は、農林省の管轄を越えてシェアなんかありませんよということを言っておるのですね。これをどういうふうに見ますか。
  129. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 三井物産から裁判所の方に意見書が出されたということを私どもは後から承知したわけでございますが、これは三井物産が、いわば東海精糖の大口債権者といたしまして、また再建に協力要請をされた立場から、三井物産としての判断を言ったものだろうと思いまして、行政庁として、その内容についてとやかく意見を申し上げる立場にはないと思っております。
  130. 田口一男

    田口委員 そうすると、三井物産の言い分だから農林省としては、という言い方なんですけれども、「前記輸入協定の義務不履行のままシエアを与えることは、同業他社との関連に於て社会的不公正となる恐れがあるのみならず、協定全体の履行に重大な支障を与える結果、特例法の目的の一つが達成を阻害されることとなります。」結局、シェアは与えられませんという言い方ですね。農林省もこういう見解に立っておるのか。さっきから課長が言っておる条件という中には、大口債権者の三井のこういう言い分も溶かしていかぬことには条件が整いませんよと言っておるのか、その辺、ちょっと確かめたいと思います。
  131. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 三井物産の意見の中で、私ども所管している法律についての見解に関する部分、この特例法の目的に照らしてという部分でございますが、これについては、御承知のように、この特例法ができます段階におきまして日本の精糖業者とオーストラリアの輸出業者との間での契約がございまして、その契約改定をめぐって非常な問題があったということに経緯を発しておるわけでございます。私どもとしては、法律の目的にありますように、日豪の砂糖長期輸入協定が円滑に履行されることを望んでおることは事実でございます。しかし、これは協定全体として、そういう円滑な履行が必要だと思っておるわけでございまして、その最も望ましい形は、この協定を結びました各精糖業者が自分の義務を果たすというのが一番望ましい形でございますが、三十二社あるわけでございます——三十三社あったのですが、一社破産してしまいましたので三十二社ありますが、そのメーカーたちがつくっていますいわば輸入カルテルの中のお互いの問題でございますから、全体として協定の円滑な履行ができれば、それ以上のことを役所側としてとやかく介入するつもりはないという感じでございます。そこは、三井物産の解釈の仕方は私どもと必ずしも一致はしておらぬと考えております。
  132. 田口一男

    田口委員 もとへ戻りますけれども、私は、雇用という問題、短絡的に農林省目をつぶれとか、少々いやがる三井物産を押さえつけろとか、そういうことまでは言いませんけれども、ただ経過は農林省は十分知ってござると思うのです。  今度は労働大臣なり職安局長に、雇用の面から一遍お考えを承りたいのですけれども、労働組合が、いままでの条件を全部たな上げにして、会社の再建のために、自分たちの雇用を維持確保していくために、しばらくはそれをしんぼうしようじゃないか、そうして一生懸命努力をして、金融機関の援助もはっきりした、それで会社更生法の開始決定で——私はすぐにはならぬと思うのですが、開始決定ということは一つの有利な条件ですね。そこまで押し詰めてきて、何とかもう少し手を加えれば雇用の確保はできるという状態にあるときに、砂糖の方の特例法で、むずかしくとかどうとかということは、いかがなものかと私は思うのです。個別の企業に権限内でちょっと手を加えれば雇用の確保が維持できるという場合には、今日の雇用情勢からいって、前と違った積極面があってもいいのじゃないか、私はこれを言いたいのですよ。こういう考えについてどうでしょうね。
  133. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 現在の不況のあらしの中で、労使が本当に力を合わせて何とかして企業を守ろうという、ここに私は企業経営の一番大切な柱があると思うのでありまして、そういう面から考えて、ただ労働省の労働行政というものの限界といいますか、決してなわ張りを云々するわけではございませんけれども、一応われわれは、そういう企業内に麗わしい気分が脈々と流れておるという、こういうことであるならば、やはり農林省あたりと十二分に連絡をとって何とかひとつ知恵を出し合うということ、法も人のためにあるわけですから、やはり企業が助かるということについて衆知を集めていく、みんなの力を合わしていくということについて、ひとつ配慮できれば、しなければならぬではないか。これは個別の具体的な御提案でございますから、どういうふうに対応していいかは事情を調べた上でないと何とも申し上げられませんけれども、気持ちとしては私はそのように考えております。
  134. 田口一男

    田口委員 個別の問題について大臣から、いまここで所管外の農林省に、言ってやってやれということは、これは私はそこまでは望みませんけれども、やはりそういう気持ちが、今日の雇用・失業情勢だけに、どんな企業であれ、大なり小なりあるのですから、そういうことは必要だと思うのです。  そこで農林省、最後に、確かにシェアの問題を厳密に解釈すれば、そういう言い方になると思うが、更生開始決定に至る条件として私の得た感触では、シェアのことを言っておる、原糖のことを言っておる、それさえまとまれば、この七月の参入に問に合うということですからね、逆算をしていけば。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕 そういう日程を考えれば、あと三十数社あるからという、そういう気持ちはないでしょうけれども、需給調整の中で円滑にいくために、この東海精糖の不良債権をどうするか、また当面求められておる裁判所からのそういったことについて、向こうの有利な判断、有利になるような判断材料ということを与えるのが、いま大臣のおっしゃったようなことにもなるのじゃないかと思うのですが、そこのところをひとつお伺いしたいと思う。
  135. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 再三の先生のお話でございますが、かなり利害関係が錯綜しておる業界でございます。私ども、おっしゃることを別に否定するわけではございませんけれども、関係者がやはり円満に協力するという形に持っていくのは、これは先生初め皆さんの御協力も得ながら、そういう話に持っていかないと、役所の権限だけで物をまとめるということは、なかなかむずかしかろう、こういうふうに思っておるわけであります。
  136. 田口一男

    田口委員 さっきの通産の二島海運の話を、私はぎゅうっと押しつけようというのじゃないのですよ。しかし、円満に大口債権者の一つの金融筋がオーケーを出しておる。あと一方は、もう商社ですがね、原糖の方です。物の方です。それに、ここまできたのだから円満に会社が再建できるように、おまえのところやったらどうや。これはできるでしょう。しかし、いまの課長の話を聞いていると、そこまでいっておらぬですわな。おまえさん方、円満に話してくれ、そこで円満に話がついたら、この特例法に従ってシェアやりますわ、こういうことになるのですよ、端的に言えば。そこを一歩踏み込んで、ここまで努力をしておるのだから、ひとつ三井物産もそうそう言わんと、円満にうまくいくように話をしたらどうか、これを私は言うておるのです。さっきの同じ日本国政府の通産省は、板硝子と二島海運の問でさらに雇用を一人でも二人でもやるようにしましょうと言っている。これは二百数人おるのですね。優勝劣敗ということを砂糖の間に持ち込まずに、その行政指導というか、それが今日必要じゃないかということを私は言っておるのです。まあお願いみたいな言い方になるのですが、そこのところの決意を聞いて、ちょうど時間が来ましたから、やめておきます。
  137. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 先生の御意見を十分尊重しまして、検討させていただきたいと思います。
  138. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、和田耕作君。
  139. 和田耕作

    和田(耕)委員 最初に、公共企業体の今度の有額回答の問題からお伺いしたいのです。  昨日、政府はいろいろの公共企業体に対して有額回答を出したのですが、私どもが予想したよりもはるかに低い感じ、つまり三%台というのは、これは根拠はどういうふうなところを目安にしてお決めになったのでしょうか。
  140. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 有額回答の中身につきましては、労働大臣として関与しておりません。ただ、有額回答をやはり早期に出すべきである、この助言はいたしたわけでございますけれども、有額回答の中身自体をどうやるかということは、まさに当事者、当局側の処理すべき問題でありまして、労働大臣がそれにくちばしを差しはさむべきでもなければ、また差しはさむこともできない、このように立場がございますので、お尋ねの点、私の立場から、高いか低いかいうことをお答え申し上げる立場でないということを御了解いただきたいと思うのであります。
  141. 和田耕作

    和田(耕)委員 そのお立場はよくわかるのですけれども、労働行政全体をあずかる立場から見て、そうしていまの賃金の水準というもの、ベースアップの水準というものが日本の経済に大きな影響を及ぼしていくという問題もあるし、そうしてまた、民間の大体の平均、どういうふうに平均をとるか、いろいろむずかしい問題ですけれども、大体平均と思われる点を目安にするということから見て、その両面から見て、これは各官庁の有額回答がどうのこうのと言うわけじゃないのです。三%台というのが何か低過ぎはしないかという感じを私、持つのです。労働行政全体に責任を持たれる大臣としての御感想でも結構ですけれども、たとえば、もっと払えないところがたくさんあるということとか、いろいろな理由があると思うのですけれども、そういう何かおしなべて三%台ということは、よく労働側が言っているように、今度予算で手当てをしているのが五%プラス二・二の七・二%ですかの予算措置があるということと、それと非常に不況産業だと言われておる鉄鋼、造船でも四%台という回答が出ておる。そしてまた、JCの中の自動車は八%、あるいは電機は六%というふうな額が出ておるということ等から見て、どうしても三%台というのは合理性がないような感じがするのですけれども、これはお答えできなければ結構ですが、その問題を一般論として、どういうようにお考えなのでしょう。
  142. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 有額回答を少なくとも十七日には出してもらいたいということを当局側に話しましたときに、私は、これの中身につきましては、民間の給与によりどころを求めて、いわゆる民間準拠の原則に立って、ひとつ、ぎりぎりの線まで回答してもらいたいという、抽象的な言葉でありますけれども、注文をつけたわけでございます。その結果が御案内のように平均三・八%ということでありまして、確かに鉄鋼関係から比べますと、鉄鋼が四・二四%という数字でありますから、それから見れば、いささか低いではないかという御指摘も私の立場として理解できないことはございません。ただ、民間というのは、ベースアップも全然できないという企業もあり、あるいはまたベースアップどころか、相当首切りをしなければならぬという惨たんたる特定不況業種の現状ということを考えた場合に、一応有額回答として、こういう線を出さざるを得なかったというふうにも思うわけでありまして、この問題が適当なのかどうかということについては当事者の自主的な交渉をやってもらう。本当は、きょう、あしたと、すでにストに入っておるわけでございますけれども、そのエネルギーを、なぜもっと話し合いに向けてもらえないのか、どうしても話し合いがつかないということになれば調停申請をやって、そして機関で、しかるべく決着をつけてもらうということを期待したい、私はこのように考えるわけでございまして、低過ぎるという考えと、やむを得ぬのじゃないかという考えが、両方こもごも頭に浮かんできているということであります。
  143. 和田耕作

    和田(耕)委員 いまのストの問題は後から触れますけれども、余り常識よりも低いと、ストもやむを得ぬじゃないかというような感じを片一方で与えるような悪い結果になりはしないかということを私は恐れているのですけれども、昨年は確かにJCの基準よりも政府の回答は上回ったのです。そのため、民間産業がかなり強い不満を持っておったと私、聞いておるのですけれども、そういうこともあったので、今度は多少JCの低いところよりも、もっと低くしたという印象を受けるのです。  御案内のように、今年度の問題は、たとえば野党や政府の中でも、一般の財界の人たちからも、減税などで国民の個人消費を高めていくということが景気政策の全体から見ても大事なときであるということが出ている。したがって、こういうときには少なくとも八と四との中間ぐらい、五・五ぐらいのものを出すということが、全般的な景気政策から見ても、あるいは労働運動に対するあれから見ても妥当ではないだろうか。しかも政府としては手当てしている予算よりも下回った数字だということですから、その点について私、非常に遺憾に思うのです。一%、二%のあれというのは相当大きなものだし、いろいろ政治的な影響力を持つことはよくわかります。払えないところもあるし、雇用不安のところもあると思いますけれども、そういうところは、そういうところとして手当てをしなければならないが、やはり出せるところは出す。民間の問題でも、出せるところは出してもらおう、出せないところは仕方がないという考え方がJCの中にもあるようですし、一般にもあるようですが、私、今年の場合には、この考え方は、そんなに間違っていないのではないかという感じがしてならないのです。不況産業と言われるところは他の方法でこれをバックアップしてあげるという配慮は必要ですけれども、やはり出せるところは出していくという形で、いま、いろいろ多様な要求、背景がある場合ですから、そういうふうなことがあって、しかるべきだと私は思うのです。これ以上、大臣のお答えを求めようとは考えておりませんけれども、そういう点で、かなり遺憾な感じがするわけでございます。  それにしましても、きょう幾つかの大新聞の論説を拝見しておっても、こういう時期にスケジュール的なストを構えて、相も変わらぬ高度経済成長の惰性のような運動をするというのは間違いじゃないかということを、みんなひとしく書いておるのですね。仲裁裁定というあれもあるし、もっと粘り強く交渉をするような態度で決めていくということが正しいと思うのですね。今後こういう問題について労働大臣も、もっと積極的に指導していただきたいと思う。  それにつけてもぼくは三%台というのはよけいな口実を与えたという感じがしてならないのです。全般として、どういうお気持ちを持っておられるか、もしお答えがあれば、いただきたいと思うのです。
  144. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 予算措置として定期昇給を含めて七・二%の財源措置がある。これは一つの原資として一応用意されているという問題と、現在の民間企業全体の景気の状況、経営の実態、こういったことを考えて、民間準拠による公共企業体の当局者がああいった有額回答をしたということとは、一応別の次元として考えるべきである。これが高いか低いかということについては、おのおのお立場によって確かに見解が分かれてくると思うのでありまして、一度、有額回答が出た以上、私としては民間の事情をよく考えて、ぎりぎりの線まで、ひとつ奮発して出してもらいたいということを言った、その答えが出されたわけでございますから、この答えを踏まえて、自主交渉がどうしてもまとまらぬということになれば、違法ストの場合はなおさら、この際、調停申請をしてもらって、調停が調わない場合は仲裁裁定で決着をつけてもらうということによって、この際ストだけはどうしても避けてもらいたいということを、きのうの午後五時、三公五現の組合の代表者の諸君とも会って、いろいろお話ししましたけれども、物別れに終わったという状況でございます。
  145. 和田耕作

    和田(耕)委員 いま行われておりますストの問題でございますけれども、先ほども、いままでの惰性そのままのスケジュールストだということを申し上げたのですが、名分がはっきりしないですね。最初の十三、十四の場合は民間の賃上げを支援するのだなどということを出しているようだ。そういう主張で、こういう時期にやるのはよけいなことですね。そしてまた、早急に有額回答を引き出すという。有額回答が出るとか出ぬとか——遅いとかいう説はありましたけれども、大体十七日ごろには出すだろうということは、事前に政府の関係の責任者の方々がほのめかしておるところもあって、出ることは決まっているのに、有額回答を引き出すためのストをやる、これもおかしなことであるわけですね。こういうように国民が理解できないようなストを繰り返すことによって——スト権を与えることは大事なことだと私は思うのです。正しい条件でスト権を与えるということはあたりまえのことだし、ぜひともやらなければいかぬことですけれども、こういう問題に対して非常に悪い影響を自分からつくるということになりはしないかと思うのです。また、二十五日から何か無期限に近いみたいなストに入っていくなんという構えを持っているけれども、こういう人たちに特に反省を求めたいのは、こういうふうな動きがスト権問題の正しい冷静な審議に対して悪い影響を及ぼすと私は思うのだけれども、大臣、いかがでしょう。
  146. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 御指摘のとおりと私も考えまして、実は、きのう代表者の諸君とも、いずれ五、六月には公共企業体等基本問題会議のスト権問題、労働基本権問題の取り扱いというのが議論になる。有額回答が出されたきょう今日、有額回答を出すためにストをやるんだという大義名分もない。しかも違法のストをやるということは、かえって問題をこんがらかして、公労協に対する国民的不信感を誘発してくる心配がある。これはまさに諸君のためにマイナスになる。こういったことをいろいろお話ししたわけでございますけれども、現状に突入しておるということでありまして、私は大変残念に思っている次第でございます。
  147. 和田耕作

    和田(耕)委員 いまのスト権問題の扱い方なんですけれども、政府としては、いま、どのような段階に来ておるか、全体のスト権問題の審議の現状について、かいつまんでお答えいただきたいと思います。
  148. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 現在、争議権問題につきましては、政府といたしましては、公共企業体等基本問題会議を設けて学識経験者の方にお集まり願って、スト権問題についての審議をお願いしているわけでございますが、一昨年九月の初会合以来、部会単位に精力的に審議が進められておりまして、現在までに約百五十回を超える会合が開かれておりまして、ただいま個々の問題点についての実質的な討議をほぼ終えまして、その取りまとめに入っている段階でございまして、全体といたしましての意見は、この五、六月にいただけるものと承知しております。
  149. 和田耕作

    和田(耕)委員 この前の専門懇の意見書の中で、経営形態の問題を一番中心に取り上げておられるようですけれども、この問題は、スト権の問題とこんがらがってくると、とてもじゃないが解決はむずかしいと私は思うのですけれども、これを分けて考えるという意見はないのですか。
  150. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 現在の公共企業体等基本問題会議の審議方針といたしまして、まず企業体ごとの経営形態のあり方、当事者能力強化の方策等の個別的な具体的な問題から検討を尽くしまして、経営形態に関する結論が出た後で、必要に応じ、これに対応した争議権のあり方を検討するという一つの審議の順序と申しますか、そういう審議方針を、あらかじめ基本問題会議において定めまして、それに乗って審議が続けられているような状況でございます。したがいまして、経営形態にウエートを置くとか、当事者能力の強化の方にウエートを置くとか、あるいは法令関係懇談会でただいま審議していただいている給与決定過程その他にウエートを置くとか、そういうウエートの問題はないものと私は承知しておりますが、順序といたしまして、経営形態についての審議を尽くし、その審議の結果を待って検討されるべきものと考えております。
  151. 和田耕作

    和田(耕)委員 経営形態の問題は、確かにスト権を付与するということと不可分であることは私もわかるのですけれども、経営形態ということになると、これは他の膨大な問題が出てくる可能性を持っているわけです。外国でも、この問題の扱い方は、それぞれ一様ではないようですけれども、官業とか公共企業体のような形のままでスト権を与えている国もあるわけで、なぜ、こういう問題が経営形態をまともに問題にするようなところまでいったのか。これは、いまの意味のないストを繰り返すなんというようなことと関係がありはしないかと思うのですが、いかがでしょうね。  ただ、こういう内容についてはお答えできる立場じゃないと思うのですけれども、もっと、まともな労使関係があれば、現状、経営形態を一応前提にしないでスト権付与という議論が、いろいろな条件つきではあっても成り立ち得ると思うけれども、経営形態の問題が正面に出てきますと、これは二年や三年で片づく問題ではないと私は思うのです。もっと、まともな労使関係というものが公共企業体の中にあれば、そこまでいかないで問題解決ができる性質のものだと私は思うのですけれども、感想だけで結構ですが……。
  152. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 おっしゃるとおり、意見を申し述べる立場にございませんのですが、経営形態問題は結果としてはスト権付与の問題に反映する、このように承知しております。したがいまして、経営形態懇談会の、あるいは三懇談会の意見が出ました段階におきまして、それを踏みまして検討がなされるというように承知しておりますので、いま先生のおっしゃったようなお考えも、その際には出てくるかどうか、この点については基本問題会議の問題と承知しております。
  153. 和田耕作

    和田(耕)委員 いずれにしても、私どもの関係あるいはいろいろな団体から、いまの違法ストに対する反対の意思表示が非常に強いのです。したがって、近い機会に、効果のある反省を求める会議をやろうとしておるわけですけれども、こういう法律違反を公然と、しかも、いかにも正しいかのように主張する風潮というものは一日も早く解決しないと、成田の問題とか、いろいろな問題もそれと無関係ではないわけですから、ぜひとも、そういう問題について真剣な配慮をお願いしたいと思うのです。  それにつきましても、私は今度の回答というのは、ちょっと大所高所から見た回答じゃないんじゃないかという感じがしてならないのです。そのことだけ、ひとつ申し上げておきたいと思います。  スト権の問題でも、もう問題点は大体煮詰まってきていると思いますので、早く詰めて、この前のように民間にしなければ問題にならぬというふうな提示の仕方ではなくて——これをやれば実際において答えになるようでならないのです。もっと、その次の問題を煮詰めていかないと回答にならないという感じが私はするのです。ぜひとも、そういう問題を関係の機関の会合で述べていただきたいと思います。
  154. 伊豫田敏雄

    ○伊豫田政府委員 御意見として十分承っておきます。
  155. 和田耕作

    和田(耕)委員 そこで労働大臣、私は今度同僚委員と一緒に松山に行ったのです。例の造船業のかなり大きな、中の上ぐらいの企業が四つも倒産をする、繊維関係、タオルとか縫製関係の人たちが特に困難を来しているという地域ですけれども、私が特にこの点をと思って行ったのは、円高の影響なんですね。円高の影響というものが、全体から見て予想よりも非常に緩慢な形の影響。というのは、業界として、それに何とかかんとか対応していっているという状態だというふうに見たのですけれども、中小企業庁の方、お見えになっておりますね。この問題がクローズアップされてから、もう半年になりますけれども、全体として、これが業界に対する影響をどういうふうにごらんになっておられるのですか。
  156. 西川禎一

    ○西川説明員 昨年の初めから円が徐々に、またある時期におきましては急速に上昇しておるわけでございますが、中小企業庁では、何度かにわたりまして、特に円高の影響が大きく及びそうである輸出比率の高い産地を取り上げまして、全国的に調査を重ねてまいっておりまして、最近では三月の中ごろに、円が二百三十円に上がったという時点で調査をいたしました。その後、急速に円が二百二十円に接近いたしましたものですから、急遽、中小企業庁の部長、三人おりますが、これを主要な産地に派遣いたしまして、その後の二百二十円台におきます影響、実態というものも、あわせ調査いたしたわけでございますが、これらの調査を総合いたしまして申し上げられることは、以下のとおりではないかと思います。  それは、昨年の十月の急激な上昇時点、二百六十円から二百四十円という激しい上昇の時期にありましては、各産地とも円の基調がよくわからないということで契約が激減いたしておりました。しかしながら、十二月、一月、二月は一応小康状態を得たような形で二百四十円で推移いたしたわけでございまして、その時期におきましては、ある程度成約が、全体的に見てでございますけれども、進んだようでございます。もちろん、昨年の実績と比べますと、水準としては下回っておりますけれども、十月のような激減ということではなかったわけでございます。したがいまして、産地の方もある程度の安堵感と申しましょうか、一服状態にあったと思います。  その間、産地の方では円高に対処するために、いろいろの方策をとってまいりました。その結果、いわゆる採算レート、これは輸出して損をしないという意味でございますが、それについての実態も、昨年の十月と、ことしの二月の時点ではかなり変わってきております。私どもの調査によりますと、昨年の十月ごろには二百七十円くらいでないと商売ができないというような回答をなさる産地が非常に多く、大体七割ぐらいを占めたわけでございますが、二月の時点では、いろいろな形で努力されまして、二百四十円でも何とかなる、あるいは二百五十円、六十円、七十円と各階層に分かれたような形になってきたわけでございます。もちろん、そのようになりましたにつきましては、輸出価格をできるだけ値上げするという価格への転嫁が一つでございますし、あるいは、それでカバーできない分につきましては、自企業の合理化その他、関係企業への協力要請というような形で対処したわけでございまして、恐らく血のにじむような思いをしながら二百四十円への対策を講じてきたと思うわけでございます。  ところが、二百二十円ということになりまして、各産地へわれわれの部長が参りましたときには、各産地の表情といたしましては、ここまでやったわれわれの努力が、また二百二十円で一体どうなるのだろうかということで、先行きに対して、きわめて強い不安感を持つと同時に、現実の商売が非常に進んでいなかったという実態になっております。そういう意味で産地では、ともかくも為替相場が早期に安定することが何よりも必要だ。そうしなければ短期の商売も、あるいは長期の対策を立てるにしても、その基礎というものが定まらないという意味で、強くそれを求められておるというのが現状でございます。産地全体といたしましては、円高という新しい情勢に徐々に徐々に対処して、もちろん苦しい血のにじむような思いをしながら進めておるといった実情ではないかと思います。
  157. 和田耕作

    和田(耕)委員 私も今度そういう感じを受けておるのですけれども、特に業界の責任者の方の発言として、手間賃を切り詰める、つまり合理化の中の手間賃を切り詰める、そして商社と関係の人たちに一緒に泣いてもらうということが中心だというふうに申しておるのですけれども、これはパートの人たちも多いし、手間賃の切り下げということが中心になっているようですけれども、そして首切りは絶対にしませんということを強調しておるのですね、この業界の代表の人たちは。首切りをしないで、しかも二百七十円から二百四十円、二百四十円から二百二十円と大幅に上がってくる。価格転嫁が自由にできればいいのですけれども、これは相手のあることだから、なかなかできやしない。労働条件が非常に下がってくるという問題が各所に出ているのじゃないかという感じがするのです。しかし、下がっても、とにかく自分の生活問題があるし、どんどん倒産もあるというときですから、しんぼうしているという問題があるというふうに思うのですが、こういう実情を少しまとめて御調査になっておられるかどうか、その点をお伺いしたい。
  158. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 まとめて調査をしておるというわけではございませんけれども、出先の基準局を通じまして、いろいろと聞いております。たとえば時間を少し長くいたしましたり、あるいは割り増し賃金の率を、これは法定を下回るわけではございませんけれども、割り増し率を下げるとか、せっかくやっておりました週休二日を少し回数を減らすとかでございますね。そういったようなことが報告されております。  私どもは、やはり法律に違反することにつきましては厳しく監視をし、指導していきたいと思っておりますが、そういった労働条件の切り下げにつきましては、やはり労使よく話し合って、していただきたい。また、変更する場合には当然、就業規則なり労働協約の改変をしなければなりませんから、そういった手続はきちんとしていただくというようなことで、注意は喚起いたしております。
  159. 和田耕作

    和田(耕)委員 仕事がなくなるよりはましだ、これは一般のそういう中小零細でなくて大企業でも、つまり雇用が先だという雰囲気が全体にあるわけですから、したがって円高の圧力に対して、これに適応していく場合に、労働条件がぐっと下がっていく、しかも、それが納得の上で下がっていくという問題があちこちにあると思うのです。それはそれとして、かなり重要な問題があるわけですから、ぜひともひとつ、こういう問題は調べていただきたい。これは全国的な問題ですけれども、集中的に出ておるところが十か十五あると思うのです。そういうところをひとつかなり綿密な調査をおやりになっていただきたいと思うのです。  通産省のいまの調査を拝見していますと、かなり機動的に調査なすっておる。これは私は感心しているのですけれども、これはもっと細かい数字があると思うのだけれども、ひとつ労働省としても、そういうものに見合う現状労働条件その他に対する影響という問題が円高という問題で——円高だけじゃないのですけれども、どのようにあれしているか、ぜひともひとつ調べてほしいと思うのです。そういうところは特に韓国とか台湾とかのそういう競争相手の問題も円高以上にあるところもあるのですけれども、幾つかの原因があっても、とにかく日本の非常に代表的な中小企業、特に繊維とかそういう小さな機械工業とかいうふうなところの労働条件は、ぜひともひとつお調べをいただきたいと思うのです。
  160. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 五十三年度の私どもの監督の進め方も、いまお話しのように、特に産地の不況業種等を抱えておるところにつきましては、注意深く監視をしながら、労働条件が著しく低下をしないようにということを、きつく指示をいたしておりますので、そういった産地ごとについての情報を収集いたしたいと思います。
  161. 和田耕作

    和田(耕)委員 次の問題は、職業訓練の問題です。  向こうの今治の波止浜造船所の労働者諸君がこもごも言っておったことは、私どもは全く倒産して——あそこは更生法等による会社の再建ということがありましても、なかなか注文がないものだから目当てがつかないということで、非常に困った状態があると思うのです。土木事業、公共的な事業に収容するといっても、あそこはちょうど四国架橋の起点になっているところですけれども、そういう公共事業だけでは造船関係の失業者を就職さすということはなかなかできない。行ってみたら二日か三日で手にいっぱい、まめができて、もう仕事ができなくなったということを報告しているのです。全くそうだと思うのですね。  そういうことであればあるほど、職業訓練という問題が非常に重要な要素になってくるわけですが、きょう採決した訓練法にも、機動的に、その土地の関係の職場に職業訓練を任すということを考えてもらえぬかという声も現場でずいぶん出たのですよ。こういうことが大事だと思うのは、ただ一般的に職業訓練をしても、新しい職業を覚えた人が新しい職業につける可能性は非常に少ないということであって、いろいろ細かい配慮が必要だと思うのですけれども、現在、職業訓練をした人たちが実際就職して働いているという率ですか、実情はどういう実情でしょうか、ちょっとお伺いいたしたい。
  162. 岩崎隆造

    岩崎政府委員 いまお話しの、現在、波止浜造船を離職した方々が訓練を受けた結果どういうところに就職しておられるかという数字となりますと、ときどきお話もありますが、実はまだ雇用保険の失業給付を受けているという状況の方々もおられまして、離転職訓練を受けた方々が就職している就職率というのは、一般の数字としては七〇%から八〇%ぐらいのところに従来あるわけでございます。ところが現実に、今回の離職者が、どういう就職率になっているかということにつきましては、私どもまだ具体的には余り——現実に訓練を受けていない方々もおられます。ただ、訓練のやり方としては、いま先生指摘のように、地場でどのような雇用需要があるか、それに対応して、どういう訓練をする必要があるか、それが既存の訓練校訓練科目でできない場合には、当然民間施設に委託する、あるいは、いま先生のお話のような受け入れ先での職場適応訓練というやり方もありますし、それから委託してお願いするということもありますから、現地でいろいろと工夫しながら、私ども予算措置その他必要なものは考えますので、そういうことで展開を図ってまいりたいと考えております。
  163. 和田耕作

    和田(耕)委員 今度、現場へ行って、中高年齢層の失業という問題、転職というのは非常にむずかしい問題だなと特に感じたのですけれども、この中高年齢層訓練という問題は、本当に現場、現場をよく指導できるような形で御指導なさるということが大事だと思いますね。特に今度の職業訓練法の大事な点、目当ての企業に委託して、働きやすいような形で企業訓練をさして、それでそこへ就職さすという考え方を、もっと拡大していく必要があるのではないかという感じがするのです。きょう通った職業訓練法というのは非常にいいところに目をつけられたなという感じがするのですね。現に、そういうことを言う工場長がおりました。それはそうだという感じがするのです。と同時に、やはり造船業とか機械工業関係の失業者というのは、数がまあ向こうは二千とか三千がたまった、公共事業を起こせば二千、三千のあれができるというふうな形の対策ではだめですね。やはりこれはもっと細かく、転職しやすいようなところを考えた対策でないと、なかなかあれにならない。  そういうふうな意味で今後、労働省とか通産省、産業官庁と労働官庁とが、たとえば今治なら今治、あるいはその他のそういう企業地が幾つかあるのですが、ここの失業者をどうするかということについて、もっと産業官庁と労働省と打ち合わせをするということが大事だなという感じを受けたのですけれども、そういう再就職の問題をテーマにした各省の協力関係というものを結んでいく必要が特にあるのではないかという感じを持ったのです。こういう問題はいかがですか。
  164. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 構造不況業種から離職される方々の再就職、これは年齢的には、まさに中高年齢者でございまして、その人たちの再就職を促進するための職業訓練ということについては、やはりその地域の労働市場そしてまた、その人の持っておる特性といいますか、造船の場合には造船の技術ですね、こういったものを生かせるような再就職の道を考えなければならぬ。そのためには、やはり各地域の意見を十分反映するような機関もつくって、そのような考え方を職業訓練の実施の面において反映するということはぜひ取り入れたい、このように考えております。
  165. 和田耕作

    和田(耕)委員 最後に、私の御要望を申し上げたいのでして、たとえば造船業、機械等の失業が非常にふえてくる、今後もかなりふえてくると思うのです。全般としてのキャパシティーが、たとえば三割なら三割というふうなものに当たる人たちが転職が必要となってくるとするなれば、そういう人は、いま言った土方に収容するわけにいかないのですから、飛行機産業を日本でもっと計画的に考えてみるとかいうふうな配慮を、高いレベルで考えていかなければ日本の雇用対策にならないないんじゃないかというふうな気がしてならないのです。そういうふうな意味で、通産省と労働省あるいは大蔵省あたり産業関係が、この膨大な、しかも構造的な失業を転換するためにはという形で、新しい雇用の機会を、その場その場の問題ではなくて、もっと組織的な形で考えてみなければならない、それくらい深刻な事態ではないかという感じがするのですね、今後の問題としても。ぜひとも、そういう問題を含めて、ひとつお願いをしておきたいと思います。  これで終わります。
  166. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、田中美智子君。
  167. 田中美智子

    ○田中(美)委員 全国紙の新聞配達を何年間やっていれば貸与した奨学金を免除するという奨学制度の問題について質問したいわけです。何々育英奨学会というのがありますけれども、これは大学と専修学校を対象にしているもので、それとは違いますので、非常に紛らわしいので、お間違いにならないようにしていただきたいのですけれども、各種学校、それから専修学校もあるのですけれども、主に各種学校に向けて〇〇奨学会というふうなものを常設しているところが多いわけです。この奨学制度というのは、新聞販売店に学生を紹介するのを業務としているのではないかというふうに、私が調査したのでは思えるわけです。  たとえば、学校法人の千代田学園という学園の中に奨学会というのがあります。そして全国紙の新聞販売店に学生を紹介する業務をやっているわけです。これは、無料職業紹介をやろうとする者は職業安定法第三十三条によって労働大臣の許可を受けなければならないというふうに思うわけですけれども、この千代田学園の奨学会というのは、労働大臣の許可を受けているのでしょうか。
  168. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 許可を受けておりません。
  169. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、ここの奨学会は法を無視して職業紹介業をやっているということですね。ですから仮に、この奨学会が職安法に基づいて許可の申請をした場合には、労働省としては許可をできる状態であるかどうかというふうに思うわけです。その点をちょっと。いまの状態で、申請していないが、もし申請すればいいのかということでしたら、許可が受けられるかどうかということです。
  170. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 ただいま御指摘いただきました千代田学園における問題でございますけれども、確かに奨学会の専従の方がおられまして、いわゆる奨学生の募集事務を行っておるわけでございます。その募集事務を行う際に、当然これは条件一つでございますので、就労する新聞販売店を特定しなければならない。そういう意味で、特定の新聞販売店を紹介するということが、この事業の中に入ってしまっている。このことが直ちに職業紹介業務あるいは職業紹介事業と言えるかどうかは非常に疑問のあるところでございますけれども、ただ特定の販売店を紹介していくというその形を見ますと、非常に職業紹介に類似した形であるわけで、私どもは好ましいものではないというふうに考えておるわけでございます。そういう意味で、一定の是正指導をしてまいりたいと思うわけでございますが、ただいま御指摘いただきましたように、では、この奨学会が職業安定法三十三条に基づく労働大臣の許可を申請した場合に、どうなのかということにつきましては、この奨学会の性格あるいは団体の役割り等をもう少し検討してみないと、何とも申し上げられないというふうに考えています。
  171. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私としては、いまのところでは業をしているというか、非常に脱法行為というふうに見えるわけなんですね。それで私としては、労働大臣の許可を受けているのは千代田学園なわけですから、この学園が自分の学生をアルバイトとして紹介する、それには、これこれ、こういう条件でこうなんですという形で紹介するように、すっきりとした形に改善させていただきたい。そうしませんと、いかにも奨学会という、いわゆる大学生が奨学資金をもらうというふうに親は誤解するわけですね。その上には全国紙の名前が出ていますので、全くその新聞社が責任を持ってやっているんじゃないかというふうに誤解をするようにできていて、実際には、どこにも責任を持つ人がいない。親がだまされたんだというので学校へ行ったら、学校は知らないという。奨学会に行ったら、奨学会は知らないという。販売店に聞けという形で、どこにも苦情の持っていきようがないという状態が起きているので、これはぜひもっとすっきりとした指導をさせていただきたいというふうに思います。まず、この千代田学園が職業をあっせんする、アルバイトをあっせんするというふうにはっきりとする。そうすれば千代田学園は責任を持つわけですから、そういうふうに御指導をしていただきたいというふうに思います。大臣、それはよろしいですね。
  172. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 確かに奨学生の募集事務と就職のあっせんということは、それぞれ別の行為でございます。奨学会におきましては奨学生の募集事務を行う。それから就職あっせんは、先生指摘のように、千代田学園においては三十三条の許可を得ておりますので学園の紹介機関が行う、こういうような形で指導してまいりたいというふうに考えております。
  173. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうしますと、結局この奨学会というのは学園の中に部屋もあるし、人もいるという形ですから、口ではどういうふうにでも言えるわけですよね。実際には千代田学園に行ったら、親に対しては知らぬ、こういうわけですからね。それがいままでのような形をとっている限りは、常時そこでは何をしているのかということを監視しない限りは、これはできないことにならないかというふうに私は思いますので、ここのところの指導が非常にむずかしいというふうに思うのです。結局、これはこのままの形で、そこは販売店は紹介しないんだということになるわけですね、あなたのいまおっしゃることだと。そういうことはしない。そうするとお金だけを貸すというわけですか。奨学会の業務というのはどういうことになるわけですか。
  174. 鹿野茂

    ○鹿野説明員 奨学生の募集につきましては、私どもの関与するところではございませんけれども、一応、新聞販売店に勤務するということを条件にして奨学生になるという資格が得られるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、その奨学会におきましては、奨学生になるかならないか、あるいはなる資格があるのかどうか、そういう決定は奨学会の方にしていただく。そして、その奨学生になろうという方々に対して個別の販売店をあっせんするという行為は学園の紹介機関でやっていただく。こういうような形になろうかと思います。
  175. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そういうふうにすれば幾らでも脱法行為はできますね。名前だけで、ここで奨学生になりますかということは、もう販売店に行きますかということですからね。そうすると学校が販売店を紹介するということですね。そうすると、よほどこれがきっちりといかないと、学校の方がきちんとした責任を持たないと、奨学制度という名のもとに学生が被害を受けるという結果が起きるというふうに思うわけです。  私が非常に心配しますのは、調べたわけではありませんけれども、奨学会というものの窓口で聞いてみましたら、三分の一以上はやめていくというんですね。やめていくというのは、お金を返すわけですからね。奨学金として最初出してもらったお金は全部返すということ。返して、やめていくということは、みすみす何の恩典も受けられなかったということです。いわゆる育英奨学会というのでしたらば、大学一年生でやめてしまった場合には、その授業料は免除とか、入学金は一年ならば何分の一とか、二年目なら何分の一とかいうふうになっていくから、そんな大きな金額じゃないわけです。しかし、この場合には大変な金額というものを最初から借りておいて、それを全部返していく。そのお金は、もともとお金がないから借りた人なんです。それを無理して人から借金したりして返してやめていく人が三分の一以上いる。あとの三分の二弱の人たちというのは、その中の何人が学校をちゃんと卒業しているかというと、個々に聞いた学生によると、自分たちはほとんど知らないというんですね。卒業したという人を聞いたことがないというふうな現状になっているわけです。  どうして、そうなるのかということを少しお話ししたいわけですけれども、この奨学会というのは、もともとが販売店主の連合体であるということは、お調べの結果よくおわかりになったと思うのです。     〔住委員長代理退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 二年間、新聞配達を販売店でやれば、入学金、授業料、実習費、こういうものが約五十万六千円とか、ほかのものが入りますと、もうちょっとになりますけれども、五、六十万の金を一遍に出してくれるわけですね。そして販売店、つまり使用主のところから新聞配達をしながら学校へ行く。やめたときには、これを全部返さなければならないということになっているわけです。ですから、三分の一以上の人は五、六十万払ってやめているわけです。これは労働基準法の十六条に抵触するのではないか。「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」ということになるのではないかというふうに思うのですけれども、その点はどうですか。
  176. 小粥義朗

    ○小粥説明員 奨学会は販売店主の団体が実質的にバックになっているというふうに承知いたしているわけでございます。一応、奨学会という別の名前でやっているわけでございます。  それで、基準法の十六条の問題になりますと、個々の使用者が、そこの販売店に働く従業員に対して、たとえば労働契約の不履行について違約金を取る、あるいは損害賠償額を予定するということになれば、明らかに基準法十六条違反となりますが、別個の団体である奨学会の名においてやる場合、直ちに基準法十六条違反になるかどうか、形の上ではなかなかむずかしい問題があろうかと思います。それで、その奨学会という名前の団体が必ずしも団体の体をなさないで、むしろ実体的に個々の使用者が、その販売店に働く労働者と、そういう契約を、貸借関係を結ぶということになりますと、基準法十六条の問題に該当してくるケースが出てこようかと思っております。
  177. 田中美智子

    ○田中(美)委員 結局、脱法行為をしているんじゃないかというのが私の言うことで、それがはっきりしていれば即簡単にわかるわけですけれども、結局、逃げているわけです。実際には、ちゃんと資金というお金があって、奨学会がお金を貸与しているという、そういう契約ではないですね。この契約書を見てみましても、この中に就業規則を遵守せよとかというようなことが書かれている。そして借用証書に書かれているものは、千代田学園の奨学会殿になっているのですけれども、この奨学会殿イコール販売店なんですね。現実はそうなんです。その奨学会の窓口の人に聞いても、金は自分のところで持っていませんということです。ですから全部販売店に、行きたいという子がありましたから、あなたのところはすぐ授業料を払いなさい、入学金を払いなさい、こう言うわけです。そこでの契約は販売店になっているわけです。ですから、返さなければならない相手は、あなたがおっしゃるように、奨学会というのがある程度あって、労働基準法違反でないというのだったらば、奨学会に返すなら、まだわかるわけですけれども、実際に返すのは販売店に返すわけです。ここのところをしっかりしていただかない限りは、この悲劇は絶対に直らないと私は思うのです。無料の職業紹介をやっていたか、やってなかったかという問題よりも、一番大事なのはここなんだというふうに思うのです。それで半年くらいたって、大体だまされたというふうに気がつくというのです。もうとてもやっていけないというのです。  それで、これはたとえば業務がどんなふうになっているかといいますと、この中にはこんなふうに書いてあります。これは募集の中に書いてあるのです。「時間的には販売店により小差があり、」「朝夕2回、夕刊配達は短時間で済みます。」だから「奨学会は、勉強する青年のための制度です。奨学会(販売店)が率先して勉学に支障のない日課を提示しています」きちっと印刷で、奨学会と書いて括弧して販売店と書いてあるのです。ということは、奨学会イコール販売店になっているのです。  そして朝夕の新聞配達三百部は「短時間で済みます。」と書いてあるのですけれども、販売店に働いている何人かの新聞少年に実際に聞いてみますと、大体朝四時に起きるそうです。四時に暗いときに起きて、広告の折り込みをやるわけですね。そして五時から配達に行く。大臣、聞いていてください。これは十八歳の少年ですからね。高校を出てから来るわけです。それで今度五時から七時までで大体三百部の新聞配達が終わるわけです。そして朝御飯を食べて学校に行くわけです。それから、学校から四時過ぎに販売店に帰ってくるわけです。そして六時半まで夕刊の配達を三百部やるわけです。それから三十分で夕食を済ませて、それから今度七時から九時まで集金という業務があるんですね。この中にはそんなことは全然書いてないんです。朝晩の新聞配達だけだ、そして「短時間で済みます。」とここに書いてあるわけです。それなのに、この子供たちは七時から九時まで集金をやるわけです。その上に今度は日にちを限って拡張をさせられる。これは、ノルマが何部拡張してこいと決められますので、そうすると、ぱんぱんと拡張ができればいいですけれども、できないと結局、日曜日もやるし、学校を休んでやるという形にもなるわけです。そしてそういう拡張を夜遅くまでやるといっても、やはり九時ごろまでぐらいしか人のうちにお金を取りに行くということはできませんので、今度は九時ごろから十一時までは翌日の折り込みと仕分けや何かをするというので、大体十一時でないと自由時間にならないんですね。それから、自分たちはおなかがすいたから夜鳴きのラーメンでも食べて、銭湯に行ってというと、早くても十二時、ちょっとラジオのディスクジョッキーでも聞きたいということになると一時になってしまうというんですね。そうすると、朝四時ですからね。どんなにぎりぎりに寝ても五時間、普通は四時間しか夜、睡眠時間がないんですね。ですから、学校へ行っても眠るわけです。朝、御飯を食べても、また寝てしまって学校に行かれないというようなことになったり、その上に会社の集金をさせるということになりますと、会社ということは昼間ですので、月のうち何日かは学校に行けない。これは販売店によっても違うと思います、昼間集金させているというところは全部じゃないかもしれません。しかし、夜の集金とか仕分けとかで、夜十一時までということは、これはもうほとんどの販売店がやっているわけです。  ですから、半年の間は無我夢中で、不眠不休のような形で、日曜はただただ寝るというような形でやって、六カ月たって、もう続けられないという形でやめようとすると、一番少ないので五十万六千円を返さなければやめられないというわけです。それは販売店なんですよ。よく聞いていただきたいのです。私の知っている弁護士のところですけれども、こんなことがいいのかというので、親が弁護士事務所に訴えたわけです。弁護士の方から、そこに、なぜ五十何万、六十何万を払わなければならないのか明細を出せという形でやりますと、すぱっと何にも言わない。そして解放してくれるというか、やめさせてくれるわけなんです。そしてその子供は親からのお金で学校へ行って卒業できたわけですけれども、結局、この奨学会にはひどい目に遭ったということで、この人は弁護士によって救われたわけですけれども、弁護士が出ていけば払わなくてもいいようなお金なのかということですね。そこのところに私はどうしても疑いを持つのです。  時間がちょっと足らないのですけれども、ちょっと読んでみますと、おたくの方の出された労働基準法のこのコンメンタールに「一たん使用者が特定の費用を与え、一定期間の間使用者のもとで勤務しない場合は、損害賠償としてその額だけ払わせるという損害賠償予定の契約と考えることがあり、その場合、本条違反となる。」となっている。ですから、結局一万、二万、三万の借金ならば、それによって自分が拘束されたということにはならないかもしれませんけれども、十八歳の少年が五十万、六十万の借金を返さなければやめられないという状態は、これは明らかに拘束されているというふうに思うわけです。  そういう点で、私としては、これが違反だから罰してくれということを言っているのではなくて、やはりいまの日本の状態の中では、子供たちが大学、各種学校に行くのに親からはお金がもらえない。だけど各種学校へ行きたいというので、新聞配達をしながら学校に行かれるということは、私は基本的にいいことだというふうに思うのです。ですから、こうした労働基準法違反が行われないように、まず千代田学園が責任を持つと同時に、こういうふうに返還をしなければならないというのではなくて、育英奨学会がやっているように、途中でだめだというときは免除措置をつくっていくというふうにすれば十六条違反にならないじゃないか。これは明らかに労働基準法違反じゃないか。これが違反でないというんだったら、脱法行為は何でも許せるというぐらい、本当にはっきりしている違反ではないかと思うのです。私は、その点を罰してくれというより、直してほしいという形で、いま言っているわけなんです。そういう点で御回答をいただきたいと思います。
  178. 小粥義朗

    ○小粥説明員 先生指摘の奨学会の実態については、私ども承知してない点もあったわけでございます。いままで私どもで承知しておりましたのは、奨学会の名において販売店から奨学金の原資を徴取し千代田学園の方に払う。二年の販売店での業務ができない場合の返済については、やはり、その奨学会に対して返済をするというふうに承知していたわけでございます。それがいま先生のお話のとおりですと、むしろ返済も各販売店主、つまり雇用されているところに直接返済するということになりますと、基準法十六条の問題の疑いが出てまいります。その点はさらに実態を調べたいと思います。その上で、そうしたいわゆる人身拘束的なことにならないような事態に持っていきたいと考えております。
  179. 田中美智子

    ○田中(美)委員 支払いの場合は、学校に行きますと学校が奨学会へ行きなさいと言う。奨学会へ行きますと、そこから販売店に紹介してくれる。子供はそこに行くわけですね。そうして奨学会がお金を払うときは直接子供にくれないのです。それは五十万という金ですからね。それで奨学会が販売店主に、早く金を学校へ払ってくれ、こう言うわけですね。学校へ払いなさいという催促をするわけです。ですから、奨学会は全然子供に金はくれませんし、奨学会も恐らく金は受け取っていないと思うのです。販売店が学校に直接払い込むわけですね。催促されるときは、これはもう奨学会じゃないのです。私の聞いた事例は明らかにみんな販売店主なんですね。  ですから奨学会との契約でしたら、いやなら、すぐやめて、それでお金を返すのをどうするかという話になるのだったらば、いわゆる貸し借りの関係ですよ。しかし、やめられないで人質に取られている、五十万持ってこなければ、一年目だと八十万持ってこなければと。そうすると、一年たつと、もういやだと言ってくれたりするのですね。そういうふうになると、今度はしようがなくて、もう一年間は通うということになって、販売店主は金を返さない限りは、もう離さないわけですね。それで親のところに請求する、本人に請求するという形で、もうそのときは奨学会ではないわけです。  ですから、これにちゃんと書いてあるように、奨学会、括弧して販売店なんですね。奨学会との貸借ならば、そこと交渉するというのならわかりますけれども、販売店へもう体は取られてしまっているわけですから、そういうことで、非常に悲劇だということで、私のところに何人もその子供が来ました。それから親も来ました。それから親が地方から電話で、どうしようもないんだ、先生に訴えたってどうしようもないんだ、おれがだまされたんだから、こういうふうな電話を、お酒を飲んでかけてきた父親もあるわけです。母親も涙をぽろぽろ流すわけですけれども、二年たっても単位がとれない。しかし、二年たちますと百何万の金を返さなければならないというので、泣く泣く、この三月まで勤めたある子がいます。  もう一人の子の場合は、弁護士のあれで払わずに早目にやめたわけですから、いいわけですけれども、その子の場合には親が迎えに来たわけですね。それでその子を連れて私のところに来たわけです。私はしようがないから、もう二年勤め上げたから返さなくていいわけですから自分の故郷に帰れというふうに言ったわけですけれども、本人はいやだと言うのですね。どうしてかと私はその子に聞いたわけです。親は泣きながら帰ってほしいと言うわけです。親は非行になるのではないかという疑いを持って心配しているわけですね。そうすると本人は、同級生に恥ずかしい、同級生は大学へ行ったり勤めたりして、勤めた人間は何々会社に高校を出て二年間勤めたという実績ができている。ぼくの場合には、いわゆるアルバイトで新聞配達をしていたというだけで、学校の単位もとれないし何にもならない。これではとても帰れない。だから東京にそのまま居残って、どこか夜のバーテンにでもなろうかというわけですね。  これは一つの事例ですけれども、私はその気持ちというのはとてもよくわかるわけです。大人から見れば二年のロスぐらいというふうに思う人もあるかもしれませんけれども、感じやすい十八歳の少年というのが、いま非常に多くの販売店で働いている。そのおかげで私たちが、外国のように外に買いに行かないで自分のうちで新聞を読める。それはこういう少年の犠牲のもとにあるのだということで、その子を見て本当にかわいそうで涙ぐんでしまったわけです。  ですから、いやになったときには、きちっと免除の措置があり、そしてもっと現実に学校に行き——睡眠時間が三時間、四時間なんということは、どんな強健な子供でも、大人だって続くわけはないのですから、そういうところの責任を学校自体がもっときちっと持って、そして新聞配達をしながら学校へ行かれるように、販売店主が労働基準法違反を平気でできるような状態に置いておかないように、きちっとした指導をしていただきたいというふうに私は思います。これはもう非常に大きな社会問題だと思いますので、ぜひ労働省の指導を強くして、徹底的に、いますぐ改善をしていただきたい。あすの朝もまた、その子供たちは新聞を配っているわけですので、ぜひその点をお願いしたいと思います。大臣、どうでしょうか。
  180. 藤井勝志

    ○藤井国務大臣 勤労青少年、これは成長期にある若い人が働きながら勉強する、こういう立場の人ですから、やはりその保護と健やかな成長を念願していくというのが政治の務めだと思うのであります。したがって、労働基準法なりあるいは勤労青少年福祉法、この法律の線に基づいて、いろいろな施策は進められているわけでございまして、仮にそういった法の精神に反するようなことがあるならば、これは厳重に措置しなければならない、また正しい方向に指導しなければならない、このように思います。  いま具体的なお話でございましたが、具体的なことは、この事実をよく調査して善処しなければならぬ、こう思います。
  181. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では、次の質問をいたします。  昨年の十一月二十二日の社労委で私が質問いたしました、これは中部電力の宅直制度の問題です。宅直制度という名の宿直をさせていたという問題で、これはおかげさまで労働省の指導によりまして、宅直制度はいいことではないのだ、事実上宿直なんだという形で、宿直にかわるという改善を見たわけです。これはまだ日にちの問題なので完全な改善とは言えないかもしれませんけれども、一応宿直制度に扱われるようになったという御指導をいただけたわけです。  そこで、残っている問題ですけれども、それまでの間、宅直制という形で、非常に安い金額で宿直をさせられていたその差額ですね、これを支払ってほしいということなんですけれども、これが進んでいませんので、これをぜひ進めていただきたいというふうに思うのですけれども、その方の御指導はどういうふうになっているでしょうか。
  182. 小粥義朗

    ○小粥説明員 昨年十一月の当委員会での御質疑の後、そうした許可を受けていない宿直という形の宅直があるということで、是正方の指導を愛知の労働基準局を通じて、やったわけでございます。その宅直自体は、いま先生お話しのように宿直という形に切りかえられたというふうに報告を受けております。  問題は、その宅直時代の手当が宿直よりも安いという点があったわけでございます。それについては、言うならば宅直についての手当をどうするかということそれ自体は、実は労使が自主的に決める話だということになるわけでございます。許可を受けていなかったという点の責任は、これは会社として負わなければいけない。その点は会社側としても是正の姿勢を示したわけでございます。いままで私どもで御報告を受けていますのは、宿直に切りかわった後、では宅直時代の取り扱いをどうするかということで、なお労使の話し合いが続いておるというふうに聞いております。近々、愛知県の基準局の方にも結果の報告が来るだろうというふうに思っております。
  183. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうすると、許可をとらなければならないのに、勝手に許可をとらなかった、そして宅直でやっていたということを労働省としては承認するわけですか。だから、許可をとれば、それが宿直になるんだ。その前のとらなかったのは、それはもう構わないということですか。
  184. 小粥義朗

    ○小粥説明員 基準法上定められた所定の手続をとらなかったことの責任は、私ども基準監督機関として会社に対して追及をしたわけでございます。その結果、是正をするという会社側の姿勢が出たわけでございます。従来、基準法の違反は、いろいろな態様のものがございますけれども、結局、事態の是正をさせることが主眼目でございますから、そうした意味で会社に対して指導もしてまいりたわけでございます。  問題は、それじゃ是正される前の姿をどうしたらいいかという問題になるわけでございますが、是正する前の、たとえば宿日直手当が、あるいは宅直の手当が、法が定めている線に届かないというような明らかな法違反があるとすれば、これは監督機関としての是正、指導ということをしなければならないわけでございますが、手続違反は別といたしまして、宅直手当の額そのものが法違反かどうかということになりますと、これは基準法上、明文の規定があるわけではございませんので、その額をどう決めるかというのは、労使が自主的に決めるべき筋合いの問題になるという意味で、労使が話し合いを続けているというふうに受けとめているわけでございます。
  185. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そんなことを言ったら、勝手に労働組合との間で話をして、そして実際の宿直をさせているのに、これは宅直なんだ、労働組合認めろと言って、その届けを出さないで、そして宿直させている。それがそのまま、まかり通って、見つかったら、大会社だからしようがないから届けを出してということになってしまうじゃないかと私は思うのです。  会社の内部資料というのが私の手に入ったわけですが、これにはこういうことが書いてあるわけです。「昭和五十一年度 考査報告書」これは制御所業務の実態について五十一年九月考査部というふうになっているわけです。これはそのものですけれども、これを見ますと、昭和五十一年六月一日から六月十八日までを会社の中で調べたわけですよ。労働基準法違反がないかというのを調べた。この中で、「通勤者の宅直については労働基準法にいう宿直に該当する公算が大きい。」と、ちゃんと会社の中で、これは労働基準法に該当するのじゃないか、こういうふうに言っているわけなんですね。そうして「小規模事業場の例外措置を考えても、その回数において問題があり再検討の余地がある。」というふうに、私が言ったようなことが会社の中で、ちゃんと上へ上げてあるわけですね。それなのに、私が国会で取り上げるまで知らぬ顔して、ほうっておいたわけですよ。会社自体が労働基準法違反じゃないかと言っているわけですよ。そういうふうに調査した人が言っているわけです。それなのに労働省の方は、いま改善したんだからいいということにはならないのじゃないですか。やはりその宅直期間というものを、いま労働者は二年返してほしい、こう言っているわけですね。  ついでに全部言ってしまいますが、これはちょっと話が違うのですけれども、ことしの三月三十日の中部読売新聞をコピーをしたわけですが、「中電にこにこ日銭一億円円高差益 それでも値下げは考えない」これが中部読売の見出しなんですね。この新聞の記事によりますと、五十一年度のことは、ちょっと別にしまして五十三年度、ことしの円相場が、もし平均して一ドル二百二十円だとしますと、一ドルについて七十八円の差が出るわけですね。そうすると、中電は一年間で四百六十八億円というものが為替差益として、もうかるという言い方は変ですけれども、これだけ収益が上がる。収益が上がるというのも変ですね。これだけ浮くわけですね。これから原油価格の負担増百億円を引いても、三百六十八億円という計算です。ですから、一日一億円と、こういうんですね。いま中電の労働者に、二年さかのぼって宅直制を宿直に認めるならば、その差額というものを計算して払ってくれれば幾らになるかというのを計算したわけですね。これは、人によって宅直した日にちが違いますので、みんなばらばらですけれども、五十万円ぐらいの人もいるし、百万円ぐらいになる人もあるというわけです。大体この調査報告ですと、三百六人の調査を考査部がやっているのですけれども、宅直をやった人が千人を超すというんですね。まあそこまでにはならないと思うのですけれども、多く見て一人百万円としても、約千人が宅直をしてきているわけですので、そうすると大体十億なんですよ。十億円のバックペイをしてもらえば、労働者はそれで納得するというのは変ですけれども、納得するわけですよ。要求なんですね。一日一億円の、利益じゃなくて為替差益が上がっているんですね。ですから、これは直接結びつくものではありません。別に為替差益が上がってなくても上がっていても、それは別の問題として、やはり宿直にする差額というものは返してもらうというのは、私は当然だと思うのですけれども、返済能力があるという点で言うのですが、十日分で済むわけですね。それなのに、どうしてこれがまだ解決できないのか。そういう点では、大至急労働省としてこれの指導をしていただきたい。間違っていたから誤りを直したわけですからね。その間違ったことをごめんなさいと言うためには、やはりそのごめんなさい分だけは払うべきではないか。それで労使がともにすっきりするのじゃないかと思います。大臣、その点ぜひやっていただきたいと思います。
  186. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私ども、監督行政をやっていきます場合の基本的態度は、法違反に対して私どもは厳しい措置をしてまいります。したがって、この件につきましては、宿直についての手続について瑕疵があったわけですから、それについては直させたわけでございます。  もう一点の、宿直に対する手当と申しますか、それが法違反であれば、私どもも厳しく追及いたしますけれども、この点については一応基準を満たしております。したがって、それ以上にやるかやらないかの問題は、労使で十分お話し合いをいただきたい。そういう点について、私どもも現地の方にも十分指示をいたしております。
  187. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それは冷たい言葉ですよ。最低に満たしているといっても、ほかの本社や何かの宿直の金額と違っているわけですからね。あなたは、それは会社の中の差別なんだから、それはおれは知らぬ、そういうことになるんですよ、いまのお言葉は。最低基準を満たしているといっても、ある人には宿直としてたくさんやっていた。こっちには宅直として、法的には満たした金を渡していたのだから、届けさえすればいいんだ。あと、差別があろうとなかろうと、それは構わないのだということでは、おかしいわけですよ。やはり、その会社の中で見るべきだというふうに思うのですね。それぐらいのことは常識で、私は、そんな冷たい法解釈はないと思う。法律というのは人間のつくったものですから、同じ会社の中でBさんは三百円だ、Aさんは百円でいいんだということでは、やはりこれ自体も差別ですから、こういうものも私は労働省としてはきちっとした指導をしていただきたいというふうに思います。ぜひこの点を強く要望しまして、次の質問に移りたいと思います。  これは、もう時間がありませんので、簡単に申しますが、大田区にあります北辰電機の問題で、十分労働省は御存じなことです。簡単にひとつ申しますと、昨年の一月三十日に中村順子さんという方が労災認定を大田の労基署で受けているわけです。頸肩腕障害ということです。そして、その年の三月八日、四月二十六日、七月二十五日と、半日就労してもいいのではないかという医者の診断書もあって、半日就労して少しづつ体をならしたいということですけれども、これは、会社はまだ就労させないという形で、いままで療養してこられたわけです。ことしの三月十四日になりまして、解雇予告通知が来たというので労基署の方にお願いしまして、藤井副社長という方が呼ばれて、指導をされたのではないかというふうに本人が言っているわけです。そこで、どういう指導をなさったのか知りませんけれども、その十日後、三月二十四日に解雇通告が来たわけですね。そして、そのとき彼女は妊娠四カ月だったわけです。それで三月二十八日に、もちろんこれは労基署に訴えて、労基署が解雇の撤回の是正勧告をしたということですね。それなのに、いまなお、きょうになっても解雇を撤回しない。こういうふうに、労働省の方が勧告を出しても言うことを聞かなかったらしょうがないのだということでは、大臣、労働省の権威というのはどこにあるのだ。せっかく労災を認定したということは、労働省が認めたわけです。労働省が客観的に認めたわけです。これは首切ってはいけないということも労働省は認めた。それを、言うことを聞かない。いまなお解雇されっ放しですね。そうすれば、結局裁判にしなければならない。また、こうした病人が、いつまでも裁判をというので、ちゃんとした安定した状態にならないということ、これを救うということは、労災認定になるかどうか、それはもう解雇していいか悪いかという論議ではない。解雇してはいけないということでは労働省と私とは一致しているわけです。それも指導できないということでは、これは困ると思うのですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  188. 小粥義朗

    ○小粥説明員 御指摘の事案で、業務上の疾病のために療養中解雇されたという形になりますので、いま先生お話しのように、先月二十八日、監督署としては是正の勧告をしたわけでございます。その後、直ちに会社として、それに応ずる姿勢がなかったものですから、できるだけ円満に解決するように指導をしてまいっておりますが、現在まで、まだ直っておりません。そうなりますと当然、基準法違反として、監督機関は司法警察官の職務も持っておるわけでございますから、司法処分に付するということも考えられるわけでございますが、実はきょう、関係組合の方から、この件についての告訴がなされた、告発がされたというふうに報告を受けております。したがって、刑事訟訴法に基づきまして監督機関としての厳正な措置をとるべく、やることにいたしております。
  189. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いま現在、同じ北辰電機に北島武さんという方と佐藤誠さんという方が、やはり労災認定を労基署で受けているわけです。御存じだと思います。中村さんの解雇の理由というものが、私病だ、向こうは私的な病気だ、ですから休職なんだという考え方をしているわけですね。それがそのまま通っていくということになりますと、このお二人の方たちも休職扱いになりますと、勤務年限で、いつか休職が切れるということになりますので、大体いつごろ解雇されるかということが予想できるわけです。ですから、最初のところで歯どめをかけておかないと、次々と同じ事件が起きるということなんですね。そこのところが一致していないわけですよ。会社の方は労働省の言うことを聞いていない。これは労災ではないんだ。勝手にそっちは労災を受けているのであって、自分の方は認めてないんだ。だから私的病気なんだから、いま休んだのは休職なんだ。だから休職期限が切れたから首切ったんだ。こういうことを言っているわけですからね。あとお二人の人たちも、そういうふうにすれば、何月何日に大体切られるということは想像できるわけです、中村順子さんの場合が通れば。そういうことで次々と同じ事件を起こしていくことになりますので、私は厳重な指導をしていただきたい。そしてあとのお二人の北島さん、佐藤さん、絶対にそういうことが二度とないように、ありますと、また国会でやらなければならない。またやらなければならないということになりますので、ぜひこの点、厳重な指導をしていただきたいというふうに思います。大臣、いかがですか。
  190. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 先ほどもお答え申しましたように、基準法違反につきましては私どもは厳正な態度をもって処理をいたします。いまの中村さんのお話は、いま監督課長が申し上げましたように、最後は司法処分というような最後の手段を講じなければならぬと思いますが、そういったような事案につきましては、いま申し上げましたような厳正なる態度で臨みたい、こういうふうに思います。
  191. 田中美智子

    ○田中(美)委員 次に、もう時間がありませんので簡単に申し上げますが、交通遺児の家庭が非常に苦労しているということで、こういう「赤いシグナル」という、お父さんを交通事故で殺されてしまったという人の母ですね、その母が体験記を書いているわけです。本当にこれは涙ぐましいものなんですけれども、この人たちの半数が健康を害していますし、月収が十万円以下というのがやはり半数いるのですね。十万円以下で子供が一人、二人、もう三人いらっしゃる方が大分いらっしゃるのです。必死になって働いているわけです。  それで私としては、いますぐやっていただきたいことがたくさんあるのですけれども、この方たちに聞きますと、こういう安い賃金で働いておりますので、五万、十万、十五万のお金に困るわけですね。そのために職を失ったり、そのために、みすみすいい仕事があるのに、それに行かれない。それで、昨年の四月からやられました訓練手当というのができるといっても、これに行く人が非常に少ないわけですね。聞いてみますと、実際には知らないという人が非常に多い。それから知っていても行かないというのは、不安だというのですね。七万円もらいながら職訓を受けても、その後の受け入れ対策がないじゃないか、不安だ。それで、いまなお十万円くらいの安いところで働いているわけです。それも失ったら困るということなんです。そういう方たちにぜひ、もう少し職訓の受けざらをつくりながら、この職訓制度というものを知らせてほしい。私が母子相談員や婦人相談員に電話をかけましたら、ほとんど知らないというのですね。ですから、もうちょっとPRをきっちりしていただきたい。せっかく、いいものをつくっても利用者がないということではあれですので、ぜひこれをしていただきたいということをまずお願いします。  もう一つは、駆け込み融資を何とかできないか。それは十万、十五万、こういうお金なんですね。ですから、これを何とかしてほしいというのと、それからもう一つは、各種学校に子供をやりたいというのが三〇%いるのですね。自分が手に技術がなかったために夫に急に死なれて本当に苦労した。だから、せめて子供は高校だけじゃなくて、どこか各種学校へやりたい。それに入学金だ何だと金が要るわけですね。それで交通遺児の育英会では高校だけですね。育英会は大学もやっていますけれども、国の補助というのは高校だけですね。それで私としては、何とか自賠責の特会の保障勘定の中から、いま育英会だとか救急医療だとかというものに、この運用益を使っていますが、この五万、十万、十五万という駆け込み融資のところに、そういうものを使ってもらえないか、それから各種学校に行くにも補助金を出すようなものをつくってもらえないか。これを見ますと、お金もあるという。どれがあると言えるかわかりませんけれども、あると思いますので、ぜひそれをお願いしたいと思うわけですけれども、その点はやっていただけますでしょうか。考えていただけますでしょうか。
  192. 橋本豊

    橋本説明員 交通遺児育英会に関する御質問でございますので、総理府の交通安全対策担当の橋本の方からお答えいたします。  先生が先ほど仰せのように、交通遺児育英会は現在、高等学校と大学に進学している生徒、学生に奨学金を出しております。さらに大学院生について、ほんの数名だけ出しております。しかし、専修学校につきましては、二年ほど前に専修学校制度改正がありました際に、この学校の生徒にも出すことを検討したそうでございますが、財源の関係で見送ったということでございます。各種学校については、まず専修学校の生徒への奨学金の貸し付けを実現してからの問題にしたいというふうに考えておるようでございます。大体状況はそうでございます。  それから、駆け込みの融資というのは交通遺児育英会では所管事項でないようでございますので、他の面で御検討願いたいと思います。
  193. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私の質問を、ちょっと取り違えていらっしゃるので、私は育英会のことを言っているのではありません。育英会は別の団体ですからね。それに対してどうこう言うのではなくて、この運用益を、このお金を高校だけにしか出していないじゃないか。ですから、これも専修学校、各種学校に出すようにしてほしい、こう言っているわけです。育英会にどうせよ、こういうふうに言っているわけじゃないんです。そういう制度を考えてほしい。だから、育英会でできないなら、また別に、そういうものを出すところをつくってもいいし、駆け込み融資というのを、別にどこか受けざらというものをつくって、そこに金を出すということを検討してもらえないかということを言っているわけです。育英会にどうのこうのと言っていることじゃありません。
  194. 橋本豊

    橋本説明員 自賠責の運用益は、この配分は総理府は関与しておりませんで、詳細につきましては所管の省、運輸省、大蔵省が関係ございますが、そこにお聞き願いたいと思いますけれども、交通遺児に対するそういうものにつきましては、関係の省庁あるいは類似の制度を持っておる省庁とも連絡をとりまして、財源措置可能性を含め、検討してみたいと思います。
  195. 田中美智子

    ○田中(美)委員 財源の問題は確かにそちらの方でしょうけれども、やはり政策として、こういうふうにしてくれということは総理府なわけですからね。総理府の方が検討していただいて、相談していただきたいと思います。  それではどうも。
  196. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次回は、明十九日水曜日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五分散会      ————◇—————