運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-13 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十三日(木曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君       井上  裕君    池田 行彦君       石橋 一弥君    川田 正則君       斉藤滋与史君    戸沢 政方君       友納 武人君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    安島 友義君       枝村 要作君    大原  亨君       金子 みつ君    川本 敏美君       栗林 三郎君    田口 一男君       中村 重光君    矢山 有作君       草川 昭三君    古寺  宏君       浦井  洋君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小沢 辰男君  出席政府委員         内閣法制局第四         部長      別府 正夫君         厚生省公衆衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省保険局長 八木 哲夫君  委員外出席者         法務省入国管理         局審判課長   日野 正晴君         外務大臣官房領         事移住部査証室         長       高瀬 尚一君         外務省条約局法         規課長     柳井 俊二君         大蔵省主計局主         計官      窪田  弘君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   齋藤 邦吉君     池田 行彦君   栗林 三郎君     中村 重光君 同日  辞任         補欠選任   池田 行彦君     齋藤 邦吉君   中村 重光君     栗林 三郎君     ————————————— 四月十二日  診療放射線技師制度に関する請願相沢英之君  紹介)(第三〇二三号)  同(愛知和男紹介)(第三〇二四号)  同(青木正久紹介)(第三〇二五号)  同(石井一紹介)(第三〇二六号)  同(江藤隆美紹介)(第三〇二七号)  同(鹿野道彦紹介)(第三〇二八号)  同外二件(木村俊夫紹介)(第三〇二九号)  同(倉成正紹介)(第三〇三〇号)  同(佐野嘉吉紹介)(第三〇三一号)  同(正示啓次郎紹介)(第三〇三二号)  同(鈴木善幸紹介)(第三〇三三号)  同(住栄作紹介)(第三〇三四号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第三〇三五号)  同(田澤吉郎紹介)(第三〇三六号)  同(田中伊三次君紹介)(第三〇三七号)  同(楢橋進紹介)(第三〇三八号)  同(羽生田進紹介)(第三〇三九号)  同(葉梨信行紹介)(第三〇四〇号)  同(橋本龍太郎紹介)(第三〇四一号)  同(林義郎紹介)(第三〇四二号)  同(福田一紹介)(第三〇四三号)  同(藤本孝雄紹介)(第三〇四四号)  同(増岡博之紹介)(第三〇四五号)  同(武藤嘉文紹介)(第三〇四六号)  同(森喜朗紹介)(第三〇四七号)  同(山崎武三郎紹介)(第三〇四八号)  同(山下元利紹介)(第三〇四九号)  同(山下徳夫紹介)(第三〇五〇号)  同(渡辺紘三君紹介)(第三〇五一号)  療術の制度化に関する請願小渕恵三紹介)  (第三〇五二号)  同外七件(小坂善太郎紹介)(第三〇五三  号)  同外一件(佐々木義武紹介)(第三〇五四  号)  同外四件(林義郎紹介)(第三〇五五号)  同外十三件(堀内光雄紹介)(第三〇五六  号)  同(近藤鉄雄紹介)(第三一二九号)  同外八件(塚原俊平紹介)(第三一三〇号)  同外一件(阿部文男紹介)(第三一四八号)  同外二件(川田正則紹介)(第三一四九号)  同外一件(篠田弘作紹介)(第三一五〇号)  同(地崎宇三郎紹介)(第三一五一号)  同外一件(友納武人紹介)(第三一五二号)  同外二件(中川一郎紹介)(第三一五三号)  同(中村靖紹介)(第三一五四号)  同外十三件(根本龍太郎紹介)(第三一五五  号)  同外二件(浜田幸一紹介)(第三一五六号)  同外二件(林大幹君紹介)(第三一五七号)  同外一件(箕輪登紹介)(第三一五八号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第三一五九号)  同(向山一人紹介)(第三一六〇号)  雇用保障及び労働時間の短縮等に関する請願(  川口大助紹介)(第三〇五七号)  同外一件(佐藤観樹紹介)(第三〇五八号)  同(塚田庄平紹介)(第三〇五九号)  同(平林剛紹介)(第三〇六〇号)  同(伊藤茂紹介)(第三一六一号)  みつばち保育園の認可設立に関する請願田中  美智子君紹介)(第三〇六一号)  保育事業振興に関する請願登坂重次郎君紹  介)(第三〇六二号)  同(松本善明紹介)(第三一三一号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法期限延長に関  する請願平林剛紹介)(第三〇六三号)  視覚障害者雇用促進に関する請願外一件(逢  沢英雄紹介)(第三一〇七号)  同(塩崎潤紹介)(第三一〇八号)  同外一件(塩谷一夫紹介)(第三一〇九号)  同(菅波茂紹介)(第三一一〇号)  同外一件(塚田徹紹介)(第三一一一号)  同(早川崇紹介)(第三一一二号)  同(宮崎茂一紹介)(第三一一三号)  同(渡部恒三紹介)(第三一一四号)  同(森清紹介)(第三一一五号)  同(山口シヅエ紹介)(第三一一六号)  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  宇都宮徳馬紹介)(第三一一八号)  同(松本忠助紹介)(第三一一九号)  同外一件(村山富市紹介)(第三一六六号)  同(八百板正紹介)(第三一六七号)  国民年金改善に関する請願河野洋平紹介)  (第三一二〇号)  母性保障法制定に関する請願河野洋平君紹  介)(第三一二一号)  同(玉置一徳紹介)(第三一二二号)  同(塚本三郎紹介)(第三一二三号)  同(中野寛成紹介)(第三一二四号)  同(中井洽紹介)(第三一二五号)  同(中村正雄紹介)(第三一二六号)  同(山本悌二郎紹介)(第三一二七号)  同(吉田之久君紹介)(第三一二八号)  同(千葉千代世紹介)(第三一六五号)  社会保障社会福祉拡充等に関する請願(和  田耕作紹介)(第三一三二号)  保育関係費増額に関する請願岩垂寿喜男君紹  介)(第三一六二号)  戦時災害援護法制定に関する請願大原亨君紹  介)(第三一六三号)  原子爆弾被爆者援護法即時制定に関する請願  外一件(大原亨紹介)(第三一六四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第四一号)  原子爆弾被爆者等援護法案大原亨君外六名提  出、第八十二回国会衆法第一号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び第八十二回国会大原亨君外六名提出原子爆弾被爆者等援護法案の両案を議題とし、質疑に入ります。     —————————————  原子爆弾被爆者等援護法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 木野晴夫

    木野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田行彦君。
  4. 池田行彦

    池田(行)委員 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案並びにそれに関連する諸問題につきまして若干質問させていただきたいと思います。  最初に、私的なことを申し上げて恐縮でございますが、実は私自身も、かつて広島市で育った人間でございまして、原爆投下のわずか二週間前まで現在平和公園になっております地に住まいしておったものでございます。そういう意味で多くの身近な人間あるいは友人を原爆犠牲者に持っておりますので、本当に、そういう方々が安らかにお眠りになるように、また、いまも苦しんでおられます数十万の被爆者方々生活に、あらゆる面で不安がないように、そういった日が一日も早く来ることを祈念しておるものでございます。  さて、質問に入りますが、まず最初に、去る三月三十日最高裁の第一小法廷におきまして孫振斗訴訟の問題について判決が出されております。この判決の中身を見てまいりますと、いわゆる原爆医療法社会保障法としての性格、こういったものを持っておることは認めながらも、他面において、原子爆弾というきわめて特殊な戦争被害につきまして、戦争遂行主体でございました国家責任というものを認めまして、その国家責任によりまして救済を図るという一面を有するものだ、こういうことを言っております。さらに具体的には、実質的に国家補償的配慮制度根底にある、こういうことが否定できないと言っておるわけでございますが、この国家補償的配慮制度根底にあるという判決見解につきまして、政府はどのようにお考えになっておるのであろうか。また、この判決を踏まえて行政面において、どのように対処していかれるおつもりであるか。その点をまず、お伺いしたいと存じます。
  5. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもは従来、国会等の場におきまして、この原爆二法に関して社会保障立法だということを申し上げてきておるわけでございますが、私は今度の判決をいただきまして、さすが専門家でといいますか、こうした判決を拝見いたしますと、法律論的にいろいろ、われわれが気がついていない面を御指摘いただいたような気がするわけでございます。しかも、現在の二法というものは確かに、この判決で言われておりますように、たとえば所得制限というものを考えておりません。もし社会保障立法だけで純粋に考えますと、所得制限というものは当然出てこなければいかぬわけでございますが、所得制限がない。したがって、判決のお示しになったような解釈が、本当はその当初から妥当ではなかったのか。われわれが、そういう面について気がつかなかったというとあれですけれども、少し勉強不足だったなあという感じを持っておるわけでございます。  ただ、全くの国家補償の観念で終始、立法されたという解釈でないわけでございます。社会保障的な立法ではあるが、しかし、その根底には、いろいろ法の規定の内容なり、あるいは実際に行われている対策なり等を見ると、やはり国家補償的配慮——配慮と言っておられるわけでございまして、配慮制度根底にあるということを否定できないとおっしゃっておるわけでございますから、今度の判決は、まさに政府の従来実施しておりました、また御提案申し上げて今日まで、いろいろ医療生活援護をやってまいりました、まさに、この二法についての性格を私は非常に正確にとらえておられるのじゃないか、こういうふうに思っております。  したがいまして、この結果、私どもが、この判決によって新たに何かしなければいけないのかと、いろいろ検討してみますと、そう必要はないのじゃないか。いろいろな各種の手当あるいはその他の制度を見てみますと、まさに現在の制度についての性格づけをおやりになったので、特別、新たなる対策をさらに付さなければ、この判決趣旨に合わぬというふうには、私ども、いまのところは考えていません。
  6. 池田行彦

    池田(行)委員 ただいまの大臣答弁によりますと、本当に現在の二法の性格あるいはその内容を正確に表現したというものであって、特に今回の判決を踏まえて新たなことを行う必要はないんじゃないか、こういうふうな御見解だったと思うのでございますが、そういたしますと、これとの関連におきまして、実は野党の皆様が共同で御提案なさっておりますいわゆる原爆被爆者援護法案というものが継続審議になっておるわけでございますが、このいわゆる援護法案と、それから、この判決との関係でございますが、ただいま大臣のお述べになりましたような考え方、確かにこの判決の中でも国家補償的な配慮と言っておるわけでございまして、特に国家補償法でなくてはいかぬというところまでは言っておりません。そういたしますと必ずしも、そういったいわゆる国家補償観点に立った援護法をつくらなくてもいいんじゃないかという見方もございましょうけれども、一方におきましては、いやそうではないのだ。まだ現行法体系というものは、やはり基本は社会保障法であって、国家補償的な配慮をされておるが、その配慮が十分でないので、さらに進んで本当に国家補償の立場に立った法体系をつくるべきじゃないか。そういった見方解釈もあり得るかと思うのでございますが、その点については、どのように大臣考えでございましょうか。
  7. 小沢辰男

    小沢国務大臣 確かに両論あると思うのでございまして、しかし私どもは、また先生方のいろいろ御審議を願って、われわれの配慮が足らぬ点があれば、それはもう政府として、また逐次これを手直しをしていかなければいかぬと思っておりますけれども、特別に法体系をわざわざ変えなければ、この判決趣旨に沿わないのだというふうには、実は考えてないわけでございます。そういう意味で、決して私は逃げるつもりもございませんで、今日の法体系の中で、できるだけ被爆者実態等を見ながら、この援護の充実を期していくということでいいんじゃないかと思っております。努力の足りない点があれば今後とも努力をさしていただいて、改善方向を逐次ひとつ実施してまいりたい、かように考えます。
  8. 池田行彦

    池田(行)委員 大臣のお考え、よくわかりました。しかし、そういたしますと現行法体系の中でも、まださらに配慮すべき点については、それを進めてまいる必要があろうかと思うのでございますが、その場合いろいろ考え方があると思うのでございますけれども救済と申しましょうか、一方において、そういった政府としてのいろいろな手当を、対象をさらにどんどん広げていくという考え方でございますね。他方においては、いや現在やっているいろんな諸政策の中でも、特に原爆放射能影響を強くお受けになって本当にお気の毒な方々、こういった方々に対する処遇というものを、さらに一層推し進めていくべきじゃないかという考え方もあると思うのでございます。  私、個人的には、いろいろございますが、特別給付金の交付なんという問題も出ておるようでございますけれども、私は、この際、諸般の情勢考えますと、対象をどんどん拡大するというよりも、むしろ本当にお気の毒な方々に対する手厚い救済の手を、こちらの方をまず進めるべきじゃないかと考えるものでございます。そういった観点から、今年度の予算を中心といたしましたいろんな被爆者対策改善措置を見てまいりますと、大体例年どおり一歩一歩前には進んでおると思うのでございます。しかしながら、まだまだ足りないところもあるのじゃないかと思いますので、その点二、三、今後の方向なり方針というものをお伺いしてまいりたいと思うのでございます。  まず、そういった意味健康管理手当、さらに申しますと、より以上に特別手当というものにつきましては、ことしも福祉の方との横並びで改善されておるようでございますが、もう少し手厚い増額を将来にわたって図るべきではないか。特に今回、国家補償的な配慮があるという判決を出されたことでもございますし、これは明年度以降の問題として、その方向についてお伺いいたしたいと思います。
  9. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 ただいま先生指摘の重い方に手厚く、こういうお話でございます。昭和五十三年度の特別手当につきましては、五十二年度三万円から三万三千円という増額をいたしておるわけでございまして、これにつきましては、大体物価上昇が七・六%というふうな数字でございますが、それよりもやや上回った一〇%アップということで特別手当の方は引き上げをいたしておるわけでございます。  同様に、健康管理手当につきましても一〇%のアップをいたしておりますし、さらに、この点につきましては健康管理手当支給するいわゆる疾病対象を、従来の十障害から十一障害というふうに広げるということを今回いたしたわけでございます。  なお、その他の保健手当医療手当等につきましても、これは大体ただいま申し上げた上昇率に見合った上げ率というのを考えておるわけでございます。  なお、確かに先生がおっしゃられました、特に重い方に特に手厚くしろ、こういう御意見でございますが、さらに来年度以降、先生の御指摘の点を十分考えまして対処していきたいと考えます。
  10. 池田行彦

    池田(行)委員 ぜひ、そういった方向で御検討願いたいと思うのです。その中で、ただいま局長の方からも、ちょっとお触れになりましたけれども健康管理手当対象障害でございますが、今回、潰瘍を伴う消化器機能障害が入りました。これが入りますと、あと残されますのは、要するに潰瘍を伴わない消化器機能障害という問題、あとは皮膚の障害でございましょうか、この二つくらいになると思うのでございますけれども、これはいろいろ御議論もあろうと思うのでございますけれども、将来にわたって、あともうこれはこれで制限せずに、すべての障害対象にしていただくという方向で御検討いただけないかという点が一つ。  それから保健手当適用範囲でございますけれども、これは現在、爆心から二キロメートル以内の範囲内における直爆者ということになっておるかと思うのでございます。これにつきまして御当局も十分御承知だと思いますけれども、何とか拡大してもらえないか。特に、かつて特別被爆者ということで三キロメートル以内という定義がございまして、その関係で、そこまで拡大という要望がいろいろあるのでございます。このあたりどうなのか。  医学的あるいは科学的な見地からいって、要望に、あるいは現在制限している方に十分な根拠があるのか、どうなのか、その辺も実は私も十分つまびらかにいたしておりませんので何とも申せないのでございますけれども、もし、この要望が医学的、科学的見地から見てもっともだというようなことであれば、これは将来いろいろ拡大方向を御検討願いたいと思いますし、いやどうも科学的根拠に乏しいのだということであるならば、むしろ、そのあたりの理由、根拠というものを十分御説明いただきまして、可能性のないものならば、淡いと言ってはなんですが、はかない期待を被爆者方々に持たせるというのもいかがかと存じますので、その点について局長の御見解を承りたいと思います。
  11. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 先生最初の御指摘健康管理手当支給要件としての障害範囲をもっと拡大したらどうか。確かに、おっしゃるとおりに今回、消化器機能障害を追加したわけでございますが、これは潰瘍を伴う消化器障害ということで一つの制限的なことになっております。こういった障害をつけ加えます場合に、私ども原爆医療審議会等専門家の御意見を伺いながら個々に、いわゆる原爆放射線影響があると思われる関連疾病、こういうことで入れておりますので、ここまで広がってきたから、要するに、あと残り全部にしてしまえ、こうなりますと、原爆放射線影響があると思われる疾患というのが、すべての病気にまでいってしまうわけでございまして、そこら辺、やはり単なる普通の胃病とか下痢したとかというようなところまで、そういった原爆放射線影響がある、関連がある疾患考えられるかどうかという専門家の御意見もあるわけでございまして、そういう点も踏まえながら、いわゆる専門家の御意見を聞きつつ私ども検討してまいりたいと思いますが、ここまで来てしまったから、あとみんな入れてしまえばいいんだ、こういうところには必ずしも、ちょっとまいらないのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから第二の問題で、現在、保健手当爆心地から二キロメートルというところで線を引いて支給いたしておるわけでございますが、それをもっと拡大する気はないか、こういうことでございまして、その根拠は何だ、こういうことでございます。  これも、しばしば議論になっておるわけでございますが、国際放射線防護委員会ICRP勧告を出しておりまして、その勧告によりますと、一生に一度被曝する場合の最大許容線量二十五レムというふうな勧告が従来ございまして、その勧告に基づきまして、この二十五レムという線量を一応考え、そして現在二キロメートルという範囲でありますと、これは広島にしても長崎にしても二キロメートルの線までをとれば、たとえば長崎ですと十ハレムということでございますので、二キロメートルまでとれば、これは少なくも二十五レムのところよりはるかにと申しますか、それを間違いなくカバーしておる、こういう考えで、この二キロメートルというのが設定されておるわけでございます。なおICRP勧告が何回もあるわけでございますが、その勧告の改定につきましても大体同じような考え方が通っておるようでございまして、そういう点から、この二十五レムという線でいいのではないかというふうに考えております。  なお同時に、米国の放射線防護測定委員会勧告というのも、危険地帯に立ち入る基準というのを、全身被曝線量二十五レム以下というような、こういうところで、やはり同じような二十五レムというような数字も使われておるわけでございまして、そんなところから、この二キロメートルというのを一応設定しておる、こういう考え方でございます。
  12. 池田行彦

    池田(行)委員 保健手当対象でも、障害範囲につきましては、ここまで来たのだから全部入れろというような趣旨におとりになったかと思いますが、原爆被爆との関連性というところは当然前提でございますので、残されたところ、わずかでございますが、それにつきましても、そういった関連性あるのかないのか、その辺をさらに御検討いただきまして、その上で、もし可能であるならばお願いいたしたい、こういうことにしておきたいと思います。  それから先ほど大臣の御答弁の中にも、現在の法律でも、いろいろ国家補償的な性格もある。その例として所得制限が置かれていない、こういうお話があったわけでございますけれども、いわゆる諸手当支給の面につきましては、まだ所得制限があるわけでございますね。ことしも、いわゆる社会福祉一般につきましては、むしろ所得制限の面は強化される、そういった傾向といいましょうか風潮の中におきまして、本件に限りましては所得制限緩和していただいた。これで対象が九五%程度までまいりましたでしょうか、大体標準世帯で五百六十万ぐらいの収入までカバーできるようになったと思うのでございますが、この点は、こういった厳しい情勢の中でよく御努力いただいたと評価するものなのでございますけれども、先ほどから申しております国家補償的配慮、これを推し進める意味からも、この点につきましては明年度以降、所得制限撤廃ということをお考えいただけないだろうかどうだろうか。これは社会福祉あるいは社会保障体系全般はともかくとして、本法につきましては、国家補償的な配慮、これをこの面で推し進めるということで、どうだろうかと考えるのでございますが、いかがでございましょうか。
  13. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 所得制限緩和につきまして、ただいま先生指摘のように、五十二年度九三%の支給率であったものを五十三年度からは九五%ということで、少し緩和をいたしたわけでございます。それで、この所得制限につきましては、私ども予算要求をいたします場合においては撤廃という形で、ずっと所得制限予算要求はいたしております。しかし私どもといたしまして、最終的に予算編成に当たりまして、相当お金がある、いわば五%ぐらいの方は、やはり残っていてもいいのではないかという考え方で、この九五%ということで本年度の予算はお願いしたわけでございます。しかし、ただいま先生の御指摘もございますし、また私どもも従来から要求といたしましては所得制限撤廃という要求をいたしておりますので、来年以降も、さらに努力をしていきたいと思います。
  14. 池田行彦

    池田(行)委員 今回こういった孫振斗判決も出たことでございます。そうして国家補償性格というものがはっきりと打ち出されたわけでもございますので、明年度以降そういった方向で御努力いただきたいと思います。  ここでまた、ちょっと孫振斗判決そのものに関連してお伺いしたいのでございますが、今回の判決で、現在国籍のない人間で、しかも、その入国が必ずしも合法的ではないけれども原爆手帳を交付しなくてはいかぬ、こういうことになったわけでございますが、この判決に従って当然、所要の行政措置をすでに、おとりになっていると承知いたしております。しかし、ここで問題は、判決でも「わが国に現在する者である限りは、その現在する理由等のいかんを」問わず、こういう言い方になっておるわけでございますね。そういたしますと、同じ被爆者であり、また孫振斗さんと同じように、かつて日本国籍にあった人であっても、日本の国内に現住しない者、韓国には約二万とも言われておりますが、そういった被爆者の方がおいでになるというふうに言われておるのでございますが、そういった方々あるいはその他の国、たとえばアメリカには約千名ぐらいでございましょうか、これは日本国籍を有する者、あるいは有していた者、被爆者方々がおいでになると承知しておるのでございますが、こういった方々に対しまして、この原爆二法上当然やらなくちゃならぬかどうかの問題は別といたしまして、政府として、これまで何か医療団の派遣などもなされた例があるというようにも聞いておりますけれども、どういうようなことをなさったか。また、これから、そういった方々に対して何らかの措置というものをとっていかれるおつもりがおありかどうか。その点をお伺いいたしたいと思います。
  15. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 外国におられる被爆者の方につきまして何か手を打つことはないか、こういうふうな御質問と思いますが、まず外国に現在いらっしゃる方は当然その国の方であるわけでございまして、私ども基本的には、よその国にいらっしゃる方に問題があるならば、その国から外交ルートを通じまして日本に、こういうふうなことをしてほしい、こういうお話がございましたならば、それは私どもとして十分そのお話を受けるというつもりはいたしておるわけでございます。ただ何といっても国と国の関係の問題がございますので、よその国にいる方に、こちらから、こうするんだというようなことを申し上げることは大変外交的に微妙な問題もはらんでおりますので、私どもとしては、こちらから、そういうことを言うことは差し控えたいと考えております。  なお一つの例といたしまして昨年、在米の被爆者方々に、こちらから専門医を派遣いたしまして健康診断をやったことはございます。この場合におきましても、アメリカの在米被爆者方々から、そういうふうな会ができまして、そういうところから正式に外交ルートを通じて、こういうことをしてほしい、こういうお話がございました。そこで私どもとしましては、財団法人の放射線影響研究所と広島県の医師会の方々に御協力をいただきまして、あちらへ医師団を派遣して、向こうのアメリカにおられる日本人の被爆者の方の健康診断を実施したというケースがございます。ですから、ただいま申し上げましたような、こういうふうにはっきりと外交ルートを通じて話がございますれば、私ども、それに何らかの形で御相談に応じたいというふうに考えております。
  16. 池田行彦

    池田(行)委員 ただいまおっしゃいましたように、今後とも米国あるいは韓国その他の国から、そういった要請のある場合には、確かに現在は、それぞれの国の国籍を有する者あるいはそこに居住権を有する者であるとしましても、やはり同じ原爆被爆者として救済の手は可能な範囲内で差し伸べてあげてしかるべきかと存じますので、よろしく御配慮を願いたいと思います。  次に、原爆小頭症の問題でございますが、この問題、いろいろ経緯がございまして、昭和五十二年度の予算におきまして指導費が計上されました。今度いろいろやってみますと、実行上なかなか本当に患者の方々あるいはその保護者の方々のニーズにうまく合致しないということもあって、今年度昭和五十三年度予算では月額三万円でございましたか、手当のかっこうに組みかえられたそうでございまして、誤りを正すにはばかることなく本当に迅速に手当てをなさった、これは評価したいと思います。  しかし、いろいろ伺ってみますと、扶養者の方方、患者の方々、いろいろ将来の健康あるいは生活について不安感をお持ちになっておる。そして終身保障の措置と申しましょうか、具体的には、たとえばコロニーを建設していただけないかというような声もあるようでございます。ただ、これはきわめて人数も限られておりますが、しかし、その限られた人数の中でも、お一人お一人非常に個別具体的に環境も違えば病状も違えば、いろんな事情の違いがあると思うのでございます。そういった意味で御当局としても、なかなかこの方々を一括して措置をするというのはむずかしいかと思うのでございますが、しかし、いずれにしましても、そういったきわめて重大な不安に脅かされながら暮らしておられる方々でございますので、予算がどうだこうだという話は別といたしましても、今後とも、そういった個別の事情に応じた、きめ細かい御配慮をお願いいたしたい。今回手当を出したから、これでもうすべて終わったんだ、そういうことではなくて、今後ともいろいろ御指導なり、そういった面でよろしくお願いしたいと思います。
  17. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 ただいま先生おっしゃいました小頭症患者に対しまして、現在二十二人の小頭症の方がいらっしゃるわけでございますが、その方に、本年度は手当とし、さらに額も二万円から三万円に増額いたしまして月々差し上げることになっているわけであります。先生指摘のように実際、非常に家庭の環境それから症状の度合い等が違っておりまして、問題は非常にばらばらであるようでございます。全くおっしゃるとおりでございます。  それで確かにコロニーをつくったらという声も私ども伺っておりますが、そういう方々は、まあほかの小頭症の方も現実におるわけでございまして、そういう方と一緒にした場合には悪いのかというと、別にそういうこともございませんし、かえって、それだけ、かたまっていくということもどうかという問題、それからさらに、だんだん大人になってきた場合に、仕事のできる方もおられるし、できない方もおられるというので、これから時を経るに従いまして、だんだん問題が新しく展開していくというようなことを、われわれも十分認識しておるわけでございます。そういうことで、確かに先生がおっしゃいますとおり、個々のケースにつきまして、どうやったら最もその方が幸せになれるかということを、これは広島県、市、長崎県、市の方と相談しながら十分進めていきたいと考えております。
  18. 池田行彦

    池田(行)委員 次に、いわゆる原爆二世の方々でございますけれども、この方々の問題、非常に微妙なところもございまして、むずかしいと思うのでございます。しかし二世の方々に健康の不安を訴える方々も非常に多いと聞いております。そういった意味で、いわゆる放影研でも、いろいろ調査や研究を進めておられるというふうに聞いておるのでございますが、その辺はどういうふうな成果をお上げになっているだろうか。また今後どのような御方針であろうかということを一つお伺いしたいと思います。  それからもう一つ、一世の問題にしましても、いまだに、なかなか手帳の申請もしない方が私どもの身近にもたくさんおります。そういったこともございますし、ましてや二世の方々は、なかなかそれは問題があるんだぞということで、ピックアップして、いろいろ厚生省としてなさることがいいのか悪いのか、いろいろ問題があると思うのでございます。しかしながら、現に不安を持って何らかの措置を求めておられる方が少なくないというのも否定できない事実でございます。したがいまして、いろいろ厚生省としての御配慮もございましょうが、御本人が希望される場合には、たとえば健康診断をして差し上げるとか、そういったことを通じて本当に不安を取り除いていただく、そういったことは考えられないだろうか、この点について御見解を承りたいと思います。
  19. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 現在まで被爆二世の方々に対します調査はABCCあるいは放影研を通じまして研究をいたしておるわけでございますが、一つは白血病が多いのではないか。白血病というのが一番放射線被害として鋭敏な指標になるわけでございますので、そういう白血病の調査をいたしておるわけでございます。これは広島市内で白血病になられたお子さんの方を調査対象にした調査、それから、いわゆる死亡標本、亡くなられた方の標本から行った調査、それから広島の研究所に登録してある親の方から生まれたお子さん方が、その後、白血病にどうなったか、こういった三つの観点から白血病の頻度というものを調べておるわけでございますが、現在までのところ統計学的に、はっきり被爆二世の方の方が多いという答えは出ておりません。これは当然のことでございますが、まだいわゆる例数が少ないので、さらに、ずっと追っかけていくということを現在やっております。  それから昭和五十一年から新たに研究を開始したのがございますが、これは被爆二世の方と、そうでない方の、それぞれの血液を調べまして、何らかの放射線の被害がございますと、遺伝と言うのは、あるいはちょっと言い方が悪いかもしれませんが、体の中で、たん白質をつくっていく酵素に変化が起こるということがございますと、それは何らかの遺伝的な変化があるということがわかるわけでございまして、血液からそういう検査をする鋭敏な方法が開発されましたものですから、現在そういった被爆二世の方と、そうでない方との両方から血液をいただきまして、その間に差があるかということの研究を進めておるわけでございます。これもまだ例数が足りないので結論を得るところまではいっておりませんが、そのうちに結果が出てくるのではないかと考えております。  そのほか、それに類する調査がございますが、現在までのところ被爆二世の方がそうでない方と違って健康状態が悪いと証明できるデータというのは全くないわけでございまして、そういう意味から、特別に二世の方にということは、さしあたり考えておらないわけでございます。  それで、先ほども先生から健康診断という御指摘がございましたが、私ども二世の方にお目にかかると、何で調べるんだ、そんなこと調べられたら、えらい迷惑だ、こうおっしゃる方と、調べてくれとおっしゃる方と、いろいろございまして、そういった社会的な配慮ということも考えまして、なかなかむずかしい問題であるというふうに意識しておるわけでございまして、そんな点から、もう少し検討させていただきたいというふうに考えております。
  20. 池田行彦

    池田(行)委員 ただいま局長がおっしゃいました二世の方々のお気持ち、しかも、これまでの研究では他の方々との有意な差が何ら出ていないということでございますので、二世、二世と言って、いろいろクローズアップすることは確かに私は問題があると思うのでございます。そういった点については、きめ細かいというよりも十分な御配慮をお願いしたいと思うのですが、しかし、その中でも、先ほど申しましたように御本人が希望して、これで不安を取り除いてほしいのだという気持ちの方々については今後、何らかの措置を御検討いただきたい。これは御要望しておきます。  次に、被爆者原爆投下から三十三年目を迎えますと、やはり相当お年を召してこられております。そういったことは先般の被爆者実態調査からも御当局でも十分認識しておられると思うのでございますが、そういった意味で、被爆者対策のあり方というものも、老齢化の進展という実態を見ながら、それに適合したあり方に今後変えていく必要があるのではないか、こう考える次第でございます。  そこで、まず第一点、いわゆる健康診断、一般検査でございますけれども、これについては昨年は肝機能検査が追加されましたが、今年度は特に新しいものは入ってないようでございますが、この点、将来ともさらに検査項目の充実を図っていかれる方針はおありか否か。  もう一つ、本年は問診票の作成ということが計画されておるようでございます。これは本当に細かい御配慮をしていただいたと思って評価しておるのでございます。確かに単に検査、診断をするというだけじゃなくて、問診の際のお医者さんとのいろいろな話し合いを通じて本当に不安を取り除いていくということで、非常によい制度をつくっていただいたと思っております。この制度趣旨が十分生かされますように今後、実施運用の面で御配慮をお願いしたいと思います。その点について。
  21. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 先生、御指摘のように本年度は特に新たな検査項目の増というのはいたしませんでした。  ただ、ここでちょっと御報告させていただきますが、私ども実は予算要求といたしまして、ふん便の潜血反応検査というのを一応考えたわけでございます。これは結局、消化器内の出血を調べるために便に血液があるかないかということを調べる潜血反応でございますが、それを一般検査に入れようかという予算要求をしたわけでございます。これについては専門家の御意見をいろいろ伺ったのでございますが、実際に便の潜血反応をやるためには、持ってきていただく便というのは、その前一日間、肉とか葉っぱとか、そういう鉄分の含まれたものを食べないで来ないと、肉を食べると、その中に血が入っておりますので検査があいまいになってしまう。そういうことが一体、一般検査として、なじむだろうか。非常にむだな検査をいっぱいやることになるのではなかろうかと専門家から問題を指摘されまして、予算要求はいたしたわけですが、最終的には、これを取り下げたわけでございます。そういった技術的に解決できる問題がありますれば、ふやすことはやぶさかではないのでございますが、ちょっとその点、非常にむずかしい問題を含んでいるということで潜血反応は入れなかったわけでございます。  第二に問診票作成ということでございますが、現在これは東京大学の先生にお願いいたしまして、現地の方々とも接触いたしまして問診票の様式を詰めている段階でございます。確かに先生のおっしゃいますように問診票が存在することによって、検査を受けられる方と検査を行う医師との間に非常にスムーズな話し合いの場ができ上がるということも、この問診票のもたらす大きな効果だろうというふうに私ども考えております。それですから、問診票の作成に当たりましては、これを上手に利用し受検者と検査をする医師の間に心が通った会話が、それを通じて、さらにできていくようにということも配慮しながら作成し、また利用していきたいというふうに考えております。
  22. 池田行彦

    池田(行)委員 ぜひ、そういう方向でお願いいたします。  それとも若干関連するのでございますが、そういった話し合いといいましょうか、本当に親身になって相談に乗っていくという体制の強化が、老齢化との関連で、ますます重要になってくると思うのでございます。この相談業務につきましては、ことしは保健婦の経費を国費で負担されることになりました。また広島長崎以外の地域について、いろいろ講習会も予定しておられるようでございますが、こういうことは本当に結構な話だと思います。今後こういった分野はますます重要性を帯びてくると思うのでございます。地元の県なり市なりが、すでに、いろいろそういった相談員を置いているじゃないか。それを国費でやっていくのは、いわゆる後追い補助になって、特に財政当局の立場から、これは認めるわけにいかぬという話があるようでございますが、しかし、実態がますます老齢化していって、そして相談業務が重要視されてくる時代なんだということを踏まえて、いろいろ御検討いただきたい。同じ後追いと申しましても、世上言われますところの、いわゆる、ばらまき福祉の後追いというものとは、また性質が違うものでございますから、その辺は厚生省もよく御検討いただいて、財政当局とも御相談いただきたいと思います。これは御要望だけにとどめておきます。  あと、これも老齢化とも関連すると思うのですが、被爆者のごめんどうを見ていくいろいろな制度とか施設でございます。こういったものを設置している主体とか、あるいは運営の仕方が、どうもばらばらであって有機的な連携が持たれていないという声がよくあるのでございます。  施設一つ見てみましても、たとえば広島市の場合、医療に関する施設だけでも日赤広島原爆病院、これは設置主体は日本赤十字社、それから広島市立舟入病院、これは広島市が設置主体、それから原爆被爆者健康管理所、これは財団法人広島原爆障害対策協議会が設置主体、それから広島原爆養護ホーム、これは援護施設でございますけれども、運営主体は財団法人広島原爆被爆援護事業団、そのほか保養施設、調査・研究機関、たくさんございますが、いずれも設置主体も違う、運営主体もばらばらだということで、どうも問題があるということでございます。これの一元化という話もあるようでございますが、これはまあそれぞれの団体なり施設の性格あるいは沿革がいろいろとございますので、一元化というのはなかなかむずかしい点もあるかと思いますけれども、少なくとも有機的な連携というものを強化していただきたいと思うのでございますが、その点について厚生省として何か施策を考えておられるかどうか、局長からお答えをいただきたいと思います。
  23. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに先生のおっしゃいますとおりに、いろいろな病院なり管理所なり、あるいはホームなりというものがございます。確かに、ばらばらという感じがないわけではございませんが、やはり、それぞれ歴史を持って現在まで運営されてきておりますので、一元化ということは、とても現在の段階で行うことはできない状況にあるのは御指摘のとおりだと思います。ただ、現地に、たとえば広島原爆被爆者対策連絡協議会というような会合がございまして、これは県、市も入りまして、ただいま先生おっしゃられたようないろいろな設置主体が相互に話し合う場というのを持っておるというふうに私ども聞いておるわけでございます。こういう連絡協議会がスムーズに相互の連携をとりながら動けば、違う設置主体であっても十分な連携をとりながら仕事ができると思うわけでございますが、やはり先生おっしゃいましたような、いろいろな問題があるといたしますれば、この連絡協議会がスムーズに話し合いが行われていないということでもあろうかとも思いますので、私ども県、市を通じまして、連絡協議会を活用してスムーズな相互連関的な運営をするように、十分伝えたいと思います。
  24. 池田行彦

    池田(行)委員 ぜひ、お願いしたいと思うのでございます。具体的には、たとえば原爆養護ホームの現在の定員二百五十で、特養が百人、一般が百五十人というかっこうになっておるわけでございますけれども、現実には、一般の中に入っておられる方にも、本当に寝たきり同然という方も数少なくありません。そういった点、要するに老齢者の方でも、在宅と一般養護施設と、それから特養と、さらには原爆病院といったもの、そういったそれぞれの被爆者の方の具体的な状況に応じまして、最も適当な援護の手を差し伸べていくことが必要かと思いますので、いま申されました対策連絡協議会などを通しまして厚生省も御指導いただきまして、施設の運営の面だけではなくて、被爆者方々に対する措置というものが有機的な連携を保ち、本当に被爆者の方のニーズにこたえるような形にしていっていただきたいということを要望したいと思います。  次に、ちょっと原爆問題から離れるわけでございますが、実は、やはり広島県の大久野島というところに毒ガスの製造所がかつてございまして、そこで毒ガス製造に従事された方々に対する措置というものを、いま厚生省あるいは大蔵省の方の所管の共済の関係で見ておられると思うのでございますが、この方も大体、年々改善措置が講ぜられております。ことに本年度は、大久野島自体ではなく、大久野島で製造されました毒ガスの管理とか保管、輸送の業務を行っておりましたところ、これは対岸の忠海というところに昔の広島陸軍兵器補給廠忠海分廠というのがございまして、そこの職員の方々百名余りでございますが、この方々にも国として救助の手を伸べようということで、新規に対象に加えられるということになっております。たしか十月からというふうに了解しております。この点は高く評価されるわけでございますけれども、実は、なお残されている方々があるのでございます。  と申しますのは、この忠海分廠の方の職員といいましょうか、そこに勤めておられた方々は今回、共済の方で対象に加えられたわけでございますが、この分廠に、いわゆる学徒動員で働いておられた方々がございます。これは忠海西国民学校の高等科に在学された方々でありますけれども、大体、私ども聞いておりますところでは六十数名の方が、いまおられるようでございます。この方方につきましても、ぜひ対象に加えていただきたいという声があるのでございます。これは毒ガス、イペリットとかルイサイトとか、そういうものをつくっておったようでございますけれども、こういった毒ガスの輸送とか保管の業務に、どの程度、関与しておられたのかどうか、いろいろ事実関係について、まだ明らかにしなければいかぬ点もあるかと思います。また、そういうものに従事したために本当に現在、何らかの障害を持っておられるのか、影響が残っておるのか、そういう点もあるかと思うのでございます。しかし、ともかくそういった点について事実関係の究明あるいは健康調査というものを、まずお進めいただきまして、もし影響がないならないで不安を取り除いていただきたいし、もし影響があるということならば、取り残された方々につきましても将来、何らかの対象に加えていくとか、そういったことを考えていただけたらと思うのでございますが、その点について厚生省の見解をお伺いいたします。
  25. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 ただいま先生指摘の忠海分廠の方の挺身隊学徒の問題でございますが、昨年広島県におきまして、大体四十三名が調査対象者になったようでございますが、こういう方々につきましてアンケート調査、それから一般健診、精密検診というのを行いまして、その結果を現在解析中でございます。そういうことでございますので、近く、この結果ができ上がってくると思いますので、私ども、その結果を見て、いま先生指摘のような判断をいたしたいと考えております。
  26. 池田行彦

    池田(行)委員 その調査結果を見まして、適切な御措置をお願いしたいと思います。  時間も大分迫ってまいりましたので、このあたりで個別の質問は終わりにしたいと思いますが、いろいろこの問題を考えてまいりますと非常にむずかしい点がございます。国家補償的な配慮もあるとは申しましても、やはり現在の段階では、完全な国家補償の立場に立って法体系をつくっていくというのは、なかなかむずかしい点もあると思うのでございます。そういった意味では、真に救済すべき方々、最も多く影響を受けられて、いまだに悩んでおられる方々を中心としまして、今後とも救済の措置を改善していっていただきたい、こう思うのでございます。  しかし、一方におきまして原爆で犠牲になられた方、あるいはその遺族の方々は、国は何もしてくれないじゃないか、こういったことをおっしゃる。この気持ちもわからないではないのでございます。しかし、こういった気持ちは、だからどうしても年金をよこせ、あるいは特別給付金支給するようにしろ、そこまでいくかどうか。これはまた個々の方々によって違うと思いますけれども、私ども地元でいろいろお話をしておりますと、そういった現実の金とかいうものも、もちろんございますけれども、それ以上に、いわゆる国あるいは政府の誠意というものを非常に求めておる。本当に申しわけなかった、国としても皆さん方に対しては、こういう気持ちを持っているのだということを示していただきたい、こういう気持ちだろうと思うのでございます。  そういった意味におきましては、昨年、昭和五十二年はいわゆる仏教の方で申します三十三回忌に当たったわけでございますけれども広島にも長崎にも総理はお見えにならなかった。現地ではその点、非常にがっかりしたような、あるいは裏切られたとまで言いますと言い過ぎかもしれませんけれども、そういった気持ちがあるのも事実でございます。もとより多忙な総理あるいは厚生大臣でございますので、何が何でも広島へ、長崎へとは申しませんけれども、しかし現地では、そういう気持ちがあるのです。また、八月六日という日は、八月九日という日は、どういうことかということは、十分頭の中にというよりも腹の中に入れていただきまして、今後いろいろ原爆問題について対処していただきたいと思うのでございます。  それともう一つは、これは私の個人的な見解でございますけれども、最近、安全保障の問題あるいは国防の問題に関連いたしまして、核兵器の保有が可能かどうかというような問題について、もとより純粋な憲法解釈の問題としてではございますが、いろいろ議論されておるようでございます。私自身も、もとより安全保障の問題、日本の現状がこれでいいと思っておりません。もっと強化しなくちゃならぬと思っておる一人ではございます。しかしながら事、核兵器の問題に関する限りは余り軽々に論ぜられるのはいかがかという、そういう気持ちを持っておるのでございます。  何といいましても、わが国は世界で唯一の原爆被爆国でございます。いまなお、あの日に、たまたま広島あるいは長崎においでになったために、健康上あるいは生活上の不安におびえておられる方が全国に、それこそ数十万おいでになるわけでございます。そういった事実にも思いをいたしていただきたいと思いますし、また平和公園にございますように「安らかに眠ってください 過ちは繰返しませぬから」こう誓ったのはだれであったか。あの文章はいろいろ物議を醸したのでございますけれども、私ども日本国民全体が、そういった誓いをしたのではないかと思うのでございます。  まあそういった意味におきましても、この問題についてやはり慎重な上にも慎重に扱うべきではないか。もとより、これは所管違いでもございますので、大臣の御見解を求めるのはなんでございますけれども、こういった、ただいま申しました二点につきまして、そういったものを踏まえて原爆被爆者への救済措置、今後における強化、充実に関する大臣の御決意というもの、そういったものをお伺いいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  27. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ただいま一時間にわたりまして、いろいろ御質疑をいただき、また御意見をいただきました。従来とも、この原爆被爆者の方々に対する医療援護対策については努力をしてまいったつもりでございますが、なお、いろいろ承りますと、きめ細かい対策について、しかも、その対策先生が御指摘になりましたような原爆被爆者に対する本当の思いやりの心というのか、あるいは、そういう事態に対する責任感というのか、そういう心なり責任感に裏づけられたものでなければいけないということは本当にそのとおりだと思いますので、私ども十分心して今後とも対策の推進に当たっていきたいと思います。  最後の、原爆保有に対する憲法解釈等、予算委員会においてもいろいろ議論がございましたが、あくまでも、わが国は非核三原則に徹しまして今後とも政策は一貫していかなければいかぬと考えておりますので、この点も、私も御意見に同感しつつ今後とも閣僚として努力をしていかなければならぬということだけはお答え申し上げます。
  28. 池田行彦

    池田(行)委員 ありがとうございました。終わります。(拍手)
  29. 木野晴夫

    木野委員長 次に、中村重光君。
  30. 中村重光

    中村(重)委員 前の通常国会で、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案審議、これが当委員会においての採決に当たって附帯決議がつけられたわけですが、その前文に「国家補償の精神に基づく被爆者援護対策についてその制度改善に対する要望は、ますます強いものがある。よって政府は、このような事情を配慮して、今後慎重に検討する」こうした決議が全会一致でなされているわけですが、これに対して政府は、附帯決議の趣旨を体して十分被爆者対策に対して努力をするという趣旨の発言がなされているわけです。大臣は、具体的に、この附帯決議をどう尊重し、施策を講じていくのかということについて考え方を明らかにしていただきたい。  なお、この附帯決議に基づいて五十三年度の予算が編成されなければならなかったと思うのですが、五十三年度の予算の中に、あるいは原爆被爆者対策の施策の中に、これがどう生かされたと思っていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたい。
  31. 小沢辰男

    小沢国務大臣 当委員会における附帯決議の趣旨は私ども十分尊重していかなければならないことは当然でございます。したがいまして、この原爆二法につきましては逐年いろいろ改善を図ってきているわけでございますが、今年度の具体的な内容については後で局長から御説明を申し上げますけれども、私も今度の判決趣旨を踏まえまして、今後ともひとつ従来の考え方を一歩進めるようなつもりで対処していかなければいかぬのではないかというふうにも思います。しかし、原爆二法というものは少なくとも、その根底国家補償配慮があることだけは、これはもう最高裁でむしろ公認をしていただいたようなことでございますので、なお内容の充実について一層努力をしていかなければならぬというふうに考えるわけでございますので、いろいろ先生方の御意見等も踏まえまして、私どもの党にも原爆委員会等もございますし、各党と十分御相談の上に一層の充実を図ってまいりたいと思います。  今年度の対策については、具体的な点がもし必要でございましたら局長から説明をいたします。
  32. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 ただいま先生、どのような措置を講じたかということでございますが、簡単に申し上げますと、附帯決議の第一は、各種の手当の額を引き上げる、それから所得制限撤廃、こういうような内容でございますが、これにつきましては、その手当増額につきまして、ただいま法律で提案しているような内容で増額をいたしておりますし、さらに所得制限につきましても、先ほど申し上げましたように九三%から九五%というような改善をいたしておるわけでございます。  それから原爆病院の整備改善、それから財政助成ということでございますが、これにつきましては、一つは本年になりまして診療報酬の引き上げということがございまして、病院の財政も相当よくなっているのではないかというふうに予想されるわけでございますが、病院の整備費それから運営費という補助金を今年度予算に計上しておるわけでございます。  それから三番、特別手当について生活保護の収入認定から外すということにつきましては、これは当面、現状のままということで御了解いただきたいと思います。  それから原爆症の認定について実情に即するようにということでございますが、これは前々から申し上げておりますが、原爆医療審議会におきましては十分患者さんの実情を伺って、なるべく合格できる者は認定というようなことで、従来同様、実情に即した認定を行っておりますし、また今後も行っていく予定をいたしております。  それから家庭奉仕員制度の充実、相談業務の強化でございますが、これも家庭奉仕員派遣費につきまして補助金約二千三百万円でございますが、これを行いますとともに、相談事業の運営費として、いわゆる保健婦を広島長崎それぞれに設置する補助をすると同時に、そのほかの県につきまして講習会を開くという予算を計上しておるわけでございます。  それから国民健康保険の特別調整交付金を十分配慮するということでございますが、これについては保険局の方から十分な配慮をいたしておるわけでございます。  それから……
  33. 中村重光

    中村(重)委員 いいです。  大臣は、今度の最高裁の判決によって、国家補償に基づく被爆者対策が講じられているということを公認をしてもらったというようなお答えなんですが、私どもも、この被爆者対策社会保障によるのか、国家補償によっているのか、あるいは、その中間的なものであるかということば、立法府としての私どもなりの考え方というものがあるわけです。現在の被爆二法に基づくところの被爆者対策国家補償ではない。きわめて不十分な施策なんだから、国家補償に基づくところの被爆者援護対策制度化して、制度的に改善をしていくようにしなさい、こういう決議をやっているわけなんです。  だから大臣としては、現行被爆二法で、どの点が国家補償であるとお考えになっていらっしゃるのか。それから、それは三権分立ということで、最高裁の判決判決として、あったけれども立法府であるところの国会において、現在の施策はだめなんだ。だから国家補償の精神に基づくところの制度改善をやりなさい、こういうことを全会一致をもって決議をした。それに対して、その趣旨を生かしてやっていきますということを発言をしておられる。ならば、この立法機関の決議を尊重する、これが大前提であるし、優先されなければならない。最高裁がこういうことを言ったから、それで現在進めているところの施策というものは十分なんだ。国家補償によっているんだ。そういう考え方で施策を講ずるということになってまいりますと、国会の決議というものが生かされないということになると断定しても差し支えないと私は思う。その点はどうお考えになりますか。
  34. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、今度の最高裁の判決原爆医療法についての判決でございますので、その医療法を、いろいろ最高裁の最高の法律的な判断をされた。その判決の中に、御承知のように国家補償的な配慮制度根底にあるんだ。その証拠に、医療について所得制限等もしていないじゃないか。こういうような御指摘をいただいているわけでございまして、従来、いろいろな解釈が言われておりますが、主としては社会保障的な配慮で、原爆被爆という特殊性にかんがみて特別な対策をとってきたんだ、こういったお答えをしておったわけでございます。そのときにも、しかし現実の対策の内容を見ると、いま判決にありますような国家補償的な性格根底にあるんだということで、いわば完全な意味での国家補償に基づく援護医療法でなくて、まあその中間ぐらいだろうというような説もあったわけでございますけれども、こういうような判決を踏まえて見ますと、やはり私どもは、その根底国家補償的な国の責任を表明する性格等も入っておりますので、問題は、その国家補償か、そうでないかというような議論よりは、内容の充実を図っていく方がいいんじゃないか、こういうことで御答弁申し上げているわけでございまして、今後とも内容の充実には努力をいたします、こういうふうに考えているわけでございます。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 大臣は先ほど、私どもが気がついていなかったことが今度の判決指摘をされている。その中で具体的な例として所得制限をお挙げになった。なるほど厚生省は、もう恐らく三年も五年も前からだと思うが、所得制限撤廃というのを出すのですよ。ところが大蔵省に行っては、これは国家補償ではないのだからということで、所得制限撤廃というのは、改善はされるけれども撤廃まで大蔵省はなかなか踏み切らない。そういうことでパーセンテージは九三から九五まで上がった。しかし依然として所得制限がついて回っていることだけは間違いがない。ならば、大臣が気づいたということは、これは誤ってあなたは気づいたんだよ。それは厚生省は所得制限撤廃として出した。それがあなたは頭にあって、所得制限撤廃されたというようなことをおっしゃったのだと思うけれども、私はそれは議論しようとは思わない。しかし、現実には所得制限がついて回っていることは間違いない。あなたが気づいたことが、実際は国家補償ではなくて、やはり社会保障という精神によって進められている、現在の施策が講ぜられているということは間違いないわけなんだから、それ以外に、どこが、何が、どの点が国家補償だということが言えますか。
  36. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私が申し上げましたのは、この最高裁の判決というのは原爆医療法のことを言っている。医療法の中には所得制限はないわけでございますから、それを引用されて判決がそうおっしゃっておるわけですね。したがって、この最高裁の判決というのは援護法については何ら触れていない。医療法の適用について判決になっておるわけです。しかし当然、援護法もそれと同じような考え方でいかなければいかぬじゃないかと私ども思います。  しかし、この判決でも完全に国家補償でやるべしという判決ではない。しかし、根底には国家補償の精神というものを否定できないのだからということで結論を出しておられるわけでございますので、いわば完全なる国家補償の精神に基づく立法ではないけれども国家補償的な性格根底に持っていることは否定できないわけでございますので、そういう意味で年々努力しまして、所得制限についても、ほとんど一〇〇%に近いものにいっていることは、この性格と私はそう矛盾しないんじゃないかと思うわけでございますので、努力を、もちろんいたしますが、いま直ちに補償法でなければいかぬという議論じゃなくて、問題は被爆者のための援護なり医療の措置がきめ細かく今後も配慮できるような内容の充実を図っていく方に重点を置いたらどうなのかな、こういうふうに申し上げているわけでございますので、逐年ひとつ努力をしてまいります。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 それは最高裁から、この医療法というのは国家補償の精神というものが根底にあるんだ。にもかかわらず政府が講じている施策というものは、その根底にある国家補償的なものも実際には生かしていないんだと、施策の不十分さを指摘されたのです。しかも、今回は最高裁のそうした指摘なんだけれども、もう原爆裁判と称するものは、昭和三十八年の東京地裁の判決もそうなんだ。それからまだ、広島の石田裁判もそうなんだ。今度の最高裁の判決と大体変わらないような形の指摘がなされている。国の財政事情、財政力からいって、余りにも被爆者対策が貧困であるということを指摘されてきたんだ。にもかかわらず、原爆裁判のたびごとに、その不十分さというものを指摘されなければならないほど政府被爆者対策というものは貧困であったということ、これをまず反省しなければいけないということなんです。  だから、先ほど来いろいろ質問に対して答えておられたのだけれども、この所得制限撤廃しかり、あるいはまた二世、三世の問題にしても、局長の答えを聞いていると、二世、三世の血液検査等をやって調査をしているけれども、統計学的には影響はあらわれていない、そういうことで引き続いて検討いたしますと、歴代の局長が同じようなことを答弁しているのだよ。     〔委員長退席、住委員長代理着席〕  それでは具体的にお尋ねするのだけれども、被爆二世と、そうでない二世、三世の白血病の疾病率というものはどうなっていますか。こんなに長い間かかって統計をとっておるんだったら、はっきりしているでしょう。その点を明らかにしてみてください。
  38. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 ちょっと、その具体的な数字は、いま覚えておらないのでございますが、先ほど申しました一つ広島市内、長崎市内で白血病になられた二世の方を、両親の被爆の距離別に表をつくったのがあったと思います。それは残念ながら分母がないわけでございますので、どっちから、どれだけ出たという疾病率が出ていない。ただし、両親が被爆した方々から生まれた方の数は、ほかの数に比べて非常に少なかったというように記憶しております。  それから第二は、死亡標本から取りました数字でございまして、これにつきまして、いわゆるパーソンイヤーという計算をいたしたものでございます。これは結局一人一年という考え方で、ある人が十年生きていれば十という数になるわけでございます。それを両親の被爆距離別に白血病の方の率をパーソンイヤーで出したものでございますが、ちょっと数字を覚えておりませんが、二キロ以内、広島市内、それから全く広島市内にいなかった、この三つに分けまして、その間でほとんど数字が変わらず、しかも、それが全国の数字とほぼ一致しておるということで、差がないという結果がABCCの結論として出ておったのを見たわけでございます。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 当委員会で、この医療法であるとか特別措置法の改正案を審議をして附帯決議をつけている。二世、三世対策というのは毎国会の附帯決議になっているのだ。さらにまた、私どもは具体的な事実を挙げて、いわゆる死亡率であるとかいうものを挙げて二世、三世対策を講じなさいと言っているのだ。あなたが先ほどのような答弁で、統計学的に影響があらわれていないというならば、少なくとも、きょうのような改正法案の審議に当たって質問が出るのはあたりまえなんだから、はっきりしたデータを挙げて、こういうことだからだめなんだというような答弁をしなければ、何か思い出し思い出しみたいなことで、そういう苦しい答弁をしたからって、あなた自身が確信を持っていないわけなんだ。そういうことでは少なくとも院の軽視という形につながってくると私は思う。そんなことでは説得力がない。しかも私どもは、あなたがつけ加えたように、いわゆる社会的な影響が出てくる、就職であるとか結婚であるとか、確かにそういうことはあるのですよ。あるから二世、三世全部そうしなさいとまで言っていない。希望があれば、その希望に沿って精密検査もし、手帳も交付するという措置を講じなさい、こう言っているのだ。なかなか厚生省が踏み切らぬものだから、原爆病院等では、それに近いようなことをやっているのではないかと私は思う。それが生きた政治というものではないのですか。そういうことでは不見識だと私は申し上げざるを得ない。この次も同じような答弁が返ってくるのだったら私どもは納得できない。今後どうしますか。  さらにまた、大蔵省にも、おいでだと思うのでお尋ねをするのだけれども、先ほどの所得制限撤廃の問題に対しては、厚生省から毎予算編成の際に撤廃という形で要求しているのだけれども、大蔵省がなかなかこれを認めない。社会保障ということからだと思うのだけれども、そういう答弁がやはり委員会の質問によって行われたこともあるわけなんで、社会保障という点からいったならば、それなりに私は根拠があると思う。厚生省が、社会保障である、あるいは、その中間的であるということで所得制限撤廃ということを言っているのか、あるいは今回の最高裁の判決によって、国家補償的なものが根底にあるのだから、こう言って、そういう確信の上に立って所得制限撤廃要求しているのか、どちらがあいまいなのかはっきりしない。少なくとも、そういうことは政府として、はっきりした統一見解を持って対処していくということでないと、それば被爆者も納得しないと思う。だから、あなたから二世、三世の問題について今後どうするのか。それから大蔵省からは、所得制限撤廃という厚生省の要求を認めない根拠は何なのかということを答えてほしい。
  40. 小沢辰男

    小沢国務大臣 詳しい事務当局の説明の前に私、ちょっと申し上げますが、社会的な影響等を考えますと、そのおそれありということから、そう軽々に二世、三世の方の調査をするなり健康診断の対象にするなりということについては、そういう点も十分配慮しながらやらなければいかぬということは、私は、これは先生も御理解いただけると思うのです。しかし、それにもかかわらず希望があればとおっしゃいましたが、希望があって健康診断をやることは、素直にそのままであれば、それは結構だと思いますけれども、そうすると、その次には、それでは手帳を渡せ、健康管理を全部というようなことになると、これはもう少し研究をさせていただきませんと、そうそこまで進んだことを、私どもは、いまから申し上げるわけに、なかなかいかないわけです。それは御理解いただけるだろうと思うのです。  それから所得制限は、国家補償観点から、もうなくなるべきだ。社会保障観点からやっているから、所得制限をやるのじゃないかとおっしゃいますが、国家補償観点が非常に強い恩給についても御承知のように所得制限があるわけでございますから、そういう面を見ますと、必ずしも、こうした手当について所得制限があることが国家補償的配慮がないのだと一概に言うわけにはなかなかいかぬのではないかと思います。しかし私どもは、被爆者実態等から見て、なるべく、そういうものはないようにしていきたいというので、逐年それは解消を図りつつあって、今年度も御承知のとおり、その率の引き上げを図っているわけでございますから、この私ども努力の気持ちだけは、よく理解していただかなければいかぬだろうと思うのです。
  41. 窪田弘

    ○窪田説明員 所得制限の問題については先生の御指摘のとおりでございますが、先般の戦争の被害者というものは非常にたくさんおられるわけでございまして、私ごとを申しては失礼ではございますが、私も家を焼かれ肉親を失っているわけでございます。しかし、そういう被害者の中でも原爆の被害者というものは、人類が初めて受けた悲惨な被害である、特別なものであるということで、この二法をつくって、できるだけの配慮をさせていただいているわけでございます。事、医療については所得制限ということは問題にしておりませんけれども、他の特別措置については、やはり限られた財政需要の範囲内でございますので、できるだけ財政資金を重点的に振り向けていきたいという観点で設けさせていただいているわけでございますが、ただいま大臣からもお話がございましたように、逐次これは改善をいたしているところでございます。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係があるから先に進めますが、原爆病院の問題です。  原爆病院の整備改善、それから原爆病院の運営費の補助、これが二千六百万、五十三年度も据え置きになっているわけですね。これを増額しなかった理由。  それから、原爆病院の整備改善については原爆病院が手狭で、広島の方はよくわからないのだけれども広島の方の運営は、長崎原爆病院と比較すると、よほど原爆被爆者中心にやっているように私は思うのですが、長崎の場合は四割から五割近く一般の患者が入院しているんですよ。被爆者は入院できないんだ。それで病床のあくのを待って入院できないまま白血病で死んでいくという悲惨なことだってあるんですよ。だから原爆病院の性格、名実ともに原爆病院でなければいけない。被爆者が最大に優先されなければならぬという考え方から、私どもは、この運営費の助成ということについて賛成をしているのです。  だから、この助成がもっと増額され、名実ともに、先ほども申し上げたように原爆病院になることを期待をしているんだ。ところが、少しも改善されない。改善されないからというのであるかどうかわからないんだけれども、運営費も二千六百万の据え置きということに五十三年度もなっている。この点をどうお考えになっているんだろうか。いつも改善をさせますということを、前佐分利局長も言っているのだ。現実は改善じゃなくて、むしろ後退をしている。これをどう進めていきますか。その据え置きした理由というのは何なのかという問題も含めて、ひとつお答えください。
  43. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに先生がおっしゃいますとおり、昭和五十二年度の額と、五十三年度二千六百万で同じでございます。これにつきまして、なぜ同じかということでございますが、一つには、予算編成のときに、今年初頭におきまして診療報酬の改定があるということは予想されておったわけでございまして、そういうことが、この病院の経営に十分反映されれば、病院の経理は非常によくなるであろうということが当然予想されたということが大きな理由の一つでございます。  なお、それからさらに、両病院の実際の経営状態を見ますと、実際に帳簿上、確かに非常に赤字が出ておるわけでございますが、それもある意味では、いろいろな減価償却が、たとえば国の補助なり、あるいは団体の補助なりで入りました機械等につきましては、必ずしも減価償却の対象にならなくてもいいはずでございますので、計算上は確かに赤字があるわけでございますが、そういうことを勘案いたしますと、それほど厳しい財政状態にないということと、先ほど申し上げました診療報酬が上がるということによって財政がよくなるということを予定いたしまして、二年間同じ金額ということになっておるわけでございます。  なお、先生指摘のように、たしか長崎の病院では三百六十ほどベッドがありますが、そのうち百九十ぐらいが原爆の患者でございまして、それ以外のベッドは、いわゆる一般患者が入っている。この状態は、やはり先生おっしゃいますように、それほど改善いたしておりませんで、昨年も一昨年も大体同じような率でございます。そういう意味で、おっしゃるとおり原爆病院が本来の原爆病院の仕事をするためには、原爆の患者が入れるようにするのが本当だというのは、全く御指摘のとおりだと思います。そういう意味で私ども、病院の方に対しまして、原爆の患者さんを優先的に入れるようにということを、これからも十分指導してまいりたいと考えております。
  44. 中村重光

    中村(重)委員 これは、一昨々年からだったかな、この助成というのは。そのときに大蔵省に予算要求をするときに、原爆被爆者が五割か六割ぐらいしか入っていないということでは、助成をつけるということについて、これは適当ではないということで大蔵省に断られると困るということで、われわれも大蔵省に行っては、これは言わないで、予算がついたということが現実なんであります。しかし、そのときに改善をするということを言ったんだ。改善をするだろうと期待していたんだよ。いま局長答弁していることよりも、現実はもっと被爆者に対しては冷たいんだ、本当に。これは原爆病院からの報告だから、まともな報告はしていないと私は思うよ。実際は被爆者にもっと優先的に使われているんだというような、実態とは違う報告がなされていると思う、あなたの答弁でも、そういうことだから。これは本当に私は自分の地元のことだからよく知っている。原爆病院にしょっちゅう見舞いに行くが、被爆者よりも、ほかの人の見舞いの方が多いんだ。そのくらい被爆者というのは、原爆病院にかかわらず冷遇されている。  だから、原爆被爆者がもっと大きい病院をつくってくれという血の叫びを上げるのは当然だと私は思う。いまの原爆病院にしても三百六十床。新しい病院の計画は、原爆被爆者のためには二百二十床、そして百四十床は一般の患者を入れるような新しい計画というものがあるのです。ところが、いまの原爆病院の敷地で近代的な病院を建設をして、そして病床が幾らとれるかといえば、二百四十床とれるんですよ。だから、いまの敷地で十分いけるんだ。だけれども、それは総合病院でないと困る。そうしないと原爆病院だけということになってくると、看護婦さんであるとか、その他の職員の整理という形に発展するから、だから総合病院でないと困るんだということを医師会も言うし、住民の人たちも、それを強く望む。被爆者は、被爆者だけでやってほしいと願っているのだけれども、そういうところで適当な土地もないということで、恐らく、まだ予算要求もされていないと思うのですけれども、本当に、いまのように一般の人の入院のために、被爆者が込みやられて入院もできないで生命を奪われてしまう、こういう事実があるのだから、これは何とか改善しなければいけない。新しく病院もつくる、それから、こういう運営上の問題も改める、そういうことにしなければならないと考えるので、その点は大臣からもひとつ、そのお答えをいただかなければならぬ。  それから、もう一つお尋ねしておかなければならないのだけれども長崎にはフランシスコ病院というのがある。この病院には五〇%近い被爆者が入院しているんですよ。ところが、原爆病院には助成金が出ているけれども、同じような比率でもって被爆者を大切にして、優先的にやっている病院が補助の対象になっていない。これをどうするのだろうか。被爆者という単位でいくならば、私は、原爆病院であろうとも、いまのフランシスコ病院であろうとも助成がなされなければならない。そうではなくて病院単位であるというならば、原爆病院のいまの運営のあり方は抜本的に改善されなければならない、こう思う。だから、そこらをどうするのかという問題を含めて、お答えをいただきたい。
  45. 小沢辰男

    小沢国務大臣 原爆被爆者の方々のためにつくられた病院が原爆被爆者のためになっていないということでは、これははなはだ申しわけないと思うのでございます。そういう意味で、いま御指摘がございましたので、私もひとつ厳重に調査をいたしまして、どうしたら、そういう不満がなくなるような仕組みができるのか。なぜ病院はそれができないのか。そういう点を徹底的に調査をいたしまして、十分この設置の趣旨に合うような運営の方法をひとつ私として検討をさせていただきます。その点について結果が出ましたら、また御相談いたします。
  46. 中村重光

    中村(重)委員 それから各種手当の問題ですけれども、これも先ほども質問があって、物価上昇の程度以上に伸びているのだということを言っておったのだけれども、この点は社会保障関係の諸手当と並べて、原爆被爆者に対する諸手当も決められたと私は思うのです。これは先ほど来、今回の最高裁の判決の問題等も含めて、特殊の戦争犠牲者について、戦争遂行の主体であった国が、みずからの責任において、その救済を図る必要があるという、この趣旨から医療法の制定となり、特別措置法の制定となってきた。そして施策が講じられているというならば、私は物価上昇範囲であるとか、あるいは、その他の社会保障と大体同率でもって引き上げていくということについては、これは強い抵抗を感じる。そういうことであってはならぬと私は思う。少なくとも厚生省は今度五万円ぐらい特別手当要求されたと思う。それを三万三千円という形になったわけですね。こういうことであってはいけないのじゃないだろうか。  それから先ほどの国家補償であるとか、社会保障であるとか、あるいはその中間的であるとかいう問題について、これは医療法を中心にしての議論ではあったのだけれども特別措置法という点からいくならば、これが扱いは私は社会保障にも満たないのだ、こう申し上げたい。なぜか。厚生大臣の指定する十の病気にかかっていなければ、この手当というものは、生活が困っておったにしても健康管理手当支給されないのだ。だから余り胸を張れないのだよ、実際の扱いは。こういうことであってはならぬと考える。今度の最高裁の判決の論旨というものを大臣が引用されて胸を張られるならば、これは内容の点についても今後、積極的に充実をしていかなければならぬということをおっしゃったのだけれども、具体的に、こういうことで申し上げるのだが、今後どうしますか。少なくとも、それは物価がどうだ、社会保障がこうなっている、それに準じていると思う。それではだめなんだ。だから私ども援護法の制定なくしては、被爆者援護対策というものは講じられないと言うのです。  この最高裁の判決からいたしましても、現在の医療法は国家補償性格というものが根底にあるのだということを指摘をして、これ以上のことは最高裁、言えないのですよ。現在行われているところの施策が何によって準拠しているかというと、現行法律によってやっているのだ。それが満たされていないのだという指摘以上はできない。国家補償で、こうしなさいというような政策的な指示なんというものはできようはずはないのです。しかし、この精神というものは、やはり先ほども申し上げたように、何回も行われた原爆裁判で被爆者対策というものは非常に貧困であるということを指摘された。これはやはり被爆者対策というものが、一般戦災者というものとは区別して施策は講じられなければならぬという考え方の上に立っているのだから、ならば政府は、私どもが提案し続けている援護法の制定ということに同調する、そういう態度が当然考えられなければならないし、また、そこまで政府として踏み切ることができないというならば、それに近いような施策が当然講じられなければならないと私は思う。この点はどうなんですか。
  47. 小沢辰男

    小沢国務大臣 手当が低いじゃないか。それから他の社会保障と同じように物価上昇程度のものの引き上げをやっては、これはもう原爆国家補償的配慮制度根底にあるという見解とほど遠いじゃないかというお説でございますが、被爆者実態等からかんがみまして、これは普通の他のそういう関係との比較から見ますと、健康管理手当なり、特別手当なり、私は相当手厚い援護対策が進められていると思うのです。ただ、今度決めた管理手当なりあるいは特別手当なりというものを毎年引き上げるペースを何によって考えるかということは、これはやはり他のものと同じように考えていかなければいかぬということを申し上げているわけでございまして、被爆者援護措置が他の社会保障的な制度のものと全く同等で考えているということではない。これはもう先生専門家でいらっしゃいますから、よく御承知だと思うのでございます。  そういう意味で、手当増額については毎年やっていることでもございますので、この辺のところは、また御意見等も十分踏まえまして、今後努力をしてまいりますから、一概に、もう被爆者援護対策が他の社会保障と全く同列であって同じようにやっているんだ。それだからけしからぬ、こう言われますと、そうじゃない。やはりこれは特別な援護措置をやっていることは事実なんでございますから、その点、手当等の増額の措置を毎年ごらんになって、不満かとは思いますが、とにかく三七%も借金をしながら国の財政をいまやらざるを得ない今日の現状でございますので、今年度はひとつ、お許しをいただきたいと思うわけでございます。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 借金をしながら施策を講じているのだから、できるだけ、やっているつもりだから我慢をしろ。借金、そこまで入ってくると、これは時間の範囲内でやれないのだけれども社会保障というのは二の次に考えてはいけないのです。社会保障というものは、やはり最優先されるというぐらいの考え方で、そのことが借金をすることの意義があるんだ。そこで、あなたは胸を張れると私は思う。借金をして道路をつくったり、港湾の整備をやったり、いろいろやっているんだ。これが第一義だ、そういうことで借金ができているんだ。だから社会保障は、そういう中で、できるだけのことをやっているのだからということでは、私どもはやはり納得できない。ましてや被爆者対策という点からいっては、ということを申し上げたいわけです。しかし、それは他の同僚諸氏からも質疑がございましょうから、この程度にとどめます。  それで局長、孫振斗さんの問題ですね。これは先ほども質疑が行われて、外国にいる人は、これは外交ルートを通じてやらなければいけない、こういうことです。今度の不法入国というようなことの孫さん、これが国内居住者扱いというのは実際はどういう形でやったのだろうか。いまの、外交ルートによって外国にいる人はやらなければならぬというようなこと等から考えてみて、何かはっきりしないのだけれども、しかし、これは最高裁の判決も当然のことであるし、また、これに手帳を交付するというのは、これはやらなければならぬ。この点は異論はない。だから、これにとどめないで、できるだけ縮めて、そして、できるだけむずかしくして出さないようにしようなんという考え方を持ってはいけないと思う。少なくとも、あなたの答弁からは、そういう感じがしてならないのです。本当に韓国の、朝鮮の人たちも強制連行され、そして大きな犠牲を強要されたわけなんだ。だから余りむずかしいことを考えないで、日本が、国が起こした戦争によって犠牲を受けた人に対しては少なくとも国家賠償というぐらいの精神を持って対処していくという考え方でないといけないと思う。  具体的に、国内の被爆者に対しては、これは被爆者であるという証明が要るわけだけれども、孫さんの場合は、孫さんだけではなくて外国人に対して手帳を交付する場合の扱いというのは、どうなるのですか。
  49. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 まず第一点でございますが、先ほど外交ルート云々と申し上げましたのは、現在、韓国なら韓国という外国におられる方の問題であれば、これは外交ルートの話である、こう申し上げたわけでございます。  それから国内に、もうすでに来ておられる方につきましては、これは今回の孫振斗さんと同じように、あの判決にもございますように「日本に現在する者である限り」こういうふうになっておりますし、それから人道上の問題として、これを考える場合は入管問題とは別問題として考える、こういうことでございますので、先ほど、ちょっと私、申し上げましたのは、あくまでも外国に現在おられる方の話で申し上げたわけでございます。  それから第二に、こういう外国人の方は、どうやって認定するのかということでございますが、これはわが国におられる方と同じような手続で認定をいたしております。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 わが国におられるような扱いでやるんだということですね。ということは、原爆被爆者として認定する制度というものが五つありますね。ところが、ほとんど、やっていることは保証人ですね。そういうことでやるというのですか。
  51. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 そのとおりでございます。
  52. 中村重光

    中村(重)委員 そこで保証人の問題だけれども被爆者である二名の保証人、しかもそれは三親等であってはいけない、こうなっている。私は当委員会でその非現実性を指摘をした。あなた方は広島の六日、長崎の九日に現地にいらっしゃらないんだからわからない。もう当時のことは三親等じゃないとわからないというぐらいの実情だったんです。他人のことなんて構っていられない。だから三親等はだめなんだというような、そういう機械的なことであってはいけない。こういう特殊なものに対しては三親等であってよろしいという扱いにすべきであるということに対しては、そのとおりいたします、通達を出します、こう言ったんだ。依然として改められていない。しかも保証人の制度だけではなくて、ほかの四つの制度がある。それはほとんど生かされない。なぜにやらぬのか。調査をしなければなりません。調査をするのには経費が要る、費用がかかる、だからやらない、やれない。国がつくっているところの制度、それをただ一つだけ安易に、保証人を持ってこいというのが一番いい。それでちゃんと記録があるからね、前にもいろんな人に保証している。今度保証をした人がどこにいたのか、前はどういうことであったか。前のと食い違っている。これはだめだと却下する。どっちが正しいのかわからないだろう。却下したことの方が正しいのか、前に保証して、その保証人の当時いた場所であるとかなんとか、どちらが正しいのかわからないんだけれども、前の方のを認めているから今度出したのは違う、こういうことで却下する。だから、なかなか被爆者でありながら手帳交付を受けられないで困っている人たちがいるわけだ。だから、ほかの四つの制度があるんだから、それを十分生かして、当然持つ権利というものは尊重されていかなければならぬ、生かされていかなければならぬ、こう思う。なぜにもっと弾力的な、先ほどの三親等の問題も含めて弾力的な扱いをされないのか、その点をひとつお答えください。
  53. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 現在、実際の運営といたしまして、たとえば極端な場合を申し上げますと、確かに先生がおっしゃるように周りの方が全部亡くなられて、どうにもならぬ。こういう場合には、その本人が申し立てた場合に、それを採用しているということも実際にやれるようにいたしております。ただし、周りに証明することができる人がいるにもかかわらず本人だけ、こういうようなことになりますと、それは問題でございますけれども、全く周りにいないという場合には、そういう場合でも承認する、こういうふうな実際上の運営をいたしておるわけでございます。
  54. 中村重光

    中村(重)委員 周りにいないというのは、どういう意味ですか。
  55. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 先ほど先生おっしゃいましたように、たとえば三人なら三人、二人なら二人、だれか探しても、その人が、そこにおられたということを証明することができる人がいない場合には御本人の申し立てだけでもよろしい。ただし証明できる人がいるんなら、それは要ります、こういうことでございます。
  56. 中村重光

    中村(重)委員 証明する人がいれば何も問題ないわね。三十三年たったんだ、なかなかいないんだよ。その当時はいたんだけれども、いまはいない。それで被爆者でありながら手帳を交付してもらえない。だからして、そのいないということを、いないかどうかわからないと言っても、それはわからないじゃないか、何とか探してこい、こういうことだ。まことに冷淡、もう言葉にも出ないぐらいに冷たい扱い、形式的だ。だからして、やはり地方自治体に対しても、そうした事務費を交付していくというようなことをやるならば、これは本人が誓約書を出して、それに基づいて地方自治体で調査をするということだって、できるだろうと思うんだけれどもね。それをやらない。やらないのか、費用をつけないから、やれないのかわからないんだけれども、ともかく周りにいなければということを弾力的に考えて扱っていくということにしてほしい。  それから、三親等はいいですか。
  57. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 文章で申し上げますと、一つは罹災証明書その他公の機関が発行した証明書、それがない場合は当時の書簡、写真等の記録書類、それがない場合には市町村長等の証明、それがない場合には第三者、三親等以内を除く二人以上の証明書、こうなっております。最後に、前各号のいずれもない場合には本人以外の者の証明書または本人において当時の状況を記載した陳述書及び誓約書、こうなっておりますので、この最後の条項で、何もないときは本人でもよろしい、こうなっております。ですから、その点で、この運用についていろいろ問題があるとすれば、運用の問題でございますので、私ども、そういった本当に困っておられる方で、どうにも証明がない方が、本人が……
  58. 中村重光

    中村(重)委員 三親等をどうするかということです。
  59. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 それもない場合にということでございます。
  60. 中村重光

    中村(重)委員 三親等もない場合。
  61. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 はい。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 じゃ三親等でいいんだな。
  63. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 それは四号でございまして、第三者二人以上の証明書というのが、ある一つの条項でございますが、それもできないという場合には、最終的には本人だけでもよろしいわけでございます。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 三親等を除くと書いてあるから、三親等でよろしいということにしないと現実的でないと私は言っているんだ。だから前もそれは言ってきた。確かに、そのときの実情というものは大変だったんだから、もう本当に他人のことなんて構っていられなかったのですよ。被爆したかどうかということを知る者は三親等じゃないとわからないということだ。だから、こういう場合は特殊なケースとして三親等でもよろしい、こうされないといけませんよということに対して、そうします、通達を出します、こうなっている。議事録を調べてみてください。
  65. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 これは条項を分けて書いてございまして、基準の一つは、三親等もない場合には本人以外の者の証明書または本人の証明書でございますから、この本人以外の者の証明書の中には三親等以内の者でもよろしいということに当然なるわけでございます。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 では、わかりました。その証人は三親等でもよろしいということを確認された。今度はそれを通達を出してください、はっきりしないでおるから。  次に、残留放射能の調査の問題についてお尋ねをするのですが、二千八百万円のお金をかけて二キロ置きに土壌調査をおやりになった。ところが、もう一年以上たつんだけれども、その結果の報告を発表されない。なぜに発表しないのですか。
  67. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 この調査につきましての発表はしてございませんが、もう先生もある程度、内容をよく御存じであろうと思いますが、一部ある特定の地域が高いという地域が出たわけでございまして、何で、そういう地域が高いんだろうかということを、もう一度、確認した上で全部ワンセットの調査にしないと、それだけでは不備な調査である、こういうふうに考えられますものですから、さらに、もっとしっかりした裏づけをした上での発表ということにいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  68. 中村重光

    中村(重)委員 だから、線量の数値が高く出たところがあるんだね。西山もそうだ、長崎の場合は。それから十二キロということで長崎は地域を是正しろと言っているんだけれども、十五キロも十七キロものところに出ている。そこを調査しようというんじゃないですか。また一度やったところを再調査するのですか。
  69. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 現在まだ新しい調査をどういう形でやるかということは、これから専門の学者の方にお集まりいただきまして、どういうことをやったらいいかということを御検討いただいてから実際の調査を始める段階でございまして、まだ私ども具体的に、こうやるということは持っておらないわけでございますが、いま申し上げました特定の地域に高いところがある。それはどういうことだろうかということも含めて、そこだけということではなくて、それも含めた調査というようなことになるのではないかというふうに考えております。
  70. 中村重光

    中村(重)委員 地域を是正しないための調査ではないでしょうな。少なくとも不合理な点を是正をしていくということが基本であるんでしょうね、どうですか。
  71. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 これはそもそも、この調査自体が、一体、当時原爆が爆発して、そして、そのときの放射能がどういうふうに残留しているかというのを逆算しながら、それぞれはかっていこうという調査でございますから、本来その影響がどう出ているかということを行政に移すための調査でございますので、何も初めから予断を持って、だめにするというような、そういう考え方でやっているのではございません。
  72. 中村重光

    中村(重)委員 少なくとも厚生省が、広島長崎も同じなんだけれども、行政区域でもって地域を指定したのです。それが不合理になっている。これはもう何回も言っているんだからわかるでしょう。だから不合理は正さなければいけない。それを土壌調査をやることは、私はやるなとは言わないのですよ。その調査が、是正をすることを歯どめをするような形で扱おうとしているから、だめなんだと言っているんだ。しかも、その中で西山地区というのは、もう前から風向きの関係もあって放射線量は高いと言われている。今回の調査でも非常に高く出ている。これを発表しない。これは大変なんですよ。セシウムとかプルトニウムとかストロンチウムとか、こういうものが高く出ているんだ、これは井戸水の中に。しかも農作物の中に蓄積されている。それを長期間にわたって食べる。どういう結果を人体に及ぼすことになりますか。これは大変な事態ですよ。都合の悪いことはちっとも発表しないで、今度はまた再調査をやるんだ、そういった考え方は正しくない。しかも、こんなに西山地区のように何回やってみても放射線量が高いところがある。長崎に落とされた原子爆弾は御承知のとおりプルトニウムであることは、これはもう明らかであるわけです。しかも、このプルトニウムというのが半減期は二万四千年と言われるのですよ。これはお米をつくっても、それは稲の中に必ず影響が出ているはずです。井戸水の調査もやってないのじゃないですか。農作物の調査はやったのですか、こんなに線量の高いところ。やらないで、ほっておくということになれば大変な問題ですよ。こういうことも明らかにしなさいよ。そして、健康を守らせなければ、施策を講じなければいけないのに、三十三年たって、こんなにでたらめなことが放置されているということを何とお考えになりますか。  大臣から前向きに一生懸命やっているんだというお話、それは絶対的な数字は伸びてきている。これは相対的に見ると物価の上昇その他、貨幣価値が下がっているんだから伸びたことにはならないんだけれども、絶対量の数字は伸びているんだから、大臣の言ったことは私は否定しない。しないけれども、大変重要な問題が放置されてきている。地域の問題のように不合理なことがほったらかされている。そして政府も、何とかこれは是正しなければならぬというように考えるのだけれども広島長崎が話がつかないからということで、五十三年度の予算の中においても、この是正はなされなかったではありませんか。もっと毅然とした態度をもって、こうしなければならぬと考えたならば、これを政府としての責任を持ってやる。その態度が被爆者に対してこたえる道であるし、特殊な原子爆弾の被害によって大きな影響を受けた犠牲者に報いる道である、私はこのように考えるのですが、大臣、いかがですか。
  73. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 調査のことで申し上げますが、確かに高いということは、ある地点が高い、たとえば西山地区が高いということでございますが、それはそこらの平均に比べて高いということでございまして、現在そこにあります、その放射性の強さというものは、これはもうミリキュリーの段階でございまして、非常に小さい線量でございます。そういう意味からいたしまして、これ自体が現在、非常に問題になるというようなことではないということだけ私から申し上げておきます。
  74. 小沢辰男

    小沢国務大臣 長崎の地域についての経過をずっと、私も就任しまして聞いてみますと、行政区画でやったものですから、あれは南北になりますか、えらいこう長くて、東西の方がどうも不合理じゃないかという御議論は、私も何かそんな気がするわけです。爆心地から何キロ以内と考えた場合に、そんな気がするわけでございますが、やはり、これはとにかく十分科学的な調査をやって、もし何らか、そこに対策をとらなければいかぬ、必要とするような調査の結果があらわれれば、私どもは、この範囲を広げることに、ちっともやぶさかではないのです。しかも、そういうような意味で何回か調査をやったのだろうと思うのでございますが、先ほど局長申し上げましたように、確かに他の周辺地域と比べて高いことはあっても、その高さが、原爆の被爆として人体に医療なり、あるいはその他の保護を必要とするようなものでなかったということでございまして、そこで、どうも地域拡大についての決め手にならぬということであったわけでございます。  これはもう御承知のとおりでございますが、しかし何としても、その地域の住民の方から見ますと、南北に長くて、そういう点がどうも見ると不合理だ。おれらの方が近いじゃないか、こうおっしゃいますと、その住民感情もよく理解できますので、そこで今年度、予算を特に計上して、もう一回念を入れて、そういう不満の解消の意味で、どうしたらいいかということを検討しようということで始めたわけでございますから、決して、これは制限しようということで断るつもりの調査ではないので、やはり、そうした合理的な範囲が確定できるようなものがないかという意味における、いわば私どもの探求の心のあらわれであると御理解をいただきたいのでございます。しかし、その結果が出ないと、なかなか、いまどうする、こうするということを申し上げにくいものですから、それまではお許しをいただきたい。
  75. 中村重光

    中村(重)委員 答弁は要りませんから一言だけ意見を申し上げておきます。  この前、予算委員会の分科会で、次の予算編成前に結論を出すとあなたは言われた。それから四十九年に北の方は広げた。南の方が行政区域でやった。北を広げたのは四十九年ですよ。そのときは地域を是正せよという運動がもう起こっておった。何しろ頭上五百メーターのところで炸裂したのだから影響は同じなんです。しかも、影響ないんだとあなたはおっしゃった。ところが、ほとんど二キロ以内、三キロ以内の症状と同じような症状が、やはり、いま指定されていない、みなし地域にもなっていないところに、同じように出ている。厚生大臣が指定する十の病気、今度十一になるんだけれども、そういう症状はもう変わらないように出ているんだから、影響がないんだとあなたがおっしゃることは間違いなんです。そのことをはっきり申し上げておきます。影響は同じに出ているから、四十九年に、長崎で言えば長与、時津というところを広げた。そのときに、それなりの調査をしたんだから、同じような形の調査をおやりなさいよ。そうして是正をしなさいよ。それがない限り納得はしない。しないのはあたりまえなんだ。それを申し上げておきます。予算委員会であなたがお答えになったように、今度は皆さんが納得のいく結論を出されるであろうことを期待をして、私の質問を終わります。(拍手)
  76. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、森井忠良君
  77. 森井忠良

    ○森井委員 大臣は、たしか三月の十七日に、広島長崎被爆者が東京に陳情に見えまして、厚生省の政府委員室でお会いになりました。森滝市郎先生ほか何人かの被爆者の皆さんとお会いになりました。その席に大原亨代議士、それから社会労働委員会理事をしております私と村山富市代議士と、参議院の同じく社会党から出ております社労の理事の片山甚市さんとがおるところで、お会いになったわけでありますが、大臣は非常に熱心に陳情をお聞き願いました。紹介をいたしました私どもも非常にうれしく思っておるわけでありますが、そのときに大臣は、被爆者援護法の制定について、かなり前向きなお答えをなさいました。これは放送局に聞きませんとテープレコーダーはないのでありますが、要約いたしますと、被爆者の皆さんの気持ちを聞いておりますと、もう心が動きます、とても断れる状態でなくて心が動く。しかし、どうも体はまだ動きにくい、こういう趣旨の御発言をなさいました。そしてさらに、この問題については各党の皆さんとも話をしてみたい、こういうふうにもおっしゃいました。  実は、率直に申し上げますと、あなた以外、以前の厚生大臣は、そういう陳情に対しましても、現行二法があるんだから、それを充実をいたしますということで、どちらかというと紋切り型で答えてきておられました。しかし、いま申し上げましたように、あなたの被爆者に対します、あのお答えは、実は感銘を持って私ども、そばで聞いておったわけでございます。この点については、いまも、そのお気持ちに変わりはございませんか。
  78. 小沢辰男

    小沢国務大臣 全く変わりはございません。
  79. 森井忠良

    ○森井委員 ありがとうございました。  そういたしますと、各党で話し合いもしなければなりませんし、大臣とも話し合いをしなければなりませんが、実は、その日もう一つ、同じように内閣官房長官と被爆者の代表が会っているわけであります。ここでも、やはりじんとくる話だったと思いますが、立ち会いましたのは、わが党の内閣部会長をしております参議院議員の野田哲さんであります。被爆者の皆さんや野田参議院議員からの報告を受けたわけでありますが、安倍官房長官は、とにかく長年の懸案の問題であるから、政府としても、この国会中に何らかの対策を講じたいと、表現は、申し上げましたようにテープレコーダーがありませんから明確には申し上げかねるのでありますけれども、大要その趣旨の発言をしていらっしゃるわけでございます。  私、考えますのに、福田内閣の有力な閣僚が、お二人とも、ほぼ同じ趣旨のお答えをなさった。これは想像でありまして、まことに、あなたには聞きにくいのでありまして、本来ならば官房長官に来ていただきたいところでありますが、この気持ちと、あなたの先ほどのお認めになりましたお気持ちとは相通ずるものがあるのでしょうか。
  80. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、そうだろうと思いますね。官房長官が、もしそういうようにお答えになったとすれば、援護二法についての審議もあることでもあるから、とにかく被爆者の特殊性、実態等考えれば、できるだけ皆さん方とお話し合いをして、そして、その心が通るようなものにしたいという気持ちだろうと思います。
  81. 森井忠良

    ○森井委員 そこまででいいですよ。あと続きますと、またぐあいが悪いですから、非常にいい答弁をいただいたところで切っていただいた方がいいと思うのであります。  そこで先ほど来、同僚、先輩の皆さんから質問があったわけでありますが、昨年の本委員会の附帯決議、これは読み上げるまでもないわけでありますが「国家補償の精神に基づく被爆者援護対策についてその制度改善に対する要望は、ますます強いものがある。」先ほどの質問もありましたけれども、これは五十二年五月十日衆議院の社会労働委員会。そして同じ趣旨は参議院の社会労働委員会でも、特別措置法の改正案の採決に当たっての附帯決議で、衆参両院とも明確に出ているわけであります。これは満場一致でありますから自民党の皆さんも入っていらっしゃる。もう一度申し上げますが「国家補償の精神に基づく被爆者援護対策についてその制度改善に対する要望は、ますます強いものがある。」これは、言うなれば、その当時の現状の認識だと思うわけでございます。  先ほど大臣から御答弁をいただきました被爆者に対する陳情の回答、そしていま私がくどいようでありますけれども読み上げました衆参両院の社会労働委員における附帯決議、こういうことを考えてみますと、与党も含めて「国家補償の精神に基づく被爆者援護対策についてその制度改善に対する要望は」非常に強いものがあるという点では、すでに一致をしておるわけであります。この点についてはもう与野党とも争いがないという形で明確になっています。  そこで、先ほど答弁をお聞きをいたしますと、確かに附帯決議はそのとおりだ。そして、ことしになって、これこれの施策をしたというわけでありますが、実は私は、先ほどの中村重光議員の質問に対する答弁で納得できないわけであります。つまり、附帯決議がついた以降、この通常国会は初めての通常国会になるわけでありますけれども、一体、本当に厚生省が、この附帯決議を実行しようとする意思のあるあかしの明らかになる施策というのは一体何なのか。局長どうですか。
  82. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 先ほども申し上げましたように「次の事項についてその実現に努めること」ということでございまして、先ほど幾つか申し上げましたが、各手当の引き上げ、それから病院の整備あるいは認定の問題、家庭奉仕員、相談員の問題、こういうことを申し上げまして、それがすべて条項にございますそれぞれを反映し、改善ということをいたしたわけでございます。
  83. 森井忠良

    ○森井委員 私は、今度の特別措置法の改正案も評価しないわけではないんです。これは大臣、ひとつ誤解のないようにしていただきたい。それはだんだんよくなっていっているんですから。たとえば特別手当にいたしましても、三万円のものが三万三千円になるのですから、三千円も引き上げていただくのですから、いまよりは多いんです。これは間違いなく前に向いております。あるいは小頭症の問題につきましても、ようやく実質的に年金的に扱っていただけるようになった。そのほか幾つかありますけれども、評価はいたします。しかし局長、なめちゃいけませんよ。いままで同じような附帯決議がついていましたけれども、わざわざ特に冒頭に国家補償という言葉が入ったのに、それは意図的にゆがめて、後の個条書きだけにアクセントをつける、これは私はけしからぬ態度だと思うのですよ。そうじゃなくて国家補償、少なくとも国家補償的なものが新たに出される、こういうことがあってしかるべきだと私は思う。個条書きのやつは国家補償ですか。それじゃ、どれが国家補償ですか。結論から言うと、私は附帯決議に基づく国家補償的な措置を厚生省が新たにお出しになったものとしては認めがたい。これはいかがですか。
  84. 小沢辰男

    小沢国務大臣 森井先生おっしゃるとおりだと思うのです。私どもは実はまだ、この二法というものは、野党の皆さんが御提出になっておるような国家補償考え方を基礎にして国家補償立法としての原爆援護法のところまでいっていないわけでございます。また、そういうことについては、いろいろ議論がございます。そういうことですから、この附帯決議の前文を、ますます強いものがあるので、したがって今後、具体的な各項の改正に当たっては、さらに一層前進するようにやれという御意思と受けとめて、やっておるわけでございますので、また、その辺のところは、先生の御意見と私ども意見がぴったり一致しないものですから、御不満があるだろうということは十分理解できます。
  85. 森井忠良

    ○森井委員 大臣の御答弁であれば、局長答弁を否定なさった形になりましたから、私は明確にしておきたいと思うのでありますが、要は局長答弁は、昨年の附帯決議の中の一から十までの項目について、しっかりやれという意味国家補償という文字がついたのだ、こういう説明だから私は反発したわけでありまして、それは大臣が御確認になりましたから、あえて申し上げませんが、大臣、私は何も人の痛いところを、さらにけり上げるという気持ちで申し上げているのではなくて、少なくとも附帯決議はそのとおりだ。しかし、ことし間に合わなかったから待ってくれとか、あるいは大蔵省に削られたから、これは勘弁してくれと言われるのでしたら、私はわかるのです。先ほど例に挙げましたから、具体的に申し上げましょう。  特別手当、これは現行二法の中では一番金額の厚いとされている手当ですけれども一体、幾ら要求したのですか。局長は非常に熱心な方でありますから、その点では尊敬をしておりますし、広島に行かれましても早速、被爆者の皆さんと会うなどして非常に姿勢のいいところを見せておられるわけでありますけれども被爆者と会えば、その中で、やはりどうしたって陳情が出る。そうすれば、せめて特別手当等については思い切ってふやしたいということを本人は言っておられる。私も、そばにいましたから聞いています。結果として、特別手当の金額の高い方は三万円が三万三千円、わずかに福祉年金並みにしか上がらなかった。しかし、私どもが承知いたしておりますのは、少なくとも福祉年金の三倍まで引き上げたい、具体的には四万五千円以上にしたいというのが厚生省の要求じゃございませんか。所得制限についても、あと五%残る勘定になるわけですけれども、厚生省はきちっと、せめて所得制限ぐらいは撤廃をしたい。所得制限撤廃できれば、その部分についてのみ申し上げますれば、より国家補償的になったと私申し上げていいと思うのでありますけれども、しかし社会保障にこだわるものだから五%でも残す、こういう形になっておるのでしょう。やろうとしたができなかったというのでしたら、物によっては、厚生省と私ども一緒になって、予算をつけろという要求をしたっていいわけです。そこのところが一番大切だ。先ほど来、先輩、同僚の方が言っておられましたけれども、国会の意思というのは具体的にはいろいろありますけれども、附帯決議というのはその最たるものでしょう。そうしますと、私はもっと重みがあっていいし、もっと真剣に考えてもらっていい、こういうふうに思うわけなんですよ。もう一遍、恐縮ですけれども、これは局長から答弁してください。——大臣ですか。
  86. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これは局長責任でございませんで私の責任で、大蔵省の責任でもない。厚生大臣責任を持って予算を決めるわけでございますから、まことに努力が足りませんで恐縮でございます。今後いろいろ検討いたしまして、また、この種の点は御承知のように政党政治でございますから、やはり党の原爆委員会等もございますし、各党それぞれ御相談をいただかなければいかぬ問題でございますので、なお御議論を、また今回いろいろ各先生方からいただくわけでございますから、それらの御議論を十分踏まえまして、私として、ひとつよく検討して、次回には何とかひとつ姿勢をはっきりしていきたいと思っております。
  87. 森井忠良

    ○森井委員 含蓄のある言葉でありまして、後また詰めさせていただきます。  その次に、例の最高裁の三月三十日の判決であります。まことに盾突くようで恐縮ですが、これも先ほど来の答弁では私はもう絶対に納得ができないわけであります。本来、最高裁の判決が出ますと、いろいろな議論があっても政府は従う。広島のいわゆる石田原爆訴訟、これは厚生省はついに控訴しませんで、そのまま確定をしたわけであります。五十一年七月二十七日の広島地裁判決、これは厚生省は控訴なさいませんでした。したがって確定判決になって、本来でしたら最高裁判決と同じ効力があるのですけれども、しかし、これは去年の本委員会におきます議論の中でも、率直に言いますと、かなりゆがめた、要するに石田さんの認定の問題にしぼった対策しか厚生省は考えませんでした。これはもちろん議論がありまして、後で申し上げますが、今度の場合は何といったって最高裁の判決なんですよ、大臣。少なくとも福岡の地裁、高裁と上がってきて、その都度、県を通じて国も争っていらっしゃいました。とうとう最高裁までいったわけでしょう。その結果の判決であります。私は決して誇張して申し上げるのじゃありませんが、私が覚えておりますささやかな経験でありますが、厚生省に関しますものでは、たとえば薬事法の改正の問題がございました。これは最高裁の判決が出て、あれは議員立法だったかどうだか忘れましたけれども、いずれにしても薬事法に関する最高裁の明確な判断が出て、とうとう法律を変えたじゃないですか。私は最高裁の判決というのは、そこまで重みがあるものと理解をするわけなんであります。  もう時間がたちますから、中身は御存じですから重複は避けるわけですけれども、そういたしますと、少なくとも、あの最高裁の判決をごらんになって、やはり厚生省が思ったとおり、現行原爆医療法は、あのままでよかったと大臣はおっしゃった。これは大先輩に対してまことに僭越なことを申し上げますけれども、私は詭弁だと思いますよ。あれでいいとおっしゃるなら、つまり現行医療法で、あの最高裁の判決趣旨に沿っているのだということなら、なぜ一体それじゃ一審、二審、三審と争ってまでこられたのですか、はっきりしてください。
  88. 小沢辰男

    小沢国務大臣 争いましたのは、御承知と思いますが、この原告が不法入国者でございますから、この点について、私どもは適用することについての疑義を持ちまして争っているわけでございまして、性格論で争ったわけではありません。これはもう御承知のとおりだろうと思います。  そこで、この判決に従いまして、私どもは、この前の議員立法の薬事法と同じように何らかの措置をとらなければいかぬということですが、この判決の御趣旨は、内外人を区別すべきではない。その入国の法的な適法、違法を問うものではない。日本に現在することによって、それだけで、この適用をすべきである。しかも、その理由として考えます裁判所の判断は、根底には国家補償的な精神があることを否定できない。しかも、所得制限がないとか、あるいは他のいろいろな事例を引っ張りまして、よって、現在する原告そのものには内外人を区別しないで適用すべきだ、こういうことでございますので、今後、そういう事例があれば全部適用してまいる、こういうことになるわけでございます。  国家補償考え方について私が先ほど申し上げましたのは、私は、実は勉強するときに、いろいろいままでの答弁等を見まして、社会保障的な立法であるということの考え方が一貫して厚生省にございまして、そして、そういうような立法なんだけれども被爆者の特殊性というものを考えた、いわば社会保障立法である、こういう見解で、ずっと来たものですから、この判決を見まして、それはそうであるけれども戦争遂行主体であつた国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有する」と見なければならないという御判断、そして、その性格根底にあるということは否定できないという判断を示されましたので、私どもは、いまの医療法——医療法自体の判決でございますが、医療法というものについては、なるほど明確な解釈をいただいたものだというふうに考えておるわけでございますから、この原爆医療法というものは医療法として、先生方がおっしゃるような面で内容の充実は、いろいろな議論があろうと思いますけれども性格としては、これでいいのかな、こう思ったということを申し上げたわけでございます。
  89. 森井忠良

    ○森井委員 上告審まで争われたわけですから、ちょっと過酷な言い方でありますが、これは厚生省、福岡県の敗訴ですよね。それはもう十分御認識をいただいていると思います。  そこで、厚生省が従来とっておりました、要するに社会保障法、そういう観点から不法入国者にまで医療法を適用するのはおかしいという議論であったと思うわけです。ところが、国家補償の側面がありますよ、したがって、不法入国者でも本法を適用しなさい、こうなっているわけですから、いままでの厚生省の考え方が音を立てて崩れるくらい基本的な立場が変わったと私は理解をするわけなんです。いかがでしょうか。
  90. 小沢辰男

    小沢国務大臣 問題は、この最高裁の判決にあります「戦争遂行主体であつた国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有する」という点と、それから「その点では実質的に」実質的にですね。「実質的に国家補償的配慮制度根底にあることは、これを否定することができない」という、このニュアンスですね。このニュアンスは、先生方の方でお考えになる、ずばり国家補償としてやるという考え方とは、やはり少し開きがあるのじゃないかと私は思うのです。もっとも、これは立法論として考えれば別ですよ。ザインの問題として、やはり判決というものは現行法の解釈上されたのであって、立法論を言っておられるわけじゃないですから、先生方の御意見を、立法論としてそうすべきであるということについて私は云々しているわけじゃありませんけれども解釈としては、そういうことなのだから、したがって、その点は相当国家補償観点が前面に出た法律だ。また、そうあるべきだという御主張ではない。そこのニュアンスをよく考えていきまして、しかし、そういう御指摘を得た以上は、いままで社会保障立法だから、したがって、社会福祉全体の中で外国人はだめなんだと考えておった、この考え方は改めなければいかぬだろう。なお、内容についても、そういう国家補償的な配慮が十分根底にあるのだから、これを否定できないのだからという解釈をいただいた以上、今度は、今後の内容の改善に当たっては、その点、十分ニュアンスとして出ておるこの最高裁の考え方は、できるだけ、われわれも反省をし、尊重していかなければいかぬな、こう申し上げているわけでございます。
  91. 森井忠良

    ○森井委員 広島地裁の判決のときの答弁よりは、かなり違うのです、大臣。その点は私は評価をいたしますが、どうも判決の文章を、大臣も都合のいいところをお読みになりますし、私も、これはこうあるべきだというところを読んで、ですから、これはそれぞれ理由があるのですが、いまあなたがお読みになったちょっと前ですけれども、こういうくだりがあるのですよ。「被爆者のみを対象として特に右立法がされた所以を理解するについては、原子爆弾の被爆による健康上の障害がかつて例をみない特異かつ深刻なものであることと並んで、かかる障害が遡れば」ここが大事なんですよ。「かかる障害が遡れば戦争という国の行為によつてもたらされたものであり、」これは国の行為によってもたらされたものであるということを明確に位置づけられている。これは大臣、実は私どもが、たとえば戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正案等で、いわゆる国家補償議論をするときに、しばしば出てくる言葉なんです。というのは、まず国家補償を求める戦争犠牲者の声を私どもが伝えますと、第一に、国家と身分関係がない、あるいは特別権力関係がないというのが厚生省のお断りになる最大の理由でした。その意味では、これはもう一つ解釈の仕方が国家補償にはあるのだということを明確に述べている。つまり、戦争という国の行為によって被害を受けたものについては、やはり国家賠償の責任があるという前提に立っているのです。これは読んでみてください、そのとおりになっているのですから。  私も実は、この判決を見て驚いたのですけれども、従来の特別権力関係あるいは身分関係、それに加えて、国の行為によってもたらされたものは、やはり国家補償として扱うのだということが明確に断定をされている以上は、いずれにいたしましても、やはりいままで厚生省が主張してきた議論だけでは国家補償というものは足りないんだ。これはごく普通のことですね。国の行為によってもたらされたもの、たとえば薬害なんかもそうでしょう。いまいろいろ出ております公害被害だって、ある意味でそうですね。そのほか国が起こす不法行為だってたくさんあります。戦争というのも、やはり国の行為なんだ。このことが判決で一番明確にうたわれていると私は理解をするわけです。この点はいかがでしょうか。
  92. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、森井先生の言うこと、気持ちはよく理解できるのですけれども、こういうふうに見れないでしょうか。私、この判決をこう考えておるわけです。「かかる障害が遡れば戦争という国の行為によつてもたらされたものであり、」その後で「不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。」「戦争遂行主体であつた国が自らの責任」と、ずっとありますが、結局これを今度私どもの行政当局として見ますと、そういうように、さかのぼって戦争という国の行為によってもたらされたものであるから、したがって対策としては国家補償制度根底にあるということを踏まえた配慮をしなさいということだろうと思うのですよ。そういうふうに言えると私は思う。これはそういう解釈以上には、ちょっと、いかぬと思うのですね。その制度を行政上いろいろやる場合には、その配慮だけはやはりしないと、この判決趣旨に沿わなくなるだろうと思うのです。  しかし、ずばり国家補償観点で、これをすべて律するという考え方ではない。配慮はしなければいかぬぞということを、私どもは今後この原爆二法の運用に当たっては、あるいは内容の改善に当たっては、この判決から当然考えていかなければならぬ点ではなかろうかと私は思うのです。そういうふうに見るべきであって、ここで「遡れば戦争という国の行為によつてもたらされたものであり、」と事実関係を断定していることは事実そのとおりだと思うのですが、対策としては逆に、そういう国家補償的な配慮をしなさい。やはり配慮であって、ずばり、そのものをやりなさいというのは、ちょっと進んだ解釈になるんじゃないかなと思います。したがって私は、この中身については今後できるだけ、いろいろ御相談の上で、いままで国が考えておったよりも進めていかなければいかぬ。少し進んだ解釈をしなければいかぬなという反省はいたしておりますと先ほども申し上げたわけでございます。
  93. 森井忠良

    ○森井委員 とっぴな質問で恐縮ですが、孫振斗さんにはいつ手帳を出したの。
  94. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 四月三日でございます。
  95. 森井忠良

    ○森井委員 これは数年にわたって争われているわけですけれども、手帳の発行それから、いままでの医療費の支払い状況等については、どうなるのですか、発行以降ですか、前にさかのぼるのですか。
  96. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 さかのぼります。
  97. 森井忠良

    ○森井委員 これは大事なんですよ。いいですか。
  98. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 正確に申し上げますが、申請した時点にさかのぼるわけでございます。
  99. 森井忠良

    ○森井委員 わかりました。  その意味では厚生大臣、明確に国家補償として扱われたわけですよね。違いがあるのですよ。ただ単に外国人を認めるか認めないかというよりも、社会保障でしたら判決が出た以降だっていいわけです、いままで何とか過ごしていれば。基本的に、いままで皆さんが説明してきたのは、社会保障の場合は遡及をしない。国家補償の場合は遡及をする。違いますか、見解が。
  100. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そこは私はちょっと違うような気がしますね。やはり国が適用すべきものを適用しなかったという誤りを正したわけですから、それは当然その誤ったときから、やらなければいかぬというだけのことであって、国家補償だからさかのぼる、社会保障だからさかのぼらぬという意味で、今度の処理をするということではない。その点は御理解をいただきたい。
  101. 森井忠良

    ○森井委員 そうしますと変な話ですが、それでは国家補償社会保障の違いというのは何でしょう。
  102. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これは概念のとり方、あるいは立法政策なり行政政策の問題で、戦後いろんな対策をやっているときに、たとえば手当の問題とか、あるいは原爆医療法で所得制限をやらぬというと、社会保障ならば普通は所得制限でいくべきものでございますから、それじゃ原爆医療法については所得制限はないのだから、これは国家補償であって社会保障でないと言えるかというと、そうではないわけでございますので、なかなか線は引っ張れないと思います。しかし、やはりいままでの国家補償という概念は、国との特別な権力関係があって、そしてそれについて国が国家賠償法の責任を負うというような普通の考え方でおりますし、社会保障は、一般的に福祉対象になるような人たちについての所得なり疾病なりについての、いろんな自己の自助によって、なおかつできないものを、国なり公共団体の力によって一定のカバーをしていこうというのが社会保障という考え方でいっているのではないかと思います。
  103. 森井忠良

    ○森井委員 そうしますと、これはちょっと話の腰を折るようで、ぐあいが悪いのですけれども、予鈴がなりますから、この一問で終わりますけれども、そうすると医療法の認識に対する判決が出た。具体的には、これはもう国家補償の側面がある。私、百歩譲って大臣がおっしゃいますように、これは社会保障だけれども国家補償の側面もある、むしろ社会保障にアクセントのついた考え方を言われるわけですね。本来これは社会保障法だけれども、中身については国家補償的な側面もある、こういうふうに限ってとられておると思うのです、いまのところ。  そうすると、外国人被爆者の問題についてはいいですよ。さっき変な答弁がありましたけれども、それ以外に、それでは医療法を受けた特別措置法の問題については、どう理解をすればいいのです。さっき大臣でしたか答弁がありまして、これはもう医療法に対する判決であって特別措置法には関係がありませんという意味答弁が、たしか、あったと思うのですね。しかし、明確に医療法と特別措置法というのは続いている、理論的にも実際にも続いておるという理解からすれば、後で出てまいります特別措置法は御承知のとおり所得制限その他あるわけですから、私はどうしても理解に苦しむ。だから、この点を厚生省と整理をしなければならぬ。いかがですか。
  104. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、この判決医療法についての判決ではありますが、この判決のいわば総論の部分についての考え方は、特別措置法にも当然適用すべきものと考えております。先ほど、この考え方についての解釈なり受け取り方は、ちょっと先生とニュアンスの相違はありますけれども、それは当然だろうと思います。
  105. 住栄作

    ○住委員長代理 この際、午後三時三十分まで休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ————◇—————     午後三時三十三分開議
  106. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案及び第八十二回国会大原亨君外六名提出原子爆弾被爆者等援護法案の両案に対する質疑を続行いたします。森井忠良君。
  107. 森井忠良

    ○森井委員 ちょっと話の腰が折れたようで、やりにくいのでありますが、もうちょっと判決関連する御質問をいたしたいと思います。  形式的には、この判決医療法に対する判決でありますが、午前中に確認をいたしましたように当然、特別措置法にも連動して影響ある、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  108. 小沢辰男

    小沢国務大臣 原爆被爆者に対する考え方としては、もう当然同じ考え方として私どもも受けとめていかなければならぬと考えております。
  109. 森井忠良

    ○森井委員 わかりました。  そこで、先ほどちょっと残ったわけでありますが、国家補償社会保障関係でございます。先ほど間違ったことを言ったかと思うのでありますが、私の理解では、これはいろいろ定義の仕方はございますけれども、具体的に見る場合に、社会保障の場合は過去にさかのぼらないで、要するに認定なら認定をされた以降が対象になるというふうに私は理解をいたしております。  それに対して国家補償の場合は、あくまでも相手に対しまして被害を与えた場合は、一般的に言いまして被害を与えた時点にさかのぼって、やはりいろいろ方途を講ずるということがあり得る。たとえて申し上げますと、いま被爆者の中では、ここまできて一本の線香代も出してくれていないじゃないか。去年の場合は御承知のとおり三十三回忌であります。私は広島の安芸門徒でありまして、概して被爆者の皆さんは、その当時、安芸門徒が多かったかと思うわけでございますけれども、一本のお線香代も出してくれていない。したがって、そういう場合に被爆者の皆さんが国家補償を求めて、たび重なる陳情をしておられるわけでございますけれども国家補償という考え方に立てば、いまこれを行うかどうかは別にいたしまして、当然それもやはり対象になり得る。たとえば弔慰金という弔意をあらわすような形になれば、これは当然、過去にさかのぼることがあり得る。私はこれが社会保障国家補償の違いではないかというふうに理解をするわけでございます。これから何をやれという意味でなくて、一般的に、これは厚生省も本委員会でも、しばしばそういう説明をしてまいりましたから、そういうふうに理解をしたいと思うのでありますが、その点はよろしゅうございますか。
  110. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 国家補償であるから、さかのぼるということは、私、それはやはり、そのときの考え方だと思います。国家補償というのは、すべてこういうことをやらなければならないという個々の項目が決まっているわけではございませんで、国家補償として、こういうことをやるという場合に、やはりそのときの考え方として、さかのぼるということを考えるのは、いささかもおかしいことではないというふうに考えます。ですから国家補償で何をやるかということは、本来こういうことをやらなければならぬということではなくて、一つの決定として、こういうことを、こういうふうにやるという内容までも決め得るものだというふうに考えております。
  111. 森井忠良

    ○森井委員 いまの答弁のちょうど裏返しになるわけですけれども社会保障については、さかのぼることはほとんど不可能である、こういうふうに理解していいですか。
  112. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 物によって、ちょっと私いま具体的な例が思い浮かばないのでございますが、社会保障は全くさかのぼらないとも言い切れない面もあるかと思いますが、ほとんどの場合さかのぼってないと思います。現在では、さかのぼったものを言ってみろ、こうおっしゃられても、ちょっと思い浮かばないのですが、全くさかのぼらないというものでもないのではないかと思います。
  113. 森井忠良

    ○森井委員 国家補償法の典型的とは申し上げませんが、一つ法律として戦傷病者戦没者遺族等援護法という法律がございます。これは御案内のとおり戦没者の妻等には、満州事変までさかのぼって弔意をあらわしているわけですね。特別給付金というのが出ているわけです。ですから、やはりこういうものは国家補償法の典型的なものだと思う。社会保障法は、いままで私も何年か審議に参画をしてまいりまして、それは法律の成立等のおくれで適用を早めるということはあったにしても、一般的には過去にさかのぼって社会保障に関する予算支給するというふうなことは、かつてなかったというふうに私は理解をするわけです。それでいいんじゃないでしょうか。
  114. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大変むずかしい議論だと思うのですけれども、たとえば遺家族援護の中の政策の中で、当然、国家補償としての援護の内容は、私はこれは扶助料とか、そういうものだろうと思うのです。あの例の特別給付金というものは、これは私はちょっと性格が違うんじゃないかと思うのです。これはむしろ社会保障としての未亡人の置かれた地位というものを考えて、そして特に未亡人としての、どこにもいかないで自分の英霊をお守りしてきたという状態を考えながら、それですから再婚した者はだめだとか、どうとかということが、あそこに条件として、いろいろ出てきているわけでございまして、したがって、これは国家補償の観念とは、特別給付金あるいは老父母の今度の援護法で協賛を得ましたような、ああいうものは私はちょっと性格が違うのじゃないかと思うのでございます。したがって、社会保障だから、さかのぼっちゃいかぬのだ。あるいは国家補償だから当然、全部さかのぼるんだという観念じゃなくて、やはり個々の政策の決定にまつんじゃなかろうか、かように考えます。
  115. 森井忠良

    ○森井委員 大臣答弁ですから、これは後で検討するとして、私自身は若干違うように考えていますが、まあ、いまの理論で国民が救える場合が非常に多いんじゃないかと思いますので、これでやめておきます。  そこで今回の場合、不法入国者であっても国家補償の立場から医療法の適用をしろということでありますが、具体的には外国人被爆者に対して、どういうふうに医療法の適用をされるのか。たとえば、いままで日本へ適法に入国をしてきて、そして一カ月間以上滞在をする、これは形式要件でありますが、それ以外に実質的には恐らく身元引受人だとか、いろいろな要件をつくっておられましたね、つくってないですか。いずれにいたしましても判決を受けて、具体的に外国人被爆者の扱いを、どのように改善をしていかれるのか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  116. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに、おっしゃいますように適法に入国しているか、していないかということを、いままで問題にしておりました。さらにまた一カ月以上滞在すればというルールでやっておったわけでございます。ただいま先生おっしゃいました身元引受人云々というのは、これは私どもの問題でございませんで、入国管理関係の問題であろうかと思いますが、少なくも厚生省の方の立場といたしましては、今後、この判決にもございますように、いわゆる現在するという状態であるならば、私どもは、それを普通と全く同様に取り扱うという方針でいきたいと思っております。
  117. 森井忠良

    ○森井委員 具体的に、朝鮮人被爆者の方が多いんですね。これも念を押すわけでありますが、戦傷病者戦没者遺族等援護法のときの援護局長答弁で、いままで明らかになりましたのは、これは援護局長答弁でありまして、たまたま大臣はいらっしゃいませんでした。政務次官だったと思うのですけれども、韓国については、いわゆる日韓条約によって形式的には問題は解決をいたしておる、実質は別にいたしまして。ところが北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国については未解決でございますという答弁がございました。そのとおりですか。——ちょっとむずかしいな。  それはともかくといたしまして、まず確認をしておきたいわけでありますが、外国人被爆者というからには、いわゆる韓国人も、それから朝鮮民主主義人民共和国に国籍のある人も、これは一切の差別はない、このように理解してよろしゅうございますね。
  118. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 そのとおりでございます。
  119. 森井忠良

    ○森井委員 そうすると、いままでの滞在一カ月というような若干の要件については、これはもう取り払って判決のとおり、やっていかれるということで、私もそれで理解をいたします。  ただ問題は、韓国人あるいは朝鮮人被爆者の皆さんは当時日本人だったという問題があるわけですね。いま何となく割り切れないのは、日本へ治療に来られる方については、この法律を適用いたしましょう。しかし現在、韓国の国内あるいは朝鮮民主主義人民共和国の国内で呻吟していらっしゃる皆さんに対する対策というのは一体何があるのだろうか。一般的には、もちろん現行法制からしましても、外国におられる皆さんに医療法を適用するということは、これはできないことだと私も思います。  ただ、情において忍びないのは、いみじくも、この判決にも書いてありますし、先ほど申し上げました戦傷病者戦没者遺族等援護法審議のときに私が申し上げたことと一致をするわけでありますけれども、とにかく被爆当時は日本人であった。これは日本国籍があったわけです。もとをたどれば、これは日韓併合条約ですか、それに基づきまして、とにかくあの朝鮮半島は日本の国のものだということになって、それから途中で創氏改名というんですか、名前まで変える。それから教育であるとか日本語を使えとか、あるいは皇居遥拝、神社参拝を強要と、いろいろなことを、当時、日本の植民地主義を強行しておりましたころの被害の状況というのを、私どもも、まゆを曇らせながら聞いているわけですけれども、いずれにしましても当時日本人であったということが一つ。これは先ほど申し上げました援護法審議のときに確認をされました。それから二つ目は、本人の意思に関係なく国籍が変わったという点。これも判決にも出ていますし、厚生省も戦傷病者戦没者遺族等援護法審議の中で、援護局長が全く同感であるということを申しました。  そうなってまいりますと、外国人被爆者といいましても、これは台湾の方も該当するかと思うのでありますけれども、今回の判決が出て以降も、まだ何となく割り切れないものがある。ほとんど来られる者を見ればいいんでしょうという形になれば、くどいようでありますけれども、私はやはり割り切れないものが出てくる。ですから、いま一般的には日本の法制で外国にいらっしゃる方まではという理屈はあるんでありますけれども、それで割り切れない朝鮮人被爆者の皆さんに対する国民的な感情が私は残るような気がする。この点について、現行法制はわかるけれども、いま申し上げました判決趣旨を踏まえて、何らかの形で朝鮮半島におられる被爆者の皆さんに方途を講ずることはできないものか。
  120. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに気持ちの上で、日本におられない方もお気の毒だということは感ずるわけでございますが、実際問題といたしまして、よその国、主権を持った国に、その方が現在住んでおられるわけでございまして、そういうよその主権の中におられる方に、こちらから、どうこうということを申し上げるということは、いろいろ外交上の問題もありまして私ども差し控えたいというふうに考えておるわけでございますが、しかし、そちらの国の方から、その中の被爆者の方が、こういうことを希望しているというようなお話が外交ルートを通じましてございましたならば、私ども十分お話し合いをしたいというふうに考えております。
  121. 森井忠良

    ○森井委員 方法はいろいろあると思うのですね。外交ルートを通じるという方法が一番代表的でしょうね。それから日韓の定期協議というようなものもあります。問題は、朝鮮民主主義人民共和国におられる被爆者の皆さんです。これは、いまあなた方は、外交ルートがないから、どうしようもないという立場だろうと思うのです。しかし、これは外交ルートという形でなくて、事実上、常識的に考えられる、それぞれの団体等から申し出があれば、それも当然できるだけのことをされる必要がある。  御承知のとおり、これは原爆だけではないかもしれませんが、医療技術全般、そういう意味では僭越な言い方になりますけれども、やはり日本の方がはるかに進んでいると私は思います。薬品だって同じであります。もちろん韓国や朝鮮民主主義人民共和国には原爆病院はありません。臨床例だって、これは数が違います。というふうなことを考えますと、日本の原爆の放射能による被害の治療技術というものを、実質的に、やはりそういった被爆者の皆さん方に供与していく努力が必要である。この点については、いま具体的に予測はできませんけれども、気構えの上では、政府はそのような考え方に立っていらっしゃる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  122. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 先ほども申し上げましたように、私ども、そういうお申し出があれば十分話し合いに応ずるという考え方を持っております。
  123. 森井忠良

    ○森井委員 私ども被爆者援護法案を現在、提案をいたしておるわけでありますけれども、海の向こうのアメリカでも、在米被爆者援護法というものをつくろうという動きが出ております。内政干渉になりますから中身について申し上げるつもりはありませんが、このことについては御存じですね。
  124. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 伺っております。
  125. 森井忠良

    ○森井委員 これは対象になっているのは事実上、日本人なんですね、大部分の方は。事実上、日本人というような言葉はちょっと適当でありませんけれども、要するに元日本人であった方、あるいは、その二世の方々が大部分を占めておりまして、ざっと千人近くいるやに聞いておるわけであります。厚生省といたしましても可能な範囲で、そういった被爆者の皆さん方の治療等に当たってこられました。  これは非常にいいことだと思うのでありますが、問題は、この本家本元のわが国で、まだ被爆者援護法ができていない。アメリカの方では、すでにロサンゼルスで、連邦下院司法委員会行政小委員会、これはジョージ・ダニエルソン委員長さんだそうでありますけれども、公聴会を開いておられる。新聞の報ずるところでありますが、場合によっては、これが成立をするんじゃないかというふうに言われております。日本よりも先を越されては困るという素朴な国民感情があると私は思うのであります。被爆者の皆さんも、私が話をしてみますと、アメリカでできて、どうして日本でできないのですかという声が非常に高くなってまいります。一体、外国人被爆者ということになりますと、在米の被爆者も日本に見えれば同じだと思うわけでありますけれども、向こうでは医療費も非常に高いから、お困りになっていると思うのでありますが、こういった一連の動きについては、厚生省としては、どのようにお考えですか。
  126. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 現在、先生おっしゃいました連邦下院の公聴会が催される予定だ、そういうふうに聞いておるわけでございますが、この内容は主として医療給付の問題であるというふうに私ども聞いておるわけでございまして、そういう意味では、この内容は私ども医療法のようなものではないかというふうに想像しているわけでございます。あちらの方で、こういう法律ができるということは、被爆者のためにも結構なことではないかと思っております。
  127. 森井忠良

    ○森井委員 時間の関係もありますから、次に移らせていただきたいと思いますが、願わくは、これはアメリカの国内のことでありますから、外交上いろいろ問題があるかと思いますが、特にお願いをしておきたいのは、とにかく在米被爆者は日本と無関係ではないわけでありますから、いままでの厚生省の施策から見ましても、お医者さんを派遣するとか、その他あったわけでありますから、ぜひひとつ関心を持って見守っていただきたい、このことを御注文申し上げておきます。  そこで、どうも冒頭に申し上げました昨年の社会労働委員会の附帯決議が生かされていないので、私はその点で、がっかりするわけでありますけれども、せめて、私どもがしばしば問題にしてまいりました保健手当等について御検討いただけないものだろうか。私は、少なくとも保健手当等については、もっと厚生省が前向きに取り組んでいい課題じゃないか、こういうふうに考えて、昨年までいろいろ本委員会議論してまいりました。保健手当というのは、厚生省が根拠にしておられるのは、大臣が新しくなられましたから、あえて申し上げるわけでありますが、ICRPの基準で二十五レム、ここで線を引いて、結果として広島長崎二キロ以内、これは健康な方でも保健手当を出すというシステムになっているわけでございます。  問題として出してまいりましたのは、一体二十五レムというのは大変な数字だ。ちなみに申し上げますと、アメリカあたりでは、一般の人は〇・一七レムであります。ICRPでも、二十五レムというのは職業人、つまり放射能を扱う専門の職業についている人が事故その他緊急時に立ち入るときの許容限度、これが二十五レムであります。これはもう毎年、私ども指摘をしてきたわけでありますけれども、一体この二十五レムをずっとそのままにしておくことがいいかどうか。いままで厚生省との確認では、こういうことになっていまして、ICRPの基準が、いま申し上げました、これはむちゃな基準ですけれども、それにいたしましても二十五レムが変更になるような場合には、これは当然、保健手当の基礎になっております二十五レムが変わってまいりますから、したがって範囲を広げることにやぶさかではない、こういう答弁がいままで、ずっとあったわけです。これはそのとおりですね。
  128. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 そのとおりでございます。
  129. 森井忠良

    ○森井委員 実は、こういう問題が出ておるのですよ。どうも、よその国を例に出して恐縮でありますがアメリカで、あの国は放射線の許容線量が、多分、職業人の許容線量だと思うのでありますが、五レムになっておるわけであります。ところが最近、下院で公聴会が開かれてまいりまして、そのテーマは、低水準放射能の危険についてというものであります。  原因は何かといいますと、一九五七年八月末のネバダ実験におきまして、俗に言うところのスモーキー作戦というのが行われまして、これはずいぶんの兵隊さんが参加をされたわけであります。調査によりますと、これは平均して一・二五レムくらいで非常に被害が出ておる、こういうことが言われております。同じように、またニューハンプシャー州のポーツマス海軍工廠原子力潜水艦修理基地というのがございまして、ここで作業員の被曝の状態が問題になっておるわけであります。これも、五レムをはるかに下回る放射線で病人が出ておりまして、がんでいいますと、死亡率は一般人の二倍、それから白血病は一般人の四・五倍、そういうふうな被害が出ておる。したがって、いまわが国の保健手当根拠は二十五レムでありますが、五レムでもこれは大変だ。いま恐らくアメリカの原爆実験その他は六百回に余って、やっておられるらしいのでありますが、参加をした職員といいますか作業員といいますか、それは二万人に上っておると聞いておりますが、全部調べてみなければわからないけれども、とにかく、いまの五レムの基準で果たしていいのだろうか、こういうことが問題にされているわけであります。この情報は入っておりますか。
  130. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 先生おっしゃいました前段のいわゆる原爆の実験を行って、その原爆の実験を行ったときに、そこにいたいわゆる兵隊の方及びそれに関連する方々の中で白血病が出たということがございまして、これに対してアメリカ政府は調査を始めたということは聞いております。
  131. 森井忠良

    ○森井委員 くどくど申し上げませんけれども、いまのところ残念ながらICRPの基準しかないのですね。あるのかもしれませんが、どこの国も採用している基準というのはICRPしかないわけです。厚生省もその立場をとって、先ほど御説明申し上げましたような保健手当根拠にしてまいりました。しかし、いまアメリカの一例を申し上げたわけでありますが、これは調査してみなければ、ほかの国の状況はわかりませんけれども、すでに、そのICRPの基準そのものが現在問題にされているという形になってまいりました。したがって、これはアメリカの調査結果も待たなければなりませんけれども、恐らく五レムという基準では、とても大変だということになるのだろうと思うのです。そういう意味では、いまアメリカでは被爆をした皆さんと政府なりあるいは軍当局と見解が違っているようでありまして、いま、あなた方に押しつける気持ちはありませんけれども、われわれがしばしば指摘をしてまいりましたように、放射能というのは、どうも被曝線量について政府考え方は少し甘過ぎるといいますか、とにかく事態を重視する度合いが私は非常に弱いと思っておるわけであります。したがってこの点についてもぜひ御注目をいただいておきたい、こういうふうに考えるわけでございますが、その点についてはいかがでしょうか。
  132. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 もちろん、このアメリカの原爆実験にかかわった人間に、どういう被害があつたか。それがどういうふうな科学的な結びつきで、その被害が出ているのかということが、これはある意味では一つの実験と申しては悪いようでございますが、そういうデータが出るわけでございますので、そういうデータにつきましては私ども非常に深い関心を持って注目してまいりたいと思っております。
  133. 森井忠良

    ○森井委員 大臣、こういうことなんでございますよ。二十五レムというのは広島長崎の、その当時のABCC、現在、放影研になっていますが、そこで得たデータで、直接被爆をした人でいきますと、大体二十五レムというのは、広島は少し無理があるのですけれども長崎で大体二十五レム以下くらいということで、爆心地から二キロ以内の人に、健康な人でも保健手当を出すというシステムになっているわけです。  これは非常に無理があるわけでして、たとえば遮蔽物がございますと、直接被爆の場合二キロでも問題が出てくる。あるいは二キロよりもはるかに離れておりましても、たとえば水を飲む、植物を体内に摂取する、こういうようなことになりますと、いわゆる体内照射というものが起きてまいります。これは直接被爆じゃありませんけれども、実際には放射能を体の中に入れるわけでありますから、摂取性の強いところへ付着をいたしまして、やはり大変な健康阻害ができる、こういうシステムであります。  それから、もう一つは胎内被爆の問題であります。つまり原爆が落ちたときに、お母さんのおなかの中にいた子供であります。何せ大人と胎児では当然、被害の状態が変わってまいります。これは一般的に言いますと、ベルゴニー・トリボンドーの法則というのでありますけれども、たとえばがんの発生頻度を二倍にする線量は成人で五十ラドといたしますと、子供は一ラド、そして妊娠十三週以内の胎児は三分の一ラドである。同じ線量でも胎児と成人では百五十倍もの感受性の違いがある。こういう法則を出しておりまして、これは厚生省の皆さんも御存じであります。ただ、これを採用なさるかどうかという点については、いろいろ今日まで議論をしてまいりましたから、いま多くは申し上げませんが、特に私が強調しておきたいのは、二キロであっても、あるいは、いま申し上げましたように、よしんば、それが正しいとしても、現実にはそれだけ無理が出てきておるわけでありまして、私どもはしばしば実情に合わせて広げていけという主張をしているわけであります。残念でありますけれども、この問題についてもまだ厚生省からの明確なお答えのないまま今日に至っておるわけであります。  そういった矛盾を指摘をいたしまして、この点どのように厚生省として改善をしていかれるのか。特に先ほど申し上げましたように附帯決議がついて何らかの新しいものを出してもらいたいときに、保健手当が必ずしも国家補償だとは私は思っておりません。厚生省の通達を見ましても、むしろ健康の管理の方に重点を置いて出された手当でありますから、位置づけは、もちろん違っておりますけれども、いずれにいたしましても、そういった矛盾について私はぜひともこの際、再検討される必要がある、こういうふうに考えるわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  134. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに先生おっしゃるように大人と子供では、それぞれ当然感受性が違うわけでございますが、少なくとも現在この保健手当考えております二十五レムというのは、一つは、いろいろ遮蔽物もあることでございますから、本当に全く何も遮蔽物のないところでストレートに受けたということで考えて、二キロのところで二十五レムということになっておるわけでございます。  それから同時にまた、この二十五レムというのは、二十五レムを受けたなら必ず病気が出るということではないので、ICRPの方でも二十五レムを超えると病気になる危険性があるから、その後の健康について十分チェックをするようにというような考え方になっておるわけでございまして、そういう意味で、これからいたしますと健診ができるような体制になっておるわけでございまして、保健手当というものを差し上げて常に健康に留意して、ぐあいが悪ければ、すぐに医療機関の方と連携を保って健康をチェックするという体制を後ろに持っているということが、私ども一応ICRP考え方にも妥当するというつもりでおるわけでございます。ただ、この放射線の問題というのは、まだ学問的にもずっと研究が進む問題であろうかと思います。そういう意味で、あくまでも今後の学問の進展を私ども、よく見きわめてまいりたいと思っております。
  135. 森井忠良

    ○森井委員 厚生大臣、くどくど申しましたけれども被爆者援護対策については、きょうの御答弁は歴代の厚生大臣と比べて、失礼でありますけれども、かなりわれわれと主張が近くなってまいりました。判決その他幾つかの要因はありましたけれども、これは歓迎すべきことでございます。そしてまた私が冒頭に申し上げましたように、被爆者要望にこたえて各党とも話し合いをしたいということであります。できれば、現在審議をいたしておりますけれども、この審議の採決までには、私どもとしても、できるだけ各党、なかんずく与党の皆さんとも話し合いをしてみたいと思います。その点についての大臣の所感をお伺いしたいのであります。
  136. 小沢辰男

    小沢国務大臣 立法府の御意思が各党お話し合いの上でまとまった場合には、その内容について行政府がこれを尊重して、できるだけの措置をとっていくということは当然のことでございますので、また各党のお話し合いができましたときに、私どもも御意見を申し上げさせていただきたいと思いますけれども、基本的には当然、立法府の御意思を尊重して、私どもとしても善処をしてまいらなければいかぬと考えております。
  137. 森井忠良

    ○森井委員 若干時間が残っておりますが、私の自余の質問は次回に譲らせていただきたいと思います。(拍手)
  138. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大原亨君。
  139. 大原亨

    大原(亨)委員 けさほどから質問があるのですが、いま最後に厚生大臣から御答弁がありましたが、各党で十分協議をして意見がまとまるならば、当然、立法府の意見を尊重して、厚生大臣としても処理したい、その趣旨に従って尊重して処理したい。こういうことですね。これは私の要請であるわけですが、各党といいましても大体四党ですか、五党ですか、これは全部一致しておるわけです。各党で一致していないのは与党、自由民主党でありますから、政党内閣の大臣である厚生大臣は、与党である自由民主党に積極的にあなたの意見を出していただきまして、強く要請していただきまして、そして政府と国会が一体となってできるように、ひとつ格段の努力をいただきたいと思いますが、いかがですか。
  140. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大原先生、私に努力せいとおっしゃるのですが、厚生省は、政府側といたしますと、やはり政治的判断よりは、かえってどうも事務的な理論や財政や、いろいろなことに制約が多いものでございますから、われわれが関与すると少し渋くなってもいけませんので、なるべく与党の皆さん方と率直に話し合いをしていただきたいと、原則としては思うわけでございます。  ただ、私どもが扱っている他のいろいろな制度もございますので、こういう点についての意見は十分申し上げさせていただきたいと思っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、党の方で原爆委員会等もございますので、早急に小委員会でいろいろと御協議を願って、そして皆様方と協議をしていくように、私どもの方からもお願いをしてございますので、ぜひ各党で率直にひとついろいろお話し合いを願いまして、より現実的な方法で被爆者方々のために改善が行われていきますことを私は期待を申し上げております。
  141. 大原亨

    大原(亨)委員 けさほどから孫振斗の判決について、あったわけですが、現行被爆者医療法が、国家補償の精神、そういう配慮のもとにでき上がっておる。これはいままで、いろいろな判決もあったわけですけれども、最高裁の判断ですから、これは最終的な解釈の決定ということになるわけですが、言うなれば原爆の傷害の特殊性、つまり放射能とか、あるいは熱線とか爆風、こういう他の焼夷弾その他に見られない特殊な非人道的な兵器による被害である。こういうことに対する対策を追及しておる中で、言うなれば、政府が振り返ってみると国家補償的な立法ができ上がっておった、私はこういう意味であるというふうに理解をするわけです。意図的に国家補償の精神によって原爆医療法をつくったというのではないと私は思うわけですね。  しかし、最高裁の判決がありますと、この解釈が確定して、そして私は、法律の上において不備な点があれば、将来、この医療法自体をとってみましても、あるいは援護法という面で、たとえば戦傷病者戦没者遺族等援護法でも医療費は出しておるわけです。軍人恩給等でも医療費は出すわけです。ですから、そういう医療費の側面だけをとってみましても、医療費と所得保障という点から現在の法文を整理する必要があるのではないか。現行法を見直ししてみる必要があるのではないか。こういうふうに考えますが、政府考えはどうですか。
  142. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに先生のおっしゃいますように、私ども、前々から社会保障の理念で、この二法をつくってきたということでございます。しかし、その二法が、前からよく申しておりますように、社会保障国家補償の真ん中のようなものだとかいうような表現もいたしておったこともございます。そういうような面から、今回、最高裁の判決におきまして、補償的配慮というような別の側面からの御説明をいただいたわけでございまして、そういう意味では、ある意味で同じことを両側から言っているような感がなきにしもあらずというふうにも感ずるわけでございますが、ただ、いま最高裁の判決から、こういった外国人に対して、いわゆる人道的な配慮で手帳を交付する、こういう問題に関しまして、この範囲内におきましては、少なくも現在の制度を、このように進めていく上において、さしあたって現在、特に両方の法律を統合しないと何かおかしなことが起こるということは、現在のところ考えておらないわけでございます。
  143. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは、もうちょっと議論を進めていくのですが、つまり国民健康保険、政府管掌の健康保険、共済の短期給付、それから組合管掌の健康保険、これが社会保障制度であるわけです、老人についてもあるわけですけれども。しかし原爆医療法をつくったのは三十二年ですね。これは、いわゆる医療についての社会保障立法に対しましては、一般法に対して特別法である。法律の専門の用語で言えばそういう関係にあるというように私は思いますが、いかがでしょう。
  144. 小沢辰男

    小沢国務大臣 それは大原先生のおっしゃるように、たとえば、そのほかにも医療に関する特別法がございますが、それと同じように、これは特別法と言えばそれはそのとおりだろうと思います。
  145. 大原亨

    大原(亨)委員 それは精神病とか結核、そういう措置入院とかいうものと同じですね。これは同じというのは特別法です。そうすると、一般法の社会保障立法、社会保険立法に対しましては、特別法は、特別法優先の原則があるんですね。ですから特別法優先の原則からいいますと、たとえば広島においてもそうですし、東京においてもそうですが、被爆者がいる、非被爆者がいる。保険に入っている。しかし、非被爆者の保険に加盟している人が一般的ですけれども被爆者が加入しているために医療費が増大して、非被爆者に対しましては負担が増大するということになるわけです。ですから、その調整をしなければならぬということを、いままで何回も議論したことがある。特別法優先の原則でいきますと、戦傷病者戦没者遺族等援護法でまいりますと、その医療費は全部国費で見るということになる。保険から外してしまう。そうしないと、こちらの保険制度の被保険者からいいましても、国全体から見るならば公平な原則が貫けないということになって、特別法であるならば特別法優先の原則でやるべきだ。その点を明らかに——局長、あなたは専門でないことをよく知っているからいい。特別法優先の原則なんです。  いまちょっと触れられておりませんが、医療の問題も認定患者の場合は数少ないのですね。全国で四千名です。限られた因果関係のある疾病ですね。この場合は全部ごっぽり国費で見るのです。保険は関係ないのです。それから孫振斗さんのような場合の一般疾病ですね。認定疾病でなしに一般疾病にかかった場合には、社会保険に入っていなくても、孫振斗さんが手帳を持って治療を受けたならば、指定医療機関であれば指定医療機関が本人にかわって請求する。そうでない場合には、領収書をつけてやる、こういうことになる。保険とは関係ない。今度の社会保障的な側面を重視した判決に基づく医療費の負担は社会保険の負担ではない。全部国費の負担である。認定疾病も一般疾病もそうである。それは特別法優先の原則が貫かれることになるというふうに解釈してよろしいか。
  146. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 認定疾患でありますれば、国費優先ということになるわけでございますが、いわゆる一般疾病につきましては、これは原爆と特に関係がない、たとえば事故みたいなものでも一般疾病として見るわけでございまして、そういう意味で保険の見た自己負担を原爆医療法の方で見る、こういう姿になっておるわけでございまして、今回の孫振斗さんの場合におきましては、孫振斗さん自身が保険のどれにも加入しておらない方でございますので、そういう意味から、その全額、医療法で見るという形になるわけでございます。
  147. 大原亨

    大原(亨)委員 そこで、お尋ねしますよ。全額医療法で見るという根拠の法規はどこにありますか。
  148. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 医療費の支給のところでございますが、(大原(亨)委員「何条」と呼ぶ)十四条の二でございます。「一般疾病医療費の支給」のところでございます。先生お持ちの本の十四ページの右から十行目ぐらいのところに、これこれの医療を受けたときには「一般疾病医療費を支給することができる。ただし、」と、ずっといっぱい書いてございまして、これはいわゆる健康保険の支払いでございますから、これこれの「医療に要した費用の額から当該医療に関する給付の額を控除した額の限度において支給」を行うことができるということですから、まず医療費を支給することができる、そして健康保険等がカバーした分があって、その残りの限度において支給することができる、こうなっておりますので、そのカバーする分が今回はないわけでございますので、それを全部支給するということになると思います。
  149. 大原亨

    大原(亨)委員 それは、あなたは法律専門家でないわけですが、原則は一般疾病についても、あるいは放射能と因果関係がなくても、かぜを引こうが足をけがしようが、やはり一般疾病の費用は負担するんだというふうに医療法で書いてあるのです。ただし保険制度に入っている場合には、というので、ただし書きで、保険の負担が家族か国民健康保険でしたら七割、その場合には保険で負担して残りを国で負担いたします、こういうことになっているわけですね。だから、これをぴしゃっと原則どおりいきますと、原則だけの場合は孫振斗氏の場合は全部国が見るということになるわけです。これは医療法で見るということになる。そうですね。
  150. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 そのとおりでございます。
  151. 大原亨

    大原(亨)委員 そうすると、あなたの前の答弁は少し不確実ということになりますが、そこで日本人であっても被爆者が移動その他で国民健康保険その他、皆保険であるけれども入ってないという場合がある。いろいろな理由で漏れている場合がある。そういうような場合でも、原爆手帳を持っておる場合には現行医療法で当然に、この判決趣旨からいいましても、これは医療法で見る、そういうふうに解釈すべきであると思うが、いかがですか。
  152. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 保険の適用がない場合は全額見ることになります。
  153. 大原亨

    大原(亨)委員 そういうことになりますね。そこで医療機関が、あなたは健康保険に加入しておる手帳を持っていないから、被爆者の一般疾病を診ることはできませんといって拒否することはできませんね。
  154. 小沢辰男

    小沢国務大臣 何らかの保険の被保険者の場合、それを断ることはできません。全く療養の保険に入ってない方が医療機関に行った場合の話で、これは医師は診療を拒否することはできません。応招の義務があるわけでございますから、そういう場合が起こり得ない。いま先生のおっしゃるのは起こり得ないと思うわけでございます。
  155. 大原亨

    大原(亨)委員 保険局、見えていますか。保険局長、早く放免いたしますから先に質問いたします。  保険局長、これは特別法と、あなたの局の所管している健康保険制度、それとの関係議論したわけです。特別法優先であるということで孫振斗判決関係をして言ったわけですね。ただし、いま日本は皆保険の制度ですから原則として、みんながどこかの保険に入るということなんです。ただし、これは本委員会で、ずっと前、昭和四十年かその前に議論いたしまして決議をしたことがあります。附帯決議をつけたことがあります。それでずっとついておりますが、つまり被爆者をたくさん抱えた市町村の国民健康保険が当然に診療費がかさむわけですから、かさんだ場合に一般の非被爆者である保険の加入者が負担するのはおかしい。そういうことで、そういう場合には医療費全体がかさむわけですから、ですから国民健康保険の制度でありますと特別調整交付金を十分配慮して出す、こういうふうに議論をし、いま局長の御答弁との間の矛盾、問題点を調整をした。  いま大体、原爆被爆者の医療のために調整交付金は、どのくらい全国で国民健康保険に関係をして出ておりますか。そして、どういう基準で出しておりますか。
  156. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先生から御指摘がございましたように、市町村の国保におきましても原爆というような特殊な事情で一般の市町村に比べて特別な経費がかかるじゃないかという面を配慮いたしまして、現在、調整交付金で、この問題の手当てを行っているということでございまして、原爆につきまして昭和五十一年度が五十五億二千四百万、それから五十二年度は六十三億三千万ということで、原爆関係の特殊性というものの配慮をしているというような実情でございます。
  157. 大原亨

    大原(亨)委員 たとえば広島市とか長崎市というのは被爆者が多いから健康保険については調整交付金が出ておるはずですね。大体どのくらい出ておりますか。あるいは組合が管掌している国民健康保険につきましても出ておるはずですね。それはいいといたしまして、厚生大臣が最近よく言っておられる財政調整交付金、こういう財政調整は、こういうやり方が一つあるわけです。あなたが最近しばしば言っている話ですが、それの中身が問題になっているわけだ。それは大体どのくらい出ていますか。
  158. 八木哲夫

    ○八木政府委員 広島市につきましては二十四億八千万円、それから長崎市につきましては十八億一千四百万となっております。
  159. 大原亨

    大原(亨)委員 そういたしますと、たとえば組合管掌にいたしましても広島県全域で、たとえば相互銀行とか何々銀行というふうなものは地域の健康保険組合を持っているわけですよ。そういう場合に、やはり家族や本人が被爆者であるという場合、本人の場合は十割給付にいたしましても、やはり普通よりも受診率が高いわけです。それは国の松浦さんのところの調査でも出ておるわけですね。これは時間がないからやりません。ですから、そういう場合でも、それぞれ健康保険組合は独立しているのですから、非常に被爆者を抱えているようなところに対しては何らかの財政措置をしなければ、他の非被爆者である加入者に対しまして、やはり全体から見れば公平を欠くのではないかという議論が最近は出ておる、これについてはどう考えますか。
  160. 八木哲夫

    ○八木政府委員 市町村の場合には住民全部が対象になっているというようなことから、当然そういう面からの財政調整交付金の中で配慮しているわけでございます。     〔委員長退席、羽生田委員長代理着席〕 しかし、ただいま先生から御指摘がございましたのは健康保険組合の場合でございます。健康保険組合につきましては、むしろ本来は政府管掌健康保険というものがあって、政府管掌健康保険外に組合というものがあるわけでございまして、政府管掌健康保険につきましては現在、料率が千分の八十である。ところが個々の健保組合におきましては、それ以下ということもあるわけでございまして、健保組合の財政状況によりまして政管より低いというようなところまで配慮するかどうかということになりますと、やはり問題があるのじゃないかというようなことから、現在、健康保険組合につきましては非常に体質の悪いところがある、そういう面について配慮するというようなことから、五十二年度におきましては八億、五十三年度におきましては十二億という国庫補助を見ておるわけでございます。その国庫補助の配分の際にも、やはり保険料率が政管よりかなり高いというようなところから、まず考えるというのが妥当ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  161. 大原亨

    大原(亨)委員 その配分の中で当然に、そういう調整はすべきであるという考えですか。
  162. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いままでは、いま局長答弁したように、そういうことの要素を入れておりません。国庫負担の配分の際に当たりましても入れてないので、組合全体を見まして、この組合は政管よりも、はるかに料率も高くて大変重荷になっているというようなところにやっておるわけでございますが、今度、私が考えます財政調整のやり方は、それらを含めまして、もっと合理的な基準をつくって、やっていきたいという構想なんでございます。国庫負担も、これも全部プールして、そうした考え方でやっていったらどうだろうか。その一つの客観的な基準の中に、いま言ったその地域の疾病の非常な特殊事情等もあろうかと思いますし、ただ、その場合に、いかに特殊事情があっても全体の疾病率がえらい低くて、料率も他に比べると圧倒的に少なくて済んでいるというようなことになると、やはりある一定の限界点を設けていかなければいかぬであろうとは思いますが、今度は、そういうものも全部、客観的ないろいろな基準をひとつ考えて合理的な財政調整をやるべきだという頭でございますが、まだ細目は決めてございませんので御了解を得たいのでございますが、いままでは少なくともやっていなかったと思うのです。
  163. 大原亨

    大原(亨)委員 現行原爆被爆医療法は、その判決で明らかなように、やはり原爆という放射能による、あるいは熱風や熱線等の他の傷害とは異なる、非常に後遺症がある。瞬間的に亡くなった人以外に、次の月、次の年、ずっと死亡者が続くような、そういう被害に対しまして、そういう傷害の実態に対しまして医療をどうするかということを、今日まで国会も追及をして、結果として、けさほど以来、御答弁がありますように、この医療法が国家補償的なそういう側面を持っている。したがって、それに対応するような法律の運営をすべきである。こういうことで議論が進んでまいりました。そうして私も特別法の観点から医療費の負担について若干の問題を提起いたしておきました。これはさらに問題を発展させていきたいと思います。  そこで私は、いろいろと法律関係をやって、この分析をして、戦争犠牲者救済等について考えるのは、つまり社会保障、一部は社会保険等の掛金をかける、いういう面で国庫補助も出していく。そういう所得の再配分をしながら医療や所得の保障をしていくという政策的な考え方、あるいは財政力に応じた考え方という社会保障考え方一つある。それから国家補償の中には、いわゆる国家補償国家賠償の考え方がある。これは補償と賠償は私は日本の法律の概念からいっても違うのではないかというふうに思います。時間の関係がありますから私の見解を言うのですが、つまり補償というのは適法な関係法律根拠がある国との関係における権利、義務、特別権力関係に立つ者について被害があった場合に国が補償する、こういう考えですね。それから国家賠償の場合は、これはスモンのことで議論になりましたが国の行為の中で、いわゆる違法であるという場合に、違法な措置等に対しまして被害者に対して補償する、こういうのが国家賠償である。それは一括して国家補償という場合もあるというふうに私は論点を整理したいと思うのですが、どうでしょう。
  164. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そうだろうと思いますね。
  165. 大原亨

    大原(亨)委員 ちょっと頼りないですが、戦傷病者戦没者遺族等援護法というのが特別権力関係において戦争犠牲者救済法であるわけです。恩給法があります。公務員の戦時災害補償法があります。雇用関係というのは、これは特別権力関係で大きくやることができる命令服従の関係。そこで私は、これは議論を長くいたしません。皆さんも、なかなか答弁しにくいこともあるし時間がかかるから、すぱっとできれば、すぐやるけれども、これはやってもあれだから……。  ただ、現行援護法の中で昭和二十年三月二十三日の閣議決定に基づく国民義勇隊に関する件、こういうのがあるわけです。しかし国民義勇隊に関する件というのは、私の議論をずっと拡大していったならば全部の国民、一定の年齢の国民は全部及ぶ、これが一億総武装である。それから昭和四十九年に、ここで私が中心で議論いたしましたが、旧防空法の関係で取り上げた警防団、医療従事者というものがある。国との権力関係ではある。これは隣組からずっと全部、職場へいっておる。その中で警防団、医療従事者を取り上げた、それで準軍属として処遇した。そういう特別権力関係の点からも一億総武装の段階では、原爆というそういう特殊な爆弾によって死んだりけがした人については責任がありますよという議論を私はいたしました。それは適法なる国家賠償、国家補償議論であります。  しかし私は別の観点議論してみたいと思うのですが、国民義勇隊については現行援護法は非常に狭く解釈している。しかし国民義勇隊は閣議決定に基づいている。総動員法その他は法律根拠がある。防空法は根拠がある。法律根拠がないので閣議決定をもって援護法国家補償対象にするというのはいかなる根拠によるものであるか。質問がわからぬですか。つまり、こういうことです。  私が議論しているのは、国民義勇隊というものは、たとえば沖繩その他における非戦闘員のように、国の業務に事実上参加したということに伴う被害であるというふうに考えられる。しかし皆さん方が、これを拒否したり、国民義勇隊に関する資料を、ずっと今日まで焼くことを命じたり、隠してきた、閣議決定を封印してきたのは、それは援護法が、準軍属がずっと拡大することを恐れたからです。これが一つ。  私が指摘するように、もう一つは、国民義勇隊というのはボランタリー活動だ。日赤のようなものだ。自分で自分の身辺を守る自発的な行動である。国家との特別権力関係はない。実際に戦闘の中に組み込んで仕事をしておって被害を受けた人、死んだ人はやる、こういう考え方であろうというふうに推定される。そういう解釈ですか。
  166. 小沢辰男

    小沢国務大臣 閣議決定で国民義勇隊を軍の指揮下に入れて戦闘隊に転移させることとして、そのために必要な法的措置を事前に講じておこうという趣旨が、いわゆる義勇兵役法であったわけですが、しかし、国民義勇戦闘隊の編成下令や召集というのは地方レベルにおいて行う。それは全然発動されないままだったものですから、したがって私どもは、それはもう、いわゆる国家との特別権力関係はなかったんだということで適用しないということに従来はやっておるわけでございます。
  167. 大原亨

    大原(亨)委員 そこで、そういう議論をいたしますと、閣議決定に基づく国民義勇隊を、そういう援護法対象にするのはおかしいのですよ。閣議決定で、あなたが言うように地域、地域で自発的にボランタリーでやったのを、国が特別権力関係にありという考え方援護法対象にするのはおかしいのですよ。いままで議論したことないことだけれども、それをやると、非戦闘員を実際上戦争に動員したという、つまり国際法違反の戦争犯罪の追及を占領軍からやられるということで、当時の内務大臣、国民義勇隊の総本部長の内務大臣、防空本部長の内務大臣が材料を焼いたわけです。そして軍備を復活するために軍属と準軍属の線引きを行って、全部の国民を動員したにもかかわらず、あなたがいみじくも答弁したように、これは自分でやったということにしたわけです。  そういう閣議決定を引用して援護法対象にすることは、非戦闘員を動員して国際法に違反したことを認めたことになるし、帝国憲法においても個人の権利義務については法律で定めるということがあるはずで、それに違反するのではないか。なぜ国民義勇隊に関する件を非常にしぼりにしぼって現行援護法で準軍属として取り上げてやったのかということについては、あなたの議論では解明できないのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  168. 八木哲夫

    ○八木政府委員 私が答弁するのはいかがかと思いますけれども援護法では、軍人軍属あるいは準軍属、その辺は、もう何らかの軍との身分関係がある。しかし軍との身分関係はないという場合でありましても、先生指摘になりましたような沖繩の戦闘参加者、これは明らかに軍の指揮命令下において戦争という行為の中で行われた。したがって、この行為というのは軍人軍属と同じように特別の権力関係にあるじゃないかということで措置が行われた。それから広島の国民義勇隊につきましても、当時、国民義勇隊というのは閣議決定で行われたわけでございます。しかし、正確ではありませんけれども、国民義勇隊は全国的には、恐らくまだ、そこまでいっておらなかった。たまたま広島の場合に国民義勇隊というものが設置され、現実にある程度の指揮命令下における活動を行っておったという面から、やはり軍と特別の権力関係があるというふうにみなしてもいいじゃないかというようなことから、そういう措置が行われたということだろうと思います。
  169. 大原亨

    大原(亨)委員 つまり広島の場合の国民義勇隊は家屋疎開その他、陣地構築なんかをしたわけです。しかし、これは敵前上陸や落下傘降下があったら全部やるんですよ。戦闘へ参加することになっているんですよ。ですから局長は、みなしてと、こう言ったのです。それが三月二十三日までの閣議決定を出しただけで、あとは全部ネグレクトし封印して出さなかった背景にあるわけです。  そこで、これは余り時間をかけませんが、四十二年十二月十三日私が総務長官から受領した文書ですが、その目録によりますと、三月二十三日は閣議決定で「国民義勇隊組織ニ関スル件」があり、それから四月十三日は閣議決定で「状勢急迫セル場合ニ応スル国民戦闘組織ニ関スル件」があり、四月二十七日には「国民義勇隊協議会ノ設置ニ関スル件」で閣議決定があり、六月二十六日には「国民義勇隊協議会及国民義勇隊事務局設置ニ関スル件」があるのです。それから中央は直接軍がやるかどうかで争った。前に亡くなった迫水さんが、そのことを言っていた。その調整をして、内務大臣が本部長という形で中央の本部長もできて、そこには親任、勅任の事務局の担当者がいて、そしてこれが戦争動員をやったわけですよ。だから、その関係を明確にしなさいと、そこで閣議決定ではもう限界に来て、国民の権利義務を拘束することができないということになって、六月に帝国議会の臨時国会を開いて国民義勇兵役法を制定したのです。  ですから皆さんが言うのは逆を言っている。隠した当時のことをずっと言っているのであって、私が言うのは、そういう閣議決定でずっと事実を積んできて戦闘隊までいって、できなくなったものですから、本土決戦の段階で国民義勇兵役法をつくって、総動員法の中で兵役法と国民義勇兵役法と、一方では防空法関係が少し残っておったけれども、その関係で全部の国民を動員した。そういう逆の方が事実であるということを私はしばしば指摘をしたわけです。その法律関係や事実関係を明確にしなさいということを、閣議決定について、しばしば言っているわけです。  そこで、これをやると言っても時間がないから、ひとつ、この前に読んだ以外の記録を読んでおきます。これは「広島市役所原爆誌」の十九ページ「国民義勇隊の編成」というところにあるのです。  昭和二十年になると戦局は末期的様相となり、三月の硫黄島陥落、四月の米軍の沖繩上陸、つづいて五月のドイツ降伏など、情勢はいよいよ急迫化し、広島市は第二総軍司令部をこの地に迎えて本土決戦の一翼をになうことになった。 一方、大本営では本土防衛体制の確立を急ぎ、六月には「国民義勇兵役法」と「国民義勇戦闘隊統率令」が制定されて、男子は十五歳から六十歳、女子は十七歳から四十歳までの全員が義勇兵役に服することとなり、正に残された国民の総力を結集しての戦いとなった。これに伴い広島市では、ただちに市長粟屋仙吉を隊長に、助役、部長を幕僚とする地域国民義勇隊と、軍管理工場を単位とする職域国民義勇隊を編成した。 ということで、六月には法律ができると直ちに、いままでのものを総決算してやった。これは広島だけの問題ではない。広島はそういう状況において原爆を受けたから私は議論しておるわけですね。そういうことです。ですから、その事実関係を、ひとつこの際、明確にしてもらいたいということが一つ。これは国家補償の精神による援護法にアプローチをする一つの仕方です。これが一つあるわけです。  私の言ったことはわかりましたか。戦傷病者戦没者遺族等援護法の附帯決議はそういう趣旨であります。そのことを去年、おととし、ずっとやっていたのだが、皆さんはなかなかやらないですね。私がちゃんと指導するから、きちっとやってくださいよ。いいですか、厚生大臣
  170. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもは再三申し上げていますように、そういう事実は確かにあったわけですね。しかし現実には、その組織下令というものと、その編成と、それがもう、まさに義勇兵役法に基づいたものとして発動はされてなかったから、そこで国家との特別権力関係はないんだ、こういうことで割り切っているわけですね。それは先生の言われるように議論のあるところだと思うのです。それぞれの市役所で、そういうことを現実にやった人もあったり、いろいろすることの記録が残っているわけですから、それは議論があると思いますが、とにかく一般的に、その当時のあれからいいますと、実はその法律の施行がされないまま終戦を迎えた。こういうことで私どもは特別権力関係に一億国民はなかったのだというふうに割り切っているわけでございます。
  171. 大原亨

    大原(亨)委員 だから、おかしいと言うんです。これは帝国議会で審議をして、議決をしたら即日公布になって施行しているのですよ。勅令から軍刑法の適用から給与令まで全部あるのです。私が言っているのは、逆に質問を出したのだが、国民義勇隊に関する件という閣議決定、そういう下令もされてない、実施もされてないようなものを戦傷病者戦没者遺族等援護法対象にしているのはおかしいじゃないか。あなたの答弁されることとは違うじゃないかといって私は逆のことをさっき言ったのです。「国民義勇隊組織ニ関スル件」という閣議決定を論拠にして準軍属と決めて戦傷病者戦没者遺族等援護法を適用しているのですよ。そのことは三月の問題。六月には法律ができて、それを全部法律でカバーして施行されているのですよ。だから戦闘状況が起きたならば全部国民は戦闘する配置についておったわけです。それを特別権力関係と言わずして何であるか。それを政策上、線引きをしたというのが今日、原爆の周辺を見ても出ているじゃないかという点を私は言ったわけです。私の言ったことはわかりますか。そういう点を頭に置いて、もう一回この援護法の決議について十分研究してもらいたい、よろしいですか。
  172. 小沢辰男

    小沢国務大臣 検討はいたします。  だが従来は、根拠は閣議決定であっても、現実に、そういう事態をちゃんとやったものだから、その対象者だけは援護法で取り上げたわけです。片っ方は法律ではありますけれども、それが組織下令なり、あるいは実際の行動までいかなかったものだから、これはもう対象にしなかった、こういうことでございます。しかし先生の言うように、理論的に言えば法律は施行されて、そうして、それが地方の末端まで一応官公庁までいったわけですから、そういう面で一体どう考えて線引きをするかということについての議論を言われますと、それは確かに、われわれのいままでの立論が、それでいいのかどうなのか、その点は法律論的にも、もう一遍、検討してみなければいかぬとは思います。だから検討しますが、従来は、そういうことで私どもは割り切っておる。現実に動かないものと動いたものと、両方の取り扱いを異にした、こういうことでございます。
  173. 大原亨

    大原(亨)委員 根拠にならない閣議決定をここに挙げざるを得なかったという情勢、実際そういう義勇隊が疎開等で動いた、そのことを三月の閣議決定だけを取り上げたというところに間違いがあるわけです。しかし、それは資料は全部焼かしたり隠したりしたのです。それを全部洗い出してみると、私が言ったようなことであって、法律が施行になって実施されないということはないですよ、あなた。そんなことは幾ら戦争中といえどもない。だから、ますます法律上のたががはまったのです。これが一つ。  それからもう一つは、これはやはり大臣がかわっておられるし、われわれが国家補償議論をするときに必ず触れておかなければならぬのは、このような原爆というのは、私も昭和三十四年以来、藤山外務大臣のときからやっておりますけれども、つまり、きょう池田委員も言っておられましたが、原爆は毒ガス以上であることは間違いないのですよ。そういうものは国際法違反ですから、国家間の戦闘行為で行われるならば、これは国家賠償の対象になるべきものである。ただしサンフランシンコ条約で放棄した。放棄した日本の政府は被害者に対して賠償しなさい、こういう議論です。  そのことで、どうしても援護法を制定すべきであるということの裏づけとしまして、これをひとつ後で大臣よく読んでください。昭和二十年八月十日に、六日、九日の広島長崎で落ちた原爆の後で、政府が新型爆弾——まだ原爆とは言わなかった。新型爆弾に対する抗議声明を出しておるのです。これはヘーグの陸戦法規、空戦法規に反する無差別爆撃である。軍事施設でなしに無差別爆撃である。それで爆弾自体が非人道的な兵器である。国際法違反の暴挙である。これは直接原爆とは言わなかったけれども、そうだ。こういう点で抗議声明を出しておる。それがずっと続いておれば、いまのような核の議論はないのです。だからこそ国際的に日本が率先して被爆国として禁止協定を結びなさい。けさほども池田委員も言っておりました。そういうことをきちっとやれば終始一貫するわけです。だから、そういう観点国家賠償という観点でも、やはりこの非人道的な爆弾による、はかり知れない被害に対しましては十分な補償措置をとるべきであるというのが、これは一つの論拠です。  いままでの議論を集約して言いました。そういう点については、けさもありましたが、大臣、その主張はおわかりでしょう。
  174. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃることはよく理解できるのですが、これは法制局長官でないとなかなか答えられないと思いますけれども、講和条約のときに賠償放棄をしたということと、国内において、それを国が国家賠償法的な精神で賠償をしなければいかぬのかどうかという問題とは、これはまた法律論的に、いろいろ見解があるだろうと思うのです。ただしかし、そこまでの知識は私はございません。私、当時海軍省にいましたから、この抗議文を出したことは承知しております。
  175. 大原亨

    大原(亨)委員 そこで国内法がない、国内法をつくりなさい。それが援護法である、こう言っておるわけです。被爆者に対しては援護法をつくりなさいということが、国内法、原爆の被害に対する国家賠償であるということですね。私が言うことはわかるでしょう。
  176. 小沢辰男

    小沢国務大臣 あなたの立論の根拠と立論の結果はよくわかりますが、われわれの見解は、また後で……。
  177. 大原亨

    大原(亨)委員 それで、これから認定被爆者疾病範囲について言いますよ。いままで認定被爆者疾病範囲は何ですか、挙げてみてください。
  178. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 範囲ということでございますが、悪性新生物、造血機能障害、肝機能障害、甲状腺機能障害原爆白内障、外傷性疾患等でございます。
  179. 大原亨

    大原(亨)委員 それは原爆に起因する認定疾病ですね。
  180. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 認定疾病でございます。
  181. 大原亨

    大原(亨)委員 私は最近こういう文献がたくさん出ているのを見るのですが、この点について直ちにうんということはできないが、専門家審議会があるのですけれども、私は審議会での審議を得て検討してもらいたいという点は、白血病と白内障だけでなしに乳がんですね。原爆を受けた人で非常に多い病気は乳がん、それから唾液腺がん、これは人数は非常に少ないらしいです。しかし、これは首から上、上半身ですが、乳がんと唾液腺がんを認定に加えるべきではないか。昭和三十二年当時できてから余り変わってないのですからね。石田判決がありまして、その問題での若干の前進はありましたが、これは個別的なものにとどまっている。そこで乳がんと唾液腺がんを認定被爆者の中に加えるべきである。そういうのを裏づけるような論文が放影研の報告書の中にもある。それから東大の医学部の吉田教授の論文の中にもある。それから広島で、この問題をずっと原対協でやっておられた松坂義正博士の論文の中にも、しばしば出てくる。起因するということは特別手当等にも影響いたしますからですが、しかし、これはやたらに広げるということも学問的な基礎なしには審議会の議を得ることはできぬでしょう。しかし私は、こういう点については審議会の議を得てもらいたい。こういう材料があるわけですから、政府の方から、いまやりますということにはならぬでしょうが、しかし審議会の議を得てもらいたい。人数については限られておるからであります。
  182. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに先生おっしゃいますとおりABCCの研究等で唾液腺の腫瘍は、高線量の放射線を受けた被爆者では、非被爆対照者に比べて五倍も多いというようなことも出ておりますし、あるいは乳がんの問題も同じような先生指摘のようなことがございます。当然のことでございますので、このようなものも認定疾患というようなこととして検討するということを審議会にお願いいたしたいと思います。
  183. 大原亨

    大原(亨)委員 それはぜひやっていただきたい。  それから原爆小頭症は認定患者に入りますね。全部入りますか。
  184. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 結局、医療がつきませんと認定患者にならないものでございますから、医療が必要たる者は認定患者になります。
  185. 大原亨

    大原(亨)委員 原爆小頭症で、胎児で被爆をして知能指数その他欠陥がある人については小頭症認定患者になりますね。全部なっているわけでしょう。
  186. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 特別手当、全員支給になっております。
  187. 大原亨

    大原(亨)委員 それで問題は、今度、手当として月に三万円支給するわけですね。それは個人に支給するわけですね。それは新しい今度の一つ努力の跡です。  そこで、時間の関係で、はしょって進んでまいりますが、やはり福祉施設をつくるべきである。というのは、そういう子供を残して親や祖父母が、順序から言えば先に死ぬわけですから、その後をどうするかという問題が社会問題になっている。たとえ小さな問題でも、これは質的に非常に大きな問題である。福祉施設を考慮すべきではないかという要求議論があります。これにつきましては前向きに検討していただきたいと思いますが、いかがですか。
  188. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに先生おっしゃるとおりに、いろいろな施設へ入らなければならないという方もおると聞いておりますし、個々に、人によりましては働いてもいけるという方もおられますし、あるいは家庭にいた方がいいという方もおられると聞いております。ただ、だんだん大きくなってきて、めんどうを見られる方がいなくなって仕事もできないという方が、年が多くなってくると両親が亡くなるというようなことがあって、そういう問題が次第に起こってくるということも私ども聞いております。ただ、全部、同じ一カ所に、そういう方を収容するかどうかということは、また一つ別に問題もあろうかと思いますが、しかし、そういった御両親が亡くなって、しかもお一人で、どうにもならないというような方々福祉施設に入らなければならないという事情が出てくることは、私どもも当然考えられることと思いますので、これについては私ども十分実情に沿って検討してまいりたいと思っております。
  189. 大原亨

    大原(亨)委員 前向きに検討してもらいたいと思います。厚生大臣、よろしいですね。
  190. 小沢辰男

    小沢国務大臣 前向きに検討いたします。
  191. 大原亨

    大原(亨)委員 原爆の外へ出ているケロイドは何回も手術をいたしますけれども、しかし痛みや、かゆみがとれなくて手術を繰り返すわけですね。特に婦人等は結婚もできない、就職もできないということですね。原爆のケロイドの患者は、どのくらい認定患者になっておるでしょう。わからなかったらわからぬと言ってください。
  192. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 現在のところわかりません。
  193. 大原亨

    大原(亨)委員 それは痛み、かゆみがあって、なおかつケロイドの症状が進行している人については認定患者になるという対象ではありますね。対象でないですか。
  194. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 結局、医療の問題でございまして、手術をするというときには対象になると思います。
  195. 大原亨

    大原(亨)委員 つまり白内障とか白血病というふうなことではないのですが、しかし原爆のケロイドは対象になるということですね。対象になりますと医療特別手当の給付があるわけですね。ですが、これは社会的にも一生を台なしにしておるわけですから、苦しんで苦しんで何回か手術を繰り返してもケロイドが出てくる、こういう後遺症が原爆にはあるわけですから、これは普通一般の常識で焼夷弾とか電気のやけどと同じような考え方で処理してはいけないということですね。そこに原爆の特殊性があるわけですから、違法性があるのですから、非人道性があるのですから。これは実際上、人道的にも一生を台なしにして、苦しんで苦しんで生き抜いておるわけですから、私は、特別手当支給や、いろんな制度については普通の障害者という常識を破って、突き越えて、これについては十分な処遇をすべきであると思いますが、いかがでしょう、大臣
  196. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるとおりだと思いますから、ただ具体的な内容について御意見があれば、また承りまして申し上げます。
  197. 大原亨

    大原(亨)委員 次は、地域指定の問題です。地域指定は、いま、いろんな面において非常に関心があるわけです。あるわけですが、私は、きちっと節度を持って処理すべきであるというふうに思う。  その第一は、やはりそういう要求が出るのは根拠があるのです。これは私がつくってもらいましたから、見てください。広島長崎です。見ながら答弁してください。つまり昭和三十二年、四十三年の特別措置法、そういうのができたときの被爆地の指定は行政区域をもってやったわけです。旧長崎市、旧広島市。広島の場合に十一キロぐらい南に離れたところに似島という島があるのですが、これは傷害者もそこへ殺到したし、あるいは海上に遮蔽物がないから、いろいろなことで放射能をたくさん受けたということの判断もあるんですが十一キロのところ。長崎でしたら、うんと南北に長いわけだ。それがいま問題になっておるわけだ。ただし、その後、昭和四十九年には長崎で健康診断の特例地域を設定いたしました。それから、広島は黒い雨地域を設定いたしました。それは昭和五十年に設定いたしました。そして健康診断の特例地域といたしまして、手帳を交付をいたしまして診断をして、そしてケース・バイ・ケースで被爆者対策を運用しておるわけですね。それで、たとえば黒い雨地域等は直接放射能というのがある。残留放射能、二次放射能というのがあって、二次放射能が雨と一緒に人体に影響を及ぼしたという科学的な根拠がある。放影研や占領軍の調査もある、そういうことですね。そういうふうに理解してよろしいか。いままで言ったことは間違いないか。
  198. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 確かに先生のおっしゃるとおり、黒い雨地域は放射能を含んだ灰が入っているということで、これが人体に影響を及ぼすのではないかということで地域に指定したわけでございます。
  199. 大原亨

    大原(亨)委員 それから一般の手帳の無条件の入手者あるいは地域入手者等は加えて、それが程度を少し薄めましてできておる。そこで、やはり十二キロ問題が長崎から出てきておるわけですね。そこで、行政区画で被爆地の地域指定をするということも根拠がないのです。行政区画によって旧広島市だけに放射能が落ちて隣のところには落ちぬという理由はないわけです。それは黒い雨地域で若干の調整をいたしましたし、長崎も四十九年、北の方に風が吹いたということで地形等でやりました。そこで、本年も調査費を設けて地域指定について見直しをやるということに答弁も聞いているし、予算も計上されておる。私は科学的な根拠に基づいて、その地域を指定することが正しいと思う。なぜ、そういうことが起きてきたかということがあるんだから、そういう理由も頭に入れながら、きょう中村君も言っていたが、いつもここで言っている。長崎県は超党派で言っておる。言っておるけれども、それぞれ理由はあるけれども、やはり広島の状況を見て、その地図をごらんになったらわかるように、科学的な根拠に基づいてやるべきである。その科学的な根拠とは何かという点について見解があれば、お聞きをしたい。
  200. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 科学的根拠ということは、私ども五十一年に原爆の残留放射能調査というのを行ったわけでございます。この残留放射能調査というのは、原爆が爆発いたしまして、そのときに生じた放射性の物質、セシウム等を使いまして、それが現在までも残っておるわけでございますから、それをはかりますと一体どのくらい——一つは瞬間放射能というのは距離ではかれるものでございます。空中を伝わってきたのは距離ではかれる。それと同時に、今度は当時、何といいますか、降ってきた灰というのがどのくらい存在するかということは、現在でも、これは一つの仮定を設けますれば、そこのところへ、そのときの物質が残っておれば、それはそのまま放射能を持って残っている。それが、たとえばセシウム等を使いますと量がはかれるわけでございますから、そういうことで各地域、地域に、どのくらいのそういった放射能の物質が当時落ちたか、現在はかりまして逆算すれば、当時の放射能の強さがわかるわけでございますから、そういった調査をすることによりまして、当時そこにおられた方が、どのくらいの線量を被爆され、また、その後も、どのくらいの線量を受けておられるかということを勘案して、そういった地域を指定するのが適切であろうか、こう考えたのが残留放射能調査でございますが、これも先ほど申しましたように、やや不備な点がありましたので、そういった不備な点を、もう少し学者の間で十分検討していただきまして、それが十分解明できるような、そういう調査をいたしたいというふうに考えているわけでございます。
  201. 大原亨

    大原(亨)委員 一般的には瞬間放射能は長崎の放射能の威力が強く、それから残留放射能は広島原爆が汚い。一言で言うと汚い原爆だと言われておる。ですから三十数年たちました今日、なかなか測定はむずかしいですよ。しかし、それは原爆がどういう恐るべきものであるかということを明らかにすることにもなるのだから、私は、銭金を惜しまないで、これをきちっと、いまの段階で整理をしてもらいたい。そして十分公平の見地で住民が納得できるような措置をとってもらいたい。  この予算の一千二百万円程度では私は足りないという気がいたしますが、この調査をするに当たって、私が申し上げた点について意見があったり、あるいは賛成だということになるならば、その所見をお聞かせいただきたい。
  202. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 この問題は、きわめて科学的な問題として理解すべきだろうと思いまして、そういう意味先生がおっしゃられたこと、まことにそのとおりだと思います。
  203. 大原亨

    大原(亨)委員 大体あれは広島市が地域でやったというのは根拠がないんです。旧広島市を中心にやったというのは根拠がないわけです。根拠が全然ないことはないけれども爆心地広島市のど真ん中でしたから大体において当たっておるわけです。しかしながら、やはりそういう科学的な根拠はなかったということは事実ですから、それで長崎からも、そういう意見が出ておる。地形やその他との関係、南北、東西との関係で出ておるわけですから、私は、それは十分被爆者や国民が納得できる措置をとってもらいたいということを強く要望をしておきます。  それから放影研、昔のABCCですね。これは質問の通告事項にはなかったのですが、二世への問題に関係をして議論されておりますね。そこで、これは応用問題になるかと思うんですが、二世への問題は大体どのくらいな展望で調査しているのですか。それから放影研の研究調査のテーマ、影響調査のテーマは、それ以外に何があるんですか、主なものを挙げてみてください。
  204. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 先生いま、おっしゃられた影響というのは二世へのことでございますね。
  205. 大原亨

    大原(亨)委員 それはもうやっているんだから、いま放影研でやっている調査テーマ。
  206. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 放影研の主な調査の大きなテーマを申し上げますと、原爆被爆者の寿命調査、成人の健康調査、被爆者の病理学的研究、子孫の死亡調査、それから新たに五十一年度から、以上のほか原子爆弾被爆者の子孫の遺伝生化学的研究というのを行っております。
  207. 大原亨

    大原(亨)委員 そこで一昨年ですか、いつだったかABCCを改編いたしまして放影研、放射線影響研究所にいたしましたね。そして日米対等でやるということで、財政負担も人的な負担も対等にいたしました。いままではアメリカの占領軍以来続いておったわけですから、日本は寄生虫的なスタッフの提供の仕方、財政負担でありました。ずいぶん、わからないこともたくさんありましたが漸次きれいにいたしました。  そこで、そういう双方対等の立場で研究を進めていくというのですが、日本側はアメリカ側が設定いたしましたテーマについて、その後、新しいテーマ等についての要求は出したことがあるか。あるいは二世への影響調査については、どのような見解を持ってアメリカ側の研究テーマに対応しておるかという点について、意見がなければ、そういう意見はありませんと言ってください。意見があるならばお答えください。
  208. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 さしあたり、いま申し上げました以外の新しいテーマについて提示されていることはまだございません。  それからもう一つ、二世の研究でございますが、先ほど申し上げました生物遺伝学的研究を五十一年から始めたわけでございますが、これについては、血液を取って、その中のたん白質をつくる酵素に変化があるとすれば、それは放射線の影響によるのではないかということが推定できるといった新しい技法でございますが、アメリカ側もこれに興味を深く持っておりまして、新鋭の機械等を入れるなど非常に一生懸命考えておるわけでございます。
  209. 大原亨

    大原(亨)委員 それは大体どのぐらいの規模で調査しているか、その調査は今後何年ぐらいで終わるのか。
  210. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 さしあたりのところ何年でという目安はできておらないと思います。と申しますのは、差が出た場合に、その差が非常に小さければ数が非常に多くなければなりませんし、非常に少ない数で大きな差が出てしまえば、それですぐわかるわけでございますから、中身の結果がどう出るかによって、何人調べるかということとも関連いたしますので、とりたてて年限がいつということは申し上げられる段階にはないわけでございます。現在のところ、いままでやった範囲内においては、まだはっきりした差が認められないという感覚であったように私は聞いておりますが、そういう点で、ある程度の時間がかかるのではないかと思います。
  211. 大原亨

    大原(亨)委員 委員長席の羽生田さんも専門ですが、しかし二世に影響がないという大胆な結論が出ておったら、そうしたら局長、調査を大きな規模で長い年かかってやる必要がない。そういう疑いがあるのです。その疑いを科学的に解明しようというのが調査の継続なんです。その結論は差があるということになったら、また大きくやって立証していこうということに研究もなるのじゃないですか。私は、そういう点について全然専門家でないけれども、常識からすれば、そうじゃないかと思うのです。だから私は、これには一定の目標があると思うのだ。  戦後三十年たっているのですから、胎児は小頭症その他の問題がありますね。胎児でない人で妊娠、出生した人に、どういう影響があるかを、放影研は医学的に調査をやっている。それで調査費は原爆予算の中にちゃんと計上されているのです。日本には十数億円の折半分担があるのですよ。日本の政府は、この問題について主体的に取り組んでいなかった。予防研究所の支所だったのです。予防研究所は伝染病予防の研究所です。放射能支所がここにあると言ったって中央でコントロールできはしないでしょう。あれがいいとか悪いとか評価できぬでしょう。占領以来アメリカが継続してやっていたのを折半したのですよ。それだったら、もう少しりっぱなスタッフを入れて、理事長は日本側が持っているわけですから、そういうふうに変わったのですから、りっぱな研究をやる。研究についても主体性を持って、もう少しきちっとした答弁ができるようにしてもらいたい。これは改めて別の機会にやります。いつまでやるかわからない、そんなことはないですよ、私が手に持っている資料だって。私が答弁すれば、もっとましな答弁をする。  それで、このドル安の円高でABCC、放影研のアメリカ側はかなり打撃を受けたと私は思うのです、十数億円に匹敵するドルを折半して負担しているわけですから。研究を進めていく上においてはドル安の問題は支障はありませんか。
  212. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 現在のところ、これは円建てにいたしておりますので、先生御心配のようなことはないと思います。
  213. 大原亨

    大原(亨)委員 円高になれば向こうはどんどんドルを持ってくるということですね。そうするとドルがたくさんだまるということですね。そのこと自体は円高とは関係がないことですから、ドルがたまり過ぎるということとは関係ないのですから、支障はないわけですね。  そこで厚生大臣、これは時間をかけてやれませんが、けさほどから議論になっている二世問題をいま調査しているのです。石田判決は、白内障は老人白内障と原爆白内障があって、従来政府見解原爆白内障は進行しないから認定の対象にならない、こう言ってネグレクトしてきたわけですが、裁判では、社会保障だから疑わしい問題については認定をして、医療と所得を保障すべきである、こういう判決が出たわけだ。これは医療国家保障の側面を強調したわけですね。  そういう判決考えた場合に、原爆についても二世については、あるなしを決定することは非常に大きなショックを与えることになるけれども、その疑義は残したままでも、健康診断をしながら放影研が研究調査を進めていくということで一つの接点を求めて、二世に対しては申し出に基づいて何らかの調査をすべきである。最小限の施策をすべきではないかということが、いままでずっと議論になっています。これは二世問題の研究に関係しますが、私が言っていることについては一応わかるでしょう。
  214. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほども森井議員にお答えしましたように、そのことはわかります。そのことはわかりますと申し上げております。
  215. 大原亨

    大原(亨)委員 だから、がんばってということでなしに、そういうことを具体的に施策の中へ出してください。そのこともわかりますか。
  216. 小沢辰男

    小沢国務大臣 社会的ないろいろな問題もありますけれども、御本人が希望する場合に、いろいろ検査申し上げて心配のないような措置をとるなり、もし万一のことがあれば、それは医療なり、その他の援護対象にすることは必要なことだと私は認識しております。  ただ問題は、それならばということで、さらに進んで健康管理手当やその他の制度への波及をいろいろ考えてきますと、これはやはり、いままでの考え方の線だけはきちっと守らせていただきたい。今日のわれわれの態度としては、そう思うわけでございますので、この点ははっきり区別して、わかるかという場合に、わかりますという意味を受け取っていただきたいと思うわけでございます。
  217. 大原亨

    大原(亨)委員 野党案によりますと、一時金として六十万円、五年間の交付公債という遺族に対する特別給付金制度があるのです。いままで議論になりましたね。  つまり、瞬間的に死んだ人は変わらぬじゃないかという議論もあるのですが、原爆被爆の傷害の特色というのは、その瞬間的に亡くなった、そのときも非常に普遍的な、社会的にも家庭的にも非常に大きな被害であったけれども、広い範囲がばっとやられるのですから、その明くる日から、どんどんいろいろな症状を繰り返して、吐血をし、出血をし、脱毛をし、そして手術を繰り返して亡くなった人がいっぱいいるわけです。ある外傷だけの場合には一定の時間がたったならば治癒することがあるのですが、これは放射能の後遺症がずっと一緒になっているところに問題があるわけです。そこで月を経、年を経ても、なおかつ今日でも、その影響で健康を害したり、あるいは死期を早めたりする人があるのですから、危険な疾病にかかることがあるわけですから、そこが問題ですが、そういうことで亡くなった人の家族については、国は国家補償の精神を発展させて、弔意を表するということで特別給付金という制度をつくるべきではないかというのが野党の意見です。  ちょっと御答弁になっておったように、現行の日本の援護法は、特別給付金というのは特別権力関係だけには限定していない、そうでしょう。
  218. 小沢辰男

    小沢国務大臣 特別な状況に置かれた方々に対する弔意のあらわれとしての特別な政策である、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  219. 大原亨

    大原(亨)委員 たとえ援護法でそれが決められ、あるいは援護法に連動して決めてあっても、特別権力関係論とは、これは別の問題ですね。
  220. 小沢辰男

    小沢国務大臣 さようでございます。
  221. 大原亨

    大原(亨)委員 だから、亡くなった人の遺族、妻とか父母とか、そういう妻と父母の年とられた人に対して特別給付金を出すということですね。だから、そういう特別権力関係に直接関係はないのでも、ちゃんと制度があるわけです。森井委員指摘をしたように、満州事変までさかのぼったわけですから、なぜ日露戦争にさかのほらないのか。第一次大戦にさかのぼらないのか。そのことを質問しておると時間がなくなるから……。  だから孫振斗の判決も出ておるのだし、石田判決もあるのです。最高裁も医療、所得保障についての社会保障的な側面は認めたわけです。やはりいままでは、そうではないと言ったけれども、最後は国家補償については私どももそう思うと大臣も言っているわけだ。それで第三の道とはこういうことだと言って開き直ったりしておるわけです。だから私が思うのは、特別給付金というふうなのは、政治的な決断で私はできると思うのです。あなたがいみじくも言われるように、立法府において合意があるならばできると私は思う。そう思いますか。
  222. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これはなかなかめんどうだと私は思うのでございまして、やはり遺家族に対する特別弔慰金の問題というのは、たとえば老父母の方で子供を亡くした人が遺族扶助料等が実はない。たとえば戦死者の未亡人がいるとか、そういうことで、ない場合に、特別な権力関係にあった戦没者に対する一つの弔慰のあり方として、親に相当する老父母の方に差し上げた特別給付金でありますし、また妻の特別給付金というのは、妻そのものが恩給の対象者、扶助料の対象者ではありますが、その妻の方が、ずっとひとりで再婚もしないでおりまして、そして自分の夫である英霊を守るという事実関係に着目して、やっておるわけでございますから、したがって被爆者方々、もちろんお気の毒でございますし、その点は私ども、ちっとも異論はないわけでございますけれども、その御遺族の方々に特別弔慰金的なものをということになりますと、原爆によって瞬間的に命を落とされた方、そういう方々との均衡問題もございましょうし、また、そこまで今度さかのぼりますと、たとえば他の原爆以外の戦争の、内地におって爆弾によって死亡した方あるいは艦砲射撃によって死亡された方との関係もございますし、いろいろ考えますと、なかなか容易でないわけでございます。  したがいまして、ただ恐らく先生方がおっしゃる、国家補償的な配慮制度根底にある特別措置法でもあるから、主体をなした、戦争という国の行為に起因したという事実を考えて、国が何らかの弔意をあらわすべきではないかという御立論について、一概にわれわれ、どうもそれはおかしな考え方だなんというような気持ちはありませんけれども、いままでの制度が当然、社会保障的な考え方でプラスアルファでいくわけでございますので、この辺のところまで、そういう社会保障的な考え方をとっていくべきかどうかということについては、いろいろな御議論は十分わかりつつも、慎重に検討しなければいかぬという気持ちを持っておるわけでございます。
  223. 大原亨

    大原(亨)委員 検討するのはするけれども慎重にやる、こういうことですね。検討するのでしょう。
  224. 小沢辰男

    小沢国務大臣 国会の御意思がどの辺にあるかわかりませんけれども……(大原(亨)委員「わかっておるじゃないか」と呼ぶ)国会の御意思がそういうようなことで、いろいろ御表明がありましたら、私どもとしては検討をしなければいかぬと思っております。
  225. 大原亨

    大原(亨)委員 もう三分ありますからね。これを話しておったら……。  外務省、来ていますか。せっかく来ているのに、あなたに言わなかったけれども、私は、最近外務省はおかしいと思うのだ。昭和三十四年に、私が出てきてしばらく後ですが、岸内閣のときの藤山外務大臣に質問をいたしました。条約局長も参加しておりました。その記録を最近出して見たのです。いま核問題がやかましいのですけれども、やはりあそこで言っている趣旨は、つまりヘーグの陸戦法規その他の空戦法規等の全体から見て、また毒ガスあるいは化学兵器、そういう兵器を指摘した実定法もあるが、八月十日、原爆の直後に政府が抗議声明出したように、一般的に、だれが考えても非常に不当で深刻な被害を及ぼすような兵器を使ってはならぬという抽象的な一般的な禁止規定もあるわけです。それから爆撃の対象地域の問題についてもある。それは指摘をしてあるし、条約局長も当時答弁しておるのです。結論としては、原爆は戦時国際法の精神に違反をする。戦争における核の使用は戦時国際法の精神に違反をするということを、ずっと議論をして、最後に藤山外務大臣政府委員答弁を受けて答弁をしたのです。それはいまも変わりませんか。
  226. 柳井俊二

    ○柳井説明員 ただいま先生から御指摘のございました藤山大臣答弁でございますが、これも先生指摘のとおり、ヘーグの陸戦法規その他戦闘手段の制限に関するいろいろな国際法の規定があったことはそのとおりでございます。原爆の投下ということにつきましては、これは破壊力の面からいいましても、あるいは放射能その他の影響ということからいいましても、これは非常に大きな損害をもたらすものであるということで、人道上大変遺憾なことであるというふうに考えております。  しかるに、実定国際法上どうかという御指摘の問題でございますが、この点につきましては、この新型爆弾が投下されました当時の国際法あるいはその後の国際法に照らしまして、このような兵器の使用というものが国際通念といたしまして、実定国際法の客観的な議論といたしまして、当然に国際法の違反であるというふうに固まっているというふうには、なかなか申し上げられないのであろうというのが私ども考えでございます。  ただ、御指摘のございましたような兵器の制限という問題につきましては、国際法の根底には、当然のことでございますが、人道主義というものが一つの基本的な思想として流れているわけでございます。この兵器の使用の制限、禁止という問題につきましては、特にこのような基本思想というものが強く出てくるわけでございます。かかる意味におきまして、このような原爆の投下というものが、かかる思想あるいは精神というものに合致しないということは明らかであると思います。この意味におきまして、当時の御指摘の藤山大臣答弁の御趣旨につきましては、いまでも私どもは異なる見解を持っているわけではございません。
  227. 大原亨

    大原(亨)委員 あなた若いのに似合わず、ぐるぐる回った答弁をするんですね。去年は、ここで公衆衛生局長ははっきり答弁したですよ、ばんと。国際法違反だと言うて。あそこの議論でも、あの性能は毒ガス以上であろう、こう言ったら、そのとおりです、こう言った。それから八月十日の政府の抗議声明もそういうことを書いておる。そのとおり、ずばりと書いてある。国際法の実定法には違反してない、実定法そのものでは違反はないけれども、しかし精神に違反する、こう言っていた。毒ガス以上の非人道的な兵器であるということを言ったわけですね。だから、やはりその判決にあるように、戦争の開始と遂行の過程を考えてみても、その原爆の実情を考えてみても、日本の国が知らぬということはできぬ、こういうことが判決趣旨には書いてある。ですから、そこらをきちっとすることが私はやはり——けさほども池田委員小沢大臣との間で、かなりいい質疑応答があったですよ、与党だから、いいかげんにやったのかもしれぬけれども。記録へちゃんと出ているのだ。だからその点は、唯一の被爆国というのはそういうことだから、ちゃんと援護に対する政策も立てなさい。そして、ちゃんと核は国際法違反だという主張をしなさい。だからこそ禁止協定を結ぶべきであるという主張の方が迫力あるんじゃないかという議論ですね。     〔羽生田委員長代理退席、委員長着席〕 日本の政府が、そういう主張をすべきであるという私の見解については理解できますか、大臣
  228. 小沢辰男

    小沢国務大臣 核の使用というものが実定国際法に照らして違反だと断言できるかというと、これはやはり法理論的には、なかなかめんどうだと思います。というのは、あらゆる兵器の進歩というものを考えてみますと、そのときどきで兵器というものの進歩があるわけでございますから、だから人道上こういうようなものを使用すべきでないという点については、これはもう、どこの国も異論がないと思いますので、したがって、われわれは核の全面禁止、全廃ということを国際的に訴えて努力をしているわけでございますから、そういう立場から考えてみますと、人道上許されるべきではないとは思いますけれども、これを使った結果、起こったいろいろな今日の被害というものについて、直ちに国家賠償なりあるいは国家補償という観念が出てくるかというと、理論的には、なかなか困難だと思いますけれども、そういう特殊性というものは当然考えなければいかぬから、その特殊性をとらえて、いまの原爆二法というものはできたんだ。そして、この判決によって国家補償的配慮根底にあることは否定できないのだという解釈を、現行法において、いただいたわけですから、その解釈にふさわしい内容を持つように努力する、これが現在われわれに与えられた義務といいますか、行政上の責任ではないかと思います。  ただ、この配慮を、どの程度の内容として受けとめるかということは、これはいろいろな議論があろうと思いますので、そこで私は、立法府である国会の御意思が、与野党いろいろ御相談の結果そういうものが出てくれば、われわれとしても、これを尊重して、りっぱな内容に一歩でも二歩でも前進したいという気持ちであるということを申し上げているわけでございますので、政府としては他の社会保障、あるいはいろいろな整合性というものを考えていかなければいかない立場がございますが、しかし、できるだけ尊重して、そういう内容に近づけていくように努力をしたい、こう申し上げておるわけでございますので、御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  229. 大原亨

    大原(亨)委員 終わりますが、これは討論が終わったわけではないです。それは最近、特に防衛のための核なんかは憲法違反じゃないというのはおかしいです。日本の国の頭の上で核爆発させることを想定して、そういう議論をしているというのはおかしいでしょう。だから、そういう議論があるようなところでは被爆者援護法はできないだろうということで、原点に返って、八月十日の政府の抗議声明、これは外務省が書いたそうだから、あの抗議声明の趣旨で、やはり政府はきちっとあらゆる解釈を貫くべきである。憲法で条約を守らなければならぬから、核拡散防止条約を締結している日本は守るんだということではなしに、これは明らかに国際法違反ですよ。こんなひどいことは許されないという観点で、日本の国際法の解釈もしなければいかぬですよ。あなたみたいに若い人は、そういうことで、ちゃんとやらなければだめだ。ただし、あなたの答弁はトップを出ることはできぬ。いまトップが議論していることを、ここで、あなたが来て答弁することは無理でしょう。それはよくわかりますよ。だから、これは別の機会にひとつ議論をするということを申し上げておきまして、時間が少し過ぎましたが、終わりたいと思います。(拍手)
  230. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大橋敏雄君。
  231. 大橋敏雄

    ○大橋委員 きょうは朝からずっと原爆法の質疑応答を伺っていたわけでございますが、大臣答弁は一貫しまして、政府政府なりに原爆被爆者に対して誠心誠意やってきているんだ、簡単に言えば、こういうことのようでございました。しかし、われわれ野党は、現在の政府が出しているいわゆる原爆二法ですね、これでは十分な対策にはならないという立場から、御承知のとおりに、国家補償の精神に基づくところのいわゆる被爆者援護法の制定を主張し続けてきたわけです。これは原爆関係者の大変なる要望でもありますし、私は血の叫びじゃなかろうかとさえ考えております。そういうことで、野党各党とも、それぞれ多少の意見の違いはありましたけれども、最終的にはまとめ上げまして、現在国会に提出しているわけですね。ところが、先ほども話がありましたとおりに、自民党一党だけの反対で、いまだにそれが実現できない。非常に残念に思っております。  その自民党の反対の主な理由は何だろうかと考えてみますと、いろいろあるわけでございますが、まず予算的に大変に違いがある、膨大な金がかかるということのようでもありますし、もっと重大な反対の要素は、国家補償に基づくというところに、こだわりがあるように考えられます。しかし、時代の流れ、そして実態の中から出てくる雰囲気というものは、国家補償というものに向かって、だんだんと動いてきたと私は思うのです。そういうことで、先ほどの大臣答弁の中にも、与野党の話し合いがつけば政府としても従来の考えを検討していかねばならない。検討していこうということは、与野党の話がつけば、それに従わざるを得ないのですというのが言葉の裏にはあると私は思うのです。そういうことから私は、きょう、もう一度、筋を立ててお尋ねをしてみたいと思うのです。  と申しますのは、ちょうど一年前ですけれども、やはりこの社会労働委員会で、この法案の審議をいたしました。そのときに私は、ある専門誌の論文を引用しまして、いろいろと質問をしたわけでございますが、厚生大臣局長も、それは法制局の、あるいは外務省の立場で答えるべき内容ですからと言って、本当にかみ合わない答弁ばかりだったわけです。きょう私は、その点をもう一度、整理をしてみたいと思うのです。  まず、私が手にしました論文というのは、法律時報、これは昭和三十九年二月出版されたものでございましたが「原爆攻撃と国際法上の損害賠償」という論文でございます。これは安井郁という先生の論説でございますが、大変長い論文でございます。この中にこういう言葉があるんです。「広島に使用されるまで、世界の人類によっていまだ一般に知られなかったものであり、その当時、原子兵器使用の規制について実定国際法が存在しなかったというのは当然のことだ。」そうですね。初めて使われたんだから、そのときまでは、このことが実定国際法に存在していなかったのは当然のことだ。「また、事件当時に原爆攻撃の禁止を直接規定する条約や慣習国際法がなかったことは明らかな事実である。」これも私も、そのとおり理解できます。「しかし、既存の国際法の規則や原則の中に、原爆攻撃について直接に規定せずとも、この種の兵器によるこの種の攻撃を禁止するものと認められるものが存在するか否か」まさにこれが問題点だ。このところを「法理的に究明していかねばならぬところである。重要な問題点だ。」こう前置きしてありまして、それから、その考察の内容としまして「この考察は、第一に兵器の性質、第二に攻撃の方法という二つの側面にわけて行う必要がある。」こういうことで、法律専門家の共通した判断の基準がここに置かれたようでございます。  これを見てまいりますと、原子爆弾被爆者に対する慰謝の道というものは、国際法違反、いわゆる国際法上適法の行為による一般の戦争被害の場合とは別に、これは法理的に異なることが特に重要な点である、こういうことを強調している論文でした。  私はまず、この点について、いま述べましたような考え方自体あるいは、いま言っている強調されている内容、これについて法規課長さんの方から一応御見解を伺いたいと思います。
  232. 柳井俊二

    ○柳井説明員 ただいま御指摘のございました論文につきましては、ただいま伺いましたところ非常に重要な問題指摘をしていると思います。また、その構成につきましても、私、全貌は必ずしも存じませんけれども、なかなか傾聴に値する議論であろうかと思います。  御承知のとおり、兵器の制限、禁止という問題につきましては、もとより、これは人道法あるいは人道主義という根本思想に立って、かつまた兵器の効果、これは戦争に使われるものでございますので、その武力闘争という観点からの効果ということも、これは現実の問題として非常に重要な要素であると存じます。この二つの面から、従来非常に古くから、新兵器が出ますたびに、いろいろな検討が加えられておりまして、その結果、御指摘のように、従来からいろいろな戦闘手段の制限あるいはその方法の制限という形で国際法が発達してきたという点は御指摘のとおりでございます。また、その論文にございますように、この新型爆弾が投下されました昭和二十年の時点におきまして、従来から、このような新型爆弾を想定しないで発達してまいりました兵器あるいは戦闘方法の規制に関する実定国際法がなかったということも御指摘のとおりであろうと思います。  問題は、その後どうなっているかということであろうと思います。これもまた御指摘のとおり、従来の国際法の中に、一般的な精神と申しますか、考え方と申しますか、兵器の使用は無制限でないというような考え方が一般的に入っていたということは事実であろうと思います。しかしながら、客観的な実定国際法の問題といたしまして、従来から発達してきたいろいろな戦闘法規というものが現在において原子爆弾に適用されるか、当然に原子爆弾の使用が国際法違反かという問題になりますと、ここはなかなか議論の分かれるところでございます。国際的に議論がいろいろ出ておりまして、この点につきましては、いまだ残念ながら国際通念として、これが当然に違反するというふうに断定するまでは固まっていないというふうに申し上げざるを得ないというふうに考えております。
  233. 大橋敏雄

    ○大橋委員 これは、これからの与野党の話し合いの中で、われわれいままで主張してきた、その国家補償に基づく被爆者援護法、これを絶対一歩も譲らないぞという立場をとるか、あるいはある程度妥協せざるを得ないのかという、きわめて重要な事柄になるわけですよ。いま、あなたの答弁を聞いておりますと、実定国際法上から見れば両方の論議があって、いまだに決められていない、これが結論なんですね。
  234. 柳井俊二

    ○柳井説明員 そのとおりでございます。
  235. 大橋敏雄

    ○大橋委員 私がいま示しました論文の中には、原爆投下というのはこれは当然、国際法違反である。だから国際法違反をしたその国は、また当然、損害賠償責任が生ずるんだ。しかしながら日本は、その損害賠償の請求権をサンフランシスコ平和条約の際に放棄したんだから、だから、その責任は今度日本国が背負って、そして日本国政府被爆者一人一人に、当然取るべきものにかわるものを与えていかねばならぬのだ、こういう論旨になっています。  これはこういうふうに書いてあります。「サンフランシスコ平和条約第一九条a項によって、日本国は、戦争から生じ、または戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国およびその国民に対する日本国およびその国民のすべての請求権を放棄した。この規定にいうすべての請求権のなかに、米国による広島長崎原爆攻撃から生じた損害賠償請求権も含まれることは、解釈上疑の余地がない。」こういう解釈なんですよね。そしてまた「国際法違反の原爆攻撃によって身体、財産に莫大な損害をこうむった原爆被害者は、米国から損害賠償を受くべき立場にあった。日本国は、国際法上において認められた損害賠償請求権を行使して、原爆被害者のために米国に対して損害賠償を要求し、これを原爆被害者に交付すべきであった。しかるに日本国はそれをなさず、損害賠償請求権を放棄してしまったのである。日本国としても、もとより好んで損害賠償請求権を放棄したわけではない。当時の情勢がそれをよぎなくさせたともいえる。しかし、このことは、日本国が請求権放棄から生じる結果について必要な措置をとるべき責任を解除するものではない。」私は全くそのとおりだと受けとめていたのですがね。「原爆被害者は米国から受くべかりし損害賠償が不可能となって、物質的にも精神的にも悲惨きわまりない状態におちいった。これは重大な法益の侵害である。原爆被害者のための国際法上の損害賠償請求権を放棄して、この悲惨な状態をひきおこした日本国は、原爆被害者に対して正当の補償をする責任を負うものといわなければならない。」  私どもはこの方の論旨が全くそのとおりだと理解してきましたがゆえに、原爆被害者関係者からの強い要請を受けまして、国家補償に基づく被爆者援護法をつくれと、ともに闘ってきたわけです。  幸いなことに今度、手帳交付訴訟の最高裁の判決が出ました。私はこれを見たときには、まさに、われわれの気持ちをくんでくれた内容だったな。いよいよ、われわれの希望している、あるいは提案している法案が成立するぞという気持ちがわいたものです。しかし、きょうの厚生大臣答弁を聞いておりますと、あくまでも人道的な立場からの配慮であって、それは社会保障そのものではないけれども、といって、また国家補償に基づくという全面的なものでもないんだ。その中間的なものだということで答弁されてきたわけでございますが、こうしたいわゆる法律的、法制的な立場からと、今回の最高裁の判決、これとの関係性について見解を述べていただきたいと思います。
  236. 小沢辰男

    小沢国務大臣 論文の執筆者である安井先生は私の国際法を勉強したときの先生でございますので、よくいろいろな所見については——当時戦時中でございましたが、大分、先生の立論も戦後変わってきた、これははっきり申し上げられます。私自身が直接、教授としていろいろ教えを受けた国際法の先生でございますから、あの当時の先生の立論と戦後の立論を比較しますと、大分変わったなという感じを持っているわけでございます。  それはしばらくおくといたしまして、いまのその論文は、まさに三十八年の東京地裁の判決原爆の投下についての国際法違反問題に触れました判決趣旨と、ほぼ同様な見解を持っておるように見受けられます。すなわち昭和三十八年の原爆判決を見ますと、われわれとちょっと見解を異にしますけれども、不必要な苦痛を与えるという、陸戦法規に禁止をいたしておりますようなものだという断定をしているようでございますし、また先ほどの安井論文にありました兵器の攻撃方法についての問題、これについても無差別性というものをとらえまして国際法に違反するという立論をとっておるようでございます。しかし、たとえその安井論文が客観性ありと考えましても、それと今度の国家補償の問題と、すぐ法理論的につながってくるかどうかという点になりますと、これはまた別の法律論があると思うのです。  と申しますのは、そういうことであれば当然、日本の国がアメリカに対して、その責任を追及し賠償を求める、こういうことになる。また被害を受けた個人も国際法上の請求権を持つ、こういうことになるわけで、たとえサンフランシスコ条約で日本の国が賠償を放棄いたしましても、違法な兵器の使用によって受けた本人の権利が消滅するわけじゃないのです。いろいろアメリカに対して請求する権利が消滅するわけでもないですから、したがって国は、その個人の法律的な権限を侵したことにはならないわけです。ただ先ほどの議論にもありましたように、講和条約を結んだときアメリカに賠償権を放棄したといっても、その被害を受けた本人に対して国がかわって損害を賠償するという責任は法理論上出てこない、こういうことになりますから、したがって、その観点から議論をするということは、そう私はこの問題の解決にはならぬだろうと思うわけでございます。これが第一点でございます。  それから第二点は、先ほども申し上げたように従来、原爆二法というものについては政府としては国家補償観点ということでなくて、むしろ社会保障観点が強く、しかも被爆者の置かれた特殊性あるいは放射能被害の非常な特異性を考えて、この二法をつくって、医療も見ます、援護も特別にいたします、こうやってまいりました。しかし明らかに従来とも、それだけではない。国家補償ではないけれども、その中間的なものかもしれませんという答弁をしているわけでございます。  それはなぜかというと、医療につきましては所得制限を設けませんし、また一般的な社会保障であるとすれば、健康管理手当やその他のいろいろな手当制度について所得制限がもっと厳しく、他のものと同じような線が引かれるのではないかと思うけれども、それも年々改善をしてきておりますので、そういう面からいって、いわば社会保障だけの立法でなくて、それよりも一歩も二歩も進んだ考え方で、この法律を立てております、こう申し上げてきたわけでございます。  今度の判決で、それがはっきりと、国の行為によって戦争というものが起きた以上、その戦争の被害というものを考えると、しかも特殊な非常に強い被害と、その後の不安というものを考えた場合に、国家補償的配慮というものが当然そこに行われてこなければいかぬだろう、こういうような立論があるわけでございますので、したがって、その配慮の程度が、これから問題になるんじゃないかと思うのでございまして、その配慮につきましては、私どもは、いまの原爆二法の範囲考えておりますことの内容の充実ということから、さらに今度、広がっていくことについては、これはいろいろ議論もありますから、もう少しひとつ、がまんをしていただきたい。しかし、この体系の中にあることについては、この判決趣旨を踏まえまして、国家補償的な配慮を否定できないわけでございますから、その配慮を逆に持ってきて、そしてできるだけ充実を図っていくように今後考えていきます、こう申し上げておりますので、その範囲内のことで充実を図っていくことについて、与野党の方で、またいろいろお話が当委員会においてあれば、それを尊重してひとつ考えさせていただきましょうと申し上げているわけでございますので、御理解をいただきたいと思うのです。
  237. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほど法規課長さんの答弁も伺いました。また、いま大臣見解も伺ったわけでございますが、内閣法制局の方、来ていますね。いまの答弁を聞かれていて、もし、おかしいと思われるところがあったら言ってください。もしなければ、いまの答弁を両方とも正当だとおっしゃってください。どちらでも結構ですから、思ったとおりに。
  238. 別府正夫

    ○別府政府委員 ただいま外務省条約局法規課長から答弁のありました点については、そのとおりというふうに私、考えます。  なお、厚生大臣答弁されました点については、後半は立法政策論でございますので、法律論という観点から言うと、立法政策論はこれからの問題に属するという点で、そのとおりと、いま法制局の立場で申し上げることが適当かどうか、いまその点は留保させていただきたいというふうに考えます。
  239. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは、話の観点を少し変えますが、今度の外人被爆者手帳訴訟の判決によりまして、これは韓国の方だったのですが、たまたま密入国をしてきた人で、この問題が起こったわけですね。しかし、国籍やあるいは密入国というのとは別問題として、そういう被爆者には手帳を与えねばならぬぞ、こういう結論が出ましたね。  これに対して当然、今後差し伸べる手が変わってくるだろうと思う。というのは現在この日本の中に、外国人で被爆をされた方、いわゆる被爆者という方がかなりいるのではないかと思うのですね。それらの方々に対して、どういう手を打たれるのか。どのくらいいると推定されているか。まず、その点をお尋ねしたいと思います。
  240. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 まず第一点でございますが、この今回の孫振斗さんにつきまして手帳を出さなかったというのは、密入国であったからということであるわけでございまして、現在まで私どものとっております措置は、適法に入国している外国人に対する被爆者手帳の交付は、必ずしも入国の目的は問わない。それから適法の入国後おおむね一カ月以上滞在する者であれば、居住関係があるものと判断して差し支えない。こういうふうな取り扱いを従来やっておったわけでございます。  そういうことでございますが、今回のこういった判決でございますので、この孫振斗さんは不法入国でありましても、手帳を直ちに交付するというような措置を福岡県でいたしたわけでございます。この点につきましては、各都道府県、広島市、長崎市あてに、この判決を添えまして、その取り扱いを、このようにするということを通知いたしたところでございます。  ただ先生、申し上げるわけでございますが、不法入国ということで、その手帳が出なかったわけでございますので、現在国内におられます外国の方は、それ以外の場合ですと、現在ほとんど皆さんに、もらえる方には手帳が行き渡っているというふうに考えております。  なお、外国人がどのくらいいるかということにつきましては、ちょっと私ども手元に数字を持っておりません。
  241. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは外務省の方にお尋ねしますが、今回は不法入国ということで論議になったということでございますが、一般的に、韓国人の方が韓国から日本の国に、原爆の被害を受けたので、その治療を受けたいという、それだけの目的で入国許可申請を出した場合に、それは受け入れられるものかどうか。まず、それを聞きたいと思います。
  242. 高瀬尚一

    ○高瀬説明員 ただいまの御質問の点でございますけれども、入国申請がありました場合に、その方が日本におきまして原爆治療を受ける必要性が十分にあると認められ、かつ、その方に十分に責任がある保証人がおります場合には、入国を認めることになっておりますし、過去におきましても、たとえば韓国からの方で相当、原爆治療を目的といたしまして入国された方があるというふうに承知いたしております。
  243. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いま、ただ原爆治療を目的とするだけで、身分を証明する人がいれば入ってこれますと言ったですね。それから、原爆の治療を受ける必要のある人であればという話、これは当然のことだと思いますけれども、いわゆる認定ですね。実際にもう戦後大変、歳月が流れたわけでございますが、いままで、そういう経済的な余裕もなく、当然、旅費とか滞在費等は本人持ちでしょうから、そういう余裕はなかった。しかし、いまようやく経済的にも、そういう余裕ができたので、じゃ日本に行きたいと思ってみても、それが原爆被害者であるかどうかという認定がなければ来れないでしょう。そういうときには、韓国の方で何らかの姿で原爆被害者であるという認定をしてくれるのでしょうかね。その点はどうなっているのですか。
  244. 日野正晴

    ○日野説明員 ただいま先生のお尋ねになりました点でございますが、御設問のような場合には、本国におきまして医師の診断を受けまして、その医師の診断書がついておりますので、それによって判断することにしております。
  245. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは韓国の方で、それなりに被爆者であるかどうかを認定している。その証明さえあれば来れるということですね。もう一度確認しておきます。
  246. 日野正晴

    ○日野説明員 御質問につきまして、もう少し敷衍して御答弁申し上げたいと思いますが、一般的には、先ほど申し上げました本国の医師の診断はもとよりでございますが、そのほかに、その入国の目的が真実、原爆治療の目的であるということと、そしてまた、その必要性が十分にあるというふうに認められまして、かつ、わが国の専門病院に受け入れがありまして、確実な身元保証人のあるときには、病気治療のための入国を認めるということにしております。
  247. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ちょっと厚生大臣にお尋ねしますが、韓国の方でそれだけの認定をした。日本の法律ではないわけですから、向こうの法律に従って認定した。それで日本に来た。日本の原爆手帳をいただけるかいただけないかは、今度は日本の判断を仰がなければならないわけですね。それはそのとおりですね。
  248. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 そのとおりでございます。
  249. 大橋敏雄

    ○大橋委員 そうしますと、もし原爆被害者であったとはっきりして、その治療がかなりかかる。長期間が予想されるとなったような場合その滞在許可は、治るまで、おれるということになるのでしょうか。
  250. 日野正晴

    ○日野説明員 現在の取り扱いを若干御説明申し上げますと、治療に要する期間は、やはり何と申しましても専門医の診断を受けなければなりませんから、その専門医の診断を受けなければ判明しないという事情があるなどしておりますので、とりあえず在留期間は六十日ということで上陸の許可を与えまして、その後、診断の結果、治療に長期間を要するというふうに認められますときには、その在留期間の更新を許可しております。
  251. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ちょっと確認しますが、とりあえず六十日間を許可して、その中で日本の専門医の診断を受けて、これが長期にかかるとはっきりすれば、それはそれなりに認めてあげます、こういうことですね。よくわかりました。  こういう判決が出ましたので、恐らく、そういう傾向が強まってくると思います。真に被爆の治療が目的であるかどうかがはっきりすればということでございますが、これはもう医学上はっきりするわけですから、それ以上のせんさくはしないでいただきたい。理由をつけて実際は来ているんじゃないかということを言われると、これはもう話になりません。あくまでも医者の診断を基準に、それを決定していく、こういうことでよろしいでしょうか、それは。
  252. 日野正晴

    ○日野説明員 先生指摘のとおりでございます。
  253. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは法務省の方、外務省の方、お帰りになって結構です。内閣法制局の方も結構です。  話は変わりますけれども、沖繩に居住していらっしゃる被爆者の方が、去年お尋ねしたときには三百四十人程度いるという話を聞いたのですけれども、そういう方々の中で、広島長崎原爆専門病院での治療を受けたいという方は、また、その必要性を認めれば、どんどんそちらの方に送ります。旅費等の経費も一応ついておりますが、これも増額していきたいと思うというような答弁があっておったわけでございますが、その後そういう人が出たのかどうか。あるいは旅費等の費用について、どの程度増額をされたのかお尋ねをしたいと思います。——わかりませんか。では後で結構です。  では先に進みます。大臣にお尋ねしますけれども大臣は先ほど、国家補償に基づく被爆者援護法という野党の主張と、自分らが考えていることとは多少の違いがある。それは今後、手当の内容によって、野党がいま言わんとしている内容は満たしていきたい、こういうふうな答弁があったやに私は理解したわけでございますが、正直言いまして、今度の手帳交付訴訟判決で、いわゆるいままでの行政的な立場から言えば、大きくその認識を改めなければならないという結果であろうと思うのです。ですから、たとえば前回の法案の採決のときに附帯決議をつけました。このときに初めて国家補償という言葉をここに使ったわけでございます。国家補償という言葉が附帯決議の中に入ったのですが、今後いずれまた与野党の話し合いの結果、来年度どうなるかわかりませんが、いずれにしましても法案の趣旨説明の中に、今度の判決に示している表現あるいは内容が盛り込まれていくべきだと私は思うのですけれども、その点はどうですか。
  254. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大変めんどうな、困難な御質問でございまして、私もちょっと困るのでございますが、大橋先生、私は先ほど来申し上げておりますのは、附帯決議の御趣旨も、その制度改善に対する要望は、国家補償の精神に基づく被爆者援護対策について、ますます強いものがあるという前提でございます。私は最初に、たしか池田委員かの質問に申し上げましたように、今度の判決は、むしろ私どもがいま持っております、御協賛を得た原爆二法というものの性格を正しく判決の方でとらえていただいたというふうに考えるべきだと申し上げたわけでございまして、それは現実問題として、その国家補償性格がこの中にあることを否定できないと最高裁の方でむしろ認めていただいたわけでございます。それを申し上げて、結果的に、逆に今度、行政のわれわれとしては、より被爆者の置かれた地位、立場、苦労、不安、いろいろなものを考えて、そして援護の充実を図っていこうということを申し上げたわけでございまして、この次の提案のときには国家補償ということをきちんと書くかと言われますが、これはちょっと、そういうことにはすぐならぬ。この辺のところは御理解をいただきたいわけでございます。
  255. 大橋敏雄

    ○大橋委員 昭和五十一年七月石田原爆訴訟判決というのがありました。これは原爆白内障の方が原爆医療法に基づく認定申請を三たびも却下されて、厚生省を相手にして、その認定却下処分の取り消しを求めたものだと思いますが、この広島地裁森川裁判長も原告の主張を全面的に取り入れて、憲法の平和主義に立脚した画期的な判決であった、こう評価されているわけですが、今回の判決も文中に、戦争犠牲者としての被爆者救済を目的としたもので、国家補償法としての側面を有する、こうあるわけでしょう。国家補償法としての側面を有するというのですから、その観点に立った被爆者行政のあり方を明示しているわけですから、行政の立場として、国家補償法としての表現を当然今度は入れるべきだ。きょうの大臣答弁の中に、この判決が出て、いままで自分が知らなかったものまで私は知りました、こういう答弁がありましたね、そのことじゃないですか。だから、いままでの法律とはやはり変わった提案理由の説明が当然出てくると思うのですね。その中に国家補償法としての側面を持った法律だということがうたわれてこなければならぬのじゃないか、私はこう思うのですがね。
  256. 小沢辰男

    小沢国務大臣 それは大橋委員のおっしゃることもわからぬではありませんが、私がここで申し上げましたのは、私どもはいままで、どうも、おっかなびっくり答弁をしておりまして、社会保障立法だ、立法だばかり言ってきたのですが、しかし、この判決をいただいてみて、なるほど、われわれのつくった法律はよくできておったじゃないか。国家補償的配慮がこの制度根底にあるんだという点を、むしろ判決の方から、それ見ろ、おまえたちの中を見ると所得制限も、とにかく医療については、していないじゃないかということも御指摘いただくと、なるほど理論的に、もう少しわれわれは自分の法律性格を整理しておけばよかった。もし、われわれに知恵があれば判決と同じ説明をいままで申し上げたと思うのですけれども、いままで答弁が何か社会保障立法でございます、国家補償の精神では、これはとても勘弁してください、こう言ってきたものが、判決によって、おまえたちのやっている法律もなかなかきちっとしたものであるのだぞ。とにかく社会保障立法ではあろうけれども、やはり戦争をやった国家のことも考え国家補償的な配慮というものも、おまえたちの法律の中にはあるのだぞという御指摘をいただいたので、実はほっとしたという感じでございます。ですから大変恐縮なんでございますが、法律国家補償という観点からとらえるべきだ。そして内容をきちんと、こういうふうに広げるべきだという公明党さんや社会党さん、その他野党の方々のお考えどおりに今度はやれと言われても、いま政府は、それに直ちに賛成はできないわけでございます。
  257. 大橋敏雄

    ○大橋委員 おっしゃるとおりですよね。国家補償的でも全く完全無欠な国家補償としての云々じゃなくて、今度の判決にもあるように、国家補償的配慮ということが出てきているわけでしょう。それで、おたくも大変自信を深めたというわけでしょう。ですから、配慮が十分でなかったんだということにつながるわけでしょう、いままでの内容は。だから配慮が十分であるように対策を充実していきます、それならばいいでしょうということをおっしゃっておると思うのですけれども、だから、いままで気がつかなかったことを指摘をされ、それほどのりっぱな法律なんだから、今度はその法律に見合った器量と内容にしろということですから、気がつかなかったことに対して、そろえなければならぬじゃないですか。
  258. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いや、率直に言いまして判決はそこまで言っていないわけですね。ただ、いまの事案についての、あれを言っているだけでございます。私が申し上げましたのは、この判決でこういう解釈をいただいたということは、やはり私ども法律の中には国家補償的配慮がこの根底にあったのだということがはっきりして、私どもには非常に参考になったし、ありがたかった、むしろ自信を深めた。しかし、野党さんが一致して言われている法案を、いま同じように審議をされているわけでございますが、その法案は、まさに国家補償観点から、もっと内容を充実し、かつ広げていけ、一方においてはこうおっしゃっておるわけですね。これは国会の少なくとも野党五党の、いわば、ほぼ半数に近い国民の意思を代表した皆さんが、そうおっしゃっておるわけです。しかも附帯決議で、ますます、その対策について、そういう要望が強まったということを全会一致で政府にお渡しになったわけでございますので、そこで私は、この国家補償的配慮制度根底にはあるのだが、その国家補償的配慮というものを、もう少しわれわれが努力をして充実をしていくことによって皆さん方の御要望にも沿うようにしていけば、いまの皆さん方の法案とわれわれとが整合性を持っていけるような面が出てくるのではないかなというような意味で申し上げたので、立法政策として申し上げたわけでございますから、その点はひとつ御理解をいただきたい。
  259. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いずれにしましても、これから具体的に与野党の間で、そういう問題を詰めていきたいと思います。いよいよ国家補償という字句を中心に、まさに攻防戦だと思うのですね。だから、これを近いうちに何らかの姿で解決させて、いまおっしゃるように趣旨趣旨としてわかったのだから、被爆者には十分な手当てをしていくというその立場から、対策改善していかねばならぬと私は思います。  時間がどんどんたって、もうあとわずかになりましたので、まだ聞きたいことが二つ、三つありますので、次に移ります。  さっきの沖繩の件はわかりましたか。
  260. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 五十三年度に予定しております沖繩の医師等の健診ということで百五十四万円を計上しておりますし、また渡航費は、患者さんの渡航費でございますが、二十四万一千円を計上してございます。
  261. 大橋敏雄

    ○大橋委員 健康診断の件ですけれども、心電図による健康診断を私がこの前、主張しましたら、これは現状では不公平になるので見合わせておりますが、将来は各都道府県とよく相談して、実施能力を確かめた上で入れていきたいという答弁をいただいていたわけでございますが、この点について。
  262. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 先生のただいまの心電図を入れろとおっしゃられるのは、一般検査の方へ心電図を入れろ、こういうふうな御意見というふうに私ども理解しておるわけでございます。ただ、心電図を一般検査に入れるということは、一つは心電図を読み取る能力を持っている人がいなければならないこと。それから心電図をとるものを操作するということも、これは普通簡単には操作できないわけでございまして、非常になれた人がやらなければならないというようなこと。それから、さらに場所的な問題もございまして、そういうことから、どうも一般検査に心電図はなじまない。やはり精密検査の方でやった方がしっかりできるのではないか、こういうふうなことで、さしあたりまだ精密検査ということでお願いいたしたいと思っております。
  263. 大橋敏雄

    ○大橋委員 時間も来ましたが、最近、訪問健診制あるいは希望健診制の要望が非常に強くなってきておりますけれども、これに対する厚生省の考えを聞いておきたいと思います。
  264. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 おっしゃるとおり、巡回健診車の健診というのを現在もやっておるわけでございますが、先生おっしゃいますように、私ども現地の方の情勢をよく伺いまして、こういった巡回の方がより喜ばれ、そしてまた巡回におきますところの検査の成果というものが十分上がるようなものであるとするならば、さらに、そういうことを進めていくよう現地と話し合ってみたいと思います。なお、当然のことではございますが、巡回の場合でも施設の場合でも、私どもその運営につきましては補助をいたしているわけでございます。
  265. 大橋敏雄

    ○大橋委員 被爆者二世と呼ばれる人の数はつかまれているかということですけれども……。
  266. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 二世の数はつかんでおりません。
  267. 大橋敏雄

    ○大橋委員 最近、特に被爆二世、今度、三世まで議論が出てきておりますが、厚生省として、この被爆二世あるいは三世に対しては、どのような考えで今後進んでいくつもりなのか、お尋ねをしたいと思います。
  268. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 まず三世よりも二世でございますが、その二世に一体、原子爆弾影響が出るものかどうかということを現在、私どもは放影研を中心にいたしまして研究を続けているところでございます。実際被爆して、そこから生まれた方々も、すでに三十年にも及ぶ間、特に病気では白血病を中心に、それから一般死亡が変わっているかどうかということ、それから先ほど申しました生物化学的な遺伝的な検査というのをやっておるわけでございますが、少なくとも白血病それから死亡ということにつきまして、現在までのデータでは被爆二世につきまして特に問題があるというようなデータは出てないわけでございます。そういうことで、これは差があったとしても非常に微細なものでございますから、さらに研究を続けることが必要だと現在考えておるわけでございます。  なお、健診の問題もしばしば御提案いただくわけでございますが、これもある意味では一般的に申しまして現在の段階では影響があるということが出ておりませんものですから、また二世の方も、余り騒がないでほしいというような声もございますので、この辺、非常に微妙な問題として私ども、さらに検討していきたいと思っております。
  269. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いまの、なるだけさわらないでという気持ちも、われわれ、わからぬでもございませんが、表面にわかるようなさわり方でなくて、対外的にはわからないようなさわり方も、研究すれば、あろうかと思います。その関係者にしてみれば大変な心配事であろうと思いますから、そういう意味でも研究を進めていただきたいと思います。  最後に、大臣にお尋ねして終わりたいと思いますが、原爆被爆者の精神的、肉体的また経済的な苦悩というものは、その立場に立った者でなければ本当にわからないほどのつらさであろうと思います。そして、もう相当の年配になられてきているわけです。死んでからでは遅過ぎると言って、われわれがいま要求している国家補償に基づく被爆者援護法の制定を期待して待っているわけですね。だから、そういう立場も十分理解した上で、与党の中には原爆委員会というのができているやに伺っておりますが、そうした委員会の方にも厚生大臣の気持ちを十分伝えていただいて、毎年、記念日には現地では大会が開かれるわけでございますが、でき得れば、そうしたところに出られて、大臣のお気持ちを披瀝なさることも重要な事柄ではなかろうかと思うのですが、それもあわせてお答え願いたいと思います。
  270. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私も、原爆被爆者の方々の精神的、肉体的、経済的な苦痛については十分理解はできるところでございますので、政府・与党十分よく相談をいたしまして、医療につきましてもまた特別措置法の内容につきましても、今後、改善ができるものは、できるだけ努力をしていく所存でございます。  ただ、その辺は実は私も、これから相談をさせていただかなければいけませんし、予算要求が、来年度の問題としては七月には方針を決めなければいかぬわけでございますから、それまでに十分相談をいたしまして確固たる方針を決めていきたいと思います。その内容がどうなるかにつきまして、現在のところは、いま直ちに、この点をこうするということを、まだ申し上げるわけにいきませんけれども、そういう精神で与党と十分相談をして、来年度の予算編成までには何らか明確な態度を打ち出したいと思っております。
  271. 大橋敏雄

    ○大橋委員 原爆記念日に行きますか。
  272. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は厚生大臣着任以来、全く暇がありませんで視察も何もしておりませんが、要望があれば、ぜひ参らせていただきたいと思っております。
  273. 大橋敏雄

    ○大橋委員 終わります。
  274. 木野晴夫

    木野委員長 次回は、来る十八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十六分散会      ————◇—————