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1978-03-30 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月三十日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君 理事 和田 耕作君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    大坪健一郎君       大野  明君    斉藤滋与史君       戸沢 政方君    友納 武人君       葉梨 信行君    橋本龍太郎君       湯川  宏君    枝村 要作君       大原  亨君    金子 みつ君       川本 敏美君    田口 一男君       矢山 有作君    草川 昭三君       古寺  宏君   平石磨作太郎君       浦井  洋君    田中美智子君       工藤  晃君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小沢 辰男君  出席政府委員         社会保障制度審         議会事務局長  竹内 嘉巳君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 山地  進君  委員外出席者         総理府恩給局次         長       小熊 鐵雄君         大蔵省主計局共         済課長     山崎  登君         大蔵省主税局税         制第一課長   矢澤富太郎君         大蔵省理財局資         金第一課長   森  卓也君         文部省管理局福         利課長     高野 文雄君         農林省農林経済         局農業協同組合         課長      三井 嗣郎君         農林省構造改善         局農政部就業改         善課長     川合 淳二君         自治省行政局公         務員部福利課長 桑名 靖典君         日本専売公社管         理調整本部職員         部長      森  宗作君         日本国有鉄道共         済事務局管理課         長       足代 典正君         日本電信電話公         社厚生局長   長谷川 實君         参  考  人         (年金福祉事業         団理事)    中村 一成君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 三月二十八日  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第四一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第四〇号)      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  3. 大原亨

    大原(亨)委員 日本社会保障の柱の大きいものは年金医療ですが、厚生大臣は就任に当たって、自分の任務は、年金医療大改革に直面しておるから、これをやり遂げることだ、こういう意味のことを発言をされたことがあります。高度成長あるいは狂乱インフレオイルショック以後の低成長人口高齢化、こういうポスト高度成長の内外における情勢の中で、いろいろな制約が出てきたわけであります。厳しい制約がある中で国民生活の安定の基礎である社会保障をどうするか。こういうことはきわめて大きな政治課題であります。  大体、この福田内閣政策後手後手に回って、その効果が上がらないで、最後の手段だと言われた公定歩合引き下げも、逆にそれ以上の手がないんだろう、そういうことで円高をさらに拍車をかけておる。そういう厳しい情勢ですが、やはり、その一つの大きな原因は、国民生活の安定ということは、これはあらゆる観点から考え政治の中心である。仁徳天皇でも、上の方に上がって見て民のかまどはにぎわいにけりとかいう話があるけれども、これはいつの時代でも国民生活安定ということがなければ、先行き不安があるならば、政治に対する不信があるならば、絶対に景気はよくならぬ、日本経済は軌道に乗らない。こういうことについて、やはり基本的に見通しがない、信頼しないということがあるのではないか。ちょうどいまごろは野党がちょっとぐらついているから自民党は安泰だけれども、大体、政治は、経済は根底から揺らいでいる、これは行き詰まっている、こう考えてよろしいと思うのですね。ですから社会保障について、やはり大きな改革のときに当たって厚生大臣がどういう決意でおるかということは非常に重要な問題であります。  年金大改革、この問題については細かくは時間のある範囲内で掘り下げますが、年金の総合的な改革については、いつ改正法律案国会に出す予定準備を進めておるか、その点につきまして質問をいたします。
  4. 小沢辰男

    小沢国務大臣 もう先生のおっしゃるような老後所得保障という面から考えまして、経済のいまの停滞、今後いかに努力をいたしましても、そう大きな配分を期待できない状況でもございますし、一方、人口老齢化は非常に急速に進んでまいりますので、年金財政を含めて、しかも年金制度国民不公平感というものも、ある程度、解消する方向のもとに根本改正をやらなければならないと考えておるわけでございますが、いつ国会法律提案をするかということになりますと、私はこの前も申し上げましたように今年度いっぱいぐらい、かしていただきまして、あらゆる角度から検討をして制度改正に取り組みたいと考えておりますものですから、果たして制度改正法律案の形で来年の通常国会に出し得るような状況になるかどうか、いまのところはまだ、はっきり見当をつけておりません。いずれにしましても、おっしゃるように客観情勢を踏まえながら、年金制度全般の根本的な改正の方針ぐらいは、どうしても今年度いっぱい中に決定をしていきたい、かように考えて、いま鋭意検討を続けている最中でございます。
  5. 大原亨

    大原(亨)委員 御答弁は、本年度中に改革についての構想をまとめたい、こういう趣旨であると思うのですが、本年度中にまとまれば来年の春の国会には出すということは当然ではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  6. 木暮保成

    木暮政府委員 年金制度改正につきましては、制度審議会を初め各政党、各団体から御意見をいただいておるわけでございます。また私ども基本構想懇談会で鋭意御審議をいただいて、中間意見の取りまとめまでこぎつけておるわけでございます。今後、大臣から御指示をいただいておりますので、一年ぐらいのうちには改革方向を出したいというふうに思っておるわけでございますが、今度改正いたすことになるといたしますれば、厚生省所管厚生年金国民年金だけではございませんで、年金制度にわたって改革をしなければならない問題が多いわけでございます。したがいまして、厚生省改革方向が決まりました後、各保険との打ち合わせというものもかなり必要になるのではないかと思いますし、また、その改革方向自体につきましても、国民皆様方から御意見をいただくというようなことも必要だと思っておるわけでございます。したがいまして、構想が固まりました後、法案提出までに若干時間がかかるというふうに考えておる次第でございます。
  7. 大原亨

    大原(亨)委員 いま厚生大臣は、これはきょうの本題ではありませんが、健康保険改正についても大きな課題を背負うておるはずであります。健康保険については、医療制度供給面を含む改革方向については、この国会に可能な限り出す。そして年金については大体来年出す。こういうのが大体の言わず語らずのコンセンサスであったと思うわけです。  健康保険改正案は、報道されているところによると、いろいろな報道があります。われわれとしても時間をかけて議論したい問題がたくさんあります。これは医療改革の問題は国会で論議をかなり尽くしておるし、あるいは国民が十分納得できる、合意できる、そういう方法と内容でやることが必要です。年金との関係を頭に置きながら質問するわけですが、健康保険医療保険改革について、この国会政府改正案を出すことができますか。
  8. 小沢辰男

    小沢国務大臣 できると考えております。
  9. 大原亨

    大原(亨)委員 大体いままでの閣議了解、前からの閣議了解、これは関連になっておりますが、そういうことからいっても時間的にいいましても、よほど五月十七日の会期延長をやるかやらぬかという問題を含めて考えなければ、これは審議する時間はない。大体三月いっぱいに出すのが当然だ、こういうことが言われておったわけですね。三月いっぱいに出せますか。
  10. 小沢辰男

    小沢国務大臣 それは無理でございますが、できるだけ早くやりたいと思っておりますので、ぜひひとつ国会の方でも受け取っていただいて御審議をできるだけお願いをしたい、かように考えております。
  11. 大原亨

    大原(亨)委員 国会が協力することは自主的に考えることですが、月末までにできぬといたしますと、たとえば、いつごろ出せるのですか、四月の十日までには出せるのですか。
  12. 小沢辰男

    小沢国務大臣 御承知のように両審議会に諮問を申し上げて答申をいただかなければいけないものですから、いま両審議会の時間的な問題もございます。私どもはなるべく早くお願いをしたいと思っておりますけれども、そういう点について自主的な判断をされるわけでございますので、これらをいまここで、いつまでに仕上げて、どうするということを申し上げるのもいかがかと思いますので、できるだけ御理解をいただいて、なるべく早い時期に出させていただきたいと考えております。
  13. 大原亨

    大原(亨)委員 審議会審議日程がある、これはもちろんそうですか、しかし、政府の案がきちっと出なければ審議しようがないわけでしょう。その政府の案がまとまって審議会に付託になり、国会にはいつまでに出す、こういうことについて、もう三月は終わろうとしているわけですから、日程があってもいいはずです。政府案閣議決定になる、あるいはまとまるのはいつですか。
  14. 小沢辰男

    小沢国務大臣 大体、来週には何とかまとめたいと考えております。
  15. 大原亨

    大原(亨)委員 それから、もう一つ懸案事項予算委員会における予算修正問題があったわけです。減税と老齢福祉年金その他の上積みの問題があったわけですね。これは大臣も突然質問してもよくわかるはずです。いろいろな経過があったけれども大臣としては、この問題の処理はどういうふうに考えておるか。
  16. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私どもは、政府の原案が最良のものと考えまして御提案を申し上げているわけでございますので、まだ予算案が通過しない今日、この修正の問題について御意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思うわけでございまして、私ども考えが現状においては、やむを得ない最良の案だと考えております。
  17. 大原亨

    大原(亨)委員 やむを得ない最良の案というのは、これは新語だね。予算が通ったならば予算修正議論や話には応ずる、政府は、もう次の臨時国会を開くようなことを言っているわけですから、それから、いまの三十四兆二千九百五十億円の、鉄やセメントだけ使うというふうな考え方による公共事業一本やりでは、どうにもならぬということはわかったわけですから、この点については予算が済んだならば予算修正を含めて、そういう問題の議論が十分あるということは考えておるわけですか。
  18. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いまのところ私ども予算修正については、ここで触れるわけにはまいりませんで、国会の御意思でございますし、御意思が何らかの形で具体的にあらわれてきましたときに意見を申し上げさせていただきたいと思っております。
  19. 大原亨

    大原(亨)委員 前の厚生大臣は、社会保障の問題は本当に大臣になってから勉強されたようです。しかし、わりあいフレッシュな考え方でよく勉強いたしました。あなたは前から一わたり知っているわけですから議論ができると思うのですが、いまの年金制度国民年金厚生年金、全部の年金制度欠陥がたくさんあると私は思うのです。どういう点に欠陥があるというふうにお考えですか。
  20. 木暮保成

    木暮政府委員 現在、年金制度八つに分かれておりますが、今後、年金の充実を図ってまいりますためには横断的な検討が必要であるという観点に立ちまして、一昨年五月から年金基本構想懇談会お願いいたしまして御検討をいただいておるところでございます。昨年十二月に一応の中間意見をお取りまとめいただいたわけでございますが、そこで日本年金制度の直面しておる問題につきまして御意見を出していただいておるわけでございます。  一つは、今後の人口老齢化にかんがみまして年金受給者がふえ、また年金給付費がふえてまいるわけでございますけれども、個々の保険制度でそれに対応するには限界があるのではないか。八つ制度が手を携えていかなければならないのではないかということを御指摘いただいておるわけでございます。具体的には基礎年金のようなことをやったらどうか。それからまた基礎年金という形で年金基本部分を統合するというところまでいかない場合でも、財政調整をしたらどうかというような御提案をいただいておるわけでございます。それが基本的な問題の指摘でございますけれども、その選択につきましては、さらに掘り下げていただくということになっておりますが、その基本問題と並行いたしまして、昭和五十年代に措置すべき点といたしまして、経過年金水準をどう考えるか。それからまた制度間の給付水準の格差をどう考えるか。単身者と夫婦の給付水準の分化を図るべきではないか。支給開始年齢について再検討を加えるべきではないか。それからまた日本年金制度八つ制度すべて年数加算制をとっておりますが、この年数加算制をとっておりますために、一方では低い年金が出、一方ではかなり分厚い年金が出る。そして将来の財政問題にも発展していくという観点から年数加算制の問題。それから婦人の年金保障の問題。長期的な費用負担のあり方。業務処理体制の整備。そういうことにつきまして問題を指摘していただき、今後さらに詰めていただく、こういう段取りになっておる次第でございます。
  21. 大原亨

    大原(亨)委員 私は基本的な問題はもう一つあると思うのですが、いまの日本年金制度、特に厚生年金国民年金インフレに対応できない仕組みになっておる。局長、これはよく聞いておいてください。それは想定問答集にないよ。これはインフレに対応できない。根本的な欠陥です。それから雇用とのつながりがない。これが一つ欠陥です。いつも言われるように外国では、年金が定着していて生活設計基礎になっている。だから年金生活は人生の有給休暇だ、こういう言葉がある。年金の始まるときが雇用の終わるときだ。そういう雇用年金との関係がきちっとしてない。だからライフサイクルということをよく言ったけれども、それについての総合的な政策がない。これが非常に不安定要因である。  そこで、年金財政の問題で、これは時間があれば総括的に議論をするといたしますが、具体的には、たとえば本年の、昭和五十二年度保険料の収入と保険給付年金給付の金額について、その割合、よく出ている数字、比率についてお答えいただきたい。
  22. 木暮保成

    木暮政府委員 昭和五十二年でございますが、厚生年金で申し上げますと、給付費が一兆九千九百四十八億円でございます。それに対しまして保険料が三兆六千五百六十二億円という予定をいたしております。
  23. 大原亨

    大原(亨)委員 その一兆九千九百四十八億円の給付費の中で、十年年金、五年年金給付幾らになっていますか。
  24. 木暮保成

    木暮政府委員 ただいま申し上げましたのは厚生年金でございまして、国民年金で申し上げますと給付費は一兆三百五億円でございます。保険料が六千四百六十二億円でございます。それで現在、国民年金で出しておりますのは、すべて五年年金それから十年年金等経過年金でございまして、一兆三百五億円は全部経過年金というふうに見ていただいてよろしいかと思います。
  25. 大原亨

    大原(亨)委員 つまり五年年金、十年年金福祉年金と合わせて経過年金と言いますが、経過年金給付に対して一兆三百五億円で、そして本体年金昭和六十六年に給付が始まるんです。二十五年かけて。その全部の保険料が六千四百六十二億円ですね。つまり積立方式をとっているわけですけれども自分たちがかけている掛金というものは、大多数の二千数百万人の人は年金財政で積み立てておらぬわけです。そして、その本体年金掛金経過年金に回っても、まだ足らない。もちろん給付費国庫負担があります。あるいは積立金運用利子がありますけれども、わずかです。ですから、国民年金は少々保険料を上げましても、保険財政の面からいいまして行き詰まっておるのではないか。定額部分保険料について二千七百五十億円、これを上げることについても、保険料納付について事務的にも限界がある。報酬比例部分付加年金部分はいま掛金は四百円ですが、これをどう積むかということを考えた場合も、きわめてむずかしい問題がある。これについて五年、十年、十五年というふうに長期見通しを立てた年金改革を通じて、国民年金に対する長期見通しをきちっと立てることができるかどうか。そのためにはどうしたらいいか。この二つの点について大筋の御答弁をいただきます。
  26. 木暮保成

    木暮政府委員 国民年金財政状況は、先生指摘のようにかなり厳しい面があるわけでございます。現在、給付費につきまして三分の一の国庫負担がございますが、経過年金かさ上げ部分につきましては、かさ上げ部分の二分の一に相当する国庫負担がございまして、全体をならしますと四割の国庫負担が行われておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、この四割の国庫負担保険料を合わせますと、年金財政は、かなり厳しい面はございますけれども、運営ができているという形になっておるわけでございまして、過去の積立金も五十二年度末では一兆八千億ぐらいは保有をいたしておる段階でございます。  将来の問題につきましては、昭和五十一年度に再計算をいたしまして、その結果を公表したところでございますが、段階的に保険料を引き上げてまいらなければならないということでございまして、ピーク昭和八十年代に入りますと、五十一年の価格で八千円ぐらいの保険料ということに相なるわけでございますが、この点につきましては、国民の御理解を得ながら保険料を段階的に引き上げまして、財政の維持を図ってまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  27. 大原亨

    大原(亨)委員 しかし、それは積立金にいたしましても一兆幾らしかないわけですから、私が言っているのは、本体年金の二十五年、昭和六十六年から始まる年金保険料を払っている人は、いま払っている自分の金が政府に預けてあると思っていても、そいつは経過年金に使わなければならぬというふうな状況だ、こういうわけです。  それはやはり二つ問題があると思うのです。昭和四十六年ですが、過剰流動性その他の問題もあって、オイルショックが加わって狂乱物価になっておる。物すごいインフレ保険料目減りをしたということが一つ。それから物価スライド財源積立金から取っている。大体、積立方式が成立するためには、インフレに対応する財政の組み立てをしなければならぬ。目減りがしないような、そういうことをしなければならぬ。目減りがしたことについてスライドする場合には、それに対する一般財源導入その他の制度が要る。そういうことをしないで積立方式をとっているから、タコの足のようなそういう国民年金財政状況になって、そして制度保険料給付の間に整合性がない。そういうことのために財政破綻状況が来ておるのではないか。  そういう点では国民年金については、いままでの経過的に見ても、共済厚生年金やすべての総ざらいで三十六年発足の皆年金をつくったわけですから、矛盾をいっぱいしょい込んでおるわけです。ですから、それについては、それらしい制度を立てなければ、少々の手直しぐらいではだめじゃないか。私の個人の意見を言うならば、年金懇答申ぐらいではだめじゃないか。大体あれは財源問題について触れておらぬじゃないか。大蔵省に遠慮して財源問題に触れてないのだ。そういう点について賛否は別にいたしまして、社会保障制度審議会答申というのは、それらを見通し長期見通しの上に立って、インフレ見通し賦課方式による、目的税による財源措置をきちっとやろう、こういうことについて年金全体を見てやっておるのではないか。そういう点では傾聴すべきではないかと私は思っておる。これ自体がいいというわけじゃない。しかし、これを十分傾聴しなければ、これからの低成長下人口老齢化の中において対応できる年金はできないのじゃないか。そういう点を私は指摘をいたしますが、これは年金局長限界を超えたことになると思うので、ひとつ、かなり議論も進んでおるときですから、大臣はどうお考えになりますか。
  28. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は制度審基礎年金構想、それは非常に貴重な意見だろうと思っております。ただ、制度審の案を、たとえば基礎年金部門について実行するにいたしましても相当の準備期間が必要だと思いますので、たとえば事務処理機構等も含めて考えてみますと、また目的税というものが大方の国民の御了解を得られるかどうかという問題等もございます。あるいは、その目的税導入の時期等を考えてみますと、制度審で言われている五十五年発足ということをやりましても、ちょっと、これは困難ではなかろうかと思っております。  それからさらに、この基礎年金案に加えて、それぞれの保険年金上積みというものを考えておられるわけでありますが、現在の各種の年金共済を見まして、相当一律に大幅に引き上げられるような形になりますので、国民費用負担問題等もあわせて、いわゆる過剰給付問題等が、よく検討してみなければいけない問題点一つじゃないかなというような気もいたすわけでございますが、いずれにしましても、やはり年金というものは老後所得保障でございますから、国民の中に一応最低の基礎部門は共通にしていきたいという考え方については、これは私は非常に貴重な御意見だろうと思いますので、一つの有力な私どもにとっての指針と考えまして、今度、根本的にいろいろ検討する際の貴重な御意見として参考にさせていただきたい、かように考えておるわけであります。
  29. 大原亨

    大原(亨)委員 国鉄運輸省は見えていますか。  年金全体をどうするかという問題で、国民年金もそうですし、行く行くは厚生年金もそうですか、共済は順序、先後はあっても、やはり財政問題では非常に行き詰まっているわけです。  国鉄共済保険料は本年度幾らになるのか。これは他の年金掛金に比較をいたしまして非常に高いわけです。それから、昭和五十五年までの一応のめどはつけた、答申によってめどをつけて本年度保険料提案をしているというのですが、昭和五十五年以降は、保険負担と、いままでいろいろ議論になった国庫負担と、それから年金給付との関係大筋において、どういう考え方を持っておるか。長い演説はいいから簡単に。
  30. 山地進

    山地政府委員 国鉄共済収支につきましては、収支計画策定審議会というのがございまして、これが五十二年の九月に再計算をいたしまして、組合員掛金につきましては俸給に対して千分の六十二、それから国鉄負担金といたしましては千分の八十五。それから、五十一年には約九十億円の赤字が出たわけでございますけれども、これなどにつきましての改善策といたしまして、追加費用は全額国鉄が出すということによりまして、五十三年度以降は赤字が解消いたしまして、先生の御指摘のとおり、五十五年までは見通すことができたわけでございます。  ただ、五十五年以降につきましては、収支策定審議会というのは五年ごとに計画を策定いたすものでございますから、今後の問題といたしまして、これを再計算するということになっております。
  31. 大原亨

    大原(亨)委員 昭和五十五年以降については、どういう基本的な考え方でやるのか。五十五年までは一応これでしのいでいける。しかし、これでも保険料は千分の五十幾らと言ったかな。
  32. 山地進

    山地政府委員 千分の六十二。
  33. 大原亨

    大原(亨)委員 これは、たとえば厚生年金に比較をいたしましても、厚生年金の場合は本人負担、被用者負担で四・五五ですが、国鉄は労働者負担が五・三五……。
  34. 山地進

    山地政府委員 それは五十二年までが千分の五十三・五でございまして、その後、それを二〇%トータルで財源率を上げたものでございますから、組合員掛金負担は千分の六十二に現在なっております。
  35. 大原亨

    大原(亨)委員 千分の六十二ですよね、組合員負担が。そして厚生年金の方で言うならば四・五五の負担でしょう。だから莫大な負担になるわけですよ。そうすると追加費用の問題を計算に入れましても、また保険料をうんと上げるか年金水準を下げるしかないわけでしょう。これは他の共済も同じですよ。他の共済も前後があるだけの話です。終戦後、満鉄やその他外地からずっと引き揚げてきたし、それから合理化が進んで若い者がいなくなったし、ここで四十から五十歳代がふえておりますから、だあっと退職するわけですね。だから、日本年金はばらばらになっておってはいけないわけですよ。それを中央で企画をして、どう改革するかということをやらぬで、それでスタグフレーションで、その日暮らしをしているのが福田内閣である。そういうことでは先行き不安というか、国民生活の安定という政治目標について一定の指標を示すことはできない。それだけでも自由民主党の内閣は終わりである、終わりであるべきであると思う。  それで国民年金の問題ですが、従来からのことで無年金の問題が議論になりました。無年金議論がありまして、去年の予算委員会におきまして多賀谷委員が口火を切って渡辺厚生大臣答弁をいたしましたことがきっかけで、それぞれ議論が進んでまいりまして、本年提案をされておるわけです。  国民年金に対する考え方は、私はこう思うのです。昭和十七年に労働者年金というのができて、十九年に厚生年金にかわった。そのときには、天皇に忠義を尽くすために後顧の憂えなく労働者が働く、こういうことが一つの目標であった。しかし、戦費の調達が副次的な目標であった。これはもう「時の動き」という政府厚生年金の解説の中に出てきている。戦費の調達、そういう考え方がずっとあって、それで戦後の狂乱インフレによって、もうめちゃめちゃになった。年金なんか、そんな先のことは言っておれぬということになった。二十八年に若干の改正をした。厚生年金改正した。しかし、その間に厚生年金の脱落者がたくさんできておる。私は後で揚げ足を取るために言うわけじゃないのですが、昭和十九年に厚生年金に加入していた加入者は一体何人ぐらいいるのか。とにかく脱退者や権利喪失者が続出したわけです。そして、昭和三十四年に法律をつくって、三十六年に掛金をかけ始めて、国民年金が皆年金として無年金も全部総ざらいいたしまして、経過年金をつくって年金発足させたわけです。  だから、労働者年金共済や厚生、船員保険が中心であるけれども国民年金は自営業者が中心であるべきであるけれども年金から落ちているのは全部総ざらいをして、そして明治四十四年の四月一日以前に生まれた人については、七十歳以上の人を対象に老齢福祉年金をつくった。明治四十四年の四月二日以降の人々については経過年金、十年年金をつくった。しかしながら、この年金のしばしばの特例納付の措置にもかかわらず無年金者ができた。それで、これは私は、戦前、戦中、戦後のそういう混乱期や高度成長における民族の移動期において発生した無権利状態である。集中的な問題である。したがって、これについては、やはり国民の立場に立って、被保険者の立場に立って改定すべきであるということで、その政策一つとして無年金の解消問題が論議をされたと思うのですね。  そこで、その前の議論はまた別にするとしまして、無年金と言われる人々、現在、年金につながらない人は二つの類型に分けることができると思うのですが、今回の対象はその一つの無年金の問題ですが、そういう人はどういう地域に多いか。これは制度がありますからわかっておるはずですが、制度的にはどういう年齢層の人々であるか。それらが総計をして大体百万人と言われているが、大体それに間違いないか。従来五十万人と言われていたのが百万人になったわけですが、これは実際、実施しますと、まだふえるのではないかというふうに言われておりますが、どういうふうに見通しをしているか。この点についてお答えをいただきます。
  36. 大和田潔

    ○大和田政府委員 無年金者の数ということになりますと、実は非常に把握がむずかしいのでございます。たとえば国保に入っておる人間が国年に入っていないといったものを把握するといたしますと、その人間はすでに厚年で四十歳以上十五年という期間を満たしておったかもしらぬ。あるいは、その他の年金をもらっておるかもしらぬということでございまして、国保に入っていて国民年金に入っていないから即年金は無年金者ではないかといったようなことで把握をしようとしても、なかなかむずかしい。そういったようなことからいたしまして無年金者の数というものを正確に把握することは非常にむずかしいのでございます。実はいろいろ各県等におきましても、そういった実態把握に努力をしてもらっておるわけでございますが、結局、出てまいりました数というものは正確な数ではない。やはり先ほど先生おっしゃいましたように百万程度であるというような結論で私どもは把握をせざるを得ない、こういうようなことでございます。次に、どういう地域に、こういった人たちが多いのであろうかという問題でございますが、これは私どもの聞いておりますところは、言うならば住民移動の非常に高い地域、これがやはり多いように聞いております。つまり、そういう地域におきましては住民登録の確保もなかなかできないというようなことになってまいりますと無年金に結びつく可能性が出てくるし、市町村におきましても、住所移動をいたしまして住所が変わるという人たちのトレースがなかなかむずかしいといったようなことからいたしまして、どうしても住所移動の多いところ、言いますならば大都市というのが農村部に比べまして無年金が多いということが言われておるところでございます。
  37. 大原亨

    大原(亨)委員 無年金者の概念の中には、明治四十四年四月二日以降に生まれた人で、福祉年金に結びつかないで経過年金の対象になる人が年金に加入していない、これが一つあるわけです。しかし加入していましても、昭和五年四月二日以降に生まれた人で、二十五年の期間を満たすことができないもの、こういう二つのケースが、大きく分けるとあるわけです。前者については今回措置をとっていると思うのですが、後者については、どういう考えを持っていますか。
  38. 木暮保成

    木暮政府委員 今回、御提案をいたしております特例納付は、いまおっしゃいました両方のグループにつきまして保険料の滞納の分を追納してもらうということで考えておるわけでございます。
  39. 大原亨

    大原(亨)委員 その滞納分を追納してもらうという場合に、それを合計して百万人ですか。
  40. 大和田潔

    ○大和田政府委員 そのように推定をしております。
  41. 大原亨

    大原(亨)委員 その保険料を一カ月について四千円にするということについてはかなり議論がある。これは十分議論しなければならぬだろうと私は思う。それで、四千円という保険料の根拠をもう一回、簡明に答えてください。
  42. 木暮保成

    木暮政府委員 今回、御提案をいたしております特例納付の保険料は一月につき四千円ということでございますけれども、四千円の根拠は、法案が成立いたしましたならば七月から二年間この特例納付の窓口を開きたい、こういうふうに思っておるわけでございます。年度で申し上げますと三年度にまたがるわけでございますが、この三年度の最後の年度保険料につきましては今度の改正法案で三千六百五十円にしていただくということで法案を作成しておるわけでございます。この三千六百五十円につきましては、昭和五十四年度にスライドが実施されましたときには、そのスライド率を掛けるという形をとっておるわけでございます。したがいまして昭和五十四年度給付のスライドがございますと四千円近い保険料になろうかと思うわけでございます。今度の特例納付の四千円というのは、その一般の保険料を下回らないという考え方で四千円といたしたわけでございます。その一般の保険料を下回らないようにということでございますが、これは、国民年金が世界に例のないような非常に大ぜいの自営業者や農民の方を対象といたしまして、そういう被保険者の方々の自主納付ということに支えられておる制度でございますので、法律の規定どおり、いろいろ骨を折って保険料を納付してくれております一般の被保険者とのバランス上、一般の保険料を下回ることは、そういう方々の保険料納付意欲にどうしても支障が出てくる。ひいては国民年金の運営に大きな障害が出てくるという意味合いから、そういうふうに考えた次第でございます。
  43. 大原亨

    大原(亨)委員 先ほど答弁がありましたように、人口移動が激しくて、出入りの激しい大都会を中心に落ちがあるわけです。それは小さな都市でしたら、どこにどういう年の人がいて、年金に入っていない人がどこにおるということをみんなわかるわけです。ですから一人一人徹底するわけです。しかし大きな都会は出たり入ったりしますし、そういうサービスは行き届かない。これは高度成長以来の民族移動に伴う民族移動革命、それに伴う行政サービスとの関係で生まれておる。大体、腹の中では、私どもが反対したから、それでかけないんだというふうなことを考えておるかもしらぬ。ときどき、そういうことを言っておる。口から出ぬだけの話で、そういうことを言っておるらしいけれども、それが根本的に間違いなのであって、われわれが対案を出して、いい案を出して、徹底的にやったから少しはよくなったのであって、ほっておいたら、ろくなものはできないんだ、あのとおりやっておいたら。それは民主主義ですから反対する自由はちゃんとある。それに対応する責任があるわけですから、そういうことを頭に置いておいて、一般保険料を下回らないということでペナルティーを科するということは、そういう考え方はいけないと私は思う。行政サービスの側の方に責任があるのです。だれだって、ちゃんと計算するゆとりがあるならば、ちゃんと計算するはずだ。われわれ途中で、ちゃんと十数年前から方向転換したわけだ。今度は積極的によくするんだ、こういうことを考えて協力しているわけだから、ですから、そういう考え方で四千円を決めるということが第一いけない。  それでは、この問題について関連して聞くのですが、昭和三十六年に国民年金の特例年金、十年年金に入った人で、十年間掛金をかけて、利子をネグレクトいたしまして、保険料だけで計算して幾らになるか。  もう一つ、現在昭和五十二年までかけておるのですが、五十二年まで過去十年間十年年金掛金をかけた人の保険料の累計が幾らになるか。
  44. 木暮保成

    木暮政府委員 三十六年から十年間の場合、保険料の単純累計額は二万五千八百円でございます。それから昭和五十二年を起点といたしまして、それから十年間さかのぼった場合、これも単純な計算で足し算をいたしますと九万八千円でございます。
  45. 大原亨

    大原(亨)委員 ですから、三十六年から十年間かけた掛金が二万五千八百円で、逆に今度は五十二年からさかのぼって十年間かけたのは九万八千円、そういうお答えですが、今度四千円にいたしまして十年間さかのぼってかけるということになりますと、合計いたしまして四万八千円の十倍ですから四十八万円です。これは複利計算や運用利子その他で利子の計算をすれば、また変わっていきますけれども、しかし、いままで、いろいろな事情でかけられなかった人を対象に、さかのぼってかけるのですから、二年間のこれからということだけではなしに、それを考えながら運用利回り等を頭に置いて、そして公平の原則で特例納付についての保険料を決めることが必要ではないか、私はそういうふうに思うのですよ。そういう点から、言うなれば四十八万円と九万八千円、現在時点にいたしましても九万八千円、これは利子を加えていろいろ計算する計算の仕方があるでしょう。しかし、当初のことから言うならば、これは貨幣価値もうんと変わりますが、二万五千八百円というふうな計算になるわけです。そういうのを比較した場合に、さかのぼってやる場合には四千円というのは非常に根拠が薄いのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  46. 木暮保成

    木暮政府委員 特例納付の保険料幾らに決めるかというのは、いろいろな考え方があろうかと思いますし、現に私ども議論をいたし、また国民年金審議会でも御議論をいただいたわけでございます。国民年金審議会の御意見の中で最も強い御意見の場合には、今回の特例納付で年金権に結びつく方々につきましては私的保険保険料というようなものを頭に置いて考えてもいいじゃないかという考え方もあったわけでございます。  ちなみに今回の四千円でございますと、一番長期に追納されます場合には五十万円前後の金額になるわけでございますが、その人につきまして事例計算をいたしますと、年金を二年間受けますと、非常に表現が悪いのでございますが、元を取り返すという計算になるわけでございます。六十五歳から受給をいたしますと、女子の場合には平均年齢が七十七歳でございますし、男子の場合には七十二歳でございまして、平均的には七年以上の支給を得られる。そこで、二年間で保険料の元が取れるということでございますので、そういう観点から四千円程度では甘いという見方もあったわけでございます。  私どもといたしましては、そういう私保険的な立場に立つのもどうだろうか。また、先ほど先生おっしゃいましたけれども、ペナルティーというような考え方委員の中にはあったわけでございますけれども年金制度にそういうことを考えるのは最後の最後にしなければならないのじゃないか。結果的に一番私どもが重視いたしましたのは、国民年金が、被保険者の方々の努力によって自主納付される保険料で運営をされておる。厚生年金等は事業所で強制徴収のようなことができますので、そういう心配はないのでございますけれども国民年金の場合には個々の国民の皆さん方に自主的に納付していただくことが制度の支えでございます。したがいまして、先にいって納めれば、それで年金に結びつくのだということになりますと、制度の根幹が揺らいでくるわけでございます。過去二回特例納付をいたしまして、その結果、特例納付というのは一定期間を置いて必ず繰り返されるのではないかという印象が出つつあるのは否めないわけでございまして、そういう印象が一般に広がりますと国民年金の運営ができなくなるわけでございまして、せめて、そのときそのときの一般の被保険者が納める保険料を下回らないという線は確保したいということで四千円を決めた次第でございます。
  47. 大原亨

    大原(亨)委員 大体うんと金がある人、年金なんか要らぬという人は人数から言えばわずかですよ。それは実態把握していないでしょう。調べてみれば、そういう人はわずかです。実際は日々の仕事に追われて、なかなか手続についてもなじまない。ついつい、おくれてしまった、忘れてしまったという人が多いわけで、むしろ所得の階層から言うなれば低所得階層や、すれすれの人が多いわけですから、そういう立場の人々をどうするかということが必要ですよ。たとえば十年間といたしまして、さかのぼって四十八万円納めるにいたしましても、これを二年間に調達するということになると大変なことになる。自分で入る意思のない者は別だけれども、入りたくても事実上入れなかった。忘れていて、しまったと思っている。しかし、せっかく特例納付の制度ができたけれども金の工面がつかない。また入れない、こういう人がかなりいるのではないか。だから、そういう人に対しましては何らかの金融上、財政上の措置をすべきではないか。  というのは国民年金には、皆年金ということからもそうですか、あるいは使用者がいないということからもそうですか、最初は保険料の二分の一を国庫補助しておった。今度は給付の二分の一に最近変わった。とにかく給付が最近変わった。そうでしょう。それは国費が、一般財源が出ておるのですから、そのことを考えても、一般財源が出るべき国民の立場から見るならば、一般財源は公平ですから、そういうことを頭に置きましても、やはりペナルティー的な考え方で追納保険料の特例納付の金額を決めるということはいけないのではないか。これは問題点だけを出しておきますけれども、私はそういうふうに考える。そういうふうに考えてやるのは当然じゃないかと思うのですが、そういう者に対して、そんな金はないという人はどういう道を選んで納付することができるか、いかがですか。
  48. 木暮保成

    木暮政府委員 今回の特例納付の額を決めますときに、ペナルティーの考え方を入れたらどうかという意見もあり、現実に私ども検討したことは事実でございます。そのペナルティーのかけ方といたしまして、一般には六十五歳から支給されるものを六十六歳とか六十七歳とか、そういう支給開始年齢考えたらどうかとか、そういう検討をいたしたのでございますけれども、結論としましてはペナルティーという考え方は一切とらないでいこうということにいたしたわけでございます。あくまでも制度の運営に障害を受けないように、一般の保険料よりも低くならないということだけにとどめたわけでございます。それにしましても先生指摘のように、かなりの額になることは事実でございますけれども、これもちょっと表現が悪いかと思いますけれども、規定どおりに保険料を納めていただければ、かなり軽い負担年金に結びつくことができる。その際には先生指摘のように、保険料が納められないときには免除の手続をとりまして、国庫負担分は出るという形にもなっておるわけでございます。仮に初めから保険料を納めない場合にも、第一回あるいは第二回の特例納付に乗っていただけば、今回の特例納付よりも軽い負担年金に結びつくことができたわけでございますが、当初から保険料を納めない。一回目、二回目の特例納付にも乗らなかった。その原因はいろいろあろうかと思いますけれども、そういう場合に先にいけばいくほど特例納付の条件が楽になる。若いときから、年金に結びつくかどうかわからないうちから保険料を納めるよりも、その方がいいということになりましては制度の運営ができなくなるであろう。その点だけを考えまして四千円ということを決めさせていただいたわけでございます。  それで、困った人が五十万円と申しますと、これは私どもでも大変な金でございます。しかし、その五十万円を納めるという場合は、昭和三十六年から一遍も保険料を納めなかった方、それから一回目、二回目の特例納付にも乗らなかったということで、極端な場合だろうと思っておるわけでございます。その場合、低所得者の方のおられることは事実だと思いますけれども、一般の被保険者の方が苦しい中から保険料を納めてきたということとの対比で、こういう方々にだけ特別の措置をすることは適当ではないというふうに考えておる次第でございます。
  49. 大原亨

    大原(亨)委員 いままででしたら、昭和五十二年現在からさかのぼって十年間と言えば九万八千円の掛金を納めている。これは利子等を計算いたしましても計算できるわけです。だから百歩譲って、そういう公平の立場の原則で議論いたしましても、根拠からいって、これはひど過ぎるのじゃないかと私は思う。四十八万円を納めろというのはひど過ぎるのじゃないか。  大体、国民年金経過年金は、昭和三十六年当時から納めた人が、いま、もらっていますが昭和四十六年から給付が始まっておるわけです。確かに二万六千円足らずを納めた人が、月にその程度に近いものをもらうわけです。福祉年金経過年金も、これは日本年金欠陥の中から制度として生まれた問題ですから、私はそれは一つも不公平であるとは思わない。野党の今度の修正案ができて、五千円プラスアルファをやりましたら、ここに資料があるけれども、十年年金も五年年金もまだよくなるわけですよ。やはり経過年金は、年金制度がなかったときは家族制度の中で子供が親を養ったのだから、順送りからいっても、いまの労働人口、働いている者、子供たちが老齢者や障害者を養うということは当然である、そういう考え方で、経過年金を、本体年金を誘導する単なる政策的な年金ではなしに、生活に近づけるという考え方年金全体を底上げをしていくということが、加藤君がかつて指摘をいたしました官民格差以上に、現在ある国民階層間における格差の是正の問題につながるという考え方処理すべきだと私は思うので、この点について、ひとつ大臣のお考えをお聞きいたします。
  50. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いま推定して総計百万人とお答えをいたしたわけでございますが、この無年金者の中にはいろいろな方がいらっしゃると思うのです。したがって、その中の非常に特殊な、いわば全く善意無過失であって低所得の方がおられるということを御指摘をされれば、そういう方は全くいませんと言うわけにはなかなかいかぬだろうと思うのですが、とにかく、ばらばらな事情がたくさんある、この無年金者と、いま局長が言いましたように、やはり他の、まじめにこつこつと、年金制度理解し、苦しい中でも積立金をやってきた方々との公平感というものは、私どもはどうしても考えていかなければいけないわけでございます。しかも、たとえば制度の周知徹底が非常に悪かったかといいますと、国民年金はもうすでに十数年も、あらゆるところで議論をされておりますし、周知徹底も図られてきております。一回、二回と無年金対策をやってきて、しかも三回目でございますから、そういう点もひとつ御理解をいただいて、どうしても公平の原則から見て、特別な扱いをするだけにしていただいて、困る人に、その財源をうんと貸してやるとか、あるいはもう少し保険料を安くしてやるというようなことだけはお許しをいただきたいと思うのでございまして、これはるる申し上げましたように、ぜひ他の一般の拠出制年金の加入者の方々との均衡というものに重点を置いて御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  51. 大原亨

    大原(亨)委員 世帯更生資金とか国民金融公庫とか、いろいろなものもある。年金がないのだから年金で担保するわけにいかぬわけですから、そういう制度等についても配慮すべきである。あるいは四千円というのは、議論といたしましては依然として問題は残っている。  これに関連しまして農業者年金について、これは特例納付の制度を、ここでまた持ってきたわけですが、六十歳からは経営移譲年金、六十五歳からは国民年金プラス付加年金、これは強制加入みたいになりますが、プラス農業者年金、こういうことで御承知のようにできたわけです。これはつくり方としては非常におかしな制度であって、制度の矛盾については幾らでも議論することができます。大体、経営移譲をして選択的な拡大をやって農業基本法を実践するのだということでやったわけですが、そういう政策効果があったかないかということが第一、問題なんです。それで国民年金財源を持っていって別な年金をつくるのだから、そうしたら中小企業にもつくれ、漁民でもつくれということになる。  その議論は別にしまして、今度、特例納付するわけですが、よく問題になるのは、主人はどこかに勤めている、兼業をやっている。出かせぎをやっていて、そこの年金に入っている、長期の場合には年金に入る。そうすると五反以上耕作をしておっても主婦農業、母ちゃん農業の方は年金権がない。それは経営者でないから年金権がない。経営移譲しようと思ったって移譲すべきものがない。しかしながら五反以上はずっと残って農業をやっている人々がある。そういう人々が年金に連結しない。それをどう救済するかということは、私は農業年金全体からいっても非常に問題点だろうと思う。それを救済する措置はありますか。
  52. 川合淳二

    ○川合説明員 先生いま御指摘のように、農業者年金は農業者の老後保障という面のほかに農業政策上の要請ということでできておりますので、加入の条件といたしまして、農地の権利を持っていることが条件になっております。したがいまして、いま御指摘のような兼業農家の場合でございますと、御主人の方は厚生年金あるいは他の共済年金に入っているというケースが通常でございます。したがいまして、そういう場合には農業者年金といたしましては土地の権利の名義を奥さんの方に移して入るということができる道を開いておりますので、一般的に、そういう道が開かれているというか利用されているというところまではいきませんが、かなりの部分は、そういう道をとって、いまおっしゃられたような主婦で実質的に農業をやっている人は入っているという形になっているわけでございます。
  53. 大原亨

    大原(亨)委員 こういうことですか。今回の特例納付、さかのぼって納付をする制度の中で、五反以上、実際上の耕作をしている人が、兼業をやっている、厚生年金共済年金等に入っている主人の耕作権を継承する。たとえば農地を主人から借りて農業者年金へ入る資格を得るということになって、それがさかのぼって特例納付をするならば農業者年金に加入する資格がある、そういうことですね。
  54. 川合淳二

    ○川合説明員 ただいま申しましたように、土地の権利名義があればはいれるわけでございますが、権利名義ができたときから被保険者になるという制度になっておりますので、その被保険者になった時点が問題でございまして、被保険者になった以後、所定の期間を満たすことができるような場合には救済される。逆に申しますと、非常に最近にそういう権利名義を取ったという方の場合ですと救われない場合があるということでございます。
  55. 大原亨

    大原(亨)委員 たとえば取ってから三年なら三年ほどで六十歳の経営移譲年金の資格を得る段階に来たとしますと、六十歳から六十五歳までは経営移譲年金をもらうことができますか。
  56. 川合淳二

    ○川合説明員 国民年金と同様でございますが、農業者年金におきましても生まれた年によりまして特例の短縮期間が決まっております。その最短が五年でございますので、先生がいま御指摘のように三年前に取ったというようなケースですと、恐らく今度の救済措置でも救済されないというふうになるのではないかと思います。
  57. 大原亨

    大原(亨)委員 六十歳から六十五歳の間は、たとえ借地権でもいいが、耕作権を持っているならば、それは国民年金とは関係なしに経営移譲年金が出るのでしょう。その際に、最低五年間の制約があるのですか。
  58. 川合淳二

    ○川合説明員 要するに被保険者になっている期間が問題でございますが、農業者年金制度におきましては六十歳になりますと被保険者でなくなるという形になっております。これは年金のシステムとして、そういう形をとっているわけでございます。したがいまして、六十になる前に最低五年間、被保険期間であるときがないと救済されないということになると思います。
  59. 大原亨

    大原(亨)委員 わかりました。だから、現在五十五歳の主婦農業をやっている主婦は、他の人から耕作権の移譲を受ける、あるいは借地する。そして自分が実際上農業をやっている、五反以上つくっているのが、この年金につながらないということで議論になっているわけだが、しかし農業をやっている場合には、これは主人が労働者年金、被用者年金の場合には、国民年金は任意加入ということになる。そこにやはり盲点がある。しかし実際に百姓を汗水たらしてやっているのは、母ちゃん農業ですから奥さんです。ですから、その人が、いまの制度では五十五歳から入ったならば、六十歳からは経営移譲年金をもらえて、六十五歳からは国民年金で積み上げて厚生年金水準、こういうことを、いくかいかぬかは別にして、考えているということですね。  そこで私は特に、これからの指導について注意を喚起したいのですが、そういう主婦農業の問題について都道府県の扱いが、地域によって市町村によって非常に違う。大体、耕作権がないのだから、そんなものは資格がないということで主婦はネグレクトされる、そういう厳しいところもあるし、そういう権利はありますよ、実際に耕作しているのですからというところもあるし、非常にふぞろいであると言われておる。だから特例納付の制度を今回やるわけですが、そういう点の指導について十分気をつけてもらいたい。いかがですか。
  60. 川合淳二

    ○川合説明員 いま先生指摘の都道府県の指導の差といいますのは、一つはこういうことだろうと思います。と申しますのは、実質的に農業をやっている人が、その権利を持つかどうか、これは農地法の世界の話になりますが、そこの判断の問題だろうと思います。先生がいま例題として出されましたような妻と申しますか、御婦人が実質的に農業をやっているようなケースでございますれば、これは三条許可という形で権利の移動が認められるわけでございますが、そこの判断と申しますか、実質的に農業をやっているかどうかということが一つの問題だろうと思います。しかしながら先生指摘のように、実質的に農業をやっている御婦人の場合でございますれば、それは権利の移動が当然行われてしかるべきケースでございますので、私どもも、そういう点での差が都道府県の間にないように注意したいと思っております。
  61. 大原亨

    大原(亨)委員 これは制度自体がおかしいのです。実際に農業をやっているのは主婦が多いのであります。そういう人がほとんど、この農業者年金には加入していない、こういうのが実態です。それは主人から農地を借りればいいわけです。夫婦で貸借するのはおかしいが、借りればいい。これは制度が、基礎が大体おかしいのですから、その場合に実際に適合したような適用の仕方を、法律ができたならば、やらなければ不公平になるではないか、こういう点を指摘いたします。  各論に入り過ぎたのですが、大蔵省、公定歩合を引き下げて今度三・五%になったわけですが、前に予算委員会の分科会で、これは厚生省へ言っても効果がないだろうと思って村山大蔵大臣に言ったのですが、いままでの経過をたどってみますと、公定歩合を下げた場合に年金積立金の運用利子にすぐ連動した場合と連動しない場合があった。積立方式をとりながら、厚生年金積立金、本年度末は十七兆円にも達するというのを大蔵省は持っていって、最初私が言ったように昭和十七年にできた労働者年金当時の戦費の調達という考え方そのまま、財政投融資に持っていくという考え方の基本が大体間違っておる。他の共済年金や、あるいは諸外国の例を見たってそうです。それをぎゅっと握って保険料給付の見合いをやりながら財政投融資に繰り入れていって、そして大蔵省が握って、ある場合には融資の先へ天下る、そういうシステムを変えなければ年金はよくならぬ、こういう議論をしばしばいたしました。  積立方式をとりながら公定歩合を下げて運用利回りも公定歩合につれて下げていくという方針をとるならば、積立金財政、その運用の点から考えてみても、インフレ、物価上昇から考えてみても、被保険者の立場から見るならば、積立方式をとっている制度自体が、先ほどから議論している点において矛盾ではないか。今回は、公定歩合引き下げに伴って、この年金積立金の運用利回りについて大蔵省はどういう措置をとったのか。
  62. 森卓也

    ○森(卓)説明員 お答えいたします。  従来から運用部の預託金利は公定歩合と必ずしも連動いたしておりませんで、運用部に預託されております預託金の六割以上を占めております郵便貯金の金利動向と連動して動かしております。したがいまして、公定歩合が動きましても郵便貯金の金利が動きません際は、私どもの方の預託金利あるいは貸付金利につきましては変動いたしておりません。したがいまして、今回の公定歩合の引き下げに伴いまして当然に資金運用部の預託金利あるいは貸付金利を動かすということではございませんが、承るところによりますと、きょう郵政審議会におきまして郵便貯金の金利をどうするかということを郵政省の方で御相談なさっているということでございますので、もし郵便貯金の金利が動くということになりました際には、私どもの方も資金運用審議会の御意見を承りまして運用部の預託金利あるいは運用部からの貸付金利を動かすということになろうかと思います。
  63. 大原亨

    大原(亨)委員 郵便貯金も厚生年金その他の掛金も、労働者であり一般庶民ですよ。法人ではないわけだ。そういう共通の性質はあるのですが、しかし、この年金積立金というのはもっと別の意味があるのではないか。公的年金の中で積立方式をとっているのではないか。それを厚生省から大蔵省がひったくって大蔵省が運用しているのじゃないのか。そのときに、公定歩合を下げたからといって運用利回りをそういう考え方で操作することは間違いだ。もし、そういうことをやるならば、百歩譲ってやるならば、どこかから、それに相当する金額を利子補給をすべきである。それでなかったら、これはどんなにやったって当面インフレは続くのだから、自民党内閣が続く限り続くのだから、それに対応して積立方式自体を崩していっているのじゃないか。  外国が全部賦課方式になったというのは、インフレに対応できないから賦課方式になったのじゃないか。社会保障制度審議会目的税方式を取り入れたのは、それは賦課方式をとらなければ、やはりインフレに対応できない。所得の再配分の逆再配分になってくるということを言っているのだ。だから郵便貯金や厚生年金積立金については共通の基盤はあるが、厚生年金は公的年金ですから、その場合には、国民年金も同様ですが、利子については特段の配慮をするし、どうしても連動して下げる場合には、これはやはり利子補給をする、補てんしなければだめですよ。それでなければ年金財政がいくはずがない。そうすると、積立方式というのはインフレに対応できないから結局は高負担低福祉ということになる。厚生大臣いかがですか。審議会云々ということを言っているけれども厚生大臣はどういう主張をしているのですか。
  64. 木暮保成

    木暮政府委員 現在の厚生年金修正積立主義をとっておるわけでございますが、これは今後、人口老齢化が進みまして年金の受給者がどんどんふえてくるわけでございます。それにつれて保険給付費財源が膨大なものになっていくわけでございますが、世代間の負担の公平という観点もございまして、積立金を持っていないと制度の円滑な運営ができないということでございます。外国の例を見ましても……(大原(亨)委員「だからそれはいいから、今度どうするのか」と呼ぶ)そういうことで積立金を持っておるわけでございますが、これを資金運用部に預託をいたしておるわけでございます。年金給付財源でございますので非常に確実な運用をしなければなりませんわけでございますが、その点、現在考えられます手段としましては、資金運用部に預託をするということは最もいい方法というふうに思っているわけでございます。  それで金利の問題でございますが、先ほど大蔵省の方から御答弁がありましたけれども、郵便貯金の利子がどうなるかによりまして資金運用部の預託金利も変動が出てくると思いますけれども、私どもといたしましては、資金運用部の預託金利を下げる場合にも、できるだけ最小限度にとどめてほしい、こういう立場でございます。
  65. 大原亨

    大原(亨)委員 考え方の基本が、大臣、それはおかしいのですよ。公的年金積立金運用については、ちゃんと政府が責任を持つという前提で積立方式が成立しているのですよ。いま十七兆円あるけれども、一割ほど減価すれば一兆七千億円ほど目減りするわけです。インフレにどう対応させるかということを考えなかったら、年金というものは安定できる、いいやつはできない。だから、そういうところは大臣が乗り込んでいって、公的年金のこの運用利回りを下げることは相ならぬ、こういうことをちゃんと言わなければだめですよ。いかがです。
  66. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これは大原先生そうおっしゃいますが、もし別の預貯金にして運用しておった場合には、これはもう当然下がってくるわけですからね。ですから、これはそうおっしゃっても困るのです。やはり、それはそれとして給付費国庫負担というものをちゃんと考えているわけですから、いまの運用利回りについて、公定歩合が下がって各種の預金金利から貸出金利まで全部、世の中の金利体系というものが変わっていくときに、これだけは年金積立金だからだめだぞというのは、それでは大蔵省に預けないで自主運用をしたって、それは下がるわけですから、世の中の全体の客観情勢がそうなっていけば、これはひとり、おれの金だけはだめだと言ってみても、なかなかそうはいかない。だから私どもとしては、こういう特殊のあれだから、まあできるだけ余り下げるなよということで交渉して、できるだけ歩どまりをよけいにしようということをやっておるわけでございますので、これを全部やめろ、下げるなと言われましても、これはちょっと困難だろうと思うのです。
  67. 大原亨

    大原(亨)委員 それは公的年金だから、公的年金で、いまだって掛金をかけているのは平均は三十年でしょう。モデルは二十八年でしょう。国民年金でしたら二十五年で五年間据え置きの三十年でしょう。ですから、その場合に目減りをしない措置をとってなかったら、積立方式なんか成り立たぬですよ。そういう財政方式の問題と積立金運用について大蔵省にちゃんとねじ込んで、きちっと大蔵省の官僚から取ってきて、それで自主運用するのはいい。  じゃ、もう一つ聞いてみましょう。厚生年金国民年金を担保にいたしまして住宅の個人貸し付けをやりますね。その利子はどうしますか。利子は今度どうするのですか。利子はいま幾らですか。
  68. 木暮保成

    木暮政府委員 現在六%でございます。この六%というのはことしの一月一日に下げたわけでございますが、厚生年金の還元融資の場合には、一方では年金給付財源でございますし、一方ではまた、その被保険者に対して福祉還元をするという意味合いで、そのバランスをどこでとるかということでございますけれども、今度一月一日から六%にいたしましたことによりまして、被保険者の方々に十分利用してもらえる条件になったというふうに考えております。
  69. 大原亨

    大原(亨)委員 私が言っているのは、それはちょっぴり改善だけれども、それじゃ共済組合の積立金運用と同じになったのですか。
  70. 木暮保成

    木暮政府委員 共済組合の個人住宅貸し付け、これは組合によりまして条件がさまざまでございます。それで、五・七%くらいのところが一番多いと思いますけれども共済組合の中で一番被保険者の多い郵政が六%でございまして、それに並んでおるわけでございます。
  71. 大原亨

    大原(亨)委員 だから今度、新しくさらに公定歩合の引き下げが決まった、どうするのか、こう言っているのです。
  72. 木暮保成

    木暮政府委員 先ほど申し上げましたように、一方では年金財源としまして考えていかなければなりませんし、一方ではまた当然のことながら福利還元をするということでございますが、そのバランスの問題なんでございますけれども、現時点では六%というのは妥当な線ではないかと思っておる次第でございます。
  73. 大原亨

    大原(亨)委員 大蔵大臣みたいな答弁をするな。あなた、何を言っているのだ。村山大蔵大臣は、決して下げないように、質問の趣旨は十分尊重して対処いたします。慎重にやります。こう言って答弁しているのだ。大体厚生大臣、やはりそういう点は、たとえば〇・五%違えば、これは保険料には物すごい影響があるのだ。その計算が出ておる、一〇%という計算ですからね。ですから、物すごい影響があるわけだ。だからそういう点は厚生大臣が直接行って話をしなければだめですよ。いいですか。やりますか。あなた、武見さんのところにばかり行ってはだめだよ。武見会長のところに行かぬで、ちゃんと大蔵大臣審議会にねじ込んでいったらいいじゃないか。国民の方に向かなければだめじゃないか。
  74. 小沢辰男

    小沢国務大臣 もちろん私は自主運用の大事な責任者でございますから、交渉に全力を注ぐわけでございますが、私は、先ほど申し上げましたのは、やはり自主運用をやるにいたしましても、当然全般の金利体系にこれは影響されるわけですから、今日の事態、政府の閣僚の一人として慎重な答弁をしておるわけでございますけれども、その努力は十分いたす所存でございます。  また、貸付金利をもう少し下げろというお話ですが、これは考えてみますと、やはり被保険者としては自分の足を食うようなものですからね。貸すときにうんと下げろと言われますと、それはそれだけ、やはりこちらとしては、せっかくの積立金がまたおっしゃるような目減りもするわけですから、その辺のところはバランスをとって考えていかなければいかぬものですから、まあ六%が適当じゃないかという今日の考えだ、こういうことでございますので、それは被保険者のためも考え積立金の確実、安全な運用等も考えて、その辺のバランスで、ひとつ考えさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  75. 大原亨

    大原(亨)委員 だから、そういうことを言うだろうと思って、大蔵大臣とぼくはここで議論したわけです。厚生大臣、あなたは国務大臣でもあるのですから、武見さんの方へ行ってはがつんとやられ、大蔵大臣の方へ行ってはがつんとやられて、何の厚生大臣だ。厚生大臣はやはり、これから国民年金医療保険改革に取り組む場合に、国民の立場でどうするかということについて、ぴしっとやらなかったら、あなたの将来に重要な影響がある、そのことを宣言いたしまして、私の質問を終わります。
  76. 木野晴夫

    木野委員長 この際、午後二時三十分まで休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ————◇—————     午後二時三十七分開議
  77. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国民年金法等の一部を改正する法律案に対する質疑を続行いたします。田口一男君。
  78. 田口一男

    ○田口委員 まず初めに、午前中も大原委員からあったのですが、去年の暮れに出されました年金制度基本構想懇談会中間意見、以下は中間意見と言いますけれども、それと、その後に出された社会保障制度審議会のいわゆる新年金体系、この二つについて二、三お尋ねをいたします。  まず、中間意見につきましては、私は、この中間意見をまとめられました各委員先生方、それを取り仕切ってきた年金局を中心の皆さん方に心から敬意を表したいと思います。ということは、これだけ年金の問題が大きくなってきておるにもかかわらず、従来とかくいたしますと厚生年金厚生年金だけ、共済年金共済年金だけという各制度の枠内に閉じこもったいろいろな提言、改革意見というものはありましたけれども、この八つ制度に真っ向から取り組んで、ともかく問題点の整理をしたという、その勇気を実はたたえたいわけでございます。それだけに、この中間意見が示しておる方向というものについては、当の年金受給者はもちろんのこと国民ひとしく、一体、中間意見の行方というものはどうなるんだろうか、こういう気持ちを持っております。したがいまして、そういう国民の気持ちにこたえるような、まああえて不透明な部分と言いますけれども、不透明な部分についてできる限り解明をするという立場でお答えをいただきたいと思います。  まず、そういった立場で言いますのは、一つは、たまたま日にちが、中間意見は十二月九日、制度審が十二月十九日、ほぼ同じ時期に出されておるから言うんじゃありませんけれども、この中間意見というものを大体読んでみますと、いま申しましたように、年金問題の抱えておるいろんな問題に対して、国民検討するに当たっての、言うならばフレームワークを示しておると思うのですね。それに対して制度審の方は、そのかがみの文章にもありますように、基本年金というものを採用することによって快刀乱麻を断つがごとき勧告をしております。したがって国民は、中間意見というものに対して、制度審が即座に間髪を入れずに、こうだというふうに答えたと見ておるわけであります。  実は、これは中間意見に対して制度審が間髪を入れずに一つの具体案を示したと国民が思っておることは、そのとおりだとして大臣もお考えになっておるのか。双方のかがみの文章を見ますと、それぞれの沿革、経過を述べてはおるのですが、結果だけを見ると、ねらいは一つだ、こういう理解に立ってよろしいかどうか。その点、まずひとつ。
  79. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そう言われる議論も成り立つとは思いますが、やはり制度審年金懇の立場の違いといいますか、性格の違い等もございますので、懇談会の方でいろいろな問題点を挙げられまして、その点を今後ひとつさらに検討を加えていかなければいかぬという、私どもに整理させますと九項目ぐらいに分かれるような問題点指摘を一応されたわけでございますが、それから十日ばかりおくれてということで、ずばり一つの本当に具体的な提案をされた制度審議会、おっしゃるような議論も成り立つかもしれませんが、私どもはやはり、それぞれの制度審議会あるいは懇談会の性格や経過等もあって、こういうことになったのだろうと思うのでございます。  私どもとしては、この年金懇制度審の両方の、懇談会におけるいろいろな指摘事項、それから制度審基礎年金構想というものは非常に示唆に富んだ御意見だと思いますので、両方それぞれの性格は違うものと受け取りまして、具体的な内容でなくて、提言のいわば次元といいますか、立つたところが違うような気がするのでありますが、それぞれ非常に貴重な御意見でございますので、この一年かかって検討する場合に、十分参考にしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  80. 田口一男

    ○田口委員 確かに制度審の方は、五十年十二月に出した「今後の老齢化社会に対応すべき社会保障の在り方について」これの各論の一つとして年金問題を出したというふうな理解もできるのですけれども、そういう経過を知らずに見た場合、さっきから言っておりますように、たまたま九日と十九日ということで、素早く制度審の方では中間意見に対する答えを出したというふうに見ても無理はないと思うのですね。  そういうことで、このことを再度追及はいたしませんが、私はなぜ、それを言いたいかといいますと、さっき高く評価をいたしましたように、現行八つ年金制度に前向きに真っ向から取り組んだ意見である。とすれば、この中間意見に対して、それぞれの制度側から、いやこうじゃない、中間意見はこう言っておるけれども、こういうことなんですよといった反論といいますか、たとえて言うならば、中間意見がピッチャーでボールを投げた。それを受けて、すぐに投げ返す、こういうキャッチボールというものが今後なければ、私は、せっかく中間意見をまとめたかいがないと思うのですね。ところが今日の状態でいうならば、その各年金制度の中では、俗に言う金持ちけんかせずということで、おれのところは財政問題ないんだよ、ああは言っておるけれども、馬耳東風ということで、だんまりを決め込むことなきにしもあらず。そうなってくると、これは単なる一作文に終わってしまうんじゃないか。ですから、中間意見は文字どおり中間意見ですから、後で一つの結論というものを、いずれかの日に出すんでしょうが、そのいずれかの日に出すまでに一体、各制度に対して、どういう働きかけをするのか、たとえば国家公務員共済に対して、地共済に対して。その辺の具体的なもくろみがあれば、お答えをいただきたいのです。
  81. 木暮保成

    木暮政府委員 基本構想懇の中間報告、それから制度審議会の建議がございまして、年金改革をめぐります意見が出尽くしたということだろうと思います。私ども、また基本懇を再開いたしまして、制度審議会の建議も見せていただきながら詰めをしていくわけでございますけれども先生おっしゃるように、これからの年金改革は、ほかの八つ制度がみんな協力してやっていかなければならないということに相なるわけでございますが、総理府にちょうど年金問題の連絡協議会がございまして、中間意見のこと、それからまた制度審議会の建議等につきましても、その場を通じまして連絡をとった次第でございますが、今後も連絡協議会を中心といたしまして話し合いを行っていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。また、単なる話し合いということだけでなく、私ども意見あるいは考え方方向が決まりました際には、協議会あるいはまた各種共済制度を持っております省にも十分連絡をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  82. 田口一男

    ○田口委員 それに関係して大臣にちょっとお聞きをしたいのですが、たとえば、いま八つ制度があって、いろいろな問題を抱えておる。ところが国会という場でそれを見たとき、厚生年金国民年金厚生省の所管であるから本委員会ですね。ところが国家公務員の共済組合は内閣委員会ですか(「大蔵委員会」と呼ぶ者あり)それぞれ所管省庁に関する常任委員会議論するんでしょう。ここへ全部呼んで、厚生年金が主軸であるから、国家公務員の方はどうなんだ、地方公務員はどうなんだと言うことはできますよ。しかし、これだけ高齢化社会に入って年金問題がいわゆる国家的事業になろうとしておるのに、私が考えるのに国会そのものが、官民格差だ何だかんだと言われておりながら、年金そのものに対する調整機能というものを十分に持ち合わせておるのか。どうも残念ながら持ち合わせていないような気がするのですね、自分のところの制度のことばかりは議論しますけれども。その辺のところで、まあ国会の機能ということですから、私、質問する方も、ちょっと場違いかと思うのですが、そこはお許しいただいて、大臣としてどういうふうに考えてみえるのか。それから制度審の方でも、こういうことを建議された以上、そういった議論があったかなかったかということを、参考までに制度審の方にもお伺いしたいと思います。
  83. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、当委員会が所管をいたしますのは、やはりただ単に厚生行政の枠内、厚生省の取り扱っている仕事の枠内でなくて、国民全体のために老後所得保障がいかにあるべきかという点からいいますと、私は、年金制度については当委員会が少なくとも主たる総括的な委員会だと思いますので、それを行政的に考える役所の責任というのは、また私は厚生省だと思いますので、この懇談会の意見にもありますように、制度間の給付水準の格差の是正、統一をやったり、あるいは負担の公平を図ったり、そういうような点については厚生省が主になって国民全体に共通するりっぱな年金制度をとらなければいけないと思っております。また当委員会の方でも中心になっておやりになるべきじゃないかと思いますので、どうぞひとつ、私も及ばずながら政府部内にありまして各年金間の調整については中心になって推進をしていきたいと思いますから、そのようにお考えいただいて、お進めをいただければ、ありがたいと思うわけでございます。
  84. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 制度審議会の立場でお答えさせていただきたいと思います。  制度審議会審議の過程で、今回の御指摘になりました建議それ自体について途中経過で、統一的な機関というような議論はございませんでした。ただそのかわり、すでに、それに先立ちまして、先ほど年金局長からも御紹介ありましたように、総理府の審議室に公的年金の各省の連絡協議会が設けられた。その連絡協議会が設けられた原因といいますか、きっかけは、社会保障制度審議会から年金についての各省、政府全体を通した統一的な見解が出せるような機関を持つべきだということから、公的年金の連絡協議会が設けられたわけでございます。その限りでは、制度審議会としては、その連絡協議会がそれなりの機能を果たしておると思っておりますし、また、ただいま厚生大臣からお話もありましたように、実質的に見まして、やはり国民年金厚生年金というものが、わが国の年金制度のいわば大宗をなすものでございますので、主体としては厚生省が、これらについてのリーダーシップをとっていくということを制度審議会としても審議の過程で当然予定した議論というものがなされてきたということを申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  85. 田口一男

    ○田口委員 確かに国民年金厚生年金の被保険者の数からいけば、わが国の年金関係の被保険者の大半ですよね。ところが、セクトを出して、どうこう言うんじゃないのですけれども、大体、厚生年金水準を決めるにしたって、いまの制度の中では恩給が先に決まり、恩給に準じて共済年金が決まり、その辺のところを横目で見て厚生年金が決まるというふうなことになっておると思うんですね。だから去年の四月の官民格差なんかの場合にも、やはり恩給なり公務員共済ということについて、事の内容は別として批判が集中をする。それに対して厚生年金国民年金を所管する厚生省としては、それを調整する気があったってできぬでしょう。なかなかむずかしいでしょう。ですから、あえて言うならば、別に社会保障省というふうなものにこだわるわけじゃないのですけれども、これだけ高齢化社会を迎えようとしておるわが国において、年金行政については一本化をするということの方が国民の期待にこたえることになるんじゃないか。こういう意味から、その行政機関についても一本化の方向で努力をする。と同時に、対応する国会としても、十分な調整機能を持つべき、そういった特別の委員会なり何なりということも順次必要になってくるんじゃないか、こういう気持ちを私は持っておるわけです。だから大臣のいまのお答えでは、閣僚の一人ですから政府部内での意思統一も十分できるということになっておるのですけれども、実際問題は、やはりそういう一つの枠組みをつくることによって、年金行政の一本化ということが可能になり、水準なり何なりということについても統一した改正改革ができるんじゃないか、こう思いますので、その点一つだけ承って次に移りたいと思います。
  86. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先生の御意見一つの卓見だと思います。そういうような考え方をお持ちになる、また、そういう社会保障省みたいな形で一元的にやっていくということも私は有力な、貴重な御意見だと思いますので、私自身もよくひとつ御意見をテークノートさせていただきまして、閣内にありまして、よく検討させていただきたいと思います。
  87. 田口一男

    ○田口委員 では基本構想の中身について、制度審の方と絡みながら具体的な問題をお聞きしたいと思います。  さっきも言いましたように、中間意見は現状の問題点を整理して、将来の年金改革について、ある程度示唆を与えておるのですけれども、その示唆するところは、いままでの八つ制度を全部ばらばらにして一本にするということは事実上不可能だ。これは制度審の方でも言っておるのですが、そういう言葉から部分的な制度統合、いわゆる昭和五十年ごろに厚生省が打ち上げておった基礎年金構想という方向にウエートがかかっておるのではないかと思うのです。これにはそうすべきだとは言ってないのです。この要約をして出された「これからの年金考える」を見ても、このもとの厚いのを見ても、基礎年金というふうなことについて、そうすべきだとは言っておらぬのですが、どうも基礎年金構想方向にウエートがかかっておる、こう見るのですが、局長としてはどうお考えでしょう。
  88. 木暮保成

    木暮政府委員 基本構想懇の事務局の立場で申し上げることになろうかと思いますが、ただいま先生おっしゃいましたように、八つ制度を直ちに一本化することは無理だろうということで各先生の御意見が一致しておったわけでございます。また一方、八つ制度がばらばらでは、これからの老齢化社会は乗り切れないだろうという点でも、大方の先生方の御意見が一致していたと思うわけでございます。それで部分的な統合あるいは部分的な財政調整というようなことが問題となりまして、その中間報告にございますように基礎年金でやる場合には、こんなことが考えられる。それからまた基礎年金によらない場合には、財政調整みたいなことを考えなければならないだろう。その財政調整につきましても二通りの試案が出ておりまして、それの長所、短所等が述べられているわけでございます。  私ども事務当局として審議経過を伺っておりました限りでは、両論が全く対立しておりまして、先生方も、この問題は大きな問題なので、さらに時間をかけて詰めていきたい、こういうようなことであったと思っております。
  89. 田口一男

    ○田口委員 では制度審議会の方にお伺いしたいのですが、さっきも言ったように「現在の混迷せる年金制度を抜本的に改善するためには、昭和六十五年を中間目標とし、基本年金の創設を中心とする以下の案によって事態を打開する以外に途なし」と断じておるんですね。これをいろいろと読むと、いまの局長答弁なんかも、そこまですっきり言ってないのですけれども、一体ナショナルミニマムということを、この基本年金の場合にどう考えておるのか。これは私、言い過ぎになるかもしれませんけれども昭和五十二年、現下で一人三万円ですね。一人三万円という基本年金は国の責任において出しましょう、全制度に。平たい言葉で言えば三万円のナショナルミニマムということは国が保障するけれども、それ以上に年金をもっと欲しければ、めいめい勝手に掛金を出して上積みしなさい。社会保険年金というふうな言い方ですね。かつて厚生省から出た言葉では付加年金という言葉、これは社会保険年金と言っていますけれども、その社会保険年金というのは、めいめい勝手に積みたければ積め、こういう言い方にもとれるのではないか。ということは、三万円は国が公的に保障しましょう。それ以上、上積みの分については、現行制度の中にもある厚生年金の例の適格年金ですね、調整年金、私的年金と言ってもいいのですが、報酬比例部分を代行させる調整年金のようなものに、この社会保険年金といいますか、付加年金というものを形を変えていこうとするのではないのか、こういう危惧もあるのですね。三万円は国の責任だ、それ以上は、あえて三万円を公的年金と言うならば、私的年金の分野で、めいめい勝手にやりなさいよ、こうもとれると思うのですが、そうじゃないのですか。
  90. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 お答え申し上げます。  私ども制度審議会での審議経過を承っておる限りにおきまして、ナショナルミニマムということについての議論があったことは事実でございます。ただし、制度審議会それ自体といたしまして、結論的にはナショナルミニマムというものの概念が、人それぞれ学者の方も、あるいはそれぞれの立場の方で現在いろいろ御議論がございますけれども、必ずしも統一した定義と申しますか、概念が確立されているとは思われないしということで、ナショナルミニマムないしは最低保障というような表現は建議にも使われておりませんし、また、審議会としてもナショナルミニマムという観点からの議論は進められなかったと申しますか、議題にはなりましたし、かなりの発言もあり、審議経過において問題にはなりましたけれども、建議として取りまとめるには至らなかった。  ただし、先ほど先生からお話がございました三万円と言われますのが、たまたま五十一年度価格で計算すれば、その程度が一応仮定される金額として示されたものでございますけれども、建議それ自体の中には、いわば老人夫婦のみの世帯における標準的な消費支出を基礎に、その一定割合、おおむね五割程度の水準を確保するという給付水準予定をしておる。この場合、老人夫婦世帯の消費生活を維持するに足りる水準の約五割程度という趣旨には、あとの五割ないしは、それにプラスアルファされる部分は、従前のと申しますか、現在の各公的年金が社会保険年金として再編成をされるときに、その保険料対応部分で、それに相当する、つまり老人世帯の残りの五割に相当する、ないしは、それ以上のものが満たされるというのが、少なくとも現状分析からして予測されるので、そういう意味で六十五歳以上の老人の標準的な生活水準というものは、基本年金プラス社会保険年金ということでカバーされるのではなかろうかという建議の論旨であろうというふうに私ども理解しております。  なお、いま社会保険年金は私的年金ないしは適格年金というふうな御表現もございましたけれども国庫負担をすべて取っ払って、いわば付加価値税を中心とした年金税で基本年金をカバーいたしましても、そのために現行の各公的年金国庫負担を取り除いた、つまり取り去ったといたしましても、なおかつ個々の公的年金、社会保険年金に含まれる八つ制度は、いずれも法律によって強制適用され、そしてまた、その給付も法定され、それから経済変動に応じた給付のスライドも法律保障される。かつ各制度間における通算制度というものも満たされておるわけでございまして、必ずしも制度審議会としては、社会保険年金を私的年金的な、あるいは付加年金的なものというような考え方でこの建議がまとめられたというふうには私ども理解をいたしておりません。この辺につきましては、いろいろ御議論にわたる点もあろうかと思いますけれども、少なくとも社会保険年金と一応建議の上で包括しております各公的年金制度というものが、国庫負担がなくなったからといって、公的年金でなくなるということでもなく、また、それは保険料に対応した形での給付水準、いわば過去の従前所得に対応するものと、それから基礎的な生活の中核になる基本年金というものを合わせて、老後の生活を守るに足りる年金制度というものが、そこで初めてつくられるのではないかというのが、建議の思想と申しますか骨子であろうというふうに事務当局としては理解をしておるわけでございます。
  91. 田口一男

    ○田口委員 じゃ大臣、常識的に言って、いま国民年金というものに対して期待を寄せておる、老後の生活における年金のウエートをどのように思いますか。いま制度審で言う六十五歳以降の老後の生活を一般的に言って支えていくに足るといいますか、年金というものはどれぐらいのウエートを占めるのか、どういう位置を占めるのか。常識的にどうお考えですか。
  92. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そこが一番問題点だろうと思うのですね。少なくとも生活保障でない、所得保障でございますから、生活保障でなくて、やはり当分は年金としては所得保障考え方でいかざるを得ないだろう。そういたしますと、しからばどの程度が所得保障水準として適当であるかということについては、恐らく制度審の方は三万円で十分だとは考えておられないから、やはり基礎年金部分としてそれを設定して、そのほかに各社会保険給付というものは上積みされるというような形で、そういう制度があるものですから、そうすれば基礎年金部分だけを統一してやっておけば、そこに上積みをされて、それが全体の必要生活費といいますか、それのある一定の割合になるだろう。それは対象者によってもまちまちだと思いますが、そういうお考えのもとに、こういう構想ができたんだろうと思うのです。  現在は、生活に必要と考えられるものみ約六割見当を頭に置いて制度そのものを全般的に考えておるというのが現状でございますので、これは社会保障の内容がどんどん進んだり、あるいは国民老齢化のぐあい、あるいは当時の生活の状況等をいろいろ考えて決めていかなければいけませんから、一概に固定するわけにもいかぬと思いますが、当面は大体六割見当というのが所得保障の一応水準考えて、現在ではいろいろな施策を進めておるというのが、私ども考えと御理解願っていいんじゃないかと思っておるわけでございます。
  93. 田口一男

    ○田口委員 確かに、この問題はすっきりして国民的な合意を得なければ、後々年金財政考えても、それから支給開始年齢が何歳かという問題も、それぞれの思惑で違ってくると私は思うのです。いつも年金局あたりの言い方は、従前所得の六〇%を保障するということを言っておったでしょう。厚生年金が四十八年改正、五十年改正で、そのとき言っておるのは、もう国際水準以上になりました、従前所得の六割です。こういうことを言っておった。ところが今度、制度審のまとめられた「年金受給者の生活」という項に(「基本年金」プラス「社会保険年金」)として、これを「年金水準」と言っておるのですが、「年金水準については、それのみによって六十五歳以上の老齢者の生活が賄われるものと考えるべきではなく、老齢者世帯の既存のストック、家族からの援助、各種の社会的施設(住居をも含めての)、とりわけ医療サービスの整備、並びにこれに加えて老齢者に対する各種の自発的サービス、」こういうものが望ましい、こういう言い方をしておる。  たとえの数字を出しますけれども、それによって三万円出せとか五万円出せとかという意味じゃありませんよ。たとえの数字で、じゃあ六十五歳なら六十五歳の老後の生活とした場合に、五万円の年金があった。その五万円の年金というものは従前所得の六割に相当するものであって、自分生活設計ができるものだ。こういうような位置づけなら位置づけをぴしっと出すのか。いろいろ意見はありますが、いま大体国民のほとんどが年金の金額によって、生活に差はありますけれども、全生活を賄おうなんという気はないと思うのです。だから、いま日本年金考えておる水準というものは、大体、従前所得しかも一番高いところの何割ですよとか、当時の勤労者のILOが言っておる四五%なり四〇%ですよというふうなことで押さえるのか。その辺が、この制度審のことと、いままで厚生省答弁してきたこととは、かみ合わぬような気がするんですね。下手をすると財政事情によって年金水準というものは落ちてくるんじゃないか。しかも六十五歳なんという年齢を出してきたものですから、これも財政的な事情で六十五歳に引き上げられた、こういう混乱、危惧というものを事実、年金受給者それから向後、老期に向かう人が持っておることは事実です。  ですからこの辺で、中間意見の方でも老後の生活像というものの実態が挙がってはおりますけれども、その実態に即して、やはり年金水準というものはこうなんだ、これを的確に打ち出す必要がいまあるんじゃないか。これはわかっておるようでわからぬですね。その辺について、時間の関係で深く二度三度は言いませんが、そういう考え方について、どう思ってみえるか。
  94. 木暮保成

    木暮政府委員 ただいまの厚生年金考え方では、先生がおっしゃいましたように平均標準報酬の六割をめどとするということで制度を立てておるわけでございます。これはILOの条約等を見ましても、国際的に十分通用する水準だろうというふうに思うわけでございます。  ところが、年金の今後の見直しということで、各政党あるいは各研究団体がいろいろな案をお出しになっておるわけでございますが、それは期せずしてナショナルミニマムのようなものを考えて、そこから年金を積み上げていこうという案が多いわけでございます。それで私どもの懇談会の中間意見でも、この問題を取り上げて検討をいたしておるわけでございますが、これは御承知のように、ごらんいただきましたように、まだ詰まっていないということでございます。一つは、各政党あるいは各研究団体が言われておりますナショナルミニマムにかなり幅がございます。また、その幅があるのは、やはり考え方によって当然だと思いますが、具体的な水準考えます場合に、職業の違い、世帯類型、地域差等をどう考えるか。また年金保障する生活の中身として、食費とか医療費だけの基礎費用を考えるのか、あるいは家賃、地代等を考えるのか。また制度審議会意見にもございましたように、一定の財産、収入を前提とするのかどうか。ここら辺の議論がなかなか解明できなかったわけでございます。  一方また、私どもの方の懇談会の中間意見としましては、いろいろな年金改革案の中でナショナルミニマムが重んぜられておるわけでございますが、やはりナショナルミニマムでも負担をどうするか、費用負担の調達の方法ということが非常に大きな問題になるのでございますが、それには余り触れられていない案が多いので、費用負担との関連も掘り下げてみなければいけないということで議論が終わっておるわけでございます。ただ中間報告も、この点につきましては年金制度の目標を国民にはっきり示すというためには、この問題に解明を与えるととが一番いいということで、今後の重要課題一つということで考えておるわけでございます。
  95. 田口一男

    ○田口委員 ちょっと時間の関係で急ぎますが、支給開始年齢制度審議会の言っておる六十五歳、この六十五歳という線引きをした理由は、いまの各法律を見ましても、たとえば労働省の中高年の雇用促進特別措置法では六十五歳が高齢者ですね。それから税金の方でいくと、六十五歳以上は老人控除がある。それから老人ホームの入所資格は六十五歳以上、それから国民年金が六十五歳、こういったところから六十五歳という線を出してきたんだと思うのですが、これも一つの問題は雇用との関係ですね。  そこで、在職老齢年金制度というものについて廃止せよという意見もあります。私は現状では廃止すべきだと思うのですが、これをもう少しはっきりさせる必要があるのじゃないか。というのは、一九六〇年代のアメリカの年金関係法律は、早く現役から引退をさせるために年金を出そう、もう職業生活はやめなさいよということです。ところが最近は、去年あたり、いろんな事情で七十歳の定年が出ましたね。それなんかを考えますと、わが国の在職老齢年金制度というものは、水準が低いということが、もちろん一番原因ですけれども、中高年齢者の雇用促進をするという一面もあるけれども、高齢者の賃金水準を下げるという役目も持っておる。だから、たとえば六十五歳なら六十五歳というものを一応肯定するとして、そこまで職業生活を継続しようと思うと、いまの定年だとか賃金体系だとか終身雇用とかといった制度を抜本的に洗い直さなければならぬ。そういった場合に、在職老齢年金制度というものは邪魔になるのかどうなのか。これもいまの水準を上げれば、それで一応解決すると思うのですが、その辺この懇談会なり制度審なんかの議論があれば、参考までにちょっと。
  96. 木暮保成

    木暮政府委員 年金の将来推計をいたしますと、これはいろいろな仮定があるわけでございますけれども厚生年金で見ますと千分の二百を超えるような数字が出てくるわけでございます。ドイツの場合には現在千分の百八十でございまして、財政的に非常にきつくなって物価スライド、賃金スライドの時期をおくらせるというようなことをやっておりますので、制度が違いますので単純な比較はできませんけれども、千分の百八十というのはかなりきつい線だろうと思うのです。日本の場合には千分の二百を超えるようなことが考えられますので、そういう将来の人口老齢化に対処するために、支給開始年齢を現在の六十歳から引き上げるというようなことは避けられない問題ではないかと思うわけでございます。  しかし、この年金支給開始年齢というのは、年金制度だけで判断するというわけにはまいりませんで、先生もおっしゃるように雇用問題等の関連も、よく見ていかなければならないわけでございます。将来の姿としましては、雇用で六十五歳まではめんどう見てもらう。六十五歳からは年金の守備範囲であるということが姿だろうと思いますが、そこに、どういうふうに持っていくかということだと思うわけでございます。  在職老齢年金につきましては、社会保険審議会の厚年部会の御意見をいただきまして、今回、額を引き上げる措置を講じておるのでございますけれども、厚年部会の審議経過も、在職老齢年金は、いまのままではむしろ高齢の方の就労の邪魔になる。あるいは高齢の方の賃金の引き下げに作用する場合もあるのではないかという議論が、かなり闘わされたわけでございますが、現在ございます在老の制度が、賃金の低い老齢者のお役に立っておるという面の方が多いんじゃないかということで、とりあえず現行制度のまま改善をお願いをしておるわけでございますが、厚生年金部会でも、この問題は引き続き根本的に掘り下げていこう、こういうことになっておるわけでございまして、厚生年金部会の審議を待ちまして、私ども考えてまいりたいと思っております。
  97. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 制度審議会議論の立場でお答えいたします。  二つございますが、一つは、まず六十五歳という支給開始年齢につきまして、制度審の建議の中身も雇用の立場あるいは現実の老人の生活といったようなことから出てきたわけでありますが、きっかけといたしましては、もともと六十五歳という段階で、いわゆる求職率あるいは職を探す希望率と申しますか、就業構造基本調査というのを総理府の統計局が五年ごとにやっておりますけれども、その率を見ましても、六十五歳という段階で大きく変化をしているということが一つあります。そのほかに厚生省の健康調査とか、あるいはその他の調査などを見ましても、健康状態あるいは有病率とかあるいは受療率という面を見ますと、二十歳、三十歳、四十歳という段階ではおおむね一けたでありますものが、六十歳を超えますと、特に六十五歳からは急激にふえてくる。  こういった条件を考慮いたしまして、かつ、退職ということと年金ということとが、欧米の場合は結びついているわけでございます。日本の場合は必ずしもそうはいっていない。しかし、将来展望として、やはり六十五歳という段階で、これは財政上のことも当然含めてというふうに建議にも書いてございますので、六十五歳というのが一つの節目であるということから、六十五歳というのを確立すること自体が、年金制度にとっても、あるいは日本の労働者の一つのライフサイクルを考えるときにも、大きなポイントになるのではないかというので、制度審議会で六十五歳という支給開始年齢を、基本年金に関しては踏み切ったというふうに理解をいたしております。  なお、在職老齢年金の問題につきましては、基本年金というものを六十五歳で踏み切りましたときの基本的な思想からいうならば、六十五歳以上の在職老齢というのは原則としてもう考えない。つまり、六十五歳から先は基本年金と社会保険年金というものが当然支給されるし、それは職についているか否かとは関係がない。ただし、六十歳という一般的な定年あるいは五十五歳定年といったようなことから、六十五歳までの間は、制度審の建議の最後の方にも書いてございますが、それまでのつなぎ的な意味で有期の退職年金ないしは再就職をいたしましても賃金が低いということによる現行の在職老齢年金というものは、存在してしかるべき、それなりの理由があるのではないかということで、制度審としても六十五歳までの在職老齢年金というものの存在意義といいますか、機能は十分理解をしていきたいというのが、制度審議会意見であるというふうに理解をいたしております。
  98. 田口一男

    ○田口委員 事ほどさように支給開始年齢六十五歳と打ち出してきておるのですけれども医療の問題、雇用の問題などを考えると、そうちょっこらちょいには、きれいに線は引けぬ。そういう点で今後大いに議論をしたいと思うのですが、もうあと時間がありませんから、ちょっと次へ進みます。  午前中、経過年金の問題で大原先生から相当意見があったのですが、これに関連して、年金格差問題などの不満、不平のある一つとして、私は旧軍人のいわゆる兵歴期間についてお尋ねしたいのですが、恩給局来ていますね。ちょっと簡単に旧兵歴を持っておる者の扱いについて、こういう場合はどうなっておるのか現状をひとつ報告をしていただきたいのですが、旧軍人の在職年が恩給権に結びつかないものを十二年なり十三年、加算をしている。その場合には、どういう措置をとっておるのか、それだけ。
  99. 小熊鐵雄

    ○小熊説明員 ただいま先生がおっしゃられましたように、加算年をつけて十二年、これは下士官、兵でございますが、准士官以上が十三年、この場合は恩給がつくわけでございますが、これに満たない場合でも、実在職年が三年以上あれば一時金がつく、こういう処遇になっております。
  100. 田口一男

    ○田口委員 ところが、この「恩給」という、これは恩給局じゃなしに恩給研究会ですか、違う団体が出しているのですが、これの九十八号の最終ページに「兵たる旧軍人の一時恩給のことについて」という質問があるのですね。それで履歴事項をずっと書いてあるのですが、この例の場合には、召集になって一年か二年おった。召集解除になって、またしばらくして一年、数回合算して三年という場合には、いまのに当てはまらないのですね。
  101. 小熊鐵雄

    ○小熊説明員 当てはまりません。
  102. 田口一男

    ○田口委員 そうなってくると特に大臣にお考えを聞きたいのですが、いろいろと聞きますと、また恩給局からの資料によりますと、軍人期間、兵歴期間があって、それから公務員をやっておれば、それは公務員期間として通算されますね。ところが、国民年金厚生年金問わず民間に入った場合には、これは通算されぬわけですね。引き続く三年以上ならば一時恩給をもらえるけれども、飛び飛びの三年以上が仮に十年あったってもらえぬわけでしょう、恩給関係では。十一年以上ならば何かもらえますけれども、そういった引き続かない在職年が仮に十年あっても恩給法上ではほっておる。しかし一方、公務員の方にそれがずっと行くと、その十年なら十年は年金の通算になる。厚生年金は通算にならぬ。制度はこういう矛盾があるのですね。こうなっておるのでしょう。恩給局、その辺。
  103. 小熊鐵雄

    ○小熊説明員 ただいま先生指摘の例の場合でございますと、断続して三年以上あるという場合でございますが、現在の制度では一時金が出ないという仕組みになっておりますけれども、これはただいま御審議いただいております改正法案の中には、こういった方にも一時金を出す、三年以上断続してあれば一時金を出すという改正法をいま御審議いただいておるわけでございます。
  104. 田口一男

    ○田口委員 それが通れば結局、引き続かない断続した三年以上も一時恩給をもらえる。金額は、従前の例によると一万四、五千円しかないと思うのですが、これを厚生年金国民年金の側から見た場合に、公務員制度では軍人も一般普通文官も公務員であるから通算をしておるのですが、通算年金通則法の第四条第二項四号、五号ですね、「戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく障害年金を受けることができる者及びその配偶者」については国民年金の被保険者とみなす、ただし昭和三十六年四月一日以降ということですけれども。こういう通則法に規定をはめ込んでおることからいっても、下士官以上は大体軍人恩給をもらっておると思いますけれども、下士以下のいま言う断続した十年未満の兵歴を持った者は、過去勤務債務といったような考えに立って厚生年金なり国民年金の被保険者期間とみなす、こういうことはできぬものでしょうか。
  105. 木暮保成

    木暮政府委員 短い軍歴期間を共済組合で見ておりますのは、共済組合法が恩給を引き継ぐという形でできましたので当然かと思うわけでございます。ちょうど私ども厚生年金が労働者年金を引き継ぎましたときに、労働者年金の期間を厚生年金で引き継いだということに当たるのではないかと思うわけでございます。  それで、厚生年金なり国民年金で短期の軍歴のある人を通算できないかということでございますが、これは先生よく御承知のとおり、厚生年金制度の立て方は、十人以上使っております事業所の男子労働者から始めまして、五人以上に広げ、また女子の労働者に広げ、それから職員に広げてきたわけでございます。そういう制度の立て方でございますので、民間の事業所に働いておったということ以外に、軍務に服したということを選んで取り上げるということができない制度であるわけでございます。さらに国民年金になりますと、国籍があり、かつ居住要件があるということが被保険者の条件でございますので、軍務に服したかどうかを問うて、その点を選んで取り上げるというような形になっていないわけでございまして、仮に軍務に服したという方に広げるということであれば、国民年金は国籍要件と居住要件さえあればいいわけでございますから、その戦時中まで三十六年の時点を全国民に広げなければならないということになってしまうわけでございまして、制度の立て方上、厚生年金につきましても国民年金につきましても、軍歴期間を通算することはできないというふうに思っておるわけでございます。
  106. 田口一男

    ○田口委員 確かに現行制度はおっしゃるとおりだと思うのです。しかし去年の四月、加藤君が言った官民格差論、私は、いい意味に評価をすれば、年金に対する国民の関心がそれによって盛り上がった反面教師だと思っておるのですけれども、そういう中で出てくる議論は、いまの恩給法でいくと、それは悪いと言うのじゃないのですが、たとえば旧南満州鉄道とか華北鉄道とか、いろいろな団体に、いまで言う半官半民というのですか、そういうところに勤めておった者も、日満目ケースであるとか、日満ケースであるとか、満目ケースであるとか、現に公務員の者は、また昭和三十一年、三十七年の改正になったときにやめた者もそうなのですが、全部通算されておるのです。ところが、同じような境遇の者がやめて百姓をやったり、民間の会社に勤めた場合には入らぬでしょう。これを一つ入れれば少々水準が上がるのじゃないかと思うのは、これは普通からいって無理はないですね。大臣、どうですか。これは制度はいまはないですが、そういう気持ちに対して、財政の問題なんかもあるにしても、公正に扱うということで考えられぬかということです。どうでしょう。
  107. 小沢辰男

    小沢国務大臣 厚生年金とか国民年金というのは、御承知のようにみんなが掛金を出し合った相扶共済制度でありまして、それから恩給というのは、国家補償の観点に立って、一定の国家との権力関係のある者に支給をしていくわけでございますから、この一定の権力関係にあった性格を、お互い相扶共済でみんなで掛金を出し合ってやっている国民年金厚生年金の方へ、その期間分だけ要素として取り入れろというのは、ちょっと私は無理だと思うのです。完全に概念が、概念といいますか、あれが違うわけですからね。  それともう一つは、実際問題として、そういう方々が約四百万人もおるし、それらの方々にもし何らかの給付をやるとすれば、相当の、これは数千億台の負担になってくるだろうと思うのです。それでとどまればいいですけれども、また、それ以外のたくさんな方に関連が出てまいりますものですから、それはおっしゃる気持ちはわからぬこともないのですが、これだけはしばらく勘弁願いたいというのが私の率直な気持ちでございます。
  108. 田口一男

    ○田口委員 しかし大臣、割り切ったらどうですか、その年金の通算制度のように、厚生年金国民年金共済年金があったら、それぞれから出すのでしょう。だから、いま例に挙げた兵歴を持つ人が厚生年金に出た場合に、厚生年金部分については厚生年金の金を出す、兵歴部分は恩給局ですから恩給局から金を出す、同じ国家ですけれども、仕組みとしては考えられるでしょう、一遍これは検討してくださいよ。  時間がないので一つだけ、ちょっと済みませんが、今度の法改正で無年金対策は私どもの要求を入れたものとして、ペナルティーの問題は議論があるのですが、それでもなおかつ無年金者は一掃できません。これは厚生省の依頼を受けて三重県の鈴鹿市が悉皆調査をやった結果を申しますと、九万八千人、二十歳以上の者がおるのですが、それを全部往復はがきで調査をいたしました結果、三万五千人が国民年金、それから一万七千八百人がいま言う五年年金、十年年金経過年金、それから三万八千人が他の制度、そういうことで、その調査をしたのは五十二年四月に調査をしたのですが、約六千人無年金者がおります。この六千人は今度のこの改正案によって全部救われます。納めるとすればですね。  ところが、これも約三百人という数字は微々たるものですけれども、いかに保険料をこれから納めていっても二十五年に満たぬわけです。それはどういう例かといいますと、昭和五年四月二日以降に生まれた者で、私の例からいきますと、この人は昭和十年十月生まれの女子です。昭和四十五年まで厚生年金、ところが退職をして脱退一時金をもらいました。それから四十六年十一月から四十八年七月まで再度、厚生年金に二十カ月加入いたしました。そして四十八年七月に結婚をいたしました。結婚した相手は自営業者、四十八年です。そこで、社会保険事務所へ行って聞いて国民年金掛金を納めた。ところが六十歳までせっせと納めても二十四年しかなりません。こういう人がいまの鈴鹿市の例でいくと約三百人おるのです。これは特例納付をやろうと思ったって掛け捨てになるんですね。九万八千人のうちで約三百人ですから、これをそのまま単純に類推すると、全国では相当な数になるのではないですか。  この原因は時間がありませんから言いませんけれども、この無年金者を救う道はないのか。そして私は結論から言いますと、救う道については三つしかないのではないか。一つは、いまの厚生年金で採用しておるような任意継続です。六十一歳から六十五歳まで本人が掛金を納めることによって、この人の場合には一年分納めることによって二十五年の本格年金がもらえる、こういう方法にするか、それから、共済年金では、あるそうですか、たとえ脱退一時金をもらっても、それを年金受給資格に入れて年金をもらうときに返していく、こういう方法か。そして、いずれにしても、こういうことは今後も後を絶たぬと思うので、本年六月に切れる女子の脱退一時金の選択ですね、これはもうやめてもいいのじゃないか、このことだけ申し上げて、あと終わりたいと思います。
  109. 木暮保成

    木暮政府委員 ただいまの例は、脱退手当金をもらってしまったために今度の特例納付にもなじまないという問題でございますが、脱退手当金の問題は、皆年金をいたしました昭和三十六年前と三十六年後とでは分けて考えなければならないと思うわけでございます。昭和三十六年までは皆年金ではございませんので、脱退手当金を選ぶということがあり得ると思うのでございますけれども昭和三十六年に皆年金になりましたので、すべての人は年金に結びつくことになったわけでございます。それで、昭和三十六年に仮に脱退手当金をもらってしまいましても、三十六年時点の年齢に応じまして二十五年を短縮しておりますので、それから昭和三十六年以降で年金に結びつけるということになっておるわけでございます。その三十六年以降、この件の場合には昭和四十五年だそうでございますが、脱退手当金をもらったということは、やはり年金でなく脱退手当金を選ばれたということでございますので、これはまあやむを得ないというふうに考えざるを得ないと思うわけでございます。  それで、こういう人たちは今度の特例納付は当然適用になりませんので、任意継続を考えろということでございますが、私どももできるならば過去二回やりました特例納付を繰り返したくないということで、いろいろ方法を考えまして、その中の一つに現在六十歳まで保険料を納められるわけでございますが、六十五歳なりあるいは資格期間ができるまで延長して納めてもらうという方法も考えたわけでございますが、これは、こういう無年金対策ということにしましては、現在、時効のことを考えませんと三十五歳を過ぎますと一年足りなくなるわけでございます。現在三十五歳の方が、そういう任継制度を仮につくりました場合に、その任継制度を利用するのは二十五年も先のことになるということで、こういう経過的な措置としては、いろいろ問題があるのではないかということで、とらずに、やむを得ず三回目の特例納付ということで無年金者対策をやるというふうに決めた次第でございます。
  110. 田口一男

    ○田口委員 これ最後。そうは言いますけれども、この悉皆調査のときに出た意見を聞かしてもらったのですが、企業の方は退職金と思って出すのですね。自分のところの退職金が少ないものですから脱退一時金をその上に積んで、さあ結婚資金の足しにしなさいって出すのです。もらう本人は全然知らぬわけですよね、それによって、いままでの期間がパアになるとかどうとかということは。それが数にしたら九万のうち三百人か知りませんけれども、善意で起こったというわけですから、それを今度の特例納付でも救い切れぬとなったら、その者については任意継続制度なり、また前の期間を戻して金を返済させる、こういった措置を考えていく必要があるのではないか。もうこれだけ聞いて終わります。
  111. 木暮保成

    木暮政府委員 昭和三十六年以降の脱退手当金の場合には、いま先生おっしゃったような事情もあろうかと思いますけれども、請求書を出されて脱退手当金を選ばれたということでございますので、現在の制度としては脱退手当金に関係する期間は消えてしまうということにならざるを得ないと思います。先ほどお話にございましたように、この女子の脱退手当金の特例は何回か延長してまいりましたけれども、五月三十一日で切れることになっておりまして、これは今度の法律改正で延長しないということにしてございます。
  112. 木野晴夫

    木野委員長 次に、金子みつ君。
  113. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いまさら、ここに憲法の二十五条を持ち出す必要はないと思うのですけれども、しかし、国は国民の健康を守るという責任を持っていますし、同時に最低生活を保障するという責任と義務も持っているわけですね。その立場からいって健康を守る政策としては、いま行われています医療制度の抜本改正、あの長い間いろいろ問題がございました、いまの問題になっている医療制度を抜本的に改正するということを、大臣は先般この五十三年、五十四年度の間にやりたいということをおっしゃいましたね。そういうことはおっしゃっていらっしゃるわけです。医療問題については、国民の健康を守るという点については、いままでの改正できなかったいろいろな点を見直しをして、そして五十三年から五十四年にかけて抜本的にいろいろな改正をやりたいというふうにおっしゃったわけです。健康の問題については一応それで、ある程度解決できるかもしれないと思います。  ところが、国民の生活を守るという問題につきましては、いま問題になっております老後の生活を安定させるための、この保障をするための年金制度というものが中心になっているわけですね。そこで、この年金制度についても、大臣はやはり国民の健康を守るときと同じように、国民の最低生活を守るという立場から、この年金制度にいろいろといま問題があるわけですけれども、それらの問題を解消できるように努力を進めているというふうに、先ほど午前中の大原議員の質疑のときにおっしゃっていらしたと思うのですけれども一つ私が気になりますことは、日本の国の年金制度というのが給付水準において諸外国に比べると、国民所得に比例しても大変に少ないという事実がございますね。ちょっと、きょうは時間がありませんので、数字はおわかりになっていらっしゃると思いますので一つ一つは述べませんけれども、諸外国に比べたらば七、八分の一から、ひどいところは十分の一くらいの違いがございます。  それほど少ないということがあるわけなんで、その低いのを何とかして直していかなければならないと思いますが、経済の減速化を理由にして福祉見直し論というものが起こってきて、そして福祉に対する国の姿勢というのが変わってきたように思うわけですね。福祉元年と言われた時代に比べますと、はるかに変わってきたような感じがして、公的年金に関しても拡充限界論というようなものが出てきたのじゃないかというふうな感じがするわけです。そういうようなことが基本にあるからでしょうか、前回の国会でも国民年金法等改正がございましたですね。そのときにも基本的な問題には触れないで、財政的なと申しますか、支給額の増額、スライドした分だけの増額程度の改正にしか終わってないわけですね。  本当にやっていただきたいと思っている基本的な問題、いろいろな問題は、この前の国会年金制度が一応採決されましたときに附帯決議がついていますし、それから社会保障制度審議会からも答申が出ていますし、それから社会保険審議会からも出ていますね。いろいろなところから、いろいろな意見が出ておりますのですから、年金制度長期見通しによる改善を必要とする時期になっていると思うのですね、いま。それなのに具体的な方針というのが示されていない。そのことについて非常にいらいらするわけですね。ことに減速経済関係からというようなことで、先ほどもおっしゃられたように福祉見直し論が出てくるとすれば、せっかく、いきそうになっていたところが、またそこでダウンするというようなことにもなりそうな感じもいたします。そこでそういうようなことをいろいろ踏まえて考えてみると、年金制度についても触れたくないと言って避けて通ってきたと思われる節のある基本的な問題に、ここでどうしてもはっきりと触れていかなければならないし改善していかなければならないということになるわけなんですが、医療制度の場合と同じように、生活を保障する制度の問題について、大臣政策として、御方針として早急にこの問題と取り組んで結論を出すという姿勢にいらっしゃるのかどうですか。その御決意がおありになるのかどうですか、まず承りたいと思います。
  114. 小沢辰男

    小沢国務大臣 簡単に言いますと、おっしゃるとおりの決意を持って、この一年もう十分勉強をして、やがて御審議を煩わしたい、かように考えております。  私の考え方を若干申し上げますと、標準的な期間の年金の方々はともかくとして、まず、その方々については、年金懇でも問題が出ておりますように給付水準の統一をやるとか、あるいは格差を是正するとか、あるいは将来、年数だけで考えていきますと非常に大きなものになってまいりますから、その場合の負担をどうするのか。その場合に支給開始年齢をどうするのかというような、いろいろな問題があるとは思いますが、経過的な年金の部類の方々、もうかけようにも標準年金までいけない方がいっぱいいらっしゃるわけでございますから、これらの経過年金の方々について一体、所得保障の最低保障額というものはいかにあるべきかということを考えて、そしてその負担を一体どこでどういうふうに求めていくべきか、これらを考えて、そういう方々も、ただ年金の期間に入れないからといって放置しておくわけにいきませんから、これはもう当然、一定の所得保障の見地から見た水準の確保はしてやらなければいかぬだろうと思うのです。その場合に一体どこで、どういう負担の問題を考えたらいいのか、これらを含めて根本的にひとつ検討をいたしまして、国民のための所得保障制度を確立していきたいという考えでございます。
  115. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いまのお考えはわかりましたけれども考えを進めていらっしゃる段階で御注文しておきたいことが一つあるわけです。それは医療制度の方の場合でも、明らかにされているわけじゃありませんが、それらしき取り扱いをしていこうとしていらっしゃるみたいにうかがえるものがある。それは総報酬制度です。ボーナスから保険料を取ろうなんというのもその一つじゃないかと思うのですけれども、そういうような取り扱いを医療制度の方ではし始めていらっしゃるのですが、そのようなことが年金考える場合でもあってはならない。そういうふうなことはお考えにならないでやってほしいというふうに思うことが一つです。  それから、いま一つは先ほどから大臣所得保障所得保障とおっしゃっておられます。私は、はっきりわからせていただきたいのは、年金というものについては、国ではこれは所得保障だというふうに定義づけしていらっしゃるのか、生活保障考えていらっしゃるかという点を教えていただきたい。
  116. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これは所得保障考え方でおるわけでございます。
  117. 木暮保成

    木暮政府委員 総報酬制の問題でございますが、昨年の暮れに二年間の成果を発表していただきました中間意見では、まだ、そこまで掘り下げるに至っておりません。また将来の厚年制度のあり方を厚年部会で御検討いただくことになっておりますが、これからの問題だというふうに考えております。  現在考えておりますことを申し上げますと、総報酬制ということにいたしますれば、医療保険の場合と同じように能力に応じた負担という面ではプラスが出てこようと思いますし、またボーナス等が実際には生活費に繰り込まれている場合が多いということを考えますと、それも給付に反映するということをするのが必要かとも思うわけでございますが、一方またボーナス等で景気に対する変動の対応をしておるということもあろうかと思いますので、そういうことになりますと、景気の変動で年金財政長期見通しがかなり左右されるというデメリットも出てこようかと思うわけでございます。また、現在の標準報酬制を総報酬制に変えますときに、いままでの方と、これから総報酬制にした場合の方との年金額の調整をどうするか、これは技術的に非常にむずかしい問題がございまして、今後研究をしてまいりたいというふうに思っております。
  118. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは、そのことは、そのようにぜひ進めていただきたいと思いますが、改正法案の中身に入っていきます。  この前の改正法案は本当に目新しいものはなかったのですね。さっき申し上げたように金額の引き上げだけだったと思いますが、今度の改正案の中には二点だけ、考えたなと思うことがあるわけです。その一つが、話の中心になっております無年金者に対する対策、それからいま一つは、前回の改正のときには据え置きにされていた児童手当が、今度は全員じゃありませんけれども、区分されて一部分、改善されたということが言えますね。私は、この二つだけが今回の改正では、まあ前回よりもよかったというふうに率直に思うわけなんです。  それで無年金者の対策の問題ですけれども、これはけさ大原議員との質疑でもって、かなり詳細にお話がございましたので、私はこれに時間をかけてというふうに思いませんけれども、ただ、これは大変結構だと思ったのですけれども、非常に心配している点があるわけです。その一つは、五十三年の七月から向こう二年間という期間が設けられて、その間にやりなさい、やりなさい、こういうことになるわけなんですけれども、そのおやりなさい、おやりなさいという勧め方がどうも不徹底だということなんですよ。  これはけさも出ていましたけれども、前回のときに、あれほどやって、二回やりましたでしょう。二回やって、なおかつ外れている人がいたわけですね。これは故意に外れた人があれば、それはまた別でございますけれども、そうでなくて、その後で、ああそれ、わからなかった、こういうようなのがやはりあったわけですよ。だから私は、そういう意味で、今度三度目で、これが仏の顔も三度だとだれかがおっしゃったのですけれども、確かに、これが最後だということになりますと、乗りおくれては大変だというふうにどうしても思うわけですね。そういうことを考えますと、どういうふうに具体的に、これを本当にみんなにわかるようにPRさせようと思っていらっしゃるかということなんです。従来の方法じゃ本当に徹底しません。何か新しい方策ありますか。
  119. 大和田潔

    ○大和田政府委員 お答えいたします。  新しい方策と言われましても、ちょっと困るのでございますけれども、何といいましても、やはりこういう制度ができたということを周知徹底させる。そのために、まず一般的な広報これはやらなければいかぬ。これは新聞、ラジオ、テレビ等、そういう報道機関を通じまして特例納付の制度の内容を知らせる。これは当然のことでございますが、さらに個々に具体的な周知というものがどうしても必要になる。  この周知の方法といたしましても、御承知のように無年金者の対象といたしましては、被保険者であって保険料を納付してない。そのために保険料納付期間が足らなくなっている、こういう人たち。さらに適用漏れという人たち。こういうグループがあるわけでございますが、それぞれ、どういう方法でやるかというのは非常に頭が痛いのでございますけれども、たとえば前段の保険料を納付してないという人たちに対しましては、納付記録等から保険料の納付書、督励書といったようなものを出しまして個々に御通知を申し上げるだけでなくて、個別徴収あるいは集合徴収といったようなやり方があるわけでございます。これはもうあちこちでやっておるところでございますけれども、そういった保険料の徴収の仕方というものを進めまして、そこで積極的な納付勧奨を行っていくということが一つあるわけでございます。それは一生懸命やっていく。  もう一つのいわゆる適用漏れ者、これに対してどうするかという問題があるわけでございますが、この適用漏れ者に対しましても、これが実はなかなか把握しにくい対象でございますけれども、市町村の公簿であるとか国民健康保険の台帳であるとかいったようなところから、何としても把握をしていかなければならぬし、できるだけ把握をさせるように、わが方といたしましては指導し努力をいたします。その把握をされました個々の対象に対しまして、はがき等によりまして、やはり個別的な勧奨をする。あなたの場合は特例納付をしなければ年金がもらえなくなるということを具体的に、個別的に勧奨していくということが必要であろうかと思います。それから適用漏れにつきましては、たとえば現在国民年金制度でつくっております民間地区組織であるとか、あるいは国民年金委員、こういう制度がございますが、こういう人たちを通じまして個々に働きかけるといったような努力を進めてまいりたい、かように思っております。
  120. 金子みつ

    ○金子(み)委員 衆知を集めて、知恵をしぼってやっていただきたいと思うのです。  それに一つ、つけ加えてお願いしておきたいのは、せっかく相談に行っても窓口が大変不親切なんです。新聞に出ますから、それを見てください、こういう言い方をするわけです。この間一人あったのです。ことしの七月から新しくなります。変わります。また機会ができますから、それでわかります。そこでいたしますと言う。どういうふうになるのでしょうかと聞いても、いやそれは新聞に出ますから、新聞を見てください、こういう言い方なんですね。これは一つの例ですけれども、そういう役所があったのです。ですから、そういうことも頭に置いて、何もわからない人に言ってあげるわけですから、それをはっきり前段に構えて、そして本当に温かい気持ちで親切に、特例をするのだから、みんなが救われるようにという気持ちをあらわしながら検討を進めていただきたいと思います。  もう一つ関連してお尋ねしたいのは、三十六年に出発してから今日まで、いろいろな事情があったかと思いますけれども一遍も保険料を納付しなかった人がいるかもしれません。そういう人がありました場合に、そういう人たちが、もし、この七月から先にこの特例法に乗せてやります場合には何年分さかのぼって納めればいいのですか。そして、それは幾らになるでしょう。
  121. 木暮保成

    木暮政府委員 いま先生がおっしゃられた極端な場合には十一年分になると思います。
  122. 金子みつ

    ○金子(み)委員 年限としては十六年あるわけですよね。三十六年から五十二年まで十六年あるけれども、十一年分でまけておく、こういうことになるわけですね、言葉はおかしいですけれども。それは金額にして幾らになるでしょう。
  123. 木暮保成

    木暮政府委員 制度ができましてから十六年になるわけでございますが、年齢に応じまして二十五年の短縮がございます。したがいまして、一番長い方でも十一年で結びつくというふうに思っておるわけでございます。その際の金額は、五十二万八千円というふうになろうかと思います。
  124. 金子みつ

    ○金子(み)委員 大変な金額ですね。けさも、この話が出ていました。私もそう思って伺っていたのです。私はあるところで、こういうふうなことを読んだのです。今度の分が一カ月四千円でしょう。大変高いですね。現在、二千七百三十円ですか、だから、それに比べたらはるかに高い。倍近く高いわけですが、なぜ、こんなに高くしたのかということについて厚生省側のお考えとしては、ちゃんと納めていなければ損をしますよ、特例納付で納めると損をしますよというような気持ちで、ここは高くなっているのだというふうなお考えがあるように私は伺っているのですけれども、そんなことはあるのですか。これはけさから問題になっていたペナルティーの精神なんですけれどもね。
  125. 木暮保成

    木暮政府委員 今度、無年金者対策としまして三回目の特例納付をやろうということに決めたわけでございます。過去二回やりました特例納付を三たび繰り返しますと、特例納付ということが一定の期間を置いて繰り返される。したがって、若いときから苦しい中を保険料を納めなくても高齢者になってから直近の特例納付に乗っかればいいんだということになりますと、厚生年金の場合には事業主に保険料を納入する義務がございますので保険料徴収上の問題はないのでございますけれども国民年金の場合には、よその国に全く類例のない二千五百万人の方々の自主的な保険料納付ということで制度を運んでおりますので、もう特例納付に乗ればいいんだということになりますと制度が成り行かないということで、できれば、ほかの制度考えたかったわけでございます。しかし、いろいろな考え方、それぞれ難点がございまして、特例納付という形で三たびやるということになったわけでございます。  これは国民年金審議会等の御議論の際も、やはりペナルティーという感じが出るやり方をしないと一般の保険料納付者に対する影響が悪いぞという御意見もありましたし、また現実に私どもも、二千五百万人の被保険者の自主的な納付意欲に支障を来さないためには罰則的なことを考えなければいけないんじゃないかということを検討したことも事実でございます。しかし結果的には、やはり三回目の特例納付をやる場合には罰則的なことは考えずに、制度の正常な運営が維持できるということだけを担保したやり方にしようというふうに考えたわけでございます。  それにつきましては、一般の方々が納めます保険料と比べまして、それを下回るというようなことがございますと悪い影響が出てくるということで、一般の方々が納めます保険料を下回らない額ということで四千円ということを考えた次第でございます。昭和五十五年度保険料三千六百五十円に昭和五十四年度のスライドアップ率を掛けたものというふうに考えておるわけでございます。したがいまして昭和五十六年の保険料が四千円近いものになるということが見込まれますので、四千円ということでお願いをしておるわけでございまして、罰則的なことは、経過的には考えましたけれども、御提案申し上げた案には考えていないわけでございます。
  126. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いまのお話ですけれども、これは昭和五十三年の七月から二年間ですから、最後は五十五年になりますね。そうですね。そうすると、いまの御説明ですと、五十四年の保険料が四千円近くになるというふうにおっしゃいましたね。ですから、そこら辺ちょっとあれに差が出てくるのじゃないですか。それよりも下回らないようにするんだというふうにおっしゃっていたと伺いましたけれども
  127. 木暮保成

    木暮政府委員 ちょっと申し上げ方がはっきりしていなかったかもしれませんけれども、今度の特例納付は昭和五十五年度までかかるわけでございます。昭和五十五年度保険料でございますが、三千六百五十円に昭和五十四年度にスライドが実施されたときには、その率を掛けるということで法案をお願いしておりますので、四千円近い金額になるのではないかというふうに考えておりますので、四千円でお願いをしたということでございます。
  128. 金子みつ

    ○金子(み)委員 余り時間をかけたくないのですけれども一つだけ。これはさかのぼりますね。さかのぼるということについて特別な取り扱いをしていらっしゃるのと違いますか。過去二年分、それがありますでしょう。
  129. 木暮保成

    木暮政府委員 保険料を滞納しております場合でも二年間は時効になりませんので、さかのぼってかけられるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げました特例納付の期間は最長十一年でございますが、その十一年というのには、これから納められる保険料が二年分あるわけでございます。それが昭和五十二年度でございますれば二千二百円で納められる、そういう措置を講じていただいて、いわば、さらに十一年の特例納付をしていただく、そういうことでございます。
  130. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そこはダブることになりますね。
  131. 木暮保成

    木暮政府委員 期間的にはダブりませんで、直近の二年間は二千二百円なら二千二百円を納めていただく、その先は四千円を納めていただく、こういうことになるわけでございます。
  132. 金子みつ

    ○金子(み)委員 直近の二年間は十一年の中に入るでしょう。
  133. 木暮保成

    木暮政府委員 それは入りません。ですから、特例納付十一年と、それからまだ時効の成立していない二年、あわせて十三年分ということになるわけでございます。
  134. 金子みつ

    ○金子(み)委員 わかりました。十一年だ、十一年だとおっしゃるから全部で十一年だと思ったら、直近の二年は入っていないのだというお話ですから、結局十三年分ですね。
  135. 木暮保成

    木暮政府委員 特例納付は十一年で、普通の形で納めてもらうのは二年ということでございます。
  136. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そのことはわかりました。しかし、いずれにしても高いですね。ペナルティー精神はないとおっしゃっていますけれども、特例でやったら損しますよ、というふうに言っておられるところを見ると、やはり、そういう気分が入ってないとは言えないのですが、これは平行線になりますから、もう触れないことにします。先へ行きたいと思います。  その先の問題は、大変長い間、問題になっていて、なかなか解決を見ないものに婦人の年金権の問題があるのですね。これが本当にむずかしいというふうに言われておりまして、いつまでたっても具体的に進められていかないわけです。この問題についても、前回の国会で附帯決議がついておりますし、それから社会保険審議会からも社会保障制度審議会からも出ているわけですね。みんなこれについては基本的な問題に触れてないものですから、いつまでたっても解決がつかない。今回の改正の中にも解決のきざしが見えないのは大変残念だと思うのです。  それで私は、一つ非常に心配だと気になることを読みましたのですけれども、それは五十二年度予算要求のときに厚生省は、遺族年金の比率を七〇%で予算要求なさったですね。——五十一年ですか、そうするとまた一年長くなっちゃったわけですが、そのときに七〇%が取れなくて、そのかわりに寡婦加算というものが新しく誕生したわけですね。この寡婦加算というのは、実にごまかしにすぎないのでして、本当に何と言っていいかわからない、こんなものつけてくれてというような感じがします。というのは、寡婦加算がついたばかりに、今度また新しい年度に新しい予算要求をするときに非常にやりにくくなっているわけですね。それで寡婦加算の方に足を引っ張られているわけですよ。基本的な率を引き上げようと思っても、寡婦加算なんて変なものをつけられてしまったばっかりに非常にやりにくいと私も思いますし、厚生省の方も、そうおっしゃっているということを聞いているわけです。  せめて寡婦加算をぐっと大きく引き上げるとかするなら、まだ話はわかりますけれども、寡婦加算を大きくすると、今度いよいよ本来的な、本格的な、基本的な比率を上げようと思うときに、これが邪魔になる、こういうことになるわけでしょう。ですから、変なものをもらったと思っているのですけれども、これはいまさらどうにもならないものなのか。あるいは寡婦加算というこぶみたいなものをくっつけて歩いて、婦人の年金制度を確立するために非常に邪魔だと思うのですけれども、これは思い切って切り捨てて、そして本来的な比率を高める、水準を高めるということを思い切ってなさる決意がおありになるかどうか。  ことしも、とうとう寡婦加算の引き上げだけですね。少しばかり上がりました。こんなわずかな引き上げ方はないですよ。千円ですか上げているだけでしょう。そんなものを上げても余り意味がない。考え方として基本的におかしいと思います。そこら辺はどういうふうに考えていらっしゃるのか、教えてください。
  137. 木暮保成

    木暮政府委員 婦人の年金権につきましては、昨年も先生からいろいろ御指摘をいただきまして、私どもも婦人の年金権を充実することは大切な問題だというふうにお答えをいたしたわけでございます。そのときに、ちょうど基本懇で検討していただいておりましたので、この婦人の年金権につきましても十分検討していただくということをお約束したと思うのでございます。  今度、暮れに出ました中間報告でございますが、婦人の年金権に非常に大幅にページが割かれておるわけでございます。それで中間意見でもごらんいただけますように、いろいろ基本年金とか財政調整とか、むずかしい問題があるけれども、それができるまで待つということではなくやるべき事柄の一つとして、婦人の年金権の問題を上げてあるわけでございます。それで、この中間意見を見ますと、いまの寡婦加算というようなやり方ではなくて本来的な遺族年金の引き上げをすべきではないかという方向の御意見をいただいておるわけでございます。  ただ、それには前提条件が非常に多うございまして、中間意見指摘されておりますのは、一つは、個人が年金を受給する場合と夫婦が受給する場合のけじめをつけなさいということがございます。いわゆる五割の遺族年金考え方でございますが、これはたとえば十万円ということにしますと夫は五万円、妻は五万円。夫が死ねば五万円、こういう考え方に立っているのだろうと思います。しかし、夫が死んだからといって、家賃が半分になるとかあるいは電灯代が半分になるとかいうことではございませんで、世帯共通経費というものがあるわけでございます。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 仮に、十万円のうち四万円が頭数に関係のない費用で、三万円が夫、三万円が妻ということであれば、夫が死んだ場合にも共通経費の四万円と、それから妻の三万円、合わせて七万円の遺族年金であるべきだ、これが七割給付考え方だろうと思います。そういうことだと考えますれば、単身の被保険者が老齢年金をもらう場合にも七割でいいということになるわけでございまして、単身者が受給する場合と、それから夫婦で受給する場合のけじめをつけなさい。外国でもそういうことになっておるわけであります。  それから、もう一つの問題としましては、日本の遺族年金は、ある意味では条件が非常に緩うございまして、夫の死んだ場合に被保険者期間が条件としてはほとんどない。あるいは、その婚姻期間の条件もないという形になっておるわけでございまして、子供のない若い未亡人の場合には、新しい出発のための給付金みたいなものを考えて、年金は出さなくてもいいんじゃないか。そのかわり、老齢とか子供の多い方の場合には七割にするというようなことを考えるべきではないかという提言をしていただいているわけでございます。  それからもう一つ、かなりやっかいな問題としましては、国民年金に被用者の妻が任意加入をいたしておるわけでございますが、現在の年金水準の場合には、そういう形で年金の全体の額を大きくするというような効果があろうかと思いますけれども、先々を考えますと、国民負担も二重でございますし、それから給付も二重の面が出てまいりますし、それから国庫負担にも二重の面が出てくるということでございますので、任意の妻の加入の問題にも結論を出すべきだということを言われておるわけでございます。そういうことにつきまして、基本懇自体がさらに詰めて結論を出していただけるというところまで来ておるわけでございます。
  138. 金子みつ

    ○金子(み)委員 いまの御説明で、こういう意見があるというふうにおっしゃっていたわけなんですが、そういうふうないろいろな考えが進められていて、それを土台にして厚生省が方針をお決めになるのだと思うのですけれども、それをお決めになるのには、まだ十分ではない、こういうふうにお考えなんでしょうか。
  139. 木暮保成

    木暮政府委員 ただいま申し上げました三つの問題点一つ一つむずかしい問題でございますし、また、共済とか、ほかの制度も歩調を合わせていただかなければならない問題もございますので、基本懇自体に詰めていただくと同時に、私ども検討し、また必要があれば関係各省とも詰めなければならないということで、まだ若干の時日をいただかなければならないと思っております。
  140. 金子みつ

    ○金子(み)委員 一つ教えてください。  基本懇で一つ意見がまとまったとしますね。そうしたら、それは厚生大臣へ真っすぐ答申してくるわけですね。これは厚生大臣の私的諮問機関、こういうふうに理解してよろしいですね。
  141. 木暮保成

    木暮政府委員 そのとおりでございます。
  142. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そうすると、その基本懇の意見を受けて、厚生大臣一つの試案をお考えになって、それをさらに諮問機関におかけになる、こういうことになるわけですね、手続としては。
  143. 木暮保成

    木暮政府委員 そういうことになろうかと思います。中間報告を受けまして厚生省案を決める。その際には関係各省との協議も要るわけでございますが、政府案が固まった段階で社会保険審議会なり制度審議会なりに御諮問申し上げるという段取りになっております。
  144. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そうすると中間報告、中間意見というのは出たわけですね。そうすると中間意見をもって厚生省は、これから諮問の内容をおつくりになるわけですか。
  145. 木暮保成

    木暮政府委員 中間意見を出していただいたわけでございますが、懇談会自身さらに詰めてくださるということになっておるわけでございます。非常にむずかしい問題が多うございますので、懇談会を煩わして私どもも一緒に勉強していきたい、こういうふうに思っております。
  146. 金子みつ

    ○金子(み)委員 そうすると時間的な問題があると思うのですけれども、一番初めにも大臣に申し上げましたように、この年金制度の抜本的な改正というのは一体いつをめどに計画を進めていらっしゃるのでしょうか。
  147. 小沢辰男

    小沢国務大臣 めどは来年のいまごろと考えております。一年くらい、ということは五十三年度中には何とか方向を求めていきたいと。
  148. 金子みつ

    ○金子(み)委員 一年でできれば非常に結構だと思いますね。本当に一年でやっていただきたいと思います。医療制度の方も一年、五十四年ですから来年のいまごろ、こういうことになるわけですね。ですから両方がそろえば、それは非常に結構なことだと思うのです。大変いろいろふくそうしているから時間がかかるかもしれないということもありますが、しかし、できるだけ鋭意御努力いただいて、来年のいまごろの時点で抜本的な制度が出るようにぜひお願いしたいと思います。  それから、その次に児童手当制度関係を少しお尋ねしたいと思います。  まず最初にお尋ねしたいのは、児童手当制度の調査を五十一年でしたかになさいましたね。それで、この児童手当制度の調査が行われるということを知りましたときに、非常に心配した人たちがたくさんいたのです。なぜかと申しますと、この調査をなさるという目的が、児童手当制度は要らない方向へ持っていこう、そのための材料をつくりたいというような気持ちで調査をしておられるのだというようなことを、どこからか漏れ聞いてきているわけですね。それで非常に心配した人たちがおりました。  そのことはともかくといたしまして、私がいまお尋ねしたいのは、この調査をなさろうとなさったその目的、それをまず伺いたいのが一つと、それから、その調査の結果、いろいろの結果が出たと思いますが、その結果をどのように政策として取り込んでいらしたかということ、そして今度の改正に、どの部分に、それがあらわれているのか、こういうことが知りたいのですが。
  149. 石野清治

    ○石野政府委員 第一の調査の目的でございますけれども、これはたしか金子委員の御質問に答えて私も申し上げたと思いますけれども、当時、児童手当制度に関しましては拡大論、廃止論、もろもろの意見がございました。その中で、四十九年度には児童手当制度というのが一応第三子からの問題について完全実施になったわけでございます。その時点において、もろもろの意見がありまして、これを今後どうするかということで実は大変苦慮いたしました。私どもは、あくまでもこの児童手当制度というのは大変必要な制度でございますし、何とか、これを拡大していきたい、こういう強い願いがございました。そういう願いをもとにいたしましても、一体、有識者なり、あるいは一般国民はどう考えておるのだろうかということを、事実としてはっきりとつかんで、その方向考えるべきだ、こういうことで実は実施いたしたわけでございます。したがいまして、廃止を目的とするとか、あるいは縮小を目的として調査を行ったものでないことは、これは事実でございます。  それから第二点の調査の結果でございますけれども、これは御案内のとおり、いろいろな意見がございました。児童手当制度そのものにつきまして、これは制度として必要だ、こういうふうに答えた者が、有識者とか一般世帯によって違いますけれども大体半数程度。それから児童手当の支給よりも、むしろ環境の整備をした方がいいじゃないか、こういう御意見が特に有識者の場合は四二%と非常に高い数字が出たわけでございます。それから同時に、児童手当制度のあり方そのものにつきましても、一般的に一子、二子拡大ということを考えて、多子世帯に関係なしにやれ、こういう御意見もありましたけれども、非常に数が少のうございました。大半の人たちは世帯の低所得階層にむしろ手厚く支給すべきではないか、こういう方が多子世帯あるいはそうでない世帯も含めまして六八・八%でございましたか、そういう数字が出てまいりました。それから所得制限等につきましても、現状凍結と申しますか現状程度でいいという意見もかなり多うございました。  そういうもろもろの御意見がございましたので、私どもは特に今後の児童手当制度をどう考えるかにつきまして、この結果をもとにいたしまして中央児童福祉審議会の児童手当部会に、その考え方を御依頼申し上げたわけでございます。そこでもいろいろな御意見がございました。ございましたけれども、集約的に申しますと、一応国民考え方というのは、ある程度わかっておりますように、児童手当制度につきまして低所得者層に対してはむしろ手厚くすべきだという意見が圧倒的でございましたし、その手当額につきましては、いまの五千円では低いではないかということで、今度の法案の中にも特に市町村民税の非課税世帯につきまして五千円から六千円に引き上げる、こういうことをいたしましたし、それからなお所得制限につきましては、意識調査の結果におきましても現状凍結あるいは厳しくした方がいいという意見もかなりございましたので、一応所得制限につきましては据え置くという考え方をとりまして法案を提出いたしました。それから三番目の環境を整備した方がいいというのも、かなり五〇%近い数字でございましたので、この際、児童手当制度の現金給付をより効率的にするために、児童手当制度独自の立場から児童の健全育成施策を行います福祉施設を創設する、こういう考え方で実は整理いたしたわけであります。このように一連の措置によりまして児童手当制度というのはより合理的な、所得保障をより重視した機能、そういうものになったのではないか、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。
  150. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それに関連してなんですけれども、私はこういう問題に参加するようになってから五、六年になるわけですけれども、その最初のときから毎回申し続けてきて、同じことを言っているのですが、いつも同じ返事をいただいて一つ改正にならないという問題が一つあります。それは何かと申しましたら、日本の児童手当制度は確かに出発が遅うございました。最後にできた制度だということもございますから、まだまだ未熟だ、未発達だと考えていいのかもしれません。そうかもしれませんけれども、とにかく諸外国と比べてみると、どうしてもいかにも見劣りがして、これでは困るじゃないかというふうに考えられるものがありますが、それは手当を受ける子供を第三子以降にしているというところなんです。  これは本当に毎回言い続けてきていることなんですけれども、第三子以降と言えば、いわゆる多子家庭ですね。戦時中はともかくも今日は、第四子以下第五子というふうにたくさん持っていらっしゃる家庭というのは非常に少ないですね。細かい数字は別といたしましても、全世帯の一割ないわけでしょう。ですから、そういうわずかな世帯の人たちだけしか恩恵をこうむっていない。ほかの世帯は、そういう恩恵をこうむっていないから、児童手当制度に対しては余り関心がないということになるのじゃないかというふうにも思います。自分たちには関係がないということになっていますから。しかし、これは正しいことではないのであって、諸外国は、もうそちらで十分御存じだと思いますので細かく申し上げませんけれども、第一子、第二子、第三子の最初の子供から手当の対象になっているわけですね。そして国によっては青年手当、十六歳から二十歳までの子供も対象になっているところもございますね。日本の場合には、児童福祉法に基づけば子供は十八歳まで子供になりますね。そうすると十八歳まで、すなわち高校ですね、高校卒業までになりますけれども、そこまで対象にしていいはずだと思いますが、今日では、いまやっと中卒までいったところですね。これも出発が遅かったのだから逐次改善していくということで、やむを得ないというふうに考えるということもできるわけです。そうであれば、これをさらに延ばして高卒まで持っていこうとしていらっしゃるのかどうかということが一つあります。  それからいま一つは、一子、二子も当然の対象になるべきであるし、ILOの百二号条約でも、これはうたわれておりますことですし、勧告もございますししますから、当然日本としては諸外国と同じレベルに、あるいは、それ以上にいっているというふうに自負している日本であるとすれば、社会保障の実態がはるかに立ちおくれているという事実もございますから、この際、この児童手当制度については従来から申しておりますように対象を拡大するということが考えられないかということが質問になります。  老人人口が非常にふえて、老人に対するいろいろな手当だとか保障だとかいうものがふえていって、財源的に大変だということがあるかもしれません。逆に、子供の人口は非常に少ないし減っていっていますね。ですから、これは相殺できるような感じがするわけです。ですから総体的に考えれば余り変わらないというふうに思いますので、こういうことをひどく気にしたり、考慮に入れたりして、それが理由にならないで、方針としてどのように進めようとしていらっしゃるのか、簡単に御方針を一言お聞かせ願いたいと思います。
  151. 石野清治

    ○石野政府委員 確かに諸外国の制度に比べまして、一番おくれた制度であることは事実でございます。ただ、いろいろ諸外国と単純に比較するというのはどうかという問題もございます。これは外におきまして、現在、第三子に限っておりますのは、御存じのとおり児童の養育費の家計に占めます負担率と申しますか、その比率が三人の場合と二人の場合、一人の場合、全然違うわけでございます。そういうことに着目しまして三子からやっているわけでございますけれども、これをさらに二子なり一子まで広げろという御意見も、確かに貴重な御意見ではございますけれども、やはり国民的なコンセンサスを得られませんと、なかなか本問題というのは解決できない問題でございます。それからまた、一方、税の問題とか、あるいは賃金制度の家族手当との調整の問題、そういうもろもろを全部解決してまいりませんと、なかなか児童手当制度を拡大するということはむずかしいのじゃないかというような感じがいたしております。  それから、現在の三子の義務教育終了前というものを、さらに十八歳までにという御意見でございますけれども、現在の三子以降という形でやっておりますと、上が十八歳未満であって、しかも三子が義務教育終了前、こうなっているわけでございます。したがいまして、技術的にも第三子をさらに十八歳未満というふうに見ますと、上は二十歳にしなければならないという問題もございます。それは児童福祉法の現在の十八歳という一つの区切りがございまして、それとのバランスをどうするかということもございます。  したがいまして、私どものいま一番基本的な考え方は、もろもろの国民的な御意見もございますので、それらを踏まえて、最も合理的な、日本の事情に合った児童手当制度というのは一体どうあるべきかということを慎重に検討しなければいかぬのじゃないかということで、実は中央児童福祉審議会にいま御諮問申し上げて、御検討願っているわけでございます。その中で、いろいろな御意見が出てまいると思いますので、その御意見を踏まえて今後の制度についての推進を図ってまいりたい、このように考えております。
  152. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ぜひ、それを進めていただきたいと思いますが、やはりそれも来年のいまごろまでにできるのですか。
  153. 石野清治

    ○石野政府委員 これは先ほどの年金と違いまして、そう簡単に結論が出る問題ではない。やはり私どもの気持ちと、それから一般国民のコンセンサスというものがございますし、それから、そういうものを仮に案として出した場合に、それはみんなが、なるほどいい案だという形で進めていかなければなりませんので、費用負担の問題も絡んでまいります。そういうもろもろのことを考えますと、来年いまごろまでということはなかなかお約束できない、こういうふうに考えております。
  154. 金子みつ

    ○金子(み)委員 できるだけ早く結論を出していただくようにお願いいたします。  最後になりましたけれども年金に税金がかかるという問題なんです。これはきょう大蔵省の方も来ていただいておりますので、大蔵省の方の御意見も伺いたいと思いますが、厚生省でもどういうふうに考えていらっしゃるのかという、両方の御意見を承りたいと思うわけです。  年金に税金がかかることを知らなかったという人がずいぶんあるものですね。案外多いのです。年金にまで税金を取られるのですかといって非常にびっくりして、そうして、がっかりする人たちが大分あるわけなんですけれども年金に税金がかかるという問題について、これは所得保障だから当然なんだという理屈があるのだろうと思うのです。これは素人でも、そのくらいのことは見当がつくわけなんですけれども、そうしますと課税対象がすべての年金にはついていないのですね。遺族年金や障害年金には税金がかかってないわけですね。厚生年金あるいは船員保険国民年金等の老齢年金と通算年金だけに税金はかかっているわけですね。そこら辺がどうも私たちにはわからない。するなら、みんなにすればいいし、しないなら、みんなしなければ公平でいいのじゃないか。そこの区別をされておられるという理由をまず伺いたいと思いますこと。  いま一つは、もしそうだとすれば、年金の中に最低保障額だとか定額部分だとかというのがあるのは、やはり所得の考え方からいうと少しおかしいのじゃないかしらというふうにも考えられますし、それから今度は逆に、年金給付のあり方が、細かい数字は別といたしまして、一口にして言えば、上には手薄く、下には手厚く、そういうふうな扱い方をしているということは、社会保障的な考え方が中にあるからじゃないかしら、含まれているからじゃないかしらというふうに考えられるわけですね。そうだとすると、税金を課するということは、やはり何となくおかしいというふうな感じがするわけです。このバランスのとれていない税金のかけ方というものについて、両方の省の御意見をまず伺わせていただきたい。
  155. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 お答え申し上げます。  まず、最初の年金の課税の方針でございますが、公的年金の一般年金につきまして課税しておりますのは、先生指摘のとおり、所得保障と申しますか、給料の後払い的な性格であるというところに着目してでございます。それから遺族年金、障害年金等が非課税とされておりますのは、これは負担力の弱い方々に対する税制上の特別の配慮ということで非課税としておるわけでございまして、諸外国で、こういったものを非課税としている例は少なく、むしろ日本の場合は、かなりこれらの点を配慮した税制ではないかというような学者の御意見もございます。  それから第二の点の、最低年金と、それから私どもの課税の基準でございます課税最低限、そこまでの所得は課税しない、そこから上は課税するという一つ水準がございますが、この課税最低限は、税の上で考えた必要最低限の生活費であろうという物差しでございまして、私どもの方では、この課税最低限を使って、そこから下は非課税、そこから上は課税という考え方をとっております。
  156. 木暮保成

    木暮政府委員 年金についての課税の問題でございますが、これにつきましては社会労働委員会で、非課税にするようにという決議を毎年いただいておるわけでございます。  いま大蔵省から説明がございましたように日本の税制では、老齢年金はかなりの配慮をされておるわけでございますし、また現実には社長のような方に差し上げる在老年金もあって、総合課税ということもやむを得ない場合もあろうかと思うわけでございますが、附帯決議の御趣旨に沿いまして、ただいまございます老齢者の年金に対する控除額、これを社会情勢に合わせて引き上げていくということに重点的に取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。
  157. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それでは、私ども年金に課税するということについては納得できないわけなんですけれども、きょうは時間がありませんので、ここで議論はできないのですが、こういうことは考えられないのでしょうか。いろいろなものに控除がありますね。年金の税の場合でも、いまの年金に課税するということを外すことがどうしてもできないのならば、実質的に非課税と同じような結果が得られるような控除を考えるということは考えられませんか。
  158. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 現に私どもの税制では、そのような仕組を持っているわけでございまして、先ほど申し上げましたように、一般の年金は給与の後払いであるということから税法では給与所得として扱っておりまして、まず給与所得控除が最低保障五十万円から働くわけでございます。それから老齢者につきましては、年金生活者の負担力という点を考えまして、六十五歳以上の方には老齢者年金特別控除といたしまして七十八万円の控除をお認めしているというのが私どもの配慮でございます。
  159. 金子みつ

    ○金子(み)委員 関連して、いまの金額はわかりましたけれども、もし、それが課税だったら税金として計算すれば幾らになりますか。
  160. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 その分が幾らになるか、ちょっと計算はすぐできませんので、どこまで課税されないかという数字を申し上げたいと思いますが、老人の夫婦お二人の方で、その方が六十五歳以上という例をとりますと、現行税制では二百十九万四千円まで非課税でございます。
  161. 金子みつ

    ○金子(み)委員 ここまでは非課税になるということはわかりましたが、それ以上の人は課税されるわけでしょう。その場合に、先ほどの七十八万円控除しているのは年間一千万円以下の人ですね。そうすると、年間一千万円以下の人が七十八万円の控除になりますが、いまのお話の二百十九万四千円ですね、課税対象から外れる人は。一千万円と大分開きがありますね。そうすると、これ以上の人は税金がかけられることになりますでしょう。その場合それは幾らになるのですか。
  162. 矢澤富太郎

    ○矢澤説明員 ただいまの七十八万円と申しますのは、一千万円以下の方に認める控除でございまして、所得が一千万円以上の方は、もはや担税力が弱いとは考えられませんので、こういった特別控除は認めないという趣旨でございます。
  163. 金子みつ

    ○金子(み)委員 それはわかっているんですよ。先ほどあなたが二百十九万四千円までの所得の人は課税しない、こうおっしゃいました。ですから二百十九万以上の人には課税するわけですね。だから二百十九万以上の人が課税される場合の、たとえば一千万円までの間があるでしょう。そこで課税されますから、それは幾らになるのですかと伺ったのです。
  164. 木暮保成

    木暮政府委員 いま公的年金、非常に充実してまいりましたけれども厚生年金で申し上げますとモデル年金が大体十万円でございます。年額百二十万円でございますので、年金だけの所得の方には六十五歳以上の場合にはかからないというようなことになっておるわけでございまして、そういう意味では十分な配慮をされておるのではないか。しかし、今後とも年金の充実を図っていくわけでございまして、それに応じた税制の改善につきましては、また大蔵省と十分協議をしていきたい、こういうふうに思っております。
  165. 金子みつ

    ○金子(み)委員 税金のことは大蔵省が所管だと思いますけれども厚生省としては、こういう国民の生活を守るための所得保障を見守っていく、あるいは改善していく立場から、年金に対する課税の措置、細かい幾らまでとかいうのは出てくると思いますけれども、この課税措置について厚生省としては率直にどういうふうに思っていらっしゃるのですか。それはしょうがないわい、大蔵省のやることだからしようがないと思っていらっしゃるか、あるいは厚生省の立場から、これは非課税にするように努力をしようと思っていらっしゃるか、その辺を聞かしていただきたい。
  166. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いま申し上げましたように、二百十九万以上の方は税金を払う、それ以下の方は払わない。したがって年金だけで見ますと、年金生活者でそれだけの収入を得ている人というのはほとんど、いまの平均的な私どもの十万円年金から見ますとありませんので、今日の段階では、そんなにとやかく言うような問題ではないと私どもとして思っております。ただ、月に二十万円なり三十万円の年金時代になってきましたときに、そのときには相当の年数がかかりますから、また課税最低限もどんどん上がっていくことでもありましょうし、税制等もいろいろな見直しもありましょうから、それはそのときの問題だと思いますが、今日の段階で余りそんなに一ただ、年金をもらって、そのほかの収入のある人が合算して二百万以上になると取られるので、そうするとおれの年金まで税金がかかるのか、こういう不満がありますけれども、これはひとつ所得の全体に応じてやはり税金というものを負担をしていく、国のいろいろな社会生活の中で税金を負担するということは、すべての人がやっていかなければならぬことなんですから、これは忍んでいただかなければならぬと思うので、現在のところ、そんなに大きな問題ではないと私は思っております。
  167. 金子みつ

    ○金子(み)委員 もうこれで終わりますが、確かに年金所得保障に違いないとは思いますけれども、働く力がなくなった、稼働力のなくなったお年寄りに対するプレゼントみたいな気持ちで年金が出ているというふうな理解をしておられる学者もいらっしゃるようです。とにかく、いずれにいたしましても稼働能力のなくなったお年寄りの生活を守るための基本的なものでありますから、これに税金がかかるというようなことは、やはり考え方としてはいかにも冷たい、法律一点張りの、所得だから当然だというので押し切っていいのかどうかということは、だれしも疑問を持っていると思うのです。ですから、これはいまお答えいただかなくてもいいのですが、そういうようなこともありますので、これから年金制度考えていらっしゃる上に、そういうことも、税金の問題も含めて一緒に検討していっていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  168. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、古寺宏君。
  169. 古寺宏

    ○古寺委員 きょうは大変お忙しい中をたくさんの説明員の方に御出席をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。  実は、年金積立金の資金運用の問題で簡単に御説明をいただくために、きょうは共済組合の担当の方々にお願いしたわけでございまして、時間の関係もあろうかと存じますので、私、一番最初にこの問題についてお尋ねを申し上げますので、御説明が終わりましたならば、お帰りになって結構でございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  共済組合の資金運用の問題でございますが、私がこれをお尋ねする理由というのは、国民年金あるいは厚生年金共済組合では資金運用の面で非常に違うわけでございまして、その参考にするためにお尋ねをするわけでございますので、ごく簡単に内容について御説明をお願いしたいと思います。それで順次、大蔵省、文部省、農林省、自治省、日本専売公社、日本国有鉄道、日本電信電話公社の順でお願い申し上げたいと思います。
  170. 山崎登

    ○山崎説明員 積立金の運用につきましては、その性格上「安全かつ効率的」な運用をしなければならないということで、この趣旨にのっとりまして、いろいろ危険分散も考慮いたしまして、資金の多角的な運用をしているところでございます。資金の具体的な運用方法でございますけれども一つは福祉につきまして組合員への貸付金、それから資金運用部への預託金、そのほか有価証券等の取得に充てております。また、有価証券の種類といたしましては、私ども国債、地方債、金融債などを購入してやっているわけでございます。
  171. 高野文雄

    ○高野説明員 私立学校教職員共済組合の運用状況について御説明申し上げます。  私立学校共済の場合も国共済等に準じておりますが、いまの財投に対する預託のかわりに、私学共済の場合は日本私学振興財団に対する貸し付けを行うという点が違いまして、その他、組合員への貸し付け、有価証券その他については国家公務員と同様の取り扱いでやっております。
  172. 古寺宏

    ○古寺委員 いま大蔵省の方からお話ございましたが、たとえば組合員への貸付金の利率とか限度額とか、それからあとは資金運用部に対して、どのぐらい回っていくのか、その辺のところをおっしゃっていただきたいのです。
  173. 山崎登

    ○山崎説明員 まず第一点、組合員への貸付金でございますけれども、実は、それぞれの組合で、いろいろと違っているわけでございまして、貸付金の種類も普通貸し付けとか特別貸し付け、あるいは住宅貸し付け、特別住宅貸し付けというものがございまして、それぞれ利率も違っているわけでございます。それから限度につきましても、それぞれ違っております。ただ、住宅貸し付け、あるいは特別住宅貸し付けにつきましては、住宅貸し付けは限度額といたしまして五百万、特別住宅貸し付けにつきましては八百万というふうになっているわけでございます。特に、特別住宅貸し付けにつきましては、二年以内に退職するという条件のもとにやっているわけでございます。  それからもう一点、預託金の問題でございますが、預託金の割合は、前年度積立金総額の三〇%を預託しているわけでございます。
  174. 高野文雄

    ○高野説明員 私学共済の場合は、いまの預託に相当いたします私学振興財団に対する貸し付けの利率は、五十二年度の場合では六・六五%でございます。それから組合員に対する貸し付けは五・八八%でございます。  貸し付けの種類につきましては、国家公務員共済に大体準じた形で、一般貸し付けのほか住宅貸し付け、これは五百万が限度でございますが、貸し付けをいたしております。
  175. 三井嗣郎

    ○三井説明員 積立金の運用につきましては、一つは預貯金、それから銀行、信託会社への金銭信託、国債、地方債、その他有価証券の取得がございまして、その有価証券の取得の一環といたしまして政府保証債の取得がございます。  もう一つお尋ねの組合員への貸し付けでございますが、この点につきましては住宅貸し付け、一般貸し付けなどございまして、住宅貸し付けの場合につきましては、利率は年利五・八%、限度額は五百万円まででございます。一般貸し付けにつきましても五十万円、その他災害貸し付け、育英貸し付けなどがございます。
  176. 桑名靖典

    ○桑名説明員 地方公務員共済組合の資金の運用につきましては、地方公務員共済組合の資金の性格からいたしまして「安全かつ効率的な方法により、」というのは国と同様でございますけれども、「組合員の福祉の増進」と「地方公共団体の行政目的の実現に資するように」という運用を法律で定められているところでございます。したがいまして、資金の運用につきましても主として地方債あるいは公営企業金融公庫債の取得が中心でございます。  そのほか、組合員への福祉の還元という意味で、全体の資金量の六一%までは組合員の福祉への還元を認めておりまして、その主なものは、組合員の福祉のための不動産の取得あるいは宿泊施設への貸付金並びに組合員の必要とする貸付経理への貸し付け等がございます。貸付経理への貸付金につきましては、国家公務員と同様に、住宅貸し付けあるいは普通貸し付け、就学貸し付け等がございますが、住宅貸し付けの限度額は、現在地方公務員の場合には七百万を限度額といたしまして指導いたしております。その貸付利率は五分七厘六毛でございます。
  177. 森宗作

    ○森(宗)説明員 専売公社の共済年金積立金の運用につきましては、私ども安全かつ効率的に運用する立場で努力をしてまいっておりますが、内容としまして三点ございます。  一つは、金融債あるいは国債、地方債、貸付信託、有価証券等への投資がございます。二つ目としましては、不動産への投資がございます。三つ目としましては、組合員に対します福祉事業への貸し付けというのがございます。  この中で、福祉事業への貸し付けについて申し上げますと、内容的には二点ございまして、一つが住宅貸し付けというのがございます。これには幾つかの貸し付けがございますが、その内容としましては、条件につきましては勤続年数によりまして貸付限度額、返済期限、利息等は違っておりますけれども、中心となっております特別住宅貸し付けについて御説明申し上げますと、勤続五年以上の者に対しまして、勤続年数に応じまして百五十万から七百万、利息は五・五二%ということでございます。一般貸し付けには、これまた、いろいろ項目がございますが、その中心となっております普通貸し付けという内容で、突発的に資金が必要な場合に貸し出しをするのがありますが、これは勤続年数六カ月以上の者に俸給の一カ月分を限度としまして年利六%で貸し付けをいたしております。  以上でございます。
  178. 足代典正

    ○足代説明員 国鉄共済組合の場合、資金運用の基本的方針は国家公務員共済組合の場合と全く同様でございます。  資産の運用状況でございますが、国家公務員の場合、資金運用部への預託を行っておりますが、国鉄共済の場合、これにかえまして鉄道債券に運用をいたしておる。これは大体、資産の三〇%になっております。  それから、組合員への福祉還元としての貸し付けの問題でございますが、普通貸し付けと住宅貸し付けがございます。普通貸し付けの場合は、最高限度額三十万円、利率につきましては年六%。それから住宅貸し付けにつきましては、最高限度額七百万、ただし、これはいわば特例でございまして、五十歳以上または組合員期間三十年以上の者、こういう条件を付して七百万、一般の者は五百万ということでございます。なお、貸し付けの金利でございますが、年五・五二%、こういうことに相なっております。
  179. 長谷川實

    ○長谷川説明員 電電公社の共済組合の長期経理の資産運用の状況について申し上げます。  この資金運用の基本的な考え方は、安全かつ効率的に運営するということをモットーにいたしまして、郵政省の指導を得ながら資産を運用しておるところでございますが、運用のやり方は三つに大別されます。  第一点は、一般的に申し上げますいわゆる特別電電債を中心といたします有価証券に対する投資でございます。これは五十一年度の実績から見ますと、過去、利率の高いときのものもありまして八・五%ぐらいに回っております。  第二点目は、電電公社の職員の社宅に対して投資をしております。これが利率が大体六・五%。  第三点目は、先ほどからもいろいろ御説明がありましたように、職員への貸し付けを行っております。この貸し付けにはいわゆる甲種と乙種とございまして、甲種は、住宅並びに宅地の取得に必要な資金を融資するということで、利率は五・五%、こういうことで運営しております。貸し付けの最高限度額は五百万円でございまして、東京等の特別な地域におきましては退職金見合いで特別に七百万円まで融資しております。乙種の貸し付けは、いろんな内容がございまして、家屋の修繕とか、あるいは奨学、あるいは結婚、あるいは災害、あるいは大きいものを買います購買資金、こういったものの貸し付けがあるのでございますが、そのうちで限度額が一番高いのが修繕の五十万円でございます。利率は乙種の場合は六%ということでやっておりまして、全体から見ますと六・九六%に回っておるわけでございます。  先ほど、お尋ねのありました資金運用部への預託はございません。  以上で説明を終わらせていただきます。
  180. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは説明員の方はお引き取りになって結構でございます。どうもありがとうございました。  厚生省にお尋ねしたいのですが、国民年金の場合の積立金の資金運用はどういうふうになっているのか。そしてまた、ただいま御説明のございました共済組合との大きな相違点についてお伺いしたいと思います。
  181. 木暮保成

    木暮政府委員 国民年金の場合には、厚生年金と合わせまして毎年の収支残額を全額、資金運用部に預託をいたしております。これは年金財源でございますので安全確実ということを、どうしても第一に考えなければならないわけでございまして、各種共済と違いまして非常に規模の大きい制度でございます。そういうことで資金運用部に預託するということが最も方法として適当ではないかというふうに考えておる次第でございます。  もちろん無条件ではございませんで、預託額の三分の一は還元融資ということで被保険者あるいは厚生年金の場合には事業主に使っていただくようなことをしておりますし、また、地方公共団体等が国民生活に密着をした施設をすることに使ってもらうという条件をつけておる次第でございます。この還元融資の三分の一を含めまして八五%につきましては資金運用部からいろいろな機関に貸し出しをするわけでございますが、これも国民生活基盤に密着したものに重点を置いてもらうということにいたしておるわけでございます。  この運用利回りでございますが、厚生年金につきましては七・〇三%でございます。国民年金につきましては六・〇六%ということでございます。  それから、共済組合が組合員に貸し付けをいたしておりますが、私ども昭和四十八年から被保険者住宅につきましての貸し付けをやっております。条件は、ほぼ各種共済と同じところになっておるというふうに思います。具体的に申し上げますと、借り入れ資格は、五十三年度から、三年以上の被保険者期間があった人に貸すということにいたしておりますが、国家公務員共済で比較をいたしますと、組合によって違いますが、三年以上または五年以上というふうになっておる次第でございます。それから限度額につきましては、二百万円から五百万円ということでございます。国家公務員の場合には退職金の範囲内、ただし五百万円以内ということでございます。限度額は原則として合っておるわけでございますが、若い人と申しますか被保険者期間の短い人は退職金の範囲内の縛りがございませんので、私どもの方が若干よけい貸せるということになっておろうかと思います。利率につきましては、国家公務員共済が五・五二%から六%という分布をいたしておりますが、私どもの方は六%で貸すということになっておりまして、ほぼ均衡がとれておるかと思います。  それから、各共済組合でやっております消費金融のようなものは、私どもの場合には非常に多くの事業所を対象といたしておりますので、やっておりません。
  182. 古寺宏

    ○古寺委員 質問の趣旨は、資金の運用が非常に大事な問題でございまして、安全かつ効率的でなければいかぬわけでございますが、国民年金あるいは厚年の場合には資金運用部に三分の一が持っていかれる。残りの三分の一も、いろいろな地方公共団体あるいはいろいろな金融公庫、そういうところの貸し付けに持っていかれる。その残りを加入者に還元するという形で行われておりますので、もちろん地方公共団体もそうですか、非常に枠が少ないとか、共済組合に比較して、どうも国民年金の場合には、この点について検討する必要があるんじゃないか、こういうことをよく言われるのでございますが、そういう点はいかがでございますか。
  183. 木暮保成

    木暮政府委員 いまの私ども年金制度修正積立主義をとっておりまして、この積立金の運用問題というのは非常に大切な問題であることは御指摘のとおりでございます。それで確実安全ということを期さなければならないわけでございますが、これはもう共済組合等々と同じでございますけれども、私どもの場合には非常に多くの被保険者を対象としており、積立金の額も五十三年度末では二十二兆になるということでございますので、資金運用部に預託するということは最も適当な方法であるというふうに思っておるわけでございます。  ただ、その際、被保険者サービスと申しますか、そういうことも当然しなければなりませんし、それからまた、この積立金を資金運用部が運用いたします際に、やはり資金の性格からいいまして国民生活に密着した部門に還元していくということが適当であろうかと思っておるわけでございます。そういうことで都道府県が行いまする病院とか福祉施設とか、そういうものに使ってもらうということで還元融資をしておるわけでございます。新規積立金の三分の一を還元融資ということでやってきておるわけでございますが、先生の御指摘のように、その資金枠は必要があれば確保していかなければなりませんので、五十三年度予算につきましては三九%を、そういうことで還元融資に振り向けるという形で予算を編成しておる次第でございます。
  184. 古寺宏

    ○古寺委員 共済組合には住宅ですとか、いろいろな貸付制度、こういうものがあるわけですが、国年の場合はどのくらいの率になっておりますか。
  185. 木暮保成

    木暮政府委員 ただいま手元には厚生年金と両方合わせた数字を持っておるわけでございますが、住宅につきましては来年度千九百六十三億円を予定しておる次第でございます。
  186. 古寺宏

    ○古寺委員 これの内容を見ますと、厚生年金と国年では内容が違いますね。
  187. 木暮保成

    木暮政府委員 国民年金厚生年金の場合には制度の成り立ちが違いますので、若干の条件の相違がございます。  厚生年金につきましては、被保険者期間が二十年以上の場合には五百万円を貸すということにしてございます。で、これも被保険者期間の長さに応じて刻みがございまして、十年から二十年につきましては四百万円、五年から十年につきましては三百万円、三年から五年につきましては二百万円をお貸しするということになっておるわけでございます。  一方、国民年金につきましては、制度発足してから十六年ほどの経過でございますので、この区分を簡単にいたしておりまして、五年以上の場合には二百万円、三年から五年までにつきましては百万円、こういうふうになっております。
  188. 古寺宏

    ○古寺委員 これはやはり国年の場合にも十年以上とか十五年以上というような新しい区分を設ける必要があるんじゃないかと思います。
  189. 木暮保成

    木暮政府委員 だんだん、そういうふうにしていかなければならないと思いますが、五年以上二百万円と申し上げましたが、これは国民年金の場合には夫婦それぞれ被保険者になりますので、夫婦ではこの二百万円の倍の四百万円まで借りられる、そういうことでございますので、厚生年金の十年から二十年のところまで大体見合うわけでございまして、制度発足以来十六年でございますので、その点では厚生年金とバランスがとれておるということでございます。
  190. 古寺宏

    ○古寺委員 わかりました。  それでは最初の問題から入らせていただきたいと思いますが、大臣は所信表明の中で「厳しい社会経済情勢の中で、社会的経済的に弱い立場にある方々に対する福祉施策の重要性はさらに高まっております。こういうふうにおっしゃっておられるわけでございますが、弱者救済ということについて大臣は、どういうお考えに立っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  191. 小沢辰男

    小沢国務大臣 弱者というのは精神的、肉体的並びに経済的な弱者ということを考えておりまして、これらについて、できるだけ手厚い社会福祉の政策を進めていきたい、こういう趣旨でございます。
  192. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、今回の年金の引き上げでございますが、非常に物価が上がっているわけでございますので、この改正案の内容では不十分ではないかという声が非常に強いわけでございますが、この問題についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  193. 小沢辰男

    小沢国務大臣 物価の上昇率は、今月、五十二年三月を五十二年の三月に比較しますと、恐らく消費者物価の上昇率は五%を割るんではないかと言われるぐらいでございますのに、今度の改正は一割ちょっと欠ける程度でございますか、一割ぐらいでございますから、物価のスライドとしては、物価の上昇率を上回っておりますので、不十分という非難は当たらないのじゃないかと思っております。
  194. 古寺宏

    ○古寺委員 次に障害福祉年金と、それから障害年金でございますが、これも非常に不十分であるという声が強いのですが、いかがでございますか。
  195. 木暮保成

    木暮政府委員 拠出制年金につきましては、ただいま大臣から申し上げましたとおり七・六%の物価スライド考えておるわけでございます。これは、もう間もなく、ことしは終わるわけでございますが、ことしの実績が出ますと、それに置きかえるということになって、七・六%を若干下回るというようなことになるのではないかと思います。  一方、福祉年金につきましては、できるだけ配慮するということで一〇%のアップを考えておるわけでございます。これ以上のアップにつきましては、福祉年金の受給者が非常にたくさんいらっしゃいまして財政制約がございますのと、やはり拠出制の国民年金とのバランスを考えなければなりませんので、そういう意味合いで引き上げることが困難なわけでございます。それにいたしましても物価上昇率を上回る一〇%の引き上げを予定をいたしたわけでございます。
  196. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、障害年金改正になりまして廃疾の認定が今度一年六カ月になったわけでございますが、これはいつから実施になるわけでございますか。
  197. 木暮保成

    木暮政府委員 昨年の八月一日から実施をいたしました。
  198. 古寺宏

    ○古寺委員 これが八月一日から実施される以前は、廃疾の認定というのは三年でございました。そして改正になって一年六カ月になったわけですね。これは非常に期間が短くなったわけで結構なわけでございますが、それとあわせまして、改正以前は、その三年間のうちに一年間保険料を納めますと障害年金の受給資格を得るわけです。ところが、この改正によりまして一年六カ月の廃疾の認定の期間になりましたが、その以前において一年間、年金掛金を納めておりませんと障害年金の受給資格が得られない。これは私はある面においては非常に大きな福祉の後退になると思うのですが、いかがですか。
  199. 木暮保成

    木暮政府委員 ただいま御指摘の事実がございます。この改正は、昭和五十一年のときに従来、老齢年金だけにつきまして通算制度をしておったわけでございますが、障害年金につきましても、国会等の御審議もございまして、通算制度をつくることにいたしたわけでございます。通算制度をつくりました場合に、通算の結果、障害年金がもらえる人について、どの保険制度費用負担をするかを決める必要があるわけでございます。それまでは共済組合、厚生年金国民年金、それぞれ違った障害年金の支給要件をとっておったわけでございますが、どの保険が費用の負担を引き受けるかということを決める必要がございますので、そこの統一をいたしたわけでございます。統一をいたしました際に従来と違いまして、廃疾の原因になった病気の初診の日が属する年金制度でもって費用負担をしようということにいたしたわけでございます。これは、年金制度保険でございますので、原因が発生した、あるいは原因の発生が確実になった時点の年金制度が持つべきであるということから、いたしたことでございます。  その結果、確かに先生のおっしゃるように、いままでは廃疾になった時点で、その前に保険料を納めてあったかどうかを認定をいたしたわけでございますが、今度は各制度そろえまして、初診日の前の資格要件を問うということになったわけでございます。その結果、多くの場合には、この通算制度で、いままで障害年金がもらえなかったことがもらえるようになったわけでございますけれども、事例的に申し上げますと、二十歳から二十一歳の間に初診日がある方につきましては障害福祉年金の方にいくということが起こっておるわけでございます。これは通算制度導入するために、どうしても避けられない点でございまして、通算制度というものが被保険者の方に非常に大きな役割りを果たすということを考えれば、これは忍んでいただくということより仕方がないというふうに考えております。
  200. 古寺宏

    ○古寺委員 たとえば筋ジストロフィーでも結構です。あるいはベーチェット氏病でもいいです。サルコイドージスでもいいですね。そういう方々が、いままでは二十歳になられて、そして一年間年金に加入しますと、認定の時点でもって障害年金になるわけです。そうしますと、今度の額でいきますと一級の場合は年間五十八万二千六百円支給されることになる。ところが、その改正されたことによって今度は福祉年金の支給を受ける場合には一級でもって二十九万七千六百円になる。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕 改正以前においては五十八万二千六百円の障害年金が受けられた方々、同じような条件の方が、改正以後においては二十九万七千六百円しか支給されない。あるいは六十歳になったお年寄りの方が、いま非常に多くなっております。たとえば人工透析を受けるようになります。それで、こういう方は以前であれば、もう最後ですから、五十九歳のとき一年間保険料を納めれば、いわゆる障害年金の支給の対象になったのですが、今度の改正以降においては福祉年金の該当者にしかならぬわけです。そうしますと、たとえばベーチェット氏病にしましても筋ジスにしましても、そういう友の会とか、また一緒の同じ施設に入っているとか、いろいろございます。そうすると、以前の人は障害年金の対象になったのに、われわれは何で、こういう少ない、目減りのした福祉年金しか受けられないのだ、こういう矛盾が出ているわけなんですよ。こういう面について、やはり特例を設けるとか、そういう方々を救済する何か方策を考えませんと、非常に不公平が起きているわけなんです。この点についてはどうなんですか。
  201. 木暮保成

    木暮政府委員 お話の実態は私ども、あろうかと思います。ただ、二十歳前に初診がございました場合には、改正前も改正後も福祉年金でございます。それからまた、二十一歳を超えまして初診がございます場合には、改正前も改正後も拠出年金になるわけでございます。先ほど申し上げましたが、二十歳以上二十一歳未満の間に初診日があります場合には、いままでは御指摘のとおり拠出年金でございましたのが今度は福祉年金になる。これは、先ほど申し上げましたように障害年金の通算制度をやるということのために、各制度共済とか厚生年金国民年金、歩調をそろえてやらなければならないということがございまして、最初、この間に入る方だけ、がまんをしていただかなければ、この通算制度はできないということがあったわけでございます。通算制度が一般の被保険者の方には非常に役立っておるということでございますので、その間の方には、ごしんぼういただくということより仕方がないということでございます。
  202. 古寺宏

    ○古寺委員 いや、通算制度はこれは結構でございますよ。だけど、そういう制度ができたために、そういう社会的に弱い方が犠牲になるような運営の仕方では困ると思うのですよ。ですから、そういう限られた特定の方々が多いわけですから、そういう方々に対しては、いままでどおりに障害年金の対象になるように取り扱いをしてあげないと、かわいそうじゃございませんか。先ほど最初に申しましたように、大臣の所信表明の中には弱者を救済していくというのが大臣のお考えなんです。そうしますと、社会的に一番弱い、たとえば筋ジスの方々なんかは、もう二十代で死を待つよりないという方もたくさんいらっしゃるわけです。そういう方を、いままでは障害年金の対象であったものが今度は福祉年金の対象にしかならないというようなことでは非常にこれはかわいそうだと思うのですが、こういう点について今後、取り扱いを検討する御意思があるかどうか、承りたいと思います。
  203. 木暮保成

    木暮政府委員 年金制度は非常に技術的で融通のきかないところがございます。まして、この通算制度のように各制度にまたがる場合には、いよいよ窮屈な面が出てくるわけでございますが、先生の御指摘の実態があることも私ども承知いたしておりますので、先生の御質問の趣旨に沿える結果が出るかどうか申し上げにくいのでございますけれども関係各省もございますことですから、検討はさしていただきたいと思います。
  204. 古寺宏

    ○古寺委員 ぼくの御期待に沿うかどうかという問題ではなくて、いままでは障害年金の対象だった人が今度は福祉年金の対象になっているわけですから、非常に格差が大きいわけです。ですから、福祉年金をもっとぐんと引き上げて同じ金額にするとか、あるいは、いままでのように、そういう特殊な方々については障害年金の対象にしてあげる特例の措置というものを講じなければならないと思うのです。これは大臣でなければだめですから、大臣、ひとつ御答弁お願いします。
  205. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、実は余りよくわからなかったので、いま御指摘をいただいて、そういう気の毒な人が何か通算制度を実施するために出てきたのかなと思ってお聞きしたのですが、よく検討します。どうもよく、まだ理解できないところが、ちょっとありますので、早急にひとつ事務当局からも話を聞きまして、そういう人があっては困りますし、従来もらっておったが、もらえなくなるというようなことが事実あるのかどうか、よく検討してみますから、もう少しお待ちいただきます。
  206. 古寺宏

    ○古寺委員 どうも問題があっちへいったり、こっちへいったりして申しわけないのですが、先ほども大臣からいろいろと御答弁がございましたが、わが国の年金制度の抜本改正、これはもう当然行わなければならない段階にきております。次期国会には抜本改正案というものを大臣としてはぜひ出したいというお考えのようでございます。そこで一挙に年金の抜本改正と申しましても、医療制度もそうでございますが、これは大事業でございまして、なかなか思うように一遍に簡単にはいかないと思うのです。  その際に、一つの方法としまして現在、国民年金の方は定額方式でやっているわけですが、他の厚生年金共済組合の場合には、その中にきちっと所得比例方式が導入されているわけです。いろいろお聞きしますと、事務的に非常に大変で、国年に所得比例方式というものを導入するということは非常にむずかしい問題だ、こうおっしゃるのですが、やはり年金の間の格差を調整していくためには、どうしても所得比例方式を導入せざるを得ないんじゃないかと私は考えるのですが、その際、国民健康保険の場合には、きちっと所得比例方式をとっているわけですから、国年においても、そういうことができないことはないと思うのですね。そういう点について厚生省としては、どういうふうにお考えになっておるか承りたいと思います。
  207. 木暮保成

    木暮政府委員 国民年金につきまして所得比例の保険料導入するということは、私ども一つの大きな課題だというふうに思っております。率直に申し上げまして、国民年金財政はかなり苦しいわけでございますから、能力のある方からは、もっと保険料をいただきたいという気持ちはございますし、また、国民年金の被保険者の側からしましても、所得に応じた年金をもらいたいという御希望があることは事実でございまして、所得比例制を導入できれば、それにこしたことはないというふうに思うわけでございます。  ただ、これは非常にむずかしい問題でございまして、二千五百万人からの被保険者の方がいるわけでございます。この二千五百万人の方は、所得税を納めないような方もたくさんいらっしゃいまして、税務署等でも所得状況を把握していないという方々でございまして、そういう方々に対しまして公正さが保たれるような形で所得を把握するということは、なかなかの難問題でございますし、たとえば事務機構一つ考えましても、相当大ぜいの職員を増員しなければならないというようなことになろうかと思います。  それで関係者の中では、確かに強制的に所得状況を把握するということはむずかしいかもしれないので、任意的に所得比例制を入れたらどうだろうかという御提案もあるのでございます。それは被保険者の方々に申請をさせまして、自分はこのランクだ、自分はこのランクだ、こういう形でやったらどうかというのでございますけれども、そういう方法の場合には、やはり保険給付との関連というものを十分考えなければならないわけでございまして、保険給付にはね返るということがかなり濃く出ていませんと、そういう方法はとれないんじゃないか。また、所得比例制をとる場合の一つのメリットは、所得の再分配ということでございますので、進んで申告をしてもらうように給付の額を充実したものにするということでございますと、所得の再分配ができないというような難点がございます。  しかし、いずれにしましても、国民年金の重要な課題でございますので、今後とも研究をさせていただきたいと思っております。
  208. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がなくなりましたので、最後に児童手当の問題について。  先ほども御質問がありましたが、昭和四十九年十一月二十九日に中央児童福祉審議会答申が出ております。これを見ますと、「児童手当制度は、昭和四十七年一月に発足し、支給対象となる第三子以降の児童の範囲を段階的に拡大し、昭和五十年度より恒常化することとなっている。」こういうふうになっているのですね。そうしますと第二子あるいは第一子まで児童手当制度を拡大していくというのが児童手当制度発足当時の性格であり、背景であったわけです。ところが、先ほどもお話がございましたように、厚生省が調査をして、その結果いろいろアンケートをとりましたところが、五一・八%の人は必要である、三〇%の人は環境の整備をしていただきたい、こういう結果が出たわけです。ところが、いろいろ答弁を承っておりますと、必要であるという人は五一・八%であって、あとの人は余り必要を認めていないんだというような受け取り方をしているように私、承ったのです。環境の整備をしてほしいという三〇%の方も、児童手当を望んでいるのですが、その以前において、児童手当も支給していただきたいけれども、保育所が足りない、あるいは遊園地が足りない、児童館が足りない、そういういろいろな施設が非常に足りないという問題が念頭にあるために、児童手当よりも先に、そういう施設をつくっていただきたいというのが願いだと思うのです。  具体的に申し上げますと、私の出身地でございます青森市の場合は毎年、要保育の子供さんが千人ぐらいずつ保育所に入れぬわけですね。ところが厚生省の枠は毎年二カ所ぐらいなんです。いつまでたっても解消されないものですから、保育所を建設したいという方はたくさんあるのです。だけれども枠がないために、なかなか保育所がふえないわけです。青森県で申し上げますと、大きいのは三市ございまして、八戸市も大体千名なんですね。それから弘前市も大体八百名ぐらいなんです。そういうように保育所に入りたくとも入れない。非常に核家族化が進み、夫婦の共働きがふえまして、どうしても、そういう施設に入れたいという方が多いものですから、児童手当の第二子への拡大は望んでいるけれども、それよりも先に施設をつくってください、実態から申し上げまして、アンケートの結果をこういうように私は分析しているのです。ですから、この児童手当が発足した昭和四十七年と昭和五十三年においても、あるいは、この調査時点においても、国民の児童手当に対する期待というものは何ら変わっていない、こういうふうに解釈すべき問題であろうかと私は思うのです。したがいまして、発足当時と同じような考え方に立って第二子への拡大の問題、この問題を厚生省としても、ぜひとも速やかに検討をし、実現の方向に向かって進めていただきたい、こう思うのですが、大臣からこれを承ります。
  209. 石野清治

    ○石野政府委員 最初に、四十九年の中間答申をいただきました際の段階実施と申しますのは、これは四十七年から始めました制度を四十九年に三子について完全にやる、こういうことの意味でございまして、これを二子、一子に広げるという意味ではございません。なお、二子、一子に広げる場合には慎重に配慮しろ、こういうことになっております。  それから問題は、いまの世論調査といいますか意識調査の結果の見方でございますけれども、確かに児童手当より環境を整備する方がいいという意味の中には、児童手当はまあ必要だけれども、それよりも、もっと先にやるべきことがあるという意味と、それから児童手当の金があるならば、そちらの方に金を使ってくれ、こういう意味と二つあると思うのです。どちらがどうかということは、これはわかりませんけれども、少なくとも、そういうものが含まれているということは事実だと思うわけでございます。  そこで、児童手当制度発足のときのいきさつから申しますと、当時の厚生大臣も申し上げておりますように、児童手当制度というのは三子から始めたけれども、小さく産んで大きく育てる、こういう基本的な考え方だったことは事実でございます。ただ、その際の頭の中には、国民の意識と申しますか、そういうものが、児童手当制度発足することによって成熟してくる、こういう考え方もあったと思うわけでございます。そういう意味で実は五十一年のときに意識調査をやったわけでございますけれども、残念ながら、その賛成論者というのは積極的な意味では五〇%程度であった。したがいまして、こういう制度に対します認識を土台にして今後、児童手当制度をどういうふうにするかということは大変大きな問題であると思いますので、私どもは中央児童福祉審議会にも御意見を聞きながら今後のあり方について検討してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  210. 古寺宏

    ○古寺委員 昭和四十九年の四月の四日に、わが党の大橋議員が当時の齋藤厚生大臣に質問を申し上げた際には、将来、前向きに第二子等に拡大していくという御決意を述べておられるのです。そういう意味で、今度の厚生大臣の御決意を承りたいと思います。
  211. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、実は児童手当については、いろいろ検討すべき問題があると思っている方なんです。したがって、いま直ちに第二子に上げます。拡大をして第一子まで逐次やっていきますという答弁はできません。  なぜかといいますと、家族手当、給与体系とも密接に関連をいたしますし、また税制の問題で、いまたしか控除が一人二十九万円だと思うのですね。そうすると五千円ずつやっても六万円ですからね。それから、これは児童の健全育成、家庭の生活の安定、そういう目的から見て非常に中途半端になっておると思うのです。保育所、保育所という話が出ましたが、保育所へ行くのに月五千円で行けるかというと、とても、いま行けるような状況じゃないのですね。若干の足しには、もちろんなりますけれども非常に中途半端である。これをうんと増額するということは、それでは現実問題としてできるかといいますと、私はなかなか困難だと思うのです。ことしは、御審議を煩わしていますように、低所得の階層の方々については特に二割アップですか千円アップしているわけでございますが、そういう点をいろいろ考えてみまして、当初の目的である児童の健全育成に資するためには、これは一体どうしたらいいのか。それから、いま平均の家族構成を見ますと、全体の子供の数の平均はたしか二人になっていなかったと思うのです。特殊な例はいろいろあると思いますよ。五つ子を抱えた方々は大変だと思うのです。そういう点、どうしたらいいのかという問題を相当いろいろ考えてみなければいけません。しかも、事業主の負担等も一方求めているわけでございますし、経済状態がこういうようなときに、いまの賃金体系やいろんな問題と絡み合ってどうするかということも考えていかなければならぬ。したがって、十分検討はいたします。やはり弱者救済の趣旨が通るような方向で、しかも、これを本当に実効あらしめるような、いわば濃密な目的達成のための趣旨が通るような制度にしていくにはどうしたらいいか、いろいろ検討させていただきたいと思いますので、いま直ちに、ここで私は二子までということのお答えは、なかなかできないわけでございます。  それから保育所のお話が出ました。私は保育所は本当に必要だと思うのです。これは全国、特に地方は非常に要望が強いわけでございますので、これはひとつ、できるだけやりたいと思っております。失礼な話ですが、特に先生の青森県は県民所得のランクは非常に低い方だと思いますので、そういう面から考えますと、沖繩とか島根とか鹿児島とか、そういうそれぞれの県の県民所得の趨勢等も織り込みながら配分の適正を図っていかなければいかぬだろうと思うのです。まず、そういうような点も考えまして、全国的にも保育所というものは私はうんと増したいと思っておるわけでございますので、できるだけひとつ、がんばってみたいと思っております。
  212. 古寺宏

    ○古寺委員 どうもありがとうございました。
  213. 木野晴夫

    木野委員長 次に、草川昭三君。
  214. 草川昭三

    ○草川委員 時間がたっておりますから、はしょって少し質問をさせていただきます。  ことしの一月に厚生省は例の社保の長期計画懇談会に人口老齢化による社会保障への影響を発表いたしておりまして、この老齢化問題というのは非常に重要な時期になってきたと思うのです。そこで、まず第一に、老齢化社会を迎えて大臣の基本的な見解、同時にまた、そのものを含めまし三昨年の暮れ、社会保障制度審議会が基本年金制度の大変な抜本的な改正を打ち出し、なかんずく、その中に年金支給開始年齢のあり方というきわめて重要な問題提起があるわけでございますので、その三点について大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  215. 小沢辰男

    小沢国務大臣 老齢化社会を迎えまして、年金制度の根本的な再検討をしなければいけない時期に来ていることは何回も申し上げているとおりでございまして、いま私どもは、あらゆる角度から、私の諮問機関であります年金問題懇談会や、あるいは制度審において、いま、おっしゃいましたような画期的な一つ改革案をずばり出していただいておるわけでございますし、非常に示唆に富んだ御提言だとは思いますが、なお相当問題点も、私どもとして考えますと、あるように思いますので、いろいろな御意見を踏まえまして、一年かかって、ゆっくり本当にいい考え、方針をひとつ決めていきたいと思っておるわけでございます。  それから、例の支給開始年齢の問題でございますが、大体外国は六十五が多いわけでございますけれども、私は、いま直ちに六十五歳に引き上げるということは、これは雇用問題等考えてみましても、雇用が終わる、年金につながるという理想的な形にいくには、まだまだ相当の期間を要するのじゃないかと思いますし、そう考えますと、一方においては年金財政の問題全般もよく見ていかなければいけません。しかし、相当将来としては、この支給開始年齢の問題は、やはり六十五歳からという考え方でいかなければならぬような、いろいろな条件があるのじゃなかろうかと思います。近い将来ではありませんで、相当の将来というふうに御理解いただければいいと思っております。
  216. 草川昭三

    ○草川委員 その件については、過日も私も予算委員会で質問を申し上げたところでございますが、いまも古寺議員の質問にもありましたが、やはり年金は抜本的な改革がどうしても必要だというように言われておるわけですが、私は、それに対してトータルな人生の意味を含めて抜本的な見直しをする必要があると思うわけであります。特に、先ほど大臣から雇用の問題と関連するというお話がございましたが、御存じのとおり、いまはかつてない構造不況でございますから、企業はそれぞれ定年制を引き下げようとするわけです。実情としては。スピンアウトというように外に出す。あるいは定年制は五十五から五十七に、だんだん引き上がってまいりますけれども、実質的には四十五定年制だとかいうような計画が立てられておる。だから、そこでつなげなければいかぬわけですが、いまの場合、それをつなげる行政指導というのは一体どこに求めるべきか。これは労働大臣にお伺いをしても希望をするという程度でございますし、なかなかないわけです。  そこで私は、一つの問題提起として、アメリカに連邦法で年齢差別禁止法という法律があるわけであります。私どもも、ぜひこの年齢差別禁止法というものをわが国でも採用したい。問題提起をしようというので、いろいろな検討会なり準備をしておるわけですが、これは御存じのとおり、たとえば定年を六十にする、アメリカの場合は、これを七十に引き上げるとかいうことが新聞でも大変話題になっておるわけですけれども、その以下の差別をして雇用をしてはいけませんよ。だから、たとえば安定所へ行っても、お手伝いさん何歳以下なんというのは全部違反になるわけですね。だから、定年が六十なら六十、七十なら七十という一定の基準を差別禁止法案でつくることによって、自動的に年金に移行をする体制というものを厚生省年金局なり大臣としてお考えになったことはないのか。あるいは、この私ども提案についての御意見を賜りたい、こう思います。
  217. 小沢辰男

    小沢国務大臣 これはなかなかめんどうだと思いますね、今日の日本にすぐ当てはめることにつきましては。やはり高年齢者の就職促進対策というものを十分に図っていかなければいけませんし、定年は私はむしろ延長論者の方でございますが、しかし、世の中の経済の実体が今日のようにいろいろ変化をしてまいりますと、なかなか、そういうふうにはいきません。しからば、その場合に、つなぎをどうするかということでございますが、それはやはり今日の日本制度のもとにおきましては、再就職の促進やら、あるいは、できるだけ他の面での雇用促進を図り、そこで雇用の年齢をとにかく引き延ばすということしか、いまのところはないんじゃないかと思いますが、社会保障制度の中で、このつなぎの問を措置をするということは、今日、私いろいろな方法を検討しましても、なかなか、これは困難ではないかなと思っておりますので、やはり年齢の引き上げについても、そういうような雇用の実情等の推移をよく考えて引き上げをやっていかなければいかぬ。それまでは軽々に引き上げることはできないのではないかな、年金財政面からだけで判断をするわけにもいかぬ、こういうふうに考えております。
  218. 草川昭三

    ○草川委員 いま財源の問題と、それから軽々に財源の問題からだけでは引き上げはできないという御答弁がございましたが、全く、そのとおりだと思うわけでございまして、いわゆる働く国民全体のトータルな人生の面から、ぜひこの年金というものを考えていただきたいということを申し上げて、次の方へ移りたいと思うのです。  実は民間企業の場合に、御存じのとおり退職一時金というのがあるわけでございますけれども、特に大企業の有力企業の中では漸次、企業年金というものに移りつつある状況が、一部でございますけれども、あります。しかし、この企業年金というのは一種のプラスアルファの終身年金として定着しつつあるわけですが、いまのように六十五に引き上げるというような話がありますと、これがつなぎの有期の年金になってしまう可能性というよりは、逆に後退をしてしまって、プラスアルファの年金という意義がなくなることになるわけですが、一体、現在広く行われております退職金という問題も、労働省関係ではいろいろな論議が出ているわけですが、この年金という立場から、企業の年金というものに対する考え方をどのように見られるか、あるいは対処されるか、お伺いしたいと思います。
  219. 木暮保成

    木暮政府委員 ただいま御指摘のように、退職金制度から順次、企業年金の方に切りかえてくるというような動きが現実にあるわけでございます。労働省の調査を見ましても、昭和四十一年には一時金制度のみでございます企業は八六%でございましたのが昭和五十年には六七%に下がっておる。一方、年金制度を持つ企業が昭和四十一年には一三・五%でございましたのが三二・九%になってきておるわけでございます。  これはいろいろな点があろうかと思います。高度成長期にたくさんの人を雇用したわけでございますが、そういう人たちが退職時点を迎えてまいりまして、退職金の負担が企業に重くかかってくるという現実もございましょうし、また年金制度につきましては基礎年金というような形で各制度横断的に公平を図らなければならないという視点がありますと同時に、個人個人の置かれておる老齢生活の条件は違いますし、また個人個人と言わないまでも、企業企業あるいは産業別に老後の生活の条件が違うわけでございますので、その生活に見合った年金という要望もあるわけでございます。  厚生省で所管しております企業年金は、できましてから十年たつわけでございまして、大体、底固めが終わったという時期でございますが、今後、退職金の問題との関連、それから個人個人の老後生活の条件が違いますのは私的貯蓄というようなことで対処していただくのだろうと思いますが、企業あるいは産業によって違うということの対処は企業年金にしてもらうのではないか。昨年来、官民格差の問題が一つ大きく出ましたけれども、国家公務員の共済組合には企業年金の部分があるという議論も行われたわけでございますが、そういう意味でも企業年金の新しい出番が来たのではないかというふうに思っておるわけでございます。  私どもといたしましても、年金基本問題懇談会に企業年金のあり方を御検討いただいておりますし、基金連合会でも、この七月ごろまでに新しい視点で企業年金の見直しをしようという作業を開始しております。そういうような過程で、今後の企業年金の誘導をしてまいりたいというふうに思っております。
  220. 草川昭三

    ○草川委員 健保の問題も、小委員会等で非常に具体的な煮詰めの問題が出ますが、この年金の問題についても相当長期の展望なり現状の企業のあり方、あるいはまた共済関係等の問題もあるわけでございますので、いろいろな方々の御意見を伺いながら、また、私どもも発言の場なり希望意見が出せる場をぜひひとつ、またつくっていただきたいということを要望を申し上げて、次に移りたいというように思います。  国民年金の女子の任意加入制度の問題でございますけれども、これは年金権が検討されるときの暫定措置として、昭和三十六年以降そのままにきておるわけでございまして、いわゆるサラリーマンの妻の任意加入制度という制度はいずれ整理をする。一度はっきりけじめをつけなければいけない時代が来るのではないだろうか、こう思うわけでありまして、御存じのとおりに厚生年金の遺族年金と母子年金の両方の支給の場合には、国庫負担分だけが削られるということになるわけでして、この点についての不合理さの問題について、どうお考えになられるか。あるいは将来展望についてお聞かせ願いたいと思います。
  221. 木暮保成

    木暮政府委員 国民年金ができましたときに、被用者年金が世帯単位でカバーをしておるのに対しまして、個人単位ということをいたしたわけでございます。そういう際に、サラリーマンの妻の年金での位置というものをどう考えるかということがございまして、希望のある方には任意加入を認めるというようなことで制度発足させたわけでございます。ところが最近、年金に対する国民の関心が非常に高くなりまして、それにつれまして現在、六百六十万人の被用者の妻の方が任意加入をするということになっておるわけでございます。これは制度発足のときに予定していたものと若干違うような形になってきているのではないかと思うわけでございます。これには被用者の妻の年金の座が必ずしもはっきりしていないというようなこともあるわけでございますが、基本懇の中間答申でも、被用者保険の遺族年金の充実等を図るような意見が出ておるわけでございますが、そういうことをします際には、ただいま御指摘のあります国民年金に対するサラリーマンの妻の任意加入というものとの調整を図らなければならないという問題に突き当たるわけでございます。  基本懇の中間意見では、サラリーマンの妻は、やはり夫の被用者年金の方で抱えてもらうということをひとつ考えるべきではないか。それからまた、これだけ歴史がございますし、また、六百六十万人の加入者がおりますので、場合によればこの被用者の妻は被用者保険から外して国民年金の方に整理すべきではないか。二つの案を御検討いただきまして、それぞれ一長一短あるわけでございますが、さらに今後詰めていただけるということになっておるわけでございますが、いずれにしろ国民の側から見れば二重の保険料負担でございますし、それからまた、給付が二重になる結果にもなりますし、国庫負担も二重になるということで、この問題は避けて通れないというふうに考えております。
  222. 草川昭三

    ○草川委員 いま言われましたように、二重の負担ということも出てくるわけでございますので、ぜひ、この整理、合理化、統合というのですか、その方向で御検討願いたいというように思うわけであります。  その次には、先ほども、たくさんのそれぞれの共済会の方がお見えになったわけでございますけれども、いろいろな実態を詳しく聞いてまいりますと、それぞれ支給の条件というのも違っておるようでございますし、それから最終の俸給の決め方ですね、基礎俸の計算方式にもいろいろな条件の違いがあるようでございます。これは直接厚生省にお伺いをするのは違うわけでございますけれども、いずれにしても年金という問題で全体的な一つ方向というのを出さなければいかぬわけでございますが、ひとつ制度間のアンバランスについて、将来どういうように、これを指導をされていくのか、これもお聞かせ願いたい、こういうふうに思います。
  223. 木暮保成

    木暮政府委員 いままで八つ年金制度がそれぞれ別にやってまいったわけでございますが、今後は老齢人口の増大に対処いたしまして、それぞれの年金が別々ではなく、手をつないでいかなければならないということの認識につきましては、大方の方が一致しておるわけでございます。その際、各年金制度給付の面あるいは負担の面でいろいろ違いがあるわけでございます。その違いの中には当然理由のあるものもあるわけでございますが、また、必ずしも根拠がないというものがあるわけでございます。それにつきましては、だんだん地ならしをしていかなければならないわけでございます。私どもの懇談会の中間意見にも、そういう事例を掘り下げていただいておりますが、率直に申し上げまして、年金長期経過がございますので、簡単な手直しはなかなかむずかしいかなあという感じでございますけれども、この問題もぜひ取り組んでいきたいというふうに思っております。
  224. 草川昭三

    ○草川委員 現状からお話しになったわけですが、結局、歴史的ないろいろな経過があるわけですから、簡単に制度間の調整だとか、制度間というよりも組合間の調整だとか、アンバランスというのはなかなか埋まらぬと思います。だけれども乗り越えなければいかぬわけですから取り組むわけですが、ここに厚生省のいま抱える医療の問題についても、保険の問題についても、きわめて深刻というよりも大きな壁があると思うんですね。しかし、その壁をどう乗り切るかということに、いずれにしても取り組まなければいかぬことになるわけですが、ぜひひとつ、みんなのいい知恵を出し合いながら、そしてまた関係者の方々の理解、あるいは本当にお互いの老後問題等を含めて一定の方向が出るよう要望しておきたいというように思います。  次は、事務処理の問題に移っていくわけでございますけれども年金の支払い業務というのは大変だと思うのです。過日も、いろいろな過誤徴収というような問題も出たわけでございますが、何かオンライン化が五十四年度からスタートをするというふうに聞いております。実務者に対するいろいろな現物の機械なんかも、検討会というのですか、ある程度のトレーニング、練習なんかもさせておるようでございますが、いま全国に九カ所ですか、何カ所かの年金相談コーナーがあるわけですが、ここの相談所へ行きますと、直ちに問い合わせができるのですけれども、そこから今度は払い込みだとか、なんとかというシステムには、まだなっていないというふうに聞いておるわけでございますけれども、いずれにしましても、国民に対します年金相談コーナーというものを、これからどんどんふやしていくのか。そういう要望もあるわけでございますし、新聞社なんかでは、年金相談の専門の新聞記者がおるというぐらいに電話がかかってきたり、投書が多いわけでございますが、そういう非常に国民の関心の深い年金の相談に対する今後の取り組み方について、ひとつ質問したいと思います。
  225. 大和田潔

    ○大和田政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします。  御説のように現在、全国で九カ所の年金相談コーナーを設けてございます。この年金相談は四十九年度から大都市等の交通の便のいいというところを選定いたしまして設けておるところでございますが、さらに五十三年度におきましては三カ所の年金相談コーナーを増設する。さらに、遠隔の地であります沖繩県は、その三カ所以外に年金相談用のオンライン窓口を社会保険事務所に設置する、こういう計画でございます。五十三年度はそこまででございす。  そこで、五十四年度からどうなるかということでございますけれども、これは先ほど先生がおっしゃいましたように、いわゆるオンライン計画を発足させる。オンライン計画は五十四年度から六カ年計画で発足をさせるわけでございますが、その前期の三年間で全国二百数十カ所でございますが、すべての社会保険事務所に、現在あります年金相談コーナーと全く同じオンラインシステムを導入して、積極的に年金相談を受け付けることができる、こういう体制を、いわゆるオンライン計画の前三年間でもって実施をするというふうな計画を進めております。  なお、その後期三年間におきましては、先ほど先生がおっしゃいました裁定、そういったようなものも社会保険事務所の窓口で行うことができる、こういうふうに計画を進めておるわけでございます。
  226. 草川昭三

    ○草川委員 現在、被保険者のいろいろなことを相談に行くと、国民年金の方は、かな文字になっておるので、すぐ出るというのですが、厚生年金は漢字になっておって、インプットしても直ちに出てこないというように聞いておるわけです。厚生年金の方がすぐ返事が来るというのも、五十三年ですか、あるいは五十四年になるのか、どちらから出るようになるのですか。
  227. 大和田潔

    ○大和田政府委員 ただいま先生おっしゃいました、記録がすぐ、いわゆるテレビのようなディスプレー装置で引き出せる、これがいま、どの程度まで引き出せるようになっているかということを、まずお答えします。  現在、厚生年金国民年金、船員保険制度年金受給者については、すべて直ちに引き出せるという状態になっております。一方、被保険者の記録が、いろいろと今後相談が非常に多くなってくるだろうと思いますが、これが一体どうなっておるかといいますと、国民年金の高齢被保険者、これは五十九歳以上でございますが、それと船員保険の被保険者は、すでに氏名索引によって即時に引き出せるという体制をつくっておるわけでございます。これはもう、ごく最近のことでございますけれども、つくり上げました。厚生年金につきましても、五十歳以上の者については即時にディスプレーに出るような仕組みになっております。ただし、これは氏名索引というのができませんで、被保険者の記号番号によって即時に引き出せる、こういう体制でございます。今後は厚生年金の被保険者につきまして記号番号でなくても名前で引き出せるというような体制に持っていかなければならないというふうに私ども考えておりますし、それがオンラインの六カ年計画のために必要である、こういうふうに考えておりますので、これにつきましては、いま鋭意検討しておりまして、その実施を進めていきたいというふうに考えております。
  228. 草川昭三

    ○草川委員 そういう一つの展望が報告されたわけでございますけれども、実は年金の裁定処理をもっと早くやってくれというのが非常に強いのです。現在、厚生年金の方は比較的早いのですが、国民年金の方は市町村が窓口で、一番早くて一カ月はかかるというのです。もちろん、申請をすることになれば、欲しい人はやはり年を取ってくるわけですから早く欲しい。厚生年金の場合でも、いろいろと過去に企業間を動いたとかいう実績がございますと、制度間の移り変わりがございますので非常にめんどうなのですけれども、少なくとも年金は、出したら一カ月以内には本人の方へすぐ給付票が出るという処置をしていただきたい、こう要望するのですが、その点についてはどうでしょう。
  229. 大和田潔

    ○大和田政府委員 現状を申し上げると実は三カ月程度かかっております。これは厚生年金国民年金でございますけれども、これはほとんど違いません。言いますれば国民年金の方は市町村からの経由期間というものがございますけれども、むしろ業務課内におきますれば事務処理はスピーディーに行われている。逆に厚生年金の方は経由期間が少のうございますので、その間は節約されますけれども、資格記録が、歴史的に厚生年金の方が若干その発足が前でございますので、資格記録の関係から業務課の内におきます作業が若干多くかかるということで、両者とも、社会保険事務所あるいは市町村に受け付けましてから裁定が終わったという通知がお手元に届きますには、どうしてもやはり大体三カ月はかかっておる。  しかしながら、これは何とか早くしなければいかぬということで、私ども最重点事項といたしまして内部でいま検討しております。この裁定の期間を早くしますためには、どういたしましても機械をレベルアップしていかなければならぬ。それからさらに事務処理上幾つか工夫を要しまして、その工夫によって解決するという問題もございます。たとえば、市町村から社会保険事務所、あるいは社会保険事務所から業務課、この期間を短縮できないだろうかとか、あるいは業務課におきます事務処理を短縮できないだろうか。これはいろいろなポイントがございまして、これをいま精力的に解明をしております。それで五十三年度中にも私どもは、短縮といいましても急に早くはなりませんけれども、できるだけこれを短縮させるということで、めどもついておりますし、努力をしておるところでございます。  ただ、これにつきましては先ほど申しましたようにオンライン計画を進めておりますが、昭和五十七年からの後期計画の段階に入りますと社会保険事務所におきまして裁定を行うことができる。いまは全部業務課まで上がってきて、社会保険庁の業務課におきまして裁定処理をしておるわけでございますけれども、このオンラインができますと身近な社会保険事務所の窓口で裁定ができることになるわけでございまして、この段階におきますれば相当裁定が迅速化されるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  230. 草川昭三

    ○草川委員 後期の五十七年にならないと、そういう非常に便利な条件にはならぬというお話でございますが、私ども、ときどき見ますのは、オンラインとかなんとかいいますけれども、リュックサックにカードを入れて人力で運んでいくというように、近代化とはいうものの部分部分では大変おくれた点があるわけであります。先ほどの事務的な検討をしておるということにひとつ期待して、最後の質問に移りたいと思います。  実は、これは堀木訴訟にも関係をすることになるわけでございますけれども、結論から言いますと、福祉年金をもらっておる方は児童扶養手当が併給受給されるけれども、拠出制の国民年金の受給者は児童扶養手当の併給受給ができないという例なんです。  これは具体的に私の方へ陳情というか要請があった方ですが、かなり以前から国民年金に入っている女性です。結婚をして子供が生まれた。ところが本人は脊髄の手術をした。そして非常に重度の障害で第一級ということで、車いすに乗ってみえる。この方は御主人が亡くなられて、そしてまた何回か手術をしなければいかぬ。授産場なんかにも入る、子供と別れる。また子供と一緒になるというように大変御苦労をしてみえる。結論的に、この方は障害年金と重度の在宅手当と遺児手当と生活保護を、いま受けておみえになるのですが、問題になりますのは、この児童扶養手当というものの併給受給がだめだということなんです。  たまたま昭和四十五年に兵庫県で堀木訴訟という有名な訴訟がございました。これは視覚障害者の堀木さんという方が障害福祉年金を受給してみえた。そして離婚をされて子供を育てる場合に、児童扶養手当を欲しいといって県に訴えられて、四十七年の九月に地裁では原告が勝ったわけです。その後また高裁で逆転判決になりまして、現在、最高裁で最終的な審理が行われておると聞いておりますけれども、実際、厚生省は四十七年の九月のこの判決の前後に、障害福祉年金を受給してみえる方には併給受給ということを認めたわけであります。極端な言い方をすると、お金を納めていない無拠出の場合には併給受給ができて、国民年金というものはいい年金だと思って、こつこつ一生懸命かけた人は今度はもらえぬということになるのですね。だから私はかけておるのに、もらえぬじゃないかという訴えがあったときに、そんなばかなことはないじゃないかといって聞いてみたら、やはりそうだ、こういうわけですね。一体この問題についてどうされるのか。こういう問題は当分の間、変える意思がないと言われるのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  231. 石野清治

    ○石野政府委員 確かに四十七年の地裁の判決におきまして、併給を認めろ、こういう形になったわけでございますが、それが一つのきっかけでございましたけれども、一応福祉年金との併給を認めることになったわけでございます。そのなぜ併給をしたかということを御説明した方が、むしろ御理解できるんじゃないかと思いますけれども、御存じのとおり経過的な年金でございます障害福祉年金なり、あるいは老齢福祉年金、これの受給者というものは一般的に見まして、やはり低所得者というふうな概念があると思います。しかも、それが母親なり、あるいはその他の養育者といたしまして、障害なりあるいは老齢というハンディを負いながら、なおかつ子供を養育していく、こういうことでございまして、その生活実態を考慮いたしました場合に、ほうっておいていいのか、こういうことから児童扶養手当との併給に踏み切ったというのが事実でございます。  しかし、よくよく制度の本質を考えてまいりますと、そもそも児童扶養手当制度と申しますのは、公的年金給付を受給できない、そういう母子世帯を対象にいたして出発いたしたものでございます。したがいまして、基本的には稼得能力の低下に対応します所得保障の一環、こういうふうな制度になるわけでございます。一方、拠出制年金というものを見ましても、これはやはり所得保障の機能を持っておるわけでございますので、内容においては児童扶養手当と拠出制年金というのは目的なり、あるいは機能の大半につきましては同一と考えなければならぬだろう。しかも拠出制年金というのは年々充実してまいりまして、御案内のとおり、いまの例で申しますと障害年金は年間五十四万一千五百円でございますか、そういうだけの内容になってまいりました。したがいまして、今後とも、この問題についてどう考えるかというお話でございますけれども社会保障全体の中で、どういう位置づけをしながらやるかということを考えてまいりますと、これは児童扶養手当だけを取り上げて考えるべきではなくて、全体の中で考えた場合には、やはり併給すべきではない、こういうのが結論でございます。
  232. 草川昭三

    ○草川委員 きょうは時間がないので論争ができませんけれども経過経過であるわけでございますが、言葉じりをとらえるつもりはございませんが、障害年金が年間五十四万円あると言いますが一カ月にして四万五千円ですよ。県によって違いますけれども、生活保護を下回るというような状況になっておるわけでございます。私は、拠出制年金の人が無拠出の人よりも特別にいいとか悪いとか、そういう判断も、生活水準が高いとか低いとかという論議もおかしいと思うのです。そういう論議ではなくて、やはりまともに考えて、拠出をして国民年金をまじめに国を信頼してかけてみえる方が、たまたま最大の重度の一級の障害を受けて、そして不幸にして、これは御主人は亡くなられたわけですからね。私は、私どもの常識的に言うなら当然児童手当は併給受給は当たりまえだと思うのですよ。ところが、いまの厚生省のお役人の立場からいうと、それがいま言うような理屈になって、併給すべきではないという発想になってくる。だから私は、堀木訴訟の場合でも、やむにやまれぬ形で国を相手に裁判ということになったのですが、これは非常に不幸なことだと思うのですよ。  一体、常識というのをどこに持つのかということが問題なんですけれども、やはり一般的な方々の常識という判断ならば、併給受給があってしかるべきではないだろうか。これこそ原資の問題からいったって、そんなに大きなものにはならないと思うわけでございますから、行政ということをひとつ切りかえていただきたい。これはいま何と言ったって、だめはだめですから、これはわかっておるわけですから、次回の改定のときだとか、審議会でも、このような具体的な例があるということは、やはりいろんな関係者の方々に言っていただいて、取り上げていただきたいということを強く要望して、私の質問を終わりたい、こういうように思います。     —————————————
  233. 木野晴夫

    木野委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま議題となっております国民年金法等の一部を改正する法律案審査のため、本日、年金福祉事業団の理事中村一成君に参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  234. 木野晴夫

    木野委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  235. 木野晴夫

    木野委員長 質疑を続行いたします。平石磨作太郎君。
  236. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大変遅くなりまして皆さんに御迷惑をおかけいたしますが、しばらくごしんぼういただきたいと思います。  私は大規模年金の保養基地について、まずお尋ねをしたいと思うわけです。  この基地構想が発表されて、もうすでに数年がたっております。この構想に基づく建設計画あるいは設置計画、こういったことが厚生大臣の指定によって、それぞれ進められておると思うのですが、厚生省に、この計画についてあらましをお願いしたい。そしてその進捗状況、これもあわせお答えをいただきたい。
  237. 木暮保成

    木暮政府委員 大型保養基地の計画は、経過がございましたが、昭和五十年度に最終決定を見た次第でございます。全国十一カ所を設置をする、一カ所当たりの規模は百万坪ということで発足をいたしたわけでございます。それぞれの基地の建設につきましては、原則として各基地ごとに工期を二期に分けまして、第一期工事を終わった段階で、その供用実績あるいは運営状況を勘案して、さらに第二期工事にかかろうというもくろみでございました。第一期工事につきましては、おおむね昭和六十年度くらいまでには完了したいということを目途といたしておったわけでございますが、基地の具体的な建設に当たりましては、地元の地方公共団体が行います関連公共施設の整備状況や需要動向等を勘案しながらやっていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。基地の建設に要する費用は、十一カ所全部で二千億円を超えないという範囲で考えておったわけでございます。ただいま申し上げましたように昭和五十年度に、そういう構想準備を進めておったわけでございますが、昭和五十一年度末に、この十一カ所の土地につきまして、地元の御協力を得て買収は終わった次第でございます。以下、基本計画、設計というような段階に取りかかるわけでございますが、一番先行しておりまする兵庫県の三木市につきましては、ことしに入りまして土木工事に着手をしたという段階でございます。
  238. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまお示しをいただきまして、計画の大体のところがわかりました。  ところで、いまのお話の中で五十一年度末すなわち五十二年に用地買収はすべて完了した、こういう御報告ですが、これの買収に着手した時期は、最初に着手したのはいつからでしょうか。
  239. 木暮保成

    木暮政府委員 土地買収でございますが、三木基地、大沼基地、津南基地、それから田老基地、ここが一番早うございまして、それぞれ昭和四十九年の三月から五月に取得をいたしております。
  240. 平石磨作太郎

    ○平石委員 この十一の設置個所の中に高知県の横浪基地も含まれておるわけでして、この横浪基地につきましても買収は完了したわけです。そして後の計画について、それぞれ基本計画も終わった、こういう段階を迎えたわけですが、この設置並びに運営については、厚生大臣年金福祉事業団に行わせる、こういうことで、その後の作業が進んでおると思うのです。事業団にお伺いをいたしますが、基本計画が終わって、団の方へ二月末には報告をしよう、こういう新聞報道を見たわけですが、その報告が来ておるかどうか、お伺いをしたい。
  241. 中村一成

    ○中村参考人 高知県の横浪に関しまする先生のおっしゃいました基本計画案は二月末に事業団の方に提出されておりまして、ただいま、その内容につきまして事業団内部として研究をいたしておる、検討いたしておるという段階でございます。
  242. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それでは事業団は、今後それに基づいての作業が出てくるわけですが、どういう作業に移られるか、ひとつお伺いをしておきたい。
  243. 中村一成

    ○中村参考人 この横浪基地と同時に、あと岐阜県、鹿児島県の基地につきましても計画が出されておりまして、これにつきまして研究をいたします内容につきましては、建設いたしますにつきまして、需要がどの程度のものであるか、つまりお客さんがどの程度入ってくるであろうか。それに対して今回出されているところの計画は果たして妥当であるかどうか。それから、建設いたしますにつきまして、土地の事情、特に地形その他非常に複雑なところが多いものでございますから、そういう問題、あるいは開発に伴いますところの自然保護とか災害の防止とか、そういうようないろいろな問題につきまして詳細に検討するわけでございます。
  244. 平石磨作太郎

    ○平石委員 設置、運営についての責任者としては、そういった付帯的な問題についても検討は必要かとは思うのですが、いま御答弁にありました三木基地が、すでに今年の一月から始まったというようなことですが、これが報告がなされて作業を終えて、工事に着手という時間的な面は、どのくらいかかっておったか、お知らせをいただきたい。
  245. 中村一成

    ○中村参考人 検討いたしましてからの順序を申し上げますと、事業団といたしましては厚生大臣に基本計画の承認を求めるわけでございます。厚生省とされましては、関係政府部内で研究なさいまして検討の結果、それに対して、よしとなれば承認がなされます。それから事業団といたしましては、それにつきまして基本設計の段階に移りまして、基本設計が終了いたしましたならば、今度はそれに基づきます実施設計をいたします。その間におきまして、所要の各種の調査を行うわけでございます。それが終わりましてから、いよいよ工事に着工するということであります。  それで、先生のお示しの三木の場合どうであったかということでございますが、三木の場合におきましては、マスタープランと私ども申しておりますが、基本計画案が事業団に提出されましてから、特にこの三木基地はモデルとして非常に慎重に実はやっておるせいもございまして、約一年間の検討をいたしまして厚生大臣の御承認をいただいております。それから、基本設計、実施設計を合わせまして大体一年余りかかっておりまして、したがいまして二年くらいの期間を、この間に要しておるというのが三木の実例でございます。
  246. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういたしますとマスタープランが出てきて、次の作業は大臣に対する承認申請、こういうことに運んでいくようですが、ところで三木の場合は、いま二年もかかった、こういうことで慎重にやられておられたようです。ところで、大臣にお伺いをいたします。事業団の方から承認申請が出てさましたら、直ちに大臣は承認を与えるのかどうか、お伺いをしたい。
  247. 小沢辰男

    小沢国務大臣 基本計画が出てまいりまして、それについて基本計画の承認を求める手続が来ましたら、これは事業団に任しておるものですから、事業団、いろいろ検討して持ってくるんだろうと思いますので、そうやかましいことは言わぬで、なるべく早く承認をしたいと思っております。
  248. 平石磨作太郎

    ○平石委員 お伺いをいたしますが、事業団は大臣承認に、高知県の横浪に限って、大体どの程度の時間を要しますか。
  249. 中村一成

    ○中村参考人 基本計画案が出されましたものにつきまして、ただいま検討はいたしておりますが、全国十一も基地がございますので、これを一時に実際の工事をすることはできませんので、そこで私どもといたしましては、三木の次に、どの基地から手をつけるかという、今度は実際に着手します基地ごとの順序を検討いたしておりますので、したがいまして、その順序に従いまして厚生省の方に提出いたしますので、横浪基地が二月に出ましたから、ただいま申しましたように一年以内には厚生大臣承認を出すかどうかというようなことにつきましては、まだわからないわけでございます。これから先の問題でございます。
  250. 平石磨作太郎

    ○平石委員 過去の経過を見てみますと、まず第一次指定があった四カ所については基本計画がなされ、大臣承認がすでに済んでおる。いま出ております三木にしろ、あるいは北海道、新潟、岩手、この四カ所については、五十年の十月に兵庫県について、あるいは五十年の十二月に北海道、五十一年の三月に新潟、五十一年の八月に岩手、このように年間大体二カ所承認をしておるわけです。その承認の前段階としては、福祉事業団において、それぞれこれを承認をするだけのいわゆる消化能力、こういったものを備えておると言わねばなりません。したがって、第一次指定、第二次指定、このように分かれておるようですが、高知県は第二次指定に入っておる。こうなりますと第一次指定はもうすでに大臣承認を得ておりますので、第二次指定の高知県を含めたものについて承認申請をするという作業になると思うのです。いま、どうかというようなお言葉ですけれども、これはいままでの事務能力からいったときに、私はできる、このように判断をするわけですが、どうです。
  251. 中村一成

    ○中村参考人 先生のおっしゃいますとおり、すでに四つの地区につきましては厚生大臣の承認が得られておるわけでございまして、したがって四地区以外につきまして、ただいまから厚生省にその案を出すわけでございますので、いまおっしゃいました事務的に書類を作成して提出するということでございますと——事務的といいますか、案をつくるのはともかくといたしまして、先ほど申しましたように全般的な経済的な情勢でございますとかあるいはそういう保養基地に対しますところの需要でございますとか、そういう点を、ちょっと時代が変わってまいりましたので、さらに検討を重ねる必要があるということで、全般的にいわば見直しをしておるというのが現状でございます。
  252. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大臣にお伺いします。  過日の分科会におきまして、この問題が論議されておりますが、その際に大臣も、いま事業団の方で発言がありましたと同じく消極的な御答弁のように承っておりました。いま事情が変わったというようなお言葉ですが、大臣はどう思っておられるのでしょうか。
  253. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、この十一カ所について地元の方々の協力を得て土地を取得して、一番早いのが四カ所、四十九年でございますね。そして見てみますと、私のところなんかも、だいぶ新潟県の方は安いのですが相当の投資をしているわけですね。これをいつまでも放置しておくのは、財産ですから、それはいいですけれども、利子も生みませんし、年金積立金の被保険者のためとはいいながら、利子も生まぬような金をずっとほってあるわけです。こういう不合理なことはないと思うのです。ただ、そうだけれども、やり始めて最初の計画のように百万坪とかの大きいものをつくって、人が来ないで、また赤字をうんと出すようなことになると、被保険者、事業主の負担をもらいながら赤字を出していくということになっては、急いだために、かえってよけいマイナスになってまいりますものですから、高度成長時代と違ってきて、いろいろな面で国民の利用度が落ちてくるというようなことも考えますと、そういう面では慎重にやらなければいかぬと思いますけれども、地元との約束はあるわけですね。     〔委員長退席、羽生田委員長代理着席〕 そして土地にも協力してもらったということになりますと、これはやはり順序を追って被保険者のためにやっていかなければいかぬのかな。ことに被保険者のための厚生施設が若干の赤字が出ても、これは福祉施設としての問題です。そう思います。ただ、金を出す側の事業主及び被保険者の方々が、率直に言いまして相当やかましく年金事業団に申し入れといいますか何か会議のときに言っておるようです。赤字を出すようなものは御免だぞというようなことを言っておられるようでございまして、そういう面で事業団もやりたいのに、なかなか慎重になっておるというのが実態じゃないかと思うのです。  しかし一方、いま申し上げましたように、もう何年も地元との約束をそのままにしておるということでもありますから、これは私、この予算委員会を終えて少し時間ができましたら、事業団の幹部や年金事務当局全部集まって根本的に方針を決めなければいかぬと思っているのです。そうしないと地元は期待をするのに、十年たっても、まだできないということになって大変御迷惑もかけますし、さりとて急いで何か閑古鳥が鳴くような、どえらい施設をつくってもしようがありませんし、そういう点は私自身もこれを非常に促進した側で、もう私なんか新潟県の津南基地は地元がうんと安く提供して、その金が余ったので一カ所よけいにできたような事情もありますので、そういう点も地元の各地区の状況等も十分踏まえまして、ひとつよく相談をして方針を決定したいと思うのです。その方針が決まりませんと事務当局はなかなか答えられないと思うのですよ。ですから、それまでお待ち願いたい、よく事情はわかっておりますから。
  254. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣から大変長い、御丁寧な御答弁をいただきました。先ほどの事業団の答弁の中に見直しも必要だということが出たし、大臣もいま、そういったようなことで方針決定をする。この構想が四十七年に発表されて、五十年にいわゆる全体計画というものが発表された。そして十一カ所については設置をするという方針決定は、もうそのときになされた。そして、それから事情が変わってきたというお話がございました。私は、事情は変わっていないと思う。石油ショックが起きたのが四十八年ですよ。四十七年の高度成長当時は、いわゆる構想としては出た。そして、いま御答弁にありましたように四十八年に計画発表がなされて、四十九年から買収に着手をして、五十二年の三月に買収が完了した。これはそれに基づいての執行がなされてきて、もうすでに方針に基づいて出発をしたわけです。それで経済情勢はどうかといいますと、四十八年が六・四%の成長、四十九年がマイナス〇・二の実質成長、これは、もちろん石油ショックによるところの四十九年の経済成長が落ち込んだという最悪の事態のときに着手に入った。それから五十年が三・四%の実質成長、五十一年が五・七%、五十二年が五・三%、五十三年度は七%成長ということで全力を挙げておるわけですよ。そういうような情勢を踏まえたとき、この計画の出発時点と、経済がこのように停滞をしたときとは同じなんですよ。だから事情が変わったので見直しを必要とする、あるいは、これからどうするかという方針決定をしなければならぬという理由は、私はないと思う。  これは遠大な計画であって、福祉のために全国に大きな規模での設置がせっかく計画をせられておるのですから、当初の計画においても六十年度にまず第一期工事を完了しようというような遠大な計画ですから、その間に多少の経済の伸び縮みがあったとしても、そういったようなことに惑わされて方針がふらふらするというようなことでは、いま大臣がおっしゃったように市町村長にも協力を得た、県にも御協力をいただいた、そしていまここまで進んできたときに、停滞するような方針が出るのだとかいったようなことになると市町村自体も困ると私は思うのです。だから福祉事業団の方も、何もちゅうちょする必要はない。停滞しなくても、いま言ったような事務的な一つの手続をそのまま進めてやっても二、三年はかかるのですよ。そうすると、そのうちに経済は上向いてくる、上向かなければ困るのです。そういうような時代背景が変わったということは私はないと思う。  これだけの大きな事業ですから、ひとつそういう意味で、大臣が変更することなく、むしろ積極的に推進の方に福祉事業団を鞭撻していただきたい。これは各県あるいは各関係町村も望んでおる。そして今後の七%の経済成長について公共事業の大幅なアップ、そういった面から考えても、むしろ、このことを進めることが景気浮揚の大きな一助になってくる、このように私は認識をしておるわけですので、これは強く要望をしたい、こう思うわけです。  そこで福祉事業団に、もう一つお尋ねいたしますが、高知県の場合、この計画は当初、五十四年度着手、五十七年度オープン、こういう計画であったようですが、間違いありませんか。
  255. 中村一成

    ○中村参考人 高知県の基地につきましては、ただいま先生がおっしゃったような具体的な年月のあれはないのでございます。
  256. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま私が申し上げた年度ではないのですか。そのように私は承っておるのです。ですから五十三年一月に報告をいただいたら、大臣に五十三年には承認申請をして、一年くらいの間に大臣の承認をいただいて、五十四年度からは着手という段階にいける。だから、むしろ停滞よりも、もともとの計画どおり進んでおるのだということを私は確認しておきたいと思うのです。
  257. 中村一成

    ○中村参考人 先生のおっしゃいましたような、具体的に昭和何年に横浪基地についての大臣承認を得て、それから昭和何年に着工するといったような具体的な計画は実はないのです。
  258. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それでは、わかりましたが、とにかく、その点については要望いたします。  それと大臣にもう一回、時間がないので、うんと簡単に答えてください。  いま方針を決めればとおっしゃったのですが、どうです。先ほど私が申し上げたような、いまの経済情勢はすでにもう予想されておったことだし、そう変更をするようなことではないと私は認識をするのですが、大臣、その点について一言。
  259. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そのとおりです。これを計画したのは高度成長の後ですから、しかもマイナス成長になったときに買収をやっておるわけですから、ちっとも変わっていない。むしろ不況ですから、うんと公共事業をやらなければならぬというときですので、むしろ、いいかもしれぬと思うのです。経済情勢だけから言いますと。ただ変わったのが一点あるのです。年金事業団の参与会議というのがあるのですけれども、それは金を出す側の人が集まっているわけですね。もちろん総評の代表もいますし、日経連の代表もいます。そういう方々が事業団に対して、この事業をどんどんやっても赤字を出すことはまかりならぬぞ、こう言ったものですから、事業団の方はぶったまげてしまって、これは大変だということになって、非常に慎重になっているのが事実なのです。それを知らぬと、この問題はなかなか進まないものですから。  そこで私は先生と同じような気持ちでいるわけです。しかし、さりとて主管の大事な年金の金を扱っているのですから、大赤字でも出して、また迷惑かけてもいけませんので、その辺のところをどういうふうにやれば、それぞれのところが成り立つようになるか。このまま何百億何百万坪というものではなくて、もうちょっとうまい合理的な縮小した案でいって、土地は多いけれども、それはなるべく自然として残しながら利用する方法はないのか。いろいろなことを検討してみて、参与の皆さんが不安を持たないようによく説得もして、できるだけ、これはやるべきだ、こういう方針なんです。ですから、もう少し待っていただきたい。
  260. 平石磨作太郎

    ○平石委員 一応このことについては、いまの大臣のお言葉をそのまま受け取って、進むものだと理解をいたしまして、私のこの質問は終わります。  次に、無年金の救済についてですが、もう時間が余りありませんので、急ぎ急ぎでまいります。  この無年金の救済については、今回、特例納付が行われるという形で救済の措置がとられるわけで、私はまことに結構なことだと思う。ところで今回のこの特別納付保険料について、四千円というお金はちょっと高いと思うのですが、これの根拠をひとつ簡単にお示しいただきたい。
  261. 木暮保成

    木暮政府委員 今度の特例納付に当たりまして保険料を四千円に決めました根拠は、この法案が成立いたしましたならば七月一日から向こう二カ年間窓口を開きたい、こういうふうに思っておるわけでございます。年度といたしましては三年度にまたがるわけでございますが、最終年度保険料は、今度の法律改正案で三千六百五十円にしていただくように御提案をしております。その三千六百五十円につきましては、昭和五十四年度給付改善が行われましたときには、そのスライド率を掛けさせていただきたい。それは従来の例どおりでございますが、そういう形になっておりますので、恐らく三千六百五十円というのは四千円近い保険料になるのではないかと思っておるわけでございます。  今度の特例納付、いろいろ議論がございました。あるいは罰則的に行うべきではないかという議論もあり、私ども国民年金の将来の運用を考えた場合には、罰則的な要素を入れなければならないのではないかと検討したことは事実でございますけれども、その罰則的な加味をするということはやめまして、経過期間中の一般保険料を下回らない額ということで四千円を決めさしていただいたわけでございます。
  262. 平石磨作太郎

    ○平石委員 過去二回行われた当時の現行保険料と特別納付保険料、これをお示しいただきたい。
  263. 木暮保成

    木暮政府委員 第一回は四百五十円でございます。第二回は九百円でございまして、それぞれそのときの一般保険料と同額でございましたけれども、二回目の九百円につきましては、その後一般保険料を引き上げる必要が生じまして千百円にいたしまして、逆の現象が出てまいったわけでございます。今回は罰則的な要素を加味することはやめましたけれども、逆転することはないように、それだけはいたしたいと思っております。
  264. 平石磨作太郎

    ○平石委員 行政は公平でなければいかぬ。いま局長言われたように罰則的なものではございません。少なくとも、いままで、まじめにかけた人と、いままでかけてなかった人の救済において不公平が出てはならない。これは前二回のときも、そのことであったと思うのです。今回もまた同じ、そのことなんです。当時は現行保険料と納付保険料に差異がなし。今回は二千七百三十円という四月からの保険料に千二百七十円を足した四千円、しかも、それは昭和五十五年度における三千六百五十円に物価スライド、こういう説明なんですが、私はそういう差異が出てきておることが公平のためにという理屈がわからぬので、そのことをひとつ。
  265. 木暮保成

    木暮政府委員 第二回目の特例納付につきましては、一般保険料と同じ額の九百円でございました。当時と現在と事情が違いますのは、当時は毎年毎年一般保険料を上げるという状況ではございませんで、第二回の特例納付をいたしましたときには、特例納付の期間中は一般保険料は九百円で済むという見通しであったわけでございますが、実際には財政状況からいたしまして後から一般保険料を引き上げたわけでございます。今回は、国民年金につきましては、もう毎年保険料を上げなければならないことはわかっておりまして、そこが前回と違うわけでございます。御提案しておりますとおり、最終年度は三千六百五十円プラスアルファの保険料になることが見込まれておりますので、原理的には前回と同様、一般保険料を下回らない額にさしていただきたいということでございます。
  266. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今回、救済措置をとったという理由、これは前二回のときに効果があったから、またやるんですか、効果がなかったからやるのか、どっちなんでしょうか。
  267. 木暮保成

    木暮政府委員 なかなかむずかしい御質問でございますが、前二回特例納付を実施いたしたわけでございます。これはかなりの方が特例納付に応じて追納をいたしております。  第三回目の無年金対策ということでございますが、さきの国会でいろいろ御議論がございました。私どもといたしましては、率直に申し上げまして第三回目の対策をとることになりますと、こういう対策は一定の期間を置いて繰り返されるのではないかという印象はどうしても強くなろうかと思います。そういうことになりますと、若いときから苦しい中を保険料を納めるよりも、直近の特例納付に乗ればいいんだということになってしまうわけでございます。そういたしますと、厚生年金等の、事業主に保険料納付義務が課せられておるのと違いまして、二千五百万人もの国民の方々に自主的に納めていただくことを支えとしておる制度でございますので、特例納付に乗ればいいんだということになると、国民年金自体の運営ができなくなるということでございまして、できれば前二回も今回限りということでやったわけでございますので、気が進まなかったわけでございます。一方、国会の御議論もございましたし、その後、国会の御議論の線に沿って実態把握に努めてみますと、やはり、かなりの方が無年金になる可能性があることも事実でございます。それは個々の人にとって大きな問題でございますので、今回、三回目を踏み切ったわけでございます。少なくともペナルティーをかけるということはいたしませんまでも、一般保険料よりも割安感が出るというようなことだけは避けさせていただきたい、こういうことでございます。
  268. 平石磨作太郎

    ○平石委員 今回のこの処置によって、実際そういった無年金者が、さかのぼって、いまの特例保険料をかけて、最高どのくらい負担を二年間でやらねばならぬか。
  269. 木暮保成

    木暮政府委員 昭和三十六年に、この制度ができたわけでございますが、この制度ができてから一遍も保険料を納めない。それから前二回の特例納付にも応じなかったという極端な場合でございますが、その場合には約十一年分で五十二万八千円の保険料を納めていただくことになるわけでございます。
  270. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま五十二万八千円、ざっと五十三万円ということになるわけですね。ところで、これを現在まじめにかけていらっしゃった方々は、これは私の計算ですから正確にはわかりませんけれども、三十五歳以上の方で、三十六年以降十万九千八百円、当時三十五歳未満の方で十万四千二百五十円という数字になるわけです。そうしますと、五十二万八千円とでは四十二、三万の差が出てくるわけです。この四十何万の差を、ここ二年や三年の間に、いまのようなやり方にしてやった場合に果たして救済の行政効果が上がるかどうか。私はこのことが、よう払わないとかいったような形で効果が上がらないようなことに結果的に終わりはしないかというような気がするわけです。  ということは、時間がないので申し上げますが、ここに毎日新聞の記事がございます。これで各市町村長も、このことには非常に心配をして、それぞれ無年金者について調査をしておるようです。ここに出ておりますのは、本年二月、宮城県の八市町村が調査をした。ところが当時八市町村に無年金者が千三百人いた。その千三百人の中で、無関心、全く知らなかったというものを含めて約半分おる、こういうわけですね。それから保険料が払えない、こういう理由で加入してない者が二〇%、こういう調査結果が出ておるわけです。こうなりますと、この二〇%という方は普通の保険料ですらよう払わない。知ってはおるけれども、よう払わないという状態。それを今回、この四千円という、ペナルティーではないにしろ何にしろ、いま申し上げたように四十何万も違ってくるというような状態のいわゆる救済処置をとってみても、効果は果たしてどうかな、こういう気がしてならぬわけです。  だから私は、さっき前回のは効果があったから、さらにやってやろうというのか、効果がなかったから、やはりやらぬといかぬ、無年金者を放置するわけにもいくまいということかと聞いたわけですよ。それはともかくとして、こういう形で理屈は立てられたとしても、現実に普通の保険料ですら二割の方がよう払わないという状況の中で、早く入ってください、早く入ってくださいと言うても、なかなかむずかしいのじゃないか、私はこういう気がしてならぬわけですが、その点はどうですか。
  271. 木暮保成

    木暮政府委員 無年金の可能性のある方が低所得者の人も多いということもあろうかと思いますが、これは法律の規定どおり月々の保険料を納められた方にも低所得の方が当然あるわけでございます。年金を将来の楽しみにして無理をして納めてきておられるわけでございます。ですから、そういう人とのバランスを考えまして、今度の場合について特別の配慮をするということは、先ほど申し上げましたように国民年金全体の運営に大きな支障が出るのではないかと考えておるわけでございます。  それから、五十万の金というものは本当に大きな金額だとは思いますけれども年金を買うというような考え方は一番いけないと思うのでございますが、仮に、そういう意味で申し上げますと、五十万納める方は二年間で保険料は戻るわけでございます。六十五歳から給付を受けられますと、一般の平均余命から言いましても男子七十二歳、女子七十七歳でございます。六十五歳まで生きられた方の平均余命は、もっと長いはずでございまして、そういう意味では、かなり高い金額の印象もございますけれども、一方では、それに見返りになる給付はかなり大きなものでございます。そういう点を御理解いただければ、御本人も努力していただくかいはあろうかと思いますし、また、お子さんや親戚の方が手伝うというかいもある問題だろうというふうに思っております。
  272. 平石磨作太郎

    ○平石委員 事情はよくわかります。事情はよくわかりますが、お金持ちだけが救済されて、実際、加入したいという方が支払いができなくて、結局、救済処置からまた再び漏れるということに陥らぬようにするために、私はいま申し上げておるわけでして、そういったいわば低所得の方々が加入できて払いができるような何かの手だて、あるいは保険料についての貸付金をするとかいうような手だては考えておりますか。
  273. 木暮保成

    木暮政府委員 結論から先に申し上げますと考えておりません。と申しますのは、その現役の被保険者の方も苦しい中から払われている方がたくさんいらっしゃるわけでございます。法律の規定どおり納めなかった、いろいる事情はあろうかと思いますけれども昭和三十六年以来一遍も保険料を納めない、過去二回の特例納付にも参加されなかったという方が貸付制度を利用できるということでは、先々、特例納付がまたあるだろう。そのときには貸付金までしてくれるのだということになりますと、やはり国民年金の全体の運営というものに大きな支障が出てくるのではないかということでございまして、貸付金をつくるという考えは持っておりません。
  274. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大変遅くなりました。ところで、いま、お話をお聞きしまして私、感じたことは、ペナルティーではありません、罰則ではありません、こうおっしゃる口の下から、過去二回もやったのに入らないのだと、これはやはり局長の頭の中に、そういう罰則的な考え方が私はひそんでおると思う。やったにもかかわらず入ってくれぬ、入ってくれぬと言う。時間がないから私は議論はできませんが、こうなりますと、年金権とは一体何か。強制加入として法律で決めて、国民に入りなさい——入りなさいじゃない、強制加入ではありませんから。そこまで論議が発展しなければ事足らぬことになってきます。だから私は、年金権の問題とか強制加入の法的な考え方はどうか。行政責任の問題はどうか。これは単なる行政サービスなのか。入らない者は入らない者でだめだ。だからこうだという形の低所得の方々に対する考え方では困る。そこまで論議をしたいのですが、時間がありませんから終わりますけれども、やはり、いま申し上げたような格差は、前の二回と比べてはっきり出ておるのです。ここをひとつお考えいただいて、大臣どうですか、ひとつ最後の締めくくりのお答えをいただきたい。
  275. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私の尊敬する、しかも非常に専門家でいらっしゃいます平石先生のお言葉でございますが、私ども、いろいろ考えると、この第三回目というのは余り気が進まなかった問題でございますけれども、せっかく国会におけるいろいろな御要望、御審議等もあったので実行をいたしたわけでございます。せっかくのお話でございますが、この際はどうしてもひとつ、より高次元の観念に立った公平観というものを御理解いただきたいのでございます。  なお、実際やってみまして、本当は、もう少しきちっとした調査といいますか、統計ができておって、なぜ入らないか、入らない原因がどういうところにあったのかというような調査が行き届いておればよかったと思いますけれども、そういうデータもない今日です。それから、中にいろいろなばらつきがございますので、いま局長が言いましたように、今度また三回目をやった。それで一遍に困る人には五十何万貸してやったということになりますと、実際面で一概に、そう全部やるというわけにもなかなかいきませんし、そうすると今度は、一生懸命になって入ろうとしている人が、どうせまた国会でも、これは気の毒だというので四回目、五回目が出てくるだろうから、それじゃ、やめておこうかなんということになっては、国民年金は本当に成り立ちませんから、御理解をいただいて、今度やらしてみていただきたいと思うのでございます。
  276. 平石磨作太郎

    ○平石委員 以上で終わりたいと思います。
  277. 羽生田進

    ○羽生田委員長代理 次回は、来る四月六日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十三分散会