○工藤(晃)
委員(新自) 本日は、
勤労者財産形成促進法の一部を
改正する
法律案について幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
最初に、
政府の方からちょうだいいたしました「
勤労者財産形成促進制度の現状について」という冊子の中に「近年の
経済成長により
勤労者のフローとしての所得については
改善がみられたが、
貯蓄や持家といった
資産の形成面では著しく立ち遅れている現状に鑑み、
勤労者の豊かな安定した生活のために、
勤労者の
自助努力による
資産形成を促進することが
雇用の安定、
社会保障の
充実と並んで重要である。」こういうふうな御趣旨のことを書いてございます。これは御趣旨については全く賛成でございます。しかしながら、このたび出てまいりましたこの促進法の一部を
改正する
法律案の中で、
勤労者財産形成基金制度の創設、この
問題点と、
進学融資制度の創設、この二点について、このままの
考え方あるいは
制度をそのまま促進した場合に、幾つかの
問題点があるように感じるわけでございまして、これは将来いろいろな矛盾を生み出していくもとになる
危険性があるのではないか、かように
考えておりますので、その
問題点について、まず最初に幾つか並べまして、それについてお答えをちょうだいしたい、かように
考える次第でございます。
その第一点といたしましては、この
財形基金制度、これは主として具体的には大
企業及び大
企業勤労者が
対象になる
制度でございます。いままでございました中小零細
企業に対する
財産形成の諸
制度は普及率が非常に低い。これは
政府答弁においても、いままでるる述べてこられたとおりでございまして実効が上がっていない。にもかかわらず、一方において今度はまた新しい
基金制度をおつくりになろうとしておられる。この
対象が今度は、いま申し上げましたような大
企業勤労者が具体的には
対象になっていく。こういうことが一点、将来同じ
勤労者間の格差の
拡大につながっていくのではないか、かように
考えるわけでございまして、やはりこの問題は、将来において
社会保障を底上げしなければならない、あるいは
充実していく場合に
阻害要因となる
危険性を持っているのではないかという点を非常に危惧いたしているわけでございます。これは例を別に挙げますと、たとえば
医療制度の中で健康保険組合が健康保険
制度の抜本的な
改正、すなわち
社会保障的健康保険
制度をつくる場合の大きな
阻害要因になっているのと全く同じような形のものが生まれてくるのではないか。別の形で、そういう形になるのではないかという危惧を持っているわけでございます。
第二番目には、
勤労者の
財産形成を真剣に
考える場合に、
政府はもっと真剣に都市政策に取り組んでいただかなければならない。そうでなければ
勤労者の
財産形成の
中心でございます持ち家
制度の促進につながっていかない。ですから今後ともに都市政策に十分な御配慮をしていただきたい。これが第二点でございます。
第三点は、
財形基金の資金が全額
事業主負担でございまして、趣旨でございます
自助努力の促進ということについては、全額
企業主が
負担するということについては、いささか、その
自助努力を促進するという趣旨から反するのではないか、かように
考えるわけでございます。
それから第四点としては、その是非は別といたしまして、公的サービスのためのいわゆる
優遇措置と言われている医師
優遇税制すら、ただいま不公平
税制、
優遇税制を是正しなければならぬ、こういう世論が非常に高まりつつございます。そのような時代に新たに、たとえ、その
理由は別といたしましても非課税の特例を新設することには間違いない。そういうことが不公平
税制の是正あるいは
優遇税制の是正という世論に、ある意味において逆行していくのではないかという懸念がございます。そういう点が第四点でございます。
第五点は、こういう
制度をどんどんつくることによって行政の複雑化は当然進捗してまいると思います。また、一方においては省力化、合理化という行政改革が主張されている現在に、そういう行政上のいろいろな措置が逆行していくということは、ある意味において、できるだけ、そういうものに対する今後の実際上の配慮をしていかなければならない点ではなかろうか、かように
考えるわけでございまして、このたび、もう一点出てまいりました
進学融資制度の新設も、やはり文部省でいろいろなそういう
融資制度もつくられている。他の省においても、こういうものがどんどんつくられていくということになれば、たとえば他の農林省あるいは郵政省あるいは他の行政官庁、いろいろその立場、立場で
進学ローンを新設していくというふうな傾向が今後ともに派生する前例をつくれば、やはりこれは行政改革あるいは行政上の省力化という問題と逆行していく
可能性がある。そういう点を
指摘いたしたいと思うわけでございます。
ただいま、るる申し述べましたような点について、まず、その第一点であります。
制度上は中小零細
企業の方にも門戸は開かれていると言いながら、実際には、そういう中小零細
企業には成熟していかないであろう条件であります
財形基金。この中で
勤労者のまず第一番に
財形が立ちおくれている、そういう資料の中には、大
企業勤労者だけの資料ではなくて中小零細
企業の資料も
一緒に含まれたものをまず統計的におとりになっていらっしゃる。そういう点において中小零細
企業にも、それが普及しなければならない、そういう目的から、いささか反する、ある意味において大
企業勤労者が
優遇されていくであろう
制度には、いささか合目的ではないという
考え方を持っておりますか、その点について御質問をさせていただきます。