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1978-02-16 第84回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十六日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 木野 晴夫君    理事 越智 伊平君 理事 住  栄作君    理事 竹内 黎一君 理事 羽生田 進君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 大橋 敏雄君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    大坪健一郎君       大野  明君    小坂徳三郎君       津島 雄二君    戸沢 政方君       友納 武人君    葉梨 信行君       橋本龍太郎君    山口シヅエ君       湯川  宏君    安島 友義君       枝村 要作君    大原  亨君       金子 みつ君    川本 敏美君       田口 一男君    矢山 有作君       草川 昭三君    西田 八郎君       浦井  洋君    田中美智子君       工藤  晃君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小沢 辰男君  出席政府委員         厚生政務次官  戸井田三郎君         厚生大臣官房会         計課長     持永 和見君         厚生省公衆衛生         局長      松浦十四郎君         厚生省環境衛生         局長      山中  和君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省薬務局長 中野 徹雄君         厚生省社会局長 上村  一君         厚生省児童家庭         局長      石野 清治君         厚生省保険局長 八木 哲夫君         厚生省年金局長 木暮 保成君         厚生省援護局長 河野 義男君         社会保険庁年金         保険部長    大和田 潔君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      窪田  弘君         国税庁直税部所         得税課長    小野 博義君         労働大臣官房統         計情報部賃金統         計課長     小野 良二君         労働省労働基準         局監督課長   小粥 義朗君         労働省職業訓練         局管理課長   名取 昭夫君         日本国有鉄道共         済事務局長   浜田 卓實君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 二月十日  辞任         補欠選任   古寺  宏君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     古寺  宏君 同月十六日  辞任         補欠選任   浦井  洋君     不破 哲三君     ————————————— 二月十四日  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第二七号) 同月十三日  失業対策事業就労者通勤交通費支給に関する  請願外一件(浅井美幸紹介)(第九〇六号)  同(池田克也紹介)(第九〇七号)  同(石田幸四郎紹介)(第九〇八号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第九〇九号)  同外一件(斎藤実紹介)(第九一〇号)  同外一件(大野潔紹介)(第九六五号)  同(浅井美幸紹介)(第一一一四号)  同(池田克也紹介)(第一一一五号)  同(小川新一郎紹介)(第一一一六号)  同(長田武士紹介)(第一一一七号)  同(武田一夫紹介)(第一一一八号)  同(中川嘉美紹介)(第一一一九号)  保育事業振興に関する請願石田幸四郎君紹  介)(第九一一号)  同(石橋政嗣君紹介)(第九一二号)  同(上原康助紹介)(第九一三号)  同(佐野進紹介)(第九一四号)  同(登坂重次郎紹介)(第九六七号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第一一二〇  号)  児童福祉法に基づく学童保育制度化に関する  請願池田克也紹介)(第九一五号)  同(草川昭三紹介)(第九一六号)  同外一件(嶋崎譲紹介)(第九一七号)  同(鈴切康雄紹介)(第九一八号)  同(千葉千代世紹介)(第九六六号)  同(池田克也紹介)(第一一二一号)  同(小川国彦紹介)(第一一二二号)  同(木原実紹介)(第一一二三号)  同(水田稔紹介)(第一一二四号)  国民健康保険制度等に関する請願加藤常太郎  君紹介)(第九一九号)  消費生活協同組合育成強化等に関する請願(  菊池福治郎紹介)(第九二〇号)  同(大柴滋夫紹介)(第九六四号)  同(坂本恭一紹介)(第一一〇八号)  同(武田一夫紹介)(第一一〇九号)  同(中川嘉美紹介)(第一一一〇号)  同(林大幹君紹介)(第一一一一号)  同(米田東吾紹介)(第一一一二号)  日雇健康保険制度改善に関する請願渡部一  郎君紹介)(第九二一号)  療術の単独立法化阻止に関する請願羽生田進  君紹介)(第九六八号)  戦時災害援護法制定に関する請願安島友義君  紹介)(第一一〇二号)  同(渋沢利久紹介)(第一一〇三号)  同(村山富市紹介)(第一一〇四号)  同外一件(森井忠良紹介)(第一一〇五号)  医療保険制度改悪反対等に関する請願佐野  進君紹介)(第一一〇六号)  同(竹内猛紹介)(第一一〇七号)  生活協同組合育成に関する請願甘利正君紹  介)(第一一一三号)  腎臓病患者医療改善等に関する請願安島友  義君紹介)(第一一二六号)  同(田口一男紹介)(第一一二七号)  同(田邊誠紹介)(第一一二八号)  同(渋沢利久紹介)(第一一二九号)  同(羽生田進紹介)(第一一三〇号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一一三一号)  同(森井忠良紹介)(第一一三二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第二七号)  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 木野晴夫

    木野委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。羽生田進君。
  3. 羽生田進

    羽生田委員 過日、厚生大臣所信表明をされました内容につきまして、二、三お伺いしたいと思いますが、私は、「第一に」と言われた国民健康づくり、このことにつきまして御質問を申し上げたいし、私の意見を申し上げたいと思います。  何といいましても国民の最大の幸せは健康で長生きということでございまして、当然それに向かって政治は行われなければなりません。ところが、生きているとか健康であるということにつきましては余り関心を持たないで、ほっといても生きているのだという考え方で、いままではおったように思いますが、今回、厚生大臣が思い切って健康づくりということを厚生省のことしの目玉商品的な政策としてやるのだ、思い切って、ずばり健康づくりと言ったことに対しまして、私は小沢厚生大臣の意図に対しまして大変、敬意を表する次第でございます。  しかし、健康づくり厚生省だけでできる問題ではない、かように私は確信いたしております。しかも、一番大きな担い手は発育盛り子供たちを預かっている文部省だと私は思うのです。ところが、過去におきましても文部省は、子供たち健康づくりに対しまして積極的にしたことがないと私は思うのです。もちろん学校保健問題ということで取り上げてはおりますものの、ほっといても育つのだという考え方で、非常に消極的であった、こういうことを私は大変残念に思っております。  そこで、きょうは特に文部省おいでを願いましたが、実は私は文部大臣に、せめて政務次官に来ていただきたいと思ったのです。というのは、いままで文部省の、私に言わせれば不満足な学校保健になじんできた文部省方々質問してお答えしていただくなら同じことだ、こう私は思って、文部省のそういう空気になじまない政務次官本当に新しい気持ち政務次官さんにおいでになっていただいて、そして本当文部行政の中で、いかに学校保健が重要であるかを認識していただき、文部省の中の空気を一新してもらいたい、私はそういう気持ち政務次官おいで願いたいと思ったのですが、いろいろな公務の御都合で、おいでになれないということでございますので、私、これから健康づくりにつきまして厚生大臣の御意見等も伺いますけれども文部省の方は、せっかくおいでいただいたのですけれども、私はあえて質問はしないと思いますので、お聞きをいただきたい。  わが国の文部行政基本はどうかと聞かれたときに、従来、知、徳、体、三位一体云々のことを必ず言われているのです。これは明治時代の古い文教行政だと私は思うのです。今度こそ思い切って、丈夫な健康な子供育成して、たくましく体を鍛えて、将来の日本を背負って立つ若者をつくるのだ、あわせて知力をつけさせます。こういうような方針を文部省はぜひ打ち出していただきたい。これを冒頭文部省方々にはお願いをしておきます。  実は私も四十年にわたる学校医生活を経験しておるのです。いまでも、もちろん健診等はしませんけれども、ときどき学校へ行って校長に会い、養護教諭に会い、保健室を訪ね、あるいは教室を回って子供たちといろいろな話もしてくるのです。また、PTAに行って親とも話し合いをします。四十年の経験の中でも、うちの子供は体は弱くてもいいから、うんと頭がよくなるように教育してほしいなんと言う親は一人もいない。多少、知力は劣っても丈夫な子供に育てていただきたい、これを願う親がほとんどすべてなんです。したがって、文部省学校保健に対して本当に真剣に考え直していただきたい。これを特に冒頭文部省からおいでの方に申し上げて、大臣あるいは政務次官その他文部関係方々に、ぜひひとつ、文部省基本的な考え方子供たち健康づくりということに、本当に力を尽くしていただきたいことをお願いを申し上げます。  そこで、本論に入るわけでございますが、冒頭申し上げましたように、厚生省だけでは健康づくりはできないということで、特に小沢大臣に御要望申し上げてお願いしたいのは、いま言った文部大臣あるいは労働大臣あるいは環境庁長官なり、あるいは科学技術庁長官、さらには栄養関係食生活関係等を考えまして農林大臣とか通産大臣、いわゆる関係大臣健康づくり閣僚会議でしょうか、あるいは健康づくり閣僚懇談会でしょうか、そういうものをぜひ設置していただいて、横の連絡を密にして、今後の健康づくりをしていただきたい、さらには、福田内閣の大きな柱として、健康づくり国民運動というところまで持っていっていただきたいと思っておるのですが、それに関しまして大臣の御意見を伺いたいと思います。
  4. 小沢辰男

    小沢国務大臣 羽生田先生の御意見のとおりだと私は思います。厚生省のいまの行政機構のいろいろな分担から申しまして、厚生省だけで国民健康づくり運動というものはできないだろうと思います。特に、文部省学校教育における協力がなければ成果は上がらないことはおっしゃるとおりだと思いますので、いま言われましたような、国民健康づくりというのが福田内閣厚生行政の中での最も大きな目玉であるわけでございますから、各省とも十分協議をいたしまして、また総理の御了解も得て、先生のおっしゃるような方向で各省協力し合うような体制を検討していきたいと考えます。
  5. 羽生田進

    羽生田委員 実は、前の渡辺厚生大臣にも私はその点をお願いをして、何とか閣僚会議をつくりたい、こういう御希望であったのですけれども、私は当然そういう会議が発足したと思っておったのですが、実はきょう質問するに当たりまして、昨年の閣議その他のことで私が聞きました範囲においては、そういうのはスタートしてなかった、こういうことでございますが、そうでございますか。  そこで、健康づくり国民運動というところまで伸ばしていきたいので、私は一つのキャッチフレーズをつくったんですけれども、丈夫に生まれてすくすく育って健やかに老ゆる、こういうことで、ぜひしていただきたい。だから特に、丈夫に生まれてということになりますると母子保健、乳児の保健、こういうことになりますし、健やかに老ゆるということになりますと成人病その他を含めましての老人保健という問題になってくるわけでございますが、すくすく育つというところは、どうしてもこれは文部省本当に真剣になってやっていただかなくちやならない、こう思っておりますので、一層その点をひとつ、特に厚生大臣にもお願いをして、協力をしてやっていただきたいと思います。  それから、今度は具体的な一つの問題でございますが、健康づくり一つ施策の中に、市町村保健センターをつくる、こういうことであって、初年度百カ所つくる、こういうような予算的な措置等も講じてございます。また、健康増進モデルセンター設置するとか、あるいは保健婦設置する、こういうふうなことも予算の中に入ってありますが、従来から地域には保健所がございます。そのほか母子健康センター、これらもあります。また、日本医師会が提唱して各地にできました地域保健調査会、こういうものもありますし、また各地域にも、そういう健康づくり的な会合やら調査会やら、いろいろなものができておると思うのですが、それらとの関連ですね、これをどうされていくか、お伺いしたいと思うのです。
  6. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 ただいま先生お話しいただきました市町村保健センターというのを来年度から新たに設置するという考え方を打ち出したわけでございますが、これは、いわゆる対人保健サービスというものの中には、先生ただいま御指摘のように、特に、いわゆる伝染病対策というのと違って、たとえば先ほどの、すくすく育つ赤ちゃんということからいいましても、まず生まれる前のお母さんの健康をきちんとしなければいかぬ、こういうこともございますし、あるいは老人の高血圧、脳溢血、心臓病といったようなものは、いわゆる地域に密着したところで、いろんなサービスを行うというのが一番実情に即し、効果が上がるであろう、こういうふうな考え方のもとに各市町村保健センターというものをつくる。そうして、これが各市町村におきます住民のニードに密着して、いわゆる保健指導あるいは衛生教育をやる。それからまた健康診査予防接種などを行うにも、場所がないということがございますので、そういうのにも御利用いただく、あるいは住民がみずから組織活動をやるための拠点にもなる、そういうあらゆる意味に使える保健センターというものを地域に密着してつくりたい、こういう考え方でございます。  そうしますと、一方、保健所との関係はどうなるかということでございますが、保健所は、まず第一に、技術的レベルが非常に高いわけでございますので、そういった市町村のいろんな仕事をするのに対する技術的な指導をする。それからなお、市町村だけではできない、もっと高度の内容施策があるわけでございますが、そういったものにつきましては、保健所の高度な機能技術というものを働かせる。それから、単に保健センター保健婦さんを中心としてやるだけじゃなくて、医師あるいはほかの技術者連携活動をしなければならぬというようなむずかしいものにつきましては、これは保健所中心でやっていく、そういうことで、保健所指導中心にし、さらうみずから行うべきものを行うという関係で考えてまいりたいと思います。  それからもう一つ母子保健センターというのがございますが、これも、できる限り母子だけにとどまらず、一般住民の、もちろん母子も含めまして衛生活動をやるというように将来、衣がえをしていくということを考えまして、これも市町村保健センターと同じように、いろいろなあらゆる部門に活躍できるようなセンターに衣がえをしていくということも計画しておるわけでございます。  それからなお、そういうふうな活動をする場合に、先生も、いま御指摘ございましたように来年度の予算の中には、各市町村健康づくり推進協議会といったようなものをつくっていただきまして、そして各市町村において、どういうことをどういうふうに進めていくのが最もその市町村にとって効果的であるかということを、そういったお医者さんの方あるいは学校方等を含めまして検討して、しかもそれを有効に生かしていくために協議会をつくるということに私ども補助をするという予定をいたしております。なお、これにつきましては全市町村補助をいたす予定をいたしておるわけでございます。なお当然、既存のそういう委員会のようなものがあるところがあるわけでございますが、もちろん、そういうものとダブルにつくるということは考えておりませんので、従来からあるものにつきましては、それがさらに強化されるよう補助をするというような考え方でございます。  以上でございます。
  7. 羽生田進

    羽生田委員 五十三年度に百カ所と書いてあります。が、その百カ所というのは、どういう基準で、どういうところを選ぶのか、具体的なあれをお聞かせいただきたいと思います。
  8. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 まだ具体的にお示しできる実施要綱というのをつくってないわけでございますが、一応の考え方といたしましては、市町村が自分でやりたいということが第一前提でございます。それから第二の前提として、そのやりたいということの中に、たとえば保健婦さんが当然いるとかいないとか、そういうことも含めて、そこでやりたいと言われたところが、十分私ども予定している市町村保健センターとしての活動をなし得る客観的な条件が備わっているかどうかということを含めて判断をいたしたいというふうに考えております。
  9. 羽生田進

    羽生田委員 それから、保健婦設置ということがあるのですけれども、従来も、保健所保健婦あるいは市町村国保保健婦、これらがなかなか思うように手を携えてやってない。そこへもってきて、また保健センター保健婦、また何かの一つの新しい組織を生むような気がいたしまして、これらの調整はどうするか。これは、先ほどのいろいろな調査会なりあるいは相談所なり保健所なり、そういう組織がある、そこへもってきてまた保健婦が、そこにそれぞれの独立した何か組織ができるということになると、せっかくの健康づくり不健康づくりになりはしないかという私は心配があるのですが、そこらの点を、もうちょっとお聞かせいただきたい。
  10. 松浦十四郎

    松浦(十)政府委員 保健婦設置といいますのは、まず第一に、従来いわゆる国民健康保険保健施設活動の一環として保健婦を持っておったわけでございます。これは、市町村国民健康保険保健婦活動をやっております場合に、どうしても従来から、国民健康保険保健婦であるのだから国民健康保険の被保険者健康対策をやるというようなふうに限られておった時代がございました。しかし、実際に地域活動いたします場合に、この方は国民健康保険の被保険者だから保健婦さんが訪問する、しかし、その隣の人は国保の被保険者じゃないから行かないというのは非常におかしいので、一般住民の方に対してもサービスをするように次第になってきた、こういうような時代の推移がありまして、そういうことから国民健康保険の方も必ずしも被保険者のみに限らないというような指導をやってきたわけでございます。  しかし本来、私ども考えますのに、本当衛生行政あるいは衛生サービスというのを行うのは、市町村におきましても、それを専門としておりますところの衛生担当部局に属していただいて、そしてそこで活動した方がはるかに、別の言い方をすればもちはもち屋というようなことがあるというふうに従来から考えておったわけでございます。そういうことから、この機会国民健康保険に所属しておられる保健婦さんに市町村のいわゆる衛生担当部局の方へ配置がえをしていただきまして、各都道府県、市町村と一貫した衛生行政の流れの中で保健サービスをやっていただくというのが最も適当であろうということで、ここに申しております保健婦設置というのは、従来の国民健康保険の方に所属しておりました保健婦さんに、こちらの衛生関係の方へ配置がえをしていただきまして、衛生関係部局のルートで仕事をしていただく、そういう意味合いが大部分でございます。  なお、先ほど申しました市町村保健センターというのは、そういった市町村におられる保健婦さんが活動をするのに、いままでのように町役場の一カ所に机を置いて、そこに座っているというのでは保健婦活動をやるのに非常に不便である、そういうことから、この市町村保健センターというのを活動の場の中心にする、そういう意味合いで、この保健センターというのをつくっていただきたいというように考えておるわけでございます。
  11. 羽生田進

    羽生田委員 それから、これからの健康づくりということになりますと、もちろん疾病予防というようなことも大変重要な役割りではございますけれども、私は、日常食生活、これが、じみではございますけれども、一番関心を持ってやっていただかなければならないことだろうと思うのです。病気になってから、血圧が高くなってから、どうのこうのというのは手おくれなんです。血圧が高くならないような日常食生活、これが私は一番大事だと思うのです。そういう点で、栄養問題ということを私はここで大きく取り上げて、栄養問題を大きく拡充強化していただきたい、こう思うのです。それには何といっても、全国に何十万人という栄養士がおると思うのですが、この人たちの資質の向上とか、あるいは地位を確保してやるとか、何か栄養士対策というようなものを、これを機会に一段と飛躍していただきたいと私はは思うのです。  最近、これは私の誤りかもしれませんし、聞き違いかもしれませんが、何か公衆衛生局栄養課、これの存置の問題とかあるいは名前を変えるとかいろいろなうわさを実は聞くのですが、私は、いまこそ栄養課を非常に強力なものにして、国民日常生活の中に食生活という大きなものを植え込んでいく、これがこれからの健康づくり本当の基礎だと思うのです。その点に関してひとつお答えいただきたいと思うのです。
  12. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、この保健センター国民健康づくりをやるに当たりましても、個々の保健婦を総合的に衛生系統に持ってきて、保健センター中心に大いに活動をしていただくと同時に、いま先生がおっしゃったような栄養士活用ということを十分考えていかなければいかぬと思っております。したがって、健康づくり推進運動の目的の中に挙げましたような、食生活に対する問題やら、あるいは肥満児あるいは婦人の貧血の問題やら、そういうことをいろいろ考えていきますと、栄養士活動にまつところは相当大きいと思いますので、積極的な活用を図っていきたいと考えております。これが第一点。  第二点は、栄養課の名称、呼称について省内で意見のあることは事実であります。これはなぜかといいますと、栄養課というのは栄養だけを扱うような印象を与え過ぎますので、むしろ栄養指導というものを中心にしながら健康の増進ということも考えますと、栄養健康指導課といいますか、そういうような名前にしたらどうだとかいう議論があることも事実でありますが、私は名前にこだわらないのでございまして、栄養課は従来どおり、いろいろ歴史的な経過等もありますし、また対外的に与える印象、それぞれの栄養士さんの御希望等もいろいろ勘案しながら、名前を変えることだけが能ではありませんで、問題は、栄養士の社会的あるいは国民的な活動拠点として、いかにその機能を発揮するかということの方が問題だと思いますので、十分御趣旨を体しまして今後とも努力をいたしたいと思います。
  13. 羽生田進

    羽生田委員 時間がありませんので、もう最後になりますけれども健康づくりの中にがんの問題が大きく考えられると思うのです。国民全体の死亡率からいえば第二位になっておりますけれども、三十歳から六十歳、人間としての一番の働き盛り、家庭においても地域においても、あらゆる面で一番大事な年齢の時期をとりますと、最高の死亡率を持っておるがんなんです。ところが、がんに対しましては、もちろんまだ原因もはっきりしてない、治療法の的確なものもない、こういう時代でございますので、いまのところ、どうしても早期発見、早期治療、これが最良の方法だと思うのです。したがって、早期発見というと自覚症状がない時分に初期のがんを発見するということでございますから、ある程度集団検診、しかも、ただ希望者だけということでなしに、相当強く集団検診をする以外にはないと思うのです。  ところが、最近は集団検診を受ける人たちが固定化の傾向があるわけです。毎年同じ人が診てもらう、新しい人が検診を受けない、こういう傾向にあるものですから、何とか集団検診をもっと広く広範囲にできるような方法を講じなければならないと思うのです。  それから、集団検診でいままで一番努力してきたのは日本対ガン協会なんです。集団検診全数の約六〇%というのは日本対ガン協会が実際にやってきたのです。ところが、これはもちろん国あるいは県、市町村補助を得てやっておりますものの、どうしても民間団体ですから、運営その他を考えますと、相当の患者負担いわゆる検診者負担、受診者負担が相当かさんでくるのです。そうするとやはり検診がしにくい、こういうことにもなりますので、この対ガン協会の検診事業に対して国からの大幅な援助を、ぜひしていただきたい、これをお願いするわけでございますが、それに対しましてお答えをいただきたいと思うのです。
  14. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるように、目下のところ、がんの対策としては早期発見、早期治療ということが最も大事でございますし、そのためには検診が普及されるということが最も必要なわけでございます。その検診について積極的に民間団体として御協力をいただいております対ガン協会の検診につきまして、私どもとしては来年も相当増額するようになっておると思いますが、なお一層努力をいたしまして、早期発見、早期治療に役立つような検診体制の整備に努力をいたしたいと考えます。
  15. 羽生田進

    羽生田委員 重ねてお願いするのですが、いま、とかく暗いようなことが多い時代ですから、せめて明るい政治ニュースとして、健康づくり閣僚会議ぐらいはぜひスタートさせていただきたい。これを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  16. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大原亨君。
  17. 大原亨

    ○大原(亨)委員 国会審議に入るに当たって、若干基本的な問題を質問したいと思います。厚生大臣は、ふさわしくはないと思うが、総理大臣になったつもりで最初は答弁してください。  第一、この予算の編成状況を見ていると、これは高度成長に逆戻りをしたのではないか。あなたも予算委員会の審議を通じて討論をお聞きになっておると思うのですね。はしょって話をするわけです。が、あなたの親分筋に当たる田中内閣のとき、昭和四十六年にドル危機があったわけですね、ドル危機がありまして、そして、やはりドル減らしの政策をとったわけです。その政策のときには列島改造という超高度成長型の公共投資をいたしましたが、それとあわせて、昭和四十八年は、四十七年、四十八年とずっと強調しましたが、四十八年を福祉元年として、福祉については年金その他若干の質的な改善を加えたわけです。今度の円高不況のもとにおけるドル減らしの政策は、俗に言われておる片肺の予算である。GNPの五十数%の個人消費支出について全く顧みない。むしろ、七%成長の裏づけの資料を見ると全く根拠のない数字を並べておるし、また、その点については数字の上でも軽視をしている、こういうことが言われておるわけですね。  第一番に質問したいのは、オイルショック以降は、いろいろな制約された条件の中で日本の経済の立て直しを図っておるというのが大きな路線であると思うのですが、そういう中において振替所得、社会保障の位置づけというものを基本的にどう考えておるのか、こういう点が質問の第一点です。いかがでしょう。
  18. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほど大原委員おっしゃいましたように、四十八年は福祉の年というようなことでドルショック以来の予算編成に臨みましたが、確かに、社会保障給付費の国民所得に対する割合を見ますと、四十八年が六・七%でございましたが、四十九年の予算を見ますと七・九%、いままで、四十七年対四十八年が約〇・六%ぐらいの増加でございましたものが、四十八年対四十九年では一・二%、急にふやしております。その後も大体順調に、四十九年と五十年を比較してみても七・九%から九・二三%になっておりますから約一・五%の増加ということになってきております。それから五十一年が一〇・一%で約一%近い増加、それから五十二年が約一一%でございますから大体一%近い、正確には〇・九%ぐらいでありますが、約一%の増。五十三年の見通しも大体一二%ぐらいと踏んでおりますから約一%増、こういうことで、一応景気の変動とかあるいは成長率とは関係なく、社会保障というものについては対国民所得の比率を見ますと伸び方についていろいろ御意見があろうかと思いますけれども、最近は比較的順調に推移してきているわけでございまして、その意味においては、私は、やはり景気、不景気といいますか、あるいは成長の度合い等から、この社会保障というものを考えるのではなくて、社会保障は本来、福祉国家実現のための、国民の必要とする社会保障給付というものを中心に逐次前進をするのが正しい考え方であって、経済の動向等によって、好景気のときはそれじゃ少なくていいのだ、不景気になったからうんと社会保障を伸ばしていくのだというような、経済の制約はありましても、そういう動きによって社会保障そのものを乱高下するという考え方はとらない方がいいのじゃないかというふうに考えておるわけでございますし、現実に、そういう推移をたどってきているわけでございます。私の考えはそういう考えでございます。なお続いて御質問があれば申し上げたい。
  19. 大原亨

    ○大原(亨)委員 この文書はだれがつくったのですか。「わが国の社会保障の給付水準は高い」以下ずっと、この大蔵省の宣伝資料の中にありますね。これは厚生省はタッチしているのですか。
  20. 小沢辰男

    小沢国務大臣 厚生省は、この文書の作成にはタッチしておりませんが、大体毎年、予算編成に当たりまして、いろいろと大蔵省と厚生省の間では話し合いをいたしておりますので、私どもの方の政策の中身を中心にして大蔵省でまとめたもので、具体的には、この文書作成についてはタッチしておりません。
  21. 大原亨

    ○大原(亨)委員 タッチしてないという答弁だけでいいわけです。いまのは。  それで、この書き方は非常に間違っていると私は思うのです。この考え方というのは、大蔵省が社会保障の予算を切り詰めるために書いた資料としてはわかるのですけれども、しかし、やはり厚生省が、議論した中で厚生省も了解しておるというのだったらばこれは非常に間違いだ。つまり、本年度の予算編成の過程の中に端的にあらわれておると思うのですけれども、これは、たとえば「わが国の社会保障の給付水準は高い」と、こういうふうにぱっと出しておるわけですよ。そして二ページのところには「人口の老令化と年金制度の成熟化が進むと社会保障の制度が現行のままとしても、その水準は、一九・八%となり、アメリカ、イギリスを追い越し、」と、こういうふうにやっておるわけですが、その一九・八%という数字は、これは何の数字なんですか。
  22. 窪田弘

    ○窪田説明員 先ほど大臣からもお話がありましたように、ことしの見込みでは一〇・八%の振替所得比率でございますが、それを年金以外はそのままにしておきまして、年金だけ、老齢人口の割合それから年金の成熟度がいまの西欧並みに高まったとした数字に置きかえて仮に試算をいたしますと一九・八、こうなるという数字でございます。
  23. 大原亨

    ○大原(亨)委員 これは何年ですか。
  24. 窪田弘

    ○窪田説明員 現在五十三年度の予算で、ほかは全部五十三年度のままに置きまして、年金だけを昭和七十五年あたりの数字に置きかえたものでございます。
  25. 大原亨

    ○大原(亨)委員 昭和七十五年の振替所得の対国民所得の比率をここへ数字を出して、そしてヨーロッパの水準より高いという、そういう議論ができるのですか、いまの日本の現状は。
  26. 窪田弘

    ○窪田説明員 老齢人口の割合が七十五年あたりになりますと現在の西欧並みの比率になるわけでございます。ですから、仮に老齢人口の割合がそうなりますと、いまの制度のままでも、このくらいの振替比率になる、こういう試算を示したわけでございます。
  27. 大原亨

    ○大原(亨)委員 この宣伝資料の三番目に「社会保障予算の追加修正は必要ない」こういうふうに言い切っておりますね。私は、細かな議論は時間がかかるからしませんが、大臣、ことしの予算は、総予算の中で公共事業費が前年度比三四%増になっておるわけです。それは列島改造のときには二八%程度でしたが、三四%になっておるわけです。それに比較をして社会保障の給付費は、これから議論する中身は問題ですよ、中身は問題だけれども、一九%ちょっとですね。教育費が一四%と一緒に言われるが、一九%増なんです。去年に次いで、やはり一九%台です。二〇%を割ったわけですね。  その象徴的なのは、老齢福祉年金を千五百円上げた、一割上げた、こういうふうに言っているけれども、この一万五千円の老齢福祉年金を一割、千五百円上げた。たとえば十万円のところを一割上げれば一万円でしょう。一万円と、この千五百円というのは、同じ率であっても格差は拡大するのですよ。そういうふうな、都合のいいときには率を出すような考えでは、所得の再配分という機能を社会保障の中で果たすことは基本的にできない。そういうことができないのが、いまのスタグフレーション、不況とインフレというものをいつまでも続ける。福田内閣は去年も初めごろは、トンネルの先に光が見えた。まだ、ことしも同じようなことを言っている。いまでも同じことを言っている。そういう考え方基本にあるからだめなんだ。それは厚生省はうんと反発して、ちゃんとそういうことについては、インフレと不況が続くならば国民生活の最底辺の層は非常に苦しくなるんだから、だから同じ率で、数字の上で、数字で食べて生活しているわけじゃないのだから、数字で計算しないで、ちゃんと金額で、たとえば年金制度では最低保障額という制度があるのだから、そういう金額で問題を考えていくというふうな、生活の実態に即して考えていくような、そういう政策をとらないと政治はよくならないし、先行きが明るくない、トンネルの先に明かりが見えない、生活が安定しない、そういうことです。  昭和四十六年のドルショックのときに議論したこと、トリレンマと言って議論したことは、死んだ愛知さんが大蔵大臣だったが、物価を安定させて社会保障をよくして、そして需要をふやしていくために一定の公共事業もやる、バランスをとる。バランスが外れて、それで一方では財政金融で調整インフレ政策をとったわけです。過剰流動性で狂乱、それにオイルショックが加わってむちゃくちゃになったわけですね。だから、その轍を繰り返さない。その当時、中曽根というのが、通産大臣をしておったのが口をすべらせて、調整インフレということを記者会見で言って後で問題になったことがあるが、まさに調整インフレ政策をとったわけだ。その反省があるわけです。  いまは前よりも逆の、さらにひどい意味において調整インフレ政策をとっている。いまのように公債をたくさん発行して、そして地方債を発行して、政府保証債を発行して、二十兆円近い。そして、ちょっと景気がよくなると民間の資金需要が出てきて、今度は公債を日銀へ持ち込む、こういうことになって過剰流動性の大きな根拠になることは先が見えている。インフレの条件と、不況がずっと長引くような、そういう予算を組んでいるのが今年度の予算ではないかということを私は最初に指摘をしたわけです。的確な答弁ができる、できないは別にいたしまして、社会保障を分担している厚生大臣がきちっとした考えを持っていないといけない。いまや社会保障は国際並みだというふうなインチキなことを大蔵省に言わせながら、所得の再配分という政治の本来の機能が喪失されるような予算を本年度は組んでいるのではないか。それではインフレと不況の暗いトンネルから脱却することは断じてできないというふうに断言してよろしい。そうするならば、福田内閣の責任が近いうちに追及されるだろう、これは必至である。そういうときに、内閣において国務大臣として、小沢厚生大臣が社会保障の担当大臣として何を主張するのかということについて明快な考え方が必要ではないか。私はそういう点について、もう一度あなたの所見を尋ねたいと思います。
  28. 小沢辰男

    小沢国務大臣 国民所得に対する社会保障の給付費の率を高めて国民の福祉に貢献したいという念願は、だれよりも一番厚生大臣が強く持たなければならない点でございます。したがって、おっしゃるように、まず国民所得の向上を図っていきませんと、どうしても振替所得を、われわれ担当する福祉のために要求をすることが、なかなかできないわけでございまして、しかし、さはさりながら、物価によって、ことに所得の低い方々生活が侵されるということがあってはいけませんから、たとえ成長率が鈍化し、あるいは国民所得が伸びないにしても、物価の調整はどうしても社会保障給付費の中に取り入れていかなければいかぬ、また、それ以上のものでなければいかぬということで、御承知のような、それぞれの年金あるいはいろんな手当あるいは生活保護の給付水準にいたしましても、物価の騰貴率よりも高い水準を確保するように、一割あるいは一割一分というものを私どもとしては実現をするようにいたしたわけでございます。  おっしゃること、わからぬでもないのですが、今日の経済環境の悪いときに、いかにして社会保障を伸ばすかということは、やはり私どもとして、しかも経済情勢の悪いときに国民の負担増を特に求めることもできないわけでございますから、まず、この非常時においては公共事業三割四分ということで非常に高い率に伸びた。社会保障は一九・二じゃないか、こういうことをおっしゃいますけれども、まず景気回復をやって、そしてその結果、振替所得の獲得を必要とする私どもの社会保障の関係の方に、できるだけ伸ばしていかなければいかぬという考えを持たざるを得ない今日の経済情勢である、かように判断しているわけでございます。
  29. 大原亨

    ○大原(亨)委員 やはり角さんの系統を引いておるだけあって、つまり、これは議論しておったら切りがないが、高度成長のときは、大きな企業がちゃんと設備投資を中心に、コンビナートを中心に大きくなったならば、そのお湿りが中小企業や労働者、国民によくなって、社会保障がよくなりますよという考えだったのですよ。それを、いまその前提条件がなくなったのだから、だれが考えても制約された経済ですから、環境問題からいったってそうですよ。人口の老齢化からいってもそうでしょう。食糧やエネルギー資源、こんな議論はしないで、やはりいまも同じようなことを言っているんだ。どこか仕事が起きてきたならば、どこかが自然に景気がよくなって、そしてそのうちによくなりますよというふうな、鼻の頭へニンジン下げて国民を引っぱっていくような考え方をあなたはおっしゃるのですね。  この資料の間違いで、もうちょっと記録にとどめておきたいのですが、厚生省の資料と違っている点は、「わが国の社会保障の給付水準は高い」というところの一ページに大蔵省が書いたのは、「厚生年金でみますと、十万五千円」と書いておるのです。厚生省の別の国際比較の資料を見ますと厚生年金は七万五千四百十五円、こういうふうにやっておる。これは数字の出る根拠が違っておるわけですよ。  時間がないから私が答弁を先回りして言うが、数字が違っておる。この十万五千円というのは厚生年金の新規受給者の平均をとっておるわけで、これは二十八年ということでモデルをとったわけです。七万五千円というのは厚生年金の受給者の平均、既裁定の年金まで全部含めての平均です。あの十万五千円のところをとって国際比較をすると、部分的にちょっと高いように見えるんだ。国民年金も三万八千円の昭和六十六年から始まるところをとっている。数字だけで見ると、とかくそういうふうに比較できるわけです。実際見るとそうじゃない。社会保障の給付費は、年金が成熟していないこともあって、国民所得に対しては国際的に低いというわけですね。ですから、こういうやり方は、これだけでも私はおかしいということで議論になるのだが、ちゃんと実態に即したような資料で議論しなければだめだということを指摘しておきましょう。  それから、第二の基本問題ですが、年金を改革しなければならぬということになりますが、年金はいまの状況では、財源やあるいは皆年金が発足してからのたちました経過から見て、国民の立場から見るといろいろなアンバランスが出てきている。年金を改革しなければならぬと思うのですが、第一は、国民年金の財源の見通しは、中期、つまり五年、十年の見通しはちゃんついていますか。
  30. 木暮保成

    ○木暮政府委員 国民年金の財政状況は必ずしも安心できないような状況でございますが、私どもの見通しといたしましては、昭和五十一年度の再計算のときの線で推移をしておるというふうに見ておるわけでございます。それで、昭和六十五年で申し上げますと支出が五兆四千八百五十三億円ということになるわけでございますが、それに対しまして、単年度赤字が出ないようにというようなことにするためには、五十一年度価格で五千三百円程度の保険料をいただかなければならないという見通しでございます。この点につきましては、被保険者の御協力、御理解を得まして、そういう保険料を確保していきたい、こういうふうに考えております。
  31. 大原亨

    ○大原(亨)委員 いまの国民年金の制度は、保険料を単一にしておるわけですね。付加年金の四百円がありますが、これはつけ足しみたいになって、もとの本体の方の保険料というのは二千七百五十円とか、そういうふうに単一にしておるわけですね。そうすると保険主義で、あるいは国庫負担を入れるにいたしましても、計算をいたしますと、どんどんこれは上がってくるわけです。そうすると所得に応じて負担をして再配分するという機能がだんだんむずかしくなってきて、低所得階層中以下の人が保険料負担をできなくなる、むずかしくなる、こういう現象が出てくる。したがって、保険財政をいまのような制度だけでやっていっておりますと、これは国民年金も早晩行き詰まるということ。これはお答えいただきたいのですが、本年度の保険料収入、そして支出の方で国庫負担を入れての給付、この昭和五十三年度の収支の数字だけを答えてください。
  32. 木暮保成

    ○木暮政府委員 見通しですか。——予算ベースの数字をただいま申し上げますが、ここにございます財政見通しでまいりますと、五十三年度は収入が一兆二千億、支出が一兆一千億、それに国庫負担が入りますので若干の収支の残が出る、こういう見通しでございます。
  33. 大原亨

    ○大原(亨)委員 保険料収入は。
  34. 木暮保成

    ○木暮政府委員 保険料収入でございますが、八千四百五十八億円を予定いたしております。それに対しまして年金の給付費でございますけれども、一兆二千二百九十一億円でございます。その差につきましては、国庫負担が出まして収支がとれるという見通でございます。
  35. 大原亨

    ○大原(亨)委員 それにしても、二十五年掛金を掛ける本来年金の掛金が、五年年金、十年年金に回っておるということなんですよ。単年度で見てみると回っているということなんです。だから、みんなが自分らは積み立てておると思って、積立方式だと考えているものは、積み立てておらぬで五年年金、十年年金の経過年金の方へ回っている、そういう財政の仕組みですよ。ですから、これは五年、十年後の財政バランスを考えた場合には、単一制度であるけれども、よほど保険料を上げないとだめだということになるでしょう。バランスがとれぬ。これは賦課方式も積立方式もないということになる。そこで問題は、そういうふうな全く一日刻みのような年金財政ですね。  それからもう一つ、一問だけですから、そのままでいいですが、国鉄は本年度の保険料の負担は幾らになるのですか。それから五年、十年後の財政収支が計算できますか。この二つを答えてください。
  36. 浜田卓實

    ○浜田説明員 本年度、昭和五十二年度の職員の掛金率は給料の千分の五十三・五でございます。それで五十三年度からこれを千分の六十二としたい。これは昨年の九月にいただきました収支計画策定審議会の答申に基づきまして、いま、そのように努力をいたしております。そして、この掛金率のアップ、財源率の改定とあわせて追加費用率、これにつきましても追加費用の発生実額を全額、国鉄が繰り入れる、こういう措置を五十三年度から講ずべきであるということに答申いただいておりまして、いま鋭意その実現方に努力をいたしております。  これが実現いたしますと、少なくとも昭和五十五年度までは毎年度二百億ないし百億の黒字をもって推移できる、こういう見通しでおります。それから先、昭和五十六年度以降につきましては、いろいろな情勢の推移、年金改定とかベアとか、あるいはまた国鉄の退職制度、要員需給状態、あるいはまた国全体として検討されております年金制度の基本的なあり方、こういうような大勢を勘案しつつ、長期的な抜本的な対策は講じてまいりたい、このように考えております。
  37. 大原亨

    ○大原(亨)委員 いまの御答弁の結論は、昭和五十五年以降の国鉄共済の財政計画は全く立っていない、こういうことなんです。それで私が、厚生省が最近の資料で国際比較を出しているので、保険料負担を見てみますと、日本の方は厚生年金を出していますから千分の九十一にしておるわけです。それでその折半ですから四十五・五ですね。国鉄の共済の保険料負担は六・二%を超えるわけですね。ですから国鉄は、いずれ他の共済もそうなるのですが、三公社、他の共済よりも保険料をたくさん取るわけですよ。厚生年金に比べましても、いま申し上げたようにたくさん取るのです。国鉄の保険料の掛金は、高負担、高福祉とよく言うが、国際的な負担に達しておるわけです。ある場合には国際的な負担を超えているのです。そういうように考えてみますと、昭和五十五年以降は国鉄の共済の収支の見通しはついてないというのがあなたの答弁の中身なんです。  そこで厚生大臣、年金を国民の立場から見て、あるいはいまの経済状況から見て、財源の裏づけがあり、しかも将来にわたって不安がない、少なくともこういう年金は保障される、こういうことは政治の一つ基本ですけれども、そういう点から見てみまして、年金は総合的に、厚生省だけじゃない、内閣全体として改革をしなければならない、そういうときが私は来ていると思うんですね。そういう時期は一体いつだというふうに判断しておられますか。
  38. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるように、保険料率等を見ましても、あるいは給付の内容等を見ましても、厚生年金、国共済、地方共済、公企体の関係国民年金、私学共済あるいは農林年金、これらをいろいろ見ますと、確かに、いろいろなばらつきがあるわけでございまして、しかも国鉄の関係の共済制度は、いま答弁がありましたように一応、審議会等の答申のまま受け入れるといたしましても五十五年までの見通しだ、それ以後どういうふうになっていくかということについては非常に心配をされておると思うわけでございます。おっしゃるように、年金制度全般を私ども国民の老後保障という観点から見まして、あらゆる点でよく検討し、少なくとも国民全体の立場に立ちますと、厚生大臣としては無関心であり得ないわけです。自分の国民年金、厚生年金だけの問題を考えていくわけにいきませんから、よくそういう面の検討をいたしまして、必要な助言と勧告をやるという立場ではなかろうかと思いますので、今後十分検討してまいりたいと思います。それには、先生委員である制度審議会、あるいはまた私の諮問機関として昨年からいろいろ御審議をいただいております年金問題懇談会等の御意見あるいは社会保障長期計画懇談会等の御意見もいただきまして根本的な制度のあり方を求めていかなければいかぬわけでございますから、いま何年でやるかということ、あるいはいつやるかということを明確にお答えできないのは、はなはだ残念でございますけれども、そういう方向で検討を進めているところでございますから、いずれ、おっしゃるように全体の制度の調整を考えた一つの成案を得ていかなければいかぬだろう、かように考えております。
  39. 大原亨

    ○大原(亨)委員 厚生大臣が担当しておる国民年金、厚生年金がかなりウエートは占めておるわけですが、しかし一割以上は共済も占めているわけです。農業者年金みたいなのがありますけれどもね。それをすべての面にわたって、これは大蔵省が言うように給付の水準がいい、悪いということだけじゃないのです。日本の年金制度は、もう年金制度自体が行き詰まっているのです。だから、そういうことについて考えないのが、財政の数字だけで文句をたれるから、いろいろな物議を醸すのであって、私は、年金について厚生大臣がそんな権限があるのかといって聞いてみると、そうでもない、それぞれ独走している。公務員については大蔵省、公共企業体は運輸省その他ばらばらになっている。そういう制度について、日本の年金はどうあるべきかということについて、財源の見通しと長期の展望を持って、きちっとした中身のある水準でやっていくということが必要である。そういう面において、だれが中心かわからない。どこが中心だ。総理大臣なんかは、福祉なんかどうでもよい、いまはそんなどころじゃない、こういう頭しかない。非常に頭脳の程度が貧困であるから、そういうことになっておる。それがいまの政治の実態でしょう、そうでしょう。しかし、それはちゃんと中心、企画するところがなければいかぬ。全部ばらばらになっている。財源のことも、長期的な見通しについても、制度の整合性についても、ばらばらになっておるところに、年金が先行き不安があり、どうなるかわからぬということが大きな社会問題になっておるのではないか。あるところでは、最も近い機会、昭和五十三年、五十四年にかけて、これに手をつけないと手おくれになる、こういう考え方を政府側が表明したことがあるが、厚生大臣は、やるやるということだけでなしに、年金の大改革はいつやるのか、もう少し具体的な答弁をしてください。
  40. 小沢辰男

    小沢国務大臣 年金制度の一元化の問題については、この前も、ある機会にお答えしたと思いますが、やはり歴史的な経過等あるいはその実態等がそれぞれ異なる性格を持っておりますものですから、いま、せっかちに一元化ということはなかなかできぬだろうと思うのです。これはやはりそれぞれの特殊性というものがございますし、業務の態様等も違いますから。しかし少なくとも、それぞれの負担のバランスあるいは給付のバランス等については、これは国民全体の立場に立ってある程度調整をお願いしなければいかぬ。その基本的な考え方をまとめるのは、やはり国民の老後保障の責任を持つ厚生省でやらなければいかぬだろう。それを何年にやるかとおっしゃいますけれども、それは私どもとしては国民年金、厚生年金を中心にして、それが一番中心をなす、国民全体の中でも比率が多いわけでございますから、その制度の根本的な長期見通しをいま立てながら、どうするかということについては一年間時間をいただきたい、こう申し上げておるわけでございます。その結果、今度それぞれの制度にどういうような整合性を持った制度として、いろいろこちらからお願いするかということについては、その後になるだろうと思いますので、とりあえず、老後保障の中心をなします国民年金と厚生年金の根本的な考え方の方向を一応決めるのは一年間の猶予をほしい、こう言っておるわけでございますから御了承いただきたい。
  41. 大原亨

    ○大原(亨)委員 年金懇は中間報告で二つぐらい案を出している。それから社会保障制度審議会の案は基本年金と年金税の構想、所得の再配分のそういう機能を持った財源を基礎として基本年金をつくる、こういう案を昭和五十五年をめどにやって六十五年までに漸次整備する。年金はお話のように一本にすることはできない、しかし内容は整合性ある一元的なものにしなければならぬ、国民の立場から見て。たとえば共済については一五%の国庫補助で厚生は二〇%というのはおかしいという議論は出ないの。一五%を二〇%にしてくれ、国鉄なんかそんな話は出ないの。逆の意味の官民格差は議論になっているのだけれども、年金の負担だって国鉄の労働者は大変ですよ。千分の六十二ですから六・二%ですからね。これは国際水準以上です。ですから、この問題について大臣のいまの答弁の一年待ってくれというのは、五十三年中に検討して五十四年ぐらいをめどにして年金を総合的に改革する、そういう目標に向かって政府全体がいくように努力をしたい、こういうように考えているのかどうか。
  42. 小沢辰男

    小沢国務大臣 先ほど言いましたように、私ども、厚生年金、国民年金の制度の責任者として、しかも、その制度が国民の大多数を持っている制度でございますから、それがいわば基本的なものになるだろう。そこで、その根本的な改正、将来の財政を見通した考え方のまとめを一年間でやりたい。来年直ちに法案の形で皆さんのところに御審議をお願いをするかどうかまでは、実は、まだそこまでの検討は進んでおりませんので、ここで、はっきり申し上げられませんが、少なくとも、こういうあり方であるべきだという考え方のまとめだけは一年間でやっていきたい、こう申し上げたわけでございます。  それから、いま国庫負担のあれでございますが、支給開始年齢も違う、あるいは給付の内容等も違う場合に、一律に国庫負担を厚生年金あるいは国民年金のようにやれというのは、あるいは所得の違いもございますので、そういうものは私どもはすぐとるわけにはいかないと思うのでございます。しかし、それらをどういうふうな形でやるかということは、先ほど言った年金懇あるいは社会保障制度審議会等の意見等もありますので、また各党それぞれ、ナショナルミニマムを設定して、こうやるべきだという御意見等もいただいておりますから、それらも参考にしながら成案を得たいと思っておりますが、ただ、社会保障制度審議会の基礎年金三万円で、あと社会保険のいままでのあれをそこに加えろ、その場合に国庫負担を除いてやれといいますと、いま十万五千円年金だといたしますと、二万円を、国庫負担として約二割でございますから、とった場合に八万円年金。そうすると五万円年金、基礎年金に、その八万円年金を加えるという場合に、現在の国民所得の割合からいいますと一三%ぐらいになるんじゃないかと思うんですね。こういう高額の年金を想定して果たしてこれから、先生がおっしゃるように負担の割合等を考えまして、一体成り立つかどうかという点を考えますと、これはなかなか容易でないわけでございますし、いろいろな角度から検討をさせていただきたいと思うのでございますから、御意見等も十分参考にさせていただきたいと思っております。
  43. 大原亨

    ○大原(亨)委員 私は社会保障制度審議会に籍がありますが、社会保障制度審議会の勧告権に基づく建議が絶対いいと言っているのではないのですよ。そういうことはない、世の中には絶対ということはないのだから。いま、何がいいかということを、われわれはそういう制度の中で探しておるわけだから。しかし、何もやらないで、じんぜんと日を過ごすと非常に矛盾が多くなるということは、いまの短い質疑応答でわかるはずだから、その点について一体だれが政府で責任を持ってやっているんだ、こういうことを私は言いたいわけですね。そういうことについて責任を持ってやっている者がいないじゃないかということを言っておるわけです。  それから、健康保険の改正はいつ出しますか。
  44. 小沢辰男

    小沢国務大臣 できましたら私どもは三月くらい、五十三年度予算との関連法案でありませんので三月に出したいと思っておったのですが、三月の末になるか、あるいは四月の早々になるかということでございまして、いま鋭意、成案を急いでおるところでございます。
  45. 大原亨

    ○大原(亨)委員 四月早々。それじゃ、その中身は出たときにやるということになりますが、従来からの議論からいたしますと、たとえばボーナスも三年の時限がついておるわけです。ボーナスの財源は三年間ですね。それから衆参両院の審議の過程で特別決議とか、あるいは附帯決議とか、あるいは政府が出した五十三年度、五十四年度へかけてやる医療制度全体の改革の問題についても政府は約束しておるわけだ。渡辺厚生大臣かな、あなたかな。(小沢国務大臣「渡辺さん」と呼ぶ)あなたは……。
  46. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私、着任しまして、御審議をいただいた健康保険法の改正の御審議のときに申し上げたのですが、十四項目について渡辺前大臣がその検討並びに実施時期について申し上げましたことは引き継いでまいりますと申し上げておりますから、私がその実現に対して責任を持っておる、こういうことでございます。
  47. 大原亨

    ○大原(亨)委員 「医療保険制度改革の基本考え方」の六項目の中に「物と技術の分離、技術料重点の診療報酬の改善」これは実施の時期は「次期診療報酬の改定から逐次実施」するとある。今回九・六%の医療費改定でやりましたね。そういうことですが、一、二の例でいいわけですが、どういう点を実施いたしました。
  48. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先般の診療報酬の改定におきまして、従来から診療報酬の改定につきましては、人件費あるいは物件費等の経済事情の変動という要素もございますけれども内容面におきまして、やはり技術料に重点を置くという方向を基本に考えておるわけでございます。そういう意味におきましても今回、単なる一律の九・六%の引き上げということではございませんで、診療報酬の個々の点数におきまして、内容的な面におきまして技術中心ということに主体を置いたわけでございます。そういうような意味におきまして、たとえば入院料等につきましては思い切って三〇%引き上げを行うというような措置をとっている次第でございます。
  49. 大原亨

    ○大原(亨)委員 物と技術を分離する診療報酬とは何か、この問題は非常にむずかしい。この問題について新しい案を考えて実行したら、これはかなりの問題が解決できる。半分以上は解決できる。物と技術を分離するということで、医薬分業について処方せん料を五百円にいたしましたね。それは何年ですか。
  50. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 四十九年の十月でございます。これは従前の百円から五百円に処方せん料が引き上げられました。
  51. 大原亨

    ○大原(亨)委員 処方せんの技術を上げましたね。上げて、医薬分業を進めて物と技術を分離して、技術を尊重して、物の方は、薬の方は科学的な原則である最小限度使用の法則、こういうものが外れておるところが日本は問題になっておるが、医薬の分業をやるということを始めた、手をつけたわけですが、そのとき五年間で五〇%を達成するということを政府は言ったけれども、いまの達成率は幾らですか。
  52. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 現時点におきましては、残念ながら、五年で五〇%達成という目標を大幅に下回っておりまして、具体的には、処方せん料引き上げの直前の処方せん発行枚数が五十七万枚、現在二百三十万枚で、倍率としては処方せんの発行は四倍に達しておりますけれども、全体としまして、外来患者に対する投薬全体を分母に置きますと、分業率はわずかに三%にとどまっております。
  53. 大原亨

    ○大原(亨)委員 五〇%を目標としながら、四十九年に始めて、五十三年になるわけですが、あの程度、三%程度である。私は実情がわかるから、いろいろなことがあるということは知っておりますけれども、一体これはどういうことだろう。政府が医療について、もちろん健康保険の問題で高負担を要求するのはわかる。しかし、高負担を要求する際には、医療の供給体制全体が、やはり問題点だけはきれいに洗い上げていなければいけない。これが一つも実行されないというふうなことは私は問題があると思うのです。ここへ、第十三項に医薬分業をちゃんと出していますが、「五十三年度から逐次実施」すると。何を実施するのです。
  54. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生指摘のとおりに、医薬分業が遅々として進まないということには多面的な原因がございます。一つには、長年の慣習によりまして患者が医療施設において薬をもらうことを選択するというふうな利便の問題、あるいは薬局側におきまして、これを受け入れる十分な体制が整っていないこと、あるいは医療施設側におきまして薬価基準価格と実勢価格の間に、いわゆるさやがあること等がいろいろ重なりまして、この進行が思うに任せないということであろうかと思います。しかしながら、現在保険薬局の二、三〇%のものが、すでに定期的に処方せんを受け入れておりますし、また相当多数のものが近傍の医療施設との間で処方せんの受け入れのための協議なり準備なりを進めておりますので、このようないわば上向きの趨勢にございます医薬分業に対して、さらに、これを誘導し刺激していくことが政府としての当面の仕事ではなかろうか、かように考えている次第でございます。
  55. 大原亨

    ○大原(亨)委員 この十四項目の問題について、これを一つ一つきちっとやれば、国民の立場、患者の立場から見るならば医療がかなり改善されることになる。渡辺厚生大臣がやめました後、どこかで講演していましたが、私はいいことを言っておるなと思った。参考になりましたが、やめると非常にいいことを言う。しかし、あの人は非常にフレッシュな感じで医療問題を見たから、非常にフレッシュな受け取り方をしていますね。七二%の問題も、薬価のさやがあるから七二%というのはなかなか放せないのだ、表現は別にいたしまして、こういう議論をしていましたね。いまの医療制度の一番の問題はそのさやなんですね。薬価基準と実勢価格の差が四割以上あるというふうに言われているのが実は一番大きな問題なんです。これは彼が指摘するとおりです。だから内科と外科によっても利害が対立するわけです。だから、そういう公平の原則や医療改革の点から見ても七二%の問題は連なっているわけですね。ですから、これらの問題を解決して、患者や国民の立場から、薬害もないし、財政上もかなり納得できるというところで負担はどうあるべきかという財源の問題を考えていくことと、制度の整合性を考えていくことが必要です。  時間が限られておるので、もう一つ、抜本改正の中で財政調整の問題についての基本的な考え方を聞きます。財政調整というのは、黒字の保険から赤字の保険に金を流していくことなんですか。
  56. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、医療保険については、本来保険制度である以上は相扶共済というものが基本にならなければならない、これは大原委員も御同感だろうと思うのでございます。そう考えますと、収入の一定率で負担するとすれば、収入の多い人はよけい負担をして、収入の少ない人は負担が少ない。しかし給付は医療保障の面から考えましてフラットであるべきだ、こう思いますと、これはそういう方向の線に沿って財政調整というものを考えていくべきだ、こう思うのでございまして、ただ単に結果的に考えますと、先生のおっしゃるように高いところから低いところに持ってくるのかということでありますが、物の考え方としてそういう御理解をいただいて財政調整というものを御理解いただきたいと思うわけでございます。
  57. 大原亨

    ○大原(亨)委員 所得の能力に応じまして、所得の水準によって負担をする。そして給付については公平にやる、必要に応じてやっていくという原則、これはだれも異議ないところですね。その場合に問題になるのは、労使の負担割合も問題になりますし、国際基準等も問題になりますが、もう一つは、財政調整のときに支出についてどうかという問題で、たとえば扶養家族とか、平均年齢が高いとか、所得の水準、生活水準と疾病との関係、そういうふうな客観的な基準で、あるべき支出を想定をして調整していくのならいいけれども、黒字のところから赤字のところへ流すということになると、これは、いまのばらばらな制度や、あるいは医療制度全体が矛盾している中においては、矛盾面だけが出てくる可能性がありますよ。一番知恵のないのは、黒字のところから赤字のところへやればいい。そうしたら、努力しないで、医療費をふやせばいいのだから、野放しにしておけばいい。健康管理や予防なんかに力を入れる必要はない。廃疾状況から脱却するリハビリテーションについて力を入れる必要はない。包括医療の逆にいくでしょう。だから、いまのたくさん矛盾のある状況において何が財政調整かということはむずかしいですよ。医療制度を本当に民主的によくしていくという方向に沿うた財政調整とは何かということについて、もう少し細かな見解を聞かしてください。
  58. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるように、ただ単に赤字のところへ黒字のところから、その分を回すということは、やはりいかぬだろうと思うのですね。国民健康保険の財政調整交付金についても、いまおっしゃいましたような老人の医療費のウエートとか、その他財政事情とか、いろいろなものを勘案してやっているわけでございますから、当然先生のような考え方の細かい要素をできるだけ——できるだけでございます。それは千差万別ですから、一定の基準を設けた場合に、そう全部が全部カバーができるとは思いませんけれども、できるだけ御趣旨のようないろいろな要素をかみ合わせて財政調整の基準を考えていかなければいかぬだろう、かように考えます。
  59. 大原亨

    ○大原(亨)委員 時間が来ましたから終わりますが、健康については自分が責任を持つ。そうすると、保険料を負担している人ができるだけ病気にならぬように健康管理をやる、あるいは元気な体に復帰するように努力する、こういうことがいまの状況では必要なわけですよ。だから、いま、この制度の中で一番悪いのは政府管掌の健康保険です。私はいつも言うのですが、厚生省がやっている保険が一番悪いのです。他の保険のどれよりも一番悪い。具体的に例を挙げればいいのですが、というのは、保険を負担している人あるいは関係者が予防や健康管理についてはほとんど力を入れていない。制度としてもない。だから、国が経営すればいいというものじゃない。国が経営すれば社会主義だというものじゃない、進歩だというものじゃない。どういう条件で国が経営するかということが、一本にする場合には必要なんだ。だから、その際には、自分の健康は自分で管理する。いまは保険制度ですから、それならばイギリスのように国が費用を負担して、そうして必要に応じて再配分していけば一番いいのです。公平に税金を取って、そしてフラットで給付すれば一番いいのです。あなたの言われる理屈のとおりで言えば。そういうことが一つのこととして考えられるのです。しかし、日本はいますぐそれをやれといったって、なかなかできないでしょう。そのときにどうするかということを順序立てて考えるのが制度の改革であり、あるいは保険制度の改革であり、財政問題の調整である。そういう方向に沿うような財政調整でなかったらだめだという点を私は指摘をしておきます。いいですね。  それでは最後に、健康保険の抜本改正はこの十四項目に従ってやる、昭和五十三年、四年にかけてやる、こういうふうに理解いたしますが、よろしいか。
  60. 小沢辰男

    小沢国務大臣 そのとおりでございます。そういう趣旨で考えます。
  61. 大原亨

    ○大原(亨)委員 最後になって悪いのだが、年金や医療は、ことしから来年にかけて大ごとになる。大変な改革の年になるわけです。福田内閣にはそんな姿勢はないじゃないか。福田内閣はこんな問題意識を持っていないじゃないか。予算委員会の討論や予算編成を見たって、そういう問題意識はどこにもないじゃないか。大蔵省のこういう資料なんか全くなっておらぬ。一々言えば切りがない、時間がないのが幸いであるが……。そういう私の意見を申し上げておいて、終わります。
  62. 木野晴夫

    木野委員長 次に、矢山有作君。
  63. 矢山有作

    ○矢山委員 では、時間がきわめて限られておりますので、私の方もできるだけ簡潔に御質問を申し上げますが、御答弁も要領よく簡潔にお願いしたいと思います。  まず第一は、厚生大臣所信表明で「厳しい社会経済情勢の中で、社会的経済的に弱い立場にある方々に対する福祉施策の重要性はさらに高まって」いる、こういうふうに言われておるのであります。ところが、その一方で今年度予算については、こういうふうに言っておられます。「厳しい財政事情のもと」で「最善の努力」を払い「厚生省予算は総額六兆七千七十七億円、前年度に比し一九・二%と相当の伸び率を示した」かなり積極的な評価をなさっておるのでありますが、しかし、実態は一般会計の予算の伸び率二〇・三%にも及ばない、こういう実態であります。前段の御発言とそして予算の編成に対しての御発言との間に、私はいささか矛盾を感ずるのです。そこで、改めて大臣の社会福祉に対する基本的な見解というものを承って、具体的な質疑に入りたいと思います。
  64. 小沢辰男

    小沢国務大臣 御承知のとおり、ことしの予算は景気対策を中心にした、いわば非常時景気回復予算、こういうことだろうと思うのです。そのために公共事業の伸び率がうんと高くなっておりますが、大蔵大臣予算委員会で言っておりますように、投資的経費と経常的な経費に分けて予算編成をいたしております。その経常的な経費は一七・四%の増でとどまっておりますが、社会福祉関係は全体で一九・二%増加でございますので、この点から見ましても、決して私は社会福祉が軽視されておる予算とは思っていないわけでございます。また、国債費というものを除きまして、公共事業の伸び率三四%全部を入れた一般会計の伸び率を見ましても、これが一八・八%でございますから、その公共事業を入れた一般会計の伸び率よりも社会保障の方が、一九・二%ということは、それ以上の伸びを示しておりますので、このような厳しい時代に、これだけ一応編成できたということは社会保障の後退ではないし、いろいろな意味で私ども重点を置いたということは言えると思うわけでございます。
  65. 矢山有作

    ○矢山委員 先ほども大原委員の質疑を聞いておりまして、大臣のおっしゃるのは常に比率の数字を引っ張り出してきて論議をされておるわけです。私は、比率の数字そのくらいのことは、質疑をする以上調べてきておるわけですから、そんなことを聞こうと思ったのではないので、あなたの社会福祉に対する基本的な姿勢というものを伺いたかったわけです。しかし、あなたがいまおっしゃったことに対しては大蔵省との関連で後で私ども考え方を申し上げますから、この問題は、その点でそのまま留保しておきます。  そこで、具体的な問題に入らしていただきたいのでありますが、社会福祉施設緊急整備五カ年計画というのがあったわけでありますが、これに対しての達成の状況というものはいまどうなっていますか。
  66. 小沢辰男

    小沢国務大臣 あのときの総定数を予定いたしましたものが二百六万四千三百五十人でございましたが、達成率を見ますと、五十一年十月現在で二百十万人ということですから、総体としては達成をいたしております。ただ、個々の施設については、遺憾ながら、まだ約五割、六割程度にとどまっているようなものもございますので、今後これらを重点的にやっていきたい、かように考えます。
  67. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、計画達成、まあ一部できてないものもあるということでありますが、一応五カ年計画を終わったわけでありますから、その段階を踏まえて、今後に残されておる問題というのはどういうふうな問題だと考えておられるのか、ひとつ具体的に示していただきたい。  それからなお、事務当局から御答弁いただけるなら、どういう施設について、どの程度の未達成になっておるのかということを、あわせて補充をしてお答えを願いたい。
  68. 上村一

    ○上村政府委員 五カ年計画は、先ほど大臣から御説明申し上げましたように、全体としては上回る整備になったわけでございますが、中には、たとえば重度の身体障害者の施設あるいは特別養護老人ホーム等々につきまして、なお一部足らない点もあるわけでございます。  それで、これからの問題でございますが、私ども、五カ年計画を一応つくって実施いたしましたので、施設整備の基盤というのは一応でき上がった、これからの問題というのは、各都道府県の段階で需要というものを的確につかんでいただいて、それに基づいて整備計画というものをまとめていくことが必要ではなかろうかというふうに思うわけでございます。  そこで、今後どういう施設に重点を置くべきかというふうなお話でございますが、先ほども申し上げましたことと関連してまいりますけれども一つは、重い障害のある人たちの施設、それから寝たきり老人のための福祉施設、それから保育所の整備、そういったものに重点を置く必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  69. 矢山有作

    ○矢山委員 これは中身に立ち入って言うといろいろ問題があるわけですね。たとえば、現在整備をされたと言っておる施設の中にも、具体的に点検すると地域的な差が非常に開いておるということは御存じでしょう。それからまた、老朽施設の改善がどの程度いっておるかということも、これはあなた方は御存じなはずでありますね。それからさらに、先ほどあなたの方からもおっしゃったが、特別養護老人ホームやあるいは重症心身障害児・者施設に、まだ在宅待機で、幾ら入りたいと思っても入れないという者も相当数おるということ、これもあなた方は御存じだ。保育所に対して、どれだけの需要があるかということも御存じでしょう。  そこで、私はこれからの議論の進め方がありますから、各種社会福祉施設に入所を必要とする対象者の数は一体どのくらいあるのか、そのために必要な施設は、どの程度整備しなければならぬと把握しておるのか、そしてまた、その場合その所要施設に対して職員数はどのくらい必要だと考えておるのか。それらのことは恐らく、あなた方はつかんでおらなければ今後の整備が進まないと思う、つかんでおられるはずだと思いますから、御報告をいただきたい。
  70. 上村一

    ○上村政府委員 心身障害のある人たちとか、あるいは老人の施設、これが必要であるということは、私さっき申し上げたとおりでございますが、どれだけの人がいるかにつきましては、把握することは非常にむずかしゅうございまして、国として資料は持っておりません。
  71. 矢山有作

    ○矢山委員 そんな無責任な答弁があるかな、あなた。施設整備の要求が出るときには、あなた方はどういう形で施設整備の要求を受け付けておるのか。たとえば入所対象者が、わが県にはこれだけおる、こういう実態である、したがって、こういう施設が欲しいのだとか、そういう形で都道府県、地方から上げさせてきているわけでしょう。そうすれば、それを集計すれば、入所を要する対象者はどのくらいおるのか、それに対応した施設がどのくらい要るのか、その施設に対する職員がどの程度要るのか、つかめぬというばかな話はないでしょうが。
  72. 上村一

    ○上村政府委員 私、申し上げましたのは、国全体として心身障害者で施設に入る人はどのくらいいるかとか、あるいは寝たきり老人で施設に入らなければならない人はどのくらいいるかということはつかめないということを申し上げたわけでございまして、実際に、この社会福祉施設整備費というのは年々増額いたしておりますけれども、その予算の執行の過程で、たとえば寝たきり老人のための特別養護老人ホームについて、各県では、これこれしかじかの人間がいるから、これだけの施設をつくりたいと言ってまいりましたものにつきましては、少なくとも特別養護老人ホームについては、出てきたものすべてにつき合うような方針で処理しておるわけでございます。
  73. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた、どういうつもりで答弁しておるの。きのう、こういう問題については、できるだけ数をつかんでおいてもらうように話してありますよ。国全体として把握ができない、そんなばかなことはないでしょうが。たとえば、国全体として的確な把握ができないというなら、それは私はわかります。しかし、少なくとも毎年毎年いろいろな福祉施設を整備する場合に、その福祉施設を整備する必要性についての資料というものは全部上がってきておるはずだ。そうすれば少なくとも、的確な国全体としての数がつかめないにしても、それらを、良心があるなら、全部総合して集計してみれば大体この程度のものになっておりますという答弁ができるはずでしょう。
  74. 上村一

    ○上村政府委員 御質問の趣旨は私はよくわかるわけでございますけれども、たとえば寝たきり老人一つ考えますと、一方で施設に入れる対策を進めると同時に、在宅対策というものも進めておるわけでございます。したがって、その絡みの中で一体、全国でどのくらいの人を、寝たきり老人を対象にした特別養護老人ホームに入れるかについては、とうていつかみ得ないというのが正直なところでございます。そこで、各県から上がってくるのを合計すればわかるじゃないかというお話でございますが、各県もそれぞれ年次計画があって、たとえばある県ならある県の中で、その年に寝たきり老人のすべてを収容するための施設を整備するわけじゃございませんで、本年度は予算関係があるから、これだけ厚生省の方に出そうということで出てまいるわけでございますから、各県から出てまいりますものを合計したものが、寝たきり老人として施設に入れなければならない数にはならないということになるわけでございます。
  75. 矢山有作

    ○矢山委員 これはあなた、理屈ですよ。それじゃ、たとえば地方から、特別養護老人ホームをうちの地域に施設設置したいという場合に、どういう資料をつけて上がってきておるのか、全部出してもらいたい。なるほど在宅で処遇する者と入所を要する者といろいろあるでしょう。しかし、在宅者は在宅者として在宅者に必要な処置をせなければならぬのだし、そしてまた入所は入所としての処置をせなければならぬわけでしょう。私はそこまで突っ込んで聞いているのじゃないのだ。大体概数として、施設に入れるとしたら、施設入所を要する者がどのくらいおるかというくらいは、つかめるはずだということを言っておるわけですから。あなたの方で、まじめにこの国会に対処しようという気持ちがないから、そういう数字に対して一切答えられない。そのまじめさがないから答えられないのではないという、もう一方の考え方だって、もしなにとするならば、全然つかんでないということだ。そんなばかな話はないでしょう。そんなふまじめな態度で社会福祉施設の整備が今後進んでいくのですか、そんなふまじめな態度で。つまらぬ議論をさせないで、あなた方の方で、事前に言うてあるのだから、わかるだけの資料をそこに出してみなさい。
  76. 上村一

    ○上村政府委員 事前にお話しになったことは確かでございますけれども、少なくとも寝たきり老人については……(矢山委員「寝たきり老人だけじゃない、社会福祉施設といえば。各種社会福祉施設についてと私は言っているじゃないか。わかったものを言ってごらんなさい、わかったものを」と呼ぶ)まあその次に、今度は心身障害児に、あるいは心身障害のある者についてどうなのか、ことに重い身体障害者の数というのは相当あると思うわけでございますし、こういった人たちの施設というものは整備しなければならないわけでございますが、これも残念ながらつかんでおらない。残念ながらと申し上げましたのは、こういった施設を整備するのについて、御質問の趣旨にもございましたように何らかの形で、その対象者をつかみたいというふうに考えました。そのための実態調査をしようとしたのが昭和五十年度でございます。昭和五十年度に実態調査をしようとしたのでございますけれども、いろいろ反対がございまして、ついに絶対数をつかむことができなかった、そういうことでございます。
  77. 矢山有作

    ○矢山委員 大臣、いまのようなことで、あなた、最高責任者として、社会福祉施設の整備について、いまの財政状態の中で、そうでなくても先ほどの御論議のように大蔵省はかなり福祉問題について厳しい態度で臨んでおるのだから、そういうときに施設整備を進めることができますか。私は、あなたの監督している担当局の態度として、こんなことじゃ許されぬと思いますよ。どうお感じになりますか。  それから、御案内のように、社会福祉施設の整備については、五十年の八月に社会保障長期計画懇談会が「今後の社会保障の在り方について」の中で「現行の社会福祉施設緊急整備五ケ年計画の実績をふまえ、在宅対策との関連、今後の需要の変化等を考慮しつつ収容人員の見直しを行い新しい整備計画の下に計画的に整備を図る必要がある」と建議しているでしょう。もし、あなた方がこうした建議を尊重して、今後こういった施設を整備する必要があると考えるなら、いまのような事務当局の態度で、これはやれますか。正直に言うなら結局何も持ってないということですよ。何も調べてません、地方から上がってきたときに、そのときどき、その日しのぎで、その問題を取り上げていくだけだという。何も計画がない。そんなことでやれますか。
  78. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私もこの問題については先生と同じような考えで、一体、実態の調査をやり、その数字をきちっと把握しているのか。身体障害者の調査をやり、その中でも施設に収容を適当とする者、しない者、在宅でいい者、あるいは特別養護老人ホームに入るべき対象者と考える者、また在宅でいい者、希望等を含めて、いろいろ数字をつかみたいということで、それがあるべき姿ではないかと、こういうことで、よりより相談はしておるのでございますが、実は五十年度にやろうとしたときに、どうもハンディキャップを持つ方々から、自分たちの実態をさらけ出すことの、あるいは差別の、いろいろな感情問題等がございまして、実際の調査がなかなか正確にいかないという問題にぶつかった事務当局のつらさがあるわけでございまして、それを聞きましたので、また老人方々の中でも特に何か収容されるという感じを持って、この特別養護老人ホームに入るということについての実態調査に感情的に拒否反応が出てくるというような向きもございまして、事務当局が正確な調査データをとることについては非常な困難があるわけでございます。しかし、おっしゃるように審議会でもそういう御答申をいただいておりますし、だれが考えても先生の御意見のように、整備計画をやる以上は必要なデータを持っていなければいかぬというのは当然の御意見でございますから、どういう方法でやれば、そういうような感情の問題もうまく処理しながらやれるかということをいま検討中でございます。そうして、厚生行政の基礎調査等の費用もございますので、あるいは都道府県等ともよく連絡をとりまして、およそのその数字が出てくるような方法を考えながら実態をできるだけ早くつかみたい、こう思っておりますので、しばらく御猶予をいただきたいと思います。
  79. 矢山有作

    ○矢山委員 さすが大臣大臣だから、ちゃんと配慮した答弁ができる。しかし事務当局の方がもう少し、いろいろな懇談会の建議を受けたり審議会の答申を受けたりしておるのだから、それを少しやっていこうと思えば、やはりあなた方の方で、正確には把握できない事情があることは私も知っております。しかし、できるだけ実態を把握してやるということでないとだめなんじゃないですか。あなた、笑顔のいい人だから、にこにこして聞いておられますが、にこにこするだけでは、こういうむずかしい問題は処理できぬのですから、いま大臣のおっしゃったことを踏まえて、もう少しまじめに取り組んでいただきたい、このことを申し上げておきまして、一つところで足踏みをすると次へ進めませんから、残念ながら、この程度にして次へ進んでまいります。  そこで、社会福祉施設における労働基準法違反の事件というのは、私かつて四十九年当時取り上げたことがあるのですが、最近の状況を見ましても、やはりきわめて高い水準にあるように承知しております。そこで労働省に伺いたいのですが、その労働基準法違反の実態がどうなっておるかということです。
  80. 小粥義朗

    ○小粥説明員 社会福祉施設関係で、労働基準法とそれから健康診断その他を定めております労働安全衛生法、あわせましての違反の状況でございますが、四十七年当時の監督結果によりますと、届けを出してないといったいろんな手続違反を含めまして、違反事業所の全体に占める割合が七九・八%という非常に高い率であったわけでございますが、五十一年の数字を申し上げますと六三・一%ということで、五十年以降低下の傾向にございます。この六三%といいますのは、全産業平均が大体同じような違反率になっておりますので、かつては全産業平均よりも非常に高い違反率であったわけですが、最近では全産業平均レベルぐらいまで改善を見ているという状況にはございます。
  81. 矢山有作

    ○矢山委員 確かに四十七年当時から比べて改善の跡が見えるということはわかります。しかしながら、そうした違反の中でも、重症心身障害児施設だとか養護施設あるいは特別養護老人ホームとか精薄児施設、養護老人ホーム、こういうところが比較的違反の率が高い、こういう実態になっておりますね。そこで私が聞きたいのは、こういう労働基準法違反が依然として後を絶たない、しかも、かなり高率であるというその原因は、調べられた場合に、どういうふうにおとらえになっていますか。
  82. 小粥義朗

    ○小粥説明員 従来の違反の中身をいろいろと当たってみますと、四十七年あるいは八年当時、非常に違反率の高い時点では、たとえば法定の休憩時間をとれないとか、あるいは残業時間が女子の場合は制限がございますが、それ以上にならざるを得ないとかいった面で、いろんな要員の問題が絡んでいたかと思います。それが、厚生省の方でも五十年以降、相当の増員を実施されたということになっております。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕 最近の違反の中では、休憩あるいは残業という面の違反もございますが、いろいろな手続面の、たとえば残業についての三六協定の届け出がないとか、あるいは健康診断をやっていないとかいった面で、比較的違反の件数が多くうかがわれますので、法の内容について、まだ十分浸透してない面があるんじゃないか、意識の面で浸透してない面もあるんじゃないか、そういうことを感じております。
  83. 矢山有作

    ○矢山委員 厚生省に伺いたいのですが、社会福祉施設の職員の充足状況ですね、これは基準数と現在の数と、この関係はどうなっていますか。
  84. 上村一

    ○上村政府委員 施設の職員の充足につきましては従前から努力しておるわけでございますが、私どもが都道府県の指導監査の際に調べましたところでは、総数として見ますと、私どもが決めました定員に対しまして充足をしておるというふうにつかんでおるわけでございます。
  85. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、違反の態様にはいろいろある。そして、言葉は適切かどうか知りませんが、形式的な違反がかなりあるけれども、実質的な違反というのですか、労働時間だとかあるいは休憩だとか、そういう面は減っておるということは、おっしゃったとおりであろうと思います。しかし、減っておるにしても、やはり違反が続いておる。そこで、いまお聞きしたところによると、基準数は大体満たされておるという御答弁であります。そうすると、これは基準数が満たされておるのに、なお、そういう違反が絶えないという問題。厚生省は労働基準法があるということを御存じのはずでありますし、その中身がどうなっておるということも御存じのはずだと思うのです。そうすれば、労働基準法違反が起こらないで運営できるような要員を確保するという立場から基準数は定められただろう、私はこういうふうに考えざるを得ないのでありますけれども、そういう運営上労働基準法違反が起こらないということを念頭に置きながら基準数を定め、なお違反がある。ここでいまだ基準数というものに問題があるのではないか、そういうふうに思うのですが、どうなんでしょう。
  86. 上村一

    ○上村政府委員 四十九年ごろに社会福祉施設における労働基準法の問題が大きく取り上げられたわけでございます。そこで昭和五十年度、五十一年度の両年度の予算で、いわゆる収容施設につきましては夜勤体制を整備する、保育所では休憩時間を確保するということで一万六千人の大幅増員を図ったのでございます。それから五十二年度は、これは労基法とは関係ございませんけれども、給食体制の整備を図るために三千二百人の増員を図った。五十三年度予算でも増員を図っておるわけでございます。したがいまして、国の予算措置としては労働基準法が守れるような体制は整備したと考えておるわけでございますが、そういった充足率と、労働基準法違反のケースがあるのはどういう関係なのかという点について、私はこう思うわけでございます。と申しますのは、マクロとして見ました数字を申し上げたのであって、個々の施設に見ました場合に必らずしも私どもの要求した定員を満たしておらない場合もあるのじゃないかということと、それから、職員は配置されてあるけれども、個々の管理者の中で必ずしもまだ労働基準法について十分理解をしていない、と言うと言い過ぎがあるかもわかりませんけれども、理解に不十分な点があって、こういった違反事件を起こしているのじゃないか。基準数が少ないがために労働基準法違反になっておるとは私ども考えておりません。
  87. 矢山有作

    ○矢山委員 基準数が少ないから労働基準法違反が起こっておるとは考えられない、こういうふうにおっしゃったわけであります。厚生省としては労基法があるということを知っており、中身を知っておって基準数を決めておるのだろうから、そういう中で、なお違反が起こっておるときに、そういう答弁しか出てこないだろうと私は思います。そこで、この問題は数字を的確につかんだ上で議論をしなければなりません。そこで私は、この質疑に備えて一週間から十日前に、そうしたものの資料要求もしておりましたが、いまだに私の手元には届いておらぬ。厚生省は四、五年前から資料要求の提出についてはきわめてふまじめだということを、この際申し上げておきまして、こうした基準数と定員の関係、それからさらに労働基準法違反の実態、これを詳細わかるように資料として提出していただきたい。よろしゅうございますか。
  88. 上村一

    ○上村政府委員 まず、労働基準法違反の問題は私どもではございませんから……。
  89. 矢山有作

    ○矢山委員 いやいや、資料として出せるのか出せぬのか、それだけでいいのだ、時間がないのだから。
  90. 上村一

    ○上村政府委員 出し得るものは出せるというふうに考えております。
  91. 矢山有作

    ○矢山委員 出せないものは何だ。
  92. 上村一

    ○上村政府委員 したがいまして、これはちょっと検討させていただきたいわけでございます。
  93. 矢山有作

    ○矢山委員 厚生大臣、これは、かつて私が参議院におりました時分から、厚生省に資料要求すると出してこない。それでどうして出してこないのか調べてみると、私が要求しっ放しにして、あなた方の方から、要求した資料に対して明確に出しますと言うて答えた以外のものは出さぬでほっておけばいいじゃないか、こういう思想が流れておるという話を聞いた。それで私は、資料が出せるか出せぬかと言ってあえて答弁を求めたのです。そうしたら、いまのような話だ。だから言いっ放しにすると、いかにも資料を出すことを承知したような顔をして、実は資料を持っていないから出してこない、こういうことになっておる。それが実態ですから、この点は責任者としての大臣の方でよく事務局にただしてみてください。  それから私は、もう一つ、労働基準法違反の問題でどうしても明らかにしておかなければならぬのは、いまの福祉施設において一体労働の実態がどうなっておるのかということも考えながら、この問題を考えていかぬと、施設の労働者の状態というものが明快にされてこないのです。この問題については私、残念ながら、いま新しい資料を持っておりません。しかし、四十七年に「社会福祉施設に対する監督指導結果の概要」というものが出ております。それによりますと、時間外労働の数あるいは休憩がとれない、これが非常に多いのです。時間がないから、きょう申し上げませんが、恐らく、その後の状態を調べておられると思いますから、調べておられるのなら、四十七年当時調べたことが今日どの程度改善されておるかということ、これについては資料があったら出してください。どうですか。
  94. 小粥義朗

    ○小粥説明員 社会福祉施設に限っての残業時間の実態がどうなっているかという数字は、実はいま手元に持っておりませんが、いわゆる保健衛生業という業種でとらえた場合の数字はございますので、そうした点は御提出したいと思います。
  95. 矢山有作

    ○矢山委員 四十七年に「社会福祉施設に対する監督指導結果の概要」というのを出されましたね。この中には労働時間の状態、休憩時間の状態あるいは夜間業務の状態あるいは宿直勤務等について詳細な報告書が出ているわけですが、私はそれをもとにして四十九年四月当時に質疑をしたはずでありますから、したがって、その後それがありますか。なければないでいい。
  96. 小粥義朗

    ○小粥説明員 特にそれだけを詳細に調べたのはないわけでございます。
  97. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると四十七年当時の資料しかないということです。四十七年当時の資料はあるそうでありますから、厚生省の方で労働省から、この労働実態がどうなっておるか、ひとつ取り寄せて考えていただきたい。その労働実態を踏まえながら、現在の基準数が、満たされておる基準数でいいのか悪いのかという論議をやりませんと、ただ基準数を踏まえて労働基準法違反の問題だけで平面的な論議をやりますと、これはいま御答弁になったような結果になるということは御案内のとおりです。したがって、労働実態をも踏まえながら、基準数、そして労働基準法違反、この三者を組み合わせて、いまの施設の職員の状態というものを的確に把握した上で施設の改善ということについても検討していただかなきやならぬだろう、私はこういうふうに考えます。  そこで、実はその当時、私は質疑の中で施設職員の給与の件について聞いたことがあるのです。これはどういう聞き方をしたかといいますと、厚生省の方は、いま国家公務員並みの給与にしておるから、それでいいじゃないか、こういうふうにおっしゃったので、私の方は、国家公務員並みの給与にしておるからということでは済まされぬ、社会福祉施設の労働の実態から見て。その労働の実態に合わせたような給与にすべきだ、こういうことを主張したわけです。ところが当時、翁児童家庭局長、いま事務次官ですね、この方が、私どもも施設職員の給与体系が国家公務員並みでよいというように決めているわけではない。施設職員にはそれにふさわしい給与体系があってしかるべきだと考え、プロジェクトチームをつくり研究を重ねている、と言われました。さらに、企業体系として福祉職はいかにあるべきかということは今後の重大な課題であり、またそのことによって施設職員の確保それから定着を図っていくという方向に努力していかねばならない。これはわれわれの最大の課題である、というふうな発言をされたわけであります。したがって、このプロジェクトチームをつくり研究を重ねた結果について結論が出、その結論について、どういうふうに対処されていくのか、これを承りたい。
  98. 上村一

    ○上村政府委員 まず結論から申し上げますと、福祉施設だけの給与体系をつくることは非常にむずかしゅうございました。そこで、国家公務員並みの給与水準を確保するような措置費を組みながら、たとえて申し上げますと特別養護老人ホームでは、施設長は施設の規模によって何等級の何号に格づけるとか、寮母は何等級何号に格づけるということをしながら、同時に調整額というのを寮母の場合には一六%というのをつけ、さらに昭和五十年度からは直接処遇職員でございます保母とか寮母、指導員について六%の給与の特別改善というものをつけることにしておるわけでございます。ベースは国家公務員給与に置きながら、調整額とかあるいは給与特別改善というものを積み上げることによって施設職員の処遇の向上に努力をしてまいってきておるということでございます。
  99. 矢山有作

    ○矢山委員 施設の問題について実は論議をしようと思ったんですが、こっち側の責任なのか厚生省当局の責任なのか、私は厚生省当局の責任だと思うのですが、論議が、何を議論をしたのか、さっぱりわからないようなことになってしまったわけであります。私は何を論議したかったかというと、現在、社会経済情勢がきわめて厳しいということを大臣はお認めになり、財政の苦しい中でも、やはり社会福祉施設は強化しなきゃならぬのだ、重要な課題だと言っておられるわけでしょう。したがって、その重要な課題にこたえていくためには、たとえば社会福祉施設を一つの例にとった場合に、社会福祉施設は、そこに入りたいという希望を持った人に対して十分施設が満たされておるのか、また、その施設の中における処遇等が十分満たされるような状態になっておるのかということを私は問題にしたかったわけであります。ところが、それを議論しようにも、あなた方の方で、議論がかみ合う審議をしようとするための資料がさっぱりないわけだから、この問題は議論できないんだ、そういうことになってしまった。しかも、議論できないというこういう状態というのは、厚生省が口では社会福祉を言っているけれども、社会福祉の主管官庁としていかに無責任であるかということを私は暴露したものだろうと思うんです。そのことを申し上げておいて、時間の関係がありますから次の質疑に入ります。  大蔵当局に聞きたいんですが、大づかみに言って、戦後のわが国の財政運営の特徴というのは、いわゆる投資型財政と言われておって、公共事業関係費の比率が高い。反面、社会保障関係費の比率が相対的に低かったと思うのです。それが四十八年ごろから福祉重視ということで若干、福祉の分野に財源が多く配分されるようになったというふうに私は思っております。つまり、福祉型へという動きを見せてきたと思うんです。ところが、それが最近また、長期化する厳しい不況の状況もあって、景気回復には公共事業がまず第一だ、こういうようなことから再び投資型の財政に逆戻りしつつあるんじゃないか、大づかみに言ってですよ、そういうふうに考えておるのですが、いかがでしょう。
  100. 窪田弘

    ○窪田説明員 先生の御指摘の点は、五十三年度予算の経費配分の姿を御指摘のことだと思いますが、私どもの感じは、むしろそうではございませんで、社会保障関係費は最も重要な費目の一つとして非常に重視をしているところでございます。先ほども厚生大臣おっしゃいましたように、社会保障予算というのは、本来必要な給付を着実に前進さしていく、こういう考え方が適当であろうと思います。景気がいいから伸ばすとか景気が悪いから控えるということではございませんで、着実に社会保障関係費を伸ばしていくという考え方を私どももとっております。五十三年度予算におきましても、このような予算の中におきまして、私どもは社会保障予算を伸ばすために最大の努力をしたつもりでございます。
  101. 矢山有作

    ○矢山委員 それじゃ私は承りたいのですが、先般、財政収支試算というのを大蔵当局は発表されたわけですね。私はこの財政収支試算を見まして、これが、いま言われた福祉を重視しておる大蔵省の考え方だということと非常な矛盾があるんではないか、こういうふうに感じたんです。特に、その問題が明確にあらわれておるケースを一つ挙げながら御質問申し上げたいんですけれども、それはケースBなんですね。ケースBでは、振替支出を五十四年度以降も五十三年度並みに据え置いておるわけですね。他方、投資部門は、五十四年度は一三・七、五十五年度が一三・八、それから五十六年度が一二・七、五十七年度一二・七と、二けたの伸びにしておりますね。これは私は福祉重視だとは言えないのじゃないかと思うのですよ。あなた方は財政再建という場合に、投資部門と経常部門とに分けて、経常部門の中における赤字国債、いわゆる特例公債ですね、これを減らすということを財政再建だと考えているわけですね。そうなるとやはり経常部門に圧力が加わってくる、こういうことになるわけです。だから、経常部門に圧力が加わってくる姿が一番端的に出たのがこのケースBなんですよ。しかも、ケースBが端的に出ておるわけであって、ケースBだけではありません。あの試算で五つのケースが示されております。大体それを通じて流れておる思想というものは同じです。そういうふうに考えておる。いまあなたは、福祉は重視しておるとおっしゃったけれども、ちょっとおかしいじゃありませんか。しかも、これは財政収支試算として示されて、五十七年度までは少なくとも、こういう方向で財政運営をやっていこうという考え方を示したのでしょう。そうだとすればこれは問題ですよ。
  102. 窪田弘

    ○窪田説明員 財政収支試算そのものの性格について、いま詳細にお話しするのもどうかと思いますが、御指摘のケースBは、仮に五十七年度に特例公債をゼロにするために、それを歳出面でやろうとすれば、こういう極端な姿になりますという一つの試算といいますか、計算にすぎないわけでございます。これくらいの無理なことをやって、やっと特例公債ゼロになる、こういういまの特例公債依存は深刻な状態になっております。経常経費の二〇%近くを特例公債に依存している、これは非常な問題ではないかという問題提起のための計算というふうにおとりいただきたいと思います。  それから、ほかのものも社会保障の伸びを非常に抑えておるではないか、こういう御指摘でございますが、この計算自体が、経済企画庁の将来の暫定試算というものを仮に前提といたしまして、そのように経済がなった場合には財政の伸びは仮にこんなものであろうという一つの数字を置いてみたものでございます。その相互の費目のバランスを見ていただきますと、振替支出は約一六%の平均伸び率になっておりますが、経常経費の全体は一二%になっておりますし、その辺からごらんいただきましても、私どもが社会保障に非常にウエートを置いて重要視しているという姿勢はおくみ取りいただけるのではないかと考えております。
  103. 矢山有作

    ○矢山委員 それはおかしいじゃありませんか。私はケースBの問題を言っているのですよ。振替支出は全然伸ばしていないのです。五十三年度八兆三千一百億でしょう。それでずっと全部推移しているのです。これは全然伸びていません。しかも、投資的経費の方は、伸び率平均で言うと一六・七%見ておられるわけでしょう。これは、いろいろと財政収支試算について、あなた方の方で言われておることは承知しております。私ども予算委員会での論議を多少聞いていますから。予算委員会の論議というのは、あれは減税を抑えるための大蔵省の積極的なPRじゃないかというようなことで論議されたと思うのですが、今度の場合は、物の考え方がケースBに特徴的にあらわれて、しかも五つのケースの場合を基本的に貫いておる思想、それは財政状況が苦しいのだということを根底にしながら、そのためには福祉に重点を向けることはできぬのだ。つまり、福祉を犠牲にしながら財政再建を考えておるという姿勢があらわれているのじゃありませんか。特に、われわれ野党側ではいま福祉年金の改善を言っております。したがって、福祉年金の改善に対して、頭から減税と同じように、あなた方の方で意図的に、そんな福祉年金の改善や減税をやったら、とてもじゃないが財政がもたぬのですというPRじゃないですか。こんな財政収支試算を出してくるのはけしからぬと思うのです。
  104. 窪田弘

    ○窪田説明員 私どもの意図は全くそういうところにはないわけでございまして、ケースBは特例公債というものだけに着目しまして、特例公債を五十七年度に仮にゼロにする、そのために歳出面だけを抑えたらどうなるか、こういう計算をやってみたというだけでございます。社会保障費を抑えるという意図はまるっきりございませんし、今後とも社会保障予算の拡充には私どもも努力してまいりたいと考えております。
  105. 矢山有作

    ○矢山委員 ところが、振替支出だけの問題じゃないのですよ。このケースBでは、振替支出の問題は伸び率全部ゼロでやっておりますが、歳出の中で「その他」というのがあるでしょう。「その他」というのは、地方交付税以外は全部ゼロに見ているわけでしょう。そうすると地方交付税以外は全部ゼロに見てしまったら、一体、あなた方は社会福祉施設は公共投資だから別にやるのです。こう言ったって、社会福祉施設はできたって、そこに入れる職員をどうするのですか。そういう矛盾もここに出ているのですよ。それでぬけぬけと社会福祉を軽視していないと言えるのですか。あなた方は財政の専門家だから、いろいろと小理屈を並べるのは好きだろうけれども、そういう矛盾がはっきり出ているじゃありませんか。たとえば、社会福祉施設を軽視しておりません。振替支出こそ、なるほど同じ金額に据え置いておりますけれども、社会保障には重点を置いております。それは公共事業の中で社会福祉施設をつくっていくと逃げたいのでしょうが、いま言ったように、社会福祉施設をつくったって「その他」の伸び率をゼロにしているんだったら職員が確保できない。そういうでたらめな財政収支試算を出してくるということに問題がある。そういうものを出してくる意図というのは、減税を抑え込もうとする意図と同様に社会福祉を抑え込もう、福祉年金の増額の要求を抑え込もうとする、あなた方の悪らつな意図だと私は思う。そういうようなことを大蔵当局が考えるのはまさに出過ぎた話ですよ。  厚生大臣、いまそういうことなんです。しかも、これを五十三年度以降、もし定着したとするなら社会福祉の増進どころの話じゃないのです。一体、あなたはどう考えておられるのですか。それからもう一つ言いたいのは、いまの福祉施設の状況で、あなたも十分だとは思っておられぬということはわかります。十分でないとするなら、形式的に数をふやすこともやらなければならぬだろうし、また中身の改善もやらなければならぬだろうし、さらに、もっと金を食う在宅対策というものも考えていかなければならぬ。そうなるとこれは大変な金を食うと私は思う。そういう金を食うということがわかっておるのに、一方で財政当局はそれに全く真っ向から水をかけるような財政収支試算をのうのうと出してきているわけです。あなた、これをどう思いますか。
  106. 小沢辰男

    小沢国務大臣 五十七年度で赤字公債を一切なくすると考えた場合には、いろいろな考え方、やり方があるが、それを試みにやってみますとAからEまでのいろいろな試算が成り立ちますということを大蔵省が資料としてお出ししたわけでございまして、国が三七%以上の赤字公債を発行しなければならないときに、確かに経済環境、財政環境が悪いものですから社会保障はなかなか容易でないと思うのでございますが、ただそれだけであったら政治は成り立たぬわけでございますから、そこを毎年度の予算編成でいろいろ知恵をしぼりながら、苦労しながら着実に社会保障を伸ばしていくのが政治だと思います。その責任者が私でございますので、もし財政見込みの表どおりに推移するということであれば、これは厚生大臣は要らぬわけでございますので、これはひとつ来年度の予算編成で国会の御審議を願う際に、いろいろと御評価を願いたいと思うわけでございまして、決して私は、ただその表だけで、ああそうか、そうすると来年は全く伸び率ゼロだな、どうしていくかなと言って苦労ばかりしているような厚生大臣であったら勤まらぬと思いますから、その点はできるだけひとつ努力をいたしますので、資料の性格については誤解のないようにしていただきたいと思うわけでございます。
  107. 矢山有作

    ○矢山委員 私は、きょう国債論議をやるんじゃありませんから、これ以上言いませんけれども、国債の中に赤字国債と建設国債と分けて、そうして財政再建の道は赤字国債を減らすことなんだという考え方そのものが問題だと私は思うのです。国債は、赤字国債と言おうと建設国債と言おうと、後の世代に借金を残す意味じゃ同じですからね。これは何ら変わるところはないのですよ。そういう物の考え方、分け方をするというのは、財政健全化には、この赤字国債を減らさなければならぬのだという発想につながっていくわけですよ。赤字国債を減らすということになれば、どうなるかといえば経常部門を圧縮する以外にはない、こうつながってくるわけでしょう。経常部門を圧縮するということになると、社会保障、そういうところへしわ寄せがいくというのはあたりまえの話ですよ、投資部門を全然減らしてないのだから。投資部門の建設国債はそのままでずっといっているわけでしょう。投資部門の歳出もそのままなんですからね。こういうでたらめな話はないということを私は言っているのです。大蔵省はそういう基本的な考え方があるのですよ。基本的な考え方があるから、こんなものがのこのこ出てくるのだ。大臣そのことをよく考えていただきたい。  私が最後に申し上げたいのは、こういうような試算が大蔵省からのこのこと示されるというのは、厚生省にも責任があると私は思う。厚生省がいまの社会福祉施策の充実の問題について一つのしっかりした計画を持っておって、私どもは社会福祉計画をつくれということを長年言ってきたのだから、そういう計画を持っておって、それを十分大蔵省にも理解をさせる、そうして福祉についての積極的な姿勢をとらせるという努力をしておったら、こういうでたらめなことにならないのですよ。ところが、大蔵省がこういうふうなでたらめな試算を出してくるという根拠は、先ほどの質疑の中でも明らかになったように、施設一つをとってみても、一体、社会福祉施設がどれだけ要るのやら、社会福祉施設に入りたいと言っている人がどれだけおるのやら、また、それを収容して運営した場合に、どれだけの職員が要るのやら、さっぱりつかんでいない。こんなでたらめな話はないということを私は申し上げておきたい。  これ以上質問を続けて、もっともっと解明しなければならぬのだけれども、時間が制約されておりますからさっぱりできない。したがって、私はこういう時間の制約については今後、委員長にも考えてもらわなければならぬ。委員会というところは、ぺらぺらしゃべって、それに対して答えをしてもらっておればいいということじゃ済まぬので、問題はやはり、意見の相違があるなら、その意見の相違を徹底的に突き詰めていく、そうして、その意見の相違の点をはっきりさしていく、それが一つ。それからまた、意見について誤りがあるなら、それを改めてもらって、そして積極的な対応策をとってもらう、そういうことが意味があるので、これではさっぱり問題が煮詰まっていない。  以上で終わります。
  108. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 川本敏美君。
  109. 川本敏美

    ○川本委員 小沢厚生大臣に朝から、大原委員が年金の問題とかあるいは医療の問題、矢山委員が福祉施設の問題等について非常に大きな立場から質問をされました。この間の厚生大臣所信表明の中で、いわゆる在宅の「身体障害者福祉対策、老人福祉対策等におきましても、きめ細かく心の通った福祉施策の充実に努めたところであります。」こういう言い方をしておられる。果たして「きめ細かく心の通った」というような施策になっておるのかどうか、こういう点について、ひとつ厚生大臣の認識を改めてもらいたい、さらには関係者の皆さん方にも、もう一度この制度の抜本的な改正について、ひとつ奮起を促したい、こういう立場から若干の質問をいたしたいと思っておるわけです。  まず、その問題に入る前にお聞きいたしたいのですけれども老人福祉法の十二条あるいは身体障害者福祉法の二十一条の三で、いわゆる家庭奉仕員、ホームヘルパーと俗に言われておるが、これらの問題についての規定がなされておるわけです。そこで、字句を聞いていくとおかしいと思うのですけれども老人福祉法の中でも身体障害者福祉法の中でも書かれておる言葉の中に、身体上あるいは精神上に障害があって日常生活を営むのに支障がある在宅の老人とか身体障害者云々、こう書いてあるのです。これは局長にまずお聞きしたいのですが、その中に日常の世話をするという「世話」という言葉が出てきておる。これは保健婦助産婦看護婦法の第五条にもこういうことが書かれてあるのです。「傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話」という言葉がある。この「世話」という言葉の使い方なんですが、老人福祉法とか身体障害者福祉法でいう「世話」と、この看護婦法でいう「世話」という意味の違いはどういうところにあるのですか。同じですか。
  110. 上村一

    ○上村政府委員 老人家庭奉仕員を例に挙げますと、「世話」というのは一つの行為をあらわす字でございますから、その世話というものにどういうものがあるかといいますと、食事の世話であるとか、あるいは衣類の洗たくとか補修であるとか、あるいは住居等の掃除、整理整とん、それから身の回りの世話、生活必需品の買い物とか通院の介助そういった家事とか介助というものを、いわゆる家庭奉仕員の「世話」であると考えておるわけでございます。それで看護婦の「世話」というのは療養の世話でございますから、その点については性格が多少違うということになるのじゃないかと思うわけでございます。
  111. 川本敏美

    ○川本委員 おかしいと思うのですよ。そうすると、家庭奉仕員の日常の世話というのは、寝たきり老人のところへ行って御飯どきになったら食事を食べさすのが世話、看護婦さんも病院で収容されておる病人に対して食事どきに食事を食べさすのが世話、それなら、その世話の違いはどういうことなんですか。
  112. 小沢辰男

    小沢国務大臣 その世話という言葉の違いじゃなくて、看護婦さんやなにかは、その前についている療養の世話ということでござますので、そこが付き添いと違う点でございまして、この点は御理解いただきたいのです。療養の世話であります。したがって食事についてもやはり療養の一環としての世話である。ただ単に、何も病気はないが不自由をしている人の食事の世話とは違う、そういうふうに考えていただきたい。
  113. 川本敏美

    ○川本委員 寝たきりの老人とか、あるいは重度の身体障害者、法律では「著しく」という表現になっておる。そういう障害者の方々が寝たきりでおられるということは、病気がなかったら元気にしておられるとぼくは思うのです。やはりその原因になるのは病気がある、傷病がある。老衰等もあると思いますけれども、やはり療養的な部分があることは間違いないと思う。そうするとホームヘルパーは、いま大臣が言ったように看護婦さんと違うんだから、その家庭へ行って、老人や身体障害者がせき込んだり、いろいろなことで苦しんでおる、ところが、それを世話する必要がないんだ、こういう意味なんですか。その辺について、まず明確にしておいてもらいたい。
  114. 上村一

    ○上村政府委員 何といいますか、家庭奉仕員が寝たきり老人のお宅に行って、せき込んでおられるときに背中をさする、せきのしやすいようにするというのは、やはり家庭奉仕員としての仕事になると思うのです。身の回りの世話あるいは必要な介護というふうに考えるわけでございます。ただ、看護婦さんの専門職としての仕事というものと、それから家庭奉仕員の仕事というものを比べました場合に、そこに大きな差がある。寝たきり老人にいたしましても、あるいは重い身体障害者にしましても、健康がよくないということは確かでございますけれども、もっぱら病人の世話ということになりましたら、これはやはり看護婦さんが、より向いた人である。何といいますか、病人について世話をしてはいけないというつもりは毛頭ないわけでございます。
  115. 川本敏美

    ○川本委員 私が言わんとするのは、家庭奉仕員とかあるいは介護人の派遣制度というものが老人福祉法や身体障害者福祉法で決められている。ところが、その要綱を見てみると、いまおっしゃるように、そのサービスといいますか、いわゆる家庭奉仕員のサービス内容、あるいは介護人の任務といいますか、そういうことが要綱の中に規定されているわけです。ところが、その中で問題点がたくさんあると思うから冒頭、私は申し上げたわけですけれども、この問題についてはもう少し後に残して議論していきたいと思うのです。  そこで、一番最初にお聞きしたいことは、これら在宅の方々に介護を要する、こういうことを判断するのは、だれが判断するわけですか。
  116. 上村一

    ○上村政府委員 家庭奉仕員を派遣いたしますのは市町村長の仕事であると理解をいたしておるわけでございます。そうしておるわけでございます。したがいまして、市町村役場の窓口であるということになるわけでございます。
  117. 川本敏美

    ○川本委員 そこで、この要綱を見てみますと非常に大まかなことが書かれているわけですね。要綱の中で、事業主体は市町村であるということは明確にしてある。ところが派遣対象ということになりますと、「老衰、心身の障害傷病等の理由により臥床している等日常生活を営むのに支障があるおおむね六五歳以上の低所得の者であって、」看護人の得られない者、こういう表現になっておる。おおむね六十五歳以上ということになると、六十四歳でもいいのじゃないかということになる。低所得者とは一体どういうことなのか。心身の障害傷病等の理由によりというのはどういう程度の者を指すのか。いろいろ具体的に考えていったら、非常に大まかなことで、物差しとしては非常に幅の広い、運用面から考えると運用によって、どのようにでもなるという性質のものじゃないかと思う。  そこで、まずこれについては派遣対象の決定はあくまでも市町村長がやる。ところが、その市町村長が、仮にこういう対象者がおっても、現在派遣しなければならないという義務を負っておるのかどうかということになると、これは問題があるんじゃないかと思うが、その点、市町村長が派遣しなければならぬ決定を怠った場合に、どうなるのですか。
  118. 上村一

    ○上村政府委員 まず、寝たきり老人にいたしましても、あるいは重い身体障害者にいたしましても、家庭奉仕員を派遣する仕事というのは市町村の固有の仕事であると考えておるわけでございます。生活保護のように国から命ぜられてやる仕事ではない。したがいまして、これは市町村長さんの御判断でおやりになってしかるべき事柄であって、仮に市町村長がやれない、やらないということになれば、これは市町村の自治体としての問題というふうに考えるわけでございます。
  119. 川本敏美

    ○川本委員 市町村の固有の仕事だ、だから国はもう全然責任はないのだ。たとえて言いますと、市町村が二つ並んでおる。片一方の町では家庭奉仕員を十一人も置いて十分な介護に当たらせておる。片一方の町では全然やっていない。そのために、仮に一人、寝たきりの老人が息を引き取られて、そのはたで、また寝たきりのおばあさんが付き添っておって、これはどこへも連絡ができぬ。何日かたって初めて、亡くなっておるということを隣近所の人が発見をして、そこで息も絶え絶えのおばあさんが苦しんでおるのを発見したというようなケースが最近よくありますね。そうすると、そういうような場合でも市町村長は何の責任もないわけですか。
  120. 上村一

    ○上村政府委員 家庭奉仕員というものを設けることを義務づけておるわけではございませんで、自治体の首長としての市町村長さんの判断でございますから、法律的に責任がある、ないという問題にはならないというふうに考えます。
  121. 川本敏美

    ○川本委員 最近、老齢化社会ということがよく言われます。現在、六十五歳以上の老人というのは大体九百万ぐらいおるそうですけれども、これが昭和八十年になり昭和九十年になって初めて大体安定化の状況に入っていくと言われておるのです。現在、六十五歳以上の老人国民全体の中で八%ぐらいだと言われておるのですが、九十年になると、その比率が一八・八%になるということを言われておるわけです。そうなると、昭和九十年になると日本国民の中で、いわゆる老人というのは千八百万人ぐらいになるんだと言われておるわけですね。そういうような将来の老齢化社会というものを考えた場合に、いまのように市町村長の恣意に任せて、いわゆる介護を必要とする在宅の老人や心身障害者があっても、うちの町はやらないんだ、こう市長さんが言うたらやらない、そういうような恣意に任せて、いつまでもいけるかどうか。この点についてやはり国として明確な一線を設けるべきじゃないかと私は思うのですが、その点について大臣ひとつ。
  122. 小沢辰男

    小沢国務大臣 御承知のように、全人口の一八%を占めるに至るような老齢化社会を想定いたしましたときに、おっしゃるようないろいろな問題点が考えられるわけでございます。そうかといって、たとえば法律で、その責任を果たさなければいかぬのだということを一つの義務的なものにするかどうかを考えますと、本来、市町村の固有事務というのは、たとえば水道とかごみ処理、これはみんなそうでございますが、そういうものが普及をしないからといって、その責任をということと同じように、固有事務の完全なる遂行をしていないという政治的なあるいは行政的な道義的な責任はありましょうけれども、法律的な責任までは、どうも、いまの体制下で追及をするということは、やはり一考を要する問題ではないかと思います。しかし、ある町ではやっている、ある町では全然やらないという問題を、国全体の老人福祉から考えて、そのままで放置していいかどうかということになりますと、これは別の問題でございますので、この点は、その当該市町村に対する行政指導を強化し、かつ、その裏づけのいろいろな援助政策というものを国がとっていく必要があるんじゃないか。そうして現実に、そういう事態の起こらないような普及を、われわれが責任を持って果たしていかなければならないのではないか、かように考えます。
  123. 川本敏美

    ○川本委員 大臣の前段の答弁はちょっと私は納得できないのですが、しかし後段で若干前向きですけれども、自治省の方へ聞きますと、自治省は全国の市町村に対して、家庭奉仕員の制度を設置してあると否とにかかわらず、交付税の配分に当たっては、三分の一が国の負担だ、三分の一が県の負担だ、三分の一が市町村の負担だ。この補助裏の市町村の負担に相当する額を、いわゆる人口十万でヘルパーが十一人ですか、そういう数で算定をして、算定の基礎の中に入れて市町村には交付してあるんだと、自治省はこう言うわけです。きょうは自治省来てもらっていませんけれども、明確な答弁なんです。そうなりますと、いわゆるヘルパーを設置するための交付税をもらっておきながら、それを設置しないでいるという市町村に対しては、厚生大臣がもっと積極的に義務を負わすというところまでいってもいいんじゃないか。財政面では見ておるんだ。こういう面で、やはりもっと積極さを出してもらいたい、このことをひとつ大臣に、まず要望しておきたいと思うのです。  そこで、話を前へ進めたいと思うのですが、大体ヘルパーと介護人の派遣制度と二つあるわけです。ヘルパーというのは一日に何人かの老人や身障者の家庭へ訪問していろいろサービスをしていく。介護人というのは、隣近所の方のボランティアといいますか、そういうような方に、もともと依存するのを制度化したという感じにはとれますけれども、在宅のそういう方に、あらかじめ予約券を渡しておいて、急に介護を必要になったときに連絡さえすれば市町村長が介護人を派遣する臨時のものこういうふうに解釈していいんじゃなかろうかと思うのですけれども、ところが、その要綱を見ますと、これは局長さん、また一つ、おかしいことがある。  家庭奉仕員の場合は、そのサービス内容について、(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)(カ)と任務の内容が書かれておる。介護人の方もアイウエオカというのがあるわけです。両方とも共通しておるのは、まず「食事の世話」これは両方とも共通しておる。イのところで、介護人の方は「住居の掃除」というのがある。ところが家庭奉仕員の場合は「住居等の掃除」と同時に「整理整頓」というのが書かれている。それなら介護人は掃除だけして散らかしておいて帰ってもいいのかということですね。整理整とんしなくてもいい、任務の中に入っていないのだから。もう一つ「衣類の洗濯、補修」というのは家庭奉仕員には入っておる。ところが介護人の方に入ってない。家庭奉仕員の方には(カ)のところで「その他必要な家事、介護」と、介護という字が入っておる。ところが肝心の介護人の方には介護ということは何にもないのですね。「医療機関等との連絡」、こういうことが入っておるだけなんですね。ここでまずおかしいと思うのは、介護人はそれなら衣類の洗たくはしなくてもいいんですか。
  124. 上村一

    ○上村政府委員 要綱に書いてあります仕事内容は、いま御指摘のとおりでございます。ただ、御案内のように家庭奉仕員というのは、そういった寝たきりの老人等に継続して定期的に派遣されるもの、それから介護人の場合には、ひとり暮らしで、ふだんは元気なんだけれども、たまたま病気で二、三日寝る、しかし、だれもめんどうを見てくれる人がいない、そこで隣近所の人にあらかじめお願いをしておいて見てもらう一時的な世話である。したがいまして、文言では、定期的に派遣される場合と、それから一時的に派遣される場合とで違いはつけてございますけれども、実際問題としては、最後の項目に、家庭奉仕員の場合には「その他必要な家事、介護」と書いてございますし、介護人の場合には「その他必要な用務」と書いてございまして、そこはその御老人のめんどうを見る家庭奉仕員なり介護人なりが、その場その場の御老人のニードに応じて適切な措置をとっていただくことを期待しておるということでございます。文言に若干違いがございますのは、繰り返しになりますけれども、定期的に派遣をされる人と、それから一時的に二、三日で、また元気になって床から起き上がれば、たまった洗たくでも、その人にやってもらうという場合があるんじゃないかというように思うわけでございます。
  125. 川本敏美

    ○川本委員 これは局長、おかしいですよ。あなた、いま言うた言葉でもおかしい。たとえて言うたら衣類の洗たく、二、三日だからと。これは二、三日と限らぬです。かぜを引いても五日ぐらい寝る場合もある。それなら局長、あなたは大体五日ぐらいは下着も取りかえませんのか。そうでっしゃろ。介護を必要とする老人を差別するか、さげすんで、その人は四日や五日、下着の洗たくもしなくてもいいんだという発想から、このものを言うておる、こういう要綱がつくられておる、そこに問題があるわけです。そんな世話をかける老人や身体障害者は三日や四日、洗たくぐらいしんぼうしなさいという思想があるから私は言うておるわけです。そのようないわゆるお仕着せ的な、やってやっておるんだというような考え方から、この要綱がつくられておるところに、厚生省としてもう根本的に間違っておるのじゃないかと私は思うわけなんです。その点について、この要綱はまず改めてもらわなければいかぬ、私はそう思うのですが、その点もう一度。
  126. 上村一

    ○上村政府委員 私は、たまたまひとり暮らしのお年寄りが病気になって、二、三日寝るから着がえはしなくてよろしいというつもりで申し上げたわけでは毛頭ございません。(川本委員「それなら衣類の洗たくというのを入れておかなければいかぬじゃないですか」と呼ぶ)要するに、最後はどんな用事でもホームヘルパーでも介護人でもやれるようにしてありまして、これはさっき申し上げましたように、家庭奉仕員にいたしましても、あるいは介護人にいたしましても、一応およそのアウトラインだけを国が決めて、こういう場合に補助いたしますよと言っておるだけでして、それは個々の世帯の事情によってもいろいろあるでしょうし、それから、その市町村の状況によってもいろいろあると思いますから、そこは派遣される市町村長さんが臨機の措置をとられるのが、こういった在宅対策として一番好ましいことではないか。つまり、在宅対策というのは余り画一的なことは決められない。決めるにしましても、せいぜい抽象的なことしかない。あとは、そこでその家庭の必要に応じて、ホームヘルパーはどういう仕事をし介護人はどういう仕事をするかというのは、その場その場の介護人なりホームヘルパーの判断であるというふうに期待するわけでございます。
  127. 川本敏美

    ○川本委員 そこで私は局長の答弁、どうもおかしいと思う。これは官僚的な発想で、この官僚性というものをなくなさなければ本当の福祉というもの、先ほど、大臣所信表明であったようにきめ細かく心の通ったという行政にはならぬと思うから、大臣所信表明どおりにやってもらおうとすれば、こういう官僚的な発想はだめですよということを指摘しておるわけなんです。こんなものは率直に認めてやったらいい。  それからもう一つ、先ほどからの考えの中で、看護婦さんと家庭奉仕員は違うのだから、療養上のお世話はせぬでもいいんだというようなニュアンスにとれた。私はそれはやはり間違いだと思う。やはり家庭奉仕員であっても研修を行って、たとえば、われわれでも人工呼吸法とかいって教えてくれるでしょう、それと同じように簡単な療養上の介護ができるようなことを考え、そういうことに対する予算も必要なんじゃないか、こう思うのですがね。その点についてお答えをいただきたいと思います。
  128. 小沢辰男

    小沢国務大臣 在宅のお世話ということで、先生がおっしゃるように、一般で考えますと病人が多いわけだから、いまのヘルパーの資質をもっと向上させて、療養の世話ができるような範疇まで広げ、かつ、それに適当な資格を与えるべきじゃないかというお考えはもっともだと思うのです。     〔越智(伊)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、看護婦さんの立場にまで、簡単な講習によって療養に関する介護なり世話までのあれを与えるということは、いろいろな意味で、また別途の問題が起こってくるわけでございますから、いま直ちに、そういうふうにヘルパーの考え方を改めるということは、少しまた、いろいろな他の問題が起こってくるだろうと思うのです。それからまた、病気の場合に、余り簡単に素人が判断をするということも間違いを起こすもとでもございますから、おっしゃる御趣旨はわかるのですけれども、この辺はなお、ひとつよく検討させていただきたいと思います。
  129. 川本敏美

    ○川本委員 そこで私は、話をさらに一歩前進させたいと思うのですが、ホームヘルパー、家庭奉仕員の方々の処遇の問題についてであります。現在、五十二年度で全国で一万二千六百二十人の奉仕員が設置されている。これは五十三年度は一万二千九百二十人、大体三百人ふえるという予定になっております。手当についても、基準手当額が五十二年度の八万四千五百円が今度は九万五百円、さらに活動費が月千円ということで、少し前進をすることになるわけです。  そこで私は、実は昨年末からことしの正月、私の選出の地元であります奈良県で四十七市町村全部にわたって調査をさせていただいたのです。この家庭奉仕員とか介護人の派遣制度について現実に市町村がどうやっておるのか、あるいは、その処遇はどうなっておるのかというようなことについて調査をさせていただいたのです。  その中身を見てみますと、奈良県の場合ですと、老人の家庭奉仕員が九十三人、身障の家庭奉仕員が十四人、それから心身障害児のが四名、合わせて百十一名の家庭奉仕員が設置をされておるのですが、その中で、まず身分で見ますと、市町村一般職員として働いておる方が全部で六十九名、全体の中の六二%です。それから市町村の非常勤の職員として働いておるのが七名、社会福祉協議会一般職員になっておるのが三十四名、そして社会福祉協議会の非常勤でおるのが一名。その中で老人だけを抜き出しますと、老人九十三名の中で、市町村一般職員的な待遇が五十九名、社協の職員が二十六名ということになっておるわけですけれども、それをさらに具体的に見ますと、一般職としての給料表を適用されて、もう正規の地方公務員になっておる人と、それから嘱託という名前で、そして給料表については技能職の給料表に準拠しておるというような方と、あるいは社会福祉協議会では社会福祉協議会一般職員と同じ待遇という給料表に乗っておる、あるいは中には、もう国から出てくる八万四千五百円そのものずばりだけを支給しておるというところと、いろいろあるわけです。だから一般職員になりますと、これは夏期手当、年末手当、期末手当も入りますし、あるいは共済組合の保険も入れる。ところが社協の場合は、これは社会保険が適用になって、厚生年金、退職金の制度はあっても違うわけです。  ところが、全般を通じて言えることは、すべての人が夏期、年末、期末一時金等は、やはりもらっておるわけです。非常勤の人の場合ももらっておる。あるいは住宅、通勤手当もある。共済や社会保険も全部加入しておる。退職金制度もある。こういうような状態の中ですけれども、国の予算は、今度五十三年度は九万五百円ですけれども、これの三分の一掛ける十二カ月、これで打ち切りになっておるわけですね。そうすると市町村の負担というものは、この制度では三分の一だと言いながら、現実には莫大な負担になっておる。一つの市の状況を言いますと、これは人口五万人前後の市ですけれども、家庭奉仕員が六人、五十二年度で設置されておって、その予算額が千百七十七万四千円、国の補助額が二百二万八千円ですから、国と県と合わせても四百五万六千円程度です。残りの七百七十一万八千円というものは市の単独の経費として負担しておる。そうなりますと国と県と合わせて総額の三八%、大体三分の一強しか実際は補助をもらえなくて、三分の二近くまで六〇%以上、市が単独で負担しておるという状態になっておるわけです。これでは市町村長に、先ほど大臣がお答えになったように、義務化して、おまえのところ、置けとは言えませんわね。ここに問題があると思うのです。私は全国的にも、これと同じような形だろうと思うのです。現在。だから、そうなれば十二カ月を掛けるという計算はもう間違いで、やはりこれには十七カ月を掛けるとか、あるいは住居手当、通勤手当等についても支給をしていく、そういうところまでやはり計算の基礎を変えていかなければ、基準額九万五百円が何ぼかということの妥当性は問題外として、まず、そういう計算だけでも早急に改めていただきたいと私は思うのですけれども、その点についてどうでしょう。
  130. 上村一

    ○上村政府委員 さっき申し上げましたように、家庭奉仕員の設置というのは市町村の固有の仕事である。そこで、国の補助というのは、そういったことを奨励する意味で国と県とで補助をしておるというのが基本になるわけでございます。しかし、こういったものを奨励するからには、できる限り処遇の改善に国としても援助をするというのは当然のことでございまして、五十三年の場合、いま御指摘になりましたような、前年に比べまして給与のアップと、新しく活動費をつけるということにしたわけでございます。家庭奉仕員の設置をより進めていくためには、今後も処遇の改善には努力してまいりたいと思いますが、ぴしっと当てはめた形で人件費ということになりますと、こういうのはむしろ交付税の話になってしまうのじゃないかというふうに思います。
  131. 川本敏美

    ○川本委員 私は、交付税で増額してもいいと思うのですよ、市町村の負担が現実に軽くなれば。ところが、やはりそこで問題が出てくるのは、同じ家庭奉仕員であって同じ仕事をしながら、町や村によって、身分が市町村の職員であったり社協の職員であったり非常勤であったり——非常勤といっても現実には連日仕事しておるわけです。そうなれば、やはりこれはもう市町村の職員、地方公務員にしていくという方向で、老人福祉法とか身体障害者福祉法の中の社会福祉協議会に委託することができるという規定があってもなくても、私は、これは市町村の地方公務員としていくという方針ぐらいは厚生省がやはり打ち出すべき時期に来ておるんじゃないかと思うのですが、その身分の問題についてはどうでしょう。
  132. 上村一

    ○上村政府委員 どういう身分にするか、常勤にするか非常勤にするか、社協に委託をするかどうかというのは、結局、市町村がその実情に応じて判断されるべき筋合いのものであって、国として、ああしろこうしろというふうなことまで言うのは、この仕事の性格上、行き過ぎではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  133. 川本敏美

    ○川本委員 どうも大臣局長考え方は、在宅の老人や身障者に対する介護とか奉仕ということは市町村がやるべきことだから、国が余り口出ししない方がいいんだと言いながら、現実には、これは放置をして怠けていこうという心のあらわれだと私は思うわけです。積極性を出すならば、こういう点についてやはり身分の保障もしてやらなければ実際働かない。そういうことは人間としてわかるでしょう。やはり身分の保障をしていく。そして、要綱の中では原則として常勤とするんだと言いながら、現実には、この八万四千五百円、九万五百円というのは何でこの金額が出たんだというと、これは非常勤として計算している。要綱で原則は常勤だと言いながら、非常勤並みの計算をしている。もってのほかだと私は思うわけですよ。その点について大臣。こういうことについては、やはり保障していく形の中で、家庭奉仕員の人が安心してこういう方々のお世話に専念できるような、前向きの御答弁を、ひとつ大臣からいただきたいと思う。
  134. 小沢辰男

    小沢国務大臣 御熱心な御意見、拝聴させていただきましたが、実はこれは市町村の固有事務に国がいかに財政的、法制的に関与するかという基本の問題にも絡むのでございます。交付税を入れまして、本来地方自治体でやるべきものを、社会的なニーズを受けまして、国が指導、奨励する意味で補助、援助いたしているわけでございますから、そういう性格を根本から変えていけば別ですけれども、この性格をやはり是認する以上は、いま局長から申し上げましたように、毎年できるだけの処遇改善に国がお手伝いを申し上げるという姿勢以上には、いまのところ出られないわけでございまして、要は実体的に老人なりその他の障害者の方々の福祉の向上が図られるという点にございますので、制度の根本については、もちろん引き続き検討はさせていただきますけれども、毎年のできるだけの私ども予算上の配慮によって解決をしていただくようにお願いをしたいと思うわけでございます。
  135. 川本敏美

    ○川本委員 時間がありませんので話を前へ進めますが、そこで、介護人の派遣制度の問題についてですけれども、介護人の手当といいますか、五十二年は一日二千七百五十円が今度五十三年度で二千九百三十円、引き上げ額が百八十円ですね。これまた微々たるもので、介護人を派遣しておる奈良県の調査した町によりますと、やはり五千五百円程度を現実には支払っておるようです。そうするとやはり一日当たり二千五百円ほどが大体市の単独負担になっておるというわけです。そして、もしこの介護人とかに事故が発生した場合、もちろん、その責任は市町村長にあることになるのだろうと思う。そういうようなこともあり、地元の負担もある。だから介護人派遣制度をやりたいけれども、負担と責任の関係から敬遠しておるんだという市町村長が数多くあるわけです。調べてみますと、統計を見ても派遣制度の利用が年々減ってきていますね。そうでしょう。介護人派遣制度により派遣している人の数が、この前、厚生省から資料をいただいたのですが、たしか三年ほどで、四十九年は一万五千九百四十二人派遣しておるのが五十一年は一万三千三百四十五人、派遣しておる人の人数も減っておる。一人当たりの派遣日数は四・六日から六・一日にふえておりますけれども、やはりこれは市町村長がそういう面でしり込みをして積極さを欠いておるという、制度そのものについての再検討を要する問題点があるのじゃないかと私は思うわけです。だから、こういう点について手当額と事故発生等の問題についても、もう一度考えていただきたい。  それと同時に、もう一つ問題点として指摘したいのは、家庭奉仕員の場合の対象人員のケースの数です。全国的には七・三人ぐらいのケースになっておるようですが、奈良県の方で私が調査したら一人当たり六ケース。六ケースが平均値なんです。中には一人で十ケース、二十ケースと担当しておる人がある。十ケースも二十ケースも、駆け足で走っておったって、とても一週間に二回は行けませんよ。まして、奈良県でも吉野郡の十津川村というのは日本一広い村なんです。村長さんも官舎がある。役場へ行くのに泊りがけで行かなければ行けぬようなところなんです。バスの停留所でおりて、そのホームヘルパーの行く家へ行くのに四キロも五キロも山の頂上まで歩かなければいかぬ。そのホームヘルパーのお父さんが、 この前、私のところへ電話をかけて、実は、うちの娘が家庭奉仕員で行っているんだけれども、行ったなりで、もう三日目なのに帰ってこないんだ。それでどうなっておるんだということで調べたら、行った家の老人の状態が手の離せないような状態だったから帰れなかったんだ。そうしたら今度は家の方でお年寄りがひとりだから、わしにも家庭奉仕員をつけてもらわなければいかぬ、こういうようなお話があったわけです。私は、地域の実情等にもよりますけれども、七・三ケース、六ケースというのはむちゃで、少なくとも一人当たり四ケースぐらいにして、そして家庭奉仕員の数をもっとふやしていく。三百人ふやすのじゃだめ、もっとふやしていくという指導方針を打ち出すべきではなかろうかと思うわけです。そういう設置基準についても、やはり一つの方針を明確に出すべきではないかということが一つ。  それからもう一つ最後に、もう時間がありませんので、お答えいただきたいのですが、ケースの記録の整理をせいということを家庭奉仕員に要綱の中で書いてあるわけですが、現実に聞きますと、このケースの記録の整理というのは、夜間うちへ帰ってからとか日曜日とか、時間外で皆やっておるわけですよ。とても時間内ではやる時間がないわけです。ケースの負担が多いから、だから、そういうケースの記録の整理を時間内にやらすようにするためにも、いま言った設置基準を改正して四ケースぐらいにしなければ、週二回以上行けない、ケースの記録も保存できないということになろうかと思いますので、あわせてひとつ答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  136. 上村一

    ○上村政府委員 介護人につきまして絶対数が減りつつありますのは、家庭奉仕員がふえるに従いまして、家庭奉仕員の仕事でカバーされる部分がふえてきたというふうに私ども考えておるわけでございます。私どもとしては、家庭奉仕員というのは今後引き続いてふやす方向で努力をしてまいりたいというふうに思うわけでございます。その場合に、持つケースをどのくらいにするかというのは、それぞれの自治体の寝たきり老人なら寝たきり老人の数であるとか、地域的な広がりによって違うと思うわけでございますが、私どもは週二回は行けるように持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  137. 木野晴夫

    木野委員長 次に、安島友義君。
  138. 安島友義

    安島委員 大臣の御都合がおありだそうですから、本来は一つ一つ具体的に問題をただした後でお伺いしたかったのですが、順不同で、まず大臣にお伺いしたいのです。  昨年十一月一日に社会労働委員会において医療保険制度に関する決議が確認され、さらに五十二年十一月五日に社会保険審議会の有泉会長から前渡辺厚生大臣に健保問題等懇談会の意見書が具申されたわけです。その中で次のように特に前文で指摘している問題ですが、昭和四十六年の答申内容は、今日まで実現を見た事項がきわめて少なく、大半の課題は残されたままになっているという問題指摘とともに、政府の反省を強く促し、さらに、明確な実施計画を策定して、今後制度改革の実を上げることを要請すると述べております。大臣は長く厚生省にもおられ、それからこの委員会委員として、これまで活躍されてきた方ですから、細かいことは言わなくても、それらの内容については十分御承知と思いますので、この意見具申に対して基本的な大臣の姿勢というか、考え方をまずお伺いしたい。
  139. 小沢辰男

    小沢国務大臣 社会保険審議会の健保問題等懇談会で、昨年の十一月四日に「医療保険制度改善方策について」という御意見をいただきましたわけでございまして、これに基づきまして、渡辺大臣医療保険制度改革の基本的な考え方十四項目というものを御提示申し上げて、それぞれ立法並びに実施についての時期的な考え方も申し上げたわけでございますが、この考え方の線は私は踏襲をいたしまして、やがて御審議を願いたい健康保険制度の抜本改正の中で、負担の公平等をひとつ図りながら、健康保険制度全般にわたる合理的な制度をひとつ打ち立てていきたいと考えておりますので、そういう考え方で今後とも鋭意努力をいたしますことを、はっきり申し上げておきたいと思います。
  140. 安島友義

    安島委員 この意見書の具体的内容の中で、特に医療費及びこれに関連する問題について厚生省のお考えを私はお伺いした上で、さらに大臣の見解を聞きたいと思いましたが、時間が制約されておりますので、後で細かい質問は担当側の方からお伺いすることといたしまして、いま、この医療に対する国民の不満は非常に強い。そして、わが国の医療費というものは国民所得の伸び率をはるかに上回り、今日まで推移しておりまして、恐らく今年度は十兆を超えるのではないかと言われております。それから国民健康保険等では、財政的にいま非常に多くの問題を抱えている。具体的にこの実態にメスを入れて本当にこの医療費の改定をしなければならないのかどうか。もちろん国民の医療というものは、制度の改革や充実を図る上においては、それを国民の負担がある程度ふえていくということは、これはやむを得ないと思うのですが、まず、その前提条件としては、現在の医療制度のいろいろな矛盾点、あるいは支出面で、もっと節減できるようなものがいろいろあるはずだ。薬剤費等はその典型的な例として、これまでもしばしば指摘されてきているわけです。それから今度は、こういう安定成長の時代に入ってきている中で、これから余り国民所得の伸びが期待できない。国民の負担にも限界が出てきている。さらに、いま予算審議等でいろいろ問題になっておりますように、国の予算も多く借金で賄わなければならない。したがって、国債の発行にもいろいろ問題がもう生じてきている。そういう中で国民の求めるのは、不公平税制をまず是正すべきではないかということで、特に不公平という問題は税制の中にはいろいろな問題がございますが、この医療に関係する問題としては、これまでもしばしば委員会で取り上げられましたいわゆる診療報酬特別措置、一般には医師優遇税制と言われているわけですが、これはどういう形にせよ、具体的に今後是正に向かわなければならない趨勢にあることは確かなんです。  その場合に常に関連してくる問題は、いろんな歴史的な経過や背景、それから国民医療のいろいろなこれまでの推移、その内容等から、どうしてもこの医師優遇税制の是正と診療報酬の改定というものが引き合いに出されてくる。この問題について、私は関連はないとは申し上げませんけれども、これは区別して本来考えるべきものではないか。当時の情勢と今日では、その意味合いはかなり変わってきている。正すものは正し、そうしてそのことによって、いわゆる医療に従事している病院、個人の開業医を問わず、問題があるとすれば、その中でどう考えるかというふうに私は措置すべきものだと思いますけれども大臣は、厚生、医療その他社会福祉、社会保障全般の所管大臣の立場から、この医師優遇税制と診療報酬の関連についてどういうふうにお考えですか、お伺いしたいと思います。
  141. 小沢辰男

    小沢国務大臣 医師の優遇税制は、その発端並びに経過等を踏まえますと、これは深く診療報酬の問題に関連していることは事実でございます。したがいまして、私どもは診療報酬の改定に当たりましては、できるだけ技術料の適正化を図るという趣旨を踏まえまして年々改善をいたしてきているわけでございますけれども、なお今日、この優遇税制に対する国民の受け取り方という点を考えますと、この特例をあくまでも特例として将来とも存続するということは、これは診療担当者側から見ましても、かえってよくないのではないかと私は考えます。しかし、この優遇税制のよって立ちます諸条件等を考えますと、この条件整備を十分にやりましてからでなければ、いたずらに医療担当者との、あるいは国民医療全体の中に、混乱を生ずるだけでございますから、この一年間にこれらの条件整備を十分考えまして、この特例措置を税として正しいあり方に持っていく、こういうつもりでございますので、私が着任しましてから、当面直ちに廃止するということについては、診療報酬の改定等の問題も、まだそのときには考えられなかった点もございますので、一年間の御猶予を願いたい、こう言っておったわけでございまして、これから各方面の意見も聞きまして、この医師の、あるいは医業の、あるいは社会保険の特殊性等を十分考え、また技術料の評価についてのいろいろな経過等も踏まえまして一つの案をつくり上げていきたい。これは税制としては、大蔵省の所管でございますが、その税制をつくる場合の意見を、厚生省からは十分そういう立場に立って提出をいたしたい、かように考えております。
  142. 安島友義

    安島委員 これまでも委員会で、先輩、同僚議員、各党の委員方々から何度も同じような質問が行われておりますけれども、特に医療費の中の薬剤費の問題等につきましてはいろんな問題が提起されている。薬が本当にこれだけ必要なのか、あるいは実際に支払い値が実勢価格とどういう関連を持っているのか。具体的には、支払いベースではこういう数値が出ているけれども、実際の薬は、薬価基準に基づく薬の価格そのものが実勢価格よりはかなり高い水準で決められている、そういうもろもろのこと、ですから、お医者さん、病院等が薬を講入する場合には、薬価基準で決められている値段よりもさらに安く講入できる。こういうところを考えますと、実際に支払われているものと実際に使われている薬の値段の間には大きな差が出てきていることはしばしば指摘された。つまり、薬を使えば使うほどもうかるという仕組みになっていることは明らかですね。そこで、私はいろんな問題を通して、前にお伺いしました問題とも関連づけてお伺いしたがったんですが、ここでは医師の所得について、労働省と国税庁の方から来ていますので、傾向だけ見るつもりですから、時間の関係上ポイントだけお伺いしたいと思います。  まず労働省の方から、勤務医と他の労働者、いわゆるサラリーマンとの所得の比較あるいは伸び率等お伺いしたいと思います。
  143. 小野良二

    小野(良)説明員 医師の賃金につきましては、私どもの賃金構造基本統計調査という調査調査しております。この調査は、十人以上の主として民営の事業所の毎年六月分の賃金を調査しているわけでございますが、賃金額だけでなく、年齢とか学歴あるいは勤続年数、わりあい細かいことも、あわせて調査しておるわけでございますが、この中に職種別の調査がございまして、約百二十職種調査しておりますが、その一つ医師の賃金がございます。これによりますと、五十一年六月の結果でございますが、毎月決まって支給する賃金——ボーナス等を除いたものでございます。これは男子の医師の場合、平均で四十八万四千六百円、これに対しまして、同じ資格ということで、たとえば大学卒の男子をとりますと、その平均は十九万五千五百円でございます。比較する意味で指数にしてみますと、医者を一〇〇とした場合は大学卒の男子が四〇、逆に大学卒の男子を一〇〇といたしますと医師の方は二五〇、つまり二・五倍ということになっております。
  144. 小野博義

    小野(博)説明員 国税庁の方で調べた数字を申し上げますが、私どもの方の統計といたしましては医療保健業ということでございまして、大部分が医師とか歯科医師に当たると思いますが、この医療保健業の一人当たりの所得金額は、医師課税の特例が創設されました昭和二十九年におきましては四十二万円であったわけでございます。これが、若干古くて恐縮でございますが、昭和五十年におきましては一千二十五万円ということで、約二十四・四倍という数字になっております。一方、給与所得者につきましては、私どもの方で民間給与実態調査というのをやっておるわけでございますが、その数字によりますと、これは給与収入でございまして、毎月の給与の税込みの額の合計額というふうにお考えいただけばよろしいかと思いますが、昭和二十九年におきまして二十六万円、それが昭和五十年におきましては二百二十三万円と、約八・六倍になっているわけでございます。ただいま申し上げましたように、所得金額と収入金額でございますので、これを直接に比較することはやや問題があろうかとは思いますけれども、強いて比較をしてみますと、昭和二十九年当時二十六万円と四十二万円で、医師の方が約一・六倍であったものが、昭和五十年におきましては二百二十三万円と一千二十五万円ということで、約四・六倍ということになっております。
  145. 安島友義

    安島委員 私は、医師の職業の公益性、特殊性から特に医師の所得がどうこうというのではなくて、あくまでも国民経済、その中での諸階層との比較において妥当値というものを、社会的にもある程度納得できるような形で考えるべきではないかという点で、医療費の伸びとの関連において、医師の所得、特に勤務医、開業医というふうな問題と一般との、できるだけ比較しやすいようなところを傾向のためにお伺いしたわけです。  特に私は、ここで、この問題を指摘したいのは、医師の所得について厚生省の担当者に聞きましたところが、そういうことは厚生省の所管ではないので勤務医については労働省、それから開業医については国税庁に聞いてくださいということでした。確かに、私はその意味は理解できますよ。ただし、今日までの医療制度にかかわるいろんな問題の中には、経営の実態面、赤字の主たる要因がどこにあるのか、そういうことを考えた場合には、いま医師会等が自由診療をたてまえとするということをよく強調するわけですが、自由経済体制の中では、やはり経費とか人件費とか、そういうものと診療報酬とのかかわりというもので、具体的に、しかも妥当な数値を見出すのが厚生省の役目じゃないですか。そういう点では、こういう資料は常に整備をされておいて、ここは厚生省自体が調査したものではありません、国税庁の方からこの資料については提出してもらいました、労働省の方から提出してもらいましたという注釈つきで、厚生省関係委員の必要な資料の要求になぜこたえられないのか、私は非常におかしいなと思ったのですよ。  医療制度全般を検討する問題、特にこの診療報酬特別措置というものを設けた当時の背景は、その当時の情勢から医師の所得が非常に不安定であり、診療報酬にそのままはね返らせるわけにはいかないということから発足したものであるならば、その後の推移がどうなっているのかというものの中に医師の所得も含まれているのが当然のことではないでしょうか。先ほどの医師優遇税制の問題について私が申し上げたのは、そういう関連において、少なくとも国民が納得のいくような一つの道筋を厚生省自身としても考えるべきではないのか。でなかったならば、ストレートに医師優遇税制の改定というものが、これまでの経緯でいきますと診療報酬にはね返る。診療報酬にはね返るからこの税制はできません、こういうことになったのでは私はどうも納得できない。ただ断わっておきますのは、私は医師の所得の問題だけを言っているわけじゃなくて、全体的な問題のかかわりにおいて、やはり今日のような社会経済情勢の中では少なくとも国民の了解が得られるようなことを厚生省はもっと指導性を持ってやるべきじゃないかという立場からお伺いしているわけですが、医師優遇税制とこういう問題のかかわり、さらに所管の厚生省として、こういうものがこれからの審議の場合にきわめて重要になると思うのですけれども、この問題だけではございませんが、こういういろいろなデータの整備について厚生大臣としてはどのようにお考えですか、お伺いしたいのです。
  146. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるように、私ども国民医療確保の責任があるわけでございますから、医療担当者の今日行われている地位なりあるいはまた処遇なりについては深い関心を持たなければなりません。その意味において、責任官庁ではありませんが、それぞれの役所からデータを集めて、それらについての実態の把握というものを持っている必要があるということはおっしゃるとおりだと思います。そういう意味において勉強は大いにしていかなければならないと思います。ただ、税の問題と、それから診療報酬のそれぞれの技術料の評価が適正であるかどうかという問題は、これはおのずから別個の問題として考えていかなければならぬわけでございまして、税の問題は、私どもの税制のあり方がどうあるべきかということは、これは大蔵省の立場でございます。しかし、この問題の発端からずっと経過を見ますと、多分に診療報酬の技術料の評価に関連してきておる点もございますので、大蔵省の税務当局としての見解がまとまるまでの間には、当然医療担当者側を所管する厚生省として、いろいろな意見を提出をしなければならないこともまた御理解願えると思うのでございます。  ただ、医療費の増高が、いまおっしゃいましたように非常に倍率が高いじゃないかとおっしゃるわけでございますが、医療費そのものは、医師の所得の保障という観点から見ますと、毎年の診療報酬では、一つの中医協の算定方式等がございまして、賃金、物価にスライドをするというだけの改正に終始してきているわけでございます。それで一応何%か決めまして、そしてそれを今度は点数表にあらわすときに、できるだけ患者の立場も考え、あるいは技術料の評価の適正化を、それぞれの中で評価を得るようにしているわけでございます。したがって、この税制のいかんというものが診療報酬の技術料の評価に特別に評価をされて、この問題との関連において医療費の改定が行われたという歴史的事実はないわけでございますので、この面で、実は発端がああいうような、与野党一致して、技術料の評価の適正化が図れるまで、この特例をやるんだということで国会の意思が確定をした経過を見ますと、私どもとしては、それらの面から今日、医師税制の改善というものが私どもにどの程度どういうふうに影響してくるのか、これは重大な関心を払わざるを得ないことも、医療を担当する私どもとしては無理からぬ点だということは御理解をいただかなければいかぬわけでございます。そういう意味で、この問題は再三私も申し上げておるのですが、優遇税制である、この名のごとく特例措置であることは間違いないわけでございます。特例を二十年も二十数年も、いつまでもそのままに放置していいという考え方は、やはりいつかは正常に戻していかなければいかぬ問題でございますから、当然その機がだんだん熟してきつつあるのじゃないかと思いますので、それに相応するわが方の環境整備といいますか条件整備というものを、この一年間かかって、どうしたらいいのかということを十分検討して結論を得たい、かように考えておるわけでございますから御理解をいただきたいと思います。
  147. 安島友義

    安島委員 この点については、私は答弁に対しては不満でございますが、きょうは時間の関係上態度を留保しておきます。どうもありがとうございました。  いまの質問の中で、開業医の所得は、当然のことながら七二%の所得控除つまり特別措置によって、二八%の所得に対しての課税対象金額でありますから、単純にはどうだとは言えませんけれども一般のサラリーマンで言えば実際の所得の三分の一の所得にしか開業医の場合は税金がかけられていない。その数字をいまお示しになったわけですから、これと一般と比較して、それほど高くないのじゃないかと考えるのは誤りである。これは当然のことながら、その問題を私は指摘しておきたい。  特に勤務医と一般のできるだけ比較しやすいような大卒の年齢や勤続年数——医師の場合はちょっと勤続という問題のウエートは違ってきますが、そういうものとの比較において、さらに勤務医と開業医ということでの格差、こういうもろもろの格差を社会的に妥当な方向に、もちろん自由診療のたてまえですから、それだけ努力をして一生懸命やっておられる、その開業医の方々が所得が同じでいいと言っている意味じゃございませんよ。社会的な一応の目安、妥当性というものは、今日のように国民の負担というものが限界に達しつつあるというような医療行政、医療制度の枠組みの中では、いやおうなしにその問題は追及しなければならないという観点から私は問題を取り上げたわけですから。これはとても本日の時間の範囲内では十分に問題指摘できませんし、誤解を生ずるおそれがありますから、そういう考え方で問題を指摘したということだけ、きょうは申し上げておきます。  そこで、やや順序が逆になりましたが、きょう、時間の関係から、特にお医者さんや看護婦数の問題について少しお伺いしたいと思うのです。  医師、看護婦数の推移と地域別分布状況について簡単にお答えいただきたいと思います。
  148. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず、医師の数でございますけれども、四十年末には十万九千人で、人口十万対百十一・三人でございましたが、五十一年末には十三万四千九百人で、人口十万対百十九・三人になっております。約一割ふえているということでございます。また、看護婦の数でございますが、四十年末には二十三万九千人で、人口十万対二百四十三・五人でございましたが、五十一年末には四十三万三千人でございまして、人口十万対三百八十三・六人となっております。  医師地域的な分布でございますけれども、十大都市とその他の市と町村に分けてみますと、十大都市は人口十万対百六十七・一人、その他の市は百二十三・七人、町村は六十八・四人ということでございまして、町村は十大都市の四割程度の医師しかいないことになりますけれども、一方、この十年間に人口の方が大変流出しておりますので、人口十万対の数は十年前より若干上がっております。
  149. 小野博義

    小野(博)説明員 先ほど私がお答え申し上げました中で、ちょっと不足がございましたので補足させていただきます。  先ほど私が申し上げました医療保健業の所得と申しますのは、先生よく御存じのように、自由診療分と社会保険診療分と両方あるわけでございます。これは診療科目等によって自由診療と社会保険診療の割合がそれぞれ違っておりますけれども、社会保険診療分につきましては先ほど先生がおっしゃいましたとおり二八%分を所得としております。自由診療分につきましては、収入金額からそれに要した経費を引いた、いわば実際の所得額を所得としておりますので、その点をちょっと補足させていただきます。
  150. 安島友義

    安島委員 外国人医師は、いまのお医者さんの数の中には含まれていないですね。
  151. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 含まれております。
  152. 安島友義

    安島委員 いまの御答弁によりましても明らかなように、お医者さんは大都市に偏っているということが言えます。それから、僻地医療の問題がしばしば指摘されているわけですけれども、いまでも、お医者さんの数が足りないで困っていると言っているところが多いのです。大体、日本に千人程度の外国人のお医者さんが来ているわけですが、一部を除いては、ほとんど僻地医療に従事しているということがはっきりしているわけです。それから、お医者さんが不足だというので委員会でもいろいろ論議になりまして、これまでの間に医科・歯科大学がかなり増設されまして、むしろ今後の推移では、医師は十分だと言えるかどうかは別としても、少なくとも医師が不足しているから僻地医療は困難でございますとは、もう説明できない状況下にあるというふうに私は判断するわけです。ところが、なぜこのお医者さんが大都市に偏っているかというようなことをいろいろ分析しなければなりませんが、少なくともこれまでの傾向を見るならば、お医者さんがどんなに養成され、社会に巣立って医療に従事したとしても、僻地医療の問題が改善されるとは思えない。私がここで指摘したいことは、医療費はどんどん青天井にふえ続けてきている。お医者さんの所得も一般の諸階層の中で、あるいはお医者さんの中でも勤務医と開業医というように、それぞれ所得格差が今日著しく拡大してきているということが、医療費の伸びとともに全く同じ傾向で出てきている。そして、お医者さんが足りないというので、どんどん医科・歯科大学を増設してふやしていっても僻地医療の問題は解決しない。こういう問題について厚生省としてはどういう対策をお考えなのか、お伺いしたいのです。
  153. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 御指摘のように、医師がふえましても、国や都道府県が計画しているほどは僻地や離島に医師の確保はできないと思います。また、こういったことは日本だけでなく、英米、さらにソ連においても、やはり頭を痛めている問題でございます。そこで、医師の養成対策のほかに医師の確保対策といったことが必要になってくるわけでございまして、国といたしましても、奨学資金に補助金を出すとか、また五十年から始めております第四次僻地医療対策におきまして、広域市町村圏ごとに地域中核病院を整備いたしまして、そこに医師とか看護婦さんをプールいたしまして巡回診療をする、また、できれば辺地、離島の診療所に医師を交代で派遣する、そういった僻地医療対策を進めているところでございます。辺地、離島の医師の確保についてはなかなか単純にまいりませんで、いろいろな手を総合的に講じなければならないと思っておりますけれども、ただいま申し上げたような計画に基づいて努力をしているところでございます。
  154. 安島友義

    安島委員 私が聞いているのは、お医者さんは以前よりはふえているのだけれども、なぜ地方にはなかなか来手がないのか。この問題について厚生省としては、お医者さんを養成するということも大事なことだけれども、いろいろな補助を出しながら養成しても地方勤務をきらうような現在の傾向を是正するような行政措置というものが強化されなければ、これでは意味がないのではないか。自由診療であるからそれは全くお医者さんの自由なんだ、そういうたてまえ論では今日の国民医療のいろいろな問題に対して対応できないのではないか。そのことを厚生省としてはこれからどういう御指導指導といってはなんですけれども、特に医師会等と、この問題については何か具体的なお話し合いはされているのですか。
  155. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 辺地における医師の確保の問題については、その待遇の問題もございますけれども一般的に、社会的文化的基盤が未整備であるといった別の問題もあるわけでございます。たとえば私、昨年北海道に参りましたけれども、北海道のある辺地では、いま若い医師に手取り年間千五百万円を支払っているわけでございますけれども、それでもやはりなかなか集まらないわけでございます。したがって、先ほど申し上げましたようないろいろな対策を講じなければならない。少なくとも、ある町村に医師そのものは確保できないけれども医療は確保できるというような状態には持っていかなければならないと思うのでございます。そういったことが先ほども御説明いたした第四次僻地医療対策であろうと思うのでございます。  最後に御質問のございました、それでは医師会とはどんな話をしているかという問題でございますが、まず各都道府県の医師会また郡市の医師会が僻地、離島の巡回診療をしてくださるように話し合いを進めております。また、ある県では、開業医の方々に年一回は交代で僻地の診療所に行っていただくといった折衝を、県の衛生当局と県の医師会のレベルで進めているといったところもございます。
  156. 安島友義

    安島委員 時間が参りましたので、最後に、きょう御質問するわけでしたが時間の関係から触れられませんでしたが、一九六五年を一〇〇としました場合に、日本の医療費の伸びは実に五七七、約五・八倍近い傾向です。イギリスの場合は、同じく年度でとらえますと四二〇、四・二倍、西ドイツが四四五、四・四五倍、アメリカが三〇八ですから約三倍。こういうように、いわゆる先進主要国と比べても、日本の医療支出、医療費というものが非常に大幅に伸びている。そしてそのうちに占める薬剤費の割合等でも、これはなかなか比較しにくいいろいろな問題がありますから一概には言えませんが、日本の場合は大体四〇%前後、最近は三七、八に落ちてきましたが、これは技術料の見直し等との関連でなったわけであって、そういう点から大まかに言って四〇%に近い。それに比べて諸外国の場合は、大体平均的に見ますと二〇%ぐらいのところの上下に位置づけられている。しかも、日本の場合のお医者さんが、それでは実際に薬価基準に定められている、その薬にこれだけのお金がかかったと言えば、これはあらゆる面から考えて大体この二分の一程度、ですから実質的には二〇%ないし二四、五%が実際の薬の価格ではないか。こういうところに現在の医療の問題点、矛盾点がある。お医者さんでも、非常に多くの良心的なお医者さんを私は知っています。まあごく限られた一部の方々がいわば利潤本位の、本来の医師のいわゆる公共性あるいは社会的にも非常に尊敬されるべき立場にある方々が、どうももうけということだけを第一義にして考えている。しかも薬を使えば使うほどもうかる。医師優遇税制というものも、これは主として開業医に適用されるわけであって、当然のことながら勤務医にはかかわりはない。同じお医者さんでもこういうように社会的に必ずしも平等化されていない。もちろん実際に自分で病院を経営しているというのとでは、私が先ほどから言っていますように、同じでいいと言っているのではありませんが、余りにもそういう点ではなはだしい格差が生じている。あるいは勤務医と一般のサラリーマンの比較的比較しやすい層を比較しましても、このいわゆる所得の伸びというものは少なくとも他の諸階層から比べれば異常な伸び方である。  こういうことを総合しますと、もっと国民の信頼にこたえる真の医療というものを考えていく場合には、厚生省は支払い側、診療側の間に立って苦労されているのはわかりますが、どだい厚生省は憎まれるお役所だというぐらいの考え方で今日の医療問題に対処しなければ、事なかれ主義的な物の考え方、まあ皆さん方がそうだと言っているわけではありませんが、私どもの方から見ると、何かいままで、いろんな問題が指摘されても、どうもその辺が、いわば中間的立場と言えばそうですけれども、もっと国民の側に立った医療というもののあり方、あるいは行政責任者の立場から、どう進めるべきか、こういう問題を真剣に考えることが、ゆがめられた医療とかあるいは医師国民との間の亀裂というものを埋めていくためには避けて通れない道だ。私もお医者さんがどうこうという意味で言っているのではなくて、今日非常に社会的に問題になっている、このままの状態で放置していくべき問題ではない。私たちも、この医療というものに対してはもっと勉強しなければなりません。あるいは国民に正しく理解させることも考えなければならない。そういう点で、やはり厚生省としては、それらの問題点についてはもっと大胆に問題を提起して、その中から論議を呼び起こして、改革すべきものは改革し、これは時間がかかるなと思うものはそういう経過の中でおのずと理解が生まれるものではないかという観点で私は問題を指摘したわけでございます。  非常に多くの問題を含んでおりますから、きょうは、こういう考え方だけを申し述べまして、幾つかの問題は今後また委員会のときに質問いたしますこととして、その趣旨だけはひとつ関係方々、十分御理解をいただきたいということを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。
  157. 木野晴夫

    木野委員長 この際、午後三時十分まで休憩いたします。     午後一時五十七分休憩      ————◇—————     午後三時十一分開議
  158. 木野晴夫

    木野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。草川昭三君。
  159. 草川昭三

    草川委員 草川でございます。大臣は朝から大変お疲れのところを御苦労さんでございますけれども、私の方も過日、大臣所信表明をお伺いをいたしまして、いろいろと検討させていただいておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この十兆円を超える医療費を負担をする医療政策はきわめて重大になってきたと思うわけであります。それだけに厚生行政の置かれておる立場というのは非常に重要な問題になってくるわけでございます。  実は、前厚生大臣の渡辺先生はかなりいろいろと御活躍をなすったわけでございますが、大臣をやめられて、それなりに非常に活発ないろいろな御意見を出しておみえになるようでございまして、過日、私のところにもいろいろな本なんかをいただいておるわけでございますが、この中で、渡辺さんが厚生大臣になられたときに福田総理大臣から、厚生省は非常にむずかしい役所だ——むずかしい役所かどうかということはぜひお聞きしたいわけでございますが、特に日本医師会の影響を強く受けているので、ぜひ君に正常な厚生行政ができるようにしてもらいたいという意味のお話があって引き受けることにしたのだ、こう言っておみえになるわけでございます。  私は、そのお話がいいとか悪いとかという問題は別といたしまして、新しい大臣としても、厚生省御出身でございますけれども厚生省というのはむずかしい役所と思うのか、それから特に医師会等の影響力を厚生行政として非常に強く受けておるのかどうかという基本的な問題について一回ちょっとお伺いをしたい、こう思います。
  160. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私は、厚生行政というものは、そんなやさしいものじゃないと思います。それはもうおっしゃるとおりだと思うわけでございます。といいますのは、御承知のように人間の一生涯の問題を、それぞれの時代に応じて担当していかなければならない役所でございますから、しかも本当に生身の人間といいますか、これらの方々のいろいろな問題を解決をしていかなければいかぬという点からいいまして、私は非常にめんどうなといいますか、適切な表現ではありませんが、むずかしい問題を抱えた役所であることは事実だと思うのでございます。  それから、医師会の圧力がどうかというお話がございましたが、私は、それぞれの団体が団体としての考え方を述べられるということについては、これが圧力とも思えませんし、それぞれの団体でいろいろな意見を出されることは、これはもう今日の民主主義社会においては当然なことでございます。しかも厚生省は、医療保険問題一つ考えましても、医師会だけではありません、保険料を負担をする事業主側の立場もありますし、被保険者の立場もありますし、そう考えますと、何といいますか、圧力が加わるようなことから考えますと、いろいろな問題がたくさんあるわけでございます。ただ、行政というものは、そういうような相手のそれぞれの立場に立って考えなければなりませんので、どんなことを言われましても、決して私はそれぞれの団体から圧力がかかったなんというふうに理解いたしません。素直にそれを受け取りまして、しかし、国民全体の立場で正しいあり方はいかようにあるべきかという点から話し合いをしていくという基本姿勢をとっていきたいと思います。
  161. 草川昭三

    草川委員 素直にいろいろな団体の御意見を聞かれるということは非常に結構でございますけれども、民主主義というのは、とかく声の大きい力のある者がやはり発言力を増し、優先的に実施をしていく。ところが、本当の意味での民主主義というのは、その中で声なき声、いわゆる弱い層を声の強いところまで押し上げるというのが基本的なあり方だと私は思うのです。そういう意味で、私は力の強い方々だけの御発言ではなくて、声なき弱い層の声というものを基本的に取り上げていただきたい。事実、前厚生大臣はりっぱな大臣だと私には思われますけれども、やめてから非常にせきを切ったようにいろいろと御発言をなすっておみえになるところを見ると、私はやはり大変な役所だと思うのですよ。そういう意味では同情しながら、しかし、筋を通していただきたい。これは激励とも抗議ともつきませんけれども、ひとつそういう趣旨でやっていただきたいと思うのです。  次に、厚生行政というのは、医療保険問題を初めとして当面早急に解決を要する課題が多いと思うのです。特に人口の急速な老齢化によって本格的な老齢化社会になるということは、すでに、たくさんの資料が出ておるので明確だと思うのです。問題は、いかにしてこの老齢化社会に社会保障制度を対応させるかというここが問題だと思うのです。この老齢化社会に対応する社会保障制度についての基本的な見解を、簡単でよろしゅうございますからお伺いしたいと思います。
  162. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるように、日本はほかの国と違いまして、人口に対する老人人口の割合が一八%に達するまでの間の期間というのが約五十年、長い国は百数十年あるいは平均して百年というのが大体の傾向でございますのに、五十年の短い間に人口の一割八分まで老齢化していくという、この速度が非常に速い点が問題でございます。  当然、老齢化社会がやってくるわけでございますので、、その老齢化社会における社会保障というものがいかにあるべきか、これは非常に大きな問題でございまして、対応の基本姿勢はおまえはどうだ、こう言われますと、実はまだ、そうした老齢化社会を迎えるに当たっての所得保障あるいは医療保障あるいはその他の社会福祉の対策について、大体大筋の考えはありますけれども、さて基本姿勢いかん、簡単に一口に言え、こう言われますと非常にめんどうでございまして、いずれにいたしましても私どもがその老齢化時代を頭に置きながら、それぞれの社会福祉なり医療保障なり所得保障というものの制度、その将来をいまから頭に置きながら、これに適応していく制度の基本的な基礎固めというものを考えていく、こういう考えでございます。
  163. 草川昭三

    草川委員 そういう意味では社会保障長期計画懇談会も発表しておるわけですから、基本姿勢がまだ明確に出ない、頭にあるだけだとおっしゃられますけれども、急速にヨーロッパの四倍以上のスピードで来るわけですから、厚生省はもう少し早目な対策がぜひとも必要ではないだろうか、私はこう思うわけです。  しかし、きょうは時間がございませんので、ちょっと後でまた質問をするということにしまして、いずれにいたしましても、老齢化社会の中で年金という問題が当然出てくるわけでございますが、昨年の十二月に二つの非常に重要な文書が発表されております。一つは、年金制度基本構想懇談会の中間意見と、それから首相の諮問機関であります社会保障制度審議会の「皆年金下の新年金体系」という建議書ともいうべきものだと思うのです。政府の諮問機関が公な意見をまとめたのは今回が初めてだと思うのです。政党のわが党も、それなりの方針はあるわけでございますが、民間もそれぞれありますけれども、政府としては初めてだと思うのです。しかし、この二つの文書の性格はそれぞれ違っておると思います。基本懇と制度審の問題については違っておりますけれども、これをただいまのところ厚生大臣としてはどのように受けとめてみえるのか、感想を聞かしていただきたいと思います。
  164. 小沢辰男

    小沢国務大臣 制度審の基本年金、単身三万、夫婦五万、これを全額目的税による国庫負担、それからさらに国庫負担を取り除いたその他の拠出制年金を社会保険の形でそこに上積みする、大ざっぱに言いますとそういう御意見を承ったわけでございますが、基本年金構想は各党からそれぞれ出ておるわけでございまして、そういうものの考え方は、私はやはり方向としてはいいんではなかろうか。ただ、いま制度審の言われましたのは遅くとも五十五年とおっしゃっておられるわけでありますが、五十五年にこの制度を実施したときのことを考えてみますと、現在の厚生年金なり国民年金の給付水準で上乗せをしていきますと、大体年金だけで国民所得の一三%をこれに向けるというような、現在の単価といいますか、経済指数で計算して、ほぼそうなるんじゃないかと思うのです。まだ詳しく検討しておりませんけれども、これは非常に大変なことだなと思っておりまして、そのままの形はなかなかとれぬではなかろうかというふうに思います。  それから、年金基本構想懇談会の方はいろいろな問題提起をしていただいております。非常に参考になる御意見が多々あるわけでありますが、基本的な方向は、当面はやはり経過年金の面で余り十分ではないから再検討しろ。それから国民年金、厚生年金のいわゆる標準年金の考え方は、今後長期的に見るとなかなか財政が大変だな、負担の面から、あるいは老齢化社会を迎えて、支給開始年齢等をある程度再検討を要するのではないかというような気持ちの表現等もございます。  したがって、私どもは今年いっぱいかかりまして基本的な構想だけはまとめてみたいと思っておるわけでございまして、なお各般のいろいろ御意見も承りながら、所得保障というものがいかに基本的にあるべきかというものを、構想だけは今年度中くらいにはまとめていきたいと考えておるところでございます。
  165. 草川昭三

    草川委員 本年度中に基本的な構想をまとめてみたいというお話があったわけですが、私ども内容については、それぞれずいぶん意見があるわけでございますが、いずれにいたしましても年金制度を今後どのように改革するかということは、簡単な一つの結論はなかなか出ないと私は思うのですから、そういう意味では国民的な合意を得るよう、さらに一層の努力が必要だというように思います。  しかし、聞くところによりますと制度審の方は、どちらにしても早くやらないと格差が広がってやりにくくなるので、思い切ってという意思があるようであります。そういう点につきまして厚生大臣として、制度審が非常に早目に結論を出したことは、役所としては、やりやすくなったのかどうなのか、一言お聞かせ願いたいと思います。
  166. 木暮保成

    ○木暮政府委員 制度審議会から御意見をいただきまして、なるべく早く着手するようにということを言っていただいておるわけでございますが、年金制度は一定の約束のもとに掛金をしていただいておるわけでございますから、年限がたてばたつほど、そういう約束事が、あるいは既得権あるいは期待権という形で集積されていくわけでございます。そういう意味で、時間がおくれますと制度改正がやりにくいということはあるわけでございます。
  167. 草川昭三

    草川委員 ですから大臣、どうですか。非常にやりやすくなったのですか、今度、制度審議会の答申が出たということについては。
  168. 木暮保成

    ○木暮政府委員 今度の制度審議会の御答申をいただきまして一つの指標を出していただいたわけでございますから、この点につきましては、私ども今後の検討の非常に大きな助けになるというふうに思っておるわけでございます。ただ、基本懇も中間意見を出しておりまして、現在八つの制度がばらばらになっておるわけでございますけれども、老齢化を迎えるに当たりまして八つの制度を一本にするということはむずかしいにいたしましても、それぞれ手をつなぎ合うようなシステムが必要だという点で、制度審議会も基本懇の中間意見も一致しておるわけでございますが、基本懇の方では、その各制度の連係の仕方としまして、基本年金構想が一方にございますと同時に、財政調整ということも考慮に値するということを指摘していただいておりまして、その両者の長所、短所、非常に検討していただいておりますが、結論が出ていないわけでございます。したがいまして、制度審議会の御意見をいただいたわけでございますが、制度審議会の御意見につきましても、基本懇等が挙げております問題点を詰めさせていただかなければならない、こういうふうに思っております。
  169. 草川昭三

    草川委員 ちょっと意見があるのですが、大臣予算委員会の方に行かれますので話を進めていきたいと思います。  率直に大臣にお聞きしたいと思うのですが、現在の年金制度は、たとえばどの程度、破綻なしにやっていけるのか。もっと言葉をかえて言いますと、少なくとも十年ぐらいの間はやっていけるのだろうかという一つのめどでございますけれども、もちろん簡単な数字で出るわけではございませんけれども、たとえば国民年金だとか一部の共済年金なんかは大変なことがあると思うし、それから厚生年金なんかでも多少時期は過ぎるわけでございますけれども、六十年代だとか七十年代にかけて非常に厳しくなってくるわけでございますが、一体年金制度がどの程度まで、いまのままで運営がうまくいくのか、ひとつお聞かせ願いたい、こう思います。
  170. 木暮保成

    ○木暮政府委員 国民年金につきまして、まず申し上げますと、これは昨年、五十一年度の財政再計算をやりました結果を公表したわけでございますが、ただいまお話のございました十年後というような意味合いで昭和六十年度をとってみますと、現行制度でまいりましたときに支出が三兆一千九百三十八億ぐらいになる予定でございます。この支出を現在の国庫負担を前提といたしましてカバーいたしますためには、五十一年度価格で五千三百円の保険料を取らなければならないわけでございます。五千三百円の保険料を取ることができますれば収支償ってやっていける、こういうことでございまして、国民の御理解を得ながら適正な保険料を確保できますれば、やっていけるというふうに感じておるわけでございます。  一方、厚生年金でございますが、厚生年金の場合には経済の高度成長時期に大ぜいの被保険者が制度に加入いたしまして、その方々が受給者に変わるというのは少し先のことでございますので、先ほどお話しのように将来を見通して早目に手を打たなければならない問題がございますけれども、十年後はそう心配なくやっていけるというふうに考えております。
  171. 草川昭三

    草川委員 そう心配がないというようなお話、あるいはまた前段では五千三百円ぐらいの保険料が要るというような御答弁があったわけでございますが、いずれにいたしましても、これは重要な問題が目の前に来ておると言って過言ではないと思うのです。そういう点では、先ほど大臣の方から、基本的な姿勢がまだ固まっていないなんという、のんびりとしたようなお話がございましたが、これは相当急いで、そしてしかも多くの方々に合意を求めるには簡単なことではいかぬと私は思うのですね。まさしく、これは重大な厚生行政というものが、特に、この年金行政の中にはあるわけでございますので、ひとつこの社会労働委員会でも、ぜひ私ども意見も反映できるようにして行政をしていただきたいとお願いを申し上げたいと思うのです。  第二番目の方に話を移していきたいと思うんですけれども、医療事務の代行業務の問題についてお伺いをしたいというように思うわけです。  すでに一部、皆さん方御存じかもわかりませんけれども、毎日の新聞を見ますと必ずと言っていいほど、広告の欄がたくさんございまして、「医療業務の代行」というような新聞記事があることは御存じのとおりだと思うんです。これを私ども、よく読んでいきますと非常に疑問に思うところがたくさんあるわけでございます。特に、労働省の認可を得ておるというような言葉があったり、よく読むと労働省の認可ではなくて、労働省職業訓練のテキストを使っておるとかという非常に紛らわしい言葉があるわけでございますけれども、しかし、新聞の高い広告料を払っても連日のごとく出ておるわけですから、やはり受講生が多いということだと思うんですね。採算が合うと思うんです。お客さんがあるわけですね。特に、今日のような不況下では、中高年齢層のまじめな方が、将来の老後のためにも覚えていこうというので応募をしている方が非常に多いわけであります。厚生省はまず、この実態を調べておるのかどうか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  172. 八木哲夫

    ○八木政府委員 御指摘の点でございますけれども、遺憾ながら私ども実態を承知いたしておりません。
  173. 草川昭三

    草川委員 労働省の方は、とりあえず職業訓練局のテキスト云々という言葉が使われておるので、労働省の方としてはお調べになっておみえになりますか。
  174. 名取昭夫

    ○名取説明員 お答えをいたします。  医療事務の職業訓練につきましては、私どもは中高年齢者の離転職者を中心に考えまして、職業訓練科目といたしまして昭和四十八年に訓練基準を改正をいたしました。これは経理事務の一部として実施をさせていただいております。  御指摘のそういう団体の訓練科目に、たとえば通信教育というような形の中でいろいろやっておられますけれども、これらのものにつきまして労働省が個別に認可をいたしたものではございません。お話しのように非常に誤解を受けやすい表現等がございます。私どもは法人として指導監督をいたしておりますので、そういう面で今後にわたりましても十分な指導をしてまいりたいと思っております。
  175. 草川昭三

    草川委員 これは非常に問題が出てくるわけですから、厚生省の方もよく一遍、実態を調べてもらいたいということを、いまから申し上げるのですが、この講習会の内容は大体一日二時間、一週間に二回、三カ月の講習というような程度で医療事務の専門家になれるという言い方をしておるわけであります。こういう広告をしておるわけです。そこでレセプト、いわゆるお医者さんが書いたカルテを写すわけでございます。この代行業務というものは厚生省として認知なすっておみえになるわけですか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  176. 八木哲夫

    ○八木政府委員 代行という形ではなしに現実にはレセプト、診療報酬請求につきましては保険医療機関が支払基金に行うわけでございますので、あくまでも責任は保険医療機関が行う。その際に、保険医療機関が内部的に補助者という形で、こういう方をお使いになっているということであろうというふうに理解しております。
  177. 草川昭三

    草川委員 問題は、内部的に、いわゆるお医者さんが手足のごとく使う限りにおいては認められるというのが従来からの役所の考え方だと私は思うのです。ところが、従業員だとか奥さんだとか家族の方々がやられる分については、まず間違いがないでしょう。しかし、代行業務というようなことき宣伝というのは、私は実際は過大広告にもなっていくのではないだろうか、こう思います。しかも、これはそれぞれのところへ電話をかけますと、幾らでもお仕事はあっせんしますよと、こういう返事が返ってくるわけですよ。ですから、みんな中高年齢だとか若い会社の事務員の方々がアルバイトでも応募をなされる形が多いと思うのです。しかし実際、医療機関なんかにお尋ねをしますと、そうは言うけれども余り委託をしていないよというようなアンケートもあるのですね。だけれども、それが本当の実態把握をしておるかどうかは、私も全国的な調査をしたわけではございませんし、部分的な調査をした程度でございますから明確に申し上げられませんけれども、しかし、かなり代行業者というものがいることは事実なんです。しかも、これはかなり職安法違反だってあると思うのです。ピンはねというのは明らかなんです。  しかも一番問題なのは、その月の診療報酬の総額の何%という請負契約をしておる例があるわけであります。たとえば一枚について十円というような契約をしておるところがあるのです。そのかわり三百枚渡すから一枚十円で三万円でやってくださいよとか四万円でやってくださいよという契約をするというのは、私は、これは先ほどのお医者さんが個人的に信頼をしてみえるという点では手足のごとく使うという範囲だと思うのですが、しかし、ある程度まとめて総点数で請負をするという例があります。もっと具体的に言うならば、百万点で一%だという契約をしておるところがあるのです。これは一千万円の水揚げに対して十万円の収入があるというわけですよね。こういう事実について本当局長の方で御存じかどうか、まずお伺いしたいと思うのです。
  178. 八木哲夫

    ○八木政府委員 承知いたしておりません。
  179. 草川昭三

    草川委員 大臣は四十分で出られるそうですから、大臣、途中で出られて結構でございますが、この種の代行業務のことについて、ちょっと一言、ただいまのところの御見解を賜りたいと思うのです。
  180. 小沢辰男

    小沢国務大臣 やはりレセプトは医師が責任を持ってやるのがたてまえでございますし、その結果、もし過誤等があれば医療担当者の責任でございますので、そういう意味においては、これを全く手足のごとく内輪の使用人として使う場合以外になりますと、どうもいろいろ問題点が出てくるのではなかろうか。たとえば診療担当者としての守秘義務についての問題点等も検討してみなければいけませんし、もちろん医師の責任と管理のもとで厳重にやっている場合には、これは守秘義務違反にはならぬと思いますけれども、そういうような何かすぐどこかへ出して請負にするような形のものになってきますと、その点も問題点としてよく法制的に理論的に検討もしてみなければならぬと思いますし、いろいろな問題点があろうかと思いますので、この実態等を私まだつまびらかにいたしておりませんから、私ども、よく検討いたしまして、世の中の需要があって生まれたんだろうと思いますが、これをどういうような形で解決をしていった方がいいのか、また、その人たちの専門的な知識の活用の道が正しい方向で活用されていく何らか道があるのか、この点もよく検討させていただきたいと思います。
  181. 草川昭三

    草川委員 大臣はお時間がないようでございますから、それで結構でございますが、さらにまた、私いまの問題について少し続けさせていただきたいと思うのです。  このような請求事務を出来高払いでやることについては、診療報酬の額がふえればふえるほど代行業者の所得がふえるということになってくるわけでございますから、もしもいまのような、変な想像をするわけではございませんけれども、いわゆるプロという方々にお任せすることによって水増し請求なんかがあっては大変なことになってくると思うのです。ですから、これを正しい意味でのアルバイトならアルバイトでいいと私は思うのです。アルバイト、大いに結構だと思うし、お医者さんが本当に信頼の置ける範囲内で、めんどうな複雑な事務になってきているわけでございますから、それがより簡素化されるような手続になって、そしてたくさんの方々の雇用の機会がふえていくことは、私は非常に望ましいことだと思うので、それを何も取り締まれという形ではなくて、これを正しい形でルールに乗せることが必要ではないだろうか、私はこういう立場で発言を申し上げておるわけでございます。  いま、たまたま大臣の方から、ある程度資格を与えたらどうかとか、このようなものを正規のルートに乗せたらどうかなというようなことを考えなければならぬような御発言があったのですけれども、私は、これはまた今日、別な意味で厚生省としては相当抵抗があるようなことになるのじゃないかと思うのです。ですから、ここはひとつ別に労働省の方から——労働省の方は単純に医療事務の養成ということで職業訓練をおやりになっていますけれども、事がだんだん、最初の医療事務を養成するということから問題が大きくなってきておる。だから、私は職業訓練という意味でも別な意味でも、もう一回これは見直さなければならぬような気がしてなりませんけれども、労働省の方からちょっと御意見を賜りたいと思うのです。
  182. 名取昭夫

    ○名取説明員 御指摘の医療事務でございますが、先ほど申し上げましたように、私どもの発想といたしましては中高年の離職者の方々中心にと申し上げたのでございます。御指摘のような問題があることも十分わかりますので、厚生省とも十分連絡して検討させていただきたいと思っております。
  183. 草川昭三

    草川委員 いま申し上げましたように、内容につきましては何万点数で何%だとか、あるいはまた請負グループというのが何人かあって、特定の方々が非常に善良な人々の、一種の職安法違反というのですか職業紹介のピンはねをするということだけは早急になくして、正規な意味での医療事務として契約をすることによって、何々病院の臨時の従業員でもいいと思います。正規の従業員になるにこしたことはないわけでございますが、毎日来るわけではないわけですから、正しいルートに乗るようにしていただきたいと思うわけであります。そういう点で、ひとつ局長の方から、この医療事務の代行のことについては以上で終わりたいと思いますので、先ほど大臣からの表明もございましたが、今後どういうお考えでこの問題を取り上げられるのか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  184. 八木哲夫

    ○八木政府委員 先ほど先生からもお話がございましたように、医療機関の手足ということで現実にはこういう方々がおられるわけでございますので、これを何らかの制度なりあるいは資格という面で考えますと非常にむずかしい問題もあるわけでございまして、あくまでも補助者なり手足という考え方で見てまいりますと、行政の対象として取り上げるには非常にむずかしい問題があるわけでございます。しかし、ただいま先生から御指摘ございましたような問題もございますし、大臣の御答弁もございますので、むずかしい問題ではございますけれども、一遍検討させていただきたいと考えております。
  185. 草川昭三

    草川委員 では、次の問題に移りたいと思います。  その次は、先ほども将来の展望の中で、保険のウエートが社会保障の中でふえてまいりまして、医療は、絶対額はふえるでしょうけれども、相対的なパーセント、ウエートはだんだん年金に押されてくる傾向になると思うのですが、今度はまた医療だけを取り上げますと、その中での薬の位置あるいはまた検査のウエートがどう変わってくるか、われわれも考えていかなければならぬ点が多いと思うのです。そういう点で、最近ME機器というのですか非常に高額な医療機器が伸びてきておるわけでございますが、これが日本の将来の医療の中でどのような位置を占めていくのかということについて、私は私なりに非常に心配をするわけであります。そのことについていまから少し御質問をしたいと思うのです。  たとえば有名なCTスキャナー、断層写真のことでございますけれども、医科用のX線装置及び関連装置は、昭和四十七年を一〇〇といたしますと、昭和五十一年では倍近く、一九〇・五、四百三十一億一千八百万円と非常に伸び率が高いわけであります。そのほか自動化学分析装置といいまして、血液をとって、小さなびんでございますが入れますと、電算機でいろいろと解析されましてたくさんなデータが出てくるわけであります。これなんかも現在は八十七億三千六百万ぐらいで、四十七年度に比べますと五割近いアップになっておるわけでございます。病院なんかへ行きますと、若いお医者さんを病院に入れようと思うと、少なくともCTスキマナーとこの解析がないと若いお医者さんは来ませんよというのが病院の院長さんのお話になっています。ところが、病院の経営はこういう高額医療機器で大変なことになってくるわけでございます。お医者さんの立場からいうと、これらの高額機器を買わないと自分の病院がおくれていくわけですから買わざるを得ない。ところが、買うと償却は一般の償却で、こういう医療の特別の償却制度は現在の大蔵省の法人税か何かではやっていないわけなものですから、どうしても無理な経営になっていくわけであります。ひとつ、この高額医療機器のこれからの伸び率についての厚生省のお考えをお聞かせ願いたいと思うのです。
  186. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘の高額な医療機器につきましては、御指摘のとおりに近時いまお挙げになりましたコンピュータートモグラフィーの関係などを中心にいたしまして非常に急速な伸びを示しておるわけでございます。伸び率からいたしますと、医療費全体の伸び率よりは低目でございますが、すでに、いわゆる医薬品の伸び率よりも医療用具全体の生産額の伸びの方が高いという状況になっております。  高額の医療機器は、先生指摘のコンピュータートモグラフィー以外に、たとえばガンマカメラ類とか、先ほどオートアナライザーをお挙げになったわけですが、それからICUとかCCUとかシステム化されている機器等を含めまして、たとえばスキャナーの場合には一億から三億といった大きな金額でございます。ただ、今日までのところは、先ほどお話しいたしましたように、その伸び率は国民医療費の全体の伸び率よりはやや低目でございます。将来の問題といたしまして、急速に新規の電機関係の業者が参入する等ドライブがかかっている分野でございまして、われわれといたしましては、この高額医療機器、ME関係中心にいたしまして、その生産動向について慎重に見守っていかなければいけない。かような意味で来年度におきましては、高額医療機器を中心に、その実態を調査する予算も計上いたしまして、慎重な実態の分析、検討を行いたい、かように思っているところでございます。
  187. 草川昭三

    草川委員 そこで、高額な医療機器を製造しておるメーカーは、日本の国内ではどうしても電機関係の重電関係の会社が中心になると思うのです。コンピューターを使いますから、どうしてもそういう傾向になると思うのです。ところが、私はあるエンジニアの方とお話をしたら、だんだん家電というのは一定の限界が来るだろう。設備投資というものが余り伸びないから重電も余り伸びないだろう。そして海外についての輸出というのも非常に困難だから、企業戦略からいうと、あとは付加価値の高い製品は医療機器しかない、こう言うわけですね。だから、非常に付加価値の高い医療器械を開発しようというのですから、お医者さんが本当にこういう器械が欲しいんだよ、こういうものを発明してもらいたい、あるいは製造してもらいたいという形で高額医療機器ができるのではなくて、実はメーカーの方から売りつけるには、付加価値の高い商品市場というのは医療しかない、こういうことから、はっきり言えば、一つの病院があるなら、思い切って、いわゆる電算機の母機、一番のセンターというものをつくって、そして端末のいろいろなターミナルを、たとえばレントゲンにも、あるいは血液の解析にも、あるいはそのほかの一般的な治療にもというように分けてやれば、トータルとしてどれだけ安く電算機が応用されるかわからない。しかし、いまの場合は、いわゆるミニコンピューターを一台一台にどんどんつけるわけですよ。こういう開発をメーカーはするわけですから、メーカーにしてみれば非常に付加価値の高い製品になっていくわけですね。しかし、だれかがそのお金というものは負担しなければならないわけでしょう。まず、とりあえずは病院が次から次へとミニコンを買わなければいかぬから、あと十年たってみたら、なぜこんなむだなミニコンばかりわれわれはたくさん買わなければいけなかったのかという時代が来るわけです。  これは目の前に見えておるわけですから、この高額医療機器の問題については、厚生省はそれこそ事前に何らかの対応策を立てる必要があるのではないだろうか、わかり切ったことですから。そのことについての意見を伺いたい。
  188. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生指摘のとおりに、高額医療機器の開発及び国民医療への導入については、いろいろな問題があろうかと存じます。一面におきましては、ただいま御指摘のとおりに、ユーザー側の真のニード、あるいはユーザー側から見たいわば効率性の問題、かような問題が開発段階において、うまく反映され得るかという問題もございます。それからさらに、かような非常に高額な億円台の高額医療機器の配置をいたします場合に、その使用効率が当該医療施設でどの程度のものが確保できるかという、いわば資源としてのアロケーションの問題もあるわけでございます。  さような意味におきまして、確かに現在では先生指摘のとおりに非常に有望なマーケットということで、電機関係のメーカーがこれにドライブをかけて入ってきているということでございますけれども、ユーザー側の立場及び高額医療機器の適正配置の問題、これはさっき先生指摘のとおりに、将来に向けて非常に重要な問題であろうかというふうに考えるわけでございます。ただいまのところは、私らの薬務局では、もっぱら高額医療機器の安全性及びその信頼性の問題をチェックしているにとどまっているわけでございますけれども、今後の問題としては、先生の御指摘のような問題を踏まえまして、将来の高額医療機器のあり方というものをめぐりまして、厚生省全体として十分な検討をいたしてまいりたい、かように思うわけでございます。
  189. 草川昭三

    草川委員 それから、億円台のそれこそ医療機器の配置という問題については、緊急な計画というのが必要だと私は思いますが、同時に、これの償却というものが一体どの程度の期間ならばいいのか。いまの償却というのは、これは厚生省ということよりも大蔵省の問題になると私は思うのですけれども、たとえば町の工場の旋盤だとかあるいはプレスだとか、そういうものと同様な取り扱いに償却というものがなされているのじゃないだろうか、こう思うのです。そういう点では、とりあえず現行税法上からも償却というのはある程度違った立場から厚生省は大蔵省に話し合いをすべきじゃないだろうか。あるいはまた、別な意味での特例的な処置ということを考えることが必要ではないだろうか。そうしないと、それがそのまま——それは適正配置ということは基本的には必要なんですけれども、いまのままだと、それぞれの病院が競い合ってそれを受け入れていくことになるわけですから、それが保険財政に最終的におぶさってくるということになりまして、私は結局最後に喜ぶのは医療機器メーカーだけだと思うのです。こういう点についての御意見を賜っておきたいというように思います。
  190. 佐分利輝彦

    ○佐分利政府委員 まず、前段の医療機器あるいは医療施設の償却の問題でございますが、御指摘のとおりだと思います。現在の法人税法では、医療機関関係が使っております建物、設備については必ずしも優遇されておりません。したがって、毎年繰り返し償却年数の短縮を大蔵省にお願いしているところでございますが、今後もさらにその努力はいたしてまいりたいと思っております。  また、後段の御質問でございますけれども、私どもは、先ほども先生から御指摘がございましたけれども、高級な器械につきましては、できるだけ多くの病院とか診療所が共同で利用するというような方法も考えているわけでございまして、たとえばCTスキャナーのような場合には、広域市町村圏に一つぐらいあれば、その圏域内の医療機関がみんなで使えるという方向にいかないだろうかという考えを持っております。また、そういうふうな考えに基づいて補助金なり、あるいは自治体病院、場合によっては民間の病院に対する融資というようなものを誘導してまいりたいというような考え方を持っております。  したがって先生、先ほど大変医療機器の将来について危惧をなさっていたようでございますけれども、決して一部のメーカーが考えておりますような、非常に利潤の上がるいい市場に医療機関がなるとは私どもは思っておりません。過渡的に現在、ほかの方も不況でございますので、御指摘のような動きが一部のメーカーにあろうかと思いますけれども、その辺は私ども、いろいろ医療政策上からも検討をし、誘導をしてまいりたいと考えておりますので、御懸念のようなことは起こらないものと考えております。
  191. 草川昭三

    草川委員 時間がございませんので、私はこれで終わりたいと思いますけれども、いま局長の方から、そういう心配はないんだというお話がございましたが、現実に起こりつつある、ただいまの時点で過去を見てみるならば、私がたまたま主張をしたようなことは、すべて現実に裏打ちをされておるわけですよ。繰り返し申し上げませんけれども、外科のお医者さんでも、だんだん、いい設備のところでないと、なかなか動きたくないとおっしゃられる方が多くなってくる。では、いい条件は何かというと、先ほど言いましたように、やはり高額医療器械のあるところだ、これがまず前提なんだ、こういうようなことでございますから、かなり病院経営者の方々は無理をして、そういうものを買わざるを得ない。しかし、買ってみると、わずか二年か三年で、もう新しいものが出てきておる。レントゲンなんか完全にそうですよね。だから普通の患者の立場からいうと、いい機器で的確な診断をしていただくことは非常にいいんだけれども、非常に過大な、あるいは過剰なサービスというものが出てくるんではないだろうか。これがまた逆に、そのまま放置をされるとするならば、日本の医療というものは検査業務というものがこれから非常に伸びてくる、その負担というものがかかってくる。それは一面、われわれにとってはいいようなことだけれども、それが不必要なものまでデータで出てくるようなことを実際に日本の医療というものは認めなければいかぬのかどうか、いろいろと私は重大な問題が出てくると思うのですよ。だから私は、いま局長がおっしゃられたように、任しておきなさいというようなことではないだろうという気がしてなりません。しかし、そのことについては、さらにまた別の機会にいろいろと意見を申し上げたいということで、時間が来ましたので私の質問は終わりたい、こういうように思います。  どうもありがとうございました。
  192. 木野晴夫

    木野委員長 次に、大橋敏雄君。
  193. 大橋敏雄

    ○大橋委員 厚生大臣予算委員会の方に呼ばれましたので、あと政務次官にいろいろとお尋ねしたいと思います。政務次官というのは副大臣ですから、非常に重要な責任がございますので、その立場でひとつ責任ある御答弁をお願いしたいと思います。  実は、いま年金問題が非常に関心が高まってきているわけでございますが、年金に対する関心の高まりというものは大変な想像以上のものがあると思うのですね。そうした中で、実は二月五日の朝日新聞に、いま持ってきているのは朝日新聞ですけれども、一面トップに「社会保険庁大量の“減額支払い”電算機に入力ミス老齢年金全国で三十万人?税金控除忘れる」という大きな記事が出たわけでございます。私は社労の理事をやっております関係もありまして、この記事を手にしたときに、いささかショックを受けた感じでした。中をじっと読んでまいりまして問題点が幾つかあると思うわけでございますが、この記事に触れられた国民の皆様は、いろいろ複雑な心境あるいは印象を持たれたと思いますけれども、少なくとも厚生行政、なかんずく社会保険庁に対する疑問あるいは不安、もっと極端に言えば不信、こういう感じを抱かれたのではないかと思うのです。  こういう事故に対しまして、電算機そのものは精密だけれども、やはり仕事は人間がやるのだから、この程度のミスはやむを得ないんだという考えにいるのか。あるいは、この問題に対して真剣に、二度とこういう事故を起こさないという協議か何かをしたのか、その結果どういうことになったのか、教えていただきたいと思います。
  194. 戸井田三郎

    ○戸井田政府委員 いま、お説のコンピューターによる事故の問題ですが、私もこれを新聞で見たときには大変驚きました。いま、国民のほとんどの人が年金には関係あるわけでありますから、それがコンピューターで処理されるようになって、しかも、そういったミスがあったということは、いまお話しのとおり大変大きなショックであろうと思います。同時に、これがある意味では不安になり、いま申しましたように不信につながるということになったら、これは大変だと思います。  それで、私は最初コンピューターが何か狂っているのかなと思ったのですが、よく読んでみると、そうではなくて人間が資料を入れるときに誤ったということでございます。人間が問題を一つ一つ処理する場合には、一つ一つ間違っていくわけですから、それがずっと影響することはないけれども、機械というものは、こういうようにコンピューターの中に資料として入れたものが一つ間違えたら、末端にいったら非常に大きな数になってくると思います。そういうことを考えると、今回のミスというものは非常に大きな意義を持っております。  そういう意味で、私どもも大変深く憂えて、そして今後の対策に対して検討いたしております。それは特に、機械は疲労したり、あるいはそういうことはないけれども、人間というものは感情もありますし疲れもあるし、いろいろあります。そういったところが間違ってはいけないから、機械の信頼を増す以上に人間が機械に対して真剣に取り扱っていかなければならない。そのためのチェック体制というものをこれから真剣に検討して、再び、こういうミスがないようにしなければいけないと思っております。そういう意味で、まず今回の事故に対し深くおわびをし、そのおわびが同時に次の改善につながるように努力をしていきたいと思っております。
  195. 大橋敏雄

    ○大橋委員 当然その問題に対して真剣に協議がなされているやに伺いましたけれども、私も、こうしたコンピューターを操作している、実務をやっている方々のお話を伺ったのによると、今度のこの社会保険庁のミスというものは、まあ極端な言い方になるかもしらぬけれども、これは不注意というよりも怠慢だ、業務の怠慢ということになるんだ。なぜならば、入力が正しく行われたかどうか、インプットした後に読み合わせ等すれば、こういう問題は起こらないんだ。言うならば初歩的な事故なんだ、こういうことでございます。ですから、いろいろ検討なさって対策は立てられるでございましょうが、根本的にはいま言ったインプット後の読み合わせを義務づけるかどうかという問題だと思うのですが、この点についてはどうでしょうか。
  196. 大和田潔

    ○大和田政府委員 ただいま政務次官が申しましたように大変申しわけないことであったわけでございます。この事故の原因につきましては、なお詳細検討、調査をしておるところでございますが、基本的にはシステムプログラム、これの作成におきますところのチェック体制という問題に欠陥があったということがはっきりしておるわけでございまして、これにつきましては、御説のとおり私どもも今後そのチェック体制というものを十分に充実をいたしまして、このような事故のないように対処いたしたいというふうに思っておりますので、よろしくどうぞお願いいたします。
  197. 大橋敏雄

    ○大橋委員 それでは電算機ミスの問題はこの程度にしまして、いま大変な長期にわたる不況であるわけでございますが、そのために、いろいろと社会混乱を来していることは御承知のとおりでございます。この長期不況というのは個人消費の低迷にあるのだということが、ここ数年来もう常識化してきているわけです。内需喚起こそが景気回復への近道である、主要課題だ、こういうふうに言われてきているわけでございますが、それにもかかわりませず五十三年度の政府の予算案をながめてみますと、すでに予算委員会等で厳しく指摘されているとおりでございますが、公共事業一本やり、大型借金財政で従来の考えとそう変わっていない。まあ何と申しますか、この財政の組み方それ自身を根本的に改めていかなければならない時期に来ているわけです。すなわち、経済主導型財政というのじゃなくて、これからは福祉主導型財政に転換させねばならない、こういう論議が予算委員会でもずいぶんとなされていたことは御承知と思います。各方面の識者の御意見も大体福祉主導型財政に転換せよということであると思うのです。こういうことから考えてまいりますと、厚生省の立場としてはもう一歩も二歩も、あるいは百歩も千歩も勇気を持って、そういう方向に指導していかねばならぬ、こう考えるわけでございます。  時間がございませんので、はしょってまいりますが、「昭和五十年代前期経済計画」という政府から出ている資料がございます。私はその中の一部を抜粋してきたわけでございますけれども、これには「内外環境条件の変化と計画期間における問題点」ということでまとめられているわけです。この内容を見てまいりますと、「世界経済の構造変化と資源有限性の強まり」あるいは「国民意識の変化」というところで、なるほど教えられる内容が出ております。特に「国民意識の変化」の中に「国民の欲求は、私的消費の増大よりも、住宅等のストックの増大や社会的消費」これが大事ですね。「社会的消費の充実等生活の質的向上を重視するようになってきた。」つまり公共住宅や学校あるいは病院、年金、医療、下水道等を大幅に充実強化していかなければならぬ、こういうことをうたっているわけでございます。  それからまた「計画の目標と新しい政策体系」の中にも四つの項目を挙げて計画の目標が示されておりますが、「物価の安定と完全雇用の確保」、二つには「安定した生活の確保と住み良い環境の形成」とあるわけですね。そして三つ目に「世界経済発展への協調と貢献」、四つ目には「経済的安全の確保と長期発展、基盤の培養」云々こうあるわけですが、そのずっと後の方に、「安定した生活の確保と住み良い環境の形成」という項の中に社会保障の問題が特に取り上げられております。「人口の急速な老齢化等社会構造の変化に対応して国民生活の基礎を固めるため、年金制度の充実や保健医療体制の整備等を進める。所要経費(振替所得)は、昭和五十年度の十兆六千億円から五十五年度にはおおむね二十三兆円と二倍強の増額を見込む。また、各制度を通じて社会的公正の確保と制度の効率化を図る見地から見直しを行い、適正で合理的な給付と負担のあり方について、国民的合意を得るよう努める。」この次にもっと重要なことがあります。「これらを具体化するための社会保障長期計画を早期に策定する。」こうあるのです。  これはたしか昭和五十一年の五月に出た資料でございますが、それからもう二年たっているのですけれども、いまだに社会保障長期計画は策定されていないと見ているのですが、この点どうですか。
  198. 戸井田三郎

    ○戸井田政府委員 いま、お説の二つの問題の前段のものですが、特に長期の不況の中で個人消費を伸ばしていくという点から見て、社会保障関係費が非常に伸び悩んでいるんじゃないか、もっとがんばれという御激励のことでございますが、大変感謝をいたします。  そこで、今度の予算の見方で、たとえば公共事業というものが非常に伸びている、そういった面から見ると、社会保障の施設費は二五%伸びているわけですから、一つも劣っていない。そこで経常部門の面で見れば、社会保障費関係全体の伸び率が一九・一%ということであり、さらに一般会計予算のうちの経常部門の一七・四%から見れば、ここの部分でも上回っている。それから公共事業費を除いた一般会計予算の伸び率から見ると一八・八ですから、この面でも個別に見れば伸びている。しかし、これでいいというんでなくして、私も基本的には、社会保障費というものが消費の部面で大衆消費につながるという考え方については同じ考え方を持っております。これからもそういう意味では努力をしていかなければいけないと思っておりますが、特に年金のような問題は、会社で言えば設備投資みたいなもので、ずっと続いていくわけであります。そういう意味から見て長期に拘束される、そのための長期的な見通しが、いま先生指摘の問題になってくると思いますが、そういう意味で私どもは、各種の答申が出たりもいたしておりますし、社会保障の重要な部門である年金と医療に関して、もうすでに昨年は基本懇あるいは社会保障制度審議会等から、それぞれ建議がなされたり中間意見が出ておりますので、それに基づいて、先ほど大臣が答弁いたしましたように、年金問題等についても鋭意努力をいたしておるところでございます。
  199. 大橋敏雄

    ○大橋委員 五十三年度の一般会計予算の伸びは御承知のとおり二〇・三%ですね。いまおっしゃるとおり社会保障費関係は一九・一%ですから年金のスライドとか、あるいは恩給などの改善が今度行われるわけでございますけれども、それにもかかわらず一般会計予算の伸びよりも下回っているということは、やはり福祉の後退だと指摘されても仕方がないことだろうと私は思います。先ほど申しましたように、「社会保障長期計画を早期に策定する。」とあるにもかかわらず、もう二年もたっておりながらできないというのは話にならぬと思うのです。いつになってできるのだということになるわけです。  そこで、わが国の社会保障の柱と言われているのは年金制度あるいは医療制度、これが大きな柱になるわけでございますが、不幸にもこの二つとも、それこそ行き詰まりを来しているわけです。午前の質問にもかなり出ておりましたが、小沢厚生大臣医療保険制度については、前国会で示された十四項目の公約については自分がその実現のための責任を負っている、だから今国会で抜本改正の中身について、五十三年度実施あるいは五十四年度実施のその内容について具体的なものを出すとは言ったものの、出てみないと果たしてどういう程度のものか疑問でならぬわけです。また年金制度にいたしましても、先ほどからの答弁を聞いておりましても、五十三年度中に各方面の意見をまとめて、それを参考にして厚生省としての考え方を整理しまとめ上げよう、実施についてはそれからだというようなお話であったわけでございます。  先ほども申し上げましたように、本格的な高齢化社会が急テンポで進行してきているわけですが、現行年金制度が財政的にも、また制度の不均衡、不公正という立場から抜本改革が焦眉の急を要する国民的課題になっているわけでございます。そうした抜本改正をやらねばならぬという立場から見た場合、もうぎりぎりの線まで追い込まれているのだ、そういうことで各方面でも真剣な検討が進められてきているわけです。いまもお話がありましたように、昨年政府関係二機関からも抜本改革案を打ち出しておりますが、いずれも、その内容は大づかみに申せば二階建て年金を提言していたと思います。年金懇あるいは社会保障制度審議会あるいは前の三木首相が出しておりましたライフサイクル計画、社会経済国民会議も、また年金制度国民会議も労働組合も、大体今後の年金制度のあり方は基本的な部分を手をつながせて、その上に比例報酬部分は上乗せていくのだ、二階建て年金だということがほとんどの意見として出てきていると思うのです。国民的合意が着々と形成されつつあると私は思うわけでございます。  先ほどの計画を策定するに当たりまして、特に年金の場合は、いま言ったように、あらゆるところから二階建て年金の問題が出てきている。わが公明党もそれを発表していることは御承知のとおりでございますが、たとえば公明党のナショナルミニマム、いわゆる基本的な部分の額というものは全産業の平均賃金の三五%と見ているわけです。これは夫婦合わせると、いまで約十万程度になろうかと思いますが、制度審は単身三万円、夫婦五万円というような、内容や額についてはまだ大きく検討しなければならぬわけでございますが、いずれにしても二階建てという方向については、これ以外にないだろうということになってきているわけです。  したがって、厚生省としては、この基本年金の基礎部分の水準をどこに置くか、幾らにするかということをまず決定しなければならぬと思うのです。その考えを昭和何年から実施に踏み切るか。この二点を明確に打ち出して、再び国民のコンセンサスを得るためのいろいろなことを実施しなければならぬと思うのです。いま言いましたその基礎部分の年金水準をどの程度に持っていくかというその決定、実施の時期ですね。厚生大臣は五十三年度じゅうにいろいろと考えてその結果、実施時期は考えますと言いますけれども、そんなに長い時期ではなかろうとは思いますが、これを早急に決定すること、それが決まれば、いま毎年問題になっている福祉年金の額の年々の引き上げの計画も立つわけですから、私はこれをまず厚生省が決定しなさい、こう言いたいわけでございますが、いかがでしょう。
  200. 木暮保成

    ○木暮政府委員 いま先生がおっしゃいました基礎年金をどのぐらいに考えるか。それからまた、いつごろ実施をするか、めどをはっきりさせること。この二つは確かに年金の改革の基本問題であろうと思います。  先生のお話にございますように、各団体あるいは各審議会から出ております意見は、八つの保険がそれぞれ別々にあるということでは老齢化の波は乗り切れない。また八つの制度それぞれ沿革がございますので、これを一本にしてしまうということも無理であろう。基礎的部分を共通にやるか、あるいはまた財政調整をするということが必要であるという認識は、もう全く一致しているんだろうと思います。その際、基礎年金の形をとりますにいたしましても、財政調整の基礎というものが必要でございますので、どの辺にめどをつけるかということが大きな問題であるわけでございます。  それで、制度審議会では、老人夫婦二人が生活する生活費の半分程度を見るというところにめどをつけられまして、夫婦五万円、単身三万円という線を出されておりますし、公明党のトータルプランでは、ただいまお話しのように賃金の三五%、夫婦で七〇%という御意見をいただいておるわけでございます。また国民会議の方では、給与の三〇%程度をさしあたり目標にするということを言っていただいておるわけでございます。  それで、厚生省基本懇でも、ナショナルミニマムをどう考えるべきかということで、いろいろ御論議をいただいたわけでございまして、現在の段階、結論に達しておらないわけでございますけれども、中間意見書には生の形で御報告をしておるわけでございまして、この点につきまして大臣から五十三年度内ぐらいには方向を出せということを指示されておりますので、基本懇等にも審議を急いでいただきまして結論を出したいと思っております。
  201. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いまも申し上げましたとおり、その点を一日も早く、むしろ厚生省の方からこの程度ではどうかというぐらいに示し、そして実施時期もこの辺だということになれば、また、そこで国民のいろいろな意見が出てきて、それで思いがけない早い時期に固まるかもしれませんし、また、そういうふうにいってほしいということを強く要望しておきます。  それから、時間がないので次に移りますけれども、年金問題は抜本改善が大変な期待を寄せられているわけでございますが、今度提出される国民年金の改正案等を見ましても、あるいは厚生年金の改正を見ましても見るべきものはない。五十一年度改正以降の経済変動等に辛うじて対応させている内容であって、制度の基本に触れるような改善はどこにも見えないですね。  しかしながら、国民年金の改正の中に一つ注目できることは、とても今後はできませんと言っておりました国民年金の特例納付、これをやろうということが決定したようですね。もちろん、法律が通らなければ実施をされないわけでございますが、その特例の措置の内容について簡単に説明願いたいと思います。
  202. 木暮保成

    ○木暮政府委員 無年金者対策につきましては昨年、国会でいろいろ御論議をいただき、また、私どもの出先にも年金に結びつかないということを訴えてこられる国民の方は多うございまして、いろいろ検討をいたしたところでございます。  過去二回特例納付をやりましたわけでございますが、三回目の特例納付を行いますと、この特例納付というものが一定の時期を置いて恒常的に繰り返される、こういう印象になろうかと思います。そういうことになりますと、若いときから保険料を掛けるというよりも、年金受給が近づいたときに一括して特例納付をすればいい、こういうような風潮に仮になるといたしますると、国民年金の運営上非常に大きな障害が出てくるということで、無年金対策を行うにいたしましても何かいい方法はないかということをいろいろと検討いたしたわけでございますけれども、結果的には特例納付、従来二回やりましたものを、さらに繰り返して行うということにいたした次第でございます。  本年の法律を通していただければ、七月から二年間にわたりまして特例納付を再開するということでございます。その際、特例納付の保険料は、一月につき四千円ということで御提案をしておるわけでございます。この四千円という考え方でございますが、別途、五十三年四月の二千七百三十円という保険料までは決めていただいておりますけれども、五十四年四月から三千三百円、五十五年四月から三千六百五十円に保険料を変えていただくような法律改正をお願いをしておるわけでございます。この五十五年四月の三千六百五十円につきましては、五十四年度において物価スライドが給付についてあります場合には、その率を掛けさせていただくという形でお願いをしておりまして、三千六百五十円に若干率が掛かって四千円に近い保険料になるのではないかというふうに思っておるわけでございますが、この経過期間中の保険料よりも下回らないということで、四千円の保険料を決めさせていただいておるわけでございます。  この点につきましては、先ほど申し上げました一般の被保険者とのバランスをとり、若いときから、こつこつと保険料を納めていただくというような風潮が壊れないようにということを考慮して決めているわけでございます。
  203. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いま言われますように、従来まじめに保険料を納めてきた方々から見ると、この特例納付というのは非常に問題があろうと思いますけれども国民皆年金体制をしいたという立場から、やはり無年金者はなくさねばならぬという政治的な大きな課題なんです。確かに、これが恒常化するみたいなことになると大変だと思いますが、今度で本当に最後だという決心で、そのかわり無年金者を本当に救い上げるんだという内容にしてもらいたいと思うんですな。  ということは、いままで事情があって国年に加入できなかった者、加入を忘れた人たち、あるいは、これから加入したとしても必要な加入期間が満たされない、そのために年金に結びつかない、こういう方々が当然対象になってくるわけでございますけれども、いま言う保険料が月四千円の計算で取られるということになると、これはやはり相当重い負担になる内容になっているんじゃないかと思いますが、まず特例対象者で最高もし納めたとすれば何年分納入することになるのですか。
  204. 木暮保成

    ○木暮政府委員 仮に極端な場合、昭和三十六年に制度ができて以来一遍も保険料を納めたことがないという方の場合をとりますと、十一年分の特例保険料を納めなければならないということになりまして、金額で申し上げますと五十二万八千円ぐらいになろうかというふうに推定しております。
  205. 大橋敏雄

    ○大橋委員 これは保険料を納め忘れるような人のために二年間の経過措置といいますか、納入猶予といいますか、それがありますね。それは別に外して十一年ということですか。
  206. 木暮保成

    ○木暮政府委員 さようでございます。
  207. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大変な高額になるわけでございますが、果たして、これで無年金者を何人救うことができるだろうか。その納入の額から最高の人ということではございますけれども、かなりやはり、そういう状況にいる方があるんじゃないかと思います。そういうことで、仮に五十二万八千円を持ってこいと言われても、これはなかなかできるものじゃないと思いますが、いま七月から二年間でという話があったのですけれども、これは二年間に分割納入していいということですか。
  208. 木暮保成

    ○木暮政府委員 前二回と同様に、二年間どういう形でも分割して納めていただいていいようにやりたいと思っております。
  209. 大橋敏雄

    ○大橋委員 仮に分割納入ということになりましても、先ほど申し上げました納入猶予の二年分がさらにあるわけでございますから、これを入れますとたしか九万六千円になりますね。五十二万八千円と九万六千円、これを合わせますと大変な額になるわけでございます。六十二万四千円ですか、これを二年間二十四カ月に分割納入したとしてみても毎月二万六千円になりますね。このほかに今度被保険者となった自分自身の保険料を毎月今度は二千七百三十円ですか、これを納めなければならないということになると、一般のサラリーマンだって無理ですね。ましてや国民年金の対象者というのは低所得者が多いわけでございまして、もう少し何かいい工夫がないだろうか、こう思うのですけれども
  210. 木暮保成

    ○木暮政府委員 先ほど、ちょっと申し上げましたように特例納付三回目をやるということを決めます前に、いろいろな案を考えてみたわけでございます。たとえば一つの案として、第一線等でも言っておりましたのは、六十歳まで保険料を納めるといういまの制度になっておりますけれども、そういう受給権を満たさない方については六十五歳まで保険料を納めることを認めたらどうかということがございまして、私どもも第一線の提案でございますのでよく検討いたしたわけでございます。現在六十歳になっておって、あと一年、二年足りないという方のためにはぴったりなのでございますけれども、実は三十七歳になって、いままで国民年金に入らなかった、これから掛けるのだと、どうしても一年分足りなくなるというような方のためには、そういう六十歳以後も延長して納められるということが始まりますのは二十数年後になってしまうということで、特例措置として窓口を二十数年あけておかなければならないというようなことがございまして、これは見合わせざるを得ないのではないかというように考えたわけでございます。  また、一つの提案といたしましては、二十五年なら二十五年の期間を納めなければ老齢年金を出さないというようなことはもうやめてしまって、外国にはあるのでございますけれども、十五年納めた人には十五年分、八年納めた人には八年分というようなことで、保険料に応じた額だけ出したらどうかということもあったのでございますが、そういう方法をとりました場合には、恐らく国民年金の将来の発展というものが貧弱なものになってしまうのではないだろうか。この際はやはりとるべき方法ではないんじゃないか。  いまの二つの方法でございますと、負担が軽くなるというような面はあろうかと思いますけれども、逆に年金として生活の支えにならないようなものになりかねないというような危険性もございまして、あえて三回目の特例納付に踏み切ったというようなことでございます。
  211. 大橋敏雄

    ○大橋委員 いま、いろいろ御説明のあったことは私自身も考えたことです。たとえば六十歳を六十五歳まで延長納付させる、これは厚生年金に任意継続制度というのがありますから、そういうことをとったらどうか。あるいは公務員共済年金等で空期間云々ということで年金加入期間を必要月数に通算できる制度がありますね。こういうことをあわせて、この特例納付をする人に限ってということでやれば何とかできるのではないかと私は思うのです。というのは無年金者の最後の救済措置だということで、特例中の特例ということでやれないか。そうでないと無年金者がたくさん残ってどうしようもないということになるのではないかという気がしてならないのです。この点、これは大きな政治的な問題ですから、政務次官の方からひとつ。
  212. 戸井田三郎

    ○戸井田政府委員 いま先生のお説は非常に大事な意味を持っていると思います。特に年金に入りたいという気持ちがありながら入れないという者が、もし積み残されたということになったら、これは大変な問題だと思うのです。ただ一方に、いま言いましたように一般の被保険者がまじめに保険料を納めていて、そういった者が、正直者がばかをみるというようなことがないようにということも一方に基本的なものであるけれども、同時に、入りたいけれども、この期間になったら五十万円というものはとても納められないなという者のために、それがついに積み残しになってしまったということになると、このことはちょっと大きな問題になりはせぬか、これをどういうふうに救済するかということは非常に問題だと思います。私、いま局長との間の討論を聞いていて頭に感じたことですが、これをどういうふうにするかということを考えてみなければいけないんじゃないかという感じを持ちます。  お説のとおり、無年金者がいままでどうして出たのか。たとえば入りたいけれども入れなかったのか、あるいは田舎の方の人などは、このごろ役所に行って手続するなどということは、役場に行くだけでもおどおどしているような人がたくさんいますから、そういうような人がどうも行きにくいという面でちゅうちょしていて、ついに過ぎてしまった。また、制度そのものを徹底して理解していないために、余り価値は認めなかったけれども、だんだん話を聞いてみたら、どうもいいことじゃないかというようなことで、ひとつ入ろうと思ったときには、とてもまともに納められるものじゃないというようなことだと思いますから、これは真剣に検討すべきもののように私は思います。
  213. 大橋敏雄

    ○大橋委員 先ほどから申し上げましたように、無年金者の最後の救済措置として、きわめて重大な内容だと思いますので、法律を実施される前にもう一度、厚生省の中でこれを真剣に検討していただきたいということを強く要望しておきます。私の時間が大分迫ってきましたので、もう一つ聞きたかったことがありますから、ちょっと確認の意味で伺います。  厚生年金の改善内容で、在職老齢年金制度の改善がありますね。これは大きく分けると二つに分かれていると思うのです。六十歳から六十四歳、それから六十五歳以上の内容に分かれていると思いますが、私が特に聞きたいのは、六十五歳以上の在職老齢年金者は働きながら年金をもらう、と同時に保険料を納めていくという二面性があるわけですね。しかしながら、六十五歳以上になってずっと勤めていくと、毎月毎月最低の基礎となる加入期間はふえていくわけですけれども、従来はそれは計算に入れませんでしたね。今度の法改正で、それを入れるのだと聞いたのですが、その点を確認したいということと、それをなぜ六十五歳以上だけに限ったのか。六十歳以上からの在職老齢年金者にも適用しないのかという二つの問題です。
  214. 木暮保成

    ○木暮政府委員 まず最初の点でございますが、今度、仰せの七十歳改定ということをやるということで法律案を提案してございます。したがいまして、従来六十五歳以上の在職老齢年金の場合には六十五歳までの保険料しか反映されなかったわけでございますが、七十歳の時点で計算し直しまして、六十五歳から七十歳の間に納めた保険料も年金額に反映させるということにいたしたわけでございます。それから六十歳から六十五歳までは、低在と言っておりますが在職老齢年金を一定の条件のもとに受けられるわけでございますが、六十五歳以後に引き続いて給付を受けますときには六十五歳ではじき直すことをいたしております。でございますから在職老齢年金は六十五歳の時点と、引き続く場合には七十歳の時点で、二度はじき返すということになるわけでございます。
  215. 大橋敏雄

    ○大橋委員 ちょっと確認ですけれども、いままでは、六十五歳を超してもずっと勤めたとしますね、七十歳近くまで勤めたとします。その間は六十五歳の裁定の額がずっと支給されてくるわけですね。やめて退職したときに改めて計算し直されたわけですね。今後もそのとおりいくというわけですか。
  216. 木暮保成

    ○木暮政府委員 二つに分かれると思いますが、六十五歳以上で就労しておられる場合に、退職をされれば、もちろん退職の時点までの保険料を反映させて再計算をいたします。退職しない場合でも、七十歳の時点で一遍七十歳までの保険料を納めた実績を年金額にはね返して増額をするようにいたしたい、こういうことでございます。
  217. 大橋敏雄

    ○大橋委員 大体わかりました。時間が過ぎましたので、きょうはこれで質問を終わります。
  218. 大和田潔

    ○大和田政府委員 私から先ほどの特例納付に関します実施面におきます私ども考え方をちょっと補足させていただきたいと思います。  先生おっしゃいましたように、今回の特例納付は今回限りということでございますので、私ども極力、広報といいますか、PRあるいは個別勧奨、これに全力を挙げていきたい。これにつきましては、単なる報道機関を利用いたしましたところの広報以外に、個別に、あなたの場合はお入りになればこうこうですというぐあいに個別勧奨というものを市町村とよく協議しながら進めてまいる。やはり知らないということが一番困りますので、知らないという人がないように、この趣旨の徹底を図ってまいる、そういうことで私ども努力をいたしますので、よろしくどうぞお願いいたしたいと思います。
  219. 木野晴夫

    木野委員長 次に、西田八郎君。
  220. 西田八郎

    ○西田(八)委員 時間がきわめて制約されておりますので、重要な部分について、大臣所信表明について二、三の質問をいたしたいと思います。  そのまず第一は、年金制度でありますが、昨年この委員会で金年の官民格差という問題が非常に大きく取り上げられました。これは事実、新聞等の報道あるいは厚生省等で発行しておられます資料その他によりましても、やはり格差のあることは明らかな事実であります。もちろん、それらにも年金の成熟度が違うという理由もあるでしょうけれども、その後、非常に改善に努力しておられるというふうに思うわけですが、現在で一体どういうふうになっているのか。それを年金別に分けてもらうと八つ答えてもらわなければならぬので、そんなことは省いてしまって、公務員関係それからいわゆる厚生年金、そして国民年金はちょっと対象にならぬかもわかりませんが、ひとつその格差だけ、どれぐらいあるのか。
  221. 木暮保成

    ○木暮政府委員 御承知のように、厚生省では一昨年五月から年金制度の基本問題懇談会をこしらえまして、初めて八つの年金制度を横断的に検討していただくということをしていただいておりまして、官民格差の議論が起こる前から、いろいろ御審議をいただいておったわけでございます。昨年の春、この問題が取り上げられました後も、基本懇の方で御検討いただいておるわけでございます。  当時、官民格差は五割程度あるんじゃないかということが言われておったわけでございますが、それはただいま先生のお話にございますように、共済組合と厚生年金との成熟度の違い等がございます。端的に申し上げますと、いま共済組合でもらっております年金は三十二、三年掛けた人の年金でございます。一方、厚生年金の場合には、二十一、二年掛けた人の年金が出ておるというような時期でございます。基本懇でこの関係を御検討いただきましたのでございますが、やはり加入期間の同じ人たちを比較すべきではないかということで、いろいろ私ども資料収集を命ぜられまして比較をいたしましたところ、大体二割程度の違いがあるという結果がわかっておるわけでございます。この二割につきましては、恩給の場合には現在でも恩給期間を持っておる方が受給者に多いわけでございまして、恩給期間の影響がどういうふうに出ておるか。それからまた、厚生年金の場合には企業年金が別にあるわけでございますけれども、共済年金の場合には企業年金の意味合いも含んでいるのじゃないだろうか、そういうふうな点について今後さらに掘り下げていただくということになっております。
  222. 西田八郎

    ○西田(八)委員 成熟度ということになると、国民年金の場合なんかは、まだ正式に有資格者は出てないわけですね。三十六年から始まっていますから六十一年にならないと出てこない。そうすると、その人たちは有資格者が出てくるまで待たなければならぬのかという議論に発展してしまうんです。私は、年金というものの性格からいきまして、現在、保険という制度で、これの処理というのをやっておられるから問題があるわけで、これは早く、何といいますか、国民皆保険、特に皆年金という形になれば、何らかの形で一本にすべきではないのかというふうに思うわけですね。そうすればそういう問題は起こってこない。なぜかと言えば、掛けた年数もそれぞれありましょうが、掛けたものに対して返すんだという、その物の考え方自体がおかしいのであって、これから生活する人の、その生活を保障するんだという考え方に立たなければ、年金というのは私は理屈が生まれてこないと思うのですよ。そうだとすれば、そういうただ成熟度だとかあるいは掛けた年数だということで議論をしておったのでは、いつまでたっても、食える年金というものを全国民がもらう時期というものは非常に長い時期を待たなければならぬ。しかし、すでに老齢化社会というのは目の前に来ておるわけですよ。そういうことからいけば、当然そういうことに踏み切らなければならない時期ではないか。それには各年金の調整をして、最低の、いわゆるナショナルミニマムといいますか、最底保障を一体どこに置いて、そこへ到達するためにどうするかということを具体的に考えなければならぬし、各年金が持っている基金を基金調整するということまで踏み切らなければならぬのじゃないかというふうに思うのですが、そういう点で年金局としてどういうふうにお考えになっているのか。
  223. 木暮保成

    ○木暮政府委員 いま先生おっしゃることは、年金の将来構想の一つ基本問題だと思うわけでございます。それで、私ども基本懇でいろいろ検討していただいた結果も、そこに一つの重点がございまして、日本の場合には国民年金も含めまして社会保険方式をとり、加入の年数が長ければ長いほど高い年金が出るということになっております。一方では、自分の納めた保険料が給付に結びつくということで国民の拠出意欲というものを阻害しないような面があると同時に、一方では、短期加入者には十分の年金が出ないということがあるわけでございます。世界各国も社会保険型をとっておりますところは、自分たちの納めた保険料に応じた年金をもらえる、比較的高い年金が出るというような点が喜ばれておると同時に、他方では、短期の年金加入者の場合には大きな年金はもらえないということがございます。また、税を中心としてナショナルミニマムを掛金に関係なく出すという方法をとっておる国もあるわけでございますが、この際は、やはり税だけで年金をやるということになりますと、とかく年金水準が低くなりまして、たとえばスウェーデンやイギリスでも二階建てにする、報酬比例部分を新たにつくるというようなことをやっておるわけでございます。  そこら辺の兼ね合いが今後の問題だと思いますけれども、制度審議会や基本懇あるいは各政党、団体で出されておる意見も、全く一本にしてしまうのはむずかしかろうけれども基本的な部分だけは共通にするというようなことをすべきではないだろうかというような御意見が多うございまして、私どもも、そういう御意見を参考とさせていただきながら検討していきたいと思っております。
  224. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そこで問題になってくるのは、年金の額の統一もさることながら、支給開始時期の問題がございますね。共済組合は五十五歳から、厚生年金は六十歳から、国民年金は六十五歳となっておるわけです。そうすると、早い人と遅い人では十年違う。国民の平均年齢は恐らく全員を対象にしてとられておると思うのですが、そういう形が出てくると非常に社会的不公平が生まれてくるのではないか。といって、現在五十五歳の人を六十歳に下げるのだぞというようなことになれば、ここにまた、その間の非常に大きな問題が出てくると思うのですね。ですから、遅いところを早めるか、あるいは早くもらえる人を六十歳なら六十歳まで年金でなくても暮らせるような収入源を求める、定年延長というか働く場所を与えるということが大切ではないかというふうに思うわけですが、この五十五歳、六十歳、六十五歳という支給時期の大きなバランスの崩れというものを一体どう調整しようと考えておるのか。
  225. 木暮保成

    ○木暮政府委員 ただいまお話がございましたように、共済組合は五十五歳から支給開始されますし、厚生年金の場合には六十歳からでございますが、これには一つ条件がつきまして、退職しておるということが必要でございます。現実には、退職して退職老齢年金をもらいますのは六十二歳ぐらいになっておろうかと思います。それからそのほかに、六十歳以降在職しましても一定の条件で年金が出るというようなことがございまして、厚生年金の六十歳というのは、かなり弾力的な形になっておろうかと思います。それから、国民年金の場合には六十五歳ということでございますが、これは退職という条件が要りませんで、仮に所得の上がる仕事をしております場合にも無条件で出す、こういうことになっておるわけでございます。  それぞれ、そのグループ、グループの方々生活実態の反映ということであろうかと思いますけれども、今後の問題としましては、そろえられるものはそろえていかなければならないと思うわけでございますが、実際問題といたしましては、高齢者が非常にふえてくるということがございますので、雇用条件の整備等々考え合わせながら高い方に合わせていかざるを得ないのじゃないかと考えております。
  226. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そこで私は、年金に対する考え方として、これは大臣にお伺いしておきたいと思うのですが、現在のように積立方式で還元方式の年金ということになりますと、たくさん収入のあった人ほど高い年金がもらえるということになるわけですね。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 ところが、人間にはどうしても運、不運というのがついて回るわけです。運のいい人で遊んでいても高い給料をもらえる人もおれば、一生懸命になって働いたって低い給料しかもらえない人もできてくるわけです。それからまた、運のいい人は、とんとん拍子に事故なしに何年間も、ずっと同じ企業あるいは同じ役所に勤めておることができるけれども、運の悪い人というのは、本人の意思にかかわらず何か突発的な問題が起こってきて退職せざるを得ないとか、転職せざるを得ないというような、そういうことにつきまとわれる人もおると思うのですね。それはもう本人の問題じゃないと私は思うのです。  ですから、そういう人が二人おった場合に、その二人とも六十五歳なら六十五歳以降の生活は同じふうにしていかなければならぬということを考えますと、その六十五歳以上になった人あるいは六十歳以上になった人の生活保障というのは一体だれがしてやるか、ということになれば、国民全体がめんどうというか保障をしていくというのがたてまえではなかろうか。ということになれば、過去の賃金の実績だとか収入がどうであったという問題ではなしに、自分の意思にかかわらず働けなくなった、あるいは働くことが社会的に制約される年齢に達した人に対する生活保障というのは最低こうするというものがなければ、年金というのは理論的にも成立しないと思うのですね。  ですから、そういうことについて、いまのような各年金方式というものは、そこに非常に大きな矛盾が出てくるわけですが、そういう問題について将来どう改善されようとしておるのか、大臣からお答えいただきたいと思うのです。
  227. 小沢辰男

    小沢国務大臣 どうも大変むずかしい御質問でございまして、一つには、年金というものを生活保障としてとらえるか、あるいは所得保障としてとらえるかによって大分考え方が違ってくるのじゃないかと思うのですよ。私は、年金というのは老後に対する所得保障ではなかろうか、そう思いますと、自分が歩いてきた過去の所得のある一定の割合というものが保障されていくような制度でなければならないと考えますと、いま先生がおっしゃったような矛盾を、それじゃ解決できるだろうかというと、過去のいろいろなことに関係なく同じような保障ができるだろうか、制度的には大変むずかしいと思うわけでございます。  ただ、もし先生の党あるいはその他の方で出ておりますようなナショナルミニマムというのを決めまして、一定年齢以上になったら国がそれだけは保障するよというようなことで考えていきますと、これは拠出制になじむのかどうかという問題等もございます。また、それじゃその不足分をどこで負担するのか。ある人には国庫負担をえらい手厚くして、ある人には国庫負担をえらい薄くというわけにもいきません、その点から言いますと。そうすると、だれがどういう形で、その差額を埋めてやるのが適当なのかという問題も非常にめんどうな問題でございます。積立方式というものを全く考えないで賦課方式で、現在働いている者が現在の老人について一定のものを拠出して、さらに国が若干のものをプラスしまして、それで同じ給付をフラットで全国民に考えていくということを考えれば、あるいは可能かもしらぬと思いますが、その場合に、これから先、老人社会、人口の一割八分、しかも五人ないし六人に一人の割合で六十五歳以上の人がいるという時代を考えたときに、果たして国民の負担にたえ得るだろうかという問題等もございますので、軽々に完全賦課方式に移行するということは、後代の負担を考えますとなかなか困難でございます。  しかし、先生のおっしゃる趣旨は、国民にある程度のナショナルミニマムのものは保障するという制度を考えていかなければならぬではないかという御意見も各方面にございますものですから、御意見として承りながら、私ども、この前から申し上げておりますように、全体構想をまとめる際に参考にしていきたいと考えておりますが、いまのところ私、そこまでの検討は進んでおりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  228. 西田八郎

    ○西田(八)委員 これは非常にむずかしい問題でして、拠出方式をとるか賦課方式をとるか、あるいは所得保障なのか生活保障なのか、あるいはそれを併合したものなのか、いろいろの方式があると思うのです。しかし、いずれにしても、所得を保障するということはイコール生活を保障することになるのだし、生活を保障するためには所得を保障してやらなければいかぬのであって、どちらがどうとも言い切れないと思うのです。  ただ、問題は、年金というものは何がために支給されるのか、何がために自分たちで積み立てていくのかというその原点から考えてみれば、双方が混在する中で最低の保障というものはどこかになければならぬのではないかと思うわけであります。したがって、それらの点を早急に方針を樹立すると同時に、それが幾らであるか、額にもいろいろ問題があるでしょうが、そうした点を早く樹立をして、そして安心をしていくことが大切ではないか。  いま、不況不況と言われてたくさんの失業者も出ておるわけでありますが、そうした状況の中でも、昨年も各組合の賃上げも行われておるし、政府も公務員関係に対する給料の引き上げも行われたわけです。したがって、物価上昇分と賃金の引き上げ分というのがほとんど大体パーもしくはマイナスぐらいという現況であると思うのです。そういう中で貯蓄性向というのが非常に高まってきておることは、私はその原因の一つに、老後生活の準備という意味も含まれているのではなかろうかというようなことを考えますと、この老後生活に対して一つの安心感が持てるように、そうした方針を打ち出して三年なら三年後、五年なら五年後にはこうなりますというものが出れば、そこで安心した人たちは貯蓄の一部を割いて消費に回っていくでありましょうし、そのことがまた、現在の不況克服の一因にもなるのではないかということも考えるのです。できるだけ早い時期にナショナルミニマムというか将来の年金構想はこういう形だというものを提示をされることを要望したいと思います。もちろん、これには年金問題懇談会だとか、社会保険審議会にもかけなければならぬし、問題もいろいろあるでしょうが、しかし、早急にそういう方針を打ち出されることを強く希望しておきたいと思います。  次に、医療問題に入るわけですが、これも大きくとらえられておるわけです。私が昨年この場所で政府に一つ要望をしておきましたことは、医療保険の支払い制度、支払いの関係において、本当に適切な診療が行われて適切に支払われておるかどうか、それをどこでチェックして、どうするのかということを私は宿題として、ここで残しておいたはずです。したがって、その後それらの保険の支払いの関係について、これは社会保険庁ですか保険局になるのですかな、昨一年間どういう努力をなされたか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  229. 八木哲夫

    ○八木政府委員 こういうような厳しい時代でございますし、一方、医療費は増高していくという際に、むだな医療をなくすという意味から申しましても医療費の支出対策ということは非常に重要な問題であるわけでございます。そういうような意味で、昨年の健保法の御審議の際にも先生から御指摘いただきましたし、それから五十三年なりあるいは五十四年、これから私どもが行う医療保険の基本的な改革の際におきましても、先生指摘の支出対策の面で審査なり、あるいは指導監査の問題も大きな重点事項であるというふうに考えておるわけでございます。  しかし、従来から言われておる問題でございますし、なかなかむずかしい問題もございます。当面は、先生指摘の審査の問題になりますと支払基金の問題になるわけでございますけれども、支払基金におきます審査委員の増加でございますとか、あるいは事務の機械化なり、あるいは審査委員長会議等を通じましての適正な審査ということにつきまして努力しているわけでございます。支払基金ども定期的に相談いたしておりますけれども、なかなかむずかしい問題でございます。しかし、これからの基本問題に、さらに取り組むわけでございますので、そういうような全般的な見直しの際の一環としましても、何らかの前進する工夫があるかどうか、さらに研究してまいりたいと思っております。
  230. 西田八郎

    ○西田(八)委員 医療費総額が今年度は十兆円に達するだろうというふうなことを言われておるわけですね。十兆円というと一億国民に割り返すと一人一万円ぐらいになるのですか、非常に膨大な金額になると思うのです。そういう医療費が支払われるについて、適正に支払われるかどうかということのチェックがなされない。なされてはいるわけですけれども、現行制度では十分でないということは、昨年の委員会でも指摘し、予算委員会でも指摘したところでありますが、そうした問題を強化することによって、厳重チェックすることによって、支払い額をかなり抑えられることもできるのではないだろうか。  それには現在の支払い制度のもとでは本当のチェックはできないと思うのです。請求されてきた請求書に基づいて、点数が間違っていないかどうかということを精査をするので精いっぱいですよ。果たして本人がそういう病気であったのかどうかというところまでは、現在の制度では調べる余地がありません。そうすると医者と患者との関係ですから、これは何かの形で第三者が、そういう治療を受けましたか、こういう投薬を受けましたかということを、現実に、そこへ行って本人から聞かなければわからぬということですね。しかし、それを全部が全部やれと言われても、十兆を超す請求を一々はやっていられないと思うのですが、各都道府県でそれを専門的にやるということだけでも、私はかなり変わってくるのではないかと思うのです。そういう点で将来厳重にチェックする。そしてまた、これは貴重な基金ですからね。労働者が働いた金の中から何%か払う、あるいは企業もまた金を出しているわけですから、そういう面で私はやはり適正に支払われるということが大事じゃないかということで申し上げておるわけです。  このことは、医者が不正な請求をしているとか、あるいはどうだというような問題を取り上げているわけではなしに、たまたま、われわれの仲間の中で、ちょっと医者へ行ってくると十日分も二十日分も薬をくれる。ところが、かぜを引いたぐらいなら二日か三日飲んで治れば、あとの薬は捨てている。次に病気になったときに、その薬を使うということは、最近、薬害というのが非常に問題になってきていて、ちょっと危険だから使わないということになると、それだけ、むだになっているわけです。ですから、そういう点で私は、厳重にチェックされれば、資源も大切にできるし、同時に、保険の支払いの方も適正に処理されるようになっていくのではないかということで申し上げているわけです。  これは大臣、非常に重要な問題だと思うのですが、今後どういうふうに臨まれるか、大臣の所信を聞かしてもらいたい。
  231. 小沢辰男

    小沢国務大臣 おっしゃるとおりに、いやしくも医療費の支払いの中には、むだがあってはいけないと思うのでございます。したがって、むだは排除するように関係者がみんなで協力し合っていかなければいかぬだろうと思うのです。これは診療担当者から見ましても、大部分がまじめな方々で、一生懸命やって患者を治そうとしているのに、どうもむだだ、むだだとばかり言われて、いわゆる医師と被保険者との人間関係というものがはなはだ阻害されてくるようなことで、私は診療担当者としてもはなはだ不本意だろうと思うのでございます。また、患者の側から見ましても、これは相当気をつけなければいかぬ面がたくさんあるだろうと思うのです。どうも、あの先生のところは注射を打ってくれないからだめだとか、いや薬をくれないからだめだとかというようなことの判断で、してはいかぬので、正しい医療を受ける教育というものも進めていかなければならぬだろうと思うのです。両々相まって、みんな貴重な医療費でございますから、このむだは本当に排除していかなければいかぬ。そういう意味で、しからば現行制度のもとで、どうやったらいいかという問題だと思うのです。  よく政府管掌はむだが多い、健保組合はむだがないのだ、こう言われますが、政府管掌の健康保険制度の中にも社会保険委員という制度があって、それぞれ対象の事業主の方から代表者も出ておりますし、社会保険の正しい運営についての協力組織もあるわけでございますから、政府の社会保険出張所等の保険官署等が当然、事業主の方ともよく連絡をとりながら、健保組合で、もし合理化をされ、あるいはうまくいっている面があるなら、それを政府管掌の中でも取り上げていくだけの努力はしていかなければならぬだろうと思いますし、あるいは監査というものについても、現実問題として、なかなか人員がいませんで、どうも実際計画した数だけは毎年余りやれないといううらみもあるようでございますが、これももう少し強化していかなければいかぬだろうと思います。  したがって私は、少なくとも今度根本改正をお願いいたしますと並行して、全体の、被保険者医師側も保険者側も、三者が協力し合って、いかにむだを排除するかという、その方法論について虚心坦懐にお互いに話し合って、そしていい方法があれば果断に採用していくというふうに考えていきたいと思っておるわけでございます。
  232. 西田八郎

    ○西田(八)委員 これはぜひ実現してほしい。実は昨年、私は予算委員会でやって新聞に取り上げられて、地元の保険医の連合会、それから医師会、歯科医師会、いろいろ各方面の人から、おまえ何を言うたのだということで突っ込まれました。その真意を話しせいということで何回か懇談を持ちました。そして議事録を持っていって、こういうふうにしゃべったのだと、納得をしていただきました。問題は、やはり医師会でも困っているのです。そういう一部のふらちな医師がいることによって。医師が全部そうであるというふうに見られている。したがって、それはわれわれも努力するということを言うておられるわけでありますから、ひとつそういう点で、制度の中で何かそういう方法を取り入れてほしいというふうに思うわけです。そうすることで現在の政管健保の赤字も、ある程度助けられるではないか。これは小沢大臣に特にひとつ力をふるっていただくようにお願いをしておきたいと思います。  そこで、関連をするわけですが、組合健保と政管健保の問題があるわけです。健保連に言わせると、組合をどんどんつくって入れてくれれば、組合内の財政調整くらいはやりますよということを去年あたりから言い出しているわけですね。本気で言うているのか、あるいはいろいろ問題もあるので、そうした問題とのすりかえなのか、真意がどこにあるのかわかりませんが、少なくとも健康保険組合をつくって、そちらの方へ政管健保を移管していくというものは、いま大切な問題の一つではないかというふうに私は思うわけです。特に経営者の場合も、中小企業の場合は二十人、三十人、百人くらいの人たちを全体的に管理しようというのはなかなかむずかしいと思うのです。まして今日のような不況の状況の中では、会社経営するのが精いっぱい、あしたの金融に精いっぱいの努力をしているときに、従業員の健康管理までしておられぬというような状況にある場合に、やはりこれは一つの企業が責任を持つというのではなしに、類似の事業をやっているところ、あるいは同地域に居住しているようなところ、そういうところを何人か単位にまとめて、厚生省自身もその指導をしてきておられるようですけれども、一層それを強めて、組合に入れて、そして健保連の各都道府県支部あたりの、そうした大企業でやっている健康管理、そういうものが導入されるように、あるいはまた、そこでやっておられるいろいろな健康管理方式を、たとえば器材が必要とするならばそういう器材もお貸しするとかいうような形で、同じ産業に働く雇用労働者なんですから、そういう方向に持っていくべきではないかと思うのですが、一体、将来この問題はどうされるおつもりなのか、聞かしていただきたいと思います。
  233. 小沢辰男

    小沢国務大臣 保険の運営というものを政府管掌で、中小企業なるがゆえに政府がまとめて長年やってきたわけでございますが、政府が保険者の立場になって、全国の出張所へ職員を置いて、政府がみずから保険の経営をやるという姿がいいのかどうかという点は、やはり相当いろいろな面から、いまおっしゃたような御意見等もありまして、私も問題があると思うのです。政府というものは、ちょうど各保険のいろいろな制度のあれをつくったり、給付はこうあるべきだ、保険料はこうあるべきだ、それから財政調整の機能を持って、一部はもちろん国庫負担を入れながら、各保険者間の公平を確保していくとか、そういう政府としてやるべきことと一緒に自分が保険の経営までやるということがいいかどうかという議論は、もちろん、もう一遍してみなければいかぬ議論だと思うのです。  財政調整、組合間でこれはぜひ、とりあえずお願いをしたいと思っておりますが、ただ財政調整といいますと、一生懸命やって黒字を出したところが、一生懸命にやっておるかもしらぬが努力がまだ足らぬように思われる赤字の組合に、おれの方から黒字を回すのだというようなことの意味で、この財政調整を考えていきますと、なかなか皆さんの納得を得られないと思うのでございます。そうではなくて、保険の将来の姿としては、当面の統合の姿としては、被用者保険は被用者保険グループで一つのあれになる。それから国保国保一つのグループになる。それから老人保健を抜き出しまして老人保健制度というものは、保健とリハビリまで含めたサービス、これをやりたいと考えておるのですが、そこまでいけるかどうかわかりませんけれども老人保健医療の新しい制度をつくって、これをグループにして、この三本立てで当面いくべきではないかという考えを持っております。  理想的に言えば、全国民が能力に応じて一定の率で負担をして、そして給付はみんな全国民平等にいくという方が理想だと私は思っておりますが、ただ、その理想のものに一挙になかなかいかない。それぞれ職場環境なり、あるいは自分の生活環境なりというものが職場によってはいろいろございますから、そういたしますと自営業者、農民の関係方々と、役所なり民間企業なりその他に勤めている方々の実態と、それと老人という特殊性を考えた問題と、この三つで一応当面は統合していくべきじゃないだろうか。その場合に被用者保険を考えますと、これは所得の高い人と低い人といろいろあるわけでございますから、社会保険制度である以上は、当然相扶共済の考え方をみんなで持ってもらわなければいかぬじゃないだろうか、そういう考え方のもとで財政調整をお願いするのが妥当ではないだろうか。  その場合に、政府管掌と組合と分かれておりますから、それではこれをどうするかという問題が出てくるわけでございまして、これらの問題は、政府がやろうとどこの保険者でやろうと、同じ被用者保険の中の働いている方々でございますから、できるだけ相扶共済、連帯の精神が貫くような心構え、これが全体に御理解を得るような制度というものを若干考えていかなければならぬのじゃないだろうかなと思うのです。ただ、当面それを一遍になかなかできませんので、少なくとも現行の健康保険組合同士の中で国も補助増額をいたしましたので、そういう意味で、国の国庫負担とそれから全体の保険料の一部を出し合って、そして、もちろん、それぞれ基準を厳格につくっていかなければいかぬと思いますが、ただ赤字だから補てんするということでない、そういうしっかりした考えに基づいた財政調整を当面は考えていきたい、かように思っておるわけでございます。
  234. 西田八郎

    ○西田(八)委員 私の質問の仕方が下手だったのだと思いますが、ちょっと大臣の答弁は総論的にお話をなさったわけですけれども、私が言っておるのは、健保組合とそれから政管健保、いろいろ問題があるわけですが、しかし、健康保険組合連合会が、とにかく同じ事業場に働く雇用者を対象にした保険というものを進めていく場合に、格差があってはならない。したがって、現在の政管健保でも、指導と、あるいは企業自体の理解が得られるならば、組合保険をつくって、それを包括していくことが可能ではないかという提言をしておられるわけですね。私は、いま大臣がいみじくもおっしゃったように保険というのは、皆保険だというものの、現在、格差があるし、保険料にも格差があるのを、一挙に来年から一緒にするわけにいかないと思うのです。したがって段階的に、それは同じ保険料で公平負担、公正な給付といいますか平等給付というか、そういう形にしなければならぬが、そこへいくまでに問題になってくる被用者保険、いわゆる雇用労働者を対象にした保険というものを一本化する道程というものの中に、現在のある方法というもの、手段を採用したらどうかという提言をしているわけなんです。しかも、現在そういう意見が成熟してきて、受け入れようという気持ちがあるのなら、この際受け入れをさしたらどうかという提言をしているわけです。
  235. 小沢辰男

    小沢国務大臣 いや、先生のお考えは、むしろ中小企業といえども地域的にはまとまり得るし、あるいは同業組合等が発達して、ほとんど、どんな中小零細な企業でも全国的な組合があるわけですね。時計屋さんは時計屋の組合がある。スタンドはスタンドの組合がある。そして、みんな事業場では運命共同体になって組合の活動をやっているのだから、健康保険を考える場合に、被用者保険は組合方式を中心にして考えたらどうだ、できるだけ組合をつくらしてやったらどうだ、あるいは、それが全国的にできなければ、地域的でもいいじゃないかというお考え、御提言なわけです。  政府管掌をやめて組合方式をやるべきだという御提言は、前から健保連を通じてもありますし、あるいは、その他有識者の方々の中でもございます。社会保険審議会でもそういうような御意見等もございます。一つの有力な考え方だと私は思いますが、いま、いろいろな事情等を考えてみますと、一挙にそこまでいけるのかどうか、あるいは政府がむしろ責任を持って一本化してやるべきだという意見もございますし、各方面の意見を聞き、また、問題点を整理し、私の考えをまとめたいと思っているわけでございまして、いまここで私がどっちがいいというところまで決めてないものですから、お答えはできないわけでございますが、一つの有力な御意見であることは事実だろうと思っております。
  236. 西田八郎

    ○西田(八)委員 そういうことで、これは行政指導でできることですから、できるだけひとつ進んでやってもらいたい。片っ方でも受け入れる体制がある。そのことがまた、そこで働く労働者の健康保持——健康保持運動というのをどんどん進めるという基本的な方針を出されたわけですから、そういう意味からも、ひとつ進めてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。     〔竹内(黎)委員長代理退席、住委員長代理着席〕  もう時間もありません。最後に一つだけ伺いたいのは、政府が今度の予算で、公共事業、公共事業といって大盤振る舞いをしておられるわけですが、地方では橋をかけても、道を直しても、一億円使おうと、その一億円を使って橋をかけたら、かけた後でそれは雇用にならないわけですよ。継続雇用ということに全然ならない。したがって、地方自治体では、いま不足しているものは養護老人ホーム、そして保育所といったようなものである。しかし、それには、いまの補助が一九・何%しか伸びてないわけでしょう。公共事業のように三四%も伸びてない。したがって、急ぐ仕事ができなくて、急がない仕事をしなければならぬというジレンマに地方自治体が置かれているわけですよ。  私は、いま思い切って、そういう社会施設を拡充する時期だと思うのです。一億円かけて老人ホームをつくれば、五十人の定員の老人ホームで何人の従業員が要るかと言えば、これは最低基準としても十二、三名要るはずですよ。十つくったら百二十人、千つくれば一万二千人の新しい雇用を起こすことができるわけですよ。しかも、老人ホームに入りたくて入れない人が、いま老人ホーム別に調べれば、最低十人、多いところでは二十人、待機組がおられるわけです。そういう人たちは入りたい人なんだから、そのことにかかる費用というものは準備しておられるはずです。だから、それは費用の負担を付加することにもならないわけです。ですから、そういう点でぜひとも大臣がんばって、いまさら公共事業——どうせ十月かそこらになったら積み残しが出てきよる。消化不良が出てくると思うのです。それなら、同じ借金をするなら、国民のためになる仕事をやってほしい、私はそう思うのです。  これはもう答弁は要りません。時間がないので、決意だけ聞かしてもらって、ひとつがんばってもらいたいと思います。大臣がそこで腹を決めて、他の大臣とやるというならわれわれも応援します。そうして、いまこそ、こういう社会福祉施設を充実さしていくべきだ。そうしてまた、保育園でも、いま保母さんがどれだけ過重労働になっておるか、これから考えれば、定数を二十五名を二十名に減らすだけで何万人かの保母さんを必要とするわけですよ。そういうところに新しい雇用を求めていかなければ、将来の雇用という問題については非常に大きな問題が残ると思うのですね。また前途非常に暗いですよ。そういう意味からいったら、新しい雇用は社会福祉関連事業のそういうところに、いまこそ、やるべきときが来ておるというふうに私は思うわけです。これに対する大臣の決意と所信を聞かしてもらって、質問を終わります。
  237. 小沢辰男

    小沢国務大臣 全く同感でございまして、今度の補正予算でも、病院と保育所に、景気対策の名をかりまして、さらに相当増額をいたしました。また五十三年度は、国立病院、療養所で整備費五百億という大変な数字をとりまして、病院、療養所の整備をやったり、あるいは社会福祉施設の整備費が五百億になりました。四十六年が八十一億ですから、大変な伸びだと私は思うのでございますが、そういう意味で保育所もうんと整備していく。それから特養なりあるいは老人施設あるいは重症心身障害施設についてはまだまだ不十分でございますから、最大の努力を私も惜しみません。基本的な考え方は全く同感でございますので、なお一層の努力をいたします。
  238. 西田八郎

    ○西田(八)委員 がんばってください。数字の伸びとかなにだけではだめなんです。五百億円くらいの金は、病院一つ、二つ建てたらしまいなんです。だから、そんな数字や金額だけでごまかそうとしてもだめなんです。問題は数なんです。ですから、がんばってください。  以上をもって、質問を終わります。
  239. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、田中美智子君。
  240. 田中美智子

    ○田中(美)委員 まず、国民年金の特別納付について質問いたします。  先ほど、月四千円という話が出ましたけれども、この四千円というのは終了する年度の保険料だというふうな先ほどのお話がありましたけれども、この前の特例納付のときには、九百円という開始のときの保険料でやったわけです。なぜ今度終了のときの保険料でやるのか。罰則的な色彩を深めていくというふうなことがありますけれども、前の九百円のときだって、百五十円とか四百五十円とかという掛金の分までも全部九百円で払うということで、十分罰則的な意味があったわけですね。それで四千円が高いということが、いま国民の中で非常に大きな不安になっているわけです。無年金者をなくすという趣旨でやっていながら、百万人もいるのではないかと言っていながら、実際に、社会保険事務所の第一線で働いている人たちに聞いてみますと、恐らく二、三年分払える人しか入らないのじゃないか。先ほど政務次官が言っていらっしゃいましたけれども、入りたいという気があるのに、お金がないために入れないという人があったら大変だ、こう言っているわけですけれども、その大変な事態が来るのではないか。たとえ十年払うとしても、二年の遡及と、それから十年払うとしますと、これは十年だけでも四十八万です。大体夫婦入っておりませんので、そうしますと、百万を優に超す金額になるわけです。これをどうして払うことができるだろうか。ということは、先ほど政務次官の言われましたように、入りたくても入れないという人がたくさん出てくるということなので、この四千円を開始時の保険料にすれば二千七百三十円でいくわけですので、私としてはぜひそのようにしていただきたい。時間がありませんので、簡潔にお答え願いたい。
  241. 木暮保成

    ○木暮政府委員 今度の特例納付三回目をやるに当たりましては、私どもいろいろ研究、検討いたしたわけでございます。前二回、特例納付をいたしましたので、今回さらに繰り返すということになりますと、この特例納付という措置が一定の期間を置いて繰り返されるという印象が濃くなることは避けられないと思うわけでございます。そういうことで特例納付以外の方法も考えたわけでございますが、結論的には、特例納付の三回目をやる以外に手段がない、こういうことになったわけでございます。  その際、保険料の決め方でございますが、確かに審議会等に御諮問申し上げた段階でも、やはり法律の規定どおり保険料を納付しなかったという方々に対する措置としては、罰則的な保険料を取ってもいいんじゃないかという御意見もあったことも事実なんでございますけれども、今回御提案申し上げておりますのは、そういう罰則的な保険料ではございませんで、今度の二カ年間の最終年度の保険料が三千六百五十円になるわけでございますが、この三千六百五十円は五十四年度の物価スライドがございましたときにはその率を掛けさしていただくということになっておりますので四千円近い額になる。したがいまして、この四千円で決めさしていただいたわけでございます。前回の場合には九百円でやったわけでございます。ところが、現実には昭和五十年一月から十二月にかけましては、一般の方の保険料は千百円になりました。特例納付の方は九百円で一般の方が千百円ということで逆に高くなったわけでございまして、せめてこういうことは避けたいということで四千円を決めた次第でございます。
  242. 田中美智子

    ○田中(美)委員 前回の場合には開始のときの保険料、今度は終了のときということで、まだ、これは法案が出ておりませんので……。とても百万を超す金額を出すということは、無年金者をなくすという初めの目的を達することはできない。ですから、これを私は二重の罰則になっているではないかというふうに考えているので、くだくだ同じことを繰り返さないでいただきたいのですけれども、これをぜひ強く要求いたします。  次にいきますが、これは法案が出てから、いろいろ審議になると思いますけれども、たとえ二千七百三十円にしたとしても、夫婦になりますと膨大な金額になりますので、ぜひ貸付制度をやっていただきたいというふうに思うわけです。この間の場合には、たしか世帯更生資金の福祉資金のところで九万円を貸すということがあったわけですけれども、あのときに九万円ということは九百円のときに九万円ですので、今度四千円になるか二千七百円になるかわかりませんが、やはり約四・四倍になっていますので、そういう意味では四、五十万の貸し付けをできるような制度をつくっていただきたい。私としては世更資金の福祉資金の中に特別納付の枠組みをつくっていただきたいというふうに思うのですけれども、その点は大臣どうお考えですか。そうしないと無年金者というのはなくならない。時間がありませんので大臣、簡単にその点お答え願いたい。
  243. 木暮保成

    ○木暮政府委員 今度の対策でございますけれども、先ほど申し上げましたように、三回目になりますので、一般の法律どおりこつこつ保険料を納めてくれている方とのバランスを、どうしても見なければならないわけでございます。一般の保険料を納める場合には、これもかなり低所得の方もおられると思いますけれども、いろいろ努力されて納めておるわけでございます。今度の特例納付の方に限って貸付制度をすることは、そういうバランス上、私どもも思わしくないというふうに判断をいたしておりますので、貸付制度を考えることはしないというふうに結論を出しておる次第でございます。
  244. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は、この貸付制度をしない限りは、無年金者はなくならないということを強く御忠告申し上げて、次の質問に移りたいと思いますが、大臣も同じ考えですね。簡単におっしゃってください。
  245. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私もこれは御勘弁願いたいと思います。
  246. 田中美智子

    ○田中(美)委員 じゃ次の質問に移ります。  次は医療扶助の問題についてですが、生活保護費の場合には一般扶助主義をとっている、ということは前渡しになっておりますね。大臣、おわかりですね。そのために一カ月分の生活費を前渡ししてあるわけですね。それで、そこにもし別の収入が入った場合には翌月に、これは収入認定として取られるわけですね、被保護者からすれば。そういう形をとっている。こういう一般扶助主義というのは、私は近代的だと思うのです。しかし、医療扶助についてだけ、こういう方法をとらないで事前にチェックする。そのために急に病気になったときにも一々福祉事務所に行かなければならない。福祉事務所が隣ならばいいわけですけれども、電車賃も非常に高くなっているということもありますし、中には自動車で行く人もあるわけです。そのために労力的にも経済的にも非常に大変だ。そういう意味で、ぜひ私は生活費と同じように医療証というものをあらかじめ渡しておいて、そうしてその後から、これは事後調整できるわけですから、こういうやり方をやっていただきたいということをまず要求いたしまして、時間がありませんので、この回答は結構です。  昨年の三月と十月に担当課長や係長を集めた会議があったときに、厚生省としての御指導として、せめて休日と夜間とか閉庁後ですね、病気になったときには、認定の決定通知書を活用するなり、それから地方自治体によっては保護手帳を出しているところもありますので、その保護手帳を活用して、福祉事務所に一々行っても人はいないわけですから、これでもってすぐ医者にかかれるというような御指導をしているというふうに伺いました。昨年の十月にも、またブロック会議をして、そこでも指導をしているというふうに厚生省で伺ったわけですけれども、実際にはこの御指導のとおりにはなっていないわけなんですね。ぜひこれを実際にやっていただきたい。それには、いま全国から名古屋市に問い合わせが非常に来ているのですけれども、名古屋市では昨年の十二月二十五日から、こういう休日夜間等受診証というものを、御存じだと思いますが出しまして、そうしてこれでやったところが、一月十六日までの、最終集計ではありませんが、私問い合わせましたら、九十六人の人たちが名古屋市でかかっているというわけですね。これがないときには結局そういう人たちは余り医者にかかっていなかったということ、また、この間、新聞で大きく報道されました秋田の婦人の保護者が、休みのときで亡くなったというような記事もあったわけですけれども、この御指導というのがどこまで徹底させられるのか、どういうお見通しで、この御指導をしていらっしゃるのか、ちょっとお聞きしたいというように思います。
  247. 上村一

    ○上村政府委員 御指摘になりましたように、去年の三月と去年の十月、担当者を集めまして、そういうふうな指示をいたしました。一つは保護決定通知書でもいいし、場合によると限定して使用できる証明書でもよろしい、そういうことで特別の受診証を発行している自治体が相当出てまいりましたし、それから保護決定通知書等、既存のものを活用する自治体も相当出てまいっております。それで秋田県の場合も保護決定通知書を活用するというふうな措置をすでにとっておるわけでございまして、私も新聞で秋田の事件を拝見いたしましたけれども、これは大分私どもが把握しました事実とは食い違っておりまして、前から病気になっておって、受診するように保護の実施機関も指導し……(田中(美)委員「個別のことではなく、基本的におっしゃってください」と呼ぶ)そういうことでございますので、これからも休日夜間でも保護者が適切な医療が受けられるように、さらにいま申し上げましたような指導を徹底してまいりたいというように考えております。
  248. 田中美智子

    ○田中(美)委員 大臣、いま秋田の場合は、亡くなった方にはいろいろな理由があると思いますので、そういうことを一々個別のことで話し合っても仕方がないと思うのです。それで私がいま申し上げているのは、秋田に問い合わせましたら結局、医師会と話し合ってないというわけです。ですから、実際には指導を受けてやっていると言っている秋田市でも、医者によっては知らないからと言って、それは受け付けない、医者によっては、これを受け付けるという形で、これは徹底されてないわけですから、実際には彼女の場合にどうであったかということは別として、やはりきちっと指導どおりにはやられていない。全国的に言いまして、厚生省に伺いましたら、ほとんど余り把握してないようでしたけれども、やっているところはまだ少ないというので、私がいまお聞きしているのは、ぜひ文書で通知を出していただきたいということと、それから、いつごろまでに、全国的にこれが実効あるものになるのかということを、時間がありませんので、簡単にちょっと話していただきたいと思います。
  249. 上村一

    ○上村政府委員 この休日夜間の受診確保というのは、地域によっていろいろ事情が違ってくると思うのです。したがって、どういう方法が望ましいかについては一応の例は示しますけれども、画一的な指導は必ずしも妥当ではなかろう。いま申し上げましたように、担当課長の集まりなりあるいは担当係長会議の際に、さらに指示を徹底することによって、保護を受けている人が休日夜間、診療が受けられぬことのないようにしていきたいと思うわけでございます。ただ、基本的には医師の診療応需の義務がございますから、お金がなくても診療は拒めないというのが根っこにあるわけでございます。
  250. 田中美智子

    ○田中(美)委員 返事になってないのですけれども、文書で通知していただきたいということ、返事になっておりませんので、大臣に聞きます。  文書で通知していただきたいということと、一体いつまでに、これが実効あるものになるかということ、いま実効あるものになってないものですから、できるだけ早く、これを実効あるものにしていただきたい、その努力をしていただきたいということを、ちょっと大臣お願いしたいと思います。
  251. 小沢辰男

    小沢国務大臣 課長会議で指示しましたことを、さらに文書をもって指示するということは可能だと思います。ただ、いつまでに全部実効を上げるかと、こう言われますと、これは医師会との、医師協力体制を考えていきませんといけません。休日とかあるいは夜間でございますから特にそうでございますので、この点はできるだけ、それぞれの地区において医師会あるいは病院の方とよく協議をして実効あるように努力をしていただかなければならぬと思っております。
  252. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では、文書で通知していただくということが可能だと言われましたので、ぜひしていただくということで次の質問に移ります。  厚生省と大蔵省にお伺いしたいと思うのですけれども、まず二月四日の予算委員会に「所得税減税に対する考え方」という、こういうパンフレットのようなものに付属しまして、「わが国の社会保障の給付水準は高い」というものが一緒に配られました。この付属の方の中に、これの一ページの一番下のところに「わが国の年金の給付水準は、」という形で、次のページの上の三行まで年金の金額と国の名前を挙げた比較が出て、日本の年金は高くなっているというふうに書いてあります。私、厚生省から二月十五日に、厚生白書とそれに厚生省の解説をつけました各国の年金の比較の表をいただいています。  これについて、まず厚生省にお伺いしますが、大蔵省のこの資料に出ております十万五千円というのは、これは七八年度だというふうにあります。その後に書いてあるアメリカ、イギリスというのは七六年度のものを書いてあるということは、他国は七六年度、日本だけは七八年度、これからなるものを出しているということに相違ないでしょうか、大臣
  253. 木暮保成

    ○木暮政府委員 そのとおりでございます。
  254. 田中美智子

    ○田中(美)委員 それでは、ここのところはやはり七六年にしなければならないわけですね。年度だけでいきますと、ここを七六年にしなければならないわけです。そうしますと、日本の厚生年金の七六年の平均の受給金額はお幾らでしょうか。
  255. 木暮保成

    ○木暮政府委員 七六年十二月現在で六万八千五百二十一円でございます。で、平均賃金に対する割合は四一・九%でございます。
  256. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうだと思います。ですから、ここは大分数字が違っている。これは六万八千五百二十一円と書かなければならないというふうに思います。ただ、これは年度を合わせたということだけですね。  中身を見てみますと、大蔵省のあれですよ、厚生省の中身の方は非常に正確だというふうに私は思うわけです。厚生省の資料と比較して見ていくわけですけれども、大蔵省の、西独の場合が七万六千円、労働者年金と括弧がついておりますけれども、これは最低の金額なわけですね。職員年金というのがあるのではありませんか。あそこはブルーカラーとかホワイトカラーとか、厚生省の資料では書いてありますね。そうすると、これは平均をとりますと幾らになりますでしょうか、西ドイツ。
  257. 木暮保成

    ○木暮政府委員 労働者年金と職員年金を加重平均いたしますと四四・二%程度になろうかと思います。(田中(美)委員「金額です」と呼ぶ)金額は八万八千五百二十円ぐらいであろうかと思います。
  258. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうですね。そうしますと厚生省の正確な数字でいけば八万何がしになるのに、大蔵省は七万六千円というふうに書いてあるわけですね。  その次に、今度はスエーデンの場合は、もっとひどいことを大蔵省はやっている。スエーデンは九万四千円と書いてあります。まず厚生省に伺いますが、スエーデンに九万四千円の年金をもらっている該当者が一人でもいるでしょうか。
  259. 木暮保成

    ○木暮政府委員 スエーデンの場合、一般制度の年金額はこのとおりであろうと思います。ただ、補足年金という制度がございまして、基本年金の少ない方や、そういう方にはそれが別途支給されるということになっておるわけでございます。
  260. 田中美智子

    ○田中(美)委員 ちょっと、いまの不正確じゃないかと思うのですけれども、大蔵省の方、よく聞いていただきたいと思うのです。  スエーデンの、あなたが書かれている九万四千円という金額は基礎年金なわけですね。基礎年金というのは、これだけをもらっている人はスエーデンにはいないはずです。この上に必ず、働いていた場合に掛けた付加年金というのがプラスされるわけですね。しかし、働いてなかったとか、この付加年金をもらえない、また付加年金が非常にに少ない人には補足手当というものが二万五千円つくようになっています。二万五千四百九十六円補足手当がつくことになるわけです。ですから、これは合計いたしますとスエーデンの最低の年金をもらえる人というのは、正確に言うと十一万九千五百八十九円、約十二万円だというふうに厚生省の統計にも出ているわけです。ですから、このスエーデンの九・四万円というのは——西独の場合は最低を書いてある。日本の場合は二年先のことで最高を書いた。スエーデンの場合には誤りの数字が出ているということでよろしいでしょうか。厚生省もそう思われますか。
  261. 木暮保成

    ○木暮政府委員 大蔵省のつくられた資料、それなりに真実だと思うわけでございます。モデル年金を使うとか、そういうことをちゃんと付記されておるわけでございますから、それはそれなりに正しいと思いますが、また御指摘のようなスウェーデンの場合、補足手当とか、そこら辺が外国の制度でどういう場合につくか、実は私ども、はっきりわからないのですけれども、そういう制度が別にあるということも事実だと思います。
  262. 田中美智子

    ○田中(美)委員 補足手当が必ずつくわけですからね。これ以下の金額はないということで、このスウェーデンの九・四は誤りだということが言えると思います。そうしますと、イギリスの場合にも、これは五万七千円になっておりますけれども厚生省からいただいた資料でいきますと補足年金や特別加算、それから家賃の実費支給、こういうものがあるというふうに書いてありますので、そうしますと、これをはるかに上回るということになるのだというふうに思いますね。  そうしますと、私がいま言いますのは、この一つ一つが誤りであるかどうかと言えば、基礎年金と書いていれば誤りではない、労働者年金と書いていれば誤りでないということは言えるかもしれません。スウェーデンの場合、基礎年金とも解説が書いてないわけですね。ですから、こんなような並べ方をして比較をするならば、そうすれば、日本の場合には七六年の時点で約千二百万人の受給者があるとして、その中の拠出国民年金、十年年金、五年年金それから福祉年金、これは七六年のときは一万三千五百円。そうしますと夫婦でこの倍になるわけですね。こういう福祉年金と拠出国民年金をもらっている人が全体の中の約七〇%だというふうに聞いておりますが、厚生省、正しいでしょうか。
  263. 木暮保成

    ○木暮政府委員 さようでございます。
  264. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そうしますと、それに共済年金の人もいるわけですからね。それと厚生年金、こういうものを全部一緒くたにしまして日本国民的な平均年金というものをもし出したとしたら、一体これは厚生省は計算したことはあるでしょうか。この金額を聞かせていただきたい。大体どれくらいになるでしょうか。
  265. 木暮保成

    ○木暮政府委員 日本の場合には八つの年金制度に分かれておりまして、それぞれ沿革も違うわけでございますので、全部をならしたらどうなるのかということは、ちょっとわかりかねるわけでございます。
  266. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私もわからないと思うのですけれども、大ざっぱに見ても四万円ぐらいになるのではないだろうかというふうに思うわけですね。そういう現状というものを全く踏まえないで都合のいいところの数字だけを並べているというふうに、大蔵省の表というか、これは思うわけですけれども、これについて大臣、どう思いますか。これ御存じですか。
  267. 小沢辰男

    小沢国務大臣 知ってます。予算委員会で配付しました大蔵省の考え方、これは決して何も誇大広告でもなければ真実を強いて曲げた内容だとは私は思っておりません。先生いま最後におっしゃったように、年金制度がまだ非常に未成熟でございますから、制度としては二十八年標準年金から言えばこうなるんだという考え方と、現在はそこまでの人が給付を受けておりませんけれども、経過年金の方々がほとんど圧倒的に多いわけでございます。したがって、水準は大体低いわけでございます。それから老人構成人口も、各国ではもう相当のところまでいっているのに日本はまだそこまでいってないわけでございます。ただ、現在の外国の国民所得に対する社会給付費を比較する場合でも、そのまま比較はできないわけですね。これは当然でございます。そうすると、それを直せば、日本はアメリカやイギリスよりも、一九・八になって約二〇になるから多くなっているのだということも、決してうそではないと私は思うのですね。昭和七十五年のことをいま言っているわけじゃないので、それを比較する場合には、当然その数字の比較ですから、基礎の条件は同じ条件のもので計算しなければ比較にならぬわけですから、一九・八をもって比較するというのも正しいと思うのですよ。そういう意味で決してうそは言ってないと私は思う。  ただ、先生のおっしゃるように、まだまだ書かなければいかぬ問題はたくさんあるかもしれません。そういうものを省略したという意味において、わが国の社会保障というものは、いろいろな面で全部先進国並みに十分できておりますという宣伝文書でも何でもないのですから、そういう趣旨でひとつお受け取り願わなければいかぬ。そのこと自体は、そんなに曲げて書いているわけでもないし、故意に何かを意図して書いたわけでもない。そのまま一応、理解を願うために書いたものだと思うわけであります。
  268. 田中美智子

    ○田中(美)委員 いま私は一九・八%のことは何も言っておりません。ここのところを言っているわけですね。「わが国の年金の給付水準は、」結局それが主語ですね、こうして各国より「上回っております。」こう書いてあるのです。こういうことが言えますか。いま大臣は、水準は低い、現状は低い、こう言っていらっしゃる。それは正しいことですよ。この厚生省の出したこれが正しいわけです。しかし、将来に向かって、これがどういうふうになるかということは、これはまた別の次元の問題ですよ。そうでしょう。現在は、いま大臣が言われたように非常に水準は低い。しかし将来は、これがだんだんとよくなる可能性はあるんだというなら、まだわかりますよ。しかし、これを見たら、国の名前を羅列し、金額をちゃんと羅列し、そして日本が各国を「上回っております。」こう言ってよろしいのですか。こういうふうに厚生省は大蔵省を指導したのですか。
  269. 小沢辰男

    小沢国務大臣 私の方の指導でできた文書ではありませんが、私は、水準は先進国並みになっているという表現で、最初の表現はやはりそうだと思うのです。厚生省の資料をごらんになって、これが正しいとおっしゃったのですが、要するに平均賃金で老齢年金額を割ってみますと、七六年、アメリカ四一・二、西ドイツが三七・七と六〇・八の二つありますが、イギリスは四一、スウェーデンが四二・一でございます。日本は七六年が四一・九といったわけでございますから、先ほどのを七六年に直した場合に、これを見ても遜色はないわけでございます。しかも負担を考えていただくと、これはこれだけの少ない負担でよくここまで来ているわけでございますから、そういう意味の御理解もいただかなければいかぬと思います。
  270. 田中美智子

    ○田中(美)委員 私は、いま厚生省の資料が全部正しいかどうかはよくはわかりません。しかし、これとこれとが違うということなんですね。ですから、ここの都合のいいところだけをとって、そして日本の年金が各国よりも、アメリカよりイギリスより西ドイツよりもスウェーデンよりも上回っていますというのは、これはどう考えたって誤りじゃないかと私は言っているわけなんです。ですから、いま厚生省がこのように大蔵省に御指導なさったのかと思ったのですが、そうではないと言われましたので大蔵省にお伺いしますけれども本当日本の年金は各国より上回っている、これは正しいのでしょうか。
  271. 窪田弘

    ○窪田説明員 いま御指摘の説明の文章の上に四角で囲った文句がありますが、ここをお読みいただいても、私どもがここで申し上げたいことは、制度的にはすでに国際的に遜色のない水準に達しておりまして、いまのままでも将来は大変なことになりますということを全体として申し上げているわけでございます。水準としては。必ず「水準」とか「制度的には、」と書いているのは、そういう意味でございます。
  272. 田中美智子

    ○田中(美)委員 そんな、あなた逃げ口上はありませんよ。厚生年金で見れば日本は十万五千円、アメリカは十万一千円で日本の方が高いというのですね。その七六年とあれと違うし、七六年と七八年、それを比較して、その上に各国は一般国民全体のになっていますね。これは厚生年金のでしょう。それで比較するということ自体がもうイロハのイで間違っているのですよ。  私は、もう時間がありませんので多くを語りませんが、これを見ただけで上回っているというのは明らかに誤りです。こういうでたらめな資料をちょこっと後ろにくっつけて、立法府の方がわからないと思うのか、国会議員をそれこそ侮辱しているのか、これを出したということは、まさに国会の権威を失墜させるような資料ですよ。立法府を侮辱した資料ですよ、これは。そういう資料であると同時に、国民の年金に対する希望、老後は年金で生活していきたい、こういうふうに国民は願っているわけですよね。そういう希望に対して、まさに大蔵省が挑戦した資料だ、こうとしか言えません。これはもうあちこちに私は言いますけれども、大蔵省がこういうことをしていると。厚生省指導ではなかった、これはちゃんとしておきますけれども、この資料は一枚どこかでかんでいるような感じもします。弁解しているようですけれども。私がいまここで大蔵省に要求しますのは、この資料を撤回していただきたい、このように要求いたします。
  273. 小沢辰男

    小沢国務大臣 国務大臣として私も責任があるわけでございますから申し上げますが、これはごらんになるように、「厚生年金でみますと、」ということで限定をして書いてあるわけでございます。全部の国民の年金が皆上回っているなんて書いてない。だから、そういうところで正確に読んでいただければ、そう間違ったことを書いたりなんかしてないわけでございますから、その点はひとつ……。まだおくれている面もありますし、これから伸ばさなければならないという面もあります。いま、こんなに負担が低いのに、もう西欧を全部上回っているというのなら厚生大臣は要らないことになりますが、そうはなかなか言えません。ただ、ここに限定している中ではと、こういうことを言っているものですから、いろいろ付加年金等の問題は、もちろん別に議論があると思います。この資料は何もそういうごまかしのために出したわけでも何でもないので、できるだけ御理解をいただこうという面でやっておるものですから、ひとつ素直に受け取っていただきたいと思うわけでございます。
  274. 田中美智子

    ○田中(美)委員 これはどんなに素直に読んでも、でたらめの資料である。都合のいいような数字をつけて日本の年金が高く見えるように操作し、国民を欺き——国民を欺くというより、国会に出したのですから国会を侮辱した資料である。ちゃんとわかるように説明がついているか。何にもついてなくて数字を羅列しているのですから、これはだれが見ても誤りです。大蔵省にこれの撤回を要求します。国会を侮辱していると言うのです。要求します。
  275. 窪田弘

    ○窪田説明員 厚生大臣からお話がありましたとおり、別に現在が低い、こういうことを誤った数字で申しているわけではございませんので、撤回する考えはございません。
  276. 田中美智子

    ○田中(美)委員 では、大蔵省が国民を侮辱した資料であるというふうに受けとめまして、私の質問を終わります。
  277. 住栄作

    ○住委員長代理 次に、工藤晃君。
  278. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 最後に、短い時間の中で多くの質問はできませんので、きょうは薬害という問題にしぼって厚生省の御意見を伺いたいと思います。「医薬品による健康被害の救済に関する法律(仮称)案大綱(試案)」厚生省薬務局の方からちょうだいしました資料をもとにして多少御意見を承りたい、かように思います。  この薬害という問題は、いま国民の大変重要な関心事でございますし、古くはサリドマイド、最近はキノホルム、その間にコラルジル、クロロキン、ストマイ、クロマイ、ミオブタゾリジン、こういう薬品によって、いろいろな問題が提起をされてまいっておりますことは御存じのとおりでございます。こういうふうな問題が、新しい医薬品の開発と同時に、今後ともに、いろいろな問題を社会に投げかけてくるというふうに考えるわけで、そういうことに対して当然政治が対応しなければならぬということも十分理解できるわけでございますが、そういうふうな問題のとらえ方を最初にしっかりとしておく必要があると思うのです。そういう意味で、私どもでも実は去年「薬剤公害発生時の患者に対する経済的救済の為の製薬メーカーサイドに於ける、強制薬害対策保険の新設と、国及び、製薬業界、医薬関係者並びに、被治療者相互を一体とした社会経済的救済を主眼とする、相互薬害対策基金新設に関する提案」というものを厚生省の方にも御参考にお出しをしているわけで、多少この中で物の考え方の相違なども感じるわけでございますので、そういう点について触れていきたいと思います。  第一番に、まず薬害という言葉でございます。たとえば、それは医薬品による健康被害という言葉に置きかえてもいいだろうと思うし、薬の副作用という言葉に置きかえてもいいと思いますが、そういうものに対して、薬というものは一体どういうものであるかという認識から入っていかなければならないのじゃないかというふうな感じをいたしております。それについて「この法律の目的」というところにも、厚生省の出された試案でございますが、「この法律は、医薬品が適正な方法により使用されるにもかかわらず、」という言葉がございます。その中で「適正な方法」という言葉そのものは一体何をもって適正と断ずるのかということが一つ問題になってくるので、そういう意味で医薬品というものの化学的な性質と申しますか、あるいは人体に及ぼす影響と申しますか、そういうものに対する的確なコンセンサスというものをつくっておかなければ、後でその問題について、いろいろと問題が発生してくる、こういうふうに思うわけでございます。  そういうことから、実は薬というものは、もろ刃の剣のようなもので、薬効というものと薬害というものは全くうらはらに共存していて、どこからどこまでを薬効と称し、どこからどこまでを副作用と考えるかという定義すら、現在の医学ではなかなかむずかしい問題だろうというふうに私は思います。そしてまた、それに対して使われた量、あるいは使われた期間、あるいは、その人の個々の体質という、いろいろなファクターがその中に共存しておって、その結果が薬効という形であらわれるか、あるいは薬害という形であらわれるかということにも通じるわけです。ですから薬というものそのものの性格というものは、薬の副作用という概念的なとらえ方で薬害というものを考えてはならないのではないかという感じが、まず、しているわけです。  そういうわけですから、一体何を定義として、何を物差しとして、この副作用というものを考えればいいのか、あるいは薬害と考えればいいのかということについても、十分お互いに認識し合っておく必要がある、かように考えますので、そういう意味を含めまして、まず薬の副作用、医薬品による健康被害という言葉の中にある、その「医薬品」というものの性格をどうとらえて、それによる健康被害をどう救済するかという、しつこい質問になりますけれども、そういうことについての御見解をひとつお聞きしたい、かように思うわけです。
  279. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 まず、基本的に医薬品と、それに伴います副作用の関係でございますが、医薬品につきましては、たとえば他の公害関係とかいうようなことと全く性格の異なる、医薬品というものの非常な特殊性から発生するものである、医薬品の副作用というものはそういうものであるというふうな認識が根本にございます。  医薬品は、たとえばわが国におきましても昭和四十二年以来、非常に厳格な製造、処理の基準を当てはめまして、万全の努力を尽くしまして有害な副作用の排除及び有効性の確保について努力をいたしておるわけでございますが、その時点、時点における完璧な努力によりまして、その時点における医学、薬学の知識をもっても万が一には副作用を防ぎ切れないという場合があり得るかもしれない。しかしながら、有用な医薬品というのは、いわば人類共有の財産として、これを絶えず開発し続けていかなければいけないという、薬というもののメリットに基づく非常な特殊性があるということを、まず基本的に考えるわけでございます。さらに御承知のように、現在、広く使われております医薬品も、先生指摘のような個体差という問題もございまして、非常にまれと申しますか低い確率で副作用が発生する。しかしながら一方において、その医療上のメリットにより、この医薬品を当然使わなければいけないという面がございます。  そういう医薬品の非常に特殊な、いわば人類の財産としての特殊性、それから人体の個体差等に絡まる、ほかのフィールドには見られないような非常な特殊性に着目いたしまして、医薬品を発展させ、かつ、医薬品のメリットを人類が共有していくというためにも、このような制度が必要であるという発想で、この薬害健康被害の救済制度を考案をいたした次第でございます。
  280. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) やはり薬というものの持つ化学的な性質からいって、いかなる手段、方法をとっても予知し得ない被害を受ける可能性がある、そういう前提に立って考えていらっしゃるというふうに了解いたしたいと思います。  ところで、そういうものであるということは、裏返せば、やはり天災に準じるような発想を持たなければならぬという部門もあると思うのです。これが人為的な天災であるというふうに考えてもよいのではないか。そういうものに対して、では救済する場合に、どういう救済の方法を考えるべきか、あるいはまた責任論で、一体だれが、どのような形で責任を持つのか、こういうことについても論議されなければならないと思うのです。逆に言って、天災に準じるものであるという前提に立てば、責任をだれにかぶせるということもなかなか困難でございましょう。そういう意味で、やはり問題は開発から生産あるいは許認可あるいはまた、それを使用する診療担当者あるいは販売する薬店あるいはそれを消費する消費者まで、すべてそれに関与する人たちが何らかの形で、やはりその危険性を持っていかなければならない、そういう特殊性のあるものであろうと私は認識するわけでございます。  そうすると、そういう性質のものを、もし予見できないという形で不幸にも、そういう副作用が発生して健康被害が起きてしまったという場合に、それをどういう目的で救済するのか、あるいはまた、その救済する手段、方法に対して、どのような形でそれを救済するのか、あるいはまた、その責任という言葉を私は使いたくないのですが、やはりそれに対してどのようなお互いの救済処置を考えるのか、こういう問題について、全く基本的な考え方でございますけれども、一応詰めてまいりたい、かように考えるわけでございます。  そういう意味において、厚生省としては、その問題に、どのようなお考え方で、こういう案をおつくりになっておられるのか、その点お聞きしたいと思います。
  281. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 まず、医薬品の有害な副作用につきまして、一つのケースとして、製造販売されております医薬品の製造工程あるいはその管理の過程におきまして、仮にたとえば不純物が混入するといった形で管理上あるいは製造工程における過失が認められる場合は、先生御承知のとおりに、これは普通の意味におきまして民事上のいわば加害責任が生じるわけでございます。そういうケースでなしに、その時点における医学、医術の水準に基づきまして万全の注意を払ったにもかかわらず、先ほど私が述べましたような副作用や健康被害が生じたという場合につきましては、先生の御指摘のように、ある意味では薬のいわばメリットを人類が共有するための一つの、先生の言葉をかりれば天災に近いような形のものという言い方もできようかと存じます。  その場合におきまして、しからばそれであれば、それをそのままにしておいていいのかといいました場合に、たまたま、その有害な副作用が生じた方について被害が個人にのみとどまるということでなしに、これを薬の性格から考えまして社会的にいわば被害を分散すると申しますか、あるいは社会全体の力によって被害をカバーするということが、薬の特殊性からしても、また薬というものをさらに発展させ、そのメリットをわれわれが共有していくためにも適当なことではないかと考えるわけでございます。  その場合に、しからばその費用をどこから調達するのか、だれの負担において被害を分散するかということになるわけでございますが、これはある意味では、先生の常々御指摘のとおりに、薬の製造あるいは使用の各過程におきまして関与する方々が、すべてそれぞれ、受益者としての国民もすべてそれぞれ、お金を持ち寄る、そういうものとして救済制度を考えるというのも、一つの筋の通った発想であろうというふうに私どもとしては考えるわけでございます。  しかしながら、その費用調達をどのような方法で行うかということにつきましては、いわば一種の技術論でもございますので、趣旨としては先生のおっしゃるような、いわば国民全体の、また、これに関与した方々全体の持ち寄りという発想も、十分それなりに理解できるわけでございますけれども、現実の費用調達の技術論といたしましては、どのようなものが、どのようなやり方が、一番適当であるのか、その技術論としての詰めも、また別途の観点から行われなければならない、かように考えておりまして、われわれとしては、いま技術論の面も含めまして費用の調達の方法について検討いたしておるところでございます。
  282. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 時間がございませんので、私の考え方を主として述べさせていただきます。  だれに責任があるということを明確にできないものを前提に、実際に被害を受けた方々に対して救済をしなければならない、こういうものでございますから、責任論を云々し出すと、私はお互いに目的達成には達し得ないのではないか、かように考えるから、かような質問をしているわけなんで、そういう意味で、お互いに、そういう被害に対して保険をし合うという考え方が、まず国民的コンセンサスとして必要なんじゃないか。しかしながら、国としても、そういうもので賄い切れないところへは十分な保障をしてやるという社会保障という立場に立つのか、あるいは国家補償ですべてを片づけてしまうのか、そこら辺のところも、やはりはっきりしておかなければならぬと思います。しかしながら、いまの性質上からいって、基本的には保険し合うという考え方の上に、よりそれを強くカバーするという立場で社会保障という概念を、そこに挿入していってはどうかというのが私の考え方でございます。  ですから、そういう意味において各論的に、いかなる手段、方法をおとりになるかということについて、一応御参考までに、私はそういう考え方のもとに発足すべきではないかということを提案したいと思うわけでございます。     〔住委員長代理退席、委員長着席〕 まず、はっきりそういうことを確認し合った上で、その手段、方法をお考えになることが重要だというふうに一つ問題を提起しておきます。  二番目に、じゃ果たして、その医薬品の副作用によって健康被害を受けたかどうかということを認定しなければならないことも重要な作業だと思うのですが、この認定そのものは、し得ないものを認定しなければならぬという宿命を持っているわけです。ということは、冒頭に申し上げましたように、薬の作用そのものの基準というものを決めかねるのが現段階だろうと思うのです。科学の進歩というのは常に未完成なものへの挑戦でございますから、そういうものに対して、これはそうであったとか、そうでなかったとかということを決定づけるという根拠はないと私は思うのです。だからといって、それじゃ何も基準を置かないで物事を処理できるかというと、具体的にはできない。冒頭に、そういう矛盾があるということを十分確認された上で、そういうものに対して、できるだけ正確な判断が下せるような、そういう認定基準というもの、あるいは認定される方々の公正というものをお考えいただかなければならぬし、その認定されるという基準が公平でなくてはならない。そういう不確定なものを対象にしながらも、国民の側から見て、それが信頼できるものであるというふうな信頼感がなければ、この制度は生かされていかないんじゃないかという感じがいたしますので、そういう点について二番目に十分御留意をいただかなければならぬし、次に各論的に、またその問題についても一つ一つ真剣に討議されなければならないというふうに考えるわけでございます。  それから三番目に、いままでの手段としては結局、裁判という形に頼って解決を見出そうとした。ところが、それに対しては余りにも期間がかかり過ぎる、その間に被害者の精神的、肉体的あるいは経済的不安が余りにも大きい、それを便宜上救済をする。本当の救済というものは薬害に対しても恐らくあり得ないと思うのです。もとの体に返せと言っても返せないのだから。可能な限りにおいて救済をしなければならぬ、それもできるだけスピーディーに対応しなければいかぬ、敏速性がとうとばれると思うのです。それについて屋上屋をつくるような、逆にまた、いつまでたってもなかなか裁定が出てこない、裁決されないというふうな、そういうシステムであれば、これは救済目的から相反する行為になると思いますから、そういう意味において、できるだけ敏速性をどのようにしてかち取るかという作業にも十分御留意をいただきたい、こういうふうに考えます。  それで後は、問題は、でき上がったものに対して、もし不幸にして、そういう適用があった場合に、経済的にもできるだけ十分な、あるいはその他の救済処置に対しても十分な施策が講じられなければ意味がない。制度だけはりっぱにできても、結局、中身が伴っていかないというのでは困るから、そういう意味においても基金をおつくりになるようでございますし、私どもも提案しておりますのはやはり基金でございますが、これは大蔵省の方がいらっしゃればお願いしようと思ったのですけれども、こういうことについての国の対応も思い切った判断をしていただかなければ、金は出さない、制度だけはつくったというのでは、その運用は意味がないんじゃないかというふうな感じがいたします。  そういうことを含めて、いま申し上げたようないろいろな問題点をあわせて、ひとつ御回答いただきたい、かように思います。
  283. 中野徹雄

    ○中野(徹)政府委員 先生指摘の健康被害の救済というものが、時々刻々に変化いたしますところの医学的な知見、薬学の進歩というふうなものとの絡みにおきまして、絶対的に確定した、また動かない尺度を当てはめ得ないものであるということは、まことに先生の御指摘のとおりであろうかと思うのであります。そのような意味におきまして、どのような医薬品と、どのような種類の健康被害が対応するのかという一般的な因果関係の認識、それからそれを個々に、個別のケースに当てはめまして、個別的な健康被害についての因果関係の認定等、これは当然そのときどきの知見によって変動するものでございまして、その意味におきまして、相当高度の権威ある医学、薬学の知識を持った方々の、また、それらの方々の判断であれば世間一般の十分な信頼がかち得られるというふうなレベルの方々の力をかりまして、この非常にむずかしい認定を行っていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  そのようにしてつくられました認定作業を通じまして、また先生のおっしゃいますように、このような救済を行う場合には、それが敏速に、たとえば従前の薬害訴訟でございますと、現に六年、七年という歳月を経ているケースがあるわけでございますが、そのようなものでなくて敏速に、かつ適切十分な救済を行うように、この仕組みを考えてまいらなければならないということは、まことに先生の御指摘のとおりであろうかというふうに考えております。  なお、財源等の問題につきましては、既存の現に動いております外国の制度等を見ますと、西ドイツの立法ではそうでございますが、主として製薬メーカーの負担によって動いているケースがあるわけでございますけれども先生が最初に申されました国民全体の、あるいは医薬品の製造、使用の過程における関与者すべての、いわば持ち寄りというふうな趣旨の、そういう発想も踏まえまして、財源調達方法、国の負担等についても慎重に検討をいたしてまいりたいと存じます。
  284. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) あと、わずかの時間になりましたので問題提起だけに終わりますが、あと問題になりますのは、要するに、ここでできるだけ可及的速やかにそういう対象者に認定をし、そして救済をしなければならぬという仕組みを持っている、こういうものでございますから認定も急がなければならないし、それができるだけ公平でなくちゃならないし、信頼性のあるものでなくちゃならないというような条件がついてまいろうかと思いますが、しかし、そういう認定をしたからといって、それがすべて正しいという前提には立てないところに、この薬という特殊性があると思うのです。ところが一方においては、被害を受けた方々は、そういう問題と、それから責任論から発生する裁判という問題との絡みが出てまいろうかと思います。ですから、こういう認定する期間とそれから裁判というものが、どのように絡み合っていくのかということについても今後は十分御検討いただいて、そこにすっきりしたものを国民の前に提示し、それに合意を得ておく必要があるというふうに考えます。  それからもう一つ最後に、やはりこのような制度をつくられることは大変結構ですけれども、できることならば、こういう制度は全然利用されないことが一番望ましいわけです。ですからそういう意味において、こういうことの発生を予防していくということについては、この制度をつくる以上に、もっと留意されて、そういうものに対する正確な施策を実行していただきたいということが強く要望されます。ですから、たとえば医薬品の毒性とか催奇形性あるいは発がん性、それからまた薬剤の情報システムの確立とか、あるいはまた薬害患者情報の分析だとか効果的治療の開発とか、ちょっと考えましても、こういう問題についても車の両輪のごとく、いままでのようなシステムをそのまま遵守していくという形ではなくて——いままで医薬品というものは効果の点が重視されてまいりました。だから効果の点の開発あるいは効果の点についての注目というものは非常に進みますが、逆にこういう薬害に対する真剣さというのは、どうしても従となるという傾向が社会的にあると思います。ですけれども、こういう立場に立ちますと逆に副作用あるいは薬害と申します点について十分第一番に配慮していかなければならぬという社会的背景も出てまいりますので、そういうことを含めて車の両輪のごとく、そういう制度をかみ合わせていただきたい。こういうふうに考えますので、どうかそういう点についても具体的にお考えをいただいて、ただ単に、この制度を急ぐというその作業だけに注目されないで、そういうものもあわせて、どういうふうに今後の社会に、そういう問題の解決を定着させていくか、こういうことに十分の御配慮と期間をおとりになって、いいものをおつくりいただきたい、こういうように思うわけでございます。  そういうことで、最後に、一言で結構でございますから、大臣から御回答をいただいて終わらせていただきたいと思います。
  285. 小沢辰男

    小沢国務大臣 薬害救済制度につきましては、この制度をつくるべく鋭意検討中でありますが、その責任者の私にとりまして、先生の、この薬害に対する、まず基本的な概念のとり方、それから救済のあり方、費用の負担のあり方、認定のあり方あるいは訴訟等の関連における問題点等々、非常に貴重な御意見を承りましたので、また、先生の提案の背景と申しますか、その基礎になる考え方、きょう非常によく私も理解できました。御意見を十分踏まえまして、私どもは、決して急いで不十分な制度よりも、慎重にして十分なる制度をつくり上げたい、かような考えのもとに、大いに参考にしながら検討させていただきたい、かように考えます。
  286. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(新自) 大臣のお答えを十分傾聴いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。      ————◇—————
  287. 木野晴夫

    木野委員長 戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。厚生大臣小沢辰男君。     —————————————  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  288. 小沢辰男

    小沢国務大臣 ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  戦傷病者、戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、年金の支給を初め各種の援護措置を講じ、福祉の増進に努めてきたところでありますが、今回、これらの支給額を引き上げ、支給範囲を拡大するほか、戦没者の父母等に対する特別給付金を改めて支給するなど一層の改善を図ることとし、関係の法律を改正しようとするものであります。  以下、この法律案内容の概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。  改正の第一点は、障害年金、遺族年金等の額を恩給法に準じて増額するものであります。  改正の第二点は、昭和十二年十一月三十日の閣議決定「満洲に対する青年移民送出に関する件」に基づいて実施された満州青年移民が、軍事に関し業務上かかった傷病により障害者となり、またはこれにより死亡した場合において、その者またはその者の遺族に、障害年金、遺族給与金等を支給するものであります。  第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正であります。これは、未帰還者の留守家族に支給される留守家族手当の月額を遺族年金の増額に準じて引き上げるものであります。  第三は、戦傷病者特別援護法の一部改正であります。これは、先に述べました満州青年移民のうち、軍事に関し業務上傷病にかかり、現に第五款症以上の障害がある者に、戦傷病者手帳を交付し、療養の給付等を行うものであります。  第四は、戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、特別給付金として交付されてきた国債の最終償還を終えた戦没者の父母等に対し、改めて特別給付金を額面六十万円五年償還の国債で支給するものであります。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  289. 木野晴夫

    木野委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十六分散会      ————◇—————