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1978-06-16 第84回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月十六日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 久保  等君    理事 相沢 英之君 理事 池田 行彦君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 島本 虎三君 理事 水田  稔君    理事 古寺  宏君 理事 中井  洽君       高村 坂彦君    西田  司君       羽生田 進君    福島 譲二君       藤本 孝雄君    小川 国彦君       土井たか子君    馬場  昇君       坂口  力君    竹内 勝彦君       東中 光雄君    工藤  晃君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         運輸政務次官  三塚  博君         運輸省港湾局長 大久保喜市君         運輸省航空局長 高橋 寿夫君         運輸省航空局次         長       松本  操君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      木戸  脩君         大蔵省主計局主         計官      塚越 則男君         大蔵省銀行局銀         行課長     吉田 正輝君         林野庁指導部長 須藤 徹男君         林野庁指導部森         林保全課長   小田島輝夫君         水産庁研究開発        部漁場保全課長 伊賀原弥一郎君         通商産業省立地         公害局公害防止         指導課長    滝沢 宏夫君         通商産業省基礎         産業局基礎化学         品課長     児玉 幸治君         通商産業省機械         情報産業局電子         機器電機課長  小林 久雄君         運輸省港湾局技         術参事官    久田 安夫君         自治省財政局財         政課長     関根 則之君         参  考  人         (新東京国際空         港公団総裁)  大塚  茂君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 六月十六日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     小川 国彦君 同日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     岩垂寿喜男君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  閉会審査に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件      ————◇—————
  2. 久保等

    久保委員長 これより会議を開きます。  まず、閉会審査申し出の件についてお諮りいたします。  第八十回国会土井たか子君外四名提出の  環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案  第八十回国会古寺宏君外二名提出の  環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案並びに  公害対策並びに環境保全に関する件以上の各案件につきまして、議長に対し、閉会審査申し出をすることに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久保等

    久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 久保等

    久保委員長 この際、御報告申し上げます。  今国会、本委員会に付託になりました請願は、東大阪市全域を公害健康被害補償法による地域指定等に関する請願二件であります。本請願の取り扱いにつきましては、先刻の理事会協議いたしましたが、委員会での採否の決定は保留することとなりましたので、さよう御了承願います。  なお、今国会、本委員会参考送付されました陳情書は、環境影響事前評価法の制定に関する陳情書外七件であります。念のため御報告申し上げます。      ————◇—————
  5. 久保等

    久保委員長 次に、閉会中の委員派遣承認申請の件についてお諮りいたします。  閉会審査案件が付託され、委員派遣の必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、その人選、期間及び派遣地等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 久保等

    久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、同じく閉会審査案件が付託されました場合、公害対策並びに環境保全に関する件、特に二酸化窒素に係る環境基準に関する問題について、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その日時及び人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 久保等

    久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  8. 久保等

    久保委員長 公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。古寺宏君。
  9. 古寺宏

    古寺委員 最初環境庁お尋ねをいたします。  北海道函館港で第五次港湾整備計画が行われておりますが、昭和五十一年度から港内しゅんせつ土砂を津軽海峡内に投棄しております。この場所青森県の大間崎から十五キロメートルの地点に当たっておりまして、ソイ、アイナメ、メバル等根つき魚漁場であるばかりでなく、アブラザメの魚道でもあります。  工事発注者説明では、投棄場所水深二百メートル以上もあり、海底に直接土砂が沈澱するおそれはないという説明でありましたが、年間約七万立方メートルの多量の土砂を五十五年度まで継続して投棄することになると沈澱しないという確証はないばかりか、土砂悪臭によりスルメイカマグロブリ等の回遊に大きな影響を及ぼし、漁場環境が悪化することは必至であります。   よって、沿岸漁民生活保護のため海峡内の土砂投棄は直ちに禁止していただくよう関係機関に強く働きかけて下さるよう陳情申し上げます。 こういう陳情書青森県下北郡大間町、佐井村、風間浦村、大畑町、東通村の町村長並びに十二漁業協同組合から提出をされておりますが、このように港湾しゅんせつ土砂公海上に勝手に投棄するということは、これは許されているわけでございますか。
  10. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 港湾等しゅんせつ工事に伴って発生いたします水底土砂でございますが、これを勝手に海洋投棄してよろしいかというお尋ねでございます。  この水底土砂処理仕方等につきましては、いわゆる海洋汚染防止法という法律がございまして、これで規定をしておるわけでございます。有害物質を含む水底土砂あるいは有機物を多量に含む水底土砂というようなものも規定がございますが、そういうもの以外のいわゆる通常水底土砂につきましては、E海域ということで、すべての海域という意味でございますが、そういう海域所定方法によって投棄できるということに法制上はなっております。ただ、その投棄をいたします場合におきましても、水底土砂ができる限り速やかに海底に沈降してそして堆積するような必要な措置をとりなさいとか、あるいは水産動植物生育支障を及ぼすおそれがある場所は避けなさいというような指導をいたしております。そういうことで、すべての海域に棄ててもいいことにはなるわけでございますけれども、海洋汚染なり漁業被害というようなことを来たさないようにということで考えておるわけでございます。
  11. 古寺宏

    古寺委員 水産庁お尋ねしますが、漁業被害の危険が非常にあるということで地元漁民は反対をいたしているわけでございますが、この事情について水産庁は御存じでございますか。
  12. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 青森県の水産部の方から水産庁の方に、先生からお話がありましたような陳情書が上がっておりまして、函館北海道開発局の方に話をしている、そういう事情説明を聞いております。
  13. 古寺宏

    古寺委員 現在のしゅんせつした水底土砂は、漁業には影響はないわけですか。
  14. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 現地海流事情等考えてみますと、五十二年度に投棄のされております地点というのは、先生お話がありましたように大間町のところ、これは十五キロメートルくらい離れておりまして、特に海流関係から言いますと、満潮時に大間地先に突っかけてくるような場所でございます。こうした点から、水深も深うございますし、どの程度の拡散とかそういう問題がありまして、わからないわけでございますけれども、ともかくにも、しゅんせつ土砂投棄がされております地点につきましては、スルメイカとかマグロとかブリ等の回遊する地域でございます。こういう点から考えますと、漁業者の方が何か漁業被害があるのではないかというような懸念を持っているのは至極当然のことではないだろうかというぐあいに考えているわけでございます。
  15. 古寺宏

    古寺委員 運輸省お尋ねしますが、この事業計画に当たりまして、環境影響に対する事前評価なり、あるいは沿岸漁民に対する合意なりを事前に取りつけてございますか。
  16. 久田安夫

    久田説明員 お答え申し上げます。  函館港のしゅんせつ土砂大間崎の十五キロ沖合いに捨てる場合に、環境影響評価あるいは漁業者との話し合い事前にしたかどうかというお尋ねでございますが、函館港の中のしゅんせつ土砂有害物質等を含んでいるかどうかという点につきましては、しゅんせつ以前に調査をやっておりまして、いわゆる有害物が含まれた有害水底土砂でないということを確認をいたしております。  それから、漁業者に対しましては、実はこの函館港のしゅんせつ土砂は五十一年以前にも捨てたことがございまして、そのとき以来、函館市並びにその周辺漁業者がその付近の海域についてはよく状況を承知しておるというふうに理解いたしておりましたので、函館市並びに周辺漁協方々十分話し合いをいたしまして、五十一年、五十二年の土砂投棄をやらしていただいたような事情でございます。
  17. 古寺宏

    古寺委員 函館側の、北海道側の了承だけを得て、この目と鼻の先の十五キロメートル地点、しかもこれは等深線の地点でございますね、そういう魚道になる地点投棄するのに青森県なりあるいは関係町村なり、関係漁業協同組合に対して相談をしない、あるいは了解を得ないでいままで投棄をしてきたというのはどういう理由でございますか。
  18. 久田安夫

    久田説明員 お答え申し上げます。  ただいまも申し上げましたとおり、実は五十一年以前からいわゆる函館の方に近い海域から順次沖捨てをやってまいりました。したがいまして、五十一年度以来やっております地点の前に、いわゆる函館港の沖のすぐ近く、それからさらに十キロ程度沖合い、それから今回の十数キロ沖合いというふうに順次進めてまいりましたために、十五キロの現在の五十一年、五十二年投棄いたしました場所につきましても、漁業への影響はまずあるまいというような漁協を含めます地元関係者等の御意向でございましたので、函館側にのみお話をいたしまして、青森県へは影響がないということで、いままで話し合いはいたさなかったような状況でございますけれども、確かに先生御指摘のとおり、ちょうど青森県と北海道中間点、ほぼ中心点と申しますか、等距離点でございますので、これは青森県側の漁民の方が漁業への影響があるのではないかという危惧の念をお持ちになるのは当然かと思います。  したがいまして、ことしからはしゅんせつを一応中止いたしておりまして、青森県側の方々に対して十分御説明をし、御理解を得た上でしゅんせつをいたしたい、土砂投棄をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  19. 古寺宏

    古寺委員 この距離の問題でございますが、運輸省お話を承りますと、函館側に近いようなところに投棄している、こうおっしゃっておりますが、実際に投棄している場所青森県寄りなんですね。しかもそこは優秀な漁場なんですよ。そういうところへ捨てているということがまず一つでございます。  それから、この有害物質があるかないかという調査でございますが、現在しゅんせつしている場所というのは、漁場も近いし非常に悪臭があるというんです。ですから、いろいろな有害物質についての分析は、いままでに何回か行われたとは思うのでございますが、どういう方法で、大体何年何月に何地点ぐらいで、現在までに水底土砂分析を行ったか。また、その内容についてはどのようになっておるのか、このしゅんせつをした土砂投棄した時点からの分析内容についてもお答えを願いたいと思います。
  20. 久田安夫

    久田説明員 お答えいたします。  しゅんせつ土砂検査でございますけれども、函館市の衛生試験所試料を持っていきまして、五十二年の二月に検査を終わっておりますが、物質につきましては、それぞれいわゆる有害水底土砂判定基準に書かれております有機燐カドミウム砒素、総水銀アルキル水銀、六価クロムシアン、鉛、これだけの所定物質につきまして検査をやっております。  これはいずれも単位はミリグラム・パーリッターでございます。有機燐につきましては基準リッター当たり一ミリグラムでございますが、これはございません。検査の結果、当該土砂には含まれておりません。それからカドミウム基準が〇・一以下でございますが、これも検査では出てきておりません。それから砒素につきましては〇・五以下となっておりますが、それに対しまして実際の土砂は〇・〇〇四ないし〇・〇一でございます。それから総水銀につきましては〇・〇〇五以下というのが基準でございますが、これに対しまして当該土砂はゼロがもう一つ多くなりまして〇・〇〇〇三ミリグラムでございます。それからアルキル水銀、六価クロム、これについては検出されておりません。それからシアンにつきましては、基準は一ミリグラム以下でございますが、これも同じく検出はされておりません。それから鉛でございますが、鉛は一ミリグラム以下が基準でございまして、それに対しまして当該土砂は〇・〇一二ないし〇・〇一八ミリグラム・パー・リットルでございます。
  21. 古寺宏

    古寺委員 いまの結果は五十二年の二月にある地点土砂分析をした結果だと思うのですが、そうじゃなくて、私のお伺いしているのは、函館港内ヘドロマップとかいろいろなものがあろうかと思いますが、大体何地点ぐらいおたくの方で分析の結果が出ているのか。それから何回行っているのか。しかも、しゅんせつを始めて投棄した段階が五十二年以前から始まっているわけでしょう。そういたしますと、投棄をする以前の段階においての調査というものは行われていないということでございますね。どうですか。
  22. 久田安夫

    久田説明員 お答え申し上げます。  私がいま御説明申し上げました五十二年の二月の検査結果でございますが、それ以前の検査結果がございますかどうかにつきましては、現在のところ私まだ調べておりません。それから場所でございますけれども、場所しゅんせつ個所が数カ所に分かれておりまして、その個所ごとに全部試料をとっておることは事実でございますけれども、そのしゅんせつ個所の中で何カ所、それから年間何回とったかということにつきましては、ちょっと手元に資料がございませんので、後刻調べまして御報告をいたしたいと思います。
  23. 古寺宏

    古寺委員 先ほどお答えをいただいた資料につきましては、私一部ちょうだいしてございます。そうじゃなくて、しゅんせつする以前に、投棄をする以前にそれはどういうような有害物質があるのかないのかという事前調査をきちっとやって、それから投棄したのかどうかというのが問題なんでございます。現に大間町を初め現地住民がおっしゃっておるのには、最近はマグロは全くとれなくなってきた、ブリなんかいつも大漁しておったのが昨年のごときはたった一尾しかとれない、そういう原因は、恐らく土砂海洋投棄によって魚道を汚染したためにこうなったんだろうというふうにおっしゃっておるのです。したがいまして、おたくの方では被害はない、被害はないとおっしゃいますが、当然、函館港内ヘドロというのはわれわれも何回も見ておりますし、よく知っておりますが、そういうものを海にどんどん捨てて水産資源影響がないということは考えられないわけです。したがいまして、よく調査をしていままでの土砂投棄によってどういうような被害が出ているのか、またさらに、今後しゅんせつを行うにしても、どういうような土砂の性状になっているのか、きちっと科学的に分析をしまして、水産動植物保護に努めていただきたい、こういうわけなんです。そこで私は、ぜひ現在の投棄は中止をしていただきたいし、それからまた地域住民漁民方々関係町村方々とよく協議をなさって了解を得た上で適当な場所投棄をするようにしていただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  24. 久田安夫

    久田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指示いただきましたとおり、運輸省といたしましても現地の方に指導をいたしていきたいと思っております。適当な場所を探しまして、水産動植物への影響のない場所を探すと同時に、いま先生おっしゃいましたとおり、関係漁民方々に十分御理解をいただいた上で工事を再開いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  25. 古寺宏

    古寺委員 今後も港湾しゅんせつ、もちろんこれは漁港しゅんせつ等も行われるわけでございますが、しゅんせつされた土砂処理方法について環境庁としてはどういうふうにお考えになっておりますか。水産動植物保護するという立場から、いまのように海洋汚染防止法からいうならば、有害物質が入っていない、公海影響がなければ捨ててもよろしい、こうなっておりますが、現実の問題としてはいろいろ影響が出るわけですね。こういう投棄に対する対策というものについて規制なりをお考えになっておりますか。
  26. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、有害であるとかなんとかは別にしまして、通常水底土砂はすべての海域投棄できるということにはなっております。ただ、その際におきましても、水産動植物生育支障を及ぼすおそれのある場所を避けろというようなことで、漁業被害防止というような点あるいは海洋汚染防止という点に十分配慮するよう、これは扱いを決めておるわけでございます。したがいまして、今後におきましても、現実投棄をやられる方等、関係の向きがこの線を十分体して行ってもらいたい、こう思っているわけでございます。  どうもお話を伺っておりますと、本件の場合は、函館側の方だけはいろいろ協議をしたようでございますが、対岸の方との話し合いなり了解というものをとっておらなかったようでございます。したがいまして、そういう面では、関係者理解を得るという面の配意につきましてやや欠ける点があったようでございます。ただいま運輸省の方からも、そういう面は是正するという御趣旨の答弁がございました。指導の線というものはこれでいいと思いますが、ただ問題は、こういう線を体して現にそれを行ってもらうということでございまして、運輸省なり、あるいは漁港であれば水産庁という役所がございますが、そういう面等々においてそれぞれこういうものを励行するように指導してもらう、こういうことでございます。
  27. 古寺宏

    古寺委員 そこで、ひとつ運輸省に申し上げておきたいのですが、函館側漁民が同意したというのは、自分たち生活に関連のある漁場を建設するために、その工事が行われているわけなんです。いやいやながら同意せざるを得ない立場にあるわけなんですね。ところが、対岸青森県側の漁民というのは別に何ら関係がないわけです。しかも、函館側の方から見れば非常に遠い距離、二十五キロ地点でございますね。青森県の方から見ると十五キロ地点、こういうふうになっていると言われております。したがって、被害を受ける側は青森県側でございます。そこで、いままで昭和五十一年からこういうような投棄が行われておりますが、もし仮にこのしゅんせつした土砂の中に有害物質が含有されている場合には、いままでの漁業被害については運輸省としては補償いたしますね。どうですか。
  28. 久田安夫

    久田説明員 大変むずかしい問題であろうかと思います。もしそういう事実がございましたら、よく検討いたしまして処置をいたしたいと思います。
  29. 古寺宏

    古寺委員 もう一点。仮に有害物質が入っていないとしても、いろんな事前調査あるいは現地住民との了解なしにやった行為について被害が発生している場合においても、十分に責任をとっていただくことができますね。
  30. 久田安夫

    久田説明員 もし具体的な被害の実態が出ておりますれば、それに相応する措置は可能かと存じております。
  31. 古寺宏

    古寺委員 こういうような問題が発生している場合に、この調査は一体どこが責任を持ってやるわけですか。水産庁でございますか、環境庁でございますか、あるいは事業主体運輸省でございますか。環境庁お尋ねします。
  32. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 この調査主体は、むしろ事業主体中心になってやるべきだと思います。
  33. 古寺宏

  34. 伊賀原弥一郎

    伊賀説明員 全国的にいろいろな問題がございますけれども、いろいろな開発行為等につきましては、少なくとも事業をおやりになる事業主体において実施をされるべきものであるという考え方を持っております。  なお、つけ加えて申しますと、ただ事業主体がおやりになる場合には、海の中の問題につきましてはなかなか事業主体のみではできない場合が出てくるという点がございまして、水産庁等がいろいろ協力を要請される場合がございます。その場合に、あくまでもその調査自体につきましては事業主体責任を持ってやっていただくわけでございますけれども、技術的な面あるいは調査やり方等については助言が必要な場合がございます。その際には、その事柄の影響の大きさ等にかんがみまして、水産庁としても技術的な協力をしたり助言をしたりしていく場合がございます。あくまでこれは全体としての考え方の御説明でございますけれども、そういうことでございます。
  35. 古寺宏

    古寺委員 これは、ただ単に運輸省だけで調査をしなさいといっても無理だと思うのです。やはり環境庁もこういうような環境問題については、指導なりあるいは適切に各関係省庁と連絡をとって、こういう問題についての対策というものを十分に考えなければならないと思うわけでございますので、どうかひとつ、いままでの問題についての十分な調査をすると同時に、今後、公害の発生がないような処理方法について、環境庁とよく連携をとって措置をしていっていただきたいということを要望申し上げます。  次は、NOxの問題に移ります。  最初に、中公審答申の一ページでございますが「政府においては、この報告参考とし、現在の二酸化窒素に係る環境基準について、公害対策基本法第九条第三項の規定趣旨にのっとり、適切な検討を加えられたい。」このように答申では述べておられるわけでございますが、この第九条第三項の規定趣旨については、環境庁としてはどのように理解をしておられるのか。先日の質疑の際にも、環境庁としては環境基準の問題については中公審に諮問をする必要がないというような趣旨の御発言があったわけでございますが、この答申趣旨はそういうふうになっておるのかどうか、承りたいと思います。
  36. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 まず先生の第一の御質問の九条三項の趣旨をどのように解しておるかということでございますが、これは法律条文にございますように「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。」という条文でございます。この条文のできましたそもそもの由来は、基準を設定する場合に、科学的にデータがちゃんとしていなければ基準なんてできないというのが、実は四十五年ごろまでの非常なむずかしいところでございました。そういうことでなかなかいろんな基準ができないということがあったわけですが、それですべて後手に回ったというのを反省しまして、ある程度乏しくても割り切ってしまって、この基準を設定して対策を打つということがまず第一だ。しかしそれにしても、これは割り切っているわけですから、それを定期的に科学的に見てみて、それをここにございますように点検をして「必要な改定がなされなければならない。」、なければならないというのは非常に厳しい表現でございますが、そういう表現になっております。  実は、NOxの場合はまさしくこれにはまりますように、四十七年当時までの非常に乏しい知見の中で、しかも、そこで非常に大きな安全性を割り切って決めて、そしていろいろな効果も上げたことも事実でございますが、いろいろな問題を生じたことも事実でございます。そういうことで、五年間たったので、それに対して科学的な知見がより新しく、豊かに、確かになってきたということで見直す、それによって必要な改定を行う。また、この立法制定のときにも、これは国会修正で入ったわけでございますが、厳しくなることもあり緩くなることもある、どちらの場合もあり得るというのがこの法律趣旨であったわけでございます。  そういうことで、この諮問文の中に最初に、環境基準にかかわる公害対策基本法九条三項の趣旨にのっとりという文章が入っておりまして、これが全然抜けておりまして二酸化窒素の人の健康にかかわる判定条件等だけを聞いているのなら、これは話は別でございますが、九条三項の趣旨というのは何かというと、先ほども申しましたような「常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。」そのような趣旨にのっとって諮問したものでございますので、それに対して最も核心の問題は、やはり科学的な確かさの問題でございます。科学的な判断条件と科学的な判断が何かということが問題でございます。それが一番中心的なところでありまして、その御答申をいただいて、それによってこの改定をしなければならない。それを受けたときにこの大気の部会で、これを受けてどうするつもりかという質問がございまして、これを受ければ、この九条三項の趣旨にのっとって、これですと前の指針とはかなり変わっておるということで、当然にこれは改定の要否を含めて検討しなければならないと存じますということを申しましたし、また諮問をいたしますときにも、この諮問の趣旨は、これの答申が出れば政府は虚心坦懐に、変えるべきかあるいは変えるべきでないか、あるいは新しいものにするのかということについて政府として判断をいたしますということを審議会でも述べ、その後の何回かの審議会でも述べ、また国会でもそのような形ではっきり申してきたところでございまして、そのような趣旨のものでございますので、これから先は行政として適切な検討を加えられたいということで、審議会としては、改定せよとか改定するなとか、一切そのようなことはおっしゃらずに、行政として検討を加えられたいという結論で全員の合意を見て出されたところでございます。
  37. 古寺宏

    古寺委員 そういたしますと、環境庁が審議会に対して最初説明をなさった際には、いわゆる環境基準の改定を前提として諮問をなさったというふうにいまお話を承ったわけでございますが、それに対してこういうような答申の中に「第三項の規定趣旨にのっとり、適切な検討を加えられたい。」ということが述べられているということは、環境基準を改定しなさいということを意味しているわけでございますか。
  38. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 先ほど私の申しました答弁が少し不明確なところがあって先生は改定を前程としてとおとりになったようでございますが、そのようなものではございません。改定するかしないか全く白紙の状態でございます。初めから改定が前提ですと、これは環境基準の改定について諮問する、このような諮問になります。そういうことで環境基準の改定について諮問するという形ですと、もうそのときから環境基準の改定は決まったということになるわけです。この九条三項の本来の趣旨は、改定するかしないかはあくまでも定期的な科学的な検討を加えた上でそこで必要な改定を行わなければならないという形になっておりますので、この改定を前提としたものではございません。九条三項の趣旨にのっとって定期的な科学的な点検を行うということでございまして、そういうことで出れば、虚心坦懐に、変えるか変えないかを政府責任をもって決めます。このような言い方をしておったわけでございます。再度申し上げますが、改定を前提として諮問したものではございません。それですと諮問の形式は異なってまいります。
  39. 古寺宏

    古寺委員 先日の質疑の際にも局長の御答弁の中にございましたが、すでに昭和五十年ごろから環境基準の見直しについては考えておった、こういうような御答弁があったように記憶をしているわけでございますが、そういたしますと、そのころからすでに現在の環境基準について改定をしなければならないというようなお立場で行政を進めてこられたわけでございますか。
  40. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 昭和五十年の十二月ころから改定を考えておったかということでございますが、九条三項の検討をしてみなければならないという立場には立っておりました。これは公害対策基本法にのっとって環境庁は仕事をしているわけでございますから、いろいろ問題のある基準がある場合に九条三項というのはいつも頭にあるわけでございます。ですから、最初から改定するとは全然申しておりません。これはうそ偽りございません。ですから〇・〇二の環境基準は異常なほどに強弁をして守ってきたつもりでございます。しかし、これは行政として告示があるから守る、この立場は貫くわけでございますが、一方に九条三項という条文があるわけでございます。またNO2の環境基準について非常な議論があること、これまた間違いないわけでございます。そういうことで、あくまでも科学的な点検が出ない以上は変えるか変えないかわからないということが一つ。  それから五十年十二月に何を検討を始めたかということでございますが、一つは、これは全部おのおの独立のスケジュールでございます。できるだけの努力は完全にしなければならないということでございます。ですから、環境基準は、できないから変えましょうということは一切許されないものだとわれわれは解しております。ですから、その可能性については、環境基準がどうであるとかこうであるとかいうことは別にしまして、この技術評価ということで自動車やあるいは固定発生源の技術評価はずっとしてくるということをやったわけでございます。  それから、いろいろ経済と技術の問題がございます。これは行政としては達成の可能性は一体何か、あるいはそれが一体どのような影響を及ぼすかということは、これまた全然独立の問題でございます。これは行政としてはやはり基準を決める。基準を決めるときにフィージビリティーとかそういうものは本質的なものでは全くございません。決めた以上は、これは一体どのような可能性があってどのような程度影響が起こるものであるという、少なくとも責任のある行政をやらなければならないということでそういうものを独立にやっております。それから、科学的な点検というものはやはりデータが固まらなければできません。そういうことで六都市五年とか沿道調査とかいろいろな調査研究を整理をしてくるというスケジュールを出しております。  それからもう一つは、日本の国内問題だけではなしに国際的にも一体どこで合意が来るだろうかということが、これは非常に大きな問題でございました。そういうことで、WHOで委員会を開いて、そしてそこでその時点での国際的な合意が一体どこにあるかということをやってみようということも構想として出しておりましたし、また政策的に日本の環境政策のやり方は本当に経済界が言うような気違いじみた間違ったものであるかというそういう批判がいろいろあったわけですが、私どもは全くそうは思いませんでしたが、私どもだけ思ってもだめなわけであります。その点は一回、国際的な検討を虚心坦懐に受けてみたらどういうことを言うかということでOECDのを引っ張ってくる、そういうことでございまして、全く独自におのおののものを進めてまいったということでございまして、初めから改定を前提としてということではございません。あくまでも九条三項というものが公害対策基本法にある。それは必ず定期的に点検していくということがある。現在いろいろな議論があるが、これはできるだけの努力はしないと、できないからとか政治的な圧力だけでは絶体に変えることができない、それは科学的に点検をする。しかし、それに並行して、必要な要素は独立に進めていくということを、スケジュールを五十年十二月に出しまして、それを公にし中公審においても何度も説明をいたしております。
  41. 古寺宏

    古寺委員 過去において、SO2その他の改定に際しては、諮問をいたしまして改定をしているわけでございますが、今回の改定に限って中公審に諮問をなさらないというところが、いろいろ国民からもあるいは関係地方自治体等からも疑問の目で見られているわけでございます。なぜ皆さんからそういうような、いろいろと批判をされるような手続をなさらなければならないのか、いままでのようなルールを守ってきちっと、いままでの環境基準を改定するにしてもやはり中公審に諮問をいたしまして国民の合意を得られるような形でなぜこの改定を行おうとしないのか、その点について承りたいと思います。
  42. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御意見の中にSO2の改定についても中公審に諮問をしたというのがございましたが、諮問文は出しておりません。SO2に対する諮問は四十六年、最初環境庁が発足したときに環境基準について問うという非常に茫漠たる諮問文がありまして、その中でみんなルーチンのようにやっておったというのが実態でございます。ですからこのNO2の問題を扱うときに、これは非常に私ども気にいたしました。一体どうするか。そうすると、環境基準を問うという諮問のままで議論をすると、これは初めから環境基準を変えるという前提になるということでございます。あくまでも九条三項の趣旨にのっとってやるということがやはり基本ではないかということでございまして、いまある基準について定期的な検討を加えるということは、そのような惰性的なやり方ではなしに、はっきり九条三項の趣旨にのっとって一番問題の核心の部分を聞くというのが最も適切であるということで、今回のこの諮問の形をとったわけであります。これは、中で非常に議論をいたしました。  そういうことでございまして、その中で最も核心の部分は何かと言いますと、科学者がだれにも煩わされることなく公正なメンバー構成で冷静、慎重に内外の議論を全部検討できるかどうか、実は、ここが九条三項の一番核心でございます。この問題が核心でございます。そこが一番重要な事項であるということでございまして、その問題をはっきり出しながら新たな諮問をした。ですから、変えるか変えないかという前提は持っておりません。九条三項が出ればこれは全く新しい条件ができた。そうすると、それに対して必要な改定をするということは、これは政府としての責任で九条三項の趣旨にのっとってやるということが適切であるということでございます。ただ、この場合に諮問という形はとっておりませんが、中公審の御意見を聞く努力は最大限にいたしております。大気部会を二回開きまして、そしてそこで非常に自由ないろいろな角度からの御議論をいただいております。大気部会の御意見はほとんど出尽くしたというところでございます。実にいろいろな違う立場の方がおられます。それから総合部会も開かれまして、そこでもまた非常に批判的ないろいろな御意見が出ました。ですから、先ほどちょっとお答えした中にありました専門委員会報告が出たときに、中公審の意見については、これは今後どのようなぐあいに私どもが基準の検討をするかということについては、すべての資料をお出しをして、御説明をして、御意見は広く伺ってまいりますということを審議会で申しておりまして、そのままのやり方をいたしております。  それからもう一つは、あらゆるところの意見を聞かなければいけないということでございまして、これは地方自治体ともこれほどまでにいろいろな段階の会合、話し合いを持ったことはいままでないと思います。また、地方自治体が何を言っているか、すべてこれは中公審にも紹介をいたしております。それから、被害者団体の方も、これは被害者団体が多数集団でおいでになったのに、二回か三回にわたって、やはり一時間以上の間、いろいろお話し合いもいたしております。短い時間にも十分にお話し合いをいたしております。それから、新聞や雑誌に出た意見も、すべて整理しております。それを審議会に紹介しております。そこで御意見を伺っております。  そこで、決断するのは政府責任でございます。そういうことで、決断は政府責任で九条三項の趣旨を厳しく体してやる。そのときに、審議会の先生方の御意見やあらゆる方面の御意見は、頭に十分置いて、慎重に検討した上でやるということでございまして、決して専門委員会答申が出れば黙ってばさっと役所がやってしまうというようなけしからぬ考え方を持ってやっているわけではございません。
  43. 古寺宏

    古寺委員 ただいまの御答弁をお聞きいたしましても、たとえば大気部会あるいは総合部会、そういう専門的な立場にある方々ですら非常に意見がまちまちである、こういうようなお話でございます。それほどNOxの環境基準というものは、非常に重要な問題ではないかと私は思うわけなんですね。ですから、そういう問題であればあるほど、もちろん行政が行政の目標としての環境基準を決めるわけでございますが、あらゆる方々の合意を得られるような形で、基準を検討する場合においてはきちっと中公審なりそういうところに諮問をいたしまして、そうして、ある一つの方向なりあるいは数値なりそういうものを検討していただく、こういう配慮というものが私は大事ではないかと思うのです。何かお話をずっと承っておりますと、非常に無理にも、環境基準はクライテリアが出た以上は改定をせぬといかぬのだ、それはあくまでも行政サイド、政府の問題であって、いまさら他の方々の意見なんか聞く余地はないのだ、われわれが考えている方針で設定すればいいんだ、その土台としてのクライテリアというものがあるじゃないか、こういうふうにしか受け取れないわけでございますが、やはり手続の上においてはあくまでも民主的に、国民から納得が得られるような形で、この改定の作業については準備を進めるべきではないか、そういう配慮が必要ではないか、私はこういうふうに考えるわけなんでございますが、同じことを何遍も繰り返してお聞きするようで申しわけないが、どういうわけでそういうふうに固執をなさるのか、なぜ一歩譲って国民の世論に耳を傾けてそういうような配慮をなさらないのか、その点について承りたいと思います。
  44. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いろいろの御意見があったということでございますけれども、いま申し上げた、政府において適切に検討して基準を決めるということについて、審議会のほとんどすべての方がそういうことでいいという御議論をしておられるわけでありまして、一、二の方は、もう一回やるべきだという御議論もありましたが、全体としてはそういう御意見であったということで、別にそういう御議論ではございません。  それからもう一つは、だれの言うことにも耳をかさないという形は一切とっておりません。これは本当にあらゆるものを公開をいたしまして、それで国会でも私は正直に申し上げているつもりでございます。また、資料につきましても、要望のある方や反対の方にも、来られた方には全部差し上げて御説明をしておりまして、聞くという手段においては最大限のものを努力をしている、また、こちらの説明も極力いたしておるという段階でございます。そういうことで、最終の前にもう一度大気部会を開いた方がいいという考え方を私ども持っているということは、一言つけ加えさせておいていただきます。
  45. 古寺宏

    古寺委員 環境庁長官お尋ねしたいのですが、橋本大気保全局長は、公害の問題についてはいままでも非常に献身的にいろいろ行政を進めてこられた、世界的にもベテランなわけでございますが、今回の中公審答申、それから、さらにはまた、環境基準の見直しの問題につきましては、巷間いろいろなことが言われているわけなんですね。そういう面については、やはり環境庁長官として十分に配慮をしていくということが必要じゃないか、こう思うのですが、外国の例その他を見ましても、こういう問題はあくまでも民主的に、国民のコンセンサスが得られるような方向で手続を進めていくべきではないか、こういうふうに私、考えるのですが、長官はどうお考えでございますか。
  46. 山田久就

    ○山田国務大臣 先ほどから橋本局長からるるお話申し上げているところですけれども、ちょっとそこに何か誤解があるのじゃないかと思うのですけれども、一番大事なわれわれの健康を守るという、その基礎の点ですね、高い確率でとにかく健康が保持されるという点、この判定条件と指針というものは、何物にも左右されない純然たる科学的な今日までのいろいろなデータ、最新のデータで言えば、これなら健康に絶対大丈夫だという答申が得られた。そこで、それが九条三項に言う最新の、つまり科学的判断というもので、したがって、われわれが今度環境基準というものを決めるといっても、勝手にいろいろなことを決めるというのではなくて、絶対に健康の守られる、その基礎に立って、たとえばいろんなことを考慮に入れて、地域的あるいは時間的その他いろいろなことを考えて、これについては行政的にはどういうように対応する拘束力を持つという問題については、そういう考慮も払いながら、動かない基礎のもとにおいてどういうような対応策をやるかということは、これは行政の責任であって、科学者の問題ということじゃないわけで、その点、そういうことでわれわれが対応しようとしておるのだということでございます。  あくまでも健康を守るという、いまの答申基準、これは動かない、これが一番大事な点で、そこの基礎の上で、ひとついろいろな点を考慮して、地域的な問題時間的な問題、その他の考慮というものを払いながら、その基礎でどういうふうにわれわれの対応策というものを考慮に入れた一つ基準というものを考えていくかということであって、私は、これが一番至当な方策であると考えているわけでございます。この点は御理解いただけるのじゃないかと思うのですけれども、どうかひとつ、ぜひ御理解いただきたいものと考えております。
  47. 古寺宏

    古寺委員 どうも大臣の御答弁もちょっと私、ぴんとこないのですね。環境基準を改定する基礎になるものはこの答申であり、クライテリアですね。九条三項によって新しい科学的な知見をどんどん吸収していく、豊富にしていく、これは必要なことでございましょう。それに基づいて環境基準を設定するのに、ただいまのお話でございますと、科学者は科学者なのであって、環境基準を決めるのはあくまでも行政サイドなのだから、科学者は関係がない、こうおっしゃいますね。確かに環境基準をお決めになるのは行政のサイドでございましょう。しかし、その環境基準を決めるもとになる、土台になるものがこの答申であり、クライテリアでございますよ。指針値でございますよ。そうした場合に、行政サイドが環境基準を設定する場合に、この科学的な知見を行政目標である環境基準の上にどう反映していったらいいのか、どのように取り入れていったらいいのか、そういう科学者の意見というものも十分にお聞きするなり、あるいはそういう知識も十分に吸収した上で、将来の目標に立っての環境基準の設定というものが必要になってくるわけじゃないですか。それをもう全然無視してしまって、こういう結論が出たんだから、結論は結論でいいんだ、環境基準を検討するのはあくまでもわれわれサイドなんだから、もうそれはそれでいいんだ——だけれども、この文章だけお読みになって、長官おわかりになりますか。それは橋本局長は当事者であるからおわかりになっているかもわかりませんよ。しかし、大臣がこの答申をお読みになって、この科学的な知見がどういうものであるということをすべて理解できますか。この答申をつくるために、いままでせっかく一生懸命討議をされ、今日まで研究をなさってきた専門委員会方々の努力というものは全く無視されたような形で大臣に受け取られている、このようにしかいま私は理解できないのでございますが、そういう意味から言っても、この答申をお出しになるために一生懸命に御協力をいただいたそういう科学者の方々の御意見というものも十分に尊重して環境基準を検討する、こういう姿勢が行政府に必要である、私はこう思うのですが、いかがですか。
  48. 山田久就

    ○山田国務大臣 私は、先ほどから申し上げておりますように、科学的な判定条件あるいは指針そのものについてはちゃんと答申を受けているわけです。したがって、この委員会を排除するとか、そんなことを申し上げているんじゃなくて、答申を受けた後においては、環境基準そのものはわれわれの責任で改めてやるべきものだとわれわれは心得ている。それは先ほど局長も言っております。いろいろな意見等を聞くというようなことはやっておる、しかし改めて環境基準そのものについて答申を得ようとすることはわれわれは考えておらない、こういうことを申し上げているわけでございまして、その点、ひとつぜひ御理解をいただきたいと思います。
  49. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 一言だけ申し添えることをお許しいただきたいのですが、部会の中には科学者の方がおられます。ですから、科学者の人を全然除外してやっているわけでは全くございません。部会の中におられます。そういうことでございまして、大臣は、総合政策として議論をするのに、科学者だけの意見ではなしに、科学的な知見と判断は答申に尽きておる、それから先の問題はいろいろな角度の議論があるということをおっしゃったわけでして、WHOのレポートの中にもございますが、やはり責任をはっきり分けないとだめだということをいましきりに言われるわけです。これは独断専行をしろという意味ではございません。やはりWHOのレポートの中に、危険性、そういうものの科学についての専門家と、それから行政や政策の面についていろいろな角度から総合的に議論のできる人とは、これはまた少し種類が違うという議論をしておるわけです。  そのように、科学と行政がどういうぐあいに関係をつけてやっていくか、あるいは責任をはっきり分けてやっていくか、あるいは科学者を政治や社会的なトラブルの中に巻き込まないようにするか。端的に申しまして、私は、科学の畑は何物にも災いされず自由におっしゃっていただいて、しかも考え方の違ういろいろな方が自由に議論をされて、これぐらいは合意した、こういう確かさとこういう不確かさがあるとおっしゃっていただくのが科学者の一番キーではないか。そこから先の総合政策としての判断を行政は逃げるべきではないということでございまして、何も独断専行をして、ほかのやつを聞かぬという意味では毛頭ございません。部会の中にはいろいろな学者の方もおられます。医学だけじゃございません。いろいろな方がおられます。もちろん経済の方も法律の方もおられます。そのような趣旨でございますので、大臣のおっしゃったのを誤解をされないようにひとつお願いいたしたいと思います。
  50. 古寺宏

    古寺委員 ですから、中公審の専門委員会でいろいろ検討されて、そしてこの答申中公審の名前でなされておりますが、実際にこの内容を煮詰めていったのは専門部会でございましょう。そのほかに大気部会もございます。総合部会もございます。関連したいろいろな部会があるわけです。そういうような中公審に、クライテリアはクライテリアとして、今度は環境基準の問題についてもう一回政府考えお話しをなさって、御相談をして、諮問をして、そして中公審の御意見を十分に承る。そういうような手続をなぜなさらないのかということを私は何回も申し上げているんですよ。  先ほどの大臣のお話をお聞きしますと、クライテリアはもうこれで済んだんだから、関係ないんだから、あとはわれわれが環境基準を決めればいいんだ。それはもちろんお決めになることは結構です。しかし、その手続の上でなぜもっと民主的に、国民の合意が得られるような方法でもって環境基準の検討をおやりにならないのかということをいまお聞きしているわけですから、その点について、今度は大臣からもう一遍御答弁をお願いしたいと思うのです。
  51. 山田久就

    ○山田国務大臣 どうも繰り返しみたいになって非常に恐縮ですけれども、われわれが一番大事な中核の点についてお諮りをした以上、行政の責任、行政の担当になるということについては、まあ非公式にいろいろな意見等は事実聞く場合があるし、またそういうこともやっておりますけれども、改めてこれそのものについてかけるということは、これはやはり責任の分担ということで、われわれはわれわれの責任でやりたい、こう考えているということで、中公審を無視しようというようなつもりはちっともありませんし、また事実そういうことでやってきておる点、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  52. 古寺宏

    古寺委員 それでは大臣、五十年の十二月九日にいまの厚生大臣、当時の小沢環境庁長官が、この環境基準緩和に対する質問についてこういうふうにお答えになっていますよ。産業界や一部の学者が何と言っても、環境基準の改定は常に厳密に科学的に行う、改定するにしても、厳しい方向に向かって改定する方針であり、現在の〇・〇二Pppmを緩和する意図は全くない。これは新聞にも載っておりますが、こういうふうに答弁なさっております。  そういたしますと、小沢環境庁長官のお考えと現在の環境庁長官のお考えは違うというふうに理解してよろしいですか。
  53. 山田久就

    ○山田国務大臣 小沢大臣の五十年十二月の段階での御判断で、私はそれで正しいのだろうと思います。われわれとしては、九条第三項によって新しい科学的な判断が出された、そうするならば再検討するということは法の命ずるところによって処置すべきものであるというのがわれわれの今日の立場でございます。
  54. 古寺宏

    古寺委員 これは局長さんじゃなくて大臣にお聞きします。  それじゃ、昭和五十年の小沢大臣が答弁した時点と現時点ではどういうような科学的な知見が変わっておりますか、御答弁をお願いします。
  55. 山田久就

    ○山田国務大臣 御案内のとおり、今般われわれが中公審に諮問していた点に対しての答申が出されてきたという点が、新しい科学的判断が出されたというこの現実でございます。
  56. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 どういう点が違っておるかということでございますが、一つは非常に豊かになっておりまして、論文の数等も圧倒的にふえております。  その中で一番核心の問題でいきますと、前回、年平均〇・〇二あたり、あるいは日平均にしてみると〇・〇四あたりがわりあい続くようなところで、有症率が大体バックグラウンドの辺のところで、そこからどうも相関があるのじゃないかと言われたことは前よりも相当確かになってまいりました。これは間違いございません。しかし、どうもそれだけでは言い切れないということもまた一方に明らかになってああいう幅が出されてきたわけでございます。  前回のときに非常に気にいたしました肺胞上皮の異常増殖という知見につきましては、あれはがんになるのではないかという心配を持っておりましたが、その後の研究であれは途中でとまってしまってそういう問題はない。いま国際的にNO2の発がん性が学問的に完全に否定されたとまでは、それは非常にむずかしいですから、言える段階ではございませんが、NO2を発がん性の角度から扱うという考え方は、少なくとも研究ベースではございますが、いまのところそういうものはないということが落ちたわけでございます。  その後、一種の篤志家といいますか、志願の人の臨床実験の成績が出てまいりまして、疫学はかなり豊富になってまいりました。動物実験も微細になってまいりました。そういう観点から見ますと、前回の関連性があるとか年平均〇・〇二の辺ではないかということは、鈴木先生がおっしゃったように、もう少し確かになったことは確かに事実でございますが、前回ものすごく注目したものはドロップしてきている、あるいは非常に人間のデータが得られてもっと正しくいろいろ言えるようになった。そのほかいろいろございますが、キーを申すとそういうところではないか。また、測定データも豊富になり、測定方法もより正確なものに移ってきつつある、こういうことでございます。
  57. 古寺宏

    古寺委員 そこで、答申の中に「提案された指針は、その濃度レベル以下では、高い確率で人の健康への好ましくない影響をさけることができると判断されるものである。」と述べておられますが、ここで言うところの「高い確率」というのは具体的にはどういうことでございますか。
  58. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 「高い確率」とはどういうことかということでございますが、これは専門家の判断でございます。  たとえば短期暴露にいたしましても、ぜんそくの患者に実際ガスを暴露してやってみて、しかもぜんそくを起こすわけじゃなしに過敏性がちょっと出るがすぐまたもとに戻ってしまうというようなもの、つまり、死亡とか病気とか機能低下でもとに戻らないとか、そのような健康に好ましくない影響というよりももっと低いレベルの、普通の健康の範囲内で動いている範囲内のデータとしてこれをつかまえたということでございます。そういう点が志願者の実験においてもありますし、また疫学調査の方は、疫学はわりあい高い確率の物の考え方でやるわけでございますから、そういうことでございます。ただ、何%の確率かということは何とも申せることではございませんが、ノーマルの健康の範囲内としてこの数字が言えるということが、これだけの文献をお集めになりますと先生方の専門的な判断として出されたというぐあいに御理解いただければ結構でございます。
  59. 古寺宏

    古寺委員 そういたしますと、大気汚染の健康への影響程度の分類に六段階を今度は示しておられるわけでございますが、どの線からこういう「高い確率」ということが言われるわけでございます。
  60. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 今回の専門委員会考え方は、従来とは相当変わって進歩してまいりまして、いま先生御指摘の六つの段階を頭に置いて整理をされたわけです。  一つは、現在の医学、生物学的な方法では全く影響が観察されない段階、これは何の反応もない全く無影響レベルでございます。その次が医学、生物学的な影響は観察されるけれども、それはもとに戻るという範囲内であって、これは生体の恒常性の範囲内。先生はお医者さんでございますから御理解いただけると思いますが、生体が普通に調節して動いている範囲内にとどまる、これが第二のレベルでございます。それから、第三のレベルは、観察された影響がどうももとに戻るかどうかわからない、あるいは生体の恒常性の保持がどうも破綻してきているのではないか、病気に発展していくのかどうかちょっと明らかでない。この辺になると、これは少し片一方の不健康の方に偏っているわけであります。それから、第四のところで、観察された影響が疾病との関連で解釈される、これはもう病気のサインである。それから、第五が疾病と診断される段階。第六が死亡でございます。  そういうことでいきますと、今回おっしゃっておられるのは一と二の範囲——一の何も影響のない範囲をとっておられません。ですから、影響がないレベルということは一切おっしゃっておりません。確かに影響はあるが、医学的、生物学的な影響が観察されるけれども、それは普通に調節していく範囲内の影響なんだというレベルをおっしゃっておられまして、従来のどのレポートの中にもこれだけの考えを健康のレベルで整理されたものはなく、今回のレポートが初めてであるということでございます。
  61. 古寺宏

    古寺委員 そういたしますと、「高い確率で人の健康への好ましくない影響をさけることができる」と述べておられるのは、具体的に申しますと、先ほどの気管支ぜんそくの例でございますとか小学生の例がこの中に載っておりますが、そういう例がこの中に、具体的な調査の実例としては入るわけでございますか。
  62. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のございました、ぜんそく患者の過敏性を増すけれども、全くノーマルな範囲内でもとに戻ってしまう範囲内で、病的な範囲内に入るわけではないということでございますし、もう一つは、先ほど御指摘のあった学童の少し敏感な人の肺の非常に深いところの肺機能の動きがあるが、それは全く正常な範囲であるということで、今回のはそれの以下に保つという考え方を持ってやっておるわけです。〇・一あるいは〇・二という短時間値でぜんそく患者が見られた。しかし、〇・二になったら異常にふえたということは別にないという状態でございます。〇・一も別に病気とかあるいは全く異常になったというわけでもない。すると、そのようなところでセンシティブに見ておこう。それから、その肺機能の方の〇・〇四のところで正常の範囲内の動きが見られるけれども、これはノーマルな範囲内だ。そうすると年平均〇・〇四よりもう一つ下の〇・〇三にこれを抑えてくるというような考え方を持っておるわけです。これは「高い確率で」という言い方は、やはりこれは学問の世界で絶対かという議論をしたら、これは良心的な学者は絶対だなんという学者はどこにもいないわけでございまして、これは専門的な判断で見ると「高い確率で」という言い方をしておられるというとこを、ひとつ御理解をお願いしたいと思います。
  63. 古寺宏

    古寺委員 先日から安全率の問題が何回か言われているわけでございますが、この答申の中に言われているところの「高い確率で人の健康への好ましくない影響をさけることができると判断される」こういう文言から安全率の必要はないというような御答弁もあったわけでございますが、どういうわけでこの安全係数は考慮しなくてもよろしいわけでございますか。
  64. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 安全係数につきましては、鈴木先生が参議院でおっしゃられたことは、一般原則として私も全くそのとおりに思います。今回の答申のところで、どういうわけでそういうことを行政がもう一回掛けると言わないのかという御質問でございますが、一つは、安全率の問題は専門委員会で議論されておるわけであります。非常にこれは議論されておるわけであります。議論されたときに、この動物実験のデータしかない、そこから何か割り出さなければならない、これはやはり安全率を使う以外に仕方がないということであります。しかし、あくまでも人間のデータがあるときにはそれを使うということでありまして、人間のデータを見るときには一体どのようなデータであるかということでこれを判断ができる。それからもう一つ、疫学の方も、これは複合汚染の非特異的な問題でありまして、しかも、そのほかにもNO2の暴露を受けている人を、一番そのNO2の暴露としては薄い戸外の空気で見ておるわけですから、疫学のデータで物を考えること自身非常にその安全性を考えながら判断する材料になるんだという考え方を持っておられるわけであります。  そういうことがありますし、それからもう一つは、いままでは病気とか死亡とか患者の症状増悪とかあるいは完全な機能の低下、こういう、明らかにそういうサインを中心としたものでばかりやられておったわけです。有症率もございましたが、今度のものと違うのは、有症率のほかに、明らかに、死亡とか病気とか増悪とか機能低下というデータが全部リンクしたデータでいままでやっておったわけです。ところが今度のNO2の問題の場合には、いま申しますような、一般の地域住民でNO2の汚染がえらい上がったり何かしたために死亡が高まったというのは、まだレポートがないわけです。これはロスで非常に一生懸命調ベたのですが出ない、ニューヨークでいろいろやったのだけれども出ないということでございます。それから、有病率がぐうっと——有症率ではございません、訴えじゃございません。有病率としてはっきり診断された患者さんの数がぐうっと上がってきたというデータもこれまたないわけでございます。使っているのは疫学の有症率であります。しかも、日本は、アメリカのようにこの一年間に二カ月以上のものが二年続くというような、そんなところをとらないで、一年間に三カ月ぐらいせきやたんがぼっと出るというものも全部拾ってきているのです。そういう点で、これは健康の範囲でということで見ておられるわけです。  それから、少しはしょるようでございますが、NO2の特異的な影響を見ているとして、せきやたんを見ておるわけじゃございません。特異的な影響も免疫の方で非常に高いところしか出てきません。それから、複合汚染ですから、ほかのものの影響も全部入っていまして、SO2が過去に高ければそこの有症率が高くなっておるわけです。そういうので、今度の六都市、これを見ましても、高いところは、もうもともと札つきのSO2の悪かったところでございます。  そういうようないろいろの問題を入れてみますと、これはやはり健康のレベルも非常にいいところに見ておられるし、しかもほかのデータも実際にないし、あるものについては、短期暴露については人間の志願者のデータ、長期暴露については疫学のデータ、これだけのもので判断をしておられるということから見ると、安全率を今度の数字には全然使っておられません。安全率を使っておられませんが、非常に健康なベースのものを問題としてデータを固められたということでございまして、従来のような死亡やあるいは病気そのもののデータからだけ今度の数字がもしも出てきたとしましたら、これは環境庁としてはセーフティを掛けます。あるいは非常にNO2の特異的な影響ということであるとしましたら、これは環境庁として当然、あれだけ出てきても掛けます。けれども、全くそういうものではないということから考えて、しかも専門家同士で議論して、安全率の議論もした結果、あそこに高い確率でごうごうということが出た以上、それから先により厳しくするかどうかということは、これは科学的な合意ではこれでと、こう来たわけですから、これは不確かさは残ります。そこから先は、やはり全体的な総合政策的な判断ということでこれはいい、それでやるべきで、科学者の議論では、そこかち先は、する理由がなかなか出てこないというところ、というぐあいに解しておるわけで、安全率を要らない、こういうぐあいに申しております。
  65. 古寺宏

    古寺委員 時間がないので、その論議はいずれまた改めて行うことにいたしますが、人口集団の中には、乳幼児とかあるいは病人とか老人とか、そういう方々もいらっしゃるわけですね。そういう方々に対する安全率は、いままでの局長さんの御答弁では私、十分に納得できないのです。と申しますのは、短期暴露については、これはある程度理解ができますが、長期暴露については、こういう方々に対するいわゆる安全率というものは十分に見込まれていないというようにしか判断ができないわけでございます。したがって、私の考えとしては、やはりそういうような老人や乳幼児あるいは病人という方々に対する安全係数というものは、これは見込まなければならない、こういうふうに考えられるわけでございます。  このお話をやっていますと時間がなくなってしまいますので、次に移りますが、それでは一体、環境庁としては、環境基準の値はどのくらいをお考えになっておられるのか、承りたいと思います。
  66. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 環境基準の値をどうするかは、まだ最終的に腹を決めているわけではございません。ただ、これは、患者さんのグループにも、自治体のグループにも、産業界のグループの方にも、あらゆるところではっきり言っておりますのは、答申にある幅、あれを最大限に尊重してやります。現在の御要望は答申にある幅よりも外れてもっと緩くしてしまえという御議論と、あれからさらに外れてもっと厳しくしてしまえという御議論がありますが、私どもは、この答申にある幅は最大限に尊重してこれをやっていくということが基本の立場でありまして、基準設定という問題の数字は、まだ最終的にそこまで腹を固めておらないということでございます。
  67. 古寺宏

    古寺委員 いままでのいろいろお話を総合してみますと、われわれとしては、緩和する方向に環境庁考え方が動いているのじゃないか、これは先ほどの大臣の答弁からもうかがわれるわけでございますが、仮にクライテリアがそのまま環境基準に採用されたとするならば、〇・〇四から〇・〇六ppm、これを満足する測定局というものは、大体全体でもって五〇から八五%にそういう地区が達するわけです。そういう地区は今後対策が何ら要らぬということになる。いままで防止協定を組んで、そして規制を行おうとしている地域が〇・〇四から〇・〇六。〇・〇四で五〇%ちょっとでございます。〇・〇六になった場合には八五%の地域が何ら対策が要らないということになる、そういうふうに理解してよろしいですか。
  68. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のありましたのは、ステーションの数字から割るとそういうことだということであります。ですから、対策は、ある地域で一番高いところはどれだけあるか、ほかは低いところがあります。たとえば東京都の意見のように、市原は何もやらぬでいいのじゃないか、そんなことは全然ございません。広域にながめてみて、そして高い汚染がここにある、そうすると、その広域をコントロールするには、たとえほかに低いところがあっても、それからがくっと下げるということでございますから、この数字がステーションの数字としてはまさしくそのとおりでございます。私どもそれは十分頭に置かなければ、かえって悪くするという議論に結びついたら、これはいけないと思います。そういうことで、地域の問題として考えますと、必ずしもそのようなことではない。ですから、一番高いところがあって、だんだん低くなるのです。問題は、対策を打つときに、地域の一番高いところを相手にそこのカット率を掛けますから、低いところにみんな下がってくるわけです。そのような形になるということは、ひとつ誤解のないようにしていただきたい。  それから、この数字はあくまでも地域ステーションです。ですから、沿道ステーションにしますと、はるかに率は悪くなると思います。
  69. 古寺宏

    古寺委員 それから、移動発生源である自動車の排ガスの対策装置関係の問題でございますが、昭和五十二年の十一月十一日には、日産自動車が国内で三十八万八千七百五十八台、輸出が十六万一千七十九台、合計五十四万九千八百三十七台、この対策費用が七億円。五十三年の六月二日には、日産自動車が、国内が四十二万六千五百九十三台、輸出が十四万二千四百五十七台、合計五十六万九千五十台、この費用は約七億円。こういうふうに約十四億円のリコール対策費によって排ガスのいわゆる欠陥装置の取りかえと申しますか、こういうことを行っておりますね。  それから、本田自動車は五十二年の十二月二十七日、国内が三十九万九千二百四十八台、輸出が四十二万六千六百六十四台、合計で八十二万五千九百十二台、これが約七億四千万円です。こういうような移動発生源に対して、この環境基準が緩和された場合に排出基準の緩和が行われるわけですか。あるいはまた来年から、昭和五十四年から行われるトラック、バス、こういうものに対する排出規制は緩和をするわけでございますか、その点を伺います。
  70. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 緩和をするような考え方は全くございませんし、排出基準の長期目標段階が全部できた暁に、初めて、いま先生のおっしゃった〇・〇六という、沿道がクリアできるということでございまして、緩和などは毛頭考えられないという数字でございます。
  71. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、固定発生源で現在、脱硝装置その他をやらない、こういう施設をしていないところは、環境基準が緩和された場合には、先ほども申し上げましたように、〇・〇四になった場合には、大体測定局で考えますならば五〇%以上のそういうところの企業は、固定発生源は対策が要らない、〇・〇六にした場合には八五%の企業が対策が要らないということになります。一方では移動発生源の方はびしびし規制をして、自動車業界がそれで黙っていると思いますか。私は、この環境基準の改定の問題は、いまここでこのように論議しているような問題ではなくして、今後この改定が行われた場合には大変な問題が次から次と発生する、こういうことが予想されるわけです。そういう面について十二分に環境庁長官は配慮をして、これら一連の手続作業をおやりになっているのかどうか。こういうNOxの問題によって、国内産業界はもちろんのこと、国民に不安を与え、紛争を巻き起こす、そういう重大な問題であるという認識に立たれてこの問題に対処しておられるかどうか、最後に承りたいと思います。
  72. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 大臣のお答えになります前に、非常に重要なポイントを御指摘になりましたので、一言だけ申し上げます。  固定と移動と両方ともこれは全く均衡をとって、両方とも五十数%ずつばしっとカットしなければ全体のものができません。ですから、固定のものが異常に緩むというようなことは、いま非常に問題になる地域で起こりっこのないことであります。決して不均衡の起こるような問題ではございません。移動と固定と両方コントリビューションをやりましてやることにしておりますので、先生のおっしゃるようなことは、もう十分頭に入れながら計算をいたしております。
  73. 山田久就

    ○山田国務大臣 いま大変いろいろな懸念の御表明がありましたけれども、十分その点は配慮して対処するつもりでおります。
  74. 古寺宏

    古寺委員 それでは、残った問題は次回に行います。
  75. 久保等

    久保委員長 次に、中井洽君。
  76. 中井洽

    ○中井委員 最初に大臣にお尋ねをいたします。  過日から、この二酸化窒素環境基準の見直し問題、大変議論を呼んでいるわけであります。問題なのは、私が聞くところで初めて、とにかく環境問題、公害問題が本当に真剣に言われるようになってから初めて、こういった環境基準の、巷間伝わるところでは引き下げというものが行われる、こういうことにあろうかと思うのであります。科学が進むに従って、その科学に基づいてどんどんと環境基準を変えていく、あるいは見直していく、これはもうあたりまえなことで、数年たてばこういったことでやかましく騒ぐということもなくなるのであろう、このように思うわけでありますが、しかし、日本におきましては、引き下げるという方向で動き出している、これはもう初めてのことだと思うわけであります。その点についての大臣の率直な御見解、御感想というものはどうでございますか。
  77. 山田久就

    ○山田国務大臣 われわれは、この環境基準の問題の基礎、これはもう客観的な、そして科学的な基準によらなければいけない、あくまでこういう点に基づいてやりたい、こう考えているわけでございます。
  78. 中井洽

    ○中井委員 先ほども申し上げたように、科学的にやっていく、これはもうあたりまえのことでございます。大いに進めてほしいわけでございますが、環境基準先ほどから見直しの場合に、いろいろ橋本さんのお話を聞いておると、専門委員会先生方がほかのいろいろな意見ということに影響されずに科学だけで判断をするのだ、こういう形で今回の諮問をした、あるいは答申をいただいた、こういうことでありますが、これは今後ありとあらゆる環境基準の見直しあるいはNOxだけではなしに、そういったものの見直しの場合にもそういった形でおやりになるわけですか。
  79. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 先ほど申し上げましたように、やはり科学的なデータが固まらないと基準規制もできないということでは困る、もちろん、ある程度なければ困りますが。そこで割り切ってやるということを日本の公害対策はやってきております。そういうことで、やはり一定の時期に来て問題のあるものについてちゃんと科学的に見直すということが最も大事なのではないか。やはり過去において、科学的なデータを冷静に見直すことがなかなかしにくい時代があったことも事実だろうと思っております。
  80. 中井洽

    ○中井委員 先ほどから安全率の問題等いろいろ出ているわけでありますが、そういった問題全体を考えましたときに、五年前、いわゆる昭和四十八年にこういった基準をつくったときと、いまのNOxに対するあるいは二酸化窒素に対する科学の予知の力、こういったものを、ぼくらは専門家じゃないものですからいろいろ聞いてもわからないのです。橋本さん自体として大体何倍ぐらい進んだとお考えになっていらっしゃいますか。
  81. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 何倍ぐらいとは申せませんが、いままでのいろいろなクライテリアの文章の中では最も充実したものであろうというぐあいに考えております。
  82. 中井洽

    ○中井委員 しかし逆に言えば、いまの答申をなさった専門委員会あるいはそれらが使われたデータ、それだけがすべてだということでもないと思うのであります。今後いろいろな科学的なもの、研究が進むあるいはデータがどんどん出てくる、こういったときに毎年毎年そういった形で見直しというものをしていくのか、あるいは何年間この次の環境基準という形にのっとってやって、そしてその間たまった技術で、また科学の進歩で判定をし直す、こういうことにされるのか、あるいはその年数を今度と一緒に五年というふうに考えておられるのか、そういった点はどうですか。
  83. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 毎年毎年というのはやはり無理でございます。ただ、測定法のザルツマン係数を最終的にどうするかぐらい、これは一年ぐらいの整理で全部ついてしまうわけです。ですから、そういうものは委員会でも指摘しておりますので、これは一年くらいのところで見直しの整理はできますが、全体問題としてのやり方はやはり少なくても五年は最低置いて見てみる。それから、いまいろんな不確定問題があって論争になっている焦点といいますのは、これから五年か十年の調査研究計画をみっちり立てて、いろんな批判のあったところを最大限に克服するようにして、そのかわりどの点だけはまだできないということを明らかにした上でこの次の五年か十年後にはより確かな知見をつかまえるというようなことが最も適切なのではないかというぐあいに考えておるわけであります。
  84. 中井洽

    ○中井委員 全くこれも素人意見で申しわけないわけでございますが、今回こういう形で科学的に専門委員会の方がおやりになって出された。これを安全率も何も掛けずにひとつ、先ほどお話のあったような形で環境基準として考えていく、こういうことでありますが、環境基準そのものをいまの日平均〇・〇二という形で置いておいていわゆる指針あるいは年次計画、そういったものを今度の答申にのっとって変えていく、そういう形では運用できないわけですか。
  85. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 そこは非常にいろいろの御議論があるところだと思うのですが、〇・〇二という環境基準がいかなる意味といかなる役割りとどのような社会的な結末を招いておるか、これだけはやはり全体的に判断してみる必要があるということでございます。そういうことで一番心配しているのは、〇・〇二を超えればもう危ないんじゃないか、病気になるんじゃないかということであります。これはやはりちゃんと是正する必要があると思います。より新しい知見が出てまいっておりますから。ですから人をみだりに心配させるという方式というのはやはり正しくないんじゃないか。これは国際的に見て、日本の言っている非常な心配がどの辺まで国際的なアカデミックなサークル、あるいはアカデミックでなくても常識的な人々に確かに理解できて受け入れられるかということから全くかけ離れたものというのは、これはどこかにおかしなところがあるのじゃないかと思うのです。そういう問題と、それからもう一つは、〇・〇二があることによって実にいろいろないいものができてきました。五十三年規制もできましたし、長期目標も立ちましたし、脱硝技術も世界に先駆けて全部日本がつかまえ非常にいいものができてきたこと、これはもう間違いございません。オキシダント対策も、日本の対策は非常に成功してきていると思います。しかしまた、片一方の面におきまして、〇・〇二を超えるような道路をつくったらいけないんだとか、〇・〇二を超えるからこれは差しとめしなければいけないとか、〇・〇二を超えているからその間じゅう全部補償しなければいけない——これは裁判は自由であります。裁判は全く自由であります。それは別に悪いとかいいとか言う気は全然ありません。全然ありませんけれども、そのような問題の中で〇・〇二が受け取られておるということは事実であります。しかも判断するときに基準としてどうなっているかということはどなたもやはり一つの尺度とされるということでございます。そういうことで、やはり一番現在の時点でちゃんとしたものをするということであります。それからもう一つは、〇・〇二と言いながら、片っ方で一〇〇ppmや二〇〇ppmのたばこをのんで、これをけろっとほっておる。あるいは〇・〇二と言いながら、家の中は非常に高い濃度である。そうすると、家の中にいたら非常に病気になって悪いのだろうか、こういう心配も持つわけであります。もちろん空気はきれいにしなければなりません。そうしますと、やはりもう少しバランスのとれた科学的な、常識的な形のものにちゃんとするのは、これは行政の責任ではないか。私は、行政というのはいろいろな角度から責められますが、それが必要だと思います。片っ方の人は、確実に病気になったという証拠がないからもっと緩めろと言います。これはできません。また、片っ方は、もっときれいにすればいいのだ、もう道路なんかできなくたっていいとか、そういう議論に結びつく。これもまた困ります。ですから、いままでのものが間違いだとかなんとかいう意味でなしに、非常にいいものが生まれたことは事実でございますが、また一方で非常に困った社会的な紛争やそういうものを生ずる一つの起点になっておったということも事実でございますし、それからその危険性の比較考量で余りにもバランスを失した考え方ではないか。国際的に言えばなかなか通りにくい。そこをやはりより積極的に、よそよりもはるかに厳しいスタンスをとっておりますが、そういうものに直して正道に乗せていくということが基本ではないか、こういうぐあいに思っております。
  86. 中井洽

    ○中井委員 日平均〇・〇二という形でずいぶん厳し過ぎるじゃないか、とうていできないぞという議論はずいぶんあったわけであります。大体いまの橋本さんのお話のあったように、この〇・〇二を守らないから道路をつくったらいかぬのだ、あるいは裁判をするとか、そういった問題として国民は余りとらまえていないのじゃないかという気が私はする。ほかのものについてはおっしゃるような、どうしてもこれを守らなければいけない基準だという形で厳しくやっている、私は、そういう形でこれだけ議論があるならば残しておいてもいいじゃないかなという簡単な気もあるわけでございます。そうしますと、橋本さんのお話を伺うと、やはりどうしてもこれを守らすのだ、しかもできるのだという厳しい基準に統一をしていくのだ、したのだ、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  87. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 まず一点、ちょっと私の申し方が不十分であったので、これはもう一度御理解をお願いしたいのですが、〇・〇二が健康上これはやらなければいかぬのだったら、どんなことがあってもやります。それはたとえ何が困ろうが私どもはやります。そういうことで、科学的に見てやはりこれはやらなければだめだということが出れば、これは何らありません。ただそうすると、日本人はせっかちで、すぐさまぴしゃっと〇・〇二にしなければだめだという議論に結びつくわけでございますね。それから、先ほどのような問題もございます。ですから、〇・〇二を置いておいて、どのような社会的な帰結が起こってくるか、その帰結が起こっていっても、別にほっておいていいという議論なのかどうなのかということも一つの判断要素ではないかということでございまして、〇・〇二が健康上大事ならこれは全然変える気ございません。少なくともあそこまで見ると、どうも今度の判断は前の判断と違うということは間違いございませんで、それはやはり科学的に物を考えて、そのかわりそれはびしっとやる。ですから、ある意味でいま先生のおっしゃったような今度出てきた数字はもっとかたいものになってきます。可能性からはじいている数字は全然ございません。環境基準を設定するときには可能性の議論は必須の要素に入れておりません。あくまでも幅は健康上必要なものとして与えられておる。可能性はどうだろうかは、全く別の独立の段階で検討しておりますので、可能性からはじいて物を考えるという考え方ではないということをひとつ御理解をお願いしておきます。
  88. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、またほかの点からお尋ねをいたしますが、答申自体が短期暴露〇・一から〇・二、長期暴露〇・〇二から〇・〇三、こういう幅の形で答申がされているわけでございます。もちろん科学が進んだといっても、ぴしっと出るものじゃないというのは私ども承知をしておりますが、この幅を受けて環境基準というものをどのように生かしていくのか、幅を設けていくのかということが一つ、それからもう一つは、たとえば私どもの郷里なんかで日平均をはかれば〇・〇二なんていうのは達成しているのじゃないかと思うのであります。いま日本全国で達成しているところもたくさんあると思う。そういったところが、それじゃもう少し汚くなってもいいのじゃないかという判断をするのじゃないか。変な言い方で、揚げ足取りみたいな言い方でありますが、そういったことに対して、たとえば、環境基準ですから地域を分けるというわけにいかぬかもしれませんが、東京あたりと田舎、こういうところを変えて基準というものを地域別につくっていく、こういったお考えというものはお持ちじゃございませんか。
  89. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 幅を基準にしたことがあるかということでございますが、ございます。一番最初の硫黄酸化物の環境基準は幅を、悪い底といい方の上と両方になっています。ですから、幅を告示にできないという根拠はございません。そうすると、今度は運用の問題になるわけでございます。——失礼しました。運用の問題よりもう一つ手前に、幅が出された場合に、それじゃ上をとるか下をとるか、真ん中をとるか、幅をとるか、こういう幾つかのやり方があります。その汚れた方をとると、皆そっちへ寄ってしまいます。これではもう日本を汚せということで、これも全然世の中に受け入れられる仕事ではございません。それから、今度は下だけにやります。そうすると、科学的にこの幅を言っておられるわけでして、それから超えるとまた危ないという議論もまた一方に出る。すると、科学的には絶対とは言えないが、いまの確かさとこの幅の中だったら同じだ。ただ、汚染のレベルとしては上と下の相違があるわけです。そういうことをいかに忠実に出すかということになるわけでございまして、そういうことで幅を基準考えるということも、一つの選択肢としてはあり得るということであります。     〔委員長退席、島本委員長代理着席〕 そのときに、地域的に少なくとも達成に相違があることは事実でございます。たとえば東京湾沿岸、伊勢湾沿岸、大阪湾沿岸あるいは将来瀬戸内海というようなところが起こってくると思います。そういうところで、いま四日市の御議論もございましたが、四日市の道路わきは決してまだそういうことはございません。広域の問題で、光化学スモッグもありますから、どういうぐあいに判断をして地域的なものを考えるかということも出てまいります。  それから、この幅の中だったら大丈夫だ、こう考えられるわけですから、その中で地域差をつくることが法律的に禁止されておるかといいますと、法律的には禁止されておりません。ただ、それが受け入れられるかどうかという問題があるわけです。ですから、そこらのところをどういうぐあいに最終的に整理をするか、達成の方途、運用、基準値そのものとして整理をするかということも一つの課題であります。  それから一方、ほかの方はもっと緩くしてしまえという無茶なことを言う方から、それよりもっと下の、もとのとおりにやっておけと言う方々がおられる。ですから、幅をいただいたときにわれわれがどう思っているかということについては、いま申し上げましたようなところが行政の検討している材料の場所であります。
  90. 中井洽

    ○中井委員 いまのお話、もう一度御答弁いただきたいわけでありますが、日本中に日平均〇・〇二なんというのを政策的に何やかやをせずに守っているところがたくさんあると思うのです。今度、もしそれを〇・〇四あるいは〇・〇六というような環境基準ができたときに、地域の人たちが受け取る取り方が、そこまでいっても構わないのだ、こういう受け取り方をしないか、そういったことに対処して、〇・〇二であるところは〇・〇二の環境基準を守れるような指導というものをお考えになっているのかどうか、こういうことであります。
  91. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 まず一点は、規制というのはナショナルミニマムで全部やります。これからその規制に差ができるかどうかというポイントがございます。しかも新設についてはより厳しい規制が入ることになります。ただ、その新設についての規制地域ごとに差があるかどうかということであります。  それから、法律的には条例で上乗せ規定ができる形になっております。それを全国としてどのように整合性のある、確かに大方の人が見て妥当だというやり方をするかというところにあるのだろうと思います。先ほども申しましたが、高いところから低いところへみんな分布があるわけでございまして、理屈を言えば、ここまで上げても法律上何も拘束がないということでございますけれども、高いところを下げれば必然的にそれに関連して別のところが下がるということも、これもやはり正しく理解していただきたいポイントであります。一番の核心は、いま〇・〇四としたとしますと、それがいかぬとか、そこまで全部汚していいというような考え方を別に持っているわけではございませんが、法律的に別に拘束はないということでございますので、そこは技術の進歩に伴ってナショナルミニマムとしての規制がどう進むかということで、何もしないで基準以下だからほうっておくというような考え方ではないが、基準以下でも厳しいところと全く同じにガチャンとやるんだという考え方でもない。その辺はやはり、その地域の社会的な特殊性で自治体がどういうぐあいに考えるかということもありましょうが、国の基準が出れば、やはりその国の基準ということをキーとして対応していく。国としても、きれいに保てるところはなるべくならきれいにしていくという原則を行政指導でどういうぐあいにするかという問題は、きわめて大事なところだと思います。
  92. 中井洽

    ○中井委員 過日から二酸化窒素の議論が盛んに行われているわけであります。しかし、大気汚染全体としては二酸化窒素だけじゃないと思うのです。ハイドロカーボンの問題、これらもやらなければ、オキシダントなんか、なかなか対策がとれない、こういうことだと思うのであります。こういった二酸化窒素基準を見直す、それと同時に、ほかの基準もこれに関連して動いていくのか、あるいは、これが本当にいままでのような科学的に不確かな基準で決めておったのじゃなくて、科学的にきちっと、こういうことだ、それを契機に一層大気汚染全体の総合施策を進めていく、ハイドロカーボンなんかもやるんだ、こういうことなんですか、どっちですか。
  93. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘があった点が、これからの行政の非常に大事なところだと思っています。問題にしている影響というのは非特異的な影響でございまして、複合汚染の影響でございます。その六都市の五年を見ましても、ばいじんとSOx、サルファ、NOxは上がりぎみなのがずっと下がっているというデータがあるわけであります。そういうことで、行政としての安全性に立った考え方といいますのは、NOxのきりもみ論だけじゃなしに、ばいじんも抑える、SOxも低いものにじっと抑えていく、あるいは、いまSOxの問題で、ある意味で触れられてないディーゼルのS分を抑えるとか、あるいは船の問題とか、そういうもろもろの問題にやはり触れていかなければならぬ。と同時に、オキシダントの問題がございますから、ハイドロカーボンも抑えを、現在は、乗用車はもう最終までいって、あとトラック、バスはかなりの程度までいってますけれども、まだもう少しの議論があると思います。それから、固定発生源という寄与分がございます。ですから、今後の対策は、複合汚染対策を進めて、最も有効に非特異的な健康影響を防ぐというところに最力点を置いて全体の整合性を、スケジュール等も考えまして、むだなことのないようにして、最も有効な再適化された方式を推していくということが、大気汚染対策として今後の一番本筋ではないか。従来はNOxだけのきりもみ論争、オキシダントだけのきりもみ論争をしておりましたが、そうではなしに、全体をずっと五十年代後半に抑え込んでしまうという方向に入るべきであって、行政としてはそのような考え方で安全性を考えてやるということは、もう当然考えるべきことだというぐあいに思っております。
  94. 中井洽

    ○中井委員 いまお話に出ましたディーゼル対策、余談になりますけれども、私も一週間ほど前に、もうガソリンをよけい使ってかなわぬのでディーゼルに変えた。私の友達なんかでもずいぶんいるわけです。そういった層に大気汚染の問題というのはほとんど理解されてない。これから省エネルギーといえば、どんどんそういったディーゼルなんかが出てくる。大型ですから、そう一遍にふえるとは思わないが。  それから、いまのお話にあったように、一つ一つの汚染物質対策というものはどんどん科学的に進んでいっても、たとえばNOxも、それから硫黄の問題も、東京あたりも、私の郷里四日市あたりもずいぶん進んでいるけれども、大気汚染が一向なくならないという問題もあるわけです。それはいわゆる汚染物質、個々の問題、対処の問題だけじゃなしに、結局、総合的な大気汚染あるいは逆に、もっと言えば総合的な政策、都市政策、住宅政策あるいは工場をどういうふうに配置するかというような政策になってこようかと思うのです。環境庁環境庁立場として、交通政策だとか住宅政策だとか、そういった総合政策にも積極的に意見を、環境汚染、国民の健康を守るという意味から積極的に発言をなさっていく、あるいは立法をしていく、こういったお考えはおありですか。
  95. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 公害対策基本法の九条の四項にございますように、環境基準の達成は、排出規制だけではなしに、土地利用及び立地の規制、それから防止のための施設の規制、全体を総合的に組み合わせ適切にということになっております。従来、排出規制だけの議論をやっております。排出規制の限界というのは、かなり目の前に相当見えてきた。よほどの技術開発があらわれれば別でございますが、少なくとも十年間ぐらいは、そう驚天動地のような技術開発があらわれるのはちょっとむずかしいのだろうと思います。そうしますと、ほかの対策をちゃんとしなければだめだということになってまいりますのと、もう一つは、これは白書にもございますように、健康が危ないというものもあります。生活の質の問題が非常に多うございます。ですから、これから先の問題は、どの程度質の方向に金を回し、どの程度健康——一応大丈夫なところへ来た、そうするとどの程度そちらの方に回すかということをよほどバランスをとって考えないと、余りきりもみ論争をしますと、資源の配分にきわめておかしなひずみを来すというぐあいに考えております。  そういうことで、交通公害を一番重点に置きまして、三全総のときも交通公害と例の住居権の問題に一番力を入れておりまして、そうなりますと、大気汚染とそれから騒音と振動と三つの問題が絡んできます。おのおの葛藤がございます。けれども、今後の重点というのはむしろそのような交通公害であり、複合汚染対策であり、総合対策を進めていくというところに最重点を置いた形で新たな方向を打ち出したい、そういうぐあいに考えておるわけであります。
  96. 中井洽

    ○中井委員 時間がございませんので、NOxにつきましてはこれぐらいにして終わりたいと思いますが、冒頭申し上げましたように、とにかくこのような大きな環境基準問題で、基準を科学に基づいて下げるという初めてのことでもあります。こういったことでいつまでも、下げる、上げるべきだという議論でとどまっているのではなしに、一刻も早く個々の対策をとると同時に、総合的な施策、こういったものに向かって環境庁に最大限の御努力をいただく、こういうことをお願いをいたしまして、次の問題に移ります。  前々から委員会でもときどき質問がございましたPCBの処理の問題、こういったものについて、環境庁、通産省にお尋ねをしていきたいと思います。  全体的にPCBの処理状況環境庁としてはどのように進んでいると確認をされておられますか。
  97. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 PCBの処理状況でございますけれども、このPCBの関係もいろいろございます。普通大体三つに分けて考えておりますが、一つはPCB入りの旧ノーカーボン紙の関係、それからもう一つはPCB入りのトランス、コンデンサーの関係、それから三番目にPCBの原液の関係というふうになります。そこで、それぞれその性状なりが違いますので、それに応じた対策ということを講ずる必要があるという観点に立っております。  そこで、最初に申し上げましたノーカーボン紙の方につきましては、所管が通産省の生活産業局でございますけれども、これの処理につきまして、旧ノーカーボン紙処理対策委員会というのを一応つくってございます。五十年の八月に設置をしておるというふうに聞いております。環境庁もこのメンバーにはなっております。また、業界団体そのものにおきましても、PCB入り旧ノーカーボン紙処理協会というものを、これも五十年の四月でございますが、つくってございます。そういうことで、委員会なりあるいは業界団体の方での処理協会なりをつくっておるわけでございますが、現在まで行いました対策といたしましては、PCB入りノーカーボン紙の回収保管でございます。それから故紙の中のPCB入り旧ノーカーボン紙の実態調査、それから実験炉での焼却実験あるいは焼却炉の仮設計、それから最近では、これを洋上焼却しようかというようなことを通産省において検討されておられまして、この焼却船が五十二年の七月に完成をしたというふうに聞いております。それが完成しまして、焼却船によるノーカーボン紙の焼却試験、これも実施をしつつある、こういうふうに聞いております。  それから第二番目に申し上げましたトランス、コンデンサーのたぐいでございますが、これも通産省の機械情報産業局が所管をしておるわけでございますが、やはり通産省におきましてPCB処理対策委員会というのを設けております。四十八年の九月に設けたわけでございます。これにも環境庁の方でメンバーに入っております。それから、業界団体の方も財団法人の電気絶縁物処理協会というものを四十八年の八月に設立をいたしております。現在まで行いました主な対策といたしましては、PCB入りのトランス、コンデンサーの保有状況調査あるいは処理工場用地の取得交渉ということをやってまいっておるわけでございます。ただ、問題は、なかなかこの用地の取得交渉というものが難航をいたしております。現在時点におきましてもこのPCB処理の実験工場の用地というものがまだ確保できておらない、こういう状況でございます。  それから第三番目に申し上げましたPCBの原液の方でございますが、これも所管は通産省の立地公害局の方に相なります。これにつきましては、液状PCBの洋上処理調査研究委員会というものを通産省の方で五十二年の十月に、これは置いておりますのは通産省の指導によりまして社団法人の産業公害防止協会というところに置いてございます。これにも環境庁はメンバーとして参画をいたしております。そこで現在、原液の回収保管がされておるわけでございます。鐘淵化学と三菱モンサント等におきまして保管をいたしておりますが、これにつきましても処理をしなくちゃならぬわけでございますので、その処理のやり方といたしまして、従来用地の取得等を検討もしたわけでございますが、二次公害といいますか、焼却した後の塩酸ガス等の問題もございまして、むしろ洋上焼却がどうかというようなことで、現在、通産省が中心になりまして洋上焼却をこれも検討中ということでございます。  以上でございます。
  98. 中井洽

    ○中井委員 通産省にお尋ねをいたします。  それぞれノーカーボン紙、それから電気関係のPCB、それから液状のPCB、いま承りますと、処理方法あるいは処理技術もほぼ完成をしておる、こういうふうな説明であったわけであります。それで間違いございませんですか。
  99. 滝沢宏夫

    ○滝沢説明員 お答え申し上げます。  いま環境庁局長の方からお答えいただきましたように、ノーカーボン紙につきましては、小さな炉の開発から始めまして実用に供される炉がほぼ完成した段階まで参っております。それから洋上焼却につきましては、すでに有機塩素系のPCB類似の廃棄物につきまして西欧とかあるいはアメリカあたりでは盛んに洋上焼却が行われておりますが、PCBについてはまだいずれも実績がございません。したがいまして、こういった洋上焼却でPCBが安全に処理できるかどうかという点については非常に慎重な検討を要するというふうなことを考えておりまして、先ほど御紹介いただきましたように、そういったものを専門的に検討をする委員会を設置いたしまして鋭意検討を進めてきておりまして、過去八回ばかり検討を進めてきております。特にアメリカとかそういうところで実際にやられております状況を実際に専門家に視察をしていただくために、ことしの一月に、現地先生方に行っていただいております。その際、オランダ政府から、少々、四十トンばかり試験燃焼をしてみてはどうかという申し出がございまして、いまそういった方向で安全に焼却できるものかどうかという小規模なテストをとりあえずやってみて、それで非常にうまくいけば本格的に実験燃焼をやってみたいというふうに考えておりまして、見通しとしては大体やれるんではないかという諸先生方の感触でございますが、環境に与える影響が非常に大なものがございますので、そういう意味で慎重に対処しているわけでございます。  それから、電気PCBにつきましては、担当の電電課長が参っておりますので、その方から御答弁させます。
  100. 小林久雄

    ○小林説明員 電気PCBでございますが、トランス、コンデンサー等は密閉された容器に封入された状態でPCBが使用されているわけでございますので、現在、正常に運転されているものはそのまま使用されているわけでございます。     〔島本委員長代理退席、委員長着席〕 これが今後二十年ないし三十年にわたって廃棄されてくるという状況でございますので、私どもの方としましては、使用中もしくは使用済みの機器の管理保管の徹底を図るために、使用者に対しまして、管理責任者を置くこと、それから使用中、使用済みの機器にラベルを張るというような厳重な保管管理を指導しておるわけでございますし、さらに、保管状況を監督するために、昭和五十一年度から地方の通産局職員によります立ち入り調査を行って、万遺憾なきよう努力をしているところでございます。  さらに、先ほど局長の方からもお話がございましたように、電気PCBの無害化処理処理工場を建設するということで、四十八年に設立されました財団法人電気絶縁物処理協会が用地の取得、工場の建設等に鋭意努力を進めているところでございますが、先ほどお話がございましたように、用地難の点から、まだ現在めどが立つに至っておりませんが、私どもとしては、今後、協会を強力に指導いたしまして、一日も早く処理工場の建設が可能になるように努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  101. 中井洽

    ○中井委員 そのノーカーボン紙の処理をする炉あるいは電気PCBの処理をする炉というのはもう完成をして、それでほぼ無公害処理ができるというのは間違いがございませんか。
  102. 滝沢宏夫

    ○滝沢説明員 お答え申し上げます。  PCBの環境汚染が問題になりました四十七、八年当時、各省の事務次官レベルのそういった水銀問題も含めた検討の協議会みたいなものが設置されておりまして、関係各省がそれぞれ分担いたしましていろいろな問題を解決するような努力をいたしたわけでございます。  その一環といたしまして、通産省の一つの責務でございますが、PCBの無公害処理というものの技術開発につきまして分担いたしたわけでございますが、私どもの工業技術院傘下の公害資源試験所で、どんな炉で焼いてどんな条件でやったらいいかというテストを繰り返しまして、ほぼ千三百度以上の温度で一秒間以上滞留させれば完全に分解するということが十分見通せまして、そういった意味で炉の設計も大体でき上がっております。技術的にはもちろんでき上がっておるわけでございますが、その炉をどこにつくるかというのがいま問題になっておるわけでございます。(中井委員「両方ともですか」と呼ぶ)両方ともでございます。
  103. 中井洽

    ○中井委員 いつごろその工場が完成する、あるいは敷地が確保できる見通しですか。
  104. 滝沢宏夫

    ○滝沢説明員 液状の廃PCBを焼却いたしますのは、四十七年当時そういう技術が開発されましたときに、それを全部回収しておりました鐘淵化学と三菱モンサントに、それぞれ自社内にそういう炉をつくりまして早急に処理するようにという指導通達を出しまして準備をいたしたわけでございますが、諸般の情勢がございまして、その炉の建設に至っていないわけでございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、液状の廃PCBにつきましては、洋上焼却をすることが適切ではないかということで、現段階では、陸上にそういう炉をつくるのは非常にむずかしいというふうに判断いたしまして、そのかわり洋上で焼却したいというふうに考えておる次第でございます。
  105. 中井洽

    ○中井委員 液状で鐘淵化学と三菱モンサントに置いてあるものは、液状でこれだけですから、一遍にやってしまえばいいからということで、炉をつくらずに、洋上で一回でやってしまう。一回と言ったって、一回でやれるかどうかわかりませんが、何年も何年もということではない。それからカーボンの方も、それほど多くないからどこかへつくっていけば短期間に処理が終わる、こういうことだろうと思うのであります。  電気PCBの方は、これはまだ二、三十年、いま使われているものの耐用年数が来るまでずっとかかるわけであります。いつになったら、それが毎年、毎年——ここにも私どもの郷里の新聞があるのですが、地方では古いテレビが捨てられるたびに抜き取って運んでおるわけであります。それをどこかで保管しておるわけでしょう。その処理技術があるなら、いいかげんに早うつくってさっさと処理をするという形で進まれたらどうですか。
  106. 小林久雄

    ○小林説明員 ただいま先生の御指摘のとおり、私どももなるべく早く処理工場の建設をするように、先ほど申し上げましたように電気絶縁物処理協会を指導しているわけでございますが、何分にもやはりPCBというものに対する地元の方々の認識がかなり厳しいものがございまして、工場の建設は、私どもは安全なものができるというふうに確信を持っておるわけでございますが、なかなか御賛同をいただけないというような点がございまして難航しておるわけでございますが、今後とも協会を指導いたしまして、一日も早く実現するように努力を続けてまいる所存でございます。
  107. 中井洽

    ○中井委員 先ほど質問いたしました、その炉は無公害でほぼできるという自信がおありかどうか、こういう質問に対してお答えをいただいてないわけでありますが、その炉が現実に、電気絶縁物処理協会ですか、その協会の方でできているということならば、一刻も早くこの処理工場がつくられて、全国に散らばっているわけでありますが、これから二、三十年の間、安全にPCBが処理できる。そしてこんなことで、もう処理の仕方、処理方法も決まっているPCBの問題で、毎年毎年国会で言われる、こういうことのないように御努力をいただきたいと思います。  以上で質問を終わります。
  108. 久保等

    久保委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時九分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  109. 久保等

    久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。東中光雄君。
  110. 東中光雄

    ○東中委員 二酸化窒素環境基準についてお聞きしたいと思います。  冒頭に長官にお聞きしますが、報道によりますと長官は、九日、福田総理に会われて、この二酸化窒素環境基準の緩和について、これを二十三日ないし二十七日の閣議に報告をして、近々告示をするということで総理の了解を得たというふうに報道で言われておるわけでありますが、実際はどうなっているのか、お伺いしたい。
  111. 山田久就

    ○山田国務大臣 その報道はどこのかわかりませんけれども、事実とちょっと違っているのだろうと思います。私は、二酸化窒素についての今日のいろいろな問題点等についてのお話を御報告したという程度で、閣議とか、そういう問題は関係ありません。
  112. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、閣議とか、近々告示をするとかいうふうな話は一切していないということでございますか。
  113. 山田久就

    ○山田国務大臣 そういう点はいま検討中のあれですから、具体的にどうというようなことを申し上げたり何かは、話には取り上げておりません。
  114. 東中光雄

    ○東中委員 そうお伺いしておいて、私は、この環境基準の問題というのは、実際問題として全く患者不在、被害者不在だと言わざるを得ないと思うのです。不確かなデータに基づいていたとはいっても、現在の環境基準の達成の見通しはいままだ全く立っていないわけです。そして、被害者がみずからの体験に基づいてNOxの被害を訴えているにもかかわらず、これに全くこたえようとされていないというのが現状です。私が大阪の例を挙げて、硫黄酸化物が改善された後も一向に新たな患者の発生が減らない、こう指摘したことについても、何かいろいろな条件があるのではないだろうか、いま分析を続けているところだ、こういう答弁が返ってきたわけであります。これは幼児の問題なんかを挙げて言っているわけですけれども。こうした点を放置したままで環境基準を緩和するといえば、これは全くの患者不在だと言わざるを得ないと思うのです。特に橋本局長、あなたは今月の五日の公害被害患者の総行動デーで、ppmの論争に来たのではない、患者の訴えを聞きに来たのだと議員会館で言われたのですが、このような患者の訴えとは全く別のところで、またこの訴えには具体的な何の答えも出されないところで環境基準の緩和というようなことをやられるのははなはだよろしくない、こう思うのですが、局長、どう思っていらっしゃいますか。
  115. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま患者不在という御指摘がございましたが、これはいろいろな御不満や御批判はあろうかと思いますが、患者さんと会って、いろいろ声を聞いたり話をしたりするというのは、私はかなり努力をしているつもりでございます。ただ、患者さんが言っているとおりにしておらぬじゃないか、それはおまえは患者不在であるというような御批判であろうと思うのですが、この問題は私は、患者さんがどうでもいいと、そんなことは全然思っておりません。これは対策を打って、きれいにしていくということがキーでございまして、そのかわり、一体NO2はどういうぐあいに悪いのだということは、やはり科学的な問題で冷静に考えないと、公害健康被害補償法で患者がずっとふえている、あれはNOxだと決めつけられているのは非常に科学的な問題があるのじゃないか、こういうことでございます。そういうことで、判定条件に示されたいろいろなところの文献、いろいろなものを見ますと、どう見ても、患者さんがどんどんふえるというような数字は、年平均〇・〇八以上ぐらいが続くということがやはりキーだろうと思います。そうでないと、年平均〇・〇五ぐらいですと、やはり決定的にデータが出てこないということですし、患者さん自身は、あのときにもちょっと申し上げましたが、たとえ環境基準に合っても、非特異的な疾患ですから、患者さんはふえます。これはもう明らかです。ですから、幾ら環境基準に全部満ちても、日本の患者さんはふえてきます。異常にふえるということがなくなるというだけでございます。その辺を、患者さんがふえるからこれはNOxと関係があるんだ、それをのまないのはおまえは患者不在で、何も聞かないということは、少しこれは、運動としてはわかります。政治的なスローガンとしてはわかりますが、やはり科学的に考えた場合に、これはそこまでおっしゃるにはなかなか問題があるのではないか。そういう点、冷静に科学的な判断条件をそろえ、指針値を出されたということでございまして、これは環境保健部の方のデータで、いずれ公表されるというふうに聞いておりますが、公害健康被害補償法の患者さんの新発生は、確かに累積としてはふえてきています。しかし新発生の傾向はずっと波を打ちながらダウンしてきていることは間違いないわけです。これは確かにそういうデータはあります。いずれ大阪市がもうすぐ公表されると思います。大阪市の患者さんをいろいろ解析したデータがございます。それを見ましても、やはり新発生はこうなってきて、それから発作や何かを起こすのはわりあい緩くなってきておるわけです。しかし最近新しく来た患者さんをよく調べると、どうも慢性気管支炎の定義に合わないのじゃないかという議論まで中にあるぐらいなんです。ですから、いまの汚染のままでいいとは全然思っておりません。これは対策を打つわけでございますけれども、いまの患者がふえているのは全部NO2だ、患者がそう言っているから、それを聞かないのは、おまえは患者不在であるというその点は、やはりもう少し科学的な議論として整理していく必要があるのではないかというぐあいに考えているわけでございます。
  116. 東中光雄

    ○東中委員 硫黄酸化物が改善をされた。環境基準内に入った。しかし患者は一向に減らぬ。なぜなんだ。その内容については、まだいろいろな条件があるからわからない。分析しているんだ。窒素酸化物については補償法の対象物質にもまだしない。極端な汚染状態はなくなったかと言えば、窒素関係で言えば、うんと高いのが出ておるという状態で、いわばそういう現状は、やらにゃいかぬことがいわば山積しているというか、いま直接に患者がなお発生していくという状態があるのに環境基準を云々する。それも環境基準と言えばうんと先の話ですよね。それをいまなぜやる必要があるのか。環境基準が大体達成されそうになってきたというところまで来て、まだ最後のところまではなかなかいかないという状態で、被害者の方も、もう被害が少なくなってきたというようなことになれば、それは環境基準を少し緩和してもいいというふうな患者の方の意見も出てくるかもしれません。しかし、いまはまだ全く極端な汚染状態がそのままあって、そしてこういう問題についての解決が全くできていない。解決どころか、患者の発生についての説明先ほど言ったように十分できない、分析中だ、こう言っているときに、現に苦しんでおる多数の患者が反対をしておるのに、それを押し切ってうんと先の環境基準をいま緩和しなければいかぬという必要はどこにも見出せない、こう私は思うのですが、いまの時期に緩和をする必要があるのかないのか。これは長官、こういう大筋の現状から見て、いまこの時期にいわばうんと先の目標を緩和するというようなことを現実の問題として出してくる必要があるのかないのか、どうお考えになっておるか、ひとつ長官の御意見をお聞きしたい。
  117. 山田久就

    ○山田国務大臣 われわれは、いま緩和するとかなんとかということはまだ申し上げておりません。要するに再検討する。これは例の公害基本法の第九条で、最近の科学的な判断によって環境基準は見直さなければならない、こういうことになっているわけであります。したがって、この委員会答申がその後におけるいろいろな新しいデータというものに基づいて行われた。それであれば、やはりそれに基づいて見直さなければならないということで、われわれとしては再検討しなければならない法律上の立場に置かれているという見解に基づいて対処しよう、こうしているわけでございます。  なお、これについての細かい点については、局長からも補足答弁をさせたいと思います。
  118. 東中光雄

    ○東中委員 基本法の九条三項、それはそれとしてわかるわけです。しかし問題は、汚染はまだ改善されていない、患者の発生は減らない、こういう現実と別のところで九条三項だけを一人歩きさすことはないじゃないかということを私たちは言っておるわけであります。     〔委員長退席、水田委員長代理着席〕 現実との関連で法の運用を図るべきであって、現在政府が行おうとしている緩和、これは長官は緩和とは言われませんけれども、科学的結論に基づいてとにかく見直しをやると言うのですから、その結果は緩和の方向に行くというふうに、これは何と言われようと見ざるを得ぬわけですが、それについてはいろいろ疑問が出されておる。これは改めて申すまでもありませんけれども、専門委員会責任者自身が環境基準は変える必要はない、こう言っているわけですから、そういう時期になぜやらねばいかぬのか、全く必要性が理解できません。窒素酸化物対策はむずかしいと言いますけれども、技術的な面は別にして、対策にかかる費用面については、ことし四月に環境庁が発表した「窒素酸化物対策の費用効果について」これを見ますと、いまの環境基準を変える必要性は全く出てこないと思うのです。技術的な面について言えば、先日の瀬戸内海法の審議の過程で、きょうは見えておりませんけれども、二瓶局長は、水の環境基準の達成は基本的に五年以内というふうになっているけれども二十年たってもむずかしいと堂々とここで述べていますね。だからと言ってこの基準を変えていくというふうには言ってないわけです。それから、硫黄酸化物のように、四十四年に決めた基準が緩くて、四十八年に九条三項に基づいて強化する。これは、緩くて人の健康を守れないから九条三項を発動し強化する、こういうふうな九条三項の運用というのは非常によくわかります。ところが、現実から全く離れて九条三項を一人歩きさして二酸化窒素基準を緩和しなければならぬ、こういう理由はどうしてもわれわれは理解できない。いま公害をなくし環境をよくしていくというふうな観点から見て、この基準を緩和しないと現実にどういう不都合が生じてくるのか、ひとつこれは長く要りませんから、簡潔に言っていただきたいと思います。
  119. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘になった点が非常に問題の議論になるポイントだと思います。  これは、まず第一点御理解願いたいのは、九条三項というのを設けました基本は、データが不確かでもとにかく割り切ってやる。それで、それからまた後で見直して、それが科学的にちゃんとすれば、厳しくする場合もあるし緩くする場合もあるということでこれは設けられておるわけでございまして、一回決めたら最後それがどうにもこうにも動かぬ、変えたら大変なことになってしまうというルールでやりますと、これからなかなかデータの不確かな場合に、相当積極的な厳しい基準政府は容易に決めなくなるだろうというおそれを私は非常に抱いております。まず、それが第一点であります。  それからその次は、〇・〇二ppmという数字が、やはりそれを超えたら危ないのだというぐあいに——いやそんなことは言っておらぬとおっしゃるかもしれませんが、やはり非常に多くの方がそれを超えたら危ない、あるいはそれを超えたらもう治るまで全部補償をもらわぬといかぬ、あるいは工場を差しとめしなければいかぬ、道路をつくっちゃいかぬというところまでの社会的な紛争があることは事実でございます。裁判は憲法で自由ですから、これは全く自由でございます。それがいいとか悪いとかということを申すのではございません。そこになぜ〇・〇二が使われているかというと、環境庁が決めて健康の保護でやっているというからその数字が歩き出すわけであります。そのときに、私は、やはり科学的に正しい受け取り方をして常識的にバランスをとった形で公害対策を進めていくというのは絶対必要だと思うのです。これは、そんなことを言ったらいままで対策は進んでおりませんから、悪いときにはがちっとやりました。しかし、これからは正攻法的にきちっと進めていくことをしなければ、これは絶対に進む時代じゃないと思うのです。そういう点になりますと、この〇・〇二に合わせようと思うと九〇%カットしなければならぬ。そうすると、交通は半分にカットをして、しかも中小企業も大幅にダウンすると思います。そういうところまでしなければならないものです。しかし健康の上ではどうしても〇・〇二は必要で、これは絶対やらなければなりません。そのことには何も疑いを抱きません。しかし、その根拠になっている科学的な問題が相当乏しい中で決められて、しかも国際的なコンセンサスの中でいろいろやってみると、日平均値〇・〇二までは絶対必要だというふうには、みんなの合意を得るのが余りにもむずかしいということも事実であります。いいことも見ました。しかし非常にむずかしい紛争の問題も生んだことは事実であります。そうしますと、一つは、どの程度が本当に大丈夫なのかということを一般の国民の方に正しく示す責任はやはり政府にあると思います。日平均値〇・〇二なら、家の中で〇・〇五だ、〇・一だ、これは大変だと思う人も中にはあるかもしれない。しかし一方では、お金を払ってたばこを吸ってそれで何百PPmでもすっとこうしておられる方もおりますけれども、これは常識的に見て余りに不均衡であることは間違いないと私は思うのです。そういう点をやはりこれから正攻法的に、規制される方も、それじゃやはり絶対従わなければならぬ——それはなかなかそういうことは思いませんが、いやでも応でも押さえつけるにしても、それにはやはり相当程度の科学的な根拠がなければこのNO2の規制というのはそうドラスチックになかなか進められない。ひとつそこをかっちり固めなければなかなか前に行かぬのじゃないかというところがこれはあると思うのです。そういう点で、これは先生の御指摘のような批判やら、確かに何でそんなことに手をつけるかという御議論があろうかと思いますが、基本的にNO2に対する正しい考え方をその時点その時点で整理をして出すということは、大気保全行政の責任者としては当然のことだと思うのです。これから厳しくぴしっと押さえ込むにはそれがかっちりしていないことにはなかなか前に行かない。これは環境庁だけが勝手にこう考えてばっとやったら規制できるというような容易なものじゃございません。非常に広範、複雑な影響があるものでございます。そういう点で、やはりきっちりしたものにして、一つは無用の心配やら、神経質になることもおかしいと思うのです。しかし、ちゃんと心配はしなければならぬわけです。また、対策はしなければならぬわけです。     〔水田委員長代理退席、委員長着席〕 その根拠を固めるのは何かというと、やはり環境基準ではないか。それを九条三項の指針にのっとってやっていかなければ堅実な進歩は期しがたいということが基本の考え方であります。
  120. 東中光雄

    ○東中委員 私はそんなことを聞いているのじゃないのですよ。現実には環境基準の何倍もの、大阪なんかは三倍も五倍もの窒素酸化物がある、まだ極端な汚染状態がある、それは一向によくなっていない、患者も出てくるというときに、うんと先の基準をいま反対を押し切ってやらなければいかぬ理由というのは、このままにしておいたら不都合だ。いま何か裁判のときに使われるとかというようなこともちょっと言われましたけれども、それは裁判のときにはその内容についてやればいいわけで、常識的に基準がきつ過ぎるというような趣旨のことであれば、一番初めから常識でやってきたのじゃないわけですからね。では常識に反したことを初めからやってきたのかということになるわけです。この前、硫黄酸化物を九条三項を発動して強化した、そうしなければ健康を守れないという現実の問題があってやった。〇・〇二までは、環境基準のところまではいかないにしても、〇・〇三ぐらいまできた、患者も減ってきたということになってくれば、汚染度はどんどん少なくなってきているという段階基準を変えるのだったら、これは恐らく反対もそんなに出ないだろうと思うのです。ところが、いま何倍ものものがある、極端に汚染した状態がそのまま置かれている、その対策はなかなか進まないという状態で基準だけをやっていくということになれば、これはそのことを非常に強く言うておる財界の圧力に屈したのじゃないかと言わざるを得なくなってくるわけであります。もっとも、財界は今度の答申さえ攻撃して、もっと大幅に緩和せいと言っていますから、何か環境庁はその中間におって公平なような感じを与えますけれども、結局は財界の方の圧力に屈してやっているというふうに言わざるを得なくなるわけです。その点は、極端な汚染状態をそのままにして、うんと先のあなたの言われる努力目標を変えるというようなところへ憂き身をやつさぬでもいいのじゃないかということを言っているわけであります。  それで、もう少し具体的に聞いていきたいのですが、今回の答申で出された年平均で〇・〇二ないし〇・〇三、すなわち現在の基準の二倍から三倍という数値そのものについては、わが党の沓脱議員も問題点を指摘しまして、専門の学者もいろいろ疑問を出しているわけですが、ここでそれを繰り返そうとは思いません。今回の答申環境基準の緩和との関係について聞きたいのですが、ここでも一定の議論がなされておりますけれども、政府の見解をちょっと確認しておきたい点があるのです。  まず、答申の中身ですけれども、汚染とその健康影響に関する総合的な知見としての判定条件及び判定条件に基づく科学的判断としての指針値、具体的には年平均値で〇・〇二ないし〇・〇三ppmという指針値、これが答申された。現状においてはそういうことですね。
  121. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いま先生の御指摘のとおり、指針としては一時間値の〇・一と〇・二の間、もう一つは年平均の〇・〇二と〇・〇三の間という幅で答申をされたということでございます。あくまでも判定条件と指針だけでございます。
  122. 東中光雄

    ○東中委員 今回はいままでの例と異なって、政府環境基準そのものを中公審に諮問しないままで、そして環境基準を変えようとしている。こういう点で大分議論もされてきたわけですが、政府の態度は、今回は科学と行政の役割りをはっきり区別する、これは橋本局長は何回も言われているわけですが、答申はあくまでも科学的で客観的な、純粋に学問的なものだ、こう言われています。これに基づいて、二酸化窒素環境基準の改定は総合政策的行政の責任で判断する、こう言われているのですが、そうですね。
  123. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまおっしゃいましたように、一番キーの問題は科学的な根拠という問題でございます。そういう意味で、専門委員会には別に可能性とかコストとか影響とか行政がどうのということは全然考えてもらわないでいいということで、いろいろな専門家といろいろな考えの人によってやっていただいたものでございます。そういうことで、これは科学的な知見と判断として合意したものはあれに尽きている。それは個人ではいろいろ考えの相違があるものですから、非常に厳しい、非常な御苦労をいただいてあそこに固まったということでありまして、これから先、その科学を基礎にしてそれではどういうぐあいに行政的にその決断を下すかということは行政としての責任で、九条三項に即して忠実にそれをやるということであるということでございます。
  124. 東中光雄

    ○東中委員 だから、今回の指針値である年平均値〇・〇二ないし〇・〇三ppm、これに基づいて環境基準値をどう決めるかは総合政策的に考えるべきことであって、学問の問題ではない、行政の問題だ。学問的判断というのは答申で尽きているから、改めて環境基準そのものを中公審に諮問するつもりはない、こういうふうな態度をとっておられるように思いますが、そう確認してよろしいですか。
  125. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 そういうぐあいにお考えいただければ結構でございます。学問的な範囲はそこに尽きておりまして、もちろん不確定さは両方に残っておりますから両側の方からの攻撃はありますが、いまの段階ではあれがベストだ、次は行政としてそれを基本にして行政の責任で決めるべきことはやる、こういうことであります。
  126. 東中光雄

    ○東中委員 この前の政府の答弁を見てみますと、どうもこの指針値の範囲内で、すなわち現行の一日平均値〇・〇二の二倍から三倍というところで環境基準の改定を行おうというように受け取れるけれども、政府考えはどうでしょう。
  127. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 最終的に別に腹を決めたり、そういうことの段階ではございません。そういうことで、〇・一と〇・二という一時間値がありますし、長期平均値としては〇・〇二と〇・〇三というのがあります。やはりそれを基調にして考えるということでありますが、一つはこの安全率が要るかどうかということももちろん検討は中でいたしてみまして、いろいろなことを聞かれておりますが、それに対しては、いま安全率は要らないのではないかという考え方を持っております。そういうことで、専門委員会が高い確率で、人の健康に対する好ましくない影響を防ぐという条件はそこに出しているわけですから、従来の死亡とか病気とか、病気の悪化とかあるいは機能の低下という問題ではない、従来よりもレベルとしてよい方の水準のものを出しておられるということを頭に置いて、政府としては最終的な判断をすべきだろうというように思っております。
  128. 東中光雄

    ○東中委員 六月五日付の「二酸化窒素に係る環境基準について」、これを見ますと、最後のところで、安全係数を掛ける必要はない。中公審では「これ以上にきびしくする理由はないと合意された。」とあるのですが、ここのところの正確な理解は、指針値についてこれ以上厳しくする理由はないと合意されたのであって、環境基準値について云々したものではないわけです。中公審環境基準を諮問されたわけでもないのだし、答申を見ても、この文章を見ても、はっきりそうなっているわけですが、そうですね。
  129. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 いまおっしゃったとおり、中公審はあくまでも科学的判断条件と、それに基づく判断としての指針を出されたのであって、基準そのものを中公審答申として出されたものではございません。それに対して今度は、行政がどういうぐあいに判断するかということであるということでございます。
  130. 東中光雄

    ○東中委員 そこで、日本の環境基準の持つ性格について聞きたいのですが、まず、この法的な性格が問題です。これはOECDに環境庁参考資料として提出された「日本の環境政策」というOECDレビュー会議のための参考資料を見ますと、世界で採用されている環境基準の概念を四つに分類している。日本の場合は、長期的な行政目標である。今回の資料でも、日本の環境基準は行政上の努力目標としての基準で、法的な拘束力はないというように述べていますが、日本の環境基準の法的性格はそれでいいのですね。
  131. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 法的性格は、公害対策基本法九条に示されたとおりでございまして、「人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準」ということでございます。また、これは努力目標でございまして、その九条四項にございますように、総合的な施策を適切に講ずることによって、その達成に努めるというものでございまして、法的な拘束はございません。
  132. 東中光雄

    ○東中委員 日本の環境基準というのはそういうものだ。  今度は、医学的、公衆衛生学的には日本の環境基準はどのような性格を持っておるか。これは橋本局長が昨年の当委員会ではっきりと述べておられます。WHOがいま言っておりますのは、医学的、公衆衛生学的に見ますと、トレラブルとアクセプタブルとディザイアラブルと三つある。ある国はトレラブルの基準をつくるし、ある国はアクセプタブルの基準をつくるし、ある国はディザイアラブルの基準をつくるということで、日本はディザイアラブルのところになっておるということを、局長自身言われておるわけですが、とすれば日本の環境基準は、医学的、公衆衛生学的にはディザイアラブルであるということになると思うのですが、そうですね。
  133. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 医学的、公衆衛生学的にディザイアラブルかどうかという御質問でありますと、医学的、公衆衛生学的にだけ好ましい、ディザイアラブルとして決めるものとは、日本の環境基準はなっておりません。公害対策基本法に「人の健康を保護し、及び生活環境を保全するうえで」ということになっておるわけでありまして、ですから、WHOの言っておりますのは、あそこはプラクティス、行政を実施していくという場合に、どのような性質のものに各国の基準を分けることができるか、基準というのは行政でございますから、分けることができるかということになると、トレラブル、がまんし得る限度、それからアクセプタブル、それなら受け入れられる限度、それから最後はディザイアラブル、望ましいということであります。ですから、WHOのほかのいろいろな文章をお読みになりますと、医学、公衆衛生学だけで基準を決めるとは一切書いておりません。
  134. 東中光雄

    ○東中委員 法的には行政上の努力目標だ、これは問題ないわけですが、医学的にあるいは公衆衛生学的にはディザイアラブルな水準になるのではないのですか。この前WHOについて局長が言うたとき、そういうふうにとれるように言っていますけれども、違うのですか。
  135. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 WHOは、医学と公衆衛生学の世界的な専門機関組織として各国の政府が構成している機関でございます。そういう意味で、純粋の学問だけではなしに、医学、公衆衛生学を実践する要請という問題もその中に入っております。それで、前にお答えしましたように、そのような考えがありますから、専門委員会に対して一番最初にお願いしますときに、WHOでもこういう考え方がある、専門委員会でいま言った三つの水準のうちの、上のトレラブルは言っておりません、別にそういうことを聞くのがねらいでございませんから。少なくとも受け入れることのできるアクセプタブル、それから望ましいというディザイアラブル、この二つのレベルが示していただければ非常にありがたいのだがということでお願いしておりましたが、専門委員会でいろいろ議論された結果、そのようなトレラブルとかアクセプタブルとかディザイアラブルとかいうのは、専門的な学問の議論ではない、それはむしろ行政がやるような話であって、専門委員会としてはそのようなことを分けることはできないということになりましたので、そのことをどう見るかということは、医学、公衆衛生学を実践に移す立場の行政の中でそれをどう思うかということに、専門委員会はこちらの方に振ってこられたというぐあいに私は理解しております。
  136. 東中光雄

    ○東中委員 局長は、この十三日の委員会で、今回の指針値が病気ではなく、「健康な状態からの偏り」に留意をして「高い確率で人の健康への好ましくない影響をさけることができると判断される」、こういうことを理由に、個人的にはディザイアラブルだという答えをされたと思うのですが、しかしこれは、局長のこれまで言っていることと矛盾するように私たちは思っておるわけです。答申は純粋に学問的なもの、あとは総合政策的に行政が基準値を決める、こうも言っておられた。しかし、今回の指針値がディザイアラブルなものかどうかというのは、総合政策的なことではなくて、医学的、公衆衛生学的な学問の問題だ、それを勝手に行政が判断するのは許されないはずだというふうに思うのです。今回の指針値の〇・〇二ないし〇・〇三が医学的、公衆衛生学的にディザイアラブルな水準、すなわち九条でいう「望ましい」という水準だと中公審がはっきり言っているなら、この〇・〇二ないし〇・〇三の範囲で行政が総合政策的に環境基準を決めるということで、筋が通らないこともないわけですが、今回の指針値について、「健康な状態からの偏り」とか「高い確率で」ということで、これがディザイアラブルなものと行政が勝手に判断するというのは行き過ぎなんじゃないか。これは総合政策的なことではなくて学問上の問題だ、しかも、局長が個人的にはディザイアラブルなものだと考えるということを言っている立場から、この指針値の範囲内で環境基準が決められるとすれば、これは道理に合わないようになってくると思うのです。この指針値がディザイアラブルかどうかというのは、WHOの言うとおり、医学的、公衆衛生学的な学問の問題なんだから、この点は改めて中公審に聞くのが筋じゃないか。その点、どうなんですか。
  137. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 これは先ほどもちょっと答弁の中で申し上げましたように、専門委員会に対しましては、ひとつそういうことで議論してもらえるかということでお願いしたわけであります。先生方も議論されたわけであります。それはとうていできない、そのことはむしろ実際実践に当たる方の側で、どういう目的にどう使うかということでそういうものは決めるべきであって、学者がそこのところでやる話ではないということでなったわけであります。  そういうことで、前にお話ししたときからだんだんそのような状況が変わってきているということで、それではおまえはどう思うかという御質問がこの間あったわけであります。そこで私は、普通の健康の間にこれでちゃんと守れるということであって、病気とか死亡とか低下ということではないということであれば、これは望ましいと言って別におかしな話ではないのではないかというぐあいに現在も考えております。
  138. 東中光雄

    ○東中委員 しかし、鈴木専門委員会責任者は参議院で、「この指針というものを考えます場合におきましては、どのような影響防止するのが必要であるかという条件次第によりましては、指針の内容は当然のごとく変わってまいります。」こういうように言って、今回の指針値は「あくまでも後で目標値というものを導き出すための最低の濃度」こう言っています。これはアクセプタブルなものであるということを言っているんだと思うのですが、諮問を受けた学者の責任者がそう言っておるわけですから、行政の方で望ましいものというふうに勝手に決めていくのはおかしいんじゃないか、こう思うのですが、どうでしょう。
  139. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 これは鈴木先生個人としての御意見、いろいろあると思います。決してこれは鈴木先生の個人の意見を、私ども縛るようなことは一切いたしておりません。専門委員会でいろいろ御議論になってこれを分けていただけませんかと言ったときに、それはできないということで皆さんがそういう結論を出されたものでございます。  そういうことで、基準に直してくるという場合には、鈴木先生はあくまでも個人としての立場であり、また学問の専門家であるという立場で言論の自由でおっしゃっておられるというぐあいに私どもは解しておりまして、行政としては行政の責任でこれを判断をする。そのときに鈴木先生のおっしゃったのは、WHOの一九七二年のレポートの長期目標のくだりをほとんど朗読されたに等しく正確に言っておられました。そのほかのところに基準設定する場合に、どういうことをWHOは言っておるかということもあわせてごらん願えれば、決していま私が申し上げていることはそういうものを無視して言っているものではないということを御理解願えると思います。
  140. 東中光雄

    ○東中委員 中公審に諮問するときに、アクセプタブルとディザイアラブルとの二本立てで諮問するというのは、去年の十月にも同じことを言われているわけですが、二本立てというよりはむしろアクセプタブルなものを求めるのが本来諮問の意図というか筋ということではないんでしょうか、どうなんです。
  141. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 これは、専門委員会の一番最初の日に私出席いたしまして、ごあいさつの中で、このいま先生のおっしゃったディザイアラブルとアクセプタブルとそういうレベルをぜひ実は知りたい、しかし諮問そのものには判定条件となっています。そういうことで国会でもそういうことを申してお願いしていますということを申し上げました。  ただ、先生方の中でいろいろ議論された、それはむしろ実際の実践と行政の概念である、学問ではそこまでできないということになったことが一つと、それからもう一つは、これは確かに今度の答申は非常に科学的だと思います。といいますのは、幅で物を言っておられるということでございます。生物の現象というのは、一つの線とか一つの点で物が言えない。やはりこの幅の中でということで、どういうことが確かでどういうことが不確かだということも非常に正直に言っておられます。そういうことで、私は幅で出るかどうかということはわかりませんでした。それは幅になれば幅でもしようがないと思っていましたが、最終的に幅で出してこられた。それでアクセプタブルとかディザイアラブルとかいうレベルは、これは専門委員会の学問議論としてはそれはだめだということでやられましたので、やはりそこになりますと、今度は行政として考えるということになるわけでございます。  そういうことで、よくいろいろ議論をしますときに、アクセプタブルとは問題になる変化の起こるミニマムのところだという議論をしますと、恐らく今度のクライテリアから見ると年平均〇・〇四の辺ではないか、これは判定条件から見ますと。例の〇・〇二と〇三を決めるときの参議院での鈴木先生の御説明の中にも、アクセプタブル、ディザイアラブルということは一切言っておりません。ただ、どうもその辺が、そこでは高いので〇・〇三というものの下に低い方向におろしてきたというお考えを言っておりますが、これもやはりある面においては、そのようなぎりぎりよりも少し下げてきて言っておられるというように受け取れますし、そこに安全率とは言わないまでも安全性を考えた判断が含まれているというぐあいに私は受け取っております。
  142. 東中光雄

    ○東中委員 局長は、昨年の十月二十六日の参議院の公環特で、二つの指針値を求めると言っておりますが、いまの環境基準は非常にむずかしい、中間目標値でさえ大きなドラスチックな策が必要でコンセンサスを得るのはむずかしい、だから、これは局長の言葉ですが、「これは、非常に正直に申しますと、最後の突っかい棒として、絶対これだけはクリアしなければならないというところで出すために、受け入れることのできる健康を守る水準ということを諮問しているわけでございます。」と、これは「正直に申しますと、」ということで言っておられるわけですが、要するにいまの環境基準についていろいろ問題が起こっているから、最後の突っかい棒としての絶対クリアしなければならないもの、これを諮問したと言っていたわけです。そして今回の指針について鈴木委員長は、注文どおりの、諮問されたとおりの最低の濃度だとはっきり言っている。にもかかわらず、今度はこれをディザイアラブルなものというふうな方向に理解をしてくるというのは、どうも初めと終わりとちょっと評価が変わっているんじゃないか、こう思うのですが。
  143. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 昨年の十月二十六日の時点で、そのような切実な気持ちがあったことは事実でございます。昨年の十月二十六日時点でこのような幅の答申があり、しかもどう言いますか、「健康からの偏り」を防ぐというようなレベルでの問題の整理をされるというところまでには、まだそういうときに入っておりません。最終的にやはりこの幅の答申で、しかも医学的、生物学的な影響を観察されるが、それは可逆的であって、生体の恒常性の範囲内にある段階、これは普通の健康のレベルであります。  これは、従来のSO2の場合に言われたレベルといいますのは、一つは成人の病人の病状の悪化が疫学的に証明されないこと。二が死亡率の増加が証明されないこと。三が閉塞性呼吸器系疾患の有症率の増加が証明されないこと。四が年少者の呼吸機能の好ましからざる反応ないし障害が疫学的に証明されない、これはもう少しレベルの悪い話であります。ですから、そういうことで前の専門委員会答申のときには、これは維持すべきなんだというお話をしておりますが、今度のときには前よりもいいレベルのことをおっしゃっておられて、そしてそれを幅で出してこられてしかも解釈として高い確率でこの健康への好ましくない影響を防げるという、まあ財界の方はそんな厳しいことを言い出してという批判をしておりますが、そのような問題として整理されるというところまでは、その時点においてはまだ私は全く予想はしていなかったし、また内容についても触れておりませんでしたから、知るわけもないというぐあいに考えております。
  144. 東中光雄

    ○東中委員 もう時間ですから。要するに、当初は「正直に申しますと、」ということで諮問したい、それと違った答申が出てきたようなかっこうになっておって、今度はそれに従って変えていこう、緩和していこうというようなことになるのは、これはどうしても納得がいかぬ。私たちは、この際、局長は、住民特に被害者、患者の立場に立って、こういう環境基準の緩和というようなことじゃなくて当面の極端な汚染状態の解消、窒素酸化物についての指定というふうな点にこそ力を注ぐべきである、基準の改定はやらないというふうにされるようにこれは強く要請をしまして、もう時間ですので、質問を終わります。
  145. 久保等

    久保委員長 次に、馬場昇君。
  146. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 私は、けさ水俣病問題関係閣僚会議、座長は官房長官ですが、ここで水俣病問題の当面の対策について決定をしておるようでございますが、この決定内容について、座長が官房長官ですので官房に質問を通告しておりましたが、幸い決定いたしました後に、決定しました内容については書き物をいただいておりますので、内容説明は要りません。  このような内容をきょう関係閣僚会議で決定したのかどうか。二点は、閣議ではこれを二十日に決定するというぐあいに聞いておるのですが、閣議では二十日にこれを決定するのかどうか。もう一つは、きょうの関係閣僚会議のこの決定内容について熊本県の知事は了解をしたのかどうか。この三点について、官房にお尋ねしておきたいと思います。
  147. 木戸脩

    ○木戸説明員 本日、水俣病に関する関係閣僚会議を開きまして、御指摘の水俣病対策についての文書による申し合わせをいたしました。この結果につきましては、官房長官から閣議で口頭で報告をいたしております。だから、きょうの段階は閣僚会議として意見が一致した、その結果一致したということを閣議に報告したということで、二十日の日にきょうの内容を閣議了解という手続をとる、こういうことでございまして、それに向けていま準備を進めておるわけでございます。  それから、知事が了解したかどうかという点につきましては、知事とは、自治省を通じまして、問題になっておりました県債の引き受け条件等を中心にいろいろ実際上協議を重ねておりましたわけでございます。本件につきましては、知事としてもきょうオブザーバーとして関係閣僚会議に御出席をされたわけでございまして、この内容について細かい点はいかがかと思いますが、大要において異存はない、こういうふうに了解をいたしております。
  148. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 二十日に閣議で了解をとるのだとおっしゃいましたが、これは閣議決定をするのですか。了解と決定というのはどういうぐあいに違うのですか。  それと、細かいところの点は知りませんけれども、知事は了解したと思うというようなことを言われましたが、ここには第四まで書いてあるわけでございます。第一、第二、第三、第四、ここに書いてありますこの部分については完全に了解したのですか。あるいはこの部分のどこかが違うとかあるいは条件をつけたとか、こういうことはなかったのですか、知事は。  以上二点について再度……。
  149. 木戸脩

    ○木戸説明員 閣議決定と閣議了解の差につきましては、いろいろ細かい話もございますが、言ってみますならば、閣議了解と申しますのは、関係閣僚が理論的には本来決め得ることを事の重大性にかんがみて一応閣議全体の了解を得ておく、こういうのが閣議了解でございます。  閣議決定というのは、本来、各大臣がお決めになることじゃなくて、閣議として決定をするという事項について閣議決定をする、こういうことでございますので、物事の軽重からいたしますならば、やはりやや閣議決定の方が重い。しかしながら、閣議了解というのも、その内容政府として一体的にその事項を指示するという意味では同じでございます。  それから、知事さんがこの内容についてという重ねての御質問でございますが、知事さんはこの内容について御異存があるわけではございませんが、この内容のうち、さらにたとえば立法措置については、今後一層立法措置を推進するように努力をしてほしいというような話があったということでございます。
  150. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 時間が余りございませんので、次に、自治省にお尋ねいたします。  県債を発行してそれをチッソに融通して補償金を払わせるということになっておるのですけれども、この県債発行の法的根拠を端的にお示しいただきたい。地方財政法五条一項二号というふうに私は思うのですけれども、この法的根拠についてお示しを願います。
  151. 関根則之

    ○関根説明員 県債の発行の根拠は、おっしゃいましたように地方財政法五条第一項第二号を根拠として発行するものでございます。
  152. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 従来、自治省は、この補償金にかかわって県債を五条一項二号によって発行することは非常に困難である、こういうぐあいに言っておられました。事実、私が本委員会で四月二十一日に質問いたしましたときにも、補償金の支払いのための地方債発行は困難である、こういうぐあいに説明しておられました。この困難であるのが出すということに決まった。どういう理由で困難がなくなったのかということについてお尋ねします。
  153. 関根則之

    ○関根説明員 特定の企業の公害補償の財源に当たるものを県債として発行するということは、いままでもやってきたことがございませんし、それから非常に似たようなケースとの兼ね合いをどういう形でやっていくのかというこれからの問題との兼ね合いもございます。  それから、そもそも貸付金でございますから、回収の見通しが、貸付金に伴います通常発生し得る危険負担の範囲内はやむを得ませんけれども、非常に危険が高いものあるいはその元金の回収につきまして他にだれか保証する者がいるということでその回収が確実に担保されておる、そういうようなものがございませんと、そもそも貸付金の概念の中に入ってこないという場合があるわけでございます。そういう形になるおそれが非常に強いというようなこともございまして、自治省は当初から、できるだけそういう方式での県債発行によるチッソ支援というものは御免をこうむりたい、こういう考え方を持っておりまして、その趣旨を多分、答弁の中でも申し上げたのではなかろうかと考えております。  しかし、現実の問題といたしましてチッソがもし万一つぶれるというようなことになりますと、地域社会経済に大変な大きな影響を及ぼしますし、雇用問題としても捨てておけない、こういう事態が出てまいります。そういう実態を反映いたしまして、地元の熊本県におきましてもいろいろ検討の末、県としては県債という方式をとってチッソの支援をするということもやむを得ないという態度を決めてまいりましたので、そういうものをもとにいたしまして、私の方としては、今回、こういう方式について、自治省としてもやむを得ないものというふうに考えたわけでございます。法律的にもともと絶対不可能だと言っておったわけではございません。先ほど申し上げました貸付金という概念の中に入ってくるようなものでありますれば、財政法の規定に基づいて発行ができるわけでございますので、そういったいろいろな周りの財政措置というようなものもとられるということになりましたので、法律規定の範囲内で発行ができるということでございますので踏み切ったということでございます。
  154. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 もともとこの問題につきましては、公共事業にかかわる問題だとか、あるいは言われましたように、返済の見通しがある、回収の見通しがある——事実、銀行がこれ以上貸してやると回収見込みがないから背任行為になる、だから銀行は貸せないのだというような状態になっているのは御承知のとおりでございまして、そういう点で非常に困難であるということでした。  そこで、この問題で議論する時間が余りないのですが、違法とは考えておられないようですけれども、地方財政法五条一項二号については、法律上も私はやはり疑義がある、こういうぐあいに思っておりますが、いまのおたくお話では、県がこれを出すと言ったから認めたんだという話があったわけです。ではお聞きしますけれども、これと同じようなケースがほかの都道府県から出てきた場合は、自治省はお認めになるのかどうか。また、熊本でもこれと同じようなケースが出て、いま大洋デパートの火災の死亡者の被償金などで、大洋デパート側も更生法を出しましていろいろな問題になっているのですけれども、それが出るかどうか知りませんけれども、熊本県においても同様なことで地方債を発行したいと言ってきた場合、他の県が、熊本県がチッソにやったじゃないか、これと同じようなことで地方債を認めてくれと言ってきた場合に認められるのかどうかについてお聞きしたいと思います。
  155. 関根則之

    ○関根説明員 今回のチッソに対する措置は、きょうの関係閣僚会議の後の関係各省庁の確認におきましても、きわめて異例な特別な措置であって、これを前例とするものではない、こういう考え方で意見の一致を見ているわけでございます。したがって、このチッソの場合というのはきわめて特異なケースでございますので、ちょっと事情が似ているからということで、直ちにいまの大洋デパートの例であるとか、あるいはまたほかの似たような例に適用するという考え方は持っておりません。
  156. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 前例としないというような、言うならば、私の言葉で言えば緊急避難措置だというぐあいに私は考えて、そんなに違法性を追及しようとはきょうは思いませんけれども、私は、いまの地財法の上から言っても疑義があるというぐあいに思うのです。後で質問しますが、これがどんどん続く可能性があるわけですから、だから私は、法的に疑義があるものを特例中の特例、前例にしないというような形で、緊急避難措置でやっているわけですが、やはりこれは国民の側から見るときちんとする必要があろうということで、私は今回の措置は緊急避難措置としてやられたと思うのですけれども、この問題については特別立法というようなことを考えながら、疑義のないように政府としては考えるべきだ、こういうぐあいに思っておるのですけれども、これについての自治省の見解はどうですか。
  157. 関根則之

    ○関根説明員 法律上疑義があるというお話でございますが、私どもは、最初から申し上げておりますように、現在の法律の範囲内でこの地方債というものは出し得るものだ、こう考えておるわけでございます。  ただ、そこで言っておりますのは貸付金でございますから、その貸付金という考え方の中に入ってこないような、いわば補助金的な、やりっ放しになるというものは、やはり法律の範囲内に入ってこないと思いますけれども、今回の場合には、国において償還財源について十分な措置を講ずるというような確認もなされておるというような経緯もございますので、法律上はいまの地方財政法の範囲内に入ってくるものということで、疑義はないというふうに考えておるわけでございます。
  158. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 疑義がなければほかのところから言ったって、これはほかのところに適用していいわけですよ。何も疑義がなければ熊本だけ、水俣だけ、チッソだけする必要はないのです。ほかのところもどんどん適用したっていいじゃないですか。これについては、私はいまからほかの省庁に聞きますから、よく聞いておいてください。そして最後にまたあなたに質問します。  これについては、関係閣僚会議の大臣ですから、大臣はどう考えておられるのですか。いまのチッソに対する県債発行について大臣はどんな発言をされ、どう思っておられますか。
  159. 山田久就

    ○山田国務大臣 法律的な見解、ただいま自治省の方から答弁いたしましたが、われわれもそういうような了解に立っております。
  160. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 何も御存じない。これは返ってこないということは大体おわかりになっておるのではないかと思うのです。いまの実情は。それは後でほかの省庁に質問しますからよく聞いておいてください。  そこで環境庁に質問しますけれども、この県債方式とPPPの原則というのはどういうぐあいになっているのか。
  161. 信澤清

    信澤政府委員 いわゆるPPPは、私ども日本で使っておる場合には汚染者負担の原則と申しておるわけでございますが、汚染者負担の原則というのは、あくまで汚染排出責任者であるチッソが患者その他に対する損害賠償の責めに任ずる、こういうたてまえを言っておるわけでございます。今回はいわば資金の貸し付けでございますので、チッソが支払うという態勢は堅持しておるわけでございますので、その意味で、おっしゃるようなPPPに反するものではない、このように考えております。
  162. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 それでは、環境庁のPPPの原則は守るという基本線がわが国にはあるわけですから、いまPPPの原則は守られておるのだとおっしゃった。そうしたならば、チッソは再建されてこのPPPの原則は貫かれる、再建をしてどんどん借りた補償金はチッソは返し切る、そういう見通しを持っておられるのかどうかということです。持っておると言われると思うのです。では患者は、その後、申請患者がどんなにふえるという見通しを持っておられるのですか、あるいは患者の認定者がどれくらい出るという見通しを持っておられるのか。そういう見通しなしにはチッソが必ず返し切るという自信、PPPの原則が貫かれるという自信はあり得ないと思うのですが、そういうところに疑義も何も感じていないのですか。
  163. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 水俣病の患者の今後の発生の見通しという点についてのお尋ねでございますが、御承知のように水俣病につきましては、本人の申請に基づきまして知事が審査会の意見を聞いて認定をする、こういう仕組みになっておりまして、今後の水俣病の認定患者数の見通しを立てるということは、現時点におきましては大変困難なわけでございます。
  164. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 水俣病の患者がどれだけ発生するかという見通しがない。いま五千人申請者がおりますね。いま千人以上の認定者でこのようにチッソが行き詰まっております。いま五千人おります。いま月に五百人余りずつ申請が続いているのです。五千人出た場合ということだってあり得るし、あるいは一万人になることもあり得る。そうした場合に、一人認定されますと二千万くらい補償金が要る。そういうときに、果たしてチッソが払い切るのか、PPPの原則が貫かれるのか、そういうことがわからなくて、PPPの原則が貫かれると言うことは、まさに無責任きわまる発言だと私は思うのです。しかし、わからないというのは、あなた方のいまの能力では事実でしょう。  そこで、これについて、今度は社会党の方で次の国会に、水俣病総合調査法といって、その深さ、広さを国の責任において調査しなさい、そうしたらその分母がわかる、汚染者や原因がわかる、申請者の見通しもつく、こういうようなことをやって明らかにしようという努力を社会党はやろうと思っているのですよ。こういうことについて、私どもが出す総合調査法というようなもの、これも一つの重要なものとして、どれだけ出るのかということを明らかにしたいという努力を環境庁はしようという気があるのか、私どもが出すこういう法律に対して、それはしようという法律ですから、どう考えておられるのかという見解を聞いておきたい。
  165. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 先生御承知のように、水俣病というのは、その汚染の広がり、深さというものは大変大きいわけでございまして、現時点におきまして、県におきましても国におきましても、申請者の認定ということに技術的な面で非常に追われておるわけでございまして、やがてはそういった技術的な能力を考えながら、県とも相談をいたしまして地域におけるその広がりをつかむことを、かつても昭和四十六年あるいは四十九年というような時期にある種の調査をしたわけでございますけれども、それの延長というような形での調査もやがては必要になってくるのじゃないかと思うわけでございますが、現時点におきまして、いろいろ能力の点あるいは技術的な水準の点というようなことで、当面は患者の認定の促進ということに力を注がざるを得ないというところでございます。
  166. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 長官、PPPの原則を貫くといって平然としておられますけれども、なかなか情勢がむずかしいということはあなたも知っておられると思うのですが、やはり国民に対しては、このような資料があるから、たとえば患者、申請者がどうだとか汚染者がどうだとか認定者がどうなるだろうという、こういう資料があるから、このように県債を出してもPPPの原則は貫かれるのだということを国民に明らかに説明し、安心させるような方策を環境庁はとる必要があろうと思うのですよ。だからそういう意味において、中身は言いませんけれども、このような資料でPPPの原則はこれでこういう県債を出しても貫かれるのだ、こういうことを国民の前に明らかにするという努力を環境庁ではすべきだと私は思うのですけれども、どうですか。
  167. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 いろいろな意味において背景というようなものを、でき得ればそういう調査、それは一つ考え方だと私も思っております。しかしながら、それによっていま御指摘のように認定を受ける患者の方がわかるか、一体どれだけの期間においてそれが可能かという問題になってくると、それは先生自身もなかなかそう簡単な問題じゃないということはおわかりじゃないかと思うのです。実際問題として、具体的にいまの段階において問題に対応する方法としては、いまわれわれ政府の方で考えておる、これが、いろいろな点はあるかもしれないけれども具体的に対応する手段であるということで、この方面で努力するのが非常に実際的な、具体的な対応策じゃないか、こう考えておるわけでございますので、この点については実際問題としての御理解をいただきたい、こう思う次第であります。
  168. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 何を御理解してくれと言われるのかさっぱりわからぬ。私が言うのは、具体的なことをいま言うのではなくて、こういう資料があってこういう状態だからPPPの原則は貫かれるのだということを国民に説明するように努力をしなさいと私は言っているわけですよ。そういうことを努力しなければ、患者は幾ら出るかわからぬという状態の中だったらPPPの原則は貫かれるかどうかわかりません、そう答弁するのが環境庁のいまの素直な答弁ですよ。あなた方がPPPの原則は貫かれると言うものだから、資料がないじゃないかと言っているわけですが、やはりPPPの原則は貫きたいのだ、しかし余りそういうことの調査とかなんとか十分はっきりしていない、しかし、それをはっきりしてこういう状況で貫かれるんだということを国民に理解してもらうように環境庁は努力する、それをあなたに聞いているのですよ。そういう努力をする意思はないのですか。
  169. 山田久就

    ○山田国務大臣 無論貫くという以上は、見通しをつけるということにおいての必要な努力は、もうわれわれとしても努めるつもりでございます。
  170. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 時間が非常にありませんので、たくさんの質問があるものですから、やはりこうやってPPPの原則を貫かなければならないわけですから、貫くために、国民は皆これに疑問を持っているのですから、疑問を解くような資料等の調査等についても十分努力してもらいたいと思うのです。  次に、もう一回自治省に聞きますけれども、県債の発行額というのはどのように考えておられるのか、そしてどこで県債の発行額を決めるのか。本年の発行額というのは、伝えられるところによりますと六十億円ぐらいだ、こういうぐあいにも聞いておるのですけれども、発行額はどこで、どのように、いつ決めるのか、本年の発行額はどのくらいが予定されておるのか。
  171. 関根則之

    ○関根説明員 県債でございますので、その発行額は最終的には熊本県議会の議を経て予算として決定を見るものでございます。  ただ、事前関係各省庁も寄りまして、どの程度の所要額が必要かというようなことをお互いに連絡調整をしながら協議をしてまいろう、こう考えておるわけでございます。  今年度の発行額については、いまだ現在の時点では明確な数字は確定いたしておりません。
  172. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 本年度の額が現在の時点ではっきりしていないと言われましたが、あなた方と県といろいろ相談なさると思うのです。熊本県が臨時議会を開くのか、九月議会になるのか知りませんが、ことしの発行額はいつの時点で決まるという見通しですか。
  173. 関根則之

    ○関根説明員 決定の時期につきましても、まだ明確ではございませんが、次の県会の定例会が通常の場合九月でございますので、九月ごろをめどにそういう準備が始まるものというふうに私どもは了解をいたしております。
  174. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 そこで六十億という数字が巷間伝えられておるのです。これについては決まっていないわけだから、あなたは知らないという答弁をするのでしょうけれども、大体私が計算しても、いまの認定状況からいったらチッソがどのくらい、年に百億なら百億円ぐらいの補償金が要るだろう。ことしはその中の半年分だからというと、その半分は五十億とかいろいろ試算はしておられると思うのです。ことしは決まっていないと言われるから、もうこれ以上質問しません。  それから、もう一つ聞いておきたいのは、この県債の発行期間です。ずっと申請者が出、認定者が出、補償金が支払われる。私は、これは今後五年、十年あるいは二十年だって続く可能性があると思うのです。それに発行期間というのをそんなに無制限に関係閣僚協議会なんかで、それは無責任きわまると思うのですよ。だから大体発行期間というのを何年間ぐらいを考えておられるのかということです。
  175. 関根則之

    ○関根説明員 さしあたりの措置といたしまして、当面、昭和五十六年度までの間、発行したいと考えております。
  176. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 その理由は。
  177. 関根則之

    ○関根説明員 当面の措置として考えております。
  178. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 当面の措置として何で四年間になさったのか、その理由。
  179. 関根則之

    ○関根説明員 将来の見通し、なかなかむずかしい問題でございます。しかし、先生もおっしゃいましたように、こういう措置はあくまでも異例な措置でございますので、そういつまでも無制限に出していくべき筋合いのものではないという考え方のもとに、さしあたり五十六年まで、こういう考え方でございます。
  180. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 これにつきましては、チッソが自主的に再建の努力をして、後五年後には経常収支が黒字になるという再建計画を出しております。だからその辺を基準にして四年と決められたんじゃないかと私は思うのです。これは、知事はそのように発言をしておるのです。しかし、これはもう四年と言われたからこれ以上聞きません。しかし、これは当面四年ですけれども、このままの状態でいったら、また続くということはあり得ると思うのです。そこで、先ほど言いましたように、そう続いていったらやはり地財法ということには疑義が生じてくるのじゃなかろうかという気もするのです。そういうところにやはり疑義のないような何か特別立法というものをその間に考える必要があるのではなかろうかというぐあいに私は思うのですが、それについては、当面、四年間ということはお聞きしておきます。  それから次に、時間が余りございませんが、地方債の引き受けについて、これは知っておりますけれども、公式にこの場で発表していただきますが、大体どういうふうな引き受けを計画しておるのかということです。
  181. 関根則之

    ○関根説明員 チッソの補償支払い総額の六〇%相当額までは政府資金で引き受ける、残余につきましては関係金融機関にお引き受けを願う、こういう考え方でございます。
  182. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 これは大蔵と自治と打ち合わせになったと思うのですけれども、チッソの補償金支払い額の総額を県債で出すわけですね。しかしこれは、この補償金はおかしいじゃないか、これはもう少し小さく補償すべきじゃないかという、そういう内容にタッチするのではなしに、チッソが支払いました補償金の総額を県債で出す、その六割を国、あと四割を金融機関、こういうことですね。
  183. 関根則之

    ○関根説明員 先ほども申し上げましたように、県債をどの程度発行するかということは最終的には県が決めることでございますので、その内容についてここまで出しなさいとかこれ以上出したらいかぬとか、そういうことは余り細部にわたって私どもの方から一方的に決めていくという考え方はしてございません。しかし、考え方の基本といたしましては、補償金支払い総額またはチッソの資金不足額、いずれか少ない額、こういう考え方をいたしております。したがって、先生ちょっと、支払い総額までは常に出すというような御発言じゃなかったかと思うのでございますが、常に支払い総額まで出すという意味ではございません。仮にチッソが黒字が出てまいりまして、自力である一定部分を支払えるということになりますれば、それを差し引いた金額、いわゆる資金不足額というものが支払い総額より少ないときにはその額でとめてしまう、こういう考え方でございます。  そして、政府資金の引き受けの六割というのはまた全然別な観点から、発行額が何ぼでございましても、もちろん発行額の範囲内ではございますが、チッソの補償金支払い総額の六割までは政府資金で持つ、こういう考え方でございます。政府資金の引き受け割合というのは発行額にリンクしておりません、支払い総額にリンクしている、こういうことでございます。
  184. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 四割を金融機関というぐあいにおっしゃいましたけれども、大蔵省、これは金融機関には了解を受けてあるのかどうかということが第一点です。  次に、チッソが償還困難になった場合ということがこれに書いてございます。「国において所要の措置を講ずるものとし、その具体策は、関係大臣が協議のうえ、決定するものとする。」こういうぐあいになっておりますが、これについてお尋ねしておきたいのですけれども、結局県債を起こす、チッソに貸す、チッソが支払いができなくなったという場合の国の保証は、「国において所要の措置を講ずるものとし、その具体策は、関係大臣が協議のうえ、決定するものとする。」と書いてありますが、非常に抽象的です。とにかく一〇〇%国が保証するという原則がこの中に入っているのかどうかということが一つです。巷間伝えられておるところによりますと、このことで相当議論になったと聞いておりまして、一〇〇%保証するというのも閣議決定を文書でもって県にくれとかと、いろいろ交渉があっているはずです。あるいは予算総則なんかにも書いてくれとか、あるいはここに特別立法してくれとかというような話もあっているはずです。そういう詳しいことは言いませんが、とにかく一〇〇%かという意味です。  もう一つは、そういうことがあったからだと思うのですけれども、伝えられておるところによりますと、内容の覚書を大蔵、自治両事務次官の間で取り交わす、こういうぐあいに報ぜられておるわけでございます。この辺について、閣議了解事項があったときに両事務次官で覚書を取り交わす、これはどういうことなのかということと、それからもう一つは、これについては経験があるわけです。いまヘドロ処理でチッソ負担分の百二十六億という県債を出しておるわけですが、これは全部国が責任を持つという意味で八・二方式というのが出ております。これは大蔵省が八だ、自治省が二だ、そういう話がチッソ負担分のヘドロ県債を引き受けるときに出ておりますが、こういうようなことを意味するのかどうかという点についてお尋ねしておきます。
  185. 吉田正輝

    ○吉田説明員 金融機関に今回の閣僚会議了解了解されているかという第一点についてお答えさせていただきますと、こういう政府間の協議の進む過程において、私どもも金融機関に適宜連絡をいたしながらできる限りの国及び県の施策に協力するように呼びかけております。完全なところまではいっておりませんけれども、ほぼ了解は得られるという見通しに立っております。  それから、こげついたときに金融機関はどうするかということでございますが、仮定の問題でございますのでなかなかお答えしにくいことでございます。現にそのことにつきましては、困難となった場合には関係大臣が協議の上決定する、こういうことになっています。その場合の関係大臣の協議の過程において、今回と同じようにいろいろと金融機関に相談しながら、可能な限りの支援、可能な限りの措置を行う、こういうふうに考えておりますが、それは将来の話でございますので、そのときにまた考えるということではないか、かように思っております。
  186. 塚越則男

    ○塚越説明員 県債の償還のことでございますが、チッソが仮に返済できなかった場合にどうするかというお尋ねでございますけれども、この点につきましては、現在の段階ではどのくらいの金額になるものか、あるいはまた、そのときの財政状況がどうなるかというようなことがまだわかりませんので何も合意ができておりません。しかし、そういう事態が万一起こりました場合には、熊本県の財政にも大きな影響が及ぶことでございましょうから、その場合には関係大臣が相談いたしまして何らかの措置をしなければならないだろうということは考えております。私どもとしても、その場合には十分の措置をしなければならないであろうという気持ちを持っているわけでございます。
  187. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 熊本県は、万一の場合国が一〇〇%保証してくれ、これを条件にしなければ県債を発行しない、それを条件にしなければ県議会は通らないという実情もあるのです。そこで、どなたもお答えになりませんでしたけれども、返済不能になった場合には、特別交付金で見るとか一般財源で見るということも自治省、大蔵省で議論されているのですが、関係大臣というのはどことどこの大臣かということと、基本でここに聞いておきたいのは、一〇〇%国が保証するのかどうか、それは決まっているのか決まっておらないのか、あるいはいつごろそれを決めるのか、そういうことについて聞いておきたいと思うのです。私の意見としては、やはり特別交付税、これは全国民の共有の財産といえば財産ですけれども、あるいは一般財源も当然国民の金ですから。こういう場合に、いまの公害補償法には原因者が倒れた場合にどうするという規定がないのです。だから私は、万一の場合というのは、そういう関係大臣が協議してするということでもいいんですが、その中身について、いまの公害補償法等を改正して、原因者が倒れた場合にはどうなるのだ、返済不能になった場合にはどうなるんだというようなことは、やはり何か特別立法措置くらい考えて、一〇〇%なら一〇〇%保証する、こういう抜本策を考えた方がいいのじゃないかと思うのですけれども、そういうものに対する見解と、いずれにしても一〇〇%見るのか見ないのかということにはっきり答えていただきたい。
  188. 関根則之

    ○関根説明員 当初、熊本県の方の態度も、県債を発行する前提として一〇〇%国の方で債務保証をしてくれなければ困る、こういう主張をしてきたのはお話のあったとおりでございます。しかし、問題を早く煮詰めなければならないという時日上の制約もございまして、最近になりまして熊本県から、ごくわずかな負担であれば熊本県も負担をする用意があるというお話がございまして、今回の関係閣僚会議了解に達したわけでございます。したがってこの措置では、もし万一そういう事態が起こったときに一〇〇%国の方で全部措置をいたします。そういう内容にはなっておりません。  それからその際に、熊本県が多少なりとも負担をするということになった場合に交付税で見るのか見ないのかという問題がございましたが、私どもは現時点におきましては、交付税でその熊本県の負担分を措置するという考え方は持っておりません。
  189. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 チッソの経営状況も聞きたかったのですけれども、時間がありませんから、それはいいです。  次に、通産にお聞きしたいのですけれども、問題は、チッソは結局こういう措置で再建できると考えておられるのかどうかということ。それから、その中で特に、県債を熊本が出すわけですから水俣工場を強化、存続させるということが原則で、これがつぶれたら県債なんかはてんで問題にならないと思うのです。だから、水俣工場を強化、発展させるという点について通産省はどういう考えでどういう指導をなさっておるのかということ。それから、新聞に伝えられるところによりますと、これは局長に聞いたらそういうことはないと言われましたけれども、通産省がチッソに水俣工場の塩化ビニールをつぶしなさいというようなことを指導しておるとか聞いたのですけれども、あそこは塩化ビニールをつぶせば、肥料とリンクしているのですから、肥料もできなくなるのです。そうしたら完全につぶれるということになるのですよ。その中身に通産省はタッチしてはおらないと思うのですけれども、いずれにいたしましても再建の見通しと水俣工場をどうするかということ。  それから、あそこを再建する場合に、実はいま労働組合と会社が再建の五カ年計画の中で五十五年までの協定を結んでいるのです。こういうことでやはり協定を守る、そして従業員の雇用を完全に保証していく、そういうような方向で指導すべきだ。そのためにも県債も出ているわけですから、こういうぐあいに思うのですけれども、チッソ再建についての通産の指導のことで、時間がございませんから、たったっと端的に答えてください。
  190. 児玉幸治

    ○児玉説明員 それでは、まず第一に、チッソの再建は可能かということでございますが、チッソの再建の成否を左右いたしますのは当然のことながらチッソ自身、すなわちチッソの経営者でありチッソの従業員の腹一つ、決意一つということでございます。われわれは、そういう会社なり従業員なりの決意をベースにいたしましてできる限りの支援をしていくということでございます。チッソの方からも中期の事業計画というものが出てまいりまして、ここしばらくの間、売上高も年々六%ずつふやすことを目標にいたしたい、五十八年度までには売上高利益率を三%に引き上げるように努力し、以後その水準を維持したいということを言ってきておりまして、いろいろ具体的な提案もいたしております。そういうものを見る限りには、われわれとしてもできる限りの支援をし、何とか再建ができるように持っていきたい、こういうことでございます。  それから水俣工場のことでございますが、これはやはりチッソの持っております主力工場の一つでございますから、この体質を時代に合うように変えていきながら強化し充実していくというのは当然のことだと思っております。先生がただいまおっしゃいました塩ビの話でございますが、これは、私どもの方、決してそういうふうに言っているわけではございません。むしろ塩ビも肥料もあるいはその他のものも含めまして、かなり長い時間にわたって、将来どういうふうにあそこを収益の上がる工場にしていくかということをこれから真剣に考えなければならないと思っております。  それから組合の問題でございますが、これは実は組合との間にどういう協定があるかについては存じないのでございますけれども、私どもの基本的な姿勢は、やはり雇用を維持しながらどうやって体質を変えていくかということをポイントにいたしております。
  191. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 ぜひ水俣工場を強化していただきたいということ、本当にそうでなければ県債を発行する意味もないわけですから。それから、雇用をいま重視しておるというお話がございましたので、雇用を重視する意味でも、協定書があるわけですから、こういうのはやはり尊重して守っていかせるように指導していただきたい、こういうぐあいに思います。  次に認定業務の促進問題について、時間がなくなりつつあるのですけれども、このきょうの関係閣僚会議では、環境庁から認定業務の促進について知事と市長に通知を出す、こういうぐあいになっているのですけれども、これは、私は、巷間伝えられております新次官通達ではなかろうか、こういうぐあいに思うのですが、巷間言われております新次官通達の内容とは違うかもしれませんが、そういう次官通達だということはどうか。  市長には何でこれを出すのかというのが二点。  それから第三点は、結局、この委員会におきましても、新しい通達を出すということは全然考えていない、四十六年次官通達を変えるようなことについては検討もしていない、考えてもおらない、こういうことを環境庁は私に対しても答弁をしておるのです。そういう意味におきまして、今度この通知を出すというのはどういう意味があるのか、こういうことでございますし、それからさらに通知を出すという場合には、これは四十六年次官通達というものを強化し発展させて、認定促進、いわゆる患者を救済するという立場で当然新しい通知というのは出さなければならないと思うのです。もしこれが患者を切り捨てるというような通達になったならば非常に問題になろう。これはあらゆる施策を立てても、現地の反発があって何もできない、こういうぐあいに思うものですから、やはり新次官通達、患者救済ということで強化発展させ、認定を促進するという意味のものであって、患者切り捨てであってはならない、こういう点についての御見解をお聞かせいただきたい、こういうことでございます。  それからさらに、伝えられる次官通達によりますと、蓋然性がどうだとかあるいは資料のない者は棄却だとかいうのが出ておるのですけれども、これは、いままでの次官通達あるいは部長通達では、こういう資料のない者は棄却だとか蓋然性というのは一つも出ていないのです。これはやはり切り捨てにつながると私は思うのですけれども、先に原則を答えていただいて、これについても関連させていただきたい、こういうぐあいに思います。  それから、自民党が用意しております。中央に審査会をつくって四十九年以前の旧法の者についてそれを認定の促進を図ろう、こういうものについて政府も所要の準備をする、こういうぐあいになっているわけでございますけれども、この内容はどうか、こういうことについて聞いておきたいと思います。
  192. 山本宜正

    ○山本(宜)政府委員 次官から通知を出すということにつきましては、先生御承知のように、昭和四十六年に裁決をしたときに次官通知を出しておりました。その当時は、いわゆる水俣病の考え方というものにつきましてはその以前におきます研究報告中心にしておったわけでございますが、御承知のように、昨年の七月にはその後の先生方の御意見、特に審査会の先生方の経験を通しまして……(馬場(昇)委員「もう経過は知っていますからいいです」と呼ぶ)したがいまして、その通知を出しましたときに、それは部長が、これを参考にされたいということであったわけでございますが、それにつきまして、この機会に従来の通知の考え方を整理いたしましてその辺を再度明らかにしていこう、こういうつもりでいるわけでございまして、特に患者の切り捨てとかいうことではなしに、はっきり認定すべき者を認定し、あるいは棄却すべき者を棄却するという点の考え方の整理をしたものを出そうというぐあいに考えておりまして、この点につきましては、県とも相談をいたしまして、それを出すことによって認定業務の促進の一助になるというつもりでしたものでございます。  なお市長というのは、実は新潟市もこの指定の市になっておりますので、県、市長、こういうぐあいになっているわけでございます。  以上でございます。
  193. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 そこで大臣、この次官通達というのを今度出すということは、いずれにしても患者さんたちの方から見ますと切り捨て、熊本県民から見ると切り捨て、こういうことになるのじゃなかろうかと物すごく心配をしているのです。決していままで以上に悪くはしないのだ、救済するという精神は変わらないのだ、そういうことは少しも変わっていないということを大臣の口からはっきり聞いておきたい、こういうぐあいに思います。
  194. 山田久就

    ○山田国務大臣 いまお話しのとおりでございまして、認定促進に名をかりて切り捨てるというようなことは考えておりません。
  195. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 最後に、三点ばかりまとめて御質問しておきます。  まず、補償協定書というのがございます。水俣病に認定された人たちは、補償法ではなしに、皆補償協定書に従って、それによって補償を受けておるわけでございますが、これがどうしてできたかということは御存じのとおりでございまして、四十八年七月九日に、これは本当にチッソが人間を破壊したということの事実を認めて、その対策が十分でなかったということを反省しまして、患者にも陳謝して、そして世間を騒がせたということにも謝罪をして、そして裁判の判決には厳粛に服する、そして補償協定書はこれを誠実に守ります。こういう形で、実は当時の三木環境庁長官、熊本県の沢田知事、私、住民代表の日吉さんという人の四人が立会人で、誠実に守るということでの補償協定書ができて、私はこれができたときに、三木さんも言ったのですが、これが今後の日本の公害に対する行政とか、あるいは企業、患者の関係の本当に憲法というべきりっぱな補償協定書だということで、誠実に守らなければならぬということでございます。  そこで、今度こういういろいろな対策をとるときに、この補償協定書を改悪をするというような動きがあってはならない、そういう動きがあるやに聞いているのですけれども、あってはならない、そう私は思うのですが、これに対しての長官の御見解を聞いておきたい、こういうぐあいに思います。  それから、運輸省来ておられますけれども、ヘドロ処理の着工はいつごろになるのかということを、端的にいつごろだということをお答えいただきたいと思います。  それから、長官は私のこの前の質問に対して、水俣に現地視察に行くと言われた。この現地視察にいつごろ行かれるのかということについてお答えいただきたいと思うのです。
  196. 山田久就

    ○山田国務大臣 いまの補償の問題はあくまで民事責任の問題で、そういう意味で、行政が介入しようというようなことは考えておりません。  私の現地視察の件は、これは前から私考えておりまして、できるだけ早い適当な機会に、ひとつ現地に参って皆さんのいろいろな御意見もよく拝聴したい、こう考えております。
  197. 大久保喜市

    ○大久保政府委員 時間が余りございませんので、簡単に結論だけ申し上げます。  いまの時点でいつという明確なことは申し上げかねますが、汚泥処理工事につきましては、すでに各港で幾つかの実績を上げておりまして、二次公害防止については技術的に十分対応できる確信を持っております。さらに、水俣の場合には、安全を期するために試験工事の実施、工事中の環境監視、こういうことまでも予定しておりますので、工事の実施につきましては、こういった事情に関しまして地域住民理解協力のもとに、速やかにかつ円滑にこれができますことを強く希望しておるわけでございます。それで、そのことにつきましては、熊本県当局も非常に強くそれを要望しておりまして、受託者でありますところの第四港湾建設局と熊本県との間で、その着工のできるような環境づくりにいま努力しているところでございます。
  198. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 時間が来てしまいましたが、最後に、委員長に一言お願いをしておきたいのです。  実は私は、もう四、五年来、議員になりましてから、水俣病対策につきましては議会のたびにこの委員会でもほかの委員会でもやっております。予算委員会でもやっております。そこで、どうしてもわからない、現在もう行き詰まって混迷しておるという中で、私は八項目にわたりまして質問主意書を提出いたしました。この間、閣議で決定して私に答弁書が回ってきました。それを見てみますと、この公害委員会で私が質問して大臣初め皆さん方が答えられた点と、今度の閣議決定の答弁書を見ますと、差異がございます。後退しておる点があるのです。それで、全然話にならないという点がございまして、答えてないところもあるのです。  そういう意味で、私は、この委員会における大臣を中心とする政府の答弁、これに疑義を感じております。閣議で決定してきたものとあなた方が答弁するのとは違うのですから、後退しているのですから、答弁のないものもあるのですから、こういう点について、この委員会の権威というものに非常に疑問を持っているのです。  そういう点について、私は、きょうは具体的なことを言う時間がありませんけれども、委員長、ここにおける答弁と質問主意書に対する閣議決定の答弁書は物すごく差異があるし、問題がたくさんあります。こういう点は、この委員会の権威にかけても何らかの処置をとってもらわなければ、ここで質問したって意味なしというふうに感ずるのです。そういう意味において、委員長の方でぜひそういう差異なんかを、私のここでの質問と答弁書をみんなで議論して差異等を見つけて、この委員会の答弁の権威にかかわる問題について委員長の方で善処をお願いしたいと思うのです。
  199. 久保等

    久保委員長 馬場委員の御発言につきましては、内閣の答弁書と馬場委員の当委員会における質問に対する政府の答弁との間に食い違いがあるといたしますと、当委員会においては当然その点の一致を見出す努力をしなければならぬと思うのですが、そのことについてどういう機会にそういった問題を取り上げるか、これは理事会でも相談をして解決をしたいと思います。
  200. 馬場昇

    ○馬場(昇)委員 質問を終わります。  ありがとうございました。
  201. 久保等

    久保委員長 次に、土井たか子君。
  202. 土井たか子

    ○土井委員 私はまず、マツクイムシの防除について、昨年第八十国会で特別措置法が成立をいたしまして以後、この空中からマツクイムシ防除剤を散布することについていろいろな問題が出てまいっておりますので、それについてお尋ねをしたいと思います。  御承知のとおり、昨年の第八十国会でのこの松くい虫防除特別措置法の審議は農林水産委員会の方で進められたわけでありますが、その場所に、連合審査ということで当公害対策並びに環境保全特別委員会からも出席をいたしまして、ここにおられる島本委員を初めわれわれも質問を展開したわけであります。その後また農林水産委員会の方におきましても、林野庁からお出しになっていたそのときの審議の参考資料内容が事実とまことに違う、具体的な事実について林野庁がみずから捏造されたとしか考えられないような資料があったということで、大変に紛糾したということでも国会史上一つの汚点を残した審議であったのではなかろうかとわれわれは考えております。  非常に問題の多い審議の過程を経て昨年成立をした松くい虫防除特別措置法でございますが、きょうは、この実施の問題について具体的なことをお聞きいただきたいと思います。  なぜかと申しますと、いろいろ調査を林野庁もお進めになっていらっしゃるに違いない、もちろん環境庁の方も相呼応していろいろ環境に対する影響調査をなすっていらっしゃることは、これは私も存じ上げております。ただ、それは、都道府県を通じて出てまいります資料によって机上でいろいろお確かめになるということが大部分であろうと思います。具体的な、実情に即応して事を考えていただける部面がその上ではなかなか少なかろうと思いますので、ひとつきょうは具体的過ぎるような話の中身になることを御勘弁いただいて質疑を進めさせていただきたいと思うのです。  まず、林野庁にお尋ねをしたいのですが、五十二年度において、国の補助を受けて十県が薬剤防除安全確認調査、自然環境に及ぼす影響調査というのをいたしてまいっております。資料として五十三年三月に出されております林野庁の資料を私もいただきました。これは引き続き、ただいまも継続して調査が進められているように私自身は存じておりますが、そのとおりでございますか。
  203. 須藤徹男

    ○須藤説明員 そのとおりでございます。
  204. 土井たか子

    ○土井委員 この十県の中には広島、山口等々も入っておりますが、兵庫県もこの中に入っておりまして、きょう私はこれから兵庫県の中にございます宝塚市という自治体で起こった一例を具体的に挙げて問題にしていきたいと思います。  先ほど委員長のお許しをいただいて正面に地図を私、張らせていただきましたが、その地図は、宝塚市の方が出しております都市計画の地図に従って、今回マツクイムシの防除剤を空中から散布するために市がつくりました計画並びに実施されたときの計画変更に伴う計画ですね、これをわかりやすくするためにつくりました地図でございます。それで、私、これをひとつ見ながらいろいろと事を進めてまいりたいと思います。  散布されましたのは、宝塚市の切畑字長尾山七番地一という場所中心にしたところでありますが、面積は、当初は——ちょっとお許しをいただいて、その前の地図を指示したいと思いますが、委員長、お許しがいただけますか。
  205. 久保等

    久保委員長 はい、どうぞ。
  206. 土井たか子

    ○土井委員 当初は、この一番外側に黄色い線でかいておりますこの面積、これは全体が百ヘクタールでありますが、この百ヘクタールに及ぶ面積のところを散布する対象として考えたわけであります。実際に散布いたしましたのは、後にこの事情を申し上げたいと思いますが、実はずいぶん減りまして、六十三ヘクタールの区域についてだけ散布をするということになりました。そうして、これを実施いたしましたのは、第一回目を、過ぐる六月二日の午前五時二十分から正確には九時二十分まで実施をいたしました。当初計画は午前五時くらいから正午少し過ぎにかけてという計画でございました。それが面積が減ったために時間もずいぶん短縮されまして、九時二十分ごろに終わっているわけであります。さらに、第二回は六月十九日という日が予定をされておりましたが、ただいまのところ、事情がございまして、この六月十九日の散布は見合わされるかっこうになっておるというのが現状であります。  さて、まずお聞きをいただきたいのは、当初計画について種々の問題点がございます。この地図にもございますが、ここに長尾小学校という小学校がございます。実はこの宝塚市立長尾小学校から散布区域まで百メーターしかございません。これはわかりやすいように、さらにここにも少し図をかいてまいりましたが、校舎から散布されるところまで百メーターしかない。これはまず端的にお考えいただいて、大体校舎から百メーター離れたところに散布されるというのは適当であるかどうか、いかがでございますか。
  207. 須藤徹男

    ○須藤説明員 私どもの指導方針といたしましては、そういう学校の校舎等の付近の松林には原則として散布しないということでございます。  いま先生から百メーターというお話がございましたが、現地の実態に応じまして、そのときの風向なり何なりによって決めなければならぬ問題でございますけれども、私どもといたしましては、そのドリフトを考えます場合、大体二百メーターくらいであればまずまず安全ではないかというふうに一般的には考えております。
  208. 土井たか子

    ○土井委員 いまの一般的に考えて二百メーターくらいが安全ではないかというお答えからいたしますと、これは百メーターで、しかもこの図は正確に地図を縮図した図として私かいてまいりましたが、こういうくぼ地になっているのです。校舎が下の方にあってくぼ地を経て高台のところで散布するというかっこうでございますから、風速は五メーター以上になると散布は見合わせなければなりませんけれども、五メーター以下でございましても百メーターの地点で散布される、しかもこういう地形であるということになると、先ほど一般論としてお答えになったことに対してプラスアルファという意味も含めて、どうも好ましくないということもこれは考えられてしかるべきだと、まず言えるかと存じます。  それからさらに、小学校のすぐ裏の高台がヘリポートに考えられていたわけであります。これもまた、小さな図で私かいてまいりましたが、校舎がここにあるとするとヘリポートがこの高台のすぐここに設けられるというかっこう、そして、ここに発着陸をさせようという当初の予定でございました。校舎の中では、もちろん子供たちが勉学をいたします。騒音という点からしてもまことに好ましくないということが考えられます。  こういうふうなことからいたしますと、これは、小学校のお父さんやお母さん方がどうも不適当だというふうな声をお出しになったのもしごく当然だと私自身も考えられるわけでありますが、林野庁とされては、こういう設定の仕方は適切なやり方だというふうにお考えになりますか。いかがでございますか。
  209. 須藤徹男

    ○須藤説明員 実際にはヘリポートを変更したようでございますが、確かにいま先生おっしゃるような図面を見ますと、適当ではないんじゃないかというふうに感じます。
  210. 土井たか子

    ○土井委員 さらに民家から散布区域まで、最短距離は三十メーターくらいに考えていいんじゃないかと思われます。それは五十メーターはあるというのが市の方の資料でございましょうが、この地点も縮図を正確にきちんと読んでかかれたのがこの図であります。こういういわばすりばち状の一番底に民家があって、両わきが壁のようになった高台の上で散布されるわけでありますから、距離からすると五十メーター離れておりましても、この高台で散布されるところの線をずっと引いてまいりますと三十メーターのところで散布されるというかっこうになりますから、恐らく民家から散布区域まで最短三十メーターくらいしかないんじゃないかというふうに考えられる地点が予定計画の中にあったわけであります。これ自身どのようにお考えになりますか。
  211. 須藤徹男

    ○須藤説明員 いまのそういう図面を見ますと、確かに余り適当じゃないという感じがいたしますが、もちろんこれは現地でその実態に応じまして実施機関が決めることでございますし、なるべくそういうことのないように私ども指導しておるところでございます。
  212. 土井たか子

    ○土井委員 実態について言うならば、林野庁の方の御指導を仰がれての県であり市であろうと思います。しかし具体的には、民家に対しての散布の区域というのが、これはやはり現地に行って見ますと、すりばち状の中に民家がある、その上から振り落とすようなかっこうになってまいりますので、決して好ましいような条件ではないというのが一目瞭然わかるような状況だと、これは一言で言えるのではないかと思われるのです。  それと同時に、もう一つ深刻なのは、数から言うとそう多くございませんけれども、五世帯の人たちが飲用水として使っております水の取水口と集水域が散布区域に入っていたという事実がございますが、これは恐らく林野庁のお耳にも到達しているのではないかと思います。この事実はお聞きになっていらっしゃいますか。いかがでございますか。
  213. 須藤徹男

    ○須藤説明員 県の報告で聞いております。
  214. 土井たか子

    ○土井委員 このこと自身は、これは好ましいとは断じてお考えにならないであろうと思いますが、こういう例がほかにございましたですか。いかがでございますか。
  215. 須藤徹男

    ○須藤説明員 水源地といいましてもいろいろな実態がございまして、基本的には水源地は避けるということでございますが、その避ける際も、他にかわる措置、たとえばビニールで覆いますとか、あるいは一時的にそういう薬剤が直接かからないような措置、あるいはそこは松林をどうしても残さなければいかぬ、この松が枯れてしまいますと水源もかれてしまいますし、あるいは災害上非常に問題があるというような場合には、たとえば一時給水をするというような措置をとる場合もございます。そういういろいろな例がございまして、全国的にはいろいろなケースが出ておるわけでございます。
  216. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、全国的にはいろいろなケースがございましても、飲用水の取水口と集水域を散布区域にすっかり入れて散布するなんというふうな例は、恐らく私はほかにはなかったのではないかというふうに考えられるわけでありますが、これ自身は、いかに後で善後措置をとりましても、計画自身でこういう計画があったという事実は、私はぬぐい去るわけにいかないだろうと思うのです。いかがでございますか。
  217. 須藤徹男

    ○須藤説明員 大変重要なことでございますから、恐らくそういうところは避けておるとは思いますけれども、先ほど申し上げましたように、いろいろなケースがございまして、どうしてもその地帯を空散をしなければならぬという場合に代替の措置をとるということがあり得るということを申し上げたわけでございまして、確かにいまおっしゃるように、宝塚の例で見ますと、計画そのものに問題があったのではないかという感じがいたします。
  218. 土井たか子

    ○土井委員 さらに、散布予定区域内の松の本数が一体どれくらいで、枯損木の本数が一体どれくらいかという調査がされてないということが考えられます。これは基本的なことだと思います。当初計画を組む場合には、やはりこの点から出発するのが私は計画の出発点ではなかろうかと思われるのですが、住民方々に対して、枯損率というのが一%くらいというふうな御説明を市当局が賜ったようでありますが、しかし新聞記事を見ますと、大体二%というふうに書いてございますから、新聞記者発表については二%とおっしゃったのかもしれません。しかし、いずれにいたしましても、虫害区域ということにこれは該当するということになるだろうと思います。ところが、現地でいろいろ、これは住民に対して一%と言われ、新聞記事では二%と言われて、どうも判然としない。一体どっちが本当なのかということを追及してまいりますと、市議会の社会党の議員の質問に対して、結局市当局は、調査をしていないというお答えをお出しになっているわけでありますが、林野庁とされましては、計画を立てるに当たりまして枯損木の本数の調査というのを一体どういう方法ですることを指示なすっていらっしゃるか。いかがでございますか。
  219. 須藤徹男

    ○須藤説明員 実は、地域が非常に広いものですから、一々全林を調査するというわけにまいりません。そこで、ほとんどとられておりますのは、標準地をとるとか、あるいは目測ということでやっておるわけでございます。
  220. 土井たか子

    ○土井委員 目測ということになりますと、五%を境にして激甚になるかならないかということでございますから、おおよそ人の目に狂いはない、専門家の目というのは、いろいろ実測値というのは、はかってみると肉眼で見たこととそう隔たりがあるものではないというふうなことがよく言われますけれども、しかし、どうも実際問題、大体のところ、それは見た限りで考えていったらいいのじゃないかということが、むしろ大変ずさんに取り扱われておりまして、よくこれに対して調査をしていないというのが実態である例があるようであります。宝塚の場合だって、私はこの市会議員の人が質問したことに対して答えられている中身が実は正直な市当局の本音ではないかと思うのです。  どういう調査方法をして具体的にどれぐらいの枯損木があるかという算出の仕方というのは、何らかの指示を林野庁としてはお出しになっているはずだと私は思いますが、何かの文書化されたものがございますか。それとも口頭での行政指導でそういうことは具体的にいろいろ指示をなすっているのでありますか。その点、いかがなんでございますか。
  221. 須藤徹男

    ○須藤説明員 先ほどお答えしましたように、いわゆる枯損本数率というのを出しておりますが、たとえば効果調査とかいろいろな調査をやる場合にはきちっと測定をいたしますけれども、防除計画を立てる際には、ほとんどが目測によります枯損率ということでやっておるわけでございます。
  222. 土井たか子

    ○土井委員 しかし、その枯損率というのは、一%でひっかかるかひっかからないかというあたりですね。一%以下にずっと抑えていくというのをいまの計画目標になすっていらっしゃるわけでありますから、一%を超えているのか超えていないかというのは、これは目で見てわかるわけでありますか。非常に微妙な問題だと思いますよ。まいていいのかまいて悪いのかというけじめになりますからね、そこのところが。どうなんですか、私はもう一つその辺が判然としないのです。そんなことでやっていけるというふうな自信をお持ちでいらっしゃいますか。
  223. 須藤徹男

    ○須藤説明員 確かにそういうふうにお感じになると思いますけれども、相手が広大な山でございますから、なかなか的確な調査というわけにはまいらない。そうしますと、やはり経験に基づきます目測ということにどうしても相なるわけでございます。
  224. 土井たか子

    ○土井委員 そういういいかげんな目測で安全性の上でも問題のあるスミチオンなんかを空中から散布されるということになってまいりますと、大変これは疑義がございます。やはりこのあたりがもう少し、目測ということをおっしゃるのならば、一%とか二%とか細かな取り上げようでなしに、考え方の上で、やはりこれくらい枯損していくというかっこうになればという目安がもう少しやっぱり、スミチオンなんかの安全性の確認ということと並行して、考えられてしかるべきだと思うのです。少しこの辺が安易な取り組み方みたいに私たちは思われてならないわけでありますが、これは林野庁としては大丈夫だと言い切れるわけですか。
  225. 須藤徹男

    ○須藤説明員 目測ということを盛んに申し上げておりますが、大体一%といいますとぼつぼつ枯れ始めたかなという感じのものでございます。したがいまして、そういうものにつきましては、いまお話がございました、昨年成立いたしました特別防除措置法ではなくて、従来の防除法を適用してやっておるわけでございます。
  226. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、いまのお答え方からいたしましても、従来の防除法でやっていくことがこの節適切であるか、また特別措置法でやるということがこの節必要であるかというけじめのところが非常にむずかしくなってまいりますね。ここのところを一体だれが判別するのです。だれがそのことに対して判定を最後的にいたすわけでありますか。
  227. 須藤徹男

    ○須藤説明員 大変失礼いたしました。私のいまの答弁は間違っておりまして、実はパーセントで判定するのではなくて、この山が重要であるかどうか、その重要度によって判定をしておるということでございます。
  228. 土井たか子

    ○土井委員 それは、一体だれの判定によるのですか。
  229. 須藤徹男

    ○須藤説明員 これは、現地におきまして、たとえばここは自然環境保全上非常に重要であるとか、あるいは国土防災上重要であるとかというような山がございますが、たとえば森林計画でもそういう山を指定しておりますけれども、そういう森林計画で指定されたものが中心になりますけれども、そのほかにも、どうしても重要だというものがございますれば、当然、市町村あるいは都道府県段階で判定をするということに相なります。
  230. 土井たか子

    ○土井委員 その判定が、どうもそれぞれ統一性がなくて、まちまちで行われるというかっこうに、当然いまの御答弁の結果からするとなってまいります。  さて、しかし、そういうことにいろいろ技術上の問題をお尋ねしていると先に進みませんから……。さらにそういう計画に従って、いよいよ実施していく上で、またさらにいろいろな問題点が出てまいりました。一つは、基本計画考えます場合に、ここに「松くい虫防除特別措置法第三条第一項の基本方針」というのが農林省から五十二年の四月に出ておりますが、この内容を見ましても「安全性、使用薬剤、散布方法、実施時の注意事項等について地域住民等利害関係者への周知徹底を図り、理解を得るものとする。」こう書いてあるのです。今回の宝塚市での散布については、関係住民理解を得ないまま第一回の散布が強行されたというかっこうになっております。現在に至るも、隣接三自治会のうち二自治会が反対をされているというかっこうのままであります。こういうことは果たして認められていいかどうか。林野庁さんの方としてはどのように考えられますか。
  231. 須藤徹男

    ○須藤説明員 県の報告によりますと、いまお話ございました、地域住民に対しまして特別防除の必要性及び安全性、それから防除の実施時期、使用薬剤の種類、散布量並びに散布時の留意事項等につきまして、地区説明会を開催して説明するということとともに、兵庫県といたしましては、新聞、ラジオ、テレビによる報道並びにパンフレット、リーフレットの配布をいたしましてPRし、周知徹底を図ったという報告でございます。たとえばリーフレットは四月中、下旬に市町村を通じまして十五万枚配布した。それから。パンフレットにつきましては、四月二十七日に市町村を通じて一万部を配布した。テレビでは五月二十五日にテレビ放送をやっております。ラジオでは五月二十六日にラジオ関西を通じてやっております。それから地区説明会、宝塚市でございますが、これは五月三十日に実施をいたしております。新聞は五月三十一日にやっておるわけでございます。  そこで、地区説明会に地区住民でない人が何人か入って、反対の発言等があったということ。それからいまお話がございましたように、一部の反対署名簿の提出があったということでございますが、県及び宝塚市は地域住民の合意が得られたものと判断して実施したという報告でございます。
  232. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御説明は、県からの報告をお聞きになったことをそのまま御答弁として述べられたに違いないと私は思うわけであります。ところが、関係住民に対する説明は、散布する三日前の五月三十日に初めて行われたというのが事実のようであります。これは私自身が現地で確かめました。そうしてしかも、これは、小学校から見た場合、散布区域まで最短百メートルしかないとか、小学校のすぐ裏の高台がヘリポートであったとか、民家から散布区域まで最短三十メートルしかないとか、また飲用水に使っている水の取水口と集水域が散布区域に入っているとか、また枯損木の本数がどれぐらいであるかということを実際調査していないというふうな実態というのは、それぞれ、林野庁の先ほどの御答弁をいただいた限りでも、部長さんの御答弁の中で適切でないということが認められる内容なんですね。基本計画から考えてもちょっとおかしいなという内容を含んでいますよ。そういう内容を持っている当初計画について、住民方々がいろいろ説明を受けたのが散布三日前の五月三十日であります。そうなると、この説明に対して、おかしいじゃありませんかという声がそれから起こりまして、実は直前に市自身が計画を変更せざるを得なくなったのです。学校の校舎のすぐ横にヘリポートを置くというのはやめなければいけないとか、あるいは当初考えておりました百ヘクタールから六十三ヘクタールに区域を狭めなければならないとか、これをいろいろ変更したわけでありますけれども、この計画自身の欠陥が関係住民方々から指摘されて、散布区域の縮小やヘリポートの変更を余儀なくされたというのが実情であります。こうなってまいりますと、先ほど、県からの御報告だと思いますけれども、いかにそれ以前にテレビを通じて報道したの、やれ、大変分の厚いパンフを配布したのとおっしゃっても、計画それ自身が肝心の関係住民に対して説明されたのが散布三日前ということになってまいりますと、この事実に対しては適当であったとは決して言えないであろうと思います。これはいかがでございますか。
  233. 須藤徹男

    ○須藤説明員 私どもは、何日前にやれというような指導もしておりませんし、やはり住民に徹底を図るという意味では、なるべく猶予期間を持った方がよろしかろうとは思います。
  234. 土井たか子

    ○土井委員 おっしゃるとおりだと思います。そういうことからすると、住民方々から、いろいろな計画に対しての欠陥が指摘されることによって、計画変更をその前日にせざるを得なかったという事情が実はあるわけでありますから、もう一つ言うと、そういう計画変更をやるということが事実必要であるということならば、実施日を先に延ばすということがあってしかるべきなのに、今度六月二日にどうしても強行するということを前提として、計画変更をその前日に急遽なされたという無理があるわけであります。これは、やり方としてちょっと無理だったのじゃなかろうかと思われるのは、その後にいろいろ事情が出てまいっております。  あと、これは申し上げますけれども、散布密度の調査というのが行われなければならないであろうと思いますが、こういう密度の調査については、どういう方法でこの調査をするということを林野庁としては指示なさっていらっしゃいますか。
  235. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 御説明申し上げます。  林野庁の指導といたしましては、空中散布をする場合には、散布地域に落下板ないしは落下調査紙という紙を置きまして、それに薬液が落ちますと検出されるという方法で、その散布の度合いを調査しております。
  236. 土井たか子

    ○土井委員 その散布調査用紙というのは、私、ここに一枚持ってまいりましたが、こういう青い色をした、この散布用紙でありますか。ちょっと見ていただきます。これですか。
  237. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 さようでございます。
  238. 土井たか子

    ○土井委員 これを調査のために置く場所というのは、散布された地域内に置くことを指示なさっているか、散布された地域外に置くことを指示なさっているか、いかがですか。
  239. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 御説明申し上げます。  そういった落下調査板につきましては、散布地域内はもとより、たとえば桑畑とかたばこ畑があるような、危被害が及ぶ範囲につきまして落下板を置いてございます。したがいまして、場合によっては、二百メートルぐらい松林から離れた地点まで設置してございます。
  240. 土井たか子

    ○土井委員 ところが、今回は、いま私がお示しいたしましたこの散布調査用紙、この青い色をした液剤散布調査用紙は、散布地域内には置かれていなくて、私もそれが置かれていた地点をひとつ目印をつけてこの地図に全部書き込んでみたのですが、七十四枚置かれていたわけですが、全部周辺にこれは置いて、地域内には置かれていないのです。そして、主としてはこの周辺のこの場所にまで液剤は散布されても届いていないということのためにこの用紙が使われておる、こういう目的のためにこういう散布調査用紙というのを使うことを林野庁としては指示されておりますか。いかがでございますか。
  241. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、散布地域内に置きますのは、散布が適正に行われたかどうかを調べる意図を持っておるわけでございまして、それ以外の散布区域外につきましては、ドリフトつまり飛散があったかどうか、あるいは作物に飛散があったかどうかというようなことをチェックするために置いておるわけでございまして、両方を指示しております。
  242. 土井たか子

    ○土井委員 両方の一方の方の意味は、これは今回の実施の方法によってはあるわけですが、片一方の散布の密度がまんべんなく行われていて、しかもその後その効果を測定することについて、このように散布されたからこういう効果が生じたという、そういうデータとなるための散布調査用紙としては、全然これは意味をなさなかったということに私はなるだろうと思うのですね。こういう指示は一体どういうふうな方法で各自治体に指示なさっているのですか。口頭ですか、それとも告示ですか、それとも通達でございますか。何でございますか。
  243. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答え申し上げます。  「農林水産航空事業実施指導要領」というような農林事務次官通達がございますし、それを受けまして各種の通達あるいはパンフレット等がございまして、それに基づいて指導しておるところでございます。
  244. 土井たか子

    ○土井委員 では、今回のようなやり方をやるということになると「農林水産航空事業実施指導要領」というその要領に違反しているというかっこうになるわけでありますが、いかがなんですか。
  245. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答え申し上げます。  そこまでは詳しくは通達には書いておりませんが、各県が実施上、たとえば先生お持ちのミラーコート紙以外の方法で散布が適正に行われたかどうかという方法が行われておればこれは問題がございませんが、もしそういうことが行われていないとすれば、若干欠陥があったのではないかというふうに思われます。
  246. 土井たか子

    ○土井委員 行われていないとすれば若干欠陥があったと言われるのは、やはり実施要領についてこれを遵守するということを、原則としてお出しになっている内容に違反しているということですわね、要は。そうでしょう。その若干問題があったとかなんとかというあいまいな表現じゃよく私にはわからないので、やはりそこのところは、私が使っておる表現についてどういうふうにお考えになっているのかということを御答弁いただかないと、どういうお考えでそういうことをお答えになっていらっしゃるのかよく私にはわかりませんから、そこを的確にお願いします。
  247. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 お答え申し上げます。  現地が非常に自然状態の松林の中でございますので、なかなか人が入れないというような場合があろうかと思いますので、なかなか画一的な検査紙の設置というのはむずかしかろうと思います。したがいまして、これを通達に違反であるかどうかをにわかに判断するのはなかなかむずかしい問題が出てくるかと思います。そういう意味で、多少問題があった、欠陥があったということでお答え申し上げたわけでございます。
  248. 土井たか子

    ○土井委員 この散布調査用紙を使っていろいろ散布状況を把握するというこのやり方は、補助の対象になっているわけでありますか、こういうことをするということ自身は。
  249. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 御説明申し上げます。  事業費の単価の積算の中には、そういう安全あるいは適性を確認する費用も入っております。
  250. 土井たか子

    ○土井委員 当然、だから、その費用内にこれは組み入れられた一つの作業になるわけでありますが、これ出しているのは、全国農村教育協会というところから今回使われたこの用紙は出されているやに私たちは知っているわけでありますが、この全国農村教育協会というところにこういう用紙を出しているということを林野庁としては指示されているわけでありますか、いかがでありますか。
  251. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 指示はしておりません。そういったミラーコート紙以外にも通常の白色の用紙を使う場合もありますし、薬によっては赤色のミラーコート紙を使う場合もありますし、あるいはまた通常の写真印画紙を使うような場合もありますので、これを特定することはなかなかむずかしいわけでございます。
  252. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、私がこういうことを聞くのは、こういう検査紙の反応というのは一体どの程度敏感なのかということをちゃんと林野庁としては把握された上でこういう用紙を使用することを指示されているかどうかの問題なんです。実は今回、市の方は、民家周辺に薬剤は降下していない、なぜかというと、この検査紙の反応がないから落ちていないということをおっしゃいます。ところが、その周辺住民方々の民家で飼っている池のコイが六月の七日、六月の八日、六月の十一日、それぞれ死んでいるのです。民家の方々は、これは恐らくスミチオンの影響があるのではないかというふうに疑いも持っていらっしゃる。しかし市の方は、この用紙の上でそういう反応がないからこのあたりには落下しておりません、大丈夫ですという答弁をなさる。当然そこで出てくるのは、この用紙自身は敏感なのかどうか、これに対して農林省は、この影響についての調査をするための用紙としてこの用紙の効果は十分にあるということを確認された上で指示されているかどうかということが問題になってくるのです。林野庁としてはこの用紙に対して、きちっとそういう見きわめというのを持っていらっしゃるか、いかがですか。
  253. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 御説明申し上げます。  そういった落下板、散布調査紙と申しますのは、マツクイムシの防除事業以外、水田の散布その他にも使用されておりまして、林野庁だけが独自にその性能をチェックしまして指示しておるようなことではございませんで、農林省の所管で申し上げますと、農蚕園芸局等が指導して実施しているところでございます。
  254. 土井たか子

    ○土井委員 農蚕園芸局が指示して実施しているとおっしゃるのは、それはこの所管している局がそういうことになるはずでありますけれども、しかしながら、やはり松枯れに対しての防除のための薬剤を空中から散布するという計画について、いろいろとこれを指示し具体的にこの実行に対して管理監督を最終的になさるのは林野庁であり農林省だというかっこうになっていくのではありませんか、いかがですか。
  255. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 マツクイムシの空中防除に関する限り、御説のとおりでございます。
  256. 土井たか子

    ○土井委員 今回は、これはマツクイムシ防除のために散布されたスミチオンに対して、先ほどから言っているこの用紙を使って周辺の民家には、ここに要するに反応が出ていないから落ちておりませんということを言われる。しかし、周辺の家では従来こういうことがなかった。池のコイがスミチオンを散布されて以後、六月の七日、六月の八日、六月の十一日に死んでいるという実態があるわけでありますから、この辺、したがって先ほど来、この用紙についてお伺いをしているわけであります。林野庁としては、したがって、この用紙の実効性というのがどの程度あるか、敏感であるかどうかということに対してきちっとした見きわめを持っていらっしゃらないというふうにいまのところ考えさせていただいてよろしゅうございますか。
  257. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 ただいまの先生のお持ちの検知紙につきましては、私ども具体的にまだ検査しておりませんので、そういう知見を持っていない、こういうことでございます。
  258. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これが敏感であるかどうか、これを使用することが適切であるかどうかというのは、散布を行う地域の自治体が自主的にやるべきことだというふうに指示をされているわけでありますか。
  259. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 落下板以外の検査方法がその他たくさんございまして、たとえばいま先生お話にございましたコイのような場合には、もしコイの遊泳の仕方に異常があるような場合はすぐその魚体を調べるとか、あるいは水質を検査するということになっておるわけでございます。スミチオンは魚毒性はB類ということで、通常の注意を払って散布すればコイは死なないということでございますので、死んだということであれば水質を分析する必要があろうかと思います。
  260. 土井たか子

    ○土井委員 それは水質の分析ということで、そのことはさらにつまびらかになるかもしれません。しかし、いまお尋ねをしているのは用紙についてのお尋ねなので、要らないところまでの御答弁は私は聞きたくないのです。聞く時間的余裕をきょうは持っておりません。したがいまして、私のお尋ねしていることに対して的確にお答えをいただきたいということを再度要求したいと思います。よろしゅうございますね。  さて、先ほどの飲用水の取水口や集水域に薬剤を散布したというこの実態がその後どのようになっているかという問題は、実は、この飲用水の中から〇・〇二と〇・〇四ppbのスミチオンがただいま検出されているという結果が出てまいっております。量は少ないとおっしゃるかもしれない。しかしながら、スミチオンはいたずらに飲料水の中にあってはならないし、またあるはずのない物質であります。実は、これが六月の二日に散布されて以後検出されているという実態が宝塚市では出てまいっております。この問題に対して、やはりこういう散布の仕方は適切でないということが一応言えるのではないか、このように私自身は考えているわけでありますが、林野庁としてどのようにこの現実をお受けとめになるか、お聞かせいただきたいと思います。
  261. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 兵庫県からの報告によりますと、当該地域は集水区域におきまして流水がございませんで、いわゆるかれ沢になっております。そういった関係から当初の計画では空中散布地域に入れたようでございます。それで、先生御指摘のとおり計画変更がありまして、空中散布した後と散布した当日に水質検査をしましたところ、薬剤は検出されていないという報告が来ております。
  262. 土井たか子

    ○土井委員 それはしかし、具体的に先ほど申し上げた問題のある地点についての飲料水を採取して検査した結果が、阪大の方の先生の手によって〇・〇四ppbと〇・〇二ppbというスミチオンが検出されているということは事実であります。この事実についてもはっきり御検討いただきたいと思います。いまの御答弁だけでなしに。よろしゅうございますね。これは事実を確かめてください。はいと一言言っておいてもらわぬと困ります。
  263. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 早速照会しまして調査いたします。
  264. 土井たか子

    ○土井委員 さて、スミチオンについては、有効面では数週間あるいは数カ月残るというふうなことを林野庁としてはおっしゃる場合がよくあるわけですが、一体どれくらいの間有効であって、一たん空中から散布すればその地域に一体どれくらいの間立ち入りすることは不適当だとお考えになってらっしゃるわけですか。
  265. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 御説明申し上げます。  スミチオンの場合は、散布後二ないし三週間、通常は二十日ぐらいと言っておりますが、その間薬剤としての残効期間があるわけでございます。ただ、人体に格別の支障が現在のところ確かめられておりません。ほぼ安全であるということで、特に立ち入りを禁止するというような指示はいたしておりません。散布当日等は立ち入りしないでほしいというような要望はしておりますが、特に何日間立ち入りしないでほしいというような日にちの指示はしておりません。
  266. 土井たか子

    ○土井委員 全くこれはおかしいのです。有効面についてはスミチオンは数週間、数カ月残るとおっしゃっている。そうして特にそういうことを重視して宝塚市では、散布してから後一カ月ぐらいは立ち入りを禁止しなければならないという措置をいまとっておるわけです。ただ、宝塚市について言うならば一つ相矛盾することは、当日散布した場合に立ち入り禁止の表示としては、一方だけに白い旗を立てて、こちら側からは何人でも入れるようにどこにも表示がなかったために、ハイカーなどが散布のときにこの山に入っているのです。だからそういう点からいったら不徹底な表示の仕方がなされていたということは言えますけれども、散布してから後は約一カ月ぐらいは立ち入りすることを禁止しなければならないのじゃないか、それは、農林省の方で有効面について数週間、数カ月というふうないろいろなことを言われているからだろうと私たちは思っておる。いまの御答弁からすると実にその点があいまいなんでありますけれども、これは何も考えなくていいのですか。
  267. 須藤徹男

    ○須藤説明員 ただいま小田島説明員が申し上げましたのは、殺虫効果、つまり薬剤を散布いたしましてマダラカミキリが後食いたしまして効果が二週間ないし三週間ということを申し上げたわけでございます。つまり残効性があるということでございます。人体に対しましては、散布時にはやはり直接被曝することはなるべく避けた方がよろしかろうということで立ち入りを制限しておりますけれども、ただいま宝塚市が一カ月というふうなことをおっしゃっておるようでございますが、林野庁といたしましては、散布後入ってはいけないというような指導はしてないのでございます。
  268. 土井たか子

    ○土井委員 そういう指導はしてないけれども、そういうふうに大事をとるということの方が、いろいろと安全面を考えていくとより適当な措置であるとは言えるのじゃないですか。そうして、そのことを考えれば、林野庁としては何らかの考え方をやはり自治体に対して示しておく必要がありますよ。まことに自治体としてはこの点、戸惑いがちです。どういうふうに考えていいのかよくわからない。どういうふうにこの点の措置を講じたらいいのかよくわからない。住民方々は率直な自分たちの声でお聞きになりますから、それにこたえられるような措置というものを林野庁としては自治体に指示しておく必要がこれについてあるのじゃないですか。特別措置法に従って実施されるという計画をお立てになるのは林野庁さんですから。いかがですか。
  269. 須藤徹男

    ○須藤説明員 林野庁といたしましては、先ほど申し上げたような指導をしておるわけでございまして、もしそういう宝塚市の例のような誤解がございますれば、はっきりした指導を徹底したいと思っております。
  270. 土井たか子

    ○土井委員 これを誤解と言い得るかどうかというのは私は問題だと思いますよ。安全面について大丈夫だと言い切れるようならば、いまおっしゃったようなことを強くおっしゃっても私は矛盾してないと思いますけれども、安全面という点でも実は不確かなところが後に残るのじゃないですか。  さらに、ちょっといま部長さんがわざわざここに御出席だから部長さんの御答弁についてお尋ねをしたい点があるのです。それは、いま有効面についてお尋ねをしたわけでありますが、周辺に空散できない狭い範囲、百ヘクタール前後というのを申し上げてもいいと思います。それに空中から散布いたしまして果たして有効なのかどうなのか。これは四月六日の農林水産委員会で馬場昇議員からの御質問に対しまして須藤部長がお答えになっていらっしゃるのにこういう部分がございます。「大きな団地と違いまして、周りが同じように空散をしなければそこだけをやりましてもそれほど効果が出ないという大きな事例であろうというふうに考えております。」、それはいろいろな面積の場合を御指示なすった後でこういう御答弁をされておるわけであります。つまり、狭い範囲に空中から散布をしても、果たして有効かどうかということになると、結論としては効果が余りないというふうなお考えをお持ちになっているのじゃないか、この答弁からそのように私たち受けとめることができるわけですが、部長さんはどのようにお考えになっていらっしゃいますか、それはそのとおりでございますか。
  271. 須藤徹男

    ○須藤説明員 お答えいたします。  その付近全体がマツノマダラカミキリによる被害地であって、その中の一部をやっても、確かにまいたときは効果がございますけれども、周りからの飛び込みを考えますと、余り効果がないということは言えると思います。
  272. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、宝塚の例もそれに当たるのじゃないかと私たちはにらんでいるわけです。この地域、しかも当初計画よりもさらに縮小された範囲においてスミチオンを空中から散布するという効果がどれほどあろうか。この効果に対しまして、周辺のそういう学校であるとか人家であるとかいうふうなところに、むしろいろいろ心配な部面というものが予想されるという声が大きいわけであります。したがいまして、そういうことからすると、周辺に空散できない狭い範囲に空散するということが有効でない限りは、この範囲、面積についてどれぐらいでなければ空散する意味がないということの御指示ぐらいは林野庁からあってしかるべきじゃなかろうかとも思われるのですが、この点はいかがでございますか。
  273. 須藤徹男

    ○須藤説明員 実は宝塚につきましては、私どもその周りの状況がどうなっておるか、周りの松林の被害状況がどうなっておるか、全然把握いたしておりませんので、場所によって違ってまいりますから、一概に何ヘクタール以下では効果がないということも言えないと思います。
  274. 土井たか子

    ○土井委員 一概に言えないというふうなことのお答えでありますけれども、しかし、狭い範囲について空散をしても有効ではないということぐらいの指示というのは一般的にできるのじゃありませんか。だからそれは、状況に対してどういう判断をするかというのは、その自治体の当事者の判断でありましよう。  でも、やはりどういう場所においても、これは空から散布すればよいというものではなかろうと思いますから、その点に対しての一定の目安というのを林野庁としては出しておかれる必要がさらにあるのじゃないかということを、今回の例などを見ておりましても、私は非常に強く感じます。いかがです。そういうことに対しての御指示というのはさらに必要ないとお考えでいらっしゃいますか。
  275. 須藤徹男

    ○須藤説明員 私が先ほど申し上げました、その部分だけをとらえておっしゃられるとまさにそのとおりであろうかと思いますが、やはりこれは、空中散布ができない場合には立木伐倒駆除でありますとか、地上散布でありますとか、いろいろほかの方法を組み合わせて、そして効果を上げるというのが私どものねらいでございまして、いま御説のような、たとえば周りが全部やられておって、そこだけをまいてほかは何もしないということになりますと余り効果がないということが言えると思います。
  276. 土井たか子

    ○土井委員 すなわち、私がいま質問の中で申し上げようとしている点は、自治体もこの辺は住民方々から聞かれると戸惑うわけであります。一体こういう場所でこのような散布の仕方をして本当に効果があるのかどうなのかという有効性の問題に対して、住民から聞かれた場合に、大丈夫なんだ、これでこういうふうになりますという有効性で、この説得があるようなデータが手持ちにないのです。これは林野庁としては、そういう意味からすると自治体相手ということをおっしゃるかもしれませんが、自治体の方々住民方々に対しての説明をされるということが必要になってくるわけでありますので、住民の方に直接説明をする場合に、果たしてこれで説得力があるかどうかということを念頭に置きながら、いろいろこういうことに対しての指示とか、あるいは告示とか通達というものをお考えいただかなければならないのじゃないかというふうに思います。この点、まだまだ私は十分とは言えないで、不備な感がいたしますから、一層の整備を要請したいと思いますが、それはできますね。
  277. 須藤徹男

    ○須藤説明員 この事業は実施後ことしで二年目でございまして、いまお話ございましたように、自治体によっては余り知識がないという面もあろうかと思いますので、さらに一層の指導を徹底していきたい、かように考えております。
  278. 土井たか子

    ○土井委員 その知識がない自治体に決定的なのは、安全性について住民方々から聞かれることが一番つらいのです。安全性について住民方々が市に聞かれますと、市は県に聞いてくださいとおっしゃる。県に聞きに行きますと、県は、国が安全であり、有効だというふうに言っているので大丈夫なんじゃないかというふうな御返答しか出てこない。これは具体的に言っていただかないとわかりませんということになると、出てくるデータを見れば、安全面に対しては、スミチオンというのはすぐ分解すると書いてあるし、有効面についてみると数週間や数カ月は残ると、まことにおかしな相矛盾したデータの中身も出てくるわけであります。だから、こういうことからすると、やはり安全性に対して末端の市や町というのはデータというのを持っていない、この資料なくして住民に対していろいろお話し合いを進めようと言ったって、これは私はやはり大変な苦労があるだろうと思います。この点は、住民方々に対して説得性のある資料というものが、いまの段階でこれで大丈夫だと林野庁はお考えになっていらっしゃるのでしょうか。安全性についてもっとしっかりと住民に対して説得の効くような資料というものを整えていく必要があるように私は思いますし、この安全性に対して確認をしない限りは散布していただきたくないというのが実は住民方々の率直な気持ちですから、このことをお考えいただくならば、まずは安全性の確認から始めようという姿勢でないと困る。私はいまの指示では十分とは言えないと思っていますよ。いかがでございますか。
  279. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 マツクイムシ防除に使用しております薬剤につきましては、農薬取締法あるいは食品衛生法、毒物、劇物取締法その他の各種の法律に基づきます検査を経まして、定められた使用法を定められた方法で行う場合には危険はないということで、安全は確かめられておるところでございます。
  280. 土井たか子

    ○土井委員 それは、定められた方法で定められたやり方をしながら実施することによって安全性は確かめられておるという、片やその物質そのものが安全であるかどうかという問題とは別に、実施の計画なり実施の方法なりに安全性をさらに確保するという問題点がいまのお答えでもあるわけですね。片や実施計画とか計画自身を実施する実施方法などについて、いまの林野庁の方から御指示なさっている内容というのも、きょう申し上げたとおり、まだ二年目だからということもおっしゃいますけれども、十分とはまだまだ言える段階じゃございません。自治体の方では、それぞれ自治体の手順の上での違いであるとかあるいは錯誤というのもございましょうけれども、手持ちの資料というのがまだまだ不十分だという段階でこれを実施すること自身に無理があるなということをわれわれは痛感しているわけであります。安全性についても、いまおっしゃったような農薬の問題について、それを取り扱っている法律があるから、施行規則があるからということをおっしゃいますけれども、それとは別に、これは特別措置法で、一定の地域について、五ヵ年計画で強行的に、多額の国費を使用して、林野庁が責任を持って全国に松枯れ対策としてこれを実行されるという計画内容なんですよ。少なくともこの計画については、松枯れ対策として、防除剤として使われるこれこれの薬剤に対しては安全だという確認をしていただくぐらいは林野庁の仕事ですよ。そういうことについて大丈夫だと言い切れるような資料というものを林野庁としては整えて周知徹底させるという努力をまずやっていただくことがABCじゃないかという意味で私はいま申し上げているのです。これについていかがですか。これはやっていただかなければならないと思いますよ、私は現場の自治体の方が本当に苦労しているのはよくわかりますから。
  281. 小田島輝夫

    ○小田島説明員 薬剤そのものの安全性につきましては、先ほど申し上げましたような各種の法律検査がされておりますが、事業実行上の安全性につきましては、先生御承知のとおり自然環境に与える影響調査というものを全国十県で、植生あるいは野鳥、水生動植物、土壌動物、いろいろ調査をしておるところでございます。
  282. 土井たか子

    ○土井委員 それはいま調査をしているところなんですね。実は、調査をしている段階で実施してしまうというのは間違っているというのは基本的に言えるのです。調査結果が判然として出て、大丈夫だということであって初めて実施に踏み切るのが順序としては順当なやり方というものです。そのように私たちは常に考えております。だから、片や調査をしながら実施に踏み切ってしまったことがすでに問題かもしれません。ただ現在、諸外国なんかの例を見ますと、インドではスミチオンなんかに対して催奇形性があるということがデータとして出てまいっておりますし、またコスメルという農薬なんかについては、ポーランドでは、遅発神経症というものがやはりあるということで、この使用禁止ということを最近指示したりするような具体的な例があっちこっちに出てまいっております。こういうことも一つは文献をフォローしながら、実際問題に対して林野庁として責任を持った取り上げ方を、事空中から散布するマツクイムシの防除剤についてお進めいただくということはどうしても必要だと思うのです。  それからさらに申し上げたいのは、最近、岡山で二件、山口で一件、先月から今月にかけて被害が起こったということは、もう林野庁としては掌握されているところだと思います。岡山では、残念ながら桑畑に散布されまして、蚕が三十万匹も死亡するという事件が起こっております。また、これをイチゴ畑に散布されて、これを収穫することができなくなって、これに対しての補償をしなければならないという問題も現に出てまいっております。また、山口県なんかでは、九十アールも野菜畑にこれを散布してしまったということで、善後措置に大変悩まれるという実情も出てまいったりいたしております。  こういうことからいたしますと、これは何でこういうふうな事例が起きてくるのか。また、宝塚なんかでも、急遽その前日に計画変更するわけですから、パイロットの人は予定計画どおりにどう飛んでどういうふうに散布してという計画を立ててこられているのが、前日に変わって、その日急にまた予定変更せざるを得ないという、これまた非常に無理なことがあるわけですけれども、いろいろ考えてまいりますと、マツクイムシに対しての防除のための空中から散布する薬剤というのは約一カ月くらいの間に全国的に実施しないといけないという期間が限られるでしょう。どうなんです。そこで問題はやはりあると私は思いますよ。約一カ月の間に全国を賄わなければならない、パイロットの数も限られる、ヘリコプターの数も限られる、そうなってくると、大変無理にこれを強行してやらなければならない。特別措置法という法律はつくられてしまっておる。その法律があるから無理して五カ年の間に多額の国費を使って無理やりにこれを実施計画をふやしてやっていかなければならないという無理がこの一カ月の間に組まれてしまっているんじゃないか。そのために無理に無理を重ねていろいろやることの結果こういう手違いや間違いや、そして住民方々からするとこれは黙っておれない、中止をしてもらわなければならないということになっていくような計画が、あたりで組み立てられていくのだろうと思います。自治体としては、言われるところですから、これは計画をお組みになるのでしょうけれども、なぜ組まれるかと言ったら、国から言われるからということですよ。林野庁が強力に指示されるからということだと思います。やはり一にも二にも住民方々理解を得て、こういう安全性が確認され、効果についても説得力のあるようなものを手に持って自治体としてはこのことに臨まれるということであって本当に自信のある計画も立てられるし、実施についても住民方々の納得を得てすることができるだろうと私自身は思う。そういうことからすると、これはやはり問題は林野庁の姿勢そのものにあると思うのです。林野庁としては、無理はしない、強行はしない、このことはもうはっきり言えますね。そうしてまた五カ年の実施計画について、当初の計上される予算というのは完全に消化されなければならないということで、約一カ月くらいの間に、むちゃくちゃな計画を組んで、この計画はどんなことがあっても強行するのだというふうなことにはなさらないですね。こういうことをひとつここではっきり聞かしておいていただきたいと思うのです。
  283. 須藤徹男

    ○須藤説明員 法律があるから強行するという姿勢ではございません。これはどこまでも地方自治体あるいは地域住民——もちろん反対の立場の方もいらっしゃいますけれども、ぜひともこの松林を守ってほしいという要望から出た話でございまして、林野庁がこれを強行して一銭の得になるわけでもございませんし、そういう点はひとつ誤解のないようにしていただきたいと思うのでございます。実際は、私どもはこれを強行しようなんという気持ちは毛頭ございませんで、やはり基本方針なり何なりに書いてございますように、地域住民理解協力を得ながらやっていかざるを得ない。だからその住民がどうしてもいやだというならば、これはやめざるを得ない。松林がいいのか、あるいはいろいろ比較があろうと思いますけれども、これはやめざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  284. 土井たか子

    ○土井委員 時間でありますから、私、これで質問を終えますけれども、ひとつ林野庁とされては、住民方々理解を得た上でやらなければならないという基本原則、これは林野庁自身がお考えになっていらっしゃる基本原則ですね、それを得るためにはやはり条件を整備するという必要もあるわけであります。ひとつ住民方々に対して説得性の十分にあるような資料というのも、二年目ですからとおっしゃいますが、そのとおりなので、だんだんこれに対しての整備というのはどうしても必要だと思いますが、まず安全性の確認こそ急がれるべき問題だろうと思います。したがいまして、こういう点に重点を置いての資料作成ということ、それからまたデータの提供ということ、またそういう意味での慎重な、自治体に対してのいろいろな指導のあり方ということを今後望んでやみません。  そして最後に申し上げたいのは、きょう私が出しました宝塚市の例なんというのは、宝塚市一市の問題じゃなくて、やはり全国の各自治体で、市、町、さらには村、この現場でいろいろ繰り返されているマツクイムシによる松枯れ対策に対して、どういうふうな実情があるかということを物語る典型的な例がここにもあるだろうと思います。実情に対して、さらに一層宝塚市に対しての連絡をとって適切な指導をいただきますように、ここで要請したいと思いますが、よろしゅうございますね。
  285. 須藤徹男

    ○須藤説明員 兵庫県を通じまして十分指導してまいりたいと思っております。
  286. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、これで終えます。  ありがとうございました。     —————————————
  287. 久保等

    久保委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件調査のため、本日、新東京国際空港公団総裁大塚茂君を参考人として、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 久保等

    久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  289. 久保等

    久保委員長 質疑を続行いたします。小川国彦君。
  290. 小川国彦

    小川(国)委員 成田空港が開港しましてから一カ月近くなるわけでございます。その中で、いま非常に大きな問題になってまいりましたのが空港周辺の騒音公害の増大の問題でございます。この問題については、去る六月六日、福田総理が閣議の席上におきまして、成田空港周辺の騒音について、地域住民の重大関心となっているので、関係閣僚の間で対策を立て、てきぱきと善処してほしい、こういう指示をされたということを伺っておりますが、この点について、運輸次官、環境庁長官、それぞれどのようにこの総理の指示を受け取り、対処されているか、ひとつ簡潔に伺いたいと思います。
  291. 山田久就

    ○山田国務大臣 成田空港における騒音対策については、総理大臣のただいまお話しのような趣旨の発言もありまして、政府としても全力を挙げてこれに取り組むべき問題であると考えております。具体的な対策については運輸省、公団が実施すべきものでございますけれども、その内容については、環境庁といたしましても強い関心を持って見守ってまいりたい。特に騒音地域の見直しにつきましては、地元自治体の測定データも踏まえまして、運輸省ともよく協議いたしまして、最終的に見直しが必要と判断されたそのときには、運輸省に対しましても地域の変更等についてひとつ働きかけてまいるということにいたしたい、こう考えております。
  292. 三塚博

    ○三塚政府委員 お答え申し上げます。  開港後の騒音問題は重大な問題でありますことは御指摘のとおりであります。本問題につきましては、運輸省、公団も開港後の最大に取り組むべき問題として認識しておりまして、これまでも学校、民家の防音工事、共同利用施設の整備、さらには騒音区域の移転補償等、騒音対策を進めてまいりましたところでありますが、総理の発言の趣旨を体しまして、今後も引き続き積極的に推進してまいります。
  293. 小川国彦

    小川(国)委員 いま環境庁長官、三塚運輸次官から非常に積極的に取り組んでいくという姿勢の答弁があったわけでございますが、実は先日、開港以後において、空港公団が現地の騒音調査を行ったわけでございます。その騒音調査の結果というものが発表されてきているわけでございますが、これについては昨年の八月、十二月と二度にわたって行われました騒音テストより、いずれも十ホンから十五ホン騒音が大きくなってきているということで、周辺住民も音の大きさと被害の大きさに非常な衝撃を受けている、こういう状況でございます。  ところが、空港公団が騒音調査を行ったわけでございますが、実施の個所が地方自治体が実施した個所よりも非常に少ない、こういうことが指摘をされているわけであります。公団の測定地点は全区域で三十四カ所ないし三十五所。これは公団の方から出ました資料によりますと、三十四カ所か三十五カ所か、二通りの説明文書が出ておりますので、これが明らかでないのですが、いずれにしても三十四、五カ所。ところが、成田市が測定した個所は成田市内のみで四十八カ所。このほか空港周辺の下総町、神崎町、大栄町、佐原市それから東庄町、小見川町、銚子市、多古町あるいは芝山町、松尾町、八百市場市、富里村、まだたくさんの町村がそれぞれ独自の調査を自治体として取り組んでおるわけです。  この調査を見ますと、公団の調査の実施個所よりも地方自治体の方が個所もはるかに多く、熱心にこの調査に取り組んでおるわけです。公団では、成田市が成田市内で実施した四十八カ所よりも十四カ所も少ない三十四カ所の調査しか行っていない。こういうことは、総理が言われた環境対策は重大だ、騒音対策は重大だからこれに取り組めという政府の方針に対して、空港公団がこの騒音調査に積極的に取り組んだというふうにはどうも受けとれないわけでございますが、この点については、この個所で十分というふうに考えられたのか、あるいはいままでの騒音調査で十分であるというふうにお考えになっているのかどうか、まずこの個所の問題と、取り組みの問題についてお伺いをいたします。
  294. 大塚茂

    ○大塚参考人 公団といたしましては、実は全部の便がそろってから環境庁の告示に従いまして連続一週間の騒音測定をやりたいというふうに考えておったのでございますが、飛び出しまして反響が非常に大きいものでございますから、便が全部そろわぬ段階から、御承知のように二十二日から飛び出したわけでございますが、二十六日からとりあえず騒音調査を開始をしたという点で、私は敏捷にこれに対処したということに当たるだろうというふうに考えております。  ただ、その調査の個所は三十四カ所でございますが、これで十分とは考えておりません。成田市等に比べて少ないじゃないかということでございますが、先ほど申し上げましたように公団としては環境庁の告示に従ってやりたい。告示に従いますと、一カ所一週間連続して調査をする必要があるというふうになっております。ですから、一日に観測の器械を持ち回りまして三カ所も四カ所もはかって回るというやり方をやりますれば、それは何カ所でもやれるのでございますが、私どもとしてはそういうやり方はやらないで、固定といいますか、定まった個所において、できれば一週間。ところが実際においては一週間できませんで、三十四カ所のうち一週間連続調査ができたのはたしか十二カ所でございますが、あとの二十二カ所は二日ないし三日の観測しかできない。これは飛行機が飛ぶ方向が日によって違いまして、南側にだけしか飛ばない日もありますし、北側にしか飛ばない日もあるというようなことやなんかから、そういうふうな結果が出ておるわけでございますが、そういうふうなことで、できるだけの調査はいたしましたが、これで決して十分とは考えておりませんので、今後必要な場所についてはさらに測定を続けていく。また、地方自治体のやりました測定結果についても、われわれとしては参考にいたしまして、今後、区域の見直しというようなことも考えてまいりたいというふうに考えております。
  295. 小川国彦

    小川(国)委員 成田市のこの取り組み一つを見ましても、四十八地点、固定点で三地点、移動点で四十五地点、四十八地点を測定しているわけですね。しかもその直接調査に三十九人、集計に十三人、庶務に十九人と七十七名も連日投入してこの測定調査をやっているわけです。それに対して公団の方が三十四地点ということで、十四地点も成田市の調査より少ないわけです。しかも公団の調査は固定測定点でたしか六カ所、移動地点で二十九カ所ということで、しかも、七日間調査を行ったところは五カ所、その他のところは二日のところが一カ所ということで、大半のところが三日しか調査をしていないわけですね。こういう騒音調査の結果では、これをもってWECPNLに換算し従来の基準を変えなくてもいい、見直しをしたくてもいいということを言い切るのは、これは政府にしても公団にしてもきわめて早計ではないかというふうに思うのですが、一体公団はこの測定調査に当たって成田市よりも個所的に少ない。しかも七日間やらない。七日間やったのは二十九カ所のうちわずかに五カ所、こういうような数字なんですね。いま総裁が言われたように、環境基準に基づく調査は七日間やる、こういうことになっているのに、二十四カ所は三日しかやらない。こういうずさんな調査で果たして環境基準調査を行ったのかどうか。言えないのじゃないかと思うのですね。一体、これは予算はどのくらい、人数はどのぐらい投入しておやりになったのですか。
  296. 大塚茂

    ○大塚参考人 先ほど申し上げましたように、この程度の測定で十分であるというふうには私ども考えておりません。したがって、この測定だけではじいたWECPNLで区域の見直しをやるというつもりはございません。したがって、この数字だけで区域の変更はしないとかなんとかいう結論はわれわれとしては出しておりません。  それから、これに要した経費は二千四百万でございまして、一カ所当たり四人で大体測定に当たっておりますから、三十四カ所で百三十何名ぐらいということに相なるかと思います。
  297. 小川国彦

    小川(国)委員 成田市が七十七名のスタッフを擁してやっておりますのに、周辺全体の騒音対策を見なくてはならないという立場にある公団が、三十四カ所に掛ける四人、百三十数名ぐらいの調査で、これは全部公団職員を動員されたのですか、それとも委託をなさって調査をされたのですか。
  298. 大塚茂

    ○大塚参考人 公団の職員を主体にしまして、業者を使ったりしてやったわけでございます。
  299. 小川国彦

    小川(国)委員 その内訳は公団職員が何名、委託が何名、委託先はどういう団体、どういう機関で、何名この調査に使われたのですか。
  300. 大塚茂

    ○大塚参考人 公団職員でこれに専門に従事しましたのは三十名でございまして、そのほかは民間の会社のを使った、こういうことでございます。  会社の名前はリオンという会社と試験検査という二社だそうでございます。
  301. 小川国彦

    小川(国)委員 リオンと試験検査はそれぞれ何名ずつの要員と器械の台数ですか。
  302. 大塚茂

    ○大塚参考人 器械は、三十四カ所でございますから三十四台でございまして、会社の職員は、さっき申し上げた数から公団の三十名を引いた残りが会社の職員でございます。
  303. 小川国彦

    小川(国)委員 何でこんなずさんなでたらめな調査しかやれないのですか。三十四カ所に三十四台の器械を設置すれば、三日やろうが一週間やろうが、器械が据えつけられればそれに必要な人員さえ配置すれば、三十四カ所一週間の徹底調査ができるはずです。騒音基準に基づく七日間という規定調査もできるはずなんですね。それをなぜ大半、二十九カ所のうち五カ所を除いた二十四カ所は三日で仕上げてしまったのですか。器械があれば当然できるはずでしょう。二千四百万の調査費ですよ。警備費に五十億もかけている状況の中で、周辺住民生活考えたならば、新左翼に対するところの対策に五十億かけて、同じ飛行機の被害を受ける住民に対してその重大な騒音問題を調査しようというのに、公団の職員はわずかに三十名ですよ。成田市の投入した職員の半分以下の人間しか投入しない。成田市では自治体の三分の一近い職員を各課から動員して駆り集めて、朝六時から夜十一時まで、器械を整備して帰ってくると午前一時、二時。そういう状況の中で自治体がやっている。それはひとり成田市だけじゃないのですよ。芝山町も多古町も、そういう周辺の町村がみんな真剣に騒音調査をやっている。そういうふうに自治体が真剣に取り組んでいるのに一番そのもとの公団がこういう取り組みでは、住民が納得できないと思うのですね。いかがなんですか。この点、運輸次官、公団が予算を出し惜しみして調査費二千四百万しか組まずに七日間やるべき調査を三日で仕上げてしまった、こういう調査、次官としてこれ信頼できるというふうにお考えになりますか。この調査のやり方についてどういうふうに次官はこれをお考えになります。
  304. 三塚博

    ○三塚政府委員 ただいまの質疑をお聞きしておりまして、公団も割愛できる人員そして委託、こういうことの中でやられておるようでありますが、成田市との対比で申し上げますならば、公団三十名、成田七十七名、こういうことで問題があろうかと思いますけれども、総体の人員の中でこれを取り進めるということでありますならば、きちっとやられますならば効果が出てくるであろう。しかし、そういうことで小川委員が疑念を持たれる、徹底を欠いておられるという、現地選出の議員としての御指摘は十二分に拝聴いたしまして、この点については公団を督励をし、住民の皆さんが御安心いただけるような方向で進めなければならぬというふうに、ただいまの質疑をお聞きしております点におきましては、痛感をいたすわけであります。
  305. 小川国彦

    小川(国)委員 公団の職員は全部で何名おいでになるんですか。
  306. 大塚茂

    ○大塚参考人 約九百五十名ぐらいでございます。
  307. 小川国彦

    小川(国)委員 それで、この騒音対策に取り組むのには、自治体では市長を陣頭に本部長にして取り組んで各自治体やっているんですが、公団ではだれが本部長になってこういう対策の取り組みはおやりになったんですか。
  308. 大塚茂

    ○大塚参考人 公団では騒音問題担当の環境対策室というのがございますから、そこが専門的にこの問題をやっております。
  309. 小川国彦

    小川(国)委員 そのときにこの委託先は二社しかないというふうにお考えになったんですか。公団の職員が九百何名おって三十しか投入できないという公団の姿勢そのものにも環境問題に対するきわめて不誠意な態度を感ずるんですがね。公団の職員が、もし開港直後で仮に投入できないというふうに考えた場合、皆さんの方では百名近くを委託されているわけですよね。百名を委託するなら、この委託者を三百なり五百なりにすれば、当然、一週間の調査データというものはできるわけですよ。そういう取り組みについてのお考えは持たなかったのですか。総裁はこれについて相談なかったのですか。
  310. 大塚茂

    ○大塚参考人 騒音の測定というのは相当技術的な知識と経験が要るものでございまして、だれでもできるというものではございません。私どもの方では、そういうことがやれる人間全部を動員して三十名ということでやったわけでございます。
  311. 小川国彦

    小川(国)委員 だから、そういうところにも公団のだらしのなさがあると思うのですよ。成田市の自治体ではそのための講習をやって、そして七十七名という人間を投入できるだけの、それだけの調査から集計から庶務を含めて訓練をして、七十七名で四十八地点をやっているわけですよ。公団が九百名の職員がおって、専門的な仕事だから三十人しか投入できないということは、公団自体においてまずこの騒音対策に対する取り組む姿勢が欠けているのじゃないか。成田市ですら七十七名。成田市はたしかいま七百名ぐらいだと思いました、市の職員が。その中の一割を投入しているわけですよ。皆さんの方は、九百人のうちの一割を投入したとすれば、九十人の職員を投入できるはずですよ。そういうところがまず欠けている。専門家じゃなくてできているのですよ。各自治体みんな市の職員が勉強してやってきているのですから。それから外注もできないはずはないのですよ。そういう点について、これは取り組みの根本において皆さんが徹底した騒音調査をやろうという考え方がなかったんじゃないですか。あれば公団の職員でもっとどれだけの人数が投入できるか、外注の人数は最大限どこまで持っていけるのか。外注先については調査なすったんですか。内部についてそういうことは検討されなかったのですか。
  312. 大塚茂

    ○大塚参考人 この調査の目的がちょっと誤解があると思いますが、私どもは先ほど申し上げましたように、全便出そろってから徹底的な調査をしてコンターその他の見直し等をやりたい、しかし、それまでほうっておくということは非常に誠意のない態度だととられますので、急遽二十六日からとりあえず、いままでのコンターが果たして正しいかどうかということの見当をつける意味において調査を実施したということでございまして、おっしゃられるように、本格的な徹底的な調査というものでは初めからなかったわけでございます。
  313. 小川国彦

    小川(国)委員 そうするともっと重大な問題が出てくるわけですが、運輸省とか公団はともかく一週間、中身は三日しかやらないものが大半なんですが、そういう不確実な調査に基づいて、騒音範囲については、騒音対策の騒音コンターについては見直しをしない、従来の決定した一種、二種、三種でほぼ見合うという発表を政府運輸省や公団はやってきたと思うのですね。そうするとその根拠であるこのものが不確かなものの上に見直しをしないということを言ってこられたのですか。この点、運輸次官いかがですか。政府は見直しについては、このデータの上に基づいて見直しをしませんと言ったのかどうかですね。その点はっきりさせてください。
  314. 大塚茂

    ○大塚参考人 私どもは、これによってコンターの見直しをしないというようなことは言っておりません。ただ、先ほど申し上げましたように、大体の見当をつけるという意味においては予想と大した違いはないということが見当がついた、こういうことは言っております。しかし、コンターを今後どういうふうにするかということは今後の問題でございまして、御承知のように八十五を八十までとりあえず広げるということを方針として運輸省並びに公団では決めておるわけでございます。
  315. 小川国彦

    小川(国)委員 運輸省はどうなんですか。新聞紙上でも、運輸大臣もこの騒音調査の結果に基づいて騒音コンターについては見直しをしないでほぼ従来の対策で十分、やり方で十分、こういう見解を政府が出されてきたように私は思うのですが、そういうものを出したことはなかった、こういうことですか。
  316. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 新聞に書かれました運輸省の見解が必ずしも発表したとおりのことが書かれておりませんで、かなりはしょって書かれておりますので誤解をいただいていると思いますけれども、私どもとしましては、騒音コンターを見直しをしないということを決めたことはありません。
  317. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、どうなんでしょうか。非常に重大な問題は、騒音コンターの発表で、世間一般には騒音コンターの見直しはしないというので出された、公団の第一次航空機騒音調査結果というものに基づいてWECPNLへの換算が行われた、この中でいきますと、いま総裁が答弁されたように、今度は八十五ではなくて八十まで騒音を引き下げる、対策区域を引き下げる、そういうふうな努力をしていくということを言われたのですが、しかし八十まで引き下げたところで、この図面によれば、いままで問題になっていたところの三里塚とか本三里塚、こういうところはいままでも対象外に置かれていた、ところが今度の八十まで下げたことにしても三里塚では七十九であり、本三里塚では七十六である。そういうふうにしてまいりますと、三百五十戸も住んでいるこの地域でWECPNLの換算でいけばまたもやわれわれは地域外か、地域の人たちはこういう絶望的な気持ちに追い込められているわけですよ。  繰り返して三里塚のことについて言うならば、これはきょうは政府の大臣、次官、来ておられるので申し上げたいのですが、昭和四十一年七月に成田空港が三里塚に決定したときに、三里塚については空港のすぐ側面になってしまって町がすたれる、したがって三里塚町を生かす方途については別途講ずる、こういうことが閣議決定書にあったのですよ。千葉県知事は、その内容は何かと言ったら、当時の運輸大臣と約束して三里塚町のわきに飛行機のための食品工業団地をつくると言ったのです。ところが友納現衆議院議員、前知事が十二年間県議会で約束してきたことが、いまになってもこの食品工業団地というのがないわけなんです。もう十数キロ離れた芝山に工業団地はつくられたけれども、三里塚町にはできない。そういうことで、三里塚町の商店街、住居を含めて三百五十戸あるわけですが、そこに対しては何ら地域を生かす対策は講じられなかった。そうして今度はそこが騒音区域、この図面をごらんになっていただきたいと思うのですが、飛行場を南北に見て左側に、飛行場の敷地によってへっ込んだ場所があるわけです。へっ込んで取り残されたところが本三里塚の五十戸であり、三里塚の三百戸なんですよ。これについては政府は、防音堤をつくって防音林をつくったから、これで騒音は十ホン下げるからここは対象外で大丈夫ということで、閣議決定のときから防音堤についての疑義が出されていたのに、これも講じなかった。それから昨年の八月と十二月に騒音テストをやった。そうしたところが三里塚町では九十ホンを超える騒音がいずれの地域でも出てきた。今度は三里塚に対して移転とか民防とかそういう対策が講じられるのかと思ったら、先ほどきわめてずさんな調査の結果で七十四と七十九だから三里塚町も本三里塚町もまた対策外だ、こういうふうに地域の人たちは絶望し、落胆しているわけですよ。それは何かというと、いままで政府が開港前にこれだけいろいろな問題が提起されていながらああいうでたらめな図面までつくって十二年間ほうってきて、飛んでみていま九十から百に近いような騒音が連日出ている。そういう人々がいま塗炭の苦しみに追い込まれているのに、非常に迅速にやったからこんなずさんな調査しかできなかったということで、こういうずさんな調査の結果で、巷間見直しをしないというようなことが伝えられては、一体どうしてくれるのかということになってしまうわけですよ。総理がてきぱきとやれという指示をしたというのですが、では皆さんは一体何をてきぱきとやっていらっしゃるのか。そういう点から言うならば、いまの公団のやった調査というものは環境基準に基づくものではない、こういうふうに私は判断しますが、環境庁長官、これはどういうふうに判断されますか。
  318. 橋本道夫

    橋本(道)政府委員 先ほど公団の総裁がおっしゃったのは、環境基準の告示の中に測定方法、計算方法が書いてあるのに準拠してやったということであろうというぐあいに私は解しております。ですから、WECPNLを何に使うかということになりますと、基本的にはどういうぐあいに分布しているかでございますが、環境基準の一種、二種の区域分けをするときに使うのか、それとも航空機騒音公害の障害防止法のときに使うためのものなのか、あるいはその後の、前国会でございましたか、周辺の土地利用の特別措置法のときに使うものなのかということでいろいろ用途が別々にございますが、少なくとも音の分布としては同様でございますから、それをはかるには環境庁の告示の中に書いてある、少なくとも一週間、最も典型的なフライトのときに最も適切な場所を選んではかるという一般的なことに準拠しておやりになったことで、環境基準のあれをはかったというものではないのではないかというぐあいに思っております。
  319. 小川国彦

    小川(国)委員 いま環境庁お答えのとおり、航空機騒音に係る環境基準について、「測定は、原則として連続七日間行い、」こういうふうにうたっているわけです。ですから、今回の公団の調査というものはこの環境基準に基づいた騒音測定ではなかった、こういうふうに断定されるわけですね。そういう事態を踏まえて、公団総裁はもう一遍、環境基準に基づく騒音測定を早期かつ迅速に行う考えがありますか。
  320. 大塚茂

    ○大塚参考人 一遍と限らず何遍でも繰り返して、季節等によってやらなければいけないと考えております。
  321. 小川国彦

    小川(国)委員 この問題はやる気になれば、いま毎日飛行機が飛んでいるわけです。私は、連日騒音区域の人たちのところへ行って泊まったり、ゆうべも十一時まで西和泉というところへ行ってまいりました。先日は野毛平に行きました。大変な騒音で、昨日のように曇った日には雷が落ちてくるような音です。滑走路から六、七キロ離れたところで。住民が連日そういう被害の中にさらされているわけです。そういう状態の調査をそれこそ総理の言うようにてきぱき行うならば、あしたからでもこの環境基準に基づく騒音調査をやる、こういう考え方を総裁自身がお持ちにならなければならないと思うのですが、この点、いかがですか。
  322. 大塚茂

    ○大塚参考人 先ほど申し上げましたように、まだ全便飛んでおりません。御承知のように、ノースウエストが、長期のストをやっておりまして、これが二十便ばかり欠けております。ですから、全便そろった段階で本格的な調査をやりたい、こういうふうに考えております。
  323. 小川国彦

    小川(国)委員 あなたに言いたいことは、これは政府全体含めてですが、いろいろ報道されていることでは騒音対策を適切に迅速にやれと総理は連日言っているのですよ。総理が言っていないなら、騒音対策はどうでもいいと言っているなら別ですが、そう言っている状況で、また皆さんの方から言わせれば、ノースウエストが飛んでも騒音値は変わらないというような言い方をされている方もあるわけです。ですから、皆さんが本気でやる気になれば、いまおっしゃった予算、いままで公団が空港関係のためにかけてきている経費、警備費や建設費から見たら、この周辺の十数万という住民が苦しんでいる騒音被害、特に周辺の連日寝られない状況に置かれている市民から見れば、これから毎晩でもいいからやってもらいたい。そういう中で皆さんが仮に八十以上を対策区域に入れるとか、それからいま言ったように、見直しをしないとは言っていない、——言っていないということは見直す考えがあるということに私は理解いたしますが、そうだとすれば、ノースウエストが飛ばない段階でも直ちにこれを実施していくという考え方ぐらい持つべきじゃないですか。これは、空港公団を監督、指導する立場から、政府としての積極的な姿勢とか考え方は持てないのかどうか、三塚運輸次官に、もう一つ運輸省の積極的な考え方を伺いたいと思うのです。
  324. 三塚博

    ○三塚政府委員 おっしゃるとおりでありまして、住民生活の中でそういうことであり、公団は調査を一生懸命やられております。こういうことでありますが、いや、そうではないという議論があります。すでに飛行機が飛んでおるわけでございますから、この調査につきましては基準に基づいた一週間ということでやりますように、これが出てまいらなければ本格的な対策が後に続きませんものですから、これは総理が言われましたような趣旨政府全体の考え方であり、当然公団もこの趣旨に従ってやらなければならぬわけでありますから、そのことにつきましては、監督官庁としてきちっと指示をしてまいります。
  325. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一遍繰り返しますが、早期、迅速にやる、こういう指示をされるのですか。
  326. 三塚博

    ○三塚政府委員 そのとおりでございます。
  327. 小川国彦

    小川(国)委員 それから次に、そういうことで全体の騒音の測定を政府としてもう一度新たな観点から積極的に取り組んで、いま地獄のような連日の生活の苦しみの中に置かれている人たちのために早期対策を立てるのには、そのもとになるこの環境の測定が行われなければならないわけでございますが、環境調査を行う場合の測定個所、従来の公団の測定個所は、いま申し上げたように非常に少ない。こういう点については、各自治体で行ってきたいままでの調査を見ますと、公団の固定測定個所などを見ましても、三里塚、本三里塚には固定測定個所を置いていない。滑走路の南北はやっていますが、東西はやっていない。それから、周辺の市町村はやっていない。ですから、この測定個所については、自治体ないし住民が望んでいる測定個所についてこれを実施していく、それこそ住民の意見に基づいてやっていく。それからもう一つは、公団の測定している個所は、部落の住家密集地でないところ、余り人家のないところを選んでやっていらっしゃる。これでは住民の人たちは納得しないわけで、たとえば西和泉とか南三里塚とか荒海という地点では人家のない地点で測定しているのだそうです。人家に与える被害とか影響を測定するのには、人家の密集しているところで測定をやってもらいたい。そういう点から言っても、各部落部落で地域住民の要求するところで測定していく、それから測定個所についても住民の要求、自治体の要求を参酌していく、こういう姿勢についてはいかがですか。
  328. 大塚茂

    ○大塚参考人 現在でも、住民からここで調査をしてほしいという要求があればやるということでやってきております。しかし、自治体との連絡が必ずしも十分でなかったという点もございますので、今後やる場合には自治体とよく連絡をしまして地点を選んでやるようにしたい、こういうふうに考えております。
  329. 小川国彦

    小川(国)委員 何も騒音のないところからはここをはかってくれとは来ないわけです。やはり痛みがあるから訴えるわけなので、そういう点では関係部落からそういう要望があった場合には、公団として当然そこに測定点を選ぶ、それから一週間にわたっての調査をやる、今後行う場合にはそういう考え方で進まれる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  330. 大塚茂

    ○大塚参考人 そういう考え方でやりたいと思っております。
  331. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、いままでの調査の中で一番ひどかった野毛平、ここは大丈夫だというので引っ越しをした。ところが爆音の直下になって、そして今度の調査では、すれすれ八十ということですけれども、ここへの対策、それから本三里塚、三里塚、大清水、この辺についての対策はいままで漏れに漏れてきているわけです。こういう地区について重点的に騒音調査を行ってそれに対する対策と取り組む、こういうお考えはいかがですか。
  332. 大塚茂

    ○大塚参考人 いまおっしゃられたような土地は、当然われわれの重要な対象になると考えております。
  333. 小川国彦

    小川(国)委員 それから、今度その測定結果が出た場合のことでございますけれども、政府、公団の方では従来八十五以上を対策区域としておりましたが、年内の作業で八十まで民防区域を拡大していく、こういう考え方を持たれ、来年度にはそれを告示されていくという考え方を持たれているようですが、この点は事実でございますか。
  334. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 お答えいたします。  当面ことしの暮れまで八十五WECPNLという中間目標がありまして、それに向かって対策をやるわけでございますけれども、何せ次の目標は五十八年七十五ということでございますが、五年先のことでございますし、五年先の機材構成とか便数等についてかなり大胆な想定をしないと現実的なものができないということもございまして、とりあえず五十八年と五十三年の中間に八十という目標を私たちなりにつくりまして、そして八十に相当するコンターを引いて、そして八十五WECPNLという中間目標の基準が終わることしの暮れ以後は、つまり来年早々は八十で仕事をしようということを考えております。その趣旨は、五十八年に最終目標が来るであろう七十五というものをできるだけ早く先取りをいたしまして、そして一日も早く騒音対策を完了したいという気持ちからでございます。一遍に階段を登るときに、八十五から七十五ですと非常に歩幅が大きくなって息が切れますので、とりあえず八十という中間段階を設けて早く対策を講じて、最終的な七十五に到達する時期を早めようということでございます。したがって、五十八年の末まで待たずに七十五という最終目標はクリアしたいというのが私どもの考え方でございます。
  335. 小川国彦

    小川(国)委員 民家防音工事の全額国庫負担、こういう住民からの要求が出ておりますが、これの全額国庫負担と、それから冷暖房費が当然かかってくる、冷暖房の設備それから維持費、これについてはどういうふうにお考えになっていますか。
  336. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 全室防音工事の問題でございますが、これにつきまして当初五十三年度試行、原則として五十四年度ということでございましたけれども、五十三年度試行に引き続いて五十三年度から実際にもう行うということに変えました。ただ、予算手当てがありませんので、いまその手当てをしている最中でございます。できるだけ早く手当てをいたしまして実施するように、いま公団にお願いしているところであります。その際の負担の方法あるいはさらに進んで起こってまいります冷房費の費用等の問題は、まだいまのところどちらの方向にも私どもとしては詰めておりませんので、今後の問題といたしまして十分検討いたしたいと思います。
  337. 小川国彦

    小川(国)委員 大体この辺の集落はわら屋根か、かわら屋根か、トタン屋根なんですね。これを全室防音されたにしても、今度は冷暖房の設備がなければ——農家はいま夏は窓あけ放しで寝ていられるわけです。しかし、これを全室防音した場合には、当然、今度そこは冷暖房の設備をしなければならぬわけです。これは当然一体のものとして考えなければならないと思うんですがね。冷暖房についてはまだ予算化の見通しはなし、こういうことでございますか。
  338. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 これにつきましては、すでに大阪など他の空港でもやっております民家防音工事の場合には、大阪ですと一室防音をやっていたわけですけれども、それに伴う冷暖房設備の費用は入れてあります。私がさっき申し上げましたのは、さらに進んで学校防音などで冷暖房の維持費をという話がありますので、これは検討しなければ何ともお答えできないと申し上げたわけでございますけれども、設備費につきましては、これは考えていかなければならないと思います。ただ、全戸防音の場合に、それでは各部屋全部やるのか、それとも主要な居室だけにするのか、こういったことはこれからの検討問題でございます。
  339. 小川国彦

    小川(国)委員 私、ちょっと試算してみたんですがね。いままで防音対策、千二百戸やったわけですよね。その中に約三百戸ぐらい残っているんですね。これから全室防音やると、五百万かかるだろうというふうに推定されているわけですね。そうすると、いままでやったものと現状対象のものを考えて、約二千戸を五百万円かけて全室防音やったとしますと百億かかるわけですね。そうすると、いままで民防費にかけてきた予算が約十六億ぐらいというふうに推定されるのですが、二千戸を全室、仮に単位を五百万というふうに平均的に見た場合に百億ぐらいかかるというふうに推定されますが、この辺の数字はそういうふうに押さえていらっしゃいますか。
  340. 大塚茂

    ○大塚参考人 八十のコンター及び七十五のコンターというのがこれから線を引くわけでございますので、その範囲に何戸ぐらい入ってくるかということはまだ的確につかんでおりません。しかし、八十の場合で全部で大体千五百戸ぐらいになるんじゃなかろうかという大体の見当でございます。
  341. 小川国彦

    小川(国)委員 一戸の民防単位の費用は平均どれくらいに押さえていますか。
  342. 大塚茂

    ○大塚参考人 目下試作を六戸やっておりまして、その試作の結果によってどれぐらい経費が必要かということが確定するわけでございますが、いまの段階で大体五百万ないし六百万ぐらいではなかろうかという見当でございます。
  343. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、五百万として千五百戸やると、ざっと七十五億かかるわけですね。これは当然、今度は大変な予算になってくるわけでございますが、これについては運輸次官どうなんでしょうか。千五百戸を五百万という、七十五億という予算を政府は確保していくという考え方を持っているのかどうか。  それからもう一つは、これに冷暖房費が入っていないということになると、当然そういうものも含めていけば、これは百億近い民防対策費というものになっていくと思うのですが、この点はどのように見通していらっしゃいますか。
  344. 高橋寿夫

    ○高橋(寿)政府委員 冷暖房の設備を何室入れるかというようなことにつきましてはこれから検討いたしますが、いずれにしても必要な部屋についての冷暖房設備は入れます。そういたしまして、いまお示しの千軒になりますか千五百軒になりますか、それも基準を八十五、八十、七十五それぞれとることによって広がっていくわけでありますけれども、少なくとも当面は八十五ということで従来やってまいりました一種地域の中の民防工事の残りが八百数十軒ございます。これに二種地域の中の移転をなさらない方のおうちがやはり数十軒残ると思うのです。そうしますと、合わせまして八百五、六十軒か、六、七十軒の家に対しまして、とりあえず直ちに全室防音工事に着手をする必要があると思うのであります。それをはじきますと、そのお金は五、六十億となりましょうか、これにつきましては、予算の点では、私ども全面的に公団をバックアップいたしまして、必ずこれを大蔵省からとってまいりまして、このお金によりまして早急に工事を終わるということで大臣からの強い指示をいただいておりますので、必ず実行いたします。
  345. 小川国彦

    小川(国)委員 最後に。環境庁長官にしても、三塚次官にしても、公団総裁にしても、それぞれ環境基準の守られたところにお住まいになっていらっしゃるというふうに思うのです。日本の政府昭和四十六年の五月に騒音に係る環境基準というのを閣議決定しているんですね。その中では、住宅地に維持されることが望ましい基準というのでまいりますと、室外で昼間は五十ホン以下、それから朝夕は四十五ホン以下、夜は四十ホン以下、こういうような基準が望ましい住宅環境の基準ということで示されているわけです。ところが、公共の用に供するもののためということで、航空機や新幹線や建設騒音というものは、こういうものから除外されて別な基準がつくられてきた。しかし、それも環境基準の目標からいけばWECPNLで七十五以下にすることが望ましいというふうになっているわけです。しかし、国の基準はいまにおいても来年当初において八十を達成したいというようなところまでしかいき得ない現状にあるわけです。ところが、そういう国の対策というものが総理の指示なり政府の取り組みで行われているわけなんですが、現実には、いま連日深夜においての便が非常に多いわけです。これはもう六割ぐらいの便が夜九時から十一時ごろの時間帯に非常に集中してきている。そういう中では、昨日参りました西和泉の部落の人たち、私先ほど申し上げたように大変な雷鳴のような騒音です。そういう中ではいろいろな人たちがおりまして、たとえば病人が耳に栓をしないと寝ていられない。それから農家の主婦が、朝五時起きするのですけれども、夜十一時に飛行機が飛び終わってみないと自分が一日が終わったような感じがしないということで、大変な睡眠不足と地獄のような生活状況の中でいるわけです。  そういう点で、少なくとも政府や公団が本当に騒音対策に取り組むというなら、三塚次官を先頭にして、公団総裁にしても現地へ来てみずから騒音体験をしていただきたいと私は思うのです。夜九時以降の騒音がどうなのか、これは環境庁長官にしてもそれぞれ日中はお忙しい方だと思いますが、騒音を体験していただくのには夜の騒音が一番厳しいわけで、そういう点ではこれは運輸省が先頭に立って、現地に泊まる設備は私どもいたしますから、関係農家に一緒に泊まりますから、これはひとつ次官先頭に立って現地に泊まりにくる、そして、現地の人たちの苦しみを分かちながら、この対策をどうしたら環境基準に達するような、生活基準を守れるような騒音対策を立てられるか、そういう一つ政府の姿勢があっていいと思うのですが、次官、どういうふうに考えるか、お気持ちを聞かしていただきたい。
  346. 三塚博

    ○三塚政府委員 小川先生地域における体験を通じての実感としてのただいまの御発言、これはごもっともでございます。私自身も昼間は聞いておるのでありますが、夜その経験がありませんので、ぜひそういうことを自分自身の体験として実感として受けとめさせていただきたいと存じます。そのときには、泊まる場所はお世話をいただく。泊まらないで帰ることもあるかと思うのでありますが、その時間帯の体験をしっかりさせていただき、今後の対策に処してまいりたいと思います。  防音対策はまさに大変な問題でありますから、このことについては、総理が言われておりますように、綿密な調査の中にしっかりとしたものを打ち立てまして、それに基づいた対策が行われなければなりません。そのためには、やはり予算上の問題は、これは金の問題でありますから、金の問題で解決できるものでありますれば、きちっと対策を立ててやらなければならぬ、これは最小限のことであろうと思います。航空局長が言われましたことで尽きるわけでありますけれども、そういうことで、本日の貴重な御質疑を体して今後に処してまいります。
  347. 小川国彦

    小川(国)委員 次官から非常に積極的に現地に泊まられるという御意思を聞いて、私も喜んで現地の受け入れの体制はつくりたいと思いますが、環境庁長官や公団総裁も、それぞれ非常に静かな生活環境におられるので、こういう生の体験というものをやはり直接持っていただいて取り組んでいただきたいと思いますが、それぞれ、環境庁長官、公団総裁にもお泊まりいただく御意思をひとつ確認させていただきたいと思います。
  348. 山田久就

    ○山田国務大臣 できるだけいまの御意思、三塚運輸次官の体験もお聞きしてひとつ対応したいと思います。
  349. 大塚茂

    ○大塚参考人 三塚政務次官以上の熱意と積極性を持って取り組みます。
  350. 小川国彦

    小川(国)委員 次官と総裁から非常にいい決意をいただいたのですが、環境庁長官、この一番のお役所ですからね。環境庁長官や次官、総裁、それぞれお忙しい方だということはわれわれも重々承知しているのです。ただ、いまの成田空港の現状は、騒音のひどさというのは夜にあるわけで、夜、一日の仕事を終えられてから七時、八時においでいただいても十一時まででございますから、十一時にお帰りいただいても結構ですし、あるいは現地で騒音対策住民と語り合って、泊まっていただいてもいいので、環境庁長官もひとつ三塚次官並みの決意をここで聞かしていただきたいと私は思うのですが、もう一遍御答弁を。
  351. 山田久就

    ○山田国務大臣 できるだけその熱意にこたえてやります。
  352. 小川国彦

    小川(国)委員 終わります。
  353. 久保等

    久保委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十五分散会