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1978-06-06 第84回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月六日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 久保  等君    理事 相沢 英之君 理事 池田 行彦君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 水田  稔君 理事 古寺  宏君    理事 中井  洽君       高村 坂彦君    戸沢 政方君       西田  司君    福島 譲二君       小川 国彦君    兒玉 末男君       土井たか子君    馬場  昇君       竹内 勝彦君    東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       金子 太郎君         環境庁企画調整         局長      信澤  清君         環境庁企画調整         局環境保健部長 山本 宜正君         環境庁自然保護         局長      出原 孝夫君         環境庁大気保全         局長      橋本 道夫君         環境庁水質保全         局長      二瓶  博君         通商産業省立地         公害局長    左近友三郎君  委員外出席者         文部省初等中等         教育局中学校教         育課長     上田 一郎君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 宮沢  香君         厚生省環境衛生         局水道環境部計         画課長     藤田 恒雄君         農林省構造改善         局建設部水利課         長       須恵  務君         林野庁林政部管         理課長     渡邊 信作君         通商産業省立地         公害局鉱山課長 檜山 博昭君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      福原 元一君         運輸省航空局参         事官      上田  浩君         労働省労働基準         局補償課長   原  敏治君         日本国有鉄道環         境保全部長   杉浦  弘君         参  考  人         (新東京国際空         港公団副総裁) 町田  直君         参  考  人         (新東京国際空         港公団理事)  角坂 仁忠君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 六月六日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     小川 国彦君   馬場  昇君     兒玉 末男君 同日  辞任         補欠選任   小川 国彦君     岩垂寿喜男君   兒玉 末男君     馬場  昇君     ――――――――――――― 六月五日  瀬戸内海環境保全恒久対策確立に関する陳情  書外一件  (第四四二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  公害対策並びに環境保全に関する件      ――――◇―――――
  2. 久保等

    久保委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。兒玉末男君。
  3. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、宮崎県内にある土呂久鉱山並びに松尾鉱山関連する鉱害がもたらしたところ被害者補償対策あるいは指定地域関係あるいはこれに関する諸問題について、ただいまから環境庁並び労働省通産省に若干の御質問をしたいと存じます。  御承知のとおり、松尾鉱山は大正四年に開業して昭和三十三年に閉鎖、土呂久は明治の末から昭和三十七年まで同じ亜砒酸製造過程があったわけでございますが、特にこの地域において、すでに閉山しましてから十数年たちました後に、当時高千穂町の田舎の小学校の教師が、去る四十六年十一月、自分のところに学んでいる子供たち健康状態というのが非常に異常な体質である、こういうことでいろいろと調査した結果が、主としてこの土呂久鉱山周辺の子弟にそのような特殊な身体状況ということが把握をされ、この一教師の熱心な追跡と告発が今日の土呂久松尾鉱山が及ぼした重大な被害に対するところの暴露となって今日の事態を迎えているわけであります。そういう点等から、社会党といたしましても、その重要性はかねてから指摘をしておったわけでございますが、いずれにいたしましても、遅まきながら、やはり現地調査し、現地被害住民の声を直接聞くべきであるということで、去る四月十六、十七日に松尾の方を主として調査したわけであります。これによって、地域関係者から、いわゆる亜砒酸製造中心とした鉱山であった松尾のいわゆる鉱害問題としての提起がなされてまいったわけであります。  昭和四十七年に労働省の一斉検診によって十一名の認定患者が発見され、その後、岡山大学医学部北久医師団協力による総合的検診救済措置の道が開き、個別の申請で二十三名と倍増し、うち四名死亡、さらに認定相当患者が多数いるということで労働省の一斉検診が五年ぶりに実施をされ、新たに四名の認定患者が掘り起こされましたものの、診断サービス検診など問題が残されております。  こうして労働省検診実施され、認定患者が発見されても、昭和二十二年以前の労働者には労災法の適用はなく、しかも認定基準皮膚、鼻だけの症状に限定されている現状では、何ら救済措置実施されていない実情であります。さらに、被害実態は、労働者のみならず鉱山周辺家族住民にまで辺んでおります。〇・一グラムが致死量という猛毒の亜砒酸を精製した窯からわずか百メートルの位置には社宅があり、猛煙を浴び、鉱毒水を飲んでいたわけでありまして、公害健康被害補償法では、まず地域指定が必要であります。家族周辺住民を含めた総合的な検診、総合的、体系的な環境調査を国政のレベルで実施をさせ、地域指定に向けて早急にその結論に向け努力すべきである、以上のような強い要望に私たちは接しているわけでございますが、まず労働省関係として、この認定に関する措置についてどういうふうな対策を今後講ぜられるか、直接この鉱山に従事してきた者はもとよりでありますが、この家族もかなりアルバイト的な立場から常時この製造工場にも立ち入りをしている関係からも、当然この影響を受けることは常識論的にもはっきり指摘できるわけでございますが、まず第一点、この点についての労働省側見解を承りたいと存じます。
  4. 原敏治

    原説明員 お答えいたします。  先般行いました旧松尾鉱山労働者健康診断労災診断サービスを使った形で行いました健康診断結果につきましては、先生いま御指摘のとおりでございまして、新しく砒素中毒関係すると認められるものが若干ながら見えております。これらの方々につきましては、業務との関連因果関係がございます関係から、実際の行政指導をさらに尽くしまして、労災補償等請求を出していただけますならば、補償を速やかに行う、こういう形で臨んでいきたいと考えております。
  5. 兒玉末男

    兒玉委員 労働省にお伺いするわけですが、現在、松尾鉱山の場合は、閉鎖された関係で、そこの地域では生活の基盤が立たない関係上、ほとんどもう大半が各地域に分散をしているわけであります。そうしますと、当時の従業員把握が一〇〇%できないという状況にあるわけでございますが、これは当然、当時の所有者であった日本鉱業等が総力を挙げて、その従業員の掘り起こしなり状況把握協力をする義務があるのじゃないか、同時にまた、労働省としてもその点についてはひとつ格段の御尽力をいただきたいと思うわけでございますが、その点について、再度見解を承りたいと思います。
  6. 原敏治

    原説明員 御指摘の元労働者の探索を正確に行って、的確な把握を行い、あるいは補償等援護措置をしろという御指摘でございます。私どもも従来、四十七年のときから、申し出のございました方々中心検診を行いましたときにも呼びかけをいたしておりましたし、今回の診断サービスの際におきましても、お申し出がありました方々中心ではございましたが、こういう制度でやるということが相当広くPRされておったように思っておりますが、なお御指摘点等につきまして、古いことでございますので、どこまで資料等が残っておるかはっきりいたしませんが、この点についてさらに検討を加えさせていただきたいと思います。
  7. 兒玉末男

    兒玉委員 再度労働省にお伺いしますけれども、この前の労働省と党の関係者との話し合いの席では、たとえばパートで働くとか、あるいは直接仕事はしないけれども補償をもらわない形で、おやじの加勢をするという形で、ともに工場の近くの住宅におりながら相当量被害をこうむっている家族もいるわけです。その辺の関連労働省としてはどういうふうに理解をされているのか、お伺いしたいと思います。
  8. 原敏治

    原説明員 私ども労働省として所管しております関係は、労働者補償という面に従来から範囲が限られておりますので、従来の検診等につきましても、元労働者中心にして実施しておった次第でございます。家族等の人々におきますところ健康被害という件になりますと、これは公害一般の問題だと私ども理解をいたしておるところでございますので、関係の機関と連絡をとるようにいたしたいと思っております。
  9. 兒玉末男

    兒玉委員 それから、先ほど冒頭に、地元の代表者からの陳情内容を若干読み上げたわけでございますが、その中で、この認定する際の基準皮膚と鼻だけの症状に限定されている、ところが全体的にはやはり砒素関係の、これは土呂久の場合でも亜砒酸製造する過程における排煙によって、吐き出す煙によって相当気管支系統患者が多いということが実際に証明されているわけでございますが、この認定基準というものは余りにも限定され過ぎているのではないか。これから生ずるところの多面的な傷病というものを十分検討するならば、やはり基準の拡大ということが当然私は必要ではないかというふうに考えるわけでございますが、これは補償との関連もありますが、課長、どういうふうにお考えになるか、お伺いしたいと思います。
  10. 原敏治

    原説明員 砒素中毒等職業性疾病判断基準につきましては、従来から私ども専門先生方に、医学的な知見と経験を持たれている先生方にお集まりいただいて専門的に御検討いただき、その結論に従って公正に認定をしていく、こういう立場をとってきております。砒素中毒等につきましてもさらに新しい文献等も見られておるようでございますが、職業性疾病全体につきましても、医学的な進歩とそれからあるいは産業技術変化等によりますところ有害性の増大などで新しい職業性疾病の領域がどんどん出てきておりますので、そういうものにつきまして新しい文献研究結果によって見直し検討をやっております。先般も実は、労働基準法施行規則の三十五条というところ職業性疾病範囲を定めておりますが、これの抜本的な改定を行った次第でございまして、今後ともその面につきましては、いろいろな研究結果等に基づきましてこれを収集し、国内はもちろん国外につきましても研究結果を収集しまして、適正な範囲設定等に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  11. 兒玉末男

    兒玉委員 あともう一点、労働省にお伺いしたいわけですけれども、御承知のように、年齢的にもすでに六十から七十という年代の人が多いわけでありまして、四十代、五十代の場合、多少体力的に抵抗があったとしましても、この砒素中毒関連する、いわゆる気管支系統から波及する体力の低下ということは、今日さまざまな形で、当時この鉱山に働いておった患者実態を見ますと、深刻な状況にあります。たとえば目が見えないあるいは耳が聞こえない、そういうようなところまで波及しておる点があるわけでございますが、先ほどの御答弁で、そういう認定基準見直しをしながら、その適応性が的確であるようにしたいという御答弁でございましたが、そういうふうにとって差し支えございませんか。
  12. 原敏治

    原説明員 砒素中毒の、特に松尾鉱山の元労働者にかかわりますところ砒素中毒検診結果の評価につきましても、実は先般、従来はございませんでした続発性気管支炎等につきまして慢性砒素中毒との関連があるということで、これを砒素中毒関係として認めていく方向の通知を御本人たちにしております。今後ともこういう点の検討はしてまいる予定にしておりますが、この松尾鉱山の場合の被災関係につきましては、事実の関係が、もと被曝をして被曝相当期間経過をしたものでございますので、この関係がやはり認定上大変むずかしい問題になってこようかと思います。  なお、私ども検討を続けさしていただきたいと思いますが、将来の問題になろうかと思います。
  13. 兒玉末男

    兒玉委員 労働省関係でもう一点お伺いして、あと水田議員関連するそうでございますが……。  健康診断あるいはこのような特殊な条件にある患者診断の場合、患者さんたちが自主的にたとえば岡山大学なりあるいは九大と自主検診をした場合と、労働省の行う総合的な検診との間に意見の食い違いが、あるいは診断によるところの違いがあることがあると思うのです。そういう場合については、やはり総合的に突き合わして、そして正しい結論が出るようにすべきだと思うのですが、その辺の見解についてはどうお考えですか。
  14. 原敏治

    原説明員 御指摘の、いろいろ自主検診をした結果と私ども国が行いました診断サービスの結果との間でそごがないように留意すべきではないかという点でございますが、私ども、今回の診断サービスの結果によりますところ評価につきましても、実はその辺については十分注意をし、留意をしたつもりでございます。検査のいろいろなデータを見るのとともに、受診者から自主的に提出されました岡山大あるいは北九州の専門医によりますところ健康診断記録等も、専門委員会評価をする際に参考資料としてこれを取り上げまして、経験の深い専門家に慎重に検討していただいてやっておりますが、今後ともこういう態度は続けてまいりたいと思っております。
  15. 久保等

    久保委員長 関連質疑申し出がありますので、これを許します。水田稔君。
  16. 水田稔

    水田委員 認定されましても、法施行以前の患者というのはなかなか救われないわけなんです。その点が現状としてどういう措置がとられておるか、まずお伺いしたいと思うのです。
  17. 原敏治

    原説明員 労働者災害補償につきましては、現在のところ労災保険ですべて補償される形になっておりますが、労災保険施行前の元労働者被災につきましては、労災保険法が制定されるときに、以前の健康保険で扱っておったわけでございますが、健康保険のその扱いを引き継がないことに法律上なっておりまして、労災保険制度では、施行前の補償については一切見られないシステムになっておるわけです。しかし、それでは元被災労働者等援護に十分ではない面がございますので、特別の措置として、労災保険付帯サービスの一環として、医療費と療養の雑費支給内容としますところの特別の援護措置を講じておるところでございます。これは原子爆弾被爆者に対する特別援護措置などのものと横並びにして措置をしておるところでございます。
  18. 水田稔

    水田委員 こういう問題はここだけの問題じゃなくて、昨年、私どもベンジジン被害等についても同じような、何とか救済しなければならぬと思いながらできないいまの法律体系というものに行き当たったわけでありますが、最近のいわゆる薬害による損害賠償請求というのは、薬会社と国とがそれぞれ責任を負う。大体昭和三十年ぐらいまでの状況を見ますと、本来、ああいう条件の中で労働者を働かせれば当然病気になる、死ぬということはわかり切っておってずっとほったらかされてきたわけですね。そういう点では国にも全く責任がないとは言えないと私は思うのです。そういう症状になった人たちの働く環境というものは、今日考えればむちゃだったと思われるような条件の中で働いておるわけですから、それを十分監督してなかった国の責任ということもあるわけでありますから確かに法律のたてりから言えば、健康保険に入っておった者はそれだけで、それが終わればこっちは引き継がないということになっておる。そのために全く救済されないで、雑費としてわずかな金が出されるにすぎないわけですから、これは何も砒素患者だけではなくて、ベンジジンもあれば、クロムもあるし、いろいろたくさんのあれが、戦前からそういう職場で働いた人たちというのはたくさんおるわけですから、別途何らかの救済方法というのを考えるべきではないか。そういう点を検討されるお考え労働省におありかどうか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  19. 原敏治

    原説明員 御指摘の点は大変ごもっともなところでございまして、労災保険が現在適用されないからといって一切の援護がないということは問題であろうかと思っております。そんなような観点から、実は先ほど申しましたような形で、四十七年の松尾のもとの検診の際に問題が出てまいりまして、それ以降、特別援護措置という制度を、特別に労災保険の本来のシステムではないものを取り入れてきたところでございます。これにつきましては、もちろん元労働者関係だけではなくて、先ほども申しましたが、原子爆弾被爆者に対する特別援護措置あるいは公害健康被害補償問題等とも関連がないわけではございません。ある意味で横並びでこれをしなければならないかと思っております。このような特別措置も、実は給付額が四十九年当時はまだ少ない金額でございまして、入院者については一万八千円程度でございましたが、漸次改定をいたしまして、五十二年八月からは二万八千円という金額改定をしております。今後とも他の関連制度引き上げ状況も考慮しながらこれらの改善に努力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  20. 兒玉末男

    兒玉委員 きょう通産省はお見えになっていますね。先般、松尾鉱山の跡を見に行ったわけでございますが、現在は窯の上に土をかぶせて、それからまた、坑の入り口は一応形式的といいますか石を積んで出入りはできないようにしてあるわけでございますけれども、一たん雨が降りますとこれは何の役にも立たないわけでありまして、廃坑の中から出てくる廃水には必ず相当量危険物質が入っていることが十分予想されるわけでございますが、通産省としては、この問題が提起されましてから現地を見られたことがあるのかどうか、いかがでございますか。
  21. 左近友三郎

    左近政府委員 この松尾鉱山につきましては、四十六年に問題が起こり訴訟が提起されました。これは常時鉱山監督局検査に回っておるわけでございますが、それ以降も大体十数回検査に参りまして、鉱津堆積場あるいは廃水というものの検査をいたしました。そして、その結果で鉱害防止工事を指示いたしまして、所要の工事をさせたわけでございます。しかしながら、この検査結果では一応現在問題ないことになっておりますけれども、今後もよく現地検査いたしまして、また県当局とも相談をしながら、水の問題あるいは鉱津堆積場安全確保等につきましては今後も十分検査をして、万全を期していきたいというふうに考えております。
  22. 兒玉末男

    兒玉委員 環境庁にお伺いしますが、今回参りましても、認定患者の問題、あるいは症状に対するところ医療給付の問題、さらには現地地域指定問題等多くの要求が出されているわけでございます。各省それぞれ独自の調査でなくして、実際被害をこうむっている被害者の会というのもございます。でありますから、通産省、あるいは環境庁、あるいは労働省、こういうそれぞれの関係者が同じ時点でひとつぜひ共同で立ち会いあるいは現地調査、そういうものをすることによって、被害者皆さん方十分納得のできるような話し合いなり、あるいは要求に対する理解が深まるものと思うのでございます。このような合同的な調査をこの際、私はやはり行うべきじゃないかというふうに考えるわけでございますが、環境庁なり通産省見解を承りたいと存じます。
  23. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 宮崎県の松尾鉱山周辺地域の問題につきましては、先生先ほど調査のお話で、御承知のように、五十年に県が環境調査あるいは疫学調査というようなことをいたしております。また、その後自主検診グループ調査等もございまして、この松尾周辺住民につきましての健康調査につきましては、五十年二月から宮崎県がいたしているわけでございますが、私どもその結果をまだちょうだいしておりません。先般も県の責任者が参りましたので私ども催促をしたところでございますが、いま少し待つようにということでございまして、私ども、この調査の結果を見た上で次のステップを考えたいと思っております。その必要がございますならば関係の総合的な調査というようなこともあろうかと思いますが、いまのところ、県のいまやっておられます調査の結果を待って判断したいと思っておりますので、いましばらく後にその点の判断をさせていただきたい、かように思っているわけでございます。
  24. 兒玉末男

    兒玉委員 党としましてもこの問題を非常に重視しているわけでありまして、たとえば土呂久の場合、打ち切り補償金額の決め方でもかなり新聞等でもたたかれましたように、密室の中で半ば強制的に打ち切り補償が決められておるということも報道されているわけでありまして、いま部長の言われたように、県の調査結果を待ってということはわからぬでもございませんが、事は県だけにそれを任せるような問題ではないわけであります。先般、私がこの委員会で取り上げました大隅開発に関するアセスメントでも、鹿児島県側の行った調査環境庁は一切認めない、こういうふうに長官が極言されているわけでありまして、私は、少なくともこういうふうな問題についてはやはり環境庁なりあるいは所管である通産省なりが現地に直接行かれて、そして実態把握をすることが、県の調査を待ってすることよりもやはり実際の場面に適応するところの対応ができるのではないか、こういうふうに理解するわけですが、そのような見解についてはいかがでございますか。これは通産省にもひとつ御答弁をお願いいたします。
  25. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 先生指摘のように、国が乗り出して調査をするという考え方もあるわけでございます。ただ、私ども環境庁は小さい世帯でございますので、なかなかすべてを私どもがやるというわけにいきませんので、一つ方法といたしましては、専門家に委託するチームをつくりまして、その技術指導によって、県の職員によって調査をしていただく、こういう形が考えられるわけでございます。そういった場合にも環境庁といたしましてはその技術的あるいは知識的な指導の面に当たっていく、こういう方式をとろうというのがあるわけでございますが、現在、宮崎県の方で自主的に調査を進めておられますので、私どもといたしましては一応その結果を待ちまして、さらにもっと広範な調査を必要というぐあいに考えましたならば、いま申しましたような方式で、県にも国の力を添えて調査を進めていくという方法があろうかと思いますが、いましばらくその判断を待たしていただきたい、かように思うわけでございます。
  26. 左近友三郎

    左近政府委員 通産省といたしましては、先ほど御説明いたしました鉱山保安監督局現地検査の際におきましても県とよく連絡をとってやっておりますし、また共同調査というような形でやったこともございます。やはり一つ問題点を解明するに当たっては、関係官庁とよく連絡をとりながらやることが必要だとわれわれも考えております。したがいまして、現在、県が調査をやっておられますが、その推移も見ながら、必要があればわれわれとしては、県あるいは環境庁その他関係官庁とよく連絡をしながら調査を進めてまいりたいというふうに考えております。
  27. 兒玉末男

    兒玉委員 環境庁にお伺いしますけれども、現在、環境庁で、答申中の慢性砒素中毒認定基準見直し検討委員会にこの問題の経過を報告しながら、全身症状として認定基準というものを、私は先ほど労働省にも聞いたわけですが、拡大する意思はないかどうか、認定基準の点について環境庁見解を承りたいと思います。
  28. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 現在私ども砒素の汚染に係る指定地域についての患者認定に当たりましては、昭和四十九年の五月十五日付の公害保健課長通知におきまして当時の専門家の知識を得ました認定に必要な要件というのによっておるわけでございます。これに関しまして、私ども、いろいろな医学につきましても診断技術等の進歩というのが年々あるわけでございまして、そういう意味では専門家先生方の御意見を聞きまして、ときにはこれの見直しをするということも考えられるわけでございます。現在、−専門家の意見を聞いて検討してまいりたい、かように考えておるわけでございます。特にまだ専門家の集まりを持っておりませんけれども、個々の砒素中毒に関する専門家先生方の意見を若干聴取してみたところでは、特に要件を変える必要はないんじゃないかという意見を二、三の先生方からいただいているわけでございますが、現在、先ほども申しましたよりに、宮崎県が松尾につきましては検診実施しておりますので、このまとまりを見ながらさらに検討したい、かように考えておるわけでございます。
  29. 兒玉末男

    兒玉委員 松尾土呂久というのは全く同じ条件であるわけでございますが、たとえば認定要件はチェックポイントにすぎないという見解ですが、宮崎県は認定要件に裁量の余地はない、認定審査会もこれに拘束されるといったような解釈で、現地被害者の会とも激しいやりとりをしているわけでございます。その審査会の構成ですね、機能といいますか、これはやはり相当客観的に、また多面的にそして医学的な権威が各方面から理解されるような構成でなければいけないと私は思うのですが、この審査会の構成は一体どういうふうな形で選考されているのか、お伺いしたいと思います。
  30. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 土呂久のいわゆる指定地域におきます患者認定につきましては、知事のもとに十名以内の医学者をもって構成する審査委員会をつくって、そこの答申によって知事が判断する、かようにしているわけでございまして、これには当然のことながら砒素の中毒の認定に必要ないわゆる皮膚科的な所見あるいは耳鼻科的な所見、さらには内科的な所見、こういったもののわかる専門の先生方をもって構成していただいているわけでございます。
  31. 兒玉末男

    兒玉委員 これに関連しまして、現在、松尾の場合は、もう経過が長い関係と、この地域では生活ができない、こういうことで、それぞれもとの従業員が各地域に分散して生活を営んでいるわけですが、やはり地域指定という問題がなければ実際の補償ができない、こういう点等からも、松尾地区の指定は当然なされてしかるべきじゃないかというように私は思うわけですが、これに対する環境庁の御見解を承りたいと思います。
  32. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 松尾鉱山につきまして、いままで宮崎県が行いました鉱山周辺地域住民健康調査によってみますと、いわゆる砒素の影響による健康被害というのは発生していないと考えております。したがって、現時点におきましては、旧松尾鉱山周辺地域補償法による地域指定とする考えを持っておらないわけでございますが、先ほどからも申しておりますように、自主検診グループの問題提起、さらにそれを受けました宮崎県がこの二月から実施しております健康調査がございますので、こういったものを見ながら、さらに検討してみたい、かように思っておるわけでございます。
  33. 兒玉末男

    兒玉委員 県が調査をしたこの松尾鉱山の塊所という名称、地域ですが、自分たちがこの前行って聞いたら、鉱山閉山後相当年数たって移ってきたのが九九%でございまして、恐らく直接的な砒素関係被害を受けるような客観的情勢がなくなった後に住みついた方が大半でございます。ですから、五十一年の県の調査というのは、そういうようなことで、ほとんど直接、間接的にその被害を受けるような環境が解消された後で住みついた人を対象にした健康調査でないか、こういうふうに思っています。ですから、われわれとしては、その被害が発生しあるいは発生する状況下にあったときの住民調査をすることが正確な結果をもたらすのではないか、こういうふうに理解するわけですが、環境庁としてはどういうふうに判断されますか。
  34. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 何分にも松尾鉱山が活動しておりましたのはかなり古いことでございますので、その古い時点にさかのぼった様子を調べるというのは大変むずかしい点があろうかと思います。ただ、当時健康の影響を受けたであろう人というものをたどりましてイその人がその地域以外のところに住んでおりましても、でき得べくんばそういう人をたどって、現時点におきまして過去の影響をうかがわせる何らかの症状なり障害が残っているかどうか、こういうものを目安に調べるしか実は手だてがないわけでございまして、そういう意味では調査方法等につきまして、そういった点を入念にしてやっていかなければならない、かように思うわけでございます。
  35. 兒玉末男

    兒玉委員 それでは、いまの部長の話では、いわゆる指定地域については非常に困難である、こういうふうな理解でよろしいのですか、どうですか。
  36. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 私ども、五十年の調査資料から見た限りにおきましては、現在、指定の要件は該当してない、ただ幸いなことに、この五十三年の二月から県がつけ加えた調査をしておりますので、これをぜひながめて、それから判断してみたい、かように思っておるわけでございます。
  37. 兒玉末男

    兒玉委員 われわれとしては、ぜひひとつこの地域指定をしてもちいたいということで、さらにまた、今後いろいろ発生するところ状況等を情報等を収集しながら積極的な運動を展開してまいりますので、その点十分御理解をいただきたいと思うわけであります。  次に、先ほど通産省の方もいろんな検査をしておるということでしたが、この塊所の下を流れている川に、以前はかなりたくさんのコイなりフナ等が生息をしておった、現在ではほとんど姿が見えないということは、やはり雨が降った場合、あるいは現在でも沢を水が流れておりますが、この中に依然としてかなりの魚介類が住まないような鉱山からの毒素が入っているのではないかというふうに理解するわけですが、現在どういうふうな状況で水質の検査がなされているのか、この点ひとつ、環境庁並び通産省側の見解を承りたい。
  38. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水質の方の検査関係でございますが、これにつきましては、公共用水域の水質は水質汚濁防止法によりまして県が常時監視するという責任かあるわけでございまして、そういう観点から、県において公共用水域の水質の測定というものをやっております。毎年やっておりますが、一番最近のデータといたしましては、五十一年の数値か一番新しいわけでございます。  そこで、旧松尾鉱山関係の方につきましては、その結果によりますれば、砒素を初めといたしましてカドミウム等、いわゆる健康項目というものがございますが、これにつきましては環境基準に不適合というような検体はない、こういうふうに県から報告を受けております。
  39. 兒玉末男

    兒玉委員 それはいつですか。
  40. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 これは五十一年度の調査でございます。
  41. 兒玉末男

    兒玉委員 それは五十二年度、五十三年度も実施する予定でございますか、どうですか。
  42. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 冒頭申し上げましたように、水濁法に基づいて常時監視の責任がございますので、今後とも毎年毎年県が継続して測定をする、こういうことになっております。
  43. 兒玉末男

    兒玉委員 測定の仕方も、先ほど申し上げたわけですが、いろんな機関があると思うのですが、その水質汚濁の状況を測定する機関は全部県に任せてあるのか、あるいは環境庁が特定のグループ等を指定してやるのか、その辺の調査機能というのはどうなっているか、伺いたい。
  44. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 県の方で測定の義務があるということに法制上なっておりますので、県がやるということになりますが、ただその際に、県の方が直轄的に公害防止センターというような機関をつくって県自体の研究機関でやる場合と、それからまた、よその機関に委託をしてやるという場合とございます。いずれにしても県の責任において調査をやっておる、こういうことでございます。
  45. 兒玉末男

    兒玉委員 休廃止鉱山跡の汚水というのは大変問題が出まして、先般、静岡県の狩野川でも、通産省は絶対大丈夫だと言っておったけれども、シアンといいますか、この排出によって莫大な河川への被害が起きておりますね。そういう点等から考えても、やはり全国的な休廃止鉱山のこのような廃水処理あるいは廃水を未然に防止するような防止対策、こういうものが積極的に行われてしかるべきだ。聞くところでは、大体七千個所ぐらい、このような休廃止鉱の跡かあると聞いておりますが、その辺は通産省なりあるいは環境庁としてはどういうふうな対策を現在とっておられるのか、この際、重ねてお伺いしたいと思います。
  46. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 水質保全という観点からお答え申し上げますが、全国の公共用水域につきましては、ただいまお話ございます旧松尾鉱山のみならず全国的に公共用水域の水質測定をやっておるわけでございます。したがいまして、これ以外にもたくさんの休廃止鉱山があるわけでございますが、その辺の近くの公共用水域という面につきましては、やはり測定計画に基づきまして、これは県が立てますが、計画に基づきまして県の方で年々測定をやっておる、その体制は今後とも継続をする、こういうことになっておるわけでございます。
  47. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のとおり、休廃止鉱山鉱害防止ということは緊急に実施しなければいけないことでございまして、通産省といたしましても、昭和四十八年度以降、金属鉱業等鉱害対策特別措置法というものに基づきまして、鉱業権者のあるところは鉱業権者において措置をする、それから、鉱業権者の存在しないところあるいは無資力であるということで鉱業権者がやれないというところにつきましては、実は昭和四十六年から補助金制度を設けまして、地方公共団体が鉱害防止工事実施しまして、それの四分の三を国庫補助するということで現在工事実施しておりますが、当初は五十二年度までで完了するという予定でございましたが、調査の結果、まだまだ処置をするべきものがあるということになりまして、五十七年度まで、大体五十三年から五十七年まで工事額として百七十五億というのを予定しておりますが、鉱害防止工事実施するということを現在進行中でございます。
  48. 兒玉末男

    兒玉委員 再度鉱山関係に返るわけでございますが、現在の公害健康被害補償法では十分に補償ができない。特に松尾の場合でも土呂久の場合でもたくさんの問題がございますし、やはり老齢化する被害者救済のためには、これは国の責任において当然補償されてしかるべきだ。しかも公害健康被害補償法では非常に補償の対象が限定されている。とするならば、やはり別途な立法措置をとって十分な補償措置ができる道をこの際考えるべきではないかと思うのですが、環境庁長官としてはどういう御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  49. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 仕組みの点につきまして、ちょっと詳細の点を私、御説明させていただきます。  健康被害補償法は、御承知のように、人の活動及び事業活動によって起こる健康被害を公正かつ迅速に救済するという趣旨でございまして、事業場の中におきますいわゆる従業員補償の問題は、これは労働省が所管しておりますが、事業場の外にその影響が出た場合に、明らかにその原因者の原因物質による被害が起こっているということが明らかな場合におきましては、その地域を指定いたしまして、それによる被害者についての認定を行い、その被害者についての法に定められた補償給付をする、こういう仕組みになっておるわけでございます。  土呂久の場合におきましては、御承知のように地域を指定いたしまして、その地域の汚染にかかわる被害者である場合には、その地域以外のところの人でありましてもその地域にかかわる被害を受けたということになれば、これは補償の対象にしておるわけでございますが、松尾の場合におきましては、現在松尾鉱山周辺地域住民の中に果たして被害者があるかどうかという点につきましての調査がまだ終わっておりません。五十年の時点の調査におきましては被害者がない、こうなっておるわけでございますが、現在県がやっている調査がございますので、これを見て考えていく、こういう趣旨でございまして、この法律によりまして、工場外におきます被害者におきまして現時点においてその被害があるということが認められますならば、この法律の適用によって補償給付がなされる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  50. 兒玉末男

    兒玉委員 私か指摘をしたいのは、たとえば休廃止鉱山周辺でかつて鉱山被害のあった集落は、閉山後消滅した場合があるわけですね、人かいないから。結局その場合は離散した被害者は全国に散っているが、補償法では現存する集落しか地域指定を受けることができないわけですね。そうすると離散した被害者補償法の適用を受けられないという場合がありますし、現実にまた、具体的になかなか把握が困難だという点等の問題。  それから、現在の生存者の疾病は鉱害の氷山の一角にすぎず、過去の埋もれた被害が大部分である休廃止鉱山にとっては、疾病が多発しているという現在進行形の公害を対象とする補償法では、死者を含む過去の被害は全く償われない、こういうことが指摘をされております。  さらに、補償法は人の健康被害に対する補償を対象とするが、鉱害にあっては、人の健康被害にとどまらず、農畜産物などの被害及び環境破壊を無視することができない。  この三点からも、やはり現行法の根本的な改善あるいは新たな休廃止鉱山鉱害に対する賠償法等の制定ということを考える、この理由が、いま申し上げた点からも指摘をされるわけでございますが、部長はどういうふうにこれを御理解していますか、お伺いしたいと思います。
  51. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 一つ宮崎県におきましては土呂久鉱山の事例をとりますと、土呂久鉱山の場合、地域指定をしておりまして、その地域指定外に現時点において住んでいる方におきましても、かつて土呂久指定地域内の影響にかかわる被害者につきましては、現在、補償の対象といたしております。  先生のお尋ねの点は、こういった健康被害以外の財産被害その他の点につきましての補償の問題でございますが、これは、現時点におきまして私どもの方でちょっとお答えできないわけでございます。
  52. 兒玉末男

    兒玉委員 さらに、とするならば、こういうふうな人間以外のそういう被害に対しても、やはりこの際、総合的な立法措置で原状回復なりあるいは補償措置ができるように、特に環境庁としても他の関係官庁と十分連絡をとりながら検討すべきだと思うわけであります。これに対する見解を後で環境庁長官からお伺いしたいと思います。  さらにまた、土呂久鉱山の場合には、最終鉱業権者である住友金属鉱山は「特定施設等」を設置していないために、補償法第六十二条に定める「特定賦課金」を納付していない。鉱業法百九条は明確に住友金属鉱山に対して鉱害賠償責任ありとしているが、補償法では特定賦課金の納付義務が免除されており、不条理であるという言い分ですね。  さらに、鉱毒による被害は重金属等の複合汚染であり、症状が全身に及ぶのは医学の常識でもある。にもかかわらず、土呂久の場合は特異疾患とされたため、慢性砒素中毒症の三つの症状しか認定要件になっていない。  現行の補償費は労働者の平均賃金の八〇%に据え置かれ、さらにその障害の程度によっては、特級、一級基礎月額一〇〇%、二級五〇%、三級三〇%とランクされ、不当な差別となっている。  さらにまた、補償法十四条は「他の法律による給付等との調整」との名目で、補償法に基づく補償給付と生活保護法などの生活扶助との両立を認めず、前者の受給と同時に後者の保護を打ち切るが、これは鉱害実態を無視したものではないかというふうな意見があるわけですが、いま申し上げた三点についてはどういうふうな見解をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  53. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 御承知のように、現在の補償法におきまして第二種地域につきましては原因者がはっきりいたしておりますので、原因者から賦課金を取る、こういう形になっておるわけでございまして、この土呂久の場合につきましても、鉱業権者が転々と変わっているというようなことから納付義務者を把握することが実は困難な状況でございまして、現在これらの地区におきます鉱業権の推移等につきましての調査を行っているわけでございますが、一応、補償給付等に要する経費につきましては、当面の措置ということで、公害健康被害補償協会の資金の運用ということで賄っておるところでございます。  なお、お尋ねの生活保護との併給の関係につきましては、生活保護法には、他法が優先するということが明定されているわけでございますので、他法による給付を受けますとその分が生活保護等の給付の中から引かれるというような形になるわけでございまして、その辺は他法との関係でございますので、私どもはっきりとお答えできない点でございます。  以上でございます。
  54. 兒玉末男

    兒玉委員 今度は長官にひとつ御答弁を求めます。  いま部長のお話では、他省との関係もあって十分な答弁できないということでございますが、少なくとも今日のこのような休廃止鉱山というのが六千以上と言われておりまして、当然、今後またこれに関連する問題が発生することは十分に予測されます。そうした点から、現在の補償法の欠陥を是正して、休廃止鉱山鉱害の特質に適用するためには、やはり現行法の部分的な修正では、いま部長さんが言われたように十分な補償がない、また他省との関係答弁ができないということでございますが、少なくとも環境庁としては、こういうふうな不合理、不備な点をひとつこの際、抜本的に改正をし、しかも賠償責任を明確にした上で、申し上げるように全国六千カ所以上の休廃止鉱山鉱害被害を十分補償させるような体制をとることは、特に環境庁中心に政府の当然の義務ではないか、こういうように考えるわけでございますが、これについて長官見解を承りたいと存じます。
  55. 山田久就

    ○山田国務大臣 健康被害補償法の本来の趣旨については、部長から先ほどお答えしたとおりでございまして、迅速に救済に当たろうというところから生まれたものでございます。  自余の財産問題も含めての問題につきましては、そういう点、全部をカバーしていない、足りないじゃないか、そこで別途の対策法律等を考える必要があるのじゃないかといういまの御指摘でございます。被害者立場に立っていろいろとお考えいただいていること、また、そういう点について御心配いただいていることは深く敬意を表するわけでございますけれども関係する省庁もございますので、この点については、ひとつよく検討させていただきたいと考える次第でございます。
  56. 兒玉末男

    兒玉委員 通産省にお伺いしますが、先ほども申し上げましたように、土呂久の場合は、その賦課金を納めていない、それで、いまではやむを得ないから国が何らかの運転資金の運用でやっておるということでございますが、やはり今後そのような責任関係を明確にする必要があるのじゃないか。そういう意味で、特に鉱害賠償法にあっては農畜産物等すべての被害の賠償及び環境破壊の原状回復が十分考えられるべきだと思うのですが、その点どうですか。  もう一つは、鉱賠法では離散した周辺住民のすべての被害が賠償される制度をこの際設けるべきである。  それから、さらに死者を含めた過去のすべての被害が賠償されるべきであると思うが、この三点について通産省はどう考えるか、お伺いしたいと思います。
  57. 左近友三郎

    左近政府委員 土呂久の問題につきましては、現在訴訟か係属中でございます。したがいまして、訴訟の結果も見なければならないということもございますが、とりあえず現在、責任関係を究明しておるということでございます。  それから、一般に鉱害対策ということにつきましては、一つは、今後鉱害が発生しないような鉱害防止工事実施させるという政策と、被害を受けられた方に対する賠償を確実に実施させるということとに分かれると思いますが、鉱害防止工事につきましては、先ほど申し上げましたように、鉱業権者があるものについては鉱業権者に実施をさせる、それが実施しやすいような体制を法律でつくっておるわけでございます。それから、鉱業権者が不存在あるいは負担能力がないというような場合には、国の補助制度で国が補助をして県が実施するという措置を講じておるわけでございます。  それから賠償の問題につきましては、鉱業法の無過失賠償責任ということがかかっておりまして、損害を発生させた鉱業権者、それを引き継いだ者ということで責任の分界は明らかになっております。  ただ、御指摘のとおり、被害を受けた方が長年月の後、各地に分散しておられるというようなときに、なかなかそういう直接の賠償を請求しにくいという問題は事実関係としてはあるわけでございます。したがいまして、現在の法制度では一応現在の問題を手当てをしておるようになっておりますけれども、現実の問題として御指摘の点もございますので、われわれといたしましては、この現実の問題を現在の法制度の運用でどのように解決したらいいかということをいま検討しておりますが、一応そういうことで財産被害についても現行の鉱業法の規定で処理をしていきたいと考えております。  ただ、現実問題としていろいろむずかしい点があろうかと思いますので、そういう点については、御指摘のような新しい法もわれわれとしても十分検討はしなければいけないと思っておりますが、現時点でそれについて具体的にどう持っていくかという新しい方法については、われわれとしては目下まだ検討を進めておる段階と申し上げざるを得ないということでございます。
  58. 兒玉末男

    兒玉委員 再度通産省にお伺いしますが、鉱賠法に定める健康被害に対する賠償給付は、この前の補償制度の際の国会決議でも指摘するように、慰謝料を含めて被害者の納得する額とすべきでありますが、これに対して通産省はどういうふうな見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。
  59. 左近友三郎

    左近政府委員 現在の運用といたしましては、公害健康被害補償法に定める給付をするということでございますが、被害者と鉱業権者の間で賠償について特別な定めがあればそれに従うということになっておりますので、それの運用で処置をしていきたいということでございます。
  60. 兒玉末男

    兒玉委員 公害健康被害補償法は、葬祭料の給付に当たっては、遺族補償費の場合と異なって認定審査会の意見を聞くことなく決定するように決めてあるわけでございますが、葬祭料はやはり早急に支払うのがたてまえではないかと思うのです。この運用について、環境庁としてはどういうふうに指導されておりますか。
  61. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 遺族補償費あるいは遺族補償一時金、葬祭料といったものにつきましては、被認定者が指定疾病に起因して死亡した場合に支給する、こういうぐあいになっておるわけでございます。死亡の原因が明らかに指定疾病であるというときには判断は比較的容易なわけでございますけれども、指定疾病以外の原因と競合していわゆる合併している場合には、指定疾病に起因した死亡かどうかといった判断が実は困難なわけでございます。そういった意味で、生前の主治医がある場合にはその主治医の意見を聞きましたり、あるいは補足的な資料を収集した上で判断を行う必要があるということから、ある程度時間がかかっているということでございます。  土呂久地区において、現在審査中のケースの人が一人おりまして、これが昨年の秋の申請でございますが、まだ判断が出ておりませんが、これは死亡後の解剖資料の取り扱いをめぐって県と遺族の間に若干の対立がございまして、そういった意味で処理がおくれているわけでございますが、私どもとしては、こういった問題はなるべく早く処理をするように地方に対しては指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
  62. 兒玉末男

    兒玉委員 最後に、長官に一点だけ御要望と意見を申し上げたいと存じます。  全国に休廃止鉱山の問題が非常に大きいわけでございますが、宮崎県の土呂久あるいは松尾の場合でも、恐らく昭和四十六年の一教師の熱心な追及による告発がなければこの事件はやみに葬られているところであったわけですが、幸い良識ある先生判断、正しい指摘のもとにこの補償救済が日の目を見たわけです。ですから、この国会が終わりましたら、東京から宮崎までは二時間もかかりませんので、一遍現地被害者の声を聞く機会をぜひ長官としてつくっていただいて、今後の新法制定の重要な参考とされるように、長官にひとつ格段の御尽力をいただきたい、このことを申し上げ、長官見解をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  63. 山田久就

    ○山田国務大臣 いろいろ大きな関心を持たれての御意見、承っておりました。いまの御要望、私も日程の都合を見まして、また現地の視察ということをひとつ検討してみたいと思います。
  64. 久保等

    久保委員長 次に、水田稔君。
  65. 水田稔

    水田委員 関連で二、三点質問したいと思います。  一つは、通産省の方に。松尾鉱山かいつ操業をやめて、そうしてその後処理をやった後、鉱山保安監督局現地を見て、これでよろしい、こう言ったのがいつでしょうか。
  66. 檜山博昭

    ○檜山説明員 お答えいたします。  まず、松尾鉱山がやめましたのは昭和四十六年でございます。それで、その後、監督部の方ではいろいろと現地調査をいたしております。そして、その結果は、先ほど局長の方からもお話がありましたように、水質関係堆積場関係調査をいたしまして、所要の工事を、松尾鉱山につきましては日本鉱業に対して指示をいたしましてやらせております。
  67. 水田稔

    水田委員 私ども現地へ参りまして聞きますと、四十七年段階では、これだけやればよろしいと指示をした、そういうことだったということを聞いておりますが、そういうことは言っておりませんですか。
  68. 檜山博昭

    ○檜山説明員 監督局の方の指示は、必要にして十分な鉱害防止のための指示をしております。その結果、改善も逐次図られておりまして、先ほど申しましたように、水質関係につきましても、たとえば四十九年に若干基準オーバーかございましたけれども、それに対して監督趣意書を交付して改善させ、それから、現在、特に五十二年二月の調査でございますけれども、カドミ、銅、鉛、亜鉛、砒素、PH、こういった点の調査をやっておりまして、すべて基準以下という結果になっております。
  69. 水田稔

    水田委員 私どもは、四十七年段階で、現地鉱山監督局がこういう形で指示したとおりやっているからよろしい、検査を通った、そういう説明を受けたのですが、そういうことは言っておりませんか。
  70. 檜山博昭

    ○檜山説明員 いまの御指摘の点につきましては、私の方は聞いておりませんけれども現地の方を確認いたしまして、後ほど先生の方にお答えいたしたいと思います。
  71. 水田稔

    水田委員 現地で聞きますと、四十七年には、もうこれでよろしいと監督局は言われた。ところが、実際には、窯跡の覆土植栽というのは五十一年からやられておるわけですね。ですから、閉山になった後、そういう指示等をやって検査する基準というのは一体どういうものか。  私は、伊豆の地震で持越鉱山も行って見ました。これは、年に二回鉱津を捨てる捨て場所というのは鉱山保安監督局検査を受けておる、合格しております。あの地震は、あそこだけが激震かと思って聞いてみますと、断層が通っているところは違いますから、それほど伊豆でひどいところではなかったのですが、一番最初の土手は岩盤に根が入っている。ところが、その上に積み重ねていったのは微粒子の鉱津、水分を大量に含んだものがその上に乗っかっておるだけのような状態ですから、揺すれば全部堤防からふっ飛ぶ。そういうことさえ監督局はその程度の基準でよろしいということであれば、これは全国至るところ大変危ない状態のところが多いと思うのです。あそこのはシアンを含んだ鉱津が狩野川へどっと流れたわけですね。ですから、この松尾へ行きまして私どもが聞いた範囲では、住民が文句を言わなければ、監督局は一体との程度の基準で——四十七年段階で、これでよくできます。よろしい、ところが、やかましくなって、五十一年に窯跡を覆土植栽をやっておる。私は、鉱山というのはいま大変不況ですから、本当は金をかけたくないと思うのですだけど、通産省の監督局の休廃止鉱山に対する、あるいは現に操業しておる鉱山に対する安全上の環境と、それから災害に対する安全の取り組みというのはきわめて悪いと私は思うのです。ですから、五十七年までにやりますと言ってやった跡が、地震でもあれば、そういう重金属を含んだものが飛び出してくる、そういう心配があると思うのです。そこらの基準はどういうぐあいにやっておるのか、その点を伺いたいと思います。
  72. 左近友三郎

    左近政府委員 この鉱害防止工事につきましては、常時、監督局の監督官が現地調査をいたしまして、それで現地に指示し、あるいは必要な場合においては監督局から書面による改善指示というのを出しておりますが、その基準につきましては、鉱山保安法に基づきます規則によって決められておる基準でやっておるわけでございます。  ただ、この工事につきましては、単に、ある時期に完成をしたからいいというものではございませんで、この維持管理を適切にしなければ問題が起こるということがございます。たとえば鉱津を捨てております打止堤なんかも、絶えず必要な水抜きの装置をつけまして、水をうまく抜いておらないと問題が起こるということがございます。したがいまして、ただ水抜き装置があるだけでいいとは言えませんので、絶えず、たとえば一年に一遍検査をいたしまして、その水抜き装置が完全に作動しているかどうかということを検査する必要もございます。そういうことでございますので、この松尾鉱山につきましても、ある時期にこういう措置をしなさいという命令をしたことは、それを守れば、もう、あと永久にそれでいいということをわれわれは言っているわけじゃございませんで、その後も、大体毎年監督官が行っております。したがいまして、その後不十分であれば、措置をまた追加するということは十分あり得るわけでございます。したがいまして、今後も、措置を命じましたところにつきましては、自後のトレースをいたしまして、その防止工事が完全に維持されていることをチェックするということは怠らないようにいたしたいというように考えております。
  73. 水田稔

    水田委員 それでは土呂久関係ですが、この指定地域というのはこの黒線で囲んだところでありますが、このすぐ下のところに小芹というところがあるのです。ここでは、いままでの調査で、農作物等に対する被害とか、あるいは普通の農地と違うような状態が起こっておるかどうか、お調べになっていますでしょうか。
  74. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 土呂久の土壌汚染の関係でございますけれども、この土呂久関係につきましては、実はさらに地区を二つに分けてございます。土呂久地区というのと東岸寺地区というふうに二つに分けてございますが、この実態等申し上げたいと思います。  まず一つは、東岸寺地区というのでございますが、この地区につきましては四十七年度に細密調査を行いました結果、カドミウムが基準以上に検出されたということがございます。約五十三ヘクタールにつきまして、農用地土壌汚染防止法に基づきまして、対策地域の指定、それから対策計画の策定というものを行いまして、五十一年度から三カ年計画ということで今年度まででございますが、一応そういうことで対策事業を実施しております。一応カドミウムということでやっておりますが、この事業をやりますことによりまして、砒素の方も同時に対策になる、こういうことに相なるわけでございます。それが東岸寺地区でございます。  それからもう一つ土呂久地区でございます。土呂区地域土呂久地区でございますけれども、これにつきましては、五十年度に砒素に係ります指定要件というものが設定をされたわけでございまして、それに伴いまして県の方で、五十年度及び五十二年度にわたりまして、砒素に係る細密調査実施をしております。その結果を見まして、対策地域の指定を検討したいということで、現在その調査結果の取りまとめ中、こういう段階でございます。
  75. 水田稔

    水田委員 私の聞かないことを答えていただいておりまして、私の聞いたことには全く答えてもらってないです。小芹というのはここなんです。この地域指定のすぐここ。ここの農作物等どういう状態ですかと聞いたんです。東岸寺というのはもっと離れたところで、私、全く聞いていません。時間がありませんから……。ここではシイタケや豆類も育たず、カキや柑橘類も実らぬというような状態がある。それから、落立というところがずっと下になります。ここでは常時飲用に使っておる水の中に砒素が〇・〇八あるいは〇・〇七三PPm、大体この範囲内の水を常時飲用水として飲んでおるわけですね。この指定地域、私もこの間ちょっと見まして、土呂久がここで、一センチが一キロとして、これが二キロで、上の方が五キロぐらいあるわけですね。ここらは人間がおらぬわけですが、指定されておる。この下はここから流れてくる、そういった汚染された水を飲んでおる住民がたくさん住んでおる、しかし指定されていないということなんですね。〇・〇八なり〇・〇七三PPmの砒素を常時飲んで、人体に影響が全くないとお考えかどうか、保健部長からひとつ答えていただきたいと思います。
  76. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 私、正確に判断する材料をちょっと持っておりませんので、正確に影響があるかどうかということについてのお答えをいまいたしかねますが、よく調べてみたいと思っております。
  77. 水田稔

    水田委員 水道水としては基準をオーバーしておることは認められるでしょう。水道水として基準をオーバーしておるということは、人体に影響があるからそんな水を飲ましちゃならぬということでしょう。ですから、風向きがどうか私知りませんけれども土呂久鉱山から一番人がたくさん住んでおり、しかももちろん大気の中へ出ていって被害を受けると同時に、水は上から下へ流れるわけです。絶対上へ流れぬわけです。下の方は指定地域から外して上だけ入れておるというところに、地域方々皆不満があります。何とか広げてもらいたい。そして、その地域から認定患者か出ておるという事実を考えれば、当然そういう点についての検討をすべきだと思うのです。ですから、私、いますぐどうするという答えはいただかぬでも結構ですが、こういう実態はよく調べてもらって検討するということをぜひやってもらいたいと思うのです。
  78. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 水道水の基準を超えている場合直ちに健康被害が起こるかどうかということにつきましては、これは水道法を所管している方からお答えいただかないと、私から申し上げますのは若干越えているかと思いますので控えさせていただきますが、現在の地域指定の、特に第二種地域の指定の考え方は、その汚染の主たる部分を指定いたしまして、そこにかかわる、要するに関係のある影響を受けたという場合には、指定地域外の方でありましても申請をいたしまして、その認定の段階でその指定地域に係る影響によるものだということがはっきりいたしました場合には認定をするわけでございまして、先生承知のように事実、土呂久の場合にも指定地域外からの認定があるわけでございます。したがいまして、私ども、いま直ちに地域指定範囲を拡大するという必要は特にない、こう考えておるわけでございます。  ただ、先生の御指摘地域につきましての実情につきましては、現地の方からの様子を十分聞いて判断の材料にさせていただきたい、かように思うわけでございます。
  79. 水田稔

    水田委員 いまの答弁を聞きますと、逆に指定地域外から認定患者が出ておるということは、その地域にも汚染があったと当然考えるべきなんです。ですから、調査をして検討していただきたいと思います。  時間がありませんので、あと一つだけ、松尾の方で。ここには日本鉱業が鉱業権を取得する以前のいわゆる砒素に暴露された人たち、それから日本鉱業の在籍者はほぼ全部これは調査がついておると思うのです。それから、先ほど兒玉委員から出ましたように、その地域へ住んでおられた方々、その点が全体が調査がまだ済んでおらぬようでありますが、こういう問題というのは、やはりそこの地域で問題が起こったとするならば、砒素による被曝を受けた人たちというのは、日本鉱業が鉱業権を取得する以前の鉱業権者によって作業をしておった人たち、そして日本鉱業で働いておった人たち、そしてその当時その地域へ住んで、影響を受けたと思われるであろう地域に住んでおった人たち、いま恐らくそこに全部おらぬと思うのですが、そういう人たちをまず把握して、その上でそういう人たちにどういう被害があったのかあるいはなかったのか、総合的な調査をした上で、一つは労災で救済するものはする、一つは、事実あれば、公害健康被害補償法による救済をする、そういうことになるだろうと私は思うのです。そういう基礎的な調査ができてないところに一番問題があると思うのです。そういう点では、どの程度の調査ができておるのか、私は、総合的な被害を受けたであろうと思われる人たち調査をすべきだ、こういうぐあいに思うのですが、いかがでしょうか。
  80. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 いま先生の御指摘指定地域外で出た患者さんというのが、飲料水によるものかあるいは指定地域内の鉱山活動の中でいわゆる砒素焼き窯の問題で起こったのか、この点につきまして、ちょっと私ども調査をいたしませんと定かでないわけでございますが、ひとつ地域指定の問題でこういった問題があるという提起でございますので、私どもよく調査をいたしまして考えてみたい、かように思うわけでございます。  それから、御指摘の、こういった場合に、基礎的なあるいは何と申しますか全体的なあるいは総合的な調査をした上で判断すべきではないか、これも御指摘の点、大変もっともでございます。私ども、こういった事例の調査に当たりましては、なるべくそういった方向で指導はしてまいりたい、かように思っているわけでございます。  なお一言、先ほど児玉先生の御質問にお答えした中で私、誤りをいたしましたので、この際、訂正をさせていただければありがたいと思います。  認定審査会の構成につきまして私、十名以内と申しましたが、新法におきましては十五名以内でございまして、医学の専門家をもって構成すると申し上げましたが、医学、法律学の専門家をもって構成する、かようになっておりますので、訂正させていただきたいと思います。
  81. 水田稔

    水田委員 終わります。
  82. 久保等

    久保委員長 この際、午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時休憩      ————◇—————     午後一時四分開議
  83. 久保等

    久保委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  公害対策並びに環境保全に関する件調査のため、本日、新東京国際空港公団副総裁町田直君及び同公団理事角坂仁忠君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 久保等

    久保委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  85. 久保等

    久保委員長 質疑を続行いたします。小川国彦君。
  86. 小川国彦

    小川(国)委員 成田空港が開港いたしましてすでに旬日を経るわけでございますが、この成田空港の騒音公害の問題が非常に重大な問題になってきまして、千葉県北部全体、茨城県にかけまして、この騒音公害の問題が、自治体あるいはまたその地域住民からその被害を非常に強く訴えられておる状況にあります。  お伺いしますと、きょう福田総理もこの成田空港に関連いたしまして、騒音公害の環境対策に万全を期するように、こういう御指示があったということを承っておりますけれども、運輸省、公団として開港後の騒音測定はどのようにやってこられたか。それから、これについては、成田市その他関係自治体がそれぞれ取り組んできておりますが、政府として騒音測定をどのように行ってきましたか。それから、それに応じてWECPNLへの換算を行っているかどうか、その点についてまずお伺いいたします。
  87. 上田浩

    上田(浩)説明員 成田空港につきましては、関係各位の絶大な御協力を得まして、御承知のとおり五月の二十日に開港いたしました。五月二十一日から実際に飛行機が着陸し、二十二日から離発着という形で成田空港は供用を開始されております。  したがいまして、私たちは成田空港の供用後、騒音問題につきましては、御存じのように、空港にとりましては航空機騒音という問題は非常に大きな問題でございますので、開港後、政府におきましても騒音問題というものにつきましては非常な関心を持っておったわけでございます。したがいまして、開港後の五月二十六日から一週間にわたりまして、公団に命じまして周辺各地点におきまして騒音の実際のテストをやらせております。その結果、六月一日に一応の騒音テストを終わったわけでございますが、また関係の成田市、芝山町におきましても独自にそれぞれのポイントで騒音テストを実施しているとわれわれは伺っております。  公団の実施いたしました騒音テストの結果につきましては、われわれは一応の報告を受けております。その結果によりますと、騒音の最大値、最低値は、昭和五十一年一月にわれわれが出しました区域指定の前提となりますいわゆる騒音コンターの予測値と今回の騒音値の最大値と最低値というのは、大体予測値の中に入っておる。したがいまして、WECPNLという形で区域指定の際の一つの前提になっております数値でございますが、その範囲内に一応おさまっているというように私たちは報告を受けております。しかしながら、関係町、市さらに千葉県におきましても近い将来、独自の騒音テストを行うというように報告を受けております。したがいまして、これら市、町あるいは県の実施いたしました騒音テストの数値もさらにこちらの方に出していただきまして、これら数値をお互いに照合しながら最終的に検討していきたいと存じておる次第でございます。
  88. 小川国彦

    小川(国)委員 いま航空局から御答弁をいただきましたが、そうしますと、公団の方としては、五月二十六日から六月一日までですか、一週間の測定結果に基づいて、これを環境基準のWECPNLに換算した数値を得ている、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  89. 町田直

    ○町田参考人 ただいま航空局の上田さんから御答弁いたしましたように、私どもは測定をいたしまして、その結果に基づいて現在WECPNLに換算する作業をいたしております。もうすぐでき上がるのではないかと思っておりますが、現在まだ最終的に換算の作業は終わっておりません。
  90. 小川国彦

    小川(国)委員 いま航空局の方では、昭和五十一年一月に作成した騒音コンターの中にはぼ入っておる、こういう上田さんからの答弁をいただいたわけですが、いま副総裁からのお話ですと、まだ作業中、そういうことですと、作業中の中でどういう結論が得られたのか、それではその作業は八、九分どおり終了しているのかどうか。そうでないといま航空局と副総裁の答弁が食い違っておりますけれども……。
  91. 上田浩

    上田(浩)説明員 私の答弁が少し寸足らずでございまして、誤解を招きましたことにつきましておわび申し上げます。  私の申し上げましたのは、公団からの中間的左報告によれば、大体平均等が一応出されておりますが、そういうものを前提にいたしますと大体おさまるのではないかという中間段階の感触的な報告でございます。したがいまして、ただいま町田副総裁が発言されましたように、最終的なWECPNLというものはどうなるかというのは作業中でございまして、その過程での一報告を前提にしまして私はお答えしたわけでございます。
  92. 小川国彦

    小川(国)委員 副総裁の方の作業は、いつごろ終了のめどになっていますか。
  93. 町田直

    ○町田参考人 今週中には完成する予定でございます。
  94. 小川国彦

    小川(国)委員 もうすでに自治体がこれに飾り組んでやっているわけでございまして、公団としてもこれはもう速やかにその結論を出すべきだ、こういうふうに思います。一週間以内ということでございますから、その換算値を待ちたいと思いますが、騒音測定の予算というのは、公団ではおよそどのくらいお持ちになっていらっしゃるのですか。
  95. 町田直

    ○町田参考人 五十三年度の騒音対策の予算が全部で約三十八億ぐらいでございますので、その中でやっております。もちろんもっとずっと小さい額でございますけれども、その必要に応じまして具体的に出していく、こういうことでございます。
  96. 小川国彦

    小川(国)委員 自治体ではもうその日その日に騒音テストの結果を発表し、住民に公表しておりますが、公団は騒音測定の結果についてはすでに公表されておりますか。
  97. 町田直

    ○町田参考人 数日前に、二十六日から三十一日までの結果を、私が成田で記者会見をいたしまして発表いたしました。
  98. 小川国彦

    小川(国)委員 三十一日以降のものについては、最終的にいつ公表されますか。
  99. 町田直

    ○町田参考人 たまたまその日に一日の分がまとまっておりませんでしたので、特に発表いたしませんでしたけれども、これはできておりますから、いつでも結果は発表できるわけでございます。先ほど申しましたように、WECPNLとの関連考えまして最終的に全部発表いたしたい、こういうふうに考えております。
  100. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、公団の測定結果の公表はすべてできる。それからもう一つは、換算も一週間で終わる。そういう経過の中で、先ほど上田事官の方ではほぼの感触を得ているということでございますが、去年の八月あるいは十二月に行った測定値と現在の測定値の差異や誤差についてどういうふうにこれを修正する、こういうお考えは持っておりますか。
  101. 町田直

    ○町田参考人 去年の八月と十二月に行いました騒音テスト飛行でございますけれども、これはそのときにも地元の方々にも申し上げましたけれども、あのときは成田空港で油をとることかできませんでしたので、最大着陸重量で測定をしたわけでございました。御承知のように最大着陸重量と最大離陸重量とは、DC8一つとってみましても相当な開きがございますので、これはそういう意味でその当時からテストをしたということを地元に十分申し上げてあったわけでございまして、したがいまして、今度測定いたしました実際の飛行機の騒音が、当時から大きいもので十ホン前後、小さいもので二、三ホン違ったということは、これはある意味では当時から想定できていたわけでございます。  私どもは、実際に飛行機か飛び立ちましてから、原則的には一週間ぶっ続けに測定をいたしまして、その結果によりまして、WECPNLに換算いたしまして指定地域が適正であるかどうかということを検討いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  102. 小川国彦

    小川(国)委員 これについては公団の測定値や市町村の測定値、それからその後の見直し対策の問題については、公団と県、市町村の間にいろいろ見解の相違が出てくると思うのですが、この対策については連携はうまくいっているのでございますか。
  103. 町田直

    ○町田参考人 これは公団がもちろん判断と申しますか、測定をいたしまして、その結果を運輸省に報告し、もしも現在の指定地域が実情に合っていないということであれば、運輸省の告示を変えてもらう、こういうことでございますけれども、御承知のように地元の成田市も、芝山町も測定をしておられますし、また最近は県も測定をするということでございますので、私どもがはかりました測定値だけでなく、市や町や、あるいは県が測定いたしましたものとよく照合いたしまして、そうして間違いがないかどうかということを調べ、また地元の市町村あるいは県の御意見を聞いた上で最終的には結論を出したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  104. 小川国彦

    小川(国)委員 私は、その中で大変な差異の出てきた二カ所について伺いたいのです。  成田市の本三里塚、それから野毛平、この二カ所は、前回も今回も非常に高い数値を示しているわけでございます。これは私ども成田市の調査結果によるわけでございますが、成田市本三里塚の場合には、前回九十七ホン、今回九十一ホンということで非常に高い数値を示しております。これは六回にわたるデータによりましても、前回で九十七ホン、今回でいずれも九十ホンを超えております。それから野毛平地区の場合にも、前回八十二ホンのところが、今回九十六ホン、これは新しい野毛平団地の場合、それから旧野毛平の場合には、前回九十三ホン、今回百三ホンという非常に高い数値を示しておりますが、この点については公団の測定値はどういう数字を示しておりますか。
  105. 町田直

    ○町田参考人 まず、野毛平につきましては、実測値が、離陸の最高が百二、最低が七十七、それから着陸の最高が百四、着陸の最低が八十四デシベルでございます。  それから本三里塚、大清水の場合は、離陸の最高が九十四、最低が六十三、それから着陸の最高が九十三、最低が五十二という数字になっております。
  106. 小川国彦

    小川(国)委員 この数字は、最高についてはいずれも自治体の調査と合致してまいります。それから最低については若干相違が出てくると思いますが、空港公団が、きょう総理が指示をしたというこの騒音公害の対策を——昭和四十一年の空港決定からすでに十二年間経ているわけです。この間において、いま私が挙げました本三里塚、野毛平、こういうところにする騒音対策というものは、すでにこの十二年間のうちに再三いろいろな角度から要請されてきている。それが今日まで放置されてきたというのが実情ではないかと思うのです。もう昨年の九月、十二月の時点で、騒音テストの段階ですでに本三里塚や野毛平については騒音対策を行わなければならないということは、もう必然というふうにわかっておったと思うのですが、なぜこれを今日まで放置されたのか、その点については航空局あるいは公団、どういうふうにお考えになっておりますか。
  107. 町田直

    ○町田参考人 ただいま御指摘がございました野毛平、三種地域の方を私、申し上げたのでございますけれども、野毛平につきましては五十一年の一月の指定で第三種に指定されておるわけでございます。それから本三里塚、大清水につきましては一種に指定されておるわけでございます。まず三種なり一種の指定が正しかったかどうか、こういうことになると思うのでございますけれども、野毛平の件につきましては、これも先ほど申しましたように、まだ最終的結論は出ておりませんからここで軽々に申し上げることはいかがかと思いますけれども、一応中間段階で、私どもが先ほど申しました離陸百二ホン、着陸百四ホンというようなもののいわゆるパワー平均というものをはかりますと、野毛平の場合は八十四それから八十六、それを平均したものが八十五、こういう数字になるわけでございます。同じように大清水につきましてもそういう数字が出てまいりますので、いまのところ第三種並びに第一種の指定そのものは多分狂っていないのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。  あとの問題はこれに対する対策でございますが、御承知のように、第三種につきましてはできるだけ移転をしていただきたい、こういうことでいろいろと住民の方にお願いしているわけでございます。野毛平につきましては、御承知のように、まだ二十戸ばかり残っておりますけれども、大部分の方がこれから約二百五十メートルぐらい離れたところに御移転になったわけでございまして、ここも一部一種にかかっておりますけれども、その移転先が非常に問題ではないか、余り近いところの移転で問題じゃないかという御批判があるわけでございますけれども、そういうことでございます。それから大清水、本三里塚につきましてはこういうことで一応一種ということで対策をいたしておるということが実情でございます。
  108. 小川国彦

    小川(国)委員 いま副総裁の答弁は、実態を解決する答弁になってないのでもう一遍伺いたいわけです。  野毛平地区の場合は、現在残っているところも移転したところもいま副総裁がおっしゃった新しい見直しの中でも当然民防の対象区域に入ってくるわけですね。そういうものについてはすでに昨年のデータでもそういう予測が立っておった。しかし、実施しなかった。今度の結果ではもう明らかに最低一種の民防以上の対策をしなければならぬ地域に入ってきておる、こういう実態にあるわけですが、この点については移転先においても新しい対策を講ずるというお考えはございますか、まず野毛平について。
  109. 町田直

    ○町田参考人 新しい移転先につきましては確かにいま申し上げたように大変近いところに移転されたものですから、今後どうするかという問題が残るわけでございますけれども現状におきましては、と申しますか、いままで私ども調査いたしました範囲ではほんの一部一種にかかっておりますけれども、その他は一種にかかっていないという指定自体が間違っているかいないか、まずこういう判断になるのではないかと思っております。その上で、もちろん指定が間違っておりますれば広げまして、第一種区域に入れる、そして民防の区域に入る、こういうことになるわけでございまして、これはいずれにいたしましても指定の結果を待って判断いたしたいということでございます。
  110. 小川国彦

    小川(国)委員 野毛平の場合は残っている旧野毛平も新野毛平も両方対策区域に入れざるを得ないのじゃないか。すでにこれは昨年の段階でわかっておりましたし、それから今度現実に飛行機が飛んでみましたら、皆さんの方の飛行機の実際のコースの飛び方がVOR/DMEの関係で、あそこに北、南に向けて飛行コースが示されておりますが、あの飛行場の西側の二百五十メートル、滑走路の横にVOR/DMEの装置がある。それが北、南に電波を発信している。そうすると真っすぐ飛び立った飛行機はどうしても西側二百五十メートルの延長上にある電波に乗るために四、五キロ飛び立つと左側のVOR/DMEの指示に従って飛ぶ。そうすると飛行コースの中心線がもうすでにここで二百五十メートル西側にずれる。そういうことになってまいりますと、いま現在数字で出ておりますように、WECPNLに換算しても八十五以上の対策区域に入ってこなければならない、こういう実態にあるわけですね。ですから、このVOR/DMEとの関係において政府や公団の方では、明らかに飛行コースに変更があるわけですが、これをVOR/DMEに乗った、現状飛行機が飛んでいるコースを新しいコースとするのか、従来、皆さんが騒音コンターをつくったときの中心線を中心線としていくのか、その辺はどういうふうに結論を出していますか。
  111. 町田直

    ○町田参考人 ただいまの問題は、実は御指摘のような問題が一つございまして、これにつきましては、私の方で、いま飛行機の飛んだ航跡を写真に撮りまして調べております。この結果も今週中には出ると思いますけれども、それによりまして、現実にVOR/DMEが二百五十メートルぐらいずれておりますに従いまして飛行機のコースが実際にずれ、その結果が騒音測定にあらわれているといたしますと、これに対する対策考えていかなければならないということでございまして、果たしてそのVOR/DMEの線に乗ったためになったのかどうかという検討をいましている最中でございまして、その結果によりまして、場合によりますと飛行機の飛び方を変えるか、あるいは指定地域を変えるかということを考えていかなければならないというふうに思っておる次第でございます。
  112. 小川国彦

    小川(国)委員 いま飛行機は毎日飛んでいるわけで、その騒音地域住民にしてみれば、一日も早い結論を出さなければならないわけです。  いま同僚の土井たか子議員の持っていた資料によりますと、「航空機騒音の環境基準としてはWECPNL七十以下とすることが適当であると判断される。WECPNL七十は、機数二百機の場合、ほぼNNI四十に相当し、二十五機の場合NNI三十五に相当する。このような趣旨にかんがみ、新空港の建設、住宅団地の造成等を行なう場合には、上記指針値よりさらに低い値以下となるよう十分配慮し、」、こういうふうな指針まで政府の方針としてあるわけです。そういうものがありながら皆さんの国や県の指導が誤ったために、飛行コースの中心線よりわずか七百メートルしか離れない、そしてまた新たな騒音対策を行わなければならない、そういうところに移転をさせたという失政、失敗を行ってきているわけです。ですから、これに対してはもうすでに現時点でどうするかということが立ってなければならないのです。毎晩十一時まで寝られない。非常に激甚な騒音の中で一家が毎晩十一時までは起きている。農家の主婦の場合、一日農作業の労働をやり、また朝早いという状況の中で十一時まで寝られない苦痛というものは容易じゃないということを訴えているわけです。そういう点ではこのVOR/DMEに基づくところ中心線は一体どこになるのか、それから、しかもその場合の新しい騒音コンターはどっちにするのか、この辺の結論はもう開港前に出てなければならないわけなんです。VOR/DMEの装置というのはいつおつくりになったわけですか。とうにできていたわけでしょう。そうすれば、当然、航空機の常識としてVOR/DMEに沿って飛行機が飛ぶということになれば、飛行コースが違ってくる、違ってくれば騒音コンターも変えなければならない。当然これは公団も政府も責任を持ってやらなければならないことだと思うのです。それを、開港しても十数日たってまだ中心線が決まってない。皆さんがつくった図面が、実際飛んでみたら飛行機が全然違うところを飛んでしまっている。それをどうするかということが、もう十数日たってまだ結論が出ないのですか。
  113. 町田直

    ○町田参考人 先ほどちょっと申し上げましたけれども、VOR/DMEに乗って飛んでいることは大体間違いないわけでございまして、その結果、 実際に騒音がいまの指定地域をオーバーしていると申しますか、指定地域の指定がその結果誤ったという結論が出るか出ないか、こういう問題だろうと思うのでございます。と申しますのは二百五十メートルでございますけれども、御承知のようにかなり飛行機が上がってまいりますから、その上からの影響でございますので、しかもまた指定地域というのは、これも先生承知と思いますけれども、実際の騒音測定よりもかなり広げて指定してございますので、その結果が果たしてそのとおりに出ているかどうかということをいま検討している最中でございます。  それから、御指摘のありました野毛平の移転の問題につきましては、実はこんな過去のことを申し上げるのは大変あれでございますけれども、当時大変近いところでございますので、むしろ公団としては、余り近過ぎるから適当ではないんではないか、こういう御意見を申し上げたのですけれども、御移転をされる野毛平の方々から大変強い御希望がございまして、あそこの場所がいい、こういうことで動いたんだということを実は聞いております。しかし、そういうことがあったにいたしましても、実際に指定地域外であって、しかも八十五WECPNLの範囲内であるとすれば、当然地域を変えまして、そして一刻も早く騒音対策をしていくという必要がございますので、そっちの方を急いでいる、こういう実情でございます。
  114. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一度伺いますが、先ほど副総裁の答弁では、野毛平と本三里塚については換算しておよそ八十五以上、こういうことは結論として出ているんですか。
  115. 町田直

    ○町田参考人 先ほど私が申し上げました野毛平は、三種地域の方の野毛平でございまして、御承知のように三種地域の野毛平は、縦に七・一キロそれから横にはゼロ、真下でございます。それから一種地域の方の野毛平は御承知のように縦に七・六キロでございまして、横に〇・六キロずれておる場所でございます。そこに移転したわけでございますから。そして、いま一応私どもで実測いたしました数値を申し上げますと、三種地域の方の野毛平は八十四・二四でございますけれども、一種地域の方は八十三・二三と、こういう数字になっているわけでございます。したがいまして、いずれにいたしましても一種地域以内であることは間違いないわけでございます。ただし、そこは現在一種に指定されている地域のことを言っているわけでございます。そういうのが実情でございます。
  116. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと答弁が明確でないんですが、集落として野毛平の旧集落と新集落とあります。その両方が新しい指定の対象となるのかどうか。WECPNLの計算で、いまおっしゃった八十四・二四、八十三・二三というのは対象になるのかならないのか、その辺をはっきりしていただきたいと思います。
  117. 角坂仁忠

    ○角坂参考人 お答えします。  今度実測をやりましたのは、野毛平で旧野毛平と申しますか、要するに第三種の移転地域に入っているところと移ったところ、両方やったわけでございます。旧野毛平は第三種地域でございますから、予測のWECPNLがいわゆる九十五以上のところでございますから、これは移転対策として大部分の方は御移転願ったわけでございますけれども、まだ一部残っておることも事実でございます。先ほど副総裁から御答弁がありましたように、新しく移転した場所、これは大体現在の中心線から六百から七百の間でございますが、ここに移転した後で告示のコンターを引きましたところに一部一種地域にかかったわけでございます。したがいまして、移った野毛平の一部の、いわゆるコース寄りの方は八十五WECPNLの範囲に入ったわけでございます。これは制度上非常にむずかしい問題でございますが、昭和五十一年の一月八日に告示いたしましたときには実はまだそこへお移りしていただいてなかったわけでございますので、告示時点におきましては一種になっておらなかったわけでございます。したがいまして、今度の実測によりまして新しく一種地域の告示がもし変わるといたしますならば、その中に含まれる方は当然、中間目標でありましても、いわゆる防音工事をいたします。最終目標になった場合にはさらに区域が広がってくるわけでございますので、その辺のところを今後の数値によりまして判断いたしまして、対策を講じていきたい、かように思っておる次第でございます。
  118. 小川国彦

    小川(国)委員 何か副総裁も理事も要領を得ないですね。私が聞いているのは、副総裁ははっきり旧野毛平は八十四・二四、新野毛平は八十三・二三と、こう言っているわけですよ。だから、それぞれの集落はこの数字が出た段階で、皆さんが従来言ってきたこの一種、二種、三種の中で言えば一種に近い数字だけれども、一種の対象にするのかしないのかと、こういうことを聞いているわけなんです。というのは、もういま毎日飛行機が飛んで、皆さんの方は、この一種なんて民防すればいい地域だと、こう言っているのだけれども、実際には、先ほど出たように、旧野毛平は百三ホン、新野毛平で九十六ホンという最高の音値を示しているわけです。この数字は皆さんがWECPNLで低めてきたとしても、出ているホン数で、現状住むのにもう困るというような状況で悲鳴を上げている状態なんです。だから、そういうところを皆さんが公団で騒音の測定をし、それから、もう副総裁は一週間以内に換算が終わると言ったけれども、先ほども私の質問の答弁では換算した数値を言っておられるのだから、換算した数値が出たら、いままでの基準に基づいてここを指定するのか、こういう決断がなければ、行政がこういう問題に迅速に対応しなければ、そういう対策区域はどこになるのか早く決めることと、決めたらそこに手を打っていくということを当然公団、考えなければならないことなんですよ。だから、それはどうなのかということを聞いているわけなんです。
  119. 町田直

    ○町田参考人 大変繰り返しになりますけれども、旧野毛平につきましては御承知のように第三種でございまして、これはそのとおりでございます。新野毛平は先ほど角坂理事が申しましたように、前回のというか、現在の指定でその一部がかかっているわけでございます。したがって、先ほど申しましたように、その一部がかかっているところの測定をいたしましたところが八十三・幾らというWECPNLのあれが出たわけでございますので、それはそれで間違いないわけでございます。そこで、それ以外の場所、一部がかかっていないところを含めて入れるかどうかというのはこれからの判断になる、こういうことでございまして、現状におきましては、一部がかかっている指定そのものには多分間違いはないだろう、こういうことを申し上げているわけでございます。
  120. 小川国彦

    小川(国)委員 一部がかかっていることは知っているわけなんです。それはもうすでに昭和五十一年の段階で決まっていることなんですから。私が聞いているのは、現在の時点で、飛んでもう十数日たって、騒音測定も終わり、WECPNLの換算も終わって、この数字が出た段階でどうするんですかという、その結論はいつ出すんですかと聞いているわけなんです。その見通しをまだ持ってないのですか。
  121. 町田直

    ○町田参考人 ただいまの地点につきましては、現段階におけるWECPNLの結論を申し上げましたけれども、今週中ぐらいに全体のWECPNLの結果によりまして関係方面と相談をして決めていきたい、こういうふうに考えておりますので、その中に含めまして考えざるを得ないと、こういうことでございます。  いまだけの結論を申し上げますと、現在指定されておるものは大体間違いないのじゃないか、こういうことでございますので、それ以外の場所につきましていま指定を変えるかどうかということは、これからいろいろ検討しなければなりませんし、先ほど申しましたように、地元の御意見等も伺って考えていかなければならないと、こういうことでございます。
  122. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと環境庁にお伺いしますが、いま八十四・二四、八十三・二三というWECPNLの数字が出ているのですが、この場合、環境庁としては、従来定めた第一種区域というものは八十五以上になっているのですが、中間基準の達成目標との関連から見て、これは見直しをするということが妥当かどうか、この数値について環境庁としてはどういうふうな判断をお持ちになりますか。
  123. 橋本道夫

    ○橋本(道)政府委員 いま先生の御質問は、八十五WECPNLという数字が中間の目標になっている、それは本年の十二月の末にその目標を達成をする、その目標が達成できなければ、屋内が六十五WECPNLになるようにやらなければならかいということになっておるわけでございます。ですから、屋外の数字がいま八十五を少し割った断字をおっしゃっております。八十三・幾らということをおっしゃっておられたので、その数字だけの問題を見ますと、十二月末の数字にそこの場所は合っているのかということでございますが、これはあくまでも環境基準の問題でございまして、いまの先生の、私に対する質問の前の御質問はむしろ航空機騒音防止法の方での地域指定の問題でございますので、その問題の方ではなしに、私は、環境基準という観点からいくと八十五以下になっているのかな、こういうぐあいに受け取りました。
  124. 小川国彦

    小川(国)委員 この点について公団の方の考え方が、自治体や地域住民が逼迫して考えているような切実感というものが全くない、そういう点で非常に残念に思うわけなんです。いまの八十四、八十三という出し方は自治体の数字も参酌して出されたものですか、あるいは公団の測定値だけをもとにしてやったものですか。
  125. 町田直

    ○町田参考人 先ほど申し上げましたように、これは公団ではかったものだけでございまして、これから、自治体でおはかりになったものもいただきまして、さらに参考にして考えていきたい、こう考えております。
  126. 小川国彦

    小川(国)委員 その場合には、換算の再計算ということもあり得ますか。
  127. 町田直

    ○町田参考人 自治体でおはかりいただいたのと私どもはかったのとそう大差がないように私伺っておりますけれども、非常に差がございますれば場合によりますともう一遍再測定をしなければからないかというふうに考えております。その結果によりまして考えたいと考えております。
  128. 小川国彦

    小川(国)委員 従来、公団の測定というのは自治体よりも非常に低い数値しか出てこないのですね。公団の機械がどういうかげんになっているのか、各自治体の数値より非常に低い数値しか出てこないので、これはぜひ自治体の数字も参考に入れて出していただきたいというふうに要望をしておきたいと思います。  それからもう一つ、野毛平の問題については、移転のいきさつについては政府や公団の指導が適切でなかった。というのは、農地も住宅も含めて、常識的に見て、こういう九十六ホンというような数字が出てくることは異常な状態の場所だと思うのですね。住民が希望したからといっても、そういうところに国費を投じて移転をさせてきた。しかも移転そのものも国費ではなくて、このいきさつから言えば日本航空の資金で行ってきた、こういうところに私どもは官民癒着じゃないけれども、公団の姿勢として非常にすっきりしない、国の行政をやっているのじゃないという感じがするのですが、ここの跡地は現在は公団が取得されたのですか、あるいはまた日航用地として何か使用されることになっているのですか。
  129. 町田直

    ○町田参考人 このときのいきさつは先生十分御存じだと思いますので詳しくは申し上げませんけれども、当時、県で大変御熱心にごあっせんいただいたわけでございます。ただ、現在でもそうでございますけれども、公団自身が取得するのは基準的になかなかむずかしいものですから、現時点におきましては依然として日本航空が所持している、こういうことでございます。
  130. 小川国彦

    小川(国)委員 そういう形で、日航の用地取得のために日航が資金を出して、少なくとも宅地については移転をさせた。そして公団が農地だけ買った。まさに騒音地域の移転対策としては、運輸省もそうですが、一体こういう形での騒音対策がいいのかどうか。そういうものではなくて、本来、政府がきちっとした騒音データに基づいて政府の予算で行うべきで、その点については、何か聞くところによると、日航の資金ででも移転をしたのだから、騒音区域に入っても民防の予算については要求しないというようなことをとっているやのこともちょっと聞くのですが、皆さんはそういうことによって今後対処されるのか、あるいは政府としてきちっとやるという考え方を持っておられるのか、その点はいかがですか。
  131. 町田直

    ○町田参考人 当然のことながら、騒音地域の移転につきましては公団が責任を持って移転の事務を進めるべきだと思いますし、今後ともそういうふうに進めるべきだと思います。  この地点につきましては、先生承知と思いますけれども、当時、日本航空がその土地を欲しいという御意向があったようでございます。それを県の方でお受け入れになりまして、日本航空との間でそういう話を進めたという経過がございます。したがいまして、いわば過去の移転の中の一つの変則的な形だと私は考えておりまして、すべてこういう形で進むものでは当然ございませんし、当然、公団が移転につきましてもお世話をし、かつ代替地等も考えていくというのが本筋であると考えております。
  132. 小川国彦

    小川(国)委員 したがって、野毛平についてもそういう原則的な考えで今後臨む、こういうふうに理解してよろしいですか。
  133. 町田直

    ○町田参考人 そういうことだと思います。  もちろん、これは制度上の問題でございますから、指定地域の中に入れば当然、民防工事もやってまいるということでございます。
  134. 小川国彦

    小川(国)委員 次に、この野毛平とか長田というのは、そういうふうに政府、公団がきちっとした騒音環境対策をやらなかった、したがって騒音区域から騒音区域に引っ越しさせた、そういう意味では国の予算の使い方、行政のあり方としても今日に残っている問題だと思うのです。  もう一つ大きな問題としては、本三里塚と三里塚について、現在、本三里塚で約五十戸、それから三里塚で約三百戸が全く無防備のまま放置されているわけです。この地区も、先日の騒音テストによればいずれも高い数値を示している。先ほど申し上げたように、前回で平均九十七ホン、今回でも九十ホン以上ということでまいりますと、これはWECPNLに換算しても当然一種、二種、三種のいずれかに加えて対策を行ってこなければならなかったところなんです。ところが、空港公団は、あそこの図面で見ますと、ちょうど飛行場の西側のところに十メートル高さぐらいの防音堤、防音林をつくって、これで騒音は防げるということでやってこられたわけですね。それで、私ども社会党の議員が質問主意書で政府や公団にただしたときも、予測コンターの作製の中で非常におかしなつくり方をしたのです。  きょう公団に持ってきていただいた図面、もっとはっきりわかる図面を持ってきていただきたいと思ったのですが、何か薄ぼんやりした図面で明確でないのが残念なのですが、騒音分布図の中で三里塚と本三里塚のところがへっこんでつくってあるわけなんです。これは皆さんの方で出された分布図ですが、三里塚のところだけ音が引っ込んでいるのですね。音というのは平行して広がっていくもので、そこだけ引っ込むというのはどうもおかしいと思ったら、防音堤をつくったからそこは音が大丈夫だ、こういうことで十二年間放置してきてあるのです。  このことについては、三里塚の騒音対策協議会の石橋会長から昭和四十一年の段階で、当時の成田努総裁に質問をしているわけなんです。それに対して、空港公団の空・企第六十四号という昭和四十二年八月二十三日付の答弁では、「騒音対策については防音林設置計画など空港周辺に与える騒音の軽減を十分考慮しながら空港建設すべく、格段の努力」を払います。昭和四十二年の八月に防音林の設置計画を出しているのですね。それか五十三年の三月三十日に、開港  これは直前というか第一回の開港予定日ですか、地元から内容証明で、三里塚地区に騒音対策はないのか、三百五十戸近くのところを放置したままでいいのかということを公団に成田市を通して文書を出したら、公団が四月十四日の文書で、「公団は従来から三里塚地区に関しては日常生活に影響を及ぼす程の騒音はないと説明してきたが、今回の騒音テスト及び慣熟飛行を通じての騒音区域には該当しないものと考える。」、こういうことで、開港前にまた地元から要望が出されたのに、慣熟飛行やその他で影響はないと言い切ったわけですね。そしていざ開港して飛んでみたら、いま申し上げたように、九十七ホンという国電のガード下に匹敵するような騒音状態の中に五十戸、それからそれに準ずる場所に三百戸というものを防音堤というものでごまかして、十二年間だまし続けてきた。これは私は確証のない政府、公団の騒音、環境対策の姿勢を物語ったものだというふうに思うのです。これについては、わが党の議員からも四十九年の四月九日に質問主意書の中で、この防音林の効果というのは一体あるのか、こういう疑問を出したところが、これには防音堤及び防音林は場外に対して十WECPNLの減音効果があると計算し、滑走路の末端におけるコンターと防音堤とを曲線で結んだものだ、これはひん曲げましたと、こういうふうに答弁しているのですね。ひん曲げて、騒音の対象区域外に外したけれども、防音堤があるから十WECPNL下がる、こういうふうに説明してきたのですが、現実の結果は昨年の八月、十二月のテスト、今回のテスト、全く同じ数値を示してきた。十下がるどころか、全く同じ数値を示してきている。しかも、現在開港して毎日飛行機が飛ぶ中で、とても住むにたえないような本三里塚の地区なども放置している、この責任は大きいと思うのですね。そういう責任について、あなた方は、これを早速にでも改善をして、指定の見直しをしてやり直すという考え方を今日の時点において持てるのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  135. 町田直

    ○町田参考人 先ほど私は大清水につきましてお答えしました。御承知のように、三里塚は大清水、それから本三里塚、三里塚、南三里塚とずっと並んでいるわけでございまして、その中で本三里塚と三里塚の二つは指定区域外でございまして、大清水と南三里塚は一種区域に入っているわけでございます。これらにつきまして、大変問題でございますので、私ども詳細に騒音テストをいたしております。結論はまだ申し上げる段階ではないかもしれませんが、現段階におきましては指定区域外の本三里塚並びに三里塚につきましては一応八十五ホン以下、七十三・三六というような数字が出ているわけでございます。御承知のように、個々の測定をとりますと九十ホンというのもございますけれども、これはWECPNLの計算の結果そういうことになるわけでございます。防音堤が約十ホンの減音効果があるということも、学者の議論でございまして、そう間違ったものではないというふうに私ども考えております。  ただ、ここで一つどもとして考え直さなければならないのは、飛行機の性能が大変よくなりましたこともございまして、あそこは四千メートルの滑走路でございますけれども、ごらんいただきますと、三千メートルぐらいで上昇する飛行機が幾つかあるわけでございまして、こういうような飛行機につきましては、防音堤の減音効果というのが、飛行機が上に上がってしまいますから必ずしも十分ないということがございます。そういうものも入れまして、さらに今後検討していくべきであるというふうには考えておる次第でございます。しかし、現在までの測定では、一応いまのところ先ほど申し上げたようなことになるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  136. 小川国彦

    小川(国)委員 大変あきれた、住民が聞いたらもう怒って、とても納得しないようなことを答弁をされているのですね。  もう一度伺いますが、九十七ホンからたしか百ホンを超えている地区もあると思うのですが、空港敷地内から移転させた三里塚の光ケ丘団地、それから本三里塚、三里塚、ここについて皆さんの方では、八十五以上の第一種に該当するところはない、こういうふうにおっしゃるわけですか。
  137. 町田直

    ○町田参考人 先ほど申しましたように、本三里塚、それから三里塚の三カ所につきましては、いまのところ八十五ホンよりもWECPNLは低いのではないかというふうに考えております。もちろん大清水、それから南三里塚につきましては指定区域内でございますし、それに近い数字は出ている、こういうことでございます。
  138. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっと公団に伺いますが、運輸省にも聞きたいのですが、光ケ丘団地とか本三里塚についてきちんとした測定をやっているのですか。この個所について測定を行ったのですか。ちょっとその間の公団の最高値と最低値ですね、先ほど伺ったら、九十四の最低が六十三、九十三の最低が五十二、こう言っているのですが、最低が大変に低いということと、皆さんの計算で、あれほど激甚な地区が全部一種にも入らないということになったら、これは地元としては大変な騒ぎになると思うのですが、この三カ所についてのきちんとした測定は全部出てないのですか。
  139. 町田直

    ○町田参考人 三カ所についてきちんとした測定を全部やっております。先ほど申し上げましたのは大清水でございまして、測定した地点も全部わかっておりますけれども、ここが最高が離陸の場合九十四で……
  140. 小川国彦

    小川(国)委員 私の聞いているのは大清水じゃないのですよ。光ケ丘団地と本三里塚と三里塚について、いろいろ新聞紙上にも取り上げられているし、大変な地域になっているのですが、そこが八十五以下で、何ら対策を施すところではない、こういうふうにおっしゃられるのですかということです。
  141. 町田直

    ○町田参考人 この場所の番地のあれがいまここにございませんけれども、私どもで調べましたのは、大清水、本三里塚、三里塚、南三里塚の四カ所でございます。この中で大清水と南三里塚は御承知のように一種の指定区域に入っております。それから本三里塚と三里塚は指定区域外でございます。これらにつきましてずっと調べておりまして、その結果を念のためにもう一遍申し上げますと、たとえば五月二十七日の数字を申し上げますと、まず大清水につきましては離陸が最高が九十二の最低が六十三でございます。着陸が最高が九十三の最低が五十二でございます。それから本三里塚につきましては、離陸が最高が九十四の最低が五十八でございます。それから着陸が最高が七十九の最低が五十八でございます。それから三里塚につきましては離陸の最高が九十二で最低が五十四でございます。それから着陸の最高が六十三で最低が五十四でございます。こういうような数字になっております。  それらの結果をその日その日に、それぞれ、たとえばWECPNLをとってみますと、大清水が八十一・〇三になりまして、それから本三里塚が七十六・二九になりまして、三里塚が七十八・八五になる、こういうような数字になっているわけでございます。もちろんこれは一週間全部はかりましてそしてその全体から見ていかなければなりませんので、それを今後今週いっぱいくらいまでにやりたい、こう考えておる次第でございます。
  142. 小川国彦

    小川(国)委員 どうも副総裁ちょっと勉強が足りないんじゃないかと思うのです。大清水、南三里塚と言うけれども、指定されているのはごく一部なんですね。部落で大半のところは指定外になっているのですよ。それから、同じ三里塚の中でも光ケ丘団地と本三里塚と三里塚は非常に違うのですね。光ケ丘団地の状態などというのはとても放置できない状況だということは、もうそこに住んでいる人から一般的に、自治体でもこれは何とかしてもらわなければならないということを言われているわけですね。そういうところが八十五以下だということになったら大変なことになるので、そこの数値については副総裁、私はまだ十分御認識を得ていないんじゃないかと思いますので、もう一度きちんと御検討いただいて御回答願いたいと思うのですね。どうですか、上田さんの方も、これだけ騒音の激甚な問題が大変な騒ぎになっているのに、きょうお二人いらっしゃって、八十五以下だと言い切っていいんですか。きょうの段階でWECPNL八十五以下だとお二人とも言い切っていいんですか。真剣な質問をしているわけですよ。大変な病人を抱えたり、家族一家が寝られないという、激甚の中に置かれた人たちの毎日毎日地獄のような状況の中にいま追い込まれている中での問題を質問するし、そういうことを通告していま質問しているのに、それが両方ともWECPNLは八十五以下だとここでお二人とも言い切っていいのですか。
  143. 上田浩

    上田(浩)説明員 お答えいたします。  私が冒頭お答えいたしました内容は、八十五WECPNL以下であると断言はいたしておりません。公団でいま集計の段階でございまして、中間的な感触から言えば、昭和五十一年の一月の騒音区域を指定したときの前提となっておりますコンター、あれの予測値の範囲内にあるということを申し上げているわけでございます。したがいまして、八十五WECPNL以下であるということをここで断言いたしておるわけではございません。すべていま集計中でございます結果を見て考えていきたいというのが私のいまの考え方でございます。
  144. 小川国彦

    小川(国)委員 ちょっとこれは審議に臨むに、いま上田事官の答えているのは古いことを言っているのですよ。この前の分布図をつくったときの五十一年の話を答弁している。私が言っているのは、五月二十日以降開港から今日までに至る時点の中で副総裁ははっきりすべての地区のWECPNLの数字を言っているわけです。運輸省はそれを知らないのですか。私は見るところ、副総裁は一週間以内と言っているけれども、もうWECPNLの数字は出ているというふうに思うのですよ。それならば運輸省と公団がこれらの激甚地区で早急に対策を望まれているところをどうするのかという答えを持ってないということでは、これは国会の委員会で審議をするに値しないと思うのです。  委員長、その数字をはっきりここで運輸省の航空局と公団のお二方から、この重大な関心のある関係を持たれている三地区について、WECPNLで対象になるのかならないのか、きちんとした答弁をもらうまで私は質問を保留したいと思います。ちょっと二人で意見調整をしてもらって、どこと打ち合わせても結構ですから、確信のある答えを出してもらいたいと思います。
  145. 久保等

    久保委員長 委員長の方からちょっと参考人なり運輸省の上田事官に申し上げますが、見通しを検討中ということだけでは、いま言ったような緊急事態にある現場の状況考えると許されないと思うのです。しかも数字的なこと、先ほど来、町田参考人の方からいろいろ御説明があったわけですから、そういう御説明ができるなら、少なくともそういったデータをもとにして運輸省そのものも判断がっくと思うのです。したがって、今後の対処の時期の問題等についてここで言明願えませんか。
  146. 上田浩

    上田(浩)説明員 お答えいたします。  冒頭御説明いたしましたように、地方自治体におきましても独自に騒音テストを行っておる。したがいまして、このデータ等も照合いたしまして最終的な結論を出したいと申し上げております。したがいまして、今後、市はすでに行っておりますので、県が行います騒音テストの結果も見て考えていきたいと考えておるわけでございます。  それから、私から御説明する必要もないと思いますが、WECPNLと申しますのは、測定は原則として連続七日間にわたって行うということを前提にいたしております。その測定いたしました結果のいわゆる幾何平均がWECPNLでございますので、たまたま一、二回の騒音値を基礎に発言をされましても、やはり七日間連続いたしましてやった結果を見ないと何とも申し上げられない。したがいまして、これがただいま集計中であるというのが公団及び政府の答弁でございますので、その点も御勘案いただきたいと存ずる次第でございます。
  147. 小川国彦

    小川(国)委員 委員長、これは承服できないですね。副総裁はもうはっきり、今度の騒音激甚対象になっているところが八十五以下だと言い切っているのです。言い切っているのに、今度は上田事官が市町村の数字を入れて検討し直すと言うことで、それじゃいままで質疑の中で三十分余り聞いてきた数字というのは根拠のない数字なのか。私はこういうところに公団と政府の騒音環境対策のごまかしの姿勢があると思うのです。数字がこういうふうに公団からきちっと出てきているのに、運輸省はそれをまだ不確定なものだとする。それじゃ、いままで副総裁がおっしゃったことは八十五以下の問題については誤りであった、こういうふうにおっしゃるのですか。
  148. 町田直

    ○町田参考人 先ほど私が申し上げましたのは、たまたま二十七日の例を御説明したわけでございます。先生から本当にはかったのかというお話がございましたので、具体的にそれぞれの地区につきましてはかった結果を申し上げました。そこで一応公団が出しましたWECPNLというものを言ったわけでございます。全体につきましていま集計中だということは上田さんから言われたとおりでございまして、できるだけ今週中には出したい。そして、先ほど先生から御指摘もございましたように、成田市、芝山町等の測定結果もあわせまして、さらに詳細に検討いたしまして手落ちのないようにいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  149. 小川国彦

    小川(国)委員 全然でたらめな答弁ですよ。WECPNLというのは、いま上田事官は、一週間計算しなければ出ないと言うのでしょう。副総裁は、一日で数字が出ていると言うのでしょう。そんな理解では騒音地区の住民は困っちゃうわけですよ。少なくともこの騒音対策については、運輸省と公団とが統一した見解を持って、どういう数字に基づいてどういう換算になったのか、それによって住民たちは、自分のところはどうなるかという切実な思いで毎日いるわけです。政府や公団はどういう対策をやってくれるのか、自分のところはどうやってくれるのか。そういうときに政府や公団の基本方針が一致しなくて、でたらめな教字をここで言われていたのでは困るわけです。  委員長、私は大変恐縮ですが、運輸省と公団ともう一遍御協議を願って、そしてこれらのところに対しては一週間の騒音結果というものはどうなったのか、WECPNLの換算というものはどうなったのか、いま副総裁が出された換算の数字というのは一体どうなのか、それをはっきりしてもらわないと、こんなでたらめな数字を国会で聞かされて地域人たちに報告できませんですよ。一時間の審議がこんなでたらめな教字ばかり並べられていて国民が納得しますか。  副総裁、三、四十分の質疑の中であなたが言った数字は全部でたらめということになりますよ。あなたの言ってきた騒音コンターから騒音の数値からWECPNLは全部でたらめだった、こういうふうに謝罪されるなら私は納得しますが、そうじゃなかったら、これは承知できません。いままでいいかげんな数字を並べてきて、絶対承知できませんよ。
  150. 町田直

    ○町田参考人 大変どうも私の説明が下手でございまして十分に御納得いただけなかったかと思いますが、WECPNLというのは一週間続けてはかって結果を出すのがいいと申しますか、出すべきであるというふうなことを書いてあるわけでございますけれども、その日一日の測定だけでもその日のWECPNLというのは、御承知の運輸省令の第一条に書いてあります方式で出すことができるわけでございます。しかしそれはその日一日のものでございますから、決してただ一日だけの例ですべてを決定するということにはなるべきではないと思っておりますけれども、たまたま一日の教字を私は申し上げたわけでございます。全体的には、一週間なり相当の日数をはかったもので出すのか適切であるので、そういう意味では、先ほど私が申しました三カ所につきましての一日だけの結果のWECPNLをもって指定地域が間違っているとかそういうことを申し上げるのは早計であるということでございます。その点、先生に誤解をお与えしたような私の答弁でございましたら申しわけないと思っております。
  151. 久保等

    久保委員長 町田参考人に委員長の方からちょっとお尋ねします。  いま、一週間にわたる測定をしなければならぬというのですが、その一週間というのはいつからいつまでを考えておられるのですか。資料として運輸省に提出せられる予定の一週間というのは、具体的にはいつからいつまでのものをデータとして提出する予定ですか。
  152. 町田直

    ○町田参考人 五月二十六日から六月一日まででございます。
  153. 久保等

    久保委員長 お尋ねしますが、その六月一日までのデータをいつまでに整理して出せることになるのですか。
  154. 町田直

    ○町田参考人 それを今週中にできるだけまとめたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  155. 久保等

    久保委員長 先ほどの御答弁だと、測定をすれば、それは即日換算すればいいのですから、即日、そのデータができ上がるはずなんですが、それがどうして四、五日かかりますか。
  156. 町田直

    ○町田参考人 それは技術的な問題でございますけれども、即日出たといたしましても、御承知のように、原則として七日間の集計をするわけでございまして、その間には、いままで測定したものの見直しとかいろいろございまして、どうもそのぐらいの日にちはかかるわけでございますので、できるだけ早く出したいと思っておりますけれども、現時点では、どうしてもそのぐらいの日にちはいただきたい、こういうふうに思っております。
  157. 小川国彦

    小川(国)委員 そうすると、私が先ほど野毛平について質問した数値も、一日の数値を言われたわけですか、WECPNLは。
  158. 町田直

    ○町田参考人 先ほど御答弁いたしました野毛平の数値では、WECPNLは申し上げなかったんじゃないかと思っておりますけれども……。
  159. 小川国彦

    小川(国)委員 いや、言っておりますよ。八四・二四と八三・二三という数字を言われているのですよ。
  160. 町田直

    ○町田参考人 野毛平につきましては、先ほど実測値の離陸と着陸の数字を申し上げたと思っております。
  161. 小川国彦

    小川(国)委員 いや、違うのですよ。  委員長、ちょっと副総裁は準備が不十分のように思いますので、これは運輸省と公団でもう少し責任ある答弁ができるように御用意いただいてから、私は改めて質問さしていただきたいと思います。いまずっと答弁されたことは、終始数字が一貫していませんので、これでは質疑を続行することはできません。
  162. 久保等

    久保委員長 委員長の方からも申し上げますが、先ほどの町田参考人からの御答弁では、一日までのデータを今週中にまとめたいというようなお話だったのですが、今週中といいますと十日までなんですけれども、十日間を要することにも対応の仕方が非常に遅いという感じがわれわれはするのですが、いずれにしても、いま質問者の小川君から話がありましたように、もう少し整理をしてもらって、しかも対応の仕方としては一刻も早く事態の解決を図ってもらわなければならぬ緊急問題だと思うのです。したがって、その報告そのものも早急に運輸省の方にお出しいただくと同時に、政府としてもこれに対する対応を早急に御相談願って、ぜひまた近い機会に当委員会に御報告願いたいと思います。
  163. 小川国彦

    小川(国)委員 先ほど野毛平地区についても二十分か三十分近くかけて質疑したのですが、離発着の数字と、それからWECPNLに換算した数字を副総裁が混同されておられて、その数字も定かでないという状況では、私はこれ以上審議しても無理だと思うのです。ただ、政府や公団に申し上げたいのは、もうすでに換算数値は出ておるはずなんです。先ほど委員長指摘されたように、その日一日のWECPNLができて、それを一週間トータルして平均すればすぐ出ることで、その数字がいまだに出てないはずはないのですよ。それを明らかにしないで、しかも明確な数字も述べられないで、幾ら総理が成田の環境対策をやると言っても、ここに環境庁長官もおりますが、こういう状況で成田の環境対策ができるとお思いになりますか。ちょっと長官の御見解を、内閣を代表してひとつ。
  164. 山田久就

    ○山田国務大臣 この新空港騒音対策というのは、関係者の一番大きな関心事でございます。したがって、これは正確なデータに基づいて、そして十分対処しなければならぬ、これがわれわれ政府の立場でございます。したがって、その方針に基づきまして、しっかりしたデータによりまして、ひとつ早急に善処いたしたいと思います。
  165. 小川国彦

    小川(国)委員 もう一言伺います。  きょう環境庁長官も、この成田空港の騒音環境対策をやる閣議においでになったと思いますが、どんなことを御相談になったのですか。本当に騒音地域で困っている人をどうするかということに  ついて、閣議で抜本的にどういうふうに取り組もうと御相談なさったのですか。何か福田総理からも督励が出たそうですけれども
  166. 山田久就

    ○山田国務大臣 特にきょうこの問題について相談したというわけではありません。ただ、この騒音対策の問題は非常に大きな関心事の問題だから、よくひとつ善処してもらうようにという、特に総理からのその点についての強い希望の表現があったわけでございます。
  167. 小川国彦

    小川(国)委員 これは委員長にお願いをしたいのでございますが、きょうせっかく一時間の審議をやりましたけれども、これは数字が非常に重大なんですが、政府側の答弁で出された数字が残念ながらきわめて不安定であるし、それから、その換算された数値の根拠が定かでない。また、政府側の統一した見解もなければ統一した数字も示されない。こういうことでは、この問題の審議を一時間尽くしたわけですが、これは結果として納得を得るものにはならないわけなので、できれば政府の運輸省の側、公団の側でもこの問題に対して、先ほど委員長も言われたように換算した数字をきちっと持って、いまの問題のある地域は対象になるのかならないのか、対策があるのかないのか、それを明示した形で委員会を改めてお開きいただけたら、こういうことを委員長にお願いしたいわけでございますが、ひとつよろしくお取り計らいをお願いいたします。
  168. 久保等

    久保委員長 先ほど委員長から要請を申し上げましたように、ひとつ早急に結論を出してもらって、当委員会に御報告をお願いしたいと思います。  きょうは小川委員の質問は……。
  169. 小川国彦

    小川(国)委員 それじゃ、次回に質問を続行させていただく、こういうことで、ぜひその時間を理事会の方で御協議いただいて、委員長にも時間をおとりいただけるようにお願いしたいのですが、今国会中にお願いできますか。
  170. 久保等

    久保委員長 では、その点については理事会で御相談申し上げることにいたします。  次に、東中光雄君。
  171. 東中光雄

    ○東中委員 最初に、長官にお伺いしたいのですが、先月出されました白書を見ますと、産業公害の防止は相当程度の成功をおさめた、こういうふうに言われて、「世界の環境保全国」を目指すというふうに言われておるわけですが、昨日の公害被害者総行動デーを見ましても明らかでありますように、大気汚染にしましても水俣病にしましても、まだまだ問題が山積しております。総行動デーが一昨年より昨年、昨年よりもことしというふうに年々盛大になっているのを見ましても、これらの問題は依然として重要であることが明らかだと思うのですが、これは被害者の問題の解決なくして「世界の環境保全国」というふうにはなり得ないのではないかと思うのでありますが、白書に関連をして長官の御見解をお聞きしたいと思います。
  172. 山田久就

    ○山田国務大臣 環境白書に述べていることは、今日まで努力によって相当効果をおさめてきている面はその面として事実を率直に認めてきておる。なお、いろいろ問題はあるけれども、そういう問題に対してのわれわれの努力を続けながら、究極において環境保全国を目指してわれわれは努力をしたいという趣旨のことを書いておるものでございます。  国民の健康を保護することは環境行政の一貫した目的であることは御承知のとおりでございまして、御指摘にございましたような公害健康被害者の問題など、まだまだわれわれは問題を抱えておりますけれども、現に新しい患者の発生率というような点は下降の方に向かっているということも事実でございまして、われわれとしては、そういう点についても最善の努力を続けていく必要があることはもちろんでございますけれども被害を未然に防止するという重点を白書においても指摘して、被害救済を軽んじているというようなつもりはないし、もういま環境保全国に達しているという自負をしているようなことはないので、今後については御指摘のような点も十分尽力しながら目的を達成していこうということを述べている。この点は十分御理解いただきたいと思います。
  173. 東中光雄

    ○東中委員 白書を見ますと、公害は基本的に解決した、あとは世界に冠たる「環境保全国」を目指すというふうな印象を与えるわけでありますけれども、これは非常にバラ色に描かれていると思うのですが、しかし、現実はそうではない。いま長官も言われましたが、日本の公害、環境問題はやはり深刻なものがまだ現にあります。世界に例を見ない日本の公害の実態というのは、パリで、パリも日本のようになるぞというふうに一時言われたことかあるぐらい、世界でそれこそ冠たる公害国だったわけでありますが、これはどんな時代になっても将来にこの経験、教訓というものは受け継がれていかなければいかぬじゃないか。そうしてこそ本当に「環境保全国」を目指すということになっていくのじゃないかと思うのです。過去の経験、教訓というものは将来に受け継がれなければいけないものだと私は思うのですけれども長官、いかがでございますか。
  174. 山田久就

    ○山田国務大臣 経験、教訓によって学ばなければいかぬということは、何事によらずわれわれが対処していくべき一つの大事な点であろうかと思います。この点については、御指摘の点についての認識をひとしくするものでございます。
  175. 東中光雄

    ○東中委員 きょう文部省に来ていただいておるのですが、昨年学習指導要領が新しく改定されました。公害教育に関する部分が相当変わっているようでありますが、どういうふうに変わったのか、御説明をお願いしたい。
  176. 上田一郎

    上田(一)説明員 公害教育に関する部分については、従前からの方針を継承しておりまして、特に変わっておりません。つまり、公害に関する教育というのは従前から、国民の健康の保護でありますとか生活環境の保全ということからきわめて重要であるということにかんがみまして、小学校、中学校それから高等学校等におきまして、生徒の心身の発達段階に応じてそれぞれ適切にやってきております。その方針を今回の全面改定においても継承しておるということでございます。
  177. 東中光雄

    ○東中委員 昭和四十三年の学習指導要領、それが四十三年で一部また改定をされて、四十六年から教科書がその学習指導要領に基づいて動き出した。今度五十二年度に改定をされた。  小学校の五年生の社会科、それから中学校の社会、公民的分野というのですか、これを見ますと、これは明らかに変わっていますね。四十三年に出されて、そして一回改定されて、その部分が今度は五十二年では旧四十三年度に逆戻りをしているのじゃないんですか。
  178. 上田一郎

    上田(一)説明員 前回の学習指導要領の全面改定は、小学校については四十三年、それから中学校については四十四年に行ったわけでありますが、それで、全面改定というのはほぼいままで十年に一度ぐらいの周期でやっておるということで、そうたびたびあるものではございません。しかし、いま御指摘のあったように公害関係につきましては、公害対策基本法の一部改正が四十五年に行われまして、その内容重要性にかんがみまして四十六年度にその部分についてだけ小中学校の学習指導要領及び指導書を改定したという経緯になっております。今回、昨年度発表いたしました小中学校の学習指導要領の全面改定におきましては、内容が変わっているというふうにおっしゃったかと思いますが、基本的な方針を継承しておりまして、ただ、今回、全面的に各教科、道徳、特別活動、すべてについて記述が非常に簡略化されておるというようなことで、文言とか文章表現上同じということではございませんが、基本的には全く趣旨を継承するということで、公害教育の重要性を踏まえながら今回の改定を行ったわけでございます。
  179. 東中光雄

    ○東中委員 では、具体的に申し上げますと、小学校社会五年、四十三年について言えば、「産業による公害などから生活環境を守る努力を続けている都市の事例、」——関係のないところはちょっと省略しますが、「などを取り上げ、」というふうになっておったのが、公害国会の後一部改定がされて、「産業などによる各種の公害から国民の健康や生活環境を守ることがきわめてたいせつであることを具体的事例によって理解するとともに、」という、具体的事例によって理解するようにさせるということが入れられたわけであります。一部一公害基本法が変わり、いまあなたが一部改定したということを言われたのは、この「具体的事例によって理解するとともに、」ということになっているところが変わったわけです。ところが今度はその部分がすぽっとまた落とされている、逆戻りしていると私は言っているのであります。  中学校の場合についても、「公害の防除、」などを図り云々というふうに四十三年度ではなっておったのを、四十三年の一部改定では、「国民の健康の保護や生活環境の保全を図ることが必要であることを理解させる。」、「産業などによる各種の公害を防止し」こう書いてありますね。改定前は「公害の防除、」だけであった。ところが「産業などによる各種の公害を防止して、」云々に変わった。これは今度は「公害の防止など環境の保全」というふうになって、やはり四十三年の一部改定の前へ戻っているわけです。これは事実戻っているじゃないですか。
  180. 上田一郎

    上田(一)説明員 記述上若干似た形というふうにおとりになられるかもしれませんが、公害教育というのはアップ・ツー・デートにやっていくという趣旨が変わっているとか逆戻りということでは、先ほどから申し上げておるように、決してございませんで、たとえばごらんいただきましたように、今度新しく改定になった中学校学習指導要領でありますが、いままでの分と比べて厚さだけでも半分以下になっておるということで、全教科にわたりまして記述を非常に簡略化している。そういう点で若干不十分な点が生じてはいけないということで、これの解説書といいますか指導書におきまして、なるべく誤解を与えないように、その分の補完をするという方向をとっておるわけであります。  「具体的」ということにつきましても、小学校の今度つくりました新しい指導書では、ちょっとくどくなるかもしれませんが、若干関連部分を読んでみますと、「これら公害の防止には、工場、国、地方公共団体がそれぞれ積極的な対策を進める必要があるとともに、人々もこれに協力しなければならないことに気づかせる必要がある。」というふうに解説しておりまして、内容それ自体が後退したということではございませんし、本来そういうことで公害に関する教育の重要性ということを十分踏まえながらやられたということは、教育課程審議会の審議の経過を見ましても事実でございます。
  181. 東中光雄

    ○東中委員 そうすると、現在の教科書を見ますと、具体的事例に即して、たとえば水俣病の問題とか、あるいは四日市公害の問題の経過を具体的に書いて、そして理解をさせるようにしているわけでありますが、今度の学習指導要領では、具体的事例によって理解させるというその部分が落ちておる。説明書というのを見ても、いま読まれた中にはそのことは書いてなかったわけですね。しかしそれは表現が違うだけで実態は変わっていないのだというふうにはっきり言われるのかどうか、その点どうですか。
  182. 上田一郎

    上田(一)説明員 少なくとも前回は「具体的事例」を入れることにしていて、今回は「具体的事例」はやめることにしたとか、そういう経緯ではございませんで、基本的趣旨は何ら変わりなく、ただ全体的に内容の精選及び記述の簡略化の方向で全面的書きかえをした結果そういうことになったということであることは、先ほど申し上げたとおりでございます。したがって、教科書がどのようになっていきますか、今度新しい指導要領に基づく新しい教科書が、小学校についても中学校についてもこれから検定を経て、全面実施は小学校については五十五年度から、中学校については五十六年度からになっておりますが、その全面実施の年から使用できるように編さんをされるわけでありますが、それが各社のつくります教科書においてどのようにあらわれてきますか、それは各科の方針もあることでございますが、少なくともその基準となる学習指導要領においては、基本的趣旨は何ら変わるものではないということは先ほどから申し上げておるとおりでございます。
  183. 東中光雄

    ○東中委員 それでは、こういう聞き方をしましょう。基本的趣旨は変わらないと言っても、これに基づいて各社が教科書をつくってくるわけですから、そうすると、たとえば十行で説明しておったことを、同じ趣旨を三行に圧縮し簡略化した、趣旨は全く一緒だというのと、今度の場合とは違うわけですね。というのは、四十三年のときには「具体的事例によって」説明せいという趣旨のことはなかった。それを公害基本法が改定されて、そこへ一部改定をわざわざやって、「具体的事例によって理解する」ようにせいとわざわざ入れたのですから。今度はその分だけを削ってある。ほかのことは同じなんですからね。この削った趣旨は、「具体的事例によって理解」させるという点を削った理由は何ですか。
  184. 上田一郎

    上田(一)説明員 先ほどから申し上げておるように、とにかく、くどくなりますが、基本的趣旨は変わりない、そういうことでありますが、結局、公害教育について大切なのは、公害の防止ということはいかに基本的に重要なことであるかを理解させるということと、それから、その内容とか教え方というものはやはりアップ・ツー・デートなものでなければならないということがあると思います。ですから、時々刻々適切な教え方、効果的な教え方というものも、どの観点から教えるかということで変わっていくものだと思います。したがいまして、今度新しくできてくる教科書で教科書の編集者が、たとえば公害と言っても具体的な名前を挙げなければ何のことかわからなかった時代に比べれば、今度は公害というのはほぼ通常の一般的な共通常識になっているとすれば、その上に立って、それを踏まえていろいろな観点から教えていくという方向が効果的であると思えば、そういう編集、記述にもなりましょうし、いろいろな態様が考えられますけれども、先ほどから御説明をしておりますように、基本的趣旨は何ら変わらない。ただ、なるべくアップ・ツー・デートなものになるように、時々刻々改正を加えておる。先ほど申し上げましたように、本来ならば四十六年にもそれは書きかえというようなことはしないわけであります。通常の現実の授業の中において学校の創意工夫でやられている範囲の事柄であったと思いますか、特にその観点を書き加えた、趣旨は何ら変わるものではないけれども、今回簡略化という方向で書き加えた、全面的に書き改めたということでございます。
  185. 東中光雄

    ○東中委員 詭弁を弄してはいかぬですよ。あなた、先ほど四十三年の一部改定をやったのは、このたび公害対策基本法の一部を改正する法律など公害に関する諸法律が制定されたことにかんがみて、小学校及び中学校における公害に関する指導がその趣旨に即して適切に行われるようにする、そういう趣旨で学習指導要領をわざわざ改定をして、具体的事例を挙げて、「具体的事例によって理解する」ようにするということを、これはいわば教科書作成の一つ基準になってしまうわけですから、そういうふうなものを入れた。アップ・ツー・デートのものを使うか使わぬかというのは、それこそ教科書の編集者が具体的事例をどういうものにするかということであっても、問題は「具体的事例によって」という文をわざわざ公害基本法が変わったからといって入れたのに、今度はわざわざそれを抜いてしまったというところに、何の変化もないなどということをあなたは言っても、これは全く詭弁にしかすぎぬのじゃないか。趣旨はというようなことを言ったってだめなんです。それじゃわざわざ「具体的事例によって理解」させるということを入れたのはなぜなんですか。公害基本法が変わったから入れた、それはなぜなんですか。
  186. 上田一郎

    上田(一)説明員 「具体的事例」ということをポイントにしておられますが、実際申し上げまして、当時、文部省の方でつくりました新旧の対照表、公害対策基本法の一部改正に伴って書きかえた際につくりました学習指導要領の新旧対照表におきましても、「具体的事例」というのは一つ指導の仕方としてこういうこともあろうということで示した傍論的な部分でございまして、ポイントは、四十六年の改正前の小学校の五年の表現によりますと「産業による公害などから生活環境を守る努力を続けている」云々とある、それをより趣旨を明確にするために、その当時の新学習指導要領の表現では「産業などによる各種の公害から国民の健康や生活環境を守ることがきわめてたいせつであることを」というそこがポイントでありまして、その後「具体的事例によって理解するとともに、」云々というふうに、確かに「具体的事例」という言葉そのものはこのとき入っておりますけれども、実際申し上げまして、詭弁と言われましたけれども、決してこれは詭弁ではなくて、当時の改善のポイントは、いま読み上げましたように「生活環境を守る努力」ということだけ書いてあったのを、これだけでは明確でない、だから「国民の健康や生活環境を守ることがきわめてたいせつである」ということを言いたいのがポイントであったということは事実でございます。
  187. 東中光雄

    ○東中委員 あなたは何を言っているのですか。「産業による公害などから生活環境を守る努力を続けている都市の事例、」云々「などを取り上げ、」というふうになっておったのを、その内容を今度は詳しく書いていることは間違いないのです。あなたがいま読んだところは。それは簡略にするか詳しくするかというだけの問題であって、それを「具体的事例によって理解する」ことがきわめて大切だ、ここに重点かあって、だからこそそれに基づいて——教科書を見たら非常によくわかる。私、ここへ「新版社会五年下」という教育出版株式会社発行編集の教科書を持ってきておりますけれども、きわめて具体的に書いてある。非常によくわかる。ところが、これについて経団連なんかではずいぶん批判的な発言をしております。ここに私、一九七六年十月の経団連月報を持ってきましたけれども、ここで鉄連立地公害委員会委員長、新日鉄副社長徳永久次という人が発言している内容があります。   それから学校の公害教育が狂っておりますね。ほんとうにそこから直しませんと、世の中よくならないという気がするのです。  というのは、この間小・中学校で何を教えているかと思って社会の教科書を見ましたら、一  昔前の公害騒ぎを延々と書いてあるのですよ。具体的に書いてあることを言っているのですね。  NO2が出た、何が出た、大衆が立ち上がって反対して、それで企業は認めたとか。一時そういう時代があったかもしれませんが、現在は驚くほどの改善をみておるのに、そのページが教科書全体の二割ぐらいになるんじゃないでしょうか。その書いてあることはうそではない。うそではないのですけれども、昔真実であったがいまそれは必要ないことで、公害問題にそれだけページをさく必要が何であるのかと、そういうところに疑問を感じました。そして、   経団連が中心になって、文部省、あるいは国会の文教委員会等に働きかける必要がありましょうね。この最後の発言は石油連盟環境委員会委員長、東北石油常務の古沢さんですが、こういう発言なんです。具体的に例を書いてある、水俣のこと、あるいは四日市のことを書いてある、それに対してこういう運動があってこういうふうに規制をされたということが書いてあるのですね。先ほど環境庁長官にお聞きしましたら、公害日本の過去の経験というのは教訓として生かしていかなければいかぬということについては、私の考え長官も同じ考えだと言われた。ところが、この指導要領は「具体的な事例」を挙げてという文を落としてある。その落とすように要求しているのは、うそじゃない、本当のことだけれども、そんなもの要らぬのだと経団連の月報で言っている、それに沿っていっているじゃないですか。そうじやないのですか。
  188. 上田一郎

    上田(一)説明員 確かに先生指摘のように、いま使っておる教科書には、非常にわかりやすく公害についての解説があるわけでございまして、こういう教訓を踏まえながら公害防止ということに努めなければならぬということを、早くから心身の発達に応じて指導するということは当然重要なことでございます。それで、先ほどから申しておりますように、これは、たまたま前回の改定のときの内部資料として線を引いてきたものでございますけれども、常に新旧対照の改正のポイントのところに内部的に線を引くわけですが、その際に「具体的事例によって」というのは特に意識を実際問題と」てしておりませんで、先ほど申し上げましたように、単なる「生活環境を守る努力」ということだけでは不明確ではないか、だから「国民の健康や生活環境を守ることがきわめてたいせつである」というようなことを詳しくした関係から「具体的事例」ということも出てまいったのであって、教科書において今後ともどういうふうに扱われるかということは、これは教科書の編集方針に係る問題であると思いますので、私がいまとやかく言うことはできませんが、少なくとも基準としての学習指導要領の趣旨は変わっておらない。今回の改定におきましても、少なくとも私の関知する限り、いま御指摘の経団連等からの要請とかそういう指示によって文章を云々したということはなかったと私は記憶しております。
  189. 東中光雄

    ○東中委員 あなたに関する限りなかったかそれはどうか知りませんけれども、文部大臣やら初中局長やらにあったかもしれぬし、とにかく公然とこういうふうに雑誌に書いて、やらねばいかぬと言っているのだから。  それで教科書の編集者がある新聞に言っておることでありますが、こういうように言っております。「指導要領にある内容は教科書に網らしなければ、検定を通らない。だが、ないことを書かなくとも欠陥教科書とは言えなくなる。教え込む内容が多すぎると言われている現在、要領にない内容を教科書に盛り込む必然性が薄くなる可能性がある」、「具体的事例によって理解」させるというふうに指導要領になっておれば具体的な事例を挙げなければ欠陥教科書になってしまうけれども、その文を落とされておったら抽象的なことだけを言っても欠陥教科書にはならぬ、教科書はなるべく内容を少なくしろ、多過ぎるのだというふうに言われているときだから、必然的にそういう具体的事例というのは挙げられなくなってくるだろうということを言っておるわけであります。そうすれば、この教科書編集者の学習指導要領を見て教科書を編集していく際にとる姿勢というのは、この学習指導要領でいくと経団連が言っておることと全く同じことになってしまう。さっきも読みましたが、教科書全体の二割ぐらいになっておる、こんなに長いのは要らぬのだ、うそじゃない、真実だけれども要らぬのだ——まさにそれを落としてしまったら、具体的事例をなくしてしまったら、この教科書はなるほど簡単になるでしょう。抽象的なことは書けるでしょう。しかし、それじゃ何にもわからなくなってしまうのじゃないかというふうに思うのです。だから、わざわざ四十三年の一部改定のときに公害基本法が変わったからといって「具体的事例によって理解する」ようにせいということを言ったのを、いま削ったけれどもそれは同じ趣旨だと言うのだったら、復活したらどうですか。また、四十三年度も四十三年で一回出てから一部改定したのですから、今度も五十二年度で一部改定したらどうですか、もう五十三年度になっていますけれども。そうでないと、経団連が言っていることに沿って文部省は動いていると言わざるを得なくなるわけです。直接あなたが聞いたか聞かないかは別として、客観的にそうなってしまいます。編集者はそういうかっこうで出してきたら、それは検定官の方は、学習指導要領に書いてあることが欠落しておるわけじゃないからそのまま検定を通してしまうということになってしまうと思うのですが、その点、環境庁にもお伺いしたいわけでありますが、公害というのは現にまだ生々しい問題が、水俣なんというのは本当に現に残っているわけですね。そういう、まだ解決がいつになったらつくかわからないという問題があるわけですから、公害教育としてもそういう問題についてやるべきではないか。健康、生命最優先、それを守っていくのが環境庁の使命であるならば、公害教育もまたそういう角度でなければいかぬじゃないか、こう思うのでありますが、環境庁と文部省に御見解をお聞きしたいと思います。
  190. 山田久就

    ○山田国務大臣 御指摘の趣旨、先ほど、過去の貴重な経験というものは十分将来に生かさなければならぬという点については、私の考えを述べたとおりでございます。無論、過去の経験と同時に、それを基礎にして今後の新しい環境行政というようなことについてのわれわれの努力、そういうものにも触れていく、これもまた重要であろうか、こう思います。いずれにしても、経験という点については、先ほど私が申し上げた点、そのように御了解をいただきたいと思います。
  191. 上田一郎

    上田(一)説明員 いまも御指摘のありましたように、学習指導要領を非常に内容を精選して、基礎的、基本的事項にしぼったということで大変今度は苦労をしたわけでございますが、それに伴ってできてきます教科書が旧態依然として、非常に詳しい、いろいろな細かいことまで書いてあるとすれば、これは全然意味がないことになってしまうので、新しい内容精選の学習指導要領の趣旨を十分にくんで、教科書もその方向でつくってほしいということはかねがね繰り返し強く関係者に言っておるということは事実でございます。しかし、それがいろいろな教材を扱います場合に、一般論を重視して記述するのか、あるいは具体例をどの程度取り入れるのかというようなことについては、これは編集の方針に任されておることでございまして、少なくとも私どもとしては、基礎的、基本的事項にしぼったという趣旨を踏まえて教科書をつくってもらわなければ困るということを言っておるわけでございます。  先ほどから何度か御説明を申し上げているわけでございますが、具体的事例云々のくだりは、何といいますか、改定のポイントとして強く意識した点ではなかったわけでございまして、国民の健康の保護とかあるいは生活環境の保全ということが基本問題であるということを強調し、明確にするという点にあったのがその四十六年の改定でございまして、その点は何とか御了解をいただきたいと思うわけです。少なくとも基本的に言えますことは、公害に関する教育を軽んじるとか必要でないとかいうような趣旨は、先ほどから申し上げておりますように毛頭ないわけでございまして、現時点に立って適切な教育を施しておく必要があるということは言うまでもないということで御了解いただきたいと思います。
  192. 東中光雄

    ○東中委員 それでは、「学校の公害教育が狂っております」、こういうように経団連の月報の中で徳永さんは言っておるわけですね。その狂っている内容は何かといったら、本当のことを書いてあるけれども、過去のことをようけ書いてあるからだ、こう言っておるのです。それは前の学習指導要領では「具体的事例によって理解」させるように書いてあるから、教科書には必ず具体的事例を載せなければこれは欠陥教科書になったろうと思うのですね。そうすると、学習指導要領に「具体的事例」が入っておることが、公害教育は狂っているという評価を受ける原因になってきているわけですね。その部分をいま削っちゃったのだから、今度は一切こういう事例が載らないで、そしてもう教科書は、それで教科書としては欠陥教科書でないということになるのではないか、こう思うのですが、その点はどうでしょうか。
  193. 上田一郎

    上田(一)説明員 経団連関係のその記事については私は読んでおりませんので、存じません。ただ、教科書をつくります場合にも、先ほど申し上げましたように、今度の学習指導要領の趣旨である、内容を精選して最低限身につけるべき基礎的、基本的事項だけをしっかり教えるのだという趣旨でつくってもらわなければ困る。したがって、その趣旨に沿ってつくってあれば検定に合格するであろうということは言えるわけであります。どういう特色、編集方針でやられるか、先ほど言っておりますように一般論で書いてくるのか、あるいは具体的事例を豊富に入れてくるのか、その辺については従来から幾度かの改定に際しても特に意識した点ではないのでございまして、要するに、公害に関する教育についても、中学生なら中学生、小学生なら小学生にわかりやすい、身につけられる程度のそのレベルの基礎的、基本的事項が記述してあることが不可欠であるということでございます。
  194. 東中光雄

    ○東中委員 「具体的事例によって理解する」ようにせいというのがあって、具体的な例が教科書に載っておった、それについて公害教育は狂っておる、こういうふうに、社会的に相当有力な団体の機関誌といいますかで言っておるという状態になって、今度は、「具体的事例によって理解」させるという部分を削っちゃったら、具体的な例が全くないものが出てきても、その教科書は教科書としてオーケーになる、どういうように出してくるかは別としてですよ。そういう具体的な事例を書いてあるのが出るかもしれない、しかし書いてないのが出てきた場合にも、それはそれで教科書としては必須要件ではなくなってしまう、そういうことに今度の学習指導要領ではなるのじゃないかということを聞いているのです。どうですか。
  195. 上田一郎

    上田(一)説明員 その狂っておる云々のその記事については存じませんし、したがって、その指摘によってどうこうしたということもないわけであります。教科書はこれから小、中とも、一年ずつずれはありますが、検定を申請してきて、そして検定を経て採択、五十五年度、五十六年度から使用という段取りになるわけですが、その際に、現時点で言えることは、今回の学習指導要領の趣旨に見合った基礎的、基本的事項を重視するということを踏まえる必要があるということでございまして、これについては、昨年九月二十二日に教科書検定基準をそのような方向で全面改正したわけでございますが、それにも、先生がおっしゃる具体的事例云々、一般論云々というようなそういう観点はございませんで、要するに基礎的、基本的事項ということでございます。したがいまして、どの程度、具体的事例が云々ということが検定とどのように関係があるかということについては、現時点では私もお答えすることはできないわけでございます。
  196. 東中光雄

    ○東中委員 四十三年度の初めの部分、改定前の部分はそれがなかったのを、公害基本法が改定されたからということで、ほかの部分もありますけれども、「具体的事例によって理解する」ということをわざわざ入れたのでしょう。意味のないものを入れたというわけではないでしょう。公害基本法が変わったから入れたのだ、改定したのだ、こう言っているぐらいなんだから、その部分が今度また落とされているということを私は問題にしているのですから、それに目をつむったってだめじゃないですか。
  197. 上田一郎

    上田(一)説明員 先ほども申し上げましたように、当時の公害基本法の改正に伴う指導要領の改正の際につくった新旧対照表で、改正のポイントにアンダーラインを引くということをやります場合に改正のポイントとしているのは、「具体的事例」云々のところは直接のポイントとはしておらないわけでございます。全体の記述が変わった関係で、こういうふうに詳しくなっている、先生はその「具体的事例」云々のところを非常に重要ポイントにされておるわけですが、意味なく書いたということではございませんで、たとえばある人の説によれば、この時点においてはまだ公害と言っても小中学生の段階では何のことかわからないという共通状態があったということであるとすれば、具体的にたとえばこういうことだという事例から入っていくのが適切であるということはあったかもしれない。常にそのときどきの、その時点に合った効果的な指導方法ということで入っていく必要がある。だから、公害教育が必要でないとかいう観点からその「具体的」云々という記述を削ったのではなくて、常に最も適切な方法で教授をしていく必要がある。今回は内容の精選、基礎的、基本的事項にしぼるということでございますから、その方針で行うということでございまして、繰り返しになりますが、この時点でも、四十六年当時にも「具体的事例によって」云々がこの部分の直接のポイントではなくて、「国民の健康」というようなことを明確に入れるということがポイントであったということは先ほどから申し上げているとおりでございます。
  198. 東中光雄

    ○東中委員 あなた、詭弁を言ったらいかぬですよ。環境保全よりも国民の健康というのは、これはもういわゆる公害国会で基本法が変わる以前からその点はむしろ変わってないのですよ。だから、調和条項一つをとってみても、健康との関係で言えば、調和条項なんというのは、基本法が変わる前も変わる後も一緒なんですから。ところが、基本法が変わったからということでこの要領を改定したわけですから、そのときに健康を入れたとか入れぬとかなんということはこれは問題の中心にはならぬわけですよ。私が言うのは、具体的にあなたが、経団連というようないわば大きな力を持っておる団体が教科書を見て狂っておるということまで批判をしているということを全く知らなかったとすれば、もう職務怠慢もいいところだということになります。そういう担当の部署の人が、社会的にも政治的にも大きな影響力を持っている団体がそういうことを堂々と言うておる、活字にまでしている、たまたまこのことを知らなかったとしても、そういう趣旨の風潮といいますか、これは公害巻き返し路線の一つですよ。それを知らぬでおったというようなことはまさに逃げ口上になります。だから、前の指導要領でいけば、具体的な事例を挙げなければ欠陥教科書になったのではないですか。その点はどうです。
  199. 上田一郎

    上田(一)説明員 その記事については、私は存じません。  それで、先ほどから申し上げておりますように、いま先生がおっしゃいましたように「国民の健康」というのは前から当然入っていたんだということでございますが、それが学習指導要領に入っていなかったわけでございます。したがいまして、四十六年には、趣旨を明確にして公害対策基本法等の趣旨も明確に取り入れようということでこういう改正をやって、その「国民の健康や生活環境を守ること」というのをこういうふうに明確に書くということがポイントであったわけです。「具体的事例」云々は、たとえば先ほども申し上げましたその時点における効果的な指導法、これは例は適切でないかもしれませんが、コンピューターというものが全然何のことかわからなかった、つい近い時代でありますけれども、コンピューターと言われても何のことかわからなかった時代には、具体的事例でコンピューターとはというところから教えなければならないという必要があったわけです。したがいまして、いまではまずコンピューターとはというところから教える必要はないというような、その時点の推移というものはありますけれども、これは決して先生の言われる詭弁で申し上げているのではなくて、改正のポイントはさっき言ったようなことであった。そして効果的な指導方法として具体的事例から入らざるを得ない場合もあったかもしれないし、そういう時代の推移はあると思いますが、少なくともアップ・ツー・デートな公害教育を施す、その場合に基礎的、基本的な事項のことにしぼるという方針で今後とも充実をさせていきたいということで、これは詭弁ではございません。御了承いただきたいと思います。
  200. 東中光雄

    ○東中委員 これは押し問答になりますからやめますけれども、あなたの言っていることは筋が通らない。国民の健康を守るというのは公害の大前提であったわけで、だから公害国会での基本法の変更ということ、それに基づいて改定したんだというようにあなたのところは説明しているのです。ところがそんなことは、そのときの基本法の改正では何も変わっていないのです。変わっていないことを冗長に書き入れたというだけのことなんですよ。だって変わっていないことを、法律が変わったから入れるんだ、それは何かと言えば具体的な問題ということなんですよ。事実そうなんです。だから、教科書の公害教育の基本的な理念については全く変わってないということをあなたが文部省としてここで言うなら、四十六年の教科書と今度できる教科書との間に相違が出てきた場合——これは必ず相違か出てくると思うのですよ、だって現実が変わっているのだから。教科書の編集者もそうならざるを得ないだろう、そういう必然性が非常に多いということを言っているわけです。だから指導の面で、これは表現が変わっただけで内容的には変わっていないのだということをここではっきり確認をしておいてもらって、あとその実情を見ていくというようにしたいと思うのですが、どうですか。
  201. 上田一郎

    上田(一)説明員 先生の前段の御要請は、趣旨を公害対策基本法の改正に伴って変えたと言っているのに、従前からのをそのまま趣旨を書いただけでは伴ってということにならないではないかということであったろうと思いますが、その点は国民の健康というような当然の事柄が、当然でありながら学習指導要領にそれまで書いてなかったというような点もありますので、公害対策基本法の改正というのも当然、公害対策改善充実という方向に沿って行われたわけでありますから、それを機会として学校教育においても明確にその位置づけをしようということで、内容が不明確であったりあるいは脱落していると誤解されるような点があった点を「国民の健康」等を入れて記述を明確にしたという点がありますので、その点がポイントであったことは、従前から決まっておったこととは言いながら、その点が不明確になっておったのを改めたという点においてポイントであったことは事実でございます。  それから、教科書の対比でございますが、さっきも言いましたように、現時点において言えることは、現在は学習指導要領も若干記述が詳しいのですが、教科書も非常に小さい子供のころからいろんなことを教えたりということで、詰め込み教育ということがよく言われております。したがいまして、その各学校段階、各学年段階において確実に身につけさせるべき基礎的、基本的事項だけにしぼるということで学習指導要領を大幅に薄くしたので、その方針で教科書もつくっていただかないと困るということを強力に言っておるわけでございまして、そういう点で各教科、各教材、各項目につきまして内容が大幅に模様がえになってくることは予想されるわけでございますが、それがどういう対比になってまいりますかは、現時点では私はお答えすることはできないわけでございます。
  202. 東中光雄

    ○東中委員 どういうふうになってくるかわからないというふうな指導要領を出しておる、文部省としてはきわめて不見識だということになります。指導要領を出しているのでしょうが。そして、それがその結果どうなってくるかわからないんだ、そんなばかなことがありますか。  時間がありませんので、この質問は本日のところはこれで終わって、国鉄に来ていただいておりますので、四月十八日に若干質問をいたしまして問題が残っておりますので、一、二点お伺いしたいのですが、新幹線の実害調査、特に新大阪駅周辺、大阪市内関係の実害補償についてどのように進行しておるか、その後の経過を含めてお伺いしたいと思います。
  203. 杉浦弘

    ○杉浦説明員 お答え申し上げます。  新大阪周辺の実害補償の進み方でございますが、東淀川区関係につきましては、四十九年の四月から五十二年の八月まで実害補償のための調査をいたしまして、その後、物価のスライドであるとかいろいろ検討をいたしておりまして、大体整理が終わりましたので、ことしの五月一日から、東の方からただいま個人個人の方とお話し合いに入っておりまして、現在まで大体五十戸余りの方々の御了解を得られたという状態でございます。あと、引き続きまして精力的に進めてまいりたい、かように考えております。
  204. 東中光雄

    ○東中委員 その際、お伺いしたのですが、実害を受けておって補償の対象になると予測できる未解決の戸数、約千五百戸が五十二年九月末現在で解決がついたというふうに言われたのですけれども、そのほかどれぐらいあるのかということについてはこの前の答弁では全くなかったわけであります。予測される実害補償対象者といいますか、そういうものをいま国鉄としてはどのようにつかんでおられますか。
  205. 杉浦弘

    ○杉浦説明員 新幹線によります全国的な実害補償の総数につきましては、前回もちょっと御説明申し上げたわけでございますが、個々の方からの申し出によりましてその都度調査をして支払いをいたしてまいりますので、全数についてはちょっと数字はつかんでおらないという状態でございます。
  206. 東中光雄

    ○東中委員 申し出があったらその都度というふうにこの前も言われたのですけれども、たとえば、いまの大阪市内関係だけでいっても、調査に入ったのが四十九年で、五十二年の八月に終わる。そのずっと前から被害申し出というのはしているわけですね。申し出があったらその都度じゃなくて、申し出があってから何年か、あるいは数年もたってそれでやっといま五月一日から、先ほど言われませんでしたが、全部で五百戸くらいあるうちの五十戸は話がついた、こう言っておるわけです。だから、申し出があったら調査をして話し合いをつけるというその間が数年あるいは十年近くもかかるという状況から言って、どれくらいの申し出があるのかということについて国鉄全体としてつかんでいないというのは、私、非常に奇妙な状態だと思っています。  この前も申し上げましたが、障害防止対策をやるところが推定で一万八千戸ぐらいあると言われている。障害を防止する対策をとらなければいかぬところは、現に障害を受けておるということを前提にしてのことだと思いますね。それは音だけの場合もありましようけれども、振動の場合だってあるということになれば、その推測が立っていないということになると、国鉄の取り組み方というのはきわめて被害者側の立場を無視した態度をとっているんじゃないか、国鉄の都合だけで動いているという感じが非常に強くするわけですか、全く推定もつかないのですか。
  207. 杉浦弘

    ○杉浦説明員 最初のお話の、相当以前から申し出があったのに動き方が遅いじゃないかという点につきましては、これはまことに申しわけないの一語に尽きるわけでございますけれども、おくればせながら始めましたので、その辺はよろしくお願い申し上げたいと思います。  それから、先生からの第二点の障害防止対策、これは一万八千戸というお話が出ましたけれども、主体は騒音でございますが、先生も御存じのように、環境庁長官の方から振動の方の勧告もいただいておりまして、これは並行してやっております。実害補償の方は地域によってもかなり違いますし、地盤によっても違いますし、線路からの離れによってもいろいろ違いますので、いま正確に騒音と振動を一戸一戸のお宅の前で改めて測定をいたしましてそして恒久策を立てようということで防音対策、防振対策に取り組んでおりますので、そのうちの振動関係で実害補償をしなければいけないのがどのくらいになるかということは、いまの段階では全数としてはっきりつかんでおらない状態でございます。
  208. 東中光雄

    ○東中委員 現在、障害防止対策をやるための調査に入っているようでありますけれども、ことしの七月までの分で騒音八十ホン以上、振動は七十デシベル以上のものも入っている、全部合わせて一万八千戸ということになっていると思うのですが、推定としては振動七十デシベル以上の障害を受けているものはそのうちどれくらいあるのか、それもわかりませんか。
  209. 杉浦弘

    ○杉浦説明員 先ほどちょっと申し上げましたように、いま測定中でございますのではっきりした数はちょっとわかりませんけれども、大体二千戸程度ぐらいじゃなかろうか、若干数字は不確かでございますけれども、その程度じゃないかというふうに考えております。
  210. 東中光雄

    ○東中委員 それで振動による現実の実害を受けておる人の調査の問題ですけれども、この前、私、「建物調査表」を国鉄が淡路町付近について出された一覧表をいろいろ紹介しました、環境保全部長は御存じなかったようでありますけれども。この調査表によると、現状だけ書いてあって過去のことは出ないようになっているということでありますけれども、時期かずっとずれてきている。工事公害や何かと違って継続的な被害地問題が起きるわけですから、これについては過去の問題も含めて、昨年八月に調査しただけでなくて、今度はまた個々に調査をしながら、話をしながら実情を確かめていかれると思うのですが、そういう点について、この調査表だけに限らずに、過去の実害を全面的に調べて、実際に被害が発生をしており、その原因が国鉄新幹線によるものだ、相当因果関係があるということになれば全部について補償をするというたてまえで当然やられるべきだと私は思っているのですけれども、そういうふうに理解してよろしいですね。
  211. 杉浦弘

    ○杉浦説明員 先生のおっしゃったとおりでございまして、調査表につきましては現状しか書いてございませんが、過去のものにつきましても一応個人個人の方からお伺いいたしましてあわせて調査してきておりますし、今後の話し合いもございますので、いま先生のおっしゃったとおりでよろしいかと思います。
  212. 東中光雄

    ○東中委員 時間が来ましたので……。  全面的な調査をよくして、これはもう数年前のことになって、すでに補修をしてしまっているという場合には証拠関係で立証が非常にしにくいという事態も当然あるので、それは必ずしも被害者側の責任じゃなくて、おくれてきた国鉄側にも責任があるわけでありますから、だからといって、ない損害の補償をするというようなことは許されないことはもう当然でありますけれども、十分よく調査をして全面的な障害補償をされるように強く要請をして、私の質問を終わりたいと思います。
  213. 久保等

    久保委員長 次に、古寺宏君。
  214. 古寺宏

    ○古寺委員 この問題につきましては先日も質問いたしたわけでございますが、青森県の大鰐町の早瀬野ダムの環境対策の問題でございます。  このダムは約六千ヘクタールの水田の灌漑用水のためにつくられたダムでございますが、たまたま工事中に鉱害が発生をしていろいろな問題が起きているわけでございますが、その後、農林省としてどのようにこれらの問題の解決に当たっておられるか、承りたいと思います。
  215. 須恵務

    ○須恵説明員 お答え申し上げます。  虹貝川の水質の悪化に伴います補償対策といたしまして、一応三つの点をただいま御説明申し上げます。  まず、その第一点は、大鰐町の上水道に対する水質の改善でございます。  早瀬野ダム築堤工事によりまして虹貝川の水質に変化があらわれ、特にマンガンの含有量の増加が顕著でございまして、ダム下流約七キロメートル地点で取水をしております大鰐町の上水道に悪影響を与えております。この水質浄化のために大鰐町に浄化施設を増強していただきまして、苛性ソーダ注入強化等によるマンガンの除去等を実施していただいております。水道用水の安定取水に関しまして農林省は大鰐町との間で話し合いを進めまして、五十三年二月末に補償協定を締結いたしました。その内容は、新水源を求めまして取水位置を変更するために必要な費用の補償をいたしますということが一つと、それから、新しい取水施設が機能を発揮するまでの間、現在の水を水道基準に合致させるために必要な経費を補償いたしますという内容のものでございます。  その後、大鰐町から、取水の位置を変更しないで現浄水場の施設を拡充強化することによって対処してほしいという旨の申し入れがございました。これを受けまして、五十三年六月二日に協定の変更を行いまして、現在の取水地点を変えずに水質を浄化するために必要な施設の増強に要する費用を補償することにいたしております。それが大鰐町の水道取水に関する補償対策でございます。  それから二番目は、平川の内水面漁業組合に対する漁業補償でございます。  平川の内水面漁業組合に対する漁業補償につきましては、ダム工事に伴いますその他のもろもろの損失補償を含めまして昭和五十三年の四月二十六日に補償協定を締結いたしました。この協定に基づきまして昭和五十三年五月三十日に補償契約を締結しておりまして、六月上旬に補償金の支払いを完了する予定でございます。  それから三番目は、酪農家に対する乳牛についての損失補償でございます。  この酪農家に対する乳牛についての損失補償につきましては、昭和五十三年五月十五日に補償契約を締結いたしまして、六月上旬に補償金の支払いを行う予定になっております。  以上でございます。
  216. 古寺宏

    ○古寺委員 まず、この第一点でございますが、当初は汚染されていない、たしか島田川だと思ったのですが、別な川から水源を求めて上水道の水源とする、こういうお話であったわけですが、いろいろな水利権その他の事情によりまして、虹貝川から上水道を引っ張るという、現在のままを拡張していく、こういうことで一応町の方が契約を更新したようでございますが、現在のままで果たして上水道として今後心配がないのかどうかという懸念があるわけでございます。その問題につきまして、農林省並びに厚生省の見解を承りたいと思います。
  217. 須恵務

    ○須恵説明員 前回にも御説明を申し上げましたが、虹貝川の水質悪化に伴いまして農林省が各専門の諸先生方にお願いいたしまして、早瀬野ダム環境対策検討会というものをもちまして各種の検討を行ってきたところでございます。この検討会の報告書によりますと、いろいろな提案をされました各種の対策を忠実に確実に実行されることになるならば虹貝川のPHは源流の状態から考えて大体六・〇程度に落ちつくことが予想されるし、さらに含有金属についても各種の基準許容値を超えることはないというふうに報告書は結んであります。したがいまして、ダムの貯水は、農業用水として十分に利用可能であるというふうに私ども考えております。
  218. 藤田恒雄

    ○藤田説明員 お答えいたします。  大鰐町では当初、水源を変えたいというような要望があったわけでございますけれども先生お話しのとおり、水利権の問題、それからまた水量が非常に少ないというようなところから、島田川に変えるというのは非常に困難であるということでございますので、町といたしましては、現在地点でもって取水を続けたい、その場合にそのまま取水するのではなくて、井戸を掘りまして取水するということになりますと、かなりきれいな水が取れるということもほぼわかってまいりましたので、将来はそういうことも考えながらやっていきたいということでございます。なお、現時点でも水道につきましては、水道法に定めます水質基準を完全に満たすきれいな水が、処理をしましてできるようになっておりますので、保健衛生上の心配は全然ございません。
  219. 古寺宏

    ○古寺委員 環境庁にお尋ねしたいのですが、水道の基準は〇・三PPMでございますか、こういうふうに基準が定められているわけでございますが、マンガンの毒性について環境庁はどういうふうにお考えになっているのか承りたいと思います。
  220. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 マンガンにつきましては、人間にとりましても必ず必要な微量元素ということになっております。したがいまして、現在、排水基準ども一応決めてございますが、この際も、むしろ水産利用の観点からというようなことで、いわゆる生活環境項目ということで排水基準を決めておるというようなことでございまして、特にいわゆる有害物質ということで、カドミなりあるいはPCBなりというほどの問題ではない、かように理解をいたしております。
  221. 古寺宏

    ○古寺委員 環境庁のお話を承りますと、いつも余り心配がない心配がないとおっしゃっているのですが、現実の問題として、ダムの下流でもって虹貝川の水を飲ませましたところ、四月までに十七頭の牛が死産したり流産したり、早産で死んでおります。それからまた、乳牛の場合には、乳量が非常に目立って落ち込んで、流産死産した乳牛は、衰弱がひどいために九頭を肉用牛として売り払った、こういうふうになっておるのですが、こういうマンガンの汚水を飲ませることによって流産、死産したり、あるいは牛が衰弱をするというのはどういうわけでございましょうか。
  222. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 ただいま申し上げましたように、一般的には毒性等につきましては厚生省かその権威でございますけれども、その方面からも先ほど申し上げたようなことを聞いておりますので、そういうことをベースにいたしまして排水基準等も設定しておる、こういうことでございます。したがいまして、乳牛で相当の流産なり死産があった、あるいは牛が衰弱して乳量も落ちたというただいまのケースにつきましては、このマンガンとの因果関係かどうかということにつきましては、はなはだ申しわけないのですが、その辺は明確に関係がないとも言い切れないような感じもしますが、さればと言って関係があるともちょっとお答えしにくいあれなんでございます。その辺は農林省の方の関係もあろうかと思いますが、検討したいと思います。
  223. 古寺宏

    ○古寺委員 農林省では、牧場を経営している方から合計八百三十四万五千円の補償を求められておったわけでございますが、これに対して四百五十九万円を補償することでお話し合いがついているようでございますけれども、この牧場の乳牛のいろいろな死産、流産あるいは衰弱の原因は早瀬野ダムの汚水によるものである、マンガンの汚染によるものである、こういうふうにお認めになって、これは補償することになったわけでございますか。
  224. 須恵務

    ○須恵説明員 お答えをいたします。  早瀬野ダムの築堤が開始されまして、下流の牧場で昭和五十二年の一月、つまり去年の一月から四月までに子牛のいろいろな被害等が出たという訴えをいただきまして、早速調査に乗り出したわけでございますが、この牧場では牛の飲み水に沢水を使用してきたわけでございますけれども、ただいま申し上げました昭和五十二年一月上旬に沢水がたまたま凍結をしたために、虹貝川の水を二月中旬まで使用したようでございます。早速、専門家の弘前の家畜保健衛生所にお願い申し上げまして、いろいろな検査をしていただいたわけでございます。その検査結果に基づきますと、死亡原因は伝染病によるものではないということが明らかに確認されまして、五十二年の一月から四月の水質は実は不明なのでございますけれども、その後の水質の変化から、当時の水質は恐らく酸性がかなり強かったのではないかということが考えられます。これが恐らく乳牛へ影響を及ぼしたに違いない、子牛の死亡の原因になっていると推定されるということから、関係者に対し補償を行うこととしたわけでございます。先ほど申し上げましたような補償契約を締結し、六月上旬に補償金の支払いを予定してもります。
  225. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、マンガンによる汚水によって死亡したのか、酸性水を飲んだために死亡したのか、その辺がどうもはっきりしないわけでございますが、何かいまのお話でございますと、酸性水を飲んだためにそういうことになったと推定をなさったそうでございますけれども、マンガンについてはどういうふうにお考えになっているのか、もう一度承りたいと思います。  なお、それとあわせて、平川内水面漁業協同組合も水質汚染で川に魚がいなくなった、こういうふうに言っておるわけでございますが、これはどういうわけでございましょうか。
  226. 須恵務

    ○須恵説明員 お答えをいたします。  マンガンが影響しているのか、あるいは酸性が非常に強くなったその水が影響しているのか、その辺の細かい分析結果の報告は実は私受けておりませんので、ここではっきり申し上げられないのですが、総合判断をした結果、恐らく乳牛や子牛に影響を及ぼしたであろうという推定がいただけましたので、それに基づきまして補償をいたしておるわけでございます。  それから、魚がいなくなったという事実でございますが、これは恐らく非常に酸性の強い、PHが非常に低くなったということが原因であろうと考えられます。
  227. 古寺宏

    ○古寺委員 きちっと因果関係を明らかにしておきませんと、こういう失敗を今後も繰り返していくことになるわけですね。先ほど検討会の結論のお話がございましたが、この検討会の水質変化についての問題点につきましても、「虹貝川水質については、今後現状のまま工事を継続したとすれば、自然に改善されることは期待できない。またダム完成後の貯水についてもPH六・〇以上を期待することは困難である。ただし、十年程度の長年月が経過し両岸地域が安定すれば水質はPH六・〇程度に回復するものと考えられる。」というふうに検討会では指摘をしているわけでございましょう。ですから、これらの問題についてはやはり十分に因果関係を明らかにして今後の対策を立てなければならないと思うのでございますが、そういう面においての配慮か非常に欠けているように思います。なぜ早瀬野ダムを建設するに当たって地学的なあるいは水質化学的な事前の調査を十分に行わなかったのか、その点が非常に私ども疑問に思うのですが、これはどういうわけでございましょうか。
  228. 須恵務

    ○須恵説明員 お答えを申し上げます。  早瀬野ダムの流域は地質条件から鉱床賦存の可能性が強く、古くから繰り返し探鉱が行われておりまして、先回にも申し上げましたが、五十九カ所に及ぶ旧坑が発見されているぐらいでございます。この早瀬野ダムの流域のほぼ全域に弱い鉱化作用が認められまして、黄鉄鉱の鉱染がほとんどの岩石中に普遍的に認められておりまして、これが水質変化の原因となっていることは明らかでございます。したがいまして、PH値が落ちるということやマンガンなどが河川水へ流出してくる、そういう原因は確かにあったわけでございます。ただ、遺憾ながら、実はこの種の類例が現在までなかったこと、それから、いわゆる低品位の鉱化作用を受けた岩石が水や空気に触れてこれほど大量に金属が流出してくるということが実は想像できなかったということがございまして、大変遺憾でございますが、手当てが後手になったということでございます。  この貴重な体験をもとにいたしまして、今後のダム建設に際しましては十二分に調査検討実施し、再びエラーのないようにしたいと考えております。
  229. 古寺宏

    ○古寺委員 失敗したから今後は事前に十分に検討するというのはよくわかりますが、こういうような大きなダムをつくる場合には、普通は地質の調査なりあるいは地学的な調査を十二分にやってからいろいろ工事を始めるように私ども承っておるのですが、このダムの場合、どういうわけでそういう事前の調査が行われなかったのかということをお尋ねしているわけでございます。
  230. 須恵務

    ○須恵説明員 通常、ダムサイト、ダムをつくる場所ですが、ダムサイトを決定すること、それからダムのデザインをすること、これの重要な因子になるのは、地形的な、そのダム、貯水池としてのポケットがいいかどうかということの検討、それからいわゆる堤敷の地質がダムサイトとして向いているかどうか、地質は物理工学的な検討が主になりますが、この堤敷の地質の検討、それから築堤材料の選定、この三つが大きな因子になるわけでございます。  この三番目に申し上げました築堤材料の選定でございますが、材質的に使用が可能かどうか、それからなるべくコストを下げてつくるという必要がございますから、なるべく近いところにその築堤材料を求める、利用が可能で近いところに築堤材料を求める、こういう検討を、地質調査等を含めて種々実施するわけでございます。このような一連の検討をこの早瀬野ダムについても行ったわけでございます。いわゆる原石山調査と申しまして、築堤材料を求めるために広範なボーリング等を主にした調査が行われております。先ほど申しました、材質として使用可能かどうかの調査でございますが、この調査は、一応私どもがその設計計画の基準としております土地改良計画設計基準というのがございますが、これにはっきりうたわれております各種の試験を実施しておるわけでございます。この中に、必要に応じて行う試験として可溶成分含量試験というのがございます。このあたりがいわゆる材質についての検討を行う試験になるわけでございますが、この流域に見られますようないわゆる低品位の、非常に含有率の少ない、大体三から四%含まれておるわけでございますが、この程度の低品位の黄鉄鉱等の鉱物が現在虹貝川で見られるほどの水質変化を来すということは、一般的には予想ができなかったということのために、この可溶成分含有量の調査を細かく実施していないという実態がございます。この点は大いに反省をいたしておるわけでございまして、この時点でもう少し細かに詰めた試験が行われておれば、いわゆる後手にはならなかっただろうというふうに考えるわけでございます。
  231. 古寺宏

    ○古寺委員 これは反省しておりますというような問題じゃないと思うのですね。今後の問題もたくさんございますから、もちろん反省も必要でございますけれども、私は、このダム建設に当たって、現在約七〇%ぐらい進行しているわけでございますが、その間になすべきことを十分にやらなかったのじゃないか。予想されなかったとかいろいろなことをおっしゃっていますが、当然やらなければならないことを十二分にやらずにダム建設を進めてきた結果、こういうふうになったのではないか、こういうふうに考えるわけなんですが、いかがでございますか。
  232. 須恵務

    ○須恵説明員 先ほど説明をいたしました岩石のいわゆる化学成分分析ということに多少やはり不十分な点は認めざるを得ないというふうに思いますが、その他一般の原石の物理特性等につきましては十分に調査をいたしておりまして、早瀬野ダム築堤開始後、五十二年四月に、いわゆる川の水の異常が顕著に認められてから急速いろいろな対策を講じてきておるわけでございまして、一応、以後やるべきことはやったというふうに私は考えております。
  233. 古寺宏

    ○古寺委員 検討会の報告を見ますと、たとえば貯水池に水を貯水した場合に、この水位よりも低くなる休廃止鉱山の坑口は全部閉塞しなければいかぬ、こういうことも言っておりますね。あるいは休廃止鉱山に対する十分な対策も必要である。それが五十九カ所あるわけですよ。そういう水が貯水されると、当然水質にいろいろな悪影響がわかる。わかり切っているようなそういう場所にダムを建設するということがすでにこれは無謀な工事としか考えられないのです。現在は、建設してしまった以上はいろいろな対策をせぬといかぬわけでございますけれども、五十九カ所も休廃止鉱山があって、全然それが放置されているところにダムを建設するということが無謀だ、こう私は思うのです。いかがですか。
  234. 須恵務

    ○須恵説明員 先ほども申し上げましたように、いわゆる非常に低品位の鉱化作用が岩石中に認められることはダムの調査初期にわかっておったわけでございますが、これが河川の水へ非常に大きな影響を及ぼすということは実は想像できなかったというふうに検討会の報告にも最後まとめられておるわけでございまして、その辺の予想に的確性を欠いたということは確かに先生指摘のとおりでございますが、要するに非常にまれな出来事であるということがこういう事態になってきておるというふうに私は考えておるわけでございます。
  235. 古寺宏

    ○古寺委員 まれなということはあり得ないような不思議な現象である、そういうことは予想もできないことだというふうにおっしゃっておるわけですけれども、これはもうだれだって予想できるのじゃないですか。休廃止鉱山が五十九カ所もあるのですよ。  それでは、現在、農林省は通産省に対してどういうような申し入れなり、あるいは協議なりを行っておりますか。
  236. 須恵務

    ○須恵説明員 通産省や林野庁に対しまして、ダム建設を始める前には一応国有林野の活用であるとか、あるいは鉱区禁止地域の指定請求等を行うために必要な協議を行っておりますが、築堤に伴う河川流水の水質の悪化につきましては、全く予期していなかったために、あらかじめ協議は行っておりません。先生指摘の五十九カ所に及ぶ休廃坑口の処理につにつきまして、現在、林野庁、通産省関係機関と寄り寄り協議をしているところでございます。
  237. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは通産省にお尋ねしますが、この五十九の休廃止鉱山の坑口の問題についてはどのように対応していきますか。
  238. 左近友三郎

    左近政府委員 一般的に申しまして、休廃止鉱山の後の処理といたしましては、それが水質汚濁を来すとか、そういう鉱害対策上問題のあるものについては逐次休廃止鉱山対策ということで工事実施し、これは鉱業権者が明白なものは鉱業権者にやらせ、それから鉱業権者が不存在あるいは無資力というような場合には、自治体において工事をやってもらいまして、国が補助をするという制度で処理をしておるわけでございます。  虹貝川のこの問題につきましては、実はわれわれの方の調査では、水の問題といたしましては、大体の坑口は自然崩落で埋まっておりまして、水が出ておりません。ただ一カ所坑内水が流出しておりますが、これについても調査の結果、水質上は水質基準を満たしておって問題がないという結果が出ております。ただ、これは現在の状態のままであればそうなるわけでございますが、いま先生指摘のように、このダムができまして水がそこにたたえられるということになりましたときにどうなるかという問題はございますので、いま農林省からお話がありましたように、農林省ともよく御相談をいたしまして、今後の対策を講じていきたいというふうに考えております。
  239. 古寺宏

    ○古寺委員 厚生省にお尋ねしますが、一応基準が守られているから心配ないというふうなお話でございますが、基準値以内で抑えられていない場合がたびたびあるのでございますよ、基準値以内でない場合、マンガンの例で申しましても。  それから、今後こういうような非常に危険なところから上水道の水源を取っていくということは心配ないというふうにお考えですか。先ほども問題がありましたように、川にもう魚が住めなくなっている。乳牛が流産したり、死産したり、早産をしている。そういうような同じ水源を水道水として皆さんが飲んでいらっしゃる。しかもこの大鰐町というのは、今度若三杉が横綱になりましたけれども、大鰐温泉といって観光地ですよ。全国からいろいろな観光客がいらっしゃるところです。そういう大事な問題について〇・三PPm以内に抑えているから心配ないのだ、マンガンは人体には影響がないのだ、そういうことを平気でおっしゃっているけれども、心配ないと思っていらっしゃるのですか。
  240. 藤田恒雄

    ○藤田説明員 お答えいたします。  先ほど牛の被害のことが出たわけでございますが、農林省さんの方からお答えがありましたように、まだ原因がはっきりしないようでございますけれども、われわれとしましてもマンガンの人体に対する影響というものはそれほど心配はないのじゃないか。なぜ水道水にマンガンの基準があるかと申しますと、これはむしろ塩素や何かで消毒しますと、水道水に色がつくわけでございまして、そういう観点からその基準を定めているわけでございまして、毒性ということはほとんど心配ないのじゃないか。哺乳動物等の実験によりましてもPPmオーダーで一〇〇を超えなければマンガンそれ自体の毒性というものは問題にならないようなことでございますので、虹貝川のようにいま一番出ましても六PPmということでございますので、マンガンに関しましては人体の問題というのはないと思います。  それから、現実に水道水として使う以前は確かにそのままでは飲めません。PHも相当低くなっておりますし、マンガンも相当あるわけでございますが、それにいろいろ処理を加えまして水道水として現在はちゃんと基準を守らせるような形になっておるわけでございまして、そういう処理が不可能ということになれば、当然、取水地点を変える、あるいはほかからも水源を見つけてこなければいかぬというようなことになるかと思いますけれども、現時点で必要な対策を講じれば十分水道水として使えるものであればそれで差し支えないというふうに考えておるわけでございます。
  241. 古寺宏

    ○古寺委員 それから、排水基準を一〇ppmというふうに規定しておりますが、この根拠は何でございますか。
  242. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 先ほども申し上げましたように、水産利用の観点からということでございますが、具体的には、水産庁の方におきまして、水産用水基準ということで、魚類等に対する影響がないような線ということで一応一ppmというのを決めてございます。希釈拡散の問題がございますので、それの大体十倍ということで一〇ppm、排水が一応一〇ppmでも希釈拡散がされるので川の水としては一ppmといいますか、お魚の住む川の水としてはそれでいいではないかということで、逆算いたしまして、そういう形で一応排水基準を決めてございます。
  243. 古寺宏

    ○古寺委員 そうすると、厚生省は色だけで心配ないとあなたはこうおっしゃるけれども、何で魚は住めないのですか。あるいは学者によっては、自律神経に非常に影響がある、こういうこともおっしゃっている人もいらっしゃるわけです。これはどういうわけなんですか。
  244. 藤田恒雄

    ○藤田説明員 魚が住めない原因につきましてはちょっとお答えしかねるのでございますが、人体にとりましてマンガンというのはむしろ微量に必要な成分でございまして、食品等にもかなり含まれておるわけでございます。豆類等でも二〇PPmぐらい含んでおりますし、穀物でも二〇を超えるようなものはかなりあるわけでございます。そういう意味におきまして毒性というのは心配ないわけでございますが、多量にそれを扱うということになりますれば職業病等でも出てくることはございますが、普通のごく微量を含んでいるような場合につきましては毒性という問題はないかと思います。まして虹貝川のように六PPmということになりますれば、それだけのことでは、いままでのデータでは心配ないということは言えると思います。
  245. 古寺宏

    ○古寺委員 心配ないにこしたことはないわけでございますが、現実の問題として魚がいなくなったり乳牛が死産、流産したりしているわけでございますから、そういうふうに単純に、害がない、害がない、こうおっしゃっても、まだぼくはぴんときていないわけなんです。ですから、これからもひとつ検討をして、将来いろんなこういう問題で健康被害が出たりしないように、十分に研究をしていっていただきたいと思います。  次に林野庁でございますが、林野庁はこの休廃止鉱山一帯の地主ということになっているわけですね。そういう休廃止鉱山をそのままに放置しているために今回いろんな問題が発生してきているわけでございますが、林野庁としてはこの問題についてどういうふうに農林省と協議をし、今後の対策をお考えになっているか承りたいと思います。
  246. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  先ほど通商産業省の方からも御説明がありましたが、休廃止鉱山に原因する鉱害対策につきましては、鉱業権者、それから地方公共団体等がその対策事業を実施なさるわけでございますが、林野庁といたしましても、この対策事業の実施につきまして、処理施設のために必要な土地の貸し付け等につきまして積極的に協力してまいりたいと思います。  それから、早瀬野ダムの上流におきます休廃止鉱山関係につきましては、私どもの方は、通商産業省と農林省の方で調査されておるというふうに聞いておりますが、この調査の結果を待ちまして協力すべきことは協力していきたいと思っております。
  247. 古寺宏

    ○古寺委員 なお、この検討報告書の中に、早瀬野林道が非常にPHに関係している、こういうふうに検討会の方で指摘をしておりますが、この問題についてはどのように対処するわけですか。
  248. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  林道につきましては、私どもの手元にありますのは、国有林林道のつけかえ補償工事というのを東北農政局が昭和四十八年に実施いたしましてこちらの方が受領いたしておりますが、それ以来、林道工事というのを実施しておりませんので、国有林の林道の工事の影響はないのではないか、こういうふうに思っております。
  249. 古寺宏

    ○古寺委員 この検討報告書を林野庁はごらんになりましたですか。
  250. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 お答えいたします。  読んでおります。
  251. 古寺宏

    ○古寺委員 そうすると、この検討報告書に書いていることは林野庁の考え方と違うということなんですか。
  252. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 私どもの方といたしましては、東北農政局が実施されました林道工事、四十八年に終わっておるわけですが、それ以後のことについては林道工事を当該地域実施していないということを申し上げましたわけです。
  253. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、これは林野庁の林道ではなくて農林省の方の林道ということでございますか。
  254. 渡邊信作

    ○渡邊説明員 林道工事実施されたのが、ダムの補償工事といたしまして東北農政局の方で実施された、こういうことでございます。
  255. 古寺宏

    ○古寺委員 わかりました。そうしますと、この検討報告書の中で「従前から実施されている早瀬野林道工事による影響がある」というのは、これは農政局が行っている林道工事でございますね、農林省。
  256. 須恵務

    ○須恵説明員 そういうふうに理解できます。
  257. 古寺宏

    ○古寺委員 肉牛に対する補償も近いうちになされる、それから内水面漁業に対する補償も行う、さらにまた、大鰐町の上水道については早急に健康に被害がないように拡張工事その他を行う、このように理解してよろしゅうございますか。
  258. 須恵務

    ○須恵説明員 よろしゅうございます。
  259. 古寺宏

    ○古寺委員 そこで、環境庁長官にお尋ねしたいのでございますが、この早瀬野ダムに近いところでございますが、この前も申し上げましたように、現在、青森県ではただ一つの稼働鉱山がございます。これは尾太鉱山という鉱山でございますが、最近は非常に不況のためにどんどん人員整理が行われておりまして、現在は百七十人従業員がいらっしゃるのですが、かつては千人も超えるような人たちが働いておったようでございます。こういうような金属鉱業の不振をそのままに放置しておきますと、先ほどから申し上げておりますような休廃止鉱山がまたたくさんできるわけですね。その後始末のために大変な苦労をしなければならぬわけです。ですから、こういう不況の中で非常に困っておる金属鉱業に対して、政府としてあるいは環境庁としてどういうような方策をお考えになっているのか、今後の休廃止鉱山鉱害防止の対策とあわせて環境庁長官の御意見を承りたいと思います。
  260. 山田久就

    ○山田国務大臣 鉱山に係る鉱害対策につきましては、これは御承知のように通産省が所管しているわけですけれども鉱山による鉱害問題ということになりますると、操業を休止、廃止した後においてもなおその対策が必要である場合が多いという関係上、鉱山保安法においてこれに対処すべき規定を置きまして、さらに、四十八年に制定されました金属鉱業等鉱害対策特別措置法におきまして、その資金を確保するよう鉱害防止積立金制度を設けておりますし、また鉱害防止義務者が無資力であるというような場合においては休廃止鉱山鉱害防止工事費補助金制度で対処いたしております。このことは御案内のとおりでございます。環境庁といたしましても、これらの規定が厳正に運用されて鉱害対策に万全を期するよう通産省に要請しまするとともに、関係地方公共団体におきましても、各鉱山保安監督局と緊密な連絡の上対処するように、その万全の点について指導してまいりたい、こう考えておるような次第でございます。
  261. 古寺宏

    ○古寺委員 ところが、この尾太鉱山の鉱業所の次長さんは、つなぎ資金がなければもうとても持ちこたえられない、こういうふうにおっしゃっているわけですね。これについては通産省はどのように対応をしているか、お伺いしたいと思います。
  262. 福原元一

    ○福原説明員 国内鉱山が、国際的な需給のアンバランス、しかも国際相場によって価格が規定されるということによりまして非常な苦しい立場にあるということは先生指摘のとおりでございまして、私ども、非鉄金属鉱山を取り巻く諸問題につきまして、当面の救済措置を含めて今後のあり方を中心に、鉱業審議会の中に鉱業政策懇談会を設けまして御審議をいただいてきたわけでございますが、先月、五月二十九日にその報告書をいただきました。その報告書によりますと、現在の非鉄金属鉱業の窮状にかんがみて、価格が現在のように異常に低落している場合には特段の優遇条件による融資制度というものを導入する必要があるのではないかという御指摘をいただきましたので、私ども、早急にこのために具体策をつくってまいりたいと思っております。  なお、いずれにいたしましても、これも予算措置を必要とすることでございますので、それまでの間の当面の緊急融資対策等につきまして、先般成立いたしました円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法、これによりまして、尾太鉱山等の中小鉱山緊急融資の道が開かれておりますので、業種指定をいたしましてこれに対応させたいと考えておりますが、さらに、五十三年度予算も、新鉱床探査費補助金の単価アップ等、あるいは五十三年度、百五十一億の備蓄の枠を設けてございますが、これらを早期執行いたしまして、鉱山に資金が一刻も早く流れるように努力してまいりたいと思っております。
  263. 古寺宏

    ○古寺委員 通産省はそういう救済については十分考えているようなお話をなさいますが、一方では、掘れば掘るほど赤字がふえてくる。それは、どんどん外国から輸入しながら国内のいわゆる金属鉱業に対しては十分な保護がなされていない、そのためにこういう結果になっているということを現場の皆さんがおっしゃるわけなんですが、一体真意はどうなんでございますか。本当に国内の金属鉱業を保護していくというお考えがおありなんですか。
  264. 福原元一

    ○福原説明員 国内鉱山は、資源の乏しいわが国におきまして非常に重要な供給源の一つでございますし、かつ安定した供給源であると申せますので、私どもといたしましても、国内の鉱山をさらに、現在やっておりますいわゆる三段階方式という探鉱につきまして私ども助成をしておるわけでございますが、これによりまして、最近の数年間でも幾つかの有望な鉱床が発見され、開発されておりますので、今後もこの探鉱の助成というものを続けてまいりたいと思いますし、さらに、現在の不況が通り過ぎれば今後、世界的に需要が伸びていくということになれば、当然、世界において新しい鉱山の開発というものがなされる必要があるわけでございますが、今後、私どもは新しい鉱山をこれから開発する場合には、現在の世界の鉱山のコスト以上にコストは非常に高いコストにつくということは考えられます。その場合、国内の鉱山におきましてもそのコストに十分対抗してやっていける鉱山が幾つかある、かなりのウエートを占めているというふうに私ども考えておりますので、これらの鉱山につきましては、企業の合理化を要請すると同時に、私ども、先ほども申し上げましたような新しい対策をもって対応してまいりたい、こう考えております。
  265. 古寺宏

    ○古寺委員 時間ですから、終わります。
  266. 久保等

    久保委員長 次に、土井たか子君。
  267. 土井たか子

    ○土井委員 化学物質によりまして環境が汚染され、その環境汚染から健康被害が生ずるという一連の問題の中で、典型的な例は、よく挙げられるPCBの問題がございます。環境庁長官もよく御承知のとおりに、このPCB問題というのは、例のカネミ油の被害事件などに見ますように、一連の被害者方々がありまして、それに対して、問題の深刻さをいろいろと世上取り上げるということでこれに対する対策が初めてとられるというかっこうにも実はなってまいりました。環境庁所管の水質汚濁防止法二条二項の中にございます人の健康に係る被害を生ずるおそれがある物質として政令で定めます中にこのPCBを入れて考えられるまでの歴史的経過というのは、なかなか簡単に言ってしまうことができないぐらいに、非常に長時間を要したということを私たちも覚えているわけであります。  さて、同じような意味で、きょう私は、これから、ある特定の化学物質が環境を汚染しているために実はこういう現象が出ているのではないかという例を一つ挙げまして、これに対しての対策をどういうふうに考えたらよいかということをお尋ねしたいと思うわけであります。厚生省、御出席でいてくださいますね。  そこでお尋ねをいたしますが、ジブチルヒドロキシトルエン、略してBHTとこれから申しましょう、世上よく知られております酸化防止剤でございます。これについては、発がん性と遺伝毒性の疑いがとかく問題にされてまいっております。昨秋以来、厚生省としてもこれを要注意物質として考えていらっしゃるはずでありますが、厚生省が、これに対して現在プロジェクトチームを組んで各種の実験をされている最中だということを私たちとしては存じております。五十三年末をめどにこの実験が行われているということでありますが、そのとおりでございますか、いかがでございますか。
  268. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  ただいま先生の御指摘になったBHTでございますが、これにつきましては、国際機関でございますFAO、WHOの専門家会議におきまして一九七四年、それまでの幾つかの動物実験等のデータから人間に対する安全性について一日摂取許容量、ADIと申しておりますが、それを勧告しておりまして、それによりますと、体重キログラム当たり一日〇・五ミリまでは安全である、こういうような勧告をしておるわけであります。  厚生省のプロジェクトチームの件でございますが、私どもとしましては、新しく起こってまいりました、いわゆる遣伝毒性と申しておりますが、染色体に対する化学物質の作用と、それから、そういう作用を持った化学物質のがん原性、これの関連について厚生省にチームがございまして研究しております。その細胞レベルでの染色体に対するBHTの影響についてこのチームで検索した結果、一人の先生が陽性だという報告をしておりまして、そのほかの先生方はいずれもマイナスでございました。しかし陽性であるというふうにされました先生はこの方法を開発された学者でございます。それから、こういうBHTのような非常に身近な食品添加物については、安全性について、私どもとしては完全でなければならないと考えておりますので、このものについて、本当に発がん作用があるのかないのか、厚生省では現在動物実験を実施しているところでございます。
  269. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁のとおり、なおかつ動物に対しての実験をいま実施中でいらっしゃるわけですね。そして、なおかつ、研究者の間では陽性であるという結論をお出しになっていらっしゃる学者もあるわけです。こういう事実からいたしますと、現に合成樹脂、ガソリン、それから食品について言うと食用油であるとか、チューインガムであるとか、魚の塩干物なんかに酸化防止剤として広く添加されているのが現在のBHTについての実情であります。安全性に関しては種々の議論が現にあるわけでありますけれども、もうこれは申し上げることも不必要かもしれませんが、アメリカのFDA、食品医薬品局は、昨年の五月末でございましたか、動物の実験結果からBHTを安全添加物リストから外しまして、メーカーに注意を与えるという行政措置もなしております。こういう実情からいたしますと、食品衛生法の一部を改正する法律に対して昭和四十七年、当時の衆議院社労委員会でも附帯決議を行っているわけですが、その中に、先ほど私が申し上げましたPCBの問題に対して、「食品の安全基準の設定、毒性その他人体に及ぼす影響についての調査研究を急ぐこと。」まずこういう項目が、いろいろある項目の中の第十というところに書いてありまして、そして引き続き、「なお、産業上使用される化学物百の総点検を行ない、専門機関においてその毒性等を検査し、厚生省が安全と認めた場合に限り使用させる等の措置検討すること。」とございます。端的に言うと、疑わしきものは使用せず、こういう原則に従っての附帯決議というものがここに具体化されたと私たちは認識しているわけであります。こういうことからいたしますと、現に使用されつつあるBHTについて、一連の食品衛生上、厚生省としては、この使用について、一部使用林禁止あるいは使用の規制ということをお認めになっているはずであると思います。もう時間の制約から、私、具体的にお伺いしましよう。  牛乳とか、それから加工乳の容器についてはりのように考えていらっしゃいますか。それから、さらに粉ミルク等々についてこれが混入されることを認めていらっしゃるかどうか。いかがでございますか。
  270. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  先ほど来のBHTにつきましては、安全性の上から、私どもは、摂取を最小限にするように努めてまいっておりまして、これについては、魚介冷凍食品とか、あるいはチューインガムとか、油脂バターとか、そういったような、本当にこのものの酸化防止効果を必要とする幾つかの食品について、その配合基準を定めて、それ以外のものにはその使用を認めておらない、こういうようなことになっております。  また、粉乳等について、最近ある学会等で、合成樹脂に酸化防止剤、安定剤として使われておりますBHTが若干溶出してきておる、そういうようなことを発表した学者もございます。私どもは、その資料を取って分析した結果、非常に少量である、したがって健康上まず問題はないだろうと考えております。
  271. 土井たか子

    ○土井委員 まだ私がお伺いもしてないことまで御丁寧に御返答いただきまして、恐縮をするところでありますけれども、酸化防止上どうしてもやむを得ないという食品を除いて、これを添加することを認めていないというただいまの御答弁、それはそのとおりだろうと思います。したがいまして、私のお伺いしておることについてはいかがですか。粉ミルクには添加が認められますか。それから牛乳とかさらに加工乳を入れる合成樹脂容器についてはいかがでございますか。このことのお答えをまだいただいておりませんね。
  272. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答えします。  ただいま御指摘の食品あるいはその容器等についての配合は認めておりません。
  273. 土井たか子

    ○土井委員 配合は認めていないということになりますと、こういう物品の中から検出されるということは本来厚生省としては望ましくないとお考えになっていると思ってよろしゅうございますね。
  274. 宮沢香

    ○宮沢説明員 ただいま先生の御指摘のとおりで、そういったものから溶出するようなことは望ましくないと考えております。
  275. 土井たか子

    ○土井委員 さて、そうすると、先ほど少し先走りの御答弁をいただいているわけでありますが、望ましくない現象が実は出ているわけであります。幾ら微量と言ったって、現に検出されている以上は、望ましくない事実を認めざるを得ないわけであります。それはそのとおりだと思うのですよ。ある学者とおっしゃるのは阪大の植村助手のことを指しておっしゃっておるのであると思いますが、この植村助手の検査結果は、世のお母さん方にとっては非常にショッキングな内容であるということは疑いの余地はございません。私自身、新聞を読みまして、実に大変ショッキングな内容だなということを非常に強く感じたわけです。  まず、哺乳びんについている合成ゴム製の乳首からいまのBHTが検出されたという実験結果が公にされているわけでありますが、このことについて厚生省の方にも植村助手から要望書が届いていると私は存じます。これはお受け取りになりましたですか、いかがでございますか。
  276. 宮沢香

    ○宮沢説明員 受け取っております。
  277. 土井たか子

    ○土井委員 それに従って、一応厚生省とされては、哺乳びんに使用する乳首にBHTが混入をされていることは本来望ましくないという立場から、これは認められないという立場からいろいろ検討を進められたに違いないと思いますが、このことに対しての調査検討はなさったかどうか、なさった結果いかがであったか、その辺はいかがでございますか。
  278. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  先ほどの乳首から検出されました合成ゴムについては、厚生省でも調査をしておりますか、イソプレンゴムを使用したものからBHTが溶出してくるという事実をつかんでおります。また、同様な実験結果は植村助手からも厚生省に報告されておるわけでございます。
  279. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃいましたイソプレンゴム、現在市販されている乳首の大半はこのイソプレン製の乳首なんでしょう。いま、同じく合成ゴムの中でも、シリコンゴムについては化学構造上BHTを必要としないというのははっきりしているわけで、この助手のいろいろな実験結果からもBHTは検出されておりません。したがいまして、問題になるのはこのイソプレンゴムだと思うわけでありますが、ポリイソプレン製のものについてどのような調査結果が出てまいりましたか。
  280. 宮沢香

    ○宮沢説明員 現在使用されておりますイソプレンゴムの乳首から、実験した結果によりますと、私どもの持っている二つの機関、一つは植村助手でございますが、学会に報告されたとおり、過酷な条件で抽出してみますと、〇・一PPmから〇・四三PPm、また私どもの方の食品衛生協会というので実験をしてもらったところでは〇・〇四PPmから〇・一三PPmというレベルのBHTの溶出を認めております。
  281. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これは植村助手が出されている実験結果と同様の結果を厚生省も御確認なさっている、このように考えてよろしゅうございますね。
  282. 宮沢香

    ○宮沢説明員 そのとおりでございます。
  283. 土井たか子

    ○土井委員 いま植村助手自身がはっきりデータとして出しておられる中身から考えてまいりますと、仮に体重三・三キログラムの標準新生児の場合、濃度一二・三%のミルクを一日に七百グラム、百グラムを七回に分けて飲んだといたしまして、ミルクの調製や授乳時の温度、時間なんかをならして考えてまいりますと、この間に乳首から〇・四三PPmの濃度でBHTがミルクに溶出していく可能性を認めざるを得ないということになるわけでありますが、この結果、新生児、乳幼児に与える影響を厚生省としてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  284. 宮沢香

    ○宮沢説明員 植村助手の指摘によりますと、非常に過酷な条件で、一番入っているものをもととして計算しますと、体重キログラム当たり一日〇・一二ミリグラム摂取するという計算になっております。国際機関でございますFAO、WHOの評価では、一日に体重キログラム当たり〇・五ミリグラムまで摂取しても問題はないという数字が得られておりますので、それから見ると、まだまだ相当下回っていると私ども理解しております。
  285. 土井たか子

    ○土井委員 日本の厚生省というのはWHOで言うところの数値を新生児や乳幼児それから病弱の  人たちに対して当てはめて、それでよいというふうに、それで十分大丈夫だというふうにお考えなんですか。乳幼児や新生児はこれ以外に食べるものがないわけでしょう。これを常食としているわけですよ。これ以外に飲まない、食べない。しかもいろいろな体の機能からいたしまして、WHOの言う成人の一日摂取許容量という物の考え方でこれは適用していっていいかどうかということを思いますと、私は不適当だと言わざるを得ません。だから、それに照らし合わせてはるかに下回る数値だから大丈夫だと言い切っていいのかどうか、この点、どのように考えていらっしゃいますか。
  286. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  食品添加物の一日摂取許容量、ADIというものを設定する場合に一つの原則がございます。これは長期間、一生涯にわたって動物に投与しまして、どこの濃度まで投与した場合にその動物に対して全く無作用である、つまり最大の安全量はどこにあるのだという量大安全量を一生涯にわたって投与した結果得られるわけであります。その動物に対して全く安全だ、入っていないコントロール群と全く同じ結果である、その量をもとにしまして、動物と人間との差を考慮して十倍の安全を見ております。つまり、動物で全く安全だ、何ともないという量の十分の一の量にまず抑えます。それからその次に、それに対して、病人もいる、子供もいるということから、同じ人間でもそこでさらに十倍の安全ということで、動物で全く作用のない、つまり無作用量に対して百分の一の量がADIの設定の根拠になっております。
  287. 土井たか子

    ○土井委員 いまのはWHOのこの摂取許容量の出し方に対しての御説明しか承ってないわけです。それからどうお考えになるかということを、実は私は先ほど質問を申し上げた。質問に対して、それに答える御答弁をお願い申し上げたいと思います。  そこで、これは次の質問とも含めて私は御答弁をいただきたいと思うのですが、このWHOの方で言っている数値自身に対しても厚生省としては種々そういう御説明をなさいますが、この数値の科学的根拠がまだまだあいまいであると言う学者も現実にあるということを厚生省はよく御存じの上でおっしゃっていると思います。  ところでこの問題は、新生児について、なおかつ植村助手のいろいろな資料を見てまいりますと、この乳首から出る〇・四三PPmの濃度だけではなくて、さらに、恐らくいま新生児の大半は粉ミルクによって育てられていると思うわけであります。この粉ミルクで育てられている新生児の実態を見てまいりますと、粉ミルクにもBHTが含まれているというまことにショッキングなデータがさらに出てくるわけです。最高値が粉ミルク中には〇・九七PPmというのが数値の上で出てくるわけですが、それを見ますと、一日摂取量〇・三八ミリグラム、体重一キログラム当たりにして考えると〇・一二ミリグラム、これは先ほど御答弁をいただきましたWHOの一日摂取許容量について言うとその四分の一くらいのところに当たるわけですね。赤ちゃんが、新生児が、乳幼児かこのWHOによる一日摂取許容量の四分の一くらいのところを連日これを体内に入れているというこの現実、そうして特に最初に厚生省がお答えになったとおり、BHTというのは遺伝毒性が実は問題なんでしょう。  そういう点から考えていくと、急性の問題じゃないのですね。慢性にその特徴があるわけですよ。だから、この点を配慮なさいますと、出る数値が低いからといって大丈夫だと言い切れる問題ではなかろうと私は思うのです。だから先ほど申し上げたとおり、疑しきは使用せずという原則に従ってとられた措置というのがあの食品衛生法の一部改正のときの附帯決議の中に盛り込まれた趣旨ではなかろうか。だから、そういう点からしますと、現に乳首の中でもシリコンゴムの場合には検出をされていないわけでありますから、これには何らかの行政指導があってしかるべきだと思いますが、何らかのそういう調査結果を生かした措置というものを厚生省としておとりになっているのかどうか、その点はいかがなんですか。
  288. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  最初に、前段でございますが、WHOで出しております数字につきましては、生まれ落ちてから、死ぬまで与えてそして安全であるというそういう量でございますので、先ほど先生が言っておられます毎日摂取しておるということは当然前提条件として設定された数字でございます。しかしながら、先ほど来、先生指摘のように、私どもとしてはそういう安全な化学物質であっても必要以上にとることはないというような観点から、厚生省としましては、合成樹脂製の容器、包装等について全般的に年次的な計画を立てまして、BHT等が溶出しないような良質のものにしていくような規格基準の作業を強力に現在進めておるわけでございます。こういった作業の進展に伴って、いま先生の御要望の点についてはおいおいと満たされていく、こういうふうに私は考えております。
  289. 土井たか子

    ○土井委員 おいおいと満たされていくというのは、具体的にどういうかっこうで満たされていくのですか。このBHTが検出されない乳首が市販されることになるということが具体的なことにならなければ困るわけでありますが、それについて厚生省としてはどういう努力をなさるわけですか。
  290. 宮沢香

    ○宮沢説明員 ちょっと説明が不足でございました。  BHTにつきましては、WHOの評価というものはがん原性、発がん作用がない、あるいは催奇形性作用もないとかいうそういうあらゆる動物実験の結果を踏まえて安全量を出しておるわけでございまして、したがって、先ほど来の〇・五ミリグラム・パー・キログラム体重というのは、毎日摂取しておっても問題はない、こういうことでございます。しかし、食品衛生法の改正の機会にそういった必要最小限度の使用にとどめるべきである、こういう御決議の線に沿って、私どもとしては、食品添加物の使用あるいはその他の化学物質についても極力入ってくるものを防遏する、防止する、こういう線に沿って合成樹脂製の容器、包装等についてもそういった規格基準の設定ということについて努力しておるわけでございます。
  291. 土井たか子

    ○土井委員 どうも要領を得ない御答弁なんですよね。最初にどういうことをおっしゃったのですか。BHTについては現に厚生省としては調査研究中なんでしょう。そして、その中で、学識経験者の中にはクロと言われている人があるわけなんでしょう。現にまだ調査研究中なのではないですか。これは全く真っ白と言えない状況なんですよ、ただいまの段階は。その中で厚生省としては、もう古く四十六年に「牛乳、加工乳などの合成樹脂製の容器の承認申請について」という通達まで出して、これによってBHTの使用というものを認めないということを原則としていらっしゃるわけでしょう。こういう一連の措置をとっていらっしゃることからしますと、乳幼児がこれを常時口にするこの乳首の問題というのは深刻ですよ。このことから、いささかでも検出されるということに対してはもっと真摯な立場で、この事柄に対して受けとめていただかなければ困るわけであります。WHOの基準値からしたら大丈夫だの、やれ摂取量からしたらはるかに下だから大丈夫だの、言いわけばかりやって、一体厚生省がいままでやってこられたこういうBHTに対しての調査研究というものはどういう意味を持っているのですか。そういう点からいったら、BHTについて真っ白だという結果が出るまでは一時使用を中止するというぐらいの態度でこの問題に対処しても私は行き過ぎでは絶対にないと思うのです。この乳首の問題に対してもう少ししかとした御答弁がここであってしかるべきだと思いますよ。いかがです。
  292. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申します。  お言葉を返すようですが、BHTというものは私は非常に安全な化学物質だというふうに考えておるわけでございます。ただ、先ほど来、先生のおっしゃっているようなバックもございます。ですから私どもは、乳首等につきましても、それも含めて、なるべく溶出しないようなものに切りかえるような指導はもちろん関係業界にいたすつもりでおりますが、それ以外のものについても、RHTの溶出等を最小限度に抑えるように、それ以外の食品容器、包装等の規格基準も強化をする、そういう作業を現在進めておるわけでございます。
  293. 土井たか子

    ○土井委員 その作業というのは、いつごろ完成するのですか。
  294. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  前に発がん作用があるということで問題になりました塩化ビニール製の樹脂がございました。これの容器、包装につきましては、すでに私どもは材質基準を厳重にしまして、現在使われている塩化ビニール樹脂製の容器、包装からは食品中にモノマーは溶出してこない、こういう基準をすでに設定しておりますか、引き続きましてポリオレフィン等についてほとんど作業が終わりましたので、その告示の作業に現在取りかかりつつあるということでございまして、乳首等はたまたまその年次計画の中にはまだ入っておりませんが、先ほど言いましたように、関係業界に対して、先ほどのシリコン樹脂なんかでは出てこないので、そういったものに切りかえるような指導はもちろん進めると同時に、こういった現在の溶出するとされている乳首等についても、もちろん、その規格基準の設定の一環としてさらに良質の、溶出してこないようなものがつくれるかどうかについても検討を進めてみたい、こういうことでございます。
  295. 土井たか子

    ○土井委員 何だか場当たり的な御答弁のように聞こえてならないわけでありますが、さらに粉乳の問題の方へ移します。  粉ミルクの場合にはBHTが混入されるということを一切厚生省としてはお認めになっていない、こういう前提で従来市販されている粉ミルクに当たられたかどうか、いかがですか。
  296. 宮沢香

    ○宮沢説明員 粉乳中にBHTが溶出しておる、若干検出された、こういうような報告がありましたので、早速関係業界に対して、その辺の原因の究明等について現在指導しておるところでございますが、厚生省としましても、そういった粉乳等についてBHTの検出がなされないように強い指導を業界にしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  297. 土井たか子

    ○土井委員 その指導をされても、先ほどお名前を幾たびか出しました阪大の植村助手の実験結果によりますと、分析をした市販されているそれぞれのメーカーの全製品からBHTが検出されています。すべてのメーカーが出している粉ミルクからBHTが検出をされるという結果が出てきております。それぞれはそう量は多くありません。けれども、すべてのメーカーから出ているということも事実であります。  そこで、いろいろこれに対して汚染防止措置ということが必要になってくるのですね。検出されてはならないところから検出されているわけでありますから、何とかこれをなくさなければならない。現に出ているのを一応使用禁止をするくらいの取り扱いを厳重にすべき問題であろうかとも思いますけれども、しかし大急ぎで何らかのこれに対しての防止措置考えていかなければなりません。そういう点からいたしますと、いろいろ要件は考えられますが、粉ミルクの中の脂肪含量は粉ミルクのおよそ二五%と考えられていいだろうと思うのです。もし粉乳中の脂肪の酸化防止を目的としてBHTが作為的に添加されているということであるならば、今回の阪大の植村助手の分析結果に見るような少量では済まないであろう。今回の分析値をはるかに上回る量が検出されて当然だろう。だから、そういう点から言ったら意図的な添加ではないと思われますが、この点はどのように考えられますか。
  298. 宮沢香

    ○宮沢説明員 関係業界を調査したところ、いま先生が御指摘のような脂肪分に意図的に添加する、そういう事実は全くございません。
  299. 土井たか子

    ○土井委員 それはそのとおりだと思うのですが、そうしてさらに、分析された全社の製品からBHTが検出されたということから考えていきますと、汚染原因はすべてのメーカーに共通している可能性があるところにあるというふうに考えなければならない、このように思いますが、この点はどうお考えですか。
  300. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答え申し上げます。  こういった植村助手の報告がもたらされましたので、早速関係業界に調査を命じたわけでございますが、とにかく目下のところ、その原因というのが全くわからないということで、私どもは、急ぎその原因の追求を命ずるとともに、排除するように強い行政指導を行っておる、こういう状況でございます。
  301. 土井たか子

    ○土井委員 その点にこの植村助手も目をつけられまして、市販されている牛乳三検体について当たられたところが、それからもBHTが検出されたということでございますから、粉ミルクの原料である生乳がすでにBHTで汚染されているということも考えられるという結果が出ているわけです。このことについてどういうふうにお考えになりますか。
  302. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答えします。  実は、環境中のそういったものについての調査は厚生省はまだやっておりません。ただ幸いなことに、アメリカのFDAに友だちがおりまして、そういった調査について聞きましたところ、やはりそういった調査は若干ありまして、いまおっしゃったような原因がわからないような形で検出される場合もあるというふうに聞いております。
  303. 土井たか子

    ○土井委員 という御答弁で済ますわけにはいかないのですよ、実は。というのは、このBHTの混入経路が不明であるということは、汚染源が不明であるということであり、それに対するコントロールも不能だということになります。コントロールか不能であるということくらい不安なことはないわけです。コントロールがきいて初めてこれに対してやはりいろいろと健康被害というものを未然に防止する対策も講ずることができるわけでしょう。どれくらいが人体に摂取されても大丈夫かという数値もそういうコントロールによって生かしていくことができるわけでしょう。したがいまして、いまの汚染経路が不明であるということは何としても大変憂慮すべき問題だと私は思うわけです。  現に、BHTのことについて種々検討してみますと、荒川であるとか多摩川であるとかの下流のヘドロからも検出されていることは、環境庁もよく御承知のとおりであります。いま端的に荒川、多摩川という名前を出しましたけれども、こういう河川からBHTが検出されるという事実を環境庁としても掌握されておるでありましょうね。いかがでございますか。
  304. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 私の方で、昭和五十一年度につきまして、環境中、特に水質あるいは底質の中におきますBHTの検出の調査をいたしました。六十八検体を検査をいたしましたところ、水質からの検出はゼロでございました。しかしながら、六十八検体のうちの十検体、これはヘドロの中でございますが、荒川の河口底質、あるいは四日市の河口の底質というようなところの十検体から検出をされておるわけでございます。
  305. 土井たか子

    ○土井委員 事実いろいろな検体からBHTがすでに検出されているということも環境庁としては掌握をされているわけでありますが、ただいま多摩川の河口なんかにどのくらいあるかというのを聞いてみると、ヘドロの中に最高値が〇・九八PPmという数値も出ております。こういうふうになってまいりますと、いま粉乳へのBHTの混入経路はここであるということがはっきりつかめないまま、まことに不安な状況の中で、しかしそれぞれのメーカーの市販されている粉ミルクの中にはBHTが現に混入しているわけでありますから、したがって、これを取り除いていくことのためには、その経路とどこからこれが出ているかという汚染源というものをはっきり掌握することが、まず何よりも大切になってくるわけであります。このことに対して厚生省としては、いま努力されていると先ほどの御答弁の中にもございましたが、具体的にどういう状況になっているかということを御説明賜れればここでお聞かせいただきたいと思います。
  306. 宮沢香

    ○宮沢説明員 御説明申し上げます。  恐らく製造に使用しております器具等から、あるいはそのコンタミナントというような形で入ってきておるんじゃないかというふうに想像されるわけでございますが、そういったものについて良質の器具等を使用するよう努力もしているようでございまして、最近の調査では溶出する、混入されてくる量が大分下がってきておる、こういうような実情でございます。
  307. 土井たか子

    ○土井委員 それは器具と言われることからすると、なおかつ、かつて牛乳や加工乳についての通達というものが具体的になかなか徹底していないということにも事実問題があろうかと思います。改めて厚生省としてはこれを、そういうものに対しての点検と適正な行政指導をされる機会にしていただきたいと思うのです。  ただしかし、先ほど来、もう環境庁としてもこの事実を掌握されているとおりで、BHTの汚染がヘドロの中にあるという事実もすでに現実の問題でございます。したがいまして、これを機会に、BHTの環境中における分布であるとか動態の早急な究明が、厚生省のいま現に進みつつある研究実態調査の中に生かされてしかるべきだと思います。この点は両省庁間でさらに具体的なそういう連絡をぜひしていただかなければそのことが進まないだろうと私は思いますが、これは環境庁とされてはいかがでございますか。
  308. 山本宜正

    山本(宜)政府委員 御指摘のように、私ども、化学物質による環境汚染というものをいろいろな角度から調査しておるわけでございますが、河川の水質からは発見されないけれども底質から、特に河口底質から発見されたということにつきましてどういうことかということで、推察されますのは、やはり都市で使用されるいろいろなプラスチックそのほかこういったBHTが添加されているものの廃棄物として底質にたまっているのだろう、こういうぐあいに想像できるわけでございます。  私ども、化学物質の規制に関しましては、通産省、厚生省、環境庁関係ところで情報交換を絶えずしているわけでございまして、先生の御指摘の点につきましては関係省庁の間で相談をしながら、今後こういった物質がどういった経路からそういったようなところで発見されるかということを見きわめる方向での調査は進めてまいりたい。その結果によりまして化学物質の今後の処理、規制の問題をどういう方向づけで出すかということを見出してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  309. 土井たか子

    ○土井委員 最後に。かつてPCBの問題が世上注目を沿びましたとき、私どもが一番ショッキングであったことは、母乳から高度のPCBが検出されたというこの事実なんです。母乳によって育てられる子供がそれを受ける。そしてPCBというのは御承知のとおり慢性毒性が非常に強いということで憂慮される物質でもあります。今回のこのBHTについても、これが新生児、乳幼児の常時食する粉乳の中から検出されたということが非常にショッキングであるというのは、これはだれに聞いても思いを一にするであろうと思うわけであります。この点からすると、厚生省のこれに対する対応というのは非常にのんき至極だと私は申し上げたいと思うわけでありまして、先ほど来の御答弁を承っておりましても、もう一つぴんとくる御答弁ではないように私には思われてならないのです。いま鋭意検討中であるとおっしゃるこの物質はなぜ検討が必要かということを思うと、このことに対して安全性が確認されてないという一点に尽きる。恐らく五十三年度の年度末にこれに対しての結論を出すべく鋭意いま検討中だというかっこうでありましょうけれども、したがいまして、そういう要素を多分に含んだ物質であるというこのBHTに対する取り扱いを、もう少し深刻に受けとめていただきたいと思います。私はそういう意味で、この阪大の植村助手の実験結果というものを非常にショッキングな結果として受けとめたわけであります。ひとつ厚生省とされても、単に一助手の研究ということでなしに、同じような検体について当たられた結果、同様の結論を得られているわけでありますから、これに対する対応も、いまのようなことではなしに、もう少し具体的に、誠意を持ってこれに対する取り組みを進めていただきたい、このように思います。  最後に、厚生省としてその点に対する御見解をひとつ承って、質問を終えたいと思います。
  310. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答えします。  厚生省で現在進めております発がん作用があるかどうかを含めた長期的な実験結果の出るのを待ちまして、それに沿った対応をすると同時に、容器、包装等につきましては、BHTが溶出しないようなものに早急に切りかえられるような指導を強めると同時に、その他全般の容器、包装の基準も設定するよう努めてまいりたいと思います。
  311. 土井たか子

    ○土井委員 私はこれで質問を終えますが、結果が出るのを待ちましてという御答弁はいつも私は気にかかるのですよ。もうすでに一研究者は、これをクロであるということを調査結果、研究結果で認めておられるわけでしょう。このことを現実の問題としてどの程度厳しく受けとめられているかということは、ただいまの御答弁を聞いていたら、厚生省としてはまたまたこの問題をそう厳しく受けとめていらっしゃらない、私はそういう感想を持ちます。疑わしきは使用せずということについて、もっと厳しく厚生省としてはいろいろ行政措置を講ずるに当たり考えを進めていただかなければならないと思いますが、この点、再度課長からの御答弁をひとつ聞かせていただくことを申し上げて、私は終わりにします。いかがですか。
  312. 宮沢香

    ○宮沢説明員 お答えします。  確かに一人の学者がそういう毒性について問題を提起しております。それは、私どもよく知っております。ですから、慎重の上にも慎重を期してその安全性の究明を進めておるわけでございますが、それとは別に、粉乳等についてBHTが混入してこないように早急な措置をとるべく関係業界を強力に指導していきたい、こういうふうに考えております。
  313. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  314. 久保等

    久保委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会