○二瓶
政府委員 御審議いただいております
政府案におきましては、
一つは、
富栄養化の
防止といいますか被害の
発生の
防止という条項を設けまして、一応
法律の形としては
指定物質ということで
指定をすれば、燐その他のものもできるわけでございますが、当面は燐を
指定しようかと
考えておるわけでございます。そして
行政指導ベースでもってこの
削減に取り組んでいこうという姿にいたしております。
それとともに
赤潮という話も出ましたが、
赤潮の
メカニズムの
解明というものがまだ十分できておりませんので、この面につきましては、御審議いただいております
法案の十八条に、
赤潮の
発生機構の
解明に努めるものとするという形で新しく挿入をしたということでございます。
この
赤潮の
発生機構の
解明という問題につきましては、かねてから
赤潮研究者の方々にいろいろ取り組んでいただいておるわけでございますが、事が事でございまして、簡単にこの
メカニズムがわからぬというのが
現状でございます。ただ、今後とも引き続きこの面については
解明に
努力していくということを盛り込んだわけでございます。
一方、この
努力規定がありますほかに、現実的な問題といたしまして、冒頭申し上げました燐の
削減対策というものを
考えたわけでございますが、この
考え方は、表題にもございますように、「
富栄養化による被害の
発生の
防止」ということでございまして、
赤潮の
発生の
防止とは端的に書いてないわけでございます。要するに燐なり窒素たりが流入するとそこで
富栄養化の現象が出てまいるということでございます。このことのためにいろいろな影響が出るわけでございますが、
赤潮は、この
富栄養化の問題の際の窒素、燐という
一つの栄養塩類を栄養素として
赤潮生物というものが増殖をする。ただ、ああいうふうに、なぜある時期にある種類の
赤潮生物が一挙に大量に
発生するかということになりますと、これは海象、気象、いろいろな要因が絡み合って出るわけでございます。燐なり窒素なりの濃度が毎年変わらない場合がありますが、それでも
発生したりしなかったり、そこは海象、気象の問題等がいろいろ絡んで好適な条件になったときに
発生するということでございます。しかし、
富栄養化の要因の物質として燐、窒素があるということは否定できない通説になっております。したがいまして、
富栄養化による被害の
発生の
防止に取り組んでいきたいということで、
行政指導ベースでございますが、十二条の三というのを織り込んだわけでございます。
問題は、なぜ燐は
規制ができぬかということになりますと、一般の汚濁物質でございますれば少なければ少ない方がよろしいわけでございますが、片方は栄養分でございますから、全然なくなってしまったら、水清くして魚すまずとなりまして、何ともならぬわけでございます。少なくしてはだめだし、多くしてもだめだ、どの辺がいいのかというのがなかなかわからないところでございまして、
環境のクライテリアみたいなものも要るのじゃないかということで、研究者の方にもいろいろ検討してもらっておりますが、これはなかなか困難でございます。したがって、望ましい
環境水質のレベルが燐についてもはっきりしておらないのに
排水規制をかけてここまで落とせと言っても無理でございますし、また
排水技術そのものについてもいろいろ技術的な問題がございます。しかし、燐の方につきましては、凝集沈でん等によって大分
削減のめどが立ってきたということでもございますので、
排水規制というか
排水基準は、現在、水濁法体系上設けておらないわけでございますが、
赤潮の
発生とか
海水浴場が閉鎖になるとか、
富栄養化によりますいろいろな被害が頻発しておるという現実を踏まえまして、何もしないでおくというわけにはとうていまいらぬ、
COD対策だけに血道を上げているわけにもいかない、それとあわせて何らかの手だてでこの燐
対策に取り組んでいくべきだ、いまの知見その他からすれば
規制というものは無理だ、しかし、
行政指導でその
削減の一応のめど等も出して何とか燐を
排出する者がそれぞれ
削減の
努力をしていただこうということで、この
規定を設けたわけでございます。
問題は、今度は窒素はどうかという話になるわけでございますけれ
ども、窒素については燐よりもなおむずかしゅうございます。
排水処理技術という問題についても、まだ技術的なめどは十分ございません。形態からいたしましても、燐の場合はトータル燐と燐酸態燐の二種類に大体分かれると思いますが、窒素の場合はトータルNのほかに亜硝酸態窒素、硝酸態窒素、アンモニア態窒素、いろいろ種類がございまして、これらのものを
削減していくについては手法がむずかしい、しかもまた凝集沈でんというような簡単なやり方ではできないということで、いろいろ技術開発の検討中でございますので、今回は
政府案としては燐の
行政指導による
削減、こういうベースで法文化をいたした次第でございます。