○杉原
政府委員 お
手元に配付いたしました「
昭和五十二年中の
交通事故発生状況」というのと「
昭和五十三年中における交通警察の
運営」この二つの資料に基づきまして、
昭和五十二年の
交通事故の概況と
昭和五十三年中の交通警察の
重点施策について御
説明をしたいと思います。
昨年中の
交通事故はお
手元に配付しました「
昭和五十二年中の
交通事故発生状況」の一ページにありますように、発生件数四十六万六百四十九件、死者数八千九百四十五人、
負傷者数五十九万三千二百十一人で、前年に比べていずれも
減少をいたしております。発生件数につきましては八年連続
減少、死者数及び
負傷者数につきましては七年連続
減少となりました。特に死者につきましては、
昭和三十三年以来十九年ぶりに九千人を下回ることができたのでございます。
このような成果が上がりました要因としましては、
交通安全施設の
整備、
国民の交通安全意識の
向上等種々あると思われますが、
関係機関、団体を初め
国民各層の方々の長年にわたる総合的な
交通安全対策が実を結びつつあることを示しているものと考えております。
しかしながら、年間の
交通事故による死傷者は、いまなお六十万人余に達しており、また、
内容的に見ましても、解決すべき数多くの問題が残っているように思います。
昨年中に発生しました交通死亡
事故の特徴を見てみましても、一ページ及びこの表になっております三ページ、それから五ページ等にありますように、第一に都道府県間及び
都市間の
事故率に著しい格差が見られることが問題であるように思います。人口十万人当たりの死者の
事故率を都道府県別に見ますと、全国平均が七・九人であるのに対して、最も高いところは茨城県の十四・二人、最も低いところは東京都の二・九人であり、都道府県間に大きな格差が見られます。
また、人口十万人以上の百七十四
都市における人口十万人当たりの死者数を見てみますと、
都市平均が五・六人であるのに対して、最も高いところは富士市の十五・八人、最も低いところは東久留米市のゼロ人であり、都道府県間と同様
都市間においても著しい格差が見られます。
次に、問題点の二は、一ページから二ページにかけてと四ページの「状態別死者数」の表にありますように、歩行者と自転車乗用者の死者の比率が高いということでございます。
歩行者の死者は前年と比較して八・五%
減少しているものの、なお、全死者の中に占める比率は三三・四%と相変わらず高く、自転車乗用者の一二・二%と合わせた、いわゆる交通弱者といわれる方の死者比率は四五・六%と依然として高くなっておるのでございます。
問題点の第三は、二ページと四ページの表に「年齢別死者数」というのがございますが、これでおわかりのように、
子供と老人の死者の
減少率が非常に低下をしたということでございます。
子供の
減少率は、二ページの括弧内にありますように、一昨年が一五・五%
減少したのに対しまして、昨年は四・八%の
減少でございます。また、老人の
減少率は、一昨年が一〇・五%であったのに対して、昨年は四・四%と大幅に下回っております。
なお、幼児、小学生、七十歳以上の老人の自転車乗車中の死亡
事故が
増加しております。
問題点の四は、二ページにありますように、酒酔い運転と最高速度違反に起因する死亡
事故が多いということでございます。
全死者の中に占める割合を見ましても、酒酔い運転が一〇・二%、最高速度違反が一八・三%、合計して二八・五%の比率を占めており、まだまだ交通モラルの問題につきまして考えなければならない点があるように思います。
以上が昨年中における交通死亡
事故の主なる特徴点でありますが、警察といたしましては、このような現状を踏まえながら、本年も
交通事故の
減少傾向を長期的に定着させるとともに、
昭和四十五年のピーク時における死者数の半減目標の達成に向かって、諸対策を強力に
推進してまいりたいと考えております。
そこで、本年における交通警察の
運営について申し上げたいと思います。
お
手元に配付しました資料「
昭和五十三年中における交通警察の
運営」の一ページをごらんいただきたいと思います。
御承知のように、わが国の
道路交通の規模は、昨年に
自動車保有台数が約三千二百万台、いわゆるバイクを含めますと四千二百万台を超えております。さらに、昨年末現在の運転免許人口が三千七百万人を突破するなど、逐年
増加の一途をたどっており、いわゆる
国民皆免許の時代、大量交通時代の到来を迎えつつあるように思います。したがいまして、これからの交通警察の
運営に当たっては、
国民の理解と協力のもとに、このような新しい
情勢に対応した
施策の方向づけを行っていく必要があると考えております。
そこで、本年は特に、一ページの下段から二ページにかけてありますように、「
交通事故の
減少傾向を引き続いて定着させるとともに、歩行者等が安心して利用でき、かつ、運転者が安全で走りやすい
交通環境及び
地域住民が安全に住める生活環境を
確保すること」と「運転者としての自覚を備え、責任ある行動をする運転者の育成を図ること」、この二つを
重点目標として、各種の
交通安全対策を展開してまいる所存であります。
以下、これらの
施策の主な点について申し上げたいと思います。
第一は、「運転者管理の新しい展開」についてでございます。
資料につきましては三ページから六ページに記載してございますが、
交通事故の発生原因の中で運転者側の要因の占める比率はますます高くなっております。さらにまた、最近、死亡
事故が全体として
減少傾向の中にあって酒酔い運転など、もっぱら運転者の自覚に待たなければ防止できない死亡
事故の構成率が依然として高いことや、
道路交通の場における運転者による殺傷事件等が発生していることなど、運転者をめぐる問題はますます複雑化してきており、そのため、運転者対策の
充実強化は、当面緊急に取り組むべき課題となっております。
そこで、運転者としての自覚と責任ある行動を促すために、初心運転者や若年運転者等を
重点とした
安全運転教育を初め、原付免許取得者に対する
安全運転講習の
充実強化、更新時講習や処分者講習の
充実、指定
自動車教習所の
近代化など運転者教育の
充実を図ることにいたしております。
また、運転者の実態を的確に把握して、暴走族や暴力ドライバーなどの悪質かつ危険な運転者の一掃を図る一方、優良運転者の積極的な育成を図るなど、運転者の質に対応した
施策についても十分配慮していくことにいたしております。
そのほか、企業における組織的な
安全運転管理の徹底を図るための
安全運転管理者制度の
充実や運転免許事務の窓口等における公衆接遇の
適正化を図るための対策についても積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
第二に「多様化する社会的要望に対応した交通規制等の
実施」についてであります。資料の七ページから十ページをごらんいただきたいと思います。
交通対策に関する
国民の要望は、
交通事故の防止だけでなく、生活環境の保全、
都市交通機能の回復等、多様化してきております。そこで、これらの要望にこたえるために、御承知のとおり、
昭和四十九年以来、人口十万人以上の
都市を中心に
都市総合交通規制を進めておりますが、本年も引き続き人口十万人未満の
都市も含めて生活ゾーン対策を初め、自転車安全対策、駐車対策、バス優先対策等を積極的に
推進していくことにいたしております。
さらに、
都市周辺部や新
開発地域についても、実情に応じた適切な規制を積極的に
推進いたしたいと思っております。
第三に「
交通安全施設の
計画的
整備」についてでございます。資料の十一ページから十三ページまでをごらんいただきたいと思います。
交通安全施設は、交通規制と相まって
交通事故防止に果たす役割りが非常に大きいことにかんがみまして、
昭和五十一
年度を初
年度とする
交通安全施設整備五ヵ年
計画に基づき、
信号機の
増設を初め、
信号機の系統化、感応化、
交通管制センターの
計画的
整備、バス感知式
信号機や中央線変移システム等の
整備を
計画的に
推進することにいたしておりますが、同時にこれらの
交通安全施設の保守管理についても今後十分配慮していきたいと考えております。
第四に、「効果的な交通
指導取締りの
推進」についてであります。資料の十四ページ以下をごらんいただきたいと思います。
交通
指導取り締まり活動に当たりましては、
交通事故等の実態と交通
指導取り締まりとの
関係について多角的な分析を行い、これに基づいて、交通取り締まり力の
重点を特に危険性の高い悪質な違反に振り向けるように配意するとともに、過積載や過労運転等重大な
事故に結びつくおそれのある違反については背後責任の追及を
強化するなど効果的な取り締まりの
推進を図ることといたしております。
また、暴走族につきましては、その実態及び動向の把握に努め、警察の総合力を結集して、取り締まりを
強化し、グループの解散、その他総合的対策を
推進することにいたしております。
第五に、「
交通安全教育等の
推進」についてでございますが、資料の二十ページ以下をごらんいただきたいと思います。
子供と老人の
事故率が依然として高い状況にありますので、
関係機関と協力しながら、あらゆる機会を利用して、
交通安全教育を
推進することにいたしております。
また、自転車台数の
増加に伴って
自転車利用者の
事故が多発している実情にありますので、自転車の安全な正しい乗り方についての教育及び街頭
指導等を
強化するとともに、さらにシートベルトやヘルメットの着用についても、各種講習会、安全
運動、日常の街頭活動を通じて、その
指導を
強化していくことにいたしております。
以上が、本年の
推進しようとする
施策の概要でございますが、このほか本年は、
道路交通法の改正につきましても積極的に取り組み、
自動車交通と人間生活を調和させた新しい
道路交通秩序の確立を図るようにしていきたいと考えております。
また、本年七月三十日から
沖繩県における交通方法が変更されることになっておりますが、変更に伴う混乱を防止するために、事前の安全対策を十分行いますとともに、
実施時には他の都府県から約二千七百人の警察官を応援派遣して街頭
指導を行うなど、この交通方法の変更が安全かつ円滑に行われるように配意してまいりたいと考えております。
諸先生方の一層の御
指導と御鞭撻を賜りますようにお願いを申し上げまして、
説明を終わります。