○原(茂)
委員 要するに誠意を持って責任ある態度で相談には乗るけれども、現在起きているあるいはこれから起こるであろういろいろな問題に対する法的全責任を負う立場ではない、そういう言いわけですね。結構です。どんな問題が起きてもその法的な全責任を
大蔵省が負うべきではないという見解は、
大蔵省の見解として一応私は聞いておきます。私は、この問題に関する限り、全責任を
大蔵省が負うべきだと考えます。
次に、
理由を言います。
しかしながら、いま言われたように、やはり責任を持って誠意ある態度で山梨県を指導し、今後も責任、誠意を持って山梨県と
事態解決に努力をすると言った前半の答弁、これはきょうの前半のつべこべ答弁をしているよりは一歩前進だと思うから、非常にいいと思います。
そこで、次に進みますが、このトラブルがいま起きている、しかも全治六週間という重傷を負わせるような傷害事件まで起きた。そうして植林すればその植林は抜かれるということ、行ったりきたりずっとやっていて、その派生するところ、一体また成田を想像するような他の勢力、力による介入があって、われわれがかねてから心配したような
事態になりかねないのではないかという心配を前から持っておりましたが、現在現実のものとして心配しているわけです。したがって、このトラブルの原因についてここで改めて申し上げてみたい。
大蔵省当局の占有引き渡し義務の不履行、これが今日のトラブルの最大の
理由だというふうに私は考える。要するに、法的責任論をいまここで展開してみたい。
払い下げ直前の昨年八月二十二日、当
委員会において、占有移転義務をどのように果たすつもりか、現に忍草、新屋の農民が事実上土地を支配占有している現実をどう処理するのかという質問を私はいたしました。
〔馬場(猪)
委員長代理退席、
委員長着席〕
川崎理財局次長は、実際に耕作している農民のある事実は
承知しておりますが、権利はないと考える、占有引き渡し義務の点、つまり土地の
状況については現状のままで売り払いを行うということで国と山梨県とでいわゆる了解がなされており、山梨県の責任において円満に解決いたします。そういう答弁を次長はしている。要するに
大蔵省はその権原については否定しているものの、忍草、新屋の農民が占有している事実ははっきりこれを認めたのだ。いまでも認めざるを得ないと思います。それを
承知の上でその問題解決の責任を県に負わせている。当局は県の言うことをそのままうのみにして信頼してきたのでありますが、私は、法的、行政的問題の解決なしに払い下げるなら必ず自後に憂うべき
事態の招来することを指摘いたしまして、誠心誠意大蔵当局が適正な措置を講ずるように忠告したにもかかわらず、問題解決なしで払い下げ契約を結んでしまったという事実が現実にございます。
しかし、その県を信頼してきた結果は、いまのトラブルをもって報われているのが現実であります。すなわち、この国が信頼した県及び恩賜林組合の回答は、忍草農民の有する占有を何ら占有排除の法的手続を経ないで暴力的に実力排除することであったわけであります。
この期に及んでもまだ県は、「完全な所有権を取得しており、入会権はない、また恩賜林組合は地上権を取得している、だから植林するには何の違法も存していない」と言っております。だが、たとえ所有権が県にあり地上権が組合にあろうとも、忍草農民がその生存をかけその体を張って、実に三十有余年にわたって支配、管理してきたり、現に占有を継続している事実は、否定できない厳然たる事実であることを認めてもおいでになる。
それが、事もあろうに、県、組合、いずれも地方公共団体と言われているものであるのに、法治主義の原則をみずから破壊して忍草の入会権に基づく適法かつ平穏な占有を撹乱して侵奪を行ったのであり、それがいまの現実の紛争の
事態であります。
県の円満解決とはこのことであったのか。なるほど県と組合はこの五月一日、忍草入会組合を
債務者として植林妨害禁止の仮処分を甲府地裁に申請しました。御存じのとおり。だが、この仮処分の申請はどうしてされるようになったか、またなぜ初めからこれをしないでいまの時期になって行うようになったのか。この申請は、今回行った実力による占有侵奪を合理化し、今後の植林強行の法的裏づけを得ようとするものにほかならないと思います。それも、忍草農民の入会地を守る、いわゆる自救
行為による抵抗に遭って特に栽培牧草地に実力で植栽することが不可能だと判断されてから初めて行ったのであって、可能とあらば法的手続を経ない占有侵奪をも一向にいとわないことは紛れもない事実だと思います。
では、かくまで問題を紛糾させ問題解決を困難にした真の原因はどこにあるのか、私ははっきりと断言する。それはかかって大蔵当局が払い下げ以前に当然処理すべき法的責任を回避してサボタージュしたこと、特に国の占有引き渡し義務の不履行にあると言わなければなりません。
大蔵省は、忍草等の占有はそのままにして現状で売り払いを行うことで国と県で合意していると答弁をいたしてまいりました。それでいて、半月もたたない払い下げ契約では、その条項はどこにもない、一字も載ってない。かえって、同契約書第七条において、国は本件土地の所有権の移転する時点に売買物件の引き渡しをなすこと、つまり同地の占有を移転することを約束している。これは何たる無責任、何たる
国会軽視か。法治主義の原則や行政の原理を
大蔵省みずからじゅうりんしたものと考えるわけであります。
行政に携わる者が、
国会、
国民を欺いて法をじゅうりんし、いわゆる権限を発動する、行政権が議会のコントロールに服さなくなったときには、その行きつくところファッショたることは歴史が証明いたしておりますけれども、さきに
大蔵省当局は忍草等の占有の事実を知っていた。
承知の上で、契約書第七条においては、占有引き渡し義務を約束した。にもかかわらず、昨年の払い下げ契約以降今日に至るまで占有引き渡し義務を果たしていない。かかる占有引き渡し義務は国がはっきりと払い下げ契約上約束しているものであって、山梨県が植林を適法に開始し得る法律状態をつくり出す責任は、いまでも国にある。買い主たる県は、国に対して、植林が完全にできるように忍草等の占有を排除せよとの請求権を持っているものであって、県や組合がみずから排除の法的手続をとる義務はさらさらなかったはずであります。
大蔵省は、払い下げ契約書第七条の占有引き渡し義務をいまもって果たしていない。しかも、今回のトラブルを引き起こした真の原因は、かかる国の占有引き渡し義務の不履行にあることは間違いありません。それが今回の現地における県や組合の法治主義に外れた占有侵奪、重傷者を出す暴力
行為となった原因であります。これらの法的責任は、挙げて国そのものが負うべきものであります。もはや県が円満に地元問題を解決するために万全の努力を払う等々の言辞を弄することをもっては、真の問題解決に一歩たりとも近づき得ないことは言うまでもありません。
問題は、県ではなく国、
大蔵省がこの法的責任をどうするか、真の問題解決のために具体的にどう対処するのかにかかっていると思います。
なお、さらにトラブルの原因は、大蔵当局の、
国会指摘事項、国有財産中央審議会答申の不履行、これにあるということは、先ほど申し上げたとおりであります。
なるほどこの指摘事項や審議会答申というのは、法律そのものとして行政庁を拘束するものではないかもしれない。これも先ほど申し上げたとおりです。大蔵当局がこれらを尊重、遵守して行動すべきことは当然であって、不当にこれを軽視することは許されない行政責任を負っているものだと思います。
しかもそれだけではなくて、これによって国、
大蔵省は利用権者の意思を十分に尊重しつつ、県を指導して円満な解決を図るという、いわば法的な
債務を
負担させられていると言ってもいいのであります。大蔵当局はこの
債務に対してどのように対処したか、利用者の意思はどのように尊重されたか、県に対してどのような指導がなされたか。残念なことに、
大蔵省が誠実にこの
債務を履行した跡はどこにも見当たりません。
かつて大蔵当局からは、国と県が協議をしながらやるとの答弁はあったし、実際その協議も行われていたでございましょう。この点からすれば、国の指導はこの協議の形で行われてきただけと言えます。
だが問題は、その協議の中身と、それが
事態の進行の中にどんな具体的姿となって現象してきたかにあるのであります。その協議をしてきた結果はどうであったか。それは
事態の推移としての現在の現地の紛争が物語っております。
しかし、今日の
事態をそのまま黙視することは許されません。以上の点を踏まえて、現在の
事態に対する対処の仕方について、
大蔵大臣の責任ある答弁をお伺いをしたいと思います。
ここでつけ加えておきますが、自分自身をウジ虫にした者は、後になってたとえ足で踏みにじられても不平を訴えることはできません。三十有余年生活をかけ生存を守り抜いた土地から追い出されその生存を否定されんとしている北富士農民が、必死になって抵抗し生存の権利を主張するのは、人間としてみずからをウジ虫にしたくない以上、しない以上、当然の権利の主張なんだということを、私は確信をいたしております。どうかこれらを踏まえていままでの経緯をお考えの上で、中央審議会の付帯条件あるいは当
委員会、本
会議等における
大蔵大臣、なお総理
大臣の答弁等をよくお考えの上で、現在この
事態になっておりますこの
段階で一体今後どう対処されるのかを、責任ある
大臣の側から答弁をお願いしたい。