○原(茂)
委員 検査院のお
考え方に少しまた私ちょっとつけ加えて聞きたいことがありますが、これは後に譲ります。
施設庁の林雑
補償費の運用をそのまま認めるわけにいかないと私は思うのですが、いまこの点についての答弁、すなわち
予算法上の
見解を直ちに求めることは無理だ、こう思いますので、私にも時間がありません、この点については後日その法的
見解、これを文書をもって本
委員会に回答してほしいと思います、私はこの
予算の運用は明らかに違法であると確信していますから。
しかし、
予算法上の問題は一応別として、なぜこのような
解釈と運用を施設庁がとらねばならなかったか、その理由はわかるような気がいたすのであります。
林雑
補償制度は、制定当時入会慣行、入会権に対する
補償制度としてつくられたことは事実なのであります。このことは、制定当時の
昭和三十年の六月二十四日の参議院内閣
委員会での福島
長官の答弁を議事録で読むとよくわかります。同
長官は、入会の慣行に損害があるから払うというたてまえで払っているが、実質的には忍草の権利を認めている、忍草も
補償金を受け取っているので入会権の
処置の問題は再認識されていると
理解しています、要点だけ三つにくくるとそういうことを言っています。要するに、入会の慣行に損害があるので、損害賠償制度として林雑
補償制度は機能、運用されているのであると福島さんは言明をしているのであります。
しかし、この入会慣習、入会権をより明確にしようとして施設庁
当局と権利者協議会が話し合いを持ち、それを覚書としてあらわす段になった
昭和三十七年六月十九日、山梨県から、県有地には入会権はないという前提に立った県としてはこの覚書は将来県有地開発に重大な影響を与えるものと考えるので調印は認められないという横やりが入り、ましてやその山梨県は北富士演習場に
土地を提供している最大の地主でありますから、施設庁はその意向に従わざるを得なかったのであります。
また、地元の富士吉田市外二ケ村恩賜県有財産保護組合という特別地方公共団体、この団体も北富士演習場に
土地を提供している大手の一人でありますが、この特別地方公共団体は旧十一カ村の約四千ヘクタールにわたる入会地の管理団体だと称してその全域に共同入会権ありと主張して、忍草入会組合の主張を聞くなら
土地を貸さない、実力行使も辞さないと言っているのであります。現にこの地方公共団体は、最寄り入会を主張する忍草入会組合の行動阻止資金あるいは共同入会権擁護集会
出動と称するデモ資金を、何百万とばらまいております。一体、地方公共団体が私権であるはずの入会権の管理団体になれるのだろうか、これが第一の問題。
また、地方公共団体がその住民団体に運動資金として、たとえば私が調査したところによると、阻止行動資金、運動集会資金として、ある住民団体には五十万円出しているのだが——これは一部ですよ、法的に出せるのかどうか。民法上の組合であれば別ですが、きわめて違法な支出ではないかと思いますが、この点については後で調べた上で自治省の方から答弁を文書でいただきたいと思います。
きょうは自治省にもおいでいただいて少しく論議をしたかったのですが、余り時間がありませんので、いま申し上げたように、この点に関して二つに分けて文書で当
委員会に答弁をお願いしたいと思います。
ともかく、このように県の横やりと地元の特別地方公共団体の思惑をてことして、林雑
補償制度を見舞い金制度あるいは何々とすることにならざるを得なかったものであろうし、また、このような一連の事実は、入会権の主張をなす北富士
農民の要求を無視する上で施設庁としても好都合であったのだろうと私は思う。
だが、現実に施設庁が、林雑
補償制度は入会慣習等に対するものとしてではなく、見舞い金制度であると言い、確定したことの意味は、きわめて重大であると思います。何となれば、政府、
防衛施設庁は、北富士梨ケ原に地元入会住民が有している入会慣行については具体的には何
一つ施策を行っていないということを承認することと同一だからであります。
次いで第三に、政府及び
当局は、忍草入会組合が梨ケ原演習場内に立ち入り、使用、収益する入会権を認め、これを将来にわたって尊重することを重ねて確約している一方、演習場開放日を設けて忍草入会組合構成員等北富士
農民に、野草等国有地上の天然果実を採取させている事実についてであります。
何と三十余年にもわたって入会権益の擁護を叫び続けてきている北富士
農民の顔をまるで逆なでするような、先ほどからの
お答えだろうと思います。林雑
補償、それは入会権益に対するものではない。民生安定と円滑な演習を行うために
関係住民に与えられている金である。入会権もしくは社会的に承認された利益、入会慣習に対するものではないと。
このことは、今日までに散見される資料、たとえば、六つありますが、
一つ、
昭和三十三年九月十一日、防衛事務次官今井久「演習場内に於ける採草採木等の入会慣行は充分尊重したい。」
二つ、
昭和三十五年八月九日、
防衛庁長官江崎真澄「忍草区が従来所有してきた入会慣行を十分尊重し、誠意をもって善処します。」
三つ、
昭和三十六年九月十二日、
防衛庁長官藤枝泉介「政府は忍草区民が旧来の慣習に基づき梨ヶ原入会地に立入り使用収益してきた慣習を確認すると共にこの慣習を将来にわたって尊重する。」
四つ、
昭和三十六年九月十七日、
防衛庁長官藤枝泉介「政府は、北富士演習場の地元
関係者が、旧来の慣習に基づき、北富士演習場入会地(梨ヶ原、大和ヶ原その他の入会地を総称する。)に立入り使用収益してきた慣習を確認すると共に、この慣習を将来にわたって尊重する。」
五つ、
昭和三十九年六月二十四日、
防衛施設庁長官小野裕「政府は、忍草入会組合が旧来の慣習に基づき、梨ヶ原入会地に立入り使用収益してきた入会慣習を再確認し、この慣習を将来にわたって尊重することを確約・確認する。」
六つ、
昭和四十三年十二月二日、
防衛施設庁長官山上重信「政府は、北富士演習場内の地元
関係者が旧来の慣習に基づき立入り使用収益してきた入会慣習を再確認し、この慣習を将来にわたり尊重する。」にも、これは真っ向から相反する問題だと私は思う。
少なくとも、林雑
補償とは、入会慣行に対する
補償であり、山本伊三郎参議院議員が提出した質問主意書に対する政府の答弁書にある、損失をてん補するものでなければならないものであったはずであります。しかしそうではなくて、民生安定と円滑な演習場使用のために林雑
補償金を出しているのだと、現在の
防衛施設庁当局は
解釈し、それで運用していると言うが、果たしてさきに指摘しておいたように林雑
補償制度をそのように
解釈、運用することが
予算法上適法に行い得るかどうかは、いま問題にしようとは思っていませんが、事実上このように林雑
補償が
解釈、運用されているということが重大なのであります。
いま私が指摘したように、政府が北富士入会
農民の演習場内入会地に立ち入り、使用、収益してきた入会慣習を承認し、将来にわたって尊重することをたび重ねて確認、確約してきたものは、何も実現、実行されていない。いまも履行されておりません。林雑
補償を、入会慣行に対する阻害による損失
補償としてではなく、民生安定と円滑な演習のために出しているのである。
一体、さきに六つの例を挙げた政府の確約は、どのような形で現実に履行されているというのか。いま言ったような林雑
補償の
解釈、運用では、全然何も行っていないと言って間違いありません。現在の防衛施設
当局は、この政府の確約を実現するために何かを実行しなければいけないはずだと思うのです。決して林雑
補償がその確約の
一つのあらわれであるなどとは言えないはずであります。
事実、林雑
補償を演対協会長に白紙一任しなければならないとしているのは、のっぴきならぬ見舞い金としての運用の証拠であります。したがって、
説明の
言葉のあやとか、
説明不足でしたとかいったことでは糊塗できない運用をやっていると私は思います。施設庁は、この何回も出されている政府及び施設庁としての確認、確約に対しての責任ある行政を何
一つやっていないと再度私は申し上げておきます。
言うまでもなく、この確認、確約は、単なる政府の方針ではなく、まさしく行政庁が現在及び将来行うであろう公法的行為について自己拘束する意図を持って北富士入会
農民に対して行った意思表示なのであり、北富士
農民に対する政府及び施設庁の公権的自己拘束の表明でもあります。どこに北富士
農民が梨ケ原入会地に立ち入り、使用、収益してきた慣習の尊重があるのか、どのように将来にわたって尊重するというのか。現状では、施設庁は債務不履行官庁であり、その非難は同時に政府そのものにも妥当する。債務不履行政府、債務不履行官庁に国民が激怒するのは当然だと思います。政府、
防衛施設庁は早急にその債務を履行すべきである。このことは法的には行政法上の信義則違反として確約の法理に明らかに違反するものでもあります。
第四に、財政法九条の枠をはめてこれを論ずると動きがとれなくなるように私は思いますので、この点について述べたいと思います。
現在の施設庁の林雑
補償の
解釈、運用を前提とする現状において、よしんばその入会慣行は、実は入会権ではないからいいんだという理論を立てたとしても、それは決して成立しないことを指摘しなければなりません。政府、施設庁は、さきに指摘したごとく演習場内に立ち入り、使用、収益する入会慣行を認め、これを将来にわたって尊重することを確認、再確認、確約、再確約しているだけではなくて、現実に北富士入会
農民が同国有地上に立ち入り、使用、収益することを承認してきているのである。
すなわち、
防衛施設庁は演習場内開放日を設け、忍草入会組合員等、北富士入会
農民に野草など国有地上の天然果実を無償で採取させているのである。つまり、このことは現実に地元
関係住民が北富士演習場という国有地に林野雑産物採取等のために立ち入り、使用、収益することを承認しているのであり、施設庁は、もちろんこれが適法なことであるという法判断に基づいて認めているのであります。
言いかえれば、林雑
補償を見舞い金あるいは何々とするにせよ、その要件は国有地へ適法に林雑物採取の目的で立ち入り、使用、収益できるという前提に立脚してこそ、演習場内への立ち入り制限を受ける林野雑産物の阻害ということを適法な要件とすることができるのであり、そもそもその立ち入り、使用、収益が違法であるとするならば、その行為こそ排除、否定さるべきであって、ましてやその違法行為をもって
予算執行の要件とすることはできないはずであります。
また、施設庁が立ち入り許可日なるものを設けていることも、北富士
農民の同国有地への立ち入り、使用、収益が適法行為であることをみずから承認していることにほかならない。この事実は見逃すことのできない重大な点であります。
すでに実例を挙げて、先日の
予算委員会において建設省及び大蔵省の法的
見解は示されているのであるから、ひとり施設庁だけが別異の
解釈をとることは、もはや許されないと思います。
すなわち、国有地上の林野雑産物といえ
ども、ほかならぬ国有地上の産出物たる天然果実であって、
土地から分離するときに他に収取権者がいない限り、
土地所有者たる国の所有に属するものであり、立ち入りすらできないはずのものであります。大蔵省は、権原のない人の国有地への立ち入りの規制は所有権に内在する権利であり、国有地上の果実については国有地に付合するものとして国有である。したがって、財政法九条一項の規定どおりに対価を徴収しなければならないと答弁しております。
実例において、そのように財政法が
解釈、運用されているものは、十勝川の天然氷についてもそう、藤岡町の調節池に生育しているヨシについてもその対価が徴収されているという建設省の答弁からも明らかであります。敷衍すれば、北富士演習場内国有地上の林野雑産物も、適法な収取権者がない限り国の所有に属する財産となり、財政法九条一項の公法上の規制を受けることになるのであります。
まさしく施設庁が立ち入り許可日を設けて林野雑産物を採取させていること、及び林野雑産物採取行為の阻害を林雑
補償の要件にしている二つの事実は、この採取行為による野草、そだなどの収取が財政法の規定に反しないし、否、むしろ正当であるとの積極的な法的評価を下していることになるのであります。
したがって、私は、施設庁が財政法違反を行っていることを承認しない以上、施設庁が立ち入り許可日を設け、北富士入会
農民に林野雑産物を採取することを承認している事実、及び林雑
補償においてそれがよしんば見舞い金であるとしても、
予算執行の要件としている事実において、まさしく北富士
農民の享有する入会慣習、すなわち、政府、
防衛施設庁が確認している入会慣習の法的評価は、財政法第九条第一項に規定する「法律に基く場合を除く」という除外例に該当する場合と言わざるを得ないと考えるのであります。
また、このことは、仮に施設庁が財政法に違反していましたと頭を下げて事が済むということでは決してありません。そうだとしたら、北富士入会
農民から少なくとも会計法上の時効期間五年に遡及して対価を徴収しなければならなくなるのであり、事実上
防衛施設庁はやれるわけはありません。
そうではなく、この事実は決して財政法に違反しないのである。このことが、政府の言う北富士入会
農民の旧来の慣習を確認し、将来にわたってこれを尊重すると確約した趣旨とも合致することでもあります。
しからば、その除外例としての依拠する法律とは何か。民法第二百九十四条において入会権は規定されております。しかし、この入会権は政府の統一
見解において否定されている。したがって、幾ら施設庁でも、その統一
見解を否定することはできないと思う。
では、ほかにないのか。ないとすれば、財政法違反とならざるを得ない。が、そのような依拠し得る法律がないわけではない。すなわち法例二条がその根拠たり得ることは、私の詳細な検討の結果、間違いないと確信しております。それは、「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反セサル慣習ハ法令ノ規定ニ依りテ認メタルモノ及ヒ法令ニ規定ナキ事項ニ関スルモノニ限リ法律ト同一ノ効カヲ有ス」と規定しているのであります。法例二条であります。
政府、
防衛施設庁は、これまで北富士入会権を否定してまいりました。いまなおこれを認めていない。しかし、財政法九条第一項違反とならざるためには、必ずや「法律に基く場合を除く」という除外例に依拠せざるを得ないと私は思う。
なお、これまでの経緯及び政府の入会権不存在の統一
見解が存する現在、これを民法第二百九十四条のいわゆる地役入会権の規定に求めるわけにはいかないのであります。
ここで、法例二条による提案も含めて、第五として
最後に申し上げたい。
法的にも行政的にも納得のいく現行林雑見舞い金制度の発展的解消と政府
当局の確約の実行を迫るために、
昭和二十四年十二月二十七日閣議決定の実例を踏まえて、私の提言としての理論を少しく展開していきたいと思うのであります。
これまで私は、北富士演習場にまつわるさまざまな問題を検討してまいりました。そこにはまことに複雑な経緯があったようであります。
前回、三月二十三日の当
委員会において、高島さんが「たびたび申し上げておりますとおり、北富士演習場には長い長い歴史的な経緯がございます。」と言っておられるとおりだと思う。これは議事録二号の十一ページに書いてあります。しかし、さきに言ったように、その対応、対策は善意に解してもきわめてずさんで、逆にその複雑さに拍車をかけるものであったとしか言いようがありません。正鵠を期して言えば、忍草
農民に対する弾圧以外の何物でもなかった。その典型が演対協窓口一本化方式にあることは否めない事実であります。
それにもかかわらず、すぐに続けて高島さんはこう言っています。「私
どもは行政の立場から、何とか
事態を円満に解決したいということで腐心してまいったわけでございますが、」「
昭和四十四年に地方公共団体、各入会組合その他県の総意を挙げて、」「北富士演習場対策協議会というのが設立されまして、その演習場対策協議会を窓口にしてすべてを処理してほしいというのが、県の首脳部並びに各入会組合の首脳部の
方々の御
要請であったというふうにわれわれは
理解し」「その態度は今日も変わっておらない」と言っていることは、同じく議事録の十一ページにありますが、私にはどうも盗人たけだけしい言い分としか考えようがありません。
この点はきわめて重要なので、繰り返し指摘しておきたいと思う。この演対協がどのような経緯でできたのかは、さきに言ったとおりであります。このことは、処理要領作成当時、調査官として活躍された高島
部長は十分御承知のところだと思います。
参考までに先に申し上げておくが、山梨県発行の
昭和四十九
年度版「北富士演習場問題の
概要」によりますと、当時の演対協会長小林昌治が林雑
補償のことで「
防衛施設庁に鶴崎次長・高島調査官ほかを訪ね」た
昭和四十八年二月七日、「国側は、」「恩賜県有財産保護組合長ないし演対協会長に委任することが条件である。」と回答し、この時点で処理要領方式原案が成立したことを明らかにいたしております。逆なのです。
要するに、あくまでも演対協が成立した
昭和四十四年の時点では、その設立目的は、北富士演習場に
関係を持つ団体、すなわち、入会組合の権益を守ることにあったのであります。いまもって施設庁が演対協をまげて云々するのであれば、この定款、規約を再度確認することを要求します。
申すまでもなく、この演対協のような団体を一個の団体として承認すると言うのであれば、その団体とはどのようなものであるかは、定款、規約を見るにしくはないと私は思う。
規約によってこの団体の構成員を見ると、山梨県、県議会、市村、入会組合、
土地所有者等、その構成員相互間に利害相反
関係が見られるものであり、構成員の個性が激しく浮き上がってくるのであるが、山梨県は入会権を否定し、入会組合はこれを主張しているがごときは全くその典型であります。
だが、施設庁は演対協を
一つの団体として承認している。だとすると、当然施設庁は、法的にかかる団体を団体として論ずることができなければならない。
言うまでもなく、かかる団体を法的にも団体として論じ得るためには、一定の共同目的事業を遂行するために複数人が組織的に結合したものでなければならないのは当然のこととして——これが法的に団体として承認されるための第一要件であります。そして、その組織的結合が単一体として社会的に承認されるものでなければならない。これが第二要件でしょう。
このような要件を具備
充足してこそ、複数人の結合体として団体の独自性が承認されるのであって、構成員の個性が云々されることはないのであります。言いかえれば、構成員の複数性は、かかる場合にあって初めて団体の背後にひそみ、団体の単一性が承認されるのであります。逆に言えば、団体は、この単一性が承認されるがゆえに
一つの団体たり得るのであります。
ほかならぬ定款、規約とは、かかる単一体としての団体を組織づけ、存立させるための組織法であり、団体構成員はこの自治法規を侵すことはできないのであります。同様に、この団体を団体として承認する者は、この規約を侵すことは絶対できないのであります。
私は、かかる観点から、演対協はその単一性を、まさにその規約第一条に高らかに掲げております「北富士演習場に
関係を持つ団体及び住民の利益を守る」ところにしか見出し得ないと思います。
しかるに演対協は、林雑
補償が真に入会に対する
補償として政府、
防衛施設庁にそれを擁護、確立させるべきものを、逆にそれをまるで抹殺するような見舞い金と変化せしめたのであり、この一事をもっても、
昭和四十四年に設立された正真正銘の演対協とは言えないと断定しても構わないと私は思う。
演対協は
昭和四十四年六月に生まれ、健全に育つことなく、
昭和四十七年、忍草入会組合の名誉ある脱退によって死亡宣告がなされたと同然であります。それでもなお、施設庁が、演対協なる団体の存在を承認するというのであれば、施設庁の承認している演対協とは一体何なのか。その組織と単一性の二要件に即して、文書をもって明らかにしていただきたいと思います。
あらかじめ断っておきますが、
昭和四十四年に作成された規約は、あくまでも現存しない団体の資料にすぎず、またそれをもって現在の演対協なるものの規約と言うのであれば、それがどうして入会団体の権益を擁護していると言えるのか、はたまた、各入会組合その他県の総意と称することができるのかを明示してもらわなければなりません。
私は、端的に言って、入会住民不在の、県と施設庁のなれ合った行政を覆い隠す隠れみのにすぎないと思います。演対協の
実態は、もはやさきの答弁のごとき飾り文句で糊塗できる
段階ではありません。糊塗しようと思ってもそれはもうできない。
また、別の観点からもこのことは指摘できます。指摘だけしておきますので、この点も前のとあわせて挙げて後で答弁をもらいたいと思います。
林雑見舞い金について演対協窓口一本化方式をあえて続けると、当然のことながら使用協定も演対協を窓口としなければならないことになります。高島さんの言うとおり「すべて」なのだから。したがって、施設庁が、あくまで
昭和四十四年の演対協の
要請に従っていくと言うならば、窓口一本化の原則で、山梨県知事をして、使用協定締結についても演対協会長に白紙一任させなければならなくなります。そうなると私は
理解をいたしますが、仮にそうでないとしたら、その理由を明らかにしてもらいたいと思います。
このように、
防衛施設庁の演対協窓口一本化方式は、覆いがたき矛盾に満ちていると私は信じます。
また、この複雑な経緯の中での矛盾は、単にこれだけではないことはさきに述べたとおりであります。すなわち、政府、
防衛施設庁のたび重なる忍草入会組合に対する入会慣習の確認と、それを将来にわたって尊重すると確約してきた問題が、もう一方の極にあるからであります。幾つも幾つも入会慣習の確認と尊重の一札を出していることは、すでに指摘したとおりでございます。にもかかわらず、ついに林雑
補償金は見舞い金として出しているとの施設庁の答弁において、いまもって入会権益擁護、その他の確約は全然実行されていないことは御承知のとおりであります。そのことそれ自体が法的には違法であり、政治的には多大の非難を浴びせられても仕方のない状態であることがわかったと私は思う。
しかも、それだけではない。仮にいまの状態のまま入会慣習は法的には何も評価しないでおくということを是とするならば、財政法違反というそしりをも甘受しなければならず、かつ、過去にさかのぼって北富士
農民から林雑物の対価を徴収しなければならないという、事実上不可能な結果になってしまうのであります。
さらにまた、現在の林雑
補償は、事実上その申請は虚偽にして、それに対する指弾も日一日と高まっていく状態であります。行政庁たるものがかかることを黙認し、申請者の虚偽を承認することは法秩序の破壊であり、遵法精神を弛緩させることになります。けさの朝日新聞がこの問題に関して告発をしているのを報道しておりますが、恐らくまだ見ていないとおっしゃるでしょうが、ゆっくりごらんをいただいたらいい。
どうしようもないどろ沼の状態にあるのはよくわかります。なるほど法例二条権原を承認するためには、これまで政府が確認し、将来にわたる尊重をも約束した北富士梨ケ原入会地への立ち入り、使用、収益がどのような
内容を有するかなど、さまざまな調査、検討を終わらなければならないと思います。私は私なりにそれを調査、検討してみてはおりますが、その
内容の一〇〇%確定までにはまだその機が熟しておりません。したがって、その
内容についての
見解は後に譲りたいと思います。
ただいままでるる述べてきた大綱と理論は、現在の
防衛施設庁がとり得る唯一のものであり、
関係当事者も同一のテーブルに着くことができるものと確信をいたしております。
法例二条権原についての
補償、この問題こそ速やかになさるべきであると考えるものであります。
もちろんこのことは、現在の林雑
補償とは法的に矛盾はしないものであります。何となれば、現在の林雑
補償は行政措置によるものでありますから、これをどうするかはひとえに行政庁の裁量にゆだねられているものであり、法例二条権原の承認とともに、その林雑
補償は漸減させることも廃止することも可能だからであります。
また、過去の事例において、このようなある一定の事案について見舞い金として支払っていたものを
補償金と改め、その相互間の調整をするというようなことも行われているのであります。
たとえば、
昭和二十四年十二月二十七日閣議決定になる「使用解除財産処理要綱」の十二などは、「すでに使用解除のあった財産で見舞金を支給しているものについても、本要綱によって損失金額と再計算し、支給済みの見舞金を控除の上、損失を
補償すること」となっていることなどは、事案は全然異なるものといえ
ども非常に参考に値するものと考えます。
いまやまさに演習場の使用協定の
更新をせんとする時期であります。そのような意味で、北富士演習場の使用に関するすべての法制度、法運用を再検討すべき絶好の時期でもあり、さらには、地元の事情に最も明るい山梨県選出の
金丸さんがその所管大臣になっていることも、この上なく時宜を得ているものと考えます。
これまでは、演習場用地をぜひ確保しておかなければならぬとして、みずからの確約に反し、またそのことによって法を犯してまで大地主たる山梨県などの意向を十分過ぎるほど聞き過ぎたのではなかったかと私は思う。
しかし、私はいま、周辺
整備事業に関する補助金の問題、あるいは借地料の問題を主題としているのではございません。そのことには言及すまい。しかし、その意向の反映が直接北富士入会
農民にはねかえってきてしまった林野雑産物
補償行政だけは、幾ら非難しても非難し過ぎることはないと思う。
かかる忍草
農民そのものに対する卑劣、不法な、言いかえれば
防衛施設庁の言う北富士演習場の安定的、円滑な使用のうちに、事実上、忍草入会
農民の入会慣習の無視、人格的侮辱といった性質をすら有する施設庁の入会慣習侵害に関する忍草
農民の
抵抗は、忍草
農民にとって義務とすら感じられているようであります。
それは忍草入会
農民自身に対する義務であり、かつ
日本社会に対する義務ですらあると言っている。「草の根を守る闘いは法治
国家の根っ子を守る闘いである」とは、
昭和三十六年、有名な忍草
農民が梨ケ原原頭に打ち立てたスローガンでもございました。
まことに、自分の権益が卑劣なやり方で台なしにされたり踏みにじられた場合に、単にその権益ばかりではなく、それによって人格もまた無視されたのだということに気づかない者、またそうした
状況の中に置かれていながら、自分自身とその正当な権益を主張しようと思わない者は、どうにも救いようがないし、そのような者が国のために何をなし得ようか、私は全然期待ができないと思います。
権益の侵害があった場合、それに対して闘うべきか、それともそれを避けるためにおのが権益を見殺しにするかという問題に直面せざるを得ない。だれもこの決断を避けるわけにはいかない。結末はどうなろうと、この決断は、いずれにしても犠牲を伴わざるを得ません。権益が平穏な秩序の犠牲になるのか、平穏な秩序が権益の犠牲にならざるを得ないのかであります。
忍草入会
農民は、三十余年の長きにわたって、自己のため及び
日本を真に法治
国家たらしめんがための血のにじむような貴重な闘いを続けて今日に至っております。私は、この忍草の主張の中に、自分の手で自分の権益を守ろうとしている
農民に救いがあるか否か、その
農民が山や野の主人になれるか、自分で山や野の開発ができるか否かを確かめている、
日本の
農民の未来についての根本的問題をも提起しているものと考えるものであります。
これを違法にも妨害しているのが、ほかならぬ
防衛施設庁である。しかし、未来は築かなければなりません。
私は、これまでるる指摘してきましたように、断じて政策の犠牲を忍草
農民に強いてはならないと強く指摘し、真に法治行政を行うべく、私の質問を含めた心からの提案を受け入れるように重ねて要求し、申し上げてきた諸点につき、
防衛庁長官、施設庁
長官などの答弁と
決意のほどを聞かせていただきたいと思います。
私はここで質問を締めくくりたいと思いますが、もし時間切れのことがございましたら、後にまた個々にでも
説明を求める予定でございますし、この中に要求してまいりました文書による回答はぜひお出しいただくように、
委員長からぜひ計らっていただきたいと思います。
以上をもって一応私の質問を終わりますので、どうかいま申し上げた順序で、その答弁なり
決意のほどをお聞かせいただきたい。