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1978-06-14 第84回国会 衆議院 外務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月十四日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 井上 一成君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君       石原慎太郎君    川田 正則君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐野 嘉吉君    島村 宜伸君       竹内 黎一君    中山 正暉君       福田 篤泰君    河上 民雄君       久保  等君    美濃 政市君       中川 嘉美君    寺前  巖君       伊藤 公介君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         外務政務次官  愛野興一郎君         外務大臣官房審         議官      内藤  武君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局次         長       溝口 道郎君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省条約局外         務参事官    村田 良平君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君  委員外出席者         法務省入国管理         局審判課長   日野 正晴君         外務省アメリカ         局外務参事官  北村  汎君         外務省経済局外         務参事官    羽澄 光彦君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         国税庁直税部法         人税課長    北村 恭二君         文部省学術国際         局ユネスコ国際         部長      仙石  敬君         厚生省医務局看         護課長     都築  公君         農林省食品流通         局砂糖類課長  馬場久萬男君         労働大臣官房国         際労働課長   石田  均君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 六月八日  辞任         補欠選任   川田 正則君     原 健三郎君   佐野 嘉吉君     篠田 弘作君   竹内 黎一君     長谷川四郎君   中山 正暉君     亀岡 高夫君 同日  辞任         補欠選任   亀岡 高夫君     中山 正暉君   篠田 弘作君     佐野 嘉吉君   長谷川四郎君     竹内 黎一君   原 健三郎君     川田 正則君 同月十四日  辞任         補欠選任   木村 俊夫君     島村 宜伸君 同日  辞任         補欠選任   島村 宜伸君     木村 俊夫君     ――――――――――――― 六月十四日  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規  約の締結について承認を求めるの件(条約第一  六号)  市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結  について承認を求めるの件(条約第一七号) 同月七日  看護職員条約批准等に関する請願(坂本恭一  君紹介)(第五六一〇号)  同(中井洽紹介)(第五六一一号)  同(中野寛成紹介)(第五六一二号)  同(板川正吾紹介)(第五六二八号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第五六二九号)  同(枝村要作紹介)(第五六三〇号)  同(太田一夫紹介)(第五六三一号)  同(兒玉末男紹介)(第五六三二号)  同外三件(増岡博之紹介)(第五六三三号)  同(北山愛郎紹介)(第五六五四号)  同(久保三郎紹介)(第五六五五号)  同(西村章三紹介)(第五六五六号)  同(山本悌二郎紹介)(第五六五七号)  同(吉田之久君紹介)(第五六五八号)  同(井上一成紹介)(第五六八三号)  同(伊藤茂紹介)(第五六八四号)  同(岡田哲児紹介)(第五六八五号)  同(久保等紹介)(第五六八六号)  同(中村正雄紹介)(第五六八七号)  同(米沢隆紹介)(第五六八八号)  同(渡辺朗紹介)(第五六八九号) 同月八日  看護職員条約批准等に関する請願(角屋堅次  郎君紹介)(第五八五〇号) 同月九日  看護職員条約批准等に関する請願(大出俊君  紹介)(第五九二三号)  同外二百四十二件(近藤鉄雄紹介)(第五九  二四号) 同月十日  看護職員条約批准等に関する請願(西岡武夫  君紹介)(第六一七八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  千九百七十七年の国際砂糖協定の締結について  承認を求めるの件(条約第一五号)(参議院送  付)  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規  約の締結について承認を求めるの件(条約第一  六号)  市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結  について承認を求めるの件(条約一七号)  国際情勢に関する件 請 願   一 日中平和友好条約早期締結に関する請     願(岡田哲児紹介)(第六五号)   二 同(渡辺三郎紹介)(第六六号)   三 核兵器完全禁止に関する請願(寺前巖君     紹介)(第一九四号)   四 日中平和友好条約早期締結に関する請     願外一件(岡田哲児紹介)(第一九五     号)   五 同外二件(岡田哲児紹介)(第三五七     号)   六 金大中氏の原状回復を求める決議等に関     する請願(平林剛紹介)(第三五八     号)   七 同(田中美智子紹介)(第三九二号)   八 看護職員条約批准等に関する請願(山     田太郎紹介)(第一四二八号)   九 同(和田耕作紹介)(第一六〇一号)  一〇 同(大柴滋夫紹介)(第一六四二号)  一一 同(浦井洋紹介)(第一七一八号)  一二 同(瀬長亀次郎紹介)(第一七一九     号)  一三 同(寺前巖紹介)(第一七二〇号)  一四 同(松本善明紹介)(第一七二一号)  一五 同(三谷秀治紹介)(第一七二二号)  一六 日ソ漁業協力協定締結促進等に関する     請願(江崎真澄君外一名紹介)(第二七     八〇号)  一七 日ソ平和条約即時締結に関する請願(     加藤万吉紹介)(第二八一一号)  一八 同(島本虎三紹介)(第二八一二号)  一九 同(安宅常彦紹介)(第二九二七号)  二〇 同(小川仁一紹介)(第二九二八号)  二一 同(大島弘紹介)(第二九二九号)  二二 同(岡田利春紹介)(第二九三〇号)  二三 同(加藤清二紹介)(第二九三一号)  二四 同(川崎寛治紹介)(第二九三二号)  二五 日中平和友好条約早期締結に関する請     願(川本敏美紹介)(第二八一三号)  二六 同(沢田広紹介)(第二八一四号)  二七 同(柴田健治紹介)(第二八一五号)  二八 同(島田琢郎紹介)(第二八一六号)  二九 同(清水勇紹介)(第二八一七号)  三〇 同(新村勝雄紹介)(第二八一八号)  三一 同(千葉千代世紹介)(第二八一九     号)  三二 同(栂野泰二紹介)(第二八二〇号)  三三 同(野口幸一紹介)(第二八二一号)  三四 同(芳賀貢紹介)(第二八二二号)  三五 同(馬場昇紹介)(第二八二三号)  三六 同(平林剛紹介)(第二八二四号)  三七 同外一件(安宅常彦紹介)(第二九〇     九号)  三八 同(木原実紹介)(第二九一〇号)  三九 同(久保等紹介)(第二九一一号)  四〇 同(小林進紹介)(第二九一二号)  四一 同(佐藤敬治紹介)(第二九一三号)  四二 同(佐野進紹介)(第二九一四号)  四三 同(坂本恭一紹介)(第二九一五号)  四四 同(渋沢利久紹介)(第二九一六号)  四五 同(嶋崎譲紹介)(第二九一七号)  四六 同(島本虎三紹介)(第二九一八号)  四七 同(新盛辰雄紹介)(第二九一九号)  四八 同外一件(田口一男紹介)(第二九二     〇号)  四九 同(田畑政一郎紹介)(第二九二一     号)  五〇 同(武部文紹介)(第二九二二号)  五一 同(塚田庄平紹介)(第二九二三号)  五二 同(中西積介紹介)(第二九二四号)  五三 同(中村茂紹介)(第二九二五号)  五四 同(成田知巳紹介)(第二九二六号)  五五 日中平和友好条約締結促進に関する請     願(椎名悦三郎紹介)(第二九〇七     号)  五六 日ソ漁業協力協定締結促進に関する請     顕(椎名悦三郎紹介)(第二九〇八     号)  五七 日ソ平和条約即時締結に関する請願(     角屋堅次郎紹介)(第三〇〇三号)  五八 同(川口大助紹介)(第三〇〇四号)  五九 同(鈴木強紹介)(第三〇〇五号)  六〇 同(原茂君紹介)(第三〇〇六号)  六一 同(佐野進紹介)(第三一三九号)  六二 日中平和友好条約早期締結に関する請     願(栗林三郎紹介)(第三〇〇七号)  六三 同(佐藤観樹紹介)(第三〇〇八号)  六四 同外一件(鈴木強紹介)(第三〇〇九     号)  六五 同(楯兼次郎君紹介)(第三〇一〇号)  六六 同(長谷川正三紹介)(第三〇一一     号)  六七 同(兒玉末男紹介)(第三一三七号)  六八 同(島本虎三紹介)(第三一三八号)  六九 日ソ平和条約即時締結に関する請願(     久保三郎紹介)(第三一七四号)  七〇 同(大原亨紹介)(第三二三九号)  七一 同(川俣健二郎紹介)(第三二四〇     号)  七二 同(多賀谷真稔紹介)(第三二四一     号)  七三 同(久保等紹介)(第三二八八号)  七四 日中平和友好条約早期締結に関する請     願(高沢寅男紹介)(第三一七五号)  七五 同(竹内猛紹介)(第三二〇四号)  七六 同(西宮弘紹介)(第三二〇五号)  七七 同(高田富之紹介)(第三二四二号)  七八 同(武藤山治紹介)(第三二四三号)  七九 同(伊賀定盛紹介)(第三二八三号)  八〇 同(久保等紹介)(第三二八四号)  八一 同(土井たか子紹介)(第三二八五     号)  八二 同外一件(野坂浩賢紹介)(第三二八     六号)  八三 同(日野市朗紹介)(第三二八七号)  八四 同(下平正一紹介)(第三三六九号)  八五 同(福岡義登紹介)(第三三七〇号)  八六 同(藤田高敏紹介)(第三三七一号)  八七 同(馬場猪太郎紹介)(第三四〇五     号)  八八 国際人権規約早期批准に関する請願(     清水勇紹介)(第三四四七号)  八九 日ソ平和条約即時締結に関する請願(     森井忠良紹介)(第三四六七号)  九〇 同(上田卓三紹介)(第三五八三号)  九一 同(岡田哲児紹介)(第三五八四号)  九二 日中平和友好条約早期締結に関する請     願外一件(森井忠良紹介)(第三五八     五号)  九三 朝鮮半島の自主的平和統一促進等に関す     る請願(小沢辰男紹介)(第三六六一     号)  九四 日ソ漁業交渉の促進に関する請願(小沢     辰男君紹介)(第三六六二号)  九五 核兵器全面禁止に関する請願(井出一     太郎君紹介)(第三七八七号)  九六 同(小川平二紹介)(第三七八八号)  九七 同(唐沢俊二郎紹介)(第三七八九     号)  九八 同(倉石忠雄紹介)(第三七九〇号)  九九 同(小坂善太郎紹介)(第三七九一     号) 一〇〇 同(清水勇紹介)(第三七九二号) 一〇一 同(下平正一紹介)(第三七九三号) 一〇二 同(中島衛紹介)(第三七九四号) 一〇三 同(中村茂紹介)(第三七九五号) 一〇四 同(羽田孜紹介)(第三七九六号) 一〇五 同(原茂君紹介)(第三七九七号) 一〇六 同(増田甲子七君紹介)(第三七九八     号) 一〇七 同(向山一人紹介)(第三七九九号) 一〇八 日中平和友好条約早期締結に関する請     願(北山愛郎紹介)(第三九九二号) 一〇九 日ソ平和条約即時締結に関する請願(     上原康助紹介)(第四〇五四号) 一一〇 日中平和友好条約早期締結に関する請     願(只松祐治紹介)(第四一四九号) 一一一 世界連邦建設に関する請願(福田篤泰君     紹介)(第四三九七号) 一一二 日ソ平和条約即時締結に関する請願(     大出俊紹介)(第四五六七号) 一一三 同(金子みつ紹介)(第四五六八号) 一一四 看護職員条約の批准に関する請願(浅井     美幸君紹介)(第四五六九号) 一一五 同(新井彬之君紹介)(第四五七〇号) 一一六 同(有島重武君紹介)(第四五七一号) 一一七 同(飯田忠雄紹介)(第四五七二号) 一一八 同(池田克也紹介)(第四五七三号) 一一九 同(石田幸四郎紹介)(第四五七四     号) 一二〇 同(市川雄一紹介)(第四五七五号) 一二一 同(大久保直彦紹介)(第四五七六     号) 一二二 同(大野潔紹介)(第四五七七号) 一二三 同(大橋敏雄紹介)(第四五七八号) 一二四 同(近江巳記夫紹介)(第四五七九     号) 一二五 同(岡本富夫紹介)(第四五八〇号) 一二六 同(草川昭三君)(第四五八一号) 一二七 同(古寺宏紹介)(第四五八二号) 一二八 同(平石磨作太郎紹介)(第四五八三     号) 一二九 同(古川雅司紹介)(第四五八四号) 一三〇 同(正木良明紹介)(第四五八五号) 一三一 同(松本忠助紹介)(第四五八六号) 一三二 同(宮井泰良紹介)(第四五八七号) 一三三 同(宮地正介紹介)(第四五八八号) 一三四 同(矢野絢也君紹介)(第四五八九号) 一三五 同(薮仲義彦紹介)(第四五九〇号) 一三六 同(山田太郎紹介)(第四五九一号) 一三七 同(吉浦忠治紹介)(第四五九二号) 一三八 同(和田一郎紹介)(第四五九三号) 一三九 同(渡部一郎紹介)(第四五九四号)一四〇 同(安島友義紹介)(第四八八四号) 一四一 同(安宅常彦紹介)(第四八八五号) 一四二 同(安藤巖紹介)(第四八八六号) 一四三 同(相沢英之紹介)(第四八八七号) 一四四 同(荒木宏紹介)(第四八八八号) 一四五 同(井上普方紹介)(第四八八九号) 一四六 同(伊賀定盛紹介)(第四八九〇号) 一四七 同(上田卓三紹介)(第四八九一号) 一四八 同(上原康助紹介)(第四八九二号) 一四九 同(浦井洋紹介)(第四八九三号) 一五〇 同(小川省吾紹介)(第四八九四号) 一五一 同(小此木彦三郎紹介)(第四八九五     号) 一五二 同外百八十二件(越智伊平紹介)(第     四八九六号) 一五三 同(岡田利春紹介)(第四八九七号) 一五四 同(岡田春夫紹介)(第四八九八号) 一五五 同(加藤清二紹介)(第四八九九号) 一五六 同(加藤万吉紹介)(第四九〇〇号) 一五七 同(鹿野道彦紹介)(第四九〇一号) 一五八 同(川崎寛治紹介)(第四九〇二号) 一五九 同外四件(川本敏美紹介)(第四九〇     三号) 一六〇 同(金子みつ紹介)(第四九〇四号) 一六一 同(工藤晃君(共)紹介)(第四九〇五     号) 一六二 同(栗林三郎紹介)(第四九〇六号) 一六三 同(小泉純一郎紹介)(第四九〇七     号) 一六四 同(小林進紹介)(第四九〇八号) 一六五 同(小林政子紹介)(第四九〇九号) 一六六 同(後藤茂紹介)(第四九一〇号) 一六七 同外一件(佐藤観樹紹介)(第四九一     一号) 一六八 同(佐藤敬治紹介)(第四九一二号) 一六九 同外四百九十九件(佐藤隆紹介)(第     四九一三号) 一七〇 同外三百三十四件(塩崎潤紹介)(第     四九一四号) 一七一 同(柴田睦夫紹介)(第四九一五号) 一七二 同(瀬崎博義紹介)(第四九一六号) 一七三 同(瀬長亀次郎紹介)(第四九一七     号) 一七四 同(田中美智子紹介)(第四九一八     号) 一七五 同(津川武一紹介)(第四九一九号) 一七六 同(寺前巖紹介)(第四九二〇号) 一七七 同(馬場昇紹介)(第四九二一号) 一七八 同(橋本龍太郎紹介)(第四九二二     号) 一七九 同(東中光雄紹介)(第四九二三号) 一八〇 同(不破哲三紹介)(第四九二四号) 一八一 同(藤原ひろ子紹介)(第四九二五     号) 一八二 同(正森成二君紹介)(第四九二六号) 一八三 同(三谷秀治紹介)(第四九二七号) 一八四 同(安田純治紹介)(第四九二八号) 一八五 同(山原健二郎紹介)(第四九二九     号) 一八六 同(松本善明紹介)(第五四〇七号) 一八七 世界連邦建設に関する請願(河上民雄君     紹介)(第四九三〇号) 一八八 同(中馬弘毅紹介)(第四九三一号) 一八九 同(永末英一紹介)(第四九三二号) 一九〇 日ソ平和条約即時締結に関する請願(     上坂昇紹介)(第四九三三号) 一九一 看護職員条約批准等に関する請願(加     藤紘一紹介)(第五四五四号) 一九二 同(青山丘紹介)(第五四八一号) 一九三 同(池端清一紹介)(第五四八二号) 一九四 同(石野久男紹介)(第五四八三号) 一九五 同(石橋政嗣君紹介)(第五四八四号) 一九六 同(小川国彦紹介)(第五四八五号) 一九七 同(小川仁一紹介)(第五四八六号) 一九八 同(大島弘紹介)(第五四八七号) 一九九 同(大原亨紹介)(第五四八八号) 二〇〇 同(川口大助紹介)(第五四八九号) 二〇一 同外一件(川俣健二郎紹介)(第五四     九〇号) 二〇二 同(木原実紹介)(第五四九一号) 二〇三 同(受田新吉紹介)(第五五三六号) 二〇四 同(大内啓伍紹介)(第五五三七号) 二〇五 同(河村勝紹介)(第五五三八号) 二〇六 同(神田厚紹介)(第五五三九号) 二〇七 同外四百四件(関谷勝嗣君紹介)(第五     五四〇号) 二〇八 同(西田八郎紹介)(第五五四一号) 二〇九 同(和田耕作紹介)(第五五四二号) 二一〇 同(坂本恭一紹介)(第五六一〇号) 二一一 同(中井洽紹介)(第五六一一号) 二一二 同(中野寛成紹介)(第五六一二号) 二一三 同(板川正吾紹介)(第五六二八号) 二一四 同(岩垂寿喜男紹介)(第五六二九     号) 二一五 同(枝村要作紹介)(第五六三〇号) 二一六 同(太田一夫紹介)(第五六三一号) 二一七 同(兒玉末男紹介)(第五六三二号) 二一八 同外三件(増岡博之紹介)(第五六三     三号) 二一九 同(北山愛郎紹介)(第五六五四号) 二二〇 同(久保三郎紹介)(第五六五五号) 二二一 同(西村章三紹介)(第五六五六号) 二二二 同(山本悌二郎紹介)(第五六五七     号) 二二三 同(吉田之久君紹介)(第五六五八号) 二二四 同(井上一成紹介)(第五六八三号) 二二五 同(伊藤茂紹介)(第五六八四号) 二二六 同(岡田哲児紹介)(第五六八五号) 二二七 同(久保等紹介)(第五六八六号) 二二八 同(中村正雄紹介)(第五六八七号) 二二九 同(米沢隆紹介)(第五六八八号) 二三〇 同(渡辺朗紹介)(第五六八九号) 二三一 同(角屋堅次郎紹介)(第五八五〇     号) 二三二 同(大出俊紹介)(第五九二三号) 二三三 同外二百四十二件(近藤鉄雄紹介)(     第五九二四号) 二三四 同(西岡武夫紹介)(第六一七八号)      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤公介君。
  3. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外務委員会の今会期中の質疑は、実質的には最後になるかと思いますので、長い間本委員会で審議されてまいりましたし、また同僚議員を含めて大きな関心を持ちながら私ども審議をさせていただいてまいりました日中平和条約の成り行きに関しまして、昨日参議院商工委員会総理みずからも御発言をされておりますけれども、日中問題についてまずお尋ねを申し上げたいと思います。  総理は、昨日の参議院商工委員会で、双方満足のいく形で、こういう御答弁をされているわけでありますが、双方満足のいく形というものはどういうことを指しているのか、外務大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約は、御承知のとおりに日本中国の関係を未来にわたって規定する条約でございます。しかも、これは日中二国間だけではなくて、アジアの平和と繁栄に重大な影響がある問題であります。したがいまして、この条約は、両国の間にはいろいろな問題がないこともありませんけれども、お互い理解し合って、お互いが納得する形で条約を早く締結すべきである、このように考えておる趣旨を総理はあのように申されたことであると考えております。
  5. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 実は、昨日新自由クラブの訪中団中国の翼に参加をされた山口代議士を初め帰国をされて、中国側の持っている、理解をしているこの条約に対するいろいろなお話を私も伺いました。中国側は、考え方はすでに以前からはっきりと示されてまいりました。公明党の訪中団のときにも、四項目というものがはっきり提示をされているわけでございます。中国の方では、終始一貫はっきりしているのです。あとは日本福田総理の決断にかかっているのです。こういう中国側見解というものが終始明らかにされてきたわけでありますけれども、昨日の総理答弁を聞いておりますと、わが国の方には一体何が今日残されているのか、双方理解を示し合える状況ということは、日本側から言えば、何を現実には詰めなければいけないのかということを私もはっきりした形でぜひお聞きをしたいと思うのでございます。
  6. 園田直

    園田国務大臣 中国側友好条約締結についての基本方針は、各団体あるいは各党の代表者の行かれた機会を通じて表明したところであります。日本政府もまた、この交渉に臨む基本方針も、いままで委員会でしばしば私からあるいは総理から本会議において申し述べられたとおりであります。したがいまして、この両方がその立場のもとに、共同声明を足場にしてどのように納得する形で結ぶか、こういうことが今後の交渉であろうと考えます。
  7. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 先ほど申し上げたとおり、中国は、日中平和友好条約に関する中国政府の四項目見解ということを明らかにしてきたわけでございます。いま日本側として納得のいく形にこぎつけるまでに残された問題は、一体どういう問題が現実にはあるのでしょうか。
  8. 園田直

    園田国務大臣 いよいよ交渉が始まることでありますから、具体的にどうこう申し上げるわけにまいりませんけれども、すでに伊藤先生承知のとおり、日本外交方針の基本的なもの、あるいは覇権問題その他について日本政府日本政府の考えがあるわけでございます。これはしばしば申し上げているところでございます。
  9. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日中平和友好条約について、先月の三十一日に佐藤大使と韓念竜外務次官との会談で再交渉の申し入れをわが方からしているわけでございますね。いまはそれに対する中国側の回答待ちということになっているのでしょうか。どうでしょうか。
  10. 園田直

    園田国務大臣 正式に出先大使を使って申し入れをしたわけでありますから、中国から当然御返答があるものと考えて待っているわけであります。
  11. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 中国側からの回答が多少おくれているわけでございますが、おくれている理由はどの辺にあるのか、あるいは回答があるまでずっと待ち続けるのか、どうなんでしょうか。
  12. 園田直

    園田国務大臣 こちらに都合があるように、中国には中国の都合があると思います。申し入れをした以上はその返答を待つのが当然でありますので、それをやんややんや催促するつもりはございません。ただ、申し入れに際して中国側日本側も、交渉再開、継続、言葉の違いはありますけれども、友好条約締結について交渉を進めようということには、そして早く締結しようということについては同意がされているわけでありますので、そこで、わが方からは、国会の都合等もこれあって、大体この付近から交渉を始めていかがでしょうかということは言っておるわけであります。それは国会終了というのが大体めどでございます。と申しますのは、アジア局長以下、佐藤大使のところに派遣をして、ここで折衝をまず始めるわけでありますが、そうしますと、国会開会中は必ずしもこちらは自由がない。それから中国の方も、この前御報告申し上げましたとおり、ベトナムその他の問題がたくさん起こっておりまして、中国の要人は精力的に駆けずり回っておられますので、まあ特別おくれたとは解釈いたしておりません。そろそろ近い時期に返答があるということで待っておるわけであります。
  13. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 中国側から、再交渉に応ずるという回答がこちらに到着をし次第、事務レベルの協議から折衝に入るということになるのでしょうか。あるいはそうではなくて、園田外務大臣中国においでになられるということになるのでしょうか。事務レベルの折衝から始まるという御感触でいらっしゃいましょうか。
  14. 園田直

    園田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、友好条約交渉を始めようということについては、もう返答があっておるわけでありまして、同意があったわけであります。今度の返事は、いつごろからどうやろうかという返答だろうと想像しているわけであります。それで、両方の意見が合意をすれば、しばしば申し上げましたとおり、まず佐藤大使が中心になって、これに本省から中江局長以下必要な人員を派遣をして事務的な詰めというか、整理というか、折衝というか、そういうものを始める。交渉そのものには事務折衝、政治折衝の区別はございません。そうして、適当な時期に総理の指示によって私が中国に行くということでございますけれども、いずれにしても、双方なるべく早く締結しようじゃないか、こういうことには間違いないと存じます。
  15. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 事務レベルの折衝を始めるということになりますと、事務折衝の中身は、どういう問題についてまず日本側としては詰めていかれるのでしょうか。
  16. 園田直

    園田国務大臣 これは、伊藤先生の御質問でございますが、折衝が始まる前に折衝の中身まで申し上げることは困難でございますので、お許しを願いたいと存じます。
  17. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それでは、日中平和友好条約に関する中国側の、中国政府見解というものは、先ほど申し上げたとおり、以前から四項目がすでに提示されているわけでございますけれども、わが国としては、この四項目中国側見解に対して異存がおありなんでしょうか。
  18. 園田直

    園田国務大臣 しばしば申し上げますとおり、わが国の外交基本方針中国基本方針と、国が違うわけでありますから、必ずしも一致するわけではありません。また、条約交渉についてもいろいろ意見があると存じます。だからこそ外務大臣が訪中する必要があるわけでありまして、それは今後の折衝の過程においてそれぞれ相互理解をし、相互が納得し合うべき筋合いのものだと考えております。
  19. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 再三本委員会でもいろいろな質疑が行われてきたわけでありますが、中国の、覇権反対という提示をされた見解というものは明らかにされてきたわけであります。今後、この折衝を始めるということになりますと、私どもが考えますと、事務レベルの折衝は、もう外務大臣の訪中によって最後の詰めをするという、かなり煮詰まった段階に来ているのではないかというふうに理解をしているわけでありますが、外務大臣のいまお話しいただける範囲内で、この覇権問題、中国側見解というものははっきりしてきているわけですから、私の感じでは、もう外務大臣中国においでになられて、最後の決断をするという段階まで来ているのではないかというように理解をするわけですが、大臣としてはいかがでしょうか。
  20. 園田直

    園田国務大臣 覇権問題については、日本中国が相談をして出した共同声明の立場に日本は立つものであります。したがいまして、それがどのように話し合いが進められていくか、どういう意見があるのか、これは今後の問題でございます。
  21. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そこで、非常に関心があるのは、外務大臣御自身がいつごろ訪中をなされるかということだと思いますけれども、どうも外務大臣の外交日程を見させていただきますと、ちょうど国会終了後の十七日でございますね、ASEANの拡大外相会議に御出席をされる。七月の中旬にはボンで先進国首脳会議がおありになる。六月の下旬から七月にかけて、この時期しか時間的な適当な時期はないというふうに思うのでありますけれども、この時期が日中交渉の山場になっていくのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  22. 園田直

    園田国務大臣 交渉が始まりまして、その経緯に従い、総理の御判断、交渉の経過等に従って私が行く時期が決まると存じます。
  23. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 再三、総理が中東を訪問されるというニュースが出たと思いますと、この中東への訪問は延期だ、こういうことでございますけれども、総理の中東訪問はおありなんでしょうか、どうでしょうか。
  24. 園田直

    園田国務大臣 私が先般中東を訪問した際、それぞれの国から、ぜひ総理がおいでになることを望むという強い要望があり、正式の招請もあるわけであります。私からも総理にお願いを申し上げ、総理も、できるだけ早い機会に中東を訪問したいという決意でございます。七月ボンの首脳者会議の帰り道ということも一応考えてみましたけれども、中東には御承知のとおりに宗教的儀礼もあることでありますし、それから時期によって要人が避暑に行くということ等もありますので、七月は無理かなということで、その後で適当な時期をいま検討しているところであります。
  25. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 総理の中東訪問を、どうも政治日程と多少絡んで推察をする方々もあるようでございますけれども、総理の中東訪問は、最近いろいろな角度から出ております。秋に向けての国会の動き、あるいは解散によって国民に信を問うというような活字もずいぶん見受けられるわけでありますが、総理の中東訪問の日程をいままでずっと私ども関心を持って見さしていただいてきたわけでありますが、どうも秋に向けてのいろいろな配慮がされているのではないかという気もするわけでありますが、いかがでございますか。
  26. 園田直

    園田国務大臣 一国の最高責任者として内外の問題を処理されるに当って、国内のいわゆる政治的というか、政略的な動きで決定されるようなことは断じてあり得ない、内外の情勢に対処して真剣にこれの解決に努力をされる、こういうのが総理の本心であると承っております。
  27. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 御答弁をいただいたとおりでございまして、私どもも、特にASEANに関していろいろな約束をしてきたこと、あるいはこれからの中東の問題、こうした問題を、私どもの国内の政治情勢で左右をされないように、すでに約束をしてきた対外援助等につきましても、確実にこれが実行をされて実を結んでいただくように、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  日中平和友好条約をこうして私どもがいろいろと審議をしてくる過程の中で、中国を取り巻く背景というものも変わってきつつあると思います。ソ連と中国との関係、あるいは南ベトナムからの華僑の引き揚げというような、中国を取り巻く国際環境というものも非常に変わりつつある、こういう状況でございますので、こうした新しい国際関係の中で、わが国の外交そのものの、一つのわが国なりの主張を持った外交を、新しい選択をしていかなければならない非常に重大なときだと思っておりますので、外務大臣の今後の外相会議を初め各国の歴訪に当たりましても、いままで私どもが約束をしてきたことをきちっと守りながら、かつまた、隣国の日中関係というものをしっかりと踏まえて、多くの国民の皆さんの重大な関心を持っている問題、しかも日中間の新しいかけ橋はアジアの幕あけであると同時に、新しい国際社会の時代の幕あけにもなるというふうに思いますので、ぜひ道を誤ることなく、多くの国民の理解のできる形で、わが国のしっかりした外交の推進をしていただくことを強くお願いを申し上げておきたいと思います。  それから、恐らくこれがこの会期中は最後の質問になると思いますので、砂糖協定の問題にも一言だけ御質問をさせていただきたいと思います。  この砂糖協定の、いただいたいろいろな資料を拝見をさせていただきまして、まず特殊の事情であるということもあろうかと思いますが、従来からの経緯によってこの中にある条項を無制限に認めるということは、協定の趣旨に反するのではないか、あるいは協定の運用というものを権威のないものにしてしまうのではないかという気もするわけでありますけれども、協定の第三十条から三十三条までの特別取り扱いの規定はどういう理由でできたものか、まずお尋ねをしたいと思います。
  28. 羽澄光彦

    羽澄説明員 お答えいたします。  ただいま先生が申されました特別取り決めは、この協定におきましては、まず第一にEEC諸国に対しましてロメ協定等に基づきアフリカ諸国等から入ってくる砂糖、それからキューバから社会主義諸国への砂糖の輸出、及びソ連から社会主義諸国への砂糖の輸出、この三つが対象になっております。砂糖協定におきましては、古くから、アメリカの砂糖特恵及び英連邦の砂糖協定に基づく特恵というのが大きく占めておりまして、砂糖協定の対象になる、自由市場における砂糖の取引というのは実は少なかったわけでございますが、最近は米国砂糖法に基づく特恵とか英連邦特恵がなくなりましたので、自由市場における取引が世界中における取引の七五%程度を占めるようになりました。したがいまして、当初申しましたこの三つの特別取り決めに基づく取引というものは、世界における砂糖の取引においては大体二五%程度ということで、これを含めましても、砂糖協定自身の有効性というのは余り損なわれなくなったということが言えるかと思います。ただ、たとえばキューバから社会主義諸国に対する輸出というものにつきましては、これを特別取り決めとして残すということには、交渉においても反対は特にございませんでしたけれども、それがいかに行われておるかということがわからないということについては、かなり不満がございました。それで、今回の取り決めにおきましては、コメコン諸国に対する輸出というものは従来からもかなり伝統的に行われておるということもありましてそのまま認められたわけでございますが、非コメコン諸国、たとえば中国等に対する輸出につきましては、キューバが持っております輸出枠というものがあるわけでございますけれども、こういった非コメコン諸国に対する輸出の総枠が六十五万トンを超えた場合には、キューバの輸出枠からその分を差っ引いて出すという規定が新たに入れ込まれたわけでございます。これは六十五万トンという枠がかなり大きいので、それを超える部分というのは実はどれほどあるかわかりませんけれども、こういった規定が入れられることによりまして、キューバと非コメコン諸国との砂糖貿易の実態がわかるということが実はきわめて重要なことであろうかと思います。それによりましてコメコン諸国に対する貿易がどのようなかっこうで行われているかということもこれからだんだん判明してくるのではないかと思いまして、今次砂糖取り決めにおきましては、そういった改善もなされておると言うことができようかと思います。
  29. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 このいただいた資料の二枚目「砂糖協定における価格と国際価格の推移」という表を見ますと、七四年から七五年にかけて史上最高値を記録をしているわけでありますけれども、これはどういう原因によるのか、また、価格の鎮静策がとれなかったのか、あるいは糖価安定事業団はこの間には何をし得たのか、御説明をいただきたいと思います。
  30. 羽澄光彦

    羽澄説明員 糖価安定事業団の関係につきましては後で農林省の砂糖類課長に御説明いただきたいと思いますが、七四年の段階におきましては非常に砂糖の生産が落ちたということで、需要と供給が逼迫したということがございますが、それに絡みましてエネルギー危機等の関連もあり、世界でちょっとしたパニックと言うと大き過ぎますけれども、一次産品の欠乏ということが大きく叫ばれましたために、若干投機的な要素も加わって史上最高と言われる六十数セントまで上がったと言うことができるかと思います。この間におきましては、実は砂糖協定には形骸的な条項だけを盛った七三年の協定があっただけで、いわゆる価格帯とか在庫とかを盛り込みました経済条項がございませんでしたので、七四年の暴騰が起りましたときには、砂糖協定としては実は有効な手段を講ずることができなかった、ただ理事会等におきまして情報の交換とか今後の対処ぶり等について検討が行われたということでございます。
  31. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 糖価安定事業団の砂糖の輸入あるいは国内価格、国内産糖価との関連あるいは運用についてちょっと御説明をいただきたいのですけれども、国内価格との利ざやの運用についてはどのようになっているのか、御説明をいただきたいと思います。
  32. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 お答えいたします。  先ほど最初に先生の御質問のありました価格の高騰時の糖価安定事業団の機能ということについてまずお話しいたしたいと思いますが、昭和四十七年ぐらいから国際糖価の高騰を反映いたしまして、いわゆる糖価安定制度におきます平均輸入価格というものがわが国の価格の安定帯の上限価格を超えるという事態になわました。そこで、糖価安定事業団はかねてより、平均輸入価格が下限価格を下回っているときに安定資金というものを徴収しまして、これを積み立てておりまして、これを上限価格を超えた部分につきまして補てんするという形で、いわば売買の差額として輸入糖業者に払い戻したわけでございます。この資金が大体二百七十億程度ございまして、これを四十七年一月の下期から四十九年二月上期までの間に、いわば高い価格を下げるために放出をしたということでございます。しかし、その後もなおかつ輸入糖の価格が高騰いたしましたので、この場合にはすでに糖価安定事業団には資金がないという形になりましたので、これは糖価安定法に規定がございますが、関税の減免という措置を講じまして、四十九年二月下期から五十年九月まで関税を減免するという措置を講じたわけでございます。この間の輸入量に減免した関税の額を掛けますと、大体一千七百三十五億ぐらいという関税の減免措置を講じたということになっておるわけでございます。  なお、二番目の御質問でございます糖価安定事業団の国内産糖の価格支持、それから輸入糖との価格差でございますが、これにつきましては、輸入糖の方から、先ほど申し上げました安定資金とは別に、国内産糖と輸入糖との価格の調整をすると、う意味で調整金というものをとっておりました。これを財源に価格の補てんをする。国内産糖の高い部分に補てんをするというのと同時に、国費を投じまして、国費と、輸入糖から徴収した調整金とを両方合わせて価格の補てんを行っている、こういうことでございます。
  33. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 この糖価安定事業団とはもちろんその趣旨の違うことはよくわかりますけれども、畜産振興事業団というのがあるわけですね。この輸入牛肉の国内販売の操作についてちょっと関連をしてお聞きをしたいと思いますので、御説明をいただきたいと思います。
  34. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 恐縮でございますが、畜産の担当でございませんので、畜産事業団の牛肉の輸入については私どもよく承知しておりません。ただ、砂糖の立場から申しますと、畜産の方はいわば牛肉そのものを事業団が輸入して国内に販売するという形をとっております。砂糖の場合は、売買という形はとっておりますが、実際は価格差を徴収するということでございまして、現物を事業団が保管をしたり販売したりということは現在やっておらないわけでございます。したがいまして、輸入をしてきたものを法律の定めるところによります価格で買いまして、すぐその輸入をする人間に売り戻すという形で価格差を徴収するということだけをやっております。
  35. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 いただいた資料を見ますと、この協定の趣旨自身が、開発途上国に対してできるだけわが国は砂糖を買って、開発途上国の経済的な面についても協力をしようということがこの協定の大きな柱になっているわけでございますけれども、この資料で見ますと、わが国の輸入先の国別の輸入数量とその比率は、七七年度は豪州、タイ南アフリカあるいは台湾、ブラジル、フィリピン、キューバ、こういう順になっているわけであります。砂糖の生産国はもちろんこれらの国々のほかに多くの国があるわけでございますけれども、今後の政策的な問題として、もっと他の国々からも適当に砂糖を買い付けをしていくということも必要ではないかというふうに思うのであります。あるいは他の国々から民間が買い付けをするということは一体可能なのかどうなのか、こうした構想をお持ちになっているかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  36. 馬場久萬男

    ○馬場説明員 お答えいたします。  おっしゃるように、砂糖の世界での供給国というのはかなりの数に上っているわけでございますが、現在砂糖は輸入自由化品目でございまして、各企業がそれぞれの採算で輸入しているというのが現状でございます。したがいまして、行政庁として、いまのところ具体的にどの国からどれだけの数量を入れるということについての積極的な指導ということはいたしておらぬ現状でございますが、ただわが国に安定的に砂糖を供給するという観点から、できるだけそれぞれの民間企業のグループで長期的な契約をするというような方向に進んでおりまして、先ほど先生が挙げられましたような国々との間で、ほぼ三年ないし五年というような形での長期的な約束が民間ベースでなされているという現状にございます。それは、これらの国とわが国の砂糖の精製業者あるいは商社との間でいろいろな物資等の取引関係等もございまして、砂糖の面からだけで判断していいかどうか私も疑問に思いますが、今後ともそういう砂糖の供給国との間で、まず安定的な供給というような観点からソースを決めていくことになると思います。
  37. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 在庫の操作をすることによって価格を安定していくということが目的であろうと思いますけれども、いままではプールをしておくのは九十万トンだったわけですね。今度はこれを二百五十万トン。恐らく世界の生産の六分の一くらいになると思いますね。これが二百五十万トンですから、ちょうど日本で砂糖を消費している量になるわけですけれども、二百五十万トンになった。いままでは九十万トンだったけれども今度は二百五十万トンにした。何を基準にしてこの二百五十万トンという数字が出てきたんでしょうか。
  38. 羽澄光彦

    羽澄説明員 その在庫数量につきましては、若干交渉マターといいますか、たくさん在庫を置くべきだという主張をする国と、余りたくさん持っておると、価格安定には資するけれどもそのための費用がかなりかさむということで、それに対して熱意を示さない国との間で交渉マターになったわけでございますが、結局は自由市場で取引されております数量が大体千五百万トン程度。それを考えますと、二百五十万トンあれば価格の上昇をかなり有効に食いとめることができるのではないか。これはポンド当たり十九セントに達したときから二百五十万トンの三分の一ずつ、結局十九セントで三分の一、二十セントで三分の一、二十一セントで残りの三分の一、こういうふうに放出しようという考えに基づいているわけでございますが、そうすればかなり有効に価格の上昇をチェックできる。  それからその二百五十万トンの経費でございますけれども、その点に関しましても、最初の二百五十万トン備蓄を用意するのは、これは生産国といいますか、輸出国の負担においてなされるわけでございますが、その維持費につきましては取引ごとにポンド当たり〇・二八セントという拠金を募って、その拠金で無利子によって融資をするということで、その拠金はこれまた取引の際の交渉次第ということで、別に輸出側が出す輸入側が出すということを決めないという妥協が成立いたしまして、二百五十万トンならば輸出国側も輸入国側も満足して受け入れることができるというような感じで決まったものでございます。
  39. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 本協定の趣旨どおり、開発途上国への経済的な援助にも実質的になるように、ぜひ政策の遂行をお願い申し上げたいと思います。  砂糖協定の内容については、お尋ねすることは以上でございますけれども、一点外務大臣に、私、先週の委員会でお尋ねしようと思ったのですけれども、時間的な制約があってお尋ねできませんでしたので……。  先ごろ行われました世界の軍縮の問題、国連で特別総会がございました。外務大臣御自身の演説は非常にはっきりした主張がされていて、それなりの評価をされたと私どもも聞いておるわけでございますけれども、私は改めて、外務大臣がこの国連総会でなされた演説を読み返し、また世界のそれぞれの新聞がどんな関心を持って、この園田外務大臣の演説、あるいはわが国から派遣された市民代表の方々が国連に参加をされて、いろいろと御発言をされたりした、そういうことをどのようにとらえているかということを、私なりに読み返してみました。  わが国が歴史的にも特殊な立場に立っているということは、世界の国々が非常に認識をしているところでございます。しかもわが国は、国の中におきましても、核に対しては非常に強い姿勢と関心を国民の皆様方が持っていらっしゃる。こうした国内的なわが国の歴史的あるいは現状の背景の中で園田外務大臣の演説になったと思うわけでございます。この中で、日本外務大臣が初めて米ソ二大国の核保有というものを名指して、核を持つということに強い反対の意思表示をされた、批判をされたということは、私は非常に注目に値をする点であろうと思うのです。このことは、外務大臣としては、時間的な問題はいろいろあろうかと思いますが、現状では、御承知のとおり日本はアメリカのかさの下に置かれて、わが国の平和と安全を保っているという状況でありますけれども、米ソ二大核保有国に対して、強いこうした姿勢と批判の演説をされた外務大臣として、将来はアメリカの核のかさの下から日本は出るのだという意思表示をされたのかどうなのか、将来の展望について外務大臣の御見解を承りたいと思います。
  40. 園田直

    園田国務大臣 軍縮総会の私の演説に対し御激励を賜って、厚く御礼を申し上げます。  ただいまの御質問の趣旨でありますが、将来わが国がアメリカのかさの下から出るという意思表示はいたしておりません。私の考え方は、いままで日本の外交、安全というものはアメリカの核のかさの下に安全を保っているわけであるから、一切軍縮に対する発言権はないというような物の考え方でございましたが、私は、それは間違いであって、核軍縮と現在の安全とは両立できる。もっと言えば、わが国が核のかさの下にいなくても安全が保てるような国際環境をつくることがわれわれの仕事であります。したがいまして、いまアメリカのかさの下におりますということは、アメリカと一緒になってアジアの諸国に脅威を与えるとか、アメリカの侵略に援助するとかということではなくて、おのおの世界の国々は平和を願っております。平和を願っておりますが、その平和が来るまでは、自国の安全を守ることがそれぞれの国の責任でありますから、核のかさで協力をしながら安全を守りつつ、逐次米ソ両大国の軍縮をありとあらゆる手段で実現をしつつ、そして、核のかさの下にいなくてもよい国際環境が来るように、困難ではあろうが努力を続けることが日本外交の基本であると考えております。  なおまた、これは安全の問題でありますが、そのような国際環境が来たからといって、日本とアメリカが離れるべき筋合いのものではない。日米外交、日米関係は日本の外交政治の基軸であるという点はますます重要になってくると外務大臣は考えておる次第でございます。
  41. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 前回の委員会でも、外務大臣の核に対するいろいろな御答弁を伺いましたし、国連の軍縮特別総会においでになられたいろいろな御報告も伺わせていただいたわけでありますが、要は、私どもは、演説をすると同時に、そうしたわれわれの願いを込めて、日本アジアの中であるいは世界の中で具体的に何をなし得るかということだと思うのです。手をこまねいて核のない時代あるいは戦争のない、そうした力関係で保たれるという形ではない平和をと言うよりも、具体的に日本がいろいろな提案をしたり、そうしたひたむきな努力を継続していくということが、わが国に課せられた非常に重要な役割りだというふうに私は思います。一つの流れをつくろうというときには、まずみずからの国が、その置かれている立場、あるいは川の中にある石の位置を変えなければ、その川の流れは変わらないわけでありますから、川の流れを変える新しい世界の平和と秩序をわれわれが打ち立てていこうという強い意思を日本の国民が持って、新しい国際外交に乗り出していくということであれば、われわれ自身が身をもって実行していかなければいけないというふうに思うわけであります。  今度の国連総会でももちろんそうでありますし、私ども、広島や長崎の問題を八月あるいは八月に近くなってまいりますと、毎年のように思い出すわけでありますけれども、比較的熱しやすくて覚めやすいわが国の国民性からしますと、何となく見て見ないふりをして通り過ごしていってしまうという一面もあるわけでありますけれども、こうした広島や長崎の現状を、時間が経過をしても、アメリカを初め世界の国々の方々が、いま非常に新鮮なショックをもって受けとめているという現状を見ますと、われわれはもっと忍耐強くあらゆる機会をとらえて、今回の軍縮の国連総会でいろいろな強い意思表示をされたような努力を、もっといろいろな機会をつくって続けていただきたいというふうに思うわけでございます。  最後の時間だということで、いろいろと兼ねて御質問をさせていただいてまいりました。園田外務大臣の今後の行動、あるいは福田総理を含めた政府の外交に対する新しい選択ということが、わが国のこれからの長い歴史の、ある意味から言えば新たな出発にもなるという、非常に重大な選択を迫られているときでございますので、十分な御配慮の上に、多くの国民の皆様方が本当に理解のできる外交を力強く園田外務大臣のもとでも御推進をいただきますようにお願いを申し上げまして、きょうの私の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  42. 永田亮一

  43. 土井たか子

    ○土井委員 本日は、いろいろな懸案事項も含めまして、重要問題がいろいろございます中で、まず私は日韓問題を取り上げて御質問を進めたいと思います。  日韓大陸棚協定に伴う関連国内法が参議院商工委員会で成立をし、そして本日、参議院の本会議で賛否が問われることになりましたが、どうひいき目に見ましても内容には問題のある条約であり、関連国内法であるということを言わざるを得ません。ただ、議会制民主主義の数の論理の上で、この問題が多数の力関係で実は成立をさせられるというかっこうになるわけであります。しかし、当外務委員会といたしましては、海洋法の動きであるとか、さらには二国間における共同開発方式というのが、これからは、日韓大陸棚協定における方式を考えつつ、これを前例として取り上げられるという部面もなくはないということを思いまして、この協定が締結されますと五十年の長きにわたって日本は拘束を受けるわけでありますから、そこでひとつ外務大臣に、まず私は、そういう意味も含めての御提案を申し上げて、御趣旨のほどを伺いたいと思うのです。  その一つは、日韓大陸棚協定に伴う経過、実情について、毎年当外務委員会への報告を要求したいと思いますが、この点はお約束いただけますか、どうですか。いかがでございますか。
  44. 園田直

    園田国務大臣 大陸棚関連法案がきょう賛否を問われるわけでありますが、これは協定の関連上私もこの委員会に出て御答弁をしたわけでありますが、いよいよこの開発が始まりますと、この開発をやる所管は通産大臣になるわけであります。したがいまして、所管が通産大臣でありますけれども、しかし協定に署名をする私としては関心があるわけでありますから、通産大臣あるいは通産省から承って、必要があれば御報告をする所存でございます。
  45. 土井たか子

    ○土井委員 いま外務大臣から、毎年ということは具体的に明らかにお答えにはなりませんでしたけれども、そういった経過の状況に対して、実情報告も含めてのやはり見守り方をする必要がある御趣旨の御答弁をいただいたわけですが、われわれといたしましても、今後この問題が成立したからといってそのままにするというわけにはまいりません。逐次これを取り上げて、具体的に俎上にのせて問題にしていかなければならないと思いますが、しかしながら、五十年の長きにわたる協定でございますので、その間国際情勢が刻々変わるということも考えられます。したがいまして、そういう事情の変更に従いまして、やはりこの内容を問いただすということも必然的に必要になってこようと思うわけであります。でき得れば五年ごとにこの条約の見直しくらいはやる必要があるのじゃないかということも考えたりいたしますが、五年という年限が果たして適切かどうかは別といたしまして、こういうことに対しての大臣の御所見のほどはいかがでございますか。
  46. 三宅和助

    ○三宅政府委員 先生御存じのとおり、協定には日韓の共同委員会がございまして、そこでいろいろな問題が常時見直されるということになっております。したがいまして、むしろそのために日本と韓国のためにこの協定の運用なり諸問題について日韓の共同委員会で議論するということになっておりますので、この場を使いながらやっていくということが一番適当かと思います。
  47. 土井たか子

    ○土井委員 適当であるかどうかという問題は、事務レベルの問題になりますね。これは技術的な側面からいま答えられる問題だと思いますけれども、もっと基本的に政治問題としていかがでございますかということを私は外務大臣にお伺いをしているわけでございます。いかがですか。
  48. 園田直

    園田国務大臣 この開発が始まりますと、いろいろ問題も現実に出てくることと考えます。特に、いま発言されたとおり、関係隣国の関係の変化、これは非常に大きなものがあると思います。さらにもう一つは、直接私の所管事項ではありませんが、しばしば言われるごとき疑惑を招くようなことがあってはならぬわけでありますから、この三点については、いまの合同委員会の場をかりて、必要があればそういう話題もあり得るかもわかりません。
  49. 土井たか子

    ○土井委員 疑惑を招くようなおそれがあっては困るからというふうな御趣旨の御答弁でありますが、疑惑はいろいろな点で日韓間においては常に取り上げられ、問題にされてきているわけでありまして、単に日韓大陸棚協定そのものについていろいろとまだ疑義が残されている以前に、日韓間の文化的、社会的、経済的、政治的、あらゆる観点から考えまして、この問題がどういうふうな意味を持っているかということにわれわれは疑惑を持つ事例がございます。  いまから申し上げるのはその一つでありますが、韓国から送金を受けていた日本の会社に多額の使途不明金がある。この韓国から送金を受けている日本の会社、この会社については、すでに参議院の内閣委員会で去る三月三十日の日がわが党の野田哲議員の方から質問として取り上げられている問題であります。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕 その三月三十日の質問の内容では、東京都の港区にある東京韓国研究院の問題を取り上げて、その院長の崔書勉という人について、いろいろ不法入国をめぐる問題、そして在日資格の問題などについて重点を置いた質問がここになされているわけでありますが、私は実は韓国から送金を受けているその日本の会社についての問題に立ち入る前に、ただいま法務省と国税庁とここに御出席いただいておりますから、再度この崔書勉という人についてのあらましのところをお聞かせいただいて、本題に進みたいと思うのです。  実は野田哲議員の方がこれを取り上げて問題にされたきっかけは、韓国の国会の中で予算決算委員会というのがあるようでありますが、その予算決算委員会の場所で新民党の全相鎮議員が質問をされまして、そしてこの質問の中で明るみに出たのがこの崔書勉氏の問題であります。金相鎮氏の表現をかりれば日本で第二の朴東宣とうわさされている崔書勉ということになるわけでありますが、この崔書勉氏について韓国側から政府の資金融資が行われているということで、実は韓国の国会でも取り上げられ、そしてその内容について、一九七七年度の韓国側の会計で二万五千ドル、そして一九七八年には二十万ドルを援助するという予算が計上されている、このこと自身がどういうふうに使われているかという援助内容を明らかにせよという内容であったようであります。政府はなぜ、肥料ブローカーであり、米ブローカーであり、書籍ブローカーをやっている人間に対してそのような援助をする必要があるのかという質問の内容でもあったわけであります。  三月三十日の繰り返しになる部面もあるかもしれませんけれども、この崔書勉氏についてまず法務省の方にお伺いをしたいと思います。  この崔書勉氏は一九四七年十二月に韓国民主党の張徳秀政治部長を暗殺して翌年死刑判決を受けた崔重夏と同一人物で、五七年の六月ごろに日本に不法入国したということが言われておりますけれども、そのとおりであるかどうか、いかがでございますか。
  50. 日野正晴

    日野説明員 お答えいたします。  崔書勉氏につきましては、昭和三十二年の六月一日に不法入国いたしまして、昭和三十五年六月六日に東京出入国管理事務所に出頭いたしまして、この不法入国の事実を申告をいたしておりますが、それに基づいて退去強制手続が進められましたところ、同人は韓国で昭和三十二年に逮捕命令が出されたために本邦に不法入国したということを申しまして、不法入国後は本邦において韓国カトリック史の研究に専念していて妻子ともども安定した生活状況にありましたために、昭和三十五年十二月十二日に法務大臣の裁決によりまして在留特別許可が与えられております。  先生先ほど御指摘の別名の名前の者が出てまいりましたが、その人物とこの崔書勉氏とが果たして同一人物であるかどうかにつきましては、法務省としては承知しておりません。
  51. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、日本に対して不法入国したという事実はお認めになっているわけですか。
  52. 日野正晴

    日野説明員 先生の御指摘のとおりでございます。
  53. 土井たか子

    ○土井委員 その不法入国の仕方なんでありますが、どのように不法入国をしたのであるか。これは一説によると立川基地に米軍用機でカソリックの尼のかっこうで入国してきたというように言われておりますが、その事実を法務省としては事実として掌握されておりますか。いかがですか。
  54. 日野正晴

    日野説明員 先生の御質問の、本人がどこから入国したかという点につきましては、何分非常に古いことでございますので、現在の記録などには何も残っておりませんが、本人の供述としてははっきり供述しなかったということで、法務省としてはどこから入国したかについては具体的な証拠を持っておりませんが、ともかくも本人が出頭してきて、不法入国した、こう言いましたので、それ以上詳しいことは、追及したものの、本人のそういう弁解がありましたために、それ以上詳しいことを法務省としても承知しておりません。
  55. 土井たか子

    ○土井委員 ただしかし、不法入国をしたというふうなことを自首されるまでに非常に時間があるわけですね。不法入国をしたのが五七年ごろ、そして自首しているのが六〇年ごろじゃありませんか。その間三年余りの時間的経過があると思われますが、その間のことは一切法務省としては不問に付したままで、本人に対してこの特別在留許可ということを問題にするという経過になったわけですか。いかがなんです。
  56. 日野正晴

    日野説明員 全く不問に付したというのではございませんで、御指摘のように、昭和三十二年に不法入国したと本人が言っておりますし、それから、申告してまいりましたのが昭和三十五年でありましたために、その後の居住歴であるとか、どういった仕事をしていたかとか、それから妻子は果たしているのかいないのかとか、そういったことについては調査しております。
  57. 土井たか子

    ○土井委員 そうしてその特別在留許可ということに対して、やはりこれは身元保証人というのが必要だと思いますが、その間の手続については、法務省としてはどのような措置、その内容に対してどのような理解を持っていらっしゃいますか。
  58. 日野正晴

    日野説明員 当時の身元保証人になっておりますのは、三越デパートに勤務しておりました方が、本人の知人で、カトリックを通じて知り合ったということで保証人になっております。
  59. 土井たか子

    ○土井委員 そのカソリックを通じて知ったと言われる三越デパート勤務の保証人の方というのは、具体的に崔書勉氏をよく御存じの方なんですか、どうなんですか。便宜的に身元保証人ということになられたといういきさつがあるのじゃないですか。いかがです。
  60. 日野正晴

    日野説明員 お答えいたします。  何分古いことでございまして、当時の事件概要書というものを本日持ってまいりましたが、それには確かに三越デパートに勤務している者が身元保証人ということになって記載されておりまして、どういういきさつで身元保証人になったかどうかということまではつまびらかにすることができません。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 これはいろいろ回り回ってそういうことになったという事実が実はあるようであります。この御当人は身元保証人ということに名義上なりながら、果たして崔書勉氏をよく御存じであるかどうかということはつまびらかではありません。恐らく崔書勉氏を御存じない方が身元保証人になっていられるというてんまつがあるようであります。その間は古いことだからよくわからないと法務省当局としてはお答えになるであろうとは思いますけれども、なかなかこの点入り組んだ問題があるようであります。つまびらかにすればするほど問題が出てこようと思われる部面がこの辺にもあるわけですね。  さらに一九六七年の八月に崔書勉氏が訪韓をいたしました節、いろいろ日本円やドル、小切手など総額にいたしまして約三千万円以上の金を韓国に持ち込もうとして金浦空港で見つかって検挙されたというふうな事実があるはずでありますが、これについて御承知でありますか。
  62. 日野正晴

    日野説明員 お答え申し上げます。  崔書勉氏は、ただいま先生も御指摘になりましたように、一九六七年の八月一日に再入国許可を取得いたしまして韓国に渡りました際に、当時まだ刑の残っていた分につきまして残刑の執行としてソウルの地方検察庁が本人を収監いたしました。その点は承知しております。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 そうして収監をして後どういう取り扱いがそれに対してあったということを把握されておりますか。いかがです。
  64. 日野正晴

    日野説明員 お答え申し上げます。  崔書勉氏は収監されましたために、その収監に対しまして異議の申し立てをしたわけでございます。それは、ソウル地方検察庁が執行停止の処分を取り消してソウルの矯導所に収容いたしましたために、その執行停止の取り消し決定に対する異議の申し立てをソウルの高等法院にいたしましたところ、ソウルの高等法院では、すでに赦免令によって、残刑は消滅しているということで、その刑の残刑の執行をすることはないということで、ソウル地方検察庁の行いました刑の執行停止の取り消し決定を取り消しております。
  65. 土井たか子

    ○土井委員 その間の、刑の執行停止取り消し決定を取り消すというまことにややこしい事情について、内容が適当であるかどうかを詳しく述べるのは内政干渉になるかもしれません。しかし、金浦空港で検挙され、そしてその罪に問われながら、あと残る刑期があるにもかかわらず、なぜ釈放されるということになったかというてんまつについては、非常に不審が残るわけでありますが、法務省としてはこの点をどのように把握されておりますか。
  66. 日野正晴

    日野説明員 お答え申し上げます。  何分外国の刑の執行の問題でございまして、当局といたしましては、先ほどお答え申し上げましたような点を確認したところ、刑の執行停止の取り消し決定が取り消されて、一たん収容されましたが、釈放されたということになりましたので、それ以上の点は問題にしておりません。
  67. 土井たか子

    ○土井委員 確かにそれ以上の点は日本の国内においては問題にすることはできないでありましょうけれども、ただそのてんまつを見てまいりますと、何だか不審が残るわけであります。  そういう崔書勉氏でありますが、昨年の十一月七日に、韓国の国会で第二の朴東宝ということを問題にされた人物でもあるわけです。この人が主宰をいたしております東京韓国研究院の問題が、先ほど申し上げたとおり、去る三月三十日に参議院の内閣委員会で取り上げられるというかっこうになったわけでありますが、問題は、東京韓国研究院の一部であるというふうに国税庁の方では理解されている国際関係共同研究所というのがさらにあります。なぜ私はここで一部ということをはっきり言うかというと、三月三十日の参議院の議事録で、国税庁はその席にも御出席でありますが、それの御答弁の中に、「国際関係共同研究所というのは韓国研究院の一部ではないかというふうに承知しておりまして」云々という部分があるわけであります。したがいまして、国税庁としては、国際関係共同研究所というのを、私が先ほど来問題にしてきている崔書勉氏が院長である東京韓国研究院の一部であるというふうに理解されているというかっこうになるわけですが、そのとおりに確認させていただいてよろしゅうございますね。
  68. 北村恭二

    北村(恭)説明員 お答えいたします。  先般、参議院委員会におきましてお答えいたしましたのは、あくまでも課税上の観点からでございます。実質的に独立した、法人格を有する団体であるか、あるいはそうでないかという観点から、詳細は承知してなかったわけでございますけれども、そういうふうに考えられるんではないかということでお答え申し上げたわけでございます。
  69. 土井たか子

    ○土井委員 課税上の関係からとおっしゃることは、事実その一部であるということが現実の問題としてあるということを認識されて課税をされるわけでありますから、それは明確にそういうふうな御認識を持っていらっしゃるということを伺わせていただいていると、われわれとしては理解いたしております。  さて、そういう観点から見てまいりますと、国際関係共同研究所の主宰は、元駐韓大使の金山政英氏であります。かつて、昨年の十一月七日の韓国の国会でも、東京韓国研究院と同時に、この国際関係共同研究所の主宰である金山政英氏に対しても、韓国側からの資金援助があるという具体的事実が取り上げられて問題にされております。その金額は、金相鎮議員の質問の内容からすれば、一九七七年には東京韓国研究院に対しては二万五千ドル、いまのレートで換算いたしまして約五百万円から六百万円ぐらいになるんじゃないかと思いますが、一九七八年になりますと、これが二十万ドル、約四千五百万円相当に当たると思います。さらに、いま後に問題にいたしました国際関係共同研究所の方に対しまして、具体的には金山政英氏に対しまして、韓国政府から七七年には二万ドル、七八年には十万ドルという金額が渡されたことが、具体的に韓国の国会で出されたといういきさつがあるわけであります。したがいまして、それを受けて、実は野田議員は、税金上のこれに対する取り扱いはどうなっているかということを質問されたのだと思いますが、いかがでございますか。このことは国税庁はそのように理解をされて、それに対しての御答弁を三月三十日にはされておりますね。
  70. 北村恭二

    北村(恭)説明員 お答えいたします。  委員会で、具体的に二つの団体の名前が出て質問がございましたので、課税関係として、法人格の有無といったようなことで課税関係がどうなるかというようなことをお答え申し上げたわけでございます。
  71. 土井たか子

    ○土井委員 そうしてそれぞれに韓国から資金が出ているという事実はその節お認めになっての御答弁であったのかどうか、いかがですか。
  72. 北村恭二

    北村(恭)説明員 あくまでも一般論で課税関係を申し上げたわけでございまして、そういう内容のことについては一切触れてございません。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、しかし「個人の関係につきましては、わが国の居住者として税法上所要の手続をとっているというふうに承知しております。」という前置きがあって、「それから、いま申し上げました団体の関係につきましても、」とあって、野田哲議員の御質問に対してのそういう表現だと思いますが、「お尋ねのような団体があることは承知しているわけでございまして、御指摘のような点についても十分関心を持って処理してまいりたいというふうに考えております。」こういうきっぱりした御答弁があるわけであります。したがいまして、一般論じゃないのですね。議事録の御答弁の内容からすると、これはだれが見たって、具体的にそういう団体を掌握して、しかしながら、法人でないために、個人の関係について居住者としての税法上所要の手続をとっているというふうに承知しているから、十分関心を持って処理していきたい、こういうふうな御発言であるということがはっきり読みとれるわけでありますが、この点はいかがなんですか。同じくこれは北村さんが御出席になってお答えになっていらっしゃいますよ。
  74. 北村恭二

    北村(恭)説明員 議事録にございますとおり、団体関係の課税関係、それから個人の関係についてもお尋ねがございましたので、「居住者として税法上所要の手続をとっているというふうに承知しております。」というふうにお答え申し上げてございますし、今後も「十分関心を持って処理してまいりたい」ということで御答弁いたしたわけでございまして、お尋ねの件につきましては、税務当局といたしまして関係の情報等を収集しながら、現在十分関心を持って対処をしているところでございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 さらにお尋ねいたしますが、図書文献センターというのが、いま「関心を持って処理してまいりたい」とお答えになりました二つの団体と同じ場所、つまり東京都港区三田のビル内にあるという事実を、これは法人でありますが、掌握されているかどうか、いかがですか。
  76. 北村恭二

    北村(恭)説明員 お尋ねのような会社が存在していることは承知しております。
  77. 土井たか子

    ○土井委員 東京韓国研究院と国際関係共同研究所は同じビルの中に存在しているわけでありますが、さらに、いま国税庁の方が存在をはっきりお認めになりました図書文献センターも同じビルの中に存在しているわけであります。ところが、この国際関係共同研究所の所長であり、この図書文献センターの取締役の一人になっておられる金山政英氏が説明をされているところによりますと、新聞紙上でこれは知ったわけでありますが、韓国政府はソウルに本部を置いている国際韓国研究院に毎年補助金を支出している、これが東京分院に当たるところの東京韓国研究院を通じて図書文献センターに入る仕組みとなっている、このように述べられているわけでありますが、この事実は国税庁としてはどのように掌握されておりますか。
  78. 北村恭二

    北村(恭)説明員 お尋ねが大変個別の事案にかかわることでございますので、具体的な内容について申し上げることは御容赦願いたいと思いますが、お尋ねの件につきまして先ほど来申し上げておりますように、国税当局としては一般的にいろいろ関心を持って対処しているということでございます。
  79. 土井たか子

    ○土井委員 関心を持って対処しているとおっしゃるのは、これは去る三月三十日の時点の問題であります。恐らくはずっとこれに対して関心を持って対処されたに違いないと思うのですが、何月ごろからこれに対して関心を持って対処されて、そしてこの問題に対しては大体もう決着がついているはずだと思うのですよ。大分日時もたっておりますから、日本の優秀な国税庁というのは問題をいつまでも延引さすようなことはなさらないと私たち思います。特にこれは私人ではなくて、図書文献センターになってまいりますと法人登記がちゃんと具体的になされているわけでありますから、法人登記というものがされているということになってまいりますと、具体的な調べというものは、それこそ国会答弁というのはだてでなされているわけではありませんから、恐らくは三月三十日以後さらにスピードアップして拍車をかけて展開をされたに違いないと思うわけであります。こういう事実に対して調べられたということはお認めになりますね。いかがです。
  80. 北村恭二

    北村(恭)説明員 一般にわが国の法人に対しましていろいろ課税上問題がある、あるいはその他いろいろ情報等がある場合には、積極的に税務当局としては関心を持って調査をしているということでございます。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 土井たか子

    ○土井委員 したがって、その情報があった結果いろいろ調査をなさる。そしてその調査というふうなことは明々白々であり、一点の曇りもないという場合には、調査というのは恐らく行われないだろうと思うのです。これに対しては「十分関心を持って処理してまいりたいというふうに考えております。」御答弁ではこうなっているわけでありますから、したがいましてどういう処理がその後なされたかということについては、国会の席上でありますので、国会御答弁に対してさらに質問に対するお答えというのは国会でいただくということが私は大切だと思うのです。国税庁として守秘義務もおありになることは私は当然承知しておりますけれども、しかしながら、お答えになったことに対して、さらに国会の席でこうであったということは具体的にお答えになれる範囲でひとつお聞かせいただくことが私は十分大切だと思います。特にこの問題に対してはいろいろと三月三十日の議事録を見ました限りでもそうでありますし、またマスコミを通じてもそうであります。疑惑が持たれているわけでありますから、そういう点からいたしますと、国税庁とされては、この問題に対して実は調査をいたしましたというふうなことを具体的におっしゃらないと、疑惑がつのる一方だということも重ねて申し上げさせていただいて、この三月三十日以後「十分関心を持って処理してまいりたいというふうに考えております。」とおっしゃった中身は、具体的には決着したのか決着してないのか、そこのところをひとつお聞かせいただけませんか。
  82. 北村恭二

    北村(恭)説明員 先ほど御答弁いたしましたように、現在関心を持って対処しているところであるということでございます。
  83. 土井たか子

    ○土井委員 そうするとそれはまだ決着をしてないわけでございますか。いるいろ問題があるわけですが、まだ決着をしてないというふうにわれわれとしては理解をしておいてよろしゅうございますか。
  84. 北村恭二

    北村(恭)説明員 直接の調査の結果に関連する御答弁としては御答弁できないわけでございますが、先ほど申し上げたとおりでございます。
  85. 土井たか子

    ○土井委員 私たちがいろいろと調べました結果においては、国税庁の方が調査をお始めになって、それは昨年の暮れ恐らくは十一月ごろからだろうと思いますけれども、図書文献センターに少なくとも四千万円の支途不明金がある。この図書文献センターというのは先ほども申し上げたとおり法人登記がなされているわけでありますから、したがってこの事実について、三月三十日に取り上げられた東京韓国研究院であるとか国際関係共同研究所とは違ってくると思うわけであります。この点はいかがなんです。
  86. 北村恭二

    北村(恭)説明員 具体的に調査の内容、結果等について御答弁できませんのは、これは法人格がない場合でも法人格がある場合でも同じでございます。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 それは同じであるということはよく承知しております。同様に守秘義務があるでしょうけれども、しかし取り扱いの上では違うのでしょう、法人格がある場合とない場合とでは税制上の取り扱いが違うし、またこれに対する処遇の仕方も違ってくると思いますが、その点どうですか。
  88. 北村恭二

    北村(恭)説明員 お答えいたします。  法人税の上では一般の株式会社等に対する課税関係というものと、それから、公益法人といったようなもの、公共法人あるいはその人格なき社団、いろいろ課税対象として考える内容は変ってまいりますけれども、一般的な守秘義務その他の関連におきましては取り扱いは同一になっておるわけであります。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 国税庁がいろいろお仕事をなさる場合に守秘義務があることくらい私は百も承知なんでありますが、しかしこの問題に対しては守秘義務の範囲内で三月三十日の参議院の場所でもお答えになっていらっしゃるに違いないと私は思うわけであります。そうしてそのときの御答弁の中には「十分関心を持って処理してまいりたい」というふうな御答弁をされておるわけでありますから、それについて一体処理がどの程度どこまで進んだか、これは処理が済んだということになるのかならないのかあたりは、お聞かせいただいても守秘義務に反しないと私は思うわけであります。そこのところは少し誠意を持って御答弁をいただくわけにはいきませんか。
  90. 北村恭二

    北村(恭)説明員 税務当局といたしまして、課税の公平ということからあらゆる問題について適切な課税処理をするということは従来から努めてまいっているところでございまして、この点についてはいかなる問題についてもそのような姿勢で臨みたいということでございます。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 しかし図書文献センターという存在に対して十分関心を持って処理してまいりたいというふうに考えていらっしゃるということについては、これは事実をそのとおりに理解をしてよろしゅうございますね。
  92. 北村恭二

    北村(恭)説明員 そのとおりでございます。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 四千万円の使途不明金があるということを、私たちとしてはいろいろ調査の上で察知しているわけでありますけれども、この事実が事実どおりであるかどうかということに対しても、それならば、いま十分関心を持って処理をなさる対象の内容でありますから、ひとつ処理の内容として、考えていただくということをここで言いたいと思いますけれども、いかがでございますか。
  94. 北村恭二

    北村(恭)説明員 いま法人の使途不明金ということの問題がございましたが、一般の法人におきまして、使途が明らかでないものというものがございますことは、その課税上の処理といたしましては、損金に算入できないというような処理があるわけでございます。それから、人格なき社団といったような場合には、それが収益事業を営んでいるか否かということでその辺の取り扱いが変わってくることもあると思いますけれども、いずれにいたしましても、税法に従って処理いたしたいということでございます。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 税法上の決めに従って処理をなさるということは、これはおっしゃるとおりでございまして、そうでなければ困るわけであります。国税庁のお仕事はそれをおいてほかにないと申し上げてもいいようなことでございますから。したがいまして、それは十分そうやっていただかなければならないわけでありますけれども、その対象として、この図書文献センターについていろいろ調査を進め、そして昨年の暮れあたりからこちらに精力的に努力をされているということは、これは私ども理解をしてよろしゅうございますね、それは認めてよろしゅうございますね。
  96. 北村恭二

    北村(恭)説明員 お答えいたします。  個別の法人の名前を挙げられましてお尋ねになりますので、非常に御答弁苦しいわけでございますけれども、一般的に問題がある、あるいは調査の必要があるといったような法人については、鋭意課税の公平のための努力をしております。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 これは、特に三月三十日にも御答弁の中に出ているわけでありますけれども、送金手続を調べるということは大変むずかしいと御答弁の中でも言われています。「外為法全体が有効な外貨の利用という観点から、日本から資金が出ていくときはやや厳重に、日本に入ってきますときはやや緩和された形で体制がなって」いるから贈与だとか寄付については規制がない、だからこういう点では非常にやり方が、出ていく場合と入ってくる場合とでは違うという趣旨のこともおっしゃっています。ここで、私は大変しっこく、守秘義務があるにもかかわらず、それを顧みず、国税庁に御質問を展開したというのは、実はこのお金の出所というのが韓国政府から出ているというところが問題なんです。韓国の政府から、これは補助金として東京韓国研究院並びに国際関係共同研究所に出されているということが、かって三月三十日に問題になり、そしてこのことに対して十分関心を持って処理してまいりたいという事実に対しての認識を国税庁としてはお持ちになり、さらにそれを受けて、この金山政英元駐韓国大使の説明からいたしますと、実は国際韓国研究院に毎年補助金は韓国政府から出ているけれども、これが、東京分院に当たる東京韓国研究院を通じてこの図書文献センターに入る仕組みになっている。この図書文献センターというのは、実は一私人じゃなくて法人格を持っているわけであります。したがいまして、そういう点からすると、やはり国税庁とされてはいろいろ三月三十日以後十分関心を持って処理していかれた対象が、具体的にここにあるわけであります。したがいまして、そういう意味を含めて私はきょうはお聞かせをいただいたわけでありますから、個別の具体的な名称を出すということになると、ここではお答えが非常にむずかしかろうと思います。そこで、さらにそういうことの配慮をしながらお尋ねをいたしますけれども、外国の特定の政府から補助金が送られて、それによって活動をやるという、日本につくられた外国の法人に対していろいろお調べになるときに咲これは日本の国内で決められている日本の国の法人と同様の取り扱いで、これ自身に対しては取り扱いをお進めになりますね、もちろん。
  98. 北村恭二

    北村(恭)説明員 ちょっとお尋ねの趣旨がはっきりいたしませんでしたけれども、国内の法人が法人税調査の対象になるわけでございます。国内の法人に対して、国内であろうと国外であろうと、収入というものがあればそれは収入として把握するということでございます。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 それは、したがって外国から補助金を受けて設立されている法人であっても、そのことに対してはいろいろと取り扱いを異にされないということであることだけははっきり言えますね。
  100. 北村恭二

    北村(恭)説明員 出資者がだれであるかということに関係なく、国内にある法人は内国法人ということで取り扱っているわけでございます。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 出資者がいずれであるかということを問わずというところで、一つはもう、韓国からの補助金の持っている政治的意味というのは国税庁においてはいろいろと勘案されないというかっこうになるわけでありますから、実にこれは巧妙だと思うわけでありますけれども、この四千万円の使途不明金に対して国税庁が鋭意関心を持っていろいろほかの法人と同様の取り扱いで処理を進められる、またいろいろ調査をそれに対して進められたというふうなことに対しては、事実をひとっここの場所で認識をさせていただきたいと思います。よろしゅうございますね。
  102. 北村恭二

    北村(恭)説明員 御答弁がどうしても一般論にならざるを得ませんけれども、収入あるいは出資者といったようなものに関係なく、国内の法人の収入であるものは収入として把握するということで、適正な課税をいたすということでございます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 課税対象に対していろいろ調査をなさる場合には、その課税対象の活動なり課税対象の内容というものに対してもちろん調査をお進めになりますね。いかがですか。
  104. 北村恭二

    北村(恭)説明員 法人税の調査あるいは税務上の調査というのは、あくまでも課税すべき所得を的確に把握するということでございますので、その範囲内で必要なことは調査いたしますが、いずれにしても所得の把握の問題だというふうに御理解いただきたいと思います。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 所得の把握の問題だとおっしゃいますが、いろいろ課税対象になる活動として具体的な名前を挙げるとなかなかこれはむずかしかろうと思いますが、特定の政府から日本に補助金がある法人の活動内容に、主なものが、どういうものが一般的に考えられますか。
  106. 北村恭二

    北村(恭)説明員 大変むずかしい御質問でございまして、余りそのような観点からは私ども考えたことはございませんので、ちょっと御答弁がいたしかねます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 外務省にお尋ねしたいのですが、国際韓国研究機関協議会というのが韓国にあるということを御存じでいらっしゃるか。いかがですか。
  108. 三宅和助

    ○三宅政府委員 報道として把握しております。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 その報道は、さらにその協議会自身が、アメリカの大学や、カナダにおいてもそうでありますが、研究機関を通じまして訪韓や招待や献金申し込みなどを行っているということで、アメリカの国内で問題にされた例があるという事実も掌握をされておりますか。
  110. 三宅和助

    ○三宅政府委員 一部報道として承知しております。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 この国際韓国研究機関協議会の傘下に東京韓国研究院や先ほどの金山政英氏の主宰されております国際関係共同研究所もあるということを御存じでいらっしゃいますか。
  112. 三宅和助

    ○三宅政府委員 新聞報道で承知しております。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 アメリカで問題にされているように、大変これは問題が大きいのです。一九七四年には、この韓国研究院の院長である崔書勉氏がいろいろとこれに対して努力をされまして、日本ベンクラブの代表を訪韓させておられます。そしてその節、韓国に言論の自由があるということを強調させて物議を醸すという事件もございました。いろいろ、図書文献センターと同じビル内にある東京韓国研究院と国際関係共同研究所というのは、日本において韓国からする一つの文化政治工作の場所だというふうなことも、とかく問題にされております。  こういうことからまいりますと、先ほど国税庁としては、お立場がお立場でありますから、ここの場所を通じて使途不明金に対してどういう取り扱いをされたか、またその具体的内容がどうであるかということのお答えは、それはいただくことがむずかしいです。しかしながら、どうしても韓国から直接こういう補助金が送られてくる、それは私どもが掌握をしている限りにおいては、一九七七年と七八年とを総計いたしまして、これは莫大な金額です。七千万円そこそこであります。こういう金額をいろいろ日本で政治的な文化的な工作に対して使われていくというふうなことがもしありやとするならば、これは大変問題が大きいと思うわけであります。そういう意味で、多額の資金が韓国政府から流れ込んできているということにもなりかねない。こういうことからいたしますと、この東京韓国研究院、国際関係共同研究所、同じビルの中にある、きょう私が問題にいたしました図書文献センター、こういう一貫した問題というのは、日韓間の正常なあり方、そして本当に友好親善ということを考えていく上で、私はどうも、持っている役割りなり持っている意味内容というものが好ましからざる存在であるというふうに思われてならないわけでありますけれども、ひとつ外務大臣、どのようにこの問題に対していままでお聞きになっていらっしゃるか、またこういうことに対してどうあってほしいというふうにお考えになるか、それをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  114. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの件は情報として承っておりましたが、正式には承知をしておりません。が、いずれにいたしましても、日本の国内にある一つの法人に第三国から送金されるということ、これ自体は外務省としてはどうにもできないわけでありますけれども、しかしそういう機関が特殊な自分の国の方針等をPRするための政府の機関であるなら別でありますけれども、そういう機関を通じて情報収集をしたりあるいは歪曲されたる方向へいろいろな宣伝をされることがないように、十分関心を払う必要があると考えております。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 いま外務省としては、外務大臣が御答弁になったような方向で、きょう私が問題にいたしましたそれぞれの団体について関心をお持ちになってこられていたかどうか、いかがでございますか。
  116. 三宅和助

    ○三宅政府委員 もちろん外務省としても関心は持っておりまして、報道その他で、それからまた、昨年先生御指摘になりました十一月の韓国国会における質疑その他も取り寄せまして、十分その事実については承知しております。外務大臣が申し上げましたように、外務省といたしましても、この点につきましては関心を持って情報をつかまえているけれども、それに対してどうこうという立場に外務省としてはないわけでございます。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 どうこう言う立場にないというのは、これはまことに無責任な御答弁だと思うのですよ。  外務大臣、先ほど外務大臣がおっしゃったとおりだと思います。一国の政府機関がその国のPRを他国において具体的に展開する、これは私は、許される範囲での活動であり、またそういうお互いの交流であるとかお互いの正しい認識を喚起していくことのためには必要な活動であるというふうに考えます。しかしながら、こういう個人的な立場に対して一国の政府が多額の補助金を、これはもう多額と申し上げなければなりません。ちょっとやそっとではないのです。多額の補助金を出して、そしてそれが正確に理解されればいいですけれども、歪曲をされるような、そして具体的な内容というのもどうもつまびらかでない、何か疑惑があるような活動が、ここの中を中心に展開されているやにわれわれも思わざるを得ぬような現状というものを、これを知っております。しかし何ともしようがないというのじゃ、これはそれこそしようがないと思うのです。外務大臣としてはどのような対処がこういう問題に対しては必要だというふうにお考えになりますか。
  118. 三宅和助

    ○三宅政府委員 ちょっと舌足らずで誤解を招いたかもしれませんが、私が申し上げたのは、外国から日本の民間団体に対する資金の流れ、そういう問題について外務省として知る立場にないということを申し上げたのでありまして、もちろん関心を持って今後いろんな形でフォローしていきたいということは外務大臣がすでに申し上げたとおりでございます。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 それは局長答弁でありまして、外務大臣としては政治家としてどのようにこういう問題についてお考えになりますか。
  120. 園田直

    園田国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、いろいろ疑惑なり事件が起こっている段階でもありますから、多額の金が送られること自体は外務省は取り締まるわけにいきませんけれども、それから来るべき可能性のあることについては、歪曲されたりあるいは謀略工作の拠点になったりということがないように十分情報を収集してこれを見守り、これに対応する措置が必要であると考えております。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 事は、この韓国における状況に対して問題にするわけではございませんで、展開されているのはわが日本の国内における問題でございますから、対処の仕方からすれば、十分に政治家として実力をお持ちになっていらっしゃる外務大臣としてやっていただく部面があろうと私は思います。それに対して具体的な考え方が、何らかいま外務大臣の胸の中にあるのじゃないかと思いますが、その点お聞かせいただくわけにはいきませんか。
  122. 園田直

    園田国務大臣 御発言の趣旨は当然外務大臣としては心得べきことであると考えております。事務当局も申し上げましたとおり、答弁の言葉が足りなかったわけでありますが、そういう方針で十分関心を持ち、これに対して注意、監視をする所存があると考えております。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 それは漠然としたことではなくて、具体的な、ここにこの団体、機関というものがございまして、しかも主宰をされている方の具体的なお名前も私は出したわけでありますから、したがいまして、これに対しては一般論としてでなしに、対処の仕方が具体的にあってしかるべきだと思いますから、ひとつその点をはっきりこの席を通じて再度外務大臣に御答弁いただいて、次の問題に移ります。よろしゅうございますか。
  124. 園田直

    園田国務大臣 ここで具体的にお答えはいたしませんが、十分注意をしてやります。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 先日、徐俊植氏の問題を私がここで取り上げたのは先月二十六日でありました。そして、そのあくる日の二十七日には、七年の刑期を満了して自由の身になるという予想があって、ここでこの徐俊植氏の問題に対しての質問を私は展開したということでありました。ところが、その後社会安全法の保安監護処分ということが具体的に行われているやにわれわれは知っておりますけれども、その後の経過について、ひとつ外務省を通じての御説明をこの場所でいただきたいと思います。
  126. 三宅和助

    ○三宅政府委員 刑期満了後も韓国の保安法に従いまして、依然として勾留されている、こういうように承知しております。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 依然として勾留をされているという状況は、どういう状況なんですか。それはいずれで、どういう状況で勾留をされているということになっておりますか。どのように具体的事実を察知されておりますか。もう少し詳しく御説明を賜りたいと思います。
  128. 三宅和助

    ○三宅政府委員 刑期満了後も保安法に従いまして、いろいろとその後の言動その他について調査を受け、そういう観点から勾留されている、こういうぐあいに関係当局の方から聞いております。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 いまのは御説明を求めたわけでありますが、先日当委員会の質問をする際に、質問の前にわざわざ二十七日の前日、恐らくはということでここで事情説明を外務大臣からお聞かせをいただいたわけであります。その後、いま御説明をいただいた状況になったわけですが、外務省として、それに対する対応は何らかおとりになったのかいかがかという点をひとつお聞かせくださいませんか。
  130. 園田直

    園田国務大臣 土井先生の御発言によりまして、ちょうど御承知のとおりに駐韓国の大使が来ておりましたから、大臣から口頭で、人道上の問題であるから韓国に対して成果があるように折衝しろ、こう言って帰したところでありますが、その後韓国の方から、出獄した後在韓国の身元引受人があるかどうか、あれば何とか内々で日本の方でもというような話もあったわけであります。  ところが、その後、わが国内と大分違っておりまして、その身元引受人というのが、どうも出獄さして、そして本人をやさしく見守ってやるという身元引受人ではなくて、本人自体も、われわれから言うのはおかしいわけでありますが、なかなか自分の信念を変えないということで、そこでそうした後、身元引受人ということは、むしろ逆に本人だけではなくて、その身元引受人等に対してもいろんな強圧というか、そういう国家権力が加わるおそれが非常にあるわけで、心配をしておったわけであります。うまくいくかと思いましたら、残念ながらいま報告しましたとおりに、刑務所を移されて、さらに収容されておるわけで、本人自体も身元引受人を出すことを承知しなかった、こういうわけでありますけれども、しかし引き続いて、内政干渉ではない、日本に在住する人間で重大な関心があり、しかも人道上の問題であるから、大使、これを何とか成果があるように努力をしろ、こういうことを言っておるところでございます。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 そういう経過をいまるる外務大臣からお聞かせいただいたわけでありますが、ひとつ何と申しましても徐後植氏もそれからこのお兄さんの方も、在日韓国人という地位は保全されているわけでありますから、したがいましてそういう意味で、ひとつ始終注目を続けていただきますように、いまこの席を通じてさらに私は申し上げたいと思います。  さて、核軍縮の問題でありますが、先日バンス国務長官がカーター大統領の宣言を発表されまして、アメリカは非核保有国へ核兵器の先制使用を行わないといったことを述べられているわけでありますが、外務大臣はこれをどう受けとめられ、この言わんとしている意味をどういうふうに理解をされているか、ここをひとつまずお聞かせいただければと思います。
  132. 園田直

    園田国務大臣 先制不使用ということを米国が言ったわけでありますが、これは結構なことであるとは一応評価しますものの、しかし軍縮総会における一般の評判というものは、もっとアメリカが軍縮に対して自国の利害ということを抜きにして、人道上の立場からもっと積極的に言うべきだという評判は一般の評判でございました。
  133. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、外務大臣自身が軍縮会議で受けとめられた印象と、今回のこの宣言というものはどうもしっくりいかない。何だか受けとめられた印象からすると、今度の宣言というのがかけ離れたところにあるような気がするというふうにお考えになっていらっしゃると受けとめてよろしゅうございますか。
  134. 園田直

    園田国務大臣 先制不使用ということ自体はいいことでありまして、一歩前進だと思いますが、そのときの空気から見ると、軍縮総会における米国とソ連の演説というものは、どうも大国の勝手過ぎる、もう少し何とか言えぬかという声がありましたので、そういうこともあって、政治上の配慮からも、一歩前進をしてそういう発言をされたものではなかろうかと判断をいたしております。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 そういう印象を外務大臣がお持ちになればなるほど、軍縮会議における外務大臣の演説というのが高く評価されていいだろうと思うわけであります。非常に格調の高い内容からいたしますと、国会決議をがっちりと踏まえた非常に歴史的な演説だというふうに私たちとしてはこの内容を受けとめているわけでありますが、恐らくは外務大臣は、核に対して当委員会における御答弁の中にも明確にそのことをはっきりお示しいただいたとおり、日本国憲法上、日本としては核が持てないという確固たる御認識の上に立っての、恐らくあの格調高い演説というものが練りに練られたに違いないと、私自身は理解をするわけであります。外務大臣いかがなんですか。日本国憲法について言うならば、やはり憲法上核は持てないというふうにお考えになったあのお考え方というのは、今日に至るまでやはり外務大臣とされては確固として考えていらっしゃるというふうに理解をさせていただいていいわけですね。
  136. 園田直

    園田国務大臣 私が軍縮総会でやった演説の毀誉褒貶は私の関するところではありませんけれども、少なくとも、当委員会あるいは国会の決議としてやられた各項目を踏まえて、これを率直に訴えてきたということは、私はっきり申し上げられると思います。問題は、その演説をしたこと、外務大臣として何とかして具体的に、これは少しずつでも前進する方向へ今後やることが外務大臣の責任であると考えますが、私政治家としての信念といたしまして、日本の憲法というのはそこに誇りがあるんだと私自身は考えております。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 したがって憲法上、核は日本としては絶対持ってはならないんだという政治家としての外務大臣の信念、また憲法に対する理解、憲法に対する確固たる信条というものが、外務大臣の具体的に展開されている外交上のいろいろな政策の中にも恐らくは生き続けるであろうし、また、国内的にそのことを具現化させていくための非常に大きな政治の力となるであろうというふうにも思うわけであります。  そこで、核の廃絶というのは全人類の悲願であるということは申し上げるまでもないわけでありますけれども、悲願に向けてのいろいろなプロセスがあるであろうと思います。たとえば全面核実験の禁止というのもその一つでありましょう。また、核保有国に対して、非核保有国がいろいろと核不使用というものを具体的に要求するということももちろんであります。またさらに、非核武装地帯というものが全世界にたくさんできていくということは、核廃絶に対してのプロセスとして提唱していくということが具体的に必要であろうと私は思っておるわけであります。恐らく外務大臣も同じ思いでいてくださるに違いないと私は考えているわけでありますけれども、可能なところからこれをやっていくという意味から考えると、日本を含めての非核武装地帯というものを、日本が積極的に中心になって具体的に構想を打ち出し、また努力を払うということは、現実の問題として大変大切だと思うわけであります。いかがですか。このことに対して、外務大臣自身どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  138. 園田直

    園田国務大臣 いま申されたことは、私、演説の中に全部訴えたつもりでございます。したがいまして、日本が米国のかさの下にあって、安全を保ちつつそういうことを言うことは矛盾であるという意見もありましたが、私は矛盾ではないと考えております。  先ほどから申し上げましたとおり、軍縮が実現をされて、日本の安全が核の下になくても保てるような国際環境なり軍縮を実現することがわれわれの悲願であります。したがいまして非核地帯あるいは不使用地帯、こういうものはそれぞれ条件はございます。その国と核を持った国との合意、あるいはその国の環境とあります。日本は抑止力によって平和を保っておるとは言いながら、なお現実には核の傘下で安全を守っておるわけでありますから、この現実と理想の間でどのように努力していくかという、努力は大事であると思いますけれども、いま直ちに日本が他国に率先していくということはなかなか大変なことで、これはまた現実としては、現在のところはなかなか不可能であると考えております。
  139. 土井たか子

    ○土井委員 現実としてはなかなか不可能なことに対して、一歩一歩努力をするということもまた大切なことであることは言うまでもないわけですが、やがて外務大臣はASEAN諸国の外相会議に御出発になります。あの席で、非武装地帯についてASEAN諸国がどのような考えを持っているかということにかかるわけでありますけれども、しかし、これに対して理解を求めるための提案をするということは、日本としては、これは当然やらなければならないし、またやってよいことだというふうにも考えられるわけですが、こういう御用意は外務大臣としておありになるのか、いかがですか。
  140. 園田直

    園田国務大臣 今度の私が参りますバンコクで開かれるASEANの外相会議に対する出席は、拡大外相会議とよく言われておりますが、実際は、私を入れたASEANの国力との外相会議ではなくて、外相会議が終わった段階で、私が各国の同意を得て出席をして懇談をするものであります。したがいまして、会談というよりも、わかりやすく言えば、ゆかたがけのアジアの外相が集まる、こういう趣旨でありますから、ざっくばらんにいろいろな問題で話し合いをするということでありますが、その中でも、特にASEANの国々も望み、私も望んでおりますことは、日米首脳者会談それから軍縮総会における私の考え方、それから先進首脳者会議、こういう問題は主な議題になるわけでありますから、会談ではありませんから議題としてどうこう言うことはありませんが、話し合う一つの問題には当然するべきであると考えております。
  141. 土井たか子

    ○土井委員 また、外務大臣御自身、国際会議の席では、八月六日を軍縮の日ということを提唱されました。これはかなり協賛を得ていると思うわけであります。先日、十二、十三の両日に非政府組織の代表として田中里子さんも八月六日を国連軍縮の日と宣言することという提唱もされております。日本も世界も忘れてはならぬ日だと、私は八月六日を思うわけでありますが、国際社会で果たしてこの問題が具体的にどのような形になるかならないかということはこれからの問題であろうと思いますが、肝心かなめ、提唱いたしました以上は、わが国がまず、このことに対して具体的に国内でこれを行動として起こすということもあってしかるべきだと思います。そういう点から、この八月六日を国民の日として、祝日であるとか記念日として設定するという方法もあろうかと思いますが、こういうことに対して外務大臣は率先して提唱されるということをお考えになっていただけませんか。いかがですか。
  142. 園田直

    園田国務大臣 八月六日を軍縮デーにするということは、私帰りましてからなお重ねて出先の代表部に、必ず実現するよう全力を尽くせと、こういう訓令を発したわけであります。その後成り行きをずっと見ておりますと、一日間で軍縮デーということよりも軍縮週間をつくったらどうだという声が出てきておりまして、それが意外にも大勢を占めてきているような感じがいたします。そこで、ヨーロッパの方では、この前の終戦記念日をという意見が起こっておりますが、これは私はきのう訓令を出しまして、軍縮デーであろうと軍縮週間であろうと、いずれにしても八月六日という日を必ず入れろ、軍縮週間ならば八月六日から一週間、デーならば八月六日、これだけは手段を選ばず実現しろ、こういう訓令を出したところでございますが、甘く見るわけではありませんが、可能性はなきにしもあらずと考えております。  そこで、いまの御意見、ごもっともでございますけれども、これが早急に決まるわけでありますから、これが決まりましたら同時に国内の問題も出てくるわけでありますので、それとにらみ合わして考えておるところでございます。
  143. 土井たか子

    ○土井委員 もう一つ、これは外務大臣御自身が国際会議の場所で具体的に述べられたことを具体化していくということの役割りの一つでもございます。実は国立平和研究所の設立というのが最近動いていっていることを、外務大臣よく御承知おきいただいているだろうと思います。国会にこれを置く研究所でございますから、政府の御用機関ではもちろんございませんで、自主的に国会で内外のいろいろな資料を集め、研究を積み、そして具体的な策を作成するという役割りをこの平和研究所は持つでありましょう。外国にもこういう例はございますけれども、平和憲法を持つわが国として、こういう研究所を設立するということは至って当然至極のことと私は思いますし、また、この役割りが期待されている。機能性を十分に発揮するということになれば、この役割りというのは非常に大きいというふうに私自身考えます。外務大臣は、大臣でいらっしゃると同時に国会議員でもいらっしゃるわけでありますから、政治家としてこういう国立平和研究所についてどういうお考えをお持ちでいらっしゃるかということをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  144. 園田直

    園田国務大臣 平和は世界的な見地から、世界各所であらゆる機関から起こってくることは当然でありまして、国会の中にそういう機関が出ますことは、考えますと、そこでどんどん決まっていって外務省としては困ることがあるかもわかりませんが、その外務省の困ることが好ましいことである、こう考えておりますので、そういう機関が出ることを私は歓迎するものであります。
  145. 土井たか子

    ○土井委員 日中問題について少し質問をしたいと思いますが、それ以前に一間だけ、竹島問題について外務大臣のお考えを具体的にお聞かせいただきたいわけであります。  それは、昨日も外務大臣は竹島問題に触れて、日韓閣僚会議以前にこの問題に対して取り上げ方を進めていきたいというお考えを披瀝されました。先日、当外務委員会においても、忍耐にも限度があるというような内容での御答弁もいただいております。そういう点からいきますと、平和的な解決ということが当面考えられなければならない問題でありますから、これに対してのいろいろな方式があろうかと思いますけれども、日韓閣僚会議以前に、外務大臣がどういうお考えで、この問題に対して韓国側との交渉ということをお考えになっていらっしゃるかをあらましお聞かせいただきたいと思うのです。
  146. 園田直

    園田国務大臣 竹島問題については、総理大臣は、日韓大陸棚が成立をすれば、それを一つの区切りとして心を新たにして平和的交渉を開始したい、こう言っておられますが、私もその方針には違いございません。竹島問題はいつまでも放任すべきことではございません。したがいまして、今国会中に当委員会ではしばしばこの御意見が出ているわけであります。この審議の経過、各位の御意見等も踏まえつつ、閣僚会議がねらいではありますが、閣僚会議を待たずして外交チャネルを通じてこの交渉を開始すべきである、このように考えております。  なおその際、総理大臣と外務大臣がまた少し違うのじゃないかということが言われたようでありますが、それはございません。ただ、御理解を願いたいことは、総理大臣は最高の責任者でありますから、やはり王者の風格を持って発言をするし、私は現場の監督でありますから、現場監督が笑顔をつくっておっては折衝はできませんので、その点の相違があるだけでございます。
  147. 土井たか子

    ○土井委員 王者の風格とおっしゃいますが、風格というのはおのずと客観的に見てそれを認識するかしないかにかかわる問題でありますから、ひとつそこのところは、外務大臣、自信を持ってお進めいただくということをお願い申し上げたいと思うのです。  そこで、一つの方策として、私は先日十分な時間がこれにはかけられませんで、中途半端な聞き方をしたわけでありますが、条約局長お見えになっていらっしゃいますね、フォーラム・プロロガトゥムという原則についてひとつ御説明をいただきたいと思います。いかがでございますか。
  148. 大森誠一

    ○大森政府委員 先般、先生が御指摘になりましたフォーラム・プロロガトゥムの原則とは、本来はローマ法上の概念でございますが、国際司法裁判所の管轄権の基礎としては概略次のように考えられていると存じます。  すなわち、一方の紛争当事国がその紛争を含むような範囲の裁判管轄権受諾を行っておらず、被告として裁判所の権能に服する意思があるかどうか不明な場合において、原告として提訴を希望する紛争当事国が、相手当事国との事前の合意を待たずに一方的な請求の形で事件を裁判所に付託する方式でございまして、被告となる相手当事国がその後の訴訟手続において、いわば事後的に裁判所の管轄権を受諾する場合には、裁判所は両当事国の同意に基づく管轄権を有することとなるものとされるわけでございます。  したがいまして、フォーラム・プロロガトゥム原則によります管轄権の設定の場合におきましては、提訴後における相手国の同意が裁判所の管轄権の基礎として有効なものとして認められるわけでありますが、いずれにいたしましても、相手国が裁判所の管轄権を受諾するということが要件でございます。したがいまして、竹島問題をわが国が韓国の事前の同意なしに一方的に国際司法裁判所に提訴いたしましても、韓国が事後に同意しない限りは裁判所は管轄権を取得し得ないものと考えております。  フォーラム・プロロガトゥム原則によりまして管轄権が設定されたケースとして著名な英国・アルバニア間のコルフ海峡事件におきましても、これは先日私が触れたところでございますけれども、英国による一方的な事件付託の後に、アルバニアが一九四七年七月二日付の国際司法裁判所あて書簡におきまして裁判所の管轄権を受諾していたことを理由に、裁判所に管轄権ありと判断されたものでございました。逆に、ソ連による米機撃墜事件に関しまする一九五五年、五八年、五九年の米国によります事件提起につきましては、いずれもソ連の同意が得られなかったために国際司法裁判所の判決は得られなかった、このような事例がございます。
  149. 土井たか子

    ○土井委員 これはいまの御説明のとおりに、一方の当事国が訴えを一方的に提起して、他方が後にこれは本訴を争う形ですから、応訴するかどうかというのは訴えられた側が決めることでありまして、拒否することもあれば応訴することもあるというかっこうなんですね。  それで、この韓国の竹島問題についての応答から見てまいりますと、昭和四十年の紛争解決に関する交換公文というものが、それ以後この案件に対しては活用されておりません。紛争と向こうは見ないわけであります。したがいまして、相手方の同意を得て司法裁判所にと言ったって、これは前例もございますけれども、やってみたってそうはならない。しかしながら、いま御説明のとおりのフォーラム・プロロガトゥムという、これはもはや裁判慣行法になっているわけでありますが、この応訴管轄の問題からいたしますと、日本が一方的に竹島問題について国際司法裁判所に提訴するということも手続上これは可能なんであります。韓国側がそれに対して応訴するかどうかは別問題なんです。  こういう方法が一つあるということをこの席で確認をして、そして外務大臣にお尋ねをいたしますけれども、こういう方法もあるわけでありますから、外交交渉も大切でありますけれども、日本としてはそういうくらいの気持ちでこの問題を取り上げていくということがあってしかるべきだと思います。いかがでございますか。
  150. 大森誠一

    ○大森政府委員 ただいま日韓両国政府間には、紛争の解決に関する交換公文というものがございます。そこで、外交上の経路を通じて両国間の紛争は解決するものとして、「これにより解決することができなかった場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によって解決を図るものとする。」このような取り決めが両国間でなされているわけでございます。  そこで、ただいま土井先生御指摘の、一方的にわが国が国際司法裁判所に提訴するというのは貴重な御示唆であると私どもも考えておりますけれども、当面、この両国間の合意に従いまして、外交的な手だてを十分尽くしてみる。  それから、それにつきましては、まずこの交換公文に言う「紛争」というものに竹島問題が該当するのであるということを韓国側に認識せしめるというところから出発いたしまして、この交換公文に定める手続に従いまして紛争解決の手だてを十分尽くす。さらには、調停というものにも訴えていくということを十分韓国側に働きかける。  そういう手だてを尽くした上で、ただいま土井先生御指摘のような貴重な御示唆についても、私どもとしても検討するにやぶさかでない、このように考えている次第でございます。
  151. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの発言のとおりに、韓国側が応ずるかどうかは別として、日本はこれを提訴する権利はあるわけであります。しかもまた、このような方法をとることは、これはやはり平和的解決の一つの方法であり手段であるということもまた御発言の乙おりであります。そういうことも踏まえ、交渉を始めたいと考えております。
  152. 土井たか子

    ○土井委員 そういたしますと、交渉についてはそういう方法、手段に訴えるということも念頭に置きながらの交渉であるということを確認させていただいてよろしゅうございますね。
  153. 園田直

    園田国務大臣 交渉を始めるからには、平和的な解決方法であるならば、ありとあらゆる手段を考えながら話し合いを進めていきたいと考えております。
  154. 土井たか子

    ○土井委員 さて、日中の問題について少しお尋ねをさせていただきたいと思います。  日中問題については交渉再開ということが目下、目の前の課題でありますけれども、この再開に臨む基本的な態度ということについて、最近新聞紙上で伝えられますところによりますと、内閣総理大臣の御発言の中に全方位平和外交という表現が出てまいります。これは東京12チャンネルで内閣総理大臣がいろいろと政治課題について発言をなさる中で、日中問題についてお話しになった部分に出てくる表現でありますが、この全方位平和外交というのがいままで外務省の外交文書で書かれたものがございますか、いかがでございますか。
  155. 園田直

    園田国務大臣 私の知識では、ないと存じます。総理のおっしゃった全方位外交というのは、多分先般の国会でいたしました私の外交方針演説の中に、どこの国をも敵としない、どこの国とも敵対行為をとらない、こういうことから全方位外交という若葉をお使いになったものだと考えております。
  156. 土井たか子

    ○土井委員 非常に耳なれない言葉なんですが、いままで外務省は文書の中に、国連中心主義外交というふうな表現はもう再三再四おとりになっております。この全方位平和外交路線ということと国連中心主義外交路線ということとは違いましょうか、違いませんか、いかがでございますか。
  157. 園田直

    園田国務大臣 違わぬと思いますが、大臣からすれば必ずしも一致はしてない。
  158. 土井たか子

    ○土井委員 それはどういう点で違っているわけでございますか。
  159. 園田直

    園田国務大臣 外務大臣としては答弁しにくいところでありますが、国連という舞台はややもすると大国の利害から運営されていることもありますので、それ以上は申し上げませんが、そういうところでいささか私の考えと国連中心という言葉とは、逆行するものでありませんが、一致したものではない、こういうお答えをしたわけであります。
  160. 土井たか子

    ○土井委員 いまの外務大臣のお考えというのは私にもわかる気がいたします。そういたしますと、全方位平和外交ということについてわが国の場合、基本法は何と申しましても日本国憲法でございますが、憲法上そういう部面についてはどのようにうたっておりますか。これは憲法上そういう問題が具体的に示されている場所というのがございますか、どうですか。いかがでございますか。
  161. 大森誠一

    ○大森政府委員 憲法の具体的な条文でそのような趣旨が述べられている点はございませんけれども、憲法の前文中に、先生御承知のように、「日本國民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」このようなくだりが日本国憲法の前文中にございます。わが国としてはあくまでも平和に徹していくということがこの憲法の精神であるというふうに理解しているのでございまして、全方位外交ということは、私の理解するところではいずれの国とも仲よくしていく、平和に徹していくということであろうかと存じますので、その点は日本国憲法の精神にも合致しているのであろう、かように存ずる次第でございます。
  162. 土井たか子

    ○土井委員 これは日本国憲法からするとそのとおりでありますけれども、全方位平和外交路線というのはどこの国とも仲よくするということをいまおっしゃいましたけれども、そうすると覇権を求める国とも仲よくするということになるのかどうか、覇権を求める国とは一線を画するということになるのかどうか。この点はいかがなんでございますか。
  163. 園田直

    園田国務大臣 どこの国にも敵対行為をとらず、敵としないという私の申し上げた方針というのは、個人の交際と同じ、どなたとも交際をするという意味でありまして、これは距離や感覚には差異があることは当然であり、かつまた日本日本に脅威を与えるような国とは、平和的な交際はするけれども、ぴったり仲よくするという意味ではございません。
  164. 土井たか子

    ○土井委員 なかなかいわく微妙な御答弁でございますけれども、いま日中間は交渉過程でございますから、なかなかこういう問題に対して具体的にどうだこうだということは聞きづらいし、また御答弁しづらい問題であろうとは思いますけれども、この平和条約の条文上、全方位外交に反するような文字や内容というものは入れないというふうに一応は日本側としては考えておいていいわけですか。先日の内閣総理大臣の御発言からすると、この全方位平和外交という問題が基本として考えられるべきだという御発言でございましたので、当然こういうことが触れてこようと思いますが、いかがでございますか。
  165. 園田直

    園田国務大臣 どなたとも仲よくいたしましょうという方針は、これはこれで結構だと思っております。
  166. 土井たか子

    ○土井委員 これはこれで結構なんですけれども、やはり共同声明の線に従っての今度は平和条約締結という段取りでございますから、そういうことからすると平和条約の内容というものは、やはり覇権の問題についても共同声明の七項という問題を無視するわけにはまいりません。したがいまして、そういうことからすると、この全方位平和外交ということと覇権ということは一体どういう関係になってくるのだろうということが当然考えられるわけであります。したがいまして、どこの国とも仲よくするということはやぶさかでない、これはおっしゃるとおりなんでありますけれども、この点はどのように整理されて全方位平和外交ということを基本として考えるという趣旨をお述べになったのか、その点を、外務大臣の御理解はどのようなものであるかというのをひとつもう一たびお聞かせください。
  167. 園田直

    園田国務大臣 これは同じ答弁をいたすわけでありますが、日中共同声明に書かれた線を一貫してわれわれは守るつもりでございます。覇権問題をどのような取り扱いをするかは交渉の内容でありますから、これはお許しを願いたいと思います。
  168. 土井たか子

    ○土井委員 交渉の内容というところで問題になってくるのは、交渉について指示をされるのはやはり大臣であろうと思うのであります。具体的な内容については相手方のあることでありますから、こちらから主張を持ち込みましてもそのことがどのように生かされるかというのは交渉次第、おっしゃるとおりのことだろうとは思いますけれども、交渉再開を日本側が申し入れて、中国側からそれに対して何らかの対応があるであろうとわれわれは考えているわけでありますが、それについてはどのようになっておりますかというのをひとつお答えいただきたいと思います。
  169. 園田直

    園田国務大臣 御承知のごとく、わが方から交渉を再開したいと申し入れをしたわけであります。向こうは再開ではない、継続じゃないか、こういう言葉のやりとりはありましたけれども、その場で交渉を進めることは合意をしたわけであります。こちらからは、大体国会の終了ごろに見当をつけて、ここらあたりでいかがでございましょうという申し入れをしておったわけでございます。わが方も国会の都合があり、中国側もまた御承知のとおりにベトナム問題その他の問題で要人が各地を飛び回っておりますからなかなか多忙でもあるし、向こうにも都合があると思っておりましたが、そろそろ返答があるころであると待っておりましたが、実は本日、北京時間で十一時、日本時間で十二時、向こうの方から申し入れの返答をしたいからおいでを願いたい、こういうことで、きょう日中条約締結についての話し合いを十二時からやったところでございます。  これに出席しましたのは、こちらからは堂ノ脇公使が参りますし、向こうからは王暁雲アジア局次長が出まして、王效賢及び通訳が同席をした。こちらは斎藤書記官及び通訳が同席をした。こういうことで、これだけの電報がいま入ったところでございますが、その内容については、しばらくたってから入ると思いますので、入りましたならばまたそのときいまの御質問に関連をしてお答えを申し上げます。
  170. 土井たか子

    ○土井委員 交渉継続が今日実現して、現に展開されつつある時間であると思いますが、そういたしますと、先日二十日ごろまでに中国側からの回答がない場合というふうな前置きで、新聞には書かれていたわけでありますが、佐藤大使の召還ということは事実上もう不必要になったということになるわけでありますか。いかがでございますか。
  171. 園田直

    園田国務大臣 きょうの話し合いの内容を見なければはっきりは申し上げられませんが、いずれにいたしましても会談をいよいよ始めようということになれば、これは佐藤大使を一遍呼んで、大臣みずから佐藤大使に、大臣の心構え、並びに今後やるべき指示等を与えることが、スムーズに行く原因であると思いますので、うまく行けば行くほど、なるべく早く佐藤大使は一遍呼ぶつもりでございます。
  172. 土井たか子

    ○土井委員 いよいよ問題は大詰めに差しかかった感がございます。これからがいよいよ大事な仕上げの段階だろうと思いますから、外務大臣の果たされる役割りというのが一層これは大切になってまいります。ひとつそういう意味で御健闘を願いまして、本日の質問をこれで終えたいと思います。ありがとうございました。
  173. 永田亮一

    永田委員長 午後一時三十分より委員会を再開することとし、休憩いたします。     午後一時三十分休憩      ――――◇―――――     午後一時四十二分開議
  174. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中川嘉美君。
  175. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私はやはり日中問題につきまして、初め伺ってまいりたいと思います。  つい先ほどまで、実は私がきょう伺おうとしたこの質問内容が、急速先ほどの土井委員に対する御答弁によりまして大分変わってきたわけなのであります。  先ほど、日本時間の十二時の時点に王暁雲氏と堂ノ脇公使とが会談を持つ、このような御答弁があったわけですけれども、その後そんなに時間は経過しておりませんが、果たして外務省として何かこれに関連した情報、こういったものが向こうから再び入ったかどうか、また会談そのものについて向こうでそれ以降何か新たな事態が判明したかどうか、この辺について御答弁をいただきたいと思います。
  176. 園田直

    園田国務大臣 先ほど土井先生の質問にお答えしたとおりでございますが、ただいま電文を整理中でございますので、もうしばらくいたしましたら御報告できると思います。いずれにしても、各位の御協力を得て交渉再開について合意を得たような感じでございます。詳細入り次第御報告をいたします。
  177. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、電文を整理しておられるということですけれども、先ほどの御答弁のみならず、整理した結果によっては、もうすでに到着している電文の中から新たな事態が生まれてくる、ここで御報告がいただける、こんなふうに解釈してよろしいでしょうか。
  178. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。当委員会にまず最初に御報告できることを喜びといたします。
  179. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 その内容いかんにもよるかと思いますが、新たな段階を迎えたというように私は解するわけです。したがって、もうこうなってきますと、交渉再開といいますか、しかもこの段取りそのものについてもかなり具体的なものが当然考えられるであろうと思うわけです。日中平和友好条約締結に向かっての交渉というものは、すでに事務レベルでの交渉が完了しているのじゃないだろうか、したがって、現在園田外相の訪中による政治折衝だけが残されているように私には思われるわけです。もし事務レベルの交渉というものがありとするならば、それは条約文の日中間の整合であるとか、調印の場所であるとか、あるいはまた全権委員のレベルの問題、総理が行かれるのか、外務大臣が行かれるのかとか、いろいろレベルの問題があるかと思います。この事務折衝そのものではないかと私は考えます。その間の事情について、いまこの段階で御答弁いただければと思いますが、いかがですか。
  180. 園田直

    園田国務大臣 まず事務的な交渉から開始されるわけでありますが、それについては、案文の整理であるとか、あるいはいままでの案文とは別個に新しく案文を出すのか、いろいろ問題が出てくると思いますが、いま先生がおっしゃったようなことが逐次出てくると思います。あとしばらくすると御報告できる内容にもその点は多少出てくると存じますので、いましばらくお待ちを願いたいと思います。
  181. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、日中の問題について、その御報告があってからまた新たな質疑ということになろうかと思います。私の後でまた渡部委員等も御質問させていただくことになろうかと思いますが、あと一、二点だけ、この際伺っておきます。     〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕  総理が過日交渉再開に踏み切った直接的な背景は一体どういうものであったのか、これを外務大臣としてはどのように理解しておられるか。この点はいまとなって云々するつもりはございませんが、要するに総理交渉再開に踏み切られたその直接的な背景というものはどういうものであったか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  182. 園田直

    園田国務大臣 各党各位の御協力等も得まして、総理は、日中友好条約締結共同声明に約束されたことであり、しかもこれは単に日中間のことばかりでなくて、アジア全般に対する重大な問題であるから速やかに締結をすべきであると、慎重に熟慮された結果決断されたと承っております。
  183. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 なお、総理は過日、日中間の交渉は大人の立場で話し合いを進めるべきである、前途は明るいという非常に楽観的な見解を示されたように私は記憶しておりますが、大人の立場で話し合うというのであれば、これは当然外務大臣が訪中をされるべきではないかということになるわけです。昨日の参議院商工委員会における御答弁もあのようにあったようですけれども、大人の立場云々ということであるならば、これは当然外相が訪中をされるべきであると私は考えるわけです。いまお聞きしたいのは、大人の立場というのは一体何なのか、外務大臣としては大人の立場という言葉をどのように理解しておられるのか、この点も含めてお答えをいただきたいと思います。
  184. 園田直

    園田国務大臣 総理答弁でありますから、私が憶測をしてお答えするのはなんだと思いますけれども、大人の立場というのは、隣国の両国でありますからいろいろ問題もあるわけであります。しかし、日中友好条約締結ということが最優先問題であって、大所高所からこれに処していきたい、こういう御発言の趣旨であると承っておるわけであります。  なおまた、私が訪中することについては、きのうも総理答弁されましたとおりでありまして、交渉を始めた後、その状況に応じて、総理の判断によって訪中するということになれば、私は喜んで訪中したいと考えております。
  185. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 事務レベルの問題について先ほど若干触れまして、こういつたことについても改めて御報告があろうかと思いますけれども、一点だけ覇権問題、これについては、これも前文に入れるのか、本文に入れるのか、またその解釈についても日中双方にはすでに了解がついているのではないだろうか、いまこの時点ですのでそういう感じがするのですが、この問題についてはいかがでしょうか、この点を伺っておきたいと思います。
  186. 園田直

    園田国務大臣 覇権問題は、しばしばお答えいたしますとおり、共同声明に書かれた線をわれわれは一貫して通したいと考えております。これをどのように取り扱うかは、内容にわたることでございますから、今後のことでございますので、答弁はお許しを願いたいと存じます。
  187. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、こういったことについて改めてまた御報告いただいてから種々御質問したいと思います。  次に、日中問題に関連をして、日韓大陸棚共同開発協定に関して御質問をしたいと思います。  日中間の紛争の原因とならないという確信が果たしておありかどうか、この共同開発協定ですね。この確信のもとに協定締結というものを促進してこられたのかどうかという点、私は、中国からの抗議というものが正式のものであるならば、当然外交交渉として誠意ある態度をわが国政府が示すべきではないか、このように思います。しかし政府は、中国のこれまでの抗議は単なる注意の喚起である、そして、わが国がこれに外交的に対応する必要はないものだ、こういうような認識を持ってこの協定に関する審議等も進めてこられたものなのかどうか、これらの点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  188. 園田直

    園田国務大臣 日韓大陸棚の問題は、中国の声明、引き続いた抗議、これは軽く受け流して対応の必要がないと考えているわけでは断じでございません。やはりこの声明なり抗議は、重大にわれわれは受けとめているわけであります。今後ともこれについては中国理解を求めるべく最大の努力をする所存でありまするし、また、これに対する署名交換のときにもそういう意思の表明をし、これに対しては逐次努力をする所存でございます。しかし、日中両国間にわたる問題は、友好条約締結が最優先であるということは、わが国も中国理解するところでありますから、これに向かって全力を承げたいと考えておるところでございます。
  189. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 御答弁の御趣旨は私としても理解せぬものではないのですが、どうも現実に進んでいる国会のこの数日間の状況一つを見ましても、何が何でもこの協定を通さんとする姿勢というもの、これと非常に何かいま対照的なものを感ぜざるを得ないわけですけれども、総理が昨日の参議院商工委員会で、日韓大陸棚協定と中国との関係について、大陸棚協定の批准はするが、その後といえども中国理解を得るように最大の努力をする。いま外務大臣答弁したのとほぼ同じような趣旨と受けとめられるわけですけれども、私としては、その方法論は全く誤りであって、将来日中間に重大な争点を残すおそれのあることを指摘せざるを得ないわけです。私は、総理のこの発想といいますか、御発言に対しては全く反対をせざるを得ない。まずこの条約の周辺にあるところのもろもろの問題というものをされいに片づけて、そして、第三国と紛争となるおそれのある問題、こういったものを整理した後で目的たる条約締結すべきが外交上の常識ではないだろうか、このように私は思います。  ただいま申し上げた総理の発言、これは総理自身いわゆるあの水域における大陸棚について、日中間に問題を残したものと認識をしておられると私は推察をするわけで、こういう答弁が出てきたということは、このような問題を残しているのだ、こういう認識を総理自身が持っておられる、このように推察するわけですけれども、ただいま私が申し上げた、総理がそういう認識を持っておるということに対して、外務大臣も同じような認識を持っていらっしゃるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。     〔奥田委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、本件協定は中国の国際法上の権益を何ら侵害しておりませず、したがって、今後、事の性格上、本協定について中国の了解を得るよう最大限の努力をする所存でございます。  なおまた、中国に対しては、日中にかかわる大陸棚の境界画定について、従来より速やかに話し合いに入りたい旨を申し出てございますが、この点についてもさらに高いレベルで話し合いができるよう働きかけたいと存じております。
  191. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 国と国が条約を結ぶ際の第一義的な要件、これは、その条約締結が第三国の利益を害するか、またはこれと衝突をしないかどうか、ただいまの御答弁では、中国の権益を害してはおらないのだ、こういう御答弁ですけれども、害しているかいないのか、この辺をいま私はここで何とも言うつもりはありませんけれども、要は、利益を害するのか、また、これと衝突をしないのかどうか、こういったことじゃないかと私は思います。もし、そのおそれがあるような場合ですと、これは事前に当然回避する万全の措置というものをとった後で締結をするという慎重さ、これが必要ではないか、このように思います。  しかしながら、日韓大陸棚共同開発協定は、全くこの常道を無視したものと私は言わざるを得ないのではないだろうか。政府としては、このような措置をとったことについては、この協定で国際紛争とする意図がないことについて、中国からの了解を得ているのかどうか、言いかえれば、日中間で話し合いができているのかどうかを伺っておかなければならないと私は思いますが、この間の事情をいま一度明確にしておいていただきたいと思います。
  192. 園田直

    園田国務大臣 大陸棚協定については中国理解を得るに至ってないことはまことに残念でございます。これについては理解を得るよう最大限の努力をしたいと考えております。
  193. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、この理解を得た上での日韓間の話し合いあるいは交渉ということではないわけで、総理が日韓大陸棚協定を国際信義の上からも成立をさせなくてはならないのだということを再三強調しておられたわけですけれども、ここで、例の竹島の問題にも触れざるを得ないわけなんですが、それでは韓国が、竹島に関する紛争で交換公文の不履行という、いわゆる条約違反を犯していることについてはどう説明をされるのか、政府はなぜこの条約違反に対して有効な対策をとろうとしないのか、こういうことが出てくるわけで、私はこの委員会でも再三竹島問題は質問してまいりましたけれども、ただいま申し上げたような、国際信義の上からいっても成立させなければならないという、総理の言われる、この協定と竹島問題そのものが余りにも対照的な気がしてならないわけです。  私が言わんとするのは、国際法上認められた範囲内で、それではわが国政府として報復措置をとって、そうして韓国の反省を求めるというようなことができるはずだと私は思うのですけれども、この点はいかがなものか、お聞かせをいただきたいと思います。
  194. 園田直

    園田国務大臣 竹島問題については、総理からも御発言がありましたとおり、大陸棚関連法律案が成立をして、韓国に対する信義を通すことを契機にして、平和的な話し合いで心を新たにして解決をしたい、こういうことでありますが、私もその方針に従って毅然たる決意で交渉を進める所存でございます。
  195. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いずれにしましても、この竹島問題の解決を長引かせること自体、日韓両国にとって不安定のマイナス要因というものをつくることになるのではないか。韓国の学生運動の要求にも入っているこの領有問題が、わが国としてどこまで理解ができているのだろうか。特に十三年もの間何ら有効な措置をとらなかったこと、これはもう政府の怠慢と言われても仕方がないと私は思います。  先ほどの報復措置に関連をいたしますが、たとえば韓国からわが国への渡航ビザの発給の停止あるいは貿易関係の停止対韓経済援助の停止、さらには日韓大陸棚協定の批准の延期であるとか、いろいろなことがここで考えられてくるわけですけれども、こういった有効な措置は幾らでもあるのではないか、このように思います。政府は、なぜこのような具体的対応をもって韓国に反省を求めようとしないのか、この点についての態度をはっきりとしていかなければならないのじゃないかと私は思いますが、この点はいかがでしょうか。
  196. 園田直

    園田国務大臣 日韓両国間では、紛争は平和的な話し合いをもって解決するということになっておりますから、あくまで毅然たる態度で決意を新たにし、平和的な話し合いでこの問題の折衝を始めたいと考えております。
  197. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 平和的でなければならないことは当然ですけれども、前々回の委員会でしたか、例の漁船問題が発生したときに、私の記憶では、対韓経済援助の停止あるいは閣僚会議の問題等も考えざるを得ないのじゃないかという質問に対して、当然そういったことも踏まえて対処しますという外務大臣の御答弁があったように思うわけです。ですから、日韓閣僚会議の議題に必ずこの竹島問題を入れられるかどうか。私としては当然これを入れるべきだと思うし、また、もしこれを韓国側が拒否するとすれば、たとえば閣僚会議の無期延期ということも当然考えていいのじゃないだろうか、このように思います。この前は、あくまでもそういうものを含めて検討するのだ、対応するのだ、そのような大臣の御答弁であったかのように思いますが、閣僚会議の議題に果たしてこの竹島問題を必ず入れられるかどうか、また、拒否された場合にはその会議の延期ということも当然考えていかなければならないかどうか、大臣の御所見を承りたいと思います。
  198. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、まず閣僚会議の議題にすることが第一の問題であります。そういうつもりで決意を新たにして交渉を始める所存でございます。
  199. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 それでは、議題として入れたとしても、これはやはり相当長引く話ではないか、いままでの十三年間という意味じゃないのですが。議題として入れたからといって、それではすぐに解決を見るというようなものでないことは私たちも承知しているわけですけれども、若干長引くのじゃないか、そういう場合に竹島からの韓国の官憲の即時撤退といったことも強力に先方に申し入れていくべきではないか、私は、こういうこともあるのだということを、大臣にまたここで申し述べるとともに、大臣のこれに対する御見解もこの際伺っておきたいと思います。
  200. 園田直

    園田国務大臣 交渉を始めるに先立って、長引くであろうとか、あるいは聞かない場合はどうするかということは、これは私が答弁しない方がいいと存じますけれども、中川先生の御発言の趣旨は十二分に了解するところでございます。
  201. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いま一度だけ先ほどの日韓大陸棚協定に戻りますが、この協定の審議そのものを思い起こしていただければと思います。この日韓大陸棚協定に限って、条約締結に際しての外交上の常識からの逸脱といいますか、これをあえてしたということは、私もしてもなかなか理解ができないわけです。  しかし、この逸脱というものを修正をする機会、これはいまだ残されているのではないだろうか、私は実はこのことを政府にいま申し上げておきたいわけなんです。すなわち、これは大陸棚境界について中国と十分に話し合いを行って、双方満足できる了解に達するまでは日韓大陸棚協定の批准というものを見合わせるべきではないだろうか、こういうことによって、政府に最後の機会というものは残されているのではないかということを私は申し上げるわけです。私はこのことをぜひここで政府に忠告をしておきたいと思うのですが、政府の最後の機会としての見解をこの際求めておきたいと思います。
  202. 園田直

    園田国務大臣 協定はすでに国会の承認をいただいておりまして、本日参議院の本会議でお願いしておるのは、関連法案の成立でございます。したがいまして、御意見は十分わかりますけれども、そういうような経緯も顧みつつやっておるところでございます。
  203. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 私が申し上げましたのは、批准そのもの、これは当然批准ということがこれからも考えられるわけですけれども、じゃこの外交上の常識からあえて逸脱をした、私はそういう表現を使ったわけですが、これに対して、それでは中国が今後、果たしてどのように対応してくるのだろうか。そんなこととはお構いなしに、関連国内法の審議であった、これは本会議で云々、だからこれはもうそのまま即、速やかに批准に向かっていくのだ、こうなってきますと、中国の言いたいことにも耳をかさないまま、どんどんこの協定の批准に向かって進んでいくように思わざるを得ない。そのために私は、最後の残された道として双方に、双方というのは言うまでもなく日中間ということですけれども、満足できる了解に達するまでは、日韓大陸棚協定の批准というものを見合わせるべきではないだろうか、このことが最後に残された一つの方法ではないだろうか、このように思うわけです。先ほどの御答弁もわからないわけではありませんが、この角度からお聞きしているわけで、一言御答弁をお願いしたいと思います。
  204. 園田直

    園田国務大臣 中国の本件に関する声明、抗議を受け流しているわけではございません。重大に受けとめておるわけであります。したがいまして、今後とも中国理解を求めるべく、最大限の努力をする所存でございます。
  205. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 そうしますと、私がただいま提案した最後に残された一つの方法、果たしてこれが最後に残された唯一の方法であるかどうか、これは客観的に見られた場合には別ですけれども、私は一応こういう提案だけは行ったということにしておきませんと、いまの大臣の御答弁によると、それはそれ、これはこれというふうに受け取られてならない。したがって私は、中国理解を得るように一方では大いにがんばるのだ、批准の方は批准の方だというふうに受けとめざるを得ないわけですけれども、私が、最後に残された道が一つここにあるぞということをここで御提案したことについては、一応この委員会でとどめておきたい、このように思うわけでございます。  それでは時間も余りございませんので、次に日ソ関係について最後に若干お聞きしておきたいと思います。  わが国の北方領土である択捉島において、ソ連の陸海空軍の演習が行われたことは御承知のとおりです。この情報について、防衛庁内において見解が真っ二つに分かれたという記事があったのを見たわけですけれども、この見解が相違していることについて、きょうはもちろん防衛庁の方はいらっしゃらないと思いますが、私がお聞きしたいのは、外務省当局の見方及び結論というものは一体どういうものであるか、この点をお聞かせをいただきたいと思います。
  206. 園田直

    園田国務大臣 防衛庁の中で御意見がどうなっておるかは存じませんけれども、わが外務省としては、北方四島はあくまでわが国の領土であると主張しているわけであります。したがいまして、この周辺における漁業の操業の安全のためにも、この地域で演習が行われることは好ましいことではないと考えております。  しかし、この種の演習は初めてのことではございません。いままで数回行われたことであって、この演習を直ちに日本に対する上陸演習であるとかあるいは一つの日本に対する脅威であるとかというふうに判断することは憶測が過ぎるというふうに判断をいたしております。
  207. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 防衛庁の見解が二つに分かれたということについて大臣が御存じないということ、私はそのこと自体は別に責めるつもりも何もありません。ただ、防衛庁がそういうふうな意見の相違というものをこのたび見たということ、このことは大々的に報道されたことでもあるので、大臣はここで御存じないにしても、少なくとも防衛庁のそういう見解というものを外務省が当然キャッチしていなければならない。委員の方々でキャッチしていらっしゃる方々もあるいはここで多々あるかと思いますけれども、そういう点についても、防衛庁はこういう考えとこういう考えに分かれておる、それに対して外務省はこのような見解であるというものはもうこの時点ですでに出て、結論というものが出されてきてなければならないのではないか。いま大変一般的な立場から大臣に御答弁をいただいた。それはそれとしていただいておきます。しかも、その中で、わが国に対する脅威というふうには受け取るつもりはない、このようなお答えもありました。ただ、今回のこの演習についてそれではソ連側からわが国に対して果たして通告があったかどうか、この辺はいかがでしょうか。
  208. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ソ連側から通告がございましたのは、六月一日未明のソ連側の水路通報によりまして、六月五日から十一日までの間、毎日十七時から午前零時までの間に射撃訓練をやることがあるということの、危険水域の設定の水路通報を受けたわけでございます。それ以外につきまして、その後新聞等に大きく報道されましたような揚陸艦の動きであるとか、あるいはミサイル巡洋艦の動きであるとか、そういう種類のことにつきましては一切何らの通報を受けておりません。
  209. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 全く通告がなかったというわけではない。しかし、さらに、ただいまおっしゃったような艦船のそういう動きについては通報があったわけではございませんと言う。わが国固有の領土である択捉島でもってこの種の演習が行われたとすると、先ほど外務大臣がおっしゃったとおり、この北方四島というものはあくまでもわが国の領土であるという前提に立って、これは言うまでもないことですけれども、そうなるとわが国の主権侵害ということになって不法行為に相当するのではないかと私は思うわけですが、このこと自体に対して日本政府はそれではソ連に抗議を行う意思があるかどうか。先ほど通告のなかった船の動き、行動、いろんなのがあったというようにおっしゃられたわけですけれども、そういったものを含めて、日本政府として何か先方に抗議を行う意思があるかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  210. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ただいま私が申し上げました水路通報によりますと、ソ連側が設定いたしました射撃訓練の危険水域の一部が、択捉島の領海のわずかな部分でございますが、これをカバーしておることが確認されましたので、六月二日モスクワの日本大使館に訓令をいたしまして、ソ連側に抗議をいたし、演習の中止方を要請し、あわせて、それにもかかわらずソ連側が演習を強行いたしました場合に、日本国及び国民がこうむることあるべき一切の損害について、その賠償を請求する権利を留保するという旨を先方に申し入れたわけでございます。  抗議いたしました内容は、ただいま申し上げましたように、わが国領海の一部に危険水域を設定したことが不法であるので、これに対して抗議し、直ちにこれを解除するよう要求したわけでございます。さらにもう一つの点は、当該水域が、現在、日ソ漁業協定に基づいて、日本側の漁船、実際には十四隻でございますが、操業中の水域でございましたので、ここに危険水域が設定されますと、これら漁船乗組員がこうむることあるべき危険及び損害がはなはだ大であると考えられますので、この点につきましてソ連側の注意を喚起して、こういう見地からも射撃訓練の中止を申し入れる、このようなことでございまして、すでに水路通報がございまして直後にソ連側にこの抗議をいたし、その中止を申し入れ、賠償請求の権利を留保いたしたわけでございます。
  211. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 いずれにしましても成り行き任せというようなことはあってはならないし、そういうことはないと思いますので、ただいまの御答弁で私も理解し得る点がございますが、そういうわが国の領土主権というものを守る、侵害されることのないような対応だけは今後とも厳しく行っていただきたい。  時間が参りましたので、あと二、三点だけちょっと確認しておきたいのですが、この演習そのものがわが国に対するある種のいわゆる政治的意図のもとに行われた行動と判断をされるかどうか。たとえて言えば日中平和友好条約に対する一つの牽制策あるいはソ連の北方領土領有の意思の誇示といったような、こういう政治的な意図があったのではないかということについて政府はどのように判断をされるか、この点が第一点。それから、日中平和友好条約締結によって一時的にせよ日ソ関係の冷却というものは不可避と政府は見ておられるか、あるいは日ソ関係に何らかの影響はないと見ておられるか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  212. 園田直

    園田国務大臣 ソ連の今回行いました演習は、先ほども申し上げましたとおり、外務省としては、日本に対し脅迫的な態度で演習されたものではない、このように判断をいたします。  日中友好条約締結については、日中友好条約締結によって日本がソ連に敵対行為をするものであれば別でありますが、そうではないものであれば、好ましいことではないかもわからぬが、格別のことはないと考えております。
  213. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 最後に、これに関連して一点だけ伺いますが、もし日本に何ら影響がない、ソ連とは実に友好的である、そのようにわが国が決めたと仮にしても、ソ連は必ずしもこういった日本政府の考え方を受け入れるかどうか、これはまことに疑問なものがあると私は思いますが、こういう疑問は全く残らないのかどうか、最後に一言お答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  214. 園田直

    園田国務大臣 もちろんソ連に対してはさらに友好親善関係を進めるよう全力を尽くす所存でございます。
  215. 中川嘉美

    ○中川(嘉)委員 関連してさらにいろいろ伺いたいと思いますが、時間が参りましたのでこれで終わりたいと思います。
  216. 永田亮一

  217. 井上一成

    井上(一)委員 私も、いわゆる北方領土四島にかかわる一連の問題として、ソ連の陸海空軍部隊が上陸演習を行ったという、わが国固有の領土である択捉島でのこの事実関係をひとつ明らかにしていただきたいと思う。  なお、先ほど政府側の答弁で、外務省としてはソ連に対して強く抗議を申し入れたということでございますけれども、防衛庁の論議とは別に、もう少し外務省が承知している事実関係を明らかにしていただきたいと思います。
  218. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 先ほど私が御答弁申しておりました中にございましたが、外務省といたしましては、ソ連側から水路通報という形で、一定期間に一定水域を射撃訓練のために使用する、こういう通報を受けました。これは海上保安庁がソ連側の出しました水路通報を受けて外務省に通報されたものでございます。それ以外につきましてソ連側から何ら通報を受けておりません。  それから、実際にどのような軍隊が、あるいはどのような航空機がどのように動いたかという点につきましては、私ども外務省といたしましてはこれを具体的に確認する手段を持たないわけでございまして、海上保安庁ないし防衛庁から御通報を得るわけでございます。ただいままでに防衛庁から受けました通報の内容を総合いたしますと、私どもとして判断いたしますことは、択捉島周辺において何らかの訓練、または同島地域に対する部隊配備ないし基地建設のための物資、要員の輸送等が考えられるようでございますが、私どもとしては特定する手段を持たないわけでございます。ただ、防衛庁の結論的な、まだ防衛庁も現在なお種々のデータを御検討中のようでありますが、ただいまのところでは、新聞に伝えられましたような大規模な統合的な着上陸演習が実施された可能性はむしろ少ない、このように承知をいたしております。
  219. 井上一成

    井上(一)委員 それでは外務省としては統合幕僚会議の議長が述べられたいわゆる上陸演習を含む総合演習を行ったのだという理解の上に立っていらっしゃるわけですか。
  220. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 統合幕僚会議議長が述べられました見解それから伊藤防衛局長が国会で述べられました見解、それらを総合いたしました結論として、私がただいま申し上げましたような判断を外務省としていたしておりますので、どのような規模でどのような演習が行われたかということにつきまして必ずしも明確な判断を持っておりませんが、ただいま申し上げましたように、新聞等で報ぜられましたような大規模な演習が実施された可能性はむしろ少ない、このように判断をいたしております。
  221. 井上一成

    井上(一)委員 新聞で報じられたその規模等についての大小についてはここで触れたくありません。しかし、そういう軍事演習をした事実があるとするならば、そのように外務省は受けとめておるわけでありますから、これに対してソ連側にただ損害を留保したのだという単なる抗議ではなく、もっと強い形の抗議を、この際明確に申し入れをする考えを持っていらっしゃるのかどうか。
  222. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 私どもは択捉島の占拠そのものを不法として、かねてあらゆる機会をとらえてこれに抗議をいたしております次第でございますから、ソ連軍が日本の施政権を妨げてその上で行います個々の行為について、抗議する考えは持っておりません。
  223. 井上一成

    井上(一)委員 このことについて大臣の見解を承りたいのですけれども、択捉に対するわが国の領土であるという、主権侵害であるということの抗議はするけれども、いま聞けば、その領土で行われた軍事演習についてはことさらこの問題を取り上げて抗議する意思はないというお答えがあったのですが、おかしいと思うのです。私は、防衛庁云々の問題よりも、この問題はむしろ外務省が解決をすべき大きな問題である、こういうふうに思うのです。外務省が積極的にこの問題の事実関係を掌握した中で毅然たる態度を示すことが、日ソ友好の礎を築くものである、こういうふうに考えます。外務大臣、いかがなんですか、択捉における軍事演習に対して改めてソ連に対して一定の見解を正式に表明することが必要であると考えていらっしゃるでしょうか。いかがですか。
  224. 園田直

    園田国務大臣 先ほどから申し上げましたとおり、領土の問題及びわが国民の安全操業については抗議をする所存でございます。ただ、この行われた軍事演習が大規模のものであって、日本に対する脅迫的な意図が含まれたものとは外務省は受け取っておりません。領土問題及び操業については御発言のとおりだと存じます。
  225. 井上一成

    井上(一)委員 私は、ソ連のとった今回の態度が日本に対して云々ということよりも、むしろ冷静な形の中でこの問題は明確にする必要がある、こういうことが外務省として必要であるということを私なりに思っておるわけなんです。それをお尋ねしておるわけで、確認をいたします。  改めてこの問題については外務省として一定の見解を添えてソ連政府に申し入れをする用意がある、あるいはそんなことはない、どちらの御意見でしょうか。
  226. 園田直

    園田国務大臣 領土問題、安全操業に関しては御発言のとおりでありまして、これはさらにさらに機を見、折を見て抗議をする必要があると考えております。
  227. 井上一成

    井上(一)委員 ここで私は日中の問題について触れたいわけでありますけれども、先ほど日中の交渉再開が本日の十二時、堂ノ脇公使と王暁雲氏の間に持たれたという公電が明らかにされたわけであります。その後正式なニュースがあったのかどうか、入ったとすればどのようなニュースがその後入ったのか、ここでお聞かせをいただきたいと思います。
  228. 園田直

    園田国務大臣 まず第一に、さらに確実を期するために土井先生にお答えしたことから繰り返して申し上げますが、本日、北京時間の十一時、日本時間の十二時から二十分間外交部において、わが方堂ノ脇公使と、中国側は王暁雲アジア司副司長との間で日中条約問題について会談が行われました。同席者は、わが方からは斎藤書記官及び通訳、先方からは王效賢副処長及び通訳であります。  会談の内容は次のとおりであります。  先方から、先般のわが方の申し入れに対する回答として次のとおり回答がありました。  一、交渉を継続することに同意する。  二、時期は七月上旬が好都合である。  三、中国側代表団の構成は韓念竜副部長、王暁雲副司長、その他のスタッフである。  以上でございます。
  229. 井上一成

    井上(一)委員 いま会談の内容を具体的に説明を受けたわけです。七月上旬ということ、このことについて代表団の構成なり交渉継続に同意するということは大変われわれも喜びにたえないわけでありますけれども、七月上旬、さてそういう日程設定の中で外務省当局は当然対応が迫られるわけであります。この二十日ごろに佐藤大使を一時帰国させて、いろいろと詰めの段階に入るというふうにも一部報じられておったわけであります。あるいは事務折衝の中では、アジア局長中国に出向いていくということも報道がされておったわけでありますけれども、外務省としてはきょうの会談内容にどのように対応していかれるお考えを持っていらっしゃるのか、できるだけ具体的にひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  230. 園田直

    園田国務大臣 わが方は交渉を始めることは少し早目の方がよいと考えておりましたが、中国側の七月上旬ということでことさらに不都合があるわけではありません。七月上旬がいつになるか、六月の月末になるか、今後の話し合いで決まると思いますし、なおまた外務大臣としても、大事なところでありますから、本委員会が終わったら、事務当局の意見等も聴取するつもりでおりますが、大臣としては向こうの申し出の七月上旬ということに特別の不都合はない、受けて立ってもよろしい、こういう考え方を持っておるわけであります。  そこで、佐藤大使を呼び返すことを申し上げておったわけでありますが、こちらの考えておったように、今月の半ばでも交渉が始まるということであれば、下旬でも始まるということであれば、御承知のとおり私はあさってからASEANの会議に出席するわけでありますから、だとすれば早急にと思っておったわけでありますが、七月の上旬となると、ASEANから帰って豪州の定例閣僚会議に出るまでの期間がございますから、そこらあたりで佐藤大使を呼んで、そして今後の具体的な問題について指示を与える。それまでになお詰めることがあれば中国側と詰めて帰るようにしたい。その結果、こちらからはとりあえず中江局長以下数名のスタッフを北京になるべく早目に派遣したい、このように考えております。
  231. 井上一成

    井上(一)委員 これは大臣の感触として、きょうの会談はいま報告がありました以外に、何かより具体的な、より突っ込んだ話でも持たれたように感触としてお持ちなのかどうか。あるいは、もうきょうは一定の顔合わせというのでしょうか、具体的には三点確認事項があったわけですけれども、よりきょうを機会に、早くその締結にスムーズに行きそうだというようにお考えなのか、その辺は大臣いかがでしょうか。
  232. 園田直

    園田国務大臣 きょうは時間は二十分間で短時間でございますけれども、必要なことは全部これで決まったわけであります。交渉を進めることに同意、それから期間は七月の初め、それから、向こうの方から進んでまず事務折衝を始める、スタッフはこうだということが出てきたわけでありますから、まことに満足すべきことであると考えております。ここまで来れば、あとはまたそれぞれ両方から、それに伴って話が進むでありましょうが、きょうの会談ではそれ以上に突っ込んだ具体的な話はなかったようであります。
  233. 井上一成

    井上(一)委員 実は回答がおくれておったということで、われわれも含めて案じておったわけでありますけれども、きょうの回答で、大臣もひとつ交渉再開、そして早期締結に最大の努力をしていただきますように私からも期待をし、お願いをしておきたいと思います。  さて次に、当委員会で私は、政府開発援助を三年間で倍増するのだという総理の方針に対して、幾つかの質問を繰り返してきたわけであります。とりわけその基準年次、あるいは円建てにするのかドルベースにするのか非常にあいまいであった部分もぜひ明確にしていただきたいということで、外務大臣質疑を繰り返してきたわけであります。政府としては、外務大臣がこの委員会でお答えになられましたように、いわゆるODAの三年倍増は五十二年を基準にし、円ベースを基準にしたいという方針を政府は十分理解して、素直に受けとめて、その方針に決定をされたのかどうか、ひとつここで確認をしておきたいと思います。
  234. 園田直

    園田国務大臣 三年間倍増で、当然五十二年暦、円建てベースであるべきであるという井上氏の発言はごもっとものことでありますから、ここでそのように努力をいたしますと外務大臣お約束をして、直ちに総理大臣じかにもあるいは経済閣僚会議でもこれを主張して、総理以下、大勢はそう当然あるべきであるということでございますが、大蔵省が承知をするという最後の決定に至っておりませんけれども、御意見のとおりに決定できる見通しとなってきたわけであります。御礼を申し上げます。
  235. 井上一成

    井上(一)委員 実は去る八日にわが国を訪問されたマクナマラ世界銀行総裁が、いわゆるいま大臣がお答えになりました三年倍増、五十二年、円建てでの政府開発援助に対して、それをぜひ実現させていただきたいという強い熱意、そのような中でたしか八日の日だったと思うのですが、日本プレスセンターで日本のODAの目標数字を明らかにしながら日本政府の援助努力を歓迎しよう、そういう姿勢を示したところ、日本側政府から横やりが入り、そして同総裁を怒らせたということが報道されているわけでありますけれども、そういう事実があったのかどうか。そういう事実があったとするならば、いま外務大臣がおっしゃった、私にお答えをいただいたそのお答えとは全くうらはらな政府の姿勢ではないだろうか、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  236. 園田直

    園田国務大臣 いまの御発言は事実は承知しませんが、話として私も承っております。世銀総裁は当然のことであるとして演説の原稿の中にそれを入れておった。ところが、それはまだ決まっていないから削除してくれと言ったら、世銀総裁は削除しなかったという話を聞いておりますが、むだなことをしたものだと思っております。
  237. 井上一成

    井上(一)委員 全く政府はむだなことをしでかしたと私も思うのです。これは、わが国のいわゆる経済援助というものの真意を十分理解してもらうためにも、やはり同総裁を怒らせっ放しではちょっとかっこうがつかないと思うのですよ。大臣の所管ではないでしょうけれども、これは政府からそういう横やりが入ったのは、一体どの省なんだろうか。あるいは、そんなむだなことをして、そのままでつくろわずに、あるいは信頼を修復せずにそのままほっておいたのかどうか。その後何らかの形で十分理解を求められたのかどうか。その点についてはいかがなんでしょうか。
  238. 園田直

    園田国務大臣 どこの省か考えてもわかりませんけれども、世銀総裁は、それは当然のことであると思って、あたりまえに演説の原稿を書いておっただけでありまして、私も世銀総裁と会いましたけれども、彼は怒ったわけではなくて、歯牙にもかけてないかっこうでございました。
  239. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、これは私の推測の範囲では大蔵当局ではないだろうか、こういうふうに判断をするわけですけれども、そういうことが、せっかく日本の外交を友好的に進めていらっしゃる外務省に水を差すことになり、ひいては国際不信を招く大きな要因になるわけであります。今度外務大臣がASEANにも訪問をされるわけですし、そんなことを考えてみると、いまの政府はてんでんばらばらな考え方に立って、あるいは外務省の基本的な方針を全く理解せずに、勝手なことをそれぞれしでかしているような感もあるわけです。この辺でひとつ、私は具体的には政府開発援助を一例としたわけでありますけれども、統一見解をまとめて、内外の不信を一日も早く解消すべきである。そうすることが、海外経済援助国に対する信頼を取り戻すことである。まして明後日ですか、ASEANの外相会議に出席をされる外務大臣として、当然そのようなことはこの委員会でも明確にしておく必要があろう、こういうふうに私は思うのです。外務大臣、いかがでございますか。政府として統一見解を当然明確にすべきだ、こういうふうに考えるわけです。外務大臣の考えを聞かしていただきたいと思います。
  240. 園田直

    園田国務大臣 お互いに行政府、立場は異にしておるわけでありますが、わが国の大蔵省は優秀な方々が集まっておりまして、単なる金庫の番ではなくて、日本の財政、経済をどうやるかという総元締めであります。世界の情勢もよくよく御承知の方がいっぱいおられるわけでありますから、われわれの説明が足りなかったのかなと思って、反省をし、さらに努力をする所存でございますけれども、この問題は先ほど発言しましたとおりに、やらなければ、世界の不信を招くということではなくて、物笑いの種になると思いますので、さらによく相談をするつもりでございます。
  241. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、お互いに政治をやっておると、気づかないうちに国民にはなかなか理解をしてもらいにくいような表現で事を済ましてしまう場合が間々あるわけです。私はこの点はお世辞抜きで、外務大臣の素直な気持ち、私に過去何回かお答えをいただいた、経済援助に対する今後努力をするんだというその意思表示は、私は正直に受けとめております。むしろ、大蔵省に優秀な方だなんて言うけれども、理解を求める方の努力が足りなかったと謙虚に反省をされているということですが、私はこれはうそだと思うのです。外務省が優秀なスタッフをそろえ、外務省が理解があるのです。大蔵省は余りにも冷た過ぎるのではないか。余りにも安易な方法で事に処しようとしているのではないか。努力せずして、結果だけ、かっこうだけ、そんなことがそもそも不信を招く大きな一つの要因になっていると思うのです。外務大臣がタイを訪問される前に、統一見解をぜひはっきりとすべきであり、外務大臣は、もし五十一年ベースであれば、そんなことは断じて許せないし、またそんなことがあるならば自分としては、福田総理大臣の命令に従いますと再々言われる外務大臣ですけれども、事これに関しては外務大臣のお考えを貫き通すという強い信念をきょうここで明確にし、そしてその気持ちをASEANの外相会議に持っていくべきであると私は思う。そうでなければ、何のためにASEANの外相会議にあなたは行かれるのですか。
  242. 園田直

    園田国務大臣 総理は、五十二年暦、円建てベースでやるべきだという御主張でございます。なおまた他の経済閣僚もそういう御主張であります。したがいまして、それは当然そういうことに決定になる見通しでございますから、それ以上、毛を吹いてきずを求めるようなことはせぬ方がいいと思いますので、お許しを願いたいと思います。
  243. 井上一成

    井上(一)委員 それでは外務大臣、いまのお答えで、政府としては五十二年ベース、円ベース、これは総理の考えであり、政府の統一した見解だということでございますね。確認だけしておきたいと思います。
  244. 園田直

    園田国務大臣 仰せのとおりでありまして、事務的に決定をする時期を待っているだけでございます。
  245. 井上一成

    井上(一)委員 外務省が日本の政治の先頭に立って、とりわけ外務大臣がその決断によって、あるいはその意見具申によって正しく外交の基本方針を今後とも守っていただくように期待を込めて私はお願いいたしておきたいと思います。  さらに、今回、外務大臣がASEANの外相会議に出発をされるわけであります。昨年の夏に福田総理がいわゆるマニラ発言という、心と心の触れ合いを訴えられてから約一年経過するわけであります。ところが、ASEAN諸国は日本に対する期待感が非常に低下している、そのためにも今回のASEAN外相会議で何とか期待感の低下に歯どめをかけなければいけないとも思うわけであります。もちろんいま指摘をした海外経済援助の政策も一つではありますけれども、それ以外に、外務大臣が今回の外相会議に出席をされて、強くASEAN諸国に訴えなければいけないものがあろうかと思うのですが、いま外務大臣がお考えになっていらっしゃる、ぜひこの点は訴えておきたいという点について外務大臣から御説明をいただきたい、こういうふうに思います。
  246. 園田直

    園田国務大臣 今度の外相会議は、先ほどもお答えいたしましたとおり、腹蔵なく、隔意なく話し合うことが大事でありまして、そこで福田ドクトリンと言われるものをさらに明確に主張すると同時に、先般の福田総理がASEAN訪問のときのいろいろな約束があります。その御約束のフォローアップ、これは大体順調にいっておりますが、そういうことについて話し合うことも一つでありますが、もっと大きな問題は、日米首脳者会議それから日中問題、それから続いて、帰ったら参りますヨーロッパの先進首脳者会議、こういうことについて報告をし、ASEANの国々のそれぞれ異なった意見を承ってくることが一番大事であると考えておりますので、そういうことで隔意なく話をしてきたいと考えております。
  247. 井上一成

    井上(一)委員 いま説明をいただいたわけですけれども、さらに先日カンボジアのイエン・サリ副首相が訪日されたときに、いろいろと外務大臣が会談をなさっているわけです。今後カンボジア、ベトナムとの外交関係を深めようとしていらっしゃるわけです。このことも、わが国の立場をASEAN諸国に理解を求めるために当然話があろうかと思うのです。そういう点についてはどのようにお考えなのか。  また続いてもう一点、カンボジアのイエン・サリ副首相が来日された折に、わが国とカンボジアとの外交関係を推進するため、中国大使の佐藤大使をカンボジア大使に兼任させたいと申し入れをしたということですが、カンボジア駐在の日本大使を任命して、中国の佐藤大使は日中条約の問題あるいは日中にまたがるいろいろな懸案の問題を処理していかなければなりませんし、これからの事務量を考えれば、カンボジアに新しい専任の大使を派遣すればいかがなものであろうかというふうにも私は考えるわけであります。そういうことも一体どうなのか、ひとつあわせて聞かしていただきたいと思います。
  248. 園田直

    園田国務大臣 先ほど言い落としましたが、御発言のとおりでありまして、インドシナ半島に対する日本外交方針及びベトナム、カンボジア、こういう問題をこちらからも話し、向こうからも意見を承ることは一番大事なことだと思っておりますから、そうするつもりでございます。  カンボジアの副総理と会いましたが、複雑なる国際情勢の中で、独立を保ちながら戦っているという率直なしかも温厚な人柄に胸を打たれるものがありました。そこで、二人の中ではこれまた国境を越え、思想を越えて率直に語り合ったわけでありますが、いまおっしゃるとおりでありまして、わが国はそういうことから専任の大使をカンボジアに出したいという申し入れはしたわけであります。ところが、向こうの方で、わが方の体制がまだそこまでいかないからということでございましたので、向こうの意向もくんで、ではとりあえず兼任にしておくが、将来なるべく早い機会に大使をやれるようにしてもらいたい、なおまた、日本にはカンボジアの大使館の家と土地があるわけでございますから、これもあいているから、なるべく早くおいでになるように、こういう話もしたところでございます。
  249. 井上一成

    井上(一)委員 そういうことでしたら理解をしたいと思います。外務大臣のASEAN訪問が成功いたしますように祈念いたしたいと思います。  さらに、私は外務大臣にひとつお聞きをしたいのです。  先日の報道で、航空自衛隊の戦技訓練をアメリカに申し入れをしておった。私は予算委員会の分科会でも、F15、いわゆるわが国は専守防衛だ、あるいはいろいろな意味でどうしても――買う必要はわれわれはないと思うのですけれども、アメリカに航空自衛隊を派遣してそこで訓練をするということ、そういうことをすることの問題は横に置きたいと思うのです。そんなことをしなければ、日本で練習もできないような、あるいは日本で使えないようなF15――F15でなくてもいいでしょう。そのような機材を買う必要があるのかどうか、またわが国はそんなことまでしなければいけないのであろうかどうか。これは私は非常に単純な質問をしたいと思うのです。大臣、どうお考えでしょうか。防衛庁長官に聞いているのじゃありませんよ。日本で使えぬようなものを今度たくさんの予算を投じてわが国は買いました。買うのです。それは日本で練習できないからアメリカへ行って、済まぬけれども、おたくの上空でひとつ訓練をさせてもらえぬだろうか、ついてはわが国が購入した機材も使わないで、あなたの方の機材で練習をさせてほしい。非常に矛盾というか論理が明快でない、非常に常識的でないこのことについて外務大臣としてどうお考えでいらっしゃるか。
  250. 園田直

    園田国務大臣 防衛庁からおいでになっておりませんから、私が言うべきことでありませんけれども、新しい道具や機械を買うときは、日進月歩の世の中でありますから、その使い方を会得して帰るのは通例でありまして、戦前でも、外国に軍艦を注文しますと、その受け取りに行って、一応操作を習って、そうしてその軍艦を持って帰るということはしばしばあったわけでありますが、新しい飛行機を買うときに、向こうへ行って向こうの飛行機で訓練するというのはまあまあいいのじゃないか、この程度に考えております。
  251. 井上一成

    井上(一)委員 しかし、その場合、買った機材は日本で使えるということです。あるいは日本で練習できるということです。その前段で、向こうの機材で向ごうで練習をする。今度は違うのですね。日本では練習ができないから向こうで練習させてくれ。これは、先ほども申し上げたように防衛庁長官に尋ねているのではないので、外務大臣、本当の素直な気持ちを――理屈としては非常におかしいじゃないだろうか、こういうことなんです。  私は、そんなこといいとか悪いとか、けしからぬとか、航空自衛隊の派兵の問題云々と、そこまでは外務大臣には聞いてないわけです。まあ何と、機材を借用して向こうで訓練することをお願いをした、その機材では日本では訓練もできないのだ、そんな機材が必要なんでしょうか。いや、だから、本来からいくと通常の常識ではそんなことはあり得ぬことですよ。違いますか。私は、そういうことなんです。だから、むずかしゅう、ここでまた下手な答弁をしたら、おれまた党内へ帰ればつつかれる、そんなやぼなお考えを持たないで、私の言っているのは、常識的にそんなことはもう通常考えられませんな、こういうことなんです。そのとおりですとか、いやそれが常識ですと言うなら、私はもう逆に外務大臣の常識を疑えばいいわけです。だから、通常そんなことはありませんということですな、そういうことについて大臣にひとつ、お答えしにくいでしょうけれども、まあまあこれは例外なのか、こんなことは常識では、普通は考えられませんというようなことなんですが、大臣、どうでしょう。
  252. 園田直

    園田国務大臣 遠慮して言わないわけではありませんで、私は古い飛行機乗りでございますが、私が操縦したのはプロペラであり、新しいのはT33まで操縦したわけでありますが、近ごろの新しい飛行機に対する知識は全然ございません。したがいまして、先ほど言った程度であって、それ以上質問されたことに一々答えておると、大蔵省からも防衛庁からもきらわれて、私は孤立して何もできなくなりますから、やはり今後皆さんから指図を受けたことは円満に行えるように、この程度にとどめておきたいと存じます。
  253. 井上一成

    井上(一)委員 外務大臣、私の常識論というものはまあ理解してもらえたと思います。決して外務大臣を孤立化さすために私は質問しているわけではないのです。むしろ、世の中の常識をもっともっと大事にしようじゃないか、常識を大切にしていかなければ本当の国民外交というものはあり得ませんよということなんです。だから、防衛庁や大蔵省が常識を破った、こんなことは私から言わせれば全く理屈に合わないことをしようとしているのです。だれかがどこかで警鐘を鳴らさなければ、わが国の国民の合意を得た基本的な外交というものを今後推し進めていくことは非常に困難でありますよ。  大臣から余り答弁を求めると確かに孤立するかもわかりませんが、ただ、私はこんな非常識なことがわが国で行われておるという事実を嘆くわけであります。こんな不必要なものをあえて買わなければいけない、こういう今日の事態を憂うるわけであります。外務大臣、あなたもパイロットであった。いわば日本で乗れる飛行機、日本で使える飛行機というなら話はわかるのだけれども、日本では購入をしても何ら利用価値のない、そういうものはむだな支出であるということを私は特に申し上げ、常識に立った国民外交をひとつ今後推し進めていただきたい。  このことだけにとらわれずに、外務大臣に一言ここで確認をしておきたいと思います。  外務大臣、いままでもそうであったと思いますし、強く強調してきたわけでありますけれども、国民が納得する外交、それを基本に据えて、常識の外交を今後も推し進めていただきたい。ここで、ひとつ締めくくって確認をしておきたいと思うのです。
  254. 園田直

    園田国務大臣 円満なる常識は最高の方針であり、最高の哲学であることは御発言のとおりであります。
  255. 井上一成

    井上(一)委員 それでは、私はその強い方針を今後とも貫いていただくようにさらに期待をし、お願いをしておきたいと思います。  それでは、過去の委員会で私が質問をして答弁が留保された点が幾つかあったわけでありますが、その点について最後にお答えをいただきたいと思います。
  256. 園田直

    園田国務大臣 御催促いただいて恐縮いたしております。その機会をうかがっておったわけでありますが、先般の当委員会で昭和二十六年四月二十三日の吉田・ダレス会談に関する外務省の記録について、いわゆる下山事件に関する吉田総理発言ということで調査をしろということでございました。調査をした結果、次のとおりでございます。  一、吉田・ダレス会談は昭和二十六年四月二十三日午前、三井本館において行われました。会談には日本側から井口外務次官、西村条約局長、米側からシーボルト大使、ジョンソン国務次官補、バブコック大佐、フェアリー国務省員、スピンクスGHQ外交局員が同席をいたしました。  二、会談は平和条約について行われたもので、韓国の平和条約署名問題も取り上げられたが、日本側記録には、米側文書の記録する下山事件に係る吉田総理の発言は見当たりません。  三、なお、会談の日本側同席者である井口元次官及び西村元局長に確かめたところ、ともに米側文書のような発言が行われたとの記憶はないということでありました。ただし、日本側記録の作成に当たった西村元局長からは、日本側記録は会談終了後記憶に基づいて作成された会談の要録であり、これに記述されていないからといって、吉田総理のかかる発言が行われなかったとは断言できないという旨の説明がございました。  それから、現在起こっております松本社長誘拐事件の現状及び解決の見通しについての御質問でありますが、五月の十七日、日本時間の五月の十八日午前発生しました松本インシンカ社長誘拐事件は犯人側からの連絡がその後とだえて、事態は膠着した状態にございます。  かかる現状を打開するため、インシンカ社においては、六月六日及び十日の二回にわたり現地報道機関とのインタビューの機会に犯人側に呼びかけを行いました。  日本政府としても、現地の林大使をしてエルサルハドルの大統領、外務大臣、国防次官等と密接な連絡をとらしめており、松本氏の無事帰還のため善処方申し入れてきておるところであります。またインシンカ社側とも随時協議をして、必要な助言を行っておるというのが現状でございます。  以上でございます。
  257. 井上一成

    井上(一)委員 いまのお答えに関連して一、二質問したいと思います。  下山事件についてはいまお答えがあったわけでありますけれども、アメリカ側の公式記録の中での吉田発言を否定をなさっていらっしゃらないわけですが、そのように受けとめてよろしいのでしょうか。
  258. 園田直

    園田国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、記録はありませんが、しかしまたその発言がなかったという証拠もないわけであります。
  259. 井上一成

    井上(一)委員 私は、このことについては前回の質問でも申し上げておりましたが、やはり事実関係を外務省としては明確にし、そして別に法廷の中での論争ではありませんけれども、確かな証拠が、あるいは確かなものがない限り、軽率な発言は自重すべきであるという考えに立っておるわけです。だからといって、いまお答えがありましたけれども、吉田発言を否定はできないんだ、それじゃ肯定するのかと言えば証拠もない、そういうことになりますと、むしろあやふやな状態を政府はそのまま放置しておくのかということになるわけです。私の見解も踏まえた上で、大臣としてはいかがですか。この問題についてアメリカ側が公式に発表しております。わが国としても、いまお答えになられたこと、そしてそれにあえて大臣なりのコメント、いわゆる明確な証拠もないという事実、そういうことも踏まえて、これは外交文書として公表されたわけでありますから、外務大臣としていずれかの機会に明確にする必要が、時期は別として、あろうかと思うのですが、どう受けとめられますか。
  260. 園田直

    園田国務大臣 雑談であろうとあるいは会談の休憩間の話であろうとも、いやしくも外交の場所において、証拠のない、しかも後々影響のあるような発言は、特に外交官としては十分慎むべきであるということはお説のとおりであります。また、このことにつきましては折に触れて実際どうであったかということは確かめてみたいと存じます。
  261. 井上一成

    井上(一)委員 二点目のエルサルバドルの松本社長誘拐事件については、私はその折も強く外務省の問題解決に対する取り組みの構えをより強く打ち出してほしいということを申し上げておいたわけでありますけれども、今日いまだにこの問題が喜ばしい結果、いわゆる元気で解放されたという報道がないわけであります。大変むずかしい問題だろうと思いますけれども、外務省としては、在外邦人の保護という基本的な領事の仕事でありますから、より具体的にこの問題解決に何か手だてをする用意を現在検討中なのかどうか。あるいはいま報告がありましたけれども、どんな見通しを持ってこれに当たっていらっしゃるのか。できればその辺もお聞かせをいただきたいと思います。
  262. 園田直

    園田国務大臣 事人命に関する問題であり、国家の威信にも関する問題でありますから、過早に甘い判断はできませんけれども、必ずしも暗い見通しばかりではないという見通しを持ちつつ、出先では表に立ち、裏に立ち、あるいは向こうの国の国情も複雑でございますので、大統領あるいはその他の警備関係も、わが政府の働きかけに応じて犯人を一部釈放するなり、いろいろ全力を尽くしているわけであります。また、反体制側の情報等も逐次とって、全力を挙げて松本社長の生命に異状なきよう努力をしたいと考えております。
  263. 井上一成

    井上(一)委員 ここで私は前回留保いたしました国際砂糖協定条約審議にかかわって質問を続けたいと思います。  七三年協定の三十三条に批准条項があるわけでありますけれども、それにもかかわらず国会の承認を求めなかったということについては前回質問をいたしました。十分な答弁がなかったわけであります。もちろん外務大臣からは丁重なおわびのお答えがあったわけでありますけれども、それで事がすべて済むのだというふうに受けとめては私はおらないわけであります。事務的な一つの手だてとしてむしろ国会の承認を求めなかった事務当局のミスを強く私は指摘したいわけであります。  そこで、批准という行為の内容は一般にどのようなことを言うのか、事務当局はどう受けとめているのか。さっきから繰り返しますように、三十三条に批准条項があるわけですけれども、それを果たさなかったわけでありますから、ひとつ批准ということをどのように踏まえていらっしゃるのか、説明を願いたいわけであります。
  264. 山田中正

    山田説明員 お答え申し上げます。  前回井上先生より御指摘いただきました七三年協定の第三十三条、先生御指摘のように批准を規定いたしておりますが、批准と申しますのは、わが国が条約締結いたします場合に国会の承認を得まして、それを国際的に確定的に発効する手続の一つといたしまして批准という手続があるわけでございます。ただ、七三年協定の発効のいたし方といたしましては、三十三条にございますとおり、批准、受諾書もしくは承認書を寄託するという手続がございまして、先般も申し述べましたとおり、七三年協定につきましては、わが国といたしましては受諾手続で発効した次第でございます。
  265. 井上一成

    井上(一)委員 山田さん、私はさっきから言っているように、三十三条の批准条項があるのだから、当然それに沿って事務的に処理をしなければいけないということなんですよ。いまの答弁にもあるように、そういう手続をやらなかった。それがあたかも当然であるようであっては私は困ると思うのです。批准条項のある条約は必ず国会の承認を求めるというのが従来の慣行であったわけです。憲法七十三条第三号ただし書きの規定は、内閣に対して、そのような条約について、事前に、あるいは時宜によっては事後に国会の承認を経ることを求めているわけなんです。七三年協定の国会承認を求めなかった理由を再度私はここで伺いたいわけです。大臣からは、非常に申しわけなかったということなんです。あなたの方で、そういうことを国会に承認を求めなかったことは何ら法に触れるようなことではないのだ、いままでの慣行から国会に承認を求めなかったことは何らとがめられることではないのだというふうにお考えでいらっしゃるとするならば、これは大きな問題であるということです。国会承認は事後であってもときにはやむを得ないわけでありますけれども、あなた方政府として七三年協定についてそれをなぜやらなかったか、私から言わせれば、行政の国会に対する、立法府に対する非常に甘い見方を持っていたんではないだろうか、こういうふうにも思うわけです。  再度、承認を求めなかった理由を伺いたいと思います。
  266. 山田中正

    山田説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、わが国が批准いたします条約につきましては、従来とも国会の御承認を得て批准しておるのが実情でございます。それで、七三年協定についてなぜ国会の御承認を得なかったかという先生の御指摘でございますが、先生御指摘のように、七三年協定、確かに批准条項があるわけでございますが、一般的に申しまして、多数国間条約の発効の手続の場合に、先ほども申し上げましたように、それぞれの国内手続もございますために、批准、受諾、承認というふうなそのどの手続をとってもよいという形で規定しておる条約が多数国間条約では非常に多いわけでございます。  七三年協定を行政取り決めとして処理いたしましたことにつきましては、先般も申し述べましたとおり、七三年協定自体が国際砂糖貿易を実体的に規制するものではなくて、むしろ新しい条約を結ぶために各国が交渉を行うというふうな規定でございまして、その各条項を検討しました際に、行政府の範囲内でできることであると判断して、国会に御提出申し上げずに行政取り決めとして処理したものであると承知いたしております。ただ、先般先生の御指摘に対しまして大臣からも申し述べましたとおり、国際砂糖協定というものにつきましては、従来から国会で御承認いただいておる協定が多いわけでございまして、それに密接に関連する形での取り決めでございますので、このようなものにつきましては、行政取り決めとして処理する場合におきましても当委員会には御報告申し上げるべき筋のものであろうか、そのように考えております。
  267. 井上一成

    井上(一)委員 山田参事官、もう一度伺います。  私はいま批准のいわゆる概念というものの説明も聞きました。そして、あなたからお答えがあったわけです。六八年協定、そして今回審議をしておるこの協定はきっちりと手続をなさっていらっしゃる。こういうことなんです。七三年協定のみについて行政取り決めでの処理でいいんだ、受諾で。それは私は行政側の余りにも勝手な解釈である、こう思うのです。また、協定の三十三条にそういう批准条項があるんだから、とりわけ行政府は事後になろうともこれは国会に対しての報告義務がある、私はこういうことを申し上げているのです。そういうことについてやはりきっちりとしておかなければいけませんので、確かにそうであった、今後はそのようなことについては十分注意をいたしますと言うのか、いや七三年の協定については行政取り決めでの処理で十分である、事が足りるんだという認識に立っていらっしゃるのか。後者に立つとするならばこれからは非常に危険だと思うのです。そういう意味で、大変私はくどいようですけれども、この問題についてはむしろ大臣よりも、事務当局の山田参事官にお答えをいただきたかったわけです。だから決して私は、当時七三年のときはあなたの担当ではなかっただろうし、いまここでどうのこうのというその責任を求めるわけでもないのです。やはり行政府のなすべきことはきっちりとしておいてほしい。きっちりとすべきであるということを強く私は訴えている、求めているわけなのです。そのことについてひとつはっきりと、そうであったと言うのか、いやそうじゃなくして、とられてきた対応が正しかったと言われるのか、そのことについてお答えをいただきます。
  268. 山田中正

    山田説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、この条約締結いたします場合の手続についてはきっちりしておかなくてはならないという御趣旨、全くそのとおりだと思いますし、私どももそのように心がけて処理していきたいと存じます。国会で御承認いただくべき条約とはどのようなものであるかということにつきましては、昭和四十九年に当委員会で、政府の統一見解を申し述べておる経緯がございますが、私どもとしてはその見解にのっとりつつ、懇意的に判断することなく、やはり国会に御承認を仰ぐべきものにつきましては御承認を仰ぐという形ではっきりしてやっていきたいと存じます。  七三年協定につきましては、先ほど来申し上げましたとおり、当時政府といたしましては、手続上行政取り決めでできると判断して処置したものであろうと思います。ただ、今後同様の協定が結ばれる前につきましては、それぞれの条約につきまして慎重に検討いたしまして万遺漏なきようにしたい、このように考えております。
  269. 井上一成

    井上(一)委員 どうも何か少しあいまいさが残るので重ねて聞いておきたいと思うのです。やはり七三年協定は、当時としては国会の承認を、あるいは事後、事前を問わず、国会に対する報告、承認を得なかった、それが妥当だと思ってやられたわけですけれども、いま考えてみれば、それはむしろそつな、いわゆる方法として誤っておった、当然国会に報告あるいはこの問題についての何らかの承認を、事前、事後は別として求めるべきであったというふうにいまはお考えでいらっしゃるわけでありますか。
  270. 山田中正

    山田説明員 七三年協定につきましては、現時点でこのような協定が出てまいりました場合は、先ほど申し上げましたように、大臣から先般先生にお答え申し上げました趣旨にのっとりまして、国会には御報告申し上げるべきものであったというふうに考えます。
  271. 井上一成

    井上(一)委員 当然そうでなければいけないので、まあ過ぎたことについては私は深く責めようとは思いません。今後七三年協定の繰り返しをしないように、あるいはこの問題以外についても、十分立法府に対する行政側のなすべきことをきっちりとその責任を果たしてもらえるように、ひとつ強くお願いをしておきたいと思います。  以上で私の質問を終えます。ありがとうございました。
  272. 永田亮一

  273. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まず最初に、いわゆる国際人権規約のA並びにBにつきまして御質問をしたいと存じます。  本日の委員会の冒頭の理事会におきまして、公明党及び共産党は、同条約についてはその審議に当たりまして本会議の趣旨説明要求を取り下げた由であります。したがいまして、残っているのは社会党だけでありますので、もしできるならば、本委員会におきまして国際人権規約A並びにBは直ちに審査に入れるものと期待をしつつ私は質問をいたすものであります。  まず、この国際人権規約A並びにBはどういうことを意図し、どういう大事なものであるか、まとめて簡略に御説明をいただきたいと思います。
  274. 大川美雄

    ○大川政府委員 国際人権規約は国連がつくりました数々の人権に関する条約の中で最も基本的なものでございまして、一九四八年の世界人権宣言の後を受けて、人権宣言の内容を条約の形でまとめ上げたものでございます。したがいまして、基本的に国際連合憲章自体で規定されている人権の尊重という基本的思想を受けてつくられたものでございまして、中身としましては二本ございまして、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約におきましては、いわゆる社会権的な基本権についていろいろ規定がございます。それからいま一つの市民的及び政治的権利に関する国際規約におきましては、いわゆる自由権的な権利についての規定がいろいろございまして、この両規約をあわせて実施いたしますれば、人権の保護の面でほぼ完全な形になるということで、政府といたしましては、両規約をあわせて批准すべくいろいろ今日まで努力してまいった次第でございます。  この内容につきましては、さらにわが国の憲法からいいましても、憲法の精神に沿っておりますし、憲法の基本的人権の尊重というたてまえにも合致いたしているものでございますので、この際日本政府としては人権規約を批准することが適切であろう、日本政府が人権の尊重という問題につきまして重視しているということをこの際内外に表明する一つの形として、国際人権規約批准することが適切であろうと思った次第でございます。
  275. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この社会的権利、自由権的権利を表示するA規約並びにB規約が、わが国の憲法のたてまえからいいましても実に当初から日本政府としては承認批准すべき案件と思いますのに、今日に至るまでその本委員会に対する提出がおくれた理由はどこにあったのか、総括的にお答えをいただきたい。  特に現在何カ国がこのA規約並びにB規約に加盟されておられるのか、日本が加盟するとすれば何番目になるのか、その辺もあわせて御返事をください。
  276. 大川美雄

    ○大川政府委員 経済的、社会的及び文化的権利に関する規約、これは俗にA規約と称されるものでございますが、これの批准国数はただいま五月末現在で五十一カ国と承知いたしております。それから、市民的及び政治的権利に関する規約、いわゆるB規約につきましては、同じく五月末現在で四十九カ国が締約国になっている、こういうことでございます。     〔委員長退席、大坪委員長代理着席〕 したがいまして、日本批准書を寄託いたしました際に何番目になるか、これはそれまでにほかの国がさらに批准書を寄託すれば順序が変わってまいりますけれども、五十番目前後ということであろうかと思います。  なぜ今日までこの批准がおくれたかという御質問に対しましては、何しろ非常に広範な範囲にわたる内容の規約でございますので、外務省以外に関係国内省庁が非常に多数に上っておりますので、それぞれの省庁におきましてそれぞれの所管行政、所管の法律との関係をいろいろいままで洗ってまいった次第でございまして、ようやく最近に至ってその検討が一段落をいたしましたので、今回の提出ということになった次第でございます。
  277. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、この国際人権規約をこの五年来速やかに当委員会に提出をするよう求め続けてきた議員でありますが、このようにおくれた、調整を要した中で何が最もおくれ、問題化し、そして調整がおくれたのか、そしてどこに問題点があったのか、もう少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
  278. 大川美雄

    ○大川政府委員 政府が今度両規約を批准いたします際に三つの留保をすることを予定いたしております。  その留保点は、A規約の第七条にあります公の休日に対する報酬の問題、それから同じくA規約の第八条の労働三権のうちのスト権に関する問題、さらに同じくA規約の第十三条にあります中等及び高等教育を漸進的に無償化していく問題、この三点でございます。したがいまして、いままでにいろいろ議論いたしてまいりました際に、その三つの点が特に問題にされた次第でございますけれども、そのほかにたとえば社会保障の規定でありますとか、いろいろございます。ただし、規約そのものの立て方として、批准の時点で直ちに規約の内容を完全に実施できる体制になっていなければならないかどうかという解釈上の問題がございまして、いろいろ検討いたしました結果、A規約につきましては漸進的に内容を実現することが義務となっておりますので、ある程度批准の時点で必ずしも完全な形での国内体制が整っていなくてもこれは批准に踏み切ることができるのではないかというような結論に達しましたし、B規約につきましても、これは漸進的という表現はございませんけれども、やはりその規約の内容を実現していくのに立法その他の措置を講ずることをたてまえとしておりますので、同じく批准の時点では、完全な形で内容が実現していなくても批准ができるというふうに解釈できるということになりましたので、そういう立場に立ってよく検討いたしました結果、今度のような形で批准に踏み切ることができるのではないかということになった次第でございます。
  279. 渡部一郎

    渡部(一)委員 人権規約のAでは、第六条から、労働の権利、公正かつ有利な労働条件を享受する権利、労働者の団結権等、社会保障を受ける権利、家族、母子、年少者の保護、適正な生活水準を享受する権利、健康を享受する権利、教育を受ける権利、文化生活に参加する権利等が規定されております。また、人権規約のBにおいては生命に対する権利、非人道的取り扱いの禁止、奴隷、強制労働の禁止、恐意的逮捕または拘禁の禁止、自由を奪われた者の取り扱い、契約不履行のみを理由とする拘禁の禁止、移転の自由、外国人追放の制限、公平な裁判、遡及処罰の禁止、法のもとで人として認められる権利、プライバシー、家族、家庭、通信、名誉、信用の保護、思想、良心、宗教の自由、表現の自由、戦争宣言の禁止、差別等をあおる憎悪の唱道の禁止、平和的集会の権利、結社の自由、家族が保護を受ける権利、婚姻の権利、児童の権利、政治的権利、法のもとの平等、差別なく法の平等の保護を受ける権利、少数民族の権利等が記載されていると政府報告書にも載っておるとおりであります。これらの諸権利は、わが国憲法の精神をさらに敷衍し、発展させるものとしてわが国は積極的にこれに当たるべきであると存じます。しかりとするならば、もっともっとこの条約に関してわが国の態度というのは前向きであってよかったものではないか、むしろ人権外交に対するわが国の政府の取り組みは、もっと一生懸命なものがあっていいのではないかと繰り返し考えられるのであります。しかしながら、今日まで、特に最近数カ月において精力的に取り組まれた外交当局の御努力に敬意を表するとして、国際人権規約が提出され、本日より実質的な審議に入るわけでありますが、それと同時にぜひとも申し述べねばならぬのは、国内関係の規約あるいは国内法の整備がこれとともに続々と整備され、提出されていかなければならぬと私は思うのであります。本規約については園田外務大臣の御指示により、急速に外務委員会に提出されましたけれども、他の国内法案件がこれと見合って提出されていないというのは、従来の外務委員会の審査とはルールが違う、これは非常にまずいことになるのではないか、こういうふうに思われるのであります。その点どのようになっておるか、ひとつ現状の御説明をお願いしたいと存じます。
  280. 大川美雄

    ○大川政府委員 この両規約の仕組みに沿って御説明申し上げますと、明示的な規定をもって漸進性を認めておりますA規約はもとよりのことでございますが、B規約の場合におきましても、批准の時点で関係国内法令等が完備していることは必ずしも要求されていないということは、先ほど御説明申し上げたとおりでございます。この人権規約は、この点で通常の条約と若干性格が異なるものでございまして、この規約のかかる仕組みに照らしますれば、関係国内法令等を整備しなければこれを批准し得ないということではないのでございまして、いつこれを批准するかにつきましては、政府が内外の全般的な要請を十分勘案しつつ、政治的に判断して決定すべきだ、こういうふうに考えた次第でございます。  そこで、政府といたしましては、まず両規約を締結いたしまして、その後に規約に定めるところを十分念頭に置きつつ、必要に応じ逐次所要の措置を講じていくことを今回決定した次第でございまして、これは先ほど申し上げました規約の性格をも考えながら、内外の全般的な要請にこたえるとの政治的判断によるものでございまして、こういう対処の仕方は規約上も何ら問題はないというふうに考えております。
  281. 渡部一郎

    渡部(一)委員 憲法の九十八条に「日本國が締結した條約及び確立された國際法規は、これを誠實に遵守することを必要とする。」となっております。明らかにこの規約の中には、直ちに同規約のことごとくを国内法として遵守するということは要求をしていない文言がA規約にあることは認めるものでありますし、また、規約の内容は、わが国の関係国内法令より劣った部分というのが散見するのでありますが、それは後へ下がらないようにするという配慮も必要だということを認めた上で、憲法の九十八条で言うところは、なるべく速やかにこれらの関係国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とするという意味は、むしろこれらの内容を速やかに国内法規として整えていく方向性を示すべきものであると思うのでありますが、大臣いかがでございますか。
  282. 園田直

    園田国務大臣 この規約の締結については、御指摘のとおり相当無理をいたしております。私は、日本外交を進めるに当たっては、やはりその基盤は、日本の法体系その他が、日本国内においては日本人だけが人間であるかのような法体系になっておりますので、これを何とかして各種の基本的人権を整えることが必要である、そのためには若干の無理もやむを得ない、こういうことで事務当局に相当無理をさしたわけでありまして、その関係上厚生省あるいは法務省その他の省からはいろいろ異論が出てまいりました。法務省はきわめて積極的に協力をしてくれたわけでありますが、それぞれ荷物を持っておる消防庁関係あるいは厚生省の年金関係等で最後までいろいろ意見が出たわけであります。  そこで、いま御指摘の国内法のことについては大体話がついておりまして、ほとんどその準備はできていると聞いておりますが、なお、御指摘を受けるとまだ足らぬ点がたくさんあるわけでありまして、また、そのために、わが方としても提案をすることに重点が置かれて、規約の中身そのものにはいろいろ問題があるわけでございます。
  283. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣、重ねて伺いますが、要するに、たくさんの問題がありながら、この人権規約を国会に提出することによって、日本外交の姿勢というのは大いに正されたことを私は評価しているわけでありますが、それと同時に、関係国内法令もあわせて今後速やかに整備していくという御決意を承りたいと思って質問いたしておるわけであります。
  284. 園田直

    園田国務大臣 御発言の趣旨は私も全く同感でありまして、この点については、この規約を無理に出した方がいいかどうか、いろいろ考えたわけでありますが、この規約を出して御審議願い、その突破口をつくって、それに伴って国内法令の体制整備を急速に進める、この方がより効果的であると考えてこのようなことをやったわけでありまして、国内法を速やかに完備することはお察しのとおりでございます。
  285. 渡部一郎

    渡部(一)委員 御答弁の趣旨のはなはだ前向きであることを高く評価いたしまして、後ろでまだ何か言いたい方もおありのようでありますが、あえて答弁を求めないで次に進みたいと思います。変なことを言われたら大変なので……。  私は、これは非常に多くの問題点があることを認めると同時に、日本国内における六十万の朝鮮半島の出身者の方々、そういう方々に対する扱いは国際場裏でどれくらいわが国にマイナスをもたらしたかわからない。また、ベトナム難民の問題一つをとりましても、これは非難攻撃のあらしを受けながら今日までやったことを考えますならば、日本国における国際的な公正を回復し、一歩前進させるために画期的なものであったと思うわけであります。私は外務省に高い点をつけたことは全くない一人でありまするけれども、今回この規約の推進に当たりましての御努力というものは、高い評価が今後において与えられるものと確信いたします。したがいまして、国内法との調整問題において、今後、解釈においての実質的な留保を拡大するような方向ではなく、むしろ積極的にこの国際的な人権関係がさらに拡大し、安定していく方向で御努力を願いたいと要望するものでございます。よろしくお願いいたします。
  286. 園田直

    園田国務大臣 御指摘のとおりであります。この上とも御指導、御協力をお願いいたします。
  287. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さて、日中問題についてお伺いをしたいと存じます。  先ほど当委員会に対する御報告によりますると、中国側から電報の御返事があったというように承っておりまして、七月上旬に日本側と先方側との打ち合わせが行われるとの御返事だそうでございます。それでわが国側の対応はどういう対応で臨まれるのかを数点お伺いしたいと存じます。  この交渉は先方側から交渉のメンバーを指定してきたことでもあり、それに対応するわが方側のメンバーを派遣することは当然のことであろうと存じますし、もう腹案はすでにでき上がっておられることと存じますが、先方に対応するメンバーとしてどういうメンバーを派遣し、交渉されますか、お伺いします。
  288. 園田直

    園田国務大臣 こちら側は佐藤大使を先頭にいたしまして、本省からは中江アジア局長外二、三名の有力なスタッフを派遣して、そうして現地でまず事務的な話し合いを進める、こういうことに考えております。そこでその前に佐藤大使を一遍召還いたしまして、大臣からじかにいろいろなことについて指示をいたしたいと考えております。
  289. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はこういう交渉でいきまするならば、交渉の内容は、先日から伺っておるところ、並びに当外務委員会で伺っておるところからすると、ほとんど交渉の要点は詰まるだけ詰まっていると思います。したがって、端的に言うならば、ほとんどの問題点は消化され尽くしており、ほんの数点だけ両者の意見を交換し、譲るべきは譲り、取るべきは取るということで話は決着するものと存じますが、どの辺に問題があるとお考えでございましょうか。
  290. 園田直

    園田国務大臣 この二国間の友好条約締結共同声明で約束されたところでありますから、共同声明の線に従って締結交渉をやるべきだと考えておりますけれども、ただ、これは二国間だけではなくて、アジア全体あるいはひいては世界の平和に影響すること大でありますから、したがいまして、この締結交渉を始めるに当たっては、やはりそれぞれ国際情勢の分析なり、あるいはそれぞれの国の外交方針等も話し合って、双方理解し、納得することが大事であると考えておりますが、問題になります点は、やはり覇権問題をどう取り扱うか、あるいはその他工、三の問題があると考えております。
  291. 渡部一郎

    渡部(一)委員 かつて木村俊夫外務大臣の当時、喬冠華外相からアプローチされて、日中平和友好条約の問題が韓念竜次官の口を通して表明されたとき、日中平和条約締結交渉について、台湾問題はたな上げにしようという旨の意思表示があったと聞いておりますが、それは現在も両国の間で合意になっておるのでございますか。
  292. 園田直

    園田国務大臣 台湾問題は共同声明ですでに話はついておると考えます。
  293. 渡部一郎

    渡部(一)委員 その点は、私はきょうは詰めて申し上げないことにしたいと存じます。  それからその次に、覇権条項の比重は当時は非常に軽かった、これほどの大問題になるとは思っていなかったというふうに当時の木村大臣は言われているわけでありますが、いま私どものところで漏れているところによれば、たとえば共同声明の第七項に、「正常化は、第三国に対するものではない。」とあるが、その冒頭に、日中間の平和友好はということだけでは覇権条項を普遍化することに足らないので、「この条約は」というのを冒頭につけようとか、あるいは二階堂私案として「この条約を基本とする日中間の友好関係の進展は」というふうに提案が出ており、瀬踏みが行われている旨すでに報道されているわけでありますが、日本政府のお立場としては、どういう立場でお臨みになるのでございますか。
  294. 三宅和助

    ○三宅政府委員 いろいろな意見が出ておりますことは事実でございますが、交渉につきましては内容に触れることでございますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  295. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この交渉の要点に関する部分について、私どもが知るところでは、公明党書記長の矢野さんの訪中の際先方から表明された四項目がすでにあるわけでありまするが、これは今度の交渉の際に、先方の意図を表明したものとして、政府としてはこれをたたき台として、あるいは先方側の説明を了として交渉を開始されるのか、その四項目の線は初めから御破算にして交渉されるおつもりか伺いたいと思います。
  296. 園田直

    園田国務大臣 先般の矢野書記長以下の訪中団が滞在中に交わされたいろいろな会談の内容、あるいは向こうから示された四項目等は、きわめて貴重な御意見であり、それももとにして話を詰めてきたわけでありますから、これを白紙に返すことは考えておりません。やはりそういうものを中心にして、たたき台にして交渉を進めていきたいと考えております。
  297. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あのときの四項目は、福田総理が言明された問題をそのままそっくり中国側に公明党が伝え、それに対する公式な返答になっているものであり、公明党に対する返事ではなく、福田内閣に対する四項目回答であるということを御銘記いただきたいと私は思います。先ほどの委員会における質疑応答を聞いておりますと、何かあの四項目をもう一回話し直して、うんと言えるところもあるし、ないところもあるから、これはもう一回聞き直して、それが交渉というものだというようなニュアンスを色濃く出されたように私は横で伺っておりまして、これは異なことを承る、おかしいなと思いました。というのは、私は全部まるのみにしろとも言っておりませんし、全部反発しろとも言っておりませんが、少なくとも一方の意見を述べ、返答が出てきたのでありますから、この四項目についてなきちんと受け答えをしていただくよう、仲介の労をとった公明党として特に申し上げておきたい、こう思うわけであります。
  298. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御意見は、決して失念しておるわけではございません。ただいま委員会のやりとりの中でそのような誤解を与えたとしたら、交渉を始める前に私が慎重に言い回したための誤解だと思いますので、御了承願いたいと存じます。
  299. 渡部一郎

    渡部(一)委員 日韓大陸棚協定にあえて触れたいのでありまするが、日韓大陸棚協定の審議の際に、この審議に対して中国側からしばしば意思表示が行われております。しかしながら、日韓大陸棚協定の考え方は、日本が本来主張している領海線、あるいは日本が本来主張している採掘権のある海面あるいは海面下の大陸棚について、韓国側の採掘を、共同ではありますが、許したという点に問題があるわけであります。ということは、この日韓大陸棚協定を審議するということは、ある意味で尖閣列島周辺に対する中国側の共同開発を許すための伏線でございますか。その点の政府の御意思はどのようになっておるのでございますか。
  300. 園田直

    園田国務大臣 しばしば申し上げるとおり、中国に対してはさらに理解を深めるべく最善の努力をするつもりでありますが、なお、これに関連する日本中国の境界の画定については向こうと話し合いたいという意思を申し入れておりまするし、尖閣列島周辺の問題についても日中友好関係の本旨に立ちつつ、この問題を解決していきたいと考えておるわけでございます。     〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
  301. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、これは詰めて言うのは気の毒ですから、この辺でやめてもいいのですけれども、ということは、尖閣列島の周辺で中国側から申し出があれば共同開発を考えてもいいという気持ちはまだないとしても、向こうから申し入れがあったときに拒否する理由もないという程度のお気持ちでいらっしゃるわけでしょうか。
  302. 園田直

    園田国務大臣 いろいろ問題もありまするし、今後の話し合いでございますけれども、私としてはやはり話し合いでやることがより友好的であり、結果としてもよいと考えております。
  303. 渡部一郎

    渡部(一)委員 尖閣列島に対する領有権は厳として日本側にあるとの立場を堅持されて、ただいまの御発言はあるものですか。
  304. 園田直

    園田国務大臣 その点はそのとおりでございます。
  305. 渡部一郎

    渡部(一)委員 日中平和友好条約が結ばれるという形で、今後日中平和友好条約が結ばれた場合にどういうメリットが両国にあるのか、しばしば論議されたところであります。しかし、それに対して、交渉が確定的に行われる前には議論が慎まれたところでもあったと存じます。日中平和友好条約が実際に締結された後、中国側に対する金融的あるいは経済協力の問題あるいは有償、無償の援助あるいはその他の中国に対する経済的な取り扱い、技術援助等で大幅に変わる面が生ずるとお考えですか。その項目はどういうものを考えておられますか。
  306. 園田直

    園田国務大臣 長期貿易を初め、実務的な話し合いはどんどん進んでおるわけでありまして、友好条約締結と同時に大幅にそういうものが変わり、日本側がまた、特に経済的にあるいはその他に利害が急増するということは考えておりませんけれども、漸次その方向に向かうべきであることは当然でありまするし、なおまた、特に日中がアジア及び世界の平和に対しどのように貢献するかということがこの条約締結の最大の眼目であると考えております。
  307. 渡部一郎

    渡部(一)委員 また日本側にとって、先方の取り組みというのは、どういうふうにこの平和友好条約締結した場合に日本にプラスが生ずるのか、また日本周辺の平和、安定のためにどういう状況が生じると、そのメリットを考えておられるのか、その点をもう少し明快におっしゃっていただきたい。
  308. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約はこれから先のことを、日中両国間のことを規定するわけでありますから、これによって直ちに成果がどうということではなくて、これから日中関係の漸次繁栄に向かい、平和に向かってのスタートであると考えております。
  309. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、あとこの日中条約締結で配慮しなければならぬのは、特に米ソの対立だろうと思います。覇権問題に対する配慮をいたします場合に、ソビエトを配慮すると同時に、アメリカに対する配慮も十分に行われなければならないと思いますし、ここで申し上げるまでもないと存じます。しかし、この条約は結局日本の大きな方向性を決め、アジアの安定に対してキーポイントになる判断であります。したがって、この条約中国側交渉するとしても、最後的な決着と判断は責任ある当局者が乗り込んでイニシアルをするしかないだろうと思います。またイニシアルでとどまらず、最後的には、安定する政権が安定する最高幹部を配置した上でこれに対して裁決をすべきものだろうと思います。しばしば大臣の訪中あるいは訪中によるところの交渉の暗礁打開というようなことを報じられているところでありまするが、それは戦略としてのテクニックとして、外相の訪中をもって問題点を突破するという意味で、こま台に上がっている大ごまとして園田外相というこまがあるということを私はわかっております。しかし、そういうこそくな問題点としてではなく、私は最後的には外相同士が出会い、総理同士が出会いということで、最後的な決着を、交渉の打開というような瑣末な問題ではなく、せざるを得ないし、するべきだろうとも思います。  では、いまの外相のお気持ちから言えば、御自分の訪中あるいは総理の訪中、あるいは先方の当局者の訪日によってサインするというようなことについてどういうふうにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  310. 園田直

    園田国務大臣 御指摘のとおりであると考えまして、仮に私が訪中することがあれば、それは障害突破ということではなくて、未来にわたる両国間の関係をよく納得のいくように話し合い、そして日本の将来を決めることが大事であると考えております。総理が、最高責任者の話し合いというのが、友好条約締結前に行われるか後に行われるか別といたしまして、これは当然そういう機会が来るべきであると考えております。
  311. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今後、むずかしい交渉でありますけれども、無事本交渉が調い、しかも周辺の環境も含めて日本の方向が平和と安定に向かうことを期待し、私の質問を終わります。
  312. 永田亮一

  313. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私も、中国問題、日中関係につきまして質問をさせていただきたいと思いますが、それに先立って、一、二お伺いをいたします。  一つは、先般の国連軍縮総会におきまして、外務大臣が非常に格調の高い演説をされ、核兵器の廃絶を訴えられたわけであります。その後いかがでございましょうか、国連の軍縮総会においてこの問題は前進しておりますでしょうか、あるいは決議が行われることになっておりますが、草案の起草については進捗状況はいかがでございましょうか、お伺いをいたします。
  314. 園田直

    園田国務大臣 軍縮の核の廃絶については、大多数の国々がこれを主張して、何とか具体的な文言にしたいという努力を盛んにやっているところでございます。
  315. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ところで、実は大変に戸惑いを感じております。外務大臣が国連で演説をされたその後のころからちょっとおかしくなりまして、アメリカの方も対ソ強硬路線みたいなものが出てまいりました。そして、今後十五年間にわたって八百億ドルの軍備費増強というような強い線が打ち出される、また恐らくこのことはワルシャワ条約機構の方もそれに対応する強い姿勢を打ち出すであろう。いま国連では、軍縮の問題を何とかせぬといかぬ、あるいは軍備を削減せぬといかぬ、こういうことをやっているさなかでございます。と同時に、周りを見回わすと、東南アジアでも紛争が各地に起こっておりますし、アフリカでも代理戦争のようなものが行われているということになりますと、軍縮総会というものの意義づけみたいなことに大変戸惑いを感じる。これについてはどのように大臣は受けとめていらっしゃいますでしょうか。
  316. 園田直

    園田国務大臣 私も御発言のとおり非常に心配しながら事の成り行きを見守っているわけでありますが、折に触れ、私は米国に対してもその他に対しても、対立激化をすることはきわめて危険であるということはしばしば発言をいたしているところでございます。
  317. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ところで大臣、私ぜひ一度お聞きしたいと思っておりました。大臣の国際情勢の認識といいますか、大変大きなテーマみたいですけれども、大臣の見方をひとつ教えていただきたい。いま世界というのは天下太平と見ていいのか、あるいは天下大乱の相があると見ていいのか、大臣はどのような見方をしていらっしゃいますでしょうか。
  318. 園田直

    園田国務大臣 天下太平とは考えておりませんけれども、必ずしも天下大乱だとは考えておりません。われわれの努力によっては争いを回避し、平和の方向へ進むべき道はたくさん可能性があると考え、これに向かって努力すべきであると考えております。
  319. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 努力することによって天下大乱を避けることができる、恐らくそういうお気持ちで今回の日中交渉に臨まれるのであろうと思います。また、それを期待しながら、日中関係、特にこれから中国との関係をどう持つべきかということについてお伺いをいたします。  第一番目に、今日の段階において、日中間に実務協定というのはどういうものがございますでしょうか。ここら辺ちょっと教えていただきたいと思います。
  320. 三宅和助

    ○三宅政府委員 まず第一に、日中間には海運協定がございます。これは一九七五年に発効しております。それから第二は、日中に貿易協定がございます。これは七四年六月に発効しております。それから、第三は漁業協定でございます。これは五十年の十二月に発効しております。それから第四が日中の航空協定でございます。一九七四年の五月に発効しております。それから最近では商標協定、これがことしの一月三十一日に発効しております。合計五つの実務協定がございます。
  321. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いよいよ日中の交渉が再開されるわけでございますが、中国は最近の姿勢の中で非常に強く四つの近代化ということをうたっております。大臣、華国鋒氏が今世紀内に四つの近代化を全面的に実現したいということを言っておられるのは、御承知のとおりだと思います。その中でまた科学技術の近代化、これに対して非常に重点を置いていることも御存じのとおりだと思います。そうしますと、これから日中交渉を始めていくその日本側の姿勢の中に、たとえば科学技術協力協定というようなもの、これをつくる用意というのは、大臣、お持ちでございますか。
  322. 園田直

    園田国務大臣 現在具体的に用意しているわけではありませんが、当然そういう問題は将来話すべきことであると考えております。
  323. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そういう点で積極的な姿勢をお聞きいたしましたが、関連いたしまして、アメリカは、五月の九日でございましたけれども、米国務省のスポークスマンが、商務、国務、それから国防省、そういうところ、各省へ連絡をした後一つの決定をした。それは地質調査用赤外線利用電子装置、これの中国向け輸出は却下しております。これが五月九日です。これは軍事的利用の可能性がある。ところが、同じものが、六月九日には方針を百八十度転換いたしまして輸出を承認するという動きになってきた。これはニューヨーク・タイムズの六月九日付に載っております。アレイブロセサーとかいうような名前の装置だそうでございますが、この動きというものをどのようにとらえておられるのか。一カ月の間にアメリカのそのような輸出に関連する、中国の技術の近代化に関連する、こういうものに対する態度が変わってきている。大臣、どのようにこれは評価しておられますか、どのように事態を把握しておられますか。
  324. 園田直

    園田国務大臣 両国間のことでありますから、詳細私が知る限りではございませんけれども、少なくとも米中関係は非常な熱意を持って両方から話し合いが進められておるということを私は判断をいたしております。
  325. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 米中の間の関係改善ということに双方が熱意を持っているというふうに判断をしていらっしゃるというふうに受けとめました。  その間にブレジンスキー大統領補佐官の訪中がございました。これはやはり一つのモメントになっているんでございましょうか。
  326. 園田直

    園田国務大臣 そのように判断をいたしております。
  327. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そこで、またお聞きをしたいのですが、そうしますと、米中関係はどのようにこれから進捗していくとごらんになっていらっしゃいますか。特にいまアメリカでもトライラテラルコミッティーでしょうか、そういうようなものも開かれております。日米欧委員会でしょうか、そういうところでも米中の関係改善についての話し合いがあったように聞いておりますけれども、大臣はどのような認識を持っていらっしゃいますでしょう。
  328. 園田直

    園田国務大臣 米国国内及び議会等にはいろいろ意見もあるようではありますが、米中が正常化をして友好関係を深めていくということが逐次前進していくのではなかろうかと判断をしておりますが、それ以上は、他国のことでございますから、私から申し上げられません。
  329. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そこで、大変具体的なことをお聞きいたします。  そういうふうに、先ほど大臣も御指摘になったように、米中関係がこれから進んでいく。その一つのあらわれとして、軍事的にも転用され得る可能性を持つこのような赤外線利用の電子装置、これの輸出が決まるということになりますと、ココムとの関係はどうなるのでございましょうか。大臣、どのように御判断をされますか。
  330. 園田直

    園田国務大臣 これもなかなか私の知る限りではありませんが、逐次緩和されていくと判断をいたしております。
  331. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 たしか、間違っていたらごめんなさい、これはココムリスト・アイテムナンバーの一五〇二赤外線利用装置の問題に私は抵触すると思うのです。  そうすると、日本はいままでココムというのにいろいろ規制されている品目に触れまして、前に日本から、たしかコンピューター輸出の問題が出たときに、ココムに申請したときに、これが認可されるまでには二年数カ月の時間がかかっているはずでございます。その当のアメリカが、一番先にクレームをつけたところがこのように変わっていく。そしてみずから軍事的転用の可能性のある装置をも輸出をするということになりますと、このココムというものの存在理由は一体どこにあるのか。大臣、これは聞くところによりますと、ことしの秋ココムのリスト、こういうものについての改定が行われるようでございます。そしてまた、すでに外務省の方では予備折衝に入っておられると聞いておりますが、そこら辺はいかがでございましょう。
  332. 溝口道郎

    ○溝口政府委員 先生の御指摘のアメリカの赤外線による鉱物探査の装置につきましては、私どもも新聞報道は見ておりますが、詳しいことは承知しておりません。ただいま事実関係を問い合わせを行っているところでございます。  しかし、このような非常に近代的な装置はココムの規制にひっかかる可能性がございます。その場合には、アメリカは、ココムに参加しておりますので、ほかの国同様、当然ココムを通じてこの件の輸出が承認されるよう各国に働きかけるという手続が踏まれることになるかと存じます。  わが国としてはそのときどういう態度をとりますかは、そのケースに応じて立場を立てていくことになろうかと存じますので、いまの段階で詳しいことはわかりませんので、詳しいコメントは差し控えさせていただきたいと思います。  なお、御指摘のとおりココムの禁輸リストは、絶えずそのときの世界情勢、あるいはそのときにおける技術水準、特にたとえば共産圏における技術の水準がどうなっているかに照らしまして、その結果、そういう品目の輸出が自由主義諸国の安全保障にどういう関係があるか等、総合的に判断いたしまして決められております。御指摘のとおり絶えずレビューが行われておりまして、わが国もまた、一方においては安全保障の観点を立てると同時に、他方においては共産圏との貿易が円滑に行われることを図るために、絶えずリストの緩和のために努力してまいりましたし、今後ともそういう努力を続けていきたいと考えておりまして、ただいま近く行われることになっておりますリスト全体のレビューのために、わが国も品目の緩和の働きかけを各国に対して行うべく準備中でございます。
  333. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 その場合に、検討中なんですか、それとも具体的に予備折衝に入っておられるのですか。もし予備折衝に入っておられるなら、だれがやっておられますか。そこら辺お聞かせいただきたいのです。  さらに加えて、そういうようにこれからどういう態度をとっていくかということはどこでお決めになっておられますか。ここら辺をお聞かせください。
  334. 溝口道郎

    ○溝口政府委員 このココムのレビュー会議は秋に行われる予定になっておりますが、その準備のためにわが国は、関係国に対して予備的に打診を始めているという段階でございます。またこれは外国との協議でございますので、外務大臣が責任者でございますと同時に、貿易関係でございますので、通産大臣も責任者でございまして、具体的には外務省と通産省が協議をいたしまして、方針を策定するという手続になっております。
  335. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 大臣、いまのように外務大臣責任者でいらして、予備的な折衝がいま進められている。それでは大臣は、どういう方向でこれを折衝するように指示をされたのでございましょうか。
  336. 園田直

    園田国務大臣 ココムの問題は、科学技術の進歩その他によって逐次変化を来しております。しかしわが国は、わが国以外の諸国の安全に脅威を与えるような兵器その他の輸出は禁じておるところでございますから、この点は十分注意をいたしますが、その他の問題については、ココムは逐次緩和していくのがいいのではないか。安全と貿易という両面からこの点は検討すべきであると考えております。
  337. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私はそこを大臣にひとつお聞きしたいのです。  逐次緩和とおっしゃいます。先ほど、努力によって世界の天下大乱は避け得る、そういう姿勢で対中打衝に臨まれる。いまのままココムの状態一つ取り上げても、ケース・バイ・ケースで一つの品目を折衝する。しかもその場合に、中国向けはアメリカを初めとして緩和をする動きが出てくる。最近ではECも貿易協定を中国と結んでおります。その中にこれは果たしてと思われるような、ココムに触れるのではなかろうかと思われるようなものもある。あるいはことしの一月でございましたか、フランスのバール総理大臣が訪中しております。そして科学技術協定を結んでおります。その中には原子力発電所の問題であるとか海底油田の掘削機の問題であるとかそういうものが対象になっていると聞いております。つまり中国向けには緩和をしていくけれども、他方同じくココムは残っている。こういうケース・バイ・ケースになりますと、反覇権という問題一つ取り上げても、具体的にこれは明らかに中国を除く他の共産圏諸国に対してはきついものが行われており、中国に対してはケース・バイ・ケースで緩和する、こういうことになると、これは大変におかしなことになりはしないだろうか。私はむしろこの際、ココムというのは、日本がイニシアチブをとっていただいてやめるべきである。そうでないと、反覇権ということを、特定国を指して具体的な行動をこういうところでもやっているということになりはしないだろうか、そういう心配がございます。そこら辺をも含めて、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  338. 園田直

    園田国務大臣 ココムの内容については申し合わせによって申し上げるわけにはまいりませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、平和と繁栄という両面から善処していきたいと考えております。
  339. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 大変しつこいようでございますけれども、私、大臣にぜひここら辺お考えをお聞かせいただきたいなと思います。  ココムができたのは一九四九年、そしてそのときは冷戦のときでございました。日本が入ったのは一九五二年。二十五年たっております。それを二十五年前の情勢と同じように今日まで持続すること自体、これはずいぶん時代錯誤的な要素もありはしないだろうか。ましていま日中友好ということを進めようとしているときに、いまのようにまだまだココムがあり、一々そこに許可を求めるというような形で進めなければならぬということは一体どういうことだろうか。中国が、先ほども申し上げたように近代化という大きな一つの国策を掲げており、その重点が近代的科学技術というところにある。そういうところを考えますと、これは昨年の十一月でございましたが、当時の外務大臣鳩山さんは、場合によってはココムを再検討する、いま曲がり角だということを言われました。私は、園田外務大臣もっともっと前進したお考えを持ってこの問題に取り組まれるのではないかと期待しておりますが、いかがでございましょう。
  340. 園田直

    園田国務大臣 御趣旨の点も十分考慮をして、これに対する検討は進めたいと考えます。
  341. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 さて、それでは別の問題にもう一つ入らせていただきます。  これは実は外務省がおやりになったというふうに聞いておりますが、昨年の暮れから一カ月ぐらいかけまして、EC諸国での対日世論調査が行われたというふうに聞いております。私は前にその詳しい資料をいただきたいと申し上げたのですが、まだいただいておりません。ですから、これは新聞に載った限りにおいてでございます。私は、やはりこれからの日本の外交というのは、日本のイメージ、日本の実態、こういうものを余り虚像と実像がないようにしていく必要があろうと思います。その際、特に海外においては日本というものをはっきり認識しておいてもらいたい。にもかかわらず、その世論調査の結果を見ますると、偶然とするような結果が出ております。たとえば日本の核政策、非核三原則を知っている者、大変わずかしかおりません。むしろ逆にこの新聞によりますれば、大体二人に一人ぐらいは、西ドイツを除きまして、核兵器を持っている国だというような日本に対するイメージを持っている。あるいはまた、将来日本核兵器を持つのではなかろうか、こういうようなことが言われております。さらには、政治体制に対する認識でございますけれども、日本という国は独裁国家であるというような意見が三人に一人、三〇%ぐらいあるという。  これについて、大臣、どのように対処したらいいものでございましょうか。ここら辺もひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  342. 園田直

    園田国務大臣 御意見のとおりでありまして、私は、その点も十分考慮をして、軍縮特別総会では、アピールをするつもりで演説をしたわけであります。しかし、いずれにいたしましても、あのような結果を見ますると、全く想像に絶することでございますので、外務省としても、日本の国内の実情を世界各国に知ってもらう、こういう点についてはもっと平たく、もっと広くやるべきであると考え、そういう方向でやっていきたいと考えております。
  343. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、これから海外にもいらっしゃる、そういう意味では、大いにその点、日本の持つビジョンなり、それからまた、本当にいま私どもが持っている姿というものを、実像を訴えて成果を上げていただきたいと、これに関連して申し上げます。  と同時に、時間が参りましたのでやめますが、先ほどお話ししましたような、ココム一つの問題を取り上げましても、私は、日本という国は、ちょっとアメリカなんかに追随をし過ぎているように思います。それだけに、こういう問題が出たことをきっかけに、私は、対中国貿易のあり方、あるいは共産圏全体に対する貿易のあり方、こういうものもひとつ検討をしていただきたい。これを要望いたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  344. 永田亮一

  345. 寺前巖

    寺前委員 今国会最終の外務委員会質疑になりそうですから、幾つか聞きたいと思って残っている問題もこの際に、時間の許せる限り聞きたいと思います。  忘れないうちに、まず、昨年第六十三ILO総会で結ばれた看護職員条約について最初にお聞きをしたいと思います。担当者はおりますか。  まず、この条約日本政府としては批准する方向で考えているのか、この条約締結するILOの総会での賛否の状況と、日本のとった態度について御説明をいただきたいと思います。
  346. 大川美雄

    ○大川政府委員 この条約は、昨年のILO総会で採択されたばかりの条約でございます。現在のところ、まだ、この条約批准した国はないと承知いたしております。  その採択の際の賛否でございますが、実はこれは、当初は勧告だけの形で採択する予定でございましたけれども、一部委員から、勧告の原則的部分を条約化すべきであるという意見が出まして、結局それが受け入れられて、条約と勧告と二本立てということになったわけでございます。条約は、賛成が三百三十二、反対が零、棄権が六十四ということで採択されました。  日本の政府代表及び使用者代表並びに英、米、豪等の政府代表は棄権をいたしております。  それから、今後のこの条約の取り扱いでございますが、関係省庁と協議をいたしまして、条約の内容と国内法制、慣行の関係を十分研究いたしました上で方針を検討してまいりたい、こういうところでございます。
  347. 寺前巖

    寺前委員 批准する方向なのかどうかをまだ決めていない。方向づけさえ明確でないということは、一体どこに障害があるのか。けしからぬ話という方向のものなのか。そこはどうなんですか。
  348. 大川美雄

    ○大川政府委員 この点は、外務省よりもむしろ関係の国内省庁から御答弁申し上げた方がよろしいかと思います。
  349. 石田均

    石田説明員 ただいまの御質問にお答えをいたします。  看護職員条約につきましては、ただいま外務省から御答弁がございましたとおり、関係省庁とよりより協議をしておるという状態でございますけれども、いろいろ問題点があるのではなかろうかというふうに感じております。  たとえば、この条約の第六条でございますが、看護職員は労働時間などの分野におきまして「当該国の他の労働者と同等またはそれ以上の条件を享受する」というふうな規定がございます。ここで申しております「同等」というふうな意味合い、あるいは「他の労働者と」という場合にどの労働者と比較するのかというふうな点が、審議経過そのほかを通じましても必ずしも明確でございません。その結果いかんによりましては、現在の国内法体系と触れてくる、そういった問題があるわけでございます。その辺につきましていま少し検討したいというふうに考えておるところでございます。
  350. 寺前巖

    寺前委員 おたくは厚生省ですか。――労働省。看護職員を直接担当しておられる厚生省はおられないですか。――おられますか。厚生省の方としては、これは批准をして改善をさしていく方向をとった方がいいと考えておられるのか。どうなんですか。
  351. 都築公

    ○都築説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  条約採択の経過それから問題点につきましては、ただいま外務省、労働省が御説明になったとおりでございますので、今後そういった問題点につきましてよく協議をして進めてまいりたいと思っております。
  352. 寺前巖

    寺前委員 「看護」という日本看護協会出版会が出しておられる雑誌の十月号を見ますと、この看護職員条約会議に出られた人の見解が書かれています。  この中を見ますと、日本が棄権した理由というのは、先ほどの説明にもあったように、突如として勧告にさらに条約という話が出てきたので、それで、突然のことなので、十分審議されないということで棄権にしたんだ。その棄権については、反対のための棄権ではなくして、慎重な意味の棄権ということなんです。勧告には賛成したんだ、こういう立場が基本的にあの会議に出た人の立場だというのだったならば、批准する方向でお互いに関係省庁の間で詰めていってこそしかるべきじゃないんでしょうか。国際会議に出る人と、あるいは国内の人が、行ってきた結果については、そうじゃなかったという態度を示されるのか。矛盾を持ったまま今後いこうというのか。それだったら国際会議に行った人は無責任だというそしりを免れないだろうと私は思うのです。これはどうですか。だれがお答えになるのか知りませんが、外務省ですか。
  353. 石田均

    石田説明員 お答えいたします。  確かに昨年の総会の折には突如として条約案が出てまいりまして、国内的に十分検討のいとまもなく、いろいろな問題があったものでございますから、その段階で棄権ということであったわけでございます。ただ、いろいろ検討いたしますと、先ほど申し上げましたような問題がございます。  先ほどの問題をいま少し詳しく申し上げますと、たとえばこういうことでございます。先ほどは国内法に若干響くかもしれないというふうなことを申し上げたわけでございますが、具体的に申し上げますと、現行の労働基準法及びその施行規則によりまして医療機関につきましては一日九時間、一週五十四時間まで労働させてよろしい、こういう規定が存在しておるわけでございます。一般的には、先生御案内のとおり、一日八時間、一週四十八時間という縛りでございますけれども、その辺が、看護職員につきましては公衆の便益のためにやむを得ないということで、他の、たとえば旅館でございますとか、小売とかというものと同じように、労働時間については例外を設けておる。そのことと、この条約とが合うか合わないか、こういう話でございます。私どもといたしますと、これは昭和二十八年に閣議決定があるわけでございまして、ILO条約批准する場合には国内法を完全に整備した上で批准をする、かような方針をとっておるわけでございます。そういうこともございまして、慎重に検討せざるを得ないということでございますので、御理解賜りたいと思います。
  354. 寺前巖

    寺前委員 慎重に検討するのはいいけれども、問題点がそこだということになってくると、それじゃ批准する方向で検討に値するというふうに見るのが妥当なんじゃないでしょうか。何となれば、昭和四十八年七月二十七日に労働省労働基準局長名で各都道府県労働基準局長あてにあなたたちは通達を出しておられます。「労働時間等の改善指導について」、これでは明らかにその方向というのは「当面、特に病院の看護婦、社会福祉施設の保母等について、深夜業が多いと認められるもののうち、まず深夜業を含む夜勤日数が一カ月の三分の一を超えるものを対象とし、順次その日数の減少を図り、改善せしめるよう実情に応じた指導をすること。」として、いろいろ四十条に基づく労働時間の特例の問題についても改善指導するようにという問題を出しておられる。これは客観的に、ILOの提起している問題と同じ方向を、労働省は現実的な指導方向として打ち出されてきているものだというふうに私は理解しておった。とすると問題点は、国内法をきちんと整備する作業問題が残ってきているだけだ。そうすると、当然批准をするそのための手続準備をしていきたいという態度をおとりになるのが妥当なんじゃないだろうかと私は思うのだけれども、いかがなものですか。
  355. 石田均

    石田説明員 御趣旨の点については私どもとしても理解ができるわけでございますけれども、ただ、先生御案内のとおり、労働基準法ないしそれに伴います施行規則の改正は非常に大変な問題でございます。それからまた一面におきまして看護婦さんはいま非常に足らないという、看護婦さんの不足の問題がございます。単に法令を改正しただけで済むという問題でもないかと存じております。私は国際労働担当でございまして、労働時間担当でございませんので、なははだお答えはいたしにくいのでございますが、大きな方向づけといたしますと、私どもといたしますと、労働時間の短縮とか、看護職員の皆さんも含めまして、労働条件の改善ということに力を尽くすべきである、こういう御趣旨にもちろん反対するものではございません。それは当然そうだというふうに理解いたしております。ただ、そのことと、直ちに批准ということが現状において結びつくか、結びつかないかということにつきましては、先ほど申し上げたような閣議決定の次第もございますし、要員確保、これは厚生省の方でお考えになっておられる問題でございますが、そういう問題とも絡んでまいりますので、いま直ちに批准の方向でということのお返事が申し上げにくいということを御理解賜りたいと存ずるわけでございます。
  356. 寺前巖

    寺前委員 外務大臣にこの問題についての質問をしておきたいと思います。  いまやりとりをお聞きになっておって、お感じになったと思うのです。ILOの総会で、看護職員の条件の改善のために勧告を日本も賛成して決めた。突如としてそれを条約にしてきた。それはちょっと研究の時間を置いてくださいということで、反対のための棄権という態度ではなくして、時間的余裕がなかったからやったんだ。そして閣議決定で、批准をするという場合には国内法を整備しておきなさいということが申し合わせでちゃんとしてあるので、すぐにするわけにいかない。国内法の整備をしなければならない。国内法の整備点はどこだというと、他の労働者と取り扱いの違う点、特例がある。看護職員の諸君たちだけ特別に長時間労働が許されるような特例がある。そこがひっかかるんだ。ところがよく考えてみると、労働省自身は基準局長名で、法律はそうなっているけれども、改善をしなければいけませんよ、指導しなさいという問題が出されてきている。問題点はきわめて明確にしぼられてきているんだから、それでは先進的な日本の国において当然のことながら、国際舞台においてとってきたあの態度から考えても、批准をするという方向で国内法を整備していくのが私は客観的な筋道ではないかと思うのです。それを、意思統一してませんというようなことで、去年の話があれから今日までどれだけの日数がたったのでしょうか。それほど私は、すぐに批准せいということを言っているのではなくして、批准する方向で検討しなさいということを言っているんだから、何にもそんなにこだわることはなかろうと思うのですが、大臣、いかがなものですか。
  357. 園田直

    園田国務大臣 所管ではございませんけれども、御発言の趣旨はそのとおりだと思います。したがいまして政府としては、批准の方向に向かって努力をすべきことだと考えます。
  358. 寺前巖

    寺前委員 次に移りたいと思います。  日中平和友好条約について先ほどから議論がございました。日米首脳会談において日本側は、日中条約推進の根拠の一つとして、中国が再び安保反対となれば、日本国内でも、安保条約の安定はなくなると説明して、米側の同調を得たという報道が一部なされました。この報道は事実なのか、事実無根なのか。一体日本側として、この日中条約推進についてアメリカに何と説明したのか。アメリカ側はどういう発言があったのか。お聞かせをいただきたいと思います。
  359. 園田直

    園田国務大臣 総理の個別会談、全体会議、そして私のバンス国務長官との会談においてもそのような発言をした事実はございません。日本側は日中友好条約締結について説明をし、それの同意を求めた事実もございません。日中友好条約共同声明に書かれてあるし、日中両国ばかりでなくアジアの平和のために締結するつもりだ、こういう決意を言っただけでございます。
  360. 寺前巖

    寺前委員 日米安保条約第六条に極東条項があります。一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明には台湾条項があります。米台条約によるアメリカの台湾防衛約束と相まってこれらは中国の主権に対する侵害になる、内政干渉という問題だと言わざるを得ないと思うのです。中国敵視政策を持ったままで日中平和友好条約ということにするつもりなのかどうか、私はそこを疑問に思いますので、お聞きをいたします。一九六九年の共同声明の台湾条項は廃棄をするという態度を日本側は持っているのかどうか。
  361. 大森誠一

    ○大森政府委員 まず申し上げたいことは、日中国交正常化が安保条約に触れることなく達成されましたのと同様に、日中平和友好条約締結は安保条約とは関係のない問題でございます。  御質問の趣旨の一つは、安保条約に言う極東の範囲の取り扱いについてであるものと理解いたすところでございますが、日中条約締結された場合におきましても、極東の範囲を含め、日米安保体制については何ら変更はございません。わが方といたしましては、中国と台湾の問題は平和的に解決されることを切望しているところでございまして、上海コミュニケに基づき国交正常化の方向に向かいつつある米中両国が台湾の問題をめぐって軍事的に対決するという事態は予想されないところでございます。  なお、御指摘の第二の点の佐藤・ニクソン共同声明における台湾条項につきましては、共同声明の性格から申しまして、当時の佐藤、ニクソン両首脳間における国際情勢の認識についての表明ということでございまして、それを廃棄するとか否とかいうような問題はないというふうに考えております。
  362. 寺前巖

    寺前委員 私は外務大臣にお聞きをしたいと思います。  台湾は中国の領土であります。その台湾を佐藤・ニクソン会談で、共同声明の中に台湾条項なるものを指摘しているのですから、明らかに内政に対する干渉であり、主権を侵す話をやっている。安保条約第六条の極東条項、ここから台湾を外すというのかどうか。台湾問題というのは私はそういう意味で非常に重要だと思うのです。本当に両国の友好を基本的に確立するというならば、中国に対する内政干渉、主権の侵害は許されないことだと思うのだけれども、そうなるとどうしたって共同声明の台湾条項、安保条約第六条の極東条項から台湾という問題を外さなかったら筋が通らないことになるのではないか。これについての外務大臣見解、アメリカ側とこの点についてどういう意見の一致を持っておられるのか、中国側とはどういう話をされているのかお聞きをしたいと思います。
  363. 園田直

    園田国務大臣 台湾の問題については、共同声明の際に書いてありますとおり、中国は自国の領土だと表明し、日本はこれを理解し、尊重するという言葉でもって話し合いができているわけであります。一方、安保条約の極東の範囲の中に入っていることは事実であります。しかし、この安保条約が台湾をめぐって発動するような現実はあり得ないということもありますし、なおまた、その場合には日本中国との友好関係を考慮しつつやるということになっておると承知しております。
  364. 寺前巖

    寺前委員 アメリカとどういう話をされているのか、あるいはいよいよ友好条約を結ぼうという段に当たって、どういう話をこの問題をめぐってしておられるのか、重ねて聞きたいと思いますし、もう一つ、台湾の帰属を条約上どう取り扱われるのか、基本的な友好条約を結ぼうというのだったらこの点が一つの問題になるのじゃないかと思うのですが、いかがなものですか。
  365. 園田直

    園田国務大臣 台湾の帰属についてアメリカと話したことは私はございません。総理が話されたことも聞いておりません。  なお、友好条約締結については、台湾の帰属の問題は問題にならぬと存じます。これは共同声明の線で話はついておる、このように私は理解をいたしております。
  366. 寺前巖

    寺前委員 それでは日中問題の次の問題、覇権ということについて聞きたいと思います。  われわれも覇権一般について反対するものではありません。ただ、二国間の平和友好条約に、外務大臣もおっしゃったように、特定の第三国を意図しての覇権をうたうというところに、今日、世上いろいろ問題が出されているというふうに理解をします。  そこで、日中共同声明第七項に「覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」とうたっておりますが、それではアメリカが行ってきた非人道きわまりなかったベトナムのあの戦争はアメリカの覇権行為だというふうに見ておられるのかどうかをまず聞いておきたいと思います。
  367. 三宅和助

    ○三宅政府委員 覇権の定義というのは概念的に非常にむずかしいわけでございますが、当時のアメリカのベトナムに対する支援を日本側は覇権と考えておりません。
  368. 寺前巖

    寺前委員 外務大臣、よろしいか。
  369. 園田直

    園田国務大臣 いま答弁したとおり外務大臣も考えております。
  370. 寺前巖

    寺前委員 あれが覇権でなくして、それでは一体何を考えて覇権を言うのかということがますます問題になるではありませんか。  次に話を進めます。  最近、中国旅行に当たって、日本交通公社発行のワールドガイド八、「中国」というのを開いてみると、「非友好的な考えの人は認められないことも当然である」というふうにそのガイドには書かれておる。それでは「非友好的な考えの人」というのはどういう者なのか、チェックはだれがするのだろうかということで交通交社の説明を求めた人があります。そうしたら、その人が聞いてきた話として、「非友好的な考えの人」とは、宣教師や日本共産党員その他それに類する人というふうに位置づけをやっております。思想、信条をチェックの基準とするということは重大な内政の干渉になるのではないでしょうか。このような選別を相手国がやっていても当然というふうに言えるのかどうか。私は、友好条約お互いに基本的なものとして確立しようというのだったならば、この問題に対して相手国のとっている態度をきちんとしておくことは重要な事柄だと思いますので、外務大臣見解を聞きたいと思います。
  371. 三宅和助

    ○三宅政府委員 いかなる人にいかなる査証を出すかということはその国の主権の最も大事なところでございまして、日本側といたしまして中国の主権に属することに対してコメントは差し控えたい、こう考えております。
  372. 園田直

    園田国務大臣 交通公社のガイドあるいはその言い分はわれわれの関するところではありませんが、ソ連も中国もわが日本も入国に関してはそれぞれ自国の立場からチェックしているところであり、したがいまして、中国が、入国を希望する人をチェックすることはよその国と同等のことであると考えております。
  373. 寺前巖

    寺前委員 私は、こういう態度では友好親善の基本を確立することにはならないと思います。  次にいきますが、二国間の平和友好条約に、第三国に関する問題を持ち込むことについて大臣はどういうふうにお思いになりますか。そんな条約は世界にあるのでしょうか、平和友好条約として。
  374. 園田直

    園田国務大臣 二国間の平和友好条約に、二国間ばかりでなく、他の国との友好関係も願うという条約は当然であると思いますが、そうではなくて、二国間条約に、他の国に対する敵対行為などのごとき条約はあってはならぬと思います。
  375. 寺前巖

    寺前委員 総理は、日本外交の基本方針として、この三月、中国側に、いずれの国とも平和友好を進めるというふうに示されております。これに対して鄧小平中国総理は「一方で覇権反対をいいながら、もう一方ではだれに対するものではないというのではロジックに合わない。事実上、覇権主義は中国を脅かしているとともに日本をも脅かしている。」こういうふうに言っております。大きな基本的な見解の違いをここに示しているのですが、この鄧小平副総理の発言について外務大臣どういうふうにお考えになりますか。
  376. 園田直

    園田国務大臣 相手国の指導者の言動を批判するわけにはまいりませんが、日本の外交の方針は、御承知のごとく、どこの国とも敵対せず敵としないというのが基本方針でありますから、その違いは交渉に入ってからの話し合いに属することでございます。
  377. 寺前巖

    寺前委員 日中共同声明には平和五原則が明記されております。いま外務大臣は、交渉の中でこの違いについては話し合うとおっしゃいました、しかし、こんなに食い違っている覇権という項をどうしても条約に持ち込まなければならないものなのかどうなんだろうか、平和五原則を明記することでは十分ではないのだろうか、私はそういうふうに思うのですが、外務大臣、いかがなものですか。
  378. 園田直

    園田国務大臣 条約の中に覇権という問題を入れる、覇権反対ということは普遍的なことでありますし、共同声明に書いておることでありますから、われわれ共同声明の線を貫く方針でございます。第三国を特定してこれに敵対行為をするという条約なら別だが、ただ単に覇権と書かれただけで、おれを敵にしているのだという過剰な自覚症状はこれもまたいかがなものかと考えております。
  379. 寺前巖

    寺前委員 その次に、遺憾ながら日韓大陸棚協定国内法が不当な運営のもとにおいて参議院において可決をされるという事態になったわけですが、国内法がこうやって国会で通った後の日韓の政治日程というのですか、この大陸棚をめぐる取り扱いはどういう日程になるのですか、御説明をいただきたいと思います。
  380. 園田直

    園田国務大臣 協定が批准をされ、関係法律案が通れば、後はこれを実行するのは通産大臣の所管でございますから、その後の日程は通産大臣の考えるところでございます。
  381. 寺前巖

    寺前委員 大陸棚問題について、私どもは主権的権利の侵害の協定だと思うわけですが、それはさておいて、韓国に対して、いよいよこうやって、日本の国内体制は進みましたよということで、これは話が共同開発ですから出されていくのだろうと思うのです。  ところが一方で、あの竹島です。竹島の方は不当にも、事実上占拠がされている。そうして、この前も問題になったように、向こうの船が出てきて日本の漁船に対する退去を要求するという事態になった。五月、六月という漁期に対して重大な影響を与えるというところまで来ました。外務大臣は、文書にしてはっきりと韓国に対して抗議の意思を示すのだとおっしゃっておったわけですが、これは一向に実行されているようにも聞かない。私は、この日韓大陸棚が、見解は別としてああいう形で、こうやって日本の国内体制、共同開発だという方向になってきているときに、少なくともこの話の現実化する段階において竹島問題をあのまま、文書による抗議もしないままで置いておくということは情けない姿ではないかと思うのですが、外務大臣、この問題について、文書で抗議をこの際にやるべきではないのでしょうか。どういうふうにお取り扱いになるのですか。
  382. 園田直

    園田国務大臣 竹島をめぐる先般の事件については、直ちに現地の大使を通じてしばしば抗議をいたしておりますが、もちろん、これは先生の御意見もありましたし、われわれもそう考えますので、文書による抗議をやるべく準備をいたしております。非常におくれているようでありますけれども、文書による抗議となりますと、事実を調査し、そしてまたこの抗議が今後竹島をめぐる折衝の一つの段階にもなるわけでありますから、したがって、時間はかかっておりますが、間違いなしに文書で抗議を行います。
  383. 寺前巖

    寺前委員 一向にばちっとおやりにならぬものですから、私はもうじりじりしております。この際にはっきりとお示しをいただきたいと思うわけです。  次に、日米防衛分担についてお聞きをしたいと思います。  昨年の六月十五日、「米国会計検査院長の議会に対する報告」というのが出ております。米国及び日本はもっと公平な防衛費分担方式を求めるべきであると書いてある。これは単にアメリカの議会に報告したという程度のものではありません。「国務長官および国防長官が共同して、本報告書の中で論じているものも含めて可能な経費分担の方式を再検討し、日本政府による経費分担の増大を求める一定の計画を立案するよう勧告する。考慮すべき重要事項には、次のものがある。」こういうふうに指摘をして、同時に「国防、国務両省は、日本との追加的経費分担の方法を検討する計画を立案すべしとの本報告書の勧告に同意した。」こうまで書かれている性格のものであります。ですから、これはアメリカの対日基本的施策をここに示しているものだというふうに言えると思うのです。その追加的支援を求める余地ありとしている例示として、「兵たんおよび作戦上の支援の増大」「労務経費の分担」「防衛施設の共同使用」、こういうことをうたっております。外務大臣はこの方針については当然御存じだと思いますが、いかがですか。
  384. 園田直

    園田国務大臣 会計検査院の勧告は、まず議会に行われ、議会でどのような決議をするか、それを受けて行政府がどのようになるか、これに対して軽々しい対応の発言はいたしませんけれども、在日米軍の駐留費、いわゆる防衛分担金は、ドイツの場合と比べて決して寡少ではありません。大体兵力とすれば西ドイツの場合には日本の二倍でございますが、それに匹敵する、やや上回った分担をしておりますから、そのように言われるいわれはない、このように私自身は考えております。ただ、ドルの低下と予算を三割削減されたから在日米軍司令官は部隊の運営にいろいろ苦労していることは想像にかたくありませんけれども、分担金をさらにふやさなければならぬという筋合いのものではないと考えております。なお、この問題についてはいかような事態が起きましょうとも日米合同委員会があり、地位協定があるわけでありますから、その協定内においてやられるべきことであって、向こうの勧告いかんにかかわらず、ここで分担金をふやすとかふやさぬとか言う場合ではないかと考えております。
  385. 寺前巖

    寺前委員 ところで、五月十日の財界の防衛懇談会で、閣僚の一員である金丸防衛庁長官が、三百億円支出すれば円高ドル安で苦しんでいる米軍も助かるだろうというような発言を、私、新聞紙上で読みました。米軍に財政援助をするというようなことは、地位協定でさえも許されていることにはなっていない問題だ。そういうような財政援助をしてもあたりまえだと言わんばかりの話がアメリカの国内にあることは承知をしておりますが、しかし、地位協定でさえもなっていないものを、軽々しく、円高ドル安で苦しんでいる米軍のことだから、まあこのくらいのお金を持っていってやろうかというようなことを発言をするということは、きわめて重大な問題だと思うのですが、いま訪米をしておられる防衛庁長官に対して、日本政府としてそういう約束をしてきてよろしい、そういうふうにしようという態度をお決めになったのですか、その点についてお聞きをしたいと思います。
  386. 園田直

    園田国務大臣 防衛分担金を増額すべきであるとかすべきでないとかいう議論は、いまなお政府部内でされたことはありません。総理、それから私も数回米国に参りましたが、向こうでもその話はいままでも聞いたことはありません。これのよしあしはまた論議の別といたしましても、先ほど申し上げましたとおり、合同委員会があり地位協定があり、その上に大平発言というのがあるわけでありますから、その枠内において以外はやりくりができないことは御承知のとおりであります。  なお、金丸長官が向こうに行かれるについては、総理からその点はしかと言われておるはずでございます。
  387. 寺前巖

    寺前委員 それではその次に、このアメリカの方針の一つの中に書かれている問題、在日米軍基地の再使用権の確保の問題について、日本側としてこれを認める方向なのかどうか、これも重大な問題だと思いますので、御答弁願いたいと思います。
  388. 北村汎

    北村(汎)説明員 御答弁いたします。  アメリカの議会の会計検査院の報告の中に述べられております基地の共同使用という問題は、これはアメリカ軍のために日本の自衛隊が一つの基地を平素から維持しておく、そういうような趣旨で書かれておるものでございまして、こういうような方向での共同使用ということは、政府としては考えておりません。事実、基地の共同使用というのは、これは行われております。アメリカ軍の基地を一部日本の自衛隊が使っておるとか、あるいは日本の自衛隊の持っております施設をアメリカが一時的に使っておる、こういう意味での共同使用はございますけれども、一つの基地をアメリカの軍が将来これを使う、あるいはいわゆるリエントリーでございますが、そういうもののために平素から日本側がこれを維持しておく、そういう意味での共同使用は、政府としては考えておりません。
  389. 寺前巖

    寺前委員 大臣、明確に拒否されますね。
  390. 園田直

    園田国務大臣 いま発言したとおりでございます。
  391. 寺前巖

    寺前委員 これは、ここでお聞きするのが適当なのかどうか知りませんが、一月四日に猪木防衛大学校長がジャパン・タイムズの四日付のインタビューに答えたものとして、自衛隊を国連平和維持軍として海外に派兵することを考るべきだ、こう言っている。私見ではなく政府の一員として発言したものであるというふうに本人が言っているわけです。政府の一員として自衛隊を国連平和維持軍として海外に派遣する。これは憲法上許されない発言になるわけだけれども、政府の一員として検討しているんだということになると事は重大なわけですが、閣僚として外務大臣、こういうことを政府として考えさせているのですか。猪木防衛大学校長の発言は私は重大な発言だと思いますので、この際聞いておきたいと思います。
  392. 園田直

    園田国務大臣 その発言は私、聞いておりません、いま聞いたところでありますが、少なくとも国連の平和維持に対し協力すべきであるという趣旨から、そういう発言を個人としてしたものと想像せざるを得ませんけれども、日本国憲法及びその他のことで海外派兵は禁止されておるところでありますから、そのようなことができるはずがございません。
  393. 寺前巖

    寺前委員 それでは大臣の発言は、私見であるというごとはあり得るかも知らぬということですか。私見にしても、大学の校長の発言というのは重大だけれども、私見ではなくと、こうまで言っているんですから、これは政府としても調査をしてきちんとさせるべき性格のものだと思うのですが、いかがですか。
  394. 園田直

    園田国務大臣 私見であるかどうかは、本人に聞いておりませんから、私がここで判断すべきことではございません。しかし、いやしくも防衛大学の校長である者がそのようなうかつな発言をすることは、これは不穏当でありますから、十分確かめたいと考えます。
  395. 寺前巖

    寺前委員 時間も来ましたので、終わります。
  396. 永田亮一

  397. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 総理の中東訪問の件はどのようになったんでしょうか。
  398. 園田直

    園田国務大臣 中東訪問を私がいたしました際、行く先々で総理が来ることを強く要請され、その後、正式の招待も来ておることでもありまするし、また中東の和平ということは重大な問題でありますから、ぜひ中東を訪問したいということで、実は新聞にちょっと書かれましたように、ヨーロッパの先進首脳者会議の帰り道にということを一応考えたわけでありますが、御承知のとおりに、あの地域は宗教的な儀礼等もあるし、それからちょうど七月は避暑の時期でもございますので、その時期をずらしましたが、なるべく早い時期にこれは実現したいということに変わりはなく、ただいま検討しているところでございます。
  399. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 宗教的な行事といいますとラマダンですか、これは八月まで続くのじゃないですか。
  400. 園田直

    園田国務大臣 断食などの行事があるようでございまするし、これもやはり考慮の中に入れなければならぬと思っております。
  401. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だからいまの断食、ラマダンですね、七、八月じゃないですか。
  402. 園田直

    園田国務大臣 おっしゃるとおりだそうでございます。
  403. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、その時期を外すということになって一番早い時期ということを考えれば、新聞には載っておりましたけれども、あれは決まったのじゃないそうでございますけれども、九月上旬ということになりますか。
  404. 園田直

    園田国務大臣 まだ決定はしておりませんが、近々に総理が決断されることと思います。
  405. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、予測としてはそういうことに考えられるのじゃないでしょうかと聞いておるのです。
  406. 園田直

    園田国務大臣 そうなるかもわかりません。
  407. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 日中条約締結交渉が始まるわけですが、これが成功することを外務大臣も願っておられると思いますが、成功したとして、この締結の内容について国民の信を問うほどの外交案件と外務大臣はお考えですか。
  408. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約については、御存じのとおりに国内にはいろいろ意見もありますけれども、すでに長きにわたってそれぞれ論議されたことでありまするし、共同声明で約束したことでございますから、これは何も直ちに国民にその信を問うというほどのことではなかろうと判断をいたします。
  409. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、これはよく言われております解散の大義名分にはなりませんね。
  410. 園田直

    園田国務大臣 解散の大権というのは総理が持っておられるわけであります。ですけれども、いま内外の情勢を考えると、そういうことをがたがたやっているときではなかろうと私は判断いたします。
  411. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その問題はそれくらいにしておきます。  批准ということを考えておるときに、臨時国会はそのために早期に開かれることを外務大臣は望まれますか。
  412. 園田直

    園田国務大臣 締結が終わればなるべく早い時期に公式批准をお願いした方がよいとは考えます。
  413. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは国連大学の問題に移りたいと思いますが、文部省にちょっとお伺いしますけれども、日本学術振興会というものは、簡単にはどういうことをやっておって予算はどうなっておるか、ちょっと報告をしていただきたい。
  414. 仙石敬

    ○仙石説明員 日本学術振興会というのは特殊法人でございまして、いろいろな事業をやっております。一例としますと、学術の国際協力に関しまして海外への研究者の派遣、外国人研究者の受け入れ等、国際協力による研究に必要な援助、こういうようなことも行っております。  学術振興会の予算は、全体で二十一億円くらいでございます。
  415. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だれが出しておるのですか。
  416. 仙石敬

    ○仙石説明員 これは文部省の補助金ということになっております。
  417. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 全額ですか。
  418. 仙石敬

    ○仙石説明員 全額でございます。
  419. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 国連大学でございますけれども、五年間に大体五億ドルを目標に国連加盟国の拠出を当てにしてつくられたわけですが、各国の拠出基金の現状を報告していただきたい。
  420. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいままでのところ、国連大学の基金に対します各国の拠出の合計は約七千八百万ドルくらいでございます。そのうち七千万ドルが日本政府から出ておりまして、残りの八百万ドルがその他の国からの概略の合計でございます。
  421. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いわゆる先進国からの拠出はどういう状態になっていますか。
  422. 大川美雄

    ○大川政府委員 いわゆる先進国の中で拠出いたしておりますのがオーストリア、これは拠出の誓約は四百万シリング、ドルにいたしまして二十三万八千ドルでございますけれども、そのうち現在までに拠出いたしておりますのが約百万シリング、六万ドル余りでございます。それからオランダが十万ドルずつの拠出を二度行っております。ノルウェーが十八万ドル、十八万九千ドル、十九万ドルと、三回にわたって拠出いたしております。スウェーデンが約二十三万ドル、それから約二十万ドルと、二度にわたって拠出いたしております。スイスからは五万ドル余りが出ております。先進国ではそういったとごろでございます。
  423. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 アメリカは下院で、七百五十万ドルですか、拠出金を否決したと聞いておりますが、そのとおりですか。
  424. 大川美雄

    ○大川政府委員 アメリカ下院の歳出委員会の小委員会及び委員会においてそういう議決がなされております。下院の本会議ではまだその最終的な議決が行われていないと聞いております。
  425. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ベネズエラの方ではどうですか。
  426. 大川美雄

    ○大川政府委員 ベネズエラは一千万ドルの拠出を誓約いたしておりまして、そのうち二百万ドルを二度にわたって出しております。
  427. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先進国のいわゆる大国は、なぜうまくいかないのでしょうか。その辺の理由というものを外務省なり文部省はどのように考えておられますか。
  428. 大川美雄

    ○大川政府委員 これは、国連大学の構想が最初出てきましたときの先進諸国の反応から御説明申し上げた方がいいかと思いますけれども、そもそも先進諸国は、国連大学を各国にあります大学あるいは研究機関のほかに改めてつくるということは屋上屋を重ねるものであるということで、どちらかと申しますと消極的な反応を示したのでございます。ところが実際にでき上がりました国連大学は、既存の大学その他の研究機関と同じような性格のものではなくて、若干異なった形のものとして生まれ出ましたので、その辺の事情は違いますけれども、当初から主たる先進諸国はそういったような反応を示しておりました。そこへ七三年の石油危機、世界経済の停滞ということで、国連大学が発足いたして拠金を募集することになった時点が、各国の経済状態が最も悪いときにたまたまぶつかったために、なかなか積極的な拠出が出てまいらなかった、こういうことであろうかと思います。
  429. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この拠出がうまくいかないときの今後の国連大学の運営の見通しですね、そういうものに危倶はありませんか。
  430. 大川美雄

    ○大川政府委員 この大学は本格的な活動を始めてから二年有余でございまして、この種の国際機関といたしましてはいわばようやくその活動が緒についたということでございます。その実質的な活動につきましては精力的に始めておりますし、その点は日本政府といたしましても、従来同様積極的に協力を進めてまいりたいと思いますけれども、同時に、ただいま話題になりました国連大学の財政事情につきましては、ほとんどわが国のみが拠出をいたしてほかの国の拠出が少ないということで、こういう事態は国連の大学という理想からすれば、まことに憂慮すべきことであると私どもは考えております。何といっても国連大学の財政的な基盤を固めるということが先決問題であろうと考えております。
  431. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほどもお話があったのですけれども、拠出金がなかなかうまく集まらない、設立当初の目標と申しますか、理想と申しますか、それと違ってきている。つまり、当時ウ・タント総長が提唱されたような第三国あるいは開発途上国を中心にした国際的な国連大学だというこのウ・タント構想というものと、今日の実際に運営されておる国連大学が相当かけ離れておる、そのように私は思いますが、外務省もそのように思っておられるわけですね。
  432. 大川美雄

    ○大川政府委員 いまから約十年前にウ・タント前事務総長がこの構想を打ち出しましたときの考え方とは、現在の国連大学のあり方は確かに変わってきていると言えるかと思います。現在の国連大学は、いわゆる大学と申しますよりは、世界じゆうにあります大学、研究調査機関等々を、いわばネットワークのように結びつけまして、そのネットアークを活用して、各分野における世界じゅうの専門家を動員して、重点的に人類のために、きわめてその緊急を要する課題を研究するということでございまして、それのいわば行政的な中心というようなことでありまして、その点ではウ・タントの当初の構想のいわゆる大学とは変わってきております。
  433. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうところがやはり拠出金がなかなか集まらない一つの理由ではなかろうか、外務省の先ほどの答弁でもそういうふうに私は受け取ったわけです。  そこで、この国連大学の予算消化の状態を監査するのはどこですか。
  434. 大川美雄

    ○大川政府委員 これは国連に行財政問題諮問委員会、略してACABQという機関がございまして、これが細かく監査いたします。それからさらに毎年の国連通常総会の開会中に、第五委員会におきましても詳細なる検討が毎年行われる仕組みになっております。
  435. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 四年間にわたって日本は七千万ドル拠出をしている。七五年から七七年までの三年間は二千万ドルずつ。本年度はどうして一千万ドルになっていますか。
  436. 大川美雄

    ○大川政府委員 三年間毎年二千万ドル出しまして、昨昭和五十二年度から一千万ドルになっておりますが、これは先ほど御説明申し上げましたような各国の拠出状況でございまして、日本政府がそもそも当初に一億ドルの拠出を誓約いたしましたのも、無条件にそれを出すということではなくて、ほかの国々がそれに相応する額、当初は三億ドル、その後学長の考え方が変わりまして四億ドルというようなことになって、したがいまして、合計四億ないし五億ドルのうちの日本は一億ドルというようなつもりで誓約いたした次第でございます。ところがその期待に反して各国からの拠出が必ずしも十全に集まってこないということで、日本政府は決して国連大学に対する協力の姿勢を崩すわけではありませんけれども、しばらく各国の拠出状況を見ていくという立場から、五十二年度からはそれまでの半額ということにした次第でございます。
  437. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、拠出の状態が悪くなれば、またこれはだんだん減っていくわけですか。
  438. 大川美雄

    ○大川政府委員 そういうことにはしたくございませんし、またそうあってはいけないと思います。日本としては精力的に各国に間接的に働きかけまして、特に先進諸国からの拠出が出てまいるように精力的に努力してまいりましたし、今後とも続けてまいりたい。ただ、本来各国政府の拠出を要請いたしますのは国連自体あるいは国連大学自体でございまして、日本政府は本部がありますホスト国、招請国ではございますけれども、各国に拠出を働きかけます場合も、どこまでも間接的な立場で働きかける、こういうことでございます。
  439. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ヘスター学長を初め高級役員の人たちの居住費というのはどうなっているのですか。
  440. 仙石敬

    ○仙石説明員 先ほど特殊法人の日本学術振興会のことを御説明申し上げましたけれども、国連大学の幹部職員の宿舎費の補助のための経費というのが、特殊法人の日本学術振興会の補助金の中に外国人研究者宿舎借り上げ事業費として計上されております。それで学長に対しましては全額、副学長及びその他の幹部職員に対しましては家賃の半額を補助しております。
  441. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 こういう国連の機関に、ホスト国がその種の居住費まで見ているところはほかにありますか。
  442. 仙石敬

    ○仙石説明員 諸外国に本部を置くほかの国連の諸機関の場合に、ホスト国が国連諸機関の幹部職員等に宿舎費の補助を行っているかどうかについては、文部省においては正確に把握しておりません。
  443. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私はないのじゃないかと思うのですよ、ユネスコだってそうでしょう。そうして、これは給与の中に含まれているはずです。特別の居住手当というものは国連から出るはずだ。その居住費を日本の方が負担する。  いま学長はどこへ住んでおられますか。家賃はどのくらいですか。
  444. 仙石敬

    ○仙石説明員 国連大学の学長の宿舎は目黒区の青葉台でございますかにございます。家賃は大体百万円でございます。
  445. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは、学術振興会が払っておっても実際はそのお金は文部省から出ておるのですからね。こういうことは言いたくないけれども、やはりこれは税金の一部なんですよ。裏から見れば二重取りということも言えるのじゃないですか。これは要求すれば国連から出るのでしょう。なぜそういうことをなさるのですか。ほかの国でもやってない、ホスト国がやってないのに、日本だけどうしてそういうことをなさるのですか、ただでさえ少ない基金の問題もあるのに。
  446. 仙石敬

    ○仙石説明員 国連大学の幹部職員の給与でございますけれども、これを分類いたしますと、年俸とそれから地域調整手当、そのほか扶養家族手当、それから教育補助金等々でございまして、特に住宅費という項目はございません。もちろん、地域調整手当の中にその住宅費が入っているのだという考え方もあるかとは思います。それで、国連大学の学長及び幹部職員に対して、どうして特殊法人の学術振興会から補助をしているかという御質問でございますけれども、これは学長が、その職務上自己の宿舎においても公務を遂行することが多いわけでございます。たとえて申しますと、来訪者の応接とかレセプションとか、それから大学職員との会合、連絡等でございます。こういう意味で、学長の宿舎は公的な性格を有するものでございます。また、欧米諸国の大学におきましては、学長は公邸としましてその宿舎を無償で提供されている例というのが非常に多いわけでございます。  したがいまして、国連大学におきましても、学長の宿舎というのは大学自体が提供すべきものでございますけれども、わが国と国連との国連本部協定によりまして、大学本部施設を政府が提供するということになっております。したがいまして、学長の宿舎についても、当然政府が無償で大学の用に供するものの中に含まれる、こういうように解釈しまして、学術振興会の方から大学の学長の宿舎を提供しておる、こういうことでございます。
  447. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうしてそんなに無理してそういう根拠をつくって出すのですかと言っているのです。  それでは、ほかのユネスコ等の高級幹部の人は住居費はどうしているのですか。給料から払っているのでしょう、そうじゃないですか。それを聞いているのです。
  448. 仙石敬

    ○仙石説明員 ただいま申し上げましたように、ほかの国連の諸機関の事務局員とは違いまして、大学の学長というものは、欧米諸国ではほとんど公邸を持っているわけでございます。そういうことで、国連大学の学長とその他の国連専門機関の高級職員とは違うということを申し上げているわけでございます。
  449. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それはこじつけだと私は言っているのですよ。国連の大学ですよ、国連の機関でしょう。だから私はおかしいと言っているのです。  しかもこれは一九七〇年十二月二十三日、国連財務官通達で、たとえば無償で補助が行われておるという場合は、ちゃんとその住居の補助費から引くようになっているのでしょう。つまり金は出ているのですよ。金が出ているから、平均的な家賃よりも多いときはその何%とか、あるいは平均的な家賃よりも少ないときはどうするとか、つまり職員相互の平等を確保するということからそういう措置がなされておるわけでしょう。だからこれは住宅費の補助あるいは差し引きの対象になる、そういうふうになっているのです。私はきょう議論をすると時間がなくなりますから、これはおかしいということだけ指摘しておきます。  いま一つ、研究プロジェクトの内容についても意見があるが、これも時間がないから省きます。  私はヘスターという学長について、その適格性に疑問がある。つまりUCCの重役でしょう。これはどのあれを見ても、国際人名事典を見ましてもちゃんと紹介がある。重役になっている。UCCとはどういう会社ですか。
  450. 大川美雄

    ○大川政府委員 UCCと申しますのは、ユニオン・カーバイド・コーポレーション、これはアメリカの多国籍企業の一つでございます。ヘスター学長はこのUCCの役員を兼職いたしておりますが、これは国連の規定に従いまして、国連事務総長の承認と申しますか、了解を得た上で、その兼職を続けながら国連大学の学長を引き受けたというふうに私どもは承知いたしております。
  451. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは知っていますよ。このUCCというのは南アフリカ、ローデシアにマンガン鉱を持っておりますね。だから、もう多くは言いませんけれども、ローデシアあるいは南アフリカ、こういう政府に対して、たとえばローデシアのあの差別政策について国連はこれを非難して経済制裁をやっている。ところがこのUCCはこのローデシア、南アフリカ政府を支持している。そういう会社の重役です。それは兼務は――人事規則がここにありますけれども、禁止してないけれども、こうなっているのじゃないですか。これは国連の人事規則の第一項の一ですけれども、国連の国際公務員は、国連のためだけを考えなさい、そして職務を遂行しなさい、こうなっています。それから三ではどうなっているか。「その職務の遂行に当たり、いかなる国の政府、また国連以外のいかなる機関からも、指令を求めたり受けたりしないこと」、こういう人事規則になっている。兼務は禁止してないけれども、しかしこの人事規則の内容からいって、明らかに私はUCCの重役を兼務しているということは問題がある。国連大学というのは、さっきも言ったとおりいわゆる開発途上国を中心に考えられた構想なんですよ。  時間が来たようですから、きょうは問題だけ指摘しておきますけれども、私はヘスター学長の適格性について重要な疑問がある。国連の人事規則にも反しておる、少なくとも道義的には反しておる、この点だけをきょうは指摘をしておきたいと思います。  以上指摘したような点について、私はもう少し責任を持って、日本が誘致しているのですから言うべきことはちゃんと言う、やるべきことはやる、そういう姿勢でいってもらいたいと思います。最後に、外務大臣見解だけ聞いておきます。
  452. 園田直

    園田国務大臣 国連大学の拠金が集まらぬことは非常に心配をいたしております。私はそれぞれの国の代表者に会う場合には直接お願いをし、先般は事務総長に会って、前代の事務総長の残されたことではあるけれども、あなたの責任ではないが、少なくとも国連の機関である国連大学がうまくいかぬことはきわめて遺憾であるから、米国に対しても御協力願いたい、こういうことをやっておるわけであります。  率直に言いますと、なぜ金が集まらぬか、これは私の感じでありますから当たってないかもわかりませんけれども、やはりこちら側に反省する点がたくさんあるのではないか。一つは、日本が国連大学設置に非常に熱心であって、他の国を排除して無理に持ってきた、そして持ってきたときに、半分は日本が出すからあとの方はというようなことを言ったので、自分でやれるならやってみろというような意地悪な感じがどうもあるのではないか。それからもう一つは、何年たっても国連大学としての機能を果たしてない、ただ寄付出せ寄付出せと言うだけじゃないかというようなもろもろの点があると考えます。  なおまた、先ほど局長は先生の御質問に対して、そうあってはならぬ、こう言いましたけれども、各国の拠金が集まらなければ日本だけが予算を出すのはおかしいという意見もあるところでありまして、これは文部省の所管でありながら予算の折衝は外務省がやっておるわけであります。なかなか困難を来しておって、ややもすると、外国から集まらぬのなら日本も出さぬというような空気が出ないとも限りません。そこで、私は学長に会ったときに、あなたがみずから回って金を集める、もう一つは金が集まらぬ金が集まらぬと金のことばかり言っておらぬで、集まった範囲内で少しでも、微々たることでもよいから国連大学としての、機能を発揮するように、その誠意が認められるように努力したらどうだ、こういうことを言っておるところでありますが、いまの御意見の中には外務大臣としてなるほどと肯定されるところが数々ございます。そういう点、十分注意をして、文部省とも相談をして、何とか機能が発揮できるようにやりたいと思います。
  453. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最後に一言だけ言っておきますけれども、私は、国連大学がウ・タント構想の方向でいくことは大賛成なんです。しかし、いま内容がそうなっていないということを危倶している。そういうことが拠出金の集まらない原因の一つになっているのではないか。だから、日本も十分金を出しているのですから口も出してちょうだい、こう言いたいところなんですよ。特にヘスター学長はUCC問題に関連してかどうか知らないけれども、過去、日本で脅迫を受けているわけでしょう。そういう事実を警察はつかんでいるはずですよ。そういうことも十分頭に置いて、誤りなきを期していただきたい。  以上です。      ――――◇―――――
  454. 永田亮一

    永田委員長 千九百七十七年の国際砂糖協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  他に質疑の申し出もありませんので、本件に対する質疑は終了いたしました。  これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  455. 永田亮一

    永田委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  456. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  457. 永田亮一

    永田委員長 次に、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件の両件が先ほど本委員会に付託になりました。  両件を議題とし、政府より一括して提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣園田直君。     ―――――――――――――  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件  市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  458. 園田直

    園田国務大臣 ただいま議題となりました経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件につき、一括して提案理由を御説明いたします。  これらの規約は、国際連合が世界人権宣言の内容を敷衍して作成した国際条約であり、国連の採択した人権関係の諸条約の中でも最も基本的かつ包括的なものであります。  二つの規約のうち、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約は、いわゆる社会権の完全な実現を漸進的に達成すべきことを規定しております。また、市民的及び政治的権利に関する国際規約は、いわゆる自由権や参政権等の権利を尊重し確保すべきことを規定したものであります。  二つの規約に規定している権利は、相互に密接な関連を有しており、政府としては、両規約を同時に締結することとした次第であります。  国際人権両規約に対する政府の姿勢を明らかにするため、本大臣は去る五月三十日、国連本部において二つの規約に署名いたしました。その際、政府としては、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の中の、公の休日についての報酬、同盟罷業をする権利並びに中等教育及び高等教育の漸進的無償化についての規定に関し、わが国の現状にかんがみ、所要の留保を行いました。また、二つの規約の団結権等についての規定にいう警察の構成員にはわが国の消防職員が含まれると解する旨を宣言しました。  人権の尊重は日本国憲法を支える基本理念の一つであり、両規約の趣旨はおおむね国内的に確保されておりますが、規約の締結は、わが国の人権尊重の姿勢を改めて内外に宣明する観点から意義深いものと考えます。さらに、両規約の締結は、国際社会における人権の尊重の一層の普遍化に貢献するという意味からもきわめて望ましいものと考えます。  よって、ここに、この両規約の締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことをお願いいたします。
  459. 永田亮一

    永田委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  この際、土井委員から発言を求められておりますので、これを許します。土井たか子君。
  460. 土井たか子

    ○土井委員 私たちは、この国際人権規約批准を政府に対して強く要求をし続けてまいりました。それは国民的要求でもあると確信をいたしております。年来、本委員会は言うまでもなく、予算委員会を初め関係各委員会の審議を通じまして、政府に対してこの要求をし続けてきたところでございます。  本月、ここに本委員会に提案されたわけでありますが、本来、このように大きな懸案の条約につきましては、延長国会になるまでの会期内に本会議における提案趣旨説明を経て本委員会に付託され、十分なる審議が約束されてしかるべきであると思います。提案にまでこぎつけられた国連局を初めとする関係諸氏の御努力は多といたしますが、延長国会の、しかも会期終了間際に、急速本会議を経ずここに提案され、もはや継続審議を通じてしか、十分なる審議を尽くす時間が物理的に認められないことに対しまして、遺憾の意を表したいと存じます。この点についての外務大臣の御所見をお伺いしておきたいと存じます。
  461. 園田直

    園田国務大臣 本件が提出がおくれましたというおしかりの中には、今国会まで長々と持ち越したというおしかりと、今国会において会期末にまで延びたという二つのおしかりがあると思いますが、全くそのとおりであると思い、反省をし、今後十分注意をするものでございます。  政府としては、御承知のごとく、早期提出を目指して鋭意努力をしてまいった次第でありますが、何分にも内容が広範であり、しかも多岐にわたり、予期以上の時間が各省の調整、国内法律案との関係等でかかったわけでありまして、与党でも格別の御協力を願ったわけであります。しかし、規約の重要性並びに外務委員会各位からの早期批准の必要性についての御指摘にもかんがみ、六月九日にようやく提出するに至ったものでございまして、この間の事務当局の苦労は察するに余りあるものがあるわけであります。本件規約を速やかに締結したいとの政府の気持ちだけは御理解をいただいて、おくれました理由はお許しを願いたいと思います。  なお、一般的に条約の了承をいただく場合には、その内容に応じ十分な審議時間が確保されるよう、国会への提出時期については今後十分留意をいたしてまいる所存でございます。      ――――◇―――――
  462. 永田亮一

    永田委員長 これより請願の審査に入ります。  今国会、本委員会に付託されました請願は合計二百三十四件であります。  まず、請願の審査の方法についてお諮りいたします。  各請願の趣旨につきましては、請願文書表によりましてすでに御承知のことと存じます。また、先刻の理事会におきまして慎重に御検討いただきましたので、この際、各請願についての紹介議員よりの説明等は省略し、直ちに採否の決定をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  463. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  採決いたします。  本日の請願日程中  日中平和友好条約早期締結に関する請願五十八件  看護職員条約批准等に関する請願百二十五件  日中平和友好条約締結促進に関する請願一件  朝鮮半島の自主的平和統一促進等に関する請願一件  核兵器全面禁止に関する請願十三件 以上の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  464. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  465. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  466. 永田亮一

    永田委員長 なお、今国会、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり、三十件であります。念のため、御報告いたします。      ――――◇―――――
  467. 永田亮一

    永田委員長 次に、閉会中審査申し出に関する件についてお諮りいたします。  経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件  市民的及び政治的権利に関する国際規約締結について承認を求めるの件  国際情勢に関する件 以上の各件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  468. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、議長への申し出に関する手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  469. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  閉会中審査案件が付託になりました場合、本会期中設置されております多国籍企業等国際経済に関する小委員会は、閉会中もなおこれを設置し、調査を続けたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  470. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長は従前どおりとし、その辞任及び補欠選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  471. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  閉会中審査のため、委員会及び小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じましたときは、人選その他所要の手続等につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  472. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  閉会中審査案件が付託になり、現地調査の必要が生じました場合には、委員派遣を行うこととし、派遣委員の選定、派遣地及び期間並びに議長に対する承認申請の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  473. 永田亮一

    永田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時七分散会      ――――◇―――――