○土井
委員 ちょっと参
事官、少しはき違えた御答弁をなすっておるようでありますが、そんなことを私は言っているのではないのです。しかも例として
犯罪行為を犯しておいて逃亡した人とおっしゃるのは、ただ一例をそこで挙げられているにすぎない。
犯罪行為をその
請求国において犯して逃亡したか否かということは、それはいろいろな
ケースがあるでしょう。外地において
犯罪行為を行ったという場合だってありますよ。だから
請求国において
犯罪行為を行った人が逃亡した例というのは、すべてに当てはめて
考えるなんということは適当とはとても思えません。それが
一つ。
それで
外務大臣、少し中座をなすっている間に私が申し上げていたことは、先ほど
外務大臣が御答弁なさったことと少し違いますので、大変時間の浪費になるかもしれませんけれども、簡単に、中座をなすっていた間の私の申し上げたことをかいつまんで申し上げて、再度
外務大臣の御答弁をお願い申し上げることにしたいと思います。
それは、
外務大臣、お手元にあると思いますが、この
条約の十六条の二項というところをひとつごらんくださいませんか。この十六条の二項というこの個所を見ますと、「この
条約は、第二条1に
規定する
犯罪であつてこの
条約の効力発生前に行われたものについても適用する。」こうなっているわけですね。それで
外務大臣が中座をなすっている間に、私は再度午前中の
井上委員や楢崎
委員の御質問の中にあったところの蒸し返しを少しいたしました。そして法務省側に、純法理論的に
考えた場合に
現行条約に従っていったら、どうも
アメリカ側から
引き渡してもらいたいなあと
日本側は
考えるのだけれどもそうはいかなかったという例に、それはコーチャンやクラッター氏なんというふうな例があるのじゃないかということを私、聞きました。それに対してはなかなか答えづらいお立場におありになるということも
一つはこっちとしては十分
理解した上で、純法理論的にどうかという詰めをさらにやったわけです。そうしましたら、それは
現行条約の上では無理だけれども、しかしただいま審議している
条約からすると純法理論的にはコーチャン、クラッターについて
アメリカ側に対して
引き渡し要求をするということができる、こういうことになったわけです。そこまではいいのですよ。そこまでは午前中
外務大臣の御答弁の中に出てまいりましたところで、そこまではいいのですが、さて、その十六条の二項と憲法三十九条との関係なんです。三十九条に矛盾しないということを午前中の御答弁で
外務大臣はおっしゃったのですけれども、憲法三十九条の条文というのは読んでみますと、
二つのことを憲法三十九条ではここに
規定しているわけなんです。
一つは二重処罰の禁止ですね。
一つは刑罰不遡及の
原則ですね。簡単に言うとそういうことです。この三十九条の条文の中で一部を割愛して言っていることの中身を読んでみると、「何人も實行の時に適法であつた行爲」は、刑事上の責任を問われないというふうに
規定しているわけなんです。この
引き渡しということは刑事上の責任を問うために
お互いが引き渡すわけですね。それ以外のことではないですね。したがいまして、刑事上の責任を問うということについてどういうふうに決めているかということは、こうこう、こういうふうな
要件に該当する場合に引き渡すということを、具体的に明定の
規定で決めておかないと、罪
刑法定主義や
人権尊重という点からすると、これはもとるわけです。そうですね。そういうことから言うと、この十六条の二項というところをもう一度読んでみてください。
現行条約では引き渡すことが不必要なんですよ。不必要というよりも、その
犯罪ではできないのです。
現行条約ではその
犯罪では
引き渡し要求ができないのです。また引き渡す義務もないのです。ところが、新しく審議している本
条約の十六条の二項というところを見ると、「第二条1に
規定する
犯罪であつてこの
条約の効力発生前に行われたものについても適用する。」となっているのですから、この
条約が効力を発していない間は
現行条約でいくべきなんです。そうでしょう、あくまで。そうすると、
現行条約では
引き渡しが不必要な
犯罪に対してまでも、この
条約が発効した限りにおいて引き渡すということをこの
条約が認めるということは、いま言う三十九条の「何人も、實行の時に適法であつた行鳥」は「刑事上の責任を問はれない。」ということに矛盾するのではないか。いろいろ憲法解釈はございますから、厳密な解釈ということになると、これは何時間あったって恐らく討論の尽きるところはないでしょう。ただ、憲法三十九条の精神から言えば、本
条約の十六条の二項というのは矛盾する
内容をここに
規定しているということになりはしないか、こういう
趣旨で私は先ほど
お尋ねをしたわけであります。
外務大臣、私の申し上げているところの
趣旨がおわかりいただけたでございましょうか。どのように
外務大臣はお
考えになりますか。