○村田
政府委員 昨日からジュネーブにおきまして第七会期が始まっておるわけでございますが、この
会議で非常に重要な問題が種々取り上げられておりますので、それらの問題に関しましてごく簡単に概括を申し上げたいと思います。
まず第一
委員会というところで、恐らく今会期で最も重要だと思われます深海海底の開発の問題が
議論されようとしております。これは御存じのとおり人類の共同財産ともいうべき深海海底におきます銅、ニッケル、コバルト等の資源をいかに開発するかという問題でございまして、非常に簡単に申し上げますと、開発途上国側の主張と先進国側の主張がなお大きく対立しておる。したがいまして、この問題の処理いかんが海洋法
会議全体の今後の動向を左右するというほど、最も深刻かつ重大な問題になっておるわけでございます。
開発途上国側は、国際機関、オーソリティーと呼んでおりますけれども、この権限をもっともっと強めるべきである、それから国あるいは私企業が行います開発は将来はフェーズアウトすべきであるというふうな強い主張をしておりますし、また、国際機関であるエンタープライズというものが設けられる構想がございますけれども、これに対して先進国側が資金あるいは技術等の援助もすべきであるという
立場をとっておるわけでございます。
これに対しまして、先進国側は、国あるいは私企業の活動というものが
条約上はっきりした形で保証されなければ困るという
立場でございまして、
アメリカ等の中には国内で一方的な立法をしようというふうな動きもあるわけでございますので、とにかく今度のジュネーブの会期におきましては、この深海海底の問題に各国が協調して、何とか円満な秩序ある開発について
合意が得られるということが必要であるということでございます。
それから、第二
委員会におきましては、従来から、先生御
指摘のとおり五年間にわたっていろいろな
議論が行われまして、領海の問題、それから国際海峡の問題、あるいは二百海里の経済水域の問題に関しましては、相当話し合いが固まっております。
ただ、その個々の問題に関しましては、なお各国の主張が相当異なっておるところがございまして、若干例示的に申し上げますと、たとえば経済水域に関しましては、これの法的な性格がどうであるかとか、あるいは管轄権をどう行使すべきであるかというふうな点については、なお意見が分かれておりますし、また、漁業の点につきましても、長期の
交渉でほぼ
日本としては満足すべきであると思われる、あるいはやむを得ないと
考えられる妥協案ができておるわけでございますけれども、これをもう一遍改めようじゃないかという動きがございます。特に、
日本としては、たとえばサケ・マス問題に関する
ソ連の提案というふうなものは、非常に神経を使っておるわけでございます。
それから、大陸棚に関しましては、自然延長論というものが強くなっていることは、屡次この
委員会でも申し上げたところでございますが、これに対して
日本としては、国益を守るという見地から、やはり明確な距離基準、特に二百海里という基準によるべきであろうという
立場でございます。ただし、二百海里以遠の収益分与についてもすでに話が出ておるというふうな大勢でございますので、その場合にも備えまして、大陸棚の外縁はいずれにしても合理的な基準で定められなければ困る、たとえば堆積層の厚さというふうなことを基準にやろうという
考えが一部の国から出ているわけでございますけれども、これに対してはわが国は反対するということでございます。
それから、大陸棚及び経済水域
両方に共通します問題としては、境界画定の問題がございまして、これも
日本の国益にとって非常に重大な問題でございます。大ざっぱに申しまして、境界画定を衡平原則でやるという
考え方と、中間線を第一義的な基準にすべきであるという
考え方があるわけでございますが、
日本としては中間線という
立場を、この会期におきましても強く主張していくという
考えでございます。
第二
委員会はその程度にいたしまして、さらに第三
委員会というところでも、海洋汚染の問題等が
議論されておるわけでございますが、これに関しましては、わが国は、沿岸国としての
立場と海洋利用国、海運国としての
立場という二つの
立場があるわけでございまして、これを総合的、調和的に
日本の国益が確保されるように対処するという
考えで臨んでおります。
なお、すでに五年の長きにわたって
交渉しておりますので、何とか一日も早くこの
会議をまとめなければいけないということで、恐らく今度の会期では、紛争解決とかあるいは最終条項の問題というふうな
条約の最終的な形づくりの
議論もあると思われますが、わが国といたしましては、一日も早く調和ある海洋法秩序ができるようにということで協力してまいる所存でございます。