○山野説明員 ATRにつきましては、先生御案内のとおり従来の軽水炉の技術を最大限に活用しながら
開発できる
新型炉という点に大きな特徴があろうかと存じますし、また燃料の
利用形態を多様化するとか燃料の有効
利用を図る、つまり燃料経済上の特徴というのが非常に大きいわけでございます。特にプルトニウム燃料の実証という面からも非常に意義があると
考えておるわけであります。そういう
観点から、ただいま
開発を進めておるわけでございますが、これが将来の炉型戦略の中でどういう位置づけになるかという点になりますと、大変微妙な点がございます。現在
原子力委員会で
考えられております線、これは過去に
原子力委員会の中に新型
動力炉開発専門部会というものを設けまして、将来の発電炉型のあり方というものにつきましていろいろ御検討願ったわけでございます。その結論を端的に申し上げれば、今世紀いっぱいは現在実用化されております軽水炉というものを主流に
考えますけれども、これに引き続きまして、ウランの有効
利用を図りますために
高速増殖炉につなげるというのが現在
考えられております基本路線でございます。その中におきまして
新型転換炉、ATRと申しますものはこの基本的な炉型の戦略を補完するものであるというのが現在の位置づけでございまして、具体的にはどういう
意味かと申し上げますと、
高速増殖炉の実用化の時期というのは大体一九九〇年代の半ば程度、そのころには実証炉の運転をしたいというふうに
考えておるわけでございますが、これもまだまだ先の長い
研究開発でございますので、計画の遅延等も多分にあり得るわけでございます。
それからまた、
新型転換炉につきましても、これはただいま運転の試験に入っておりますけれども、この運転の成果というものを十分に検討いたしませんと実用化できるかどうかという判断もできないわけでございます。私は非常に両方とも暗い面を申し上げておるわけでございますが、そういったふうな要素をいろいろ勘案しまして、五十年代の半ばぐらいにはこのATRを実用化するかしないかという最終的な決心をしようとしておるわけでございまして、その時点でATRの実用化をしようとなれば、
わが国の発電炉の炉型戦略と申しますのは軽水炉からATRに行き、さらにFBRに進むといったようなことになろうかと存じます。
その間におきましてCANDU炉の位置づけでございますが、CANDU炉もまた燃料が非常に有効に活用できるとかあるいは濃縮の必要がない、バックエンドにおきまして当面再
処理の必要もないといったようないろいろな利点もある。かつ実用化された炉でございますけれども、これを
わが国に導入するに当たりましてはいろいろ
わが国の安全基準に合致するかどうかといったような問題あるいは当然耐震設計等も含めてでございますが、そういう問題もございますし、
先ほど申し上げました炉型戦略のもとで
考えております
燃料サイクルにも非常に大きな影響を及ぼすものでございます。そういう
意味で全体の炉型の中にCANDUを組み込みました場合の費用対効果と申しますか、そういうようなものも十分検討いたしませんと、軽々にCANDU炉を導入するといったようなことは言えないわけでございまして、その辺の問題につきまして現在
原子力委員会の中に
新型炉につきましての今後の戦略を決めますための懇談会を設けまして、大体本年の暮れを目標にしまして検討
作業を進めておる、そういうふうな状況でございます。