○瀬川参考人 初めに東海プラントの現状を申し上げますと、御承知のように昨年の九月に日米交渉が妥結しましてすぐ、余り日にちを置かずに
原子力研究所のJPDR燃料を引き取りまして、これは三トンぐらいでございましたが、つまり余り燃焼度の上がっていない、軽く燃えた燃料から最初本番のテストにかかるという考え方で原研のJPDR燃料をまずホット試験をやりまして、続いてことしの三月までに東電さんの福島炉の使用済み燃料約五トンを
処理いたしまして、近く関西電力さんの美浜炉の使用済み燃料を約六トンばかり、これは五、六月中に本番の
処理をいたすつもりでございます。
こういう昨年の九月以来現在までの経過は、要するにそれ以前の
ウランだけによる試験、われわれはコールドテストと言っておりますが、いま申し上げたように、昨年の九月末から本番の使用済み燃料でホット試験をやっておるわけでございまして、いまのところこの本番のホット試験はほぼ順調に推移しておるというふうに申し上げていいかと思います。したがって、先ほどお話に出ましたように、ことしの秋にさらに燃焼度の高いものに引き続き移りまして、秋ごろから本格操業に入りたいというのが現状でございます。
ただ、いま申し上げましたように、私
どもはいままでの本番のホットテストと言いながら燃焼度が低い方からだんだん試験をやっておりますので、決してうまくいったというふうに油断するのは禁物だというふうに考えております。
それではいままでの経過から見て、
経験上どういう感じを持っておるかということでございますが、その前に第二
工場民営につきましては、私
どもの方といたしましては、いま申し上げたような東海プラントの本格的
運転をこなしていくとか、諸般の
技術開発をやっていくというようなことで、東海発電所の安定確立をまず第一の仕事にして考えますと、第二
工場の準備というようなことは私
ども動燃事業団としては、ちょっと余裕が見出せないと思いますので、そういう
意味におきまして、この際民営という道を開いておいて、それによって、電気事業なり化学工業、重電機工業、そういう全産業界の協力を得る道をこの際開いておいた方が私はよいのではないかというふうに考えております。私
ども自身、この東海プラントを
建設する過程から試験
運転に至る経過におきまして、実は
日本の化学工業界にもずいぶんと参加を呼びかけ、また
運転要員の派遣等もずいぶんお願いしましたが、何分にもいままでの
原子力界の状況といたしましては、そういう化学工業界等の核
燃料サイクル分野に対する
関心というものは、私はきわめて低調であったというふうに考えておりまして、私
どもも人を集めるのにずいぶんと苦労をした覚えがありますので、この際民営の道を開いて、そういうふうに全産業界の協力を要請するという方向は妥当ではないかと思うわけでございます。
ただ、
経験上から意見をつけ加えますと、要するに再
処理技術というものは、非常に高度の化学、工学、それに非常に高いレベルの
放射能処理技術をつけ加えたものでありまして、そういうものはどういうことかといいますと、いろいろトラブルが発生したときに手直しをするとか、あるいはこういうところを改善したいというときに、非常に困難な作業になる。普通の化学工業のように、手を入れてネジを締め直すなんというようなことは簡単にはできないことでございまして、まず
放射能を取り除くという作業だけでも一カ月、二カ月はすぐ飛んでしまうというような
技術でございます。また私
どもは、実際には東海プラントの
建設は
昭和四十九年の終わりに終わりまして、五十年から試験に取りかかったわけでございますが、
ウランだけによるコールドテスト、並びにさっき申し上げた燃焼度の低い使用済み燃料のホットテスト、これを加えますと、約三年間試験をしておる。少し長過ぎたのじゃないかと思いますが、入念に入念にというようなことで、かなり試験
運転に時間をかけた。その三年間の試験期間中に、大小取りまぜて約百カ所くらい手直しをしております。したがって、私
どもはこの手直しの際にいろいろな工夫をいたしまして、改善、改良を加えましたので、当初の設計とはかなり姿の変わったものになっておると思うわけでございまして、十年前に設計したやつだから古いんじゃないかというふうに考えるのは、必ずしも妥当でないと思いますが、つまり、最近の世界じゅうの傾向等もある
程度取り入れて手直しをするついでに改良を加えたというようなことが申し上げられるかと思います。したがって、再
処理技術におきましては、いま申し上げた手直しとかあるいはトラブル発生のときの
処理対策、そういう
経験というものは、再
処理の場合にはノーハウ的なものであるというふうに私は考える次第であります。事実、各国とも再
処理工場におけるトラブルというものは余り詳細には発表しませんし、またそれの
処理経過、
対策等についてほとんど
情報交換は行われないという傾向が見られますので、私はそういう
意味におきまして、民営第二
工場の
建設におきましては、第一
工場のそういう
経験というものを十分に生かしていただけるように、どうか各方面の御配慮をお願いしたいというふうに考えております。
第二に、私
どもは、御承知のロンドン協議等の経過を考えますと、将来再
処理技術に関する国際移転というものはかなり制約が加えられるようになるのではないかということを考えまして、昨年あたりから再
処理施設における機器の国産化というものを準備すべきであるというふうに政府にも申し上げて、ことしの予算からそういう
関係の予算をいただいておりますので、第二
工場等のための機器の国産化のために試験的な機器の発注を行いましていろいろなRアンドDを加えるということは、私は非常に大事なことではないかというふうに考えております。
最後に、まあ老婆心としてつけ加えますと、先ほど申し上げましたように、私
どもの東海プラントというものもだんだん安定した
運転技術を習得してまいりまして、現在環境に御迷惑をかけるということもありませんし、また、従業員に対して安全管理上大きな
影響を与えるということもいまのところ考えられないというふうに思っております。しかし、先ほど御
指摘のように、再
処理工場というものは稼働率が各国ともなかなか上がっていかないじゃないかというふうなことも、また一方において見受けられるわけでございますが、私はいま申し上げましたように、いわゆるピューレックス法に基づく再
処理技術というものは、私
ども自身だんだん腕が上達してきた、大丈夫これは本格
運転に持っていけるというふうに考えておりますので、第二
工場が詳細設計等を経て
建設にかかるまでには十分時間もございますし、ピューレックス法の再
処理技術というものは十分第二
工場において安定した姿を描けるのではないかというふうに考えております。一方、この
経済性の問題につきましては、単に再
処理プラントだけのコストだけで考えるのが妥当であるかどうか私はちょっと疑問を持つわけでございまして、核
燃料サイクル全体のメリット、
日本における核
燃料サイクルに対して再
処理プラントがどういう貢献度を持っているか、やはりその面も判断に加えるのが当然ではないかと思います。
先生が先ほど御
指摘になった、再
処理費というのは前は一トン
当たり五百万円というようなことを言うておったじゃないかとおっしゃられるような時期もございましたが、しかし考えますと、
アメリカ、フランス、イギリスとも
日本に対して最初再
処理の役務サービスを申し出たころは、すでに軍用のお古の再
処理工場を利用した役務サービスでございまして、その当時のサービスの価格というものはほとんど新設の場合には私は当てはまらないのではないか。また、この十年間の間に非常な物価の上昇等もございますので、私は確かに、私もときどき東海プラントも千五百万円でやりますなんということを五、六年前は考えておったわけでございますが、とうていそれでは追いつかないという点は、これは認めざるを得ないと思いますが、いま申し上げましたように、新しい
工場としての国際比価というものから見ると、そんなに各国とも食い違いはないのじゃないかと思いますし、また
日本の再
処理による回収された
ウラン、
プルトニウムの利用を考えますと、これは非常に大きなメリットがあるという点を御判断願いたいと思うわけです。
それから、これは御
質問になかったことをつけ加えて申しわけないわけでございますが、老婆心のついでに申し上げますと、再
処理プロセスから
プルトニウム燃料加工に至る過程を、どういうふうに今度の
法律改正によってお考えになるのかよくわかりませんですが、私は、この
プルトニウム燃料加工等の分野につきましては、これは何も
法律の
改正なんかやらなくても、
民間でいまでもやろうと思えばやれるわけでございますが、それでもやはりやらないわけでございまして、やはり
プルトニウム燃料の加工というような問題は、現実の情勢展開に合わせて考えていくべきでありまして、むしろ当面はやはり政府援助等を期待しながら、弾力的に経過的に考えていった方がいいのではないか。
プルトニウム加工やら、あるいは高レベル廃棄物の中間貯蔵問題等もそうでございますが、そういうふうに最終プロセスを
民間でおやりになるのは結構だけれ
ども、さらにダウンストリーム分野においては、私は経過的な実情に即した考え方をとる方が
日本としてはいいのではないかというふうに考えております。