運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-19 第84回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十九日(水曜日)     午後四時二十四分開議  出席委員    委員長 竹本 孫一君    理事 國場 幸昌君 理事 西銘 順治君    理事 本名  武君 理事 村田敬次郎君    理事 加藤 万吉君 理事 安井 吉典君    理事 斎藤  実君       有馬 元治君    熊谷 義雄君       村上 茂利君    上原 康助君       玉城 栄一君    柴田 睦夫君       甘利  正君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君  出席政府委員         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         沖繩開発庁振興         局長      美野輪俊三君         外務省アジア局         長       中江 要介君         水産庁次長   恩田 幸雄君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設補償課長 近松眞次郎君         外務省欧亜局東         欧第一課長   都甲 岳洋君         海上保安庁警備         救難部長    村田 光吉君         特別委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   瀬長亀次郎君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     瀬長亀次郎君     ――――――――――――― 三月十三日  沖繩県にB52戦略爆撃機飛来阻止に関する  陳情書外一件  (第二二〇号)  沖繩県の市町村未買収道路用地補償等に関す  る陳情書(第二二  一号)  沖繩県交通方法変更に伴う安全対策等に関す  る陳情書(第二二  二号)  沖繩県小中学校借地買収等に対する特別援助  措置に関する陳情書  (第二二三号)  沖繩県金武湾汚染防止及び浄化に関する陳情  書(第二二四号)  沖繩県八重山群島海岸汚染防止対策に関する  陳情書(第二二五  号)  北方領土復帰促進に関する陳情書  (第二二六号)  北方領土返還促進に関する陳情書  (第二二七号) 四月三日  沖繩県交通方法変更に伴う安全対策等に関す  る陳情書(第二八  〇号)  浦添市における未買収道路用地補償等に関す  る陳情書(第二八一  号)  本土・沖繩間航空運賃の据え置きに関する陳情  書(第二八二号)  沖繩県米軍ヘリコプター墜落事故に関する陳  情書  (第二八三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  沖繩及び北方問題に関する件      ――――◇―――――
  2. 竹本孫一

    竹本委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がございますので、順次これを許します。安井吉典君。
  3. 安井吉典

    安井委員 この沖繩北方特別委員会で二月九日、園田外務大臣によって外務省所管事項説明が行われました。その説明に対する質問がきょうですから、かなり間延びしたことになりますが、しかし、その間、北方領土の問題のほかに南方領土の問題も起きて、南も北も領土問題が大変な事態にきているように思います。与えられた時間が短いのですが、初めに北の方から伺ってまいりたいと思います。  一月早々園田外務大臣訪ソで第五回日ソ外相定期会議、しかしこの中においては、日ソ間に領土問題は存在しないというコスイギン首相拒絶反応に遭いました。その後、ソ連側は、領土解決済みだというキャンペーンを続け、とりわけ二月下旬にはソ連国営タス通信が、ソ連政府がさきに日本に提示した、日ソ善隣協力条約草案全文公開という外交的に非礼とも思われる措置があり、その後も在ソ日本大使館に対し、日本領土返還要求に対する非難口頭声明、しかし三月二十日には、日本の駐ソ松原公使ソ連外務省に対し、北方領土日本の当然の領土であり、その解決の後平和条約締結をという口頭声明を伝えるというふうなこともありました。それから日中平和友好条約交渉の前進に伴って、それに対する、特に覇権条項に対する批判が強まってき、そこへ尖閣列島と、こう続いてくる一連の動きがあります。  これをずっと考えてみますと、領土交渉を前進させるきっかけとか要素というものがきわめて得にくくなった、少なくも北の領土問題については足踏みあるいは後退というふうな印象国民が受けているわけなんですが、外務大臣は、この困難な局面をどう打開していくおつもりなのか、今後への展望についてもこの際お示しいただきたいと思います。
  4. 園田直

    園田国務大臣 先般の訪ソの際における平和条約締結交渉においては、平和条約の重要なる部面は国境であり、領土の問題であり、したがいまして、領土の問題を解決して平和交渉再開せよという申し入れをしたわけであります。これについてソ連の方では、平和条約交渉の継続については同意をいたしましたが、領土問題についてはいま言いましたように言を左右にして、解決に至っていると言ってこれを拒否する、こういう状態でございました。そこで、領土についてのわが万の終始一貫した不変の主張を再三外務大臣との会談においても、首相との会談においても、最後の会談においても執拗に主張すると同時に、ソ連の方で第二十五回党大会、一九七六年以来、領土問題は一部の者が外部の教唆により行っておる不法な行為であると主張しておられるが、これは全国民一致の意見であるという点を強く主張してまいりました。このような基本方針で今後ともこの交渉を粘り強く繰り返す所存でございます。  また、一方には、ソ連日本の間には経済問題その他の問題で利害が共通する問題も非常に多いわけでありまして、わが国外交の基本的な問題はどこの国とも敵対せず、どこの国とも善隣友好を進める、こういうわけでありますから、経済その他多様な面から相互理解あるいは友好関係を深めつつ、粘り強く厳然主張しながら、こちらの理解を向こうに求めていきたいと考えております。
  5. 安井吉典

    安井委員 次の段階交渉日程、いまは尖閣列島の問題や日中の問題が先行しているわけなんですが、いつごろにお考えになっておられますか。
  6. 園田直

    園田国務大臣 次の交渉段階年内に、今度はソ連外務大臣がおいでになる順番でありますから、年内交渉したい、こう言いましたところ、交渉再開には同意しながらも、時期についてはまだ具体的には返答はしておりません。
  7. 安井吉典

    安井委員 いま日程その他について議論をする段階ではないと思いますから、それは後の問題にいたしますが、現在ある、日本北方領土と称している地域の現状がどうなっているかということをもう少し知りたいと思うわけであります。  これは先般の北海道新聞から得た知識なんですけれどもソ連学術誌極東の諸問題」という機関誌、これに「極東の真珠」というソ連サハリン州共産党第一書記レオノフ氏の大きな論文が掲載されていて、その中身は、ソ連サハリン及び北方四島を含む千島列島総合開発を大々的に展開する方針を打ち出しているということのようであります。そのレオノフ第一書記は最近モスクワに呼ばれて、コスイギン首相バイバコフ・ゴスプラン議長との協議で、サハリン州を含む千島列島全体にわたる総合開発計画についての計画の内容と、巨額の特別開発資金話し合いの末決定をし、これは閣議決定というふうに報じている新聞もあります。そういう中で、交通施設の改善だとか漁業コンビナート開発等計画され、進んでいるように聞いています。日本側として、これらの開発状況をどういうふうにとらえているか。われわれはここは日本領土だと言っているわけですからね。  それからもう一つ軍事基地としても強化されつつあるという情報を聞くわけでありますが、これはいまどういうふうなことになっているか、それについてのどのような情報をお持ちか、外務省及び防衛庁からこれらの点を伺います。
  8. 都甲岳洋

    都甲説明員 先生指摘になりました「極東の諸問題」に載りましたレオノフサハリン州第一書記論文につきましては、これは一般的に樺太及び千島ソ連領土であるということを歴史的に述べつつ、これらの地域の一般的な経済発展の成果について述べ、そして第十次五ヵ年計画の中において、樺太及び千島全域について重点的に経済発展が行われておるということを記述した論文でございまして、特に私どもが見た限りにおいて、これが北方四島を意識して書かれている論文であるということは、そういう印象は受けておりません。  それから、先ほど先生が御指摘になりましたレオノフ第一書記モスクワに行きまして、コスイギン首相バイバコフ・ゴスプラン議長等と協議した結果、極東開発のために特別の資金を割り当てる閣議決定が行われたというような報道があったことも私ども承知しておりますけれども、その事実は何ら確認されておりません。私どもとしましては、いまのような論文が「極東の諸問題」に載ったことをとらえて、若干誇張的に報道されたのではないかというふうに認識しております。  それから国後択捉歯舞色丹北方四島の開発状況につきましては、私どもとしましては、これは断片的な情報しか得ていないわけでございますけれども、御指摘のように、これらの島々が漁業基地その他漁業コンビナート等の建設が行われて、ソ連側がそれを経済的に開発をしつつあるという事実は私どもも承知しておりますけれども、完全にその全貌を掌握するような資料が、体系的に入手し得ていないということもまた事実でございますので、御説明はこの辺にさせていただきたいと思います。
  9. 上野隆史

    上野政府委員 国後択捉等北方領土におきますソ連軍配備状況でございますが、飛行場あるいは港等があると承知しております。  なお詳しく申し上げますと、国後島には飛行場二つございまして、東沸飛行場、古釜布飛行場、そこには輸送機とかヘリコプターが数機置かれておるようでございます。それから択捉島でございますが、天寧天寧飛行場というのがございまして、そこに戦闘機約二個飛行隊、それから色丹島には斜古丹港、色丹飛行場というのがございまして、そこには警備艇十数隻があるというふうに承知いたしております。これらは、戦闘機につきましてはソ連空軍所属であり、その他につきましては国境警備隊の所属であるというふうに承知いたしております。
  10. 安井吉典

    安井委員 短い時間ですから、詳しいお話を伺うことは次の機会に譲りますが、大臣、いまのような開発やあるいは軍事施設等がどんどん置かれているという実態に対して、何か国民としては、自分領土だということから、ある種のいら立ちを禁ずるわけにはいかぬと思います。そうかといって、これをどうせよこうせよと言ったって、具体的な方法のあるわけはないようにも思うわけでありますが、外務大臣としてどうとらえておられますか。
  11. 園田直

    園田国務大臣 歯舞色丹国後択捉の北万四島は、歴史的にも法的にもわが国固有領土でありまして、サンフランシスコ条約わが国が権利、権原及び請求権を放棄した千島列島には含まれていない。政府としては、北方四島の一括返還を実現をして、日ソ平和条約締結すべく粘り強い対ソ折衝を一貫して続けていく覚悟でございます。
  12. 安井吉典

    安井委員 それだけの、準備された原稿をお読みになっただけで、それ以上のお話を承るわけにはいかないようでありますけれども、やはり一日も早く領土返還を実現する努力を大臣としてお進めいただくこと、それよりほかにないように思うのです。  そこでもう一つ外務大臣は当時官房長官時代ではなかったですかね、去年、北方領土返還要求国民大会の代表があなたに会われた際に、総理大臣外務大臣現地視察を何とか実現してくださいという要請に対して、ぜひ実現したいと思いますというお約束をされているようであります。ことし、北方領土返還要求道民大会でも、政府首脳現地視察という決議をして、これもあわせて申し入れをしておるようです。いまは外務大臣であられるわけでありますが、最近の向うの新聞にも、日本の閣僚がソ連領域周辺地域で、示威的な視察旅行を行っているという非難も書かれているようでありますけれども自分の国の中の旅行にほかの国からとやかく言われる必要もないように思うのです。やはり、次の交渉再開されるという前には現地を見ておかれるということの方がいいと思うのですよ。そういうような意味で、総理大臣外務大臣と、こう二つ要求があるわけですが、どうですか。
  13. 園田直

    園田国務大臣 総理みずから根室を訪問されて、直接関係者の声を聞かれ、現地を視察されることは重要なことであると考えておりますが、日程の都合上、検討しておりますが、まだ実行に至らぬわけであります。  外務大臣としても、地元の方の声も十分承っておりますが、率直に申し上げますと、外務大臣としては、まず当面の中国の問題をできる限り片づけて、これが終わったら直ちに、ソ連に対する外交上のあらゆる点を尽くしながら、そういう方向に進めるべきだと考えておるわけでございます。
  14. 安井吉典

    安井委員 そういたしますと、中国問題が片づいた後は現地もごらんになる、そういうおつもりでおられるということだけは間違いないわけですね。
  15. 園田直

    園田国務大臣 そのように考えております。
  16. 安井吉典

    安井委員 それでは、あと幾らもありませんが、いま当面している尖閣諸島の問題、これは沖繩県の一部であるわけですから、そういう立場から二、三お伺いをして、時間が来れば次の上原委員にバトンを譲りたいと思います。  日中平和友好条約締結が、当面する日本の最大の外交課題だということは当然であり、園田外務大臣もずいぶん御苦労をなすって、外交と、それから党内の内交の方も御苦労をされておられるようでありますが、訪中直前に至っていろいろな問題が起きて、大変残念であろうとお察しをするわけであります。しかし、事態はいかに困難であろうと、その打開のためにぜひしっかりやっていただかなければならぬと思うわけであります。  いま起きている事態がいかなる原因によるものかということはよくわからないのですけれども、わかればおっしゃっていただきたいと思いますが、この間の耿副首相発言によれば、偶発的なものだと、こう言われる以上、そしてまた、先方の、事情の調査をいたしますという約束日本政府にされているということでもありますから、やはり偶発的なものなら偶発的なものでありましたというような処理の仕方を、現実に日本側にも見せていただかなければならぬと思いますね。その点については、どうですか。
  17. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでありまして、当初、私は準備されたものではないかという推測をしておったわけでありますが、その後、訪中された方々及び公的にも公電が入りまして、これは絶対に計画的なものではない、偶発的なものである、こういう話がございました。しかし、その後の現場における中国船行動及びその他を判断をして、なお理解に苦しむ点もあるわけでありまして、ここしばらくこの成り行きを見守りつつ、それによって判断をし、なお、中国政府からの実地調査の御返答ももらいたいと思って、公式、非公式に東京、北京で折衝しておるところでございます。いずれにいたしましても、事はきわめて大事であると同時に、慎重に、冷静に事を処しなければ、これは大局的に大きな過ちを来す、こう考えておりますので、事態を見守りながら、これを判断し、対応措置を講じていく考えでございます。
  18. 安井吉典

    安井委員 台湾にある政府は、いままで尖閣諸島にいかなる主張をし、特にいまのような事態に至って、これに対する主張というか、コメントというか、これはいかようにしているのか、ちょっと伺っておきます。
  19. 中江要介

    中江政府委員 台湾にあります当局は、あの地域石油資源がありそうだというエカフェの報告が出ました後、外交部声明というものを出しまして、あの尖閣諸島は自国の領土であるという公式声明を出したことはございます。その後、いままで公式声明というものはございませんでしたし、今回の事件が起きましてから、台湾の方から、特段の公の論評なり公表なり声明なり、そういったものは私どもは承知しておりません。
  20. 安井吉典

    安井委員 四月十四日のソ連タス通信は、尖閣列島日本領土であり、中国領土要求は間違っているという非難をしましたね。一方、中国の方は、北方領土は、これは四島は日本領土であって、ソ連領有は間違っている、こういう非難をしていたわけです。これがちょうどあべこべなら話は早いのですけれども、なかなかそうはいかないわけです。北方の問題と尖閣諸島の問題とも日本主張は、一方は条約が先で領土は後だと言うし、一方は領土が決まらなければ条約はしないというようなことで、何か論理の矛盾があるのではないかという話もあるわけでありますけれども、しかし、私は両方とも問題が違うように思うのです。  とりわけ、北方の方は日本領土であるという歴史的な根拠は明確であるが、しかし、さっきもちょっと触れましたように、あれを占有しているという形態においては、こちらの方はほとんどゼロに近い。しかし、尖閣諸島の万は、領有根拠も、それからそこに人が居ついて、あの土地の持ち主までいるわけですから、そういう歴史的な事実も、こちらの方はほとんど一〇〇%に近いあれがあるわけですから、北方領土とこれとは全く性格が違うように私は思うのです。ですから、尖閣諸島の場合は、漁船領海に一度や二度踏み込んだからそれで事実関係が狂ってしまうというような、そんなものではないぐらい日本領有権は明確になっているように思います。  外交というのは、相手の国によって、あるいはまたケースケースによって違ってくると思うわけで、もちろん、国際法の原則というのがありますからそれは貫かなければいかぬけれども、しかし、現実的な対応というのが必要ではないかと私は思うのです。尖閣列島の問題を——尖閣諸島と言うのが正しいのですか、その問題を引き延ばしの材料に使うというようなことは絶対に許すことのできない問題であり、いままでの経過があるわけですから、やはり切り離して条約を進めていくのがたてまえだ、こう私は思うのですが、早期に、ここ何日かのうちに交渉再開するというようなことはあるいはむずかしいと思いますけれども外務大臣として再開のめどをどう考えておられるか、それをひとつ伺います。
  21. 園田直

    園田国務大臣 政府・与党の中にはいろいろ論議のあるところでございますが、交渉再開するについての理解と御協力をだんだんと求めている段階でありまして、少なくとも、交渉再開が間近に迫ったという環境の時期にこういう事件が起こったことは、本当に残念でございます。いままで台湾漁船その他の漁船がこの領海を侵犯したことがございますが、これはこちらの警告によって直ちに退去しているという例がございます。中国の船は今度が初めてでございますが、偶発的であると中国政府は言われておるわけでありますけれども、どうも数の多い点、その他のこと、それからいまなお領海に出たり入ったりされて、昨日の午後五時から本日にかけては領海内には一隻もいないわけでありますが、なお二百隻近い船が集団で領海外の間近なところに集結をしておる、こういう点から理解に苦しむ点があるわけでございまして、それは先ほど申し上げたとおりでございます。いずれにしても北方四島と尖閣列島は、安井先生発言のとおり、全然本質的に違うわけでありまして、これが日本固有領土であることは両方とも同じでありますけれども、一方は不法占拠をされておる。それに対してこちらは絶えず返還主張しておる。尖閣列島の方は、一九七一年になってから、それまでサンフランシスコ条約その他については何ら抗議もなく、サンフランシスコ条約第三条によって、米軍基地として貸与し、定期的に射撃場として使用しておるわけでありますが、それらについても異議がなかった。それが、一九七〇年、この周辺石油があるということから、台湾がまずわが万の領土であるとこう言い、続いて中国も言ったわけであります。したがって、これは御発言のとおり、全然別個の問題であります。しかも、日本厳然として実効的支配をしておるわけであります。そこで、何らか事件が起こるなり抗議がなければ、こちらとしては当然そのままの方がよいわけでありますが、今度のような事件が起こりますと、なかなかそう簡単には処理できぬわけであります。困難な状態に立ち至っておりますものの、本件が友好交渉の障害にならないように期待し、希望しつつ、今後の事態を見守っていくところであります。
  22. 竹本孫一

  23. 上原康助

    上原委員 きわめて短い時間ですので、二、三点お尋ねをしますが、誠意ある御答弁を願いたいと思います。  最初にお尋ねしたいことは、一九七二年の九月の日中首脳会談において尖閣問題、いわゆる尖閣諸島の件についてどういう話し合いがあったのか、御答弁を願いたいと思います。
  24. 中江要介

    中江政府委員 まず一つ明確にしておかなければなりませんことは、日中共同声明の出されました例の正常化の際の両国首脳会談において、尖閣諸島の問題は議題とされたことはないということがまず第一点でございます。  それから第二点は、この首脳者会談の中で、この問題についてたな上げにするというような合意なり了解なり、そういったものがあったかというと、それもないということでございます。  第三番目に、それでは一体何があったのかといいますと、中国側は、この尖閣諸島帰属の問題を取り上げたくないという態度を示していたということでございます。したがいまして、日本政府といたしましては、先ほど外務大臣もおっしゃいましたように、日本固有領土であるという確たる根拠の上に立って、かつ有効支配をしておるわけでございますので、相手の方から取り上げないものをこちらから取り上げるという筋合いのものでもございませんので、中国側がこれを取り上げないという態度を示したことは、それでわが方として差し支えないということで、結果として双方で何ら触れることなく正常化が行われた、そして今度の事件が起こりますまでそういう状態が続いていた、こういうことでございます。
  25. 上原康助

    上原委員 いま三点にわたって御答弁があったわけですが、私もそうであったことを願いますし、またそれが日中政府間のこの問題に対する公式な考え方であったことを期待をするわけです。  念を押すようで恐縮ですが、いささかなりとも、この尖閣諸島帰属の問題をめぐって、日中政府間で秘密協定的なあるいは秘密的な話し合いはないと断言できますか。
  26. 中江要介

    中江政府委員 ないと断言できます。
  27. 上原康助

    上原委員 そうしますと、国交が回復し、正常化して今日まですでに五年が経過しているわけですね。その間中国側同島周辺領海に対する侵犯事件はなかった。それが今回、去る十二日に突如として、しかも——後ほど漁船の数についてもはっきりした報告をいただきたいのですが、大挙ああいう行動に出たというのは、少なくとも何らかの政治的な変動なり情勢の変化があったと見るのが妥当だと思うのですね。先ほど大臣の御答弁にありました偶発的な事件だということは中国側の言い分なので、それをそれなりに理解をしないわけでもありません。だが、偶発的事件として片づけられる性格のものではないと私は思うのです。きわめて残念なことですが。今日こういう挙に出たということの背景なり、どうしてそういう問題が起きたのか、ここいらのことを十分解明をしないといけない問題だと思うのですね。この点については外務大臣はどういうふうにお受けとめになっておられるのか。またこのことについて、先ほど安井先生への御答弁でははっきりしたお答えはなかったのですが、中国政府北京政府として、公式にこの問題に対する見解がわが国政府に寄せられているのかどうか。また、それに対するわが方の照会といいますか、いろいろ問い合わせもやっているようですが、公式のやりとりはどうなっているのか、このこともぜひ明確にしていただきたいと思うのです。
  28. 中江要介

    中江政府委員 私から公式のやりとりについて概略を御説明いたしますと、十二日に事件が起きまして、その翌日、十三日でございますが、東京で中国課長から、在京大使館の一等書記官に対しまして本件の概要、つまり、こういうことが起きた、そして尖閣諸島わが国固有領土であるので、中国漁船の不法な操業や漂泊行為に対しては遺憾であるという遺憾の意を表明して、これらの漁船が直ちにわが国領海から立ち去るように、そして再びこういうことを繰り返さないように必要な措置中国政府にとってもらいたいということを要請して、これを本国政府に取り次ぐように申し入れたわけでございます。そのときに先方は……(上原委員「簡単にしてください」と呼ぶ)はい、わかりました。そのときに先方は、尖閣諸島中国領土であるということで一九七一年の声明に言及したにとどまったわけでございますが、その翌日の四月十四日になりますと、北京におきましてわが方の堂ノ脇公使が先方の王暁雲アジア局次長に申し入れました。そのときには、尖閣諸島中国領土であるという従来どおりの態度を示しつつも、他方、事実関係については、実態を調査しますという返答があったわけでございまして、現在その調査の結果を待っておるということは先ほど大臣が言われたとおりでございます。翌十五日の土曜日になりますと、これは外交チャンネルではございませんが、社会民主連合の代表として訪中しておられました田代表に対して耿ヒョウ副総理がいろいろと本件について説明しました。偶発的な事件であるとか、そういったことを言ったわけです。そこで、偶発事件ならば早速退去をするかと思ったら、日曜日にもまだ二十数隻朝残留しているということでございましたので、十六日の日曜日に、私が在京大使館の肖向前参事官を呼びまして、そしてお話をした、こういうことでございます。
  29. 上原康助

    上原委員 そんな経過はちゃんと新聞に出ているのだよ。問題は偶発事件とたまたま中国を訪問していたある党の代表に言っているわけですね。そのことについて、政府に公式な見解として中国政府からあったかどうかということを私は聞いているということと、それと先ほどの御説明によりますと、これまでそういった領海侵犯はなかった、また、日中間でもこの問題についてはわが国固有領土であるという前提で話し合いが進められてきた、今日こういう突発事件が起きたことについての背景をどう政治的に見ているかを外務大臣からお答えいただきたいというのが私の質問なんです。
  30. 園田直

    園田国務大臣 いま経過は説明いたしましたが、最初田代表に話があって、その後こちらからも問い合わせをし、正式の公電で偶発的なものであるという説明があったわけであります。しかしそういう説明はあったが、いままでなかったものが、急にこういう事件が突発をした、船の数が多過ぎる、それから領海を出たり入ったりするというようなことで、偶発的な事件としてとおっしゃるけれども理解になお苦しむところがあるわけでありますので、向こうの調査の結果及び今後の漁船団の行動等を見守りつつ向こうと折衝を続けているわけでございます。
  31. 上原康助

    上原委員 そうしますと、調査の結果についてはまだ公式な報告はないということですか。
  32. 園田直

    園田国務大臣 ございません。
  33. 上原康助

    上原委員 それはいつごろ期待できますか。
  34. 中江要介

    中江政府委員 現在北京でさらに催促をする申し入れをすべく準備中でございます。
  35. 上原康助

    上原委員 そこで北方問題あるいはまた一方では竹島問題を抱え、今回また尖閣問題というふうに、海洋国であるわが国周辺で非常に領土問題が起きてくるということは、ある面では隣国との善隣友好友好関係を維持発展させる上で、きわめて外交上も国内政治上も障害になることは御承知のとおりなんですね。そこで全方位外交とかいろいろなことをおっしゃって、いかなる国とも親善友好を深めていくのが日本政府外交政策の基本だということを、それは言葉どおりに受けとめれば私は結構だと思うのですね。しかしその日中関係、平和友好条約締結の作業状況を見ると、私はタイミングを失したと思うのです。本委員会なりあるいは内閣委員会でも、私は外務大臣の御見解を求めたのですが、当初、一月いっぱいにはと思ったのが、その後いろいろ自民党の党内事情などがあって三月にずれ、三月は何とか外相訪中というのはあるのじゃないかと国民全体期待をした。しかしそれも果たし得なかったですね。だから私はあのときにも、恐らく五月の日米首脳会談が行われるまではできないでしょうと申し上げた。いやそんなことはない、日中は日中、日米は日米だと大みえを切ったのですが、それができなかった。そういうもたもたしている段階でこの問題が起きたという政府外交の失態についての責任は私は重大だと思うのですね。これについて一体どういうふうにお考えになっておるのかということ。  いま一つは、政府の現在のお考えは、たとえこういう領海侵犯事件があったにしても、日中平和友好条約を早期に締結をしていくという考えには変わりはないと私は思うのですが、一方においてはまた障害になったのは事実なんですね。これをどう調整をしていくかという、このことを国民の前に明らかにして、早急にいまのいろいろなもたもたしたものを解決をしていかなければいけない問題だと思うのです。これに対する外相の決意といいますか、所見を改めてお尋ねをしておきたいと思うのです。
  36. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約交渉再開がきわめて大事であると考えて、一日も早くと努力してきたことは上原議員御存じのとおりでございます。しかし、この事件が起きますと、やはりこの問題も未解決のままほっておくわけにもまいりませんし、国民の不安も出てきたわけであります。そこで中国態度等も見守りつつ、冷静に沈着に処理したいと思うわけでありますけれども、十五日の政府・与党最高首脳会議で決めたとおり、友好条約締結交渉はこのまま進めていくという方針に変わりはない、こういうことでありますけれども、少なくとも、目の前に起きたこの事件解決をされ、しかも、この問題について将来どのようになるのかという見通しがなければ、国民の方も不安でございますから、その点だけが非常な障害となってきたわけでありますが、いずれにいたしましても、よく事情を調べよく聞いた上でなるべく本件を処理をして、友好条約交渉を進めたいという熱意に変わりはございません。
  37. 上原康助

    上原委員 そうしますと、この尖閣諸島帰属問題というか、今度の侵犯事件とは切り離して平和友好条約は進めていく、しかし交渉過程では全く切り離すというわけにもいかないと思うのですね。ここらはどうするのですか。
  38. 園田直

    園田国務大臣 本件が処理されて、少なくとも尖閣列島周辺状態が本事件の突発以前の状況に返ることが第一の問題でありまして、それができましたら、次にはこの問題を国民の方が納得のいくように、将来どう取り扱うのかということも明らかにしなければならぬわけであります。そこで、これとは別に努力はしますが、全然関係なしとは言い切れないものでありますので、本件を速やかに処理して、条約交渉を進めていきたい、こう考えておるわけであります。
  39. 上原康助

    上原委員 言葉を変えてお尋ねしますと、一九七二年の日中首脳会談で話し合われた状況に、日中間のこの問題を含めての話し合いの基本といいますか、スタートラインに一応戻す、そういうふうにお考えになっておられるわけですか。
  40. 園田直

    園田国務大臣 簡単に申し上げますと、共同声明の線に回復するということを私も考えておるわけであります。
  41. 上原康助

    上原委員 そこで、今回中国漁船領海侵犯が大きく政治問題、社会問題化してきたわけですが、海上保安庁にお尋ねしますが、この周辺において台湾漁船の侵犯状況は一体どういうふうになっているのか。特にこの一月から三月にかけて、従前の倍以上になっていると聞かされているのですが、御報告をいただきたいし、また、これに対して保安庁はどのように対処してきたのか、今後の御方針を含めてお答えをいただいておきたいと思います。
  42. 村田光吉

    村田説明員 領海法施行後、沖繩周辺海域の領海に不法入域いたしました台湾漁船は九十一件、そのうち八十四件が尖閣諸島周辺でございます。  海上保安庁では、沖繩復帰以来、巡視船及び航空機をもって尖閣諸島周辺海域について重点的な警備を実施してまいりました。今回の中国船領海侵犯事件の発生を知るや、他の管区海上保安本部から直ちに大幅な巡視船、航空機の増派を行いまして、今度の事件に対処いたしております。今後とも諸情勢を勘案いたしまして一層厳重な警備を実施いたしまして、付近海域における不測の事態の発生に備えていきたいと存じておる次第でございます。
  43. 上原康助

    上原委員 この八十四件というのは、いつからいつまでですか。
  44. 村田光吉

    村田説明員 これは昨年七月一日領海法施行して以来でございます。
  45. 上原康助

    上原委員 そうしますと、これまで台湾漁船の侵犯というのもしばしばあったということですね。
  46. 村田光吉

    村田説明員 そのとおりでございます。
  47. 上原康助

    上原委員 そこで、時間がありませんので、状況だけわかりましたが、今回の中国漁船の侵犯があったこと、あるいはまた台湾漁船の侵犯状況等について、今回の事件についてあるいはこれまででも海上保安庁から、そういう状況を空中撮影してくれとかあるいは侵犯状況調査の上で、自衛隊に協力要請とかそういうのをやった前例はありますか。
  48. 村田光吉

    村田説明員 現在まではございません。
  49. 上原康助

    上原委員 その件はありませんね。
  50. 村田光吉

    村田説明員 ございません。われわれの方にも航空機等を所有いたしておりますので、必要がある場合われわれの方で措置いたしております。
  51. 上原康助

    上原委員 それと、今後同諸島周辺の漁民の安全操業、安全確保をしていくというのも政府のやらなければいけない大きな任務であるわけですね。その安全確保の問題は、海上保安庁第十一管区の整備状況で十分できるのかどうか、また、若干補強なども、保安庁の施設問題を含めてやらなければいけない面もあると思うのですが、その方針はどういうふうになっているのか、お答えをいただきたいと思います。簡単にお願いします。
  52. 村田光吉

    村田説明員 先ほど申し上げましたように、今回の場合も他の管区海上保安本部から巡視船艇、航空機を応援派遣したわけでございますが、海上保安庁といたしましても、今回の事件で十分分析いたしまして、十一管区海上保安本部を増強いたす方向に進めてまいりたい、このように考えております。
  53. 上原康助

    上原委員 そこで、時間でありますので、後の御質問の方々に御迷惑もかけられませんし、最後に外務大臣中国首脳と本当にこの問題について誠意をもって、日中友好の立場でやっていけば必ず解決できる問題だと私は思うのですね。八方美人ではいけないと思いますよ。本当に情理を尽くして中国側とお話し合いをするという、いまこそ日本外交の誠意を示すべき時期だと私は思うのですね。そのことを大前提にしていただいて、平和友好条約締結問題、あるいはいま何といったってあと残されているのは、台湾問題を含めて自民党内のもたもたですよ。こういうことを早急に調整をしていただいてやるということと、同時に八重山の方々あるいは宮古の方々、沖繩の漁民あるいは九州各県の漁民の皆さんは、あの尖閣列島海域を豊富な漁場として今日までやってきているわけですから、この問題についても、外交的に漁民の皆さんが安心して漁業ができるような方途を早急に確立をしていただきたい。そのために積極的にお話し合いをいただきますね。
  54. 園田直

    園田国務大臣 ただいま、まず当面の事件の処理と、それから後その問題をどう取り扱うかということをやり、なるべく早く友好条約を進めていきたいと考えておるわけでありまして、こういう事件が起こった以上、そういう問題について誠意をもって話し合うべきであると私も考えております。
  55. 上原康助

    上原委員 安全操業確保の問題についても……。
  56. 園田直

    園田国務大臣 それもそのとおりでございます。
  57. 上原康助

    上原委員 終わります。
  58. 竹本孫一

    竹本委員長 斎藤実君。
  59. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 私は外務大臣北方領土問題について御質問をいたしますが、その前に漁業問題について水産庁にお尋ねをいたします。  御承知のように、ソ連の二百海里外でのサケ・マスの扱いを決める日ソ漁業協力協定交渉が、日ソ間で四万二千五百トンで合意をしたというふうにきょうの新聞にも報道されております。これは、昨年はサケ・マスは六万二千トンであったのが今回四万二千五百トン。そうしますと三一・五%のダウンになるわけでございます。今回の交渉ではソ連が新しく北緯四十四度以北を禁止区域にするということで報道されております。この区域は公海でございまして、いままでわが国が自由に操業をしてきた区域です。ソ連は、公海といえどもサケ・マスに限ってソ連の管轄下に入るというもので、まことに不当きわまる要求だというふうに私は言わざるを得ません。仮に四万二千五百トンで合意したとしても、これでは漁場が縮小されて四万二千五百トンは消化がむずかしいのではないかと私は思います。仮に報道されているような事態になれば、この問題はわが国のサケ・マス漁業の死活問題でありまして、断じて容認はできない問題だと私は思います。  これに関連しまして当然予想されるのは減船問題です。昨年も五百五十一そうの減船。政府は三百二十六億円の補償をいたしました。そのほかに千七百六十六そうがとも補償するために三百八十七億円を借金をした。これはまだ返していない。仮にいま三一・五%ダウンすれば、当然計算では七百そう近くが減船になるだろう。そうしますと、大まかに見ても一千億程度の補償ということが当然起きてくるだろう。こういうふうに私は認識をするわけですが、この操業区域の拡大のために中川農林大臣も一生懸命やっていると思います。しかし私は、この操業区域の拡大のために積極的に交渉すべきだと思うし、これは、外務大臣、閣僚でございますので、さらに中川農林大臣に対して強力に、この操業区域の拡大のために訓令をすべきではないかと私は思うのですが、大臣の御所見をいただきたいと思います。
  60. 園田直

    園田国務大臣 ただいま行われておるモスクワの中川農林大臣とイシコフ漁業相との交渉というのは、日本の置かれた立場からきわめて厳しい環境の中に、しかもこの漁業に対して各国がそれぞれ自国の利益のために厳しい態度に出てくるという状態において行われたわけでありますが、農林大臣はよく健闘しまして、まず第一に問題であった裁判権の問題は大体こちらの意向どおり、それから漁獲量の問題は、まあこれもほぼ何とかなった。いまおっしゃいました漁期の問題はあるわけでありますが、これはまあ大体従来どおりにいけるのではなかろうか。ただ残っておるのは、おっしゃるとおり漁区の問題でありまして、これの問題がうまくいかないと、漁獲量という数字の方がなかなか合わなくなってくるわけであります。そこで、私の方は、中川農林大臣にその最後の問題で健闘されたい、こういうことで中川農林大臣は滞在延期をして、最後の詰めに入っておるところでございます。
  61. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 この問題はわが国漁業の問題の中できわめて重要な問題でございますので、ひとつ積極的に協力的にこれはまとめていただきたい。要望申し上げておきます。  次に、北方問題につきまして、外務大臣訪ソいたしました。この報告にもありますように、領土問題につきましては解決済みだということをソ連側は繰り返し主張されておりますが、この領土問題につきまして、一九七三年十月田中・ブレジネフ会談の結果、共同声明で戦後の未解決の問題であることが確認されていたはずでございます。その後も第三回あるいは第四回の平和条約交渉の際の共同声明でも七三年の日ソ共同声明の当該部分ですね、戦後の未解決の問題を確認をしてきたわけでございます。しかし、今回園田外務大臣訪ソいたし、その交渉では、この田中・ブレジネフ共同声明の戦後の未解決の問題について確認できずに終わったわけでございます。そうしますと、この七三年十月の成果は雲散霧消をしてしまったというふうに判断をしていいのかどうか、いかがですか。
  62. 園田直

    園田国務大臣 私、訪ソの際は、先ほど申し上げましたが、まず第一に歴史的、現実的、国際法的に北方四島はわが国固有領土であるということを主張するとともに、両国間に交わされたる共同声明なるものは条約に匹敵すべき両国の意思の表明であって、これは国際的に表明されたものである。したがって、これに未解決の問題という言葉がはっきり入っているんだが、それを一方的に破棄されることの不当をなじったわけであります。交渉の結果、これに対しては、ソ連は未解決の問題ということでは全然議論をしない。最後に会談があった場合には共同声明を出すのは当然の慣例でありますから、共同声明の話は出てまいりましたけれども、この未解決の問題という文字を落として共同声明を出すならば、一九七三年の日ソ最高首脳の共同声明を退歩させ消滅させることになりますから、この問題が入らないのであれば、一九七三年の共同声明をそのまま生かすべく共同声明をつくることをこちらが拒否したわけでありますから、七三年の共同声明から一歩も退歩はしていない、これが法的な解釈であり、事実であります。
  63. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 実は本年三月の末にソ連のグジェンコ日ソ友好協会会長が記者会見をいたしました。その際に、北方四島一括返還はおろか五六年の日ソ共同宣言でうたわれている歯舞色丹二島の返還にも応じない考えを公式に明らかにしておるわけでございます。一九五六年の共同宣言は国会の承認案件でもありまして、日ソ間では一つ条約でございます。国と国との約束の文書であるはずでございますが、それを二島返還にも応じられないとの発言は私は条約無視だと思います。  そこで、グジェンコ・ソ日友好協会の会長の公式発言に対して公式に抗議する必要があると私は思うがいかがですか。
  64. 都甲岳洋

    都甲説明員 先生の御指摘のグジェンコ海運大臣発言は、これは朝日新聞の特派員の単独記者会見において行われたものと承知しておりますので、そういう意味で公式な発言ではないというふうに私どもは承知いたしております。したがって、このような非公式な発言に対して、これに一一抗議をするということは必要はないのではないかというふうに考えております。もちろん基本的な、二島をもう返さないという発言につきましては、これは先生指摘のように、両国間の厳粛な国際条約である日ソ共同宣言の中において約束されておるものでございますから、これを一方的な発言によって取り消せるような筋合いのものでないということは御指摘のとおりでございます。
  65. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 外務大臣北方領土に対するわが国の歴史的あるいは法律的な主張根拠は数多く出されておりまして、もうすでに出尽くしているというふうに私は考えるわけでございます。したがって、新しい根拠を見出す可能性はないのではないか。大臣は、この北方領土問題については、長引いても粘り強く交渉をしていくことをたびたび表明されていますが、現状では、将来も日ソ両国の交渉は同じことの繰り返しで事態の進展は期待できないのではないか。したがって、北方領土返還の実現は政治的政策論、すなわち国際情勢の変化あるいは日ソ関係の変化に期待する以外に理論的に方策はないのではないかというふうになるわけですが、大臣、いかがですか。
  66. 園田直

    園田国務大臣 先ほども申し上げますとおり、日ソ間には四島のほかは共通する利害が非常に多いわけであります。日本もまたソ連の繁栄その他に対する貢献をしたいとも考えておりますし、ソ連の方も一日本に期待する点はあるわけであります。したがいまして、この友好関係相互理解を深めつつ、四島の問題についても政策的に、政治的に判断をして折衝することは御発言のとおりでありますけれども、さて政治的、政策的とはどのようなことかということになれば、これは交渉の条件に関するわけでありますから、これによって一歩二歩と退歩していくわけでありますから、具体的には考えられませんが、いま発言されましたあなたの御意向は私はよく了解できるわけでございます。
  67. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 交渉ですからいろいろな条件が出てくると思いますが、仮に返還に際して一定の条件を受け入れる用意があるかどうか。たとえば返還される島を非武装地域とするとか、あるいは日米安保条約の適用除外の地域にするとか、こういう条件をソ連が提示した場合には政府はどう対処されますか、お伺いしたいと思います。
  68. 園田直

    園田国務大臣 実は具体的な例がございまして、一九六〇年一月二十七日にソ連のグロムイコ外務大臣が、新しい日米安保条約の署名に関連をして、歯舞色丹の引き渡しに日本領土から、全外国軍隊を入れない、撤退するという条件を一方的に課する内容の覚書を出したことがございます。これに対してわが方は、この共同宣言は日ソ両国関係の基本を律する国家機関によって批准された正式の国際文書である、したがって、国家機関に承認されたこの厳粛な国際約束の内容を一方的に変更し得ないことは論ずるまでもないとしてこれを反論したことがございます。今後の交渉に応じて、交渉する際、いろいろ出てくるでありましょうけれども、まず返還ということが一番先の前提であって、その後に返還、引き渡しをするのにはどういうことがあるのか、こういう順番だと考えております。
  69. 斎藤実

    ○斎藤(実)委員 時間が参りましたので、私の質問はこれで終わります。
  70. 竹本孫一

    竹本委員長 玉城栄一君。
  71. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務大臣には最後にお伺いしたい。  十分しか与えられておりませんので、最初に水産庁の方にお伺いしたいのですが、先ほどの質疑にもありましたのですけれども、いわゆる尖閣諸島領海問題に関連しまして地元の沖繩県の方では、御存じのとおりにあの周辺沖繩県にとりましては優秀な漁場になっておるわけです。御存じのとおりであります。したがいまして、こういう問題が起きまして関係漁民の方々が出漁を見合わせているわけですね。これは沖繩本島から宮古島、八重山、それから与那国と関係漁民がおるわけです。カツオの漁獲シーズンにも入ってくるのですけれども、そういうことで出ていけないというようなことで、実は、地元の県議会でもきのう議会を持ちまして、要請団が政府にきょうも来ておるということです。そして、あした、沖繩県の那覇市の方で、県漁連を中心として関係漁民の団体の方々が漁民大会を持つ。言わんとすることは、安全操業をちゃんと保障してもらいたいというようなことなんです。  それでは、時間もございませんので、水産庁の方からこの問題について、漁民の生活の保障と漁場の確保という点からどういうふうに考えておられるのか、最初にお伺いします。
  72. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 尖閣諸島周辺は非常にいい漁場でございますことは、先生御承知のとおりでございます。今回、中国漁船領海侵犯の問題が出てまいりましたので、当時、私どもの方も、まき網、底びき、あるいは小型漁船等が操業しておった現状がございますので、これらの漁船との紛争が起きないように、まず実態を調査するということが先でございましたが、それと同時に、もし何かトラブルができた場合に、水産庁の船が参りまして、両方の間に入りましてトラブルの解決あるいはそれ以前の防止ということに努めようということで、急遽一隻の水産庁の監視船を派遣して、現在でも現地に待機しております。  なお、現在、小型漁船が約三十七杯ほど魚釣島の周辺で操業しておるという情報を得ております。現在のところ、日本漁船中国漁船との間のトラブルは全く聞いておりません。
  73. 玉城栄一

    ○玉城委員 御存じのとおり、あの諸島周辺は台風常襲地帯でもありまして、たまたま県の漁船が出漁中に台風に遭遇しますと、あの島に緊急避難する場合が多々あったわけです。従来から、適当な島に防波堤をつくってくれとか、あるいは漁港法でいう第四種漁港、離島の漁場の開発あるいは漁船が緊急避難できるような簡単な漁港をつくってもらいたいという要請があったわけですが、実は、あした行う漁民の大会でも、そのことを強く打ち出したいという話が現地の方からあったわけですが、そういう第四種漁港指定申請をされた場合に、水産庁としては当然御検討されると思うのですが、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  74. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 尖閣諸島に避難港を設置してほしいというお話は、まだ私どもの方は沖繩県から伺っておりません。沖繩県からちょっとお話がございましたのは、あの辺で漁船が仮泊する場合に、いかりを打った場合に、いかりが岩礁にひっかかって起きてこないので、ロープを切っていかりを捨てるというような事態が間々あるので、何かがっちりしたブイを浮かせて、そこに船が着けられるようなことができないだろうかという御相談は、県の水産課長から受けております。これについては、もう少し状況を見て御相談しようということでございます。  なお、避難港につきましては、御指摘のとおり、実施主体でございます県あるいは市町村からお話を伺いましてから、私どもの方はいろいろ技術的な検討その他もやって、それから漁港の申請、指定という手続になってまいるわけでございます。ただ、私どもの方で心配しておりますのは、あそこの場合には非常に海洋の条件が悪いということ、それから、島の周辺に漁港をつくるのにいいような場所がないということもございまして、もし沖繩県の方から御要望があれば、そこらの点をどうやって克服できるかということをまず相互に検討いたしまして、それからいろいろその後の手続に入るということに相なると思います。いずれにしろ、沖繩県から御要望がありましたら、わが方として検討させていただきます。
  75. 園田直

    園田国務大臣 ただいま水産庁からお答えがありましたが、将来、そういう問題が出てくれば、外務大臣としては、農林省水産庁の方に格別の検討を願うように意見を申し述べるつもりでございます。
  76. 玉城栄一

    ○玉城委員 よろしくお願いします。  もう一点は、防衛施設庁です。御存じのとおり、黄尾嶼、それから赤尾嶼ですが、これは米軍の射爆場になっておりますが、この制限水域で漁業補償がされているわけですね。これは前々からですが、今回もこういう問題がありまして、地元の関係漁民から強い要請が来ているわけですけれども、補償額が少ないと言うのです。それで、いろいろ県の方から聞きますと、数字もいただいておりますけれども関係漁業団体への補償、あるいは県当局あるいは市町村にもですけれども、その補償額が果たして少ないのか、もっと上げるべきであるのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  77. 近松眞次郎

    ○近松説明員 赤尾嶼、黄尾嶼にあります制限水域に関係いたしますところの沖繩県の漁業組合といたしましては十一組合ございます。そして、これらの組合が沖繩周辺関係しますところの制限水域は、黄尾嶼、赤尾嶼を含めまして八水域ございます。そして、毎年、これら八水域につきまして一括して補償申請がなされておるというのが現実でございまして、実質的には毎年これに対しまして補償をしておるということでございます。ちなみに、五十二年度におきましては、これらの組合に対しまして約一億五千五百万円を支払っておるわけでございます。それで、この漁業補償は、いわゆる操業制限法に基づきまして、損失を受けた漁業者からの申請によりまして、水揚げ高、経営費等を、現地の組合その他に当たりまして実地に調査を行い、そして適正な補償額を算定しているというふうに私ども考えております。そして、その補償額につきましては、地元の同意を得た上でお支払いをしておるということでございます。  いま先生指摘のように、いろいろと地元の方に不満があるというお話がございますが、われわれとしては、一応適正な補償を払うべく努力しておるつもりでございますが、なお、先生指摘のことでもございますので、また、現地関係者の方々の御意見も十分に拝聴いたしまして、現地調査が必要ならば、またやりまして、なお、適正な補償に努力いたしたいというふうに考えております。
  78. 玉城栄一

    ○玉城委員 ただいまの問題につきましては、漁民関係者からそういう要請もありますので、ぜひともおっしゃるように検討していただきたいと思います。  最後に、大臣にお伺いしたいのですが、御存じのとおり、沖繩の場合は、歴史的に、中国と沖繩というのは、文化的にも、あるいは経済的にも、あるいは人事の交流の問題においても、非常に深い密接な友好関係があったわけですね。そういうようなことで、実は今回こういう事件がありまして、沖繩県にとっても非常に遺憾なことだということで、早くこの問題が解決されて、特にそういう関係漁民の方々が安心して操業ができるような措置が早急にとられてほしいということなんです。大臣とされまして、いま私が申し上げました点についてどのようにお考えになっておられるのか、お伺いしたいと思います。
  79. 園田直

    園田国務大臣 先ほどから申し上げますとおり、尖閣列島周辺に起こった本件をどのように処理するか、これは冷静に見守り、中国の回答を待っておるところでありますが、ただいまの御発言のような点には十分留意をして今後折衝を続けてまいりたいと思います。
  80. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  81. 竹本孫一

  82. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 尖閣諸島の問題ですが、これが日本領土であるということは明白で、疑問の余地はないわけであります。そしてまた、尖閣諸島周辺わが国の漁場となってきたということも間違いのない事実であるわけです。  そこで、最初に水産庁に伺いますが、この尖閣諸島周辺漁場での漁獲高、主な魚種、さらに、この漁場を利用している日本の県はどこどこか、こういうことをまずお伺いします。
  83. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 尖閣諸島周辺で操業しておりますのは、まき網、以西底びきそれから小型漁船によります釣りはえなわ漁業等でございます。現在約二百五十隻が操業しておりまして、漁獲量で約八万トンの生産を上げております。主要なものはやはりサバでございます。そのほか沿岸の釣りはえなわでとっておるものは、タイ、アマダイ、マグロ、カツオ等も漁獲しております。
  84. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 漁場として利用している県。
  85. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 県といたしましては、大体山口から以西の東シナ海の沿岸の諸県、それからさらに大分等、九州の東側の各県も出漁しておられるようでございます。
  86. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 中国船の今回の領海侵犯という事態のもとで、先ほどからもお話がありましたように、地元の沖繩では操業の安全という問題についての不安が出てきているわけです。そういう中で沖繩県議会の決議がなされておりますし、また、あしたには那覇市での漁民大会が開かれるということになっているわけです。特に、これから、沖繩県下の漁船尖閣諸島周辺で揚げております漁獲量の約半分を占めておりますカツオの一本釣り、この漁期を迎えるわけですけれども、この安全が果たして保障されるだろうか。沖繩の各漁業協同組合はこういう問題について不安を持っているわけですが、この不安を解消するにはどうするか、安全操業のためにどのような手だてを講ずるかという問題についての見解を聞きたいと思います。
  87. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 私ども中国漁船領海侵犯事件の発生後直ちに監視船を一隻派遣いたしまして、あの辺で操業しております日本漁船の実態を洋上で完全に把握すると同時に、中国漁船とのトラブルが起きないように未然の防止、あるいは起きたときの処置というようなことに当たらせますために派遣したわけでございます。  その結果、現在のところは以西底びきが約三十隻、それから小型の釣りはえなわ漁船が三十七隻出ております。現在のところでは中国とのトラブルは全くございません。発生しておりませんというような状況でございます。今後も引き続き監視船を派遣いたしまして、あるいは一隻常駐のようなかっこうで置きたいとは思っておりますが、そのようなかっこうでトラブルの発生しないように努力してまいりたいと考えております。
  88. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 いままでは日本の方がどちらかというと、この問題が起きてからは操業を見合わしたというようなこともあってトラブルがなかった。問題は、このトラブルが生じるおそれがあるという不安が現に漁民の中にあるというふうに聞いているわけです。そこでいまの点はそういうお答えといたしまして、外交の問題といたしまして、いま日中の交渉段階にあるわけですけれども、この安全操業という面についてどうとらえられるか、その点をお伺いします。
  89. 中江要介

    中江政府委員 いま外交的にとらえております側面は、あくまでも中国漁船による日本領海侵犯ということでございまして、これがそのまま日本漁船の安全操業に関係のあるものかどうかという点は、今回の事件の真相といいますか、中国側がいま鋭意調査中と言っておりますその調査の結果を見まして、中国側漁船が、これだけの相当の数がこの地域に出たことの意味を見きわめませんと、領海侵犯即安全操業に何らかの影響があるというふうにはまだ判断する段階ではない、こういうことでございます。
  90. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先ほども出ましたけれども、地元漁民からの緊急避難港をつくってほしいという要望の問題です。つけ加えますと、あの周辺というのは、しけになってもこれは一時的なもので、すぐないでしまうというように聞いております。そのために一時的に避難する場所があれば一々漁場を離れなくて済むということで、これは非常に強い要求になっているということです。先ほどのお話を聞いておりますと、この場所という問題が言われておりましたけれども、実は地元の漁協の方から場所についても意見が出されているというように聞いているわけです。全体的に見ましても、結局これは漁民の安全を図って、ひいては尖閣諸島わが国が支配できるという実効支配の内容になるということにもなるわけですが、そのことはともかくとして、漁民の要求としてもこれは重視してぜひ実現すべきものであるというように考えております。場所の問題について地元の漁協からここがいい、ここでできるというようなことまで言ってきていると思うのですけれども、これを実現しなければならない、その必要性を感じておられるかどうか、お伺いします。
  91. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 私どもはまだ沖繩県からお話を伺っておりませんので、沖繩県がどう御判断なさるかはこれからの問題ではございますが、あの周辺に出漁をいたしております漁業者にとって、避難港というものが設置されればより安全に操業できるということではあるだろうとは思います。  ただ問題は、先ほども申し上げましたように、海洋条件その他きわめて悪いところでございまして、またさらに細かい、海底地形だとか土質だとか、そのほかの条件もほとんど資料がございませんような状況でございます。さらにもう一つ申し上げれば、いろいろな工事に使います機具とか資材、こういうものの陸揚げをするところ、あるいは工事に参加いたします人たちの居住施設をどうするかというような問題、あるいは水の問題等もいろいろございます。これらも十分調査した上でないと私どもの方としては何とも申し上げかねる。いまお話のございましたように、漁業者からお話があったところはどこかというところは、私どもはまだ全然伺ってはおりませんが、いずれにしろそういう十分な調査を行った上でございませんと、どのようなかっこうで港をつくるかということは、われわれとしても港が果たしてうまくできるものであるかどうかという判断がつかないということがございます。それからそのほかに、現在の状況ですと工事施工が果たして円滑にいくかどうかというような問題もわれわれとしては検討しなければならない問題であろうと考えております。
  92. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それではもう一つの問題ですが、尖閣諸島周辺での漁獲のうちのほとんどは大型まき網漁船によって占められていると聞いております。そこで、地元沖繩の水揚げは、五十一年度の実績を見ますと、先ほど言われました八万トンのうちの千六百トンほどにすぎないということであります。沖繩の遠洋漁業がいろいろな事情からいま頭打ちの傾向にある中で、沖繩県では資源の有効活用のために試験研究機関の設置を要望しているようですが、これにこたえる用意があるかどうか、これは開発庁の問題なんでしょうか。
  93. 恩田幸雄

    ○恩田政府委員 魚の研究所でございますか。——では私でございます。  私どもといたしましては、沖繩県には現在県の水産試験場がございます。これがある程度老朽化しておりましたので、これに対しまして国庫助成をいたしまして新しい近代的な施設につくりかえたところでございます。この試験場を中心に御活躍願えれば、特に国の水産研究所をあそこへつくるということまでは当面考える必要はないのではないかと考えております。  なお、またさらに沖繩県の漁業の実情、その他いろいろな全体の御要求等もございますれば、またそれは検討いたします。いずれにしろ、人員その他の増加というものはきわめて困難な状況でございますので、きわめてむずかしい問題ではなかろうかと考えております。
  94. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ただ、これもやはり避難港と同じように漁民の強い要望であるということを踏まえて、実情を調べて積極的に検討してもらいたいということを要望しておきます。  ところで、避難港をこの尖閣諸島の島につくる、あるいは試験研究機関の設置というような問題になりますと、日中条約交渉から見て、どうもいままでの答弁では先の話のようですけれども、日中条約交渉というものとの関係について大臣はどう考えていらっしゃるか、お伺いします。
  95. 園田直

    園田国務大臣 いま紛争を起こしているときでありますから、その紛争に対してデモンストレーション的な実効支配の体制をことさらにつくるということは、私は決して賢明ではないと考えます。しかし、付近で操業する沖繩漁民の方々のために、海流がなかなか適当でないし、港をつくるに不便であればあるほど、避難港をつくったり研究所をつくったりするということは十分検討に値することだと考えます。
  96. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 最後ですが、要するに、この領土問題をたな上げにしてしまうということは、これはきわめて間違いであるというように考えるわけです。というのは、この諸島にもいろいろ設備をつくってほしいという地元の希望がありますし、そういう問題から見て、日中条約締結したとしても、結局日本国民がそうした領土問題でそれが使えないということになると、やはり国際的にも軽率とかあるいは自主性の欠如だとかいうような非難が当然出てくるわけであって、尖閣諸島の問題について条約交渉の中でも、もう何回も大臣から外務委員会でも聞いておりますけれども、この締結交渉の中で解決していくという方向をとっていただきたいということを最後に申し上げておきたいと思います。
  97. 中江要介

    中江政府委員 基本的な考え方は、毎回政府側から申しておりますように、日中平和友好条約という条約そのものは、領土問題とは関係がないということが第一点でございまして、他方尖閣諸島につきましては、いま先生たな上げという言葉をお使いになりましたけれども、私どもはたな上げという考え方は全くとっておりません。と申しますのは、日本固有領土であるということに確信を持っておりますし、また古来ずっと有効支配をしてまいっておるわけでございます。サンフランシスコ条約によって一時アメリカに施政権を渡したことはございますけれども、沖繩返還後はまたもとに戻りまして有効支配を続けておるわけでありますので、これはいずれかの国から言挙げされない限り、日本としてはたな上げなんということは考えるまでもない固有領土であって、現に支配している、こういう態度で貫いておりますので、その点は誤解のないようにお願いいたしたい、こう思います。
  98. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 終わります。
  99. 竹本孫一

    竹本委員長 次回は、来る五月十二日に開会することとして、本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十五分散会