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1978-03-17 第84回国会 衆議院 運輸委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十七日(金曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 増岡 博之君   理事 石井  一君 理事 小此木彦三郎君    理事 佐藤 守良君 理事 浜田 幸一君    理事 渡辺 芳男君 理事 石田幸四郎君    理事 河村  勝君       加藤 六月君    北川 石松君       関谷 勝嗣君    田澤 吉郎君       西村 英一君    原田昇左右君       藤本 孝雄君    古屋  亨君       堀内 光雄君    久保 三郎君       佐野  進君    斉藤 正男君       田畑政一郎君    中村 重光君       草野  威君    宮井 泰良君       薮仲 義彦君    米沢  隆君       小林 政子君    中馬 弘毅君  出席政府委員         運輸省船舶局長 謝敷 宗登君  委員外出席者         運輸省船舶局関         連工業課長   清水 正彦君         参  考  人         (一橋大学商学         部教授)    地田 知平君         参  考  人         (日本船主協会         会長)     永井 典彦君         参  考  人         (日本興業銀行         会長)     正宗猪早夫君         参  考  人         (全国造船重機         械労働組合連合         会書記長)   高橋 正男君         参  考  人         (全日本造船機         械労働組合中央         執行委員長)  畑田  薫君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   宮井 泰良君     吉浦 忠治君 同月十四日  辞任         補欠選任   吉浦 忠治君     宮井 泰良君 同月十七日  辞任         補欠選任   太田 一夫君     中村 重光君 同日  辞任         補欠選任   中村 重光君     太田 一夫君     ――――――――――――― 三月十四日  台風襲地帯における気象官署拡充強化に関  する請願石田幸四郎紹介)(第二〇七四  号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二一五六号) 同月十六日  台風襲地帯における気象官署拡充強化に関  する請願薮仲義彦紹介)(第二三一八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月十三日  国鉄播但線整備充実に関する陳情書  (第二〇〇号)  国鉄ローカル線拡充強化に関する陳情書  (第二〇一号)  国鉄貨物駅廃止及び地方線合理化反対に関する  陳情書外二件  (第二〇二号)  地方陸上交通事業維持整備法案等制定促進に  関する陳情書外十九件  (第二〇三号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  海運に関する件(造船業不況に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  ただいま商工委員会において審査中の内閣提出特定不況産業安定臨時措置法案について、商工委員会連合審査会開会申し入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 増岡博之

    増岡委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会開会日時は、委員長間で協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  4. 増岡博之

    増岡委員長 海運に関する件について調査を進めます。  本日は、前回と同様に、造船業不況に関する問題について、集中的に調査を進めてまいりたいと存じます。  本日御出席いただきました参考人は、一橋大学商学部教授地田知平君、日本船主協会会長永井典彦君、日本興業銀行会長正宗猪早夫君全国造船機械労働組合連合会書記長高橋正男君及び全日本造船機械労働組合中央執行委員長畑田薫君、以上五名の方々であります。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  申すまでもなく、今日わが国造船業不況問題は、まことに憂慮にたえないものがあり、その対策の樹立が強く求められております。本問題につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を承りまして、調査参考にいたしたいと存じます。  議事の順序について申し上げます。地田参考人永井参考人正宗参考人高橋参考人畑田参考人順序で、御意見をお一人十五分程度に取りまとめてお述べいただき、次に、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願います。  それでは、地田参考人からお願いいたします。
  5. 地田知平

    地田参考人 私、地田でございます。  私は、本来、海運専門に勉強しておるものですから、造船業はどちらかといえば海運を通じて見ているということで、十分な知識は持ち合わせないのですけれども、一応私なりの考え方を申し上げておきたいと思います。  申し上げるまでもなく、海運造船業ともに大変な不況に陥っているわけでございますけれども、原因は、申し上げるまでもなく、海運に起きた過剰船腹ということだと思います。ところが、同じ不況産業なんですけれども、両方を比べてみますと、現状においても、また将来の展望においても、造船業の方が質が悪いように私は思っております。  その理由はいろいろございます。たとえば現状について申し上げますと、海運の場合には、何といいましても係船という供給を自動調節する作用がありますけれども、造船業の場合にはそういう作用がないということも一つ原因かと思いますけれども、特に将来の問題に関して申し上げますと、海運の場合には、とにかく過剰船腹がなくなれば、これでもって一応均衡状態に到達するわけでして、そこでは景気がよくなるということにはなりませんけれども、しかしながら、一応採算がとれるような状態になるのでございます。ところが造船業の場合には、海運業が仮に均衡がとれたとしましても、それだけでもって不況回復できるようには私は思っておりません。と申しますのは、いま世界でもって持っております造船能力、これをある高い水準操業度操業をするためには、実は、過去において海運業が大きな投資を行いましたその投資と同じテンポでもって投資が進んでいかなければ、造船業好況ということにはならないと思うのでございますけれども、しかしながら残念なことには、現状では、少なくとも常識の範囲内では、過去において起きたような海運業投資が近い将来に起きてくるものとは考えられないのであります。  その理由は幾つかございます。一つは、これもまた申し上げるまでもないと思うのですけれども、世界経済が過去におけるような高成長を遂げるかどうかということについては大変疑問がある、むしろ低成長でもって進むことを考えた方がよいのではないかというような状態がございます。それで、これは当然のことながら海上輸送にも影響いたしまして、海上輸送が過去のようなテンポでもって伸びていくことは予想できないのであります。そして、それに伴って船腹需要も過去ほど大きなテンポで増加するというふうに期待することは困難であることがその第一点でございます。  第二点は、現在の造船業設備は、過去に起きました海運の仮需要、これを言葉が適当でないかもわかりませんけれども真性需要と考えまして、それに応じた設備拡大をやっているわけでございます。こういう仮需要が出てくる状況は、海運の場合には過去にも何編か繰り返されたところでありますけれども、それを真性需要と見誤ったところに造船能力が必要以上に拡大した一つ理由があるのだと思っております。  第三点は、過去における海運投資は、ちょうど一九六〇年代の海運不況のときにおいても、なお船腹に対する需要があったことからもわかりますように、船舶技術進歩に誘発された需要でございます。それがかなり大きな部分を占めていたと思うのでございます。ところが私、造船技術について非常に暗いのであるいは間違っているかもわかりませんけれども、どうやら造船技術進歩もある段階まで到達いたしまして、これ以上、過去の一九六〇年代に見られたような、あるいは第一次のスエズ運河の動乱の後から起きたような造船技術進歩がどうも期待できないのではないか、そういう意味で、技術進歩に誘発された造船需要がこれからは余り大きく期待できないのではないかと思います。  この三点でもって、大体現在の世界造船需要は少し大き過ぎるのではないかと思われます。そして過去に起きたような船舶に対する需要が同じようなテンポで起きてこないということから、造船不況というものをかなり深刻なものと受けとめた方がいいのではないかと考えます。  いま申し上げましたような状態を典型的にあらわしたのが日本造船業であると私は考えております。言うまでもなく、造船能力というのは、言葉が悪いかもわかりませんけれども、いささか肥大し過ぎたと考えております。それからもう一つ日本造船業というのは、後でまたそれに関連して申し上げますけれども、輸出船比重をかけ過ぎているということが第二点。第三点は、技術の問題で、これもまた私、よくわかりませんけれども、われわれ素人から見るところでは、どうやら大型船技術開発技術が集中いたしまして、そのほかの技術が決して無視されていたわけではないのでしょうけれども、どうやら比重大型船開発に傾き過ぎたという点があるように思われます。第四点は、御承知のように国際貿易だけではございませんで、そのほかいろいろな点でもっていわゆるナショナリズムが起きてきた。そこで、輸出船比重をかけて設備拡大をした日本造船業にとっては、これまた常識的なことでございますけれども、かなり設備の過大が起きていると考えざるを得ないと思うのです。  そこで、将来の日本造船業はどうあるべきかということなんですが、これはいろいろな機会にいろいろな方面から申されているようでございますので、素人の私が特に多く申し上げる必要がないと思うのですけれども、ただ言えることは、国内船にもう少し比重をかけるようにならざるを得ないし、またそうすべきだと思います。  私の勉強した範囲内では、たとえばイギリス造船業を見ましても、自国海運業自国の海軍の発注をベースにして、その上での発展を遂げてきたという歴史的な事実から見ましても、もう少し国内船比重をかけるようにしなければならないと思われる。ところが、現在の日本海運業は、確かに世界一であるとか世界二であるとか申しますけれども、海運業船舶に対する需要だけを基礎にして現在の日本造船業を維持できるかといいますと、私は決してそうは思っておりません。  たとえば、現在、日本造船能力は千八百万トンとも二千万トンとも言われるわけでございますけれども、過去における計画造船最高発注量を見ても、三百数十万トンというところでもってとどまっていることからもわかりますように、日本海運業がかなり高い水準造船業操業度を維持するだけの発注をする能力はないと思っております。とりわけ現在は非常に悪い状態でございまして、御承知のように海運業不況でございます。特に日本海運業は、かなり国際競争力を失って、そのために困難な状態にある。そこでもって投資の意欲は当然ながら減退しているわけでありますし、それどころか減量が必要だと考えられている時代でございます。  そういう中で、自然のままでもって投資需要船舶需要を待つとするならば、とうてい日本造船業操業度を維持するだけの需注を期待できないだけではなく、恐らく船舶発注はほとんど考えられないではないかと思うのでございます。  そこで私、新聞等で拝見している範囲内では、日本海運業に対して造船需要政策的に喚起しようという案があるようでございまして、私、それも一つ方法には違いないと思います。ただ、この場合に申し上げておきたいことは、海運政策との整合を必要とするということでございます。また後でいろいろ御質問があったら申し上げたいと思いますけれども、一つの例だけ申し上げておきます。  これはいろいろ問題になっているようで大変生々しいのですけれども、過去の事実でございますから申し上げておきたいと思いますのは、一九三五年にイギリススクラップ・アンド・ビルド政策をとりました。これはもちろんスクラップ・アンド・ビルド政策なんですけれども、非常に限られたスクラップ・アンド・ビルド政策で特に不定期船についてのSB政策を導入しようと考えたわけでございます。ところが、そのときにおけるイギリス海運業状況というのは、かなり日本と似ておりまして、原因については幾らか違いがあるかもわかりませんが、一言で言いまして国際競争力を失ったということであったわけです。そういう状況のもとでSB政策を導入しましたが、結局これは失敗に終わりました。つまり海運業がある程度国際競争力を持った上で、その上でSB政策を導入すれば確かに効果がある可能性はあるとは思います。しかしながら、そうでないような状況のもとでは、造船業の振興のために特に海運業に対して船舶を建造させるということはなかなか困難ではないかと私は思います。  要するに海運業造船業とが絶えずきわめて密接な関連を持って経済的にも政策的にも発展してきたという事情からもわかりますように、造船政策海運政策というものは整合させなければならないということを、この機会に強く申し上げておきたいと思うのでございます。  私は、日本海運国際競争力回復する手段はないわけではないと思います。よく言われますように、日本国際競争力というものが、船員費一つの重要なファクターになりまして、それが国際競争力を喪失した一つ原因であるというふうに言われております。私もその点を否定できないと考えます。その場合に私の申し上げておきたいことは、労働組合船主との両方が、現状のままではとうてい国際競争力回復を期待することはできませんので、もう少し高度な見地から自分たち利益というものを考えた方がいいのではないか。私、これもまた寡聞でもってあるいは正確でない情報かもわかりませんけれども、たとえばいま、一つの船がありまして、そして、この船が国際競争力がなくなったということから、売ってしまえば確かに何人かの船員は失業するわけでございます。しかしながら、その船員がもしも、たとえば先ほど申し上げましたように、不確かな情報ではありますけれども、仕組船に乗せれば、確かに、いままでだけの雇用は維持することができないにしても、何人かの船員は就職の道を見つけることができるというふうに聞いております。そうしますと、どちらが利益なのか、つまり現状を維持しようと考えることが利益なのか、それとも一歩譲って、たとえばいま申し上げましたような仕組船に乗っかることが利益なのかということの判断を、いわば船員全体の立場から考えてみる必要があるのではないかというふうに思っております。  それはそれといたしまして、とにかく国際競争力をある程度回復した上でもって、やはり造船政策との整合を考えながら政策を進めていくべきだというふうに思っております。その場合に、問題になるもう一つの点として、計画造船との調整をどうするかという問題があるかと思いますが、これはちょっと私も判断つきかねますので、ここでは問題点だけを指摘しまして、これ以上申し上げないことにいたします。  最後に申し上げておきたいことは、造船業のいろいろな不況対策として国内陸上部門における需要喚起ということが問題になっているようでございます。確かに、イギリスその他、私、最近聞いた話でございますけれども、造船業保護政策というのは、大体地域経済というものを大変重視しまして、その地域経済との関連でもって造船保護政策が出てきているようでございます。その場合に、日本でもやはり造船業が行えるような、陸上における内需喚起ということももっと考えていいのではないか、特に中小造船業の場合に、これは地域経済と密接に関連している度合いが強いと思うのですけれども、それに対して何か方法がないだろうか、たとえば地域開発のための公共投資というようなものが中小造船業需要喚起するような点でもって行えないかどうかということも考えられるのではないかというふうに思っております。  大変まとまりのないお話をいたしましたけれども、何か御質問があればまた後でもってお答えすることにいたしまして、一応私の申し上げたいことをこれでもって終わっておきたいと思います。
  6. 増岡博之

    増岡委員長 ありがとうございました。  次に、永井参考人にお願いいたします。
  7. 永井典彦

    永井参考人 日本船主協会会長をしております永井でございます。  わが国海運育成強化につきましては、かねがね一方ならぬ御指導、御高配をいただいておりまして、まず厚く御礼申し上げたいと思います。  本日は、造船業不況に関する問題と関連いたしまして、海運に関する現状を申し述べよとのことでございますので、御趣旨に沿って申し述べさせていただきたいと存じます。  改めて申し上げるまでもございませんが、海運造船は深い相関関係にあり、海運がよくなればおのずから造船工事量もふえるわけでありますから、この観点に立って、海運現状につき御理解を得たいと存じます。  日本は、御承知のとおり島国であり、その上資源が非常に乏しいので、貿易立国でいかねばならぬ宿命を負っており、物資輸送の大動脈としての海運業は欠くべからざる基幹産業であり、同時に、経済安全保障観点からも日本海運は重大な国家的任務を負っていると自負しております。  ところで海運業、なかんずく外航海運は、世界経済動向に直接的な影響を受けます。特にタンカー不定期船運賃市況は、世界経済動向に極端に左右される特性を有します。オイルショック以降の世界的規模経済停滞は深刻でありまして、わが国を初めOECD諸国を中心とする各国政府のたび重なる景気浮揚策にもかかわらず、いまだ本格的回復の兆が見られぬことは御既承のとおりでございます。  これがため、世界海上荷動きは低位に推移しておりまして、他方高度成長期に大量発注されました船舶が、オイルショックの後も相次ぎ就航してきたために、船腹需給バランスが大きく崩れ、その回復のめどがなかなかつかず、世界海運過剰船腹の重圧のもとで未曾有の不況のさなかにさまよっておる次第でございます。  かかる客観情勢の中におきまして、日本海運は、外国船くつわを並べ、裸の国際競争をしておりますが、残念なことには、近年、日本海運国際競争力はとみに減退してきており、われわれといたしましては、世界的な海運不況日本海運固有の問題としての国際競争力低下という二重の苦しみにあえいでいる現状であります。  まず、海運不況の実態を部門別に見てみますと、初めに定期船でございますが、他の部門と比べますと比較的安定はしておりますが、円高影響も次第に顕在化しつつあり、オイルショック以降も活況を呈しました産油国向けプラント貨物成約量も、世界的経済不況を背景とした輸入国工業化計画のおくれも加わって減少傾向にあり、先行き憂慮材料となっております。  他方、期待された輸入も、内需の不振により目下目立った増加もなく、当分定期船に多くを期待することはできません。  こうした海上荷動き量停滞に加え、定期航路秩序に関しましても深刻な問題を抱えております。  すなわち、海洋自由の原則は多くの発展途上国貨物留保等措置により侵害されつつあり、他方東欧圏諸国海運の一部は、この原則を最大限に乱用いたしまして、海運同盟に参加しないまま大幅な運賃値下げによる非商業的盟外船活動を行い、既存の秩序に脅威を与えております。前者については昨年対抗法を御用意いただきましたが、定期船部門の今後の安定のためには、後者の非商業的盟外船活動についても、時宜を得た御措置をいただきたいと願っております。  次に、タンカーでございますが、昭和四十八年のオイルショック前には、ペルシャ湾から西欧、西ヨーロッパ向けVLCC、すなわち二十万トン以上の大型タンカーのことでございますが、VLCC成約運賃最高は、タンカー運賃の指標のワールドスケールという指数であらわしますと四一〇であったものが、昭和五十年前半には約二十七分の一の一五にまで低下して、現在は二〇前後で推移しております。  同様に、ペルシャ湾から日本向けの例をとってみますと、これを二十三万トンの大型タンカーの例で金額的に見ますと、ペルシャ湾日本往復約四十日の航海で、好況のときには最高航海当たり運賃収入約十三億円、費用が約三億円、差し引き十億円の収益を上げることができたわけでございますが、現在は同じ一航海当たり運賃収入は一億一千万円、費用は少しふえまして三億五千万円、差し引き航海当たり二億四千万円の赤字となりまして、海運市況が乱高下し、かつ、なべ底に張りついたまま約四年を経過した現在の海運不況がいかに激しいかを御理解いただけると思います。  現在、世界タンカー船腹量は、本年末で約三億三千万重量トン、兼用船、すなわち油と鉱石等両方積めます兼用船が五千万重量トン、合計約三億八千万重量トンと推定されますが、五十三年度のタンカー船腹推定需要量、幾ら要るかという量は、約二億八千万重量トン程度と思われますので、総船腹のおよそ二六%、約一億重量トンが過剰でございまして、そのために現在約四千万重量トン係船したり、その他減速運航する等の工夫で対処しておりますが、それでも年々膨大な赤字を蓄積している次第でございます。  要は、いつ船腹需給バランスがとれてくるかという点にございますが、石油海上荷動き量は、昭和五十一年の十六億八千万トンから昭和五十二年には十七億六千万トンに、約四・八%の伸びを示したものの、今後の予測に関しましては楽観は許されません。  すなわち、昨今の世界経済の低い成長率恒常化の感がございますし、次に述べます悲観材料をも勘案いたしますと、本来的には船腹調整以外には市況回復はあり得ないと申しても過言でないと存じます。  今後の好材料といたしましては、アメリカ石油国家備蓄の増進がありますが、他方悲観材料といたしましては、市況がよくなってまいりますと、現在やっております減速運航係船の解除が行われますし、また北海、アラスカ、メキシコ、中国等の距離の近い油田の開発、増産、さらにはタンカーにかわるパイプラインの利用、スエズ運河拡張等船腹需要減殺要因他方にはあるわけでございます。  このような事情によりまして、タンカー船腹需給バランスいたしまして市況回復に向かうのは、昭和五十七年から五十八年、すなわち一九八二年から八三年ごろでないかと考えておりますが、多情報化時代の今日、その間相当の船腹絶対余剰の存在が周知の事実である以上、少々の荷動き増市況に好影響を与えないものと思う次第でございます。  次に、不定期船事情を簡単に申し上げますと、この分野におきましてもタンカーと同様の傾向が見られ、たとえばアメリカの東海岸にハンプトン・ローズというところがございますが、このハンプトン・ローズから日本までの石炭を例にとりますと、昭和四十九年に最高トン当たり二十五ドル五十セントしておりました運賃が、現在、約七ドルのレベルで推移しておりまして、採算線を大きく割っております。  これを五、六万トンのバラ積み船で金額的に見てみますと、ヨーロッパ揚げ切り後、ハンプトン・ローズ−日本、約四十八日の航海でありますが、好況時には六万重量トン型で最高航海当たり運賃収入四億二千万円、費用が約一億六千万円、差し引き二億六千万円の収益を上げることができたわけでございますが、現在は運賃収入が約九千万円、費用が一億八千万円、差し引き航海当たり九千万円の赤字となっております。  これほどの市況低迷の原因は、タンカーと同様に船腹過剰にありますが、これは高度成長時の落とし子である新造船の竣工とタンカー不況によるタンカー新造の取りやめに伴う船種変更代替建造等の結果もたらされました船腹増と、ドライカーゴーの海上荷動きの鈍化が重なったことに起因している次第でございます。  現在、世界のバルクキャリアの推定船腹量は、本年末で約一億三千八百万重量トン、これに対しまして五十三年度の推定船腹需要量は約一億七百万重量トン、すなわち、先ほど申し上げました兼用船の流入を計算外といたしましても、約三千一百万重量トンの船が過剰となっているわけでございます。  一方、荷動きの方を見ますと、鉄鉱石、石炭、穀類の三品目が世界のドライカーゴーの荷動きの約三四%、これをトン・マイル・ベースに引き直しますと、すなわち、トンとマイルを合わせたものでございますが、トン・マイル・ベースに引き直しますと、約五〇%に相当するわけでございます。すなわち、鉄鉱石、石炭、穀類の三品目が海上荷動きの五〇%に相当するわけでございますが、これも主要国の景気停滞によりまして鉄鋼消費量は減退しており、このために日本、ヨーロッパの鉄鉱石、石炭の輸入減少傾向にあり、昭和五十二年は前年度に比しまして三品目ともに海上荷動きが目減りしておる次第でございます。  これがため、現在約千二百万重量トンの船を係船する等の措置がとられておりますが、海上荷動きの低迷は相当長期にわたると思われますので、その間市況も現在のどん底からなかなか抜け出しがたく、これが本格的に改善してくるのは、船腹需給バランス回復するであろう昭和五十六年ないし昭和五十七年、すなわち一九八一年から八二年のころと思われる次第でございます。  市況がこのような状況でございますので、海運の企業経営はいよいよ深刻かつ厳しい状況となってきております。比較的中小に属する企業会社で倒産が生じておりますことは御承知のとおりでございますが、五十三年度以降資金繰りがさらに窮迫してくるであろうことは避けられないことと存じます。  このような不況世界海運に共通する問題でありますが、前段において触れましたとおり、日本海運はこれに加え、固有の問題といたしまして国際競争力の減退という致命的な離間を抱えております。  まず、これを一船当たりの国際競争力の面から見てまいりますと、就労条件、船員制度、賃金水準の上昇等の要素のために、予備員の費用も含めた一船当たりの船員費がきわめて割り高となってきたために、欧州先進国海運と比べても日本船は国際競争力を著しく欠いてきております。さらにこの傾向は、円為替レートの高騰によりましてますます深まってきておる次第でございます。  日本海運の健全な発展のためには、就労条件、船員制度等を見直して、再び日本船の国際競争力回復することが不可欠であり、また、この解決は雇用の安定にも通じますので、目下労使間にて鋭意自主努力を傾注しておる次第でございます。  次に、企業としての国際競争力の面でありますが、さきにも述べましたとおり、海運は市場変動が他産業に比較して極端に激しい産業であり、各海運企業が好況時に企業内部に利益を十分蓄積し、経営を安定させ、市況下落時に備えなければならないという宿命を持っておる次第でございます。この蓄積力の大小が国際競争力不況抵抗力となってあらわれる次第でございます。  わが国海運企業の場合は、昭和三十九年の再建整備法に基づく集約により自立体制を固めつつあったのでございますが、しかしながら、その後の国民経済の急激な伸びにより高まりました船腹需要に応ずるために、ほとんどすべて借入金による船隊拡充を余儀なくされた結果、他の先進国海運と比べた場合基盤が脆弱なために、現在の不況下において企業としての国際競争力の弱さを露呈しております。  われわれといたしましても、あらゆる努力を傾注いたしまして、この至難な経営危機を乗り切り、将来にわたり海運に課せられました使命遂行に努めたいと存じておりますので、先生方におかれましても、何分の御理解と御支援を得たいと考えております。  海運現状は、以上概観してまいりましたとおり、世界的規模において、また、それにも増して日本海運として深刻な局面に直面しておるのでございます。  もちろん海運造船は深い相関関係にあり、われわれも造船不況の実態は十分に認識しておりますので、でき得る範囲で極力造船不況対策に協力したいと考えております。しかしながら、海運自体が非常事態下にある現在、海運不況を克服し、かつ日本海運が一船当たりにおいても、また企業といたしましても国際競争力回復することが、新しい船舶の建造に結びつく造船業の根本対策になるわけでございますので、今後、諸施策の検討に際しまして、すでに沈みかけており、何とか浮上しようと努力しております海運に新たな負担となるのではなく、逆に両業界双方に魅力があり、双方を浮上させるに役立つものとなるよう御高配いただければありがたいと存じます。どうもありがとうございました。
  8. 増岡博之

    増岡委員長 ありがとうございました。  次に、正宗参考人にお願いいたします。
  9. 正宗猪早夫

    正宗参考人 正宗でございます。  造船業の当面の不況問題につきまして、金融経験者の立場から一言意見を述べさせていただきたく存じます。  わが国造船業界が直面しております不況の実態や今後の見通しにつきましては、すでにそれぞれ業界の方々等よりお話がございましたようですし、私も大体は同じように見ておりますので、その点につきまして詳しく申し上げることは避けさせていただきたいと思います。  ただ、お話の皮切りとして、私の立場から造船業に対する認識といったようなことを初めに申し述べさせていただくこととしたいと存じます。  皆様御高承のとおり、わが国造船業は、日本の経済及び海運業発展とともに成長をいたしまして、昭和三十一年には世界第一の造船国となり、わが国の重要な輸出産業の一つとして大きな役割りを担ってきたわけでございます。しかしながら、オイルショック以後、造船業世界的に極端な需要不振に陥りまして、わが国造船会社でも、五十年度以降操業度は急速に低下いたしました。五十二年度にはついに最盛時の四十九年度に比べて約四〇%も落ち込んだ操業状態を余儀なくされているのでございます。  こうした状況のもとにおきまして、現在までにすでに経営的に破綻を来してしまった企業もございますわけで、今後のことも考えますと、いまやわが国造船業界全体が容易ならざる事態に立ち至っているわけでございます。  このような事態へと急速に転落いたしました原因を考えてみますと、突き詰めればオイルショック前の昭和四十七年から四十八年にかけての国際的なタンカー建造需要の盛り上がりと、それに対応した造船設備の大幅な拡充にあると申し上げてもよろしいと存じます。そのころのタンカー発注量は、当時の世界全体のタンカー船腹量にほぼ匹敵するほどの膨大なものでございました。こうしたタンカーの大量発注の直後、不幸にしてオイルショックが発生し、現在のタンカー及び貨物船の世界的な過剰状態につながったわけでございます。そして、このような船腹過剰の状態は、少なくとも今後数年間は続くものと考えられますし、その間わが国造船業も、これまでの受注残を食いつぶしていくというわけでございますから、事態はさらに一段と深刻になり、これから数年間は、過去の最盛期の三分の一から四分の一程度の仕事量しかないという極端な不況を耐え忍んでいかなければならない状況が続くのではないかと考えております。  このような深刻な状態は、他の産業では余り例を見ないものでございます。現在、造船業のほかにも、いわゆる構造不況業種と言われる産業があることは御高承のとおりでございますが、これらの産業には個々それぞれの事情はございましょうが、その苦境の原因は、突き詰めれば設備の過剰または国際競争力の低下あるいはそれら二つの要因の組み合わせということになるかと思います。  造船業の直面している不況も、程度の差はありますにしても、これらの原因によるわけでございます。ただ、造船の場合には、供給能力に対する需要不足が他の産業と比較して極端に大きいこと、しかも、わが国造船業の場合には、すでに国内需要はもちろんのこと、世界の市場をもみずからの基礎的な存立基盤として組み込んでしまっておりまして、そのような状況下で世界的な需給のアンバランスに直面したという点が現在の厳しさを倍化させておるものと考えます。他の産業の場合には、ある程度設備の休廃止を行い、かつ国内景気刺激を行うことによる内需の増加によりまして需給バランス回復が相当程度期待されるものが多いのであります。また内需の増加と関連各業界も含めた構造改善策との組み合わせであるとか、海外立地の促進などの工夫によりまして、企業としての将来性を期待できるものがあると存じますが、これに対し造船業の場合には、かなりの数の企業が私企業として存立し得なくなるような絶対的な需要不足が世界的規模でこれほど急速に起こったということは、他の産業ではなかなか考えにくいことでございます。この点が造船業を他の不況産業と比較した場合の最も大きな違いではないかと考えております。  このような苦しい状況の中で、造船業界の方々を中心にいろいろな対応策をすでにお考えのことと存じます。そこで、業界全体としての対策を皆で考える場合の前提といたしまして、金融機関の目に映ったわが国造船業界の特色といったようなことをここで再確認しておくことも意義のないことではないと思われますので、二点だけ挙げさせていただきたいと存じます。  その一つは、造船業は御承知のとおり、いわゆる労働集約型の産業でありまして、しかも関連産業も含めますと、全国で約三十一万人もの人々が従事している、すそ野の広い業界であるという点でございます。  第二は、いわゆる業界構造が非常に複雑な面を持っているという点でございまして、設備の規模を見ましても、一社で超大型ドックから中小型の船台までを全国的な広がりで持っているという大規模企業から、中小型船台を一基ないし二基しか持たない小さい企業までいろいろございますし、また、その業態を見ましても、大手企業のごとくむしろ総合重機械メーカーであって造船業はその一部分にすぎない企業から、造船専業とも言える企業までバラエティーがありまして、収益力や内部蓄積の大きさ等にも大きな格差があるように見受けます。  企業の数では中小型船台を一基ないし二基しか持たない造船専業者が圧倒的な割合となるのでありますが、このような中小造船は大手企業との結びつきも全体的に見ればさほど強いとも思われず、独立色の濃い企業が大多数を占めているように見受けられます。  したがいまして、これらの点を要約いたしますと、この業界の特色は、むしろ中小造船を中心とする労働集約型、地域密着型の産業というふうに規定できるのではないかと思うのでございます。  このような造船業界の特色からしまして、今後、業界全体としていろいろな対策を考えていく場合にも、他の産業に比べまして事柄をむずかしくする、あるいは影響するところが大きいという面が出てくるわけでございます。  造船業と金融機関との取引関係につきまして、従来は無論、直接造船業との接触、取引がございますが、それと並行してというか、あるいは通常それ以上の比重を持って、銀行は造船所への金融を円滑にするためには、造船発注主、船主側への融資を大いに進めて、造船所へは代金回収等の円滑な期待をするということを応援するのが一つの通常の形として考えられてまいっております。無論、直接造船所との取引もあるわけではございますが、それは必ずしも一律に一定してという形を持っておりません。金融機関の取引先との接触は業界に対して一律一体ということはまず考えにくいのでありまして、一般的に申しましても、金融機関は取引先に対してはその金融判断をなかなか画一的にはしてまいっておりません。特にこの造船業界の場合に、先ほど申しましたような特性からいたしますと、金融機関と造船所との接触は、船主への融資というようなことを通じての円滑を期待するとともに、個々の造船所との間の接触、取引というものは、画一的ではなくて非常に個々別々というふうに申し上げてよろしいかと思うのであります。  すでに四年にわたる景気停滞の中で、金融機関といたしましても、社会的な摩擦を最小限に食いとめるためにいろいろな努力を重ねてまいっておりますが、一方においては民間機関としての制約といったものがございますわけで、その辺の兼ね合いがなかなかむずかしいわけでございます。  そこで最後に、民間金融機関の一員としての意見、要望のようなものを申し述べさせていただきたいと思います。  まず第一に、絶対的な需要不足の状況に対応するためには、わが国造船能力全体としては、これを大幅に削減して適正な能力規模にすることがやはり必要不可欠ではなかろうかと存じます。しかも現状で判断いたしましても、それはかなり大がかりな構造改善ということにもなりましょう。  どのような方法で改善していくか、まだ造船業界としてのお考えも明らかにはなっておりませんけれども、いずれにしても業界全体の、あるいは個々の企業の信用力が結果として高まるようにしていただきませんと、金融を円滑にするということにはつながらないと思うのであります。  そこで、その構造改善を円滑に行えるように事業転換などの面で従来以上に国の側面的な御援助をお願いいたしたいと思うのであります。  現在御審議中の特定不況産業安定臨時措置法案が構造改善に向かっての業界全体の動きの引き金になるということが期待されるわけでございまして、その点評価できるものと考えておるわけでございます。  第二番目には、業界の自主努力によります構造改善がある程度のめどがつきましても、深刻な仕事量不足は早急に解消するとも思えませんので、なお積極的に仕事量を追加するような何らかの方策が必要かと存じます。  現在すでに業界の方々より、官公庁船の建造促進やスクラップ・アンド・ビルド方式による国内船建造体制の導入等を要望されておられるようでございますが、そのほか造船所の集中している地域への公共事業の傾斜的な配分等をも含めまして造船所の仕事に結びつくような事業は、事情の許される限り前倒しで促進されることを期待いたしておるわけでございます。金融機関といたしましても、そもそも仕事がない造船所に対しましては、経営再建への確信が持ちにくいわけでございますので、この辺の見通しが最も重要と考えるわけでございます。  最後に、担保力の問題でございます。  特に中小造船専業について一般論的に申しますと、造船業設備そのものが他に転用のききにくい船台、ドックが中心でございまして、しかも、その立地が概してよくないことと、加えまして、内部蓄積が比較的少ない企業が多いことなどが重なりますと、担保力に問題が生ずる可能性が強いわけでございます。このことが、企業が身を縮めていく際の金融面での障害になることを危惧いたしております。  したがいまして、国の力によりましてその点をカバーするような何らかの信用補完措置が必要となってくるのではないかと思うのであります。もちろん、現在御審議中の特定不況産業安定臨時措置法案による特定不況産業信用基金は、この問題のある程度の解決にはなりましょうが、その運用に当たりましては、造船業については格別の御配慮も必要になるのではないかと存じております。  以上、三点にしぼって当局への期待を述べさせていただきましたが、いずれにいたしましても、これからの苦しい環境に対応して造船業が信用力を維持していくためには、国の力による相当の手助けが必要であろうと考えます。  この点に関連いたしまして、これまで二十年間にわたり西欧の造船諸国、イギリスを含めフランス、ドイツの各国で、日本造船業の躍進を初めとする厳しい環境に対しいかに適応してきたか、その過程でそれぞれの国の政府がどのように力をかしてきたかということも、国情の違いはございますものの、何か他山の石ともなるものがあるのではないかと存ずる次第でございます。  以上、金融経験者の一人として感想を述べさせていただいた次第でございます。  終わります。
  10. 増岡博之

    増岡委員長 ありがとうございました。  次に、高橋参考人にお願いいたします。
  11. 高橋正男

    高橋参考人 高橋です。  わが国基幹産業である造船労働者として、誇りを持ちながら荒廃した造船産業を立て直し、今日まで日本経済の発展に努力してまいりました。  昭和三十年代の初めから世界第一位の建造量を占めてきましたし、そして四十年初めから四〇%から五〇%のシェアを占めてきたわけであります。しかしながら、昭和四十八年の石油ショックを契機に、特にタンカーの受注量が激減し、今日構造不況という重大な局面を迎えておるわけであります。  石油ショック以来今日までの造船会社の倒産は、三十八社に及び、昨年だけでも二十二社、今年に入りましても、すでに四社が倒産をしているわけであります。また造船関連企業の倒産も、今年に入っただけでもうすでに十社に及んでおるわけであります。倒産した造船会社三十八社の従業員は約七千名であり、負債総額におきましては二千億円に達しようとしているわけであります。  特に異常な円高の問題、さらに開発途上国の追い上げ、仕事量が減少しておりますので過当競争が激しいわけでありますから、低船価の受注など、考えますと今後も倒産が続出するのじゃなかろうかというふうに考えておるわけであります。  私たちは、雇用確保優先の基本的な立場に立って、造船産業危機突破のための産業政策を確立し、今日まで政府に要請を続けてまいったわけでありますが、昭和四十九年以降今日までの造船産業からの離職者が、すでに五万一千名にも達しているわけであります。  今日段階の仕事量の見通しから見ますと、業界の推定でありますが、新造船部門だけでも三万五千名の余剰人員と仄聞しているわけであります。また、すべての造船会社は、経営の減量化として系列さらに他業種への出向、配転などが行われ、今後大量の一時帰休などが起こるのじゃなかろうかというふうに考えておるわけであります。経営者は安易な雇用調整を進めているわけでありますけれども、労働者にとってはきわめて遺憾なことだと考えておるわけであります。  仕事量の見通しについては、昭和四十九年度の操業度を一〇〇といたしますと、五十二年度は五九%と低落し、五十三年度につきましては、今日の見通しでありますけれども、何と三〇%にも達しない。五十四年度においては四%程度でなかろうかというふうにも考えられるわけであります。今後の受注見通しを含めましても、五十三年度の操業度は四〇%程度じゃなかろうか。雇用問題については、きわめて重大な危機を迎えることになるわけであります。  船腹量の過剰については、もうすでにお話もありましたが、われわれとしても、船腹の過剰については是認をしておるわけであります。そういう情勢から考えますと、今後、新規受注というものはあまりないのじゃなかろうかと予測をしているわけであります。たとえ市場が回復したといたしましても、過去のような大量受注ということは絶対にあり得ないだろうというふうに考えておるわけであります。  造船産業全体の設備の問題でありますけれども、世界需要量から考えましても、日本は約千九百万総トンの建造能力があるが、これを満たすことはできないだろうし、設備過剰という点についても否定はできません。物理的に否定はできないと思っておるわけであります。  造船産業というのは、労働力の集約産業技術の集約産業でもあるわけであります。したがって、地場産業でもあり、地域経済に及ぼす影響はきわめて大きいものがあります。  今日、一定の造船県と言われる一つの県を見ますと、すでに七千名が離職して、社会問題に発展すると言っても過言でない状態にあるわけであります。  造船は、日本だけの不況でなくして世界的な不況であります。したがいまして、EC造船主要国におきましても、イギリスを初めとして国営化、これは緊急避難措置として国営化が図られ、また公社化が進められておるわけであります。政府がすべて助成をしてやっておるわけであります。  西ドイツの場合については、政府が直接一七・五%程度助成を行って雇用優先の政策を採用していることも、われわれは実際に調査をしてその点は明らかになっておるわけであります。  造船産業は、海運とは密接な関係にありますので、私たちは、海員組合、全日海と言われておる組合とLNG船の建造促進、さらにスクラップ・アンド・ビルド方式の採用などの問題について協議し、対策を検討しております。すでにLNG船の建造につきましては、相互に調査研究を行っております。当然、造船海運とは相関関係が密接にありますので、今後も政府並びに皆様方に政策についての御努力をお願いしたいというふうに考えておるわけであります。  私たちは、この数年、今日の造船危機を予測いたしまして造船産業政策を確立し、政府並びに各政党にも御協力を要請してまいったわけでありますけれども、再度緊急対策として次の諸点について強く要請を申し上げる次第であります。  私たちの基本的な姿勢というのは雇用優先であります。そうして労働諸条件の維持向上、そのために仕事量の増大をお願いしたいわけであります。雇用優先の立場から、造船産業の実態に応じた雇用安定資金の運用についてさらに実効を上げていただきたいということであります。  さらに、現在審議されております特定不況産業安定臨時措置法案の問題については、雇用安定を前提とした配慮を強く要望するものであります。特に資金運用については裏保証の問題、これについての改善、さらには返済年数の延長の問題、さらに資金量についても不足するのではなかろうかというふうにも考えておりますので、この辺の対処をお願い申し上げたいというふうに考えるわけであります。  また、すでに離職した者については、共公事業への就職、さらには職業訓練等を経ての再就職の配慮もお願いを申し上げたいというふうに考えます。  国内造船については、SB方式の早期導入をしていただきたいと思います。特に海運国際競争力を強化する立場から、不経済船のスクラップ化の推進、そのための船主にメリットのある助成策をお願いしたいと思います。  それから、官公庁船の発注を飛躍的に増大してほしいということであります。二百海里時代であります。国益を守るための海洋秩序の確立が当然国民的な課題であろうと思うわけであります。したがいまして、官公庁船の近代化のだめに代替建造、スクラップ・アンド・ビルド方式その他を行うための必要な予算措置もお願い申し上げたいと思います。  さらに、環境保全のため、かけがえのない海を守るために、すでにIMCOの総会でも決議されているように、既存タンカーに対するSBT並びにCOWの設置の法制化等についても御努力をお願い申し上げたいと思います。  国内LNG船の建造促進のための金融財政面での助成をお願いしたいと思うわけであります。日本は、世界の過半数の船舶を建造しておりますけれども、LNG船は一隻も持っていないわけであります。エネルギー対策、クリーンエネルギーとも言われているわけでありますので、この建造促進についても金融財政面での助成を強くお願い申し上げます。  さらに、石油備蓄の問題であります。すでに一昨年からわれわれは石油備蓄を行うべきだという政策要求を提言し、いろいろ政府にも要請してまいりました。これは外貨の大幅黒字というような、外貨減らしのためにも実はお願いしたいわけであります。いまタンカーの備蓄の問題も課題になっておりますけれども、日本の備蓄量が七十七日であります。アメリカは二年分の備蓄をやろうとするわけであります。アラブ諸国の紛争があるならば、二カ月紛争しただけでも日本列島は暗黒であります。これについては、政治的に早急に備蓄政策を確立していただきたいことを強く要請申し上げます。  さらに、技術集約産業である造船は多種な技術を擁しておりますので、海洋開発、浮体構造物の建造促進、すなわち洋上ハイウエーなり、さらには過密都市におけるベイブリッジの建設、このような公共事業の促進をお願い申し上げたいわけであります。  さらにまた、経済協力の一環として開発途上国への積極的な船舶の供与の問題であります。開発途上国は外貨事情から発注ができないということもあります。この点についても、経済協力の一面で船舶の供与をできるように御配慮願いたいと思うわけであります。  中小造船対策の問題でありますが、特に造船専業の業種に対しましては、長期低利の事業資金の融資、さらには官公庁船の優先発注なり、中小造船対策として企業基盤の強化、効率化のための行政指導、さらには労務債権も保証されず、退職金も支給されないで離職する者もおるわけでありますので、そのような業種に対しましては、設備の政府賢い上げ、債務のたな上げ等についての御配慮もお願い申し上げたいと思うわけであります。  造船重機労連の中に航空機部門の組合もありますので、航空機産業について一言要望申し上げますと、航空機の国産化率の向上のため一段と金融上の御配慮をお願いしたい。特に省エネルギー、省資源時代でありまして、それに適合しているのが航空機産業だろうというふうに考えますので、したがって、航空機産業の育成強化を前提とした配慮をお願い申し上げたいというふうに考えるわけであります。  いままでお願いを申し上げてまいりましたけれども、労働組合として自主的に何をなすべきか、私たちは四年前から週休三日、完全週休二日制を大勢として実施してまいりました。残業もほとんどありません。そして雇用を守るために、これらの政策をとってまいりましたし、さらにまた、中小企業の倒産防止、雇用確保、さらには企業再建のために、二十二万の組合員が身銭を切って、友愛救援基金一人五千円を出し合って約十億にし、そして労働金庫などに預託をして信用度を高め、三十億並びに四十億程度にいたしまして、われわれ自身がみずから中小企業の労働者を守ろうとしているわけであります。  したがいまして、政治の面から、本当に政治というのは温かいのだというような施策をとっていただきたいことを最後に申し上げまして、終わりたいと思います。
  12. 増岡博之

    増岡委員長 ありがとうございました。  次に、畑田参考人にお願いいたします。
  13. 畑田薫

    畑田参考人 全造船畑田でございます。  私は、労働組合立場から、雇用問題を中心にその現状にも触れながら意見を述べたいと思います。  まず、その前に申し上げたいことは、現在国会に上程されている特定不況産業安定臨時措置法案、また、これを受けた形で海造審の造船施設部会で審議されようとしている造船業設備廃棄の問題について大きな危惧を抱いているものであります。この法案でもそうでありますように、最近の構造改善論議が、設備廃棄だけが先行をして雇用問題が置き去りにされていることであります。特に造船業の場合は労働集約型であり、設備廃棄はそのまま労働者の解雇につながるおそれがあるわけであります。総合重工業である大手企業は別といたしまして、造船専業である中小造船の場合は直接的にそのことがあらわれるのであります。最近の造船需要が中小型船にかわり、大型船が皆無ということが過剰設備になっているのであり、その受注をめぐって中小造船が大きな影響を受けているのが現状であります。こうした実情からすれば、むしろ大手、中小企業の分野協定が前提でなければ、中小造船にとって直ちに設備廃棄問題が解雇につながるのであります。したがって、それなしには私どもとしては強くこの法案には反対せざるを得ないのであります。  造船労働者の雇用失業問題は一層深刻化しているのであります。造船危機が言われた昭和四十七年以来の倒産は、先ほども御意見がありましたが、三十八社に上り、このうち昨年一年間で二十社、本年に入ってからもすでに五社が倒産をしており、現状のままでは三月以降もさらに増加、拡大をする状況にあります。  これら倒産企業の労働者は、下請労働者も含めまして約一万五千人であり、家族を含めると約三万人以上の人たちが現実に失業、雇用不安にさらされ、生活の危機に直面しているのであります。さらに倒産企業だけではなく、大手企業を初めとする各企業の徹底的な人減らし合理化が実施され、昨年末現在では、本工、下請、関連労働者を含めて五万一千人の人員削減が行われているのであります。  こうした人員削減が、最近ではこれまでの出向、配転だけではなくて、大量の希望退職、定年切り下げ、雇用延長の打ち切りなど直接的な解雇という形で進められているのであります。また倒産企業では、会社更生法による保全管理下に置かれているにもかかわらず、再建計画も明らかにされないままの中で全員解雇という衝撃的な事態さえ発生しているのであります。こうした造船労働者の失業雇用問題は、今後さらに波及、拡大する状況にあり、地域社会に大きな影響を与えているのであります。  造船業は地域集中型であり、地場産業として地域経済に与える影響はきわめて大きいものがあります。その県の経済に占める造船業のウエートは、たとえば長崎、佐世保地区においても四割を占め、函館地区では三割、今治地区が一割と高いものがあります。また今治地区では、県の出荷額の三分の一を占めるというきわめて高い地位にあるのであります。また労働集約型である造船業は、中小造船といっても数百、数千人という雇用規模であり、しかも同一地域に集中しており、造船所の倒産、失業は、関連工業も含めて地域的に大きな社会問題となる要素が大きいのであります。  今治地区を例に申し上げますと、今治の湾内を中心に十二の造船所がありますが、すでに半数の六社が倒産をし、失業者は下請関連を含めて約二千三百人に及んでいるのであります。これが三月末には三千八百人程度になるものと見込まれているのであります。今治の職業安定所によりますと、一月末の求職者は四千五百人で、そのうち造船関係者が半数近くを占めているのでありますが、有効求人倍率は〇・三八七と低く、再就職がきわめて困難な状況に置かれております。  こうした状況は、単に今治地区だけではなくて、造船所が所在する他の地域でも全く同じ条件下に置かれているのであります。  こうした雇用情勢のもとで、私たち労働組合としては、完全雇用を基本とした雇用対策が緊急の課題であり、それを前提とした産業政策の確立が必要であると考えているのであります。  こうした立場から、われわれ全造船機械は、三年前から雇用保障と産業政策の要求を掲げまして、その実現に努力をしてきたところであります。  そこで私は、これまでの要求とともに、緊急対策を含めて次の四点について意見を述べたいと存じます。  その第一点は、過当競争の排除についてであります。第二点は、需要の創出についてであります。第三点は、雇用の保障について、第四点は、倒産対策についてであります。  第一点の過当競争の排除についてでありますが、その一つは、大型ドックなどにおける同時複数建造の規制をさらに徹底して、造船事業の秩序分野を確立することであります。かつての造船業は、大型船は大手、中型船は中手、小型船は中小手という建造分野がつくられ、その範囲内で企業競争が行われてきたのでありますが、大型タンカー船腹過剰、需要量の激減ということと相まちまして、大手企業が中小分野に進出し、限られた中小型船の受注にしのぎを削る状況から、中小造船が倒産、経営危機に追い込まれる大きな要因になっているのであります。これまでのような高度成長が望めない状況からして、大手企業は総合重工業として企業余力もあり、したがって、新たな需要開拓、創出に努力をすべきであり、造船専業である中小造船の分野を保持すべきであります。したがって、建造許可段階において、船台及びドックの建造能力に応じた船舶の建造を基準にチェックをして、造船業の事業分野の確立を図るべきであると考えます。また現在実施している同時複数建造の規制は、引き続いて徹底をする必要があると考えるものであります。  それから、新造船の建造許可に際しては、船種、船型別に工数をチェックして、従来プラス一〇%以上の所要工数でなければ建造許可を与えず、また船価のダンピング防止に強力な行政指導が必要であると考えます。  昨今の需要量の落ち込みから、各企業間の受注競争は激しく、ダンピング競争に走っている実情にあります。こうした結果がコスト対策として、さらに人員削減、労働時間の延長、定年切り下げ、雇用延長打ち切り、賃金、労働条件の切り下げなど労働者の雇用と生活を一層深刻なものにしているのであります。  こうした企業行動は、全体としての需要量をふやすことにはならず、限られた受注量の食いつぶしであり、みずから墓穴を掘る時代逆行の行為であると言えます。低成長に向けての対応は、需要の創出を図るだけでなく、仕事量を食い延ばし、雇用機会の創出と拡大に努力すべきであります。そのために、いまこそ労働時間の短縮、それと同時に、一割の工程繰り延べによるゆとりある労働を実現することだと考えます。したがって、一〇%の工数付加及びダンピング防止の行政指導を強く求めるものであります。  次に、第二点の需要創出でありますが、私どもも、労働者の雇用確保、拡大のために一定の需要の創出が必要であると考えます。これまで主張してきている要求は、船舶の安全と海洋汚染防止と関連をして、タンカーの二重底、SBTの実施あるいはLNG船、工場、作業船などの建造の促進、また新たな需要開拓としてエネルギー、資源、海洋開発など総合的な政策とその研究開発であります。  しかし、これらの需要が現実の仕事量に結びつきにくい状況にあり、ここ一、二年がきわめて厳しい造船状況からして、緊急対策として国内老朽船のスクラップ・アンド・ビルドの実施、また船舶整備公団の予算拡大による代替建造、海上保安庁の巡視艇などの中小造船への優先発注を実施してもらいたいと思います。  第三点の雇用保障についてでありますが、深刻化している造船の雇用情勢については先ほど申し上げたとおりでありますが、中でも不況のしわ寄せを最も受けている下請への対策として従来の工事発注率の維持、継続、さらに親企業の責任で下請労働者の雇用保障を図るよう行政指導、監督を強化すること、また、これは所管が違うかもしれませんが、私どもとしては、労働時間の短縮、週休二日制の実施、解雇制限法の制定、政労使三者による雇用対策委員会の設置など一連の雇用保障対策が必要であると考えております。今日の雇用問題は社会問題となっており、企業の雇用責任と同時に、政府の総合的な雇用保障の施策をとってもらいたいと存ずるわけであります。  最後に、倒産対策についてでありますが、先ほど申し上げましたように、中小造船の倒産が相次ぎ、これからも続出する状況にありますので、倒産防止のための緊急対策が必要であろうと考えるわけであります。  これまでの倒産企業の内容を分類しますと、一つには、受注減により前受金が入らず運転資金が逼迫をしていることであります。二つ目は、受注船のキャンセルやクレームが発生して、赤字の発生と資金回転に支障を来していることであります。第三点は、設備投資後売り上げが低下をし、金利負担と返済資金の捻出が困難となったことであります。第四点は、円高による差損が発生をしたこと、第五点については、船主会社の倒産による影響を受け、その代金の回収ができなくなったことであります。第六点としては、赤字船の工事が積み重なったこと、そして第七点としては、放漫経営の要素があったということがあります。しかし、実際の倒産の時点では、これらの要素が幾つか積み重なっているのでありますけれども、直接的には銀行が造船の先行き判断からの選別融資ということが倒産になっているのであります。したがって、運転資金の逼迫による金融上に問題があるのであります。  倒産は直接雇用問題につながり、地域的、社会的問題に発展をしますので、倒産防止のための金融対策として、一つには政府主導による信用保証基金の設立、二つには設備資金、金利などの返済猶予、三つには金融機関の選別融資を排除するなどの行政措置、指導を緊急に講じる必要があると考えます。また造船には多くの関連工業がありますので、連鎖倒産の可能性が大きいわけでありまして、これらの防止のための施策についても強く望むものであります。  さらに、倒産した企業では、雇用不安にさらされながらも、労働者が企業再建に向けて必死の努力をしているところもあるのであります。こうした倒産した企業に対して、工事受注の保障と緊急融資、二つ目には国、自治体による公共事業の優先発注とあっせん、三つ目には労働債権の確保などの対策に万全を期してもらいたいと考えているわけであります。  以上、申し上げまして、私の意見にかえたいと存じます。
  14. 増岡博之

    増岡委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 増岡博之

    増岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤六月君。
  16. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 参考人の皆さん万には大変貴重な御意見を開陳いただきましてありがとうございます。私たちも、皆さん方の御意見を体して今後造船不況に対処していきたい、こう思っております。  時間がございませんので、本会議の予鈴が鳴るまで質問させていただきたい、こう思います。順序がばらばらになって恐縮でございますが、御都合で午前中お引き取りになられます正宗参考人に最初承りたい、こう思います。  いま最後に畑田参考人も、いみじくも事業資金の問題、その他の問題についていろいろ触れられたわけでございまして、私たちも同感するところがたくさんあるわけでございますが、大手の造船所と中小造船所の違いというのはいろいろございますけれども、特に中小造船所の場合には事業資金が非常に窮屈になってくる。特に私たちがいろいろ業界の実情を調査してみますと、受注から引き渡しまでの期間が非常に延びてきた、あるいは引き取り方がいろいろ理由をつけて完成した船を簡単に引き取ってくれないという問題、さらに一番大きな問題はキャンセルがたくさん出ておるわけであります。キャンセルが出ておる場合でも、着工してキャンセルする場合、完成してキャンセルする場合、契約だけしてキャンセルする場合、いろいろあるわけでございまして、ここら辺で中小造船所は非常に資金の枯渇あるいは不足状態が起こってくるわけであります。これがまたある面では造船所に対する先行きの金融不安にも通じておるわけでございます。  ここら辺を考えた場合に、事業資金融資の円滑化というのは、これは一銀行だけでやっていただくのはなかなか無理ではないか。畑田参考人からは信用保証基金をつくれ、こういう御提言もあったわけでございますが、私は、オール金融機関でオール造船所のそういった問題に対する資金の確保あるいは資金融資の円滑化という方法はないものかあるものか、金融機関としたら、後ろ向きの金は原則として出さない、前向きなら出すという一つの金融上の原則があるわけでございますが、これを行うことが、ある面では前向きに通ずるのではないかとも思うわけですが、そこら辺で何かいい案、いい考え方があったらお教えいただきたい、こう思うわけでございます。
  17. 正宗猪早夫

    正宗参考人 キャンセルというような場面もしくは工事ができたにもかかわらず引き取りを延ばすというような場面、このいずれもが通常の事例ではまず考えられないわけでございまして、契約があって、その契約によって決済その他があってしかるべきであるにもかかわらず、業界、これは双方のことでありますが、主として船会社、船主の方の側の状況で契約をよう履行しないというようなことから起こる問題であるのでありますが、制度として何か考えようということになりますと、通常の取引に絡んでこういう制度をするということは比較的考えやすいのでありますけれども、非常に異常な事態が起こるというようなことをあらかじめ予測して、それのために制度をつくるということは、実は考え方からいたしますと保険のような仕組みで解決する用意がある方がいい。たまたま残念ながら、現在のところはそういう不測の事態を予想して、それに対応するためのあらかじめの制度はできておらなかったのでありますが、さてここで、急いでそういう制度をつくろうといたしましても、ちょっと急の間には合わないのではないだろうかという気が私はいたしますので、ただいまの御質問に対してのお答えは大変むずかしいということに相なる次第でございます。
  18. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 私がいま申し上げましたのは、日本船主の場合と外国の船主、特に外国の船主の場合にこのケースが多いわけでございます。もちろん正宗参考人は、そういう場合に船会社への融資という問題を意見開陳されたわけでございますが、国内船主の場合にはそれが考えられると思うわけです。外国船主というところに問題があるわけですが、むずかしいとおっしゃらずにいろいろ知恵を出していただきたい、これをお願いしておきます。  次に、永井参考人にお尋ねいたします。  いろいろ参考人の方々から御意見があったのですが、私たちも、急いでやらなくてはならない、当面焦眉の急として短期決戦で処置すべき問題と長期にやらなくてはならない問題、この造船不況に対しては二通り考えておるわけであります。それで、その中で設備過剰あるいは過当競争という問題等も、いろいろ参考人から御意見があったわけですが、当面、大急ぎでやらなくてはならない問題の中に、たびたび各参考人からも御意見が出たのですが、スクラップ・アンド・ビルド方式でありますが、このSB方式を行う場合の船主協会側の条件というか、こうしてくれたらわれわれメリットがあるので、SB対策に船協側としても取っ組んでいこうじゃないかという条件というかメリットというか、何かそういうものがありましたらお教えいただきたい、こう思うわけでございます。
  19. 永井典彦

    永井参考人 いまの加藤先生の御質問に対しまして、船主協会として特にまとめた案はございませんが、私として考えておりますことを御参考までに申し述べたいと思います。  現在、先ほど申し上げましたように、海運界は不況からの脱出に全力を挙げているわけでございますが、不況の一番の原因船腹過剰にあるということで、われわれとしては、世界じゅうの船腹、もちろん日本船腹も含めてでございますが、できるだけふやさないように努力していかなければならない。船腹の増大を防いでおいて需要の増大を図るということが、海運不況から回復する一番いい方策だろうと考えているわけです。  その場合に、スクラップ・アンド・ビルドと申しますと、原則的にスクラップしてつくるわけでございますから船腹量はふえないという点がありますので、海運界といたしましても、造船業界に対する御協力という意味におきましてできるだけのことはいたしたいと考えておりますが、ただ、現在ある船腹をふやさないで減らさなければならない現状におきましては、スクラップ・アンド・スクラップですと非常に歓迎すべき案なのですが、スクラップ・アンド・ビルドとなりますと、やはりそれだけの分はふえる。おまけに先ほど申し上げましたように、ふやした船腹は、ことに日本海運の場合でございますが、国際競争力を持った船でなければ新しい船をつくる意味がないという前提条件がございますので、したがいまして、私といたしましてスクラップ・アンド・ビルドに対する条件といいますか希望を整理して申し上げますと、スクラップする場合に、いまスクラップの価格が少し上がっておりますが、大体安い、ところが、各会社のスクラップする船の簿価は依然として償却不足で高いわけでありますので、スクラップする場合に売却損ができるわけであります。したがいまして、まずスクラップするときに、これは勝手な希望かもしれませんが、スクラップ価格と簿価との差額を何らかの形で埋めていただけないものかという希望が一つ。  それから、そういうふうにいたしましてつくる船、これは国際競争力を持った船でなければいけません。おまけに、ただいま幾ら船価が安くてもタンカーをつくる人はおりませんし、幾ら船価が安くても不定期船、バルカーをつくる人はいません。したがいまして、新しくつくる船はタンカー、バルカー以外の船になるわけでございまして、建造の時期が相当デリケートなものがございます。したがいまして、スクラップして建造するまでの期間、これをすぐ結びつけないでできるだけ離すことを考えていただきたいということ。一番のわれわれの希望といたしましては、スクラップしたら新造船をつくることを義務づけないで、スクラップいたしましたら、違った条件で新造ができる権利を取得させていただきたいというのが一審の希望でございます。  その場合も、先ほど申し上げましたように、スクラップしたときと新しい船をつくるときの時期、これを若干余裕を持たしていただきたいというようなことが、船主側としての大体の希望でございます。  以上でございます。
  20. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 いま永井参考人からお話を承ったのですが、これは永井参考人高橋参考人にちょっと伺いたいと思うのです。  高橋参考人は、LNG船あるいはSB方式について全日海と相談をし、あるいは特にLNG船については相互に調査研究をいたしておる、こうおつしゃったわけでございますが、私たちがSBを考える場合には国際競争力を持たすということが大前提でございます。その場合、わが国海運がなぜ置籍船がこんなに多くなり外国用船がこう多くなったかという問題、あるいはまた企業別の国際競争力というものと船別の競争力というもの、両方の面で検討しなくてはならない、こう思っておるわけですが、たとえば国際競争力を持たした船ということになりますと、タンカーで三十五人乗り組みのものが経済船でSBをやらすと十五人の乗組員で済む。ところが、アメリカのカリフォルニア・スタンダードがつくったジェットエンジンの船を見ると十人で済むというようなケースがいろいろ出てきております。そうしますと、造船重機あるいは全造船立場から言うと、雇用の問題はうまくいくけれども、逆に同じ仲間の全日海の皆さん方がそういう問題に耐えられるか耐えられないかという問題が起こってくるわけです。     〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕  そういう点で、これは高橋参考人に、そういった経済船そのものの問題、SBを推進する上についての基本的な話し合いというものが、全造船造船重機と全日海との間に協定ぐらいのものはできないものかどうか、お教えいただきたい、こう思うわけでございます。
  21. 高橋正男

    高橋参考人 海員組合の方も当然雇用問題が一番懸念されるわけであります。仕事量はふえても海員組合の方は雇用問題が心配だということで、実はいま平郡副組合長と今後具体的に検討していこうということにして、まだ具体的に話し合っていないわけであります。しかしながら、お互いの立場で利害損得といいますか、そういう実情があるわけであります。調和をとって両方とも両立するような具体的な方針をやろうじゃないか。すでにいままでLNGの問題も相互に、海員組合は海員組合としての立場造船重機は造船重機としての立場で個々にいま調査研究をやっているわけであります。その両案を持ち寄って照合しながら、両立するような具体的な方針を見つけ出そう、今後実は協議するということにしているわけであります。  ですから、いまの段階では海員組合は海員組合独自として検討し、造船重機は造船重機として検討し、今後それをあわせて両立するような方向性を出していきたい、こういう段階でございます。  したがって具体的に、たとえばSBT方式で世界の競争力を強めるには海運としてどうなのか、造船重機としてつくる側はどうなのか、そういうことを今後検討するということで合意しておりますので、今月中に再開したいと考えております。
  22. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 ぜひこの問題は抜本的にやっていただきたいと思うのです。私たちは、LNG船をつくるべくもう五年前から補助金を出していろいろやったのに、なぜできないかという理由をいろいろ聞いております。この席でこれを申し上げるのは、時間がございませんから遠慮しておきますが、そこら辺は皆さん方に逆に期待するところが大なるものがあるということを申させておいていただきたいと思います。  その次に、畑田参考人にちょっと伺いたいのでございますが、私たちも、造船不況になって大手が中手に、中手が小に殴り込みをかけるという問題からいろいろな問題あるいは運輸省の需給調整の問題、いろいろ議論してきたわけでございますが、十日の際に参考人にもお聞きしたのですが、木工と社外工の問題であります。昭和四十九年以来、本工と社外工の減りぐあいを単純に数字に出してみても社外工の方が非常に多い。下請業者の中の構造は皆さん方の方がお詳しいと思いますが、数字だけで見ても多いわけでございます。ここら辺の問題も、実は私たちとしては造船再建の大きなポイントになっておるのではないかと思っておるわけでございますが、端的に見て、造船所は本工を大切にしておるか、あるいは社外工切り捨てはやむを得ないと思っておるか、そこら辺、全造船から見た立場としてひとつお教えいただきたい、こう思うわけであります。
  23. 畑田薫

    畑田参考人 本工と社外工の関係、なかなかむずかしい問題ではあるわけですけれども、こうした雇用構造が二重構造になっているということについても、全造船としては非常に問題にして、それらの解消に向けて下請労働者の雇用安定を含めて本工化の努力をこれまでもしてきているわけでありますけれども、ただ、そのことはそれ以前に、現在でも存在しているわけですけれども、造船の場合も、かつては本工、下請という関係の中でもう一つ臨時工制度というのがあったわけであります。この臨時工というのは、全く本工と同じ条件の中で働かされて、ただ期限がついているかついていないかという違いだけでありました。そういうことで、これは三十年代初めごろになりますけれども、臨時工の本工化要求ということで全国的に取り組みまして、造船の場合は臨時工制度というものについては、まだ一部残っていますけれども、かなり解消してきつつあると思います。しかし、それが今度は下請という形に変わってきておりまして、こうした雇用の二重構造が解消されない。特に下請労働者が非常に劣悪な労働条件、雇用条件の中で働かされてきているという状況にあるわけであります。したがって私どもは、労働者の全体の立場から物を考えていかなければなりませんから、この下請労働者の木工化というものをぜひ実現していくべきではないかというふうに考えております。  したがって、今日造船業界が非常に厳しい状況下にありますけれども、しかし、何としても労働者の雇用の安定を図っていかなければ、これはもう社会問題になってきつつあるわけでありますので、今日においてもなお、私どもの雇用保障要求の中で下請工の木工化の促進を強く要求いたしているわけであります。     〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕 したがって私どもは、本工、下請ということを区別しないで対応していかなければならないし、そのための措置を講じていかなければ根本的な解消にはならないのではないかというふうに思います。  しかし、そのことのためには、先ほどの意見でも申し上げましたように、これまでのような労働のスピード化を図るのじゃなくて、これを緩めて、いわゆる雇用機会の創出を図るために、時間短縮その他の措置をぜひとも講ずべきでありますし、そういうことの中で下請を含めた労働者の雇用量の拡大、このことにつながるものである、こういうふうに私どもは考えているわけであります。
  24. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 どうもありがとうございます。私たちは、下請関係者の従業員の削減ということについては、ある面では造船所サイド、これは労使ともに対して不信感を持っております。はっきりこれは申し上げておかなければならぬことではないか、こうも思うわけでございますが、きょうは時間がございませんので、余り多くのことを申し上げません。  実は、同僚の原田委員正宗参考人に一点お伺いをしたいということでございますので、原田委員とかわりまして、私の質問は終わらしていただきます。御意見ありがとうございました。
  25. 増岡博之

  26. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 正宗参考人にお伺いしたいと存じます。  先ほどのお話で、中小造船は担保力が欠如しておるというお話でございました。まことに憂慮すべき状況でございまして、目下構造不況業種に対する対策立法というものの審議が国会で行われておりますけれども、これをもってしてもなお現下の信用不安というか、造船専業度の高い中手以下の造船所に対する信用については非常に問題があるのではないかと思うのです。  そこで当面、この信用不安を解消する上にどういう方策が最も有効であるかということについてお伺いしたいと存じます。  たとえば、信用不安が発生しておりますと、新しく船主がせっかく注文しようとしても、途中で倒れてしまうのじゃないかということで注文を差し控える。ですから、こういったものにボンド保証のようなものが要るのではないかとも思いますし、また船主が倒産したような場合には、直ちに連鎖反応でつぶれてしまうというような問題がございます。  もう一つ、別の面から言いますと、関連工業という造船の下請並びに舶用機器のメーカー、こういったものはかなり大きな債権を抱えておるのですが、これが切り捨てになるというようなことで、この部門についても非常な問題が生じていると思います。これらに対して何か有効な手はないかとわれわれとしては一生懸命考えておるのですが、ひとつ率直な御意見をお伺いしておきたいと思います。
  27. 正宗猪早夫

    正宗参考人 思いますのに、注文があればぜひこの注文を受けて仕事ができるように応援するということをやりたい。すでに注文があったものについて支払いがおくれるというような場面では、その注文をした人の側に早く金を払えということでの応援をすれば、それで片づくであろうと思いますが、注文がこれから来るという場面での応援は、金融の一般的な考え方からすれば大変結構であるから、その注文が来るのであれば何とかして応援してあげたいという意味では、金融の問題はまず非常に解決しやすくなる。  問題は、すでに済んだことで、相手が契約不履行であるというのをどうやってつなげるかということと、それから、それに対応してむしろ今後引き続きその造船所は次の船の注文を継続してとれるであろうかどうであろうか、金融判断からいたしますと、そういう注文がとてもとれそうもないということである場合、あるいは現にそういうお話を全然聞くことができない場合には一体どうなるであろうかという不安は常に銀行としては持つということになるのでありまして、その不安を片づけるのは新しく注文をとる体制がどうあるかということに戻ってしまうと私は思うのであります。  ただ、すでに注文されたものができてしまっており、これの引き取りがおくれておるためにそれで困るのだと言えば、それは問題としては銀行としても非常に解決しやすい、一般的に言えば、注文がないのに比べては非常に解決しやすい、工夫が出るのではないか、こういうふうに思うのでございます。  お返事、これでよろしゅうございますか……。
  28. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いまのお説もっともなんですが、さらに私、お聞きしたいのですが、注文を出せるような体制になった場合においても、造船所がちょっと不安であれば出し渋ってしまう。で、もっと信用度の高いところへしか注文が行かないということでなだれ現象が起きるというのが信用不安の状況ではないかと思うのです。そこで、それに対する何かボンド保証のようなものを考える必要があるのかないのか、その辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  29. 正宗猪早夫

    正宗参考人 普通、銀行にボンド証明というような御相談が出てまいりますケースは、すでに造船契約としては船型なり引き渡しの時期なりあるいは当然金額も決まって、まさに発注寸前において手続として銀行のボンド保証というふうなものを要求されてくるのが通常のケースであると思います。それを先に、どこの注文であろうとこの造船所に対しては銀行が必ずボンド証明を出しますよというような姿勢は全くなくはないと思いますけれども、普通の形ではないと思うのであります。むしろそういう意味では、船主側、発注側の方と造船所との間はいわば力関係というか好みの問題というか、そういう意味での選択は競争としてあると思いますが、その競争以上のことを、特に特定の造船所について金融機関から手を出すというのは通例ではないと思うのでございます。したがって、契約がとれるという段階まで進んだものについては、そのボンド証明で話が進行するとすれば金融機関として当然そういう証明はすると私は考えております。
  30. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 もう一点、正宗参考人にお伺いしたいのでございますが、本会議の時間が参りましたので、この程度にいたします。  以上で午前中の私の質問を終わらせていただきます。
  31. 増岡博之

    増岡委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時六分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  32. 増岡博之

    増岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。原田昇左右君。
  33. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 先ほど来参考人からいろいろ貴重な御意見をちょうだいしたわけでございますが、まず日本海運国際競争力の問題について船主協会の永井さんにお伺いしたいのでございますが、外国と比べて船員費が非常に高くなっておる。それから資本費もかなり増高しておる、こういうことから蓄積力が少なくなって非常に競争力が落ちておるというお話でございました。  そこで、具体的に船員費、資本費、それから蓄積力、それが外国と比較してどういうふうになっておるか、また、これに対する対策はいかにあるべきかという点についてお話しいただければ幸いでございます。
  34. 永井典彦

    永井参考人 日本船と外国船国際競争力の比較におきまして、いま原田先生がおっしゃいましたように、日本船が競争力を失っております一番大きな原因は、コスト高というところにあるわけでございます。コストの中で船員費が一番高い、ほかに比べて高くなっておるということがコスト全額を非常にかさ上げしている一番大きな理由であると私は考えております。  これを数字的に申し上げますのは、余りアップ・ツー・デートの数字がないのでちょっと恐縮でございますが、実は海造審に船主協会で出しました資料がございますので、参考までにそれの数字をちょっと読ましていただきますが、たとえば在来の一万トン型の定期船のコストを、日本船の場合と外国船の場合と比較いたしますと、日本船の中核六社の平均で見ますと、いわゆる船費の合計が一隻につきまして年間四億七千四百万円、繰り上げまして四億七千五百万円かかるわけでございます。ところが、同じ船でイギリス船の場合にはそれが二億七千三百万円、ノルウェーの場合には二億七千八百万円、東南アジアの船では二億四千四百万円、大体二億台、ギリシャに至りましては二億四百万円でございまして、中核六社の平均の半分以下になっております。  それで、この船費の内訳はどうなっているかといいますと、日本の場合、四億七千五百万円のうち船員費は三億四千五百万円でございます。その他の船費が一億二千九百万円ございますので、合計約四億七千五百万円になるわけでございます。そういう内訳になっております。それからイギリスの場合の二億七千三百万円のうち船員費は幾らかといいますと、一億四千三百万円、それからその他の船費が一億三千万円、合計二億七千三百万円になるわけです。それから、先ほど申し上げましたのは、ギリシャ、東南アジアを申し上げましたかと思うのですが、ギリシャの場合には船費合計二億四百万円、そのうち船員費が七千三百三十七万円、それから、その他の船費はイギリス船と同じく一億三千万円でございまして、合計二億四百万円。ですから、数字的に申し上げまして、日本船員費はほかの国の船員費と比べて倍以上になっております。  日本船員費がどうしてこんなに高いのかといいますと、これはもちろん一人一人の給料も若干高いのでございますが、コストとしての船員費を一番高めておりますのは、乗組員の定員が多いことと、それから予備員費の負担が多いということ、この二つがコストとしての船員費を高めている原因でございます。予備員費というのは、釈迦に説法で申しわけございませんが、要するに交通産業の場合には、必ず勤務中の職員のほかに予備の職員がございます。海上の場合も同様でございまして、乗船中の乗組員のほかに予備の船員がいるわけでございまして、通常、この予備の船員が何%が適当かということなんですが、はるか昔といいますか戦争前ぐらいの場合におきまして、日本の予備員率はたしか三〇%ぐらいじゃなかったかと思うのでございますが、いまは全日海との労働協約によりまして、それが約五五%ぐらいにはね上がっている。ところが実態は、各社ともそれをはるかに通り越しまして、七、八〇%の予備員を抱えている。その予備員の費用が非常に各社の負担になっております。そのことと、さっき申し上げました定員でございますが、これはいろいろの場合がございますけれども、日本の定員の方が普通ほかの国の定員と比べて多いわけでございまして、定員が多いことと予備員費が非常に負担になっているということが原因船員費が非常に高くなっている、その結果、船のコストが高くなっているというのが日本船舶の競争力を失わせている一番大きな原因でございます。  大体以上でございます。
  35. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 定員並びに予備員率が外国から比べて非常に高いというお話ですが、具体的に定員はどの程度多いのですか。
  36. 永井典彦

    永井参考人 それは各船によって違いますので、ちょっと手元に資料がございませんのではっきり申し上げられませんが、たとえば、これはちょっと不正確かもしれませんが、われわれが配船しておりますコンテナ船には日本船員は二十七、八名乗っていると思います。ところが最近、スウェーデンあたりではそれを十六人でやるという船が出てまいりました。単なる一例でございますが、このほかのいろいろな在来船におきましても、大体日本船員は二割以上多く乗っているのではないかというふうに思います。ちょっとはっきりした数字はいま持ち合わせておりません。
  37. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 いま定員、予備員率がヨーロッパと比べて非常に高いということが競争力低下の最大の原因だというお話でございますが、やはり競争力を強化することによって新造船意欲というものが出てくるのではないかと思うのです。いまの造船不況対策を考える場合に、海運界がどんどん船をつくってくれるということが大事だと思うのですが、それにつきましても、ここに組合の代表の方々がいらっしゃるわけでございますが、ぜひとも全日海と話し合っていただいて、全日海の方もたくさん船をつくれば雇用機会がふえるわけですから、この点についてぜひ話し合いをしたらどうかと私は思うのでございますが、いかがですか。高橋さん、畑田さんに伺いたいと思います。
  38. 高橋正男

    高橋参考人 先生の言われるとおり、国際競争力、これは船主協会と全日海との労使交渉の対象になるわけでしょうけれども、予備員といいますか、そういう経費の問題、さらに国際的な比較、国際的な競争力を強めるためには、そのような比較の中で解決していかなければならない。それは船員の場合も雇用問題が大変でありますが、造船の場合も仕事量がない、これも雇用問題と関連するわけでありますので、組合サイドにおいて整合しながら国際競争力をより強める方向で対応したい、話し合いをしたい、そのように考えております。
  39. 畑田薫

    畑田参考人 私どもも、全日海との接触が十分ではありませんけれども、こうした状況でありますし、海運造船との関係は非常に密接なものがありますので、労働組合立場から共通する問題を含めていろいろ話し合いを十分持てるように努力をしたいというふうに考えております。
  40. 永井典彦

    永井参考人 ただいま原田先生からお話のありました海陸の組合が話し合ったらどうかということ、私の立場といたしまして、組合の皆さんにお互いに話し合ってくれということは、ちょっとお願いはできませんが、われわれがいま組合に理解していただきたいと思っておりますことは、一船ごとの定員を減らしてくれということと、それから予備員の率が五五%ぐらいにいまなるわけですが、これはもっぱらいまの協定によります休暇が非常に多いということ、その休暇を全部与えるためには五五%ぐらいの予備員が必要だということなわけでございますので、休暇を少し合理的な線まで下げてもらえないかということを組合に対していま要求しているわけでございます。その二点が実はポイントじゃないかというふうに感じます。  以上でございます。
  41. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 先ほど高橋さん、畑田さんから非常に前向きな御答弁をいただいて非常に意を強うしておるわけでございますが、要するに日本船舶国際競争力を強化することによって新造船意欲を強める。それには船員費としての定員、予備員の合理的な水準への転換ということによって国際水準に持っていって、日本国際競争力を強めることによって新造船意欲も出てくるし、さらに、それによって全日海の船員の雇用機会もふえる、一石三鳥ぐらいになるはずでございますので、ぜひともこの点は進めていただきたいと希望する次第でございます。  それから同時に、先ほど高橋さんのお話にも出てまいりましたけれども、LNG船を日本でつくることを考えたらどうだ、これは全く同感でございます。しかし、これはいわば原料の積出港と発電に使う発電所との間に一種のベルトコンベヤーを設定するような形になるわけでございます。ですから、途中でストが起こって船がとまっちゃうというようなことになりますと、発電所がとまってしまう形になりますので、これはよほど全日海の皆さんに協力していただかないと、この計画が日本船としてはできない、したがって、いまのところ外国船に頼らざるを得ない、こういうような変な現象になっておるというように聞いておるのです。  そこで、この点についてもぜひ日本船の建造を促進する意味で全日海との協力が必要だと思うのですが、この点についても高橋さん、畑田さんにぜひひとつ全日海と話し合いをしていただいて、協力してもらうように持っていけないものかと思うわけでございますが、いかがですか。
  42. 高橋正男

    高橋参考人 LNG船の保安上の問題について、すでに運航しております諸外国の保船上の問題について申し上げますと、ストライキをやったところはありません。しかしながら、あくまでも全日海と船主協会の関係の問題でありまして、当然、労使の信頼関係というものが基本になくてはだめじゃないか。ですから、私たちはお互いに話し合う中でも、頭からスト権を否定するというようなことでなくて、全日海と船主協会のあくまでも信頼関係の上において、そのような不測の事態がないように協定することが筋道じゃないかというふうに考えております。  なお、それらの問題につきましても、造船重機と全日海と話しておるところでありますけれども、これは私の方から申し上げることでなくて、あくまでも労使関係で決めていただきたい、そのように考えます。
  43. 畑田薫

    畑田参考人 いま高橋さんがお話ししたように、これは全く労使関係の問題でありまして、そのことと需要の関係と結びつけて問題を提起されるということ自体にちょっと疑問を感ずるわけなんで、LNG船の建造促進ということと労使関係のそういう問題については別個のものとして考えるべきではないかというふうに考えております。
  44. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 労使間の問題だというお話でございますが、もちろん労使間の問題ではあるのですが、基本的にいわばベルトコンベヤーのような性格のものを、どういうように労使間で知恵を出して設定していくかということだと思うのです。きょうは残念ながら労の方がいらっしゃらないのですが、使の方がいらっしゃるのでお伺いしたいのですが、永井さん、その点いかがでございましょう。
  45. 永井典彦

    永井参考人 この問題につきましては、ただいま高橋さん、畑田さんがおっしゃいましたのが原則であろうかと存じます。われわれの方としても、労使間に信頼関係が保てるようにできるだけの努力はしたいと思うのでございますが、ただ、LNG船の場合におきましては、一日の船費が二千万円以上かかる船でございますので、ストライキ問題がはっきり解決しない間は、ちょっと私の方としてもLNG船の建造につきましてちゅうちょする気持ちが残るということだけ申し上げておきたいと存じます。
  46. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 それでは、次の問題に参ります。  計画造船の枠がありながら、これが応募船主が足りないために枠を余しておるという現象があるようでございますけれども、この点について一体どこに原因があるのか。もちろん全般的な海運不況で応募する船主が少ないという気持ちはわかりますけれども、条件をどういうように改善したらいけるのか、やれるのかやれないのか、その点永井参考人に率直に伺いたいと存じます。
  47. 永井典彦

    永井参考人 先ほど海運不況の実態について御説明いたしましたとおり、たとえばタンカーでございますと、ペルシャ湾から日本までの一航海につきまして運賃収入が一億一千万円、ところが経費が三億五千万円、差し引き航海で二億四千万円の赤字となるというほど悲惨なマーケットの状況でございます。したがいまして、この場合に、たとえば計画造船の融資条件を非常に有利にしていただきまして運航経費三億五千万円がたとえば二億五千万円に減るといたしましても、まだ一億四千万円の赤字が出るという状況でございますので、いまの状況が続く間はなかなか計画造船で船をつくる意欲が出てこないというのが、率直に申しましての現状でございます。もちろん定期船のリプレースメントその他がございますので、それにつきましては、ある程度計画造船の制度を利用させていただくことも考えられるわけでございますが、その場合には、また前に戻りまして、そうやってつくり上げました船に果たして国際競争力があるのかどうかということについて、はっきりした見通しがつかないうちはなかなかできにくいというのが現状でございます。
  48. 原田昇左右

    ○原田(昇)委員 時間でございますので、これで質問を終わります。
  49. 増岡博之

    増岡委員長 久保三郎君。
  50. 久保三郎

    ○久保(三)委員 参考人の方々には本日は大変ありがとうございました。  先に地田先生にお伺いしたいのであります。お話の趣旨は十分わかりますが、いま造船不況、こういうものがかなり深刻であることは事実でありますと同時に、それじゃ造船に関係する海運の方はどうかというと、これもお話があったとおりでありますが、言うならどっちもこの辺で体質を変える必要があるということも共通項としてあると思うのです。  そういう意味で、われわれは前向きで多少問題を考えてみたらどうかと思っているのでありまして、そのためにスクラップ・アンド・ビルドというものを一応考えてみたらどうかということであります。これは単に造船企業の雇用を確保することに焦点をずっとしぼるだけじゃなくて、むしろいま日本海運の構造的な欠陥、と言ったら永井参考人にしかられますけれども、欠陥というのじゃなくて何か特殊なもの、それは言うならば船腹保有の構造一つをとっても外国用船に非常に傾斜している。もちろん海運産業そのものは用船に頼るというか、これによって波動に対応してやっていく産業でもありますから、まるっきり外国用船を捨ててしまえとかいうことは暴論だと思うのであります。しかし、どうも最近は、お話があったように日本船員費が非常に高い、だからということで外国船に逃げる傾向が強いと言われていますし、また事実そうだと思うのであります。  しかし、いま考えてみると、永井参考人に後でお答えいただきたいのですが、二重に賃金を支払っていやしないかという疑いさえ持つのです。たとえば適正な予備員率は、労働協約からいっても五二%ないし五三%ぐらいだろうと思うのです。ところが実際には七〇%を超えている。逆に二〇%がよけいなというか過剰な予備船員なんで、これにも賃金を払っている。また、それから逃れようとして外国用船なり仕組船をつくっていった場合、この船乗りにも払っているということでありまして、最初のうちは差っ引きしてプラスになったからいいけれども、最近は差っ引きしてもプラスにならないのではないかというふうに、私どもよくわかりませんけれども推量しておるのです。  それ以上に問題なのは、いまの政治経済の根源は、参考人の方から話があったとおり、雇用の安定というのが古くて新しいというか大きな命題だと思うのです。そういう意味でこの問題を考えていくと、スクラップ・アンド・ビルドということでいまの邦船の船主の持っている外国用船の比率を変えてもらいたいものだと私どもは考えている。それから仕組船日本船員を配乗するのであれば、これはあえて仕組船にする必要はないのじゃないかとも単純に考えます。  そういう意味で、この外国用船比重を少し軽くしてもらいたい。そうして、その上で日本船の比重を高くするためのビルドをしてもらったらどうだろうと思うのであります。  そこで一つは、地田先生、いまの外国用船の比率は妥当だとお考えでありましょうか、どうですか。もう一つは、いまの集約体制というのはきっともう十五年ぐらいになっているのだが、この集約体制がいまのままで問題はないのか、あるとするならばこれをどういうふうにすべきか、海造審にもおられるようでありますので、先生の御意見を伺いたいのであります。  それから、造船の方の参考人高橋さん並びに畑田さんにお伺いしたいのですが、大体四人の方のお話を集約してみると、これから造船の方の需要喚起して、たとえばスクラップ・アンド・ビルドをやるにしても、お話の趣きからすると、どうしても船台は余ってくるという感じがする。船台が余ってくるとなれば、これは何かしなければならぬ。そうなった場合に、雇用の安定をと言っても、これはなかなかそう簡単なものではないと思うんですね。その場合に、時間短縮の問題もございましたが、新しい分野でと言っても、すぐことしの秋から用に立つというようなものはなかなかありませんね。ないとすればどういう方法をこの際とるべきか。政府がいま提案しているような特定不況産業安定臨時措置法案によってスクラップというか構造改善というか、そういうことをやることの方がいいのかどうか。畑田参考人は何かあの法案には反対の意思を表明されたのでありますが、改めてその点をお聞きしたいと思うのです。  まずさしあたり、そのことだけお願いしたいと思います。
  51. 地田知平

    地田参考人 いまのお話は、一つは外国用船はどの程度が妥当なのかということと集約体制の二つの問題だと思います。  先ほどもお話がありましたように、雇用安定を何とかして確保しなければならないことは当然であろう、しかしその場合に、外国用船一つの障害になっているのではないかというニュアンスのことだったと思うのですが、外国用船はいろいろな形態がありまして、必ずしも船員費だけの問題ではありませんで、たとえば税制上の問題等々が外国用船を引き起こしている一つ原因だと思うのです。  そこで、いわゆる景気変動の緩衝、バッファーとしての用船のほかに、実際には日本船に類するような外国用船がある、このことがどの程度の比率がいいかというお話だと思うのですが、これはなかなかむずかしい問題でして、実は先ほどお話がありましたように、日本船の国際競争力がつくような仕組みであれば、恐らく外国用船も減ってくるのではないかと思うのです。その意味で、何としても日本船の国際競争力を強める必要があるのですが、先ほどからいろいろな方がお話しになりましたように、船員費について労使協議でその点を十分検討していただかないと国際競争力がつかないのではないだろうか。その場合、しばしば定員を減らし、そして予備員を減らせば失業が起きてくるじゃないかということなんですけれども、直接的にはそうかもわかりませんが、しかし長い目で見れば、必ず船員の雇用も増大するような余地があるのではないだろうか。先ほど御指摘がありましたように、仕組船が戻ってくれば、それだけ船員の雇用もふえてくるわけです。  そのほかに、もう一つ私、申し上げたいことは、とにかく現状のような状態では、もう少し進めば企業の倒産もふえるかもしれません、そうすれば当然失業がふえてくると考えなければならないと思うのですが、その際もう一歩労使それぞれがお互いに歩み寄れば雇用も確保でき、そして企業としてもつぶれないで済むような方策がお互いに十分考えられるはずだと思っております。  それから、集約体制の問題なんですけれども、これはなかなかむずかしい問題です。当初考えられておった集約体制は、たとえばイギリスのようなパターンであったと思います。イギリスのようなパターンというのは、言葉は適当かどうかわかりませんけれども、トラストであったわけです。トラストというのは、要するに一つの資本の支配のもとに幾つかの会社がコントロールされているということなんですけれども、日本の場合にはどうもその点がいささか欠けているのではないだろうか。つまり、外観から見ますとトラスト形態をとっているのですけれども、実質的に、たとえば親会社のコントロールがどこまで及ぶのかということになってきますといろいろ問題があるようです。その点私の考えでは、やはりトラストの形態というのをつくるようにしないと、世界の大勢というものにおくれるのではないかというふうに考えております。  果たして御質問の趣旨に合ったかどうかわかりませんが、一応これで終わります。
  52. 永井典彦

    永井参考人 いまの久保先生の御質問の、外国用船の比率が非常に高いので、それを少なくしたらどうかということでございますが、外国用船をしなければならない理由、これは程度の問題でございまして、いま地田先生もおっしゃいましたのですが、われわれの方から見ました場合の理由と申しますのは、海上荷動きの量が非常に変動いたします。運賃が変動すると同じように大変変動いたしますので、所有船だけでそれを全部賄うということにつきましては非常にリスクがございますから、海上荷動きの変動に応じられるように外国用船をある程度持たなければならない、平常の場合でもそういう理由があるわけでございます。  それからもう一つ、最近に至りましては、実は円が非常に高くなってきているので、船のコストをドルならドルにした方が企業経営の安定につながるという意味もございます。そういう意味もありまして、外国用船をある程度持っていなければ経営の安定が望めないという理由がございます。  そのほかに、特に外国用船の比率が最近多くなってまいりましたのは、いま御指摘ありましたように、仕組船という形で外国用船を行っていることが最近特に多くなったからでございますが、もちろん仕組船にいたしまして外国船員を使って船を動かすことになりますと、日本の船賃を、自社の船員を予備員として遊ばしておいて、かつ仕組船の、卑近な言葉で恐縮でございますが、陳さん王さんの船員費を払わなければいかぬということで明らかに二重にはなるわけでございますが、一船ごとの競争力を見ますと、明らかにそういうふうにしても仕組船、すなわち外国用船の方が経費が安いということでございます。  要するに、これは程度の問題でございまして、仕組船が非常に多くなりますと、そのために予備員がどんどんふえてまいりまして、それがまたコストとなってはね返ってくるという悪循環を来しますので、ほどほどのところでとめなければいかぬということは、もちろんわれわれは考えているわけでございますが、一船ごとの船の経費を見ますと、明らかに仕組船が安いものですから、ついその方へいってしまっているというのが現状でございます。  それから、われわれに対する御質問じゃないのかもしれませんが、集約体制、これは三十九年の集約時からずっとわれわれとっておりまして、大体六つのグループに分かれてやっておりますが、われわれといたしましても、現在程度の集約は今後も必要であろうと考えております。  以上でございます。
  53. 高橋正男

    高橋参考人 造船産業は労働の集約産業であるとともに、技術の集約産業であると思います。技術の集約産業として造船産業を技術の職穂別に分類しますと、約五百種類の職種が存在するわけであります。したがって、その技術をどう活用するか、こういうところに問題がしぼられるわけであります。したがいまして、先ほども申し上げましたように、まず官公庁船、これは大体耐用年数が二十五年と言われているわけですが、たとえば海上保安庁の巡視船というのは三百五十トンぐらいでありまして、二百海里時代であるのに二百海里に出られない、木の葉のように非常に揺れてしまう、そういう船もありますし、老朽化している船もありますので、その辺を五十三年度に着工できるような配慮をまずしていただきたいというふうに考えておるわけであります。  さらに、日本は国土が狭いわけでありますから、何としても二百海里時代になれば海洋開発を進めていかなければならない。その海洋開発とは何だ、いろいろいまちまたでも言われておりますが、一つは空港の問題とか、さらにまた洋上ハイウエー、そうして過密なたとえば東京、横浜あたりのところにおいては船が通れるようにベイブリッジ方式をとって、そうして千葉とか横浜とか東京とか、こういうようなところは発想の転換をして仕事量をつくらなくちゃならないのじゃないか。これはあくまでも国民の環境保全を考え、そうして雇用を考え、そうして内需拡大に結びつける、こういうふうな発想転換が必要ではなかろうかなというふうに考えておるわけであります。  したがいまして、いろいろなアイデアというものを、組合は組合として雇用を守り、そうして日本の経済を安定成長させるために考えているわけでありますけれども、皆さん先生方にもお考えいただく、つまり、いままでの時代と違うのだ、新しい次元に立った発想の転換をせざるを得ないのじゃないかというふうに考えているわけであります。  特定不況産業安定臨時措置法案の問題でありますけれども、私は、あくまでもこれは緊急避難的な法案とすべきじゃないのかというふうに考えているわけであります。しかしながら、このような雇用不安の状態でありますから、あくまでもこの法案については事前に、通産大臣なり労働大臣の協議はされるでしょうけれども、雇用を守る、それが優先する労働組合においては労使の事前協議、こういう中でひとつ設備の削減、廃棄、そういう問題について、雇用を守るという精神をこの法案でぜひ生かしていただきたい。そうでなければこの倒産を絶対守れる法案ではないと思う。これは倒産をなるべくやわらげる法案ではないかと、私、この法案を読んで理解しているわけでありますけれども、やはりこの法案に頼らないで、みずからが、労使がともにひとつ構造転換をしていかなければならない、そのように考えておるわけであります。  したがって、構造転換、構造転換といま言われているわけでありますけれども、では構造転換、産業構造の転換をどういう方向で、どういう政策でいくのかというのを出すのが、実は私、政府の責任じゃなかろうかと思うわけであります。  これは国民全体が考えて、本当にいままで繊維が不況だ、次は造船だ、鉄鋼だ、そういう産業構造はかなり転換せざるを得ないわけでありますが、一体どういう方向でやるのか。省エネルギー、省資源、そういう知識集約産業とするならばどういう政策が必要なのか、こういう点をぜひ国政レベルにおいても国民の前に提示されることを、われわれも当然その模索をしますが、ぜひお願いしたいと思うわけであります。
  54. 畑田薫

    畑田参考人 まず、法案の問題について申し上げたいと思います。  本法案の目的が、これからの審議の過程でどういうふうになっていくかわかりませんけれども、政府案そのものからいたしますと、まず不況克服と経営の安定ということが前面に出てきているわけでありまして、雇用の問題について設備廃棄に伴う措置をどのようにしていくかということについては触れられていない、むしろ単に一業者に対する配慮ということだけになっているわけでありまして、そういうことからいたしまして現実に造船の場合、これまでの政府の操業短縮措置に基づいて今日進められてきている中でも、先ほど申し上げましたように、人減らしが個別企業段階では非常に急速に進められている状況であります。そういうことからいたしますと、設備が余っているから廃棄しなければならぬ、そうすると解雇もやむを得ないのだ、こういうことに短絡的につながっていくことに非常におそれを抱いているわけであります。極端に言えば、そういうことからしますと、この法案によって摩擦なく人員整理を行うということにしかなっていかないのではないかということを非常に危惧しているわけであります。  そういうことで、まずもって、私どもの立場からすれば、雇用の安定、雇用の確保というものを、その設備廃棄ということの中でどのように位置づけていくか、これらを明確にすべきであろうというように考えております。  もう一つは、現在の構造改善の問題が、先ほどの意見の中でも申し上げましたけれども、確かに過剰という現実に直面しているわけであります。しかし、いま造船の場合、ここ二、三年のところが最も落ち込む最低の状況にあるということであります。しかし、それ以後の需要見通しについても、海造審によるいわゆる昭和五十五年を目指した六百万トン、国内船を含めての六百五十万トンという需要見通しだけが出されているわけでありまして、こういう状況の中で、今後の造船需要見通しというものをどのように立てていくのか、それらに向けてどう対応していくかということが明らかにされていない中で、いまどん底の中で大変だ大変だということだけが前面に出て、それが労働者にすべてしわ寄せされていくということに非常に問題を感じているわけであります。そこらについての雇用対策というものが、もっと政治的にも前面に出されてこなければいけないのではないかというように思います。  また、この設備が非常に余っておる、過剰の状態だということについても、いま日本造船会社が千五百社ある中において、その生産力の大手八社だけで約七割を占めているというこの実態の中において、しからばこの過剰状態をどう改善していくのか、ここらについても非常に問題視するところがあるわけであります。そういうことから、現実に起こっている大手、中小のこの関係についても、どのようにしていくかが明確にされないままの中で中小が倒産という事態に追い込まれている、こういうことをもっと見詰めて、そしてそれに対する対応策が考えられていかなければならないというように考えております。  したがって、もちろん需要創出、そしてまた今後の低成長という状況等からいたしますと、既存の、従来型の船腹だけを中心にした造船の対応ということでいいのかどうか、将来展望も含めながら、やはり新たな需要開拓というものを考えていかなければならないのではないかというように考えております。  それらについては、先ほどから申し上げておりますように、やはり海洋構造物その他のあらゆる措置を考えていかなければ、あるいはその研究開発に積極的な取り組みをしていかなければならないというように思います。そして、その間のつなぎの問題としてスクラップ・アンド・ビルドの問題が考えられてくるのではないかというふうに考えます。  もう一つは、先ほども申し上げましたように、仕事がないから、少なくなったから、だから仕事を仕事をと言うことだけでいいのかどうか。従来のような労働のスピードで、働き過ぎということの中で今日の国際問題その他を起こしている状況等からすれば、やはり労働のスピードを緩め、緩やかな労働、さらには、それに基づく時間短縮、こういうことによって雇用機会をつくり出し拡大をしていく、こういうことをしていかなければ、非常な設備の過剰あるいは従来のような大きな需要が見込めないという状況の中であれば、雇用問題は根本的には解決しないのではないか、こういうことで、ぜひこの時間短縮等の問題については積極的に実現を期するべきではないか、このように考えている次第であります。
  55. 久保三郎

    ○久保(三)委員 もう持ち時間がありませんので簡単に永井参考人にお伺いしたいのです。  いまお話が出たように、造船の問題を中心に話をするほかありませんが、そうなると大変海運の方がそのダシに使われるような気持ちになられたのでもちょっと困るのですが、命題は造船であります。たとえば、お話があったように、これから雇用の転換を図っていくと言うが、転換の先が、実際言うといま見つからぬのであります。これは全体としてわからぬ。抽象的には知識集約産業とかなんとか言ってはおりますが、計画を立てるようなそういうまでにはとてもいっていない。ところが片方では余剰人員というか、そういうものが出ざるを得ないということですね。  それが一つと、もう一つ、いまお話がありましたように、果たして造船能力というか造船に働いている人間の技術を含めて、これは本当に過剰なんであろうかどうか。いま提案しているのは、五年間の時限立法でございますが、少なくとも五年間の見通しを、それじゃつけていけるのかどうか。いまお話があったように、いま一番落ち込んでいるのだろうと思うのです。それじゃ伸び上がるのはどこまで伸び上がれるのか、これも早く言えばちっともわからぬ。そういうわけで、少なくともそういう二つぐらいの問題の、おぼろげながら大体手につかめるようなものが出てきてから、初めていまのような法律案が適用になることが一番私は望ましいものだと考えているわけなんであります。  そこで、つなぎとしてというお話がありましたが、私もつなぎとして、少なくとも一年半か二年間の問題として、否そうじゃなくて、もうことしの秋から大体船台が空になるというのでありますから、ことしの秋から少なくとも何がしかの約束ができるような政策をこの際打ち出すべきだというふうに考えております。と言っても、先ほど地田先生からも冒頭お話しがありましたように、造船のための船つくりではなくて海運のための船つくりでありますから、これはやはり体質改善というか海運産業の体質改善、特に国際競争力の問題を含め、そして、いま問題になっている雇用の安定をどうするかという問題を基礎にして考えていかなければならぬと思うのです。先ほどお話があったように、一船単位で見ればなるほど外国用船でいった方が安いという計算は成り立ちますが、国家的な立場あるいは全体的な海運産業の立場からいくと、そうではないだろうというふうに私どもは思っている。しかし、労使の間で原則的な問題だけでやっている限りは、これはなかなか解決はむずかしいと思うのであります。やはりお互いに現実を直視しながら問題の解決に当たるという共通の広場が必要だと思うのです。  これは、もちろんわれわれがとやかく申し上げることではありませんが、たとえば、私どもがいま考えているのは、国内船のスクラップ・アンド・ビルドは一対一でいこうじゃないか、そうすればこの場合、雇用は早く言えば減りますね。不経済船を新しいものにつくりかえるのですから、この場合は雇用が減る、減るけれどもやはり一対一でやってもらう。ところが船主が支配されている外国用船ですね、こういうものについてはまあ一対一・五と、一・五ぐらいのスクラップに対して一杯つくってもらう、これが雇用の増大につながりはしないか。  それから単純な用船、これは用船というより買船でもいいですが、どこからか古船を買ってきて、二つつぶして一杯新しくつくる。そして、もちろん新しくつくる船は日本の国籍で運営してもらうということで、これはいまの予備員率を多少なりとも解消していくということができはしないか。もちろん、そのためにはスクラップとビルドの間の格差がございますから、これに対しては税金の問題もあるだろうし、資金の問題もあるだろう、それから、いまの国内船を、まあ国内船は大体船腹過剰でありますから、この際は一・三ぐらいスクラップしてもらって一杯つくるというようなことでやる、しかし、融資条件その他はこれは当面考え直してもらう、いま離職者対策としていろいろな手当金を出しますが、これは言うならどこまでも後追いの金、だから、そういうものを出すくらいならば、前もってそういうものを出せるような仕組みで雇用を確保するということに転化できないものかという考えをいましているわけなんでありまして、この間、永井さんが恐らくその衝に当たられたと思うのでありますが、船主協会と造工の責任者とがお会いになって、スクラップ・アンド・ビルドについてのお話もしたそうでありますが、われわれとしてはそういうことを考えているのだが、あなたの方としてはどういうふうにお考えでありましょうか、一言だけお伺いしたいと思うのです。
  56. 永井典彦

    永井参考人 本日の会に私が出席さしていただきまして、いろいろな御意見を申し上げることは、決して造船対策のためのダシになっているとは思っておりません。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕 といいますのは、造船海運は非常に相関関係がございまして、日本海運世界に冠たる海運業になったのには、日本造船業の力が大いにあずかってあったということは、これは言えると思います。しかしながら、造船不況のために海運が協力しろというお話になりますと、まず海運不況から海運が逃げ出せて、それから初めて造船好況になるというものであろうかと存じます。おまけに、おまけと言っちゃ失礼ですが、海運産業の不況原因世界的な船腹の圧倒的過剰にあるということでございますので、その点いまの段階といたしましては、両産業の関係が非常にむずかしいということでございます。  スクラップ・アンド・ビルドでございますが、これは理屈といたしましては全く船腹がふえませんし、それで造船業に仕事ができるという意味において非常に歓迎すべき案じゃないかと思うわけでございまして、われわれが過日、造工の首脳部と打ち合わせをいたしましたときも、そういう原則論におきましてはわれわれは全く反対を示さなかったわけでございます。しかしながら、船腹が圧倒的に多い中で、それじゃスクラップしてつくる新しい船はどういう形の船をつくるかといいますと、その船が国際競争力があって、この不況海運界の中でかせぎ手になってくれるような船でなければいけないということがございます。そこで、日本海運国際競争力が非常になくなってきている原因を先ほどからるる申し上げましたように、諸経費の中で船員費が非常に高くなっているためにこういうことになっているということでありますので、今後われわれといたしましては、全日海とよく話しまして、お互いに生きられる道を見つけ出していきたいと思います。  われわれの考えといたしましても、雇用か就労条件かどちらかになった場合に、両方はどうしてもできない場合には雇用をとっていただきたい。私も、就労条件を少し低下させましても雇用だけは迷惑かけないようにしていきたいと考えておりますので、そういう意味で全日海の協力を今後ともお願いいたしたいと考えております。  それから、先ほどのスクラップ・アンド・ビルドの比率でございますが、国内船の場合は一対一、それから外国用船の場合は一対一・五、これは非常にいい考え方の一つであろうかと存じますが、外国用船と申しますのは、先ほど申し上げました仕組船が大部分になろうかと存じますが、われわれが仕組船に走らなければならなかった理由というのは、経費が安くつくからという意味でございますので、一対一・五でビルドする場合の新しい船の競争力は、やはり世界的に見てりっぱに通用するものでなければいけないという点になりますと、また、さっきに戻ってまいりまして船員費の問題にかかってくるということでございます。  以上でございます。
  57. 久保三郎

    ○久保(三)委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  58. 小此木彦三郎

    ○小此木委員長代理 中村重光君。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 地田先生に御意見を伺うのですが、先ほど非常に高邁な御意見を聞かしていただいて非常に参考になったのですが、その中で国内船比重をかけなければならないといった点と、それから造船海運とは密接な関係にある、したがって、両者の整合性が必要だということ、これは考え方としても言葉としてもよくわかるのですけれども、さて現実の問題になってきますと、国内船にどのように比重をかけられるのか、その可能性というものについて、何かこういうことがいいじゃないかという御提言でもあれば聞かしていただきたい。  それから、整合性の問題ですが、そのとおりでなければならないのだけれども、さて現実問題として、これをこういう点をこう変えていかなければならぬということになってくると、いま整合性に欠けているという点がどういったような点なのかということですが、これについても、こういう方法があるのだというお考え方がありますればお聞かせいただきたい。
  60. 地田知平

    地田参考人 最初の国内船比重を移さなければいかぬということなんですけれども、この問題は、いかなる場合においても造船業が破滅したり、あるいはそれから起きてくる労働者の失業というものを避けるために、一定の操業度、これ以上下り得ない操業度があるだろうと思うのです。その操業度の中でもって国内船というものを考えて、それ以上は輸出船にお頼りになっても結構、差し支えないのですけれども、一体適正な操業度というのは何%かと言われますと、私ども学校の教師としてはなかなかわからない点があるので、その点ひとつお許しを願いたいと思うのです。  それから、もう一つ整合性の問題なんですけれども、これは抽象的に申し上げれば、要するに海運政策の中で、たとえば先ほどからお話が出ておりますスクラップ・アンド・ビルドというものを取り込んだ上で考えていく必要があるだろうということなんでございますけれども、具体的に申し上げますと、私、先ほどから申し上げておりますように、国際競争力の問題というものを確保する手段を講じて、その上に立っての船質改善ではないかということでございます。ですから、何とかして国際競争力というものを確保していくような努力を、これはなかなか労使間だけでは解決できないかもわかりませんので、その場合にはまたそれなりのやる方法もあるかと思うのですけれども、そういう国際競争力の確保ということを前提にして、船主に船質改善の意欲を起こさせた上でないとなかなかうまくいかないのではないだろうか、こういうことでございます。
  61. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど久保委員からも質疑がなされておりました造船業の構造改善の問題ですが、海造審の造船部会で九日から、六月をめどに建議をするために本格討議に入っているということなんですが、六月をめどということは、特定不況産業安定臨時措置法案、これが成立をして動き出すころに合わせていこうという考え方であろうと思うのですが、実はもう法律案の審議よりも先に、業界の主務大臣が定める基本計画の準備に入っておるということになると思うのですが、そのよしあしは別といたしまして、ここで五〇%廃棄をするという考え方の上に立っておられるように伝え聞くわけです。ところが、実際の仕事量というのは、その半分程度しか操業率がない、それで精いっぱいだ。してみると、今後何に期待をしていくのか。五〇%に設備廃棄をして、その程度にとどめるとしても、その半分しかないとするとどうするのか。結局国内船のスクラップ・アンド・ビルド、それから国、中央の巡視船とか監視船とかそういったもののスクラップ・アンド・ビルドあるいはまた新たに新船をふやしていくといったこと、いろいろLNG船であるとかその他の考え方もあるようでありますけれども、それはいま直ちに間に合うことでもないということになってまいりますと、この法律案も実は五年ということになっているわけですから、期待は、そうしたLNG船あるいは二重底等々ということよりもスクラップ・アンド・ビルド、そういったものに対する期待であろうと考えるわけです。  そこで、高橋参考人畑田参考人は、直接現場におられて実態をつかんでいらっしゃるのですが、大変重要な雇用問題もあるわけですし、どの程度操業率であれば現在の雇用量を維持していくことができるのかということと関連をして、この五〇%廃棄ということについて強い関心をお持ちになっていらっしゃるのだろうと思うのです。先ほどもこの点に対するお答えがありましたけれども、具体的に数字を挙げてお尋ねをいたしましたので、御見解をそれぞれ伺ってみたいと思います。
  62. 高橋正男

    高橋参考人 設備過剰問題ですが、確かに建造能力が千九百万総トンとも言われているわけですけれども、私の推定では二千万総トンくらいじゃなかろうかと思うわけであります。これは大型タンカーを中心に建造いたしましたので、そのような能力が肥満化したと言っても過言ではないわけであります。したがって、タンカー需要はここ三、四年はないのじゃないかというふうに考えますと、今度はカーゴーなり特殊な船ということになるわけであります。そうしますと、トン数だけで機械的に設備過剰の問題を論ずることは適正ではないと思うわけであります。したがって、業界筋から約五〇%の設備を削減しなければいけないのじゃないかというのが出ておりますが、しかし、総論としてはそのようなことは言われますけれども、具体的に今度どの企業がどれだけ削減するのか、廃棄するのか、これは私、なかなかむずかしいのじゃなかろうかというふうに考えるわけであります。  先生が言われたように、海造審の施設部会で検討されて答申されて、それで業界全体としてその答申に従って削減をする、結果はこういうことになろうかと思うのですが、これはさっき申し上げましたように、算術計算的に過剰設備だというようなことでなくして、その設備を一時封鎖する、さらに、その設備をどのような新規需要で稼働させるか、そういうことが必要ではないかと思うわけであります。  さっき申し上げましたように、海洋構造物とかそういうものをやれば、そういう施設が使えるわけでありますから、ひとつそのように進めていただきたいと考えておるわけであります。  問題は、どの程度なのか、これはわれわれも経営者サイドでないのですが、いろいろ話し合ってみると、何としても六五%くらいの操業度が必要だ、たとえば雇用の問題についても六五%の操業度が確保できれば、雇用問題も余り調整しなくてもいいのではないかというふうに考えますけれども、設備が半分だから従業員を半分にする、こういう短絡的な発想については全く反対せざるを得ないわけであります。  したがって、六五%の中で造船から他の部門へ開拓していく、労働者にとって仕事がないということほど悲惨なことはありませんので、したがって、そういうようなことをわれわれも労使会議の中で問題を提起して、あくまでも雇用を守る方向でやっております。  いま自然減耗も行われているわけですが、新規採用はほとんどがやっていない、そして定年も早めるような方向にあるわけで、これも問題があるわけです。  ですから、問題は時間短縮、これはさっき申し上げましたように、造船については四年前に週休完全二日、これは産業別でも一番早いのじゃないかと思うのですが、そういうように今日の事態に対応していままでやってきた。こういうことで、専門家の皆さん方で海運造船合理化審議会の施設部会で検討されるわけでありますし、われわれは、それが雇用優先をあくまでも前提として適正に行われることを期待しますし、われわれも労使の場においてそういう前提に立って協議をしてまいりたいと考えております。
  63. 畑田薫

    畑田参考人 設備操業度の問題、これはなかなかむずかしい問題でありまして、先ほども申し上げたように、結局大手と中小の関係、設備能力、生産能力、それを含めていま大きな格差があるわけでありますから、非常にむずかしい問題があると思います。  ただ、それと同時に、操業度を考える場合には、先ほどからも申し上げておりますように、工程、労働密度、労働時間、労働スピードの問題、これらのものを現状のままで考えていくのかどうか、こういう点もかかわってくるように思います。  先ほど高橋さんの方からもお話がありましたけれども、大体海造審答申に基づく政府の操業短縮平均六五%という勧告の中では、そういうことの中で雇用問題も維持できるというなにもあったようでありますけれども、そういう点等から考えますと、やはり大手と中手との関係の分野の中においてそれらの関係をどう考えていくかというのが非常にむずかしい問題だろうと考えております。  さらにまた、いま五〇%だとかあるいは二五%だとか三〇%だとか廃棄率についていろいろ言われていますけれども、先ほど申し上げましたように、これらの関係が、今後の需要見通し、そういう見通しに立っての基本計画その他をどのようにしていくのか、こういう点等が明らかにされていない中で設備廃棄だけが論じられているところに非常に疑問を持っておりますし、さらに労働組合立場からすれば、雇用問題に対する大きな危惧を抱いているというところにあるわけであります。  そういうことで、操業度設備との関係というのは、いろんな条件がありますから、いますぐこれでどうだということはちょっと言えないのではないかと考えます。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 畑田参考人がいまお考え方を述べられた例の中小との関係、かつて大型船は大手、中型船は中手、それから小型船は中小といったような分野が実はあった、ところが、いまそうでなくて、大手が中小の分野にどんどん進出をしている、それで中小の受けている打撃は大変大きいのだということ、まさに御意見のとおりです。  ところが、建造分野の確保も、建造能力に応じた船舶の建造基準にチェックして許可をしていくべきであるという御意見だったと思うが、実際問題として大は小を兼ねるということになって、小さい造船所は大きい船が受注できないことははっきりしているのだけれども、大手の方はどんなのでもやれるわけですから、建造は許可制になっていますので、本当にチェックしようとすればチェックできるのだけれども、本当に分野確保ということが実際問題としてできるのだろうかという心配をするわけです。  同時に、こういった造船不況状態の中ですから、当然業界の中で話し合いというものは進められてしかるべきであると思うのですけれども、そういうことはやっているのかいないのか。  それから造船業は、御指摘のとおりに地域の経済に重大な関係を持つわけですから、当然、都道府県知事というものが積極的に両者の調整のために手を打たなければならぬが、その点についてやっているのかやっていないのか、ひとつお考え方とかそういう状態についてお聞かせをいただきたいと思います。
  65. 高橋正男

    高橋参考人 造船産業労使会議というのを持って、そういう造船プロパー、特に中小造船対策の問題についても組合から常に意見を申し上げておるわけであります。  その内容というのは、まず造船所というのは、特殊な産業と言ってもいいわけで、大手も中小手も皆同じ船をつくっている、たとえばA社という会社があると、小さい造船所を幾つも持っている、ですから大手も中小手も同じクラスの船をつくってきた、そうして中小手も大型ドック設備をやってきた、したがって、いままでも大手の造船が大型で中小手の造船が小型だというような分野を区分けしたような内容というのはなかったわけであります。ですから、どこに線を引くかというのはきわめてむずかしいと思うのです。しかしながら、業界協調の精神で、中小手が倒産しないように仕事量をどうするかという問題について業界でも話し合いをやっているわけであります。  もう一つは、やはり大手においてもお互いに協調して何%の仕事量をとればストップして、そして分けてやれと組合から経営者に対してそういう意見も具申しているわけであります。お互いに共存共栄の立場であるべきではないか、これは労働組合立場で言うならば、大手の組合員も中小手の組合員も同じであります。そういう考え方で業界に対して強く、そのような大手、中手、小手に対しても協調の立場で仕事の分け合いもやるべきであろう、したがって大手が大型、大型と言っても、かつては四十万トンとかありましたけれども、いま皆大きくても六、七万トンくらい、ですから、そういうところで、百万トンドックならそういう中で小さい船をやる、それから中手でも新造船所をつくって五十万トンドックでもやれる、小型造船においても一万トンくらいのも、どんどん設備拡大をしてきましたから、そういうのもやる、ですから、その辺についての区分けはきわめて困難だろうというふうに考えているわけであります。  したがって、何としても業界でそのような仕事量の問題については協調して、お互いに受注競争をやって船価を下げないようにということについて、厳しく組合から経営者側に対して申し入れているということです。
  66. 中村重光

    中村(重)委員 畑田参考人に整理をしてお尋ねするのですが、あなたの御意見の中に、先ほども触れましたように、建造能力に応じた船舶の建造を基準にチェックしていく、それは許可制だからチェックできる、ところが、いまでもできるのに実際はやっていない。私どもは、大企業が中小企業分野にじゃんじゃん進出をしているということをチェックしなければならないというので、分野調整の法律を実はつくったのです。ですから、やはりそういった法的措置というものが必要でないのかどうか。現行法の中で造船は建造許可が要るのだからということでチェックできるというようにお考えになるか、その点いかがですか。
  67. 畑田薫

    畑田参考人 これは一応運輸省等において建造許可をしているわけですから、そういう中でチェックしようと思えばチェックはできると思います。ただ、その規制がどこまでいくかということについてはいろいろあろうかと思いますけれども、私は、いま運輸省自身がそういう許可段階で厳しくチェックをしてやっていこうとすればでき得ると考えております。  結局先ほどの業界との関係その他があるのですが、業界の中でも、こういう状況ですから、分け合ってということは、マクロ的にはいろいろ言われているわけですけれども、さて個別的な問題になってきますと、なかなかそうはいかないというのが現状ではないかというように思うのです。  かつては、成長の段階では、一応大型船は大手、中小型船は中小ということで、大体その分野は維持されてきていたわけです。ただ問題は、いま大型船がなくなったわけですから、ほとんど中小型船になって、それをお互いに取り合いっこしているというのが現状であるし、そこに非常な問題があるということを指摘しているわけです。  そこらの基準をどのようにしていくかは、いろいろむずかしい問題はあろうかと思いますけれども、やはりその点をきちんとしていかないと、これからのいろいろな構造改善その他を論議するにしても、そういう点が一番問題になってくるのではないかというふうに考えております。
  68. 中村重光

    中村(重)委員 この特定不況産業安定臨時措置法案は、実は商工委員会でもう審議に入ったのです。きわめて重要な法律案であるという考え方で、「不況」という文字がありますので、急を要するという形にとれるのです。しかし、実際にその中身を見てみると、この法律案が原案のまま通るということになってまいりますと、労働者の首切り、それから銀行に対する救済、銀行は、この法律が通りますと、いままで貸した金が、信用基金という一〇〇%危険負担のない保証によって金を新たに貸すことになるわけですから、銀行は非常に助かる、ところが、それ以外にはこの法律案の中でメリットというのは余り考えられない。たとえば平電炉のようなのは、もう労働者の首を切るだけ切ってしまった、だから、過剰設備を抱えておるために、これを廃棄しないとむしろ雇用圧力になる、だから、平電炉なんかには、私、これは非常に有効な役割りを果たすであろうと思うのです。  いろいろ中身を見てみると、この法律は造船業にとってきわめて重要な役割りを果たすと言っていいのではないか。設備廃棄等は五〇%とか言っている関係上、この法律が、ほとんど半分以上は造船設備廃棄という方向に働いていくのではないかというように考えるのです。  であるとすると、私どもは、これはいわゆる雇用問題という点について、あるいは関連中小企業をどう保護していくかという点について非常に重要であるというように考えますし、それから地域経済に及ぼす影響という点から、当然、労働者と経営者との間の協議とか、あるいは地方、都道府県の意見を聞くとか、審議会もできるわけですから、審議会の意見も聞くという面もありましょうし、ともかくこの法律がただ単に首切り、銀行救済という形で働かないように、本当にその名にふさわしいような法律の中身に修正をして成立させるということにしなければならないという考え方の上に立って、これから野党間の話をまとめまして、与党との間の最終的な折衝に入るという考え方を持っているわけでございますが、ただいま私が一、二こういうことが必要ではないかということを申し上げましたが、その点に対するお答えを高橋畑田参考人から伺いたい。  時間の関係がありますから、続いて永井参考人に御意見を伺うのですが、スクラップ・アンド・ビルドの点については、必ずしも積極的な態度表明でもなく、また別に反対もしなかった。それは海員組合との労使の問題もありましょうし、きわめて慎重な御発言ということになったと思うのですが、ところが、伝えられるところによりますと、造船工業会と船主協会との間にスクラップの際の財政援助について事務レベルの詰めをやっているということも伝えられているわけでございますから、この点に対する協力ができるのかどうかという点が一点であります。  もう一つは、LNG船の建造の問題でございますが、いま川崎重工でたしか一隻つくって、つくっただけでまだ何もやっていない、テストをしていない、こういうことですが、ところが、コスト面から言って、船主協会としてはこの点期待が持てるのかどうかという点、それから技術的な面についても、運輸省は、いままで日本発注するということについてはむずかしいということを言ってきたわけですが、川崎重工が一応一隻つくっておるという点からいたしますと、技術面については十分いけるという考え方の上に立っておられるのかどうか、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  69. 永井典彦

    永井参考人 まず、スクラップ・アンド・ビルドの問題でございますが、この問題につきまして先ほどたびたび申し上げておりますように、海運界と造船業界とは非常に相関関係の強い関係がございますので、われわれとしても、造船対策につきましてはできる限りの支援をしたいと原則的に考えておるわけでございます。  そういう意味におきまして、先日、造船工業会の首脳部と船主協会の首脳部が会談いたしましたときに、原則論としてはお互いに協力してやろうじゃないかという話し合いがついたわけでございます。しかしながら、これも先ほど申し上げておきましたとおり、現在の海運不況は、船腹が圧倒的に多いから不況になっているわけでございます。また海運界がよくならない限りは造船業界もよくならないという関係がございますので、まず海運界が不況から逃げ出すのが何と言っても最初の問題であろうかと実は考えておる次第でございます。  スクラップ・アンド・ビルドの場合に、スクラップする船はそれだけ減るわけでございますが、新たにビルドの船が出てまいります。マクロで言いますと、スクラップとビルドを一対一にしますと総合計の世界船腹はふえないわけでございますが、いま圧倒的に船腹が過剰なために、船腹がふえないだけでは海運界にとってプラスにならぬわけでございます。  それからもう一つは、こういう場合において、ビルドをするのにあくまでも国際競争力を持った船でなければ新しくつくれないという点もございます。  それから、スクラップする場合のスクラップ補助でございますが、いま海運不況によりまして、持っている船の償却が進んでおりませんので簿価が非常に高くなっております。その簿価と同じ額でスクラップ価格が決まりますなら問題ないのですが、通常、スクラップの方が安いのでスクラップすると処分損ができる、それが新しくできる船の船価に実質上かぶってくるということになりますと、新しくできる船の国際競争力はそれだけ減るという意味におきまして、スクラップ・アンド・ビルドも、マクロで言いますと結構な案ですが、そういうように詰めてまいりますといろいろ問題があるわけでございまして、それで現在、造船工業会と船主協会の間の事務局ベースでそれを詰めておる次第でございます。  したがいまして、いま詰めている段階なので、これがどういうふうになるか今後さらに検討すべきでございますが、原則としては賛成でございますが、そういう細部の点におきましてはなかなか問題があるというのが、スクラップ・アンド・ビルドの現状でございます。  それから、LNGでございますが、われわれの考え方は、LNGと申しますのは、将来の日本の第一次エネルギーにとりまして欠くべからざるエネルギー源だと思っておりますので、これにつきましては、日本海運界もぜひこの輸送に参画させていただきたいと思っております。現在すでにいろいろなLNGのプロジェクトが実施されておりますが、日本船は全然それに参加しておりません。参加していなかったのは、日本造船会社がつくれなかったというわけではございませんで、いままでのLNGのプロジェクトは、全部日本側が現地のLNGの生産者からCIFで購入している形になっております。したがいまして、現地のLNGのメーカーから日本船に対しましていままでもたびたび引き合いがございましたが、われわれの方としては、運航するのに非常にリスクがあるものですから、そのリスクを掛けた運賃を提示いたしましたところ、それが国際競争力に負けまして日本船は参画できなかったわけでございます。  最近、いわゆるカリンガスのプロジェクトが非常に脚光を浴びてまいりまして、すなわちイランのカンガン地区からの輸送でございますが、これは皆さんの御理解によりまして、ナショナルプロジェクト的な取り扱いをしていただくことになったと私は了解しておりますが、その場合には、現地から揚げ地まで一貫してこれを輸送するという形、一貫して考えるという形になりましたので、その中の海上輸送部門につきましても、船会社だけがリスクを負ってやらなくても済むような形になろうかと存じますので、その場合には、私の方としても欣然参加させていただきたいと思っております。  日本造船会社は、別に川崎重工に限らずに、ほかの造船会社でも一応LNG船はつくれるというふうに私は確信しております。ただ問題は、LNGというのは、輸送途中はマイナス百五十度以上の非常に冷たい温度でやってまいりますので、それを入れますタンクの構造が非常に複雑でございます。そのタンクをつくれるところはそうやたらにないと思いますが、船体その他はどこの造船会社でもつくれると存じております。  以上でございます。
  70. 高橋正男

    高橋参考人 特定不況産業安定臨時措置法案に対する見解でございますけれども、これは倒産防止のクッションの役割りは若干あろうと思うわけであります。問題は、雇用をどう守るかという問題です。通産大臣と労働大臣と事前協議というようなことも言われているわけですが、問題は、それだけで雇用問題が解決するということにはなり得ないのじゃないか、したがって、あくまでも雇用優先を前提としての労使の事前協議、そうして合意をしなければやらない、こういうような一つのルールをぜひ導入していただきたいと思うわけであります。  当然、造船産業は地場産業でありますし、地域経済に与える影響も大きいわけでありますから、地方自治体との話し合いということも、また関係部門との話し合いということも事前にやっていただきたいというふうに考えておるわけであります。
  71. 畑田薫

    畑田参考人 いま中村先生が言われましたような法案に対する面がやはり明確にされてくることが前提でなければ、私どもとしてはこの法案には反対せざるを得ません。いずれにしても、やはり雇用が最優先でなければならないわけですから、先ほども申し上げましたように、余っているからしようがないのだ、だから削減をして、それによって人も減らしていく、こういうことでは雇用問題が非常に深刻な事態になっていくだろうというふうに思います。  特に、設備廃棄をしていく場合においても、中小の場合は専業メーカーでありますし、船台を一つしか持っていないというようなところなどは、たとえば五〇%ということで船台を半分にして事が済むという問題じゃなくて、中小の場合はそういうことでは企業そのものを閉鎖、つぶしていく、こういうことになっていくわけでありますから、そういうことになりますと、これは労働者にとっては大変な問題だというふうに思うのです。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕 そういう点では、やはり十分労組との協議の問題、同意の問題、これらはぜひ明確にされていかなければならぬのではないかというふうに思うのです。  ただ私どもも、これまでそういうことで事前協議協定についてそれぞれ企業と交渉をしてきているわけなんですけれども、設備その他の問題等あるいは事業所の閉鎖その他の問題等についての事前協議について、なかなか協定を結ぼうとしない傾向がまだあるのです。そういう状況並びに海運造船合理化審議会についても、全造船の場合、これまで全造船もやはり委員として入れよということを長い間要求をしてきているわけですけれども、今回ようやく造船施設部会の専門員という形で全造船の方からも参加をするようにしておりますけれども、しかし、審議会の正式な委員ではないわけです。こういう取り扱いでは非常に問題があるのじゃないか。本当に対等の立場労働組合意見を十分尊重して、事がこういう非常な構造上の問題にまでなってきているという事態であればあるほど、労働組合意見を尊重する、こういう態度を明らかにしなければならぬし、そのためにはそれぞれ協議の問題にしても、あるいは審議会に対する委員の問題についても、やはり同等の取り扱いをするような態度をとるべきではないか、このように考えております。
  72. 増岡博之

  73. 宮井泰良

    宮井委員 参考人の皆さんには長時間大変御苦労さまでございます。  私は、まず最初に、労働組合の関係の方々から二、三お聞きいたしたいと思います。どちらの参考人の方からお答えしていただいてもいいのですが、一応順番にお聞きいたしたいと思います。  まず最初に、畑田参考人にお伺いいたしますが、造船不況のしわ寄せというものは、まず下請、社外工の解雇、このようなところから始まっておると思います。そこで、そのような人たちが現在どのような状況にあるか、また、そういった点を労組として把握されておるかどうか、その点をお伺いいたしたいと思います。そしてまた下請、社外工の方々の訴えというもの、要望というものはどういうものであるのか、そういう点もお伺いいたしたいと思います。
  74. 畑田薫

    畑田参考人 いま御指摘のように、下請、社外工に対してのしわ寄せが非常に厳しく出ているわけでありまして、いま下請の問題になりますと非常に複雑な状況にありますから、全体的な把握というか掌握というのが非常にむずかしいわけでありますけれども、造船の場合は、特に中小の関係においては下請の依存度が強い状況であります。大体、ほとんど本工と下請が半々という関係でこれまできているというふうに思います。そういうこと等からいろいろ考えますと、それぞれの企業にとりましても下請の存在というのは非常に重要な位置を占めているわけです。しかし、こういう非常な仕事量の減少という状態等が出てまいりますと、どうしても下請の整理ということでまずあらわれてくるわけであります。  だから、現在までのいわゆる人員削減が昨年末で五万一千人と言われていますけれども、そのうち本工の関係は一万二、三千人くらいの減少になっておりますけれども、他はほとんど下請関連の労働者の数になっているわけであります。  こういうこと等からいたしまして、私ども全造船機械といたしましては、やはり下請工を本工化して、雇用の安定を図る中でやっていかなければならないということで強い要求をいたしてきておりますけれども、その実現が非常にむずかしいのが現状であります。このことは、下請の組織化が非常に困難だということであります。いま全造船の関係でも、最近に至ってようやく四つの組合が組織化されるという状況でありまして、なかなか全体的に組織化がむずかしいということで、下請の本工化という問題についての実現も、そういう面からも非常に困難な状況になっているというふうに思うわけであります。  したがって、今後の下請対策、特に下請労働者の対策の問題については、親企業の責任において雇用保障を完全にさせていくという取り組みと同時に、下請の労働条件、雇用を守るために、組織化をこれまで以上に強力に進めていかなければならないというふうに考えているわけであります。  そういうことで、いろいろと下請の現状が、ある日突然いなくなってしまうというような状況等も出てくる点があるわけでありますけれども、そういう点でやはり親企業に下請問題についての責任ある措置をとらせることを、もっと政策的にも強めていく必要があるのではないか。さらには、午前の意見の中でも申し上げましたように、下請に対する発注率その他の行政指導も、これは一応維持することで指導はされているわけですけれども、現実にはそのことは無視されたような形でやられておりますので、そういう点についての義務づけなどももう少し明確にさせていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  75. 宮井泰良

    宮井委員 それでは次に、高橋参考人にお伺いいたします。  労働組合は会社との間で労働協約を締結しておられると思うのですが、現在の倒産や会社更生法申請中の中小の企業の場合、事前協議をどの程度行っておられるのか、この実情をお聞かせいただきたいと思います。
  76. 高橋正男

    高橋参考人 一昨年の全国大会で、企業合理化対策指針というものを満場一致で決定いたしまして、出向、配転、あらゆる労働の異動について規制したものを産別として決めているわけであります。それはあくまでも完全雇用が前提であり、さらに労働条件の維持向上、労使関係の近代化、そうして事前協議で労使が合意しないものについてはやらせない、こういう方針を決定いたしまして指導してまいっておるわけでありますけれども、造船工業会に所属する労使関係においては大体実践されておるわけであります。たまたま小手の中で労使関係がうまくいかないところもあるわけでありますが、その点については本部がオルグを派遣いたしまして、そこに専従張りつけをして、あくまでも事前協議をやらせておるわけであります。したがって、いま全加盟組合においては、ほとんど事前協議を行っておるわけであります。  ただ、下請協力工の問題でありますけれども、造工会員会社二十三社の平均を見ますと、四十九年から協力工の減少が約一万五千名で、本工といいますか従業員の減少が一万二千名であります。当然、労働組合でありますから、協力工すべてについて労働者という視点には変わりはありません。したがって、協力工が会社からどうしても仕事の都合でやめてもらうという場合には、会社自身がその協力会社に対してどこどこへ仕事に行ったらどうかという配慮をするように、経営の責任においてそれを行うべきだという態度で強く申し入れてきているわけでございます。  協力工と言っても種々あります。非常に流動性もあるわけであります。そういう点についてのむずかしさは否定できません。したがって、労働組合としては、社会的な責任の立場に立って、同じ労働者という視点で労使の間で協力方についていろいろ協議をしてまいっておるわけであります。  それで、これらの問題についても、常に労使の事前協議、設備廃棄の問題にしても、さらには異動の問題にしても、全部事前協議でやっているわけであります。たとえて言うならば、ある造船会社では自動車会社へ、これは流れ作業でありますが、全く作業環境の違うところに多くの労働者が出向しているというのも実態でありますし、さらには鉄鋼会社に造船部門からの配転、さらに職場によっては仕事が変わりますので、それぞれの配置がえというものも行われているわけであります。  したがって造船従業員、協力工すべてが厳しい環境の中で配置がえとか出向とか配転というものがやられているのですが、これはあくまでも労働条件を下げないという前提で、事前協議の中で労使の意見一致を見て実施しているというのが実態であります。
  77. 宮井泰良

    宮井委員 それでは次に、畑田参考人に、午前中の御意見の中にもございましたが、希望退職に応じます労働者の方々の内容についてちょっとお伺いしたいと思います。  まず第一点としては、中高年齢者が多くなっているか、それとも若い人が多いか、第二点は、その中において熟練工が多いか、未熟練工、熟練工でない人が多いか、この二点についてお伺いいたします。
  78. 畑田薫

    畑田参考人 希望退職についても、私どもは事実上の解雇であるという立場で、これらについては、できるだけないように努力をいたしてきているわけでありますけれども、結果的にどうしてもそういう事態が出てくるという現実があります。  その希望退職に応じてくる内容については、おっしゃられましたように、どうしても中高年層が多いわけであります。若干若い人もいますけれども、大部分は中高年層に集中しているという状況があります。  その中で熟練工か未熟練工かということですが、やはり中高年層になってきますと、相当熟練の人が含まれるわけであります。このことは、一たび募集した場合においては、私どもが予想している以上に希望退職が出てくるわけなんですけれども、そういう内容についても、いろいろ分析をいたしてみましたが、もちろん希望退職の条件によってプラスアルファが退職金につけられるわけであります。労働組合としても、そうした場合の条件については、できるだけこれを引き上げてやるという努力もいたしているわけであります。そういうことで、特に定年を間近に控えた人たちが、いろいろそういう面を計算されて応じていくという状況等もあります。  しかし、もう少しそれを調べてみますと、住宅、自動車その他耐久消費財のローン返済の問題があるわけであります。これは従来造船の場合、時間外労働が大体常態化してきておりまして、そういうことの中で生活設計が立てられてきておりますし、購入がされてきておるわけです。しかし最近、こういう需要量の減少という状態の中で時間外労働が減少してきた、あるいはほとんどなくなってきたということで、一時、時間外労働収入が三万円から多い人では五万円という状況がありましたが、これがなくなってきた。収入は減少したけれども、差し引かれるこういうローン返済その他の返済金は変わらないということで、実質収入の中においてその負担が非常に大きくなってきているわけであります。そういうこと等から、この際その退職条件に応じてローンその他の清算をして、そして他に就職を求めた場合において従来より名目賃金が大きく減少することになったにしても、手取り金、手取り収入を、そういうことで一定の確保をしていく、こういうことから希望退職に応じていくというケースがかなり出ている現実があるわけであります。  そういうこと等からいたしますと、単に雇用問題が雇用の継続という形だけの問題じゃなくて、そうした労働者の生活の実態、生活の問題にかかわっているというのが、この希望退職に応じる面からもあらわれているのではないかということで、私どもとしてはこの点について非常な関心を持っているところであります。  ですから、そういう労働者の生活の置かれている実態についてもっと目を向けていかなければならないし、そのことによっての雇用問題をさらに考えていかなければならないのではないか、このように考えている次第でございます。
  79. 宮井泰良

    宮井委員 それでは次に、高橋参考人に労働者の職業転換給付金あるいはまた職業訓練制度等の利用状況についてお伺いをいたしたいと思います。また、それが余り利用されていない、そうするなればどこに問題点があるのか、そういう点をお伺いいたしたいと思います。
  80. 高橋正男

    高橋参考人 実は、四国にある造船所の実例でありますけれども、これは離職者法の適用を受けておるわけですが、実は職業訓練の手当の受給を忌避しているという、全部ではありませんけれども、そういう実例があるわけです。それは職業訓練所の立地的な条件といいますか、それが遠隔地にある、そういう点から職業訓練を受けない、そして失業手当をもらっているというのが非常に残念だと思っているわけであります。  職業訓練というのは、中卒で初歩的な技術の習得、こういうのが中心であるわけですが、やはりその職業訓練法を抜本的に改正していただきたい。というのは、いま日本造船労働者というのは、技術を身につけているわけでありますから、アラブ語などを、要するに外国語等を教えて、そしてアラブ諸国のプラント関係の技術者として派遣する、こういう方向にいくべきではないのかというふうに考えておるわけであります。したがって、職業訓練の内容について、私は、抜本的にひとつ改正をしてほしいという要望があるわけであります。  あと、職業転換給付金の問題について、協力工関係においては対象者になっておるわけでありますけれども、確かな数字についてはいまは持っておりませんので、その点は申し上げることができません。
  81. 宮井泰良

    宮井委員 それでは、たくさん聞きたいことがあるのですが、相当時間も経過いたしておりますので、簡単にお伺いしていきたいと思います。  次に、永井参考人に一点だけお伺いします。  二月十七日の政府間海事協議機関、すなわちIMCOのタンカーの安全、汚染防止に関する国際会議は、御承知のとおりタンカーの安全を守るための決議をいたしまして、バラストタンクの設置についての決着を見たわけでございますが、このバラストタンクの設置は、造船不況対策にもつながり実施すべきである、このように思うわけでございますが、これに対する御見解を伺いたいということと、これを実施いたしますと多額の費用が必要となってくる、そのために船主の負担も大きくなってくるわけでございますが、この点についての政府などに対する要望はどういう点にあるか、この点もあわせてお伺いします。
  82. 永井典彦

    永井参考人 ただいまの御質問のいわゆるSBTの問題でございますが、SBTが義務づけられますと、それだけの工事量がふえまして、確かに造船対策になろうかと存じます。それからまた海上の油濁汚染防止にも役立ちますので、そういう意味におきましては、相当の意味のある施策じゃないかと思うのでございますが、SBTといいますのは、御承知のように油を積むタンクとバラストでいく場合の海水を積むタンクとを別々にしようということでございますので、それだけ積み高が減るわけでございます。積み高の減るのが約二割というふうに言われております。すなわち十万トンのタンカーで八万トンしか積めなくなるという結果になるわけでございます。  したがいまして、海運界といたしましては、先ほどお話しました海上油濁防止の観点、それから造船不況に対する一つの施策という観点からは、これはいいと思いますけれども、ただ、われわれの方として非常に困りますのは、積み高が約二割減るということ、それによって運賃がそれだけ減るということ、これは海運界に対しまして大変な影響を与えるということで、余り好ましくない施策じゃないかと思います。  これも今度の会議によりまして一九八一年でございましたか、それから実施しなければならぬことになりましたし、また、これとCOWと言いまして、原油でタンクの中を洗いますと非常にきれいになるという方法開発されまして、どちらかということでございますが、どちらにいたしましても相当の費用がかかります。これにつきましては、私の方は財政融資をお願いいたしたいと思っておりますが、八一年のことでございますので、まだ具体的な要望はいたしておりません。  以上でございます。
  83. 宮井泰良

    宮井委員 それでは最後に、地田先生に一点だけお伺いいたします。  今回の造船不況をどのようにとらえておられるか。午前中にもいろいろお話を伺ったわけでございますが、この不況対策について、業界再編成の必要性が一部で言われているわけでございます。こういう点についてどうお考えになっておるか。  さらに、この不況対策について、こういうことが最も効果的であるというのを、優先順と申しますか、具体的にこういう点であるという点をお聞かせいただきたいと思います。
  84. 地田知平

    地田参考人 私、先ほども申し上げましたように、造船業のことはそううんと知っておるわけでございませんので、構造改革について申し上げることは、もう少し勉強してからにさせていただきたいと思います。  効果的な方法というのは幾つかあると思います。一つは、先ほど申し上げましたように、国内船という問題もございます。それからまた技術の上から言いましても、陸上の構築物というようなものもあると思うのですけれども、問題は、国内船比重をかけるにしましても、現在の造船施設というのは非常に大き過ぎるので、その意味から言いまして、あるいはそれに関連してもしこの構造変革というものがあるとすれば、その辺から起きてくる。しかしながら、先ほど申しましたように、私、十分な知識を持ち合わせませんので、これで失礼させていただきます。
  85. 宮井泰良

    宮井委員 終わります。
  86. 増岡博之

  87. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 石田でございます。  参考人の方々からは、長時間にわたりまして大変に貴重なお意見を承りましてありがとうございます。もう各委員から大分質問が出ましたので、私からはごく簡単にお伺いをしたいと思うのでございます。  まず最初に、永井参考人とそれから高橋参考人にお伺いをしたいのでございますが、何と言ってもこの造船不況克服のためには仕事量の拡大を図らなければならないというのが一貫した御意見として出ているわけでございます。そして、その中で最もいま望まれておりますのは、スクラップ・アンド・ビルドの問題であるわけでございますが、先般、運輸省の方に官公庁船の代替建造がどの程度できるかということを私、質問したわけなんですが、これに対しまして、護衛艦等の老齢艦が三十八隻四万五千八百トン、巡視船艇が約一万三千トン十隻、こんなようなことで、金額にして大体二千五百億程度というような数字が出ておるわけでございます。  先ほど永井参考人からいろいろなお話をお伺いいたしまして、このSBに対しては、要するに価格が安いわけですから、その未償却の分についての補償等が必要であるというようなお話がございました。そこら辺のいろいろな問題はあるといたしましても、現在、それではいわゆる船主協会の方でごらんになった場合に、このSB方式について総枠、アバウトで結構でございますから、どのくらいのトン数がこれに乗り得るというふうにお考えになっていらっしゃるのか、お伺いをいたしたいわけでございます。  それから、同じ質問高橋参考人にして大変恐縮なんでございますが、何と言っても雇用環境を維持するために仕事量を拡大しなければならない、そういう観点からどの程度希望をされているのか、もしそんなお考えがございましたらお伺いをしたいわけでございます。  それから、地田参考人一つお伺いするわけでございますが、先ほどお伺いいたしておりますと、この造船不況の一助のために陸上部門への需要喚起をする必要があるのではないかというお話が、先ほどから出ていると思うのでございますけれども、これは地域経済との関連、特に大手の場合はいろいろな仕事ができると思うのでございますけれども、中小の造船業界、これはその地域経済との関連を考えますと、そこら辺を救済していかなければならないのですが、その中小の企業の人たちが実際に陸上部門への需要喚起ができる、果たしてそういう手法が何かあるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  88. 永井典彦

    永井参考人 お答えいたします。  何トンこのスキームに乗って船がつくられるかという御質問、これは非常にいまお答えしにくいのでございます。と申しますのは、スクラップ・アンド・ビルドといいますのは、元来は船をつくる場合に船をスクラップにしないとつくっちゃいけないぞ、ビルド・アンド・スクラップというのがスクラップ・アンド・ビルド方策の発生といいますか、そういうことからこのスキームが考え出されたのではないかと思います。  ところが海運界の現状は、たびたびお話ししておりますとおりに、圧倒的に船腹過剰でございますので、新しく船をつくる意欲のある人は非常に少ないわけでございます。むしろ船をつぶしたいという人が非常に多いわけでございまして、元来のビルド・アンド・スクラップじゃなしに、スクラップ・アンド・ビルド、あるいは極端に言いますと、スクラップ・アンド・スクラップというのが、各船主が持っている気持ちでございます。しかしながら、これが造船業界にもプラスになり、あるいは海運業界にもプラスになることがあるかもしれないというわけで、いま造船業界と海運業界の事務局のベースでいろいろその方策を詰めているわけでございます。これが全部詰まりまして、ある程度の固まった条件が出てから船主協会の会員各社にアンケートを出しまして、それで初めて大体の予想がつくわけでございまして、いまのところ、そういうわけでございますので、まことに申しわけないのですが、何トンという数字はちょっと申し上げられない状態でございます。
  89. 高橋正男

    高橋参考人 概算でありますけれども、造船産業の生産高が二兆円と言われているわけでありますから、それの六五%が一つの分岐点だということになりますと一兆三千億、しかしながら、実際の仕事量の見通しというのは、操業度で今後の受注見通しを含めても五十三年度が四〇%としますと、やはり概算で四千億から五千億ぐらいの、これは官公庁船を初めその他のものも含むわけでございますけれども、その程度のものが必要ではないか。労働組合でありますから細かい経営的な数字を持ってお答えできませんけれども、一つのめどとして一応四千億から五千億程度というのが私の申し上げる限界だと思います。
  90. 地田知平

    地田参考人 私、先ほど申し上げましたのは、要するに日本造船業を幾ら削減しましても、やはり限度があるだろうと思います。それは一つは、これは私、最初に申し上げましたように、イギリスの場合で造船業の保護をなぜスクラップ・アンド・ビルドでやらなければいけなかったのかと申しますと、それは国の基本的な産業として技術を温存しておかなければいけない、こういうことからの発想のように聞いております。その意味で、日本海運業の規模から言いまして、日本造船業をとうてい維持することができないとすれば、やはり陸上産業に目を向けざるを得ないのではないか、そこでもって技術を温存しておく必要があるのではないか。私、技術のことに暗いのではっきりは申し上げられませんけれども、大手で同じような技術陸上施設に進出することができるとすれば、すぐには転換できなくも中小の場合でも転換の可能性があるのではないかというふうに思っております。
  91. 石田幸四郎

    ○石田(幸)委員 終わります。
  92. 増岡博之

    増岡委員長 米沢隆君。
  93. 米沢隆

    ○米沢委員 高橋参考人畑田参考人に最初にお尋ねいたします。  造船不況原因につきましては、いろいろと言われておりますけれども、端的に申しまして、造船不況原因は、ちょうどあの高度経済成長がいつまでも続くという錯覚の中で発注がどんどんふえる、したがって、設備をどんどん大きくしなければならない、そういう意味では、もう端的に言ったら過剰生産に一番大きな原因があった、そう思います。しかし、そのとき労働組合として、その時点においてどういう発想でそういうものをとらえておられたのか、それが私は問題だと思うのです。いまになって大変だということでいろいろと悩んでおられますけれども、実際不況のときも好況のときもそれなりの組合としての責任もあるであろうという感じがしますので、その点その当時どういう取り組み方をされておったのか、同時に、今後よくなれ悪くなれ歯どめをかけられるような経営参加の方式を組合として持っておられるのかどうか、その点聞かしてほしいと思います。
  94. 高橋正男

    高橋参考人 なかなかむずかしい御質問でありますが、実は高度経済成長世界的にずっと成長を遂げてきた、われわれが労使会議の中で世界需要量がどうなのか、これは日本造船工業会とさらにAWES、すなわち欧州の造船工業会とのコンタクトコミッティーが毎年行われてきているわけであります。私たちはIMF、国際金属労連でありますが、それを中心にECの主要造船国の労働組合代表と常に会合を持ってまいったわけであります。  需要予測について、最初は三十年以来ずっとやってきたわけでありますけれども、昭和四十八年までは日本造船工業会の予測が実態とマッチしておったわけであります。したがって、その予測が実態と同じでありますから、そのような方向性でまだ伸びていくだろうという、今日にしてみれば錯覚かもしれませんが、そういう予測を持っていたわけであります。それほど国際的な需要予測というものはなかなかむずかしいわけであります。投機的な一面も入っているわけでありますから非常にむずかしい問題があるわけであります。  しかしながら七年前に、このようなスピードアップをして設備拡大されるのは問題だということで、当時の造船工業会の会長である永田日立社長に、千五百万トンでストップすべきであろうということを申し上げたわけであります。これは「造船界」という月刊誌にも載っているわけでありますが、しかしながら、予測に実態が沿っていくわけでありますし、やはり企業組合でありますから、新しい設備ができるとそれは労働条件の向上にもつながるのだといって肯定の立場をとってきた、こういう経過があるわけであります。  いま千五百万トンでストップしておれば、設備の廃棄問題も少なくて済むだろうし、労働者の犠牲も少なくて済むだろうという反省がありますけれども、産別機能として設備の規制というものはきわめて能力が弱いという点を今日反省をしているわけであります。したがって、あのような石油ショックを契機として今日の事態を迎えておるわけでありますが、真に産業別労働組合としては、やはり学者なり経営者、労働組合、さらに政府も入った四者構成ぐらいで、今後設備の問題について話し合いをすることが必要ではないかという反省を持っておるわけであります。  したがいまして、組合は歯どめとしての何があるのかということについては、何としても雇用を守るために、政治レベルにおいて助成していただいて、何とか労働者の生活を守っていきたいという一心に満ちておるわけであります。  きわめて不十分なお答えでありますけれども、以上であります。
  95. 畑田薫

    畑田参考人 今日の事態を迎えたのは御指摘のとおりだと思いますが、過剰生産の結果であり、果てしない生産性向上の結果であるというふうに思っております。  私どもがこれにどう対応していくかということについては、全造船機械といたしまして、終始一貫こうした資本の生産優先の合理化案に対しましては反対の立場をとり、そういうことの中で今日までそれぞれ対応してきましたし、また全造船の産業別的な立場から、産業上の問題として、こうした設備拡大競争は、その結果として必ず過剰の事態を迎えるであろうということで、常にそれを指摘し、そして私どもそれらに対する主張をいたしてきたところであります。これらについては、先ほど高橋さんの方からもお話がありましたけれども、やはり資本の自由競争の原則に立った無原則的な設備拡大あるいは過剰生産、こういう事態に対して、もっと労働組合としてこれらに対応する立場をきちんとしてこなければならなかったのではないか。しかし残念ながら、日本の労働運動が高度成長の中で賃金を追うという状態で、こうした反合理化の問題、それらに歯どめをかける取り組みというものが非常に不足をしていたのではないか。そういう点では、私どもも含めて、この事態に立って大きな反省をしていかなければならないのではないかというように考え、そういう立場で、今後の問題についてもさらにその対応をしていきたいというふうに考えているところであります。  経営参加の問題については、私どもは、今日の労使関係、日本の労働運動の現状等をいろいろ考え、あるいは今日の経済体制その他のいろんななにを考えてみた場合において、直ちに経営参加という立場をとり得ません。やはりもっと労組としての主体性の確立、資本から独立をした自主的な立場をきちんとしていく必要があるのではないかというふうに考えております。  最近も政労会議その他等がいろいろ持たれておりますけれども、双方の主張の交換ということよりも体制側のそれぞれの主張、それを認知していく場にされているのではないかという疑問すら持つ点もあるわけであります。そういう立場から、私どもとしては、経営参加ということについてはとる態度を時っておりません。  以上であります。
  96. 米沢隆

    ○米沢委員 あと一点だけお尋ねします。  まず、高橋参考人にお願いしたいのでありますが、先ほどのお話の中で、西ドイツあたりでは一七・五%ぐらい国家が助成をして、雇用安定対策を何かやっておるという、そんな話でしたが、簡単に、そのあたりどういうかっこうで雇用安定対策をやっておられるのか、わかったら教えてほしいということと、それから畑田参考人にお願いしたいのでありますが、先ほど来のお話の中にもありましたように、特定不況産業安定臨時措置法案、この中で造船業界の設備の廃棄は結局首切りにつながるのだ、そういう話でございましたが、しかし、造船業界の今後の需給バランスを見たときに、現在の供給量そのものが過剰であることはもう事実だろうと思います。何らかの形でその部分を廃棄しない限り、なくならない限りバランスがとれないわけでありますから、いつまでたっても不況は続く、そういうことになります。  したがって、この法律のよしあしは別にいたしましても、この法律を利用することによって、何しろ目下供給過剰である部分に何らかの形で対処していく、またしない限り、いま何となく雇用を守りながらじっと耐え得ることができたとしても、今後五年先、十年先、今度は産業もろともひっくり返るという可能性があると私は思うのです。そういう意味で、何らかの段取りはしなければならぬ、そういう厳しさがあると思うのです。  しかし、完全雇用を守りながら結局設備を廃棄するなんというのは、口では簡単ですけれども、これは本当にむずかしいし、逆に、そんなものはやっても余り意味がないと企業サイドは言うことでしょう。そうなりましたとぎに、いつもジレンマに陥るのじゃないかと思うのでありまして、そのあたりどういうふうに御判断なさっておるのか。  確かに、解雇制限なんかの法律をつくって、それで解雇が抑止されるという、そういうことで本当に生き延びられるぐらいだったら、そんな簡単なことはないと私は思うのです。首を切るなという法律をつくりさえすれば、首を切らずに完全雇用が守られて、結局企業も採算がとれる、こんなものはできないはずでありまして、そのあたりどういうふうに御判断なさっておられるのか。  おっしゃるとおり、ある程度の雇用を守りながら産業そのものが需給バランスがとれるようにもしなったとしても、国際競争力という面からは、世界の大勢の中でどんどん発展途上国が追い上げている、また西欧諸国あたりではかなり国が助成をして日本に負けるな、こうやっている、そういうことで徹底的に国際競争力的には負けるのではないか。そのあたりどういうふうに判断をされているのかお聞かせいただいて、質問を終わりたいと思います。
  97. 高橋正男

    高橋参考人 昨年の十一月、IMFの世界大会がミュンヘンであったわけですが、その際ハンブルクの造船所の実地視察が行われたわけであります。その際の組合幹部の話を含めて申し上げますと、いま西ドイツのハンブルクのある造船所においては、船台を壊している最中でありました。そこで、一体どうするのかということに対して、今後プラントを陸上機械関係の分野へ進出する。アラブ・アフリカ関係の仕事を受注してやる。それで造船所が縮小されるわけでありますから、その造船所に対して一七・五%の資金を面接援助する、こういうのが西ドイツの実態であります。  ECの主要造船国では民間ベースは西ドイツだけでありまして、イギリス造船産業においても国有化が進められておるわけであります。私も直接行ってスワンハンターの工場を見たわけでありますが、もうすでに二十万トンタンカーが要らない、要らないから日本に持っていってくれというような冗談話もありました。そこでタンカーが終わったらどうするのだと言ったら、アラブ諸国やオーストラリアの軍艦をつくる、軍艦の方が効率がいいのだ、こういうような話であったわけであります。  さらにまたノルウェー、スウェーデン、これは一昨々年ですから、いまの実態に合わないかもしれませんけれども、タンカーのストックボートをつくって、とにかく雇用を守る。これも公社化が行われまして、政府の保護のもとに雇用を守っているのが実態であります。  また、アメリカの場合については、大統領選挙近くになりますと、やはり造船に対する援助をやるわけであります。それは大体四五%くらい直接政府の援助が行われる。こういうように、いずれの国においても、雇用を守るために政府みずからが助成策を積極的にとっているということが言えるのではなかろうかというふうに見てきました。
  98. 畑田薫

    畑田参考人 こういう過剰状況の中でどうやっていくのか、こういうことでありますけれども、これは非常にむずかしい問題だと思っております。  ただ私は、先ほどから申し上げておりますように、現在造船の場合は一番どん底という状況であります。こういうことの中で、過剰過剰と言っているのだけれども、将来どういう需要見通しなり、あるいは造船産業としてのこれからの新たな方向をどういうふうに求めていくのか。従来の実績と今日の状況とだけで物を見て、単に過剰ということだけで物をとらえていくのか。そういうことになりますと、先ほど申し上げたように、むしろ構造改善ということだけが先行して、そのことのために労働者の解雇はやむを得ないのだ、こういうことになっていくことをおそれているわけであります。  したがって私どもは、これらの点について、現在出されている法案についても、非常な不備、私どもの立場からすれば、雇用の問題について置き去りにされているようになっておりますし、そういう点等を明確にし、これからの問題等も含め、あるいは設備その他も含めて、労組との協議の問題とかそういう点について非常に明確にされた中で、今後の方向を求めていくためのいろいろな取り組みをしていくということについて考えていかなければならないと考えているわけであります。  そういう点で、私どもの立場で、いまこうすればこうなるじゃないか、こういう点等について具体的にこれを提起していくということまではできませんけれども、私ども全造船機械は全造船機械なりに、造船産業というもの自身が、それだけの問題ではなくして、やはり国際的、国内的な経済その他のかかわりの中にあるわけでありますから、午前中申し上げたような内容でいま対応していますけれども、今後の根本的な問題を含めて、そういうことについて政策的にどのようにしていくかということについては、専門家その他も含めていま検討を私どもなりに進めているところであります。  また、国際競争力その他等もいろいろ言われておりますが、ただ、国際競争力ということだけの視点では、従来のような輸出その他の依存だけでは、これからの造船の問題も解決し得ない問題もあるのじゃないかと思います。韓国等の造船に関しては、後進国と言われるところの追い上げもありますけれども、これらはそれぞれ労働集約その他いろいろなことの中でやられております。かつて日本造船が二十年、三十年前にやってきたようなことをいまそれぞれがやっておりますけれども、これがいつまで続くものかどうか。あるいはヨーロッパその他の国において保護政策その他がいろいろとられていますけれども、これらもあくまで期限つきでありますし、そういうこと等からいろいろ考えますと、ただ単に競争力が日本の場合ないからということで問題をとらえるだけでは不十分ではないかというふうに考えているわけであります。
  99. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  100. 増岡博之

    増岡委員長 河村勝君。
  101. 河村勝

    ○河村委員 どうも長時間御苦労さまです。  一、二簡単にお尋ねをいたします。  私どもも、いまの深刻な造船不況に対処をするためには、過去の責任がどこにあるかということは別にいたしまして、向こう最小限度三年くらいつなぎの需要をつくっていかなければ、構造改善をするにしても何をするにしても、とても雇用不安が大きくなってだめである、そう考えているわけでございます。  そこで、先般造船業界の代表からお聞きしましたところでは、ことしで言えば輸出で大体二百五十万トンくらい確保できる、あとスクラップ・アンド・ビルドで百五十万トン、官公庁船の繰り上げ受注で五十万トン、合計四百五十万トンくらいの手当てをして何とかつないでいきたい、こういうお話でありました。  そこで、きょうはスクラップ・アンド・ビルドに限定をしてお尋ねいたしますが、造船業界の話でありますと、三年間で六百万トンつぶして、それで四百五十万トンつくろう、したがって年百五十万トンになるわけでありますから、解撤と建造との比率は一・五対一ですね。でありますから、海運業界の側からいっても五割船腹が減るわけであり、かつ、できるものは当然合理化船である、不経済船をつぶして合理化船になるわけでありますから、そういう意味では、海運業不況のさなかであるけれども、そういう条件ならば好ましき仕事であるとわれわれには考えられますが、永井さん、いかがでございますか。
  102. 永井典彦

    永井参考人 問題は、スクラップ・アンド・ビルドでどういう船をつくるかという点に実はあるわけでございます。たとえばタンカー不定期船、こういうものは、先ほど申し上げましたように、いま世界船腹の約三〇%近いものが過剰でございます。これを消化いたしませんと、マーケットの改善が望めないという状況でございますので、タンカーそれから不定期船をつくるわけにはまいりません。それ以外の船をつくることになるわけでございます。  それで、ちょっと前に地田先生は、スクラップ・アンド・ビルドの政策が成功するのには、その国の海運産業が国際競争力回復してからやると非常に成功するけれども、しないうちにやっても余り成功したためしがないということをおっしゃったわけでございますが、日本海運全体としていま非常に国際競争力が低下しております。したがいまして、今後つくる船は超合理化船か何かにしまして、国際競争力を持った船にしなければこのスキームはうまくいかないのじゃないかと思うわけでございます。そういう意味におきまして、スクラップする船はたくさんございますが、ビルドする船が非常に制限されるという点においていろいろ問題が出てこようかと思います。  これが造船対策になることでございますから、われわれの方としても、できるだけの協力はしたいと思いますが、たびたび申し上げて恐縮でございますが、このスキームが成功するためには、まず全日海の協力が必要だ、そしてその協力の点は、まずスクラップいたしますから船が減るわけですが、全日海の言によりますと、職域が減少されるということになりますので、この点はひとつごしんぼう願う。それからもう一つ、それによってつくる船につきましては、これは国際競争力を持った船でなければいけませんので、ある程度のいわゆる合理化船でなければいけない。したがいまして、乗組員の数もいまの数よりは減らしていただくことを全日海に理解していただかなければいけない。その二点においてまず全日海の御協力を得る必要があるわけです。  それから、いまおっしゃいましたスクラップとビルドの比率は、一対一・五前後がいいのじゃないかと私も思います。  それから、もう一つ申し上げますと、スクラップする船、これがいま海運不況によりまして、簿価がまだ非常に高い状態で残っておりますので、スクラップした場合に処分損が出る可能性が多分にあるわけです。そして処分損が出ますと、新しくできました新造船のコストにそれが実質的にはね返るわけでございます。そうなりますと、新しくできた新造船国際競争力がそれだけ減りますので、おねだりめいて恐縮でございますが、スクラップするときの損が起きないような施策をお願いしたいと存じます。  それからもう一つは、タンカー不定期船以外の船をつくることになろうかと存じますが、そうなりますと、いわゆる定期航路のリプレース船その他になりまして、新しくつくる船の時期がやはり相当問題になるわけです。したがいまして、スクラップして新しく船をつくる間のタイムラグ、これをある程度認めていただきたいと思います。  それからもう一つは、スクラップしたら必ず新造船をつくらなきゃいけないということよりも、スクラップしたら新造船を一定の条件によってつくることができるという形にしていただきたい、こういうことを実は考えておりますので、そういうことが、全部造工その他と打ち合わせいたしまして、皆様の御了解を得られたならば、ある程度のスクラップ・アンド・ビルドは可能になろうかと存じます。
  103. 河村勝

    ○河村委員 後のスクラップと建造の間のタイムラグを余り長くしたら需要創出になりませんので、それはちょっと問題があろうと思いますが、それは議論になりますから、きょうはおきまして、いまの簿価とそれからスクラップとの値段の差ですね。いまスクラップの値段がうんと動いておりますからはっきりしないと思いますが、いまの段階でトン当たりどのくらいになりますか。
  104. 永井典彦

    永井参考人 ちょっと細かい数字は、船協の方としては準備してまいりませんでしたので……
  105. 河村勝

    ○河村委員 大ざっぱなもので結構です。
  106. 永井典彦

    永井参考人 スクラップの値段は大体トン当たり百ドル前後ではないかと存じます。それから新造船の船価、これも船の種類によって非常に違いますが、九十ドルではできないということになります。これは造工の数字を申し上げてまことに恐縮千万でございますが、造工さんの数字によりますと、百九十五万トンの船をスクラップいたしまして、百五十万トンの新造船をつくるとする、この場合、百九十五万トンのスクラップをするときの簿価とスクラップ価格との助成の合計が約九十億というふうに計算されております。ちょっとこれしかないので……。
  107. 河村勝

    ○河村委員 簿価も減価償却いろいろでしょうからはっきりしないと思いますが、大体それが簿価とスクラップとの差だ、そう考えてよろしいわけですね。
  108. 永井典彦

    永井参考人 造工の数字で……
  109. 河村勝

    ○河村委員 いいです。造船工業会の数字でしたら別に私の方にもありますから。
  110. 永井典彦

    永井参考人 そうですか。どうもはっきりしなくて申しわけありません。
  111. 河村勝

    ○河村委員 それから高橋さん、さっきの一七%の西ドイツの造船所に対する助成ですね、これはは建造船価に対する一七%ですか。この一七%というのは何に対する一七%ですか。
  112. 高橋正男

    高橋参考人 船価に対してです。
  113. 河村勝

    ○河村委員 終わります。
  114. 増岡博之

    増岡委員長 小林政子君。
  115. 小林政子

    ○小林(政)委員 どうも皆さん御苦労さまでございます。私、ごく簡単に二、三の点についてお伺いをいたしたいと思います。  先ほど来、労働組合立場から、設備廃棄だけが先行して雇用の問題が置き去りにされるという御主張がございました。この雇用確保の問題というのは、不況の中で、しかも船腹過剰という状況の中で、これは切り離して考えられるものではございませんし、重視をしていかなければならないきわめて大切な問題だというふうに私は考えます。  今回の造船不況と一般に言われておりますのは、何と言っても大型タンカー船腹の大きな過剰を来している、設備拡大拡大を重ねてまいりまして、世界第一位の建造量などと言われてまいりましたように、その背景には、私はもちろん優秀な技術もあったと思いますが、造船労働者が長時間、しかも低賃金で船をつくってきていた、これが、いろいろな要素があるとは思いますけれども、今日のこの危機を招いたのではないか、このように考えております。  特に私が問題だと思ってお聞きしたいのは、今回操業度に関する勧告が出されております。第一回は五十一年の十一月二十五日に四十社を対象にして行われておりますし、また第二次のものは五十二年の十一月二十六日に運輸省から出されておりますけれども、このような操業度に関する勧告の中身が、造船量の削減ということではなくして、むしろ稼働の労働時間の制限、こういう形になってこれがあらわれてきている。私ども聞くところによりますと、すでに大手七社では第一次の段階で削減計画を立てまして、大手七社だけでこの二カ年間に二万人を超える削減計画を立てたというふうな話もお聞きいたしております。  私は、こういう状況の中で、先ほどからお話をいろいろとお聞きいたしておりますと、職場の中が管理体制も非常にきつくなってきているし、労働のスピードも非常に速まっている、こういったようなお話なども出ておりますので、人員削減という合理化が職場の中に具体的にどのような形であらわれているのかという点について、これは全造船畑田参考人造船重機の高橋参考人にまずお伺いをいたしたいと思います。
  116. 畑田薫

    畑田参考人 人員削減が職場段階でどのように具体的にやられているか、こういうことでありますが、具体的には出向だとか配転だとかあるいはまた新規採用の抑制あるいは定年退職その他の自然減耗の不補充、こういう形でやられているのが実情でありますし、さらにまた下請関係の労働者がかなり削減をされていっているというような状況であります。  ただ、こうした多量の出向、配転ということ、特に出向の関係についても、関連会社、下請その他等にそれぞれ出向をさせているということ等もあるわけですけれども、しかし、もう押し込むところがなかなかないという状況の中で、関連ということよりもそれぞれの事業所に出入りしている商店その他にも人を出しているという状況があります。はなはだしいのは、ガソリンスタンドだとかあるいは植木屋さんだとか町の酒屋さんだとかあるいは葬具屋さんとか、こういうあらゆるところに出向という形でやられている点があります。これらの点について、なかなか本人の意に沿わないという面も現実にはあっているようでありますけれども、現実にはそれらがそのような形でやられているということについて、私どもの立場からいたしますと非常に問題を感じているところであります。  しかし残念ながら、いま造船の場合、昭和四十年の暮れ以来組織が分裂させられているという状況で、いまそういうことの中で、私ども全造船機械は、産業別的にもあるいは企業内における単組段階においても、特に大手の関係の中では少数ということの中に置かれてきているわけでありまして、そういうことからいたしますと、そうしたいろいろな形での人減らし、合理化がいろいろ進められていることに対して、造船に働く労働者のすべての面に直接的に労働組合ということでかかわり得ない立場がありますし、それぞれの組合の異なった対応もあるわけでありますが、非常にそういう点ではいろいろな問題を感じているところであります。  こういうことで、いろいろとこうした人減らしが面接的な解雇という形ではまだ大手の段階では出ておりませんが、最近中小手の関係ではかなり希望退職その他の具体的ななにがありますし、大手の関係でも直接解雇という形ではいまのところ出ておりませんけれども、先ほど申し上げたような形で相当な人員削減、合理化が進められているというのが実態であります。
  117. 高橋正男

    高橋参考人 大手七社では昭和五十五年までに二万人近い削減計画がありますけれども、まだ実現されているわけではないのです。徐々に行われていますけれども、その実態は採用を控えておりまして、ほとんどが採用しない、それで自然減耗という形で五十八歳で定年退職している、こういう形と、さらに特にいま好況と言われている自動車産業、さらにはその営業関係部門、そういう関連系列の会社に同じ労働条件で行く。これは労働条件の低下は認めませんから、同じ労働条件で出向なり配転が行われております。  なお、低賃金の問題ですが、確かに昭和二十年代、三十年代、四十年の初めまでは言えると思うのですが、その後確かに造船のブームもありましたし、鉄鋼労働者なり自動車、電機労働者とは今日の時点では大体同じ水準になりましたけれども、国際的に見て昭和二十年代、三十年代、これは確かに低賃金という問題があったと思うのです。二十年代、特に昭和二十九年は一つ造船危機で、三十年から上昇カーブをたどってきておるわけであります。  ただ、賃金の比較の問題については、これは為替レートだけで比較できないと思うのです。円は外面は強いわけでありますけれども、内面は何も変わらないわけでありますから、そういう点では、確かに過去はそうでありましたけれども、午前中にも申し上げましたように、開発途上国の追い上げ、それから第三世界といいますかそういうところ、要するにアウトサイダーといいますかそういうところの造船の追い上げというのが、最近顕著になってきておるわけであります。したがって、世界全体の中での造船の今後のあり方について考慮していかなければいけない時代だろうというふうに考えております。  特に、解雇は大手にはまだない、首切りとかそういうものはないのですけれども、配転、出向が非常に多いということだけ申し上げておきます。
  118. 小林政子

    ○小林(政)委員 配転、出向という問題で私が聞いておりますのでは、職場が非常に暗くなってきている、ともかく何かというと、いつこの会社も閉鎖になるかなどというようなことがずっと言われる中で、職場全体が非常に暗くなっているということを私どもはいろいろ聞いておりますし、そういう中で、管理面の強化というようなことも相まって、造船にいま残って働いている人たちも暗い状況で、自分たちはいままで一生懸命働いてきたのだという誇りを持っていきたいということを、私がお話を伺った人たちにはそのようなことを言う方が多かったということでございます。  時間の関係もございますので、私、この問題は地田先生にお伺いをいたしたいというふうに思いますけれども、先ほど来、今日のこの造船不況を招いたという見通しがなぜできなかったのかというようなことが、質問の中でいろいろと出されておりましたけれども、先ほど先生は、この造船設備の過剰は仮需要と申しますか、それを真正の需要と見たところに問題があったとも言われておりますし、また造船能力が肥大し過ぎた、輸出船比重をかけ過ぎて設備の過大を招いたとか、あるいはまた大型船開発比重をかけてきた、こういった幾つかの点を指摘されておりますけれども、今日のこのような深刻な事態を招いた原因については、先ほど来労働組合の人たちも、自分たちも見通せなかったというようなことも言っておられましたけれども、むしろこの原因というのは、やはり国自身が相当政策的な融資も注ぎ込んで今日の設備に次ぐ設備を重ねてきた、こういう中で、あるいはまた大手造船がこの問題についても責任の一端を負うのはあたりまえではないか、このように私は考えておりますけれども、先生は、このような今日の事態を招いた原因と責任という問題についてどのようにお考えになっていらっしゃいますか、この点についてお伺いをいたしまして質問を終わりたいと思います。
  119. 地田知平

    地田参考人 私は、こういう事態になったこと、これは何も造船業だけではなくして、いろいろな産業にも同じような事態が出ていると思うのです。その過程において、たとえば造船業の場合に、国の輸銀の融資であるとか、そういったいろいろな施策が加えられてきている、そこで、こういう結果になったことについては、経営者も国も同じように責任があるというふうに思っております。  ただ、先ほど私が申し上げました仮需要の問題なんですけれども、これは実は、需要一つ一つをとって仮であるか真正であるかというのは大変むずかしい問題でございまして、海運業者というのは、大体タンカーなんかの場合には、用船料でもって建造の採算、船の投資の採算をとるわけですけれども、ところが、その用船料というのには、投機的な用船が入ってまいります。したがって、用船料が上がったときには、実は投機的な用船があるにもかかわらず、それが見きわめがつかないために、真正の需要と見誤るということは過去においてもしばしばありました。大体、海運業景気変動の大きな部分は、そういう仮需要が出てきて、それが何かのきっかけでもって投機的な動きが引っ込み、そして仮需要につられて発注した造船不況になっても出てくるというところに、海運業造船業不況を結び合わせる原因があると思うのでございます。  大変むずかしい問題があるのでございますけれども、理論的に言えば、そういうことでございます。ただ、全体としてそういう仮需要をなぜ見きわめられなかったのかといいますと、大変むずかしい問題であるということだけは言えると思います。
  120. 増岡博之

    増岡委員長 中馬弘毅君。
  121. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 造船不況に対する対策でございますが、自由経済を前提とする以上、やはりこの責任といいますか、先ほどから責任論が出ておりますけれども、あくまで企業の自己責任ということに一つの重点を置かなければならない、このように思っております。したがいまして、この対策に対する政府の助成あるいは資金といったものも、これは国民の税金だということの御認識が、経営者も労働者の方々もあるいは関係の方々も必要だという気がするわけでございます。そのときに、あくまでも後ろ向きの対策はごく限られたものでなければならないと思っておりますし、逆に前向きのものに対しては大きな施策を打っていくべきだ、このように感じているわけでございます。  そこで、地田先生にお尋ねしたいと思うのですが、日本造船業は今後どういう形であったらいいか、能力的には世界の建造量の五割を占めてしまったようなことでございますが、それが世界経済の中であるいは国際関係の中で今後とも五割を維持していくことが非常にいいことなのか、あるいは三割なら三割がいいのか、その辺の御認識をお聞かせ願いたいと思います。
  122. 地田知平

    地田参考人 私は、過去において日本造船業の輸出のシェアというのを五〇%以下に抑えておくことが大事だということをかねがね考えておりました。その理由といたしましては、きわめて非論理的というふうに言われるかもわかりませんけれども、どこの状態を見てみましても、五〇%以上になると国際的な反響がひどくなる傾向がある、そういうことから考えまして、せいぜい五〇%以下であるというふうに思っておったわけでございます。  そこで、それを上限としまして一体下限はどの辺にあるかということになりますと、これはむずかしいのでございますけれども、ただ、将来の動向を考えてみますと、たとえば先ほどからも話が出ていますように、造船業の保護主義がかなり一般化しております。各国とも造船業に対してかなりの補助政策をとっているわけでございます。それは主として自国船を対象にして自国造船業に注文を持っていくという形であります。したがって、国際的な自由市場に出てくる需要というのは、過去ほどは大きな割合では出てこないのではないか、そういうことを全体として総合いたしますと、やはり輸出を世界の五〇%というのはなかなかむずかしかろう、もっと少ない水準でもってターゲットを置いた方がいいのじゃないかというふうに思っております。
  123. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 需要される側の永井さんの方から考えますと、全部日本でつくる方がいいのか、あるいは場合によっては一部は外国から船を買う方がいいのか、そのあたりも含めまして、日本の建造能力世界シェアのどのぐらいを占めておったらいいとお考えでございましょうか。
  124. 永井典彦

    永井参考人 われわれの立場といたしましては、日本船の建造はあくまでも、あくまでといいますか、できるだけ日本造船所にやっていただきたいと考えております。過去においても日本船主は一〇〇%日本造船所で船をつくってまいりました。これは外国に類を見ないものでございました。一番多いアメリカにおいてさえも九〇何%でございまして、一〇〇%自国造船所で船をつくった海運業日本だけでございます。  そういう意味におきまして、われわれは非常に日本造船業に負うところが多いのでございますが、それでいて、またわれわれの立場として利己的に申しますならば、造船施設が多ければ多いほどいいということでございますが、過去の結果を見てみますと、一〇〇%われわれが発注いたしましたのが、造船の方から見ますと造船能力の二〇%にしか当たっていなかった、残り八〇%は全部輸出船であった、その残り八〇%が世界の五〇%を占めていたということは、数字としてはちょっと不自然じゃないかというふうに考えます。
  125. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 いまの御両者の御意見ですと、やはり日本造船業が五〇%のシェアを今後確保するということが必ずしも前提でないというような気がいたします。そうするならば、日本造船業を少なくとも縮小ないしは横ばいの方に持っていかざるを得ない、そうしますと、これは労働移動も含めましての一つの構造改善という形になってくると思います。  そのときに、この間お聞きしました中で、これは中小の方のメーカーの方が、組合長さんでございましたか、転廃業を、少なくとも積極的ではないにしても一割ぐらいの人たちはそういう形ができれば転廃業をしたいということをおっしゃっておりました。それに対しまして、そこで働く方々、本当にいままで造船一本で来られた方々が別のところに移るということは大変でしょうけれども、それに対して何らかの協力をされるものかどうか、組合の高橋さんと畑田さんの方にお伺いしたいと思います。
  126. 高橋正男

    高橋参考人 既存の身につけた技術を生かして類似した職種に自然に転換できるというのが一番望ましいと思うのです。しかしながら、どのように海造審で答申案が出るのか予測がつきませんけれども、設備の削減、廃棄という問題は当然出ると思うのです。問題は構造転換がどう進むのか、私は、さっきも申し上げましたように、政府がやはり不況産業についてはこのような業種に構造転換すべきだという指針を示してほしいというのが願望なんです。  ただ、組合的に考えますと、雇用が守られ、労働条件が維持されるということであれば、それはあくまでも労使の事前協議の中で、生活を守るためにそのような方向で対応をせざるを得ないのじゃないかというふうに考えるわけであります。特に中高年齢者が解雇されますと、再就職はきわめてむずかしいわけでありますから、中高年齢者の雇用問題については、政治の場で御配慮を願いたいと考えておるわけです。
  127. 畑田薫

    畑田参考人 造船の場合、事業転換というのが、大手の場合は総合重工業ですから一定のなにはできるにしても、中小の場合、専業メーカーとしての立場から事業転換と言っても非常にむずかしいのじゃないか。特に産業全般にわたっての非常な不況という状況があらわれているわけでありますので、どのような事業に転換をしていくのか、これらの点については非常にむずかしい問題があると思うのです。  いずれにしても、構造改善を図っていくということの中で、じゃ、それらをどうするのかという問題も出てくるとは思うのですけれども、現実の問題としては非常に問題がありますし、さらに造船の場合、申し上げておりますように、地域経済に与える影響もあるから、その地域における造船所がどのようになっていくのかというのは、これまた非常に影響をもたらすものでありますから、なかなか容易にいかないのではないかというふうに思います。  また、労働者の職業訓練に基づいて他の職業を求めるということについても、いま失業者が百万人あるいは百三十万人とも言われておるような状況の中で、職業転換を図っていくにしても、新しい就職の道はなかなか困難な状況があります。そういう点等については、個別の問題だけで解決しない状況に今日の状況は立ち至っているのじゃないか。そういうことで、企業責任なりあるいは国の責任それぞれの中で、これらの問題についての対応を求められていると私どもは考えているわけであります。  ただ私、繰り返し述べておりますように、仕事がなくなったから、少なくなったから、需要が縮小してきたから労働者も減らさなければいかぬという観点だけでは、これからの低成長に向けては従来のような需要は望めないということにおいては一致しているのではないかと思います。  そういうことからしますと、雇用問題ということを考えれば、新たな雇用創出、もちろん仕事をつくり出すということも大事だと思いますけれども、雇用創出をしていくための手だてとして時間短縮なり労働密度の問題なり工程の問題なり、こういうような面から雇用の確保あるいは拡大を考えていかないと、これからの雇用問題は根本的な解決をしていかないのじゃないかということを、私どもは非常に感じておりますし、そういう立場で、それぞれの雇用問題に対する政策も出しているわけであります。ぜひそういうことの実現を願ってやまないところであります。
  128. 中馬弘毅

    ○中馬(弘)委員 長時間皆さん方の貴重な御意見、御提言、本当にありがたく思います。どうもありがとうございました。
  129. 増岡博之

    増岡委員長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ長時間にわたり当委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十四分散会