○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、本
法案に対し、
反対の
討論を行うものであります。
まず最初に私が指摘しておきたいことは、本来、この短期の
臨時国会におきましては、
雇用法案など、全会派一致のものに限って
処理すべきであったのであります。しかるに、急転直下と申しましょうか、本
法案も含め、世に対決
法案と言われるものの議了が事前に決められました。私たちが重視いたします問題は、わが党を除くいわゆる公党間の合意と称するものについてであります。そもそも、本
法案と同一
内容の
法案は前
臨時国会では
国民の強い
反対を受けて廃案に至ったのであります。にもかかわらず、そのわずか十一日後の本
臨時国会開会の前日に、全く同一
内容の本
法案が、
国会も始まらないうちから個々の
法案の議了することまで決められ、初めから、その成立について、いわゆる合意がなされたのであります。私は、もしこのようなことを二度、三度繰り返すならば、
国会を
政府提出
法案を承認するセレモニーの場に変えることになりかねない。このおそれを指摘せざるを得ないのであります。新聞論調にも非常に明確に見られますように、まさに
国会審議そのものの空洞化、翼賛
政治に至るおそれということを指摘しておる点も、私は当然であると思うのであります。
私は、もう一点、本
法案が成立しなければ
国鉄職員に対するボーナスの支払い停止を考慮せよ、こういう言動をした一部勢力に対して強く抗議の意思を表明したいと思うのであります。年末ボーナスという、勤労者の一番切実な問題につけ込んで、
法案反対の気勢をくじいて成立を図ろうとするやり方は、絶対にフェアなやり方とは思われません。
このようなルールの上に立って、今
国会での
運輸委員会での質問は、残念ながら、合計各党合わせて、わずか百二十分であります。問題点が十分解明されぬまま、いま
採決されようとしていることは、遺憾のきわみであります。
以下、私は、本
法案に
反対する
理由を申し述べます。
反対理由の第一は、本
法案が
国鉄再建につながらないどころか、危機を一層深刻にするものであるという点であります。
たび重なる
運賃大幅
値上げによって、
国鉄経営が乗客離れなどの新たな事態に直面しているにもかかわらず、
政府は、
国鉄再建対策の見直しをいまの時期にすべきであるにかかわらず、これをなさず、
運賃値上げだけは、適時適切という名のもとに、自由自在に、かつ頻繁にできる本
法案の成立を図ろうとしておるのであります。
総裁の答弁でも、これまでよりしばしば
値上げをお願いすることになると明言していることからも明らかなように、本
法案は連続
運賃値上げの条件づくりにほかなりません。これでは、
国鉄が一層激しい乗客離れ、あるいは中小の
貨物離れによって、ますます深刻な
経営危機に落ち込むことは明白であります。いま
国鉄にとって必要なことは、このような
値上げ第一主義の、いわば自殺行為ではなくて、
利用者たる
国民の
立場に徹した財政と
経営の全体にわたる抜本的かつ民主的な
再建策を歩むことであると思います。
わが党は、
運賃値上げと膨大な
借金に依存する従来型のやり方を転換して、また、
新幹線や大企業
貨物中心の輸送網づくりを改めることを
内容とする「五つの転換こそ急務」と題する
国鉄再建策を
運輸委員会各党理事各位にも提示をして、徹底した
国鉄再建論議を行うよう要望いたしましたが、残念ながら実行されませんでした。
さて、自民党など三党は、「
国鉄再建の基本
方向」なるものを
法案修正の前提として提起しております。
政府もこれに努力すると言っている。しかし、これは、
国鉄に採算優先の企業主義的
方向を一層露骨に強めて、
国民に奉仕する機関としての
役割りをないがしろにしようとするものだと思います。中でも、公的
助成の名のもとに
地方自治体の
負担を強要したり、
国鉄運賃にあわせて私鉄や飛行機の料金を引き上げるための総合
運賃政策を導入するなどは、
国民生活や自治体財政にとって絶対に許すことのできない問題であります。
反対理由の第二は、本
法案を突破口として、専売や電信電話など、他の公共料金の
法定制についても
緩和あるいは廃止をしようとしておる。このことは、本
法案の持つ
危険性を一層明らかにしているのであります。このことは、公共料金の全面的な引き上げ、さらに物価の全面的な上昇にこの
法案が
一つの契機となるという危険を明からにしていると思うのであります。
反対理由の第三は、
国鉄を利用する
国民が、この
法案によると、何%の
値上げがさるのか、心配であるけれども、全く
規定や条文がこの法律にはないのです。
値上げの上限の答弁はばらばらであります。
昭和五十一年度
決算を基礎にすると、
昭和五十三年度で三六%というのが鉄監局長、二六・六%が田村前大臣、そうして、住田局長の答弁より十数%低いというのが加藤六月修正案提案者、わが日本共産党の「赤旗」の試算では四〇%、
国鉄総裁は、頭の整理ができてないという。きのう
運輸大臣に聞いたところ、新大臣は、自分も
国鉄総裁と同様の答弁だとおっしゃる。一体、これは何でありますか。
財政法三条には、法律または
国会の議決に基づいて
国鉄運賃を決めるとあります。これは、
国民から金を取るのでありますから、
運賃・料金の
限度は
利用者や
国民が一目見てわかるように決めなきゃならぬということであります。
財政法の立案に参画した平井平治氏の「
財政法逐条解説」には、「少なくとも、その料金の
限度が客観的に判明する程度のものでなければならない。」と書いてあります。これは、第一には料金の
限度を法文上明らかにする、第二は客観的に判明する程度に明らかにするということである。しかるに、本
法案は料金・
運賃の上限も根拠も決めてない。本
法案は、どう見ても客観的に
運賃・
賃率が判明する程度に書いてありません。書いてあるのは、
経費の上限と、そして
収入の見込み額の上限は書いてあるが、
運賃・
賃率の上限は書いてない。これは法律的に見て本
法案の致命的な欠陥であり、
財政法三条、憲法八十三条、八十四条に違反する悪法であり、いかにこれを強行的に通そうとしても、これはいまの憲法のもとで通らぬ
法案だということを私は指摘したいのであります。(
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反対理由の第四は、
国鉄経営にはびこる浪費が
経費をさらに
増加させ、
値上げ率の上限を押し上げて、
大幅運賃値上げに拍車をかけるという問題です。
昭和四十九年度、
昭和五十年度の二年間に、会計検査院からの指摘分だけを見ましても、用途不明な資材の過大購入は約百七十億ございます。また、
国鉄の検査を
実施しておる検査院の問題については多くは言いませんが、運輸省、
国鉄の過剰接待問題、工事手抜きの問題が
委員会において指摘をされました。これらの実態の究明と是正こそ緊急の課題であります。また、組織ぐるみの
選挙違反事件などに見られる官僚的体質は、いまなお依然として存在しております。現在の
国鉄に係る
法案が適用されることになれば、このような体質が生み出す浪費は、さらに
運賃値上げの形で
国民にツケとして回ってまいります。このようなことは断じて許すわけにはまいりません。
以上のような
理由により、私は本
法案に強く
反対をするものであります。
最後に、日本共産党は、今
国会で示された異常な事態を厳しく批判をし、あくまで議会制民主主義と
国会審議を守るとともに、さきにわが党が提起をした
国鉄の民主的
再建策の
実現のために引き続き奮闘努力をすることを強く表明いたしまして、私の
反対討論を終わるものであります。(
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