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1977-12-08 第83回国会 衆議院 農林水産委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十二年十二月七日)(水曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 金子 岩三君    理事 片岡 清一君 理事 菅波  茂君    理事 山崎平八郎君 理事 竹内  猛君    理事 美濃 政市君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       加藤 紘一君    久野 忠治君       熊谷 義雄君    倉成  正君       國場 幸昌君    佐藤  隆君       玉沢徳一郎君    中野 四郎君       羽田  孜君    羽田野忠文君       平泉  渉君    福島 譲二君       堀之内久男君    三原 朝雄君       森   清君    森田 欽二君       小川 国彦君    岡田 利春君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       松沢 俊昭君    武田 一夫君       野村 光雄君    吉浦 忠治君       神田  厚君    津川 武一君       菊池福治郎君    田中 角榮君     ————————————— 昭和五十二年十二月八日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 金子 岩三君    理事 片岡 清一君 理事 菅波  茂君    理事 山崎平八郎君 理事 竹内  猛君    理事 美濃 政市君 理事 瀬野栄次郎君    理事 稲富 稜人君       加藤 紘一君    久野 忠治君       熊谷 義雄君    國場 幸昌君       玉沢徳一郎君    中野 四郎君       羽田  孜君    羽田野忠文君       平泉  渉君    福島 譲二君       森   清君    森田 欽二君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       武田 一夫君    野村 光雄君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君    菊池福治郎君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         農 林 大 臣 中川 一郎君  出席政府委員         農林政務次官  今井  勇君         農林大臣官房長 澤邊  守君         農林省農林経済         局長      今村 宣夫君         農林省構造改善         局長      森  整治君         農林省農蚕園芸         局長      堀川 春彦君         農林省畜産局長 大場 敏彦君         農林省食品流通         局長      杉山 克己君         食糧庁長官  大河原太一郎君  委員外出席者         経済企画庁物価         局物価政策課長 宮本 一三君         大蔵省関税局企         画課長     勝川 欣哉君         国税庁間税部酒         税課長     大橋  實君         農林省農林経済         局国際部長   志村  純君         通商産業省貿易         局輸入課長   斎藤 成雄君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 十二月七日  辞任         補欠選任   玉沢徳一郎君     羽生田 進君 同日  辞任         補欠選任   羽生田 進君     玉沢徳一郎君 同月八日  辞任         補欠選任   菊池福治郎君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   中馬 弘毅君     菊池福治郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  閉会中審査に関する件  農林水産業振興に関する件  農畜水産物輸入自由化等に関する件      ————◇—————
  2. 金子岩三

    金子委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち  農林水産業振興に関する事項  農林水産物に関する事項  農林水産業団体に関する事項  農林水産業金融に関する事項  農林漁業災害補償制度に関する事項 以上の各事項について、衆議院規則第九十四条により、議長に対し、国政調査承認を要求することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 金子岩三

    金子委員長 この際、中川農林大臣及び今井農林政務次官からそれぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。中川農林大臣
  5. 中川一郎

    中川国務大臣 このたび農林大臣を拝命することになりましたが、この機会に一言あいさつを申し上げます。  現在の農林漁業を取り巻く内外の諸情勢には、まことに厳しいものがあり、農林水産行政責任者として、その責務の重大さを痛感しております。  関係方面の御協力を得て、この重責を果たすため最善の努力を尽くす覚悟でありますので、よろしくお願いいたします。  私は、農林水産行政基本は、農林漁業者が誇りと働きがいを持って農林水産業にいそしめるよう、その体質の強化を進め、総合的な食糧自給力の向上を図るとともに、国民生活の安定を図ることにあると考えます。  このためには、農林漁業者はもとより、消費者対策、特に牛肉消費拡大に配慮する等、幅広く国民的理解を得ながら進める必要があると考えております。  このため、農業については、生産基盤生活環境整備需要に即応した生産の増大、生産の担い手と後継者確保価格政策の充実、流通改善等の施策を強力に進める所存でありますが、特に当面する問題として米の過剰の問題があります。  すなわち、依然として稲作志向がきわめて根強い一方で、消費拡大努力にもかかわらず、米の需要の減退が続いているため、再び生産調整開始時期の昭和四十五、六年当時のような事態を招きかねない状況にあります。  このような情勢にかんがみ、このたび長期的視点に立って、米の消費拡大を積極的に推進しつつ、米の生産を計画的に調整し、他作物への転換を進めることにより、需要の動向に安定的に対応し得る農業生産構造の確立を期するため、米需給均衡化対策を推進することとしております。  本対策は、単に米を減らすということだけではなく、農業生産の再編成を行うもので、日本農業の新しい展開を図る上で避けて通れない厳しい試練とも言うべきものであります。また、その確実な実施こそ食糧管理制度を堅持するゆえんでありますので、私としても、真剣かつ積極的に本対策に取り組んでまいりたいと考えております。  また、最近の国際収支大幅黒字のもとで農産物貿易が問題となっておりますが、本問題については、水田利用再編対策等総合食糧政策の推進に支障を与えぬことを基本として対処してまいる所存であります。  また、森林林業についても、木材価格低迷等厳しい状況にある中で、国民期待にこたえ、その役割りを一層高めていくため、森林資源整備林業振興を一層強力に推進してまいる所存であります。特に、国有林については、経営がきわめて悪化してきており、その改善に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  さらに、水産業については、二百海里時代の急速な到来に対処して、強力な漁業外交漁業協力を通じて漁業実績確保に努めるとともに、わが国固有の水域である沿岸漁場整備開発等沿岸沖合い漁業振興、新資源、新漁場開発水産物有効利用促進等を積極的に図っていくこととしております。  以上、このたび農林水産行政責任者となるに当たり一言あいさつを申し上げましたが、農林水産業は、国民生活にとって欠くことのできない食糧を将来にわたり安定的に供給するという重要な使命を担っており、また自然と土地制約条件のもとで営まれる産業であります。したがって、農林水産行政は、長期にわたる一貫した不動の方針のもとに推進しなければなりません。  私としましても全力を挙げてこれに取り組む覚悟でありますので、委員各位の御支援、御協力をよろしくお願い申し上げる次第であります。(拍手
  6. 金子岩三

  7. 今井勇

    今井政府委員 このたび農林政務次官を拝命いたしました今井勇でございます。  先国会では、当農水委員会理事として委員皆様方には大変お世話になりました。この際、厚くお礼を申し上げたいと存じます。  わが国農政はいまや多事多難でございますが、新大臣を補佐いたしまして、全力を傾けてこの時局に当たりたいと存じます。  何とぞ委員各位の変わらぬ御支援のほどをお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。  まことにありがとうございました。(拍手)      ————◇—————
  8. 金子岩三

    金子委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、中川農林大臣に対して、当面の農政問題、特にドル減らしのための農産物自由化の問題並びに米の生産調整と五十三年度の予算との関連について質問をいたしたいと思います。  まず、中川農林大臣が御就任になられたことに対しては、時期的に見て大変厳しい時期になられた。本来、本当に農林大臣としての本領を発揮できないような状態の中で、内憂、外圧という、そういう中で就任されたことに対しては、これは大変任務が重いし、なかなかやりにくい点もあるであろうと思いますが、ひとつしっかりがんばってもらいたい。日本農民大変期待をしていると思うんですよ。  ところが、就任最初の言葉が、牛肉輸入して安く売るということになり、その次には、二十二品目の中で洗い直しをして、そして、この中で適当にこれをやろうというようなことになって、どうも足が農村の方につかないで、アメリカの言うなりになるとは言わないけれども、それや、あるいは外務省通産省の方にえらい気をとられてしまって、本来の農民の側にどうも足がつきにくいような状態にあるということで、大変心配しているわけなんです。その点を何とか、やはり北海道の御出身ですから、北海道大変農業地域であり、この問題については悩み抜いている皆さんが多いわけですから、今日まで自民党の中にあって陰に陽に農業問題について発言をされてきた中川さんですから、ひと2元気でがんばっていただきたいということを最初に私は申し上げたいのです。  先ほど若干の御説明がありましたが、その中で幾つかの点は理解をされたわけですけれども、まず第一に、農政に対する新農林大臣の理念というか、哲学というか、こういうものについてひとつここでお話しを願いたい。
  10. 中川一郎

    中川国務大臣 まず、農業は、国民に対して安定的な食糧を供給する、こういうきわめて大事な任務を持っておることが第一点でございます。第二番目は、やはり農民方々が、経済的にも環境的にも希望を持ってやれる、そういった農家立場を擁護する、これが第二点でございます。第三点は、農業というものは非常にじみなものであって、長期的に国家にとってはなくてはならない大事な産業である。これは単に食糧生産するというだけではなくて、人間形成の場としてきわめて重要な立場にある、こういうことを注目しなければなりません。  しかし、農業をやるに当たりましては、やはり消費者というものも考えなければならない、こういう立場も配慮してまいらなければなりません。その上に、最近、外圧というものが出てまいりまして、外国からの安いものを消費者大衆に売ってはいかがかという強い要請のあることも事実でございます。これに対しましては、先ほど竹内委員から、誤解があるぞという御指摘をいただきまして、まことにありがとうございました。これは決して外務省通産省方々の味方になって言ったのではなくして、発言の中に、牛肉大衆皆さんに安く——これはちょっと蛇足になりますが、世界じゅうで日本ほど牛肉が高いところはない。二倍、三倍、四倍というような状況になっておりますから、消費拡大目玉として申し上げたところ、輸入目玉になってしまって不安を与えたことは、まことに申しわけないところでございます。消費拡大のためにわれわれとしては相当手を施さなければならない。そのためには生産対策も大いに講じていかなければならないし、国内の生産も伸ばしていかなければならない。結果として、輸入に対処することもできるのではないか、こういうことを申し上げたところでございますし、第二番目に、二十二品目の中からかなり自由化して、農家に御不満を与えているということでございますが、この点も決してそういうことではなくして、特にいま米の生産調整といいますか、総合食糧対策を講じておりますので、やはり米以外の自給率の悪い農作物について、これを増産していかなければならない、こういう立場のときに、外圧によってこれらの政策支障を来すようなことがあっては断じてならない、こういうことはもう憲法として堅持したい。ただし、二十二品目の中に総合農政支障のないものがあるならば、現下、このドルの問題は、農政を含めて日本全体の問題でありますから、できるものがあったならば努力をして見出そう、こういうことでありまして、いまの農政支障を来すような自由化は考えておらないところでございまして、誤解がありましたならば、この委員会を通じて明らかにしておきたいと存ずる次第でございます。  以上のような基本方針をもって農政に取り組みたいと思いますので、御理解、御協力をお願いいたします。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)委員 まあ大筋のことは理解ができるわけですが、次に、農林大臣は、大臣になられる前——中川さんが農林大臣になったというときに、農協のある人は、過ぐる二月二十五日の朝日新聞投書欄に「食管制度を廃止せよ 過剰・価格問題の解決のために」、こういう中川一郎という人の投書がございました、あの人か、これは米退治じゃないか、こういうことで大変心配をしている。そこで、いまのことでやや理解ができるわけですが、この食管問題に対するあの見解、あるいは他の雑誌などで座談会をやっているが、そのときの見解は、いまでも考え方は変わりはないかどうか。
  12. 中川一郎

    中川国務大臣 総括的に申し上げて、その考え方につきましては、基本的にはいまも変わっておりません。確かに朝日の「論壇」の見出しは「食管制度を廃止せよ」と書いてありますが、内容は決してそういうことにはなっておらないと思います。かつて過剰時代があり、昭和四十五、六年ごろ七百万トンが余って、そして生産調整対策を講じ、過剰米処理を講じ、何とか需給バランスをとってまいりましたが、生産調整をやりつつ、なお過剰米ができる時代を迎えた。そうして、いまなお生産調整をやらずに、高米価といいますか、他作物に比べてバランスのとれないような米価要求を続けて、そして莫大な、七百万トンとか八百万トンというような過剰米を生ずるような農政になったならば、これは一般国民食管を堅持するような情勢にはならないのではないか。そういうことにならないように、米の問題は消費者流通すべてを考えて真剣に対処すべきである、こう御警告を申し上げたつもりであって、いまもその考え方基本的に変わっておらないところでございます。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題についての議論は、また後でいたします。  そこで、先ほどから御質疑の中でやや明らかになりつつあるのですけれども、ここでひとつ、いままでの農林大臣、たとえば安倍農林大臣は攻めの農政ということをスローガンにした。その次には総合農政というようなことを言う大臣もいた。中川農林大臣は、自分のキャッチフレーズというか、何か信念を一本のスローガンにしてみたらどういう農政をやりたいか、ちょっとそれ……。
  14. 中川一郎

    中川国務大臣 まあ一言で言えば、農政危機突破政策、こういうことになろうかと存じます。非常に厳しいときでございまして、いまの農政は本当に大変なときでございますから、この危機を何とか突破したい、一言で言えばそういうことになろうかと存じます。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農政危機突破、それは結構なことだと思うのだが、果たして突破できるかどうかということは、これから質問することによって一つ一つ詰めていきますから、それをひとつ裏づけてもらいたい。  私は、農林水産業というのは、日本資源エネルギーとともに、国の安全保障にかかわりのある非常に重要な問題、産業だと思っている。だから、農林大臣はいまの農林水産業というものを重化学工業と同じように、国の重要な産業として考えられているのかいないのか、その点どうですか。
  16. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほども所信の中で申し上げましたように、農業はあらゆる産業に優先してきわめて大事なものであると認識をいたしております。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これも後で問題にしますが、中国では農業を基礎とし、工業を導き手とするという二本足の国づくりをやっている。それからまた、朝鮮民主主義人民共和国では、憲法の二十五条、二十六条によって農業労働工業労働、都市と農村格差というものを、これを国の責任によって縮めて、農業工業の発展を国の責任で図るように、価格政策や諸政策をやっている。これは社会主義の国だからそれができるけれども、資本主義の国においてもアメリカでもECでもどこでも農業保護政策をとっている。日本だけがだんだんだんだん、いまでも保護政策はあるとぼくは思っていない。農業はまる裸にしちゃった。言ってみれば、昭和三十五年、高度経済成長のときに、農村から若い労働力を抜き取っていこうということで、その裏側には農業基本法をつくって、そして若い労働力を抜き取った。四十年代には、今度は土地と水と、これを工業の団地、あるいは農村工業導入法によってそれをつくり、そして農村をだんだんだんだん破壊をするとは言わないけれども、農村の活力を失わせた。いよいよ五十年代になってくると、今度は外圧がそこへ押し寄せてきて、そうして最後に残った二十二品目というものも脅かそうとしている。これが日本の現状ではないか。  こういうときでありますから、日本農業産業として育成するためには、これは手放しで、まる裸で海外農産物と競争して、それで立ち行くようなことをやれと言っても無理だ。きょうの各社の新聞を読むと、その論調にこういうことが書いてある。なるほど黒字減らしのために農業に手をつけるのもいいけれども、農業も甘えてはいけない、構造改善をやれ、海外に太刀打ちできるような構造改善をやれということを言っているけれども、日本のように零細な農地の中でこれだけの労働量を投下してきてもなお海外に太刀打ちができないというのは、これは日本生産的な土壌でしょう。先ほど内村農林次官があるところで講演をしているけれども、内村農林次官の話というのはまことに農民の気持ちを代表したような発言だとぼくは思うが、あれくらいの考え方を持たなければ私はいけないと思う。つまり、日本農業特殊性というものをやはり考えて、そして、まる裸にしないでこれを防衛する、政策的に防衛するということが必要だ。つまり、保護政策をとらなくちゃならないということだ。この点についてどうですか。
  18. 中川一郎

    中川国務大臣 諸外国に例を見るまでもなく、わが国は戦後異常な経済成長をしたわけでございます。ところが、その異常な成長の中に、鉱工業あるいはサラリーマンというのですか、俸給取りというのですか、こういった方々が相当伸びて、これに対するに、農村がこれについていかなかった。ここに農村と他産業との間に差のできたことは事実でございます。したがいまして、一時期は、この農村と他産業との格差を縮める、バランスをとっていくということが政策の大きな目標であったことも事実でございます。ただ、言えることは、他産業合理化が非常に進みますが、農業はなかなか合理化が進まないものである。特にわが国農業の特徴として土地が少ない。特に一人当たり経営面積が非常に少ないということで、合理化に大きな支障を来してきたところでございます。  たとえば、酪農品牛肉、最近問題になっておりますが、豪州では二千町歩の農家がある。牛は生産するものでなくて、つかみ取ってくるものであるとさえ言われるくらいコスト安でございます。したがって、外国畜産を初めとする農産物に比較をして、日本農政土地が少ないということにおいて非常に苦しいものであるということでございます。  しからば、農政は裸にしたかというと、私はそうではないと思っております。たとえば、お米にとりましても、国際価格に比較するならば四倍とも五倍とも言われております。先般、東南アジア、インドネシアから十万トンの協力要請がございましたが、価格トン当たり六万円、コストが三十七万円についておりますものを六万円ということで出さなければならないくらい、わが国の米のコストが高くなっておる。こういうことで、言ってみるならば国際価格の五倍、六倍の価格でもって処理をしておるということも、いかに農政について裸にしないで一生懸命やっておるかという例の一つではないかと存じます。このことは大豆についても麦についても、あるいは南北砂糖の問題にとりましても、すべて裸にしたのではなくて、相当消費者の御協力政府の手厚い助成によって何とか苦しくとも今日まで守り続けてきた。  今後もさらに外圧その他が厳しくとも、農政は、先ほど申し上げましたように、国にとって基本的に大事な産業でありますから、経営面積の少ないという厳しい中ではありますけれども、さらにより一層強力にこれを推進して、いま危機状態にあるこのむずかしい時期を何とか突破してしっかりした農業をつくっていきたいという考え方を持っておるところでございます。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そういう考え方にぜひ立ってもらいたいけれども、それから次にまた進んでいきますが、いまわが国米作農民を初めとして果物、畜産及びトマト、サクランボ等々の地域的な特産物をつくっているところの地帯のすべての農民が、一斉に中川農林大臣一言一句に注目をしている。最近は農業のことがよく新聞に出るようになった。なぜ出るようになったかといったら、それだけ注目があるということだろうと思うのですね。いままでは、農業の問題などというものは本当にすみの方にしか出なかったけれども、今度は表に出てきた。これはそれだけやはり農業にある意味においては危機的な様相が出てきたということだろうと思う。     〔委員長退席菅波委員長代理着席〕  で、十二月の六日の総理の指示により、経済閣僚が、アメリカからの要請によって、ドル減らしのために自由化あるいは開放体制に対する二十二品目残存農産物についてのいわゆる話し合いをされた。この中には農産物に対する自由化はしないけれども輸入枠を拡大する、あるいは関税を引き下げる、こういうようなことも含まれていると思う。このことについて、きのう自民党総務会で、きょうの新聞に見られるように、かなり議論があった。あれくらい議論があるわけだから、相当なことになるだろう。  そこで、今度の内閣の中に海外経済担当大臣という幽霊みたいな、いる場所のはっきりつかめないような場所ができてきた。それで、農林大臣というのは、農村に足を持っていままでずっと農林水産の代表としてやってきている。経済企画庁というものがあって、これが調整をする。いままで経済企画庁などの予測が当たったことはない。これは何をやっても当たったことがない。これはきわめて無責任なものだ。農村というものはこれは一朝一夕に変えるわけにいかない。六十年展望というものをつくったけれども、あの六十年展望の中には自由化なんということは予測されていないはずなんだ、牛肉にしても何にしても。そういう中で、政府の六十年展望などというものをまともに信用してやってくる農民はたまったものじゃない。  だから、そういうようなことで一百一句が大変注目されているときに、これは十一日にアメリカに行って、アメリカ日本が同時に公表すると言うけれども、どの辺まで閣僚の話が煮詰まって、どんな決意で行かれるのか。この点はここで許せる範囲だけひとつ説明をしてほしい。
  20. 中川一郎

    中川国務大臣 御承知のように、日米関係のドルバランスが百億ドル日本が黒字になった。その結果、円が史上最高の高値を呼んでおる。これ以上この問題が進展いたしますと、日本の経済全体が、特に中小企業を初めとして危機状態になる。これはアメリカから言われるまでもなく、日本みずからがこの格差の是正を図らなければならないところであることは竹内委員も御理解いただけるところだと存じます。  そこで、内閣の中に経済対策閣僚会議というものをつくりましてこれに対処しなければならないとすることは当然のことだと私は思うのでございます。その中にありまして、農業がいかに協力するかということも当然のことでございますが、新聞その他にも言っておりますように、いま作付転換というきわめて重要な、農政の方向転換とも言うべき大作業をいたしておりますので、これに支障があってはならないというのが農業の方を守るわれわれの立場でございます。  また、農家皆さんや当委員会においても、あるいは昨日の総務会においてもそういう議論が出るのは当然であって、私といたしましては激励の意味を含めまして感謝をいたしておるところでありまして、決してこれに反発するものではありません。私の作業に御協力をいただいておるありがたい発言であると理解いたしておるところでございます。  そこで、先ほど御指摘のありました肉とかあるいはトマト関係、果樹関係、こういったものにつきましては生産の意欲が落ちるような、あるいは転換をするのに希望を失うような協力は断じてできない、こういうことを基本といたしておるところでございます。ましてや自由化などということについて、これが口の端にでも出るならば大変だということで、断じて自由化などは考えてはならないという基本考え方で対処しております。ただ、サクランボにつきましては、私が農林大臣になる前にすでに過去自由化になりまして、コドリンガというガがあってこれは国内に輸入してはならぬという禁止条項で輸入されておりませんでしたが、アメリカ側が完全に薫蒸するということになればこれを輸入することを阻止することはどうしてもこれは支え切れないということで、この点については前農林大臣のときに処理したところでありますが、それを除く御指摘のありました戦略的農作物につきましてはそういったことは避けたい、こういう基本方向を持っております。ただ、関税とか輸入枠の拡大等については、まあまあ農政を推進する上に支障のないという判断に立っての検討はいたしておりますが、基幹的な自由化、一番恐ろしい自由化についてはこれを避けて通るように努力をしたい、こう思っております。  ただ、二十二品目の中で全部が全部そうであるかというと、新聞にも書いてあるとおり自由化という幹が一本ある。これを全部取り払うわけにはいかぬ。この自由化という一本の幹に二十二本の非自由化品目の枝がある。その枝一本も払うわけにはどういじってみてもできない。しかし、その二十二本の中の枝のうちに幾つか小枝ないしはその先の葉っぱというようなものを自由化しても農政上それほど大きなというか、はっきり言えばいささかも総合農政なりあるいは作付転換なりに支障のないものを覚出して、そして、これを自由化し、この厳しいドル対策に対処する姿勢だけは示さなければならないのではないか、こういう気持ちでございますので、農政基本を動かすような自由化や枠の拡大や関税の引き下げは、農林大臣責任においてもまた皆さんの御協力を得ながらも守り続けて日本農業を守っていきたい、こういう考え方でございます。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)委員 本年末にはドルがいま言われたように百億ドルぐらい余るであろう、黒字になるであろう、こういうふうに言われている。このドルの過剰というか、円高というものは、その原因は一体何だ、工業製品の輸出増じゃないか。少なくとも日本アメリカに対して農産物は一・八%しか出してない。こういう状態の中でドルが蓄積されたというその原因は、一体どこにあるのか、それはどうなんです。
  22. 中川一郎

    中川国務大臣 まさにそのとおりでございまして、アメリカからも言われておりますことは、貿易の中で、完成品という言葉に最近変わっておりますが、二〇%しかないではないか、これをひとつ率を上げるように完成品の輸入について努力をしなさい、御指摘のあったことも事実でございます。したがいまして、農業関係で言うならば、アメリカにとっては日本は大変なお客さんでございます。たとえば、麦あるいは大豆等がそれぞれ三百万トンずつ、さらにトウモロコシに至りましては六百万トン、合計千二、三百万トンの輸入をいたしておりますから、いろいろ非難されるよりはむしろ農業関係においては感謝されてしかるべきものではないか、こういう基本考え方も持っております。  また、農産物自由化を仮に少々いたしましても、仮に百歩譲って全部やりましても五億ドルと言われておりますぐらい、それほど大きなものではないということも認識いたしておるところでございます。ただ、御指摘のように、農業はあずかり知らぬ、工業の後始末はおれは知らぬというわけには日本全体としてはいかぬではないか。やはり日本工業国として発展をしてきたがゆえにこそこれだけの経済力を持ち、毎年国の予算の一〇%、いまでは二兆円をはるかに上回る農政費というものが財政として投入されるような力は、工業国として伸びた日本の力があずかってあるということからいくならば、工業だ、農業だと分けて考えるべきではなくして、やはり全体として日本の経済が安定することが長期的に日本農業もよくなるゆえんである、こういう観点で御協力できるものは当然御協力すべきだ、こういう考え方でございます。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これはよく理解できます。  そこで、問題は、日本農業が内部から事実上ほぼ崩壊の前夜にあると思っているし、崩壊したという意見もある。そのとおりになっていて、ほとんど兼業収入によって家計が賄われているというのは事実だ。そういうときに、黒字の原因が重化学工業にあるにもかかわらず、最近の新聞や財界やすべての世論というものは、日本ドルが余ったのは、二十二品目農産物自由化がされていないから、あれを抑えているから大変なんだということをほとんどの人が言っている。この間も、東京銀行の前の頭取の堀江さんもそういうふうに言った、あるいは財界の大立て者もそう言っている。こういう形で、何か日本の経済の混迷というのは二十二品目にあるかのごとき発言をされている。あるいは宮澤大臣も牛場大臣もしばしばそういうことを発言する。ところが、実際、いまのお話のように、二十二品目仮に全部自由化をしてみても五億ドル、八十億ドルも百億ドルも余るというのに、五億ドルくらいのもので仮に日本農民をずたずたにしてやったところで、日本の経済はよくならない。よくならないことがわかっていながらそれをあえて強調するゆえんは何だ。それはどこにあると思いますか。
  24. 中川一郎

    中川国務大臣 二十二品目というのは、日本の二十七品目の中の二十二品目でございますから、工業製品に比べて数が多いのではないかという印象が一つあろうかと存じます。また、世界的に見ても二十二品目というのは、農業はどこの国でも保護政策を講じなければならない産業でございますから、それぞれ非自由化品目を持っておりますが、日本は決して少ない方ではないというような見方もあります。しかし、財界その他から言われておりますゆえんは、ドル対策ではなくして、もし、この関税障壁といいますか、自由化をやるならば、大衆はもっと安い肉が食えるのではないだろうかとか、安い果物がもっともっと食えるのだからというような発想であって、決してドル対策をやるためにはというところから来ているのではないのではないかと私は認識いたしております。  私どものところに参ります意見も、この際は、農業農業でめんどうを見て、やはり安いものを食えるようにしてもらいたいというのが、財界のみならず一般大衆の声ではないであろうか、こう見ておるところでございますが、先ほど来申し上げましたように、農は国の基幹であって、ただ外国から安いものを買えばいいというような簡単な理論に屈するわけには断じてまいらない、やはり自給率というものを、そして基幹的な農業だけはがっちり守っていくことが国の安全保障にもつながる大事なことであるという基本のもとに、この二十二品目は断固として、そう軽々に自由化すべきものではないという立場をとっておるところでございます。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 何もその問題はきょうに始まったことじゃないのだ。つまり、生産者から安く買い上げて消費者に高く売っているというのはきのうやきょうの話じゃない。こんなものは十年くらい前からこの委員会で何度もやった。それをいまのドル問題とひっかけてやるところがおかしいじゃないですか。いまここに北海道皆さんが見えているけれども、先ほど陳情がありました。その中で、北海道でも卸売価格と小売価格との差が圧縮できない、この問題を何とかしてくれ、これは生産者からの要求だ、財界からの要求じゃないですよ。そういうような問題を一つも解決をしないで、いまのドルの問題も、あたかも二十七の中の二十二品目自由化されれば日本の経済はまともに行くのだというような印象ばかり与えている。これでは農民がかわいそうじゃないかと私は思うのです。  そこで、前の鈴木農林大臣は、本委員会で、少なくとも国内で自給力を高めるためには、国内において生産できるもの、あるいは稲作転換によってやったもの、それと競合するものは自由化をしないということを言明された。前の政務次官の羽田さんもそこにいるけれども、この人もここでそのことは言ったはずだ。その口が乾かないうちに自由化をするようなことがあったら、これはおかしいですよ。同じ自民党の内閣だからね。(「そういうことを言ってないよ」と呼ぶ者あり)そういうことを言ってないからいいけれども……。  そこで、さっきも言っているように、日本だけが非自由化品目を持っているわけじゃないでしょう。イギリスにおいてもあるいはフランスにおいても——アメリカだって、ガットをいいぐあいにやって、ウエーバー方式というものでちゃんと自分の国を、十三品目プラス幾つかで十七品目くらいは抑えてあるじゃないですか。しかも、小麦とか麦製品とか重要なものはみんな外国からの輸入を抑えているじゃないか。自分の国は抑えておいて、そして余ったものをどんどん押しつけてきて、それを今度は一生懸命やるなんという、そんなばかな話はない。少なくとも農政としてはおかしいですよ。ECだってそうじゃないですか。そういうようにすべての国々が自分の国の農業を保護しながら、価格支持をしながら守っているときに、日本で守られているものはせめて米価だけじゃないか、あるいは葉たばこだけじゃないか。その米価でも毎年毎年、中川農林大臣は今度米価をどうするかわからないけれども、それこそ農家は不満足ですよ。北海道から九州まで米価に対する要求は強い。そういうときに、守られているという米価でさえもそれなんです。ほかのものは危なくてしょうがない。  そういうときであるだけに、農業の問題については真剣に考えてもらわなければいけないということを重ねて念を押すように申し上げますが、どうですか。
  26. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほどからそのとおりであると何度も言っておるのですが、それでも、そうではない、そうではないと御指摘されるので、私は理解に苦しむのですが、前農林大臣のときも、いまの私になりましても、二十二品目には手はつけられないと申し上げておるのです。特に私は、外国は十七とか十三、日本は二十二でちょっと多いと言うけれども、日本の地図を見てください、ほかの国は四角いから作物の数は少ないかもしれぬが、日本北海道から沖繩まであるのですから、二十二というのは決して多い方ではないのではないか、こういうことまで言って自由化を阻止しておることを御理解いただきまして、余りしそうだ、しそうだと言わないようにお願いしておきます。
  27. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それにもかかわらず、それはなかなかそうはいかないのだ。  それでは、細かいことを聞きますが、トマトの問題について伺いましょう。加工用トマト、トマト製品、こういうものについてちょっと私は質問しますが、トマトは茨城県、長野県、愛知県あるいは福島県を中心とした二十五県が産地です。そこで、第一次生産調整のときにこれを転作して契約栽培になっている。契約栽培になっていて、これは農村工業の一つの重点にもなっているわけだ。そういうときに、かつて四十七年に自由化をした。トマトペーストの場合には、四十五年に輸入した三千百四十四トンが、四十七年の自由化によって、四十七年には一万六千十一トン、五十年には二万五千百五十六トン、こういうぐあいに何倍かにふえている。また、ピューレの場合においても、四十五年に四十トンであったのが、四十七年には八百五十トンと何十倍かにふえている。  こういう状態でありますが、これからトマトジュースあるいはトマトケチャップというものが対象になりそうなので、これが一番心配で、いま全国から各議員のところに恐らく電報や要請が来ているはずだ。このトマトの問題はどうされますか。
  28. 中川一郎

    中川国務大臣 トマトにつきましては、関東方面を中心にして、あるいは愛知県方面もそうでございますが、非常に関心作物であり、また作付転換の有力な作物として御協力もいただき、今後もさらに一層の御理解、御協力をいただかなければならない作物でございます。したがいまして、この自由化その他につきましては十分配慮してまいりたいのでありますが、こういったものを一つ一つの品目について、あなたのようにこれはどうだ、あれはどうだと言っていくと、消去法によって最後に残るものが決まりますから、これはどうだこうだと一品一品については、外交交渉を実効あらしめるために、これは一つしない、あれは一つしないという答えではなくして、作物一つ一つについては申し上げられませんが、御期待にこたえるように、そして意欲を損なわないように十分頭の中に入っており、対処していくということで御了解いただきたいと存じます。
  29. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは大変重要なところなんですね。これが重要なところだ。一品一品を言うわけじゃない。それはさっき言ったように自由化という幹があって、それに二十二の枝が生えている。枝の中でもトマトの問題は太い枝なんだ。葉っぱじゃない。枝葉末節という言葉があるけれども、葉っぱじゃない、枝なんだ、太い枝なんだ。その太い枝のしかもトマトで、残った部分で、たとえばトマトジュースの場合には五十年で九万四千四百十五トン、こういうものがある。その中で、輸入が三百三トンになっている。それから、ケチャップの場合には八万五千六百四十三トンの中で、輸入が六百九十八トンというように、非常に輸入が少なくなっているわけです。だから、このトマトの契約やそういうものがちゃんとできている。安心して生産ができている。にもかかわらず、これはいまの話の中ではしりつぼみでぼけちゃった。一つ一つというが、あとのことは言わないですよ。トマトについて言うわけだ。これをもし仮に自由化というような形で、そうでないにしても枠の拡大などということになったら、それは被害は大きいですよ。どうです。もう一つそれについて……。
  30. 中川一郎

    中川国務大臣 御心配される趣旨はよくわかりますが、断固として、結論としてひどい目に遭ったということがないように、よかったな、安心してつくれるなという処置をしてまいりたいということで、一つ一つになりますので、あとこれだけと言うから、それならばと言いたい気持ちもしますが、言ってみれば、いまおっしゃったように、枝なんですよ、枝はおろさないということであれば落ちないということに直結するのではないかと思いますので、この辺でどの枝を払う、払わない、トマトはどうする、あれはどうするということは、この際ひとつ事を円満にするために御協力いただきたいと存じます。
  31. 竹内猛

    竹内(猛)委員 後で通産省と大蔵省に尋ねますから、それはちょっと飛ばします。  その次は、また大臣に米の問題について質問をしておきたいと思います。  米価の問題について、先ほどもちょっと申し上げたが、鈴木前農林大臣米価の決定については来年度からは少し決定の方式なり何なりを変えよう、研究しようと言ったのです。それで引き継ぎがあったかどうか。そこで、来年度はいままでのような米価を決定する時期、方法、それから決定の内容、これについてはさっきの食管の問題と関連をして何か新しい考え方を持っているのかどうか。それをお伺いします。
  32. 中川一郎

    中川国務大臣 農産物価格については非常にむずかしい問題がございます。一般畑作物につきましていろいろ議論もありますが、米についてだけお尋ねでありますならば、米についてはまだ来年度産の米価についてまとまった議論をいたしておりません。従来からの法律、制度、仕組みもあれば、こういった過剰ぎみという非常な事態でもある、こういうことを踏まえて、時期が来ましたならばまた御相談申し上げたいと存じます。
  33. 竹内猛

    竹内(猛)委員 重ねてお尋ねしますが、そうすると、従来のような方式を変えないということですか、別に新たな方式をとるということですか、それはないですか。
  34. 中川一郎

    中川国務大臣 いま特別な方法をとりたいというような考え方は持っておりません。
  35. 竹内猛

    竹内(猛)委員 朝日新聞投書並びにある雑誌の座談会を見ると、中川農林大臣の米に関する考え方あるいは農政に関する考え方の基調は財政が中心だ。なるほど経歴を見ると前に大蔵省の政務次官をやられたという関係から、金はとうといものだ、これはだれでも思っていますが、国民の税金だから金は有効に使わなければならない、それもわかる。わかるが、食管の経費が一兆円と言われるけれども、実際、食管の経費というものは、長官、何ぼになりますか。一兆円じゃないでしょう。それをちょっと正確に言ってください。
  36. 大河原太一郎

    ○大河原政府委員 お答え申し上げます。  一兆円というのは、食糧管理費の段階で九千九百億、約一兆円の時代がございましたが、現在におきましては調整資金繰り入れで七千三百億、それに別途九千九百億なり一兆円に対するものとしてプラス米の水田転作関係が約千億ございますので、八千三百億ということでございます。
  37. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そうすると、まあ大体昭和四十八年ごろに食管の占めたのは農林予算では四〇%で、最近は二七%になったというような話がこの問あって、だんだん食管の中身は五年間で圧縮するという方向を一つ持っている。農林大臣もちゃんとどこかの座談会で言っているし、何とかして食管の中の、つまり生産者と消費者に対する枠組みの中の経費を小さくして、その部分をよそに回したらいいじゃないかというのが、どうもこれは農林大臣の米に対する哲学みたいに、執念みたいに見える。これは食管基本的な精神に私は反すると思っている。そして、直接の統制から間接統制に移していこうという考え方のようだが、この点はどうなんですか。
  38. 中川一郎

    中川国務大臣 食管の仕組みというのは、国民の主食であります米を自由にいたしておきますと安定的に国民に供給されないというので、国がこれを管理して、そして国民に米を心配ないようにしていくというのが基本立場でございます。その場合、生産農家に対しては生産費所得補償方式で値段をそのかわり保証いたします。こういうのが食管の仕組みだと存じます。  ところが、近年、消費者価格生産価格との間に相当大幅なものが出てまいりまして、いわゆる逆ざやというのが出てまいったわけでございます。私はいつも申し上げるのですが、食管の仕組みとして、農家が国に売ります値段と配給所で売ります値段とが隔離をして、自分のつくった米は全部供出して配給所から買ってきた方が安いというような仕組み、あるいはまた配給所から集めてきて食管に持っていったら高く売れるというような仕組み、こういった逆ざやについては、これは考えるべきではなかろうか。何も食管の赤字を全部なくそうというのではなくして、食管を守っていく上において、運賃や倉庫代あるいは金利等、こういった管理をする上において必要なものは、これは国が持ってもしかるべきであろうが、逆ざやと言われるものについては、これは食管の仕組みとしても若干問題があるのではなかろうか。これはひとつ解消して、そして、もっと有効な生産対策に回すべきではなかろうか。これを解消してほかの方に取られたのでは意味がありませんけれども、同じ農政費として使うならば、これはもっと有効な使い方があって、むしろ農村のために役立つのではなかろうか。特に安定的な生産生産性の向上、あるいは農村生活環境の向上の方に使うべきではなかろうか、こういう考え方をもって従来も政治家として行動しておりましたし、責任者としても今後そういう方向に持っていきたいという考え方は変わっておりません。  ただ、大蔵省におったから財政のことだけ考えていると言われると、若干そうではない。財政もさることながら、やはり農政を守るという基本的観点がそこに並列をいたしておる。財政は全く考えないということはありません。国家を維持していく上に財政がもちろん健全でなければなりませんから、それも考えなければなりませんが、そればかりでものを処置しようとは思っておりません。
  39. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大臣はしばしば、米の生産調整をやって百七十万トンを実行するのが当面非常に大事だ、こういうふうに言われた。したがって、それと自由化の関係で、それを押しつぶすような自由化には同意できないということも、最近やや明らかに新聞に伝えられるようになって、さっきの言葉の中でだんだん浮き彫りにされたことはいいことだと思う。本委員会を開いた意義もあると思うが、そこで米の生産調整について、各地の動向というものが必ずしも好感は持っていませんよ。私たちは、社会党を中心とする野党五常は、過ぐる十一月十七日に本委員会に福田総理大臣に出てもらって、そして十分に話し合いをしたいということを要請したけれども、ついに実現がなかった。きわめて残念であって、その後夕方、総理大臣の官邸に直接に要請に行きました。われわれは六項目の要請をした。そういうことの中に、問題は、このような重要な問題を行政処置でやる、一方においては自由化の波が来る、そこで農家に説得のしようがないじゃないかということで、いろいろ申し入れをしたわけですが、大臣生産調整が非常に大事だということで、自由化の問題に対してかなり強い姿勢を持たれているわけだから、これはいいとは言わないが、この問題は上から押しつけをしたという印象が非常に強い。だから、新潟県でもいろいろな社会問題が起きておる。私の茨城県でも、トマトの問題やその他の問題にけりがつかない限り、農協はこの問題に手がつけられない、そういう状態になっております。  現段階で生産調整は順調に進んでおると思うかどうか、それをひとつ……。
  40. 中川一郎

    中川国務大臣 これは当委員会も十分御理解いただきまして、ぜひとも御協力いただきたいと私は思っておるわけでございます。  私どもも、生産性も一番高いし、農家経済にとってもいいことでございますから、生産調整をやらないで済むものなら済ませたいというのは、竹内委員以上の気持ちを持っております。たとえば、外国に輸出する方法があるとか、あるいは家畜のえさにする等のことでこれが利用できるとか、あるいは消費が急に拡大をして生産調整をやらぬで済むような事態がありますならば、これはもう湿気の多い、耕地の少ない日本にとっては一番生産性の高い作物でございますので、これを生産調整するなどということをやりたくない。しかし、輸出の問題を考えましても、あるいは家畜のえさにおろすにいたしましても、これはもうコストのみならず、国民感情からいっても非常に問題のあるところであり、消費拡大を一生懸命やっておりますが、これにも国民からの反発もないわけではない。でありますから、この際はかつての七百万トンのような過剰米ができないように生産調整をするということはもう至上最高の農政の大事な問題であるとして取り組まなければなりません。  ただ、やり方としていかがしたらいいか。農家皆さんや地域の皆さんが相談をして、自主的にやっていただけるならば、政府としてこんなありがたいことはございません。しかし、われわれも、農林大臣になる前に農業団体の幹部の皆さんとも話したのでありますが、それぞれの地域はそれぞれの理由があって、北海道で言うならば、生産性が一番低いのだから米地帯であるというところもありますし、あるいはわれわれのところは作物転換するものはないからやるべきで、北海道は転換する作物があるから北海道でやるべきだということで、なかなか自主的にまとまり切れないというところに問題があるわけでございます。そこで、過去の実績や湿田率や適地適作等いろいろな総合的な物差しを一応つくりまして、全国百七十万トンの生産調整をお願いした、こういうことであります。  この間には、県によってそれぞれ御不満があります。ああよかったという県は一県もないのでございます。緊急避難のことでございますから何とかひとつ、先ほども申し上げたかどうか、ただ米をつくるな、さあほかのものをやれ、自由化するというのではありませんで、自由化も十分検討するし、対処するし、それから反五万五千円ないしは場合によっては七万というような、畑作農家に比べれば相当基礎的な助成もして、国も力を入れますから御協力をくださいということで必死のお願いをいたしておるところでございます。これがやらずに済む方法がありますならば、ひとつ竹内委員からも御指摘いただきたいと思いますが、どうかどうか、ひとつこれはもう緊急避難として何としてでもやらなければならないところであり、全国各県、当初いろいろな御議論もありましたが、もう近々自由化の問題もなるほどという内容が出るであろうと思いますし、全国御不満のあるところではありますが、これは農業団体の人もあるいは政党政派を超えても日本にとってやらなければならない、日本にとってというより、農政にとってどうしてもやらなければならない、避けては通れない道だとして、むしろ私の方から野党の皆さんにも御理解、御協力をお願いし、私自身も何とかこの制度をやり抜いて、そうして食管は堅持してまいりたい、こういう姿勢でございます。
  41. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その気持ちがわからないことはないけれども、これは後で島田委員の方からもこの問題についてはかなり詳しい質問があろうかと思いますが、われわれはただ単にこれを中止をしろとか反対をするということじゃない、一つの考え方を持ってこの問題に対応しているわけであります。  その一つは、やはり他の転作すべき農畜産物の価格保証がないということなんです。価格が支えられていないということなんです。せっかく安定的にやってきたものでも、自由化があればそこはさらわれる。人間で言えば完全雇用の状態にある米とたばこというものが——たばこの問題は別にここで議論しないが、米が移っていくのに、それにかわるべき価格支持なり価格保証なり、そういうものがなくてそこへ移れと言ったところで、これは十数万円取っていた月給取りに十万円台のところ、しかも、その企業は倒産寸前だというところに移れと言っても、それは無理な話なんです。だから、そういうことはもうここで答弁は要らないから、私たちはそういうわれわれの気持ちをここに述べておきます。  だんだん時間も来ましたから、あと二、三質問をして、あとは事務当局の方に質問をして御答弁を願って、若干、北海道皆さんの話を聞いていただきたいと思います。  そこで、大臣にお伺いしますが、先ほど食管の経費を、逆ざやを解消してそれを他に回すという話をされましたが、来年度の農林予算の要求について、国の予算全体が三十四兆ぐらいになるだろう、その中でとりあえず農林省が三兆六十五億ですか、そういう要請をされた、これは予算全体の一〇%を切っておりますね。従来、あるときには一六%もあった時期がある。それがだんだん一〇%を割るようになってしまうと、事務当局もあれもこれも考えてみてなかなかやりにくいのじゃないか。もっとこれをふやすような努力と意思と決意はないのか、それをお伺いしたい。
  42. 中川一郎

    中川国務大臣 一時期は国の予算の中に占める農政費の割合が相当大きかったこともありますが、数年前はまた落ち込んで、九%でしたか、一〇%を割った時代もあると思います。その後は大体——大体といいますか、農政費は国の一割ということをたてまえにしたわけでございます。それは食管の赤字は減らせないまでも不拡大の時代もありました。不拡大の時代でも一割取ってきませんと、せっかく不拡大した分は他の予算に取られてしまうというところから、一割だけは堅持しておるつもりなんです。ただ、要求の段階でも予算上一割を割っておるじゃないか、実は予算の中でも公債費関係は全体が責任を負わなければならないところでございますから、それを除いた部分の一割、実際予算として活用される分の一割だけは要求もいたしておりますし、今後、予算編成最終仕上がりの場合でも一割の精神だけは貫いてまいりたい、こう思っておりますので、決して一割を割るような方向には持っていかない、御理解をいただきたいと存じます。
  43. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大臣に対する最後の質問として、日本の経済あるいは農業、そういうものの立て直しをするために、日本と中国との関係について、技術交流やあるいはさまざまな交流に対する、平和友好条約などについて促進をするという気持ちはないかどうか、これはどうですか。
  44. 中川一郎

    中川国務大臣 中国との関係においては現在も技術交流なりいろんな関係を持っておりますから、これを促進することに何らやぶさかではありません。ただ、条約締結等は単に中国との問題だけではなくして、国際環境、その他の国々との関係を十分配慮しなければ国益に合わない、そういった総合的な判断のもとに処置すべきであるという考え方を持っておるところでございます。
  45. 竹内猛

    竹内(猛)委員 大臣に対しての質問はこれで私は終えまして、ちょっと北海道の方の皆さん——あと通産省と大蔵省と、それから農林省の事務局の方にお願いをしたいと思います。  いまトマトの問題で、実は契約栽培をしていて、その契約栽培が、自由化をされると、そこに離職者が出るという方向はほぼ明らかであります。せっかく工業団地をつくって農林省と一緒になってトマトの加工をやってきている。現に茨城県にも工場があるし、あるいは長野県にもあるし、あちこちにそれができている。そういうようなことに対して、そういうことも予見できるのになお自由化の問題についてはやらなければならないと考えているのか。あるいはそういう場合になったら、それじゃどう処理されようとしているのか、その点をまず通産省からお伺いしたい。
  46. 斎藤成雄

    ○斎藤説明員 お答え申し上げます。  トマトの具体的な問題につきましては、先ほど農林大臣から御答弁がございましたように、現在の段階でまだ政府内部ではっきりしたことを申し上げる段階にないというふうに私ども理解しております。ただ、御指摘のように、何らかの措置によって国内に悪影響の出るようなことは当然に避けなければならない問題でございますから、そういった問題につきましては政府内部で十分対策をとった上で結論が出る、また本件については、現在の段階ではどういう措置になるのか、私ども結論を承知いたしておりません。
  47. 竹内猛

    竹内(猛)委員 なお、通産省要請をしますが、農村工業導入法によって各地に工場が誘致をされております。農地も提供してあります。その農村工業導入によるところの工場は必ずしも予定どおり、予想どおりに進んでいないということを私は幾つかのところで見ているわけだから、こういう点についてなお注意をしてもらいたいということです。  それから、大蔵省にお伺いしますが、わが国にはヨーロッパのように課徴金制度というものはなくて関税でこれを処理している。そこで、自由化の問題に関連をして関税に対する引き下げをしなければならないという要請があると思う。しかし、農家関税引き下げは反対だ、こう言っておりますが、その点についての取り扱いをどうされようとしているのか、その点をお伺いします。
  48. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 御存じのように、最近、世界において保護貿易主義の高まりが見られておりまして、このような保護貿易主義の高まりを防止し、あわせてわが国輸入の増大に資するために、今回、関税の前倒し引き下げということに踏み切った次第であります。  かかる見地から、政府といたしましては、原則として、わが国関税率が比較的高いもの、または国際貿易上優位にあるもののうちから、中小企業製品の性格の濃いもの、または極端な不況業種の製品等、国内的に見て問題の多いものを除くという考え方で、対象品目を選定した次第であります。  農産物につきましては、国際的に見まして割り高な関税率を有するものが多いのでありますが、今日わが国農業の置かれております特殊、困難な状況にかんがみまして、加工度が比較的高いか、またはその主要原料がほとんど国産されていない農産加工品あるいは国内における生産の増加が期待しがたい水産物というような、農林漁業者に直接影響の少ないものに限って関税の前倒し引き下げの対象とするという方針で、農林省とも十分協議しつつ品目の選定を行っている次第であります。その結果、前倒し引き下げの対象は大部分が工業製品でありまして、比較的少数の農産品は大半が農産加工品という状況であります。  このように、政府といたしましては、今回の関税の引き下げの繰り上げ実施に当たりましては、総合農政の推進に支障を来すことのないよう慎重に配慮しているつもりであります。
  49. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これもまた大蔵省の方への要請ですが、少なくとも百七十万トンという米の生産制限、作付制限をし、転作をしているさなかに、外国から、せっかく農家がつくっているものを脅かすような、そういうものに対する関税についてはやはり考慮をしてもらわなければ困る、こういうことについて強く要請をしておきたいと思います。  最後に、これは農蚕園芸局に関係をすると思いますが、私の茨城県の問題について、要請とお願いをしなければならぬ、ちょっとぐあいが悪いのですけれども。というのは、私の県西地域というのは白菜の産地なんですね。白菜の産地で、ことしの異常気象によって白菜が生産過剰になった。そして、先ごろは四千トンというものを市場隔離をした。それでもなお白菜は余っております。そこで、肥料にしたりあるいは施設に無償で出したり、いろいろしているけれども、なお余っております。ところが、これは京阪神に関しては重要野菜の指定地域でありますから一定の措置がとられておりますが、東北、仙台、盛岡等においてはそういう措置はとられておらないために、農家の中で、同じ農家が西へ出す場合には一定の手当てがあるけれども、東北の方へ出す場合にはそれがないということで非常に悩んでおりますので、ぜひ盛岡、仙台方面についても重要野菜の指定地域としての努力をしてほしいということですが、これはどういうことになりましょうかね。むずかしいですか。
  50. 杉山克己

    ○杉山政府委員 野菜についての価格補てんの事業は、指定生産地のものが指定消費地域の指定市場に出荷される場合にこれを対象とするということになっております。その意味で、東北の市場の一部ではまだ対象になっていないところがあるのかと思います。そういったところに出荷しているものについては、現在は対象になっていないにいたしましても、私どもの方でも実情をよく聞きました上、要件を満たしているならば、また現地からそういう申請がありましたならば、検討した上でしかるべく対処したいと考えております。十分調査いたします。
  51. 竹内猛

    竹内(猛)委員 以上で終わります。
  52. 菅波茂

    菅波委員長代理 美濃政市君。
  53. 美濃政市

    美濃委員 若干の質問をいたしたいと思います。  まず、私は、竹内君からいろいろ体系的な質問がありましたので、第一点として、輸入量の増大、自由化傾向をめぐって現在すでに起きてきておる現象についてどう対応するのか、これをお伺いいたしたいと思います。  まず、第一番に、牛肉の問題をお尋ねしたいと思いますが、畜産局長でよろしゅうございます。局長で答弁できなければ大臣が来てからお聞きすればいいのですけれども、今回、新聞に大きく出ました牛肉輸入量の増大というのはどの程度のことが考えられておるのか。  もう一つ、時間の関係でついでにお尋ねいたしますが、ことし見込まれる牛肉生産量は何ぼか、それから現時点の牛肉の消費量はどのくらいに農林省としては押さえておるか、この三つを最初にお聞きしたい。
  54. 大場敏彦

    ○大場政府委員 牛肉需給の話からまず申し上げますが、牛肉需要にはいわゆる一般的な需要と、それから、たとえば学校給食とか沖繩とか加工用とかいった特別の需要とあるわけでありますが、便宜上一般的な需要量について申し上げますと、正肉ベースで年間通して三十二、三万トンではなかろうか、これは部分肉ベースです。それから、これに対応する生産量が二十五、六万トンではなかろうか。しかし、これは推定でありますから、消費の方におきましても景気の問題だとかいろいろ変化する要素がありますから、かなりの幅はあるということで御理解願いたいわけであります。大体そんなところではないか、かように見ております。  それから、そういう需給状況をどう見通しておるかといいますと、いままでの消費の動向は、家計調査から見ますと、今年度に入ってから消費は前の年に比べて大体六%くらい伸びているという状況でございます。それから、生産の伸びは、これは前の年がいわゆる畜産危機の影響をもろに受けたわけで、がくんと落ち込んだせいもあるわけですが、いままでのところ前の年に比べまして二〇%を超える伸びになっている。年間通して十数%の伸びになるのではないだろうか、かように思っております。  それから、輸入の枠でありますけれども、今年度は上期は一般枠で三万五千トン、それから特別枠としてそれに加えることの五千トンという割り当てをいたしました。それから、下期の割り当ては、先ごろ一般枠として四万トン、特別枠として七千五百トンという割り当てをしたわけでございます。
  55. 美濃政市

    美濃委員 先ほど来、竹内委員質疑を聞いておったわけですが、農業を破壊しないと言うけれども、すでに現実に起きてきておる面をお尋ねしておきたいと思うのだが、いま畜産局長の説明では、牛肉需要量は、一般需要量としては大体三十三万トンであろう、国内の生産は二十五トンが見込まれる、だから五万トン程度不足するから上期で三万五千トンという枠であり、大体いままでこの不足量を調整するという牛肉輸入であった。  今回、黒字問題から発生した、新聞に出た大幅な牛肉輸入の拡大というのは、こういう需給関係に対して、どういうふうに見込まれておるか、その現実の動きをちょっと聞いておきたいと思います。
  56. 大場敏彦

    ○大場政府委員 私ども、これは牛肉に限ったことではございませんで、農産物については同じような方針であろうと思いますけれども、ことに牛肉海外に全面的に依存することが危険でありますから、国内でできるだけ生産を高めていく、国内の生産というものを大事にとっておくということだろうと思います。しかし、需要が強うございますので、それでは足りないことは事実でありますから、足りない部分をやはり安定的に輸入していく、こういうことだろうと思うわけで、今年度上期それから下期の輸入割り当てもそういった方針に基づいてしたわけであります。決して過剰なもの、不必要なものを入れるというつもりはございません。
  57. 美濃政市

    美濃委員 不足量だけを輸入して過剰なものは入れない、こういうわけでありますが、しかし現実には牛肉はかなり下がってきましたね。北海道牛肉は支持価格をかなり割り込むようになってきた。ここで余りそういうふうにはっきり答弁されると、それに対して私どもは疑いは持ちませんが、もし、これから先、輸入量が不足量であれば価格は余り割れないと思うが、輸入量が増大されて割れた場合には、国内の生産のものはやはり支持価格があるわけですから、下回れば畜産事業団に無条件で買い取らす、その方針は間違いございませんか。そういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  58. 大場敏彦

    ○大場政府委員 価格水準でございますが、乳雄の例をとりますと、卸売価格の水準の推移は、安定帯制度が発足したのは二年前でありますけれども、発足した当初から、これは物が足りなかったせいもありまして、高騰を続けて、安定帯の上限を突破しっ放しで、またこれは別の御批判があったわけであります。しかし、昨年の九月以降安定帯の中に入って鎮静化傾向をたどっており、現在のレベルは大体安定帯の中心のところを推移しているのじゃないかというような状況でございます。  それから、和牛は、これもことしの三月以降安定帯の中に入りまして、現在のところは決して下がったという状況ではございません。比較的安定的に鎮静化傾向をたどっている、安定している、こういったことではないかと考えております。  それから、輸入量と安定帯制度との問題でありますけれども、輸入が即市場に放出されるということにつながるわけではございませんので、やはり輸入したものは一たん事業団で保管いたしまして、事業団が需給状況を見ながら、慎重に、需給に悪影響を及ぼさないような形で放出するという形をとっております。ですから、不幸にして需給が非常に混乱いたしまして、それで片一方輸入が入ってくるというようなケースがありますれば、それは事業団は放出しないという形で需給の安定を図る、こういったことになるわけでありまして、いわゆる民間貿易と違いまして輸入量が即市場に放出されるという仕組みにはなっていない、事業団がその間に介在して価格の安定を図っているということでございます。  それから、安定帯の下限を下回れば買い上げる、これは当然制度の仕組み上そうなっているわけでありますから、おっしゃるとおりであります。
  59. 美濃政市

    美濃委員 次に、乳製品についてお尋ねしたいと思います。  これまた、指定乳製品については特に自由化はされておりませんけれども、かなり乳製品——乳製品もさることながら、疑似乳製品の輸入量が非常に増大してきておる。その結果、国内産の乳製品の価格が低迷してきた。軒並み、指定乳製品は指標価格を割り込んできておる。まだ大きく割り込んでいないようですけれども、しかし、もう現実に在庫は多くなってきたわけですね。指標価格がございますから、売り支えを指標価格でしておりますから、政府に買ってもらうのは指標価格を割った価格では売りたくないというのは、法律制度がある以上、やはり国内乳製品メーカーがそういう考えに立つのは当然であります。各国内乳製品の在庫が非常に目立ってきた。もう少しすると、これはさらに指標価格を割って売るか、政府に買い入れ要請をするか、事業団買い入れを要請するか、大体どっちかの条件になってきたと思うのです。  やはり製造しておるメーカーとしては、政府の買い入れ要請が起こってくると思うのです。現時点ではまだ畜産局長の手元へは買い入れ要請は来ておりませんか。私はもうその時期が到来してきたと思うのです。具体的な要請も来ておるのではないかと思うのですけれども、その関係をこれからどういうふうにやっていこうとしておるのか、お聞きしておきたいと思います。
  60. 大場敏彦

    ○大場政府委員 確かに御指摘になりましたように、乳製品の市況が軟化してきているということは事実であります。これはやはり根本的には、決して牛乳が過剰だという意味で申し上げるのではないのですが、需要と供給との間が、過渡的にせよバランスを失しているということじゃないかと思います。ことしの四月から現在まで——十月までですが、生乳生産量を見ますと、これは九%から一〇%の間になっている、非常に高いピッチで伸びている、こういう状況であります。それから一方、生乳の飲用として飲まれる量でありますけれども、これも非常に、現在不況下ではありますけれども、六・数%という形で伸びている。率直に言ってかなり堅実に飲用牛乳の消費は伸びている、こう評価していいわけであります。しかしながら、生産の方が、前の年に比べて一割ぐらいという非常に高い率で伸びているということから、一時的にせよ、あるいは過渡的にせよ、それが脱脂粉乳あるいはバター等の生産に振り向けられて、結局として在庫がふえて、その在庫圧力でいまの製品の市況が軟化している、こういった状況であります。  バター、脱脂粉乳、確かに市況が軟化しておりまして、バターの場合には三%、これは対安定指標価格との比較であります。それから、脱脂粉乳の場合、一ないし二%程度下がっておる、こういう状況であります。しかし、直ちに現在のその程度の軟化状況で買い入れという事態を想定するのはまだ尚早ではないか。制度に従えば、一割ぐらい暴落したときには、もちろん買い入れというぐあいに制度は発動しなければなりませんけれども、現在時点の段階でそこまで悲観的に考える必要はないだろう。いま御指摘になりました買い入れ発動というような業界あるいは生産者団体等からの御要請は、うかつにまだ私は聞いておりませんが、よく御意向は今後聞いてみたいと思います。  しかし、いずれにしても、今後の推移を見る必要がありますけれども、今後生産が現在みたいなハイピッチで伸びていくかどうか、こういう問題もありますし、もう少し慎重に事態の推移を見守りたい。買い入れというような形で直ちに悲観的に現在の需給を予測するということは、業界に与える影響もありますし、もうちょっと慎重に対処いたしたいと思っております。
  61. 美濃政市

    美濃委員 特にいままで乳製品問題を論議した中では、たとえば乳糖は大体医薬用として七千トン、それから調整粉乳、いわゆる育児用粉ミルクに混入するものとして大体二万トン、合計二万七千トンないし三万トンが乳糖の需要である。その限度はやはり輸入しなければならぬが、それを超えるものはできるだけチェックして、疑似乳製品であるからこれは入らないようにするという政策がとられてきたわけですね。ところが、最近これが五万五千トンぐらい入ってきておる。これは医薬用と、それから育児用粉ミルクで五万五千トンの需要に増大したのか。     〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕 それとも、その需要はやはり三万トン限度のものであって、これはやはり疑似乳製品としての用途に供されておる。これは入ってくれば疑似乳製品になって使われるということに間違いないわけですから、ほかの用途にはならぬわけです。それから、もう一つは、飼料用として入ってくる四万九千トン、五十一年度四万九千トン、約五万トンですが、これが年々増大してきている。これはかなり他の用途に使われておると私は思うのです。  こういうふうになってきますと、それが特に乳製品そのものの需要よりも、あるいはココア製品、五十一年が二万一千六百三十、こういうものが入ってきて乳製品の需要というものを圧迫しておるということは私は間違いないと思うのです。この傾向を調整しなければ、やはり国内の酪農振興をしても、だんだんこういうものによって需要が圧迫されてくるのです。市況——市場と言った方がいいですかね、市場が圧迫されておる、あるいは需要が圧迫されておる、こういう傾向が出ておることは間違いないと思うのです。確かにことしはやはり一〇%近く牛乳の生産量は伸びておりますけれども、一面、生乳の需要が伸びない関係にも、こういうものが、やはり乳等省令という政策をとりながらも、また食品衛生上は別に問題がないということで、やはり加工乳とか加工飲用乳も圧迫しておる。そういう相対的な関係がやはりいわゆる飲用乳の伸び率が鈍化する原因の一つにもなっておる、こういうふうに考えられるわけですが、この体制を、前からこの酪農政策の上では決まっておるわけでありますから、既定方針でこういうふうに増大したものをやはり整理をしなければならぬが、整理ができるのかできないのか、それを聞いておきたいと思います。
  62. 大場敏彦

    ○大場政府委員 乳製品の輸入に関する考え方でありますけれども、私ども三つに大別できるわけで、結局その国内の生産力が皆無だとか、あるいはあっても非常に少ない、こういったために、一方、国内においては旺盛な需要がある、それに対応できないというような場合に、やはりこれは輸入に頼らざるを得ないというものはございます。いま御指摘になりました乳糖、カゼインなんかその例でありまして、そのほかにナチュラルチーズなんかございます。  それから、これも御指摘になりましたけれども、児童の健康の増進だとか、あるいは畜産業という特定の産業振興のために海外の廉価な乳製品を入れる、こういったものが次の範疇にあるわけでありますけれども、たとえば飼料用脱脂粉乳あるいは飼料用ホエイパウダーとか、あるいは学校給食用の脱脂粉乳、こういったものがあるわけであります。これが第二の範疇であります。  それから、第三の範疇といたしましては、先生御存じのように、畜産振興事業団で一元輸入品目という形で国内の乳製品の需給に十分配慮した輸入措置がとられている、こういったものがあるわけで、これはまさにバターだとか食用脱脂粉乳、こういったものであります。  そこで、疑似乳製品のお尋ねがあったわけでありますが、乳糖、カゼインにつきましては、結局、カゼインは製紙、紙をつくる工業に使うとかあるいは接着剤に使うとか、乳糖につきましては化学薬品とかあるいは菓子をつくる原料、そういったものに使われるために輸入されているわけでありまして、これがほかの方に転用されているということがあっては非常にゆゆしき問題でありますが、私ども全然問題がない、こういう認識は持っておりませんが、多量にそれが転用されているというふうには認識しておりません。しかし、気をつけていきたいと思います。  それから、えさ用脱脂粉乳につきましては、畜産生産者団体の要望にこたえまして割り当てをしているということでございまして、かつ横流れ防止のために、承認工場において魚粉等を混入するということによってそれが一般の食用の脱脂粉乳にならないような措置をとっている、その監督は税関がしている、こういった状況であります。しかしながら、やはりそれが流れて一般需給に悪影響を及ぼしては大変でありますから、割り当て制度をとって、対象団体も六団体にしぼっておるということで、無制限にはやっておりません。それから、数量も生産者の需要にはもちろん応じますけれども、これも無制限にはしていない、限定的な形で割り当てをしている、こういった形で対処しているわけであります。  それから、加工乳のお尋ねがございましたが、先ほど私は飲用牛乳の伸びが、ことしの春から現在まで、七%まではいっていませんが、それに近い数字で伸びている、これは非常な伸びだと私は評価していいと思うわけでありますが、そういう飲用牛乳の着実な伸びで、加工乳というものはかなり減ってきている。昨年も減ってきているわけでありますけれども、昨年の減りに加えてことしもさらに減ってきている、こういう状況でありまして、いま加工乳がふえている、そのために飲用牛乳が圧迫されているというふうな需給関係ではないというふうに判断しております。
  63. 美濃政市

    美濃委員 いずれ私どももこの関係はもっと調べて、次の機会に、いま申し上げたような原因が私はあると思うのですが、ここでこれ以上ある、ないの論争をしておってもいかぬですから、畜産局の方でもこういう関係をひとつ整理するということと、それから、さらに注意をして、そういう状態があるとすればそれを払拭しなければならぬと思います。  同時に、このことはやはり生乳生産量が伸びて飲用乳が伸びないという関係もございまして、いま推定される加工原料乳の補給金は、限度量がかなり不足する、こう現時点ではっきり言えると思うのです。何トンかというところまではまだ期間がありますけれども。相当限度量が不足するということはもういまはっきり想定はされるわけですね。  これに対しても、やはり対策をやると言えば予算を必要とするわけです。畜産局としてはどういうふうにこれを考えておるか。
  64. 大場敏彦

    ○大場政府委員 現在までの数字で、ことしの四月から十月まで全国のベースで申し上げますと、いわゆる加工原料乳としての認定数量が百五万二千七百トンでありまして、これはいわゆる限度数量の百五十八万トンに対しましてちょうど三分の二に当たる、こういった状況であります。  なお、前年と比べますとどの程度伸びているかといいますと、前年同期に比べまして一一六・五%、こういう伸びであります。ですから、加工限度数量をこのままいけば突破してしまうのではないかというおそれといいますか、可能性というものは予見されるわけであります。しかしながら、加工限度数量というものはあくまでも限度数量でございまして、不足払い法の趣旨に即して、やはり限度数量という範囲内で合理的な生産を展開していただくということが不足払い法でもありますし、限度数量の意味であるわけでありますから、生産が伸びたからといって、直ちに限度数量を改定する、あるいは何らかの措置をとるというぐあいにつながるわけではないわけであります。これは釈迦に説法で恐縮でありますけれども、そういうつもりでおります。  しかし、では今後、限度数量をどうするか、突破した場合それをどう処置するかということにつきましては、もう少し今後の需給状況を見た上で判断させていただきたいと思っておるわけであります。
  65. 美濃政市

    美濃委員 次に、農蚕園芸局長にお尋ねしたいと思います。  豆類が非常に暴落しておる。大豆は支持価格ができましたから支持価格を拠点にできますけれども、豆類は非常に暴落しておる。六十年度の生産展望では、やはり豆類も特に北海道における稲作の転換作目等に若干見込んで生産目標は立てておる。しかし、現実はもうことしの価格であれば生産することは不可能である、こういう実態が起きておるわけです。その中で、手亡という豆を一つとらえてみますと、すでにもう自由化はされないでも、輸入量が増大してしまっておる。輸入在庫で一年分の消費量が港に積まれておる。ですから、輸入量が増大すれば自由化したのも同じですね。自由化しなくても物が入ってくる。需給の均衡が破れなければ暴落はしない。その中で、特に円高という問題を検討していくと、たとえば一ドル三百六十円の為替レートであれば北海道でつくる手亡とアメリカから入るホワイトとは対応できる、こう思います。二百三十円になったのは何の原因なんだ。結局は円高というのはやはり国際収支の黒字から、黒字減らしの報復手段として出てくるのじゃないですか。こうなってきますと、たとえば何ぼ土地改良したり何かしても、国際収支が黒字である限り、円高という基調がこういうふうに続く限り、弱い日本農業体質もさることながら、三百六十円の為替レートであれば対応は十分できる。アメリカから入るホワイトと生産コストが対抗できる。いまから数年前は三百六十円であったわけです。それが円高となってきたのはやはり黒字が原因となっておるということになってくると、単にこれは生産対策だけではどうにもならぬ問題が出てきておると思うのです。  そうすると、やはり国内の農業を守り、国内の食糧自給率を低下させないというのであれば、やはり私の考えは、秩序ある輸入という面も考えなければならぬ。特にこれは大臣にお聞きしておきたい。秩序ある輸入ということにも相当政府としては政策を用いなければ、ただ安い物と言っても——安い物、安い物というと、特に円高関係から起きてきておる価格差というものは、単にコストだけの問題ではない。そこにやはり何らかの政府政策によってそういうものは措置をしていかなければ、国内農業を破壊しませんと言っても、これは破壊になってしまうわけですね。現実は破壊が起きてきておるわけです。こういう差し迫った問題をどうするか。起こしませんと言ったって、現実は起きてきておるわけです。  ですから、まず第一点として、この問題に対して、特に小豆等の輸入は、従来こういう価格形成が起きたときには、二月いっぱいは輸入しなかったわけです。外割りをしなかったわけです。ことしもやはり従来どおり、二月なり三月まで外割りをとめて、その後の需給事情や価格の動向を見て、不足ということがはっきりすれば不足量を買うこともやぶさかでないけれども、まず第一点として、従来やった外割りを一たんここでとめるということはできますか、どうなりますか。
  66. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 豆類につきましては、畑作農業の中において重要な地位を占めておる作物であり、特に北海道におきましては、畑作輪作経営の中でウェートの高いものでございます。  そこで、私ども、小豆を含む先生御指摘の雑豆の輸入の問題につきましては、きわめて慎重に対処しながら、外割りの手続を進めておるところでございます。一時期、小豆が非常に高値をつけましたが、その後の状況の変化で、その中には先生のおっしゃる円高の問題も影響はないとは私は考えておりません。確かに、どの程度かということはむずかしゅうございますが、影響はしておろうと思います。そこで、小豆を中心といたします雑豆の生産農家が、毎年毎年のことでございますが、豊凶の変動、それからこれは相場商品にもなっておりまして、いろいろの情報によって、海外の買い付けがどの程度円滑にいくかとか、そういうことの影響を受けまして、相場がかなり上下をいたしますが、私ども極力外割りの実施につきましては、国内の価格流通関係も安定的に推移をし、それによって農家が大きな痛手をこうむることのないようにという配慮をしながら進めてまいるつもりでございます。  今後ともそういうことの配慮をしつつ、また転作先の作物といたしましても、一時小豆を相当つくったということもございますが、これは奨励措置を講じつつ過剰生産というようなことになるのは矛盾でございますので、私ども、これらの転作作物の作付の計画というものにつきましては、十分慎重な配慮を払いながらやってまいりたいというふうに思っております。
  67. 美濃政市

    美濃委員 大臣、円高問題をどういうふうに考えるか、それだけでいいです。
  68. 中川一郎

    中川国務大臣 円高問題は、ひとり農産物のみならず、日本の輸出の面においても、あるいは輸入による他の同列品目に対する影響も非常に大きいわけでございます。これは重ねて申し上げますが、豆だけではございません。しかるがゆえにこそ、先ほど申し上げたドル対策をしっかりやって、そういった被害が起こらないように最善を尽くして対処しよう、これを命がけでやっているのもまさにそういうことにあるわけでございます。  ただ、小豆の問題、北海道の豆類につきましては、円高のみならず、転作作物の問題とか、あるいは外国の市況等々もありますので、総合的に判断をして、生産農家が圧迫をこうむらないように最善を尽くしていきたいと存じます。
  69. 美濃政市

    美濃委員 終わります。
  70. 金子岩三

    金子委員長 この際、午後一時二十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ————◇—————     午後一時二十五分開議
  71. 菅波茂

    菅波委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。島田琢郎君。
  72. 島田琢郎

    島田委員 大臣、このたび時局柄大変厳しい情勢の中、大臣に御就任、おめでとうございます。私は、大臣と選挙区を同じくして、ともに選挙戦を戦っている仲間の一人として、心から喜ぶものでありますし、それだけに、どうかひとつ期待にこたえて、ブルドーザーみたいな大臣でありますから、日本農業を守るために先頭に立ってがんばってくださるように心から期待をする一人でございます。かく申す私も農民の出身でありますし、同じ国会議員の一員として、大臣が懸命におやりになる、そういうことがありますれば、私は全面協力をして、ぜひ日本農政確立のためにともにひとつがんばりたい、こう思っているわけでございます。  きょうは、牛肉問題を中心にして、若干私の考え方を述べながら、また大臣のこれに対処する率直なお考えを聞かしていただきたい。それは、つまり牛肉ということになりますれば、日本の酪農も含めて当然話題にしなければならない点でもありますので、年来大臣がお考えになっている点についてこんな機会に明らかにするというのは、これからの畜産、酪農を確立していく上で非常に大きな示唆になるものと私は思いますので、すでに新聞やあるいは個人的にも私はあなたとお話し合いをさせていただいたこともございますから、おおよそその考え方については理解はいたしておりますけれども、しかしながら、こういう大変な時期を迎えておるわけでありますから、牛肉問題という限られたテーマだけで見ても、国内的には非常に大きな問題を持っているということが言われておりますだけに、ぜひひとつこの機会に腹蔵のない意見を交換させていただきたい、こう思っています。  そこで、明日、畜産審議会の懇談会をお開きになるということで招集がされているようであります。この席では何をテーマにして審議をされようとしていらっしゃるのか、政府側の計画をまず冒頭にお聞かせ願いたいと思うのです。
  73. 大場敏彦

    ○大場政府委員 牛肉問題をめぐっていろいろな御論議があるわけでありますけれども、共通してやはり牛肉をできるだけ安く消費者の手元に届けてほしい、こういう御意見があるわけであります。そういった世論にこたえまして、私どもいろいろな対策を講ずる必要があるわけでありますが、単一の対策ではなくて、根本的にはやはり生産合理化をどうするか、こういった問題もありましょうし、あるいは非常に立ちおくれていると言われている流通合理化をどうするか、それから現在の安定帯制度があるわけでありますが、そういった制度そのもの、あるいはそれについての運営をどうするか、こういった種々の御議論があるわけであります。あるいは輸入と国産の問題とかいうこともあるわけでありまして、そういったもろもろの御議論を一回審議会という中で十分にやっていただいて、そして、その中から対策を、根本的なものあるいは当面とり得るものというぐあいに分けられるものであれば分けてとっていきたい、かように考えて先月第一回目を開いたわけであります。第二回目はあした懇談会形式で開いていただく、こういう予定をしております。
  74. 島田琢郎

    島田委員 そこで、大臣、畜審でいろいろ議論を願うということは非常に意味のあることではありますけれども、こういう会議の中で委員のもろもろの立場における考え方が出てくるということは一つの意味を持つんでしょうけれども、しかし、こうした審議の過程で、たとえば牛肉問題なんというのは、六十年目標というものが一つありますけれども、それに向けて年次的にどういう計画で進めていくのかという計画策定あるいは需給計画を持つことについてはややどうも怠慢な感じがしているわけであります。今度の六十年を見通した場合の国内生産計画は年次的にはどういうふうになっていくのか。そして、それに対して足らないところを輸入するというような形にいままでもなっていますから、そういう点では需給計画が年次的にきちっと策定されて、それを実績と比較検討しながら次の年次計画に向けていかなければならないというふうに私は思うのですけれども、年次計画の策定についてはいままでも何回かここで議論もしているわけですけれども、明確になっていない。これが明確になっていないので、輸入についてもその都度全体的な情勢を見ながら、計画的でないような入れ方もせざるを得ないというふうになっていくのだと私は思うのです。こういう計画についてはどういうふうにお考えになっていますか。
  75. 大場敏彦

    ○大場政府委員 六十年見通しでは、需要は四十七年という基準年次に比べまして一七〇%、生産量は一七五%、自給率は、四十七年の七九%に対しまして六十年見通しでは八一%、それぞれこういった数字を持っています。  ただ、いま御指摘になりましたように、それではそれをブレイクダウンをして各年次別に需要供給はどうなるか、こういった数字は持っておりません。これはやはり長期見通しの見通しとしての性格から出ているわけでありまして、途中の各年次を計画経済的にやるということは考えておりません。ただ、実際われわれ現実に毎年の需給を運営していく場合には、そういった現在までの実績だとか、あるいは六十年の長期的な見通しを総合勘案しながら、その年その年の動いている需給を円滑に適正な形で操作していく、こういった形が必要であろうと思っております。  それから、輸入の安定とか、そういったことにつきましても、四十八年から四十九年にかけて牛肉の異常な暴騰があり、暴落があったわけでありますけれども、あれはいわば世界的な超異常的な環境で起きた事柄で、今後世界経済が安定的に推移するならば、やはり輸入もその年その年の需給を見ながら、そう大幅な変動なしに安定的に入れることができるだろうというふうに考えているわけであります。
  76. 島田琢郎

    島田委員 私は、四十七年から五十一年までの実績を計画との比較で見てみましたら、いま局長がおっしゃるように、年次計画によって六十年見通しあるいは六十年達成の努力を積み上げていくというふうな、そういう実績すらこの数字では読み取ることができないというふうにこの統計を見ているのであります。  それで、四十七年の牛肉需要生産の計画に対して、四十八、四十九、五十、五十一の四年間の動きを見てまいりますと、どうやら六十年の最終の計画にはとても届きそうもないような実態になっている。年次計画をきちっと立てて、それによって国内生産をどういうふうに誘導していくのか、こういう点が欠けているということにもなるわけで、私が年次計画が大変大事だと言うのは、そういう点で強調しているのでありまして、いまのままでいきますと、これはとても六十年における五十二万トンの生産を達成することはできないのじゃないでしょうか。  そういうことが、腹いっぱい食べていて、もうこれ以上食べ切れないということを承知の上でも外国から輸入が強要されてくるというようなことに私はなりかねないと思うのです。ですから、まず年次計画をびしっと立てるということを早急におやりになる、それで、いわゆる国内における需給計画を内外に鮮明にして、それに基づいて国内の生産をどのように持っていくか、輸入はどういうふうに年次的に計画を立てて入れてくるのかというふうにしていかなければならないのではないのか。そもそも、いま国の内外から牛肉に対して大変大きな注文や、消費者の間からは値段が高いなどという不満が出てくるのは、こういう牛肉基本にかかわる、政府が当然責任を持っておやりにならなければならない、年次別の需給計画を明確にしていかなければならないという作業を怠っているところに私は問題があるのではないか、こういうふうに思います。いかがでしょうか。
  77. 大場敏彦

    ○大場政府委員 年次計画との関係で、いま六十年の長期見通しと現在までの実績というものを御言及なさったわけでありますが、牛肉の場合、長期見通しでは年率四・二%、それから生産が四・四%という伸び率を見込んでいるわけであります。しかし、残念ながら需要は四十七年から五十一年の伸び率を見ますと三・一%、生産は逆に若干ではありますが減っているという状況であります。  ですから、それだけを単純に比較いたしますれば、六十年見通しとの関係で非常に実績が落ちているというような現象が出てくるわけでありますけれども、なおよくしさいに分析いたしますと、これは実は四十八年、四十九年という超異常事態というものを中にかんでいるわけでありまして、四十八年に世界的に食糧危機があって、牛肉もその一環として暴騰した。大量輸入もしたわけでありますが、その次の年に逆に輸入をストップしなければならないような、オイルショックの後の景気後退ということがあって需要が減退してしまった。こういった通常の環境ではないような事柄がきびすを接して起きたということから出てきている現象だと私は思っております。ですから、六十年見通しの達成が非常に努力を要するということはそうだと思いますが、過大であるというふうには必ずしも思っておりません。われわれの努力の次第によっては実現は可能であろうと思っております。  生産の話を申し上げましたが、五十一年は非常に減ったわけであります。畜産危機の後遺症がちょうど五十一年に集中的にあらわれたということで、普通の年に比べまして二割くらい生産が減ったということから、先ほど申し上げました数字が出てくるわけでありますが、ことしに入りましてから、毎月の推移を見ますと、前の年に比べまして大体二割前後国内生産が回復してきている、年間を通じましては十数%の増産が見込まれる、これは乳離が中心でありますけれども。そういう増産基調というものは、今後について、努力次第によっては増産の可能性をわれわれに与えるものだと思っております。
  78. 島田琢郎

    島田委員 何といっても六十年見通しの達成に必要なのは、国内における牛肉生産をどう上げていくかにかかっている。いま局長からは、ことしに入ってから大変上向きになっているので心配ないというような見通しが述べられているわけでありますけれども、いまもお話の中に出ているように、牛肉というのは、歴史的に見ても日本牛肉そのものがまだ大衆化の状態に完全になり切っているとは言えない。つまり、特権階級が食べて、明治の初めに、文明開化の音がすると言ってなべをたたいたあの日本における牛肉の消費の実態というのはかなり長期にわたって続いてきましたし、現在もまだそういう体質の中から完全に抜け切っていない。ようやく大衆化し始めたのは戦後、ごくごく最近のことであります。それも酪農経営をやっている、そういう中から雄牛なり乳廃牛の高度利用という知恵の中でようやく大衆化に一歩踏み込んだというのが牛肉の歴史でありますし、そうでなくても肉牛経営というのは経済変動にきわめて敏感で弾性値が非常に高い、こういうふうに言われておりますし、それを裏づけるように、いまちょっと議論をいたしましたわずか四、五年の動きの中でもそういうことが如実にあらわれている。こういうふうに考えますと、ことしだけの動きで来年以降を見通していって果たして大丈夫かということになりますれば、私はまだまだ不安材料がたくさんあると思う。  そこで、牛肉輸入あるいは自由化などという問題については慎重にならざるを得ない。特に、先ほどから局長も何回もおっしゃっているように、四十八年に国内生産との見合いの中で若干輸入量をふやしたということが大変大きな、経営に不安を与えるような原因をつくった、こういう点については率直に政府も認めているところでありますし、今後もそういう体質がしばらくの間は続くわけでありますから、輸入については特に慎重を期さなければいけない。ましてや自由化などということになりますれば、大臣がちょっと発言なさっただけで国内的にものすごい大きな影響をもたらす。この間聞きましたら、鹿児島の家畜市場の牛の値段が、大臣就任なさって冒頭に一言牛肉の問題に触れただけで百円以上も下がるという大変な影響を持つということであります。  私も昨日まで郷里に帰りました。帰りましたら、あちこちから電話が入りまして、中川さんは牛肉自由化をやる気なのか、これはえらいこっちゃ、酪農経営はまたぞろ大変な危機にさらされるということになるのだが、この点についてはぜひひとつ直接忠告をしてもらいたいという御意見がたくさん寄せられてまいりました。その後大臣発言はだんだん慎重になってまいりまして、午前中からの大臣の御答弁の中でも、きわめて慎重に対処する、そういう姿勢であることを私どもは理解するわけでありますけれども、しかし、いかに元気のいい大臣でも諸外国からのなかなか強い攻撃に果たして耐えられるかどうかというのは、やはり牛肉というものがこれまた予想以上に外国に大きな問題を提起していることから考えますれば、これは容易ならざることだ、こういうふうに考えて、午前中も竹内委員が質問をしておるのですから、あえて私が同じようなことを覆う必要はないのでありますけれども、やはりこの際、国の内外に対して時の人、中川農林大臣の姿勢はこうだということを繰り返し鮮明にする必要がある、私はこういうふうに思いまして、いま牛肉の持っております体質について、あるいは肉牛経営そのものの持っております問題点について若干局長とやりとりをいたしましたのは、もう承知のことをあえてこんな席で申し上げましたのは、時あたかもそういう重大な問題を幾つもはらんでいるという点でやはり重ねて大臣の所信を伺っておきたい、こういうふうに考えたからにほかなりません。  一言大臣牛肉に対する考え方を冒頭にお伺いして、次の話題に進めてまいりたいと思います。
  79. 中川一郎

    中川国務大臣 お答えに先立ちまして、同じ選挙区で特に農村問題について心配しております同僚島田委員から激励やら、また、いろいろと御示唆をいただきましたことを、まずもって厚くお礼を申し上げます。  牛肉の問題が議論をされるようになりましたのは、ここ四、五年だと存ずるのでございます。特にオイルショックがありました際、農業資材が上がる、えさが上がる、肥料が上がる、そういう中で、あるいはまたあらゆる物価が上がる中で、酪農家が非常な塗炭の苦しみをした。中でも、副産物収入としての牡犢あるいは廃牛、これが非常な値下がりをした、そのために酪農家が大変なことになった、何とか乳価を値上げしてもらいたいという中から、やはり副産物収入である牡犢なりあるいは廃牛についてもしっかりしたものにしなければならぬという背景が生まれてまいりました。  また、同じように、えさ代が上がったところから和牛専門家、専門の肉用種の方々も塗炭の苦しみをしたということから、肉の安定が酪農の安定につながることだということになりまして、御承知のように、昭和五十年、畜安法の中に育成牛を含めることにいたしたわけでございます。その結果、御承知のように、安定帯支持価格、上下価格が決まりまして、それ以上上がらないように消費者対策も考えると同時に、最低の下限価格も割らないように、その中に肉の生産価格といいますか、卸売価格を安定させる、こういう仕組みになって今日に至っておるわけでございます。  この仕組みができましてから肉の値段はまあまあいいところを来ておったのでございまして、一時苦しかった酪農も、あるいは肉の生産農家も、莫大な負債の中に緊急対策も講じましたが、やや安定の方向に向かってきたというのが今日までの状況であったと存じます。  私が大臣就任いたしまして発言を申し上げたのは、そういう中で自由化をしようとか肉の輸入を大幅にやって、そして値下げをするのだ、こういうふうに伝えられたことはまことに遺憾なことでございまして、私が申し上げておった趣旨は、日本だけが牛肉というものが手の届かないところにある、特別の高給取り、お金持ち、簡単に言えばお金持ちしか食えないものであり、また食べられるとしても、仲間が来たとか親戚が来たとかお祭りだとか、特別な口にしか食べられないようなところに肉を置くことはいかがか、何とか大衆が食べられるようなものにすべきではなかろうか、こういう趣旨から、そのためにはもちろん生産対策を講じ、原価は安くすることに主眼を置かなければなりませんけれども、その場合、生産農家がどうなってもいいということではなくして、生産農家生産意欲を後退させるようなことのないように生産対策を講じていくという背景がしっかりとあったことでございます。この辺が隠れてしまっておることが一つと、それに先駆けて自由化だとか輸入枠というものが先に飛び出してしまったことにまた大きな誤解があったかと存じます。  このようにして生産対策を講じ、そうして消費価格を下げる仕組みをつくった中で、先ほど昭和六十年の、約一・七倍の需給の見通し、そして生産の見通しを達成するように努力すると同時に、それで足りない分は輸入の拡大ということで外国皆さん方の御期待にもこたえられるのではないか、こういうことが前提にございます。  もう一つこれにつけ加えますならば、肉については生産価格消費者価格が連動しない、この間にかなり急激な変化があったり、あるいはまた流通段階にもっと合理化をすべきだというものがあるのではないかという議論も非常に強いものでございますから、その辺の仕組みも連動するようにやっていくことが生産者のためにも、また消費者のためにもなるのではないか、こういうこともあわせて行っていくべきだということでございます。  したがって、自由化だとか、あるいはまた国内の需給バランスを見ないで輸入枠を大幅に拡大するというようなところから発想したものでないことははっきり申し上げておくところでございます。特に、アメリカから何か外圧があるというように言われておりますが、私から言わせれば、アメリカは最大の生産国であると同時に、最大の消費国でございます。したがって、仮にわが国自由化をして肉の輸入量をふやしたとしても、アメリカからは入ってくる仕組みになっておりません。大部分は豪州、ニュージーランドから入ることになりますから、もし、そういったことになって日本の乳牛が少なくなったとするならば、むしろわが国の乳牛が外国の穀物、特にアメリカの穀物を大量に食べて育っている関係上、アメリカからの穀物の輸入量が相当減ってしまうということからいくならば、この自由化アメリカとの貿易関係においてはむしろマイナスになるという作用がありますから、そのような要請アメリカから強いわけではございません。豪州とても、そういう強い要請ではなくして、前の年は一つも輸入しない、その次の年にはやるというようなことではなくて、やはり輸入するならば安定的に輸入をしてもらいたいということであって、必ずしも自由化について非常に強い外圧があるとは私は受けとめておりません。二十二品目の中で、全体として数が多いという批判はありますけれども、牛肉を名指してそういうことを言っておるとは思いませんし、仮に言ってきても譲るべき何物もない、こう思うわけでございまして、どうかひとつ誤解のないように、これから六十年の長期見通しに合うように生産性も伸ばしていくし、消費の拡大も図る。そして、特に魚資源が非常に厳しくなってきておりますから、こういった動物たん白質としての地位はますます大きくなるという観点からいくならば、私の脅え方はそう間違ったことではない、こう思っておりますので、少々長くなりましたが、この機会に牛肉に対する私の基本的な考え方を申し上げまして、御協力をいただきたい、こう思う次第でございます。
  80. 島田琢郎

    島田委員 大臣の所信のほどはよくわかりましたが、ただ私はまだ心配が残ります。というのは、円高とはかかわりなく、国際的な経済の動きとはかかわりなく、特定国においては、日本に向けて牛肉を売り込みたいという動きは、いまお話にありましたアメリカを初めあるわけであります。アメリカに対する考え方は、いま大臣のおっしゃったとおりでよろしいと私は思うのであります。そういうふうに理解しておいて結構だと私も思っております。第一、アメリカそのものは、牛肉は輸出国ではなくてむしろ輸入国でありますし、かつて牛肉の輸出に向けてアメリカの奥さん方が大騒ぎをしたというような、ああいう苦い経験をアメリカ自身も持っておるわけでありますから、そんなに日本に対して牛肉を押しつけてくるような状況にはないというように私も見ております。  ただ、心配されますのは、オーストラリアとニュージーランドの動きであります。特に、最近ニュージーランドは大変国内事情が悪くなって、つまり対日感情が悪化しつつあるというふうにも伝えられております。それを裏書きするように、先般も新聞紙上をにぎわせましたように、ニュージーランドの二百海里内における魚をとらすわけにはいかない、もしも魚が欲しければ牛肉を買えというふうな話が持ち込まれてきたことは、私どもも、牛肉輸入問題に対して先行き一抹の不安を持たざるを得ない状況にあるのではないかというふうに思うのです。  それから、オーストラリアにいたしましても、砂糖問題を初めとして、日本に対する売り込みはなかなか盛んでありますし、牛肉日本向けのパドック飼い方式に切りかえをして、そして最大のお客さんを日本に求めているというようなオーストラリアの国内事情などを考えますれば、これはなかなか油断ができないというふうになると思うのであります。  ですから、そういう一つ一つの問題を洗ってまいりますと、よほどしっかりいたしませんと、日本の国内事情とはかかわりなしに、もしも世界の世論が、ニュージーランド、オーストラリアの言い分が正しいとして応援するような機運が出てまいりますれば、これを一国で、単独ではねのけていくというのはなかなかむずかしくなる、こんなふうにも思いますので、その辺のところの所見をひとつお聞かせ願いたいのと、さらに、それあるがゆえに、大臣がいま御指摘になった国内におけるもろもろの問題を一刻も早く整理をして解決をしていかなければならないというふうに私は思います。  一つは、やはり何と言っても価格問題にあると思います。この牛肉価格形成というのはまことに不思議で、摩訶不思議で内容がわからないというのが一般の見方であり、かく申す私自身も、なぜこんなことになっているのかが何としてもつかみ切れないという、そういうむずかしさを一面持っている牛肉のいわゆる価格形成の問題が一つございます。ですから、そんなふうに考えますと、生産対策を進めて、特に生産農家を守っていくと大臣がおっしゃっても、それじゃ具体的にはどういうふうにして守っていくのですかという点が、そういう一つの手法が明らかになってまいりませんと、なかなか安心できないということも国内的にはあるわけでございます。  一区切りいたしまして、いま私の申し上げた外国からの問題、それから国内におけるそういう問題について、大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  81. 中川一郎

    中川国務大臣 アメリカ関係については御理解をいただいたようでございますが、御指摘のように、ニュージーランド、豪州等が、肉のみならず乳製品について非常な関心を持っておることは事実でございます。豪州やニュージーランドは、何と言っても酪農、肉の国でございますから、そういった気持ちを持つのも無理からぬことでございますし、先般来新聞等で、もし肉あるいはまた乳製品を買わなければ二百海里問題には協力できないぞというような厳しい意見が向こう側にあったというようなことから、非常な御不安をお持ちになっていることは私も承知いたしておるところでございます。  そこで、長期的には、やはり先ほど言った消費の拡大を図って、こういった国々の希望にもこたえるべきではないかという気持ちはないわけではありません。だからと言って、国内の生産を抑えるというんじゃなくて、国際的にも、日本は肉の消費量が非常に少のうございます。また、値段も、ヨーロッパ先進国その他の国に比べて二倍であるとか三倍であるとか、極端な場合には五倍であるとか、こういうようなところから、もっともっと値段を安くする余地もあるだろうというので、そういったことを私は提案し、これからやろうと思っておるところでございます。  しからば、豪州やニュージーランドがどんなことがあってもと言っているかというと、私はやはり話し合えば——そんなに必要のないものを買って、そして特に肉など、外国へまた再輸出したらどうだなんて言われても、そんなことはとてもできるものではありません。酪農製品もそういったことではないのであろう。そういった面については、これから外交を通じて、そういうむちゃなことを言わないように、理解はできますけれども、お互いに長期的に協力しようという外交を進めてこの問題は解決していきたい、こう思っております。  今後は、国内生産で足りない範囲内において必要な枠を設定し、その中で豪州なりニュージーランドはどう配分をするか、また、いい肉についてはアメリカがどうなるかという、中の配分の問題はあります。特にニュージーランドがきついようでございますが、ニュージーランドは、どちらかというと肉よりは酪農製品に関心があるということも事実でございますので、そういった空気はありますけれども、これらには厳然とした決意で対処していきたい、こう思っておるところでございます。  なお、国内の生産対策でございますが、特にこの流通関係について、島田先生も御承知のとおり、東藻琴に食肉センターというのをつくりましたのを手初めに、北海道では四カ所、全国でも相当できております。これは生産段階の流通合理化する意味において非常に効果のあるものだと思っております。これの全国ネットワークを進めるように、来年度以降においても大幅にこれを強化してまいりたい、こう思っておるところでございます。  また、消費の流通についても今後工夫を重ねて、従来の仕組みに補完をしてしっかりした流通体系をやっていきたい、そして流通を近代化して、先ほど申し上げた生産と消費が連動するように仕組みをきちっとしていきたい、こういうこともあわせて考えておるところでございます。  また、生産対策としては、そういった流通面のみならず構造政策でも明年度予算で相当多くの新規のものもあれば従来やっておりますものも強化したり、あるいは場合によってはえさ等の値段についても短期的ではあっても手当てをする等々万全の策を講じて、一遍にはなかなかできませんけれども、長期的に安定的なものにしていきたい、こう思って真剣に取り組んでいるところでございます。  以上、まだこれからの問題もありますから、十分御理解はいただけないとは思いますが、この上とも勉強していま御指摘のあったような諸問題を解決して、国内の生産者もあるいは消費者も満足できるものをつくっていきたいと考えておるところでございます。
  82. 島田琢郎

    島田委員 実は大臣、私は、いま最後におっしゃった国内的にも外国にも満足してもらえるものをとおっしゃっている、そこのところが聞きたいのであります。具体的に何をやろうとお考えになっているんでしょうか。  つまり、私は、大臣大臣におなりになる前にいろいろなお話をされているのを仄聞いたしておりますが、大臣はやはりいまの牛肉の仕組み、生産にしても価格の問題にしても、あるいは外国からの輸入の仕組みにしても相当強いお考えを持っていたというふうに私は思っています。ですが、大臣になりますると、いろいろ影響が大きいから慎重にならざるを得ないというふうにも思うのですけれども、先ほど総体的におっしゃったことを私は了解しながら何か押し返したような話になって恐縮なんですけれども、本当は、いまの日本が抱えております牛肉流通問題、価格問題、これは大変なことだと私は思っているんです。しかし、だれも手をつけられない。なかなかむずかしい。ですから、私は、大臣ならこのことにきっと手をつけて改善されるだろう、別な一面、こういう期待を持っている一人なんです。ほかの人じゃなかなかやれぬけれども、中川さんならやれるんではないか。そして、いまの牛肉の仕組み、価格形成そのものについての非常に大きな矛盾を承知していらっしゃると私は思っている。  ですから、従来の大臣のおっしゃり方と同じように、農民も困らせないように、外国にも納得させ、もちろん国内の消費者皆さんにも理解を求めてというふうにおっしゃるだけでは、私は中川大臣の、つまり真骨頂というものは失われてしまうように思うのです。私は、あなたでなければこの牛肉の問題に手はつけられないとさえ思っていたのです。ですから、そういう意味では、大臣就任第一声で牛肉問題に手をつけるとおっしゃったのは、私は私なりに別な期待を持っていたのです。われわれでもなかなかこれはできないことなんで——われわれなんかはもちろんできないのでありますが、私は、行政の立場でその頂点に立たれた大臣は、この問題についてはかなり具体的にお考えを持っていらっしゃるはずだ。差し支えなければ私はできるだけの範囲で御答弁が願いたいのでありますが、いかがでしょうか。
  83. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほども具体的に少々述べたつもりでございますが、いまの食肉センターというような仕組みの全国ネットワークをつくっただけでも相当生産対策としてはメリットがあるのではないか。同時に、今度は流通面、生産段階はいまのそういうことで合理化されますが、流通段階でも何らか工夫をしてそういった仕組みを導入できないかなということでいま検討いたしておるところでございまして、この生産と消費、両面の流通について合理化されるならば、相当、価格は連動してしっかりした仕組みになるのではないかな、こう思って、鋭意実現方に努力をいたしておるところでございます。  また、生産対策としては、先ほどもちょっと触れましたが、えさの問題や、あるいはまた和牛の生産対策として分娩手当というのですか、お産手当というようなものも一頭一万円差し上げて価格政策の補完をいたしております。こういったものも強化できる仕組みはなかろうかな、こういうような幾つかのことを総合的に組み合わせてしっかりしたものにしたいという柱だけは持っておりますが、まだ何分にも着任をいたしまして十日前後であり、そしてまた自由化問題といいますか、経済対策問題と取り組んでおりましたために、まだじっくりやっておりませんが、少々時間をかけて、そう遠くない機会に成案を得たい、こう思っておるところであり、こういった問題については、私個人として意見を申し上げるだけではなく、やはり畜産審議会その他もございますから、そういった専門家あるいは場合によってはそれ以外の知識人等の御意見も伺ってしっかりした案をつくってみたいものだな、こう思っておる次第でございます。
  84. 島田琢郎

    島田委員 そうですか、大臣なら相当のことを私はお考えになっていて、考えているに違いないけれども、なかなか立場になると言えないというのが本当なんでしょうが、たとえば大臣、ここの点はどうでしょう。  日本牛肉の値段という話がでると必ず私どもの耳にも入ってくるのは、日本牛肉の値段を決めているのは十本の指に満たない人たちが決めているといううわささえあるのですね。これはうわさの域を出ないとすればあれでありますが、そして、いま外国から強い要請がありますのも、せっかく外国の安い牛肉が入ってきても、それがいわゆる台所にスライスされて入っていくと、その価格が化けてしまうという、これは外国というのじゃなくて、国内の消費者の間からそういう不満があります。生産者の段階から言ってもそうでありまして、生産価格が、いまおっしゃっているように中間卸売市場を通し、小売されてくる段階で値段が大変上がっていく、こういう問題をそのままに放置しておいては幾ら生産者ががんばって牛肉生産しても国内的に喜んでいただけるような形にならない、これをそのままにしておいて、いまの牛肉生産をもっともっとふやしていくといってもどこかで壁にぶち当たってしまう、そういう心配があるのであります。  ですから、今日の市場の状態にだってメスを入れていかなくてはいけないと思うし、また御承知のように、先ほどもちょっと言いましたが、牛肉大衆化が進むに及んで、酪農家生産をいたします雄子牛、乳雄が大変有効利用されるようになってきました。しかし、これはぬれ子から育成に回され、育成から一定の時期育成が終わると、今度は肥育に回されて市場に出てまいります。こういう面について、私はもっと合理化ができないだろうかという感じがいたしています。また、それが一回一回市場を通ってきますが、そのたびに値段がはね上がってくるのであります。そこのところが、一貫性という問題から言うと大変問題があるという指摘を早くから受けている点であります。  しかし、いまおっしゃったように、その中間中間で政府は助成措置を講じたり、あるいは行政上の手当てを講じたりして何とか牛肉をつくるところまで一貫性のあるようなかっこうに実は仕組んでいるのでありますけれども、実際にはそこのところ一つ一つをぶった切って合理化というものを考えてみると、まだまだ矛盾がいっぱいひそんでいるということがわかるわけであります。  ですから、そういうことを抜きにして国内の生産対策消費者対策をおやりになると言っても、これはなかなかむずかしいのではないでしょうか。そこに大臣としてのお考えがあるのではないか、私はこういうふうに思ってお尋ねをしたのですが、いかがですか。
  85. 中川一郎

    中川国務大臣 肉の値段の問題では二つ問題があるだろうと思います。  一つは、いま御指摘のあった生産者から消費者に渡るまでの間にいろいろと複雑な仕組みがあるということでございますので、それはそれなりに過去のいきさつから言って仕方のない面もあっただろうと思いますが、そしてまた、それだけの意義もあったとは思いますけれども、これに改善を加えることが第一点だと存じまして、先ほどのような御答弁を申し上げた次第でございます。  第二番目に、肉の問題で国民皆さんからどうなんだという声が出てまいりましたのは、畜産振興事業団が扱います外国から安く入ってきた肉を、畜産事業団が国内のものに合わせて高く売っているのはけしからぬ、その差益は一体どこへ行ったんだ、おかしいところへ行っているんじゃないだろうかという御不満が出てきたことでございます。この点は、実は畜産振興事業団の仕組みがそういうことになっており、その利益は畜産振興、わけても酪農の振興に使うということで、ほかのところへ行ったのではなくして大部分が酪農の振興に使われておるわけでございます。  島田委員御承知のように、畜産を取り巻く情勢は厳しいというので、その中でも負債が大変だ、これを整理して長期、低利のものにしてもらいたいという声がありまして、二回にわたってこの改善を行い、相当額、数百億の借りかえ資金を用意してございます。その利子補給などにも数十億円というものが使われておるところであり、そのほか、先ほども申し上げた分娩手当等々、酪農政策に大部分、すべてと言っていいでしょう、還元をされておるのでありますから、この仕組みというものはまさに酪農にとってなくてはならない、そして有効適切な仕組みであると私は自負をいたしておるところでございます。  ただ、そのことが消費者から非常な反発を食うといいますか、なぜ高く引き上げて売るんだという御不満が出ていることも事実でございますので、今後外国から入ってまいります肉の売り方についても、やはり消費者のことも考えた売り方ということも十分配慮をして、そしてまた、かかります金については一般会計等から協力を受けるものは受ける。さて、その財源はどうするかということになりますと、なかなか財政事情が厳しいときでもございますので、先ほど申し上げた消費者も喜ばない、生産者も喜ばない食管の逆ざやというものなどを取り崩して、米のみならず、真の農政を打ち立てるためにはそういった配慮もしなければならない、こう総合的に考えておるところでございます。
  86. 島田琢郎

    島田委員 それを言いたかったのでしょうけれども……。  局長にちょっとお尋ねします。  いまの価格形成の問題で、あなたは所管の局長として、改善する余地がないとお考えかどうか。価格形成の場所として考えられますのは、公設市場あるいは私設市場を通しまして、市場を通すものが一つありますし、それから、もう一つは、市場外で流通をしておるという仕組みと二通りあるわけであります。市場流通でも、統計的に見てみますと、中央卸売市場というのは五十年の実績で全体のわずか二一%しか通っていない、二十四万頭である。それから、地方卸売市場を通るものが一つございますが、これは微々たるもので、四・二%で四万八千頭、圧倒的に多いのは市場外流通というかっこうになっているんですね。これは八十六万頭ほどありまして七五%を占めている。  この市場流通の形そのものをどういうふうに改めるかということになると、なかなかむずかしい問題が出ますから、専門家の御意見を聞かないと私としても意見は述べられる筋合いのものではありませんけれども、たまたまそれが世に言われるところの小売価格と卸売価格が別々に歩いているというふうな形になっていはせぬのだろうか、こういうところの理解は私自身としてはどうもわからないというのが本音であります。  ですから、この際、こういう問題については、つまり価格が乖離しているという説に対して、局長としてはどういうふうな理解と指導をされようとしているのか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  87. 大場敏彦

    ○大場政府委員 牛肉流通量のうち、中央それから地方卸売市場を含めまして大体三〇%程度が市場に上場されている、あとは市場外流通で流れている、こういったことであります。卸売市場そのものの改善は、私は卸売市場はたとえばまだ十年の歴史しか持っておりません割りには進歩はしてきていると思います。かつて議論になったように、そでの下取引というものも影をひそめておりますし、市場は市場なりに改善の方向はたどってきている、こう思います。ただ、やはり屠殺能力、そういったものが限定されておりますから、どうしても、いま御指摘になりましたように、市場に上場する量が減るというために必要以上に乱高下が起きて全体の需給を乱すというような弊害もありますから、屠畜能力をアップするとか、あるいは芝浦に生体で持ってこないで産地で屠殺して枝肉で持ってくる、そういったかっこうで上場量をふやすという対応も必要じゃないかと思います。  それから、市場外で流れておりますのはかなり量がございますが、それがすべて悪いというふうに断定することは必ずしも当を得ない。その中には博労、いわゆる家畜商的な前期的な取引形態もございますけれども、かなりの部分、たとえば先ほど大臣が御指摘になりましたように、生産者団体あるいは県等が共同出資してつくっている大規模な食肉センター、そういったものが産地で殺して、生体で運ばないで枝肉ないしは一歩進んだ部分肉で大消費地に直送してしまう、こういう形態もあるわけでありますから、今後の方向としては市場の改善策と並んでそういった新しい芽を、現在細いのを太くしていく必要があるのじゃないか、オープンにしていく必要があるのじゃないか、かように思っているわけであります。  そこで、卸売価格と小売との連動性が非常に鈍いという御指摘があるわけでありますが、その問題の一つは、たとえば芝浦で形成される卸売価格というものは、これは枝肉であります。骨つきの枝肉の価格で卸売価格が形成される。しかし、一般の主婦が肉屋で買う肉の形態は、それを骨を抜いて部分肉にして、さらに脂だとか筋を取って精肉にして、その上さらにスライスしたものにする。そういうスライスした形で買っているわけで、流通の過程で加工が入り、肉がいろいろ変化して最終的に消費者の手元に入る、こういった形でありますから、端的に言えば、卸売価格は枝肉価格で形成され、表示されて、小売価格はそういったスライスされたものとして表示されている、こういうことですから、比較の次元がかなり違うわけであります。そういう意味で、縦の連動が鈍いということもあろうかと思います。それをどうするかということが一つ、今後の大きなかぎじゃないかと思っております。  それから、もう一つは、肉の規格がどうもまだ整備が不十分であるということ。Aという店とBという店で売っておる同じような肉でも必ずしも同じではない、こういったことがありますから、そういう意味で競争条件が未熟である、こういったことも横の関係であるわけでありますから、例示的に申し上げますればそういった縦の関係、横の関係の競争条件というものを整備していくということが今後の有力なる手がかりではないだろうか、かように私は思って、そういった方面の施策を展開していこうと思っておるわけであります。
  88. 島田琢郎

    島田委員 価格を決めていく場合に、いまの畜安法によります決め方というのは、上下限価格の間にある中心価格、ここを目安にして決める、これに対するよしあしというような議論もあるわけであります。しかし、大臣新聞でおっしゃっていた点で大変気になることが一つあります。ここのところを、目安の持っていき方というのが、いま申し上げた小売価格と卸売価格との連動性という問題から言うと、大変大事な点なんであります。ですから、この価格決定に当たっての中心価格を目安にした決め方というのは、いまの段階ではいろいろな意味で検討すべきだという声なども非常にあって、そこのところを気にされて大臣がお考えになっているのかどうか。ここのところはひとつはっきりさせておく必要があると思うのであります。
  89. 中川一郎

    中川国務大臣 そのようなことは考えておりませんで、やはり中心価格を維持することが畜安法の目的でございますから、その域は出ておりません。  ただ、大幅な上の方に大分長い間ついておりましたから、そういう仕組みはどうかなということでありまして、中心価格といいますか、基準価格といいますか、真ん中の線に近いところを維持するというのが畜安法の目的でありますから、下にずっとつけてしまうということは考えておりません。
  90. 島田琢郎

    島田委員 しかし、もう一つの意見としては、いまの畜安法の価格先ほどの道農連の要請の中にも一つあるのですが、経済変化に対してどうも経営そのものが微妙に影響を受けるという体質を持っている関係から、なかなかこれを拡大していく上に安定的な拡大というのはむずかしいというような現場の経営者の意見もあるわけであります。したがって、新しい価格支持制度を検討願いたい。これは全中の中でもそういう意見が出されているようであります。この点についてはどうですか。  大臣はいま、いまの畜安法の精神にのっとってこれからも価格を維持していくのだ、こういうふうにおっしゃっているわけでありますけれども、こういう経営をやっている生産農家立場から、どうもまだ不安があるという率直な意見があって、新しい価格支持制度をつくってもらいたいという要求も出されているわけですけれども、この点については、いまの御答弁から考えて、検討の必要なしというふうにお考えですか、いかがでしょうか。
  91. 大場敏彦

    ○大場政府委員 現行の価格安定制度は、先生御承知のとおり、直接に枝肉を対象にしてその卸売価格を安定帯の中で安定させる、こういった仕組みになっているわけであります。そういう意味で、畜産農家の中でも肥育農家には直接的な影響が比較的及びやすいという問題があるわけであります。しかし、いわゆる子とり農家、繁殖農家に対してはやや間接的な欠陥も持っていることも事実でありますから、やはりそれを補強する必要があることは御指摘のとおりだろうと思います。  そこで、私ども子牛価格安定基金というものを各県に設置して、それに国が助成いたしまして、同時にまた生産者、県が応分の負担をしていただいて基金を積んでおいて、子牛価格がある一定のラインより下がった場合にはそれを取り崩して補てんするという制度を仕組んで逐年強化いたしております。おりますが、ことに繁殖農家経営対策としてはそういった面の強化、補強ということが今後必要になってくるのではないかと思っておりますので、今後ともそういう方面の努力は続けていきたいと思っております。
  92. 島田琢郎

    島田委員 大臣先ほど局長からお答えになったのと、いまのお話を聞いていられて、私の質問しようとしていることはおわかりになったと思うのでありますが、端的に言って、局長の答弁ではいまの制度はそんなに悪い制度ではない、卸売価格も小売価格も本来比較するそのことがすでに次元の違う話なんだからというおっしゃり方でありましたけれども、そこのところがいま一番問題になっておるわけで、卸売価格と小売価格とが連動しないといいますか、卸売価格が上がったら上がったようになってくるのですけれども、下がったときに必ずしも連動していかないのですね。この点はやはり改善をしなくてはいまの世論にこたえることにならないと思うのですけれども、そのことについてひとつお考えというか、名案が欲しいと私は思うのですよ。いかがでしょう。
  93. 中川一郎

    中川国務大臣 安定帯価格の問題は安定帯価格の問題としていま申し上げてきたようなことで真ん中に落ちつくようにやっていきたいし、小牛生産者は小牛生産者でそういった基金制度をつくってやっていきたい。いま御指摘のあった卸売価格消費者価格とが連動しないことについて、仕組みに問題があるというので、それなりの——これを改善する意思はないと畜産局長は答弁しておらないところでありまして、なかなかむずかしい問題がありますので、これらの仕組みについては工夫して改善を図りたい、こういうことを申し上げたのではないかと思いますし、私ども局長ともよく相談をして、その辺をこれから合理化していこう、こういうことでございます。
  94. 島田琢郎

    島田委員 さて、先ほどからいろいろお考えも聞かしてもらいましておおよそやろうとなさっている輪郭はわかりましたので、この際、経営を守るという立場から私の考え方を四、五点述べて、大臣の率直な御意見と対策をお聞きしたいのであります。  肉牛経営は、先ほどからお話し申し上げておりますように、歴史的にもそんなに古いわけではありませんし、二、三年のあの大変な時期からやっと少しほのかではあるけれどもろうそくの光ほどのものをいま見出そうとして一生懸命努力をされているさなかであります。しかし、体質的になかなか一朝にして解決できないものも実はたくさん持っているのでありますが、最近の戸数の減少というのが非常に気になる一つであります。ここ七、八年のうちに半分になってしまって四十万戸というような状態にまで落ち込みました。かつては百二十万戸くらい肉牛を飼っている農家がいたのでありますが、ものすごく減少してきています。これは規模が拡大されたのだと見ればいいのでしょうけれども、ところが、どうも規模拡大も肉牛経営に関してはきわめて緩慢であって、一頭から三頭という零細規模がようやく最近は少し経営の規模が高まったと言えども内容的にはまだまだ貧弱で、経営の規模なんといったってとても拡大されたと言えるような状態ではない、きわめて規模拡大が緩慢である、現実にはこういうふうになっているのであります。ですから、当然のことながら収益性がきわめて低い、経営の不安定を免れることができないという状態であります。そして、牛肉価格によって、肉資源というのは右に左に揺れ動いて、ときには赤信号がともる。つまり、高くなっていきますと個体が食いつぶされるという心配、安くなってきてもまた個体が維持できないから売ってしまうというように安定帯が非常に狭いのが肉牛経営の特徴でもあります。  そういうふうになってまいりますと、なかなかこの辺のところを個人の力でやり抜いていくことはできませんから、いろいろな対策をこの一、二年の間にやってもらいました。その点については、大臣おっしゃるとおり、私は一定の評価をしているものであります。しかし、さらにこれを強化していかないと経営を発展させていくことはむずかしいのではないかと思うのです。  ですから、この機会に具体的にひとつこういう方向を強化していきたいというようなお考えがあれば、率直にお聞かせを願いたいと思います。もっとも先ほどこういう問題についても、いまなったばかりだから、これからひとつ検討しながらやるから、もう少し見とってくれという御意見でありますが、しかし、いま肉牛の経営というのは表面的には大変安定の様相を呈してまいりましたものの、一朝何かのファクターが生ずれば経営は一遍に壊滅してしまうというほど危険に満ちたものでありまして、決して外部から見るほど楽観できるような状態ではありませんから、こういう面でやはり雌牛の繁殖牛の保留など、まだまだ行政的におやりいただかなければならぬ面がたくさんあると思いますから、そういう面をひとつぜひ国内の生産をまず確立して、外からの影響をかなり未然に経営みずからで守っていくことのできるような体質改善というものが急がれるという点については、ぜひその行政上の手当てを急いでもらいたいという感じがするわけであります。これは一つの注文でありまして、ぜひひとつ大臣は、この肉牛の問題が世上大変大きな話題になっておるのを機会に、さらに一層いまのような問題を含めて検討を進めていただきたい、こういうふうに思っているわけであります。  それから、ついでですから、時間的に余り余裕がなくなりましたので、先ほどアメリカからの輸入の問題で少し量的に手直しをしたという面については理解をしてもらいたい、こういう話がありました。伝えられておりますのは、アメリカからホテル用ビーフの輸入ということであります。私はこの際アメリカからは牛肉なんか入れなくたっていいのではないかということをさっき申し上げたのを前提にして、一体このホテル用ビーフというのはどういう牛肉なのか、そして、それはどういうルートを通して入ってくるのか、価格面ではどういうふうに国内における価格との比較で見ればいいのか、またホテル用と用途を決めた理由というのは何なのか、そして、それは先ほど大臣がおっしゃっていましたからおおよそわかりましたが、日米貿易収支への寄与率なんということを考えたら、そんなものはほとんど問題にならぬというようなことではないのか。それなのに、あえてニュージーランドやオーストラリアからの輸入というような問題を前にしながら、アメリカから多少であるとは言いながらも牛肉輸入をやろうとするのは、どうも大臣がおっしゃっている、あるいは考えていることと私は矛盾し、逆行するような気がしてなりませんので、先ほどのお答えのときにこちらからお尋ねをすればよろしかったのでありますが、一項設けて質問の条項としてそちらに通告をしてございますから、改めてひとつこの項についてお答えを願って、その輪郭を明らかにしておいていただきたいと思います。
  95. 大場敏彦

    ○大場政府委員 ホテル枠のお尋ねがございましたが、牛肉の割り当て枠としては、一般的な需給に関係する一般枠と、それから特殊な需要分野に割り当てる特殊枠とあるわけでありまして、その中にホテル枠が、沖繩枠とかあるいは煮沸枠だとか、あるいは学校給食用の枠とかいうのと並んであるわけであります。具体的な割り当て量は、従来この数年、年間で千トンという程度であります。  どういう肉を割り当てているかといいますと、これはヒレだとかロースだとか、そういった高級部位の、いわば俗に言う霜降り肉でございます。そういったものが入ってきている、こういったことでございまして、割り当て対象は、外国人旅行者はホテルに当然多く泊まるわけでありますが、そういった国際観光ホテル整備法という法律があるわけでありますが、その登録ホテル業者に枠を与えて、その業者から発注を受けたインポーターが輸入する、こういった仕組みになっているわけであります。この枠を、従来の実績で言えば千トンでありますが、どうするかということにつきましてはいま現在検討中であります。  それから、主な輸入先はアメリカが、年によって変動がありますが、大体八割から九割、残りがオーストラリア、こういったことになっております。  それから、黒字減らしとか、そういった関係でどの程度寄与するかということでございますが、寄与という程度ではきわめてわずかであります。昨年度の実績で申し上げますと、千トンで約五百万ドルというようなものであったかと記憶しております。ただ、豪州等から一般に入れております一般枠が一万トンで千六百万ドルということに比べますと、金額では三分の一近いわけでありますが、かなり高級な牛肉、いわゆる、霜降り肉が入ってきて、それがホテルで旅行客等に供給されている、こういった実態であります。     〔菅波委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 島田琢郎

    島田委員 国内で供給するというようなことは不可能なんですか。
  97. 大場敏彦

    ○大場政府委員 ホテルが使用しております牛肉、これははっきり統計的につかんでいるわけじゃありませんが、推定できわめてラフでありますが、三千トンかあるいは四千トンぐらい年間費消しているのではないかと思います。ですから、輸入されている千トンの残りの部分が国内の牛肉から賄われている、こういったことであります。ただ、ヒレとかロースとか、そういった高級牛肉が決まった規格で、まとまった形で入るという点では、非常に輸入肉というものが重宝がられているということは事実であります。
  98. 島田琢郎

    島田委員 大変長い時間議論しながら、いま一つすとんと腑に落ちない思いで時間がもう押し詰まってしまったのであります。私は、大臣はこの牛肉問題についてかなり積極的なお考えをお持ちで、恐らくいままでの歴代大臣にないやり方をされるのではないか、そして牛肉の抱えておりますいろんな要求や矛盾の解決に当たられるのではないかというふうにも考えて、きょうは牛肉問題だけにしぼって質問を続けてまいりました。従来の農林省の考え方から現段階においては大きく踏み出すというふうな考え方が示されないのは、果たしてこれが日本の将来の牛肉にとってプラスかマイナスかという点を考えますれば、私もまだ現段階でそれを判断することはむずかしゅうございます。  ただ、どうしても私どもがわからないのは牛肉の仕組み、せっかく私どもがつくった牛肉国民皆さん方に喜んで食べられるようになっていかないという点に一つのもどかしさ、そういうものを感じております。第一、牛肉というのはまだまだ全国的に見ても、どこででも豚肉や鳥肉のように簡単に買えるというふうになっていないという販売上の問題ももちろんありますし、それ以上に牛肉というのは、ふところが豊かになったら牛肉が頭に浮かんでくるけれども、さびしくなってくると、どうしても牛肉の方は頭に浮かんでこないという性質のものですから、それだけに大変むずかしい対策が幾つも必要なんでありましょうけれども、しかし、そこのところをこんな機会に、いままで牛肉がこれほど大きく世上問題にされ、話題にされたことはないと思います。ですから、絶好の機会なので、やはり行政の責任において大臣は、いま私が幾つか問題の提起をいたしましたものを含めて、勇敢に手をつけていただきたい。ただし、勇敢にと言っても自由化問題で勇敢に取り組んでいただいては困るのでありまして、そこのところだけは、後ほど本委員会も決議をいたしますから、当然区別されておると思いますけれども、しかし、ややもすると元気のいい大臣、こう言われておりますから、そういうところでひとつ元気を出されても困りますので、国内の牛肉問題については、ぜひ思い切った、あなたらしいやり方で、さすがに中川農林大臣であったというふうな解決をぜひやっていただきたいと思います。先ほど私は価格形成、わずか十人足らずの人間で日本牛肉価格を牛耳っているというようなうわさが飛ばないように、やはり真剣に取り組んでもらいたいと思っています。  さて、少し時間がありますので、私は、牛肉問題をここでおきまして、私の考え方だけ申し上げて、大臣から特別御答弁をいただくつもりで申し上げるのではございませんが、五分ほど時間がありますから、しばらくお耳をかしていただきたいと思いますのは、先ほどもちょっと触れた米の生産調整の問題であります。  私は、実は米の問題でこの席から政府側に向かって物を言ったことは余りございません。今度の生産調整についても、積極的にいろいろな御意見を聞きながら、私なりに幾つかの判断をして見ているところであります。ただ、私は、歴代農林大臣が、口を開くと米が最近食べられなくなってしまって、消費拡大を一生懸命やっているのだけれども、なかなかどうもうまくいかぬ、こういうお話を聞きます。私は、米の生産調整というのは、もう八年間という苦い、長い経験を持っているのですから、そろそろ政府内部においても私どもが納得できるような対策というものが打ち出されてこなくてはならぬと思っていましたら、今度の第二ラウンドで出されてきた米の問題というのは、私どもの期待を大きく裏切るばかりか、とんでもない米つぶしというような感じで、またぞろ同じ手法を用いておやりになろうとしている。  先ほど大臣は、竹内委員の質問にも答えておりましたが、米はともかく余っているのだ、こういうふうにおっしゃっているわけであります。私も、米が足らないとは思っておりません。かなり余裕のある状態になったと思っています。しかし、反面、消費対策について一体いままでどれだけ政府が力を入れてきたのかというと、私は、はなはだ貧弱ではなかったかと思うのです。なるほどテレビにも米を食べなさいという字幕が出てまいりましたから、ああ何とかやりおるなと、あるいはまた、ポスターで米を食べようというようなのも見かけますから、やっていないとは申し上げません。しかし、もうこういう時期になったら、もっと具体的な消費対策を組んではいかがだったのだろうか、こういうふうに考えますと、どうも米の消費拡大という面ではきわめて消極的で、やり方は、私はお粗末に過ぎるという感じがしてなりませんでした。  今度の生産調整というのを考えますときに、私はどうしても、特に中川農林大臣に訴えておきたいのは、第一ラウンドでおやりになったあのやり方というものは、農民の心を踏みにじったというふうに思っているのです。というのは、確かに転換をせい、休耕をせい、そのことは、行政の責任において補てんをし、損害は見てやるよ、こういうことでありますから、農民のふところに入ったお金は、おっしゃるとおり決して無為なものであったとは思っていません。ただ、やはり私ども農民は、確実に種をまいて、それを雨風しのいで育てながら何とか出来秋を迎えようと努力をするところに農民の生きがいと心があるのであります。札束を積んでおいて、余り働かぬでもいいわ、テレビでも見て暮らせよといっても、それは三日や四日や五日は続きますが、仕事を取り上げられたさびしさというのは、これは農民だけではない、人間である限り、非常にさびしい思いをするのは、農民といえども例外ではありません。そういうやり方を避けるべきだと言ってきたのが私ども社会党の主張でもありました。  しかし、今度おやりになるのは、さらにそれに一層お札を高く積み上げて米づくりをやめろということであります。つまり、ほかのものに転作をせよということでありますけれども、しかしながら、ほかのものに転作せよと言われても、その条件はないのです。私は、そういう意味で、転作できる条件をつくってから畑作転換へ自然に誘導していくという、そういう政策をおとりになるべきだというのがいままで私がここで言ってまいりました一つの主張点でもあります。それが今度同じ手法を用いて米つぶしをやろうという、そういうやり方に私はどうしても納得ができないし、これは直ちにおやめいただきたいというふうに申し入れをいたしましたとおり、私どもとしては、そういう農民への協力要請というのは本来おかしいのではないか、こういう立場に立って反対をしてきたわけでありますから、ぜひこの機会に、もう少し知恵をめぐらしてお米の消費拡大を図るという点について努力をした上でこれからの生産調整協力を求めるという姿勢に立ち返ってもらいたいと、こう思っていましたが、もう時間がなくなってしまって、しゃべっているうちに終わりになってしまいましたが、まだ全部お話ししないうちに終わりになってしまいましたが、私はそういう意味で、前大臣のときにもわが党からかわるがわる立っていろいろな具体的な、こうやれば何も百七十万トンを直ちにつくるのをやめろなんという言い方をしなくたって済むではないかと、こういうふうに言ってきたのでありますが、しかしながら、どうも取り入れられないまま、見切り発車で各県に指示がなされています。これは、いまからでも遅くはありませんが、いずれ時を改めて私は新大臣に対して米の問題についての考え方をひとつ交換したいと、こう思っています。  きょうはもう少し時間の余裕を見て私の考え方を具体的に述べたいと思っていましたが、すでに時間が過ぎたという通告が来ましたので、残念ながらこれで私は終わりにいたしますが、重ねて申し上げますのは、農民の心を大事にする、そういう気持ちの農政をぜひ中川農林大臣にはとっていただきたい。そんなつもりでいるよとおっしゃるでしょうけれども、私は重ねて、生産調整というものがどういう問題を現地に引き起こし、そして長い目で見た場合に、農民の大事な、いままでも本当に後生大事にしてきた百姓としての心を踏みにじるようなことがないようにしてもらいたい、そういうふうに考えているのです。いずれ具体的には時を改めてお話をしたいと思います。それを述べるだけでもう少し時間がないといけませんから、一言だけ農民の心という問題だけを区切って私の考え方を述べておきたいと思うのであります。  先ほど牛肉の問題と合わせて、いま私の申し上げました点についてお考えがあれば、時間が余りなくなってしまいましたから、一言だけお聞きをして、私の質問を終わりたいと思います。
  99. 中川一郎

    中川国務大臣 御指摘の点、まことに農民立場を考えた御意見でありますから、重々参考にして今後処してまいりたいと思いますが、私の方から申し上げれば、農家方々も、消費ということを考えて生産をするということを考えていただかなければいけないと思うわけでございます。消費がないのに肉をつくる、消費がないのに米をつくるといっても、これはいけないのではないか。やはり消費者のために農家があるのであるという基本も離れてはならない。  しからば、消費がないのは政府責任であるように言う人もあるのでございますが、これは消費拡大について何の努力をしたかという意見があります。この消費宣伝というのは、いままで何もなかったものを、こういういいところがあるから食べてください、伸ばしてくださいという場合には、やりやすい手があるわけです。米は、神代以来もう日本人の独特の食物、主食として定着してきたものがだんだん消費が減退するということを食いとめるのは、攻めることはやすいけれども守るということはなかなかむずかしい。米についてはもう政府よりもだれよりも国民自身がよく知っておることでございますので、なかなか消費拡大は大変だ。そこで、うどんに入れたらどうだ、ラーメンに入れたらなんというところまでやってまた消費者から反発を食う。あるいは、われわれは言っているのです。まず農協からひとつ消費拡大について積極的にやってもらいたい、たとえば農協でラーメンを売っているというのは一体どういうことでございましょうかと。この辺から改めないで政府が悪いんだ、政府が悪いんだではなくして、農家消費者も、すべてが一体となってやるようにしていきたいものだと、こう思って、消費の拡大についてもさらに一層努力しますが、農家皆さんもやっていただきたいし、また生産については、消費というものがないところを何でもかんでも米しかつくれないんだから米だ米だと言われても困るので、やはり日本自給率の少ない、外国から入ってくることですら問題のあるようないろいろな作物がありますから、こういうものを積極的にやるんだ、ついては政府がこういうふうにしなさい、たとえば価格の差のある分は奨励金として出しなさい、あるいは土地改良をやってこうしてやりなさい、こういうお互いに政府農家とが一体となって消費者を考えて対策を講ずる、このような前向きの姿勢で今後またひとついろいろな方法について、われわれ足りないところがあろうと思いますので、御指摘賜れば幸いだと存じます。
  100. 島田琢郎

    島田委員 終わります。
  101. 金子岩三

  102. 野村光雄

    野村委員 去る二十八日に新農相に御就任なさいまして、きょうが初めての委員会でございまして、特に中川大臣、同じく北海道選出の代議士でございまして、党派を別といたしまして率直にお祝いを申し上げる次第でございます。  そこで、就任に際しましての初委員会当たりまして、率直な大臣の今後の農政に対する基本的な所信といいますか、お考え、先ほど来お聞きをいたしておりました次第でございますが、その中で特に強調されましたのが、希望の持てる農政、さらに農家は自然を相手にする仕事でございまして、人間形成をも意味する、そういう非常に高邁な立場の中で展望が示されたわけでございますけれども、これは率直に申しまして私も異存もなく同感でございます。  しかし、現実はどうなのか、希望が持てる農政なのか、自然を相手にした人間形成というものが果たして営まれている農業であり、水産業であるのか、こういうことに対しましては、大臣就任早々申し上げておりますとおり、余りにも今日置かれております農村並びに漁業にいそしむ労働者の立場というものは悲惨であり、先ほどの希望的な、そういう展望からいたしますとかけ離れている、私はこういう認識をいたしておる次第でありますけれども、大臣はこの置かれております農漁村の実態というものに対してどのように厳しく受けとめられていらっしゃるのか、まず第一番にお尋ねいたしたいと思います。
  103. 中川一郎

    中川国務大臣 温かい激励をいただきまして、本当にありがとうございました。しっかりがんばりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  先ほども申し上げましたが、農村の置かれている位置というのは、戦後、高度経済成長を約三十年間にわたって続けられた結果、他産業の伸びが余りにも激しかったために、他産業との間にアンバランスがある、他産業は一五%とか二〇%とか、あるいは国家公務員の給料でも最近は一けた台などということになっておりますけれども、かつては一五%、多いときは三〇%というような伸び率、端的に言うならば、農協に働く職員に比べて農村の収入が少ないではないか、こういう不満が出るくらい格差のあったことは事実だろうと思うわけでございます。  なぜそうなったかというと、他産業合理化の余地が非常にある。自動車産業でもあるいは鉄鋼業でも、あるいはまた時計でも、あらゆるものが合理化の余地があった。したがって、今日、世界を侵略するというぐらい大変な伸びを示したわけでございます。農業については残念ながら、国は相当の力は入れておりますけれども、合理化の余地がない。少なくとも土地というものに限界がありますから、経営規模の少ない中で合理化を図るのには、そこに相当の厳しさがあって、相当の力は入れたけれども格差ができたということは率直に認めざるを得ないところだと思います。  私ども、高度経済成長はもうそろそろやめるべきだ、資源の問題あるいは輸出入のアンバランスの問題、物価の問題等々のほかに、第一次産業と第二次産業との間に大きな格差が開いて、国民感情が許さぬところからも高度経済成長には問題があると指摘したのもまさにこのためでございます。しかし、ここ一、二年ようやく安定成長となってまいりましてからは、この格差は大きくならないばかりか若干なりとも縮んできたのではないか、そしてUターン現象というものができつつあるのではないか、こう見ておるところでございまして、なかなか農業に生きがいの持てるようなしっかりしたものにするのには厳しい条件はありますけれども、これから努力をしてやっていくならばできないことではない、条件は厳しくありますが、ここ一、二年だんだんと改善をされてきた、この勢いをさらに前進をせしめていかなければならない、御指摘のとおり、現段階において他産業に比べて希望の持てるものであるということは言えませんが、要は今後ひとつがんばってやっていけばできないことではない、こういう認識に立っておるわけでございます。
  104. 野村光雄

    野村委員 大臣、いま一番大きな問題になっております米の転作問題、これは特に北海道選出の大臣となさいまして、一番、ことのほか事情にも当然精通していらっしゃるでしょうし、それなりのお考えも持っていらっしゃると思います。就任早々の新聞で拝見いたしましたが、大臣の転作に対する北海道に対するお考え方が載っておりました。これは新聞が間違って書いているかどうかは知りませんけれども、新聞紙上によりますと、特に北海道に対する転作面積は、一応昨年の全国二五%に対して、本来ですと倍ですから五〇%来るべきはずのものが本年は三五%で終わった、こういうことに対して当初の予想よりも低かった、そういうことで農業団体からも喜ばれている、こういうような認識で御発言をなさっていらっしゃるようでございますけれども、これは現在、北海道農民の置かれている立場と非常に食い違いがあるのじゃないか。さらに、転作奨励金に対しましても、すでに七万ないし七万五千円という大幅な奨励金が増額されたということに対しても非常に毒ばしい、こういう御発言、いろいろありましたが、二点、非常に私は注目をして拝見させていただきました。  私はそこで非常に心配いたしますことは、確かにこの七万五千円の奨励金を云々というわけじゃございませんけれども、いま一番心配なのは、北海道農業がどんどんと大幅な転作面積を割り当てられまして、日に日に、年々と営農意欲を喪失してきている、こういう実態を考えましたときに、目先の七万とか七万五千という金額にこだわって、長期的な展望の中から北海道農業が将来の展望を失っていく、こういう危機を私ははだで感じておる次第であります。  そこで、私は、転作後の対応策がどう打たれていくか、打たれているのか、ここにこれからの農政は着眼をすべきだと思うのです。需要と供給のバランスのために転作だけはやむを得ないからといって押しつけていくけれども、じゃ転作を余儀なくされた農家の実態に対するどういう対応策ができているのか。御存じだと思いますけれども、北海道で稲作可能面積の五〇%以上の転作を強いられている町村は四十カ町村ございます。四〇%台だけでも二十三カ町村あるのですよ。  こういう中で、先般、私は幌加内町というところに行ってまいりました。ここでは大臣、一つの実例でございますけれども、ことし七一%の転作をしているのですよ。七一%で一〇〇%やりまして、その中で全面転作、耕作面積全部をこの際やむを得ず畑にした、こういう農家が百九十九戸ございます。その百九十九戸のうちの大半が牧草畑になっております。しかも、その百九十九戸の中で、どっちみち全反別転作しちゃったんだ、牧草を植えたんだ、家族そろってそこで営農して、仕事もなければそれだけで生活をやっていけない、村として行き先不明みたいになった農家が六十戸ございます。これは大臣、偽らない北海道の実態でございますよ。七万五千円増額されたことに、目先だけにこだわった、そういう基本的な農政の欠陥が、ひいては長い間何十年として親子何代にわたって手に汗を握り、血を流しながら耕し続けた農地が荒廃してきているこの現況であります。この現況に対して大臣はどのように認識していらっしゃるのかということと、どのようにこれからこれに対応していくのか、この点をお聞きしたい。  あわせて、この機会に事務局に聞きますけれども、昨年度の転作によって全面休耕を余儀なくされております農家が全国で何戸あるのか、その面積は何ぼなのか、どういう対策を打っておるのか、これをまず聞きたい。
  105. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 私ども奨励金を交付いたしまして、現在、水田総合利用を進めているわけでございますが、その奨励金の交付の対象になりますのは、やはり転作をしていただくというものに対してやっておるわけでございまして、先生のおっしゃいますのは、多分かつて休耕措置などについて奨励をしたというころ、休耕したままで後が不作付の状態で来ておるものがあるということを御指摘になっておるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そういう状況のものが幾らあるかということは、これは実は統計的には把握しがたいわけでございますが、ある程度のものはあり得るというふうに思っておるわけでございます。
  106. 野村光雄

    野村委員 大臣、よく聞いておいてください。いいですか、大臣一番わかっているでしょう。おたくの選挙区等、昨年の転作が全部五〇%以上です。中にはいま言ったように、やむを得ないから一〇〇%耕作面積を転作している農家があるのですよ、その実態をつかまえていないじゃないですか。知っていますか。昨年とことしの生産調整によりまして全面積を転作している農家は何世帯あるのか、数字を挙げてくださいよ、それがなかったら対策を打てないでしょう。
  107. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 持っておる水田の全部を転作に回しておるという農家が少数あろうと思いますが、その数字は持っておりません。
  108. 中川一郎

    中川国務大臣 昨年といいますか、ことしですね、生産調整はそんなに無理してないのです。むしろ北海道は第一次転作のときには割り当てよりオーバーして困ってしまったのです。あれもやりたい、これもやりたいといって割り当ての倍もやってしまって、そして、たんぼを捨ててほかのところへ行ったことがあって、政府は決して北海道についてたくさんやれなんという残酷なことは少なくともことしまでやっておりません。でありますから、どういう結果になっておるか知りませんけれども、本人の意思でそうなったとしても、国がしゃにむにこれをやらなければだめだというようなことはやっておりませんので、その辺はひとつ御理解いただきたいと存じます。  なお、ことしは確かに北海道が二五%ございました。九十万トンに八十万トンプラスして約倍になるわけですから、全国をにらんだところ、いまのところ、ふやそうという、だれも引き受け手がないのです。今日まではそれほど無理なくできましたが、来年からこれを倍にするならおれの方でやってやるからというところがありませんので、この際一律、理屈はあっても、倍で割り当てするのも一つの案ではないかということで、北海道農家の人が一番心配したわけなんです。いまの二五%はまあ無理なくやれたけれども、来年から倍にされたら困るから、一律に倍にすることだけはやめてもらいたいというのが、私どもに陳情に来たときの偽らない言葉なんです。そして、九万町歩ぐらいなら何とかできるけれども、九万町歩以上やられたら困るというのが生産者団体の偽らない陳情でございます。それを若干下回って八万台にして、まあまあこれならばやっていけるという団体の幹部の皆さんの言葉であって、少なくとも、ありがとうございましたと私は言われておるのです。しかし、それでも三五%になりますから、大変だと思いますので、御協力は申し上げておると言っております。  それじゃ、もし北海道がそれ以上はいやだと言った場合、米以外につくる物のない東北方面の農家が、いままでの二倍、三倍、四倍とやられたときには一体どうなるか、こういうことを考えたときに、まあまあ四割増しの、二五%が三五%でとまったということは、本州に比べるならばまだまだ方法はあり得るのではないか。  私は七万五千円差し上げたからそれで結構だ、金をやったからとは申し上げておりません。おりませんが、私のところへ来る農家の人に、あなたは何町歩おつくりでございますかと聞くと、五町歩でございます。四町歩でございますと、それ以外の農家の人は聞いたことがございません。仮に四町歩全部お休みになってほかの作物をつくったらどういうことになるかと言えば、反七万五千円でありますから一町歩七十五万円、四町歩持っていらっしゃるならば三百万円の国家からの奨励金が来るわけでございます。しかも、このお金は、議員立法ではありますけれども、税制上の優遇措置を講じて、まるまる三百万円入る仕組みになっております。その上に、四町歩に牧草をつくるなりあるいはビートをつくるなり、そういうことをやればまたそれなりの収入もあるはずでございますから、少なくとも経営上から言うならばそう苦しいことにはならないのではございますまいかと言うと、そう言えばありがたいことだな、いまどき三百万円奨励金をくれる商売はまずほかにないな、協力せざるを得ないな、そのかわりに湿田だとか何かで大変なときはめんどうを見てくださいよ、それは公共、非公共を通じまして米以外のものがっくりやすいように御協力申し上げます。こう言って、大体の皆さんが御納得をいただいております。  もう一つ、立ったついでに、どれくらいのことになるかという、いつも申し上げていることを申し上げます。たとえば、大豆について言うならば、外国から買ってくると五千円で買える仕組みになっております。畑作でつくれば大豆交付金法によって一万円を差し上げる仕組みになっておりますから、国際価格の三倍高いものになります。七万五千円もらって大豆を、これは戦略物資でございますから、仮に三俵とれたとすれば二万五千円の奨励金に当たります。三俵でありますから三で割りますと。そうすると、一俵が四万円につきます。外国から買えば五千円で買えるものを、水田でつくったのだから四万円差し上げますというところまで一生懸命やっていることですから、まああなた方も大変だとは思いますが、米の過剰はどうしようもないことでございますので、御協力くださいと言うと、なるほどなと大体の方はおっしゃっていただいておるところでございます。
  109. 野村光雄

    野村委員 大臣、確認しておきますけれども、北海道農業団体はことしの転作は少なくとも九万台ぐらい来るだろう、しかし結果的に八万八千だったから思ったよりか少なかった、そういうことで喜んでおる、こういう農業団体の幹部の話だ、こういうことでございますね。農業団体の役員のお考えと現場の農民の考えとは違うのだということを大臣よくお聞きしておいてくださいよ、大事な農政上、いいですか。  もう一つ、私は先ほど来言っておりますとおり、全面転作という中で一番心配するのは、この機会にぜひ確認をしていかなければならないのは、いま大臣が言っているように、確かに七万五千円もらうことだけが能ではない、しかし、どれだけの田畑がこのことによって荒廃しているかという現実を確かめておりますか。農林省はいま現実を握ってないでしょう。全面休耕、全面転作したのがどれだけの面積あって、どれだけの戸数がそうなっているかという現実をつかんでないではないですか。現実をつかみもしないで、ああだこうだで農政をやる資格はないでしょう、はっきり言っておきますけれども。それなら出してくださいよ、ないでしょう。  もう一つ私がいま一番心配しておりますことは、大臣、いいですか、この一〇〇%ないし一〇〇%近い大幅な転作をなさった方は農政に最大に協力なさった方だ、私たちはこう受けとめている。大臣から言わすと、七万も受け取ったのだから、利害から言えば得したから、やりたくてやったのだ、そんなようにとられますけれども、そうではないのですよ。最大の協力者だ。その中で、いま一番言っていることは——いいですか、時間がありませんから、数点、よく聞いておいてください。  一つは、米が余るのだし、北海道として協力すべきことは協力する、しかし協力しても、一〇〇%協力した限りは、裏づけとして、そのかわりとれた米だけは全量買い上げてもらえないのか。過去の実績からいっても、大臣御存じのとおり、一〇〇%まじめに転作しない府県も、まじめに実施した県も、結局は同じなんです。正直者がばかをみているという結果になっている。これにまずどう対処するかということです。  第二番目には、この前私は前大臣にもお尋ねしましたけれども、当面三カ年分のこの配分目標を達成した後、四年目からはさらにこの転作面積がふえるのか、現状でいくのか、減るのか、この見通しに対しては、そのときになってみなければわからない、こういう全くその場その場限りの農政というものについて農民は非常に不安を抱いているということ、これが第二点。  第三点目には、いま特に北海道農民が言っていることは、一時的な転作なのか、半永久的なのか、このことが明確でない。農民立場とすれば、どこまでも、できるだけ近い将来にまた米をつくりたい、こういう希望を込めての転作である、もし、これが半永久的であるならば、畑なら畑としての土壌の改良なり品種の改良なり、そういう技術の習得なり、こういうことも考えるけれども、いままで昭和四十五年以降は単年度単年度でやってきて、来年から戻されるか、来年から戻されるかという希望観測の中でやってきて、将来に対してのきちっとした方策がいまだに何ら示されない。大臣、よく覚えてほしい。本州みたいに耕作面積の三%とか五%の転作ならいざ知らず、少なくとも耕作面積の三〇%も五〇%も転作をどうしても余儀なくされるという場合は、御存じのとおり、耕作面積が多いわけですから、それだけ転作の面積も多い。その面積が、一体半永久的なのか、また米に戻るのかということさえも示されないというところに大きな不安を抱いているわけです。  もう一つは、全面転作はしたけれども、基本的に、いま言ったような方針から、新しい営農方針が立たない。全面休耕をしたのに、酪農にした方がいいのか、畑作にした方がいいのか、肉牛でいくのか、こういう方針がいまだに立たない、こういう農家が多いということです。  それから、営農方針を決めるとしても、資本がなければ営農の基本的な転換はできない。  さらに、畑作をこれから自主的にしようとしても、畑作物の品種改良、また構造改善等が全くなされないでいるに等しい、こういう状態。  もう一つは、先ほど言ったように、不在的地主が次から次へ出てきているのですよ。この実態をどう見るか。  これらに対する対策を具体的にひとつ示していただきたいと思うのです。
  110. 中川一郎

    中川国務大臣 第一番目の、生産調整協力した場合は後は全部買ってくれ、こういう意見がありますよということにつきましては、食管の仕組みが限度数量というものから成り立っておりますので、限度数量の改定はできませんけれども、たとえば昨年、北海道で一〇〇%に近い生産調整をやってくれましたが、天候がいいためにかなり、六、七万トンだったと思いますが、よけいとれた。これをどうしてくれるということになりまして、限度数量は変えられないけれども、まず自主流通米といいますか、先に市場に流れるように手当てをし、増産分でございますから、予想以上の収入になるわけでございますので、たしか五百円前後の奨励金を差し上げて、しかも食管の米の売り渡しを調整いたしまして、余り米がまず消費されるという仕組みを講じていただきまして、これは生産農家からも、まあまあことしはよかったなということで、過剰米が生じたときの対策を講じて、万全を期しておるところでございます。  次に、これからの作付転換でございます。とりあえず三年とは言っておりますが、実は前回は毎年やってきた、こう言っておりますけれども、そうじゃなくて、前回は五年を目標にしてやってまいりましたが、過剰傾向がとまらないというので三年を追加して、八年間やってきたわけでございます。それでもなおかつ、私どもいつも言っているのですが、従来は、昭和四十五、六年ごろでございますが、何にもなかったところに過剰米という病気が出た、今回はかなりの生産調整をやりながら過剰米が出たということでございますから、入院中、病気の手当てをしながらまた病気が重くなってきた、こういう異常な事態だということで、今度はさらに十カ年、とりあえずの手当てその他は三年とはいたしますが、さらに三年たって、たとえば奨励金が足りないとか、いろいろな補完的なことをやらなければならない、十年間定着しておいてもその間に変更しなければならないこともあろうと思って、とりあえず仕組みは三年でありますが、その背景をなすものは半永久的とも言っていいでしょう、十年間は少なくともいまのような百七十万トンの生産調整をやっていかなければ食管は堅持できない、農政はやっていけないという長期的な見通しのもとにお願いしておるところでございまして、この点は、三年たったらネコの目のように変わる、前は一年ずつ変わったということではないということでございます。  そういうことでございますから、長期的に言うならば、まず半永久的だ、先ほど答弁のときに緊急避難と言ってちょっとこれは間違っておるのですが、三年とか二年なら緊急避難ですが、長い意味では緊急避難でありますけれども、まず当分予想されることとしては半永久的に、米の消費がそれほど大きく変わることもありませんし、まず、いまぐらいの生産調整といいますか、作付転換はやっていかなければいかぬ、こういうことに現地にもおろしておるところでございます。それが末端に行っておらないとすれば、その点はさらに強化していきたい、こう思う次第でございます。  なお、そうなった場合、これから一体どうやるか、確かに水田をつくってきたところが今度は畑作でございますから、何をつくったらいいかな、そしてまた、どういう機械を入れてどうやったらいいかな、こういう点について御不安のあるところは十分理解できますが、その辺はやはり道の営農指導員なり普及員なりとよく御相談をいただいて、その地域その地域の特殊性に応じた営農形態というものもあるだろうし、また農林省等においてもそういった点についでは指導していかなければならない、こう思うのでございまして、何分にも長年つくっておりましたお米をいままでの倍以上——ただ言えることは、北海道でも過去においても八万三千町歩から四千町歩ですか、転作休耕の時代ではございますが、そういった時代もあったのであって、地域地域においては大変だとは思います。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 幌加内へ行けば大変だとか、いろんなことはあろうと思いますが、全体的に知恵をしぼっていただくならばそう無理なことではないのではないか、こう思っておるところでございます。  ただ、大変であることだけは間違いない。私は本州方面に行って、これだけはむしろ北海道より、もう水田以外、神代以来つくったことがないのですよ、親の代からずっと先祖代々、周りを見渡しても、一割休め、二割休めと言われましても本当にないのでございますというときに一番回答に苦しむ。そこで、管理転作というようなものを講じて、農協で管理していただくというような苦肉の策も講じておりますが、北海道ならば農協や営農指導員やあるいは普及員と相談しながら、少なくとも十年あるいはそれ以上の長期的な転換というものを考えれば、国家にも役立つ作物もたくさんございますので、私は努力をしていただければできるのではないか、こう思っておる次第でございます。
  111. 野村光雄

    野村委員 大臣、言葉を返すようでございますけれども、確かにかつて北海道が本年度の割り当て以上の転作をやった事実がございます。これは私も当時道議会の時代で、たしか当時の耕地面積の約四八%を休耕した。しかし、ここでよく知っておいていただきたいことは、私が申し上げるまでもなく、大臣北海道の人間ですからわかっているでしょう、経済状態が当時といまとは違うのですよ。当時は何も狭い面積の中でごちゃごちゃ働いていなくても非常に働くにいい、好条件のところがたくさんございました。そういう社会構造、条件があったればこそあれだけの転作があったということであって、いまは全く事情は逆転しているわけですから、そういう認識を何年前と同じようなつもりで、北海道はそういう実績があるからことしはまだそれから見たら少ないんだというようなお考えでは、私は非常に、北海道からせっかく出られて一応の期待をしている北海道農民から見て、全く期待を裏切るような言動でございますので、私からはっきりこれは大臣にひとつ認識を改めていただくように申し上げておきますから、認識を改めていただきたい。  それから、最後に、あと残り五分になりましたから、一括質問を申し上げます。  一つは、先ほど来問題になっております黒字減らしに対するところの輸入枠の拡大問題でございます。まあ大臣から、基本的な姿勢としては、日本のこれらの生産者の立場に立って無謀な拡大はしない、こういう再三の言明がございまして、私も若干希望を持ち出したわけでございますけれども、この二十二品目に対する輸入量は全く断じていままでの数量よりもふやさない、こういうことなのか、その点がもう少し端的に、この品目に対しては若干こうなる、こういう含みがあるのか、これらに対してこの際ひとつ大臣の今後の決意と見通しをお答えいただきたい。  次に、韓国漁船の被害の問題でございまして、これまた大臣御存じのとおり、特に北海道沿岸漁民等に大きな危惧を与えている問題でございまして、すでに五十年以来被害が約一千件にも達しておりまして、その被害金額は三億七千万にも達している、こういう状況でございますけれども、これらに対して民間並びに政府間において種々協議はしていらっしゃるようでございますけれども、これに対する損害補償、これらの見通しと現況並びに今後の対応策等につきましてひとつ御答弁をいただきたいと思います。  以上。
  112. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほど、過去八万何千町歩やったからやっていいとか、あるいは三五%でとまったからいいと言っているんじゃなくて、そういうこともありましたよといった程度であって、これでやれと言ったんじゃなくて、それはどこの県に参りましても、いままでの倍やるわけですからそれぞれ大変なんです。大変なんですが、背景としては、何としてもやっていただかなければ大事な食管が堅持できないということで御協力をお願いしているところであって、いや、おまえのところはあたりまえだなんて私は一回も言ったことはないんです。そういうこともあり、ほかのところでは三倍、四倍のところもあり、何とかがまんをして協力していただけませんか、こうお願いしておるのであって、決して北海道に残酷に、おまえはこれだと言っていませんから、この点は御理解をいただきたいと思う次第でございます。  それから、黒字減らしの二十二品目について枠の拡大はどうなっているかということでございますが、これは年々消費も拡大しておれば、いろんなことがありますから、個々の品目についてそれぞれ若干の増大はあろうと思いますが、このことによって、先ほど自由化によって日本の大事な農作物がやられることのないようにしたのと同じように、枠の拡大につきましても若干はやりましても、そのことによるダメージがないように配慮しながら対処してまいりたい、こういうことでございます。  それから、韓国漁民の北海道沿岸における操業について、北海道の漁民が非常な、かつてソビエト船もありましたが、最近では韓国船を中心に被害をこうむっておりますので、この点については真剣に対処いたしておりますが、韓国はこういった二百海里問題をやっておりませんので、ここが厳しくなると南の問題がまた厳しくなるという、相互でお互いに犠牲をこうむらなければいかぬというような厄介な問題もありますが、これは北海道漁民にとっては大変なことでございますので、先般、水産庁長官が数日韓国に渡りまして、北海道近海における沿岸漁民の苦しみ、実情を訴えまして、これからの操業について、また被害をこうむりましたものについても十分協議して対処するよう民間ベースで話し合いをする、こういうことになってございますので、このルートをさらに強化すると同時に、今後も最大の関心を持ってこの問題に対処していきたい、こう思う次第でございます。
  113. 野村光雄

    野村委員 最後に、大臣に強く要則しておきますけれども、特にいま大きな問題になっておりますこの輸入枠拡大の問題、全然いままでの実績よりかふやさないわけにはいかない、こういうニュアンスの御答弁がいまございました。しかし、そのことによって生産書を混乱に落としめる、こういうことはできるだけしないようにしたい、こういう希望観測でございましたけれども、この問題に対しましては、私が申し上げるまでもなく、関係生産者団体が非常な関心と恐怖とを抱いてこの問題にぶつかってまいってきておりまして、ぜひひとつ大臣の所信を、農民のためにがんばっていただきたい、こういうことを希望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  114. 中川一郎

    中川国務大臣 ちょっと、誤解をされては困りますから、一言だけ訂正いたしておきますが、当初申し上げました、生産調整について団体の絆部の人が、九万町歩以下ならば、こういうことであった。これは生産農民とは相当かけ離れたことである、したがって生産者団体の幹部の方を追及するなんということになりますと、これまた問題でございますので、私は、生産者団体の皆さん方がある程度のめどをのめるようなものをやられたから、あの程度でおさまったのであって、何でもかんでも反対、一切二五%はいやだというような行動をしておったならば、恐らくむしろもっと厳しいところにいったのではないか。まあまあこれならばのんでやろう、のんでみたい、こういう目標が、九万町歩を割るというところに目標を置かれたことは、かなり厳しくならなかったいいことだと思っておりますので、どうかひとつ、皆さんが善意でやっておることであることだけはこの際補足して御説明申し上げ、御理解をいただきたいと存じます。
  115. 野村光雄

    野村委員 大臣から補足がありましたから、私の方からも補足をいたしますが、この問題は、私ども初め北海道農民も、また農林省自身も——私ども、ここで四日間にわたりまして集中審議をいたしました。その場合に当たりましても、昭和五十三年度の生産調整面積数量が、農林省の考えが倍であるから北海道は機械的にその倍にするということは一切ございません、こういうことは農林省自身も最初からその考えであったわけでございまして、別に農民団体がこう言ったからこうなったんではない。  もう一つは、生産者団体と生産農家との間の中にやはり大きな隔たりがございまして、北海道なら北海道としても、この配分をどうするかということがいま大きな関心事になっております。そういう中で、少なくとも大臣なり、または農業団体の責任のある方々が、まあ言葉はいま改められましたけれども、八万八千ヘクタールということはいずれにしてもまあまあよかったんだ、そういう認識に立っていらっしゃるということに対しては、私はやはりこれは果たしてそれが本当の生産農民の声であるかどうなのかということに対しては疑問を持っておりまして、これ以上論争する気持ちはございませんけれども、大臣、やはりこの点十分に御注意なさって発言なさいませんと、私は大変なことになるのじゃないか、こういう感じがいたしましたから、私も改めて補足を申し上げたわけでございます。
  116. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 吉浦忠治君。
  117. 吉浦忠治

    吉浦委員 福田総理は、改造を前にして内閣記者クラブとの会見がございましたが、その席上で、いま日本立場は戦後最大の厳しい環境の中に置かれているという発言がございました。第二次大戦前夜のような情勢であって、大きな転換期にあるという厳しい時局認識を強調されたわけでありますが、この認識は、円高という内外の経済環境の激変から見れば、至極当然なことだと思います。世界情勢が地球始まって以来の厳しい変化の時代だというふうにも総理は前に強調されたようでありまして、こういう時局認識に対してどう取り組むかが現内閣の使命だというふうに私は思いますが、そこで登場されたのが中川農林大臣でありまして、そういう期待が大きくかかっているというふうにも言えると思います。農林大臣就任の日のテレビを児ますと、テレビの方は一斉に大臣を追っかけておりまして、中川農林大臣だけが改造の主役であるように追っかけておりましたが、その期待感からだろう、私はこういうふうに思いました。  そこで、当面の問題は、何といっても円高に象徴されている問題だと思います。いわゆる対外経済、緊張を強める日米経済問題が主体だろう、こう思います。言うなれば、アメリカ黒字減らしということで、そのしわ寄せが日本の経済を大きく左右しているわけであります。その最大が農産物であろう、こういうふうに考えるわけであります。  したがいまして、当面する農政課題は、何と申しましても農産物輸入圧力だろう、こういうふうに考えられます。黒字減らしとしてオレンジなどの自由化、さらに東京ラウンドにも絡む関税引き下げの要求がより強まってくるだろうと思いますし、前農林大臣の鈴木さんは、食糧自給を盾にとられて、一線をきちっと踏まえておられた。そして、それを抵抗の支えとして農政を持ってこられたというふうに私は感じておりますが、新大臣の抱負は先ほど伺いましたけれども、もう一度この線に対する決意のほどを最初にお尋ねをいたしたいと思います。
  118. 中川一郎

    中川国務大臣 今度の内閣改造は、人心を一新して経済の問題に取り組む、危機突破ということであることは間違いないと思います。私が目玉であるとかどういうことであるかは御判断に任せるといたしましても、大変な事態である、その中心をなしますものは、一つは、円周に象徴されるドル問題であろうと思います。もう一つは、国内の景気を浮揚して、何とか不況ムードから脱却をして、国民経済を安定したい、この二面、これは相関連するものでありますが、二つではなかろうかと存じます。  その中にあって、農産物に対して自由化なりあるいは枠の問題関税の引き下げによって国際的に協力するということではなかろうか、こういう御指摘でございますが、確かに一般的なこととして、そういうことはあり得るかもしれません。しかし、アメリカから言ってきております話は、むしろ百億ドルの基礎収支を改善すべきである、中でも完成品が二〇%程度という低いものであるところに問題がある、であるから、この辺のところをしっかりひとつパーセントの改善努力をしてもらいたいという大きな柱がございまして、一次産品である農産物について、しゃにがむにでも枠をふやしてやれというふうには私は受け取っておらないわけでございます。ただ、姿勢としては、協力する姿勢もあっていいのではないかというところから、全体的な問題としては総合農政なり、あるいは先ほど来声を大にして議論をしております作付転換等総合食糧政策の基幹を揺るがすような協力はどんなことがあってもできないということでございまして、その点は農林大臣としては絶対譲ってはいけないことだと思っておるところでございます。ただ、二十三品目について、あるいは枠の拡大について、さらには関税の東京ラウンドの早期実現あるいは前倒し等について、まるっきりこれを排除してしまわなければならないのか、よくよく一つ一つ洗ってみて、ドル関係ではそれほど大きいものではないにしても、この問題については真剣に取り組んでおるのだという姿勢を示すものがないかと真剣に検討して、その結果、若干なりとも協力できるものがあるならば、目玉とはならないけれども、先ほども申し上げましたように、自由化については、枝葉末節という言葉がありますが、枝の大きなものはかないませんとも、小枝なり葉っぱなりとも、もし総合農政なり総合食糧政策支障を来さないものがあるとするならば御協力申し上げよう、また関税輸入の拡大についてもそういったような基本姿勢で取り組んでおるところでございます。  したがいまして、今度は経済危機突破であり、その中で農政をひとつ後退させて、外国依存度を高めようというねらいがあるであろうという御指摘でございますが、そのようには認識しておらないところでございます。
  119. 吉浦忠治

    吉浦委員 現在の農政は、総合農政という枠組みの中で規模拡大が行われておりまして、農林大臣総合農政の推進者であることは明白でございますが、その総合食糧自給率の向上というものを中心に進められる中で、大臣がかわられたからといって政策の大転換はなかろう、こういうふうに私も思ってはおりましたが、現状の認識、判断というものは、やはり見方を間違いますというと、いまの政策の進め方なりというものは非常に国際的な問題として波及度が大きいわけであります。いま大臣は、輸入の問題でもやや緩められる方向の含みのある言葉でありまして、骨のある大臣でありますから、やはりしんが通っていることは私も信頼申し上げているわけですけれども、総合農政立場からしますと、転作問題にいたしましても、輸入の拡大問題等にいたしましても、これは大臣は恐らく積極的な取り組みをなさるだろうというふうに私は踏まえております。そこで、ぜひとも農民立場大臣にお願いいたしたいのです。  それは、農民の生活の実際というものに目を向けていただきたい。長い政治生活の中でキャリアもありますし、そういうともどもに苦しみをされた大臣の過去の経歴を思いますときに、農民の声を十分に吸い上げて物事を運んでいただきたい、こういうふうに考えているものであります。特に、農民の心というものはやはり時間をかけなければ——いまの大臣の性急の答弁で私は心配をいたしているわけですけれども、さまざまな意見があることは当然であります。これに十分な時間をかけて、そして政策の決定等も行っていただきたい。そうしませんと、大臣の性格から、失礼ですけれども、独断専行の方にはならないでしょうが、もしもそのように運ばれるようなことがあったならば、これは大変なことになる、取り返しのつかないことになる。一議員でもそうでありますけれども、農政の最高の責任者でありますので、この点を十分に考慮していただいて、政治には決断も必要でありますし、やらなければならないときにはやらなければならないけれども、そういう点で農民が不幸になるような決断だけは絶対に避けていただきたい、心からお願いを申し上げるわけでありまして、その政策の一つ一つが生活につながっているわけです。そういう意味から、大臣就任されたその記者会見などの記事を私はつぶさに読んでまいりましたけれども、牛肉輸入問題等がやはりどうしてもひっかかってくるわけでございます。最初に、この点を少しばかりお尋ねいたしたいと思うわけでございます。  現在、輸入が行われておる牛肉についてでございますが、いま大臣になられたばかりで行おうとしているということはどうかと思いますけれども、もしも輸入を拡大された場合に、果たしていまの牛肉は下げることができるかどうか、もしも下げられるならばどの程度は下げられるという自信がおありかどうかをお尋ねいたしたいと思います。
  120. 中川一郎

    中川国務大臣 決断も大事だが、慎重にやれという本当にありがたい御指摘、感謝してそのようにしてまいりたいと思います。  ただ、決断があるから農民に向かってひどいことをするのじゃないかなという空気といいますか、そういうような目で見ておられるとすれば、それはそんな気持ちはありません。私は農林大臣でございますから、農村の生活向上ということに最大のウエートを置いておるところでございます。先ほど申し上げたように自給率の安定、あるいは農業日本人の人間形成という点で本当に国の柱だということでございますので、いかに外圧が厳しくともその基本線は曲げないということだけはしっかり守っていきたいと思いますから、御了承をいただきたいと思います。  なお、それに関連して、私が記者会見のときに、輸入枠を拡大してうんと安い肉をつくってと言ったようなところが第一番目に印象に映ったことは、私の発表の仕方にも問題があったのではないかと反省いたしておるところでございます。  私がいつもずっと申し上げておることは、また総理の気持ちもそうでございますが、消費者価格が非常に高い、国際的に二倍、四倍で、大衆の手の届かない品物になっておるところに問題があるのではないか、これを何とか大衆が食べられるような仕組みにして消費の拡大を図り、その結果、国内の生産も伸びれば、輸入枠の増大ということも長期的に検討すべきではないか、こういうことに力点を置いたつもりでございます。さしあたり、今年度において枠をふやしたりして価格を引き下げる、そして生産農民を苦しめるというようなことは考えておらないところでございます。ただ、特別枠とかいろいろありますから、一定の枠の中での操作は若干はあるかもしれませんが、総量をふやして生産農民に不安を与えるということはいたさない、このことははっきり申し上げておきます。
  121. 吉浦忠治

    吉浦委員 肉を下げる、消費者立場を守るというのはわかります。ただ問題は、国内の畜産農家の壊滅的な打撃というものは、大臣の言動によってその日にもう鹿児島等においては競り市で暴落しているような状態であります。大臣が慎重に物事を運ばれていることはよくわかりますけれども、受けて立つ競り市等においてはもう大暴落をしておるというふうに、影響が生活に直結しておるわけです。ですから、その輸入枠の拡大で消費者立場を守っていこうというのは、私も決して反対ではありません。けれども、国内の畜産農家というものが壊滅的な打撃を受けるような結果になっている現状を大臣はお知りになっていらっしゃるわけですから、そういう点の対策というものは、これからほんの一言、これっぽっちお話しなさっても影響力というものはものすごく大きくなっております。私の地域でも、大変だということで私のところへ泣きついてきて、ぜひこの問題を取り上げてください——それはたくさんの方が言ったわけじゃないけれども、深刻な意味が含まれているわけでありまして、そういう点について大臣がどういうふうにお考えなさっているか、お尋ねをいたします。
  122. 中川一郎

    中川国務大臣 大臣というものは責任ある立場でございますから、軽率な、誤解を受けるような発言生産農民に大きな不安を与えたとするならば、今後さらに慎重な行動をとらなければならない、こう思っておるところでございまして、その後、新聞が非常に大きく伝えたということもありましたが、真意がわかって回復したとも聞いておりまして、喜んでおるところでございます。
  123. 吉浦忠治

    吉浦委員 さて、畜産振興事業団の点について、ちょっとお尋ねをいたしたいのです。  この調整金というものが国内の畜産農家の保護育成に使われているというふうに農林省は言っておられますが、実際に畜産農家にその補助金をどのように使われておられますか、お答えをいただきたいと思います。
  124. 大場敏彦

    ○大場政府委員 輸入牛肉輸入、放出によりまして、畜産振興事業団に差益が発生するわけでございますが、それはルールといたしまして翌年度に助成事業として支出する、こういったことになっております。したがいまして、五十一年度に発生した差額を五十二年度に助成対象として拾うということになるわけでありますけれども、その主なものを御説明申し上げますと、畜産経営改善資金特別融通事業ということで、これは酪農、肉用牛、養豚あわせまして融資枠一千億、それを末端金利五分にするために利子補給をするということでございまして、これは約百三十一億であります。  それから、大臣がたびたび御説明申しております子牛生産奨励事業、これは肉専用の繁殖雌牛を保留して、子牛を分娩した場合に奨励金を交付するという形で、農家に雌牛を殺さないで保留してもらう、こういった意味の奨励金でありますけれども、それが三十二億六千万円、そういったものであります。  それから、酪農経営安定のために加工原料乳の限度数量をオーバーした分に対して交付金を交付する、それが約三十五億、そういったものもございますし、肉用子牛の価格安定対策事業等につきましても所要の助成金をしている、あるいは産地における食肉センター等、流通合理化につきましても助成ないしは出資をしている、こういったことがございます。  一方、消費者対策といたしましても、消費生協、そういったものによります食肉の販売等につきましてこれも助成をしている、そういった形で、生産合理化あるいは流通合理化消費者対策等につきまして多面的に助成をしているという現状でございます。
  125. 吉浦忠治

    吉浦委員 畜産振興事業団の機構というものが、国内の生産農家を保護するという立場で十分な働きをしていることはよくわかっておりますが、この機能というものが十分に果たされませんと、逆な立場にもなりはしないかというふうに思います。ということは、安い牛肉というふうなことで私はお尋ねをいたしたときに、そういう面では私も決して反対をしているわけではございませんけれども、真の意味の流通機構の改善をいたしませんと、メスを加えませんと、実際に価格は安くならない。ですから、最初に、お答えがありませんでしたけれども、輸入肉がどのように安くなるのか、安いという感覚が、まあ半値になれば安いというふうに感ずるでしょう。ほんの少し下がっても安いということになる。いま大臣が二倍なり四倍高いという言葉がございましたが、四倍なり五倍高いかもしれませんから、半値になって安いという感覚が出るかもしれません。  そういうことで、流通機構にメスを入れない限りは、幾ら輸入牛肉をふやしたとしてもこれは問題解決にはならぬのじゃないかというふうに心配をいたしておりますが、この点局長いかがでしょう。
  126. 大場敏彦

    ○大場政府委員 畜産振興事業団は、結局、輸入牛肉価格安定帯とリンクさせて、計画的にまた安定的に輸入する、そして市場に需給調整のための放出をしている、こういったことで、いわば卸売価格を安定帯の中におさめる、こういったことが直接的な機能であります。それが小売価格にどう連動するかということは、実は畜産振興事業団の機能以外の問題でありまして、畜産振興事業団が万能ではございませんので、これは別途私どもの政策分野に入るわけでありますけれども、御指摘になりましたように、卸売価格と小売の連動がどうも鈍いというところに問題がある流通機構の合理化ということをあわせて徹底的にやっていかないと、せっかくの安定帯制度も消費者の手もとにその効果が及ばない、こういったうらみが出てくるわけでありまして、やはりその流通合理化ということは価格の安定と並んでやっていく必要がある。  また一方、生産合理化ということも必要でありますが、生産農家生産合理化の恩恵が消費者の手もとに届くようにするためには、やはり流通合理化ということが並行して行われなければならないということは御指摘のとおりだと思います。
  127. 吉浦忠治

    吉浦委員 そこで、配合飼料の価格についてお尋ねをいたしたいわけですが、現在の円高等に対して大きな問題が起こっているわけでございます。  その一つに、円高差益のメリットを消費者価格の値下げという形で消費者にも還元させなければなりませんが、私が農村地帯を歩いて畜産農家からの御要望を聞きますと、円高対策で農畜産物の自由化が問題になっても、われわれが買う配合飼料価格のことは問題にならぬ、農林省は一体どのように農政をやっているかというふうな厳しい声を聞いているわけでございます。  確かに今年に入ってからも、全農においては一回の値上げと二回の値下げを行ってはおります。去る九月にはトン当たり五千円の値下げを行っております。しかし、私の試算によりますと、九月の時点での円の相場である二百六十五円が現在の二百四十円に上がったといたしまして、これを配合飼料の主な原料となっているトウモロコシとコウリャンにしぼって試算してみますと、トン当たり約千七百円程度安くなるわけであります。  配合飼料の価格決定について、今後の円相場の推移、見通し、あるいは原料となる輸入飼料の価格の見通し等についても考慮しなければいけないと思いますが、農林省はこの配合飼料価格についてどうお考えになるか、あるいは値下げをさせるその指導というものはどのように手を打たれるかをお答え願いたいと思います。
  128. 大場敏彦

    ○大場政府委員 配合飼料価格、これは統制価格ではございません。また、農林省自身が管理している価格でもございませんので、結局メーカーが自主的に決めるという事柄でございます。しかし、事が畜産の基礎生産資材でありますから、私どもかなり厳しい指導をしている。原則として年間、上、下分けまして、上半期、下半期ごとにそれぞれ価格を見直しまして、引き下げるときは引き下げる、こういった措置を従来からとってきております。いま御指摘になりましたように、その途中におきましても、かなりの激しい変動がありました場合には、価格の改定をするということをいたしておりまして、期の途中でありましたけれども、九月にはトン当たり五千円の値下げ、これは約九%でありますが、値下げを実施してもらったという経緯があります。  その後さらに円高ラッシュというものが続きまして、それによる原料面のコストの節減ということがあるのじゃないか、こういう御指摘でございますけれども、それはやはり当然あるだろうと思います。しかし、また一方、残念ながら配合飼料の主原料でありますトウモロコシ等の市況が、九月値下げのときに比べまして、かなりシカゴ相場等に対しまして上がってきておるということがございます。それから、ことに問題になっておりますのは、たん白質系の飼料、つまり大豆油かすとかあるいは魚かす、そういったものの価格もやはり同様に騰勢に転じてきているといったことで、下げ要因ばかりではなくて、それを相殺してどうも上げ要因が残念ながら出てきている、こういった状況であります。  しかし、いずれにいたしましても、もう十二月に入っているわけでありまして、来年一月以降の価格をどうするか判断する時期に達しておりますので、そういった円高傾向とか、原料の価格の変動というものの将来の推移も含めまして、今月中旬には見通しを立てて、来年の一月−三月あるいは一月−六月の配合飼料価格をどうするかということにつきましては、厳重に、生産者団体を集めまして指導はしたいと思っております。
  129. 吉浦忠治

    吉浦委員 鶏の方も大場局長の方ですか。——鶏の点でちょっと付随してお尋ねをいたしますが、牛肉から鶏に移って申しわけございません。  最近、やみの生産調整、いわゆる鶏の生産調整でございますけれども、お米じゃございませんが、農林省は四年前から、畜産危機当時以来養鶏の生産調整を続けておりますが、去る先々月の十月二十九日には「採卵養鶏について」という通達、いわゆる現在の羽数を凍結するという通達を出されたようです。畜産局長の名前で出ております。この方針を一般の養鶏農家は、歯を食いしばって守ろうとしているわけです。特に私の地元の千葉県においては一生懸命守っておりますが、ちょっと名前を挙げてはぐあいが悪いのですけれども、ほかの県でございますね、その県の出身の代議士もいらっしゃるようですが、宮城県とか茨城県を初め、あちらこちらで商社系の業者がインテグレーションという形でかなりのやみ増羽を行っていらっしゃるようです。東京などに卵を直送しているような事実があるようでございます。  これについては、すでにまじめな養鶏業者の団体等によって明確な実態がつかめて、現在まだ調査中のところもありますが、いずれにしても、こうしたまじめな団体から、これに対する農林省の取り締まりというものが甘いのじゃないかという声があるわけです。弱い者いじめのこうした実態について、農林省はもっと、通達だけじゃなくて、実効ある強力な行政指導というものをすべきじゃないかと考えますが、よろしいですか、お答えを願いたい。
  130. 大場敏彦

    ○大場政府委員 鶏卵の生産はかなりの段階にまで達してきて、伸びないということはないのですが、これからの伸びというものはかなり緩慢である。こういったことで、需要に見合った形で供給というものを調整していく必要があるだろうということで、全国的にいま先生御指摘になりましたように、四年前から、生産調整という言葉が適当であるかどうかわかりませんが、需要に見合った形での生産をお願いしているといった状況であります。もちろんこれは強制ではございませんで、自主的な形でお願いしているということでございます。  そのために、国の段階とかあるいは県の段階とか、それから末端の町村段階で生産調整のための協議会という組織をつくりまして、そこで実効を期している、こういったことであります。農家方々に非常に御協力をいただいて、総体としては円滑に推移している、かように思っておりますが、中には比較的規模の大きい不心得者がいて、せっかく一般の零細な農家協力しているにもかかわらず、そういった非協力的な者も出てくるということがございます。そういった場合には、当然これを行政指導で是正しなければならないわけでありますが、町村の段階でできないものは県の段階、あるいは県をまたがるような場合には農政局の段階、つまり農林省でありますけれども、地方農政局の段階、あるいは本省でも場合によってはしますが、そういった段階で不心得な業者を招致して、それの是正を求めているというような処置をとっております。従来も、そういった非協力的な業者がありますれば、本省に必要に応じて招致して、いろいろ是正しておりますが、具体的な事業者の名前がわかりますれば、これは県等を通じて聞きますが、私ども積極的にその業者について協力方を要請し、一部に正直者がばかをみるということのないような措置はいたしたいと思います。
  131. 吉浦忠治

    吉浦委員 しっかりお願いをいたしたいと思います。いまおっしゃるように、そちらでお調べにならなければ、こちらの方から資料を提供してぜひ取り締まっていただきたい、こういうふうに思いますので、よろしくお願いいたします。  続きまして、これも私の地元の問題でございますけれども、白菜がいま大暴落をいたしておるわけでございます。来年度以降に予定されております水田利用の再編成とあわせて、いわゆる野菜産地などでも神経をとがらせているわけですけれども、白菜、キャベツなどの露地野菜の主力栽培はやはり自衛手段をとらなければならないのか、いまの温暖な気候だけが左右する最大の要件なのかどうか、どうすればこの大暴落を救うことができるのか、まず、この点を先にお答え願いたいと思います。
  132. 杉山克己

    ○杉山政府委員 ことしの秋冬野菜の作付面積、白菜、キャベツ等は、全体としてはほぼ前年並みでございました。ところが、いま先生御指摘のように、大変、例年にない好天が続いております。気温も高くて、日照も十分である、しかも適度に雨量もあるというようなことで、大豊作になっております。それから、生育も促進されているというようなことから、最近の出荷がきわめて多くなっている、このため価格が低落をしているわけでございます。  今日のような事態になるまでに、生産者団体による計画的出荷等も努力されたところでございますが、結局なかなか価格の低落はやまないというようなことで、白菜、これは茨城県のもの、それからキャベツ、これは愛知県のものにつきましては、緊急避難的な措置といたしまして、市場隔離措置をとったところでございます。要するに市場への出荷をとめる、もう運賃も償わないという条件のものですから、市場への出荷をとめる、そして価格の回復を図る、そして出荷をとめたものに対しては、国からこれを補てんするための助成金を出すというような措置をとったところでございます。  しかし、これは起きた現象に対する緊急避難的な措置でございまして、私どもは、確かに天候に左右されるところはございますが、今後とも生産者団体の全般的な協力を得まして、出荷の調整といいますか、計画的な出荷に努める、また特に豊作になった野菜につきましては、消費者の消費の拡大を図るようにPRもするというようなことで、需給面での改善措置を図っていくことが先決であるというふうに考えております。今後ともそういったことに努めまいりたいと思っております。
  133. 吉浦忠治

    吉浦委員 この白菜、キャベツの大暴落というのは、心ず正月に向けて大暴騰する、これはもう当然なことでございます。いま大暴落していれば、わが子を殺すような思いでいまつぶしてしまっているわけです。そうすれば、これは正月、年未年始にかけて大暴騰するような状態を目の当たり見ているわけでありますので、農林省、いまのようなお答えでなくて、やはり機構的な問題だけでない救済方法というものはお考えになっていらっしゃらなければならぬと思うのです。そういう点をお尋ねしたわけですから、なるべく簡単にお答えいただきたいと思います。
  134. 杉山克己

    ○杉山政府委員 運賃も償わないというような状況のもとにおいては市場隔離を行ったわけでございますが、価格が一定の基準価格を下っている場合は、これに対して国から価格差の補てんをする、そういう価格保証措置は別途基本としてあるところでございます。ただ、私どもそういう措置の対象にするということ以前に、やはりできるだけ計画的な出荷、先生いま御指摘のように、いまよけい出れば年末年始物が足りなくなるのじゃないか、私ども年末年始は何とかしのげると思いますが、その先二月、三月が出術が少なくなって価格の高騰することが心配されるわけであります。  そこで、今後の問題でございますが、品種等についても遅植えのものをもう少し奨励するとか、生産者団体でもいろいろ工夫していただくというようなことによって、時期の調整を、天候に左右されるということも確かにございますが、人力でもできるだけ努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  135. 吉浦忠治

    吉浦委員 最後に、大臣にお尋ねをして質問を終わらせていただきますけれども、先ほど大臣の所信表明のような最初のごあいさつのときに、二、三、あら探しをしているわけではございませんけれども、今度の大臣の取り組みはどういう農政かという質問がありましたら、農政危機突破農政というふうなことでございましたが、お言葉が違いはしないかというふうに思います。農政危機ではなくて、農林水産業危機を突破するというふうでなくてはならぬと思います。政治をよくされるのは当然でございますから、農林水産業危機を突破する農政であってほしい、こういうふうに御訂正をして取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  最後に、同僚の野村議員からお米の生産調整について細かな質問がございましたので、大枠の点だけを最後にお願いをしたいと思いますが、私も地元を回りまして、いま最末端で大混乱をいたしております。と申しますのは、何を聞かれても答えられるような人が実際の最末端にいないわけであります。そういうわけで、農林省のここのところでも四日間審議してもまだ結論が出ないぐらい多くの問題を含んでいるのが今度の米の需給均衡化対策でございますので、先ほど大臣が緊急避難的な措置だとおっしゃったけれども、途中で言葉を訂正されましたが、そうでなくて、やはり恒久的な長期視点に立つ転作でございますので、私はここで国民的な合意を得るために、大混乱をしている末端のことを思いますときに、やはりこれほどの大改革をなさる場合には十分な期間を置かなければ国民的合意を得ることはできない。その一つ一つの問題を聞かれても農協で答えられない、当事者も答えられないというふうなことで、これはどう処理なさるのか、目前に麦もまけないような状態になっている現状を見ますときに、暫定的にも一カ年の延長を、大英断の農林大臣でありますので、その所信のほどを最後にお聞きをして、質問を終わらせていただきます。
  136. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほどの一口で言う農政の表現はどうかということについて、御指摘がありました。まことにそのとおりでございます。農林水産業危機突破農政といいますか、そういう姿勢で取り組みたいと思います。  それから、生産調整について一年待てないか、時間をかけてはということでございますが、これはもうことしの生産状況からいきまして、来年豊作であろうと不作であろうと、四百六十万トン余剰米が出るという、もう非常に切迫した状況にございます。そこで、ことしはいつもより早く生産調整の目標を各県におろしまして、普通ですと二月ごろおろしておったのでございますが、ことしは十一月の十九日ですか、いつもよりかなり早く都道府県におろしまして、ぜひとも協力願いたいということで、知事さんや市町村長さんに御苦労を願っておるところでございまして、すでに十の県は大体目安を得たというところまできておりますので、何とか委員の先生方も御協力いただいて、来年から生産調整ができますように、私たちもさらに一層の努力はいたしますが、一年待つということは残念ながらでき得ない状況にありますことを御了解いただきたいと存じます。
  137. 吉浦忠治

    吉浦委員 終わります。
  138. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 神田厚君。
  139. 神田厚

    神田委員 中川大臣、大変なときに大臣に御就任をされまして、日本農政の一大転機と言われるこの時期でありまして、日本農業農民を守るという立場で、今後全力投球で御尽力を願いたいと思うのであります。  さて、現下の問題といたしまして、私どもは食糧自給率の向上という至上課題を一方では持っております。もう一方では、急速に問題になってまいりました輸入農産物の枠の拡大という問題、この二つの課題を一体どのような形で調整、調和を図っていくおつもりなのか、まず御答弁をいただきたいと思います。
  140. 中川一郎

    中川国務大臣 確かに、御指摘のように、いまの農政が非常にむずかしいのは、自給度の向上、一方ではドル対策からくる自由化という、まさに相矛盾する二つの課題を同時に解決しなければならないというむずかしさがあるわけでございます。しかし、一義的には、やはり食糧の自給度の向上ということがまず基本に置かれなければならない。それを阻害しない範囲内でできるだけの国際協調を図っていきたいということをたてまえとしておるつもりでございます。
  141. 神田厚

    神田委員 さて、今度の黒字、いわゆるドル減らしを基幹としました外国からの農産物自由化の要求、これと輸入拡大の要求の背景といいますのは、一九七一年のガットの東京会議における東京宣言及び昨年の福田総理が行かれましたロンドンの先進国首脳会議において、各国間の保護貿易の復活を抑えるために開放経済体制を強化して自分もその先頭に立つ、こういうふうに言い切ってきたり、あるいは輸出入の不均衡を是正するためにそのことを全力を投じてやっていきたい、こういうふうに、日本政府の首脳がやっていることと言っていることとが違うという外国からの不信感が私はその根底にあるというふうに考えているわけであります。  そして、具体的に先日八項目にわたる対外の経済政策というものを決められました。この問題につきまして、この八項目のうち農林省に関係するものといたしまして、たとえば第一に、東京ラウンド推進に積極的に取り組むというような問題、ここには自由貿易を促進するということ、さらにはスイス案に基づいて向こう八年間で関税率を平均四〇%引き下げの実現を目指すということ、これが明記されております。  さらに、第三番目では、残存輸入制限品目の割り当て枠の拡大を図る、そして明確に残存輸入制限品目の一部を自由化する、それから今年度割り当て枠を相当額拡充して来年度も安定的拡大に努める、こういうふうに書かれておられます。  さらには、七番目には、備蓄の前払い輸入等を推進するという中で、穀物の備蓄を検討する、こういうふうなことを明記されておられますが、この点につきまして、こういうふうな形で対外経済政策というものをお進めになるのかどうか、聞きたいと思います。
  142. 中川一郎

    中川国務大臣 御指摘のとおりの要請があり、解決をしなければならない課題を御指摘いただきまして、そのとおりでございます。  第一番目は、関税の東京ラウンドの積極的取り組みでございますが、これは国際間協調をしながら取り組むという姿勢で、わが国だけが特にやるものではありませんので、国際間の協調を図りながら協力してまいりたい、こう思うわけでございます。  その次は、輸入制限品目の枠の拡大という問題でございますが、これも協力はいたさなければなりませんけれども、だんだん御説明してまいりましたとおり、農産物に限っては、アメリカとの間は買い手市場でございます。千三百万トンという膨大な麦なり大豆なりトウモロコシというものを買っておりますので、それほど、しかるべき理由はないのではないか。あるいは仮に自由化いたしましてもドル関係で協力できるものは非常に少ないという観点から、もう一つは、わが国でいま農政危機とも言われるくらいの最大の仕事、作付転換、総合食糧政策の樹立という非常にむずかしい仕事と取り組んでおるこの際、その政策に逆らうようなことがあってはならない、こういう観点から、そう要請に一〇〇%こたえられるものではないということははっきりしておるところでございます。ただ、総合農政なりあるいは総合食糧対策を推進する上において支障がないと思われるものがあるならば、この際、姿勢としてだけでも協力すべきであるというところから、二十二品目の中で小枝あるいは葉っぱというような——一本柱、二十二本の一本を倒すというわけにはまいりませんけれども、まあできるだけの御協力をして誠意だけは示したいということで作業を進めておるところでございます。  また、輸入枠の拡大ということにつきましても、この自由化の問題と同じように、総合農政を推進する上に支障を来すようなことがあってはならない限度内におきまして、少々なりとも協力できるものがあったら協力したい、こういうことでございます。  第七番目に関連いたします麦の備蓄でございます。これにつきましては、国内備蓄はもとよりでございますが、さらに、アメリカそのものに、外国に備蓄する方法が技術的にあるならばということで、先般、調査団をアメリカに派遣をいたしております。もし、技術的に事務的に可能であるとするならば御協力もしてドル対策に御協力申し上げたい、こういう姿勢で今回の経済対策に取り組んでおるということでございます。
  143. 神田厚

    神田委員 そうしますと、新聞などでは枝葉というふうに見たのですが、いま大臣は小枝と葉というふうに言われました。枝から小枝に変わったようでありますけれども、いずれにしましても、そういうふうな形でやっていくと言いましても、それでは具体的に農産物でどのくらい、何億ドルくらいこれを減らすつもりなのか、この辺はいかがでございますか。
  144. 中川一郎

    中川国務大臣 こういう表現をしているのです。自由化という木の幹がありまして、二十二本の枝が非自由化されております。その枝一本、すなわち二十二品目一本をおろすわけにはどうもいかぬようだ。その二十二本の先にあります小枝の部分ならば何本かやれるのではなかろうか。そしてまた、小枝は落とせなくともその先の葉っぱ程度は幾つかおろせるのではなかろうかということでございます。  このことによるドル協力程度はどれくらいかということでございますが、そのことを含めまして、どの品目、どのくらいということは、外交政策上といいますか、交渉する上に、ポケットの中に入れて交渉することが事を進める上にうまくいくのではないかというところから、この辺のところはもう少々ごしんぼうをいただきたいということで、お答えは御遠慮をさせていただくというか、お許しをいただいておるところでございます。
  145. 神田厚

    神田委員 具体的にどれがどうだという問題はいろいろあるのでありましょうが、私たちはやはり日本農政を守っていく立場から、ひとつ十分な御配慮をいただかなければならないというように考えているわけであります。  それで、一方、アメリカなどの政府部内の筋からの話によりますと、農産物自由化日本が反対するならば、アメリカが対日輸出をしている農産物、具体的には大豆、それから小麦、こういうものについての輸出ストップをするというような話も伝わっているようでありますが、その辺のところの見通しはどうでございますか。
  146. 中川一郎

    中川国務大臣 アメリカも大変な過剰の穀物を持っておりますので、これをストップするというようなことはあり得ないし、そのような強硬な話は聞いておりません。
  147. 神田厚

    神田委員 そうしますと、先日決められました経済対策の対外経済政策というのは、どれくらいの期間効力を持つというか、政府といたしましてはこれを推進をしていくおつもりなのか。今回限りの交渉にするのか、あるいは継続的に毎年毎年こういうふうな形でやられるのか、その辺はいかがですか。要求が出るたびにやるのですか。
  148. 志村純

    ○志村説明員 お答えいたします。  今回のような形の日米間の特別の交渉ということは、一応決着がつけばそう毎年繰り返すものではないと思います。ただし、具体的な交渉ということでなしに、交渉の結果まとめられた関税の引き下げというようなものは、将来変更がない限り続きますし、備蓄のような一回限りの措置のものについては今後は繰り返されない、措置の内容によって永続性は異なる、こういうことだろうと考えます。  いずれにしても、今回のような交渉は、今回終われば毎年繰り返すものではない、このように考えております。
  149. 神田厚

    神田委員 これはアメリカ向けにつくられたものでありますけれども、そうしますと、いわゆるECあたりも日本から約五十五億ドルくらいの輸出超過になっておりますね。ECあたりからも、あるいはニュージーランド、オーストラリアあたりからもいろいろな話が来ているのではないだろうかと思うわけであります。したがいまして、そちらに向かっては、このつくられました対外経済政策の八項目というものを準用していくのか、あるいはECやほかの国に向かっては新たに違う政策をとっていかれるのか、その辺はいかがでございますか。
  150. 志村純

    ○志村説明員 今回の措置につきましては、アメリカだけを念頭に置いたわけではありませんで、ECその他の国のことも考えながらやっております。  この際、私ひとつ申し上げておきたいと思いますのは、今回の措置の内容は農産物が中心ではなくて、工業製品の関係が中心でありますので、そういう意味で、その効果はただ単にアメリカだけではなしに、いろいろの国に及ぶものと考えております。
  151. 神田厚

    神田委員 そうしますと、大体ほかの国全部に対しましてこの経済政策の八項目というものを準用していく、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  152. 志村純

    ○志村説明員 さようでございます。
  153. 神田厚

    神田委員 その中で、特にニュージーランドのマルドーン首相が米国を公式訪問中に発言をしたニュースが入っておりますが、これはニュージーランドからの輸入品に対する貿易障害を取り除かない限り、来春の二百海里経済水域実施後の入漁許可証を日本には一通も与えない、こういうふうなことをワシントンでニュージーランドの首相が言っておられますけれども、こういうものにつきましてはどういうふうにお考えになりますか。
  154. 中川一郎

    中川国務大臣 そういう話はわれわれも聞いておりますが、二百海里の問題とニュージーランドの関心品目であります酪農あるいは乳製品、そして肉というようなものとは直接連動がありませんので、鋭意二百海里は二百海里、また農産物農産物、切り離して交渉するよう、また相手側も、誠意を持って努力するならばこたえてくれるものだろう、こう思っておる次第でございます。
  155. 神田厚

    神田委員 この項目につきまして、さらに関税の前倒し引き下げの実施、これを行うというふうに言われております。具体的にどういう農産物に対してどうするというようなことはちょっといま言えないという話でありますけれども、大蔵省といたしましては、こういう問題も含めまして、国内農産物の保護とそれから現在進められようとしている自由貿易の原則というようなものをどういうふうに調和させていこうとしているのか、あわせてお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  156. 中川一郎

    中川国務大臣 関税の前倒しにつきましても、農政を推進する上に支障のないように、先ほど農産物あるいは関連品目自由化の問題と同じ考え方できめ細かく配慮して対処してまいりたい、こう思っております。
  157. 神田厚

    神田委員 次に、現在、先ほどもちょっと問題になりました円高と国際農産物の値下がりによる差益というものが膨大な金額で出ているわけであります。これが残念ながら消費者に還元をされてない。この問題につきまして、少し詳しい数字を挙げながら御答弁をお願いしたいと思うのであります。  まず、石油ショック以来全世界の自由諸国というのはスタグフレーション、要するに不況下の物価高、それから失業率の増大、こういうものに苦しめられております。そういう中で、五十二年九月現在の対前年同月比の消費者物価、これは値上がり率を見てみますと、日本は七・六%、アメリカが六・六%、イギリスが一五・六%、西ドイツが三・七%、フランスが九・七%、イタリアが一八・六%、カナダが八・四%、こういうふうになっております。いずれも平常状態とは言えない高い数字となっておりますけれども、日本はイギリスやイタリアと比べますと、比較的物価の抑制、これに成功している、こういうふうに考えられるわけであります。しかし、円の対ドルの相場が五十一年に比べまして二〇%も値上がりをしているわけであります。そういう事実を見ると、この対前年比七・六%という消費者物価の値上がりは、これは見逃しがたい大問題と言わなくてはなりません。私は家計支出の三〇%を占める食料費支出を少しでも軽減するという見地に立ちますと、食料品価格の問題を、輸入食料品も含めまして、末端の消費者価格にどういうふうに反映されているかということをもう少し詳しく見ていかなければならないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  そこで、農林省の統計情報部の資料によって五十一年度の農畜水産品輸出入の実績は、大体、農畜水産品の総輸出比率が一・七%に対して総輸入比率が二〇・七%、こういうふうに言われております。この輸入高を金額にしますと、約四兆円になっております。したがって、これを一億一千万国民の一人当たりに換算しますと、約三万六千円ということになります。そして、この輸入食料の価格がコーヒー、カカオ、それから一部の油脂原料、魚介類を除き、ほとんど大幅に個下がりをしております。しかし、それに加えて、八月以来の急激な円高ドル安によってこれがさらに値下がりしていることは疑うべき余地もないわけであります。  ところが、こうした事実があるにもかかわらず、国内の食料品の消費者価格はおおむね値上がりをしている。消費者がこれで大変困っているし、もう少し何とかならないかという気持ちでいることは疑うべくもないのでありますが、その中で、この主要食料品の対前年度の値上がり率というものを比較しますと、いずれも大変な値上がりをしているわけであります。これらの中には輸入の依存度の高い物も大変数多くあるのでありますけれども、その大部分は輸入しておりましても値上がりしている。値下がりした物も値下がり率は非常に低いのであります。これを仮に円高ドル安による輸入差益を二〇%と見ると、約四兆円の輸入食料品のうちの八千億円が円高差益であるというふうにわれわれは考えております。そしてさらに、輸入した物の値下がりした物と値上がりした物のこの差を約一五%というふうにとりますと、これの合計が約六千億円、ですから両方で一兆四千億円くらいの食料品の値下がり益が推計されるのであります。これをそのまま消費者価格の値下がりとしたならば、一人当たり一万三千円、一世帯で平均三・八人として約五万円の家計の支出減となる勘定です。  これだけ食料費支出が軽減されれば、それが国内の潜在購買力を喚起しまして、国内景気の回復に果たす役割りも大変大きい、こういうふうに考えているわけでありますが、当局はこうした円高差益と農畜水産品の値下がり差益を国内の加工流通業者に独占せしめて、食料の末端価格の値下げに結びつけようとしていないけれども、こういう問題についてどういう対策を講じようとしているのか、その点に対する姿勢をお聞きしたいのであります。膨大な差益でありますが、それが全然消費者に還元されていない、この問題について御答弁いただきたいと思います。
  158. 杉山克己

    ○杉山政府委員 円高によって輸入価格が下がっているということは事実でございます。これが食料品全体でどのくらいの額になるかということはいろいろな計算の仕方があろうかと思います。いま先生御指摘になりましたような計算の仕方も一つの方法であろうかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、それらの効果を、物価対策の観点からも、これを国内販売価格に反映させることは私どもも必要だと考えております。円高が起こりました十月のころ、十月十四日、物価担当官会議の決定におきましても、円高に伴う物価対策の推進についてということでその方針が明らかにされております。農林省といたしましても、今後とも民間取り扱いの輸入農林物資については、その価格動向を注意しながら、消費者に対する情報の提供でありますとか関係業界に対する指導等、適切な対応を図ってまいりたいと考えております。  それから、円高の傾向につきまして、また、その国内価格への反映につきましてすでに経済企画庁からさきに公表されておりますが、第一次輸入価格動向調査、農林省関係では十四品目の動向が明らかにされております。ただ、この効果が末端の国内販売価格にどう影響してくるかということになりますというと、かなりのタイムラグもある。それから、物自体の性格といたしまして卸売市場を経由するものもある。それから、原材料として輸入されて、国内で加工、製品化されるものもある。あるいは相当高い関税、消費税等を負担するものもある。それから、海外市況によって価格そのものが大きく影響を受けるものがございます。そんなようなことで、なかなか最終消費者価格の上でどれだけ効果があったかということを把握するのはむずかしい問題ではございます。  ただ、私ども、その第一次の調査に引き続きまして、経済企画庁調整をいたしまして、第二次の調査を第一次調査品目と同様の十四品目についても調査することといたしております。そういう全体的な方向の中で個別の物資につきましても、たとえば水産物の一部あるいは飼料、えさでございますとか、そういったものについても、個別の具体的な価格引き下げの指導を今日まで行ってまいっているところでございます。
  159. 神田厚

    神田委員 経済企画庁、来られていますか、ひとつお願いします。
  160. 宮本一三

    ○宮本説明員 お答えいたします。  ただいま農林省の方から御説明がございましたように、円高の効果が物価に反映されること、これは現在の物価政策を進める上で最も重要な課題だ、このように私たち考えております。先生御指摘のように、円高に伴うメリットが物価面でできるだけ早く出るように努力すべきだと私たちも考えておりまして、いろいろ努力いたしております。  ただ、御承知のように、日本輸入構造を見ますと、その八割までが原材料関係でございます。したがって、円高の効果が最初にあらわれるのはやはりその大きなウエートを占める原材料関係、これは確かに卸売物価に反映いたしております。最近の卸売物価は、十月の時点で前年度に比べまして〇・一%の上昇、ほぼ横ばい、それから十一月中旬で見ますとマイナス〇・八%というふうに、昨年の水準よりも下がっております。これは国内の景気の問題もございますけれども、同時に円高の効果がかなり大きくあらわれております。  そういったことを通じまして、漸次、小売物価、消費者物価にも反映してくるというふうに期待しておりますし、また、いま御指摘のような農産物で直接消費財というふうなものについても、これができるだけ早く小売価格に反映されるようにあらゆる努力をいたしております。  以上でございます。
  161. 神田厚

    神田委員 時間がないので、余り詳しく御質問できませんが、たとえば輸入食料品全般についてもいろいろ御質問申し上げたいのでありますが、特に輸入金額の大きいものを拾ってみましても、前年比の値下がり率を見ますと、小麦粉が半値になっておりますね。さらに、砂糖は三分の一です。それから、三〇%以上の値下がりを示しておるのにはトウモロコシや牛肉、こういうものがあります。それから、バナナは二五%、豚肉一三%、そして、こういうふうな中で、これらが全然、末端の消費者価格に影響を及ぼしていないのでありますね。この辺のところをやはりもう少しきちんとした手を打っていただかなければいけない、こういうふうに考えるわけであります。  輸入食料品の単価とこれを原料とした加工食品、これの末端消費者価格を五十二年の八月の時点で比べてみましても、大変な倍率になっております。主なものだけ見ましても小麦粉は四・六五倍、それから大豆が十倍、輸入牛肉が五・二倍、羊の肉が四・一三倍、バナナが四・六五倍、グレープフルーツが四・十六倍、こういうふうにどんどん、その末端の価格消費者の方に還元をされていない。こういう状況をどういうふうにして直していったらいいのか、これをひとつお聞きしたいわけであります。  どうして末端価格が値上がりするかという問題につきましては、いろいろ考えられると思います。関税とか価格調整金、それから輸入量の制限、非関税障害それから消費税、こういうものでかさ上げがされたり何かされて、そういうふうになっておりますね。したがって、私は、こういう問題につきまして、輸入価格と末端消費者価格との格差を縮小するために、当局は輸入物資の流れに沿った価格形成要件を追跡調査をすべきである、そして、その不合理を思い切って改める必要があるというふうに考えるわけでありますが、その点はいかがですか。
  162. 杉山克己

    ○杉山政府委員 確かに、輸入差益が消費者価格の上に反映してこないということは問題であろうかと思います。私、先ほどタイムラグの問題もある、それから把握の仕方がなかなかむずかしいというようなことを申し上げました。しかし、今後とも農林省のあらゆる行政の機会を通じて、これは消費者に情報を提供する、関係のメーカーあるいは販売業者に指導をするということで、できるだけその実現を図っていくように指導してまいりたいと考えております。  それから、そもそもそういうことの実態について追跡調査をして、しっかり把握すべきでないかということ、これはごもっともでございます。したがいまして、そういう考え方のもとに、先ほども答弁申し上げましたが、企画庁とも打ち合わせをいたしまして、私ども農林関係で十四品目につきまして——これは主要な輸入食料品でございます。十四品目につきまして、再度綿密な調査を行うということにいたしております。
  163. 神田厚

    神田委員 企画庁はどうですか。
  164. 宮本一三

    ○宮本説明員 企画庁といたしましても、輸入品の価格が小売価格に反映されるように最善の努力をしたいというふうに考えております。で、いま農林省の方から御説明がございましたように、私たちといたしましては追跡調査を行いたいというふうに考えております。  実は、第一回目の追跡調査というのは、昨年の十二月の時点とことしの六月の時点、二時点をとらえまして、主要な輸入消費財三十五品目、農林関係でいま言いました十四品目を含んで調査をいたしました。その結果、実はその時点では輸入品の価格が、円高にもかかわらず、輸出価格、FOB価格ドル建てで上がったというのが相当ございまして、結果といたしまして三十五品目の中で円建て輸入価格が上がっていたものが二十品目ございました。それから、円高の効果というのがありまして、輸入価格が下がっていたものが十五品目あったということでございまして、輸出価格それ自体がかなり上がっているという事実も発見いたしました。  それにいたしましても、それからさらに円高が相当進んでおりますので、最近の時点をとらえまして、それがどういうふうになっているか、また先生からいま御指摘がございましたように、輸入段階から末端の小売価格の段階に至ってどういうふうな過程で価格が形成されているかということも、できれば調査したいというふうに考えております。
  165. 神田厚

    神田委員 これはいつまでに調査するんですか。
  166. 宮本一三

    ○宮本説明員 まだ具体的にいつまでに調査を完了し、発表できるかということにつきましては、ここでお答えできないのでございますが、できるだけ早い機会に発表できるようにまとめてみたいというふうに考えております。
  167. 神田厚

    神田委員 これはどんどん、全部、企業の収益の中へ組み込まれていってしまっているわけですね。ですから、そういう前にやはりもっと早く迅速に調査をして発表してもらわないと、せっかく調査しても、もう後の祭りというようなことになってしまうわけでありますから、ひとつその辺のところは十分早く進めていただきたいというように思うのであります。  それで、時間がありませんから、二、三の特に目立っているものについて御質問申し上げたいと思うのであります。  まず、一つは麦芽、これが値下がりしているのにビールは値上げをしていますね。御案内のように、ビール業界というのは寡占産業の見本のようなものでありますけれども、これらを見逃していっていいのかどうか。  それから、二番目には砂糖、これは分みつ糖が前年比で三分の一の価格に暴落しているのに砂糖はたった七%しか値下がりをしておりません。  それから、牛肉、これは前からもいろいろ問題になっております。四割近い値下がりなのに、末端価格は依然として高値で推移している。  それから、バナナ、これも大幅な値下がりをしているのに、末端価格は一四%も値上がりをしている。  こういうものにつきましてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  168. 大橋實

    ○大橋説明員 お答えいたします。  ビールについてでございますけれども、ビールの価格は五十年の三月以降百八十円となっておりましたが、五十一年の一月には増税によりまして十五円値上がりいたしまして、現在、その後ずっと引き続き百九十五円というふうになっているわけでございます。  一方、ビール用の麦芽でございますけれども、近年では国産大麦というものが優先的に使用されるというルールになっておりまして、大体原料の一五%程度、八万トン程度でございますが、これを使用しておりまして、およそ残り三十五万トンが輸入麦芽または輸入大麦から製造しているものでございます。  それで、輸入麦芽について見ますと、輸入価格は、前年平均と本年一−十月平均で見ますと微増しているということでございまして、ごく直近の十月をとってみますと、前年平均に比べますと四%下がっておりますけれども、そういうことでございます。  それから、国産の大麦でございますが、本年度から麦価の算定方式が変更されたということがありましたようで、ビールメーカーの購入価格もおよそ二七%程度上昇してきております。そういうことでビール用の麦芽全体として見た場合には必ずしも安くなっていないというのが実情でございます。  以上のことによりまして、値下げ原因というのは原料面からは特に見つけるのはむずかしいのじゃないかというのが現状でございます。
  169. 杉山克己

    ○杉山政府委員 砂糖につきましては、国際相場もかなり下がっております。それに円高の傾向もありまして、輸入価格、国内の輸入砂糖の購入価格というのは低落しているわけでございます。ただ、わが国におきましては、国内糖価の安定と国内産糖の価格支持という政策の観点から、糖価安定法に基づきまして輸入糖について価格調整を図るという措置がとられております。したがいまして、むしろ国際価格が上がっても、あるいは国際価格が下がっても、それをそう敏感に国内価格に直ちに反映させるというような方式をとっていないこと、つまり安定させるということのために、輸入価格が低落した場合におきましても調整金あるいは安定資金というような形でこれが調整されますので、直ちに国内価格の低下にはつながらないという仕組みになっているわけでございます。  これは、下がった場合には、いかにも下がっているのに消費者価格が下がらないではないかというおしかりを受けるように見えますが、上がった場合のことを考えての全体的な価格調整措置でございますので、ひとつ御理解をいただきたいと考えております。
  170. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 バナナでございますが、バナナは昨年実績では八十三万トンくらい輸入されておるわけでございます。これは食品でございますので、季節的な需要変動がございます。そういうようなことで、需給関係でも値段は動くわけでございますから、先ほど来光臨御指摘の円筒という問題ばかりで値段が動いておるわけではございませんが、本年の一月から十月までの値動きを宛てみますと、対前年で見まして、CIF価格の対前年がイコールの月、同じ月が二カ月ありまして、それよりもやや上がった月が一カ月ございます。つまり、十カ月のうち三カ月はCIF価格が同じか上がっておるが、それ以外は下がっておる。浜値と卸売価格も十カ月のうち三カ月分だけが上昇いたしまして、それ以外は下がっておるという状況、それから小売価格は、これは農林省統計情報部の資料によりますが、いまの浜値、それから卸売価格、これとちょっとタイムラグが起きましてずれまして、いずれも十カ月のうち三カ月は上がっておりますが、それ以外は全部下がっておるというような状況でございまして、私ども統計数字で見る限りにおきましては、総体といたしましては前年に対しましていずれも下がっておるという形に出ておるわけでございます。
  171. 神田厚

    神田委員 時間がありませんので、最後に御質問申し上げますが、バナナなどのとり方は、私どもの計算ではやはり末端価格は上がっているのですね、どういうふうな御計算になっておるかわかりませんけれども。  それで、円高と農産物の値下がり益というものをこういう形で放置をしておきますと、大部分が大手企業や輸入業者、これの経常利益として計上されてしまいまして、配当と社内留保という形で消化をされてしまって、消費者には全然還元されてこなくなってしまう。それで、こういうことは、これから先また輸入枠を拡大しようというようなときに、こういうような現象が続いたのでは、本当に消費者にとっても全くありがたくない話でありますし、まして輸入差益が、いろいろな問題が、こういういいかげんな形でなおざりにされているということにつきましては、大変社会的な問題になってくると思うのであります。ですから、この辺のことにつきまして政府がどういうふうな手を打っていかれるのか、これを大臣に最後にお聞きをしたいと思うのであります。  つまり、いろいろな問題はありますけれども、輸入コストの値下がりというものを消費者に還元をすること、このことについてまずよく肝に銘じていただきたいということ、さらに、これから先の問題といたしまして、政府輸入関税の引き下げや非自由化食料品の輸入増、非関税障害などの洗い直し、こういうことをもくろんでいるようでありますけれども、国内の農畜水産品の保護のため取っております各種の調整金や消費税などもこの際徹底的に洗い直して、そして、それらが真にその目的に合致して機能を果たしているのかどうかを検証する。それと同時に、やはり日本の現在の途上国型の輸入政策を先進国型に改めていくことが急務であろうというように考えるわけでありますから、どうか農林省といたしましても、国民のための農林省として、今後の方針大臣の決意を最後にお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思うのであります。
  172. 中川一郎

    中川国務大臣 全く御指摘のとおりでございますので、今後とも、いままでも一生懸命にやってまいりましたが、この上とも一層努力をし、しっかりした農村、同時に消費者対策を講じてまいりたい、こう思う次第でございます。
  173. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 津川武一君。
  174. 津川武一

    津川委員 本論に入る前に、地域的なことを一つお伺いします。  リンゴでございます。安くて売れない。そこで、青森県では農協も出荷しない、移出商の商人も出荷しない、出荷団体も出荷しないで過剰ぎみになる。三月、四月を迎えて余って腐る心配が出てまいりました。県も一万箱、何か加工に回したいなど、いろいろなことをしております。出荷団体ともいろいろ協議しているようですが、なかなかうまくいかないで出荷が思うようにいかない。これをどうするか、この点が一つ。  二つ目には、値段が下がっても売れない。そこで、売れていく方向にやはり消費の拡大に政府は乗り出さなければならないと思います。関係業者だけでは、地元ではもうどうにもならなくなっているので、県、国が大きくこの点で指導、援助すべきだと思うのですが、この二点を答えていただきます。
  175. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 過日も先生から当委員会においてこの点の御質疑がございまして、私ども担当官を青森県に派遣をいたしまして、これからの出回りは青森中心でございますから、関係の県庁の職員、それから農業団体の方々、それから商人系の組合の担当者、さらに産地の工場、加工工場でございますが、回らせまして、いろいろと相談をしてまいったわけでございます。さらに、今月に入りまして、十二月三日でございますが、県といたしましては、これらの関係者を総合いたします県のりんご対策協議会を開いて対策について協議をしたわけでございまして、先生御指摘の加工処理促進、県内での消費拡大、あるいは場合によって輸出に向けられないかという話、あるいはまた一般的な消費拡大のためのPR、こういったことについて協議をしたわけでございますが、先生御案内のとおり、あの地域の事情はなかなか複雑でございまして、私どももいろいろ助言をしてまいったわけでございますが、すっきりと方向が決まるというところまでまだきておりません。引き続き、この十日には在庫の調査などの結果をもとにいたしまして、さらに協議会の理事会を開いて、これらの問題について結論を出したいという意向であるようであります。  お話のように、ジュース加工等も真剣に考えているようでございますが、この辺、あるいはまた輸出という問題は相手のある話ですからなかなかむずかしい点もあろうかと思いますが、そういった生食用の通常の国内消費以外の消費がいかにできるかということがかなり重要になってまいると思いますので、私どもも十分この問題には関心を払って、適切な指導をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 津川武一

    津川委員 神田の市場でこういうことが起きたのです。市場の前の小売店で三百五十円に売っているのです。売れないものだから二百円にした。値段を下げた。いつものお客さんが来て、そのリンゴを見て、三百五十円のリンゴなら買っていくのだけれども、二百円のリンゴはきずに決まっているからと買っていかない。そこで、政府としてもリンゴという果物に対する国民の認識を深めていかなければならぬ段階に来たのじゃないか、そういう消費の指導もしていくように要求して、本論に入ります。  アメリカからの農産物輸入ですが、小麦、大豆、えさなどが農産物輸入の半分を占めております。そのために、日本農業をかなり阻害する圧力となっております。いままでも日本は、このようにアメリカに対して十分過ぎるほどの義理を立ててまいりました。私たちはむしろ隷属してきたと言ってもいいのです。そこへ今度のアメリカを中心とした外圧であります。大臣もそう言っております。国を挙げての騒ぎになっております。  ところで、この外圧の正体は何であるのか、これが問題なんです。アメリカが、いつ、だれが来て、どのように、アメリカ農産物のどれをどのくらい輸入しろと言ってきているのか、これを明らかにしてほしいのです。大臣は、外務省からこのアメリカ輸入要請を聞いたのか、経済企画庁から聞いたのか、総理から聞いたのか、ここらを具体的に明らかにしていただきたい。何だか幻にとらわれて騒いでいるみたいな感じもないわけではないのであります。というのは、内村農林次官が、アメリカからは農産物自由化は求められていないとまで言っている。大臣に答えていただきます。
  177. 中川一郎

    中川国務大臣 農産物自由化をやれというような具体的なことではありませんが、自由化を含めた輸入の障壁について解消してもらいたいというのは前々からありました。具体的には、ストラウスさんという特別機関に所属される方、先般リバーズという人が参りまして、具体的にそういった提案がございました。  しかし、全体を通じて言われることは、農産物が特にけしからぬ、何を何ぼ輸入しろというようなことは言ってきておりません。むしろ完成品、原材料以外のものの輸入の割合が非常に厳しい、こういうことでございますが、一般的にやはり輸入関税障壁なり自由化の問題については、協力できるものは協力して、これはアメリカから言われたというだけじゃなくて、百億ドルの問題ないしは円高の問題はむしろ日本の問題としてとらえるべきことでありますから、閣議においても、あるいは経済企画庁においても、あるいは牛場さんにおいても、まあ協力できるものは協力してくれと、こういう話もあります。  これに対処するのに、先刻来申し上げましたように、農政の譲れないものは断じて譲るべきではない、しかし協力できるものがあったならば少しでもしたい、こういう姿勢で臨んでおるところでございます。
  178. 津川武一

    津川委員 そうすると、大臣が直接向こうの責任者からは聞いてない、したがって何かわからないものと取り組んでいる。そして、薫製のニシンをやるとか、でん粉からつくるビタミンCをやるとか模索しているという状態はやはりいけないので、事の衝に当たる大臣が、直接向こうを呼びつけるなりして、向こうの腹も聞くべきだと思う。こう思いますが、そのことを大臣要請して進んでいきます。  次に、いわゆる円高ドル安、日本でたくさんドルを抱えてしまった、このことをどう見るかです。このことと、日本農業がどうこたえていかなければならないかの問題ですが、円高の原因としては、鉄鋼、自動車、カラーテレビなどの日本の大企業の集中豪雨的な輸出とアメリカ側のドルたれ流しなどであることはだれも疑っておりません。そのあおりを、その犠牲をなぜ農業農民がかぶらなければならないのかです。大臣はきょう劈頭のあいさつの中でも、農業は守る、自給力はふやす、農民の生活は守る、こう言ったばかりであります。鉄鋼、自動車などの集中豪雨的輸出は日本の労働者の賃金が低いことと、大企業という資本と国家が労働者への福祉に対して出し惜しみしているからであり、仮に輸出入のアンバランスを直すとしても、それは鉄鋼、自動車などの大企業の責任と大企業の出費でやるべきでありませんか。なぜこれを農業、弱い農民にかぶせてくるのかということなんです。  この点で大臣は、河本通産大臣や総理、通産省などとどのような交渉をしているのか、どんな態度でやっているのかを明らかにしていただきます。
  179. 中川一郎

    中川国務大臣 ただいまの御質問に先立ちまして、幻のものにこたえているのかということでございますが、そんなことではありません。だれが何やれと言うことは内政干渉でございますから、一つの品物について言われるゆえんはありません。ただ、姿勢として協力できるものは農林大臣責任においてこれを選んでおるということであって、たとえば、いま指摘がありました物品になりますかどうかは別として、そう農漁民、林業者に支障のないものなら協力しようという、農林省独自、農林大臣責任立場においてやっておることでありますことを御指摘申し上げ、むしろ幻であろうと何であろうと、外野席からこれをやれ、あれをやれなんて言われることは排除してまいらなければならぬという態度でございます。  なお、御指摘のように、円高の原因は鉄鋼だ、テレビだ、その他工業製品、まあ共産党式に言うと企業の圧力からきたのである、こういう言い方でございますが、私はそう思いません。やはり日本の経済がこれだけ力を持ってきた、円筒になり、ドルが余るだけの力を持ってきたというのは、日本のそういった輸出産業が効果があったからであり、その効果が農村にも反映をして、年々一〇%という、二兆数千億円という国民の、企業も含めて、財政投入が農業にできるということは非常な恩恵のあったことだと考えなければならないのであって、農業工業とが対立をするという関係は全くとらないところでございます。  なお、その犠牲になるということはいささかも考えておらないので、農業が犠牲にならない範囲で協力できるものがあればやろうということで、農村を守ることを第一に置いて、余力がもしどこかにあるならば、姿勢として協力しようと言っておるのでありますから、御理解いただきたいと存じます。
  180. 津川武一

    津川委員 私は、中川大臣農民の味方だと思っていたが、いつの間に大企業の味方になったのですか。この点で心配になるのは、大臣、あなたの言動なんです。あなたは大臣になった直後の幾つかの記者会見で、米国は日本の国際協力のマナーがよくないと怒っている、余り強がりを言っていると、単なるおどかしでなく、日本が混乱に陥る、もはや議論の時期でない、自由化枠拡大に踏み切るべきだ、自給率を上げるために農家に赤字作物をつくらせ、消費者にも負担を強いる政策は考え直すべきだ、石油ショック以降食糧自給向上ムードが強過ぎた、総合的に洗い直して一つでも二つでも自由化するという姿勢を示すことが大切だ、こんな意味のことを何回か言っています。農民は怒っています。私もあなたの言動に心配になりました。大臣になったばかりで何か言ったのでしょうが、気持ちが鎮静したいまでもまだ同じことを考えているのですか。考え直していただかなければならないと思いますが、いかがでございますか。
  181. 中川一郎

    中川国務大臣 一つも変わっておりません。やはりアメリカ日本に対してそういう気持ちを持っておることも事実であり、もし今回調整がいかなければ報復措置をとるであろう、こういうことも言っておりますから、これにこたえないで済むならばこれは結構なことでございますが、この対米調整をもしとらなければ、農村を含めて日本の経済全体がおかしくなりますから、この際、やはり協力すべきものは協力すべきだし、もう一つ、日本というのはムードが少し強過ぎまして、あのドルショック以来何でも自給度の向上ということに余り走り過ぎてはいかぬのではないか。安定的な自給度向上ということはやらなければなりませんし、これを忘れてはなりませんけれども、一つや二つ——私は、何も二十二のうちの一つ、二つと言ったわけではありませんで、小枝も一つならば葉っぱも一つということで、一つ以上二つ、三つ、四つ、できるだけのことは協力して、このむずかしい対米調整を何とかして国難を乗り切りたいということであります。  しかし、申し上げますが、農民を犠牲にしてなんという言葉は一つも使っておりません。共産党式のすりかえての物の発言はむしろ慎んでいただきたい。お願いを申し上げます。
  182. 津川武一

    津川委員 私は国会議員であり、国務大臣から発言に対してとやかく言われる筋合いのものでない、そのことを強く大臣に抗議申し上げて進んでいきます。  そういうあなたの態度が心配なものだから、今度は具体的に聞いていかなければなりません。  そこで、牛肉自由化する心配は、あなたにありませんか。牛肉輸入の枠を拡大していくのじゃないでしょうか。この点が一番心配なところなんです。今度は具体的に答えていただきます。
  183. 中川一郎

    中川国務大臣 あなたの言論は決して封鎖いたしません、あなたもりっぱな国民の代表ですから。しかし、すりかえることだけはお断り申し上げておきますと、こういったことでございます。  牛肉の問題について、自由化は、個々の品目についてする、しないは言わない方がいいということでありますから、そういった、あれはする、これはしない、牛肉はどうと言われますと困りますが、自由化をして農家皆さんを困らせるようなことになるならば、それは差し控えなければならないと考えております。  具体的に申し上げましょう。いまのところは、そんなことは考えておりません。
  184. 津川武一

    津川委員 牛肉自由化する心配はありません、枠を広げる心配はないと解釈していいのか、答えていただきたい。  次は、オレンジの自由化、これも自由化はしない、輸入枠の拡大はやらないとはっきり言明していただかないと、あなたの言動では私たちはなかなか心配が絶えない。私は決して言論をすりかえてはおりません。真っ正面にあなたと論議しております。
  185. 中川一郎

    中川国務大臣 牛肉自由化につきましては、総理大臣も記者会見で明らかにしておるところですから、はっきりいま申し上げたところでございます。  しかし、オレンジがどうだ、トマトがどうだ、あれがどうだと言われますと、品目は言わないということになっておりますものを、消去法でそれをやられますと、一つ一つ残りますものがありますから、はなはだ残念ながら申し上げるわけにはまいらない。  しかし、総合農政を推進し、食糧総合政策を樹立する上において支障のある農産物については自由化はとてもとてもできる状況にはない、また輸入の拡大についても農家の困るようなことはでき得ない、こういう基本方針で全体をながめてございます。
  186. 津川武一

    津川委員 この問題は、きょうあすに解決されるものじゃありません。アメリカドルたれ流しは続く、日本の低賃金と集中豪雨的な輸出は続くので、さらにさらにこれから繰り返されると思います。だから、日本農業を守るために具体的に聞かなければならない。  オレンジのことについてあなたは明確化を逃げたが、いま一番心配されている国民の聞きたいと思っているのは、国会の中で大臣に言明してもらいたいのは、牛肉、オレンジ、トマト、これにはっきりした態度をとらないで何の国の行政か、政治かという問題なんです。  そこで、もう一つ具体的な問題を聞く。そう言うだろうと思って私も質問を設定したんだけれども、この持っていく品目、ここをごまかすことによって国民がだまされる。そこで、トマトケチャップ、トマトソース、この自由化はないでしょうね。いかがでございます。
  187. 中川一郎

    中川国務大臣 幾ら聞かれましても個々の品目について言える段階にはございません。いま言えばお喜びでございましょうが、言うことによって対米折衝をまずくすることは、農民のためにも日本国家にとってもよくないことでありますから、品目についてどうする、こうするは言えません。しかし、総合農政なり食糧総合政策を遂行する上に支障のある作物については自由化はとても無理である、こういう基本考え方は、何回申し上げても変わらないところでございます。
  188. 津川武一

    津川委員 そこで、これはどうしてもしゃべらないと言うなら、私が手をかけて口をあかすわけにもいかないから、牛肉、オレンジ、トマト、これだけは絶対にやっちゃいかぬということを私はさらに申し上げて進んでいきます。  牛肉、この間ニュージーランドのトルボーイズ副総理が来たときも、向こうのものより五倍、十倍も高い、何か安くする方法はないのかということ、具体的なんだけれども、どうされるのですか。
  189. 中川一郎

    中川国務大臣 日本牛肉が高いことにつきましては、これはニュージーランドから指摘されるまでもなく、世界じゅう歩いてみてわれわれ自身が感ずるところでございます。そして、牛肉というものが何か特権階級の食べるものであったり、あるいはまた特別のときに限られて食べるというような仕組みになっていることは事実でございますので、福田総理からも御指示がありまして、何とか大衆牛肉を食べられるようにひとつ工夫してみるべきではないか、そのためには生産対策なり流通対策をしっかりしたものにして、そして消費の拡大を図り、国内生産者が希望を持って生産にいそしめるように、そして余力がありますならばニュージーランドや豪州からも輸入枠がふえていくように、ともどもにやるようにしたいということで一生懸命がんばっておるところでございます。
  190. 津川武一

    津川委員 大臣、ここに農林漁業金融公庫が五十一年度に委託調査した報告書がございます。「食肉加工業の動向と問題点」、この中で加工大手五社、日本ハム、伊藤ハム、プリマハム、丸大食品、雪印アンデス、この大手五社で五千四百八十七億円売り上げ、前年の伸びが四六%、そして日本ハムがソーセージや牛肉やその他のものを売っていますが、この売り上げの中で牛肉が六五・三%、伊藤ハムが五二・五%、プリマハムが五七・六%、この連中が、合わせると三千億円近いもの、これが実態なんだ。  そして、この調査した人たちは結論的に何と言っているかというと、こう言っている。「寡占市場から独占市場化する食肉加工業界の市場構造は国民経済的視点から考察しても決して正常な進路とはいいがたい。」「資本主義経済下における競争」の中では「価格形成が歪曲化される」、流通過程にいろいろ問題があるけれども、ここなんです。  あなたは非常に大胆な人だ、行動力がある人だ。したがって、牛肉を安くするためにこの五大食品メーカーを調べてここのところに手を加えないと、ここで逃げてしまって牛肉は高い。あなたには必ず勇気があると思いますが、いかがですか。
  191. 中川一郎

    中川国務大臣 五大メーカーの果たしてきた役割り役割りとしてあるのだろうと思います。しかしまた、改善する余地は改善する余地としてあるのだろうと思いますが、まだその資料を見ておりませんから、改善すべき余地があれば、これからひとつ勉強いたしまして善処いたしたいと存じます。
  192. 津川武一

    津川委員 一番大きな問題がここにあるのに、大臣が勉強してからやるというのはまことに心細いが、これは政府系の機関が調べたのだ。あなたのところにある、農林省に。すぐ調べて、次の国会の劈頭にでも私たちに報告してほしいと思う。  この調査はさらに何と言っているかというと、このためには大企業を抑えて小さな商店たちを育てなければ下がらないと言っている。ところが、世間はこの小さな商店が牛肉の値段を上げている犯人みたいに言っているけれども、そうじゃないので、速やかに検討することを、あなたは正直でまだわからないと言うから仕方がありません。早く調べて、牛肉を下げる点に全力を挙げていただきたいのです。  もう一つは、きょうも私たち北海道農民連盟から要請を受けましたが、日本牛肉生産昭和四十七年の三十一万トンから四十八年には二十四プロも減少している。五十年も五十一年も減産になっている。これは生産費が高い、採算がとれないことが問題なんだ。その生産費の五〇%は小牛の価格、これは私よりもあなたがよく知っている。この小牛の価格に対してあなたは出荷奨励金を出していくということで何とか乗り切ろうとしていますが、長期的な問題なんです。したがって、出荷奨励金なんかでごまかさないで、ここに小牛価格に二〇%ぐらい不足払いを導入すると牛肉の値段は一〇%は下がる。これが生産体制面から下げる重要な機構になると思うのです。非常にあなたはこのことでしょっちゅう言ってきたが、あなたよりもこの方がぼくはいいと思うが、どうですか。
  193. 中川一郎

    中川国務大臣 確かに肉の需要は、昭和五十年の畜安法の改正を見るまでは非常にばらつきが多くて、生産者が不安を持っておった。その結果が、肉農家のみならず酪農家にも大きな影響があるというところから、畜安法の中に肉牛も対象とした、それ以来安定してきております。また、子牛の出荷についても基金制度をつくってやっております。  かなりよくなっておりますが、やはり改善すべきものは改善をして、よりよき安定した酪農あるいは畜産農家の健全な発達に資してまいりたい、こう思う次第でございます。
  194. 津川武一

    津川委員 あなたのいままでの国会の外での発言で一番おもしろいのは、子牛の出産に奨励金を出すということ、それは一時的なものじゃなくして、不足払いの恒常的なものとしてやることが何よりも必要だということを申し上げて、私は次に進んでいきます。  この二、三日、あなたの態度は大変変わってまいりました。私はびっくりしているのです。政府全体としてはどういうことかということがまた一つの問題にしなければなりませんが、十二月一日のAP電によると、アメリカ大統領通商交渉特別代表ストラウスは、日本政府も国会も必ず協力してくれる、アメリカ立場が強い、福田内閣の今度の閣僚は、アメリカの要求に非常に敏感な人でできている、われわれはがんばる、こういうようなことを、あなたも一番猛者だと言っているストラウスが言っているのです。  もう一つ、この点でアメリカの態度をあらわすものとして、この間のケネディ・ラウンドのときに、アメリカのフラニガン報告書の大要を見るとこう書いてある。「このためには日本の最高首脳がその農業、財政担当大臣等の反対を押し切れるような、また、立法府の議員連中に対しその地盤の保護主義者達の圧力に打ち勝つための理屈を与え得るような、十分な幅と規模を持った交渉でなければならない」と言っている。「もし日本を納得させて牛肉自由化させられれば、日本アメリカ畜産の安全弁になる。日本に圧力をかけて牛肉自由化を早めさせなければならない。供給が不足しているときこそチャンスである。」と言っている。いまがチャンスなんです。そして、アメリカの要求に敏感な閣僚としては、あの外務担当の牛場大田のことを指していると思う。この牛場さんを相手にあなたはやっているが、これは負けるよ。何でこんな人を相手にするのか。何でこんな人たちの要求についてちゃかちゃか農林省の官僚を使うのか。そうでなくして、これはやめて、あなたが牛場さんを呼んで、宮澤企画庁長官を呼んで、こうあるべきだというかっこうにしなければ、アメリカの要求に敏感な人たちがそろっている、アメリカは強力だと言っている。これに対して私はあなたなら立ち向かえると思っていたわけなんだけれども、どうも言動がへなへなになってきて心配なわけです。あなたが牛場国務大臣などでなくして、やはりきちんとした態度で事に処すことが求められております。この点はいかがでございますか。この決意がよければ、これで終わります。
  195. 中川一郎

    中川国務大臣 アメリカが何と言おうと、経済閣僚がどうであろうと、私は農林大臣でございますから、農民の保護というものを第一義的に考えてございます。ただ、だからといって、アメリカどうでもいい、ドル対策どうでもいいという無責任なわけにはまいりません。農家を保護しつつ、そして、できるものがあるならばこれは協力していかなければならぬ。そして、対米交渉を円滑化して、経済戦争と言われる、あるいは国難とも言われるこの問題を解決するためにも努力をしていくということであって、何で牛場さんに言われてちょろちょろ、そんなことはしたことありません。ないことをあったように言わないようにこちらからお願いをいたしまして、答弁をいたします。
  196. 津川武一

    津川委員 そこで、大臣日本アメリカからの農産物輸入に十分なほど義理を尽くしているのです。もうこの点で何にも農産物輸入の面ではアメリカに言われる筋合いのものではないので、毅然たる態度をもって臨むことを要求して質問を終わります。
  197. 中川一郎

    中川国務大臣 少し津川委員もお勉強願いたいのです。アメリカは肉の最大の生産国であると同時に消費国なんです。もし、わが国自由化して入ってくるとすれば、大部分は豪州、ニュージーランドでございます。したがって、少なくなった肉の分だけは、アメリカに依存しておりました麦あるいはトウモロコシ、こういったものが輸入されなくなるのでありますから、むしろアメリカさんよ、牛肉自由化はあなたの国のためになりませんよと私どもは申し上げておるのであって、外国からどうのこうのと言われるのではなくて、日本立場を堂々と主張していきますから、ちょろちょろはいたしませんので、どうか御安心いただきたいと思います。      ————◇—————
  198. 金子岩三

    金子委員長 この際、農畜水産物輸入自由化等に関する件について決議をいたしたいと存じます。  本件に関しては、各党の理事間におきまして、先ほど来、御協議を願っておったのでありますが、その協議が調い、ここに案文がまとまりました。  委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえたいと存じます。     農畜水産物輸入自由化等に関する件(案)   最近のわが国農漁業は、内外とも極めて重大な問題に直面している。   かかる時期に、政府は、貿易不均衡の是正と黒字減らし対策の一環として農畜水産物についても残存輸入制限品目自由化輸入枠の拡大等を進めようとしているが、これらを軽々に実施することは、生産農漁民に深刻な不安と動揺を与え、ひいてはわが国農漁業に壊滅的打撃を与えることは必至である。   よつて政府は、これらの諸事情を十分勘案し、農畜水産物に係る残存輸入制限品目自由化輸入枠の拡大等については、特にわが国農漁業の振興を図る上に支障を及ぼすことのないように対処すべきである。   右決議する。 以上でございます。  ただいま読み上げました案文を本委員会の決議といたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は委員会の決議とすることに決しました。  この際、本決議に対し政府より所信を求めます。中川農林大臣
  200. 中川一郎

    中川国務大臣 ただいまの御決議につきましては、御趣旨を尊重して適切に対処してまいりたいと存じます。
  201. 金子岩三

    金子委員長 ただいまの決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。      ————◇—————
  203. 金子岩三

    金子委員長 閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  すなわち  農林水産業振興に関する件  農林水産物に関する件  農林水産業団体に関する件  農林水産金融に関する件  農林漁業災害補償制度に関する件 以上の各件につきまして、閉会中もなお調査を行いたい旨、議長に申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  204. 金子岩三

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十四分散会