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参考人(富塚三夫君)
参考人に御指名をいただきました総評事務局長の富塚であります。
ただいまから雇用情勢についての認識とこれからのわれわれの具体的な要請、対応、こういった問題について申し上げたいと存じます。
雇用情勢は、申すまでもなく、短期的なものでなく中期的にも
かなり見通しは暗い。過日、衆議院の
予算委員会の
参考人でもそのことの所見を明らかにいたしました。ようやく雇用問題の重要性についてこの国会で認識が深まってきたものと理解をしています。与党間、野党間ないしは
政府の間でも連日の論議を通じてそのように理解をしています。福田首相は、
臨時国会冒頭、所信表明演説の中で、経済政策の中でも特に雇用問題を重視すると強調いたしました。しかし、具体的な案になりますと、雇用安定資金の積極的な活用と
構造不況業種の離職者
対策にとどまるということでありました。また、大蔵大臣は、
政府が九月に決めた総合経済政策の意義を
雇用対策と関連して強調されているように見受けられます。われわれは、現実に、深刻な失業、雇用不安に対しまして、雇用安定資金制度だけの活用では決して十分だとは考えていません。こうした
政府の考え方とはうらはらに、連日、新聞やテレビを見ておりましても、
企業倒産による首切りあるいは減量
経営といった計画等が報告をされ、けさの新聞にも、失業で職を失った人あるいは雇用不安に陥っている人の投書が目立っておったように思います。私ども労働四
団体は、後で前川さんも申し上げると存じますが、雇用問題で統一した目標を設定いたしました。そして、特定業種離職者臨時特例法案というものをこの国会で決めていただきたいということで、五野党間にも働きかけをいたしまして
成案を見て、いま何とかこの国会で成立をさせていただきたいと強く要請をしております。私ども、特定業種離職者臨時特例法案と申しますのは、まず特定業種の指定、
事業主の責務及び国と地方公共
団体の責務、雇用保険法、
雇用対策法の特例、解雇
制限、職業訓練の実施、訓練手当の支給、就職促進手当の支給などが主な柱と実はなっています。私ども総評の
立場からしますと、決してこの案では満足はしておらないのでありますが、全体がぎりぎりの線でまとめ上げていこうという、しかも、国会では議員立法という形で成立せざるを得ない
状況のもとではやむを得ないというふうに考えておりますが、伝え聞きますところ、自民党さんの方は、どうもなじまないということでこれを拒否をされるような動きがあることを聞いて、非常に遺憾に思っています。
私は、本日、
参考人といたしまして参議院の
予算委員会の皆さんに訴えたいのは、この緊急かつ重要な
雇用対策につきまして、国会における責任ある態度と
対策を労働者国民の前に示していただきたいという
立場から、また、
政府には積極的な姿勢を打ち出していただきたいという
立場から、次のようなことを提起をいたしたいと思います。
まず第一に、
政府自身の対応としては、特定業種の離職者臨時特例法案をこの国会でぜひ成立をさせていただきたい。そして、雇用安定資金の運用も含めて、実態調査とその運用を公平に行うような手だてを考えていただきたい。
第二に、各
企業主、
経営者に対する要請といたしましては、定年延長、六十歳を目途に具体化をする
努力をしていただきたい。一週四十時間、週休二日制の時間短縮を進めていただきたい。同時に、年次有給休暇の完全な消化を求めて
企業は
努力をしてほしい。
第三に、われわれ労働者、労働
組合の任務としては、残業規制と年次有給休暇の消化、そして数多く存在をします争議を続けておる労働者に対する解決を速やかに図るということについてわれわれは
努力をしていくことをお誓いをいたしたいと思います。
そういう
政府、そして
企業主、そして労働側、この対応する具体的な方向なり目標について明確にしておくことが非常に重要なのではないかというふうに思います。
私は、もうすでに衆議院
予算委員会の場ではいろいろな考え方を申し上げておりますので、本日は、総評自身が失業、雇用不安の実態を調査した、現実に起きておる多くの産別や職場レベルあるいは地域での問題について申し上げて、ぜひ考えていただきたい、参考にしていただきたいというふうに思います。
総評が八月から九月にかけて調査をしました産別、職場レベルでの雇用問題に対する労使間の摩擦、つまり労使紛争は、民間の
組合、大小で八百三の
組合があります。金属、化学、マスコミ、あるいは交通、
一般労組、地下
関係、こういうふうに見受けられます。その原因を探ってみますと、高
成長時代に設備の過大な投資によるものから、現実には業積不振に悩んで
企業閉鎖、倒産、首切りということが出ています。また、関連会社への配転、出向ということも出ています。化学工業などで代表的な
企業である
日本ソーダでは七百名、
日本カーボンでは三百名の人員整理が出ています。また、東京機械——千葉にありますが、
造船タンカーの
影響で四百人の、半数の首切り、あるいは浜田製機は四百人の全体の首切りということで、これは大手の三菱重工が出てきたために倒産を余儀なくされています。
全国金属という組織の中では、中国工業で五百名、あるいは
造船では三重
造船が三百名、函館の日魯
造船は五百名が倒産して首を切られています。六十七件の倒産が
全国金属という
組合の中には現実に出ています。また、鉄鋼
業界の平電炉の問題でありますが、七十二社で五十年四月には四万五千二百名、本工三万八千人、
下請が七千二百人、こういった
企業の実態でありましたが、五十
年度は本工が二千八百七十、
下請が千三百五十、つまり四千二百二十人の減となり、主に雇用
調整は
企業外配転ということでありました。しかし、実態的には、本工で二千四百四十人、
下請で千三百五十人が首を切られてやめています。また、五十一年では、これに本工が二千七百十二人、
下請が四百人、三千百十二人、そのうちで本工が二千四十人が具体的には職を失ってやめていっています。ところが、ことし四月から九月に、この上半期でありますが、急増いたしまして、上半期だけで本工が二千三百六十人、
下請が四百三十人減らされる、二千七百九十人となりまして、人員整理は約二千人がもうすでに首を切られているという
状況であります。五十年四月から今月までの二年半で本工が七千七百人、
下請が二千二百人の九千九百人が排出をされています。鉄鋼労連の掌握でも、すでに七五年に八戸鋼業、利川製鋼が閉鎖をされ、また七七年五月には筑前製鋼全員解雇、六月には興国金属全員解雇、七月には南部製鋼全員解雇、十月には東北砂鉄全員解雇、また七月から
日本砂鉄では八百人中半分が希望退職を募られておるという
状況であります。また八月には国光製鋼が四百人の中で百二人首切られて、現在その提案を受けて係争中であります。東北鋼業も六百八十人から二百二人減らされるという
状況であります。月に一回は大型整理というものが必ず出てきているという
状況でありまして、次から次へとこの平電炉問題に対する
企業の縮小、倒産という
状況が事実出てきている
状況であります。
また、われわれ総評は地域における失業者の多発している
状況についていろいろな調査をしてまいりました。
北海道は二百海里問題による
影響であります。また、冷害による
影響もあります。九州では筑豊地帯に調査をしましたが、失対
事業の問題、あるいは産炭地
対策の後退による
影響が出ています。沖繩は軍事基地が縮小されることによる
影響が出ています。また、裏
日本の山陰なり東北は、誘致された
企業が倒産をしている実態が出ています。
北海道では二十九万人の季節労働者、以前は九十日の失業給付で
生活を十二月から三月までしておったのでありますが、いまは五十日分ですから、この五十日分で四カ月も
生活を強いられる。昨年の冷害も手伝って出かせぎ希望が非常に多くふえています。稚内の例を申してみますと、二百海里の
影響で、五十一
年度の水揚げは稚内だけで二十六万
トンあったと言われています。ところが、二百海里経済水域でスケソウダラの規制によりまして
北海道全体で十万
トンに減らされてしまう。この割り当てがどうなるかということになりますと、稚内だけで二十六万
トンとっておったものを
北海道全地で十万
トンということになりますから、大変な深刻な
影響を受けます。このため、漁業に携わっている家族は八百人、あるいは関連加工では四千人の雇用不安が出ている。稚内市では、緊急
対策といたしまして、救済の土木
事業などの開発を考え、四億円を措置をしていると言われていますが、地方の財政では限界であり、国の援助が必要だと叫ばれています。また、留萠などでは公共投資縮小による
影響で公共
事業投資により季節労働者の雇用問題を従来は考えてきてもらったのですが、五十二年二月現在、一人の季節労働者の雇用もなされていません。留萌が九万八千人の人口で七千人季節労働者がいる。家族を含めると二万一千人です。建設業者には
仕事も金も与えているのですが、実は地元の人を一人も雇わないという
状況のもとに季節労働者は採用のないままに不安な
状況に置かれています。
九州の筑豊の事情を視察してみますと、炭鉱資本の残した荒々しいつめ跡がボタ山と老人だけさびしく
生活をしている
状況であります。この地方の不完全就労者は五万人、失対
事業で
生活を支えている人が一万八千人と見られていますが、地方自治体は慢性的な
赤字で、
生活保護を受けている人
たちは筑豊の五市で人口千人当たり百人ちょっとという割合に、つまり一割が
生活保護を受けている
状況になっています。
全国平均では千人に対して十二人の割合ですから、まさに十倍の状態に置かれているということであります。そこで、筑豊
地区に行ってみますと、廃山後の産炭地振興、いわゆる
企業の誘致が余り成功していないんです。苅田町などは、日産自動車は現地の採用は八百名で、
企業がこちらから連れていったのが三千名というふうな
状況になっています。大
企業はまれで、大半は百人以下の
中小企業ですが、百人を超す
企業は五十のうちに八つぎりありません。働いている労働者の
平均の賃金は六万から七万。十万を上回るのは
一つだけで、福祉設備も非常に後退をしています。これらの誘致された
企業はあらゆる面で地元の手助けにはなっていないというのが
状況でありまして、これをどうしていくかが大きな課題だと思います。老人だけが残って、これからの
生活の見通しも暗い。そして、明年は失対
事業が打ち切られるのじゃないかという心配も実は出てきています。
それから岩手県の大船渡港などは、木材工業地における危機がやってきまして、現実に四十五年に十の
企業が出発いたしまして、新たな工場団地もできましたけれども、この三カ月のうちに二社が工場閉鎖、一社は会社更生法の適用
申請という事実上の倒産で、地域経済社会に大きな
影響を実はもたらしています。
沖繩には、いま社会党と総評で合同調査団を編成をして、これから具体的な調査をし、裏
日本、東北にもさらに続けていきたいと思うのですが、私は衆議院
予算委員会でも申し上げたのですけれども、
構造的な
不況業種だけではなくて、地域的にこういった失業多発地帯に対しても決して見落とすことなく、忘れることなく、同時に
対策を講じていただきたいという
意味で、冒頭申し上げましたように、
政府は臨時措置法の成立を受けて立っていただきたい。そして、雇用安定資金を含めて公平な運用をしていただくと同時に、時間短縮なり年次有給休暇の消化なり、あるいはわれわれ自身も残業規制をするということに積極的に取り組むということなどの
対応策を考えるべきじゃないかという点で、具体的にそれぞれの持つ任務について明確にしていくことが適切であろう。
以上申し上げまして、総評を代表しての問題提起にかえます。