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1977-10-22 第82回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十二日(土曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員の異動  十月二十一日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     佐藤 昭夫君  十月二十二日     辞任         補欠選任      源田  実君     加藤 武徳君      野田  哲君     寺田 熊雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 小柳  勇君                 山崎  昇君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 園田 清充君                 成相 善十君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 秋山 長造君                 片山 甚市君                 竹田 四郎君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 福間 知之君                目黒今朝次郎君                 矢田部 理君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 下田 京子君                 佐藤 昭夫君                 井上  計君                 山田  勇君                 柿沢 弘治君    国務大臣        大 蔵 大 臣  坊  秀男君        農 林 大 臣  鈴木 善幸君        通商産業大臣   田中 龍夫君        運 輸 大 臣  田村  元君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  長谷川四郎君    政府委員        大蔵省主計局長  長岡  實君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        労働大臣官房審        議官       谷口 隆志君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省住宅局長  山岡 一男君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    参考人        日本造船協力事        業者団体連合会        会長       宇野信次郎君        日本合板工業組        合連合会会長   又賀 清一君        日本絹人繊織物        工業組合連合会        理事長      浅井長一郎君        平電炉普通鋼協        議会会長     安田安次郎君        全国建設業協会        会長       鴻池 藤一君        日本労働組合総        評議会事務局長  富塚 三夫君        全日本労働総同        盟書記長     前川 一男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1  号)(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十二年度一般会計補正予算  昭和五十二年度特別会計補正予算  昭和五十二年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  本日は、補正予算三案について、お手元の名簿の七名の参考人方々から御意見を拝聴し、質疑を行います。  一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様方におかれましては、大変御繁忙中にもかかわりませず、本委員会のために御出席を賜り、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして衷心より御礼を申し上げます。  本日は、現在の経済情勢下において、貴業界の置かれておるお立場から御忌憚のない御意見を承りたく存じますので、何とぞよろしく御協力お願い申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。まず、五人の参考人方々からお一人十五分程度の御意見を順次拝聴し、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、これより順次御意見をお述べ願います。  まず、宇野信次郎参考人お願いをいたします。宇野参考人
  3. 宇野信次郎

    参考人宇野信次郎君) 時間が余りありませんので要点だけを申し上げて、あとは御質問に応じたいと思います。  不況という言葉が現状はほとんど定着したように見えます。しかし、この不況対策、主として景気上昇目的とされる今度の臨時国会参考人として意見を述べる時間を与えられたことを厚く御礼申し上げます。  造船業、特に下請企業を代表して、われわれはある程度意見を申し上げたいと思いますが、本日の補正予算についての意見と申し上げましたが、これに関連しまして造船下請企業実情を率直に申し上げ、本予算委員の諸賢の実のある御支援をひとえにお願いしたいと思います。  意見開陳の前に、自己紹介を簡単にいたしたいと思います。財団法人日本造船協力事業者団体連合会は、昭和四十六年八月、運輸大臣の許可を得た公益法人であります。以下、略称を日造協と申します。現在の会員は五十五団体であり、全国主要造船所のほとんどの協同組合協力会を網羅しております。その団体に所属する事業所は二千、その事業所に所属する従業員は、造船不況で減りましたが、約七万人おります。  その主要の目的とするものは、加盟企業経営の安定と、所属の従業員技術レベルアップ、同安全の確保等を目標にしておりまするが、これに関連して諸種の事業を行っております。したがって現在造船下請企業としましては欠くことのできない存在となっております。もちろん、現状に至るまでには会員のたゆまない努力協力はもちろんでありますが、発足以来、運輸省船舶局指導支援、その指示による財的援助財団法人日本船舶振興会から受けて達成されております。この内容は後ほど申し上げたいと思います。  造船業現状不況対策を申し上げたいと思います。  わが国造船業は、代表的輸出産業として成長昭和三十年以降現在まで世界一の建造量を誇るに至りました。当然、これに果たした造船協力業下請業の功績は見逃すことができないものがあります。造船業労働集約産業であり、その下請分担率平均四二%に及ぶもので、その労働力は別紙の資料にあるとおり、十八年間で元請造船所の本工増は三〇%にすぎませんでしたが、この造船協力業協力工は、下請の方は二六〇%と増加しておるのであります。わが国造船業建造量増大の大きな担い手となっておりまして、したがって下請企業協力なくしては日本造船業の興隆はなかったと言っても言い過ぎではないと思っております。しかし、このことは逆に不況の進展に際しては、その甚大な影響を直接に受けている現状であります。  四十八年のオイルショックを契機としまして、構造の変化、影響は直線的に協力企業に来ているのであります。五十年一年間では、約十二万人の本工の減少はほとんどありませんでした。しかし、下請協力工減少は一万六千人、それから五十一年は前半六カ月で七千人の減少、約一年半で二万三千人以上の減少となっております。この間、ほとんど元請の本工はいわゆる自然減少以外には減っておりません。あるいは、ある意味において企業内の出向等でやっておりますが、下請企業のように実際に職場を失ったという者はないはずであります。現在は、それも多少小康を保っておりましたが、新造船受注激減から、これからなお雇用条件の悪化する見通しはもう避けられないと思っております。当然、この避けられない悪条件を避けるために、われわれはできるだけ自分たちの手で工事をつくろうと、造船受注新造船のないときに仕事を要求することができない現状から、自分たちの手で一つ事業を興し、あるいは自分たちの手でこの工事減少を防ごうとしております。それが五十年以来われわれのやっておる船舶解撤事業であります。  いま造船不況と申しまするけれども、その最大原因船舶のつくり過ぎ、余剰船舶の処理が進んでないということであります。この余剰船舶があるために係船料となり、あるいは新造需要減退となる。当然、現在の造船不況は、因果関係でこの余剰船舶解撤する以外にはないはずであります。その余剰船舶解撤は現在もう世界的な趨勢となっています。日本だけでこれは解撤するのではなく、世界的に解撤事業は進められなければならないものと思っております。これは最近のアメリカのインタータンコあるいは欧州方面造船所経営者が言っておることであります。したがって、われわれは現在の造船不況いわゆる新造船受注減は、一方に当然の結果としてこのあり余っておる船舶解撤する以外にありません。  また、われわれが五十年当時から、解撤と並行してタンカーの安全のために二重底の設置を要請していることも、このわれわれの記録で見ますと、五十年の九月にいろいろ各方面お願いしておるのです。しかし、その当時にはタンカーの二重底はいろいろの事情から各国でも乗り気でなかったのですが、本年のアメリカ大統領意見から急速にこれは具体性を帯びてきております。われわれはこのタンカーの二重底をすることも一つ作業の穴埋めにはなると思いますが、これはタンカーで、主として中型造船の方には余り影響がないかもわからない。で、このタンカーの二重底の設置と同時に、解撤事業も当然進めなきゃならぬ。これはいつの場合においてもわれわれはそう信じております。もちろん、本年度、われわれのために政府予算から一億四千六百万の助成を受けましたが、その予算を組むときの事態と現在は余りにスクラップの値が激しくて、とうてい一総トン六百五十円の補助では太刀打ちできないどころか、赤字が多過ぎて、われわれがいろいろ努力をしても、元請自体もこれは総論は賛成でおっても各論反対で手につかない状態です。しかし、これはすべての損害下請に転嫁しては当然できないことです。また元請にいままで利益がいっているから損害をしょえと言いましても、現在、造船不況の場合に元請企業赤字を覚悟ではとうてい手をつけません。  その意味から、この際、われわれとしましては、政府において雇用対策の一環としての解撤事業を育成するために、いわゆる応援、あるいは何らかの形で船舶買い取り機関をつくっていただき、その買い取り機関において解撤事業のリスクを消化していただきたいというのがわれわれの願っておることであります。  で、この解撤事業そのものについては、従来まで台湾がほとんど四割あるいは四割五分というように大きな比率を占めてやっておりまするけれども、その他朝鮮でもかなりの量を最近解撤しております。もちろん欧州方面においてもこれは実行されていることであります。少なくとも千万総トンの船は最近解撤されておるのであります。ただ、その場合に、日本解撤は実に微々たるもので、ほとんどやらないに等しいと思っております。これを政府助成において五十三年度において何らかの形でぜひ実現していただきたい。補正予算はとうてい無理と承知しておりまするから、五十三年度においては何とかして実現をしていただきたい、これがわれわれのまず大きな願いであります。  その次に、われわれとしましては、できるだけ雇用確保目的から一つ対策——要するに造船業というものはいろいろの意味においてアンバランスがあるわけであります。日本全体で見ますと、一造船所では人手が足りなくても、一造船所にはかなりアイドルがある。こういうような意味から、本年度、われわれの方では、この需給の調和を図る意味において所属する各従業員を全部登録しまして、それによっていろいろの調整を図りたい、こういうようなことをいま考えて一つの案を練っております。これは各従業員の個々の経験から、あるいは技術からすべてのものをコンピューターに記録きして、それを一つ記録としてわれわれは各造船所に流して、そしてその取捨を図りたいと思っております。ただ、この場合に特にお願いしておきたいのは、こういうことをある意味においては職安法違反というようなことに誤解されることもあると思いますが、日造協事業所は、単に生活の保障もない連中を右から左にやってピンはねをやっているようないわゆる労務供給業者ではない。自分のうちに従業員を持って、その従業員作業アイドルがあれば他の方面に移動しなきゃならない。これは決して労務供給じゃない。労働省においても、こういう点において一般労務供給業者日造協の特定の事業所部門に対しては別として扱っていただきたい。できれば、日造協傘下事業所に対しては、いわゆる紹介認可を与えてもらいたいというようなことも考えております。  それから、一つ申し上げておきたいのは、われわれの下請従業員というものは、大企業あるいは元請の企業と違って実に不安定な立場にあります。いわゆる下請として、元請から仕事をとめられればいやおうなしにとらの子の従業員を整理せざるを得ない。この従業員を維持するためには何をやったらいいか。単に失業保険をもらうようなことでは企業は滅亡するわけです。私たちは前向きの姿勢で仕事をつくる、後ろ向きの失業保険は欲しくない、こういう点から、いろんな点でできるだけ自分の手で仕事をつくりたい。これが解撤事業であり、また補助的には人間のあっせんを、労務供給のようにお互いの事業所間にあっせんをするというようなことを考えております。  それから第三には、現在、造船不況のあおりを食っていろいろの中小企業造船所が倒産しております。その場合に、二重パンチでその倒産企業下請企業は不渡りの債権を持って四苦八苦しております。これは一つの例を見ましても、いろいろの資料がありまするけれども、われわれの会員の中だけでも二十億に近い倒産企業からの損害を受けておる。こういう点においてもいろいろ申し上げたいと思いますが、時間の関係上、一応、これで終わりたいと思います。
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) どうもありがとうございました。  次に、又賀清一参考人お願いをいたしたいと思います。又賀参考人
  5. 又賀清一

    参考人(又賀清一君) 日本合板工業組合連合会日合連と略称いたしまして、以下順を追って業界状況の概況を御報告申し上げまして、諸先生方の格別の御指導とお力添えをお願い申し上げたいと存ずる次第でございます。  第一は、日本合板工業組合連合会は、中小企業団体法によりまして昭和四十年に創立をされたものでございまして、この下部組織といたしまして全国に八つの合板製造業者から成る地区合板工業組合を持っておりまして、その地区は、北から北海道、東北、東京、静岡、中日本近畿四国、中国、九州と相なっております。  わが国合板生産量は、アメリカに続きまして世界第二位を占めております。しかし、そのほとんどが国内消費に充てられておりまして、わずか全生産量の二%ないし三%の北海道国産材合板のみが現在輸出をされておるというような実情でございまして、したがって原料のほとんどは東南アジア地域、すなわちインドネシア、マレーシアあるいはフィリピンから輸入されるラワン材によるものでございます。本年八月現在の総工場数は二百三十ございまして、その八五%が日合連傘下組合員、こう相なっております。  第二番目に、不況の実態でございます。昭和四十八年の高度成長最終年度ピークといたしまして、合板需要はその後大きく三割、現在に至りましても二割の激減をいたしている現状でございまして、なお、合板需要の大宗をなすものは住宅用の資材としてでございまして、新設住宅着工数にその需要が連動しておるというような実情でございます。昭和四十九年、五十年、五十一年、五十二年と、四カ年にわたる極端な需要落ち込みに対しまして、一方、わが国合板生産能力というものは昭和四十八年度ピーク時の需要を賄って余りあるだけのものを持っておりました。したがいまして、その需要落ち込み部分過剰生産となりまして、いわゆる過当競争価格はダンピングというようなことで、価格に関する限りでは原価を大きく割っておりまして、最近に至ってもなおその原価を割った経営を余儀なくされておるというような実情でございます。日合連といたしましては可能な限りの対応策を講じておりますけれども、残念ながら、本日現在までに、休止あるいは廃止あるいは倒産工場が四十四カ工場に及んでおりまして、このままの状況で推移いたしますならばさらに増加するおそれがありまして、憂慮すべき事態に相なるのではあるまいか、こう私は判断をいたしております。  第三点は、しからばこれに対して日合連はどういうふうな不況対策を講じておるかということでございます。この対策につきましても、主務官庁林野当局十分協議をいたしまして、その指導を仰ぎながら進めておりまして感謝申し上げておる次第ではございますが、その対策の第一点は手っ取り早い金融対策でございまして、あらゆる制度金融を活用いたしましてこれが不況に対応しておりますけれども、各企業体の体質が弱体化するに従って、日合連あるいは各地区組合での金融施策というものが非常に困難な実情に相なっておるということを御報告申し上げておきたいと思います。  対策の第二点は、不況カルテル認可による強制操短でございます。昭和四十九年度自主操短に終わりまして、昭和五十年、五十一年、ことしの五十二年と、三カ年にわたりましてすでに十回の認可を得て、年間平均ベースで言いますならば一二%程度の操業をカットし、本年は特になお悪くございまして、一五%の出産のカットをいたしておるというような実情でございます。この不況カルテルによる強制操短目的は、当然、需給のバランスをとりまして、そして価格を安定に尊くというものでございますけれども、残念ながら、操短をいたしますその率の策定に誤差があったり、あるいはこの不況の中で完全な買い手市場である、あるいは操短認可が細切れ——終わったらまた申請をする、終わったらまた申請をするというような細切れであるために、買い手市場から先を見込まれるというようなことで、所期の目的を達したとは申し上げられませんけれども、われわれといたしましてはそれなりに効果を上げ得たと、こう考えておる次第でございます。したがいまして、今回、特に操短効果を上げるために、十一月から来年の三月にかけましてその認可を取りつけると同時に、中小企業団体法の五十七条によりますいわゆる事業活動制限命令、すなわちインサイダーあるいはアウトサイダーを含めた農林大臣操短命令の発動を現在お願い申し上げておるというような実情でございます。  対策の第三点は、構造改善事業でございます。需要がそう大幅に伸びるということは、努力はいたしますけれども、とうてい考えられないということで、われわれといたしましては、この構造改善事業二つに分けまして、第一点は、中小企業近代化促進法の改正によりまして生産コスト、いわゆる近代化による生産コストの切り下げ、あるいは品質の向上、あるいは新製品を開発いたしますとともに需要の開発を図る、この施策でございまして、これは本年四月一日付で農林大臣認可を得て、すでに実行に着手いたしておるような次第でございますが、片一方のいわゆる生産設備調整問題でございます。これがきわめてわが業界にとって大きい問題でございまして、この生産設備調整の問題をさらに二つに分けまして、現存する生産設備をこれで歯どめをかける、したがって将来にわたって新増設をさせないという中小企業団体法によるいわゆる制限をいたしたい、こういうふうに考えておりまして、これも目下着々準備を進めておる。この歯どめの中で、過剰の生産設備をさらにカットしていくという大きい問題があるわけでございます。  この問題は、日本合板業界の将来を占うきわめて重要で至難な問題でございまして、わが業界といたしましても、昭和五十年、もう二年半も前のことでございます、一月から特別委員会を設けまして、いかように将来を策定し、いかようにカットすべきかということで、成案をことしの四月得まして、いわゆる二年半にわたる研究の結果の成案でございますが、一二%の年産カットをしなければ絶対安定は期し得ない。さらに、これを細かく申し上げますと、合板をつくる一つのいわゆる機械のシステムワンラインといたしますと、三十五ラインシステムカットする必要があるという結論に到達いたしておりまして、これは非常に問題が大きゅうございまして、あらゆる点を考えての結果でございまして、これに要する費用が大体百億円を下るまいと、こういうふうに算定いたしておりまして、しからば、その百億円をどうして捻出するかということにつきましては、残る企業体で当然負担すべきですけれども、一部どうしても国庫の補助お願いせなければならない、こういうふうに考えておりまして、特に、この点、御配慮をお願い申し上げたいと思う次第でございます。  これが現在までにとっております対応策でございまして、何といたしましても、一二%の生産設備カットするということにつきましては本当に大きい問題でございまして、私も責任者といたしまして、体を張ってこの問題に取っ組んでおるというような実情でございます。  最後に、不況カルテルについてちょっとお願いを申し上げたいと思うわけでございますが、この不況カルテルというものは、これは一時的な緊急避難であると。平時の場合、市況が落ち込んだ、それで一時的に不況カルテルによって生産調整して価格の安定を図るというふうな原則論がありますけれども、構造不況業種に対する不況カルテルの運用につきましては、この業界その業界抜本策が講ぜられるまでは、長期に、しかも弾力的にぜひ運用するようにお願い申し上げたい。こういうことを申し上げまして、私の御説明を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) どうもありがとうございました。  次に、浅井長一郎参考人お願いをいたします。浅井参考人
  7. 浅井長一郎

    参考人浅井長一郎君) ただいま、われわれ織物業界の代表的な立場参考人に加えさせていただきましたことを衷心より厚く御礼申し上げます。  わが業界は、絹人繊織機にいたしまして大体三十万四千台余りの業界でございまして、業者数も三万企業という膨大な企業を抱えた、全国的に分布する、北は山形から南は沖繩に至るまでの全国にまたがった零細な企業であるということで、地域的に、また経済的にも非常に住民との密着のある、また、しかも五台以下という企業が六〇%を占めるという非常に零細な企業の集団の組合であるということを、まず概況だけを申しておきたいと思います。  いろいろ、最近、新聞その他を非常ににぎわしておる問題点の円レートから私は要望事項として取り上げたいのでございますので、ひとつ御了承のほどをお願いしたいと思います。  円レートの安定化と緊急措置という問題を一つ取り上げまして、絹人繊のわれわれ業界輸出の依存度が非常に高く、特に合繊の長繊維の織物においては生産の量の約六〇%が輸出されているのが現状でございます。深刻な今日の不況の中にあって、今日まで出血輸出を余儀なくしておる中にあって、現在のこの円高というのは輸出の競争力を大きく失い、また最近に至っては商談はほとんどできないというのが展近の実態でございまして、このまま推移すると、ややもすると、われわれ業界はもちろんのこと、社会不安にも陥れられる大きな重大な問題だと私認識しておるわけでございまして、この問題において早急に円の安定化をまず図っていただきたいということをお願いしたい。それとあわせて、緊急措置として無担保、長期低利の融資を特にお願いしていただきたい、かように思っておる次第でございます。  次に、繊維の輸出規制等、政策的な救済資金の償還猶予並びに返済期限の繰り延べということで特にお願いをいたしたいと思います。われわれは過去において国際経済上の調整措置としての実施に伴う緊急融資並びに対米繊維輸出規制等に伴う緊急融資等、各種の政策的な融資が行われたのでございます。この融資を業況が回復するまで償還猶予並びに償還期限の延長を特にお願いいたす所存でございます。  次に、第三番目といたしまして、既往の借入金の問題でございますが、既往の借入金の金利の再度軽減という問題を取り上げてお願いしたいと思います。不況業種においてはさきに政府の金融機関の既往貸付金利の軽減がとられたのでございますが、なおこの程度ではわれわれの業種ではどうしても救いがたいのでございまして、現在の貸し付け程度までひとつ引き下げていただきたいというのが第三点でございます。  次に、第四点でございますが、実需者割り当て輸入生糸の売り渡しについての問題でございますが、この問題については、昨年八月十九日に、三省覚え書き事項の中に、当然、一元化に伴う問題点として実需者に安い輸入生糸を配給したいということが載っておるわけでございます。また、本年六月十日に、閣議決定事項の救済対策の中にもこの問題点が取り上げられておるはずでございます。こういった問題において、ことしの四月から六月分の生糸の配給を実は現在受けておるわけでございますが、これが非常に生糸がなくなり高くなって、特に二十一という生糸がないからして、売り渡しができたわけでございます。この方法をひとつ生糸一元化の対象から除外して、直接われわれに売り渡しをしていただきたい。これだけは特にお願いしておきたい問題で、いま現在国際価格日本の生糸の価格とが約倍近くの価格になっておることは皆さん御存じのとおりでございますので、どうかぜひともこの問題点においてひとつお願いいたしたいと思います。  また、非常に過剰設備の問題において、われわれ綿業並びに化繊織機において、いま買い上げを円滑に実施するために税制の問題において二つばかりお願いをしておきたいと思います。  その問題は、転廃業助成金に関する課税の特例の適用対象に、中小企業振興事業団等から設備共同廃棄事業のために資金の貸し付けを受けて協同組合等がその構成員に交付する設備廃棄助成金を追加していただきたい、こういうことでございまして、これは当然圧縮記帳ということで、前回行われたものと同様な扱いをしていただきたい、こういうことでございます。  次に、関連した問題でございますが、過剰設備を廃棄する業者に対して関係業者が設備廃棄協力金を拠出したときは、その協力金を損金として算入していただきたい。われわれ連合会が事業をやっておる場合に、これは損金にぜひともしていただきたい。この二点を共同廃棄に伴う税制上の問題として特にお願いをいたしておきたいと思います。  そのほか、いま中小企業の連鎖倒産を防止するための共済制度の問題点が取り上げられて、着々準備がなされておるんですが、われわれの業界といたしましては、早期にこの問題をひとつ実施に移していただきたいということを特にお願いしておきたいのでございます。  なお、電気税の軽減、あるいは延長の問題として、中小企業の貸し倒れ準備金の特例措置あるいは中小企業構造改善準備金等の制度の延長、こういった問題点を税制上の問題として特にお願いをいたすわけでございますが、最後に、実は、お願いいたします問題は、非常に構造不況というものとやはり一元化によって大きな影響を受けておるこのわれわれの業界が、構造不況のほかに、ややもすると政策的な段階としての大きな一元化の苦況に立たされて、やむなく設備廃棄をいたすわけでございますので、繊維の適正な輸入処置という問題はひとつぜひとも考えていただきたいということを最後につけ加えて、私の意見といたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  8. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) どうもありがとうございました。  次に、安田安次郎参考人お願いをいたします。安田参考人
  9. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 平電炉のことについて御説明申し上げます。  まず第一に、平電炉の概況、二番目に現況、三番目に当面する諸問題、それらを踏まえての国家に対する要望と四点に分けて簡単に御説明申し上げます。  平電炉業界は、工場から発生いたしますいろいろな鉄くず、あるいは自動車のくず、家電、こういう老廃物のくずを原料といたしまして、電気炉または平炉で溶かして、圧延して、建設材料としての小形の棒鋼または中小形の形鋼を製造する業種であります。  わが国における平電炉業界の粗鋼のシェアは大体一二%程度でありまして千三百十万トン程度、普通鋼鋼材で一六%で千二百四十万トン程度になっております。ちなみに小形の棒鋼の生産量は五十一年度で約一千万トン生産しておるのでありますが、その中で平電炉業界だけでつくっておるものは約七〇%を占めております。また中小形の形鋼は三百七万トンつくっておりますが、そのうち平電炉でやっているのは九〇%を占めておるのでありまして、そういう意味から言いまして、この平電炉業界は鉄鋼業の中においても非常に確固たる地位を持っておる大切な企業なのであります。  また、平電炉業は、先ほど申し上げました市中で発生するくずを使っておるわけでありますけれども、鉄鋼以外にこの老廃するスクラップを使う事業はないんであります。鉄くずは貴重な国内の資源でありまして、日本の経済のセキュリティーの確保のためにも国内では有効利用することが絶対に必要だと思います。こうした観点から、市中くずの大部分を消費いたしております平電炉は鉄源のリサイクルという点においてきわめて大きな役割りを果たしておると思います。その上、約二千万トン程度発生いたします市中くずをそのまま放置するといたしますと非常にゆゆしき社会問題となるばかりでなく、平電炉はこれを活用することによりまして環境保全対策の面からも非常に大きな貢献をしておるのであります。したがいまして今後とも不可欠な産業であるのみならず、経済的にも社会的にも非常に意義のある産業であると私は信ずるのであります。  第二番目に、現在当たっておる平電炉の現況を申し述べたいと思うのでありますが、つくっております製品の小形の棒鋼の国内需要の約九〇%は建設用部門に使用されております。昭和四十八年度までは毎年十数%の伸び率をもって伸びてまいりましたが、石油のショックの結果、不況になると大幅な減産に入りました。ちなみに昭和四十八年の小形棒鋼の内需は八百七十万トンでありましたが、五十一年度には百万トン減の七百五十万トンに減ったのであります。他方、供給力を見てみますと、四十八年度以後の積極的な設備投資によりまして、昭和五十一年度には、平電炉関連製品を粗鋼ベースで見ますと約七百万トン需給ギャップが生じまして、価格も大幅にコスト割れを見出したような状態であります。  こうした状況のもとで、昭和五十年の九月から五十一年の四月までの間の約八カ月間、小形の棒鋼につきましては独禁法に基づく生産カルテルをつくりましたが、残念ながら事態の改善を見ることができず、再び昭和五十一年の十一月から本年九月末までの約十一カ月間、独禁法に基づく数量の生産カルテルを実施いたしました。さらに八月十七日から九月末まで約一カ月半、価格カルテルをも実施いたしたのであります。その後、十月以後は、約五十二社で中小企業団体法に基づきまして生産のカルテルを実施いたしてきておるのでありまするが、残念ながら市況は低迷しておりますので、メーカーの出荷価格は大幅にコスト割れになっておるのが現状であります。  三番目に、当面する問題点について申し上げたいと思うのでありますが、今日、非常に苦境に陥っております一番大きな原因は、何といってもこの需給のギャップでありますので、何としてもこれを解決することが緊急課題だと思います。  ことしの二月に、通産省の基礎産業局長のもとに私的諮問機関といたしまして平電炉基本問題研究会によって報告されたところによりますと、昭和五十五年度の粗鋼の供給能力は二千六百三十五万トンと見込まれておりますが、これに対する需要は二千四十五万トンから多く見ても二千二百四十五万トンと見込まれて、大体三百九十万トンから五百九十万トン需給ギャップが存在すると推定されております。現時点において予測し得る最大限の需要を見たといたしましても、三百九十万トンについては少なくともその処理を実行する必要があると提案されておるのであります。そのうち平電炉業界の過剰能力というのは三百三十万トンでありまして、これを昭和五十三年度末までに処理いたしまして需給ギャップの解消を図ろうといたしております。  これについては、すでに通産当局の御指導を得まして、業界として、また個々のメーカーといたしましていろいろな方法を検討しておりまして、一部のメーカーでは電炉の廃棄または廃棄を前提といたしまして休止しており、着実に実行に移っております。  第二の問題は、企業経営に必要な資金確保の点でありますが、約二年間にわたるこのコスト割れの販売のために企業体力はもはや限界に参っております。関係当局の御指導や関連企業、金融機関、商社各方面からの御支援をいただいておるわけでありますが、大幅の赤字、債務超過という状況の中では、市中からの民間の融資を得ることは非常に困難でありまして、毎日の運転資金にも苦しんでおる状態であります。  さらに、これからは不需要期に入りますものですから減産の強化を実施しなければならない状態であります。また本格化する過剰設備の処理を考慮いたしますと、資金の確保は当業界の重要な課題であると言わなければならぬと思います。  これらの状態を踏まえまして、国家に対してお願い申し上げたい点をこれから申し述べたいと思います。  平電炉業界構造改善につきましては、先ほどから申し上げましたように、個々のメーカーにおきましてすでに設備の休廃止をやったり、あるいは小棒の部門から撤退をするとか、業務提携による生産・販売の調整、工場の集約化等によって構造改善が着々進んでまいっております。  こうした業界努力のほかに、政府当局によって当業界への助成措置も再建するためには絶対不可欠なことでありまして、目下助成をいただいております点について申し上げますと、金融面では、設備処理に伴う所要資金を民間金融から借り入れる場合、その債務の保証制度創設があります。また、商工組合中央金庫によってビレットを担保にして金を借り入れるとか、政府関係金融機関から借り入れした貸付金利の引き下げを願って金利の負担を軽減するとか、さらに借入金の返済を繰り延べしてもらうとかいうような方法を講じてもらっております。さらに雇用対策といたしましては、雇用保険法に基づく各種の援助措置や失業給付期間の延長対象業種として指定してもらい、業界として厚くお礼を申すところであります。  しかし、これだけではいけませんので、さらにお願い申し上げたいことは、金融面といたしましては、現状では減産及び構造改善に伴いまして資金繰りが一層苦しくなってまいりますので、これに必要なる資金について格段の御配慮が願いたいということであります。  特に、最近円高傾向になってまいりましてから、小形棒鋼とか中小形の輸出というのは生産量のうち約三割占めておりますので、したがって、この苦しみは非常に苦しいのでありまして、すでに電気炉及び平電炉の操業率は七〇%になっておるわけでありますけれども、さらにそれが落ち込んで六〇%も切るのではなかろうかというふうに心配されておりまして、円高は全く致命傷だと言わなければならぬと思います。  さらに、税制の面では、すでに鉄鋼業界といたしましては政府各省庁に五十三年度税制において要望いたしておりますが、過剰設備の処理を行う事業者に対しては、高炉メーカーあるいは商社、銀行等関連事業者が協力負担金を支出した場合、その負担金は、先ほどお話しなさったように、損金として処理し得るよう処置をお願いいたしたいということであります。  以上、金融面、税制面について御要望いたしたのでありますが、これらの対策はこれだけでは十分でありませんので、もう一、二政府に対してお願い申し上げたいと思います。  その一つは、小棒の需給がアンバランスの状態になっておりますので、現状より見ますと約三十万トンと見込まれる過剰在庫がございますので、これを買い上げしてもらいまして、経済協力推進の一環として発展途上国へ製品の供与という姿で検討していただきたいということが第一点であります。  さらにもう一つ政府の景気振興のために公共事業の促進が行われておりますことは、平電炉業界としてもこの需要の喚起に対し非常に期待を持っておるのであります。  つきましては、この公共用の工事向けの資材についてお願いいたしたいのであります。公共用の資材の購入の価格というのは市中価格で買われておるのでありますけれども、構造不況業種である平電炉業界現状での市中価格というものは、先ほども申し上げましたように、原価をはるかに下回った価格でございますので、公共事業に使われる資材の購入については、何とか適正な原価をもって買い上げしていただくようお願いいたしたいということであります。また、さらにできることならば、以前から行われておりますように支給材方式の復活ができれば非常にありがたいということであります。  次に、先ほど申し上げましたが、平電炉業界は、全国五十二社で、業界の安定と合理化を図る目的のために中小企業団体法に基づきまして工業組合を当局の指導のもとにおいて結成いたしまして、ことしの十月一日から五十三年の三月三十一日までの六カ月間、生産数量のカルテル、また十月十二日から十二月三十一日の二カ月半、価格制限認可を受けて、市況回復に努力いたしておるのであります。しかしながら、この工業組合に参加しておられない方がおられまするので、これについてはわれわれは非常に困っておるわけであります。この工業組合で、われわれは五十二社で生産制限をやり、資金面でも採算面でも非常な犠牲を払っておるのでありますが、加盟しておられない方々はこれに拘束されることなく自由な生産をやっておられるのでありますが、その数字は約二割に相当します。こういう状態でありますので、このギャップのために、われわれがいかに努力いたしましてもなかなか安定が困難なのであります。つきましては、どうかこの中小企業団体法に基づきまして早急にこうした未加入の方々に対して生産制限に関する指示をしていただきたいというのがお願いの一点であります。  最後にお願いいたしたいのは、雇用問題についてでありますけれども、現状においてはすでに工場の集約化、小形棒鋼から撤退する等、あるいは極力当該企業内において配置転換、教育の実施、また一部には一時帰休制度などをして調整してまいっております。しかしながら、今後過剰設備を処理するに至りますと、雇用調整の表面化ということはどうしてもあらわれるような気がいたすのであります。この場合において、雇用調整給付金の給付、離職者・転職者への職業訓練、その他雇用安定資金制度の運用について小形棒鋼業界実情に沿った弾力的運用をお願いいたしたいということでありますが、それにも増して望みたいことは、今国会に構造不況業種の離職者を救済する目的のために特例法が提案されるということを承っておりますが、離職者に対しては長期間の失業給付の支給や国家的配慮による離職者救済について格段の努力をしていただくようお願い申し上げたいと存じます。  以上、平電炉業界に対するいろんな問題を申し上げるとともに、国家に対して種々の御配慮をお願い申し上げたのでございますが、当業界の窮状を御賢察賜りまして、どうか早急に対策を立てていただくことをお願いいたしまして、私の説明を終わりたいと存じます。
  10. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) どうもありがとうございました。  次に、鴻池藤一参考人お願いをいたします。鴻池参考人
  11. 鴻池藤一

    参考人(鴻池藤一君) 私、全国建設業協会会長の鴻池でございます。御指名がございましたので、業界の現在の状況につきまして申し上げたいと思います。なお、全国建設業協会は各都道府県に地区協会がございまして、これに所属する企業が約二万七千に及んでおります。それでは、現在の状況につきまして申し上げます。  国会当局また政府当局におきまして、景気の浮揚策といたしまして本年度公共事業費の拡大また公共事業の上期集中発注方式をとられまして、上半期に七三%の契約率を目標とされまして早期執行が行われましたことにつきましては、長期にわたって不況に悩んでおりますわれわれ業界にとりましてまことに感謝にたえないところでございまして、謹んでお礼申し上げる次第でございます。  公共工事の発注につきましても、六月以降、順調に発注されておりまして、上期の契約の消化率もおおむね目標に達しておるように伺っております。その波及効果でございますが、元来、建設工事は、請負契約締結後、工事の施工契約また資材の購買契約並びに各職種別の下請契約が行われまして、施工の工程に基づく各種手続の後に本格的な工事が稼働してまいることになります。したがいまして、この段階におきまして資金の流れが活発化いたすことになるわけでありまして、特に本年度は暫定予算で始まりました影響もございまして、二、三カ月のずれは当然これは起こってくるんではないかと考えておるわけであります。九月までの前倒し発注効果はこれから逐次出てくるんではないかと期待いたしておるわけでございます。  ただ、六月以降、公共事業の発注は順調に進んでおるのでございますが、しかし、現在の段階におきまして建設業界といたしましてまだ不況感がぬぐい切れないと申しますのは、その最大の原因といたしまして、総建設需要の約三分の二を占めております民間の建設需要が民間経済活動の不振から低迷の域を脱し切れないというところに主たる原因があるのではないかと考えております。また、このことは建設業の倒産状況にも反映いたしておりまして、最近におきます建設業の倒産件数は月平均四百ないし五百件に及んでおりまして、その全産業の倒産件数に占める割合は約三〇%内外を占めております。その主な原因と目されますものは、民間の建設需要激減に加えまして、現在の建設業者数は許可業者数が約四十二万に達しておりまして、経営基盤の弱い企業を含めた過当競争を余儀なくされている結果ではないかと考えております。全建設業者の数のうち約九九%までは中小建設業者が占めておりまして、経営基盤が弱いという客観的な実情にあるものと思われますが、最近の注目すべき傾向といたしましては、受注不振の理由によるほか、不況型の倒産が多くあらわれてきた結果も注目いたさねばならないと考えております。  以上、建設業界現状につきまして申し述べましたが、われわれ業界といたしまして、これからの厳しい経済環境に対応しますためにも、企業自身にとりましてもやはりみずからの体質改善に努力いたさねばならないと考えておるのでございますが、次の事項につきましては特別の御配慮方をお願い申し上げたいと存じておりますので、よろしくお取り上げをいただきましたならばまことに幸いと存じております。  その一つといたしまして、長期にわたる不況の景気浮揚策のために補正予算の早期成立また早期執行をぜひひとつお取り上げいただきたいと存じております。  次に、明年度以降の予算につきましても、長期にわたる不況の景気浮揚策といたしまして公共事業費の拡大をお願いいたしたいと存じております。  次に、また、これらに関連いたしまして、総公共事業費の約六五%を占めております地方の公共事業の円滑な執行を期するために、起債を含めて地方財源の裏づけ確保対策等につきまして特段の御配慮をお願い申し上げたいと存じております。  最後に、経済波及効果の多い住宅政策の振興につきましては、有効な土地利用対策を含めまして、この件につきましてもぜひ御配慮の上お取り上げいただきましたなれば、まことに幸いと存じております。  以上、現在の状況とあわせて業界としましての要望事項を申し上げまして、特別の御配慮をお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございました。
  12. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより質疑を行いますが、おおむね午後零時三十分に休憩するよう委員会を運営いたしたいと存じます。何とぞ各委員の御協力お願い申し上げます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 小柳勇

    ○小柳勇君 日造協の宇野さんに質問いたします。  いま造船下請で働いている労働者を首切らないために解撤事業をやるとおっしゃっておりますが、非常に結構なことであろうと存じます。造船不況新造船ができないから廃船を買って労働者に仕事をやらせるということであります。したがって廃船を買う単価、買いましてこれを解撤いたしまして今度はその鉄くずを売られるのでありますが、その差額は労働者が失業しないためには政府も何らかの補助措置をやらなきゃならぬと思うのであります。したがいまして一年間に、いまの下請企業の労働者を首切らないで働かせて、しかも採算のとれない仕事でありますから、どのくらい金額が必要であるか。買う単価とそれから鉄くずを売る単価とその差額については何らかの方法で考えなければなりません。したがって、その点を少し数字的に御説明を願いたいと存じます。  それからもう一つは、台湾とか欧州諸国でもやっておるとおっしゃっておりますが、その諸外国でやっております実態について、いま少しお話を願いたいと思います。  以上であります。
  14. 宇野信次郎

    参考人宇野信次郎君) お答えします。  われわれのいま希望しておるのは大体三百万総トンぐらいの老朽船舶を買っていただいて、これを解撤することによって年間大体延べ百万人以上の人員が仕事にありつける。それは数字的には三百万総トンの買船費は、現在のドル計算で一ドルを二百五十五円ぐらいの見当でやりまして、約三百四十四億になる。これの解撤の経費、これが大体百九十八億円。この回収品のスクラップ、伸鉄材あるいは船舶についておるいろいろな補機類、機関類、そういうものを細かく大体試算しまして、これが販売価格は四百六十二億。差額の八十億以上がちょっと不足するので、これをひとつ補助していただきたい。それから、この場合に買船費をひとつ融資していただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  現在、この解撤の資源というものは、少なくともわれわれの調査によりますると、三千万トンぐらいの余裕がある。したがって、これを日本で全部というわけにいかなくても、少なくとも一〇%ぐらい、一割ぐらいのものをつぶしていただいて、漸次これがふえれば就業人員もふえてくる。ただ、この前、本年政府から受けた補助金は一総トン当たり六百五十円でした。六百五十円では現在のスクラップの市況価格ではとうてい採算がとれなさ過ぎる。したがって、この現在せっかくつけられた補助金がまだ十分に手がつかない状態。われわれもこれについてこの予算内で年内は何とかして解撤事業を進めたいと思っていますが、この予定は二十二万五千総トンですが、六百五十円の補助金ではほとんど施設を持っておる元請企業は手を出さない。少なくとも五、六千円の赤字が出るというので、それをわれわれの方では中小企業の手でいま何とかして消化しようとしておるわけなんです。  で、解撤を一番多くやっておるのは台湾であります。大体四百万前後、あるいは朝鮮が百五十万、あるいは欧州方面でその他を合わせて、実際において、資料によると千万トン以上の解撤のうちで、日本はわずか七万トンぐらいしかつぶしていない。  この点においては、私たちは、ある意味において世界の船を半分近くもつくっておる日本余剰船舶解撤するというのは、ある意味において一つの対外的な責任を果たすことにもなる。そうして何よりもこの余剰船舶解撤しない限り新造船の意欲はなかなかわいてこない。こういう点から、これはいままで日本では新造船に追われて解撤というものには目をつけませんでしたが、少なくともいままで多年尽くしてきた下請を救済するためにも解撤はぜひともやっていただきたいと思います。今年は国会の協議で一兆円以上の減税が実施された。それから見ますれば三百五、六十億のお金は大した費用ではないと思います。その点でお願いしたいと思います。
  15. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日合連の又賀さんにお尋ねしたいと思うのですが、合板の問題で、特に韓国との関係をお尋ねしたいと思うのですが、韓国から日本に輸入されているかどうか。輸入されていると、どのぐらい輸入されているのか。日本の消費量のどのぐらいの割合になるのか。なければ結構でございます。  それから韓国の合板業界というのは最近大変成長してきているというふうに伺っておりますけれども、それの単価差とか生産性の問題がどのぐらい違うのか。  それから合板業界には原料の購入とか製品の販売というものに商社がかなり介入しているという話を私は前に聞いたわけでありますが、そうした商社がどういう役割りをしているのか、あるいはこの商社が韓国から合板を買って第三国に輸出をしているというようなことがあるのかないのか、その辺の、商社が第三国貿易に対してどんな役割りをしているのか、このことが第三点であります。  それから先ほど日合連の転業対策というお話が余りお話の中に出なかったのですけれども、転業対策が何かありましたらひとつお伺いをしたいと思います。  それから先ほど三十五ラインのこれを廃棄をする、そのために百億円ぐらいの金が要る、それについて業界が負担をするつもりなんだけれども、もうとても足りない、国の方でその金についてある程度考えてくれというわけですが、具体的にどのくらいの金なのかお話がなかったのですけれども、国でどのぐらい持ってもらいたい、業界でどのぐらい負担できるのか、その辺の金額をお示しいただきたい。  以上でございます。
  16. 又賀清一

    参考人(又賀清一君) お答えいたしたいと存じます。  第一点は、わが国合板の中で韓国との問題でございますが、現在韓国からわが国に輸入されておるものがあるわけでございますが、これはきわめて少ない数字でございます。輸入合板そのものからいいますと、わが国生産国で輸出国でございましたわけですが、最盛期には約三十五工場分ぐらいのものが年間輸入されておった、韓国を含めて。最近は五カ工場ぐらいにダウンしており、それも特定なルートによるものである、こういうふうにお答え申し上げたいと思います。  それから韓国の生産コストの問題でございますが、韓国の生産コストは非常に低い。韓国の合板メーカーは、日本合板工場が歩けば韓国は走れと、日本合板工場が走ればもうその倍ぐらいに走っていけというぐらいな、意欲的に日本合板業界を対象として生産コストの切り下げに努力をしておりますけれども、私の考える限りは、輸入関税の二割というものが現存しておりまして、これがある限りは平時の需給のバランスがとれるわが国価格ではそう恐しい問題ではない。したがいまして、あくまで輸入関税二割にわが国合板業界の将来がかかっておるというふうに申し上げておきたいと存じます。  それから次は、商社の問題だったと思いますが、商社は完全に第三国貿易あるいは韓国のものをアメリカに出すとかあるいは台湾のものをアメリカ輸出するというのをやっておると思います。実は過日もアジアの合板生産会議がございまして、クアラルンプールで十一カ国が集まって会合いたしましたときにもその事実が判然と出ております。しかし、現在の韓国の考え方といたしましては、国が輸出について将励を指導いたしておりまして、積極的に欧州市場——アメリカが第一でございますが、最近欧州市場あるいは中近東市場へ盛んに売り込みに行っておるというような実情でございます。  それから第四点は、転業と設備の関係でございます。三十五ラインカットするということをきわめて簡単に御説明申し上げましたわけですが、これにはどうしてそれをカットするというその廃業、あるいはその施設を受け入れる受けざらの問題が一つと、それからもう一つは、廃業すると同時に失業していくいわゆる従業員の問題がございまして、私の方の算定は、ワンライン百二十人といたしまして四千二百人の従業員の方がやむを得ず失業されるだろうという想定をしておりまして、これにつきましてはいろいろ目下研究をしておるということでございます。したがいまして、その百億円の中にある程度のそういうものを配慮しておるかどうかというようなことだろうと思いますが、実はある労働組合団体から昨日も会見を申し込まれましていろいろ懇談をしたその中でしっかり政府予算をもらってくれという激励を実は受けておりまして、申し添えさしていただきたいと思います。それで、その百億円と申し上げますのは、工場が閉鎖いたします場合に、ワンライン、ツーライン等ありますが、ツーラインの場合にワンラインカットしても、企業仕事は、会社は残る。しかし、ワンライン即ワン企業の場合は、会社がそのまま閉鎖する。まあ合板企業は簡単に工場何ぼの中から何ぼカットせいというようなわけにいきませんで、ワンラインカットすれば即その会社はもう休業だということに相なりますので、そのワンラインでも、企業体が閉鎖する場合と、企業体が生きていながらワンラインカットする場合では、価格の算定が違いまして、当然平均ラインにならして私の方では四億円程度と、こう考えておりまして、そういたしますと、計算いたしますと百億を下らないという算術計算が出ておりますけれども、私の方は、したがいまして、最低ということを申し上げておる次第でございます。  それじゃ、最後の御質問でございますが、その百億円をまるまる業界で負担するのかどうかと、あるいはまるまる政府補助金で賄おうとするのかどうかという御質問であったかと思いますが、これは私の方も、いまどういう金額でこの中身を業界が負担して、何ぼ助成お願いするという問題につきましては、ここで軽々しく申し上げるということを差し控えさしていただきまして、常々林野当局と連携プレーよろしく現在まで進んでおりますので、この点についてはしばらくお預けをさしていただきたい、こういうふうにお願い申し上げます。  以上でございます。
  17. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それから輸出商社の、原材料を商社が買って皆さんにこうやるわけですが、あるいは製品を買っておるわけですが、その辺の条件。
  18. 又賀清一

    参考人(又賀清一君) これは実は合板業界の中に商社が占める役割りでございますが、原料につきましては、輸入木材でございますから、商社からダイレクトで買うという場合と、問屋を経由してメーカーが買い入れるというケースがございますが、最近はほとんど商社からのダイレクトということになりましたのと同時に、商社からメーカーへの売り込みも系列化されてきておるという実情でございます。  片一方、今度は製品の面でございますが、メーカーがつくりました製品を流通市場に流していく中に商社が依然やはり介在いたしております。その介在の一番起源は、流通市場が過去において非常に信用的に不安がある。したがって、メーカーがダイレクトで売った場合にえてして問題を起こす。したがって、信用力の膨大な商社にわざわざメーカーサイドから中へ入っていただいてそうしてわずかなマージンで取り扱いをしていただいた、それで信用の維持を図ったということが発端でございまして、それがだんだん濃厚になりまして、最近もうほとんど生産量の七〇%ぐらいじゃないかと思いますが、メーカーの系列で流通市場に出ておる、この七〇%は私の推測でございますが。  以上でございます。
  19. 片山甚市

    ○片山甚市君 浅井参考人にお伺いするのですが、絹織物に関して若干専門的な方でありますから私から少しお聞きしたいのです。  基準価格は、いま絹糸の価格は一万三千百円から一万四千五百円で蚕糸事業団が放出をする値段を決めておる、このように思います。そこで、生糸の一元化輸入を行っているのでございますが、現在の生糸の放出のやり方では、繭糸価格安定法第十二条で、糸の相場が一万三千四百五十円を下回っているときまた下回るおそれがあるときは事業団は売り渡しをしないということになっておるのですが、それは運用を誤っていないかどうか、まず一つお伺いします。と申しますのは、二十八中標準で一万三千四百五十円が三日続くと生糸を出すことになっておるのですが、現在の相場が一万三千五百八十円−一万三千六百円であるにもかかわらず、放出しておりません。この七月から九月の四半期分で六千俵あるのに四千俵しか放出してないというのは、農林省としてどういうことになっておるのか、業界としてそれについて御意見はどうか、これが一つです。  それからこれは自由経済という立場から言っても、行政当局が糸の値段をつり上げておるのではないかということで丹後の方々から公正取引法の違反ではないかというように聞かれておるのです。先ほどあなたがおっしゃったように、二十一中、いんゆる細い糸の上等のものについては操短をしておりますから非常に足らなくなっておることは御承知のとおりです。そういうことで、二十一日の横浜の糸の値段が一万三千五百八十九円、神戸の値段は一万三千六百円、こういうことになっておりますから、これは放出をせなければならぬのにかかわらず抑えておるというように考えるということです。  それからこれを考えるときには、二つ目には養蚕者と織物業者を保護する立場から、養蚕者に対しては特別の保護をすると同時に、織物業者に対して安い糸を確実に保障するようなことでなければならぬと思うが、いまそうなっておるかどうか、業界から見てですね。丹後ではことしに入ってから十件ほどで百億円くらいの倒産をみておるんです。これで全国ではそういうような民族衣装にかかわる産物に対してどのような形になっておるのだろうか、こういうことについて質問いたしたい。実は平年の在庫は大体五千万平方メートルですけれども、現在八千五百万平方メートル(ネクタイも含む)があるんですが、にかかわらず外国から輸入をどんどんやるということになると、これは共倒れになる。ここらあたりについても調整をどのようにするかということで、地元では相当調整をやってきました。この絹織機の共同廃棄ということで、あなたのところでは二千六百四十八社、一万三千八百五十四台を近く二年間かかってやるということになっておるようでありますが、調査によると生糸の引き渡し高から推定すると、大体二万台くらいが過剰になるのではないか。ですから、この過剰の織機をきちんと処理をするためには、相当国からの皆さんから御案内になるようなことをしなければこれはだめだろう、こういうふうに思うところです。統計は白生地用の織機で一万一千三百台、先染め用織機で七千五百台、合計一万八千八百台が過剰になるだろう、こういわれているについては、おおむね間違いないだろうか、こういうことであります。  最後に、先ほどあなたがおっしゃったように昭和五十一年、昨年の八月の十九日に三者の了解事項があるうちの四項について、四項と申しますと、「輸入生糸については、日本蚕糸事業団からいわゆる実需者売渡方式により糸価安定及び綿業の経営安定を配慮し、可能なかぎり多くの数量が輸入価格に所要の経費を加えた額で速やかに実需者に渡るよう生糸一元輸入制度を運用する。」こうなっておるかどうか。私の方から地元からそうなっていない、もう改めてもらうように。ですから、あなたはそういう関係の人ですから、業界として閣議やあるいはそういうとこで決定をしたことについて守られておるかどうか。五十二年の六月十日の閣議では、先ほどお話が出ていた絹業対策について、輸入生糸の実需者売り渡しは適正かつ円滑な実施をすると、こうなっておりまして、そして通産省はそれを受けて三日後の六月十三日に、生活産業局長の名前で、絹業者の安定についてということで、輸入生糸の実需者売り渡しについては、今後とも可能な限り多くの数量を四半期ごとに計画的にしかも輸入業者の所要の費用を加えて速やかに、かつ安定的に売り渡すよう運用するということになっておりますが、非常に納得できません。というのは、事業団の手数料が六十キログラムに二百五十円掛けて一万五千円になっていますが、ペーパーマージンとして多過ぎるのじゃないか、三十円くらいでいいのじゃないか、こういうふうに考えてみておるところです。実は私たちとしてはこの蚕糸事業団についてもメスを入れるべきだ、こう考えますが、お答え願いたいと思います。
  20. 浅井長一郎

    参考人浅井長一郎君) ただいまお尋ねになりました件でございますが、当然繭糸価格安定法の十二条の十三の三というところに挿入された問題でございまして、これがある限りわれわれの実需者売り渡しができないというのが元来の農林省なり事業団の行き方でございます。そういうことで、私冒頭に述べたように、当然去年の八月十九日あるいは六月十日の時点において円滑に運用するというたてまえからすれば当然われわれに渡していただかなければならないということで、絶えずわれわれ連合会としては農林省、事業団に対して陳情を申しておるわけでございます。  ただいま非常に暴騰をいたし、特に二十一中という糸が生産価格の二百円ないし三百円のアップでございます。そういうことから四−六というものについて二千俵ずつ四千俵決定したわけでございます。あとの分については何か近く出るとかといううわさだけは私は聞いておる範囲でございます。当然引き続き七−九という問題でございますが、これについてもいま仮割り当て、それから船積みの関係で十一月、十二月の船積みということで手配はできておるようでございますが、ややもするとこの経済情勢の中で需要と供給のバランスの崩れる中においていまのこの条項の「基準糸価を下るおそれがある場合」、これが非常に微妙な法律上の動き方でございまして、下がるおそれのあるというこういう不安定な要素の中でわれわれが出すとか出さないとかというような非常に不鮮明な姿でわれわれ業界が運営しておるわけでございまして、強いて言えば倍近くの国内糸を使って少しでも国際価格に寄りつくような織物、そういった陰には、やはり努力と省力化、そうして輸入の原料を少しでも安いものを曲げて市場へ出る方向をとりたいというのが趣旨でこの実需者売り渡しというものができておるはずなんです。それが国内価格の左右によってそれを締められるということが非常にわれわれ不可解な問題点でございまして、この問題点について何か法律改正をできるようにしていただけないかと、まあ三省覚書事項もあり、閣議決定事項その他から考えた唯一の絹業という立場から見たただ一つの救済の方法として絶えず陳情をやっておるのが現状でございます。そういうことで、ひとつぜひとも、わずかでございますが、実需者売り渡しについては特別な一元化という問題を外して、除外例によって逐次毎月少しでも生産者に渡していただければということで実は陳情をいたしておるわけでございますので、いまの御質問はごもっともな点でございまして、三日という問題と一万三千四百五十円をという、この値を三日間以上でないと出ないということは、これは輸入一元化の糸をそう指してわれわれは思っておるわけなんで、実需者という問題については何かひとつ特別な法を講じていただければということできょうお願いをしたわけでございます。  それから御承知のとおりに、生糸の事業団のマージンの問題でございますが、事業団が安定を図るために将来のリスクをかけないと、こういうつもりで実はああいう膨大な手数料ということをお取りになるわけなんで、実際瞬間タッチの糸が来ればすぐ業者に渡るもんで、結局その間のリスクというものはほとんどないわけなんです。一般の一元化による生糸の場合では、為替の問題あるいは国内価格との問題で非常に問題があろうかと思うのですが、この点においてもわれわれ実需者の売り渡しにしては最小限度の事務手数料と申しますか、そういう程度でひとつお願いしたいということは絶えず申しておるわけでございます。こういったことについて、ひとつ格段の事業団の問題についてはお願いいたしたいと、かように思っておる次第でございます。  以上でございます。
  21. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ちょっと申し上げますが、あと七人ほど御質問を通告された方がございますので、時間との見合いにおきまして、簡潔なる御質問、簡潔なる御答弁をお願いを申し上げたいと思います。
  22. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 全国建設業協会の鴻池参考人に質問いたします。  三点ばかり考え方をちょっとお伺いしたいのでありますが、第一の問題で、建設業界ほど最近の倒産が非常に大きいという訴えがございます。二十日の本予算委員会でも私が質問いたしまして、政府対策を要望いたしております。不況といっても一般論では困りますので、具体的に不況の原因とは一体何が原因になっているかといいますと、元請業者が、第一下請あるいは第二、第三という下請会社に対しまして、つまり不良長期手形を発行したり、あるいは政府積算価格による単価を買いたたくということが、結果的には、中小企業下請建設業者が非常な倒産が続出をしているというのが結果でありまして、そこで、北海道帝国興信所調べでも、北海道の倒産の五〇%はこの種の例でございます。したがって、業界としてこの種の対策をどのように指導いたしているのか、この点を第一点としてお伺いしたい。  第二の問題でありますが、労働者に対する賃金支払い防止法違反が、私の調べによりますと、四八%のケースの中で一番多いのが建設業界であります。これまた賃金支払い防止法に一番抵触をいたしております。特に季節労働者でありますから、季節労働者といっても建設業界の場合ははっきり申し上げまして常用労働者が九〇%、こういう態勢で、労働条件の実態を見ましても、普通の一般常用労働者と違いまして、退職金はゼロ、ボーナスはゼロ、あるいは北海道の場合なんか申しますと、寒冷地つまり暖房手当はゼロ、こういう劣悪な労働条件で実は働かされている。そういう中にあって、なおかつ賃金支払いが行われていない。しかも、防止法には一番抵触している。こういった問題について、業界自身が、元請のつまり下請あるいは孫請に対する対策あるいはこれに対する搾取、それから労働者の条件の取り扱い、こういったものについては非常に前時代的である。こういうものが改善されなければ健全な建設業界としての維持ができないのではないか、特に労働者が基本的に守られていかないと、こういう点についての業界指導について二点目はお伺いしたい。  それから第三の問題でありますが、建設業界認可のあり方につきましていま訴えられましたが、これは私も一面考え方を持っておるのでありますが、この認可指定につきまして、もちろん資本金あるいは一級建築士の資格条件、もちろん官公庁の発注、入札の場合の資格条件などがございますけれども、そればかりでなくて、過当競争になっているというのでありますが、認可に対するあり方として業界としてどういうお考えをお持ちなのか、この点をお伺いをしたい。この三点であります。  それから先ほど小柳理事から特に日造協宇野参考人にちょっと御質問がございましたが、私は特段ここで要望しておきたいのでありますが、先ほども、首切りは出さないと強い決意でございますけれども、北海道の日魯造船がいま重大な段階を迎えているんです。それはお聞きになっていると思うのでありますが、親会社である函館ドックが日魯造船に対して積極的な再建協力姿勢がない。こういう点では、結果的には、首を飛ばさない、生首は飛ばさないといっても、現実にいま一千名近くの組合員の家族が路頭に迷わざるを得ないといういま重大なピンチに函館市の日魯造船は立っているわけであります。これは、業界としても、親会社である函館ドックに対してひとつ積極的な、むしろ国としましても運輸大臣が非常に積極的な答弁をしておられまして、行政指導には協力していただけるという温かい御支援を願っておるのでありますが、もともとやっぱり親会社が積極的にこれに乗り出してもらう、こういう業界としての手だてをぜひひとつとっていただきたいと、このことは特段にひとつ要望申し上げておきたいと、こう思うのです。  以上であります。
  23. 鴻池藤一

    参考人(鴻池藤一君) ただいまお尋ねの件でございますが、業界の倒産業者に関連しまして手形の件でございますが、まず第一に、原則的に申しまして中小企業におきましては担保能力が十分でない、したがいまして、受注しました工事の取り下げ金が担保になりまして融資が行われるというのが実情でございます。したがいまして、原則的に申しますと、工事の絶対量が少なくなってきますと必然的に業者の金融が梗塞されるような状況は避け得られないような状況でございます。また、大企業におきましても、石油ショック後、非常に長期にわたる手形の発行もございましたので、先般も業界関係団体が建設省の方へ招致を受けまして、建設大臣から直接手形の期限改善につきまして注意が発せられました。業界団体といたしまして、この問題につきまして真剣にこれを取り上げて、会員に対しまして手形の期限改善について努力をいたしております。現に、大きな企業におきましても、従来の期限を短縮して改善したという事実もございまして、業界団体といたしましてもこの問題を重要な問題の一つとして改善方に努力いたしておる次第でございます。  次に、建設事業に従属する労働者の件でございますが、先ほど御説明申し上げましたように、許可業者が四十万以上にわたっている上に、九〇%以上が経営基盤の非常に弱い中小企業がこれを占めております。したがって、経営管理能力が十分でない業者のあることもこれは事実であります。したがいまして、支払い状況におきましても、特に関係方面でこれが改善方の一つの手続といたしまして雇用改善法も施行されまして、法律的にもこれが指導されるようになりまして、われわれ業界団体におきまして全建設投資量が国民総生産の二〇%を占める大きな業界でありながら、第一線に従事する労働者の厚生福祉の面が必ずしも十分とは考えておりません。これは、一つ工事が終わったなれば次の工事に移らなければならない、すなわち就労場所を転々としなければならないという企業としての宿命的な条件がございまして、固定した職場における厚生福祉施設を完全にやれないという宿命的な原因もございますが、やはり重要な産業の一つとしまして、第一線労働者の厚生福祉と、また雇用条件の明確化、不良支払いの防止ということから、雇用改善につきまして業界団体としてこれまた重要な問題として改善方に努力をいたしておる次第でございます。  また、許可基準の関係でございますが、われわれ困っておりますのは、現在建設業者の数が余りにも多いということが、やはり中には企業として管理能力のない企業が当然含まれることを恐れておるわけでございますが、許可業者の数に関連しまして、発注されております工事の規模を取り上げて考えますと、公共工事といたしましても発注規模一件当たり数千億に及ぶ大きな工事から、地方におきましては一千万を切れる、数百万の工事もやはり公共工事として発注されておるのが実情でございます。したがって、これの受け入れの窓口である業者の規模も勢い非常に幅の広いものにならざるを得ないのが現在の実情でございます。それで、これは私個人の考えにすぎませんが、許可と登録制と二本立てにしなければなかなか業者の規制もむずかしいのではないかと考えておりますので、将来の機会を得ましてこの二本立ての方式がとられましたなればさらに管理の面におきまして一段進んだ管理方法がとられるのではないか、こう考えております。  また、第一線労働者の雇用条件に関連しまして、退職金の問題もつとに業界としてこれが改善策を考える必要がございまして、建設業の退職金を支払う一つの機関も先般設置しました。まだ十分な支払い金額には達しておりませんが、ある程度の期間建設業に従事した者におきましては、たとえ日雇い労働者に対しましても退職金を支払える方法を現在具体的な機関を通じて実施いたしておる次第でございます。  以上、御説明申し上げました。
  24. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 平電炉の関係でお伺いをします。  安田参考人にお伺いしますが、先日の本予算委員会でも時間がございませんでしたので簡単にしか私は平電炉関係の質問ができなかったのでございますが、一つは、現在やられておる不況カルテル価格カルテル、これは現在でも値崩れをしておるわけですけれども、大体値段としてはどれぐらいになれば現在の大変なこの不況をしのげるのか。しかし、それは今後建設資材とかいろいろな値上がりを誘発する危険性も出てくるわけですが、業界としてはその辺はどうごらんになっておりますか。  それからもう一つは、四十八年に大変増産をされたわけです、四十八年以降。年間十二基もつくられておりましたし、このころは通産省が指導をされたといわれますが、業界の方もかなり積極的にふやしたいという、まあこれは高度成長の真っ最中ですからやむを得なかったと思うのですが、石油ショックの直後の不況に入って、もう少し今日のようなことを予測した上での対策というものが講じられなかったのかどうか、その辺は通産省とどういうふうなお話し合いといいますか、業界の要望がなっておるのだろうか、ここまで落ち込んで初めて取り上げられるわけですけれども、あの時代にたくさんふやしたのが大きな原因になっていることは事実ですから、その辺の予測というものができなかったのかどうか。  それから今後の対策としていろいろおっしゃったことは私もごもっともだと思いますし、また私なりに——私も大阪でございますから、大阪は平電炉業者が大変多うございまして、大変大きな影響を及ぼしているわけで、何とかしたいと思いますけれども、輸出の方がこういう円高時代でむずかしいわけですけれども、輸出の方はまだ伸ばせる可能性はあるのかどうか、その点いかがですか。
  25. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) 簡単にお答えいたします。  現行の価格カルテルの価格がどこまでいったらいいだろうかということは、第一の条件としてはスクラップ価格が幾らになっておるかということで決まるわけであります。スクラップ価格が変動すれば当然丸棒の価格も変動するわけであります。したがって、スクラップ価格プラス幾らが適正価格かということになろうかと思いますが、いままではスクラップ価格プラス三万四、五千円というのが一般に言われておりまして、大体その程度の人もおりますし、会社の内容によってはもう少し上だと言う人もおられます。また、いろいろ会議をやってみますと、いままでの赤字の累積を消すためにはとてもそれじゃだめなんだ、その上さらに上乗せしてもらいたいと言う人もおられまして、各社ばらばらでありますが、まずこの価格の決め方は、スクラップ価格を基準にしてプラス幾らということで決まると思います。それが、大体三万四、五千円という——いままで四万円ぐらいだと言ったり、いろいろみんな合理化をやっておりますので、三万四、五千円から六、七千円というところが結句だろうと思います。  第二の点の設備の増設の件でございますが、いまおっしゃったとおり、四十八年まで急に伸びて、その後どういうわけかという話ですが、これは余りやっておりませんが、ただリプレースはあります。古い十五トンか二十トンをやめて大きなものにするという能率化のためのリプレースはありますけれども、本当の意味における増設というものはございませんので、恐らくこれから後はないというふうに私も思いますし、そういう心配はなかろうと思います。ただ、予測については、政府関係の予測についても、中長期予測については相当のものが四十八年は出ておったのでありますので、もちろん設備をやった経営者みずからの責任であることは言うまでもありませんが、その指標になったものについては、やはり客観的な政府その他関係筋の経済指標というものが相当大きな役をなしていたことだけは間違いはないと思います。
  26. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私が聞いたのは、四十八年のそれはいいです。要するに、オイルショック以降のこの不況に入ったときに、いまになるまで余りやかましく言われなかった、もう少し早い対策を講じられなかったのかと。
  27. 安田安次郎

    参考人安田安次郎君) それはもちろんわれわれの方でも申し上げましたように五十年のときからもうすでに不況カルテルをやっておるくらいですから。その以前から、もう直るだろうもう直るだろうということで来ていたことだけは間違いありませんので、そのときから本当に構造改善の問題に取っ組んでおればよかったとおっしゃることはよくわかりますけれども、そのときにはそういうことまではまだ進んでいかなくて、やはり従来の景気パターンでものを考えていたということだけは間違いないと思います。
  28. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は日造協の宇野さんに一点お尋ねしたいと思います。  官公需がないのかどうかですね。たとえば、協力事業であるならば、道路の鉄骨とか、あるいは橋の骨、橋梁とか、そういうものの官公需が全然ないのかどうか。  それからもう一つは、先ほど解撤事業のことにつきましていろいろお聞きしました。三百万トンの船の解撤をやって八十億円補助が必要だと、このようにお述べになりました。そうしますと、一総トン当たり大体二千七百円が赤字ということに計策できますけれども、いま六百五十円の補助金で赤字をつくりながら二十二万五千トン解撤をやっておられる。失業を防ぎ、何とかして仕事をつくりたいと、こういう御努力をなされているわけでございますが、どの程度補助金があればその解撤事業が進む可能性があるのか、あるいは一総トン当たり二千七百円の補助金を望まれるのか、八十億円全部の補助を望まれるのか、その辺ですね、もっと詳しくお願いしたいと思います。  それからもう一点、これは全国建設業協会の鴻池さんにお願いしたいのですが、先ほども御答弁がございましたが、官公需はどうなっているのか、中小建設業者の官公需の点はどのように行われておりますか。ジョイントベンチャー方式が建設省でも進むように指導はされておるようですが、なかなか大手の方に押しまくられてうまくいかないということもありましょうし、ピンはねとか、あるいは過酷な下請条件、手形の問題、あるいは最初の手付の問題等で不利な条件をのまされていると思いますが、その辺の現状を簡潔にお願いしたいと思います。
  29. 宇野信次郎

    参考人宇野信次郎君) お答えします。  われわれのいま解撤事業は、まず自分たちの手で仕事をつくるということが主になっております。先ほど対馬議員からもありましたが、元請に対しては、仕事のないのを出せと言われても、雇用関係のない下請仕事がないと言われればそれでおしまいなんです。元請は首切りということは言わないんです。仕事がないから出せないと。したがって、まず自分の手で仕事をつくるということは、造船不況下においてはどうしても解撤事業以外にはもうない。現在の解撤した回収資材とそれから現在の解撤の経費、その差額が、これは買船費にもよりまするけれども約四、五千円の相違がある。したがって、この差額が助成で受けられれば十分に元請も協力し、それから赤字を出さないで資材回収ができます。現在の国の予算からいって補助金は整理の段階にありますけれども、われわれとしては、同じ補助金でも生きた意味からぜひこれをお願いしたいというふうに考えております。  それからもう一つ、官公需の点において造船下請のやれる仕事は相当ありますが、建設業界の業者の多過ぎるというか、現在資格は持っていましてもほとんど指名にありつけないというような現状なんです。また、造船下請の零細のものにはなかない資格が取れない、資格を取りましてもまず実績がないというので指名にありつけないということの現状であります。
  30. 鴻池藤一

    参考人(鴻池藤一君) 官公需に基づきます下請の契約条件につきまして、非常に過酷な下請契約条件を押しつけておるのではないかというお尋ねでございますが、現在工事の絶対量が少なくなっております関係で、業界全体といたしまして非常に過当競争の状態に落ち込んでおることは事実でございます。したがいまして、これは下請だけではなしに、元請業者といえども発注単価が非常に十分でない条件のもとに受注しておるのもこれまた現在の実情でございまして、それがために下請に対する契約条件も従来に比べて逐次窮屈なものになっておる次第でございます。ただ、建設業といたしまして、これを完成する構造物は利用者にとりましては身体、雄命、財産に影響のある非常に重要なものでございますので、これが品質管理ということにつきましては絶えず業界団体としては十分な関心を持って指導しておる点でございますが、業者の数が多いということと、先ほど申し上げましたとおり、企業としての管理能力が十分でない企業につきまして、これが指導という点につきましては具体的には非常にむずかしい点がございます。また、完成された構造物の品質管理につきましては、ダンピングを防止する方法は必要なことであるということはわれわれも十分考えておるのでございますが、ダンピング防止の方法は、業界団体として行います場合に一歩その方法を誤るとやはり独禁法の違反になるおそれがございますから、非常に重要な事柄であると考えておりますが、具体的な指導方法につきましては、その方法に非常に苦慮いたしておるような次第でございます。  以上、お答え申し上げます。
  31. 内藤功

    内藤功君 日造協の宇野会長にお伺いしたいと思います、二点。  一つは、先ほどのお話の中にはお触れになっておりませんでしたが、日造協として不況対策をお出しになった中の一つとして、専用バラストタンクをタンカー設置すべきである、こういうような御要望があるやに聞いておりますが、もしそうだといたしますと、その点について一言御説明をいただきたいということです。  もう一点は、先ほどの御説明でもありましたように、昨年夏までの一年半の間に二万三千人もの大量の協力工の方の離職が生み出されたという深刻な事態でありますが、このような事態の原因はいろいろありますが、私どもの見るところで、その一つに、最近における親会社の協力下請企業分野への進出という実態があると思うのですが、これについて会長としてあなたの見られるところを、簡潔で結構ですから、御所見をお願いをしたい。  以上、二点でございます。
  32. 宇野信次郎

    参考人宇野信次郎君) タンカーのわれわれの方では二重底の設置ということを言っておるのですが、これは、昭和五十年九月に、われわれが、船の安全性それから事故のあったときに油の流れるのを防ぐという意味から、ぜひ二重底にするということを、これは日本だけでなかなかできないことで、こういう要望をしたのですが、結局は、その当時、これは日本だけではできないということ、また、その二重底の費用を船主に負担しろといってもなかなか船主はやらない。結局は、総論は賛成ですが、現実にその費用がないというのでそのままに送られてきました。これは、ことしアメリカの大統領がこういうことを提案しておりまして世界的に協議されているということは聞いておりますが、これは何か国が重要な規制をするとか、あるいは世界的な規制でやらなければ、単に船主に船の安全でやれといっても当人はやらないだろう。この二重底の財源はどこから出るかということが問題だと思います。  それから先ほど申しました下請の、これはわれわれに言わせれば首切りと言うのですが、元請に言わせれば仕事がないから次の仕事を出さないのだということで、これはわれわれとしてはそれ以上に言える段階でない。これはまた相当の圧力をかけようといっても、こちらが受け身ですから、そこの反面には、労組の方は雇用関係を持っておりまするから、まず自分立場からいろいろな要求をする。自然的に加工外注を含めて構外に出している仕事も構内に取り上げる、構内におる社外工も整理する、こういうような実に無力な労働者をわれわれとしてはぜひ国会で取り上げて救っていただきたい。この下請の労働者が大企業のように労働組合をつくって対抗するとなれば下請企業は一たまりもない。結局は国の援助によって何らかの仕事を見つける以外にはないということなんです。元請に対するいろいろのわれわれは意見はあっても、これを元請に要求したり強要することができないのが下請の泣きどころだというふうにお考え願いたいと思います。
  33. 井上計

    ○井上計君 絹人繊の浅井理事長とそれから合板の又賀会長お二人にお伺いしたいと思います。  最初に、絹人繊の浅井理事長にお伺いいたします。特に資料をきょうお持ちでございませんでしたら、後ほどちょうだいするということで結構でございます。  第一点は、非常に零細な企業が多いわけでありますけれども、その企業の中で商社系列といいますか、賃機をやっておられる方はどの程度の比率であるのか、これを第一点にお伺いいたします。  それから合繊と正絹との比率がどうなっておるのか、これが第二点です。  それから第三点は、正絹のうちで和装用といいますか、国内呉服用といいますか、これらのものがどのような比率で生産されておるのか、これをお伺いいたします。  なお、それに関連しますけれども、これらの和装用の絹織物の輸入ですね、先ほど輸入の適切な措置という御要望がありましたが、それらについてどのような輸入の状態になっておるのか、これを伺いたい。  それからもう一つは、まあ生産者の皆さん方は原料高の製品安ということで大変お困りになっている。われわれも困っておることを承知しておりますけれども、そのわりには末端の特に呉服物、高級呉服物等の末端価格は余り値下がりをしていないと、こう聞いておりますが、それらの理由が何であるのか、これをひとつお伺いをいたしたいと思います。  それから最後に、円高の中で、特に合繊の長物についての生産量六〇%が輸出をされておる。したがって、円高でほとんどの業者が出血輸出というふうなことでお困りのことを承知しておりますけれども、どの辺のレートであればこれは損益分岐点になるのか、これをお聞かせをいただきたいと思います。数字は、先ほど申し上げましたけれども、もしいますぐでなくても結構でありますから、また後日ちょうだいできれば結構であります。  それから合板の又賀会長にお伺いしたいと思いますが、先ほどいろいろと御説明を伺っておりますけれども、過去三年間に十回程度不況カルテル操短をやられたということでありますが、余り他の業界に例がないほど多くのカルテルをおやりになっておるというふうなことは、特別な事情がおありであろうということは承知をしますけれども、率直に申し上げまして、失礼でありますが、合板業界の皆さん方にどうもやはり厳しきについての認識が足りないのではないかというちょっと感じがいたしてなりません。  そこで、お伺いをいたしたいのですけれども、やはり御説明の中で、現在の設備は四十八年ピーク時の需要を十分受けるだけの設備は持っておるんだと、こういうことであります。ところが、四十八年ピーク時と比べて現在二〇%以上の需要が減退をいたしていると、こういう御説明であったかと思いますが、そこで、構造改善計画が、三十五ライン、一二%のカットということでありますけれども、二〇%以上の需要減退、すなわち、四十八年ピーク時から比べますと、設備過剰が二〇%以上あると、こういう私は理解を先ほどの御説明でいたしましたが、それにかかわらず、一二%程度のいわば構造改善計画での設備廃棄で、果たして今後の見通しがどうであるのか、それらのことにつきましてどうお考えかということを一つ。  それからこの構造改善事業で設備制限を行う、新増設は一切やらないと、こういうことでありますが、ただ、そこで、三十五ラインカットだけで、スクラップ・アンド・ビルドは全くお考えでないのかどうか。今後の対応策として、現在の設備で凍結をする、カットだけするということでは、設備の老朽化ということも当然考えていかなきゃいかぬと思いますが、それらの点についてどうお考えか。  以上、ひとつお願いをいたします。
  34. 浅井長一郎

    参考人浅井長一郎君) 第一点の御質問の賃織りと元機屋との数字については、いま持ち合わせておりませんので、ひとつ御了承のほどをお願いしたいと思います。  絹と化合繊の約三十万台と申しましたその中に、絹の分野にわれわれが台数を見ているのが十二万台、それから化合繊の台数が十八万台、ともどもこの二〇%共同廃棄という目標で、機屋は、絹の場合は二カ年計画で二万四千台という計画を立てて、化合繊の場合はことしから三カ年計画という乙とで三万六千台の過剰の処理ということで考えております。  それから絹の和装の輸入の問題でございますが、昨年までは、これは平米で出ておる関係上、反数に直すと二国間協定の数量が四万反余りになるわけでございますが、ことし若干数量がすわりまして三万五千反余りの数量となる予定でございます。そういうことで一応大体……。  それから流通段階の価格の問題でございますが、繊維というものが、われわれは織るだけの考え方、それに染色、流通部門は多岐多様な、小売部門までの間の流通段階において非常に問題があるわけなんで、われわれの不況のために当然安くならなければならない分野が小売段階では高くつくというのが、やはり構造不況と申しますか、物があり余るという前提においてはそういった現象が起こりやすい。それと、小売段階というような業種になると、仮に、店の総売り上げ数量が減退する、反数も減退するということになると、若干それに利潤を付加するというような減量の仕方が今日の取引の問題じゃなかろうか。そういった取引の改善も当然これからわれわれはやはりメスを入れて考え直さなければならない大きな宿命だろうと思うわけでございますので、よろしくお願い申し上げます。
  35. 井上計

    ○井上計君 円レートの損益の分岐点……。
  36. 浅井長一郎

    参考人浅井長一郎君) 化合繊の損益分岐点でございますが、去年まで、ことしの前半にかけての化合繊の輸出の分岐点は二百九十円余りのものでございましたが、その後いろいろの情勢によって、二百七十五円程度のものなら何とか努力化していけるのじゃなかろうかというのが現時点だろうと思うので、いまの現在からいくと、二十円ぐらいの大きな開きがあって、とうていもう輸出にはできないというのが現状でございます。
  37. 又賀清一

    参考人(又賀清一君) ただいまの御質問に対しまして、まず第一点は、不況カルテルによる操短回数が、過去三カ年間で十回に及んでおる、他の業界に例を見ない、診しい、なおそれにもかかわらず業界現状がこういうことであるということは厳しさが足りないのではないかという御指摘でございましたと思います。合板業界は、昭和四十九年の時点で、すでにこれは大変だというもう意識を強めまして、しかし、何しろそれまでは高度成長に酔うておりますので、自主操短ぐらいでひとつこの需給のバランスをとろうではないかということで送ってきたということは事実でございます。五十年、五十一年、五十二年に入りまして、これは容易ならぬということで、先ほど申し上げましたように、いち早く不況カルテルによる認可を得まして、インサイダーだけの操短をいたしたわけでございますが、まあ区切りが三カ月でございますので、操短に入った段階では値段は上がりますけれども、もう先で終わるぞということを見越されまして、市況はまた転落する、そうするとまた鎮静するというような繰り返しでございまして、したがいまして、非常に回数が多いというお指摘を受けると思います。それともう一つは、やはり本音とたてまえが違いまして、いわゆる業界の場に出ると、一致協力して操短をして、需給のバランスをとって価格を上げなきゃいかぬということになるのに、家へ帰ると、人のことを言っておれるか、おれのところが生きるんだという、その辺の大きい本音とたてまえのギャップが特に合板業界の場合には大きいのではあるまいかということは、私も痛切に感じておるような次第でございます。  それから第二点の、四十八年度ピーク時の需要を十分賄い得ておる、しかもその落ち込みは二〇%だと、にもかかわらず、二一%の三十五ラインの設備カットでは少なきに過ぎやしないかという御指摘だと思いますが、先刻も御報告申し上げましたように、本日現在までに四十四の合板工場が倒産ないし休止、閉鎖いたしておりまして、その中で九カ工場が会社更生法等々によって復元をいたしておりまして、その辺のバランスも考えております。したがいまして、最近の操短が一大体一二%程度カットをすれば需給のバランスはとれると、年間通じてでございます。一時的には二〇%もカットせなければなりませんが、その辺も配慮いたしまして、大体これでよかろうということでございます。  それから第三点は、しからばそれで将来どうなるかというお指摘でございますが、林野のガイドラインといたしまして普通合板製造業中小企業近代化計画というのが昨年の三月三十一日に出されております。その中で、ある程度バランスのとれるまでカットして、その設備については改めて近代化をしなさい、そうしていまのような状態で操短してコストアップを図っておったのではどうにもなりませんよ、改めて徹底した近代化をする、コストダウンを図っていく、再び国際競争場裏の中に打って出るようなことに体質を改めなさいというガイドラインも出ておりまして、それにのっとって修正をいたしたい、こういうように考えております。  以上でございます。
  38. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 きょうは構造不況五種類につきまして大変貴重な御意見を伺いましたが、私伺っておりまして、これからの景気が回復し、そして予算で住宅、公共事業等の拡充をしていけばある程度回復するのじゃないかと思いましたのが、日本合板工業と平電炉、全国建設業、これは将来明るい見通しもあると思っておりましたが、どうも造船の方と繊維の方は、これは世界じゅうが不景気であって、国際的不況影響と、いま一つは国際的な競争力、特に先ほど繊維は六割が輸出とおっしゃった。それから船の場合には、世界一造船国で、五割が日本が持っていると、こうおっしゃったので、国際競争力という点で、特に最近繊維の場合には韓国の方が相当伸びてきたと思うのです。中国もそうだと思う。そういう意味では、日本はどの程度国際的な影響力が出てきたか、今後どういうふうにやれば見通しが明るくなるのか。造船の場合には、このごろ台湾の方が大変伸びてきたという話でございますので、その影響力と今後の対策について、時間もございませんから簡潔に御答弁願いたいと思います。
  39. 宇野信次郎

    参考人宇野信次郎君) 確かに、造船は、将来、われわれが見た目、将来というよりまず五、六年はなかなか回復しないということが考えられます。その間に考えられるのは、どこまででも解撤のしようがあるということです。解撤をするにはそれだけの仕事がある程度防げるということ、その予算をわれわれとしてはとりあえず三百五、六十億円の投資とそれからそれに対して赤字の補償、援助をお願いしたいのですが、これは一つの例を申し上げてちょっと恐縮ですが、われわれがいまこれだけの団体になりましたのは、もちろん運輸省の指導と指示によりますが、とかくの批評がありますが、船舶振興会の財的援助が大きな力になっております。いままで、合計、団体に対しては約十億近くの助成金なり基金をくれています。あるいは苦しいときに約六十何億の低金利の融資をしてくれておる。あるいは最近はリース事業としてできるだけ各造船所下請の機械を安いリースで貸してやるというようないろいろの援助を受けております。これを関係から見ますれば、一財団がこれだけの援助をしてくれますと、国としてこの程度の援助は願えるのじゃないかということがわれわれの大きな期待なんです。われわれがいま幾ら要求しましても、ない仕事をくれということはできません。したがって、われわれのできるのは解撤、またこれも永久的に援助を受けなくても、解撤の工法なり機具をだんだん開発していけば、決して長い間ではなくても少なくとも二、三年の援助で相当の採算がとれるのじゃないかと考えております。ぜひこの点においてこの解撤事業が軌道に乗れるような財的援助お願いしたいのであります。
  40. 浅井長一郎

    参考人浅井長一郎君) ただいま御指摘のとおりに、中国あるいは韓国の問題でございますが、これは当然絹の関係はもう政策的か一元化という  一つの問題点で、価格でもうわれわれは相撲をとれない状態でございます。これは国際価格でやれば決して負けることはございません。そういうことでございますし、また合繊関係輸出のシェアが非常に多いわけなんですが、どう申してもやはり世界的また国内の不況というものをまず解決していただけなければこの繊維というものも解決できないと思うので、需要というものはまだ潜在的に内外ともに相当あるのじゃなかろうかと、われわれはそういうことで、構造的な不況の二〇%は廃棄して、その後においての問題点は、やはり全力を挙げてあらゆる内蔵しておる問題点を解決したいと、こういう考えであります。
  41. 戸塚進也

    ○戸塚進也君 私は浅井参考人と鴻池参考人に一点ずつお伺いします。  浅井参考人には、先ほどのお話の中で、構造不況業種に対する政府の措置について再利下げのお話がございまして、まことにごもっともだというように思うわけです。安ければ安いほどにこしたことはないと思いますが、しかし、常識的に考えてみましても、再利下げの場合にどの程度のことを業界として期待されるか。これは恐らくほかの構造不況業種も同じような気持ちを抱いていらっしゃるのじゃないかと思います。また、再利下げができなければ、再利下げに匹敵するような施策としてこういう政府施策をやってもらえばというものがあればお答えをいただきたいと思います。  それから鴻池参考人には、先ほどのお話の最後に、土地政策、こういうことについて政府が見直すということが建設業界全体にとっても、あるいはまた住宅を取得したい、こう思う多くの方々にとっても必要なことだと思うというような貴重な御意見がありまして、私もそれは全く同感なんであります。ただ、土地政策と申しましても、これは税制とか、線引きとか、いろいろあろうと思いますが、その中で参考人は特にどういう点を重点的に直せば建設業界不況も克服され、さらにまた土地政策等の政策よろしきを得るのか、もし具体的にありましたらこの点について教えていただきたい。  以上二点でございます。
  42. 浅井長一郎

    参考人浅井長一郎君) 過去の公定歩合の引き下げによりまして、われわれ政府機関でございます既往の借金も、八分六厘までのものは一応下げるということになっておりますが、現在の段階で長期の場合は多分八分前後だと思うので、そこまでひとつ下げていただけないか。現在の借り入れの状態までに不況業種だけはしていただけないか。それができない場合に次の対策と申されるわけでございますが、われわれは何分にも担保力がこの業種は少ないわけでございまして、新しい借り入れということになるとすぐ担保力という問題がございますので、ぜひとも既往の借入金の利下げということに全力を挙げていただきたいと思います。
  43. 鴻池藤一

    参考人(鴻池藤一君) 景気浮揚策の一つとしまして、波及効果の多い住宅政策を取り上げていただくようお願い申し上げた次第でございますが、それに関連いたしまして、ただい京お尋ねがございました土地政策に関する件でございます。税制の問題その他いろいろ土地に対する政策が考えられますが、税制につきましては、これはいろいろプラスの面、マイナスの面がありまして、単一に一つの方法を取り上げるということはいまの段階では非常にむずかしいように聞いております。  重要な問題の一つといたしまして、住宅政策をまとまって執行する段階におきまして、公共負担の非常に多額な負担ということが一つの大きなネックになっております。これは公営住宅におきましても、また私の企業におきます開発あるいは住宅の計画におきましても非常に大きなネックの一つになっておるのが公共負担の非常に大きな負担であろうと考えておりますので、この点につきまして、いろいろひとつ御検討の上お取り上げいただきましたなればまことに幸いだと存じております。
  44. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で午前の部の参考人に対する質疑は終了いたしました。  一言御礼を申し上げます。  参考人皆様方には貴重な時間をお割きいただき、当委員会のためにわざわざ御出席の上にそのお立場から御意見をお述べいただき、また委員質疑にもお答えいただきまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、今後の当委員会の審査に役立つものと確信してやみません。ここに委員会を代表いたし示して深甚なる謝意を表する次第でございます。(拍手)  皆様方におかれましては、御自愛の上、今後一層の御活躍をお祈り申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  この際、関係各大臣に申し上げます。ただいままでお聞きいただきました各参考人意見につきましては、本補正予算の執行に当たりまして十分御配意下さいますよう特にお願いを申し上げます。  午後一時三十分から委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時四十分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  45. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十二年度一般会計補正予算外二案を一括して議題といたします。  一言ごあいさつを申し上げます。  富塚参考人及び前川参考人におかれましては、御繁忙中にもかかわりませず、本委員会のために御出席を賜り、まことにありがとうございます。委員会を代表して衷心より御礼を申し上げます。  本日は、現在の経済情勢下における労働者のお立場から忌憚のない御意見を承りたく存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。  次に、会議の進め方について申し上げます。まず、お一人十五分程度の御意見を順次拝聴し、その後、委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、御意見をお述べ願います。  まず、富塚三夫参考人お願いをいたします。富塚参考人
  46. 富塚三夫

    参考人(富塚三夫君) 参考人に御指名をいただきました総評事務局長の富塚であります。  ただいまから雇用情勢についての認識とこれからのわれわれの具体的な要請、対応、こういった問題について申し上げたいと存じます。  雇用情勢は、申すまでもなく、短期的なものでなく中期的にもかなり見通しは暗い。過日、衆議院の予算委員会参考人でもそのことの所見を明らかにいたしました。ようやく雇用問題の重要性についてこの国会で認識が深まってきたものと理解をしています。与党間、野党間ないしは政府の間でも連日の論議を通じてそのように理解をしています。福田首相は、臨時国会冒頭、所信表明演説の中で、経済政策の中でも特に雇用問題を重視すると強調いたしました。しかし、具体的な案になりますと、雇用安定資金の積極的な活用と構造不況業種の離職者対策にとどまるということでありました。また、大蔵大臣は、政府が九月に決めた総合経済政策の意義を雇用対策と関連して強調されているように見受けられます。われわれは、現実に、深刻な失業、雇用不安に対しまして、雇用安定資金制度だけの活用では決して十分だとは考えていません。こうした政府の考え方とはうらはらに、連日、新聞やテレビを見ておりましても、企業倒産による首切りあるいは減量経営といった計画等が報告をされ、けさの新聞にも、失業で職を失った人あるいは雇用不安に陥っている人の投書が目立っておったように思います。私ども労働四団体は、後で前川さんも申し上げると存じますが、雇用問題で統一した目標を設定いたしました。そして、特定業種離職者臨時特例法案というものをこの国会で決めていただきたいということで、五野党間にも働きかけをいたしまして成案を見て、いま何とかこの国会で成立をさせていただきたいと強く要請をしております。私ども、特定業種離職者臨時特例法案と申しますのは、まず特定業種の指定、事業主の責務及び国と地方公共団体の責務、雇用保険法、雇用対策法の特例、解雇制限、職業訓練の実施、訓練手当の支給、就職促進手当の支給などが主な柱と実はなっています。私ども総評の立場からしますと、決してこの案では満足はしておらないのでありますが、全体がぎりぎりの線でまとめ上げていこうという、しかも、国会では議員立法という形で成立せざるを得ない状況のもとではやむを得ないというふうに考えておりますが、伝え聞きますところ、自民党さんの方は、どうもなじまないということでこれを拒否をされるような動きがあることを聞いて、非常に遺憾に思っています。  私は、本日、参考人といたしまして参議院の予算委員会の皆さんに訴えたいのは、この緊急かつ重要な雇用対策につきまして、国会における責任ある態度と対策を労働者国民の前に示していただきたいという立場から、また、政府には積極的な姿勢を打ち出していただきたいという立場から、次のようなことを提起をいたしたいと思います。  まず第一に、政府自身の対応としては、特定業種の離職者臨時特例法案をこの国会でぜひ成立をさせていただきたい。そして、雇用安定資金の運用も含めて、実態調査とその運用を公平に行うような手だてを考えていただきたい。  第二に、各企業主、経営者に対する要請といたしましては、定年延長、六十歳を目途に具体化をする努力をしていただきたい。一週四十時間、週休二日制の時間短縮を進めていただきたい。同時に、年次有給休暇の完全な消化を求めて企業努力をしてほしい。  第三に、われわれ労働者、労働組合の任務としては、残業規制と年次有給休暇の消化、そして数多く存在をします争議を続けておる労働者に対する解決を速やかに図るということについてわれわれは努力をしていくことをお誓いをいたしたいと思います。  そういう政府、そして企業主、そして労働側、この対応する具体的な方向なり目標について明確にしておくことが非常に重要なのではないかというふうに思います。  私は、もうすでに衆議院予算委員会の場ではいろいろな考え方を申し上げておりますので、本日は、総評自身が失業、雇用不安の実態を調査した、現実に起きておる多くの産別や職場レベルあるいは地域での問題について申し上げて、ぜひ考えていただきたい、参考にしていただきたいというふうに思います。  総評が八月から九月にかけて調査をしました産別、職場レベルでの雇用問題に対する労使間の摩擦、つまり労使紛争は、民間の組合、大小で八百三の組合があります。金属、化学、マスコミ、あるいは交通、一般労組、地下関係、こういうふうに見受けられます。その原因を探ってみますと、高成長時代に設備の過大な投資によるものから、現実には業積不振に悩んで企業閉鎖、倒産、首切りということが出ています。また、関連会社への配転、出向ということも出ています。化学工業などで代表的な企業である日本ソーダでは七百名、日本カーボンでは三百名の人員整理が出ています。また、東京機械——千葉にありますが、造船タンカー影響で四百人の、半数の首切り、あるいは浜田製機は四百人の全体の首切りということで、これは大手の三菱重工が出てきたために倒産を余儀なくされています。全国金属という組織の中では、中国工業で五百名、あるいは造船では三重造船が三百名、函館の日魯造船は五百名が倒産して首を切られています。六十七件の倒産が全国金属という組合の中には現実に出ています。また、鉄鋼業界の平電炉の問題でありますが、七十二社で五十年四月には四万五千二百名、本工三万八千人、下請が七千二百人、こういった企業の実態でありましたが、五十年度は本工が二千八百七十、下請が千三百五十、つまり四千二百二十人の減となり、主に雇用調整企業外配転ということでありました。しかし、実態的には、本工で二千四百四十人、下請で千三百五十人が首を切られてやめています。また、五十一年では、これに本工が二千七百十二人、下請が四百人、三千百十二人、そのうちで本工が二千四十人が具体的には職を失ってやめていっています。ところが、ことし四月から九月に、この上半期でありますが、急増いたしまして、上半期だけで本工が二千三百六十人、下請が四百三十人減らされる、二千七百九十人となりまして、人員整理は約二千人がもうすでに首を切られているという状況であります。五十年四月から今月までの二年半で本工が七千七百人、下請が二千二百人の九千九百人が排出をされています。鉄鋼労連の掌握でも、すでに七五年に八戸鋼業、利川製鋼が閉鎖をされ、また七七年五月には筑前製鋼全員解雇、六月には興国金属全員解雇、七月には南部製鋼全員解雇、十月には東北砂鉄全員解雇、また七月から日本砂鉄では八百人中半分が希望退職を募られておるという状況であります。また八月には国光製鋼が四百人の中で百二人首切られて、現在その提案を受けて係争中であります。東北鋼業も六百八十人から二百二人減らされるという状況であります。月に一回は大型整理というものが必ず出てきているという状況でありまして、次から次へとこの平電炉問題に対する企業の縮小、倒産という状況が事実出てきている状況であります。  また、われわれ総評は地域における失業者の多発している状況についていろいろな調査をしてまいりました。北海道は二百海里問題による影響であります。また、冷害による影響もあります。九州では筑豊地帯に調査をしましたが、失対事業の問題、あるいは産炭地対策の後退による影響が出ています。沖繩は軍事基地が縮小されることによる影響が出ています。また、裏日本の山陰なり東北は、誘致された企業が倒産をしている実態が出ています。北海道では二十九万人の季節労働者、以前は九十日の失業給付で生活を十二月から三月までしておったのでありますが、いまは五十日分ですから、この五十日分で四カ月も生活を強いられる。昨年の冷害も手伝って出かせぎ希望が非常に多くふえています。稚内の例を申してみますと、二百海里の影響で、五十一年度の水揚げは稚内だけで二十六万トンあったと言われています。ところが、二百海里経済水域でスケソウダラの規制によりまして北海道全体で十万トンに減らされてしまう。この割り当てがどうなるかということになりますと、稚内だけで二十六万トンとっておったものを北海道全地で十万トンということになりますから、大変な深刻な影響を受けます。このため、漁業に携わっている家族は八百人、あるいは関連加工では四千人の雇用不安が出ている。稚内市では、緊急対策といたしまして、救済の土木事業などの開発を考え、四億円を措置をしていると言われていますが、地方の財政では限界であり、国の援助が必要だと叫ばれています。また、留萠などでは公共投資縮小による影響で公共事業投資により季節労働者の雇用問題を従来は考えてきてもらったのですが、五十二年二月現在、一人の季節労働者の雇用もなされていません。留萌が九万八千人の人口で七千人季節労働者がいる。家族を含めると二万一千人です。建設業者には仕事も金も与えているのですが、実は地元の人を一人も雇わないという状況のもとに季節労働者は採用のないままに不安な状況に置かれています。  九州の筑豊の事情を視察してみますと、炭鉱資本の残した荒々しいつめ跡がボタ山と老人だけさびしく生活をしている状況であります。この地方の不完全就労者は五万人、失対事業生活を支えている人が一万八千人と見られていますが、地方自治体は慢性的な赤字で、生活保護を受けている人たちは筑豊の五市で人口千人当たり百人ちょっとという割合に、つまり一割が生活保護を受けている状況になっています。全国平均では千人に対して十二人の割合ですから、まさに十倍の状態に置かれているということであります。そこで、筑豊地区に行ってみますと、廃山後の産炭地振興、いわゆる企業の誘致が余り成功していないんです。苅田町などは、日産自動車は現地の採用は八百名で、企業がこちらから連れていったのが三千名というふうな状況になっています。大企業はまれで、大半は百人以下の中小企業ですが、百人を超す企業は五十のうちに八つぎりありません。働いている労働者の平均の賃金は六万から七万。十万を上回るのは一つだけで、福祉設備も非常に後退をしています。これらの誘致された企業はあらゆる面で地元の手助けにはなっていないというのが状況でありまして、これをどうしていくかが大きな課題だと思います。老人だけが残って、これからの生活の見通しも暗い。そして、明年は失対事業が打ち切られるのじゃないかという心配も実は出てきています。  それから岩手県の大船渡港などは、木材工業地における危機がやってきまして、現実に四十五年に十の企業が出発いたしまして、新たな工場団地もできましたけれども、この三カ月のうちに二社が工場閉鎖、一社は会社更生法の適用申請という事実上の倒産で、地域経済社会に大きな影響を実はもたらしています。  沖繩には、いま社会党と総評で合同調査団を編成をして、これから具体的な調査をし、裏日本、東北にもさらに続けていきたいと思うのですが、私は衆議院予算委員会でも申し上げたのですけれども、構造的な不況業種だけではなくて、地域的にこういった失業多発地帯に対しても決して見落とすことなく、忘れることなく、同時に対策を講じていただきたいという意味で、冒頭申し上げましたように、政府は臨時措置法の成立を受けて立っていただきたい。そして、雇用安定資金を含めて公平な運用をしていただくと同時に、時間短縮なり年次有給休暇の消化なり、あるいはわれわれ自身も残業規制をするということに積極的に取り組むということなどの対応策を考えるべきじゃないかという点で、具体的にそれぞれの持つ任務について明確にしていくことが適切であろう。  以上申し上げまして、総評を代表しての問題提起にかえます。
  47. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) どうもありがとうございました。  次に、前川一男参考人お願いをいたします。前川参考人
  48. 前川一男

    参考人(前川一男君) 同盟の前川でございます。  私は、いま労働四団体がこの雇用問題のみにつきまして中央レベルで共同闘争をいたしております。したがって、雇用問題を中心にいたしまして労働四団体立場から問題点の指摘並びに報告を申し上げたいと思います。  ちょうど約二年ぐらい前でありましたけれども、いわゆる不況、それからインフレの進行の中にあっても、なおかつ雇用情勢というのはいわゆる景気の着実な回復に伴って漸次改善されるという見通しのもとに、当時前期経済計画が昨年策定されたわけであります。しかし、今日顧みますと、景気の回復はおくれ、雇用情勢は悪化しております。しかも、長期不況の中でいわゆる構造不況実情というのはますます拡大の一途をたどっているわけでありまして、雇用全体の見通しというのは大変に暗いと思います。当面、私どもは、最大の課題として景気の回復と雇用の問題を特に取り上げているわけであります。その中で、雇用については、雇用改善並びに雇用不安解消のために、緊急の課題としてこの臨時国会で対処をお願いする次第でございます。雇用政策として第三次基本計画が昨年の六月に決まったわけであります。すなわち、不況の長期化、あるいは構造不況の深刻さ、そういう条件はその後一年以上を経過しまして大変に厳しい状態になっていると私は思っております。したがって、この基本計画はすでに根本的にやはり崩れ去ったものと考えているわけであります。現状の雇用に対する厳しさを踏まえた上で今後に対応するために全面的な基本計画の見直し作業をこの際すべきではないかと考えるわけであります。  次の点は、雇用対策の強化ということはだれもが否定をしません。マクロでは一致をいたしております。しかしながら、具体的なミクロの面で私は大変に消極的だと考えているわけであります。そして、最近、経済の上昇というものについて福田総理が六・七%を必ず達成するという方向性を再確認いたしておりますけれども、雇用の改善というのは、現状において果たして経済成長の回復に伴って並行的に改善されないのではないかという考え方が大変強く出ているわけであります。あるいはまた、職業訓練をいたしましても雇用の吸収が具体的にできるかどうかということが大変疑問であるという考え方も出ているわけであります。雇用吸収力は、私は、こういう危機的な状態の中におきましていわゆる国全体としての雇用の指導体系の中で物事を進めていかなければならないと思います。そういう意味からも雇用基本計画の見直しが必要であると思いますし、そのために業績の比較的順調な企業というのは可能な限り雇用吸収のための社会的責任を考えてもらってこれに対してぜひとも対応していただきたいと思います。  それから次の問題は、臨時措置法の制定についてでございます。構造不況対策は緊急の課題であるという認識であります。そのために総合対策として臨時措置法を制定してこの臨時国会で必ず成立させていただきたいことをお願いするわけでございます。現在、野党五党と与党間におきまして調整が行われていると聞いているわけであります。この際、十分に検討をしていただきまして、超党派的な立場で一日も早く臨時措置法の成立を期待したいわけであります。私どもの考えておりますのは、この二年間のうちに雇用問題の将来について明るい見通しを得たい、こう考えるわけでありまして、二年間の時限立法としての制定をお願いしたいわけであります。  労働四団体の要求というのは、実はそれぞれの組合立場の違いなどもありまして、要求もそれぞれ当初は異なっておりましたけれども、どうしてもこの臨時国会に対応していって何としても成立をさせていただくというためには、お互いに譲り合うものは譲り合いながら統一要求として一本化したというのが実態でございます。したがって、私ども労働四団体は労働四団体として統一要求をつくった内容というのは、組織的な合意に達したいわゆる最大公約数のものであると考えるわけでありまして、その内容についても実現可能性というものを十分に考えたというつもりでございます。  第一に、臨時措置法とした理由はいろいろあります。現行法でも、大方のものというのは、これは現行法の改正なりあるいは行政面において解決ができるのではないかという一部の意見もあるやに聞いておりますけれども、しかしながら、雇用関係諸法に関連する課題を総合的に取り上げるいわゆる効果というのは、雇用の改善あるいはまた今日の雇用不安に対応する一つの道であろうかと思います。予算措置との関係におきましてまた積極的なものを私どもは期待をしたいわけであります。同時にまた、緊急性を持っているということもゆるがせにできない現実の課題であろうかと思います。また、社会的な意味で雇用不安の解消に効果的であると思われるのがやはりこの臨時国会におけるいわゆる臨時措置法の制定だと考えるわけであります。  構造不況業種につきましては、雇用安定事業の指定業種に統一をしたいという考え方を持っております。職業転換給付金につきましては、指定業種は同じように雇用安定事業の指定業種とすること。で、この際、年齢制限についても撤廃をしていただきたいわけであります。  さらにまた、就職促進手当あるいはまた訓練手当については大幅に増額をしていただきたいと思います。就職促進手当につきましても、失業給付をもらっている金額から考えた場合には、最高の比較でいけば約半分近いものにがくりと落ちるという実態になっているわけでありますし、訓練手当は、内容としては通勤手当などを含めて月額にして一万三千五百円程度のものになっているわけで、その内容は、今日の現状に照らした場合には大変にやはり低いのではないだろうか、もっとやはりみんなで包んでやるという気持ちを持っていただきたいと思います。  次に、個別延長給付でありますけれども、一月いっぱいで従来行ってきました個別延長給付が切れることになりますけれども、私どもは二年間延長をしていただきたいという要請であります。同時にまた、希望退職を含めまして、個別延長給付についても年齢制限の廃止をお願いしたいと思いますし、五十五歳以上については無条件で適用というように改善をお願いしたいわけであります。  次の問題は、失業給付の期間の問題でありますけれども、構造不況業種の離職者に限って九十日間延長することをぜひとも取り上げていただきたいと思います。衆議院の方でも申し上げましたけれども、そのためにいわゆる財源はどうするかという問題が当然ここではやはり大きく起こってまいります。私ども労働四団体は最終的に寄り寄り協議をしましたけれども、そのためにいわゆる雇用保険の出金が増大したとしてもそれはやむを得ない、こういう考え方をとりまして、十分に検討する用意があるという表現の要求にまとめたわけでございます。  それから、構造不況業種の離職者については、それを雇い入れてくれる事業主に対しまして、採用を促進するに足る助成制度をこの際つくっていただきたいわけであります。助成期間は約一年と考えておりますし、この助成期間が過ぎたらすぐにやめてもらうというようなことではなくて、義務づけまして、その後最低一年間はやはり解雇をしてはならない、そういう条件つきで助成制度をお願いしたいということでございます。  次に、職業訓練並びに再教育についての問題でありますが、全国的に見た場合には、現在の訓練の制度、その他学校であるとか訓練所であるとか、大変に少ない状態であります。いまのような状態では、もっとその内容を十分に整備をしていただかなければならないと考えるわけでありまして、この点もそれ以上には申し上げませんが、よろしく計らっていただきたいと思います。  なお、離職者の多発地帯、再就職困難地帯につきましては、公共事業を起こして、そして離職者が相当極度吸収できるようなそういう体制をつくっていただきたいと思います。  次の問題は、雇用の拡大と安定措置にかかわる幾つかの事項について申し上げます。  特に高年者層を中心にしまして、現在、定年延長奨励金、継続雇用奨励金、高齢者雇用奨励金などが実施されているわけでありますけれども、この内容は金額としても大変に少ないと思います。それから、これを支給する期間も大変に短いということもありまして、現在の段階におきまして、特に雇用問題の中の中高年層というのは労働省の調査などによりましても大変なものがあるわけでございます。したがって、そういう意味を踏まえながら、この問題についてはもっと内容の充実を十分なものにしていただきたいわけであります。  次に、中高年法に定められておりますいわゆる高年齢者雇用率の達成に関する問題であります。六%ということであって、何の義務づけもありませんから、したがって、それほど十分な成果を上げていると私どもは考えておりません。この際、やはりお互いに一つの義務感というものをもっといわゆる法律的な意味におきまして強化をしていただきまして、どうしても雇用率を達成しない、そういう企業に対しては納付金制度を新設をして、その納付金を中高年対策に使っていくとか、そういう手だてをとっていただきたいわけであります。  その他、二、三の点がございますが、大まかに申し上げまして、以上が労働四団体でいろいろ検討しました内容のものになるわけでございます。  そこで、若干の時間をいただきまして、一つは漁業従事者に関する問題でありますが、他の法律の場合にも十分な御配慮をいただいているわけであります。特に船員の場合には、船員法という中でいわゆる運輸行政が行われておりますので、雇用保険法はありません。したがって雇用安定資金もないわけであります。同時にまた雇用対策法におきましても、これは船員は除外するということが条文に明確になっているわけでありまして、その意味で私どもは一般のいわゆる雇用者に比べまして二重にも三重にもおくれの上面があるのではないかと考えます。したがって漁業離職者につきましては特に慎重な御配慮をいただきまして、そして先ほど申し上げた臨時措置法とともに並列に、いわゆる漁業従事者に関する臨時措置法ということで、二本立ての扱いをぜひともお願いを申し上げたいと思います。  同時にまた、同盟でも幾つかの産別に連絡をとりまして若干の調査をいたしているわけであります。その中の一つの例でありますけれども、たまたま同盟に加盟をしておりますゼンセン同盟の概要につきまして一言触れさしていただきます。四十九年の二月から五十二年の八月までの間におきまして六百八十八件の合理化が起こっておりまして、その内容は、事業所の縮小、倒産、閉鎖、こういう内容で大変に離職者が多くなっております。雇用も至きく変化をしまして、紡績などはまさに三一%のいわゆる人員減ということになっておりますが、繊維関係だけで見れば平均して一七・七%の減ということになっております。同盟に加盟をしておりますゼンセン同盟組織の繊維の部門だけをとらえてみますと、最高時は五十七万人からの組合員を擁しておりましたけれども、この不況、今日の実態の中におきまして、今日では繊維だけでとらえれば四十一万七千人という大変少ない人員になってまいるわけであります。  私どもは、労働四団体で寄り寄り協議をしまして調整した結果、先ほど申し上げたような内容になったということを再度申し上げまして、ぜひこの臨時国会におきまして与党、野党の話し合いを十分に進めていただいて、必ずこの法律が成立を見るように強くお願いしまして、私からの御報告にかえたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  49. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより質疑を行いますが、本日は午後三時を散会の目途として委員会を運営してまいりたいと存じます。何とぞ委員各位の御協力お願い申し上げます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  50. 山崎昇

    ○山崎昇君 富塚参考人に端的に二点ほどお伺いをしたいと思います。  一点は、残業規制あるいは時間短縮あるいは週四十時間あるいは有給休暇等々を行った場合に、一体雇用力はどれぐらいふえると計算をされておるか、もし計策をされておりましたらお知らせをいただきたいと思います。  それから第二点は、いま四団体の案について御説明がございました。そして先ほどはそれに関連をしながら地域の問題につきましても実は御説明がございました。私は、構造不況業種も大事であるし、また、それ以外の一般の雇用もまた重大でありますが、わけてもその地域地域の雇用というものもまた大変重要なものではないかと、こう私も考えます。そこで、いま四団体の案では、地域対策についてどうも欠けているような私は気持ちがするわけなんですが、もしその点がございましたらひとつ御意見お願いをしたい、こう思います。
  51. 富塚三夫

    参考人(富塚三夫君) いま労働省の毎月の勤労統計調査でも、非常にこのグラフにあるように残業がふえている、急増している傾向に実はあるわけです。そこで、私どもは、残業を規制することによって四百万人ぐらいの雇用の条件を満たすことができる。これは昭和四十五年平均の年間一人当たり総労働時間数千八百七十四時間ですが、総労働投入量は一五・二〇億人時となっています。そのうちの一〇・一%に当たる一・五四億人時が残業分となっていますので、この裏を返しますと、残業をゼロにした場合には一〇・一%の雇用増になります。したがって一〇・一%の雇用増になるということになると、四千万の就労者を考えてみると、約一割で四百万という数字が具体的に出てまいります。また、時間短縮で週四十時間にした場合には、二時間の短縮掛ける五十二週、そして雇用労働者三千二百万と推定をいたしまして、一人当たりの年間総労働時間、これは先ほどは千八百七十四時間と政府統計四十五年で見ましたが、いま二千八十時間、そうしますと全体で百六十万人生み出すことができるということになるわけです。これは週四十時間、週休二日制でそのぐらいの数字が出てくることになります。また、年次有給休暇の完全消化でありますが、十一日平均と見て三千二百万人、一人年間の稼働日数二百四十日で百四十六万七千人、つまり時間短縮と年次有給休暇の消化で三百万人、そして残業規制で四百万という数字上のデータが実は出てくることになります。また、定年延長の場合でも、一年間五%やめていかれる方が延長されますと、これも百五十万人ぐらい実は一年延長で出てくることになります。鉄鋼業界の話を聞いてみますと、鉄鋼業界でもこれは高年齢者が多いものですから、約一割と見て二万人ぐらいは一年を延ばすことによって生み出すことができるということに言われています。  こういう状況でありますから、つまり全部が全部うまくいくとは思いませんけれども、時間短縮、週休二日、年次有給休暇の完全消化、そして残業規制。総合的に企業の側もわれわれの側もこの問題に取り組むことによって当面の雇用対策を乗り切ることができるのではないかということであります。  それから、二番目に質問のありました地域失業多発地帯に対する要求なんですが、四団体要求、五野党の案の中では十分に盛られておりません。これは冒頭申し上げましたように、総評は総評としての要求があり、同盟は同盟としての要求があるものですから、全体で統一できる問題として四団体要求をまとめて五野党の方々にも御努力をいただいて、いま具体的な案についての成案を見ているわけであります。  そこで、私どもはまず地方の失業の多発地域に対する対策としては、まず公共投資が地方自治体を通じて直接現地労働者の雇用につながるような対策を考えてもらいたいと思います。雇用対策協議会はすでに三者構成で三十県ぐらいができておるわけです。地方自治体と使用者側、労働者側の構成であります。で地場労働者の雇用対策、最低限でも三分の二は確保していただきたい。いまどうも三分の一程度以下になっているわけで、そういうことを第一に要請したいと思います。  第二は、筑豊地区などに行って見ましても、一般失業対策事業等四事業の旧産炭地対策を進めているんですが、石油関税との見合いがあって来年で打ち切ってしまうといううわさがかなり現地の労働者を不安に陥れています。したがって、これはぜひ継続してもらいたいということが第二の問題です。  それから第三の問題は、季節の出かせぎ労働者、この失業給付を現行五十日を必ず九十日に復活させていただきたい、十五万円の五十日間の支給で四カ月の生活はとても不可能だ、切々と北海道の労働者からも訴えられています。また、東北とか北海道、この冬の就労確保については、地方自治体は予算単価を引き上げてもらいたいという要請が強く実は出ているわけであります。その点も考慮していただきたい。また、子供の教育費とか授業料を免除する、給食費を免除する、あるいは交通費を補助する、こういうことを失業多発地帯にやっていただけないか。これは東北はすでに一部の革新自治体で冷害のときにこういうことを実はやっています。そういうことを特別交付金みたいなもので考えていただいて対応していただけないかということを考えています。  過疎問題は、根本的に一次、二次産業の開発、これが国、地方自治体を含めて抜本的に考えていただきたいというふうに思うのですが、これは政府にわれわれが要請をいたしました臨時措置法とは別に、この問題について特に積極的に取り組んでいただきたいというふうに要請をしたいと思います。
  52. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 二点ほど富塚参考人にお伺いいたします。  私もずっと雇用問題を取り上げてきたわけでありますが、労働大臣初め政府の答弁としては、今回の総合景気対策の中で雇用安定資金をフルに活用して十分にやっていける、どうしても金が足らない場合には予備費を使ってやるんだというふうなことをずっと終始一貫言われておるわけであります。したがって今日の段階でいま御説明のあった暫定措置法を実施するとしたならば、どのくらいの金が必要なのか。現在の労働者の予算では四百七十七億程度計上されておるわけでありますが、労働四団体ではどのような財源の計算をされておるのか。同時に、政府の取り組み方について十分に労働側として対応できるかどうか、その点も含めてひとつ教えてもらいたいと思います。  第二点は、中小零細企業でパートであるとか臨時であるとか、こういう本当の下積みの方々が一千万とも七百万とも言われておるわけであります。こういう方々は、やりようによってはいろんな保険の適用を受けないまま放任されているという点も、われわれは把握をしておるわけでありますが、これらに対する具体的な対策はどうかという点をひとつ教えてもらいたい。  それから前川参考人お願いいたしますが、いわゆる公共事業で雇用を確保するという点が政府もまたこれ一貫して言われておるわけでありますが、いま総評の富塚さんから若干触れられましたけれども、前川さんとしても現在の公共事業と雇用の確保という点について、どのような認識と問題点を持っておるか、お聞かせ願いたい。  以上、三点でございます。
  53. 富塚三夫

    参考人(富塚三夫君) 私どもが五野党に要請をいたしまして、特定業種離職者対策等臨時措置法の要綱というものをまとめてもらって、いま自民党さんと折衝していただいておりますが、総額約二千五百億というふうに大体考えています。これは九十日間延長いたしますと、十万掛ける三カ月で三十万円の七十万人を想定をしますと約二千百億、その他プラスする費用を含めておおむね二千五百億ぐらいがこの予算にかかわる問題だというふうに思っています。目黒先生おっしゃいましたように、四百七十七億という雇用安定資金ではどうにもならない状況であります。これだけ深刻な失業、雇用状況を迎えておるときに、二千五百億ぐらいの措置ができないのかということについて、これはやっぱり声を大にして労働者を代表して訴えたい、そのぐらいのことはできるはずじゃないかということを私どもは確信を持って訴えたいというふうに思います。  同時に、保険料の引き上げについて、画期的なことだと思いますが、労働側も保険料負担金を値上げしてよいとまでわれわれ労働四団体は割り切っているんですから、従来の労働者の要求でありますと、保険料の引き上げについては、これは相手側の負担ということを訴えてまいりましたが、労働側も負担をふやしてもいいというところまで割り切って問題提起をしているんですから、これを考えていただかなければ、やはり国民なり労働者の批判はおのずから政府に問題が向けられるだろうというふうに私どもは考えます。  第二の中小零細企業の労働者、保険の適用外の人が一千万人以上いることを私どもも承知をしています。主にパートタイマーに働く人、それから臨時工の人たちだと思います。政府は適用方をやっぱり真剣に考えてもらいたいと思うんです。問題は、実態を正確に掌握する、把握するというために地方を回ってみましても、労働省所管の職業安定所の機能が十分機能していない。これは労働者側の立場から見ていましても非常に人が少ないわけです。要員増、人の配置を考えてもらいたい。そして職業安定所の機能を強化をしてもらいたい。筑豊の田川の職業安定所に行ってみましたら、約二千人ぐらいの人が並んで、代表の人が職業安定所長をつるし上げていました。安定所の人たちはノイローゼにかかるぐらいに毎日大変な問題に実はぶつかっているんです。このことにもっと政府は、労働省は人をふやして要員増を行って、職安の機能を強化をしてもらいたい。また、完全な登録制度といいますか、これもひとつ考えていただきたいと思います。何と申しましても、行政指導が当面は積極的に進められることを期待をしたいというふうに思っていますので、従来のような高成長時の、雇用状態が満たされているときのような職業安定所の機能ではどうにもなりません。この深刻な不況の中にある状況の中でどうするかということについて、この機能強化を積極的に考えていただきたい。労働省は、もっと積極的にこの問題を予算の場にも出して、ひとつ提起をしてもらいたいというふうに私どもは考えています。  以上です。
  54. 前川一男

    参考人(前川一男君) お答えいたしますが、まず第一に、私どもが考えております雇用対策は、いろんな角度からこれを取り上げないといまの雇用不安に対応することができないというように考えておりますので、先ほど来御質問がありました、たとえば労働時間の問題、超過労働の問題、週休二日制、その他いろいろあると思うんです。そのことは、私が冒頭に御報告申し上げました中に、いわゆる業績がある程度いいのではないかと思われるような企業とか産業は応分のやはり社会的負担を担うという、そういういわゆる基盤の形成というものが当面大事だろうということがないと、そういうものはどんなにいわゆる数字に照らしてみても、雇用吸収にはなっていかないという社会の暗い面が一つあるんではなかろうかと思います。  そして総合的にいろんな角度からやるわけですけれども、その中の一つのいわゆる公共事業の投資拡大ということは、私どもとしては、やはり基本的には賛成であります。やはり生活関連のいろんな仕事を中心にして、できるだけ公共事業を、こういう中で相当の予算を取って、そしてやってもらわなければ、いわゆる景気の回復にも結びつかないわけでありますし、現在の雇用が一つは景気の回復というのが重要な前提であって、もう一つはやはり構造不況という問題があるわけでありますから、やや短期的な意味と、やや長期的な意味、こういうものに対応していく一つの手だてとして、公共事業というものが地域においてやはり相当程度の投資がされることを私どもは期待を申し上げたいわけであります。そしてそのために景気回復の面と、それからもう一つの面は、いわゆる雇用安定資金などの雇用安定事業だと思いますし、あわせて臨時措置法、こういう三つの柱によって総合的に行わなければ、雇用の解決というもの、あるいは見通しはなかなか得られない、かように考えるわけでございます。
  55. 内藤功

    内藤功君 富塚さん、前川さんを初めとする労働四団体関係者の皆さんによって、四団体それから五党の法案要綱ができてまいりまして、私も拝見さしていただきました。  富塚さんに二点ほどお伺いをしたいと思います。それから後で前川さんに一点お伺いしたいと思いますが、第一点は、私はこれを読みまして、特に第十四の一律に九十日延長、つまり職種や業種というものにかかわらず一律に九十日延長というのは、これは非常に重要だし、また大変な意味を持つ内容だし、私どもも大いにこれは賛成であります。  そこで、改めて聞くようになりますけれども、半ば質問で半ば激励のようになるかもしれませんけれども、これについて特に総評としては九十日問題はどういう点で重視をしておられるか、機関内部のいろんな御討議も含めて。そして、これについて恐らく強い不退転というのに近い御決意だろうと思いますが、そこらあたりをお聞かせ願いたいということです。  それから富塚さんに対する二点目は、質問になりますが、雇用保険法の雇用安定資金制度の問題、これは実は私どもの方はこれには表決は棄権をしたわけなんですが、それはともかくとしまして、この制度の運用についてはプラス面とマイナス面と両方あるだろうと思うんですよ。プラス面はもちろん言うまでもないけれども、マイナス面としてわれわれが心配しておるのは、いわゆる人減らし合理化のそういう促進の役割りを果たさすことにならないかということを非常に心配してきたわけであります。そこらあたりは総評としては、富塚さんの方ではどういうふうにお考えになって、今後の運用面でどういう点を留意なさろうとしておられますか、という点をお伺いしたい、という二点でございます。  前川さんに一つお伺いしたいのは、これは私の指摘はあるいは当たってないかもしれない。当たってなければ当たってないということをお教え願えれば結構なんです。  今日の雇用問題の一番大きな問題としまして、好況産業、率直に言いまして自動車産業だとかオーディオだとかいうのが適切かどうかわからないですけれども、そういうような好況産業が人を余りふやしていないんじゃないか。で、合理化、それから労働密度も強まっているんじゃないかという面はないかと、そういう点について言われている向きもありますので、そこらあたり前川さんの御所見がお聞きできたらと思います。  以上三点でございます。
  56. 富塚三夫

    参考人(富塚三夫君) 新たに提起をいたしました、五野党間でまとめていただきました雇用保険法の特例といたしまして、一律に九十日間延長しようというふうに前向きに決めてもらっていることに実は敬意を表しています。  私どもは、構造不況業種、これは通産省が指定をする、あるいは雇用安定資金の適用業種は労働省が指定をする、いろいろな、行政所管でも違いがありまして交錯している、これは議論があったところであります。私どもとしては、じゃあ構造不況業種の指定とかあるいはその安定資金の適用範囲をどうするかという問題になりますと、現実にはいろいろな問題がたくさん出てくると思うんであります。その点で、一律に九十日間を延長してもらうということは非常に有効な方法であろうというふうにわれわれ自身は考えています。したがいまして、この点はむしろ内藤先生がおっしゃったのは、このことを非常に評価されておるというふうに、私どももこのことを評価をしています。ぜひ実現を図っていただきたいというふうに要請をしたいと思います。  それから、雇用安定資金制度の運用なんですが、おっしゃるようにプラス面とマイナス面のあること承知をしています。と申しますのは、すでに労働大臣と四団体事務局長書記長間の交渉の中でも、公正に弾力的運用を期するというふうに実は合意をしているんです。まあしかし、実際問題としてこの適用業種がどうなっていくかという問題は、政治的な圧力が加担をされたり、特異な一つの方法をとられたりするということがあってはならない。まず実態を正確に正しく調査をする、掌握をする、その中に運用という問題も、一面では厳格な運用を試みるとこれはマイナスが出てくる場合もある。弾力性を持たせなければならない。一面では公平に、公正を期されなければならないという問題があるわけであります。そういたしますと、労働省が中心になってこの運用措置を図るんでしょうけれども、われわれは随時労働省との間に、労働大臣とわれわれ四団体の間で懇談会を持って実態調査の問題とか問題点については意見交換をして意思統一をすることを決めているんですが、われわれの側からすると、政府の政治的な運用とかというふうなことがあってはならないという立場から、十分監視をするというと労働大臣におしかりを受けるかもしれませんが、十分われわれも労働省と相談をして公平を期していくようにすべきであろうというふうに思っています。そういう点で、この雇用安定資金制度の運用についてこれからの対応がむしろ重要なんじゃないかということを考えております。  以上であります。
  57. 前川一男

    参考人(前川一男君) お答えいたします。  私は同盟の書記長であります。それで民間労組が大変に多いわけですから、ある程度の実態は私もつかんでいるつもりであります。特にいま好況産業と言われるところということで御指定がありましたけれども、労働組合そのものも比較的にしっかりした組合があります。私はその意味で、たとえばインフレとか不況とか、いまの雇用不安の中で何か景気がよければ労働強化といいますか、労働密度の増大というようなことを、そういう取り上げ方をしたということは全く聞いておりません。たとえば自動車の場合でも、定年延長問題などはすでにもう何年か前に六十歳定年が達成されているということもありますし、たとえば電力なんかの例を見れば、これは好況不況とは少し違いますけれども、ついせんだって中部電力の労使におきまして六十歳までの再雇用問題の決着がついた、あるいは東京電力の労使においても現在定年問題が六十歳までの延長をめぐって具体的な話し合いが進められているとか、いろんなことを私どもは承知をいたしております。その意味でそういう事実は私はないということをまず申し上げておきたいわけで、私が要望したいのは、たとえば新規学卒の問題でも一つの例を挙げれば、東京電力の場合は去年より多く採用するように私は聞いておりますけれども、そういう問題全体を含めて、いわゆる比較的業績が悪くないと思われるところが社会的責任を持った形で、おれの方は、これだけのたとえば超過労働を何割か詰めて、その分でこれだけの人を、こういう人を採用したいと、こういうようにみんなが積極的にもしとらえてくれるならば、職業訓練を行ったとしても、雇用を吸収してもらえるそういう企業があるわけですから、そういうことで大変にこの雇用問題というのは、景気回復のいわゆる上昇と相まって雇用問題の吸収力というのは増大をするんではないだろうか、さように考えるわけでございます。
  58. 多田省吾

    ○多田省吾君 富塚参考人並びに前川参考人に二点ずつ同じ問題をお聞きしたいのでございます。  一つは、先ほどの臨時特例法案におきまして、野党五党と自民党さんとの間にいま折衝が行われているわけでございますが、どうやら九十日間という問題、あるいは特定業種の範囲の問題等でまだまだ折り合いがつかないということでございますが、労働者のお立場からもどうしても九十日必要であり、また業種も幅広くしなければならないんだという端的なその理由をお話し願いたいと思います。  それからもう一点は、完全失業者数の日本の統計でございますが、学者の間では非常に統計が少なく見積もられている。九月現在で完全失業者数は百六万人、二・一一%と総理府の統計は出ておりますが、詳しくは申しませんけれども、アメリカあるいは西ドイツと比べても非常に統計の数が少なく出ている。アメリカの場合だったらば軍隊が入ってないのに日本は労働者の中に自衛隊を入れているとか、あるいはその統計のとり方も、アメリカでは職安に行かなくても失業者として取り扱われているのに、日本では職安に行った人だけが完全失業者として取り扱われているとか、あるいはそのほかにアメリカにはレイオフ制度がありまして、それも全部失業者になっております。そういった関係で、私は企業内失業者も、ある銀行の調査では百二十万人いる、あるいはいま目黒先生からお話があったパートタイマーあるいは下請業者、こういった人の中にも二十五万人は完全失業者がいるだろう、そういうことを考えますと、私は日本にも百六万人どころじゃなくて、完全失業者数はアメリカ並みに考えれば二百五十万あるいは三百万いるんじゃないか、このように思いますが、その点はどう考えられますか。  以上の二点をお伺いします。
  59. 富塚三夫

    参考人(富塚三夫君) 最初に、五野党にお願いをしました臨時措置法案の中の九十日問題ですが、これはどうしてもこのことを考えて実施をしていただきたい。と申しますのは、御存じのように、先ほど前川参考人から御説明をしましたこの四団体の考え方と、五野党がまとめていただいた臨時措置法についての各論、各項の問題になりますと、これが発効いたしましてもどこまでじゃあ企業主は守るのか、政府が守るのかという問題になってきますと、やはり具体的に実態として生活の保障の裏づけ、こういうものがないと救われないという問題が出てくるわけであります。言いかえるなら、法律を成立をさせても運用をする立場になると、いま不況業種関係者あるいはいろんな企業の減量経営をしている関係者の間で、どうしてもひとりよがりになるというか自分企業だけよくなれば、自分の労働組合だけがよくなればといったことになっていく傾向が、これはある程度やむを得ないと思いますけれどもあると思うのです。そうなりますと、法律はつくっても絵にかいたもちになるといいますか、その運用面での欠陥が出てくるという心配がされるわけであります。ですから、具体的な保障措置といいますか、そういうことは九十日問題が非常に重大な課題であるというふうに考えておりますので、ぜひ御尽力を賜りたいというふうに思います。  それから、完全失業者の率でありますが、たとえば七月の完全失業者は百五万人で失業率は二・一%、なるほどアメリカ、フランス、イタリアなどに比較をしてみると率は少ないという。ただ、われわれが今日まで重視してきていますのは、日本の場合には中高年齢層の失業者が非常に多く目立っている。言いかえるならば生活を支えておる層の失業が目立っている。これは反社会的な階層制が貫かれているんじゃないかとわれわれは実は指摘をして今日まいっています。その点では、ヨーロッパ諸国などは若年労働者の失業が顕著になっているという違いがあります。しかし最近流布されている状況を見ますと、新規に大学を卒業した人たちの明年度に向けての、来年三月に向けての就職状況というものは非常に悪くなっていくという一つの心配。まあ言いかえるなら、若年の失業者もだんだんふえてくるというヨーロッパ型に似てくる傾向もあるんじゃないかと思うのですね。定年延長をされないと中高年齢者の失業も増大をする。一方、この不況の中で新規の若年労働者の採用も見合わせる。沖繩などは、大学は出たけれどほとんど就職が見当たらないという状況ではないでしょうか。いまの全体的な状況を見ましても、来年度の大学卒の就職状況はどうなるか、大変な社会問題になるんじゃないかと思われます。  そういうことから言いますと、私どもはもっと政府が実態というものを、産業ごとに、地域ごとにしっかりとしたやっぱり調査をするというか、そういうことを考えていただきたいというふうに思うのであります。過日北海道に参りまして、道知事も申されておりましたが、二十九万人の季節労働者がおるということはわかると、これは保険の給付でわかるわけですが、一体どのぐらい北海道の五百万の中にいるのかということになると、残念ながら道知事も正確につかめないと、こう言っているわけですね。ここに職業安定所の機能の問題もありますけれども、とにかく実態を正確に掌握をしていくという、まさに中高年齢者と若年労働者とこの二つの面の失業という課題は、ちょっとヨーロッパ型とは変質の形のものが出てくるというふうに思います。むしろこういった若い労働者の失業傾向は、極度に社会不安を呼び起こしていくんじゃないかという一面も私どもは考慮しているというのが実情であります。
  60. 前川一男

    参考人(前川一男君) 第一点の、いわゆる九十日の問題ですが、野党案とそれから労働四団体お願いをしたものとは、私は大きな差があるということは承知いたしております。労働四団体の場合には、いわゆる構造不況業種ということで、雇用安定事業で指定された業種を指すと、こういうことになっているわけでありますから、この考え方というのは、単に構造不況だけというのではなくて、いわゆる不況構造不況との接点を見出すのが大変困難な雇用状況に悪化をしておりますので、その接点を結びつけるという意味で、現在行われている雇用安定事業全体の中で指定された業種と、こういうように考えたわけであります。野党案の場合には、そのところは私は消えているのではないのか、全部だという、この違いがあります。  ただ私どもは、たまたま十四日の日に、労働四団体を代表しまして二時から自民党に要請に行き、同時にまた午後四時五十分から五野党にお願いをしたと、こういう経緯をもって、その中で、大変短い時間の中で野党の五党が案をまとめていただいたわけで、大変感謝を申し上げているようなわけでございます。したがって、これについてどうだこうだということをいま申し上げる必要はないのではないかということが一つと、それから労働四団体から考えました場合には、私どもの要求というのは、いわゆる先ほど申し上げた意味での指定業種というものに限って九十日間と、こういうことですから、これはどうしても最低通してもらいたいのだということになるわけです。それは冒頭申し上げましたけれども、九十日間というのは数字ですから、したがって九十日は絶対かと言われますと大変答えづらいという面がありますけれども、三カ月程度、大変に雇用問題が御質問の中にもありましたように、二年ほど前にはやはり二%の完全失業者が統計上出ていて、それが逐次これはよくなっていくであろうという見方をしていたんだけれども、しかし現実には、いまになってなおかつ二・一以上のものになっているということですから、そうであれば、失業給付の問題についても、特定の業種に限っては三カ月くらいはこれは延ばしてもらってもそんなに無理ではないのではないのか。同時に、お金がかかればその保険料の負担は応じますと、こういうことでありますので、第一点はそういうように考えております。  第二点の、完全失業者は、これはもう御指摘のとおりだと思います。これはもちろんアメリカのように先任権制度などもありません。したがって、パートタイマーとか臨時工から順次やはりやめてもらうという、そういう社会のしきたりのようなものにこれは実際はなっていると思います。百五万人とか百十五万人とか言われているものは、もう御存じのとおり職安に登録をされてぴたっとしている人数だけでありますから、その意味では、多くの学者の意見を聞いてもまず三百万人は下るまいということでもありますし、私どもも、働きたいなという意欲を持っている人は、少なくとも、登録はされていなくても三百万を超えているのではないだろうか、そういう認識に立っているわけでございます。
  61. 井上計

    ○井上計君 時間がありませんので、お二方にお聞きしたいのでありますが、時間がありませんので富塚参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  私どもとしても、雇用不安を解消するためには人後に落ちない努力をいたしておるつもりでありますが、そこで、先ほど来各委員の御質問に若干角度を変えてひとつお尋ねをいたしたいと思います。若干失礼になる質問があるかと思いますけれども、あらかじめお許しをいただきたいと思います。  先ほど来富塚参考人の御意見あるいはまた御要望等を承っておりまして感じますことですけれども、まず総評においては過去、企業の合理化に一時は非常に強い反対をされておったということであります。もちろん合理化につきましては、省力化ということで、高度成長下におきましての省力化と現在の省力化もちろん違いますが、必ずしもすべてが省力化ということでありませんで、やはり技術の革新、まあ技術競争に勝ち残ろう、こういう意味での省力化も合理化も非常に多かったわけでありますが、ところが結果が技術競争に負けたというふうなケースも特に中小企業の場合にはかなりあるんではなかろうかと、こういう点を実は私感ずるわけであります。先ほど実例として挙げられました浜田精機が、三菱重工の影響で全員解雇というふうなお話がありましたけれども、印刷機械だと考えておりますが、これなんかは私の聞いている範囲では、やはりその再度成長下におけるところの浜田精機の言えば技術革新、技術のおくれがそのような結果になったんではなかろうかと、こういうふうに考えております。あるいは違うかもしれませんが、それらの点を考えますときに、今後さらに、ただ単に不況だからということだけではなくして、不況ももちろん大きな原因ではありますけれども、そのような言えば技術の立ちおくれが、そういう形で企業の不振あるいは人員整理、解雇というふうなことにつながっていくのが、さらにこれからふえるのではなかろうかと、こう考えますが、これらについてのお考え、対策はどうされるか、これが第一点であります。  それから、それとやはり関連をいたしますけれども、労働省では各種の技能検定制度が多く実施をされております。総評におきましては、技能検定制度については比較的従来消極的でおられたというふうに聞いておりますが、ところで、その技能検定に合格をした、いわば勉強し努力をした技術者、技能者等に対して、企業がそれについての若干経済的な優遇措置を講じようという場合に、総評としては従来これについては反対を実はされておったというふうに聞いております。言えば職能的なそのようなものに依然として今後も反対をされるのか、どういうふうなお考えでおられるのか、ひとつこの点についてお聞きをいたしたいと思います。  それから、もう一つは最賃制の問題であります。現在、これは総評、同盟とも全国一律最賃制についての御要求をされていることは承知をしておりますし、また私もある意味では同感でありますけれども、ところが全国一律最賃制が、特に地方の地域におきましては雇用を実は阻害をしておるというふうな面があるんじゃなかろうかと、現在まだ一律制ではありませんけれども。特に高年齢層の就職希望者がありましても、最賃制があるためになかなか、企業としては雇いたいけれども、といって能力等からいって、言えば最低賃金に見合う以上のものは出せないと。しかし、本人は最低賃金を下回っても結構だと言っておりながら、なかなかそうはいかぬというケースがときにはあると聞いておりますが一このような最賃制の問題等についてのそういうふうな面があるわけでありますが、どうお考えであろうかということであります。  それから、最後に地域のいろんな求人等の問題についての、先ほどいろいろと御意見がございました。そこで、これは私の疑問というよりも沖繩で聞いた疑問、素朴な疑問であります。軍事基地即時撤廃反対という運動は依然としてなされておりますが、同時に基地の離職者に対する対策というもの、片方では基地撤廃によって当然失業者、離職者がふえるわけでありますけれども、それと撤廃運動と離職者との問題、これらの問題等についてはどうお考えでありますか。  以上、大変失礼な質問だったかと思いますけれども、お伺いをいたしたいと思います。時間がありませんので、前川参考人への質問はひとつ省略をさせていただきます。
  62. 富塚三夫

    参考人(富塚三夫君) 労働組合の持つ本来的な使命と雇用対策、そのかかわり合いの問題提起だと実は存じます。私どもは、高成長時代に企業の側がスクラップ・アンド・ビルド、そういった政策を掲げて、私どもから言いますと、合理化、省力化と、こういった攻撃をかけてきたと、それに対応する対応の仕方の問題では、人を減らさない、労働時間の短縮を図る、そして賃金の上昇を求めていくという、当然これは労働組合の対応する、対置する目標なのであります。このことについて、やはり私どもは、経営者の側が、企業の側が、資本の側がそれを認めるという前提に立っての省力化、合理化というものが前提でなければならない。にもかかわらず、人を減らす、低賃金に抑える、そして労働条件を低下させるという結果になるようなことは、私どもは、基本的に労働者として、労働組合として納得できないという運動の路線を実は進めてまいりました。その結果において、今日の低成長下の転換の中でどのような状況が出ているかを考察をしてみますと、やはり企業の持つ社会的責任なり、労働組合に対する責任というものがきわめて無責任な経営者は、あるいは企業の側は大変労使関係にも混迷を来している、あるいは地域的条件にも混迷を来していると私どもは見ています。ですから、そういった観点に立って、私どもは資本の側の論理、企業の論理ということはわかりますけれども、もっと労働者を大事にする、そういう視点に立って賃金あるいは雇用、労働条件というものを考えるような資本の側、企業の側の対応をぜひ求めたいということが第一の問題でありまして、そういう立場に立って私どもは努力をしてまいりました。  それから、技術検定試験に合格した者、それに対する対応の仕方について反対という態度をとってきたことについてどうかということなんですが、具体的なその実施の仕方なりあるいは結果として出てくることが差別問題につながっていく、あるいは組織問題につながっていくといった問題などが随所に実は見られることについて非常に不満を持っているわけであります。ですから、系統立ってこの問題がどのように労働者側が有利になるかという問題について明確になれば、私どもはいささかも否定をする気持ちはありません。  それから、第三の全国最低賃金一律の問題でありますが、これはぜひ考えていただきたいと申しますのは、来年度の春闘における賃上げの問題も恐らく首か銭か、雇用か賃金かという問題に直面することは十分承知をしています。そういうキャンペーンを資本の側に張られるだろうとも想定をしています。しかし考えてみていただきたいのは、余りにも高成長時代に無軌道、無奔放なやはり資本や経営の側の利潤追求というものが余りにも労働者に大きなしわ寄せになって、大きな傷口になって出ているという、この実態だけは共通の認識に立てるんじゃないかと私どもは思っています。いま雇用問題は、あえて言うなら国の責任です。労働者の責任じゃありません。しかし、それでも真剣になって労働組合が四団体で共闘して一生懸命やろうとしていることのその方向はぜひ見ていただきたい、評価をしていただきたいというふうに思うんであります。いま参加問題なども議論をされていますが、結局企業の社会的責任、公害の問題、価格の問題、あるいは地方自治体に及ぼす、地域的な経済社会に及ぼす影響は、余りにも大資本、大企業が無軌道に思うまま勝手にやってきたことが大きな問題になっているんじゃないでしょうか。その点を、社会的機能をつくり上げてどうチェックをして制約をしていくか、制動していくかは、ヨーロッパだけの労使関係や国とのかかわり合いだけじゃなくて、わが日本に画面をしている大きな課題だというふうに考えています。そういたしますと、企業の側がもう倒産を余儀なくされる、後は労働者の希望退職ないしは首切りだということの状況の中で、労働者は生活を守るだけの賃金が欲しい、そして首もつないでもらいたい、残業規制もやっていこうという状況になっているんですから、そのときに少なくとも生活できる最低の賃金というのはわれわれ自身は認めてもらう、それを国が法制化をするのは当然のことだと思うんです。先進諸外国においても、そのことの労働者の要求は非常に重要な要求の柱に実はなっています。加えて来年はどうでしょうか、大手企業中小企業との格差、つまり産業間格差、業種間格差、地域間格差というものは、労働者に深刻性を一段ともたらすものじゃないかと私どもは思います。単なる官公労とか民間とかの相違という問題じゃない。民間の企業の内部に大変な問題を起こしてくるときに、最低賃金制の歯どめというものをかけておかなかったら、安く労働力を提供させられ、そして長時間労働で倒れていくというふうなことは、私は労働組合のなすべき仕事ではない。労働組合は当然労働者の生活と権利を守るために存在するのですから、そういう立場に立って最低賃金制問題も積極的に進めていきたいと、労働大臣とも交渉をしているところであります。  沖繩問題では、われわれは安保条約に反対をして軍事基地を撤去してもらいたいと、総評も方針として掲げています。問題は日本の平和を守るというわれわれの要求なり運動の進め方と、この離職者とのかかわり合いの問題はおのずと性格を異にします。それは先生も恐らく日本に軍事基地があっていいとはお考えになっていないと思います。そうしていきますと、いかにして平和を一日も早く取り戻すのか、それがためには軍事基地をなくしていこう、日本が自立していこう、この希望、要求に沿ってわれわれは運動を進めるという観点に立つならば、その離職者の方々に対する対応は、当然国の責任において、あるいは地方の責任において対応するということで、そのかかわる課題について実は要求をしておるというのが実情であります。総じて私どもは、労働者が一致結束していま雇用問題の難局に当たらなければならぬという共通の認識に立ち、同盟さん、あるいは中連、新産別が画期的な四団体共闘をして、行動の面でも活動範囲を広げることを実は申し合わせをしています。重ねて、政府もわずか二千五百億ぐらいのこの法案をなぜ今回成立させることができないのか、国民も労働者もそのことについては注目をしていると思います。その点でどうか参議院の先生方にも格段の成立方について御協力お願いをして、私の発言を終わることにいたします。
  63. 宮田輝

    ○宮田輝君 土曜日の午後というのにお出ましをいただいて大変恐縮でございます。週休二日制をおっしゃる方に、こうして時間を割いていただきまして本当にありがとうございました。  富塚さんがさっきおっしゃいました中に週休二日制もありました。それから定年延長ということのお話もございました。私は、この七月にNHKで調査いたしました老後問題に関する意識調査というのがあるんですけれども、これをちょっと広げてみても、勤め人の六割が定年延長を希望というのがございます。これは四十歳以上の首都圏の住民二千人を対象にして行った調査なんでございますけれども、四十歳以上ともなればなおさらそういうふうにお考えになるのは、これは非常によくわかるような気がするわけでございます。私どもも直接そういう声をよく伺います。そういうときに、いま富塚さんのお話の中に官民格差なんという問題じゃないという点もあったかと思うんですけれども、官民格差も確かに問題になっていると言えば、あるいは言い過ぎかもわかりませんが、話題には大きくなっていくと思うんでございます。  そこで、私は前川さんにもお伺いをしたいんでございますけれども、公務員の定年制についてどんな御意見をお持ちでしょうかという点が一点。それからもう一つは、だんだん労働時間が短かくなる。したがって、楽しむ時間といいましょうか、余暇がふえてまいります。そういう趨勢にあろうかと思うんでございますけれども、やがてそういう時代がやってきて、余暇をどういうふうに利用したらいいかというふうにお考えでしょうか。この公務員の定年、それから余暇利用、この二点について、それぞれの立場から御意見を聞かしていただければありがたい次第でございます。
  64. 富塚三夫

    参考人(富塚三夫君) 私どもは、高齢化社会を迎えるこの必然性というものをどう考えるか、二十一世紀になりますと人口増加の問題、食糧の問題、エネルギーの問題が大きな問題になるだろうという基本的認識に実は立っています。そこで、日本も北ヨーロッパ並みに高齢化社会を迎えるということが言われておるだけに、定年延長はいまや時代の趨勢といいますか、そういう視点で一つは考えてみるべきだろう。同時に雇用問題のかかわり合いの問題についても、当然の要求としてそこに出てきているわけであります。  そこで、官民の定年制に対する考え方の問題なんです。実は鉄鋼産業などに見る、たとえば新日鉄などが定年延長を要求いたしましたが経営者に実はけられました。そして、これからさらに交渉を続けていくということになるのですが、先ほど申しましたように、鉄鋼業界の中で中高年齢層が多いものですから、一年延長すると約二万人ぐらいつまりふやすことができる、雇用拡大ができるというふうに言われています。そうしますと民間企業はミクロの、つまり個別企業立場ではその企業条件に合った中の定年制をどうしても考える。そこに中高年齢層の雇用促進問題も去年国会で特別決議もしていただいて、行政指導もしてもらっていますが、なかなか思うようにいってない。これは六十歳定年ということをひとつ基本に考えてみるべきだろう、こう私どもは総評の民間の中の組合でそういう議論を実は進めています。同時に公務員の場合です、公務員の場合に六十歳定年、これは当然あるべき姿だと基本的に考えています。しかし問題は、地方財政とのかかわり合いの問題とか、幾つかの人件費問題に対するいろんな問題点が提起をされている状況も実は現存します。しかし、基本的には公務員も民間も六十歳定年を目指して、当面法制化問題をひとつ検討していただこうではないかというふうに私どもはいま真剣に考えているところであります。もちろん公務員労働者の場合には、年金問題なり、あるいはその他の待遇条件で民間との違いの問題もありますが、私どもは、年金問題なども民間とあわせて考えていこうということに画期的に踏み切って、いまその相談を、コンセンサスを求める努力をしている最中であります。  それから、第二の問題は余暇をどのように利用するかという課題の問題であります。御存じのように高成長の峠を通り抜けて、いま特に若年労働者を中心に意識が多様化している、価値観が多元化している、ニーズも変わってきている、こう言われています。若い労働者はかなり積極的に余暇をレジャーに求めるという、そういった傾向がありますが、なかなか中高年齢層は戦後の耐乏生活をくぐり抜けてきているだけになじまないという、ひとつ年齢層のギャップがあることに、私ども労働運動を進める上の、そういった娯楽活動の面でも、非常に実は悩んでいます。私自身の子供をとってみてもなかなか親と接点を見つけることができないといったように、こういった課題について、もっと積極的に大衆的な余暇の利用、レジャーなどを考えてもらうような国の施策というか、方針というものを打ち立ててもらわないと、やはり中高年齢層はなかなか頭の転換がきかない、体の転換がきかない。そしてとりわけ若い労働者だけがそういう方向に行ってしまうということを考えているので、私どもは総評の場合でも、積極的に中高年齢層と若年層との間のコンセンサスを求めて、この効率的な余暇の活用といいますか、人間として健康的にふさわしく生きられるだけの条件をどう満たすことが可能か、いろいろな角度から検討を加えてみたい。私がお願いしたいのは、国家的な立場からこういう問題についての指向性というか、そういう目標なりプロセスをひとつ明示してもらうということを考えていただけないかというふうに思っています。
  65. 前川一男

    参考人(前川一男君) お答えいたします。  公務員の定年制についてということでございますが、現在公務員の場合には定年のあり方というのが大変に不明確ですから、五十何歳かで肩たたきでやめてみたり、あるいは七十歳を超してもまだ働いておりますと、いろいろな状況になっていると私は思います。そして定年問題というのは、老後という問題から考えますと、これからの年金制度あるいはその他の諸問題と大変密接な関係を持ってくることであります。たとえば年金制度の受給開始年齢を一体どこにするかという場合にも、定年延長との関係というのは無縁ではなくて、大変密接なことだと思います。その意味で、今日乱れているいわゆる定年制というのは、長い昔からの状態がいまの時点でもなお残っているということなのでありますから、私は、やはり民間の定年制のあり方と公務員の定年制のあり方とがどこで一体重なり合うのかということで、十分いわゆる公務員関係の定年制については計画性のある検討というものが望まれていかなければならないだろう、かように考えるわけであります。  それから、労働時間短縮に関連をした余暇の活用ということであります。労働時間も、まだまだ日本の場合には国際先進国に比較をした場合に、大分改善はされましたけれども十分なところにまだいっていないというふうに考えます。先進諸国の中でも多くのところは、むしろ週三十五時間制を目指していろいろ話し合いが進められているというのが実態ですし、一部では試験実施がされているというのも私は聞いたことがございます。そういう面から見ますと、まだまだこれはおくれているんではないかと思いますが、同時にまた、週休二日制も完全週休二日制をやっているところはまだ大変に少ない実態だと思うんです。しかし気持ちの上では、福祉国家ということが大方の人からそれほど矛盾なく言われる時代に入ってきまして、先々週休二日制も実現するのはそう遠くないだろうということから考えますと、いま宮田先生からの御指摘のように、余暇との関係というのは十分いまから心がけていかなければならない重要な問題だというふうに考えます。  一つ基本的なものは、やはり余暇の利用というのは、まず自分がどうするかという、そういうものをしっかりと身につけるということが必要でありまして、人に決めてもらって余暇の活用をするというのは恐らく民主主義の国では余りうまくいかぬでしょう。そういうものを本当の意味で確立をしていくというためには、私は教育ということが大変大事なんではないのかというふうに思います。したがって、教育の中でこの余暇あるいは労働時間、そういうものを含めてどういう教育をしていったらいいのかというのが根本的に一つあるのではないかと思います。それから余暇を本当の意味で、善意の意味で有効に使ってもらうために国なり自治体はこういう考え方があるんですという、そういう指導とまでいかないまでも、参考までにいろんなものをまとめて、そして私の知っている範囲では、いわゆる政府の諮問機関としても余暇利用のための審議会なども開催をされて、大分まとまったものもあるようですけれども、そういうものを十分にひとつ活用してもらうという幾つかの面からの対応が必要なのではなかろうか、かように考えるわけでございます。
  66. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  一言御礼を申し上げます。  富塚参考人及び前川参考人には非常に貴重な時間をお割きくださり、当委員会のためにわざわざ御出席の上、それぞれのお立場から御意見をお述べいただき、また委員質疑にもお答えをくださいまして、まことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、今後の当委員会の審査に役立つものと確信いたしております。ここに委員会を代表して深甚なる謝意を表する次第でございます。(拍手)  御両名におかれましては、御自愛の上、今後一層の御活躍をお祈り申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  この際、大蔵、労働両大臣に申し上げますが、ただいままでお聞きいただきました参考人の御意見は、本補正予算の執行に当たりまして十分御配意くださいますよう特にお願いを申し上げます。  次回は明後二十四日午前十時から委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十四分散会