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内藤誉三郎君 総理のお考えはよくわかりました。
ASEAN外交を進める上にも、インドシナ三国との国交を回復する上にも、私は
中国との友好が必要であると思っております。特に
中国は
石油ショックの影響を受けていない国でもあるから、欧米諸国と異なって
貿易の拡大が今後期待されると思っております。私は九月上旬、ちょうど毛沢東の一周忌に際し、超党派訪中団の一員として
中国へ行けということで行ってまいった。昔から一衣帯水と言われた隣国、総理のおっしゃる隣国でございますが、なるほど飛行機で北京まで四時間、上海まで二時間半、近いのが何よりの長所だと思っております。第一回は日
中国交回復前、一九七〇年の文化大革命の直後でした。文化大革命とは何かと聞いたら、人間改造精神革命だと言うんでね。昔はハエや紙くずがいっぱい、こじきがごろごろしており、どろぼう市が栄えるほど盗難があり、犬とシナ人入るべからずの立て札を立てられ、腐敗堕落していたと言われる
中国が完全に立ち直っているのに私もちょっと驚いたんですが、その原動力が毛語録である。仏教の五戒、うそをつくな、物を盗むな、人を殺すなから始まって自力更生、刻苦奮闘、勤倹建国、最後が人民のために服務する、人民のために奉仕することが毛沢東最高指示であった。この国では毛沢東は絶対崇拝、絶対信仰で神格化されていたので、毛語録は至上命令であり、権威があった。昔の教育勅語以上にみんなが拳々服膺したから教育の成果が上がったんだろうと。
私は、教育の偉大さに実は驚いたわけですが、今度は文化大革命の終結宣言を行った直後でした。軍事訓練や勤労奉仕は姿を消しました。防空壕掘りも終わりまして、防空壕は外からは全然見えない。前回と比較して大変伸び伸びとして自由な雰囲気になっているなという印象を強く受けました。服装も以前は工人服一色であったが、今回は質素だが色とりどりが目立つようになった。毛沢東一周忌の記念演奏会に招かれたが、歌って踊って実に楽しかった。
師範大学を見学したが、大学から幼稚園まで毛沢東の教えが中心であることには変わりはなかったが、どの教室にも毛沢東の写真が飾られていた。学校のみならず、あらゆる職場、駅等の公共施設はもちろん、農家の各家庭まで毛沢東の写真が飾られているのには実は驚いた。八億の人民が毛沢東を中心に団結する姿はうらやましくもあり、頼もしい気もした。四人組の追放と鄧小平氏の復活で華国鋒体制は一段と安定してきたように思われました。特に農業、工業、国防、科学技術の四つの近代化を国是として決定しているので、
日中貿易の前途は明るいように思いました。特に、
中国には
日本が欲しい
石油、
石炭の地下資源が豊富であると聞いております。
出発前に経団連の土光
会長にお目にかかり、わが国
経済界の実情をお尋ねしましたら、欧米との
貿易はもう頭打ちだ、これからは
中国に期待している。四つの近代化のほかに八億の人民がおるから、日中平和
条約が締結されると前途は非常に明るいんだと、一日も早く、平和
条約の締結を望むとのことでありました。
国交回復以来、海運、航空、漁業、
貿易と四つの懸案が実務
協定ができ上がって、解決ができないのがいまの平和
条約だけなわけで、これがまあむずかしいわけなんです。しかし、これができないとやっぱり
日中貿易の進展も多くを期待できないんではなかろうか。五年前に
田中元総理の日
中国交回復のときは、最大の懸案である台湾との断交があったが、台湾問題はいろいろ問題が残されているようでございますが、大筋においてはもう解決済みではないかという気もするんです。
日
中国交回復に際し、
日本軍が多年にわたり損害を与えた上に、一千百万の人命を奪ったのに対し、
中国は一文の損害賠償も要求しなかった。私は、これは世界史上でも珍らしいことだと思っております。
国内的には対ソ
関係を考慮して、確かに慎重論もございます。しかし、北方領土の返還なくしては日ソ平和
条約は私はできないと思うんで、日ソ平和
条約の見込みはいま全く立っていないんではないでしょうか。日中平和
条約と日ソ平和
条約とは私は全く別個の問題で、ソ連が漁業問題や北方領土で日中平和
条約を牽制するなら、私はソ連こそ漁業問題や北方領土でもっと誠意を示していただきたいと思いますが、この日ソ
関係の現状について、鳩山
外務大臣からお尋ねをいたしたいと思います。