○井上計君 私は、民社党を代表して、ただいま
議題となっております
昭和五十二
年度補正予算三案に対し、一括して
賛成の
討論を行います。(
拍手)
今回の
政府補正予算案は、
内容的にはまだまだ十分ではありません。しかし、現在
わが国の
政治の最大の
課題は、不況の克服と、速やかな
景気の
回復であります。
昭和四十九年以降四年間にわたって続いている
日本経済の長期
停滞はまことに深刻なものがあり、このままで推移するならば最悪の
事態の発生さえ憂慮されております。
企業の
倒産は月を追うごとに激増し、
潜在失業者を加えると、職を失い
生活に困っている人は実に三百万人を超えると言われております。さらに、
構造不況業種の従事者を初め、
中小企業者の多くは経営の自信を失い、労働者は失業の不安に日夜おびえておるのであります。このような深刻な
事態を直視するとき、一刻も早くその
対策を実行に移すことが緊要であることは当然であり、同時に、日夜苦悩を続けている数百万人の労働者、
中小企業者の経営と
雇用の不安を少しでもやわらげるためには、まだまだ多くの問題はありますけれども、あえてこの
補正予算案に
賛成するものであります。
さて、この際、
福田総理を初め各
大臣に、改めて過去の
政策についての厳しい反省を求めたいと思います。現在
国民が抱いている切なる願いに真剣に耳を傾け、今後に対処すべきであることを強く要求するものであります。
まず、その第一は、
補正予算成立後直ちに
公共事業等の諸施策を実行に移し、
年度内には完全にこれを消化して、末端までの
需要創出効果を図ることであります。また、このためには、窓口業務の迅速化と
中小企業の官公需確保については格段の配慮をいたすことを特に要望いたすものであります。
要求の第二点は、現在最大の
課題である
雇用安定
対策であります。わが党が他党と協力して提案する特定
業種離職者臨時特例法を
補正予算と一体のものと位置づけ、万難を排して今
国会で必ず成立させることであります。同時に、
構造不況業種を初め、
中小企業の関連
倒産を
防止する
制度を速やかに創設するとともに、思い切った
財政援助を行い、
政府系
金融機関の貸し出し条件の
拡大と
改善、既往貸し出し分を含めて大幅な金利の
引き下げを実行することを強く要望をいたすものであります。現在多くの
企業の経営は風前のともしびという状態にあるとき、いたずらに従来の慣例にこだわり過ぎてタイミングを失することのないよう、篤と善処されることを警告いたすものであります。
さらに、現在緊急な
課題として
円高の
対策があります。一ドル二百五十円台の
円高相場が定着しつつあるとき、不況と
円高の二重の挾撃を受けて
中小企業者の苦しみは想像を絶するものがあります。特に零細な
輸出企業の多い洋食器、陶磁器、繊維、雑貨等の業者は致命的な打撃を受けて、今後の新規成約は全く絶望的と言われております。これらの
輸出業者は、過去数年来、
政府の指導のもとに、国際競争力を身につけるため血のにじむような努力を続け、合理化、
構造改善を実施してまいりました。当時、国際競争力の対応ラインは二百九十円前後という指導がされておったのであります。ところが、本年初め二百九十三円であった円相場は、わずか十カ月足らずのうちに一六%という大幅な
実質切り上げとなってまいりました。その
原因は
政府の無為無策と失政にあったことは間違いのない事実であります。
政府は、この責任を痛感して、これら影響を受ける業者に対しては速やかな救済
措置を講じなければなりません。
政府がこの十月から新設をした
円高対策緊急
融資制度では万全の
措置とは言い得ないのであります。なぜならば、この
措置によって既契約分の
円高差損については一時的にしのぐことができますけれども、しかし、今後の新規の
輸出成約は全く期待できないのであります。現在の
経済情勢から見れば、二百七十円レートがほぼ適正と言われております。とするならば、二百七十円と実勢レートの差額分については長期低利の
融資制度を新設をして、中小
輸出企業の安定を図るべきでありましよう。
次に、この機会に、目前に迫っておる明
年度予算の
編成と今後の
政治の
あり方等について提言をいたしたいと思います。
政府は、
景気回復に対する
財政の
役割りの重大なことは
認識をしておりながら、依然として
国債発行率三〇%以内にこだわり過ぎておるようであります。わが党の主張している二、三年ぐらいは、まず
景気を
回復をして、税収の増加を図り、改めてその上で中期
経済計画を見直すことを提言をいたします。また、
財源不足を
理由として、
一般消費税等の新税の創設を企図いたしておるがごときは、余りにも
認識不足と言わざるを得ないのであります。万一これらの新税を創設した場合は、さらに消費は減退をし、不況は一層深刻となるばかりでなく、
物価高の要因となることは火を見るより明らかであります。したがって、
一般消費税の創設はもちろんのこと、
国民生活をこれ以上圧迫するような自動車税等、すべての増税には断固
反対をいたすことをこの際表明いたしておきます。
さて、
わが国の
政治には、はじめに働く人が損をしている施策がまだまだ多く残されております。このために
国民の間に
政治への不平不満がますます高まっておることを考えていただきたいと思います。長い間懸命に努力をして
日本経済の発展を築き上げてきた多くの人たちの不満を早く解消しなければ、
わが国の将来は坂道を転げ落ちるような破滅の一途をたどることが憂慮されるのであります。このためにも、不公平な税制の速やかな
是正、行政
改革の断行、官公庁、地方自治体の冗費の節約、
給与、待遇等の官民
格差の
是正を実行して、
財源を確保するとともに、
国民の奉仕者たる
公務員の使命感の確立を図り、
政府がまずみずから範をたれ、努力することが急務であります。
さらに、エネルギーを初め、物を大切にすること、人を大切にすることを
国民に強く訴える施策を行わなくてはなりません。
わが国は資源の乏しい国であることを承知しながらも、残念ながら、物を粗末にし、むだにしている
国民は他にないとさえ言われております。物を粗末にする風潮は、自分さえよければというエゴまる出しの行動につながり、ついには人命さえ粗末にするような社会になりつつあるではありませんか。国の安全と平和を守るための施策、産業の振興、発展のための施設、
国民生活安定に必要な
事業等に対しても行き過ぎた
反対あるいは地域エゴが横行していることは、まことに悲しむべき情勢であります。
政府は、これらの誤った行動をいたしている人たちに対し一層の啓蒙と指導を行い、理解を求める手段を実施すべきであると考えます。
また、数年来、相次いで行われている国鉄、郵便等の公労協の違法ストは、
国民生活に甚大な影響を及ぼし、大きな損害を与えているのであります。(
拍手)この違法ストに対する
政府の軟弱な
態度が
国民の不平を増幅させ、
政治不信をさらに高めていることを反省すべきでありましょう。法秩序を厳正に守ることは民主主義の
基本であります。
政府は、このような誤った行動が今後は絶対に起きることのないように毅然たる
政治姿勢を貫き、まじめに働き、まじめに努力している人が損をすることのないよう、
対策を確立すべきであります。
最後に、
事業所総数五百万、そこに働く人三千万人と言われる
中小企業の声を代弁し、要望をいたすものであります。
中小企業の振興は、
国民経済の健全な発展のかぎであることは申すまでもありません。したがって、そのためには、金融、税制等を初め、
中小企業政策の
改善、
改革を抜本的に行うべきであります。長い間
政治の谷間に置かれている
中小企業を早く日の当たる場所に
引き上げる
政治を行うことを切に要望し、願うものであります。そのためにも、急を要することを二点提言をいたします。
その一つは、従来固定化している国の
一般会計予算の中に占める
中小企業対策費がわずか総
予算の千分の六という低率にあることを反省して、明
年度予算編成に当たっては、これを大幅に増額すべきであります。さらにいま一点、
政府は、
中小企業者の信頼をかち得るために、
中小企業専任
大臣を置くことであります。この二点の実施のために、
福田総理の勇断に期待をいたしております
中小企業者が非常に多いということを付言しておくものであります。
以上、わが党の要求が今後の
政府の施策に十分に生かされ、
国民の期待にこたえられるよう強く要求して、私の
賛成討論といたします。(
拍手)