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1977-10-24 第82回国会 参議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月二十四日(月曜日)    午後四時二十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第五号   昭和五十二年十月二十四日    午後三時開議  第一 国家公務員等任命に関する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、昭和五十二年度一般会計補正予算(第1   号)  一、昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1   号)  一、昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機   第1号)      ——————————
  2. 安井謙

    議長安井謙君) これより会議を開きます。  日程第一 国家公務員等任命に関する件  内閣から、原子力委員会委員井上五郎君、村田浩君を、  科学技術会議議員鈴江康平君を、  宇宙開発委員会委員網島毅君、八藤東禧君を、  公正取引委員会委員長橋口收君を、  国家公安委員会委員松本正雄君を、  中央社会保険医療協議会委員高橋勝好君を、  労働保険審査会委員中村博君、山本秀夫君を任命したことについて、本院の承認を求めてまいりました。  まず、原子力委員会委員科学技術会議議員宇宙開発委員会委員公正取引委員会委員長国家公安委員会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  3. 安井謙

    議長安井謙君) 過半数と認めます。よって、いずれも承認することに決しました。      ——————————
  4. 安井謙

    議長安井謙君) 次に、中央社会保険医療協議会委員労働保険審査会委員任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも承認することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  5. 安井謙

    議長安井謙君) 総員起立と認めます。よって、全会一致をもっていずれも承認することに決しました。      ——————————
  6. 安井謙

    議長安井謙君) この際、日程追加して、  昭和五十二年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十二年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第1号)  以上三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 安井謙

    議長安井謙君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。予算委員長鍋島直紹君。    〔鍋島直紹君登壇拍手
  8. 鍋島直紹

    鍋島直紹君 ただいま議題となりました昭和五十二年度補正予算三案につきまして、委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  今回の補正予算は、最近の内外経済情勢にかんがみ、先般政府が決定いたしました総合経済対策を推進することによって、景気の着実な回復を図るとともに、対外均衡にも資するため、一般公共事業災害復旧事業等のほか、社会福祉文教等施設整備追加を行うとともに、人事院勧告完全実施のための給与改善費北洋漁業救済対策費中小企業等特別対策費等の計上を行い、歳出追加総額は五千二百四十七億円となっております。  他方、一般行政経費の節減一千三百四十億円を初め、予備費地方交付税交付金等減額を行うことにより、歳出修正減少額は土千五百四十六億円となっておりますので、歳出予算の純追加額は二千七百一億円となります。  歳入につきましては、公共事業追加財源として、産業投資特別会計からの受入金一千五十八億円を計上するほか、建設公債二千五百十億円の増発を行うとともに、特例公債を一千百二十億円減額することとし、そのほか、特別減税に伴う所得税減収見込み額三千億円の減額を行う等の補正が行われております。  本補正の結果、昭和五十二年度一般会計予算総額は、歳入歳出ともに二十八兆七千八百四十四億円となります。  また、一般会計補正に関連して、国立学校特別会計等十五特別会計と、日本国有鉄道等三つ政府関係機関についても補正が行われております。  補正予算三案は十月三日国会に提出され、八日に坊大蔵大臣から趣旨説明を聴取し、衆議院からの送付を待って、十八日から二十四日までの六日間にわたり、福田総理大臣並びに関係大臣に対し、国政全般にわたり質疑が行われました。なお、二十二日には、参考人を招致し、構造不況雇用問題等に関する質疑が行われました。  以下、質疑の主なるものの若干につき、その要旨を御報告申し上げます。  財政経済問題の質疑のうち、まず、経済関係質疑として、「政府が九月という早い時期に異例の経済見通し改定を行ったことにも端的にあらわれているように、福田総理経済見通しとその運営に誤りがあったのではないか。また、総理国民の間に景気見方で大きなギャップがあるのではないか。さらに、総理の持論であった全治三カ年論については、日本経済が単なる循環不況でなく、構造変化を伴う再編成に遭遇していることから見て、全治五カ年はかかるのではないか。構造不況対策、特に金融面雇用面対策をどう進めるのか」次に、財政関係では、「過去三カ年間にわたり公共投資主導型の景気対策を実施してきたが、期待どおり効果を上げていないのではないか。また、事業規模二兆円の今回の景気対策も、国債依存率三〇彩にとらわれ、不満足なものとなっている、もっと弾力的に考えるべきではないか。公共事業契約率七三%の前倒しを実施しているが、中には契約率の低い事業もある。景気刺激のための財政指標としては、むしろ支払いベースをより重視すべきではないか」等の質疑がありました。  これに対し、福田総理を初め関係大臣より、「経済景気見通しを的確に行うことは至難の上に、世界経済が依然として混乱をしており、各国とも計画どおりに行ってはいない。そうした中で、わが国経済は着実に回復軌道を進んでおり、物価の安定も定着しつつあり、大筋として見通し運営に間違いはなかった。しかし、民間設備投資異常停滞によって、当初見通し実質六.七%の成長が、放置すると五・九%ぐらいで推移する状況になったので、国際的な約束を守り、あわせて国内景気回復を一層着実なものにするために、事業規模二兆円に及ぶ総合経済対策を実施することにした。政府国民との間に景気見方で、ずれはないと思う。もしあるとすれば、日本を取り巻く環境が一変して資源・エネルギー有限時代を迎えている今日、かつての高度成長を夢見ているとしか思えないが、そうした時代は再び来ないし、あってはならないのであって、基本認識を改めてほしい。全治三カ年論については、五十一年度最終年度で、そのときまでに国際収支危機を乗り切り、一時は二割五分も三割も騰貴した物価を鎮静化させ、成長率世界最高の五.八%を実現したことを見てもらえば、石油ショック後の骨格調整は完了したと思う。しかし、同時に、最近構造不況の問題が発生し、景気並びに企業経営跛行現象という困難な課題を抱え、これが足を引っ張っている状況から見て、日本経済安定成長に順応させていくには全治五カ年論は十分理解できる。構造不況対策については、価格生産の両面でカルテルを結び、需給ギャップの解消を図るほか、近い将来需給均衡回復が困難な業種については設備廃棄を含む構造対策に取り組み、今後経済全体のかさ上げを行っていく過程で転換を図っていきたい。その際、廃棄転換に伴う金融面雇用面対策については万全を期す覚悟である。先般来の金利引き下げ措置も主として雇用安定をねらったものであって、各金融機関を通じその趣旨を徹底させたい。以上の構造対策は何とか五十三年度中に大方のめどを終えたい」旨の答弁がございました。  財政問題については、「不況期財政支出拡大有効需要創出の上でそれなりの効果を上げてきたと思う。ただ、今回は在庫が非常に多かったので在庫調整に食われ、生産段階にまで及んでいないというのが実情である。国債依存度については、政府も、経済あっての財政という考え方に立っており、依存率三〇%を神聖にして侵すべからずとは思っていない。ただ、現在のわが国国債依存率世界最高のゆゆしい事態に立ち至っているので、何としても三〇%という線は守り抜きたいと思っている。公共事業前倒し七三%は、計画当初から事業別に若干の出入りがあり均一ではなく、ならした数字ではあるが、港湾事業、一部公団事業団等用地取得難等の問題があって契約率の低いものがあるが、全体としての目標達成は十分可能である。また、契約率目標にしたのは、契約時点で四〇彩前後の前払い制度もあるので、資材購入契約時点で出てくるので指標に選んだが、今後は支払い促進に鋭意努力したい」旨の答弁がありました。  国際収支円高問題に関する質疑としては、「経常収支七億ドルの赤字見込みの五十二年度政府経済見通しロンドン会議で国際公約したことが外圧の原因ではないか。改定見通し経常収支が六十五億ドルの黒字に変わったのは内需喚起政策の怠慢の結果ではないか。政府の不手際と諸外国のいら立ちが重なって、このところ外国為替市場は一本調子の円高となっているが、日銀市場介入態度黒字減らし対策円高倒産防止策為替差益消費者への還元対策等を聞きたい」との質疑がありました。  これに対して、関係大臣並びに森永日銀総裁より、「国際収支見通しに狂いが生じたのは輸入の伸び悩みに原因があり、これは設備過剰、構造不況を反映して原材料輸入停滞したためであるが、貿易を行っているのは政府ではなく産業界であって、結果として相当多額黒字が発生する見通しとなった。しかし、輸出増加率は逐次低下の傾向にあるので、下半期の黒字は縮小すると思う。最近の円高は、上半期で五十五億ドルにも達する経常収支黒字と、アメリカの国際収支赤字が予想を超えて増加していること等が九月のIMF総会で明らかになったことが背景となっている。日銀としては、為替相場の乱高下が生じた場合は介入するが、原則はあくまでも実勢に任ぜるとの態度で臨んでおり、このところ相当額市場介入を余儀なくされている。黒字減らし対策としては、石油、ウラン、畜産飼料等備蓄輸入中心に七億ドル程度の緊急輸入対策を講じることにしているが、さらに上乗せを図る方向で鋭意検討中である。円高倒産防止については、長期不況企業経営が苦しい上に円高の追い打ちがかけられるかっこうになっておるので、輸出関連中小企業重点に、産地別業種別実情調査を進めており、補正に組んだ中小企業等特別対策費の活用を初め、融資対策中心に万全の対策を講じる決意である。為替差益還元策として、原油については電気、ガス等料金据え置きを初め、日常生活用品では、たばこ、ウイスキー等価格引き下げを行ったほか、輸入流通業界の代表に対し、円高利益還元方法について検討と協力を要請している。さらに、牛肉については、輸入牛肉取扱店をふやす一方、差益流通段階のみに吸収されることのないよう、調整金引き上げを一行ったが、今後とも国内生産農家消費者双方の立場を勘案して措置していく考えである」旨の答弁がありました。  外交問題の質疑として、「日中共同声明以来五年を経過し、この間、貿易を初め、人事、文化交流等も順次拡大しており、懸案の平和友好条約についても国民世論締結を希望している。中国の華国鋒体制も固まろうとしているので、総理条約締結の決断をすべきではないか」との質疑があり、これに対し福田総理より、「日中平和条約はなるべく早く締結したいと考えているが、将来の長きにわたって真の友好親善の実を上げるためには、日中双方が納得し、満足できるものでなくてはならないと考えており、目下静かにではあるが、環境づくりを進めている。覇権条項等内容に触れる答弁は好ましい環境づくりの障害になると判断しているので差し控えたい。ただ、締結のための正式会談が始まれば時間はかからないと思うし、そうすることが日中の将来のために大切なことだと考えている」という旨の答弁がございました。  そのほか、ハイジャック対策に関する質疑に対し、関係大臣より、「今回の超法規的措置人命救助の上からやむを得ないものであったが、今後はハイジャック防止国際条約、未加盟国加盟促進ダブルチェック導入刑罰法規改正等措置を講じ、発生の未然防止に万全の措置をとる決意である」旨の答弁がありました。  なお、質疑はその他広範多岐にわたって行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。  かくして、本日をもってその質疑を終局し、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して山崎委員反対自由民主党自由国民会議を代表して宮田委員賛成日本共産党を代表して佐藤委員反対、公明党を代表して矢原委員賛成、民社党を代表して栗林委員賛成、新自由クラブを代表して柿沢委員賛成の旨、それぞれ意見を述べられました。  討論を終局し、採決の結果、昭和五十二年度補正予算三案は、いずれも多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  以上御報告を申し上げます。(拍手
  9. 安井謙

    議長安井謙君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次発言を許します。山崎昇君。    〔山崎昇登壇拍手
  10. 山崎昇

    山崎昇君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度補正予算三案に対し、反対討論を行うものであります。  今日の経済危機は、世界資本主義全体の矛盾の深まりと拡大背景としていますが、わが国の場合は、特に戦後経済高度成長政策矛盾の累積によるものであり、インフレ、物価高、富と所得格差拡大、独占、寡占体制強化が急速に進み、経済の二重構造供給力の過剰が生み出され、現在の構造的不況となっているのであり、加えて、自民党政府不況対策の失敗によって、ますます深刻の度を増しているのであります。この結果、製品は売れず、稼働率は低下し、百万人の顕在失業者、パート、臨時工など潜在失業者を加えると、まさに五百万に近い失業者が存在し、深刻な雇用不安の状況にあります。勤労者実質所得の切り下げ、個人消費停滞によって巨額の需給のアンバランスとなり、名目の経済成長率の上昇があっても、経済実態国民生活実態は一向に改善の兆しは見られないのであります。しかも、輸出の増大により、国際収支の大幅な黒字は異常な円高を招き、それがまた、中小企業の大倒産につながるという悪循環を引き起こしているのであります。  このような経済危機の中における国の財政役割りはきわめて重大であります。われわれが当初予算においても抜本的な政策転換を主張してきたように、その重点は、勤労者大幅減税年金等社会福祉充実雇用安定のための諸制度の確立、農林漁業の自立と食糧自給度の向上、中小企業倒産防止対策不公平税制改革による財源の確保、地方財政強化に置きつつ、財政健全化を図るとともに、最終需要拡大し、景気回復を実現して、経済安定的発展を達成すべきであったのであります。  しかしながら、福田内閣は、年度当初から経済見通しとその対策を誤り、事態をさらに悪化させてきているのであります。現在の経済構造変化に対応した緊急かつ効果的な政策をとらない限り、日本経済の立て直しはできず、勤労国民生活防衛を果たすことは不可能であります。経済財政の総合的、中期的計画を明らかにし、高度成長企業優先の各種の制度を抜本的に改革するために、今回の補正予算をその布石とすべきでありますが、その展望を見出すことはできないのであります。  以下、具体的に反対理由を指摘したいと思います。  その第一は、景気不況対策中心編成をしながら、多くの欠陥を持っていることであります。  二兆円の公共事業規模と言いながら、その半分は住宅金融公庫による融資を媒介にした民間住宅建設に依存する内容であり、この事態を迎えての財政主導景気対策あり方としては十分と言われないのであります。構造不況業種対策が重要だと主張しながら、この補正予算では、わずか五億円を計上しているにすぎません。政府昭和五十三年度中に構造不況対策を終了したいと強調していますが、その対策は、民間主導弱者切り捨ての方針で対処するものと断ぜざるを得ません。それは、日に日に経済危機に直面している中小企業対策費がわずか百億円にとどまっている一事をもっても明白であります。金利引き下げ企業金利負担を一兆二千億円も軽減しながら、一向に設備投資は盛り上がらないのであり、また、企業に対して何らの雇用保障も取りつけられないのであって、これでは、企業、とりわけ大企業借金軽減対策であって、勤労国民生活とは無縁と言っても過言ではありません。  第二に、公共投資拡大内容に関連してでありますが、基本的発想転換が見られないことであります。  公共投資重点生活基盤整備中心に、中でも住宅建設中心に移行していくことは、時代の要請で避けられません。しかも、その住宅建設は、良質、大量、低家賃の公共賃貸住宅建設でなければならないのにもかかわらず、今回の措置は、個人持ち家中心自力建設促進であり、福祉型住宅政策に逆行するものであり、公団住宅建設の削減は納得できないのであります。しかも、住宅政策には土地対策がいまほど必要なときはありません。土地政策を確立し、地方自治体の住宅建設をも重視した公共住宅建設基礎にし、その上に個人住宅融資制度拡大していくことが住宅政策基本でありますが、その芽を今回の補正予算に見出すことはできないのであります。  第三は、国民生活圧迫内容となっていることであります。  政管健保の保険料値上げ国鉄運賃値上げを前提にした予算となっておりますが、低所得層に重い負担となる公共料金値上げは、生活水準格差拡大する不公平な政策となっております。先日発表された政府国民生活白書でさえも、実質家計所得伸び率は、一般世帯の一〇・九%に比べて、農家は〇・八%、サラリーマン世帯では〇・一%の格差を生じており、さきの預貯金金利引き下げによる目減り額四千百億円の損失といい、弱者ほど被害甚大なのであります。この予算では、福祉年金引き上げ見送りなど、社会保障充実は捨て去られようとしております。また、円高による為替差益によって石油業界の受ける五千億円の利益消費者に還元されるという保証もありません。社会保障社会福祉充実国内需要最終需要喚起となり、これこそ不況対策基本となるのでありますが、企業優先資本第一の政策を推進している福田内閣には、政策転換を期待することはできません。  第四は、わが党提案政策に真剣に耳を傾けず、それを受け入れようとしないことであります。  雇用対策として雇用創出プランを提示することが雇用不安をなくすことであり、中小企業倒産防止基金制度を創設して末端の下請中小零細企業を救済すべきでありますが、そのような意欲は全く見られません。また、財源対策としての不公平税制是正も行われておりません。医師優遇税制は、いまだ是正の目途もなく、来年度改正についても動揺していることでは、国民に増税を要求することなど絶対に許されないのであります。ましてや、逆進的負担の最たるものと言われる一般消費税導入を策すなどは、国民収奪政策以外の何物でもありません。  第五は、財政民主主義に関連しての予算案それ自体の問題であります。  今回の財源対策として、日本輸出入銀行、開発銀行北海道東北開発公庫貸し倒れ準備金一般会計への繰り入れについて当該機関補正予算を提出していないことは、きわめて遺憾であります。今回のやり方は、わが党を初めとした野党が二年前に提示したものであり、それを政府が採用したにすぎませんが、財政民主主義の観点から言って、国会予算審議あり方として、政府独断的処理を厳しく非難するものであります。大蔵大臣から予算委員会において遺憾の意の表明がありましたが、当然であり、今後厳に慎むべきことを指摘しておきます。  以上、今補正予算案反対する主な理由を述べましたが、本補正予算案わが国経済財政抜本的改革に着手するための重要な一石とすべきであるにもかかわらず、その認識が欠落していることを重ねて指摘して、私の反対討論を終わります。(拍手)     —————————————
  11. 安井謙

    議長安井謙君) 中村太郎君。    〔中村太郎登壇拍手
  12. 中村太郎

    中村太郎君 私は、自由民主党自由国民会議を代表し、昭和五十二年度補正予算三案に対し、賛成討論を行います。  今日の最優先政治課題経済運営の問題であります。すなわち、景気の着実な回復を図り、国民生活、特に雇用の安定を確保するとともに、企業倒産防止物価の抑制などの諸問題を解決することが政治に求められております。  わが国経済の現況について見ますると、本年四月以降、わが国経済は緩やかな拡大基調にあるとはいえ、その要因は輸出財政に大きく依存しており、肝心の民間企業生産活動はいまなお四十八年水準に達せず、加えて、いわゆる構造不況業種の足かせによって、設備投資を初めとする民間活動の盛り上がりを欠いているのが実情であります。このため、企業倒産は昨年来依然として後を絶たず、雇用情勢もはかばかしい改善を見ず、産業間格差拡大するなど、経済の先行きに不安を醸し出していることは否定できません。本年度当初以来、政府公共事業前倒し執行等対策を講じてまいりましたが、かかる経済情勢を考慮し、九月、さらに総合経済対策を決定したことは、われわれ自民党の従来からの主張であり、まことに時宜を得たものと言わなければなりません。  今回の対策は、財政面においては追加事業規模にして総額二兆円に及ぶものであり、国内需要喚起を図るため、需要拡大効果が大きく、かつ、国民生活充実基礎となる公共事業及び住宅建設追加することとしており、また、金融面では、三月、四月と二度にわたる公定歩合の引き下げに続き、さらに九月にも〇・七五%の引き下げを行うことによって、民間経済の活力を強め、企業経営雇用改善に資するなど、数多くの方策がとられているのであります。  以上の財政金融措置のほか、構造対策雇用対策等各般の差し迫った措置が実施されることとなっております。本補正予算案は、以上の総合経済対策を踏まえ編成されております。  以下、補正予算案内容に即し、賛成理由を申し述べます。  まず第一は、今回の補正予算によって、六・七彩の経済成長がより確実なものとなり、安定成長への基礎固めがつくられることであります。  今回の財政面措置等経済に及ぼす需要創出効果を控え目に見積もっても、五十二年度中に一兆五千億円、一年経過後の五十三年度前半までに約三兆円に達するものと見込まれるのであります。  第二は、財政による公共投資追加にかかわらず、公債依存度三〇%の限度が維持され、財政節度が貫かれていることであり、この点は高く評価するところであります。  世上、経済回復を重視するの余り、三〇%以上の国債発行を当然視する向きもありますが、現在の公債依存度三割水準は、戦前、戦後を通じ、わが国はもちろん、諸外国にも例を見ない異常なものであり、このような異常な事態から速やかに脱却し、財政に対する国民の信頼を確保することが必要であります。  第三は、五十二年度当初予算で講ぜられた特別減税に伴う地方交付税減額に対し完全な補てんが行われるなど、地方財政への配慮が講ぜられているということであります。  本補正では、所得税特別減税による収入見込み額減少に伴い、地方交付税交付金九百六十億円が減額されるわけでありますが、地方財政状況を考慮し、資金運用部資金を活用して、五十二年度当初予算どおり地方交付税総額を確保しております。しかも、この借入金の償還について、国が昭和五十五年以降八年間の各年度償還額に見合う臨時地方交付金一般会計から地方交付税特別会計に繰り入れることとしておるのであります。  このほか、本補正予算案には、公務員給与引き上げ措置を初め、構造不況円高により影響を受ける体質の弱い中小企業に対し特別対策費百五億円の計上を行うなど、緊急かつ各般の必要な経費が計上されております。  以上、五十二年度補正予算案について申し述べましたが、一方、私は、政府に今後の経済政策、なかんずく物価の安定について強く要望いたすものであります。  物価の安定は、国民生活と福祉充実の基盤であります。卸売物価は、主要先進国の中で最も落ちついた推移を示しております。しかし、反面、消費者物価は、安定基調を強めつつあるものの、依然として高い水準にとどまっております。政府が公約した五十二年度物価上昇率七彩台への抑制を必ず実現されんことを期待するものであります。  最後に、私は、今回の補正予算案が与党である自由民主党自由国民会議のほか、公明党、民社党及び新自由クラブの三野党の賛同を得たことを深く喜ぶものであります。(拍手)今後とも、国民生活擁護の観点から一致し得る共通点を見出し、協調と連帯をもって政治を進めることこそ国会国民の期待に沿うゆえんでありますことを強く訴えまして、補正予算三案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)     —————————————
  13. 安井謙

    議長安井謙君) 内藤功君。    〔内藤功君登壇拍手
  14. 内藤功

    ○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、本補正予算三案に反対討論を行うものであります。  国民がこの臨時国会に求めているの屡深刻な不況とインフレの緊急な克服であり、さらに、ファントム墜落事件の根源にある安保、基地問題金大中事件を初めとする日韓問題の真相の徹底究明であります。  国民生活は、依然として二けたに近い物価高、長引く不況下で増加の一途をたどる倒産と失業など、戦後最も重大な危機の中にあります。しかも、石油、商社などが為替差益で大もうけをし、自動車、家電などの一部大企業が大きな利益で潤っている反面で、円の急騰が輸出中小企業に新しい深刻な打撃を与え、不況の二重構造を一層強めておるのであります。財政の破綻、食糧、エネルギー危機もまた深刻であります。このような事態は、歴代自民党政府経済政策が生み出した、まさに構造的な危機であると言わなければなりません。(拍手)  しかるに、本補正予算案を含む政府総合経済対策は、財界首脳から合格点をつけられたことによっても明らかなように、相も変わらず従来型の大企業優先景気対策を貫いております。四次にわたる公定歩合の引き下げで、金利負担の軽減はどうなっておるか。本年度資本金一億円以上の会社で見ますと、実に八千五百億円であります。逆に、預貯金金利の引き下げによる国民の利息減は四千百億円に達しております。ここに、大企業利益優先し、国民の暮らしを破壊して顧みない今回の景気対策基本的性格が端的に示されているのであります。  わが党は、本年六月、「日本経済への提言」を発表いたしました。国民生活の安定と向上を基本として、今日のわが国経済構造危機を打開し、日本経済を民主的に再建する方向を明らかにしました。そして、これに基づきまして、九月三十日、生活密着型の公共投資促進、金利対策物価安定緊急対策、不況・雇用対策など十項目にわたる「当面の景気対策および補正予算にかんする日本共産党の提案」を提起して、政府を追及いたしました。しかるに、福田総理は、わが党の質問に対し、これまでの経済財政政策について反省するどころか、依然として歴代自民党政府の大企業本位の政策を継続する態度を変えようとしておりません。  また、政府は、わが党の追及に対し、ファントム事件では、国民の生命と財産に重大なる被害を及ぼしているにもかかわらず、万全の措置をとっているなどという態度を固執して、安保条約に基づく対米追随の態度を変えようとしておりません。さらに、わが国の主権侵害が明らかである金大中事件につきましても、捜査の進展を事実上不可能としておる政治決着の見直しをあくまで拒み、米日韓軍事同盟を軸とした日韓癒着をあくまで続けようとしております。わが党は、政府のこうした態度を断じて容認することができません。(拍手)  以下、本補正予算案反対する理由を申し述べます。  第一点は、本案が依然として大企業優先の大型公共投資重点とした従来型景気対策の継続にほかならないということであります。  政府は、財投資金なども投入をして、高速道路、新幹線などの大型プロジェクトを一層拡大しております。しかし、その反面、中学浪人一万人と言われておりますこの深刻な事態にもかかわらず、高校建設予算は計上せず、住宅金融公庫融資をわずかに拡大してはおりますものの、住宅建設基本となるべき公共住宅建設計画を三万三千戸も削減をして、低所得者層の方々の切実な要求を切り捨てておるのであります。しかも、公団家賃についてのわが党の追及に対し、引き上げの方は表明しましたが、引き下げの方は意思の一片も示さず、関連公共施設費国庫負担強化も拒否をして、安くて住みよい公共住宅という、この建設を事実上放棄する態度をとっておるのであります。  第二点は、今日深刻な危機にある国民生活を見殺し同然にしておるという問題であります。  国鉄運賃の法定制緩和、再引き上げと、健保料金の労働者のボーナスからの徴収や、初診時、入院時の患者一部負担引き上げは、低福祉のもとでの高負担を一層強めるばかりか、物価をますます高騰させる契機になるものであることは言うまでもありません。中小企業に対するわずかばかりの金融措置も、たとえば既往金利の引き下げは、不況業種の特別に高金利の部分に限定をした、焼け石に水とも言うべきもので、官公需発注の拡大や下請企業保護あるいは構造不況業種対策と言っておりますけれども、これまたきわめて不十分なものと言わなければなりません。雇用の問題も労働者の一致した強い要求であります。労働四団体と野党五党の一致した法案要綱がつくられておりますにかかわらず今日まで引き延ばしてきたのは、ひとり自由民主党の責任にほかならず、まことに遺憾であります。この際、政府主導の物価引き上げは一切行わず、老齢福祉年金の一万八千円への引き上げ、失業給付の改善中小企業の仕事の拡大円高対策、二百海里に伴う減船補償対策など、国民生活と経営を守る施策を、不況の今日の実情に合わして進めるべきであります。  第三点は、財政危機に一層拍車をかけるという点であります。  政府は、巨額の、しかも不要不急分も含めた防衛関係費、さらにYX開発補助金など、こういう支出の見直しをすべきだというわれわれの主張にもかかわらず、これを行っておりません。大企業、大資産家優遇の不公平税制是正をする意欲も見られません。またしても千四百億円もの国債を増発をし、国債依存率は二九・九四%に引き上げたのであります。これが一層インフレとわが国財政破綻を強めるものであることは、ここ数年のわが国事態が明白にこれを示しておるのであります。  以上のような本補正予算案が、当初予算と相まって、不況対策どころか、国民生活の破壊、中小企業の経営危機に一層拍車をかけ、不況とインフレの克服を一層困難とする、そういう性格のものであると言わなければなりません。  以上のように、本補正予算案は、国民生活の防衛と国の政治の革新を願うすべての勢力が当然反対しなければならないものであることは明らかであります。(拍手)私は、いまこそ国民本位の経済政策の方向に大胆な転換を図るべきこと、そのことこそがわが国経済危機を克服し、新しい再建へ踏み出す根本策であることを重ねて強調いたしまして、反対討論を終わるものであります。(拍手)     —————————————
  15. 安井謙

    議長安井謙君) 太田淳夫君。    〔太田淳夫君登壇拍手
  16. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました昭和五十二年度補正予算三案に対し、賛成の立場から討論を行うものであります。(拍手)  現下のきわめて困難な経済情勢の克服は一刻の猶予も許されない深刻な事態であり、国民生活を守る緊急避難的な意味から、補正予算三案にこの立場をとったものであります。  現在の深刻な経済情勢によって、国民生活中小企業など、あらゆる面にわたって、ひずみ、きしみが生じ、社会的に立場の弱い人々に対するしわ寄せ、切り捨てがますます増幅されてきております。当面するわが国経済は、本年に入って、生産、出荷の減少在庫の増加に見られるように、企業活動は沈滞し切っております。中小企業倒産件数は、二十三カ月連続して一千件を上回り、特に本年三月に入ってから六月までの四カ月間は一千五百件を突破するなど、景気回復どころか、さらに深刻さを増しております。構造不況業種については、先行きの光明を見出せないまま、ずるずると経営危機に追い込まれており、その結果、高い失業率の持続、有効求人倍率の月を追っての低下など、国民は、いつわが身に生ずるかもしれない不安から、生活水準を切り詰めることで何とか毎日を切り抜けているのが真の実態であります。中小企業は、大企業、親企業の不況克服という名の減量経営政策によって、手形サイトの長期化など、そのしわ寄せを一気にかぶり、さらに最近の円高によって輸出の道が閉ざされ、深刻な経営難にあえいでいるのが今日の姿であります。  わが党は早期から今日の事態に思いをいたし、六月二十四日に、政府に対し、補正予算の速やかな編成を求める見解を発表し、その後、政府へ強く申し入れを行ってまいりました。しかるに、政府は、八月の景気対策発表の段階においてさえ補正予算編成をあいまいにし、結局、無為無策のまま今日に至ったことは、まことに遺憾きわまりないと言わざるを得ません。政府の後手後手の対策が深刻な経済をより悪化に至らしめた、その責任はきわめて大きいと言うべきであります。しかし、今日の国民経済社会の現実に立ってみたとき、日本経済を一刻も早く景気回復の軌道に乗せ、雇用不安を解消し、生活不安を取り除いていくためにも、本補正予算案は不満足の点が多々あるものの、次善の策として、政府案を成立させることが国民の期待に沿うものであると判断したのであります。(拍手)また、衆議院段階における公明党・国民会議、民社党、新自由クラブの共同要求による住宅金融公庫の貸し出しについて低所得者に対する無抽せんの優遇措置等についての政府自民党との確約は、マイホームの夢が持てなかった人々への一歩前進の措置として評価するものであります。(拍手)  しかし、この際明確にしておきたいのは、これによって福田内閣経済政策の万般を認め、かつ、今回の総合経済政策を肯定するものでは断じてないということであります。むしろ、この機会に、福田内閣の諸政策に対し、反省と政策転換をより一層強く求めたいのであります。  質疑を通じて明確にしたように、経済見通しの誤算、時期おくれの景気対策から今日の円高の発生をもたらしたこと、さらに、わが党が数年前から主張している、個人消費喚起を軸にした景気浮揚策を無視したこと、サラリーマン金融の指摘にも見られるように、大企業金利負担は軽減しても、庶民金融を初めとする大衆のためのきめ細かな諸政策が欠落していることなど、挙げれば枚挙にいとまがないのであります。福田内閣経済政策に対する国民の不信と先行きに対する不安は一層高まっていると言わざるを得ません。以下、わが党の本予算賛成する理由を申し述べます。  第一は、さきに申し述べたとおり、現下の深刻な経済情勢を克服するためには、補正予算編成は欠くことのできない措置であり、早期の成立が緊要の課題であるからであります。  第二は、今回補正における住宅金融公庫の貸出枠十万戸追加総合経済対策の目玉でありますが、住宅金融公庫融資において、特に今年度における低所得者に優遇措置を講じ、来年度からの住宅金融について貸付総枠並びに貸付限度額の増額等を含め、金利負担実質的な引き下げを積極的に推進することを政府が確約したことであります。  第三に、今回の補正予算案は、これまでのわが党を初めとする野党側の主張を幾つか取り入れていることであります。その一つは、政府関係機関貸し倒れ準備金を取り崩し、産投会計を経て一般会計への繰り入れを行っていること。その二つは、所得税の減税実施による所得税の減収に伴う地方交付税減額分を財政融資で補てんし、将来臨時地方特例交付金とする措置をとったこと等であります。  わが党は、政府関係機関貸し倒れ準備金の取り崩しについては、第八十国会でも提唱したほか、昭和五十年度予算の参議院における修正案においては共同提案者として同様の主張をしてまいりましたので、今回の措置において、予算計上の仕方に工夫の余地と、前もっての話し合いの必要性があるものの、政府の決断に一定の評価をするにやぶさかではありません。また、地方交付税減額分の補てん措置については地方交付税率の引き上げの中で解決すべきが本旨であることは言うをまたないのでありますが、補正段階の措置としては、臨時所得税減税分を地方交付税にはね返さないことで、やむを得なかったと思うのであります。今日、地方財政の窮状はまことに厳しい状況にありますので、来年度での地方交付税率の引き上げを強く主張するものであります。  以上が、本補正予算三案に賛成する理由であります。  最後に、われわれがこの際明確にしておきたいことは、この補正予算三案に賛成することが、国鉄運賃改正案や、主任手当を具体化するいわゆる教員給与改善に関する法律案等、政府提出の法律案のすべてを認めることにはならないということであります。これら法律案に対する態度補正予算案と立て分けることをここに明確にいたすものであります。  さらに、経済情勢の推移の中で、必要な場合には速やかに第二次補正予算編成し、景気対策を実施すべきであること、中・長期の経済見通し財政計画改定し、国民の先行き不安感を払拭すべきことを強く要求し、賛成討論を終わります。(拍手)     —————————————
  17. 安井謙

    議長安井謙君) 井上計君。    〔井上計君登壇拍手
  18. 井上計

    ○井上計君 私は、民社党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十二年度補正予算三案に対し、一括して賛成討論を行います。(拍手)  今回の政府補正予算案は、内容的にはまだまだ十分ではありません。しかし、現在わが国政治の最大の課題は、不況の克服と、速やかな景気回復であります。昭和四十九年以降四年間にわたって続いている日本経済の長期停滞はまことに深刻なものがあり、このままで推移するならば最悪の事態の発生さえ憂慮されております。企業倒産は月を追うごとに激増し、潜在失業者を加えると、職を失い生活に困っている人は実に三百万人を超えると言われております。さらに、構造不況業種の従事者を初め、中小企業者の多くは経営の自信を失い、労働者は失業の不安に日夜おびえておるのであります。このような深刻な事態を直視するとき、一刻も早くその対策を実行に移すことが緊要であることは当然であり、同時に、日夜苦悩を続けている数百万人の労働者、中小企業者の経営と雇用の不安を少しでもやわらげるためには、まだまだ多くの問題はありますけれども、あえてこの補正予算案賛成するものであります。  さて、この際、福田総理を初め各大臣に、改めて過去の政策についての厳しい反省を求めたいと思います。現在国民が抱いている切なる願いに真剣に耳を傾け、今後に対処すべきであることを強く要求するものであります。  まず、その第一は、補正予算成立後直ちに公共事業等の諸施策を実行に移し、年度内には完全にこれを消化して、末端までの需要創出効果を図ることであります。また、このためには、窓口業務の迅速化と中小企業の官公需確保については格段の配慮をいたすことを特に要望いたすものであります。  要求の第二点は、現在最大の課題である雇用安定対策であります。わが党が他党と協力して提案する特定業種離職者臨時特例法を補正予算と一体のものと位置づけ、万難を排して今国会で必ず成立させることであります。同時に、構造不況業種を初め、中小企業の関連倒産防止する制度を速やかに創設するとともに、思い切った財政援助を行い、政府金融機関の貸し出し条件の拡大改善、既往貸し出し分を含めて大幅な金利の引き下げを実行することを強く要望をいたすものであります。現在多くの企業の経営は風前のともしびという状態にあるとき、いたずらに従来の慣例にこだわり過ぎてタイミングを失することのないよう、篤と善処されることを警告いたすものであります。  さらに、現在緊急な課題として円高対策があります。一ドル二百五十円台の円高相場が定着しつつあるとき、不況と円高の二重の挾撃を受けて中小企業者の苦しみは想像を絶するものがあります。特に零細な輸出企業の多い洋食器、陶磁器、繊維、雑貨等の業者は致命的な打撃を受けて、今後の新規成約は全く絶望的と言われております。これらの輸出業者は、過去数年来、政府の指導のもとに、国際競争力を身につけるため血のにじむような努力を続け、合理化、構造改善を実施してまいりました。当時、国際競争力の対応ラインは二百九十円前後という指導がされておったのであります。ところが、本年初め二百九十三円であった円相場は、わずか十カ月足らずのうちに一六%という大幅な実質切り上げとなってまいりました。その原因政府の無為無策と失政にあったことは間違いのない事実であります。政府は、この責任を痛感して、これら影響を受ける業者に対しては速やかな救済措置を講じなければなりません。政府がこの十月から新設をした円高対策緊急融資制度では万全の措置とは言い得ないのであります。なぜならば、この措置によって既契約分の円高差損については一時的にしのぐことができますけれども、しかし、今後の新規の輸出成約は全く期待できないのであります。現在の経済情勢から見れば、二百七十円レートがほぼ適正と言われております。とするならば、二百七十円と実勢レートの差額分については長期低利の融資制度を新設をして、中小輸出企業の安定を図るべきでありましよう。  次に、この機会に、目前に迫っておる明年度予算編成と今後の政治あり方等について提言をいたしたいと思います。  政府は、景気回復に対する財政役割りの重大なことは認識をしておりながら、依然として国債発行率三〇%以内にこだわり過ぎておるようであります。わが党の主張している二、三年ぐらいは、まず景気回復をして、税収の増加を図り、改めてその上で中期経済計画を見直すことを提言をいたします。また、財源不足を理由として、一般消費税等の新税の創設を企図いたしておるがごときは、余りにも認識不足と言わざるを得ないのであります。万一これらの新税を創設した場合は、さらに消費は減退をし、不況は一層深刻となるばかりでなく、物価高の要因となることは火を見るより明らかであります。したがって、一般消費税の創設はもちろんのこと、国民生活をこれ以上圧迫するような自動車税等、すべての増税には断固反対をいたすことをこの際表明いたしておきます。  さて、わが国政治には、はじめに働く人が損をしている施策がまだまだ多く残されております。このために国民の間に政治への不平不満がますます高まっておることを考えていただきたいと思います。長い間懸命に努力をして日本経済の発展を築き上げてきた多くの人たちの不満を早く解消しなければ、わが国の将来は坂道を転げ落ちるような破滅の一途をたどることが憂慮されるのであります。このためにも、不公平な税制の速やかな是正、行政改革の断行、官公庁、地方自治体の冗費の節約、給与、待遇等の官民格差是正を実行して、財源を確保するとともに、国民の奉仕者たる公務員の使命感の確立を図り、政府がまずみずから範をたれ、努力することが急務であります。  さらに、エネルギーを初め、物を大切にすること、人を大切にすることを国民に強く訴える施策を行わなくてはなりません。わが国は資源の乏しい国であることを承知しながらも、残念ながら、物を粗末にし、むだにしている国民は他にないとさえ言われております。物を粗末にする風潮は、自分さえよければというエゴまる出しの行動につながり、ついには人命さえ粗末にするような社会になりつつあるではありませんか。国の安全と平和を守るための施策、産業の振興、発展のための施設、国民生活安定に必要な事業等に対しても行き過ぎた反対あるいは地域エゴが横行していることは、まことに悲しむべき情勢であります。政府は、これらの誤った行動をいたしている人たちに対し一層の啓蒙と指導を行い、理解を求める手段を実施すべきであると考えます。  また、数年来、相次いで行われている国鉄、郵便等の公労協の違法ストは、国民生活に甚大な影響を及ぼし、大きな損害を与えているのであります。(拍手)この違法ストに対する政府の軟弱な態度国民の不平を増幅させ、政治不信をさらに高めていることを反省すべきでありましょう。法秩序を厳正に守ることは民主主義の基本であります。政府は、このような誤った行動が今後は絶対に起きることのないように毅然たる政治姿勢を貫き、まじめに働き、まじめに努力している人が損をすることのないよう、対策を確立すべきであります。  最後に、事業所総数五百万、そこに働く人三千万人と言われる中小企業の声を代弁し、要望をいたすものであります。  中小企業の振興は、国民経済の健全な発展のかぎであることは申すまでもありません。したがって、そのためには、金融、税制等を初め、中小企業政策改善改革を抜本的に行うべきであります。長い間政治の谷間に置かれている中小企業を早く日の当たる場所に引き上げ政治を行うことを切に要望し、願うものであります。そのためにも、急を要することを二点提言をいたします。  その一つは、従来固定化している国の一般会計予算の中に占める中小企業対策費がわずか総予算の千分の六という低率にあることを反省して、明年度予算編成に当たっては、これを大幅に増額すべきであります。さらにいま一点、政府は、中小企業者の信頼をかち得るために、中小企業専任大臣を置くことであります。この二点の実施のために、福田総理の勇断に期待をいたしております中小企業者が非常に多いということを付言しておくものであります。  以上、わが党の要求が今後の政府の施策に十分に生かされ、国民の期待にこたえられるよう強く要求して、私の賛成討論といたします。(拍手
  19. 安井謙

    議長安井謙君) これにて討論は終局いたしました。  これより三案を一括して採決いたします。  三案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  20. 安井謙

    議長安井謙君) 過半数と認めます。よって、三案は可決されました。(拍手)  本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十六分散会