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1977-10-07 第82回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十月七日(金曜日)    午前十時三分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   昭和五十二年十月七日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ―――――・―――――
  2. 安井謙

    ○議長(安井謙君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る三日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。吉田忠三郎君。    〔吉田忠三郎登壇拍手
  3. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 私は、日本社会党を代表して、政府演説に対し質問し、当面する諸問題について国民立場から明らかにしていただきたいと存ずるものであります。  まず、今回のハイジャック事件であります。  ハイジャックは、平和で善良な一般乗客を人質とし、人命に脅威を与える卑劣な暴力行為であります。絶対に許されるものではないと考えます。政府は今回緊急措置としてとった対応は、何よりも人命尊重、何よりも人命最優先とする方針で、私は支持をするものであります。しかし、この種の犯罪行為を繰り返させないために、毅然たる方針再発防止対策をとらなければならないと考えます。総理は、これが再発防止に万全を期すと言明されたが、暗中模索ではないかと私は感ずるのであります。そうでないとするならば、再発のおそれ全くなしという具体的な対策と、その骨格、そして今回の不幸な事件から何を教訓として生かすのか、具体的に示さなければならないはずであります。この点、総理、いかがなものでしょうか、御所見を賜りたいと思うのであります。  私は、ここで提案を申し上げます。この種の事件のために国際条約をさらに有効なものに強化すること。第二は、すべての空港各国共通の厳格なハイジャック防止措置を義務づけ、これを国際的な監視機関が常時点検する体制を確立すること。政府は、そのために国際協力を図る努力を一層すべきであります。また、この際、精密で有効なハイジャック防止装置を開発し、空港だけではなく、空港バス、航空機にも設置するなどの措置をとるべきであると考えるものであります。  次に、この問題に関して法務大臣辞任をされました。いかなる理由か。また、辞任を認めた総理は、どのような責任を認め、辞表を受理したか。犯人の身柄、身のしろ金の引き渡し問題での内閣不統一的な批判の問題、相次ぐ航空事故、日航、米軍機墜落等政府安全対策を含めて答弁をこの際私は求めるものであります。  さて、一連の政府演説に耳を傾けてまいりますと、日本経済なり国民生活がどのような方向へかじをとられていこうとしているか、のみ込んだ者は私は余りないのではないかと思うのであります。私は、暗くさえぎられた国民の視野を開くものではなかった、いわば福田総理大臣演説は視界不透明の福田演説だと言って過言でない、かように判定をするものであります。  また、演説では、国際環境の変化に対応する国民各階層の血のにじむような努力に言及し、その困難と苦悩に満ちた新しい時代への対応をやり遂げるか否かに日本の将来がかかっていると述べております。根拠のないバラ色の幻想を国民に振りまくより、厳しくとも置かれている状況を正確に伝える指導者としての総理の姿勢は、高度経済成長時代総理とは違う率直さがあり、私は多とするものであります。だが、国民に対して施策への協力、耐乏を求める場合は、ある条件が存在し、その条件が満たされなければなりません。その一つは、政府自身が率先、大胆に政治行政見直しを実行することであり、一つは、不安のない落ちつきのある社会に至る政策プログラムをはっきり国民に示すことであります。この点、総理演説では国民を納得させてはおりません。  福田総理は、昨年十二月二十四日、この深刻な経済危機を立て直す全治三カ年論を唱え、強い意気込みで就任し、実際上、経済外交も直接指導する内閣体制をとってきたにもかかわらず、経済見通しとその対策誤り国民にも国際的にも約束した景気回復は大幅におくれておるのであります。不況長期化雇用の不安、物価政府見通し七彩以上に上昇いたすという状況の中で、勤労者はもとより、農漁民中小企業者生活は深刻な状態となっているのであります。福田内閣期待をしてきた財界人の中でさえ、最近の福田総理経済政策批判が起き始めているのであります。さらに、総理が異常な決意で直接取り組んだ行政機構改革の柱である省庁統廃合の構想が自民党官僚陣の猛反対に遭って挫折するという指導力の低下は、かつての内閣が経験した内閣末期状態と全く同じような地盤沈下状況を示すものだと思うのであります。恐らく、国民は同様の感じを抱き始めていると思います。福田総理は、この経済危機をどのように乗り切るつもりか、その自信を持ち合わせているのかどうか、当面の諸問題を通じて明らかにしていただきたいと思うのであります。  総理は、所信表明の中で、わが国社会が当面する最大の問題は景気雇用物価の問題であると指摘し、九月三日経済対策閣僚会議決定した総合的な経済対策中心施策を進め、国民の要望にこたえると言っておるのでありますが、今日の経済危機は、このような対策だけではとうてい乗り切れる性質のものではない深刻なものだと私は認識をいたすのであります。  すなわち、わが国経済は、輸出の好調による国際収支黒字、今年に入って三回の公定歩合引き下げによる金融緩和公共投資拡大にもかかわらず、三年半にわたる不況続きであります。このままでは自律的に景気回復しないという異常な経済危機にあるのであります。それは、わが国経済構造がこれまでとは全く違ったものになっているからであります。  まず、輸出拡大は直ちに景気回復につながらないということであります。鉄鋼、自動車、カラーテレビ等輸出の増大は、貿易収支黒字幅拡大し、外貨準備高をふやし、今日一ドル二百六十円台という円高状況をつくったのであります。そのために、国際競争力の弱い中小企業、その製品は、円高による採算悪化新規契約のストップにより輸出が減り、輸出関連中小企業円高不況に落ち込んでいるのであります。中小企業は、不況長期化という経済危機の中で、受注の減少、売り上げ不振、今日では四社に一社は赤字経営という経営赤字が定着をいたしているのであります。それに加えた小売部門への大手スーパーの進出、商社や親企業は不請再編や支援打ち切りを進めており、中小企業倒産件数月平均一千五百件を超えるという状態で、このままでは大型倒産が続出するのではないかという深刻な状況でございます。また、インフレが続く中で個人消費が伸びず、依然として二〇%近くの需給ギャップがあり、金融緩和しても民間設備投資につながらず、かえって企業手元資金をふやすことになり、その資金株式市場に流れて市場を過熱させ、インフレを促進しているのであります。  こうした中で雇用状況も悪化し、完全失業者は百十万人台をじりじり上昇をいたしておるのであります。中高年層雇用悪化は深刻なものになってきております。来年度の新卒者就職戦線にも大きな不安がのしかかっているのであります。このままでは、今後二年間もこのような不況状況が続くのではないかと言われておりまするが、国民不安感は増大するばかりであります。福田総理経済対策誤りに対し、総理はどのような責任を感じておられるのか、明らかにしていただきたいと思います。  次に、私は、この経済危機国民立場から打開するために、この際、政府のとるべき施策を明確にすべきだと考えております。そこで、以下の諸点につき福田総理の明快な答弁を私は求めます。  まず、福田総理は、景気対策として、事業規模にして総額二兆円に達する公共投資追加を行い、その中心として住宅建設を促進するための住宅金融公庫の貸し付け枠を十万戸追加をしているのでありますが、政府のねらいに反して、国民住宅建設対応できないのであります。問題は土地問題でございます。国民はのどから手が出るほどマイホームを望んでいるのでありますけれども、住宅が建てられない最大原因土地価格が高過ぎるためであります。政府は、土地問題の解決のために、土地重課税の緩和市街化調整区域見直し考えているようでございまするけれども、これは土地価格の高騰につながり、国民住宅を建てたくても建設できない状態をつくり出すことになるので、かりそめにも地価抑制の手をこの際緩めてはならないと私は考えるのであります。この際、土地値上がりの夢を断つ土地税制土地保有税土地譲渡益課税を強化するとともに、わが党が主張する住宅保障法の制定、住民と自治体が主導する土地利用計画整備土地公的利用の促進、用途に応じた地価形成などを図る総合的な土地政策を早急に確立すべきであると考えるものであります。  第二は、この不況を打開するためには、今日低迷している個人消費支出拡大することが何といたしましても必要であります。個人消費支出を一%伸ばすならば約一兆円の需要が起こるわけであります。この及ぼす波及効果はきわめて大きいのであります。したがいまして、二〇%という需給ギャップを解消するために、内需の拡大、特に消費需要拡大経済政策の最重点にすべきであろうと私は思うのであります。西ドイツアメリカも、こうした視点から経済政策を進めており、西ドイツでは、新年度予算千八百八十六億マルクの中で七十五億マルク、約九千億円の減税を打ち出しておるのであります。アメリカは、一昨年以来一毎年二百億ドルから三百億ドルの大幅な所得減税景気回復を図っているのであります。したがいまして、波及効果のある所得税減税によって需要拡大を図るべきだと思います。所得税減税は約二倍の消費需要を引き起こすことが政府経済データでも指摘をされておるのであります。この際、大幅な所得税減税を行うべきであると考えます。また、所得税減税と並行して、社会福祉や年金の充実を図るための措置が確立されるべきだと存じます。  以上のような大幅減税等による消費需要拡大導火線として、住宅学校建設、上下水道の整備など、生活関連公共事業に重点的に資金を注ぎ込み、その波及効果を広げるべきであると考えます。  第三は、雇用対策であります。  今日、完全失業者は百十万人台に上っており、雇用状況はますます悪化しております。ことに構造不況業種においてはきわめて深刻な状態でございます。雇用の安定は何といたしましても優先的に措置されるべきでありますが、やむを得ず離職する勤労者に対しては、職業訓練はもとより、離職中の生活を守る措置がとらるべきであります。雇用保険の一時金を基本手当五十日分にしたのは、今日的に私は政策誤りであると考え、これを改めて、これからは九十日に戻すことを早急に政府は行うべきだと考えております。  さらに、今日の深刻な雇用情勢対応して、失業の予防、再就職促進のための失業対策臨時措置法を制定すべきであると考えるものであります。  第四は、中小企業倒産防止のための緊急対策制度を確立することが当面の重要な課題であります。  中小企業倒産防止制度につきましては、わが党は数年前から倒産防止基金制度を提唱してまいりました。最近ようやく通産省がこれにならって、倒産防止共済保険制度提案しようとしているのでありますが、共済保険制度では、その制度効果を発揮するまでには相当の年数がかかります。今日の経済危機の中で倒産することを防止するには役立たないのであります。したがいまして、今日、月平均千五百件を超えるという深刻な倒産状況に対処するため、倒産防止基金制度として、取引先倒産による不渡り手形、親企業倒産による下請企業への波及など、関連倒産を防止するために、無利子長期の貸し出しを行う制度をとるべきであります。この倒産防止基金制度は、この臨時国会提案すべきであると私は考えるのでありますが、総理見解を求めます。  第五は、物価の問題であります。  不況の中での物価上昇不況下インフレーションは国民生活に深刻な影響を及ぼしているのであります。この物価を安定さぜるために、まず、円高にもかかわらず輸入製品国内価格は下がっていないのであります。この為替差益消費者に還元さぜる行政指導を早急に行うべきだと考えるのであります。これから冬に向かい、暖房のための灯油需要がふえるのでありますが、灯油価格を安定さぜるため、為替差益消費者への還元は、物価安定のための重要な施策として、これまた早急に措置すべきものであります。  さらに、消費者物価は、運賃値上げ消費者米価引き上げ等、相次ぐ公共料金値上げ上昇しているのであります。政府見通しの七%以内に消費者物価を抑えるという総理所信表明は、全く現状に沿わず、無責任きわまりないと言わざるを得ないのであります。政府提案を予定している国鉄の運賃の再値上げ健康保険料値上げは、この際中止すべきだと考えておるのであります。  以上、経済政策に関して五点の質問を申し上げましたが、これらの諸点につきましては、十分な国会での討議によって、国民的な立場から、政府のメンツにこだわることなく、虚心に野党の意見を取り入れ、修正するところは修正するという態度こそ、この段階での最も重要な点だと私は考えるのであります。総理にその考えがあるかどうか明らかにいたしていただきたいと思います。  同時に、政府と日銀は、総合経済対策の一環として、九月五日、公定歩合〇・七五%引き下げ決定し、戦後最低の四・二五%としたのでありまするが、これと連動させて、預貯金金利も一律に〇・五%引き下げを決め、郵政審議会政府の意向に基づき、大衆の零細な郵便貯金金利まで一様に引き下げることを決めたのであります。この措置によって企業金利負担を大幅に軽減されることになり、資本金一千万円以上の法人の借入金は約百兆円と言われておりまするから、この措置企業金利負担は七千五百億円の負担減となっているのであります。金利引き下げは今年に入って三回目の引き下げであり、これで実に二兆二千五百億という企業に対する恩恵を与えたことになるのではないでしょうか。  一方、預貯金者である国民の方はどうか。総理府の調査によれば、一世帯当たり平均三百七十万円の預金でありまするから、〇・五%で一万八千八百円の損失でございます。四月からの分を加えますと、実に五万六千五百円の損失を受けているのであります。六月末の国民個人貯金は約百八十五兆円と言われております。今年四月からの預金金利引き下げ幅は一・五%でありまするから、国民は二兆七千八百十億円の大損害を受けているのであります。つまり、企業に二兆二千五百億円の恩恵を与えるために、零細な郵便貯金を含めて国民から二兆七千億円も合法的に奪い取るというのが金利引き下げ構造なのであります。ある新聞に、老母の手から太った資本家が財布を強引にひったくっている漫画が描かれております。まさに金利引き下げ本質を痛烈に私はこの漫画は描いているものだと思います。飽くなき資本論理とはいえ、まさに血も涙もない政治の姿であります。福田総理の頭の中に、せめて、われわれが要求したように零細な郵便貯金利子だけは据え置くという温かい心が全く起こらなかったかどうか、伺いたいのであります。  私は、この際、国民の零細な貯金については、公定歩合の動きに関係なく一定の金利水準を保つ制度を確立すべきであると考えるものであります。  さらに、ただいままでに申し述べてまいりました諸問題解決には、当然、財源が必要でございます。しかし、財源は十分考えられるのであります。たとえば、医師税制見直し法人税減免措置各種引当金など、大企業だけが十二分に活用している税制を洗い直すことだけで、約五兆円の税収が見込まれるのであります。さらに、従来からわが党が主張して、政府も今回の補正予算で計上してきた輸出入銀行開発銀行及び北東公庫貸し倒れ引当金のみならず、その他の政府関係金融公庫貸し倒れ引き当てのための滞貸償却引当金がございます。これらを合わせて二千八百億円あるのであります。この際、総理見解を私は求めておきたいと存じます。  次に、外交問題でございますが、福田内閣外交は、経済問題以上に全く方向を失い、場当たり外交展望を失っていると言わざるを得ないのであります。外交内政のあらわれと言われておりまするから、福田内閣内政を見れば、方向展望なき外交は当然かもしれません。われわれが大きな懸念を持っているのは、福田内閣外交によって、より一層外国の信頼を失うのではないかという点であります。  福田総理は、さきのASEAN及び東南アジア諸国訪問福田外交の成果として大いに自己宣伝をしておりますが、出発前にわれわれが申し入れた重要な問題が今日問われていることを指摘せざるを得ないのであります。  総理は、八月十八日、マニラにおいて、東南アジア外交原則を盛り込んだ、いわゆる福田ドクトリンなるものを発表し、独特な精神論を組み入れたアジア外交を述べているのでありますが、国際間の信頼関係は、言葉による説教ではなく、誠意ある実証で示す以外にないと私は思うのであります。福田総理東南アジア歴訪約束をしたものは、ASEAN工業プロジェクト援助十億ドルを初め、インドネシアフィリピン等五カ国に対して、無償援助八十三億四千万円を含む総額四千七十八億四千万円の経済協力約束をいたし、そのほかに、マレーシアの海底ケーブルインドネシア石油備蓄計画等、盛りだくさんな協力検討約束をいたしてきたのであります。しかし、これらの問題が当事国期待どおり誠意をもって実行されるなら歓迎すべきことでありましょうが、その後の政府態度を見てみますと、過去の過ちと同じ轍を踏むのではないかと疑わざるを得ないのであります。帰国した福田総理は、自民党長老たちに対する報告で、ASEANからの十億ドルの援助要請検討約束しただけで、実際は新規援助八百二十五億円、交換文書約束したのが四百九十億円で、確定した援助は千三百十五億円であると述べているのであります。大蔵当局もこれらを受けて、約束した経済援助は一千億円程度だと言っているのでありますが、四千数十億円が帰国した途端に三分の一以下になるという論理に、東南アジア諸国が少しも疑問を抱かないでいるでありましょうか。心と心の触れ合いを説いた同じ人物なるがゆえに、一層不信感がつのるのではないかと私は思うのであります。  すでに八月二十日のインドネシア・タイムズの社説は、「さて、われわれはここにもう一つドクトリンを持つことになった。福田ドクトリンである。」「ASEAN自身ドクトリン友好協力そして内政不干渉原則に基づいて形成されたのは筋道の立ったことである。根本的な考えは、国内を見詰め、自衛することにある。福田ドクトリンは、疑いもなく、さまざまなドクトリンが覇権を争っている、ここ東南アジアで、日本利益を確保することを目指している。」と述べているのであります。財界の意を受けた福田総理の意図を鋭く東南アジアASEAN諸国は見抜いているのであります。  福田総理は、東南アジア歴訪約束をしてきた経済援助の正確な内容はいかなるものであるか、本国会を通じて日本国民の前に明らかにいたすとともに、いかなる計画でそれを実行しようとしているのか、また、訪問国の要人の外交辞令ではなく、日本外交本質を見詰めるそれぞれの国の国民の声をどう受けとめておられるのか、率直な見解を伺っておきたいのであります。  アメリカ外交の枠組みの中で、目先の利害に合わせて外交テクニックを弄していることが日本外交だとしてきたのが戦後自民党内閣の特徴でありますが、福田内閣もまたその忠実な踏襲者であることを東南アジア外交がさらに一層鮮明にしたということでございます。  対中国外交も、その原則で見ると明白であります。日中共同声明に基づいて日本中国の国交が回復してからすでに五年になっておるのであります。いまだに平和友好条約締結されていないのは、まことに奇異でございます。遺憾なことであると言いたいのであります。このすべての原因日本政府態度にあることは明らかであります。日中共同声明五周年記念を迎えたいまごろになって、鳩山外相中国外相との意見交換ということが伝えられているが、何の意見交換が必要なのか。中国側もしばしば表明しているように、決断するのは福田総理だけであって、鄧小平中国副主席は、この問題は一秒で済むことだ、その一秒は「調印」の二字と言っているとおりで、日中平和友好条約締結福田総理決断だけであり、あとは何も残っていないのであります。  対ソ外交につきましても、この際粘り強い交渉決断が必要であります。日ソ漁業関係を決める長期漁業協定交渉は、わが国利益を損なうことなく、早期締結を図るべきであります。また、北方領土問題、すなわち国後、択捉、歯舞、色丹を初め、千島全島返還交渉も、すでに衆参国会において決議がなされておるわけでありまするから、この際、総理は勇断をもってこれが返還交渉に臨み、そしてその問題を解決いたし、日ソ平和条約締結と並行して最大努力をすべき課題ではないか、かように私は考えるのであります。  また、昭和五十三年度の防衛費は、一兆九千億円に上ります。五十二年度に比べて一六%も伸びると伝えられているのでありますが、私は、この中で、ロッキード事件で疑惑に包まれておりまする一機百億円もする対潜哨戒機P3Cの購入が含まれているが、鉄面皮な政府態度を断じて私は容認することはできないのであります。  九月にアメリカに行き、ブラウン米国防長官と会談した三原防衛庁長官は、P3Cの購入、装備の質的強化後方支援体制の改善などを約束をしてきたと伝えられておりまするが、その内容を明らかにするとともに、ロッキード事件追及の途中で何がゆえにこの対潜哨戒機F15機購入決定したのか、防衛力を増強の理由は一体何か、この際、国民の前に明確にすべきであると私は思うのであります。  後方支援体制の強化は、韓国から米軍撤退と重要な関係があるだろうし、防衛力全体の増加は、アメリカの三%増、韓国防衛費年度予算の三五%という増加と全く無関係ではないと考えますが、この不況の中で、黒い霧に包まれているP3Cの購入を初め、防衛費増加には絶対に反対し、その取り消しを強く私は要求するものであります。  以上を申し上げまして、福田総理の明快な答弁を求めながら、私の代表質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  4. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、ハイジャック問題についてでありますが、私は、この処理については非常に苦悶をしたんです。つまり、国家の治安を優先すべきか、あるいは搭乗者、人の命を尊重すべきか、いろいろ思いあぐねましたが、結局、一人の人の命はこれは地球よりも重いと、こう言われる、この搭乗者さしあたりの命の問題、これを重視しなければならぬだろうと、こういう結論に達しまして、所信表明演説でも申し上げましたが、犯人の要求を受け入れると、こういう決定をいたしたわけであります。この決定につきましては、内閣におきまして一人の異存もございません。ただ、法を守る立場にある法務大臣におかれましては、とにかく私はこの処置については賛成だが、その立場にある私としては残念で残念でたまらない、この際そういう気持ちを表明する意味において辞意を表明したい、こういうことで、私もその考え方を了といたしまして、これを受け入れると、こういうことにいたしたわけであります。まことに残念でありましたが、やむを得ざる処置であったと、また、そのような福田法務大臣の信条、これに対しては私は高い評価、理解をいたしておる次第でございます。  吉田さんはこれに関連いたしまして、再発防止が大事だと、こういうお話でございまして、これこそが大事な問題であります。この事件はこうして処理されましたけれども、これからの問題は、再発防止処理をしなけりゃならぬ。直ちに再発防止対策本部をつくりまして、そうして目指すところは、お話しのように、これは対外的措置であります国際協力、これは国際間の協力を強力に求めますが、しかし、同時に、国内でできることは速やかにしたいと、そういうことで、今月中には決着をつける、こういうことを私は指示をいたしておるわけであります。その決着のついた指示に従いまして、そしてこの施策を実効あるものにし、再びこういうことが起こらないようにということをぜひやってみたい、このように考えておる次第でございます。  また、吉田さんからは、経済問題、私がとっておる措置についていろいろ批判があった。私は、いま世界が非常に困難な状態にある、そういう中で、まあ、私がとっておる措置は、これはだれが考えてもこれまでというような大局においての措置であるんじゃないかというふうに考えておるんです。また、伺いまして有効な措置がありますれば、私はそれを取り入れるにやぶさかではございません。  いま世界は非常な混乱期じゃありませんか。私は、これは地球始まって以来の混乱期じゃないかとも思うのです。その混乱期、その混乱を象徴する出来事があの石油ショックなんです。その石油ショックというものが直接間接に世界全体に影響を及ぼしておる。その影響の中にわが日本もあるわけなんであります。私は、そういうふうに変化した世界情勢、これに日本の各界各層、これは日本ばかりじゃありません。世界じゅうがみんなこれに対応する姿勢転換をしなけりゃこの混乱というものはおさまらぬと思うのです。しかし、よその国のことをいま言う余裕はございませんけれども、どこの国でも非常に困難です。優等生と言われるあのドイツにおきましても経済の勢いが非常に鈍っておる。あの首脳会談におきましても、五%成長ということを宣言したんです。それをすぐ四・五%成長に修正しなきゃならぬ。その修正した四・五%成長がまたどうも怪しくなりまして、四%になるかならないのかと、こういうような状態であります。そういう中で、わが国におきましても、ずいぶん努力はしましたけれども、民間の生産活動は停滞しておる、それを受けまして雇用の情勢の改善がない、そういうことでございますが、私は、この状態を見まして、やっぱりわが国経済全体といたしますと、世界の大混乱の中ではありまするけれども、これはとにかく上向きに動いておることは、これは事実であります。これは統計がはっきり示しております。しかし、それにもかかわらず、国民の中に不安がある、また雇用情勢が改善されない、そういう問題が残っておりますのは、これはやっぱり石油ショック、またその背景にある世界の転換、そういう状態を受けまして、特殊の現象、つまり不況業種というものが数多く出てきておる、そこに非常に大きな問題があると思うのです。また、とにかく石油ショック以来四年続いての不況といいますか、低成長、そういう中で大企業も非常にくたびれております。しかし、特に中小、力の弱い中小企業階層というものが疲弊が非常に深刻である。この状態が私は今日のわが国経済社会の実態ではなかろうかと、このようにとらえておるわけであります。  そういうことを考えながら、まず、とにかくわが国経済全体のスケール、規模を拡大しなきゃならぬ。私は首脳会談におきましては六・七%成長を実現したいということを申し上げたんです。ところが、私の予期に反しまして、このままで放置いたしますと六%をちょっと切りはしないか。専門家の見方は、五・九%成長だと、こう言うのです。これをとにかく是正いたしまして、国際社会にも言っておることでありまするから、六・七%成長を実現しなければならぬということで、あの総合政策を打ち出したわけであります。しかし同時に、それだけで問題は解決いたされません。やっぱり、先ほど申し上げました今日の経済情勢の非常に問題点となっておるところの構造不況問題、これに対する対策をやり遂げなければならぬし、また、中小企業に対する手当て、これを手厚くやらなければならぬ。そして、この全体のかさ上げ、経済成長のかさ上げの状態と、それからそういう個別の対策が並行して進められるならば、わが国経済は初めてそこで安定時代を迎えると、こういうことになるだろうと信じまして、せっかく努力をいたしておるところでございます。この年の大体の展望を申し上げますと、六・七%成長は実現される、それから物価は安定度を増しまして、七%台の上昇で維持できる、それから国際収支の方は、かなりこれからは黒字基調が緩和される傾向に向かうと、こういうふうに考えまして、いま黒字過多の問題につきましては国際社会で非常に大きな非難があるわけではございまするけれども、私は、そういう形において国際社会にもこたえ得ると、かように考えておる次第でございます。  福田、おまえの責任はどうだと、こういうようなことでございまするけれども、そのような内外にわたる政策を実現して、日本はよくやったと、国際社会に対する責任もやり遂げたという評価をかち得るような努力をすることが私の責任である、かように考えておる次第でございます。  なお、住宅問題に関連いたしまして、土地政策が大事だと、こういう御指摘でございます。私も全くそのとおりに考えております。もうこの土地問題というものが論議されて久しいのでございまするが、これを富士山のてっぺんまでを含めての全国全体の土地政策ということになると、いろいろの議論がありまして、これはまとまりがつかぬ。やっぱり土地政策の焦点というものを、これは宅地という一点、つまり住宅問題の一環としての土地問題というしぼり方、そういうアプローチでないとこの問題は解決しないと、こういうふうに考えるのであります。私がいろいろ、ときどき意見を述べておりまする点も、そこに根底があるわけなんでありますが、いま現実の問題といたしますと、ずいぶん住宅政策が推進し、ことに公庫住宅、これなんか、かなりふえているわけでございまするけれども、だんだんとこの宅地問題で隘路が出てくるかもしらぬ。そういう状態考えますと、いま土地の、特に宅地の流通が阻害されるような傾向になりゃしないかという心配が方々から起こっておるわけであります。  それに対しまして、いろいろ意見が出ております。税制をどうする、あるいは調整区域の問題をどうするかとか、国土利用計画法の運用をどうするかとか、いろいろ問題が出ておりますけれども、私は、宅地の流通を阻害するという面で問題がありますればいまの土地政策の枠組みはこれは崩さない、その枠組みを崩さないその範囲において微調整ぐらいのことを考えるということも一つ考え方ではあるまいか、しかし、これは十分に問題は掘り下げなきゃならぬ、しかも、この宅地政策のゆえに宅地の価格が暴騰するというようなことがあっちゃこれはならぬわけでありますから、その点も十分踏まえながら、もし本当に、現行の制度において宅地の流通が阻害されておるんだ、しかも、それが微調整で済むんだというようなことがあれば、それは微調整をすることもまた一つ考え方ではなかろうか、というふうに考えておりますが、これはいま関係各方面において検討されておる問題でございます。  それから、新たなる立法をつくれというような御提案もありますが、いま住宅建設計画法というものがありまして、それに基づきまして住宅建設はとにかく強力に進められておるという状態でございます。  それから、この前の国会でも議論があった問題でありますが、吉田さんから再び、ひとつ大幅な個人所得税減税をせよと、こういうお話であります。その際私は申し上げたんですが、減税をするのには財源が要る。その同じ財源を使ってこの景気対策のために何が有効かという考え方をしなけりゃならぬじゃありませんか。そういうことになりますれば、個人の一人一人について細かい減税をするというよりは、これは波及効果の高いと定説のあるところの公共事業をやるのがいいんじゃあるまいか。しかも、その中で、大型の事業というんでなくって、特に住宅、また住宅に関連した事業をやるということになれば、これこそ一石二鳥ということになるのじゃあるまいか、そのように考えますので、前回も申し上げましたが、今回も大幅な所得税減税をいたすという考え方はいかがであろうか、このように思うわけであります。  次に、失業の問題につきましては、これは私も本当に重大な問題だと考えておるんです。七カ国の首脳会談におきましても、もうどこの国でも言うことは、まず失業の問題だということが指摘されるぐらいな重大問題に世界的になっておるわけでありますが、そのために吉田さんは失業対策臨時措置法を制定したらどうかと、こういうようなお話でございますが、この雇用問題につきましては、その事前策また事後策につきましてかなり完備された法制が整っておるわけであります。十月一日からは雇用安定資金制度が実施される、これなんかはかなり有効に私は雇用問題には作用すると、こういうふうに考えておりますので、これらの既存のたてまえ、機構、そういうものを積極的に活用いたしまして、雇用不安ということがいささかも起きないように最善を尽くしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  それから、倒産防止問題につきまして一つの御提言があります。それは倒産防止基金制度創設だと、こういうようなお話でございますが、この点は、私どももそのような仕組みが必要なんではあるまいか、そのような考え方をもちまして、何と申しますか、ある種の共済制度、いま通産省を中心にして検討しておりまするが、中小企業連鎖倒産防止共済制度、そのようなことを検討いたしておるわけであります。これは委員会の場等において各党各派とも相談をいたしまして妥当な結論を得たいと、かように考えておるわけでありまして、これは、いま吉田さんが申されたように、これが仮に法律で実施されましても、準備のために時間がかかるんです。そういうようなことがありますので、もし御議論がまとまりますれば、これは私は今国会において成立せしめるというような御協力をくださることが望ましいと考えておるのであります。  それから、為替差益問題につきましては、これはこの前の臨時国会でも申し上げたところでございますが、政府におきましては、この為替差益消費者に還元される、これが望ましいと、こういうふうに考えておるわけであります。現に、この為替差益は非常に大きな物価への影響が出てきておるわけでありまして、卸売物価が、皆さん御承知のように、世界最低の水準までなってきたわけであります。これも為替差益が響いてきておるわけであります。為替差益というものは、原材料の輸入の多い――わが国は原材料の輸入が総輸入の八割になるんです。そこへまず響いてくる。ですから、完成品、それに響く度合いというものは直接には非常に少ないんです。しかし、総輸入の八割を占める原材料費にはもう直接に響いてきておる。したがいまして、卸売物価、これはもうかなりの影響を受けまして、いま世界最低の水準まで来ておる。この卸売物価というものがそういうふうに下がれば、それがやがて消費者物価にもはね返ってくるわけでございますが、同時に、完成品輸入、たとえばウイスキーでありますとか洋服地でありますとか、そういうものにつきましては、これは個別に調査をいたしまして、これが価格に反映されるような努力をいたしておる最中でございます。  それから、国鉄運賃値上げは中止せよ、健康保険の料金引き上げを中止せよという御所見でございますが、この国鉄の問題はまあ御承知のとおりの状態でありましてね、やっぱり賃金問題につきましてもこれは御配慮を願わなければどうにもならぬという状態なんですよ。これは吉田さんが非常によく承知しておられるところじゃないかと思うのです。やっぱり国も努力しなければなりません心また企業体の努力ということも必要でございます。しかし、利用者の協力、これもまた欠くことのできないことでありますので、何とぞ御協力を願いたいと思うのであります。  また、健康保険財政、これももう破綻寸前というような状態であります。しかし、わが国社会保障、特に健康保障ですね、これは非常にわが国状態はいいんです。いい状態でございまするけれども、それにはやっぱり財源が必要なんですよ。これも、これ以上さらに改善しようと、こういうことになりますると、財源問題を避けて通るわけにいかない。この点につきましては切に御理解を賜りたい、こういうふうに思います。  吉田さんからは、国会審議の過程において野党の意見も聞けと、こういうお話でございまするけれども、もとよりこれは国会の御審議でございまするから、政府におきましても野党の意見に耳を傾けます。傾けますが、非常にこれは深刻で重大な問題であるということだけは御承知おき願いたいのであります。  次に、零細預金金利引き下げ、特に郵便貯金貯金金利引き下げに触れられましたが、今回公定歩合引き下げを行いました。その趣旨は、常のごとき景気循環過程における景気調整という趣旨ではないのであります。これは、いま企業が非常に困っておる、その企業は人件費の負担でも困っております。あるいは金利の負担においても困っております。せめてその中の金利の負担を軽減しよう、その金利の負担を軽減いたしますれば、そこに企業では苦しい中でもそれだけその苦しさが軽減される。そこで、その過剰の労働者を抱えておる、その抱えておる力というものがそれだけ強まってくるということ、これを主眼としてこの公定歩合引き下げをやり、公定歩合引き下げをやって、そしてそれに連動して金融機関の貸出金利というものがそのために引き下がるということを期待しておるわけなんです。そうなりますると――やっぱりまあそんなことをやりたくはない。しかも、物価努力しても七%台だと、こういうような際に五・二五%まで貯金金利を下げるというようなことは、これは本当にやりたくはないことではございまするけれども、しかし、企業がよくなり、そして雇用が安定しなけりゃ、その預金のそのもとは出てきやしないんですから、そういうことを考えまして、非常に苦しい気持ちではございまするけれども、臨時非常の際だという考え方でひとつ踏み切らざるを得ないと、こういうふうに考え貯金金利引き下げに踏み切ったわけでありますが、しかし、その際におきましても、これは生活保障、福祉政策を適用しなけりゃならぬ、こういうような方々の零細な貯金につきましてはせめて例外にしようというような考え方をしたわけでございまするけれども、非常に私も気持ちはすっきりはしないところがあるんです。ありまするけれども、臨時非常の際だということで御理解を賜わりたいと、かように考える次第でございます。  それから、東南アジア歴訪につきましてのお尋ねでございますが、ASEAN諸国に対しまして、私がこの歴訪の過程において約束をした有償資金協力の額は千三百十五億円であります。また、無償資金協力約束した額は七十七億円であります。これが正確な数字であります。そのほかにASEAN諸国からASEAN共同プロジェクトというものが出てきておるわけでありまして、その額が十億ドルでございます。ですから、これを総計いたしますると、約四千億円になるというわけでありますが、この十億ドルにつきましては、これは、ASEAN当局に私が申し上げたことと、私が国内で申し上げておることと何か違いがあるようなお話でございますが、そんなことはありません。ASEAN当局に対しましてもはっきり申し上げております。この計画が具体化し、実行可能となるという際には、わが国は十億ドルを目途といたしまして協力をいたしますと、こういうことをはっきり言っておるわけであります。そのことも同様の趣旨において国内に対しましてもはっきり申し上げておるわけであります。  さらに吉田さんは、一体そんなことを言ったけれども、実行することができるのか、空手形になったらこれは不信を招くことになりはしないかというようなお話でございますが、これは空手形ではありません。裏づけのある手形でございます。これはまあ大体私も財政家ですよ。財政の将来を展望いたしまして、ちゃんとこれは実行できるんだ、こういう確信のもとにそういうお約束をいたしておる次第でございます。  それから、さらに吉田さんは、福田外交というのは経済経済で、経済外交ではないかと、こういうことをおっしゃいますが、私はそれは逆のことを言っているのです。わが日本と諸外国との関係は戦後非常に緊密化してきておる、特にアジア諸国との関係は戦中不幸な時期がありましたけれども、戦後緊密の度を加えておる、しかし、それが物と金に偏り過ぎておる関係だと。私はこれを是正したいんだ、本当にアジアの一員としての友好協力という、心と心との触れ合いという関係に置きかえたいんだということを強調しているのです。私は世界各国に対しましても同じような考え方を持っているので、経済経済と、経済外交を商人のような、そういう立場においての外交姿勢はとりませんから、その点ははっきり申し上げておきたいのであります。まあしかし、ASEANとの関係東南アジア諸国との関係、私は今回の歴訪でかなり変わってきたというふうに思うのです。所信表明でも私は、新しい一本の苗木を植えたと、こういうふうに申し上げましたが、これは吉田さんが御指摘されるように、まだ指導者間だけの間の協力、あるいは指導者を取り巻く一部の人の間だけの理解だと、こういうふうに思います。これからが問題なんです。国民次元にお互いにこれを持っていかなければならぬ、こういうふうに思います。そういうためには各界各層の人の協力を得なければならぬ、そういう問題でありますので、何とぞよろしくひとつ御理解のほどをお願い申し上げます。  日中平和条約について、一秒で決まるんじゃないかというようなお話でございますが、とにかく私は、日中平和友好条約、これは忠実にこれを遵守することが両国の義務であると、かように考えておるのであります。その線に従って、五年間、幾多の実務協定も締結され、また、日中両国の関係も良好に前進をいたしておるわけでございますが、さて条約を締結するということになると、やっぱり条約は条約の文言というものがありまするから、まあ一秒というわけにはとてもまいりませんから、やっぱりその文言を詰めて、そして未来永劫にわたって両国の間に疑義が起こらないような、そういう形において締結をしなけりゃならぬと、こういうふうに考える。過日、九月三十日におきましては、ニューヨークにおきまして、わが国の鳩山外務大臣、中国の黄華外交部長との間でそれらの問題の話し合いをいたしました。そして、双方とも速やかにこの条約はひとつ締結をいたしましょうというふうになっておるのであります。しばらく私どもの努力を見守っていただきたいと、かように考える次第でございます。  それから、日ソ漁業協定早期締結をせよというお話でございますが、この締結交渉はすでに始まっております。そして、順調に推移をいたしております。少なくとも私は、この二つの暫定協定が年内には期限が切れるわけでありまするから、来年一月一日からの操業に支障がないということはぜひ確保するようにいたしたいと考えておるわけであります。  また、北方領土の問題とこの日ソ平和条約の問題についてお触れになりましたが、これは所信表明において申し上げておるとおりでありまして、あのとおりの姿勢で臨んでまいりたいと、かように考えております。  また、対潜哨戒機P3Cの購入方針の問題についてのお尋ねございましたけれども、これはアメリカの要請でどうのこうのという、そういう問題は一切ありません。わが国わが国の安全を守る上においてどういう機種を選ぶことがこれは最も妥当であるかという見地で検討が続けられてきたのであります。いま防衛庁当局におきましては、P3C、これが妥当であるという結論を持っておるわけでありまして、そのような要請を大蔵当局に対していたしておる次第でございますが、最終決定はこれは国防会議決定し、そうして最後的には予算案でこれの決定のときにこれを決める、こういうことになるわけであります。アメリカから押しつけられている、そういうような事情は一切ありませんから、その辺は御理解のほどをお願いしたいのであります。  最後になりますが、防衛費という問題につきましてどう考えるかというお話でございますが、これは私はかねて申し上げているんですが、防衛費は、大体いまの現状、現実をとらえまして、国民総生産の一%、GNPの一%以内ぐらいを見当にいたしてやっていったらどうだろう、こういうふうに考えておる次第でございます。そういう中におきまして、これは量よりも質だ、こういう考え方を貫きたいと、かように考えておる次第でございます。昭和五十三年度予算をどうするかというようなお話でございますが、昭和五十三年度予算で〇・何%になるかというようなことは、まだ具体的な問題にはなっておりません。  なお、三原防衛庁長官アメリカへ行ってどういう約束をしたのかというようなお話でございますが、約束は一切いたしておりません。お互いにお互いの事情を述べ合ったにとどまるものであったというふうに御理解を願いたいのであります。(拍手)    〔国務大臣坊秀男君登壇拍手
  5. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 広範なる諸問題に対しまして総理からきわめて詳細に御答弁がございましたので、私から申し上げることは余りございません。  ただ、一点補足をさせていただきますことは、預貯金の問題でございますが、預貯金の中で一部のものについては金利水準引き下げとは切り離して特別に扱うというか、いまのお話によりますれば、もとへ戻したらどうだ、こういうようなお話がございましたが、今度の金利水準引き下げる、貸出金利引き下げるということについての目的や、あるいはその効用につきましては、総理からお話がございましたとおり、現経済におきましてはどうしても実効をおさめていかなければならない問題でございますが、その実効をおさめるためには、やはり金融機関の資金というものはできるだけコストを安くしていかなければならない、かような意味におきまして、預貯金につきましてはできるだけ利子を下げていく、こういう政策をとっておりますが、その中で一部のものをそれをやらないということになりますと、その限りにおいて貸出金利引き下げていくということに対しまして一つの抵抗というか、支障というか、ということになるということがございます。  それから、大きな預金についてそういうことではないと思いますが、零細なる預金についてひとつやったらどうだ、こういうことも御意見としては承るのでございますけれども、一体、預貯金の中で零細なる預金というものの規定、範囲、これをどうしますか、何の何兵衛さんが預貯金を持っておる、その持っておる貯金は非常に零細であるけれども、その人があるいは乙銀行、丙銀行、丁銀行等にどれだけの預金をお持ちになっておるかということ、なかなかこれは調べにくいというようなことでございますし、それからまた、観念上零細の預金をどこに一体線を引くかということにも大変な問題があろうと思います。  それからもう一つは、小さいと申しますか、小さい金融機関でございますね、そういったような金融機関に、たとえば信用組合とか、あるいは地方の小さい銀行だとか、そういったような銀行は主として零細なる預金を扱っておりまして、そしてそういうような銀行が融資する相手方というものは、主として中小零細の事業が多いということになりますと、そういったような金融機関がなかなか貸出金利を下げにくいというようなことになりますと、相手にしておりまする中小以下の企業に対しましてどうも金利を下げることができにくい、こういうようなことに相なりますので、この点につきましては相当慎重に考えていかなければならないことであり、直ちにこれを実行しようということはなかなかむずかしい問題であろうと考えます。  以上お答え申します。(拍手)    〔国務大臣石田博英君登壇拍手
  6. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私に対するお尋ねの第一は、経済関係の指標が緩やかな回復過程をたどっているのに、雇用関係の指標が一向改善されない――その第一の原因は、やはりわが国の長い間の雇用慣行、終身雇用制という雇用慣行、その上に、雇用調整給付金等によりまして、本来ならば操業短縮その他によって失業しなければならない人を失業させないで企業が抱えている、言いかえれば、過剰雇用が存在することであります。しかし、公共事業の発注というものが予算成立後一定の月日が要りますので、したがって、それが直ちに経済の改善に結びつかず、また、結びついたとしましても、いま言ったような事情のためにその過剰雇用を転用する、さらに時間の延長等で賄っているという結果であるのであります。したがって、私どもは、先般の五十二年度予算公共事業の前倒し発注、さらに今回の補正予算に大きな期待をかけておりますが、これが並行するまでにはやはり若干の時間が必要ではないかと、こう考えておる次第であります。現に、七月から八月にかげましては、わずかではありますが、有効求人倍率が好転をいたしました。これは主として建設業であります。これは公共事業の前倒し発注の好影響が一部に出たものであろうと考えておる次第でございます。また同時に、前年同期に比べまして、七月においては六十二万人ほど雇用自体はふえているわけであります。一方において求人も同様にふえておりますために、雇用指数の改善がおくれているわけでございます。  それからもう一つは、こういう情勢に対処するために臨時措置法を制定したらどうかと、こういう御意見でございますが、先ほど総理からも御答弁申し上げましたように、現在、いままでこの情勢に対応いたしますためにとってまいりました措置がようやく発動し始めた時期でございます。雇用安定資金は十月一日から、あるいは身体障害者に対する雇用促進の強制実行も十月一日から、いま始めたばかりであります。しかも、予算的余裕も現在のところございます。それから同時に、現在各党それぞれの臨時措置法の案あるいは労働四団体の共同の御意見というようなものが発表されておるのでありますが、その中には、現行法規の中で、また現在予算的措置をとりましたものの中で処理をし得られるものも多くあるわけでございます。またそのほかに、明年度予算に私どもがすでに概算請求をいたしておるものもございます。この経過を見守ることが一つ。それからいま一つは、いわゆる構造不況業種の中からどれだけの失業が出てくるものか、それをどれだけ防げるものか、こういうことのつかみが必要であろうかと考えておるのでありまして、各党あるいは労働四団体から出ております試案自体の中でいろいろ食い違いがございます。また、現行法規で十分できるものが多いのでございます。したがって、御意見を拝聴しつつ、雇用失業情勢の改善に最善の道を選びたいと考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣田村元君登壇拍手
  7. 田村元

    国務大臣(田村元君) 重なる航空機の諸事件につきまして、所管大臣として国民の皆様にいろいろと御心配と御迷惑をおかけいたしましたことにつきまして、心から深くおわびを申し上げるものであります。と同時に、各位から賜りました激励につきまして、心から感謝を申し上げます。  先ほど御質問のありました国鉄の問題につきましては、総理大臣の答弁が非常に克明でございまして、私がお答え申し上げようと思っておりましたことを、より詳しくおっしゃったようであります。でありますので、総理答弁をもって私の答弁と、このようにを受けとめいただいて結構と存じます。いずれ改めて委員会で詳しくお答えをいたしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣鳩山威一郎君登壇拍手
  8. 鳩山威一郎

    国務大臣(鳩山威一郎君) ハイジャック再発防止がこれからの大事な私どもの義務であると思っておりますが、このためには、何よりもまず、ハイジャック防止の目的をもってつくられました東京条約、へーグ条約、モントリオール条約、三つがございますが、その中で特にハイジャックの防止のためにへーグ条約があるわけでございます。この条約は、まだ七十八カ国しか加盟しておらないのでございます。国連加盟が百四十九カ国になりました。ほぼその半数しか加盟しておらないということがやはり何よりも私は最大の問題であろう。この点につきましては、国連当局に働きかけて、あらゆる加盟国がこのへーグ条約に加盟せられるように最大努力をいたしたいと、このように思います。  また、諸外国の空港等の体制が不備であると今回のような事件が起こるということ、これもまた大変心配な点でありまして、これらの点につきましてはICAO等で御検討あることと思いますが、運輸大臣と密接な連携をとりながら努力をしてまいりたい、このように考える次第でございます。(拍手
  9. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 吉田忠三郎君。    〔吉田忠三郎登壇
  10. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 答弁漏れがございますから、若干時間の許す範囲内で再質問をいたしたいと思います。  総理に伺いますが、答弁漏れの一つは、私は行政改革の問題についても触れました。総理大臣は、今度の演説におきまして、国民に対して大変な耐乏を要求いたしているのであります。ですから、そういうことについては、政府みずからも、具体的に大胆に政治、行政を見直さなければならないということを私はこの席から先ほど申し上げましたが、この点には触れておりません。  それから、もう一つは、財源の問題で私は申し上げましたけれども、貸し倒れの引当金等についても具体的に私は二千八百億と、こう言っているのでありますが、これについても触れていないのであります。特に私はこの点大蔵大臣に申し上げますが、この点については、すでにさきの予算委員会において、わが党の田中議員、藤田議員、宮之原議員等々がこの問題に触れているわけであります。それぞれ時の大蔵大臣から答弁されているのでありますが、私はその答弁に基づいて今回再質問をいたしているのであります。当時、こういう財源については、政府大蔵当局は、先ほどの金利引き下げにも関連いたしますけれども、かような措置をとらない、とれませんと、こう言っておったのでありますが、どうでしょうか、大蔵大臣。今度の補正予算で具体的に八百億という、この引当金から財源として引き当てているのであります。こういう点を私は先ほど含めて質問いたしましたから、この際、明確にお答えを願いたいと思います。  それから、先ほども私は、預貯金金利について、福田総理は財政金融の大家であり、また人情深い人でありますから、こういう零細な預貯金金利公定歩合と連動して下げるべきものではない、ある一定の水準を保つようなことを考えたらどうかと、こう言ったわけなんでありまして、大蔵大臣は郵便貯金とか零細預金ということを知らないと思う。私は、具体的に一世帯当たりの零細預貯金の金額を先ほど申し上げた。そういう零細の方々が何でその預金をしているかということは申すに及びません。今日、社会保障制度ができていません。老後の生活のための年金制度もまだ十分ではない。ですから……
  11. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 吉田君、時間が大分過ぎております。
  12. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君(続) 老後、将来を心配するがゆえに零細な預貯金をしているのであります。それと、経済行為でありまする公定歩合あるいは都市銀行あるいは市中銀行などなどの金利と一緒にするということは、政策的にいかがなものであろうかということを質問いたしているわけですから、こういう点で再答弁していただきたいと思います。  それから、もう一つは……
  13. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 吉田君、時間が大分過ぎています。
  14. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君(続) もう一点です。  もう一点は、防衛庁の問題でございますが、福田総理は、今日の経済危機を訴えつつ、国民に耐乏を迫っている。ところが、防衛予算は一兆九千億ということがほぼ明らかになってきておる。大変だと私は思うんですよ。同時に、いまだロッキード事件の問題は公判廷で争われているとはいえ、国民感情は大変なものであります。そういう国民感情と絡めて、この対潜哨戒機なるもの――しかも莫大もない高額なものであります。ですから、私は、国民感情とあわせて、こういうことが一体どうなのかということをお尋ねをいたしたわけでありますから……
  15. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 吉田君、時間が相当超過しております。
  16. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君(続) こういう点は、福田総理、もう少し私は国民にわかりやすい答えにしていただきたい、このことを望みまして、再質問を終わりたいと思います。    〔国務大臣福田赳夫登壇
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、行政改革の問題でありますが、私は、この問題はもう政府といたしましては、ぜひやってのけなきゃならぬ問題であるというかたい考えを持っておるのであります。とにかく、先ほども申し上げましたように、世界は非常な転換期である、その際に、わが日本の国も、各界各層、もう政府も地方公共団体も、企業も家庭も、その他の各分野がみんなこの新しい転換した時代への対応をしなきゃならぬ、こういう状態に置かれておる、かようにいま考えておるわけであります。そういう際に、いま率先してそういう対応努力が始まっているのは企業です。企業によりましては本当に血のにじむような努力をしておるところもあるわけなんです。そういうときに、政府が、高度成長下にでき上がった仕組み、つまり行政機構というものをそのままにしておいていいのであるかどうかという考え方をしてみれば、私は、当然政府は行政機構の改革に取り組まなきゃならぬ立場にある、そのように考えておるのであります。その考え方は、去る九月の初めにこれを閣議において決定し、これを公表しておりますが、ただ、まだ方向の出ておりませんのは、中央省庁の統廃合だけの問題なんです。これはなかなかむずかしい問題でありまするから、なおさらに別途検討して結論を得たいと思いまするけれども、問題はそればかりじゃないのです。あるいは中央官庁の出先が地方にたくさんあるわけでありますが、それらを一体どうするんだと、これは着々いま準備を進めておるわけであります。あるいは公社、公団、これも私は高度成長下の遺物という面がかなりあると思うのであります。それの統廃合を一体どうするんだと、こういう問題がある。あるいは許認可の問題、そういう問題もあるんですよ。そういう問題をひっくるめまして、いま鋭意作業を進めておるわけでありまして、私が申し上げましたような、この新しい時代への政府としての対応、この考え方につきましてはいささかも変わっているところはありませんから、誤解のないようにひとつ御理解を願いたいのであります。  それから、零細預貯金についてのお話でございますが、先ほども申し上げましたが、零細な預貯金、これをこの際、物価がああいう状態であるにかかわらず引き下げる、私としても気持ちがおさまらないところもあるんです。しかし一方、国の最大の問題は一体何だと言いますれば、早く景気を正常に戻す、そして企業が活発な活動ができるようにするということなんです。そういうことを考えると、いま企業は何で困っているんだと言えば、困っておらないものもありまするけれども、困っておるその企業の困っておる最大原因というものは、やはり過剰設備を抱えておる。過剰設備を抱えておるということは、それに要した金利負担に悩んでおるということですよ。それから、過剰設備ということになれば過剰雇用ということがあるんです。雇用の問題で非常に悩んでおる、こういう状態でございますが、しかし、その悩んでおる企業状態を、これをやわらげ、特に構造不況業種等につきまして思いやりのある対策を講じなけりゃ、いまの日本経済状態というものは安定いたしません。そういうことを考えると、過剰設備を稼働せしむるためには有効需要を起こさなきゃならぬというので、二兆円事業費の施策を打ち出す、一方においてこの金利引き下げをやるという、そういうことになりますれば、この金利負担が軽減し、過剰の雇用を抱えておると言うが、それをさらに抱えるところの力がそれだけ加重されるということにもなる。どうしても貸出金利引き下げということをやらなきゃならぬ立場にいま日本のこの経済社会というものは置かれておるというふうに思うのです。そのためには預貯金金利もこれを下げなきゃならぬ、その際に、一部のものは下げて一部のものは下げないんだというようなことにするわけにはなかなかいかぬだろうと思うのです。いま大蔵大臣も述べましたが、預貯金の零細なものと零細なものでない区分というようなことを考えましても、技術的に非常にむずかしいところもある。そこで一律に預貯金金利も下げましょう、下げましょうが、せめて社会保障対象者の預けておる預金だけはこれは特例といたしましょうという措置をとったわけでありまして、私も気持ちといたしましては忍びぬところがある、そのように考えます。しかし、諸外国の例を見ましても、ドイツだけがいままではよかった。しかし、いまではドイツまでが逆ざやになってきておると、こういう状態でもある。そういう世界の動きなんかも、こう私見ておるわけでありますが、とにかく臨時緊急の考え方といたしまして、このような措置をとった。しかし、私どもは責任がある。責任とは何ぞやと言えば、物価をさらにさらに引き下げることである、こういうふうに思いますので、それに向かって全力を尽くすという決意でございます。  あとは二千八百億円の問題ですね。あとは大蔵大臣からお答え申し上げます。(拍手)    〔国務大臣坊秀男君登壇拍手
  18. 坊秀男

    国務大臣(坊秀男君) 輸・開銀等の貸し倒れ引当金についての御質問のように思いますが、こういった政府機関の貸し倒れ準備金というものは、これは常に平素から、これは別に利益を得たから税金をかけるといったようなものではございませんので、これは絶えず運用を、もし準備金を使わなかったらこれは資金としての運用に充当しておるということでございます。  で、今度の場合も、その貸し倒れ準備金をそういった目的に使わなかったというような場合には、ひとつ政府機関からこれを、まあ何と申しますか、戻しまして、政府にこれを提供させまして、そうして今度の大変な危機に際しましてこれを活用すると、こういうことでございます。
  19. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 答弁の補足がございます。    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何か一つまだあるように思いましたが、防衛予算の問題であります。  このことにつきましては、先ほどもお答え申し上げましたが、防衛庁においては、次期対潜哨戒機としてP3Cが妥当であるという見解を決めておるのであります。しかし、まだ国防会議において正式にこれを決定しておるわけではございません。しかし、これは吉田さん御指摘のように、問題のあった経緯もあります。その点は十分承知をいたしておるわけでありますが、国民に対しまして誤解のないように、この点は十分解明をいたしまして、その上国防会議において正式に決定をいたしたいと、かように考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  21. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 園田清充君。    〔園田清充君登壇拍手
  22. 園田清充

    ○園田清充君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、    〔議長退席、副議長着席〕 当面する政治課題につき、総理に若干の質問を行うものでございます。  本論に入るに先立ちまして、ただいま吉田君からもただされましたが、日本赤軍による日航機ハイジャック事件についてお尋ねをいたします。  本件が人命に異状なく全員無事救出されましたことは、不幸中の幸いとして関係者に心から厚くお見舞いを申し上げます。  人命尊重国際協調の立場から、犯人の要求に応じた今回の政府措置は、法治国家として、政府みずからが法秩序を破らなければならないという、まことに残念な結果となったのでありますが、私は、緊急やむを得なかったものとは思います。しかし、今回の措置を心情的に理解できるといたしましても、法治国家として厳正な法のたてまえを保持しないと、単に人質救済という人道上の問題で済まされず、国家や政治の根幹に触れる大問題が生ずるばかりでなく、また、国際的に多大の迷惑をかけ、日本不信の風潮が拡大されるやも知れず、再発防止対策は焦眉の急務であると思います。異例の措置、緊急避難、高度の政治判断、超法規的措置という言葉は、今後二度と繰り返してはならないと思います。総理は、非人道的暴力に対し再発防止に万全を期すと発言せられておりますが、具体的にどのような方途で、いつをめどにその対策を立てられるのか。重ねて明確にされたいと思います。  以下、本日、質疑の前提として、総理のまず政治姿勢について伺います。  かつてない厳しい政治情勢の中で行われました七月の参議院選挙は、保革逆転等々の予想を裏切り、わが党に過半数の安定政治勢力が与えられました。このことは、保革逆転あるいは連合政権の将来に対する国民各位の深刻な不安の表明であると同時に、再生する自由民主党に対する新たな期待と願望のあらわれが国民の審判になったものと思います。  本国会経済対策景気対策国会と言われるだけに、いまこそわれわれは全党挙げて、戦後最大と言われる不況の中で、景気対策を初めとして、物価の安定、企業倒産の防止、貿易問題、雇用安定、資源の確保、行政改革など、山積する課題解決に英断と責任をもって取り組むと同時に、厳しい現状について国民各位の理解と協力を求めつつ、国民信頼と負託にこたえることは、政府並びにわが党に課せられた政治責任であり、使命だと確信をいたすのでございます。  総理は、就任以来一貫して、連帯と協調を政治の基本姿勢として貫いてこられましたが、私は、今日ほど連帯と協調が国政の上に必要不可欠である時期はなかろうと思います。  かつて有資源国家として世界経済の中に君臨いたしてまいりました米国、そして、植民地経済政策の中に安定を続けてきたヨーロッパ諸国が、戦後急激な成長を遂げたわが国に戸惑いながら、旧経済秩序の中に押し込めようとするこれら諸外国のわが国に対する外圧、同時に、わが国もまた、世界平和の中に新しい産業体系を築きつつある発展途上国の追い上げに会い、前門のトラ後門のオオカミと言いましょうか、このような情勢の中に、新しいわが国の産業の構造変革が求められているのが今日当面しているわが国の姿ではないかと思います。この厳しい時期に政権を担当する総理の決意と所信をお聞かせ願いたいと存じます。  なお、問題はただ単なる経済政策にとどまらず、いまこそ総理政治理念である連帯と協調の精神に、政財界はもとより、労働界、学識経験者等の創造力豊かにして広範な人材を求め、このような国際情勢を踏まえ、民族の進路と、わが国産業の構成と秩序を探求し、勇敢に前進すべき方途を見出す努力の必要な時期だと考えます。私は、この進路探求の一方法として、総理の大型諮問機関設置も一つの方法かと考えますが、御所見を伺いたいと思います。  さて、本論の質問に入りますが、今期国会中心課題である経済問題について伺います。  質問の第一は、景気対策についてであります。  総理は、昨年十二月内閣誕生以来、経済の安定成長を最大政治課題として経済政策を進められてきたことは、すでに周知のとおりでございます。今回取りまとめられました総合経済対策によりますと、まず財政面では、公共事業生活関連推進のために約二兆円の事業規模となっております。財源から見ますと、政府もまさに裸になって景気対策を進めようとする意思が出ておりまして、この点は高く評価をするものでございます。今日、わが国の財政は、五十二年度末の国債残高は三十二兆円、利子等の支払いに充てる国債費は二兆三千億円に上るという状況にあります。国債依存度についての絶対的な限度はございませんが、現在の戦時並みの三〇%ラインを超えるという事態は、財政上避けなければならないと思います。総理の所見を伺います。  このような財政状況のもとで二兆円の財政面からの対策は、一兆五千億が攻防ラインとされていたことから見ますならば、かなり評価を与えてもよかろうかと私は思います。一方、金融面では、今回で三次にわたる公定歩合引き下げられ、今回の引き下げにより、戦後の混乱期を除いて、四・二五%という最低水準まで引き下げられたわけであります。これに伴い、市中銀行の貸出金利引き下げられ、企業金利負担の軽減効果はかなり大きいと見ることができます。このような思い切った一連の景気対策は、やがて実体経済に浸透し、今日の低迷している民間需要に活力を与え、構造不況業種雇用情勢の改善に効果を及ぼすものと思いますが、総理は、この効果をどう見通されておりますか。あわせて、六・七%経済成長率達成の再確認をお願いをいたしたいのでございます。  質問の第二は、中小企業対策についてであります。  中小企業は、石油ショック以来の四年間の国際不況により、体力の限界に落ち込んでおります。企業倒産件数も本年に入り増加の傾向にあり、この八月は再び以前の危機ラインの千五百件を超し、負債総額も二千九百九十三億円と、昨年同月の約二倍に達する状況になっております。このような状況を招来した基本的原因は、申すまでもなく、四年にわたる不況による需要の伸び悩みにありますが、さらに、今年に入って急上昇した円レートの問題や関連倒産等の内外からの要因あるいは資金調達の困難性など金融面からの要因もまた大きな原因となっております。  かかる状況のもとで、政府中小企業円高救済対策、連鎖倒産防止のための運転資金融制度の延長、あるいは連鎖倒産防止の共済制度の発足、不況業種の資金調達のための信用保証限度額の引き上げ、拡大等の措置を講じたことは、中小企業者にとって力強い措置となると思うのであります。これらの充実された対策は、従来からの中小企業施策と相まって十分な効果が発揮できることを心から期待するものであります。  特にここで政府質問したいことは、まず第一に、中小企業円高対策として講ぜられた中小企業為替変動対策緊急融資制度の発足を速やかに実現するとともに、融資対象企業の範囲の拡大及び融資要件を明確にすべきだと思いますが、政府見解を伺います。  また、関連倒産防止のための共済保険制度については、掛金、期間等の問題を含め、なお検討の余地があり、現行のままでは機能を十分に果たし得ぬと思われます。よって、掛金、期間の大幅な短縮、貸付給付条件の改善等が必要と思われますが、政府の所見を伺います。  要は、体質の弱い中小企業が、まじめに経営努力をしているにもかかわらず、親企業や大口取引先倒産という他動的な原因で巻き添えを食ったり、また、構造不況で設備廃棄や円高により契約ストップの影響を受ける中小企業倒産を何としても防止すべきであり、今回の対策もそれなりに期待できるのでありますが、もっときめ細かい個別実態に即応した抜本的な対策が必要かと思いますが、政府は、今後、中小企業経営安定にどういう基本方針をとり、その育成強化を図る考えであるか、あわせてお伺いをいたします。  質問の第三は、構造不況対策の確立についてであります。  今日、自動車、家電の好況業種に対し、繊維、アルミ、平電炉を初めとし、造船、化学肥料など、十指を超える業種が多くの過剰設備と莫大な在庫を抱え、生産の過剰体制を脱却できず、あるいは開発途上国の追い上げにより国際競争力を失い、構造的な不況業種となっております。政府は、総合経済対策の一環として、自助努力を前提に、構造不況業種のカルテル実施、過剰設備の廃棄、業種転換の推進等の施策を打ち出しておりますが、しかし、いずれも抽象的で、具体性に乏しい内容にとどまっております。これらの生産活動の低迷が一層経済回復を困難にしている現状を考えますと、これら不況業種の自助努力も当然のことながら、すでに自助努力の範囲を超えた産業が続出しつつある現状を見逃すことはできません。したがって、政府は、いつまでに、どの構造不況産業にどのような形の施策を講ずるつもりか、業種ごとの具体策を明示してほしいものであります。  なお、これに関連し、構造不況業種で深刻になりつつある失業問題についてお伺いをいたします。  最近の完全失業者は百万人台と高い水準を持続しており、これに現在企業が過剰雇用人員として抱える百五十万人を超える失業者を持っていると見なければなりません。今後、構造不況業種対策を進め、設備の廃棄や事業の転換など減量経営を進めていけば、さらに失業者が急増し、社会不安の火種にならないとも限りません。したがって、今後、構造不況業種対策を進めるに当たり、離職者を出さず、あるいは離職者が発生しても速やかに再就職の場を見出すことを緊急措置として行わなければならないと思います。雇用及び失業対策につき政府考え方をお聞かせ願いたいのであります。  なお関連して、新規学卒者など若年労働力の就業・就職対策についてもお答えを願いたいと思います。  質問の第四として、農業問題についてお伺いをいたします。  最近における世界的穀物需給は、一九七二年のきわめて緊迫化した状況から抜け出し、需給、価格とも安定的に推移をいたしております。その理由としては、経済不況を反映した先進国を中心に畜産物の消費が停滞したこと、さらには食糧輸出国の輸出量増大が続き、他方、アジア諸国における連年の豊作等、多くの要因が指摘せられるところであります。しかしながら、一九八〇年代に向かっての展望としては、これまでの需給の緩和から一転して、食糧事情は緊迫するというのが大方の見方であります。食糧は、すでに石油、鉄鋼などと並ぶ重要な戦略物資として認識を新たにされており、したがって、従前のような国際分業的安易な輸入依存政策をとることは、国民生活を不安に陥れるだけでなく、国家の独立、安全の上からも一刻もゆるがせにできない問題であります。したがって、わが国としては、国民が必要とする食糧の大方は国内で自給する体制整備をいち早く行うことがまず必要であります。それには、農業生産に従事する農業者が農業に魅力を感じ、意欲を持って農業経営に当たれるよう、中長期にわたる日本農業再建のプログラムを策定すべきであると思います。政府の所見を伺いたいと思います。  次に、農業生産の増大を促すには、何よりも農業経営の安定化の措置が必要であります。農業経営の安定化にとって、生産条件整備はもちろん、農畜産物価制度の充実は最も重要な事項であります。減速経済下の今日、諸般の事情から農畜産物価格の大幅引き上げが困難となり、その結果、農業所得の伸び悩み、農家の兼業化の進行、農業後継者不足等を招来していることは御承知のとおりであり、このため、農業者の不満が増大していることもまた事実であります。したがって、今後は農畜産物価制度の一層の充実にあわせ、生産資材価格の安定が必要であり、このことは農業者が最も希求する政策であります。このことについて政府は今後どのような措置を講ずる考えか、所見をお聞かせを願いたいと思います。  本年度、米をめぐる状況は一層困難性を増しております。さらに、米の生産調整について、これを実効あらしめるためには、米生産農家の所得が低下しないよう、生産調整奨励金の大幅な引き上げ、農畜産物相対価格の是正、米の消費拡大あるいは地域分担、主産地形成など、一連の強力な施策が必要であります。これらの施策についていかにお考えになっているか、所見をお聞かせ願いたいのであります。  質問の第五は、消費者物価の安定についてであります。  最近の物価動向は、卸売物価が着実な低下傾向を見せておるのに反し、国民の台所と密接に結びついている消費者物価は下げどまりの傾向を見せ、東京都区部が対前年同月比九・七%の上昇率で反騰の様相さえ見せております。消費者物価の安定は国民のひとしく熱望するところであり、今後とも政府の強力な政策努力期待されるものであります。特に五十二年に入って預貯金金利がすでに公定歩合に連動して二回も下がっております。金融資産の目減りが避けられない状況日本経済が置かれていることはわかりますが、それだけに一層政府物価の安定に責任を負っております。その意味で、弱者救済措置として目減り対策をどう講じているのか。また、あらゆる政策を総合的に駆使し、五十二年度末七・七%の物価上昇の範囲内にとどめるとの政府約束を果たす必要があろうかと思います。ここで改めてその公約の再確認を求めますとともに、前国会でわが党同僚議員が指摘をいたしました為替の円高差益を消費者に還元する施策がいまだ不十分であると思います。この際一段と輸入製品価格引き下げの実を上げるべきだと思いますが、政府の所見をお願いをいたします。  次に、地方財政対策について伺います。  新憲法下、地方自治制度が施行されましてからちょうど三十年を経過し、きのう盛大に記念行事が行われ、将来への発展が誓われましたことは慶賀の至りであります。地方自治体は住民生活に直結する行政サービスに鋭意努力されてまいりましたが、わが国経済長期にわたる不況を反映し、地方財政も三年続きの巨額の財政不足に直面をいたしました。いまこそこの危機を打開し、その健全化を図らなければなりません。  そこで、当面する地方財政に対するとるべき措置について伺います。  今回の総合経済対策において公共事業や地方単独事業が追加されますが、これらの事業の相当部分は地方団体の手を通じて行われるものであり、地方の協力なしには現在の景気対策を円滑に実施することは困難であると考えます。景気対策を推進する上で地方団体の協力を得るためには、地方団体に対して財政上万全の措置を講ずべきだと考えますが、補正予算における地方交付税交付金九百六十億円の減額措置をどのように講ぜられたのか、また、今回の二兆円に上る総合経済対策に伴う地方団体の負担額はどの程度になるのか、その財源対策をどのように措置されるのか、お聞かせを願いたいと思います。  今日の財政事情の推移から見ると、昭和五十三年度の地方財政も急速に好転するとは考えられません。依然として厳しい状態が続くものと考えます。したがいまして、従来のような臨時応急的措置のみではおのずから限界が存することは明らかであります。来年度においては、地方財政の将来を展望し、その基盤の強化を図るよう、地方税源の充実、地方交付税率の引き上げ等抜本的な対策を講ずる必要があると考えます。あわせて政府の所見をお聞かせを願いたいのであります。  次に、外交問題について伺います。  今日、国際情勢は世界的には比較的波乱の少ない情勢で推移しておりますが、国際経済の分野では、経済国際化に伴い貿易面での摩擦は保護貿易の風潮を巻き起こしているほか、資源ナショナリズムの台頭と二百海里海洋新時代の世界的大勢は、資源のない貿易立国としてのわが国の行方に大きな障壁として、きわめて厳しい情勢に立たされておるのでございます。わが国外交は、これらの国際的制約と協調を図りながらも、もう一方で、開発途上国に対する経済援助はもとより、世界の景気回復をリードするという使命を負い、いまほど、世界の目がわが国を注視しており、その比重が増しているときはなかろうかと思います。  このような世界の期待に対して、総理は、カーター米大統領との会見、先進国首脳会議への出席、さらにはこのたびのASEAN諸国の訪問と、内閣誕生後精力的に国際外交を展開されておりますことは、世界の平和と発展に大きく貢献するものとして慶賀にたえないところでございます。厳しい局面に際会している今後の世界外交にいかに対処されるのか、総理のお考えをお聞かせ願いたいのであります。  さて、わが国外交の当面する第一の課題アジア外交であります。さきの総理ASEAN諸国及びビルマの訪問は、従来の物を中心とする協力関係から、心の通い合った友好善隣関係への結びつきが得られましたことは、域内の連帯強化が図られ、わが国アジア外交の新たな再出発として歓迎するところであります。共同声明に見られる東南アジアへの経済協力について、現地では、果たして日本がこれを完全に履行してくれるかという心配をしておる向きがあるようでございます。新しい信頼関係の確立には、まずもって具体的にこれを実行することが第一のあかしであります。政府として、共同声明に盛られた事項の実行について、特にASEAN側が大いに感銘を受けて歓迎をいたしましたASEAN文化交流基金の構想についてどう対処するのか。また、アジアの一員として平和と繁栄を分かち合うための友好関係の育成には、もっと基本的な南北問題への取り組み方が裏づけらるべきだと思います。南北問題に対する基本的姿勢についてお聞かせを願いたいのであります。  次に、中国とは国交回復してからはや五年を経過いたしました。この間、共同声明に明記されました貿易、航空、海運、漁業の実務四協定はすべて締結され、両国の関係は順調に推移をいたしておりますが、いまだ日中平和友好条約交渉は妥結に至っておりません。私は、両国が将来にわたって揺るぎない友好関係を確立するためには、米国を初め、ソ連、東南アジア等の世界各国との関係、動向を踏まえ、国益を十分考慮しながら、上述関係国の理解を得る努力を積極的に推進しつつ、速やかに日中平和友好条約締結を図らるべきだと考えますが、政府の所見を伺います。  次に、核燃料再処理問題に関する日米原子力交渉について伺います。  核燃料の再処理問題については、半年余りに及ぶ日米両国政府交渉を経て、ようやく先月十二日に決着し、二十二日、国民の待望久しい東海村核燃料再処理施設が運転を開始したのであります。私は、今回の交渉に尽力されました宇野科学技術庁長官を初めとする政府関係者の労を多とするとともに、わが国立場に深い理解を示されました米国に対し感謝の意を表したいのであります。今般の原子力交渉に当たってわが国が貫いた基本的立場はどうであったのか、また、今回の交渉結果を踏まえ、政府わが国の原子力開発利用をどのように進めていくつもりであるのか、伺いたいのであります。  さらに、わが国が資源有限時代対応して今後とも発展していくためには、省資源、省エネルギーの推進を一層図るとともに、わが国の持てる科学技術のすべてを駆使して、将来の夢である核融合の開発に全力を挙げて向かわなければなりません。総理は、わが国の核融合の研究開発の将来ビジョンをいかに考えていられるのか、また、核アレルギーを持つわが国国民にいかに理解を求め、かつ、これを推進しようとされるのか、お伺いをいたします。  次に、行財政改革について伺います。  今日、行政改革が大きな政治課題として取り上げられております。わが国経済が高度成長から低成長へ移行し、三年有余の不況という谷間の中で、民間企業は減量経営を余儀なくされ、これに対応するため懸命の合理化努力がなされております。一方、わが国の行政組織は、昭和二十七年以降その骨格は変わらず、従来の高度経済成長に支えられ膨張して、いまや財政は国、地方を通じて大幅な赤字を抱えるに至っております。いまほど、国民の負担の軽減を図り、国民のニーズに合った行政を目指し、肥大化した旧態依然たる行政機構を見直し、近代化、効率化を図り、抜本的改革に取り組むことが要請されるときはありません。  そこで、まず伺いたいのは、行政改革に臨む総理の決意であります。御承知のように、その改革は、だれしもその必要性は認めながら、いざ具体案が出ると、これが官僚や与野党を含む議員の強い抵抗により、なかなか進まないのが行政改革の特色で、これまでほとんどかけ声だけに終始し、基本的課題解決が見送られてまいりましたが、改めてこの難題に取り組む総理の理念、決意を披瀝願いたいと存じます。  さて、先月二日に閣議了解になった行政改革要綱は、現時点では妥当なものと考えます。行政改革の柱は、何と申しましても、拡大した行政組織を縮小するものであり、その中心は人員の整理ではないかと思います。行政改革は、財政を合理化し効率化して、行政経費の節減にあるのでありますから、人員を適正に削減して、チープガバメントを目指すべきだと思います。  さきの要綱では国家公務員の定年制に触れておりません。行政改革の基本的理念が失われているようで、私は、民間との均衡を考慮し、若年労働力の吸収からも、この際、地方公務員に先んじて国家公務員に定年制を導入し、これを六十歳とすべきだと思いますが、御所見を承りたいと思います。  公務員の人員削減に関連して、定年制とともに取り上げたいのは、国家公務員の定員問題であります。今回の要綱では、昨年八月閣議決定を見た五十二年以降向こう四年間に五十一年度末定員総数の三・二%を目途に削減する計画を踏襲しております。この十年間に地方公務員は六十万人増員されておるのに、国家公務員については三次九年に及ぶ定員削減により、自衛官及び五現業職員を除き五十万六千五百七十一人と、その削減に努力されてまいりました経緯は多とするにやぶさかではございません。今回の改革は、これまで歴代内閣がなし得なかった抜本改革の第一歩であるだけに、前内閣の既定のものを引き継ぐのではなく、新たな視点から定員管理を見直すべきだと思うのであります。再考の余地はないか、お伺いをいたします。  なお、関連して、補助金、助成金、負担金の整理について具体的考えがあればお聞かせを願いたいと思います。  次に、特殊法人のあり方が大きな問題となっております。百十二に上る特殊法人は、それぞれその時の国策上、特別立法で設置されたものでありますが、低成長時代を迎えた今日、これほどの数をいまなお存置させる必要があるのか。活動状況、業績評価を十分調査をして整理統合すべきだと思いますが、この点についても所見をお聞かせ願いたいのであります。  特に、役員の給与、退職金については、民間、公務員との均衡を考慮して決定すべきだと思います。設立当初、役員に民間の有為な人材を確保するための給与基準は、天下り役員がほとんどを占めている現実では果たして妥当なのか、役員の選考基準の見直しについて政府はいかに対処するのか、所見をお聞かせ願いたいのであります。  以上、行財政改革に関する基本的な問題に触れましたが、行政改革ほど政治決断総理の強いリーダーシップを要するものはありません。今回の改革が単なる機構いじりに終わることなく、硬直化した行財政体質の抜本的改革に国民の声、政治の力を結集して、この難問題解決に当たられることを強く私は要望いたすものでございます。  最後に、公害の原点と言われる水俣病についてお伺いをいたします。  昨年末の熊本地裁の水俣病認定申請の不作為違法確認の判決に基づき、熊本県はもちろん、国においてもその対策について努力をされていることについては承知をいたしております。しかしながら、九月末現在、なお全国二十六都道府県にまたがる申請患者四千二百人近くの未処分件数を抱え、また、新規の申請が月に百件に達している現状を考えますと、現行制度の枠内での対応で水俣病認定問題の根本的な解決期待できないと思います。私の杞憂であれば幸いです。本問題については、さきの熊本県知事への国の回答は、認定業務を国において直接処理することは適当なものとは考えがたい旨を述べているだけであり、制度の抜本的改正についての国の考え方は何ら示されていないのであります。政府はどう考え、どう措置しようとされるのか、お尋ねをいたします。  さらに、御承知とは思いますが、水俣、芦北地区はチッソ水俣工場を中心として発展をしてきた地域であります。しかしながら、水俣病発生以来のチッソの不振や、海域汚染による漁業の不振等のため、三割にも及ぶ人口の流出を招くなど、当地域の疲弊は著しいものがあります。水俣病被害者の一日も早い救済は最も重要かつ緊急な問題であることは言うまでもありませんが、有機水銀に汚染された水俣、芦北地区を今後どう振興させていくかについて、国としても当然取り組んでいただかねばならないと思います。同時に、チッソの当地域において果たす役割りと、水俣病患者への民事責任の円滑な履行のためにも、チッソに対する国の適切な援助措置が必要であると考えるのでありますが、政府見解をお伺いをいたしたいのであります。  以上で私の質問を終わりますが、働こう内閣にふさわしく誠実にこの難局を打開しようとして精励せられておる総理以下各閣僚に対して、私は深くその精励に敬意を表すると同時に、今後の御活躍をお願いをし、また、総理から適切な御答弁を賜りますことをお願いをいたしまして、私の質問を終わります(拍手)。    〔国務大臣福田赳夫登壇拍手
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答えいたします。  まず、今回のハイジャック事件につきましては、再発防止、この問題が重大なことではあるまいか――全く私はそのとおりに考えておるのでありまして、事件が一段落いたした直後、内閣対策本部をつくりまして、一昨日、その初会合をいたしまして、私からその初会合の席上で、これはもうじんぜん日を許すわけにはいかぬ、日がたてば、これがとにかくうやむやになるおそれがある、もう直ちにこの問題に着手し、早急に結論を出さなきゃならぬと、こういうので、今月いっぱいに結論を出すということを要請をいたしておるわけでありますが、内容につきましては、外交的な処置を要する問題もあります。これは時間がかかる。しかし、国内処置ですね、これはもう国内で決めればそのとおりやれるわけでありますから、早急に万全の施策を講じたいと、かように考えておる次第でございます。  なお、園田さんから、この厳しい世界情勢の中で、福田、おまえはどういうふうに姿勢をとっていくんだと、こういうお話でございますが、確かに私はいま厳しい世界情勢だと思うのです。いま世界を離れてわが国の安全を、わが国経済を論ずるわけにはまいりません。この世界情勢というものを見てみますと、私は、戦後三十年とちょっと違う問題が出てきておると思うのです。南北問題、これはまあ六〇年代から厳しくなってきておりますが、いよいよこれが激化する時代になってきておる。また、この資源・エネルギー有限という問題、これももう世界に定着する動きと、こういうふうになってきておる。そこへもっていって、やっぱりあの五〇年代以降のあの厳しい東西の関係、これもまた依然として続いておる。この複雑多様な要因を抱えた世界の今後を考えますと、私は、世界情勢というものは、これからやはり当分の間というものは波乱含みの非常に不安定な時代が続くんじゃないか、そんなような感じがしてならないんです。そういう中で、わが国の安全とわが国の繁栄をどうしてやっていくか、これが私は当面政治に課せられた最大課題である、こういうふうに思うわけでありますが、そういう中で、とにかく先々の可能な限りの展望の中におきまして、わが国社会を、わが国経済をどういうふうにやっていくか、これが忘れることのできない最大課題になってくるわけであります。  そういうことを考えますと、高度成長もう再びというような考え方はできない。そうなりますと、やはり国民の各界各層に、いろいろ厳しいことにつきましても率直に申し上げて、そして御理解を願わなきゃならぬというふうに思いますが、私がかねて申し上げておる協調と連帯、この精神こそはこれからいよいよ重大になってくるし、これは国際社会においてもまたそのとおりであろう、こういうふうに思うわけでございます。私は、この立場を与えられたものといたしまして、本当に、所信表明でも申し上げましたとおり、日本丸の前途を誤らしめないということを旨といたしましてやっていくということを申し上げて、お答えといたしたいと思います。  それに関連いたしまして、園田さんから、福田、おまえ、大型の諮問機関でも持ったらどうだというような御提言でございます。私も、これからの日本国民がどういう気持ちで最大公約数としてまとまった考え方を持つかということ、これができれば大変いいことだと思っておるんです。そういうことで、二十一世紀のビジョンづくり、そういうことについて大型の諮問機関などというものをつくったらどうだろうというような方もあります。ありますが、私は、そこまで考えて、私が私の意見を決めて、そしてみんなに呼びかけるというのは、ちょっと出過ぎた行き方じゃあるまいか。何となく世論というものがコンセンサスの方向に向かう方向が出てくればなあというふうに考えておるのです。まあ、よく言われますが、明治時代には、追いつき追い越せという国民の目標があった。富国強兵という合い言葉もあった。文明開化という国民的な願いもあった。いま、それがちょっと追いつき追い越せというような状態が実現され、文明開化というような時代にもなり、また富国強兵ということは、これはもう強兵の方は放棄しちゃったわけですから、ちょっと国民的なコンセンサスが、こう、穴があいたというような気がするのです。しかし、この変動期でありまするから、そういうこともやむを得ませんけれども、これから先を見回して、国民全体の中で何かコンセンサスができたらいいのじゃないか、そう思いまして、それとなく私は各界の指導者あるいはまた若い人、あるいは中年層の人、御婦人の方、各界の人、そういう人と対話をしてみる、そういう中でどんな感じが出てくるかということも見きわめてみたい、そのように考えておる次第でございます。  経済問題に触れられまして、六・七%成長というのは一体可能なのか、こういうようなお話でございますが、これは私は可能である、こういうふうに考える次第でございます。とにかく、ほうっておきましても大体五・九%ぐらいいきそうだ、そこへとにかくあれだけの需要をつぎ込むのですから、六・七%は可能になるだろうと思う。しかし、それで問題は解決されたかというと、そうではないのです。これは園田さんが後からるる御指摘ありましたが、いろいろの問題がある。  その中で最も大きな問題は、私は構造不況の問題である、このように考えておるわけでありまして、構造不況につきましては、不況業種につきましては、一つ一つそれぞれ具体的な対策を進めておるわけでございますが、その一つ一つを示せというのでありますが、これはずいぶん時間がかかりますのでお許しを願いたいのですが、一般的に申し上げますと、これはやっぱり企業間におきまして生産・価格調整を進めておるわけでございます。その方法としては、独禁法による不況カルテルの結成、あるいは中小企業団体法によるところのカルテルの結成、そういうようなことがあります。それから、政府におきましては減産指導をする業種もあります。そういうものは、紡績業、また塩化ビニール樹脂産業、またアルミ圧延、小棒産業、平電炉、綿紡、毛紡などの紡績業、絹織物、そういうような業種でございますが、生産・価格調整をそういうものについて進めておる。  それから、過剰設備対策というものが必要なんです。つまり過剰設備を封印をいたしますとか、あるいは廃棄いたしますとか、そういうことになりますと、平電炉産業とか綿紡あるいは毛紡、絹織物などの種類がそれに該当する、こういうふうに考えます。また、減産、設備廃棄、そういうことをやるものに対しての金融対策、これも必要になってくるわけでありますが、それに対しましては、債務保証基金を平電炉産業に対しまして設置するということでありますとか、中小企業振興事業団によりまするところの設備共同廃棄事業融資制度というのがあるのです。これは無利子で十六年までの融資ができるというような、非常にこれは強力な手段でございまするが、それの活用でありまするとか、その他、政府関係金融機関の条件緩和でありますとか、いろいろなことをやっております。  それから雇用対策、これはやっぱり今度動き出しました雇用安定資金制度、これが非常に物を言う制度である、また言わせたいと、こういうふうに考えておりまして、これはもう五十前後の業種にこれを適用いたしておる。それから特定産業の離職者雇用促進給付金制度、これも大いに活用しなけりゃならぬ、そういうように考えております。  なお、そういう構造不況業種対策をやった後、これらの産業がどういうふうに安定していくかという長期的な展望も、いまとる当面の対策そのほかにおきましても考えながらやっておるわけであります。この構造不況業種問題、これが非常に深刻な問題でありまして、これが片づきますと、非常に日本経済社会というものも明るくなってくるんじゃないか。  しかし、同時に、中小企業問題、一般的に中小企業問題もあるわけであります。いま園田さんから御指摘がありましたが、為替変動、これに対する特別措置、これはすでに実行をいたしておる、始めております。それから倒産関連防止対策、これにつきましては皆さんからも御指摘があったのでございまするが、政府におきましても、何らかそういうような関係で共済制度的なものはできないかということを検討をいたしておるわけであります。いずれにいたしましても、中小企業、これはわが国経済におきまして非常に重要な立場を占めるわけでありまして、この中小企業階層に全体として問題が起きてくるということは、これはもう絶対に避けなけりゃならぬという意識を持ちましてこの問題には取り組んでまいりたい、かように考えておる次第でございます。  次に、農業問題についてお触れになられましたが、農業問題、これは所信表明演説でも申し上げたところでございますが、どうも需要構造が非常に変わってきている。米は余っちゃう、しかし、必要な小麦だとか大豆だとか穀類、飼料作物とか、そういうものを大変輸入しなければならぬ、こういうような状態になってきておりまするので、いろいろ御議論なんかあるところでございまするけれども、ある程度の米の減産政策、これはやっていかなければならぬ。そのかわりに、その代替作物、これを奨励をする。そのための積極的な対策をとる。そして全体としての自給力を向上させる。また同時に、価格政策についての御指摘がありましたが、これは一つ一つの農作物について事情が違います。ですから、画一的な、米のような生産費所得補償方式というような、ああいうものを画一的にとるということはむずかしゅうございまするけれども、その作物の特性に応じて、できるだけ価格安定の施策をとっていきたい、かように考えておる次第でございます。また、米につきましては、とにかく消費の拡大、これを考えなければならぬし、やっぱり米につきましては、能率よく米が栽培できるという主産地形成というような考え方も、これは時間のかかる問題ではありまするけれども、取り入れていかなければならない問題ではなかろうか、そのように思うわけであります。  それから、物価の問題にお触れになられまして、五十二年度七%台の物価上昇、これは実現できるかと、こういうお話ですが、これは実現できる見通しでございます。とにかく卸売物価が世界最低の水準になった。これはじわじわと響いてくると、こういうふうに思います。消費者物価のこれからの成り行きを考えますと、これは安定基調で動いていく、こういうふうに思いますが、その間において、生鮮食料品なんかの動き、これについては格段の配慮をいたしてまいりたい、注意をしてまいりたいと、かように考えております。  なおまた、円高の問題につきまして御指摘がありましたが、円高による影響はすでに卸売物価には出ておりまするけれども、個別の商品につきましても、できる限りの順応のための指導をいたしたいと、かようにいま考えておる次第でございます。  また、今回の金利改定に伴いまして弱者救済をどうするかというお話でございますが、これはごもっともなことでございます。まあしかし、一律的に少額預金について特例措置を設けるということは技術的にもできません。そこで、生活保障、社会保障対象者の預金につきましては特例を設けるということにいたしたわけでありますが、非常に気持ちといたしましては私も園田さんと同じようなことでございまするけれども、政策的、技術的にやむを得ざる措置であると、かように考えております。  それから、地方財政の問題にお触れになられました。地方財政も、国の財政と同様に、私は、来年もまた苦しい年になるんじゃないかと、こういうふうに思っておるんです。苦しい者同士がどういうふうにその間を調整するかという大きな問題になってくるだろう、こういうふうに思いますが、いま交付税交付金の交付率の改定はどうかというようなお話ですが、まだそこまでの結論を出す時期ではございませんが、いずれにいたしましても、地方財政がその行政を執行する上に支障を生ずる、こういうことのないようにはしなければならない、かように考えておる次第でございます。  それから、これに関連いたしまして、地方税源の充実というようなお話もありましたが、この問題は、これは数日前の税制調査会においてもそのような趣旨の答申をいたしておるわけでございます。いつ、いかなる形においてこれをそういうふうにするか、これについてはよくこれから検討をいたしてみたいと、かように考えます。  次に、外交問題に転ぜられまして、世界に臨む外交姿勢はどうかというような大きな御質問でございますが、やっぱりわが日本は、世界におきまして、これは何と申しましても、平和国家という旗印を掲げたんです。これはそれを掲げるにふさわしい条件も持っておるわけであります。核は持たず、つくらず、持ち込ませず、非核三原則。また、他国を脅かすに足るところの軍備を持たない、こういうこと。この平和国家。そうすると、ただ乗り論という議論が出てくるわけでございますが、それに対しましては、開発途上国等に奉仕、貢献をしよう。さらに、その上、これから人類としてもう大変な問題になってくる資源・エネルギーの問題です。その新しい資源・エネルギーの問題、その中で石油にかわるエネルギーの開発なんという問題に日本が積極的に貢献するというようなことも、私は、このただ乗り論と言われる前に、わが日本がなすべきことではなかろうかというような感じもいたしますが、要するに、軍事国にはならぬというたてまえのもとに世界の平和と繁栄に貢献をする。これがわが国の基本的な外交の構えでなければならぬ。さように考えまして、国内においては協調と連帯ということを申し上げておりますが、国際社会におきましても、そのようなことを基本といたしまして外交政策を進めてまいりたいと、かように考える次第でございます。  それから、東南アジア諸国に対しまして、私が先般回ったそのとき東南アジア諸国約束をした経済協力、これが実現できるかというようなお話でございますが、これは必ず実現しますよ。私もちゃんとそろばんをはじいて、これは実現可能であるか、不可能であるか、よく見きわめをつけてやっているんですから、この点につきましては、いささかの御不安もないようにお願いをしたい、かように考える次第でございます。  それからさらに、ASEAN問題に関しまして、文化交流基金構想というのが伝えられたがどうかというお話でございますが、私は、ASEANのみならず、東南アジア諸国、この間に経済関係、これがとにかく主軸をなし過ぎてきたんです。そうではなくて、文化的な心と心との関係というものにとにかく主力を置くような状態につくり直さなけりゃならぬだろうと、こういうふうにいま考えまして、日本とこれらの国々との文化交流を大いに進めたいと思います。しかし、同時に、とにかくASEAN五カ国というかたまりができて、そして、これからお互いの経済を、お互いの文化を向上しようという努力が始まった。でありますので――日本じゃありませんよ、そうじゃなくて、この五カ国の間でいろいろ学術あるいは文化の交流をしようという計画がある場合におきましては、日本はそれに対しましてできる限りの御協力を申し上げましょうと、こういうことも申してきておるわけでありまして、いまASEAN諸国において、どういうそういう面の交流をしようか――つまり、ASEAN諸国というのは経済でかたまったんです。それをさらに文化、学術、そういう面まで拡充しようと、こういう動きにつきまして具体的な検討を始めておる、こういう段階であります。検討が固まり、そして日本政府もこれは大変結構だという認識ができますれば、わが国としても所要の御協力を申し上げたいと、かように考える次第でございます。  なお、南北問題を重視せよというお話でございます。南北問題は二つの面に分けられると思うのです。一つは貿易の面です。ASEAN諸国を回りましても、経済協力、これはもうお願いしますよと、しかし、それよりも何よりも、日本はひとつこのわれわれの第一次産品、これをもっともっと買ってくださいよということなんです。そういう貿易の面。それからもう一つは、それと同時に経済的な御援助を願いたいという、二つの面があるわけでありますが、南北問題と言われる問題、大きく区分けすると、そういうものに分けられる、こういうふうに思うわけであります。南の国々が北の国々に対して、なるべく売りいいような体制を整える、北の国々はその要請にこたえると同時に、経済的な協力強化すると、こういうことだろうと思いますが、そのような考え方、国際社会におきましていろいろな企画が進められておりまするが、わが国も積極的にこれに参加し、協力いたしてまいりたいと、さように考えております。  日中平和友好条約の問題でありますが、これは所信表明演説の中で申し上げましたので、ここでは省略さしていただきます。  それから、核燃料再処理問題についてのわが国の基本的立場はどうなっておるかということでございますが、これはこの前の臨時国会でも申し上げたかと思うのでありまするけれども、わが国は核が拡散されるということは絶対に困る、その立場は、これはもう世界じゅうで私は理解されておると思うのです。しかし、同時に、わが国の生命線とも申すべき核燃料サイクルの確立、そのための核燃料の再処理、これが妨げられるということも困る。この両者を両立させなきゃならぬと、こういうわが国の基本的な立場でございます。今回の日米交渉におきましては、この両者が大体におきまして両立し得たということになったわけであります。そこで、今後国際社会におきまして、いわゆるINFCEPの会議が進行するわけでありますが、わが国といたしましては、このINFCEPの会議に積極的に参加いたしまして、今後のわが国考えておるような方針、つまり、平和的利用を阻害してはならない、しかし同時に核が拡散されるという危険は絶対に防止しなけりゃならぬ、これが両立するような方途につきまして検討を進めていきたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。  さて、さらにエネルギー問題の先の先につきましてのお尋ねでございます。世界のいま大体の見方は、石油は三十年、四十年もつかもしらぬけれども、あと十年たちますると、この石油の供給自体、これがかなり窮屈になってくるであろうと、こういうようなことが一般的に展望されておるわけです。さて、それに対してどういうふうな対処をするかということになる。とにかく、なるべく石油の輸入が確保されるようにという努力をすることは当然でありまするけれども、同時に、代替エネルギーの開発、代替エネルギーと申しましても、これは原子エネルギー、これがとにかく最大の頼りなんでありまして、どうしてもわが日本としてはこの原子エネルギーを急がなけりゃならぬという立場に置かれておるわけです。しかし、それにもまた限界があるだろうと、原子力エネルギーの根源であるところのウラン、これが無限であるかというと、これも資源有限である。そうなると、その先をどうするんだという問題がまた起こってくるわけです。そういうことを考えますと、いまかなり学術的に進行しておるところの核融合の問題でありますとか、サンシャイン、太陽熱利用の問題でありますとか、そういう問題もいまから検討いたしておかなければならぬだろう、こういうふうに思います。わが国におきましても、かなりこの検討は進んでおるんです。世界では有数の、指折りの国の一つになってきておりまするけれども、さらに私はこれらの問題につきまして積極的に研究に参加、貢献をすべきであるというふうに存じ、この間宇野長官が訪米いたしたときも、そのような見解アメリカ側に伝え、アメリカもこれに賛成であるということであったことをつけ加えて申し上げます。  行政改革に臨む理念、決意いかんというようなお考えでございますが、この行政改革の考え方につきましては、先月初めに発表いたしたわけであります。ただ、別途検討だというふうになっておるのは中央省庁の問題であります。その他の問題は、あの要綱に示されております線に従いましていま具体的な詰めを進めておるわけでございまして、成案ができますれば、次の国会から逐次国会の御審議に、必要なものにつきましては、これを付していきたい、こういうふうに考えております。  やはり、御指摘のように、定員の管理の問題、これは重要な問題であります。いま定員管理計画が進められておるわけでありますが、あれとても実行するにはなかなかむずかしいような状態で、完全に実行されておるかというと、そうでもないところもあります。しかし、今度あれを完全実行する、また同時に、新規定員の増加、これは各省からいろんな要求がありまするけれども、これは他のところからこれを振りかえて使うというようなことを厳格に実行していきたい、こういうふうに考えておりまするし、それから補助金、助成金、そういうものにつきましても、これを整理、合理化を進めてまいります。これは五十三年度からいたすようにいたします。  それから、定年制についての御言及がありましたが、これはなかなかむずかしいんです。いま六十歳定年制という話でありますが、さあ、まあ六十歳としたら、いま五十歳だ五十五歳でやめていかれる、今度はだんだん六十歳までおるんだということにもなりかねないのでありまして、この定年制をつくるということ、それは目標としては、私は、やっぱりそこまでいかなけりゃならぬけれども、そこへだんだんとなだらかに持っていくようなことにしなければならないんじゃないか、そのように考えておるわけであります。  なお、特殊法人について整理統合、役職員の給与、退職金、役員選考基準の見直し、そういうような御提言でありましたが、それはそのように心得ておりまして、いま具体化をどうするか、これを急いでおるような状態でございます。  最後に、水俣病の問題についての御所見でございますが、病人の認定問題につきましては、今月からさらに熊本県の検診体制を一段と強化するということにいたしておる。これは園田さんもよく御承知のとおりと思いますが、水俣、芦北地区の産業振興、これはまた県当局等とも相談いたしまして、できる限りのことをいたします。また、同地区における水産業、これは、非常に水産業が苦しい立場にあるわけでございますが、これも地域の実態、知事等の意見も十分お聞きし、また、園田さん等の御意見も伺いまして、そして善処してまいりたい、かように考える次第でございます。  一番むずかしいのは、最後のこのチッソの問題でございますが、非常にこれは負担がかさんでまいりまして、苦しい立場にある。しかし、何といたしましても、このチッソが健在であってもらいませんと、この被害者の救済、これに非常にむずかしい問題が出てくるわけでありまして、何とかこのチッソが健在であって、そうして被害者に対して補償金の支払いができるような状態にあることを希望しておるわけでございますが、しかし、一企業に対しまして特別にどうということにも限界がありますので、その辺が非常にむずかしいところでございますが、行政的にできること、そういうことにつきましては最善を尽くしてまいりたいと、かように考えております。(拍手
  24. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君)質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十一分散会