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1977-11-21 第82回国会 参議院 法務委員会、地方行政委員会、外務委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十二年十一月二十一日(月曜日)    午後一時二十三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。    法務委員会     委員長         中尾 辰義君     理 事                 大石 武一君                 八木 一郎君                 寺田 熊雄君                 中野  明君     委 員                 大島 友治君                 山本 富雄君                 橋本  敦君                 円山 雅也君    地方行政委員会     委員長         金井 元彦君     理 事                 望月 邦夫君                 野口 忠夫君                 神谷信之助君     委 員                 成相 善十君                 丸茂 重貞君                 佐藤 三吾君                 志苫  裕君                 阿部 憲一君                 上林繁次郎君                 向井 長年君    外務委員会     委員長         安孫子藤吉君     理 事                 大鷹 淑子君                 亀井 久興君                 原 文兵衛君                 戸叶  武君     委 員                 永野 嚴雄君                 秦野  章君                 渋谷 邦彦君                 立木  洋君                 和田 春生君                 秦   豊君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  鳩山威一郎君        運 輸 大 臣  田村  元君        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    小川 平二君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        警察庁長官官房        長        山田 英雄君        警察庁刑事局長  鈴木 貞敏君        警察庁警備局長  三井  脩君        法務大臣官房長  前田  宏君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省中近東ア        フリカ局長    加賀美秀夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   岡垣  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君        常任委員会専門        員        奥村 俊光君        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        内閣審議官    田中 和夫君        外務大臣官房領        事移住部長    賀陽 治憲君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○航空機強取等防止対策を強化するための関係法  律の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院  送付)     —————————————   〔法務委員長中尾辰義委員長席に着く〕
  2. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) これより法務委員会地方行政委員会外務委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして私が連合審査会会議を主宰いたします。  航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案についての趣旨説明はお手元に配付してあります資料により御了承願うこととし、直ちに質疑に入ります。  この際、政府側に申し上げます。質疑者の持ち時間は答弁時間を含め限られた時間でありますので、答弁は簡潔適切にお願いをいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 秦野章

    秦野章君 ハイジャック事件に関連して法案が審議されることになったわけでございますけれども、ハイジャック事件というのは、国内法の問題であると同時に、すぐれて国際的な影響も多く、国際問題であるという認識が必要だと思うのでありますが、ただ、これに対する対応策というのは、確かに国によって憲法その他実定法も違うし、それからまた民族の違いもあるし、歴史の違いもある、そういうことで、そう単純に比較して単純に判断をするということは間違いだろうと思いますけれども、ただ、近代国家といいますか、法治国家として、国際的に特にすぐれて国際問題であるということを考えますというと、そのことを念頭に置かざるを得ないというふうに思うのです。  総じて、今度提案された法律は、一体予防のためなのか、後始末のためなのか、その辺の感覚をまず最初に総括して、きょうは官房長官総理もおいでにならぬので、瀬戸山先生、まことに恐縮ですが、政府を代表して御答弁願いたいと思います。
  4. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ただいま御審議いただいておりますのは、まあ後始末といいますか、事件が仮に起こった場合それに対する責任を問うという一面もあります。この措置だけで完全とは思いませんが、予防的な面は、いわゆる爆弾等ハイジャックにつながるおそれのあるものを持ち込むことを厳にチェックする、それからもう一つは、ハイジャックにつながるような危険な人物といいますか、性格のある者をできるだけ海外渡航線に乗せないと、こういう面においては予防措置にもなると考えております。
  5. 秦野章

    秦野章君 たとえば、この前のハイジャックが起きた後の予算委員会の質問で、五十年の春でしたけれども、私、旅券法の問題について、無法な一定の原因がある旅行者から旅券を無効ならしめる方法について、とにかくそれを返納させるほか手がないというやり方はまずいではないか、これはもう事前に公告なり何なりして、事前というか、そういう方法でやったらいいということで、まあそのことは今度ようやく、この前のハイジャックの直後の意見外務省は検討すると言ったのだけれども、二度目が起きなければやっぱり実現できなかったというそういうテンポの大変のろいところを残念に思うのですけれども、そういう予防に多少とも役立つことはできるだけいま法務大臣がおっしゃるように努力をしながらも、しかし、テロリストの犯意というもの、意図というもの、覚悟というものを考えたときに、これに対して、言うならば法律主義をもって対応することはできない、多分むずかしいだろう。予防ということになると、ああいったようなことをやる意図をくじく方法は一体何であろうか。あの意図、あの覚悟をくじく方法というものをどう考えたらいいのかということになると、私は、法律をつくるとその意図がくじけるのだろうか、そこにちょっと問題があって、予防ということについてはそれはまあいろいろな技術的な問題がいろいろ行政的に講じられることは結構なんだけれども、根本的にあの意図をくじくというようなことについてあんまり役に立たないということを認識せなきゃならぬと思うのですね。なぜそんなことを私申し上げますかというと、結局、ああいうものが起きたときの最も基本的な問題は、即時に対応する政治姿勢とかそのときにおける行動というものが決め手になるのだろうと、こう思うのでございますが、法務大臣、いかがでしょう。
  6. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) おっしゃるとおりに、彼らは特殊な考えを持っておると思いますが、言われておりますように暴力的な手段によって世界革命——夢みたいな話でございますけれども、世界革命をねらっておると、こういうことでありますから、その野望が達成できないのだと、こういう措置をとることが万全の予防策になると思います。言いかえると、世界各国世界じゅうの国々がそういうものを受け入れない仮に飛行機あるいはその他によって入った場合は全部これを逮捕して処断する、そういう国際的な動きがありますと、私は、目的を達成するためにやっておるのですから、これはやったってだめなんだということにならなければ終わらないと、かように考えますが、それがなかなか御承知のとおりいまの世界各国の事情では必ずしも万全でない。それに全力を挙げて努力することはしなきゃならない、かように考えております。
  7. 秦野章

    秦野章君 意図をくじくということについては、ほとんどあんまり効果がないのではないかというふうに私も思うわけであります。それだからといって、これは必要がないと言うわけじゃありませんけれども。  そこで、今度は、この間の事件の取り扱いに関連して、私、基本的な考え方とか姿勢の問題でお尋ねをしたいのですけれども、まず、超法規、超実定法という態度なんですけれども、これは法制局長官の御意見を伺いますが、超実定法ということは、政治判断だ、つまり憲法法律にないことをやるわけでございますから、これは言うならば役人のベースを越えた問題だというふうに思うのですが、これはいかがでしょうか。
  8. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) お答え申し上げます。  前回、おととしのクアラルンプールのときには、主として超法規という言葉を使っておりましたが、今回は、政府としては超実定法的措置という表現で実は統一したわけでございますが、言わむとするところは結局同じでございまして、超実定法、つまりわが国成文法主義でございますから、実定法といい、成文法といい、同じでございますけれども、今回の場合のように乗っ取り犯人人質を盾にとってわが国に対して非常に不法な要求をする、そういう場合を予定して平素から実定法つまり成文法が整備されているわけではございません。ございませんが、しかし、その場合に、一体実定法つまり成文法をあくまでも厳守して法の権威あるいは法治主義権威を守り通すか、あるいは、その場合の何十人あるいは百数十人の人質生命を救うかという非常に瀬戸際に立たされて今回の場合でも対策本部の方々の決断は非常に苦渋に満ちた空気のもとで決まったわけでございまして、おっしゃるようにそれは純粋に法律的に片方が尊重すべきで、片方はそれよりも尊重すべき度合いが薄いのだというようなことが一義的に法律的に決まるものではございません。多分にそれはまあ政治的とばかりと私は思いませんけれども、やはり実定法を越えた条理だとかいろいろなやはり働くべき法理があるわけでございますので、そういうものに照らして今回——前回もそうでございますが、今回も百数十人の生命を守るというふうに実は決断をつけまして、そして、はなはだ残念ではございますけれども、実定法つまり成文法にない、成文法には書いてない措置をとらざるを得なかったと、こういう次第でございます。
  9. 秦野章

    秦野章君 いまの長官のお話、私は結論のことを言っているのじゃないのですよ。法解釈だと言うと、私はちょっと疑義があるわけだ。つまり、政府憲法法律を守る義務があるわけですね。だけれども、こういう事態になったのだからということで、超法規はわかるのだけれども、わかるというか、仕方がないのだけれども、これは言うならば政治判断なんだ、法解釈論では無理なんだ、法解釈というものじゃない、そういうふうに厳しくいかないと、安易に流れる危険があることに非常に心配があるのですよ。だから、私は、端的に言うと、法制局長官権限のらち外の問題じゃなかろうかと思うのですよ。純粋に政治判断ということでしか理解できない問題だ。その点が少し安易になっているのではないかという気がするのですが、いかがですか。
  10. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 御承知だと思いますけれども、現在の日本法秩序全体はそれはもちろん成文法つまり実定法を中心にして形づくられておりますけれども、しかし、およそ成文法が森羅万象、社会的事象のすべてを書き尽くせるわけじゃございませんので、おのずから実定法にはない慣習法もありましょうし、条理もありましょうし、あるいは自然法と言われているようなそういう法理もございます。今回のような場合は、まあ強いて言えば緊急避難的なものであろうと思いますけれども、そういう緊急避難的な場合に処する処し方については、これは御承知のとおり刑法の三十七条にもございますし、あるいは民法の不法行為のところにも緊急避難の場合には損害賠償の責めを免れるというような規定がございまして、実は緊急避難とか正当防衛とかいうような法理はこれは実定法にあるとないとにかかわらず法理として働くものだというふうに私は考えております。もちろん、おっしゃいますように、これは安易に流れてはいけないのであって、慎重の上にも慎重に、しかも緊急避難の場合でございますと、刑法の三十七条に書いてありますように、過剰避難はいけない、正当防衛でも過剰防衛はいけないというふうなこともございますし、これは十分慎重にやらなければならないという点はおっしゃるとおりでございます。
  11. 秦野章

    秦野章君 私はそこはちょっと違うのだけれどもね。つまり、正当防衛とか緊急避難とかそういうのは、市民権——自然法成立の歴史的な経過から言っても、市民市民との権限が衝突したとき、あるいは市民に準ずるものの衝突したときで、国家国民との間に正当防衛とか緊急避難なんかあるわけはないですよ。もしそういうことであるならば、国家に対して内乱その他を起こして正当防衛だ、こういうことになっちゃう。だから、私は理論的にちょっとそこに疑問があるのですよ、いささか。こういう点ここでは時間があんまりありませんからあれしている余地はないのですけれども、少なくとも政治判断以外の何物でもなかった、政治行動だと、こう解釈することの方が法治国家としては妥当なんではないか、こう思うのです。何かかぜを引いておられるようだから余り答弁に立たせると悪いからあれしますけれども、またいずれ個人的にいろいろ私も教えを請いたいし、この問題を詰めていきたいと思います。  そこで、政治的な問題にウエートがあって初めてこのことはできたのだということになりますと、今度は政府立法府とそれから言うならば裁判司法権の方の、この三権のこういう事件に対する対応の問題として一遍考えてみなければいかぬと思うのですが、まず最初に、そのことでドイツのシュライヤーの子供さんが弁護士でもって原告になって釈放の仮決定をしてくれという憲法裁判所訴えがありましたが、日本ではああいう訴えができるのですかできないのですか。これはどこに聞いたらいいのだろう。そういう訴えができるのか。憲法裁判所訴えて、ドイツでは御承知のように判決は却下をいたしました。ああいう訴えの道、つまり三権分立組織ですから、議会制民主主義、特に日本三権分立ですから、非常な対応に対しては政府対応方法があるし、立法府司法府も対応の何らかの方法があるはずだ。しかし、ないならないでそこに欠陥があるのかないのか、こういう基本的な問題を論議するのが私は立法府としては大変にふさわしい問題だと思うのですけれども、まずその点、具体的な問題がドイツにあったものだから、日本で一体たとえば人質になった人の家族が早く釈放してくれという訴え裁判所訴えることはできますかできませんか。
  12. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 私、いまの問題、余り詰めて考えたわけでございませんけれども、現在の日本実定法から言いますと、そういう人質になった人の家族が、国に対して、自分の親族なり家族である人質を救うために、犯人の言うことを聞いてくれということを裁判所に対して訴え出るというそういう請求権といいますか訴権はどうもないのではなかろうかと思います。
  13. 秦野章

    秦野章君 これはひとつ政府部内で検討していただきたいと思うのです。というのは、秩序生命かという二者択一というわけにいかない。生命秩序の真ん中、間にものすごい苦悩に満ちた判断をするわけですけれども、これを政府だけがすればいいという問題ではなかろうと思うのですね、こういう問題になってきたら。だから、裁判所に道があるのならそれも一つの手だし、それからそれよりも今度は立法府というのは一体どうなんだろうということを考えたいのであります。というのは、要するに価値観の問題が実ははなはだ明確でない。政府のこの間とったいろいろな新聞記者会見その他の発言にしても、生命価値とか、あるいは生命以上の価値とか、価値観というものについていま少し国民に啓蒙していくというか、民主主義のリーダーシップを発揮してもらいたかったと私どもは思うわけです。というのは、単純に秩序生命かなんという問題じゃないのは申すまでもなく、とにかく生命以上の価値というものを認めない限り今日の人類も国家もなかったわけでございます。いかなる国家生命以上の価値を認めたことによって今日ある、これは厳粛なる事実だと思うのですね。そういうことの問題の重さを国民にどうやって理解してもらうかということが日本の現状においてはきわめて大事だと思うのです。結論よりもそのプロセスが非常に大事だと思う。そういうことを政治の舞台でやってのける絶好のチャンスを逸したような私は感じがするのです。といいますのは、政府だけがさっさとやっちゃう。これはまあ非常に断腸の思いでおやりになったことはわかるのだけれども、しかし、これは、ドイツがやったからやったというのじゃなくて、憲法にも何にも権限がないことをやるには、やはり裁判所に引っかけるか立法府に相談をするか。立法府に相談するということは、立法府を構成している政党になろうかと思いますね。そういうことをやっぱりやって、そこでどういう意見が出ようと、そういうものが政治言動として中央に出てきたときに、国民はいろいろな問題の角度があるのだなあということがわかってくるのですね。私は、そういう意味において、いまの野党人たちはおれたちに相談しろと言って政府に切り込んでくるだけの心意気を持っていませんから、どうかひとつ政府の方で総理官邸へひとつ各党首に来てくださいというような調子で、やっぱりこういう問題はイデオロギーとか党利党派の問題じゃなくて国全体の問題だと思うのですよ。そういうようなイニシアチブをとることによって国民が問題の重さなり何なりがわかってくるようになるだろうと、そういうふうに私は思うのです。どうかひとつ、きょうは法務大臣大変恐縮ですが、これからまたいろいろな問題が起きる可能性もあるわけですけれども、その対応の仕方が少し短絡過ぎるというのか、右から左に裁き過ぎるというのか、そういう点について私は非常に残念に思って、実はこの前のクアラルンプール事件のとき、三木内閣のときに、ドイツのことをまねせいと言ったわけじゃないけれども、どんどん野党とも相談して、政権を野党も目指しているのですから、政党として国民責任があるのですから、こういう場合にどういう意見を持っているかということはやっぱり当然言うべきであります。また、言ってもらわなければ政府としても挙党の姿勢が出ないわけですよ。自民党も国民全部の代表じゃありませんから、一応政府を構成していますけれども、私はそういうことが実は非常に大事なんだと、こう思うのです。そういう意味において、これは公安委員長もいらっしゃるのですけれども、法務大臣も、政府意見統一をやってそれでさっといくという問題じゃない、そんな軽い問題じゃないと思うのです。  それからいま一つ政府の中でもたとえば検事総長だとか国家公安委員会というものは特殊の地位にあるわけですね、独自の地位にあるのです。今度検事総長態度というものは私は非常によかったと思う。何でもかんでも総理大臣とイコールではあり得ない。釈放それ自体は政府決断でやった以上しようがない。しかし、それに対する姿勢というか、その統一した総理の気持ちを具体的に表現する場合には、じっとただがまんをしてただこれを受忍するだけ、仕方がないというだけのことと、やむを得ないとそこまで踏み切って言う立場と、いろいろ立場があると思うのですね。そういう意味において、私は、この対応政治姿勢というものについて、次の問題を防ぐということに非常にかかわりがあるものだからそういうことを申し上げて、タイミングのいい政府の処置と言動というものがもう少し活力を持って出るならば、その次の問題に非常にいい影響を与える——いい影響というか、犯罪者に対する、反徒をくじくような方向に動くだろう、こう思うのですが、法務大臣、その点ちょっと御答弁を願っておきたいと思います。
  14. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) このたびのとりました措置について、私は御承知のように局外でありましたが、政府のとりました措置考え方は、先ほど法制局長官から御説明申し上げましたように、いわゆる実定法に処理の仕方がないから超実定法という名前を使った。しかし、憲法その他憲法政 のもとにおける諸制度は、国民生命財産といいますか、安全を図り、平和と自由を守るという大目標に憲法以下の法律が制定されておる。そういう意味で、政府は、百数十人の人命を尊重することは憲法のもとにおける措置としてはやむを得ないことであるけれども許されるものであると。そういう意味において憲法を超越した判断ではなかったと了解をいたしております。ただ、いまおっしゃるように、ああいう緊急事態、非常な事態でありますから、まあ冷静に考えていくとやや違いますけれども、しかし、この措置は、人命を救うという前提はありますが、やはり行政といいますか政府責任においてやったことでございます。政府が重大なことと判断する場合には、やはり国民のおおよその意向といいますか感情等を背景にしてやるべきものだと思うわけでございまして、いまおっしゃるように、ああいう非常に緊急な時間的な余裕もない場合もありますから、すべてがそうだとはなかなか断言できないわけでありますけれども、しかし、私は、議院内閣制度に基づく政府でありますから、国会の意見を聞くとか、時間的余裕がなければ各党の党首意見を聞いて、国家としてどういう判断をするか、こういうことをするのが非常にベターであると、今後可能な限りさようにすべきであるということを考えておるわけでございます。
  15. 秦野章

    秦野章君 最後に、直接関係ありませんけれども、日本刑事裁判が非常に長期である、長期にわたって裁判をしておる。これを調べてみると、先進国の中で一番長くかかるのですよね。たとえば浅間山荘事件なんかは、いまのペースで換算すると七十年かかるという説があるのですけれども、まさかそんなことはないだろうと思う。いずれにしても、長期裁判を克服するということは、私もほかの委員会に出てそういうことを言ったことがあるのだけれども、なかなかこれは刑事訴訟法その他いろいろな角度からの検討が必要だと思いますが、原告、被告、当事者のほかに裁判所、まあこういう問題について長期裁判をどうやって克服するか、これは直接関係ないけれども、しかし若干関係がある。やっぱりこれを何とか、これは法務省だけでやり切れない問題でしょう、裁判所もあるし弁護士会もあるし。だけれども、何か新しい構想で長期裁判をひとつ、特に重要犯罪裁判ですね。十年も十五年も、中には二十年もかかるなんてそんなことはもう本当に常識でいくとおかしいわけで、時間が遠くなればなるほど証拠は薄くなるだろうし、そして判決が起きたときはマスコミもぱっと書きますけれども、もう三日もたてば忘れちゃって、そして長期裁判判決が出たときには、無罪のときはああかわいそうに二十年も一生棒に振ったと書くし、有罪有罪でそんな二十年も十五年もたって裁判したってそんなものは予防的効果も薄いわけですから、この問題は法務大臣にぜひイニシアチブをとっていただいて、この長期裁判というものは何とか日本先進国として司法権権威——司法権権威というものは意外なところから傷がついていく危険もあると思う。日本は、幸い、裁判権威というか、司法権権威は国際的に非常に評価の高いものであるだけに、やっぱりこれを大事に守っていくということのためにもぜひ必要だと思いますので、ひとつ何か構想をお立てくださって、何カ年計画かで何かこの問題を具体的にしていただくことを最後にお願いして、この答弁をいただいて終わります。
  16. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) おっしゃるように、法治国家においては、争いがあれば最終判断裁判所でやるわけでございます。法律は書いてあるだけが能じゃないのであって、最終判断によって国民にその結果を早く知らしめるといいますか、実効をあらわすというのが法治国家の本当のねらいであるわけでございます。でありますから、そういうことを考えますと、裁判はできるだけ早く結論を出すということがたてまえであり、望ましいことである。民事にしろ刑事にしろそれが当然のことであります。御承知のとおり、いずれにいたしましても、裁判の迅速化ということで年々予算、人員等もお願いして進めておりますが、まだ理想の体制にはなっておりません、残念ながら。  それはそれといたしまして、いまおっしゃったように、こういう凶悪犯罪、国民が非常に注目をしておる凶悪犯罪というものの裁判が非常におくれておるというのは現実でございます。でありますから、この点は国民の側から見ますると非常に釈然たらざるものがある、私はさように見ておりますが、今度の事件が全部これにかかわりがあるというわけじゃありませんけれども、一部今度の事件がここにかかわりがありますから、この際、平素そういうことを考えておりましたが、こういう凶悪犯罪等国民が注目しておる犯罪についてはできるだけ早く裁判を終わらせる、こういうことから、御承知のように憲法三十七条で必ず弁護人を選ぶことができるように人権規定がありますが、これは当然のことでありますけれども、それを受けておる刑事訴訟法を逆用してことさらに裁判をおくらすという傾向がある。これは、私どもから見ると、まさに法の逆用、こういうことになっておりますから、その点を改めるためにいま準備を進めております。その内容についてもし御説明する必要があれば刑事局長から申し上げますが、次の通常国会までに何とか御提案を申し上げたいと、かように考えておるわけでございます。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 時間がありませんから簡潔に二、三点お伺いして、簡潔に答弁いただきたいわけでありますが、今度の事件は二年前のクアラルンプール事件に続いて人質犯人の交換といういわば超法規的な措置がとられたわけでありますが、政府はこれは人命尊重のための例外的な措置だということで釈明をしましたし、世論もこれを大筋として了解したのでありますが、例外というのはあくまでも例外なのでありまして、その例外が二度も行われるということになりますと、これはやはりそれが原則になったことを意味する、このように理解をするわけでありますが、いわば人命あるいは人権のために、それの尊重が大原則であるというこういう原則が確立をされたと、こう理解をしてよろしいですか。これはひとつ政府の見解を、官房長官は来ていませんね——お伺いしたいし、それから国家公安委員長からは、この種の事件に対する人命の安全というものの扱いについてお伺いをしたい。  以上です。
  18. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 今度の事件を処理します場合に人命を尊重するというたてまえを申し上げておるわけでございます。人命尊重が原則かと言われますと、わが国憲法その他の法律は、法治国家を保っておりますのは、人命を尊重するというたてまえであろうと思います。しかし、その人命を尊重するということは、国民全体の平和と安全と自由を守ってそれぞれ豊かな生活を実現すると、こういうことでありますから、特定の人命だけを尊重するという考え方でございません。憲法法治国家の目的は、人命を尊重するたてまえでございます。それを維持するということは当然でありますが、しかしそのために全体の人命が危うくなる、これを言いかえますと、法治国家の根本がそのために崩れると、こういうことは断じて許してはならない。かように人命法治国家とは全然別なものとは考えておりません。
  19. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) この種の事件に対処いたしまする警察の基本方針は、一方で人命の尊重、一方で犯人の逮捕、要するに法秩序の維持でございますが、まあ二律背反的な、これは容易に両立させがたい二つの要請でございますが、これを二つながらこの二つの要請にこたえていかなければならない、こういう方針で対処いたしてまいりました。国内における類似の事件が十一件あったわけでございますが、「よど号」の事件を唯一の例外といたしまして、その他の事件は、一方で法の秩序も守り通す、一方でその人質を救出するということでやってきたわけでございます。これが今後も警察の基本方針であるわけでございます。今回の事件は、御承知のとおり、事件の起こりましたバングラディッシュの当局が、これはあくまでみずからの責任においてみずからのイニシアチブにおいて解決をすべき問題だと、そういう立場を固持しておりましたために、非常に残念でございますが、犯人の要求を入れてあのような解決をせざるを得なかった。その結果、国際世論の批判を受ける余地を残したということは非常に残念でございますが、政府のとりました措置はこれはやむを得ざる措置であったと考えております。
  20. 志苫裕

    志苫裕君 法務大臣、あれですか、端的に聞きますが、ケース・バイ・ケースだという意味ですか。
  21. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ケース・バイ・ケースという意味ではございません。やはり大局において法治国家の尊厳といいますか法治国家の維持ができないという判断をすれば、時と場合によっては人命を損傷してもやむを得ない場合があり得ると、かようなことがございます。
  22. 志苫裕

    志苫裕君 私はきょうは議論をする時間はありませんから、時と場合によっては人命の損傷もあり得るというのが政府の方針ですか。
  23. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 事件の態様はいろいろあると思いますが、最終判断はそれ以外にないと思います。
  24. 志苫裕

    志苫裕君 後ほどまたこの点はやります。  ところで、今度の法改正あるいは罰則の強化等でありますが、ハイジャックの罰則の三年延長、旅券法違反の二年延長等を初めとして幾つかの提案がされておるわけでありますが、これまでの経験からいけば、この犯人たちは、まあ決死の覚悟とでも言ったらあれですか、そういうことでやってくるわけでありますから、この種の法改正や罰則強化等の措置の有効性には私自身も大変疑問を持つわけであります。その有効性について、これは官房と法務、外務からごく簡潔にひとつ……。
  25. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) これだけで万全だとはもちろんわれわれも考えておりません。まあ簡潔にとおっしゃいますが、こういうことが起こらないように予防措置を可能な限りとらなければならない。起こった場合はどうするかというと、それに対する責任を問うだけの刑罰規定を設ける、こういうことでございます。
  26. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 旅券法につきまして、罰則のみでこれが強化をしたからこれで万全だというようなことで考えているわけではございません。しかし、現行よりも厳しくすることによって旅券法違反の責任を追及しようと、こういう意味でございまして、旅券法の発給すること自体から問題があるわけであります。そういう意味で、執行全体を公正に行うということにいたしたいと思います。
  27. 田中和夫

    説明員(田中和夫君) お答えいたします。  今回の法律改正を御審議していただいているわけでございますけれども、この法改正だけでハイジャック防止の目的を全部達成できるということは私ども考えておりません。十一月八日、ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部で決定いたしました、先生すでにお手持ちだと思いますけれども、七項目二十四細目にわたる防止対策のそれが一体となりましてその予防措置について効果を上げていくと、かように考えている次第でございます。  なお、対策本部といたしましては、この対策全般にわたりまして常に外部の状況をよく観察いたしまして、その外部の状況に応ぜられるような対策というものをこれからもこの対策に補強したりあるいは補充したり、あるいは場合によってはこの各細目を実施いたします各関係省庁を督励したり、あるいはその実施を観察したり、かようなことにして常置の機関としてこれからも実施に努力いたしたいと、このように考えております。
  28. 志苫裕

    志苫裕君 先ほど、私は、二年前のクアラルンプール事件と同じ措置がとられたという立場でこの超法規的な措置のことを挙げましたが、実はクアラルンプール事件と違ったこともある。それは政府の処置は生ぬるいのじゃないか、弱腰じゃかいかという海外論調を初めとして、主として政府関係筋からもいわゆる強硬論というものが台頭してきたというのが私はクアラルンプール事件のときとの違いだ、このように思うわけであります。海外論調が日本政府措置についていろいろいわば強い調子の意見を言う、それがイスラエルから出たり西ドイツから出たりしていることは、それぞれの国の置かれた状況が日本とまるきり違うわけでありますから、そのことの論評は別にしまして、私は政府部内筋から出ておるその種の意見というものが、国民が率直に言って何とかもっとほかの方法はないのかといういら立ったような気持ちを、先ほど法務大臣答弁にもありましたように、時によっては人命も流すのだ、国家の威信や法の尊厳のためには人命は後回しなんだというたぐいの強硬論のいわば誘導をしておる、そういう危険を実は感ずるのであります。いまお尋ねをしました法改正や罰則強化等、これらは、あのゲリラあるいは赤軍などからすれば、死を決した彼らの武装行動にはこんなものは役に立たないだろう。そうすると、エンテベやあるいはミュンヘンやあるいはモガジシオの例がありますから、彼らはいままでよりももっと強い形で出てくる。今度の法改正その他の対策も役に立ちませんから、もっと強いものをというふうに考えるようになる。ずうっと強硬論が際限もなくいわば進むことになる。こうなってまいりますと、事件に対する冷静な解決能力というものを失うことにもなるし、あるいはまた人命よりも法秩序国家の威信が優先するという錯倒した価値観を持つようになる、警察国家への道をひたすら歩むことになる、こういう点での懸念も一方に表明されているわけでありまして、こういう点についてはいかように理解をされますか。
  29. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 決して強硬論を申し上げておるとこちらは考えておりません。法治国家を維持するために人命を軽く見る、あるいは人命尊重のために法治国家はどうなってもよろしいと、かようなものでは私どもはないと思っております。先ほど申し上げましたように、憲法を制定し、憲法の諸原則によって各般の法律規則を定めておりますものは、そういう制度国民全体の平和と安全、自由を守って豊かな社会ができると、こういう目標を定めて、これは一応国民の約束事でございます。それが暴力によってその制度が破壊される、こういうことは許してはならないと、かようなことでございまして、それはまさに人命を尊重する大原則に従って考えておる、かようなことでございます。
  30. 志苫裕

    志苫裕君 いずれにしても、この点については、先ほどの秦野委員の発言をもし引用するとすれば、国家生命以上の価値を持つという考え方には同意をしないということだけを申し上げて次へいきます。(「そんなことを言っていない」と呼ぶ者あり)  時間がないのでまことに恐縮ですが、最近、日本赤軍のいわゆるアラブ離れということが言われておるようであります。また、例のダッカ事件の後に発表した彼らの声明文というものを見てまいりますと、たとえば天皇制や日本帝国主義を攻撃目標に掲げる、いままでのパレスチナから日本革命に対する日本赤軍の責務を強調しておるというふうなことから考えますと、在外公館を含む政府機関、政府要人、あるいは皇室、商社、彼らの表現を用いれば資産百億以上の二百家族と言うのですね、こういう表現も使っておるわけでありますが、こういうところをねらった遊撃戦というものも十分想定されるわけでありますが、ハイジャックもさることながら、こういう方向への目標転換というものに対する治安当局の見方と、この声明以来それをどの程度に評価をして対応を変えているかどうか、この点をお伺いします。
  31. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 今回の事件の最中に発せられました声明文等から種々の解釈等が行われておりますが、私は基本的には従前の日本赤軍の路線は変わっておらないと考えております。もともと日本赤軍が結成されましたのは、わが国の革命を世界同時革命ということでアラブゲリラの中で共産主義革命をやろうとしておるグループと手を握って同時的に実行しようというねらいで海外に行き、海外でできたと考えておるわけでございます。ただ、今回の事件最中の声明等によりますと、従前は余りわが国内のことについて言及しておらなかったのを今度はするようになったと、むしろアラブゲリラ自体のことについての言及がほとんどないと、こういうようなところから、基本の目標は同じでありますけれども、彼らが当面闘争としてテロ行為をやる対象、方法というものに若干の違いが出てくる可能性があるということは御説のとおりでございまして、声明等に言われておりますように、いままでと違った攻撃対象を選定して各種の方法でテロ行為を行うということに対しまして、いまお挙げになりましたようなことも踏まえて対策を考えておるわけでございます。
  32. 志苫裕

    志苫裕君 この点は、ハイジャックに対する万全の措置はもちろんでありますが、何か西独赤軍ですか、これが、もうハイジャックはやめて今度はだれか要人をねらうというたぐいの声明をつい最近にも出しておるわけでありまして、そういう点についての配慮も甘く見ない方がよろしいのではないか、このように意見を申し上げておきます。  最後に、一問ですが、いわゆる赤軍Gメンと言われておる専従組織でありますが、これは細かく聞く時間がありませんのであれですが、これらは、いろいろお話を聞いておりますと、諸外国の治安当局などとの連携などを密にしていろいろな情報を主として的確につかむというところにねらいがあるようでありますが、これらの権限、あるいは当然諸外国とかかわりのある外国との何らかの取り決めを特別に行ったりするものであるかどうか、これらの点についていかがでしょうか。
  33. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 端的に申しますと、国際協力を推し進めるというのがねらいでございまして、外国との関係でございますので、それぞれの各国の治安当局等が日本赤軍の問題について関心を深めていただく。そうなりますと、わが国におきましてはわが国国内法によって処理をいたしますし、日本赤軍のメンバーがおります外国におきましてはそれぞれの法規によって措置をしてもらうということがまず当面であります。また、わが国の法令により犯罪とされる事項を敢行しておるわけでありますから、それについては手配をいたします。それによって処理をしていただくと、こういうような点について認識を相互に高めるということを中心といたしておりますので、特に権限云々ということではありませんで、それぞれ理解を深めるために協力をするということでございます。もっと端的に申しますと、日本赤軍は現に彼らの保護されておるアジトにおるわけでありますが、そこを出ますと、どこの国もテロ行為という犯罪行為に対しては厳しくこれを処理しようというのは世界共通だと思います。したがいまして、そういう国におきましては、彼らがやった行為が犯罪に触れればその国によって処理いたしますし、また、その国の犯罪に触れませんでも、わが国から手配しておる者につきましては、わが国が手配をいたしました犯罪によって処理をすると、このいずれかで処理をしてもらうわけでありますが、もっと実質的に申しますと、彼らは大抵偽造旅券行動しておりますから、偽造旅券を行使することは世界中どこへ行っても犯罪だと私たちは考えております。したがって、端的にこれで逮捕していただく、そしてわが国が引き取りに行くなり送還してもらうと、こういうことができるわけでありますので、そういうつもりで関心を高めて日本赤軍のメンバーについて取り締まりに当たっていただくということをお願いをするといいますか、プッシュすると、こういうことでございます。
  34. 志苫裕

    志苫裕君 これは外務当局でもいいのですが、この新しい専従組織がその種活動を展開するに当たって、新たな何らかの諸外国との取り決めとか、そういうものを必要とするのかということを聞いている。
  35. 三井脩

    政府委員(三井脩君) ただいま申しましたようなことでございますので、取り決め等はいたしません。それぞれが日本から言われなくてもやるべきことをやっていただく。また、ICPO等によって相互に——ICPOでは取り決めかありますから、これを運用するということでありまして、改めてこのために特にということはございません。
  36. 戸叶武

    戸叶武君 この問題をめぐっては、すでに衆議院、参議院を通じていろいろな角度から審議がなされておりますが、二十分の短い時間で二、三問題点を質問いたします。  いま世界は激動変革の時代に当たっておりまして、ことしはちょうどバルフォア宣言がなされてから六十年、ロシア革命をしてから六十年、大きな変革が世界の各地において行われなけりゃならない転換の年だと思うのです。だれも急にエジプトのサダト大統領がイスラエルを訪問しペギン首相との会談に入るということは予測できなかったほどでありますが、やはり現在置かれている厳しい現実の流れの中において、立ち往生するよりは、一国の指導者が自分を捨てて民族のために世界のために運命を打開しなければならないという責任感があのきのうのような行動を起こしたのだと思います。あの問題から見ると、日本のこのハイジャックの問題に対する取り組みの政治姿勢というものは、自分の国の安全を考えているが、あたりにどういうふうに迷惑をかけているか、国際的な連帯の上に立ってどうやって共同責任を果たさなけりゃならないかというのに対して、確固たる方針が確立されていないのじゃないかと思います。  いま、私は、この問題の推移を見て、福田首相はあのとっさの場合に福田首相としては珍しい決断を敏速に行ったと思うのです。いまの政府の部内においていろいろな考え方があったのは当然であって、サダトが行動を起こす前に側近の外務大臣がやめる、また次に推薦されていた人もやめるというような厳しい基盤の上に立って、そうして祈りを上げながら運命開拓の道を歩んだのです。それだけの土性骨を、一国の少なくとも総理大臣、また外務大臣、法務大臣あたりも持ってもらいたいと思うのです。私は、法務大臣の進退というものは、法秩序を守るという形において前の福田さんもそれなりのりっぱさはあったけれども、何といってもいつも優柔不断としか思えない福田さんが、人命がとうといという一語の中に、何だか憲法改正をするのかしないのかわからないような寝言みたいなことを言っている人にしては、この現実と取り組むときに、日本は中外に対してどういう決意を表明しなければならぬかということは直感的にわかったのじゃないかと思うのです。  いまの瀬戸山さんは、失礼だけれども、非常にまじめな人だけれども、どうも私は裁判官弾劾訴追委員をやっていながら感じたことは、鬼頭さんの裁判に対してもきわめて厳しい一つのあれはやりましたが、法律畑に住んだ人としてやはり法というものの厳しさ、冷たさを感ずるだけであって、厳しき一面においてただ法の権威というものだけにこだわっていては私は今日の世界の変転する渦の中において動きがとれなくなるのじゃないかと、そのことが心配です。ですから、この法律においても、これは前のを継承したのでありましょうが、われわれが心配するのは、さっき自民党でも秦野さんのような良識派は、法を厳しくしただけでは問題解決にはならぬということに触れております。問題はこのニヒルなテロリストを生む根源があるのです。その問題にいきなりメスを入れても簡単に転換はできません。それがゆえに、私は、国の平和憲法の精神を守ると同時に、西ドイツのような伝統並びに現実の置かれている地位日本は違うということを明確に認識して、国際連帯、国際協力には同調するけれども、海外派兵をにおわすような、海外に特殊な部隊を派遣してテロリストをやっつけるというような手荒なことはやるべきでない。ことに、人命のとうとさ、自由のとうとさ、そういう点を、総理大臣だけでなく、自民党の中じゃ与党の方にも変な人たちも相当いるでしょうし、閣僚の中にも大分青嵐会も入っているし、揺すぶられたようですが、ほかではみんな見えるので、日本はどっちを向いて走っているのか危なくて、ハイジャックだけじゃなく、ハイジャックを生むような精神が、ドイツがやはりナチを連想すると同じく、このハイジャック問題に取り組む姿勢の中に日本のミリタリズムをいやというほど感じているところにほかの国の警戒ができたので、一個のハイジャックだけの問題じゃないと思いますが、それに対して特に外務大臣がしっかりしなきゃならないが、その前に瀬戸山さん、余り法律におっ振り回されないように、法の権威というものを保つことは大切であるが、やはり世界の流れの中における苦悩している人々に対しての若干の思いやりというものもし、日本憲法の精神というものを崩さないように、目先の力み方だけで問題は片づかないということをもう法務大臣地位につかれたらしみじみとそれを感じたと思いましたが、どうぞ、前の福田さん以上に、少なくともいまの総理大臣の福田さんよりももっとしっかりとした一つの見識を、政治家はやはり見識が生命です、それを持っていかないと、本当の意味日本の国の基本法の精神は守れないと思うのですが、あなたの御所見を承ります。
  37. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 戸叶さんから御教訓やら御批判をいただいて、どうもありがとうございます。  わが国憲法は、おっしゃるとおり平和憲法でありまして、その平和憲法のもとにおいて日本民族が世界の人類と仲よくしていくように各般の法律制度をつくっております。私が言いたいことは、そういう法律制度を暴力によって転換しようと、これは民族のために許してはならない、かようなことでございます。
  38. 戸叶武

    戸叶武君 もう戦争と暴力革命の時代は去ったのです。それなのに、プリミティブなナショナリズムと不消化ないわゆる革命理論とが世界を混乱さしておるのでありますが、その最大の責任者はアメリカとソ連と、やはりそれに対して共同の責任を持たなくちゃならないのは、西ドイツ日本とイギリス、フランスあたりは共同の責任を持たなくちゃならないのです。いま核兵器はやめろと言いながら、武器輸出の最大のものはアメリカであり、フランスであり、イギリスであると、こんな矛盾した行動が、言うことはりっぱだが、やることはろくでのないことをやっておっては、やはり世界の人心をして、特に若い人たち、純粋な人たちをして、人世のはかなさ、自分たちの無力さを感じて、そこにテロリズムが発生したりするのです。テロリズムは悪いことです。けれども、ツァーの専制のもとにやはりテロリズムが発生したし、イギリスだって強力なわがままな戦争ばかりやっているようなばかな王様を相手にはこれを断頭台に送るようなクロムウェルの革命もあったのです。フランス革命も同様です。やはり当事者が心して、世界の国一国だけでなく、共同の責任を持って、もう戦争や暴力革命の時代ではないというだけの決意を持って、人民を殺すよりも指導者みずからが、サダトだってそうだと思いますが、体をなげうって世界の平和秩序をつくり上げるという行動を起こさなけりゃならないときに来ておるのに、あっちをのぞきこっちをのぞいて、そうしてほかの国じゃどうしているのかなあなんということでは、電光石火のようにひらめきの中に世界が変化していくときには対応できないと思うのです。これが日本のちょんまげ外交であり、これが日本のちょんまげ法律のいたすところであって、政治がさびついておりますよ。そういう意味において、日本みたずからも、やはり日中平和友好条約を締結するなり、朝鮮における南北の問題も、南にくみして北は危ないからというような形じゃなくて、近所隣をまとめていくだけの度胸がなけりゃ、見識がなけりゃ、日本の国なんというものはどこにも尊敬される国じゃないと思うのです。そういう意味において、いままでの日本政府考え方の中には文明史観と哲学が欠けている。自分のことを打算的に考えるが、近所隣の迷惑を考えていない。思いやりがない。これじゃ私は政治外交にならぬと思います。そういう意味において、鳩山さんは名字が鳩山というので、鳩は平和を代表するでしょうが、お父さんがむずかしい中でソ連との道を開いたように、いまソ連だけじゃなく、ソ連にも中国にも偏る必要はない。日本独自の一つの平和共存路線というものをしっかりと踏まえて、ずいぶん他の国に対する誹謗力は強いがみずからの反省のないソ連なりアメリカなりあるいは中国なりにも遠慮なしに、人のことには干渉する必要はないが、われわれはこの道を行くのだ、一緒に手を握っていくのならわれわれと一緒に手を握って、このサダトのやり方から見れば、実に見識と決意さえあれば可能な問題じゃありませんか。世界がもう先取りの時代です。大きな変革を起こさなけりゃならないときです。人事を尽くした後においてユダヤ教なりキリスト教なり回教なりを乗り越えて神に祈るつもりで両国の指導者がいま自分たちの過去のあり方を反省しながら未来を開こうとしているときに、日本だけはいつでも後を向いたり横を向いたりして、前向きの姿勢ハイジャックの問題でも何でも取り組む気魂が足りないと思うのですが、鳩山さんはそうでもなさそうだが、ひとつ御見解を承りたい。
  39. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ハイジャックの防止の問題から世界全体の問題にお触れになりまして御激励を賜りまして恐縮に存じます。  ハイジャックの防止につきまして、私ども、このような事件を二度と起こさないように、これは関係各省一緒になってがんばっておるところでございます。また、ハイジャックが起こりましたことによりまして、これが世界の多くの国々の国民の方にも大変心配を与えていること、日本さえよければいいというような気持ちでは毛頭ありません。私も事件が起こりましたときにニューヨークにおりましたけれども、各国の者は皆その凶悪犯が世界に拡散され、二度、三度のハイジャック事件を起こすのではないかというような危惧の念を非常に持っておりました。そういった観点からも、日本といたしましては、いま十一人の今回の関係者、犯人がどこにいるかわからないというような状態にありますが、私どもといたしまして、ぜひともこれは警察、法務省と連絡のもとに何とかこれらの者の逮捕に向かって、そして世界に対して責任を果たすべきものと思って、今回のハイジャック事件はそれが済むまでは終わったとは言えないと私どもは強く責任を感じているところでございます。  また、外交政策全般にお触れになりましたけれども、これらの点につきまして私どもは真剣に取り組んで、日本の将来の発展のために尽くすべきものと考えております。ただ、日本といたしまして、いまある日本立場というものが国際的には大変恵まれた環境にあると思います。しかし、そういう環境にあるから、そういったことに国際的な協力というものを忘れないで、この際、やはり世界的に日本はあらゆる面で協力をしていかなければならない。また、北朝鮮との国交の問題等につきましては、いろいろ問題がありますので、これらにつきましてはなお慎重に対処いたさなければならないと考えております。
  40. 戸叶武

    戸叶武君 鳩山さんも触れましたが、ハイジャックの問題を片づけるのにも小さな土俵だけで相撲はとれないのです。やはりねらいは国際的な連帯ですから、連帯と日本政府のとるべき責任はどこにあるか、やはり自分たちのファンクションというものを明確に把握することが必要だと思うのです。できないことはできない、できることはできる、日本はこういう事情でこうなんだということを諸外国にわからせるように、日本の外交は潤達に躍動しなけりゃならないと思います。  それから鳩山さんが言われたように、いま、たとえば通貨の問題でも、エネルギー資源の問題でも、すべてグローバルな時代に、世界の渦の中に日本は巻き込まれておるのです。日本国内だけの財政、金融、税制、外交政策では問題が片づかない。やはり世界とともに手を握って前進しなければこの波濤を乗り越えることができないところへ来ていると思います。日本は幸福な面があるといいますが、幸福な面と同時に非常に厳しい嵐の中へ巻き込まれていると思います。東西南北間の風当たりが非常に強いのです。多くの人たちが、嵐のときほど苦しいときの神頼みのように、荒波をよぎる者たちは皆光を求めるのです。日本がやはり灯台のような役割りをアジアにおいては果たしてもらいたい。日本だけではできるものじゃありません。やはり日本がアジアの進歩に貢献し、また中国と日本が組まなければアジア問題の解決はない。こういう問題を、変な軍事的な協力でなく、本当に平和共存をつくり上げる協力体制としていかなければだめなので、そういう意味においては、やはりアメリカに対しても、ソ連に対しても、中国に対しても、毅然とした姿勢をもって、自分たちは足りないけれどもこの道をベストを尽して行くのだという外交方針をゆるがしてもらっちゃ困るし、先ほど秦野君も触れましたように、外交防衛の問題は国の大事です。それと同時に、変な気違いじみた暴力革命と戦争を企画するところの頭の変な連中をコントロールしていくということは政治家の任務です。そういう点において、党内にいろいろなものがあるからという八方美人的に見識なくしてそうして右に左によろめくのじゃ、その内閣は吹っ飛んでしまいますよ、難破しますよ。内閣だけじゃない、国民が迷惑です。そういう意味において、このハイジャックの問題に対しては積極的な取り組みをすると同時に、他に乗せられてドイツと同じような厳しいやり方をしろとか、あるいはアメリカがこうだとか、参考にはするが日本はみずからの道を行くという毅然たる姿勢が必要でありますから、どうぞ、法務大臣も、大分そういうふうに変わりつつあるようですし、やはり法を守るということが、無法者を取り締まることか、ただ単に——無法者には無法者の哲学があるのです。悪くても。それを本当に変えさせていくのには、われわれの心というものがぐっと温かくなければ人は寄ってこないですよ。どうぞ、そういう意味において、この中東の何千年のアブラハムの時代から、モーゼの時代から、キリストの時代を経て、民族苦悩のどん底の中から宗教やイデオロギーや小さな部族の流れを乗り越えて平和を求めていかなけりゃならないという一つの悲願が生まれたということは、世界歴史の中においても珍しいきのうはできごとです。なぜ古き眠っているような国にあんな動きが出たのかというように、日本が明治維新において尊王攘夷から開国進取に百八十度転回できたアクロバティックな外交と見られるかもしれないが、日本自身には非常な柔軟性があると思うのです。どうぞ、民族のエネルギーをむだにしないように、あんまり変な力み方をして腰を抜かさないように、やはり政治が一番大切だと思いますので、そのことを一言法務大臣からお願いしないと、これはおっかない人だから、法務大臣からひとつお手やわらかにというわけじゃないが御意見を承って鳩山さんからはもう先ほどありましたからよろしゅうございます。
  41. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いろいろお話がありましたが、わが国立場というのは御承知のような国でございますから、一人でちゃんとして生きていけるものじゃありません。いままさに世界は残念ながら必ずしも完全な平和でありませんが、人類はやはりすべて同一だという頭で私は国の経営をしなけりゃならない。そのとおりなかなかいかぬところがありますけれども、それがやっぱり国家経営の基本であろうという考え方でおるわけでございます。
  42. 戸叶武

    戸叶武君 終わります。
  43. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 政府は、今回のハイジャック事件に関連して、ただいままでの答弁を含め、さまざまな角度から所信の披瀝がございました。いま私は私なりに整理をしながら確認の意を込めて若干お尋ねをしてまいりたいと思います。  ただいまも瀬戸山さんから御答弁がございました。今後国民全体の平和と安全と自由というものが損なわれる場合、法治国家を維持する上から人命の損傷もやむを得ない、このようにお述べになりました考え方は、たしか法務大臣就任早々の御決意と一貫しておると理解をしております。ならば、この国民全体の平和と安全と自由というものはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。また、今回のようなハイジャックそれ自体は、直ちには国民全体のそうした問題には触れないと。なれば、今後起きないという保証がないこのハイジャック事件について、もし再びこうしたことが起こった場合、また同じような措置を超実定法という立場から、あるいは緊急避難という考え方に立って、政治的な決着をおつけになるおつもりなのか、その辺を再度明確にひとつお尋ねをしたいと思います。
  44. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この前の案件の処理は、政府全体が考えましてあれがわが国としては現状においては人命を助ける上からやむを得ない措置であると、かようにしてとったことは御理解いただいておると思います。そこで、あの場合、裁判の結果を一応無にする、あるいは犯罪者裁判にかけることもできない措置をやむを得ずとったと、こういうことをしばしば繰り返すということは、法治国家の実体がなくなるおそれがある。これはその事案の状態によって判断すべきことでありますが、そういたしますと、検察、警察等はそういうものの事案の処理に努力をしなくなる。国民はまたいろいろな考えを起こす。そういうことを連鎖反応を起こします状態になると、法治国家とか言いますが、憲法あるいはそのもとにおける法律というものはあってなきがごとくになります。これは避けるべきであるというのが私の根本の考え方でございます。さような事態にあるかどうかということは国民世論を背景にし、さっき申し上げましたけれども、国民全体がどう考えるか、これは国民を代表して政治をするわけでございますから、そういう観点からその時点において判断をすべきものであると、かように考えておるわけでございます。
  45. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあそれが最も望ましいのかもしれませんけれども、ただ、ただいま申し上げましたように、国民世論を背景とするコンセンサスを得ると。しかし、緊急の場合にその判断を求めるということは非常に困難な場合があろうかと思います。先ほどのやりとりの中でも、あるいは野党党首と合議をして根本的な一つの方向というものを決めようと、これも一つ方法かと存じます。それしかいまの段階でわれわれとしても考えるところはなかろうかと思いますが、願わくばこうしたことが再び起きないような国内法の整備、いまも提案されております法律改正もそれに一連の関係があるわけでございますが、ただ、もう一つ気になりますことは、前回は超法規、今回は超実定法と、これはそうたびたびあるわけではございませんね、法律論から言っても常識から考えましても一体どういうときにその超実定法というものが適用になるのか、これはおのずから帰着するところ結論は私は決まってくるのではないだろうか。いたずらに今回のような緊急避難ということで超実定法というものが安易に先ほどもあったようでございますけれどもしばしば適用されるということになりますと、いま瀬戸山さんがおっしゃったように、法治国家として一体どうなるのだろうと、これは少なからず国民全体が疑問を抱くことはもう当然だろうと思うのです。私は、この超実定法というのは、まあほかにも例があるかと思いますけれども、たとえば外国から侵略をされて大変な混乱を起こした、憲法あるいはその他の法律体制というものが維持できないと、そういう場合にのみ初めてこの超実定法ということが適用されるのではなかろうか。いたずらにそういうことをそういう判断に基づいてそういう措置をするというその表明というものもいかがなものかと、こういう疑問に対していかがでございましょうか。
  46. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほどもどなたかにお答えいたしましたが、超実定法というのは超憲法的な措置ではないということを政府としては考えておるわけでございまして、政府憲法のもとにおける政治国民の皆さんから預かっておるわけでございますから、いまおっしゃるように超実定法という名前において憲法国家の根源を崩してはならない、これは厳に慎まなきゃならぬところだと考えております。
  47. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 これが将来においてまたそういうことが行われますと、政府みずからが法律を犯すと、こういうそしりを私は免れないということを憂慮するがゆえにいまのことを再度確認したわけでございます。  さて、昔から災難というのは忘れたころにやって来ると言われておりますけれども、最近ハイジャック等を初めとして、もう記憶の生々しいうちに起こっているというのがきわめて強烈な印象を全体が受けるであろうというふうに思うわけです。もうハイジャックが起こってから十年ぐらいの経過があったはずだと思いますけれども、これに政府が一体どういうふうに対応してきたのか。たとえば、国連の場で、あるいは運輸省が、具体的にどういう方法でもってその絶滅を期すための適切な手段を講じてきたのか、この際整理をしながらもう一遍その辺を明らかにしていただきたいと思います。
  48. 田村元

    国務大臣(田村元君) 外交的な面については外務大臣からお答えがあると思います。  確かに十年経過して、その都度いろいろと議論されながら、それがいつの間にか生ぬるくなったということは、これは否めない事実だと思います。率直にこれは認めなければなりません。それはそれとして、今日までに具体的に行ってまいりました問題として一、二お答えをいたしたいと思います。  とにかく航空会社を主導していくものが多いわけでありますけれども、まず、国内空港における対策としましては、乗客に対しては凶器類を客室内に持ち込むことを防止するために、金属探知器、それからエックス線透視機、そういう装置を使用いたしましたボデーチェック、それから手荷物検査を航空会社に行わせると、こういうことをやっておりまして、先ほど午前中にちょっとお答えしましたように、その一部の費用を助成いたしております。それから空港における不審者の監視につきましては、空港構内への出入り口につきまして証明書を所持させて確認いたします。構内パトロールの実施、監視用テレビの設置等を行っております。それから乗客が検査を受けた後に他人から凶器類を入手することを防止するためにボーディングブリッジの設置、これを大変急いでおります。相当でき上がってまいりました。それから旅客と送迎人との分離さくの設置等を行っております。また、検査による混雑を防止するためにターミナルビルの改造を行って検査スペースの確保に努めてまいりました。それから日本航空の全便につきまして検査を行う体制を整えさせたのでありますが、海外空港において日本航空では保安担当者の任命等を行うようにいたしております。それからボデーチェック等の権能を明確化するための運送約款の改正、それから持ち込み手荷物制限についての周知等を指導してまいりました。  いずれにしても、こういうことをいたしてまいりましたが、あのような事件が起こった。またその後いろいろと調査をした。やはり欠くるものが相当あったということは否めない事実でありまして、いろいろと法務省その他御苦労いただいておりますが、要はやはり水際作戦ということが一番大切でありますから、その意味におきます運輸省の責任は重大でございます。その責任と、いま一つは、外務省と協力をして国際会議の場において大いに実効ある行動をしていくということもいたしていきたいと考えておる次第でございます。
  49. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 いま御答弁がございました。まあ恐らく可能な範囲でもっての取り組み方だろうと思うのですね。だからといって、じゃこれから完璧に防げるかというと、恐らくその保証はないとお答えになるに違いないと思うのですね。羽田空港にしても、あるいは大阪国際空港にいたしましても、やろうと思う人間はどこからでも入り込めるというようないま恐らく地理的環境、あるいは飛行場内の環境等がまだ十分でない、そういう面も私はあろうかと思います。将来そこにまたさくを設けてどうのこうのということになりますと、果たしていかがなものかというまた問題も残ろうかと思いますけれども、やはり絶滅を期すためには、今後試行錯誤は許されないと、こういう決意と判断に立って、運輸省は運輸省としての防護の体制というものを完璧を期していただきたいというふうに願わずにはおられません。これは私個人のそういう意見ではなくして、国民全体あるいは航空機を利用される人たちの心情であろうと思うのです。ダブルチェックなんということは、本当に航空機を利用される立場からいえばいやなことです、ほとんど多くの人が善良な人間ですから。まるで犯罪人扱いです、率直に申し上げますと。そうしたことが一日も早くなくなることが本当は望ましいと思うのですが、ただ、運輸省の方からちょうだいをいたしました資料を拝見いたしますと、日航が寄港する外国空港ですね、いま御指摘になりましたエックス線あるいはその探知器でございますね、装備されていないところがモスクワとかロンドンみたいな大空港にもあるのですね。こういった点について、午前中には、何か、私答弁を伺っていませんでしたけれども、日航の寄港を見合わせようではあるまいかというような田村さんの御答弁があったように伺っておりますが、この点はどうしますか、寄港を見合わせるのか、あるいは国連なら国連というものを通じて積極的に働きかけながら国際間の協力を求めるというような方向に取り組むのか、それはいかがでしょうか。
  50. 田村元

    国務大臣(田村元君) われわれは、一方において、国連等の場においてつまり国際会議の場において努力をいたします。けれども、御承知のように国際会議結論というものはなかなかそう簡単に出てこない。いろいろな国が参加しております。でありますから、その方面でもわれわれは急がなきゃならぬし、先ほど言いましたように実効ある行動を起こさなきゃならぬ。一方において、いま直ちにやらなきゃならぬことがあるわけです。こういって質疑応答しておる間にもハイジャックは起こるかもしれない。そこで、私どもは、金属探知器等の機器で空港に設置してない、しかもその国の状況によっては、わが国からそれを差し上げるとかあるいはお貸しするとかいうようなことも考えなきゃならぬと思います。  それからダブルチェックの問題でございますけれども、日本航空が独自のダブルチェックができるような方途を講じなきゃならぬのですが、これはやはり主権を持っておる相手国との話し合いが必要でございます。まずJALがやる、らちが明かなければ外交ルートでこれをやる、それでもなおらちが明かない場合ということを私は指して申し上げたのでありまして、その場合には、そういう空港に対して寄港を取りやめます。なお、寄港を取りやめるということは、その国の飛行機のわが国に対する寄港もこれをお断り申し上げると、まあそういうふうに強い決意を持っておるということでございますが、最後の決断を下すまでには踏むべき手順段階というものは十分踏んでおかなきゃならぬ、それも急がなければならぬ、こういうことで午前中にお答えをしたわけでございます。
  51. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 外務省とされては、東京条約、へーグ条約、モントリオールと、こうありますね。それも数年前条約が発効しておるわけです。この間もう少なくとも数年間過ぎている。しかも、ハイジャックは、この資料によりましても減っていないのですね心各国に起こったその発生状況を見ましても、ゼロだという年は一つもないわけです。しかも、日本の場合は強烈なハイジャックをやられる。もうそうなった場合、やはり積極的に安全を期する上から、まだ未加盟国が相当あるはずだと思いますね。いま私の記憶では八十数カ国でございますか。常に国連ということを意識しながらも、こうした問題が起こったときに初めてまあ手がけると言っては大変失礼な言い方かもしれませんけれども、いま田村さんの御答弁にもありましたように、各国いろいろと事情が違う場合があってなかなか早急に結論が出ない場合がございましょう。しかし、こうした問題は人命に関する問題でありますだけに、私があえて申し上げるまでもなく急がなければならないわけですね。各国の協力を得なければこれの絶滅を期するなんということは、国内法がどんなに整備されようとも、やはりアリの一穴ということがありますように、どこかから必ずまた起こってくる。やはりそのためには国際間の協力体制というものを整備していく必要がある。その先頭に日本が立っても一向に不思議ではない。この点について、この数年間においてどういう一体提言をされてきたのかということが一つ。  それから先ほどもパスポートの問題が出ました。このパスポートの改正というものによって、これも確かに今後事故が防げるという保証は私はないと思うのです。また偽造旅券というものが出回るのではないか。今回の旅券法の改正というものには外務省としても何かの効果を考えていらっしゃると思うのですね。その二点をまず最初にお尋ねをしておきたいと思います。
  52. 賀陽治憲

    説明員(賀陽治憲君) 第一点のお尋ねでございますけれども、十年前からいかに予見して外務省が国際協力の場裏においてどのような施策を実施してまいったかということでございますけれども、これは先ほど御指摘ございましたように、三十五年に東京条約の作成ということがございました、これが一つの事実でございます。それから四十五年の国連総会におきまして空のハイジャッキング及び民間航空による旅行に対する妨害と題とする議題の緊急上程を日本が十四カ国と行うというような点で例証されますように、関係条約の整備に努力をしてまいったわけでございます。これらの努力はやはり国際協力促進のための努力として記憶されるところであろうかと考えておるわけでございます。  最近のことにつきましては、すでに御高承のとおりでございまして、国連総会における決議案の成立並びに最近のICAOの理事会におきまして日本が特別提案をしてICAOをハイジャック防止のための方向に動いてもらうということで鋭意努力しておることもこれまた御高承のとおりと存じます。  旅券法の改正の方に移らしていただきますと、これは御指摘のように、旅券法を改正したからといって直ちにハイジャック防止に対して直接的なきわめて即時的な効果があるということにはならないかと存ずるのでございますけれども、やはり五年を二年に改正いたしまして、二年以上の刑において訴追されておる者または逮捕状が出ておる者については旅券の発給をしないことができるということによりまして、過激派関連の犯罪の公務執行妨害罪等五罪について外務大臣の判断によって旅券を発給しないことができるということになし得ましたことは一つ効果を加えるものであろうかと、かように考えております。その他、五罪に限りませんで、暴力行為等処罰に関する法律第一条等数罪につきましても、これを運用方針の中に入れまして今回の旅券法改正の一つの実効的な部分とするという考えでございます。
  53. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) ただいま領事移住部長から御答弁申し上げましたが、今後、わが国といたしまして、特に三条約にあらゆる国が加盟してもらえるように、これが何よりも大切なことだと思い、一層の努力をいたしたいと思いますが、従来、ややもすれば、特に中東方面の国々の中には、民族解放運動に対するいろいろな考え方があって未加入だという国が多かったのでございます。しかし、最近におきましては、そのような考え方が大分変わってまいったと考えておりますので、それらの国々に対しましてもわが国といたしまして加盟の要請を強くいたしたいと考えております。
  54. 神谷信之助

    神谷信之助君 時間が短いですから端的にお尋ねをしますから、簡明にひとつ答えていただきますようにお願いします。  まず、最初に警察庁の方ですが、クアラルンプール事件の五人の釈放犯、これについていわゆる佐々木、西川、坂東、松田、戸平とICPOを通じての国際手配を行ったというそういう報道がありましたが、これは事実でしょうか。そして、それはいつごろでありますか。
  55. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 今回の事件の起こりました直後、十月七日、国際手配の手続を取りました。
  56. 神谷信之助

    神谷信之助君 事件が起こってから二年間たっていますね。しかも、これは、事件を起こした犯人それ自身は割り出しがまだできておらない。しかし、釈放犯の方は確定しているわけですね。それを二年間手配をしなかった理由、そして今回手配をすることにした理由、これをお尋ねします。
  57. 三井脩

    政府委員(三井脩君) その理由は二つございます。一つはICPO自体の問題、もう一つは外交的といいますか国と国との関係の問題でございます。  第一の点は、御存じのように、ICPOは政治犯を扱わない。まあその他のものもありますが、それが一つはございます。したがいまして、私たちはあの事件が起こりました直後からICPO事務総局に連絡をいたしました。ICPO事務総局は、これは凶悪犯であるから、政治的な性格があるかもしれないけれどもそういうものは捨象して凶悪犯として処理をしたい、ただし、ついては事務総局だけではいかぬので、関係の国と相談をして了承をとってもらいたい、こういうことでございました。したがって、あのときの飛行機の着いた、犯人関係した国がございますので、そこに了解を求めておりましたけれども、なかなか了解が得られませんでした。ただいま外務大臣からお話がありましたように、今回の事件が発生いたしましてそういう点についてもやっと理解がいただけたという点が一つでございます。もう一つは、国と国との関係ということでございまして、あれはリビアへ行ったわけでありますから、リビアにおる間に手配をするということになりますと、リビアに、帰してくださいと、あるいはリビアで処分したら、裁判が済んだらうちへくださいよと言っておるのに、おまえのところから逃げたのだ、だから手配したというようなことになってもいけませんので、リビアから出たということを確認をする時期を見ておりました。おおむね昨年の十月、奥平純三並びに日高敏彦がヨルダンでつかまり、送還された時期には、他の連中もリビアから出たであろうということは私たちは推測をいたしましたけれども、確認というわけにはまいらなかった。この両様の理由があって延びておったわけでありますが、今回の事件がありましたので、関係のところももう踏み切っていいと、こういうことになったわけでございます。
  58. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、今回の事件があって、そして大体まあリビアを出たのではないかという推測はできておったが、今回の事件の発生によって関係国の了解を得られたということと、それからリビアを出国したという、そういうことが確認をできたということになるわけですか。
  59. 三井脩

    政府委員(三井脩君) リビアを出た点については確認の方法はないわけでございますけれども、推測するについて有力な根拠といいますか、相当そう考えてもいい、こういう状況が昨年十月以来ありましたので、関係のところが踏み切った機会にこれを実施したということでございます。
  60. 神谷信之助

    神谷信之助君 先般のダッカにおけるハイジャックですね、これの犯行に佐々木あるいは坂東その他、これらが参加をしている可能性が非常に濃いというように、先般の地方行政委員会で質問しましたときに、割り出しはできていないけれどもその可能性もあるということでしたが、それとの関係もあってリビア出国の推測がより一層確度が高くなったという面も含まれているのではないでしょうか。
  61. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 今回の事件は、この種の事件はたとえ見方によって政治的なものであるということを言う人がありましても、ICPOの関係では単なる凶悪事件として扱うということについて踏み切ったということに尽きるわけでございます。  なお、ダッカの今回の事件について、前回釈放した五人の犯人の中の何人かが加担しておると、こういう点については、現実にダッカの五人の犯人の中に含まれておったかどうかは別として、事前にどうせ共謀があるでしょうから、事件には実行行為には参加しなかったけれども事前の謀議に参加したということまで含めますと、あの中の五人が関係しておったであろうと。それは今度要求した、九人の犯人釈放せいという人の選び方とか、そういう中から、ああいう知識はやっぱりあの五人の何人かが供給しておるに違いないと、こういうふうに推測はいたしておりますけれども、ダッカの五人の実行犯の中におったかどうかということについてはちょっと明らかじゃないということでございます。
  62. 神谷信之助

    神谷信之助君 今度の事件で、例の釈放犯六人、これについてまだICPOを通じての手配をしていないのはどういう原因ですか。
  63. 三井脩

    政府委員(三井脩君) ICPO事務総局には資料等を送りまして、いつでも事務総局が手配をするものですから、事務総局で手配書を出してくださいよということは依頼して、万端準備を終わって待っておる、こういう段階でございますが、ただ、御存じのように、アルジェリアに行ったということはもう明確でございまして、これもまた御存じのように、アルジェリアからわが国に引き渡されることについて日本政府としては希望をしておる、こういうこともアルジェリアに伝えてある、こういう状態でございますので、アルジェリアから返してくださいと言いながら、もうおたくにはおりませんよということを前提とした手配書をアルジェリアを含めた加盟国全部に出すということについてはいかがなものであろうかということで、手配書を発送する時期をいまにらんでおる、こういう段階です。
  64. 神谷信之助

    神谷信之助君 外務大臣にお伺いしますが、それで、ハイジャック犯人及び釈放犯について、アルジェリア政府との交渉は一体どういう状況になっているのですか。
  65. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) アルジェリア政府に対しましては、着陸前には、犯人の引き渡し並びに身のしろ金の引き渡しは日本政府は認めないということを約束したわけでありますが、しかし、着陸後犯人が飛行機をおりました後で、翌日になりまして、わが国といたしまして、わが国裁判権を放棄したわけではない、わが国裁判権を持っておること、また犯人に対する身のしろ金の返還請求権も持っておるということを考慮して、アルジェリア政府犯人及び身のしろ金を日本政府に引き渡すことを希望し、その場合には日本政府はこれをいつでも受け入れる用意がある旨を申し入れたのが第一点であります。第二点は、さしあたりアルジェリア政府犯人をアルジェリアから出国させないこと、拘束しておくことを含む、を要請する。また、身のしろ金については、新たなテロ行為に使用されないよう適切な措置を講ずることを要請するということが二番目であり、三番目には、犯人、身のしろ金等に対します措置をとったときは、その内容を日本政府に通報してもらいたい。以上、三点をアルジェリア政府にわが方大使を通じまして申し入れをさしたわけであります。  しかし、その点につきましては、アルジェリア政府といたしましては、それは着陸前に日本政府が行った約束と違うということでその要請は受け入れることができない、こういうことを先方は申しておるわけであります。したがいまして、日本といたしましては、今後時期を置きまして今後の再発防止という観点からアルジェリア政府に協力を求める、こういう考え方を持っておるわけであります。その後、犯人等につきまして情報を教えてもらうように連絡をしてありますが、先方としては公式には答えられないという態度をとっておるわけであります。
  66. 神谷信之助

    神谷信之助君 問題は、何といいますか、クアラルンプール事件釈放した釈放犯、これが今回のまたハイジャック事件に参加をしている、あるいは少なくとも共同謀議に参加をしているだろう。こうなりますと、また今度釈放犯が六人ふえている。拡大再生産がされていくわけですね。ところが、それに対する手配が、これは犯人の割り出しはもう完全にできているわけですから、手配はすぐできる。しかし、リビアにおる間は相手国との関係でぐあいが悪い。いまアルジェリアの場合は、外務大臣のおっしゃるようなそういう経過があってこれもできない。しかし、考えてみると、リビアから出ていったクアラルンプール事件釈放犯がもし犯行に参加をしておったとすれば、これはいまアルジェリアにおる可能性があるわけですね。それについては国際手配をする。そういうことであれば、今回の、アルジェリアにまだおるであろう、あるいはもう出たかもわからぬが、国際手配を早くするというのは、二年前のクアラルンプール事件から考えましても、釈放犯がリビアから出ていろいろな策動をやっておる、そして今日に至っているという状態から考えても、この国際手配は早くするということが日本としては必要じゃないか。出てから、どこへ行ったかわからぬようになってから手配をするよりも、いま向こうにおる、だからその点についてはもし出たらその次のところで逮捕に協力してもらうというようなそういうことを前もってやらなければ、これはなかなか日本の警察が直接やるわけにいかぬわけですから、そういうように思うのですが、この辺、ひとつ外務省の方の外交交渉、これと、それから警察の方のICPOとの連絡、これが両方相まってやらないとなかなか事は進まないのじゃないかというように思うのですが、この点両方からそれぞれお答えをいただきたい。
  67. 三井脩

    政府委員(三井脩君) もう手配は一刻も一日も早い方がいいという点については、御説のとおりでございます。したがいまして、外務省と十分連絡をとりながら事を進めておりますが、アルジェリアからの返事が、いま外務大臣がおっしゃったようなことで、その後変化がなければ、いつまでもじんぜん日を送っておるというわけにはまいりませんので、それは見切り発車ということも考えなければいけませんので、私たちは、この手配をした結果、手配を受けたICPO加盟国がその気になってやってくれるということが一番大事な問題でありますので、ICPO事務総局と連絡を密にしながら、一方外務省当局とも連絡しながら、そのタイミングをはかっておる、それについては大変長くなるということにならぬようにというふうに考えております。
  68. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) アルジェリアにおきまして各種の情報はございますけれども、なかなかオフィシャルな情報をよこさないという段階でございまして、外交面ではなお今後努力を要するものと思っております。
  69. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう最後ですが、時間になりましたから終わりますが、いま警察の方も言っておりましたが、外務大臣ね、これは日本の方がテロリストを輸出をしているということで国際的にも非難される内容ですから、それだけにアルジェリアとの折衝を早くやって、それで事の決着を、そういう国際的手配をし、国際的に泳がせようとやっているという非難を受けないようにしなければならぬ、こう思うのですね。警察の方は場合によったら見切り発車だという話がありますが、それは外交関係もありますから外務省の方も相当急いで努力をしてもらわないと、いつの間にかいなくなってそして各国にまた迷惑をかけるというのはこれは恥の上塗りになりますから、この点最後にちょっと要請をして、私の質問を終わります。ちょっと一言だけ……。
  70. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 外交ルートを持ちますと、これは着陸前のことがアルジェリア政府のトップの方まで行っておるのでございまして、したがいまして、警察当局が単独でおやりになることにつきましては私どもは一向差し支えはないものというふうに本当のところは考えております。
  71. 和田春生

    ○和田春生君 この問題については外務委員会でも法務委員会でも質問をしたことがあるわけですが、基本的なハイジャック事件に対する政府立場というものが依然としてあいまいであります。私は、いままで再々この種の問題について人命か超法規措置、超実定法的措置というような言葉も使われておりますが、そういう二者択一の命題を立てることが間違いだということを言ってきたわけです。なぜならば、人命は尊重しなくてもいいという公理が出ない以上、当然そういう超法規説という名のもとに政府のとった態度、いろいろな方法を講じてきたことがすべて認められるという形になってしまう。したがって、とりようによっては人命尊重ということを免罪符にした政府責任逃れの行為ではないか、このことについて一体どう考えるかということを問いただしてきたわけであります。しかし、その点については、あの場合やむを得なかった、残念だがそういう措置をとらざるを得なかったと、そういう答弁が繰り返されるばかりであります。  そこで、多少観点を変えてお伺いをしたいのですけれども、どうも政府についてはいま赤軍と称している凶悪犯の行為というものについての認識が基本的に欠けているように思われてならない。先ほど来の同僚委員の皆さんとの質疑を通じてみましても、これを犯罪人——一種の凶悪犯という言葉は使っているけれども、犯罪人と見ているのではないか。ところが、日本赤軍を称しているこれらの連中は、そういう単なる犯罪という形ではなくて、やはり日本国家そのものに挑戦をしている、日本国を敵として一種の戦争をいどんでいると考えた方が正しいと私は思うのです。今日の国際社会における戦争というのは、これまでのように国と国が宣戦布告をするとか、お互いに軍隊を動員して戦闘を開始するとかいう形ではなくて、戦争の形態そのものもいろいろ多様化をしている。つまり、日本国家日本の公権力に真っ向から挑戦をしてきている。そういう意味で、本来の犯罪と意味が違うのではないだろうか。その点に対する自覚というものが日本政府にはっきりないために二度にわたって超法規措置とやらをとってきた。二度と繰り返すまい、三度繰り返してはいかぬと、こう言いながら、このまま行くと、三度が四度と重なる可能性があり得るわけですね。その点についての基本的な認識というものについてこの機会にはっきりお答えを願いたい。これは法務大臣にまずお伺いをしたいと思います。
  72. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 彼らの言動といいますか、申しておるところを見ますると、まさに彼らなりの主張、考え方によって世界革命をねらおうと、こういうことだと思います。当面は、最近は日本をねらうと、こういうことのようにわれわれは認識をいたしております。ただしかし、それをやることはわが国の国法から言いますと犯罪でございますから、やはりこれを犯罪人と見るのはあえて間違いじゃないと思っておりますが、基本的認識はそういうふうに見ておるわけでございます。
  73. 和田春生

    ○和田春生君 それでは具体的にお伺いいたしますけれども、今回のときには殺人犯を含む九人の釈放と六百万ドルの身のしろ金、こういう形でそれに応じると。ほとんど無条件にこのハイジャック事犯の要求をまるのみにするという形で何とかおさめたわけですね。仮に、それならば、次に、こんなことが起こってはいけないけれども、またぞろあの連中がハイジャックを行ったと、そうした場合に、今度は、たとえばここに公安委員長がおられますけれども、国家公安委員長と警察庁長官の身柄を引き渡せと、それと引きかえに人質釈放してやるという要求が来た場合に、応じますか応じませんか。
  74. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) お答えいたします。  これは一つの仮定の御質問でございまして、そのときの状況いかんによって判断すべきものでございますから、さような場合に必ず私が参りますという答弁はこの場ではちょっと申し上げかねます。
  75. 和田春生

    ○和田春生君 公安委員長のあなた自身のことをお聞きしているのじゃないのです。国家公安委員長とか警察庁長官というような治安の最高責任者の国家の中における立場と職務というものに関して私はお伺いしているわけですね。仮定の問題だとおっしゃいますけれども、今後万全の策を講じつつもあるいは起こり得るかもわからないハイジャック対策というのは、すべて仮定の問題なんですよ。いろいろな仮定の場合というものを想定しながらこちらにそれに応ずる準備というものがなければ、万一起きたときには周章ろうばいなすところなく、またまた犯人の前に全面降伏するような醜態を演じないとは限らないわけですね。幾ら予防措置を講じておいても、万一起きたときの対策というものがあって初めてその予防措置というものも生きてくるわけです。これが抜けておったらどうにもならないのです。そこで、いま言っている公安委員長と警察庁長官という名前を仮に出しましたけれども、一体そういうような国家の^公権力の基本に切り込んでくるという要求を出してきたところへ、それに応ずるのか応じないのかという返事ができないようじゃ政府を担当していく責任はありませんよ。はっきり答えてください。
  76. 小川平二

    国務大臣(小川平二君) これはそのときの諸般の状況を十分検討して決定すべき問題でございます。ただいまの時点では抽象的な御返事しかできない、これはやむを得ないことだと存じます。一方で法の秩序は守り抜かなければならない、一方で人命はあくまで尊重していかなければならない、これが仮に二者択一を迫られるような状況というもの、こういうものもあるいはあり得るかもしれません。それはそのときの判断で決めるほかない、こう考えます。
  77. 和田春生

    ○和田春生君 この問題で総理でもおればまたもう少し突っ込んでお伺いしたいと思いますが、これ以上の押し問答はやめましょう。しかし、これは本当に日本政府の閣僚として基本的に考えてもらわなくてはならない問題だと私は考えているわけですね。われわれの人間社会というのは、人間の命と生活を守る基本的な存在である。その社会の価値を守るということが一番大切なことなんだ。そういう社会の秩序と平和と価値というものを組織的に公権によって維持するというのが私は国家の使命であり存在であると思っておる。そのために法があるわけですよ。その点に対する基本的な認識というものがどうも甘い。だからこそクアラルンプールに引き続いてまたぞろ起こした。そういう考えでおれば三度同じようなことが起きる。そのたびに、犯人といいますか、赤軍派の要求がエスカレートしていくということは、根本的に国家の崩壊に通ずる危険性があるのです。その点深刻に私は反省をしてもらいたいということを要望いたしておきたいと思うのです。  そこで、今度は、きょうは時間も非常に限定されておりますので、この種の事件を防止し対策をするためには国際的な関係が非常に重要であるということは再々強調をされているわけでございます。ところで、この政府ハイジャック等非人道的暴力防止対策本部、ここから出された十一月八日の案の中にいろいろなことが書かれているわけでございますが、「国際協力の推進」ということに対して、「ハイジャック等防止関連三条約にすべての国が加盟するよう」「積極的に努力する。」あるいは、「条約の作成を含め、国連等におけるハイジャック人質等の防止対策の推進に積極的に参加貢献することとする。」と、こううたわれております。あの事件が起きてから今日までに具体的にどういうこの面についての外交的努力をされたのか、それに対する反応はどんなものであったか、すべてを網羅しなくてもよろしいですから、主なものについてひとつ外務大臣からお答えをお願いします。
  78. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 御指摘のように、ハイジャックの防止につきましては国際協力が何より大事であろうと、私どもも全く同様に考えております。御承知のように、先般の国連総会の場におきましてこの国際民間航空の安全につきましての決議ができたわけでございます。これはわが国も積極的に共同提案国になって努力をしたわけでありますが、この点につきましては特に今回は全会一致によりましてこの決議が成立をしたということであります。前回の決議のときはこれが全会一致ができなかったわけでありまして、それはやはり民族解放運動に同情する国が反対をしていたと、こういうことがありまして、それが今回は全会一致ができたということは大変よかったと思っております。  また、ICAOの会議におきまして理事会を緊急招集をしてもらいまして、経過の報告とともに今後の防止対策につきまして協力していこうということを日本が主唱して開いてもらったというようなことで、運輸省当局と連絡をとりながら努力をいたしているところでございます。
  79. 和田春生

    ○和田春生君 この点について、いままでの経過が明らかなように、アルジェリアにあの釈放犯人を含めて身のしろ金をつけてハイジャック犯の受け入れを要請したと。無条件に日本はむしろその犯人を幇助するような立場で、もちろん人質人命を助けるという目的はあったにせよ、交渉して受け入れてもらった。なすところがないわけですね。結局そういう行為を一方でやっておりながら、今度はダブルチェックに応じない国であるとかあるいはそういう国際的な協定に参加をしない国に対しては航空機の乗り入れをとめるとか、そういうところとの間には航空関係においてこちらも対抗措置をとるとか、こう言っているわけですけれども、片方でどうぞよろしくと言っておってノーズロースでお願いしておって、後から事件が済んで対抗措置をとるのだと言ったって、それは通用するですかね。説得力が私は大変ないように思うのですが、外務大臣、どうお考えですか。
  80. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 外務委員会におきましても御指摘のあった点でございます。この三条約の趣旨は、これはやはりハイジャックを起こりにくくさせようと、こういう趣旨でございます。前回事件の直後であるからわが国として説得力が乏しいではないかと、こういうお話でございます。しかし、前回のようなハイジャックに対する日本のような措置をとったからこそよけいこれは予防をしなければならない。まあ、逆に申せば、西独の場合は、起こっても、自分の実力で解決をするということで、いや国際協力はなくても自分の力でやってしまう、こういう態度でもあるわけでありますが、日本のような解決方法人命尊重を第一として処理をしたということをやりました日本といたしましては、二度とこのような事件が起こらないように最大限の努力をしなければならない。むしろ、日本にはその責任が加重してあるというふうに痛感をしているのでございます。
  81. 和田春生

    ○和田春生君 ぜひこの面については過去の経緯というものを顧みながら積極的に努力をしていただきたいと思います。  最後の質問になりますが、二点、防止という面で具体的な点をお伺いしたいと思うのですが、この種の事件を起こさないために万全の措置というものは、相手はすきを突いて来ますから、なかなか考えにくい。しかし、何と言っても一つは徹底したチェックによってハイジャック犯が飛行機に乗り込まないようにするということがやはり基本の一つ。もう一つは、万一そういう諸君がおったとしても、適当な抑止力を働かすということが一つと、この二つというものが基本的に考えられていないと十分防止はできないと思うのです。  そこで、一つは、チェックについて現在航空会社が運送約款に基づいてやっているわけです。しかし、法的な根拠はない。航空会社がやるにせよ、空港当局がやるにせよ、やはりそれは法的な根拠を持ってそういうチェックを行う、あるいはダブルチェックについてもそういう任務が与えられているということがあって、国内的にもその措置がきちっととれますし、国際的にもいろいろ相手側と折衝するという場合に、国の外交ルートを通じてやる場合、やはりプラスになる面もあるのではないか。どうもそういう点がどこに権限責任の所在があるか大変あいまいであると思うのですが、これを改めるというおつもりがあるかないか、これは運輸大臣。  もう一つは、抑止力について航空保安官ということが言われております。これについては前回法務委員会でもお伺いいたしました。いろいろと検討中であるというお答えでございました。しかし、ピストルを撃ち合うとか、これがいろいろな問題を起こすであろうというようなことはいわば運用と動作の問題に関することでありますが、あらゆる手段を準備して抑止力を働かせる、その一つとしてこういう準備もあるということが非常に必要であると思う。こういう点について、検討中と言うけれども、それはやらないことも含めての検討なのか、どういう方法でやろうとして検討中なのか、その点をお伺いしたい。この二点を質問いたします。
  82. 田村元

    国務大臣(田村元君) 現在は、御承知のように、航空約款でやっております。いまのところ約款で私契約の形でやっておりますけれども、特に不都合を感じることはいまのところございません。まあ約款といえども法律に基づいて運輸大臣が認可をするものでございますから、それなりの権限はあるわけでございます。  それから法律の裏付けをしたらどうかということでございますが、率直に言って法的措置を講ずる必要を認めたときにはやっぱりすべきだと私は思うのですけれども、問題は、国内と国外、ドメスティックとインターナショナルは全然またこれが意味が違ってまいりまして、ドメスティックの場合でございますと、法律措置というものが一段と効果を上げることはこれは当然考えられること。ただ、その法律も、中半な法律ではちょっとなかなかむずかしい面があります。相当厳しいものでなければならぬ。ところが、今度は外国になりますと、主権国との関係がありますから、主権国との関係で果たして日本法律の適用がどこまでうまくいくかという問題があって、これはやはり私契約の方がいいであろう、こういうような考え方の使い分けが二つあるわけでございます。いずれにいたしましても、今度の対策でも、場合によっては法的規制を検討するという一項目を入れてございますが、これからしばらく経過を見て、必要とあらば法的規制に踏み切るということを当然検討しなければならぬ、このように考えております。
  83. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 航空保安官のことについてお答え申し上げます。  ハイジャック防止のためにあらゆる手段方法を考えなきゃならぬというふうに私たちも考えております。そこで、公安官の場合に、どういうような運用をするかということによってもその利点あるいは欠点というのはいろいろ差がございます。したがいまして、今回の政府のあの案をつくる段階では結論を得られませんでした。今後継続して検討を進めてまいりたいと思います。したがいまして、検討の結果、実施しないということもあるわけでございますけれども、全部を含めまして検討したいということでございます。
  84. 和田春生

    ○和田春生君 終わります。
  85. 秦豊

    ○秦豊君 何分朝からの延々たる連合審査のしんがりですから、若干の重複があらばあえてお許しをいただきたい。  初めに法務側に伺いたいのですけれども、端的に今回のこの第一条(航空の危険を生じさせる罪)、この法定刑を二年から三年に重くした理由はどんな配慮から発したのか、その点どうですか。
  86. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 航空危険処罰法の一条の法定刑の下限を二年から三年に上げた理由でございます。  この規定は、昭和四十九年にこの法律ができましたときに、それまで航空法にございましたものをそっくりそのまま持ってきたわけでございます。ところで、航空法にこの規定が設けられましたときには、刑法にございます汽車電車等の危険罪の法定刑を横目でにらみまして、それと同じ法定刑を盛っておったわけでございます。ところが、御承知のように、その後航空機の進歩は目をみはるものがございまして、非常に大型化し、非常に大量の輸送を一時にする、こういう状況になってまいりますと、汽車電車というものの危険性というものと格段な差が生じてまいりました。そういう事態がございましたところへこのたびハイジャック事件がございまして、ハイジャック事件の経緯を見ておりますと、管制塔のとめるのを振り切って夜間強行着陸をするとか、それから強引に離陸をするというようなことが随所に見られました。かようなことも事案によりましてはただいま御指摘のその条文に違反をすることになります。そういう場合を考え合わせますと、やはり従来の法定刑の下限が二年というのは軽きに過ぎるのではないかというふうに考えたわけでございまして、そのことと、それから今回設けます危険物の持ち込み罪のうちの爆発物の持ち込みが法定刑の下限が三年になりますので、それやこれやを勘案いたしましてこの際下限を一年引き上げることとしたわけでございます。
  87. 秦豊

    ○秦豊君 それから飛行場の設備とかあるいは航空保安施設の損壊の問題に関連したつまり第一条ですね。これは法文上はハイジャックとは直接どのようなかかわりがあるのか、こういう点はいかがですか。
  88. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) この条文自体はハイジャックを想定したものではございませんで、ハイジャックのみならず、あらゆる航空の危険を生じさせる場合を想定したわけでございますが、その中でたとえばハイジャック行為の結果としてそういう危険な状態が生じたと、こういう場合を想定いたしますと、その場合はハイジャック処罰法とそれから航空危険処罰法と二つの罪が一度に成立いたしまして、刑法五十四条の適用によりましていわゆる一所為数法とか観念的競合とか言われております法理で処理されることになるわけでございます。
  89. 秦豊

    ○秦豊君 それから新しく今回設けられた第四条ですね。その中にある「その他航空の危険を生じさせるおそれのある物件」という表現があるのだけれども、これは具体的にどんなものを指しているのですか、法務側によれば。
  90. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) これは条文をごらんいただきますとおわかりいただけますように、火炎びんを例示といたしております。したがって、火炎びんと同程度の危険性、効力を有するもの、これを考えておるわけでございます。  具体的な例といたしましては、かなり高度な爆発性あるいは易燃性——燃えやすい性質を持つ相当量以上の火薬、爆薬、ガソリン、こういうようなものが考えられると思います。こういうものを用いた器物といたしましては、たとえば小型火炎放射器と、こういうようなものが考えられると思います。さらに、効力のきわめて高い毒ガス、こういうようなものもこの中に含まれると考えます。こういうものを用いた器物といたしましては、ガス銃というようなものが考えられると思います。
  91. 秦豊

    ○秦豊君 あなたの答弁はそのとおりだと思うのだが、昨年度のデータを調べてみると、昨年チェックしまして十六万九千件で二十五万点がひっかかっている。ところが、そのうちの大部分は、御婦人がお持ちのはさみとか、あるいは近距離移動の大工道具とかいうのが大半なんですね。だから、チェックされた物件の中で私の聞いた第四条にかかわる物件に当たるものはどんなものがあるか。あなたは火炎放射器とかいろいろ言われたけれども、それはどうなんですか。
  92. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 運輸当局から伺って承知しておるところによれば、チェックに引っかかったものはございませんようであります。
  93. 秦豊

    ○秦豊君 それからもう一つ、確かめておく意味を込めて、この第四条には未遂規定がありますね。未遂規定というのであれば、この実行の着手時期というのをいつどこで区切るのか。たとえばエックス線透視の探知器に引っかかって反応したときを指すのか、その点はどうなんですか。
  94. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 未遂と申しますのは、申し上げるまでもなく、機内に持ち込もうとする行為の着手があった時点から成立するわけでございます。したがって、携帯したり身につけて飛行機に乗ろうというような場合には、いわゆるゲートを通る時点でございましょう。それから託送いたします場合には、航空会社の職員にカウンターで引き渡した時点、これが未遂罪の成立する時点だと思います。
  95. 秦豊

    ○秦豊君 運輸側になると思いますけれども、いま日航側が各地で点検を始めている例のダブルチェックの試行錯誤ですね。これは、実際、だから試行錯誤してどの形が一番安定した形だというのは時間がかかると思う。しかし、常識的に考えた場合、ダブルチェックなんだから、二回目の段階では全面無差別にボデーチェックということになりかねませんね。この点はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  96. 田村元

    国務大臣(田村元君) 最初第一次検査をします。ところが、その後、第一次検査で漏れることはめったにありませんけど、機械といえども絶対じゃありませんから、その後、やれ荷物を委託するとか、あるいは免税店で買い物をするとか、あるいはコーヒーショップへ行くとか、そういういろいろなアクションがありますね。でありますから、ダブルチェックの場合は、やはりボデーチェック、まあそれは女性客にはもちろん女性がやらなきやならぬでしょうけれども、ボデーチェックを厳しくするということしか当面考えられない、ダブルチェックはそれしかないというふうに思います。
  97. 秦豊

    ○秦豊君 いま和田委員と当局側との応答の中で、確かに運輸約款であると。そのとおりですね。しかし、法律をつくるともろ刃の剣になりかねないと、人権問題が出ると。いまでも私もこれはよくいろいろな空港で目撃するのですけれども、そもそも、最後はやっぱりボデーチェックだろうと運輸大臣は言われたが、そのボデーチェックは法に基づいていない、法ができていない間はですよ。法に基づいていなければ、人権侵害だと言って拒否する人に対してはどのような措置をとり得るのか、また、とろうとするのか。
  98. 田村元

    国務大臣(田村元君) これはもう航空約款でございますから、搭乗拒否という手段でございます。
  99. 秦豊

    ○秦豊君 それから関連しまして、日航機はいまたしか世界の国際空港のうち三十五空港に寄港をしていると思います。ところが、十七空港が現状の検査体制では不十分であるという認識を日航当局側は持っているようである。そのうち、マニラとカラチなど七つの空港での日本航空側のダブルチェックを認めるように、いま申し上げたマニラ、カラチなど七空港では応諾の返事が来ているはずです。あるいはまだ返事が来ていないか交渉途中なのか、その辺の確認がまだとれていませんが、ところが、さっきも運輸大臣がお答えになっていたのだけれども、日本側の要請にイエスと言わない国に対してはさらに強く交渉をする、鳩山さんとよく相談をされて。それでもだめな場合には羽田におろすことはまかりならぬと、あるいはあなた方待望の線で言えば成田にはおろしませんよというふうに強い姿勢をとるとおっしゃったのだが、IATAの関係もあるし、双務的な航空協定もあるし、あなたの言われたようなそんな強い方針が果たして貫けるものかどうか、この点若干の危倶を私は感じているわけですが、改めて御答弁ください、両大臣から。
  100. 田村元

    国務大臣(田村元君) 正確に申しますとバンコク、マニラ、カラチ、クアラルンプールの四空港はすでに実施しておる。それからコペンハーゲン、ローマ、アテネ、これは目下日本航空が直接話し合っておるのもあれば、外交交渉のルートに乗っけておるのもあるということでございますが、私は先ほどもちょっと御答弁申し上げたのですが、手順というものは要ると思うのですよ。  まず、ハイジャックの当面の防止に対する当面の責任者は、何といってもこれは航空会社です。でございますから、航空会社がまず相手国、主権国と話し合う、それでだめな場合にはいまおっしゃったように外交ルートで話し合う、なおかつだめな場合においてはこちらの寄港もさせませんし、また向こうの寄港もさせないという強硬手段をとる。これは私は航空協定の基本に触れるものではない、当然航空協定にはそれだけの幅があるというふうに解釈をいたしております。
  101. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) 寄港を取りやめとかあるいは日本に入れさせないというような話がございました。外交当局といたしましては、運輸省とよく連絡をとりまして、また在外公館でもいろいろお手伝いはいたしておりますが、そのようなことにならないように外交的努力を払いまして何とかチェックができますように努力をいたします。
  102. 秦豊

    ○秦豊君 いま確かに田村運輸大臣の御答弁では、あれをまとめると、日航が認識している、つまり検査体制不備と認識している十七空港中の七空港はどうやらアンサーがあったと。十空港残りますよね。鳩山さんによれば粘り強く誠実な外交チャネルを開いておっしゃる以外にないと思うが、これはもう交渉はかなり進んでいるのですか、それともほど遠いのですか。
  103. 田村元

    国務大臣(田村元君) 実は、先ほどの御答弁でこういう国々の検査すべてを一月までに終わりますとお答えしたのですが、まあ私は御承知のような性格でございますから、先ほど御質問のあった直後に航空局長に命じまして、年内、大みそかまでには全部終われと。少し班をふやして、いま四班でやっておるのですね、四班で一班大体二週間かかるというのです。ですから、班をふやしてでもやれということを命じました。航空局長もそれを了としてやることにいたしましたが、残る十空港ももちろん検査対象——全部検査するのですから検査対象でございますが、いまのところ日本航空が掌握しておる情報では、特にいま目くじらを立てるような不都合はないというようなことのようでございます。
  104. 秦豊

    ○秦豊君 そのことは、確かに田村運輸大臣のパーソナリティー、性急というのじゃなくて迅速というのだと思う、大変結構だとその点は思います。  さっき和田委員とか渋谷委員との質疑応答の中で国際関係に触れられましたね。これはすでに鳩山外務大臣の答弁の中にもあったのだけれども、たしか十一月三日の国連総会では、東京条約、へーグ条約、そしてモントリオール条約、三つ含めたハイジャック防止決議、いわゆる三条約が全会一致で採択をされたと。ちょっと寄異に感じたのは、今度のハイジャックで三条約への未加盟国がたまたま寄港地として選んだ中にたとえばバングラデシュがあり、事件が実際に起こった。アラブ首長国連邦とかアルジェリアなどがあって、そういう国々は確かに加盟をしていなかった。ところが、決議には全会一致で参加した。だから、明らかにこれは態度の変化と読み取っていいわけですよね。また、同時に、態度の変化があるのだから、日本政府ハイジャック防止対策の中で、和田委員がお触れになったような外交交渉ですね、あの交渉に際しては、しかも政府側の文言を見ると、「強く働きかけるものとする。」と。通り一遍じゃないのですよ。こういう表現にもなっていますので、交渉に際して日本政府なかなか強くなんという言葉はそれこそ慎重過剰で余り言わない立場が、強くと言っているので、一体外交的にはどういう交渉のレベルを強いと言うのか。また、具体的に和田委員には答弁にならなかった、それらの外交チャネルは全開して相当もう交渉が進んでいるのか。鋭意やっていますではなくて、交渉の途中経過、向こうの反応、これを含めて念のために伺っておきたいと思います。
  105. 鳩山威一郎

    国務大臣鳩山威一郎君) いまわが国に寄港したいという国が三十二ヵ国ございます。これは成田の空港ができるのを待っておりまして、これらの国は日本に乗り入れを希望しております。これらの国に対しましては、これらの条約に入ってくれなければ困るというようなことは、日本は大変強い立場になりますから、それはもう当然言えると思うわけであります。  なお、その他の国につきまして、先ほども申し上げましたが、従来特に中東諸国の中には加盟していない国が非常に多い。これらの国に対しまして、あらゆる機会を通じまして日本といたしまして働きかけたいと思います。
  106. 秦豊

    ○秦豊君 恐らく、いままで、朝からの質疑あるいはこれまでの当該関連委員会質疑の中で、やはり法律は万能でない、あらゆる厳戒体制すら万能でない、絶えずすき間はあり得るのだというふうな御指摘も多々あったと思います。また、事実、法律の強化という問題がもろ刃の剣であることももうさんざん論議された果てであろうと思う。しかし、現実には、やはりキューバ等へのハイジャック件数の激減というふうな実績を見ると、あながち法の強化が全然無効である、ぬかにくぎではないという認識も成立すると思う。私は、今度の改正法律案自体は、その点では一応の、まあ前進とは言えないが、前進と結びつく可能性を秘めたものだと思う。しかし、あくまでこれは、政治の知恵と、過剰警備になり人権抑圧につながらない、しかもハイジャック防止の所期の効果を上げるということは、きれいごとで、まさに隴を得て蜀を望むようなものかもしれないけれども、そういう点については瀬戸山さんがいかに張り切って執務をされようとも、その限界は序はり限界として、まさに政治のバランス、良識というものはあくまで貫かなければならない。これは常識であろうと思います。そういうことを要望申し上げて、二分ばかり時間を余しているようですけれども、あえて質問を終わります。
  107. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 他に御発言もなければ、本連合審査会はこれにて終了することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認めます。よって、連合審査会は終了することに決定いたしました。  これにて散会いたします。    午後三時五十四分散会