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国務大臣(
瀬戸山三男君) 第一点の、こういう事案に対して、将来場合によっては血を流しても云々という
発言をしたと、これに
関連してでございますが、私は今度の
政府の——その当時は局外でありましたけれども、とりました
措置については、それこそ万やむを得なかったと、こういう意味で局外にあったときから了承をしておりました。しかし、私は、この
法治国家というものを
政府のものであったりあるいは
法務省のものであったりする、そういう
考えの上に立っておりません。まあ私なりに
考えてみますと、憲法を制定し、そして
国民生活に関する、あるいは国家運営に関する基本的な原則を憲法に打ち定めて、その憲法に基づく諸原則を実現するために御
承知のとおり万般の
法律、規則を制定しておる。こういう制度は、細かい歴史は知りませんけれども、長い歴史の成果である。いろいろな歴史が繰り返されたと思いまするが、そういう
国民の合意だと私は見ておりますが、あらかじめ
国民生活を憎むについてのおきてといいますか、定めを決めておいてそれに従って
国民生活を続けるということが、平和で安全で自由な生活ができる。もっと将来別な知恵が出るかどうか、これはわかりませんが、長い歴史の過程においてこういう
方法がベターである、現在
考えられる限りにおいてはこれがベターであるということで、各国おおよそそういう制度をとっておると思っております。
わが国も御
承知のとおり明治以来と言っていいでしょうが、約百年間これを続けてきておる。これは
国民一人一人の平和で安全、自由な生活ができるという定めであると私は思います。これは
法治国家の基本であって、日本にいたしますると一億一千万のすべての
国民のよりどころである、私はさように
考えております。でありますから、たとえば
ハイジャックのように、今度残念ながらそういう実定法に定めてある規則を破って、犯人の
要求に応じて
人命を何とか助けようと、こう
措置したことでありますが、そういう
法治国家をつくっておる根本のねらいは、いわゆるいま申し上げましたように、平和で安全で自由な
国民生活を憎むということでありますから、まさに
人命を尊重するということが基本原則で前提になっておると思います。でありますから、ああいう
事態に際して
考えることは、何とか乗客、乗務員等の
人命を可能な限り尊重しなければならぬ、助けなければならない、この前提があると私は思います。ただしかし、こういうことをそれならばそれでは
法治国家の根幹を常に崩していってもいいのかというと、私はそれに対してはそれでいいという感じが起こらぬ。と言いますのは、
法治国家の根幹を崩していくということは、それ自体が
国民全体の、平和と安全と自由を破壊していくということでありますから、憲法を制定し
法律規則を定めた趣旨に反することになる、こういう
事態が起こり得るわけでございます、将来想定いたしますと。これは非常にむずかしい問題でありますが、でありますから、これはこういう事案についての処理をあらかじめ一定しておくという
方法はなかなかないと思う。いまよく言われておりますが、ドイツ方式がよかったとかあるいは
わが国のとった方式がよかったとか、こう単純に割り切れるものじゃないと思う。私、率直に言って日本的には非常によかった、あるいはドイツのやり方も一人二人の犠牲は出ましたけれども非常によかったと、こういう感じを実際率直に申し上げて持っておりますが、しかし、たびたびこういうことが繰り返される場合においてそれでいいのであろうかどうか。
人命はもとよりいま申し上げたとおり尊重する前提に立って
考えなきゃなりませんが、しかし、その
法治国家のねらいが崩れ去るというような
事態は、もし仮にそういう
事態が想定される場合には
人命をああいう
人質を救うということを前提に作動しなきゃなりませんけれども、時と場合によってはやはりある程度の犠牲を払わなきゃならぬ場合もあり得る。このくらいの
決意をしなければ
法治国家の
維持というものはできないと私は確信をいたしております。それが単純にもう犠牲にしてもいいんだと、そう簡単なものじゃありませんけれども、それくらい
国民全体が
法治国家ということの意味を、先ほどのを繰り返しますが、国家、
政府のことでもなければ
法務省のことでもない、
国民一人一人の問題でありますと、それくらいの
法治国家というものの根幹をみんな
考えて対処しなければこういう問題の根本的解決にならない、こういう趣旨を申し上げたいと思う。私はそういうことも全然ないとは
考えられない。もし、それを、ただ
人命尊重、何でも注文どおりやりますと言っておると、これは
法治国家の根本が崩れますから、私はそれに応ずるわけにいかない、こういう
考えを申し上げておるわけでございます。
それからこれはさっき実定法で
人命尊重の
関係は含まれておると言いますが、さればといって、おっしゃるように、まあドイツは国情は違いますし、西ドイツのヨーロッパ地域における国際
関係といいますか、地理的条件、いろいろ歴史的条件がありますからああいうことができるのじゃないかと言いますけれども、
わが国ではああいうことはそう簡単にはできないと思う。でありますからそういう
意見もあります。
ハイジャック対策本部の中でもそういう
意見もたまには出ますけれども、
わが国でああいう
特殊部隊をつくるという形式でやるということはいまの段階で、私は、適当ではない、可能ではない、こういうように
考えておるわけでございます。そういうことは
考えておりませんが、あらゆる努力を続けて
人質の救助をしながら
法治国家を守る、これに全力を挙げなけりゃならぬ。しかし、これは起こってからではなかなかいま申し上げましたようにそう簡単じゃありませんから、まずこれも万全の
対策ということは、いまの世界情勢、いまの交通事情、世界各国の政治情勢等を見ますると、なかなかこれは万全にはいかぬと思いますけれども、とにかくああいう
事件が起こらない方策、まずこれに全力を挙げる。それが、いま先ほどある程度申し上げましたことを国内的にあるいは国際的に世界全体がそういう気持ちになってもらわなければこれは根本的に排除することはできない。そういう意味で早速外務省を通じて督励して、御
承知のように国連等にも持ち出して国際的にそういう方式をとってもらいたい、こういうことをやっておるわけでございまして、私は重ねて申し上げますが、根本はああいう諸君の蠢動を許さないという
措置をとることが大前提であると、かように
考えております。でありますから、
特殊部隊を派遣して云々ということはいま
政府の中では
考えておりません。
それから
ハイジャック対策について、それは必要であると、中身は大いにひとつ研究しようという
お話ですが、
暴力というのはそれだけじゃないじゃないか、そのとおりであります。でありますから、他の
暴力について、これは
刑事局長あたりからも御
説明申し上げますが、いかなる
暴力でも、これはもういまの憲法、
法治国家でこれは許されない問題でありますから、同じように対処をする。しかし、
ハイジャックの特殊性に応じて、御
承知のように飛行機の中でございますから、ほかの場合とやや違う。その違うところに無点を当てて今度の
ハイジャック対策についてのことを
考えておる、かように御
理解いただくとよろしいのじゃないかと思います。
他の
暴力問題については、
刑事局長から御
説明させます。