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粕谷照美君 私は日本
社会党、公明党、日本共産党、民社党、第二院クラブ並びに無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました
女子教育職員の出産に際しての
補助教育職員の確保に関する
法律の一部を改正する
法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。
学校教育がその目的を達成するためには、
児童・
生徒に対する
指導活動のほか、財務・管理・
環境整備や
子供の安全福祉にかかわる活動が一体として機能しなければなりません。そのため、
学校内に教諭のほか養護教諭、栄養職員、寮母等いろいろな職種が
法律に基づいて配置されております。事務職員につきましても、
学校教育法第二十八条に原則として置かなければならないと定められておるのであります。現在、
学校事務職員が担当している職務にはまず
一般的な事務として文書・統計・給与・経理事務などがあり、また直接
子供にかかわる事務としては、教材教具、施設設備および就学奨励などの事務、さらには
地域の父母にかかわる
PTA諸活動への援助など、きわめて多方面にわたっております。
さらに、これらの複雑多様な
学校事務を適正に行うためには
学校教育の理念、
教育内容、
教育行政の仕組み及び
子供の学習
環境の把握など
学校教育に関する深い知識・教養が要請されており、
一般行政事務とは別の意味での専門性を持たなければならないのであります。
以上のように
学校事務は、教員の
教育活動と相まって
学校運営を有機的・一体的に進めるためにきわめて重要な
役割りを果たしていると言わなければなりません。
しかるに去る第四十六回国会における本法の一部改正によって女子の
実習助手が法の適用対象に加えられ、国立及び
公立の
小学校、
中学校、
高等学校、盲
学校、聾
学校、養護
学校及び
幼稚園に勤務する
女子教育職員のすべてが、この
法律の適用を受けるに至りました。にもかかわらず、
学校教育の現場に勤務する教職員のうち、ひとり
学校事務職員のみが本法の適用の対象外に置かれることになりました。
したがいまして、たとえば女子の
学校事務職員が一人のみという
学校で、本人が出産のための休暇に入った場合、その仕事はすべて教員に肩がわりされることになります。ところが教員は、元来そのような事務にふなれなため、病院あるいは自宅で休んでいる
学校事務職員のまくら元へ仕事のことでいろいろと聞きにいくこととなり、本人は事実上安心して産休を完全にとれない状態であります。
また、教員が
学校事務を分担させられることにより、
教育活動に手不足が生じ、
教育の正常な
実施が阻害されているのであります。
また、一部の県では、
学校事務職員が産休をとった場合、
学校内の事情に通じている当該
学校の教員を
学校事務に当たらせ、その結果
学級担任、または教科担当の穴埋めには、産休補助教員を充てるという措置をとっているのであります。
このようなやり方は、いずれも
学校事務職員に対する産休補助職員
制度が認められていないため生じた苦肉の策であり、これでは専門的な
学校事務の遂行に円滑を欠くばかりか、
子供の
教育にも支障を来たし、
学校内に二重の不正常な事態を引き起こすものであり、看過
できない問題であると思います。
ところで、
学校事務職員の男女別割合を見ますと、女子事務職員の占める割合は、
幼稚園で八六%、
小学校で六九%、
中学校で六〇%、
高等学校で四〇%、特殊
教育諸
学校で三九%という高率であり、国
公立のこれらの
学校に勤務する女子事務職員の総数は約三万一千名に達しております。これら多数の女子事務職員は、先に申しましたように、その出産に際して代替職員の臨時任用
制度がないために、その大半が労働基準法で保障された産前六週間・産後六週間の休暇もとりにくい
状況であります。
このような不合理な実情を改め、かつ母体及び生児の保護と
教育の正常な
実施を確保するために、多くの県または市町村においては、それぞれ独自な形で代替事務職員を置くことを認めざるを得なくなってきているというのが今日の実態であります。これは、当然速やかに国の
制度として確立すべきであると考え、ここに本改正案を提出した次第であります。
次に改正の内容としては、第一に、法第二条第二項に新たに「事務職員」を加えております。これによって、女子の事務職員の出産の場合も補助職員の任用が可能になります。
第二に、法の題名及び本則中の「
女子教育職員」を「女子教職員」に改め、「
補助教育職員」を「補助教職員」に改めております。これは、従前、本法の適用対象とされていた者が、
教育に直接的に携わる「
教育職員」に限られていたのに対して、今回、
学校事務職員を加えるために、その字句を
教育職員と
学校事務職員の総称である「教職員」に改めるものであります。
なお、この
法律は、
実施のための準備期間の
必要性を考慮して、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することといたしております。
なお、本法施行に要する国の経費は年間約一億九千七百万円であります。
本法案は、過去第四十八回、第五十一回、第五十五回、第五十八回、第六十五回、第六十八回、第七十一回の各国会に提出され、とくに第七十二回国会では参議院において全会一致をもって可決されました。その後第七十五回、第七十七回及び第八十回国会にも提出され、この法案が
最初に提案されて以来十年以上の歴史を持ちながら、いまだにその実現を見るに至らないのであります。
以上の経緯にかんがみ、今回はぜひとも本法案が成立するよう、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。(拍手)